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1988-04-28 第112回国会 参議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十八日(木曜日)    午前九時四十分開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      吉村 真事君     陣内 孝雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中野 鉄造君     理 事                 真鍋 賢二君                 松岡滿壽男君                 安恒 良一君                 中野  明君     委 員                 伊江 朝雄君                 坂元 親男君                 陣内 孝雄君                 高平 公友君                 野沢 太三君                 二木 秀夫君                 森田 重郎君                 山崎 竜男君                 穐山  篤君                 小山 一平君                 田渕 勲二君                 小笠原貞子君                 田渕 哲也君    国務大臣        運 輸 大 臣  石原慎太郎君    政府委員        運輸政務次官   久間 章生君        運輸大臣官房長  棚橋  泰君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長       清水 達夫君        運輸省貨物流通        局長       中島 眞二君        運輸省海上技術        安全局長     間野  忠君        運輸省海上技術        安全局船員部長  野尻  豊君    事務局側        常任委員会専門        員        多田  稔君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○船員法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、吉村真事君が委員を辞任され、その補欠として陣内孝雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに船員法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 安恒良一

    安恒良一君 まず、日本企業支配をしております便宜置籍船の隻数、総トン数は幾らでしょうか。  それから、それに日本船員はどの程度乗っているんでしょうか。その点について伺いたい。
  5. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) いわゆる便宜置籍船の実態につきましては、その所有用船関係が複雑でございまして、また、実質的な船主の確定が難しいということから、正確な数を把握することは困難な状況でございます。しかし、当局において、いわゆる便宜置籍船の数を、海運事業者から提出されました外国船借り受け状況報告に基づき推計いたしますと、おおむね千隻、約二千万総トンというように考えられます。具体的には、昭和六十二年六月末日時点における外国からの用船数は千二百六十六隻、二千六百三十一万総トンとなっております。このうちいわゆる便宜置籍国と称する国から用船しておるものは千三十一隻、千九百七十五万総トンとなっております。  それに対して日本人船員がどのぐらい配乗されているかという御質問でありますけれども、こういった便宜置籍船外国法律に基づいて設立されているという関係から、私どもの方で日本人船員が何人乗っているかという正確な数については、残念ながら把握できない状況にございます。
  6. 安恒良一

    安恒良一君 把握していないというのがまず私は大変問題があると思うんです。  私は、日本企業支配をしている便宜置籍船日本人船員を配乗せしめることを制度化すべきではないだろうかというように思う。例えば千五百隻として三人乗れば四千五百人の船員雇用が助かるわけですね。ですから、こういうことについて、なぜ運輸省は積極的にこれをやらないのか。なぜかというと、言うことだけはちゃんと言っておるわけです。ことしの運輸大臣所信表明の中に、「特に外航船員については、緊急雇用対策として、外国船への配乗等海上職域確保陸上職域への転換等を積極的に推進してまいります。」と、大臣は私たちの前で所信を述べられたわけです。  ですから、ここに書いてあるところの「外国船への配乗」というのはどういう意味なんでしょうか。私は、いわゆる便宜置籍船等に対してもこれを乗せると、こういうことだと思うんですね。そうでなければ大臣所信表明はうそを言っていることになるんですが、まだ大臣が到着されておりませんので、政務次官、その点についてお答えを願います。
  7. 久間章生

    政府委員久間章生君) 先生指摘のとおり、日本人船員雇用の場を確保するためには、便宜置籍船、これは必ずしも私どもにとって望ましいものとは言えませんけれども、それがふえている以上、これらに配乗すること、乗ることについてそれを促進していく必要があると考えておるわけでございます。  しかしながら、御承知のとおり便宜置籍船外国法人所有船舶でありますから、その雇用関係について直接行政指導を行うということがなかなか困難でありますために、従来からも財団法人日本船員福利雇用促進センターにおいて便宜置籍船中心とした外国船開拓を行い、これらへの日本人船員の配乗の促進を図っておるわけでございまして、ストレート行政指導という形ではできませんけれども、このような、促進センター等を通じまして雇用開拓を図っておるということで、大臣所信でもそういうふうに述べさせていただいたわけでございます。  なおまた、このほかにも外国船に乗船するのに必要な訓練を実施して乗りやすくするとか、あるいはまた、就職奨励金あるいは船員派遣助成金支給等日本人船員便宜置籍船を含む外国船に乗りやすくなるような環境の整備運輸省としても努めることとして、六十三年度の予算におきましても、その奨励金の十二万円を十八万円に引き上げ、また、税制面でも外国船裸用船料に係ります源泉徴収課税の不適用措置をとってもらっておるというようなことで、運輸省としても努めておるわけでございます。
  8. 安恒良一

    安恒良一君 大臣代理だからって、長くしゃべらぬでもいいんですよ。聞いたことにだけ答えてください。時間がありませんからね。  私が聞いていることは、日本企業がいわゆる支配をしているんですね。ですから、その意味からいうと、もう少し運輸省自体が、今日の船員雇用問題を考えるならば、便宜置籍船に対するところの、積極的にこれに乗せる方策について、今言われたこと以上にお考えを願いたいと、こういうことを言っているんです。この点は強く要望をしておきます。  次に、この前同僚委員からもいろいろ質問がありましたが、北米航路収支はどういうふうになっているか。すなわち、費用のうち船員費幾らなんですか。私は、日本人船員が一人も乗り組んでいなくてもこれは収支赤字になっているように思うんですが、この前同僚委員からの質問もあっていますから、また、資料を後からもらうことにしていますから、簡単に説明をしてください。
  9. 塩田澄夫

    政府委員塩田澄夫君) お答え申し上げます。  北米定期航路収支状況につきまして、これを経営しております邦船大手六社からの報告によりますと、六十一年度におきまして、六社合計で六百九十億円の赤字となっております。それから、北米定期航路船員費につきましては、同じく六十一年度の各社定期監査報告書を根拠に計算をいたしますと、船費の中に含まれる船員費だけを計算いたしますと、北米定期航路事業の全費用の約三%でございますが、一般管理費やその他費用などに含まれております船員費分を含めて計算をしますと、約五%になります。また、北米定期航路費用の中で、船を借ります借船料が約九%を占めておりますが、この中にはほかの会社船員外国人船員船員費も含まれておりますので、この借船料分を除きました北米定期航路事業費用に占める船員費の割合を見ますと、約五・六%になるわけでございます。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 問題は、だから船員合理化をすると言う。私は、合理化方向だけでやっていくのは非常におかしいんじゃないかと思う。船員合理化の最大のしわ寄せをする前に、いわゆる事業をやっている事業主政府が私はもっとやるべきことがあるんじゃないか。一方においては船員雇用を守る守ると言いながら、赤字だから、だから合理化だと。それが結局全部従業員船員しわ寄せをされている。  例えば、私が今やりとりをして、もう少し積極的な政策を打ち出してほしいと言いました。日本企業支配するこの便宜置籍船への配乗による船員費コストの分散や、近代化船への積極的な取り組み、こういうことをやっていかないと、赤字だ、赤字だから合理化だ。合理化船員減らし。このストレートの構造では、問題の解決はできないと思うんです。ところが、この前同僚委員質問参考人に来ていたださました経営者側の態度を見ましても、こういう問題については全く逃げ腰。そして、あたかもこの船員のいわゆる首切りだけをコスト削減の目標に置いているがごとくであります。  一方政府は、日本安全保障という観点からも、日本の船及び日本人船員は必要だと前回質疑の中で運輸大臣答弁をされています。それならば私は、監督官庁である運輸省も逃げ腰の対応ではなくて、今私が申し上げたようなことで、なるほど北米航路は大変な赤字だ、赤字だが、やり方を今言ったように積極的な方向にやっていく、こういうことの取り組みについてぜひとも運輸大臣にお約束をしてもらいたい、こう思うんですが、どうですか。
  11. 塩田澄夫

