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1988-03-09 第112回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和六十三年三月八日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月八日  本分科員委員会において、次のとおり選任さ  れた。       池田 行彦君    金子原二郎君       倉成  正君    宮下 創平君       川崎 寛治君    宮地 正介君 三月八日  池田行彦君が委員会において、主査選任され  た。 ────────────────────── 昭和六十三年三月九日(水曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 池田 行彦君       金子原二郎君    倉成  正君       宮下 創平君    川崎 寛治君       新盛 辰雄君    中西 績介君       日笠 勝之君    宮地 正介君    兼務 井上  泉君 兼務 井上 普方君    兼務 小川 国彦君 兼務 小澤 克介君    兼務 大原  亨君 兼務 左近 正男君    兼務 沢田  広君 兼務 新村 勝雄君    兼務 渡部 行雄君 兼務 小川新一郎君    兼務 薮仲 義彦君 兼務 河村  勝君    兼務 滝沢 幸助君 兼務 安藤  巖君    兼務 岡崎万寿秀君 兼務 経塚 幸夫君    兼務 中島 武敏君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房会         計課長     則定  衛君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 河上 和雄君         法務省保護局長 栗田 啓二君         法務省訟務局長 菊池 信男君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務大臣官房会         計課長     林   暘君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵大臣官房会         計課長     佐藤 孝志君         大蔵大臣官房審         議官      尾崎  護君         大蔵大臣官房審         議官      瀧島 義光君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         国税庁次長   日向  隆君  分科員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官         兼厚生省年金局         年金課長    松本 省藏君         警察庁刑事局捜         査第二課長   垣見  隆君         総務庁行政管理         局管理官    伊原 正躬君         大蔵省主計局主         計官      若林 勝三君         大蔵省主計局主         計官      水谷 英明君         大蔵省主計局主         計官      永田 俊一君         文部省学術国際         局国際企画課長 飯沢 省三君         水産庁海洋漁業         部遠洋課長   小野登喜雄君         運輸省国際運         輸・観光局観光         部旅行業課長  高野 富夫君         自治省税務局市         町村税課長   小川 徳洽君         会計検査院事務         総局第一局審議         官       宮尾  明君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 分科員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     新盛 辰雄君   宮地 正介君     日笠 勝之君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     中西 績介君   日笠 勝之君     木内 良明君 同日  辞任         補欠選任   中西 績介君     坂上 富男君   木内 良明君     神崎 武法君 同日  辞任         補欠選任   坂上 富男君     関山 信之君   神崎 武法君     春田 重昭君 同日  辞任         補欠選任   関山 信之君     中西 績介君   春田 重昭君     宮地 正介君 同日  辞任         補欠選任   中西 績介君     坂上 富男君 同日  辞任         補欠選任   坂上 富男君     関山 信之君 同日  辞任         補欠選任   関山 信之君     川崎 寛治君 同日  第一分科員小澤克介君、沢田広君、渡部行雄君  、河村勝君、滝沢幸助君、安藤巖君、中島武敏  君、第三分科員左近正男君、第五分科員小川新  一郎君、第六分科員小川国彦君、岡崎万寿秀君  、経塚幸夫君、第七分科員井上普方君、新村勝  雄君、第八分科員井上泉君、大原亨君及び薮仲  義彦君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算  (法務省外務省及び大蔵省所管)      ────◇─────
  2. 池田行彦

    池田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。  本分科会は、法務省外務省及び大蔵省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算及び昭和六十三年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。宇野外務大臣
  3. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昭和六十三年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、四千四百十六億四千六百十三万八千円であり、これを昭和六十二年度予算と比較いたしますと、百七十二億四千百万七千円の増加であり、四・一%の伸びとなっております。  我が国を取り巻く国際情勢は依然として厳しく、外交役割はいよいよ重大であります。近年国際社会における地位が著しく向上した我が国は、世界に開かれた日本として、また、「世界に貢献する日本」という視点に立ち、各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していく必要があります。この観点から、昭和六十三年度においては定員機構拡充強化在外勤務環境改善等外交実施体制強化政府開発援助ODA)及びその他の国際協力拡充海外邦人対策等整備拡充等に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実は、外務省にとっての最重要事項の一つでありますが、昭和六十三年度においては定員百二名の増員を得て、合計四千百五十一名となります。  また、機構面では、在外公館として在イエメン大使館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係予算について申し上げます。  今や自由世界第二位の経済力を有するに至った我が国が、平和国家として、世界の平和と安定に貢献する上で、経済協力我が国の重要な国際的責務となっております。なかんずく、政府開発援助ODA)の果たす役割は年を追って重要なものとなっております。政府は六十年九月にODA第三次中期目標を設定し、その着実な拡充に努めることを宣明し、さらに昭和六十二年五月には緊急経済対策において、第三次中期目標の極力早期達成、少なくとも七年倍増目標の二年繰り上げ実施等を決定いたしました。昭和六十三年度はこの中期目標の極力早期達成に向けて、量、質両面の着実な拡充を図るため、ODA一般会計予算においては、厳しい財政事情にもかかわらず、政府全体で対前年度比六・五%増とする特段の配慮を払いました。  このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比百三十一億円増の一千四百七十一億円としたほか、技術協力予算拡充に努め、なかんずく、国際協力事業団事業費のうち技術協力に向けられる同事業団交付金は対前年度七・五%増の一千六十二億円と、初めて一千億円を超えるものとしています。また、国連等国際機関を通ずる国際協力及び欧米等先進諸国との関係を円滑化するための対策にも配慮を払っております。  さらに情報機能強化のための予算充実に努め、また、各国との相互理解の一層の増進を図るための広報・文化人的交流予算についても、一層の手当てを講じております。  このほか、海外で活躍される邦人の方々が安心して生活できるよう緊急事態における通信連絡体制整備拡充を図るとともに、海外子女教育の問題についても、全日制日本人学校一校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」なる印刷物を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。  以上であります。
  4. 池田行彦

    池田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま宇野外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 池田行彦

    池田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔参照〕    外務省所管昭和六十三年度予算案説明  外務省所管昭和六十三年度予算案について大要を御説明いたします。  予算総額は四千四百十六億四千六百十三万八千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費三千二百六十五億七百三万円、エネルギー対策費二十六億五千四百六十八万四千円、その他の事項経費一千百二十四億八千四百四十二万四千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省三千七百五十五億四千百四十九万一千円、在外公館六百六十一億四百六十四万七千円であります。  只今その内容について御説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費二百二十億四百三十五万八千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、六九六名の人件費及び事務費等、並びに審議会運営経費であります。  第二 外交運営充実に必要な経費三十四億六千九百三十一万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉我が国に有利に展開させるため本省において必要な情報収集費等であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費八十五億五千七百八十八万七千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金三十七億四千二百五十一万八千円及び啓発宣伝事業等委託費六億三千二百九十万一千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費五十八億三千百九十八万四千円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十九億九千四百九十八万円であります。  第五 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費二十八億二千六百三十三万三千円は、アジア北米、中南米、欧州、大洋州、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十一億五千七百九十八万五千円、財団法人日本国際問題研究所補助金二億八千七百四十万五千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五千三百二十八万三千円及び社団法人国際協力会等補助金一億三千八百五十三万四千円並びにインドシナ難民救援業務委託費六億九千七百七十二万六千円であります。  第六 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費九千七百三十六万一千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 条約締結及び条約集編集等に必要な経費五千三百二十二万八千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八 国際協力に必要な経費十七億六百五十三万三千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金四千四百五十九万二千円であります。  第九 経済技術協力に必要な経費二十四億三千八百九十七万八千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金十一億四千三百十一万一千円等であります。  第十 経済開発等援助に必要な経費一千四百七十一億四千五百五十四万七千円は、発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。  第十一 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費六百八十三億四千三十四万一千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十二 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費二十六億五千四百六十八万四千円は、我が国が加盟している国際原子力機関支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十三 国際分担金等支払に必要な経費十八億三千二百七十八万三千円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十四 国際協力事業団交付金に必要な経費一千六十二億七百十六万四千円は、国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団出資に必要な経費二十三億七千五百万円は、国際協力事業団の行う開発投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費五百二十六億四千二百八十八万一千円は、既設公館百六十六館五代表部と六十三年度中に新設予定の在イエメン大使館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計二、四五五名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費六十八億七千四百八十万五千円は、諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な情報収集費等であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費二十七億二千九十一万六千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制維持強化に必要な経費三億五千七百八十四万八千円は、自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費三十五億八百十九万七千円は、在寿府代表部事務所営工事(第二期工事)、在西独大使館事務所営工事(第二期工事)、在インド大使館事務所営工事(第三期工事)、在シンガポール大使公邸営工事(第一期工事)等の建設費、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管昭和六十三年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────
  6. 池田行彦

    池田主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 池田行彦

    池田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  8. 新盛辰雄

    新盛分科員 最近の国際捕鯨について集中的に質問をしたいと存じます。  我が国国際捕鯨取締条約に従い、国際捕鯨委員会加盟国に対する諸手続を踏まえて、国の主権として実施した調査捕鯨に対して、パックウッド・マグナソン法PM法とこれから呼びます。また、ペリー修正法P法と呼びます。これを発動して、対日漁獲割り当て削減水産物輸入規制措置を講ずる、極めて遺憾な事態になっているわけであります。そこで、鯨は資源の問題ではなくて、倫理道徳の問題であるとしているアメリカを中心にした反捕鯨主張、これはまさに民族固有文化の否定である。何の目的であろうとも、鯨を一頭たりとも捕獲することは悪であるという思想に基づいているようであります。このような一面的考え方あるいは価値観の押しつけを、外務省としてどういうふうな基本的な姿勢で今後こうしたいわゆる反捕鯨国に対して対処していかれるのか、偏見的な考え方が横行しているさなかでありますが、まず外務大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おっしゃるとおりに、今国際的に捕鯨倫理道徳の問題である、そういうような御意見があることは承知いたしておりますが、やはり捕鯨問題というのは、あくまでも科学的根拠に基づいて主権というものに対処する、そうしたことが一番根底にあるのではないか、かように私たちは考えております。したがいまして、いろいろな問題に関しましても、我々は科学的に、合理的に処理していくべきである、こういう路線で今後も対処いたしたい、かように思う次第であります。
  10. 新盛辰雄

    新盛分科員 そうなりますと、これまでのIWC運営はいわゆる鯨保護政策に偏り過ぎているのではないか。国際捕鯨取締条約第八条に、条約上の権利義務に関する法的解釈、こうした面ではいまだに権利行使が認められていると私ども考えているのでありますが、現在のIWC運営はまさしく鯨保護政策に偏っているのじゃないか。正常な運営が阻害されているばかりか、条約上の正当な権利をも否定していると思うのでありますが、いわゆる八条、この条約上の権利義務に関して法的な解釈を明確にお願いしたいと思う。
  11. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 捕鯨取締条約第八条一項におきましては、科学的研究のための鯨の捕獲等締約国政府の判断で実施し得る旨を規定しております。したがいまして、ただいま御指摘がございましたとおり、調査のための捕鯨権利というのは、これはこの条約上認められた各締約国権利でございます。
  12. 新盛辰雄

    新盛分科員 一九八二年のIWC年次会議で、反捕鯨諸国の数の力によってモラトリアムが強行採択されたことは御存じのとおりであります。日本は、これには科学的正当性がないとして条約第五条に基づき異議申し立てを行ってきたわけですね。日本のこの主張、私どもは当然であると思っているわけです。この日本異議申し立て権行使に対して、米国国内法、いわゆるペリー法パックウッド・マグナソン法等によって圧力をかけてきているわけです。そして約一年余り日米政府間の協議の結果、日本は二年間の商業捕鯨の継続と引きかえに異議申し立て権を放棄した経緯があります。両国とも条約に加盟している中で、米国は反捕鯨グループ圧力によって条約上の正当な権利までも日本に放棄させる選択をさせたのでありますが、外務省はこのIWC条約という国際取り決め国内法とどちらを優先するお考えか。国内法というのはアメリカのいわゆるP法あるいはPM法、こうしたものの優先を考えているのでありますが、こうした姿勢についてどうお考えになっておられますか、お答えいただきたい。
  13. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 米国にとりまして、国際条約でございます捕鯨条約とそれから米国国内法でございますパックウッド・マグナソン法のどちらが優先するかというお尋ねであれば、それに対するお答えは、当然のことながら国内法規定よりも国際法上の義務が優先するということでございます。したがいまして、パックウッド・マグナソン法に従って日本に対する漁獲割り当てを削減するということが捕鯨条約規定と矛盾するということであれば、これはアメリカにとりましては当然条約義務が優先いたしますので、そのような国内法上の措置はとれないわけでございます。  しかしながら、法律的な解釈といたしましては、残念ながら国際捕鯨取締条約規定とそれから米国が自国の二百海里水域の中で各国漁獲割り当てを行うということの間には矛盾があるというふうには純法律的には考えられない次第でございます。したがいまして、法律的に米国措置が不法であるということは遺憾ながら主張できないわけでございますけれども我が国といたしましては、我が国条約上の当然の権利行使しているにすぎないにもかかわらず、米国我が国漁獲割り当てを削減するというようなことは非常に残念なことであると考えております。
  14. 新盛辰雄

    新盛分科員 事態をただ残念なことであるというふうに済まされない向きがあるわけです。今おっしゃられたように、日本の漁船は同水域から追い出されることはわかっている。いわゆるさきの日米漁業協定合意書に基づく質問外務大臣に二月の末に申し上げましたが、確かにこれはわずか二年間の商業捕鯨の延長だけで異議申し立て権を放棄したというふうに思われる節もあるのですが、また、この合意書漁獲を保証させる内容を一句も盛り込んでいないで、アメリカがいわゆる商業捕鯨をあなた方やめるなら日本アメリカの沿岸における漁獲は確保してあげますよ、こう言ってきた経緯がありますね。ところが、御承知のとおり年々漁獲割り当ては減ってまいりました。来年は恐らくゼロであろうということなんですが、漁獲もゼロであれば商業捕鯨もゼロである、こうなりますと、日本外交交渉の面において極めて重要な、ある意味では漁業者を含めて、外交上一体どうなっているんだ、日本外交の失敗じゃないかというふうな意見も出ているわけです。外務大臣はどうお考えでしょう。
  15. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 ただいま御指摘捕鯨に関します八五年におきます日米取り決めにつきましては、政府関係各方面と密接な調整を行いました上で、何とか日米間の衝突を回避しつつ我が国の利益を最大限に確保したい、そういう観点から行いましたやむを得ざる選択であったと考えている次第でございます。
  16. 新盛辰雄

    新盛分科員 科学調査捕鯨に関して、条約では、この条約の他の規定にかかわらず各国政府主張により調査実施できるとの趣旨が規定されているのですね。もしも万一この権利までも米国圧力によって放棄させられるようなことになれば、異議申し立て権とあわせて条約に明記されている権利はそれこそなし崩しに放棄されることになるわけですね。そうなると、条約は単なる文面上の存在でしかなくなるのではないか。また、米国圧力によって日本は一層条約解釈を曲げてやっていかなければならなくなるのではないか。日本も自衛の手段でもってやらなければならない。この点について明確な見解をお聞かせいただかなければ、これから後のいわゆる捕鯨について、調査捕鯨を含めてですけれども、対処することは非常に難しくなるのではないかと思うのです。この点妥協で、今おっしゃるように、非常に残念だとかやむを得なかったとか、こうおっしゃっているのですが、国際問題の解決の一つとして毅然たる日本の態度というのが必要になってくるのではないかと思うのです。これはどうでしょう。
  17. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題でアメリカの最高責任者の方とも私は話したことがございますが、日本捕鯨というものはあくまでもIWC条約の範囲内においてすべてやってきておることであって決して違法なことをした覚えはありませんから、その点もはっきり申し上げておきます、かように申し上げておるわけでございます。したがいまして、今新盛先生の御趣旨にもありますとおり、私はIWCの基本精神というものは立派なものだと思いますが、運用に関しましていささか御指摘のような面もなきにしもあらず、こういうところは、既に衆参両院におきましても調査捕鯨に関しましては決議もなされておりますから、私たちはやはり国際的な理解も深めるようにさらに努力をしたい、かように考えております。
  18. 新盛辰雄

    新盛分科員 最近のこのIWCの推移というものを見ますと、四分の三の多数決が非常に難しくなっている。勧告という手続を乱発をして、そしていかなる目的の捕鯨であろうともこれを阻止しようとしているわけですね。昨年のIWCでも調査捕鯨の禁止勧告が採決されたわけです。この勧告の有効性あるいは拘束性ですね、法的解釈についてどうお考えになっておられるのか。  これは多数決でもってやらなければならない、四分の三でやらなければならない。しかし、最近は集めるのが非常に難しい。あるいは全然鯨を見たこともない国の皆さんを説得をして集めてきている、そういうIWC国際捕鯨委員会なんですね。しかし実際は勧告、勧告という形で変わってきている。勧告というのは有効性とか拘束性ということを度外視している、私どもはそう思うのですけれども、これは外務省としては世論を非常に気にして、いわゆるグリーンピースとか動物愛護団体とか、あるいは国際的な今までの交渉の環境の中で非常に気にしておられて、世論にも筋の通る世論と独善的なイデオロギーでやられる面とがあるわけですが、何でも世論であれば日本は受け入れる。聞きようによっては、外務省は今後の調査の継続に関して対外的な反応を気にして極めて消極的じゃないだろうかと我々は理解するわけです。大臣がおっしゃったように、国会では農林水産委員会等で、衆参ともに超党派で満場一致でIWCを脱退する決意でもって調査捕鯨断行を訴えたわけですね。決議しました。そういう中で、こういう勧告を我々はそれはそのとおりですという受け取り方をしていいものかどうか。有効性そして拘束性について、しっかりした外務省の見解をいただきたいと存じます。
  19. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 最近幾つか行われております捕鯨委員会におきます勧告は、法的拘束力のないものと考えております。外務省といたしましても、調査捕鯨に消極的ということは全くございませんで、調査捕鯨条約第八条に基づきます我が国の当然な権利行使であるという基本的な考え方に立ちまして考えている次第でございます。
  20. 新盛辰雄

    新盛分科員 だとすれば、いわゆる法的拘束力がないとなれば、この調査捕鯨をこれから継続し、一九九〇年までに商業捕鯨の可否について議論をする時期が来ますね。これは、日本とすればこれから捕鯨の継続というのはあり得る、私どもそう理解していいのでしょうか。
  21. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 モラトリアム後の我が国捕鯨、捕獲の可能性につきましては、ただいま我が国が行っております調査捕鯨の結果を見て今後判断すべき問題であると考えている次第でございます。
  22. 新盛辰雄

    新盛分科員 その結果を見て判断をするとおっしゃいますけれども、最近また、これはアメリカの方が中心になったと言われているのですが、勧告をもって日本に対する調査捕鯨については八百七十五頭から三百頭に推移して、そして三百頭もとってはならない、科学委員会でも検討しろ、こういうふうな話になって、内々日米間の折衝が行われたと聞いているわけです。アメリカ側の方も、あうんの呼吸といいますか、多少問題はあるけれどもまあ黙って見過ごそう、こういう経緯があったにもかかわらず、実はイギリスを中心にして調査捕鯨に関する郵便の投票を行った。この件については、郵便投票の手続上の問題で私どもは有効であるかどうかということについても疑問があります。このイギリスが提案をした手続上の問題についてどういうふうにお考えになっているか。余りにも日本を侮辱した対応ではないかと理解をするのでありますが、外務省としてはどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  23. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 先生ただいま御指摘のとおり、現在実施中の調査捕獲につきましては、アメリカとの協議を踏まえて、またIWCの手続を誠実に得て行ったものでございまして、アメリカの態度は大変遺憾だと思っている次第でございます。  また、お尋ねの郵便投票につきましては、事実関係は十九カ国が賛成して、IWC事務局は、全加盟国四十一カ国中八カ国が分担金を滞納して投票権がないために、投票権のある三十三カ国を母数として賛成票がその過半数を占めた、こういうことで採択されたとしておりますが、政府といたしましては、この解釈IWCの投票手続上議論の余地がある問題であると考えておる次第でございまして、来る五月のIWC総会においてこの点についても議論を尽くしたいと考えておる次第でございます。
  24. 新盛辰雄

    新盛分科員 幾つか問題点があるのですが、ここでは省略しまして、アメリカは、自国の原住民の捕鯨の対象の鯨、今一番危険な状態であると科学委員会指摘をしているわけですが、にもかかわらず昨年の年次会議では強引に枠を増加させた、いわゆるアラスカにおける原住民に対する捕鯨の枠組みでありますが、こういう保護政策をとりながら一方で日本にはとるなという指摘をしている、非常に矛盾があるわけであります。そういう考えのもとに、日本の立場とすれば次期のIWCの会で一体どういう強調をされるのか、この辺のことについてぜひひとつ決意をお聞かせいただきたいと思います。
  25. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 今後の調査捕獲の問題の対応につきましては、国際的な理解を得ながら調査の実現に最大限努力すべきであるという国会での決議等も踏まえまして、関係国の理解と協力が得られるよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。  先ほど大臣からも御説明がありましたとおり、IWC条約の基本精神につきましては私ども正しいと思っておりますけれども、その運用につきましては種々問題がございまして、運用の改善が図られなければいけないと考えている次第でございます。
  26. 新盛辰雄

    新盛分科員 非常に矛盾したことが行われているわけですね。調査捕鯨の取り扱いについても前回のIWCでは科学委員会を中心にして、実は調査捕鯨まかりならないと日本だとかソ連だとかノルウェーだとかアイスランドなどに対して勧告決議をしたわけですね。ところがアイスランドは、IWCを脱退してもいい、NATOを脱退してもいいと強い決意でアメリカ側に迫ったと言われております。その結果アイスランドでは捕獲を許している、いわゆる調査捕鯨実施している。日本も一応強行突破したわけですけれども日本は別問題だ、このアイスランドと日本とは別問題だとアメリカの高官が言っている。何が別問題だかさっぱりわかりませんが、こういう差別的な取り扱いに関して強力に抗議しないのか、米国日本外交を甘く見ているのではないか、世間ではそう言っているわけですね。この片手落ちのやり方について外務省は一体どうお考えになっておられますか。
  27. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 アイスランドの調査捕獲につきましては、昨年のIWC年次会議におきまして中止勧告が出された次第でございますが、アイスランドと米国との間の協議の結果、米国はアイスランドの調査捕獲に対しては米国国内法に基づく制裁は行わないと決定したように承知しておりまして、先生御指摘のとおりでございます。が、米国我が国に対する対応がアイスランドに対する対応と異なる点につきましては私ども納得しておりませんで、我が国に対する制裁について米国に再考を強く求めているところでございます。
  28. 新盛辰雄

    新盛分科員 アメリカ側の対処の仕方でございますけれどもペリー法の制裁発動の可否決定は大統領の裁量にあるわけですね。その決定の期間は署名してから六十日以内、すなわち四月中旬が予定されているわけです。その発動の可能性及び発動阻止の対応について外務省としてはこれからどうされるのですか。具体的な問題であります。
  29. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 ペリー修正法に基づきます対日制裁の発動の可否につきましては、米政府はまだ現時点で何ら決定していないと承知しておりまして、現時点でそれが発動されるかされないかの可能性を予断することは差し控えさせていただきたいと思います。  我が国といたしましては、既に米政府に対しまして、米政府国内法に基づいて一方的な制裁をとることは不当であって、日米の漁業関係の安定を損なうおそれがあるといった重大な問題であることを指摘いたしまして、先ほど申しましたとおりその立場の再考を強く求めている次第でございます。引き続き発動の回避には最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  30. 新盛辰雄

    新盛分科員 アメリカがそうであるなら、我が国も自衛の手段として一体どうするかというのがこれからの課題だと思うのですね。現に水産物の輸入状況もそうですが、米国からの水産物の輸入額は約二千億円以上ですね。これに対して日本側からの対米輸出は五百億円程度であります。こちら側の方が輸出するのは金額的にもそうでありますが、アメリカから水産物の輸入をこんなにまで受けておりながら、日本ペリー修正法制裁発動に備えて一体どうするかということです。  私どもはさきに国会で野党合意に基づいて提案をいたしました。いわゆる水産対抗法であります。これは現在農林水産委員会の方につるされておるようでありますが、自民党、与党の方では、一応これは農水部会としては認めよう、しかし政調会長のところで預かりになって、いまだに日の目を見ないですね。アメリカ側がこんなふうにやってくるなら、あるいはEC諸国もそうでありましょうが、この際、この水産対抗法という問題についてどう処理をしていかれようとしているのか。これは外務省もですけれども、実際の実務に当たられる水産庁としてはどういうふうにお考えになっているか、両者お聞かせいただきたい。
  31. 小野登喜雄

    ○小野説明員 ただいまも経済局次長からお答えになりましたとおり、現在我が国としてはペリー修正法の発動の回避に向けて全力を挙げているところでございまして、我が国としましては、今後の状況を見つつその対応について検討してまいりたい、かように考えております。
  32. 新盛辰雄

    新盛分科員 今度ニュージーランドで大体五月三十日から六月三十日にわたってIWC年次会議が開かれるわけですが、まさしく調査捕鯨を初めとする日本の正念場を迎えていると私は思います。  この外交上の根回しを今まで各国々でやってこられたとは思いますが、もうIWC会議は次年度、あと二、三カ月に迫ってきているわけですね。どのような対応策をお考えになっているか、IWCの正常化を含めて外務省はどう対処されるか、水産庁はどう対処されるのかをお聞かせいただきたい。
  33. 内田勝久

    内田(勝)政府委員 政府といたしましては、科学的な根拠に基づきます資源管理というIWCの基本精神を踏まえまして、我が国の立場に対する理解と協力関係各国から得られますよう、今後とも最大限の努力を傾注してまいりたいと考えている次第でございます。  また、繰り返しになりますけれどもIWCがその基本目的に沿いました本来のあるべき姿に戻り、あるべき運用が図られるように我が国といたしまして関係各国に働きかけていかなければならないと考えている次第でございます。
  34. 小野登喜雄

    ○小野説明員 IWC運営につきましては、先生御指摘のように、とかく今まで問題があったかと思います。私どもとしましても、IWCのそのような運営につきまして何とか正常化したいということで今まで努力してまいりましたのですが、今後とも引き続き努力してまいりたい、かように考えております。
  35. 新盛辰雄

    新盛分科員 努力をする努力をすると言うのはわかりますけれども、実際にもう非常に危機的な状況に来ているわけですね。調査捕鯨三百頭もこれで一応終わるでしょうが、この後、一体どうなるだろうか。水産物の輸入についてもこんなにまでアメリカ側から日本は受けている、しかも日米漁業協定も枠組みはゼロになる、こうなれば日本は水産対抗法でもって対処しなければいけない。なのに、これがまだ与党の内部においては調整がとれていないというところにまた問題があるわけです。  そして最後に、そのいわゆる水産対抗法と言われている問題について、今後どうされるのか、ぜひひとつ決意を。内容本邦漁業者の漁業生産活動の確保に関する法律案であります。これはもう既に議論を開始しようとしているのですけれども、一向に論議の俎上にのせない。これは非常にけしからぬことだと思うのですが、この決意。  それと、もうここまで来れば――この一月にアイスランドで捕鯨国会議が開かれました。捕鯨をする国々だけが集まったわけであります。そして、現在のIWC運営に非常に不満を持っている。だから北洋捕鯨諸国は、場合によっては近い将来IWCの脱退を考えている。そうなった場合に、日本の場合はこれは国会でも決議をしたことですから、IWCがこれまでの運営でやっていくのなら脱退する、その決意があるのかどうか。これは日本としても、水産対抗法は出されないわ、いやまだそれは議論中だ、しかしもう現実あと二、三カ月うちに次の会議が待っているわけですね。だからこの際、外務大臣、これはどうしても、IWCを脱退するのは見合わせようかとか、あるいは日本の決意というのを国際的に示さなければいけないと思うのですよ。今、捕鯨協会だってもう縮小されましたね。こういう状況ですから、アイスランドを中心にして今行われている状況を踏まえて、ぜひひとつ日本の立場を鮮明にしてほしい。  そしてまた、さっきは努力をされるとおっしゃっているのですけれども、このいわゆる水産対抗法について、日本の立場を明確にするために打ち出していいじゃないか。アメリカ側ではPM法だとかそんなので、いわゆる制裁措置国内法でもってやってこようとする。それに対抗するなら日本だってそれをやっていいじゃないか、こういうふうに考えるのは当然でしょう。この辺について最後にお聞かせをいただいて、終わりたいと思います。
  36. 池田行彦

    池田主査 外務大臣。時間が経過しておりますので、簡潔かつ明快に御答弁願います。
  37. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常に貴重な御質問をいろいろと賜りました。既に衆参両院の委員会における決議もございます。こうしたことは重要な決議でございますから、我が国政府といたしましても、そうした決議の意味も次回総会において詳しくさらに強調し、またあくまでもIWC科学的根拠に基づく資源管理ということが大切じゃないか、そういうふうなことを私たちといたしましてはやはり繰り返し繰り返し申し述べるべきである。また郵便投票の件もありますし、そうしたものを含む運営問題等々に関しましても、総会におきまして言うべきは言う、こういうふうな姿勢で臨みたいと考えております。
  38. 新盛辰雄

    新盛分科員 脱退できませんか。
  39. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 脱退というところまで今の日本国際環境下における立場からまだ申し上げることは、またそれについてのイエス・ノーを申し上げること自体も、私はこの際は控えたいと思います。
  40. 新盛辰雄

    新盛分科員 もう一つ、水産対抗法はどうですか。
  41. 小野登喜雄

    ○小野説明員 対抗法案につきましては、先ほどもお答え申し上げたとおり、私どもとしてはとにかく今ペリー修正法の発動の回避に向けて最大限努力しているところでございまして、その後の様子を見ながら今後検討してまいりたい、かように考えております。
  42. 新盛辰雄

    新盛分科員 終わります。
  43. 池田行彦

    池田主査 これにて新盛辰雄君の質疑は終了いたしました。  次に、日笠勝之君。
  44. 日笠勝之

    日笠分科員 大臣、先日は予算委員会で青い目の里帰り人形展につきましては大変御見識の深さを感じました。宇野平和文化外交をかいま見たような思いをするわけでございます。きょうは短時間でございますが、文化、平和問題につきまして少々お尋ねをしたいと思います。  まず、世界文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約についてでございます。もう大臣はこの趣旨についてはよく御存しかと思いますが、念のため仮訳の中から抜粋しまして、どういう趣旨のものであるか、御紹介を申し上げたいと思います。  現代文明社会の発展に伴い、文化及び自然遺産が本来の衰退の原因によって破壊されるのみならず、経済的、社会的原因によって損傷または滅失する状況が起こりつつあることを考慮いたしまして、全人類のための世界遺産の一部として文化遺産と自然遺産を世界的に保護するため、締約国に対し、守るべき文化遺産と自然遺産をユネスコに報告し、世界文化遺産一覧に登録し、保存と保管を世界的に行っていく趣旨のものでございます。これは一九七二年の十一月、第十七回ユネスコ総会で採択されたものでございます。その折の議長役は我が日本でございました。以来もう十六年が経過をしようとしておるわけでございます。  締約国は、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリア、カナダの主要先進国はすべて締結をしておりますし、締結してないのは日本だけでございます。そして今現在世界で九十八カ国がこれに批准をしておるわけでございます。日本は現在、十六年余りたちましたけれども、まだ批准ができておりません。そのおくれている原因は那辺にあるや、まずお伺いをしたいと思います。
  45. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 お答え申し上げます。  この条約につきましては、趣旨は大変望ましいものというふうに考えまして、この条約の発効以来いろいろと検討してまいったわけでございますけれども、この条約の受け皿となる国内法との関係、あるいは締約国として求められます財政負担の問題等がございまして、現在までのところ結論を得ておりません。しかしながら、この条約の趣旨にかんがみまして、今後さらに具体的に検討を進めていきたいと考えております。
  46. 日笠勝之

    日笠分科員 では、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。国内法関係とおっしゃいました。各省庁、各方面との調整を現在進めておられると聞いておりますが、この辺の状況はいかがでしょうか。
  47. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 文化財につきましては例えば文化庁の関係、それから自然遺産等につきましては環境庁その他と協議をいたしております。
  48. 日笠勝之

    日笠分科員 そろそろ煮詰まるような状況でございますか、まだ道遠いという感じでございますか、道半ばという状況でございますか。
  49. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 いつごろなら結論が得られるかということはちょっと確定的にはお答えいたしかねるわけでございますけれども、私どもこの検討を促進してきているということだけは申し上げられると思います。
  50. 日笠勝之

    日笠分科員 ですから、道遠いのか、半ばなのか、間近なのかという三者択一でどうでしょうか、抽象的なお答えで……。
  51. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 今の先生のおっしゃいました選択肢の中では、恐らく半ばというところが適当ではないかと思います。
  52. 日笠勝之

    日笠分科員 財政負担のことをおっしゃいましたが、この条約を見ますと「自国の分担金の一パーセントをこえないものとする。」とありますが、現在ユネスコへの分担金は幾らでございますか。そして、この条約のとおりの分担金を出そうと思えば幾ら出せばいいのでしょうか。
  53. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 一九八八年度におきまして予定しております日本分担金は約二千五百万ドルでございます。したがいまして、その一%ということは大体二十五万ドルということになるかと思います。
  54. 日笠勝之

    日笠分科員 そうしますと、日本円にいたしまして三千万から四千万ということですね、為替レートでいろいろ変わりますけれども。財政的負担というのは三千万ないし四千万のプラスが非常に厳しい。これは平和大国であり文化大国を目指していかなければいけない日本でありますし、先ほどから申し上げておりますように、先進七カ国、いわゆるG7の中でも日本だけが加盟しておらない、こういうことでもございます。この分担金、三千万なり四千万という金額が非常に厳しいのですか。
  55. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 その金額自体はもちろん出せない金額ではございません。ただ、もちろん条約を批准いたします場合に、当然、殊にユネスコにつきましてはいろいろ問題がございましたものですから、そういったことも若干考慮しながら検討しなければいかぬということは考えておりますけれども、金額といたしまして日本が拠出できないというふうなものではございません。
  56. 日笠勝之

    日笠分科員 そうすると、分担金の問題はクリアできるわけですね。あと国内法との調整でございますが、これも実は昭和五十六年の外務委員会のときに当時の園田外務大臣が、亡くなられましたけれども、この条約の批准について質問をされたときの答弁がございます。  このような答弁をされております。「重大な関心を払って、困難はありましょうとも、各省庁とも協議の上前向きに締結の可能性について検討したい」、今から七年前にはっきりとこのように申しておられるわけでございます。その七年間の間に国内法調整が難しかったということは、先進七カ国のうち六カ国までは批准をすいすいとやっておられるわけでございますが、もう少し積極的にできるのではないか、そろそろ機も熟してきたのではなかろうか、かように思いますが、精力的に国内法調整についてやるお考えはございますか。
  57. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 そのように努力したいと思っております。
  58. 日笠勝之

    日笠分科員 昨年の七月、ユネスコ本部のドロステ生態科学部長が来日されて、早く批准をしていただくようにという要請があったと聞いておりますし、つい最近は竹下内閣の全閣僚に京大の今西名誉教授であるとか動物作家で有名な戸川先生なんかが批准を求める質問状を出した、このようにお聞きしておりますが、大臣、覚えていらっしゃいますか。
  59. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そのようなものをもらった記憶が私には今のところございません。
  60. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 ちょっと私のところで今具体的にどういう形で提出されたか存じておりませんけれども、ただ、この関係者の伊藤正春先生という大変熱心な方を通じまして、外務省の方に熱心にこの条約の批准につきまして働きかけがあったことは事実でございます。
  61. 日笠勝之

    日笠分科員 新聞報道では質問状を出した、こうあるわけですね。ひとつ帰ってよく見ていただいて御検討をお願いしたいと思います。  一般論で申し上げたいと思うのですが、もしこの条約を批准した場合、日本の国でいわゆる世界の遺産一覧表に目録を提出する、これはこちらから世界遺産委員会へ目録を提出して審査をされた後に登録をされるわけでございますが、一般論としまして、日本でもしこれが批准された場合、どういうふうなものが登録をされる可能性があるかということについてお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  62. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 この条約の対象となります遺産につきましては、この条約の定義にのっとって、まず各国で決定し、それをユネスコの方に提出する、そこでこの世界遺産委員会の方で改めて審査するということになっておりますが、いずれにいたしましても、具体的にというのはちょっと今必ずしも思い当たりませんけれども、一般論といたしましては、記念的な意義を有する彫刻だとか絵画、歴史上、美術上あるいは科学上顕著な普遍的価値を有する建造物群あるいは遺跡、こういったものが考えられているわけでございます。
  63. 日笠勝之

    日笠分科員 例えば識者の間では、広島、長崎の被爆遺跡、特に広島の原爆ドームですね、それから西表島のイリオモテヤマネコの生息地、ヤンバルクイナの沖縄本島、こういうものが非常に可能性が高い、こういうふうに言っておりますが、その辺はいかがでしょうか。一般論ですからね。
  64. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 この条約につきまして批准、締結いたしました後に、また国内的な枠組みに従って検討することになると思います。例えばただいま御指摘の広島の原爆ドームにつきましても、同じように条約批准後いろいろと協議したいと考えておりますけれども、歴史的な価値については十分留意する必要があるというふうに考えております。
  65. 日笠勝之

    日笠分科員 とりあえずこの質問を締めくくるに当たって、大臣、先ほどから何回も申し上げておりますように、先進七カ国では日本だけがまだ加盟できてない。十七年間も、悪い言葉で言えば棚ざらしになってきた。園田外務大臣が前向きに答弁されてもう既に七年経過した。ひとつ宇野平和文化外交を進める立場の方として、この条約について今後どういうふうに取り組んでいきたいのか、ひとつ前向きな御答弁をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
  66. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろとただいまの委員の御質疑内容、私、かみしめながら拝聴いたしました。  文化国家と言うからには、ふさわしい体制を整えなければならぬという観点に立ちました場合には、当然この条約に関しましてもさらに深い関心を持って推進しなければならない、私はかように存じております。  これは一般論ですが、文化国家とは何ぞやとよく言われますが、文化国家とは文化財の多い国をいう、その文化財を守る国民が多くいる国をいう、また、文化財とは過去のものだけではなく将来に向かっても文化財になるようなものをつくり得る国民が多くいる国を文化国家という、こういうふうに私は申しておりますから、そういう観点で、ただいま政府委員からいろいろと御答弁がございましたが、そうしたことを踏まえながら十二分に検討させていただきます。
  67. 日笠勝之

    日笠分科員 片一方、もう一つの条約がございます。これは、武力紛争の際の文化財の保護のための条約というものでございます。  これもかいつまんで内容を申し上げますと、文化財が最近の武力紛争の間に重大な損害をこうむっていること及び交戦技術の発達のため文化財の破壊の危険が増大しているということから、文化的遺産の保存が世界のすべての国民にとって多大の重要性を有すること及びこの遺産に国際的保護を与えることが重要である、こういう観点で一九五四年ハーグで作成をされ、日本は一九五六年署名をいたしてきておるわけでございます。これも以来三十二年経過しておるわけでございます。  武力紛争の際の文化財の保護でございますから、一つの平和の担保にもなるわけでございます。お互いの国々が文化財のあるところを攻撃しちゃいけない、こういうふうなことにもなるわけでございまして、平和の担保でもあるかと思います。これが現在まで、先ほどの条約と同様でございまして、余り前向きに進んでいるようなお話は聞かないわけでございますが、この武力紛争の際の文化財の保護のための条約に関して、何がネックになっておるのか、そして現状はどうなのか、このことについてお尋ねいたします。
  68. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 武力紛争の際の文化財保護のための条約につきましては、この条約実施のための国内措置等につきまして種々検討を要する問題点があるというふうに考えております。特にこの条約が主たる目的としております特別保護の付与というものにつきまして、対象となる文化財の集中地区、例えば京都とか奈良等でございますけれども、こういった文化財の集中地区が重要な軍事目標から妥当な距離にあるということを条件としております。  この軍事目標というのが、空港であるとか放送局であるとか交通の幹線であるとか、そういったものがこの条約において重要な軍事目標ということになっておるわけでございます。したがいまして、我が国の場合、京都、奈良といった地域をこういった条件に合致させてこの条約の適用を確保するために所要の国内措置を講ずるということは相当な困難があるというふうに考えざるを得ないわけでございます。そういった問題点がございますので、この条約締結については慎重に対処せざるを得ないというふうに考えております。
  69. 日笠勝之

    日笠分科員 世界でもう既に七十数カ国でございますか、批准をされておるわけでございますし、三十二年間棚ざらしでございます。軍事目標云々ということがありますが、国際的に見ましてもクリアをして批准をしている国もあるようでございます。きょうは時間がないので具体的なことは申し上げられませんけれども、ぜひひとつ国際的に世界各国がどういうふうにクリアしておるかということも今後研究課題にしていただきたい、かようにまずお願いをしておきたいと思います。  さて、続きまして大臣にお伺いいたしますが、第三回の国連軍縮特別総会が五月末からニューヨークの国連本部で行われる。一九七八年、一九八二年に次いで六年ぶりでございます。日本政府代表いたしましてどなたが行かれる御予定に今なっておられますでしょうか。
  70. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間も予算委員会で総理みずからその点を答えておられましたが、もし事情許せばみずから行きたい、こういう意向を持っておられます。
  71. 日笠勝之

    日笠分科員 そのときにソ連のゴルバチョフ書記長と会談、会見をということも漏れ聞いておるわけでございますが、もし総理が行かれた場合、具体的に可能性はあるのでしょうか。
  72. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 軍縮総会はわりかた長い期間で行われておりますから、ゴルバチョフ書記長がいつ出かけられるか今のところ全く不明でございます。したがいまして、こちらの政界、さらには国内問題もございましょうから、そうした事情を思いなから、総理もお行きになるというときに果たしてぴたっと合うかどうか非常に難しい問題ではないかと思っておりますし、ゴルバチョフ書記長が出席なさるかどうかも私たちはまだ把握いたしておりません。
  73. 日笠勝之

    日笠分科員 タイミングがうまく合えば、日本の平和のためにも国連中心の平和外交を進める上でもぜひ善処方をお願い申し上げたいと思います。  そこで、これは提案でございます。つたない提案でございますが、ひとつお聞きいただければと思うのです。御承知のように、INFの全廃条約の調印もなさりました。そしてソ連が、アフガニスタンからの撤退ということもスケジュール的にも煮詰めておるようなお話も聞いております。しかし反面、イラン・イラク戦争はますます激化をしておるわけでございます。  そこで、オリンピックが今度九月十七日から十月二日までソウルでございます。このオリンピックは、原点に戻れば、古代ギリシャの昔に戻れば、大臣も御承知のようにオリンピックを開催中は戦争当事国は休戦をしておったわけでございます。有名なお話でございます。そこで、六八年二月、フランスのグルノーブルで冬季オリンピックがございましたときにオリンピック休戦ということでIOC、国際オリンピック委員会がこれを採択をいたしました。呼びかけたわけでございます。  そこで、大臣いかがでございましょうか。この第三回国連軍縮特別総会でも結構でございますし、国連中心外交を進める我が国といたしましては、もちろん呼びかける主体者はIOCであろうし、また韓国のしかるべき要人、首脳ではあると思いますけれども、側面からオリンピック休戦の各国とのかけ橋になってひとつ平和外交を進めていくということが大変重要なことではないかと思います。どういうふうに御所見を持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  74. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 イラン、イラクともにオリンピックに参加を表明しております。その表明している両国が戦争をしながら平和の祭典で果たしてどうだろうかというふうな御疑問から恐らくそういう提案が出たのではないかと私は思います。非常に世界の平和のために、またオリンピック精神の高揚のために大切な御提案だと私は感じますので、いろいろな面等そうしたことについての考え方をまとめるように前向きに検討してみたいと思います。
  75. 日笠勝之

    日笠分科員 前向きにということで、ひとつよろしく御努力のほどをお願い申し上げたいと思います。  最後に、海外経済協力につきまして若干お聞きしたいと思います。  実は昨年、私は南太平洋のある国に参りました。国の名前を出すといろいろ誤解があってはいけませんので伏せておきますけれども、その中で港に一隻漁船がさびたまま放置されておるのをこの目で見ました。  私が思いますのは、特に開発途上国におきましてはハードの分、そういう機械物ですね、漁船であるとか冷凍庫であるとか、こういうものを協力を申し上げるということは、特に東南アジア、南太平洋諸国において、日本の過去のいきさつから見てもさらに積極的に協力を申し上げるということはやぶさかではないし、当然だと思いますが、ハードの面だけに凝りますと、結局いい機械なりそういうものを援助いたしましても、ソフトの面がないのですね。すなわち、船をもらってもその船を動かす方法、魚をとる方法、内海といいまして、湾の中でとるのはもう昔から何千年来とやっておるからよく知っておりますが、外洋に出ると全然漁法が違ってきます。そういうようなことの、ハードも当然ながらソフトも一緒につけて経済協力をしなければせっかくのものが、いわゆる最近よく言われておりますところの税金のむだ遣いではないかとか、よくマルコス疑惑のときに外務委員会でもさんざん議論されたところでございます。ソフトの面をもう少し十分考え援助申し上げないと、画竜点睛を欠くのではないかと思います。  具体的な国の名前もどういうことかということは別にいたしまして、今後の海外経済協力について技術的な指導、ソフト的なものについてどのようにお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
  76. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 甚だ失礼でございますが、その前に先ほどのオリンピック提案、それはそれで結構でございます。我々の外交方針といたしましては、それまでに国連の五九八の決議がございますが、イランはこれをまだのんでおりません。そういうようなことも大切でございますから、オリンピックまで戦争を続けてろという意味ではありませんので、それまでに速やかに戦争を終結しなさい、こういう姿勢でございますから、そこだけ一つつけ加えさせていただきます。
  77. 英正道

