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1988-04-18 第112回国会 参議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十八日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十六日     辞任         補欠選任      吉井 英勝君     佐藤 昭夫君  四月十八日     辞任         補欠選任      一井 淳治君     本岡 昭次君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 沓掛 哲男君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 及川 一夫君                 田渕 勲二君                 丸谷 金保君                 本岡 昭次君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房経理課長    高橋銑十郎君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    甕   滋君        林野庁長官    松田  堯君        水産庁長官    田中 宏尚君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        総務庁行政監察        局監察官     石和田 洋君        大蔵省主計局主        計官       竹島 一彦君        大蔵省銀行局特        別金融課長    浅見 敏彦君        中小企業庁計画        部金融課長    中野 正孝君        自治省行政局行        政課長      秋本 敏文君        自治省財政局財        政課長      遠藤 安彦君        会計検査院事務        総局第四局長   吉田 知徳君    参考人        農林漁業金融公        庫総裁      松本 作衞君        農用地開発公団        理事長      杉山 克己君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十六日、吉井英勝君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。  また、本日、一井淳治君が委員辞任され、その補欠として本岡昭次君が選任されました。     ─────────────
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、農林水産省及び農林漁業金融公庫決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 本題加古川西部水利事業質問に入る前に、今問題になっております牛肉オレンジ自由化交渉の件について一言伺っておきます。  四月十五日から十六、十七日と連日の新聞各紙は、「農相自由化容認へ 来週末に訪米決着めざす」とか、月内決着合意、代償四項目を要求とか、また必至の自由化国内対策に着手などと報道されております。この報道を見る限り、もう自由化の路線は敷かれたという認識で新聞を見なければならぬ状況にあると思います。また、その中で記事一つとして、佐藤農相は「牛肉オレンジ輸入自由化を事実上容認、来週末にも訪米し、今月二十八日をメドに対米交渉決着させる意向を固めた。」と報じている新聞もございます。  そこで、政府は、新聞が報じているように、自由化容認の方針を既に固めて、それに基づいて大臣訪米をされて、月内決着を目指すというこ とになったのかどうか、この点を伺っておきたいと存じます。
  8. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今、報道を例示されまして御質問でございますが、今日までの間、一部の報道に、あらざることを報道しておるその点について、私自身困惑をいたすことがしばしばでございました。特にと申されたその記事につきましても、はなはだ私といたしましては遺憾な報道だということで、官房長をしてその社に厳重に申し入れをいたしました。取材もせず、現実もわきまえず、推測以上の推測を重ねておられては非常に困るということを率直に抗議を申し上げておるところでございます。  もとより言論の自由、出版の自由はあるわけでございますけれども、それにしても余りにもという感じでございまして、私はそうは言いながらも、その報道についてどう思うかと問われれば、そのような理由によって私は一部の報道コメントをしたのでは、また憶測憶測を重ねる、外交交渉についていかがなものか、こういうことをおもんぱかりまして、これ以上の報道についての言及は差し控えさしていただきたい、かように思っておるところでございます。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、報道に関するコメントでなく、現状はどうなのかということを聞かしていただきたい。
  10. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 三月末、私が訪米いたしまして、自由化は困難との基本的立場、これを明確にしつつ我が国の実情を十二分に説明をいたしました。アメリカ側理解説得に最大限努力いたしたところでございますけれども、残念ながら合意を得るに至りませんでした。まことに申しわけないと思っておるところでございます。  米側基本姿勢は、本年四月一日からの自由化であり、そのずれはまことに大きいものがございました。しかし、友好国でありますアメリカとの間で決裂してはならない、話し合いは何としても継続し、我が方の実情をわかってもらいたい、そして話し合いを円満に進めて平和的な決着を見るようにいたしたい。私がよく使う言葉でございますが、またアメリカに行っても言ったところでございますけれども、結論は勝ったとか負けたとかという評価を受けるような形ではなしにひとつ話し合いをいたしたい、このことを提案いたしましたところが、それはわかった、こういうことで話し合い継続することになったわけでございます。  しかし、話し合い継続ということになりましたが、宗教的、社会的な行事ということになりましょうか、私も詳しく説明をするだけの見識はございませんけれども、イースターということでほとんどがみんなお休みになる、こういうことでございました。  そういうこともございまして帰国をいたしましたが、先般、眞木経済局長を初め三局長を実は派遣いたしまして、話し合い継続するというその約束に、合意に基づいて実務者レベル話し合いをさせたところでございます。このたび三局長も帰ってまいりましたが、米側が必要と考えている内容を一々具体的に中身を申し上げるわけにはまいりませんけれども、概略申し上げれば、さらに内容が具体的に示された。しかし、米側の考え方は自由化時期の明示が不可欠、こういう前提に立つものであって、依然として双方の立場の相違は埋められるところに至っていないというのが現状でございます。  私といたしましては、先ほども申し上げましたように、何としても二国間でひとつ友好的に平和的な解決を図るべく全力を挙げておるところでございます。こういう状況にございますので、格別の御理解を賜りたいと思います。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、本題質問に入ります。  本日の私の質問は、兵庫県にございます国営事業として進められている加古川西部水利事業及び東播用水に関係する問題でございます。この問題は、兵庫県あるいは神戸市、加西市を初めとする多くの関係市町、そして受益農家という立場皆さんが大きな関心を持っておられます。佐藤農林水産大臣農水省幹部答弁一つ一つが、この問題を円満に解決する方向に向かうのか、あるいは解決見通しのつかない泥沼の状態になるかのかぎを握っているということを認識されまして、解決方向に向かっていくよう、誠意ある答弁をまず初めに期待をしていることを申し上げておきたいと思います。  最初質問は、この加古川西部水利事業がいつ完成するのかということなんであります。  昭和四十二年に事業を七カ年計画でスタートして既にことしで二十二年を迎えています。私の質問もこの決算委員会で五十七年、五十八年、五十九年、六十一年と既に四回に及んで、きょうで五回目の私は質問をしておるのであります。完成時も、五十九年に完成すると言われ、六十二年にできるかもしれないと言われ、また六十五年というふうに変更をされています。六十五年まであと二年、必ず完成するのかどうか、もうこれ以上決算委員会大臣なり担当の局長が次々といたずらに完成年を引き延ばすということは許されないと思います。大臣答弁をいただきたい。
  12. 松山光治

    政府委員松山光治君) 大臣お答えに先立ちまして、事務的に現段階における状況について御説明させていただきたいと思います。  加古川西部地区につきましては、先生からも何度もいろいろと御指摘をいただき、御指導いただいておるところでございます。本地区につきましては昭和四十二年度に着手して以来、やむを得ない事情も多々あったわけではございますけれども、今御指摘ございましたように、当初の予定に比べまして工期が大幅に遅延をいたしておるということにつきましては、まことに遺憾に存じておる次第でございます。  それで、現在の状況でございますけれどもダムなり取水施設なり幹線水路といいますか、そういった基幹的な部分につきましての工事建設はおおむね終了いたしておりまして、附帯施設を含めまして最終的な仕上げの段階にかかっておるわけでございます。私どもといたしましては、六十五年度中の完成ということを目指しまして鋭意努力を傾けておるところでございます。  以上でございます。
  13. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 実はこの問題は、先般六十三年度の予算につきまして御審議をいただいておるさなか、衆議院分科会において貴党の永井委員から厳しくお話がございました。それと若干重複するかもしれませんけれども、私といたしましては、今委員おっしゃいますように、結果としてとにかく何かいいかげんなことをみんな毎年言ってきたではないか、何回も何回もおかしいではないかと御指摘を受けても、それに抗弁の余地がないような率直な感じを受けておりまして、工期が延びておることにつきましてまことに遺憾に思っておるところでございます。  六十三年度予算は、先般おかげさまで成立をさせていただきました。その中でのこの種の予算も今までとは違って伸びておりますし、今後ともそういうことに意を用いながら、今実務者から申し上げましたように六十五年度完工を目途に全力を挙げたい。環境は少し変わってきたぞ、ここで不名誉な御質問を受けることのないようにひとつ名誉挽回を図りたい、かような決意でおるところでございます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 六十五年を目指して鋭意努力するというのは三回聞かせていただいております。うそは泥棒の始まりと昔からよく言われております。うそとは言いませんけれども、こう再々やりますとやっぱりうそと言いたくなるんです。  そこで、農水省の資料を見ますと、国営かんがい排水事業のあり方のところに特別型と一般型がある。そこで、特別型の事業を行う場合はというところにちょっと注釈がついています。加古川水利事業特別型になっておるんですね。最初一般型でスタートして、そして昭和五十二年に特別型に変わるんです。特別型にはこう書いてあります。一般型に比べるとより多くの事業費を確保することができ、工期が短くて済みます、しかし、 受益農家財投資金を借りるわけですから、建設期間中も金利がかかります、こう書いてあるんです。金利がかかるけれども負担が多くなるけれども、早く済ますことができますといって特別型を採用した。一体この責任はどうなるのかということなんです。早く済まないのに高い金利の金だけを借りて、そしてやってきたというこの責任、今の段階で鋭意努力しますでは済まないものがあると私は思うんです。この責任を、おくれてきたということと、特別型を選択させて、金利がかかるけれども早く済みますよと言ってきたということに対する責任農水省としてどうおとりになりますか、はっきり言ってください。
  15. 松山光治

    政府委員松山光治君) 多少言いわけになるかもしれませんけれども工期遅延の問題につきましては、間にオイルショックが入ったとかいろいろな事情もあったわけでございます。農水省といたしましては、何とか全体としての国営事業の進度の促進を図りたい、そこで財投資金を活用しながら少しでも事業促進方を図っていく、こういうことで特別型の事業を採用したというような経緯があるわけでございます。私どもとしては、今おしかりをいただいたわけでございますけれども、六十五年度中に何としてでも完成させる、こういうことでもってせっかく特別事業型を採用したことの趣旨にこたえたい、このように考えておる次第でございます。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 その責任は、具体的に受益農家負担というところで当然国は果たすべきであると私は考えますが、いかがですか。
  17. 松山光治

    政府委員松山光治君) 受益者負担の問題につきましては、工期遅延等あるいは工法見直し事業量追加といったような事情もございまして、かなり当初予定したものよりも大きいことになるわけでございますけれども、私どもといたしましては地元関係者とも相談しながら、できるだけ負担軽減が図られるような道がないか、引き続き検討していきたい、このように考えておる次第でございます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 その問題は、また最後の段階で詰めたいと思います。  そこで、議論をする前提といたしまして、次のことを質問します。  まず、六十五年完成という前提で、次の具体的な金額をここで公式発表として示していただきたいんであります。  兵庫県の十二月県会で、県当局は総事業費三百六十九億円、十アール当たり地元負担二十八万三千円、年償還金三万一千円、そして利子もつけて総トータルして十アール、一反当たり約五十万円の金がかかるだろうという試算を出しております。  これに対して農水省は、総事業費幾らになるのか、地元農家の十アール当たり負担額年償還額、あるいは十アール当たり維持管理費、こうしたものがそれぞれ幾らになるのかという点を具体的にここで数字として示していただきたい。
  19. 松山光治

    政府委員松山光治君) この地区の総事業費の問題につきましては、工法変更でございますとか、事業種目追加とかというようなこともいろいろございまして、これまでも多少変動してきておるわけでございます。今、私どもといたしましては、地元負担軽減の問題、最終的にどのような中身事業決着させ、どの程度負担いただくか、こういうこともあわせまして計画変更問題の一環として地元とも御相談しながら検討を行っておる段階でございます。そういう意味で、最終的な事業費の正確な見積もりを得るには若干なお時間をかしていただきたいと思っておりますけれども、現段階におきます私ども検討状況といたしましては、総事業費といたしまして約三百九十億円程度という試算ベースにいたしまして、これから精査を進めていきたい、このように考えておる次第でございます。  これを十アール当たりとか、あるいは年償還額ベースで換算をいたすわけでございます。今、そういう意味での最終的に検討しておる数字ということでございますので、多少ラフな試算としてお許しいただきたいと考えるわけでございますけれども、今申しました約三百九十億という試算ベースにいたしまして六十五年度に完成する、それから県とか市町村の上乗せ助成といったようなものを考慮しないで国庫負担残の二分の一を農家負担する、こういう一応前提条件を置きましてかんがい排水につきましての負担額試算を行いますと、今お話のございましたのと大体同じような数字でございますけれども、十アール当たり農家負担額にいたしまして約三十万円、それから同じく十アール当たり年償還額といたしまして約三万円、それから十アール当たりの総償還額といたしましては約五十一万円、こういう結果に相なるわけでございます。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうしますと、着工時総事業費五十五億円でスタートしたものが三百九十億円ということですから、これは七倍強。それから、着工時の負担金として十アール当たり二万一千円でスタートしたものが三十万円というのですから、これはもう十五倍。それから、着工時十アール当たり償還金年二千円が三万円になるんですから、これも十五倍。それから、着工時に総償還額はとにかく三万四千円払ってもらえばいいんだというお金が約五十一万円払わなければならぬ、十アール当たり、これも十五倍。大変な数字になっているんです。二十二年という歳月を経て、そして当時約束したときからこれだけの金額が膨れ上がった。でたらめとは言いませんが、こんなむちゃな国営事業がほかにあるんですか。大体国営事業というのは、当初約束した十五倍、二十倍というような数字で最後処理されるというのが通常なんですか。加古川西部水利事業あるいは東播用水も同じようなことになると思うんですが、これが異常なんですか。どうです。
  21. 松山光治

    政府委員松山光治君) 今お話ございましたように、当初予定いたしました事業費負担額に比べますれば相当の増高があるわけでございます。この地域の特殊な事情といたしましては、ダム建設に伴います補償交渉にかなり時間がかかっておる。それには社会環境変化といったあの地域一つの置かれた事情というものがあったのかなと思いますし、それから都市化との関連その他から安全性といったような観点から整備水準も向上させなきゃいかぬ、こういうような要請その他もございまして、そういう意味でかなりふえたという要素が一つあるわけでございます。一般論として申し上げますれば、これは再三にわたっていろいろと御指摘、御指導をいただいておるわけでございますけれども国営事業全体の遅延が問題であり、その間オイルショック等が入りまして物価、賃金の上昇もあるといったような状況もございますので、程度の差はいろいろとあるわけでございますけれども国営事業全体について事業費増高が問題であり、これをいかにできるだけ増高を抑制し、負担軽減を図っていくかということが私どもにとっての非常に重要な課題になっておる、こういう状況にあるわけでございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣にはまた後ほど質問をいたしますので、現実、どういうことが起こっているかということを十分この質問、やりとりを通して知っておいていただきたいと思います。  それでは、次に計画変更について伺います。  昭和六十一年四月十四日、決算委員会において、その当時の佐竹局長は私の質問に答えまして、現在作業中の計画変更案では総事業費約三百五十億円と答弁されているんです。正確には三百四十八億円でございます。昭和五十九年から農水省はこの地元の出先の所長を通じて、三百四十八億円の総事業費で間違いなく工事完工する、だからこの計画変更に応じてくれというふうにして地元同意をずっと求めてきたんであります。計画変更の総事業費三百四十八億円で間違いないからといって皆さん同意の判を求めていった。一体そのことは現在どう考えればいいのか。私、三百六十九億でも大変だと思っておるのが、三百九十億になるかもしらぬという数字が今出てきて、大変驚いています。これも地元の農民を、農家皆さんを愚弄するにもほどがあるんじゃないんです か。五十億近い金がその後ふえるということの見通しも立たないまま、三百四十八億で完工しますから計画変更の判を押してくださいと言って説得に回った。本当かと尋ねれば、間違いありませんと言い切った。「舌の根も乾かぬうちに」という言葉があります。文字どおりそういうことをやってきているんですよ。これは一言で言えばどういうことになるんですか。一体、計画変更を求めて、そのことがほぼ二、三年のうちにひっくり返ってしまうという、局長、これどうお答えになります、この問題に対して。
  23. 松山光治

    政府委員松山光治君) 委員指摘のように、六十一年の段階で六十年の価格をベースにいたしまして、六十五年度完工という予定で、総事業費を三百四十八億というふうに見込みまして地元と相談に入ったという経過があるわけでございます。その後の事情といたしましては、地元負担問題とも絡みまして、改めて計画中身についても見直し検討ということで、今私ども宿題を持っておるというのが現状でございます。  非常に大きな額の増加になったではないかという御指摘でございますが、その後の事情変化といたしましては、ダムとか頭首工等附帯工におきましての事業量の増であるとか、あるいは水路建設をずっとやっておるわけでございますが、その水路建設居住地周辺に至りましたために、全体としての安全性観点から工法変更を行いますとか、あるいは思わざる用地補償費の増があるようになったとか、用水の遠隔管理施設追加する方がいいんじゃないかというような状況が出てきたとか、いろいろな事業費増加要因がありまして、先ほど申し上げましたようなことで三百四十八億をある程度上回らざるを得ないというのが現在の私ども見通しになっておるわけでございまして、ひとつ御理解を賜りたい、このように考えておる次第でございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、御理解願いたいと言っても、現実問題理解できないんですよ。間違いなくそれでやりますと言って地元の所長が判をとりに回った。しかし、地元皆さんはそのときに恐らくそれでおさまりはすまいということでもって同意を皆拒否していったんですよ。文字どおりふえたじゃありませんか。一体、農水省事業というのはこんなずさんなものなんですか。あなたは先ほど三百九十億円で完工するだろうとおっしゃった。ことしの予算を全部使って、執行予算は三百六十三億になる。そうすると、残事業費といわれるものは二十七億円ということになってきます。そうすると、もうその二十七億円という残事業は、それでは一体加古川西部水利事業として一体どこの地域のどの工事に何億円使って、残りの二十七億円で完工しますということをあなた方はもう責任を持って言えなければならぬと思うんです。残事業二十七億円について、今ここで何々だということは時間的にむだだと思いますので、後でその二十七億円の残事業、ここの何町のどこの水路をこうするから、ここにこれだけのお金が要るという残事業の総体を私に資料として示していただきたい。それが一点。  それから二点目に、昭和六十年以降、三十億、四十億、三十億と百四十四億もの金をどんどんつぎ込んでいっているんです。それは総事業費のうちの三〇%を上回るものが最終年の三、四年につぎ込まれるという、私たちから見れば何か異常な状態に感じます。だから、その六十年以降、あなた方が三百四十八億円で計画変更地元住民に求めたそれ以降、一体どういう事業を具体的にやられて百四十四億円という国の費用、地元負担もそこにかかってくるが、それの資料を後で私に示していただきたいと思いますが、いかがですか。
  25. 松山光治

    政府委員松山光治君) 六十年以降の主たる事業につきましては、水路を中心にいたしましてそれぞれ具体的に行われておるわけでございますけれども、後ほど先生に状況について御説明さしていただきたいと思います。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 ここで会計検査院においでいただいておりますので伺います。  今日まで会計検査院も国営かんがい排水事業遅延問題を取り上げて、二度にわたって指摘をしてこられました。私もそれに基づいて質問をしてきたという経緯がございます。それで会計検査院として今までも特記事項あるいは指摘事項として取り上げたその事業がこのような遅延をしているという状況に対してどういう感想をお持ちかということと、それから、私が今いろいろ質問しましたことで会計検査院としても一定の認識を持たれたと思います。そこで、やはりこの問題を円満に解決をしていくためにも、あるいは地元皆さんの不信を払拭するためにも、会計検査院としてこの事業についてのぜひ会計検査を私はお願いをしたいと思うんですが、いかがですか。
  27. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) ただいま先生からお話がございましたように、私ども昭和五十九年の検査におきまして、国営かんがい排水事業及びそれに附帯しますところの道県営、団体営事業の施行につきまして、事業効果の速やかな発現を図っていただきますように、会計検査院法第三十六条の規定に基づきまして農林水産大臣あてに対して意見表示をしたところでございます。その中におきまして、ただいま御論議になっております国営加古川西部土地改良事業についても指摘しているところでございます。  この事業につきましては、昭和四十二年に着手されまして、当初予定工期、これは七年であったわけでございますけれども、その後、ダム水没関係地域等の用地補償の交渉に長期間を要しましたことなどから、指摘いたしました五十八年の検査時におきましても事業の進捗率が六九%程度になっておりまして、長期化によりますところの事業効果の発現が遅延しているということで、他の国営かんがい排水事業とあわせて指摘したところでございます。  その後、用地買収補償及び水利調整がおおむね解決いたしまして、ただいま農水省の方から御説明がございましたように、ダム関連の附帯施設あるいは揚水機場、導水路幹線水路等の建設促進されつつあるというふうに聞いております。  会計検査院といたしましては、農林水産省御当局の対応及びその事業の遂行状況等について関心を払って推移を見守っているところでございますけれども、今後の検査に当たりましても、引き続きまして経済性、効率性という観点から検査を実施してまいりたい、このように思っているところでございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 昭和五十七年四月二十一日の決算委員会の私の質問の中で、当時の森実局長は次のように答えました。「この地域の実態を考えると、多目的利用を図るべきだ」と思っている。「本事業への新規参加の可能性を含めて、高度な水利用計画検討ということについては、この場所で私はっきり申し上げますが、農林水産省としても非常に前向きに考えておりまして」と言って、この加古川西部水利事業のためにつくられた糀屋ダムの水を単に農業用水だけじゃなくて、いろんな多目的なものに使って、結果として受益農家負担軽減させるということにつなげたいと言って、ここに答弁されたんです。一体どのように今高度な水利用計画があって、農家負担軽減が策されているのか、答えていただきたい。
  29. 松山光治

    政府委員松山光治君) 先生御案内のように、糀屋ダムを基幹といたしますこの地区につきましては、当初の段階から工業用水との共同事業、大体工業用水としては三万立米というふうに承知しておりますが、そういうものとして計画されかつ実行に移されてきておるわけでございます。  今、過去の森実局長の御答弁の話がございましたけれども、まさに当時の農林水産省としてはそういう考え方のもとに何とかして高度な当地域の水の利用を図っていく、そのことを通じて農家負担軽減を図りたいということで、特に五十七年から五十九年にかけてと承知しておりますが、県とも真剣に協議を重ねてまいった経過があるわけでございます。しかしながら、御案内のような多用途の水需要が予想されたほどには伸びていない等々、本地域の水利用をめぐります諸般の事情からこういった努力が具体的な成果を得るに至っ ていないというのが実情でございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣、このようにまさにその場その場の言い逃れをやってきたんです。今言ったようなことをきちんと会議録は残して、そして何かやったかというと何もできていない。これは決算委員会を愚弄しておるのだと思うんです。その場が終わったらもう終わりだということで、次の質問をするまで、私はこんな無責任が許されていいのかという憤りでいっぱいであります。時間が限られておりますから次々と質問をやっていきますが、一体森実局長は今どこにおられるのか知りませんけれども、こんな失礼なことはないです。  この事業検討した最初の時点では、こういうことだったようです。地元開発のために水が必要だと、そうなんです。あの地域は水が不足して、私も二十年近く住んでいましたから、水は大切だということは本当によくわかるんです。それで、総合的に見れば地域開発だから、その負担地元皆さんだけに負わせませんというふうな、ある程度安易なことも含みながら初め同意を与えてやってきた、こういうこともありました。それから水の高度な利用、上水ということも出ましたので、それも調べてみました。加西市は市川という一級河川の川がありますが、その県水を今トン当たり百二十円で買っているのです。それをやめて加古川西部水利事業で出てきた水を上水道として加西市が使用すればいいじゃないかという問題を持ち出した。どういう答えが返ってくるかというと、日量二万トン要る中で、もし加古川西部水利事業の水を加西市が使用したとしたら、トン当たり百二十円で買っておるのが二百四十円以上につくというのです。だから、とてもじゃないがそんな負担は市民の皆さんにできぬ。それはそうでしょう。  だから、この問題を別の意味で考えたら、人間が使う上水にも採算が合わない高い水を田んぼや畑につぎ込んで、そして一体採算が合うのかという問題が今度は出てくるわけです。 上水にも採算の合わぬような水をなぜ田畑に使って採算を合わせようというのか。だから結局のところ皆さんは、一体どのような農作物をつくったら先ほど言った十アール当たり五十万円という高い投資をして一体間に合うのか教えてくれとおっしゃっているんです。こういうものをつくりなさい、そうしたらこの投資に見合います、それなら私たちはオーケーしましょうと言うんですよ。ここのところは農業政策上の一番のポイントだと思っている。はっきりここで、こういうものをおつくりになったら五十万円をペイしてさらに利益が上がりますよということを言ってください。農業経営上どうしたらいいんですか。
  31. 松山光治

