○
参考人(
岡部達味君)
最初に、このような
機会を与えていただきましたことにつきまして感謝申し上げます。
私はまず、
中国の
対外政策の基本方針からお話しを申し上げたいと思います。
一九八二年以来の
中国の
対外政策は、いわゆる独立自主
政策でございます。この独立自主
政策とという
言葉は、名前は一見平凡でございますけれども、実はその背後に非常に大きな転換が隠されていると言わなければならないと思います。
〔小
委員長退席、
最上進君着席〕
それまでの
中国は、
世界に存在する
諸国家あるいは語勢力というものを敵と味方に分けておりまして、その敵の中の主要敵、これを特定し、それを孤立せしめる統一戦線をつくる、これが国際的な大戦略でございました。
国内的にも同様でございます。具体的に申し上げるならば、まず
最初は
日本、次にアメリカ、それから
ソ連がこの主要敵になってきた。一九七二年における日
中国交正常化、これも反ソ統一戦線という枠の中において、それだけではもちろんございませんけれども、そういう枠の中において実現されたということは否定できない事実でございます。
ところが一九八二年以後、この敵、味方に分ける、あるいは主要敵論から離脱し始めたわけでございます。その八二年以降の
政策を私は是々非々主義
外交、あるいは争点ごとに連合
関係を組みかえていく多元重層的な
政策というように呼んでおります。
〔小
委員長代理
最上進君退席、小
委員長着席〕
別の
言葉で言うならば非同盟的な
政策であり、あるいは悪く言えば日和見主義的であるというふうに申し上げていいかと思います。しかし、この
政策は
中国が現在追求しております
経済建設、改革、開放、近代化という目標にとりましては最も適合的な
政策であるということが言えようかと思います。
中国自身も
戦争と革命の
時代という
認識から、平和と
発展の
時代という
認識へ変わってきているんだと、我々はそういう
認識が変わってきているのだということをしきりに言っております。人によりましては、かつて
戦争と革命という
時代というふうに
認識したことによって
中国がこうむったマイナスははかり知れないというところまで語っている状態でございます。
以上のような基本的な方針に立ちまして、一九八二年以降、
中国は国際情勢を米ソの間の対話と対抗という観点から見るようになっております。対話と対抗というのはどういうことかというならば、対話が進み過ぎますといわば米ソ共同支配というような状態が出てきてしまう。対抗が進み過ぎますと
世界戦争の危険が出てくる。どちらも望ましくないわけでございまして、対話と対抗が同時並行的に進む、例えば現在のような
状況、これが現実の姿であり、かつ
中国自身の期待する状態である、こういうふうに考えるようになってきております。そういう米ソの対話と対抗の中において米ソ間でバランスをとることによりまして自分の国の地位を向上せしめる、独立自主を守り得る、こういう
考え方がこの是々非々主義、あるいは多元重層的な物の
考え方の
中心にある
発想法であるかと思います。
この
考え方は、南北
関係的な視点から国際
社会をとらえているわけでございまして、決して資本主義対
社会主義という東西二陣営論的なとらえ方ではないということに御注目をいただきたいと思うわけでございまして、そこから
中国の最近の対外主張というものはいずれも南の立場からの主張、それが非常に色濃く出ているということが言えようかと思います。
経済的に申し上げるならば、例えばアジアNICS、ASEAN
諸国などと一緒にアメリカの保護主義に対して非常に
反対的な
態度をとっているというような
状況が見られるわけでございます。対日
関係もそれに伴いまして
変化したわけでございますが、その点は後で改めて触れさせていただきます。
一九八二年以来ずっと基本的にこのような方針をとってきたわけでございますけれども、ところが昨年あたりからこの基本方針に新しい要因が出てまいりました。二つ挙げさせていただきたいと思います。
第一の要因は
ソ連の変貌でございます。
ソ連の行っております改革の
努力、ペレストロイカというものに対しまして
中国が抱いている関心は極めて大きいものがございます。しょせん中ソ対立があれだけ激しくあった後においても、
中国は自己のやっていることの正当性の根拠を
ソ連にやはり求めているんだなというふうに感ぜざるを得ないくらい
ソ連の改革に対する
中国の関心は大きいものがございます。
ソ連でもやっているじゃないか、だから我々のやっていることは正しいのだというような気配が非常に濃厚に見られるわけでございますし、また、単にそこにとどまらず、