    政府委員塩田澄夫君) 先生今御指摘北米定期航路の現状でございますが、これを簡単に申し上げますと、この航路は世界で最も大きくてかつ成長性の高い市場でございますが、同時に、参入の船会社の数が非常に多くて、また定期船同盟運賃調整機能が著しく低下しているという状況の中で、競争が非常に激化しておりまして、邦船社経営悪化の大きな要因となっております。またこの問題は、今安恒先生指摘のとおり、船員費の問題さえ解決すれば解決するというものではございませんので、種々の要因が複合的に作用して現在の経営状況を招いているものだと私どもは考えております。  ところで、この分野につきまして基本的な問題は、これはやはり船会社経営上の問題であるというふうに私ども思いますが、同時に、我が国定期船海運が今後ともその役割を十分に果たしていくためには、日本船会社北米航路における赤字体質からの脱却が必要であると考えておりまして、このために運輸省としましても、この問題に対しましていかなる施策を講ずべきかにつきましては、現在、海運造船合理化審議会の場で検討を進めているところでございます。  なお、もう一つ先生が今御指摘になりました近代化船整備でございますが、この点につきましても、従来、厳しい国際競争下にある我が国商船隊につきまして、日本船外国用船を適宜組み合わせまして、全体として競争力を持つような船隊構成にしていくという必要があると考え、そのようにやってきたわけでございますが、そのような位置づけの中におきます日本船につきましては、先ほど先生指摘がございました、近代化船が中核になると考えてきたところでございます。ところが、実際問題としまして、最近の円高によりまして、日本船国際競争力がまた低下をしてきているという状況がございまして、このような中で近代化船建造意欲を起こさせるためには、近代化船国際競争力のある船舶となるということがどうしても必要となってきております。  このような問題を解決しながら国際競争力のある商船隊をどういう形で維持をしていくかということは大変大事でありますが、非常に難しい問題でございます。この問題については、今後の問題として今取り組みつつあるというところでございます。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 いろいろ問題があっても、日本の安全という観点から、やはり我が国海洋国家でありますから、どうしても日本人船員による日本船確保というのが日本安全保障観点からいってもこれは絶対にゆるがせにできないわけですね。単なるコストだけの問題ではないんです。だから今回もこういう二つの法案がかかっているわけですからね。そこで積極的にその点の取り組みを強く要求しておきます。  一方では、日本船外国人船員導入を進めようとしているんじゃないか。経営者側は、マルシップ日本人外人との混乗を行い、さらに便宜置籍船では日本人船員を排除する。今度は日本の船にまで、コストの面だけで外国人を乗せ、日本人を追い出そうとしている状況があります。これに対して、私はどうも運輸省は、政府は、船員対策は重要だ、船員雇用は重要だと言いながら、運輸省自体が傍観をしているのではないかという感じすらしてなりません。  そこで大臣にお伺いしたいんですが、日本船に対して外国人を乗せるということの導入はしない――これはこの前私は予算委員会で、いわゆる外国人労働者問題ということで、総理を含めて関係大臣を全部並べていろいろお聞きをしているところなんですが、この日本船に対して外国人導入しない、こういう点はよろしゅうございますか。
  13. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 大臣の御答弁の前に、ちょっとこれまでの経過について御説明申し上げます。  外国人労働力導入問題につきましては、かねてから、雇用対策法に基づく雇用対策基本計画の策定の際に、労働大臣から、原則として外国人労働力導入しないということが閣議発言されまして、これが了承されるという形で今日に至っております。船員につきましては直接この閣議了解適用になりませんけれども、国会における船員局長及び船員部長答弁という形でこの閣議了解を準用するということでこれまで方針を貫いているわけでございます。  しかしながら、昨今の円高等によりまして日本船がますます減少するという状況にあります。ちなみに外国状況はどうかと申し上げますと、ヨーロッパ各国におきましてもそれぞれの国の自国船が減少する、いわゆる海外流出専門用語でフラッギングアウトと申しておりますが、こういった現象の中で、いかにして自国船を維持していったらいいかということで非常に悩んでおります。その悩む過程の中で、一つ解決策として、自国船員に関する国籍要件につきまして緩和して、外国船員を受け入れしやすくするようにということがいわば世界的な潮流となっているわけであります。  かかる観点から、日本船主協会中心といたしまして業界からは、この際、ヨーロッパ各国で行われているように船員国籍要件を緩和して外国人船員導入したらどうかというような御提案がされていることは私どもよく承知しております。私どもといたしましても、もちろん日本人船員雇用の場をどうしても確保したいということを念願しているわけでありますけれども、一方、五倍も六倍も船員費コストが差があるという中でどんどん日本船海外流出が続いて、日本船がなくなってしまうということは、ひいては日本人船員雇用の場が縮小するということになるわけでありまして、かかる観点からこの問題をどうしたらいいか非常に頭を悩ましているところであります。  一方、労働側といたしましては、そういう形によりまして日本人船員雇用の場が縮小するということについて懸念されているわけでございますので、私どもといたしましては、まず、そういう形で外国人船員導入した場合に日本人船員雇用の場が確保できるのかどうか、そういうような観点からの検討も必要ですし、あるいはまた、これから日本船国際競争力を強化するためにはどうしたらいいかという各般からの検討も必要かということで、現在、海運造船合理化審議会で御検討いただいておりますので、その検討結果を見守りながら今後の対応を考えていきたいというように考えているわけでございます。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 長々としゃべらぬでいいと言っているでしょう。外国船員を乗せないようにするのかどうかと聞いておるので、閣議のことなんかもう全部知っているんだよ、僕は。君たち、長々としゃべるのは頭が悪い証拠だよ、はっきり言っておくけれども。頭が悪いから長々としゃべるんだよ。  というのは、あなたの論理で言ったら、コストが安いからと。賃金日本の船乗りは三倍四倍。だったら、そのことはほかの業種にも全部適用できる。それ、あるんですよ。円高の影響で、名目賃金だけ見ると日本労働者は高いことになっているんだよ。あなたの諭理で言ったら、他の業種も全部今後どんどん外人労働者を受け入れなければならぬということになるんだ。だから僕は予算委員会関係大臣に全部聞いて、そして明確にその方針は変えませんと、こう言っているんです。君のところだけ、いや、日本船員は四倍も五倍も賃金が高いから、場合によったらあり得るかもわからぬ、今研究を続けていますと。政府方針と違うことを君は言っているんだ。べらべらしゃべるんなら、それこそ予算委員会議事録をよく見てからしゃべってもらいたい。私は大臣に、まさかそういうふうにはしないでしょうねと言ったんだ。はいそうですと、こう答えるだろうと思ったら、君が前段にべらべらべらべらしゃべる。もう少し、予算委員会労働大臣が何を答えたか、総理が何を答えたか、こういうことをちゃんと勉強してきてあなた答えてください。  大臣、私はこういうことを聞いているんですよ。今お見えになったから言いますと、結局、非常に雇用問題が重要だということでこの法案がかかっているわけですよね。例えば雇用給付金支給延長をする。やめていく船員給付金支給延長をやったからそれで済むという問題じゃないんですよ。どうしたら日本船員雇用確保できるかということ、これが法案中心なんですから。給付金支給というのは、どうしてもそれでもやめていかなければならない人に対する手当ての問題。そこで私が大臣が来る前に聞いたのは、日本の船に外国船員導入を進めょうとしている。もう既に経営者側は、マルシップ日本人外国人を混乗させています。また、便宜置籍船日本人船員を排除しているんです。その上にさらに今度は日本の船に外人を乗せるということになると、もういよいよ日本船員は乗るところがなくなるじゃないか。大臣がおっしゃったように、セキュリティー観点からいっても日本の船は必要だ。また、日本人船員も必要だ。これは大臣方針でもある。そういう意味からいうと、まさか日本の船に外人を乗せるようなことはないでしょうねと、こう聞いたんです。聞いたら、まあべらべらべらべら長いこと言う。しかも議事録は全然勉強していない。自分のところのことだけ言っておる。  ですから大臣、ここのところは非常に重要です。もしもこれで日本の船に外国船員を乗せる、賃金が安いという理由だけで乗せ出したら、もう雇用問題は全然守れないんです。ここのところは、労働大臣総理含めて答弁された趣旨に基づいて、そのことはしないということをはっきりしてください。
  15. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) これはたびたび予算委員会でも問題になりましたけれども日本の労働問題全体の基本的な姿勢をこれから変えるのか、それともここしばらくというんでしょうか、ともかく原則として守っていくのかという大きな問題だと思います。  ただ、この委員会でもたびたび船主とそれから組合の代表を参考人としてお呼びしましても、そこのところで微妙に食い違いがあるわけで、船主の方はノルウェー式法律を変えてでも入れてほしいと。ただその場合に、私はやはり日本に入ってくるほかの種類の労働者との兼ね合いがあると言いますと、まあ船に乗っていれば目立たないんで、日本の社会で働く労働者と本質的に違うという論も出ますが、やっぱり一点突破全面拡大ということになりますと、日本雇用問題に大きく響いてまいりますし、ですからこそ私はナショナルミニマムということを申し上げているんですけれども、そういうものをきちっと構えることで初めて国家の補助というような問題も出てき得ると思いますし、私は、セキュリティーという観点からも現在の体制というものを守っていかなくてはならないと思っております。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 私は、後から総論的に申しますが、今船員部長が言っているようなことであるなら、船員労働条件運輸省がやるのは適当でない。これは労働省に移すべきです。運輸省がやると、どうしても事業経営ということだけを中心に考える。私は、事業経営はどうでもいいなどというそんなむちゃなことは言いません。しかし少なくとも、船員労働条件については今運輸省が握っているんですが、労働省よりも一歩大きく後退をするようなそんな発言をするようだったら、これは労働省に移したらいいと思う。なぜかというと、空のパイロットであろうとスチュワーデスであろうと労働省なんです。私は私鉄ですが、バスの労働者であろうと、交通関係はみんな労働条件労働省が一元的にこれはやっているんですよ。ところが、船員だけはいろいろ特殊性があるということで今まで運輸省に持たしてやってきましたけれども、こんなことで労働省よりも後退をしたような労働政策を平気で言うような運輸省だったら、運輸省船員労働政策をやるのはもう間違いだと思う。それこそ総理に進言をして、機構改革して、合理化をしなきゃならぬ、これぐらいの感じを持っているということをまず申し上げておきます。  そこで私は、少なくとも経営優位、事業者優位だけではこの問題は片づかないんです。そうすると、首切り合理化ということになります。だから私は、各社ごとにやっぱり雇用計画をきちんと立てる。そして海上及び陸上職域確保研修員の数なども明確にしながら、そして雇用計画を持たないと、今のような状況でどんどんどんどん進んでいきますと、もう船員は毎日毎日が不安でならない。いつおれがやめる番になるのかと。これでは立派な仕事もできないわけですね。ですから、私は事業がどうなってもいいとは言いません。しかし、事業の問題だけに目を向けるんじゃなくして、少なくとも今回の船員雇用促進に関する特別措置法、私どもは賛成をして決めたいと思っている。それに当たっては、各社各社ごと雇用計画をきちっと立ててそしてやっていく。そういう指導を私はやっぱり運輸省はすべきだと思うんですが、そういう指導についてどう考えますか。
  17. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 現在、労使協議に基づきまして、昨年の四月から二年計画緊急雇用対策と称する雇用調整各社で進められております。聞くところによりますと、会社によりますと第二次、第三次の雇用調整というようなことも計画しているというようなことでございます。このような状態が続けば、今先生指摘のとおり、船員雇用不安がますます募るということは無理のないことだと存ずるわけであります。したがいまして、雇用計画という用語が適当であるかどうかは別といたしまして、企業がその雇用の将来の見通しを立てて船員雇用不安をなくすように努力をすべきことは当然のことであるというように我々考えております。  ただ、そのことを行政として具体的にどこまで指導をすることができるか。指導の仕方によっては労使問題への行政介入というようなそしりを免れないわけでございますので、私どもといたしましては、行政としてのなし得る範囲で最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 どうも最後の方に一言多いわな。一言多いよ、それ。  それじゃ次に、船員法に行きます。  まず、これも同僚委員から聞かれた分ですから簡単に、今回の船員法の改正で対象になる船員数、全船員のうちのシェアを言ってみてください。
  19. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員法適用船員は、六十一年十月現在十八万七千人余りでございます。そのうちで海運業が八万三千人、漁業が八万八千人、その他一万六千人ということになっております。  今先生指摘船員法適用船舶というのは、いわゆる沿海区域あるいは平水区域を航行する船舶以外の船舶、七百トン以上の船舶ということになるわけであります。その船員につきましては、現在乗り組んでいる船員あるいは予備船員を含めて大体五万二千人程度というように私ども承知しております。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 ですから、船員法の本則の労働時間の短縮の恩恵を受ける船員の数は、今言われましたように私は非常に少ないと思うんですね。これも陸上の週四十六時間に対して二時間おくれています。それからいま一つは、小労則、漁労則の適用船員に対していつ短縮できるか、スケジュールが示されておりません。私はこの問題も、労働者側が極端な不利益を受けているというふうに思うのであります。ところが、同僚委員質問を聞いておりますと、運輸省は、現実がこうなんだから仕方がないんだ、また、短縮はおくれるのも仕方がないと、こういうような、いわばあきらめ切っている。こんな態度が同僚委員質問の間にずっと見えて、私は許せないことだというふうに思います。しかも、衆議院では労働基準法に合わせて修正をされて、こちらにこの原案が来ていますね。ところが、どうもそのことについても、特に船員部長の姿勢なんか見ていると、全くこれを知らぬふりで通そうとしているんじゃないか。何でそんなに企業の肩を持たなきゃならぬのかと思われてならぬようなやりとりが続いています。  そこで、まず私は、週四十時間への短縮スケジュール、船員法は労働基準法の方よりも一年おくれになっていますが、週四十時間の実現の時期はぜひとも同じにしてもらいたい。いわゆる出発は一年おくれています。しかし、労働基準法は一九九三年までに週四十時間にしようということを審議の過程で政府は約束をしています。そういう点について、大臣、どうでしょうか。出発はおくれているが、これは政府全体がそろえるときにそろえると、少なくともこういう方向でやるということについて、大臣の考えを聞かしてください。
  21. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 何か私が消極的な発言だというようにとられておるんですが……
  22. 安恒良一

