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1988-04-15 第112回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十五日(金曜日)    午前十時三十五分開会     ─────────────    委員異動  一月二十五日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     藤井 恒男君  二月十九日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     下田 京子君  二月二十二日     辞任         補欠選任      下田 京子君     佐藤 昭夫君  三月十一日     辞任         補欠選任      福田 幸弘君     岩上 二郎君      峯山 昭範君     及川 順郎君      橋本  敦君     下田 京子君  三月十二日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     福田 幸弘君      及川 順郎君     峯山 昭範君  三月十四日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     田中 正巳君      佐藤 昭夫君     橋本  敦君  三月十五日     辞任         補欠選任      田中 正巳君     二木 秀夫君      福田 幸弘君     北  修二君  三月十六日     辞任         補欠選任      北  修二君     福田 幸弘君      下田 京子君     佐藤 昭夫君  三月十七日     辞任         補欠選任      寺内 弘子君     岩上 二郎君      宮崎 秀樹君     中西 一郎君      佐藤 昭夫君     近藤 忠孝君  三月十八日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     寺内 弘子君      永野 茂門君     坂元 親男君      近藤 忠孝君     佐藤 昭夫君  三月十九日     辞任         補欠選任      坂元 親男君     永野 茂門君      中西 一郎君     宮崎 秀樹君  三月二十三日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     勝木 健司君  三月二十四日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     林 健太郎君      佐藤 昭夫君     山中 郁子君      勝木 健司君     関  嘉彦君  三月二十五日     辞任         補欠選任      永野 茂門君     二木 秀夫君      峯山 昭範君     広中和歌子君      橋本  敦君     佐藤 昭夫君  三月二十六日     辞任         補欠選任      林 健太郎君     永野 茂門君      広中和歌子君     峯山 昭範君  三月三十日     辞任         補欠選任      及川 一夫君     稲村 稔夫君  四月一日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     近藤 忠孝君      関  嘉彦君     勝木 健司君  四月四日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     関  嘉彦君  四月六日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     橋本  敦君      山中 郁子君     佐藤 昭夫君  四月十四日     辞任         補欠選任      稲村 稔夫君     及川 一夫君      佐藤 昭夫君     吉井 英勝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 及川 一夫君                 田渕 勲二君                 丸谷 金保君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 橋本  敦君                 吉井 英勝君                 関  嘉彦君                 藤井 恒男君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   河原崎守彦君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        國廣 道彦君        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   宮脇 磊介君        内閣法制局長官  味村  治君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     中島 忠能君        日本学術会議事        務局長      田中 宏樹君        公正取引委員会        事務局長     厚谷 襄児君        公害等調整委員        会事務局長    稲橋 一正君        宮内庁次長    藤森 昭一君        皇室経済主管   井関 英男君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        総務庁長官官房        審議官      新野  博君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        青少年対策本部        次長       倉地 克次君        北方対策本部審        議官       鈴木  榮君        外務大臣官房審        議官       谷野作太郎君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      石川 達紘君        法務省人権擁護        局調査課長    柏樹  修君        文部大臣官房審        議官       中島 章夫君        文部省体育局学        校保健課長    込山  進君        厚生省保健医療        局企画課長    萩原  昇君        運輸省国際運輸        ・観光局観光部        企画課長     平野 忠邦君        運輸省貨物流通        局複合貨物流通        課長       吉田 孝雄君        運輸省貨物流通        局陸上貨物課長  小幡 政人君        労働省労働基準        局監督課長    松原 東樹君        建設省住宅局市        街地建築課住環        境整備室長    羽生 洋治君        自治省行政局振        興課長      谷口 恒夫君        自治省行政局公        務員部公務員第        一課長      古居 儔治君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君    参考人        日本国有鉄道清        算事業団理事   池神 重明君     ─────────────   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書(第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○国家財政の経理及び国有財産管理に関する調査  (派遣委員の報告)     ─────────────
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月二十五日、抜山映子君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君が選任されました。  また、昨十四日、佐藤昭夫君が委員辞任され、その補欠として吉井英勝君が選任されました。     ─────────────
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事峯山昭胸君を指名いたします。     ─────────────
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、内閣総理府本府及び総務庁決算について審査を行います。     ─────────────
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  8. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 田渕勲二

    田渕勲二君 私は、きょうの質問の趣旨は、臨時行政改革推進審議会規制緩和に関する事項について御質問申し上げたいと思います。  この臨時行政改革推進審議会公的規制あり方に関する小委員会が設置をされて、現在各分野規制あり方について検討がなされておるようでございますが、この新行革審における検討審議を進めるに当たっての基本的な視点と今後のスケジュールについて、まずお尋ねをしたいと思います。
  10. 新野博

    政府委員新野博君) 臨時行政改革推進審議会におきましては、昨年の十二月に総理からの要請を受けまして、経済構造調整推進するために行政改革推進観点から公的規制あり方について検討する小委員会を設置するということで、この二月から審議を開始いたしておるわけでございます。  その検討のポイントでございますけれども経済構造調整推進を図るということ、それから行政改革推進観点から公的規制あり方を見直すということでございまして、市場メカニズムの活用であるとか、内外競争条件整備であるとか、また国際化への対応、こういうものの見地から経済活動に関する規制緩和検討をするということで、現在関係省庁等ヒアリングを約十一省庁について終わりまして、その後フリーディスカッションをして、今後の検討進め方等について今議論をしておるところでございます。  大体の取りまとめの時期といたしましては、ほぼ一年間の検討をするということで、でき得れば年内答申を目指したいということで、現在フリーディスカッション中でございます。  以上でございます。
  11. 田渕勲二

    田渕勲二君 総務庁行政監察局、これが六十二年の第二・四半期の行政監察計画の中で規制行政調査実施を決めて実施をしておるようでありますけれども、その規制目的と、それから見直し観点についてまず説明をしてもらいたいということと、それからこの調査結果の取り扱いでございますけれども、各関係行政機関に対してこれを勧告するのか、あるいは新行革審審議参考にあくまでもとどめていくのか、これからのスケジュールについて御説明をいただきたいと思います。
  12. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 御指摘の、行革審公的規制見直しの御審議の御参考に供しまするために行政監察局公的規制の問題につきまして調査をする、こういう点でございますが、ただいまお話がございましたように、行革審の方から、審議参考に供するためにひとつ公的規制の問題につきまして幅広い分野について調査を行い、その結果を行革審公的規制小委員会に報告してほしい、こういう協力要請があったわけでございます。それで私ども幅広い分野につきまして、物流を含めましてただいま実態調査をいたしております。関係行政機関あるいは関係業者、あるいはその利用者等々、関係者からその運営状況を含めまして調査をいたしております。  その際、どういう観点調査をするのか、こういう御指摘でございますが、これは私どもあくまで、ただいま行革審事務局をやっております新野審議官からお答えいたしましたように、行革審がその見直し観点を示しておりますので、私どもはその観点にのっとって見直しを行う、こういうことで作業を進めておる次第でございます。  今後のスケジュールでございますが、私ども分野によりましては出先機関を使いまして実態調査もいたしておりますので、必ずしも同一時期というわけにはまいりませんが、今のところ御審議タイムスケジュールに合わせまして、恐らく五月から六月等々にかけて、逐次実態調査がまとまり次第御報告させていただきたい、このように考えております。
  13. 田渕勲二

    田渕勲二君 質問を続けますけれども、前回の行革審答申が六十年七月二十二日にありまして、この中で物流関係指摘事項のうち中期課題とされているものの中に、トラック事業区分等規制見直し、並びに複合一貫輸送にかかわる規制見直し作業、こういうものを現在指摘に従って運輸省が行っていると私は聞いておるのでありますけれども、このことは新行革審についても十分御承知のはずだと思うのです。そういう運輸省検討を行っている最中に物流関係規制緩和を取り上げておるという理由は、どうも私にはよくわからないのでありますけれども、私の考えに従えば、中期課題検討の後、そういう推移を見てからこの物流関係規制緩和の問題を改めて検討してもいいのではないか、こういうように思うのでありますけれども、その辺についていかがお考えでしょうか。
  14. 新野博

    政府委員新野博君) 先日の公的規制あり方に関する小委員会におきまして運輸省からヒアリングをいたしたわけでございますが、その際に臨調であるとか、また旧行革審答申実施状況等につきましても説明を聴取いたしたところでございます。  それで、御指摘中期的課題につきましては、運輸省検討が行われておるということは我々も承知をいたしておりまして、その検討状況につきましても一応説明を聴取いたしております。小委員会におきましては、もちろんこれから年内検討を進めていくわけですが、それらの状況も当然見守りながら、今後種々の御検討を小委員会の場でしていただけるものと、こういうふうに思っております。
  15. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは運輸省に聞きますけれども物流関係、とりわけトラック輸送中心とした数多くの指摘事項があるわけでありますけれども、これを運輸省としてはどのように対応されてきているのかということの若干の経過と、それからこの物流事業規制に関してその果たす役割なり行政の基本的なスタンスと申しますか、そういうものについて考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  16. 小幡政人

    説明員小幡政人君) 先に六十年七月の行革審答申実施状況から説明させていただきますが、六十年七月には物流関係で四十一項目にわたりまして指摘されているところでございます。このうち、積み合わせ運送許可弾力化あるいは宅配便標準約款の制定などを含めまして三十九項目につきましては、現在もう実施済みということになってございまして、残りは二つでございまして、これは先生指摘のような中期課題二つでございます。  具体的には、トラック事業区分見直し等規制見直しと、複合一貫輸送を促進する方向での規制見直しということでございますが、これらにつきましては、昨年から貨物流通局内検討会を設置いたしまして、実態把握であるとか問題点整理等検討作業を行っておるところでございます。この検討作業の結果を踏まえまして、近く運輸政策審議会におきましてこの二つ課題につきまして御審議いただけるようにということでの準備を現在進めておるところでございます。  次に、物流関係規制強化なりあるいは我々の規制緩和問題に対するスタンスの問題でございますけれども、まず我々といたしましては、物流事業は、宅配便などのように不特定多数の利用者から貨物をお預かりいたしまして、これを破損したり、紛失したりしないようにということで管理し、あるいは保管し運送するということを前提とした事業でございます。  そういう意味から、そのサービスにつきましては、安全性であるとか確実性などの基本的要請にこたえる一定の水準が維持される必要があると考えておりまして、このような見地から事業者に対しましては、一定の資格なり資質等というものを維持させていくことが必要であるというふうに考えております。  さらに加えまして、物流事業は比較的事業の参入が容易であるという特性を持ってございます。そういうことにより、状況によりましては著しい供給過剰というようなことにもなりやすく、その結果労働条件へのしわ寄せなどの弊害を生ずるおそれもあるように考えております。そういうことから、需要に見合った適切な供給力を確保することが必要であるというふうに考えておりまして、これらの要請を担保する手段として、物流にかかわる事業規制というものは十分合理性を有しているというふうに判断してございます。  一方また、物流事業は御案内のように、労働集約的であることから長時間労働というような問題を生じやすい、あるいは経営基盤の弱い中小企業が多い、さらにはまた道路などの公的な場における活動であるということで、第三者を含めた安全問題を惹起しやすいというようないろいろな特色がございます。そういうことでこれらの労働条件の改善であるとか、中小企業体質強化であるとか、事故防止という観点からの実効性ある政策手段として、この我々の物流事業規制というものは有効に機能しておるのではないかというふうに評価してございます。  一方また、物流事業というものは御案内のように、産業活動国民生活に伴って発生する非常にダイナミックな物流需要にこたえましてサービスを供給していくという事業でございます。そういうことで、産業消費構造の転換ということに伴って変化する物流ニーズに柔軟に弾力的に対応していくことが求められているわけでございます。そういう観点から、物流事業をめぐる社会経済環境の変化の中に、そういうものによく対応した形で規制について見直しを適宜行っていくということも必要であろうというふうに考えております。ただその際には、先ほど申し上げましたような物流特性というものもございますので、現在の物流にかかわる事業規制の果たしている役割なり機能というものが損なわれることのないよう十分留意していく必要があるというふうに考えている次第でございます。
  17. 田渕勲二

    田渕勲二君 総務庁にお尋ねしますけれども行政監察局公的規制あり方に関する小委員会というところで論議されている大きな課題として、この公的規制の内容には経済的規制社会的規制、こういうように区分をされて検討されておりますが、これはまさに表裏一体のものでありまして、どちらかが先行してもこれは問題になるんであります。どうも今の規制の論議のあり方を私なりに資料を取り寄せて検討してみますると、経済的活動に関するものが中心になって規制緩和問題が取り上げられておるように非常に思われるわけです。しかし、むしろこの物流トラック関係は、今も運輸省からいろいろ説明がありましたように非常に長時間労働、多くの中小零細業者を抱え、かつまた非常に事故多発産業である、そういう面での社会的規制というものがやはりもっと重点に置かれた上で経済的規制の問題を眺める必要があるんじゃないかと思うのですけれども、その辺のところについて総務庁としてはどのようにお考えでございましょうか。
  18. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 先ほど申し上げましたように、行政監察局といたしましては行革審要請を受けまして、公的規制の各分野実態につきまして行革審が示しました観点に立ちまして実態調査をしておるわけでございますが、一言申し上げますと、ただいま先生指摘のように、臨調、旧行革審におきましては、いわゆる公的規制を理念型といたしまして、三つに一応類型区分はいたしております。しかしながら、あくまでこの答申に書いてございますように、現実の実態というものは、やはり純粋にいわゆる経済的規制マーケットメカニズムの補完といったことに重点のあるものから、純粋に社会的規制重点があるもの、その間に限りなく両方目的が合わさっておる、こういう実態十分臨調行革審は認識いたしまして、しかしながら、その上に立ってわかりやすく類型化した場合にこういった三つ類型に分かれるのではないかと。そのときに、具体的な規制につきまして見直します際に、そういった三つ類型規制を見直す一つの観点、それぞれの観点に立って当該規制がもし両方の意味合いを持つならば、あくまで経済的規制観点社会的規制観点をあわせて見直す、そういうふうなことで臨調行革審指摘をいたしておるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましてもそういった観点に立ちまして、両面を十分考慮しながら、あくまで経済活動活性化とか消費者の利益とか、あるいは従業員の問題とかあるいは利用面での安全の問題、そういったことを万般にわたりまして十分現実的な検討を加えて見直しを行っていくべきではないか、このように考えております。
  19. 田渕勲二

    田渕勲二君 非常に調和のとれたきれいな答弁なんですが、なかなかそうは、社会的規制経済的規制を調和させるということはこの業界では私は非常に難しいという前提に立っていますから、それはまた後で質問いたします。  しからば、この業界の特に関係の深い労働省にお伺いしますけれども、このような業界の事業規制の緩和が進められることによりまして、労働時間の短縮というようなことが実際問題としてどのように規制緩和と関連してくるか、進められるか、これについてお尋ねをしたいと思います。
  20. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) トラックの業界につきましては、御承知のように現状でも非常に激しい競争条件あるいは荷主のニーズがシビアになってきているというような非常に困難な環境下にあるということもございまして、お察しのとおり労働時間等非常に長いような条件にございます。ただ、いかような経営環境にございましょうとも、やはり労働基準法あるいは労働安全衛生法等に定める最低基準はきちんと遵守していただく必要はございますし、また、一般的な労働時間あるいは労働条件につきましても他の業種並みの水準には進めていただく必要があろうかと。そこに現に働いておる労働者の福祉のみならず、将来にわたる良質の労働力の確保という見地からもぜひ必要なことであろうというふうに思っております。  このような見地から、私ども従来からこの業界につきましては重点的な監督、指導を行っておるところでございますが、今後ともさらにそのような視点から監督、指導を進めてまいりたいというふうに思っております。
  21. 田渕勲二

    田渕勲二君 どうも満足な答弁じゃございませんがね。  しからば、観点を変えてお尋ねします。これは新前川リポートをフォローした内容になると思うのですけれども、そうすると、この新前川リポートをフォローするとすれば、規制問題というよりも労働時間短縮問題も大きな問題なんですから、両者は裏腹の関係にあって非常に重要な視点で論議されなきゃならぬと思うのです。しからばこの行革審の中でこうした労働時間問題、こういうものをいつごろどこでやられるのか、これをお尋ねします。
  22. 新野博

    政府委員新野博君) 現在、お尋ねの公的規制あり方という問題につきましては、経済構造調整推進目的という観点から、一面では需要構造といたしましては内需主導というものを頭に置き、かつまた供給構造としましては当然のことながら産業構造の改善、そこらあたりにも視野を広げた議論が行われておるところでございます。  それで、お尋ねの労働時間そのものの短縮を直接目的とした検討ということではございませんが、当然のことながら公的規制にはいろいろな側面がございますので、その中で今申しましたような方向での検討の過程におきましては、当然そうした問題も視野に入るような形で既にその労働時間の問題等についてもいろいろ御議論が行われておりまして、そこらも視野に入れた格好での議論が展開されるものと思っております。  以上でございます。
  23. 田渕勲二

    田渕勲二君 論議はされるんでしょうけれども、もう一つ具体的にそういう問題が、どうもこの規制緩和という経済的な側面だけが非常に強調されておるように私は思うのですが、それはそういうことであってはならぬと思います。  ちょっと観点を変えまして、通運事業関係についてお聞きをしますけれども、この行政監察の計画の中に、通運事業についての駅別免許制、それから運賃規制、参入規制、こういうものの見直しが挙げられております。このJR貨物会社の発足という状態の中で、運輸省はこのJR貨物と運輸事業というものとの関係、さらに通運事業規制、この関係についてどのようにお考えになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  24. 吉田孝雄

    説明員(吉田孝雄君) 鉄道貨物輸送をドア・ツー・ドアで一貫した輸送として完結するためには鉄道と通運の緊密なる連携、協調が必要であると考えております。先生指摘のとおり、さきの国鉄改革に際しても非常に問題になりまして、再建監理委員会の御意見でも鉄道貨物輸送が成り立つための要件として、販売はその専門である通運事業を初めとする専門の業者に重点を置くことが必要であると提言されております。また、通運業界にありましても、いち早くコンテナ貨物中心に新生のJRの収入確保についてその約五〇%に当たります収入を保証する等、鉄道貨物輸送の維持発展のため全面的な協力、支持を表明しているところでございます。国鉄改革後の貨物の動向を見ましても、こうした通運業者の懸命な努力もありまして、コンテナ輸送販売の増大を中心に堅調な実績を示しているところであります。六十二年度は速報値でございますけれども、目標をやや上回るという成績をおさめております。このような通運事業者の努力は、鉄道貨物を扱う通運事業者としての自覚とか使命感によるものでございまして、現行の通運事業法に基づく通運事業体制は十分有効に機能しているものであり、この体制は私どもは必要であると考えております。
  25. 田渕勲二

    田渕勲二君 率直にお聞きをしますけれども、そうなると通運事業規制を外してはまずいというような結論になると思うんですが、いかがですか。
  26. 吉田孝雄

    説明員(吉田孝雄君) 私ども先生の御趣旨のような意見を持っておりまして、関係方面にもそのような御意見を申し上げ御理解をいただく努力をしているところでございます。
  27. 田渕勲二

    田渕勲二君 この規制見直しの小委員会の構成メンバーに関してお尋ねをしたいと思うんですけれども、どうもメンバーを見ますると、余り物流には詳しい人が入っておられない、しかも出だしから初めに緩和ありきの議論というものがなされておるようでございますけれども、小委員会構成に当たっての選考された基準についてまず御質問を申し上げるということ。  それからもう一つ大事なことは、各省庁関係団体からヒアリングをされることになっておりますけれども関係団体という中にはほとんどが経済団体でありまして、むしろこれと非常に関係の深い事業者団体であるとか、特に重要な役割を占めておる関係労働団体、こういうものも一定考え方を持っておるわけですから、その意見も十分に聴取していくのが私は妥当じゃないかと思うんです。そうしたヒアリングに対する対象を経済団体だけにとどめずに、事業者団体あるいは関係労働団体、こういうものはいつごろどういう形でお聞きになるのか。  二点について御質問申し上げます。
  28. 新野博

    政府委員新野博君) 小委員会の構成の御質問でございますが、小委員会に入っていただいております参与につきましては、各界のすぐれた識見を有する方々を依頼いたしておりまして、全般的な観点から広範な論議をいただいているところでございます。それで、現在までのところ民間団体という場合に経済団体だけではないかというお話でございますが、これまでの各界の論議を踏まえまして当面前広に検討を行う過程といたしまして、これまでのヒアリングではそうなっておりますが、今フリーディスカッションをしておりますゆえんは、そこで議論をいたしまして今後検討の方向をどういう形で絞っていくか、あるいは追加をしていくかということを含めまして議論をやっておりますが、その際に、当然のことながら今後のヒアリングということもあり得るということで、そこでは関係の業界であるとかあるいは専門家であるとか、あるいは、労働団体であるとかということは当然に議論をされて日程が固まっていくものと考えております。
  29. 田渕勲二

    田渕勲二君 いや、議論をされるんじゃなくて、この六十年度の行革審のときには実施されておるわけですね。六十年の行革審のときに私はそういうヒアリング実施されたと、それを対象にして聞いておるんですが。議論をされるというんじゃなくて、そういう関係団体なり関係労働団体を呼んでヒアリングするのは私は当然のことだと思うんです。議論して決めるんじゃなくて、決めることがまず先決じゃないかと思うんです、決まっていることが。これは決まっておらぬのですか。
  30. 新野博

    政府委員新野博君) 小委員会の進め方は、まずそれぞれ当面御議論をいただいた日程に従いましてこなしておりまして、先ほど申し上げましたように、今の段階は各界でいろいろな御議論があったそういうものを中心に、関係省庁中心ヒアリングを一通り終えた段階でございます。そうしてこれからいろいろと問題を深めていくにつきましては、例えば現在の委員会トータルでやるのか多少分けてやるのかというようなこともございましょうし、また日程の関係ヒアリングをどの段階にやるか、こういうようなことをこの四月中に議論をいたしまして小委員会の方で日程をつくる、こういうことになっておるわけでございます。その意味での議論であるということでございまして、いわば今後の小委員会の運営の進め方ということ自体小委員会で決めていくというような形をとっております。本日の田渕委員の貴重な御意見は行革審の方にお伝えをしておきたいと思います。
  31. 田渕勲二

    田渕勲二君 まだ私の意見は最後まで言っていませんけれども、私の質問の流れからいっておわかりいただけると思うんです。  そこで、この第二臨調答申で私は問題にしたいのは、確かに規制緩和経済的規制社会的規制いろいろそういう側面から検討がなされることは結構なんですが、一つだけ大変欠落している部分があると思うのは、物流関係の中でもトラック運送事業というのは、今さら私が申し上げるまでもなく非常に国民生活にとっては不可欠の交通運輸産業基幹であるということなんです。今非常に大きな社会問題になっておる交通事故、それから車の公害、こういうものをなくするためのマイカー規制あるいは自家用トラック規制とか、こういう私的交通機関というものをいかに抑制するかという視点がこの第二臨調答申では完全に欠落していると私は思うんですが、この点いかがでしょうか。
  32. 新野博

    政府委員新野博君) 従来の臨調行革審におきましても、それぞれ各界の方に御参加いただきましていろいろな御議論をやった結果の結論でございますので、当然そうしたことも視点に入れて議論した結果の結論であると思います。
  33. 田渕勲二

    田渕勲二君 労働省にお伺いしますが、この労働事業規制に関連をして、特に労働省の考え方をお聞かせ願いたいのですが、この二七通達というのはこれは九年前にトラック労働者の労働基準として決められているんですが、これがまことに遵守されない。この違反率が調べると五〇%近い現状にあるわけです。したがって、こういう状況でありますから、貨物輸送従事者の長時間労働問題というのは労働行政の上からも大変な課題であるわけです。しかし、これはひとり労働行政のみでこれを改善するということは非常に困難だと私も思います。したがって、この事業規制を行っている運輸省、こういうところと十分手を組んで事業法になっておりますところの道路運送法の改善なり指導、こういうものを通じて労働省、運輸省がともに改善を協力してやるべきだ、こういうように私は常々思っておるんですが、その見解について労働省並びに運輸省の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 御指摘の問題につきましては、運輸省との間に自動車運転者の労働条件等にかかわる連絡会議を設けておりまして、随時連絡をとって進めておるところでございます。さらに労働基準法あるいは二七通達にかかわります重大な違反事項等につきまして、運輸省との間に相互通報制度を設けて相携えてやってきておるところでございます。今後ともそういうことで相連携しながら進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  35. 小幡政人

    説明員小幡政人君) 監督課長からの御答弁と同じでございますが、我々としても連絡会議あるいは相互通報制度というようなものを利用いたしまして、協調し連携して進めていきたいと思っております。
  36. 田渕勲二