    ○英政府委員 御指摘のように経済技術援助に当たりましてソフトとハードの間の関連性を強化する必要がございます。それで、私ども援助要請を受けて実施いたします際に、当然先方のニーズに対して資金なり技術を提供するということでございます。その際に、提供した技術が使用されない、または提供された物資が十分活用されたいということは大変な税金のむだ遣いになるわけでございます。そこで、当然事前に調査団を送りまして現地の技術水準、そういうものをよく検討して、どういうものが使われるかを詰めて、その上で供与するわけでございます。  そこで、実際の問題として起こりますのは、なるたけ新しいいい技術が欲しいという御要望もあります。他方、こちらから行って、いやまだ現地の水準はそこまで達していない、そういたしますと技術協力、ソフトを一緒に付与してどこまでカバーできるか。その際に、もちろんこちらから長期にわたってずっと人を張りつけるということも、人がなかなかいらっしゃらないという点もあるものですからバランスをとらなければいけないのでございますけれども調査団の目的というのは、そういう点のバランスをとった上でソフトとハードをミックスしながら先方に技術移転が行われるようにということでやっておるわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のように場合によっては当初に予定したとおりにいろいろなことがはかどらないということもあります。そこで、私どもはまた調査が行われた後フォローアップの評価ミッションとか現地の大使館から頻繁に現地を視察するとか、そういうようなことで、もし動いていない場合にはさらにこちらでフォローアップの措置をいろいろとるということでやっているのが一般的な仕組みでございます。また、いろいろ御指摘、御叱正を受けながら最善を尽くしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  78. 日笠勝之

    日笠分科員 在外公館の方も少なくて、範囲は広うございましてアフターフォローはなかなか厳しいようでございますので、要請主義に基づいて援助するわけでございますが、必ずハードについてはソフトはどうなのか、それを日本の国がどのようにカバーをしてソフトの面の援助もやるかということを十分お考えの上、国民の貴重な税金でございますので、その点もさらに御努力をお願いをして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  79. 池田行彦

    池田主査 これにて日笠勝之君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  80. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 最初に外務大臣にお伺いいたしますが、我が国外交の陣容と申しますか外交体制というものを国際的に比較したとき一体どのような姿になっているのか、その御認識についてお伺いいたします。
  81. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日本の今日の世界における地位を何によって評価するかという問題もございますが、経済という観点から見ました場合には、一応我が国世界の大国になっておるという評価を受けておることは事実でございます。したがいまして、そうした観点からも我が国に対する国際社会からの期待なり要請なり、これは非常に大きなものがあると思います。  現在、世界には百六十カ国ばかりの国家がございます。それらの国とは我が国は極力平和外交というものを維持していかなければなりません。さような意味で、ではアメリカはどうか、あるいはECはどうか、こういうふうな比較論になりますと、いささか人員等々の陣容の面で欠くるところがあるのではなかろうか、私は率直にかように思います。しかし、現在といたしましては国の面においても行革だとか財政再建だとか、いろいろそういう問題があるので、ぜひとも少数精鋭で一人が五人前、十人前働くように頑張っていただきたい、こういうふうに激励しておるのが現段階の姿であります。
  82. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 確かに経済大国になっていることは統計の上からも認めざるを得ないのですが、問題はその経済大国としての内容がそれにふさわしいものになっているかどうかということであります。  そこで、私は在外公館というものについて大分昔からこれの充実を訴えてきたわけですが、しかし、さっぱり、さっぱりと言うとなんですが、余りいい方向に進んでいない。まだまだ大変おくれておる感がいたすわけであります。在外公館というのは、言ってみれば日本外国における玄関口だと思うのです。どこのうちでも玄関というのは非常にきれいに、そして金をかけてつくるものです。中身はそれほどよくなくとも玄関だけは立派につくってそのうちをよく見せるという、これは大体人間の共通した心がけじゃないかと思うのですが、そういう点で見てみますと、日本は金持ち国だと言われるけれども行ってみると屋根裏で事務をとったりしておるところもあるし、人の土地を借りて、あるいは建物を借りて間借りみたいな公館もあるし、こういうことではどうにもならないのじゃないか。つまり、相手が日本はなるほどすばらしい国だという印象を受けることはできないのじゃないかと思うのですよ。  外交というのはある意味ではそういう印象というものも非常に重要だと思うのです。我々の個人的なつき合いの中でも、余りひどい格好をしていると、もう頭からばかにしてかかったり、その人の言うことを信用しなかったりするわけです。そういう点で、やはり日本も今こそ在外公館充実を図る時期ではないか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 渡部さんから非常に温かいお言葉をちょうだいいたしまして、外務省といたしましても本当にうれしく存じます。確かにそういう面もございますから、今後努力をいたしたいと考えます。
  84. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、今、在外公館の人員的な状況について世界的なレベルはどの程度になっているのでしょうか。
  85. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 在外公館のレベルということでございますけれども外務省全体の定員のレベルをまずちょっと簡単に御説明させていただきますと、日本の場合は、これは昨年の九月の数字でございますが、四千六十名。これに対しまして、イタリアが四千九百六十六、イギリスが八千二百二十二、約二倍でございます。他方、在外公館だけに限りますと、その一つの比較でございますけれども我が国にあります在外の大使館の陣容というものとそれから我が国の出先と比較してみますと、これがまた相当に大きな開きがございます。  例えば、日本の在米大使館は定員九十名でございますけれどもアメリカは当地におきましては、まあいろいろな計算ございますけれども少なく見積もっても数百名おるということでございます。したがいまして、我が国在外公館定員というものがほかの先進国等、場合によっては第三世界の国と比較しまして定員的に弱体であるということは事実でございます。他方、在外公館定員それ自体は我が国の苦しい定員全体の中では比較的優遇と申しますか、着実に伸びてきておるということもまた事実でございます。しかしながら、その努力にかかわらず、全体といたしまして世界の水準から比べまして相当低位にあるということは間違いない事実であると思います。
  86. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これは特に、あなたは大臣ではないのだから、はっきりとこういう場所で外務省の実態を訴えて、どうすれば充実することができるかという観点でお答え願いたいと思うのですよ。遠慮したお答えでは、これは話にならぬ。  そこで、いろいろな資料を見てもわかるとおり、日本外交陣容というのは大体イタリー並みなんですね。これで世界一の金持ち国だなんて言ったら笑われるのじゃないか、私はそう思うのです。だから、それにふさわしい外交陣容というものを大臣は考える必要がある。  そこで、外務省というのはどういうふうにこれを見たらいいのかというと、私は、外務省というのは一つの日本全体の全省庁の外国的展開をする先端の、何といいますか前衛部隊だ、こういうふうに解釈しているのですよ。そのくらい大事なんです。これはもう科学技術の問題一つとっても外務省を経由していろいろ展開しなければならない。あるいは農産物にしてもそうだ。すべて外国との関係というものを外務省が取り仕切っているわけですから、しかもその内容というものは政治全般にわたるものです。あるいは産業全般にわたるものになるわけですから、そういう点ではその窓口がおたおたしておるようなことではどうにもならないと思いますよ。やはり一流国にふさわしい人員の配置をして、そしてむしろもっと積極的に日本から外国に働きかける。相手の国からの働きかけを待っているのではなくて、そういう積極的な外交を展開する必要があると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  87. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もうお説のとおりだと私は思うのです。やはり我が国外交充実、しかも今日の外交、内政は一体なりという観点に立ちました場合には、あらゆる内政問題は外交と関連なくしてあり得ないと言っても過言でないほど各省にまたがりまして外交問題がございます。さような意味合いにおきましても、やはりその充実ということを期すのが内においては私の最大の任務ではないか、さように心得まして、本年度も予算編成に際しましてはそうしたことを主張いたした次第でございます。かなり外務省には配慮ございました。  しかしながら、我が国は現在財政再建、行政改革等々推進中であり、また公務員の総定員法もある。かつて私は行管庁長官をいたしましたが、そのときにも今渡部委員が申されましたとおり、イタリア並みということがいいか悪いか別といたしまして、イタリアも立派な国家でございますが、人口からいくと我が国の方が多いし、また経済力も大きいだろう、そういう点からいきますと、さらにサミット参加国の中においても日本はやはりそれにふさわしい内容を整えるべきである、このように私も行管庁長官のときに申しまして、そして特別の配慮政府内においてやったという経験もございますが、今大変勇気づけられるお話を承りましたので、今後もその線に沿いまして最大の努力をいたしたい、かように考えます。
  88. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は何回か在外公館問題では質問したことがありますが、いつも外務大臣は非常に色のいい返事をするのですが、それが実体として伴っていないのですよ。  今も財政の問題が出ましたけれども、それじゃ一兆円を超す対外援助をやっておる、この金は日本が必要とするものをしないでやらなければならないほどの重大な性質を持っているのだろうか。私は、まず自分を整えてその上でその余力を対外援助なり発展途上国に対する技術援助等を含めた援助をやっていくべきではないか、こういうふうに思うのですよ。だから、今、日本が金がないというようなことはもう世界にも通じないと思うのです。  そこで、それじゃ本当に努力をしているだろうか。今、円高で大変騒いでいる。円高というのは喜ぶものと悲しむものと二通りあるようですが、私は、この円高を政府が本気になって利用、活用しようとしているだろうか、こういうふうに思いますよ。というのは、円高のときほど在外資産の充実を図るべきではないか。今在外公館で、借用をしておるものはどれだけあるのだ、そして日本の国有財産になっているものはどのくらいか、このことについてどういう把握をしておられるのか。これは細かい話ですから大臣でなくとも結構ですから、少し詳しく話してください。
  89. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 在外公館は、六十二年度で申し上げますと百七十一実館がございます。その実館のうち事務所で国有化しておりますものが四十七、これはパーセンテージで言いますと二七%でございます。それから公邸で国有化しておりますのが百五で、比率でいきますと六一%でございます。これが六十二年度におきます現状でございますけれども、近年の趨勢を申し上げますと、この国有化率は若干この七、八年をとりますと伸びておりますけれども、必ずしも大きく伸びているという現状ではございません。  国有化ということは、在外公館の秘密保持の面からも、あるいは能率の向上、体面の維持という意味から申しましても望ましいことと考えておりますので、漸次これを強化していきたいということが外務省予算の、三つの重点がございまして、第一が定員でございますが、第二がいわゆる足腰、在外公館外交実施体制強化、その中のまた一つのポイントでございます。
  90. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これは今大臣お聞きのとおり、こういう時代に国有化が遅々として進まないなどというのは経済を知らない証拠ですよ。私はいつも考えるのですが、円高、そして貿易摩擦といって騒いでいるけれども、本当に貿易摩擦をなくすならこういうのをどんどん買って、そして日本の金が外国に出ていくようにしなければだめでしょう。これは何も損するわけじゃない、その対価がそこに残っていくわけですから。だから、そういうことをきちっとやるとか、あるいは円高で高くなった部分についてどんどんと日本にない原料を輸入するとか、そうしてため込むことも考える必要があると思うのです。この円高は永久に続くわけじゃありませんからね。  そういう場合に、もっと積極的な考え方で在外公館のいわゆる財産づくりというのか、そういうものを図るべきではないか。これはまた、特に大蔵省が金を出し惜しみしているからこういうことになるのだろうと思いますが、大蔵省はひとつ、きょうは大臣はいないから、帰ったら大臣に十分きちっとこれは話していただきたいと思う。
  91. 永田俊一

    ○永田説明員 お答え申し上げます。  在外公館につきましては、先ほど来大臣、また官房長からもお答えいただきましたように、厳しい財政事情の中でございますけれども、着実に伸ばす努力をさせていただいております。  御案内のとおり、六十三年度、現在審議していただいております予算の中でも、在外公館施設費につきましては約六億四千万円、二二%強の伸びを確保しております。これは先ほどお話にありました円高ということがございましたが、ドルベースで見ますと四八%という高い伸びになっております。こういうことで努力しておりますが、先生今おっしゃられた点、帰りまして大臣にも御報告いたしたいと思います。
  92. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、人員の問題もそうですが、大臣はこの在外公館の人員の配置について、一流国として恥ずかしくないようにする一つの計画というものを持っているのでしょうか。例えば何年以内にはイギリス並みにするとか、そういう一つの計画のもとにこの人員の充実を図っていかないとなかなか国民を説得できないと思うのですよ。こういう実態を明らかにしながら国民の理解を得て、外交関係は特に他の省庁とは違うのだという認識を持たせる必要があると思うのですが、その点はいかがでしょう。
  93. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ただいま委員指摘の計画でございますけれども昭和五十四年に外務省定員を五千名に持っていくという定員拡充計画というものをつくりまして、そのもとに昭和五十四年以降毎年の予算におきましては、常に外務省予算の最重点事項ということで定員拡充というものを挙げております。その際の目標がただいま委員指摘のとおり、ほかの先進国並みと申しますか、の五千人ということでございました。現に昭和五十四年には三千四百名でございました定員が、六十三年度におきましては四千百四十八名というように着実に伸びてきておる。これは日本の全体の定員に関する状況を考えますれば、外務省に対してただいま委員指摘のような認識のもとに、この外務省定員というものは特に手厚くするという政府全体の意思があったと思いますのでそういうふうにふえてきてはおりますけれども、先ほど来御指摘のように、あるいはこちらの方からも御説明申し上げておりますように、いまだ十分ではないということが現状でございます。
  94. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 計画というのは実施するために意味があるので、計画は立てるところに意味があるわけじゃないのです。ところが、今外務省が立てておる計画というのは、もう前からそれは知っているのです、私もその計画書を見ていますから。ところが、さっぱり進まないのですよ。計画どおりになっていかないのですね。これでは話にならないので、特に宇野大臣は実力者なんだから、少しそういう点で大見え張って、外交陣容の充実にひとつ働いていただきたいと思います。  そこで、私はいつも外国に行くと思うのですが、大使や公使あるいは領事と言われる偉い人が、我々が行くと、荷物を背負ってくれたりいろいろして、本当にかわいそうになるのです。まるで代議士の赤帽みたいな仕事をやる。ああいう国の仕事をしておる人たちにはそういうことをさせないで、そんなだったら現地採用の職員がいっぱいいるんだから、そういう人たちにそっくり持たせた方がいいと私は思う。やはり役所の人は上の人にはぺこぺこするが下の人には非常に肩を怒らす傾向があるので、そうでなくて、私は逆にしていただきたい。代議士なんか来たって何もそういう義務はないのですから、そういうのは別に頼んでもいいのですよ。だから、そういう点ではもっと毅然として、そして重要なその国の情勢を説明したり、そういうところにいろいろ力を注いてもらいたいと思うのです。その点についてひとつ、これからは大臣はどういうふうにお考えですか。     〔主査退席、金子(原)主査代理着席〕
  95. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常に外交官尊重という立場からの御発言に対しまして、私は感謝申し上げます。  大公使は我が国代表して行っておられる方々でございますから、決して国会議員の諸公が皆が皆無理を言っているわけではございません。今渡部先生が申されたようなことでございましょうから、むしろそうしたことは、やはりサービスをしなくちゃならぬことはわかってはおりますが、大公使みずからがするべき仕事としなくてもよい仕事はきれいに分けたらよかろう、私もこう思いますから、そういうような指導は私からひとつ在外公館に、国会でこういうような話があった、このことを伝えようということははっきり伝えたいと思いますので、御理解賜りたいと思います。
  96. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、時間もそろそろ参りますので、最後にお伺いいたしますが、私は最近の日本外交のあり方について非常に心配しているのです。というのはどういうものか、日本外交というものが国民的な一つの裏づけというか、支持のもとに動いていないのではないか。それは具体的に言うと、例えばココムの問題あるいはガットの問題その他今アメリカからいろいろ要求されておる防衛分担金の問題、こういう中で一体何をもって日本アメリカの言うなりになっていかなくちゃならないのか、私は非常に不思議で仕方がないのです。これは、言いかえると日本の国はまだ独立国でない、そういう印象すら受けるわけです。そういう点で、最初は非常に高姿勢のように見えるけれども、ガット問題一つとってもじりじり向こうの言うなりになって、やがては今度国際的にも孤立していく。これはつまり国際感覚に問題があるのじゃないかと私は思うのですよ。日本人的な発想ではもう国際社会は通用しないと思うのです。  そして、私が見ていると実際問題非常に日本はずるいと思うのですよ。なるべくサボって長引かせて、そうして最後、結論は見えているにもかかわらずだらだら長引かせてそれを実行しようとしない。そして、げんこついただいて初めて騒いで、今度それにこたえていく、こういう外交姿勢というものは改めなければならない。やはり経済大国であればあるほど、それにふさわしい毅然とした独立国家として振る舞うべきだと思うのですよ。そういう点で、今の日本外交姿勢全般について私は非常に不満があるわけなんです。これからも、あなた、フィリピンのアメリカ軍の駐留費まで日本に分担させろとか、こんなことをやったら今にアメリカの軍艦全部日本につくらせろなんということにならないとも限らないくらい言いたいほうだい言っている。  ところが、こういうことを言われながら日本の国会はどういう役割を果たしているか。これは大臣に言う問題でない、国会に言う問題だけれども、しかし大臣にも責任がある。国会議員の一員であり、そして、なぜ政府はそういう場合に国会を召集して、国会で徹底的な議論をして、国会の議論というものを背景に外交の展開をしないのか、私はそう思うのです。アメリカはその辺上手ですよ。あの東芝の機械をぶち壊したりして、常に世界にああいう野蛮なことを広げてさえ議会がアメリカ外交をバックアップして、そして駆け引きの道具になっている。アメリカ外交というのはそのくらいしたたかなんです。そういう点で、ひとつ外務大臣の所信のほどをお聞かせ願いたいと思うのです。
  97. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 例えば今アメリカ議会の例が言われまして、そしてフィリピンの基地の借用料を日本に負担させろ、これは一議員が申したことで、詳細に前後の事情あるいは会議録を調べさせました。しかし、政府がそれに便乗して、そうだそうだと言っておる面はなかった。最近かくのごとく一人の国会議員がいろいろなことを日本に対しまして、言うならば発言をして関心を集めておるというのがアメリカの議会の一つの流れではないか。しかし、そのような方々ばかりではなくして、皆様方も出会われるでしょうし、私たちも多くの議員に出会いますが、多くの議員はやはり冷静に事態を見詰めながら、日米親善という大きな舞台というものを傷つけてはいけない、こういうふうに考えておられるし、また政府もそのような方針を堅持しておられます。  したがいまして、ガットとか、あるいはいろいろとアメリカ日本との間におきますココムの問題、何かアメリカから押しつけられて日本が追随しているような感じを受けられる面が多いということは、私は御指摘のとおりだろうと思いますし、またそのようなことがあってはならないと思いますから、決してさようではないのですが、しかし、見ていただくと、何かアメリカに言われて初めてはいはい言うておる、何だと国民はあるいはお考えの向きが多いかもしれません。私は出会うたびに、そうではないよ、日本はガットの面においても国際的立場を尊重して、また国内の農業等その他の産業を尊重しながらやっているんだ。特に私はアメリカの人には、日本経済成長は非常に急激に伸びたということを知っていただきたい。それは我々国民の努力によるところのものである、また各国の御協力によるところのものである。だから、体がぐっと大きくなったが、そのかわりにいろいろな面において洋服が小さくなっておる面があるかもしれぬから、その洋服の小さいところを、今農業の面においてはズボンをもうちょっと大きくしなくちゃいかぬな、あるいはそでを大きくしなくちゃいけないね、例えばそういうふうなことで、やはり国内的にも国内問題を無視してやるわけにいかないから、いろいろ苦労したんだから、この点も日米親善という面から見たならばおろそかに見てもらったら困るということを申し上げておるわけでございますが、この点、確かにもう少しく政府といたしましても外交に関しましては国民の御協力を仰げるような努力をしなくちゃいかぬ、その努力があって初めて国際的な私たちの努力も実るのである、かような気持ちで今後内政外交一体の外交を進めていきたい、かように存じております。
  98. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ちょうど時間が来ましたので、これで終わります。どうかひとつ今私が言ったことを今度は実行でこたえていただくようお願いして終わります。どうもありがとうございました。
  99. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 これにて渡部行雄君の質疑を終了いたします。  次に、薮仲義彦君。
  100. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は大臣に、最近私が相談を受けたことを通じて解決の方向で善処していただきたいということを質問したいと思うわけでございます。  先ほど来いろいろお話ございましたように、最近は国際化という言葉がいろいろなところ、いろいろな角度、また何か事があると国際化ということをすぐ表現として使われるわけでございますけれども、事ほどさように現在日本の置かれた立場というものは、もはや国際社会の中でひとりよがりとか孤立とか、そういうことはもう許されないのだ。国際社会のよき一員として、世界の国々との協調の中でしか日本は存在できない。これはもう周知の事実でございます。  こういうような時代の趨勢の中で、日本のあすを担う若い人といいますか、少年たちがやはりよりよき国際人に育ってほしい、これはだれしも願っている大事なことだと思うのでございます。その少年たちあるいは青年の中で、ある方は留学する、ある方はホームステイ、外国を体験しよう、あるいは観光で行こう、そして広く世界の見聞を広めて、その経験を通じて大きく立派な一人の人間として成長していく。このことは私は非常に重要なことであるし、これからますます盛んになってほしい、こう考えておるわけであります。  そこで、外務省のやっていらっしゃる国際社会の中の役割というのは、私は大変その労を多とする立場にあります。同じように一人の少年や一人の女のお子さんが向こうへホームステイで行った、その一人の小さな子供さんの国際親善に果たす役割も非常にまた大事じゃないかな、大臣も同じようなお気持ちで考えていらっしゃると私は思うのです。きょう私はこの中で、留学とかホームステイ、観光という問題がございますが、特にホームステイに問題を絞りまして、私の受けた相談の中から大臣に質問したいわけでございます。  最初に、最近のホームステイの推移について、これは運輸省と文部省がおやりになっていらっしゃると思いますので、留学とかホームステイを中心とした最近の増加といいますか、人数、わかれば数字だけ、運輸省、文部省、教えてください。
  101. 高野富夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  最近の大手旅行会社四社の実績、概数でございますが、六十一年が一万二千百人、六十二年が一万五千七百人でございます。
  102. 飯沢省三

    ○飯沢説明員 文部省で承知しております青少年を中心といたしますホームステイの数は、六十一年度の数で申しますと二千九百六十五人というふうな数でございます。
  103. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、今お話があったように、一万数千という数が行っているわけでございますが、きょうはこういう関係官庁しかおりませんので、この間に大臣が心にとどめておいて、やはり関心を持っていただきたいのはリクルートの関係でございます。リクルートの関係でやはり数万の子供たちがいろいろな形で海外へ行っております。これはきょう問題にはできませんので、それは後日また御検討いただきたいと思うのでございます。  先ほども申しましたように、私のところに電話があったわけです、このホームステイの問題で。どういう電話かと申しますと、ちょっと長くなりますけれども、事情を大臣に正確に御理解いただくためにお話をしたいと思うのでございますが、そのお母さんからなんです。ロスへ行っている娘に電話をしたんだけれども通じないということなんですね。なぜかといいますと、ちょうどお母さんが前日留守のときに娘さんから電話があった。そのときお母さんがいなかったものですから、お友達に、お母さんに電話をくれるように言ってと、こういうことでおったわけです。また電話しますよとは言っていたのですけれども、お母さんに電話ちょうだいという言づてがあったのですね。お母さんがどうしようかと思って困ったのですね。  ちょうどその日が土曜日だったものですから、旅行業者に連絡をしたのですけれども、担当者が連絡をとれなくて対応できない。心配で日本橋とか成田の営業所へも電話をしました。しかし事柄がうまく進まないということで、私の方へ関係者から電話があった。私も、土曜日の午後なものですから、御承知のように役所も会社の方もしかるべき方がいらっしゃらない。連絡のとりようがなくて、非常に私も心を痛めたのです。ところが翌日になりまして、どうやら連絡がとれましたということで電話があって、一件落着かなと思ったのです。その相談を受けた方が非常に海外に詳しい方で、よくお母さんと相談をするからあとは何とか善処しますということで、私は終わったと思っておったのですが、そうしたら、このお母さんとお父さんから手紙が来たわけです。  薮仲さん、この問題について親として思うことがあります。この問題はやはり将来のために考えてください。手紙ですので、ちよっと一部読みますけれども、非常に感情的な部分もございますから、ポイントだけちょっと読んで、あとは避けたいと思うのです。これは会社の名前や個人名が出てきますけれども、これは避けさせていただきます。  娘が○○社の主催のホームステイに参加いたしました。娘の方から連絡が参りまして、ホームステイ先の子供に日本円をとられそうになったり、また食事なども毎回食べる支度をしてもらえなくて大変困っておる。リーダーの名前が出ておりますが、その地区リーダーというのですか、その地域のリーダーの方にそのことを話して、ホームステイの変更をしてくださいとお願いしたというのです。そうしたら、勝手な行動をするなら強制送還する、こうこの女の子が言われたのですね。それで恐ろしくて申し出ることもできませんでした。中間は省きます。楽しかるべきアメリカの旅行が恐ろしい旅行となり、親としてまことに残念に思います。  その他いろいろ感情的な話がありますから、これはちょっと避けさせていただいて、もう一つ読みますと、やはりこれも会社の名前が出て、同じことなんですが、これは御両親です。  娘から国際電話があったが、私が不在のため話をすることができませんでした。私も英語が話せませんので、また娘から電話があることを待っていたのですが、心を決して電話をしてみました。これが別紙のように――旅行業者ですね。よこされた電話番号が先方では使われていない電話とのことです。夜十一時でしたが、東京の留学センターに電話をいたしますと、○○さんという方が出てくださいました。その旨を話し、こんな時間ですが、よこされた番号が使われてないという返事がある。日本でなく全く知らない国で娘はどうなっているのでしょうかと、矢も盾もたまらず電話をいたしました、この時間に済みませんということを言いました。ところが応対に出た○○さんは、やたら勝手に電話をされては困ります、この番号は調べて返事をいたしますが、三日ほどかかります、このような返事で、海外に娘を出した親の心情がわかっているようにも思われません等々、ここでるると感情的な話がありますが、これは私がドライに整理してみますとどういうことになるかといいますと、一つは、有名な旅行業者が出している、大臣も御承知のパンフレットがあるわけでございます。これは、有名な日本の各社が出しているホームステイのこういうパンフレットですね。こういう有名な旅行業者を信用してホームステイを経験させようと思いました。ところが、困ったときのバックアップといいますか、相談に乗ることが非常に適切を欠いておる。  これは双方に誤解も感情もあると思うのですけれども、言いたいことを先に一方的に聞いたとおりに言いますと、一番問題になったのはホストファミリーの件であります。相手の家が、そのお嬢さんが行ったうちが家具も余りなかったというのですね。お母さんと子供さんが二人だったのです。そのお嬢さんが行っている間九人のお友達が来て、娘はその部屋にいたのですけれども、ドアをあけるとほとんどごろ寝といいますか、これは余り具体的に言うとちょっと国際問題になりますから細かいことを避けますけれども、そういう状態でありました。食事も満足に用意のできる家庭でなかったし、いわゆるホームステイというのは本来ボランティアであるということですが、とてもボランティアで受け入れられるような御家庭の様子には思えませんでした。しかし心配なのは、娘が帰った後、その次の人が入ることになっております。それで心配して私に手紙をくれたわけですね。この説明の中では、土曜、日曜はそのホストファミリーが計画を立てていろいろ楽しい経験をさせてくれます、こういう説明をオリエンテーションで受けた。ところが実際はそういうことでは全くなくて、他のホストファミリーが気の毒に思って一緒に連れていってくれた、こういうことなんですね。  それで、もっと困ったのはホストファミリーについて、どういう紙かといいますと、こういう一枚の紙なんですよ。これなんですね。これが一枚来たっきりなんですよ。大臣、ちょっとごらんになれると思うのですが、この電話番号が五一〇七と五一七〇の間違いなんですね。ただ入れかわっただけですけれども、これでは絶対に通じないわけです。ホストファミリーについてこういう紙が一枚来るっきりなんですね。このホストファミリーが連絡を受けて、間違っていますよと、こういうファックスが来たわけです。これしか来ないのですね。こういうホストファミリーの一番知りたい家族構成とかいろいろなこと、あるいは行く前に、例えば文通してお互いに意思の疎通を交わそうかということになるのですけれども、そのホストファミリーについては、うちの場合は全く知らされておりません。娘が家族構成について知らされたのは、ロスからホストファミリーの家に行くバスの中で、あなたのお宅はこういう家ですよと、その地区リーダーの方から話を聞いたというのです。ですから、いかにせん非常にぐあいの悪い話なのです。しかも、募集したのはJALで募集して、ほかの航空会社を使ったり、これはよくあることですけれども、運賃の問題でこれもおもしろくないという感じになって、すべてが不愉快の連続になってしまうわけです。  こういう問題で、ホストファミリーの状況の中で、お母さんが言うのは、エイズであるとか麻薬であるとか最近いろいろ騒がれることについて、私はやはり心配です、こういう話なんですね。私、これは避けて通れないことだと思うのですが、やはり親御さんにしますと、こういう家族の構成とか家族に対するしっかりとした、何というのですかね、安心できる相手の受け入れ態勢であってほしいと思うのは当然かなと私は思うわけです。  私は、親御さんの言っていることだけが必ずしもすべて正しいとは決して思っておりませんで、うちの事務所の二人の秘書に、ちょっと東京駅の周辺の有名な旅行業者に行って、今どうなっているか聞いていらっしゃいと行かせたのです。これは大臣もどなたか行かせればおわかりのとおり、ことしの夏のプログラムは五月ごろにならないとできませんということです。一番問題であったホストファミリーについてどうなんですかと聞きましたらば、やはりここが一番ウイークポイントだと思うのですね。先方からの連絡を待つしかありません、当方から、こういう家庭であるとかこういう条件だとかいうことは今私の方としてはできないのです、こういうことなんですね。  私は、こういう実情の中で一番感じたことが幾つかあるわけです。それは、今申し上げましたように、相手側の受け入れ態勢がボランティアであるということでありますけれども、その選考については今のような状態でいいのかどうか。これから五万、十万とだんだんふえていって、今は事故が表立ってきませんけれども、事故があっては大変心配です。ですから私は、やはりこのホストファミリーの決定についてのことを少し考えていただかないと困るかなというのが一つです。  それから、海外に初めて行く子供ですから、やはりオリエンテーションというのは非常に大事だと思うのです。食生活も文化も全部違うと思うのですね。しかし、そういうことをきちんと教えてあげて、それに立ち向かっていくということも、あながち向こうだけの責任じゃなくてこっちにもあるのかな、子供自身の教育も必要かなと今思っているのですが、そのオリエンテーションの時間も、聞いてみましたら、出発前にわずか数時間で終わりなんですね。ですから、しっかりとした知識を持って行ったわけではない。  また本人の語学力、これについても、今の旅行業者がおやりになる場合にはもう無審査で通っていくわけですから、本人の語学力が災いしているのかもしれませんし、これはあながち相手にばかり責任は負わせられないかなと思うのですが、いずれにしても、それは一つ一つチェックをする機関がないわけです。  しかも、事故があったときに、今回のように二十数時間通じないというのは、電話番号が一番間違っているだけで、お父さん、お母さんにすれば、本当にアメリカに行っている友人に電話をして、何とか子供を引き取ってくれというような騒ぎになったのです。ですからこういうことを考えますと、私はこの問題を、まだ事故の起きないこの段階で、海外の最も正確な情報をつかんでいらっしゃる外務省のお立場から、今運輸省とか文部省のやっていらっしゃるそういうことにやはり関心を持っていただいて対応していただくことが非常に大事じゃないかなと思うのです。  ただ、ここで私もいろいろ一方的に言ったわけでございまして、文部省のお考えもあるでしょうし、運輸省の私に対する反論もあるかと思うのですが、それは、現に私は自分でそういう困ったという相談を受け、自分で旅行業者の実態を聞いて、これはやはり何とかしなければならないと思って言っているわけでございますから、文部省は教育的な見地から非常にしっかりやっていらっしゃるようですけれども、その辺を含めて文部省に特にお伺いしたいのは、今問題にしたホストファミリーの決定であるとかあるいは研修の内容であるとか、あるいは事故があったときのバックアップシステム、そういう点を含めて、ごく簡単に要点だけ文部省の言いたいことをちょっと言っていただけますか。続いて運輸省、何か御意見があればおっしゃってください。
  104. 飯沢省三

    ○飯沢説明員 ホームステイは、外国滞在中にその国の家庭に宿泊いたしましてその家庭生活を体験するものでございまして、世界の人々の相互理解と友好親善を深める上で極めて意義深いものであると考えております。ただし、ホームステイを成果のあるものにするためには、これに参加する者がホームステイの意義を十分理解するとともに、ホームステイのプログラムを提供するものが、その実施につきまして十分な管理運営体制を整えていくことが重要であるというふうに考えております。  文部省といたしましては、ホームステイを実施するような所管団体等に対しまして、適正な運営がなされるよう従前から指導してきておりますけれども、今後とも引き続き教育上有意義なホームステイが行われるように配意してまいりたいと思います。それで、文部省所管の法人で日本国際生活体験協会というものがございまして、これが専らホームステイを教育的な見地から行っておるものでございますが、この団体におきましては、相手国あるいは各国の生活体験協会の関係者が随時会合いたしまして、プログラムの実施計画等について協議を行い、また、国内でも関係者が慎重な検討を重ねてプログラムの運営実施に当たっております。  この実施上の留意点といたしまして、この団体の活動について申しますと、まず、参加者に対し事前にオリエンテーションを受けさせて、相手国の事情あるいはホストファミリーの一員としての心構えなどを学ばせております。それから、中高校生がホームステイをする場合には、教員をグループリーダーとして付き添わせ、滞在地において参加者の相談役として生活上のトラブルの解決等に当たらせております。また、緊急時に参加者の自宅に迅速かつ確実に連絡がとれる態勢を確保しております。これは休日とかいうことにかかわりなくそういう態勢をとっております。  また、ホストファミリーにつきましては、ホームステイの趣旨を理解し、これに賛同した家庭で、受け入れ前にオリエンテーションを必ず受けるというような条件もございます。ホストファミリーの決定に当たっては、参加者の希望をできる限り考慮することにしております。  また、プログラム終了後には参加者にアンケート調査を行い、あるいは参加者を交えての反省会などを開いて、今後のプログラムの改善に役立てております。そして、国際会議あるいは国内での会議等により検討を重ね、常によりよいプログラムの開発、提供に努めているところでございます。  以上、いずれも重要な事柄でございまして、引き続きこういう方向で私ども努力していきたいと思っております。
  105. 高野富夫

    ○高野説明員 受け入れ家庭の決定につきましては、旅行者の皆さんからホームステイ申込書というものが旅行会社の方に出されまして、その申込書を旅行会社を通じまして海外各国組織されていますホームステイ受け入れ団体に送付することになっています。その後、当該受け入れ団体によって受け入れ家庭が決定されるというふうに聞いておりまして、そういう情報につきまして、旅行会社におきましてはホームステイ先の家族の情報をオリエンテーションの場などで事前に旅行者の皆さんに提供している、こういう状況であるというふうに理解をいたしております。  先生御指摘のようなホームステイに関するいろいろな問題もございますけれども、こういう問題につきましては、私どもといたしましては旅行者の安全それから利便の観点から重要な問題であるというふうに認識しております。運輸省といたしましても、こういう問題防止の観点から、現地受け入れ団体の選定などにつきまして万全を期するように旅行会社を指導してまいりたいというふうに考えております。
  106. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、外務省では留学生に対するガイドブックをつくっていらっしゃるわけですね。私、これは拝見させていただいたのです。これは、留学という一つの大きな目的と相手もしっかりした形での場合もあるでしょうし、個人で行く場合もあるわけでございますが、その問題点を網羅していて、私はある意味では非常に適切だな、こう感じておるわけでございます。しかし、この本の最後の方にはアンケート調査もなさって、外務省としてホームステイ等についての実態については御承知だろうと思いますので、大臣ではなくて結構でございますから、外務省としてこういう海外でのホームステイに関してどういう認識と問題意識を持っていらっしゃるか、外務省の担当の立場からお話をいただきたいと思います。
  107. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、いわゆる国際化の大きな動きの中で若い人たちが海外でのいろいろな機会を求めて勉強していくというのは自然の趨勢でございまして、それとともに今御指摘のようないろいろなトラブルが起こっていることは私どもも胸を痛めているところでございます。新聞紙上で大きく取り上げられましたり、あるいは在外公館の方からこういうふうなケースがあったということを報告を受けておりまして、そのたびに私どもでできる限りの関係方面への指導、連絡はいたしているところでございます。従来からそういった誇大広告等のあったものにつきましても、これは改善することが必要だと思いますし、従来関係省庁と御相談の上でそのような指導もしていただいていることは今御報告のあったとおりでございます。  他方、実際にホームステイ等の形で海外に行かれる日本人の側の問題もあると思います。これは日本人の側の意識の問題と申しましょうか、割合と気楽な気分で華やかなパンフレットにつられて行ってしまうというようなことがございますので、そういった準備不足から来るトラブルを事前に防止したいということから、今先生のお手元にございますような資料につきましても、関係の旅行団体等関係の人たちの意見を広く求めまして、一般の啓発を図るための努力をしているわけでございます。  また、現地におきましてもホストファミリーについて的確な選択ができるような受け入れ団体のしっかりしたものがなくてはいけないと思いますし、それからさらに、トラブルが起こったときに現地でカウンセリングを受けられるような体制というものもこれから必要ではないかと考えておるわけでございます。これは今後、非常に大きな幅の広い問題でございますので、関係方面と御相談しながら私どもでできる限りの努力をしていきたいと考えております。
  108. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は運輸省にきちっとした形で要望しておきますので、これは今ここで、大臣のいないところでお答えするということは大変かもしれませんけれども、私の指摘についてはきちっと研究してほしいのです。  まず、土曜、日曜のプログラムですね。普通のウイークデーは英会話の学校に行くとか、ホームステイの場合いろいろなスケジュールを持っていらっしゃるのですが、土、日のプログラムについて過大な夢を持たせないように、土、日のプログラムあるいは平日のプログラムについても運輸省は一回きちっと調査をしていただきたい。どうなっているのか。今問題になっているのは、申しわけないのですけれども、観光業者、旅行業者のおやりになる部分が非常に大変かなという感じを持って、私はだめだというのじゃないですよ。何とかしてほしいということを言うのですけれども。  それから、オリエンテーションの内容ですね。これはやはり教育の見地あるいは国際社会としてどうあるべきかという意味から、専門の外務省とか文部省の意見というのはオリエンテーションの中に入れた方がいいのじゃないか。協議機関を設けた方がいいのじゃないか。  それから、ホストファミリーに対する責任を一体だれが持つのか。旅行業者が非常にあいまいです。この点は監督官庁としてどうするのか、はっきりしておいていただきたい。  それから、本人とホストファミリーとのコミュニケーションというのは事前に非常に重要だと私、思いますので、この辺のルールづくりをしていただきたい。  それから、本人の語学力をどうするか。これも全然テストしないで行くということについては私、非常に心配だと思うのです。  それから、現地のチームリーダーの人柄というのは非常に大事です。このチームリーダーの育成といいますか、そういうものについて旅行業者任せであるということはよくないと思います。やはりこれは国際人を育てる重要な観点ですし、相手側の国とも影響してきますから、この辺はきちんとしておく。  それから、トラブルが起きたときのバックアップ体制が、今回のように日曜日に連絡がつかない、土曜日は連絡がつかないということが絶対あってはいけない。どうせまた、ことし七月におやりになると思うのですが、少なくともことしから改善されたという結果をつくっていただきたいと思います。  きょうは、もう少し具体的にやりたいのですが、もう時間がございませんので、最後に、私は外務大臣にお願いでございますけれども、やはり子供は大切だと思うのです。この子供のときの経験が大きく花を咲かせますし、また、そのときの傷口がどれほど国際人としての芽を摘み取るかはかり知れないと思うのです。今もお話にありましたように、子供が自分の力で立ち向かっていくというのは人生大事かもしれません。しかし、何しろ行っている子供は中学生とかそういう小さな子供が行っているわけですから、その子を極力守れるところは守っていかなければならないのが我々の立場じゃないか、また、大臣にも守ってやっていただきたいと私は思うわけでございまして、このホームステイをよりよく育てるために、大臣の方で運輸省、文部省等の関係の機関とも御協議いただいて、何らかの形で旅行業者が責任を持つような、報告をするような体制を早急にことしの夏のときから、と言っては大変かもしれませんけれども、できることは今直ちに何とか善処していただいて改善をしていただきたい、これを大臣から御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  109. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常に貴重な御意見をいろいろ承りましてありがとうございます。まさに国際化の我が国といたしましては、本当にそういう問題に関しましても国自体が詳細な検討をし、また指導をし、そして効果あらしめるような体制をつくり上げていかなければなりません。  今文部省並びに運輸省の方々の御意見も承りましたから、もちろん外務省といたしましても放置できない問題も中にはあるかと思いますので、早速関係省と協議いたしまして、今薮仲委員が申されましたような方向で立派な成果を上げるように努力をいたしたいと思います。
  110. 薮仲義彦

    薮仲分科員 よろしくお願いします。終わります。
  111. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 これにて薮仲義彦君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  112. 大原亨

    大原(亨)分科員 ことしは世界人権宣言が発表されましてから四十周年ですね。一九四八年十二月十日、国連第三回総会で採択をされている。御承知のように、国連は、平和の問題と一緒に人権問題について非常に重視をして国連憲章その他が規定をされていることは御承知のとおりです。それを受けて日本の平和憲法も出てきたわけですから、そういう面においては人権問題というのは第二次大戦後の世界政治の中においては非常に重要な問題である。南アフリカの問題もありますが、これは世界平和にとっては非常に重要な課題である、こういうふうに私も信じておりますし、大臣も異議はないと私は思います。その点について所信を一言述べてもらいたいと思います。
  113. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり、第二次世界大戦というものは、人類にとりまして大変な一つの大きなショッキングな出来事でありましたが、終戦を迎えまして、勝者、敗者ともどもにやはり反省の大きい戦争であった、かように思います。そうしたことから、終戦後、間なしに人権宣言がなされたということは、私はやはり基本的人権というものを尊重すべきであるという一つの世界のコンセンサスがそこにでき上がったものとして高く評価しなければならないと思うのでございます。  その後、我が国も独立をいたしましたし、また晴れて国連加盟をいたしましたし、いろいろとこの四十三年の経緯を顧みますと、我々の努力もまた今日そうした面においては非常に実りつつあるのではなかろうか。第一、我が国の憲法にはやはり特筆大書すべき幾つかの特色がございますが、基本的人権の尊重ということも我が国の平和憲法の一つの大きな柱をなしております。そういうふうな面から考えましても、やはりこの四十三年間、特に世界には幾つものトラブルがございました。また、人権を無視するようなこともございました。現在も、今御指摘の南アにおきましてはそういう問題もあるわけでございます。  したがいまして、世界が一つの使命のもとに永久の平和を築くためには、やはりまず個々の尊厳というものをお互いが確立し合い、各国が信頼し合うということが大切だと思いますと、そのもとにおけるところの人権を宣言いたしましてよりの本年ちょうど四十周年というのは、今後の国際社会にとりましても我が国にとりましても極めて大切な記念すべき年である、こういう年を私たちみずから率先して大切にすることを国民諸公とともに誓わなければならない、それを広く世界にも普及しなくてはならぬ、こういうふうに私は考えます。     〔金子(原)主査代理退席、主査着席〕
  114. 大原亨

    大原(亨)分科員 私が順次質問いたします第一点は、人種差別撤廃条約の批准問題であります。  大臣からも所信の表明がございましたように、平和と人権は国連の一番大きな取り組むべきテーマであるという御所信、憲法もその精神でありますが、今国連の加盟国が、私のところのメモでは百五十九となっておりますが百六十ですか、間違ったら後で訂正してください。百五十九といたしますと、その四分の三に当たる百二十四の国が人種差別撤廃条約を批准しているわけですよね。それで、日本はこれをいまだに批准をしていない。ですから、世界人権宣言四十周年に当たって、大臣が述べられた所信に従って、この懸案の問題をぜひ大臣の手によって処理をしてもらいたいというふうに私は強く要望したいわけであります。  そこで、人種差別に対する認識の問題ですが、人種差別というのは一体どういう項目といいますか、どういう事由といいますか、そういうものが挙げられておるのですか、条約上。
  115. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 人種差別撤廃条約におきます人種差別と申しますのは、条約の中に、例えば人種的な優越あるいは増悪に基づく思想それから人種差別の扇動云々、こう書いてございますけれども、個々の具体的にそれでは人種差別というのをどう理解するかというのはなかなか難しい問題がございます。
  116. 大原亨

