運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-20 第112回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十日(水曜日)    午後一時七分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         加藤 武徳君     理 事                 坂元 親男君                 堀江 正夫君                 最上  進君                 矢田部 理君                 和田 教美君                 関  嘉彦君     委 員                 石井 一二君                 植木 光教君                 大木  浩君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 中西 一郎君                 永野 茂門君                 林 健太郎君                 真鍋 賢二君                 松浦 孝治君                 山内 一郎君                 志苫  裕君                 中西 珠子君                 田  英夫君                 青島 幸男君    政府委員        外務省中南米局        長        坂本重太郎君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        大蔵省国際金融        局次長      岩崎 文哉君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    説明員        外務省中南米局        中南米第一課長  成田 右文君        外務省経済協力        局審議官     久保田 穰君    参考人        東京銀行取締役        副頭取      宮崎 知雄君        学習院大学教授  渡部福太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (国際情勢認識に関する件)  (派遣委員の報告)     ─────────────
  2. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  外交総合安全保障に関する調査を議題とし、国際情勢認識に関する件のうち、累積債務問題について政府から説明を聴取をいたし、参考人から意見を拝聴いたします。  本日は、参考人として、東京銀行取締役頭取宮崎知雄君、学習院大学教授渡部福太郎君、以上二名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところを本調査会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  累積債務問題について忌憚のない御意見を拝聴いたし、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  本日の議事の進め方といたしましては、まず大蔵省外務省からそれぞれ二十分程度説明を聴取いたし、次に宮崎参考人渡部参考人からそれぞれ二十分程度意見を拝聴し、その後、委員の質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、まず初めに、大蔵省お願いをいたします。岩崎国際金融局次長
  3. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 大蔵省国際金融局次長岩崎でございます。  お配りをいたしました資料に基づきまして、最近の累積債務問題の現状、それから対応策というような点について御説明をさしていただきます。  「開発途上国累積債務現状」という四ページの資料をお配りしてございます。参照いただきながらお聞きいただきたいと思います。  一ページでございます。ここに四つほど表が載ってございますが、左の上の「開発途上国債務残高の推移」、この表が一番権威あると申しますか、IMF世界経済見通し、いわゆるワールド・エコノミック・アウトルックというものの中で公表しておる資料でございます。最新のものが八七年十月発表のものでございます。それによりますと、八七年末、また八八年末の見込みという債務残高一兆一千四百五億ドル、これが昨年末でございますし、ことし末の見込みが一兆一千七百七十三億ドルという数字になっております。これの内訳がその下に示してございますが、短期のもの、これは貿易関連あるいは直接に貿易と関連せずに短期借り入れているという資金、運転資金的なものでございますが、中長期資金、これが八七年で一兆十三億ドル、それから八八年で一兆二百九十七億ドル、こういう数字になっております。その中でごらんいただきますと、公的資金民間資金というのが大体半々になってございます。八八年末見込みでございますと、四千七百十二億ドル公的資金民間資金が五千五百八十五億ドルということでございます。  その下にデット・サービス・レシオというのがございます。これは通常計算が、資料の下に注というのがございますが、そこにございますように、年間元利支払い額、これを分子といたしまして、分母といたしまして通常輸出額ですが、この場合はサービスの輸出、いわゆる貿易外受け取りというものも含めた輸出額分母にしてございます。この数字をごらんいただきますと、八六年の二七・三%をピークに最近は二五・四、二三・六と若干改善方向にございます。  これはいろいろな要素がございますけれども、いわゆる世界的な金利の低下の傾向というのも一つございます。それから例えば通貨の対ドルでマルクあるいは円が強くなりました。そういうことによります為替の影響によりますことによって債務額が評価減するというようなものもございます。そういうことで、最近の方向としてはデット・サービス・レシオ、いわゆる債務支払い比率、稼得額に対する比率というのは改善方向にございます。  その中で地域別債務残高というのが2の表でございます。中長期債務の中で一番大きいものがいわゆる中南米地域というものに三千九百十四億ドルうち中長期三千五百十四億ドルとございます。中南米諸国債務の中におきましては、公的資金よりも民間資金比率が高い。いわゆる民間資金、特に商業銀行からの借り入れ債務というのが一番大きな債務の問題になっております。  次に大きい残高といたしましてはアジア地域でございまして二千六百八十八億ドル中長期で二千二百九十四億ドル、これの内訳といたしましては、大体半々ぐらいの公的資金民間資金割合 になっております。これは東南アジアだけではございませんで、西アジアその他の諸国、いわゆるパキスタン、バングラデシュ、インド等も含みますものですから、公的資金割合中南米に比べて高いという構成になっております。  アフリカが三番目でございますが、千六百十三億ドル中長期で千四百二十三億ドル。これにおきましても公的資金八百三十三、民間資金五百九十となっておりますが、これは民間資金については特定国に集中しておって、いわゆる極貧国の問題というのは公約資金債務の問題ということになっております。  その他の地域は省略をいたしますが、こういうことで、いわゆる累積債務問題というものが二つのカテゴリー、いわゆる中進途上国における民間債務の問題というのが一つございます。それから、極貧途上国における公的債務の問題というのがございます。  通常一般的に累積債務問題として取り上げておりますものは、主として中進途上国におきます民間債務の処理の問題というふうにとらえております。地域的には中南米中心であり、また一部アジアの国も含むということでございます。  主要な大口債務国を拾いましたものが右側の3の表でございます。  今申しましたように、ブラジルメキシコアルゼンチンベネズエラ大口債務国は、中南米に集中をしております。韓国、インドネシア、フィリピンというアジア諸国も入ってございます。それから東欧のユーゴスラビアも入っているというようなことで、上から九つとりましたところではこのような形になっております。そのうち、いわゆる民間債務の問題と申し上げましたが、4の表では、西側先進国銀行債権残高という別の切り口でとらえてございます。  3の表の数字と突き合わせをいたしますということになりますと、八六年末残高という数字と、こちらの一九八六年末という数字がちょうど見合う時点になってございますが、例えばブラジルで申しますと、総債務が一千百七億ドルうち民間務が七百八十三億ドルということでございますが、そのうち先進国銀行債権残高は六百九十四億ドルというようなことになっております。メキシコその他についても同様のことでございまして、債務残高のうちの民間債務、その大宗を占めるのが先進国銀行債務であるということになっております。  二ページにまいりまして、最近の債務問題の大きな流れというものを若干お話しを申し上げます。  八二年の夏でございますが、ブラジルメキシコにおきまして債務問題が顕現化いたしまして、主として民間債務の問題でございましたが、これに先進国国際機関民間銀行挙げて取り組みをいたしまして、いわゆる債務国自助努力、それから国際機関経済再建に対する支援、それから民間銀行ニューマネー及び繰り延べによる措置、そういう三つのもの、それを債権国政府としては環境整備という形で支援する、こういう形でやってまいりまして、一応ブラジルメキシコ等の問題を世界的な大きな金融不安、その他につながらずに乗り切ってまいりましたのでございます。  その次の第二段階がここに、二ページの最初にございますいわゆるベーカー提案という形でございまして、八五年十月のIMF世銀総会、ソウルで行われました際のベーカー財務長官の演説はございましたものでございます。従来のアプローチとどう適うかと申しますと、その1の(1)目的にございますが、現在のケースバイケースアプローチ、これが従来八二年以来とられてきた手続でございますけれども、それの中で「大債務国における成長の展望を改善し、希望を与える」、従来のようにIMF調整計画というのが、対外バランスを回復させるということに重点を置きまして、その国の経済成長というものはやや後ろに置いておったということでございますが、この成長重視型の債務戦略をとろうという提案ベーカー提案でございます。そのための具体的な役割といたしまして、1の(2)にございます大債務国においては成長及び国際収支調整の促進並びにインフレ抑制のための包括的なマクロ経済政策、いわゆる構造政策を積極的に採用する、この構造政策採用することを②の国際機関支援する、その中心的な役割IMF国際通貨基金が果たすということでございます。  それから、世界銀行中心といたしまして開発金融機関からの支援を約五〇%増大する、つまり年間六十億ドルのそれまでの水準でございますが、これを九十億ドルまでふやす、それを三年間続ける、つまり三、九、二百七十億ドル資金を投入するというようなことを提案しております。その間いわゆる返済というものがございますので、ネット国際機関から八五年以降三年間に大体二百億ドル程度の追加的な資金が出ていくということを見込んだわけでございます。  三番目に、民間銀行支援もそのような国際機関からの追加的な支援に合わせて同じようにやってほしいということで、大体新規貸し付けを三年間約二百億ドル増大する、国際機関の追加的な支援額同額程度支援民間銀行からも期待する、こういうような枠組みでございました。  しかし、八五年以降そのようなことでやってまいりましたんですが、いわゆる調整指向型の経済政策採用というものが、それぞれの債務国の国内的な事情というものがございましてなかなか所期のような、期待したほどの効果というものは十分上げてはいない。ただ、このようなベーカー提案、いわゆる成長指向型の債務戦略という考え方というものは世界的にも支持を得、それに基づいての行動が行われているわけであります。  昨年のIMF総会、これが3に書いてございます。ちょっと2を飛ばしまして3でございますが、ベーカー財務長官が九月の総会でいわゆるメニューアプローチというものを提案いたしました。これはさきの八五年のベーカー提案の延長といたしまして、引き続きケースバイケース成長指向型調整政策採用というアプローチは続けていくが、その中におきましていろいろな国によってそれぞれのケースバイケース政策をとっていく必要がある。例えばということでここに並べました九つの提案を出したわけであります。  中で新しいものといいますと、例えばいわゆる貸付金債権銀行からの貸付金債権証券の形に化体するという提案というものが幾つかございます。三番のニューマネー・ボンドでございますとか五番のエグジット・ボンド、あるいは六番の債務株式化という提案、七番も同様でございます、慈善団体のために使用する債務債券化ということでございます。このような一つ証券形式による新しい資金の供給、こういうことを提案しております。  これはどういう意味を持つかと申しますと、二番で具体例がございますけれども、ごく最近メキシコ債務につきましてアメリカ財務省及びメキシコ政府の共同の試みといたしまして行われたものでございますが、そこにございます、メキシコ政府は昨年十二月末、米国財務省発行のゼロクーポン債、これを自分の外貨準備から購入をいたまして、それを担保といたしましてメキシコ利付債券既存債務発行いたしますメキシコ利付債券既存債務とを入札により交換する、この意味は「入札により」というところが問題でございまして、いわゆる銀行貸付金債権をこの新しく発行いたしますメキシコ利付債券、それの元本部分につきましては裏に米国財務省発行クーポン債担保としてついておるという形でございますが、そういう新しい債券と交換する、その交換する価格について入札をする。その結果どういうことが生ずるかと申しますと、例えば民間銀行が一〇〇保有しております貸付金債権入札価格によりまして五〇なり六〇なり七〇というような値段になる。つまりその間でディスカウントが生ずる。その分につきましては民間銀行の損失が生ずる。しかし、その貸付金債権と交換されました新たなるメキシコ政府発行債券というものは元 が保証されているという意味で従来の債券よりも確実性があるということでございます。  そういうことで一応百億ドル債券発行を企図いたしまして、それの裏保証としての米国のゼロクーポン債、これは二十年間で満期百億ドルでございます。元利込みでございますから現在の時価にいたしますと二十億ドル相当ということで、メキシコ政府は二十億ドル現金の外貨準備を支払ってそれを米国から購入する。それによって自国の百億ドル銀行貸付金債権と交換するという計画でございましたが、約五百行ぐらいの、債権銀行に応募をいたしました中で百三十九行が入札に応じ、入札金額は六十七億ドルであったということでございます。そのときの価格というのはさっき一〇〇と申しましたものがディスカウント率平均三〇・二三とございますから結局六九・七七と、六九%ぐらいの減価ということで応札されたわけでございます。そこに至りますところで、メキシコは、それ以上ディスカウントが大きい応札もございましたんですけれども、そういうものはメキシコ側の方で拒否をいたしまして、結局六十七の応札のうちの五五%に相当する三十六億六千五百万ドル部分だけ債券発行し、既存債務と交換をいたしました。これによって二十五億ドルメキシコ国債発行され、これによって、二十年間でございますけれども、メキシコ政府にとっては元利ともで二十六億四千五百万ドル債務負担の軽減となるという計算なりました。これはやや金融技術的に複雑でございますけれども、結局、百億ドル応札を企図いたしましたが、結果二十五億ドル発行だと。四分の一だけ発行されたということで半分成功、半分は余り成功でなかったというような評価になっております。  時間がやや超過いたしましたんで、はしょって三ページ、四ページ簡単に御説明いたします。  日本政府といたしましては例の三百億ドル資金還流措置、これは債務国を直接の対象としてはおりませんけれども、その一部の資金債務国に向けられるということでございます。アンタイドであり、追加的であり、国際機関を通ずる形で調整計画の実施に協力するという形でやっております。中南米地域には四十億ドル程度を枠としているということをうたっております。  それから最後の四ページでございますが、これが四月十四、十五日に開かれました暫定委員会開発委員会におきますコミュニケが発表された中で累積債務問題関連部分を抜き書きしたものでございますが、うちアンダーラインを引いてございますところがポイントでございます。従来と同じような方策を引き続きやっていくということでございます。いわゆるケースバイケース、それからIMF中心とする債務者自助努力支援する、経済調整支援するということでございます。それから、債務戦略中心的な役割IMFが果たしていくということでございます。また、これとは別に、いわゆる宮澤大臣債務戦略について宮澤提案というのをいたしました。今後この宮澤提案に沿って議論を進めていって、国際的なコンセンサスを得られれば、この債務救済のための新しい仕組みをみんなで一緒にやろうではないかという提案をいたしたわけでございます。  簡単でございますが、御説明を終わります。
  4. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  次に、外務省お願いをいたします。まず、内田経済局次長
  5. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 外務省経済局次長内田でございます。  ただいま大蔵省の方から現状対応の概要について御説明ありましたものですから、さらに関係局からもこの債務問題を考えます上で重要なポイントを御説明いたしますので、経済局からは債務問題の認識と申しますか位置づけ、外務省としてどう考えているのかという点について、かいつまんで御説明いたします。  もとより外務省といたしましても、この途上国債務問題、途上国のみならず世界経済全体の安定的な発展にとって深刻な問題であると考えている次第でございます。債務問題、ただいま御説明ありましたとおり累積債務で一兆ドルを超えているというこの数字のみならず、いわゆるデット・サービス・レシオも二〇%を優に超えるというそういう深刻な状況にございます。仮にここでまた大きな返済不能といったような状況なりますれば、国際金融システム全体の危機にもつながりかねないと考えます。日本といたしましては、いろいろ国際経済秩序全体から大きな利益を享受しているわけでございますから、そういう事態になるということ自体、我が国の発展と繁栄にとって大きな意味合い、影響を持つものと考えている次第でございます。  また、この債務問題の過程で途上国に対します資金フローが現時点でマイナスになっている、こういう事態につきましても途上国の安定的な発展というためにそういう資金フローは不可欠でございますので、その道が閉ざされるということはこれらの国の政治的な安定、発展というものに大きな影響を与える。これも世界の中にある日本世界の安定と平和に頼って生きている日本にとりまして大変大きな意味を持つものと思っている次第でございます。  基本的には、この債務問題につきましては債務国側輸出の拡大あるいはその基礎になります成長の実現ということを通じまして債務返済能力を向上させていくということ、これが基本的に重要であると考えておりまして、途上国自身がその経済政策、特に調整政策等々で努力をしてもらう必要があることはもとよりでございますけれども、先進国の側におきましても高い成長率を維持しますとか、あるいは貿易環境改善するとか、資金フローを拡大するとか、そういった意味での国際経済環境を整えていくということが極めて大事であると考えておりまして、その意味先進国側の責任も大きいと考えている次第でございます。  日本対応につきましては、ただいまちょっと御説明ありましたとおり、例の二百億ドル以上あるいは三百億ドル以上の資金還流措置でありますとかODAの拡大等種々努力しておりまして、今後ともこの努力を一曽強化していく必要があると考えている次第でございます。  私ども経済局で頭の整理のために簡単な「債務問題を中心とした途上国経済問題の図式化(試案)」というものを、全くのこれノンペーパーではございますけれども、お手元にお配りしてございます。何らか御参考になればと思った次第でございます。ただ、この図式化した表は何といいましても余りにも一般化し過ぎておりまして、御案内のとおり、債務問題といいますのは各地域各国それぞれ事情が異なっておりますので、その事情各国、各地域別事情に応じましたきめ細かい対応が必要であるというように考えておりますことはもとよりでございます。そういう点につきまして関係局の方から別途説明をしたいと考えている次第でございます。ありがとうございました。
  6. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは、次に坂本中南米局長
  7. 坂本重太郎