    安恒良一君 いや、大臣に聞いてるんだよ。君には聞いていない。
  23. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) これまたますます御要求が厳しくなってくるわけでありますけれども、一年おくれていることは御指摘のとおりでありますけれども、基準法の短縮八時間、船員法が十六時間で倍ということと、それからまた新しく補償休日制度というものを設けましたので、そういうものをひとつ勘案して御理解いただきたいと思います。  一年のおくれを取り戻して同じ時点というのはなかなか至難だと思います。ですから、最初は二十一世紀を目途と言っていたんですけれども、九〇年代のできるだけ早い時点に完成するように努力をいたすつもりであります。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 それなら百歩譲っても大臣、労基法と同じ経過年数で、一年おくれて出発したんですから、その一年おくれを取り返すのが無理ならば、同じ経過年数で実現をしてもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。どうも大臣のニュアンスもそういうふうにとれますから、私はあえてそういうふうに言っておきます。
  25. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) なかなかそこではいと申せない事情がございまして、繰り返すことになりますけれども、労基法の方の成就と時間の誤差ができるだけ少ないように努力いたします。
  26. 安恒良一

    安恒良一君 ここを強く私は言っておきます。というのは、既に日本の長時間労働というのは世界各国の非難の的になっているんですね。前川報告でも明らかにされている。ですから、政府全体としては、一九九三年までに週四十時間制の実現ということは、これは国会の場における法案の審議の際に政府方針として、これまた当時の総理も含めて明確になっていることなんですから――中曽根前総理のときでありますが。その意味からいうと、私はやっぱりおくれは取り戻す努力を運輸省はされるべきだと思う。ですから私は百歩譲って、一年おくれたんだから、一年ぐらいおくれてもそこに追いつくようにしてくださいということをこの際強く言っておきます。これはまだ時間があることですから、おやりにならなければ、今後も次から次にやるように追及をしていこうと、こう思っています。  そこで次は、本法の改正で恩恵を受けない船員が大体八割以上おるわけですが、これまでの運輸省答弁を聞いておりますと、これらの人に対しては、船員中労委で問題になっていると言っていますが、いつまでに実現できるのかわからないんです。ですから、これらの人々に対するスケジュールを、考え方を示してみてください。
  27. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先生指摘のように、本件につきましては、船員中央労働委員会船員法改正について答申をされた際に、「公益委員見解」として指摘されております。指摘の内容につきましては、今先生がおっしゃいました、小型船舶に対して本法の適用拡大については三年以内に結論を得るように審議すべきものというように言われております。  私どもといたしましては、この船中労の答申に従いまして三年以内に結論を得るように、各般の観点から検討を進め、あわせて船中労に御諮問申し上げまして、しかるべき結論を得るように努力したいと考えております。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 実は私は、小労則を全面撤去する、本法に吸収すべきではないかというふうに思うんです。これは経営者サイドに任せておったら進まないんです。ですから私は一日も早く小労則なんて廃止して本法でやれるようにするべきだと思うんです。  そこで、船員中労委に諮っておられるということは事実なんですが、検討をするということだけでは、検討したけれどもやられなかったということになりかねないんですから、私はもう少し意欲的に、この問題についての考え方を聞かせてもらいたい、こう思うんですが、どうですか。
  29. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 私ども基本的な理念といたしましては、七百トン未満の船員であろうとあるいは七百トン以上の船員であろうと、労働時間といういわば労働条件について、基本的な問題について同一であるべきであるということについては同意見であります。  ただ、現在は、七百トン以下の船舶につきましては、先生今御指摘のように、小労則あるいは漁労則ということで省令で決めているわけであります。その違いを二、三御指摘いたしますと……
  30. 安恒良一

    安恒良一君 それはわかっているから。
  31. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) それでは、そういう省令では法律にないいろいろな規定があるわけでございまして、したがいまして、その法律にない省令のいろいろな規定についてどのようにして改めて法律に持っていったらいいかということについては、実態を把握しなきゃいけませんし、また法律上の観点からも検討をしなければならないということでございますので、先ほど申し上げました期限内に結論を得るように、今後とも最善の努力をしたいと考えております。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 私は、今回の本法の改正で、小労則、漁労則の改正も行わなければならぬと思います。ですから、本改正を全面的に盛り込んで、そして本法と小労則、漁労則の格差ですね、この解消に努めるべきだと思いますが、その点はどうですか。
  33. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今回の改正案の中では、補償休日制度という新しい制度、新しい概念が導入されているわけでありまして、そういう新しい制度あるいは新しい概念を小労則にも適用すべきではないかということについては、私どもも同意見であります。  したがいまして、そういう観点から、とりあえず本法の改正に伴う小労則の改正についてはできるだけ早い時期に着手いたしまして、本法は来年の四月一日施行ということを予定しておりますので、同時期に小労則についても改正し適用できるように、今後努力してまいりたいというように考えております。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 有給休暇について、内航船乗組員の付与日数の増加を図るべきではないだろうか。また、漁船員の有給休暇制度の適用も図るべきだと思いますが、その方向に向かって努力することについて、これは政策の問題ですから、大臣に約束をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  35. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 基本的には、これはその方向に努力すべきことだと思いますし、また努力をしたいと思います。  ただ、それぞれ範疇が違う海運の特殊事情もございますので、できるだけそういう事情の違いを越えて、結果としてはお申し出の目的が達成されるように努力をしたいと思います。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、どうも私は、内航船員の労働実態を本当に運輸省はきちっと把握されているのだろうか。また、漁船員の労働の実態について、正確な把握が行われているのだろうかと思うんですが、同僚委員とのやりとりや私とのやりとりを見ても、なかなかそこの調査を正確に運輸省自体がしていないんじゃないかと思う。正確な調査なくして船員の労働行政は行うことはできませんので、少なくとも私が今申し上げた調査不十分なところについて、ぜひともこの実態調査をすると、こういうことについて確約をしてほしいんですが、どうでしょうか。
  37. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先ほど申し上げましたように、小労則の問題につきましては三年の期限つきでこれから検討しなければならないわけでありまして、その過程において、今先生指摘のとおり就労実態等について十分調査してまいりたいというように考えております。
  38. 安恒良一

