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1988-05-16 第112回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十六日(月曜日)    午前九時三十一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         加藤 武徳君     理 事                 坂元 親男君                 堀江 正夫君                 最上  進君                 矢田部 理君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君     委 員                 石井 一二君                 植木 光教君                 大木  浩君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 永野 茂門君                 林 健太郎君                 松浦 孝治君                 山内 一郎君                 久保田真苗君                 福間 知之君                 丸谷 金保君                 中西 珠子君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君                 青島 幸男君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君    政府委員        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    説明員        特許庁総務部工        業所有権制度改        正審議室長    山本 庸幸君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査     ─────────────
  2. 加藤武徳

    ○会長(加藤武徳君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  外交総合安全保障に関する調査を議題として、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 堀江正夫

    堀江正夫君 まず初めに、宇野外務大臣瓦防衛庁長官が御就任以来、ともに我が国の安全と世界の平和と安定のために八面六臂、獅子奮迅の御活躍をいただいておることに対しまして心から敬意を表したいと存じます。  本日は、当調査会調査中間年としての締めくくりの審議のために、朝早くから初めて両大臣においでいただいたわけであります。限られた時間でありますので、早速当面の問題数点について、私の意見を交えて質問に入らしていただきます。  第一の問題は、安全保障面における国際的な貢献という問題であります。  日本の国際的な責任貢献という問題は、言うまでもなく現在の日本における最大の課題でありまして、総理施政方針演説においてもこのことを強調され、また総理外務大臣も今日までのたくさんの訪問国でその都度この日本方針を述べておられます。もとより日本国際的責任貢献経済面や社会、文化面等中心となり主体となることは当然であり、疑う余地もありません。しかし同時に、限られた分野ではありますが、狭い意味での安全保障面についても我々がなすべきこと、なさなければならないことがあることも我々は十分に認識しなければならないと思っております。  過日、当調査会マンスフィールド米大使をお招きして懇談しました際に、同大使日本のバードンシェアリングについて、緊密な日米安保体制下の一層の防衛努力国際経済協力の拡充を強調されました。私は、狭い意味での安全保障面での国際的貢献基本というのは、あくまでも日本自身安全確保のために従来の日米安保体制基本的な枠組みの中でより一層抑止力対処力向上するように国としての防衛体制防衛力整備に努めることである、これによって従来余りにも多くを米国に依存してきたその依存度を軽くする、このことが同時に間接的に極東の平和にも寄与することになると思っておりますが、いかがでございますか。  また、今回初めてアフガン監視軍外務省職員が派遣されたと聞きまして、高く評価しておるわけでありますが、従来の何でも金だという考え方から、この際、国際平和維持軍に対しては今後自衛官の派遣を含めて一層積極かつ直接的な寄与をする、そのほかでも、従来頭からタブー視されていたものにメスを加えて、当然できること、やらなければならないものがいろいろとあるんだ、このように思っております。これらを今後長中短期的視野でとらえて具体化を進めることが必要ではないか。もとより、これらは憲法の枠内で行うことは言うまでもありません。しかし同時に、憲法の解釈は従来よりより柔軟、現実的に、そして国際的な常識に十分に沿うものである必要があることは当然であります。また同時に、国民合意国際的理解も必要であることは言うまでもありません。  これらにつきまして、両大臣の御見解を承らしていただきたいと存じます。
  4. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まず、我が国の安全並びに平和に関しましての所見ということでございますので、それに関して申し述べたいと思います。  堀江委員がおっしゃるとおり、我が国が今日の 平和と繁栄を得ておりますのは、日米安保体制が極めて円滑に、効果的に運営されていたからだと私は信じます。したがいまして、今後もそういう体制は大切にしていかなければならないと考えております。また、当然我々自身といたしましてもそうした枠組みの中におきまして自主的、自発的に防衛力整備に努めてまいりました。このこともやはり必要なことであろうと私は考えております。  特に、外交面におきましては、そうしたことを念頭に置きながら常に平和を訴えてまいりましたのが我が国外交方針でございます。そうした姿勢において我が国の安全をより一層かたいものにしたい、これが私たち考え方であります。したがいまして、我が国外交方針といたしましては平和に貢献する外交を貫かなければならない、このことを主題といたしましてあらゆる面でいろいろと私たちの主張を行っているところでございます。  特に、二番目に申されましたアフガン、幸いにいたしまして昨日からソ連軍の撤退が始まりました。私は、このことがスムーズに行われ、なおかつ難民がスムーズに母国に帰られることをお祈りします。  そのためにはやはり国連がそうした間の関係者合意事項を満足に、円満に完遂することを監視することが必要でございますから、当然国連からは監視団が派遣されるわけであります。また私たちは、監視団そのものについての経費の一部負担、そうしたことも国連におきまして既にお約束をしておるわけでございますが、ややもすれば経済大国日本は金さえ出しておればいいのかというお話がございますから、我々といたしましてはこの際何らかの汗をかく必要がある、したがいまして文民を派遣するということを決定した次第でございます。  一名でございますが、既に外務省の中に、私が、そうした文民として平和の貢献をせんとする日本外交の第一線で頑張らしてくださいというふうな人たちがたくさんおりましたが、選択をいたしまして国連に内報してあります。ただ、いろいろ今まで言われております海外派兵という問題もございますから、外務省といたしましてはあくまでも文民で通したい、こういうふうに考えておる次第であります。  以上であります。
  5. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 我が国憲法もと防衛基本政策を掲げまして、みずから適切な規模の防衛力整備を図っておるわけでございますが、一方におきまして、安保体制、この体制によってみずからの平和と安全を確保してまいっておることは御承知のとおりでございます。このことはアジアの平和、ひいては世界の安定に寄与しておる、かように考えておるものでございます。  なお、総理施政方針演説、さらには先般ロンドンにおきまして日本の役割につきまして講演をいたしておりますが、政治経済文化、各般にわたりまして国際的貢献をしていく、そうしたことは当然である、かように考えておるものでございます。
  6. 堀江正夫

    堀江正夫君 今いろいろと両大臣から御見解を承りましたが、私が申し上げようと思いますのは、従来のパターンよりももっと踏み込んだ安全保障面施策というのが、米国の相対的な国力の低下、日本の相対的な国力向上、こういったような面から必要となってくる、こういう認識もとでいろいろと前向きの検討をする必要があるのじゃないかという提言でございまして、ひとつこの点は今後慎重に御検討願いたいということを希望させていただきます。  第二は、今後の日本国際経済協力の方向や方策についてであります。  その第一点は、いわゆる質に関連する問題でありまして、無償の枠をふやすことは当然でありますが、この際、かつて鈴木レーガン会談共同声明にもうたわれております世界の安全にとって極めて重要な地域に対する援助、時に戦略援助などと紛らわしい言葉も使われているようでありますが、そうではなくて、あくまでもこれは世界の平和にとって大事な地域の安定に寄与する経済援助国民にもはっきり理解を求めながら一層積極的に進めるべきではないかという点が第一点であります。  第二点は、国際経済協力を計画的、効率的に実施するという観点からの提案であります。  御承知のとおり、関係閣僚会議昭和五十年代の初めに一時持たれましたが、二、三年で廃止をされ、現在は四省の担当者連絡会議調整をされておるわけであります。この事業は今や十六省庁にまたがり膨大な予算額となっており、その内容は多種多様、複雑多岐にわたり、現実的に連絡調整の不備と思想の不一致としか思われないような幾多のぐあいの悪い事例も出ているように聞いております。このようなことを考えますと、国民に対する責任からも早急にまず関係閣僚会議を設置することを外務省から積極的に提案すべきではないかという点が第二点であります。  第三点は、既に予算額が七千億円を超え、遠くない時期に一兆円時代になることも予測されておりますこの事業に、基準になるところの何らの法律もないということであります。言うまでもなく、国際経済協力相手国との交渉決定等まさに外交そのものでありますから、一般法律と同じように律せられる筋のものではないことは当然であります。しかし私は、個人的に申し上げますと、その理念と最小限のものは速やかに法律でこれを定めるべきではないか。そしてでき得る範囲で国会審議活発化を図ることが必要じゃないか。これは法治国として、議会制民主主義国家として当然ではないかと思っておるわけでございまして、この三点について、できればかいつまんで大臣からお答えいただければ大変ありがたいと思います。
  7. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ODAは、いつも私国会で申し上げておりますが、援助の最たるものであります。したがいまして、ODA理念は、南北間の根底に横たわる相互依存並びに人道上の考慮、こういうふうに言われておりますから、それをすることにおいて、やはり途上国福祉の安定、国民生活向上を図るべきである、これがODA理念であるとされております。  私も国際会議に臨むたびに諸国のODA関係者から、やはり政治の安定を図りたい、そのためには経済の安定である、経済の安定なければ福祉の安定なし、こういうような理論で常にいろいろとお話を承っておりますから、ぜひとも日本といたしましては、経済大国としてそれは一つ責任である、また義務である、これぐらいの考え方で今後も臨まなければならない、かように私たち考えておる次第でございます。  しかし、御指摘のとおりに現在は、量は世界一になっておりますが、質の面におきましてはGNP対比で申し上げますると十四、五番目であるとか、あるいはまた無償の比率によりますとこれまた最後尾に属しておるとか、いろいろと言われておりますので、やはりそうした指摘がないように努力をしなければならない、これが一般的な私たち考えでございます。  したがいまして、それに関して関係閣僚会議を開け、また基準を求めよというふうな考え方であり、さらには援助理念を明らかにした法律をつくるべし、そういう御意見でございまして、いずれも私は一応傾聴に値する御意見であろうかと、かように存じております。  閣僚会議も余りたくさんありまして、したがいまして、かつてその必要性というものがないというので一応整理の対象になってしまって、今日開かれておらないというのが実情でございますが、私は、この国会を通じていろいろとODAに関する皆さん方の御意見が非常に高いということを十分知ることができましたし、そうした意味合いからもひとつこれはどういうふうな姿でやるのがいいのか考えてみたいと思っておるところでございます。  と申し上げますと、やはり閣僚会議と一概に申し上げますが、極めて今日まではやはり、寄った が、何のことはない、作文の見せ合いだったというようなことであってはいけません。だから、閣僚会議というものはこれからは、この間も留学生のときに言ったんですが、私は外務大臣だけれども、留学生に関して寄与された企業あるいは個人があるのならば減税を考えるべしと、例えばこういう意見を私が吐いてもいいんだと。また大蔵大臣は、外務省はそうした出入国に対してこうすべしという意見を吐かれてもいいんだと。そういう意見がお互いに吐かれてこそ閣僚会議だが、どうも今まではある程度の限定した発言しかしておらないから、これでは何のことはないと、そういうような反省が閣僚会議が多過ぎて整理したという一つの問題になったかもしれません。  したがいまして、今後こうした皆さん方の御意見を承りながら、どういう姿に持っていくのが一番実効的であるか、これは当然考えてみたい、かように考えておる次第でございます。  また、法律等々においてはっきりさせたらどうかという御意見もございますが、これも一つの大切な御意見として私は拝聴いたしておきます。
  8. 堀江正夫

    堀江正夫君 時間の関係もございますので、予定しました質問の順序を一部変えまして、次は給与中心とした自衛官処遇改善につきまして質問させていただきたいと思います。  その第一点は、自衛官に至当な地位、処遇を与えることは防衛にとって基本的な問題であることは言うまでもありません。防衛庁も一貫をして不断の努力をされておりまして、既に一部改善を見ているものもあるわけであります。私も過去何回かこれらのいろいろな点について委員会提言もしてまいりました。  きょうは時間の関係上、昭和五十七年に安保特別委員会で私が取り上げました自衛官医療費負担だけについてお尋ねしたいと思います。  これについては、その際に検討をお約束いただいておるわけでありますが、あれから既に六年を経ております。防衛庁でその後検討されました結果と、その結果に基づいてどのような対応考えておられるか、まずそれを承りたいと思います。
  9. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) ただいま先生指摘のとおり、昭和五十七年に御質問を賜りまして、自衛官私傷病にかかわります医療費についての俸給からの控除額についての検討をさせていただくということで答弁をさせていただいております。  たまたまちょうどその時期に自衛官について定年延長を実施しておりましたので、昭和五十四年から五十九年まででございますが、この定年延長の期間が経過してまいりませんと年齢構成等についての実態が把握しにくいということもございまして、これが終わりますのを待ちまして現在実態を把握するということで作業を進めておるところでございます。  なお、その結果を待ちましてこれにどう対応していくかということを検討さしていただきたいと考えておりますが、いずれにいたしましても他の国家公務員に比べまして平均年齢が若うございます。そういうところから自衛官医療実態というものを適切にとらえて対処していく必要があろうかと考えております。
  10. 堀江正夫