    田渕勲二君 大臣にお聞きをしたいと思います。  私のこれまでの質問の経過をお聞きいただいておわかりいただいたと思うんでありますけれども、先ほど来申し上げておりますように物流関係、とりわけトラック輸送の面の規制緩和見直しというものは、まず結論から先申し上げると、トラック労働者の置かれている実態から見て見直しの環境にはない、私はこういう考え方を持っているわけです。したがって、仮に参入規制を緩めたり運賃を自由化したり、そういうようなことがあるとどういう事態が発生するか。今現在ある規制のもとでも、大変な過当競争のもとで運賃の割引制であるとかダンピング、あるいはまた白トラックの営業類似行為、さらに今社会問題になっておる過積載の問題、こういう状況を見てまいりますと、輸送秩序の状況というものはまさに麻のごとく乱れておる状況なんであります。  しかも、先ほど来私も申し上げましたように、今トラック労働者のかなり組織された労働者でも一年間の労働時間は三千時間を超えているという状況なんです。今労働時間短縮時代に入りまして、平均二千百時間程度の日本の労働者の労働時間が千八百時間に向けて二千時間を割ろうということで、まさに時短元年を迎えておるわけでありますけれども、そういう状況の中で、トラック労働者の場合には一年三千時間を超えるという非常に大きな長さなんです。このことは結局は労働者の肉体をむしばむと同時に、これがまた事故多発の引き金になっておる、あるいは労働災害を引き起こしておる、または公害の激化を伴っておる、こういうような状況に今トラック労働者は置かれているということを、まず私は大臣以下関係者の皆さんにもひとつ十分理解をしていただかないと困ると思うんです。  しかも、先ほど来申し上げておりますように輸送秩序というものが非常に混乱をしておるということで、五十八年の参議院の運輸委員会で、貨物自動車に係る道路運送秩序の確立に関する決議、これは八項目ございます。これが採択をされて五年目の現在に至っておるんでありますけれども、これまたこの八項目の決議も実現を見ないという実態に置かれているわけです。したがいまして、規制緩和というものは、こうした環境が整って労働者の時間短縮が図られるという見通しの立ったときに、そうした規制緩和の問題が具体的に取り上げられる、こういうように私は思っておるのでございますけれども、どうも現実はそういうように動いていない。こういう状況に関して大臣としてはどういう御所見をお持ちか、その点について御質問申し上げます。
  37. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 今の道路貨物運送業関係労働条件が非常に厳しい状況にあるということにつきましては、私もいろいろな機会に伺っております。今私の手元にあります労働省がおつくりになった資料によりましても、全産業はもちろん製造業、生産労働者、あるいは御売・小売業関係、金融・保険業、サービス業等に比べまして、トラック輸送の月間の労働時間あるいはまた平均の月間収入は、いずれも一番低いという劣悪な状況にあるということは私も承って承知しております。  ただ、それだけいろいろな規制をしておりながら、こういう状況にあるということは、逆に言えば、労働条件の改善にどれだけその規制がプラスになっているのかなというような感じもしないでもないわけでありまして、労働条件の改善ということにつきましてはもっともっといろいろな手だてを考えるべきではないんだろうか、こんなふうにも思うわけであります。  いずれにいたしましても、今行革審におきましては、幅広い見地から、従来の各種規制につきまして大胆な見直しを行うという観点に立って御検討いただいておるところでありまして、こうした劣悪な労働条件にあることにつきましても、十分念頭に置いて検討していただけるものと考えております。
  38. 田渕勲二

    田渕勲二君 今の大臣の答弁の中に、規制があってもこういう状況が正されないということについて見解がありましたけれども、私はむしろトラックを使っている経済界に非常に問題があると思う。最近少しは景気がよくなりましたから多少緩んではおりますけれども、もう不況だとか経済の見通しが悪いというときでありますと、まず先に取り上げられるのは運賃なんですね。運賃を買いたたかれる。また時間どおりに運ばない場合にはこれを受け付けないというように、労働者の労働時間というものは全く無視された形で荷主である経済界がこういうトラック業者を痛めつける、こういうものが現在横行しておるわけであります。  こうした経済界における自粛というものがまずこういう輸送秩序を守るという、そういう観点からこういうトラック輸送を使っていただきたい。それは幾ら規制をやろうが緩和しようがこの実態は変わらないと思う。そういう意味で、ひとつ十分こうした経済界における要請だけに応じてこうした規制緩和を経済的な側面から進めるんではなくて、そこに働く労働者の労働条件というものが他の産業に比べてどういう実態に置かれているかということをよく追求されて、それの解決をまずやる、こういうことを重点に置かれてこれからの行革審における検討をお願いしたいということを申し上げまして、時間が参りましたので、以上をもって私の質問を終わります。
  39. 及川一夫

    及川一夫君 私は、昭和六十年度の決算の中で広報費用、政府の広報にかかわる使用問題とプライバシー保護法の問題二つについて質問並びに意見を申し上げたいと思います。  まず最初に、事実関係としてこれはお役所にお伺いしておきたいというふうに思いますが、広報費は昭和四十七年には大体二十億、こういう数字でございましたが、四十八年から担当された田中内閣の手によって、広報を重視されたのでしょう、三十四億に引き上げられて、それ以来昭和五十年までには百三十四億、四十七年に比べればおおむね七倍ぐらいの数字になっておられます。五十七年、恐らくこれは中曽根総理がなられて行革との関係などを含めて小さな政府づくりということを意識されて削っていったんでしょうが、いずれにしても五年間削られてまいりまして、そして六十二年には百十一億に下がっているが、ことしは百十四億にふえている、こういう形のものになっているわけであります。百億を超える広報費ですからむだ遣いはもちろん許されないし、やるからにはそれだけの効果が上がらなきゃ意味がないということに実はなるというふうに思うんです。  そこでお伺いしたいのは、一体これだけの金額についてどういう手法をもって広報というものをなされているのかという事実についてお伺いしたいんですが、時間の関係もありますから、私も手元に若干資料を持っていますので、すべてが網羅されているとは思いませんけれども、テレビ、ラジオ、全国紙、その他ということで、テレビの場合には、これは六十一年度のもので申し上げますと四十億程度、ラジオが一億四千万程度、全国紙が九億一千万、その他ということで五十七億ということに大体なっております。そうして、とりわけ「その他」というのが大きい数字になっているわけでして、週刊誌、月刊誌、「フォート」、「時の動き」、「Pacific Friend」、短編映画、ムービースポット、電光板ニュース等の媒体を使用して各般にわたる政府施策等を紹介しているというのがその他の項目としてあるわけです。したがって、全国紙は当然三大紙を初めとした各紙ということになるでしょうし、ラジオも金額は少ないんですが、いずれにしてもタイトルを掲げて広報されておる。テレビは「あまから問答」、「話題のひととき」、「霞が関レポート」、「ホームジャーナル」、こういうものが大体出ておるんです。この点総務庁のお役所にお聞きしたいんですが、大体事実関係として間違いございませんか。
  40. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 大体及川委員が仰せのとおりでございます。すなわち総理府広報室が実施しております政府広報の、これは六十一年度におきますところの媒体別の決算額について見まするに、仰せのテレビ、ラジオ関係でございますが、これが約四十一億七千万円、それから新聞、雑誌等の広告関係が約三十六億五千万円、また定期刊行物、パンフレット等の資料配布でございますが、これが約十八億五千万円、また政府広報展示室、東京タワーのところなどにございますが、その関係事業等約十一億九千万円、さらに世論調査関係が約三億三千万円というようなぐあいになっておりまして、その活動内容といたしましては、個別的には、例えばテレビで申しますと「話題のひととき」でございますとか、「さわやかニッポン」、「ホームジャーナル」、「霞が関レポート」、ラジオでは「クローズアップにっぽん」、これも五百回を超えました。また、出版関係では「時の動き」でございますとか「今週の日本」などの編集なり買い上げ等によりまして広報する、あるいは新聞の記事下広告、突き出し広告、週刊誌、月刊誌の広告、その他パンフレットと、多岐にわたってやらしていただいておるところでございます。
  41. 及川一夫

    及川一夫君 そこでこれから先なんですけれども、事実関係のよしあしを論じてみても私は仕方がないと思っています。むしろ政府が広報するということは一体いかなる意味、同時にまたどういう立場に立ってやるのかというのが私は非常に大きな問題だというふうに思っているわけです。どだいは税金ですから、私たちも出していますが国民全体が出しているわけでして、国民のためにということがやっぱり大前提に私はなると思う。そういう前提で、お答えの方はお役所じゃなしに、両大臣いずれでも結構なんですけれども、お答えをひとついただきたいと思うんです。広報に対する基本的な姿勢というものはどういうふうに持たれてこれまでやってこられたのか、またこれからやろうとしているのか、それをお伺いしたいと思います。
  42. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 民主政治においては当然のことでございますが、この開かれた民主主義として政府は政府の行っておることを国民に正しく認識をしていただかなければならないわけでございます。そういう意味で、もとより一般のマスメディアを通じて国会で行われておる議論もさることながら、政府としての施策をいろいろな形で報道をお願いしつつ国民に理解を求めてきているところでございますが、さはさりながら、やはり政府としても独自な形で広く国民にこのことを御理解願うために、今、及川委員指摘のように、政府としてはこのようなお金を使って今まで広報活動を続けてきたところでございます。したがいまして政府としてはできる限り、国民の税金を使って行うこの広報活動ですから、正しくわかりやすく、そして国民に政府として行っておりますことを克明に報告をいたしつつ、その御批判もいただけるように適切な素材も提供していこう、こういうことで今までやってきたところでございます。  その金額につきましても、先ほど過去の計数を申されまして、政府としてはどこまでが限界かということはなかなか実は難しい問題だろうと思いますけれども、一般のマスメディアが現在広告時代と言われるような時代で、それぞれの企業体におかれましても数百億単位で広告宣伝活動をいたしておることに比較しますと、政府全体で百十億内外、総理府の広報室関係ではそういうことになっております。政府としては、さらに広く国民に理解を求めるためには予算的にもいま少しくという気もいたしておりますが、しかし、定められた限界の中でより効率的に今最善を尽くして、先ほどお示しをいたしましたような各種の媒体を通じまして現在最大の広報活動を展開しておる、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  43. 及川一夫

    及川一夫君 私は、別に広報しては悪いとは思っていない。政府がどの程度が限度かということについて悩んでおられる話もお聞きしましたけれども、どちらにしても百十四億というのは、今日の条件の中では民間に比べましても第八位というぐらいのランクにあることだけは間違いありませんので、これはひとつ官房長官も覚えておいてもらいたいと思うんです。  問題は、広報するに当たりまして、お答えが実はないんですけれども、具体的に言えば、例えば政府・与党と野党の間に対決をしている問題、まだ解決をしていない問題等について広報したということはありますかありませんか。
  44. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 少し先回りしたお答えになるかもしれませんけれども、最近税制改革の広報を担当させていただいておりまするけれども、これなどはいろいろ御意見のあるところかと思います。例えて税制改革の問題を申し上げさせていただきますが、現在、政府は、税制調査会に望ましい税制の姿についての検討を昨年の十一月十二日にお願いをいたしました。税制調査会といたしましてはその審議に当たりまして、広く国民の皆様の御意見を聞くために地方公聴会を数多く開催いたしましたり、あるいは税制改革についての素案の提示を三月二十五日にいたしているところでございます。  そこで、税制調査会に審議をお願いしております立場にございます政府といたしましても、国民の皆様方にこの政府税調の公聴会の開催の御通知を申し上げる、あるいは出されました素案というものにつきましてわかりやすく御説明したいという広報は必要と考えまして、実施をいたしているところでございます。税制改革などは国民生活に深く関連するものでございます。今後とも税制調査会の審議等に対応いたしまして必要な広報は実施をしてまいりたい。このように政府といたしましては、政府の施策につきましてその段階に応じた広報を及川委員指摘のような状況におきましても差し支えないというふうに承知をいたしまして、実施をさせていただいているところでございます。
  45. 及川一夫

    及川一夫君 私は納得できない。だから官房長官、あなたが答弁してください。私はそんなことを聞いているんじゃない。与野党対立している問題について広報したことはございますかと聞いているんであって、あるかないかだけなんです。立場を聞いているんじゃないんだ、私は。  そういう前提に立ちますと、官房長官、あなたもお持ちでしょう、「今週の日本」というこれを。これは一体どういう性格のものなのだろうかということについて、別に政府も隠しているわけじゃないし、私も調べさせていただきました。私は政府の直接的な広報紙と言ってもいいんじゃないか、こう実は受けとめているわけです。昭和四十三年から始まっておられます。そして、そうたくさん役員がいるわけじゃありませんが、年間収入大体七億円という収入だそうでありまして、配布のやり方は日経新聞とか毎日新聞、しかも東京、名古屋、大阪と、こういうものに限って折り込みで配布をされる、こういう内容になっている。それで、これには編集協力ということで総理府広報室とか書いてある、だから立場ははっきりしているわけですね。  それで、これは全部が全部じゃないんですが、この二面、三面ですか、この紙面をお買い上げになっている。そして政府の必要と思われることについて広報活動を、これをもってやられていると私は受けとめているわけであります。そういう性格のものでしょう。しかも大体政府は五億円でこの紙面を買っているそうです。だから何を編集するかは、編集協力とはなっているけれども金を出すんですから、当然政府の意思でもって項目を決め、また編集もやっぱり考えてもらうというものでなければこれは意味がないですね。金だけ出して勝手にやれなんというのは、そんなものはないんで、それじゃ全く無責任ということになるわけです。そういう点で考えると、ここに載ったものは政府の意思と、こう受けとめるのは常識だと私は思うんです。  その常識を前提にして、過去のものを実はたぐってみたんですが、国会図書館では、これは何かずっと置いておくことになっていないみたいですね。だから飛び飛びになっているんです。都合の悪いものを飛び飛びにしたとは私は思わないんだけれども、過去、六十年からちょっとあれしますと、一つは税制改革の問題が出されている。それから最近、四月の十一日、前のものは昨年の四月二十七日、大蔵省のお偉い方がここで税制改革のことを述べておられる。ただ、四月二十七日というと、官房長官、思い出してごらんなさい、去年の国会はどういうふうになっていましたか。二十三日で終わったんじゃないですか、税制問題は。要するに廃案ということで、議長が乗り出してきて、与野党それを合意して、そこで打ち切ってそこから先は参議院へ送る、同時に衆議院は法案の審議に入る、こういう状況でありまして、そのときにまた改めて大山さんという方ですか、この方が座っていろいろおしゃべりになっているということなんです。この中には野党のヤの字も出てこない、国会の論議のロの字も出てこない、こういう形。  それから四月の十一日のものを見ますと、これは税調の委員をやっておられる貝塚先生が受けて立たれているんですが、私はこの質問内容というものを見れば、明らかに世論誘導ということを考えているに違いないというふうに推察されるわけです。  時間がないから一々読み上げるわけにはいかないんですが、「まず、どうして税制改革をしなければならないかということについてお話しをいただきたい。」、「前回は議論が十分浸透しなかったのではないかと言われていましたが。」、「またそれを公開して広く論議をしてもらおうということですか。」というふうに、いわばこの間接税の問題を含めて全部質問をして、それに税調の論議の内容を紹介していく。それで、私は学者ですが、その中で私はEC型付加価値税が一番よろしいと思うというところまで言い切った実は内容になっているわけです。この辺になってきますと一体これの性格は何だという問題から、同時に国会では税調の議事録を出してもらいたい、我々も知りたい、検討したい、こういう国会側の御質問に大蔵大臣は、それを公開すると自由討議ができなくなると言ってお断りになっておるわけです。しかし、これからすると類推できるんですよ、いずれにしても。国民を大事にするというのは結構ですけれども、じゃ国会は大事にしないのか、こういうふうにも今度はこれから私らは、少し曲解かもしれませんけれども、何かこれはねたみみたいなものを感じてしまうんです。  一体この「今週の日本」というものについて官房長官、別に広報しちゃ悪いと言っているんじゃないんですよ。内閣がどういうものになったとか広報するのは結構でしょう。そういうものは私は認めるんです。ただ与野党の対立をしている問題についてこういうふうにやられてきますと全く世論誘導じゃないか。しかも税金を使って、税金は野党の諸君だって出しているんだ、反対をしている人だって税金は出しているんじゃないか、公平じゃないんじゃないか、こういう私は議論にならざるを得ない、こんなふうに思うんですが、いかがですか。
  46. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 及川委員質問をされておられる趣旨は私理解できるんです。それは与党と野党と対決しているようなそういう問題を一方的に取り上げてはいけない、こう言われることは私もそう思うんです。ただ、政府は与党ではないんでございまして、政府は政府という立場でございますから、決してこれは自民党の主張をここに載せておるということでありませんで、政府としては明確に、議院内閣制ですから与党に支えられていることは事実でありますけれども、政府という立場で政府としての広報宣伝活動をするということについては、厳然と一つの筋道はつけているというふうに私ども考えておるんです。  そこで御指摘の「今週の日本」でございますけれども、これは政府の税調の審議の過程を、今、内閣総理大臣が御諮問しておる過程でいろいろ考え方が出てまいりますので、政府税調の考え方を国民にお示しをしつつ、こういう審議過程になっております、こういうことにいたしておるわけでございまして、この点私どもは議会で選任をされて政府をつくり、その政府の立場でやっておる事柄をこうした「今週の日本」等を通じまして表現していくということでございます。片や国会における与野党の論議そのものにつきましては、あるいはそういうものの紹介もいたすことも検討しなければならぬかとも思いますけれども、そのことは広く一般のマスメディアを通じて国民には正しく報道されていると思いますので、その間の仕分けといいますか、その点については政府としてはおのずと節度を持って対応している、こういうふうに私ども考えているところでございます。
  47. 及川一夫

    及川一夫君 官房長官、余りそうおっしゃると私は墓穴を掘ると思いますよ。じゃ、もう政府には一切広報活動というのはないのか、そうおっしゃるなら。それは与党と政府というのはあるわけでして、与党の支えがあってまた政府があるわけでしょう。もちろん我々もいろんな意味で関与はさしていただいております。そういう前提に立ちますと、そういうそらぞらしい御答弁はよろしくないと思う。ただ重要なことは、与党、野党対立をしているものについては取り上げるべきでない、こう言われた。これは私は確認しておきたいと思います。  ただし今回載せたものは政府が出したものじゃない、こう言っているわけね。政府が出しているものじゃないと言って、この中へ大山さんがなぜ出てくるんですか。大蔵省のお役人でしょう、この人。だからこの「今週の日本」というものは一体どういう性格を持っているんですか。わざわざ編集協力、こう言っているけれども、これは総理府広報室と名前が書いてあるんです。しかもお金をあなた方は五億円出しておるんです。年収七億円です。あとの二億は何かといったら、広告収入等でしょうね、これは有料じゃないんですから、無料ですから。その広告のところを見てごらんなさい。運輸省であるとか、何々公団であるとか、そういうものにみんなかかわっているんです。少なくとも「編集協力総理府広報室」というふうに書いておるからにはお金も出しているんですから、政府の意思もなしに勝手に走り回るなんということはありますか。政府の意思ということを前提にしてみれば、税制改革の問題にしろ売上税の問題にしろ、こういうことは今与野党間で対立をしている問題ではありませんか、どうしてそれを素直に認めないんですかというふうに私は正直言って思います。  それで、これはもう国会でも暴露されていますけれども、朝日ジャーナルに載っていました「大蔵省の売上税PRにおける理論と実践」という中で、「首相の「やいのの催促」で作られた秘戦略」なんというのがあるわけでしょう。これは国会で暴露されましたね。その中に、「政府、大蔵省は一切表に出ない形で」というのを書いてあるんです。これは大蔵省のマル秘文書でしょう。だから、あなた方はそうやってつくっておるんです。そういうことは私はおやめになったらどうかということを素直に言っているつもりなんです。あとは声が高いだけ。どうなんですか官房長官、これはやめるべきじゃないですか。
  48. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 政府としての広報活動というものは、政府が施策として執行するためには国会の議を経て法律をもってすることになっておりまして、そういう意味で、すべて議決をされて政府としての政策をPRするということも、政府としては当然これはなさなきゃならぬことだと思います。  さりながら、やはり政府としても、例えれば、税制改正につきましても総理大臣の施政方針演説でも申し述べられておりますように、政府としてはこの改革を推し進めたいという意思も明らかにしていることも事実でございます。したがって、その意思を明らかにする意味合いからも、なぜそう政府は考えておるかということについてあらかじめ国民の理解を求めるために各種の広報活動を行うことも、これまたお許しを願えるものだと私ども考えており、ある意味ではその一環ということも言えるのではないかと思っております。
  49. 及川一夫

    及川一夫君 全面的に否定しているわけじゃありません。ですから、ぜひ考えていただきたいのは、一致したものとか対立のないものというのはたくさんあるわけです。そういうものについて、これは国民に重々知らせた方がいいというものは大いにやったらどうですか。やられて結構です。しかし、対立しているもの、一致しないものということについては、これは少なくともどんなに下がってみたって、政治的な配慮という面は必要なことじゃないですか。やればやったでもめるだけですからね、これは。それは少なくとも政治の問題等を配慮されるべきだし、基本的に言えばみんなが出している税金ですから、反対した人たちの気持ちもそんたくするなら、そういうものは本来広報の対象にはまずできないはずだ、やるべきではないというのが私の基本的な立場なんです。  これは自治体なんかではしっかりやっています。私は今、船橋に居住していますけれども、船橋市にしてもそうですし、千葉県にしてもそうですよ。ちゃんと議題ごとに、各政党がどんな発言をしたかというのを全部議事録より載せまして、薄いものですけれどもみんな配ります、各戸に。だから、もしあなたがどうしてもそれをあれすると言うんなら、対立しているものについては野党欄を設けて野党の主張というものを入れてもらいたい、結論が出ていないということをそういう意味ではっきりさせてもらいたいというふうに言いたくなるんですよ、これは。ですから、これは私はここで今結論を求めていませんけれども、どちらにしても、今後も大きな問題になる課題だし、過去にも問題があったわけですから、小渕官房長官も新鋭ですから、ぜひ新しいイズムをつくるようにお願いをして、次の議題に移りたいというふうに思います。  そこで、総務庁長官、長いことお待たせして大変申しわけないんですが、個人情報保護法案というものについて長い間いろんな議論、また我が党もさまざまに皆さん方に提起をしてきた経過があるんです。四月七日、これは朝日新聞なんですが、ここに出た記事、これは事実に反していないかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
  50. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 仰せのとおり、行政機関における個人情報の保護対策につきましては大変長い経過があるわけでありますけれども、所要の法律案を今国会に提出すべくただいま鋭意関係省庁と協議中のところであります。  新聞報道につきましては、現在なお法律の立案の過程にありますものですから、これの事実関係ということでありましてもコメントを差し控えさせていただきたいというのが現段階でございます。
  51. 及川一夫

    及川一夫君 そういう実態にありますから、これをもとに質問するわけには私はいかないと思いますが、私も見まして、やや問題のとらえ方に足りない面というか、事実認識でちょっと違うのかなということもあるわけですので、これ自体については問いません。  もう一つの問題として、これまた朝日新聞で恐縮なんですけれども、四月十三日の浜松の小学校の「こまごまと90項目」という、これはプライバシーに関してかなり介入しているというふうに私は受けとめるんですが、これについて総務庁はどういう御感想をお持ちですか、この記事が事実という前提に立って。
  52. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 私どもが今個人情報の保護対策ということで検討中の法案の中身について逐一お話しできる段階ではございませんけれども、公的機関が個人情報についてコンピューター処理をする、これを対象として現在法案を立案中なわけでございます。  今仰せの浜松の状況ですか、これにつきましては、恐らく文書でいろいろととっておるものでありましょうから、この事実の関係も私どもまだ承知をいたしておりませんし、私どもの法案の対象とするものにはちょっとならないんだろう、このように思いますので、これにつきましての感想といいますか、考え方というのも、練ったお返事ができるような状況ではございませんものですから、御勘弁を願いたいと存じます。
  53. 及川一夫

    及川一夫君 大臣、今お話がございましたように、実はこのコンピューターというものが出てきますと、大変便利なものですから、もう極端に言ったら何でもできるみたいな話ですから、そうすると、人間の頭の構造というのは、どんどんやりたくてやりたくてしようがない発想になるんですよ。こんなことは十年前なんか考えられなかったんじゃないかと思うんですね。  私は、プライバシーの問題というのは際限のない問題だと思います。だからそういった点では、この個人情報保護法案を考える大きな基本は何かということについてしっかり踏まえて考えていただきませんと間違いを起こす。特にこの記事でも載せられているように、何かOECDで決まったからとか、先進七カ国でやっていないのはイタリアと日本だけだ、イタリアは法案を出している、日本だけになってしまう、だからやらなきゃいかぬとか、まとめに大分御苦心なさっているようだけれども、各官庁ではそんなものは業務が煩瑣になるからやめてくれみたいな意味で開示請求の範囲を狭めるとか、そういう議論をした保護法案ということになりますと、そんなものは保護法になりませんよ、私から言ったら。  そこで、大臣に、大臣もこれからいろんな行動をされると思うんですけれども、一体このOECDの八項目の勧告というものについて、その基本はどこにあるかということについてどう受けとめておられるのか、お聞かせ願いたいと思うんです。
  54. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) OECDの勧告の中身でございますから、私の方からお答えをさせていただきますけれども、御承知のように法的措置を講ずるに際して考慮すべきガイドラインとして八つの項目を出しておるわけであります。このそれぞれがやはり大事なことだろうというふうに考えておるわけであります。そのガイドラインの内容、これはもう御承知でありますから逐一申しませんが、例えば収集制限とかあるいはデータ内容の原則、目的明確化の原則、利用制限、それから安全保護、公開、個人参加、それから責任の原則。特にこの個人参加の原則といったようなことは、やはり個人がある程度情報についてみずから確認ができるということの基本をなすわけでありますから、こうしたようなことはそれぞれ重要でありますけれども、どれが特に重要であるかというと、やはり個人参加の原則といったようなものをある程度進めていくということであろうか、このように私どもとしては理解をいたしておるということでございます。
  55. 及川一夫