    政府委員坂本重太郎君) 中南米局長としては非常に残念なんでございますけれども、この累積債務問題に関して中南米が群を抜いて非常にウエートを占めております。そこで、私の方からこの中南米累積債務問題の現状と、なぜ中南米にこういう問題が集中的に発生したのか、その発生した要因、それから中南米諸国、その他国際機関日本債権国中南米累積債務問題に関してはどういう対応をしておるかという点。それから最後に、釈迦は説法かもしれませんが、解決の必要性というものを御説明させていただきたいと思います。  お手元に「中南米累積債務問題」という二ページの資料でございますが、差し上げてございます。現状では中南米累積債務額年間約百億ドルずつふえております。つまり八四年の末には三千七百六十九億ドルが八五年には三千八百六十四億ドル、八六年には三千九百九十四億ドル、そして昨年末は四千九十八億ドルというぐあいになっ ておるんではなかろうかと推定されております。  開発途上国累積債務残高の約四割を中南米諸国が占めておりまして、その額は中南米全体のGNPの約六割という実情になっております。債務残高がその国のGNPを上回っておる国が中南米では実に七カ国あるという実情でございます。中南米全体の累積債務額中南米全体の輸出額の四年分、つまり一切輸入しないで稼いだ外貨を全部払っても四年間かかるという実情になっておりまして、これをすぐ返済すべきであるということは事実上不可能であるということがおわかりかと思います。  中南米累積債務特徴といたしまして二、三ございますけれども、一つは、中南米全体の四分の三が実にブラジルメキシコアルゼンチンベネズエラのこの四カ国に集中しておるという点が第一の特徴でございます。  それから、先ほど大蔵省からも御説明がありましたけれども、中南米の場合には民間銀行からの借り入れが主体になっておりまして、実に約七八%が民間銀行から借り入れられております。しかも、大部分変動金利でございまして、アメリカドル金利の動向による影響が非常に大きいと言われております。これは試算でございますけれども、アメリカドル金利が一%上昇いたしますと中南米全体の利払いが約三十億ドル増大する、こう言われております。  二ページ目でございますが、それじゃなぜ中南米にこういう累積債務が集中的に発生したのかと申しますと、私は三つ要因があるんではなかろうかと思っております。  第一には直接的な要因でございますけれども、国際経済環境が非常に変化した。  七〇年代には、御案内のとおりオイルマネーが発生いたしまして中南米に大量の貸し出しがなされました。ところが、八〇年代に入りますと貸し出しが急減いたしまして、中南米諸国資金はショートする状況なりました。ちなみに数字で申し上げますと、中南米諸国に対する資金の純流入、その額が七九年には百五十五億ドル、八〇年には百十五億ドル、八一年には百四億ドルだったんですが、八二年からは中南米諸国から資金が流出し始めまして、八二年には実に百八十四億ドル、八三年には三百十四億ドル、八六年には二百十八億ドル資金が流出しております。七九、八〇、八一年には毎年百億ドル以上入っておりましたけれども、八二年以降は実に二百億、三百億ドルというお金が流出しております。  それから、直接的な要因の第二の理由といたしましては、金利の上昇、これが非常に中南米諸国に対して負担増になっております。アメリカの公定歩合が七五年末には六%だったんですが、それが八〇年末には一三%までふえております。  したがって、その高金利政策によってその分だけ中南米諸国の利払い負担が急増したということが言えると思います。  それから、直接要因の第三の理由は、世界的な不況、一次産品価格の低下というところかと思います。石油以外の中南米輸出産品価格は八〇年をピークにいたしまして低下しておりまして、八二年以降大体三〇%から四〇%低下しております。これは直接中南米諸国外貨事情悪化につながっております。  第二の発生要因は、構造的な要因かと思います。  例えば、中南米諸国のうちで積極的に開発政策を七〇年代から進めた国がございます。その典型的な国はブラジルでございます。このブラジルは大型開発プロジェクトをどんどん開始いたしまして、それがゆえに債務が重なったということが言えると思います。それから、石油収入を当てにしましてやはり開発投資をした国としましてメキシコベネズエラが挙げられております。石油の価格上昇を当て込んでどんどんいろんな開発をやったわけでございます。それから、どちらかというと、とにかく輸入はどんどん自由にさせたらいいじゃないかということで輸入増、輸出不振につながった国がアルゼンチン、チリである、こう言われております。  さらに構造的な要因としては、御案内のとおり中南米諸国は非常に一次産品に依存する輸出構造をとっておりますし、それからまた輸入代替型工業が主でございまして、その結果、輸出能力、外貨獲得は限界が出てきておった、こういう構造的な要因が考えられます。  それから、第三の理由は政治・社会的要因でございまして、中南米諸国は七〇年代、八〇年代にかけまして政治的に不安定な状況が続きまして、したがって政策の一貫性を欠いた。その結果資本が逃避、それからまた外国からの投資が伸びないという実情に直面いたしました。  それから、これはちょっと言いづらいことですけれども、やはり社会的要因として中南米諸国の方たちの、ラテンアメリカ人の楽観的な気風と申しますか、気質と申しますか、余りあしたのことは考えずにきょうの生活がよければいいじゃないかという感じでどんどん借りまくったというところもあろうかと思います。  そこで、関係者の対応でございますけれども、こういう累積債務が発生した結果、中南米諸国では、まず第一に、我々がひとつ一緒になって、債権国と交渉しようじゃないかという動きが当然起きてまいりました。  八四年の六月にカルタヘナ・グループが結成されましてみんなで共同歩調をとろうということになりました。債権国側は、これは不払い同盟結成かと一時非常に懸念したのでございますけれども、その後このカルタヘナ・グループは非常に穏健かつ現実的な路線を歩んでおりまして、当初心配された不払い同盟の結成ではないと私ども判断しております。  さらに昨年の十一月にはリオ・グループ、これは中南米のG8と呼んでおりますけれども、その首脳がアカプルコに集まりまして、例えば金利の上限を設定するとか、新たなより有利な条件での融資の必要性を強調するとか、そういう動きが出てきております。  中南米諸国の主な主張でございますけれども、四点ほどございますが、第一は、この問題は債権国債務国の共同責任だ、借りた方も悪いが貸し込んだ方も悪いじゃないか、こういう主張をしております。  それから第二の点は、先進国債権国がもう少し我々の立場を理解してもらいたいということで、先進債権国に対する要求といたしまして、例えば一次産品価格の回復、高金利を是正する、さらには先進国サイドにおける輸入制限の撤廃等を要求しております。  それから第三番目は、ペルーにおいて顕著でございますけれども、債務に関しては我々は輸出した輸出額の一〇%しか払えませんとこういうことで、それ以外は一切支払いには応じないということを言う国もございます。  それから、その他新規融資の必要性、長期リスケ、それからまた銀行マージンの削減とか利子率の引き下げ、貿易拡大等々、中南米諸国は要望しております。  他方、債権国の方は、先ほど大蔵省の方からも御説明がありましたのでごく簡単に御説明いたしますけれども、まずやっぱり自助努力が必要だと、それから国際機関債権国政府民間銀行共同で支援しようじゃないかとか、IMF中心役割を果たすとか、それからまたケースバイケースでやっていくとか、具体的にはリスケ、民間債務金利分は新規融資と、こういうような対策を講じてきております。  国際機関も、御案内のとおりIMF中心なりまして経済運営に注文をつけてやっておりますが、若干中南米の場合にはこのIMFの介入を内政干渉と見まして反発する国がございます。ごく最近までブラジルがそうでございました。しかし、やはりIMFの協力なしにはこの問題は解決できないという認識も最近は広まっておりまして、メキシコアルゼンチン、ごく最近はブラジルに至るまでIMFとの話し合いを開始しております。  最後に、この問題の解決の必要性でございますけれども、もしこのままこの問題を放置いたしますとますます中南米累積債務問題は深刻化する、その結果世界経済にも悪影響がございますし、日本に対しても非常に影響が大きいと私どもは判断しております。これは数字は必ずしもはっきりいたしませんが、中南米に貸し込んでおる日本民間銀行のシェアは全体の一五%と言われておりますけれども、これだけでもやはり直接な悪影響があるのではなかろうかと思っております。それからまた、この債務問題が中南米諸国の政治的安定それから民主化の進展を阻害しておるということに関しても我々は懸念を抱いております。  他方、もし上手にこの中南米累積債務問題を解決いたしますと、これは中南米経済が再活性化されまして、恐らく二十一世紀には中南米諸国を真のパートナーとして世界経済はさらに大きく拡大するのではなかろうかという期待を抱かせる面もございます。したがって、我が国としてはこの中南米累積債務問題により積極的に取り組む必要があるのではなかろうかと思っております。  以上でございます。
  8. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  次に、経済協力局久保田審議官。
  9. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 私の方からは、累積債務問題につきまして、政府開発援助、ODAの側面から御説明申し上げたいと思います。累積債務問題について、ODAのかかわりぐあいということにつきまして二つの点をまず申し述べたいと思います。  一つは、この問題につきましてODAそのものが解決手段として重要である。特に~ 先ほど大蔵省岩崎次長からの御説明にもありましたように、途上国におきましての公的な債務というもの、これが特に最貧国――アフリカ、中近東、この辺の、先ほどの表の2の分類のところでございますが、ごらんいただくとわかりますように、公的な資金による債務というものの重圧が多い国につきましては直接的にODAを拡充するということ自体がこの累積債務問題の解決に役立つわけでございます。  そのような問題と、もう一つはODAが累積債務という問題全体に対する取り組み方として重視しなければならない役割を果たしておるということがございます。これは累積債務問題について何をするかということを考えます場合に、ファイナンスという側面から既存債務負担というものを、例えば極端な場合帳消しにしてやるとか、または非常に重い条件、金利等々重い条件になっているものを少しでも軽減してやる、債務繰り延べをしてやる、またはリファイナンシング、借りかえをしてあげるというような手段で救済していく部分一つあるわけですが、それともう一つ、今後に向かって新しいニューマネーを提供していくという、こういう部分が直接にファイナンシングとして果たしていく役割ではなかろうかと思いす。  これと並びまして第三番目に、世銀・IMFベーカー提案でも強調されておりますように、それと同時に重要なことはグロース・オリエンテッドなアプローチ、先ほどから御説明ありますように、成長指向対応策、一言で申し上げますとこのようは金銭的な面について、中南米に見られますような非常な重圧というものを軽減していくと同時に、成長側面、実体的な経済成長というものに対して強力に支えをしてやる。これがございませんと、やはりある程度帳じり合わせをやってもまた実体経済そのものがもとのもくあみになってしまったのでは根本的な解決にはならないということで、世銀、IMFその他主要な援助国も、各受け取り途上国に対しまして積極的にマクロの経済改善政策、財政収支、国際収支改善政策、国内の税制、それから輸出政策、関税の問題等々非常なアドバイスを行っておるわけでございます。  その他、地味ではありますが、昔から言われておりますように中間技術者であるとか技能者、こういった人の育成、これは技術協力の分野でございますがそういう部分、国づくり、人づくりということで、国の実体経済というものを経済援助によってあるいは技術協力によって強化してやる。いわば、こういったような側面をODAが果たし担当していくということがございます。したがいまして、累積債務全体の取り組みを見ます場合佐、金銭的な側面と、ただいま申し上げましたようなODAの技術援助なり資金援助なりによって果たす役割というものが基本的にかかわり合いを持ってくるということが言えると思います。  そこで、まず最初の問題に立ち返りまして、第一番目の柱の、ODAの流れそのものがそれではどのようにかかわり合っているかということでございます。お手元にペーパーをお配りした次第でございますけれども、ここに書いてございますことは、現在直接的にODAで債務救済のために果たしている部分を要約したものでございます。  二ページ目に、まず、一般無償援助のうち債務救済としての無償援助というのが詳しく書かれております。日本政府の場合に、まず無償資金援助を活用しまして、一九七八年にUNCTADの貿易開発理事会、TDBの決議に沿いまして、借款の返済にあえいでいる国に対して、LLDC、最貧国でございますが、LLDCに対しては元金、利子くるめまして免除してやろう、直接帳消しにはできないものですから、相当額を差し引きの形で無償資金によって供与するということをいたしております。  それから、その二ページ目にこの対象国が挙がっておるわけですが、LLDC十一カ国。MSACというのがインド以下ございますが、これは石油危機当時にモースト・シリアスリー・アフェクテッド・カントリーズといいましてLLDCではないけれども非常にヒットされた国、これに対しましては、借款の利息を一九七八年時点ではかりまして、貸し付けた当時の利息が高いのが通常なんですが、その部分金利の差額分を無償によって救済してやろうというものでございます。  その次のページにおきましては、この今申し上げた債務救済以外に、アフリカ諸国中心としましてノンプロジェクト無償資金協力というものを現在実施しております。これは中曽根前総理がベネチア・サミットで発表した計画でございまして、二百億ドルないし三百億ドル資金還流計画と並行しまして、アフリカを、サブサハラのアフリカ貧困国を中心に、ビルマも含めまして、公的債務負担に苦しむ国、日本外交にとって重要である国、それから先ほども触れましたように、世銀、IMF等のいろいろな経済構造改革の助言に対して努力をしておる国、そういったような基準を設けまして無償のノンプロジエクト型の資金を供与しようというものでございます。  それからこの最後のページでございますが、二百億ドル資金還流計画の中で特にOECFの譲許的な円借款というものを使いまして、ダムであるとか道路であるとかそういったものを直接プロジェクト援助として供与するのではなくて、財政難なり国際収支難なりというものにあえいでいる国に対しまして、そういう財政支援ということを主眼点に置いた商品援助の性格を持つ円借款の供与を単独または世銀等と協調しまして供与している例でございます。  以上のお手元は配りましたこれらの種類の援助は、直接に債務救済そのものに非常に関係の深い援助でございます。  これと加えまして、先ほど二番目の柱として申し上げた、目立たないことではありますが、非常に重要な地道な協力といいますか、技術協力を含めまして経済基盤を強化してやるという援助、これをふやしていくということが重要なわけでございます。その意味でお手元に配りました資料の第一ページをごらんいただきますと、世界全体で十八カ国の援助供与国がございますが、これが一九八六年の時点、これは暦の年度で一年間世界がどのくらいの援助を実際に途上国に流したかというネットディスバースメント、純粋の支払いベースでDACが統計をとっているわけでございますけれども、これによりますと総額が約三百七十億ド ルという中で、アメリカが一番多いわけですが九十八億ドル、我が国が五十六億ドル、これは前年の八五年我が国三十八億ドルに比べまして飛躍的な増加を遂げておりますけれども、これはドルベースでございますので、円高等々の点もございますが、いずれにしましても日本は非常に世界全体における援助のシェアがふえておるという姿でございます。  しかしながら、相対的な形で見ますとまだまだふえ方が足りないということで、今後ともただいま申し上げたような観点から債務累積問題に対する解決の手段としてもODAの拡充ということが必要であると思う次第でございます。  以上でございます。
  10. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  次に、宮崎参考人お願いをいたします。
  11. 宮崎知雄