    堀江正夫君 警察予備隊発足以来もう三十八年ですかたつわけでございます。その間明瞭に自衛官が他の公務員に比較して医療費の過大な負担をやっておる、こういう実態考えました場合に、来年度の予算要求ででもこれははっきりと決着をつけ改善すべきである、このような思いをしておるわけでありますが、これについて長官、ひとつどのようなお考えか承らしていただきたいと思います。
  11. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) 先ほども御答弁申しましたように、現在実態について検討しております。  確かに、先生ただいまおっしゃいましたように、警察予備隊発足以来の率で現在やっておるわけでございます、基本的にはですね。したがいまして、その間かなりの動きがあるということも事実でございますので、これは早急に検討していかなければならないわけでございますが、先ほども申し上げましたように現在実態について調査をしておるところでございまして、その実態の把握が終わりました段階で、可及的速やかにそれについての対応検討さしていただくということにさしていただきたいと存じております。
  12. 堀江正夫

    堀江正夫君 さらに今の問題でございますが、来年度の予算要求実態調査は当然間に合わせなければいけない、私はそう思っていますが、それは間に合いますか。
  13. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) これは現在非常に急いでやっておりますが、一応六十年度、六十一年度それから六十二年度あたり、これぐらいのレンジでは実態を把握しなければならぬであろうというぐあいに考えます。したがいまして、できるだけ概算要求に間に合わせるというようなことになればいいかと考えておりますけれども、その辺はちょっと現在の作業の状態から見まして、現在ここで必ずそのように間に合わせたいというようにお答えし得る段階ではないということを御理解賜りたいと思います。
  14. 堀江正夫

    堀江正夫君 今の問題は一応これで矛をおさめますが、今の問題とも関連をして私はここで防衛庁提言をしたいことがございます。  それは、総理は今年三月の防大卒業式で、自衛官国民に尊敬され、誇り高い存在にならなければならないという趣旨を述べておられるように承知しております。自民党でもこのための専門の委員会を設けまして具体的な検討をしておるわけでありますが、この際、一つの大きな問題でありますところの給与中心とした問題につきまして、三十万人にも近い特別職である自衛官給与制度等について人事院に準ずるような独立した機関を設置するか、人事院の中にそのような部門をつくるという問題について提案をしたいということでございます。  その理由につきましては、時間の関係上ちょうちょう申し上げることを省きたいと思いますけれども、今も問題になりました自衛官の過大な医療費負担の問題、これが今日まで長くそのまま放置されてきた。そこにはやはり制度上の問題があるんじゃないかというふうに考えざるを得ないと思うわけであります。  また、警察官自衛官給与は準ずるということになっておりますが、細部の警察官給与制度実態というものは必ずしも一〇〇%掌握できるものでもありません。警察官に準ずること自体にも、防衛庁給与制度審議会ではそれが至当であると言われておりますけれども、必ずしもそうだと思えない面もございます。  言うまでもなく、三十万人にも近い人たち、それも国の安全を守る自衛官というものの給与が果たして当事者間の交渉で決められるということが至当なのかどうか。今後自衛官の募集という問題がますます労働人口構成の面からも難しくなってまいります。このようなことを考えますと、自衛官給与決定の現体制を見直さなければならないぎりぎりのときに今なっておる、このような思いからの提案でございまして、ぜひとも真剣にこの点は検討をお願いしたい、こう思うわけでありますが、長官の御見解を承らしていただきたいと思います。
  15. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) まず、長官がお答えになります前に実態について御説明申し上げますが、防衛庁職員給与に関することにつきましては、他の特別職職員と同じように総務庁の人事局の所管となっております。この点におきまして人事院が担当しております一般職の場合と異なるわけでございますが、特別職職員給与につきましては、従来から一般職職員給与相互均衡をとれるように措置するものとして管理されておりまして、例えば例年の給与改定に際しましても一般職改正に準じて行われているところでございます。  したがいまして、現行制度もとにおきまして給与改正は十分に保障されておるというぐあいに考えておりますし、また、防衛庁職員の勤務の条件等特殊なものを勘案した給与のあり方につきましても適切にやろうということで努力しており ますが、この点につきましては今後とも十分配慮してやってまいりたいと考えております。  なお、第三者の機関を設置してはどうかという御提案につきましては、これは他の特別職公務員も含めまして高度に政治的に判断していただかなければならない問題であろうかと考えておりますので、それを踏まえまして慎重に対応していくべきであろうかと考えております。
  16. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ただいま人事局長から答弁がいたされましたが、防衛庁職員並びにその給与処遇につきましては、その任務に基づきまして私は今後取り組んでいく重要な施策と、かように心得ておるわけでございますが、国家公務員との均衡、そうしたものも踏まえてまいらなきゃならぬわけでありますし、また、ある面から言いますと自衛官から不満等が生ずることがあってはならぬという、その間を考慮しながら今後施策の大変重要な問題であると、かような認識に立ちまして取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 今の点につきましては、今長官からはやや前向きとも思われるような御発言があったかとも思われますが、総じて言いますと従来の考え方を強調されたにとどまったと思います。  私は、それなりに努力しておられることはわかっておるんです。また、特別職自衛官だけではないことも知っております。しかし、特別職の中で自衛官というのは、また特別な身分、使命を持ったものであり、その数は三十万にもなろうとしている。それが行政サイド一般公務員に準じてやるということだけで果たして至当なのかというその原点をまず防衛庁当局がもう少し深刻にとらえて考えていただきたい、こういうことを重ねて申し上げて次に入ります。  あと十分でございますので、私は、去る五月三日から五日まで行われましたSSCにつきまして一括して三点を御質問をしたいと思います。  このSSCは、回を重ねまして今回は十八回になったわけでありまして、特に今回は各般にわたり忌憚のない建設的な意見の交換が行われたと聞いておりまして、これを高く評価するものでございますが、質問の第一点は、今回の会議では初めて経済協力の問題が議題となったというふうに言われておりますが、安全保障という観点からこの経済協力の質的、量的な拡大強化と防衛努力関係についてどのような認識で話し合われたのかということが第一点であります。  第二点は、当然共同研究や共同訓練等、日米防衛協力についても議題となり、また報道によりますと、物品役務融通協定についても話し合われたというふうに言われておりますが、これらについてどのようなことが提案をされ、どのような合意を見たのであろうかという点であります。  そして第三点は、さきにも申し上げましたが、総理もその就任以来国際社会の平和と安定のための国際的貢献という問題を強調されておりまして、当然この点についてもSSCで話し合われたと承っておりますが、その内容について承りたい。  この三点について逐次お答え願いたいと存じます。
  18. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 私から経済協力にかかわります部分と一番、三番目の御質問にお答えいたします。  まず、経協が議題になったということはございませんが、経協が話題になったことはございます。その脈絡を御説明いたしたいと思います。  今回の協議におきましては、国際情勢、日米防衛協力、我が国防衛努力の現状、一九九〇年代に向けての国際社会における日米の責任等について説明あるいは意見の交換が行われました。その際、米側から米国の国防費は抑制されているが、同盟国に対する米国のコミットメントに変わりはないとの説明がございました。  それから、我が国防衛努力について、米側から、米政府としては我が国のこれまでの努力を評価するとの発言がございまして、同時に、米国にあっては議会を中心にいわゆるバードンシェアリング、負担の分かち合いとでも訳せるかと思いますが、我が国を含む同盟国に対し、防衛分野を中心に幅広い貢献を求めていく声が存在するとの米側の事情が説明され、その関連で、一般的な形で経済協力などの問題にも話が及んだと、そういうことでございます。  それから、この会議の場面では、我が国の国際社会に対する貢献がいかなる姿に今後なっていくか、自主的にいかなることを行うかというこで、例えば総理がロンドンで話をされました平和のための努力でありますとか、平和維持活動への支援等を自主的に行っていくという考えであるということを説明した場面もございました。  以上でございます。
  19. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま北米局長からお答えがあったように、ハワイ会議というのは防衛庁と国防省だけの会議じゃございませんで、国務省あるいは外務省もお入りになった会議でございますから、幅広くいろいろな問題が論議されるということは御理解いただけると思います。  その中で、今御質問のありましたアメリカのNATO相互支援法、これについて、これが改正されてNATO諸国以外の、例えば日本についてもこれが適用できるようになったと、こういうことで、それに基づく協定というものがあれば日米間の共同訓練等についてもより利便でなかろうかというような提案が米側からあったわけであります。  本件に関しては、会議では外務省の方から、それらの必要性そのものを含めて今後検討しましょうということで終わっておるわけでございます。いずれにしましても、我々としては、共同訓練というものが逐年レベルが上がっていく、あるいは規模が大きくなっていくということも踏まえまして、その種の相互融通といいますか、支援というものが必要であるかどうか、現行のままでぐあいが悪いかどうかということを十分検討して、必要性の有無をまず検討する。さらに、それがある程度必要だということになれば、国内法その他協定等についてどういう問題があるかというような問題について逐次検討をしていく。そのためにはまずNATO相互支援法に基づくこの種相互融通というものがどういうものであるかということを、まず実態を知る必要がありますので、そういう勉強から始めたいというように考えておる次第であります。
  20. 堀江正夫

    堀江正夫君 今の問題につきましてはもう少し詰めてお伺いしたいとも思いますけれども、時間の関係がございますから、また次の機会に譲らしていただいて、この点はこれで一応終わろうと思いますが、最後に、若干時間がございます。  十二月の沖縄本土に対するところのソ連機の領空侵犯措置の問題につきましてお伺いしますが、その第一点は、あの事件が起きました後、十二月二十五日にソ連が五項目の対応措置を通報しております。その中で関係者の降格を予定をするというふうにあったと思いますが、この問題につきまして、その後どのような措置をソ連がとったのか、その点をまず伺います。
  21. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) お尋ねの件でございますが、ことしの二月三日になりまして、ソ連側から外交ルートを通じまして領空侵犯機のパイロットであるK・L・ノゴヴィツィンですか、これを処罰した旨連絡がありました。処罰の内容は、同人を、このパイロットを一階級降格せしめたということでございます。
  22. 堀江正夫

    堀江正夫君 ひとつ、こういう問題につきましては主権に関する問題であります。今回の外務省の措置については、私はこれを高く評価するものでありますが、今後も適切に処置していただきたいということを重ねてこの際申し上げておきたいと存じます。  次に、防衛庁にお伺いしますが、この領空侵犯の措置の中で武器が行使できるのは正当防衛と緊急避難のときだけとなっております。具体的にそれはスクランブルに飛び立ったパイロットだけに適用するのか、さらに例えば戦闘爆撃機等が爆倉を開く、あるいは複数機以上の戦闘爆撃機等の編 隊が侵犯をしてきて、今回の沖縄のように重要基地上空を行動する、すなわち国民を含めて大きな被害を与えるおそれもあるといったようなときにも適用できるのかどうか、その点を承りたいと思います。
  23. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今、先生の御質問にありましたように、領空侵犯に対処するための我が方の要撃機が武器使用できるという場合は、正当防衛あるいは緊急避難、そういった場合に該当する場合というふうに前々から申し上げておりますが、それは必ずしも戦闘機に対して攻撃がなされたという場合には限らない。例えば爆撃機が我が国上空にあって、爆弾倉を開いて今や爆撃をしようとするという、国民に対して危害を与えるということが明確になった場合、そういう場合も当然含めて私どもは正当防衛なりあるいは緊急避難という条項は当てはまるというふうに考えております。
  24. 堀江正夫