    及川一夫君 私の気持ちと合うのかどうか知りませんが、それぞれ大事でしょう。しかし、この中で最もやっぱり大事なものは、この場合には収集制限の原則の中でうたわれたデータ主体という言葉だと思うんです。つまり、本人、個人の了解を得なければインプットもできないし、同時にまた、開示請求をされたらそれを断ることができないという原則です。これが一番基本なんです。このことをお認めになって法律がつくられるかつくられないか。もちろん私は、だからといって原則だけでいけというんじゃないですよ、保護法ができていないわけですから。しかし、事態はどんどん進んでしまっている。インプットされているのはいっぱいあります。それをどうするかということは、ある意味じゃやっぱり現実対応ということは最後には出てくるんですけれども、物の考え方としてデータ主体という、個人というものの尊厳を本当に認めた上で保護法がつくられるかどうか、各省がそういう気になってみずからのデータというものを見詰めるか見詰めないか、ここが本当に大切なんです。このことを踏まえない保護法なんというものは、ざる法なんていうものではない、法律がないと同じことに私はなるというふうに実は思っているわけでして、これ以上議論してもなかなか難しいようですから、ぜひそれを踏まえて今後当たっていただきたいというのが一つ。  二つ目には、この種の問題ですから、与野党が対立をした中で法律制定が強行されるということはあっていいのかどうかの問題なんです。私はあるべきではないと思います、個人のプライバシーにかかわる問題ですから。対立だ、いや数でいこう、そんな発想でこれをやろうということになりますとそれこそ間違いを起こすと私は思う。あくまでも与野党で何とか合意をしなきゃいかぬ。そういう法律の性格ではないかと思うんですが、大臣、これは与野党の問題ですからお答えください。
  56. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいまの個人情報保護法案につきましては、基本的にはやはり私的生活の形成の範囲をどのように守っていくか、基本的人権にもかかわる問題であろうというふうに考えております。ただ、諸外国の法制はいろいろと違っております。したがって諸外国の法制で非常に一番厳しいのは、私が勉強してみますとドイツのヘッセン州の保護法案が一番厳しいものになっておるようでありますが、それがそっくりそのまま今日本に当てはめられるかどうかということになりますと、やはり必ずしも国情、あるいは中央と地方との関係、あるいは各省庁が、日本の場合は非常に縦割り意識が強いものですから、そこいら辺の問題が数多くございます。いろいろな民間の方々の御意見な私も拝聴しておりますが、その全部を取り入れて法律ができるかというと、なかなか必ずしもそうはいかないんじゃないかということは御理解いただきたいと思うわけであります。  それからまた、国によりましては公的部門と民間部門とを一本の法律によって規制をしておるところもございますし、民間のコンピューター処理をされた情報量というものも非常に膨大なものがあろうとは思いますが、当面、やはり私どもとしましては公的部門の規制ということで考えてまいりたいというふうに思っております。そこいら辺でいろいろと違う意見をお持ちの方もございますが、OECDの専門家も、公的部門と民間部門とはやはり別の法律にした方がいいのではないかというような意見も私どもの担当者に話しておられたようであります。それらを通じまして、私どもとしましては、今必ずしも百点満点はいただけないかもしれないけれども、もうこういう法案を立法する必要性というものをお認めいただいて、ぜひひとつ幅広い御意見を私どもも承りながらまとめてまいりたいと思います。しかし、問題はあろうとも、こういう法律をつくらなければならない時期に来ているという共通認識に立って御賛同いただけるようなものをまとめ上げるべく努力していきたい、このように考えております。
  57. 及川一夫

    及川一夫君 これで終わりますが、大臣、作業過程だから、新聞記事も、それはそれとして突っ込んでもらっちゃ困りますというようなお話があるのに、中身に入ったような話になると私も議論したくなってしまうわけです。私はそういうことに行く前の話をしているわけでして、何か法律をつくることに意義があるなんて、そんな程度にプライバシーを扱われてたまるかという意見だってあるんです。しかも、あなたはヘッセン州の話をされたけれども、とにかく日本という国は民主主義の制度になってから四十年そこそこでしょう。向こうは百年越してしまっているわけです。全然スピードが違うんです。だから、単に形だけ合わせて私もやれとは言っていませんが、同時にまた、そういうおくれがあったということを前提にして、先進国だということも考えたらそれはやっぱり追いかけなきゃいかぬ、追いつかにゃいかぬ、そういう気持ちを含めて、人間の尊厳にかかわる問題だけにという気持ちが私は非常に強いんです。ですから、きょうはこれ以上議論になりませんからやりませんけれども、ぜひ総務庁長官、私の言っていることが少しでもひっかかりがあるなら、これからの行動の中でそういう観点で問題をとらえていただくことをお願いして、終わります。
  58. 菅野久光

    ○菅野久光君 本日は内閣総理府、総務庁所管の決算でありますから、中曽根前総理府がよきにつけあしきにつけ行ってきた幾つかのことについて、決算的な立場で今日どうなっているのかということを振り返ってみたいと思います。  まずその中から、首相官邸の建てかえの問題であります。  まず、建てかえの必要性は何か。また、新しく建てる官邸の全体の規模とか、今の官邸に比べてどのくらいの広さになるのか。当初いつごろ完成の予定ということでこの話を進めてこられたのか。また、現在建てかえの構想が進展していないようでありますが、その理由はどんなところにあるのか。あるいは情報通信網の整備充実についてはどのようなことを考えておられるのか。総経費はどのくらい見ているのか等について、時間がございませんからごく簡単に御説明をいただきたいと思います。
  59. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 先生の御質問は多岐にわたりますので、まず総論として私から申し上げますが、官邸は、近年行政が多様化、国際化、情報化、こういう時代に対応してその機能を十分発揮できるものであることを要求されておりますが、現在の官邸は建築後六十年経過いたしまして、老朽化、狭隘化が顕著になっております上に、施設、設備の近代化を進める上の障害となっております。このような状況にかんがみまして、官邸機能の近代化を図るために官邸の建てかえを行うことといたしまして、昨年五月十五日にこの旨を閣議了解いたしたものでございます。私も昨年の秋から入らしていただいていますが、いずれにしても、今も工事中で外装を直しております。いわゆる行政の本当の意味でのヘッドクォーターとして新しい、先生指摘の情報機能その他にわたりましてもいかにしてもクラシック過ぎるということでございますので、昨年こうした閣議了解をいたしまして、現在鋭意その建てかえのための諸準備を行っておるということでございますが、詳細にわたりましては担当の者から御説明させます。
  60. 河原崎守彦

    政府委員河原崎守彦君) 必要性等につきましてはただいま長官からお話し申したとおりでございますが、規模等につきましては、ただいま実は基本計画ということで検討をしておるところでございます。これは平たく申しますと、官邸の備えるべき諸室の機能とか規模とかという問題でございますが、この辺を詰めております。またその中で、情報通信につきましては研究会を設けて個別に研究をいたしております。したがいまして規模等につきましては、現段階では説明できませんので御了承いただきたいと思います。  それから、今どういう状況にあるのかというお話でございますが、今申しました基本計画をつくるということも急がれるわけでございますが、同時に、立地を予定しております地区の整備をしなきゃいかぬ。すなわち、そこにございますサイエンスビルの移転とかあるいは千代田区道が通っておりますし、その下には上下水道の施設もございますので、そういうものを移転する等、要するに調整を要する問題が多うございますので、その辺の調整を鋭意進めておるという段階でございます。
  61. 菅野久光

    ○菅野久光君 いろいろ憶測をされてこのようなものであろうなどということが新聞に出されておりますが、まだまだ基本計画の段階だということであります。この計画もそもそもが前の中曽根首相自身特有の、言えば大統領府的な首相を目指すというような構想から発想されたものだというふうに思うんです。しかし、今の竹下総理はどちらかといえば中曽根前首相とは正反対の、つかさつかさに任せるという発言にもあらわれておりますように、総理自身が余り出しゃばる、出しゃばるという言葉は適当ではありませんが、そういうタイプではないので、余り無理してまで首相官邸を建てかえることは考えていないのではないかなというふうにも思うんですが、総理自身の意向はどうであると官房長官は理解されておるのか、また小渕官房長官自身はどう思っているのか。閣議決定ということはありますけれども、現在の心境といいますか、そういうことをお聞きしたいと思います。
  62. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 竹下内閣の姿勢といいますか政治のやり方といいますか、ということにつきましては御理解願っておられるようで、そういうことであるかと思います。  そこで官邸につきましては、先ほど来冒頭申し上げましたように、実際入らせていただいておりまして、やはり何といっても三権の一つの中心であることは間違いないわけであります。国会もこうした形で立派な建物で立法府としてありますし、また最高裁判所も新しくなりました。そういう中で、申し上げたようにもう半世紀以上古い建物になっておりまして、諸外国から国賓その他参られましても、決して小さいことを卑下するわけでもございませんが、機能的にもいろいろパーティーその他開催するのにはいかにしても手狭であるというようなこともございます。新しい情報ネットワークとして特に安全保障その他の問題を考えますと、そうした機能を十分整えているかどうかということについても疑問なしとしないということでございますので、必ずしも大統領府的、いわゆるホワイトハウス的にでんとしたものを構えるということでなくて、やはり行政府としてそれぞれ各省はつかさつかさで担当していただいておるわけでございますが、そうしたものを束ねるという意味からも、あるいは三権の一つの中心であるということからも、やはりそれ相当の体裁を整えさせていただいて国民に責任を果たしていこうという趣旨であろうと、現竹下総理もそうお考えであろうと思います。
  63. 菅野久光

    ○菅野久光君 この官邸の建てかえについては前総理の時代からこれは手がけてきたものでありますが、前総理の時代から民活ということで、それが言えば地価暴騰の引き金になったのではないかというふうに言われておりますし、今日、国会でも土地問題の特別委員会を設けてそのしりぬぐいをしなきゃならぬというような状況になっております。特に首都圏における地価の高騰ということが、今回の首相官邸の建てかえで立ち退いてもらいたい日本科学技術情報センターが、なかなか代替地を買おうと思っても買えないというような状況などが起こっておるわけでありますが、これが立ち退かないと当初構想されたようなことにはならないわけですね。そんなことを考えますと、この立ち退き先がいつまでに決まらなかったら当初の計画を断念して計画を縮小するとかなんとかという、そういう作業になるのか、その辺はどのようなことになるのでしょうか。
  64. 河原崎守彦

    政府委員河原崎守彦君) 先生指摘のように、新官邸の整備の予定の敷地内に日本科学技術情報センターというものとそれから新技術開発事業団という二つの法人がございまして、その移転が新しい官邸をつくる上での必須の条件だと思っております。  いずれにしましても、両法人ともこれからの我が国の科学技術の振興を図る上で非常に重要な役割を担っておりますので、移転によりましてその機能が損なわれることのないように私どもとしても配慮しなきゃいかぬというふうに考えまして、移転先地の適当なところの選定を急いでおるところでございます。現段階ではまだ絞り切れておりませんけれども、できるだけ早い機会に決着をするように鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
  65. 菅野久光

    ○菅野久光君 いつごろまでにというおよそのめどがなければ次の基本計画を変更するとかなんとかということができなくなるわけでしょう。そのおよそのめどを聞いているんです。
  66. 河原崎守彦

    政府委員河原崎守彦君) こういう用地交渉は、御承知のように相手方のある問題でございますので、私どもとしてはできるだけ早く御理解を得られるような解決にしたいということを思っております。いつまでにということを明らかにして進めるというのはいかがであろうかというふうに考えておるわけでございます。
  67. 菅野久光

    ○菅野久光君 およそのめどというものがなければ、三年でもできるだけ早くということになりますでしょうし、五年たって決まってもできるだけ早くということになるでしょうし、そのおよそのめどはどのくらいかということを聞いているんです。およそのめどですよ、いつまでなんて私は言っていません。どうですか。
  68. 河原崎守彦

    政府委員河原崎守彦君) 実は閣議了解が済みましてからもう一年過ぎておりますので、私どもとしてはなるべく早い機会に解決をさせていただきたい、数年先ということは非常に苦しいというふうに考えております。御理解をいただきたいと思います。
  69. 菅野久光

    ○菅野久光君 数年先ということは苦しいことになるということですから、その辺はこれからのおやりになることを見守っていきたいというふうに思います。しかし、いずれにしろ膨大な国費をつぎ込むようなことになるわけですね。しかし、それも必要だと言えば必要であることはまあ間違いがないわけなんでしょうけれども、財政難のこういったような時代で、今、税制改革の問題などもいろいろ論議されている。こういうことで非常に国民の間でもやっぱり今やらなきゃならぬのかなという気持ちが強くあることは間違いありません。  さらに問題なのは、東京一極集中の弊害が各方面から指摘をされておりまして、そのために自民党では、党の機関として首都機能移転調査会を設置して何かこれから検討されていくようでありますが、先ほどの特殊法人の立ち退きがうまくいかない、この調子では完成まで七、八年から十年かかるというふうに何か言われているようであります。こんなことを考えますと、むしろ遷都が決まったころには工事が途中ということになりはしないかという心配もないわけではない。だから、この問題について改めて白紙に戻して検討し直すことも必要ではないかなというふうに思うわけであります。この官邸建てかえの根拠としているのは、六十年七月の臨時行政改革推進審議会の意見が出たときだというふうに思いますが、今日では事態はさま変わりしている。今では土地問題、東京一極集中をいかにして是正するかを行革審で懸命に討議してもらっているわけですから、ここで前のいきさつにとらわれて建てかえを進めるのは全く矛盾しているのではないかとお考えにならないのかなというふうに思うんですが、長官、どうでしょうか、考え直すお気持ちはありませんかということをお伺いいたします。
  70. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 先生指摘のように、遷都、展都論、今日非常に華々しい議論が展開されておりまして、与党としても金丸会長を中心検討会をされておられることは承知をいたしております。さはさりながら、展都、遷都ということに仮に相なりましても、一体どういう機関をどう移すかということになるわけで、先ほど申し上げましたようにやっぱり三権というものは極めて密接な関係がある機能ではないか。そうなりますと、官邸だけ移すのが遷都、展都になるのか、国会も行くのか、あるいは裁判所も行くのかというようなことに相なりますので、今日のまだその基本的方針が定まっておらない段階では、この三つの機関というものは一体として存在することに相なりますので、そういう意味で、首相官邸も同様に今日の時点では定められた方向でこれを建設していくということが、今の対応としては正しいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  71. 菅野久光

    ○菅野久光君 首相官邸をここに建てるということは、今言った三機関は東京に置くということが基本的に考えられているからそこは動かさないんだということにこれはなるわけですね、結果的に。そういうことだと思いますが、それが政府機関の地方移転問題にかかわるやはり悪影響ではないかというふうに思うんです。移転対象機関のリストアップの第一回目、これは数は少し多かったんですけれども、中には既に移転の決まっているものも入っていたりしたわけで、移転をしても一極集中の是正に何ら影響は及ぼさないようなものが多かったのではないかというふうに思います。これでは効果がないということから、竹下総理、奥野国土庁長官らは地方移転の第二段を矢継ぎ早に各省庁に求めた。ところがその結果は惨たんたるもので、今度は数さえろくに出てこないということであったわけですね。それはやっぱり本当に移転するとなるとさまざまな乗り越えなければならないハードルがある。なかなか軽々にはいかないということもあると思いますが、どうも各省庁の思惑は、この首相官邸の建てかえを見ていて、総理以下は本当に地方移転をさせるつもりではないのではないか、ポーズだけではないのか、そのうちに少しでも地価が下がれば地方移転など立ち消えになるのではないかと、真剣に受けとめていないのではないかということが言われているわけです。こうした意味からも、遷都問題がはっきりするまで官邸の建てかえというのは見合わせる必要があるのではないかというふうに思うんですが、重ねて官房長官にお尋ねをいたします。
  72. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 東京の一極集中を排除して多極分散型の国土を形成しようということは竹下内閣としても喫緊の課題として取り上げ、その一環としていわゆる一省庁一機関の移転ということでございます。これは、申し上げたように、多極分散をし、今の東京の過密を解消しつつ平均的にそれぞれの地域が発展できるようにという思想、哲学に基づくものでございまして、それはそれとして、政府としては全力を挙げて、いろいろな困難を排除しつつもそれを乗り越えて達成をしていきたいというふうに思っておりますので、その点については御協力もいただきたい、教えもいただきたいと思っております。  この官邸の移転につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、このことは他の重要な機関との問題もあり、遷都、展都というような大きな問題にかかわることでございますので、それはそれとして、これは国民の衆知を集めてこれから一つの結論を導いてまいると思いますけれども、その結論が出ない、今検討中であるからといって、多極分散型のそれぞれの機関の地方移転についてはこれを妨げるものではない、こう考えておりますので、ぜひその点につきましては御理解をいただいて御支援もいただきたいと思っております。
  73. 菅野久光

    ○菅野久光君 私、一月二十九日の代表質問で、このことが竜頭蛇尾に終わらないようにということを申し上げたわけでありますが、非常に困難な問題があったとしても、やはり多極分散型国土の形成ということに当たって非常に重要な問題でありますから、しっかり取り組んでもらいたいというふうに思います。  ちょっと時間がありませんので、もう一つ内閣の官房の問題についてお尋ねしたいと思いましたが、その前に一連の汚職事件の問題についてお尋ねをしておきます。  撚糸工連の事件について、通産省の高沢元課長の一審判決が出たようでありますが、その概要について法務省から簡単にひとつ説明をしていただきたいと思います。
  74. 石川達紘

    説明員(石川達紘君) 高沢信行元課長につきましては、本年三月十五日、東京地裁におきまして収賄罪により懲役一年六月、執行猶予三年の有罪判決が言い渡されましたが、被告人が控訴いたしまして、現在東京高裁は係属中でございます。  一審判決が認定いたしました事実は、昭和五十七年七月から六十年八月までの間、五十八回にわたりまして東京都内のクラブにおきまして撚糸工連の小田元理事長等から、同連合会の設備共同廃棄事業等で好意ある取り計らいを受けた謝礼などの趣旨で合計二百四十六万円余りの供応接待を受けた、そういうものでございます。
  75. 菅野久光

    ○菅野久光君 次に人事院に。高沢元課長は多分休職をしていたと思うんですが、給料が支払われているとすれば、一体どのくらい、どういう理由で支払われているのか、お答えをいただきたいと思います。それは根拠法規ということではなくて、どういう理由からこういう制度になっているのかという法の背景を伺いたいと思います。また、何がしかの給料が支払われていたとすると、刑が確定し、もしくは一審の判決が出たときには、このことに対してどういう効果を生じることになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  76. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 通産省の方でおとりになった措置でございますけれども、刑事休職ということで現在休職処分にされておるようでございます。そして、給与法の二十三条に基づきまして百分の六十の休職給が支給されておるというふうに通産省から伺っております。  なお、刑が確定いたしました場合には、その罪状によりまして当然失職する場合もございましょうし、あるいはまた、その事実関係のいかんによりましては通産当局において懲戒処分等をおとりになることも考えられます。
  77. 菅野久光

    ○菅野久光君 法の背景ということでお尋ねをしたんですが、時間がございません。ただ、公務員の身分というものをある程度守るといいますか、そういう立場でこういう起訴休職ということになっているんだろうと思いますが、しかし起訴休職、いわゆる刑事事件で休職をする場合に、その刑事事件の内容がいろいろ問題だというふうに思うんです。とてもこれだけの汚職で一審判決も出た、こういうことであって、国民から見れば大変な汚職をしていて、それでも六〇%の給料が払われているということは、ちょっと国民感情としては納得ができないんじゃないかというふうに思うんです、汚職ということにかかわっていけばですよ。ほかの事件であればこれは事実関係も含めていろいろあると思うんですが、そういえば汚職だってそうだといえばそういうものかもしれません。  しかし、事柄の性格というのはほかの事件とは私は違うんじゃないかというふうに思うんです。そういう意味では、この汚職というものについてもっと別な考え方をしてはどうかというふうに思うんです。その辺は後からまた官房長官にもちょっとお尋ねしたいと思いますが、最近一連の汚職の問題が特殊法人あるいは地方自治体においても出ております。それも出ているというものじゃなくて、続発しているという状況だというふうに思います。それも以前に比べて一層悪質化しておりますし、また巧妙化しているのも大変問題だというふうに思います。  今罪に問われているのが畜産振興事業団の一部長、しかもこの事業団では唯一の農林水産省からの天下りの人間です。このことは、ただでさえ日本国内における消費者と畜産農家との確執を助長するというようなことで、国内農業に対する消費者の理解を難しくした事件ではないかというふうに思います。  また、日本道路公団の現職の理事が収賄で逮捕された、その構造的な実態が明るみに出たわけであります。この事件は、もう何といっていいんでしょうか、公然と理事室で金銭の受け渡しがされていた、公団の他の職員がこの理事と業者との豪勢な接待に何度も同席していた。こんなことはおよそ公団のトップでも、事件が司直の手による以前に当然把握していならないならないというふうに思われるのに、何らの手も打っていなかったということは、私はやはり最高責任者の責任が問われてしかるべきではないかというふうに思いますが、現在では建設大臣の責任において辞職をさせなかったということになっております。  私の伝え聞くところでは、今の道路公団の宮繁総裁は非常に清廉な方で、この捜査が入ったとき、あるいは逮捕されたときに責任をとるということを申し出られたというお話も聞いております。これはトップとして私は当然のことではないかと思いますが、こういったようなことの取り扱いといいますか、そういう厳正な対処の仕方というものはいかにあるべきなのか、そのことによって汚職というものを未然に防ぐ、させない、そういうことにどういうふうに今しなければならないのか、そういうようなことが大変問題だというふうに思うんです。まあまあ主義だとか、そういうことではないとは思いますが、しかし、国民の目にはやっぱりそういうふうに映るのではないか。  宮繁さんという方は大変清廉で立派な人だというお話は聞いておりますが、個人の問題ということでなくてこういう組織という問題からいったときに、しかもこういった汚職をこれから根絶していくという態勢、あり方、こういったようなことについて一体どのようにしていくのか。私は撚糸工連の事件が出たときにも、そのことについて本委員会で通産大臣にただしたことがあるわけですけれども、しかし汚職などが出ていないほかの政府関係機関、そういうところでも汚職を出さないという態勢をどうつくっていくのかということがやはり大事なことではないかというふうに思うんですが、その辺についての政府の考え方というものを官房長官からぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 政府といたしましては、今委員が御指摘のような事犯が摘発されて国民の信頼を揺るがせることになったことについては、深く反省をいたしておるところでございまして、かねて来、綱紀の粛正につきましては内閣総理大臣もしばしば指示もいたしており、かつそのことによって官房長会議等で不正な事実については厳正な処分を行うことを申し合わせ、その趣旨の徹底を図り、機会あるごとに関係方面の注意を喚起いたしておるところでございます。  そういう中にありながら、今御指摘のような事柄が発生をいたしたことにつきましては、なお一層心していかなければならないというふうに思っておりますし、また同時に、指示をいたし、またそのことをすべての者がそのことによってみずからを戒めていくことは必要であります。しかし、こうした事犯の発生につきましては、いろいろシステマチックに相互牽制を図るとか、その他の事柄につきまして今までも努力をしてきたのであると思いますが、さらに勉強をいたしまして、その発生を防いでいく努力をしていかなきゃならないことは言うまでもないと思っております。  そこで、御指摘にありましたように、発生した場合に最高責任者の措置でございますが、今具体的な事例も申されました。確かに公団でいえば総裁、あるいはそうした事業団の理事長その他の責任も、国民の目から見ると、その責任者としての責任のとり方につきましてはいろいろお考えがあるかと思いますが、これはなかなかケース・バイ・ケースということもありますし、事犯の内容等にもよります。  具体的な道路公団のお話がありまして、委員もお話しのように、現総裁はまことに清廉な方でありまして、あらゆる面から見ましてもこの事業推進については手腕力量を発揮されてきたことでございます。みずからも辞任の意も申し述べられましたが、建設大臣といたしましては、今後こうしたことが公団の内部に再発をしないことも含めて総裁としての責任を果たしていただきたいということで実は留任をすることになった次第でございます。もとより総裁としてみずからその本俸をカットする、その他のみずからの姿勢は示しておりますが、この点につきましては、政府としては、今回の措置によって総裁としてさらにこうした事犯が内部に再発をしないように、今後とも努力を願ってこの総裁職を続けていただきたいというふうに思っております。しかし、いずれにしても事件の発生その他につきましては遺憾のことでございますので、政府全体としてはさらに綱紀粛正に努めてまいりたい、このように考えております。
  79. 菅野久光

    ○菅野久光君 官房長官は日程がございますようで最後にちょっと申し上げておきますが、地方自治体の汚職も大変頻発しているんですね。最近の新聞をちょっと見ましても、秋田、大月、矢板、小山、東久留米、富士吉田などで発生しておりまして、中には現職の市長も逮捕されている。汚職についてはまるで政府特殊法人を見習ったか、あるいはそれを超えるような状態だというふうに思います。政府機関の地方移転はうまくいかないんですが、汚職の地方移転だけは何かうまくいっているような感じで大変残念な状況だと思います。そうした意味でも竹下内閣の毅然たる態度が求められると思いますので、内閣としても自治大臣から地方団体に対して注意を喚起するようにぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  80. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 承知いたしました。
  81. 菅野久光

    ○菅野久光君 じゃよろしくお願いいたします。官房長官、結構です。  次に、国鉄の清算事業団の関係について、特に公的部門の採用の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  昨年の四月一日に国鉄が分割・民営化されて一年たちました。JR各社は黒字基調ということでマスコミも報道されておりまして、大変結構なことだと私も思っております。  しかし、この華やかなJR発足一周年とは対照的に、国鉄清算事業団では再雇用の見通しが立たないということで不安な日々を送っている人々が北海道、九州を中心に約五千名いるということを忘れてはならないと思います。この人たちは、昨年二月に不採用になって以降今日まで、何の仕事も与えられずにパイプいすで一日を過ごすという精神的な苦痛の中で、仕事がしたい、家族を安心させたい、そういう思いをしながらこのつらさに耐えて再雇用を待っているのが実情です。健康な人間が仕事をしないでじっとしているということぐらいつらいことはない。清算事業団の中では何もさせられていない、自学自習ということでやられているわけですから、言えば格子なき牢獄という言葉がぴったりするのではないかというふうに私は思わざるを得ないんです。  そういう意味では、今の清算事業団に置かれている人々のことを考えますと、これは人権問題だ。それは旧国鉄時代にいろいろなことがあったとしても、そこにいる人たちの一人一人の責任の問題ではない。それがまだ二十代、三十代、四十代という働き盛り、子供がまだ一歳だとか二歳だとかという小さい子を抱えている。そういう人たちのことを考えると、まともな感覚を持ち合わせている人であれば、一日も早くそういう状態から解放してあげたいという思いをすることは当たり前ではないかというふうに思うんです。しかもこの人たちは、昇給、昇格はない、ボーナスもカットされている、期末手当でJRに比べて一・一カ月も減らされている、そういうような状態になっているわけです。だから、この方たちの生活も苦しくなっていることは間違いがありません。このような状態から一日も早く希望を持って新しい仕事につけるように政府は努力する責任があります。それは、一昨年の第百七回国会で、本院の国鉄改革特別委員会の中で政府は雇用に対して多くの約束をしておりますから、この約束を必ず政府は実行しなければならない責任があるわけです。  今次、特に公的部門三万名の採用について、その窓口であります総務庁にお聞きをしたいと思います。  まず初めに採用目標、国、省庁一万三千名、特殊法人五千五百名、それから地方公共団体が一万一千五百名となっていますが、このうち何名の枠が確保されて、または採用、採用内定しているということになっているのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  82. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 先生は公的部門の受け入れの窓口というふうに総務庁についておっしゃいましたが、実はそうではございません。私どもの方は、公的部門のうち、国、それと特殊法人の関係の取りまとめをやっております。  そういう意味では、六十二年度から六十五年度まで年次計画で採用していくという、当初はそういう計画を持ちました。しかし実態を見ますと、職員のためにも不安定な状態が続くのは好ましくない。各省としても、やはり早くから採用計画を立てた方がいい方も来てもらえるんじゃないかということで、一括選抜という形で前倒しで採用内定をしてもらうように各省庁にお願いしたわけです。それが現在までに、数でいいますと約一万三千百人、これが採用内定ないしはもう既に採用されているという形になっております。  その他の地方公共団体等につきましては、私どもの方は所管しておりませんので、ちょっと答弁は差し控えさせていただきます。
  83. 古居儔治