    政府委員松山光治君) 結局のところ、水を有効に活用いたしまして、あるいはそれに伴って行われております圃場整備の成果を生かして、いかに能率的な営農形態を考えていくかということになろうかと思うわけでございますけれども、先生御案内のように、この地域は就業機会が多いということもございまして兼業農家も多いわけでございますし、一戸当たりの平均規模も小さい、しかし、そのかわりに都市に近いといったような市場流通条件には恵まれているといったような状況にあるわけでございます。  ただ、そういう全体の状況の中で、経営の規模も比較的小そうございますし、生産の組織化もおくれているような実情にあるというふうに、市等の資料から私は拝察をいたしておるわけでございます。結局、水をいかにうまく使いながら地域の農業の展開を図っていくかといったことになるわけでございますから、県なり市なりの農業振興の方向、既に文書でも出ておるわけでございますから、地域実情に合わしてよく相談いただくということになろうかと思います。県なり市の出されております資料等から私は拝察いたしまして、やはりそっちの方向で考えにゃいかぬのじゃないかなというふうに思っております第一の点は、できるだけ能率的な農業生産が営まれ得るような、そういった生産単位の形成、具体的には中核的な農家の規模拡大をどう図っていくかということでもありましょうし、あるいは専業的な農家と兼業的な農家の役割分担をうまく考えながら、一定の集団組織で能率的な営農をやっていくというようなことにもなろうかと思うんですけれども、そういった言ってみればこの地域における農業の構造的な改善というのが一つのとるべき道ではないか。  ちなみに、やはり規模の制約等もございまして、大体このあたりの水稲で申しますと平均作付規模、五十アールから六十アールぐらいかなというふうに見ております。これは兵庫県の場合が大体平均的にその程度になっておるわけでございますが、例えば農機具費にいたしましても、六十キロ当たりで、これは六十一年産米の生産費調査の結果を今見ておるんですが、八千二百円程度かかるという結果が出ております。ただ全国平均、これは一ヘクタール規模ということになりますが、そうなりますと、八千二百円よりも大分低くて四千八百円ぐらいのたしか数字になっておったかと思います。これは一つの実例でございますが、そういう形でできるだけ能率的な生産単位を形成していっていただく。またそのことが、このかんがい排水と一緒に並行してやっております圃場整備を通じまして、そういうことが可能な基盤がつくられてきておるというふうにまず考えるわけでございます。  それからもう一つの道は、やはりこれは加西市の農業振興計画の中にも出ておるわけでございますけれども、水稲が中心の地域ではございますが、同時にブドウでございますとか野菜でございますとか、そういった都市近郊としての強みを生かした作目も持っておるわけでございます。加西市などは具体的な営農類型の目標なども出しておるわけでございますけれども、そういったいわば農業生産の多様化を図っていくためには、やはり水の安定的な供給というものがこれまた基礎的な条件でございます。せっかくの農業基盤整備、水の安定供給と圃場整備という事業が進むわけでございますので、ひとつ地域の英知を挙げて、それに見合った生産性の高い、収益の上がる農業というものを構築していただきたいものだ、このように私どもは考えておる次第でございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 別に目新しい話じゃないんですね。それはあなた、国全体の農業政策でありまして、そういうことで地元皆さんが到底納得するわけはないわけです。しかも、昭和四十年当時は食糧増産で、米をつくれつくれというときで米も適当に上がっておりました。米作で採算がとれた状態かもしれません。水不足というのも、当時これはやっぱり補水ということで考えられた事業でしょう。その補水という意味の水不足はどれだけかと言われたとき、三〇%というふうに当時考えられていたようなんです。だから皮肉なことに、今減反が二九・四%から三一・二%に減反しておる。必要とするそれだけの田畑が同じ分要らなくなったといえば、補水の必要はなくなったということなんです。年々ため池は改良されて、たくさんそこにお金もつぎ込まれて、別に糀屋ダムから水路を引いてその水を補水してもらわなくとも、今あるのでちょうど間に合うという一つの農業政策も現にある。ある意味ではそういう農業政策上の大きな矛盾がここにも露呈をされている。水が必要なときに工事を始めて水が要らなくなったときに工事が完了して、そしてその金を払えと言う。それは要ったものだから仕方がないと言うかもしれぬ。しかし、国が一つの農業政策と打ち出したものの中で、二十年たったこの時の流れの中から起こった変化を無視して、私は受益農家に、これだけのお金がかかったんだからあなた方は払うべきであろうというやり方は、とてもこれは政治のありようではないと思います。  だからこそこの地元は、大臣の手元にも渡してあると思いますが、「加古川西部土地改良受益者負担金にかかる決議文」というものを六十三年の三月三十日、加古川西部土地改良第二十一回総代会というところで決議を上げているんです。私が今質問しましたのは、言うなればこの中にずっと書かれてあることをさらに資料をつけて私は質問した。この改良区の皆さんの意思を私は代弁した つもりでおります。この中にも、私が今いろいろ言ったような問題が「解決されない限り農家は本事業より逃避したい気持である。」と。「本事業より逃避したい」、非常に配慮した表現であります。しかし、私はもっと厳しい考え方を持っておられると思うんです。さらに、「農家が納得する額にしかも農家が実際に受ける受益の範囲内において大幅な軽減をされるよう、特に特別会計による金利負担事業遅延が重なり農家負担が高額になっている」こうした問題を含めて、やはり政府は土地改良の中で、国負担受益者負担、その中には都道府県負担もありますが、そうしたものについて抜本的に改めていただきたいということをこの中に決議をされておるわけでございます。  六十五年完工を目前にした時点で、やはり地元皆さんも喜んで完工できる条件をつくる今極めて重要な段階にあると私は思います。農林水産大臣、ずっと今までのこのお話をお聞きになっていただいて、これは農林水産省のどういう責任においてこの問題を解決されようとなさっているのか、御答弁をいただきたい。
  33. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) いろいろ具体的なお話を伺っておりまして、なかなか事務当局が説明をいたすにいたしましても、言いわけとしか聞こえないという結果になるような感じは、私も聞いておって率直にそう受けとめます。そうは言いながらも、今減反政策にも言及をされたわけでございますけれども、短期的な需給均衡あるいは中長期的な需給均衡、とにかく長期的には食糧は、今過剰だ何だと言われながらも、全世界的に見れば中長期的には不安定な要素があるという認識の中で農業政策をどう進めていくか。  今実務者からもお話ございましたように、構造政策はぜひとも必要だ、しかし、始めたときに水は要って今は水が要らぬじゃないかと、それも確かにそういう言い方でおっしゃればそのとおりでございますけれども、それじゃ全部これを直ちにこのままほってもいいのかというとそういうわけにもまいりません。やはり地元理解をいただきながらこの六十五年完工を目指していくとするならば、そこに負担の問題が出てくる、この負担はちゃんと考えろよというお達しだろうと、私は今質疑を聞きながらそういう感じを受けたわけでございます。六十二年度につくられました計画償還制度の適用を含めまして県や市町村ともさらに十分な相談をしながら、理解を仰ぎながらこちらもできるだけのことはする、そういう責任をやはり果たしていかなければならぬのだなということをつくづく感じ入った次第でございまして、御指摘の点を一々弁解しようとは思いません。重ねてその点は申し上げながら、今後の決意を申し上げておく次第でございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 最初段階なら、ひとつよろしくお願いしますと言って私も引き下がるところですけれども最初も言いましたように、私も五回の質問をやって、そのたびに歴代の大臣がみなそうおっしゃったんですよ。何にも答えが出てこないまま今を迎えているんです。だから、はいそうですかと言うわけに私はいかぬわけで、それであなたもおっしゃった、せっかくここまでつくったものをほかすわけにはいかぬ。それはそうでしょう。しかしこれは契約事項でしょう。だから最初着工当時に契約したままずっと来ておるんです。だから完工してもそのときの支払い義務というのは最初契約した二万何ぼを払えばいいということにこうなるんです。五十万円かかりますと言われたって、そんなの私ら初め契約していません。だからこれから計画変更が要るんでしょう。しかし、計画変更について皆さん同意を得ようと思っても、今言いましたように、地元皆さんはもう不信の塊みたいになってしまって、うっかりこのまま判を押したら大変なことになるぞという状態にあるんですよ。  だから私は恐れるのは、計画変更の判をもらわぬまま完工してしまう、しかし、そんなことが果たしてできるのか。そうでしょう、地元の人の同意のないまま三百九十億で完工した、しかしそれは地元の人の合意を得ていなかったということになれば、一体その三百九十億はだれがどのような責任において処理することになるんですか。この工事の始まった最初の議事録をずっと私は精細に読んだら、みんな地元の人の三分の二以上の合意に基づいて進めていきますと書いてある。ところが、最初得た合意のまま十五倍に膨れ上がっても、そのことについての地元の人の合意はいささかもないんですよ。それで終わったらそれに合意をもらいますというような、通常こんな契約があるでしょうか。これは民間のケースでは絶対そんなことは起こり得ぬと思うんです。  大体長期にわたって払うというのも、それは仕事がずっと長期にわたる中で順次払いながらいって、完工したときにはやっぱりお金の方も大体払い終わっておるということで初めて納得ができるわけで、二十年かかって、おじいさんのときに契約したが、子供の代に払い始めて孫の代にそれが終わるなんというのは、そんなばかげた契約なんというのは私は成り立たぬと思う。国だからこんなことができると思うと私は許されぬと思うんです。どこへ持っていったってこんな話は成り立たぬ。  どうしますか、計画変更について地元皆さん合意を得るには、ここに書いてあるように、地元の改良区の皆さんが、国が誠意を持って農家皆さん負担軽減問題、四二%の半分の二一ということじゃなくて、一体それをどうするのかという問題を具体的に示してからでないと、私は計画変更の判は絶対地元ではもらえぬと思うんです。私も国政に携わる一人ですから、地元皆さんが気持ちよく計画変更の判を押して、そして円滑に完了をしてほしいと思うんです。だけど、今のままでは、私の見るところそうした計画変更地元皆さんが応じられるということについては、三分の二の合意を得られるということは不可能ではないか。それを前にして、最後にこの判こを押させていくということは、果たして農水省事業として正当性のあるものでしょうか。はっきり答えてください。
  35. 松山光治

    政府委員松山光治君) 御指摘のように、計画変更につきまして御理解が必要なわけでございます。多少言いわけになるかもしれませんけれども、これまでの過程におきましても、事業の実行状況なり、金のかかりぐあいについてはその都度できるだけ地元の方にも御説明する形で進めてきたつもりではございますけれども、このような事業費増高という状況でございますので、私、一番最初に申し上げましたように、これから総事業費についての精査を進める一方で、ただいま大臣からもお話のございましたような計画償還制度の適用という問題も含めまして、農家負担軽減問題についても県、市町村とも十分相談しながら関係の方々の御理解、御納得の得られるように最善の努力を尽くしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう時間もありませんので、大臣の方からどうするかという問題を答えていただきたい。三人か四人の大臣が、農家皆さんが納得されるようにやりますということを全部おっしゃったんです。大臣も結局そうおっしゃると思うんです。だけど、ここで農家の納得するように、納得するようにと言ったって具体的なものが出てこなければこれは納得されようがないんです。だからひとつ大臣、ここで本当に農家皆さんがまず負担をどうするのかという問題について、納得されるようなものを示さない限り計画変更地元皆さんに申し上げませんということになると思うんです、結論は。鶏か卵のような話ですけれども計画変更をあなた方がうんと言わないから工事が進まないんだとか、負担軽減の話ができないんだとかと、こういうある意味では恐喝めいた話があります。だけど、私は逆に、国の方がやはり具体的に受益農家負担をどうするのかという問題について、今までは四二%のうちの二一%を地元受益農家の方に負担をお願いするということでスタートしましたけれども、それはこのようにさせていただきますというものを持って、そして計画変更に臨まなければこの問題は解決しないと 思うんです。  だから、負担軽減の割合の問題に具体的に農水省が入って、そして農家皆さんを納得させるということについて誠意を持ってやる。まず真剣にそこのところをやる。国の責任でそこのところをやらしていただきますということをここで言ってもらわなければ、抽象的なことでは私はおさまらない気持ちなんです。
  37. 松山光治

    政府委員松山光治君) 事務的にこれからの私どもの進め方についての段取りといいますか、考え方を説明さしていただきたいと思いますが、先ほども申しましたようなことで、計画償還制度の適用を含めまして県なり市町村とも農家負担軽減問題について十分打ち合わせをする、そのこととあわせて計画変更の案を詰めまして、両方一緒にお示ししながら関係の農家の方々の御理解を得ていくようにしたい、このように考えておる次第でございます。
  38. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今、構造改善局長から実務的な話がございました。それはそれで進める。私といたしましては、そういう実務的な答弁のほかに、私自身が自分で、計画更変あるいは同意書の取りつけ等々について非常にこじれた経緯の土地改良事業を私の地元でも実は経験をしてきております。そういうわけで、今新しい去年つくった制度も含めて受益者の皆さん理解を仰いで、そして負担軽減をどうしていくか、それと並行して条件変更同意書をどう取りつけるか、これはもう丁寧に話し合いしなければ、こじれたらこじれたままどんどんそれだけが進む結果になることを私はおそれております。でありますから私は、従来の大臣が言ったからおまえもそう言うだろうとおっしゃいましたが、いかように受けとめられましても結構でございますけれども、私は私の経験に徴しまして実務者を督励いたしまして、今言った方向で何としても六十五年完工を目指したい、このことを明確に申し上げさせていただきたいと思います。
  39. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう一問、もう時間が来ましたけれども大臣、それは失礼な言い方をしたかもしれませんけれども、私としてはそういう気になるんです。  そこで、負担軽減というものを大臣責任でやりますということをひとつ。あなたは地元の経験とかいろいろおっしゃいましたけれども、それ以外に解決の方法はないんです。だから、方法はこれから詰めるにしても、要するに問題のかぎは受益農家負担軽減にある、その問題の解決を私はいたしますということをここで私は言ってもらいたい。
  40. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今この委員会、この席上において、ただいま私は実務者を督励をいたしておるのでございます。それでわかっていただきたいと思います。
  41. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、今聞いていて、今の答弁では私は全然わからないんですよ、わかっていただきたいと言っていたけれども。どうもそういう点がちょっと。いつも決算委員会というのは時間が来れば終わるんで、はいそこまでということになって、後でまた一年かかるんです。  私は、今の話と同じような問題ですが、これは終わってしまった事業についての後始末の問題、ここだけで終わらなきゃまた大蔵委員会とか本会議もありますし、私はずっとこの問題は結論の出るまで実はやらしていただきたい。そのかわりできない相談はいたしません。こうやればできるんでないかということを提言しながら実は御質問したい。御質問というよりはきょうはむしろ本当に農家は困っているんだから、こういうのを何とかしてください、地方自治体も困っているんだから何とか大臣考えてくださいという半ば要望、陳情を兼ねた質問、だから色よい返事をしていただければ十分でも終わると思っておるんです。  最初に、その前にこれは五十九年四月七日の時の山村農水大臣がワシントンでの記者会見で話した談話、これは大臣の方に通告しておいたんで読んでいただけたと思うんですが、この中で、「我が国農業を着実に発展させていくことを念頭に置き、我が国の農業を守り、農業者が犠牲にならないように対処するとの決意の下に、すべて私の最終的な責任の下に判断を下した。」、もし「万一、不測の事態が発生するような場合には、直ちに必要な措置を講ずる方針であるので、生産者各位におかれては、動揺することなく、生産活動に努力していただきたい。」、これは四年前、牛肉オレンジ問題、ガット問題等についてのワシントンでの合意をしたときの談話なんです。それから四年間たってまたことし同じ問題になりましたね。しかし、このとき、さきの農水大臣談話で話したこのことについては現佐藤農水大臣も同様な考えであるということを確認してよろしゅうございましょうか。
  42. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 四年前の山村農林水産大臣の発言を引用して、そのことについておまえも変わりはないか、こういう御質問でございます。そのとおりでございますと申し上げておきますが、さらに敷衍をいたしまして、中川・ストラウス会談が始まりましたとき私も応援団の立場で携わっておりましたけれども、そのときの気持ちから全く変わっておりません。
  43. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 今肉牛を生産し、あるいは肥育している農家がかたずをのんで事の成り行きを見ております。そして、もう既に現況でも離農者も出てきておりますし、この取り扱いを一歩誤ると大変な問題になることは大臣御承知のとおりだと思うんです。それで、そのことの問題の一つ農家負債の整理の問題があります。特にここできょうはその中から農用地開発公団事業に絞って、こういう負債をどうしてもらえるだろうかということで御質問を申し上げたいと思っております。  まず最初に、会計検査院にお伺いいたしますが、先ほど私の方から御連絡いたしました、特に一つだけとったんですが、霧島北部、これが三、四年予算額と実施額が事業計画に見ると同額なんです。なかなかこういう操作をするということは面倒なんですが、これは会計検査院は検査をなさっておりますね。差し支えないということですが、もう一度ここで確認をさせていただきたいと思います。
  44. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) ただいま御指摘のございました点でございますが、先生のおっしゃいます意味は、霧島北部地区で実施されております事業につきまして予算現額と決算額とが一致しているという点であろうかと思います。  事業を担当しております霧島北部事業所がこの事業を実施いたしました昭和五十四年度から五十九年度までの六年間の予算額、決算額について見ますと、予算額に対しましては、これは当然でございますけれども決算額はこの間には差異がございます。けれども、先ほど申し上げました予算現額は予算額に前年度からの繰越額を加えまして、さらに流用増減を行った後の数字になるわけでございますけれども、この予算現額と決算額との間で申しますと、ただいまおっしゃいますように昭和五十七年度以降三年度の間は全く一致しているのは事実でございます。一般的に申し上げまして、予算現額に対しましても決算額は変わるものでございますけれども、霧島北部地域事業につきましては年度途中におきます事業が順調に進捗いたしまして、事業費が早期に明確になったといったようなことから予算の流用手続等が行われました結果執行額と予算現額が一致した、こういうことであろうと思います。したがいまして、この予算現額と決算額が一致しているといって予算執行上に特段の問題があるというふうには思っておりません。  以上でございます。
  45. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 普通はこういう場合、例えば工事費とか今おっしゃったような事業費、これは繰り越しをしたりいろいろなことができるけれども、人件費だとか旅費だとか、そういうものまでぴたっとうまくはなかなかできないし、普通の会計ですとこういうのは別ですから繰り越して使えないんです。ここだって人件費はかかっているはずなんです。ところが問題はそこにあるんです。人件費とかいわゆる物件費的なものが全部この公団の 事業については事業費の中に入っているから、実施額と予算額が同額という経理の仕方ができる、こういうふうに私は判断したんですが、そうですか。
  46. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) 今翌年度の繰越額のお話がございましたけれども予算現額とそれから決算額との一致しております五十七年度から五十八年度までの間におきましては、翌年度の繰越額はこれはゼロとなっております。したがいまして、今御指摘のございました点でございますけれども予算の流用の手続がとられまして、例えば零細な残額が生ずるかもしれませんけれども、そのような場合には微細な消耗品等に充当されることによりまして予算現額と一致するということはあり得ることだ、こういうふうに思っております。
  47. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私が質問しているのは、それができるのは給料その他そこで働いている公団の人の人件費的なもの、物件費的なものもみんな事業費という科目で整理しているからそういうことができるんですねと聞いたんです。そうですね。
  48. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) 公団の事業費の区分を拝見いたしますと、大きく分けまして開発事業費とそれから開発事業事務費の二つに分かれております。それで、その開発事業事務費の中に職員給与、旅費等も含まれておりまして、おっしゃいますように、この開発事業事務費の中で予算が執行されている、こういうことによるものかと思います。
  49. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、公団にお聞きしますけれども、公団が事業を完了すると、これは都道府県に売り渡します。このときはそういう人件費その他の事務費的なものも一応事業費の総額の中に見て売り渡すということになるわけですね。
  50. 杉山克己

    参考人杉山克己君) 公団の完成した事業につきまして、いわゆる下物と上物とございます。先生がおっしゃっているのは上物の施設関係かと存じます。完成した施設は、公団は御指摘のように都道府県に売り渡します。その場合の対価はかかったコスト、コストの中には事務費、人件費等を含んでおります。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、ここに問題があるんです。というのは、今公団の理事長答弁のように、その仕事の計画、設計、監督、これは公団ですから、全部事務的経費として事業費の中に入って、これらが都道府県に売り渡すときには原価として算入されるんです。その結果どういうことが起きるかといいますと、普通の公共事業としてつくったものと公団がつくったものとでは、公団から売り渡しを受けたものがえらい高いことになるという仕組みの一つがここにあるんです。えらい高いものになってしまうんです。この点をひとつ大臣、まず御記憶を願いたいと思います。  それで、次は畜産基地を例にとりまして、この畜産基地の事業で、ここはうまくいっているというところを五つ、それから、いやここはどうもうまくいっていないというところを五カ所、これを名前を挙げてお答え願いたいというふうに質問しておきましたので、これをひとつお願いしたいと思います。そこを、私現地をずうっとその後見て回りたいと思っておりますので、御指摘を願いたい。これはお願いしておきましたので、多分きょうはできると思います。
  52. 杉山克己

    参考人杉山克己君) うまくいっているかうまくいっていないかという判断につきましては、いろいろな見方があろうかと思います。  今地域別にということで仰せられましたが、地域別に見ていった場合、公団としては法の目的とするところの大型の畜産物の濃密生産団地を形成した……
  53. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 地域じゃなくて事業別です。事業箇所で五カ所。
  54. 杉山克己

    参考人杉山克己君) 事業箇所で申し上げているつもりでございます。  そういう意味では、どの地域においても大型の生産団地を形成し得たと思っております。ただ、そういう地域の中でも、個別に見ていけば経営のうまくいっていない農家もございます。それをどういうふうに判断するかということでございますが、経営がうまくいっていない農家があるからその地域がだめだということにはなかなかならないかと思います。  いい例、悪い例ということでございますが、比較的私どもとして問題が起こっていない、今まで地元でも評価されているというふうに受けとめられている地域としては、例えば関東の八溝西部でありますとか多賀、それから九州の日田でありますとか、北海道では士別、青森の青森東部、そういったようなところが例示として挙げられるかと思います。  それから、うまくいっていないかということについては、もう冒頭のところで申し上げましたように、全体の地域としてはそれなりに成果を上げていると評価できますし、それから、例えば先生の地元の根室などでございますが、あれだけの大型の生産団地はできておりますけれども、個別農家で見た場合はかなり経営に苦しんでいる農家もあるというようなこともあります。それから、うまくいっていないということについてはいろいろ原因も複雑でございますし、それぞれその立場に立つ人の弁明もあるかと思いますので、ここで具体的に例示することは差し控えさせていただきたいと思います。
  55. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それでは、例えばNHKで放送された大隅だったですかね。あそこはどうなんですか、うまくいっている。うまくいっていない方には入らないんですか。何かこれは大変けしからぬということで地元がNHKに抗議したという話も聞きましたけれども農水省は、そんな事実はない、あの放送は事実無根だというふうな抗議をしていますか。
  56. 松山光治