    堀江正夫君 実はもう一つ聞くつもりでありましたが、時間でございますので割愛さしていただき、私の質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  25. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それぞれ両大臣にお伺いいたしますが、まず私の一問は、これ大体四分かかります。そうすると答弁の方も大体同じ四分以内くらいでやっていただくということになると、この八問がちょうど終わることになりますので、両大臣御協力をお願いいたします。そのため要旨をそちらに早くお上げしてありますから、手際よく御答弁いただけると期待しながら御質問申し上げます。  政府は、四月十二日に、昭和三十一年度条約第十二号に基づく軍事目的の米秘密特許を日本でも秘密特許とする手続で合意し、手続細目と交換公文を発表しました。  この問題については、五六年協定当時、下田条約局長が、幸いにして特許法に第三十三条という便利な規定があると国会答弁して以来新たな立法措置を必要としないという立場を通してきております。今回、三十二年ぶりに五六年協定の具体的実施が外交日程に上がってきてからも、幸いにして便利な規定があるという態度で臨み、国会答弁でもさしたる心配がないかのごとき答弁を繰り返してまいっております。  しかし、今回の交換公文が発表されるや新聞報道は直ちに対応し、十二日夕刊各紙は一面トップに五段抜き見出し等でそれぞれ大きくこの問題を取り上げております。そしてその中で、政府の発表とは別に、三十一年の調印以来死文化していた防衛特許に関する協定をよみがえらせるねらいには、米国防衛庁に軍事秘密特許の一部使用を認めるかわりにこれを日本国内でも非公開とするよう要求し、先端技術分野で最大のライバルである日本のハイテク研究、ハイテク産業を統制しようとの意図も込められている。あるいは日本のSDI参加に関し、研究参加で生み出された新技術、情報などの特許権は原則として米国に帰属し、米国が秘密指定した技術の使用は制約を受けるという昨年七月来の流れの一環でもある。日本人の出願人が独自に開発した米国秘密特許と同じ技術を日本の特許庁に出願しようとした場合、出願を見合わせるよう求める政治介入のおそれもある等いろいろ指摘しております。  さらにまた十四日には、社説で「将来に禍根を残す秘密特許制の導入」日本経済、「疑問残る秘密特許取り決め」毎日新聞、「軍事特許の合意をなぜ急ぐ」朝日新聞というように、各社一斉にこの問題に大きな懸念を表明しております。さらに、翌十五日には経団連が、軍事秘密特許の問題が今後の産業界に及ぼす影響について懸念して、改めて政府の説明を求めるというような異例の申し入れを行っております。  こうした疑問に対し、幸いにして便利な規定があるということで、国会の論議というのは極めて限られた場で行われてきております。六月のサミット、あるいは技術協定に向けて依然としてこのようなスタンスで臨んでいいものかどうか、両大臣考えを改めてお聞きいたしたい。
  26. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 五六年協定と一般的に言われております。したがいまして、これは既にそのときに国会の御承認を得ておる内容でありまして、これに基づいて我が国においては、では新しい何か立法措置が必要なのかということに対しましては、全くないということからひとつお考え願いたいと思うんでございます。  そして、今我々の特許そのものについても不利をこうむるのではなかろうか、そうしたいろんな意見があるということも付加されましたけれども、これは防衛目的のための米政府より日本政府に提供された技術上の知識について、日本においても特許上の保護が可能になるということでございますから、したがいましてそうしたことでお考え賜りたいと思いますし、また米国から特に日本に技術を提供しようと、そうした環境をこれによって整えるという意義がある、むしろそういうふうにお考え賜った方がわかりやすいのではなかろうかと私は考えます。  以上でございます。
  27. 瓦力