    参考人宮崎知雄君) ただいま御紹介いただきました東京銀行宮崎でございます。私は、本調査会において公述の機会を得ましたことを大変光栄に思っております。  累積債務問題の全般的な概要につきましては、先ほど大蔵省外務省方々からお話がございましたので、私は民間銀行の立場から次の三つの点に焦点を絞って私見の一端を申し述べたいと思います。  第一は、民間銀行として本問題発生の背景をどのようにとらえているか。第二は、民間銀行は本問題にどのように取り組んできたか。第三は、民間銀行として主要国政府、議会並びに国際金融機関に対して今何を望むかという三点でございます。  まず第一の、本問題発生の背景でございますが、我が国ではこの問題を累積債務問題と呼んでいるわけでございますが、欧米ではこれをデット・アンド・デベロップメント問題、略してDD問題と呼ばれることが多いようであります。日本語に置きかえますと、これは開発途上国債務と開発問題ということになろうかと思われます。  我が国のように累積債務問題と呼びますと、この問題は途上国の借金累積問題と単純に受け取られがちでございますが、この問題の本質は、欧米の認識どおり途上国の開発問題、すなわち南北問題でありまして、累積債務問題はそれに派生した問題と広い視野からとらえることが妥当ではないかと思います。  ところで、累積債務発生の直接的契機は、やはり二度にわたる石油ショックであったように思います。石油価格の急騰に伴い、OPEC等の産油国の国際収支は巨額の黒字を示すようになりましたが、その反面、非産油国の国際収支は巨額の赤字に陥ったわけであります。多くの途上国経済開発のさなかにこのような石油ショックに見舞われましたから、たちまち外貨資金繰りに支障を来したわけです。  このような異常事態に直面して、IMFなど国際金融機関も産油国と非産油国との間の資金還流に努めましたが、オイルマネーと言われる資金量は非常に巨額に過ぎまして、これら国際金融機関だけでは十分な資金還流を行い得なかったのが実情でございます。このため、多くの非産油途上国の求めに応じて米銀を中心とする主要国の民間銀行がオイルマネーの還流に努めるようになったわけであります。民間銀行によるオイルマネーの還流を通じて世界経済資金の偏在に伴う不況を逃れ得たわけでありますが、他方、非産油途上国の対外債務は増大し始めたのであります。  また、石油ショックは全世界を高インフレに巻き込みました。このために一九七九年以降、主要国、特にアメリカは強力な金融引き締め政策を実施しましたので、一九八〇年代初めにはいわゆる世界的な同時不況が到来したわけであります。多くの途上国では一次産品の輸出が減退すると同時に、米ドル金利の高騰によって対外債務にかかわる利払いが激増いたしました。このような状況のもとで、一九八二年夏にはメキシコ債務支払い危機が発生し、次いでブラジルアルゼンチンなど多くの途上国債務支払い危機に陥り、いわゆる累積債務問題が発生したわけであります。  次に、民間銀行対応という点について申し上げますと、一九八二年夏にメキシコ債務危機が発生して以来、今日まで民間銀行対応は、主としてアメリカ政府主導のもとに行われてきたと言って過言ではないと思います。  メキシコ債務危機が発生するや、アメリカ政府は機敏に日欧主要国政府IMF、BISなどに働きかけまして緊急のつなぎ融資を取り決めましたし、また他方、IMFメキシコ政府経済調整政策の実施を求めたわけです。日本銀行も、アメリカ政府の要請もありまして他国の民間銀行と同様に債務の繰り延べに応じましたし、また必要資金を追加的に融資して国際的な金融危機の回避のために協力を惜しまなかったわけであります。  メキシコのこの危機対策が前例となりまして、その後ブラジルアルゼンチンなどの債務危機の発生に際しましても、一つにはアメリカ中心とする主要国政府、二番目にはIMF、世銀等の国際金融機関、それから三番目にはもちろん債務国、それに四番目に民間銀行、この四者が協力して事態を乗り切る体制がつくり上げられてきたわけであります。  当時、これらの債務危機は、外貨不足ないし流動性の危機というふうに認識されておりましたので、債務国経済調整に重点を置きながらIMFなど国際金融機関が緊急の融資を行い、また民間銀行は満期の到来する元本を繰り延べ、さらには利ざやを、金利の利子の幅ですが、利ざやを一部圧縮するなどの対応がなされたわけです。  しかしながら、債務国経済調整あるいは引き締めという対応は、国内的に不人気な政策でありまして、国内の政治問題や社会問題のために経済調整がなかなか思うように進展しないという国も出てまいりました。多くの中南米諸国の場合がこれに当たるわけです。  そこで、一九八五年ごろから経済調整、引き締めの一辺倒ではなくて、成長資金の供給もまた必要であるという考え方が浮上してまいりました。これがベーカー構想と言われるものであります。  アメリカベーカー財務長官は、先ほど大蔵省からもお話がありましたが、一九八五年のIMF総会でこの提案をしたわけでございまして、多年度一括繰り延べを行うとともに、三年間に新規融資を二百億ドル行う、あるいは世銀は九十億ドルの構造調整融資を行うということを提案したわけです。  これに呼応しまして、主要国の民間銀行は十六行から成るこのための委員会を組成しまして協力体制を整えることになりました。そして累積債務問題は途上国成長を志向する路線へと修正が図られたわけでございます。  この路線では、途上国経済構造調整が必要であると認識された点におきまして大きな進展が見られたわけでありますが、その具体策としましては、元本については多年度の一括繰り延べ、利払い分については民間銀行の追加融資という形でありましたから、結果的に見ると債務国債務残高は累積してしまったわけであります。このために債務国民間銀行ともこの路線の永続性に疑問を持つものも出てまいりました。俗に言えばうんざりした感じを持つものも出てきたわけです。これは債務国についていえば調整疲れということでありましょうし、民間銀行については支援疲れと言えると思います。  それで、こうした状況を反映してか、昨年は債務国民間銀行との間で一時緊張の状態が高まりました。昨年二月にはブラジル民間銀行に対する中長期債務にかかわる利払いを一方的に停止したのを初めとしまして、エクアドル、ペルーなどの他の累積債務国も相次いで一方的に利払いを停止したわけであります。  他方、このような債務国の強硬姿勢に対応して民間銀行側にも新たな動きが見られました。これは、昨年の五月に大手の米銀であるシティコープは第二・四半期の決算におきまして、赤字を覚悟で累積債務国向けの債権を対象として貸倒引当金の大幅な積み増しを行いました。他の大手銀行、 大手の米銀、それからその後カナダ、イギリスなどの銀行もこれに追随いたしました。これは民間銀行が経営の健全性の維持と万一の非常事態にも備えつつ、債務国との交渉において場合によっては強い立場で臨もうとするものでありましたから緊張感が高まったわけです。  こうした状況のもとで、昨年九月にIMF総会が開かれまして、その総会においてベーカー財務長官が再び新しい対応策の推進を提唱したわけです。これは一九八五年の提案を一層進展させたものでありまして、債務国並びに民間銀行採用可能な選択肢として債務株式化を初めとする九つの新たな対応策を示して債務問題解決策の多様化を促したわけであります。この具体的な内容につきましては先ほど大蔵省岩崎次長から詳しく御説明があったとおりでございます。  ところで、昨年二月に利払いの一方的停止措置をとりIMFの指導を拒否し続けてきたブラジルでございますが、これが昨年の九月に、それまでの強硬姿勢を転換いたしまして民間銀行との交渉に応ずるようになりました。その結果、十一月初めには銀行団との間で暫定合意が成立しまして、昨年末から利払いが一部再開されるというようになってまいりました。昨年中、国際金融問題の焦点の一つとなっておりましたこのブラジルの問題は、銀行団との話し合いを通じて一応落ちつきを取り戻しつつあるように思われます。  昨年初めにはかなり緊張した場面も見られましたこの累積債務問題でありますが、最近では国際協調体制のもと、ようやく小康状態を得るに至ったと言えるのではないかと思います。しかし利払いを続けている国の債務残高はまだまだ増加傾向にあります。それから、銀行団との交渉も事実上棚上げの状態で大幅に元利払いの遅延を起こしている国も多いことでありまして、こういう状況から見ますと、この問題を真の解決に導くにはまだまだ長い歳月と道のりが必要であるように思われます。  最後に、民間銀行の要望ということでございますが、そこで本問題の解決のためには今後何がなされなければならないのかという点につきまして、要望という形で私の考え方を申し述べたいと存じます。  まず、主要国政府並びに議会に対する要望でありますが、これは二つございます。  その第一は、世界経済、特に主要国の経済につきまして、インフレのない持続的な成長をぜひとも実現すべく、今後とも格段の政策的配慮を賜りたいということでございます。  前述のとおり、この問題の本質は南北問題でありまして、この問題の解決のためには主要国が成長を持続しつつ市場開放を行って、途上国輸出が伸びやすい環境づくりを行うということが最も肝要でございます。さらに、インフレの発生しないということも極めて重要であります。主要国にインフレが発生いたしますと金利水準が高騰しますので、債務国の利払いは直ちに増加し、債務負担がそれだけ大きくなるからであります。幸い、近年、サミット参加の主要七カ国でインフレなき持続的成長を目指して政策協調が実施されつつありますが、今後さらに緊密な政策協調を願うものでございます。  第二の要望は、IMF、世銀等の国際金融機関の資金量の増大と機能の拡充ということでございます。主要国政府はこれら国際金融機関のいわば大株主でありますから、その権限を行使してその実現を図っていただきたいと思うわけであります。  IMFや世銀など国際金融機関の資金量の増大というのは、必ずしも加盟国一律の増資を図ろうというものではありません。むしろ現在の経済力に応じて、対外的に余力のある国、例えば我が国が特別増資に応じて出資比率を高め、これらの国際金融機関における我が国の発言力の強化を通じて国際金融機関の機能を充実させるということが必要だろうと思われます。  累積債務問題の解決は当たりまして最も重要なことは、言うまでもなく債務国自助努力でありますが、その自助努力を促進できるのは、これはIMFとか世銀などの国際金融機関しかないと思います。IMFは、加盟の債務国経済につきサーベイランスを行うこともできますし、またその国の経済運営についていろいろ注文をつけることができるわけであります。  しかしながら、前述のとおり、一時的にせよ、加盟の債務国IMFの指導に従わない事態も現実には発生しているわけです。これは、IMFや世銀自体の融資額が少ない、あるいはこれらの国際金融機関の触媒としての機能が十分でない、民間資金の還流の呼び水効果が少ない等のためもありますが、IMFの指導が無視されてしまうのは困るわけです。この意味で、IMFや世銀の資金量増加と融資を保証するというような、そういう機能の拡充が強く求められるわけでございます。新聞報道によりますと、先週、ワシントンにおける一連の国際金融会議におきまして、宮澤大蔵大臣はIMFにおける我が国の出資比率の引き上げを提案されたところでありますが、これはまさしく適切な御提案であると存じます。  最後に、日本政府並びに議会の皆様方に対する要望を申し述べたいと存じます。今後の税制改革の御審議を通じまして、次の点について格別の御配慮を賜りたく思うわけでございます。  それは、民間銀行債務国向け融資に関しまして、無税の貸倒引当率を早急に欧米主要国並みの水準にまで引き上げることを認めていただきたいということでございます。無税の引当率は、現状では我が国は一%でありますが、欧州やカナダではこれが三〇から六〇%まで無税による積み立てが認められているのであります。  前述のとおり、累積債務問題解決策の多様化が図られ始めたのは事実でありますが、債務株式化あるいは債務債券化等は、債務残高と比較いたしますと残念ながら金額的にはまだまだ小さいのが現状でありまして、この累積債務の問題は今後とも主要国の民間銀行の融資に依存するところが大きいわけであります。邦銀が他の主要国の民間銀行と協力を続けていくためにも、無税の貸倒引当率を他の主要国並みに引き上げていただくことをお願いいたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。
  12. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  では次に、渡部参考人お願いいたします。
  13. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) 参考人としてここで意見を述べることに相なったわけですが、ただいまもう既に累積債務問題に関して多くのことがほとんど網羅的にお話しされておりますし、私がつけ加えるべき点もほとんどないのではないかと思われる状況であります。大学の研究室にいれば、こういう問題をどんな目で見るかという、皆さんのこれまでのお話の中に含まれていなかったと私が感じたようなことだけを少し申し上げてみたいと思うのであります。  結局、この債務が起きるというのは、収入以上に支出したから債務が起きるという、ごく当たり前のことでありますが、その収入を上回った支出をこれまで長く続けてきたというのが現在の債務累積国の実情であろうと思うんであります。具体的には、それが経常収支の赤字という形で出ているわけであります。その意味からいいますと、アメリカも実は債務累積国でありますが、アメリカの立場自体がキーカレンシー国ということもあって、この累積債務問題からは全く除外された立場に立っているわけであります。  結局、経済がどんどん発展して、その国の産業が確立され、十分な輸出力がついてくれば、おのずから経常収支の赤字というのは縮小し、やがて黒字になっていく、そうすれば初めて債務返済も可能になると、こういうことでありますが、したがって債務問題の解決というのは、そういう輸出力を持つ産業が確立されて、経常収支が赤字から黒字に転ずることができるのかどうかという問題であります。  もちろんその裏側には、経常収支がそれらの国で黒字になれば、つまり現在の債務累積国がすべて経常収支を黒字にしたら、当然どこかほかの国 が赤字でなきゃいけませんので、多分今の債権国は赤字にならないと帳じりが合わない結果になってしまう。私は、そういう点から見てこの債務問題というのは、単に開発途上国だけの立場で解決できない問題だと。つまりそれは、資金援助とかそういった問題ではなくて、債務累積国が経常収支を黒字にするときには、現在の経常収支の黒字国は赤字にならないと、実はこの問題はグローバルには解決しないことになってしまうということであります。  そこで、いつまでも経常収支の赤字が続いている限りは、その赤字を借り入れで賄わざるを得ないわけでありますので、借り入れが膨れ上がれば利子負担も高まってくる、しまいに利子の支払いもできなくなってしまう。そういう状態に今なってしまっていると言っていいのかと思うんですが、こうした状態、先延ばしをやっていって、果たしてそれらの国が本当に産業の輸出力を高めることができるようになるのだろうか、これは一つの問題点であろうかと思っております。  いずれの国も、その国の経済発展させ、国民に豊かな生活を味わってもらうには成長政策をとらざるを得ない。日本もかつてそれを過去百何十年にわたってやってきたわけでありますが、今の開発途上国もまたその道を歩んでいるわけであります。したがって、いずれは必ず、今のそのやりくりを助けていけば、そういう日本がかつて歩んだようなことになるのだろうかという問題なんでありますが、どこが違っているのだろうか。  日本も確かに発展政策をとってまいりましたが、現在開発途上国がとっている発展政策、特にもう中進国でありますが、それらの国が野心的にそういう政策を追求すればするほど、実は債務が累積するという形になってきたと思うんであります。もちろん、何か輸出するものがあって、それがそういう穴埋めを将来ともにやっていけるというのであればいいんですが、そういう輸出を増大させるとしても、先ほどからお話しのように一次産品の価格は停滞している状態ですし、製造工業品の輸出も行われてはおりますけれども、これも先進国の景気が悪ければ到底ふえるわけにもいかない。先進国自体も、そういった国々からの輸出がこれから先急増してくれば、つまりそれらの国から先進国の市場にそういう製造工業品があふれてくれば、果たして何らかの保護的な措置をとらずにやっていけるのかどうかも怪しい状態であります。  そういうふうに考えますと、現在のそういう経済発展させ、国民生活を豊かにするには、成長政策をとり資本蓄積を図るべきだ。そのためにはたくさんの資本財や工業製品の輸入をしなければならない。その結果、赤字になってしまう。もしそれを何とか避けるとすれば、ともかくその発展政策成長政策を余り野心的にやらないということ以外、今とりあえずやることはないのではないか。もちろん、先進工業国がこれまで、いろいろお話がありましたように、技術的な側面、金融的な側面でいろんな援助、政策はとれるでしょうが、やはり問題は、結局開発途上国で問題になっている国々が処理しなければならない問題でありますので、発展政策をどんどん進めてはいきたい、しかし金がないからそれは貸してくれという状態をいつまで続けられるのかと。  私はこの問題については、やはり自国の経済力とのバランスのとれた発展政策をそれぞれの国が追求していく以外に解決の方法は見つからないのではないか。せめて、今ある債務がふえないという程度に持っていければ上々である。先ほど、一年ごとに百億ドルずつふえていくというケースブラジルについて言われましたけれども、せめてあれがストップするだけでも随分状況は変わるであろうという気がするわけであります。  発展政策が少し野心的であり過ぎるということの証拠は、それらの国々の多くがかなり激しいインフレーションに見舞われているということから容易に言えると思うんであります。  一九八〇年代に入りましてからの、八五年までのインフレーションの状況を見てみますと、ブラジルが一四七・七%、アルゼンチン三四二・八%、チリ一九・三%、コロンビア二二・五%、メキシコ六二・二%、ウルグアイ四四・六%、こういった状況であります。ユーゴも債務累積で困っている国でありますが、この国もインフレーションは四五・六%。  ちなみに先進工業国のインフレーションの程度を見ますと、最近の状況は二・三%程度であります。最近、アジアNICSが非常な注目を浴びているわけでありますが、これらの中に確かに一部債務累積国がございます。しかし、これらのアジアNICS及びASEANの主要国は、お金も借りていますが、しかし同時に輸出能力を持つ産業を確立しております。どんどん確立しつつあります。そのやり方がいかに、問題になっている国々と違うかというのは、もうインフレーションの程度を見ればすぐわかるわけであります。これまでの一年間のインフレーションを見ましても、例えばインドネシア、問題になると言っていますがインドネシアはわずか九%、フィリピン、問題になっていますが八・三%、優等生と言われる韓国六・七%、香港七%、タイ三・二%、そして一番強力に進んでいると見られる台湾〇・七%というぐあいであります。  私は、このインフレーションの程度を見ただけで、いずれの国が余りにも野心的な発展政策をとり過ぎていたかを知ることができるのではないかと思います。したがって、野心的であり過ぎたために輸入がふえ過ぎたというふうに見ることもできるし、したがって借金もふえたというふうに見ることができる。非常な長期の視点から見なければ結果は判断できないと言われるかもしれないのですが、しかし、現在その債務累積が世界経済を揺るがすほどの大問題になっているとすれば、やはりこの野心的な発展政策自体については、先進国側としても何らかの注文をつけざるを得ないという気がするわけであります。  なぜそれではそのような野心的な発展政策をとらなければならなかったのだろうかと、これが一つの問題点であります。それはやはり経済の自立化を推進したいということでありましょうから、動機自体は極めて立派であります。ただ、それが余りにも急ピッチであり過ぎたということだろうと思うのであります。  それからもう一つ、国際的なデモンストレーション効果というのが考えられる。先進国の生産様式や生活様式が与える影響でありますが、現在のほとんどすべての開発途上国は、この先進国の生産様式や生活様式によって強い影響を受けているわけであります。ある国は、その生活様式にあこがれる余り、大量の消費財を買い過ぎているという批判を受けるかもしれませんし、ある国は、その国に似合わないほどの生産技術を持った生産設備を買い過ぎているということになるかもしれません。  こういった事態発展政策における効率化の問題とかかわってくる。多くの国が国家企業という形でもしこういった発展政策を追求するとすれば、それらのいわば民間企業ではない部門がこういう担い手になれば、どういうことが起こるかということも、既に先進国及び現在の社会主義国における国営企業の事態を見れば非常によくわかるわけであります。  ただ、同情的に言わなければならないのは、それらの国は多くの場合、政治的基盤が大変脆弱であるということであります。したがって、ある程度貿易収支が赤字であっても、あるいは赤字を覚悟してでも、実は生活水準を維持するための消費財の輸入を行わなければならないかもしれません。あるいは、時には無理な賃上げに応じなければならないかもしれない。そういったことがいろいろ重なっているわけでありますが、それにもかかわらず、やはり私の見るところでは、この発展政策をもう少し地道なものにしなければならないのではないかというふうにマクロ的には見ているわけであります。  とりあえず、以上で私の意見を終わりにしたいと思います。
  14. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  以上で政府からの説明聴取並びに参考人からの御意見聴取を終わります。  これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  15. 石井一二