    大原(亨)分科員 第一条には、差別の事由として、人種、皮膚の色、カラー、門地、デセントと書いてある。それから、民族的または種族的出身による差別、こういうふうに書いてあるじゃないですかね。これらはすべて含む、こういう意味に条約を理解しておるのですが、間違いありませんね。
  117. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 御案内のように、この条約、まだ私ども日本として批准しておりません。そこで、この内容は、御案内のような非常に難しい問題点を持っておるわけでございます。したがいまして、私ども、この条約の英文によりましていろいろやっておりまして、その作業用のために私ども一つの日本語がございますけれども、これは訳語にいたしましても非常に難しい問題がございまして、まだ正式に私どもとして訳語を確定しておりません。  したがいまして、現在、先生が御発言いただきました部分でございますけれども、例えば人種、皮膚の色等々につきましては、私ども特に疑念はないわけでございますが、デセントという言葉の意味につきましては血統であるとかいろいろ意味がございます。どういった意味であるか、その訳語として何が適当であるかということは現在鋭意検討中でございます。
  118. 大原亨

    大原(亨)分科員 大臣、国連で採択しました人種差別撤廃条約の原文が英文である、日本文はないということについては私も承知をしております。そこで、これはかなり年数がたっているわけですし、百二十四カ国が批准をしているわけですから、最も多く批准をしている条約の一つなんですね。最多批准条約。ですから、それをいつも外務省のようなそういう答弁をするのですが、やはり英語を日本語に直して最も正確な翻訳を決めておいて、そして国会やその他内外の国民の意見が反映できるようにそういうオープンに民主的に条約について処理をする必要があるのではないか。  大臣が、まず批准する直接の前段階の問題として、そういう日本語に正確に翻訳、最も近い有権解釈的なそういう日本文を用意される必要があると私は思うのですよ。そういう点について、これは何年も同じことを言うわけですよ。破れたレコードのように同じことを言うわけですよ。そういうことでなしに、やはり大臣の決断によって、政治的な決断によって一歩一歩前進しなければならぬと思うのです。そういう条約の翻訳文、日本語に翻訳した文章をきちっと、最も近い将来、すぐできるのです、随分議論は詰まっているのですから。ぜひやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  119. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう既に御承知のとおり、この問題に関しましては我が国の憲法上の問題あるいは諸制度との問題の調整ということを急いでいるわけでございます。したがいまして、今までの外務省は、私聞き及ぶ限りにおきましては、翻訳をして出すということも大切なことでございましょうが、いよいよこれを締結をしよう、批准をしようという段階になって、このような趣旨でございますからというふうなことも今まであったので、だから今までそういう面でちょっとヘジテートしていたというような説明も受けておりますから、今の大原委員のお話を聞いておりますと、ひとつ翻訳から始めろということでございまして、広くこれをわからしめる、そうすると、既に我々としてもそこに入り込んでいくのかなどうなのかなという、あるいはそこら辺の外交的なこともございましょうし、私といたしましては、今唐突としてそういう御質問を受けますと、過去の経緯もございますから、十分検討します。
  120. 大原亨

    大原(亨)分科員 検討しますというのはどういうことなんですか。
  121. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今のところ、私が聞いておりますと、先ほど私みずから申しましたとおりに、憲法上基本的人権という中には、表現の自由とか結社の自由とか集会の自由とか、いっぱい憲法に書いてあるわけでございましょうから、それとこの条約締結し、批准した場合の処置、これとの関連性はどうであろうかという問題もございましょうし、したがいまして、今関係各省がいろいろ協議しておる最中でございますから、そのときに外務省だけで、外務省だから英語がうまいから、あるいはフランス語がうまいからひとつ翻訳しましょうということがいいのか悪いのか、これは私といたしましても、今初めて質問を受けたわけですから、ここで、ああ、やりましょうということになってしまいますと、いろいろ過去の経緯がございますから、何か苦しい言いわけをしているのじゃありません、私としては慎重に十二分に大原さんの御意見を踏まえながら今御答弁申し上げでおるわけですから、そこもひとつ御理解賜りたいと思います。
  122. 大原亨

    大原(亨)分科員 これは、同じことなんですよ、答弁は。大体、宇野さんという人は割合はっきり物を言う人だと私は思っておったのです。いいとか悪いとかいうことは別にしまして、はっきり物を言う人だ。それから何というか、非常にはっきり物を言う人であるということと、口数が多いと言ったらまた語弊があるが、非常によく発言される人です。そういう人が、なぜこんなことについて、はっきりしていることについて、つまり条約を批准しましたら国内法を整備しなければいかぬわけです。その国内法を整備するときに、国民の人権に関する権利義務関係等についてどういう影響があるか、国内法ではどういう法律が裏づけとなって批准をするのか、こういう議論が当然あると思って、そのことの質問をするだろうと思って警戒するわけですね。  しかしながら、条約内容というものはこうなんだ、有権解釈に基づく日本文の表現をきちっとしておいて、国内法ではこういう点を整備するんだということをきちっとしておいて、そして条約の批准の是非を、いつやるかということを含めて議論する。是非はもうないわけですから、百二十四カ国やっているのですから、最多批准の条約ですから。だから、それを日本がやらぬのはおかしいじゃないか。世界人権宣言についてはあなたは非常に高邁なはっきりした議論をされたわけですから、その点は私も全く同感であり、同意する。ですから、このことについてきちっと日本文で表現をして、そして国内法で議論すべき問題はこういう点であるという点を整理して、私はあなたが任期中の最も早い機会にそのことを発表してもらいたい。  それから、検討する。検討すると言ったらいいかげんなことだということでなしに、そういうふうにきちっとしてもらいたいのです、人権宣言の四十周年ですから。そういうことぐらいは、日本はいわゆる国連優先主義をとっている国として当然にやるべきではありませんか。いかがですか、賛成ですか。
  123. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 大原さんの今御質問の趣旨に関しましては、私は非常に結構だと思いますが、政府といたしましては、我が国は幾つもの法律もあり、また、憲法そのものも厳然として基本的人権に及ぶ面もたくさんございますから、それをやはり専門的な立場における解釈を得て、これなら大丈夫ですというふうな整備の上でお答えするのが至当ではないかと思いますから、その点は私の個人的見解だけですべてが決定されるものではない。私といたしましても、責任あるこういう立場におりますと、やはり国際的な約束事でもあり、国際的にそれを果たしていかなければならぬということを考えますと、現在関係省庁が鋭意努力しておるということについては認めざるを得ないというふうに思います。  そういうふうに任期中にやれという御期待をしていただくことに対しましては、私は本当にありがたい、こう思いますけれども、やはり国際的な条約を結ぶ場合にはそれだけの準備も必要ではないか、こういうふうに思います。そういうことでひとつ御理解のほどお願いします。
  124. 大原亨

    大原(亨)分科員 こういう質疑応答を繰り返していますと三十分はすぐなくなってしまうのです。あなたの答弁はそれをねらってやっているんじゃないでしょう。そうじゃないでしょう。あなたはツーと言えばカーと言う非常に敏感な人なんですよ。こんなのは常識ですよ。特に外務大臣としては政治的な決断が要るのですから。  例えば第一条にあるディセントというのは門地というふうに普通訳するわけです。学者なんかモデルになる解釈で訳しているのですよ。こういうのはいろんな言い回しをしましても、そう変わるものじゃないですよ、英語の原文があるのですから。ですから、人種とか皮膚の色なんかについてはもちろん疑義はない、問題は門地であろうと私は思うのですよ。非常に難しい問題ですよ。ただし、この人種差別という条約の名前の人種というのは、あらゆる人間差別を含むんだという趣旨を繰り返してこの条約は書いておるのですよ。そうでしょう。あなた、そうでしょう。
  125. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 あらゆる人種差別を撤廃するということでございます。
  126. 大原亨

    大原(亨)分科員 だから、これはあらゆる差別ですから、すべての人間に対する差別を含んでいるのですよ。ここへ言葉として例示してあるとおりなんです。出身も入っておるし、種族的というのも入っておる。人種というふうなのを私は字引で引きましたけれども、それは物すごいですよ。しかし人種というのは、詰めてみると、やはり一つの説は、白人とか黒人とか黄色人種とか、そのくらいに詰まってきて、それでいろいろなものがミックスして、そういう人種的にはいろいろな問題があるということの一つの議論を踏まえても難しい議論です。  しかし、例えば門地ということ、出身ということ、差別の理由として挙げてある問題は、これは国内だけの人権でなしに国際的な人権にも通ずる国連の概念なんですから、そのことについて我々が人権尊重の措置条約批准で国際的に歩調をそろえてとっていく、国内法を整備する、そして国連の平和と人権を貫いていくような、そういう普遍的な国際的な環境をつくっていくということなんですよ。ですから、百二十四カ国がやっていて、先進国は全部やっているのに、日本だけが批准しないというのはおかしいじゃないかと思うのです。  全く外務省の官僚や関係省の官僚が不勉強なのか、あるいはサボってやろうという悪意を持っているのか、そういうこと以外には考えられないわけですよ。ですから、英文が出ているのですから、日本文で明確にしながら、その内容について明らかにした上で、国民的な議論の上に一定の結論を出す、こういうふうにしてもらいたい、こういうことなんですね。大臣、わかりましたか。あなたは非常に敏感な人ですよ。口数の多い人だというのは口が滑ったけれども、あなたは非常に口数が多い人だけれども、このことについては非常に少ないですね。いかがです、はっきり言ってください。
  127. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 せっかくの御熱意を持った御質問でございますから、私もひとつ、現在関係各省がという言葉は聞いておりますが、ではどういうところに問題があるかということに関しまして、関係各省の意見を私自身がひとつ聞いてみて、それからいろいろと判断したいと思いますから、ひとつそこまでお待ちください。
  128. 大原亨

    大原(亨)分科員 それじゃ、これだけで終わってもいけませんから、今までの質疑応答を踏まえて、大臣としてこれを前向きに前進させるのには、条約を批准するのにはどうしたらいいか。最近、もう同じことを言っているのですから、それをやってもらわないと、決断してもらわないと、また外務大臣がかわるわけですよ。今度七月には外務大臣はかわられないのでしょう。そうすると、秋の臨時国会が済んでからかわるのですか。それとも同時選挙が済んでからかわるのですか。同時選挙をやるのですか、やらないのですか。僕らの三十三年の同期生ですが、金丸信君なんかだってほうくらほうくらいろいろなことを言っている。あれはねらいが全然別だから、何を言っているのかというのは大体わかりますよ。  しかし、こういう問題については、一つの大臣のときに、次の大臣になるまでにけじめをつけなければいかぬ。前進しないですよ。また鋭敏でない外務大臣でも出てきましたら、全然前へ進まぬ。鋭敏な大臣のときにやらなければいかぬ。あなたの任期中の最も早い機会に、いつというふうに期限は切りませんけれども質疑応答ができるというときにこの問題について結論を出してもらいたい。わかりましたか。
  129. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今申しましたとおり、私みずからがひとつ関係省庁の意見を聞き、今日の検討結果、あるいは中間報告になるかもしれませんが、それを聞いて判断をしてみたい、こういうふうに申し上げておりますから……。
  130. 大原亨

    大原(亨)分科員 私は、そういう意味で、質問申し上げた点については的確な結論が出るということを、これは言葉の意味ですから、批准している条約を正しく表理することですから、これはぜひやってもらいたいということです。  それから、この条約は戦争の宣伝と差別の扇動という点を非常に重視しているわけです。国連では、戦争の宣伝も禁止しているのですね、差別の扇動もいけない、こういうふうに言っているのです。その裏には啓発とかいろいろなことがあるわけです。それから差別の内容については、直接的な差別と一緒に間接的な差別、差別の結果として生まれる差別、生活とか雇用とか職業、そういうものも含まれておるわけですね。ですから、そういうことを含めて国内法が整備されなければならぬということになります。  そうすると、日本の国内において人種差別撤廃条約関係をして国内法で議論になる法律の項目、その項目について、非常に博識の外務大臣は恐らくこれとこれとこれだ、こういうふうにぴんと頭へくると思いますが、どういうものを指すか御承知ですか。非常に失礼な質問ですが。
  131. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 この条約は、その内容からいきまして多岐にわたっております。したがいまして、私どもが協議をしております省庁は非常に広範にわたっておりまして、もうほとんどの省庁と言ってもいいくらいでございます。もちろんその中には法務省等が含まれております。
  132. 大原亨

    大原(亨)分科員 私が言っているのは項目なんですよ。例えばアイヌの問題。それから、歴史的に特別の関係がある外国人の、例えば在日朝鮮人・韓国人の問題、これもあるわけです。それから、例えば門地、出身ということからいえば部落差別があるわけです。こういう問題をそれぞれの国々が国内で処理しながら、国際的に世界人権宣言の意図しているところや人種差別撤廃条約の意図しているところを貫徹する。こういう意味において、人種差別撤廃条約というのは非常に広い範囲で目配りをした、言うなれば差別撤廃の基本条約的な問題なんですね。ですから、私が挙げたような法律が国内法において問題となる。こういう点について、私はそう思うのですが、大臣はいかがですか。
  133. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 委員が今御指摘の幾つかの問題につきましては、まさに人種差別をどう理解するかという問題でございまして、個々の点につきましては今後さらに検討せざるを得ないということでございます。
  134. 大原亨

    大原(亨)分科員 その話は今まで大臣も、本会議でも委員会でもどこでもそうですが、人種差別撤廃条約は批准するのですかと言うたら、批准します、批准する方針です、政府はこう言うのです。いつやりますかと言ったら今のような答弁をするわけです。判で押したような答弁をする。全然進んでおらないわけです。大体、政府が悪いのか、大臣が悪いのか、あるいは事務当局が不勉強なのか、どっちかなんです。どっちも責任のなすり合いをしているのじゃないかということも言われるわけです。これはおのずから、各国が人種差別撤廃条約を批准するに当たって、あるいは批准した後において、国内法との関係条約解釈をそれぞれ具体化している場合に、みんな国内法ではそういう問題をやっているわけです。ですから日本も、今例えば部落問題で言うならば御承知のとおり、財特法をやっているわけです。それからアイヌの問題については、非常によくしゃべる、外務大臣よりももっとよくしゃべるかもしらぬが、中曽根総理大臣が誤った発言をしたことがあるでしょう。アイヌの問題で口を滑らせて間違ったことを言いましたね。  時間が来たらしいですけれども、私はこの問題については、百二十四カ国がやっているのですから、世界人権宣言の四十周年ですし、日本は平和の国ですから、人権の国としてぜひこの条約を批准して、そして国内法についてはこうあるべきだということを明確にしてもらいたい。これを重ねて強調をして、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  135. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど来、非常に御熱心な質問を拝聴しました。そして私もその御質問に対しまして、私みずからが勉強いたしますからその上で判断いたします、かように答えました。その線で鋭意努力いたします。
  136. 大原亨

    大原(亨)分科員 終わります。
  137. 池田行彦

    池田主査 これにて大原亨君の質疑は終了いたしました。  次に、小川新一郎君。
  138. 小川新一郎

    小川(新)分科員 私は、極めて短時間の三十分の中で、韓国問題の中では竹島問題、中国問題では尖閣列島問題、重要なこの二つに絞ってお尋ねをするわけでございますが、我が党の井上和久君が先日国会用語の問題で、わかりにくい、やるのかやらないのかわからないというような批判の質問をなさっておりますから、どうか答弁も明確、前向きにひとつお願いしたいと思います。  まず第一点は、盧泰愚新大統領の就任祝賀式に竹下総理もお祝いに駆けつけ、大臣も行かれたと思いますが、そこで新政権はもちろん、これは新大統領もおっしゃっておりますように、私は平凡な人であり、平凡な中に国民との対話の政治を進めていくやの意味のお話をテレビでお聞きいたしました。そういう隣の近くて近い国にするために、近くて遠い国であった韓国をさらに与野党ともに密接なる協力のもとでお互いの繁栄のために進んでいかなければなりません。  そこで大臣にお尋ねしますが、大臣は最近また韓国へ行かれるということを聞いておりますが、韓国外務大臣との定期的な外相会議、これらを設けられて新しい問題点、これはいろいろありますが、北との問題また例のオリンピックの安全の問題、一体どういうふうに我が国協力していくかという点でございます。  そこで一点は、もう大臣にこんなことを言うのはまことに失礼なんですが、韓国経済というものは今あるところ行き詰まりに来ているんだという極言をする方もいらっしゃいます。猛烈な勢いでこの二、三年、四、五年の間にNICSとして追い上げて我が国を脅威に、経済的な面ですが脅威にさらすほど対米問題等で今覇を競っておる韓国でございますが、対米貿易摩擦、国内の賃金問題、さらにウォンの再切り上げ、こういう問題が今韓国としても大きな問題になって浮かび上がってきました。  そこで、そういった経済問題の背景の中に、私たちは経済問題を通じ、また外交問題を通じ本当に新大統領、新政権と話し合いをしていかなければならないということで、外相会議テーマとしてはいろいろおありでしょうが、一体どういうことをおやりになり、いつ行かれ、いつ外相会議をやられ、どのようなことをテーマになさるのでしょうか。
  139. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間、竹下総理と盧泰愚大統領との最初の会談がございましたが、これは御承知のとおりの内容でございまして、今小川委員が申されました問題等に関しましては、ひとつ早く外相会談を開いてそこで協議しましょうということでお別れになっております。だから私も、その趣旨に沿って私が今度は敬意を表して韓国を訪問して外相会談を開きたい、かように思っておりますが、国会開会中でもございますから、やはり適切な機会をとるためには十二分な準備も、また国会の御了解も得たい、かように思っております。  それで、その内容に関してでございますが、そういうようなことでございますから、どういうふうに話をその中で盛り込んでいくかということはまだ未定でございますが、しかし言い得ることは、盧泰愚大統領みずからが、私は普通の人間である、そういう政治をしたいのだ、かばんも自分で持ちたいのだ、そこまでおっしゃっておる。そういう新しい体制の民主主義的初めての選挙によって選ばれた大統領である。これは私たちは高く評価をしなければなりません。したがいまして、新しい政権といたしましては新しい方針がございましょうから、十二分にそのことは伺いたい、かように思っておる次第でございます、  特にオリンピックという国際的な大行事があるわけで、これはやはり成功してもらわなくちゃいけません。成功するというのは何も私たちが援助するまでもなく、韓国が独力で会場をつくり、また大いに英気を養って国民全体がひとつ成功せしめたいと頑張っていらっしゃるわけですから、言うならば過般来のテロ行為等々が万一我が国において起こっても大変だ、我が国からうかつな旅券発行がそれにつながっちゃいけない、そういうようなことも私この間から国会で申し上げておるわけでございますので、そうしたテロ行為の防止、これに関しましては当然あらゆる体制を組み込んでいかなくちゃならないと思います。  今のところは、そういうことは当然お話の中に入ってくるだろうと思いますが、ではそのほかもっと経済的に何かあるか、そのほか何かあるかというような問題に関しましては、やはり時期が来るまで十二分に検討して、そして相手方の内容もございましょうから打ち合わせもしたい、かように思っておる次第でございます。
  140. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そうすると、国会開会中、重要法案が上がるまでちょっとお留守にできない。ということは、三月いっぱい、四月いっぱい、これはだめだ、韓国へ行ってそういった定期外相会議等は。しかしオリンピックはもう迫っておりますからその協力体制、いろいろな問題等また差し迫った問題がございます。そうすると四、五、五月までは行かれないのですか。
  141. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そういう意味ではございません。やはり国会開会中ですから許可を得なくちゃならないでございましょうが、極力国会審議に支障を来さないという日時を選んで行くべきではなかろうか、かように思っておりますから、決して五月まで行けないというような話ではございません。
  142. 小川新一郎

    小川(新)分科員 こういうことは隣へ行くといっても隣の小川君の家へ行くわけではございませんので、一国の、また代表して行かれるわけですから、それなりの予定等も組まなければなりませんし、もう少しはっきりお答えいただけませんか。
  143. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理大臣との間におきましても、極力早い間に行いましょうということでございますから、先方の御都合もございましょうし、やはり私たちがそういう会談を開くときには両国がいつ幾日開かれるということを同じ日に同じ時間に申し上げるのが一つの礼儀じゃないか、こう思いますので、私から具体的な日時は申し上げられない、こういうふうにお考え賜ればいいんじゃないかと思います。
  144. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そこで、竹下総理またベーカー米財務長官韓国訪問に対して、学生たちの集会及び民衆の集会の中で、アメリカ日本は軍事政権への支援を中止せよといったアピールが出されておりますが、これは事実であるかどうかということですが、我々は軍事政権として盧泰愚さんを認めているわけでもない、また軍事的援助は憲法上できるわけがない。ところが韓国の学生諸君及びそういった一部民衆の中にそういう認識、アメリカ日本アメリカは確かに在韓米軍の在留、そういった軍事援助というものを行っていることは我々もよく知っておりますが、安保条約の拡大解釈の中でもそういった米・日・韓という複合体における安保の変質というものは考えられないわけでございますから、韓国の学生諸君や一部民衆の方々がそのような理解をするのであれば、これは甚だ両国にとって不幸な出来事であり、新しい総理のもと、新しい大統領のもと、また外務大臣も新しくなられて、そういった意味でこれは明快にしておかなければなりません。この席をおかりしてはっきりお答えをしておいた方がよろしいんじゃないかと思います。
  145. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 東南アジア各地におきましては、過去の戦争というものを体験をされ、また体験をしておらなくてもその戦争の忌まわしさというものをいろいろなことから知っておられる方々が多いわけであります。だから少なくともあらゆる機会に、日本経済大国と言われるが軍事大国にはなりませんということをはっきり申し上げることが必要だろう。竹下総理もそういうことでASEANでそのことを言明されまして、フィリピンの新聞にはそのことの方が一番大きく載ったのです。このことを考えましても、今小川さんがおっしゃることは大切なことだ。特に韓国におきましてはやはりかつて我々も反省しなければならない両国間の歴史があるわけでございますから、したがいまして、そういう面におきましても日本は軍事大国にはならないのである。ましてや今日の日本の憲法あるいはまたそのほか諸制度のもとにおきましても、我が国アメリカとは日米安保条約をもってその体制下にいるが、我が国には個別的自衛権しかないのであって、言われるがごとき集団的自衛権というものは禁止されておるのである、こういうこともあらゆる機会に申し上げて、そしてやはり日本の正しい理解を深めてもらうということが必要なことだと存じます。
  146. 小川新一郎

    小川(新)分科員 これは何も自民党とか公明党とかという問題ではありませんので、国家国民の立場を明確にするのは時の為政者、責任者のこれは当然の義務であり責任であると思いますので、あえてこの問題を出したわけでございますが、また韓国経済が今のような成長しているときはよろしいのですが、またその陰に、どこの経済、どこの一家、個人においても陰というものはございます。そのときには韓国の行き場というものは対中、対ソ経済というものに踏み切らざるを得ないだろう。またそっちの方に現実にはもうその傾向が見えております。そうなったとき私どもは、対中、対ソの経済発展の方向に韓国が行ったとき、日本としてはこれを支援する御決意ですか。
  147. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在のところ韓国の新政権は、社会主義国に対しましても大きく門戸を開かなくちゃならぬ、そのことはもう既に十年前から申されておるわけでございますけれども、新しい大統領もそのことに特に力点を置いておられます。現在直接的な経済交流あるいは経済協力というものは私は寡聞にして知らないわけでございますが、とにかく中国に対しましてもソ連に対しましても新しい道をつけたい、この意欲はもう満々たるものがあるということは理解しておかなくちゃなりません。  ただ現在ただいま、オリンピックに両国が参加されたから極めて劇的な光景がその前後に展開されるというふうな情勢でもまだないかもしれないと私たちは考えておりますが、しかしいずれにいたしましても、お互いにこれからの貿易経済というものはやはり自由貿易なら自由貿易ということを一つの大きな柱として、お互いが相互依存、そうしたもとにおきまして発展しなくちゃなりませんから、もし韓国が中国とあるいはソ連とというような、まだそういう大きな段階にはなっておりませんので何事も申し上げるべきことはないと私は思いますけれども、やはり日本といたしましては、今日世界の中の日本という立場を十二分に理解しながらすべての面に対処しなければならない、かように考えております。
  148. 小川新一郎

    小川(新)分科員 そこで、外務大臣の腹中をひとつお聞かせいただきたいことは、盧泰愚新大統領はテレビ公開放送で、私は北との対話、平和のためにはいかなるところ、いかなるとき、いかなる場所においても、出向いてでもこの解決をするために努力することを惜しまない、こう言っておりますね。そしてまた、オリンピックというものの門戸もあけておくんだ、北の方々もどうぞお入りください、こういう姿勢を新任大統領のテレビ放送で私は拝見いたしました。  そこで、今韓国は中国とは正式な国交がございませんですね。そこで、これはもう前からお話しになっております南北の朝鮮半島における恒久的平和のための話し合いを、日本が何もしゃしゃり出て東京でそのとりなしの会談をやれとかというようなおこがましいことを言えというのではありませんが、韓国は今中国との橋渡しを非常に求めております。こういう場合に日本のとるべき態度は、外務大臣としては北京あたりでこの話し合いの場のおぜん立てを、もし要請があり、またそういう機運が熟し、今しているかどうかそれは私の判断ではわかりませんが、そういうことがあれば鋭意努力をして、大臣としての御見識の中からの御行動をするのではないかと私は期待しているのですが、私の間違いでしょうか。
  149. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一番近い国々の話でございます。当然日本が無関心であってよいはずはない、かように私たちは考えております。だからオリンピックに関しましても、中国へ何人かの前内閣の閣僚もお行きにたったときには常に、オリンピックに参加してくださいよということを韓国の立場で日本は申しておったということもございますから、したがいまして、いわゆる韓中橋渡しということに関しましても、我々は心にとめておかなくちゃならない。今すぐやりますよとかやらしてくださいというのじゃなくして、やはりこういう問題に関しましては両国からこれに対してどういうような期待が日本に寄せられておるのか、今のところはまだその点に関しましては、私自身といたしましても、そういう気持ちはございましても両国からそういう頼まれた立場でもございません。しかしながら無関心ではない。しかしその前にやはり南北朝鮮が第一義的に仲よくなってもらうという問題は南北自体のお話であって、そうしたことが中国にも重大な影響を与えるのじゃないかな、今のところの判断としてはそういう判断をしておるわけでございます。
  150. 小川新一郎

    小川(新)分科員 全斗煥大統領のときにはラングーン事件、大韓航空機事件、全斗煥政権のときのいろいろな感情のしこり等、これはどこにもありますね。ところが今新しく盧泰愚大統領になって、そういう開かれた、私は国民とともに行くというそのアプローチの中で、日本がただ腕をこまねいていていいんだろうかという危惧。今大臣おっしゃったように二人でやればいいじゃないか、これは一番いいことなんですが、できないから今日大騒ぎになっているのであって、できないような事情がいっぱいあるわけです。それをとりなすのは時の氏神であり、いろいろな面の配慮をしなければならない兄貴分としての日本の立場じゃなかろうかと私思うから質問しているわけでございます。  そこで現実には竹島問題が浮かんでくるのですが、竹島は日本の固有の領土である。それから実効的支配をしているのは尖閣列島である。私はこの問題を、どういうわけか知りませんが、十年来この分科会でずっと続けてきておりまして、これが私の年中行事になっているのでございますが、竹島問題をお尋ねするわけはなぜかというと、幾ら親しくても言うべきことを言う、間違ったことは厳しく指摘する、これが外交の第一の考え方であると私は思っております。  そこで、竹島も尖閣列島も我が国の固有の領土であると従来から答弁されてきておりますが、竹島と尖閣列島との扱い方の違い、これが一点です。これは、今言った実効的支配等々あるでしょう。  それから尖閣列島は、現にこれを実効的支配している領有権についていずれの国とも話し合うべき筋合いでないと我々は思っておりますが、竹島は日本が実効的支配をしていないんだから、これは定期外相会議とか新しい大統領のもとで、新政権のもとで当然これは議題にならなければならない問題ですね。これが二点目なんです。  そこで、竹島を韓国が不法占拠しているということは、韓国が国際的不法行為を行っており、加害者が韓国であって被害者が日本ということかという質問が第三点に出てくるわけです。これはそう極端に、あなた違法だよと今こういうときに大臣としては言いにくいでしょうけれども、これは明確にならなきゃならぬ問題ですね。  そこで、なぜそういうことを私が言いますかといいますと、竹島の男島に韓国の一家が今度居住する計画を立てている。居住計画。これは慶尚北道庁が一億ウォンの支出金まで出してこれを奨励しているということは一体どういうことなんだろうか。また違うもう一つの島、女島の方では韓国の軍隊が駐留している。日本はこの問題については今まで余り言わなかったが、一番はっきり答えてくださったのは園田外務大臣だったと思うのです。明確な御答弁をしていただいたのですが、その後それっきりになってお亡くなりになりましたし、絶えておりますが、今申し上げました四点について順次お答えいただきたい。
  151. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 まず大臣の御答弁の前に事実関係について御説明を申し上げます。  第一点、委員指摘のとおり竹島もそれから尖閣諸島も、ともに歴史的事実に照らしましても国際法上も我が国固有の領土である、この点は同様である。竹島につきましては国が実効的支配をしていないのに比して、尖閣諸島は我が国の実効的支配が及んでおります。委員の御指摘のとおりでございます。したがいまして、竹島につきましては随時外相会談等の機会があります際に我が方の立場を主張しておりますし、定期的に海上保安庁の巡視艇によって竹島の状況を視察をいたしまして、それに基づいて、ただいま委員指摘のとおりいろいろな構築物等が置かれていることに対しては注意を喚起し抗議をするという態度をとって対処をいたしております。  それから不法の占拠ではないかという御指摘はまさにそのとおりでございまして、不法に占拠をされておるという状況であるということでございます。  それから一月の中旬に韓国で報道されましたけれども、韓国の漁民の一家が竹島に一億ウォンの補助金を得て移住をするという計画が報道されました。それに対しましては直ちに我が方在ソウルの大使館から、この事実関係の確認と、これに対してもし事実であれば我が国の竹島に対してとっております立場にかんがみまして極めて遺憾なことであるという申し入れを行いました。それに対して韓国からは、韓国側が従来竹島問題についてとっております立場の表明があったという経緯がございます。  以上、事実関係の御説明をいたしました。
  152. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 事実関係はお聞きのとおりでございますが、竹島並びに尖閣列島ともに我が国固有の領土である、このことは従来のとおりでございます。  しかし、竹島に関しましては韓国が不法占拠しておることは甚だ遺憾である、こういうことで機会あるごとに我が国はそのことを韓国に主張しておるわけでございますから、この点はさながら北方領土も固有の領土であると常に主張しておるがごとく、我々といたしましても常に機会を得て主張していかなければならない問題である、こういうふうに心得ております。もちろんこの解決は平和的な解決を我々としては志すべきである、かように思っております。  尖閣列島は今申しましたようなことでございますから、したがいまして中国との間においてそういう問題はないのである、こういうふうに理解していいのじゃないかと思っております。
  153. 小川新一郎

    小川(新)分科員 それで、この竹島問題はもう毎回同じ御答弁をいただいているんですよ。大臣みずからお話しになった例がないんですよ。事務当局がお話しになっていることは御報告があるのですが、少なくとも領土問題というのは昔であれば戦争状態を惹起させるような原因の一因にもなるわけです。本来だったら国連に提訴してでもお互いに明確な黒白をつけなきゃならぬ問題ですが、そこまでやることが果たして大人げない問題なのか。いろいろな日韓の問題でそういうことはできない。しかし、新大統領が御誕生になって、こういうことは、新しい大統領が出ているという礼儀上、合わざわざ波風立つような問題を、小川君、おれにやらせるというのかというようなお顔はしておりませんからあえて言うのですが、それではこの問題を、先ほど私が言ったように、外交というものは、いいものはいい、悪いものは悪いと、自分のところの悪いところも改めなきゃなりませんね。これが要するに法治国家であり、また、自由主義、民主主義の国々の当然果たすべき国際的約定であり信義なんです。  でありますから、大臣、これは前の外務大臣がやらなかったからいかぬとかなんとか私申しませんから、どうか、先ほどから出ておりますテーマの中で、竹島問題については、我が国固有の領土である、これを韓国軍が不法占拠している、また新しい移住者を移住させようとしている、こういうことについてはまことに遺憾であるということのみでなく、速やかにその結果を出してもらいたいことをお約束願いたいのですが、いかがでしょうか。
  154. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 冒頭に申し上げましたごとくに、外務大臣会談とかあるいは――私が大統領にお目にかかるのは、これは会談じゃなくてむしろ表敬という部類に属すると思います。したがいまして、外務大臣会談というときには、両国がどういうテーマで議論をしてもらうかということをやるわけでございますから、やはりそうした両国の協議にまってからの話である、こういうふうにお考え賜りたいと思います。  しかし、今私が申し上げましたことはあらゆる機会に、常に日本政府としては申し上げておる、その点だけは御理解賜りたいと思います。
  155. 小川新一郎

    小川(新)分科員 どうかひとつ、そういった儀礼を欠いてまでやれと私は申しませんが、表敬訪問であり、かつ、そこに実質的な事務的な仕事もなさらなければならないのですから、いつまでもいつまでも儀礼的あいさつで、よきかな、よきかなじゃこれは困るので、ひとつお願いしたいと思います。  そこで、尖閣列島については、南小島、北小島、魚釣島、久場島、この久場島は今防衛庁の管理下に置かれ、しかもこれは米軍の射爆場になっておりますが、いつ、こうなったのですか。それは米軍から返還になったわけですね。ところが、これがいつ米軍専用の射爆場になったかということが一つ。  この中で、民有地であるために、沖縄県ですか、これはその関係の県並びに市町村が固定資産税を取っているわけですね、尖閣列島から。私の友人の栗原君は年間二百万円固定資産税を納めております。それから、古賀さんという方から栗原氏はこの島を購入したのですが、その古賀さんは固定資産税を三十万円納めております。お金を納めているのにその所有権者が何か仕事をしようとすると日本政府からだめだと言われるのですが、じゃ、金は取りっ放しなんですか。所有権の権利というものは浮かんでこないのですか。しかもここは、沖縄諸島の漁師の方々が、暴風や台風のときに避難漁港としてぜひ開いてくれ、こういう陳情があるのです。  大臣、こういうことはお知りにならなかったと思うのですが、固定資産税を二百万円も取っておいて、何にもそれにはさせない。しかも一方には米軍に貸して、そこのお金を日本政府が立てかえてやって古賀さんの奥様にお払いになってくださる。ところが何にもしないから、栗原君の方は二百万円ただ毎年毎年使い捨てでもう十年もたっちゃった。これは僕は大変な問題だと思うのです。そこで何かやろうとしても、ああだこうだ、滑った転んだでやってくれない。こういうことが果たして法治国家で許されていいのですか。
  156. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 事実関係でございますので、前半につきましては私からお答えいたします。  先生おっしゃられましたように、尖閣諸島内には赤尾嶼、黄尾嶼という二つの射爆撃場が施設、区域として米軍に提供されております。これらは沖縄が米国の施政下にありましたときから同じ目的で米軍が使用しておりまして、これを返還の際、昭和四十七年五月に、安保条約地位協定に基づきまして、今申し上げました目的で施設、区域として提供したものでございます。
  157. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 後半の固定資産税の徴収とそれから港湾の構築の点について御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり固定資産税をいただいておる、そのとおりでございます。  それから、これは委員が先般、国交正常化の直後でございましたか、園田外務大臣との間で本件についての応酬がいろいろございました際にも御指摘になっておられますけれども、尖閣諸島は我が国の実効的支配に服しておりますし、何ら我が国としてこの領土権について問題にすることはないというのが日本の立場でございますが、他方、その際に委員も御指摘になりましたように、若干平地に波乱を起こすような行動をとるというのは果たして日本の国の行動としてどうかという御指摘もございました。そういうような御指摘もございますし、いろいろな考慮を踏まえまして、所有者の方ないしは政府、地方自治体が尖閣諸島においていろいろな工事等をする際には、その是非についてはいろいろ御相談にあずかって、適当と認める行動をお勧めしているというのが、若干抽象的にはなりますが私どもの立場でございます。
  158. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣、お聞きになっていてそういう実態なんですが、固定資産税はいただきますわ、それに対して実効的支配はしておるために、おまえたちがいてくれれば助かるんだ、そういう実例があるから我が国主張が通るんだ。だけれども、これはお金がある人はいいんですが、なくなって、もう払えなくなって、年々上がっていくようなことがあれば、これは大変なことなんです。  その辺、大臣、これは外務大臣とか国会議員ということを考えなくても、人間として、それこそ普通の人として、盧泰愚さんの言葉じゃないが普通の政治を行う、普通の人としての考え、発想の中で、自分の所有権で自分のお金を国家に御奉公しておいて、固定資産税払って、何にもさせてもらえない。それこそやらずふんだくり、取るだけ取る。それで、おまえたちがいてくれ。じゃないと、日本の国の所有権の実効的支配ができなくなるということであったのでは大変なんで、何らか手を打てないですか。
  159. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 所有権の方がいろいろなことをお考えになる際には、そのことの是非についていろいろ御相談を受けるわけでございまして、私どもその行動を禁止するとか、どう命令するという立場にはございませんけれども、御相談に応じて私どもなりの助言を申し上げているというのが今までの状況でございます。
  160. 小川新一郎

    小川(新)分科員 時間が来ましたのでこれでやめますが、それで十年も二十年も取ってしまったんですから、そういうあいまいもこたる国会答弁では私は承服できない。どうかひとつもう一遍検討していただきたい。
  161. 池田行彦

    池田主査 これにて小川新一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  162. 井上普方

    井上(普)分科員 外務大臣、長いことお待たせいたしました。先般ODAにつきまして少しお伺いしておる最中にああいうような事態になって、長らくお待たせをいたしましたが、その続きを少しお伺いいたしたいと思います。  この間の経企庁あるいは外務大臣、通産大臣、大蔵大臣の御答弁を聞きますと、ODAに対する考え方が少しずつ違っておる。外務大臣は、これは相互主義であり、人道主義が中心でなければならないとおっしゃるが、経企庁の長官は世界経済発展に寄与しなければならないし、それから、調和ある発展をやらなければならないんだ、こういう趣旨です。通産大臣は、経済協力は崇高な任務である、受ける立場の方々を重点に置いて考えなければならぬ。こういうように少しずつニュアンスは違っております。  しかし、今までのやり方を見ますというと、海外からいろいろと批判を受けている。日本はグラントエレメントは七六%であって、これを八六%に伸ばしてくれ。これは私どもからいたしますと、その国その国の考え方によってやられるのでありますから、そこまではどうかという気もせぬでもない。しかしながら、公平に見て、客観的に見て、この日本海外援助あるいは海外協力というものが商業化されておるんじゃないか。これは藤田君が発表しておる数字によりますと、日本海外援助、有償援助というものは大体七二%ですか七六%の日本の商品でともかくやられておるというような論文も出されておることを私は見たことがある。  事実、私も池田さんとイラクへ行ったとき、少ない経験ではあるけれども見ました。海外援助というのはどんなものが行われておるのか。飛行場からバグダッドに至る高速道路ができておる。片道四車線、立派な道路ができている。ところどころに歩道橋がある。後で聞きますと、歩道橋にエスカレーターが全部ついておる。砂漠の国でエスカレーターの網の中に砂が入ってしまってじゃりじゃりいう。それは一月もすれば使えなくなる。これは日本海外援助でやったのかなと二人で心配した。ところがこれは西欧の国だったので、ほっとしたことがあります。  そうかと思うと、医療援助だというので病院を見に行った。私も医者の片割れだ。果たして、日本の最高級品がともかく入っている。使われるかな。これはちょっと失礼ではあるけれども日本で教育を十分に受けた方でなければ使えないような医療器具が行っておる。あなたはどこで研究されたか、医者になられたのですかと聞きましたら、私はアイルランドでやった、あるいはドイツで勉強したんだとおっしゃる医者もおったけれども、果たしてこれで使えるんだろうかという気がせざるを得なかったこともあります。  そこで私どもは、考えてみますと、このODAをやるに際しましては、各国からの要請によっておたくの方が、あるいは四省庁がともかく共管で採択するかしないかということを決める。しかしその要請は一体だれがやるんだ。これは外交ルートを通じてやるだろうけれども、その外国に対して、ある国に対してこういうようなことをやれば金もうけが援助でできますよと言って知恵をつけるやつがおる。それが商社であり企業である。私がその病院のところへ行ったときには、丸紅の連中が説明に来ました。医療的な知識は素人でございましょう。そういうように商品化されておることがあるんじゃないだろうか、これが一つです。それから、こういうような見方をするならば今の援助が人類愛に、果たしてその国の国民の福祉に適合するんだろうかという感を深くいたしたのであります。  また私も数少ない経験ではありますが、ビルマへ行きました。ビルマへ行くと、経済援助ということで橋ができておった。JICAの連中に、おい、この橋どうしたんだ、橋と取り合い道路の間に二十センチも差がある。つくられてから二年だ。二十センチもあるので、自動車が入るにはがたんがたんということで、長い石を詰めているような状況になっておる。JICAの連中に、おい、これはどうしたんだと私聞きましたら、いや、この国はこんなものでいいんです。こういうようなことを平気で言うような連中が海外協力にいる例もありました。海外協力の諸君がネパールへ行き、あるいはビルマへ行き、あるいはバングラデシュへ行って、非常にまじめに海外協力でやっておる人たち、まじめにやっておるなという方々も数多くある。しかし、こういうような経済援助をやって果たして将来あちらの国の方々はどう思うだろうか、こう感じたのは私一人ではないと思います。どういうあり方がいいのか。これも経企庁あるいは大蔵省、通産、外務の共管でやっておるところに一つの大きな問題があるのじゃないかと私は思うのですが、いかがでございます。
  163. 英正道

    ○英政府委員 井上委員よく御案内のように、円借款につきましては四省庁で相談をしながら進めるということになっております。無償援助技術協力につきましては、そういう外務省、JICAということでやっております。  体制の問題についての御指摘、最後の点ですけれども、一つの省にすべての知識を集めるというわけにはとてもいかない体制なので、やはり相談をしながらやっていくということで、その点については今のやり方で基本的には実効を上げているというふうに考えております。  個々の案件について御指摘の点、私、具体的なケースを存じませんけれども、要請を受けてそれをそのままうのみにしているという……
  164. 井上普方

    井上(普)分科員 何だ、要らぬわ。あなた、いつ大臣になったんだ。いつ政治家になったんだ。  私が聞いているのは、こういうようなちぐはぐがあるから、共管を一つの主務官庁にすればいいじゃないか。大臣に聞いているのです。こんなもの、事務官が答弁すべき問題じゃないじゃないか。大臣どうです。
  165. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今局長が言いましたとおり、円借款は四省庁でやっておるわけですね。従来の経緯もずっとございますし、この間から予算委員会井上委員が言われましたお話も、私もそうだな、もっともだなと思う点もあります。したがいまして、やはりそういう問題もひとつ今後いろいろと援助のあり方なり借款のあり方、内容等も議論しなくちゃならぬ問題でございますから、私といたしましては、外務大臣として諸方面の意見を一回聞いてみたいと思っております。
  166. 井上普方

    井上(普)分科員 実は私が感ずるのは、主務官庁がないということです。四省庁で共管するのもいいでしょう。しかし、主務官庁が一つ要るのではないだろうか。ちぐはぐになりつつある。  私は通産省の「経済協力の現状と問題点」というのを見てみた。これはやがてことし白書として出るものです。しかし、これを見てみると、全く何と申しますか、日本の産業の援助にすぎぬのではないだろうか。事によれば、帝国主義的な発展ではないだろうかという感をするような問題が出ている。  例えて言いますならば、第一次大戦前のイギリスの発展と経済援助、あるいは第一次大戦後のアメリカ経済援助、失敗したけれども第二次大戦後のパックスアメリカーナの実情というのも分析してあるわけなんです。全く商業的な見方でこの海外協力あるいは現状というものを分析しつつある。どこに人道的な、あるいは相互主義的な考え方がこの中から見出せるであろうか。私は不思議に思った。これはもう出ているのじゃないですか、もう二月ですから。あなた方は人道主義的にやっていると言うけれども、そうじゃない。これが今の海外援助の実情じゃないだろうか。  もう一つ言うならば、外務省外務省として、外交手段としてこれを使おうとする、外交官は。私も海外に行ったときに在外公館の諸君にお世話になる。そのときの話によると、外交官は、ひとつもっと海外援助をふやしていただいて我々が自由にさせてもらおうと、外交手段にODAを使おうとする。それから通産省は、先ほど申したとおり日本の国内産業の発展のために使う。ということになれば、受ける側は一体どうなる。あるいは政略的に戦略的に使われた例は、私が申し上げるまでもなくマルコス政権に対するあの支援であります。  こういうようなことをやっておって、国民その他の、ODAの本旨に逆さまになるような結果を生み出しておるのがフィリピン援助ではなかったかと思うのであります。大臣、いかがでございます。
  167. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 フィリピン援助、マルコス大統領時代のやつは、いろいろと話題になりました。しかし、その点におきましても、一応援助援助として十二分な審査の上にやっておったことだと私は考えております。しかしながら、まあ話題になった面においては十二分にこれはやはり慎重を期さなければならない問題であると考えております。
  168. 井上普方