    説明員(古居儔治君) 地方公共団体関係につきましてお答えをいたしたいと思います。  国鉄及び清算事業団の職員の受け入れにつきましては、国鉄等職員の受け入れを表明しておりました地方公共団体におきまして一括選考の実施をするなど、できるだけ早期に採用するよう努力していただきました結果、昭和六十三年の四月一日現在で六千九百四十人が採用済みとなっておりまして、このほか千九百五十人が採用内定を受けております。したがいまして、両者を合計いたしますと八千八百九十名というふうになっております。
  84. 菅野久光

    ○菅野久光君 総務庁は取りまとめをやっているというふうに私は認識してるのですが、それは間違いですか。
  85. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 公的部門全体ではございません。それはむしろ運輸省の方がその全体の取りまとめ、かつて内閣がやっておりましたが、私どもの方は国と特殊法人関係の取りまとめをやっております。
  86. 菅野久光

    ○菅野久光君 次に、現在の状況なんですが、当初とはかなり状況が違ってきているというふうに思います。当初の計画では、全体の在籍職員が二十七万六千名、新事業体の適正要員規模が約十八万三千名、したがって余剰人員は九万三千名だった。そして、このうち鉄道旅客部門の適正要員の二割が三万二千名でありましたから、他に雇用の場を求める者は希望退職の二万人を含めて約六万一千名であったんですね。その人々が清算事業団職員となりて再就職先を探すということになっていたわけであります。ところがふたをあけてみますと、他に雇用の場を求めることとなるのは総計で一万八千八百八十人ということになりまして、政府としては従来各部門別及び各省庁別に設定された目標数値、これは効力を失うことになったんだけれども、新たな目標数値などは設定しないことにしたようです。そうしますと、これまで旧国鉄職員を各部門、各省庁で採用を決定した実績がどの程度なのか。採用努力の評価ができなくなるのではないか、これは大変おかしなことになると思うんです。  そこで、私なりに従来の目標数値を新たに職を求める人々の人数を基礎に計算し直して、ことしの一月一日現在の実績に照らして見ますと、ある程度の各部門における採用状況の強弱がわかってまいりました。それによりますと、民間企業ははるかに当初の予定よりも数値は上回っている。特殊法人もわずかではありますが超えていて、地方自治体はほぼ達成しているという状況だと思います。それに引きかえて、国と国鉄関連事業が大幅に下回っているという実態だと思います。最終的には六十五年度初めまでに採用すればいいとはいっても、あと二年足らずとなっておるわけですし、この間に清算事業団で心待ちにしている人々がたくさんいるのですから、一日も早い再就職ということが実現されるように、これはだれしもが希望しているわけであります。こうした現状ですと、国は大きな顔をして法律にうたわれている協力要請をこれ以上特殊法人や地方自治体にできないのではないかと思います。各省庁総務庁中心になってもっと強力に採用を働きかけるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか、長官。
  87. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 先生指摘の公的部門三万人、確かにそういう設定がある時期にされました。ただ、そのときには、正直に言いまして国鉄の方の要員数等がはっきりしないために、まあおおむねということで三万人を設定して、それを公的各部門の各分野に一応割り振ったという事実がございます。ところが、実際には希望退職が随分ふえてきて、実態とは違ってきたということがございます。それから、各省庁としては最大限努力いたしましたが、正直言って、例えば東京地区ですと、むしろ各省庁は採りたいと言っても、余り応募者はないというようなところもありました。  ということで、昨年の六月五日に閣議決定しておりますが、そこで再就職促進基本計画というものについてということで閣議決定をしております。その際に、それまでの先生のおっしゃった計画というのは、一応それはもう御破算にいたしまして、そしてそれまでに採用を内定している職員の着実な採用に努めるというふうにいたしたわけでございます。その後、さらに採用を内定している者以外の職員についても、要請があった場合には各省庁の実情に応じて職員を採用するように努めるということになっておりまして、本年の三月末の各省庁の人事管理官を集めての総会におきましても、可能な限り協力するようにという要請もいたしたところでございます。
  88. 菅野久光

    ○菅野久光君 可能な限りということでは、私は国としての責任ということからいえば、やっぱり問題じゃないか。  そこで、私は、公的機関のうちの各省庁が個別にどの程度採用を決定しているのかということを調べようとしたら、総務庁は現状を的確に把握していないようであります。手に入った資料は一年前の各省庁別採用申し出状況でありまして、これは六十一年度から六十五年度初めまでに各部門でどれだけ採用するかという今後の見込み数なんです。これでは、現状どの省庁の採用が少ないのか、そしてもっと努力してもらわなければならないのかがわからないんです。ある省庁はまともに――まともにと言ったら悪いですが、一生懸命取り組んでいる。しかし、ある省庁は消極的だ。しかし、当初の計画というのはそれなりにやっぱりありましたし、またこの分割・民営化に当たって総理自身が、一人も路頭に迷わせない、政府が責任を持ってやるということを言ったわけでしょう。ですから、初めのうちはみんなそういうことだったんですが、だんだん日にちがたてばそれが冷めてくるというような状況になっているのではないか。  それから、募集をしても応募が少ないということがありますが、しかしそれは、そういう状況になったときに、やはりないからといってやらないということは私はだめだと思うんです。というのは、募集をしているその時点では、例えば年寄りがいるだとか、あるいは子供がもう少しで学校を卒業するというようなそれぞれの家庭事情あるいは地域の事情というものがあるのではないでしょうか。しかし、一定の時期がたてば、そういう今の、しかも雇用の状況等を考えて、行かないつもりだったけれども、しかしこのままいるわけにいかないから応募しようというような気持ちになる人も出てくるのは当たり前じゃないでしょうか。そういうことをしっかり考えて、前に募集したけれどもいないから、もうやらないんだと、何か清算事業団はそんなようなことを言っているようでありますが、これはまあ別のときにやりますけれども、そうじゃなくて、やっぱり国としての責任というものをしっかりやってもらいたいというふうに思うんです。  この再就職の関係については、当初予想していた余剰人員が、先ほど申し上げましたように、いざ民営化がスタートした時点で大幅に下方修正ということになったわけであります。それで相当進展しているのではないかというふうに思いますから、その状況をぜひ把握したいというふうに思います。先週からこれは頼んでおりますから、各省庁別の資料を出してもらうように、ぜひこれはお願いをしたい。  なお、二十五日にこの決算委員会運輸省の部をやりますので、そのときにもぜひその資料を使わしていただきたいというふうに思いますから、この提出についてはよろしゅうございますね、遅くとも来週の前半には提出をしていただきたい、このように思いますが。
  89. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) これは各省庁の了解をとらなければ出せないものですから、おくれていることをおわびします。先生のおっしゃった期日までにはお手元に届けるようにいたします。
  90. 菅野久光

    ○菅野久光君 そういうことでぜひ対応してもらいたいと思いますし、また清算事業団の職員の採用の問題については、各省庁でそれは別にきちっと、いつでも総務庁が提出してくれと言ったら出せるような状況にしておくのが、私は国としての責任ある対応の仕方ではないかというふうに思うんです。一週間以上たっても、総務庁が要求しても出さない省庁があるということは、それだけ責任ある対応をしていない省庁ではないかというふうに思わざるを得ないんです、そうじゃないとおっしゃられるかもしれませんが。  では次に、清算事業団職員の再就職促進の基本計画がありますが、この中で、総務庁は、各省庁への円滑な受け入れに資するために、調整定員の一部を清算事業団職員の受け入れ用に割り当てる措置等を講ずるものとする、ということにこれはなっているんですね。ですから、各省庁、特殊法人、それから地方公共団体においても、この閣議決定での一四%という採用枠をぜひ今年度以降、人数もずっと少なくなったんですから、あるいはこれも変えるのかもしれませんけれども、早急にとにかくこのことがなされるように私はしてもらいたいと思うんです。というのは、清算事業団で今何も仕事をさせられていないんです。この人たちの給料は清算事業団で払っているんです。清算事業団で払っているというのは国民の税金で払っているんです。ですから、清算事業団で再就職を希望している、そういう人たちの雇用というものを一日も早くやることが私は国民に対する義務、責任ではないかというふうに思いますので、その点について、今年度以降どのようにされようとするのか、明らかにしていただきたいと思います。
  91. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 清算事業団の方からも答弁していただきたいと思いますが、先ほども申しましたように、当初の計画というのは不確定な数字をもとに一応割り振ったものでやったわけです。現実には地域差の問題がございまして、大きく残っておりますのは北海道、九州でございます。逆に言えば国家公務員の場合には、地方に置いてある職員というのはそれぞれの必要性に応じて置いてあるわけです。ということで、北海道で精いっぱい採っております。普通よりも多目に採っておるわけですが、これ以上、例えばそれを採るということはできないわけです。それで、しかも各省庁から募集させる場合には、なるべく広域募集をしてくれ、東京で採る場合も東京だけで募集するのではなくて、全国を対象として募集してくれという要請も行った結果が今の状態になっておるわけです。  それで、現在の六月五日の閣議決定では、現在内定している者を円滑に採用していく、これを中心にやっております。残りの者につきましては、もう数も少なくなっておりますので、個別に清算事業団の方が個人個人の状況も把握し、その上でこういった口はないかというようなことで各省庁に来た場合には、それに協力してほしいというふうに各省庁にお願いしている、そういう仕組みになっているわけでございます。
  92. 池神重明

    参考人池神重明君) まず、清算事業団におきまして再就職先が未内定の職員の現状でございますが、昨年の四月一日以降ことしの四月一日までの一年間におきまして、再就職先の未内定者が各分野での採用決定等によりまして、当初の七千六百二十八人から本年の四月一日現在で四千七百七十三人になっております。二千八百五十五人減少いたしております。  そこで、先生のお話にございます公的部門についてでございますが、既に積極的な一括選抜を推進していただいておりまして、その結果、本年の四月一日現在で国の関係で約八千五百四十人ほど、それから特殊法人等で四千五百七十人ほど、それから地方公共団体で先ほどお話しございましたように八千八百九十人、合計二万二千人につきまして採用または採用内定をいただいておるわけでございまして、できる限りの努力をしていただいているというふうに考えているところでございます。  ただ、事業団としましては、全体の雇用情勢が大変厳しくなる中で、事業団の職員だけのための例えば枠を確保するといったような新たな採用の申し出につきましては、かなり厳しい状況にあるんではないかというふうに認識はいたしております。  ただ、職員の公的部門への志向、希望といいますか、これはまだかなり根強いものがございますので、私どもの本社あるいは地方などにおきましてこれまでのつながりなどをできるだけ活用させていただいて、実情に応じて一人でも二人でも公的部門に採用していただけるよう、お願いをいたしておるところでございます。  このような取り組みによりまして、事業団に移行しましたこの一年間におきまして、新たに公的部門に二百四十三人を採用もしくは内定をしていただいております。それから採用は、既に内定している者につきましては、これも各省庁等におかれまして着実に御採用していただきました。その結果、昨年の四月一日で採用の内定者が一万一千二百四十九人おりましたが、ことしの四月一日には四千百五十四人となりまして、七千九十五人減っております。引き続き着実に採用していただけるよう、今後ともお願いをしてまいりたい、このように考えております。
  93. 菅野久光

    ○菅野久光君 採用の問題について一人でも二人でもというのは、本当に一人でも二人でもその積み重ねでありますから大事なことなんですが、特に各地方自治体などについて、これは可能な限り清算事業団職員を雇用してもらいたいという国としての要請というのは、それぞれの各自治体にはされておるのですか、おらないのですか。
  94. 古居儔治

    説明員(古居儔治君) 自治省といたしましても、昨年の六月五日に閣議決定をいただきました再就職促進基本計画に基づきまして、国の講ずる措置に準じて清算事業団の職員を採用していただくように要請をいたしてはいるところでございます。
  95. 菅野久光

    ○菅野久光君 ある自治体に行ったら、国の方から何かそういう要請が来ていればやりやすいんだがというような話をされたということを私は聞いております。あるいはその方が知らなかったのかもしれませんけれども、年度も変わっているわけですし、ぜひあと残された人たちが一日も早く一人でも再就職ができるようなそういう方途を国としても通達などを含めてひとつやっていただきたいと思います。  時間が来ましたので、この問題についてはまた改めて別な機会に取り上げていきたいと思います。  最後に、長官、行革ということで定員削減をある程度機械的にやってきたわけですね。しかし、どうしても必要なところというところには幾らかずつ定員をふやしてきたことも私は認めるわけです。しかし、それは本当にスズメの涙程度でありまして、非常に私は残念だというふうに思うんですが、例えば国民生活に非常に重要なかかわりのある検疫所です。今食糧、食品が洪水のように日本の国に入ってきているんですが、それを水際で食品添化物だとかあるいは農薬だとかそういうものの基準を超えていないかどうかということを調べる、そういう人たちがなかなか、若干はふえていますが、ふえていないんです。ですから、やっぱりふやさなきゃならないところは、必要なところはふやして、必要でないところは減らす、これはだれもが当たり前なことなんですが、必要なところだけはぜひふやしていただきたいと思いますし、そういう国民からも非常に強く要望のあるところについては大臣も足を運んでひとつ現場を見てやっていただきたい。  そういう中で実感として受けとめてもらわなければ私はいけないと思いますし、公共事業がどんどんふえてくる中で、ある人の話では、現場監督が四十も五十もの現場を抱えて監督しているというんです。それじゃ監督にならないんです。そうしたら、結局業者が責任施工ということになっている。じゃ責任施工できちっとやっているかということになれば、やっぱりもうけなきゃならぬということで、全部の業者じゃありませんよ、一部の悪徳業者は施工だけはして、何とか検査員が来ないように祈って、できるだけ早く台風が来て災害でまたやればいいというような、そういうことなどもあるやに聞いております。  その辺について、今後の定員問題について長官から一言お話をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいま委員指摘のように、今日まで七次にわたりまして定員の削減を実施してきたところでありますが、反面また必要な部門につきましてはそれぞれの手当てをすることは当然のことでありまして、特に非常にふえておりますのは国立大学、これが三万名余りふえておるということであります。  その他、ただいま御指摘のあったようなことにつきましては、今後とも最大限の配慮をしてまいりたいと存じますが、検疫などにつきましては、これは一つにはそれに適格な職員がどれだけ得られるかという問題もあろうかと思います。それから建設関係につきましては、最近、質的にはかなり施工の技術が実際面では向上しているというふうに聞いておりますが、なお、今後とも総務庁といたしましては各省庁の御要望を十分拝聴しながら進めてまいりたい、このように思います。  現場を見に行けということでありますが、現場を必要があれば見ることはやぶさかではございませんが、現場を見るとなかなか切りにくくなりますので、したがいまして今後、各省庁の御意見も伺いながら必要に応じてやりたいと思います。
  97. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  98. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、内閣総理府本府及び総務庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  99. 板垣正

    ○板垣正君 私は、サンフランシスコ平和条約第十一条に関連して政府見解を伺いたいと思います。    〔委員長退席、理事菅野久光君着席〕  サンフランシスコ平和条約は昭和二十六年九月八日調印され、翌二十七年四月二十八日に発効しました。これによって我が国は七年近い占領から解放され、独立を回復し、国際社会に復帰したわけであります。  しかし、その第十一条には次のごとく規定されました。「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」。さらに、日本国内服役者について、その赦免、減刑、仮出獄に関し、我が国の勧告と関係国政府の決定を要件とすることが定められております。  この背景としては、当時、いわゆる戦犯として拘禁中の者は国内巣鴨には千五十四名、フィリピン、豪州には合わせて三百五十七名と言われ、この早期釈放は国民的な関心事、要望であったわけであります。普通ならば平和条約発効とともに解消されることが当然でありましょうが、言うなれば異例の措置とも言うべきものであったと思います。したがいまして、平和条約第十一条の目的は、平和条約発効と同時に我が国が任意に戦犯等を釈放することを禁ずるために設けられたものであり、第十一条により我が国は連合国にかわり刑を執行する責任を受諾させられたわけであります。その意味ではあくまで判決を受諾したと言うべきであろうと思います。しかし、これをもって我が国が東京裁判を受諾し、かつ、したがって平和条約発効後も、さらには今日に至るまでも国として東京裁判の批判は許されない、あるいは東京裁判は正当であったと、こういう認めるべき義務づけを受けておるというふうな見解もありますけれども、こうした見解は私は妥当でないと思う。  この問題の今申し上げましたような点について、つまり東京裁判はタブーである、あるいはこれは正当化されているという見方について政府の見解を伺いたいと思います。官房長官、お願いします。
  100. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 極東国際軍事裁判につきましては、諸外国におきましても、また学者の間でも、また今、板垣委員御自身もかねて来この問題についてのメインサブジェクトと考えられるほどに、この問題についての御見解を持っておることも承知をいたしております。おりますが、政府といたしましては、同裁判をめぐる法的な諸問題に関しまして種々の議論のあることは承知をいたしておりますが、いずれにせよ、国と国との間の関係においては、我が国はサンフランシスコ平和条約第十一条によりまして極東国際軍事裁判所の裁判を受諾したことは御承知のとおりであり、我が国としては、右裁判を受諾した以上、右裁判についての異議を唱える立場にはない、こういうふうな考え方でございます。
  101. 板垣正

    ○板垣正君 法制局長官にもお見えいただいておりますが、同様のことについて法制局としてはどういう見解をお持ちでしょうか。
  102. 味村治

    政府委員(味村治君) これは全くただいま官房長官がおっしゃったとおりに存じております。
  103. 板垣正

    ○板垣正君 外務省としてはいかがですか。
  104. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 外務省といたしましても、ただいま官房長官の方から御答答がありましたとおりの考え方をとっております。
  105. 板垣正

    ○板垣正君 そこで、私は歴史の事実ということについて申し述べ、さらに御見解を承りたいと思います。  この歴史の事実というのは、講和条約がかけられました昭和二十六年十月から十一月にかけて、平和条約及び日米安全保障条約特別委員会が衆参に設けられ、これらの議事録を改めて読み直してみたわけであります。  こうしたものを読みますと、第十一条に関しまして、当然平和条約で解消されるべき問題が和解と信頼の条約と言われながら、不幸にしてこの第十一条のような規定が置かれたことは大変遺憾であるというような意見がいろいろ述べられております。さらには、この十一条によりますと、日本内地に服役している者については日本政府の勧告、関係政府の決定があれば減刑等ができますけれども、なおモンテンルパとか豪州あたりにいる海外の者は釈放できない、そういうことに論議がやはり集中しております。外地にいる人を速やかに政府は救出をしろという声が非常にいろいろ論議をされておる。また、政府の立場からも当時高まっておりました、いわゆる戦犯釈放についての国民感情、国民運動、そういうものを受けながら最善の努力をするということが述べられております。  さらに、講和発効後でございますけれども昭和二十七年十二月九日、衆議院本会議におきまして、戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議が行われております。この決議は、当時の自由党の田子一民氏外五十八名、自由党と改進党、両社会党、無所属倶楽部の共同提案によるものでございます。  この決議におきましては、独立を回復して半年たっておるけれども、今なお巣鴨には、当時八百十名、さらに海外には三百八名、しかもそのうち五十九名は死刑の判決を受けておる、こういう状況についてこれらの助命、内地送還、赦免、減刑、仮出獄、こうしたことを促進すべきであるということを強く政府に迫った決議が採択されているわけであります。  なお、これに先立ち政府においても、昭和二十七年の八月にいわゆるB、C級の戦犯に関して釈放の勧告を関係諸国に出しております。さらに、二十七年の十月にはいわゆるA級も含めたB、C級全戦犯の釈放の勧告を連合国に提出をしてその促進を図っておるという事実も背景にあったわけであります。  そして、この議事録、これは官房長官まだ見ておられなかったらぜひ、私は一つの歴史的文書であるというふうに考えるわけであります。  特に論議をされておりますのが、いわゆるB、C級を扱いました軍事裁判の問題であります。この軍事裁判には約五千名が戦後起訴をされ、約千百名の人々が死刑に処せられておる。しかし、いわゆるB、C級については言葉も通じない、弁護権も決して十分ではない、そしてまた、時間的にも非常にたってしまっておる、あるいは人違いがある、そして全く関知しないことについて刑を受けておる、あるいは全く事実無根のことが裁判にかけられる、言うなれば、まさに暗黒裁判、勝者の憎悪による復讐裁判。このB、C級戦犯の異常なそうした姿についても、この二十七年、独立回復後半年の衆議院本会議においていろいろ論議がされておる。さらには、東京裁判につきましても、パール判事が日本無罪論と言われますけれども、いわゆる東京裁判というものが法的正義を破壊したんだという立場に立ったいろいろな発言等も引用されつつ、この勝者のみに適用される法律、罪刑法定主義も無視し、いわゆる事後法の扱いによって行われた裁判、こうした一方的な文明の破壊、こういうこともその時点において国会論議の中で各党から論議が行われている。この記録を改めて見たわけであります。  さらに下がりまして、四十年八月六日の衆議院内閣委員会でありますが、高瀬傳委員がこのように述べております。判決の容認と裁判自体の正当性に対する日本政府の見解披瀝は別の問題ではないか、将来子孫に非常に重大な影響がある、政府として統一見解を持つ必要があるのではないか、勝者の敗者に対する裁き、国際的にはあり得ないことである、時期が来たらそういうことに対する政府の見解もちゃんとしておいてもらいたい、それが子孫に対する現在生きている者の義務ではないかと思う、研究してもらいたいという発言もとどめられております。  以上、るる申し上げましたように、この裁判について私はきょうあえて内容について申し上げようとは思いません。ただ、先ほど官房長官から、内閣法制局長官から、そして外交当局から御答弁があったように、事実においてこの裁判を受諾しておるということにおいて今なお我が国が拘束をされ、そしてこれに対する国としての見解を述べることがなし得ないとするならば、まさに先ほど来申し上げましたような講和後のあの歴史の流れの中で、国会の中で、これは背景における国民的な運動という盛り上がりの中、堂々たる真実を求め、折り目を正すべきであるとする議論が高らかに行われたということに思いをいたしますときに、戦後四十三年を経て今なおこうした御答弁、こうした政府の態度に接しざるを得ないということはまことに残念であります。  特にこの問題は、今申し上げましたように、第十一条で受けとめましたのは、東京裁判もありますけれども、いわゆる暗黒裁判と言われるB、C級をめぐるあの外地におけるあるいは内地における裁判の実態ということでございます。こうしたものも含めてこれを受諾したということは、冒頭申し上げましたように、この判決を受諾する、日本政府がかわって刑を執行する、ここにまさに目的があり、その趣旨があったのではないか。ちなみに講和条約の英文の正文、あるいはフランス語あるいはスペイン語、これが正文になっているようでございますが、専門的な国際法学者のこれらの検討、研究等におきましても、これらの正文におきましてはやはり素直に判決を受諾する、そういう趣旨に読まれるということを専門家の意見として伺っております。  そういうことで今こそ、先ほどの高瀬傳委員が四十年八月六日に言われた「時期が来たらそういうことに対する政府の見解もちゃんとしておいてほしい。これは子孫に対する現在生きている者の義務ではないか」と。我々はやはり今日あるのもあの先輩たちが築き上げてきたあの叫び、その流れ、これはやはりその歴史を継承し、そして我々の責務を果たし、次の代に伝えていかなければならない、そういう立場においてまさに今時期が来ているのではないのか。東京裁判が正当、これに批判ができない、こういうことによって日本は国際法を無視した侵略国家であり、犯罪国家である、悪い国なんだという主張が今なおいろいろ見られることはまことに遺憾であります。やはり、国家には名誉があります。また、民族には誇りがあります。しかも、私ども真に戦争を反省し、そしてまた、平和を何よりも守っていかなければならないという思いにおいて断じて人後に落ちるものではありません。また、これは自由民主党の、また国の一つの国是であろう、国民的なまさに基盤であろう。しかも、なおかつ今申し上げましたような立場において、政府の見解を重ねてお伺いしたいわけであります。  官房長官、いかがでしょうか。まず、政府として、東京裁判あるいは軍事裁判等について、これはもう受諾したんだから全くタブーだ、あるいはこれに対する批判はできないんだ、こういう立場というものはやはりもうはっきり脱却をして、今直ちにこれに対する見解を出すか出さないかは別として、それに対しては独立国家として、自由なる国家としてこれに対して自由なる見解は持ち得るという、せめてそういう立場をこの際明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 板垣委員のお考えを述べられ、お聞きをさせていただきました。政府といたしましては、冒頭申し上げましたような見解を一貫して国会の場で申し述べてきたところでございまして、その範囲を超えることは困難と存じますが、私もここ何年か前でしたか、東京裁判なる記録映画を見ました。その他極東裁判は、おっしゃられますように、B、C級の方々が大変厳しい外国の収容所の中で処置をされたという経緯も承知をいたしております。  いずれにいたしましても、今日の平和国家日本の存在を思うときに、多くの方々の犠牲といろいろ歴史的な経過の中で確立されたこのすばらしい今日を思いますときに、いたずらに過去の問題を忘却のかなたに押しやることはいかがかと思います。先生がお示しをいただきました速記録等につきましては、私も終戦間もないころはまことにまだ幼少のころですべてを理解しておりませんので、改めて当時の速記録等を拝見させていただきながら考え方を取りまとめてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、政府としては一貫としてこうした考え方を述べてきたところでございますので、重ねてこの裁判については今政府としては異議を申し述べる立場にないということを申し上げざるを得ないところでございます。
  107. 板垣正