    ○石井一二君 自民党の石井でございます。  ただいまのいろいろな御説明、あるいはまた日ごろから私が持っております所見をもとにして、若干の質問をさせていただきたいと、そのように思うものでございます。  まず最初に、渡部参考人、今ちょうど御発言が終わったところなので、その御発言に対して若干申し上げておきたいと思うわけでございますが、私は先生の御発言の内容が余りよく理解できないと、そのように思うわけでございます。結論的に申して、発展政策を地味なものにせよということは、即、何ら解決に対して自助努力をせぬでもいいというように私には聞こえてなりません。  それと、いろいろな数字を羅列されて、インフレーションが特に高いと。そのインフレーションの原因は、成長と資本財の蓄積を目的とした野心的な発展政策の結果であると言われましたが、私はインフレの原因はそういうところにあるのではない、むしろその逆ではなかろうかと、そのように思うわけでございます。無策による国の荒廃というものがインフレに結びついたというむしろ逆の論理が正しいような気がしてならないのでございます。  例えば一般論としてインフレが起こる場合、野心的な経済政策の結果ではなしに、余りにも政策がないから物がない。そのために需要と供給のバランスが崩れたとか、政府が無策な貨幣の増発をしたために供給過剰となって購買力が多過ぎてインフレになったとか、政情の不安であるとか無理な賃上げとか生活様式に対するあこがれとか、いろいろあろうかと思います。しかし、少なくとも私は今おっしゃったような野心的になってはならない、発展政策は地味なものにせよということではこの問題は解決しないと、強く反論をしておきたいと思います。  本来ならすぐまた御答弁をいただきたいんですが、水かけ論になると思いますし、後また渡部参考人にはほかのことで聞きますので、その関連でひとつ御答弁をいただけたらありがたいと思い、一たん先に急がせていただきたいと思います。  さて、私は、この累積債務問題いろんな角度から物を見るべきでありますが、私はその中心になるのがやはりアメリカであると、そのように思うのでございます。なぜならば、先ほど来いろいろと数字をお見せいただいた中で、御承知のように債務国はほとんど中南米に集中をしておる、ブラジルメキシコアルゼンチンベネズエラ。そして、これらの中南米の国々は主に米国からお金を借りておる。しかも、その米国というのは主に民間の銀行がその貸し主である。したがって、米国がいろいろ努力をされるということがまずこの問題の解決の努力の発端を開いてくれるのではないかと、そのような気がいたすわけでございます。  そこで私は、東京銀行の副頭取でもございます宮崎参考人にお聞きいたしたいのでございます。あなたのきょうの御発言とは若干関係がございませんが、私はここに一枚の新聞の切れ端を持っております。宮崎参考人とほぼ同じ立場にある日本興業銀行頭取黒沢さんの「債務問題再燃私の見方」、日本経済新聞に対する投稿でございます。  その中で、次のような発言があるわけでございます。すなわち、中南米諸国年間輸出額から見て極めて多くの金額を元利返済に向けねばならないという現実を指摘した後で、「この事態を避けるには、利子の元本組み入れなどによって支払い条件を緩和する必要がある」と。「その際、ネックとなるのが米国の会計規則だ。米銀の持つ債権は支払いが九十日以上遅れると不良債権とみなされる。だからブラジルのような大債務国が九十日以上利払いを停止すれば、巨額の不良債権を抱えることになり、米銀の経営は大きく悪化する。繰り延べ償却が認められないため償却も困難だ。」「結局、新規融資をしないと最も困るのは米銀であり、債務問題は主として米銀の問題と言える。米国としてはまず会計規則を改正して繰り延べ償却を認めるようにすべきだろう」と、こういう提案をされておるわけでございます。  私は、先ほど立ち上がってそこの外務省の席の後ろへ行きまして、この一年間にこの問題は改正されたのかということを聞きましたら、弾力的運用があるが、規則としてはほぼそのままであるという私的なお答えをいただきました。そこで、私は宮崎参考人にこの件に関してどのようにお考えか、たまたまお立場がほぼこの御意見を出しておられる副頭取と一緒ですから、何か御意見があれば勉強をさしていただきたい。そういった面でまずお聞きをしております。
  16. 宮崎知雄

    参考人宮崎知雄君) ただいまの御質問の中で、一つ累積債務問題というのが主として米銀が中心の問題だ、米銀の債権が非常に大きな部分を占めている、それがまたこの累積債務問題の解決について米銀の動向というものが非常に重要になっている、このことは私は事実だと思います。  それから、ただいま御質問のそれはアメリカの会計原則に由来して、結局利子の元加ということがアメリカの今の会計原則によるとできないということを恐らく指摘されているんだと思いますが、この利子の元加の問題についてはこれは意見が実は分かれておりまして、ヨーロッパの国では一部利子の元加ということをやったらいいじゃないかという国もございます。それからそういう銀行もございます。しかし、逆に利子の元加ということを安易に認めると、これはもう債務国の方で利子は払わなくていいんだということになる、またそういう要因にもなるわけでございます。したがって、利子の元加というものをそう安易に認めるべきでないという見方もまたこれ有力なわけでございます。恐らく黒沢氏の言われるのは、利子の元加をもっと容易にやったらいいんじゃないかということですが、それは一つの方法ではありますが、逆に言うと、今度は利子を払わない国がふえてくる、そういう現象を招く、そういうおそれもあるかと思います。
  17. 石井一二

    ○石井一二君 まあ、たったこれだけのアーティクルですから、特に詳しく書かれておらない。ただ、私は利子の繰り延べということを言っておられるので、元加とは別の問題であると思いますが、一たんこの場は結構でございます。  そこで、私はこの問題に関連して外務省にお聞きをしておきたいわけでございますが、昨今、日米交渉というものが極めて多岐にわたり、一つの問題が解決すると次の問題が出てくる。こういった中で常にディフェンシブな立場で日本が物を言い続けておるような局面が多いわけでございます。私がお聞きしたいのは、ただの一度でも今言ったような累積債務の問題についてはアメリカさん、こういったこともお考えになってはどうですかといったような、オフェンシブにこのような問題を取り上げたことが外交ルートの交渉の上であるのかないのか、ちょっとお聞きをしておきたいと思いますが、いかがですか。
  18. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 先生御指摘のとおり、日米交渉ではこれでもか、これでもかといろいろと日本の市場開放あるいは貿易の黒字にかかわる問題について要求を受けていることは事実でございます。  ただ、全体、マクロで見まして、日本貿易の黒字あるいは彼らの赤字、さらにはもっとグローバルに見まして累積債務の問題等につきましては、これはあるいは大蔵省の方からお答えした方がよろしいかもしれませんけれども、昨今、日米あるいはその他主要国との間の政策協調ということが非常に軌道に乗ってきておりまして、その過程で日本といたしましても米国の財政運営あるいは国際金融上の諸施策について注文をつけるべきところはいろいろつけてきているということが現実かと、そのように理解している次第でございます。
  19. 石井一二

    ○石井一二君 いろいろ御答弁いただいてありがとうございましたが、私の質問は、外交交渉ルートの中でこのようなことを指摘した事実があるか ないかということですから、絶えず言い続けておりますとか、したことがありませんとかいう答弁を期待しておったわけでございます。  以後、なるべく、私はたった三時十五分までしか時間ございませんので、ポイントを得た御答弁を期待したいと思います。  一たん話題を変えて、円借款絡みの問題に移りたいと思います。  私、先ほどほとんどの債務アメリカ中南米の国々だということを申しましたが、次いで多いのがやはりアジアの国々というものがかなり債務を抱えておる。私は、この中で海外経済協力基金の例えば円借款の残高は四兆五千億、輸銀の場合でも五兆円を超える。こういった中でこれらの国々が借り入れ当初に比べて最近の円レートというものが二倍以上に上がっておる。彼らはドルの年収で稼いでそれを円にかえて返さなきゃならぬという中にいろいろと苦悩があると思うのです。私は、このようにアジアの累積円債務の問題を解決する道として今後円の国際化戦略というものが大いに進められるべきであろう、このように思うわけでございますが、これについてどのようにお考えか、御所見を賜りたいと思います。
  20. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 先生御指摘のように、我が国の場合御承知のようにODAの七割をアジアに配分しておる関係上、まさに御指摘の問題というのが非常に最近のアキュートな重要な問題になっております。具体的にはインドネシア、フィリピン両国とも円借款に対する返済分が円高、為替変動のために大ざっぱに申し上げまして四割ぐらい当初よりもふえてしまっておるということで、何とかしてほしいということを言っておるわけでございます。  これにつきましては、当面の問題としましては、現在の枠組みから申しますと、やはり新規に円借款を出す場合に何とか使いやすい、例えば商品借款のような形で財政なり国際収支難の救済に役立つようなものをやってやらなきゃならないところでございますが、中長期的には先生御指摘のようなこの仕組みそのものに対して手を加えていく、必要があればいろいろな法的、制度的な面についても改善の余地があるのではないかということで関係省庁ともいろいろ検討している次第でございます。
  21. 石井一二

    ○石井一二君 そこでお伺いしたいのですが、物を輸出する場合相手がございます。もちろん輸入の場合もございますけれども、買う側の方が言いたいこと言えるわけですから、輸入の円建て化をまず進めると私はより円の国際化が進みやすいと思うのですが、特に輸入の円建て化に絞って何が原因でこれが進まないのか、もう一歩突っ込んでお教えいただけませんか。
  22. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 若干金融的な側面がありますのでお答えさせていただきます。  最近の輸出、輸入の円建て化の現状をまず申し上げますと、輸出についてはかなり率が上がってまいりまして、八六年の貿易の円建て化比率三五・五%というふうになっております。これは八五年には三五・九%でございましたから若干最近の為替の変動により率が落ちておりますが、これが輸出でございます。他方、輸入につきましては先生おっしゃいましたように八五年が七・三%、八六年が九・七%と遅々ではございますけれども、円建て化が若干進んでおります。  なぜ輸入について円建てが進まないのかと。一つは重要資源、特にエネルギー資源をほとんど海外に依存しております日本の輸入構造、こういうものにおきましてそういう国際商品、石油を中心といたしましてドル中心の建て値になっておるというのが一つございます。また、今の買い手、売り手の力関係というものもございまして、なかなか円建てが進まないというのが一つ現状ございます。  もう一つ、金融的な側面で申しますと、従来外貨不足あるいは日本の国内の金融が非常にタイトな時代が長うございました。そういう慣行が続いておりまして、いわゆる貿易金融についてのドルでの金融というものが行われてきてまいりました。こういうものを一挙に円の金融に切りかえるというのが難しい現状にございます。徐々にではございますが、国内の手当てもやっておりますが、貿易手形買い取り制度というようなものもやっておりますけれども、まだそのような現状にございます。先生おっしゃいますように円建ての貿易にすれば為替のレートによる日本側の為替リスクというものは回避できますが、他方それは相手方の方ではやはり円の変動による為替リスクは向こう側に移るという形になってしまいます。したがいまして、一番根本的な問題は、世界全体通貨の安定、円ドルレートを中心といたしましていろいろな通貨の間の安定がより図られることが基本であろうと思います。
  23. 石井一二

    ○石井一二君 今売り手、買い手の力関係とか円の為替リスクということを言われましたが、ドレにも為替リスクがあるしむしろドルの方が不安定だ。売り手、買い手の力関係も、こちらは買う方ですから、例えば円でLCを開いちゃうと拒否される、あるいは先方の国のいわゆる標準決済の枠内に入ってないとか、いろいろ問題があるのかないのかも私は知りたいところですが、要望として今後ひとつぜひその線で進んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、外務省にお聞きしますが、デット・サービス・レシオについて若干御指摘になりましたね。あのレシオを債務返済比率の指標として御説明になった。  それで、一般論として、警戒ラインと言われるのは二〇%なんて言われているんですが、大体そんなところなんですか。そこら、どうですか。
  24. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 国によって事情は違うと思いますが、通常言われておりますのは、デット・サービス・レシオ二〇%を超えると債務問題が顕在化してくる兆候だというような、そういう指標として二〇%という数字が使われていることが多うございます。
  25. 石井一二

    ○石井一二君 それで、特にとっぱしにデット・サービス・レシオの話をされたんで私は殊さら印象に残ったんですが、今私はここに一冊の本を持っているんです。日本経済新聞が出した渡辺長雄さんという方が書いた本なんですが、その中身を見てみますと、デット・サービス・レシオすなわちDSRはそういった債務返済に絡んだ指標としては頼りにならぬというような言い方をされておるわけです。それで、その原因として、このレシオというものは年間に期限が到来すべき要返済額と利払い額というものを取り上げておるんで、実行した実績が一番大事であるということが一 つと、債務不履行の場合は債務返済比率がかえって低くなるとか、金があり余って期限前に償還が行われたりすると高くなるというような逆のことも起こり得ると。それで、もっと信用度の低い国はもともと貸してもらえないから率が高くなりようがないとか、それと民間の債務をカバーしてない場合が多いとか、だからこのDSRで物を論ずるのは間違いであるというような言い方をされているんですが、その点、こういう統計をつくられる上でどのようなとらえ方をなさっておりますか。
  26. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 大変難しい問題でございまして、私もそこまで実は考えたことがございませんでしたが、基本的には、先生御案内のとおり、年間の物の輸出あるいはサービスまで含みまして財サービスの輸出額というもの、輸出というものがその年の債務返済の財源と申しますか、そのうちからどのくらい返せるかということが、債務の返還にどのくらい充てられるかというところが問題になるわけでございまして、そういう意味で言いますと、どうしても輸出額というものが債務返済していく上での一つの指標としては大事なものになると思います。  その数字と実際にその年に返さなければならない債務返済額というものの比率というのは、先生御指摘のとおりいろいろ問題点あると思いますけれども、少なくとも短期的にその年についてどの程度返さなければいけないか、まあ二〇%以上のものが返せるかというところが一つの指標として従来使われてきたということであろうかと私は理 解している次第でございます。  先生御指摘のとおり、貸してくれないとかあるいはその年の実行実績が年によって随分違うではないかと、そういった流れで見ますといろいろ、流れと申しますか、それぞれの国別の事情、国別の債務返済スケジュールの状況を勘案してみまするといろいろ問題は出てくると思いますが、大きくマクロでとらえました場合には、このデット・サービス・レシオ一つ債務問題を判定する上での有効な指標として使用してよろしいのではないかと考えている次第でございます。
  27. 石井一二

    ○石井一二君 それで先ほど参考人の御要望の中で、これは宮崎参考人がおっしゃったかと思いますが、我が国の、無税で一%しか引き当てが認められておらないという御要望がございましたですね。これたしか有税の場合五%だったのを一〇%に上げて認められておる。これについては御言及がなかったわけですが、どのような御所見をお持ちでしょうか。
  28. 宮崎知雄