    井上(普)分科員 いかにこれが着実に他国民、低開発国の国民の福祉の向上、生活の向上に使用されておるかということを追跡調査をやっておりますか。これは、私、この前外務省の発表の文書を見ました。見ましたけれども、そこにはずらずらっと、深い分析もなかった、こんな点で実にアバウトな報告だけであります。ここには持っておりませんけれども、私、いただいて見ました。追跡調査というのは何らなされていない。ODAは、これから私が申し上げるまでもなく、国民の共感を得ています。ODAをもっと増額しなければならぬというのは、今国民の間では非常に共感を得ておるようであります。  その一つの理由は、あのアフリカの飢餓難民あるいはまたバングラデシュの飢餓難民、こういうのに対して援助するのだということで表面やっておりますから、国民からあれだけの支持があるんだろうと思う。本来の意味において、私は援助が国民の共感を得られておると思う。これはもう一兆円を超すのですからね。  ですから、このことにつきまして、一体本当に所期の目的、すなわちその国民の福祉の向上あるいは生活の向上に資しておるかどうか、これは徹底的に追及する必要があると私は思います。大臣いかがであります。
  169. 英正道

    ○英政府委員 もう報告書をごらんになっていらっしゃるそうでありますので多言は弄しませんけれども、フィリピンの援助につきましてはああいう指摘がいろいろなされたということを踏まえまして、かなり部外者の方の御参加を得て、日本援助が集中しておりました運輸でありますとか通信でありますとか、四つの部門について報告書を調査をいたしまして、そしてフィリピン側ともその報告書に基づいて意見を交わして、その結果、おととしの十一月にアキノ大統領が日本にお見えになったときの共同発表の中で、従来の日本援助というものがフィリピンの経済、民生の発展に資していたということがフィリピン側も同意することになったということでありまして、基本的にはほかの国についてもそういう調査を鋭意やっておるということでございます。  ただ、評価の問題につきましては、国際的にもまだ評価手法というものが完全に確立しておりません。そういうことで、外務省におきましてもそういう評価手法の研究というようなことも有識者の方の御助言を得ながらやっておるところでございます。
  170. 井上普方

    井上(普)分科員 それはアキノさんだって日本から借金をもらいたいのだから、あれは悪うございましたなんてこと言えませんよ、当たり前の話だ、もっと欲しいんだから。これは日本政府に対しておべんちゃら言わなんだらくれぬはずだから、当たり前の話なんだ。そういうことを言いわけにするよりも、日本自身がやっておるかということ。幸いにして、去年会計検査院がこのことをえらい調べたようだが、その結果どうでございました。
  171. 宮尾明

    ○宮尾会計検査院説明員 ODAの検査につきまして、昨年二月から八月までの間に東南アジアを中心に八カ国に調査官を派遣しまして、在外公館国際協力事業団事務所、それから海外経済協力基金の事務所の検査を行うとともに、このうち政府開発援助の対象国、七カ国でございますけれども、それにつきましては現場を実地に調査いたしました。これらの検査におきまして、我が国援助で建設されました施設あるいは購入された機材は有効に活用されているかどうか、あるいは技術協力の成果は上がっているかなど援助効果の側面を重視して検査を実施いたしましたが、我々も本格的にこういうことをやるのは初めてというようなこともございまして、検査報告に掲記するような不適切な事態は特に見受けられなかったわけでございます。
  172. 井上普方

    井上(普)分科員 これは去年の十二月十一日の朝日の記事です。それによると、海外援助海外検査をやったけれども、空振りに終わった、これはどこがだといったら外務省が抵抗したんだ、外国主権の壁がある、例のマルコス疑惑のときに言うたのと同じことです。そういうことで、会計検査院も十分に検査ができなかったという報道が大きくこのようになされています。  私は、これは今までの外務省の役人ども考えからすれば当たり前だな、それは外国主権の侵害になるわといって会計検査院も十分に検査ができなかっただろうなという想像をした。しかし、海外事業団において汚職が起こったでしょう。モロッコヘ行っておるのでどこか向こうで汚職事件が起こっておるのを、これは一体どうなんです。御存じですか。
  173. 英正道

    ○英政府委員 存じております。
  174. 井上普方

    井上(普)分科員 海外事業団の人が外国から金をもらう、汚職をする、これは国内であったからいいだろうけれども、しかし外国から金をもらって、こっちの方で捕まえたけれども、向こうの方の人を捕まえることはできない、向こうの主権だから。これが今の実態なんです。  だから、今の経済協力というのはまさに出してしまったらわからない。あるいは先ほども申しましたように要請主義によりますから、各国に売り込む、外国に商社が売り込んでいく。マルコスのときだって、御存じのとおり、二〇%から三〇%ともかくリベートをとっておって、新たに商社の連中は税金で追徴金がかかったでしょう。現にそういうことが行われておるのだ。  だから、ここらあたりを会計検査院もしっかりしてもらわなきゃいかぬ。会計検査院ももう少し国民の税金だという考え方で外務省なり関係各省庁ともやっていただかなければ、税金なんだから、向こうで使えるか使えぬかわからぬようなものを、あるいは半年後に直さなきゃならないような道路、橋梁をつくってどうなります。こういうことを私は申したいのです。  それと同時に、外務省ODAというのを外交手段に使ってはいかぬ。しかし外交官は使いたがる。この点について外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  175. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間も申し上げましたとおりに、あくまでも南北間の根底にあるところの人道上の考慮並びに相互依存だ、これでございますし、ODAは、その意味では世界における唯一の援助である、こういうふうな解釈もなされておりますから、今まで日本として戦略上これを使ったということはございません。  しかし、今のいろいろの御指摘ございますから、そうしたことのないように我々といたしましてもやっていかなくちゃいかぬ。また、ODAは当然日本といたしましてさらに大きなものが要請される、また条件緩和等々も要請される、こういうことも考慮いたしまして、国民の税金でございますから、十二分に有効にこれをひとつ諸外国の福祉の向上に使っていただきたい、こういうふうに思っておりますので、その点は心得てやっていきたいと思います。
  176. 井上普方

    井上(普)分科員 じゃ外務大臣、少なくとも日本の税金が使われる、これに対してともかく会計検査院が出張して検査するというときには、外務省は全面的に協力しながらこれの行方というものを追跡調査する御決意がありますか。
  177. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今までの経緯から申しますと、援助というものは向こうの要請に従って十分吟味して、我が国の自主的判断に基づいて決める、その後のことは、お渡しした後のことは相手国の主権ですから、私たちがそれを中へ入り込むということは主権という問題との絡みが非常に大きいねというのが外務省考え方でございますし、今も外務省としては、私ももう少し研究したいと思いますが、現在としてはそうじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  178. 井上普方

    井上(普)分科員 外国主権が侵害されると言って、いつもこうやって国民の目から隠してきたのがこの海外援助なんです。それにメスを入れようというのが、税金がどういうように使われているかというのが会計検査院の今の姿勢なんです。少なくとも新聞に、外務省が抵抗して主権の壁によって十分な検査もできなかったということを書かれるようじゃ外務省も恥でしょう。この問題につきましては、シベリア出兵のときの陸軍の機密費の問題で、秘密会を開いて会計検査院も中に入って報告したというような事実を私は聞いています。あの軍部の機密費につきましても昔の会計検査院はこれにメスを入れることができたのです。  外国主権があるからというと、それもありましょう。ありましょうけれども日本の国民が払った税金がどういうように使われて、所期の目的が果たされておるかどうかを調べるのは当然のことじゃありませんか。これをともかく外国主権の名のもとに非協力的態度をとるということは、私は許されぬことだと思います。外務省としては特にこの点を注意していただきたい。すべて協力できるところは協力していただきたい。私は強く外務大臣に要求するのですが、どうでございますか。
  179. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 井上委員の御意見として私は拝聴しておきます。
  180. 井上普方

    井上(普)分科員 これは私の意見ではない。税金がどういうように使われておるか、税金がどういうように効果を上げておるか見るのは行政府としては当然のことなんです。また、国民はそれを要求する権利がある。それを一部官僚がこれをシャットアウトするというようなことは許されることじゃない。だから、万難を排してでもそういうようなことを疑惑を招かないように――例えばマルコス疑惑につきましてはいまだに言われておるじゃありませんか。あのときだって外務省は何と言いましたか、あるいは政府は何と言いましたか、商品借款なんということは全然出さなかったじゃありませんか。見てみれば化粧品に至るまで商品借款として向こうは出しておった。しかし、おたくの外務省はなかなか資料を出さなかった。抵抗に抵抗を重ねたのです。我々社会党あるいは公明党あるいは民社党がフィリピン現地に行って、マルコス政権のもとで前のリストをもらってきて初めて渋々出してきたんじゃありませんか。これが今の海外援助の実態だ。  これは国民の税金なんだから、あくまでも国民の前に明らかにするように、そして効果が上がるようにやっていただかなければならない。それには、少なくとも会計検査院というものがある。これが海外へ出張して検査するときには、各省ともあらゆる努力をして協力するということでなければならないと思いますが、大臣いかがです。
  181. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 会計検査院に外務省が妨害した、そういうことの一つの見解からやっておられますが、それは私はまだ聞いておりませんから、一回、後で聞いてみます。
  182. 井上普方

    井上(普)分科員 これで終わります。
  183. 池田行彦

    池田主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  速記をとめて。     〔速記中止〕
  184. 池田行彦

    池田主査 速記を起こして。     ─────────────
  185. 池田行彦

    池田主査 次に、大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和六十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十六兆六千九百九十七億千四百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十五兆九百億円、雑収入は二兆六千五百三十八億千九百万円、公債金は八兆八千四百十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十四兆千六百五十二億二千二百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは一兆三千億円、国債費は十一兆五千百十九億八千七百万円、政府出資は二千三百十億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも二百六億三千二百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。  国民金融公庫におきましては、収入三千六百四十億千七百万円、支出三千七百四億六千八百万円、差し引き六十四億五千百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いを申し上げます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  187. 池田行彦

    池田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま宮澤大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 池田行彦

    池田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔参照〕    昭和六十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算に関する説明  昭和六十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十六兆六千九百九十七億千四百万円でありまして、これを前年度予算額(補正予算(第一号)による補正後の改予算額。以下同じ。)に比較いたしますと、五千百九十四億千九百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、四十五兆九百億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、三兆八千九百六十億円の増加となっております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額四十五兆六千四百三十億円から、昭和六十三年度の税制改正による減収見込額二千三百四十億円を差し引き、更に、揮発油税の道路整備特別会計への組入割合の変更による減収見込額三千百九十億円を差し引いたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、土地・住宅税制の見直しを行うことによる増減収見込額を調整して、十七兆四千四百四十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、欠損金の繰戻還付・繰越控除の適用停止の廃止及び租税特別措置の整理合理化等による増減収見込額を調整して、十三兆九千三百十億円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、相続税二兆千百三十億円、酒税二兆六百六十億円、たばこ消費税一兆百十億円、揮発油税一兆三千百四十億円、物品税一兆七千七百二十億円、有価証券取引税一兆六千六百三十億円、関税六千百九十億円、印紙収入二兆六百六十億円、及びその他の各税目を加え、租税及印紙収入の合計額は、四十五兆九百億円となっております。  第二に、雑収入は、二兆六千五百三十八億千九百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、千百五十八億三千三百万円の増加となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金四千三百億円、日本中央競馬会納付金二千百五十四億九千九百万円、特別会計受入金一兆七千九十五億六千八百万円等であります。  第三に、公債金は、八兆八千四百十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、三兆二百億円の減少となっております。  この公債金のうち、五兆六千九百億円は、建設公債の発行によることとし、残余の三兆千五百十億円は、特別公債の発行によることといたしております。  なお、特別公債の発行につきましては、別途、「昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案」を提出し、御審議をお願いいたしております。  最後に、前年度剰余金受入は、六千四百万円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十四兆千六百五十二億二千二百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆八百六十六億九千五百万円の増加となっております。  これは、産業投資特別会計へ繰入が八千四百十九億八千八百万円、国債費が二千四百二十六億七千五百万円増加したこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、産業投資特別会計へ繰入につきましては、一兆三千億円を計上いたしておりますが、この経費は、無利子貸付けの財源に充てるための「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に基づく産業投資特別会計への繰入れに必要なものであります。  第二に、国債費につきましては、十一兆五千百十九億八千七百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債の償還、国債及び借入金の利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費の財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  なお、先ほど申し述べました「昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案」に基づき、昭和六十三年度において、前年度首国債総額の百分の一・六に相当する額及び割引国債に係る発行価格差減額の年割額に相当する額の繰入れは行わないことといたしております。  第三に、政府出資につきましては、中小企業信用保険公庫等二機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、二千三百十億円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫百九十五億円、海外経済協力基金二千百十五億円であります。  第四に、経済協力費につきましては、六百六十三億六千八百万円を計上いたしておりますが、この経費は、発展途上国に対する食糧増産援助等に必要なものであります。  第五に、国民金融公庫補給金につきましては、三百七十億九百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国民金融公庫の業務の円滑な運営に資するために必要なものであります。  最後に、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、三千五百億円を計上いたしております。  次に、当省所管の特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも二百六億三千二百万円となっております。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入七百七十二億二千五百万円、歳出七百十四億三百万円、差引き五十八億二千二百万円の歳入超過となっております。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部、国債整理基金、外国為替資金、産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、国民金融公庫におきましては、収入三千六百四十億千七百万円、支出三千七百四億六千八百万円、差引き六十四億五千百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────
  189. 池田行彦

    池田主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  190. 池田行彦

    池田主査 この際分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  191. 新村勝雄

    新村分科員 大臣にお伺いをいたしますが、民主主義国家においては納税は当然であるし、国民は積極的というか、喜んでではないにしても、十分納得をして納税をするのが民主主義国家の約束だと思いますけれども、今の状況は、脱税とは言わないまでも、避税といいますか、何とかして税金を逃れようとする風潮があると思うのですね。これはどこに原因があるのか。  かつての時代においてはそういう傾向は余りなかった。どちらかというと、税金を納める階層が限られていた、あるいは特権的なものと一体となっていたという状況はあるでしょうけれども、一部では税金を納めることを名誉と考えていた時代があったと思いますが、今は反対に税金を逃れようとする風潮が一般的であるのはどういうわけでしょう。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 突然のお尋ねでございますし、いろいろな歴史観とかというものを持っておりませんときちんとしたお答えができませんけれども、戦後の我が国、殊に今新村委員の言われますように非常にたくさんの納税者がみんな、かつてのようにいわゆる多額納税者の時代と違いまして、みんなが納税者になった。なったのでありますけれども、みんながこの日本という社会を一緒につくり、動かしていかなければならないという、先進民主主義国には自然に育っておったような、それでもよその国でも問題だと思うのでございますけれども、そういう十分なコンセンサスがないままに戦後の日本が出発をした。旧憲法の時代におきまして、納税者がどのような気持ちであったかということは十分にはわかりませんけれども、恐らく比較的限られた数の納税者が天皇のために、あるいは祖国を守るためにというような一種のエリート意識で納税をしておったかと思いますが、戦後はそうでなくなりましたので、非常に納税者の数はふえましたが、一緒にこの国をつくり上げていこうという意識というものが同じようなテンポでは育たなかったというところに一つ大きな原因があるのではないかと思います。  それから、私どもが反省としていろいろ考えますことは、例えば納税者から税金をもらいながら、それだけのことを政府が国民のためにしているということについて至らざる点があったか、あるいは国民に知らせることに足らざる点があったか、両方かもしれませんが、そういうことであるとか、あるいは同じ納税者の間で一種の不公平感が存在しておるとか、そういったようなことは私どもは常に反省しておるところでございますが、そういうこともあわせて原因であったかもしれないと思います。
  193. 新村勝雄

    新村分科員 今、大臣の言われたことはほぼ正鵠を得ていると思いますけれども、やはり現在の税体系が国民に理解をされていない。理解をされていないから、したがって支持をされていないということに、全面的にではないにしてもあるのではないかという気がするわけですね。現在の税の不公平感、これは世論調査等によってもかなり大きな割合であらわれておりますから、この税の不公平感あるいは税体系に対する国民の理解、これを政府としてはできる限り国民の理解を得るように努力をされなければいけないと思いますし、そのことが民主主義国家の基礎になると思いますね。  ですから、本当に国民の支持が得られていれば、そしてまたその税金の使途が国民の理解を得ていられれば、増税といえども国民は甘受せざるを得ないはずでありますけれども、そこまでいかないということについては、これは民主主義の成熟度ということもありましょうけれども政府のその面における御努力の不足ということも、これは確かにあるのではないか。それからまた、現在の税体系が必ずしも公平というふうに国民から思われていないという面があろうかと思いますけれども、そういう面についてなお一層の政府の御努力をお願いしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申しましたように私自身も考えておりますので、ただいま新村委員の御指摘の点はまさに私どもがさらに努力をいたさなければならない点であると存じます。
  195. 新村勝雄

    新村分科員 それで、税制については、これはあくまでいわゆる税制の民主化あるいは財政の民主化ということが必要だと思います。ところが、我々国民の方から見ますと、大蔵省御当局あるいは徴税御当局は努力をされていることはよくわかるのですけれども、徴税の過程において、あるいは課税の過程において、守秘義務ということを盾にとって、ややもすれば、あるいは肝心のところはすべて秘密のベールに包まれているという点があるわけですね。例えば課税にしても、課税の過程あるいはその結果としての税額等についてもできる限り国民に知ってもらうということが必要ではないか。ところが、個人の問題はプライバシーということがあるかもしれませんけれども、例えば企業の税額等については一切マル秘だということで発表されない。そういう面があって、税制民主主義という点において欠ける点があるのではないか。  昔の話になりますけれども、例えば昔の市町村においてはいわゆる戸数割というのがありました。これが今の住民税に当たるわけですが、この戸数割というのが市町村の財政の大宗を占めていたわけですね。恐らく七、八割を占めていたのじゃないかと思いますけれども、その当時でも、全村民の納税額を一覧表にして発表していたわけですよ。これは村会等に議案として出すわけです。そういうふうに各人の納税額あるいは課税過程というものがかなり住民に公開されていたわけですけれども、現在はそういう点からしてマル秘の部分が多過ぎるのではないかというような気もするわけですが、大臣はどうお考えですか。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今、昔のことをお話しになられまして、私も自分の経験を思い出すわけでございますけれども、かつては所得調査委員制度というのでやっておりました。これは、例えば温泉旅館なんかで申しますと、各旅館の権衡と申しますか、それを全部一覧に並べましてその間でバランスをとって所得調査委員との間で課税を決定するというようなことをやっておりまして、そういう意味ではお互いの納税額がお互いにわかっておったわけでございますけれども、その後申告納税制度に変わったものでございますから、一人一人の納税は秘密であるということになったわけだと思います。  戦前にやっておりましたようなことが果たしてよかったのか。それはいわば、ふっとやり損ないますと、仮に温泉旅館組合であればその組合長あるいはその幹部が組合員に対して大変な査定力を持つわけでございますから、そういう意味では、一人一人対税務署という関係でなく、非常に悪い場合には、一種のボス支配になりやすいというふうなことがございましたので、私は戦前の制度にやはりそういう弊害があったように思うものでございますから、そこをどう申し上げていいか、ちょっとにわかに私自身も判断がつきかねるところでございます。
  197. 新村勝雄

    新村分科員 大臣が今言われたのは組合でそれを決めるということでしょうけれども、課税当局が決めていく、例えば昔の村会等においては、課税当局が査定をして、これを議案として村会に出してそれで決めたわけですよ。ただ、その場合に、これはプライバシーという問題はあるでしょうけれども、全納税者の税額を一覧表にして出したということは公開性という点では評価すべきではないか。プライバシーと公平な課税というのは完全に矛盾しますね。間接税はプライバシーとは全く関係ありませんけれども、他の面で弊害がある。直接税はかなりプライバシーを犠牲にしなければ完全に公平な課税はできないという性質をもともと持っています。ですから、そういう点からして公平な課税ということになれば、プライバシーをある程度犠牲にしなければいけないという決意がなければ本当に直接税を公平にすることは難しいと思います。そういう点で、やはり個人にしても法人にしても全体の課税額を納税者が知るということは税制民主主義の上では必要だと思うのです。  それからまた特に、今の経済というのは企業が一切を動かしている。働くのは労働者ですけれども、それを組織運営するのは企業ですから、その企業が日本経済を支えているということですから、企業の社会的責任というのは非常に大きいと思うのです。ところがその企業に対する課税のプロセスが我々国民には余りはっきりしない。税額さえもわからない。税額を教えてくれと言えばマル秘だ。ということになりますと、国民の税制度に対する、租税民主主義に対する疑問が出てくると思いますけれども、いかがでしょうか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたことをもう少し続きを申させていただきたいと思うのですが、昔の時代は、例えば熱海なら熱海に温泉旅館が二百軒ある。そうしますと、その二百軒が一つの組合をつくっておりまして、その組合でいわば指数とでも申しますか、そういったようなものをつくってまいります。こちらはこちらで組合全体でどのぐらい課税をしたいという目標があるものでございますから、その全体の目標と組合の責任者が持ってきました指数と合わせますとおのおのの旅館の納税額が決まる。それを所得調査委員会にかけておった。この制度でございますと、組合内部のいわば均衡あるいは平和というものは保たれるのだと思いますけれども、それは場合によってはボスの力で保たれておったかもしれない。そういう危険は恐らくはらんでおったと思うのでございますけれども。  そういうものをやっておりまして、シャウプが来まして、それはもう一切そういうことではいかぬ、納税民主化ということになり、申告納税になり、しかしそのときにそうかといってやはり高額納税者のことははっきり示した方がいい。そのほかに通報制度なんというのもあのときに、戦後にできたわけでございますけれども、そういうことで民主化を図ろう、こうなってきたのではないかと思います。  なお、政府委員から詳しく申し上げます。
  199. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 新村委員指摘のように、直接税の分野におきましてはプライバシーの問題というのはないのではないかという御指摘、これは納税者の方と税務当局との間ではそのとおりかと存じます。ただ、税務当局が納税者の方々との折衝の過程で知り得たことを第三者の方に示すということはまた別の問題でございまして、やはりそこはプライバシーの問題が出てくると思います。  そこで、守秘義務の問題でございますけれども、これは納税者の方々のプライバシーを公にしない、そういう納税者の方々の利益を守るという意味もございますが、それに加えてと申しますか、それよりより大きな意味を持つものとしまして、税務署員に話したことは税務署員は外には話さない。したがって、税務署の人には安心して物をしゃべっていいんだという気持ちに納税者の方々になってもらって、そこで正しい所得の調査が行われ、適正な課税が実現される、そこのところにやはり非常に大きな意味があるわけでございます。  したがいまして、委員は税務当局の立場に立っておっしゃっていただいているわけで非常にありがたいと思うわけでございますが、プライバシー、税務当局が知ったことを表に出すということにいたしますと、直接的にはそれは調査に役立つように見えながら、間接的にはかえって納税者の中に陰にこもると申しましょうか率直に物を話していただけないという傾向が出てまいります。やはりその辺が難しいということで、我が国のみならず、明治以降日本がお手本にいたしましたドイツなんかにおきましても守秘義務という規定がありまして、その守秘義務の意味といたしまして今私が申し上げたようなことが解説書に書いてあるわけでございます。
  200. 新村勝雄

    新村分科員 大臣のお話はちょっと私の趣旨とは違っておりますし、また今のお話は、私は税務当局の立場で申し上げたのではなくて、税制民主主義というものはやはりできるだけ公開にすべきではないかということを言ったわけです。  それと、今のお話のマル秘事項というのは、課税の過程はマル秘でしょうけれども、結果については、これはすべてマル秘である必要はないと思うのです。一定の額以上については現在も公表しております。それから、法人については税額は全くマル秘でしょう。そこらの点が首尾一貫しないし、調査の過程はマル秘であっても結果はできる限り公表した方がいいのではないか、こういう考え方ですけれどもね。
  201. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 今法人のお話がございましたが、法人につきましては、事業年度が一年のものにつきましては、所得が四千万円を超える場合その所得額が公示されます。個人の場合には税額で一千万円という基準がございまして、それを超える方々につきましては所得税額が公示されるということで、両者、税額と所得の違いはございますけれども、ある程度以上の所得水準と申しますか税額水準の方々につきましては、それが表に出ることによっていわば第三者によるチェック機能というものを期待しているというのが現在の制度でございます。法人についてもそういう形で存在しております。
  202. 新村勝雄

    新村分科員 ですから、法人については一定額以上ではなくて、法人すべてについてそれをやるべきではないか。大規模の法人であっても利益がない法人については均等割しか納めていない、そういう部分については発表されないということですね。ですから、それは法人については一定の額以上ではなくて全部公開すべきであろうし、個人についても課税の過程ではなくて結果については一定の手続と制限のもとに知らせてもいいのではないか、それが税制民主主義の内容ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  203. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 委員指摘の点、一つの御意見として承りましたが、やはり個人の場合、税額が一千万円を超えますと公示されます。そこに税務署が調査に行きまして、ちょっと出来心で所得を正しく申告していなかったという方が調査を受け、直ちに改心して正直に申告をされる。そうしますと税額がふえるわけでございますが、ふえたものがまた公示されるということになりますと、いわば私は脱税をしたということをみずから進んで世の中に公示するということになります。そういたしますと、せっかく改心しようと思った人ができるだけそこは隠そうじゃないかという気持ちが働くのも人間の心理としては起こり得るのではないか。そこのところのいろいろな配慮、その結果、現在のような制度になっているわけでございまして、私どもといたしましては、そうした改正を行うことはむしろ結果としての適正な課税の実現にはつながらないのではないか。プラスもありますけれども、より多くのマイナスもあるのではないかというような判断をしているわけでございます。
  204. 新村勝雄

    新村分科員 一定額以上の税額については公表することによってお互いのチェック機能を果たし得る、それ以下については果たせないというのはちょっと論理が一貫しないような気がするわけです。  それから、法人については、やはり一定額以上は公表する。法人の場合には私人と違って、その年度に利益がなければどんなに大きな経済活動をやっていても公表されないということですから、その不合理はどう説明されますか。
  205. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 大規模法人、特に上場されている法人につきまして、所得が上がらない、赤字になったという場合、税務署の窓口にはその所得は公示されませんけれども、別途有価証券報告書というものにはその財産、それから損益計算、税額、すべてこれが記載されて、これはだれでも見られるようになっておりますので、別途その方面からのチェックは可能な状況になっているわけでございます。
  206. 新村勝雄

    新村分科員 もう大体考えはわかりましたけれども、個人について一定の線を引いて、それ以上についてはチェック機能が働く、それ以下については働かないということの説明はちょっとはっきりしないと思うのですが。
  207. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 確かに委員指摘の点、そのとおりでございます。こういった考え方を徹底いたしますれば、すべての納税者につきましてその所得水準あるいは税額水準を公示するというのが究極の姿なのかもしれません。しかし、その場合には数が大変多くふえまして、公示される人の数が多過ぎることによって、かえって真のチェック機能というものが拡散されてしまうというような問題があろうかと思います。現在でも税務署のこの公示のための手数というものは大変でございまして、これを一挙に一千万円という水準を下に下げますと、これは税務当局にとりましても、それを見てチェックしようとなさる方にとりましても、果たしてコストに合ったメリットというものが期待されるかどうかという問題があろうかと存じます。
  208. 新村勝雄

    新村分科員 時間がありませんから、全部省略しまして一つお伺いしたいのですが、今減税を計画されて、考えておられますね。そのうちで相続税についても減税されるということでありますが、相続税については全体を下げるのですか、それとも基礎控除を、下の部分をかさ上げするということですか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府といたしまして税制の抜本改正を考えておりまして、政府税制調査会に諮問をいたしております。所得、消費、資産間のバランスのとれた税制をお考えいただきたいというお願いをしておるわけですけれども、相続税もその一つでございます。  現在の相続税は昭和五十年に決めましてそのままになっておりますので、土地の高騰等に示されるように、またそればかりではございません、十年余りたっておりますから、このままではいろいろなひずみが来ております。したがって、将来に向かってこの際抜本的に直したい。考え方は、もう五十年水準ではいろいろなものが合いませんので、全体としてはやはり控除等々を引き上げるような形にならざるを得ないと思っておるわけでございますけれども、そういう方向で考えております。
  210. 新村勝雄

    新村分科員 相続税の場合に、結果的に非常に不公平がありますね。例えば現金で相続財産が決まった場合、それから不動産で決まった場合では結果的に非常に違うわけですね。  それで、今そこを利用して盛んに節税が考えられているということでありますけれども、特に土地の場合なんかは実際の実勢価格の三分の一程度に査定をされているわけです。それと、現金あるいは有価証券との格差が非常にあるわけで、これはもう本当に権威ある税制かと疑わせるほど不公平であるわけです。  そこで、その一つの方法として土地については物納してもらう、あるいは物納を積極的に許すということの方が公平ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  211. 瀧島義光

    ○瀧島政府委員 委員指摘の点は、土地の課税上の評価が実勢価格に比べてかなり低い、したがいまして、十億円借金をして十億円の土地を買う、その土地の評価額が例えば六億円でありますと、そこに四億円だけ純資産を減らす効果が出てくる、そこに着目した節税策というものが横行しているのではないか、その対策として物納ということを御示唆なさったわけでございますが、今政府の税制調査会におきましてもまさに御指摘の点が大きな問題として議論されているわけでございます。  まだ結論が集約されるに至っておりませんけれども、今回相続税についての抜本改革というものを行う場合には、先ほどおっしゃいました控除の問題等々とあわせてこの点についての何らかの対策というものを講ずる必要があるというところまではコンセンサスができているように思います。ただし、具体的な方策につきましてはまだ明らかにされるに至っておりませんので、その点についてはお許しをいただきたいと存じます。
  212. 新村勝雄

    新村分科員 相続税の改正については、基礎控除を引き上げるということ、これは必要だと思いますけれども、それ以上の税率についてはこれは下げる必要はないし、むしろ累進を強めるということが社会的公正には合っているのではないでしょうかね。  これから経済が発展し社会的な構造が高度化してまいりますと、一生の間に個人間の格差がかなりできるわけですね。ですから個人間の格差は世代間で調整をとっていかないと、いわゆる政治王朝はなくたったけれども経済王朝は生きていると言われておりますけれども、億万長者のうちに生まれた息子は生まれながらにして億万長者として出発するわけですけれども、一方の無産者は全くゼロから出発する。人間というのは、人生の出発はできるだけ一線で出発をして、自由競争で一生の間に格差ができるのはいいのですけれども、世代間にまでその格差を及ぼすということは社会的公正に反するのではないかというような気がするわけです。そういった意味では、相続税は下は控除を上げても上の方の累進はむしろ強めるべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょう。  時間が終わりましたので、以上要望申し上げて終わりたいと思います。
  213. 池田行彦

    池田主査 これにて新村勝雄君の質疑は終了いたしました。  次に、岡崎万寿秀君。
  214. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 申告納税制度の問題についてお尋ねいたします。  我が国の税制の基本は言うまでもなく申告納税制度でございます。これは戦前の賦課課税、お上が決めて国民に押しつける税制ではなくて、主権在民のもとで主権者である国民がみずから計算しみずから申告する、こういうすぐれた制度であるというふうに考えます。  そこで、税務行政もこの申告納税制度の精神に立ってきちっとやってもらわぬと困ると思うのですよ。大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、この申告納税制度に基づいて税務行政がその一層の定着と充実のためにもっともっと努力しなくてはいけないと思いますけれども、大臣としての所信をまずお伺いしたいと思います。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども実は申し上げておったところでございますけれども、戦前の課税というのはいわゆる所得調査委員というものを置きましてやっておったわけでございますが、戦後になりまして申告納税制度というものに変わりました。これは一種の税制及び税務行政の民主化ということであったわけでございますから、シャウプ税制もそのラインで書かれております。その基本の精神はもちろん今後ともますます発揚していかなければならないものと思います。
  216. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 税制の民主主義だとおっしゃいました。まさに私もそう思います。租税の民主主義、これはやはり主権者たる納税者を大切にするというところから出発しているというふうに思うのです。  そこで、国税庁にお聞きしますけれども、この申告納税制度のもとで主権者たる納税者に対する態度はどうあるべきか、かなり基本的な問題でございますが、どうぞ。
  217. 日向隆

    ○日向政府委員 今大臣からお答えになりましたことを踏まえまして、私ども税務行政の使命は、税法を適正に執行し、よってもって課税の公平の実現と租税収入を円滑に確保するということであろうかと思っております。申告納税制度を租税制度の基本としておりますことから、納税者のすべてが租税の意義を理解し、適正な申告と納税を行うことにより自主的に納税義務を履行するようにすることである、こう理解しております。  このために、従来から納税者の理解と協力を得ながら、特に税務調査の面におきまして、これは任意調査でございますから納税者の理解と協力がぜひとも必要でございますが、適正公平な課税の執行を通じて税負担の公平を確保し、国民の税務行政に対する信頼を得るよう努力してきたところでございますけれども、今後ともこの方針に沿って着実に一層の努力を積み重ねていくつもりでございます。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 何か盛んに読まれましたけれども、納税者の理解と協力は当たり前なんです。納税者の権利を守る、これも申告納税制度の基本的な立場に立った対応だと思いますけれども、どうですか。
  219. 日向隆

    ○日向政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども、税法を適正に執行するという立場でございますから、この中において納税者の権利が守られるべきは当然であるかと思います。
  220. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 ぜひ納税者の権利をしっかり守ってもらいたいと思います。  そこで、小倉税調会長が地方公聴会の終わった後、三月三日でございましたけれども、記者会見でこのように述べております。「クロヨン批判はムードだけで、農業、自営業者などに悪意の脱税はほとんどない」「クロヨン批判は実態から当たっていない。この言葉はまじめに働き、納税する人の心を荒廃させる」、かなり率直な御意見であるというふうに私は受け取っていますが、大臣、大多数の納税者はまじめな納税者であるというふうにお考えになっていると思いますが、いかがでしょうか。     〔主査退席、金子(原)主査代理着席〕
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さように思います。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 小倉税調会長も大蔵大臣も、大多数の納税者はまじめな納税者であるというふうにお考えになっている。そこから今の税務調査の問題についてお伺いするわけでございますが、最近の税務署の税務調査が納税者の権利を著しく軽視している、非常に高圧的で強権的に行われている事例が多々ありまして、私も多くの陳情、相談を受けています。  例えば、昨年十月六日の朝でございます。これは神奈川県保険医協会から出している新聞にも写真入りで載っておりますけれども、神奈川県川崎市のA診療所に、何の連絡もなくて突然、東京国税局の資料調査課の方が二名と川崎南税務署員二名、計四名が参りまして、A先生は午前中は二件の手術があるために別の日にしてくれないかというふうに言ったそうですけれども、待合室に上がり込んできた。  十二時過ぎて手術が終わった後調査を受け始めたわけでありますが、その途中でA先生の自宅にも二名の張り込みがあるということ、そういう近所の人からの連絡があって大急ぎで帰ったところ、やはり調査員が二名張り込んでいた。さらに当日、別の調査員が銀行や信用組合に対しても反面調査を行っている。このA先生というのは、医師の信用とプライバシーを大変傷つけるものだと怒っておいでになりまして、神奈川の保険医協会も東京国税局に抗議をされています。  これは朝日新聞の二月十四日付「ウイークエンド経済」にも載っていまして、結局調べたけれども申告漏れは見つからなかったと書いてあるわけであります。  これを見ましても、税務署というのは初めから納税者を、この場合はお医者さんですけれども、脱税者と見て調査に当たっているわけですね。調査した結果は申告漏れさえもなかった。これをこのように、張り込みはするわ、同時に反面調査はするわ、こういうことをやっていいのかどうか。こんな指導をされているのですか。
  223. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御指摘になりました個別の事件について私の立場で言うことは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、「税務運営方針」は御存じだと思います。ここに税務調査の方法について指導すべきことが書かれております。「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであること」こういうふうに書いてございます。  今委員が、例えば具体的に事前通知の問題、反面調査の問題についてお尋ねになりましたが、私は、今委員が御指摘になりました個別のケースが現実の姿においてどのようであったかについて現時点でつまびらかにしておりませんので、申し上げることは冒頭に申し上げましたように差し控えさせていただきますが、調査の現場においてはいろいろな問題があるとはいうものの、私どもとしては、今私が申し上げました「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものである」ということを強く指導しておるところでございます。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 「税務運営方針」のもとに指導しているのだったら、こういう指導は間違っているのですね。  さらに聞くと、同様なことが神奈川県津久井町のB病院でも起こっているわけです。ここでも同じように八名ほどの人が、十分ほどと言っていきなり上がり込んできて夕方の六時ぐらいまで調査をしたそうでありますが、その途中でそのお医者さんが予防接種のために外出をした。ところが、それに町役場まで尾行がついたというのです。帳簿類やその他の書類も開示しているにもかかわらず、当日に別のグループが四カ所の金融機関を反面調査しているわけなんです。  このような張り込みとか尾行が任意調査で許されるかどうか。先ほどあなたが読んだ「税務運営方針」には「社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行う」となっているのですね。尾行、張り込みが社会通念上相当ですか、任意調査ですか、はっきりしてください。
  225. 日向隆

    ○日向政府委員 今おっしゃいました調査はすべて任意調査のケースであって、査察調査のような強制調査のケースではないと私は理解いたしますが、先ほど私が申し上げました「税務運営方針」に明記されておるとおりでございまして、税務調査はあくまでも任意調査である限り「納税者の理解と協力を得て」「公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で」行われるわけでございますから、今具体的に御指摘になりました尾行とか張り込みということが事実あったかどうかは私もわかりませんけれども、それがこの考え方に照らしてやはり相当でないということであれば間違ったことではなかったか、こう思います。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 やったことは事実なんです。相当でないということであれば間違ったということですから、文字どおり相当でない、間違ったことだというふうにはっきり自覚してもらいたいと思うのです。  さらにお聞きします。  反面調査ですけれども、これは本人調査と同時並行してやられているのですね。あなたが読まれた「税務運営方針」にも「反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」というふうになっているわけですね。やむを得ない場合じゃないですよ、同時にやっているではありませんか。これも「税務運営方針」違反じゃありませんか。
  227. 日向隆

    ○日向政府委員 個別のケースにつきましては、現場でいろいろな事情があるものでございますから、社会通念上の判断におきましてやはりいろいろな判断があり得るのではないかということをちょっとつけ加えさせていただきます。  今委員が御指摘になりました反面調査でございますけれども、納税者の取引先、この取引先には金融機関も入りますが、これに対するいわゆる反面調査は、適正公平な課税を実現するために必要な資料を収集することを目的といたしまして、客観的にやむを得ないという言葉の御指摘がございましたが、私ども現在の運用といたしましては、納税者本人の協力が十分得られない場合や納税者本人に対する調査だけでは的確な調査ができない場合にはこれを行っておるところでございます。既に御承知と思いますけれども、判例におきましても、当該調査の必要性と相手方の私的利益と比較考量して、社会通念上相当な限度内である限り、権限ある税務職員の合理的な選択で反面調査ができるということになっておるところでございます。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 次長さんは同じところを何回も読みますけれども、私は先ほどAクリニックの場合を言いましたが、反面調査を本人の調査とあわせてやっているのですよ。本人が調査に応じなかったとか調査ができないというわけじゃないのです。こういうことをやられているのですね。ですから「税務運営方針」を読み上げるのではなくて、それがそのようになされていないことこそ問題だ、そのことを指摘しているのです。お医者さんでもこうなんですよ。まして、一般の業者の場合はもっとひどい状況がある。私は、税務調査権の乱用が大変まかり通っているということを指摘したいのです。こんな納税者の権利を踏みにじるような、強権的とも言える税務調査が末端では随分広く行われていまして、私はそうした事例をたくさん陳情を受けています。  これはこの朝日新聞にも載っていますけれども、国税庁が各署ごとに毎月成績表を公表して競争意識をあおっている、こういうふうにありますが、税務署でもいろいろなノルマがあるというふうにも聞いています。こういう異常な状態が生まれるのも、こうした税務署の税務行政に対する基本姿勢から来ているのではないかどいうふうに考えるのです。これは十分下を点検してもらいたいと思うのです。次長、今盛んに「税務運営方針」を読みましたけれども、そのとおりなされていないところに問題があるのですよ。下の方を十分点検していただけますか。
  229. 日向隆

    ○日向政府委員 御案内と思いますけれども、「税務運営方針」は昭和五十一年に策定され、その後変わっておりません。したがいまして、私どもは機会あるごとにこの「税務運営方針」の徹底について局署を通じて努力しておりますので、私はかなり定着してきていると思いますけれども委員の御指摘がございますので、なお一層努力してまいりたいと思います。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 一層の努力は何回も聞きました。私はおととしも同じ分科会でやりましたからね。努力だけじゃだめなんです。税務署をきちっと点検してほしいと思います。こういう「税務運営方針」から著しく逸脱している事例がないのかどうか、その点しっかりと指導してほしいと思いますが、再度お答え願います。
  231. 日向隆

    ○日向政府委員 委員の本席におきます御指摘は私十分承っておきますけれども、我々といたしましては、先ほど申し上げましたように税法を適正に執行し、もって課税の公平を実現し、租税歳入の円滑な確保を図るという観点から仕事をしておるわけでございまして、税務調査もこの一環としてやっているわけであります。その面におきまして問題がございますれば、私は十分これは調査したい、こう思っております。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 問題を十分調査してもらいたいと思います。  そこで続きますが、これは千葉の同じくお医者さんの場合に起こったことでございますけれども、反面調査の場合に、カルテを見て、そしてそこから治療内容をいろいろなことを聞いたということでちょっと問題になったことがございました。  きょう私がここで紹介したいのは、品川税務署管内で起こったことです。食堂を経営しているSさんの場合ですけれども、これもわずか二回の調査で反面調査に移っているわけでございます。昨年九月十一日、取引先の銀行です。これははっきりした人名も出ていますが、名前は差し控えますけれども、銀行の課長に対して、このSさんは民商に入っているという話をされています。ある人がどういう団体、どういう政党に所属しているかということは個人の自由、まさに基本的人権、結社の自由に属する問題で、こういうことを平気で反面調査の際に言うということは、これは公務員法百条の守秘義務違反になる、私はそう思うのです。反面調査の必要性を説明されるわけでしょうが、まさかこれによって公務員の守秘義務を破ってよいとお考えになっているということではないと思いますけれども、こういう点についてはどう指導なさっていますか。
  233. 日向隆

    ○日向政府委員 税務行政は、本来適正な課税の実現を図ることを目的として公平に執行されるものでございます。特定の団体に対し先入観念を持って行うべきものではないというのが私どもの基本的な考え方でございます。したがって、どのような団体に対しましても国税庁は中立の立場で税務執行を行っているところでございます。また、納税者がどのような組織に所属しようとそれは納税者個人の自由、これは委員の御指摘のとおりでございまして、私どもがそれに干渉する筋合いのものではありません。  なお、続けて御指摘になりました守秘義務違反との関係でございますけれども、国家公務員法あるいは所得税法、法人税法等に規定されております守秘義務についての規定の仕方は、御存じと思いますが、構成要件といたしましては職務上知り得た秘密ということになっております。したがいまして、今御指摘の特定な団体に加入しているかどうかが職務上知り得た秘密に該当するものでございましたら、これは守秘義務に違反するおそれがかなり強いと思いますが、その点の事実関係が明確ではないと思います。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 事実関係ははっきりしています。守秘義務違反です。こういうことのないようにひとつ指導してもらいたいと思います。  そこで、私は一つの文書を持ってまいりました。これは、昭和六十一年八月に東京国税局が出したものです。「特定事務担当研修資料」と銘打っています。この中で、昭和六十一年度の留意事項というふうにして、納税非協力団体についての対応が書いてあるのです。先ほど次長はどの団体に対しても差別的な対応をしてないとおっしゃいましたけれども、納税非協力団体とは何です。保険医協会を指すのですか、民主商工会を指すのですか。それで、この対応がまた問題です。「税務環境の整備」というところで、退会者に対しては再加入の防止を図るためこうせよ、ああせよ。さらに、納税非協力団体への加入を未然に防止する必要があるからああしなさい、こうしなさい。常時納税非協力団体に関する情報が得られるようにしなさい。  こういうことは御存じあるかどうか知りません。明らかにこれは憲法の保障する結社の自由、その活動への介入ではありませんか。こういうことを全体の奉仕者であるべき国家公務員、税務署員に指導なさっているのかどうか。大問題なんです。どうですか。
  235. 日向隆

    ○日向政府委員 御理解を賜りたいと思いますのは、私ども限られた職員で膨大な調査事務をこなしているわけでございまして、その調査につきましてはできるだけ、適正な範囲ではございますけれども、円滑に、かつ効率的に執行したい、こう思っているわけでございます。そこで、そうしました場合に、もし納税非協力あるいは調査協力活動がございましたらこれはまことに困るわけでございまして、これについて私ども、ある程度の関心といいますか注意を払うのは、これまた当然のことではないか、こう思っているわけでございます。今委員が申されました団体がどうであるこうであるということではございません。問題は、納税非協力活動が行われておるということに私ども注意と関心を、先ほど申し上げましたような観点から払わざるを得ないというのが実情だということでございます。
  236. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 納税非協力団体、先ほどの次長の答弁からいうならばこういう団体を特定すべきじゃないと思いますけれども、そういうものに対して関心、注意を払うのは当然だというふうにおっしゃっているけれども、こういうことが、結社の自由やさらにその活動に介入するようなことが許されていいものかどうか、今の憲法で。そのことを聞いているのです。中身が問題なんですね。こういう活動が適正であるかどうかということなんですよ。どうですか。
  237. 日向隆

    ○日向政府委員 今の御質問に対する基本的なスタンスは、私先ほど申し上げましたとおりでございますので重ねては申し上げません。特定の団体に対し先入観念を持って行うべきではないということと、それからどのような団体に対しても私どもは中立の立場で税務行政を行うということをはっきり申し上げたつもりでございます。
  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 どの団体に対しても中立な態度でやるということでしたら、こういうことがもし方針であるとするならば、それは適正じゃないし、そういうことはやっていないということになりますね。確認しておきます。
  239. 日向隆

