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1988-05-11 第112回国会 参議院 科学技術特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十一日(水曜日)    午後二時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         飯田 忠雄君     理 事                 後藤 正夫君                 出口 廣光君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君     委 員                 岡野  裕君                 岡部 三郎君                 木宮 和彦君                 志村 哲良君                 高平 公友君                 長谷川 信君                 林  寛子君                 前島英三郎君                 最上  進君                 穐山  篤君                 稲村 稔夫君                 松前 達郎君                 吉井 英勝君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      見学 信敬君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    石塚  貢君        科学技術庁原子        力安全局次長   緒方謙二郎君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        外務省国際連合        局原子力課長   中島  明君     ─────────────   本日の会議に付した案件核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 後藤正夫

    後藤正夫君 本日は、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。  ただ、その前に質疑に先立ちまして、先般、科学技術庁長官には今月の一日から七日までアメリカ出張をされました。本当に御苦労さまでございました。その御出張の期間中に向こう科学技術関係のいろいろな人とお会いになって向こう科学技術の情勢あるいは日本科学技術に対する評価であるとか、あるいは長官自身がいろいろ見たり聞いたりされてお感じになったこと等がございましたらば、この際に伺っておきたいと思いますのでお願いをいたしたいと思います。
  4. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 後藤先生からお話しのとおり、私は一日から七日までアメリカに行ってまいりました。たくさんの方々にお目にかかってまいりましたけれども、いずれの方からも大変歓迎をしていただきましたし、また日本科学技術に対しまして大きな期待を表明していただきました。  若干個々の方々との会談に触れますけれども、まずグラハム大統領科学顧問との会談におきましては、日米科学技術協力協定につきまして大筋がまとまりまして、今ワーディングの作業をしているわけでございますけれども、この大筋まとまった日米科学技術協力協定につきましてレーガン大統領も非常に重視をしております。また、本協定締結は非常に有意義であると考えている旨のレーガン大統領からのメッセージが私に伝えられております。そしてまた、この協定締結によりまして日米科学技術協力関係の促進を一層図りたいとの希望が申し述べられました。  また、フレッチャーNASA長官からは、宇宙ステーション計画における日米協力早期開始早期協力を始めたい、そういうことを強く望むという希望が表明されました。  ヘリントン・エネルギー省長官からは、新日米原子力協定早期発効への期待及び日本研究機関核融合等研究施設米国研究者積極的活用期待する旨が申し述べられたところでございます。  さらにグラハム大統領科学顧問ブロック国立科学技術財団長官プレス科学アカデミー総裁等との会談におきましては、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム、七月に発足予定でございます科学技術政策研究所、さらに六十三年度から始めます科学技術庁フェローシップ制度等につきまして多大の関心を示しておりました。  全般として私としては、今回の訪米日米間の相互理解を深めるとともに、日米間の科学技術協力をより一層推進する契機となったものと認識をしております。  さらに科学技術分野における日米間の意見交換はいろいろの段階でやっておりますし、それぞれ重要でございますけれども各層各界会談も重要でございますけれども、特にトップレベル会談が非常に有意義であるということを認識をいたしました。できるだけトップレベル会談が今後も続けられるように私自身努力をいたしますし、期待をしてまいりたいと考えております。先ほども触れましたけれども米側我が国に対する期待評価が予想以上に高いということも改めて認識をいたしました。  科学技術分野における国際貢献は、我が国科学技術政策基本である科学技術政策大綱の三本柱の一つとしてうたっておるわけでございますけれども、この三本柱の一つでございます国際化といいますか、国際貢献につきまして今後もこの訪米を機としてさらに決意を新たにして努力をしてまいりたい、このように考えております。
  5. 後藤正夫

    後藤正夫君 どうも御苦労さまでございました。  それでは、本論に入って質問をさしていただきたいと存じます。  我が国平和利用のための原子力研究開発に着手いたしましてから既に三十年以上の歳月が経過いたしております。この間に私ども生活の幅広い分野におきまして原子力開発利用成果が着実に進展をしているということは、我が国原子力発電が既に総発電量の三割近い二八%弱を賄うに至っているというようなことからも明らかなことであると思います。原子力発電は安定した運 転実績と世界的にも高い評価を私ども受けていると思っておりますが、その信頼性の高いということ、我が国原子力は今や国民生活に欠くことのできないエネルギー源といたしましてその地位を確立しているというふうに考えられるのであります。  また、現在青森県の下北地区に具体的な計画が進められております核燃料サイクルの確立に関する事業は、我が国のいわゆるエネルギーのセキュリティーの確保、保障と申しますか、これを確保していきますためにも極めて重要な事業であるというふうに考えられますので、その円滑な推進を図ることがぜひ必要であると存じます。  このような我が国原子力開発利用は、関係者方々努力によりまして着実に進展をしているのでありますけれども、今後のことを考えるに当たりまして、原子力開発そのものの歴史、原子力の世界的な活動についてどのように世界各国がこれを評価してきているかということについてもう一度振り返ってみることも必要であろうかと思います。今後さらに環境変化というものも大きくなるでありましょうし、社会的ないろいろな変化に対応する努力も必要な時期が来るように思いますときに、一層その感を深くいたすのでございます。  と申しますのも、本日当委員会議題となっておりますこの核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案目的としております核物質防護措置は、いわゆる核拡散防止原子力の安全な平和利用を図るという上におきまして大きな国際的な政治の流れの中でも重要な意味を持っているものと、そのように考えられるからでございます。  原子力をめぐる国際環境を考えますときに、核物質防護、フィジカルプロテクション、PPと普通言っておりますが、以後PPという言葉を使わしていただきたいと思いますが、PPを正面から取り上げた本改正案の意義というものは極めて大きいものであるというように確信をいたします。  しかし、核物質防護に関する問題は、単に一つの国の政策だけにとどまらない国際的に宿命的な問題であるというように思われます。  今申し上げましたような認識のもとにまず政府にお伺いいたしたいのは、核物質防護に関する国際的な検討というものがどのように行われているかということでございます。それについてまずお答えいただきたいと思います。
  6. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) お答え申し上げます。  近年、核拡散防止に関する国際的な検討の場におきましても、核物質防護が非常に重要な課題一つであるというふうに認識されてきております。こうした状況を受けまして国際原子力機関IAEA核物質防護のための指針を取りまとめ、加盟各国に対し勧告を行ったところでございます。初版の勧告昭和五十年でございまして、昭和五十二年にはその改定版勧告されたわけでございます。さらに国際輸送中の核物質に対しましては、一定の防護措置が講じられるべきことを主眼とする核物質防護に関する条約というものが昭和五十五年より署名のために開放され、昨年二月にこれが発効したところは御案内のとおりでございます。  また、核物質防護核物質供給のための基本要件として認識されており、そしてまた、いわゆるロンドン・ガイドラインと言われますもの、これは昭和五十三年に公表されておりますけれども、そういったものでございますとか、あるいは日加日豪、そういった二国間の原子力協定の中におきましてこのPPというものが中心的な事項の一つとして認識されてきているわけでございます。  このように、核物質防護につきまして適切に対応していくということは原子力先進国たる我が国責務となっておりまして、今回の法改正は、こうした状況を踏まえまして我が国として核物質防護に関する条約への加入に当たりまして核物質防護に取り組む我が国政策意図というものを内外に明らかにし、我が国原子力活動への国際的な信頼性の一層の向上に努めるということにしたものでございます。
  7. 後藤正夫

    後藤正夫君 一口に核物質防護措置PP措置といいましても、その実施に当たりましては、防護しなければならない核物質の置かれております状況であるとか、あるいは量であるとか、あるいは種類であるとか、さまざまな要素を取り扱っている事業者がみずからの問題としてこれを検討してその有効な実施を図るという体制を確立しなければならないと思います。例えば輸送の際のPPについて考えてみますと、陸上輸送の場合あるいは海上輸送の場合、さらに航空輸送といったような輸送手段、あるいは輸送の道順、経路等状況を踏まえなければ十分な体制をとるということはできないわけであります。社会状況核物質防護措置検討するに当たりまして考慮すべき大きな要因であると思います。我が国のように銃砲等の所持が禁止されております地域もありますし、また動乱であるとかあるいは政治的ないろいろなトラブル、カタストロフィー等が起きておりますような地域におきましては、またその地域に相応した核物質防護に関する取り組み方というものもおのずからあるというように、いろいろな場合によって異なってくるというように思います。  先般東海村の施設を視察いたしました際にも、PPの問題は、最先端技術を使うということばかりでなく、人間の頭脳の力によらなければならない部分がかなり大きいということも私は痛感をいたしたのであります。我が国におけるPP措置、これもまた我が国国情に即したものでなければならない。しかしそれは国際的な水準から見ましても満足のいくもの、それはリライアビリティー、信頼性の問題、あるいはライアビリティーといいますか、安全性の問題、そういう問題からも国際的な水準から見て満足のいくものでなければならない、そのように考えられます。  私どもは今日本における核物質防護法律を制定しようとしているわけでありますが、実際の状況についてまだいろいろと把握しなければならない問題があると思います。当委員会は去る九日の日に茨城県の東海村の原子力施設状況について私も参加してこれを見てその点を切実に感じたわけでありますけれども、現在、我が国における核物質防護の対策ということにつきまして科技庁としてはどういうようにされているかということにつきまして簡単に御説明をいただきたいと思います。
  8. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 我が国におきます核物質防護につきましては、国際原子力機関、先ほど申し上げましたIAEAにおきます核物質防護に関する検討など、こういった国際的な動向を踏まえまして、事業所等において講じられるべき核物質防護要件というものが昭和五十六年に原子力委員会によって決定されております。現在、この原子力委員会決定を踏まえまして関係行政機関所要施策実施してきております。そして、その現状はおおむね私ども国際水準に達しているというふうに考えている次第でございます。
  9. 後藤正夫

    後藤正夫君 ただいまの御説明によりますと、我が国核物質防護措置というのは、昭和五十六年の原子力委員会決定に基づいて実施されているものであり、国際的な水準にあるということで、実施面では何ら問題がないというふうに理解されると思います。  先ほどの核物質防護に関する国際的な検討についての御説明にもありました核物質防護に関する条約、これにつきましては、私はこの分野における世界的なコンセンサスであると考えており、先刻本会議においてこの条約我が国としてもこれに加入すべきものという意思決定を行ったところでありますけれども、今回の改正法案内容の一部はこの条約への加入のために必要な条項が盛り込まれているようであります。しかし、これにつきましては外務委員会審議が行われておりまして、この委員会での審議ではございませんでしたので、この委員会におきましても、この条約の 概要につきまして御説明をいただいておきたいと思います。
  10. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) この核物質防護に関する条約は、国際輸送中の平和目的核物質防護につきまして規定しております。また、このほか、核物質に関する犯罪処罰等について規定しているものでございます。  具体的には、条約は、国際輸送中の核物質がその条約附属書に記載されておりますところの水準というものの適切な防護水準を満たすべきことを求めているほか、核物質によります殺人でございますとかあるいは傷害等の行為を、外国において行われた場合も含め、いわゆる国外犯も含め、それを各国国内法によって処罰すべきことが締約国に対し求められているものでございます。
  11. 後藤正夫

    後藤正夫君 今の御説明を伺っておりますと、我が国原子力のいわば先進国であると私どもは思っておりますけれども、今後とも原子力開発利用を着実に実施してまいりますためには、国際的な責務を果たすためにも、この核物質防護に関する条約に早急に加入するという判断をしたことは、これは正しかったことである、よかったことである、そのように考えます。  そこでお伺いいたしたいのは、核物質防護に関する条約への各国加入状況は一体どのようになっているか、また、我が国加入がかなりおくれた、おくれているというような理由につきましても御説明を伺いたいと思います。
  12. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 本日の段階におきますところの核物質防護に関する条約締約国は、五月四日、つい最近でございますが、メキシコが加入をしたことによりまして現在二十三カ国というふうになっております。  そこで、我が国では、かねてより関係省庁間で本条約への加入のために必要な条約の解釈でございますとか、あるいは必要な国内法体制についてこれまで協議を行ってまいりました。この条約は昨年の二月に発効いたしましたけれども、このほど政府部内における所要検討も終了したため、我が国といたしましても同条約早期加入すべきとの立場から今国会でこのための承認を求めることとし、あわせてこれに必要な措置を含めた規制法改正案を作成したものでございます。  特にそのおくれました理由といたしましては、先ほどちょっと触れましたとおり、国外犯処罰規定といったものを我が国国内法でどのように位置づけていくかということも一つの非常に大きな論点であったわけでございますけれども、幸いにいたしまして昨年の刑法改正によりまして、国際条約で求められておる国外犯処罰規定につきましては、我が国刑法規定されておる刑罰についてはそれを罰することができるといういわゆる刑法の第四条ノ二の規定が新たに設けられたことによりましてそこの解決が図られたということも一つの大きな環境変化であったわけでございます。
  13. 後藤正夫

    後藤正夫君 現在核物質防護に関する条約とは別に、新しい日米原子力協定、この承認案件衆議院に付託されているのでありますけれども、これらの二つの国際的な約束は、制度的には一方は多国間の条約であり、一方は日米の二国間の条約というふうに承知しております。つまり直接関係のない別個のものであるというように承知しておりますが、新日米原子力協定の第七条には協定の対象の核物質に関して核物質防護措置が求められていることと、さらには包括同意のもとにおけるプルトニウムの航空輸送に関するガイドライン内容の多くが、この防護措置一つのメルクマールといいますか、指針となっているようなことから考えますと、両者がかなり混同されやすいような感じがいたすわけであります。  核物質防護措置法律上明確化する今回の法改正一つ目的は、このPPに関する条約への我が国加入に必要な措置を講ずることであると思いますけれども、この二つ条約と今回のこの改正法との関係を頭の中で整理しておかないとどうもわかりにくいというように思いますので、この点につきまして、今回の改正法核物質防護に関する条約への加入との関係は一体どのようになっているのか、また、今回の改正法と新日米原子力協定批准との関係はどのようなことになるのか。さらに、これらの二つの国際的な約束相互関係等につきましてひとつわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  14. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 今回の規制法改正法案とそれから核物質防護に関する条約への加入との関係につきましては、今回の改正規定のうち、輸送中の核物質防護に関する責任の移転に関する確認の条項規制法の五十九条の三にございますが、そういった条項でございますとか、あるいは核物質を用いた犯罪処罰規定、これは改正法案の七十六条の二等でございますが、こういった規定につきましては、これは我が国核物質防護に関する条約加入するために必要不可欠な規定でございます。  また、今回の改正法と新日米原子力協力協定批准との関係でございますが、これは全く無関係というふうに申し上げることができるかと思います。すなわち新日米原子力協力協定規定されております核物質防護条項は、実態的にその実施が担保されておればそれで十分なものでございまして、また、かつ米国側現状我が国におけるPP措置で十分であるということについて了解をいたしておりますので、この新日米原子力協力協定批准をするために今回の法律改正を行うものではないということを明確に申し上げることができるかと思います。  それからさらに、これら二つ国際約束関係でございますが、これも法制度的には無関係でございます。ただし、核物質防護に関する条約実施というのは、これは結果として新日米原子力協力協定実施そのものに資するものであるというふうに言うことができようかと思います。
  15. 後藤正夫