    安恒良一君 今度、時間外労働については改正法の六十四条で規定をされ、船長が「臨時の必要がある」と認めるときは、「補償休日において」「作業に従事させる」と、こうなりますが、私が一番心配しているのは、往々にしてこれが乱用されるおそれがある。その歯どめがない。  そこで大臣、この乱用の歯どめはどう担保するつもりですか。考え方をお聞かせください。
  39. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 六十四条の規定につきましては従来六十七条で規定されておったものでございます。この六十四条、旧来の六十七条、この規定の運用につきましては、かねてから国会におきましても再三論議されているところでありまして、つい最近も、昭和四十八年には衆議院の運輸委員会で取り上げられましたし、そういうような経過を踏まえまして、昭和五十年には通達でこの運用について明確にされております。  したがいまして、今後とも、これまでいわば確立しました六十四条、旧来の六十七条の運用について厳格に守ってまいりまして、船主の恣意によって、この「臨時の必要」ということで時間外労働がされるようなことがないように最善の努力を尽くしたいと考えております。
  40. 安恒良一

    安恒良一君 私は、この小労則適用船舶船員については、六十四条の歯どめがないに等しい状況になっておりはしないか。年間総労働時間の実態が三千時間から四千時間の間です。ですから、こういう点について運輸省はどう指導監督を強められるつもりでしょうか。  それから、補償休日の六十四条と六十五条の労使協定でダブル運用されると、ほとんどの日数が買い上げ可能となります。そこで、補償休日の買い上げの枠の設定については、この六十四条、六十五条を含めた日数で、省令、規則等ではっきりすべきではないでしょうか。省令が難しいということであれば、少なくとも運輸省としては、指導監督通達をやはり出す、こういうことが必要ではないかと思いますが、この点どうですか。
  41. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まず第一点の、「臨時の必要」について、乱用されることのないように十分監督せよということにつきましては、私どももかねてから船員労務官が監査をする際にその点について重点的に監査するように指導しておりますし、今後ともその方針で臨みたいというように考えております。  それから第二点の、補償休日労働につきまして、これによって無制限に買い上げということになりはしないかというような御指摘でございますが、補償休日の労働のうち、まず六十四条に基づく「臨時の必要」というのは特別の場合に限られているわけでありまして、極めて例外的なケースというように考えております。六十五条の規定による補償休日労働につきましては、日数の制限を定めるということによりまして船主の恣意によって買い上げが行われないようにすることにしておるわけであります。  ちなみに、労働協約によりますと、年間休日百十八日のうち三十八日を限度として就労することができるような規定がされております。そのとおりにするというわけではありませんが、こういった労働協約等による実態を勘案しながら日数制限について今後検討してまいりたいというように考えております。
  42. 安恒良一

    安恒良一君 それから私は、やはりこれから思い切った労働時間の短縮や休暇制度を的確に行っていくためには、非常な長時間労働を規制する。それがためには、私はやっぱり乗組定員の適正化を図ることが必要だと思うんですね。こういう点について、大臣としてはどのようにこれを実現をしていこうとされているのか。  それから、同じくこの点も聞いておきたいんですが、十人未満の船員を使用する事業者に対して、就業規則の整備が行われていない。そこに極めて劣悪な労使関係労働条件関係が発生しておるんですから、私は、十人未満の船乗りを使用する事業者に対しても、最低、就業規則の整備を行わせる、こういうふうに指導してもらいたいと思いますが、どうですか。
  43. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まず、定員の問題につきましては、現に船員法六十九条によりまして規定が定められているわけでございます。それで、この定員につきましては、就航する船舶あるいは航路、航海の態様等によって一概に確定的に決めるというのは難しいと思いますけれども、恒常的な時間外労働によって労働過重にならないように、船員労務官の監査の機会を通じまして必要な指導をしてまいりたいというように考えております。  それからもう一点の御質問であります、十人未満の事業者についても就業規則の作成を指導すべきではないかという趣旨の御質問に関しましては、私ども船舶所有者に対しましてそのような方向で強く指導してまいりたいというように考えております。
  44. 安恒良一

    安恒良一君 今回の改正においても、また従来から労使協定の締結の当事者になる労働者の意思を適正に反映した選出が行われるように指導してほしいと、こうお願いしておったんですが、本当に恥ずかしい話ですが、まだ内航海運においては黄犬契約があります。こんな実態を大臣知っておられるかどうか知りませんが、私はまさに日本の労働問題の恥だと思います。こんなことでは、船員に若い人がもう寄りつかない。将来に希望もない。こういうことでありますから、このような黄犬契約などを持っていることについては徹底的に排除してもらいたいと思いますが、大臣どうですか。
  45. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) これはおっしゃるまでもなく、本当に恥ずかしいことでありますし、非常に野蛮といいますか、非近代的な現象でありまして、こういうことが絶対にないように徹底して調査し、また指導するつもりでございます。
  46. 安恒良一

    安恒良一君 それから、この船員法の履行を確保し、労働時間短縮を一層図るためには、船員労務監査業務の徹底と船員労務官の増員とを行わなければ、労働行政の一層の充実はできないと思います。  そこで、労務監査をどういうふうに今後強化していこうとするのか。さらに船員労務官の増員計画はどうなっているのか。この点について答えてください。
  47. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員労務官の配置につきましては、的確かつ十分な情報収集やきめ細かで効率的な監査を実施するためには、状況に応じて複数の船員労務官による監査が必要となりまして、船員災害の発生あるいは船員からの申告に対して即時即応する体制が必要であるとの観点から、船員労務官の一人配置となっている海運支局について二人配置化を中心として増員を行ってきているところでございます。  六十三年度の増員を含めまして、現在六十七の海運支局のうち三十三の海運支局が一人配置となっております。これらの海運支局の管轄する区域の状況あるいは船員労務官の業務の状況等を勘案しまして、関係省庁とも十分連絡の上、逐次船員労務官の増員が図られるように、今後とも努めてまいりたいというように考えております。
  48. 安恒良一

    安恒良一君 そこで私はこの前の船舶整備公団法のときにも指摘をしたんですが、中小船主が主体である内航海運における船員の時短や労働条件の改善を図るためには、やっぱり運賃とか用船料、こういう問題ですね。荷主産業との運送取引条件の適正化に努めなければならぬと思います。そうでないと、運輸省は荷主との話し合いの場があるとか、船舶航路が多岐多様にわたっているから基準運賃は設ける必要がないと、こういうことを先回も言われましたが、私は、陸上やその他は、全体には認可運賃なりがあるわけですね。最も弱い海だけが基準運賃を設定しないでおるということが、今ここで議論しているようないろんな雇用問題なり時短問題なり、いろんなことにこれは一つは大きな影響をしていると思います。  私はやはり、この前も聞いたことですが、今すぐやるとはおっしゃらないと思いますが、やっぱり大臣、この問題に積極的な取り細みをしてもらいたい。そうでないと、なかなか船員雇用問題というのは、どうしても荷主に買いたたかれてそれが労働者しわ寄せになるということになりますから。その点どうでしょうか。
  49. 中島眞二

    政府委員(中島眞二君) 標準運賃につきましては、御承知のとおり昭和四十一年に設定いたしましたけれども昭和五十年に廃止をいたしております。それで一方、ただいま先生指摘になりました用船料につきましては、最近用船料の安定についての要請といいますか、それがオーナーサイドから大変強く出てまいっておりますので、これは内航海運組合法に基づきます調整運賃ということでございますが、その設定方につきまして、今年度の内航海運対策要綱の中で、全日本内航船主海運組合と全国海運組合連合会が積極的に協議を行う、あるいはまた用船料に関するあらゆる苦情を調停し処理するため、苦情処理委員会を用船料委員会のもとに設置するというようなことが行われております。そういう方向での検討がありますが、そういうことも踏まえながら、標準運賃の設定についてなお関係者の意見を聞きながら検討をしてまいりたいと思います。
  50. 安恒良一