    ○日向政府委員 具体的に前提的事実として委員指摘のようなことを私現時点で存じておりませんので、それを前提としたことにつきまして申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。御理解をいただきたいと思います。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 やっているのは事実なんです。しかし、あなたの答弁と全く食い違う。やめてもらいたいと強く要求します。  それから修正問題について話を進めたいと思いますけれども、これもまた随分たくさんの相談を受けています。反面調査で推計をして税務署員が突然やってきて金額だけを一方的に示して、これがだめなら更正を打つ。イエスかノーかなんですね。ノーならばもう更正決定だというわけです。これは、戦前のお上が決める賦課課税と全く同じなんです。申告納税制度のもとでこういうことが今平然として行われている。私、驚いているのです。  例えば大田区の蒲田税務署の場合ですが、去年の十二月二十四日、クリスマスの日になります。私の相談を受けたのは五名ですけれども、午後に突然署員が見えて、修正額のみを示して、翌日二十五日の十時までに回答をしなさいと言ってくるのです。二十八日に更正決定になりました。私は二十五日に署長さんに会いまして、これは「税務運営方針」から見ても問題じゃありませんか、社会通念から見て妥当性を欠いている、こんなクリスマス、大みそかという忙しい時期にいきなり来ていきなり金額だけ示してやるのはどうなんです。あれこれと言っていましたけれども、後でよく調べてみましたらそれは違っておりました。単なる言いわけにすぎないことがはっきりしましたけれども、「税務運営方針」は、将来にわたり適正な申告と納税を続けるよう指導する、つまりどこに問題があったのか、そのことをはっきり指導する立場でなければいけないというふうに書いてあるわけです。したがって、修正というのはあくまでも納税者が自主的に行うものでありますので、なぜこういう金額になったのか、納税者の理解と協力を得られるように説明するのが、誠意を持って話すのが当然じゃありませんか。どうでしょう。
  241. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御指摘になりましたように「税務運営方針」にこれも明記されておるところでございますが、税務調査は単に調査における非違の指摘に終始することなく、将来においてその納税者が二度と同様な非違を犯さないように十分調査内容について説明するということになっているところでございます。そういう意味におきましては、私は、できる限り現場におきましてもそういう努力をしているのだろう、こう思っております。  修正申告の件につきましては、これは御存じと思いますからくどく申し上げませんけれども、国税通則法第十九条で、更正があるまでは、確定申告をした納税者がいつでも確定申告等による所得や税額が過小であった場合に修正申告は税務署長に提出できるということにされておりますので、この法令にのっとりまして具体的な事実が把握された場合に納税者について修正を促すということはあり得ることだと思いますが、決して強要や押しつけをするべき筋合いのものではない、かように理解しております。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 聞いているのは、納税者が理解できるように説明しなさいということなんですよ。それはどうですか。
  243. 日向隆

    ○日向政府委員 それは、私今の答弁の前段で申し上げたつもりでございます。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 それがなされていないところが大問題なんです。ほとんどが金額だけなんですよ。なぜそうなのかさっぱりわからぬ。翌年はまたこれに基づいて申告しようがないのです。そういう問題が起こってくるのです。それもきちっと正してもらいたいと思います。  さらに、こういう問題が起こっているのです。税務署員の非常に恣意的な、個人的な判断で金額を幾らでも変えるのです。  これは大田区の雪谷税務署で起こっている事件で、二月十日に本人から署長あてに請求書が出されているわけでございますけれども、電気工事を営むYさん、税務調査を受けました。一月三十日にYさんの留守宅に、奥さん一人のところに署員が突然訪問して、そして上がり込んできた。初めに所得額は八百万円と言った。そんなに払えないと言うと、じゃ所得六百万円くらいでどうだ。払えない。それでは四百八十万円くらいでどうだと言うのです。一時間くらい粘って、断り切れずに、金額も大分少なくなったので奥さんは署名捺印をしたようです。  修正慫慂というのは、そんなに税務署員の胸算用だけでできるほど根拠のないものなんでしょうかね。こんなことがまかり通っている。しかも、夫人一人でいるときに上がり込んできてやるというのは、全く社会的に非常識であります。主人の帰宅を待たずにやる。ちょっと待てばいいじゃありませんか。事業専従者でもなく所得税の申告書の責任もない奥さんに、まさにバナナのたたき売りのような形で署名捺印をさせる。こういうのは「税務運営方針」とも違うと思いますけれども、どうですか。
  245. 日向隆

    ○日向政府委員 今御指摘の事実関係について私承知しておりませんので、それを前提に議論することは控えさせていただきたいと思いますけれども、私が先ほど再三申し上げましたように、税務調査をした結果、修正等の必要がありました場合には、単に非違の指摘にとどまらずして、将来二度とその納税者が同じような非違を繰り返さないためにも十分その調査内容説明し、調査による非違の更正、修正だけでなく、将来における指導的効果を持つようにということで私ども指導しておるつもりでございます。そういう観点からいたしますと、私が今委員からお聞きしましたようなことは起こり得ないことではないかという気がいたします。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 起こり得ないことが起こっているのが問題なんです。調べてもらいたいと思います。  そこで、時間が迫りましたので、最後の青色申告の取り消し問題について聞いておきたいと思うのです。随分方々で起こっていますけれども、青色申告というのは、もともと税務当局としてもこれを奨励する立場にあると思うのです。この青色申告事業者に対して、青色申告の取り消しをちらつかせておどかしに使って、そして高圧的な税務調査をやるような状況が進んできていますが、こういう青色申告の取り消しを口実にするようなことはやるべきじゃないというふうに思いますが、どうでしょうか。
  247. 日向隆

    ○日向政府委員 もう既に御指摘になりましたから詳しくは申し上げませんが、私ども申告納税制度を定着させるための一つの大きな柱は、やはり正確な記帳を備えるということであると思っております。その大きな一つの柱といたしまして、さらに青色申告者の育成という問題があるわけでございます。ただ、そうは申しますものの、やはり課税の公平ということを考えますと、単に青色申告であるというだけじゃなくて、実質的に青色申告の実を備えたものであってほしいということは常に考えて、したがって私ども、青色申告の普及という言葉のほかに青色申告の育成ということを今大きな推進の柱にしているところでございます。  そこで、それを前提にさせていただきまして御質問にお答えいたしますが、青色申告が取り消される場合は、御案内のように所得税法第百五十条に幾つかのことが規定されておりまして、これは明文の規定でございます。したがいまして、それ以外の場合に青色申告を取り消すことはできないわけでございますから、青色申告を取り消すことを税務調査の手段として使うということは、私ども、やはり先ほどと同じような答弁になって恐縮ですが、考えにくい、考えがたいところでございます。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 手段として使っては絶対ならない、私もそのとおりだと思うのです。しかし、それがなされているところに大きな問題がありますので、これもきちっと調査してもらいたいと思います。  最後になりまして大変恐縮ですけれども、大臣、お聞きになっていまして、申告納税制度は主権在民のもとでぜひ充実させていかなければならないという立場でございますけれども、このもとで私がたくさん事例を挙げてお尋ねしましたように、末端では納税者の権利を著しく踏みにじるような、「税務運営方針」からも逸脱するようなことがやはり起こっているわけでございます。こういうのは正していただかなくてはいけないというふうに思いますけれども、所信をお伺いします。
  249. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから幾つかの例を挙げてお尋ねでございました。私はその例につきまして具体的なことを存じませんので、一つ一つについて申し上げることはできませんが、もとより青色申告の自己申告の趣旨に基づきまして税務行政というものは運営されるべきものでございますが、税務署側におきましてもそれを助けていく意味で税務側の調査、直接個人に対するものもありましょうし、反面調査もありましょうし、そういう調査は当然いたさなければ課税の公平というものは期せられません。これは適正適法に行われます限り、納税者の側においても受け入れていただかなければならないことであります。もとよりそれがかねて指導の基準としておりますところに反するようなことがありますと、これは適当ではございませんからよく注意をいたさせますが、調査そのものは、これはやはり申告納税制度を反面で支える制度であると思っております。  一言つけ加えて申しますならば、そのような税務調査、税務当局の調査に対して、納税者の皆様に、政治あるいはイデオロギー等々のお考えいかんにかかわらず、ひとつ御協力をお願いいたしたいと思います。
  250. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 これにて岡崎万寿秀君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。
  251. 小川国彦

    小川(国)分科員 最初に大蔵大臣に御所見を伺いたいと思いますが、今大型間接税の問題が一つの焦点になってきておりますが、国民の側から見ると、その前に不公平税制をまず是正すべきじゃないか、その最たるものとしてキャピタルゲイン課税をすべしという世論は非常に大きなものになりつつあると思いますが、このキャピタルゲイン課税について、現在大蔵大臣としてこの問題に対処するどういうお考えを持っていらっしゃるのか、その所信をまず伺いたいと思います。
  252. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆるキャピタルゲインでございますが、土地等につきましては課税が行われておりますので、それのお尋ねではないと思います。恐らく株式、証券等に対するキャピタルゲインのお尋ねであろうと思いますが、総合課税のもとにおきましてはいかなる所得も原則としては総合されて累進課税を受けるべきものでございますから、キャピタルゲインでありましてもその例外ではないというのが基本の考え方であると思います。  ただ、現実の問題として、株式等々のキャピタルゲインはシャウプ勧告の後三年ほどいたしましたけれども、いろんな事情でなかなかうまくいかないということから、一般的にはいわゆる現在のような制度に、つまり年間に非常に多くの回数、またかなりの株数について行われた取引について課税をするということになってまいっております。現実の税務あるいは税制の動きとしては、必ずしも代替性があるという意味ではなかったわけでございますけれども、有価証券取引税がその後ずっと行われておりまして、一兆七千億でございますか、かなり大きな税収になっておるというのが現在までの経緯でございます。  それで、今回税制調査会にお願いいたしておりますことは、株式等についてのキャピタルゲインの課税を本当にまんべんなく、行き当たりばったりでない公平な行政としてつくり上げていくために具体的にどのようなことが必要であるか、どのような方法が可能であるかということを御検討願っておるということでございます。現実の問題としてキャピタルゲインもあればキャピタルロスもございますし、取得のときがいつであるとか、あるいはロスの方が多かったときにそれは何から控除するのかとかいったいろいろ具体的の問題がございますけれども、それと同時にまんべんなく、行き当たりばったりでない行政をするための仕組みが必要である。それはどういうことでならば可能であるかということをただいま御検討願っておるということでございます。
  253. 小川国彦

    小川(国)分科員 税制調査会での検討はいろいろ新聞紙上等でも拝見しているところなんですが、大蔵大臣御自身としてはこの辺をどういうふうに今御判断になっているか、その辺を伺いたいわけでございます。
  254. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 諮問をいたしましたのは、ある意味で私も私の責任と申しますか、総理大臣でございますから、私もそれを補佐する形で諮問をいたしておりますわけなんでして、公平に、行き当たりばったりでない行政ができるということであれば、それはやはり総合課税するのが本来であろう。その方法はどうすれば可能であるか、どうすることが望ましいかということを今できるだけ早く結論を得たい、こう思っておるということでございます。
  255. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、大臣御自身のお考えでは総合課税するのが妥当で、そういう方向での結論が出るというのを期待している、こういうことでございますか。
  256. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総合課税を可能にするような方法いかん、しかもそれはいろいろな方法が考えられるでございましょうが、国民全体のコンセンサスとしてまあまあそういう方法であれば受け入れられるというものでなければならないわけだと思いますけれども、そういう方法を探してみたい、こういうことでございます。
  257. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、総合課税でやるという形ならば今と全く変わらないことになってしまうのではないのですか。現在、総合課税でやっておられるのでしょう、届け出の件数については。
  258. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただ、小川委員も御承知のように、三十回以上十二万株というのはかなり実はまとまったケースでございますので、恐らくお尋ねの趣旨はそういうことに限らず、一般的に株式のキャピタルゲインの課税と言われるのでございましょうから、それでございますと非常に多数な件数、非常に多数なケースを扱わなければなりませんので、その具体的な方法いかんということでございます。
  259. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、大臣としては、一応キャピタルゲインの課税というものは非常に多数な件数に上ってくるであろうが、そういうものをどう捕捉して課税ができるか、こういうことも研究をしておる、こういうことでございますか。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうでございます。
  261. 小川国彦

    小川(国)分科員 具体的にはいつごろ政府として結論は出せるのでございましょうか。
  262. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいまキャピタルゲイン課税の問題も含めまして精力的に御審議願っているところでございますが、いつまでにという期限がついておることではございませんので、現段階で政府税調の結論がいつごろ出るのか、ちょっと申し上げかねます。     〔金子(原)主査代理退席、主査着席〕
  263. 小川国彦

    小川(国)分科員 先ほどの大臣の御答弁はちょっと矛盾しているように思うのでございますが、総合課税を可能にするような方法いかん、こういうことを言っておられまして、もう一つは、キャピタルゲインの課税は非常に多数な件数に上るので、その捕捉をどうするかというようなものを考えているということになりますと、このキャピタルゲインの課税というものを、あくまでも独自なものとしてキャピタルゲイン課税をするのではなくて、総合課税の中の一つとしてあくまでも考えていく、捕捉を考えていく、こういうことでございますか。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、私の申し上げ方が確かに不正確でございました。  最初に申し上げましたことは、すべての所得は原則として総合課税せらるべきものである、その原則はキャピタルゲインといえども恐らく例外ではないであろう、これは大原則でございます。しかし、さらにそういうことがいろいろな意味で難しいとか現実的でないとか、いろいろなことがあり得ることでございます。その場合には全く課税ができないということもございましょうし、総合課税以外の課税が考えられるということもあり得ることであります。ですから、原則として一番望ましい形から、現実の行政に入ってまいりますと変化していくことはこれはあり得ることで、二つのことをちょっと一緒に申し上げましたから、申し上げ方が十分でなかったかもしれません。そういう意味でございます。
  265. 小川国彦

    小川(国)分科員 そういたしますと、大臣のおっしゃるのは、すべての所得に総合課税をしていくのは大原則だ。しかし、それから発展していってキャピタルゲイン課税というものがそれから取り出されて、そこに新たな課税が行われる、こういうことも、原則はあるけれども、その原則から発展していってそういう臨機応変の措置というか応用の措置考えられる、こういうふうに理解していいですか。
  266. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその辺のところを今税制調査会に御検討願っておるものでございますから、今私がイエスと申し上げますと、何かそういうことになっていくのではないかというふうな印象をお持たせしてはいけませんので、今その辺のことまで含めて御検討願っておる。物の考え方としてはいろいろな対応があり得るということを抽象的に申し上げたにすぎません。
  267. 小川国彦

    小川(国)分科員 どうも答弁がだんだん焦点がぼけてくるのであれなんですが、そうすると、先ほど大臣のお考えとしては、キャピタルゲイン課税は非常に多数な件数があるので、これを捕捉するという方向も考えなければいかぬ、こういうふうに述べられたのですが、ではそれはどういう形でおやりになろうとお考えになっていらっしゃいますか。これは大臣に答弁していただきたい。私のような素人が聞いているのですから、これは大臣でも御答弁できますから、大臣にひとつ。
  268. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府委員から申し上げます。
  269. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほどからの大臣の御答弁にございますように、シャウプ勧告で原則総合課税という体制から、キャピタルゲインはいろいろ把握に問題がありまして、結局現行制度のもとでは総合課税になっていないわけでございます。原則非課税でございまして、例えば継続的取引でございますとか、そのような特定のものだけを取り出して課税するという姿になっているわけでございます。  そこで、現在政府税調等で議論されておりますのは、最近の経済情勢等、あるいは取引の実態等、あるいはほかの所得とのバランスなどを考えます場合に、キャピタルゲイン課税につきましても原則課税という世界に置きかえることができるのかどうか、その方がよいのではないかという意見を受けて検討しているわけでございます。しかし、もともと原則課税から外れたにつきましては理由があったわけでございまして、キャピタルゲインの場合、有価証券譲渡益の場合には、非常に課税の根拠、その課税の体制といいますか、把握がなかなか難しいわけでございます。そこで、もし原則総合税に移行する場合には、そこでいろいろな問題が生じないように把握体制というものを十分整備しなければいけない。その点もあわせまして検討をお願いしているということが、先ほど大臣が御答弁なさった趣旨でございます。
  270. 小川国彦

    小川(国)分科員 ちょっと委員長にも不満はあります。大臣に聞いたら大臣に答えさせてもらわないと。  それでは具体的な数字でちょっと伺いたいのですが、キャピタルゲイン課税についての件数と譲渡益の額が六十年七十件、六十一年百八十六件、それで六十年度の取引総額は二百六十億円、うち課税対象となった売却益は五億円、六十一年度の取引総額は九百三十億円で、うち課税対象となった売却益は六十億円、こういうふうに伝えられていますが、この数字はそのとおりですか。
  271. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいま手元に金額の数字を持っておりませんが、有価証券譲渡益の申告状況、いわゆる継続的取引と言われているものにつきましては六十年度七十件、それから六十一年度百八十六件でございます。
  272. 小川国彦

    小川(国)分科員 金額はいかがでございますか。――それじゃその先を伺っていますから。  この数字を見て私感ずることは、件数も非常に少ないですし、取引価格も売却価格も低い。自己申告だから金額か低いのじゃないかと言われているのですが、株式売買高が約五百兆、こういう時代にこういう低い数字というのはあり得ないのじゃないか。一体この売却益に基づく納税額、課税された額は幾らになっているか、キャピタルゲインに対して幾らになっているか、この数字を伺いたいのでございます。
  273. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほどの継続的取引の所得額でございますが、六十年度で五億円でございます。それから六十一年度で約五十九億円でございます。
  274. 小川国彦

    小川(国)分科員 これに対する税額をお願いしております。
  275. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 税額はただいまわかりかねます。この分につきましては所得が総合されておりますので、このキャピタルゲインの分についてだけの税額というのはわかりかねます。
  276. 小川国彦

    小川(国)分科員 これについては、申告書によって調査をするとか、大蔵省自体が国税庁当局等を活用なさっておやりになれば申告書の中で把握できるでありましょうし、あるいはまた証券会社に対してさまざまな報告を皆さん求めていらっしゃるわけですから、そういう中で当然、証券会社もあれだけ機能がコンピューターでシステム化されておりまして、皆さんが年間の取引件数なり金額なりを提示したものを数字として差し出すことは極めてたやすいことではないか。しかも、そういう件数と金額までわかっていて税額が不明というのは、極めて大蔵省の怠慢じゃないか、サボタージュじゃないかと私は思うのですよ。国民に対して、こういう有価証券の、キャピタルゲイン課税というものを何か証券会社の味方になってやっているんじゃないか。  それからもう一つは、自民党が、これは大臣も含めてなんですけれども政府税調もキャピタルゲイン課税をやれ、それから財界の中にもある、労働界も大賛成、国民世論の大勢はこれをやれと言うのですよね。だけれども、大蔵省と自民党税調だけがどうも煮え切らないのです。これは政治家が株の取引で政治資金をつくったり、あるいは証券会社から多額の政治献金を受けている、そういうことでどうもこのキャピタルゲイン課税に対して明快な態度をとれないのじゃないか、こういう国民の疑惑があるのです。  そういう点から、やはり少なくもこういう数字ぐらいきちっと大蔵省が、私は把握はしていると思うのですよ、公表しないだけなんで、少なくも大蔵省の機能と能力とをもって、これだけ件数と金額がわかっていて納税額がわからないなんて、これは日本の大蔵省の水準を国際的には疑われるのじゃないか。情報公開の立場からはこういう数字をきちっと把握して公表する責任というのは大蔵省当局はあると私は思いますよ。大臣、いかがですか。
  277. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはちょっと、そうおっしゃいましても、総合課税されているわけですからその部分の税額というお話は無理でございますわね。
  278. 小川国彦

    小川(国)分科員 それは総合課税、私は多角的に言っているわけですよ。一つは、所得申告の面から押さえられないか。それから総合所得だっていろいろな何の収入が幾らというのは、全部我々だって個人だってみんな明細を出しますでしょう。当然その中に何のやつで幾らというのは報告に入るはずでしょう、明細は。抜き出せばわかるはずでしょう。それから、もしそれができないとしても、もう一つ今度証券会社に報告を求めるという手があるでしょう。証券会社が持っている顧客名簿の中からは、これだけの規定の件数以上、金額の取引をやった会社なんというのは一目瞭然にわかるはずですよ。それができないような会社は今の証券会社にはないと僕は思いますよ。コンピューター管理で、一人一人のお客様の取引経過なんというのは全部立派な記録があると思いますよ。要は、大蔵省がその協力を求めて、少なくも今後の税制審議の中でそのベースになっていく数字だから出してほしいと。個々の会社のを出せと我々言っているのじゃないのですよ。全体の件数の金額を出せと言っているのです。そのぐらいのことができなくてキャピタルゲイン課税をなぜ政府税調が検討できますか。自民党税調、大蔵省、なぜ検討できますか。そういう基礎数字がなくて何で検討しようというのですか。いや、大臣に聞いているのですよ。
  279. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それなら私が。  これは政府委員がお答えすれば十分なことでございますが、総合課税だということを御存じなわけですから、その分の税額というのはどうやって計算しますか。(小川(国)分科員「いや、だから二つ聞いているでしょう。その後段の方を説明してくださいよ」と呼ぶ)その計算できないじゃないですか。そんなことはもう極めて簡単なことじゃございませんか。累進税率、どの税率で掛けますか。
  280. 小川国彦

    小川(国)分科員 あなた、私より大蔵大臣を長くやっているからね。さっきからずっと答弁に立ってくれと。なぜ途中で審議官にかわるの、そういう方が。だから、堂々と私と一騎打ちでやりましょうよ。僕の方が税法は素人なんだから。その素人に対してあなたが答えないで審議官に答えさせるというのは、大臣として極めて無責任ですよ。国政審議に対して非協力ですよ。だから、最後まであなたとやりましょうよ、素人の私がわからないことを聞いているのだから。  じゃ第二の、証券会社に対してあなた方が報告を求めることはできないか、そこのところはどうですか。
  281. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは本来政府委員がお答えすべきものだと思います。私は回避しているのではないのです。まず、キャピタルゲインによる所得は幾らかということは先ほどお答えをしたのです。それに対する税額は幾らかとおっしゃいますから、これは総合課税でございますからほかの所得と総合されて累進税率が適用されるのであって、その部分についての税額は幾らかというお答えはできないのが本当であります。これは政府委員がお答えすべきこと。
  282. 池田行彦

    池田主査 それでは政府委員から正確に事務的に。
  283. 小川国彦

    小川(国)分科員 いや、いいですよ。少なくともこういうことでこの売却益に課税したらどのくらいの推定税額になるか、その辺のところは出るわけでしょう。いや、大臣に聞いているの、ですよ。私、きょうは大臣に聞いているのですよ。大臣、私より頭がいいし経験があるので。
  284. 池田行彦

    池田主査 小川君に申し上げます。  まず、ただいまの問題は事務当局が……(小川(国)分科員「いや、大臣に聞いているときは、委員長、大臣に答えさせなさいよ。大臣に聞いていることは大臣。だから、大臣にちゃんと私に納得いくように説明させてくださいよ」と呼ぶ)まず尾崎審議官から答弁を求めます。
  285. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど来の先生の御質問にございますように、申告書を検討いたしますとその方の譲渡所得が幾ら、給与所得が幾ら、雑所得が幾らというように所得別の所得はわかるわけでございます。ところが、総合課税でございますからその所得を全部足し合わせたところで税率、税額表を適用いたします。その税額表は累進税率になっているわけでございますから、そこでそれぞれの所得の源泉別にその税額が幾らということはわからない。そこが先ほど来申し上げておりますように、総合課税でございますから税額についてはわかりませんということを申し上げているわけです。
  286. 小川国彦

    小川(国)分科員 これを推定するということはあなた方は研究したことないですか。税率を幾ら掛けたら幾らになるという推定はやったことありませんか。
  287. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 総合して税額表を適用するというのが現行制度でございますから、それにどういう税率を当てはめたらいいのか。税率を当てはめればいろいろな推計はできましょうけれども、どの税率を当てはめたらいいのかというのがわからないわけでございます。
  288. 小川国彦

    小川(国)分科員 ともかくこれに対しての税額はやみの中に置かれている、やぶの中にあるということがよくわかりました。  それで伺いたいのですが、キャピタルゲイン課税を行うとすると、五百兆の株式売買高の二分の一、これの二三・九%の個人株主割合掛ける一〇%の利益率、それに三〇%の税率を掛けますと約一兆七千億の税収を望める、こういう計数がございますが、この出し方については大臣としては妥当だというふうにお考えになりますか。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府委員がお答えいたします。
  290. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいま一気に述べられましたのでちょっと正確には、あるいは検討させていただきますが、取引がありましても所得もありますしロスもあるわけでございますから、ただいまのような計算で直ちに税額が出てくるのかどうか、ちょっとわかりかねます。
  291. 小川国彦

    小川(国)分科員 大蔵省としては、キャピタルゲイン課税をしたら標準的に見てどの程度の税収が見込めるという御計算は現在おありですか。
  292. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 それはございません。標準的といいますか、総合課税の世界に戻すわけでございますし、それから、株の取引によりまして利益が出る場合それから損をする場合がございますから、それを通算いたしますと一体どれだけが所得として残るのかというのもなかなか難しいところでございまして、そういう推計はございません。
  293. 小川国彦

    小川(国)分科員 少なくともキャピタルゲイン課税が不公平税制是正の野党要求の第一項目に挙がっているわけですよね。それを今後政府と野党と協議してそこから財源を生み出そう、そういうときに大蔵省がキャピタルゲイン課税をやってどのくらいの税収が見込まれるという試算というのは全くないのですか。
  294. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 キャピタルゲイン課税をどのように改めたらいいのかということを現在検討しているところでございますから、いろいろな取り組み方があると思いますけれども、その税収自体はどういう仕組みが決まるかによって決まってくることでございまして、現在まだどのようにするのかあるいは今のままでいくのか、総合課税でいくのかあるいは利子の例のように分離課税でいくのか、いろいろなことが言われておりますけれども、それをどういう形でやるのかということが決まっておりません。それで、その税収の推計をするというのは大変難しいところでございます。ましてや、先ほど大臣のお話にもございましたように有価証券取引税という税がございまして、それとの関連もございまして、税収としてはどういうことになるのか、そこの推計は現在ではいたしかねます。
  295. 小川国彦

    小川(国)分科員 ともかく新型間接税と言っていながら、国民の大多数が是正すべきだというキャピタルゲイン課税について、一般的にはこのぐらいの税収が望めますというようなことを国会で大臣が明確に答えられない。これは減税の財源論争にしてもあるいは大型間接税の問題の論争にしても、こういうところを大蔵省がもっと明快に――これからいろいろやるような審議官考えじゃ、国民の理解と協力は得られないですよ。そんな秘密主義の中でやっていたのじゃ。だから、さっき頭の悪い私が聞いていてわかったことは、ともかくキャピタルゲイン課税というのは今は全く有名無実のものだ、税額すら把握されていないという有名無実のものだということははっきりわかった。大臣もそう認識されますか。
  296. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今確かに言えますことは、非常に多数の回数、例えば今度新しく三十回でございますか、それから十二万株というようなことになりますと、それはかなりまとまった取引でございます。それについては課税をするということになっておりまして、それ以外の、それは取引の数はたくさんあると思うのでございますが、それは課税の対象になっていないという意味では、株式のキャピタルゲイン課税は部分的なものであるということは言われるとおりでございます。  それから、私どもにわかっておりますのは、先ほども政府委員が申し上げましたように、そのかなりの、大口といいますか、まとまった取引についてのゲイン、所得はどのぐらいであるかということはわかっておりますので申し上げたわけでありますが、その税額というのは、累進税率でございます関係でその部分についての税率というのが仮定し得ないわけでございますから、税額で申し上げることはできない、こういうことでございます。
  297. 小川国彦

    小川(国)分科員 その点については、これからひとつ大蔵省も大いに取り組んで、もっと国民にわかりやすくやってもらいたいと思います。  次に、新大型間接税の最終案は一般消費税方式で行われるのではないか、売上税と九割方同じ一般消費税方式で来るのじゃないか。そうすると、中小企業などは法人税、所得税に加えて一般消費税とダブルで税金を納めるようになる。それから最終的にはやはり一般消費税というのは消費者に課税されるということが大原則になってくる。こういうことで国民生活への影響が非常に大きい。どうも大蔵省は今度は、手間がかかって手のうちがわかってしまう売上税では反対が多いから、手間要らずで手のうち見えぬ消費税でやろう、一般消費税でやろう、どうもこういうような腹ではないか、こういうふうに皆さん見ているわけなんですが、大臣の大型間接税についての、これは一般消費税でやるのではないか、こういう大方の国民の見方があるわけですが、大臣はこの点どういうふうにお考えになりますか。
  298. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これもただいま税制調査会で御検討願っているところで、税制調査会御自身もまだ案を持たずに、先般全国で御承知のように公聴会をやられたところでございますので、その結果を持ち寄られて、これからどういう幾つかの案が可能であるかということを検討される、その今やさきでございますが、政府としましては、昨年ああいう経験をいたしましたので、そこからいろいろな反省をしておりまして、昨年なぜあのような政府提案が廃案になったか、それについてはいろいろ反省をしておりますものですから、できるだけ慎重に国民のお考えを聞き、また幾つかの仮にたたき台のようなものでも出ましたら、それについてさらに国民がどう考えられるか、そのような段階を税制調査会で踏んでいっていただきたいということを申し上げておりまして、ただいま案なしでの二十回の公聴会が終わったところでございますから、まだこれからどのような案を税制調査会がお考えになってこられますか、ちょっと予測が可能でございません。ただ申し上げられますことは、昨年のようないろいろな不手際がございましてああいう結果になりましたから、そうなってはいかぬということだけはかたく戒めておるところでございます。
  299. 池田行彦

    池田主査 小川君、時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。
  300. 小川国彦

    小川(国)分科員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  301. 池田行彦

    池田主査 これにて小川国彦君の質疑は終了いたしました。  次に、河村勝君。
  302. 河村勝

    河村分科員 きょうは国鉄年金のこれからのことについてお尋ねをいたします。  御承知のように国鉄の共済年金は既に破綻を来しておりまして、現在、六十四年までの間は国家公務員並びに電電、専売の共済組合の援助を得て財政調整によって支払いを維持しているわけでありますが、もう来年は財政調整の期間が終わって、六十五年から以降は見通しがついていない状態であります。  それで、昭和六十年の衆議院の年金問題の連合審査の際の政府の統一見解によれば、六十一年度中に六十四年までの計画について具体的な立法措置を決めて、六十五年以降の分については、その後速やかに対策を講じて、支払いの維持ができるように措置いたしますと、こういう政府の統一見解が出ております。  ところが、もう六十三年に入りまして、時期的にも大分切迫をしておりますが、どうも今までの政府のおとりになっておる段取りを見ておりますと大変おくれておるように思いますが、大蔵大臣、一体六十五年以降に間に合うようにおやりになっておられるのか、これからおやりになるのか、その辺をまず見解をお尋ねをいたします。
  303. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 後ほどまた細かいことは政府委員から申し上げますが、確かに六十年の十一月に、六十四年度までのことにつきましては支払いに支障のないようにということを統一見解で申し上げまして、この分は一応六十一年度中に結論を得たわけでございますが、六十五年度以降のことにつきましては、実は四大臣によりまして日本鉄道共済年金問題に関する閣僚懇談会をつくりました。それは運輸大臣、年金問題担当大臣、これは厚生大臣でございますが、内閣官房長官、それと大蔵大臣でございます。そこでいろいろ相談いたしまして、この問題は申し上げるまでもない、河村委員は大変お詳しくいらっしゃるわけですが、問題が難しゅうございますので、各界の有識者の方にまことに申しわけないけれどもお集まりを願って御議論をいただきたいと考えまして、鉄道共済年金問題懇談会をつくらしていただきまして、御多忙な方々にこのメンバーになっていただきました。そうして、できますならばことしの秋ごろまでに御意見をちょうだいをいたしたい、それを踏まえまして具体案を作成してまいりたいと思っておるわけでございます。
  304. 河村勝

    河村分科員 どういう形で新しい対策ができるかはこれからの問題でありましょうが、いずれにせよ立法措置予算措置が必要になるのだと思います。そうなりますと、六十五年以降に間に合わせるためには、六十四年度といいますか、来年の通常国会での予算ないしは立法措置が必要になるはずだと思うのですが、この秋ごろに学識経験者による懇談会の答申が仮に出るとして、そういうピッチで行って一体間に合うのでしょうか、どうなんでしょうか。
  305. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 法案提出のスケジュール等も含めましてまだ具体的なスケジュールが完全に固められる状況ではございません。先生がおっしゃられましたような六十五年度に間に合わすためにはというところでの法案の時期というのは、一つの想定としては理解できるわけでございますが、いずれにいたしましても、今大臣が申されましたような懇談会の方々にも大所高所の御議論をお願いする。本当の年金専門家と申しますより、大来佐武郎先生を初めといたしまして各界の有識者に広く御議論いただきます関係上、どうしても数カ月の間に結論を得るというわけにはまいりませんものですから、大臣が言われましたように、本年の秋ごろを目途に何とかお願いをしたいということで、現在基礎的な勉強を含めて御議論いただいておるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、そのような感じで御意見の取りまとめをいただきました暁には、これを具体案にまとめるべく、当然のことながら政府として最大限の努力を傾けるという覚悟でおることは間違いございません。
  306. 河村勝

    河村分科員 今私がお聞きしたのは、時間的に立法措置予算措置考えれば、来年の通常国会でなければ間に合わないのじゃないか、こういったことについてはどうお考えですか。
  307. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 先ほどもちょっとお答えをしたつもりでございましたが、現段階で、その点につきまして来年の通常国会に提出いたしますと明言申し上げる自信はまだないのでございますが、大変有力なお考えであろうかと思います。
  308. 河村勝

    河村分科員 どうも有力と言われても困るのですが、大臣、何とかひとつ努力するぐらいの返事はしていただけませんか。
  309. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう努力をいたさなければならないと思っております。
  310. 河村勝

    河村分科員 それで、現在年金を受給している者が一番心配しているのは、一体これから今までどおり年金がもらえるだろうかというのは大変な心配でありまして、今日までのところ、財政調整中は、一般の年金がベースアップをされましてもベースアップはストップされています。されているけれども、今もらっている額、現在の額はそのまま維持をされているという状態でありまして、幸い物価もこのところ安定しているものですからまあまあ辛抱できる状態であるものですから、まずまず今までのところまでは来ております。しかし、国鉄共済の状態が大変苦しいことはみんな知っておりますから、六十五年以降減らされるのじゃないかというような心配が非常にあるわけですね。  そこで、この統一見解におきましても、「その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるよう措置いたします。」こう書いてありますのは、これは単に幾らかでも払えばいいということではなくて、少なくとも最低限度合もらっている額を減らすことはないというふうに考えなければならないし、そうでなければ、公的年金に対する国民の信頼感、これは国鉄関係だけではなくて、全体の信頼感をなくすことに相なるであろう、そう思います。大臣どうですか、少なくとも今もらっているのを減らすことはないというぐらいのことはおっしゃれるものだと思いますが、いかがでございますか。
  311. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 もう先生が御指摘になられましたように、この鉄道共済の維持の中で、既に受給者、組合員それぞれにいろいろと自助努力をお願いしておるわけでございます。  そういうわけでございますが、六十五年度以降、さらに制度を維持してまいりますために鉄道共済年金の給付を具体的にどうするのだということになりますと、やはり六十五年度以降対策の一環としてというか、全般の中で検討される必要はやはりあろうかと思います。現在、鉄道共済年金問題懇談会におきまして広く有識者の皆さんに御議論をしていただいておりますので、政府の方でその点だけに限って、ここはこういう前提でお願いをしたいと申し上げることができる段階ではないということを御理解いただきたいと思っております。
  312. 河村勝

    河村分科員 大蔵大臣、事務当局の答弁ならば必ずそういうことに相なります。ですけれども、公的年金の信頼性全体を考え、しかもベースアップをストップして現給を維持しているわけですから、だんだん値打ちは下がってきているわけですね。それすらも維持できるかどうかわからぬというのでは、これは大蔵大臣の答弁にはならないと思いますが、どうなんでしょう。
  313. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは御推察のとおりなかなか容易でない問題でございますし、将来の一般年金の問題とも場合によっては関係をしてくるというような可能性を持っておりますものですから、そういう意味では、よほど注意して進んでまいりませんと、かえっていろいろな方に迷惑をかけるようなことになりかねないものでございますので、今の段階で先ほどのように政府委員が申し上げておるのでございます。  河村委員のおっしゃっておりますことは、もとより私どもよくわかって伺っておるわけでございますけれども、そのようにあっちこっちへの関連のある複雑な問題でございますので、もうしばらく懇談会の、そのために実は懇談会もお願いをした、そういう要素もございますものですから、しばらく懇談会の御検討にゆだねて推移を見させていただきたいと思っております。御指摘の趣旨はよくわかっております。
  314. 河村勝

    河村分科員 そうかもしれませんけれども、しかし公的年金制度というのは、やはり国民の信頼を得るものでなければならない。だから一カ所がおかしくなれば全体の信用はなくなるという性格のものだと思いますね。ですから大臣としては、少なくとも今までもらっているものまで減らすようなことはやるべきものではない、そういう考え方ぐらいははっきりおっしゃってもいいのじゃないですか、いかがでございますか。
  315. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ財源をどういうふうにしていくかとか制度問題にも発展する可能性がなきにあらずでございますから、どうなってもいいと思えば別にそういう難しいことをすることもないのでございますが、心配いたしておりますから、そういういろいろなことを考えておりますので、その辺のところはどうぞそこらで御理解をお願いいたしたいと思います。
  316. 河村勝

    河村分科員 ところで、六十五年以降の国鉄共済組合の収支見通し、これは一応できていると思いますが、細かいことは時間もありませんから結構ですが、大まかなところでどのくらい赤字が出て、どのくらい補てんしなければならぬかということをちょっと説明してください。
  317. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 概略の推計をいたしております。六十五年度から五年間、六十九年度まででございますが、六十五年度から六十九年度までの平均で申しますと、鉄道共済年金は収入が年平均六千六百億円。支出が約九千六百億円というふうに見ておりますので、毎年およそ三千億の赤字という姿が六十五から六十九の五年間に関しては大体推計できると思っております。それをそれ以前の六十四年度までと比べますと、毎年度の赤字が五年間約五百億ということでございましたので、六十五年度以降は、六十四年度までに比べますとかなり大幅な毎年度の赤字になる、これがまさに大問題である、こういうことかと思います。
  318. 河村勝

    河村分科員 大分苦しい状態が続いておりますから、積立金も減っているであろうし、掛金も上がっておるはずです。掛金の方は千分の八十四・九五、ですから抜群に高いわけですね。それから積立金の方もほとんどもうなきに等しい、短期給付を賄うのに精いっばいくらいのものだろうと思いますが、そういう状態を前提にするともはや掛金を上げるわけにはまいらぬし、積立金のような持参金もないということになると、今までのような他の公社あるいは国家公務員、その枠を地方公務員に広げて同じような財政調整をやるということは事実上不可能であろう、そう思うのですが、いかがです。
  319. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 積立金の状態は、六十四年度末までの対策の中で若干積立金の取り崩しも行わしていただくということもございますので、確かに六十四年度末で千六百億くらいに減ってしまう、それだけで何かに対応するということは困難でございます。また、掛金について先生がおっしゃられましたように相当な努力をしていただいているということも、これは承知しておるわけでございます。  しかし、六十五年度以降対策全般として、大臣もお答え申し上げておりますように、極めて大きな広がりを持った問題でございますので、先ほど来何度も繰り返すようでございますが、懇談会で御議論をお願いしておるわけでございます。したがいまして、その具体的な方策、何か一つだけこれという決め手が出てくるとも私ども想定できないわけでございますけれども、具体的な方策をどういうふうに組み合わせてどう考えたらいいのだろうかという議論になる段階が参ると思うのでございますが、現段階ではまだそれを具体的に申し上げられる段階にないということでございますので、この点については御理解を賜りたいと思っております。
  320. 河村勝

    河村分科員 厚生省から来てもらっていますね。六十一年四月から公的年金制度の一元化の第一歩ができて、基礎年金とそれからそれぞれの組合の給料比例年金、二階建ての年金ができてきたわけで、給付の額は大体統一されたと言っていいだろうと思うのですが、この年金制度の改革についての閣議決定を見ますと、六十一年度以降は給付と負担の両面において制度間調整を進める、こう書いているのですが、一体具体的に六十一年度以降給付と負担との関係、これは両面で制度間調整がどの程度進んでいるのか。
  321. 松本省藏

    ○松本説明員 お答えをいたします。  先生今御指摘のとおりでございまして、先般の年金改革によりまして全国民に共通の基礎年金というものが導入されたわけでございます。これによりまして、公的年金の一階部分につきましては給付と負担の両面におきまして公平化が図られた、またあわせまして二階部分につきましても共済年金の給付水準が厚生年金の給付水準にそろえられたということで、将来に向かっては二階部分の給付面での公平化も図られたという形になったわけでございます。したがいまして、今後の課題と申しますと、被用者年金につきましての負担面での公平化をどういうふうに図っていくかというのがこれからの課題ということになっていくわけでございます。  このために、年金問題担当大臣が座長を務めております公的年金制度に関する関係閣僚懇談会、これが昨年の九月に開かれまして、昭和七十年を目途とする一元化に向けまして来年、昭和六十四年の財政再計算期におきまして地ならしできるものは地ならしをするということを申し合わせたわけでございます。これを受けまして、現在この閣僚懇の下部機構でございます公的年金制度調整連絡会議、これは関係各省庁の局長クラスで構成されている会議でございますが、ここにおきまして、七十年を目途とする二元化を展望しながら六十四年の次期財政再計算期におきまして地ならしできる事項についての具体的な検討作業が進められているということでございます。
  322. 河村勝

    河村分科員 給付が一元化をしていながら、それぞれの年金財政の違いによるのですけれども、余りにも負担の差が大き過ぎるのですね。だから、一番安いところは五%台、それで国家公務員などは六%、専売が七%、JRに至っては八・五%、もう限界以上まで来てしまっているわけですね。だから、公的年金と言いながら、同じ給付をもらいながら負担額が倍だというのは、一体これは許されるのであろうか。いろいろな懇談会その他もおやりになるのは結構でありますけれども、これは早急に解消しなければならないものだと思うのですが、もう少し具体的に今後のスケジュールというのはわからないのですか。お立てになっていないのですか。
  323. 松本省藏

    ○松本説明員 先生御指摘のとおり、公的年金各制度におきまして負担、具体的に申しますと保険料率でかなりの格差があることは十分承知をいたしております。先ほど申しましたように、これからの公的年金一元化の課題というのはまさしくそういう負担面の制度ごとの格差というのを一体どういうふうに考えていくのか、どういうふうに対応していくのかというのが課題でございますので、そういう課題を念頭に置きながら、基本的には七十年の一元化完了というものを目途にしながら来年の財政再計算期にできるだけ地ならしできるものについては地ならしをするという方針で対応しているところでございます。
  324. 河村勝

    河村分科員 来年の財政調整期、精算期……。
  325. 松本省藏

    ○松本説明員 昭和六十四年に厚生年金その他公的年金の各制度が財政再計算というのをやる時期に来るわけでございます。それにあわせまして、いろいろな地ならしできる事項について地ならしをしていく、こういうことでございます。
  326. 河村勝

    河村分科員 それを待たなければいけないだろうと思いますけれども、七十年まで待つのには余りにも問題が多過ぎるのですね。恐らく国鉄の問題が一番大きいのですけれども、その他のものを含めて不公平をなくする改革をやろうと思えば、もう少し時間を繰り上げて、一挙に本当に公的年金一本化をやってしまうというのが一番望ましい方向だと思うのですけれども、そういう考えでおやりになる気はないのですか。
  327. 松本省藏

    ○松本説明員 御指摘ではございますけれども、公的年金制度それぞれ歴史的にもあるいはその他のいろいろな沿革を異にしておりまして、一元化を実施するといいましても非常に難しい問題がたくさんあるわけでございます。したがいまして、一元化を進めるのにはある程度時間をかけながら、段階を踏みながら進めていくということが必要ではなかろうかと思っておりまして、そのために、先ほども申し上げましたように、明年の財政再計算期に地ならしできるものについて地ならしをし、そしてそれを踏まえて七十年に一元化を完了する、こういうスケジュールを立てているわけでございまして、このスケジュールを早めるということはなかなか実際上は難しいのではなかろうかというふうに考えております。
  328. 河村勝

    河村分科員 きょうはいずれにしても時間がありませんからこれでやめたいと思いますが、最後に大蔵大臣、もう少し温かい気持ちの御返事がいただけるかと思ったら、どうもちょっとクールというのかコールドというのですか、クールでなしにコールドみたいな感じの御答弁で残念でしたが、少なくとも時間的に六十五年以降の見通しのつかないことのないようにする、しかも公的年金の本来の性格からいって関係者が不安を抱くようなことにはしないというぐらいの御答弁はできるかと思いますが、いかがですか、最後に。
  329. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今いろいろお尋ねがございまして、政府委員からもお答えしておりましたように、大変いろいろな大きな問題に発展する可能性がございますものですから、できるだけ各方面の協力も得なればなりませんで、それで慎重にお答え申し上げておるわけでございますが、河村委員のおっしゃっていらっしゃいますことはよくよく心にとめて問題の解決を図ってみたいと思います。
  330. 河村勝