    後藤正夫君 次に、原子力委員会活動との関係について伺いたいと思います。  我が国における原子力研究開発及び利用に関する基本的な施策につきましては、昭和三十一年以来原子力委員会審議をされているわけでありますけれども核物質防護という我が国原子力政策の根幹にかかわる重要な課題につきまして、原子力委員会としてはどのようにこれに取り組むべきであるかという、その問題について伺いたいと思います。  まず、原子力委員会昭和五十六年三月に我が国における核物質防護あり方について決定を行っているというふうに聞いておりますが、その内容というのはどのような内容のものであるか。  また、核物質防護に関する国際的な枠組みとも言える核物質防護に関する条約への我が国加入について、原子力委員会としてはどのような判断とどのような認識をされているか、そういう問題について御意見を伺いたいと思います。
  16. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 昭和五十六年の原子力委員会決定は、核物質防護に関する国際的な検討成果でございます国際原子力機関、ここのガイドライン内容を踏まえまして、我が国国情に即した形で核物質防護というもののあり方を具体的に示したものでございます。  さらに、この核物質防護に関する条約に対する原子力委員会の対応でございますが、同委員会昭和五十六年の決定におきまして、この条約批准に備えまして諸般の準備を進める必要があるというふうに指摘されたところでございますが、この条約が、御案内のとおり、昨年の二月に発効したということにかんがみまして、昨年の十二月には同条約早期加入すべきこと、それから加入するに必要な国内法の整備をすること、それから五十六年に原子力委員会決定いたしました基準、そういったものを法令上明確に位置づけることといったような決定を昨年の十二月に原子力委員会決定をしたところでございます。さらに、ことしに入りまして、去る三月八日には今回の法改正案内容につきまして、それは適当であるといった御判断をいただいているところでございます。
  17. 後藤正夫

    後藤正夫君 今日我が国におきましては、既に 原子力による発電量は全体の発電量の二八%に達しているという状況にあります。原子力我が国におけるエネルギー供給源としては既に定着していると言えるだろうと思います。しかしながら、今後核燃料サイクル事業本格化を迎えて核燃料の安定的な供給確保ということがますます重要になってくると考えざるを得ませんが、我が国の国際的な立場ということを考えますときに、我が国原子力活動について国際的な信頼を得ることが何よりも重要なことであり、十分なPP措置を講ずることはその基本的な要件であることは当然のことであります。  そういう意味から、今や原子力開発利用を行うすべての国が守るべき共通の枠組みとして認識されつつありますPPに関する条約核物質防護に関する条約我が国として一日も早く加入するとともに、我が国国情に即した核物質防護体制をさらに強化をするということが急がれていたのは当然のことであったと言えると思います。したがって、原子力委員会決定は適切なものであり、政府はこの決定内容を実現するために最大限の努力を払うということが我が国原子力平和利用基本であり、ひいては日本国民の負託にもこたえる道であると、そのように考えられます。  本日提案されております原子炉等規制法の一部改正案は、我が国といたしましてこのようなPPという国際的な課題にいかに取り組むかということにつきましての政府考え方をも具体的に示しているものというように理解をいたすものでありますが、今回の改正に当たって基本的な考え方は一体どういうものであったか、また法案内容につきましては、配付された資料あるいは趣旨説明でも承ってはおりますけれども、この点につきまして改めてここで御説明をいただきたいと思います。
  18. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 今回の法改正は、我が国といたしまして、核物質防護に関する条約への加入に際して、核物質防護に取り組む我が国政策意図といったものを内外に明らかにするとともに、核物質防護体制についてさらに万全を期することによって、我が国原子力活動への国際的な信頼性の一層の向上及び原子力先進国としての国際的な責務の履行に努めることとしたものでございます。  それから、法案内容でございますが、三点あろうかと思います。  まず第一点は、原子力施設における核物質防護に関する規定の整備でございます。その内容といたしましては、原子力事業者に対し、核物質防護のための区域の設定を初めとする核物質防護のために必要な措置の基準の明確化を行い、また核物質防護規定の認可あるいは核物質防護管理者の選任といったものを義務づけることといたしたものでございます。  第二点は、輸送時の核物質防護に関する規定の整備でございます。内容といたしましては、核物質輸送に関する防護措置の義務づけを行うとともに、輸送の全行程における核物質防護に関する責任体制の明確化を行うということにいたしております。  それから第三点は、核物質防護に関する条約が求めております核物質を用いた犯罪に関する所要の罰則の整備でございます。内容といたしましては、核物質防護に関する条約は、その締約国に対しまして故意に行う核物質の不法な入手あるいは不法な利用に関する犯罪の処罰を義務づけておりまして、このうち、現行の我が国刑法では十分に対応ができないものにつきまして所要の罰則の整備をすることといたしたものでございます。
  19. 後藤正夫

    後藤正夫君 ただいまの御説明によりますと、核物質を用いた犯罪の処罰に関して所要の罰則の整備を行うということがこの法案内容一つであるということであります。核物質利用する犯罪は、現実にそれが行われた場合には、単に個人の生命、身体、財産等の法益の侵害があるばかりでなく、核物質の有する危険性というものがあるがゆえにその影響が波及する範囲というものは極めて広く、また大きな社会不安をも引き起こす可能性があるという点でこれは大きな問題であると思います。したがって、こういう問題につきましては、厳重な罰則をも設けるのは当然のことであると思います。また、そのような犯罪を厳しく取り締まることが我が国において原子力平和利用を着実に今後進めていくという上からも極めて重要であると思います。  そこで、今回の法改正の中におきまして、特に罰則についての考え方及びその内容はどのようなものであるか。また、これ以外の条約で定める核物質に関連する犯罪の処罰はどういう方法で行うのかというような点について御説明願います。
  20. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 罰則の整備でございますが、これは条約加入のために必要かつ十分な範囲内で行うということで対処いたしてございます。それで今回の立法は、条約が定める犯罪行為のうち、したがいまして現行法では十分に対応できない核物質を用いた危険犯等を処罰する規定を設けたものでございます。  すなわち、今回の改正法案で定めようとしております罰則規定二つございますが、一つは、その危険犯に対する準備でございます。これは核物質等を不法に使用いたしまして、みだりに使用するといいますか、みだりに使用いたしまして、それによって核分裂を起こさせたりあるいは放射線を発生させるということ、そのことによって危険な状態をつくるという、この三つの要件、それぞれの要件についてそれを故意に行うというような犯罪につきまして、これを危険犯として、故意犯として罰するというのが趣旨でございまして、我が国刑法ではそのような規定がないということで新たに設けたものでございます。  それからもう一つは、脅迫罪、それから要求罪と言われるものでございますが、これは核物質を用いて人を危険な状態に陥れるというような、そういうことを脅迫の材料にして相手を脅迫する。その際に、実際に被害を受ける人と脅迫される人が同一人物でなくても、第三者の関係であっても罰しなくてはいけないというのが条約の要求でございますので、日本刑法ではそこまでは読み切れないというふうに解釈されておりまして、その辺の手当てを行ったものでございます。  また、そういった核物質を盗取するということで脅迫をして相手に何かを強要する、そういった類型、そういった形の犯罪につきましても、我が国の現在の刑法では第三者脅迫という点においてカバーされていないという考え方がございまして、その点を今回の法律改正でカバーをしようということにいたしたものでございます。  なお、それ以外の条約が処罰を求めております核物質の窃取あるいは強盗あるいは殺人、傷害、そういったものにつきましては、日本の現行刑法でカバーされているということになっておるわけでございます。
  21. 後藤正夫

    後藤正夫君 先ほどの御説明によりますと、今般我が国加入しようとしておりますPP条約、これは国際間で行われる核物質輸送について所要防護措置を講ずることを定めているものであるというのでありますけれども我が国原子力活動を世界の範たらしめるためには、単に条約で求められている措置を講ずるということばかりでなく、もっと積極的な姿勢で国内の原子力施設における防護についても万遺漏なきを期す、その旨を内外に明らかにしておくということも極めて重要なことであると思います。  そこで、核物質防護上あるいは輸送中の防護とともに重要な原子力施設における防護につきましても、今回の改正法案内容に入っているように思いますので、その内容につきまして御説明いただきたいと思います。
  22. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 核物質防護に関する条約は、御案内のとおり、国際輸送中の核物質規制の対象といたしておりますが、今回の法改正は、国際輸送にかかわるもののみならず、昭和五十五年、原子力委員会核物質防護専門部会が国際原子力機関がっくりましたガイドライン内容を踏まえて策定した核物質の使用中あるいは貯蔵中と いった、そういう施設防護及び輸送中の防護に係る要件を両方含めまして法律上明確に位置づけるということにしておるものでございます。
  23. 後藤正夫

    後藤正夫君 我が国原子力開発利用現状を見ますと、最も重要な柱の一つである安全の確保という面におきまして、我が国は今や世界の範たり得る高い信頼性、リライアビリティー、これが確保されているということを私は高く評価したいと思います。また、核物質防護に関しましても、我が国においては事業者の自主的な努力によりまして既に国際的な水準を満たし得る措置が講じられているということは、私自身が諸外国の原子力に関するいろいろな施設を見ましても感じているところであります。現に我が国におきましては、これまで核物質防護が問題となるような事件が発生した例はないというふうに承知いたしております。  このような現状を見ますときに、核物質防護という国際的にも極めて重要な課題につきまして、我が国としても国際社会の一員としての責任を十分に果たしつつ真剣にこれと取り組んでいくという意図を内外に明らかにすることが重要であるとはいうものの、しかし一方におきましては、今回の改正法が、事業者がこれまで実施してきた実態上の措置を大幅に変更して過度の規制強化をする、過度の規制の強化になるというようなことがあってはならない、その点について若干懸念を持つものでありますけれども、その点はどうであるか、御説明を願いたいと思います。
  24. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 繰り返し申し上げるようでございますが、我が国核物質防護は、昭和五十六年の原子力委員会決定内容を踏まえまして、既存の関係法令の実施運用、行政指導といったものによりまして実施されており、現在それはおおむね国際水準に到達しているというふうに私ども考えておる次第でございます。しかしながら、今回の改正は、今後とも我が国における核物質の取扱量等の増大が予想されること、それから核物質防護に取り組む我が国政策意図といったものを内外に明確にすること等の理由により、核物質防護に関する条約加入するための条件を整えることのみならず、核物質防護を十分明確に既に実施されているものにつきまして法令上位置づけるといったことを目的といたしておるものでございます。したがいまして、御懸念のような現在各事業者実施している核物質防護措置につきましてさらに何か大幅につけ加えるといったような、そういった実質的な変更を求めるというものではございません。
  25. 後藤正夫

    後藤正夫君 我が国エネルギーの自給率、エネルギー資源のといいますか、自給率は極めて低い。例えば水力だけで見ますと一五%以下であるというようなことを考えますときに、その他のエネルギーはすべて海外からの輸入に依存しなければならないという現状にあると思います。したがって、さきにも懸念いたしましたように、問題を指摘いたしましたように、いろいろな国際的なトラブルあるいはカタストロフィーといったようなことが世界のどこでどういうときに起きぬとも限らないというような状況にありますときに、我が国エネルギーの自給率を高めるということは極めて重要なことであると思います。そういう問題が世界のどこかで起きましたときには、たちまちそれが日本に対するエネルギー資源の輸入、液化天然ガスあるいは石炭、石油等の輸入にも響いてくるということを考えますときに、核エネルギー確保ということは非常に重要な問題であり、したがって核燃料サイクルというものを確立するということが、これは刻下の急務であるというように考えられるわけでございます。そういう点から、今後の防護体制確保ということにつきましては、一層我が国としても努力をいたしていかなければならない問題であると思います。  私の質問の予定時間はまだ残っておりますけれども、質問したい事項は一応終わりましたので、ここでひとつ長官にお伺いいたしたいと思います。  今申し上げましたように、我が国原子力発電等に依存するエネルギーというものの比率は今後非常に重要な位置を占めてくるように考えられます。したがって、核燃料サイクルの確立を急ぐことにつきまして一層政府としても御努力をいただきますと同時に、その安全対策、この法律をもって行おうとしている防護対策はもちろんでありますが、さらに大きく変化する国際的な環境の中また社会環境の中で、我が国エネルギー確保いたしますために政府としての一層の御努力を願いたいと思いますので、その点につきまして長官のお考えを伺いまして、時間はまだ残っておりますけれども、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生御指摘のとおり、核物質防護につきましては、さらに適切に対応してまいりますことは我が国原子力の円滑な開発利用を進める上で極めて重要であります。また、これも先生御指摘でございましたけれども原子力先進国でございます我が国の国際的な責務でもございます。したがいまして、政府としては、関係法令に基づきまして、十分な核物質防護対策が講じられますよう所要規制を慎重にかつ万全に行ってまいる所存でございます。
  27. 後藤正夫

    後藤正夫君 終わります。
  28. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、今回の原子炉等規制法の一部改正案、これと密接に関係を持っております、今いろいろと御質問のありました核防条約関係と、それから新日米原子力協定の問題を先にお伺いしたいというふうに思います。  最初に、核物質防護条約についてでありますけれども、先ほど本会議でこれはもう採決になったわけでありますが、この論議の経過は私も外務委員会でされたものをよく存じておりませんので、内容について若干お伺いをしたいというふうに思います。  まず第一は、この核物質防護に関する条約というのは平和目的に限定をされております。軍事目的のために使用される核物質についてのものは除外をされるという形になっておりますが、その理由はどういうことになるんでしようか。
  29. 中島明

    説明員(中島明君) 核物質防護条約につきましては、昭和五十二年、一九七七年から約二年間をかけまして条約作成のための政府会議が行われたわけでございますが、そこでは、平和目的のために使用される核物質であるかあるいは軍事目的のためのものであるかにかかわらず防護措置が必要であるということについては、各国とも共通の認識がございました。ただ、軍事目的核物質をこの条約の対象とするか否かということにつきましては、これをすべしとする国、これはアルゼンチン、フィリピン等の非核兵器国でございましたが、こうしたすべしとする国と、これに強く反対する国、反対する国は米国等の核兵器国でございますが、これが対立をいたしました。その際、核兵器国の側からは、軍事的目的核物質につきましてははるかに厳重な防護措置がとられており、あえてこの条約の対象とするまでもないと、そういう立場を表明したわけでございます。  その結果、次のような妥協が成立したわけでございます。すなわち、この条約の対象をまず平和的目的核物質に限る、これが第一点でございます。それから、それと同時に、軍時的目的核物質につきましては、その効果的な防護の重要性というものを前文において言及する、そのような妥協が成立いたしまして、結果として現在の協定条約ができ上がったということでございます。
  30. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そういたしますと、ちょっと疑問になってまいりましたのは、まず第一に、例えばフィリピン等の非核武装国ですね、非核兵器国が軍事的目的のものも対象にすべきである、こういう主張をされたということを伺いました。核兵器国がこれを外すべきだということを言われたというのもわかった。そうすると、非核兵器国である我が国はどういう立場をとられたのかということが一つ疑問になります。  それからもう一つは、この条約でいきますと、いろいろと締約国間ではっきりしなければならない問題というのが出てまいります。いろいろとありますけれども、例で言いますと、例えば附属書 Iの2で、「国際輸送中の核物質防護水準には、次のことを含む。」と言いながら、第二群とか第三群の物質、荷送り人とか荷受け人、運送人の間の事前の取り決めとか、それからそのそれぞれの国の管轄権、規制に服する自然人または法人の間の事前の合意だとか、輸送に係る責任の移転をする日時とか場所とか手続とかというようなことがいろいろとこう書かれてあります、平和目的の場合にはこういうことが確認をされますと。ところが、軍事目的で、そこまで含めて考えるかどうか、その辺の解釈もいろいろあるでしょうけれども、例えば核物質利用した兵器というようなものを言ってみれば持ち込んでいるか持ち込んでないかということは、査察があるわけでもないし何でもない。保有国が核兵器を持ってないと言えばそれまでのことになってしまうというのが、少なくとも我が国の今までの国会論議の中でもいろいろとこう言われて、私らはそういう疑いを持っていますということになりますね。ですから、とにかく核物質というものが、これは核ジャックということも非常に大事な問題でありますから、その必要性は私も認めているわけでありますけれども、同時に、その核物質というのがみだりに、それこそだれもわからないときに拡散をされるというようなこと、あるいは万が一そんなときに事故があったりしても大変だと、いろんなことがあるんだということを考えてまいりますと、軍事目的を外したというのはどうもちょっと納得がいかないところがある。  原子炉の事故で、チェルノブイリ原子力発電所の事故が起こったときには、少なくともあの後のいろいろ国際的な議論の反省の中で、通報であるとかそれから相互援助であるとかというようなことについては、軍事目的のものも含めてきちんとしようということになって、核については、軍事、非軍事を問わず、一定のきちっとした国際的なそういう取り決めというのがされていくということがやはり必要なんではないかなと私は思うのでありますけれども、その考え方がどうであるのかということについて。  二点ですね、事前に相談をされたときに我が国はどういう態度であったのか。それからもう一点は、今の軍事目的というのを外したのはちょっと納得がいかないが、その辺はこれでいいと思っておられるのかどうか、こういう二点です。
  31. 中島明