ソ連のペレストロイカの成功のいかんというものが
社会主義というものが生存していけるかどうかという
一つの根拠、そういうような観点から見ているというぐらいの状態に今やなりつつあるという点が指摘できようかと思います。これが新しい要因の第一でございます。
第二の要因は、
日本のいわゆる
大国化でございます。
大国化といった場合に、
中国から見ますと、少なくとも三つ重要なポイントがあるわけでございます。
一つは、
日本の
経済政策が
中国にとってあるいは
発展途上国にとって望ましからざる方向へ行くのではないかという、こういう懸念でございます。ここでしばしば
中国側から言及されますのは、長谷川慶太郎氏の書いた「アジアょさらば」という本でございまして、堂々たる学術論文に繰り返し引用が出てくるという状態でございます。これが一番目でございます。
二番目は軍国主義復活という議論でございます。軍国主義あるいは軍国主義復活というものをもって何を
意味するかという点に関しましては、甚だ
中国側の定義もあいまいでございましてよくわからないわけでございます。論理的に申しますと、
中国が最近展開しております
戦争と平和についての議論からするならば、
日本が軍国主義を復活せしめる、この場合の軍国主義というのは
軍事力の
行使あるいはそれの威嚇によって何らかの国家目標を達成し、あるいはそのための
国内的な
体制をつくるというような
意味で私は使っているわけでございますけれども、そういうような
行動はナンセンスであるという議論に
中国自身の主張がだんだんなってきているわけでございまして、したがいましてそういう点から申しますと、この軍国主義復活という議論は、論理と感情が矛盾していると申しますかあるいは別に目的があって行っている議論かいずれかというようなことになりかねないかと思いますが、いずれにいたしましてもそれが二番目でございます。
それから三番目の要因は、
日本が台湾に接近しつつある、過度に接近しつつあるという、こういう観点でございます。台湾が
中国にとりましては極めてセンシティブな問題であることは御承知のところでございますけれども、特に最近におきまして、例えば昨年、鄧小平主任が香港からの代表団に向かいまして今のままだと台湾はいずれアメリカか
日本にとられてしまうというような言い方をしたりしておりますし、それから、
日本がサンフランシスコ平和条約に法的に束縛されることによりまして台湾の帰属未定という法的立場をとっていることに対しまして、これは実際に台湾を
中国大陸から切り離してしまおうという、そういう野望のあらわれではないかというような議論、これが出てきているわけでございます。で、一九七二年の日
中国交正常化に当たりまして、当時の条約課長、外務省の栗山さんが、法的にはサンフランシスコ平和条約に束縛されるから帰属未定だけれども、
政治的には既にカイロ宣言、それからそのカイロ宣言の条項は履行さるべしといったポツダム宣言を受諾している
日本は、台湾は
中国へ返しているんだという言い方をしているわけでございますけれども、そういう歴史があるではないかということをこちらから指摘いたしましてもなかなか納得しないという、こういうような台湾についての懸念というもの、これがございます。そういう三つの要因からできておりますのは
日本の
大国化という新しい要因であろうかと思います。
第一の要因、
ソ連の変貌という点から具体的な
中国の対外
態度のあらわれを見ますと、御承知のように、中ソの接近というものが非常に顕著に出てきているわけでございまして、それも単に改善されてきたというのみならず、一時
中国は、
社会制度とそれから
対外政策との
関係はないというふうに言っていたわけでございますが、したがいまして、資本主義の
日米とも友好
関係を結ぶことができれば、
社会主義の
ソ連とも敵対
関係に立つことができる、こういう言い方をしてきたわけでございますけれども、最近の状態を見ますと、
社会制度と
対外政策との
関係は全く無
関係であるとはどうも考えていないように思われる、そういう節が出てきているわけでございます。まあ、今までの
中国の
態度がいわば西南西ぐらいのところにあったといたしますと、今や東南東ぐらいのところへ移行してきたというふうに申し上げてよろしいかと思います。
カンボジアに対します、カンボジア
政治解決ですね、それに対します
中国の最近のここ数カ月における緩和された
態度もそのあらわれでありましょうし、それから、
ソ連側から言うならば、