    河村分科員 終わります。
  331. 池田行彦

    池田主査 これにて河村勝君の質疑は終了いたしました。  次に、安藤巖君。
  332. 安藤巖

    安藤分科員 私は、幾つかの税務署員の行き過ぎ調査の問題について、具体的な事実を指摘しながらお尋ねをしたいと思います。  主として国税庁にお尋ねをするわけですが、大蔵大臣にも時々お尋ねしますので、よろしくお願いをしたいと思います。  まず最初に、これは広島県の三次税務署の調査官が、山本という石材業をやっている人のところで昭和六十二年十月九日午後一時過ぎにいわゆる臨宅調査というのをおやりになったわけであります。そのときに、八十歳の病気がちのお年寄りが寝ている、だから常時布団が敷いてあるという部屋へものこのこと、そこへ入ってもらっちゃ困るという奥さんの制止を振り切って上がり込んでいくというようなことが行われたり、この引き出しをあけよとか預金通帳を出せとか請求書、領収証、帳簿を出せ、こういう命令をしてそういうものを出させる。そして、午後六時ごろまで調査を続行して、調査が一応終わったという段階で、きょう勝負するか、調べればもっと所得が出る、七年さかのぼるところだが五年でこらえてやる、こういうふうに言って、結局修正申告に判こを押させた、こういうような実態があるのですが、命令をして帳簿などを出させる、こういうふうにしろというふうに指導をしておられるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  333. 日向隆

    ○日向政府委員 御案内のことと思いますけれども、税務調査には大別して二つの種類がございまして、一つは国税犯則取締法に基づくいわゆる裁判官の令状を得て行う強制調査でございます。もう一つはそれ以外の一般の税務調査でございまして、この後者の税務調査の場合には、御案内と思いますが、納税者の理解と協力を得て円滑にこれを遂行するという任意調査でございますので、命令してという事柄ではないと思います。
  334. 安藤巖

    安藤分科員 もちろん先ほどおっしゃった後者のことを私はお尋ねしているわけです。ですから、命令をしてということではないというふうにおっしゃったんですが、こういうふうに命令を受けた、この問題は後でもお尋ねしますけれども、命令をされたということをはっきりと言うておるわけですね。だから、命令をするということではないんだということははっきりしておきたいと思うのですが、どうですか。
  335. 日向隆

    ○日向政府委員 その限りにおいては、委員のおっしゃるとおりでございます。
  336. 安藤巖

    安藤分科員 それから、これは名古屋の昭和税務署の調査官でありますが、これはことしの一月二十一日、Nさんという人の調査のために、このNさんのところではなくて、この人の大家さんのところに調査に行かれたのです。そして、大家さんの従業員に対して、大家さんであるかどうかということも確かめないで、Nさんから借金をしているかどうか、こういうふうにいきなり問いかけたり何かしている。そこで従業員の人がびっくりしてしまうわけなんですが、人違いだとわかったということになりますけれども、借金をしておるかどうか、これは人のプライバシーに関することなんですね。だから、そういうような問題を相手を確かめもしないでいきなり問いかける、調査に入るというようなことはどうかと思うのです。  ですから、大きく言えば、振りかぶった話をすれば、よく税務署の職員の皆さん方は公務員の守秘義務というようなことをおっしゃるということも聞いていますけれども、まさにそういう人が、借金をしているかどうかという問題をいきなり全然関係のない人に質問をする、そういうことをしゃべるというようなことで、守秘義務違反じゃないかというような声まで出ている状況にあるのですが、そういう相手を確かめもしないで、とにかく何でもいいから調査をしてこいというようなことではないと思うのですが、どうですか。
  337. 日向隆

    ○日向政府委員 これも御存じのことと思いますけれども、本来の税務調査は、調査を受ける納税者本人を主体に行うべきでございます。ただ、そういう場合にも二つほど問題がございまして、一つは納税者本人の税務調査における協力が十分得られない場合であるとか、あるいは納税者本人に対する調査、まあいろいろな調査を尽くしましても的確な調査ができないような場合がございました場合には、反面調査と一般に称しておりますけれども、納税者本人の事業の取引先に出向きまして、その納税者本人との取引状況等を調査することがございます。  その場合に、もちろんそれは納税者本人と事業その他取引関係がなければいけないわけでございますけれども、今委員が御指摘のことを私伺っておりますと、その取引関係について誤解といいますか誤認をしたことがあるのではないかなと。その事実を私承知しておりませんので、その事実があったかどうかについては控えさせていただきますけれども、一般的にそういうことであろうかと思います。
  338. 安藤巖

    安藤分科員 いや、ですからこの具体的な事実としては、相手をしっかり確認もしないで、そして人の借金しているかどうかということは余り知られたくない話だと思うものですから、そういうことをやたらに話すというようなことはやはり差し控えるべきではないかというふうに思いますので、その辺もしかるべく御指導をお願いしたいということなんです。
  339. 日向隆

    ○日向政府委員 一般的に人に知られたくない事柄というのはプライバシーに属する事柄というふうに私ども理解しておりますので、そのことを十分わきまえて税務調査を遂行するよう指導いたしたいと思います。
  340. 安藤巖

    安藤分科員 それから、これは名古屋の中税務署の場合でございます。これは去年の八月三日のことでありますけれども、エアコンの工事をやっている人のところへ行きまして、一生懸命仕事をしてみえるわけ。今から自宅へ行って調査をするから自宅へ来い、それは困る。当然な話だと思うのですが、そうしたら一緒に働いておった息子さんに、息子さん、あなたは一緒に来て調査に立ち会え。息子さんは納税者でないのですね。ところが、そういう納税者でない息子さんに対して、立ち会え、こういうようなことを言って、最終的にはお断りを申し上げたということなんですが、ほかの日に今度は自宅の方へ調査官がお見えになって、ここでいろいろなことがありまして、これは先ほどの命令のこととも関連するのですが、とにかく自動車のトランクをあけろ、ダッシュボードの中へそういういろいろなものが入っておるかわからぬですが、ダッシュボードをあけろ、押し入れの布団の中、衣類の入っているたんすの底まで見せろと言って調査をする。あげくの果ては、私はびっくりしたのですが、漬物の容器の中まで手を突っ込んで捜した。これは一体どういうことか。これはもう明らかに行き過ぎではないかと思うのです。  それからもう一つは、これは江南市の例でございますけれども、やはり自宅へ行って、命令の話もあるのですがそれは一応省略しますが、納税者の後をつけて、台所まで行って中をのぞき込んだり、食事をするというとのぞき込んだり食事が終わるまで外に立っておって監視したり、トイレに行っても後をつけ回してくる。まるで監視をされているような一日だった。こういうような訴えもあるのです。漬物の容器の中まで手を突っ込むとか食事をするところからトイレまでつけ回すというようなこと、全くこれは異常きわまる状態じゃないかと思うのです。  だから、こういうようなことはやはり行き過ぎではないのかなというふうに思うものですから、この辺のところもしかるべく指導していただきたい。そういうことは行き過ぎであるのかないのかということもお答えをいただきたいというふうに思います。これは、今大臣もちょっと顔を動かしておられましたが、そういうようなことは一体どうなのか。大臣にも後からお答えいただきたいと思います。
  341. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が仰せになりましたような事柄は、私は具体的な事実を存じませんので私の一つの考えで申し上げますと、恐らくそれはいろいろな事情があった上でのことではないかと思うわけであります。  実は私ども普通の調査は、帳簿やそのもとになる原始記録等を調べるというのが主体でございますけれども、その帳簿やそのもとになる原始記録を調べてもなかなかわからない場合とか、帳簿やそのもとになる原始記録に書いてございます事柄等が事業の実態を正しく反映しているかどうかというのを、各種のいわば書類とか物件等を実際にさわりまして多角的に確認するということも場合によりましてはやっておるわけでございます。これを俗に現況調査と言っておりますが、私は今委員のお話をお聞きしておりまして、もしあったといたしますと、多分それは現況調査を税務署員が行った場合ではなかろうかと想像しております。  私どもといたしましては、現況調査といいますのはやはりそういう書類やあるいはその書類をつくっているもとになる原始記録等を調査した上で、いろいろな必要性があって今申し上げたような事柄として行うものでございますので、こういった場合は、仮に所得のごまかしがあったといたしますと、その実態を把握するという公益的な必要性、それからその際におきます納税者の私的な利益というもの、この両面を十分にらみながら、その範囲とか具体的な方法について行き過ぎがないよう特に配意するよう職員の指導をしてまいりたい、こう思います。
  342. 安藤巖

    安藤分科員 大臣はまた後でお答えいただきます。  実際これは現実に行われておるわけなんです。だからそういうようなことは、これは一、二の例を申し上げておるのですが、本当に異常きわまりないやり方ではないかと思うわけです。いろいろ帳簿をお調べになるということは必要であると思いますけれども、こういうやり方までなさったのでは納税者の権利というのは一体どこへいってしまうのかと思わざるを得ぬわけです。  もう一つお尋ねしたいのは、御案内のように民主商工会という団体があるのですが、これに対する税務署の態度の問題について事実を指摘してお尋ねしたいと思うのです。  これも昭和税務署なんですが、名古屋の天白区の植田にいるTさんという人の場合ですが、この人はスナックを経営しているものですから酒屋さんが取引先だ。税務署の方から今調査を受けている。もちろん民商の会員さんです。そうしましたら、その酒屋さんがわしは税務署に顔がきくから一遍一緒に連れていってあげようということで一緒に出かけた。そうしましたら、そこの税務署の副署長さんと統括官の方が応対をした。そしてそのいろいろな話の中で、民商というのは暴力団のようだ、監禁されて困っているのだ、民商に入っていると官公署のお客さんがあなたのところへ行かなくなるよというようなことまで言うて、暴力団呼ばわりをするわ、お客さんが行かなくなるよということを言って暗に脱会をほのめかすようなことをおっしゃったということなんです。  だから、ほかの団体をこういう第三者の前で誹謗中傷するというようなことはやめてもらわなければならぬことじゃないのかなと思うのですが、これは後の話がありまして、時間の関係で申し上げますが、そういう問題が民主商工会の方に聞こえていった。いろいろけしからぬではないかというやりとりがあった。そうしたら、後日、その第二統括官の方がその人を税務署へ呼んで、一体どういうような話をあなたは民商の人たちにしたんだとか、今こういうような話をあなたとしていることは違法になるのでだれにも話さないでほしいとか、こういうようなことを言う。さらにはその統括官の方がまた別の日にそのTさんという人のうちへわざわざ出かけていって、これは調査ではなくてないしょで来たんだ、だからきょう来たことはないしょにしてくれ、こういうようなことをやっておられたというのです。  いろいろ税務署の中で特定事務担当研修資料というのがあってその留意事項の中には、統括官は本人の自宅とか事業所へ臨場していろいろ話をするというようなことはしてはならぬと言われているというふうにも聞いておるのですが、こういうような民主商工会を暴力団呼ばわりするというやり方は行き過ぎではないかと思うのですが、どうなんですか。
  343. 日向隆

    ○日向政府委員 これは私からこの席で申すまでもないことだと思いますが、私ども、税務行政を展開するに当たりまして、特定の団体に対し先入観念を持って行うべきではございませんし、また、どのような団体に対しましても私どもは中立の立場で税務行政を行っておるところでございます。したがいまして、納税者がどのような組織に属しようとまたこれは納税者個人の自由でございまして、私どもがこれに干渉する筋合いのものではない、こう考えております。  ただ、実を申しますと、今委員が御指摘になりました民主商工会の事務局員や会員の方々の中には、税務調査の際に立ち会いと称しまして各種調査拒否や調査妨害に至る行為をすること、私ども納税非協力的な行動と言っておりますが、こういう非協力的な行動をすることがございまして、このため円滑な税務行政の実施が極めて困難になるという事例も率直に言って見受けられるところでございます。この点についてはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  344. 安藤巖

    安藤分科員 いろいろ非協力的と見られることがあるというようなことをおっしゃったのですが、今おっしゃった立ち会い云々の問題、これは古くて新しい話だと思うのです。現実におっしゃったような立ち会いということが行われても調査はちゃんと行われているということも非常にたくさん私は聞いているのです。だから、そういうことからするとそれをもって一方的にこれは非協力だ、暴力団のようだというようなことはいかがかと思うのですね。だから、やはり最初に前段におっしゃったようなそういう特定の団体をあれこれするものではないのだという御趣旨を貫いていただかなくてはならぬのじゃないかと思うわけです。  そこで、最初にお尋ねをした三次税務署の関係でございますけれども、先ほど申し上げましたような事実がありまして、結局、調査を受けた人の奥さんが、これは十月九日に調査を受けて先ほど言いましたようなことになったわけですが、それから二カ月足らず、十二月三日に奥さんが先祖のお墓の前で焼身自殺をしてしまったわけなんですよ。先ほど言いましたようなのはごく一部を申し上げたのですが、これはやはりそのときの調査の結果強いショックを受けられて焼身自殺をされたということは、そこに至るまでの奥さんの言動からしても明らかだというふうに言われておるのです。  そこで、そういうような焼身自殺に追い込まれたという形になるものですから、税務当局のそういう不当な調査のやり方に対して、民主商工会の人たちが、大衆団体ですから会議の中で話をしたり、いろいろ訴えたりというようなことをやっておるのですが、これに対して税務署の方が、殺した殺したと言うけれども、本当に殺した証拠があるのか、遺書があったら持ってこい、こういうふうに、まあ開き直っておられるという状況にあるというのです。  今、私ここへ持ってきたのですが、こういうチラシ、ビラ、「確定申告のご相談は税務署か税理士へ」それから「納税者のみなさん最近、三次民主商工会は、宣伝カーなどで「税務署は、所得をでっち上げた、不当な調査を行っている」などといった宣伝をしています。誤った宣伝にまどわされないようにしましょう」あとは税務署の宣伝です。それで三次税務署、これは、民主商工会が、実際この調査に立ち会っておったのがこういうような調査を受けた方の奥さんらしいものですから、奥さんがそのショックで焼身自殺をするという悲惨な事件があった。だから税務署のそういう違法、不当な調査がありとすれば、それは正してもらわなくてはならぬという事実を指摘して、いろいろ訴えておった。これに対して税務署の方が、普通なら、行き過ぎがあったかもしれぬがまことに申しわけなかったとか、何かしかるべく応答するのが普通だと思うのですが、そういうことも全くない。そしてあげくの果ては、これは新聞折り込みだそうです、こういうようなことをおやりになった。  これは、税務署という一つの権力機関が一つの民主団体に対して、誤った宣伝に惑わされるなということをやっているわけですよ。これは行き過ぎではないかと思うのです。第一、これに幾らかかったのか、これは行き過ぎと思わないのかという点について、まずお尋ねしたいと思います。
  345. 日向隆

    ○日向政府委員 御指摘になりました事柄は、確かに広島国税局の三次税務署が行った広報のことかと思われます。  いろいろな事柄を今委員がおっしゃいましたが、私どもが現地から聞いておりますところでは、ある調査事案に関連いたしまして、民主商工会が税務署は不当な調査をしているとか、架空の所得をでっち上げて税金を押しつけているといったようなことを宣伝といいますか申しておりましたので、これに対して黙っておりますと、その事柄を全く認めたことになると考えまして、これは税務署の立場だと思いますけれども、そのような宣伝は誤った宣伝であるとしてその誤った宣伝に惑わされないよう、PRのビラを配布したというふうに聞いております。幾らかかりましたかということについては、私今ここでつまびらかにできませんが、配布した枚数は一万六千枚だそうでございます。  もとより、税務行政は、本来適正な課税の実現を図ることを目的として公平に執行されるものでございまして、先ほど私が申し上げましたからあえて繰り返したくはございませんが、特定の団体に対し先入観念を持って行うべきではないということでございます。したがって、私どもとしてはどのような団体に対しましても申立の立場で税務行政を行ってまいりたい、こう思っております。
  346. 安藤巖

    安藤分科員 国税庁としてはそういうことをおっしゃるだろうと思うのですが、どういうような中身の宣伝がなされたのか、私も実はその宣伝しているのを直接聞いたわけじゃありません。しかし、こういうビラまでつくって特定の団体が誤った宣伝をしている、惑わされるなというようなことまでおやりになるというのは行き過ぎではないのかなと思うのですが、そうは思われませんか。
  347. 日向隆

    ○日向政府委員 私ども税務行政を展開しております場合、御存じのように広報、相談、指導、調査というのをいわゆる四本柱として設定してやっておるわけでございますが、私どもがそういった行動を通じましてこいねがっておりますところは、結局税務行政に対する国民あるいは納税者の信頼を高める、この国民あるいは納税者の信頼なくしては円滑な税務行政の遂行は非常に難しい、私はこう思っておるわけでございます。したがいまして、現地の税務署が国民や納税者の信頼に差しさわりがあるというふうに思いました場合、私が先ほど申し上げましたような考えに立ちまして、税務署の立場としてそういったPRをしたということでございまして、この点についてはそういった意味でぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  348. 安藤巖

    安藤分科員 御理解を賜りたいと言われましても、こういうことまで税務署がおやりになるというのは行き過ぎだと私は思います。  そこで、時間がなくなりましたから最後に一つ、富山県の砺波、出町小学校六年生の社会科の授業で、税務署の職員の方が、これは社会科の勉強ですから臨時に講師となって税金とはどういうものかということで租税教室というのに出られてお話しになった。  そのこと自体は結構なことだと思うのですが、これはその六年生の子が、講師になられた方が恐らく黒板に書いたのを筆記してきたのだろうと思うのですが、それを私は持っておるのですが、国会の話から法律、予算、それから大蔵省、厚生省、文部省があってという話から直接税、間接税の仕組みから、負担する人、納める人、こうずっとくるのです。  これはいいのですが、最後に、税金を国に納めてなかったらその家に行ってちゃんと納めているかぴしっとノートを見る。ここまではまあいいと思うのですが、「その税金を、ごまかしていたら国税局」と書いてある。「査察」矢印があって「検察庁」矢印があって「裁判所」矢印があって「つみがきまったら、けいむしょ」こうなっておるのです。だから、税金をごまかしたらこれは刑務所に行くんだ。査察、検察庁、裁判所、刑務所、こういうことを教えてもらっては困るんじゃないかと思うのですよ。それは、まさに脱税で刑務所に行かれる方もあるのかもわかりません。しかし、ごく最近の例で、新聞に大きく載った国会議員の方が株の取引をやって漏れがあって、そしてじゃあの人刑務所に行かない、どうなったんだ、こうなってしまうのですよ。  だから、こういうような話を税務署の職員の人が小学校の六年生の人に言った。これは子供さんが書いてきたメモですけれども、これは行き過ぎじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  349. 日向隆

    ○日向政府委員 今具体的にお挙げになりました事例について正確に私存じておりませんので、具体的な今の件に即して言うことは差し控えさせていただきますけれども、脱税をしたからすべてが刑務所に行くということで、これは一般論でございますけれども、お話をしたとしたら、それは誤解を招く行為だと思います。しかし、大口、悪質な脱税の中には、冒頭に申し上げましたように国税犯則取締法に基づいて強制捜査を受け、偽りその他の不正の行為による脱税であることが明らかになり、それが証拠収集によって立証されるということになりますと、これは検察庁に告発されまして検察庁がこれを起訴するという段階を経て有罪判決があり、それが実刑判決であれば、場合によると刑務所に収監されるということにもなるわけでありまして、そういう事実がある一部の面においてあることもまた事実だ、こう思うわけであります。
  350. 安藤巖

    安藤分科員 そういうこともあり得るでしょう、最初に申し上げましたように。しかし、この小学校六年生の児童がこういうメモを書いて勉強してきたということになると、これはやはりこういう理解をしているんじゃないかと思うのです。私はそれを問題にしているのです。だからこういうような教え方、ほかにもほかのことをしゃべられたかもしれません。しかしこういうメモをして帰ってきたということになると、理解の仕方はこういう理解の仕方だと思うのです。だからこれはやはり行き過ぎだと思うものですから、しかるべき方法で改めていただくように処置をとっていただきたいというふうに思うのです。どうでしょう。
  351. 日向隆

    ○日向政府委員 私、この席でよく承っておきたいと思います。
  352. 安藤巖

    安藤分科員 そこで大臣、最初にもお願いしましたが、今いろいろ税務署の職員調査の実態につきまして、命令したり、それから行ってくれるなというところへも入り込んだり、あるいはトイレへ行けばトイレへついてくるとか漬物の容器の中まで手を突っ込むとかというようなこういうやり方というのは行き過ぎだと思うのですが、その辺について、きょうは国税庁長官お見えになりませんので、大臣ひとつ、今聞いておられて、それはそういうやり方でいいとおっしゃるなら別ですが、やはり私は行き過ぎじゃないのかなと思うのですが、いかがでございましょう。お答えいただいて……。
  353. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まあ事実関係はわかりませんので、伺っておりまして、行き過ぎはやめなければいけませんが、しかし民主商工会もどうぞひとつ納税にはよろしく御協力を願いたいものだと思います。
  354. 安藤巖

    安藤分科員 時間が来ましたので、終わります。
  355. 池田行彦

    池田主査 これにて安藤巖君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  356. 池田行彦

    池田主査 次に、法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。林田法務大臣。
  357. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 昭和六十三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  法務省は、法秩序の確保並びに国民の権利保全等国の基盤的業務を遂行し、適正円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。  法務省所管の一般会計予算額は四千百二十一億七千八百万円、登記特別会計予算額は九百九十六億三千五百万円、うち一般会計からの繰入額五百六十六億八百万円でありまして、その純計額は四千五百五十二億五百万円となっております。  この純計額を昭和六十二年度予算額と比較いたしますと、九十三億五百万円の増額となり、増加率にいたしまして二・一%となっております。  何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  なお、時間の関係もありますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれまして、会議録に掲載せられますようお願いを申し上げます。
  358. 池田行彦

    池田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま林田法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に、掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  359. 池田行彦

    池田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔参照〕    昭和六十三年度法務省所管予定経費要求説明書  昭和六十三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、法務省所管の一般会計予算額は、四千百二十一億七千八百万円であり、登記特別会計予算額は、九百九十六億三千五百万円でありまして、その純計額は、四千五百五十二億五百万円となっております。  この純計額を昭和六十二年度予算額四千四百五十九億百万円と比較しますと、九十三億五百万円の増額となっております。  次に、重点事項別に予算内容について、御説明申し上げます。  まず、定員関係でありますが、前年度に比較いたしますと純増九十九人となっております。  昭和六十三年度の増員は、新規四百八十四人と部門間配置転換による振替増員四十四人とを合わせた五百二十八人であり、これに内部振替二十八人を含めると合計五百五十六人となります。  その内容を申し上げますと、  一 検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、百二十人  二 法務局における登記事件、訟務事件及び人権擁護関係の事件に対処するため、登記特別会計の百八十人を含め、百九十二人  三 刑務所における保安体制及び医療体制の充実を図るため、百三十三人  四 少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、六十人  五 保護観察活動等の充実を図るため、二十六人  六 出入国審査及び在留資格審査等の業務の充実を図るため、二十三人  七 公安調査活動充実強化を図るため、二人となっております。  他方、減員は、昭和六十一年八月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第七次)の実施について」による昭和六十三年度定員削減分として四百二十九人、その他削減分として二十八人、合計四百五十七人となっております。  次に、主な事項の経費につきまして、概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計では、  一 刑事事件の処理等検察活動に要する経費として、三十二億八千六百万円  二 刑務所等矯正施設における被収容者の衣食、医療、教育及び作業等に要する経費として、二百六十四億一千三百万円  三 保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として、四十三億八千七百万円  四 出入国の管理及び難民の認定等に要する経費並びに在留外国人の登録等に要する経費として制度改正に伴う経費を含め、二十八億七千三百万円  五 破壊活動防止のための公安調査活動に要する経費として、二十億一千五百万円  六 施設費としましては、老朽・狭あい化が著しい基幹の大行刑施設の継続整備を含めた法務省の庁舎、施設の整備に要する経費として、百二十一億四千三百万円をそれぞれ計上しております。  次に、登記特別会計について御説明申し上げます。  登記特別会計の歳入予算は、一千十七億七千万円、歳出予算は、九百九十六億三千五百万円でありまして、歳出の主な内容といたしましては、登記事務のコンピュータ化計画を推進するとともに登記事件を適正、迅速に処理するための事務取扱費として、九百十三億二千七百万円を計上し、ほかに、登記所等の施設の整備に要する経費として、七十二億円を計上しております。  以上、法務省関係昭和六十三年度予定経費要求の内容について、その概要を御説明申し上げました。     ─────────────
  360. 池田行彦

    池田主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  361. 池田行彦

    池田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。左近正男君。
  362. 左近正男

    左近分科員 私は、きょうは無期懲役の仮釈放というか仮出獄というか、この問題に絞ってひとつ質問をさしていただき、見解をお聞きをしたいと思っております。  その前に現在の状況について少しお教えをいただきたいのですが、現在の刑務所、拘置所、少年刑務所だと法務省所管の全矯正施設に受刑者が何人収容されておるのか、お教えいただきたいと思います。
  363. 河上和雄

    ○河上政府委員 全国の刑務所、これは五十八ございます。拘置所が七つ、少年刑務所が九つ、そのほかに支所がございまして、これが百十七、全部で百九十一ほどございまして、昭和六十二年末、昨年末の既決の定員で申し上げますと、これはつまり受刑者ですが、四万七千七百十一名の定員、それに対して実際に入っている数は四万六千百二十八、したがって、収容率は九六・七%ということになります。  それから未決の定員が一万五千六百八十八名、それに対して入っている数が九千三十六名で、収容率は五七・六%、そういうことになります。
  364. 左近正男

    左近分科員 今の数字を聞かせていただいたら、この既決の受刑者の収容率というか施設に対する収容されておられる方の率が非常に高いですね。この傾向値は、どうですか、これは近年、ここ十年ぐらいをとった場合、どういうような傾向をたどっておりますか。
  365. 河上和雄

    ○河上政府委員 大体この十年近く似たような率でございます。手元にある数字で申し上げますと、昭和五十八年、ちょうど五年前になると思いますが、五十八年が既決が九六%、五十九年が九六・八%、六十年が九七・九%、六十一年が九七・四%、そして六十二年が先ほど申し上げました九六・七%ということで、九〇%をオーバーしております。
  366. 左近正男

    左近分科員 大体一年間で既決の受刑者というのは何人ぐらい新しく発生するのですか。
  367. 河上和雄

    ○河上政府委員 新しく入ってくる受刑者の数が約四万ぐらい入ってくると思います。
  368. 左近正男

    左近分科員 今現在四万六千百二十八人入っているのでしょう。毎年新しく刑を確定して受刑される方は何人ぐらいか。
  369. 河上和雄

    ○河上政府委員 新受刑者ということでございますが、失礼しました、昭和六十一年度の統計ですが、三万六百五十一、つまり三万ちょっとということでございます。
  370. 左近正男

    左近分科員 そうしますと、四万七千人の定員の枠といえばおかしいけれども、施設がそれぐらいしかない。現在もう九六%、満杯状況ですね。それで毎年毎年三万台の人たちが新しく既決で受刑する。そうなれば、これは政策的に非常に回転を速めていかなければ施設がもたないんじゃないですか。
  371. 河上和雄

    ○河上政府委員 全体として短期の受刑者の数が比較的多いこともございまして、特に政策的に次々に出さなければならないというほどではございませんが、もし刑期どおりに入れるとすれば、先生御指摘のようにもう満杯になってパンクいたします。
  372. 左近正男

    左近分科員 私は後ほど、この無期懲役者の仮出獄問題について少し触れたいと思うのですが、やっぱりそういうような背景がこの仮釈放制度の中にはある。私はこれは非常に問題だと思うのですね。  きょうは限られた時間ですから、受刑者、今四万六千百二十八人とおっしゃいましたね、その中で無期懲役の者は何人おられますか。
  373. 河上和雄

    ○河上政府委員 昨年末現在で無期の受刑者が八百四人おります。
  374. 左近正男

    左近分科員 現在無期懲役の者の仮出獄の現状はどうなっていますか。例えば観察対象者になっている者は何人おりますか。現在社会復帰されている方ですね。何人おりますか。
  375. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 お答えいたします。  無期懲役で仮釈放になりまして現在保護観察に服しております者、六十二年十二月末日の数字で申し上げさせていただきますと七百十九名でございます。
  376. 左近正男

    左近分科員 これは大体毎年何人ぐらい無期懲役の者が社会復帰していますか。
  377. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 ごく最近の数字で申し上げますと昭和六十年が三十三名、六十一年が三十二名、六十二年が三十四名ということで、大体三十数名というところで推移いたしております。
  378. 左近正男

    左近分科員 この無期懲役者の仮出獄された方の大体三年ぐらいの再犯率というのはどれぐらいでしょうか。
  379. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 まことに申しわけございませんが、厳格な意味での再犯率の数字をとっておりませんが、仮釈放になりまして再犯をしたり、それから御案内のように遵守事項というのがついております。この遵守事項違反で取り消しになる。再犯をして取り消しになる、遵守事項違反で取り消しになった者、この数字が、過去八年分ぐらいを見ますと四百二十八名中の三十五名でございます。八・二%になっております。  個別に調べてみますと、このうち一%少々ぐらいが、再犯はしていないけれども遵守事項違反で取り消しになっている。例えば善行を保持するとか不良の徒輩とつき合わないというような条件をつけられた、それに反したために取り消された者が大体一%前後いるというのが従来の具体的なチェックの結果でございますので、再犯しました者を過去八年間で見ますと大体七%前後というふうにお聞き取りいただければ幸いでございます。
  380. 左近正男

    左近分科員 その七%前後、八%という数字は無期懲役者の再犯率としては法務省として高いと思われますか。その辺はどう判断されていますか。
  381. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 はっきり申し上げまして、申しわけございませんが高いと思っております。
  382. 左近正男

    左近分科員 私は無期懲役者のこの再犯について、再び殺人を犯すとかそういうものは限られておると思いますが、やっぱり八%近い方々が社会復帰した後さらに犯罪を犯しておられる。これは私は非常にゆゆしい問題だと思うのですね。この点について今の刑務所の教育のあり方、そういう問題について、社会復帰を万全にするための教育体制になっておらぬじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  383. 河上和雄

    ○河上政府委員 無期懲役の受刑者で仮出獄によって出るのが、大体十五年ないし十六年施設にいてそれから出るわけでございます。法律上はこれは十年たてば出ることになっておりますけれども、平均は大体十五、六年でございまして、その間私どもとしては、これは主として殺傷犯でございますので、命のとうとさ、あるいは社会復帰した場合に職業的な技術を与えるとかあるいは勤労意欲を与えるとか、そういった処遇計画を一応一貫して立てまして、一生懸命やっておるつもりでございます。  ただ、何といっても十数年も入っておりますと社会復帰の前の教育というのは非常に重要でございまして、その間、例えば物価はもう倍あるいは三倍に上がっていることもありますし、施設内での生活と施設外での生活は非常に大きな隔たりがあるわけでございます。そのため現段階では一週間ないし十日の釈放前教育ということでもって、普通のかぎのかからない部屋に入れまして、出てからも日常生活に不便のないようないろいろな教育をいたしております。  ただ最近の世界各国の矯正思潮からいきますと、こういう場合には一遍職員の介護なしに外へ出しまして自宅へ泊まらせる、あるいは自由に買い物をさせる。それとはまた別に、外部の工場に通わせて夜だけ帰す、こういったような制度がございまして、何とかそういった制度を私どもとして取り入れたいと思っておりますが、残念ながら現在の監獄法は八十年前にできた明治四十一年製の非常に古い法律でございまして、そういうことはできません。そのために現在、国会の方に昨通常国会に御提出しております刑事施設法案においてそういった新しい制度を取り入れて、何とか長期の人間も出る前に社会に順応するようにしたい、こういうふうなことをお願いしているわけでございます。
  384. 左近正男

    左近分科員 私は、今日の刑法の二十八条の仮出獄制度についてはこれは当然理解もしております。問題は、仮出獄を決めるときに、これは刑法では無期の場合十年以上、今おっしゃったようにこれは十五年から十六年が実態だと。どういう審査方法、法務省はどういうような関与をしっかりやっておられるのか。また仮出獄した者が今何かいろいろ監視というか観察されているわけですね。その制度は今日どうなっているのか。また有期の者の仮出獄と無期の者の仮出獄と法務省としての審査の取り扱いは一緒なのかどうか、その点いかがですか。
  385. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 それでは仮出獄の手順につきましてまず一般的に御説明いたしまして、その上で短期の者と無期刑その他長期刑の者と分けて御説明いたしたいと思います。  まず最初は、一般的に仮出獄の手続について御説明いたします。  全国に八カ所の地方更生保護委員会というのを置いでございます。ここには委員を配置いたしておりまして、各委員会に属します三人の委員で一つの合議体をつくらしております。例えば裁判所の裁判長のもとに陪審判事が二人つきまして三人で普通合議体をつくっております。あれと同じような格好で三人の委員による合議体をまずつくってございます。この合議体が地方更生保護委員会としての権限をもちまして仮出獄を決定したり、あるいは仮出獄後に成績の悪かった者の仮出獄の取り消しなどをいたす権限を法律上与えられております。これは犯罪者予防更生法の規定によりまして地方更生保護委員会の権限になっております。  実際の進み方を申し上げますと、地方更生保護委員会に保護観察官を配置しでございます。この保護観察官を、大体潮どきを見計らいまして各施設に派遣いたします。そうしまして施設の方と、つまり刑務所の方と相談いたしまして、そろそろ仮出獄申請の候補に挙がりそうな者につきましていろいろ調査をいたします。もちろん観察官が本人に会いまして、一体どこへ帰りたいか、帰ったらどうしたいんだというような話を具体的にいろいろ聞きます。  そうしましてから、今度は、例えば親元へ帰りたいというのでございましたら、親元の居住地を管轄しております保護司さんにお願いしまして親御さんに会っていただきまして、親御さんの引き受けの気持ちなどを確かめます。あるいは、できましたら親御さんに本人に会いに来てもらう。特に、ちょっと混乱するかもしれませんが、刑が長くなってきますと家族の方でもいろいろ条件が変わってきますので、刑務所へ送り込むときには真っすぐうちへ帰ってこいよと言って出してくれた親御さんでも、五年十年たちますといろいろ状況が変わってくる。後の子供ができたあるいは嫁さんを迎えたということで、裁判を受けている当時には必ず引き受けるつもりでいた親御さんでも、ちょっとうちで引き受けるのは勘弁してくれなんということが出てくることがありますので、親だからといっていきなりぶつけるようなことをいたしませんで、まず、親御さんにせよ兄弟にせよあるいは昔の雇い主にせよ、いろいろと直接連絡をとりまして、必ず引き受けてもらえるというめどがつくまでいろいろ調整いたします。  そのような調整を重ねまして、今度は刑務所の方も所内での行状もよくにらみ合わせまして大体これでちょうどよかろうという時期になりますと、刑務所長から公式に地方更生保護委員会委員の方へ上申が上がってまいります。そういたしますと、委員が今度は自分でその施設へ赴きまして直接収容者と会いまして、また今までの資料をもとにしましていろいろ面談した上で、この男は出して大丈夫かということを判断いたします。一遍でだめな場合は再度、三度と通いましていろいろと質問してみる、あるいは状況の推移を見るというようなこともいたします。その結果を持ち帰りまして、委員会で先ほど申しましたように三人の委員の合議で仮出獄を認めるか認めないかという決定をいたす、こういう段取りになります。  仮に仮出獄が認められますと、仮出獄の期間中、要するに刑期の残っている期間、無期刑でございますと原則として死ぬまでということになるわけでございますが、その仮出獄の期間中には保護観察に付されるわけでございます。保護観察と申しますのは、御案内のように保護観察所が行いますが、具体的には担当の保護観察官が担当の保護司さんを決めまして、その保護司さんと対象者を引き合わせて、具体的には対象者は常時は保護司さんとの接触を保つようにさせる、何か問題がありましたようなときには保護観察官が前面に出ていって対象者と接触する、あるいは保護司さんに、対象者に対する接し方についていろいろとアドバイスをしたりするというようなことで保護観察を進めてまいるわけでございます。  それから、先ほど御質問ございました、長期の場合、無期の場合あるいは短期の場合と違いはしないか。私ども、無期はもちろんでございますが、刑期が八年を超えているような場合には、やはりこれは相当長期でございます。先ほど申し上げましたように、裁判を受けましたときからいざ仮釈をもらえるかどうかという時期まで年数がたっておりますので、環境も変わっております。ですから特に念を入れた環境調査をいたすようにいたしております。  それから、先ほど矯正局長も申し上げましたが、刑務所としてもいろいろと社会になじませる努力はしてくださっておりますが、現行法の枠がございます。それを超えたことは刑務所としてもできないということでございますので、引き取ります私どもの方で特別な対策をとっております。この八年を超える、もちろん無期も含めます者につきましては、仮に親元で真っすぐ引き取ると言っていただきましても、本人も親元も説得いたしまして、まあそう言ってもいきなりは無理だ、余りにも長い間いわゆるしゃばから離れてい過ぎたということで、各地に保護会というのがございます、これは原則としては刑務所などから出てきて行き場のない人を一時的にお預かりする施設でございますが、その保護会のうちに特定の、設備もそろっている、指導者もしっかりしているところを本省の方で指定してございまして、その保護会に長期刑で出てきた者についてはとりあえず預ける。それで一カ月ぐらいそこで特に綿密に行動を観察し、また指導して、世の中になじませるようにしていく。それで、これで大丈夫という見きわめをつけまして親元へ帰すあるいは兄弟のところへ引き渡すというような手順を講ずるようにいたしております。これを私ども中間処遇という言い方で事実上のあれとして実行いたしております。
  386. 左近正男

    左近分科員 事情よくわかりました。  この保護観察官というのは何人おって、保護観察官一人に対して何人ぐらいの仮出獄者を担当するようになっているのですか。
  387. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 保護観察官の総数は全国でたしか一千六十四名ちょうだいしていると思います。そのうち八百二十四名が保護観察所に配属いたしてございます。先ほど申し上げましたように、地方更生保護委員会にも保護観察官を配属いたしまして仮出獄前の調査などをいたしておりますので、この人たちは保護観察には直接タッチいたしません。八百二十四名が保護観察所に配属している保護観察官でございますが、この中には保護観察所長とかあるいは特定の事件を扱っている保護観察官という人がありますので、実際に保護観察に直接従事しております保護観察官といいますと約七百でございます。  で、保護観察の対象事件、全国で常時約九万件程度持っております。ただ、そのうちには、家庭裁判所から回ってきます交通短期保護観察と申します、非常に簡単というと語弊がございますが、講習を二、三回して済ましてしまうようなものも入っておりますが、本来の保護観察的な扱いをして見なければならない者、大体五万人ほど抱えております。
  388. 左近正男

    左近分科員 大体これは、五万人の仮出獄者に対して七百人の定員で社会復帰からいろいろその後のアフターケアを面倒見るというのは実際物理的に不可能ですわな。そうすれば、形は今おっしゃったようにかなりきめ細かい考え方をお持ちですけれども、実際問題、しゃばに出てしまえば、社会復帰されればもう目が届かないというのが実態じゃないでしょうか。  私はそういう観点から、きょうこの分科会質問させていただくのは、身近なところで非常に凶悪な事件が起こったんですよ。このことについて申し上げて、ひとつ皆さん方のお考えを聞きたいと思うのです。  これはことしの一月十五日の夜の二十二時三十分ごろですが、十九歳の尾崎弘恵さんという短大生です。これは新聞にも大きく出たから皆さんも御存じだと思いますが、大阪の地下鉄の構内で、これは私のもとの職場でございまして、ここで刺殺されたわけです。犯人は逮捕されている。Mとしましょう、Mという四十八歳の男が逮捕されております。ところがこのMは、三十年前に二十一歳の女性に重傷を負わしているのです。そしてまた、昭和四十三年、二十年前に百円札一枚を奪うために当時二十四歳の女性を、これも殺しているのです。で、四十五年にこれは無期懲役が確定をして、昨年の四月に仮出獄をしておる。このMという人がこういう凶悪な犯罪を犯したんですね。  私は、これだけの前歴ある者を仮出獄するに当たってはよほど慎重な取り扱いをしなきゃならぬじゃないかと思うのですが、この件に対してあなた方はどういう考え方をお持ちですか。
  389. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 御返事させていただきます前に、被害者の方、遺族の方、また社会に対して深くおわびを申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおりでございます。あってならないことでございます。御案内のように、数年に一回このような事件がかつても起こっております。私は昨年来、こういう事態がなくなるように万全の努力を払ってきたつもりでございますが、まことに私の指導力不足で全国にその方針が十分浸透していなかったのではないかと深く反省いたしております。  こういう事態が起こりました原因の一つには、まさにただいま御指摘のように保護観察官の数が足らないという問題がございます。これは毎年、この財政事情の中でございますが、少しずつでも保護観察官の数をふやしていただいて理想的な方向に持っていくように、財政当局の御理解をいただきながら努めているところでございます。  それから、わずかな保護観察官で全部やっているわけではございませんで、全国で五万人になんなんといたしますボランティアであります保護司さん、この中には、かつて保護観察官をした経験者、学校の先生あるいは社会福祉の施設におられた経験のあるいろいろなボランティア、民間人といいますが、いわばプロ、あるいは駆け出しの観察官などよりは処遇に非常にたけた方々もおられます。こういう方々の御支援をいただきまして、この方が約五万人おられるわけでございます。保護観察を実行しているわけでございます。  そこでもう一つ、私が先ほどおわびいたしましたのは、まさに御指摘のもう一つの点だと思います。こういう事態に対する私ども職員の認識にやや問題があるのではないか。御案内のように保護観察と申しますのは、原則はいわゆるケースワークでございます。相手との人間関係をつくって、それによって相手を自分の方へ引きつけていこう、そのためには余りこちらから差し出がましいことを言わず、相手に言うだけ言わせて、いわゆる人間関係をつくるということがカウンセリング理論というものでそういうふうに教育されているわけでございます。そういう人たちが保護観察官として保護司さん方にそういう処遇理論をまたお伝えしているわけです。  ところが、こういう方法をとっておりますと、相手との人間関係をつくることに急な余りに、相手の背後にあるもの、まさに今御指摘のように、同じような事件を前に何遍も繰り返した危険な人間じゃないかということよりは、目の前にいる人間がまことにしおらしい、まじめそうなことを言うということに引きずられてしまいまして、科学的な目を失ったと申しましょうか、やや情緒に流されたと申しましょうか、あるいは保護観察としてあるべき責務をやや見失ったのじゃないかと思うような、私の目から見ますとそういう感じがいたしまして、そのために強硬な措置、具体的に申し上げますと、この場合ですと仮出獄を取り消すべき時期があったように私は思っております。  本省の担当課長を大阪に派遣しまして詳細調査させてまいりましたが、こちらで書面で受けた報告、これを分析した結果と、また主管課長が行きまして調査してきた結果とやはり符合いたしまして、手の回り方の問題もございますが、私どもとしては、もっと本人だけを考えずに社会の安全ということを考えなければいけないのじゃないか。昨年来、私は一生懸命言ってきたことが、やはり悪い意味で裏づけられてしまった、非常に残念に思っております。私がより強力な指導力を持っておりましたら、あるいは今回の事件は防げたのじゃないか、そういう反省をいたしている次第でございます。
  390. 左近正男

    左近分科員 僕は被害者の冥福とともに、今局長の方からの事情、これはよく理解できます。しかし、私は一局長とかいうような問題ではなしに、やはり今の法務行政全体、受刑者に対する取り扱い全体にいろいろ基本的な問題点があるのじゃないかと思うのですよ。  したがって、先ほども若干申しましたが、やはり十年以上刑に服している者を社会復帰をさせる場合、もっと刑務所内で復帰のための十分な体制をとってもらう。そうでなければこんな凶悪な第二、第三の犯罪が起こる可能性はありますよ。これは国のそういう刑務行政というか、そういうものに対する物すごい不信感があるわけでして、大阪でああいう事件が起こったら、ああ、あそこの谷町の駅の構内はもう若い女の子は立ち入ったらあかんでというような恐怖感を抱かせるような状況になっているわけですよ。私はこれは大変なことだと思うのです。  大臣、今のやりとりを聞いて、どうですか。仮出獄問題について特に慎重に――私はこの制度を否定するものではございません。やはり刑務所内での職業訓練、社会復帰に対する十分な対応を根本的に考えてもらわなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  391. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 今回の大阪におきまする事件はまことに残念なことでありまして、御遺族に対しても、また一般社会に対しても深くおわびを申し上げる次第でございます。  先生はもう十分御承知のように、仮釈放制度は受刑者の人権の面から一方においては必要なものでありまするが、しかしそれが社会に危害を及ぼすということがあってはならないことでありまして、十分慎重にして仮釈放をしなければならぬと存じます。これは現在地方更生保護委員会におきまして決定をしておる次第でございまするが、これから十分慎重にやるように指導をいたしまして、また刑務所や拘置所におきまする教育を十分行い、また出所後につきましても十分観察をするという施策をしっかりやっていきまして、今後こういうことが絶対にないように努力をしてまいりたいと存じます。
  392. 左近正男

    左近分科員 最後に、仮出獄をさせた者がこんな凶悪な犯罪を犯したというのは国も責任があるわけでして、ちゃんと更生さす一つの義務があるわけですよ。この御遺族に対して国はどのような補償があるのですか。その辺どうですか。
  393. 池田行彦