    安恒良一君 前回もそんなことを聞いたから、あなたに聞いているのは、さらに一層研究するかしないかと聞いているんだから、研究するならする、しないならしないと言えばいいですよ。同じことを議事録に二回載せたってもったいないから。  最後になりましたが、もう一遍私は運輸大臣に聞きますが、今も聞いておるように、この船員労務政策運輸省が専管していますが、どうも運輸件の政策は、経営者側事業採算だけに目が向けられている。労働政策は二の次、三の次の実情です。ですから私は、事業経営も非常に重要です。しかし、運輸省がやる以上、労働者側ばかりに犠牲を求めてはいけないと思うんです。もう労働政策というのは運輸省は専門でない、苦手ですから、私はこの際、労働の専門家たる労働省に集中させる、その方が非常にいいと思います。  正直に言って大臣、あなたの御感想はどうですか。運輸省では労働政策は私は無理ではないかと思いますが、御感想を聞かせてください。それで終わります。
  51. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) いや、決してそうは思いません。一生懸命努力いたします。
  52. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 船員の労働時間を考えていく場合に、言えることは、海上特殊性ということを余りにも強調され過ぎているのではないだろうか。陸上では週休二日制、週四十時間の労働時間を目指そうとしているとき、海上特殊性ばかりを強調していくと、船員労働条件は一層引き離されていくのではないかと心配をいたします。  いろいろ議事録を読んだり討論を聞いておりますと、やっぱりここで問題になるのは、運輸省として、特に大臣が本気になってやる気があるのかないのかにすべてかかっているような気がいたします。  それで大臣、やる気があるのかないのか、決意のほどはどの程度か、そこを初めにはっきり聞かせてください。
  53. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 決して海運特殊性をいたずらに強調するつもりはございませんけれども外国の実態などと比べてみましても、日本の場合には、違わないといいますか、スリークルーをフォークルーにするというわけにいきませんし、それなりに皆さん苦労していらっしゃると思うんですが、ともかくその特殊性を踏まえながらということで今度補償休日制度も導入しましたわけですから、結果として、世界の動向に日本の海運の労働条件というものが沿った形で成就するように努力をするつもりでございます。
  54. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その努力のほどを聞いたの。努力をしますか。
  55. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 一生懸命努力いたします。
  56. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 言葉じゃなくて、本当に一生懸命やっていただきたいと思います。  以下、具体的に質問をいたしますけれども、さっきも言いましたように、衆議院からずっと来て、議事録も読ませていただいて、私が最後の質問になりますので、いろいろと説明や解釈はわかっているから結構ですから、私端的に質問いたしますから、聞いたことについて端的にお答えをいただいて、時間の御協力をいただきたいと思います。  そこで、補償休日制度というものが導入されました。これは何を目的として導入されたのですか。
  57. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 週四十時間労働に短縮する場合に、船内で休暇をとらせて短縮するという方法もありますけれども、それでは船員にとって休養にはならないという観点から、船内における労働は労働として働いていただきまして、超過して働いた部分については別途陸上でまとめて休暇をとらせるという形によりまして船員の休養をとらせ、あるいは消費生活の拡大を図っていこうと、こういう趣旨でございます。
  58. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 労働時間を短縮してゆっくり休ませたいという気持ちから導入された、大変結構だと思うんです。ところが、それに対して余りにも制限があり過ぎるということで、具体的に、六十二条四項で、「命令でこれを定める」というのがありますね。これは具体的に何々を指していらっしゃいますか。
  59. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 六十二条四項の御質問だと思いますが、この「命令」におきましては、付与されるべき補償休日について、先ほど申し上げましたように、休日のとり方は停泊中あるいは航海中、あるいは下船中といろいろなとり方があるわけでございますけれども、やはり先ほど申し上げたように、乗組員の休養をとらせるという意味では停泊中あるいは下船してからとらせる方が望ましいということから、そういうことを原則にする。あるいはまた補償休日を付与する際にどういう手続でやったらいいかというようなことについて命令で定めたいというふうに考えております。
  60. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それから、「船長は、臨時の必要があるとき」というふうに書かれていますが、その「臨時の必要があるとき」とは一体何ですか。どういうときですか。
  61. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 「臨時の必要」というのは、従来の規定から何らの変更をもたらすものではございません。航海の開始に当たりまして予定しがたい作業量の増加が生じたというような場合に、臨時の必要があるということで、船長判断によって時間外労働ということになるわけであります。  そこで、どういうような例があるのかという御質問でございますが、例えば濃霧の発生によりまして航海当直に立つ船員の数を増加しなきゃいけないというような場合だとか、あるいは機器等が故障いたしまして緊急にその故障を直さなきゃいけないといったような場合などが考えられております。
  62. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほどの、「命令で定めるやむを得ない事由」という中に、かわって乗船すべき船員確保できないというのがありますね。つまり、かわりに乗ってくれる船員が足りないときには働かせることができるというのがありますね。それから、今の、船長が必要とするというので、おっしゃらなかったけれども、何らかの事情で運航スケジュールに変更があるときというのがありますね。そのときは船長が必要と認めて働かせられる。これ、考えてみると、運航スケジュール変更というので往々出てくるのは、荷主側の要請でこういうものが起きてくるということがよく考えられる問題だと思うんですね。そうすると、命令だとか船長が必要だという、これこれこのときと書いてあるけれども、この運用解釈、どれくらいの幅を持たすかということで、先ほども出ていたけれども、実際に補償休日というものがあってもとれなくなってしまうのではないかというのが心配ですね。  もうるる言われております、来年四月から四十八時間スタートしても、結局、休日がなくて今までどおりの五十六時間変わりないという状態になるのではないかということを心配するわけなんです。その辺のところはどういうふうに考えられますか。
  63. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今先生の御指摘の部分は、恐らく補償休日の与え方について、運航スケジュール等によって、補償休日が与えられる場合に休日の付与を延期することができるという規定がございます。そのことについての御質問かと思います。場合によってそういうこともあり得ますけれども、それはもう最小限の範囲内だということで私ども十分指導してまいりたいと思っております。  それからもう一つ、そういう形によって、いわば補償休日の買い上げによって事実上補償休日が与えられない事態になりはしないかという趣旨の御質問かと思いますけれども、これにつきましては、やはり日数の制限等によりまして船主の恣意によって補償休日に強制的に働かせるというようなことのないように制度上もしっかり省令等で定めることにしておりますし、また、船員労務官等の指導によりまして周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。
  64. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 補償休日の日数を命令で定め、制限するというふうに言われておりますけれども、どの程度の中身ですか。
  65. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 補償休日につきましては、例えば外航船のように一年タームで行われるような場合もありますし、あるいは内航船のように、そんな一年にも及ばない短い期間で済む場合もありましょうし、あるいは旅客船のようにもっと短い部分もありましょう。したがって、何日という日数で制限するのは非常に難しいかと思います。  したがいまして、補償休日のうちで、例えば何割程度というような決め方になろうかと思います。今、これから船員中央労働委員会にお諮りしながら具体的な割合については決めようと思っておりますけれども、例えば労働実態について御説明いたしますと、外航関係の労働協約では百十八日の休日のうちで三十八日、いわば三割程度が今申し上げました休日出勤という形での就労を認めているという実態がございます。そういう実態を勘案しながら、補償休日における時間外労働の日数制限について今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  66. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 具体的に協約でやられているというのは、百十八日のうち三十八日までは就労させることができる、働かせられるというふうになっているわけですね。それにプラス先ほど言った命令で定めるという何項目、三つありましたね。それから今度、「船長は、臨時の必要があるときは」働かせられるというのがありますね。それをプラスするということになると、ある意味では、それはもう、運用できちっと押さえると言うけれども、その運用に幅があるから、ある意味ではもう無制限にどんどん近づけられるということにならないかというのが私は心配なんです。その辺のところの歯どめ、これで絶対歯どめができるというような何かあるんですか。
  67. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まず、六十四条による「臨時の必要」というのは、通常の場合は航行中生ずるわけでございまして、下船中に緊急出動、それは絶対ないというわけではありませんけれども、ほとんど考えられない異例の事態であろうと考えております。  ただ、補償休日中に出勤させるという場合のその割合につきましては、先ほど申し上げました労働実態から勘案してその日数制限を考えたいということでございます。したがいまして、一般的に言えば、補償休日として与えられた休日の中で、休日出勤という形で労働させるということにつきましては、先ほど申し上げました労働実態等を勘案した日数の制限内におさめることができるというように考えております。
  68. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 せっかくの休日ということになるわけですから、航海中では船の中ね。これは拘束されるということになるわけで、基本としては下船したときに与えるということが筋だと思うんですけれども、それはその筋でいいですね。
  69. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) そのとおり考えております。
  70. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 次に、六十六条で、補償休日を買い上げる、割増手当を出して買い上げることができるようになっておりますよね。その買い上げるという補償休日は、無制限にできるのかという、その辺はどう考えたらいいんですか。
  71. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 六十六条は、先ほど申し上げました形で、補償休日等に時間外労働ということで労働した場合に、割増手当という、普通の給料よりも割り増しの手当を与えるといういわば手続的規定でございまして、六十六条を根拠にして補償休日に労働させるというようなことにはなりません。六十六条を根拠にして補償休日に労働させるということではなくて、六十六条は、あくまでもそういう補償休日に労働させた場合にどの程度の手当を与えるべきかという規定であります。  したがいまして、そこの六十六条で規定されるのは、割増手当として、通常の賃金として支払われる賃金に、時間外労働としていわば休日に労働するわけですから余計支払うべきだと、その余計に支払われるべき割合はどのぐらいにすべきかということを六十六条で定めるということでございます。
  72. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 わかりました。  それで、補償休日で三十八日でしたか、さっき、三十八日働かせることができると、そうなっていますよね。それで、いろいろな事情があって補償休日にまた働かされるというようなことになるということも考えられるわけでしょう。
  73. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 誤解のないように申し上げますが、三十八日というのは外航関係船主団体と全日本海員組合の労働協約の中でそう定めているということでありまして、私ども、そのように決めようと思っているわけではございません。そういう労働実態を勘案しながら、外航船の場合、内航船の場合、あるいは旅客船の場合、それぞれの航海の実態に応じて補償休日の労働させるべき日数の上限を決めよう、こういうことでございます。  したがいまして、補償休日における時間外労働として定められる上限の日数を超えて労働するということはあり得ないというふうに御承知願いたいと思います。
  74. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 三十八日と決めると。決めるけれども、もっと働かなければならないということはないんですか。三十八日と決めたらそれでもう働かせられないということなんですか。
  75. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先ほど申し上げましたように、「臨時の必要」、その他六十四条等で異例のケースとしてあり得る場合は別といたしまして、一般的に申し上げれば、今申し上げましたように、補償休日の中で休日出勤という形で時間外労働させる日数については、命令で上限を定めるということになっておりますから、その命令で定められた上限を超えて休日出勤させるということはないというように御了解いただきたいと思います。
  76. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 あり得ない――絶対ないというんじゃなくて、あり得ることもあるわけだわね。理論的に私は言っているのよね。  そうすると、そういう事件が起こった、そういうことがあった、それで働かされるというようなことになりますね。そうすると、補償休日というものがたまっていくということも考えられると思うんですよね。そうすると、本年度分の補償休日はあるんだけれども、それは使われちゃった。そうしたら、この余った分は来年度に回して、補償休日にプラスしていくということもできていいんじゃないかと思うんだけれども、どうなんですか。