    参考人宮崎知雄君) 税金の関係でちょっと申し上げますと、私ども民間銀行累積債務国に対する引当金を積み立てているわけでございますが、その積み立て方には有税の部分と無税の部分と二つございます。それで実は一〇%までは有税で積むということになって、その一〇%のうちの一%だけ、ですから九%有税で積む、一%が無税で積み立てられる、こういう仕組みになっているわけです。  それで、そもそも引当金を積むその理由は、銀行経営の健全性という立場から万一の場合に備えて引当金というものは積むわけでございますが、その場合にはやはり健全性という立場からいきますと銀行の体力を強める、銀行の経理の健全化を図る、そういう立場から申しますとこれは無税で引当金が積めるという形の方が望ましいわけでございます。有税の場合ですと、それに対する税金というものは納めなければなりませんから、結局体力的には無税の方が銀行としては望ましいということで無税の引当金をヨーロッパ並みにお願いしたいということを先ほど申し上げてございまして、ヨーロッパではやはり、国によって違いますが、例えばドイツなどはこれは五〇%近く積んでおりますし、それ以外のスイスとかあるいはイギリス、そのあたりでも大体二〇から三〇というところは大体無税で積まれているというのが現状でございます。
  29. 石井一二

    ○石井一二君 それで、私、御要望される場合に、ごもっともで、それはなるべく多いにこしたことはないと思うんですがね。単純はそのパーセンテージだけで論議をするよりも、例えばカントリーリスクのあり方を日本と外国と比べた場合にその基準はどうなっておるかとか、日本の場合はリスケジューリングが行われたらすぐに貿易保険制度の対象外推されるといったようなほかのルールがあるから、いかに引当金だけ金額をふやしておっても、貸すということができなかったら、あるいは投資するということができなかったらその必要性もないわけですからね。全体的な私は環境がまだまだ厳し過ぎて、大蔵省の、どう言うか、規制がきつ過ぎとでも言うと弊害があるのかもわかりませんが、いろいろ改善の余地があるような気がしてならないんです。  その関連で一つお伺いしたいのは、貿易保険制度。これは御承知のようにもともと昭和二十五年に違う名前でつくられて、昭和六十二年に従来の輸出保険法を貿易保険法に拡充強化した。その結果、いろいろ対象の範囲がふえたとか対象リスクが拡大されたとかいろいろあるわけですが、問題はたった七十億円の政府資金で独立採算制をとり、しかも年間三千億の赤字を出しておるというような関係で、言うならば萎縮をして、どちらかというならば会計が悪いから引き受けもなるべく抑えようということで制限的になっており、本来の使命を果たしてないというような意見があるわけです。このことについて通産省、御意見があれば承りたいと思うんですが、いかがですか。通産来てない――じゃ外務省、関連で。
  30. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 先生御指摘のとおり、最近のその貿易保険あるいは輸出保険会計大変な赤字を出しておりまして、なかなか円滑な運営ができない。そのために貿易保険の引き受けが制限的となっているというのは、これは私ども外務省から見ましてそのとおりであると思っている次第でございます。  この問題、今後どうしてどのように解決していくかという問題につきまして、私、特に現時点、現在意見を持ち合わせておりませんですけれども、このままでは債務の累積国と申しますか、債務国に対してはなかなか貿易関係が伸展と申しますか、やっていけないという状況にもなりますし、今後政府の内部で検討していかなければいけない大きな問題の一つであろうと考えている次第でございます。
  31. 石井一二

    ○石井一二君 それで、特にこの保険の場合は通産省の一つの課が運営をしておるということで、本来なすべき使命は非常に大きいにもかかわらず制度というものが妙に小さくまとめられておる、そのために十二分な機能を発揮していない、そういうことが言えると思うんですが、例えば外務省、OECF、海外経済協力基金でもう少しこの分野でやるべきことがあるのではないかとも思うんですが、その辺、御所見いかがですか。
  32. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) OECFの場合、先生御承知のように、借款による援助の実施機関ということでございまして、現在、外務省大蔵省、通産省、経企庁四省庁で協議しまして、その政策唯対していろいろな検討を随時行っております。  御指摘の問題につきましては、現在、我々の間では特に議論に上ってございませんが、全体的な問題としまして、やはりこの援助の問題と貿易の問題というものは非常に密接につながっておりまして、今後援助増大と並行しましていろいろ検討を加えていかなければならない問題ではないかと思う次第でございます。
  33. 石井一二

    ○石井一二君 それから債務国にどんどんどんどん融資の金額をふやしていっても、債務国に金を置いておってもリスクもあるし、もうからぬということで、バケツに水を入れるごとく、海外逃避というものが非常に問題だという指摘がございます。  例えば私が先ほど指摘した一連のアーティクルですが、上智大学助教授の堀坂先生もそのような指摘を、「資本流出にイラだち」という見出しで言っておられますけれども、特にブラジルの場合なんかそういった傾向が多いわけでございますが、こういった問題を防ぐためには、もちろんその当事国、すなわちその国の政府の心構えとか政策ということで、ょその国の問題だということであれば論議の余地がないわけですが、こういったものを未然に防ぎ、投下された金がその国で拡大再生産のためは有効に使われるというために何らかの国際的な提言をするとか、IMF以下いろいろ国際機関が助言、指導するとか、いろんな方策があってしかるべきだと思いますが、何か具体的な手が打たれておるんでしょうか、いかがでございますか。
  34. 成田右文

    説明員(成田右文君) ただいま先生御指摘になりましたように、債務問題の裏腹の関係で、債務国からの資本逃避という問題があるわけでございますけれども、その基本的な問題というのはやはり幾つかの問題が挙げられると思います。例えばその国における投資に信頼感が持てないということもございましょうし、また、そういう投資機会がない、あるいはむしろ海外においてより有利な投資機会が提供されているという問題もあることだと存じます。  したがいまして、基本的な問題は、もちろんその当該国がより健全な経済運営をやり、かつ経済成長を図ってより投資を有利にするという問題に尽きると思うわけでございますけれども、現段階で先生の御指摘のような国際的にそういうものをシステムとして行わないようにする、抑制するというような形での提言は私の承知する限りないと存じます。
  35. 石井一二

    ○石井一二君 ここに具体的な数字がございますが、ECLA、すなわち国連中南米カリブ経済委 員会の推計では、中南米諸国からネットで八五年に三百二十九億ドル、八六年に二百二十一億ドルの資本が海外に流出したと。だからまあ半分以上流出したということをその前後の数字を読むと言っているわけですが、今の御答弁で投資に信頼感がないということと、投資の機会がないと言われましたが、この二つだけとってみれば、最初から行かなかったらいいんですよ。むしろ最初から行かないと思うんですね。行ったものが違うことで逃げて帰ってしまう。例えばそこの国の通貨がどんどんどんどん切り上げになるとか、ほかの原因があるわけなんですよ。あるいはそこの国の金持ちが金を持ってどこかに行ってしまうとかね。だから、今のように単に投資に信頼感がないとか投資の機会がないという問題ではないと思うんです。  私は、こういった問題がやはり解決されないと、全体の問題が解決されない。もちろんよその国のことですから、干渉できないと言えばそれまでですが、国際的な会議とかその他を通じてやっぱりそういう声を出していただきたい、そのように要望をいたします。  次に、若干財テクの話でございますが、ふだん我が国内で言われるような財テクではなしに、債務削減のためのテクニックとして債務証券化とか、あるいは債務債券化というようなことが最近はやってきた。特に、メキシコでその例があり、先ほども御説明があったわけでございますが、こういったやはり努力というものもいろいろ、まあ苦しみの中でもがく、その中で何らかの生きる道がないかということでやっておると思うのでございますが、また一方では、不良債権市場なんていうようなものも出てきているようでございまして、特に、例えば額面を一〇〇とした場合に、アルゼンチンだったら大体六〇と七〇の間、ペルーのごときは一七から二三ぐらいの数字というものが出ておるようでございますが、私は、今後こういった財テク的なテクニックでこの問題が解決するとも思いませんけれども、メキシコに端を発して今後こういった問題がどんどんどんどんふえてくるのかふえてこないのか、今後の傾向として外務省はどのようなお考えに立っておられるか、審議官ひとつ御所見を賜りたいと思いますが。
  36. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 今、石井先生御指摘のとおり、このベーカー・メニューアプローチという中にも、幾つかそのような提言が入ってございます。しかし、現実の姿は、さっきメキシコの例で申しましたが、そのほか二、三の例がございますように、この債務問題解決の特効薬あるいは主流とはなり得ない、一部の、一つの方法、いわゆるメニュー一つだという位置づけでございます。  この証券化というものにかかわる問題点というのがいろいろございますが、先生今もおっしゃいましたように、いわゆる貸付金債権が市場で売買されます価額がディスカウントされる、値引きされるということで、そのような相場というものがございます。そのような相場に基づきまして、いわゆる財テクと先生おっしゃいましたが、金融技術によって銀行債権を切り売りする、値引きをして売り払う。その結果、その売り払った銀行はその国の債権者の銀行団、債権者グループでございますが、そのグループから離脱する。離脱するという意味は、次にその国に対する新たなる資金の供給、いわゆるニューマネーの供給の要求が出ました場合に、私はもうその債権は売ってしまいましたということで出ていく、いわゆるエキジットと申しますが、出口を与える効果があるということでございます。それの見合いとしてその銀行ディスカウントされた分だけの損失をこうむるということになります。したがって、損得勘定から見ますと、長い目でその国が経済回復を得て返済が滞りなく行われるというのを待ち続けるか、さらにそれに新たなる新規のニューマネーを注いで経済再建をさらに促進するということをやるか、あるいはもうそのグループから離脱してしまって古い債権を切り捨てる、切り捨てるといいますか、減価した値段で売り払って出てしまうという関係かと、そういう選択になってまいるわけであります。  そういうことでございますから、銀行の経理上の問題、あるいは世界全体としての債務戦略上の問題といういろいろな面からの検討が必要でございますが、私どもの見方としましては、そういう債務証券化、メニュー一つではございますけれども、本流の解決策とはなり得ない。メニュー一つであるというふうに位置づけております。
  37. 石井一二

    ○石井一二君 私の時間はあと三分となってまいりました。ひょっとしたら最後の質問になろうかと思いますが、先ほど御説明の中でパリ・クラブの話が出ました。これは歴史的経過で、公的債務の繰り延べ交渉の場として、恐らくフランスの外務大臣あたりが招集してかなりの権威があるもので、ここへ出ると大体二十四時間で話がつくと言われておるわけですが、私が先ほど申し上げた円借款絡みのアジア公的債務という面で、日本外交が自主性を持ち、特に日本経済外交というものは今後世界で重きをなしていくべきですから、東京クラブみたいなものでも提唱してある程度主導権を持ってこういった問題に取り組んでもらいたいと思うわけでございますが、パリ・クラブの権威、この問題解決のための効用等について外務省、どのような評価をなさっておりますか、端的で結構ですから。
  38. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 我が国の場合、パリ・クラブに参加しかつパリ・クラブの  利用しまして債権繰り延べ交渉というものを積極的に、率直に申し上げて進めてきていると言えると思います。  現在のところ、既存累積債務の救済手段として国際的な基準のもとに公平な形で救済するということになりますと、やはり先生御指摘のように新しいいろいろな知恵もいろいろ工夫せよということで識者、関係者はいろいろ検討はしていると思いますけれども、現存する権威のある方式という形ではやはりパリ・クラブというものを尊重して、これを通して既存債務の解決、その上で新しいニューマネーフローを確保してあげるということがやはり一つ有効な道じゃないかというふうに考えております。
  39. 石井一二

    ○石井一二君 あと一分ありますから。  最初に、渡部参考人に後でほかの問題で論議をと言いましたが、ちょっと適切な場所がなかったので。  冒頭、私が参考人の御発言に対してむしろおっしゃっていることが逆ではないかというようなことを申しました。もし御反論があれば承り、間違っておれば私がおわびを申し上げたいと思いますが、いかがですか。
  40. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) どうもありがとうございます。  私の野心的という言葉の使い方がどうも余りよくなかったようであります。端的に言ってしまえば、返す当てもない金を借りて発展政策をとった、そういうことに結果としてはなっているんじゃないのか。だから、そうすればそれなり発展はするけれどもやはり返す当てのない金がどうしてもたまってしまうんだから、それだったらいいかげんに返す当てが立つ程度に借金するような発展政策をとってはどうだろうかという、簡単に言ってしまえばそういうことを申し上げたわけであります。だから、野心的という言葉がちょっとぐあいが悪かったんですが、そういうことでございます。
  41. 石井一二