    国務大臣瓦力君) このたびの措置につきましては、従来入手することが困難でありました米国の秘密特許資料、これが我が国へ移転されるということは、我が国の研究開発、日米共同開発等にとりまして円滑に実施されるようになってまいる。このことは、防衛分野におきましての日米間の協力関係が一層進展する、こうしたことを期待をいたしまして今回の措置がとられたわけでございますが、特許問題につきましては基本的にはこの手続は防衛庁でとり得るという問題ではございません。よって、ただいま申し上げましたように日米間の協力関係が一層進展することを期待して、その目的において今回の措置がとられた、かように御理解をいただきたいと思います。
  28. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そのようなお考えだろうかと思うんですが、実は四月の十一日に朝日新聞の「論壇」に特許庁の職員がいろいろこの協定が進むと大変だという懸念の論文を出しております。  一つは、長官がこれは秘密特許制度に進むものでないと言うけれど、行き着く先はそういう心配があるということ。それからもう一つは、今の協定出願の場合よりもむしろ準協定出願、この場合にこの判断が国防という名のもとに事実上米国からの防衛技術の提供を受けた防衛庁によって行われる、準協定の方ですね。そして果たしてできるんだろうか。あるいはまた、この問題を進めていくためには相当な事務量が要るけれど、一体それに特許庁の職員がかかわらないでできるんだろうか。こういうふうな幾つかの疑点を挙げておるんです。  そういうことでございますので、一体この防衛秘密の判断というのはどこがやるのか。今長官は、特許の関係は特許庁だというふうにおっしゃいましたが、ところが特許庁は必ずしもそう言っていないんです。これをもう一度ひとつ、特許庁がやるんですか、準協定出願の場合の。
  29. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 今委員御指摘の点は、実はこういうことになっているわけでございます。  防衛庁はアメリカの国防省からアメリカで秘密に保持されている特許資料につきまして、これが日本の装備品の開発等に有用であるという判断をした場合に、これを防衛庁が資料として受け入れる、それで防衛庁がこれを利用するという形になっておるわけでございます。  一方、特許の問題につきましては、これはアメリカで秘密に保持されているものが日本に来た場合に、特許出願をした場合には同じような扱いをするということになるわけでございます。その場合に、今特に委員の御指摘の準協定出願でございますが、これは秘密特許の内容そのものも同じでございますが、準協定出願の判断もこれはすべて特許庁が行うという形になっております。  ただ、防衛庁といたしましては、実は秘密特許資料を受け取りまして、これは防衛庁自体が利用することは当然でございますが、もし必要がある場合には関係者にもこれを示すことができることになっております。したがいまして、もし関係者 が、特許の言葉で協定出願と呼んでおりますが、協定出願の内容を開示するような新たな特許出願をするような場合には、このもとになる特許出願をもとにした新しい発明だということを示すようにしてほしいといういわゆる手続上の、何といいますか、事実上の干渉はいたします。ただし、それが準協定出願かどうかということは防衛庁は一切判断いたしませんで、これはすべて特許庁の判断によるという形になっておるわけでございます。
  30. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで、実はこの手続の内容を調べますと、アメリカは特許商標庁ですわね、ここでは約五万くらいの細目ができていて、それでこれは軍事機密に属するとか防衛上の問題だとかということをざあっとすぐ分けて、そして特許の審査を凍結していわゆる秘密を保持しますね。そうすると、そのナンバーがこちらへ件名で来ておる。これは特許庁は見ていませんでしょう、その中身は。どうなんですか、特許庁。
  31. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) ただいま御指摘の点につきましては、まずこの五六年協定第三条そのものにつきまして、米国においていわゆる特許出願があった場合に、それに秘密保持命令が出されるという点に関することだと思いますけれども、それにつきましてこの三条という一つのルートを通って日本防衛目的のために提供された場合に限ってこういう三条上の措置をとるということになっておるわけでございます。
  32. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それはいいんだけれども、その通知は特許庁に来るんじゃなくて、外交ルートを通じて防衛庁に来るんでしょう、通知とそれから中身は。
  33. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) それではこの五六年協定第三条の中身に即して御説明したいと思うんですけれども、第三条には、一方の政府すなわちアメリカ政府が合意される手続に従って防衛目的のため他方の政府すなわち日本政府に提供した技術上の知識が、その提供国すなわちアメリカで秘密に保持されている……
  34. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それはいいの、この間やったんだから。結論だけ、ちょっと時間が……。
  35. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) ということでございますので、これは日本政府に対して提供される発明でございます。その発明について日本において例えばそれを翻訳されて日本の特許の出願様式に転換されてそれで出願される。その出願されたものは特許庁に来るわけでございます。
  36. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 その中身は、特許庁はそれは全部見るんですか。
  37. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) したがいまして、これは同じ発明につきまして二つの側面があるわけでございます。  一つの側面は、全く同じものが、一つ日本国政府に対するいわば米国秘密特許資料として防衛目的のために使用される。それと同じ中身について、今度は出願様式に転換されて特許庁に出願されるということでございますので、実質的な中身は特許庁にもそれからそれを受け取る日本国政府のほかの関係省庁、例えば防衛庁にも提供されるということになるわけでございます。
  38. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ところが、この協定議定書によるところの関係規定、これによると、添付する書類、これはアメリカから許可書がついてきますわね、これがそうだということですが、今度はしかし特許庁の方はそんな内容の詳しいことまではついてこないでしょう。防衛庁に一遍行って、防衛庁の証明書つきで今度は特許庁へ準協定出願が出てくるときに、要するにもとの協定出願の内容まではそれにはついてきませんわね。
  39. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) もとの協定出願の内容は、米国政府の米国特許庁に対する出願でございますから、その出願と全く同じものが、いわば翻訳されて日本の特許庁に対する出願になるわけでございます。したがいまして、そういう意味では全く同じものが日本国政府の特許庁に出願されるというふうに理解してよろしいかと思います。
  40. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、これは協定出願の中身、それから準協定の出願の中身というのは、特許庁、できるんですね。これまた二十三日にゆっくり聞きますから、この問題についてはしっかりあれしておいてくださいよ。実際にはそう簡単に今の特許庁のシステムの中では私はできないと思う。  それで、実はここへあれを持ってきているので、これは私が取った意匠登録なんですが、特許の場合も大体似ているから同じような考え方でやって、両大臣にそう簡単でないということをひとつ説明したいと思うんです。  これはブドウのマーク、このマークにも特徴があるんですが、上の方へ四つ、三つ、二つ、一つ並べて、これは私がつくって——ところがこれは意匠登録にならないんです、これだけでは。これにひもをつけますとこれが意匠登録になるんです。そしてこれが意匠登録になりますと、この中のブドウのマークも同じように意匠登録の中身としてできるんです。いいですか。ところが、ここで日本とアメリカの特許システムの違いがありまして、アメリカで簡単に特許になったものが日本では特許になるとは限らないんです。  ですから、アメリカはこれだけでもなるかもしれないんです。そして、これが軍事特許だということで来ますと、日本ではこれならないんです、これつけなければ。そうすると、これをつけたのを日本の特許庁へ出すと、これは準協定出願だということで、公開されないでそのまま押さえ込まれる。としますと、日本で特許にならないものをアメリカが特許だと言ってきたから、それが特許なんだということにして何らの審査もしないで、このひもをつけて出願したものはだめだと、こういうことになりますね。特許庁、そこのところだけ答えてください。
  41. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) いわゆる協定出願も我が国に対する特許出願でございますから、秘密解除された後は……
  42. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 秘密解除聞いてないじゃないか。秘密解除じゃないよ、秘密解除いつになるかまだわからないんだから。その前の段階、準協定出願は許可になりませんねと聞いているんです。解除になった後でなくて解除前ですよ。ならないでしょう。
  43. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 解除前でも、要するにこれは特許庁に対する特許出願ということでございますので、審査した後で初めて特許性の判断を行うということになるわけでございます。
  44. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 はぐらかさないで、私の聞いているのは、審査した後でという用語では皆わからないんですよ。私はわかりますよ。だけど、審査しないんでしょう準協定出願が出てきたら、防衛庁から証明ついてきたら。どうなんですか。
  45. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 特許出願でございますので、いわばそのもととなる協定出願が米国で秘密に保持されている間は、当然私どもとしては審査しない方針でございます。
  46. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうでしょう、それを言えばいいんだよ。審査しないんですね。だからこれは不安定のまま、こういうことになるんですよ。  それじゃ、そういう例がないかというと、あるんです。私、ここに植物特許の問題を一つ持ってきたんですが、それは黄桃というのがアメリカで特許になっているんです。そして、これは防衛のあれではないですが、ところがこれを日本の特許庁では約十年近くかかってまだ特許にならないんですよ、十年くらいかかっているんです。これは私、気の毒だ、この人はもう八十三にもなるんで、早くくれなきゃどうなるかわからないというような状況なんだけれども、それでも十年近くかかってもまだならない。こんなように、アメリカで特許のものが日本ではなかなか特許にならない、こういうふうなものがある。これもひとつよく御理解をしておいていただきたい。  それから今度は、日本で特許しなかったけれども裁判の結果結局それは特許すべきものとして特許になった例もあるんです。そういう判例もあります。  しかし、それは今度どういうことかというと、これは誘導弾のちょっとした集積回路の問題なん ですが、その場合でも、最初出てきた説明書だけでは日本の特許庁は特許する中身がよくわからないということで拒絶査定している。それから裁判になって、裁判の中でそこのところが今度いろいろと明らかになってきて、その結果、対空ミサイルの誘導システムですが、これは裁判で特許すべきだということになった。  ところが、この間、これは四十三年の三月十五日にアメリカで特許になって、四十四年の三月六日に日本に出願されたやつなんですが、これが決まったのは六十一年です。いいですか。決まる場合でもこうだし、なかなか十年たっても決まらないという問題がたくさんあるからね。特許庁が判断するというのはこんなに時間がかかるんですよ。そうすると、その間、今のような準協定出願、ひもをつければ特許になるやつが押さえ込まれてなかなか審査されないなんということになると、アメリカの特許は、十七年ですから、十七年間はたなざらしに合う。あけてみたら日本では特許に値しなかったということになったら、日本の申請人はたまりませんよ。こういう場合に、その損害に対してはどこかが賠償を払ってくれますか。払うようなシステムにないという今までの答弁だったわね。  ですから、特許の問題というのはこういう非常に難しい問題がありまして、きょうは時間がありませんから、これはまた二十三日に特許の問題に限ってやりますけれども、これはなかなか大変だということをまず両大臣しっかり認識をしておいていただきたい、その上で次の質問に入ります。  特許庁の長官は、四月十四日の商工委員会での答弁で、「協定出願の中にも秘密保護法の対象になるものも含まれ得る」と言うのです。この記録を私読みまして、そうすると対象にならないものもある、こういうことになるのじゃないかと思うんです。もともとMDA協定、秘密保護協定ですね、提供されたものは枠内に置かれているものに限ると。MDA協定は二十九年ですか、そしてその後秘密保護法ができたときには、その第一条でMDAの規定がはっきりしているんですよ。しかも、そのほかにSDIとかこれからの共同研究、先ほど質問ありましたが、そういうふうなものがありますね。これはこの秘密保護法の枠内に入らないんです。しかし、国会ではこの秘密保護法の枠内に入らないものについての議論をしておりませんので、この点についてひとつこの、要するに定義づけ、両大臣、どちらかが御答弁いただきたいのですが。
  47. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 今御指摘のものは、日米相互防衛援助協定、MDA協定と呼んでおりますが、それに基づいて日本にアメリカから装備品等についての、装備品そのものあるいはその技術あるいはそれに関する情報が提供された場合には、これを日本の国内でどういう形の秘密の保護をするかという実は法律ができておるわけでございます。  したがいまして、今回私どもが秘密特許資料をこちらで利用するためにアメリカから提供を受ける場合に、これがアメリカの装備品とか、それの技術とか、それに直接関連するものにつきましては、これは秘密保護法の対象になりますが、これに関連しないものにつきましては対象にならない、そういう実態になっておるわけでございます。
  48. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで、この五六協定の第二条には、「単に情報として技術上の知識を提供し」といって、単に技術上の知識を情報として提供する、知識をですよ、こちらが使うことでない。三条は使用させることですね、今の御答弁あったように。ところが二条では、情報を提供するだけのものについてもアメリカの方から協定出願が出るならば、三条の規定によって特許庁は受けなければならないことになるんです。  そこで私は、ああこういうのがあるから、それで特許庁長官が秘密保護法の枠外のものもあるという答弁をしたのはこのことかなというふうに考えたんですが、防衛庁、そのとおりですね。
  49. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 今の点はややちょっと部面が違うことでございます。二条の方の情報として提供するというのは、実はそれを利用して研究開発とか試作とかはしないと、こういう意味合いでございまして、情報が来まして、それを見てそれを勉強することは自由でございます。
  50. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 しかし、それは使用はできませんわね、この二条の条文を読むと。ところが、その所有権者の知識は「特許その他の法令上の保護を受ける権利」を持っていると二条にあるんです。そうすると、提供をして使用させないものについても、情報としてアメリカから日本政府に伝えられたら、これはやはり三条の保護を受ける権利が出てきませんか。
  51. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 特許上の保護につきましては、これは特許庁からお答えする問題でございますが、今の二条の方の問題につきましては、実は特許資料というのは貴重な情報源でございまして、私どもはそれを十分勉強し、それをもとに私どもの装備品の研究開発の非常に重要な参考資料にしたい、こういう意味で、その限りにおいては利用するわけでございます。  それと、実は特許の方で秘密保護法の対象になるかならないかというのは違うものをちょっと言っているものですから、秘密保護法の対象になるかならないかはあくまで装備品に直接関連する情報かどうかということで区別をつけるわけでございます。
  52. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 二条では装備品にならないでしょう、情報は。なりませんね。単に情報ですよ、単なる情報ですから。
  53. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) 二条は、情報は割合広いわけでございまして、装備品に関する情報も二条にございますし、装備品に関しないものもあり得るわけでございます。二条はそれを直接利用して開発にまで使い、あるいは製造にまで使うというようなことはしない、こういうのが二条の規定でございます。
  54. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで外務大臣昭和三十一年五月十一日の下田条約局長答弁で、「直接に受け取るのはやはり防衛庁」だと、こう言っているんです。その理由は、防衛目的の協定だからということです。しかし、漠然と防衛目的だとしてしまうなら、これは際限なくその対象が、今答弁がありましたように、広がっていくおそれがあるんです。なぜなら、アメリカのSDIで使う技術は民生用に使うハイテクもあるし、新たな科学技術協力協定の交渉過程で、アメリカはすべての科学技術協力について軍事化の理論的可能性を考慮するという態度をはっきり示しております。そしてまた、アメリカの大半の科学技術開発は国防関連予算で行われておる。こうしたアメリカの位置づけによる秘密保護法の枠外の協定出願も防衛庁が受け取るということ。そうしますと、アメリカ・ペンタゴンと防衛庁は準協定出願を理由に、日本のハイテク産業に際限ない統制をかけることができることになる。情報をもらって、これが特許にも関係してくる、そしてこれは防衛機密だということになると、三条で技術を提供を受けて、それが使えるからいいやというふうなことでなくて、今度二条ではこれは使ってはいけませんよというけれども、情報だけもらったら、これで日本のハイテク産業はそれらの技術開発が全部おかしくなっちゃう。  日本経済の社説が十四日、まさに日本の主権の放棄であります、これほど重大なことが国会審議を経ずして取り決められていいのかという疑問を投げかけております。ですから、協定出願された秘密特許のうち、今度の交換公文で、防衛目的のための使用という条件つきで供与されるものは、アメリカにとっては、例えばFSXのブラックボックス、もう日本に与えても惜しくないと。イージス艦のように売ろうと思ったけれども秘密がまだあるからだめだというふうに途中で変わるものもあります。  しかも、その供与の見返りに、アメリカは、日本の企業が渡したくないような民生用のハイテク、武器技術として対米供与を要求することができるようになっていますわね、八三年の武器供与 協定で。日本の企業は嫌だと言っても日本政府はアメリカのそのような要求を実現するために行政指導する、既にこのことが約束されております。  これを八三年の交換公文では、日本は促進するという、意味の余りわからないような言葉で表現していますが、英文でははっきりこれはエンカレッジという言葉が使われているんです。アメリカでエンカレッジという場合にこれは行政指導なんです。ですから、もしそういうものは民間が嫌だと言ったら政府が行政指導をして出させると。このエンカレッジという言葉は、例えば五月の文芸春秋でも問題になって、いわゆる何といいますか、半導体協定の密約文書というのが出ておりましたが、この英文がここに出ておるんですよ。ここにはエンカレッジという言葉が使われているんです。  そうすると、しかし日本はちっとも行政指導しないから半導体の日本への輸出ができないじゃないかと、こういうアメリカから文句を食って、いわゆる貿易摩擦、問題になりましたね。こういうことになって、そうすると日本政府としては、新聞が心配しているように、行政指導という名のもとにいわゆる政治的圧力をかけるんでないかと。かけて、実績を上げないと、アメリカは実績主義ですから、干渉する、あるいは行政指導するといってもちっとも協力しないじゃないかということになると、またこれは問題になりますわね。したがって、日本政府としては、アメリカが要求するハイテク技術その他いろいろあります。これらはみんな協力せいと企業に圧力をかけるんではないか、こういう心配もありますが、いかがですか。そういう圧力かけませんか。
  55. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) ちょっと初めに事実関係だけお答えしたいと思います。  一つは、対米武器技術供与につきましては、これは供与するかどうかはあくまでも日本側の自主的判断でございます。  それからもう一つ、これは事実上でございますが、対米武器技術供与の場合の日本における武器技術というのは、基本的には政府が持っているものがほとんど大部分でございます。したがいまして、今先生指摘のように、民間企業が持っていて、しかもそれを出したくないというようなものがそもそも非常に少ないと思いますし、そういうように本当に出したくないものを政府が強制する形はあり得ないわけでございます。  なお、一般的に今まで日米の技術交流につきましては、非常に盛んにやっていこうということで話してきておりましたけれども、今までは装価品についてはほとんどすべてアメリカから一方的にもらっている段階でございまして、日本から対米武器技術供与を含めて技術供与をした件数はごく今のところまれな状態でございます。それが事実関係でございます。
  56. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、特に外務大臣にお願いしたいんですがね。今答弁のあったように、ほとんどアメリカからもらっていると。装備品とわざわざ言ってるんです、装備品についてはと。いいですか。アメリカが今日本に欲しがっているのは装備品じゃないんですよ、向こうは。ハイテク産業その他の汎用技術なんです。そういうものをアメリカの方では欲しがっているんで、この対米武器供与の交換公文の細目取り決め、ここにございますがね。あるいはまたSDI協定、それから現在進行中の科学技術協力協定、それぞれ秘密保護条項が入ってきているんですから。いいですか。しかも、これらの協定を実行することによって生み出される技術上の情報はMDA秘密保護法の枠に入らないのが大部分なんです。装備品でないんですから、今出ているのは。  そうしますとね、だからアメリカから新たな秘密保護法を要求される事態になってきたら、そういうものを積み重ね、秘密をいっぱいやっているけれども、包括的な秘密保護法がやっぱり要るじゃないかと言ってきたときに、断固として特許公開の原則があるからということで、特許庁の長官はそんなものつくらぬと言っているけれども、そういうものはお断りしていくというふうにはっきりできますか。
  57. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど冒頭にお答えいたしましたように、これは五六年協定、国会の承認を得た、だからそれの今度は実施細目を取り決めんとするものであると、そういうような格好で、そしてアメリカにおける秘密取り扱いのものに関しましては類似の行為をとってください、よろしと、こういうことでございますから、我が国におきましては秘密的なものの取り扱いは現在一切ございませんし、なおかつ特許制度そのものは公開を原則といたしておりますし、それを守っていくんでございますから、だから今回におきましては、何ら我が国において秘密取り扱い的な立法措置を講ずる必要も何にもないと、こういって累次御答弁申し上げている次第でございますので、その経緯をお考え賜れば、当然私たちの気持ちもわかっていただけると思います。
  58. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 最後に、両大臣、まことにいいことずくめの今度の協定のように思えますけれども、とんでもない話なんです。例えば技術供与、今度の協定ができますと、それからSDIもそうですが、これらの権利は全部アメリカですわね、知的所有権はアメリカに属するんです、SDI研究なんかも。そうすると、日本の研究技術もアメリカの方へ行くわけです。これらは全部今度は日本でも凍結されるわけです、防衛目的というふうなことになってですね。民間では今いろんな技術が進んでます。コックピットだとかいろんな、民間でも使える、軍事用にもなるという、この差別がつかなくなってきている。そのときに、技術供与によってアメリカ側が日本のあの会社のこういう技術、あの会社のこういう技術というふうに指定してきた場合には断れない。向こうへ行って、それがシステムで一つの組み合わされた特許となって協定出願した場合には、日本の産業はその点で手も足も出なくなる、そういう非常に大きな危険性を持っているということをもう一遍振り返って、いわゆるパクスアメリカーナと言われているアメリカの大きな戦略にだんだん組み込まれていく、そのことがやはり平和憲法が空洞化し、さらに進めていくというふうなことにつながりかねない今回の交換公文であるということをひとつぜひ御認識いただいて、私の質問を終わります。
  59. 山本雅司

    政府委員山本雅司君) ちょっと恐縮ですが、事実だけお答え申し上げたいと思います。  今、日本の、装備品についても同じでございますが、特許は全部公開されて、もちろん全部だれでも利用できるわけでございます。ただ、アメリカの特許は軍事機密に属するものだけは公開できないものですから、公開されておらないものですから私どもも利用できない、こういう形で、どちらかといいますと日本の技術は全部特許で保護され、しかもそれを利用できる、アメリカの場合は軍事技術については秘密になっていて、何がそうなっているかもわからないから、私どもはその内容を知って、できればそれも利用したい、こういうのが今回の少なくとも私どもの交換公文でやっている趣旨でございます。
  60. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 委員長、やめようと思ったんですが、こういう答弁されるともう一問お許しください。  公開されるまでにどれだけかかります、日本の特許法で。公開するまでに、公告でないですよ、出願から公開までに一年半という時間があるんです。あなたは瞬間タッチで公開されるような今の答弁、そういうごまかしの答弁はいけない。私はその一年半ある問題を言っているんだから。
  61. 加藤武徳