  77. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) この点につきましては、そういう形で繰り延べ繰り延べということになりますと、集中的に労働させられるという事態になります。したがいまして、やはり休日というのは一定の期間の中でとらせるのが筋であるということで、基準労働機関というものを定めることにしております。  基準労働期間というのは、先ほど申しましたように、外航船、内航船、旅客船等によって航海の実態が違いますから、一概に何年、あるいは何カ月と申し上げにくいわけでありますが、それについては別途労働委員会等はお諮りして期限を定めることにしておりますが、そうした形で定められた期限内で補償休日を発生させるというように考えているわけであります。  それから、今先生、補償休日に労働させるということを船主の恣意に任せておくとますます労働日数がふえてしまうではないかというお話ですが、先ほどからくどくど申し上げておりますように、補償休日において労働させる日数については上限を定める。あるいはまた、「臨時の必要」等については、極めて異例な事態でありますから、異例な事態ということを乱用する形で補償休日に労働させるということになってはいけないということは当然であります。私どもといたしましては、そういうことにならないように十分に船主等に周知の徹底を図ると同時に、船員労務官等を通じて監査の際に十分指導してまいりたいというように考えております。
  78. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、基準労働期間内に正当な事由なくして付与しないということが起きた場合には、これは違反ということで罰則があるわけですね。
  79. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先ほど申し上げましたように、基準労働期間の中で、もちろん規定の中で、航海の途中どうしても付与できない場合とかいろいろと例外規定がございます。そういう例外規定に該当する場合は別でございますけれども、今先生おっしゃるように、法律に定められたとおりに補償休日を与えられないという場合については、罰則が加えられる場合もあり得るというように考えております。
  80. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣ね、この辺のところ、きちっと日にちを決めておいても、突発的な事故があるとかなんとかというようなことで働かせられるということで、せっかくの補償休日というのが有効に働かないというようなことになって、骨抜きになってしまうということを私は一番心配するわけですよ。その辺について大臣、そこはやはり大事だというふうに、しっかりさせようとお考えになるかどうか。
  81. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 補償休日の労働というのはあくまでも特定の場合の例外的な措置であり決して、それを関係者に周知徹底いたしまして、この制度が決して形骸化しないように、ちゃんと確保されるように指導してまいるつもりでございます。
  82. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 では次に七百トン以下の問題で伺っていきたいと思います。  内航船員労働条件が極めて劣悪だということはもう言われております。ずっと私もいろいろ聞いたり調べたりしていきましたから、一週間の労働時間が八十ないし九十時間。年間三十八日の休暇があってもそういうふうになっている。そうしますと、年間労働時間が、先ほども言われていたけれども、三千九百時間というのが出てきた。これ三千時間なんていうのはざらだよと言われたし、三千から四千時間というような実態なんですね。そういう実態を御承知でいらっしゃいますか。
  83. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今先生が御指摘のような、三千時間、四千時間という具体的な時間について、私ども十分把握しているわけではありませんが、しかしながら、内航海運におきます労働時間が外航船等に比べましてかなりの長時間にわたっているということは、私ども承知しております。
  84. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 陸上では千八百時間とか二千時間と言っている時代に、実態を調べてみたら余りにもひどいじゃないか。海上だから特殊だということは言えないと思うんですね。  そうしますと、簡単に言えば、これをなくしていくためには一体どういうふうな手だてが具体的に必要なのかということですよね。それは、法的規制措置が全くされていないからこういうことになっていくんだと思うんですよね。その辺のところはどうお思いになりますか。法的規制や措置が全くされていないという点。だからこういう大変な三千時間、四千時間という労働時間になる。私はそう思う。これは正当化できない問題だと思うんですけれども大臣いかがですか。
  85. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 大臣答弁の前にちょっと補足説明させていただきますが、七百トン未満の船について全く法規制がないというわけではございませんで、七百トン以上の船については船員法という法律で定めておりますが、七百トン未満の船については省令で定めております。省令で定めている内容につきましては、法律の本則とは違っております。ただ、今回法律の改正によりまして補償休日制度という新しい概念が導入されますから、それに伴いまして今申し上げました省令も改正する必要があろうかと思います。  それからもう一つ問題になっておりますのは、労働時間という労働条件の基本にかかわる問題について省令で定めておくのは適当ではないんじゃないか、これはやはり法律で定めるべきではないかという趣旨の御意見がございます。これは、この法律案について御審議いただきました船員中央労働委員会におきましてもその議論が提起されたわけでありますが、省令と法律との間でいろいろな食い違い等がございますので、その点については三年間の期限内で十分検討した上で改めて改正案について考えようということになっているわけでありまして、私どもといたしましては、そういった労働委員会の御指摘に沿いまして今後検討してまいりたいというように考えておるわけでございます。
  86. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろ三年間検討すると言われて、検討されるのは結構です。それはちょっとおいて、次に聞いていくんだけれども、これ、現状でいくと一日十二時間ないし十六時間の労働になっていますよね。機関部員が二人しかいないとなったら結局二人で二十四時間ということになる。三年間の検討とか省令の改正とかというふうにおっしゃるけれども幾ら検討しても、定員がなければ検討したってだめなんですわ。検討したら二人のところが仕事減るかといったら減らないでしょう。そうすると、どうしても定員をふやさなければ、一日八時間労働ということで運航できないというふうに言わざるを得ないんです。しかも、今のような実態が正当でないとおっしゃるなら、検討するというんじゃなくて、やっぱり定員をいかにふやすかという、その点を改善されなければならない。こういうことが今までなぜおいておかれたか。そういう定員の問題にしても、積極的な改善がなされないで放置されてきたと言わざるを得ないというわけですよね。  これから三年間検討いたしますとか、それから船員中央労働委員会でも審議してもらうとおっしゃるけれども、私は、最初に大臣にも質問したように、問題は、大臣が本当にやる気があってやるのかどうか。そして運輸省がどういう構えでやるかどうかという、その運輸省の考え方によって問題が変わってくると思うんですよね。船中労の委員会検討しますといっても、その中に船主さんがいるわけでしょう。船主さんにしてみれば、定員をふやされたらコストもかかるし嫌だよと反対が出てくるわけですよね。そういう抵抗があるから今までずっと野放しみたいになって現状になったんだと思う。  そうすると、やっぱり運輸省としても、検討してもらっていますなんて無責任な預け方ではなくて、荷主側がいろいろと問題を持ち込んできたとしても、運輸省としてこんな労働条件で、三千時間、四千時間ということはもうだめなんだ、そのためには、定員をふやす。そのためには省令なんというんじゃなくて、法的な規制なども、やっぱりきちっとしたところでカバーしていかなきゃならないというところが私は問題のかぎだと思うんですけれども大臣、どうですか。
  87. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 確かに、労働時間を短縮すれば短縮された分だけ要員が必要になってくる、これは当然であろうと思います。あるいはまた、今先生おっしゃるように、長時間労働で働いている業界につきまして、それを短縮していくということに伴いまして定員もふやさなければいけないという事態になろうかと思います。ただ、定員の問題につきましては、その船の航海の実態等によりましてそれぞれ変わってくるわけでありまして、画一的に何人ということはなかなか決めにくいという問題がございます。  実は、船員中央労働委員会におきまして船員法改正問題について御審議していただいた過程におきまして、この定員問題についても指摘されました。しかし、今申し上げましたように、定員問題についてはいろいろな角度から検討しなければならないということから、この問題につきましても先ほど申し上げました適用範囲の拡大の問題とあわせて今後三年以内に検討して結論を得ようじゃないかというような御結論を得ているわけでありまして、私どもといたしましては、今後定員問題を含めまして検討してまいりたいというように考えております。
  88. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 定員問題を含めて検討するのは当たり前なのよね。いろいろ難しい。省令で今までも決めていると。法律ではない、細かい部分も省令で決められるんだとかいろいろ言われたけれども、それは立法の技術的な問題なんですよね。だからそこでさっき言ったように、海の場合はいろいろと特殊性がありましてということがそこにつながっていくわけですわね。だから、そういうことではなくて、本当に特殊性はあるけれども特殊性だから人間が少なくて強制労働させられたらたまらないんだから、その辺のところをしっかり考えてもらいたいと私は言うわけです。  そこで大臣、今度は答えていただきたいんだけれども、今最も重要なことは、問題になっていますのが七百トン以下の船舶の、それに就労する船員の労働環境が極めて悪いということで、大きな改善が求められ、期待もされている。今十二時間が当然になっているのをいかに八時間に持っていくかというそこですよね、さっきから言っている。運輸省が何を求められているかといったら、そこが求められているところですね。だから、十二時間だったのを八時間にするために運輸省がそこでどういう力を発揮するか。これを解決するためにも、この内航船の問題がここまで来ている、その背景となっている荷主の支配の問題、ここにメスを入れなければ片手落ちになると言わざるを得ない。  内航海運は、荷主である鉄鋼、石油などの大手の製造業などの下請の様相を今示していると思います。運賃、用船料の引き下げ、ダンピングを強要されるわけですよね。自由料金だということでどうしてもダンピングを強要される。そうなると定員を削減しなきゃならない。それがひいては労働時間がふやされるという、こういう構造になっているわけですよね。だから、労働時間短縮等に伴って増加する経費、人員をふやすとか、その増加する経費を適正に荷主が負担していくようにしなければ解決がつかないんですわ。ということで、運輸省として、法的措置も含めて、こういうことが悪循環で、荷主側が料金のダンピングを強要する。そして、大変お金がかかる、そうしたら人数を減らしましょう、労働時間が長くても我慢してくださいということでまたずるずるいっては困ると思うんですよね。  だから、ここのところで運輸省としても指導する、法的措置も含めてその対策をしっかり立ててもらいたいと私は思うんですが、大臣、その点はいかがお考えですか。
  89. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 本質的には、内航小型船も、漁船も、それから外航船も、船で働く方方の立場は本質的に同じだと思います。また、陸で働く労働者も同じことだと思います。私の選挙区にはもう下請の零細企業はたくさんございまして、これがちょっと不況になってくるともう買いたたかれて、最低労働賃金を割るような条件で下請をせざるを得ない。本質的にはこういったものを国がどこまで関与して調整していくかということは大問題と思いますけれども、同じような問題がやっぱりこの内航の小型船舶、漁船にもあると私は心得ております。  ですから、そういう観点に立って、やはり結果としてはそこで働く方々の条件が合理的に近代的に整備されていくようにいろいろ多角的に努力をしたいと思っております。
  90. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今までの経過もあるし、歴史的なものもあるし、なかなか大変だと思うんだけれども、本当に今問題になっているそういう船員さんの労働時間を短縮するということを取り上げて今法案まで出されているんだから、今までと変わった姿勢でもってしっかりと努力をしていただかなければならないと要請するわけです。  今言いましたように、荷主によるダンピングの強制というのがやっぱり非常に大きな問題になっていますよね。そのダンピングについてずっと調べていったら、神戸海運監理部というのが実施いたしました「港湾運送事業料金監査実施状況」というものがあるわけなんですよね。この料金監査実施状況というものの中身を調べてみましたら、料金監査の対象になった事業者は二十七社なんです。その結果、海貨料金というのですね、船積み作業料金などを含めて。その「海貨料金の不完全収受」、つまりダンピングですね。海貨料金のダンピングというのが十一件、八社ありました。そして警告文書がそれに出されているんです。これがそうなんですけれども、神戸海運監理部長から「警告書」というのが出されています。「立入検査の結果、港湾運送事業法に違反する事実が認められたことは、極めて遺憾である。 ついては、下記事項に基づき違反事項を直ちに是正するとともに、今後かかる事態の再発を防止するため、必要な措置をとるよう警告する。」、まあダンピングというのがわかって警告されたというわけですよね。こういうのが出されています。これは「文書警告」ということでありまして、「口頭警告」、ここまで書かないけれども口で警告したというのも出ている。これは二十九件で十二社あったというわけですね。これは違反している、気をつけなさいと警告文書をもらったのと口で警告を受けたのと、これを合計いたしますと、四十件で十四社。二十七社を対象にして四十件、十四社あるんですよね。半分以上と言えるわけですよね。これが港湾運送事業法違反を犯している。荷主からダンピングを迫られているという実態がここでもはしなくもあらわれているわけですよね。  こういうようなダンピングを強要され、船員、港湾労働者が削減され、そして労働強化が進められる。だからここにメスを入れなければ幾らやるといっても私は無理だと思うんですね。これは自由料金じゃなくて、法的に決まっている料金でしょう。決まっている料金なのにダンピングをするわけですから。だから、自由料金なんというところは何ぼでもやってくるということのこれは裏づけになっていると思うんですね。  こういう問題について、事実やられているんだから、しっかりと荷主の方に向かってもきちっとした御指導をいただきたいということをお願いしたいと思います。
  91. 中島眞二