    ○板垣正君 従来の政府見解というものを直ちに変えるということについて、この場で御答弁を求めることがあるいは無理かもしれませんけれども、しかし長官、どうかそうした形でいつまでも日本がある意味の特殊な国家といいますか、そういう形でみずからの歴史をみずからが明らかにすることができないということではまことに遺憾であり、もちろん私どもの立場において今後さらに今度は裁判の内容に立ち至ってもこれらの問題について解明し、先輩議員の築き上げられてきた伝統を受け継ぎ、そして次の子孫に歴史の真実を深刻なる反省とともに残さなければならない、こういう思いを重ねて新たにいたすわけであります。  きょうは、私は以上を申し上げて終わらせていただきます。ありがとうございました。
  108. 菅野久光

    理事(菅野久光君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  109. 菅野久光

    理事(菅野久光君) 速記を起こして下さい。
  110. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、きょうは先般上海で起きました列車事故につきまして質問させていただきたいと思います。  先般、上海で起きました列車事故はまことに痛ましい限りであります。この事故、特に修学旅行の途中で事故が起きたということは非常に大変なことであると受けとめております。そういうような意味で、特に犠牲になられました高校生を初め担当の先生、そして負傷されました皆さんに対しまして早く御回復されますように、また御家族の皆さんをお見舞いをする、そういうような意味を込めてきょうはこれから質問をさせていただきたいと思っております。  既に官房長官も御存じのとおり、この修学旅行というのはことしがちょうど百年になるんだそうでございます。いろいろと調べてみましたら、そのことに関連をした記事も相当たくさん出ておりました。また、「学校ことはじめ事典」というのがあるんだそうですが、この中にも修学旅行というのはどういうものかということも記載をされておりました。調べてみますと、明治十九年に東京の高等師範学校の生徒が関東地方を何日間か学術研究のために行軍をしたんだそうでありますが、その旅行に修学旅行という名前が付せられてことしでちょうど百年だそうであります。  そこで、きょうはこの修学旅行の目的とか意義というようなものにつきまして、初めに文部省にお伺いをいたしておきたいと思います。
  111. 中島章夫

    説明員中島章夫君) 修学旅行でございますが、これは教育課程上特別活動の学校行事ということに位置づけられておりまして、学校行事の中には儀式あるいは学芸、体育等のいろいろな行事があるわけでございますが、その中の旅行的行事というふうに位置づけられております。  この目的は、平素と異なります生活環境の中にありまして、見聞を広め、集団生活の決まりとか公衆道徳などについて望ましい体験を積む等の活動を通しまして、各教科での学習をさらに深め、広い知見と豊かな情操の育成等を図るということにいたしております。
  112. 峯山昭範

    峯山昭範君 そういうことで修学旅行が行われているんであろうと思いますが、これは文部省からいたださました資料によりましても、最近の修学旅行の傾向というのが既に資料として私の手元 にも入っております。特に最近の修学旅行がどういうふうな傾向になっておりますのか、最近の傾向について概要を御説明いただけますでしょうか。
  113. 中島章夫

    説明員中島章夫君) 最近の修学旅行でございますが、特に海外へ出かけるというケースがかなりふえてはきております。現在、公私立合わせまして、これは六十一年度中でございますが、百三十四校が海外へ出ておりますが、そのうち一番多いのは韓国、続いて中国といったような順序になっております。国外に関連をいたしましてはそういうことでございます。
  114. 峯山昭範

    峯山昭範君 実は最近の修学旅行、海外も随分ふえてきたようでございます。私の手元にも資料をいただいておりますが、韓国を初め中国、台湾、アメリカ、香港、マカオ、遠くはオーストラリア、カナダ、ニュージーランドと非常に幅広くなってきているようであります。  きょうの私の質問の趣旨は、海外のこういう修学旅行をやめるというつもりはないんです。しっかり私は海外にもどんどん行かしてもらいたい、今回の事故を契機に修学旅行がしぼまるような感じではいかん、そういうような意味で、もっとちゃんとやってもらいたいという意味を込めてこれから質問したいと思っているわけであります。  実は官房長官、これは最後でまとめて御答弁いただきますけれども、聞いておいていただきたいんですが、今回の事故が起きまして、これは毎日新聞の今田好彦さんという北京支局の方が「記者の目」というところで記事を書いておられます。お読みになっていただいておるかもしれませんが、私はこの記事を読みまして、こういう質問をする気になったわけであります。  実は、本当はこれを全部読んで御紹介したいのでありますけれども、時間の関係がありますから、前文のところだけちょっとだけ読ませていただきたいんですが、こういうふうな記事であります。   三月二十四日、中国の上海近郊で起きた列車事故、取材する私も、涙でノートの字がかすむ光景ばかりだった。だが、遺族の方の態度は立派だった。深い悲しみのなか、自己を抑え秩序をまもり、礼儀を忘れない。ホテルの従業員、車の運転手など遺族を世話する中国人みんながみんな「日本人は素晴らしい」と深い感銘を受けた。一方、病院で手当てを受けた生徒は「中国語で言えないのが残念。どうか、先生ありがとう、と私の気持ちを伝えてください」と通訳を通して中国人医師にお礼を述べた。国の違いを超えた人間同士の心の通い合いがあった。どうか、来年三月二十四日には、遺族の方も、けがをした生徒のみなさんも、もう一度、上海を訪れてほしい。また、海外への修学旅行を計画している学校は、ぜひ、実行していただきたい。国は違っても同じ人間がいることを知るのが、修学旅行の大きな意義の一つだと思うからである。 というのがこの記者の前文であります。  それで、この記事の中身を読んでみますと、非常に細かく取材をして、そして、遺族の皆さん方が中国へ参りまして本当に大変な悲しみの中、普通ならばとてもじゃないけれども取り乱して大変な状況になるようなところを本当に我慢をして、そして中国の皆さん方にお礼をしている様子、そしてまた、中国の政府が国を挙げて一生懸命にこの問題を解決しようとしている様子が、手にとるようにわかるわけであります。  そこで、この記者は何でこういう記事を書いたかというと、こういうふうな事故が起きると日本ではすぐこういうことが起きるということで書いているわけです。それは、  たぶん、新聞が「海外への修学旅行見直しへ」といった見出しで、文部省あるいは教育評論家の「慎重論」を大きく紹介するのではないか。また、発展途上国である中国での事故だけに、遺族、家族を含めた日本国民が、例えばアメリカでの事故とは違って医療体制などで不安を持つのではないか。 ということで、修学旅行とかそういうのがだんだん逆方向に行くのではないかという心配もあってこの記事を書いた、こうこの方はおっしゃっているわけです。  そこで、私はこの記事を皆さんに紹介したわけでございますが、実は文部省は、この人が思っているとおりになっているわけです。そういう指示をちゃんとそのとおりにしているわけです。それは、私がもう紹介するまでもなく、文部省はこの事故が起きる前の六十三年一月十九日には、これは私立高校とかいろんなところに対しまして、各都道府県によっては修学旅行の海外旅行を禁じたりあるいは飛行機の利用を禁じていた文部省が、ことしの一月十九日に開いた都道府県教育委員会の指導部部課長会議で、ことしから海外旅行もオーケーという前向きの新聞の記事があった。これは新聞の記事です。実際はどうだったかわかりません。ところが、この事故が起きたすぐ後には、今度は海外旅行は厳しくチェックということで新聞に報道されております。  三月三十一日、同じく全国都道府県教育委員会に対しまして、次官名で今度は自粛を求める、いわゆる公立高校については承認が必要、私立校に対しては届け出の義務が必要、こういう通達を出したという記事が出ているわけであります。実は私の手元に、今までに修学旅行に関する通達というのだけで一冊の本になるぐらいたくさん出ておるわけです。これはそれで当然そういう処理はしなくてはいけないと私は思うんです。しかし、やはりこれからのあり方として、この記者が心配しているようなこと、当然、こういう事故が起きたわけですから、それだけの心配事もあるわけですから、チェックすることはチェックしなければいかぬわけですけれども、全体としては、やはり臨教審の答申の中にもあるわけですし国際化の時代ですから、ここら辺の問題についてはぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思うのであります。初めに文部省の方から御答弁をいただきまして、その後官房長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  115. 中島章夫

    説明員中島章夫君) 今回の痛ましい不測の事故の発生を踏まえまして、今後特に海外への修学旅行をどのように考えるかということでございますが、目標といたしましては基本的には、我が国の国際化が進展いたします中で、伸び盛りにある高校生が外国に旅行いたしまして、外国人と交流したり外国の文物に直接接するなどして国際的視野を広めることは意義のあることであるというふうに考えております。しかし一方、今御指摘もございましたように、修学旅行というのは、外国への修学旅行でございますが、我が国とは環境や習慣あるいは衛生、医療、交通事情等の異なる土地への旅行でございますので、安全の確保が極めて重要であるというふうに考えているわけでございます。  先ほど御指摘がございましたように、本年一月、実は、昭和四十三年に出しました通達、この中では特別に海外旅行を禁止しているということでもないわけでございますが、改めまして、先ほど申しましたような事情のもとで、海外への旅行ということもあるということを基本的に示しながら、その教育的な意義とか目的というものを明確にする、あるいは生徒などの健康管理や安全の確保、交通機関等についてあらかじめ慎重に十分配慮する、またこれらについて保護者の理解を十分に得るといったような諸点を改めて留意するように各都道府県に指導をしたわけでございます。  さらに、今回のこの痛ましい事故が発生をいたしましたものですから、三月三十一日付で文部次官通達を出しまして、海外の修学旅行の計画実施に当たりまして、あらかじめこれを学校の管理機関への届け出または承認にかかわらしめるなどの慎重な取り扱いを指導したところでございます。  今後さらに、教育関係者のみならず旅行業者への情報の収集、提供等の指導を含めまして、きめ細かな指導をやっていく所存でございますし、教育的に意義ある海外修学旅行がそういうことをしながら適切に実施されるように今後とも配慮をしてまいりたいと考えております。
  116. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) ことしが修学旅行百年ということは先生からお教えをちょうだいいたしました。こういう年に当たって、今出ておりますようなこうした上海の列車事故が発生したということは、大変悲しいことであり、かつ残念なことだというふうに思っております。改めてこの事故で亡くなられた方々に心から御冥福をお祈りいたすところでございますが、先ほど来委員がお読みをいただきました、新聞の意見をお取り上げになられましての所見は、私自身も卓見、卓論だというふうに率直に思います。記事の中で、中国政府の対応の仕方、また御遺族あるいはけがをされた方々の父母の方々の現地においての対応について、本当に悲しみを乗り越えて慎みを持って対応されたそのお話は、改めて感銘深く実は拝聴いたしたところでございます。  政府といたしましても、事件発生以来直ちに竹下総理の御指示によりまして、御案内のとおり外務政務次官を現地に御遺族の方々とともどもに特別機で派遣をするというようなこともいたしまして、政府としては速やかになすべきことを配慮したつもりでございます。改めてお褒めをいただくことではありませんけれども行政としても政治としても対応すべきことについては努力をいたしておるところでございます。  そこで、御指摘のように、事件発生以来直ちに文部省といたしましてもただいま御答弁されたような種々の指示をされたということでございます。これまたある意味ではこうした事件を通じてさらに今後そうしたことが二度と起きないような措置として対応することはもとよりでございますが、記事の中にも示されておりますように、俗に言う羹に懲りて云々ということであってはいけないわけでございます。適宜適切に対応いたしていかなければならないことは当然でありまして、このことをもってして、せっかくの国際交流も含めた海外への目を開くための修学旅行というものが細るようなことがあってはならぬという先生の御指摘は、私もそのとおりだというふうに考えております。
  117. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、今回の列車事故の犠牲者の皆さんに対する補償問題、ちょっとこれもお伺いしておきたいと思います。  これはいろんな問題がたくさんあるわけでありますが、今回の事故は修学旅行であります。本来、修学旅行というのは旅行会社が主催する主催旅行ではないので法的には何か旅行会社に補償の義務はないと、今そういうふうに言われているわけでありますが、それでも今回の事故については、日本交通公社が団体障害保険から死者一人に対しまして約千五百万円の保険金を支払うというようなことが報道の中にあるわけであります。また、交通公社を含む大手の旅行会社が修学旅行に保険を掛けるシステムを検討中であるということも報道をされております。また、文部省では日本体育・学校健康センターから遺族に対して一人当たり千四百万円の見舞い金を既に支払ったというような報道があるわけでありますが、この場合、中国側から補償金が出されてもその分を減額しないようにしてもらいたいという要望も出されているようであります。いろいろと問題がたくさんあるわけでありますが、現在までの補償交渉に関する交渉経過は大体どういうふうになっておりますか。文部省、外務省でわかる点だけで結構でございますが、御説明いただきたいと思います。
  118. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 中国側との補償問題に関するお話し合いというのは、当然のことながら当事者、つまり日本側では御遺族を初めとする関係者の方々と中国側とで話し合いを始めることになるわけでございますが、いまだその話し合いが始まる段階には至っておらない状況でございます。
  119. 込山進

    説明員(込山進君) 先生からお話ございましたように、日本体育・学校健康センターと高知学芸高校との間には災害共済給付契約が締結されておりましたので、それに基づきまして死亡見舞い金を支給いたしたところでございます。今回、特にこの重大な事故にかんがみまして至急に手続するよう指示をいたしまして、三月三十一日に同センターの高知県支部より高知学芸高校に手渡されたところでございます。なお、遺族への支給につきましては、四月三日に開かれました遺族会において高知学芸高校が預かるというふうになったと聞いております。  なお、この災害共済給付につきましては、制度の建前で今まで国内で起きました事故の一般の仕組みと運用で申し上げますと、第三者の不法行為によりまして損害賠償が支払われた場合には、その受けた損害賠償額の限度において給付をしないという建前になっておりますので、その点に関しまして高知学芸高校並びに高知県知事からその問題についての取り扱いについての御要望をいただいております。  何分にも、今回の事故は外国で起きた事故という初めてのケースでありまして、中国におきます制度でありますとか、あるいは補償問題の成り行きなどもはっきりしておりませんので、それらが明確になった時点でセンターとしての取り扱いを指導することといたしております。
  120. 峯山昭範

    峯山昭範君 外務省はまだ具体的には動きはないということでありますが、外務省としてはこの問題についての例えば勉強、要するに中国の補償の状況はどうなっているかとか、国内においてはどうなっているかとか、大阪では弁護士さんが中国へ行ったというお話も新聞でいっぱい報道されているわけでありますが、そういうような点の勉強とか、あるいは外務省の中での窓口とか、例えば実際交渉する場合に窓口をどういうふうにしようかとか、そういうような具体的な話し合いとか相談は、実際問題として外務省の中でやっておられるんでしょうか。
  121. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) もとより私どもは中国の法制の勉強等も含めまして既に必要な勉強を始めておるつもりでございます。ただ、先生も御承知であろうかと思いますが、中国の法制自体まだ極めて初歩的な段階でございまして、いろいろ難しい点はございますけれども、精いっぱいの勉強はしておるつもりでございます。  また、現地におきましても、建前は先ほど黒河内部長から御説明したところでございますけれども、私どもも大臣の御指示もありまして、全面的に側面からあらゆる御協力をするようにということでございまして、先方の窓口を早く一本化するようにとかということも含めまして、裏で中国側に働きかけておるところでございますけれども、残念ながら中国の中にもいろいろ議論があるようでございまして、ただいま先生の御指摘になりました中国側の窓口につきましては、いまだ中国側政府の中で議論が継続中であるというふうに聞いております。
  122. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 一言だけ補足させていただきますけれども、外務省では私ども領事移住部が本件の担当ということで、高知県、今県の方で学校当局、それからそこに遺族会の代表も加わりました対策会議がつくられておるわけでございますが、そちらと緊密な連絡をとりながら、今後政府としてどのような側面的な御援助ができるか勉強しているところでございます。  その中には、いろいろ遺族会等の方で、これからまた代理人をお決めになる等の動きもございますので、そういう状況の連絡を緊密にしながら今後どのようなお手伝いができるかを考えていきたいと思っております。
  123. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題は非常に大事な問題でありますし、私は、中国政府のとった今度の非常に細かい配慮というものがあると思うんです。これは、例えば中国側から、この間から日本にお見えになっているいろんな皆さん方がわざわざ高知まで出かけて、遺族の皆さん方や病院で治療中の皆さん方に花束を持っていったり、激励したり、おわびをしたり、たびたび新聞の報道で見るだけなんですけれども、いろんな配慮をやっています。それは非常に私は大事なことだと思うんです。そういうような意味で、ぜひ外務省の方も、大臣も閣議でも発言をされて、今回の問題については政 府としても、被害者、学校側にできるだけ協力をしていきたい、側面的な援助に全力を挙げるということを言明もしていらっしゃるわけでございますし、ぜひともよく連携をとりながら、この問題がスムーズに、あるいは地元の皆さん方も政府がよくやってくれているというふうな感じを、まずお互いに意思の疎通というのがちゃんとないといかぬのと違うかな、そう思います。ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。  それから、運輸省お見えになっていらっしゃいますね。この問題と関連をいたしまして、やはりこういう事故というのは、文部省、外務省だけではなくて、旅行業法を扱う運輸省としても海外修学旅行というのはやはり非常に大事な問題であると私は思います。そういうような意味で、運輸省として検討すべき問題が幾つかあると私は思うんですけれども運輸省としてはこの問題についてどう御検討をされていらっしゃいますか。
  124. 平野忠邦

    説明員(平野忠邦君) ただいま先生の方から御指摘ございましたように、今回の海外修学旅行につきましては、これはいわゆる手配旅行と申しまして、旅行者であります学校側が旅行日程を立てまして、この旅行計画に従いまして運送機関と旅行者との間を旅行業者がいわゆる手配というのを行っておりますので、こういう運送機関等の事故につきましての責任というのは、第一義的には運送機関が負うということでございますけれども、先ほど先生の方からも御指摘ございましたように、今回の修学旅行を手配いたしました日本交通公社におきましては、旅行者を被保険者とする団体傷害保険というのに加入いたしておりますので、これに基づきまして今回の事故の被害者、これは死亡者及び後遺障害者を含みます補償者に対してでございますが、保険金が支払われるということになっております。  また、日本交通公社におきましては、今回の修学旅行の旅行計画等のオリエンテーションの一環といたしまして、保険会社に保険制度についての旅行者に対する説明というものを行わせておりますが、今後も旅行者に対する任意保険制度の周知の徹底ということを図ってまいりたいと思いますし、また今、先生の方からも御指摘ございましたように、こういうぐあいに修学旅行等海外旅行の機会がふえますと、やはり事故に遭う可能性等がふえてまいりますので、私ども運輸省の方といたしましても、外務省の在外公館等から得ました海外の安全に関する情報等を旅行業者に周知徹底を図るとともに、私どもこういう海外旅行における安全の確保ということは極めて重要な問題であると認識しておりまして、本年の三月一日に私ども国際運輸・観光局に日本人海外旅行安全等対策研究会というのを設置いたしまして、関係省庁あるいは関係団体、業界の参加を得まして開催いたしまして、この研究会におきまして海外における安全等の情報提供あるいは事故発生時の連絡体制、事故時の補償等に関します問題点を把握いたしましてその対策を検討いたしているところでございます。
  125. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは最後に官房長官にお願いしたいのでありますが、先ほどからのこの補償問題、これは当然建前は当事者間の話し合いということになるでありましょうけれども、この問題は非常に大事な問題であります。特に御存じのとおり、ことしは日中平和友好条約締結十周年に当たるわけであります。また、日中友好という点からいきますと、この三月二十四、二十六日にはヒマラヤの未踏峰であるカント峰の初登頂という報道がなされまして、これも日中友好があったからできたというふうに言われております。  そういうようなことを考えてみますと、日本政府としても、例えば運輸省が担当いたしております鉄道の安全技術なんというのがあるわけですね。そういうような問題とか、観光客の受け入れ態勢における整備のやり方とか、日本のJRが持っているノーハウなんというのがあるわけです。そういうような意味での協力ということもあると思いますし、安全対策の面でもいろいろあると思うんです。したがって、その補償の問題と、それから将来のそういう安全対策やそういう協力できる点はいろんな面であるんじゃないかと私は思うんです。したがって、将来のことを考えて幅広く政府としても、この問題を契機に、災いを災いのまま終わらせるんじゃなしに、将来の発展の大きな契機になるような解決をしなければいけない、こう思っておるわけでございますが、そういう点を踏まえて長官の御答弁をいただきたいと思います。
  126. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 今回の事故に対する処理につきましては、文部省、外務省、運輸省それぞれ御答弁申し上げましたが、政府一体となりまして機能的に有機的にしっかり相談の上、本問題につきましては親身になって御遺族のためにも、また同時に、中国との関係がかりそめにも悪くなることのないように対処いたしていきたいというふうに思っております。
  127. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、在韓被爆者の問題についてお伺いをいたします。  在韓被爆者の問題というのは非常に悲惨な問題でありますし、我々にとっては何となく忘れ去られていくような問題であります。実はきょうの質問に当たりまして、一九八六年十月に出されております日本弁護士連合会が調査をいたしました在韓被爆者問題第一次報告書というのを読ませていただきました。それで、これを読ませていただきましたら、本当にもう私たちといたしましてはこの被爆者の皆さん方にどういうふうに対応したらいいのかということで、私たちの気持ちとしてできる限りのことはしなくてはいけないなということをしみじみと感じているわけであります。  私も、実は一昨年でありますけれども、広島へ参りまして、八月のちょうど夏でありましたが、大会のときに現場でいろんな方にお会いをいたしました。そしていろんな御意見もお伺いしたわけでありますが、非常に大事な問題がたくさんあります。きょうは順番にお伺いしていきたいと思うのでありますが、まず初めに官房長官、在韓被爆者の問題についての御認識、今どういうふうな御認識をお持ちか、その点を初めにお伺いしておきたいと思います。
  128. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 数多くの朝鮮半島出身者が過ぐる大戦の折に被爆をされまして、なお多くの被爆者が韓国内で後遺症に苦しんでおられることにつきましては、心からお気の毒に思う次第でございます。しかし、この在韓被爆者問題につきましては、現在そうした方々が韓国人であるということで第一義的には韓国政府が国内問題として処理すべき問題であり、純粋法的に言えば、日韓間の請求権の問題は一九六五年の日韓請求権協定第二条により解決済みであるというのが我が国の立場でございます。しかし、今、峯山委員仰せのとおり、極めて人道的な性格の問題であることにかんがみまして、具体的な協力はどのようなことが可能であるかということにつきましては改めて検討いたしていきたいと思っております。具体的には、先般の日韓外相定期協議を受けまして実務者のレベルの調査団を派遣いたしまして、韓国側とあり得べき協力につき話し合いをさせていきたいというのが現在の政府の考え方でございます。
  129. 峯山昭範

    峯山昭範君 官房長官、実は私、この質問に当たりまして質問の通告をたくさんしたわけでありますが、今官房長官からお話ございましたので、端的にきょうは質問しておきたいと思います。  それは、実は新聞でもいろいろ報道されているわけでありますが、広島、長崎の被爆者の皆さん方というのは、これは正確じゃございませんが、日弁連の報告でも、韓国原爆被害者協会の話なんですけれども、生存被爆者は約五万人のうち、解放後約八千人が日本にとどまり、無事帰国できた者は約三万人、その後いろんなことや被爆が原因で多くが死亡して、現在約二万人の被爆者がいるはずであるというふうに推定をいたしております。  そこで、今官房長官もおっしゃいましたように、この問題は、結局補償要求の問題とかいろんな問題等、日韓条約ですべて請求権等は消滅しているということも私は承知の上であります。しかし、実は官房長官も御存じのとおり、日弁連の報告の中にもありますが、一九七〇年に孫振斗さんという方が韓国から密入国をいたしまして、被爆者健康手帳というものの交付を求めた。ところがそれは却下されるわけですね。ところがこの問題は裁判になりまして、最高裁まで行きまして国が敗訴をいたしまして、そして孫振斗さんの勝訴になったということがあるわけです。これは実は日弁連の報告の中だけかと思いましたら、それだけじゃなしにその他の新聞報道の中にもこのことと同じことが書かれておりますので、きっとこれは間違いないであろうと私は思います。  したがって、最高裁の判決は日本に現住する外国人被爆者にも原爆医療法を適用せよ、こういうふうに判決したということになっておりますから、このとおりだろうと私は思いますが、そういうことをずっと考えてみますと、私、きょうお願いしたいのは、一つは今までずっと続けてまいりました渡日治療というのがあります。これは韓国の都合でと言われておりますが、今打ち切りになっているわけであります。これを何とかもう一回復活できないかというのがまず第一の質問であります。
  130. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 先生も御承知のとおりでございますけれども、ただいま仰せの渡日治療の問題につきましては、実は日本側では何とかこれを継続したいという方向で、人道的な見地からいたしましてもそれが望ましいことであることは言うまでもございませんものですから、厚生省の課長方がソウル等に行かれまして実は私どもの気持ちを、当時、昨年でございましたか、韓国側に訴え続けたわけでございます。しかしながら、韓国政府はその当時におきましては、いわゆる渡日治療につきましては、必要な者の治療はほぼ終わったのではないかという認識、そして第二点といたしましては、韓国の国内におきましても治療の体制は整備されてきておる、したがって国内での治療が可能になったと。この二つの理由によりまして、私どものお話し合いにもかかわりませず延長は必要がないというのが当時の韓国政府の立場でございました。  しかしながら、その後最近に至りまして先般、先ほど官房長官から御答弁申し上げましたように、先方の外務長官から再びこの問題の提起がございまして、被爆者の援護につきまして日本側に恐らく相当な蓄積された経験もおありであろうから何とか協力してほしいというお話が改めて新しい政府からございまして、これを受けまして官房長官から御答弁ありましたように、私どもといたしましても何とか調査団の派遣も含めて御協力したいということでございまして、今、関係省庁とその辺の細目を協議いたしておるところでございます。
  131. 峯山昭範