    説明員(中島明君) 私ども基本的な考えといたしましては、輸送中の核物質につきましては、これは軍事的目的のものであろうと平和的目的のものであろうと非常に厳重に防護されなければならない、そのような必要性が非常に大きいということについての基本的な認識は持っております。しかしながら、実際問題としてこういう軍事的目的のための核物質につきましては、それを防護するための共通の基準を設けるとか、あるいは国際協力を行うというようなことを考えてみますと、現実問題としてはなかなか難しい面があろうかというふうに考えております。  したがいまして、この採択会議の際においても、軍事的目的のものも入れるべきだ、入れるべきでないということで議論が対立したわけでございますが、最終的に先ほど申し上げましたような一つの妥協、コンセンサスが成立したわけでございますから、それを受け入れた、それに同調したということでございます。  それから、今後の問題でございますが、この協定自身につきましては、先ほど申しましたように、平和的目的のものというものだけに適用対象が限定されているわけでございますが、今後この軍事的目的のための核物質についてはどうするのかという問題につきましては、実施上いろいろ難しい問題もございますが、そこのところをいろいろ勉強させていただきたい、そういったことも含めていろいろ考えていきたい、そういうふうに考えております。
  32. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 もうちょっとはっきりさせてください。念押しみたいで申しわけないけれども、妥協が成立したことはお話でわかりました。今の御説明内容はわかりました。だけれども、そのときに妥協が成立するまで我が国はそれじゃどういう立場の主張をされたんでしょうか。さっきの非核兵器国と核兵器国の大まかに言って大きい二つの対立がある。その対立のうちの我が国は非核兵器国の立場で主張されたんでしょうか。
  33. 中島明

    説明員(中島明君) この妥協の成立につきましては、これは政府会議の受け入れるところとなりましたので、もちろん日本もそれと同じ立場をとったわけでございますが、それに先立ちます議論の中で日本がどのような立場をとったかということにつきましては、今手元に記録がございませんのではっきりしたことは申し上げることができません。大変申しわけございません。  ただ、先ほど申しましたように、基本的な認識といたしましては、もちろん軍事的目的核物質についても、これは厳重に防護される必要があるんだと、そういう認識は持っておりましたし、そういう必要性ということについても強く意識していたわけでございますが、他方において、それでは現実にこういうような国際条約というような枠内での協力になじむかどうかということについては、やはりいろいろ問題があろうという認識も他方において持っていたわけでございまして、そういった立場に即して政府会議においては対処したんではなかろうかと思います。
  34. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の議論はわからぬわけではありませんが、中距離弾道弾の査察問題一つにしたって、ああいう大問題になってくるともう本当に難しいものがいっぱいあるわけで、長い間かかってやっと到達をするというようなこともあるわけですから、特に軍事目的のものについての難しさというのはわかります。しかし、今御答弁いただいたようにやっぱり大事な問題ですから、その辺は我が国としては今後追及をしていっていただかなければならない問題だなというふうに私は思っております。その辺は要望ということにさせていただきたいと思います。  次に、やはりこの核物質防護条約の中で第五条ですね、第五条の1、「締約国は、核物質防護する責任並びに核物質が許可を受けることなく移動され、使用され若しくは変更された場合又はそのおそれが認められる場合に」と、こういう記述があります。これは2にもあります。2の中の(a)にもあります。あるいは第七条にも1の(a)のところで、「財産の実質的な損傷を引き起こし又は引き起こすおそれがあるもの」というようなふうにしておそれがある場合というのが規定をされております。これは一つ締約国というものによってそれぞれ認識の違いだとかなんとかいろいろ出てくる問題ではないだろうかという気もいたします。  そこで第一は、おそれがあるというふうに認定をするのはどこが認定をするということになるのだろうか。IAEAまで持ち込んでいって、そこで認定をするということになるのか、締約国の——これで見れば締約国のような気がいたしますけれども、そうすると、締約国によって判断の違い、国の法体系とか、何といいましようか、社会的ないろいろな要因だとかというようなものの中でおそれがあるかないかという判断の仕方にはいろいろとあるんではないだろうかというふうに思うんでありますが、その辺は何か国際的なこれに対する基準のようなものがあるのかどうかというようなことも含めて御見解をお聞かせいただきたい。
  35. 中島明

    説明員(中島明君) まず第五条の方について御説明申し上げます。  御指摘のとおり、この一項以下には、核物質が不法に取得されるおそれが認められる場合というものが書かれておりますが、これが具体的にどのような状況を指すのかということについて国際的な基準といったようなものが特にあるわけではございません。また、この五条のような事態がこれまでに現実に問題になったというようなことも承知しておりませんので、なかなか具体的にどのような状況かということを想定することは難しいわけでございますが、核物質の輸出国、輸入国あるいは核物質が通過する国、そういった国が具体的 な状況に照らしてそれぞれに判断するものではないかと思っております。  あえて想定するとすれば、例えば核物質輸送が行われている最中に、その輸送に係る事業者に対して、これを不法に取るぞというような脅迫ないし予告が行われる、あるいはその輸送を襲うというような者の動きが関係当局の間で察知されるというような事態もあえて想像すれば想像できますが、そういった事態があれば、これはおそれがあるということが言えると思いますが、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、特に国際的な基準というようなものがあるわけではございません。  それから次に、七条の一項の(a)で、これは核物質を用いた犯罪として処罰すべきものに関する規定でございますが、そこにも「おそれ」というのがございますが、ここにある「おそれ」ということにつきましては、この一項(a)に従って申し上げますと、そこの末尾にございます「人の死亡若しくは重大な傷害又は財産の実質的な損傷」、こういったものが引き起こされはしないけれども、引き起こされる具体的な危険が生じている、そのような場合がここに言う「おそれがある」という事態であると考えております。
  36. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、率直な意見を言わせていただけば、この「おそれ」という表現というのが、これは英文でどういうふうになっているのか、私は英文を読んでもよくわかりませんからあれですけれども日本語に訳してこういうふうになっている。かなり主観的なものなどが入る場合もあり得るわけでありますので、それだけにこれがどう国内法の中で取り扱われるようになっていくかというような問題等についてはやはり重大関心を持たざるを得ない、こういうことなんであります。これは意見であります。  それから、さらにもう一点核防条約について伺っておきますと、附属書Iの1の(c)のところで、「第一群の核物質の貯蔵に当たっては、第二群について定められた防護区域であって、更に、信頼性の確認された者に出入が限られ、かつ、適当な関係当局と緊密な連絡体制にある警備員の監視の下にある区域内において行うこと。」と、こういうふうに書かれております。  一つは、これは第二群以下については「更に、」以下の分のところが適用されないと、こういうことになるのかどうかということが一つ。  それから、この「更に、」以下の中で、「信頼性の確認された者に出入が限られ、」云々と、こういうふうになっておりますが、「信頼性の確認」というのも、これもどこが信頼をするということがこの「信頼性の確認」ということのもとになるんだろうかということが一つ。それから、これは国際条約ですから、国によってやはり判断の違いなどというものがいろいろとあるんではないか、そんなふうに思います。そうすると、国ごとの整合性、全部合わせての整合性ということも考えなきゃならぬ。そうすると、国際的な基準みたいなものがあるんだろうかなということ、この二点について。
  37. 中島明

    説明員(中島明君) まず第二点の方から先にお話し申し上げますと、ここの附属書Iの1の(c)にございます「信頼性の確認」でございますが、この条約核物質を不法な取得及び使用から守るということを目的としておりますので、ここで言う「信頼性」というのは、そのような不法な行為をするおそれのない、そのようなことを指しているのだと思います。そして、この「信頼性の確認」の具体的な方法につきましては、やはり国によって異なることになろうかと思いますが、核物質防護に関する国際原子力機関勧告がございまして、その勧告の中においては、防護区域に入る者には通行証もしくはバッジを発給することが勧告されております。したがいまして、各国もおおむねこの勧告に沿った措置実施しているのではないかと考えております。  それから第一点の、第一群の核物質の貯蔵に当たって、第二群について定められた防護区域がどのような関係に立つかということでございますが、この附属書の1の(c)に書かれておりますことは、第一群の核物質についても、第二群について定められた防護区域というものが適用される。しかし、第一群については、さらにそれに加重しまして信頼性の確認された者にその出入りを限定するというような追加的な防護措置を講じると、そのようなことが定められております。端的に申しますと、第一群の方が第二群に比べてより厳しい措置を講ずるということがここで定められているわけでございます。
  38. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私もおととい皆さんと一緒に東海村の日本原子力研究所と、それから動燃の事業所を視察をさせていただきました。かなり厳しいチェック体制にあるということを実際に実感をさせていただいてまいりました。あそこでちょうど休みのときにいろいろ食事をしているときなどに話が出ましたが、武装した者に襲ってこられたときはどうだろうとかなんとかということも、もちろんそういう問題もこれからまた法案のところで問題になるのかもしれませんが、ただ、私どもも通行するに当たって必要なカードなどを携行させていただいたという形になるわけでありますが、ただ、そこで信頼性というのは、では入り口でカードならカード、バッジならバッジというものを与えるということ自身、与えられるかどうかということ自身信頼性ということにもなってくるでしょう。信頼性のない者には与えられないということになりますわな、バッジだとかそういうものは。そうすると、そこの最初の判断をするときにかなり国によっての違いなどということもあるんじゃないでしょうか。例えば私どもは国会の科学技術特別委員会の視察団でしたから、そういう意味では信頼性があったのかもしれません。しかし、極端な物の言い方をさせていただくと、例えば私が、一応国会には送ってもらっているけれども、しかし、不法に何か考えているということがないという保証は全くありません、極端な言い方で恐縮ですけれども。だから、信頼性というものの確認というのは、そんなふうにまで言っていくと本当に面倒なところがあります。その国によって、我が国の場合、今の我が国の社会体制の中、国民の全体の気持ちだとか、そういういろんなものの中で私たちは信頼性があるというふうに認定をされて、そこへ出入りをするためのカードもいただけました。国によってその辺の判断というのは、最初に渡すときの判断というのが違ってくるということがあるんじゃないだろうか。そうすると、その辺のところはどういうふうに国際的には整合性を持たせていくのかなということがやっぱり気になるんですよ。  というのは——ちょっと長く自分だけしゃべっていて申しわけありませんけれども、例えば、信頼をするに足るという意味の幾つかのチェック項目をつくっていて、そして人間との間にチェックを全部して、これで信頼できるよというふうにしている、そういう場合も国によってはあるということも聞いていますけれども、そうすると、信頼性というのは非常に問題があるんじゃないだろうかなということが気になります。これは今私がこんなことを確かめておりますのは、これからのまた国内法の方の規制法審議にも非常に関係があるからなんであります。  そうすると、国際的にはそういう信頼性というためには何と何、どういうことをチェックしなさいよというようなものは特別にないんですね。
  39. 中島明

    説明員(中島明君) 附属書において「信頼性の確認された者」ということが書かれておりますが、先ほども若干御説明いたしましたように、防護区域の中に出入りする者に関する信頼性の確認でございますから、防護区域の中に入ってその者が不法な行為をする、核物質の不法な取得ないし使用を企てるというようなことがないように、あらかじめ出入りに当たって信頼性の確認をするということでございます。したがいまして、ここの「信頼性の確認」と申しますのは、今のような話にもございますように、核物質防護条約の趣旨に照らして考えていく必要があろうかと思っておりまして、この条約の趣旨と申しますのは、核物質の不法な取得及び使用から守る、そういうことでござ いますから、そういった守るということを達成するために必要な限度において信頼性を確認すればいいということであろうかと思います。  それから、具体的な方法につきましてはいろいろなやり方があるのではないかという御指摘もございました。私どもといたしまして、各国それぞれに細かい事情は存じてはおりませんけれども、今のような信頼性の確認というやり方の趣旨に照らしまして、それぞれの国がそれぞれの具体的な方法を講じていけばそれはそれでよろしいのではないかと、このように考えております。
  40. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 防護条約は大体以上であります。  そこで次に、原子力平和利用に関する協力のための日本政府アメリカ合衆国政府との間の協定について伺いたいと思います。  第一は、この協定については、かなり長い間アメリカの議会の中でいろいろ反対議論があったというふうに聞いております。これは新聞等でも伝えられております。これはどういう理由で反対であったのか、それで、それが現在はどういうふうにして克服されて、克服といったらあれですけれども協定について大体どういう態勢になっているのかということをまずお聞きをしておきたいと思います。
  41. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 現在、私どもが国会に御審議をお願いしております新日米原子力協定でございますけれども、昨年の十一月の四日でございますか、日米双方で署名いたしました。それでアメリカの場合にはすぐそれを議会に提出、具体的には十一月九日にアメリカの議会に提出されております。それで結論から申しますと、本年の四月の二十五日でございますけれども、いわゆるアメリカ法律によりまして九十日間の会期を終了したということで、アメリカの方におきましては議会の承認の手続が完了したという状況になってございます。  それで、先生御指摘のアメリカ議会におけるいろんな御議論がございました。内容をちょっと簡単に御紹介させていただきますと、大別すると二つあったというふうに思います。  一つが、プルトニウムを飛行機で輸送する場合、これはいわゆる今度の協定では包括同意の対象になってございます。そういったプルトニウムの航空輸送をする場合の安全性確保できるのかどうか、こういった問題についての懸念を表明する動き、これが一つでございます。  それからもう一つが、新しい協定は、アメリカ国内法であります米国不拡散法というのがございます、そこの要件を満たしていないのではないか、つまり国内法違反ではないか、こういった疑問視する動き、その二つが大きな動きであるというふうに承知しております。  それで、まずプルトニウムの航空輸送のお話から先に申し上げますと、これにつきましては、特に輸送ルートとなるてあろうということでアラスカ州選出のマコウスキーさんという上院議員の方、この人が中心になりましていろいろとそういった動きがございました。具体的には現在アメリカ規制委員会が持っておりますプルトニウムを航空輸送する場合の基準がございます。これはNUREG—〇三六〇というナンバーでございますけれども、その基準に対してさらにもっと難しい条件を付加したらどうかというような動き。具体的には幾つかございますけれども、簡単にちょっと一、二申し上げますと、一つは、それに対して最高巡航高度からプルトニウム輸送容器を実際に落としてみて大丈夫かどうか確かめろということ、あるいはもう一つは、飛行機ごと輸送容器と一緒に落として、それで大丈夫かどうかというのを確かめてみろ、こういったようなことでございます。それにも条件がございますけれども、それは省略いたしますけれども、そういったような案件のいわゆるマコウスキー法案と当時言っておりましたが、これが昨年の十二月二十二日に成立してございます。したがってマコウスキー法になっておるわけでございます。また、その後の動きといたしましては、といっても、やはりアメリカの領空を飛ぶのは危険ではないかという議論がございまして、現在アメリカ政府としては、アメリカの領空を通過しないでヨーロッパ、具体的にはフランス、イギリスでございますけれども、それから公空上を通過して北極を通って日本に直行できるノンストップ便が将来可能である、こういう判断とか、そういったいろいろな話がございました。それがプルトニウムの航空輸送に関する問題でございます。  それから、もう一方のアメリカの核不拡散法という国内法要件を満たしていないということについての件でございますけれども、つまり現在の協定は、個々のケースごとに個別同意と申しますか、という仕組みでございまして、そういった個別同意であってこそ初めて核拡散防止のためのアメリカの影響力の行使ができる。新協定にあります包括同意方式になると、そのような影響力は行使できないのではないか、こういった議論が一つございます。それから、今回の新しい協定では、例えば日本で再処理をする場合に包括同意の対象になってございます。そういうことが日本でできるようになるわけでございまして、非核兵器国が核物質を核爆発装置につくりかえるのに対して、十分事前にそういうのを察知した場合には、アメリカ政府が時宜を得た警告、タイムリーウオーニングと言っておりますけれども、それを米国が持たなくちゃいけない。そういったようなことに対して、これを与えてしまうとできなくなるんじゃないかというような懸念の向き、そういうようなことが理由でございまして、いろんな議論がございました。  具体的には、昨年の十二月十七日に上院の外交委員会、これがそういった趣旨で、今度の新協定は米国の核不拡散法の要件を満たしていないといった趣旨の判断をしまして、多数決、多数でございますけれども、それの書簡を大領統に送っているとか、それから、同じく下院の方は外交委員会有志でございますけれども、同様の趣旨の書簡を大統領に送付している。これは両方とも国内の核不拡散法を満たしていないという立場でございますけれども、そういうことを承知しております。それからさらにことしになりましてから上院のバード院内総務あるいはドール院内総務、この両名で新協定承認決議案というものを提出してございます。それからさらにクランストン上院議員外十二名が、これは米国の国内法を満たしていないんだから、新たに国内法を満たしていない協定であるということで再提出しなさいと、そういった義務づける法律案と申しますか、そういうものもございました。また下院も同様な動きがございました。  それに対しまして行政府は、一月二十九日でございますけれどもレーガン大統領から書簡を送りまして、包括事前同意方式の合法性について関係省庁にもう一回再検討させましたと。その結果は、米国核不拡散法の規定は、包括同意方式を排除してでもではない。具体的にはスウェーデン、ノルウェー、フィンランド等の協定については三十年間にわたる包括事前同意方式の前例がございますと。それで、新しい日米原子力協定も核不拡散法の要件を満たすということを再確認するということを議会に対して送付してございます。その他国防総省が反対しているというような動きもありましたものですから、それに対してカールーチ国防長官から、国防総省は全部完全にこの新協定をサポートする、支持するといったような書簡も出してございます。  一方、二月ごろになりましてから上院、下院でそれぞれの有力議員さんが、新協定を支持すべきだという呼びかけもなされておりました。そういったいろんな動きがございまして、三月二十一日に、これは上院でございますけれども、この協定を不承認承認しないという決議案についての採決が行われまして、それが賛成三十、反対五十三ということで否決されました。  そういうことで、いろいろと動きがございましたけれども、やはり本協定承認すべきであるということが多数を占めたというふうに理解してございまして、それ以降特に目立った動きはなくて 四月二十五日まで過ごしまして、そこで新協定アメリカ議会では成立したと、こういう状況になっているわけでございます。
  42. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、一つやっぱりおそれといいますか、注意をしておかなければならない問題があるんじゃないかなというふうに感じておりますのは、一応議会では成立をしたという形になりますけれども国内法との突き合わせでいろいろと議論があったということは、今後の問題としましても、やはり何かのいろいろと情勢の変化等の中で国内法とのかかわりでまた新たにいろんな条件が議会等から付されてくるというようなことも起こり得るんではないだろうかというようなこともちょっと気にしております。このところずっと、アメリカとの関係でいけば、貿易ということで国際的な条約との結びつきを大体はっきりさせている法案が多いんですけれども、しかし、アメリカ国内法を盾にしていろいろと貿易摩擦に対応してくるというようなことなどが最近は非常に多くなっておりますし、鯨の場合のように、まさに国内法をカードの主要な武器に使っているという場合などもありますし、ということもありますので、その辺のところは今後も十分に留意をしていかなければならない問題ではないかなという気がいたします。  それからさらに、アメリカの会計検査院で何か新協定法律違反だというようなことを言ったというようなことが新聞に報道されたことがありましたが、これはどういうことだったんでしょうか。
  43. 松井隆