    ○会長(加藤武徳君) また、商工委員会等でいろいろ議論がありましょうから、これで終わらしてもらいます。
  62. 和田教美

    ○和田教美君 日中戦争の戦争責任をめぐっての一連の奥野前国土庁長官発言問題は、奥野氏が閣僚を辞任したことによってひとまず決着して、中国や韓国からの批判もどうやら鎮静化の方向にあるように受け取れます。しかし、奥野氏が辞任した当日、朝の閣議で中尾経済企画庁長官が奥野発言を支持する発言をして閣内不統一を露呈するというふうな動きも出ておりまして、中国はもち ろんアジア近隣諸国の民衆に改めて不信感を植えついたのではないかというふうに心配をいたしております。いずれにせよ、日本アジア外交の基盤がこの問題でまた小さくない傷をつけられたということは否定できないと思います。  宇野外務大臣は中国、韓国に対して、奥野発言問題の経過を説明したりして鎮静化に努力されているということですけれども、問題は落着したときの外務大臣の所見の発表というふうなことで事はすっかり済むのかどうか。それから、この前中国訪問されたときの印象で、中国首脳の日本に対する態度は非常にソフトであったというふうなことを聞いておるんですけれども、そういう点について影響がないかどうか、当面の処理を含めて外務大臣見解をお聞きしたいと思います。
  63. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私と中国、銭其シン外務大臣との会見内容を一つ一つつまびらかにするわけにはまいりませんが、指名はなかったものの、奥野発言に関して、言いにくいことである、また言いたくないことであるがということで、礼を欠いた発言であるという旨の発言がございました。それに対しまして、私も総理のお立場、私の立場鮮明にいたしまして、そして外務大臣のお言葉そのまま御当人に伝えましょうと、概略そうしたことが二人の中のお話でございました。また、李鵬総理との間におきましては奥野発言というものは一切出ておりませんが、総理としては次のような発言されまして、私はこれは非常に大切な発言だと思いますので、既に委員会でも公にしておるわけでございますが、お互いに戦争というものは悲惨なもので悲しい思い出がいっぱいある。中国にも肉親を殺されたという思い出を持っている人がいっぱいいます。日本においても原子爆弾等々悲しい思い出があるでしょう。しかし、現在の指導者はそういう悲しみを越えて平和に向けて手を取り合っていこうということが大切だと私思いますから、やはり一般国民にも悲しい思い出をよみがえらせるようなことはお互いに慎みましょうと、こういうようなお言葉でございました。  私は、そういう言葉のものの間において、私みずからが今回の中国指導者の対応はソフトであったというふうな印象を語ったことはないのでありますが、そういう言葉からいろいろと想像されたことがあったかもしれません。しかし、一応奥野発言そのものは御本人の辞任ということにおきまして、直ちに私は奥野さんが辞任されたこの際という意味の私自身のコメントを記者会見で公にいたしておきまして、それをそれぞれ外務省の担当官より韓国並びに中国にお伝えしたという段階でございます。  今のところ、それらに対しまして両国からは通報に感謝するという言葉があっただけであります。だから、ああしたこうしたということを言うのか言わざるべきなのか、ああせいこうせいということを言われたのか言われなかったのかというようなせんさくはいろいろあるんですが、そうした細かなことまでは、これはやっぱり外務大臣としてお互いの本当にひざを接してお話し合ったことでございますから、そこまで私は申し上げるわけにはまいりませんが、私といたしましては、こうしたことで今回のことが鎮静化するであろうと、そのことを願うというのが現在の私の気持ちでございます。
  64. 和田教美

    ○和田教美君 INF、中距離核戦力の全廃条約の調印に引き続きまして、この二十九日からモスクワで米ソ首脳会談が開かれる予定になっております。また、INFに続いて戦略兵器半減交渉が今行われておりますけれども、なかなか問題の複雑さから米ソ首脳会談までの妥結は困難だということでございますけれども、しかし交渉が後戻りしているわけではなくて、年内には妥結するだろうというような見方もあるわけでございます。一方、アフガニスタンからのソ連軍の撤退はいよいよ始まったわけでございまして、このようにこの半年ぐらいの間の国際政局は、私は明らかに米ソの緊張緩和、デタントの方向、そして軍縮の方向に動きつつあるというふうに判断をしているわけでございます。  ところが、外務省が先ごろ公表しました、八七年の回顧と八八年の展望という文書によりますと、最近の国際情勢について、米ソ間の軍縮に一定の評価を与えながらも、これが直ちに東西間の緊張緩和に結びつくかどうかは、地域紛争、二国間問題、人権問題などを含めてとらえるべきであって、平和ムードのみの先行は疑問だというふうなことを指摘しまして、今の局面を米ソデタントと明確にとらえるのには懐疑的な見解を示しておりました。もっとも、その後外務大臣が、この四月根室で記者会見されたときに、ゴルバチョフ政権について、対外政策面でも従来と異なるダイナミックな政策を展開しているというふうに述べられまして、ソ連の政策のうち肯定的な面は正当に評価して対応していくと、従来の対ソ認識をかなり修正させたような感じも受けておるわけです。  そこで、国際情勢がデタント、軍縮の方向に動いているのかどうか、そういう問題を中心外務大臣基本的な認識をひとつお聞かせ願いたいわけでございます。
  65. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) INFのグローバルゼロは、これは我々としても大いに歓迎しますが、しかし核軍縮の第一歩であるという評価を私たちはしておるにすぎないのであります。と申し上げますことは、やはり全保有量のうちの極めて少ないパーセンテージのところの合意であった、しかしこれは歓迎しましょうと。しかし、これによって世界のデタントが来されたかと申しますと、私たちはまだまだそのような楽観視はいたしておりません。  特に、デタントという言葉に関しましては、第二回目のSALT交渉のときに、この今回収拾を見るに至りましたアフガンの侵攻があったわけでございます。自来、アメリカにおきましては、せっかくデタントと言っておったのが一方通行だったかという悲観論もまかり通っておりますから、やはりデタントという言葉が非常に広いので、私はそれを使うことはいろいろ問題があろうかと思いますので、最近、私みずからもデタントというふうな言い方はしておらないわけでございます。  しかし、米ソの努力は大いに評価をしよう、特にペレストロイカ等々思い切った政策を講じておられるゴルバチョフ書記長の外交姿勢にはまことにダイナミックなものありと、こういうふうに私たちは評価いたしておりますが、やはり言葉よりも実績をというのが私たち考え方でございます。したがいまして、近くモスクワで行われます第二回目の会談に際しましても、非常に難しい問題ではございましょうが、やはり戦略核の五〇%削減、これは合意されるようにお祈りします。  同時にまた、二国間、この二国間には実は日本の北方領土も入っておるということを私たちは忘却すべきでないと思うのであります。  また、地域紛争、その一つとしてアフガンソ連軍撤兵がきのうから始まりました。しかし、ゲリラが何分にもパキスタンの中でも七つほどあると聞いております。また、多くの避難民がおると聞いております。避難民の中には、帰っても果たして荒廃し切った祖国で飯が食えるだろうかというような心配も持っておられる方々もいると聞いております。だから、日本といたしましても、平和に貢献しなくちゃいけませんから、ソ連の撤兵が円満に行われること、またこれ以上の紛争が超こらないこと、また避難民が円満に帰国されることを祈りながら、国連監視軍にひとつ、シビリアンコントロールの今日でございますから、そうした文民を派遣する、これが大切ではないかということで、一名ではございますが文民を派遣して、大いに我が国も汗をかこう、こういうことを表明した次第でございます。  そうした中において、今後、地域紛争の問題もあるいはまた軍備管理の問題も議論されると思いますから、現在といたしましては、両国首脳の努力に対しまして敬意を払い、なおかつ二回目のモスクワ会談が成功するように、ひとつその期待を表明したいというのが現在の私たち考え方であります。
  66. 和田教美

    ○和田教美君 今、外務大臣が触れられました日 ソ関係の問題についてお尋ねしたいんですけれども、外務大臣は、先ほど申しました根室談話で、ソ連との関係はもちろん平和条約交渉が最重要ではあるが、これに限定されるわけではない、二国間問題のみならず国際問題についても十分な意思の疎通を図っていくべきだと考えるというふうに述べられて、日ソ対話の拡大を表明したというふうに報道されております。  私は、北方領土問題については我が国の固有の領土であって、四島一括返還を求めるという日本側の基本的主張を粘り強く主張し続けることはもちろん必要だと思います。しかし、すべてが領土問題で、その前進が先決であるという、いわゆる領土問題入り口論で思考を停止するというのは、日本外交のあり方として賢明ではないというふうに思います。外務大臣のおっしゃるとおり、日ソ間の懸案は領土問題に限定されるわけではないわけですから、領土問題と並行して経済文化の交流促進など、日本側として日ソ間の関係改善について今こそダイナミックな、とにかく努力をすべきだと思うんですけれども、対ソ外交基本姿勢についてお聞きしたいと思います。
  67. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 北方四島一括返還ということは、これは国是と言ってもよいぐらいの強い私たち民族の悲願でございますから、当然これを忘れ去るわけにはまいりません。したがいまして、その粘り強い主張は当然でございますが、今和田委員が御指摘なさいましたとおり、それと並行してやはりダイナミックな外交をすべきである、この点に関しましては、私、無論異議はございません。したがいまして、評価すべきは評価し、また正当だと思われるところは正当だとして大いに、隣国でございますから、今後も対話を進め、それによるところの関係改善を行っていきたいと思います。  特に、そのためにはやはりシェワルナゼ外相と私の会談が一番最初に予定されるわけでございますので、このことに関しましても、まず事務的なレベルで話し合いしましょうということに合意をいたしまして、六月の二十三、二十四、両日にモスクワにおいて我が国の代表とそしてソ連の代表、ロガチョフさんだと思いますが、外務次官、これとの間におきまして十二分な話し合いをしてもらうということをただいま進めておるわけでありまして、これは決まりました。  したがいまして、そうしたところから経済文化、さらにはいろんな面におけるところの関係改善は、私たち努力しなければならないと、かように考えております。
  68. 和田教美