    峯山昭範君 そのとおりでしょうね。  それで、これは官房長官、私もいろいろと調べてみたんです、何で打ち切りになったのか。そうしましたら、これはいろんな資料にも出てくるわけでありますが、要するに韓国側の表向きの理由は今お話しのとおりです。ところが実際は、重症の人や寝たきりの人やそういう人たちが、経済的な理由によって、とてもじゃないけれども日本まで来れないという人が非常に多いようです。しかも、この渡日治療の場合は、日本での治療費と滞在費というのは日本側が全部面倒を見ているようでありますが、渡航費とか、要するにいろいろ来る費用は全部韓国側が負担をする。そういうことになってまいりますと、非常に韓国の内部事情にもよる。しかも原爆の被災者だけではなしに、韓国の中にはベトナム戦争とか南北朝鮮戦争によるいわゆる被災者もたくさんいるわけです。そうしますと、そういう人たちと両方いろんな問題がたくさんあるものですから、とてもじゃないけれども対応できないような状態にある。それが実情のようであります。  そこで私は、こういういろんなことを考えてみますと、実はこれはおととしの六月八日の新聞報道の中にもあるわけでありますが、これからの外相会談の中で出てくる話だろうと思うんですが、昭和五十四年に両国の間で話し合ったときに、一つは韓国の医師の日本での研修、それからもう一つは専門医の韓国への派遣、そして三番目が在韓被爆者の渡日治療、この三項目が合意されて、そしてその三項目めだけが実際は実施されているわけです。そういうふうな意味では、日本のこの治療のために、この一項目め、二項目めのこういう問題も日本側としては積極的に推進をしたらどうかというのが私の考えであります。  それからもう一つは、韓国は本当に我が国にとりましてはお隣の国なんですから、相当予算をつぎ込んでも私はこの問題を解決するために一生懸命やってもらいたいという気持ちが強いわけでございます。もう時間の関係もありますから全部言ってしまいますけれども、その二つの問題と、それからもう一つは、渡日治療についても今度は外相会談で新たな援助の方向が検討されるわけですから、いろんなことを細かく突っ込んでお話し合いいただきたいというのが一つ。  それからもう一つは、これは韓国の国内に原爆被災者のいわゆる治療をする病院をつくったらどうか。これは私が初めて言うんではなしに、前々からあるわけです。これは予算の問題、いろいろあると思いますが、提案する人たちは、そんな大きな病院でなくてもいい、小さな病棟、五十床ぐらいの病院でもいいというお話もあるわけでございまして、そんなにたくさん予算がかかるわけではございませんので、そういう病院をつくっていただいたらどうか。そして、その病院の運営の費用とかそういうようなものも日本政府が出す、そのくらいのことをやったらどうか。この日韓条約でいわゆる補償問題は解決しているとはいえ、これは日本の国として、明治以来日本の政府がとってきたいろんな問題と絡み合わせますと、とてもじゃないがそんな問題だけで解決できる問題ではありませんけれども、そういうことまで踏み込んでやるべきではないかなということをしみじみと私は感じているわけであります。したがいまして、そういう問題につきまして、まず初めにそれぞれの係の省庁の方から御答弁をいただきまして、最後に官房長官のお答えをいただきたいと思います。
  132. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) あるいは後ほど直接の御担当であります厚生省の方からいま少し詳細な御答弁があるかと思いますが、ただいま先生仰せの幾つかの点につきましては、そういう点もまさに踏まえまして、実務者が先方に参りまして、先方の考えておるところが那辺にあるか、いま一度じっくり協議をいたしまして私ども考え方を固めたいと思っております。  ただ、その中で幾つか御指摘がありました例えば病院の建設の問題でございますけれども、この問題につきましては、関係者の方から強い要請があることは私ども承知しておりますが、政府の部内の中にある議論といたしましては、韓国のような中進国以上のレベルに達した国に対して、いわば経済協力の言葉でいいます無償の援助で病院を建設するということについては政府の中でも強い異論もございまして、実情はなかなかそういうところで議論がいろいろ錯綜しておるというところでございます。  それから、渡日治療にかかる費用につきましても、厚生省の方から御答弁があるかと思いますが、横並び等の問題も厚生省の側でおありになるようでございまして、渡日治療の費用を日本政府が負担することについては、なかなか韓国の御要望にはそのままこたえられないという問題があるようでございます。  ただ、そのほかの例えば先生が仰せになりました、医療面での研修とか技術指導とか若干の機材供与ということにつきましては、私ども先生のお考え等も十分踏まえまして、実務者が先方に参りましてじっくり先方と協議をしてまいりたい、かように考えております。
  133. 萩原昇

    説明員(萩原昇君) 厚生省といたしましても、渡日治療の継続の問題につきましては、今外務省の方からお話のありましたように、こちら側としては延長に応ずる考えもあるということでお話をしたわけでございますが、結局韓国側の事情で延長に至らなかったものでございます。  原爆専門の治療を行う病院の建設につきましては、私どもの厚生省の立場から申し上げますと、現在の被爆者関係の予算は国内の医療及び諸手当の給付のためのものでございまして、これについて対応することは非常に困難でございます。外務省からの御答弁は、外務省の関係の費用での御答弁があったものでございますので、私どもも外務省とよくその立場をお聞きしながら対処してまいる必要があると思っております。  それから、渡日治療の費用につきましても、外務省からもお答えがありましたけれども、他地域との均衡の問題もございますので、現在これに対して対応することは非常に困難であるというふうに考えております。
  134. 峯山昭範

    峯山昭範君 官房長官がお答えになる前に一言。  それは外務省とか今厚生省のお答えは、いわゆる従来の、そういうことなんですね。そういうことだから私はきょう質問しているわけでございまして、渡日治療も韓国側の都合によってと言っていますけれども、実際は要するに、日本側の滞在費とか日本での治療費とかそれは日本で出す。だけれども、日本に来る旅費とかいろんなものは全部韓国持ち、そういうふうになっていますから、非常に今は向こうも厳しいわけです、自分のところの予算の関係でしょうから。そこら辺のところをもう一歩何とかならないかなという問題があるわけです。ですから、これも非常にアフターケアの問題もありまして、日本で治療して、あと向こうへ行ってどうしようもないという問題もありますから、これはそこら辺のところをもう一歩何とか踏み込んでいただきたいなということが一つあるわけです。  それから病院の問題も、韓国は発展途上国と違って先進国の仲間に入りつつあるような国ですから、いろんな問題もあるかもわかりませんが、私は韓国という国は日本の将来にとっても大変大事な国だと思っております。そういうような意味で、もう既に昔のことは昔のことと言って片づけてしまうには余りにもいろんな問題が残っている。やっぱり殴られた人というのはいつまでも覚えているわけです。ですから、そういうような意味では、日本としてはできるだけの誠意は見せ、できるだけのことはしなくてはいけないんじゃないかなと思っているわけでございまして、そういうことも踏まえまして、ただ予算がないからあかんというんじゃなしに、もう一歩踏み込んだ考え方、検討というのが必要なんじゃないかなということを私は感じるわけです。そういうような意味で官房長官のお答えをいただきたいと思います。
  135. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 具体的事案につきましては、一応外務省、厚生省、現時点で御質問にお答えするとすればそういうことかと存じますが、韓国側も盧泰愚新政権が誕生されまして、そして我が方も宇野外務大臣が参られましたときに、改めてこの問題を政府ベースの問題として考えようということで調査団を派遣するということになったわけでございますので、今先生が御指摘をされた諸点につきましてどう解決したらよいかということを十分念頭に置きながら、調査団が相手方との話し合いを進めるようにいたすように考えていきたいと思っております。  ただ、渡航費の問題等につきましても、立派な独立国として存在をしておりますので、なかなか独立国家同士のそれぞれメンツとかそういうものもございますので、そういうところも含めて、単に財政的な面だけで考えられるかどうかという点もございますので、あらゆる諸点から御意見の趣旨は踏まえながら検討していきたいというふうに思っております。
  136. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは最後に、北方領土の墓参の問題についてお伺いをいたします。  非常にこの問題は頭の痛い問題であります。いろいろといろんな経過はありますが、昭和五十一年以来中断しておりました墓参が一昨年ですか、六十一年からまた開始になりまして、六十一年、六十二年と実現をしているわけでございますが、ことしは大体どういうふうになりますでしょうか。
  137. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) ただいま委員が御指摘になりましたとおり、北方墓参につきましては昭和三十九年に開始されまして、それ以来途中中断はございましたが、昭和五十年までは実施されておりました。ところが五十一年に、ソ連側がそれまで長年にわたり確立されてきた身分証明書による渡航という慣行を無視しまして、墓参参加希望者に有効な旅券の携行とソ連入国査証の取得を要求してきたことから中止のやむなきに至った次第でございます。こういった状況にかんがみまして、六十一年の一月と五月にございました日ソ外相間の定期協議を初めとしまして、日ソ間で鋭意折衝した結果、同年の七月に従来どおりの身分証明書方式によって墓参の再開が合意されて、その結果、今委員が御指摘になりましたとおり、昨年、一昨年と二年にわたりまして墓参団が北方領土へ墓参を行ったわけでございます。ただ、そのときは色丹と歯舞群島、水晶島であったわけでございます。  ことしの問題でございますが、政府としては北方墓参は人道問題である、こういったことを踏まえまして、今後とも墓参地の拡大、殊に歯舞、色丹のみならず国後、択捉を含めて四島すべての円滑な墓参が行われるようできる限りの努力をする方針でおります。
  138. 峯山昭範

    峯山昭範君 ぜひ政府としても、この北方四島の墓参についてはいろんな面から御協力をいただきたいと思っておりますが、今もお話ございましたように、歯舞、色丹につきましては今墓参が行われるようになったわけでありますが、特に国後、択捉両島に対する墓参が非常に長い間途絶えているわけであります。実はこれは新聞の報道によりますと、在京のソ連筋ということで新聞に載っているわけでありますが、使われていない墓地は三十年間保存された後は破壊されるというふうに報道されておりまして、ソ連が墓参を認めていない国後、択捉両島は既に墓地が撤去されている可能性が強い、こういうふうな報道もあるわけであります。これは非常に大変な問題でありまして、この問題については政府としてどういうふうになっているのか。これはみんな心配をしているわけでございまして、ここら辺の事情はどうなっておりますか、わかりましたら御説明をいただきたいと思います。
  139. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 国後島につきましては、昭和四十一年、四十二年、四十四年、四十五年に認められた経緯がございますが、択捉島につきましては今まで認められておりません。なぜソ連が国後、択捉の墓参をなかなか認めないか、この事情につきましては私たちは承知しておりません。ただいま委員が御指摘になりましたような報道等があることは知っておりますが、詳しい事情は承知しておりません。ただ、政府としましては北方四島すべての墓参ということにつきまして、元島民の方々の希望も十分わきまえまして、ぜひとも四島全部に墓参ができるように今後とも最大限の努力をしていきたいと思っております。
  140. 峯山昭範

    峯山昭範君 確かに、この四島の中の国後、択捉につきましては、ソ連軍の軍事基地があるからだとか、いろんなことが言われているわけでございますが、政府もいろいろと要望しながらなかなか実現しないでいるわけです。しかしながら、ソ連が、三十年間使われていない墓地は廃棄処分にするというようなことは本当なんですか。もしそういうことであるとするならば、そこら辺のことはよく聞いていただきたい。みんな心配しておるわけです。できたらそういうような意味で、特に北方四島の墓参が今後も思うようにできるようにぜひ取り組んでいただきたいと思います。実情は外務省の方から御答弁いただいて、最後に、もうこれで終わりますから、官房長官から政府としてのお考え、姿勢をぜひお伺いしておきたいと思います。
  141. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 国後、択捉に関する墓地の状況につきましては、私ただいまお答え申し上げましたとおり詳しい事情は承知しておりませんが、従来ソ連側と折衝の過程において、例えば気候条件が厳しいとか、あるいは墓地が四十年、五十年を経過しているというようなことで、その結果墓地が必ずしも残っていないということを断片的に言った経緯がございます。  いずれにしても、ただいま委員が述べられましたこと、あるいは関係者の御関心、本件が人道上の問題であるということを踏まえまして、政府としては今後とも一生懸命これが実現するように努力していきたいと念じております。
  142. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) ただいまの答弁のとおりでございまして、日本人の祖先墳墓の地でありますので、その家族にとりましてはふるさとそのものでございまして、そうしたところに参れないということ自体大変おかしなことだろうと思います。しかし、今後とも粘り強くソ連ともお話し合いをしながら、国後、択捉を含めまして、墓参のできますように政府としてもさらに一層の努力を続けてまいりたい、このように考えております。
  143. 峯山昭範

    峯山昭範君 ありがとうございました。
  144. 菅野久光

    理事(菅野久光君) ちょっと速記とめてください。    〔速記中止〕
  145. 菅野久光

    理事(菅野久光君) 速記を起こしてください。
  146. 橋本敦

    橋本敦君 高知学芸高校の上海での列車事故による遭難というのはまことに痛ましいことでございまして、私どもとしても、亡くなられた若い命に対しては本当に惜しむべき言葉もありません。御遺族には衷心より哀悼をささげたいと思いますし、また、負傷された皆さんの一日も早い回復を心から祈っておる次第であります。  遺族の皆さんは、深い悲しみの中で今すぐ補償問題というところにはなかなか気持ちの上でも、またいろんな準備の上でもいかない状況だろうと思いますが、遺族会も結成をされておることでありますし、いずれはこの問題は解決をしなくてはならぬ大事な課題でありますので、この問題について質問をしたいと思うわけであります。  官房長官にまずお伺いしたいのでありますが、時あたかも自民党伊東総務会長が首相の特使として中国を近々訪問になります。多くの課題があるわけでしょうが、新聞も報道しておりますところによりますと、この列車事故の問題についても、日本政府として中国とも話し合いをしたいということも報道されておるようであります。私は、まさにこの機会を大事な機会として、日本政府としては、この事故についての原因究明の問題、さらには中国が誠意ある態度を示しているということは官房長官も言われておるようでありますが、具体的に補償問題についてどう対応していくかという問題についても、積極的な話をしてこられるのが絶好の機会としていいのではないかと思っております。まずこの点について官房長官のお考えはいかがでしょうか。
  147. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) お話のように、自民党伊東総務会長は近日中に竹下総理の特使という資格で訪中することに相なっております。それは、中国側の首脳部が全人代を経まして新たに確定いたしました折に、両国間の関係を振り返りつつ、今後の日中関係を一層発展させたいという総理の意向また趣意の表明をあわせて伝達することを主目的にいたして訪中することに相なっております。  したがいまして、今次訪中は、上海列車事故について話し合いを行うことを主目的としたものでありませんが、列車事故の問題が話し合われる場合には、伊東特使からも中国側に対しまして誠意ある対応がなされるよう御発言があるであろうことは想像にかたくないことでございまして、恐らく今般の事故につきましても日本側の考え方を申し述べられることだ、こういうふうに思っております。
  148. 橋本敦

    橋本敦君 今回の事故について新聞が報道するところによりましても、運転者の信号無視という重大な過失がほぼ明らかになりつつある状況であります。この原因究明は当然、日本政府としても厳しくきちんと要請すべき一つの課題であると思っておりますが、官房長官、お考えはいかがですか。
  149. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 列車事故の原因につきましては、現在中国側におきましてその究明に努力をいたしておるところだというふうに聞いておりまして、もとより事故を受けた我が方といたしましては、一日も早く正確な原因の究明がなされることを期待いたしておりますが、現在の時点ではまだそのことを定かに承知をいたしておりません。
  150. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにいたしましても、今後の話し合いの前提として、今回の事故について中国側に中国の法律に基づいても損害賠償責任があるというこのことがまずは明確でなくちゃならぬと私は思うんです。この点につきまして、外務省から私も中華人民共和国民法通則をいただきまして、説明もいただきました。いろいろ民法自体についてまだまだ検討する課題はあるようでございますけれども、いただきました民法通則の百二十一条では、国家機関または国家機関の職員は、職務執行中に公民に対して権益を侵害し損害を招いた場合には責任を負わねばならないという明確な規定がある。それからさらには百十九条でも、その損害賠償すべき内容について、医療費や休業による減収やあるいは身障者の生活補助費などの費用、あるいは葬儀費用、あるいは死んだ場合には生前の扶養者に必要な生活費などというように規定がある。こういう規定に加えまして百六条の民事責任の一般規定でも、公民が他人の財産その他に損害を与えた場合には民事責任を負わねばならないという規定もある。こういったことを考えますと、今回の事故でどの部局が責任を負うかという問題は検討を要するとして、一般的に中国のこの民法に基づいても中国側に損害賠償責任があるという、そのこと自体は明確であるはずだと思うんです。その点、外務省の御検討はいかがですか。
  151. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) ただいま委員仰せのとおり、先方の中国の民法通則の、繰り返しませんが、お述べになりましたような趣旨のことが百二十一条で述べられております。ただ何分、先生承知のとおり、この民法通則自体が実は八六年に制定されまして昨年からやっと施行の段階に入ったという、まだ大変未成熟な状況でございまして、現在その各条文の解釈あるいは実際の運用がどのようなものになっておりますか、その点につきまして私どもなりに慎重に検討あるいは調査を始めておるというところでございます。  いずれにいたしましても、中国の、第三国の外国の法律であり条文でございますので、日本政府が有権的にこれを解釈するという立場にないという苦しさはございます。
  152. 橋本敦

    橋本敦君 有権的に解釈する立場にないというのは外国の法制ですからそうですが、今私が指摘したようなところから、一般的に言って中国側に民法上の損害賠償責任があるというように考えられる状況はこの法律から見受けられるでしょう。
  153. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) その点も含めまして、施行自体の実態の問題にもかかわることでございますので、いましばらく私ども検討を進めさしていただきたいと思っております。
  154. 橋本敦

    橋本敦君 検討はいいですが、私が指摘したところから中国側に明らかに法的に賠償責任がないというような状況はないと、逆に言えばそれは言えますね。それはっきりしてください。それをはっきりしないと話が進みません。
  155. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 各条の規定は別といたしまして、先生も御存じのとおり、中国側の最高のレベルで、今回の事故につきましては損害賠償の点も含めまして中国側に責任があるということは、先般上海に参りました浜田外務政務次官に明確に述べておるところでございます。
  156. 橋本敦

    橋本敦君 だからしたがって、それを裏づける法的な考え方もこの法文上からは明確なんです。  ところで官房長官、非常に重大な問題は、この問題について中国側と交渉するという場合に、先ほどからも議論がなされておりますが、中国側は窓口がどこであるかということ、これは非常に難しいんですね。例えば今度の上海で起こった事故が、まさにこれは国の事業としての国家公務員の重大な過失によって国が全面的に責任を負うということが一つは考えられる。これは上海鉄道当局が中国の鉄道部の直接の一部局である場合はそうなる。ところが今度は、上海鉄道当局がある程度独立した公的企業性を持っている、例えばこの民法通則による言葉によりますと、全人民所有制企業とか集団所有制企業ということで、独立して民事責任を負えるものはこれは法人格を別に持っているという規定がありますから、こうなりますと、上海鉄道当局それ自体が独立して民事責任を負うということになるのかもしれないといった問題、いろいろ検討する問題があるわけです。  ですから、これは日本側で検討するよりもむしろ中国側が遺族に対する誠意ある態度として、責任を負う機関はここですよ、だから交渉する窓口になるのは中国側はここですということを中国側が早く示すようにするのが私はとるべき態度だと思うし、そのことについて日本政府の方も、早く中国側の責任ある部署と窓口を公に明確にしてもらいたいということは、政府として遺族に対する側面的援助の重要な一つとしてこれは要請してしかるべきことだと思うんですが、いかがですか。窓口が早く決まらないと進まないわけですからね。
  157. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 今委員指摘の点でございますが、四月五日に高知県知事それから高知学芸高校理事長の名前におきまして私どもに御要望が出されておりまして、外務大臣そのほか関係者に対する御要望の中でもその中国側の窓口について早く明らかにする必要があるという御指摘がございましたので、私どもは在外公館を通じましてその点を中国側に申し入れております。ただ、現在のところ中国側で検討中でございまして、その結果はまだ明らかになっておりません。
  158. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。  だから官房長官、お聞きのように、外務大臣の指示もあって在外公館を通じて申し入れているわけです。だから今度伊東さんがお行きになってこの問題が話し合われるときに、申し入れている問題について責任の所在と窓口を早く公にするようにということもあわせて要請してもらいたいと思うんですが、どうですか。
  159. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 今回の事故は、初めてのことにしてそれこそ最後にしなければならない事件だろうと思います。そういった意味で中国側としてもその対応につきましては、率直に申し上げて経験のあることではなかろうと思いますので、対応についてあるいはいささか我が方から見て遅滞しておるというふうに考えられないでもないかもしれません。あるいは中国側にも全人代その他いろいろ政治的な大行事もありましておくれているのか、その辺は推察をするばかりでございますが、いずれにいたしましても、政府といたしましても、外務大臣から一日も早く中国側の対応についても協力を求めているところであります。中国側も、誠意を持ってこの問題には対応したいという熱意を持っていることに間違いないわけでございますので、本問題が伊東総務会長の訪中までに決着するかどうかについてはわかりませんが、そのことも総務会長にこういうことがありますよということについてはお伝えいたしたいと思います。
  160. 橋本敦

    橋本敦君 それで官房長官、そういった窓口ができてもまだまだ難問は先に山積みなんです。御存じのように、中国での損害賠償内容と程度がどうなるか、外務省としてもいろいろ御検討になっているというお話もありましたが、過去の例によりますと死亡一人当たり二百六十万円、それでも中国の賃金水準からしますとこれはかなりのものだというように言われている。したがって、それがどういうふうになっていくかということはこれから具体的な問題として非常に重要な問題であります。  試みに、日本では交通事故による死亡等による損害賠償請求、慰謝料等多くの判例や学説を通じてほとんど定型化をしておりまして、私が私の法律事務所に連絡をして調べさせますと、財団法人の日弁連交通事故相談センターが交通事故損害額算定基準というのを本で出しておりますが、これに基づいて死亡による逸失利益を計算いたしました。この計算方法としては、労働省の政策調査部が編さんしました財団法人労働法令協会からの全国の労働者の賃金、これの賃金センサスを基準にいたしまして計算をいたしますと、男子で逸失利益が三千四百四十八万九千六百七十一円、女子で三千四百一万七円、これは生活費控除は四〇%及び三五%として控除をしますが、ホフマン係数で掛けてこうなってくる。慰謝料は今までの例で見ますと一千四百万から一千八百万ということですから、この合計をいたしますと大体五千万円前後が日本の国内でほぼ客観的に通用する損害賠償額、こうなるわけです。  ですから、この問題は今後どうなるかということは非常に重要な問題でありまして、根拠法が中国の法律、こうなるということもあって見定めがたい問題であります。しかし、日本においては少なくとも現在まで確立された死亡事故に対する逸失利益の賠償、あるいは慰謝料の賠償も含めてこういった金額になるということについては中国側も十分に研究し、そしてまた、日本の情報もこちらから必要あれば提供するということも私は必要ではないかと思うんです。そういう意味で、今後中国側との交渉ルートが正常に動いていくようなことがあれば、こういった日本の実情についても中国側に外務省を通じて伝えるしかるべき方法を、私は遺族のためにそれは検討しておく必要があると思っておるんですが、外務省のお考えはどうですか。
  161. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私ども承知しておりますところでも、中国側においてもいろいろな方法で日本の制度について研究していると伺っております。私ども政府といたしましても、今後中国側の御要望あるいは御遺族側からの御要望がございました場合には、そういうところでできるだけお手伝いできるように努力いたしたいと思っております。
  162. 橋本敦

    橋本敦君 それで官房長官、一点、私はこれは大事な問題としてお考えを聞いておきたいんですが、遺族の皆さんがこの問題でいずれ交渉するとしたら、中国へ出かけなくてはならぬということになるんでしょう。あるいは被害を受けたのは日本の皆さんだから、中国が、日本に在外公館、大使館もあるわけですが、日本に来て遺族との交渉に応ずるというようにすべきなのか。一般的に言えば、これは加害者の方が被害者のところへ出向いて話をするというのが筋ですね。だから日本国内なら裁判を起こす場合は、損害賠償の義務履行地である被害者の管轄の裁判所で起こせるわけです、裁判ならば。そういうわけで国際的にはこれは非常に難しいんですけれども、私は、できれば日本でこの交渉が進むように、政府としても側面的にそのことを腹に置いていろいろと遺族に援助してやってほしいと思っておるんです。官房長官はどうお考えでしょうか。
  163. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 委員指摘のことの趣旨はわかりますが、事故発生の場所が中国であるということでもございます。それから、補償の問題につきましては再三申し上げていますように、当事者間の話し合いということになっておりまして、そのために遺族側からの弁護士の方もたしかあるいは訪中をしておるというふうに聞いておりますので、今後どういう形で進めていくかにつきましても、そうした話し合いを通じながら円満な納得のいく結論が出るということがすべてでございますので、そのための舞台はいずれが望ましいかということにつきましても、勉強さしていただきたいと思っております。
  164. 橋本敦