    政府委員(松井隆君) アメリカの会計検査院、略してGAOと言っておりますけれども、これは、先生御案内のとおり、アメリカの議会に附属している機関でございます。そこで新日米協定に関しまして米国会計検査院がレポートを議会に提出してございます。ただ、これはまだ正式な公表はなされておりません。それで、実は三月の二十一日、例の採決した日でございますけれども、米国の上院本会議におきまして、その協定の不承認決議案、これをサポートするという立場から、グレン上院議員がその不承認決議案に賛成討論を行ったわけでございますけれども、その際にその要約部分を紹介してございます。それに基づきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。  まず、米国の核不拡散法、これは先ほどの国内法でございますけれども、について、それに書いてあることでございますけれども一つが、他国との原子力平和利用に関する協力協定締結あるいは改定する際には、協力相手国が米国から受け取った核物質等を第三国に移転する際には、事前に米国の同意を得なければならない、そういった幾つかの、九つありますけれども、そういった規制権、そういった要件協力協定に盛り込まなくちゃいけないということが一つ国内法に書いてございます。それからもう一つは、協力協定実施段階におきまして、非核兵器国における再処理であるとか、ここで言ったら日本における再処理あるいはプルトニウムを第三国へ移転する、そういうような場合に事前同意を与える際に、万が一当該非核兵器国が核爆発装置等をつくりかえていく可能性がある場合には、当然米国が事前に十分に時宜を得た警告、タイムリーウオーニング、こういうことが得られるような条件が確保されなくちゃいけない、こういう規定があるわけでございます。  そういう規定との関連で、今回の米国の会計検査院の報告書の意見でございますけれども、まず協力協定に盛り込むべき要件で、第三国移転とか再処理とか、そういうものに対する米国の事前同意権を米国が保持していない、それから時宜を得た警告、タイムリーウオーニングが得られることになっていない、この二点で新協定は米国核不拡散法の要件を満たしていないというふうに結論づけていると、こういうふうに言ってございます。  その理由でございますけれども、新日米協力協定の中の自主取り決めであるのでございますけれども、例えばプルトニウムの返還でもいいんでございますけれども、三十年間にわたって、再処理も同じでございます、白紙承認包括同意というのは白紙承認だと、こういうふうに見ているわけでございます。そういうような形で白紙承認を与えるものであって、米国の核不拡散法という国内法はそういうことは予定していない。つまり同法が要求している米国の事前同意権を放棄するものであると、こういうふうに見ているわけでございます。  それから、その包括事前同意方式という今度の新しいやり方は、日本がNPTから例えば脱退するとか、あるいは日本IAEAの保障措置協定に重大な違反を犯すとか、そういう極めて例外的な場合は包括同意というものを停止できるということになってございますけれども、議会がこの国内法を立法した当時は、米国の事前同意権によるコントロール、つまり米国は、現在事前同意権を個々に持っていますからそこでコントロールできるわけですね、そのコントロールをそのように極端に限定された場合にのみ発動できるということを予定していないということでございます。つまり包括同意というのはある特定の場合には解除されるわけでございます、個別同意になるわけでございますけれども、その条件が今回の協力協定附属書で詳細に書いてございまして、極めて例外的な場合になっているわけでございます。そこまで認めるのは行き過ぎであるということかと思います。そういったようなことがいろいろと理由として書いてございます。  そんなようなことで、どうも本件はアメリカの核不拡散法という国内法が当初考えていたものとは違反しているのではないかというのがアメリカのGAO、会計検査院の意見でございまして、そういったものも実はグレンさんが先ほどの上院本会議での協定承認の採決のときに説明したわけでございますけれども、結論としては三十対五十三でその否決案は否決されたということになっているわけでございます。
  44. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の御説明を受ければ受けるほど、今後の問題ということで私はやはりいろいろと動きには留意をしていかなければならない、そういう側面があるのではないかというふうに思います。  さらにもう少しこの協力協定について伺っておきたいんですけれども協定の中の十一条に基づく両国政府間の実施取り決めがあるんですね。この実施取り決めの内容について若干伺いたいと思います。  附属書一の4に、附属書一というのは「再処理、形状若しくは内容の変更又は貯蔵のための施設」ということで施設が列記してありますが、その4に「独立のプルトニウム貯蔵施設 なし」と、こういうふうに書かれておりますが、独立のプルトニウム貯蔵施設というのは、これは「なし」と書かれていますから、将来もこういうものは我が国ではつくらないという考え方なんでしょうか。そして、六ケ所あたりに計画をしておられるいわゆる三点セットの施設の中に附属をした施設というふうに考えているからこれでいいと、こういうことなんでしょうか。その辺のところはどんなふうにお考えになっていますか。
  45. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウムの貯蔵施設の件でございますけれども、我々としては、具体的にはプルトニウムというものはなるべく国内でためないで、やはり需要に合わせて例えば海外から持ってくるというふうにした方がよろしいのではないかという考え方をとっておるわけでございます。  それで、一応大ざっぱに申し上げますと、現時点では高速増殖炉実験炉の「常陽」であるとか、あるいは現在建設中の「もんじゅ」であるとか、そういったものにプルトニウムを使う。それから現在動いている「ふげん」、新型転換炉等にプルトニウムを使う等々が考えられるわけでございますけれども、大ざっぱに言いまして大体二〇〇〇年ごろまでで核分裂性プルトニウムにして約四十トンぐらいの需要ということを考えておりまして、一つは、それに対しましては国内で再処理で得られたプルトニウムもあるわけでございます。これが大体二〇〇〇年ごろまでで約十七トンぐらいを今想 定しているわけでございまして、それからあと海外の再処理で得られたプルトニウム、これが大体二十五トン・プルトニウム・フィサイル、核分裂性プルトニウムでございますが、そういうものを想定して大体バランスをとっておりまして、そういうものを逐次日本の需要に合わせて持ってくるということが望ましいんじゃないだろうかという一つ考え方をとってございます。  それで、先生御指摘の六ケ所村の話でございますけれども、当面は私ども現在使用する目的が動燃事業団でやっております高速増殖炉あるいは新型転換炉、そういうものが中心でございますから、やはり動燃事業団の中にありますプルトニウムの加工施設がございます、そういうところで加工するわけでございまして、そういうところに持ってくることになるんじゃないかというふうに考えてございます。  したがって、具体的に六ケ所村につくるのかどうかということにつきましては、現時点で申し上げますと、まだそういった計画はないというようなことにならざるを得ないと思っております。  ただ、将来については今後どうなるかということにつきましては、まだ少し先の話でございますので、そういった今後のプルトニウムの需要を見つつ考えていくということになろうかというふうに思っております。
  46. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、疑問点が二つです。  一つは、我が国で再処理をして回収をするプルトニウム、例えば六ケ所と東海村でですね、ということは、それは輸送するまでの間そこならそこに一定の量までの貯蔵はしてある。これはそれなりにわかります。再処理がいいかどうかということについての問題は、これはちょっと意見を異にしているところがあります。技術的にまだいろいろと問題があると私は思っております、今のプルトニウムの貯蔵ということについてだけ言えばですね。ただ、フランス、イギリスに委託をして回収をして送ってもらう、そういうものは、そうすると、空港に着いて、これは後でまた聞きますけれども、空港に着くらしいですが、空港に着いてすぐに、どこかへ仮貯蔵でも何でもすることもなしに、すぐ使用施設に直送するようなことになるのかどうか、こういう問題ですね。これが一つです。  それからもう一つは、これは協定の取り決めなんですけれども、ここで明確に「なし」というふうに書かれていると、今度は、将来はわからぬというお話がありましたが、将来もしつくるとなると、これの改定交渉というのをしなきゃならないということになるんでしょうか。
  47. 松井隆

    政府委員(松井隆君) まず第一点の方でございます。  海外から持ってきた、返還されたプルトニウムにつきましては、当面私どもの考えておりますのは、動燃事業団の中にありますMOX燃料加工施設がございまして、そういうところでやはり入れるのがいいんではないだろうかというふうに考えていることを申し上げたわけでございます。もちろんそれは加工施設ですぐそこで加工するかどうかというのは、それはあくまで需給を見てやらなくちゃいけないわけでございますけれども、やはりそういうところにまず入れておく。それで逐次加工して、それを動燃事業団の「もんじゅ」であるとかあるいはその他の新型転換炉であるとか、そういうものに燃やすということかなというふうに考えておるわけでございます。
  48. 中島明

    説明員(中島明君) 将来附属書一の独立のプルトニウム貯蔵施設を置く場合には条約改正が必要であるかどうかと、そういう御指摘でございますが、実施取り決めの附属書四というところを見ていただきますと、将来附属書一、二または三に追加されることが予定される施設が一覧表として書いてございます。そしてそれの4のところに「独立のプルトニウム貯蔵施設 なし」というふうに書かれております。したがいまして、附属書四の4「独立のプルトニウム貯蔵施設」に「なし」ではなくて施設の名前が書いてある場合には、附属書四から附属書一に施設を移すという手続を行うことによりまして附属書一の中に施設を置くことができるわけでございます。その手続につきましては、実施取り決めの第二条の1及び2の中に附属書四から附属書一に上げる手続が書いてありまして、ごくごく簡単に申し上げますと、一方の政府が他方の政府に対して各種の情報を盛り込んだ文書による通告を行えばいい、そのようなことになっております。したがいまして、この場合は条約改正というようなことは必要がございません。  次に、それでは附属書の四に現在は「独立のプルトニウム貯蔵施設」のところに「なし」と書いてありますが、ここにプルトニウム貯蔵施設として将来予定されるものを追加する場合にはどうしたらいいかという問題がございます。これにつきましても実施取り決めの中に手続が書いてございまして、具体的には、第二条の2の(c)というところにございますが、その場合には施設を追加するための通告というものを行えばいいようになっております。したがいまして、将来予定される施設附属書四に追加する場合にも、これは通告手続というものをとればよろしいわけで、その場合にも条約改正というふうなものは必要ございません。
  49. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それで、附属書五によって「回収プルトニウムの国際輸送のための指針」が述べられているわけです。この国際輸送のための指針については、どうも私どもわからないことがいっぱいありますのでいろいろお聞かせをいただきたいと思います。  第一は、前回フランスから返還されてきたものは船で輸送をされてきました。どうしてこれは航空機でなければならないということになったんでしょうか。
  50. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウムの輸送そのものは、安全確保というのは当然でございますけれども、同時に、やはりプルトニウムが核不拡散上の重要な物質であるということでございまして、そういう意味じゃ十分な核物質防護措置をとって運ばなくちゃいけないという問題であろうということだと思います。それで、飛行機の場合には輸送時間が非常に短いということがございます。それから、高速で飛んでおりますものですから、飛行中のアクセスが難しい、こういう問題があって核物質防護がより船よりも容易であるというメリットがあるということだと思います。したがいまして、新しい今度の日米原子力協定では、先ほど先生御指摘の附属書五に決めるような一定の条件、そういった条件に従った航空輸送に関しては米国が包括事前同意を与えるという仕組みになっておりまして、したがって、プルトニウムの航空輸送につきましては、この規定に従って具体的に計画をつくるということになるわけでございます。  なお、それは飛行機の話でございまして、船舶による輸送という選択もあるわけでございまして、これにつきましては包括同意の対象ではございませんけれどもアメリカの個別同意があればやはり船舶輸送は可能であるというような仕組みになっておるわけでございます。
  51. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の航空機にした理由というのは大体そのようなことなんでしょうが、そういたしますと、今度航空機になりますと、航空機の安全の問題だとか能力の問題だとかいろいろそういうことがまた問題になってまいります。船というのとまた違った意味でのいろいろな心配というのが新たに出てくるということにもなります。  そこでお伺いをしていきますけれども、まず、例えばフランスから送られてくるとすると大体どのような航路を通ってくるんでしょうか。これは一つ気になります。なぜこんなことを私が申し上げるかといえば、先ほどのお話の中で、アメリカの反対の意見の中に環境問題の観点からいろいろと議論が出ているということですね。しかも、特にアラスカの場合というのはかなり世論の面からも強いものがあるんではないかというふうに思いますと。今、北極点を通過をするというふうに、大体その辺を通ってという意味のことを聞き及んでいるわけですから、そういたしますと、ちょっと 幅を逆にすれば逆にソ連領の方を通らなきゃならぬというようなことにもなってきたりする。なかなか面倒なものが航路ということで考えてもあるんじゃないかなという気がいたします。  それから、先ほど将来ノンストップ便というようなこともちょっと言われましたけれども、これは今度は飛行機の能力の問題とか積み荷の重さの問題だとか、そういうような問題がみんなひっかかってくると思うんですけれども、その辺のところはどういうふうに考えておられるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  52. 松井隆