    ○和田教美君 次に、瓦防衛庁長官にお尋ねいたします。  去る四月の二十二日に、本調査会の安全保障小委員会で、ここにいらっしゃる西廣防衛局長に来ていただきまして、米軍の有事来援問題などについていろいろお話を聞いたのですけれども、その際の防衛局長の説明の中で、米ソ間のINF全廃合意を契機として、戦略核等の軍縮、軍備管理の進展が問題になろうが、いずれにせよ、現実の問題としては通常兵器レベルでの抑止の信頼性がより重要になってくることは否定できないというふうに述べられて、有事来援研究を進める理由づけにされておりました。この見解は解釈によっては、INFの全廃が行われれば、西側にとって米国の核抑止力がそれだけ弱まる、そこで現在西側を上回るソ連の通常兵力の存在が一段とクローズアップされてきて、アジアにおいてもソ連通常兵力の潜在的脅威がそれだけ増大するという見方のようにも受け取れるわけで、事実、防衛庁はそういう説明もいろいろとされておるわけでございます。  しかし、私はそのような脅威増大論というのはどうも納得ができないわけでございます。私は外務大臣と違って、国際情勢は明らかにデタント、軍縮の方向に流れを変えていると思うんですけれども、軍縮というものは単に中距離核に始まって戦略核だけにとどまるわけではなく、さらに通常兵力の相互削減というものにも及ぶべきだと思うし、我が国としてはまずそういうことに積極的に努力をすべきだと思うんであります。ところが、この軍縮、INFの全廃という問題を取り上げて、改めて日本防衛力の増強の一つの宣伝材料に使おうとするような言い方は、いかにも時代逆行ではないかというふうに思うんですけれども、瓦長官政治家としてこの点についてどうお考えでございますか。
  69. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私の答弁に関連したことなんで、私からまずお答え申し上げます。  私ども、戦略核戦力を初めとして通常兵力に及ぶ軍縮、軍備管理が進行するということを期待していることは間違いないわけであります。その点については、通常兵力についての軍縮も行われるべきであるという先生の御意見に全く同意見になるわけでございますが、ただ、現状認識なり、それに持っていく持っていき方ということについて、若干見解を異にしているんじゃないかと思うわけです。  まず第一点は、先ほど外務大臣が申されましたけれども、我々はデタントという言葉そのものではなくて、具体的に実態がどうなっているかということに着目せざるを得ないということであります。  デタントと言いますと、我々すぐ思い出すのは一九六〇年代の終わりから七〇年ごろのデタントでございますが、御承知のように、当時デタント、デタントと言われながら、中ソ国境紛争もありまして、アジア地域ではわずか二年足らずの間にソ連の兵力が二十数個師団から五十数個師団までふえたというように倍増したわけです。決してデタントではなくて、アジアにおいては緊張が増大したと言わざるを得ないと思いますが、それでもなおかつ世の中はデタントと言っておった。我々はそういうふうに、デタントという言葉ではなくて、実態がどうなっているかということにまず着目をしたいということであります。  第二点は、これは先般本調査会の小委員会で、久保田先生の御質問だったと思いますが、私がお答え申し上げたと思いますけれども、この東西両陣営の対立の構図というものは、いい点もあれば悪い点もたくさんある。いろいろありますけれども、少なくともその両陣営内に属する国間の戦争はなかったという意味では、マクロ的にその種主要国の間の戦争がなかったという点では、それなりの評価をせざるを得ない。そういった枠組みが現在変わりつつあるということを私が申し上げたと思います。そして、この東西両陣営のそもそもの防衛戦略というものは、かつては非常に非対称的なものであったということも申し上げました。  それは、西側は主としてアメリカの戦略核抑止力、そういったものに依存した防衛戦略をとり、ソ連はそもそもは通常兵力の優位というものに依存した防衛戦略をとっておった。それが六〇年代から七〇年代にかけて逐次逐次変わってきて、まず戦略核戦力においてソ連がパリティを獲得し、さらに現在INFについて相互ゼロオプションということでゼロにしようという状況まで来ている。つまり、核の分野については戦略核戦力を含めて中和状況になりつつある。残った状況は、全体として見れば通常兵力の東側優位という状態が際立ちつつあるという実態はやはり御認識いただかなくちゃいかぬということを申し上げていると思います。それが私のお答えした通常兵力による抑止といいますか、そういったものの重要性についての一つの理由であります。  第三点は、軍備管理なり軍縮を実現するための戦術的な問題になろうかと思いますが、やはり軍備管理、軍縮というのはパリティ、ある程度の力の均衡というものがあって初めて可能になってきている。例えば戦略核戦力、SALTIIが実現したというのは、ソ連のアメリカに追いつこうとする戦略核戦力の増強というものがなされて両者間である意味のバランスというものが出て、そこで初めて、残念なことながらそこにいって初めて軍縮にいこうじゃないかという機運が起きてきたということは御理解いただけると思います。  同じようにINFにつきましても、ソ連のSS20等の配備、そういったことに伴いましてNAT O諸国でいわゆる先生よく御存じの二重決定というものが行われました。要するに劣勢のまま軍備管理を行おうとしてもなかなか難しい。そこでNATO諸国としてもその種中距離核についてソ連と対抗し得るものをまずつくろうじゃないか。そこでお互いにテーブルに着ける状況にして、そこから軍縮交渉、軍備管理交渉を始めようじゃないかという二重決定が行われ、それが曲がりなりにも実行でき、そこでソ連もテーブルに着いてきて、幸いにして相互に全面削減をしようじゃないかという合意にたどりついた、こういう経過がございます。  今仮に、INF等が実際に全面削減された段階で申しますと、先ほど申したようにソ連の通常兵力の優位というものだけが非常にクローズアップされてくる状況になりました。この削減あるいは通常兵力の軍備管理ということに進もうといたしますと、やはりそこにある種のバランス、お互いにこれではいかぬではないかという認識に立ち得るような状況がありませんと、一方的に優位にあるものの善意だけに期待しているということではなかなか軍備管理というものは行われないという現実も御理解をいただきたいと思うわけであります。  その他、そういったもろもろの点を考えまして、やはり我々としては戦略核なりあるいは中距離核の現実に抑止効果というものが減じつつあるということは事実でございますので、そういう際に現状を見ますと通常兵力の劣勢というものは否めない。やはりその間のみずからの安全というものについては留意せざるを得ないというのが私の考えでございます。
  70. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ただいま防衛局長からの答弁にもございましたが、INFの全廃合意というのは、これまた外務大臣からの御答弁でもございますが、大変私どもとしてはこれは歓迎すべきことではございます。しかし今後は戦略核であるとかまた通常戦力、これらについて東西間で真剣な議論が行われていく、そうしたことを注目してまいらなきゃならぬと思っておりますが、このことは並み大抵のことではない、かように思っています。  しかし、我が国といたしましては、平和な環境が維持されることはもとより望ましいわけでありますし、こうした実態をまず直視しながら取り組んでまいらなければならぬわけでございますので、デタントと言うにしてはまだ垣根といいますか課題がたくさん残っておると、かように考えるわけでございます。  なお、国際的軍事的なバランスというのは常に働いておるわけでございますから、そういう中で世界の平和、安定が維持されておるということも現実でございます。よって、我が国防衛努力ということにつきましての御質問もございましたが、これは大綱にのっとりまして進めておる、さらにまた具体的には中期防を通じまして、我が国防衛努力は主権国家として当然なことでございますし、また我が国の平和、安定は日米安保体制によって支えられておるわけでありますから、そうした意味で先般の有事来援につきましては、米軍の有事におきましての確実かつタイムリーなる来援という問題、この問題につきまして検討をしていくということを話し合ったわけでございます。  でありますから、今御指摘のように、我が国の平和、安定、そうしたものを確実にしてまいるためには、私どもは東西間の首脳を初めとする交渉をこれからも注目、注視してまいらなければならぬと、かように考えておるものでございます。
  71. 和田教美

    ○和田教美君 日米安保事務レベル協議、ハワイの協議の問題についても質問をしたかったんですけれども、私に与えられた時間が来ましたので、それはまた別の機会に譲りまして、質問を終わります。
  72. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私に与えられた時間は二十分なので、簡潔に答弁をお願いしたいと思います。  まず第一はODA問題で、今和田委員が質問されかけましたが、第十八回ハワイ事務レベル協議でアメリカ側はバードンシェアリング、責任分担論、これを主要議題として経済協力援助の質量両面の拡充を要望したと、そう報道されています。防衛庁の宍倉次官はホノルルの記者会見でそれに大体応じた趣旨のことを述べておりますが、これは戦略援助ですね、アメリカの。それに日本が応ずるということでしかないと思うんですね。今実績でGNP比〇・二九%のODAを、政府は中期目標の見直しを行っている、六十七年度にはGNP比〇・四%にまで上げようという報道などもあって、トロントのサミットでは首相が表明をするとも報道されています。  宇野外務大臣にお伺いしたいんですが、今度のハワイ事務レベル協議でのアメリカの要望にこたえて、GNP比のODA総額をふやしつつ、その中でアメリカの戦略援助に応じていくという方針なのかどうか、はっきりお答えいただきたいと思います。
  73. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ハワイにおける事務レベル協議の内容に関しましては、先ほど北米局長が申したとおり、経済協力という話はいろんな話の中で出たわけであって本議題ではない。本議題にすべきでないというのは私の方針でございますから、当然出席者は本議題にいたしておりません。特に私はシグールさん等いろんな米政府の高官がお越しのときに、我々といたしましては、例えばそれは軍事関係の人がそういう問題を出されることもありますが、あなたがそういう問題を出すのは大いに間違いですということを私は申し上げております。  シグールさんがおっしゃったのは、例えばアキノ政権、フィリピンにアキノさんにかわるべき人はない、やはりフィリピンはこれから一生懸命経済再建をしようとしておるんだからお互いに応援をしてあげたいがどうだろうという話ですから、あくまでもそれは非軍事的な問題として私たちは了承し、なおかつアメリカも豪州も欧州もすべての国々が関心を持って協力をしようというんだったら日本だって協力いたしますよということを例えば申し上げておるということでございますから、今私が申し上げましたとおりにODA等々を戦略的に用いるということは我が国においては一切ございません。  また、トロントでどういう問題が出るのかというお尋ねでございますが、これまた、まだそういうことを明らかにする段階じゃございませんので、今私の申し上げましたことが政府の原則だと、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  74. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 八五年一月当時の新聞報道で、あの一月に安倍・シュルツ会談があって、そこで日本の対外援助政策をめぐる日米調整について、アメリカ側は国務次官を、日本側は外務審議官を当てて高級事務レベル協議を随時開いていくということが合意されたという報道があります。この報道では、ハイレベル協議に格上げされて高度な政治判断を伴う戦略援助をめぐる意見交換を行う舞台が整うことになるというふうに言われていたんですが、その後、こういう外務審議官、向こうは国務次官で日米間で海外協力、援助についての協議が行われてきているんですか。簡潔にお答えください。
  75. 英正道

    政府委員(英正道君) 随時行われております。
  76. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 行われている……
  77. 英正道