    橋本敦君 文部省に最後に伺っておきますが、文部省に伺いたいのは、災害共済給付金が支払われたということで、これを災害給付金を定めております施行令に基づきまして、損害賠償額が将来とれた場合に控除するかどうかについては、これはその状況を見た上で適切に指導したいという御答弁がありましたね。つまり、私はこの災害給付の施行令を見ましても、これは「その価額の限度において、災害給付を行わないことができる。」、こういう「できる。」という裁量規定に基づいて、運用の実際としてはとれたらその分は引きますよ、こうなっているわけですから、「できる。」というように施行令が決めて、必ず差し引きなさいと決めていないのはケース・バイ・ケース、実情は応じて検討する必要があることを含んだ私は法的定めだと思うんです。だから、法律の定めそのことからいっても画一的に必ず差し引くという運用は問題がある。ましてや本件の場合のように補償が将来本当に、二百万、四百万、五百万か知りませんよ、日本から見れば問題にならないような額だということになったような場合でも、そのわずかなものを千四百万から引くというのは、これは法の趣旨からいっても運用の実態からいっても適正を欠くのではないか、私はこういうふうに思っているわけです。だから、遺族やその他の要望にもこたえると同時に、やっぱり実情に応じてこの施行令の解釈、運用は弾力的にケースに応じてやるということでお考えいただくというのが正しい態度ではないかと思いますが、この点どうお考えですか。
  165. 込山進

    説明員(込山進君) 先生指摘のような制度でございますが、国内の今までの取り扱い運用で申し上げますと、そのような場合につきましては一律に公平の原則からいきまして取り扱ってきたところでございます。しかし、何分にも今回の事故は外国で起きた事故という初めてのケースでもございますし、先ほどからいろいろ御議論いただいておりますように、中国の制度であるとか、この補償問題の成り行き等々いろいろまだわからないところがいっぱいございますので、それらが明白になった時点で諸般の事情を考慮してセンターの決定について指導してまいりたいというふうに考えております。
  166. 橋本敦

    橋本敦君 ということで、画一的に必ず引くということではないということを確認して、私の質問を終わります。
  167. 菅野久光

    理事(菅野久光君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  168. 菅野久光

    理事(菅野久光君) 速記を起こしてください。
  169. 吉井英勝

    吉井英勝君 私は、同和問題についてお伺いしたいと思いますが、地対協意見具申また啓発推進指針などの中で、行政当局の主体性の欠如の問題や公平の観点から見て合理性が疑われる問題などたびたび指摘をされておりますが、私は、きょうは行政の主体性がどんなに失われているかという具体的事例について少し見ていきたいと思うんです。  実は私、せんだって大阪府の堺市役所の方へ参りまして、同和地区住民が住民票の異動について届け出に行ってもすぐに受け付けてもらえないという事実を知りまして、市の窓口の職員からも同和地区の人からもいろいろ聞きまして、また確かめても参りました。私はきょうは資料を持ってきているんですが、実は昭和六十年三月二十八日に、堺市におきましては市民課長名で各担当の職員あてに通達文書が出ております。ちょっと御紹介いたしますと、こういうことを書いているんです。「同和地区改良住宅にかかる転入・転出・転居については必ず住宅改良管理課の「連絡票」の持参している者のみの届を受付け、「連絡票」の持参していない者については、住宅改良管理課へ行ってもらっている。」。これはどういうことかといいますと、わかりやすく言いますと、同和地区の人の言葉をかりて言えば、部落民証明書という言い方までされている連絡票を持っていかないと住民票の異動ができない、受け付けてもらえないという事実が生まれているんです。  最初に自治省の方にお伺いしておきたいと思いますが、住民票の異動にはいわば部落民証明書を持参しないと受け付けないということ、これは住民基本台帳法その他の法律に照らしてそういうことが許されるのかどうかということです。まずそのことを伺いたいと思います。
  170. 谷口恒夫

    説明員(谷口恒夫君) 住民基本台帳法におきましては、転居届には何の書類の添付も義務づけられてはおりません。また、転入届には転出証明書の添付が義務づけられているということになっておりまして、その届け出が参りました場合には市町村長は要件を満たしているかどうかこれを審査いたしまして、満たしているときは原則として届け出を受理するということに法の建前はなっておるわけでございます。  したがいまして、ただいま御指摘のことでございますが、実際の運用については私ども必ずしも正確に把握しておるところではございませんが、法で定められた書類以外の書類を届け出のときに添付しなければ届け出を受け付けないというような取り扱いは法の趣旨に照らして適当ではない、このように考えております。
  171. 吉井英勝

    吉井英勝君 今おっしゃったとおりだと思うんです。さらに少し御紹介しておきますと、「受付窓口につかれる職員は届書の住所に特に注意し改良住宅にかかるものであれば所定の手続きをもって処理して下さい。」ということで、受付の職員のところには、この文書の中にはちゃんと地名が入っているんですが、いわば部落地名総鑑の堺編ですね。つまりどういうことかといいますと、その地域が同じ堺市の中であっても同和地区の町名であるかどうかということを確認しないと受け付けていいものやら、受け付けをまず一たんお断りして改良住宅の管理係へ行ってもらわなきゃわからない、そういうことでいわば座右に置きなさい、そういう指示までしているわけです。  あわせて自治省にお伺いしたいんですが、住民票異動に際して、いわば地名総鑑とも言うべきものを置いておいて届け出人の住所と一々チェックするということ、こういうことはあってはならないことじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  172. 谷口恒夫

    説明員(谷口恒夫君) ただいま御指摘の点につきまして堺市に照会してみましたところ、そのような事実はないというような答えでございました。
  173. 吉井英勝

    吉井英勝君 私はちゃんと堺市の文書を持っているんですが、私が言っている意味はこういうことです。地名総鑑を置きなさいという指示じゃないですよ。届け出の住所が同和地区の住所であるかどうかということを受付職員はすべてチェックしなさい、同和地区に係るものであればこれはそのまま受け付けをしちゃならぬということをこの文書に書いているんです。だから、堺市がもしそういうふうに自治省にお答えしているとすれば、それは堺市が言っていることが正しくないというか、あるいはねじ曲げて、部落地名総鑑を買い込んで置いていますという、そんな事実はないというふうに言ってうそをついているか。もちろんそんなのは、地名総鑑は本物を置いてやるわけはないですから、そういうことを言っているんじゃないんです。実際に受付の職員が、この人は同和地区の人なのかどうかということを同和地区の町名をちゃんと頭の中に置いておくか、座右に置くかしてチェックをしているというこの事実があるということなんです。こういう事実については、これはやはり私はあっちゃならないことだと思うんです、先ほどもおっしゃったように、これはすべて受け付けなきゃいけませんから。この点もう一度お伺いしておきたい。
  174. 谷口恒夫

    説明員(谷口恒夫君) そういう事実があるかどうか、堺市の方はない、こういうふうに聞いておりますが、仮にあったとしても、これは住民基本台帳の届け出の受け付け云々とは関係のない事実だというふうに考えます。
  175. 吉井英勝

    吉井英勝君 住民基本台帳法上の届け出には一切これは必要としないわけです。ですから、それは堺市がどう答えようとそれはあっちゃならないことだということです。  さらに読み上げておきますと、今住民基本台帳というのはコンピューターに入力をしているわけですが、この資料でも、「異動届の整理及び入力の際にも「連絡票」」、つまり地域の人たちが言っている部落民証明書、これがついているかどうか注意してくださいということまでわざわざ書いているんです。つまり、そういうものがついていなかったらコンピューターにも入力できないシステムになっているんです。自治省にあわせてお聞きしておきたいんですが、このような電算機のプログラムの組み方というのはやはりおかしいと思うんです。そういうものがなくても受け付けをして入力するのが当たり前のことだと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  176. 谷口恒夫

    説明員(谷口恒夫君) 先ほど第一番のところでお答えしたとおりでございまして、いずれにいたしましても、法で定められた添付書類以外のものが添付されないと受け付けない、あるいはコンピューターでいろいろな入力云々の手続をしないとか、そういったものは住民基本台帳法が想定していない手続であると考えております。
  177. 吉井英勝

    吉井英勝君 それに先立つ文書も実はあるんですが、窓口に転居の届けがあれば、同和地区改良住宅に係るものであるか住所を確かめるとか、そういう人はまず住宅改良管理課へ行くように指導するとかいろいろありますが、さらにこういうこともあるんですね。そういう地域の人が言っている部落民証明書については、これは受け付けた段階で市民課で保管するようにする、その上で転出証明を持っていった人が新しい住所地の市役所の出張所で転居用住民票を持っていった場合には、住宅改良管理課への手続は済んでいるものとみなすという扱いにするんだということを書いているんですが、これは翻訳するとこれの意味はこういうことなんです。これは、同和地区外の新住所地の出張所では、この人は市役所市民課の方でいわば部落民証明書を保管してもらっている人なんだと、こういうことで扱うということで、転出していっても部落出身者という扱いを市役所の出先機関が行うということになるわけなんです。  ですから、この問題というのは非常に重大な問題を持っているんだということを指摘しておきたいと思いますし、自治省としてもそういう観点で、どうも堺市に問い合わせをされても正直な回答等もないようですが、その点は特に注意をして指導していただきたいと思うんです。  あわせてこの問題は、私は憲法に照らしてみても、憲法二十二条では居住、移転の自由というものが明記されております。しかし、堺市におけるこういうやり方というのは、同和地区の住民については、そういう連絡票、部落民証明書を求めるという、自由な住居の移転も阻害されるという重大な憲法違反を犯していると思うんです。これは私は重大な人権侵犯に当たると思うんですが、こういう点は法務省の方でもやはり是正をさせるということで臨んでいくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  178. 柏樹修

    説明員柏樹修君) 私ども法務省の人権擁護機関といたしましては、先生指摘の件につきましては事実を把握しておりませんので、ここで法務省の人権擁護上の問題があるかどうかにつきましては、意見を述べるのは差し控えさしていただきたいと思いますけれども先生のおっしゃるような人権擁護上の問題があるかどうかにつきましてはなお事実を確認してみたい、かように思うわけでございます。
  179. 吉井英勝

    吉井英勝君 事実は確認してそういうふうにやっていただいたらいいんですが、ただ問題は私が指摘したような問題です。同和地区出身者ですよという証明書を持っていかないと住民票の異動ができないということ、こういうことは人権侵犯に当たりますね。この点だけはちゃんと確認しておきたい。
  180. 柏樹修

    説明員柏樹修君) ただいま申し上げましたように、事実を把握しておりませんので、その点の見解については差し控えさしていただきたいと思います。
  181. 吉井英勝

    吉井英勝君 調査調査としてやるということと、しかしそういう事実があれば、それは人権侵犯として正しく対処していただきたい、こういうふうに思うわけなんです。  そこで、そもそもこういう事態がなぜ生まれたかということなんですが、長年にわたって堺市当局は、特定の民間運動団体の言いなりで自主性を失ってきたというところに実は問題があるわけなんです。  ここに昭和五十八年三月三十一日付のこのことに関連した資料がございます。これは「入居者の皆様へ」という文書で、大阪府の府同促堺地区協議員会と堺市の連名の文書なんです。この府同促というのは事実上部落解放同盟という民間運動団体が中心になっている組織でございますが、こういうことを書いているんです。「昭和五十八年四月一日以降は居住についての異動(転入、転出、転居、出生、死亡等)がある場合は、まず改良部住宅改良管理課で所定の手続をされ、住宅に関する承認書をご持参のうえ、市民部で住民登録の異動手続をしてください。」。  また、それについて、「なお、同和事業推進について、そのすすめ方で従来要求段階と執行面が一部不十分な点がありましたのでより明確を期するため昭和五十八年四月一日より各施策など全ての要求(要望)は同一要求、同一組織の原則に基づき、執行面においては府同促一本化で進めてまいりたい」、窓口一本化でやりたいと。この府同促という、事実上一民間運動団体が牛耳っている組織ですが、そこでもう窓口一本化でやりたいと。つまり、実はこの問題はどこから出てきたかといいますと、同和向け施策の、属地主義あるいは属地属人主義でやるんじゃなくて、属人的施策を拡大する中からいろんな問題が出てきて、そしてそういう主張の中からこういう問題が出てきたわけなんです。  私は、やはり総務庁としては、この意見具申と啓発推進指針で頑張ってもらっているわけですが、一部にまだこういうふうに行政が主体性を欠いて、一部特定運動団体と一体となってこういう問題を引き起こしていることについては、やはりそれは是正させるということで、総務庁としては、地対協意見具申やらまた啓発推進指針のそういう立場で是正をさせるように努力をしていただきたいと思うんですが、この点長官いかがでしょうか。
  182. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 先生おっしゃるように、地対協意見具申において、同和問題の今日的な課題の一つとしまして地方公共団体の主体性の確立が重要だと指摘されております。総務庁としましても、この御指摘を踏まえまして、地方公共団体の主体性の確立について関係省庁と連携をとりながら積極的に努力していくつもりでございます。
  183. 吉井英勝

    吉井英勝君 特に具体的な事実で私は申し上げていますので、こういう問題については具体的に解決を図るようにしていただきたいと思います。  引き続いて、実は大阪府の茨木市にございます解同大阪府連沢良宜支部の規約をきょうは持ってきております。この規約では、民間運動団体を脱退するときの条件が十一条に載っておりますが、「支部を脱退する場合、部落解放運動の中で得た全ての条件はこれを返却するものとする。」となっているんです。この中には、「同和住宅入居者は住宅を明け渡さねばならないし」、また「資金融資はこれを返さねばならない、」と、これは運動団体の規約で明記しているわけです。  そこで、建設省に先にお伺いしたいんですが、同和地区で住宅地区改良法に基づいて建設された同和向け公営住宅において、部落解放同盟を脱退した者は住宅を明け渡せというのは、これは建設省の指導ですか、どうですか。
  184. 羽生洋治

    説明員(羽生洋治君) 私どもは、住宅地区改良法の施行事務の一環として特定団体の規約との関連を求めるような指導は一切行っておりません。
  185. 吉井英勝

    吉井英勝君 明け渡せという規約があったとしても、当然民間運動団体の所属のいかん、入っているかどうかとか、加入したが脱退したかのいかんを問わず、法の定める資格ある者は改良住宅入居が認められ、退居させられる必要はないと思うわけですが、この点、建設省はいかがですか。
  186. 羽生洋治

    説明員(羽生洋治君) 先生指摘のように、住宅地区改良法による改良住宅の入居資格につきましては、住宅地区改良法十八条で、地区内に居住していた者で住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者等と定められております。また、改良住宅のその後の管理につきましても法令において第二十九条に定められておりまして、これらの規定に基づき適切な管理を行うべきものであります。したがいまして、特定の団体への加入の有無によって改良住宅に居住できるかどうかが決まるというふうなことはあってはならないと考えております。
  187. 吉井英勝

    吉井英勝君 長官に特によく聞いておいていただきたいと思うんです。私は、きょうは時間の都合で堺市と茨木市における二つの事例を御紹介しているんですが、実は今のその規約に関係して、茨木市の方の沢良宜支部というところでは、同和向け個人施策、例えば税の減免とか奨学金とか、入学仕度金とか就職仕度金、結婚祝い金、妊産婦の給付金、技能習得金、国保の減面、老人対策、駐車場個人向け給付金とか、こういうものを受けるにはすべて沢良宜支部という部落解放同盟が組織しているそれぞれの要求者組合に入らないと受けられないという仕組みになっているんです。  これが地方自治体との間の窓口一本化というものですが、その結果はどうなっているかというのは、私はここにその団体の支部の決算報告を持ってきておりますが、Aカンパ、Bカンパとそれぞれ受けた給付金の一割を全部ピンはねということになっているんです。現在、その運動というのはそういうふうになっております。そして、どうもそのやり方はおかしいじゃないかと。ただのピンはねだけじゃなくて、場合によっては選挙の運動までやらされる。それで自分の思想と違うから困るというのでやめようと思ったら、今の規約なんです。同和向け改良住宅に入居しておった人は出ていきなさい、それから資金融資その他はこれを返しなさい、こういうことになっているんです。これが現在大阪における問題として、この点をよく御認識いただきたいと思うわけなんです。  もともと、この解同ないしは先ほどの住宅問題に戻りますと、解同の組織する住宅要求者組合などに入ることが改良住宅入居の条件とされ、地方自治体がそのことを受け入れてきたいわゆる窓口一本化、これが現在こういう事態を生み出しているんです。また、こういう規約を当然のことのようにしているわけなんです。  運動団体がどういう規約をつくるかは、これは勝手であるとしても、少なくとも建設省や地方自治体がかかわる問題については法律違反は許さないんだということ。つまり同和地区住民の居住の自由まで侵害してはならない、ある団体を出たから出ていきなさいとか、そういうことを侵害しちゃならぬ、地方自治体も運動団体に追従しちゃならないんだということを私は今はっきり示すべきだと思うんです。  この点では、まず先ほど触れました改良住宅の問題については、これはこういう規約が現実にあって縛られている人たちがいるわけですから、またその点できっちりできない自治体もあるわけですから、建設省としてもしかるべき対応というものが必要だと思うんですが、この点はどうですか。
  188. 羽生洋治

    説明員(羽生洋治君) 改良住宅の管理の適正な執行につきましては、従来から会議、研修会等において指導してきたところでございます。また特定の団体への所属等ということは改良住宅の入居要件というふうにはいたしておりません。今後ともそういった旨を徹底して、法令の規定に基づいて適正に入居等の管理事務を行うようにさらに強く指導してまいりたいと考えております。
  189. 吉井英勝

    吉井英勝君 実はこの民間運動団体は地対協の意見具申でも啓発推進指針でもたびたび出てきておりますが、この団体、解同は、八八年度運動方針でこううたっています。啓発推進指針については立ち枯れ状況に持ち込むことができたと。長官、あなたが頑張っていただいている啓発推進指針というものは立ち枯れだと。なぜ立ち枯れという状況認識になっているかといいますと、そこには、私が時間の都合できょうはたった二つだけお聞きいただきましたけれども、堺市における状況、茨木市における状況、こういう具体的な状況というものがそれこそ大阪府下だけとってみましても山ほどあるわけです。そういう実例に見られるように、現在もこれがまかり通っているということが、幾ら地対協の意見具申が出ようが啓発推進指針が出されようが、推進指針などは立ち枯れ状態に追い込んでいるんだという認識になっているんです。だからやはり政府も、立ち枯れなどは許さないという政府一体となった取り組みが今大事なときだと思うんです。  八六年の池対協意見具申や八七年の啓発推進指針の中で繰り返し強調していることは、同和問題の今日的課題の中で新たな差別意識を生むさまざまな新しい要因が存在していることが挙げられるが、新しい要因の第一は行政の主体性の欠如だということを挙げています。「現在、国及び地方公共団体は、民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて、不適切な行政運営を行うという傾向が一部にみられる。」。また、「今日的課題を達成するための方策」としては、「行政の主体性の確立のためには、今日、改めて民間運動団体との関係について見直すことが必要」だと。「民間運動団体と身近に接触する機会の多い地方公共団体に対しては、主体性の確立について国が積極的な助言・指導を行うべきである。」としています。  くどいようですが、この意見具申や啓発推進指針の示す立場で、大阪府や堺市、茨木市などに、私はきょう御紹介したような問題に対してやっぱり積極的な助言、指導をやっていただきたいと思うんです。堺市と今の茨木の問題などをお聞きいただいて、長官としても改めてどういう運動団体であろうと窓口一本化は誤りだということと、行政は主体性を確立せよということを私は強力に指導していただきたい。この点についての長官の御決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいま引用されました地域改善対策協議会の意見具申でありますが、これは、前提にしておりますことは、昭和四十年八月の同対審答申の当時と、昭和四十四年に制定された同和対策事業特別措置法等によって施策を進めてまいりました今日とでは、十八年間の歳月を経てかなり事情が違ってきておりますよということを前提にして対策を考え答申をしていただいておるわけであります。その中で大きく取り上げられておりますのは、やはり行政機関は主体性を保持して民間運動団体との関係について見直しを行うべきであるということをはっきりと指摘をされておるわけであります。これを受けまして、実は関係省庁と協議をしました結果定めましたのが今後の地域改善対策に関する大綱というものでございます。  その大綱におきましても、「地域改善対策に係る行政の主体性の確立、同和関係者の自立、向上精神のかん養対策、えせ同和行為の排除対策及び同和問題に関する自由な意見交換の環境づくり対策を推進すること。」云々というようなことをずっと幾つか掲げてございますが、特に「行政の主体性の確立」ということを強く要請しているところであります。この大綱に基づきまして啓発指針を定めて、それぞれ取り組んでいただいておるところでありまして、この大綱につきましては、各省庁合意の上で定めたものでございますので、総務庁といたしましては、各省庁がこの方針に沿って努力していただくように取り進めてまいりたい、このように考えております。
  191. 菅野久光

    理事(菅野久光君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  192. 菅野久光

    理事(菅野久光君) 速記を起こしてください。
  193. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国際化がだんだん進んでまいりますと、単に物やお金の国際化だけではなしに、好むと好まざるとにかかわらず人の国際化というのが進んでくるんではないかと思います。最近でもいわゆる外国人労働者を入れるべきか入れるべきでないか、いろいろ議論がされておりますけれども、私がきょう取り上げようと思うのはその問題ではございませんで、公務員に対して外国人をどの程度まで採用すべきであるかすべきでないか、 その問題でございます。これにつきましても、やはりはっきりした考え方を持っていないと、むやみにこれを認めるということはこれは大変なことになると思いますし、他方、また余りに厳格に拒否するという態度をとることも、必ずしも日本の国益に合致しない場合があるんではないかというふうに思っております。  それで、現在、国家公務員に採用が認められていますのは、国家公務員法第二条七項でこういう条文がございます。第二条六項では、「政府は、一般職又は特別職以外の勤務者を置いてその勤務に対し俸給、給料その他の給与を支払つてはならない。」、それから七項で、「前項の規定は、政府又はその機関と外国人の間に、個人的基礎においてなされる勤務の契約には適用されない。」、こういう除外規定があるわけですが、この「個人的基礎」というのは恐らく毎年契約するところの嘱託というふうな地位の人ではないかと思います。正式に任用される、発令される公務員については、現在のところ私の理解するところでは、大学教員それから研究公務員、これらについては単独立法で認められているわけですが、それ以外は法制局の意見を聞いて個別的に判断しているように私は理解しているんです。したがって、内閣法制局としてこの問題について一般的にどういう考え方をとっておられるか、そのことをまず最初にお聞きしたいと思います。
  194. 味村治

    政府委員(味村治君) この問題につきましては、一般に公務員となるのにつきまして日本国籍が必要だという旨の法令上の規定の明文はございませんが、政府は、従前から公務員に関する当然の法理といたしまして、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わります公務員、そういう公務員となるためには日本国籍が必要であると。しかし、それ以外の公務員、例えば単に技術的労務を提供するだけの公務員といったような、それ以外の公務員となるためには必ずしも日本国籍を必要としないと、このように解釈しているところでございます。先生指摘の教育公務員特例法といったような法律は、この当然の法理を前提としてできたものというように考えております。
  195. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 どうも私はよく法律のことはわからない、勉強したいと思っているんですけれども、公権力の行使または国家意思の形成への参画というのは、もう少し我々素人にわかりやすく説明していただくとどういうことになりますでしょうか。
  196. 味村治

    政府委員(味村治君) これはいろいろございますので、一つ例示だけを申し上げますれば、例えば警察官でございますとか、刑務所の看守でございますとか、ああいったように国民に対しまして権力を行使するというような仕事についている方方、これは公権力の行使に携わっている方の典型でございます。  それから、国家意思の形成への参画、公の意思の形成への参画と申しますのは、国の場合でございますれば国の意思を形成する、例えば非常にいろいろな例があるわけでございますが、ある省の政策を決定いたします、そういったことに参画する地位にある公務員というようなものがそれに当たろうかと思います。そういうのが例でございます。
  197. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そのことを質問いたしましたのは、つまり大学教員の場合、ある学生を卒業させない、留年させるかどうか、これは教授会で判定するんですけれども、教授会に出席してその意思形成に参与する、これは公権力の行使に当たるでしょうかどうか。あるいは学部長が教授会の決定に従って留年なら留年を言い渡す、これはそれに妥当しますか、どうですか。
  198. 味村治

    政府委員(味村治君) 具体の問題につきましては、非常に問題がはっきりとその事実を確定いたしませんとお答えしにくい場面があるわけでございますが、国立大学の教授会でございますれば、その教授会の議によりまして、例えば学長の候補者を推薦なさるというようなことがあるわけでございます。そういった人事、どなたを学長として推薦するかといったようなことにつきましては、これはやはりその国立大学の学長を決定するという国家意思の形成に参画されるというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味で教授会に参加されるということは国家意思の形成に参画されることである、そのように考えていたわけでございます。  ただこの点につきましては、先ほどの先生の御指摘の特例法によりまして、外国人でありましても教授となることが認められている次第でございます。
  199. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 別に揚げ足をとるつもりは少しもないんですけれども、つまりある教授会では学長候補者を決定するということもあるでしょうし、ある教授会ではさっきも言いました留年の問題なんかを決定することもある、一律にはいかないと思いますが、そういう問題について必ずしも私は明白には決まっていないんじゃないかというふうに考えて、そういった問題をあいまいのままにしておいていいかどうかという観点からお伺いしているわけです。  その問題を一応離れまして、先般、自治省が内閣法制局の見解に基づいて、昭和六十一年六月二十四日、自治省行政局公務員部公務員第二課長から各都道府県の人事課長に対して、これは通達というんですか、「このたび別紙のとおり内閣法制局から口頭により見解を得ましたので、お知らせいたします。」として、「保健婦助産婦看護婦法に規定されている各職種の本来的業務(保健婦・・・保健指導、助産婦・・・助産、妊娠等の保健指導、看護婦・・・傷病者等に対する療法上の世話、診療の補助)は、専門的、技術的な業務であり、公権力の行使、公の意思の形成への参画に該当するものではない。」、したがって、そういう人に対しては国籍要件を付する必要はない、つまり採用してよろしい、そういう通牒を自治省は出されているんです、地方公務員に関して。これは国家公務員についても同じように当てはまると解釈してよろしいでしょうか。
  200. 味村治