    政府委員(松井隆君) このプルトニウムの航空輸送のルートでございますけれども、これはアメリカ政府に先ほど言いましたようないろいろな議論がありまして、その後いろいろと調べた結果、これはアメリカ政府としても、主としてDODが中心になってやったわけでございますけれども、ヨーロッパから日本までいかなる国の上空も通過せずにノンストップで飛行することが可能な航空機が近い将来利用可能になるという判断アメリカはしているわけでございます。それで、そういう場合には、したがって、緊急時は別でございましょうけれども、それ以外の場合には米国上空を通らずに、米国に着陸しないルートで行ける、日本まで来られる、こういうことになります。具体的には、そこのあれによりますと、イギリス、フランスから北極を通りまして、それからベーリング海峡を抜けて南下いたしまして、それで我が国に来る、こういったルートが一つ考えられておるわけでございます。  それで、それにつきまして、じゃ一体現在存在しない飛行機、こういうお話でございまして、私どもいろいろと今調査をしているところでございます。それで、具体的に一例を申し上げますと、ボーイング747—400というのが今開発中でございまして、今年末かそのころにはいわゆるお客さんを乗せるパッセンジャータイプといいますか、これが就航するという話で、それからさらに少しおくれまして、コンビと申しまして、お客さんを乗せるのと荷物を運ぶのと両方一緒にできるやつ、そういうものも就航するというような話も聞いております。そういったものの航続距離から見まして運べるのではないだろうか、こういう判断であろうというふうに承知しておりまして、現在私どもはいろいろそれは調査している段階でございます。
  53. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 本当に不思議な感じがするんですよね。というのは、現に両国政府によって確認をされる協定なわけですよね。その協定に基づく実施取り決めですよね。ということなんですが、実際はまだ開発中の飛行機輸送というのが主力になっている。それで、さっきのあれで船舶の場合は個別に、いわゆるこの協定に基づく包括的なあれじゃなくて、個別に確認をすれば船舶でもというお話でしたから、そうすると、やっぱり少なくともこの協定の主力は航空機ということですよね。この協定に基づくものは航空機ということになるんだけれども、それがどうも開発中というのは、何かこう取り決め、約束の方が先にされていて、実際はまだできていないものということには、やっぱりどうしても私は疑問が残ります。  そこで、そのことはさらにまた伺うとしまして、そうすると、ボーイング747—400というのは、それは民間機になるんですか。軍用機ではないですね。
  54. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 私ども考えているのはもちろん民間機を考えてございます。  それで、民間機を民間のいわゆる航空会社と申しますか、そういうところに買ってもらいまして、それを我々がプルトニウムを運ぶときにそのときだけチャーターすると、こういう形にしたいなというふうに思っているわけでございます。
  55. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 専用の貨物機というふうになっていますね。そうすると、買ってもらってチャーターをしたら引き合うほど我々が使うということなんでしょうか。専用の貨物機というので、そこのところがちょっとひっかかるんですよね。要するに民間で買ってもらうという場合、やっぱりペイしなければならないわけですから。そうすると、我々がそれほどたくさんプルトニウム空輸で使うということになるんでしょうか。
  56. 松井隆

    政府委員(松井隆君) ここで言う専用の貨物機と申しますのは、その飛行機がプルトニウムを運ぶときに、まさにそれはプルトニウムを運ぶための専用機であるということでございまして、それ以外につきましては、プルトニウムを運ばない以外には大いに民間がいわゆる商売の一環として、企業の一環としてやっていただくということが望ましいということでございまして、私どもとしてはもちろんプルトニウムを運ぶときはこれはもう専用というふうに考えているわけでございます。これが附属書五で決められている条件だというふうに理解しております。
  57. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、普通の貨物機で、航続距離の問題は別にしまして、普通の貨物機でプルトニウム空輸のために特別な内部の改装とかいろいろやらなくても済むという状況のものなんですか。それともプルトニウム輸送のためにはいろいろと内部改装などもやらなきゃあならないということになるんでしょうか。
  58. 松井隆

    政府委員(松井隆君) その辺につきましては、そのまま使うことが望ましいわけですけれども、場合によったら多少改造しなくちゃいけないこともあるかもしれません。何分まだ輸送容器そのものが開発過程でございまして、飛行機そのものもまだできているやつでございませんものですから、そういうことも含めてこれから検討していく事項であるというふうに考えております。
  59. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 どうもそれでひっかかっているんですよ。この法案審議するときにひっかかっているんですよね。というのは、お化けみたいな飛行機とお化けみたいな輸送容器ということで、何か将来できたらという話。それで条約の取り決めだけは具体的に確認をされるというようなところが何か私の方もすっきりしない、ひっかかってくるわけですね。  それから、例えば今の飛行機の問題、もうちょっとほかの角度から伺ってみましょう。  今まで外国でプルトニウムの空輸などをやったという実績があるのかどうか。それから、そういう飛行機で墜落事故とか何か重大事故を起こしたというような実績などはございますか、ございませんか。
  60. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 外国でのプルトニウムの航空輸送をした実績でございますけれども、最近の十年間ぐらいを見てみますと、諸外国のいわゆるコマーシャルユース、民生用と申しますか、そういったプルトニウムの航空輸送の実績は少量ならあると思います。大きなものとしてはイギリスからフランスへのプルトニウム輸送ということがあるというふうに承知しております。英国からフランスへ向けて一九八二年から一九八六年までに合計十九回のプルトニウムの空輸が行われたということを知っております。それで、その際事故は全く起きてないというふうに私ども聞いております。
  61. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私が聞いている範囲の中でいきますと——ちょっと今その資料が見つかりませんから、事故があったというふうに聞いていたんですが、そのことはちょっと今私の方に具体的に書いたものがここに見当たりませんので、後に回しましょう。  それで、ただ、最近航空機事故というのは思わぬ形でいろいろと起こっていますよね。それだけに航空機の輸送ということについて心配があるわけです。開発をされる新しい飛行機というものの安全性がいろいろと製造会社によってチェックをされるんでしょう。アメリカ政府によっても厳重な審査がされるんであろうというふうに思いますけれども、しかし人間の及ばないところで、後になってから、ああこうだったというようなことがよく出てまいります。それだけに心配があるわけであります。  それからさらに、この飛行機は、何といいますか、もう大分前の話になりますけれども、新鋭のいろいろな技術を駆使してやりましても、大韓航空機のソ連軍による撃墜事件などというのがあり ましたですね。そうすると、海域を仮に通ってくるといたしましても、もし間違って進路が少しでも、あれだってもう二段にも三段にも航路を間違わないように構えていたものが、起こらないはずだと言われていたことが起こったりしている。それだけに随分心配になります。ですから、やはり航空輸送というのは私にはなかなかきれいに吹っ切れないものが残ります。  こういう意見を申し上げておきながら、さらにこの航空機の輸送関係について伺いますけれども、この中で同行する乗務員から独立した武装護衛者というのが書かれています。要するに武装護衛者が同行しなきゃならぬと、こういうことになっているんですが、武装護衛者というのはどういう人たちを言うのでしょう。
  62. 松井隆

    政府委員(松井隆君) ここで私ども今考えておりますのは、日本の例えば民間の航空会社の飛行機を利用するという場合は、当然飛行機そのものは日本国籍でございますから、その日本の武装護衛者を乗せなくてはいけない。この場合に私ども考えておりますのは、警察官に同乗していただくということを考えております。
  63. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 警察官というのはピストル程度ですか。そういうことでということですか。これは飛行機の中の武装護衛者という意味ですね。
  64. 松井隆

    政府委員(松井隆君) もちろんまずこれは飛行機の中に同乗する武装護衛者ということでございます。  それから、持っている武器に関しましては、まだそこまで詰めたわけではございませんけれども、普通ピストルとかそういうものはやっぱり必要なんじゃないだろうかというふうに考えております。
  65. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私がこういうことを伺いましたのは、予算委員会で局長が答弁をしておられた。前回のフランスからの輸送のとき、あれは日本以外のところは軍艦が付き添っていたということでありましたね。そして日本の領海に入ったら海上保安庁の機関砲でしたか、装備をした船が同行したと、こういうふうに言われておりました。航空機の場合は、これは日本の領空以外のところは武装した航空機が護衛するというようなことはあり得るんですか。
  66. 松井隆

    政府委員(松井隆君) その条件につきましては、附属書五の「回収プルトニウムの国際輸送のための指針」の中で、飛行機で輸送する場合の条件が書いてございます。ここではそういった飛行機を護衛するための飛行機、そういうものは要求されておりません。したがって、そういうことはないと思います。
  67. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、船のときには軍艦が護衛しろという条件がついているんですか。
  68. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 船の場合につきましてはあくまで個別同意でございますもので、そういった条件等については一切ここに規定されておりません。あくまでこれは具体的に船で輸送する場合に日本計画をつくって、それについてアメリカの同意を求める、こういう仕組みになっているわけでございまして、そこまで本協定には何の規定もございません。
  69. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それじゃどうしてアメリカは軍艦でずっと護衛してきたんですか。
  70. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 私の今申しましたのは新日米原子力協定の話でございまして、現行の日米原子力協定ではそういったものはすべて個別同意という仕組みになっているわけでございます。それで現行の協定でこの前、昭和五十九年でございますか、フランスからプルトニウムを輸送した場合に、日本計画をつくって、そこでアメリカの同意を得てやったわけでございます。したがいまして、新しい協定と古い協定の差があるからというふうに申し上げたいと思います。
  71. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 新しい協定と古い協定の違いというのはわかりますけれども、要するに古い協定のときには、そうするとアメリカが軍艦をつけるということをこちらに通告をして、こちらもそういうことを受け入れてああいうふうに護衛艦がついたというふうに理解をしていいんですか。
  72. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 昭和五十九年の晴新丸で運んだときにつきましては、私どもとしてはまずIAEAの基準がございまして、その基準を満たすような船の改造とかそういうものをして運んだわけでございます。一方、それに対してアメリカとフランスが独自の判断で軍艦で護衛するという仕組みになったわけでございまして、もちろんそれにつきましは私どもにも通告があったわけでございますから、そういうことは承知しておるわけでございます。
  73. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、非常に極端な言い方をいたしますけれども、我々の方は協定上とかいろいろそういう問題には全然関係なかったから、その手続なりのことはきちんとやりました、しかし輸送に当たってはフランスとアメリカが独自の判断で護衛艦をつけました、こういうことになるということなんだと思うんですね。そうすると、新協定にしてみても、包括同意はしていますけれども、プルトニウムの輸送だから心配だからということで、フランスとかアメリカが武装した飛行機を護衛につけるというようなことはあり得るということになるんじゃないですか。
  74. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 新協定によってプルトニウムを飛行機で輸送する場合につきましては、この附属書五で規定されておりますものですから、恐らくそれはないであろうというふうに考えております。  ただ、個別同意で具体的に船で運ぶ場合、その場合についてどうなるかということにつきましては、ルールが決まっておるわけではございませんものですから何とも言えませんけれども、場合によったら過去の昭和五十九年のような例、そういうことがあり得るかもしれぬ。なぜならば、アメリカ考え方は、やはり飛行機の場合には、先ほど申しましたように、核ジャック、核物質防護上飛行機の方が望ましい、船の場合には時間がかかるということで非常に危険であるという考え方アメリカは強く持っておりますものですから、その場合にはそういうことをやらないということは私は言えない。つまりその辺はこれからの話ではないかというふうに思っております。
  75. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私はどうもそういう御答弁じゃ納得できないんですよね。というのは、取り決めにないことだけれども、自主的判断でもってやられたわけでしょう、船で輸送した場合には。取り決めというのは、具体的に軍艦がつかなきゃならぬとか、そんなことというのは取り決めの中には特になかったということでしょう、船で輸送したときに。だけれども向こうの独自の判断でやられたというわけでしょう。そうすれば、航空機になったからといってその独自の判断でもってつかないと思うと言われても、あるかもしれぬというふうにもなるんじゃないですか、協定にないことであっても独自の判断でやられるということだったら。どうなんですか。
  76. 中島明

    説明員(中島明君) 航空機による核物質輸送と申しますのは、輸送に必要とする時間が非常に短い、それが一つございます。それからもう一つは、核物質を盗んだり、核物質輸送を妨害するというような企てを行うチャンスを与えることが非常に少ない、そういう意味核物質防護するという観点から非常に確実な輸送手段だというふうに考えられております。国際原子力機関核物質防護に関する勧告でも、輸送時間を最小とすることによって核物質防護を図るということが望ましいというふうに規定しております。普通民間航空機の場合には通常の巡航高度及び巡航速度を見ておりますと、大体高度一万メートルのところを時速九百キロぐらいの速さで飛んでいるわけですが、このような高い高度で飛んでいる航空機によって輸送されている核物質を不法に盗み取るあるいはその輸送を妨害するということは実際問題として不可能であるわけでございます。  しからば、それでは空を飛んでいないときにはどうかということでございますが、それは飛行場に航空機が置かれている場合でございますが……
  77. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それは後で聞きます、また。
  78. 中島明

    説明員(中島明君) はい。その場合にも安全の 措置を講ずるということになっております。したがいまして、ここの附属書五のプルトニウムの国際輸送のための指針の背景にある考え方は、今のような航空機による輸送ということを行えば、格別追加的な防護の手段、例えて申しますと、戦闘機による護衛ということをやらなくても核物質防護の観点からは非常に確実な輸送ができる、そういう考え方がこの背景にあるわけでございます。
  79. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 このことだけで議論をしていても時間だけ過ぎていきますので、私の方ももう十分にすとんと落ちないままに先へ進ませていただかざるを得ないのです。というのは、航空機なら安全だというけれども、やっぱり航空機、例えば飛んでいる飛行機の針路を変えさせることができないかといったら、必ず絶対に大丈夫だということは言えないわけですよ。それは飛んで来るところが締約国の中だけを通っているのであれば、その締約国の責任だけで全部考えられるということにもなるでしょうけれども、心配をすれば切りがありませんということであります。  さらに航空機による心配についてほかの問題に少し移らせて——航空機による心配ですよ、ほかの問題に移らせていただきたいと思います。  これの中で「警察を含む関係当局」のほかに「又は他の武装要員を使って航空機への接近を制限する」というふうに書かれていますけれども、「警察を含む関係当局」のほかの「他の武装要員」というのはどういう人たちを言うんでしょうか。
  80. 中島明

    説明員(中島明君) 輸送指針の2の(c)におきましては、核物質防護するという観点から、飛行場における航空機の隔離の確保ということが書かれておりまして、それとの関連で「他の武装要員を使つて」という規定がございます。この「他の武装要員を使って」とございますのは、海外の飛行場でその国の法令によって、例えば民間人である護衛者が武装を許されている場合、そのような場合、そのような民間人を使って航空機への接近を制限することを想定した、そのために設けられた規定でございます。
  81. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これは、そうすると軍隊は入らないんですか。
  82. 中島明