    政府委員松山光治君) 今お尋ねの点は鹿児島の大隅第一かと思いますが、この地区は五十年度から五十五年度にかけまして建設をいたしましたところでございます。  この地区実情といたしましては、当初入植者が二十七戸であったわけでございますけれども昭和五十九年から現在までの間に十七戸の経営主が交代をいたしております。内容的には、そのうちの七戸は規模拡大を進めていく上でいささか資金が足りないといったようなことで、現物出資いたしまして農業生産法人をつくった。残りの十戸につきましては、技術の不足なり経営主の病気等々の事情がございまして、ほかの個人なり農業生産法人に経営を移譲した、こういう実情であるわけでございます。  現在の経営体の経営状況につきましては、おおむね良好であるというふうに私ども話を聞いてございまして、現に農畜産物の生産が行われているということでもございますので、経営主のこういう交代というのは事業目的を達成いたします上で次善の策としてやむを得なかったのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは、農業法人をつくってそこに移管するということは合法的に行われていると思いますけれども、公団法の立法の趣旨からいって、ああいう形で入っていくことを農水省はやっぱりそれでもうまくいっているというふうにあの実態を見るんですか。違法なことだとは思いません、それはいろいろ考えてやったことですから。それしかもう方法がない、ほっておいては、農家にやらしておいてはどうにもならぬということで、ああいう形で企業も参加できるような農業法人をつくってやる、このことは私たちも決して違法だとは思いませんけれども、公団の本来の趣旨からいって、大隅第一のような現況をどうお受けとめになりますか。
  58. 松山光治

    政府委員松山光治君) 公団の譲渡先といいますか、どういう農家なり生産組織を対象にして造成いたしましたものを譲り渡していくかということにつきましては、地元段階で関係者が集まりまして、いわば入植者を選定する委員会がございます。その委員会におきまして、一定のこれは基準があるわけでございますけれども、それに照らして適当な人であるかどうかと、そういう慎重審議をいたしました上で選定するということになるわけでございます。  今申しましたように、大隅におきまして当初の入植いたしました方が、いろいろな事情があったんだとは思いますけれども、経営交代せざるを得なかったという事情はある意味では残念ではございますけれども、もともと農業生産法人というのは公団事業の対象として当初から予定され得るものでもございますので、せっかくつくりましたものを有効に活用していくという点からすれば、やむを得ざることだったのではないだろうかというふうに私は考えております。
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、これはまだそういう引受手があって負債その他そっくり農業法人に移して肩がわりのできるところはいいんです。問題は、できなくなってきたところが出始めているんです。だれも引受手がない、そのことによって今度は負担金が払えない、こういう問題が出てきております。この場合、公団法をずっと広げてみますと、なかなかよくできておりまして、公団は建前としては、地元の要望によって農水省が決定した計画に基づいて、事業計画地元と十分都道府県を通して相談をして、じゃこれでやりましょうということになって初めて農水省の指示によって公団が事業実施をする、こういうことですね。だから、そこまでの段階では公団にかかわっていないから事業にかかった経費は全部いただきますよと。そして問題は、事業にかかった経費を全部いただきますよということですけれども、それから、地元の意思で地元がこういうふうにやってくれと言うからということを再三言っておりますけれども、実際それはあくまで建前であって、何でも地元が言うからやるというのなら行政指導は要らないわけです。  大蔵省にお聞きしたいんですが、先年私は牛舎の火災報知機の問題を取り上げました。そのときに大蔵省の当時の主計官の答弁だと、これは消防法で決まっているというふうに農水省から説明受けたから、それでこの予算は認めたんだという答弁があったんです。それで、私は消防司令を長いことやっていたからよくわかるけれども、消防法というのは野中の一軒家の牛小屋までを対象に考えてはいない、だから、千平米以上あっても消防署長が特認をすればそんなところにはつけなくてもいいんだというふうにこの場で言ったんです。そうしましたら、その後農水省から、畜舎における自動火災報知設備の設置についてというのが五十九年の三月に出て、消防署長がそういうのは要らないと言ったらいいよと、こうなったんです。これは大蔵省は知っていますね。大蔵省の判断が間違っていたんです。やらなくてもいいものを認めたんです。  今度、もう一つ畜産基地の問題で換気扇の問題があるんです。  北海道なんかの牛舎で換気扇がなぜ要るんだ。換気扇というのはただふうっと回すだけでたかが知れているじゃないかと言うかしらぬけれども、北海道の田舎へ行きますと、三相が通っていないところ、いいですか、換気扇をつけるために三相電気を新たに工事してつけなきゃならぬのです。これは莫大な金がかかるんです、何百メートルも引いてくるんですから。何でそんなことをしたと言ったら、換気扇を回す必要がある。こういうのを大蔵省は御存じですか、あなたたちが査定をしているんだけれども。これは消防法に関係ないですが、どうですか。
  60. 竹島一彦

    説明員(竹島一彦君) 農用地開発公団の行っている事業というのは、いわゆるメニュー事業というのが多いわけでございますが、私どももどういうものをその事業対象種目にするかということにつきましては当然協議を受けておりましてやっておりますけれども、具体的にそれぞれの地区でどういう畜舎にどういう装備をするかということにつきましては、まさに地元公共団体、それから実際に増反農家がある場合などは農家の意向なんかも聞かれて、具体的な実施計画がつくられて事業が行われているというふうに認識しております。  私どもは毎年の予算の査定に当たりまして、そういう具体的な施設の種類について、どの地区にはこれは必要がないとかあるとかいう判断までは、やはり物理的にも限界がございます。そこは、執行面におきまして一番効率のよい施設の選択が行われているという前提のもとに事業費の査定をさしていただいているということでございます。したがいまして、今前段のお話の警報機の話、これは、やはりそれぞれの地区に応じまして、つけた方がいいところはおつけになればよろしいし、その必要がない場合には、今まさに委員おっしゃったとおりの特認もございますので、そういうことでなるべく効率的な低コストの施設ができるように工夫されるべきだというふうに考えます。  それから、後段のお話も具体的には私存じませんけれども、それも当然地域実情に応じ、ただ将来的な見通しもあるかと思いますけれども、そういった将来も見込んだ上で一番効率的な選択をしていただきたい、またそういう前提で今後も予算査定に当たっていきたいというふうに考えております。
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ちょっと主計官、そのままいてください。  それで、地域と相談してという建前をおっしゃいますけれども、火災報知機のときもそうですが、地域と相談はしていないんです。地域ではだれも要るなんて言っていないんです。これは消防法で決まっているからといって全部つけさしたんです。それで、おかしいじゃないかと言ったら今度は全部やめた。これは地域と相談していますか、こんなこと。  換気扇の問題も同じです。だれもそんなものをつけてくれなくても、北海道のような寒いところで換気扇をつけなきゃならぬ理由はないんです。全国一律に九州から北海道まで全部換気扇。それは暑いところでは必要かもしれません。しかし北海道のような寒いところじゃ、むしろ換気扇なんかつけたら余計寒くなってしまってかなわないですよ。それでなくたって、すうすうです。中の牛の体温が温かければ夏でも風は入るんですから、そんなことは必要ない、そんなものはだれもつけてくれとは言っていないと思うんです。  だから、私は非常に今ミクロの問題を言っていますけれども、一事が万事なんです。地元と相談している建前にはなっています。しかし、大臣も御経験があるようですけれども、それは農家といろいろそういう問題について細かくはやりません。恐らくそれは自治体なり農協の担当者との詰めだと思うんです。担当者の意見を聞いて何でこういうことをやるんだと言ったら、返ってくる言葉が、これはもう百人が百人、言うとおりの設計図を、こういうふうにやれと言われてそのとおりやらなければ補助事業にのっけてくれないぞ、計画として承認しないぞと言われるから仕方がない、そのまま認める。これはこうやれああやれというふうなことは、なかなか地方自治体は弱いものだから口出しできないんだ、それが実態なんです。  だから今大蔵省が言われたように、地元と相談しているからいいんじゃないかと言うけれども、換気扇でも自動火災報知機でも、地元がこれをぜひつけてくれなきゃ困るなんて、調べてごらんなさい、そんなものは私は極論だけれども、一軒だってないと思います。牛小屋に火災報知機がついていて、牛が自分で戸をあけて出られますか。寒くなったからといって換気扇をもう回すのやめてくれ、もうもうたくさんだなんて言えませんよ。火災報知機は私が前に質問してからやまったけれども、前にはついていたでしょう。これだってみんなその一部は農家負担で払わなきゃならない。換気扇だってそうです。これで地元と何でも相談してやったという建前どおりだというふうには思いませんけれども大臣どうですか、そこら辺は。
  62. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) どうも聞いておりまして、私の常識からはちょっとかけ離れている御質疑でございまして、実は驚いております。そんなのが本当に何ぼあるんかいなと実は思っておりますし、答弁しようにもちょっと困ります。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 きょうは陳情なんで、いろんな矛 盾の問題をまず大臣に御理解していただいて、最後にこういうことだから借金を何とかしてくれという話が最後に、いいですか。  それで、今度は畜産基地などの資金を計画したときに、大体当初計画では金利を六・〇二%ですか、大体六%前後で計画しているんです。それが、終わったときには資金運用部の資金を使っているから大体全部七%以上なんです、今払っている利息は。これなんかも地元とよく相談したから七・二%になったんですか。そんなことはないでしょう。計画したときには六%前後で計画していますね。これはどうなんですか。
  64. 杉山克己

    参考人杉山克己君) 公団の財源は資金運用部の資金を借り入れて調達いたしております。資金運用部資金は、これは何も農用地開発公団だけでなく、政府資金全体としての金利がその都度決められております。最近は金利は大幅に下がってまいりましたが、先生が御指摘になるような事業についての従来の金利水準は、平均しておおむね七・一八%ぐらいになっております。
  65. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ここでもやっぱり農民自身の責任でないところで借金がふえていく原因が一つあるんです。ところがこれらで、もうそろそろとても借金が払えないという農民が出てきて離農者が出ました。離農跡地について先ほどのように農業法人をつくってやるという引受手がないところも出てきている。具体的な例、別海町の例を私はここに持っているんですけれども、それより先に、時間もありませんからもっと基本的な問題で、この農用地開発公団の法を全部調べてみますと、農用地開発公団事業が終わったら都道府県に売るんです。都道府県が市町村に売るんです。市町村が農家に売るんです。だから都道府県は農用地開発公団に対して債務償還をすればいいだけですね。
  66. 杉山克己

    参考人杉山克己君) 先生おっしゃられましたように、都道府県を相手に売却するということは業務方法書によって決められております。
  67. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは、この要綱その他法令によるということになっているんで、そのやり方は公団が悪いということにはならないんです。それから、事業費に人件費までぶち込んで割高なものを売りつけても、これも法にちゃんと従ってやっているんだから、公団が悪いということにはならないんです。ただしかし、これは非常に問題がある、売買ですから。これは根拠法は民法五百五十五条ですね。いかがですか。
  68. 杉山克己

    参考人杉山克己君) いわゆる下物、公共事業部分については、もう既に法律上決められておりますが、先ほど私が申し上げましたのは、上物、農業用施設についてでございます。これは農用地開発公団業務方法書によりまして、売却先、売却する施設の種類、そのほか細かく規定されております。その場合、売却する相手が、先ほど申し上げましたように、公団は直接には都道府県ということになっております。この売買は契約で行われます。民法一般の規定に従って行われるものであることは先生御指摘のとおりでございます。
  69. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで、民法に従った売買契約が上物については行われる。もちろん、牛そのものもそうですね、土地は、土地改良法の規定の中で枠がはめられますけれども。  それで、自治省にお伺いします。都道府県並びに市町村がいわゆる民法五百五十五条に基づく売買契約をする場合には、一定以上のものは条例に基づいて単項議決が要りますね、いかがですか。
  70. 秋本敏文

    説明員(秋本敏文君) 地方公共団体が契約をいたします場合に、法律の定めにより政令に定めるもの、あるいは財産の取得、処分につきましても、それぞれ政令の定める基準に従いまして条例で定めるもの、そういうものに該当するものにつきましては議会の議決が必要になるということになってまいりますし、また予算上の根拠が必要なものにつきましては、それぞれそれに見合う措置が必要になってくるというふうに考えております。
  71. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 法はそのことの費用負担は二十七条、あるいは同条三項等において規定をしておりますが、二十七条の三項で公団法は、「当該市町村の議会の議決を経て同項の規定による負担金の全部又は一部」と、こうなっておるんです。そうするとこれは、法制局にも来ていただいているんですが、この議決のない場合にこの契約は有効ですか無効ですか。自治省に先に聞きましょう。もう一回聞きます。一般的な民法上の売買契約を都道府県並びに市町村は条例の範囲内でしか長に専決権を認めていないから、それ以上のものは議会の議決を経なきゃなりませんね。一件ごとに単項議決が必要です。例えば、幾ら以上の金額というふうにあれば、それ以上になった場合には。これは自治法の九十六条の何項だったかな、あります。私もここに持ってきていますけれども、この場合にその議決がない売買契約は有効か無効かということです。
  72. 秋本敏文

    説明員(秋本敏文君) 地方自治法におきましては、御指摘ございましたように九十六条、それからまた関連の政令の規定に基づきまして、それに該当するものについては議会の議決が必要だということになってまいりますが、最初に御指摘のありました農用地開発公団法の規定につきましては所管でございませんので、農水省の方から御答弁をしていただきたいと思います。
  73. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 いやそうでなくて、いいですか自治省、民法五百五十五条の売買の契約、公団法に関係ないんです、私の聞いているのは。これが、議会の議決をなされないで長が結んだ契約は有効か無効か、こういうことです。そんなものははっきりしているでしょう。
  74. 秋本敏文

    説明員(秋本敏文君) 地方自治法の施行令の別表におきまして、財産の取得、処分につきましては、不動産もしくは動産の買い入れ、売り払いについて一定の要件に該当するものについては議会の議決が必要だということになっております。一般的にそういうことでございますけれども、具体的なケースにつきましてそれが直ちに無効であると、こう言い切れるかどうか、それは具体のケースを伺いましてから判断をさせていただきたいと存じます。
  75. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで法制局、同じ問題について聞きたいんですが、この場合の解釈、具体的なケースでなければ答弁できないですか。民法上の売買契約が一定の金額以上の場合には自治法によって議会の議決を経るということになっているんです。議決を経ない契約が、もちろんこの場合は公団法では議決を経なさいとなっているんだから問題は別なんです。私は今一般論を聞いているんです、一般論として法制局はどう思いますか。
  76. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまの御質問は地方自治法の九十六条、普通地方公共団体の議会の議決事件に関する規定でございますが、それに関連した御質問かと思います。この中には、いわゆる契約というような側面から考えてみますと三つの規定があると思います。その一つは、政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結するというのがその一つであろうと思います。それからもう一つは、財産を交換するとか、あるいは適正な対価なくして売るというような規定がございます。
  77. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それは要らない、ちょっと時間がないから。それ一個だけでいい。ほかのことは聞いていないんだから。
  78. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) よろしゅうございますか。  それからさらに、八号にも契約に関連した規定がございますが、問題になるのは議会の議決を要するということでございまして、もし議会の議決を要するところの売買契約、そういうものについて議会の議決を経ないでなされたということになれば、当事者間の関係においてはその効力はないというふうに考えるのが至当かと思います。ただ第三者の関係がございますので、その辺は具体的な事案に即していろいろ検討を要するということになろうかと思います。
  79. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで公団にお伺いするんですが、そういう地方自治法九十六条を受けて二十七条の第三項では、「当該市町村の議会の議決を経て」ということがわざわざ入っているわけであり ます。今局長さんの方では、これは債務負担行為のことを言っているんだとおっしゃりたいのかもしれませんけれども、この法令、それから要綱すべてを読んでみても、債務負担行為だけでいいというふうな法令になっていないんです。だから、当然これは今の法制局の解釈のように本来必要なものだと。  ところが、そうすると公団が都道府県と契約をする場合、単項議決というんですが、要するに議会の九十六条によるところの議決書をつけたものによって売り払いをしなきゃなりませんね。全部それはやっていますか。
  80. 松山光治

    政府委員松山光治君) 第二十七条三項の場合の「当該市町村の議会の議決」は、今先生御指摘の契約による場合ではございませんで、上物施設以外の下物施設についての規定でございます。私、そのあたりの契約実務、実務と申しますか、実態は定かではございませんけれども、当然のことながら関係法令に従った契約手続が行われているものというふうに理解をしておるところでございます。
  81. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ところが、ここで言うのはいわゆる土地についてだけなんです、規定しているのは。だから、もちろん解釈で土地についてさえ議決が要るんだから、ましてや上物や牛それ自体動産です。こういうものについて売買契約に議決が要らないということはないんです。これはもう当然のことです。ところが事実はこの単項議決のついてない契約がたくさんあるんです。これは公団では御存じでしょうね。  大臣、これは請求権が出てこないんです。だから、農家が払わないから市町村から都道府県が取るといっても、契約していないんですから、契約などといっても議決がない契約です、それは。契約に瑕疵があるんです。これは事実たくさんあります。その市町村の条例も調べてみました。この理由は何かというと、ある都道府県では瞬間タッチだから要らないんじゃないかということで行政指導してしまったところがあるんですよ、いいですか、瞬間タッチだから。ということほど、それほど市町村は本来責任のないものなんですよ。まあ言われるからしようがない、売って買ったことに、公団法にこうあるんだから、そうしなきゃ農家は困るだろうからとやったんです。ところが離農が出てきた。どうしようもない。例えば別海なんか約九百三十五億というような事業量で、自治体がもしこれ牛肉自由化で牛の農家がばたばたといったら、ほっておくと負担しなきゃならないのは百億を超えるんです。  それで自治省にお伺いしたいんですが、行政の立場で、この場合そうしたものを今度は農家にかわって市町村が債務負担行為に従って払っている分は、交付税なり特別交付税のルール計算に乗るようなシステムになっていますか、ちょっとお伺いします。
  82. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ちょっとよろしいですか。法制局でございますけれども、先ほど九十六条の一項の五号と六号と八号とが契約に関する議決事件としての規定である、こういうふうに申し上げまして、その五号につきましてはこれは「政令で定める基準」ということでもって工事とそれから請負契約、これについての規定でございます。売買契約ということになりますと……
  83. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 時間がないからいい。それはよくわかっています。
  84. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 六号と八号との関連ということでございますので、ひとつ御了解をいただきたいと思います。
  85. 遠藤安彦

    説明員(遠藤安彦君) お答え申し上げます。  今の市町村が負担をいたします部分につきましては、これは実質的には受益者負担というような性格で負担をするということと考えております。したがいまして、御指摘のように、財政措置をするということであれば普通交付税か特別交付税ということになりますけれども、普通交付税というものは先生もよく御存じのとおり、標準的な行政経費について算入をするということでございますので、そういう普通交付税の性格上、基準財政需要額にはなかなか算入がしにくいものであろうと思います。また、特別交付税ではどうかということでございます。これは受益者負担的な性格のものを各市町村において、それぞれの市町村の財政状況等があると思いますけれども、そういったものを自主的に判断をして負担をされるということでございますので、普通交付税の場合と同様なお答えになろうと思いますが、地方公共団体の共有の財源である特別交付税で措置するという特別の財政需要にはなかなかなりにくいものではないかというように考えて、現在はルール的に算入するという措置は講じておりません。
  86. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ぼつぼつこの問題が出てきて、とても払えないという市町村も出てきています。これは私もびっくりしたんですが、民法上の売買契約なのに、ほとんどの市町村は農家に売り渡して担保をとっていないんです、二十年で三年据え置き十七年償還という契約はしていても。この牛をほかへ売ってはならないと契約にあるけれども、売られてしまってもどうしようもないんです。上物を売ってもどうしようもない。土地だけは土地改良法の枠がはめてありますからいいんですが、こんな契約を農水省が指導してそのままやらせたということが不思議なんです。結果どうなるか。市町村は直接徴収するといったって、税と違うから強制力はないんです。農協に頼んで農協から払ってもらうことになります、その生産物から。そうすると、農協は自分の方の借金がたくさんあればまず優先的にそちらへ入れます。そうすると、公団の事業負担金その他の代金だけはなかなか払い切らないんです。そこへもってきて、離農した場合でも金利から先に取るんです、延滞利息から。  通産省来ていますね。商工中金や中小企業金融公庫では、破産しない前でも非常に苦しくなったら、まず元金だけ入れなさいというシステムがございますね。どうですか。
  87. 中野正孝

    説明員(中野正孝君) 中小企業庁の金融課長でございます。  商工中金、中小企業金融公庫におきましては、融資の目的が中小企業の経営安定、振興ということでございますので、債権管理におきましても同様の考え方で、個々の中小企業者の事情に応じまして弾力的に行うということでやっております。したがいまして、償還金を優先的に元金に充てるということもございます。
  88. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それから大蔵省、国民金融公庫の制度にもそういうのはありますね。
  89. 浅見敏彦

    説明員(浅見敏彦君) 銀行局特別金融課長でございます。  丸谷先生お尋ねの延滞債権に係ります償還金の充当順序についてでございますが、今お尋ねのケースは、恐らく単に数カ月延滞をしたというような場合ではなく、倒産に至るおそれがあるような限定的な場合ということに解してお答え申し上げますと、利息、損害金を後回しにいたしまして優先的に元金に充当するという場合がございます。  ただ、このような取り扱いを行いますのは、元金に優先充当した方が債権管理上有利であるという場合でございまして、もう少し具体的に申しますと、企業が倒産に至ると経営状態が著しく悪化をいたしまして、かつ今後の債権回収が困難であるということが予見される場合等に限定しておりまして、これはそのような取り扱いをした方が債務者が今後返済能力に応じまして自発的、優先的、継続的に償還が期待できるとか、そういった債権管理上の理由に基づく限定的なものでございます。
  90. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大蔵省や通産省関係の所管にはそういうことができるんです。ところが公団のこれは今のところできないんです。これは大臣、今とにかく延滞利息から先なんです。年利一四・何%、これから先に取っていくんです。これは、金利を後にして元金から払うというふうな方法は現地ではできないと言われていて困っているんですが、できないことはないんじゃないですか、どうなんですか。
  91. 杉山克己