ソ連がブレジネフ・ドクトリンというものを否定しつつある、それに対して
中国側が非常に注目しているという
現象があるわけでございまして、そういうような面で中ソ接近というものが注目されるわけでございます。ブレジネフ・ドクトリンというのは、御承知のとおり、
社会主義圏を構成する個個の国の
利益よりも
社会主義圏全体の
利益の方が優先するんだという物の
考え方でございまして、したがいまして、
中国はだから
社会主義圏というようなものはない、
中国は
社会主義圏を離脱するという
態度をとったわけでございます。この
態度は現在でも変わっておりませんし、近い将来において中ソ同盟復活というような
現象が起こることはございませんけれども、にもかかわらず中ソ接近というものが生じていることは御承知のところでございます。
それから、
日本の
大国化という点から出てまいります問題が光華寮問題に集中的にあらわれておりますし、それから防衛費の一%突破問題あるいは歴史教訓問題というような形で、一般的な形で提起される諸問題ですね、こういうものが出てきているわけであります。
教科書問題のような歴史教訓問題に類する問題でございますけれども、これは八二年にあらわれた
現象でございまして、その点、先ほど申しましたように、八二年から
中国の
政策が変わったという点とあわせてお考えいただければその
意味が非常にはっきりしてくるであろうと思われるわけでございます。八二年以前におきましては、例の覇権条項を含みます平和友好条約をめぐるトラブル以外はトラブルらしいものはなかったわけでございまして、そういうふうな
変化が出てきているわけでございます。
こういう
中国側の
態度に対しまして
日本側がなすべきことはどういうことであるかということを考えてみますと、
一つは相互
理解の一層の促進が不可欠であるというふうに申し上げたいわけでございます。
この点は、先ほど
袴田さんがおっしゃいましたように、
ソ連の
日本研究者はだんだんふえているけれども
日本の
ソ連研究者は少ないとおっしゃいまして、
中国はまだいいというように聞こえましたけれども、実は私は、
中国に関しましても、
日本の
中国研究が衰退しつつあるという印象を持っているわけでございまして、そういう状態が続くということは甚だ望ましくないことであろうと思うわけでございます。そういう観点からも相互
理解の促進というもの、真の相互
理解というものの促進は極めて重要であるということがまず申し上げられるかと思います。
それから、国際
社会における
日本の
役割、これの明示と実行、これをはっきりせしめること。これは、当然国際
社会において
日本が軍事的
役割を果たすというようなことは考えられませんし、また望ましくないことでございますので、非軍事的
役割、これを明示し実行するということ、これが不可欠であるというふうに考えるわけでございます。
それからもう
一つ重要なことは、
日本国内における歴史教育、これの整備をする必要があるわけでございまして、最近の人々、若い人々の近代史に対する
理解のなさというものは恐るべきものがあるわけでございまして、
中国側においては、中年と老年はもう
戦争をしたくないと思っているけれども、青年の間には軍国主義が見られるというような議論があるわけでございます。それはどういうところから出てきた議論か私はつまびらかにいたしませんけれども、若い人の間に例えば兵隊さんのような
格好をして
戦争ごっこのまねをする人があらわれたり、あるいは突っ張りとかそういうふうに呼ばれている青少年が右翼に走ったりという現実があることは間違いないわけでございまして、恐らくそういうような個々の点をとって言っているのだと思いますけれども、仮にもそういうような誤解を招くようなことのないような
態度をとる必要があろうかと思います。
次に、
経済問題に移らせていただきたいと思います。
日中間には広範に友好
関係を樹立する
可能性があるわけでございまして、それは言うまでもなく
経済的な相互補完性の存在ということであるわけでございます。ところが、ここ数年いろんな形でこの
経済協力
関係に問題が起こっております。
一つは
貿易赤字の問題であり、それからもう
一つは投資が少ない、そしてそれに伴って技術移転が少ないという問題でございます。
貿易赤字、これは対
中国のみならずアメリカ、ヨーロッパあるいは東南アジアの国々との間にあるわけでございまして、いわば
日本がしょっておる
世界的な
傾向であるという面があるわけでございますけれども、そのほかに日中間の
構造的な要因があるわけでございます。
例えば、