    政府委員(英正道君) 行われております。
  78. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やっぱり大問題だと思うんですね。  それでは次に、防衛庁長官にお伺いします。  四月二十九日にアメリカの国防総省が一九八八年「ソ連の軍事力」、これを公表しました。いろんな大問題があるんですけれども、非常に注目すべきことは、全面戦争の場合、ソ連は日本に対して中立化を図るだろう、あるいは日本海からの出口を確保するため日本への限定的上陸作戦を試みることもあり得る、この上陸作戦を阻止するためには同盟国の共同努力が求められようという叙述があると報道されています。で、五十八年の防衛白書には既に「敵が通峡の自由を確保するため、海峡周辺地域に対する侵攻を企図するおそれもあ り」と叙述があって我々大問題にしたんですが、今度は日本防衛庁だけでなくてアメリカ側も、米ソ戦のときに日本に対してソ連側が限定上陸をやる、これは共同して阻止しなきゃならぬと書いてあるわけで、そうなりますと日米共同作戦研究、シーレーン防衛研究あるいは有事来援研究、こういうものの想定の一つにソ連の、まあ北海道などでしょうな、こういう上陸作戦、この想定が含まれているんですか。はっきりお答えいただきたい。
  79. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 共同作戦研究のお話でございますので申し上げますが、現在日米間で行われている共同作戦研究というのは、日本を主対象として周辺諸国から日本に対する侵攻が行われた場合にどうするかというものを研究いたしておるわけであります。
  80. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 先般の「ソ連の軍事力」、このことにつきましての米国防総省の発表でございますが、ソ連の軍事力の実態につきまして米国防総省は豊富な情報に基づいて各般にわたる分析をしております。我が国といたしましては、国際軍事情勢というものを正しく承知をしてまいる、理解してまいるということは大事なことでございますので、このことは、このたびの、「ソ連の軍事力」の公表されたものにつきましては、その意義を評価しておるわけでございます。かように評価をいたしております。
  81. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛白書の方はソ連とは書いてないんですよね。ところがアメリカの「ソ連の軍事力」はソ連と書いてあるわけね、ソ連の上陸作戦と。あれですか、これを意義評価するというんだが、では防衛庁としては、ソ連は仮想敵国の一つだ、そう評価しているんですか。
  82. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 仮想敵国ということは私は申し上げていないわけでありまして、アメリカの国防総省が幅広い情報、豊富な情報の中から格別ソ連の軍事力の実態につきまして今般そのまとめを行っておるわけでございますから、これも我が国にとりまして、防衛政策を進める上には私は意義あるものであるというぐあいに評価をいたしております。
  83. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、奥野発言の問題についてお伺いします。  奥野氏が現職閣僚として問題提起を行ったのは四月二十二日の靖国神社参拝の後だったわけですね。八五年八月十五日に中曽根首相が初めて公式参拝に踏み切って、中国を初め国際的に批判が噴出して、それ以後行われていないわけです。これに対する奥野氏の不満があの発言になったと思うんですね。  八月に竹下首相は訪中されます。それで、私は、八五年八月十五日の中曽根首相の公式参拝以後の国際的な批判、並びに、靖国神社というのは戦前陸軍省、海軍省の管轄だったわけですからね、天皇と軍国主義の象徴ですよ。こういうものに対する公式参拝問題、これに対する竹下内閣の基本態度は中曽根内閣と同じなのかどうか。私は、やはり見直すべきだと外務省発言していいんじゃないかと思うんですが、宇野さんいかがですか。
  84. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 靖国神社問題に関しましては、従来外務委員会におきましても私は、私の個人的意見でございますが、次のように申し上げております。  我々は、あそこに祭られている方は、私の同窓生もたくさんいますし同年兵もいますから、私も学徒出陣で第二次世界大戦に参加した者で、戦闘には加わらない、主計だったものですから、それで終戦を迎えたんですが、一生懸命国家のために頑張りました。したがいまして、あそこに祭られている方々に対する私たちはやはり感謝の気持ちは私個人は失ってはいけない、かように思います。ただ、外務大臣でございますから、靖国神社へ参拝すること自体が近隣諸国にいろんな意味を与えるということをおもんぱかりました場合に、私は靖国神社には参拝いたしませんと、こういうふうに外務委員会においても申し上げておるような次第でございます。  したがいまして、こうした問題に関しましては、今上田委員からのお話でございますが、私といたしましてはノーコメントということにさせていただきたいと思います。
  85. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 奥野発言の問題の一つに、大東亜戦争という言葉を彼使っているんですけれども、大東亜戦争は米英に宣戦布告したので侵略戦争なんだ、しかし日中戦争は、これは偶発的なことで起きたし不拡大方針をとっていたので事変なんだ、そういう発言があるんですね。中国との間では侵略戦争でなかった、これは驚くべき発言だと思うんですね。ある新聞に、人民日報の孫東京支局長がこの問題について述べて、中国の犠牲者二千万人、死体を並べると日本の海岸線をはるかに超えるということまで述べているんですが、外務省あるいは防衛庁は、中国に対して与えたこの犠牲者の数把握してますか。
  86. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) とっさの御質問でございますが、極東国際軍事裁判等でいろいろな数字が出ていることは承知しておりますけれども、公式の数字というのは今のところないんではないかというのがとっさのお答えでございます。
  87. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 広く二千万という数字は日本でも言われているんですね。そうすると、第二次世界大戦の死者は全体で五千万です。そのうちソ連が二千万で、ナチスによってそれだけの犠牲者が出た。中国二千万といいますと、ソ連と同じ、第二次大戦の死者の約四割を特に日本軍国主義の侵略の結果受けている、非常に重大な問題なんですね。  我々は、奥野氏だけでなく竹下首相も日中戦争、これが本当に侵略戦争だったと明言されない。ここに奥野発言などが、この前は藤尾発言が中曽根内閣であったし、今度どうも他の閣僚が出ているわけですけれども、そこにある根源があると思うんですが、宇野さん、日中戦争は侵略戦争だったと、あれだけの甚大な被害を与えた、このことははっきり認識されておられますか。
  88. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 内閣には承継制というものがございますから、前内閣におきまして中曽根総理が日中戦争は侵略的事実があった、こういうふうに言われております。したがいまして、竹下総理もそれをそのまま踏襲をされまして国会においてそういう御答弁をなさっております。  過般の外務委員会におきましてさらに外相としての個人的見解いかん、ここまでお話が進みましたので、今申し上げましたのは政府として前政府からの一つの継承制の答弁としてきちっといたしておるわけでございますが、私自身といたしましては軍国主義の侵略である、こういうふうにお話をしたばかりであります。
  89. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 奥野氏はあの辞任の日の朝の閣議で南京虐殺事件を取り上げた。これが大問題になってついに辞任までいったわけですけれども、辞任後の記者会見で、新聞の見出しが中国批判と書いたけれども、あれは違うんだ、外務省を批判したんだ、こう述べているわけですね。そうすると、あなたのところが南京虐殺事件のあの碑の問題で批判されたということになります。  南京虐殺事件は、先ほどアジア局長が東京裁判のことを言われましたが、極東軍事裁判の判決全文を私ここに持ってきておりますけれども、南京暴虐事件というのは非常に重大な戦犯問題として取り上げられているわけで、ここには「日本軍が占領してから最初の六週間に、南京とその周辺で殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万以上であった」「これらの見積りが誇張でないことは、埋葬隊とその他の団体が埋葬した死骸が、十五万五千に及んだ事実によって証明されている」こうあるわけです。奥野氏は、東京裁判というのは戦勝者が戦敗国に対して行った懲罰だと言ったんですね。政府の統一見解は、サンフランシスコ条約十一条でこの裁判そのものを受諾しているというのが政府の見解なんだ、だから南京暴虐事件についてもこの判決を政府はまともにまじめに受けとめている、これは国際的公約なんですね。  そういうことを国会発言したり、また閣議で言われているということが次々続いていることに ついて、これは中国のあれだけの犠牲を負った人民が憤激するのは当然だと思うんですね。  外務省としてはこの南京虐殺事件の問題について、奥野氏から批判されて宇野外務大臣と激論されたという報道ですけれども、それに対してどう思っておられるのか、南京虐殺事件についての事実をどうつかんでおられるのか、これもお伺いしたいと思います。
  90. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) いわゆる日中戦争の種種の過程におきます一々の事実関係について、それぞれをどう評価するかということについて議論を行いますこと自体果たしていかがなものかという気持ちがいたします。  ただいま委員御指摘のとおり、南京の事件につきましては、この正確な姿についていろんな学問的な研究もなされておりますし、御引用になりました極東国際軍事裁判の数字ですとか、その後いろんな学者の方がいろんな議論をしておられます。しかしながら、我が国の政府はもう国交正常化の際に、たびたび引用されておりますように、共同声明の前文で我が国が「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」という態度で一貫しているわけでございまして、その間における個々の事件についての評価云々ということにはむしろ立ち入らないことの方が適当なのではないかというふうに感じております。
  91. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最後に一問。  先ほど中国の人民が受けた被害の数について質問したけど、答弁がありませんでした。それで、防衛庁長官に要望したいんですが、防衛研究所戦史部というのがあるんですね。私は日中両国民の友好関係を本当に発展させるためには、今度の奥野事件などが起きているわけですけれども、一体日本軍国主義が中国に対して全体としてどういう被害を与えたのか、今個々の事件については立ち入らないと言われましたけれども、全体として、これをはっきりさせることがあの侵略戦争の反省に立って我々が平和の方向に進む上で必要だと思うんですね。防衛研究所戦史部はいろいろ南京虐殺事件などについても調査している等々の報道がありますが、個々の事件でなくとも、一体日本軍国主義が中国その他のアジア国民にどれだけの被害を与えたのか、この問題の調査と研究を行ってその数字を国会に報告していただきたい、お願いしたいと思いますが。
  92. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように防衛研究所の中に戦史部がございますが、これは二次大戦を中心として我が国がそういう過去にいろいろな行動をとった、そういったことについて日本側の関係者というものが逐次亡くなっていったりするわけでございますが、そういった事実というものをしっかりわかる時期に把握しておくべきであるということで、こういったことを繰り返さないためにもそういったことが必要であるということで戦史部というものができているわけでございまして、中国の状況等について戦史部の者がいろいろ調査をする、そういったようなことはなかなか困難であろうと思っております。
  93. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  94. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 当調査会外交総合安全保障の長期的な問題を討議するところでございますので、久しぶりに御出席願いました外務大臣及び防衛庁長官に対していろいろ意見を述べたいことはたくさんあるんですけれども、持ち時間がわずか十分しかございませんので、きょうは開発協力の問題だけに絞って申し上げます。その他の問題については当調査会でしばしば私意見表明をしておりますので、ついでのときにお読みいただければありがたいと思っております。  その問題に入ります前に、実は最近外務省外交方針についていろいろな批判があるように思っておりますので、その問題について私の意見を申し上げておきたいと思います。  外務省の仕事は外国に対して日本の安全と繁栄を守るために日本の言い分を主張し、そして合理的な対話によって相手国との利害の調和を探っていくということがその任務であると思いますけれども、同時に外交はしばしば内政であるというふうに言われておりますように、外務省の仕事はそれだけではなしに、同時に日本の国内に向かって外国の立場あるいは考え方を説明して国民理解を求めていく、これもやはり重要な仕事だろうと思うわけであります。その外国の立場をいろいろ説明するに当たりまして、一部の人たちは、どうも外務省は外国の言い分を聞くのみで軟弱外交であるという批判を浴びせる人もいるわけであります。例えば経済摩擦の問題については、日本はアメリカの言い分だけ聞いて日本の国益を主張しない、軟弱である、けしからぬという批判がある一方において、別な人々からは、日本は中国の立場のみを聞いて外国要人の言葉に振り回されているというふうな非難もあるわけであります。しかし、そういった批判を受けるのは、私はこれはある意味外務省の宿命ではないかと思う。もし外務省がそういう批判にたじろいで、いわゆるそういった人たちの気に入るような強硬外交に踏み出すのであるならば、私は外務省は必要ないと思う。今後もそういう批判を恐れることなく、また一時の国民的感情なんかに流されることなしに、国際協調の路線を堅持してもらいたいというのが私の希望であります。  これは質問通告しておりませんでしたので、お答えがなければそれで結構でございます。何か御意見があれば承りたいと思います。
  95. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 非常に外務省の立場を御理解賜りましての御発言、私は心から感謝申し上げます。トラブルを起こすのが外交ではありません。やはり、世界に開かれた日本世界に尽くす日本として常に協調を頭に置いてやっていきたい、これが今日の外務省基本的な姿勢でございます。
  96. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ODAの問題につきましては、この調査会の中にあります小委員会でいろいろ討議しております。いろいろ意見を表明することにもなるかと思いますけれども、その中できょうちょっと私が取り上げたいと思いますのはODA予算の国会審議の問題であります。  外交権と国会の行政府の監督権の問題、これは昔からいろんな議論があってなかなか簡単に解ける問題ではないということは私よく承知しておりますけれども、ODAの予算はGNPの比率においてこそ少ないにしろ、事業規模において一兆三千億円を超えている。今後ますますこれは私は量的にもふやし、質的にも改善していく必要があると思うのです。しかし他方、国内においては、これだけ日本がいろいろ経済問題で困っているのにこれ以上の援助が必要なのかというふうな懐疑論もありますし、外国でもいわゆる援助無用論なんかを説く人もいるわけでございますけれども、私はやはりふやしていく必要があると思います。  したがって、政府としては、国民に対して開発協力の必要性について絶えず啓蒙するとともに、個々の援助計画につきましても国会内の審議を通じて国民理解を求めていくことが必要だと思うのです。ところが、日本の場合においては、予算書を見ますと、無償資金協力が幾らであるとか有償が幾らであるとか、技術協力が幾らであるとか、総額としてしか書いてなくて、その内訳は外務省その他の官庁においてそれぞれ決められる。そういう仕組みになっていると思うのでありますけれども、これでは十分国会審議をしようにも審議することができないわけであります。国別あるいはプロジェクト別の事業の説明書を国会に参考資料として提出したらどうかという意見も強いわけでございますが、これに対して外務省としては賛成でないように承っておりますけれども、その反対の根拠をおっしゃっていただきたいと思います。
  97. 英正道

    政府委員(英正道君) 本調査会初め国会のいろいろな委員会におきまして、ODAの問題につきましては個々の具体的な案件の問題を含めまして常にいろいろ御議論をいただいておるところでございます。  ただいまの御質問は、援助の活動の内容について、例えばプロジェクトごと等に、または国ごと 等にどういうふうな実施を行うかということを事前に国会審議できないか、こういう点がなぜできないか、こういう御質問だろうと思います。  毎年国会ODAの予算を御承認いただくわけでございますけれども、この総枠をはるかに上回る額の援助要請というものがいろいろな国から出てくるわけでございます。これを、プロジェクトのフィージビリティー等々ございますので、やはり具体的なプロジェクトについて所要の検討を行って、そしてその間相手の国と個別の細かい交渉を行いまして、また国内においては関係省庁とそういう協力ができるか、またそれが必要であるか等の検討を行って、そういう交渉を経まして決定を行っておるというのが実情でございますので、その結果、毎年予算の枠内ですべての援助が行われるというふうになっておるわけでございます。  事前に国会の御承認を求めるということは、こういう援助の仕組み、つまり相手国との交渉、それから個別の案件についてのいろいろな技術的な詰めというような点を考えますと、やはり問題があるというふうに考えざるを得ないと思います。今やODAは国際的な我が国にとって大きな責務でございます。そのためにはやはりタイミングを失することなく迅速に援助を行うということも必要でございます。こういう観点からほとんどすべての先進国におけると同様、国会におきましては援助の予算の大枠を御承認いただき、政府がその枠内で外交交渉権の範囲内で具体的な援助案件につき交渉して決定するという従来からの方法が一番適している、かように考える次第でございます。
  98. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外務省考え方もわからないではないんですけれども、しかし同時に、先ほども言いましたように、やはり国民理解を求めるということが大事でありますし、やはり国会がいわば白紙委任状で政府に任せるというふうなやり方では、これは国民理解を得ることはなかなか難しいのじゃないかと思うんです。両方の何らかの折衷点を探っていくことが必要じゃないかと思うんですけれども、最後に外務大臣、そのことについてちょっと御意見があればお伺いしたいと思います。
  99. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今、経済協力局長が申しましたとおりでございまして、私もいろいろと国会の御意見も尊重しながらそういうふうな方途はあるかということに関しましても、今後は十二分に国会の御意見も生きる何らかの接点があるか、そうしたことに関しましては私自身といたしましても勉強をいたしたいと思います。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 中期防が決定をした直後の参議院予算委員会で、西廣防衛局長にP3C百機体制について伺ったことがありますが、これをどう使うのかという私の問いに、二十機は海上輸送の安全のため、八十機は対潜哨戒であるという意味のことを言われたと記憶しておりますが、これは現在も変わりませんか。
  101. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) P3C、対潜哨戒機の体制、我が方の運用の状況からいいますと、まず地域的といいますか、海域を、我が方の常々考えておる周辺海域と申しておりますが、日本海側ですと中間点ぐらいまで、太平洋側ですと三百マイルぐらい、その間の海域について一日一回程度の対潜哨戒をやるということで割り振りますと、先ほど先生がおっしゃいましたように、八十機程度のものが要る。それから船団護衛、これも二個船団ぐらいを考えておるわけでございますが、これを千マイル程度の距離までやるということになりますと、どうしても一個船団に十機ぐらいの機数が要るということで二個船団分で二十機ということで、合わせまして百機という積算でいたしております。
  102. 田英夫