    参考人杉山克己君) 公団が返済金を引き当て ます順序は、別段元本優先ということではなくて、一般的には元利均等でございます。それから滞納が生じました場合は、滞納分は未収金として別途経理いたします。この未収金については、先生御指摘のように規定上は延滞利息を取るべきことになっております。しかし、事情に応じてこれについては猶予をすることができる、全体についての支払い猶予をして、その中で延滞金を免除するという措置がとれることになって、現在までのところ若干の件数についてそういう措置をとっております。
  92. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そういう措置をとっておるといっても支払い猶予の三年間なんです。そして、これが離農しなきゃならぬということで財産処分するときになったら、まずそれからだということですよ。そうでしょう。だから、上手なところだけ言ってもだめなんだよ、その後まで言わないと。  それで大臣、実はこれはまた公団の問題としては、具体的に例えば、こっちが百八十万で一本井戸掘ったのに、すぐ近くで公団の事業でやると一千万もかかっている。みんなそれで補助事業なんです。こういう問題もあるんです。それから坪単価にしても非常に高い、そしてしかも、それは親から孫から子からひこぐらいまでの下請に転々としてくるとか、こういう問題がいろいろあります。  しかし、きょうは時間がないので、そういういろんな問題はちょっとこの次にいたしまして、特にお願いしたいのは、これらの離農者の場合に市町村に負担させないで、公団に国が措置をする道は法律上あるんです。これは公団法をずっと読んでみて、ああこれがあるんだなと思って、それできょうはいろいろこういう問題があるんだということの最後に、ひとつ大臣の御意見を聞きたいと思うんです。  公団法の三十六条に、「政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第三条」、これは保証契約の禁止ですが、「の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、公団の長期借入金又は債券に係る債務について保証することができる。」というのがあるんです。長期債務というのは、まさに資金運用部から長期にわたって、十七年で受益者から返ってきたら返すということで長期債務の契約をしていますから、長期債務は保証することができるんです。この保証を国会に大臣が諮っていただいて、そうしてもうどうにもならない、ある意味では政府責任もあるそうした負債、これはその責任がどうしてあるかという問題は、今の火災報知機だけではなくてたくさんあるんです、拾い上げれば。こんなものが協議したことになるか、おっつけでないかというような問題は幾らもあります、それはきょうは言いませんが。  それらを抜きにして、よく事務方で打ち合わせしていただけば、何とか自治体に迷惑を——自治体は本当に瞬間タッチなんです。だから、まさかこんなものも払わなきゃならぬとは夢にも思わないで、みんなすいすいと債務負担行為はやったんです。しかし担保もとっていない。驚きました、私はあちこち調べてみて。全然そこまで考えていない自治体が多かったんです。それは行政指導をしていないんです、農水省は。担保をとれとも言っていないんです。そういうことですから、まずきょうは、農家負債のうち、少なくともそういう点で離農農家の公団の借金の後始末を自治体が全部かぶらなきゃならないということがないように、この三十六条を生かした措置を何とか考えていただくと同時に、離農者の場合にはまず元金から返すというシステムをしっかりやる。いろいろなことを言っていますけれども、離農したということはもう破産です、全部財産を出して土地を売ったりなんかして残ったのが何千万なんですから。これについては金利まで一遍に取るということでなくて、まず元金の方に充てさせるという措置、これらについてひとつ大臣から明快な御答弁をお願いしたい。
  93. 松山光治

    政府委員松山光治君) あらかじめちょっと事務的に私どもの考え方を述べさせていただきたいと思いますが、ただいまの御指摘の点は、公団が担保力のない場合の政府の債務保証の問題でもございますので、本件に該当するような話かどうかよく勉強させてもらいたいとは思いますけれども、今御指摘のありました問題、もともと市町村に何か強制的に持ってもらうというような形ではなくて、たまたま出ました離農農家の中のごく、たしか別海の場合に立てかえ払いをしていただいたのが六十二年に二戸だったかと思いますが、そういう事例でございます。したがいまして、私どもとしてはやはりそういう事態に立ち至らないように、いかに公団の事業の対象になった農家について安定的な経営をやっていただくかということが基本だと思いますし、そのための経営指導の問題、あるいは負債農家に対する償還の円滑化の特別事業ということもことしから組んでおる次第でございます。  離農農家の発生いたしました場合に、今発生しております別海町のような場合につきましては、やはりできるだけ早く交代者を見つけて経営を引き継がせるというのがまず基本でありましょうし、そういう場合の交代者につきましての経営の安定を図るという観点からいたしますと、ことし県の公社を活用いたしました立ち上がりの措置ということも新たに私どもの方でも実施しておりますので、そういうことも活用しながらよく考えてみたい。  なお、公団のつくりましたものがえらい高いんじゃないかという実は御指摘もあったわけであります。時間の関係上詳細は申し上げませんけれども、できるだけコストをかけないで、もちろん地域実情がございますから、若干高くなる場合もままあるいはあることもあるわけでございます。しかし、地域実情に即して有効適切な経営が行われるような、そういうことにした方がいいということで指導しており、畜舎などにつきましても、単価の上限なども指導いたしながらやってきておりまして、ここ何年か、年々単価については低減傾向になっておるということを申し上げておきたいと思います。
  94. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 古材や間伐材を使ったらという問題も私が指摘してからそうなったんだよ、あなた、そうでしょう。自分たちでやったようなことを言いなさんな。
  95. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 見識ある委員のいろいろな御発言をちょうだいいたしましたが、またその都度お教えもいただきたいと思います。  今火災報知機に始まりましていろいろ私も初めて聞く話を承りました。要すれば、問題は倒産状態にあり離農しなければならないそういう人たちに対する配慮がいかがなものか、こういうことでございます。市町村においては瞬間タッチ的な経緯にある、そういう中にあってどうするかということでございます。換気扇にしても火災報知機にしても画一的な指導が浸透しますと、きめ細かなその地域その地域実情に合ったやり方が薄められてしまうという弊害があります。金融の償還負担につきましても画一的であっていいのかどうか、こういうことも私感じ入りました。個別的に元本優先等々の弾力的な現実に合ったやり方をやはりすべきであると思いますし、さらに検討をさしていただきたいと思っております。
  96. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 大臣には日本農業のために日夜本当に御苦労さまであります。先ほどから同僚議員のお話を聞いていまして重複する点がございますので、その点は御容赦願いたいと思います。  今までお伺いしまして、農政というのは経済合理性とはまた違ったいかにも困難なお仕事であるということを痛感したわけであります。それで、御答弁の中で御当局の御苦心のほどをむしろお聞かせ願いたい、こう思うわけであります。  決算委員会でありますので、決算内容についてまずお聞きをします。  昭和六十年度農林水産省決算の検査についてお伺いします。農林関係でございますので、農業基盤整備費についての検査で従来指摘された事項にどのようなものがあるのか、まず会計検査院にお尋ねいたします。
  97. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) お答えいたします。  農業基盤整備事業に関します検査の指摘事項のここ数年の主なものについて申し上げますと、会計検査院法第三十六条の規定によりまして意見を表示しました事項といたしまして、五十九年に国営かんがい排水事業及びこれに附帯する道県営、団体営事業の施行について、事業効果の速やかな発現を図る要があるとしたものがございます。それから六十年に農用地開発事業によって造成された農地の利用について効率的な施行を図る要があるものとしたものがございます。なお、個別の不当事項につきましては、工事の設計でございますとか積算あるいは施工に関するものの指摘がございます。  以上でございます。
  98. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 それでは、昭和五十九年度の会計検査におきまして、国営かんがい排水事業等について指摘されているとのことですが、その内容について具体的に御説明をお願いします。
  99. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) 昭和五十九年の検査におきましては、国営かんがい排水事業の完了いたしました地区、及び五十八年度当時事業継続されておりました地区並びにこれに附帯いたしまして道府県等が国庫補助事業により施行しておられますかんがい排水事業につきまして総合的に検査を実施いたしたわけでございます。  その結果、第一といたしましては、予算規模に比べて採択事業数が多いなどのために、五十八年度におきまして実施中の国営事業百十事業は全般的に工期が長期化していたわけでございます。その中には当初の予定工期の二倍以上の期間を要しているものもしくは要すると見込まれるものがありまして、その間総事業費も当初予定額の三倍以上に増高している状況でございまして、事業効果の発現の遅延が顕著なものが二十三事業見受けられたわけでございます。  第二番目といたしまして、かんがい排水事業は、国営事業と附帯事業とが相互に整合性を持って施行されまして初めて総合的な事業効果が発揮されることになるわけでありますけれども国営事業に比べまして附帯事業の進捗率が低いために、国営事業事業効果の発現が遅延している及びそのおそれのあるものが十四事業見受けられまして、中には国営事業建設されました基幹施設が遊休しているものも見受けられたわけでございます。  第三といたしまして、国の直轄事業で施行することとしております多目的ダム、河口ぜき等の水源施設の建設につきまして、利害関係人との権利関係の調整が難航しておりますために、事業が長期化していて事業効果の発現が遅延しているものが六事業ございまして、この中には水源施設に接続する各種の施設が遊休しているものも見受けられたわけでございます。  以上申しましたように、事業効果の発現が遅延している事態が多数見受けられましたので、農林水産大臣に対しまして、効率的かつ重点的な予算配分、調和のとれた事業の実施、利害関係人との権利関係の迅速な調整につきまして各般の対策を講ぜられますことが緊要である旨、会計検査院法第三十六条の規定によりまして意見を表示したものでございます。
  100. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 ありがとうございました。  五十九年度の会計検査院の御指摘に対しまして、その後どのような改善措置がとられましたか。農林水産省にお伺いしたいと思います。
  101. 松山光治

    政府委員松山光治君) 国営かんがい排水事業、これは農業基盤整備事業の基幹となるものでもございます。農業用水の確保それから水利用の合理化ということを目的といたしまして、従来からも積極的に推進に努めてきたところでございますが、今会計検査院の方からお話のございましたような工期の長期化の問題あるいは国営と附帯事業との跛行の問題、補償交渉の長期化の問題といったようなことにつきまして御指摘を受けたわけでございまして、まことに遺憾に存じておる次第でございます。  これらの問題が発生したにつきましては、物価の高騰でございますとか、社会情勢の変化でございますとか、いろいろな事情はあるにいたしましても、何とか問題の解決に向かって努力する必要がある話でございます。したがいまして、私どもといたしましては、会計検査院の指摘も踏まえまして、昭和六十年三月に通達を発しまして改善努力を行うこととしたわけでございます。  内容といたしましては、まず工期の長期化の問題といたしましては、たまたま昭和六十年度に部分特別会計制度という新しい仕組みも盛り込みました特別会計制度の積極的な活用、これは財投資金をできるだけ活用していくという考え方のものでございますが、さらには完了地区等を勘案いたしました抑制基調での計画的な新規地区の採択、さらに事業の進捗状況等を勘案いたしまして予算の重点的な配分と効率的な執行に努める、こういう趣旨を明らかにいたしまして、できるだけ工期の短縮に向けて努力するというのが第一点でございます。  それから、附帯関連事業との跛行の問題につきましては、やはりそれぞれの進捗状況の把握、特に附帯関連事業の進捗状況の把握ということがまず重要な点でございますので、適宜、的確に把握できるような体制の整備というのが第一。それから遅延しております附帯関連事業への予算の重点的な配分とその効率的な執行、あるいは附帯関連事業計画的な促進を図りますために、特に附帯関連事業におきましては、末端での考え方の調整といったようなあたりで案外手間取ることが多うございますので、都道府県なり市町村なり、それぞれ関係者の御努力をいただきまして、受益のほかに啓蒙指導を強化するといったようなこと、こういうことを明らかにして努力しておるところでございます。  なお、補償交渉等のおくれの問題につきましては、県、市町村あるいは土地改良区等との連携の強化、さらには用地関係事務の外注の活用といったようなことを通じまして、まずは執行体制を強化していく、それからこれは調査計画等のできるだけ早い段階から権利関係者との接触を始めるといったようなこと、これらはいずれも会計検査院からの指摘を踏まえたものでございますが、そういうことを内容とする通達を発しまして事業の適正な実施についての指導を強化した、こういうことでございます。
  102. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 ちょっと基本的なことで教えていただきますが、国営かんがい排水事業の目的、それからその仕組み、それから特に農民負担のめど、さらには当該事業による生産性向上の目標というものについて御所見をお伺いします。
  103. 松山光治

    政府委員松山光治君) 国営事業を初めといたしましてかんがい排水事業は、いわば圃場条件の整備の前提条件とでも言えますような農業用用排水施設の整備を通じまして、水利用の安定と合理化、さらには農業上の土地利用の高度化を図っていくというものでございます。  仕組みといたしましては、御案内のように、受益地域の広がりに応じまして、事業主体が国なり都道府県なり土地改良区等といったような形に分かれるわけでございますが、言ってみれば国営かんがい排水事業はその骨格でもございます。末端部分を施行いたします附帯関連事業等々と一体的になりまして総合的な事業効果が出てくる。なお国営かんがい排水事業の実施に当たりましては、これは農業基盤整備事業全体がそうでございますが、長期的には土地改良法に基づきます土地改良長期計画に沿いまして実施をしてきておるところでございます。  農家負担のめどなり生産性向上の目標というお尋ねでございます。これは、地域実情に応じてそれぞれ営農形態も異なりなかなか一概には申し上げにくいわけでございますけれども事業の採択を行うに当たりましては、まずは農業の生産性の向上なり、あるいは地域の農業構造改善の観点といったようなことから考えまして、その事業を必要としているのかどうかというのが第一の視点。それから技術的に見て可能なのかどうかという視点。あるいは効果と費用の関係のバランスが とれているのかどうか。第四は、その事業を実施することによって期待される受益者の負担力、こういったものを勘案し、これらを総合的に勘案した上で決定を行っておるということでございます。
  104. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 国営かんがい排水事業の現在までの実績とその効果についてお尋ねします。
  105. 松山光治

    政府委員松山光治君) まず、国営かんがい排水事業の現在までの実績でございます。  国営造成土地改良施設整備事業とか直轄明渠排水事業等といった特定のものについてはこれは除いておりますが、一般的な国営かんがい排水事業についての数字で申し上げますと、昭和二十二年度以降昭和六十二年度末までに百三十四の地区を完了いたしております。また、昭和六十三年度におきます実施地区数といたしましては百十一の地区予定いたしておるところでございます。
  106. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 先般、NHKで報道がされておりましたが、西欧諸国、特に西ドイツにおける同じような農業基盤整備事業、同じものはないとは思いますが、政策のポイントは、これは圃場整備に近いと思ったんですが、金利補給に重点を置いて農民の自発性にまっておるという感じを私どうも素人ですが見ていまして受けたわけです。この辺、外国と比較はもちろん直にはできませんけれども、政策の基本的な助成の仕方について参考になる点があれば教えてもらいたいと思います。
  107. 松山光治

    政府委員松山光治君) 我が国の土地改良制度は、御案内のとおり、プロイセンなどの耕地整理制度などを参考として発足したわけでございますけれども、その後やはりそのときどきの我が国の農業事情によりよく適合するような形で改められまして今日の制度になってきておるというふうに御理解いただきたいと思います。  当然のことでございますけれども、農業はその国々の置かれました地形条件なり、あるいは気候なり風土、経営規模といったようなものに影響されましてさまざまな形態で営まれておる。 したがいまして、そういうものを相手にいたします制度につきましても国によって当然異なっているということになろうかと思います。  日本と西ドイツの圃場整備について簡単に考えてみますと、例えば西ドイツの場合には畑を対象にいたしてございますので、日本の水田と違いまして水を貯留する必要がないわけでございますし、あるいは田面を平らにするということ、あるいは畦畔を大がかりにつくる、ないしは大きな用排水路をつくることも必要がないといったような事情一つあるようでございます。それから、雨の点なりあるいは雨の強度を見ましても、どうも日本の方がやはり大きいといいますか、多いといいますか、そういうことでございますので、排水路のつくり方にしてもそれほど大がかりにやる必要がなくて密度も低いといったような事情があるやに聞いております。かつ、今の水田と畑の違いでございますが、水をためる必要がないということで割合区画も大きくして大丈夫だ、かつまた経営規模も大きい農場制の形をとってございますから農道の密度が低くて済む、こんなことでございまして、私もNHKのあの放送は見ましたけれども、単純に西ドイツのやり方でというわけにもなかなかまいりにくいのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  助成の問題につきましては、日本の場合にはやはり基本的に今のような実情を踏まえながら国庫補助といいますか、国の負担というものをかなりの率で行いつつ、しかし農家の創意工夫を生かしていただくという意味では、補助の対象になりがたいような比較的規模の小さいものでございますれば、農家の自主的な努力をサポートするという意味でかなり低利の融資の対象にしている、こういうようなこともあるわけでございます。
  108. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 外国とは比較できません。主食が違いますし、特に日本は米作が中心であったわけですが、過剰生産、減反問題も出ておりますし、転作という問題を控えて農家がこれからやっていくわけですから、その辺畑作を中心にする外国、ドイツあたりのやり方をもう一回勉強していただきたいと思いますし、また、同じ予算を使うわけですからその重点をどこに置くのか、基盤整備なのか、価格政策なのか、利子補給なのか、その辺もきちっとした何か施策のポイントと申しますか、骨組みと申しますか、そういうものが今後要るかなと。今まで非常によくやられましたが、そういう感じを今この段階でまた考えなきゃいかぬと思います。  最近、農業基盤整備事業等の問題がテレビにまで出ますと国民は非常に関心を持つわけでありまして、現在大臣が御苦労になっています牛肉オレンジ交渉その他農業問題が国際問題になってきますし、国内でもそれについての世論が高まっておるということでございますので、この問題をあえてきょう取り上げたわけであります。  日本農業をどうしていくのか、これは一番難しいところで、食糧問題が絡むわけでございますが、端的に言って農業の生産性を高めること、それによって、過剰生産ではいけませんが、生産コストを下げるということが経済の原則であろうと思うんです。そういう観点から見ますと、農業基盤の整備事業というのはやはり非常に重要な役割を今後とも持つと思うんです。農業の生産性向上の諸条件を整備するという今までの考え方、これは今までは農業環境前提にしていますが、これからは国際的な競争力を高めるという観点から、もう一度再検討されながらもっといいものにしていただきたいという気がするわけであります。  先ほど会計検査院の御答弁がありましたように、昭和五十九年度の国営かんがい排水事業工期の長期化が指摘されています。また局長からも御答弁がございましたように、農林水産省としてはできるだけの御努力をされてきたと思うわけであります。しかしながら、これもほかの条件に左右されている。第一次、第二次オイルショックとか財政の逼迫とかいろんな問題を抱えた中での事業でございましたために、工期が大幅におくれたり事業が大きくふえたということで、非常に困難な問題に対処しておられるわけです。  これは地元のことでございますが、予算の面で農水省に大蔵省は非常に配慮されて、予算を満額につけられるわけですが、地元の方での評価がそうでないというので非常に意外な感じを受けたわけでございます。耳納山ろくの国営かんがい排水事業というのは、これは昭和四十七年度の着工で七年後にもう完成する、五十三年度完成予定であったのが、農林水産省がお考えになっている計画変更案では二十二年というふうに三倍以上に大幅に延びて、六十八年度完成というふうに見込まれているようです。この間に事業費が当初計画の百十億から六倍の六百億というふうになると伺っております。この辺非常に御苦労だったと思いますが、主な原因をお尋ねしたいと思います。
  109. 松山光治

    政府委員松山光治君) 先生御指摘のように、農業の生産性を高めて足腰の強い農業をつくっていくというのがやはりこれからの課題でございますし、そのためにはその基礎的な条件をつくる農業基盤整備の問題は非常に重要だと考えております。かつ、昨今の厳しい農業、農家をめぐる事情を考えますと、できるだけコストの安いものになるように格段の努力をいたさなきゃならないし、そういう意味でのいろいろな勉強もしていかなければいかぬだろう、このように考えておる次第でございます。  今御指摘の福岡の耳納山ろく地区の問題でございますが、この地区につきましても予定よりも大分工期が遅くなっている点申しわけなく思っております。多少言いわけになるわけでございますけれども、他の地区とも同じような事情一つあろうかと思っております。その間におきますオイルショック等を間に挟んでございますので、労務費なり資材費なりの高騰というようなことを一つ基本的な要件に置きながら、事業費の問題をめぐりましては、やはり社会情勢が変わることによって整備水準一つ変わってくる。それに伴います工法変更の問題でございますとか、先ほど来も話がございました補償交渉にかなりの年月を要したといったようなこと、そういったいろいろな事情 が絡みまして工期がかなり延び、かつ事業費につきましても当初予定したものをかなり大きく上回るような事態になっているということについて、ひとつ御理解を賜りたいと思っておる次第でございます。
  110. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 やはり国費を投入してこれだけの事業をやられるわけですから、地元としてはそれだけの受益があるわけで、私有財産としては価値が上がるわけですから、よく御説明を丹念に何回もしていただくということが非常に大事だという気がします。  また、負担の問題は負担農家の方はいいわけでございますが、農家負担額をこの地区についてどのように見込まれておられますか、お伺いします。
  111. 松山光治

    政府委員松山光治君) 今、本地区につきましては事業計画変更の問題に対応しているわけでございます。変更計画を策定するに当たりまして、それに先立ち受益農家の意向を確認するということで作成いたしました見通しによりますれば、総事業費が約六百億円、工期昭和六十八年度まで、こういうことに今なっておるわけでございます。  農家負担がどの程度になるのかという御質問でございます。この事業、水田にかかわりますかんがい排水事業、それから畑にかかわりますかんがい排水事業、畑と申しましてもこれは果樹園が中心でございますが、それから農地造成と、それぞれ区分がございます。六百億という総事業費をべースにいたしまして六十八年度完了ということを前提にいたしました推計によりますれば、十アール当たり年償還額で見まして水田の場合が約四千円、畑の場合が、これはスプリンクラーなどをつけましたかなりのもののようでございますが、約四万六千円、農地造成、これはかんがいなんかも含めまして約八万円ちょっとと、今こういうふうなことでございます。  ただ、これらの数値はまだ確定したものではございませんで、現在も整備水準をどの程度のものにするか、例えば畑地かんがいの中身もどれぐらいの多目的なものにするか、地元との意向を踏まえて議論せにゃいかぬものもございますので、そういった事業計画内容見直しも含めましていろいろと今検討をしておるところでございます。御指摘ございましたように、できるだけ丁寧に関係の方々と御相談、御説明しながら、理解が得られるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  112. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 負担の問題はできるだけいろんな面で御配慮を願いたいとは思うんですが、一方において、負担がありましてもそれを上回る生産力があればいいわけですから、その辺の経営指導といいますか、これからできましてから付加価値の高いものに持っていくというふうなつなぎをよくお考え願いたいと思うわけであります。  耳納山ろくの話をまた聞きますと、これは四十七年度着工事業の途中で五十一年度から財投からの借り入れが始まったわけです。これはやはり財政が苦しい問題がありまして、同時に事業をふやしたいという事業拡大、これで財投借り入れが始まったわけだろうと思うんです。財投を入れた以上は財投を将来どうするかという問題は考えなきゃいけないわけで、今その問題に直面しておるわけであります。  金利が、当時財投借り入れが始まったときには、八%から七%という現在の金利に比べて相当高い金利を引っ張っておる、これは借りかえ的になる部分がありますが、そういう高い金利を今いろいろと負担感として持つわけでございます。その中身として長くかかっていますし、事業量がふえていますので、金利が、またそこで財投の金利の関係から、農家負担の中でいわゆる建設期間中の建設利息の割合が大きくなっている、これがどうも問題じゃないかというふうに分析してみたわけです。  水田部では、農家負担の中の建設利息の割合ですが、四五%なんです、それから畑では約二五%、農地造成では約四四%が利息分である、建設期間中の利息、償還利息じゃないんですね。この辺が一般金利感覚から見ると相当な負担だなという感じを持つわけです。現在低金利になっていますし、米価の引き下げに代表されます農産物の価格の低迷というような収入面、さらにいろんな外国からの外圧の脅威という心理面もあるわけでしょうが、どうもこの金利負担の面からの割高感、高い金利で仕事を長い間、またそれで拡大したためにというそ負担感の中の金利というのがどうも私の受ける感じでございます。  大臣にお聞きしたいんですが、これは局長でも結構ですが、昨年から農産物の十二品目の輸入自由化問題とか、現在交渉中の牛肉オレンジ問題、いろいろと問題が国際的に苦労があるわけです。この日本農業をめぐる国際的な諸問題に対応していくために、農業の国際的な生産性を高める基本条件である農業生産基盤の整備を図るという、先ほど申します農業基盤整備事業の新しい観点、これが非常に重要だと思うわけです。しかし、今までの背負っておる負担をどうするかというときに、この金利負担軽減を含めた農家負担軽減方策はやはり早急に検討していただく、そして具体的な解決を急ぐ必要があるというふうに考えるわけであります。  この辺、大臣おられませんので、局長農家負担の中で金利負担建設期間中相当高い割合になってきておる、長くかかって事業量が大きくなったものですからこれはやむを得ないわけですけれども、その辺の対策をいろいろおやりになっていますので、その辺御紹介願いながら、今後ともそれを推進されさらに拡大していただきたいという趣旨でお伺いします。
  113. 松山光治