    説明員(中島明君) ここで書かれておりますプルトニウムの航空輸送は、イギリス、フランスから日本輸送するものでございますので、具体的にはイギリス、フランスの状況ということに照らして考えていかなければならないと思いますが、そこの細かい具体的な状況については残念ながら私よく把握はしておりませんが、ここで想定されておりますのは、まず警察を含む関係当局の協力によって航空機の隔離というものを確保する。その場合に、もし警察以外の武装をした護衛者を使うということが必要である場合には、そのことをやっても差し支えないということが書かれているというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、ここで考えております護衛者というものは、やはり民間人を使って航空機への接近を制限するということが想定されているというふうに考えております。
  83. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 まだ通信機器の問題だとか、オペレーションセンターにどんな人間が配置をされるかとか、その信頼性の問題だとか聞きたいことはいろいろとあるんですけれども、時間が大分経過してしまいまして時間配分がうまくいかないということになりますので、少し省略をさせていただきます。  この空輸について私の意見を申し上げておきたいと思いますけれども、私はやはりプルトニウムそのものを、先ほどの話を伺っていても、燃料として加工されたものを持ってくるというわけではないと思いますので、それだけにいろいろと問題があるというふうに思います。先ほど聞こうと思っていた容器の問題もございます。これの容器も、本当に実際に輸送されるとなると、かなりの高空を飛んでくるんですから、それで万が一のことが、事故などが起こったときなどというのが非常に心配になるわけでありますから、一たんもしそれが飛散をするなどということになれば、多分粉末状のものを持ってくるんでしょうから、それが飛散をするということになりますと、これはもうそれこそ国際的に大変な重大な問題にもなりかねない、こういう内容のものになるわけであります。ですから、容器の問題等についても私はいろいろと心配がありますけれども、これはまたの機会ということにさせていただきます。  いずれにいたしましてもそういう心配はいろいろとあるわけでありまして、私はプルトニウムを燃料にしてというふうな考え方というものをぼつぼつ転換したらいいのではないかというふうに思っている一人なんです、これはいろいろと議論があるでしょうけれども。といいますのは、例えばアメリカにおける再処理、それからプルトニウムを燃料として開発するということについての最近の対応であるとか、あるいはフランスのスーパーフェニックス計画の凍結とかいうようなものなどということも、私はやはりプルトニウムの非常に難しさというものを持っているんではないか、証明しているんではないかというふうにも思うわけであります。言ってみれば、プルトニウムの輸送がなければ心配することは何にもないわけで、そういう意味では、ということになるわけでありますから、本来そういうふうに考えていくのが、考え方を転換していくのがいいのではないか、こんなふうに思っております。  その辺のところはさらにいろいろと今後、特に商業的な大規模の利用についてのことなんですけれども、今後またさらにいろいろと議論をさせていただかなければならない問題ということで意見だけ申し上げておいて、そして法案内容の方に入らせていただかないと、もう時間がなくなってしまいました。外務省どうもありがとうございました。  この原子炉規制等に関する法律の一部改正について、その内容をいろいろと審議する前に、衆議院でも提出をされたというこの法律を読んでみますと、物すごく政令、省令事項というのが数が多いわけですね。その政省令事項について衆議院で提出をされたという資料を私ももらいました。それで、いろいろとその辺検討をさせていただいたんですが、検討させていただけばいただくほど、またもう少し確かめなきゃならないことが出てまいりますが、まずこの政省令のうち、例えば第十一条の三あるいは第五十九条の二第一項等については、先ほど核防条約でいろいろと議論をいたしました内容と重なるものを持っておりますね。出入りの管理ということで当該者の信頼性の確認というようなのがございます。これが総理府令になっております。総理府令で当該者の信頼性の確認などということはどのようになされるのか、内容はこれではさっぱりわかりません。今例として申し上げましたが、そのほかに核防のための組織の問題であるとか従業員の教育訓練の問題であるとかというようなのは、この考え方の資料をもらった中ではさっぱりわからぬのです、内容が、具体的には。そういうわからない問題がいっぱいあるということが一つ。  それからもう一つは、第二条の五項とか十一条の三、五十九条の二の第一項、第二項、それから五十九条の三の第一項、こういうものについては、この資料をいただいた範囲でいけば、例えば第二条の五項、ここで「政令で定める核燃料物質」というのは、「核物質防護に関する条約第一条で定義されている核物質」である、こう書かれています。そういたしますと、この法案の中では、「この法律において「特定核燃料物質」とは、プルトニウム(プルトニウム二三八の同位体濃度が百分の八十を超えるものを除く。)、ウラン二三三、ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然の混合率を超えるウラン」などというふうに書かれて、後が「その他の政令で定める核燃料物質」こうなっています。なぜここでわざわざ「その他の政令で定める核燃料物質」というふうに言わなきゃならないのか。核防条約では明確に明文化されているわけですよね。明文化されているものだったら法律に明文化しても一向に差し支えないんではないだろうか、そう思うんです。こうした明文化されても差し支えないんではないかと思うのは、 先ほど私は十一条の三だとか五十九条の二の第一項であるとか、五十九条の二の第二項であるとか、五十九条の三の第一項とかというふうに挙げました。なぜ核防条約で明記をされているものをわざわざここではその他政令事項とか政令で定めるとか、こういうことにしたのか、法文に明記しておけばそれでいいことじゃないですか。
  84. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 最初にちょっと委員長にお伺いいたしますが、ただいま先生が御指摘になりました政令、省令案につきまして、もしほかの先生方の御参考に供する必要があるということでございますれば、私ども余部を持ってきておりますので、今こちらでお配りしてよろしゅうございましょうか。
  85. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 配ってください。    〔資料配付〕
  86. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) それではただいまの御質問でございますが、いろいろ御指摘がございましたけれども、政令で定めるべき核燃料物質の定義あるいはその範囲について、それはもう法律で定めてはいかがかという御指摘が中心だったかと思いますが、その点につきましてお答えを申し上げます。  核燃料物質の定義、これは現行の原子力基本法及び原子炉等規制法に基づきまして政令で現在既に定められているところでございます。一方、もしこの核物質防護に関する条約で定義されております核物質の種類、そういったものを法律のレベルで規定しようといたしますと、ただいま申し上げました現行の政令で定められた核燃料物質の一部を取り出してまいりまして、それを法律で定めるということになりまして、これは立法技術上バランスを失することになるというふうに私ども考えております。したがいまして、今回の改正におきましても、原子力基本法等とのバランス上こういったものを政令で定めることとしたものでございます。  なお、特定核燃料物質の種類及び区分を定める政府令では、核物質防護に関する条約規定されている核物質の種類、区分をそのまま定めるということでございまして、何ら変更を加える意図は現在持っておりません。  それから信頼性の確認でございますが、そっちの方の御答弁も今申し上げた方がよろしゅうございますでしょうか。
  87. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 してください。
  88. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 信頼性の確認、我が国ではだれがどのように行うのかという御指摘がございました。昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告書の「事業者等の措置すべき核物質防護要件」におきましては、核物質防護のための区域の出入り管理に関するものといたしまして、臨時に当該区域の出入りを行う者につきましては、事前に信頼性の確認をした上で許可を与えた者に限り出入りを認めるというふうになされているところでございます。そしてその確認というのは、やはりその当該施設における核物質防護措置実施に関して責任を有する事業者が確認を行うということになろうかと思います。  一方、ここで言います「信頼性の確認」とは、あくまでも臨時にその区域へ出入りする人に対するものでございまして、具体的には、身分証明書等によります身分の確認並びに防護区域への出入りの必要性といったものについて確認するというふうに考えております。  それから、もう一点の御指摘は組織体制整備、教育訓練、こういったものの具体的な内容がよくわからない、不明瞭であるという御指摘がございましたけれども、ただいま申し上げました原子力委員会の専門部会報告書は、それが取りまとめられました時点、すなわち昭和五十五年七月当時既に策定され、また現在その国際的な基準となっております国際原子力機関IAEA勧告というものでございますとか、あるいは核物質防護に関する条約、これは五十五年三月に署名のために開放されたわけでございますが、そういったものの内容基本といたしまして原子力委員会が取りまとめたというものでございまして、その核物質防護に関する国際的な水準をこれは示しておるものでございますが、その中で、この組織体制の整備の要件といたしまして、原子力事業者に対し、核物質防護を担当する部局の設置あるいは管理責任者の選任、そういったものについて、それぞれの施設において適切な核物質防護措置等を講ずるため必要となる内部の組織体制を整備する必要があるというふうに指摘されておるところでございます。  また、教育訓練の要件につきましては、原子力事業者に対し、その施設の従業員が、それぞれの職務区分に応じまして適切な核物質防護活動実施できるような核物質防護に関する知識の普及あるいは啓蒙、それから核物質防護にかかわる緊急時のための訓練、そういったものを行うことを求めているものでございます。
  89. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 一つは、原子力基本法で、さっきたしかそう言われましたね、政令でもって定めている物質というようなことを言われたと思います。そうすると、整合性を欠くと言うけれども、私はそれこそ時代とともにもし扱う物質がいろいろとふえてくるとかなんとかというようなことがあるならば、それはそれなりにそういう物質がそうだということを確認をしていくことというのも国会では必要なことなんじゃないかというふうに思うんです。要するに原子力基本法の制定の趣旨からいって、平和目的に限り、そして自主、民主、公開の原則を持っているわけでありますから、そうすると、国会で審議をされるということが非常に大事なことなんだというふうに、関係法律については国会で審議されるということが非常に大事なことなんだと思うんです。  ということでありますから、私はむしろ積極的に政令で定めるという、ここの中でも既にもうバランスを欠いているのじゃないかというふうに私は思うんです。というのは、例えばさっきのこの前半の部分、「その他の政令で定める核燃料物質をいう」という前の部分というのは、これは核防条約でも前の部分として書かれている物質です。あと核防条約にずっと続いて書かれている物質名があるんですから、それをここに記載をしたって、何もほかのところで政令になっているからここのところも政令にしなきゃならぬという理屈は成り立たぬのじゃないだろうか。むしろ政令の部分をきちんと法律にしていくということの方が公明正大になっていいんじゃないかと思うんですけれども、その辺どうですか。
  90. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 私が御説明申し上げました趣旨は、そういったものを定義する場合には、やはりある一つの法体系の中での定義、原子炉等規制法の体系の中での定義ということになりますので、そういう意味では、既に現行政令で核物質の定義がなされている。それを引用した上である範囲あるいはその種類をこの核物質防護の対象としてどういうものが対象となり得るかというものを特定していくという立法技術上の考えといたしまして、現行で既に政令で定められているものを引用して、そのうちのこういうものが対象であるという決め方を法律レベルでやるのはやはりバランス上おかしいのではないかというふうに御説明申し上げたものでございます。  それから、例示として挙げておりますのは、やはり政令ではどういったものを定めるのかということを法律のレベルである程度わかるように措置する必要があるということで例示をしたわけでございまして、その範囲というのは、既に本日御承認をいただきました核物質防護条約の中で明定されておりますので明らかでございますし、そういったことで、やはり立法技術上の問題として政令で定めるということの方がやはりバランス上適切であるというふうに考えておるものでございます。
  91. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 明定されておるものであればあるほど法律でもきちんと明文化しておくことの方が私は大事だと思うんですが、どうですか。
  92. 緒方謙二郎