    ○田英夫君 時間がありませんから、私がなぜこのP3Cの問題、百機体制の問題を取り上げたかということを両大臣に御理解をいただきたいと思うわけですが、素人考えかもしれませんけれども、今防衛局長がああいうふうに言われましたが、世界的な状況を見ても日本憲法の規定もあるし、そういう中で百機というのはいかにP3Cが性格上専守防衛にふさわしいものだといいながらいささか多いのではないかという疑問を持つわけですね。それは結局米ソ対立している中で日米安保条約というものがありますから、それはある意味では当然の帰結という意見の方もあるかもしれませんけれども、私のような考え日本国民も非常に多いだろうと思うので御配慮をいただきたい、そういう点にも配慮すべきじゃないかという意味で申し上げるわけです。  アメリカの対ソ戦略、特に今INFの合意というようなことから、あるいは戦略核の五〇%削減というところにいったとしても、さっきからお話がありますようにデタントかどうかという議論も出てきている中で日本が果たすべき役割ということを考えましたときに、一方で専守防衛と言いながら実は米ソの間で海の核の問題についてはSLBMとかSLCMとか言われるようなものについてはほとんど話し合いの舞台にさえ出てきていない。こういうつまり海の核というのがこれから核の中の一番最後に残る米ソの一番重要な問題になってくるのじゃないか。  そうするとP3Cというのはその一つの象徴でありまして、アメリカの対ソ、特に海の核戦略の一翼を担ってソ連の潜水艦発見の部分を日本が分担をするということになるんじゃないかと、こう素人は思うんですね。そうなりますと、日本がいかにもアメリカの戦略の一翼を担っていくと。私は、自衛隊すぐになくせとか日米安保条約がいけないからすぐに廃棄しろということを申し上げるつもりはないんでありまして、それなりの意味があるという前提に立った上でも日本国民の皆さんの心配の種になるんじゃないか。事実そういうことになっていく可能性が私はあると。あれだけのものを持って日米安保条約の体制の中で緊密に、まあ軍事的という言葉がいいかどうか、防衛的な意味で連絡をとり合っているという緊密な体制の中にあるということはみんな知っていますから、そうなるとそういうことが考えられるのも当然じゃないか。そういう意味でこのP3Cの問題を象徴的な問題として取り上げたわけです。  したがって、防衛問題そしてそれにまつわる日米の外交問題というものはそうした国民の意識というものを常に配慮しながらやるということが一番大事じゃないか。憲法を持っているということを、ごく一部の人を除いてああいう憲法があるということを非常に誇りにしている日本国民ということを考えたときに、そこが一番大事じゃないか。これは私、一方的に私の考えを申し上げて、五十五分に青島さんに渡しませんと両大臣の御都合もあるようでありますから、私の方から意見だけ申し上げておきます。
  103. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 一つだけ簡単に御説明申し上げておきますが、我が国のP3Cというのは海上交通保護のためにあるわけでございますが、お考えいただきたいのは日本の場合非常に海外依存度が高くてそういう輸送量が非常に多いということであります。一方アメリカの場合はそういうものが少のうございますので、アメリカの持っておるP3Cは軍事的な輸送のためのものに付随したものというふうにお考えいただきたいのが第一点であります。  それからもう一つ我が国の特殊性は一緒にその海域を分担する、守る仲間がいない。例えばヨーロッパ諸国もかなり海外依存度が高いんですが、これらは太平洋よりはるかに狭い大西洋を分担しておりますので、アメリカを含めまして四百数十機の対潜機で分担をしている。そういう意味で我が方は一人でやらなくちゃいかぬという点を御理解をいただきたいと思います。
  104. 青島幸男

    ○青島幸男君 今もP3Cの話が出ましたけれども、私は大変基本的に疑問に思っていることがございまして、この際ですからお尋ねを申し上げるのですけれども、まず、我が国憲法をベースに考えまして、外敵が侵入するようなことがあった場合まず水際でこれをたたいて自国の防衛を図るというのが最初のスタートでしたね、防衛の手段としては。それも水際でたたく程度のもので、必要最小限。水際でたたくのだったらどこに来るか わかっていた方が効率的に防衛がしやすいという立場から海の先まで哨戒するようになり、足の長いレーダーを持つようになり、領空侵犯などがあったときにはそれに対応するべく要撃の戦闘機も持つと。だんだんと防衛手段が水際でたたくはずだったのが先へ先へと進んでいきまして、P3C百機持って、それで常時艦船のスクリュー音の特定をしなきゃならない。しかもそれが艦船のスクリュー音を全部コンピューターに入れておいていつどんな種類の船がどこを通ったかというのが即わかるようにしなければならないというような先まで、防衛を先の先まで進めていくということに一般国民の方々は大変な疑問をお持ちだと思いますね。  せんだってもあの三沢の所属部隊と米軍との共同演習みたいなのがあったときに、米側の航空部隊の司令官かこういうことを言っておりました。領空侵犯が行われるようなことがある。迎撃で出ていくんだけれども、スクランブルをかけて出ていってドッグファイトをやる。それはそれなりの技術も必要だし、絶えず錬磨していなきゃならないのも確かだけれども、一番有効な手だては向こうの飛行機が基地を立つ前にたたくことだというようなことを平気で言っておるわけですな。  そうなりますと、この防衛の手段というのを先へ先へ広げていくと攻撃こそ最良の防衛だということに、かつての日本軍が持っていたような議論を展開するようなことになりはしないかという危惧を抱かざるを得ないわけですよ。軍備ですからこれがいいということはないわけでして、常に常に相手より優位に立たなきゃならないということを考えますと切りがないわけですね。どの辺までを中期防の最終ガイドラインに決めておられるのか、そこが限度なのか、それから先まだあるのか。国民の大多数の方々が持っておられる極めて素朴な疑問だと私は思うんですけれども、防衛庁長官にお尋ねを申し上げます。
  105. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今、先生のお尋ねになった点についてお答え申し上げますが、まず、我が国防衛の最も基本というのは未然防止ということでありまして、できるだけ領土から離れたところでたたくとかそういうことではありませんで、専守防衛防衛力を持って相手が侵略をするような気を起こさせないということが基本であります。  しからば、それじゃ防衛対象は何かといいますと、具体的に言いますとまず国土、国民という土地の上にあるものが防衛の対象になっております。それと同時に先ほどちょっと申し上げましたように、日本の場合非常に海外依存度が高い。国民が生存していくためにはどうしても海外から資源を持ってき、あるいは海外に商品を持ち出さなくちゃいけない。そのための海運、海上交通の保護をしなくちゃいけない。したがって、守るべきものは国土でありかつ船舶であるというように我我考えておるわけです。したがって、その考え方については一次防以来全く変わっていないわけでありまして、ただ、これに対する攻撃手段というものが変わりつつある。  例えば、今まで船舶の上に来て爆弾を落としておったものが、百キロ、二百キロ離れたところからミサイルを撃ってくる。防空にしましても、そのミサイルの精度というものが上がり、かつ射程が延びたものですから、通常爆弾、通常火薬であってもピンポイントを攻撃できるので、例えばレーダーサイト等について、領空に来て攻撃するということじゃなくて、五、六十キロ離れたところからレーダーサイト等が正確に攻撃できるようになった、そこを何とかしなくちゃいけないという、そういう軍事技術の進歩、そういったものに対応して、ある程度の前方防衛といいますか、そういったものを図らざるを得ないというのが実情でありまして、防御対象そのものについて我々は広げたという事実は全くございません。
  106. 青島幸男

    ○青島幸男君 ですから、軍事技術が進めば進むほどその対応策を講じていかなきゃならないということは、いつまでも、エスカレートされていっても切りがないということと同じなんですよね。これ以上この論議はしませんけれども、常にそういう国民が素朴な疑問を持っているということ、このことはいずれにしても明確にしておきたいと私は思います。  せっかく外務大臣がおいでですので、ひとつ御要望申し上げたいことがあります。  せんだっても委員会質問の機会を得ましたときに、海外援助も結構だけれども、ただ金をやってそれでいいというものではないだろう。それよりも外国が本当の意味で、技術的にも経済的にもおくれている国は、自立的な発展をしていくためにはやっぱり技術だとか教育だとかということが大変大事だと。ついては留学生などにもうちょっと温かい手を差し伸べてやったらどうだろうか。  そのことが、私どものこの日本国が近代的な国として発展してきた経過をたどりましても、明治以来外国の先進技術を導入する、技師を呼ぶ、先生を呼ぶというような格好で教育ということに力を入れてきたことが基本的には我が国の飛躍的な発展を支えたという認識はどなたも共同にお持ちになれると思うんですね。ですからこそ、教育というものを非常に力を入れなきゃならない。  今外国からいろいろ留学生我が国に来ておりますけれども、中に就学生という形で、海外の国に実に小規模な日本語学校というようなものができておりまして、そこで何人か学生さんを集める。そのときの手段として、あなた方は日本に行って働きながら日本語が学べます、日本文化も吸収できます、勉強できます、帰ってきてそれも役に立つでしょうし、勉強しながら稼いだ金を国へ送れます、というようなスタイルで生徒を募集しておるんですね。  事実上どうなるかといいますと、そういう甘言といってはなんでしょうけれども、そういう宣伝に乗ってこちらへ留学してきますね。正規の手続をちゃんと外務省にとるんでしょうけれども。しかし、実際に来てみると、タコ部屋のようなところへ何人も押し込まれまして、それで深夜労働だとか、そういうサービス業の労働などに従事させられて、日本語を習うどころではない、肉体的な消耗も非常に大きい、体を壊しても補償もないという状況の中で嫌な思いだけして国へも帰れないという、海外の大きな希望を抱いてきている若い人たちがいるわけですね。  外務省関係だけの問題ではなくて文部省、労働省あたりともいろいろお話をしなきゃならないと思うんですけれども、そういういかがわしいといいますか、その学校が正規の手続を一応は経るんでしょうけれども、非常に認可がルーズといいますか、実態をきちっととらえてない現実があるんじゃないかと思いまして、せっかく向上心に燃えてといいますか、青雲の志でこちらへ来て留学なすっても嫌な思いだけ抱いて帰るような人たちが少しでも少なくなるようにきちっと管理をする手だてを講じていただきたいというのが要望なんですけれども、いかがお考えですか。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 仰せのとおり非常に大切な問題だと心得ておりまして、この間総理の招集で関係閣僚が相集いました。そして、留学生問題に関しましては二十一世紀までに十万人体制ということもございますが、果たして今のままでできるかという問題でございますから、今おっしゃいました留学生の寮のことに関しましても、例えば通産省は企業に連絡をされまして、現在五千ほど寮があいておりますと。さらにはまた通産省といたしましても、それぞれの企業が留学生のためにひとつもっともっと積極的に貢献しましょうと、そういうような報告もなされておりますし、あるいは文部省に対して私からも博士号の問題があるよというふうな指摘もしております。  そうしたことで、やはり日本に学ばれた方々がよい印象を持って、日本を第二のふるさととして帰ってもらうように最大の努力をしようということで閣僚協議会というものが設けられました。今後あらゆる閣僚が入ってきます、十人ばかり今そのメンバーでございますが、それぞれのフィールドだけではなくてあらゆることに国務大臣としての意見の交換をしようというふうに私は主張をい たしておきました。  その中で留学生以外の就学生という問題も出たわけでございます。これに対しましては、あっせん業者にいろいろと問題があろう、そういうこともございますし、だれが一体それを今後正しく指導するのだというふうな問題もございますし、本当に青雲の志を立ててきた人が、今青島委員が指摘されるようなことでございましては、これはもうかえって十万人も敵にしてしまっては大変でございます。  やはり十万人は私たちの本当の友人をつくる、将来我々の子弟のためにもよき友人をつくるということを私たち考えていかなければなりませんので、就学生問題を含めまして鋭意政府といたしましても一体の問題としてこのことを協議して、そして十万人体制を確立したい、さらには就学生にも不便をかけないようなことを考えたい、こういうふうに考えております。
  108. 加藤武徳

    ○会長(加藤武徳君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時六分散会