    政府委員(中島眞二君) ただいま御指摘の港湾運送事業につきましての運賃料金の収受状況、全国的にもほぼ同じような傾向でございます。今回、昨日付でまた新しい運賃料金の認可をいたしましたけれども、この機会に、さらに完全収受方について業界を指導しますとともに、本年度、全国的な監査を実施いたしたいと思っております。そして料金の収受が行われるように、私ども努力してまいりたいと思っております。
  92. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 次に、内航船舶船舶数。そのうち七百トン以上と以下の数字を教えてください。
  93. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 内航船舶の隻数につきましてですが、船舶統計によりますと、七百トン以上の船舶が八百六隻、それから七百トン未満が八千四百九十三隻という状況でございます。
  94. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますと、法の適用を受けているという七百トン以上というのが約八%くらいですよね。九二%の船舶は法の適用は受けていない。これは全く骨抜き。このまま放置しておいたら大変なことになりますね。その辺のところはどう考えられますか。
  95. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 隻数にしますと先ほど申し上げた数字でありますけれども船員数にしますともっと多いということになります。  そこで問題は、そういった七百トン未満の船舶について法律適用を拡大すべきではないかという趣旨の御質問であろうかと思います。これにつきましては、法律に書かれている労働時間に関する規定と省令に書かれている労働時間の規制とがかなり違っている部分がございます。そういう違った部分がある状態のまま適用範囲を拡大することは難しいということから、船員中央労働委員会では、三年かかって省令をどういうように整理し法律に格上げしたらいいかというようなことを含めて検討をすべきであるという趣旨の御答申をいただいているわけでありまして、私どもといたしましては、これから内航海運の実態を踏まえ、かつ、省令をどういう形で直していくべきか、法制的な観点からの検討も含めて今後検討していくべきであるというように考えておるわけでございます。
  96. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういう労働時間の問題を検討する検討すると言う、三年間の中でね。考えていいことは法的にきちっと裏づけを持って守っていこうということになれば、基本的な方向として、法律で規定するということについても異論は私は別に出ないと思うんだけれども、大体基本的にはそれも検討とせざるを得ないというふうに考えてもいいんじゃないかと思うんですけれどもどうですか。
  97. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 労働時間というのは船員にとって労働条件の基本的な問題でございますから、七百トン以上の船員と七百トン未満の船員との間で労働条件に差があっていいというわけではないということについては、私どもも同意見であります。いわば基本的な理念としては、労働時間について同じような法体系で行うべきであるということは私ども考えているわけであります。  ただ、そもそも発端から言いますと、法律は二十二年に制定されましたが、七百トン未満の船舶については、当初は法律に規定されていなかったわけであります。そういう状態ではまずいというので、昭和四十二年あるいは漁船に関しては四十三年に省令で定めるということで今日に来っております。しかし、今の時点になりましてもう既に二十年近くたっているわけでございますから、そろそろ省令ではなくて法律に規定すべきではないかということで、船員中央労働委員会でかなりの議論になったわけであります。ただ、一方では労働時間短縮という国家目的に沿った改正もしなきゃいけないという、短時間の中でそういった問題を含めて議論しておりますと時間がいたずらに経過してしまうということで、今申し上げました拡大問題については後ほどの検討ということで残されているわけであります。  したがいまして、今後、今省令で定める事項を法律に格上げすべきかどうか、格上げした場合にどういうような規定ぶりにするのか、各般の観点から検討しなければならないというように考えているわけでございます。
  98. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今度いろいろ調べていて、おもしろいですね、九十九というのが好きなのね、船って。みんな九十九がついているんだね。何でそんなに九十九が好きなのかといったら、七百以上になると法的規制を受ける、六百九十九だったら規制を受けない、それでみんな九十九と。普通九の字は嫌いなのに、ここでは九の字が好きなんだわ、ずっと調べてみたらね。  そこで、もう一つの問題なんだけれども、今いろいろな船が昔と違って出てきていますよね。それで、七百総トンというけれども、船の構造が変わってきたということで、今問題にしたいのは、二層船だとか三層船だとか四層船まであるんですって。例えば二層船というふうな船ができた、二層甲板船というのができたとしますと、今までだと、実際七百総トンということになるんだけれども、二層船にして上部の二階の方は総トンに含めないという考え方になっていますね。だから、今までだったら七百総トンだったのが上はもう計算に入れないんだというので、下だけではかられるということですよね。そうすると、例えば実際には全体で千四百トン。だけれども二層船になった。それで一階だけを計算するから、これで六百九十九トンだということで、これが法的に適用を受けないで済むと、こういうことになってきていますよね。  そういうことになると、私はこれ大変なことになると思うんですよ。大臣、どう思いますか。本当なら七百トンなんだけれども二層船にして上は計算に入れないんだ、下だけだなんてね。だから総トン数が半分になっちゃうから定員なんかの規制も受けないというふうなことになっちゃう。私はこういうことでやられると大変なことになると思いますね。だから、二層船だといっても七百総トン以上の扱いにして、定員、人員をきちっとすべきだというふうにしてもらいたいと思うんですけれども、いかがですか。
  99. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今先生の御質問の趣旨は、現行船員法の七十条では、七百総トン以上の船舶については甲板部員は六人以上乗せなきゃならないという規定がございます。その規定を七百総トン未満の船舶にも適用すべきではないかという趣旨であろうかと思います。  この規定につきましては、実は当初は九名であったものが昭和三十七年には六名に減らされたということの経緯がございます。この規定のよしあしについてはいろいろな観点からの議論がございます。一つは、船舶の技術革新がこういうふうに進んでいる時代に、なお甲板部員六人が必要なのかどうかという観点からの議論もあるわけでございます。したがいまして、今後の検討といたしましては、定員規制のあり方をどうしたらいいか、七十条のように一律六名という規定の仕方がいいのか、そうではなくて船舶のそれぞれの実態に合わせた規定の仕方がいいか、いろいろな規定の仕方があろうかと思います。  そういう観点から今後私ども検討してまいりたいというように考えております。
  100. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこで最後の質問なんですけれども、今おっしゃった七十条をなくして新たにというふうにも考えられるということも言われたけれども、これは私は労働時間短縮の動きに逆行するんじゃないか、そう思うんですよ。  といいますのは、七百トン以上の船の場合には船員法で甲板部員というのが六人規定されていますよね。それから船舶職員法の海技免許を持った人が四人で合計十人ですよね。甲板部員六人というけれども、この六人の中から無線が要るじゃないか、機関部が要るじゃないかということになるわけですよね。御飯を食べなきゃならないから炊事もしなきゃならない。いろいろ実情聞いてみたらこれは大変な労働だ。だから六人が全部甲板で、ワッチャーというの、見張り。六人がみんな二人ずつで見張りしていれば、八時間ずつで交代ということができるけれども、いろんな、さっき言った炊事とか無線とか機関とかに入れられちゃうと、初めに出ていましたよね、二人で二十四時間甲板で見ていなきゃならない。こういうことになるから、だから大変な労働強化になるということでしょう、今の問題点というのはね。だから、この十人の乗組員の、今の甲板六名という中で、炊事とか無線、機関ゼロにしたままで、これでも運輸省は許可するということになるんですか、十人で。――そういうことでしているんだわ、答え聞かなくてもしていると。そうすると、ちっとも労働時間改善ということにならないわけですよね。  まして七十条をなくしちゃって、そして船に適合したといういろんな言い方はあるけれども、一番初めに言った原則から考えてもらいたい。一日十二時間、十六時間労働しています。三十八日休みをとっても三千時間、四千時間という労働になっていますよ。それというのも定員が足りないということですよね。だから、この定員の問題をしっかり考えて裏づけをとらなければ解決にはなりませんよね。その定員をきちっと裏づける、そのためには荷主側のダンピングというような強要があったら経営的にやれないというところが出てくるから、そこにも目を向けてくださいよ、こういうふうに言ったわけです。  だから、もう最後なのでこれでやめますけれども大臣も、三年間検討してもらっている、一生懸命やるつもりだとおっしゃっても、具体的な手を打っていただかないと、今までずっと放置されてきたその延長になると思いますので、どうかその辺のところをしっかり考えて、私のきょう指摘いたしました問題について腹に据えて取り組んでいただきたいと思いますので、その御決意のほどを、初めに伺ったけれども具体的な問題を出したから、最後に具体的な決意もちょっと入れていただきたいと思います。
  101. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 具体的な方策については部長の方からお答えいたしますけれども、先ほど申しましたように、陸、海、境なく、大企業とそれの下請である中小零細企業との非常に不合理なかかわりというのはここにもあると思います。やっぱりそれを合理化しませんと日本の経済の健全な発展もありませんし、そういう曲がった原理というものを踏まえてそれを是正するように、労働条件整備という形が成就されるように努力しようと思います。
  102. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣が御決意くださいましたので信頼申し上げますので、よろしくお願いいたします。  これで終わります。
  103. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  104. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、船員法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。  本法案は、補償休日の法定化、有給休暇取得条件の緩和など、現在船員の置かれた劣悪な労働条件の中で、一定改善された部分があることは指摘しておきます。しかし、本改正案は船員の労働時間の短縮、休日制度の導入中心とするものでありながら、その対象となるべき船員の八割はこの法律適用にならないのです。  法律適用とならない七百トン以下の小型船や漁船に乗り組む船員労働条件は、今や黙過できない極めて深刻な実態となっています。  例えば、一日十二時間ないし十六時間労働、年間労働時間三千ないし四千時間という驚くべき前近代的労働条件を強いられているのです。  これら船員労働条件の向上を目指すならば、まず労働時間の短縮、休日の保障そのために定員の定めなど、法的規制措置をしない限り基本的解決にはならないのであります。しかも、船員の八割にも及ぶ労働者法律適用を受けず、過酷な労働実態にある内航船舶に至っては、わずか八%だけ適用を受け、残る九二%の船舶適用にならない。まさに骨抜きと指摘せざるを得ず、真の労働保護法とは言えません。  同時に、これら内航船舶に就労する船員の労働環境が極めて劣悪な背景に、鉄鋼、石油、自動車など、荷主による支配問題があります。荷主による運賃、用船料の引き下げ要求は不当なダンピング競争を強要し、そのたびに定員削減、労働時間の急増を迫られています。これを解決する上でも、法律で労働時間の短縮、休日の付与や定員などを明記すべきなのです。  また、労働条件の具体的部分の多くが運輸大臣の命令に落とされていることや、特定船舶に対する変形労働時間制を残したままとなっていることであります。  以上、簡潔に反対の理由を述べ、反対討論を終わります。
  105. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 他に御意見もないようですから、計論は終局したものと認めます。  それでは、これより順次両案の採決に入ります。  まず、船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  106. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  安恒君から発言を求められておりますので、これを許します。安恒君。
  107. 安恒良一