    政府委員緒方謙二郎君) 立法技術の問題でございますので私からちょっと御説明をさせていただきますが、先生おっしゃいますような立法論の 考え方もあろうかと思いますが、従来、現在のいろいろな法律体系の条文の書き方を見てまいりますと、このように一方の法律で政令で指定しているもの、基本法で政令事項になっているものをこちらの原子炉等規制法でそれを法律で引いてくるというのはバランスを失するというのが立法技術的な意味での感覚なんでございます。そういう意味で、全く立法の形式上の技術論としてこういう形になっておりまして、それでは丸ごとその定義のところで「政令で定めるもの」と書きますと、これは何でも政令で決められるのかということになりますので、そういうことではなくて、およそどういうものが政令で決められることになるのかというのを限定する意味で例示を示して、「甲、乙、丙その他政令で定めるもの」というような書き方をするのが法律上の政令に委任をする際の形、定石になっているわけでございます。今回も、そういう意味で、純立法技術的な観点から御提案しているような書き方になっているものでございます。
  93. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 立法技術というふうにいろいろと言われますけれども、しかし、政令とか府令、省令という形でいろいろと書かれている場合には、法律の場合には国会審議の対象として審議がここでもって議論をされて深められていくということになります。しかし、政令とか府令とか省令ということになりますと、国会審議等の外になるわけでしょう。だから、違う言い方をすれば、大事な部分というのは本来政令とか省令とかというものにすべきではない、法律としてきちんとして国会での議論というものを深めなきゃならぬのじゃないか、そういう考え方が私にはあるんです。今度の法案を見てまいりますと、そういうのでは政省令にゆだねている部分というのが多いだけにその辺が大変気になるんです。  昭和三十年の十二月十六日に原子力基本法が本院の当時の商工委員会で満場一致で採択をされています。この商工委員会審議をされたときの議事録を見てまいりますと、「原子力政策というものは、超党派的な措置をもちまして、政争の圏外において全国民の協力を得る形をとることが必要なのであります。国民の一部に冷眼視してこれを見る層がいささかもないように、われわれ政治をあずかる者としては心がけなければならない」とか、「政府ないしは政党といたしましては、非常なる努力を傾注いたしまして、国民の協力を求むる謙虚なる立場がほしいと思うのでございます。」というようなことを、これは提案者の一人として当時の中曽根衆議院議員が本院の商工委員会で言われているわけです。そして、最後に満場一致で附帯決議が付されておりまして、「本法の改廃及附属法、関係法の制定、運用に当っては、本法の趣旨並に提案の経過に鑑み、あくまで超党派性を堅持し、国民的協力態勢を確立すべきである。」というようなことが書かれています。私は、このときに議論をされた経過あるいは附帯決議の趣旨というようなものを考えていきましたときには、やはり国会で十分に議論をして国民の協力が得られるようにするということがこの原子力基本法をもとにして関係法律の一番大事なことだということが強調されていると思うんです。  ということになると、ここでたまたま今第二条の場合を言いましたけれども、私は政令、省令というものはできるだけ少なくして、その辺のところを明確にして議論が十分にできるようにという法律のつくり方をしてもらわなきゃならぬのじゃないかと思う。先ほど私は、不明な点も結構ありますというふうに言いました。例えば組織の問題にしてみても、私のいただいた、今配られたあれでいったって、ただその組織を整備することだけでしょう、考え方として出されているのは。「組織体制の整備」、「核物質防護に関する従業員の教育訓練」、こういう項目だけしか出てないわけでしょう。僕ら見せられてない。内容は今ちょっと説明があります。それでもまたさらに伺いたいことが出てきますけれどもね。  要するに、議論をするのに非常に大事な部分というのが、本当は議論をしなきゃならない部分というのが政省令の中に随分あっても、これは我々はわからぬということになるんじゃないですか。その辺基本法が制定をされた経過とか、それから、そこでの議論とか附帯決議とか、そういうものを踏まえてどういうふうにお考えになっているかを聞かしてください。
  94. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 原子力基本法の制定当時のお話でございますけれども、そういった附帯決議がなされているということは私どもも承知をいたしております。ただ、その原子力基本法につきましての国会の御審議におきましては、一部の党の反対はあったものの、複数政党の議員立法としてこれは制定されたものというふうに私どもは承知をいたしております。したがいまして、同法の可決に際しての附帯決議における「超党派性」という意味でございますが、これはやはり原子力開発利用に関する政策を広く関係者理解を求めながら進めていく、そういう趣旨であろうかと理解をしておるわけでございます。これまでの原子炉等規制法改正、累次にわたってあったかと思いますが、このような趣旨で行われてきたというふうに私どもは考えておる次第でございます。  今回の原子炉等規制法改正は、今国会で既に本日御承認をいただきました核物質防護条約実施し、あわせて核物質防護に関するIAEA国際原子力機関勧告を踏まえた原子力委員会決定内容法律上明確に位置づけることとしたものでございまして、これまでの法改正と同様に今国会での御理解をいただけるものと期待しているわけでございます。  次に、省令、政令への委任が多過ぎるのではないかという御指摘でございましたけれども、定義につきましてはただいま申し上げたとおりでございますが、確かに本法案におきましては、御指摘のように、核物質の種類、区分、そういったもの以外にも事業者の講ずべき措置の具体的な内容あるいはその手続的な事項等につきまして政令、府令に委任を行っておるものがございますけれども、重要なものにつきましては可能な限り法律規定されておりまして、また委任の範囲等につきましては他の立法例等を踏まえまして定めたものでございます。  さらに、例えば防護措置につきましてはいろいろ例示をさせていただいたわけでございまして、例えば「特定核燃料物質防護のための区域の設定及び管理、施錠等による特定核燃料物質の管理、特定核燃料物質防護上必要な設備及び装置の整備及び点検その他の特定核燃料物質防護のために必要な措置」というように、できる限り例示を行いましてその内容の明確化を図っているところでございます。これらは原子力委員会の調査、審議をこの後受けることにもなっておりますし、また核物質防護規定及び核物質防護管理者といった事項につきましては、他の立法例等も踏まえましてこれを省府令で定めることといたしたものでございます。
  95. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 防護措置とか防護規定とかいうようなものが、これがやはりいろいろな面で秘密保護というものとかかわってくるということが言えると思うんですね。核ジャック防止という観点から物を考えていけば、みだりに必要のない者を中に入らせてはいかぬとか見せてはならぬとかいうようなことというのがやっぱり秘密とのかかわりで出てくるのですよ。というようなことがありますから、それだけに私はその運用面においていろいろと重要な部分というものが出てくると思うんです、あると思うんです。ですから、その妥当性についての議論というものをやっぱり国会で十分にやらなきゃいかぬことなんだというふうに思っています。その国会で十分論議をするというためには、政令とか省令ではこういうふうにいたしますというものをある程度もうきちんとつくっていただいて提出をしていただくというのが私は本来のあり方じゃないかというふうに思いますけれども、その点はどうですか。
  96. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) ただいま配付させていただきました政令それから府令の素案でございますが、現在それは検討中のものでございまして、そ れを配付させていただいたものでございますが、そういったものによりまして、私どもといたしましてはなるべく現時点で政令の内容あるいは府令の内容については御説明を十分にさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、政令とか府令は、現在私ども説明させていただいておりますそういった案の範囲内で制定させていただくということで御理解承りたいというのが私ども基本的な立場でございます。
  97. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そういたしますと、さっき申し上げたみたいに、例えば十二条の二、総理府令で定めるということになっているものですね、それに「原子力委員会核物質防護専門部会報告書にある次の事項」というようなことでずっと幾つかのことが並べられていますね。それで、昭和五十五年の原子力委員会の専門部会の報告書というのが私どものところに今一緒に配られましたね。それで「組織体制の整備」というところを見ると、「核物質防護のための組織体制を整備しておくこと。」としか書いてないんですよ。それから「従業員の教育訓練」といっても、「従業員に対し、その職務に応じ、核物質防護に関する教育訓練を行うこと。」としか書いてないんですよ。そうしたら、ここに書かれているこの程度でこういうふうにして出されてきても、どんな組織が整備されていなきゃならぬのかというようなことの内容はわからぬわけですよね。「従業員に対し、その職務に応じ、」と、こうなっているけれども核物質防護に関する教育訓練とはどういうことをやるのかということもわからぬのですよ、これだけじゃね。言ってみれば、あなた方から今配られたものを見たって、我々はそのものが妥当かどうかということがわからぬじゃないですか。
  98. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 御指摘の組織体制の問題あるいは教育訓練の問題、その項目につきましては、府令でも恐らくそういった程度の規定ぶりになろうかと思います。さらにより具体的な内容につきましては、それは扱っております核燃料物質の種類でございますとか量でございますとか、あるいはどういった使用施設であるか、そういうケース・バイ・ケースによって変わってくるものでございますので、なかなか一律に基準として明定することは難しいというふうに私ども考えておるわけでございます。このためにやはりそういった問題については核物質防護規定の中で具体的に定めていくというのがこの制度の体系でございまして、具体的に組織体制をどういうふうにするか、具体的な教育訓練はどういう内容についてどういう方法でやるか、そういったことにつきましては、事業者がみずから自分の事業所として最も適当であるといったものを考えまして、それを核物質防護規定として事業者が定め、それを主務大臣が認可するという方式になるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、そういった具体的な問題につきましては、防護規定といったものが申請された時点で内容を慎重に審査をいたしまして、妥当であれば認可をすると、そういう方式になるわけでございます。
  99. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 核物質防護規定というもの、それじゃそれは自主的につくったもの、何でも自主的につくったらそれでよろしいというわけじゃないでしょう。やっぱり規定をつくるに当たってはいろいろと認可ができるという、認可することになっていますわね、届け出ること、認可を受けることになっている。そうすると、認可をするための基準とか条件とかというのがあるわけでしょう。そういうものはどうなるんですか。
  100. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 防護規定内容の基準となるべきもの、防護規定についてはどういうことを定めるべきかということは府令で定めますけれども、その内容がどうあるべきかということにつきましては、核物質防護上とるべき措置というのが府令で定められることになっておりまして、それに照らしてその事業所にとってそれが適当なものであるかどうかという観点から審査をし、妥当であれば認可をするということかと思います。
  101. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 まだ納得できませんけれども、そうすると、核物質防護管理者というのを定めなければならないことになっていますね。その防護管理者はこれはどんな基準で選出されるのですか。
  102. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 核物質防護に関する業務を適切に遂行することができる管理監督的な地位にあるかどうか、それから一定の知識を有する者であるかどうかといった観点から、この管理者として要件を満たしているかどうかという点がそれに照らして考慮されるべきであるというふうに考えておりますが、具体的にはこの業務を適切に遂行することができる管理監督的な地位にある者としては、工場または事業所における特定核燃料物質防護に関する業務、そういったものを統一的に管理することができる権限を有する地位にある者であって、これをもう少し具体的に申し上げますと、個々の工場または事業所の実情によってこれは異なるものであるというふうに考えられますけれども、例えば小規模な事業所でございますれば工場長とか所長といった立場の方、あるいは大規模な事業所にあっては担当の部長といった人たちがそれに当たるというふうに私ども考えております。  また、「防護の対象となる特定核燃料物質の取扱い等について一定の知識」を持つというその「一定の知識」といたしましては、具体的には特定核燃料物質の性質、特定核燃料物質の取り扱いに関する技術的な知識あるいは核物質防護に関する知識でございますとか、さらに放射線防護に関する知識、こういったことが考えられますけれども、現実的には前述の要件を備えた地位にある人たちにつきましては、これらの知識に関する要件についても十分にこれを兼ね備えているというふうに私ども考えている次第でございます。
  103. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 随分細かく聞いて恐縮ですけれども、やっぱり大事なことですからどうしても確かめたいんですが、「一定の知識」ということについては、今伺っていれば、かなり技術的なことも理解できるという、そういう知識のように思います。そういたしますと、必ずしも管理監督という、そのこととイコールで重ならない場合があり得る、多くあると思いますよ。というのは、例えば赴任してから一定の期間それこそ一生懸命勉強してそういう知識を身につけるというふうになられるんでしょうけれども、そういうふうにはなられるでしょうけれども、今までが直接そういう専門的な知識というのは余りなかった人が、例えば管理の面では非常にすぐれているからということで配置をされるということだってあり得る。そうすると、そういう場合には防護管理者にはなれないということですね。
  104. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 「一定の知識」と申しましても、別に国家試験で資格を取るとかそういう試験を予定しているわけではございません。ある程度の知識があればよろしいということでございますので、あとはそれぞれの事業所の中において総合的に勘案してその両方の要件を兼ね備えた人を選んでいただくということに現実的にはなるんであろうというふうに思っております。
  105. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私がこんなことを伺いますのは、先ほどのところへまた戻っていく形になりますけれども、要するに原子力基本法に基づいて、それで自主、民主、公開の原則に従って物を見ていったときに、この核物質防護ということが、その内容が例えば防護規定が本当にその自主、民主、公開の原則から外れていないかどうかというようなことについて一体国会が確認をするという機会というのはあるんだろうかないんだろうかということをやっぱり気にするから伺っているんですよ。要するにどこかで、政令、省令の中でそういうものがチェックができるというそういうものがあれば、それはそれで納得できる面もあるんですけれども、その辺はどうなんですか。
  106. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 原子力基本法に言う三原則と今回のこの核物質防護関係でございますけれども、今回原子炉等規制法の体系の中で位置づけようとしております核物質防護、これは昭和五十五年の原子力委員会の専門部会報告書において記されておりますとおり、核物質の盗取等による 不法な移転の防止、それから原子力施設核物質輸送に対する妨害、破壊行為の防止といった観点から行われるものでございます。今回の法改正は民主的な運営のもと原子力利用を進めるために設けられました原子力委員会における決定を受けて行われるものでございまして、また我が国原子力活動を取り巻く内外情勢を踏まえまして我が国が自主的に行うということは当然のことでございます。  従来からこの三原則の中の公開の原則の適用に当たりましては、これは財産権の保護あるいは核不拡散等の観点からある種の情報についてはこれは慎重に対処しておるところでございまして、今回の核物質にかかわる情報につきましても、そういった取り扱いをすることにつきましてはこの公開の原則には何ら触れるものではないというふうに考えておる次第でございまますが、いずれにいたしましても、核物質防護に関する体制を整備していくに当たりましても、従来どおりこの基本法の第二条の原子力三原則というものを堅持していかねばいけないというふうに考えております。専らその三原則が侵されているかどうかといった観点からチェックする機能というのは特段の準備はございませんけれども、やはり防護規定の認可でございますとか、あるいはそういった規制を行うに当たりましては、そういった点については、いたずらに過度な防護といったものに陥らないように十分注意をしていくということは、これは当然のことかと考えております。
  107. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、チェック体制としての最高の機関としてはやはり国会がそうだというふうに思うんですよ。政府を信用してくれと皆さんの方はそれは言いたいんでしょうけれども政府政府としての考え方を持って対処をしてきておられるとは思いますけれども、しかしその政府考え方でいいかどうかという国民的なコンセンサスの観点から物を考えていったときには、視点から物を言ったときには、やっぱり国会での議論というものが非常に大事なんだというふうに思います。そのことが原子力基本法を決めるときの「超党派性」ということで附帯決議までついている、そういうことではないかと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えですか。
  108. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 原子力基本法は第二条でこの三原則がうたわれているわけでございますけれども、国会の意思によりまして成立されましたこの基本法の第二条を遵守する義務というものは、私ども行政の立場にある者としてそれを遵守していくという立場にございますので、その点につきましてはこれまでも努力してまいったつもりでございますし、今後ともそういった法律に定められました義務といったものについては最大限それを果たすべく努めてまいるということでございます。
  109. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 皆さんは原子力基本法の第二条の立場をちゃんと守っていますというふうに言われます。それはそれでそう言われるのはわかります。しかし、それが妥当であるかどうかということをやっぱり私は国会でもきちんと議論をすべき問題だというふうに思っているんですよ。ですから、こういうふうにして政令、省令というのを例示として申し上げたんですよ。さっきの一つ一つお答えをいただいたような格好になりますけれども、「組織体制の整備」としか書かれてないが、どんな組織体制なのかわからぬじゃないかとか、教育訓練がどうなっているんだとかというようなことというのは、私は今の内容がよくわからぬということの例示として申し上げたんです。  というふうにして政令、省令でもっていろいろと規制をされるということについては、本来であれば、そういうきちっとした議論をしようと思えば、政令についてはこういう内容の政令にしたい、こういう政令にいたしますと、それから総理府令あるいは通産省令というのはこういうものですというものを当然この法案と一緒に提出してもらわなきゃならない問題。そうしなければ内容がわからない部分というのは、極端な物の言い方をして恐縮ですけれども、これだけ読んでいったらちんぷんかんぷんな部分もあるんですよ。内容がよくわからぬというところだって出てくるんですよ。  ですから、まず政令、省令というのについて、私はこの程度の抽象的なものでなくて、実際にもう、中にはそれはさっきの十一条の三のような場合の核防条約に明示されているもの、そういう物質というのはむしろ「その他の政令」なんて言わないで、もう全部並べた方がいいんじゃないかと思われるような、明文化された方がいいんじゃないかと思われるものもありますけれども内容がよくわからないもの等についても結構あるわけですから、そういうものをつくって出していただくべきだというふうに思うんです。これだけだとやっぱり今御説明をいただいた部分については多少はわかってまいりましたけれども、そうしたら、それなりにちゃんと政令、省令はこういうふうにしたいと思いますと、もう少しそういう詳しいものが出てこなかったらならないわけでしょう。どうですか、その辺は。
  110. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 繰り返して申し述べるようでございますが、私ども府令等で定めようとしております技術上のそういった基準、指針といったものは、昭和五十六年の原子力委員会決定いたしました核物質防護に関する事業者が守るべき措置要件、そういったものを定めていくということでございまして、それ以上のものでもなければそれ以下のものでもない。したがいまして、そういう方針で政府令が定まっていくものであるということを本日御説明申し上げておるわけでございますので、それについての立法府の御判断を私どもいただきたいというふうに思う次第でございます。  なお、三原則がきちっと守られることになっているかどうか、そういったチェックにつきましては、やはり原子力委員会といったものは、原子力基本法によりまして原子力委員会の設置が決められ、その原子力委員会がやはり民主、自主、公開といった原子力開発利用、推進の三原則といったものについて常にそれをウォッチしているという体制になっておるわけでございまして、今回の核物質防護についての細かな規定につきましても、将来そういったものを改廃しようとする場合には原子力委員会がそれをきちっと審査し、チェックをするということを原子力委員会みずからが御決定になっていることもございますので、私どもといたしましては、そういった観点からは原子力委員会の御審議を経て政府令を定めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 二つ聞きたいんです。  それ以上のものでもない、それ以下のものでもないという話でしたけれども、私は請求をして今の一部改正法律案の政令及び府令についての考え方と、それから五十五年の「原子力委員会核物質防護専門部会報告書」というのを事前にいただいて読ませていただいて、そして今疑問点をいろいろと出しました。しかし、ほかの委員さんはさっきもらったばっかりなんですよね。以上でも以下でもないというんだったら、こんなの法律にみんなその他政令とか省令とかと書いてあるんだから、本来だったらこれはもう一緒に配られてしかるべきものじゃないんですか。これが第一。  それから、原子力委員会でいろいろとチェックをしています。それはそれでわかっているつもりなんです。だけど、例えば今の防護の問題というのは、場合によっては基本的人権ともかかわる場合も起こり得る可能性を持っていますということですから、それだけに原子力についての専門的な観点からの検討原子力委員会でなければ、僕らは素人なんですからわからない部分がいっぱいあるんですから、それは原子力委員会であれをしていただくということは必要ですけれども基本的人権にかかわらないかあるいは学問の自由との関係はどうなるかというような問題等は、これはまさに国民全体の問題として国会で論議すべき問題だと思うんですよね。だから、それだけに内容が明らかにされなければ困るから、政省令についての細かいことを一緒に教えてもらわなきゃならぬという主張になっているんです。この点をどうお 考えになりますか。
  112. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 政省令は目下なお私ども検討中の段階でございまして、本日お配りできたものにつきましても、それはあくまで科学技術庁の内部で検討中のものでございます。政令は各省庁一本でございますけれども、省令、府令となりますと、通商産業省令あるいは運輸省令といった他の省庁の所管の省府令もございまして、それはやはりその法律案が御審議され、それが法律としてそれでよろしいという御裁断を国会から得ました後でそういった政府令というものが形を整えていくというものではないかと思う次第でございます。  私どもは現在検討中のものをとりあえず御参考までに御要望に応じまして先生に御提出し、また本日は他の先生方にも御参考までに、委員会からの御要望はございませんでしたけれども、配付させていただいたということでございまして、私どもはなるべくこの段階法律の御審議の参考にしていただくという趣旨で御説明を鋭意させていただいている次第でございますので、何とぞその点を御理解を賜りたいと思います。
  113. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それではちょっと別の角度から伺いましょう。  法律ができたら、その後で政省令というのは最終的にきちんとつくりますと、こういうお話です。そうすると、私はこれは結構大事な問題が含まれているというふうに思われますからそういう要望になるんですけれども、その政省令はできたら国会に報告をしていただけますか、本委員会に報告をしていただけますか。
  114. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 先ほども申し述べたとおりでございまして、繰り返して申し上げるようでございますけれども、その枠組みあるいは考え方、そういったものにつきましては十分な御説明をここでさせていただいておるつもりでございます。そしてその政府令といったもの、そういった範囲内で今後制定させていただくということでございますし、御理解を賜りたいと思うのでございますが、将来につきましては、御要望があれば、形式はともかくといたしまして、御説明するにはやぶさかではございませんので、その時点で御相談をさせていただきたいと思います。
  115. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 審議のときに内容が十分、枠組みについても出されたといってもやっぱりいろいろと心配のところもありますから詳しく知りたいということを申し上げている部分があるわけですが、それだけに枠組みについても一緒につけて出すのが本来じゃないですかというふうに私は申し上げました。ですから、要求があればというような話よりも、これは当然出していただきたい、そう思うんですけれども、出していただけるんですか、もう一度念押しをいたします。要望があればというのじゃない。というのは、いつできるのかそれも僕らわかりませんが、できた時点で私たちはもらえますか。
  116. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 現在検討中のものでございますが、成案が整いました時点で御説明するために御相談をさせていただきたいと思います。
  117. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 委員長に要望いたしますが、それぞれ所要があってそうなっているんだと思いますけれども法案審議でありますので、やはり定足数には達していなければいけないのじゃないかと思います。他の委員会では定足数に欠けると審議しないという慣例になっているところもあるようでありますから、その辺は委員長のお計らいをひとつよろしくお願いをいたします。
  118. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) はい。
  119. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そこで質疑を続けさせていただきます。  私が今特にいろいろと心配をしておりましたのは、そうした防護ということを理由にいたしまして基本的人権や学問の自由や研究の自由というものが大きな制約を受けてはならない、こういうことがやはりあるものですから、その辺がどうなるかということを気にしながら、かなりしつこく根掘り葉掘り聞いているということになりますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  そこで、例えば原研とか大学、そういった試験研究機関施設研究施設、そういうものはこの法律でいくとどの部分になるんでしょうか。それぞれ製錬事業者とかあるいは加工業者とか廃棄業者とかという指定をしながら同じような内容のものになっていますね。そういう試験研究機関というのは特別に書いてありませんけれども、これはどこに入るんでしょうか。
  120. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 原子炉等規制法におきましては、その規制を行うに当たりましてこれを各種の分野に区分をいたしておりまして、それぞれの分野ごとに一連の所要規制を行うという体系になっております。  具体的には、ただいま先生御指摘のとおり、まず製錬事業というのがございます。それから加工事業、それから原子炉の設置、運転等、それから四番目に再処理の事業、五番目には廃棄事業、六番目には核燃料物質等の使用という、そういったカテゴリーに分けまして、それぞれの分野ごとに規制を行うものでございます。  したがいまして、研究所あるいは大学といったようなそういう組織ごとの区分というのは法制上行われておりません。  そういった観点から御説明いたしますと、現在原研につきましては、原子炉設置者ということでもございますし、一方核燃料物質の使用者としての規制を両方受けておるわけでございます。また大学につきましては、原子炉設置者の性格を持っている大学もございますし、核燃料物質の使用者として規制を受けている大学もございますし、あるいは両方の規制を受けている大学もございます。
  121. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 この防護規定というもので特にこういう試験研究機関のことを伺いましたのは、特にそれが学術的な発表であるとかそういうものと微妙にかかわってくるような場合というのが試験研究関係では出てくるんではないだろうか。その辺が大分気になるものですから、要するに学問の自由、研究の自由というようなものをこの防護規定が制約するような形になったんでは困る、こういうことになるわけですけれども、しかし防護という観点からいうと、その辺がやっぱり制約を受ける部分があるんじゃないだろうか、そういうことが気にもなるんですけれども、どうですか。
  122. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) 核物質防護のための措置、これは基本的には核物質の盗取等の不法な行為からこれを守るということに限定されるものでございますから、核物質防護、これは英語ではPP、フィジカルプロテクションと呼んでおるわけでございますが、その名の示すとおり、あくまでまずハード面の措置というものが基本でございます。さらにこれをより万全なものとするために、人の出入り管理等についてあわせて行うという、そういう性格のものでございます。  また、今回の法改正によりまして事業者に義務づけようとしております核物質防護のための措置内容、これは再三申し上げておりますとおり、原子力委員会が決めました事実上はおおむね事業者によって既に講じられているそういう措置でございまして、事業者等においてこれまで特段の問題なく受け入れられているものでございます。今後こういった内容を規則として基準化する際には、先ほども申し上げておりますとおり、原子力委員会意見を十分に尊重しながらこれを制定していくということになっておりまして、核物質防護措置実施というものが研究者の自主性でございますとかあるいは研究の自由、そういったものを損なうというような御懸念はないのではないか、そういうものではないというふうに私ども考えておる次第でございます。  このように今回の法改正は決して研究の自由、そういったものを侵すというような性格のものではございません。それで、その運用に当たりましても、私ども十分事業者を指導いたしまして、この点につきましては万遺漏なきを期す所存でございます。
  123. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は特に運用の面で間違いがない ようにということを特に留意をしていただきたいということがあります。ぜひお願いをしたい。その点は留意をしていただきたいと思います。  それからもう一つ伺っておきたいのは、従業員の労働三権を制約するようなことがあってもならないと思うんですが、その点も指導としてはきちんとされるんでしょうね。
  124. 石塚貢