日本の省エネルギー化が進みまして、
日本が
中国からエネルギー
資源を導入して
かわりに
工業製品を売るというようなもくろみというものがだんだん崩れてきているということ。それから御承知のように、最近
日本の産業
構造が転換しつつある。
中国においても転換しておりますけれども、そういうような問題がある。それから、
中国のような
発展途上国が
日本のような国と
貿易関係を持てば必然的に赤字になるわけでございまして、これはほかのあらゆると言ってもいいかと思いますが、石油産出国以外との間では赤字になるのがごく普通になっておりますが、そういうような
構造的要因があるわけでございます。
しがたいまして、この
貿易赤字の問題は、実は
中国が非常に非難する割には改善の見込みが少ないわけでございますけれども、ところがこれも昨年あたりから
中国の輸入規制と輸出強化、それから円高、これによりまして是正の
傾向にあるということは指摘できようかと思います。
それから、投資、技術移転の停滞という点に関しましては、これは
中国側の
条件の未整備ということは非常に重要な点でございまして、これは
中国自身がインフラの未整備、それから労働力の質が低いというような点を自覚いたしまして改善に非常に今
努力をしております。
また、
日本側はそういう状態を見まして、かつ
日本の企業の
政策決定はボトムアップといいますか、下からだんだん上へ上げていく
政策決定のやり方でございますので、どうしても慎重に慎重にという方になる。トップダウンの
政策決定をやるほかの国よりは
日本が慎重であるというようなことがあることは間違いないわけでございますが、そういう
条件から進んでいないわけでございます。
ところが、この点に関しまして
中国側は、
日本が
中国に対して技術移転を行うならばブーメラン効果が起こるであろうということを恐れているのではないかというような
考え方がある。それから、
中国側の
条件未整備の中に、ろくな法律がないではないかという議論があるわけでございますけれども、それは法律万能論である、契約で考慮してもらえないかというような、そういう議論がございまして、特にアメリカ、ヨーロッパあるいは華僑資本と比較した場合に、
日本の消極性が目立っているというようなクレームがしばしば聞かれるわけでございます。
ただこれも、ここ二、三カ月でございますけれども、円高の
影響から企業が、特に中小企業を含めましてアジア
諸国へ進出が非常に進んでおりまして、そういう
状況を見て
中国側の期待が増大することによってこの対日非難が好転しているということは事実でございます。問題は、その期待に
日本がこたえ得るかどうかということになろうかと思います。
中国側ももちろん輸出
努力をいたしまして、この日中間に存在する、あるいはより広くアジア・
太平洋に存在する
問題点の是正に
努力をしているわけでございまして、御承知の趙紫陽総書記が主張いたしました沿海地区の
経済発展戦略というようなものが出てきているわけでございます。それから、
経済関係を持つパートナー、これを多様化しようという
努力が見られまして、
日本だけにおんぶをしているのではこれは
日本がそっぽを向いたときに危ないということから、ヨーロッパ、アメリカその他の国々、第三
世界の国々等へ多様化しようという、こういう
努力をしている、これもまた事実であろうかと思うわけでございます。
そういうような
中国側の
努力によりまして、日中間に存在する
経済問題が軽減されるかと申しますと、実は必ずしもそうではないであろうという気がするわけでございます。
国内的に見ますと、
中国の場合、いわゆる郷鎮企業という、沿海地方なんかに
条件のいい企業もございますけれども、内陸部に
条件の悪い企業がたくさんありまして、そういう企業が開放戦略をとればとるほど国際競争に負けてつぶれていくのではないか、こういう問題がある。その郷鎮企業は、実は余った農業労働力を吸収することを期待されているわけでございまして、郷鎮企業がうまく
機能しないということになるならば、その剰余労働力をどうするかという問題が出てくる。
それから
地域格差、沿海だけ
発展させるということになりますと内陸との間の
地域格差、それからうまくやった人とまずくやった人との間の階層格差、これが広がる情勢にある。それから、国際
市場との結合が増大いたしますと、当然物価改革、価格改革、これをだんだんに漸進的にやっていかなければならないものが一遍にがっと物価を上げざるを得ないというような、そういう状態が出てきてしまうというような
問題点を
中国は
