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政府委員(松井隆君) 現在、私
どもが国会に御
審議をお願いしております新
日米原子力協定でございますけれ
ども、昨年の十一月の四日でございますか、
日米双方で署名いたしました。それで
アメリカの場合にはすぐそれを議会に提出、具体的には十一月九日に
アメリカの議会に提出されております。それで結論から申しますと、本年の四月の二十五日でございますけれ
ども、いわゆる
アメリカの
法律によりまして九十日間の会期を終了したということで、
アメリカの方におきましては議会の
承認の手続が完了したという
状況になってございます。
それで、先生御指摘の
アメリカ議会におけるいろんな御議論がございました。
内容をちょっと簡単に御紹介させていただきますと、大別すると
二つあったというふうに思います。
一つが、プルトニウムを飛行機で
輸送する場合、これはいわゆる今度の
協定では
包括同意の対象になってございます。そういったプルトニウムの
航空輸送をする場合の
安全性が
確保できるのかどうか、こういった問題についての懸念を表明する動き、これが
一つでございます。
それからもう
一つが、新しい
協定は、
アメリカの
国内法であります米国不拡散法というのがございます、そこの
要件を満たしていないのではないか、つまり
国内法違反ではないか、こういった疑問視する動き、その
二つが大きな動きであるというふうに承知しております。
それで、まずプルトニウムの
航空輸送のお話から先に申し上げますと、これにつきましては、特に
輸送ルートとなるてあろうということでアラスカ州選出のマコウスキーさんという上院議員の方、この人が中心になりましていろいろとそういった動きがございました。具体的には現在
アメリカの
規制委員会が持っておりますプルトニウムを
航空輸送する場合の基準がございます。これはNUREG—〇三六〇というナンバーでございますけれ
ども、その基準に対してさらにもっと難しい条件を付加したらどうかというような動き。具体的には幾つかございますけれ
ども、簡単にちょっと一、二申し上げますと、
一つは、それに対して最高巡航高度からプルトニウム
輸送容器を実際に落としてみて大丈夫かどうか確かめろということ、あるいはもう
一つは、飛行機ごと
輸送容器と一緒に落として、それで大丈夫かどうかというのを確かめてみろ、こういったようなことでございます。それにも条件がございますけれ
ども、それは省略いたしますけれ
ども、そういったような
案件のいわゆるマコウスキー
法案と当時言っておりましたが、これが昨年の十二月二十二日に成立してございます。したがってマコウスキー法になっておるわけでございます。また、その後の動きといたしましては、といっても、やはり
アメリカの領空を飛ぶのは危険ではないかという議論がございまして、現在
アメリカ政府としては、
アメリカの領空を通過しないでヨーロッパ、具体的にはフランス、イギリスでございますけれ
ども、それから公空上を通過して北極を通って
日本に直行できるノンストップ便が将来可能である、こういう
判断とか、そういったいろいろな話がございました。それがプルトニウムの
航空輸送に関する問題でございます。
それから、もう一方の
アメリカの核不拡散法という
国内法の
要件を満たしていないということについての件でございますけれ
ども、つまり現在の
協定は、個々のケースごとに個別同意と申しますか、という仕組みでございまして、そういった個別同意であってこそ初めて
核拡散防止のための
アメリカの影響力の行使ができる。新
協定にあります
包括同意方式になると、そのような影響力は行使できないのではないか、こういった議論が
一つございます。それから、今回の新しい
協定では、例えば
日本で再処理をする場合に
包括同意の対象になってございます。そういうことが
日本でできるようになるわけでございまして、非核兵器国が
核物質を核爆発装置につくりかえるのに対して、十分事前にそういうのを察知した場合には、
アメリカ政府が時宜を得た警告、タイムリーウオーニングと言っておりますけれ
ども、それを米国が持たなくちゃいけない。そういったようなことに対して、これを与えてしまうとできなくなるんじゃないかというような懸念の向き、そういうようなことが
理由でございまして、いろんな議論がございました。
具体的には、昨年の十二月十七日に上院の外交
委員会、これがそういった趣旨で、今度の新
協定は米国の核不拡散法の
要件を満たしていないといった趣旨の
判断をしまして、多数決、多数でございますけれ
ども、それの書簡を大領統に送っているとか、それから、同じく下院の方は外交
委員会有志でございますけれ
ども、同様の趣旨の書簡を大統領に送付している。これは両方とも国内の核不拡散法を満たしていないという
立場でございますけれ
ども、そういうことを承知しております。それからさらにことしになりましてから上院のバード院内総務あるいはドール院内総務、この両名で新
協定不
承認決議案というものを提出してございます。それからさらにクランストン上院議員外十二名が、これは米国の
国内法を満たしていないんだから、新たに
国内法を満たしていない
協定であるということで再提出しなさいと、そういった義務づける
法律案と申しますか、そういうものもございました。また下院も同様な動きがございました。
それに対しまして行
政府は、一月二十九日でございますけれ
ども、
レーガン大統領から書簡を送りまして、包括事前同意方式の合法性について
関係省庁にもう一回再
検討させましたと。その結果は、米国核不拡散法の
規定は、
包括同意方式を排除してでもではない。具体的にはスウェーデン、ノルウェー、フィンランド等の
協定については三十年間にわたる包括事前同意方式の前例がございますと。それで、新しい
日米原子力協定も核不拡散法の
要件を満たすということを再確認するということを議会に対して送付してございます。その他国防総省が反対しているというような動きもありましたものですから、それに対してカールーチ国防長官から、国防総省は全部完全にこの新
協定をサポートする、支持するといったような書簡も出してございます。
一方、二月ごろになりましてから上院、下院でそれぞれの有力議員さんが、新
協定を支持すべきだという呼びかけもなされておりました。そういったいろんな動きがございまして、三月二十一日に、これは上院でございますけれ
ども、この
協定を不
承認、
承認しないという決議案についての採決が行われまして、それが賛成三十、反対五十三ということで否決されました。
そういうことで、いろいろと動きがございましたけれ
ども、やはり本
協定は
承認すべきであるということが多数を占めたというふうに
理解してございまして、それ以降特に目立った動きはなくて
四月二十五日まで過ごしまして、そこで新
協定は
アメリカ議会では成立したと、こういう
状況になっているわけでございます。