    ○石井一二君 おわびをいたしておきます。ありがとうございました。
  42. 矢田部理

    ○矢田部理君 今、渡部参考人からお話がありましたのにちなんでその問題について質問したいと思うのでありますが、先ほど借り手側の問題点が外務省などから中南米中心にいろいろ指摘をされましたが、貸し方の方にも問題がなかったのか。特に中南米累積債務問題というのは、主たる問題点はやっぱりアメリカ側にもあったというふうに考えられるわけですので、アメリカを初めとする債権国側の貸し方の問題というようなこと についてはどんなふうにお考えになりますでしょうか。
  43. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) 貸し手側の問題については触れませんでしたんですが、オイルショック以後のオイルマネーの還流に貢献したと先ほど宮崎参考人も申されましたけれども、その面は確かにあったと思います。  しかし、同時に私は、たまたまその後の段階で、これは外国の銀行の方ですけれども、その方が話した話をちょっと御紹介申し上げますが、その方はどういうふうに言ったかといいますと、こういう状態で先進工業国の企業はだめである、先行き見通しも立たないしどうにもならないんで金を借りたがらない。そして、実際のところとその方はおっしゃいましたが、日本の造船産業に貸すぐらいなら、当時の造船産業というのは不況産業の最たるものでしたから、そんなところへ貸すぐらいだったら開発途上国で金を欲しがっているところに貸した方がまだいいと。特に、政府が関与している場合には少なくとも元本まで踏み倒すことはないだろう、利子は払ってくれるだろう、利子さえ払ってもらえればずうっと借りてもらってても差し支えないんだ、そういうことを考えたら開発途上国へ投資することは極めて今の段階では有利な投資先である、そういう話をされていた。つまり、貸し手側としてはそういう債務累積問題として返済問題、利子も払えなくなるような状態までは実は想定していなかったというのが事実だと思います。  したがって、それで貸し手側にもし責任ありとすれば、その見通しを誤ったのはやはり銀行側でしょうから、その銀行が見通しを誤っていろんな対策、証券化とか債券化を通して若干損失しても構わないと逃げ出すという態勢をとっているのは銀行側としては仕方がないやり方なのかもしれない。しかし、その点については、借り手の側につきまして余り助けてやるということは、逆に、借りて踏み倒した方が得だというモラルを、いわば借り手のモラルを損なうようなやり方になってしまうからそれは望ましくない。同じように私は、貸し手側について余り国際機関が援助するということは、それ自体として貸し手側のモラルを低下させるので望ましくないというふうにも、パラレルに言おうとすれば言うことができる。  ただ、貸し手側の銀行が倒産しても構わないということになれば、これは国際金融上の大問題になってまいりまして、結局世界経済全体が迷惑をこうむることになってしまう。恐らく第三者が迷惑をこうむるような事態を引き起こしたくないから、結局は債務国も助けなきゃいけないし貸し手も助けなきゃいけないというのが現状であろうと思います。もし第三者が迷惑をこうむらないなら、それはそれらの国がどうなろうと正直なところ余り問題にはならないだろうと思います。ちょっと極端に過ぎるかもしれませんけれども。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、国際経済について専門的な知識があるわけでもありませんが、素朴に考えますと、お金を大量に貸した、借り手の側が債務超過に陥って返すことが困難あるいは支払い不能という状態に陥った場合に、借り手側はどうすべきか、貸し手側はいかがすべきかということになりますと、まず貸し手側の立場、ある種の責任論も含めて言えば、言うならば過剰融資だったわけですね。やはり金利をまけてやる、それから元本についてはいわば棚上げして、長期に、いずれ債務国が自立したり返済能力がついたときに分割して払わせるというような方式をとるのが基本ではないかと。  それから借り手側の方では、先ほどから出ておりますように経済の自立、それから野心的な成長ではなしに節度あるというか、安定的な成長を図って輸出を伸ばして返済能力をつけるということを相互に基本軸にして問題の解決に当たるしかないんじゃないかと素人なりに思うのですが、その間にいろんな専門的、技術的なやり方が出てこようと思うのですが、これ大蔵省がいいんでしょうか、先ほど債務証券化といいますか、株式にしたりしているわけですが、これはメニュー一つであって本流ではない、本則ではないというふうに言われましたが、本流的なというか解決の処方せんというのは一体何なのか、どんなふうに大蔵省としては考えますか。
  45. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) お答え申し上げます。  先ほど債務問題の一つの歴史的な流れというのをお話し申し上げましたけれども、現状を申しますと、基本的なパターンといたしましては、主たる債権国であります銀行団、それから国際機関、それから公的債権につきましては先ほどから話題に出ておりますパリ・クラブ、この三つのものが同時並行的に進行して債務処理という問題をやっておるわけでございますが、一つの国がいわゆる支払い不能の状態に陥った場合に、民間銀行団はまず国際機関によって将来の青写真をかいてもらう。これはIMF中心としたものでございますけれども、そういう経済再建計画、まあ二、三年にわたるものでございますが、かく。それから、通常IMFからも緊急融資をそれに伴って行います。そういうことをまずやります。そこで、銀行団はそれを基礎として債権の元本の繰り延べ、それから新規のニューマネーの供与という、貸し増しというようなものを交渉いたします。  他方、公的債権につきましてはいわゆるパリ・クラブというところで公的債権の繰り延べの交渉を同時並行的に行います。これもいわゆるIMFの青写真を基礎としてやるということで進められます。  その結果、全体の最終的な姿としては元本が繰り延べられ、利子は支払われる、そのかわり見合いといたしまして新規に追加的な融資が民間銀行から行われる。それから公的資金につきましては、日本の場合ですと輸銀基金あるいは輸出保険からの債権、こういうものが繰り延べられるということで繰り延べの条件交渉というものを行う、こういうものが一連の流れとして進められます。その結果、全体のその国に対する公的、民間債権が繰り延べられ、あるいは流動性を確保できるだけの新規の資金民間銀行ないし国際機関から供給される、こういうような形が従来からの基本型でございます。  そこにごく最近、今の債務証券化して債権団銀行から離脱するというようなメニューというようなものもケースバイケースで出てきた。いろいろなその従来の基本型からの変化があらわれてきたというのが現状でございまして、基本的な今の解決のプロセスというものは大体それぞれの国で同じような形で個々の国ごとに行われております。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 同じ問題を渡部参考人にも伺いたいのですが、かつて八五年にベーカー提案があった。しかし、これは必ずしも期待どおりの効果があらわれないまま、つい最近のまた提案もあるわけですが、さらには宮澤さんが先般何か日本としての意見を出したということで幾つかの解決策あるいは救済策のための諸提案があるのですが、その有効性、効果がどの程度期待できるのかということについて何か御意見がありましたらいただきたいと思います。
  47. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) どのぐらい有効かということについては私も特別の意見を持っておりません。ただ、方向としては、返済できるような産業が確立されること、つまり輸出を十分伸ばしていけるような産業が確立すること、それがもう最終的なコースだと思いますので、それが一体いつごろそうなるのかという問題が一つあると思います。  それと同時に、それらの国が本気でそういう産業を確立して輸出できるようになったとした場合に、現在の債権国である国々が、アメリカはちょっと別としまして、現在の先進工業国が本当にそれらの生産物を買い、実質的には経常収支や貿易収支が赤字になっても構わないというところまで本気で考えるだろうか、そのときになって、やはりそれは困るということになるのだろうかどうだろうか。  私はそのあたり、つまり最初にちょっと申し上げましたが、解決するときに一番問題なのは、そ れらの国が十分な輸出能力を持ってきたときに、今の先進工業国がそれを十分受け入れることができるのかどうかという点が一つあると思っております。  その点は、ちょうど韓国は大分借金はしているんですけれども、もう十分な利子返済能力を持っておりますので、実は債務累積問題というときには我々の頭の中にといいますか、私の頭の中には韓国というのは全然入ってこないわけですね。そこで、韓国から今どんどん日本にいろんな生産物が流れて入ってきておりますが、将来とも日本がこの問題で韓国の生産物あるいは他の周辺諸国からのそういう生産物に何らかのガードをとるようなことがなければ、多分それは一つ方向として十分予想の中に入れていくことができると思います。  その意味では、これから先の日本の周辺国からの日本への輸出増加に対して日本がどうそれに対応していくかは、将来開発途上国の中のその債務国が十分返済能力を持ったときに果たして先進工業国がその輸出品を受け入れるかどうかの試金石といいますか、見通しの一つのサンプルといいますか、そういうものとして理解できるだろうと思っております。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういうにおける日本としての責任なりこれからの役割を果たすに当たってぜひお聞きしておきたいと思いますのは、大蔵省がいいんでしょうか、日本としては各国にどのぐらいのお金が渡っているのでしょうか。国別に、特に先ほど債務国のランクがずっと出ておりますが、それらの国々に従って幾らぐらいになっているのか、大蔵省説明いただけましょうか。
  49. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 手元にございますのが円借款の残高という数字だけでございます。これはODAでございます。一番大きいのがイシドネシアに対するもので六千七百八億円ございます。次が中国で四千四億円、それからフィリピン三千二百四十七億円、タイ三千三十二億円というようなところが大口でございます。総計で三兆七千八百二十六億円の残高になっております。これは六十二年三月末という数字でございます。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 その数字はわかっているんですが、民間からどんな程度資金がそれぞれの国に流れているか、動いているかはわかりませんか。
  51. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 日本の、いわゆる邦銀の国別の対外債権残高というものの数字というのはいろいろございますけれども、BISの報告統計ということで申し上げます。六十二年六月末が最新のものでございます。メキシコについて約百四十億ドルブラジルが百二十億ドルアルゼンチン六十億ドルベネズエラ四十億ドル、チリ十五億ドル、あとはフィリピン三十億ドル、ユーゴスラビア五億ドルというのが主なところでございます。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 その貸し出しあるいは貸し付けの時期とか理由とか内容についても少しく本当は議論をしたいのでありますが、そういう数字を伺いましたのは、中南米に対する日本資金協力あるいは貸し付けというのは比較的少なくて、日本の場合は圧倒的にアジアないしはASEAN諸国に重点が置かれているということを数字などから考えてみますと、そしてまた一方で中南米に対してはアメリカが圧倒的に大量の資金を貸し付けているということになりますと、これを一緒にして対外債務問題、累積債務問題ということで論じるのではなくて、むしろ地域別、国別にもう少し細分化して議論を立てる方がより合理的なのではないかと私は思っているわけです。  その点で言えば、中南米債務問題、累積債務問題は主としてアメリカが責任を持つ、それからアジアのそれは日本が分担をする、アフリカも恐らくあるだろうと思われますので、それについてはEC諸国がかかわるというようなことで、もう少し地域的に分担をし、それから国別に問題をやっぱり立て直して処理を図るというようなことを考えることもいかがかと思うのですが、これはどなたが適切でしょうか。参考人、どなたからでも結構ですから、御意見があればお話をいただきたいと思います。
  53. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) まさに先生御指摘されましたような考え方というものが識者、専門家、政府レベルでもいろいろな場で議論になっているのではないかと思います。 事実我々の事務当局の間におきましても先生御指摘のような考え方に基づきまして、地域別に細かくその性格、金の出どころ等々、別にいろいろな対策を考えるべきではないかという議論をしております。  その場合に、どの地域をどういう国が分担するかというような考え方と同時に、どの地域に対してはその資金の性格から政府なり商業銀行、民間なり、どういう形で対策を立てるべきかというような考え方があるかと思います。アフリカ、中近東の場合には、かなり部分公的債務が多い、かつ規模も比較的中南米アジアに比べますと小さいということから、政府資金による救済努力というのがかなり効果的な地域だというふうに認識されていると思います。 他方、中南米の場合には、額も巨額ですし、民間部分も多いということで、メキシコ方式に見られますような民間及び政府が協力していろいろな知恵を出すという方式がアプライされたわけですけれども、アジアにつきましても、やはりこれ半々で民間及び公的な資金債務累積ということでございまして、日本のみならずアメリカも非常な関心を持ちましてアジア累積債務問題に取り組む姿勢を見せております。いろいろ多角的な視野から今後検討さるべき問題、委員御指摘のとおりだと思います。
  54. 志苫裕

    志苫裕君 どうも参考人の皆さんきょうはありがとうございました。  途上国累積債務問題を見る場合に、一概に言ってもしようがないので、低所得国、中所得国あるいは産油国、非産油国、それぞれ分けて見なければならぬようにも思うんですね。ごく簡単でいいですが、発生要因にもそれぞれに違いがあるんだと思うんですが、これはどこがいいのかな、外務省だか、その辺ちょっと説明してくれますか。
  55. 成田右文

    説明員(成田右文君) 私は中南米関係の問題を見ているわけでございますけれども、中南米の中でも、確かに先生御指摘のとおりメキシコとかベネズエラというような産油国ございますし、それからボリビアのような経済そのものが非常に停滞し、かつ非石油の一次産品に依存している国もございます。したがいまして、どちらかといえば、石油産出国のように基本的に外貨を獲得できる国につきましてはそれだけ信用度も高いということで、債権額あるいは債務額も大きくなるという傾向がございますし、逆により低所得の国については、債務問題は深刻でございますけれども、しかしもともと貸し付けが少ないわけですから、額としては非常に少ないというような形で、それぞればらつきがあるだろうと思います。
  56. 志苫裕

    志苫裕君 でしょうね。ですから、一概に途上国債務といっても流動性危機の発生している国はせいぜい九カ国か十カ国ぐらいでありまして、そのうち六つばかりが中南米に固まっておるということですから、これ一般論で論じても少し意味合いが違ってくるんじゃないかという意味で、ちょっと今のところこれは私は対応にも違いがあるんじゃないかと思って申し上げたわけです。  ところで、先ほど渡部参考人のお話に関連をして、貸した私が悪いのか借りたあなたが悪いのかという論議がありましたけれども、それは今後の対策にも関係すると思うんですが、私もこういう点は素人ですが、石油危機で先進国押しなべてぐあいが悪くなる。一方では膨大なオイルダラーが発生をする。そのオイルダラーの行方を調べると、そのほとんどは先進国銀行へ行って、それが今問題になっている国々は貸し出された。こういう行方はなっておるわけですから、ですから一時的にせよ西側はそれで黒字にもなったわけでして、いわば先進国輸出拡大政策の一環として構築したオイルダラー還流のメカニズムが基本的な累積赤字の発生要因だというふうにとらえないと、私は、能力のない者が借りたとかというふうな物の発想、とらえ方では南北問題の解決になら ぬと思うんですね。そういう点でもう少し、これは渡部さん、宮崎さん、どちらからでもいいんですが、お話をいただけませんか。
  57. 宮崎知雄

    参考人宮崎知雄君) 借り過ぎか貸し過ぎかという議論、これは確かに一つあると思うんです。現在の状況から見ますと、それは確かに貸し過ぎであったという議論も私はあり得ると思いますし、それを否定するものではないんですが、私のこの累積債務問題に対する基本的な考え方をちょっと申し上げたいと思うんですが、やはり先ほども申し上げましたように、これは私は南北問題の一形態だというふうに思っているわけです。発展途上国がやっぱり先進国にだんだん追いついていくまでの間は、どうしてもこれは途上国資金が必要なわけです。その資金というのは必ず先進国から資金が流れていかなければいかぬ。ですからこういう問題は、歴史的に見ればずっと先進国から途上国経済発展に必要な資金というものが流れていかなければいかぬ。そういう状態は、今南北という二つの、先進国途上国という二つのグループが存在する限り続くんだろうと思うんですね。  その過程においてこれはいろんなことが起こり得る。一つは、ある時期には金利が非常に高くなった、これはいろんな理由があると思うんですが、あるいは一次産品の値段が安くなった、こういうようなことは起こり得るわけですね。ですから、これはそういう時期になったときに、これからもあるいは起こるかもしれない問題であるわけです。ですから、これをどうやって解決していくのかということが、やっぱり今後の南北問題、広く言えば世界全体の発展の問題に非常に重要な意味を持っているんじゃないかというふうに思うわけです。  したがって私は、ただこれは金融だけのメカニズムで解決できる問題じゃなくて、もっと広い立場から本来解決されるべき問題であるという基本的な認識を持っているわけです。ただ、私ども銀行といたしましてできるのは、やはり金融の側面からどうやってこの問題の解決に取り組んでいくかということであろうと思うんです。  そこで私どもとしましては、先ほども申し上げましたが、この問題の解決のためには、やはり借り手である債務国がまず自分で努力する、自助努力をする、経済調整政策をとっていく、これが一つ必要である。それからまた、今度は貸し手である民間の銀行、これもやはり引き続き資金を貸し続けていくということが私は必要なんだろうと思うわけです。  それで、それに対してただ当事国だけではなくて、資金を貸す以上やはりそこに一つの何か約束事がなければなかなか貸せないわけですから、そういうことについてはやはりIMFとか世銀とか、そういう国際機関がはっきり債務国が自国で調整政策をとるという約束をして、そのIMFなり世銀なりのそういう保証人といいますか、そういう保証のもとに民間銀行としては資金を供給していける。それに対してやはり先進国政府も、先ほども申し上げましたが、世界経済環境というものを悪化させないように努めていただくとか、あるいは個別の問題になりますが、いろいろそういうメカニズムがうまく動くようなことを、例えば今の世銀の出資金をふやすとかというようなことをやっていただきたい。そういうふうなことでいろいろみんながやはり協力していろいろなととを考えて、この問題をやっていく必要があるんじゃないか、私はそういうふうに考えるわけでございます。
  58. 志苫裕

    志苫裕君 南北問題という視点が大事なわけで、歴史的に見れば北は南から随分取り上げておったわけでありまして、それがまた国際経済のゆがみにもなっているわけでしょうから、北から南に金なりなり技術を移すという、そういう大仕事が要るわけで、そういう観点で考えれば一時的な累積債務というような問題をそう目くじら立てることはない、もう少し冷静な解決の仕方がある。政府も積極的に、民間ばかりじゃなく乗り出さぬといかぬというふうなことを当然考えられてくるんだと思うんですが、そこでこういう状況を基本的に解決するのは、結局ODAがもっと大きい役割を果たさぬといかぬのではないかという意見もございますね。これについては渡部先生どうですか。
  59. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) 現実問題としては結局そういうことであろうと思いますが、何と言ったらいいでしょうか、やはりこういう貸し借りの話というのは、コマーシャルベースといいますか、エコノミックベースでの話でありますし、それぞれの経済主体がそれぞれ自分の発展あるいは成長のいろんな計画に基づいて金を借り、貸す方もそれをチェックして貸す。したがってそこではやはり当事者が本来その問題については十分な責任を持たなければいけない問題だろうと思うんです。  私は、それが実はうまくいかなくて問題が発生したとしたときに、その問題が余りこじれてしまったときに、その与える影響が国際経済なり国際金融の全体に波及するような大影響を与えるとすれば、ほかの人たちは知らぬ顔をしているわけにいきませんから、やはりみんながその火の粉を払うというためのある種のサクリファイスは必要だろうと思います。ODAはそういう位置づけになるのかなというふうに私は思っているわけですが、もしそれがそんなに大した火の粉でなければ、これはもう当事者に任せておけばいい問題ではないか。  ですから、やはりこの種の問題は基本的には自己責任の原則でなければならないので、私はこういった問題を余り南北問題の解決のためにというモラル的なニュアンスをそこに込めるのは、私の個人的な考えから言うと余り賛成できないんですけれども、ただもう一点、債務累積問題の解決とかいろんなことで解決という言葉が非常によく使われるのですが、私はこの問題に解決などがあるのだろうかというふうに考えております。  多分、世界経済の中ですべての国が経常収支の均衡を十分果たしているという状態にならなければ解決というのは起こり得ないわけで、絶えず経常収支の赤字を累積する国もあり、あるいは黒字を累積する国もあるという限りは、そのイソバランスから起こってくるいろんな諸問題の解決はそのつど、影響が深ければみんなで何とかびほう策を講ずるし、影響が少なければ当事者に任せてほっておくし、この程度のプラクティカルな解決しかあり得ない、解決と言うならそれしかあり得ないというふうに思っております。この問題について私はモラルの問題を導入させてはならないというのが私の立場であります。
  60. 志苫裕