    池田主査 栗田保護局長。時間が参っておりますので、簡潔に答弁してください。
  394. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 保護観察の関係からの直接の対策はございませんが、昭和五十五年にできました犯罪被害者等給付金支給法ということで、犯罪の被害に遭われ命を失った方の遺族に対しまして国の方から給付金が出る制度がございます。
  395. 左近正男

    左近分科員 現にある制度の中で御遺族に対する十分な対応をしていただきたい。これを要望して終わります。
  396. 池田行彦

    池田主査 これにて左近正男君の質疑は終了いたしました。  次に、中西績介君。
  397. 中西績介

    中西(績)分科員 私は、先般の予算委員会総括質問の中でごくわずか触れさせていただいた問題で、私の選挙区内にあります福岡県苅田町の住民税横領事件について、もう少し内容的に深まった論議をしてみたいと思います。  そこで、自治省の政府委員おいでですか。――まず、この問題は町長の交代なしには不問に付された問題ではなかったかと私は推察いたします。自治制度始まって以来、このような事件はなかったのではないかと私は思いますが、この点、どのように理解しておられるのか、お答えください。
  398. 小川徳洽

    小川説明員 ただいま御質問のございました苅田町の件でございますが、この事件につきましては現在検察当局におきまして捜査中でございまして、私どもといたしましては、現時点では事件の全容について完全に把握しているという状態にないわけでございます。しかしながら、御指摘のように極めて異例な事件でございまして、地方公共団体に対する不信を招くことにもなり、極めて残念であり、遺憾に思っておる次第でございます。
  399. 中西績介

    中西(績)分科員 私が聞いておりますのは、この告発状はお読みになりましたか。どうですか。
  400. 小川徳洽

    小川説明員 一応は目を通しております。
  401. 中西績介

    中西(績)分科員 ということになりますと、今までこうした地方自治体における事件としてあったかなかったか、この点はっきりしてください。
  402. 小川徳洽

    小川説明員 過去の例といたしまして、同じ形のものというのは私は承知しておりません。
  403. 中西績介

    中西(績)分科員 住民の皆さんが納めた税金をこのようにして横領するという、かつてない大変な事件だということをまず第一にここで確認をしておきたいと思います。  そこで、このことは行政機関の否定につながる極めて極悪な事件と私は思います。この事件の性格と問題について自治省はどのように整理を今されておるのか。この点についてお答えください。
  404. 小川徳洽

    小川説明員 先ほども申し上げましたように、私どもが現時点で掌握しております事実関係というのはおのずから限度がございますので、その範囲でお答えをさせていただきたいと存じます。  現在の制度は、公金を収納すべき額、それを決める機関、それから収納を現実に行う機関、それが分かれております。そういうふうに収納すべき額を決めるところと収納を現実にするところを分けることによりまして、相互に牽制をする、役割分担をする、こういうことで仕組みが成っておるわけでございます。しかもそれにつきましては、さらに決算の際に相互にチェックする仕組みになっておりますし、また、不正防止のための手段といたしましては、監査委員の制度ですとか議会におきます決算審査、こういうような制度が設けられておるところでございます。  したがいまして、制度といたしましては何段階ものチェックがなされているという仕組みになるわけでございますが、そういう意味で、制度の問題としてよりもその運用の問題ではないか。いやしくも、公金の取り扱いにつきましては住民の不信感を招くことのないよう厳正に行うべきものでありまして、司法当局の調査の結果をまちまして適正に対応、指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  405. 中西績介

    中西(績)分科員 今説明がございましたように、何段階かのこのようなチェック機関を設け十分注意をしておるということ、そしてさらに収納と支払い、この関係を完全に分離をするというようなことも含めてやっておられるのに、こういう事件が発生をし、ごまかすことができたということはどこに問題があるのですか。  それは、一部の職員だとか、この前、処分がこれとは無関係に発表されておりますけれども、処分されておりますけれども、一部の職員がそういうことをやることができるかどうか。この点についてどうです。
  406. 小川徳洽

    小川説明員 ただいま申し上げましたように、制度として相当のチェック機能が働くような仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、ただいま御質問の一部のという範囲が若干問題でございますけれども、少なくとも、特定の一人、二人の人間でできるものでないということは明らかであろうかと存じます。
  407. 中西績介

    中西(績)分科員 そうなってまいりますと、やはりこれはある程度、組織的にという言葉を使わせていただきますけれども組織的に対応しないとこうした事件は発生することは不可避だと私は考えるわけです。  さらに、例えば一部職員、地方の役場でいいますと、係長だとか一課長程度でこのことが処理でき、しかもそれが十数年にわたって隠しおおせるというようなことになり得るかどうか。この点どうでしょう。
  408. 小川徳洽

    小川説明員 ただいま申し上げましたとおりでございまして、これがある特定の時点だけの一回限りのものというものでもなかったように私ども報告を受けておりますので、その間、当然職員の交代その他もあったことと存じます。したがいまして、先ほど申し上げましたようなお答えになるわけでございます。
  409. 中西績介

    中西(績)分科員 ということになりますと、一、二度でなしに、十年を超える年限の中でやられたということが調査の結果出ていますけれども、実際に、具体的に告発をするという場合に五年というものを区切ってやっていますから、それより以前の問題もあるわけですから、よほどそこに組織的に対応できるものでなくては、入れかわりもあるだろうし、そういうものを継承してやっていくということになれば、それが認められておらないとこれはできないわけですから、今あなたがおっしゃるように、相当の数の者がこれに関与しなくてはならぬということになるわけです。と同時に、系統的に、組織的にやっておかないとこの問題はやれなかったのではないか、こう私は思うのですけれども、どうでしょう。
  410. 小川徳洽

    小川説明員 私どもが確認をいたしておりますのは、たしか過去四年間のことでございまして、その前につきましては実は書類が町当局にもなかったために、今のところそれを確認することはできないわけでございます。  ただ、私どもがいろいろ県の方から聞き取りをいたしまして、その辺、過去四年間のことについてはほぼそういうことがあったというのは間違いなかろう、その間において、先ほども申し上げましたように相当数のということにつきましては、単に一人か二人でできるということではないということは申し上げられますが、それ以上の範囲について、私、現時点で申し上げるだけの材料は持ち合わせていないところでございます。
  411. 中西績介

    中西(績)分科員 告発状を見ていただきますと、相当長い期間にわたってやられておったということが明らかになっています。ですから、それ以上にまだ深いものがあるということをここでは私の方から申し上げるだけにとどめます。  そこで、このことが地方行政の不信につながりまして地方自治が崩壊をする、こういうことを招きかねないような重要な中身を持っておると私は思います。なぜなら、二月十四日に千人を超える町民大会がございまして、税金不払いを含めてこの問題について対応するということまで言われておりますし、これがさらに拡大をするおそれがあるわけであります。地方自治体の運営のための根幹になる部分がこれによって大きく揺らぎかねないという中身を持っておるということになってまいりますが、このことに対する御見解があればお聞かせください。
  412. 小川徳洽

    小川説明員 公金の取り扱い、しかも特に町税の取り扱い、それが適正に行われなかったといいますことは、地方公共団体に対する大きな不信を招くもとになったものであろうというふうに私ども考えております。まことに残念かつ遺憾なことでございます。  私どもといたしましては、市町村におきます行財政運営につきまして、先ほど来申し上げましたような各種の自律的な機能が有効に働いていくようにまた県当局を通じ十分指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  413. 中西績介

    中西(績)分科員 指導はしておりますか。
  414. 小川徳洽

    小川説明員 私ども、この点につきましては、県の担当の課長会議とかいうような各種の場におきまして特に厳正な執行、すべての面について当然のことでございますが、税というものについては特に住民の信頼というものが基礎になるという点について特に配慮して十分指導するように申しておるところでございます。
  415. 中西績介

    中西(績)分科員 さらにその点を追及していただくことを強く要望をいたしておきます。  そこで、私は告発状についてお聞きをしておきたいと思います。  これは昭和六十二年三月三十日付で、告発人は苅田町、代表者は町長の沖勝治、そして被告発人は苅田町の収入役であります花房正蔵、もう一人は住居不明の氏名不詳者というのがあるわけでありますけれども、これはどのように理解していますか。
  416. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 告発状には被告発人といたしまして氏名不詳者と記載されておるところでございまして、この氏名不詳者につきましては、告発を受けました検察庁におきまして捜査をいたして解明することになろうかと思います。
  417. 中西績介

    中西(績)分科員 そうすると、これは特定していなくて、捜査の過程の中で出てくるということを意味しているのですか。
  418. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 被告発人に氏名不詳者を書かれましたのは告発人の意向でございますので、そこのところは私どもも正確にこうだということは申しかねるところであります。
  419. 中西績介

    中西(績)分科員 それじゃ、さらに続けて聞きたいと思いますが、告発をされた中身について、大体五十二年に別口座を設けまして、収入役の花房という人がその中に繰り入れをさせておるわけですが、大体五十六年から六十年まで合計一億二千九百万円と言われています。告発された中身は八千六百二十五万八千円でありますけれども、これは新聞で発表されておりますね。ところが、五十二年に別口座を設けたということは、その当時からそうしたものがあって、約十年間で二億を超える金額になるのではないか。  こういうような不祥事というのは、先ほど自治省に聞きましたけれども、検察庁はこうした問題についてかつて経験をしたことございますか。
  420. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 金額的に申しますと、何億円というような事件を検察庁が業務上横領あるいは詐欺等の事件で解明したことはあると思っています。
  421. 中西績介

    中西(績)分科員 いや、私は税金で言っているのです。税金の横領事件で。
  422. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 税金の横領事件につきまして、こういった多額のものがあるかどうかにつきましては、私今のところお答えするだけの調査をいたしておりませんので、何とも申し上げかねるところでございます。
  423. 中西績介

    中西(績)分科員 そうしますと、調査をしていないということですか。
  424. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 全国の各検察庁はいろいろ事件を扱っておりますので、ただいま御指摘のありましたような事件がこれまで他にあったかどうかということにつきまして、私、今ここで申し上げかねるということでございます。
  425. 中西績介

    中西(績)分科員 それでは、それは後で資料なり何なりを提出していただきましょう。そのことを約束してください。
  426. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 その点は調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  427. 中西績介

    中西(績)分科員 それでは次に移ります。  この告発状を、三月二十日に提出をしましたから四月以降になると思いますが、東京地検が受理をいたしておりますね。受理をするということは、捜査まで含めて責任を持ってやるということを意味しておるのですか。
  428. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察官が告訴状あるいは告発状を受理いたしますと、これにつきましては所要の捜査を遂げまして処分をするということになるわけであります。
  429. 中西績介

    中西(績)分科員 したがって、私が申し上げておるように、こうした受理をするということは、調査をし、そして結果を出すということを前提にしてやるということになるわけですね。
  430. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 そのとおりでございます。
  431. 中西績介

    中西(績)分科員 そこで、この場合に、今までいろんな新聞だとか、あるいはこの前もちょっと示したのですけれども、文芸春秋のこうした内容からいたしますと、当時の町長に手渡したものが、しかも月まではっきりしている。五十九年八月、一千五百万円、六十年四月に一千五百万、六十年十月に二千万、もしかすると、この四月と十月が入れかわっておるかもしれませんけれども、ちょうど六十年の七月に町長選があっていまして、それを挟みましてこういうふうに手渡しされたということがあるし、前回もちょっと私が申し上げましたように、その手渡したときの状況等についても、この文芸春秋によれば詳しく記述をされておる。こういう状況がある中での問題であるということだし。  ところが、この文芸春秋をずっとあれして見ますと、どうもこの捜査内容が漏れるとだめになるということが盛んに書かれている。そういうことがあるのですか。
  432. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 捜査につきましては秘密を守らなければならないわけでございますので、捜査中の事柄につきましては、各捜査に携わっております検察官も秘密を守るという努力をいたしておるところでございます。  捜査の経過が漏れたからだめになるという、そのだめになるといいますのは、事件としてつぶれていくという趣旨のことであろうかと思いますが、捜査いたしておりますことが外部に出ましても、すべてつぶれてしまうというわけではないと思っております。
  433. 中西績介

    中西(績)分科員 しかし、どうもそういう言い方を上級幹部がしておるということが記述されています。そういうことになりますと、これをつぶすということを前提にして情報を流しさえすれば、事件はつぶれるということになりかねないわけですね。  もう一つあるのですよ。それは、逆に今度は情報を流して、起訴もできないような案件であっても、事件であっても、その人をつぶすという目的のためにはどんどん情報を流していくという手があった。私はそれを経験しておるのです。そして最終的には起訴猶予なんですね。全部流して、全部秘密だとか守秘義務だとか言いながら盛んにそれを流して、毎日毎日流して新聞に載せていくというやり方です。とうとうその人は公職をやめなければならぬというように追い込まれてやめる。ところが、起訴にも何にもならないのです。  だから、私は二通りあると思うのですけれども、こうした問題が実際にあっていますからね。どのようにお考えですか。
  434. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察といたしまして情報操作と申しますか、そういった操作をいたしまして事件の処理を右にするか左にするかというようなことをするとは思っておらないところでございます。そういうことはないということでございます。  検察といたしましては、あくまで証拠に基づきまして冷静、客観的、また公平に判断いたしまして、事件の処理を徹底いたしているところでございます。
  435. 中西績介

    中西(績)分科員 しかし、先ほど私が申し上げるように起訴猶予、不起訴になるものをどんどん情報を流して、毎日、新聞に流していくのですよ。そしてその人をとうとう公職から追放する。それで目的は達するわけです。しかもそれは政治的に達するわけです。こういう状況があるわけですから、私はその逆の場合、この中身を見るとそういうことが書かれています。  ですから、それがないとは、私、断言できないのではないか。あなたが思われる、あるいはないというように言われましたけれども、この点はクエスチョンマークですね、疑義があるということを私は提言しておきます。これはまた法務委員会でも、時間があればさらに時間をかけてでも論議をしていかなければならぬ問題だと思います。  さてそこで、今度移送の問題についてどうなのかということです。  六月二十九日、福岡地検に移送したということを遠藤前法相が札幌で発表いたしました。これを見ますと、私はこれに出ておることが、相当調べたと思いますけれども、この中にありますように、まず第一にその担当である田中森一という検事の発言あるいは司法関係者の発言あるいは田中森一という検事の辞表提出につながる一連のもの、これらをずっと見ていきますと、移送を決定をするに当たって、大体捜査の中止命令が六月の十日にあっておるのに、六月十八日にこういう関係の人たちの検事全員に対して福岡移送決定を伝えたということがちゃんと記述されています。その結果がこうしてどんどん次々に問題が起こったわけでありますから、中身を見てみると、このように多くの人、特に専門家である人たちが言っておるし、その関係の中で、私がこの前お聞きをいたしましたところが、移送したその理由というのは、関係人が多数存在をする、あるいは関係人が福岡県に居住をする、だから移送が相当であるということを局長は答弁されました。  ところがこれは、この田中検事が言っておるように、最初からわかっておる話です。この告発状を受け付けたとき、ちゃんと検討して捜査に入るわけでありますから、少なくともそうした問題について告発人からいろいろ聞いておるわけであります。ところが今ごろになってこういうことを言い始めるということが、私はどうしても納得がいかないのです。もしそれがそうであったとしても、仮定しても、頭越しに福岡で事件があるのを東京の地方検察庁に告発をしておったものを、頭越しにしたものを、福岡の地検の皆さんが今度は、その機関の中の一員であるということはわかりますけれども、一生懸命やるでしょうか。私はこれにもまた疑問があるわけです。  そして、さらにもう一つ私は言っておきたいと思いますのは、表向きは反対をせぬだろう、しかしその中身について、検察庁というのは奮い立たせなくちゃならぬわけですね。そうしなければ本格的にはやらぬでしょう。奮い立たせるような中身であるのかどうか、その判断を求めます。
  436. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 文芸春秋の記事につきましては私も読んでおりますけれども、そこに出てまいります関係者から直接取材をしてこの記事が書かれたものではないと思っておりますし、いろいろ主観的な判断なり憶測に基づいて記載されている部分も多々あるわけでございまして、そこに記載されておることが事実だとは思っておらないところでございます。  また、苅田町の事件につきましては、東京地検で告発を受けまして、所要の捜査をいたしましたけれども、先ほど委員指摘のありましたような事情にかんがみまして、福岡地検において捜査するのが相当であるということで福岡地検に移送し、現在福岡地検において捜査を継続しておるところでございます。
  437. 中西績介

    中西(績)分科員 それでは一言聞きますけれども、そのように頭越しにやられて、そうした問題を快くやりますか。奮い立ってやりますか。
  438. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 頭越しといいますのが、私少し十分理解ができない点があるわけでございますけれども、検察は全国組織でございまして、移送するということは検察庁としては決して希有の例ではございません。相当の件数につきまして移送事件をやっておるところでございますので、移送を受けました福岡地検といたしましても、厳正公平な立場で捜査を行うものであると思っております。
  439. 中西績介

    中西(績)分科員 思っておるだけで、決して、こうした中身を見ますと、これにあるような中身を見ますと、それぞれそこには渦巻いた中でそうした問題が論議され、そしてそれに対して不信を持って本人がやめるというところまで行っているわけですからね。やめてなければまだ言いようはあるでしょう。しかし、そうした事態が起こっておるということを考えますと、これは決してそうじゃないと言わざるを得ません。  そこで、私は大臣にこういう問題について、またこの中にも出ておりますけれども、例えば平和相銀事件、三菱重工CB事件、国内転換社債一千億問題等含めて、あるいは盗聴事件等含めて、いろいろ政治的に決着をしたということがたくさん出ていますね。その最たるものはこの問題だというように出ています。ということになりますと、この問題について政治決着は絶対にあり得ぬということを断言できますか。
  440. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 現在の検察におきましては、政治的に決着をするというようなことはあり得ないと思います。
  441. 中西績介

    中西(績)分科員 時間がありませんから、私は法務委員会なりでまたさらに論議をしていきたいと思いますけれども、いずれにしてもそのような不信というものが起こり、そしてしかも、先ほども自治省の方に私が申し上げておりますように、税金不払いまで起ころうとしておる現象というものを見たときに、私はこうしたことを絶対に簡単に灰色決着をしたりいろいろなことをしちゃならぬということを言わざるを得ません。これは徹底してやらぬことには日本の地方自治の崩壊につながるわけでありますから、この点をぜひ、何回も言うようでありますけれども、私は言いたいと思います。  そこでこの問題について、行政あるいは司法あるいは検察あるいは政治が突き崩し破壊をしちゃならぬわけですから、徹底して社会正義が貫かれるように、自治、民主主義が守られるように、苅田の町でそれが回復できるようにしていただかなくちゃならぬわけですね。ですから私は、そのためには、いろいろな政治的な状況等があろうと思うけれども、これを乗り越えてやらないことには、このことが日本全国のそうしたものを破壊するということを考えなくちゃならぬと思います。したがって、いつごろになるかわかりませんけれども、早急にこれを結論を出していただきたいと思います。したがって、大臣のそうしたことに対する決意をお願いを申し上げます。
  442. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 現在福岡地検におきましては鋭意捜査中でありまして、私としましては検察当局を十分信頼をしており、証拠に基づきました適正な処理を行うように福岡地検で努力をしておるところでございます。
  443. 池田行彦

    池田主査 中西君、時間が参っております。
  444. 中西績介

    中西(績)分科員 終わります。  最後に一つだけ。先ほど私が申し上げましたように、平和相銀、三菱重工あるいは盗聴事件等、盗聴事件なんかでも、あれを読んでみんなびっくりしたでしょう。こういうようなことにならぬようにぜひ大臣が陣頭指揮をしていただいてでも、自治省は自治大臣が警察関係を持っているわけですから、ぜひそうした問題についてやっていただくことを強く要望を申し上げて、終わります。
  445. 池田行彦

    池田主査 これにて中西績介君の質疑は終了いたしました。  次に、滝沢幸助君。
  446. 滝沢幸助

    滝沢分科員 委員長、御苦労さま。大臣初め政府の皆さん、御苦労さまです。  実は私がこれからお伺いしようと思いますことは、先日の予算委員会一般質問の中でお伺いしました人名用漢字についてのことでございます。  あのとき時間がございませんで、大臣に本当に簡単に申し上げました。大臣からこれまた一言おっしゃっていただいたのでありますが、その後いささか御研究もあそばしたことと思いますが、人名用漢字というもののいわば指定、これはいわゆる常用漢字をも含めた意味での二千百十一字、この文字の範囲で名前を選びなさいという制度を全廃されて、名前は自由につけてよろしい、こういうぐあいにひとつ法改正されるお考えはありませんか、改めて質問させていただきます。
  447. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 先日も予算委員会において御質問をいただいたのでございまするが、この戸籍法におきます子供の姓名の問題につきまして滝沢先生はもう熱心に取り組んでいただいておりまして、敬意を表しております。  そこで、まず現行戸籍法の、これは昭和二十三年に施行されたのでありまするが、この施行前におきましては、子の名に用いられた漢字には極めて難解なものが見られまして、これにより本人及び第三者に社会生活上の不便を与えたのでございます。そこで、昭和二十三年に全面改正されました現行戸籍法におきましては、名に難解な文字を用いることによって生ずる本人及び社会一般の不便を避けるために五十条が設けられたものでありまして、以来、時日の経過とともに子の名に用いることのできる文字の制限は広く社会一般に受け入れられたものと考えまするので、この制限を廃止する考えはないのであります。  そこで、この五十条の第二項に「常用平易な文字の範囲は、命令でこれを定める。」こういうことになっておりまして、子の名に用いることのできる漢字の範囲につきましては、過去にも三回にわたりまして字種を追加して拡大をしてきたところでありまするが、今後も市町村、法務局などを通じまして国民の要望の把握に努めまして、社会情勢の変化に対応し、必要に応じて子の名に用いることができる漢字の見直しを行ってまいりたい、かように存じておりまするので、今後ともよろしく御指導をお願いいたします。
  448. 滝沢幸助

    滝沢分科員 大臣、御答弁ありがとうございました。  私は当選以来今日まで、法務大臣が交代されるたびごとに同じことを申し上げている。ところが、歴代法務大臣全く同様。これはリコピーなんというものじゃありませんな。精密写真で写し取った、いやレントゲン写真のように全く同じ答弁を承ってきているわけであります。申し上げるならば、その大臣がお読みになった原稿は何人が書くのか知りませんけれども、つまり官僚の答弁を大臣が繰り返されることでありまして、御勉強いただいているうちに法務大臣は更迭をなさるということで、日本政府という立場、自民党の政権という立場におきますれば連綿たる責任体制でなければなりませんのに、私はまことに残念なことと言わざるを得ない、このような所感でございます。  そこで、ここに、新大臣の立場でありますから御存じのことでありますが、一つ申し上げさせていただくならば、昭和二十年の八月十五日、あのようにして我が国は連合軍に戦い敗れました。そのときの我々の心情というものは、戦い敗れ山河あり、そこでいかなる処分なりといえどもこれをのまざるを得ない。しかし心底に期して他日これを是正し、本来の我が国の姿を回復せんと誓った。私はそのとき一兵卒でありました。しかし、御年配からして大臣も恐らくは同じような御経験をあそばしたことと存じまするが、今日、講和が成立してしかも三十数年、なおかつ我々は、あの昭和二十年八月十五日の誓いをなし遂げずして惰眠をむさぼっておるのでございます。その一つがこの戸籍法ではありませんか。  そのゆえんなるものは、我が国が戦いに敗れましたならば、直ちにアメリカは教育使節団なるものを遣わしました。そして、もちろんいわゆる人間天皇宣言と言われました例の二十一年一月一日のあの布告、これ等に基づきまして、二十一年の十一月十六日には早くも文部省は当用漢字というものを制定をいたしました。これは、御存じのごとく日本の漢字は難し過ぎる、そういうことではよき祖国再建はできないので漢字のごときは簡便にしようということでございます。  しかし、これは大臣、この後があるのですよ。それは一つの段階。次の段階において漢字を全廃して仮名にいたそう、そしてこれをローマ字にいたそう、そして日本を、国語をして英語たらしめよう、これは世界の歴史の中で、戦いに勝った国が、いわゆる戦勝国が戦敗国に施す施策といたしましては、一つには、その国の固有の歴史を忘れさせよう、一つには国語を戦勝国、おのれと同じ国語を使わせよう、一つには宗教を、日本では宗教は自由でありますが、かつては神道が日本の国教のごとき感がございました。イギリス等におきましては、御存じのごとくキリスト教が国教でございますな。そういうものにいたそう、この三つをおのれと同じものにさせることが占領の最終目的でございます。我が国は戦前におきまして、かの南北朝鮮に対し、台湾に対し、さらには満州に対しこれをなそうとした。いや現になしたということは、大臣も御記憶に新たなることと思う。そのことがいわゆる戦後政策の日本に対する教育政策、文化政策、土地対策、憲法第九条で難しい議論にはなっておりまするけれども、防衛、安全に関することということではありませんか。  そこで、これを受けて法務省は、人名漢字を当用漢字の範囲でやりなさいということになさったわけでございました。二十三年の一月一日、戸籍法五十条において、今おっしゃったようないわゆる制限を加えたわけでございます。しかし、このとき私は、日本政府といたしましては、各省庁の整合性があると思いましたよ。つまり教育使節団の勧告、その他仮名文字、ローマ字論者等によりましてできました当用漢字なるものを、これはこれ以外使ってはならぬ、いわゆる強制でございました。そのときに法務省も、名前をこれ以外の字でつけてはならぬという強制でございました。しかし、それは大臣がおっしゃったようにいかにも少ない、いかにも不便だということで随時これをふやしていただきましたことは、全く賢明なる措置と思いますよ。  つまり、二十六年の五月二十五日に別表というものをつくって、当用漢字以外にこれも使ってよろしいぞよ、こういうふうになさいました。そして五十一年の七月三十日にはさらにこれを追加され、その間におきまして文部省は、当用漢字というものの制限の姿勢というものはいかにも国民になじまない、そこで常用漢字というものにこれを直しました。これは五十六年の十月一日ということでございます。そこでその五十六年十月一日に法務省はいわゆる人名用漢字というものを同時にふやしまして、今日の二千百十一字体制を確立したわけでございます。文部省の方は強制的な当用漢字をやめて一つの目安、お勧めをしたいというものとして常用漢字体制に変わったのですね。ところが法務省は依然として強い法的制限をもって、これ以外の文字を名前に使ってはなりません、受け付けませんということになっておるわけですよ。ここに私は、竹下内閣の法務省と文部省との整合性というものはいかがなものであるかということを問わざるを得ません。  このようなことを申し上げるついでに、大臣がおっしゃったようにたびたびふやしていただきました。ところが、大臣、ふやしていただきますると、ふえたところの文字を怒濤のごとく届け出てくるという事実を御存じでしょうか。仮に今、さらに五字でも十字でも百字でもいい、追加していただいたならば、ことしこれからお生まれになる子供さんについては、その文字が驚くべき量をもって届けられてくる。つまり、もっともっともっともっとふやしていただくこと、つまりは無制限に、かつて戦い敗れざりし日のごとく、子の名前ぐらいはせめて自由につけさせたいものだ。  大臣も人の子の親だと存じます。私も二人の子供を持っています。子供の名前をつけるとき、これは非常なる感激を持って、子の幸せを念じて夫婦が相談し、また父母がある人は父母にも、ないしは先輩にも、恩師にも相談をして、時には姓名学者等の意見等も承りまして、祈りを込めて選ぶものでありましょう。これが市役所に行きましたならば、いやそのような文字は使ってはいけませんということを言われたときの気持ち、これはいかがなものでありますか。  ことに私は、つぶさにたびたび聞きました。東京にいる嫁御が電話をくれて、お母さん、いよいよ生まれました。そこで名前だけれども、お父さんと相談しているんだけれども、おじいちゃんの文字一つとお母さんの文字一つをおかりして名前をあした届けてこようと思うのですが、と言ったときの喜び。しかし、その日の午後になって息子がまた電話をよこして、いやお父さん、実はお父さんの文字はよかったのですが、お母さんの文字がなくて、仕方ないからと言われたときのがっかり、これを語りましたな。  そのような思いを国民にさせなくたっていいじゃありませんか。名前ぐらいはせめて自由にしろ。戦後の政治の流れというものは、いろいろの制限がどんどん自由にされるという歴史じゃありませんか。こういうときにどうして戸籍だけが逆行するのです。逆行しなくたっていいじゃありませんか。あなた、米ですら自由化しようなんて言っているじゃありませんか。そういうときどうして名前を制限するのですか。制限すること、これはいつもどの大臣も読むのだけれども、難解なる文字のために本人及び社会一般の受ける、なんというのは役所の文句でありまして、あれはスタンプみたいなものであります。  事実具体的に、親が、この子供は憎たらしい子供だ、この赤ちゃんに難しい嫌な名前をつけて一生涯苦しめてやろうなんという親がどこにありますか。そういうものについては裁判で、ちゃんと家庭裁判所で直すことができるのです。例の左翼学生のクーデターか何か、そういうものにおいて選ばれた名前がありましたな。これは何か革命家の名前をかりたというもので、これはすぐに直りました。卑近な例で、これは大変恐縮に存じますが、田中元総理大臣がロッキードで逮捕されましたときに、田中角栄という少年がとてもとても学校に行ってつらいというので、これも裁判所でなるほどごもっともということで、これは改名を許されました。そういうことがあるのでありますから、よしんば百万人に一人、難解な文字のために苦しむ者があったならば、それは家庭裁判所で改名できるのですから、名前は自由にさせていただいた方がいい、こういうふうに思うのでありますが、もう一回所信を承りたいと思います。
  449. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 名前につきましては戦前は格別の制限はございませんでしたが、戦後の現行戸籍法になりまして「常用平易な文字を用いなければならない。」こう定められましたのは、これは名前の持つ社会的性格からしましてその当時において極めて妥当な政策であったというふうに考えられるわけでございます。その後、逐次人名漢字が追加されてまいったわけでございますが、国語審議会において従来の当用漢字表を見直して新しい漢字表をつくるという審議がなされております過程において、人名用漢字につきましては、これはちょっと扱いが違うのではないか、これにつきましては国語審議会から切り離して法務省の方に扱いを任せるという御意向が示されまして、国語審議会の方のそのような建議がございまして、法務省の方にゆだねられました。  そこで、法務大臣はその諮問機関でございます民事行政審議会に、子の名に用いる漢字につきまして諮問をしたわけでございまして、その中で各界各層の委員の方々の御意見を承りまして、人名用漢字については引き続き制限をすることが妥当であるという答申をちょうだいいたしました。もちろんこの中には少数意見もございましたけれども、多数の御意見がそのようなことでございましたので、それを受けまして、法務大臣におきまして昭和五十六年にただいまのような戸籍法の定めといたしたわけでございまして、その際に、常用漢字として用いられる数が当用漢字よりもふえましたし、人名用漢字も従来のものよりもさらにふやして、現在の二千百十一字となったという経過でございます。  この人名用漢字に関する政策につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、そしてまた、たびたび先生からいただきました質問主意書に対する政府の答弁書におきましても申し上げておりますように、当面これを廃止するということは考えられていないわけでございます。
  450. 滝沢幸助

    滝沢分科員 いいかげんにしなさい。何回同じことを説明するのですか。その経過のごときをわからずしてこの滝沢幸助質問台に立つと思いますか。経過のことは一々よくわかっていて、これに対して異議があるから質問をしているのです。何回も何回も同じ経過の説明を承っているわけにはいきません。そして、将来のことについてどうして行政官僚たる君が答えることができますか。だから、大臣いかがですかと言っているのですよ。ところが、いつの委員会におきましても大臣が答えようとすると、そのようなときには事務官僚がるる説明をしたあげく、これに対して変更等の考えはないということを申すのですよ。ある大臣の場合のごときは、立とうとしたときにこれを引っ張って座らして答えるのでありました。行政の官僚は、国会が定めた、ないしは内閣、大臣が定めたことを、つぶさにこれを実行する実務が官僚でしょう。将来のことを語るのは、大臣でなくては語れないじゃありませんか。せめて研究をするくらいの前向きの答弁がなくて、私だって何万票を代表してここに来ているのです。しかも、私のところにはおびただしい数の実例がございます、大臣。  卑近な例でありますが、私の息子が結婚しました。来ました嫁様は道子という。ところがこれは、田んぼの真ん中の縦の棒が出ている、石油の油のさんずいのないやつ、これにさんずいのかわりにしんにゅうをつけた迪をつけようと思ったら、だめだというので、道路の道にされた。私は道路みたいで、踏んづけられるようでとても嫌だわ、こう言う。いや、そうは言うな。道徳の道だ。人の道、これだ。こういうふうに励ましてやりました。  ところが、一年数カ月たちましたら、去年のきのうでしたかに孫が生まれました。そうしましたら、私の息子は弁護士をしているのですが、お父さん、いよいよあした名前をつけるんだけれども。そう、どうつけるんだと言ったら、笙とつけようと思うがいかがだろうと言うのですよ。ああ、それはいいことだ、どうして笙なんだと言ったら、いや音楽が好きだし、古い日本文化ということをお父さんいつも言うものだから、笙の笛の笙、たけかんむりに生まれるとつけようと思うんだがどうだと言うから、いやそれはいいことだ、あなたたち夫婦が相談していいならばお父さんも賛成だし、お母さんも喜ぶに違いない。ところで、信君というのですがね、おまえは法律で飯を食っている男だからわからずには済まないだろうが、あした行ってごらんなさい、それは受け付けになりませんよと言ったら、そんなことはない、そんなことないかどうかとにかく、というわけです。そうしましたら、全くこれは親の勝ちでございまして、やむを得ず彼は文章の章に変えました。全くこれは間違った行政措置じゃないかと私は思いますよ。  ところが、愚かなる我が滝沢家だけではなくてもうおびただしい数がありますが、ちょっと申し上げますと、作曲家の黛敏郎先生は自分の御子息を凛太郎、勇気りんりんの凛太郎とつけようと思って市役所に行きましたら、だめだと言うので、いろいろ考えましたが、子供をして生涯この愚かなる政治の姿を示さなくてはと存じまして、平仮名でりん太郎とつけなすった。恐らくおれの子供はこの文字を書くたびに、お父さんがこの男の子に平仮名の名前をつけた気持ちを解して、悪政を改善せんがために頑張ってくれるのだろうという願いを込めたというのであります。また、作家の水上勉先生は、前の子を亡くされたのでありましょう。そこで、今どきの雪の消え間に出ているフキノトウをごらんになって、この生命力に打たれまして、フキノトウの薹という字をとって薹子とつけようとなさった。しかし、これは受け付けにならなかった。非常にがっかりされて、この子も早く逝くのかなと思われたというのですよ。どうしてそういう思いを国民にさせるのです。  今はワープロ時代ですね。何か聞きますれば、二万字記憶すると言っておりますよ。各市役所に二万字記憶するこの機械がございまして、それではじき出す。つまり受け付けにならぬものはちょっとこれは遠慮いただいても、少なくとも二万字までふやしてもいいのですよ。あるいはまた、千円の字引を各役場ごとに置けばいいわけです。私がこう申しますと、もうそこら辺に持っている。いや滝沢さんはそう言うけれども、例えばあなたの滝沢幸助の幸だって、ここがはじいているのもあればこっちにちょんのあるのもあればいろいろございましたなんて、昔からのものをいっぱい持ってきて言うわけです。私たちはそういうものを認めろと言っているわけではありません。しかし、少なくとも常識的な、字引に書いてある文字は、これは用いさせていいのではないか。  特に私が問題だと思いますのは、それぞれのおうちに伝統がございまして、と申し上げるのは、この家の伝統を否定するもの、つまり家族制度を廃止するものがあのマッカーサーの占領政策でありますから、ゆえに国家の伝統もこれを否定するということでありますから。ところで、この国家の伝統、家の伝統というのを重んずる立場に立つならば、私のうちは代々長男にはこの文字を使うといううちがありましょう。徳川のうちは家という字を使うかどうかは別にして、そういうことであります。それが受け付けにならなかったならば、そこのうちの御先祖様はいかがにおぼしめしか、またその当主はいかに残念と思うか、こういうことでございましょう。  さらに、これは実例でありますが、浄土真宗の熱心な信者が恐れ多くも親鸞上人のお名前をおかりして鸞子とつけようとした。しかし、この文字はだめだと言われて、そこで非常に自殺したいぐらいの失望をいたしたが、しかし上人のお教えはいつも本願に頼って生きなさい、自分で生きているのではないということであるから自殺はそこで思いとどまって、かわる文字を当てて帰ってきたというのであります。そのように、全く人間の生きる本源にこれは立ち返ることであります。  最近、非常に不名誉な事件が多いのであります。つまり、今日日本人の道徳の一つの問題点としては、恥を恥と思わない。恥というものは武士道の真髄とも聞きましたが、私は人間の生きる基本でなくてはならぬと思います。その恥を恥と思わぬところに今日の世の数々の不正の根源があろうと私は思う。ならば恥とは何ぞや、これは名を汚すことでありましょう。名誉にかけて、我が名においてということでございます。名というものはいかにとうといものであるか、このことを政治が再認識することによって、今回のこの措置がいかに愚かなる四十数年であったかということを反省して、今からでも遅くはない、兵に告ぐような話でありますが、どうかひとつそういうことで大臣、選ばれて難しいときに法務大臣の要職に立たれました。少なくとももう少し研究を深めて、大臣独自の一つの方向を見出していただいたならばというふうに私は要望し、かつ、大臣自身の政治家としての判断と所信をお示しをちょうだいしたいと思います。
  451. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 今までの経過を見ますると、五十一年に名前の数字をふやしまして、五十六年にふやしました。その間五年でふやしたわけであります。ちょうど現在、それからまた五年以上がたちまして、社会情勢の進展に応じ、また国民世論の動向を見ながらこれは検討しなければならぬ、かように存じます。先生のおっしゃるように、これは大いに検討いたしまして、努力をしてまいりたいと思います。
  452. 滝沢幸助

    滝沢分科員 終戦当時に政府が、もちろん占領軍の助言によって施行したものはどんどんこれを制限して、ついに、先ほど申し上げましたとおり英語国民たらしめよということの発想でありましたから、そのときのプログラムから申しますれば、どんどん制限を強化していくことでございました。しかし、おっしゃるようにこれをどんどん緩和してきているわけでありますから、緩和をするということは制限が無理だということに連なるわけでありますから、今後ひとつ緩和の方向において前向きに検討されるようにこれは要望いたしたい。重ねて、くどくて大変御苦労でありますが、これを前向きに検討される御用意ありやなしや、承りたいと思います。
  453. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 前向きに検討をいたします。
  454. 滝沢幸助

    滝沢分科員 大変力強い所信を、歴代法務大臣の中でただ一人、いわば政治家としてのおのずからの判断において所信をお述べいただきまして、まことにありがたく思います。こういうことの改善を求めている全国民の名において謝意を表し、ひとつ勇気ある御判断をされますように要望し、また助言を申し上げたいと存じます。  終わります。委員長、どうも御苦労さまでした。大臣、各政府委員、御苦労さまでした。ありがとうございます。
  455. 池田行彦

    池田主査 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。  次に、井上泉君。
  456. 井上泉

    井上(泉)分科員 法務大臣という職務は他の大臣と違って大変な権力を持っておるわけでありますので、その権力を国家国民のために生かすということは法務大臣としての責任だと私は思うわけであります。  そこで、法務大臣にまず最初にお尋ねをするわけでありますが、光華寮の問題はもう法務大臣も十分御承知だと思うのです。光華寮の問題は我が国の公共の問題として、当然法務大臣がこれに対して裁判所に意見申し出ることができる法的な権限を与えられておるので、それに該当するとお考えになっておられるのか、それは別に権限を与えられておる条項とは違うとお考えになっておるのか、その点を承っておきたいと思います。
  457. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 光華寮の訴訟につきまして、最高裁から、法務大臣に意見陳述の機会を与えるこにつきまして現在はまだ何の態度も示されていないのでございます。そういう状況のもとにおきましては、この訴訟が権限法四条の「国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟」に該当するかどうかということにつきましては申し上げることは適当でありませんので、差し控えさせていただきたいと存じます。
  458. 井上泉

    井上(泉)分科員 裁判所が何も言ってないからではなしに、あなた自身最高の学府を出られた、そしてまた行政者としても練達の士が、この光華寮の問題が「国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟」と考えておったならば、該当するものであると考えておったなら、裁判所にあなたみずからが申し出て、今訴訟になっておる光華寮の問題について私はかくかくのものと言うことができることは当然法務大臣としての権利としてできると私は思うわけですけれども、光華寮の問題はそんなに考えていないのですか。
  459. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 法務大臣の意見陳述についてでありまするが、三権分立のもとにおきましては司法と行政権との関係からして慎重であるべきであるという見地から、裁判所から法務大臣に意見陳述の機会を与えられたときに限ってするべきものということで運用されてまいっておりまするので、光華寮訴訟につきましても、最高裁から法務大臣に意見陳述の機会を与えることにつきまして何の態度も示されておりません現段階におきましては、権限法四条の意見陳述をするとかしないとかということは適当でありませんので、差し控えさせていただきたい、こういうような次第であります。     〔主査退席、金子(原)主査代理着席〕
  460. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は法律の専門家でないからわからぬわけですけれども、少なくとも光華寮の問題は、公共の福祉あるいはまた我が国の国家権益というものから考えても該当する案件だと思うので、むしろこちらから積極的に申し出るぐらいの、申し出ることは何も法的に違反すると思わないわけですけれども申し出ることができない法の仕組みになっていますか。
  461. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 御承知のように我が国は三権分立という建前をとっておりまして、そこで行政が司法に対して意見を申し上げるということは、よほどのことがないとないわけでございます。そして従来の運用から申しまして、司法から法務大臣に意見陳述の機会を与えられる、そういうときに限って法務大臣が意見を申し述べるわけでございまして、したがって仰せの問題につきましては、まだ最高裁判所から法務大臣に意見陳述の機会を与えられておりませんので、今それに先立ちまして意見陳述をするとかしないとかいうことができないのでございます。
  462. 井上泉

    井上(泉)分科員 三権分立のことはよくわかっておりますけれども、私は過日の本会議質問において竹下総理に、あなたが法務大臣をしてそういう申し入れをするようにしたらどうかと言うと、今言われたような答弁をされて、まだやる時期じゃない、やるべきでないというような解釈をされておったわけでありますけれども、むしろこれは我が国国際条約を遵守する姿勢であるとするなら、こんなことで裁判を持っていくようなこと、また裁判の結果ですから予測はできないわけですけれども、そういう不幸なことになった場合にはこれは大変なことだと思うので、法務大臣としての権限を行使をする、逮捕される人を逮捕してはいかぬといういわゆる指揮権発動の権限とはまた違った重要なあなたの権限だ、私はこう思うのであえて申し上げたわけであります。  この問答をいたしておりますとなかなか結論が出ないわけでありますからもうおきますけれども、少なくとも光華寮問題、そしてまた日中関係における諸条約、日中の条約あるいは共同声明、そうしたものについてはあなたはどういう認識を持っておられるのか、このことだけ聞いておきたいと思います。
  463. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 本会議におきまして竹下総理から答弁をいたしておりますように、私も日中の条約とかあるいは共同宣言をそのとおり受け継いでおるものでございまして、中国は一つであるということの原則の上に立ちまして考えておるところでございます。
  464. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは次の問題に移りますが、狭山事件ということについて大臣は承知をしておるでしょうか。
  465. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 承っております。
  466. 井上泉

    井上(泉)分科員 それで、その狭山事件で石川一雄君が今日まで約二十五年刑務所の中で拘置をされておるわけですが、彼は判決は無期懲役ということになっておる。しかし現実にもう二十五年も刑務所の中で拘置をされておるわけですが、彼をもう仮出獄させてしかるべきではないか、こう思うのですが、そういうようなお気持ちには大臣としてはならぬでしょうか。
  467. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 先ほどもこの分科会におきまして仮釈放の問題は極めて厳格に考えなければいかぬ、こういうようなお話もあったわけでございます。  そこで、その問題とは異なりますが、石川一雄さんは昭和五十二年八月に無期懲役の裁判が確定をいたしましたので、昨年八月に刑法所定の最小限の期間を経過したことになりますが、通常無期受刑者につきましては刑期を十五、六年間経過した時点で仮釈放になっておりまして、石川さんにつきましても他の無期刑受刑者との間に特に有利にも不利にも偏しないよう公平に取り扱われるべきものであると考えておりまして、当面仮釈放の問題はまだ起きてこないもの、こういうように考えております。
  468. 井上泉

    井上(泉)分科員 その未決で拘束されておったことは、刑期の中に普通未決勾留、未決通算何日とかいってよくやるのですが、こういう場合にはやられぬのですか。今十六年ということを言われましたが。
  469. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 未決の期間は通例これに算入をしておりません。
  470. 井上泉

    井上(泉)分科員 算入しておらぬけれども、普通の場合には算入するでしょう。これはもう普通の場合にも算入はないですか。これは事務当局で御答弁願いたいと思います。
  471. 河上和雄

    ○河上政府委員 無期懲役の場合でございますので算入いたしておりません。有期懲役の場合例えば算入するということもございますが、刑法二十八条の解釈としてはこれは算入しないという解釈になっております。
  472. 井上泉

    井上(泉)分科員 解釈によってそうなっておるということは、解釈のしようによっては算入することも別に不都合はない、こういうことに推理していいでしょうか。
  473. 河上和雄