    政府委員(味村治君) 先ほど少し適切でなかったかと思いますが、公の意思の形成に参画するかどうかということは、その職務の内容として参画するかどうかという、そういう参画する職務になるかどうかということによって決まるわけでございまして、具体的にある行為が場合によってはそういったことでないというケースがあるかどうかということは別にいたしまして、個別具体的に決めるわけではございませんで、職務の内容それによって決めるということを申し上げておきたいと存じます。  それから、先ほどは国家公務員について申し上げたわけでございますが、この法理は地方公務員についても適用があるというふうに従前から申し上げている次第でございます。
  201. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうしますと、国立病院においても差し支えない、看護婦長になるとかというふうになればこれは別になるかもしれませんけれども、普通の看護婦であれば差し支えないというふうに、国立病院の場合でもあるいは国立大学の病院の場合でも、そういうふうに理解していいわけでございますね。
  202. 味村治

    政府委員(味村治君) 国立大学の病院なり国立病院なりにおきます看護婦のお仕事、これは保健婦助産婦看護婦法に規定されている仕事と同じだろうと思うんですが、そういうものでございます限りは、これは先ほど申し上げました公権力の行使とか公の意思の形成への参画というような仕事とは別でございますので、それ以外のことだということでございますので、外国人の看護婦を国立病院等に任命することも可能であるというふうに考えております。
  203. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうしますと、ほぼそれと同じように考えられるところの栄養士であるとかそれに類する職種があるんじゃないかと思いますが、そういう人たちも国立病院あるいは国立の学校の栄養士として採用しても差し支えないというのが当然の法理として結論される、そう考えてよろしいでしょうか。
  204. 味村治

    政府委員(味村治君) 栄養士というのは、栄養士法によりますと栄養の指導に従事することを仕事ということになっておりますので、そういったような仕事を公務員として行うということでございますれば、それは単なる専門的な技術的な業務だということでございますので、当然国家公務員なり地方公務員に採用することも可能であるというように解しております。そのほかにもいろいろ職種としてあろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように非常にたくさん職種があるものでございますので、公権力の行使に当たらない、あるいは公の意思の形成への参画をしないという基準で判断していただきたいと存ずるわけでございます。
  205. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 誤解ないように言っておきますけれども、採用するかどうかはそれは主務官庁が決めることであって、そこまで私は言っているわけではない。その資格があるかどうか、それを聞いているわけで、個々の事例なんか挙げるとあるいは答えにくい問題が出てくるかと思うんです。私は外交官なんかでも文化交流なんかに従っているような人たちの場合は、今でも在外公館の日本センターなんかに外国人が働いていますけれども、これは嘱託で身分、地位が非常に不安定で、優秀な人はどんどんやめていっているようです。こういう人たちでもあるいは正式の公務員に採用した方が、特定の分野を限ってですけれども、それの方が文化交流の観点からいえばもっと日本の国益になるんじゃないか、そういうことを考えていますので、それで今申したような質問をしたわけでございます。採用するかどうかは、これは別に法制局の問題じゃないんで、それぞれの省庁のときに言いたいと思いますけれども、一般的な原則をはっきりさしておきたいというふうに考えているわけでございます。  それで私は、やはり今後国際化が進展するに伴いまして、いわゆる当然の法理で一つ一つ解釈するではなしに、一般的な基準を明文化する必要が生じてくるのではないか。その意味でその基準を、あるいは原則を総務庁あたりで一度検討してみられたらいいんではないか、そのことを考えているんですけれども総務庁にそういう御意思があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  206. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 外国人の国家公務員への任用問題、法制局の方からも御答弁ありましたが、現在当然の法理ということで判断していただいています。そういう意味では現在の制度からいきますと、公権力の行使、また国家意思の形成の参画に携わる職員はいけません。それからまた、試験採用ということで国家公務員試験、これは受験資格が国籍が要件となっておりますので、その道はございません。ただ、それ以外の選考採用ということで、先生指摘のような保健婦、助産婦、看護婦的なもの、あるいは教師、教員のたぐいですが、個人的な契約によるものもありますし、そういった道が開かれております。  それで、その中でも例えば最近でしたら研究公務員については、組織的なものがもっと必要じゃないかということで、研究交流促進法を確かに設けました。その前にそういった要請の強い国立大学の教員につきましても、特別の法律をつくったということになっております。先生のおっしゃるのは、それらも含んだ全体的なものが必要かと、そういう点もあるいはあるのかもしれません。ただ数等の点からいきますと、むしろ個別にそういったニードの大きいところに対して措置をしてきておりまして、現時点では今の制度で、特別な何かそういったものをつくらなきゃいけないという必要性は実は各省からも余り聞いておりません。  それから、なお付言するならば、自治省の場合には、各県がばらばらになるといけませんので、通達を出して統一を図るということをやっておるわけですが、国の場合にはそうではございませんでして、例えば看護婦ですと専ら厚生省ないしは文部省ということで限られるものですから、特に通達を出して周知徹底を図る必要もないということになっているわけでございます。
  207. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今すぐやってもらいたいというんじゃなしに、単独立法で個々にやっていくとばらばらになってくるんじゃないか、それを私は恐れているわけなんです。現在のところはその必要がないにいたしましても、将来人手が足りなくなってきて、現場を抱えているところの省庁なんかではそういう必要があるいは起こってくるかもしれない、そのことを私は考えているんで今言ったような質問をしたわけで、別に急ぐ問題ではないんですけれども、やはり研究を進めておいていただきたいということをお願いしまして、次の質問に移ります。  質問通告には役人の天下りについてと書いておきましたので、あるいは先般政労協あたりで発表しました民間に対する天下り人事、あるいは特殊法人に対する天下り人事ということをお考えかもしれないと思うんですけれども、きょう取り上げますのは天下りというか、横滑りというか、つまり各省庁間の異動の問題を質問したいと考えております。  私は、やはり縦割り行政を打破していくためには、若いお役人が自分の省を離れてほかの省に二年なり三年なり出向してその経験を学んでくる、場合によっては大学なんかに行って研究してくるというのも非常に役に立つんじゃないか。そういう意味の総合的な多面的な人事交流というのはメリットが非常にある。それは私は賛成です。また新しい庁なんかができたときに、新しいところは人が足りませんから、既存の省庁から人材を派遣してその仕事を手伝う、そのことも結構だと思うんですけれども、私はここで問題にしたいと思いますのは、そういった若い人たちが行くのではなしに、相当上の局長クラス、そういったポストにつきまして、特定の省が、新設の省庁でも何でもない既にもう二十年や三十年たっているそういう省庁に対して局長クラスの人を送り込んで、しかもその地位を何か自分の省の既得権益であるかのように押さえる、そういうことがあるやに聞いております。    〔理事菅野久光君退席、委員長着席〕  今ちょうど春、桜のころは省庁の人事異動の季節なので、各新聞が各省庁の人事の予想記事を書いているんですけれども、それを読んでおりましたら、これは四月十一日の読売新聞です。経済企画庁に対していろいろその予想をした後に、「通産省は大蔵省と見合う二つ局長ポストを押さえるのは確実。」であるというふうなことが書いてあり、いろいろな名前が書いてあるんですけれども、これではまるで経済企画庁は通産省なり大蔵省の植民地と言っていいんではないか。あるいはその同じ新聞、続き物ですけれども、北海道開発庁、これも随分日にちがたっているんですけれども、道庁出身のプロパーの人をあるポストにつけるか、そうではない、よそから入ってきた人をポストにつけるか、その問題について北海道選出議員団内部などの意見の調整がつかず微妙だということが書いてある。まさかその道出身の議員さんたちが介入しているとまでは思いたくないんですけれども、どうもこういう記事を読みますと、特定のポストをいつまでもほかの省庁が握っていて離さないという事例があるように思うんです。  異動する場合に、本籍ごと異動してくるのはこれは一向差し支えないと思うんですけれども、本籍はもとの省に置いておいて、二、三年間現住所だけ移す、そしてまたもとに帰る。本籍を移すかどうかの基準というのは、いろんなそれについては本が出ております。官僚について私も二、三冊本を読んでみましたけれども、それによりますと、やめたときに就職の世話をしてもらいたいと思う人は本籍は残しておかなければいけない。しかし、就職の世話をしてもらわなくてもいい人は本籍ごと移してしまう。もしこれが事実であるとしますならば、そういう考え方がやはり天下り人事なんかを生み出すもとではないか。今申しましたような局長のポストをある省が押さえておくということは、むしろメリットよりもマイナスの方が多いんじゃないか。つまり異動先の省庁の職員たちの士気を阻喪させる。あるいは予算をとるためには大蔵省から官房長でも入れておいた方が予算がとれるから、だからむしろ入れておこう、そういうことになってくると、私はマイナスの方が大きいんじゃないかと思う。  これについて、これはだれにお尋ねすればいいか。どうもこういった問題は総務庁長官内閣官房長官かよくわからないんですけれども両方からお答え願えればなおいいと思いますが、どういうふうにお考えでしょうか。
  208. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 建前を申し上げるようになりますが、事務次官等の幹部につきましては任命権は各省庁大臣に属しておりますので、政府内で重要な官職の人事であり、これは閣議了解を得た後に任命する。また局長等の幹部職員の出向の人事につきましても、各省庁大臣はその都度御指摘のような問題点、当該省庁の業務を踏まえ関係省庁と十分な調整を得て適任者を選定して閣議の了解を得て任命する、こういうことでございますので、それぞれ省庁に他の省庁から人を迎えると申しますか、任命する場合も、それぞれ大臣がその人材を十分検討して任命をすることでございますので、そのことによってそれぞれの省庁がより機能を発揮するという形のシステムが従来からとられていることは御指摘のとおりでございます。  ただ、先ほど具体的に経企庁の例が言われましたが、経企庁が創設されたときの経緯、あるいは大蔵省とのかかわり合い、あるいは通産省とのかかわり合い等において、もとよりプロパーでその職務に当たっておられる方々とあるいは他の省庁から来られた方々とお互い切瑳琢磨し、磨き合ってその所期の目的を達成されるという、要はその結果ではないかというように考えますので、一概にその是非を論ずることは甚だ難しいのではないかというふうに考えます。
  209. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一概にその是非を論ずることは難しいと言われましたけれども、先ほど言いましたように若い人たち、これは大いにメリットがある。しかし、局長ぐらいになってから向こうに行って二年、三年座っていて果たしてメリットがあると言えるかどうか。多少あるかもしれないですけれども、むしろデメリットの方がはるかに多いんではないか。そういった何かポストを自分の省の私物化する、そういうことは私は日本の官僚制度の非常な欠点ではないかと思う。これはやはり改革するのは政治家の任務だと私は思うんですけれども、建前の議論ではなしに、本当のところどういうふうにお考えでしょうか。
  210. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 人事管理の立場にありますので、ただいま官房長官から御答弁がありましたが、私からも申し上げさせていただきます。  表向きは大変偉くなってからその部署に急に行ったように見える方でありましても、案外若いときにその省庁できちっと勤めておったという人もあるわけでありまして、しかも各役所が相当のポストに人を出す場合には、そこに出して決して恥ずかしくない折り紙つきの人をむしろ出しておるわけでありますから、マイナスになるということはないのではないだろうか、このように思います。  それから、お役所の機構などのことについては、むしろそっち側に並んでいらっしゃる自民党の参議院議員の先生方の中に詳しい方がたくさんいらっしゃるわけでありますが、新設の役所というのは寄り合い世帯でございますので、バランスを考えるということはやはり人事の融和の上において極めて肝要なことであります。それらを配慮しながら今のところやっておるということでありまして、やがて相当の歴史が積み重なりまして、新卒で入った人たちが幹部になっていくというそういう時代になってまいりますれば、おのずからそこのプロパーの人たちが大部分を占めるということになるであろう、このように考えております。
  211. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 新設の省庁については問題ありません。私も先ほど言いましたように、国土庁でありますとか環境庁でありますとかというのはまだ日にちが浅いですから。こういう問題はつかさつかさに任せておくのではなしに、政治家が大局的な判断に立って決めるべき問題だと思う。十分留意していただきたいと思います。  これからはむしろ総務庁を激励する質問なんですけれども行政監察につきまして、これは亡くなられた玉置前々長官の発言がきっかけだと思うんですけれども、六十二年度に農協に対する行政監察を始められました。その目的はどういう目的で、どのような方針に従っての行政監察であるか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  212. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) ただいま御指摘の農協監察の目的でございますが、これは先生もただいまお話ございましたように、農協が組合員農家の自主的協同組織体といたしまして、農業をめぐる厳しい環境の変化の中にございまして、組合員農家の意思を反映した事業運営あるいは効率的な経営を行っているか、さらにまた地域におきまする農業生産、それから農村生活の中核としての役割を十分発揮しているか、こういった観点から農協の業務運営の実態と、それからこれに対しまする国、県の指導監督の実情といった点を調査いたしておるものでございます。
  213. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その報告は大体いつごろ出てまいりますでしょうか。
  214. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 報告の時期を申し上げます前に、現在の取りまとめの状況もあわせまして申し上げさせていただきますと、この行政監察は昨年以来二十六都道府県におきまして、都道府県、市町村のほかに二百数十の単協、それから連合会等につきまして現地調査を行いました。その後本庁におきまして中央段階の調査と並行いたしましてこれらの現地調査結果の分析、取りまとめを行ってまいったわけでございます。  現在、これらの調査結果につきましては、農水省等との間で、率直に申し上げまして千ページ近いものでございますが、その事実確認作業を行っている段階でございます。農水省におかれましても、この事務的作業に十分協力を率直に申し上げましてやっていただいておりまして、一応順調に進んでおります。  したがいまして、現在の時点で勧告の時期を確定的に申し上げることは少々申し上げかねるわけでございますが、これらの事務的作業が終了し次第、総務庁といたしまして改善意見を速やかに取りまとめまして勧告を行いたい、このように考えております。
  215. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 農協の活動につきましては、国民の間でもいろいろ批判があるところでございますので厳正にやっていただきたいし、また国民もそれを読みたいだろうと思うので、できるだけ早くしていただきたい。  私は新聞の記事をそのまま信用するつもりは少しもない。政治家になって新聞を注意して読むようになってから、確かに新聞は事実は報道しているかもしれないけれども、必ずしも真実は報道していないと感ずることがしばしばあります。決して新聞をそのまま信用するつもりはないんですけれども、これもことしの四月十日の日経新聞によりますと、農水省がアメリカとの関係もあっていろいろ抵抗していて、発表の延期であるとか、内容も余り個別事例を盛り込まないようにしてもらいたいということで、総務庁と農水省がやり合っているということがあるんです。こういうことはあるべきことじゃないんで、発表の時期はしかるべきときを得たらいいと私は思うんですけれども、内容をゆがめるようなことは絶対にしてもらいたくない。そのことを総務庁長官にぜひお願いしておきたいと思うんですけれども、よろしゅうございますか。
  216. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 新聞の記事につきましては、これは各方面を聞き回った結果を判断して記者の方が書かれるわけでありますから、その記者の方の考えというものがかなり盛り込まれて書かれておると思います。しかも、やっぱり記者の方は書く以上は編集に取り上げてもらわなきゃいかぬということで多少脚色をして書かれるところがあると思いまして、この具体的にお挙げになった記事につきましては、そういう農林水産省と私どもの間に争いがあるような事実は全くございませんので、その点につきましては申し上げておき たいと思います。  なおまた、農協監察につきましてはただいまお話ございましたように、いわば玉置前々長官の遺言とも申すべきものでございますので、私どもといたしましてはきちっとした結論を出したいということで一生懸命取り組んでおるところであります。これはただ単に農協だけではなくて、それの指導監督の立場にあります農林水産省あるいは地方農政局、さらには都道府県などの対応の仕方につきましても御意見を申し上げたい、このように考えておるところでございます。
  217. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ぜひその考え方で貫いていただきたいと思います。  総務庁にはもう一つ質問通告を出しておきましたけれども、私の持ち時間は五時一分までだと思いますので、次に、内閣官房の方に質問を移したいと思います。  私は、日本の安全を守っていく道は、敵が侵入してきた場合にはいつでもそれを撃退し得るだけの実力と申しますか、それだけの必要最小限度の実力を持つと同時に、単なるハード面だけでなしにソフト面においてもそれに対応できるようにしておく。つまり、有事立法その他の問題をあらかじめ準備しておくことが必要だろう。有事立法というと何かすぐにでも戦争が始まるんだというふうに考える人があるんですけれども、そういう備えをしておくことが戦争を防ぐ道だ、そういう意味で有事立法を早く制定するようにということを私は国会議員になってからたびたび申し上げたんです。防衛庁の報告によりますと、いわゆる防衛庁だけでやる第一分類、それから他省庁関係してくる第二分類、これは一応研究が終わったというふうに聞いたんです。しかし、第三分類といいますか、どの省庁にも所属しない、その問題については安全保障室でやっておられるというふうに話を聞いたんですが、どの程度進捗しているか、もしボトルネック、隘路があるとすればそれはどういう点にネックがあるのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  218. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  第三分類は、先生指摘のようにどの省庁にも属さざる問題で自衛隊が防衛出動した際に起こるであろう課題、こういうことでございますので、政府全体として取り組むべきものである、こういう考え方から内閣安全保障室がどの省庁に何をやっていただくか、そういう振り分けをやる、こういうことと相なっております。そういう観点から、防衛庁が内部で検討をいたしておりました第三分類の問題点を昨年の十月から本年の三月まで実務者レベルでもって事情を聴取させていただきまして、その聴取がほぼ終わったという段階でございます。  どういう問題点、ボトルネックがあるかというお尋ねでございますが、これらの割り当てを行う際に関係省庁にどういうふうにやるか、これをやはり内閣官房の立場からしばらくお時間をいただいて勉強をし、それから今度関係省庁と個別折衝をしてそれをお引き受けいただく、こういう調整と申しましょうか、説得をする。これがちょっとどこもやらない仕事でございますので、お引き受けいただくについてはよほどよくお話し合いをしないといかぬなと考えております。
  219. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 お聞きのように、第三分類の仕事というのはどこの省庁も本当は余り引き受けたくない仕事じゃないかと思いますし、引き受けてもなかなか順調にはいかないんじゃないかと思うんですけれども、こういう問題は内閣官房長官がつかさつかさに任せるんじゃなしに、やっぱりリーダーシップをとってやっていただきたいというふうに考えますけれども、よろしゅうございますね。
  220. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 法治国家であります以上、平時であれ有事であれ、いずれにしても法制的な整備は整えておくことは当然のことだろうと思います。そういった意味で、本来でありますればこうした法的な措置は既にでき上がっておらなければならないかとも思いますが、政府といたしましては過去努力をいたしまして、第一、第二、第三、それぞれの分類にわたって法制の努力を続けてきたところで、ただいま佐々室長が申し上げましたように第三分類につきましても最後の段階に来っておると思いますので、一日も早く法制的なきちっとした整備がなされますように督励し、かつ努力をいたしていきたいと思っております。
  221. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次は、安全保障会議の問題ですけれども、これは昨年、昭和六十二年七月三日の決算委員会で私が取り上げた。どうも安全保障会議で単に防衛庁予算の追認をするだけではなしに、例えばその当時はINF交渉なんかが進展していたときですけれども、INF以後の国際情勢の検討であるとか、あるいはペルシャ湾の危機にどういう対処をするか、そういった問題も安全保障会議で議論すべき問題じゃないか、そのことが各省庁あるいは国民に対して安全保障上の意識を高める上に必要であるということを私は述べました。その当時の後藤田官房長官も大体においてその趣旨に賛成されたんですけれども、新しい小渕官房長官もやはりその趣旨でやっていただきたい。単なる防衛庁が出した予算を追認するというだけでは安全保障会議の意味がないんではないかというふうに考えますので、そのつもりでせっかくつくった安全保障会議を大いに活用していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  222. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 安全保障会議は、言うまでもありませんが議長は内閣総理大臣でございます。そのことからもってしてもこの会議の重要性は言うまでもないことでありまして、御指摘の点にも十分留意をしながら、最も重要な国家安全保障の問題に対しましても、適宜適切にこの会議を開いて対応することは言うまでもないことだろうと存じます。
  223. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようでありますから、内閣総理府及び総務庁決算についての審査はこの程度といたします。     ─────────────
  224. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 国家財政の経理及び国有財産管理に関する調査を議題とし、派遣委員の報告を聴取いたします。大島友治君。
  225. 大島友治

    ○大島友治君 本委員会委員派遣につきまして御報告を申し上げます。  委員派遣は、穐山委員長、杉山理事、菅野理事峯山理事橋本委員、それに私、大島の六名で、一月二十一日から二十三日までの三日間、国家財政の経理及び国有財産管理に関する実情等を調査するため、愛媛県及び香川県に参りました。  調査の日程を申し上げますと、第一日目は、まず、日本たばこ産業株式会社松山工場を訪れ、当工場の概要について説明を聴取するとともに、セブンスターとエコーの二品目の紙巻きたばこの生産現場を視察いたしました。当工場は、明治三十八年二月に、たばこ製造の官営は伴って設置された長い歴史を持つ工場であります。  次に訪れましたのは、四国電力株式会社が全額出資している株式会社四国総合研究所の一つの機関となっています電子技術研究所であります。当研究所では、レーザー、データ通信、センサー、メカトロニクスなどの電子工学の調査・研究・開発を行っており、また、これらの分野での研究受託、コンサルティング並びに電子応用機器及び情報の販売、研究設備の賃貸など、地域の産業、経済等の活性化に役立つ業務を行っております。  次に、四国郵政局におきまして、郵政局、郵政監察局、電気通信監理局からそれぞれ管内の所管事項の実情説明を聴取しました後に、松山中央郵便局を訪れました。当郵便局は、昭和六十一年八月に局舎新築と同時に、地域住民へのサービスの一環として、「ゆう・あい・ルーム」を開設して、各種の展示会を開催しているほか、来客ロビーを利用してOA機器等の無料貸し出しなどもしております。私たちが訪れましたときには、愛媛大学養護学校の生徒さんたちの機能回復訓練の一つとして、ミルクパックを再生利用したはがきなどの作品展が開催中でありました。なお、材料は地域のボランティアグループの皆さんが提供しております。  第二日目は、昨年十二月十八日に供用が開始されて間もない、三島・川之江―善通寺間三十八・四キロメートルの日本道路公団高松自動車道を視察いたしました。現在、四国内には、高松―高知県須崎間のルートの四国横断と、徳島―愛媛県大洲間のルートの四国縦貫の両高速道路の計画がありますが、これまでに開通しておりますのは、香川県善通寺―愛媛県土居間の約五十キロメートルと、高知県南国―大豊間の約二十キロメートルの二区間であり、四国四県の県庁所在地が高速道路で結ばれますのは、二十一世紀に入ってからと言われ、また、四国横断高速道路が本州四国連絡橋の児島・坂出ルートの終点となります坂出市まで拡張されますのは、六十六年度末になると予定されています。  次に訪れましたのは、海上保安庁第六管区海上保安本部の備讃瀬戸海上交通センターであります。当海上交通センターは、一日当たり約一千隻が航行する備讃瀬戸海域の船舶の安全を図るため、昭和六十二年七月一日から海上交通情報の提供と航行管制の業務を開始しております。  次に、本州四国連絡橋児島・坂出ルートを海上から視察いたしました。本ルートの建設費は、昭和五十九年度価格で約一兆一千三百億円、工期は九年六カ月の予定で五十三年十月に着工し、六十二年度は建設費一千百四十八億円をもって、道路の供用及び鉄道の開業に必要な工事を完了させ、六十三年四月十日に道路、鉄道ともに全線開通いたしましたが、このルートの全長三十七・三キロメートルのうち海峡部の九・四キロメートルは、六つの橋でつなぐ世界に例を見ない長大橋梁群であります。なお、全線開通によりまして、本州―四国間の所要時間は、道路ではこれまでの三分の一に、鉄道では四分の一にそれぞれ短縮され、その結果、人・物・情報の行き来が活発になり、二十一世紀にかけて西日本を中心に地域の活性化に役立つものと期待されております。  第三日目は、高松市内におきまして、四国旅客鉄道株式会社、四国財務局、高松国税局、高松国税不服審判所、日本たばこ産業株式会社四国支社の順に、それぞれの管内業務の概況説明を聴取いたしましたが、その詳細な報告は、本報告に譲りまして、四国旅客鉄道株式会社について若干御報告いたします。  当鉄道株式会社は、旧国鉄の分割・民営化によりまして六十二年四月に設立されました。当社の六十二年度事業計画による収支計画の実績は、同年度の九カ月を経過しました昨年十二月の時点で、営業収入三百十三億円に対しまして、営業経費が四百五十九億円でありまして、差し引き百四十六億円の赤字経営の状況でありますが、経営安定基金の資金運用による百五十二億円の受取利子の補てんによりまして、経常損益は五億円が見込まれ、辛うじて黒字となっております。  次に、地場産業の実情を把握するために、香川の漆器で有名な株式会社森繁に参りました。当社の創業は昭和十九年一月で、資本金四千百万円、従業員数三百人という典型的な中小企業であります。生産品目はいす、棚、漆塗り和家具など家具全般にわたり、製造と販売を特別注文も含めて行っており、私たち一行は、工房内で手づくりの和家具を生産しております状況を見てまいりました。  最後になりましたが、今回の委員派遣に当たりまして、関係各機関に大変お世話になりましたことを申し添え、お礼を申し上げたいと思います。  以上で口頭報告を終わりますが、委員長に別途派遣報告書を提出してありますので、本日の会議録に掲載させていただけるよう委員長においてお取り計らいをお願い申し上げます。
  226. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。  なお、ただいま御要望のございました詳細にわたる報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  次回の委員会は来る十八日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会