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政府委員(
西廣整輝君) 私の
答弁に関連したことなんで、私からまずお答え申し上げます。
私ども、戦略核戦力を初めとして通常兵力に及ぶ軍縮、軍備管理が進行するということを期待していることは間違いないわけであります。その点については、通常兵力についての軍縮も行われるべきであるという
先生の御
意見に全く同
意見になるわけでございますが、ただ、現状
認識なり、それに持っていく持っていき方ということについて、若干
見解を異にしているんじゃないかと思うわけです。
まず第一点は、
先ほども
外務大臣が申されましたけれども、我々はデタントという言葉そのものではなくて、具体的に
実態がどうなっているかということに着目せざるを得ないということであります。
デタントと言いますと、我々すぐ
思い出すのは一九六〇年代の終わりから七〇年ごろのデタントでございますが、御
承知のように、当時デタント、デタントと言われながら、中ソ国境紛争もありまして、
アジア地域ではわずか二年足らずの間にソ連の兵力が二十数個師団から五十数個師団までふえたというように倍増したわけです。決してデタントではなくて、
アジアにおいては緊張が増大したと言わざるを得ないと
思いますが、それでもなおかつ世の中はデタントと言っておった。我々はそういうふうに、デタントという言葉ではなくて、
実態がどうなっているかということにまず着目をしたいということであります。
第二点は、これは先般本
調査会の小
委員会で、久保田
先生の御
質問だったと
思いますが、私がお答え申し上げたと
思いますけれども、この東西両陣営の対立の構図というものは、いい点もあれば悪い点もたくさんある。いろいろありますけれども、少なくともその両陣営内に属する国間の戦争はなかったという
意味では、マクロ的にその種主要国の間の戦争がなかったという点では、それなりの評価をせざるを得ない。そういった
枠組みが現在変わりつつあるということを私が申し上げたと
思います。そして、この東西両陣営のそもそもの
防衛戦略というものは、かつては非常に非対称的なものであったということも申し上げました。
それは、西側は主としてアメリカの戦略核
抑止力、そういったものに依存した
防衛戦略をとり、ソ連はそもそもは通常兵力の優位というものに依存した
防衛戦略をとっておった。それが六〇年代から七〇年代にかけて逐次逐次変わってきて、まず戦略核戦力においてソ連がパリティを獲得し、さらに現在INFについて
相互ゼロオプションということでゼロにしようという状況まで来ている。つまり、核の分野については戦略核戦力を含めて中和状況になりつつある。残った状況は、全体として見れば通常兵力の東側優位という状態が際立ちつつあるという
実態はやはり御
認識いただかなくちゃいかぬということを申し上げていると
思います。それが私のお答えした通常兵力による抑止といいますか、そういったものの重要性についての
一つの理由であります。
第三点は、軍備管理なり軍縮を実現するための戦術的な問題になろうかと
思いますが、やはり軍備管理、軍縮というのはパリティ、ある程度の力の
均衡というものがあって初めて可能になってきている。例えば戦略核戦力、SALTIIが実現したというのは、ソ連のアメリカに追いつこうとする戦略核戦力の増強というものがなされて両者間である
意味のバランスというものが出て、そこで初めて、残念なことながらそこにいって初めて軍縮にいこうじゃないかという機運が起きてきたということは御
理解いただけると
思います。
同じようにINFにつきましても、ソ連のSS20等の配備、そういったことに伴いましてNAT
O諸国でいわゆる
先生よく御存じの二重決定というものが行われました。要するに劣勢のまま軍備管理を行おうとしてもなかなか難しい。そこでNATO諸国としてもその種中距離核についてソ連と対抗し得るものをまずつくろうじゃないか。そこでお互いにテーブルに着ける状況にして、そこから軍縮
交渉、軍備管理
交渉を始めようじゃないかという二重決定が行われ、それが曲がりなりにも実行でき、そこでソ連もテーブルに着いてきて、幸いにして
相互に全面削減をしようじゃないかという
合意にたどりついた、こういう経過がございます。
今仮に、INF等が実際に全面削減された
段階で申しますと、
先ほど申したようにソ連の通常兵力の優位というものだけが非常にクローズアップされてくる状況になりました。この削減あるいは通常兵力の軍備管理ということに進もうといたしますと、やはりそこにある種のバランス、お互いにこれではいかぬではないかという
認識に立ち得るような状況がありませんと、一方的に優位にあるものの善意だけに期待しているということではなかなか軍備管理というものは行われないという現実も御
理解をいただきたいと思うわけであります。
その他、そういったもろもろの点を
考えまして、やはり我々としては戦略核なりあるいは中距離核の現実に抑止効果というものが減じつつあるということは事実でございますので、そういう際に現状を見ますと通常兵力の劣勢というものは否めない。やはりその間のみずからの安全というものについては留意せざるを得ないというのが私の
考えでございます。