    志苫裕君 マクロ経済で見れば一番収支の合っていないのは南北なんでして、南北の収支を合わせなければ国際経済の恒常的な発展もないわけですから、そういう問題を、ただモラルという意味じゃなくて、さっき宮崎参考人、自立の条件を支援をすると。そういうものを抜きにして緑の革命のようなやり方でやっていけばどこかに破綻が来るわけであって、そういう意味ではこれからの政府役割という問題は我々はもう少し重視をしたい、このように思います。  ところで、最後でもいいんですが、途上国債務に占める軍事化あるいは兵器購入というようなもののウエートはどんなものなんでしょうかね。これは外務省わかりますか。
  61. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) ただいまちょっと数字を持ち合わせておりません。申しわけございません。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 概略わからぬですか――いや、わからなければ結構です。  私は、外国からの兵器購入がなかったら、あるいは軍事化というふうなものがなければ、累積債務、対外債務というのはどの程度引き下げられるものか。そういう意味でもう少し大きい視点でこの平和保障機構というふうなものも考えなきゃと思ってちょっと聞いてみたんですが、なければそれで結構です。  もう一、二分、一問だけですが、きょうは途上国債務に絞っていたんだそうですが、累積債務とは少し質が違うけれども、でかい債務アメリカ にもあるわけでありまして、日本との関係で言えば日米の債権債務というようなものが一番大きいので、そういうお話でも出るのかなと思っていたら、きょうは少し筋違いのようですが、これは学 者の先生からでもいいですが、ちょっと質が外れるかもしれませんが、この日米の貯蓄、投資の資金バランスを見ますと奇妙に有無相通ずる形になっておりまして、相互に統合化が進んでおるとでもいいますか、そんな感じがしないじゃないんですが、よく言われておりますが、アメリカは国際収支の発展パターンから見ると今や債権取り崩しの段階でありまして、世界的な経済覇権が衰退をしておる。ちょうど人間のライフサイクルがあるのと同じように、経済覇権というのもどうもライフサイクルがあるようで、ちょうどポンドからドルに、約十五世紀からずっと見ていますと、百年に一遍くらいずつ経済覇権がかわってきておるという意味では、そういう見方をしますとドルもそろそろ終わりというふうなもののさまざまな症状ではないのかというお話が出てきているんですが、それがまたアメリカ債務になったかもしれませんが、ドルは何かに席を譲るような段階に来ているんでしょうか。ちょっとわかりませんか。
  63. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) 非常に予測の難しい問題かと思いますが、結論的にはそういう時期ではないと思います。理由は非常に簡単でありまして、現在の実物的世界におけるアメリカの力というのは世界最強と言っていいと思うんです、資源の保有量からいっても、生産性の高さからいっても、それから生産規模からいっても。この事実は客観的な事実であります。  それからもう一つ、今世界のどのような国も、自分が売ったものに対して支払うお金、これは大体ドルで受け取っている国が大部分であります。少なくともドルで払うと言って相手が断るという可能性は少ない。この事実から見てもドルは依然として世界通貨の位置はちゃんとついている。したがって、その通貨が事実上ドル資産という形で世界各国で保有されているというわけですので、そのドルを国際的な決済に使い、資産の蓄積に使っているという現段階では、ドルが衰退していくこと自体がすべての資産の保有国にとってのマイナスでありますので、いかなる国もドルの崩壊を望んでいないということであります。したがって、実物的世界から見てアメリカは最強であり、ドル資産という面からいえば、保有している他の国々がその喪失を望まないとすれば、あるいはドルの崩壊を望まないとすれば、ドルがほかに席を譲るはずもないというふうに判断しております。
  64. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。
  65. 中西珠子

    中西珠子君 本日は参考人の先生方、お忙しいところ貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。  まず私は、宮崎参考人がお述べになりました御意見について大蔵省外務省意見を聞きたいと思うんでございますが、宮崎参考人累積債務の問題の改善に関しまして、一つにはインフレなき持続的経済成長と市場開放の必要性、またそのための主要国の政策協調の必要性をお述べになり、また二つ目にはIMF、世銀などの国際金融機関の資金力の増大、またこれらの国際機関の機能の充実、そして日本の発言力の強化の必要性を強調されましたが、大蔵省外務省はこれらの点についての日本の寄与の増大についてどのようにお考えか、御意見をお聞きしたいと思います。
  66. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) 宮崎参考人のお述べになりました御意見、ほとんどすべて私ども同意見でございます。  国際機関における日本の発言権の強化につきましては、本院でもたびたび私どもの国際機関の案件を御審議いただきます際は附帯決議その他で御意見をいただいておるところでございまして、実は今国会におきましても、国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行の増資の法案を提出いたしまして、それにより我が国の出資シェアの拡大を図ることを御提案しておるところであります。また、先ほど宮崎参考人のお話に出ましたIMFにおける発言権におきましても、長年の悲願でございまして、従来より第五位の地位に甘んじておりますが、日本の最近の経済力からいたしますると米国に次ぐ地位を得ても当然だと考えております。IMFの増資の機会あるたびごとに日本のシェアの拡大を主張し続けてきておりますが、現在までのところまだ実現に至っていないという現状でございます。その点におきまして参考人の御意見に全く賛成でおりますし、引き続きこの努力を続けていきたいと思っております。
  67. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 外務省といたしましてもただいまの宮崎先生の御意見に全く同感でございます。資金の流れに関しましては、先ほどから大分議論が出ておりますので、若干私どもが考えております途上国発展あるいは開発の問題に占める市場開放であるとか成長の持つ重要性についてもう少し敷衍させていただきたいと思う次第でございます。  七〇年代におきましては一般に、石油もそうでございますし、一般一次産品につきましてもかなり高騰いたしまして、その間途上国の方でも、そういう一次産品の価格、あるいは一次産品を通ずる途上国輸出所得の増加が今後とも見込まれるという前提に立ったような形での、先ほどからも出ておりますけれども、言うなれば積極的な開発施策というものを志向していた嫌いがあるのではないか。ところが実情は、八〇年代に入りまして途上国輸出所得というものは相当程度減少しております。一つだけ数字を持っておりますけれども、八〇年におきます途上国全体の輸出所得というものを一〇〇といたしますと、八六年におきましてはその指数が七七まで下がってきている。一〇〇から七七という輸出所得の絶対額が減少傾向をたどっているというところに、この開発あるいは債務の問題の私どもは基本的な問題点があるのではないかと考えている次第でございます。したがいまして、途上国輸出所得を増加させるといいますと、途上国からの輸出の増大を図っていくということを先進国側としてどういうふうに協力していけるかということも一つの大きな問題であると考えている次第でございます。  その中で、先進国側の持続的な成長というのは、先進国側の需要拡大という形を通じまして、途上国の産品をそれだけ余計に受け入れるという意味で極めて重要な役割を果たすわけでございますし、市場の開放あるいは市場アクセスの改善という問題も全く同じでございます。例えば、たまたま今ガットではウルグアイ・ラウンドの交渉が行われておりますけれども、そのラウンドにおきましても先進国側は、ウルグアイ・ラウンドは途上国も入っておりますけれども、先進国側途上国側が合意いたしまして、そのラウンドの目的の一つには、開発途上国貿易拡大を通ずる経済発展支援しよう、そういう宣言ないし合意を踏まえまして、現在途上国に対する特別の支援といいますか、特別の待遇をどうして与えていくかということを一つの軸とした交渉がジュネーブで行われている次第でございます。  さらに、市場開放の一つの形態といたしまして、先生方御案内のとおり、特恵関税というものを先進国側採用いたしまして、途上国産品を特に優遇して先進国側の市場に入ってきやすいようにするという措置もとっている次第でございまして、そういう先進国側途上国からの輸入の促進、途上国側からの輸出の促進により大きな力を注いでいかなければいけないというように考えている次第でございます。
  68. 中西珠子

    中西珠子君 宮崎参考人から御要望のありました民間銀行債務国向け融資に対する無税の貸倒引当金率、これを高めることですね、少なくとも欧州各国並みに引き上げるべきだという御主張に対して大蔵省のお考えを伺います。
  69. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) これはかねてより銀行業界より要望の強いところでございます。何分にも財政再建途上でございまして、また全面的な税制改正の年にもことしは当たりますということで、残念ながら御要望にこたえられず、一%無税引当金の率は据え置きということになったのでございます。しかし、諸外国ともそのような備えを 強化しておるという全体の状況は十分認識しておりまして、またこの問題の重要性というものも十分承知しておりますので、今後の検討課題ということで受けとめております。
  70. 中西珠子

    中西珠子君 前向きの検討をお願いいたします。  外務省の久保田経済協力局審議官日本のODAが累積債務問題に果たす役割についてお話しになりまして、人づくり、国づくりのための経済援助、資金協力、技術協力の必要性を強調されましたんですが、その中で私は対アフリカ諸国等ノンプロジェクト無償資金協力について伺いたいと思います。  まず、このいただいた資料によりますと、六十三年―六十四年度は五億ドル程度の規模を考えておられるそうですけれども、個別の国への配分の基準というのはどういうふうにお考えになっているんですか。
  71. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 五億ドルの無償につきましては、サブサハラ・アフリカ諸国中心にしまして債務累積に悩んでおる国と。その場合に特に日本との経済協力関係に着目して、日本の援助による返済負担が生じておる国、これが一つございます。それから、世銀、IMF債務累積の解決の一手段としてそれぞれの途上国経済構造改善策というものをいろいろ助言しておるわけですが、こういうものに従って内政上努力を払っておると。全然それにそっぽを向いて言うことを聞かないという国は除外してそういう協調的な国、これも一つの基準としております。また日本との二国間関係にも考慮しておるという、これらの基準を設けております。
  72. 中西珠子

    中西珠子君 同じく対アフリカ諸国等ノンプロジェクト無償資金協力についてでありますが、このいただいた資料の四番目に「「適正な」使用の確保」とありますね。これは具体的にどのようになさっているんですか。
  73. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) これは一般の無償援助の際も行っていることで、さらにそれを強化しておるわけでございますが、交渉の結果相手方と、最終的には政府間で約束を結ぶわけでございます。その際の文書の中に適正な資金の使用を義務づけることをしておりますとともに、実際の資金を使うプロセスにおきまして、公正な機関としましてイギリスの公的なコンサルタントであるクラウンエージェント等を使いまして金の流れをよく見張って、使い方が適正かどうかというのを確保するという手段をとっております。
  74. 中西珠子

    中西珠子君 UNDPなどを使うということも書いてありますけれども、これはどのように使っていらっしゃるんですか。
  75. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 先生御指摘のUNDPも、まさに相手国側が日本から受け取った資金を所期の約束どおり、目的に対し適正な価格で必要物資を購入しているかどうかというような面で、先ほど申し上げましたイギリスのクラウンエージェントと同様にUNDP等も活用しております。
  76. 中西珠子

    中西珠子君 各国のUNDPのレズ・レップなんかを使っているということですか。
  77. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) はい、当該国に関係のあるUNDPでございます。
  78. 中西珠子

    中西珠子君 世銀とかIMF国際機関債務国に対して経済調整策、構造調整策ということをやらしているわけですね。これはなかなか効果が上がっていないところの方が多いのではないかと思うんですが、それで、一次産品依存体質からの脱却というふうなことで、一次産品の生産は減少するし、一方工業生産は全然まだだめだからその製品輸出というものも伸びていない。一次産品そのものの輸出もやはり価格の低迷などがあってなかなか輸出の増加というものが図られない。それで国民一人当たりの所得が非常に落ち込んでいるところが多いし、そして消費は減退して生活水準というものはますます下がってきて社会不安、ところによっては政治不安も起きてくるというふうな状態のところが多いわけですね。債務国国際機関から実施を迫られている、要求されている経済調整策、産業構造調整策というふうなものにょって、しわ寄せがたくさん、殊に農村の婦人とか子供に対して来ているということが問題にあちらこちらでなっているわけで、地域的にそういった問題を取り上げたセミナールとかシンポジウムとかそういうものを開くという動きが出ているわけなんですけれども、こういった面については外務省はどのようにお考えですか。  いろいろ日本のODAが、人づくり、国づくりのために資金協力、無償資金協力、技術協力をやっていくというのは非常に必要なんですけれども、一方やはり草の根の人たち、殊に困って、貧困で飢餓にあえいでいるような婦人とか子供というふうなそういった人たちの民生の安定とか福祉の向上というふうなことのために、もう少しODAをふやしてもらいたいと思うんですけれども、こういった今申し上げたような点についてはどのようなお考えですか。
  79. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) この本日の席では累積債務問題というところに焦点が当たっておりますが、先ほど宮崎……
  80. 中西珠子

    中西珠子君 累積債務の国にそういう現象が起きていると申し上げているわけです。
  81. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) はい。宮崎参考人もお話ししておられたように、トータルな問題として南北問題という観点から、当面非常に国際的なカタストロフィーを起こしかねない一兆二千億ドルに上る累積債務問題に対する資金手当てと同時に、最も大事なのはやはりその実体の産業なり経済なりをがっちりとつくり上げていく。先生御指摘の農村というものが途上国の場合通常最も重要なセクターを構成しているわけですが、その中における婦人の役割、地位等々、社会の安定も含めまして、そういう部分を強力にしてやることがトータルに見まして問題の解決にかかわっているんじゃないかということにつきましては、私も冒頭のお話、説明のところで御指摘申し上げた次第でございます。そういう観点から見ますと、援助、ODAの日本が果たす役割におきましても、振り返ってみますと途上国と長いつき合いでございますが、ある時期におきましては当初工業化というようなことに傾斜し、またある時期は農村、現在累積債務問題ということになっておりますけれども、やはり草の根レベルでの政治、社会の安定というものの果たす重要性というものは非常に大きいのじゃないかと思います。  現在、各国、受け取り国側もこういう面に非常に着目しておりまして、先週開かれた世銀、IMFの開発合同委員会におきましても、先進国のみならず途上国側もやはり貧困撲滅、環境問題というようなものを累積債務解決と同時に非常に重視する演説を行っております。  また、渡部教授御指摘の点で、かなり意欲的に経済開発を進めていったということに対する反省も非常に起こっているというのを私実感しております。大型の開発プロジェクトであるとかそういうものに対しては最近非常に手控える傾向がありまして、かなりまじめに必要最小限の資金を、これは公的によらず民間によらず借りるにとどめなければいけないという意識は広まっているのではないかというふうに感じております。  いずれにしましても、外務省としましてもこの草の根レベル、NGO、そういう活動を通じての支援というものにつきましては、GツーGの従来の援助に加えてさらに気を配って力を入れていきたいと思っている次第でございます。
  82. 中西珠子

    中西珠子君 経済開発即社会開発ではないわけでございますから、きめの細かいODAを今おっしゃったように進めていっていただきたいと思います。  まだ少し時間がございますので、アメリカのビル・ブラッドレー上院議員が、債務返済困難に直面しているLDCに対する一定期間の金利減免、元本支払い猶予というのを提案しておりますけれども、これについては大蔵省外務省どのようなお考えですか。
  83. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) ブラッドレー提案というのは、一昨年、八六年の六月に議会サミットというのが開かれまして、いわゆる有識者が、国会 議員あるいは学者、金融界あるいは官界の者が集まりましての債務問題に関する会議でございますが、そこで提案されたものでございます。  内容は、先生おっしゃいましたように、元本及び金利の減免ということで成長を促すということでございまして、概要を申しますと、ある一定の調整政策を約束した適格国に対して民間及び公的な債務残高金利を三%一年間引き下げる、つまりキャッピングと申しますが、高い金利を取らないというようなことを提案しております。また、元本についても民間及び公的の債務残高の元本を三%減免し償却する、また国際開発金融機関から構造調整融資を含め三十億ドル追加供与する、こういうかなり大胆な提案でございまして、当時、いわゆる先ほど申しましたような債務の繰り延べ、ニューマネー、それからIMFあるいはパリ・クラブというような一連の手続による債務救済策というものに対して非常に大胆な提案をブラッドレー議員がされたということで注目を浴びたわけでございます。しかし、民間銀行もしょせん商業的なべースに基づく営業を行っておりますし、それから政府の公的な貸し付けにおきましても、従来パリ・クラブその他においての取り扱いでもそのような大胆な債務の減免あるいは金利のキャッピングというようなものを行った例がございませんでしたので、革新的な提案ではありましたけれども、大方の支持は得られなかったというように承知しております。
  84. 内田勝久

    政府委員内田勝久君) 外務省といたしましても、ただいま大蔵省の方から説明ございましたとおり、同じように考えている次第でございます。民間の銀行に対する影響というものがやはりちょっと大き過ぎるんではないかということが第一点と、それから第二点は、こういう大胆な、一挙に債務問題を根本的に解決してしまうというようなやり方が、途上国成長のために本当にいいのかどうかということも考えなければいけないと思っておりますし、いずれにいたしましても、その他先進国国際機関等と協調の中でやっていかなければいけませんものですから、各国いろんな提案が出ていると思いますけれども、やはり一番大事なことはみんなが協調してやっていくことであるというように考えている次第でございます。
  85. 中西珠子