    政府委員松山光治君) 今お話がございましたように、一定の制約の中でできるだけおくれている事業の進捗を図りたい。そこで、一般会計だけではなくて財投から金を入れまして、その金を活用しながら事業促進を図っていく、これが特別会計制度ということで呼んでおるものでございます。そういうことで進めてきておるわけでございますが、特に最近金利が安くなってきているということもございまして、その結果発生する建設利息の問題、割高感というのが出てきておるということは十分我々も認識をいたしておるわけでございます。全体として高率の事業費補助を行って事業を進めておるわけなものですから、その利息についてまた改めて何か利子補給でもするかということになりますと、二重助成の問題という話になるわけでございますので、私ども基本的な考え方といたしましては、いろいろと御議論いただきましたように、やはりできるだけ事業費を切り詰めるといいますか、地域実情に見合ったできるだけ経済的な工事に努める、あるいは整備水準と費用の関係ということを受益者の方によく御理解いただくような、そういう選択的なやり方をやるという進め方と、それから何はともあれ予算の重点的な配分等によりまして事業をできるだけ早く進めていく、その結果利息を少なくしていく、こういうことが基本的な対策になろうかと思っております。  しかし、農家負担軽減の問題その他の面におきましてもできるだけの努力はせにゃいかぬということで、いろいろと制約の条件のある中ではございましたけれども、例えば六十一年度にはステップ償還制度といったような制度も導入いたしましたし、また六十二年度には一定の要件に該当いたしまして、土地改良区が自主積み立て等をやっておるといったような特定の国営事業地区につきましては償還期間の延長を認める、例えば国営かんがい排水の場合には通常据え置き期間を含めまして十七年になっておりますが、それを二十五年の償還にするといったような計画償還制度も創設したところでございます。さらにまた、六十三年度からは新たに土地改良事業償還円滑化特別対策事業というものも実施することにいたしておる次第でございます。今後ともこういった施策を有効活用することによりまして農家負担軽減に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  114. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 ただいま局長おっしゃいました、六十二年度の土地改良区による自主積み立て等いろいろ条件を満たした場合の償還期間の延長を認める計画償還制度の活用、これは非常に重要だと思いますし、また六十三年度から、これは期限が限られておりますけれども、土地改良事業償還円滑化特別対策事業、これはやはり今後とも農民の安心を得るような形で引き続きお願いしたいという希望を申し上げます。  最後に、大臣おいでになられましたので、これからの農業基盤整備事業というのはやはり新しい農業を取り巻く諸環境変化に対応をする必要があると思うわけで、長期的なそして国際的な観点から効率化を図る必要があると思うんです。これはやはり従来と変わった視点だと思います。これをやってガット違反になるわけじゃありませんので、国富がそれだけふえるし、生産性は上がりますし、またコストも下がるわけですから、そういう意味で新しい方向でのこれからの展開をお願いしたいと思います。  ただ、今までのところが問題でございまして、これはもう本当に苦労された、頭の痛い話だと思います。ここは過去のことは切り離して、農民に安心感を与えて次の段階を考える。一緒に古い話と新しい話がごっちゃになりますと実は混乱しますので、過去の事業工期が予想外に延びたり、事業費が高騰した、これはもう行政の責任とは私は考えないんです。環境の非常な変化だと思いますので、この辺の農家負担軽減については、今おっしゃいましたような施策にさらにいろんな面も加えまして農民の負担の不安感がないように、そして収益性が上がるようにということを特にお願いしまして、私の質問を終わります。大臣、一言だけ御意見をお伺いします。
  115. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 経済合理主義ではいかぬ農業、こういう御質問に始まりまして、いろいろ御指摘をいただきました。そういう御認識をいただいておることについて感謝申し上げておきたいと思います。  今、補助それから補助制度をどうするのか、金融、金利をどうするのか、さらに基盤整備なのか、何かもう少しアクセントをつけてというお話もございました。また生産性の向上は必要だ、コストの削減も必要だ、さらに、そういう意味では基盤整備に相当重点を置くべきではないかというような意味お話もございました。しかし、環境全体からいって、また国際化の中で、国際競争力ということで内外格差というお言葉は使われませんでしたが、そのようなことも言われたように私理解をいたしております。いずれにしても、長期的観点に立ってひとつ努力をせよと。  過去のことで負担問題等を考えますと、私も実は内心じくじたるところがございまして、率直に農林水産委員会等でも申し上げたかと思うんでございますけれども、私も陳情する側で、限られた予算の中でいろいろ陳情をしてきたことがまた工期の延長につながるような結果になっているかなと考えますと、なかなか内心じくじたるものがございます。しかし、やはりそうした事業に着手した以上はその実効を上げていくということに全力を尽くさなければならぬと思います。基盤整備には相当予算関係でも重点的に、超重点的にと言ってもいいかと思いますが、六十三年度でもつけたつもりでございます。もちろん内閣全体として財政当局の理解も仰ぎながら相当理解してもらえたなと私自身思っておりますが、しかしこういうことでもっともっと進めていかなければならぬな、こう思っております。  同時に、金利負担、償還負担の問題につきましては、今局長からも答弁がございましたように、また繰り返して委員が申されましたように、六十二年度から新しく発足しました土地改良区実質積み立てによる国営事業地区についての償還期間の延長を認める計画償還の制度、これをさらに実効あるように進めていかなければならぬと思っておりますし、六十三年度には償還円滑化特別対策事業を土地改良事業に特に新規としてつけておること等もございまして、基盤整備に重点を置きながら、そして負担問題について、金利問題についても配慮をしながら実効を上げていかなければならない、かように思っておるところでございます。非常に多くの方々から言わせればもどかしい点もございます。ございますが、対外政策として粘り強くやっておる今日ではございますけれども国内対策におきましてもやはり私どもの真意が通ずるように一生懸命努力をしてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  116. 片上公人

    ○片上公人君 牛肉オレンジ自由化問題について伺います。  先週、三局長が米国より帰られましたけれども、米国との協議内容についてお伺いしたいと思います。  なお、大臣は三局長から報告を受けたと思いますが、その印象はどうなのか、また大臣は再訪米することになるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  117. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 協議の結果について最初にお触れになりましたので、今ここに経済局長、出かけてきて帰ってきたばかりのがおりますので、その話をまず先に実務的に聞いていただいて、それから答弁をさしていただいた方がいいのではないかと思います。
  118. 眞木秀郎

    政府委員眞木秀郎君) お答え申し上げます。  先週四月十二日から三日間アメリカ側と協議を行ったわけでございます。この協議は先月末の佐藤大臣とヤイター代表との会談で今後とも協議を継続しようという合意がされましたのを受けて行われたものでございます。  我が方といたしましては、自由化は困難であるという基本的立場を主張しながら、二国間の話し合いによる解決を求めましてさまざまな角度から意見の交換を行ったところでございます。米国側は本年四月以降の自由化を要求するというのが基本的な立場でございまして、それが実現できない場合にはできるだけ早期に自由化すべし、その時期を明示してほしい、それが不可欠であるという主張を持っており、これは今回も変わらないところでございました。  また、こういう主張に合わせまして、自由化をする時期、自由化時期までの輸入枠の拡大でございますとか、あるいは現在、輸入牛肉の売買に関与しております畜産振興事業団の運用を改める問題とか、あるいはまたオレンジ果汁等につきまして、その国産かんきつ果汁との混合を現在しておるわけでございますが、その問題等実質的なアクセス改善につきましてアメリカ側より主張がありました。  今回の議論を通じまして、二国間協議を通ずる本件解決のためにアメリカ側として考えておる主張なり内容といったものがかなり具体的になったというふうに感じておりますけれども、いずれにいたしましても、米側立場というのは自由化時期の明示というのが不可欠だということで、そういう前提に立っているものでございます。したがいまして、依然といたしまして双方の立場の相違は埋められるには至っておりません。  この問題につきましては、あす以降、別の会議で来日いたしますスミスUSTR次席代表と私の間で今週も引き続き話し合おうということになっておるわけでございます。したがって、この機会をまた利用いたしまして引き続き二国間解決に向けて協議を続けていきたい、このように考えておるところでございます。
  119. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) というわけでございまして、私といたしましては、とにかく三月末、もう話し合いだけはしていこう、決裂するのは簡単でございますけれどもそうはいかぬ、毎年毎年こうしてわあわあ言っているんじゃこれはとてもじゃないということで、とにかく平和的に円満に決着をつけよう、そのための話し合いはやはり必要だと思う、どうだと、こう言ったところが、それはわかったということで合意したその延長線上にあって、今実務者レベルでいろいろこう手探りをする、中身はなかなか申し上げにくいのでございますけれども、今、眞木局長が申し上げましたようなことで話し合い継続をされておる。  適切な時期に私自身が政治判断をすべきときが来るとするならば私は訪米をしなければなるまい、そして決着を一日も早くつけたい、多くの方方に心配をかけておりますので、そういう気持ちでおるわけでございます。  新聞記事でございますけれども推測記事と全部の新聞を決めつけるには私もちゅうちょをいたしますけれども、一部の報道は私自身を非常に神経質にさせ、私自身を相当いら立たせておる部分がございます。しかし、そこは冷静に私は構えておるわけでございまして、どのような推測を書かれようとも、どのような方がどのように発言されようとも、結果は出てきた結果に基づいて全責任を負わなきゃならぬのは農林水産省であり私でございます。そういう意味で真剣慎重に対応をしておるところでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  120. 片上公人

    ○片上公人君 その報道によりますと、竹下首相は、昨日、牛肉オレンジ輸入自由化問題につきましては、自由化に前向きの取り組みを、そういう姿勢を示したと報道されております。    〔委員長退席、理事菅野久光君着席〕 政府はこれまで四月じゅうに二国間協議で決着を図る方針を固めておりましたけれども、首相がこのような発言をするということは、米国との二国間決着への見通しがようやく立ったということを意味するのか、こうも思います。また、二国間協議で自由化問題に対する見通しがついたといたしますれば、日本は米国に対しまして大幅な譲歩、すなわち日本が自主的に自由化に踏み切るということを決断したのか、もし仮に自由化前提にして国内調整を進めていくつもりであるならば政府は何年後をめどに自由化をしていくのか、このことを伺いたいと思います。
  121. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) そこがまだ決まらぬわけでございまして、またそこが多くの方々に心配をかけておるところであろうと思っております。  そういう意味で、総理がどのような発言をされたか、私も新聞報道は見ております。テレビのニュースも聞きました。しかし、私に責任を預けておる、発言全体のトーンとしてはそういうことでございますので、私は先ほどのような答弁を申し上げたわけでございます。何分にもストラウス・中川会談以降長きにわたる懸案の事項でございます。そして、先様は四月一日完全自由化、この旗はまだおろしていないんです。そうでないとするなら、二年後はどうだ、何だかんだいろいろなことを言っておるわけでございます。だから、いろいろなことを言っておるけれども、そこはまだ決着を見ていないわけでございまして、これはぎりぎりの段階まで相手の真意を確かめながら、また我が方の国内措置、国境措置、幅広に私どもは考えながら、平和的な決着点を見出したいということで全力を挙げておるところでございます。
  122. 片上公人

    ○片上公人君 大臣お話のように、アメリカは、自由化の時期が二年より先に延びるならば各種農産物の関税を引き下げる、自由化後は従来の割り当て制にかわる輸入課徴金などの保護措置を原則として認めないなど厳しい条件を挙げているとされております。  今回、首相は自由化に前向きな姿勢を示したところでございますけれども、これらの代償措置要求が撤回あるいは緩和される見込みがあるのかどうか、そしてこの要求をある程度受け入れるとするならばどのような内容になると思われるのか、また首相は、自由化をする場合は思い切った国境措置、国内措置を推進する考えを示唆しておりますけれども、具体的にどのような措置を講じていくつもりなのか、御見解を伺いたいと思います。
  123. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先ほどの答弁の繰り返しになるのでありますが、先ほど私が四月一日完全実施あるいは二年と申し上げておるのは、二年というのは、これは一部の報道によればそういうことを言っておる。しかし先様は、四月一日が延びるとするならば代償措置が必要だということを言っておる。  それからもう一つ言葉足らずのところを私が補足いたしておきますが、十二品目問題がまだ引き続き実は残されておるわけでございます。これは国内措置、国境措置というものをあわせながらさらに考えていかなければならない。そこにはプロジェクトチームの結論も得なければならない、アメリカとの話し合いもする部分もあるだろう、こういうことで、国境措置等も含めて私どもは真剣に考えておるということでございまして、これ以上のことをまた申し上げますと、これはなかなかやかましい、やかましいと言ってはいけませんが、いろいろ推測推測をまた重ねられる結果になって、結果は私どもが目しております我が国農業の行方にやはり禍根を残すようなことになっては、私としては甚だ不本意でございますので、丁寧に扱うという意味からもこの程度の見解にとどめさせていただきたい。  なお、実務者が渡米をしてまいりましたので、そのことの概略の報告は今ございましたけれども、さらに御質問があれば局長から答えさせたいと思います。
  124. 片上公人

    ○片上公人君 非常に大変な問題に取り組んでおるわけでございますけれども、いずれにしましても、自由化の問題につきましては、この前の急激な円高みたいな形にならないように、十分日本農業のことを考えて慎重に取り組んでもらいたいと思います。  次に、宍道湖・中海干拓淡水化事業につきましてお伺いいたします。  これは三十八年に調査に着手して以来、既に四半世紀を経過いたしておりますけれども、その間に農業を取り巻く社会的、経済的環境は大きく変化し、また国民の環境や文化に対する価値観の変化で県民のニーズも大きく変わっております。昭和三十年代に県や受益者の強い要望を受けて着工したこの事業は、ここに来まして、宍道湖の淡水化についての地元住民の強い反対の中で完全に行き詰まりを見せておる状況であります。  この事業は、三十年代の食糧不足時代に土地を造成して食糧増産を目的に始まったものでありますが、これが本格着工した二年後の昭和四十五年から米の生産調整が行われ、その後引き続いて減反政策がとられているので、当初の事業目的が失われていると思います。さらに、淡水化による宍道湖の水質汚濁が確実といったことがはっきりしてきまして、今では淡水化による経済効果は期待できず、デメリットが余りにも大きいことはだれの目にも明らかになってきております。地元住民の淡水化反対の現況を政府としてはどのように認識していらっしゃるのか、まずお伺いしたいと思います。
  125. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) この問題につきましては、昨年九月、限定的な淡水化試行を具体案として地元に提案をいたしました。三月末には返事をもらいたい、こういうことでございますが、反対の声ももちろん多くありますし、また賛成の意見もあるということでございますし、いろいろな意見があって、県当局としても私の方にまだ答えを持ってこないままに、私が渡米中の三月三十日に至りまして、両県より今しばらく延ばしてくれ、こういうことでございました。しかし延ばすといっても、むやみやたらに時間さえ延ばせばいいというものじゃございません。私も相当深刻に今日までの経緯を受けとめておりますので、五月末までにということで、その回答を延長することにいたしました。五月末にはひとつ地元の意向を明らかにしてくれ、両県の意向をまとめ上げてくれ、それをもとにして私ども農林水産省として考えなければならぬ、かように心得ておるところでございます。
  126. 片上公人

    ○片上公人君 工期が大幅に延びまして、当初見込んでいた期間の三倍にもなっておりますし、総事業費は当初計画の約六倍に膨張しております。干拓地の地元負担金も高くなる。さらに大規模農業に見合った機械設備をかけるとなりますと多額の資金が必要となってきます。仮に農地として利用されるといたしましても、とても採算性は乏しいと言わざるを得ない。こうした状況のもとでも政府としてはあくまでこの事業完成を目指すという考えをお持ちかどうか、伺いたいと思いま す。
  127. 松山光治

    政府委員松山光治君) 状況が変わったというお話でございまして、中身につきましては事情変化を見ながらいろいろと見直しもやってきております。  今大臣からも、反対の声ももちろんあるけれども、中に賛成の声もあるというお話もございました。あの地域の経営規模の小ささということを考えましたときの経営規模の拡大効果でございますとか、あるいは特に干拓地だけではございませんで、周辺の既耕地、これが七千ヘクタールぐらい予定しておるわけでありますけれども、そこへの水の安定供給をどうするかといったようなことで、推進してくれというような御意見もあるわけでございます。事業費の問題ももちろんございますけれども、そういうもろもろの中で地域としてどういうふうに御判断いただくのかというのが一つのポイントでございます。  私どもといたしましては、今大臣からお答えがございましたように、五月末までにぜひ両県から御意見をいただきまして、その上で私どもの考え方を取りまとめてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  128. 片上公人

    ○片上公人君 宍道湖の特産である年間三十億円の水揚げがあるところのヤマトシジミの絶滅も淡水化になりますと必至になりますし、七珍と言われる宍道湖特有のすばらしい魚も淡水化してしまうととれなくなる。こうした環境破壊が起こることはこれまで茨城県の霞ケ浦などの例でもわかっております。淡水化は水門を閉めて外海と遮断して水の性質を変えていくわけでございますから、限定試行で十の水門のうち一つをあけておいて、塩水濃度を半分に薄めるといっても、一度水門を閉めて淡水化が進んで、湖が汚濁して自然生態系に変化が起こったときに、その試行をとめて再び海水に戻しても生物がもとに戻るかどうか、これは難しいと思います。農業用水の確保のためとはいえ、淡水化によって失うものが余りにも大きく、得るものがこれは少ないと思います。淡水化というのは、限定試行を含めましてこれは中止して、干拓地の水の確保につきましては別の対策を考えるべきであると思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  129. 松山光治

    政府委員松山光治君) この地域におきます水の問題、これは利水の問題もございます。それから治水の問題、両面があるわけでございますけれども、これにつきましては戦後のみならず、戦前かなり古いときからの地域の課題であったようでございます。そもそもの事業の実施を計画いたします際には、あらかじめあの地域に入っております重要な河川でございます斐伊川でございますとか日野川でございますとか、そういった既存水利の活用の可能性も調査、検討いたしました上で、地域の立地条件によります工事施行の可能性でございますとか、あるいは経済性でございますとか、あるいは事業完了後の水利用の利便性の問題、そういったことにつきまして十分調査、検討を加えながら関係県等の御意向も踏まえました上で、やはりどうも長期安定的に水を確保していくという点からいたしますれば淡水化を図っていくのが最も有利だ、あるいは適切だということで事業の実施に踏み切ったという経緯が実はあるわけでございます。  今お話のございました漁業問題との関係について申しますと、一応漁業補償はその段階で終わっておるというのが現在の姿でございます。その後、各方面から例えば部分的に淡水化する手はないかとか、別途ダムをつくってはどうかといういろいろな御提案を実はいただいておるわけでございますが、今申しましたような経済性でございますとか、実行可能性でありますとか、いろいろな点を総合勘案いたしますと、なかなか長期安定的な水の安定供給策という点からいたしますれば、現実的な代替案としてこれがいけるというのが見つかりにくいというのが実情でございます。そういう状況を踏まえて両県にいろいろ御議論をいただいておるというのが実態でございます。
  130. 片上公人

    ○片上公人君 限定的淡水化試行の問題につきましては、先日の衆参の予算委員会でも取り上げられましたが、そのとき、県も市町も苦慮をしている、国として軌道修正すべきではないかという質問に対しまして竹下総理は、事業開始当時と現在では県民のニーズが大変に変わってきておるという現実も本当に無視できないと思う、こう述べて、過去にこだわらない含みのある答弁でございました。それではどのように対応していくかということになりますと、両県がどう対応するか見守っている段階ということでとどまりまして、先ほども述べられましたように、農水大臣は現地の県側に対しまして昨年来意見を求めているので、相談をかけた先様が三月末までには回答することになっているので、まずその回答を待つという答弁にとどまったわけでございます。  それで三月中に求めていた島根、鳥取両県の回答はしばらく延期してほしいということで、農水省としては五月末までの回答を強く要請した、これは先ほどの話のとおりでございます。これは関係十二市町のうち同意を表明したのは宍道湖西岸の農業用水に困っておる平田市、斐川町の二つだけでありまして、残りの十市町からは結論が得られておらず、県としても各市の意向をまとめられなかったためでございますが、国は県に、県は市町に判断をゆだねているので、結局この三者のもたれ合いの中で時間が経過しましてずるずると工事が続くことになるのではないか。五月末になってもわからない。どのような事態になったら政府としては最終判断をするのか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  131. 松山光治

    政府委員松山光治君) ただいまお答え申し上げましたような水の確保の問題を一つとりましても、結局のところ地域の資源をどういう形で地域の振興のために考えていくのかということが基本にある問題ではないかというふうに思っております。そういう意味で、ここはもともと要請がございましたのが両県からだということもございますけれども、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、両県において扱いについてしっかりとした御意見をいただきました上で国としてのあり方を慎重に考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  132. 片上公人

    ○片上公人君 着工から二十数年たっておりまして、農業環境もすっかり変わってきております。農水省としては干拓と淡水化は一つのセットの事業というように現在もお考えのようでございますけれども、干拓と淡水化を分離するという柔軟な対応で考えるべきではないか。    〔理事菅野久光君退席、委員長着席〕 そうして完成した干拓地は農地利用分を減少させまして、公共用地や住宅用地など多目的土地利用を考えるなどして、速やかに有効利用を図ることも考えるべきであろうと思います。農水省で造成したからといって農地にということではなくして、投下した国費を少しでも有効に活用することが国の立場としては必要であると思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  133. 松山光治

    政府委員松山光治君) 先ほどもお答え申し上げましたように、長期安定的な水の供給確保という点からいたしますれば、淡水化計画にかわるなかなか現実的な案が見出しがたいというのが私どもの現在の判断でございます。そういう意味で、長期安定的な水の供給確保という観点からいたしますれば、干拓と淡水化というものを分離してはなかなか考えにくいというのが実情でございますが、ただ御指摘のございましたように、現在、干陸がおおむね終了いたしております揖屋、安来、弓浜、彦名という四つの工区があるわけでございますけれども、この工区の土地の扱いにつきましては、両県からもできるだけ早く完成さして払い下げをするようにしてくれという強い要望を受けておるわけでございます。  私どもといたしましても、せっかく投資いたしました土地でもございますから、効果の早期発現の見地からできるだけ前向きに考えていきたい、このように考えておるわけでございますが、その場合、それでは当面の水手当てを一体どうしていくか、こういうことになるわけでございまして、 そういうものといたしましては、淡水化とは別に、質、量ともに必ずしも十分とは言えないかとは思いますけれども、ため池等を別途考えて、暫定的な用水対策を実施していくといったようなことを水の問題としては考えざるを得ないのではないか、このように考えておるわけでございます。  そこで、部分的に竣工を図りまして、でき上がりました土地をどのような形で使っていくかという問題になるわけでございますけれども、当然のことながら、この事業をやはり両県の農業振興なり農家の経営規模の拡大を図るという観点から進めてきたということが一つございます。余りそれにこだわらぬでもいいじゃないかというお話はございましたけれども、実態として見ましても、実はこの地域は農業への依存が高いにもかかわらず、全国平均から見ましてもかなり経営規模の小さい地域でございまして、せっかくの土地であるから農地として利用したいんだという要望がかなりあるというふうに聞いております。そこで、私どもはでき上がりました干拓地の配分を考えていくに当たりましては、まず農家への配分、それを有効に活用して生産性の高い農業経営の育成に役立ててもらいたい、これをまず基本に考えるのが本来ではなかろうかというふうに思っております。  ただ、御指摘ございましたような公共的な利用も含めました多用途利用の問題につきましては、地域でもっとも望ましい土地利用を図っていくという観点から、具体的な要望がございます場合には、農業用の利用との調整を図りました上でそういうことを考えていくことも当然あり得るだろう、このように考えておる次第でございます。
  134. 片上公人

