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参考人(
土井一清君) まず、やっぱり
船員の
海上での職域を確保するには、
日本人の乗った
日本籍船を
一定数維持するということであります。現在、八百隻
程度の
日本籍船がおりますが、これは今から十年も前には約千二、三百隻おったわけであります。これがこれだけ減ってきた。同時に、当時も外国用船がありまして、大体
日本船が千二、三百隻であれば外国用船もそれぐらいおったわけでありまして、総数で二千二、三百隻というのは十年前も今もほとんど変わりません。したが
って
内容は、
日本籍船が少なくなって外国用船がふえたということであります。それだけに
日本の船に乗っておる
日本人船員というものが少なくなったというのが先ほど来申し上げている
船員数の減少の傾向であります。
私
どもとしては、やはり
日本の旗を立てた
日本籍船は、
一定数はぜひ国策として必要ではないかというぐあいに考えます。それを
経済安保上というかあるいは総合安保上というか、いずれにしましても、
日本は島国でございますので、どうしても有事の際、とかくこれは戦争と誤解されるわけですけれ
ども、そういう意味ではなくて、やはり
経済的、社会的いろいろな問題が生じた場合最低限、
日本の船、そしてそれに
日本人が乗っておるというものが
一定数はぜひ必要ではないかというぐあいに考えるわけです。そういう意味から、私
どもはナショナルミニマムを設定すべきではないかということをかねがね提言しておるところであります。
そこで一方、そういう形で守りながら、片面、
日本の
船舶が
競争力を失うとか、老朽化するとか、あるいは
経済構造の変化でどうしても減少するという、そこから余ってきた
船員をどうするかという問題であります。これについては、
海上に残りたい者と
陸上にかわりたい者、あるいは全然廃業するという者といろいろな形があるわけでございますが、私
どもは、やはり
海上に残りたいという
船員が多いわけでございますので、できるだけそれらの
船員を船に乗せる。これは便宜置籍船に乗せるか、言うところの外国用船に乗せるか、あるいは国内船に乗せるか、いろんな船がおるわけでございますが、少なくとも
外航船で育った
船員は
外航船に乗りたいわけであります。
それで、そういう船があるかどうかということになるわけでございますけれ
ども、実は、
日本には千五百隻の便宜置籍船がおります。言うところのFOCというのがおります。これは全世界で約七千隻おるわけでございますが、そのうちの千五百隻が
日本の船主が利益を得ている、いわゆるべネフィシャルオーナーでございます。この千五百隻の、
日本の
船社とか商社とか荷主とかいろんな形で
日本の法人が支配しておる千五百隻の船になぜ
日本の
船員を乗せないかという問題であります。これはやはり、
日本の重要な輸出入物資を運んでおる
日本の
船社が、あるいは商社が支配をしておる船であるわけですから、こういう船に
一定の
日本人を乗せるということは、私は当然の救済策ではないかと思っておるわけです。
現在、千五百隻のうち約三百三十隻ぐらいには
日本人が何がしか乗っております。約二千五百人ぐらい乗っておりますが、あとの千二百隻については、これはもう全く
第三国人が乗って運航をしておるわけであります。これらの
船舶は、恐らく
先生方も御存じだと思いますけれ
ども、
海上保安庁による毎年の要救助海難
船舶、ひとつ助けてくれと言うて
海上保安庁に通知が来る、海難を起こす船は、ほとんどそういう
船舶であります。先ごろ瀬戸内でも火災事故を起こしましたし、いろんなところで衝突事故、あるいは
海上の汚染というような、環境を汚すと、こういうことをやっておるのがほとんど便宜置籍船と言っても過言ではありません。したがって、やはりそういう船に優秀な技術、技能を持った
日本人船員を何がしか乗せるということは、私は国の保全上からも大事なことではないかというぐあいに思っているわけであります。
そういう
立場から、私
どもは
日本のフラッグを掲げた
日本籍船に
一定の
日本人船員を乗せると同時に、便宜置籍船にも
日本人の
過剰船員を乗せていくということがこの際最も必要なことだ。同時に、それについては、今まで
コストの安い
第三国人を乗せておったわけでございますので、そこに
コストが高いと言われる
日本人船員を乗せるわけでございますので、どうしても
一定の政策的な手当てが必要であろうというぐあいに考えておるわけであります。したがって、その政策的な手当てをつけることも含めまして、現在の千五百隻の便宜置籍船に対して
日本人船員を乗せてほしいということを御請願いたした次第でございます。
現在、私
どもは、それらの船に乗せるについても、できるだけ外国人も
海員組合の
組合員にしていこうという運動もしております。そういう中からやはり資質の向上、技能の研さん、修練等を加えることによって、それこそ便宜置籍船を
日本の国の利益に役立たせることができるという
立場で、
対応も
組合としていたしておるところであります。そういった点におきまして、ぜひひとつ議会の中で御
検討いただいて、我々の趣旨が御理解賜れば幸いだというぐあいに思っております。
以上であります。