    中西珠子君 四月十六日の日経に、宮澤大蔵大臣とベーカー財務長官との「債務国救済の「哲学」で火花」という記事が出ていますね、ごらんになりましたか。その中で、「ブラッドレー上院議員のようなかなり進んだことを考えている人もいる」と宮澤さんがおっしゃっているんだそうですね。それで、国際機関を活用してやっていく、しかし大胆な対策もとっていかなくちゃいかぬというふうに宮澤さんもおっしゃっている。ベーカーさんと対立というか、火花を散らしたというふうに新聞はおもしろおかしく報道しているわけですが、この記事についての大蔵省外務省の受けとめ方はどうですか、これ出てよかったと思っていらっしゃいますか、ODAが宣伝になってよかったと思っていらっしゃるかどうか。
  86. 岩崎文哉

    政府委員岩崎文哉君) これは暫定委員会、それから開発合同委員会における宮澤大臣の発言及びベーカー財務長官の発言を対比させて囲みの新聞記事になったものでございますけれども、出席いたしました者から聞きますと、ベーカー財務長官の演説、それから宮澤大臣の演説というものの時点がある程度ずれて発言がなされておりまして、両者の間で意見の対立があったというような形にはなっておらない。また、その記事の一つポイントは、IMFを活用して大胆な債務問題の解決を行うというようなことについてベーカー長官は強く反対した、こういうようなことなんでございますけれども、ベーカー長官の発言の記録を見ましても、宮澤大臣の演説の中でございますように、IMFに、より強化された役割を果たすように提案するという点について、いわゆる債務戦略の中でIMF中心的な役割を担うという点ではベーカー長官もそれを否定してはいないということでございます。ベーカー長官が否定しておりますのは、包括的、一括的に民間債権をIMFその他の公的な機関が肩がわりする、これには強く反対する、こういうような言い方をしております。
  87. 中西珠子

    中西珠子君 外務省いかがですか。
  88. 久保田穰

    説明員(久保田穰君) 今、岩崎次長がお答えしたとおりだと思います。この問題は確かにコマーシャルマネー部分を含んでおりますので、政府サイドからは、我が方大蔵大臣もベーカー財務長官も、まともに扱う点で非常に難しい部分が含まれているのではないか。私も、先週世銀の方のこれは開発合同委員会でございますが出させていただきまして、そこでいろいろ仄聞した印象を総合しますと、そういう印象を受けた次第でございます。しかし、いずれにしましても世銀もIMFも、それが中心なりまして今後引き続きいろいろな知恵を絞って主要国の考え方も入れながら検討していくということになっていると理解しております。  またこれを、他方我が国のODAという立場から考えますと、やはり現在主要国は、少なくともLLDCのような最貧国に対しては無償によるグラソト化というような手を打ちつつありますし、政府資金の面のみに限っていえば、より緩やかな条件の形のものを考えていくというのがこれから検討課題になっていくのではないかなという印象を持っております。
  89. 中西珠子

    中西珠子君 日本のODAはグラントエレメント、グラントが少ないわけですから、大いにこの点では改善していただきたいと思います。  私、時間が来てしまいましたのでこれで質問終わりますが、どうも本当にきょうはありがとうございました。
  90. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうは参考人の方、どうもお忙しいところいろいろありがとうございました。いろいろ教えてもらいたいことがあったんですけれども、時間もありませんし、同僚議員の質問されたこととダブる点はすべて省略いたしまして、一つだけ質問いたしたいと思います。  私の質問の観点は、累積債務の問題は、先ほど宮崎参考人がこれは単なる金融の問題ではなしに経済全体の問題だと言われましたけれども、私はむしろ単なる経済問題でなしに政治問題ではないかという感じを持っているんですけれども、その観点から質問したいと思います。  渡部参考人、先ほどいろいろ分析されまして、私は大体当たっているんじゃないかと思うんですけれども、しかしその得た結論は非常にグルーミーなもので、絶望的とまでは言いませんけれども、なかなかこれは大変な問題であって、容易には解決できない問題じゃないか。  途上国がやっぱり債務の問題を解決するためには輸出をふやさなくちゃいけない、そのためには先進国の方がもっと輸入を拡大しなくてはいけない、インフレなき成長を図っていくためにはもっと途上国の商品を消費しなくちゃいけない、消費水準を高めていくと、先ほどおっしゃったデモンストレーション効果で途上国の方も生活水準の引き上げを要求してくるだろう、それを認めていけばインフレーションになるし、社会不安が起こってくるだろう、あるいは資金の流出が行われていくだろう、先ほどおっしゃいましたように非常に野心的な開発計画をやっている、これが累積債務をもたらした非常に大きな一つの原因である、私もそのとおりだと思うんです。しかし、開発計画を抑えていくようにすると、やはり生活水準の今までのような上昇はできない、低下をもたらす、これもやはり同じように社会不安をもたらしていくだろうと思う。その場合に、果たしていわゆる民主主義的な政治のやり方でこの問題を解決できるか。これは経済問題として見ていけば、こっちを抑えていくとこっちが膨れてくる、こっちの膨れたところを抑えていきゃまたこっちが膨れていく、何かモグラたたきをやっているようなもので、これをやっぱり解決するのはかなり強力な政権がなくてはいけない。政権の基盤が非常にもろいわけですから、生活不安、社会不安が起こってくれば、やはりそれに対して譲歩していくだろうと思う。独裁政治という言葉を使うと非常に誤解 を招くんですけれども、非常に強権的な政治が行われなければこの問題は解決できないんじゃないかと思う。  NICSなんかの成長の過程を見ましても、必ずしも民主主義の国とは言えない。韓国は最近民主化の方向に進みつつありますけれども、やはりかなり強権的な政治を行っていた。シンガポールにしてもそうだと思うんですけれども。そういったふうに、つまり民主化を要求することはかえって回り回って累積債務の問題をかえって悪化させるんじゃないかというふうな印象を受けるんですけれども、渡部参考人、どういうふうにお考えでしょうか。
  91. 渡部福太郎

    参考人渡部福太郎君) 今の問題につきましては、恐らくいろんな意見があり得ると思います。  例えばジョーン・ロビンソンのような立場の人がこの問題を見たら、恐らく関先生が言われるような方向つまり議会制民主主義が妥当性を持つためにはある種の生産力が上がらなければいけないし、ある種の生活の豊かさが必要である。それがないときにはある種の強権的な、つまり中央集権的な計画経済をある程度容認しなければならないと言っていたわけですが、事実、確かにうまくいっている国は何のかんの言われながらもやはりかなり中央集権的な政府であったと思います。したがって、もしこの歴史的な事実をこれからも当てはめなければいけないとすれば、議会制民主主義を強力に実行しない限りはだめであるという政策先進国がとっていったらなかなかうまいこといかないかもしれない、こういう一つの結論は出てくるかと思います。  ただ、その種の問題が非常に困難な、現在厄介な問題を引き起こしているのは、それでは中央集権的なそういう政府が本当に賢人政府であるのかという問題だと思うんです。おおむね中央集権的な政府はしばしば非常に腐敗した政府であることが多いわけであります。したがって、腐敗した政府であることが多いために、実はそれが結局先進諸国からの援助なりあるいは各民間企業からの投資なりあるいは資金援助等が、融資等が有効に使われずにしまう。そうして、見た目だけ派手なそういう政策がとられていく結果、一見発展政策がとられているかのように見えながら実態が進まない、そういう状況になってしまっているところも結構あるわけです。  したがって、私は必ずしも、ジョーン・ロビンソンが言うように、生活水準が豊かでない国はある程度中央集権でやっていけばうまくいくんだというふうに言っていいのかどうか。少なくとも現実のデータに即して見る限りは疑問を持っているわけです。つまり、結果としてうまくいった国もあれば全然だめになってしまっている国もある。つまり、必ずしもその中央集権的なやり方が常にいい結果を生むとは限らない。その意味で、そういうところがもし賢人政府であればうまくいくかもしれない。しかし、果たしてそういう政府に賢人政府現状で期待できるんだろうかということを考えると、ある程度議会制民主主義に近い方式をやはりとってもらった方がまだ社会的、政治的なそういう亀裂が深まらないで済むのではないかというふうに思っております。  そうしますと当然、ペシミズムと今言われたと思うんですけれども、私は必ずしもペシミズムではなくて、先進国も当事国も余りにも問題を短期間に解決しようとし過ぎているというふうに私は見ているわけであります。先ほどは野心的で性急なせっかちな発展政策というふうな言い方をいたしましたが、同時に南北問題なりあるいはこの債務累積問題なりの解決策と言っている場合も、解決という言葉が非常に誤解を招きやすいのは、いかにも何か政策をうまくやりさえすればあっという間にこの問題が解決するかのような印象を与えてしまうというところに私は問題があるような気がします。
  92. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かにこういう問題、非常に気長にやっていかなくちゃいけないということはおっしゃるとおりだし、また強権的なあるいは独裁政治的な国が既得権益の擁護なんかになり、あるいは腐敗した政権になりやすいということもおっしゃるとおりだろうと思う。アジアで言いましても、フィリピンなんかその例だと思います。シンガポールはむしろ逆の例ではないかと思うんですけれども。  その点で私、アメリカの南米に対する政策ですね、これ外務省にお伺いしたいんだけれども、ちょっとアメリカ政策は自分の国の尺度をそのまま中南米途上国なんかに当てはめて早急な民主化を要求し過ぎるんじゃないか。かえって今申したような国内の混乱、経済的な混乱を招いている。すべての国がそうだと言うわけじゃございませんけれども、かえって招いている点があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、中南米局としてアメリカ中南米に対しての政策をどういうふうに評価しておられるか。
  93. 成田右文

    説明員(成田右文君) 先生御指摘の点は、非常に難しい問題ではございますけれども、ただ、中長期的に見て民主化が進むことがそれぞれの、中南米に限らず将来の安定と発展を生むということについてはだれも異論がないところだろうと思います。したがいまして、それをどういう格好で持っていくかということで、先生も御指摘の例えば性急にし過ぎるんじゃないかとか、あるいは自分たちのやり方を押しつけ過ぎるんじゃないかという見方も出てくるんではないかと思います。ただ、そこはどれを基準にして性急にし過ぎるかとかいう問題はあるわけですけれども、やはり国によっては早急な民主化がないと逆に、逆の方向で非常に悪くなってしまうという国もございますので、そういう国についてはできるだけ悪い方に行ってしまわない時点でやはり民主化を図っていくということもまた必要な場面もあるということでございまして、したがって国によってあるときは早急にそういうものをやっぱりやっていかなきゃいけないんじゃないかという国もありましょうし、もうちょっとゆったりと現状を踏まえてやっていくべき国もあろうかと思いますが、ただ基本は、アメリカがどうこうするという問題よりも、その国自体がそういう必要に目覚めて自分たちでそういう方向に持っていくんだということだろうと思います。
  94. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 誤解を招かないようにちょっとつけ加えておきますけれども、私はやはり将来の目標としては民主化を進めていくべきである。ただし、ちょうどその発展計画が余りにアンビシャスであるとかえって弊害を招くのと同じように、民主化ということも余り急速にアンビシャスにやるとかえって逆の弊害を招くことがある。そのことを言いたかったわけです。  終わります。
  95. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 以上で質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  御多忙の中を長時間御出席をいただきまして貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。本調査会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  拝聴いたしました御意見は今後の調査参考にいたしたいと存じております。本日はありがとうございました。  また、大蔵省外務省、御苦労さまでございました。     ─────────────
  96. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) それでは次に、先般当調査会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。堀江正夫君。
  97. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 去る二月三日から五日までの三日間にわたり本調査会一行、すなわち矢田部理事、和田理事、関理事、真鍋委員、鈴木委員、永野委員志苫委員、田委員、それに私、堀江正夫の九名が沖縄県に派遣され、外交総合安全保障に関する実情調査してまいりました。  第一日目は、航空自衛隊南西航空混成団、陸上自衛隊第一混成団及び海上自衛隊第五航空群を訪れ、それぞれから業務の概況について説明を聴取 し、主要施設を視察いたしました。  航空自衛隊南西航空混成団は、南西防衛区域における防空行動及び領空侵犯に対する措置を主な任務としております。本混成団は、第八三航空隊、南西航空警戒管制隊、第五高射群、南西航空施設隊及び南西航空音楽隊から編成されており、第八三航空隊は、F4EJ戦闘機を装備し、領空侵犯に対する措置等の任務を遂行しております。  陸上自衛隊第一混成団は、教育訓練を主軸として、有事に即応し得る精強部隊の育成を目標に隊務を運営しており、沖縄県を警備隊区とし、その防衛、警備及び災害派遣を担任しております。また、沖縄県の特性上、不発弾処理も重要な任務としております。本混成団は、基幹部隊の第一混成群、第六高射群と第一〇一飛行隊、第一〇一後方支援隊等から編成されております。  海上自衛隊第五航空群は、周辺海域の防衛、警備、災害派遣、第九救難区域における航空救難業務及びこれらを遂行するために必要な教育訓練を主な任務としております。本航空群は、第五航空隊、第五支援整備隊及び那覇航空隊から編成されており、主要装備としては、P2J型対潜哨戒機を約十機保有しております。  なお、三自衛隊視察の間、陸上自衛隊のヘリコプターにより、沖縄本島を上空より視察いたしました。天候は曇り時々晴れという状況ではありましたが、視界は十分きき、多くの米軍基地、施設等を中心に、地理的に沖縄本島の全体像を把握することができました。  第二日目は、午前中、まず那覇防衛施設局を訪れ、その業務の概況について説明を聴取いたしました。  本施設局の所掌事務の主たるものは、自衛隊施設の取得及び管理並びに駐留軍の使用に供する施設、区域の取得、提供、使用条件の変更及び返還に関する事務並びにこれらに関する補償事務、地位協定第十八条に基づく駐留軍事故の損害賠償請求の処理及び防衛施設周辺の生活環境の整備等であります。  次いで、米軍牧港補給地区を視察いたしました。  本補給地区は浦添市にあり、昭和五十三年から米海兵隊管理下にあります。面積は、約二百五十七へクタールであり、現在軍人が約三千七百名、全体で約五千名が本補給地区で活動しております。なお、本補給地区では、提供施設整備予算による隊舎、住宅が建てられております。  午後は、沖縄県庁を訪れ、米軍基地、県の国際交流について概況説明を聴取し、米軍基地の整理縮小、パイナップル産業の振興対策に関する要望書を受理いたしました。要望書では、米軍基地の返還がはかどっていないこと、ガットの対日勧告を受け入れれば、パイナップル産業は壊滅的打撃を受けることが特に強調されております。  次いで、沖縄県議会を訪れ、米軍基地関係特別委員会と米軍基地問題について懇談を行いました。  本特別委員会各会派の意見は、県民の最大の政治課題は、米軍基地問題であること、沖縄県は日本発展に大きな貢献を余儀なくされてきたこと、沖縄社会経済発展のためにも空港、港湾を全面返還すべきであること、復帰の目標は、基地がなくなること、あるいは少なくとも基地についても本土並み、そして振興計画による経済基盤の整備であること、爆音や実弾射撃訓練による被弾等のさまざまな演習被害が生じており、これらは県民の生命を脅かしていること、民間空港の安全という観点から、米軍機の強行着陸はあってはならないこと、基地の沖縄集中を見直し、全国的な分散を図るべきであること等でありました。  次いで、南部戦跡を訪れ、国立戦没者墓苑、平和祈念堂に参拝し、平和祈念資料館を視察いたしました。  第三日目は、午前中、電源開発株式会社の石川石炭火力発電所を訪れ、その業務の概況について説明を聴取し、主要な設備を視察いたしました。  本発電所は、一〇〇%石油に依存していた沖縄の電力供給の脱石油化、電源の多様化を図るため、電源開発株式会社が建設した沖縄県初の海外炭による石炭火力発電所であります。現在、電力需要量の約五〇%弱を賄うまでに至っており、沖縄県における重要な電力供給源としての役割な果たしております。  午後は、国際協力事業団の沖縄国際センターを訪れ、その業務の概況について説明を聴取し、主要施設を視察し、研修生との懇談を行いました。  本センターは、我が国の政府ベースの技術協力の一環として、ASEAN諸国との約束に基づき、各種レベルの行政官、技術者、研究者等を技術研修員として受け入れ、技術の普及、あるいはその水準の向上を図る研修員受け入れ事業を実施する場としての機能を重視しております。  以上、先般の委員派遣の概要について簡単に御報告申し上げましたが、調査の詳細につきましては、別途報告書を会長に提出いたしておりますので、本日の会議録に掲載させていただけますよう、会長において取り計らいをお願いを申し上げます。
  98. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ただいま御要望のございました詳細にわたる報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 御異議ないものと認め、さように取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会