    ○片上公人君 時代がどんどん変わっておるわけでございますから、減反を推進しながら農地をつくる、不思議なことでございますし、また、減反によりまして水の需要も随分変わってきたんではないか。だから淡水化によるんじゃなしに、むしろここでそれ以外の地域からどう水をつくるかということを真剣に考えるべきではないかと思っております。  会計検査院が検査をされる場合でございますが、会計経理が予算、法令等に従いまして適正に処理されているかどうかという合規性の観点からの検査はもとよりでございますが、経済的、効率的に行われているかという点、少ない費用で効果を上げているかどうかというそういう見方、さらに、ある事業が所期の目的を達成しているかどうかという有効性の観点からの見方も重要であるということを、会計検査院長は昨年十二月の当決算委員会でおっしゃいました。そうして、最近の検査においては合規性の観点と並び経済性、効率性の観点、あるいは有効性の観点からの検査を充実しているところであるとの答弁をされております。  ところで、中海干拓事業につきましては、これまで検査はされていると思います。決算検査報告におきましても、過去に国営干拓事業全体としてその現状と問題点を取り上げて、特記事項として意見を述べられたことがあります。五十五年度でございます。その中に、中海干拓事業事業継続中ではあるが、造成後の土地利用について所期の目的どおりの効果を発現しないおそれがあると指摘されておりますけれども、その後数年を経過いたしまして、七百億円を超える国費を投入した事業が現在のような状況であり、検査院が常々言われるこの三E検査、特に有効性という観点から見ると、中海干拓事業について検査院としてはどのように見ておられるのか、会計検査院の所見を伺いたいと思います。
  135. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) 中海干拓建設事業につきましては、ただいま先生示されましたように昭和五十五年度の決算検査報告におきまして、国営干拓事業に関する特記事項の一部として取り上げたところでございます。  当時の中海地区におきます事業の実施状況を見ますと、五十五年度末までの事業の進捗率は五九%余りでございまして、工事費の支出済み額が約四百二十二億円であったわけでございます。当初計画では水田の予定だったわけでございましたけれども、これを畑等に変更して造成するということになりましたために、水路等の整備による工事費の増高地元負担金の増加あるいは配分時の応募者の確保が困難ではないかということが見込まれておりました。また、安定した農業経営を図るための導入作目の選定も決まっていない状況にございましたことから、他の干拓地区とあわせまして国営干拓事業につきまして、社会、経済情勢の変更に対処されまして、地元関係者との調整や干拓事業をめぐります周辺の自然及び社会環境との調和を図りながら適切に事業を実施されていくことが肝要である、この旨論及しているところでございます。  その後の計画につきましては、御承知のように諸情勢の変化がございます。それから、水質環境問題をめぐりまして地元住民の反対等によりまして、当初予期されました事業の進展が見られていない状況となっているのは御承知のとおりでございます。  会計検査院といたしましても、このように多額の国費を投じられました本事業に対しましては非常に大きな関心を持っておりまして、その推移を見守っているところでございますけれども、先ほど来御説明がございましたように、農林水産省におかれましては六十二年九月に島根、鳥取両県の知事に対しまして限定的淡水化試行計画案を提示しておられまして、両県からの回答が近くあるやに聞いておりますけれども、その回答に基づきましてこれから農林水産省がとられることとなります対応策を待ちました上で、会計検査院といたしましても今先生御指摘の有効性の観点からの検査を実施しなければならない、このように思っているところでございます。
  136. 片上公人

    ○片上公人君 会計検査院は各省庁に対しまして、細かいことにつきましては大変きめ細かく注意をいたし、改善をさしておりますけれども、そのとき検査院はこうよくおっしゃいます。このような事業は今後とも引き続き実施されるからこうしたことを繰り返さないようにという趣旨を述べられておりますけれども、この中海干拓事業のような大きい事業は政策の選択の問題でありまして、会計検査院としても口を挟むことは遠慮するという態度があるんではないか。しかし、これだけはっきりと勇気ある撤退が求められている、このことも国の事業としては珍しいのではないか、むしろ検査院の立場から現在の見解を明確に言うのも検査院の使命と思いますが、重ねてお聞きしたいと思います。
  137. 吉田知徳

    説明員(吉田知徳君) 確かにこのような国家的な大きな規模の事業になりますと、実施されております事業につきましては期間が長期間かかりますし、その間に事情変更によりまして当初計画されましたものに比べて変更をされなければならないような場合も生ずるかと思いますけれども、その辺どのように事業変更なりしていくかということにつきましては非常に高度な行政的な判断を伴うものでございます。したがいまして会計検査院といたしましては、従来からこのような長期的な計画につきましては、その推移を見守りながら最終的な判断が行われました時点で御意見を申し上げているというケースが多くなっておりまして、本件につきましても、これから農林水産省で対応されます措置を見守りながら検査院の方としては検討さしていただきたい、このように思っている次第でございます。
  138. 片上公人

    ○片上公人君 農水省におきましても、五月末の回答がどう出るかわかりませんけれども、時代も変わっておりますことでございますので、どうか柔軟に取り組んでいただきたいことをお願いしておきたいと思います。  次に、輸入牛肉の売却による円高差益の使い方についてお尋ねいたします。  畜産振興事業団は、安い外国産牛肉を輸入しまして、国内生産者保護のためにこれを割高な国内産牛肉の相場に合わせて卸市場に放出しているのでございますから、その売買差益はそっくり事業団に入るわけでございます。政府牛肉の差益は 消費者から強い還元要望がある中で、一部は安売りデーの増加などで対応してきましたけれども、差益の大部分は国内生産者の保護に役立てるという理由で畜産振興に充てられてきました。事業団は輸入牛肉の売買のほかいろいろな業務を行っておりますが、事業団による畜産振興事業というのは、指定助成対象事業であると聞いておりますけれども、この事業はどのようなことを行っているのか、お伺いしたいと思います。
  139. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘ございましたように、畜産振興事業団の業務の一つといたしまして、輸入牛肉について国内牛肉の価格安定制度とリンクをしました売買業務の結果生ずる差益金を財源といたしまして、一定の指定助成対象事業の財源にこれを充てるということになっております。この指定助成対象事業につきましては、畜産物価格安定法第三十八条の一項六号に、一部省令委任を含めまして規定がございまして、肉用牛その他の畜産生産の合理化のための事業、それから畜産経営に関する技術指導、さらには牛肉を初めといたします畜産物の流通の合理化に対する助成を行う仕事ということで指定助成対象事業が法定をされておるわけでございます。  最近の状況を申し上げますと、六十三年度の場合には、酪農あるいは肉用牛生産といった大家畜生産部門の生産振興、あるいはこの大家畜生産部門の負債が非常に多いといったような状況で、経営体質をさらに強化しなければいけないという観点からの特別の資金供給対策、さらには国産牛肉の小売価格を引き下げ、安定をさせるという意味で、特別の小売対策ということでこの指定助成対象事業を考えておるところでございます。
  140. 片上公人

    ○片上公人君 そこで指定助成対象事業について伺いますが、六十一年度の決算検査報告で会計検査院から畜産特別金利子補給金の交付が不適切であるとして注意を受け、農水省は急いで対策をとったものがございます。それは畜産農家の経営改善のために必要な資金を低利で融資した農協などに対しまして、社団法人中央畜産会が融資機関に利子補給を行う事業であります。このための利子補給に必要な資金は同事業団が助成して造成した基金から出ているわけであります。この事業団が助成している財源には輸入牛肉の売買差益がたまったものを充てていると思いますが、その点まず確かめておきたいと思います。
  141. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま御指摘のございました六十一年度の決算検査報告で指摘を受けております畜産特別金利子補給事業と申し上げますのは、先ほど申し上げました畜産振興事業団の指定助成対象事業でございます。これは内容は先生御承知のとおりでございますが、酪農及び肉用牛生産の経営につきまして相当の負債が集積をしておるということで、五十六年度以降六十二年度にかけて低利貸し付けが行われまして、それに対する利子補給を行う事業として継続を実施されておるものでございます。これの財源は先ほど申し上げましたように、御指摘のとおり畜産振興事業団が行っております輸入牛肉の一元的な売買に伴う差益を財源として支出をされておるものでございます。
  142. 片上公人

    ○片上公人君 会計検査院からどういう注意をされたかといいますと、検査院が五十六年度から六十年度までの貸付対象畜産経営者五千四百十九人への貸し付けで、金額七百九億七千四百三十七万円に対する六十一年度までの利子補給金九十四億五千五百十八万円につきまして調査しましたところ、既に家畜の飼養をやめて畜産経営を中止しているのに、中止後も利子補給をしていたものが三百八十一人分もあり、金額では一億九千百七十九万円にもなっていた。なぜこんなことが起こったかといいますと、農水省事業団と中央畜産会に対しまして、畜産経営者が経営を中止したときは利子補給をとめるという明確な方針を示していなかったこと。また、経営を中止したときは、そのことを実態がよくわかる農協なりが中央畜産会に通知するというようなことも決めていなかったから、空き家になった畜舎に利子補給をしていたという事態が起こりまして、検査院が検査して初めてわかったわけでございます。つまり、農水省事業団も利子補給を行うについて要綱などをきちんと定めなかったからこういうことが起こったわけでございます。  輸入牛肉の円高差益を畜産農家の経営安定のために使うのは畜産振興のために必要なことではございますが、それがこのように交付の方針や規定をきちんと定めないでずさんな使われ方をしては困るわけでありまして、牛肉を消費する国民はただでさえ諸外国に比べて高い食料品を買わされているわけでございますから、少しでも安い牛肉を食べたいと願っているのは当然でございます。一方、国が行っているところの国内畜産農家を保護することも仕方がないと思って消費者は我慢させられております。ところが、本来国内の畜産振興に役立てるはずのものがこのようにずさんきわまる使われ方をしていたとすれば、一層消費者の国内農家に対する風当たりは厳しくならざるを得ない。外国からも国内からもそっぽを向かれかねないということを検査院から指摘されるまで放置していた責任は重いと思いますが、御見解を伺いたい。
  143. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま先生から御指摘をちょうだいいたしましたような事例が生じておりますことはまことに遺憾でございます。この本来の対策の趣旨は、経営が累年の負債によって行き詰まりをする大家畜農家について、低利資金の供給を通じコスト引き下げの努力を通じてできるだけ安い牛肉を供給する体制をつくるという意図で行っておるものでございます。私どもこの低利資金の融資措置を決める実施要領におきまして、不幸にも経営を中止せざるを得ないような事態になった場合に、当然この制度の趣旨から、そういった事態が起こった後には利子補給が中止されるものと理解しておりましたが、実施要領の文言の上で明確にその方針が明らかになっておりませんでしたので、末端において誤解が生じまして、御指摘のような事例を生じたのでございます。私ども直ちにこの会計検査院からの指摘に基づきまして、この事業実施要領の中で指摘された状況の場合には自今利子補給は中止をするということを明文化し、かつまた末端の金融機関に対してそういった事態の発生について通知を義務づけるという措置をとっておるところでございます。  また、既に支払われたものにつきましても一部につきましては返還措置をとると同時に、その他大部分のものにつきましては経営を中止したもののまだ資産の処分が、経営中止に伴いまして畜産経営からリタイアをする場合に当然資産処分がありまして、それが行われないとなかなか資金繰りがつかないということがございますので、一定の猶予をちょうだいするように措置をしたところでございます。いずれにしましても、昨年の十月に、将来につきましてはこういった事態が生じないように規定の整備をしたところでございます。  先生御指摘のとおり、消費者の御理解のもとで畜産振興事業団が輸入牛肉の一元的な操作を行って、発生しております差益を財源にして畜産農家の生産性向上に向けての努力を助長すべく行っておる事業でございますから、その趣旨に則して適正に使われていくことが必要であることは私どもも重々承知をしておるわけでございますし、こういった事態を招いた責任を十分認識をいたしますとともに、今後再びこのような事態を生じないように適正な事業実施に努めてまいる所存でございます。
  144. 片上公人

    ○片上公人君 畜産振興事業団の助成はこのほかにも多くありますが、このような要綱や規定が不備なものはほかにないか一回見直してみる必要があるのではないかと思います。会計検査院の指摘につきましては、他省庁に対するものでありましても自分のところに同じようなケースはないか点検するべきでありますから、まして同じ事業団の他の助成についての規定や要綱については十分に点検してみるべきであると思います。農水省には畜産振興事業団を通じての助成を含めまして補助金や助成金がたくさんございますが、検査院からこのような注意を再び受けることのないように注 意していただきたいと思います。農水大臣の御所見を伺いたいと思います。
  145. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 会計検査院の決算検査報告において指摘を受けておることはまことに遺憾でございまして、申しわけないと思っております。これを厳しく受けとめておる次第でございます。  指摘を受けた事例につきましては、その態様に応じて補助金返還等の厳正な措置を講ずることは当然でございまして、地方農政局あるいは都道府県等に対して文書または会議の場を通じまして補助事業の適正な執行について指導監督の徹底を図っているところでございます。今後とも補助金等の効率的な使用、そうした観点に立って一層の努力をしてまいらなければならぬと考えておるところでございます。
  146. 片上公人

    ○片上公人君 次に、総務庁にお尋ねいたします。  畜産振興事業団による牛肉の価格安定制度は円高差益がどの程度国民に還元されているか不透明であるとか、牛肉価格全体の高値安定を生んでいる、畜産農家の助成事業に充てる分は果たして有効に利用されているのかといった批判が出ているだけでなく、アメリカからも、事業団を中核とする日本国内の輸入牛肉の流通制度は価格の上昇につながり、牛肉を日本に輸出しにくい状況を生んでいるといった批判がございます。  内外から牛肉の流通制度につきまして改善が求められているときに、行政監察をぜひ早急に行っていただきたいのはこれは国民の強い要望でございます。総務庁は六十三年度に同事業団に対する行政監察を実施する計画であると聞いておりますが、監察は事業団の業務内容についてどのような観点から行うのか、またいつごろから実施するのか、お尋ねしたいと思います。
  147. 石和田洋

    説明員石和田洋君) 今先生の御指摘がございました今年度の行政監察の計画でございますが、これは十月から畜産対策に関する行政監察として実施する計画にいたしております。この監察におきましては畜産物の内外価格差の問題もございますので、生産対策の実施状況を見るのとあわせまして、畜産物の流通面におきまして合理化の余地があるかないかということを調査したいと考えておるところでございます。したがいまして、この監察計画におきましても当然畜産振興事業団をもその対象として指定助成対象事業のほかに、流通に果たしている役割等をも調査したいと考えておるところでございます。
  148. 片上公人

    ○片上公人君 次に、密漁問題についてお伺いしたいと思います。  漁業者の中でも沿岸漁業者の生産活動を保護する制度は、現在どのようになっており、どのような法律のもとに保護されているのか、お聞きしたいと思います。
  149. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 現在水産関係では漁業の振興でございますとかあるいは経営の維持ということを含めまして、いろいろと広い意味での漁業活動の保護のために各種の法律の制度というものが整備されているわけでございますけれども、ただいま先生から冒頭にございました密漁ということに絡みましての法律制度ということで申し上げますと、一つはアワビでありますとかサザエという定着性の資源につきまして、漁場の管理を図りつつその安定的な漁業経営を確保するという観点からの漁業法に基づきまして、沿岸漁業者に対しまして漁業権という権利を認めるという制度が一つあるわけでございます。  それから、もう一つは資源の保護でございますとか、あるいは漁業の調整ということから水産資源保護法、あるいはただいまも例示しました漁業法というものに基づきまして沿岸水域については主として都道府県の漁業調整規則によりまして、とる魚の体長制限でございますとか、あるいはとる時期の禁止期間等こういうものを設けましたり、あるいは特殊なものにつきましては許可を要するというような制度がそれぞれしかれておりまして、漁業活動の保護ということをねらいとしている次第でございます。
  150. 片上公人

    ○片上公人君 法律規制の保護のもとに漁業者が安心して操業、生産活動が続けられればよいわけでございますが、その法律規制を犯しまして密漁は地域によって頻繁に行われております。我が国の内外における密漁、漁業違反の事例、傾向をお尋ねしたいと思います。
  151. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) ここのところ、ただいま先生から御指摘がありましたように密漁というものが各地で散見されるようになってきておるわけでございます。そして、この中で特に目立ってきておりますのはサザエでございますとかあるいはウニ、それからさらにサケというような高価な魚につきまして、ここのところアクアラングでございますとか、こういう簡便な潜水器具というものも普及してまいりましたことと、それから一部にはかなりの高速艇というものを使っての違反事件というものも見られるわけでございまして、全国的にこういうものにつきましては国、都道府県、それから海上保安庁でございますとか警察、こういうものが一体となって取り締まりに当たっているわけでございます。ここのところ都道府県から毎年報告を聴取しておりますけれども、漁業関係の法令違反ということで挙げられておりますのが毎年大体千件前後、六十一年には九百四十七件と、実件数でございますけれども、こういう件数になっている次第でございます。
  152. 片上公人

    ○片上公人君 第七管区内の長崎の一漁業組合ではお話ありました潜水器密漁に悩み続けまして、八年前には約二千万円の自衛船をつくりまして監視に当たっていましたけれども、密漁船の方がだんだん高速になりまして、現在では約四千万円の自衛船を二隻つくりまして、漁民が一隻に五名から六名で交代で毎日監視を続ける状況が続いておると聞いております。その自衛船の年間維持費約二千万円を約三百五十余名の組合員が負担しておりまして、この負担は不漁のときも、また今後とも続くわけでございます。我が国の警察の陸上の取り締まりは行き届いているわけでございますが、このような新たな犯罪とも言える密漁の監視取り締まり態勢はどのようになっていらっしゃるのか。強化すべきと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  153. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 取り締まりにつきましては、ただいまもお話ししましたように国の監視船あるいは都道府県そのもの、それからさらには取り締まりということから申し上げまして海上保安庁、警察、こういうものが相連携して行っているわけでございますけれども、中には自衛手段といいますか。ただいま御例示ありましたように漁協によりましてはみずからがやはりみずからの漁場を守るということで、みずからの船を沖合なり沿岸に出しまして相対峙するというようなケースも各地で出てきているわけでございます。我々といたしましては、何とか漁業法でございますとかあるいは水産資源保護法というものの趣旨なり内容というものを十分、一般の方にも理解していただくということが何といっても最初でございますので、そういうソフト面といいますか、PRなり宣伝あるいは普及ということについて従来からいろいろと水産庁独自でも助成等を行ってきたわけでございますけれども、今お話ありましたようにみずから自衛するというものにつきましても、六十三年度から開始になります沿岸漁業構造改善事業の後期対策の中でそういう機械、施設につきましても助成するという道を開きまして、そういう動きにつきましても水産庁としてバックアップしてまいりたいというふうに考えております。
  154. 片上公人

    ○片上公人君 密漁には暴力団までが資金源として動いているとも言われております。これら密漁に対する法的罰則はどのようになっていらっしゃるのか。現行の罰則が密漁防止には効果がなく、強化の必要があるのではないか、このようにも思いますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  155. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 密漁につきましては、先ほども申し上げましたように二系列ございまして、一つは漁業権という沿岸漁業者が持っている権利を侵害いたしまして、アワビでありますとか サザエをとる漁業権侵害という事件と、それから体長制限でございますとか、あるいは禁止期間、さらには無許可で魚をとるというような漁業関係法令違反と、多くは都道府県で決めております漁業調整規則に違反するというケースが多いわけでございますけれども、そういう二つの系列があるわけでございます。前者の系列の漁業権の侵害につきましては漁業法で二十万円以下の罰金ということになっておりますし、それから各部道府県が決めております漁業調整規則の違反につきましては、それぞれの調整規則で罰則の中身が異なっておりますけれども、法律上は六カ月以下の懲役、十万円以下の罰金、あるいは拘留でございますとか科料の罰則というものをそれぞれの規則で置くことができるというふうに定められているわけでございます。これらの罰金の金額等につきましては、昭和五十八年に十倍に引き上げられて現在の水準に相なっているわけでございます。
  156. 片上公人