国内的に抱えるであろうと思うわけでございます。
これが、最近新聞などで言われております趙紫陽と李鵬の対立のもとというような
現象であろうと思いますが、私自身は、この
問題点は趙紫陽も李鵬もともに
認識しておりまして、その両者の間の対立というのはそんなに大きなものというふうには見ておりませんけれども、例えばそういうような
問題点、矛盾というものが存在するわけでございます。
そういうような状態にあるにもかかわらず、
中国は
経済体質の改善のためにあるいは改革の成功のために対外開放に一層の
努力をしなければならないわけでございまして、それが一昨年以来、アジア・
太平洋協力に積極的に
中国が参加し始めた、PECC、
太平洋経済協力会議というようなものに正式参加する、それからガットに加盟を申請する、ADB、アジア開発銀行の正式メンバーになるというような形で、アジア・
太平洋地域の
経済協力
関係に積極的に参加しよう、こういう
態度を見せている
背景がそういうところにあるわけでございます。
日本にとりましては
中国がそういう
態度をとるということは歓迎すべき
現象でございますけれども、しかし問題はアジアの他の
発展途上国にとりましてこれは非常に大きな問題になります。沿海
発展戦略というものをとりつつあるというふうに先ほど申しましたけれども、その沿海地区にいる人口一億六千万でございます。一億六千万の国が大々的に輸出をする、輸入もするわけでございまして、アジア
諸国から見るならば
市場として非常に
評価すべきものがあると同時に、輸出戦略をとりつつある国々にとりましては非常に手ごわい競争者である、こういう立場にならざるを得ないわけでございまして、ここに
日本が果たすべき
役割があるように思うわけでございます。それがアジア・
太平洋協力における秩序ある分業
体制の確立ということでございまして、
日本がアジア・
太平洋協力というものを積極的に推進するということの
意味はまさにそこにある。
中国がアジア・
太平洋協力に密接に参加しようという意図、これが歓迎すべきものであるという
理由もまたそこにある、こういうふうに考えるべきであろうと思うわけでございます。したがいまして、
日本が国際的になし得る貢献というものは一体どういうものかということを
経済の面におきましても明確化すること、これが非常に重要であるということが言えようかと思います。先ほどは
政治的な
意味において
日本の
役割の明確化ということは必要であるというふうに申しましたが、
経済的な
意味においても同様なことが申し上げられようかと思うわけでございます。
最後に、
中国がそういう状態で近代化を進めていった場合に、軍事強国化し、アジアにおける不安定要因になるのではないかという、こういう議論があるわけでございまして、この点について一言申し上げたいと思います。
そういう
可能性がもちろんないわけではございませんけれども、それに対しまして
日本にしてもあるいはほかの国にしてもそれを妨害するという
行動をとることはいたずらに
中国側の、何と言いますか、嫌悪を買うのみでございまして、
日本はけしからぬという
考え方を生み出すのみでございまして
意味はないというふうに考えるわけでございます。むしろ、今日の国際
社会において
軍事力が果たし得る
役割、
軍事力の効果というものが急激に低下しつつあるわけでございますが、それについての相互
理解、相互了解というものを強めるということ、これが必要なんであろうというふうに感ずるわけでございます。
中国はかつては農業
社会であり、かつあれだけ広い土地にばっさりと広がっておりましたために
戦争のできる国であった。
日本は密集しておりますために
戦争のできない国になりつつあったわけでございますけれども、
中国自身が沿海
発展戦略をとることによって
中国自身もだんだん
戦争のできない国になってきつつあるということ、これをお互いに
認識し合うということ、これが非常に重要なことであろうというふうに思うわけでございます。そして、アジアにおける
地域紛争の平和解決に
中国を含む諸
大国とともに
努力するということによりまして、
日本も
中国も非軍事
大国化するという方向を促進する、こういう
努力が必要になるであろうというふうに感ずるわけでございます。
中国の軍事強国化の
可能性に対しましてはそういう対応の仕方しかないというふうに私は考えるわけでございまして、米ソが緩和に向かいつつある新
時代の
日本の軍備の
意味の再
評価にもこの問題は連なるであろうというふうに考える次第でございます。
以上でございます。