    政府委員石塚貢君) ただいまの研究の自由の確保といいますか、自主性の確保と同じように、この労働三権といいますか、こういったものに対する影響といいますか、そういったものにつきましても、このPP核物質防護というものによっていささかもそれが侵害される心配はないというふうに私ども考えているわけでございますが、この核物質防護といいますものは、先ほど申し上げましたとおり、人の管理というものを主たる目的とするものではございませんし、いわんや従業者の労働三権、そういったものに対してそれを拘束するとか侵害されるということにはならないであろうというふうに私ども考えておりますし、またそういう運用がなされますように、それが問題となるようなことがないように私ども指導してまいりたいというふうに考えております。
  125. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 まだ伺いたいことが随分あったんですが、ついつい変なところでしつこく聞いちゃったので時間をとってしまいました。  そこで、あと一つだけこの法令の内容で聞いておきたいと思いますのは、例えば十一条の三の一番後ろの方に「特定核燃料物質防護上必要な設備及び装置の整備及び点検その他の特定核燃料物質防護のために必要な措置」と、「その他」というふうになっておりますけれども、その「その他」とは何だろうか。これは一項の方ですね。  それから二項の方で、これも後ろの方で「特定核燃料物質の取扱方法の是正その他特定核燃料物質防護のために必要な措置」と、「その他」の必要な措置というのはどんなことなんだろうか。  あるいは十二条の二の3で「内閣総理大臣及び通商産業大臣は、特定核燃料物質防護のため必要があると認めるときは、」云々というふうになっていまして、この「必要があると認める」というのはどんなことを想定をしておられるのか。  政省令でわからぬ部分があるということを申し上げましたけれども、こういうふうに「その他」とか「必要があると認める」というような部分というのはどういうことをお考えになっているのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  126. 緒方謙二郎

    政府委員緒方謙二郎君) まず最初の御指摘の十一条の三の第一項、「特定核燃料物質防護のために必要な措置」について「その他」の部分でございますが、先ほど来局長の方から御説明しておりますように、一連のこの府省令と申しますのは、昭和五十五年の原子力委員会核物質防護専門部会の報告書に示された「事業者等の措置すべき核物質防護要件」、お手元にお配りした資料の後ろの方でございますが、それについておりますものを府省令の形で整理をして正式に書いていく、こういう考え方でございます。したがいまして、その中に後ろの方を見ていただきますと対応する条文がございますが、法律で今先生がお読みになりましたものが例示として挙げたものでございまして、「その他」というのは、したがって引き算をした残りのものになります。条文で例示されていないものとしては、後ろの方を見ていただきますと、例えば、連絡通報体制の整備であるとか、核物質防護の詳細に係る情報の管理であるとか、緊急時における対応体制の確立であるとか、核物質防護のための組織体制の整備であるとか、核物質防護に関する従業員の教育訓練というようなものが例示としては挙がっていない。したがって、「その他」のものとして府省令で定める、こういうことになります。  二番目の御指摘の十一条の三の二項の是正措置等の具体的な内容でございますけれども、是正措置と申しますのは、今御説明をしました第一項の方で府省令で基準が決まっておりまして、事業者等が守るべき措置が決まっているわけでございます。事業者がそれに合わないときに合わせろという指示、命令をするわけでありますから、基本的に先ほど申し上げたものと同じものになるわけであります。事業者が守るべきものを守っていないときに、それを守れということを言うということでございます。ただ、書き方が若干違っておりますのでこういうような表現になっておりますが、今例示で挙がっていないものとしては、例えば侵入警報系統の確立維持であるとか、連絡通報体制の整備であるとか、緊急時における対応体制の確立というようなことがこの是正措置の命令として「その他」の中に入ってくることになろうかと思います。くどいようですが、いずれも原子力委員会の専門部会の報告書にある中身でございます。  それから、三番目の御指摘の十二条の二の三項、これは核物質防護規定の変更を命ずることができるというものでございまして、どういう場合に変更を命ずることができるか、こういうことの御質問であります。  御説明申し上げましたように、それぞれの事業者が各施設に一番具体的にフィットする核物質防護規定というものを制定して主務大臣の認可をまず受けるわけでございます。その受けた後で、核物質防護規定と実情とが合わなくなってしまったときにこの変更を命ずることができるわけです。  どういう場合が考えられるかということですが、典型的な例としては、例えば、認可を受けた後で施設が増設その他によって変更される、あるいは取り扱っている特定核燃料物質の種類とか方法が変わってしまうというようなことが考えられるかと思います。こういう場合には十二条の二の一項で変更の認可申請というのをしなきゃいかぬことになっておりますが、仮に事業者がそれを怠った場合、実情と規定が合わなくなりますから、そういう場合には実情に合うように合わせろということを、事業者が申請してこないのをそこを変えろということを主務大臣が言うことができる、こういう規定でございます。基準を事業者が決めて、その後合わなくなったときに主務大臣が変更を命ずることができるというのは、現行の法体系の中で保安規定について、これは放射線障害の防止のための保安でございますが、保安規定について全く同様の制度が既につくられ運用されているところでございます。
  127. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 もう時間がなくなりましたので、やむを得ませんので、最後に長官に伺って私の質問を終わりたいというふうに思っておりますが、長官は過日閣議で、我が国の反原発の運動というのが高まっているというのに懸念を表明された。そしてまた、閣議ではそれに対処する方針を何か相談をされたというようなことが新聞で伝えられております。  私は、ちょっと意見を申し上げた後で最後に長官の御見解をいただきたいんでありますけれども、これも過日ですけれども、何日だったか覚えていないんですが、たしか十チャンネルだったと思います。テレビ朝日の特集として、アメリカの原発会社が周辺の住民に事故が起こったときにこう対応しなさいというかなり詳しいマニュアルを配布をしているというようなことなどが報道されました。私はそれを見ていて、その報道というのはそれを劇化していたわけでありますけれども、軍事機密ということでいけば大変厳しいアメリカでさえ、原発についての安全性ということは、むしろ原発事故というのは起こり得るんだということを前提にして、万が一のときにはこう対処しなきゃならないという、そういうことをきちんとしているということに改めていろいろと考えさせられたということなんであります。  我が国の場合は、逆にそうした点では安全性の方がかなり強調されていまして、我が国では安全なんだというようなことが強調されていて、だから、意外に知らされていない面というのが結構あるというふうに思うんです。そのことがやっぱり反原発運動というものにいろんな面で影響しているというふうに思います。違う言い方をいたしますと、その反原発の運動というのが逆に原発の安全性というものに影響しておる。反原発運動があるからやっぱり安全性というのを常に気にしな きゃならぬ、こういう作用もしていると思うんですよね。そういう面では、反原発の運動というのも私は一定の役割を果たしているんじゃないだろうか、こんなふうにも考えているんです。  これと、今度のこの問題とどう関係するかといったら、私はやっぱり核ジャックは、これはもう何としても防がなきゃならない、そう思うんですけれども、しかし同時に、核ジャックを恐れて、そのために原子力というものについていろいろと神経質になって、エコロジストだとかいろいろといますけれども、そういう運動に対して逆に抑圧の口実みたいなことになってしまってはこれはいけないんではないだろうか、そんなふうにも思うんです。  そういうふうに考えていくと、この間長官が閣議で反原発の運動の高まりというのに懸念を表明されたということにちょっと私は逆に懸念を持ったわけなんですが、その辺の御見解と、そして確認ということで恐縮でありますけれども、核ジャックを恐れる余りに逆に秘密主義にならないようにということをぜひ約束していただきたい、そう思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  128. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 閣議での発言でございますけれども、先ほど来後藤先生も御指摘のとおり、我が国原子力の発電は三〇%近くになっておるわけでございまして、我が国の基軸エネルギーとしての地位を高めておりまして、その原子力発電あるいは原子力について反対の運動が高まってきて、我々の説明の不足あるいはまた接触の不足等によって無用の不安なり心配を国民に与えることは必ずしも国全体として得策ではない。もちろん、今お話しのとおり、原子力平和利用に徹して自主、民主、公開という三原則をしっかり守り抜く。さらにまた、安全性確保についても、これまた先ほど来御指摘のとおり、私自身もこの委員会でも申し上げたと思うんですけれども科学技術、とりわけ原子力についてはもうあつものに懲りてなますを吹くというぐらいの愚直な態度を貫くべきだという考え方で進まねばならぬということでもございます。  また、核ジャックを理由にして情報についての非公開に性急になるというようなことは避けなきゃならぬということも全くそのとおりでございますが、ここまで三〇%にもなっておる原子力発電について、国民の皆様方、特に今回の動きを見ますと、主婦の方々にそういう不安が広まっているようでございますので、内閣全体挙げて、科学技術庁だけあるいは通産省だけでやってもこういう方々の不安を取り除くことはできないので、内閣全体として誠意を持って、PAといいますか、原子力発電というものを国民的なコンセンサスのもとに、あるいはまた社会的な受容のもとに、国の基軸エネルギーとしてなお一層定着をさせていただきたい、そういう気持ちから発言したわけでございまして、御指摘の情報の非公開、あるいはまた原子力の三原則をいささかでも損なうというようなことは露ほどもございませんで、これはかたく誓えということでございますから、まさに私もこの場ではっきりと原子力平和利用の三原則を損なうあるいは情報の非公開に性急になるというふうなことは絶対に避けるということはここで心からお誓いを申し上げて、これからの原子力行政の健全な進展のために、この法案の御審議等を通じましての御意見を十分踏まえながら進ませていただきたい、このように考えております。
  129. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  130. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案審議のため、来る十八日の委員会参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認めます。  なお、参考人の人選につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会