    ○片上公人君 以上です。ありがとうございました。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 本来であれば当面の政治的焦点であります牛肉オレンジ自由化問題で冒頭に質問すべきところでありますけれども、衆議院の方の委員会で農水大臣答弁要求をされておるようですから、ちょっとここで大臣には暫時退席をいただきまして、政府委員で答えていただける問題から順序を変更してお尋ねをしたいと思います。  昨年の十月十六日、当決算委員会での私の質問、またことし三月九日の衆議院予算委員会分科会での寺前議員からの質問で、京都市北部地域の開発をめぐって河川の汚染、アユなどの名産地に重大な被害が起こるおそれのある問題を取り上げてきました。こうした中で、大見総合公園計画の開発に関連して三月の二十五日、滋賀県知事が県内の各自治体の意見も取りまとめつつ、京都市の行ったアセスメントに対して、直ちに賛成しがたい、なお再検討すべき重大な問題が含まれておるという意見書を提出したわけであります。  そこでまず、確認をしておきたいと思いますが、保安林を含む森林の開発行為をしようとする場合にはどのような手続が必要なのか。当然隣接自治体また地権者の同意が必要だというふうに考えるんですが、林野庁どうでしょうか。
  158. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 森林におきまして開発行為を行う場合におきましては、森林法の規定に基づきまして所要の手続をとることが必要でございます。  具体的に申し上げますと、保安林で開発行為を行う場合はその保安林の解除手続をとることが必要でありまして、一定の解除要件を満たしている場合に限って解除することができるものであります。その中に地権者の同意といったようなことも当然含まれてくるわけでございます。また、保安林以外の地域で一ヘクタールを超える開発行為を行う場合におきましては、行為者が国または地方公共団体等であるものを除きまして都道府県知事の許可を受けなければならないことになっております。なお、この場合の国、地方公共団体等が行う開発行為につきましても適正な土地利用が図られるようあらかじめ都道府県知事と十分な連絡、調整を行うことになっているところでございます。
  159. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、京都市の大見総合公園計画について、今も触れましたように滋賀県知事からは安曇川の魚への、具体的にはアユ、アマゴなどでありますが、そういう影響のおそれがあるという意見書になっているわけでありますけれども、こうした意見書を踏まえて水産庁として、魚族といいますか、その保護、育成のために関係市町村を適切に指導してもらいたいと思いますが、水産庁どうでしょうか。
  160. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) ただいまお話ありましたように、先般京都市の方からただいまの開発計画に絡んで安曇川の水質はおおむね現状どおりの水質が維持されまして、生物層への影響はないということを聞いていたわけでございますけれども、ただいま御指摘ありましたように、三月の末に滋賀県知事から今度水質あるいは水生生物等の調査が不十分であるということで、公園計画変更を求めるなり、あるいは変更した計画に基づいて影響評価の実施を求めたということを聞いております。我々といたしましてもその滋賀県知事の提出いたしました意見について現在いろいろと中身を精査しているところでございますけれども、いずれにいたしましても、本件は滋賀県と京都市との間のことでもございますので、当面はそれぞれの意見を十分当方として精査し、その推移を見守りながら、ただいまお話がありましたように、何といいましても魚類資源を守るということが我我水産庁としての立場でございますので、そういう基本的な立場に立ちまして、今後双方に対しまして適切な指導なり調整を行ってまいりたいと思っております。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、川上でそういう大規模な開発を行う場合に、沈砂池、大雨などが降ってざあっと砂や泥が流れ出す川下に、その途中で池などをつくればその汚染を食いとめることができるという説があるわけです。しかし、一定程度はもちろん食いとめられると思うわけですけれども、極めて微粒子的な砂や土というものを完全に食いとめるということはできない。  ところで、清流を好むアユとかアマゴとか、こういった魚の卵や稚魚などはどうしても一定の影響を受けざるを得ぬのじゃないか。だから、沈砂池をつくったからといって魚にとってそれで万全だ、もう完全に大丈夫だというふうには言い切れない、慎重な検討が要るんじゃないかというふうに思いますが、その点についての見解はどうでしょうか。
  162. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 本件河川につきまして、どのような沈砂池を設けるかということによりましていろいろ魚に対する影響は違ってくるわけでございますけれども、ごく一般論で申し上げますと、そういう微粒子で魚に影響というものは全くないわけではございませんので、いずれにいたしましても、濁りによります魚類への影響というものが生じないようにこれからも適切な調整なり指導というものを心がけてまいりたいと思っております。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ごく要点だけをきょうはお尋ねをしたわけでありますけれども、いずれにしても、安曇川流域の六町がこぞって町議会としての反対決議も上げております。私は京都ですが、京都市の側が非常に強引な開発をやるということで、お隣の県にまでも迷惑をかけておるということは非常に申しわけないと思うわけであります。一度水産庁あるいは林野庁、現地調査に来てもらいたいという要望を私も地元の人から聞いているわけでありますけれども、一遍そのことを両庁で検討をしていただけませんか。
  164. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 御指摘の現地調査につきましては、今後の開発計画の動向等を見守りながら必要に応じ判断をしていくべきものと考えております。
  165. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 林野庁と同じ姿勢で臨んでまいりたいと思っております。
  166. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ぜひ前向きの方向で御検討いただきたいと思います。  それでは次のテーマは、まだ大臣は戻られませんから、減反政策にかかわる問題について最初政府委員の方を中心にお尋ねをします。  新しい減反政策、すなわち水田農業確立対策と称されるものでありますが、これは減反面積をこれまでの六十万ヘクタールから七十万ヘクタールへ、全水田面積の二七%へと大幅に拡大をする一方、転作関連補助金を十アール当たり平均で三六%も大幅に削減をするということで、たんぼを減らせ減らせ、しかし転作しても、補助金もこれも減るというやり方で、さらにそれに加えて、これまで政府責任で行ってきた過剰米の調整保管を農協に押しつけるということなどが打ち出されているわけであります。そして、昨年の暮れに米需給均衡化緊急対策というものを打ち出しましたが、この緊急対策はどういう内容か、ごく要点を御説明ください。
  167. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 最近の米需給の動向でござ いますが、豊作が続きまして在庫の積み増しがありましたり、また、消費の予想以上の落ち込みというものがございまして、今後三たびの過剰処理の懸念が現実に生ずる事態となったわけでございます。このために、六十三年度におきましては引き続き七十七万ヘクタールの目標面積のもとで水田農業確立対策を継続実施しますほかに、今お話がございましたように、米需給均衡化緊急対策を消費、流通、生産の各般にわたって講じていこうということで、生産者団体等とも十分協議の上着手することにしたわけでございます。  その内容につきましては、まず他用途利用米の生産あるいは地域の創意工夫を生かした消費拡大策、さらには需要開発米の生産、こういった分野に最大限の努力を傾注していただく、それとあわせてこれらの取り組みによってなお不足する分については転作で対応する、こういった内容で取り組もうとしているところでございます。
  168. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その緊急対策の中で最大限の努力を傾注をすると位置づけられているのは、生産団体の消費拡大策、米の消費純増策であります。これの内容がどういうことになっているのか、そして取り組みの現状はどうか、これも簡単に御説明ください。
  169. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいまお話しのございました消費拡大策でございますが、ちょっと数字にわたって申し上げますと、六十三年度におきます米需給均衡化緊急対策におきまして三十万トンの調整をしようということでございまして、そのうち多用途利用米の需要拡大あるいは在庫造成といったことで十二万トン、それから販売業者の在庫の積み上げ三万トン、あるいは米飯学校給食の推進で一万トンというものを消化いたしまして、残りの十四万トン分について消費純増策、需要開発米、それから不足する分については転作、こういう枠組みにしておるわけでございます。そのうち消費純増策につきましては生産者団体が主体的に取り組んでいただきまして、これまでに取りまとめられておりますのは、農協等による備蓄一万二千トン余り、生産者団体等による学校給食千五百トン、あるいは純米酒等についての原料用米の供給及び製品の引き取り、さらに米菓についての原料用米の供給、製品の引き取り、米加工食品等についての原料用米の供給、製品の引き取り、その他、ほかにも各地域実情を踏まえまして努力の限りを尽くして、この際三万トン弱の成果を大体取りまとめてきたところでございます。なお、需要開発米の生産につきましては、現在のところ四千四百トン程度、こんな実績になっておるところでございます。
  170. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、三月の初めですが、京都府議会において農林部長が説明をしているんでありますが、今の緊急対策に基づいて千二百九十トンを消費拡大に充てる、しかし実際に具体的な計画として出ているのは四百七十トンだ、したがって残りの約八百二十トンが、面積で言えば百七十八ヘクタールについては、結局はこれは転作というところで帳じりを回していかなくてはならないということで、緊急対策によって消費拡大を図ろうというその六、七割が結局は転作の上乗せに回るということになっておるわけで、これは結果として一層の減反を強制するということにならざるを得ないということがこの府議会における説明。よその県も似たようなことだと思います。そこで、これがもし未達成だという場合には何かペナルティーをかけるんですか。
  171. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいま先生おっしゃいました京都府の数字でございますが、これは先ほど私が申し上げました全国の枠組みで申しますと、十四万トンにつきまして消費拡大等に努力を尽くし、不足するところは転作に回す、こういう中で京都府の分の数字としておっしゃったものかと思います。  実際に、消費拡大で足らざるところは転作がその分増加して対応するということになっておるわけでございます。これは、強制というお言葉もございましたけれども、生産者団体等におきましても需給均衡化というものが現下の米問題の最重要課題ということで取り組んでおりまして、全体として三十万トンの調整といったものに真剣に取り組まれておるところでございます。  そこで、その分野で目標が達成されなかった場合にはどういうことになるか、ペナルティーはどうかというお尋ねでございますけれども、これも現在七十七万ヘクタールの転作との性格の相違等も踏まえまして、ただまた三十万トンの達成もこれもぜひなし遂げなければならない課題だということも踏まえまして、どのような取り扱いにするか、現在検討中でございます。
  172. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣お戻りをいただきましたけれども、実は政府委員にいろいろ数字的にお聞きをしておったのは、ことしからの新たな減反政策、いわゆる水田農業確立対策と言われるものの内容でありますけれども、要するに、減反面積をこれまでの六十万ヘクタールから七十七万ヘクタールへ持っていくということで、ますます減反をふやす、しかしながら転作をするかといって、転作奨励金も減らされる。ここに加えて、それでもなお米が余りそうだからということで、去年の暮れに米需給均衡化緊急対策というものが打ち出された。そしていろいろ、やれ給食だとか、お握りをつくろうだとか、せんべいをつくろうだとかということだけれども、それが予想どおり進まなかったときには、結局それはさらに転作分の上乗せとして帳じりを持っていくということになって、本当にこれは農民にとっては踏んだりけったりという姿になっていると私は思うんです。こういう本当に悪循環に悪循環を重ねていくこのやり方については、いよいよもって抜本的な再検討をすべき時期に来ているんじゃないかというふうに思うんですが、大臣どうでしょうか。
  173. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 生産調整の問題でございますが、もうこれ以上はということで七十七万ヘクタールを設定した経緯もございます。また、今おっしゃるように、さらに緊急避難的に特別対策としてやっておることについて今ほどお話がございました。  何分にも、私自身しょっちゅう言っていることでございますけれども、米は我が国の歴史的な経緯にある大事な大事な主食でございますから、そういう意味において考えていかなければなりませんけれども、需給バランスというものはやはり考えていかなければならぬ。そういうところにあって一番私の念頭にありますのは消費拡大でございます。そういうことで鋭意努力をいたしておるところでございまして、この成り行きを見ながら、生産者団体においてもそれなりの汗は流してもらう、流通段階においてもまた汗を流してもらう、いろいろみんなで汗を流しながらこの米の問題を、需給均衡への道を歩んでいかなければならぬと真剣な努力を重ねておるところでございます。
  174. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろ努力をしているんだということではありますけれども、しかし私の強調しております、いよいよもって減反政策の悪循環、再検討をすべき時期ではないかというこの点については確たるお答えがないんですけれども、重ねて私の意見としてそれは強調しておきたいと思います。いわんや、そういうことでありますから、言われておりますように、アメリカから米の輸入が持ち込まれるというようなことには、日本側としてこれはもう断じて応ぜられる問題ではないということは言うまでもないことだと思うんであります。  そこで、当面の政治的焦点になっています牛肉オレンジ輸入自由化問題でありますけれども、自民党の安倍幹事長が四月九日、名古屋で講演して、将来は自由化方向で考えなければならないと述べたとか、翌日の十日には大宮市で、日本さえよければよいという状況は終わったとかの報道があります。大臣、安倍派に属されるとお聞きをしているんですけれども、まさかこの安倍幹事長と同じ考えではないでしょうね。
  175. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 非常に答えにくいことを言われまして今びっくりしているわけでございますけれども、まあ世に言う清和会に属しております。  それはそれといたしまして、私自身この自由化問題につきましては各種委員会において答弁をいたしておりますように、真剣に受けとめ、そして日米間におきましては円満な解決を目指して鋭意努力をしておるということでございまして、安倍幹事長が何か言ったという話でございますが、私率直に申し上げまして、それはどこでどのような発言をされても私の立場から、ただいま私は農林水産省責任者でございまして、関知しないと言ったらまた怒られるのかもしれませんけれども、関知いたしません。
  176. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、午前中も同僚委員からの新聞報道をめぐる質疑に対して大臣は、一部の報道は誤報であり遺憾だ、官房として抗議訂正を申し入れているというふうにおっしゃいました。しかし、どうも見るところその後も似たような報道が相続いている。けさの報道ですと、竹下総理が四月十七日、昨日の夜、静岡でやったんですが、自民党婦人部研修会で、自由化問題では一月の訪米時、日米で痛みを分かち合うと確認をしてきたという話をしたという報道があるんですね。あるいは四月十六日、政府筋は牛肉オレンジ自由化に備え、牛肉の輸入課徴金制度の導入とミカン農家に対する低利融資制度強化を軸とする国内対策を講ずることとなったという報道がありますが、これらは事実ですか。
  177. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 報道関係のいわゆる新聞あるいはテレビ等を通じて言われておることに私がまた一々言及をすると、今大事な時期でございますので、一生懸命に今詰めておる最中でございます。そういう意味において、私どもが考えておることに実効が上がるように私どもは考えておりますので差し控えさせていただきたいという答弁は、先ほど来申し上げているとおりでございます。  また、総理が昨日発言をされたというそのことにつきましては、私自身もテレビを見ましたけれども農林水産大臣にということを言っておられますので、政府といたしましては私が窓口になって責任を負う立場にある。私は自由化は困難であるということを主張しつつも、相手の真意、相手の対応の仕方、那辺にあるか、今実務者を通じて交渉をさせておる最中でございますし、あしたからまたスミスという大使と、USTRの次席代表、これともまた眞木経済局長が話し合うことといたしておりますので、そういう推移を見ながら私自身がどう判断をするか、どう決着を相手とつけるか、その中身については、時期としては微妙な時期でございますので、ひとつこれ以上のことは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  178. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 微妙だということを何回か言われると、非常にこちらも受け取り方が微妙になるわけでありまして、いずれにしても今回の牛肉オレンジ自由化アメリカ側のごり押しは、アメリカの非常に身勝手な対日要求がますますエスカレートしてきておるというふうに見ざるを得ないわけです。  そうした点でぜひ、言うなら総理からも任されておる、国民からも任されておるというそういうことであれば、本当に日本の農業を守り、日本の食糧の自給率を高めるということは独立した主権国家としての当然の立場だというこの立場、見地に立って対米交渉にひとつ臨んでもらいたいというふうに思いますが、どうでしょうか。
  179. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 私自身非力ではございますけれども、日本の食糧政策に過ちがあってはならない、まさに日本国として過ちがあってはならない。国民に供給すべきその責任は政治の責任でもあり、行政としては我が農林水産省責任であると心得ておるのでございまして、禍根を残すようなことがあってはならない。自給率のことも当然考えていかなければなりませんし、自給力もつけていかなければなりませんし、そしてまた全部が賄えるわけじゃございませんから、足らざるところ、安定的な輸入体制、これを維持しつつ国民に安定供給体制を図っていく、責任を持っていく、この考え方に徹して交渉を続けてまいりたいと思っておるところでございます。
  180. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは最後に、輸入食品の安全性の問題で少し質問をいたしますが、農協の全中が企画をした輸入農産物の危険性を訴えたビデオ、「それでもあなたは、食べますか」という最近話題を呼んでおるビデオでありますけれどもアメリカのリン農務長官が激怒をして、焼き捨ててしまえというふうに発言をしたと伝えられるわけでありますけれども大臣、このビデオをごらんになったのか、そしてその感想はどうでしょうか。
  181. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 済みませんが、まだ見ておりません。見ておりませんが、あのビデオはこうだああだという話は聞いておりますので、見たと同じになるかわかりませんけれども、見たか見ないかと言われれば、正直に答えますが、見ていないんでございます。
  182. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私、全中に持ってきていただいて実際に見ました。そんなにアメリカが激怒をして焼き捨ててしまえというようなそんな内容じゃない。反米感情をいたずらにあふり立てておるというそういう問題じゃない。事実としてアメリカから有害物質を含むそういう食品が輸入をされておるという事実を描いているわけであって、何か一説では、字幕の英字スーパーに非常に刺激的なことをつけ加えて、これはだれがやったのかわからぬです。日本の農協がやったわけじゃ絶対ありませんと言っています。だれかがそういうことを小細工して、わざわざリン長官にそれを見せてリン長官を怒らせたという、何かこういう裏幕があるらしいんですね。そして、今の日本いじめにそれを運用するということでたきつけているんだろうと思います。ということも念頭に置いて、ぞひ一遍よく大臣もごらんをいただきたいと思うんです。  そこで厚生省、お尋ねしますが、アメリカ産の豚肉に食品衛生法で残留が認められていない抗菌性物質が検出をされたということは事実ですね。
  183. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 事実でございます。
  184. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 消費者の不安にどうこたえるのかというのが今日政治問題にもなってきておるかと思うんでありますが、スルファジミジン、これは発がん性物質の疑いのある物質ですね、厚生省。
  185. 古川武温

    政府委員(古川武温君) そういうことでアメリカにおいても現在チェックをしているところであるというふうに聞いております。
  186. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 アメリカだけじゃない。最近食品衛生法で残留が認められない物質が検出された件がほかにもあると思います。台湾産の豚肉、タイ国のタイ産ブロイラー、これについて厚生省から御説明ください。
  187. 古川武温