    安恒良一君 私は、ただいま可決されました船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。  一、現下の厳しい船員雇用情勢に対処するため、便宜置籍船への日本人船員の配乗を促進する等の必要な施策を講ずること。  二、我が国商船隊中心として、近代化船の建造を促進するための有効な施策を講ずるとともに、我が国貿易物資の安定輸送の確保を図るため、国際競争力のある我が国商船隊整備に努めること。   右決議する。  以上でございます。
  108. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいま安恒君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  109. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 多数と認めます。よって、安恒君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、船員法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  110. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  中野君から発言を求められておりますので、これを許します。中野君。
  111. 中野明

    中野明君 私は、ただいま可決されました船員法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     船員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。  一、週平均四十時間労働制に可及的速やかに移行するため、労働基準法に基づく労働時間の段階的短縮の実情に配慮しつつ、その着実な達成に努めること。  二、「小型船等に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令」(小労則)の適用船員については、早期に本法を適用するための必要な検討に着手するとともに、法改正に伴う小労則及び「指定漁船に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令」(漁労則)の改正に当たっては、法改正の内容を十分考慮して本法との格差圧縮に努めること。  三、有給休暇について、内航乗組員の付与日数の一層の増加を図るとともに、漁船分野の実態を正確に把握し、漁船船員への有給休暇制度適用に努めること。  四、時間外労働については、改正法第六十四条の精神を踏まえた適正な運用が図れるよう十分な指導監督を行うこと。    また、補償休日の労働に関しては、可能な限り休日を確保するように努め、その運用に当たって十分な指導監督を行うこと。  五、十人未満の船員を使用する船舶所有者についても、就業規則の整備が行われるよう指導すること。  六、各種労使協定の締結当事者である労働者代表の選出については、労働者の意思を適正に反映した選出が行われるよう指導すること。    また、特に、内航海運分野における不当労働行為の未然防止について十分な監督を行うこと。  七、中小船主が主体の内航海運における船員の労働時間短縮を促進し、併せて労働条件の改善・向上を図るため、運賃・用船料を始めとする荷主との運送取引条件の適正化に努め、内航海運業の一層の健全化を図ること。  八、船員法の履行確保、労働時間短縮の一層の促進を図るため、船員労務監査業務の徹底、必要に応じた船員労務官等の増員など船員労働行政体制の一層の充実強化を図ること。   右決議する。  以上でございます。
  112. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいま中野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  113. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 全会一致と認めます。よって、中野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの両決議に対し、石原運輸大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。石原運輸大臣
  114. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) ただいまは、船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び船員法の一部を改正する法律案につきまして慎重審議の結果、御可決いただき、まことにありがとうございました。  また、それぞれの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、政府として、十分の努力をしてまいる所存であります。  どうもありがとうございました。
  115. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  117. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。石原運輸大臣
  118. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件の提案理由につきまして御説明申し上げます。  この案件は、運輸省の地方支分部局として、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所を設置しようとするものであります。  すなわち、愛知県の東三河地域における自動車の検査及び登録に関する事務の円滑化を図り、あわせて当該地域の住民の利便を増進するため、愛知県豊橋市に、中部運輸局愛知陸運支局の下部組織として、豊橋自動車検査登録事務所を設置する必要があります。  以上の理由によりまして、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し国会の御承認を求める次第であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。
  119. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。――別に御発言もないようですから、討論に入ります。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、中部運輸局愛知陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件について採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  120. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時二十九分散会