    政府委員(古川武温君) アメリカの豚肉にスルファジミジンが残留しているということの情報を得て、アメリカの全ロットについて検疫所に指示をいたしまして豚肉の検査をさせたわけでございますが、同時にそのほかの豚肉についても検査を指示したところでございます。一つ委員指摘の台湾産の豚肉、これからも抗菌剤が見つかりました。またタイ産、タイの方はブロイラー、鶏の肉でございますが、ディルドリンが検出されたということで、これも全ロット検査を指示しました。
  188. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まさに消費者の不安にどうこたえるか、そういった点でいわゆるこの検査体制、検査の人員をも含めましてどういうふうになっているんでしょうか。
  189. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 輸入食品の検査につきましては、海際、空際ということで検疫所においてこれをチェックすることにしております。検疫所、二十の検疫所でございますが、ここに食品衛生監視員を配置しております。輸入食品についてはすべて届け出制をとっておりますが、この食品衛生監視員が専門的な立場からその届け出書を検査し、審査し、そして必要なものについては物の検査を行っております。そして違反のものがあればこれを本国に送り返す、あるいはその場焼却その他の処分をしているところであります。
  190. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ことしの二月に、同じく農協の全 中が、収穫後に使用される農薬「ポストハーベストに関する研究」という、かなり分厚い、七十、八十ページ近い報告書を発表しているわけでありますけれども、これによると、アメリカの残留許容量は日本に比べて大幅に甘い、またアメリカからの輸入農産物に農薬が残留されていれば、我が国の食品衛生法違反の疑いがあるということを指摘しているわけでありますけれども農水省はこの報告書についてはどういう御見解ですか。
  191. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいまの御質問でございますが、私ども食品を担当いたしております観点から、食品の安全問題につきましては関心を持っておるわけでございますが、具体的に残留の基準でございますとか検査につきましては、食品衛生法の枠内で厚生省に御担当いただいておるわけでございますので、この御指摘につきましても、そのようなお立場でお考えをいただくのが適当であろうというふうに考えておるわけでございます。
  192. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 厚生省にお聞きをしてもいいんですが、ちょっともう時間が迫ってきていますので。とにかくこういうものが出ているということでよく注意を向けていただきたい、農水省としても厚生省としても。  ということで、ちなみにお尋ねをしますが、さっきの御答弁の中であったと思いますが、現在の検疫体制、検疫官は現在七十五人ですね、答えていただきましょうか。
  193. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 七十五名でございます。先日予算を通していただきましたので、本年度につきましては七十八名を予定しております。
  194. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこでちなみに聞きますが、輸入植物の病害虫の検疫官、これは何人ですか。ざっとの数字でいいです。
  195. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) 六百三十三名でございます。
  196. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、どうなんでしょうか、この病害虫の検疫で約六百三十三人、それから人の命と健康にかかわる有害物質の検疫官がわずか今度ふえて七十八人ということで、もうけた違いに人数が違うんですね。もちろん植物の病害虫、これはこれで注意を向けなくちゃいけませんけれども、一番日本国民の胃袋に入ってくる、ここの危険の問題に対する体制というのが極めて弱いということを示す一つ数字ではないかと私は思うんです。  ところで一方、どういうことが起こっているかということで、大抵よく新聞に出ますけれども、これは三月十九日付の朝日新聞、そこにこういう大きな広告で、要するにアメリカを初めとする外国農産物のバーゲンフェアですね。しかも、このバーゲンフェアが「アメリカンカーニバル」という名前がついていますけれども、通産省とアメリカ農務省とが共同して後援をしているということで、片一方で輸入の自由化自由化ということで圧力をかけている。そして、おまけにそれにはもう毒までついているおそれありという、こういうものを日本の通産省がほいほいと一緒になって後援をいたしておる。一年間でこういうカーニバルは五百件ぐらいある、そのうちアメリカが七、八割を占めるというふうにきのう通産省から聞きました。  そこで、最後に大臣にお尋ねをしておきたいと思うんでありますけれども一つは、さっき前段で言っておりました、アメリカの度を超した農産物、当面牛肉オレンジなどの自由化要求、こういうものに対して日本として卑屈な態度をとってはならない、本当に日本国民の食糧を守るという主権国家としての立場を堅持して堂々と渡り合っていただきたいという、この問題とあわせて、現在でも入ってきておるこの輸入食料品について、その検疫体制、さっき言いました、胃袋へ入るものに比べて植物についておる虫を調べる方が人数が多い、胃袋の方は非常にわずかな人数でやっているという状況ですから、およそ全数調査がやれるような状況でないわけです。ごくもうサンプル調査にとどまっているということで、紛れ込んで胃袋へ入ってくるということは大いにあり得るということでありますので、本当に大臣として、それは役所の仕事としてはいろいろあろうかと思いますけれども国務大臣の一人として、安全な食糧を安定的に供給するという立場で、この食料品の安全対策のために特別の努力をしていただきたいということを大臣に特に要望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  197. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 食糧の安全性という問題につきましては、極めて重要な問題だと心得ております。  今御意見を拝聴しておりまして、植防の人数とそれから食監との数の問題、余りにもかけ離れているということでございましたが、それが実態からいって、ただ数だけでどう比較していいのか、私もちょっとよくわかりませんが、いずれにしても安全性の問題は厚生省からぴしっとやってもらわなければなりません。同時に、国民に食糧を供給するという責任は我が方でございますから、そういう意味と両々相まって、農林水産省、厚生省十分連絡をとりながら、ひとつ安全な食糧の供給ということについて努力をしていかなければならぬ、こう心得ております。
  198. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 終わります。
  199. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 農水大臣は就任以来、自由化の問題で日夜御苦労されていると思います。御同情申し上げます。  前回、渡米される直前に、私は予算委員会の一般質問のときにも質問したんですけれども、ちょうど交渉中でありましたので、詳しいことは質問いたしませんでした。しかし、そのときに私感じたんですけれども、どうも農水大臣はせっかく交渉に行かれるんだけれども、何か手足を縛られておいて無理に泳げと言われているようなものじゃないかと思って、大変その立場に御同情申し上げた次第です。恐らく今月末また行かれると思いますけれども、今度はもういよいよ五月四日のタイムリミット直前でございますので、ぜひとも解決されるように希望する次第でございます。  牛肉オレンジの問題につきましては、ほかの同僚議員からもいろいろ取り上げられました。また、ただいま同僚議員の佐藤委員から、アメリカ自由化要求に屈服するなという趣旨の御質問がございました。また、新聞報道によりますと、自民党の内部においても強硬論が非常に強い。自由化の要求に譲歩すべきじゃないんだという声が強いそうであります。私は共産党と自民党というのは正反対の立場かと思っておりましたけれども、事ナショナリズムに関しては両方一致する点があるんだと思って改めて見直した次第でございます。しかし、私は少し意見が違っております。その立場から質問質問というよりも意見を述べます。大臣、今の段階ではお答えにくい問題、したがってあえて答弁を求めませんけれども、こういう意見もあるんだということをお伝えしたいと思いますので、私の意見を申し上げたいと思います。  前の農産物十二品目、十品目が焦点になったわけですけれども、あの交渉を見ておりましても、もっと早くあのガットの規約に従った解決をしておればもっと日本に有利な立場解決ができたんじゃないか。それを少し延ばし少し延ばし、国内の意見がまとまらなかったこともあるんですけれども、延ばし延ばししたためにかえって不利な条件を押しつけられることになった。そういう印象を私は持っているんですけれども、その経過から我々は学ぶ必要があるんじゃないか。つまり、日本が国際社会で生きていく限りは、やはりガットの精神に従わざるを得ない。  また、そうであるならば、むしろ日本が積極的にガットを擁護する立場に立って、必ずしも農産物については、ECであるとかアメリカなんか合法的でありますけれども、ウエーバー条項なんかで実質的にはその精神に反している国もあるわけで、むしろそういう国に対して門戸開放を進めていく、そういう積極的な立場をとるべきではないか。そのためにはやはり政府が指導力をもって、国内にいろんな意見があると思いますけれども、リーダーシップをとって決断をしていく。引き延 ばせば引き延ばすほど私は事態はもっともっと悪くなっていくというふうに思います。もちろん、それによって被害を受ける、損害を受ける国内の農家に対しては十分の補償措置を、国内措置をとる必要がございますけれども、しかし、原則としては私はやはり自由化を目標を立てて、そしてそれに向かって一歩一歩進んでいくというふうに努力すべきであると考えております。これは私の意見ですから、御答弁は必要ございませんけれども、こういう意見が国会にもあるということを私は言っておきたいと思います。  それで、牛肉の価格の問題ですけれども、これはアメリカからの要求があろうとなかろうと、そういう問題と離れて、国内の消費者の立場から牛肉の価格が高いと考えている人は私は相当多いと思います。その立場から、消費者の中にも牛肉の価格を下げるという立場から、自由化に賛成している人もいるんじゃないかと思う。外国のために自由化するのではなしに、国内消費者の立場から、もっとこれの価格を下げる方策を講じていく必要があると思います。  それで、日本の牛肉は国際価格との比較において、こういう問題は直ちに国際比較をするということも、為替の変動なんかもありますので簡単にはできないと思いますけれども、やはりアメリカ、豪州なんかに比べて四倍ぐらい高いと言われております。  総務庁の統計をいただきました。総務庁が実施しました牛肉の小売価格の資料をいただいたんですが、輸入牛肉昭和五十七、八年ごろに比べますと確かに三、四割、三割以上下がっております。これはしかし、為替がその間に変動しているわけで、実際的には日本国内に輸入する牛肉価格はそれほど下がってないと思いますが、全体の小売価格はほとんど横ばい。昭和五十七、八年、これが昭和五十八年が三百五十一円ですか。昭和五十七年が三百四十六円、百グラム当たりです。そして、六十三年の一月が三百五十四円、二月が三百五十三円ですからほとんど横ばいです。そういったふうに、牛肉の値段が高い原因はどこにあると農水省としては認識しておられるのか。そのことをまずお伺いしたいと思います。
  200. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま先生から御指摘ございましたように、牛肉の内外価格差があるという問題はかねてから言われておるわけでございます。ただ、ただいま先生御指摘のございました総務庁の小売物価統計調査によります国産牛肉と輸入牛肉の品質がどういう関係にあるかということになりますと、やや品質的に違うものではなかろうかという認識を私ども持っております。  傾向的に見ますと、小売価格の絶対値といたしましては、国産牛肉については御指摘のとおり、五十七、八年ごろから今日までほぼ横ばいの状態でございます。それに比べまして、輸入牛肉につきましては、六十一年の四月から本年の三月にかけまして、一連の円高差益還元対策等もございまして、大体二二、三%下がっておるという状況でございます。この中で国産牛肉が三百五十円強で推移をしておりますが、実はこの国産の牛肉につきましては、御承知のとおり日本人の嗜好に合った特別の品質と申しますか、若干輸入物とは違った、やや脂肪分の多い牛肉という性質を持っております。ただ、それにいたしましても、国内価格が品質差を持ちながら相対的に外国に比べて高いという実情にありますことは私どもも認識をしております。これは国土、資源がやはり制約をされておりますとか、あるいは牛肉の本格的な生産に取り組まれてからの歴史がまだ浅いという問題、さらにまた、牛肉の生産に当たる肉用牛生産農家の実態というものが、経営規模が非常に制約をされておって、生産性の向上がなかなかはかばかしくないという要因もあろうかと考えております。  私どもは、やはりこの内外価格差、冒頭に申し上げましたように、品質的な差という問題はございますけれども、できるだけ消費者の皆さん方に御理解をいただくような価格で国産の牛肉を供給していくことが必要であるという認識を持っておりまして、まだ不十分ではございますけれども、各般の生産コストの低減対策を進めております。  また、それを反映いたしまして、国産牛肉の生産振興のためにとっております価格安定制度の運用におきましても、安定水準というものを漸次引き下げてきておりまして、この引き下げた水準で現実の国内価格が形成されるように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  201. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先ほど同僚議員の片上さんの方から畜産振興事業団の問題について御質問がありました。私は、主として流通面からの質問をしたいと思うんですけれども、流通面において価格を引き下げる話ですね。農水省では、例えば指定小売店をつくるとか協力店をつくるとかして、あるいは「肉の日」、「肉のデー」ですか、そういうものをつくって放出しておられる、そのことは知っておりますけれども、どうも私の周囲の、娘たちなんかに話を聞いてみますと、その日は極めてまれ、めったにないし、しかもその時間帯が大体午後二時ぐらいから四時ぐらい、夕飯の支度をする前の時間だろうと思います。そういうときに放出されて、うまくその場に居合わせれば買えるけれども、あるいは前から行ってそこに並んでいれば買えるけれども、たちまちにして売り切れてしまう、勤めを持っている主婦なんというのはちょっと実際には手に入らないということを聞くんですけれども、そういった量の問題がやっぱり足りないんじゃないか。  どうしても足りない、それ以上ふやせないというのでありますならば、特定の県、一月は東京でやるとか二月は次の県でやるとか、そういうところに集中して大量に一遍に放出する必要があるんじゃないかと思うんですけれども、干天に慈雨みたいに少しずつやったのでは慢性的に不足感が続くのじゃないかと思う。そういった放出の時期なんかを再検討されるおつもりはないですか。
  202. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま御指摘いただきましたように、牛肉の国内需要は着実に増加をしております。それに対しまして国内の生産は、過去におきますいろいろな資源的な変動がございまして、率直に申しまして、増加する需要に対して国内生産がやや追いつかないという状況にございまして、これはカバーするために計画的な牛肉の輸入を行っておるわけでございます。  この総体量につきましては、御承知のとおり、一九八四年に主要輸出国との間で協定を結びまして、計画的な輸入を進めてきておったわけでございます。実は直近四年間、毎年九千トンの増加をするという計画であったわけでございますが、大変需要が堅調に伸びておるということも背景にいたしまして、協定期間の最終年度でございます昨年度につきましては、協定で約束をしました年間九千トンの増加量に加えて三万七千トンという大量の輸入増加を図ったわけでございます。このことを通じまして、先ほど御指摘のございました輸入品である牛肉につきまして、かなり顕著な価格の低下が見られておるわけでございます。地域的にも先生から御指摘ございますようにやや凹凸があろうかと思いますが、私どもとしてはそういった需給事情をにらんだ適切な輸入枠の設定を通じまして、できるだけ品物の潤沢な出回りを図っていきたいということでございまして、今後とも需給動向に応じた輸入の拡充を通じてできるだけ各地域におきまして適正な価格形成が行われるように、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  203. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 輸入肉が流通の過程で国産の肉とまぜ合わせられたり化けたりするということがよく言われるんですけれども事業団の方では主婦連なんかに頼んでモニターをやっておられるそうですが、そういったモニターだけじゃなしに、やはり農水省としてもそれは時々検査する必要があるんじゃないかと思いますけれども、それはやっておられますか。
  204. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のとおり流通過程で国産牛肉と輸入牛肉がどういう状況になるかというのは、第一次的にはやはり小売業者等の流通業者のモラルの問題であるというふうに考えるわけでございます。また、そういった先生御指摘 のような事態を防ぐために、小売業者の団体であります食肉事業協同組合等を通じまして地域ごとに公正取引規約をつくっていただいて、これを相互監視のもとで適正に実行をしていくということで指導をしております。  また、これをチェックするために、御指摘のように消費者の団体の皆さん方にお願いをしてモニターをしていくということでチェックをしております。さらに加えて農林水産省としても直接チェックというお話でございますけれども、大変大量、全国各地域にわたる流通でございますので、なかなか農林水産省の手だけではチェックをしかねるということもございます。私どもも人員等に制約がございます。関係の市町村あるいは都道府県の方々についても時によりましてはいろいろ御協力をお願いしております。なかなか行き届かぬところもありますけれども、一定の制約のもとで私どもとしても可能な限りのチェックをするように心がけていきたいと思いますが、繰り返しまた現実の流通に当たられる業界の方々にもそういった意味での適正な取引励行についてこれまで以上の心がけをいただくように、私どもとしてもできるだけの努力をしてまいりたいと考えております。
  205. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 輸入差益を還元していく方法は、一つは流通過程で安い牛肉を提供するということですけれども、やはり根本は国内における畜産農家の生産性を高めていく、これがやはり一番大事だろうと思うんです。そのためにいろんな対策、先ほどから同僚議員の質問もありましたので、繰り返しになりますからそこのところは繰り返しませんけれども、さっき丸谷議員から北海道の牛舎に火災報知機であるとか、あるいは換気扇なんかをつけなければならないという話を聞いて、あんな寒いところでこれ以上換気扇なんかをつけられたら牛はもうもう我慢できないと言っているんじゃないかと思うんです。そういうばかげたことが行われているという話です。私はそういった現場のことは知りませんので、書かれたもの、活字によってしか知識を持つことができないんですけれども、日本の雑誌のエコノミストの三月十五日号を見ておりましたら、「このままでは肥育農家は全滅する」という題で三人の座談会が載っておりました、多分お読みになっただろうと思います。その中で、一人の人は全然補助金をもらわない、そして非常に事業を拡大して繁栄している、一方の人は補助金をもらっているんですけれども、借金の返済に追われて四苦八苦している。これは極端な例をピックアップしてきたんで、これが私は必ずしも一般的なものだとは思いませんけれども、その中にこういうことがあるんです。  公団事業で増設にまで補助金を受けているために、畑に牛舎を建ててはだめだとかいろんな制約がある。つまり、畑は傾斜があるんで牛舎を建てようと思えばそれを平にしなければいけません。そうすると、入植する時点の造成の補助の条件が変わってくるのでそれは認めない。したがって、隠れ隠れ移動式のカウハッチとかという移動できるもので、それだと畑で持ち運びができるから建物じゃないということで、合法か非合法か知りませんけれども、そういうことでやっている。こういう事例は極端な例かもしれませんけれども、しかしさっきの丸谷さんの話を聞いてみると、そういうことはいかにもあり得ることだなと考えるんです。その補助金なんかの場合、あるいは融資なんかの場合のその条件が余りにしゃくし定規じゃないかということを感ずるんですけれども農水省としてはそういう印象はお持ちになりませんですか。
  206. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 私ども肉用牛生産に限らず各般の分野について補助あるいは融資措置をとっておるわけでございます。これらの融資、補助措置につきまして、御指摘のとおりいろいろしゃくし定規に過ぎて現実の経営になかなか合わない、そのことが補助なり融資の受益者の皆さんに御迷惑をかけておるというふうな問題指摘、いろいろな機会に拝聴をいたしておりますが、特別の政策的に行われる補助金なり融資の適正な実施に支障のない限り、できる限りの弾力化をしてきているつもりでございます。特にまた、従来やっておりました農用地開発公団の畜産基地建設事業の例なんかでも、そういった運用面での硬直性ということについていろいろ問題提起がございまして、直してきておるつもりでございます。  先生が御指摘になっているケース、具体的にどういう制約要因で問題が起きているかということを私ども余りつまびらかにしておりませんけれども、やはり私ども自身も実情に応じた弾力的な運用ということを心がけていかなければいけませんし、また末端で仕事に当たる地方公共団体の皆さん方にも、実情に応じて政策目的に沿って行われる融資なり補助というものが現場の実態に応じて有効に活用されるように、今後とも私ども心がけてまいりたいと思っておるところでございます。
  207. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 いずれにしましてもこの問題というのは、アメリカからの圧力があるからとかないからとかという問題ではなしに、やはり国内の消費者の立場からもっと牛肉が安くなるように生産面及び流通面について一層の御努力をお願いしたいということを申しまして、次の米の問題に入ります。  米の問題はさしあたりの日程にはなっておりません。またガットの方でも、生産制限をしている商品ですから、輸入制限をして差し支えないということになっていると思います。そういった米というのは単なる商品としてだけ見るべきじゃなしに、やはり日本人の宗教的な行事なんかとも非常に結びついた作物でありますし、あるいは水田というのは、水の保存でありますとかあるいは自然景観の保全でありますとか、そういうことに非常に重要な役割を持っておりますので、単に経済的な合理性だけで考えるべきではないということは私もそのとおりだと思います。しかし、経済的な合理性を無視していいということには少しもならないわけであります。やはり米につきましても、その生産性をもっと高めていく、合理的な方法を講ずべきであると考えております。  現行の食管制度に関しましては、もちろんこれを喜んでそれはあくまで支持してもらいたい、維持していってもらいたいという農民も相当いるだろうと思います。しかし同時に、専業農家の中には、もっと米をつくりたい、それが今の減反政策なんかでつくれない、そういう不満を持っている人たちもあるだろうと思いますし、消費者の方の需要も非常に分かれてきておりまして、一方では値段に関係なしに良質のものを食べたいという人もあるでしょうし、他方ではそれほど品質が高くなくてもいい、もっと安い米を食べたいという人もあるだろうと思います。もともと現行の食管制度というものは米不足のときにつくられた制度でありますので、現在のような米余りのときに、運用面の手直しなんかをやっていっただけで果たして実情に即した対策がとれるかどうか、私は疑問に思っているんですが、その観点から二、三質問を申し上げたいと思います。  先般、ことしの一月十一日でございますけれども、秋田県の大潟村の食管法違反事件、やみ米千七百余トンをやみで販売したとして書類送検されていた大潟村の三人に対して、検察庁は不起訴処分に付したわけです。その理由は、利益を上げていないからとか、あるいは米の生産者の特定ができなかったからという理由であると思います。しかし、これはやはり米の有償譲渡を禁じた食管法の施行令九条違反ではないかと思うんですけれども農水省としてはこの不起訴処分をどういうふうに受け取られておりますか。
  208. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいま委員指摘のように、大潟村の不正規流通の事案につきまして検察当局が不起訴の処分をこの一月十一日でしたか、行ったわけでございます。これが一部に食管法では不正規流通が取り締まれないんじゃないかといった誤解に基づく憶測等もございまして、残念な事態だと思っております。  しかし、今回の不起訴処分は具体的な事案でございます本件に限っての判断であることはもちろんでございまして、証拠不十分という判断に示さ れておりますとおり、これは違法の疑いは十分あったわけだけれども、刑事訴訟において必要な犯罪成立を断定し得るだけの証拠が完全にはそろわなかったということが理由であると承知をしております。したがいまして、不正規流通につきましては違法の事実を立証し得るだけの証拠が確保されれば当然罰則が適用され得るということは十分可能であると考えておるわけでございます。食管法の的確な運用を図ってまいります際に、消費者ニーズに弾力的に対応し得るような流通改善を積極的に行ってまいります一方、取り締まるべきものは取り締まるという厳正な姿勢を持って今後とも対処したいと考えておるところでございます。
  209. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 同じ役所でありますから、まさか不起訴処分に不満があるといって検察審査会に申し立てすることもできないだろうと思いますので、今のような答弁をされるのはいたし方がないと思っておりますけれども、私はこれが契機になってこのような事件がもっともっとふえていくんじゃないかというふうに考えております。その点、安心しておられますか。  それから、もう一つ続けて、生産者が直接消費者に縁故米の形で送るのは、これは合法的に認められているわけですね。しかし最近、消費者と生産者とを結ぶネットワークといいますか、産直運動が広がりつつあるように思うんです。これも謝礼というふうな名目で相当の金額を受け取ればやっぱり食管法違反になるんじゃないかと思うんですけれども、その点の見解はどうですか。
  210. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 大潟村の事件を契機に不正規流通が広がる心配があるのではないかという御指摘は、実は私どももいろいろ承っております。また、実際に各地方の現場におきましてそういう動揺があってはいけない、こういうことも心配をされまして、私ども、その不起訴処分が行われた直後から、いろいろな会合等を通じまして、先ほど申し上げましたような私どもの考え方を的確に理解を深めていただくように各地方にもいろいろ指導を加えております。食糧事務所あるいは都道府県が連携をとりながら対処をしていくように、関係機関に対しまして通達を改めて発出をするというようなこともいたしております。本件の事態を深刻に受けとめまして、これを参考にしながら一層適切な対応がなされるようにという努力をしておるところでございます。  また、縁故米か、あるいは縁故米と称して実質的には有償譲渡といった食管法違反の事態が心配されないかという関連の御質問でございましたけれどもお話にございますように、縁故米自体はこれは食管法上認められておる、また常識的にも今日は定着をしておる流通かと思います。それと紛らわしい事案、これは、はっきりと有償の対価を取って流通をするというものにつきましてははっきりしておるわけでございますけれども、紛らわしい事案等につきましては、これも全体流通を秩序あるものにしていくという観点から、都道府県あるいは食糧事務所において個別にいろいろ実情をチェックいたしまして、それが法律違反にならないようにという指導を親切かつ的確に行っていくという体制をとっておるところでございます。
  211. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 こういった大潟村の事件なんかが起こってまいりますのも、根本はそういった農民の人たちが減反政策に反対しているからだろうと思うんです。米余り時代にしかも食管制度を維持していこうとするならば、やはり数量規制といいますか、水田の減反政策を進めていかなければいけないわけです。しかし他方、農業者が生産性を高める努力をすればするほど需要がそれに応じて伸びればいいですけれども、需要がそれほど伸びない限りは、今度はますます減反面積を拡大していかなきゃならない。これは一種の矛盾だと私は思うんです。  その問題はまた後で触れますけれども、減反の基準としておたくからいただいた資料によりますと、稲作の生産性であるとか、担い手のウエートであるとか、農業依存度、稲作依存度であるとか十のファクターを考慮して、どこの地区は何%の減反、どこの地区は何%の減反と、その減反の率を決めておられるという説明ですけれども、目標面積の配分の基準、この十のファクターにどういうウエートを置いてそれぞれ計算されるんですか。何か客観的な基準というものがあるんですか。
  212. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) 転作目標面積の配分につきましては、ただいま先生もお触れになりましたように、新しい対策が水田におきます稲作・転作を通じた生産性の向上、体質の強化ということを目指して進むべきである、こういった基本的な考え方の上に立ちまして、従来からも七つの要素ということで各種の地域指標等も含めました要素を反映して決めておったわけでございますが、今回の対策、昨年発足するに当たりまして今後とも農業や稲作を担う地域あるいは担い手、さらには稲作の生産性、そういった要素も加味して配分をするという方法をとっておるわけでございますし、その具体的なやり方につきましては、各関係者の御意見を伺い、また生産者団体とも協議をしつつ、配分を行っているという状況でございます。
  213. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私が言わんとするところは、十のファクターに対するウエートのつけ方は話し合いによってというふうになるんですけれども、かなり政治的な恣意が入ってくるのじゃないか、声の高いところ、圧力の強いところが有利になってくるということを心配するからであります。しかし、その点は答弁を求めませんけれども、私はやはり専業農家に有利に、兼業農家に不利になるように割り当てを決めていくべきじゃないか、それが日本の農業を強くする道じゃないかというふうに思うんですけれども、その意見に対してどうお答えになりますか。
  214. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) 目標の配分につきましては、国から各都道府県に配分する段階におきまして、先ほど申し上げましたような考え方で配分を行っているわけでございますが、それから先の末端での配分の段階を通じまして、できるだけそういった思想が反映できるような配分をしてほしいということを私どもは地方公共団体あるいは農業団体にお願いをしているという状況でございます。こういった対策の性格上全員の協力を得て進める必要があるということから、おのずと制約の加わる面もあろうかと思うわけでございますが、私どもはできるだけそういった担い手の育成ということに意を用いながら進めてまいりたいというふうに考えております。  なお、専業農家とおっしゃいましたが、中心的な担い手を育てていくということのためには、先ほども若干触れましたが、稲作・転作を通じましてそれぞれやはり土地利用型の作物については規模拡大、そのためにはまた生産組織の育成といったようなこともやりながら進めてまいる必要があるわけでございますので、この対策全体の進め方としまして、そういった地域輪作農法の確立といったような観点も含めまして、また一般の行政手段におきましても、生産組織の育成でございますとか、あるいは非常に生産性の高い農法の実証的なモデル事業を行うとか、そういった各面の努力もあわせ進めながら水田農業の体質強化につながるように努力を行っているところでございまして、今後ともお話のように農業を力強いものに育てていくということを基本に据えて取り組んでまいる必要があるというふうに考えている次第でございます。
  215. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 十のファクターにそれぞれウエートを置いて決めていかなくてはいけないと思うんですけれども、それを数量化してだれでもが納得するような基準であればみんな満足するだろうと思うんですけれども、そういったふうに数量化してみんなが納得するような基準を出すということは私は不可能だろうと思うんです。そうすると、一部のあるいは相当数の農民の間には減反政策に対する不満が依然として残るんじゃないかと思うんです。もしそれを避けようと思えば、結局価格政策に頼らざるを得ないだろうと思うんです。つまり、結局生産者米価の買い入れ価格を下げていく以外には方法がないんじゃないかと思うんですけれども、価格政策についてはどういう方針をお持 ちでしょうか。去年から若干下がったことは知っておりますけれども、どういう考え方をとっておられるのか、その点を御質問いたします。
  216. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいま先生のお話にありましたような御意見は御意見としてあろうかと思います。また、需給の現状からいたしますと、需給の実勢をより的確に反映した価格政策が必要であるということは、一昨年の農政審の「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」の中におきましても指摘をされておる事項でございます。またしかし、農政審の答申の中には、同時に、これが担い手の育成に資するものであることということがやはり今後の価格政策の基本的な考え方になろう、こういう指摘もございます。  そこで、私ども米価政策の運営に当たりましては、昨年もそういったラインにのっとりまして適切な米価決定というものに努めたつもりでございますけれども、今後とも基本的にはそういったラインで運用をしていくことがよいのではないかと考えております。  また、具体的な米価算定の方式をどうするかということもあわせて現在課題となっておりまして、米審の中に小委員会を設けていただきまして、今後の算定方式等についてもせっかく検討していただいておるところでございますので、今後はそういったものにも十分配慮しながら価格算定に当たってまいりたいと考えております。
  217. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もう三、四十秒ありますのでお許し願いたいと思います。  その問題についてはもっといろいろ言いたいこともあるんですけれども、時間がありませんのでまた別な機会に譲りたいと思います。  最後に、先ほどやっぱり佐藤委員が取り上げられた問題ですけれども、全中がつくりました「それでもあなたは、食べますか」というビデオカセットの問題です。まだ大臣はごらんになっていないそうですけれども、もし今度アメリカに行かれるのでありますならば、行く前にぜひ一度ごらんになっておいていただきたいと思います。私はむしろあれで感じましたのは、先ほども質問で明らかになったんですけれども、厚生省の食品安全上の検査官が非常に少ない。あるいは税関の検査の際、あれは果物だったと思いますけれども、輸入しようとしているものとは同種の別のものが持ち込まれ、すりかえ検査によってパスしてしまう、そういうふうなことが書かれておりましたが、私はそれの方がむしろ問題ではないか。これは農水省の仕事ではございませんけれども、大蔵省なり厚生省あたりの方はむしろもっと考えてもらわなくちゃならない問題があると思う。  しかし、それは別としまして、やはり何か外国からの食料品を買うと、ベトナムの枯れ葉剤のダイオキシンですか、が含まれたものを食べて奇形児が生まれたですね。何か外国からの輸入食料を食べると、あたかもああいう奇形児が生まれるかのような印象を与えるああいうビデオをつくることは、これは日本国内向けだけだと思っているかもしれませんけれども、今のような情報化時代、もうアメリカあたりでは、外国では日本のことは実によく知っている。我々が知っている以上によく知っているので、直ちにアメリカなり外国に行くということを考えておく必要がある。それを考えますと、私はああいうビデオを今つくるということはまことにインセンシティブといいますか、無感覚と申しますか、感覚の足りない仕事だ、あるいは国際的な感覚が非常に足りない仕事だというふうに私は考えております。  大臣はどのようにお考えか知りませんけれども、ぜひあれを一度ごらんになっていただきたい、そのことを希望しまして、私の質問を終わります。
  218. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですから、農林水産省及び農林漁業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は来る二十五日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会