    ○河上政府委員 私どももいろいろな考え方があることはよくわかります。ただ、確定した解釈は算入しないということになっております。
  474. 井上泉

    井上(泉)分科員 まさに石川君は青春を牢獄の中で閉じ込められて、逮捕された当時には字も知らなかったものが、その中での自分自身の潔白を証明するためのいろいろなことを思い出の中に書きつづるために勉強されて、そして今日では立派に字も書いておられるわけです。そして受刑の態度といたしましても、千葉の刑務所長は非常に立派な受刑者としての態度である、こういう話をされておるわけです。それで、一方においては再審の請求もされておる。再審の請求をされておることとこの仮釈放とは別に矛盾はない、こう思うわけですが、これはどうですか。
  475. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 仮釈放の決定の関係は私どもの方の所管しております中央更生保護審査会で決定いたしますので、私の方からお答えいたします。  仮釈放いたしますにつきましては、本人の改悛の情とか更生の見込みとか諸般の事情を検討いたしまして仮釈放の許否を決定いたしております。
  476. 井上泉

    井上(泉)分科員 諸般の事情を検討する中で、石川君を釈放するところの条件はもう十分整っておるのじゃないか。二十五年もなにしておる。しかし、無実を訴えて再審を請求しておることは彼が仮釈放を要求することとは法的にも何も矛盾してないし、過去においても再審請求中のものでも仮釈放された例もあるということを承知しておるので、そうした点からも、更生保護審査会に属する問題といえばなおのこと、私は石川君を早く釈放するような努力を積み重ねていただきたい。幾らそのことを要求してきてもなかなからちが明かないので、これは我々としては余りにも司法当局の壁の厚さというものに本当に困惑をしておるという状態で、この運動をしておる者といたしましても、本当に自分たちの力不足というものを嘆いておるわけですが、もっと法というものは愛情があってしかるべきだ。愛情があってこそ罪というものから、石川君ではありません、一般の犯罪者も立ち上がっておるわけだから、ただ罰するということだけでなしに、本人を立り上がらせていくという勇気を与えていくのもやはり法務当局の仕事である、私はこう思うのです。  何であんなに一生懸命、未決のときも判決を受けてから以後も、いわゆる仲間の中では本当にみんなに好かれる、愛される、そして刑務所の人たちにも模範囚だ、こう言われておる日常生活を送っておる石川君ですから、そこらのところをなぜ酌み取っていただくことができないのだろうか。本当に情けなく思うわけでありますが、石川君の場合十六年、今大臣はこう言いましたけれども、無期懲役の者に当てはまらないという法的な何かあるのですか。無期懲役は未決通算はしない、こういうことはあるのですか。あればお教え願いたいと思います。
  477. 河上和雄

    ○河上政府委員 刑法二十八条はこういうふうに書いております。「懲役又ハ禁錮二処セラレタル者改悛ノ状アルトキハ有期刑二付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後行政官庁ノ処分ヲ以テ仮二出獄ヲ許スコトヲ得」、この「無期刑二付テハ十年ヲ経過シタル」、これの解釈になるわけですが、無期刑というのは、要するに刑罰として刑が確定してから、つまり無期懲役という刑罰が確定してから十年を経過したるとき、こういう解釈でございまして、したがっていわゆる未決通算は入らない、こういうことになるわけでございます。
  478. 井上泉

    井上(泉)分科員 新たな証拠が続々と出てきて、その証拠を開示をして再審を求める要求をしても、壁が厚うて一向にそれが実現をしないわけですが、何かいい方法はないか、お教え願いたいと思います。
  479. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 先ほど先生のお話の中で大変ありがたいお話がございまして、私どもも刑に服している人たちに一日も早く更生するきっかけをつかんでもらいたいと努力いたしているつもりでございます。ところが、先ほどから大臣御説明申し上げましたように、他の無期刑で入っておる人たちにつきましても、未決期間を算入しませんで計算してそれで十六年で出ているわけでございます。私どもといたしましては、みんなが公平に扱われていないと、やはり公平は正義だという観点から申しまして問題があるのではないか。石川受刑者だけを特別に未決期間を算入するということは公平を失するであろう、他の無期刑受刑者との間に特に有利にも不利にも偏しないよう公平にと先ほど大臣が申し上げましたのは、そういう趣旨だと私ども存じております。
  480. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういうふうな解釈でおられるということはあなたの立場としては当然のことだと思うわけですけれども、しかしこんな十何年も未決の中に、十四年もおったものというような例はないでしょう。例があるのですか、十年以上未決におったものは。
  481. 河上和雄

    ○河上政府委員 手元に資料がございませんので明確なことを申し上げかねますけれども、最高裁まで争ったような事例の場合、かつ、いわゆる権利保釈の除外事例のような殺人とか非常に重たい犯罪を犯した人の場合には、十年以上ということもあると思っております。
  482. 井上泉

    井上(泉)分科員 私が調べたところでは、十年以上も未決に拘置をされておってそのことが通算されないというようなことはないのですけれども、そこは解釈の問題と、そしてまた司法の行政権力といいますか、そのものからいうて法務大臣が決断すればできる問題とは違いますか。
  483. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 先生が愛情を持って人に接する、こういうようにおっしゃいましたが、私も同じような考え方を持っておるのではありまするけれども、この仮釈放という場合に、やはり一方におきましては仮釈放した者がどういうことになるかということも十分考えなければいかぬわけでありまして、それが社会に危害を与える、そういう事例が最近においても大阪で起こりまして、私たちは非常に反省もし、またこれから大いに検討をしていかなければならぬ問題である、かように存じておるわけでございます。そういうようなことで、愛情のみでやってまいることもできませんので、十分慎重に検討をしなければならぬ、かように考えております。
  484. 井上泉

    井上(泉)分科員 慎重に検討することは当然でありましょうが、私はこの石川君の問題に関与してからもう十何年にもなるわけで、その当時は頭も黒髪であった青年がつるつるの坊主頭になっておるわけです。そういう石川君に会うたびに法の無情さというものを本当に痛いほど思い知らされるわけなので、そこらの点は法務省事務当局の方にしてはなかなか決断がつかないのじゃないか。例えば平沢貞通さんが再審の訴えをしておる、そうしてその再審の訴えも取り下げて、九十何歳という年だかちというて恩赦の請求をしても、中央更生保護審査会という壁があって、その中央更生保護審査会はなかなかそれを決定を下さずに、結局死に至らしめた。中央更生保護審査会あるいは地方更生保護委員会、そういうようなものは一つのそういう審査の対象になる人を合法的に押し込んでおくような役割を果たしておるのじゃないか、そういう疑問を抱かざるを得ないわけですが、中央更生保護審査会というものはどの程度開かれておるのですか。
  485. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 中央更生保護審査会は定例の合議を週に二回いたしております。そのほかに週に二回、合議の準備といたしましての資料点検あるいは事情聴取などの作業をしておられます。
  486. 井上泉

    井上(泉)分科員 例えば平沢さんのは中央更生保護審査会に出されてから二年か三年かになるわけですけれども、全然決定がされたということを承知しなかったわけですが、あれはやっておったのですか、やってなかったのですか。
  487. 栗田啓二

    ○栗田政府委員 私が着任しましたときには御当人が既に亡くなられた後でございましたので、記録の上で拝見いたしましたが、審査会としてはいろいろ検討しておられたということは記録の上でうかがえております。
  488. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、石川君は年齢的にも若いからそういうふうな憂き目に、獄中で不幸な状態になるというようなことはなしに、本人も自分の潔白を信じて生きる力というものを絶えず持ち続けておるので、その辺の心配はないと思うわけですけれども、なお十年以上ですから、十四年拘束されておるわけなので、その点を考慮するような愛情というものを大臣、持ってもらえぬでしょうか。ひとつ大臣の……。
  489. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 私もこの事件につきましてはよく存じておりまするが、愛情を持っておるのですけれども、十分慎重に検討しなければならない、かように考えております。
  490. 井上泉

    井上(泉)分科員 今、町の本屋にも売られておるわけですが、「そして、死刑は執行された」という、合田士郎という架空の名前だそうですが、これは刑務所の中における囚人のいろいろな姿を浮き彫りに書いておるわけで、私はこれを見てびっくりもしたわけです。こういうふうなやり方で刑務所の中へ入っておる囚人の中に当局が、つまり法務当局が何かスパイのような形で囚人を置いておりやせぬかと、そういう疑問が直観的にこの本を読んでから感じたわけです。これを読んでないとするならばまた読んでいただいて、平沢さんのことなんかも随分書いてあるわけですけれども、平沢さんのことにしても、私は真実とは非常に違う内容ではないか、こう思っておるので、何か法務当局がそういう受刑者の中にスパイを入らしておいてやっておるのじゃないか、こういうような気持ちを抱いたわけですが、その点どうお考えですか。
  491. 河上和雄

    ○河上政府委員 私ども矯正関係者が受刑者の間にスパイを入れてそういったいろいろな情報を収集するということはいたしておりません。戦前は私知りませんが、少なくとも最近においてそういうことはあり得ないことでございます。
  492. 井上泉

    井上(泉)分科員 それじゃ、この中は見たことあるのですか。
  493. 河上和雄

    ○河上政府委員 その図書を私拝見しました。中身は、ありていに申し上げますと、これは虚構と事実の歪曲、捏造に満ちております。先生御指摘のとおりでございまして、内容はノンフィクションと銘打っておりますので、つい事実であるかのような錯覚を読む人に与えるように書いておりますけれども、中身は、これはいわば小説だ、フィクションだと思われます。
  494. 井上泉

    井上(泉)分科員 私はこのなにを見てから、平沢さんのいろいろなことを自分で整理をしておったときにこの本が出ておって、これを見て、これは平沢さんもこんな書き方をされているが、受刑者の中に当局と意を通ずる者をよく言う泳がして、それで便利を図らしむというような者を置いておるのじゃないか、こういうように非常に感じたわけなのであえてそのことを指摘をして申し上げておるわけですが、今刑務所の中での受刑者の日々というものがなににはわからぬでしょう、いわゆる言葉で言えば、シャバ。シャバの世界には通じないわけですが、刑務所の中をもっと開放したらどうですか。
  495. 河上和雄

    ○河上政府委員 刑法に従って要するに刑務所に入れまして、そして刑法どおり定役に服するということで、いわば強制労働をさせること、これが法律によって私どもに求められている職責でございます。ただ同時に、入っている間に何とか自立更生の道を本人たちにつけさして、そして社会に有用な一員として送り返す、これをしたいということが私ども矯正関係者の実は理念でございまして、何とかそういう方向でもって教育をしております。  その教育の一つとして、やはりできる限り現実の社会に接することができるようにということを私ども考えております。ところが現行の監獄法は、先生御承知のとおり明治四十一年にできた八十年前の古い法律でございまして、そういったことを考えていないでつくられている法律ですので、どうもなかなかうまく社会復帰にスムーズにつながらないのじゃないか。  そこで実は現在国会に提案しております刑事施設法案という法案がございますが、この中では、釈放される前に自分の家に帰って七日間以内なら泊まることができるとか、あるいは刑務所から仕事先に働きに行く、それは全然監視を受けないで自分ひとりで自由に働きに行く、こういったような実は非常に新しい制度、これを取り入れて、何とか社会復帰を容易にしたい、こうしておるわけでございまして、どうか今度の法案についても御理解をいただきたいと思っております。
  496. 井上泉

    井上(泉)分科員 時間が参りましたので私は質問を終わらねばなりませんが、最後に、刑務所の中で石川君の作業しておるところを、石川君を救う会の責任者としても、どういう作業をしておるだろうと、いつも格子越しに面会するというのではなしに、実際に作業服をつけて働いておる場所、そういうところへ行って激励と慰めとを与えて、そうして自分たちの気持ちというものを理解をしてもらいたい、こういうように私は思うわけですけれども、そういう措置はとれないものかどうか。まあ平沢さんの場合にも、私は非常にその点ではいろいろな便利と言うてはなんですけれども、歩いてこれぬときには病室で面会というようなこともさせていただいたので、そのことをお願いしておきたいと思うのですが、どうでしょう。
  497. 河上和雄

    ○河上政府委員 刑務所の中の処遇にとって一番大切なのは平等に扱うということです。みんなを平等に扱うということでございまして、例えば外部から代議士さんが来られまして特定の、みんな工場の中で六十人、八十人働いているわけですが、その一人に知り合いの代議士さんがいろいろ話しかけて激励するという形になりますと、ほかの受刑者は一体どうなるのかということで、ほかの受刑者に与える影響は非常に大きゅうございます。そのために更生の意欲を失ってしまう。つまり彼には立派な代議士がついている、我々はどうなんだということですぐ反発をしていろいろなことをまたやり出す。そういうことで、実にやはり平等というのが刑務所の処遇にとって一番大切なことでございまして、なかなか一概に今ここでもってすぐぜひおやりいただきたいということは申しかねます。
  498. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 井上君、時間が来たので簡潔にお願いいたします。
  499. 井上泉

    井上(泉)分科員 はい、わかりました。  不特定多数の人に、刑務所の作業現場はどんなものだろうということで視察をさせてもらうとかいうようなことはできるのですか。
  500. 河上和雄

    ○河上政府委員 国会議員の先生方に刑務所の中を視察していただく機会は今までたびたびございます。
  501. 井上泉

    井上(泉)分科員 終わります。
  502. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 これにて井上泉君の質疑は終了いたしました。  次に、経塚幸夫君。
  503. 経塚幸夫

    経塚分科員 私は、今問題になっております原野商法の問題についてお尋ねをしたいと思っております。  まず最初に、被害の状況がどうなっておるかということでお尋ねをしたいわけでありますが、経企庁の国民生活センター、集計がございましたら五十九年、六十年それから六十一年、六十二年、それぞれ相談件数はどうなっておりますか。
  504. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 吉田消費者行政第二課長。――お見えになっていませんか。
  505. 経塚幸夫

    経塚分科員 来ていない。何しているんだ、ちゃんと言ってあったのに。連絡してあるんでしょう。そんなばかな話があるか。ちゃんときのう連絡してあって、そちらからも連絡が行っている。そんなあなた、人をなめたようなばかな話があるかね。  それじゃ警察の方へお尋ねしますが、警察への相談件数は、全国それから東京、大阪それぞれ何件ですか。
  506. 垣見隆

    ○垣見説明員 お尋ねのいわゆる原野商法に関しまして警察で把握しておりますのは、昭和六十二年四月以降各都道府県警察本部が悪質商法一一〇番で受理した相談件数でございますが、それによりますと昭和六十二年十二月までで、いわゆる原野商法に係る相談件数は二百四十一件でございます。
  507. 経塚幸夫

    経塚分科員 東京、大阪それぞれ何件ですか。
  508. 垣見隆

    ○垣見説明員 お答えいたします。  東京につきましては、二百四十一件中十一件、大阪については二十件でございます。
  509. 経塚幸夫

    経塚分科員 大阪府警の関係ですが検挙者がありますか。ありましたら何年度幾らですか。
  510. 垣見隆

    ○垣見説明員 警察庁に報告のございました検挙事件数は昭和六十二年二件でございます。
  511. 経塚幸夫

    経塚分科員 大臣にちょっとお尋ねをしたいと思っているのですが、今の報告は警察だけでありますが、国民生活センターの方もございます。それから私どもが入手いたしております資料では、例えば大阪弁護士会が会員にアンケートをとったわけですね。これを見ますと、五十九年が三十件、六十一年が八十三件。悪徳土地取引研究会というものをつくっておりますが、ここの一一〇番で受けたところが六十二年は二百九十三件、これは六十二年の十月二十二日から二十三日でありますが、被害額が最高一億四千万なんですね。それで特に無視できないと思われますのは、一次被害にとどまらず二次、三次、そうして多いのは四次、五次被害というのが出てきておるわけなんですね。  これは最初に、この土地は国の開発計画のあるところだから値上がりをいたしますよ、心配は要りません、国が買い上げますよ、そう言って買わしておいて、次は、売りたいと思うならいつでもあっせんをしますけれども、税金の関係もありますから別の土地を税金対策として買っておいてくださいと言って、二次目にはまた金を払わせる。それから三次目は、売るに際しては測量が必要だから測量の経費を払ってもらえぬか、こういうようなことでまたお金を取るというようなことで、一次、二次、三次、四次、五次と被害が最近ふえておるのが特徴なんですね、単なる一次件数だけじゃなしに。  こういうような状況にあるわけでありますが、恐らく大臣も所管の大臣といたしまして、こういう事態についてはよく御承知のはずだと思います。これは豊田商事に次ぐ重大な社会問題になりつつあるわけでありますが、どんな感触をお持ちでしょうか。
  512. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 御指摘のように相当悪質な商法である、かように考えております。そこで、この商売の中で刑罰法令に触れる事実がありましたならば捜査当局におきましてこれに対して適切に対処をしてまいる、そういうことでございまして、この悪徳商法の防止や根絶につきましては所管の省庁が多方面にわたりまするが、各省庁におきましても適切な対策を講じまして、また法務省としましてもこれに参加をいたしまして、これの根絶に努力をしてまいりたいと存じております。
  513. 経塚幸夫

    経塚分科員 それじゃ、さらに具体的な問題についてお尋ねをしたいと思いますが、検察庁それから警察庁、告訴、特に刑法二百四十六条の一に該当するというようなことで告訴のあった件数は、東京、大阪それぞれ何件ですか。
  514. 垣見隆

    ○垣見説明員 いわゆる原野商法に絡みまして詐欺罪で告訴を受理した件数は、これまでに調査した結果では昭和六十二年中警視庁で九件、大阪府警で二十六件でございます。
  515. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察庁といたしましては詐欺事件ということでは統計をとっておるわけでございますが、さらに個別の態様の事件別には統計をとりませんので、私の口から検察庁が受理いたしましたのが何件というふうには申し上げかねるところでございます。
  516. 経塚幸夫

    経塚分科員 大阪は随分告訴件数が多いわけでありますが、これは明らかに詐欺罪に該当すると私どもも判断をしておるわけであります。  例えば告訴をされておる件数の一つの例でありますが、大阪市在住のAさんの場合は七回で約一千万円をだまし取られたわけであります。一平米六千九百円ぐらいで買わされておるわけです。七千五百円という例もあります。そこで大阪の悪徳土地取引研究会が昨年現地調査をされたのです。一体これ、一平米当たり現地ではどれくらいの価格のものなのか、関係者に事情聴取をしておるわけでありますが、例えば、売買をされました青森県上北郡横浜町の役場の担当官の話では、一平米三百円だというんですね。これが六千円、七千円、場合によっては一万円という値段で売りつけられておる。それから野辺地町役場でも、大体一反十万から二十万ぐらい、これも買い手があっての話で、地元の人なら金をもらっても要らないと言う人が多いと言われておるような、こういう土地なんですね。現地の不動産鑑定士の話でも、一平米二百円から高くて五百円、こういうふうに言われております。  こういう状況を見ますと、全く価値のないものを価値があるかのように話をして、そしてしかも数十倍の値段で買わせる。それで、心配なら国が買い上げますよ、国が買い上げるまでもなく私どもの方でも買い上げて国に買ってもらいますよと、こういう気もないのにそういうことを言ってだます。それでこれが、言いましたように一度ならず二度、三度という状況が続いておるわけですね。一般的に、こういう事例の場合は明らかにこれはもう詐欺罪に該当すると考えますが、御判断はいかがなものでしょうか。
  517. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 詐欺罪が成立するかどうかにつきましては、個々具体的な事件につきましての証拠関係いかんということにかかってくるわけでございます。ただ、御指摘のありましたような、いわゆる非常に安価な土地、原野につきまして将来必ず値上がりするというふうにうそをつきまして金をだまし取ったということで、現に詐欺事件で捜査をいたしまして、公判中のものあるいは裁判が確定した事件もあるところでございます。
  518. 経塚幸夫

    経塚分科員 長崎地裁でもって懲役三年から四年という判決の例もあることを承知をしておるわけでありますが、手口は、この長崎地裁の判決の事例といずれも、告訴されている事件といいますのは全く同じような手口なんですね。それで、申し上げましたように、二次、三次というような大変な被害であります。  先ほど大阪の例を申し上げましたけれども、これは例えば神奈川県在住のパートの女性の場合でありますが、五十二歳ですが、最初は五十三年七月に北海道の原野を三百二十八平米、百三十七万七千円。これは固定資産の評価が七百六十五円。これは坪当たりじゃない、全部の土地の評価です。仮にこの時価が固定資産の評価の三、四倍といたしましても、四百五十倍の値段になるわけですね。そして二回目は会社を変えて、今度は六十二年七月に、五百八十万円で売ってやる、測量し直さなければならぬ、五十万円要ると。これは会社は変わりましたけれども、最初のA社の土地を買ったということを調べ上げて、それで、土地を持っておる、持ったけれどもこれはもう大変なものを買ったと思っておる弱みにつけ込んで、別の会社の名前をかたって測量代を巻き上げる。それで今度は、三度目は、測量代を巻き上げた会社の系列会社が行って、土地を転売してあげたいと思うけれども税金がかかる、別の土地を買ったことにすればいい、こういうようなことで別の土地をまた買わせて、これは八十二平米を百三十万円でありますが、固定資産の評価額はたったの二千四百六十円であります。こういうようなこともやっているんですね。これが言われておる原野商法の実態であります。これはもうぜひ手厳しく取り締まってもらわなければならぬ、こういうふうに考えております。  そこで、次にお尋ねをしたいと思っておりますのは、この手口が極めて系統的であるということと、それから組織的にやられておるということ、しかも計画的だということでありますが、若干の例を申し上げておきたいと思います。  大阪弁護士による先ほど申し上げましたこの研究会の昨年十月の一一〇番の例を見ますと、被害を受けたという相談件数が二百九十三件、先ほど申し上げました。うち、三陽商事、三青商事関係というのが百二十八件で四三%、二社だけで占めておるわけです。しかも、三次以上の被害を受けたというのが四十件ですが、この四十件のうち、先ほど名を挙げました三陽、三青商事関係が二十三件でありますから、三次以上の被害の何と五七%を占めているのですね。  これは、大臣、ちょっとおわかりにくいかと思いますが、私は、その当時一一〇番で相談を受けました会社の名前を拾ってみまして、それでそのルーツをたどってみたのです。これがその一覧表でございます。ちょっと渡してよろしいですか。
  519. 金子原二郎

    ○金子(原)主査代理 はい。
  520. 経塚幸夫

    経塚分科員 ごらんになっていただければわかると思いますが、一番左の端に大隆と甲隆というのがございます。これがいわゆる北海道の原野商法をやった会社であります。それで、いろいろ線が入っております。下を見ていただきますと、「むつ」という会社がございます。一番下の左端ですね。これが甲隆という北海道の原野商法から流れてできました会社であります。この「むつ」は、大阪地裁でもって昭和五十九年に損害賠償の判決を受けておる会社であります。会社そのものが判決を受けたわけです、もちろん個人も含まれておりますが。この「むつ」が、その右へ行きますと三陽商事というものをつくりました。「むつ」が、これはもう危ないと思って解散をして三陽商事をつくりました。その右手へ行きますと三青商事というのをつくっております。それから流れまして国土開発センター、国土観光、それから上へ行きまして日本通商、田園都市計画等々がずっとあります。  私が線を引っ張っておりますのは、全部人脈が同じ人物で流れていっておるということであります。甲隆の従業員であった者が「むつ」の設立に関与する、「むつ」の従業員であった者が三陽商事の代表取締役で会社を設立する等々、全部ずっと流れていっておるわけです。上の方を見ていただきますと、幾つかの企業名が挙がっておりますが、全部、もとはこの大隆と甲隆から端を発しておるわけですね。  そして、大阪で今告訴事件で大問題になっております三陽と三青と称するのは、大阪地裁で損害賠償の判決を受けた、その後「むつ」を解散して三陽と三青をつくって、そうして、今申し上げましたような対象物件も同じ青森県の土地であります。手法も同じ言い方であります。著名な政治家も買っておる、国土開発の計画がある、国に買い上げてもらえる。これは同じ手法でやってきているのですね。だから、こういう状況から判断をいたしますと、もう極めて系統的で、しかも組織的で、そして計画的ないわゆる犯行だ、こう判断をされるわけであります。  それで、これも同じ昨年行われました研究会の一一〇番の一覧表でございます。これは二百九十六件全部それぞれ企業名が入っておりますが、三次、四次の被害を見ますと、一番最初に被害に遭ったのが「むつ」。同じ人ですよ。そして二番目は三青商事に被害に遭い、そして三番目は三青、三陽から分かれましたユニオンプランニングという会社の手口でだまされて、そしてその次には国土観光。これまた、そこの図面にお書きをしておりますけれども、三青商事から国土開発センターへいき、開発センターから国土観光がつくられたわけでありますが、これは一連の同じ系列の会社なんですね、全部。これに第四次まで被害を受けている、総額九百万円という方がございます。それから八百八十万円という方も、同じく「ムツ」、三青、ユニオンプランニング、国土観光。悪質きわまれりと言える状況なんですね、この一覧表を見ますと。こういうことでありますが、警察、それから法務省の方も、これは極めて系統的、組織的、計画的な犯行だという御認識をお持ちなのかどうなのか、その点はいかがですか。
  521. 垣見隆

    ○垣見説明員 いわゆる原野商法につきまして、研究会の事例から見まして、これはケース・バイ・ケースでございますけれども、中には犯行グループが次々に会社を設立して事犯を敢行するケースもあるものと認識をしております。
  522. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察が捜査いたしました事件を見ましてもただいまと同じでございまして、この種事件につきましては、グループをつくりまして計画的に犯行を行っている事例が少なくないと思われます。
  523. 経塚幸夫

    経塚分科員 さらに、具体的な問題をお尋ねいたしますが、昭和六十二年三月十三日大阪府警捜査二課、それから四月二十三日大阪地検に対しまして、弁護士宮地光子、村松昭夫を代理人といたしまして告訴状が十数件出されておりますが、これは現在それぞれどうなっておりますか。事情聴取はもうされましたですか。
  524. 垣見隆

    ○垣見説明員 御指摘の事案につきましては、昨年の六月に十件の告訴を受理いたしておりまして、現在関係者からの事情聴取等捜査中でございます。
  525. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 大阪地検におきましては、昨年の四月二十三日に告訴を受理いたしまして捜査を行ったところでございますが、その後大阪府警にも同じ告訴が行ったという関係がございまして、現在は大阪府警と連絡をとりながら大阪府警におきまして捜査を行っているところでございます。
  526. 経塚幸夫

    経塚分科員 これは検察庁の方、地検の方から告訴人に対して中止の通知が舞い込んできて、これは何事だと。弁護士の方に言わせれば、地検へ問題を持ち込んだ、そうすると府警にもということで府警にも問題を持ち込んだ。この種の、重大な社会問題になっておる、しかも御認識は組織的、系統的だという御認識を持たれておりますように極めて重大な事件でありますから、もう検察庁が率先して指揮に当たられて事件の解明のために先頭に立つべき筋合いのものじゃないか。何で中止なんだ。告訴人の側からは今ちょっと不信感が出ているのですよね。そういう実情なんですが、いかがなものですか。
  527. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 大阪地検におきまして中止処分にしたのはそのとおりでございますが、これは捜査をしないということではないのでございまして、現在大阪府警にも同じ告訴が出ておりまして、大阪府警と連絡をとりながら大阪府警において捜査をいたしておるという実情にあることにかんがみまして、大阪地検におきましては一時中止処分ということに付したわけでございます。  中止処分に付しましたのは、関係人の中に所在不明者もいるというような事情もあったところでありまして、大阪地検におきましてはそういう意味では所在不明者の所在捜査などを継続いたしているところでございます。
  528. 経塚幸夫

    経塚分科員 事情聴取も進められておるということでありますが、これは速やかに警察の側からすれば送検すべきものは送検する。検察庁の側としては、もうこれは詐欺罪に該当することはほぼ間違いないという状況でありますから、速やかに処理をされるように要望いたしておきます。  そこで、法改正の問題と絡んでお尋ねしたいと思うのですが、例えば宅地建物取引業法に原野商法は該当しないわけなんですね。いわゆる宅建業法というのは二条でもって、その「用語の定義」で「宅地若しくは建物の売買」こうなっておる。原野は入らない。きょうの新聞を見ますと、訪問販売法の改正で、うそに近いセールス、こういう文句を使ったりおどしたりした場合は刑事罰で一年以下の懲役に処するというようなことで改正案を出すというようなことが言われておるようでありますが、この訪販法から見ましてもこの種の不動産、原野林野の販売は該当しない。言わせれば、法の盲点をついて好き勝手なことをやっているわけです。  それで弁護士の中からも、これは宅建業法を改正して、いわゆる宅地建物だけじゃなしに原野山林などもこの業法の対象にすべきではないか、それから、訪販法を改正するのならこういうことを取り締まれるような内容の性格にすべきじゃないか、こういう意見も上がっておるのですが、私はこれは当然だと思う。まさに法の盲点をついておるのです。何やったってひっかからぬじゃないか、まあ損害賠償か、いわゆる刑法の詐欺罪の適用か、安易に使えるような法律でないじゃないかというようなことで、これはいろいろ疑問が出ておるのですが、その点、法の改正問題、いかがなんですか。
  529. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 宅建業法は法務省の所管ではないわけでございます。ただ、法務省といたしましても、これまで例えば豊田商事事件等、いわゆる悪徳商法の問題が起きましたときに関係省庁とも協議会を持つなどいたしまして、そういう中で法律の所管庁が法改正あるいは新しい立法など行われます際には法務省としても十分御協力申し上げてきたところでございます。
  530. 経塚幸夫

    経塚分科員 これは宅建業法にもなじまないということで枠外に置かれておる。訪販法もなじまないということで枠外に置かれておる。そこで、一つは宅建業法の改正問題あるいは訪販法の改正問題も考えられます。しかし同時に、別の分野から、何らかの原野林野等のこういう、ほかの法律では明らかにひっかかるんですね。明らかにひっかかるんです、訪販法の今度の改正案からいきましても。しかし原野山野はひっかからないということなんで、何か網をかけるようなものが別に考えられないものなのか。その点はいかがですか。
  531. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 いわゆる詐欺的な商法でございますと、刑法に言います詐欺の事実が認められれば犯罪が成立することになるわけでございます。それ以外に何か規制するような網をかけられないかということでございますが、ただいまの御指摘に対しましてこの場で直ちにこういう方法があり得るということはなかなか申し上げるのが難しいことであるというふうに考えております。
  532. 経塚幸夫

    経塚分科員 時間も参りましたので大臣にお伺いをしたいと思うのです。  お聞きいただきましたようにこの事件の性格は、金利が下がってくる、一方で土地が高騰する、こういう状況の中で、わずかばかりの預貯金が利率が下がって目減りをする、こういう弱点につけ込んで、しかも手法は、大阪の被害者救済センターの相談件数を見ますと三十八件中三十件が主婦、留守居をしておる家庭をねらって行って、そしてその告訴状の一つの例を見ますと、二時間近くにわたっていろいろとなだめ、すかし、おどしする、子供が泣き始める、それでついふっとなって預金通帳と印鑑を渡したというようなことで三回、四回と被害に遭った。一たん最初に手をつけますと、自分の投資したものを守らなければならぬという保護本能でもって、持っていたら税金がかかりますよ、対策が必要ですよ、売りたいでしょう、売ってあげましょうというようなことで次々ひっかけていくというやり方で、全く社会的に許しがたい犯行だと思うのです。  そういうことで、詐欺罪に該当するということで告訴も相次いでおるわけであります。先ほど法改正は大変難しいという御答弁でありましたが、そういうことも含めまして、これは第二、第三の豊田商事事件として広がらないように、大臣としてもこの際抜本的な根絶対策をとっていただくべきではないかと私は思いますので、最後に大臣の姿勢をお伺いいたしまして終わりたいと思います。     〔金子(原)主査代理退席、主査着席〕
  533. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 山林あるいは原野は、農地とは異なっておりまするので農地法の適用もないわけでございます。それからまた、訪問販売も主として動産が中心でありまするから、不動産がその範囲に入っていないのだろうと思いまするが、経済企画庁で今消費者行政をやっておられるわけでありまするけれども、消費者行政の一環としまして考えていかれることができないだろうかと思うわけですが、そういうような場合には、法務省としても法律作成につきましては協力をしてまいりたいと存じます。  いずれにいたしましても、こういう詐欺的な商法によりまして多数の人たちが苦しい目に遭うわけでありまするから、政府として十分考えなければならぬと思いまするので、今後検討をさせていただきたいと存じます。
  534. 経塚幸夫

    経塚分科員 終わります。
  535. 池田行彦

    池田主査 これにて経塚幸夫君の質疑は終了いたしました。  次に、小澤克介君。
  536. 小澤克介

    小澤(克)分科員 最初に法務大臣にお尋ねしたいと思います。  法務大臣あるいは法務省の職掌のうちの非常に重要な柱に人権擁護行政があろうかと思うわけでございます。人権侵害は、いろいろな場面で、いろいろなパターンといいますか類型があろうかと思いますけれども、そのうち現在日本で非常に大きな要素を占めるのが、依然として根を絶たない部落差別問題であろうかと思うわけでございます。部落差別の解消は国民的な課題であると言われて久しいわけでございますけれども、いまだになくならない、本当に残念なことであるわけでございます。部落差別による人権侵害事件が後を絶たないということは極めて残念だと思うわけでございます。  そこで、まず最初に大臣に、人権擁護行政、とりわけ部落差別に発する人権侵害についての基本的なお考えをお尋ねし、あわせて来年度予算のこれに関係する部分についての特徴といいますか、特に力点を置いている点などありましたら教えていただきたいと思います。
  537. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 ことしは世界人権宣言が行われましてから四十年目に当たっておりまして、法務省といたしましても人権問題に大いに取り組んだわけでございます。なかんずく同和問題を根本的に解決するために努力をしておるわけでありまするが、やはりこの問題は国民の理解と協力が重要であるとの考えのもとに、従来から国民に対する啓発活動を行いまするとともに、特に同和問題に関する人権侵犯事件の調査及び人権相談の充実強化を図りまして、差別意識の解消に努めております。  御承知のように、同和対策の法律ができましてから環境の整備と申しまするかそういう条件は大分整ってまいったのでありまするけれども、今なお結婚とか就職などに関しまする差別が後を絶っていない状況にありまするので、今後ともより一層効果的な啓発活動を展開いたしまして、同和問題に対する正しい認識と深い理解を得るように努めてまいる所存であります。
  538. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 来年度の予算について御説明いたします。  法務省昭和六十三年度地域改善対策関係予算は、六十二年度予算に比べましてパーセンテージにして一二・二%の増、金額にいたしますと総額で二億六百万円が計上されております。そのうち金額的に特に増の多いのは啓発活動に関する予算でございまして一億六千六百万円が計上されておりまして、これは六十二年度予算に比べまして一千八百万円、パーセンテージにして一二・二%の増となっております。そのほか、人権相談のための経費あるいはケース研究のための経費といったものが六十二年度に比して相当程度増額されております。  なお、ここ数年来増員が認められませんで推移いたしました人権擁護委員でございますが、六十三年度予算において五百二十四名の増を認めていただきました。これによりまして地域における人権擁護活動が従前にも増してさらに充実されるものと期待しているところでございます。
  539. 小澤克介

    小澤(克)分科員 大臣の現状認識及び決意のほどを聞かせていただいたわけでございます。また、予算面についての裏づけの面も今聞かせていただいたわけでございますが、人的な組織あるいは体制というものがないと十分な活動ができないのは当然でございます。  それでまず、お尋ねしたいのは、現在人権擁護行政に携わる法務省職員、結局人権擁護局ということになろうかと思いますが、本省あるいは地方法務局も含めまして、どのくらいの方が全国でこれに従事しておられるのか、まず教えていただきたいと思います。
  540. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 昭和六十三年度予算案において定められております職員の定数について申し上げますと、法務省本省の人権擁護局、これが十五名、それから出先機関であります法務局、これは管区局と言っております全国に八つある法務局並びに地方法務局、これは全国の県庁所在地等にそれぞれ配置されておりまして四十二あるわけでございますが、その合わせた人権行政従事職員の定数が二百六名でございます。  以上は、人権擁護行政に専従する職員予算定数でございますが、委員も御承知と思いますが、法務局の下部機関には支局というものがございます。この支局におきましても人権擁護の事務を取り扱わせるということになっておりまして、この支局が全国に二百六十八あるわけでございますが、その支局の支局長、あるいは支局長補佐の置かれているところにおきましてはその補佐、あるいは補佐のないところで庶務の係長、こういった職責にある者が他の登記とか戸籍とかいった事務と兼任ではございますが、人権擁護事務も取り扱うことになっております。この者たち、そういう立場で人権擁護事務を扱う者を数えますと千五十七名になります。  したがいまして、現在全国で人権擁護行政に携わっている人員と申しますと、今申しました専従の二百二十一人プラス支局の職員の千五十七人、こういうことに相なります。
  541. 小澤克介

    小澤(克)分科員 支局というのは登記事務その他で大変忙しいわけでございまして、今のお話を伺っていますと、結局人権擁護行政に専任で携わっておられる方は全国で二百二十一名ということのようでございます。これで果たして人権擁護が全うできるのか、甚だ心もとなく感じるわけでございますが、これにつきましては、いろいろ予算の制約等あろうかと思うわけです。  逐次改善を図っていただくしかなかろうと思うのでありますが、人数はともかくといたしまして、人権擁護に携わる方々は人権問題、とりわけ部落差別問題等について深い知識と理解、それからまた何といっても鋭い人権感覚といいますか、これが必要であろうと思うわけですけれども、そういったものを備えていただくためには、そういった職員の方々に対する研修といいますか、そういったものが十分なされなければ実効性を上げることはできないのじゃないか、かように思うわけです。これまでの研修等の実績あるいは今後の方針あるいは来年度予算での裏づけ等、実態をお聞かせ願いたいと思います。
  542. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 ただいま委員指摘のとおり、人権行政に従事する者にとりましては、その知識及び人権に関する感覚というものを陶冶しなければならないことにつきまして私どもも十分認識しておりまして、同和問題はもちろん、人権侵害等に関する問題につきましていろいろな研修を行っておりますが、法務省本省で所管する各種職員研修におきましてももちろんその中に含まれております。それから、各出先の局におきまして随時研修を行っております。これもその一環でございます。  特に人権事務に従事する職員に対しましては、こういった研修という形のものだけでなく、あるいはそれよりもむしろと申しますか、会同だとか打合会だとかそういったものを随時本省あるいは各局単位で催しまして、委員の申されましたような資質の涵養に極力努めているところでございます。
  543. 小澤克介

    小澤(克)分科員 この研修に関連いたしまして、これはひとつ大臣に、御質問というよりはむしろ要請になろうかと思うのですけれども、一度被差別部落の実態を視察していただきたいと思うわけでございます。大臣は関西の方で自治体の長をやっておられたとお聞きしますので、恐らくこの被差別部落の実情等についてはあるいは私よりもむしろお詳しいのではないかと思うわけでございますが、しかし今般、国全体の法務行政の、しかも人権擁護行政の責任者となられたわけでございますので、改めて実態を把握していただきたい。百聞は一見にしかずと申します。  前にも、もう数年前でございますが当時の法務大臣にそういうことをお願いいたしまして、検討してみようというお答えをいただいたのですが、いろいろお忙しいこともあろうかと思いますけれども、結局実現したという話を聞いておりません。ぜひお願いをしたいと思うわけでございます。もちろん大臣だけでなくて、大臣を筆頭に次官あるいは局長もつぶさに実情を見ていただきたいという要望が、これは私の要望というよりも差別解消運動を実際に行っておられる方々からの強い要望があるわけでございますが、いかがでしょうか。
  544. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 私は京都の北の方の田舎で生まれまして、子供のころから同和部落の友達も多いというようなことがございまして、よく存じておるわけであります。また、知事になりましてからは、同和関係の方々と非常に親しくいたしまして、部落にもお伺いしたり、またそういう極めて親しい親友を持っておるというような関係もございまして、よく承知をしておるわけでございます。大臣といたしましても、関東の方につきましては余り存じませんので、ぜひまた視察もさせていただきたいと存じております。
  545. 小澤克介

    小澤(克)分科員 ぜひ実現をしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、昨年、あるいは昨年に限らずここ数年間ということで結構でございますが、差別事件の内容あるいは件数、その傾向といいますかそういったところにつきまして、実態を把握しておられる、当然把握しておられると思いますので、御紹介を願いたいと思います。
  546. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 同和に関係いたします差別事件として人権擁護機関が取り上げました事件の数をここ三年来申してみますと、昭和六十年が九十六件、六十一年が七十六件、六十二年が七十四件でございます。  これらの事件の傾向を見てみますと、差別言動、言辞というたぐいの事件が一番多いわけでございますが、そのほかにも結婚に際しての差別事象も依然として後を絶っておりません。また、いわゆる逆差別意識と言われております考え方といいますか意識と申しますか、そういうもの、あるいはねたみ意識に基づくと思われるような差別落書きや差別文書なども目立ってきているところでございます。  私ども人権擁護機関といたしましては、今後ともこれらの差別事件につきまして事件として調査、処理するとともに、差別を生む土壌そのものを変えるための啓発活動を精力的に行ってまいりたいと考えております。
  547. 小澤克介

    小澤(克)分科員 今のお話だと、部落差別に基づく人権侵犯事件としてはこの三年間にやや減っていく傾向があるようにうかがえたわけでございます。それ自体は大変結構なことだろうと思うわけでございますが、聞くところによりますと、人権侵犯事件というふうに立件したもののほかに、いわゆる情報収集活動の対象となった件数というのも多数あるというふうに伺っております。  それからまた、直接法務省人権擁護局で扱ったのではなくて、各自治体などで受け付けたといいますか、差別事件で法務省に報告の上がっているものもいろいろあるというふうに聞いているわけでございます。これらについての傾向といいますか、定量的、定性的傾向等について把握しているところをお知らせ願いたいと思います。
  548. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 ただいま委員指摘のとおり、先ほど申しました数字は人権侵犯事件として立件した事件の数でございますが、そのほかに法務局等人権擁護機関において情報を収集いたしまして啓発を行っているものがございまして、これはかなりの数に上るわけですが、六十二年分については現在その数について整理中でございます。  また、ただいま地方自治体からの報告があるというお話でございましたけれども、これは制度といたしましては地方自治体から報告を受けるということにはなっておらないわけでございますが、私どもの啓発の必要から昭和六十年に地方公共団体の御協力を得まして同和問題に関する差別事象の取り扱い件数を調査したことがございます。その調査結果によりますと、その件数が千百七十二件ございました。ただ、この数字は都道府県あるいは市町村それぞれの任意の御協力を得たものでございまして、協力をいただけなかったところもありますし、また重複したものも考えられるようにも思いますので、数字自体あいまいな数字というふうに私ども考えてはおりますが、そのような数字となっております。
  549. 小澤克介

    小澤(克)分科員 それでは、自治体からの報告の方はともかくといたしまして、情報収集の対象となった件数でございますが、これについてはどうなんでしょうか、傾向としてはふえているわけでしょうか。
  550. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 私が今手元に持っております数字は、昭和六十年が五百十七作、六十一年が四百四十四件ということで、この二年だけで言いますと六十一年の方が減少しておる数字となっております。
  551. 小澤克介

    小澤(克)分科員 ちょっと私の方で把握しております数字と幾らか異なるのじゃないかと思うのですが、一九八六年ですから昭和六十一年で情報収集が六百五十八というふうに聞いているわけでございます。何らかの統計上の問題でそごが出たのだろうと思いますけれども、私の聞いているところでは、情報収集の対象となった件数は決して減っていない、ふえている年もあるというふうに伺っているわけですね。そして人権侵犯事件として立件したものについてはやや減っている。こうなりますと、これは統計の読み方でございますが、見方によっては差別による人権侵害がより巧妙になってきていて、情報としてはありながら立件するに至らないというようにも読めるわけでございます。  したがって、差別事象が減っている、部落差別が解消するよい方に向かっているとばかりはどうも言えないように思うわけでございます。先ほど最初に伺った全国で二百若干名という体制で甚だ心もとないというのも、この辺から率直な感想として持つわけでございますけれども、ひとつ今後ともこの体制の整備等にはぜひ意を注いでいただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、私ども聞いているところでも、本当に意識面での差別が減らないどころか、何かもうむしろふえているような側面すらある。非常に悪質ないたずら書きであるとか、それから結婚差別ですね、これが本当に根を絶たない。そのためにもう幾多の悲劇を生んでいるわけでございます。結婚差別のゆえに自殺をしたり、あるいは当事者同士は非常な理解を持って結婚にやっとこぎつけたけれども、一方の配偶者の親との関係がうまくいかなくなって断絶状態になるとか、本当にそういう理由のない悲劇が依然として後を絶たないという実態を私ども承知をしているわけでございますし、また被差別部落の方々とお話をしますと、年配の方が、自分が生きているうちにこういう差別が世の中からなくなると確信をしてこれまで運動してきたけれども、残念ながらなくならなかった。しかし、おばあさんでございましたけれども、お孫さんをひざに抱いておられたわけですが、この孫の時代にはこういう差別が本当になくなってほしいと涙ながらにおっしゃられる、そういう状況が依然として続いているわけでございまして、本当に胸が痛むわけでございますけれども、ぜひこの問題について十分なお取り組みを願いたいと思うわけです。  それで、個別の事件でなお解決に至ってないものがたくさんあるというふうに聞いております。時間が余りありませんけれども代表的なものとして地名総鑑の事件の問題、それから東京の今戸差別の張り紙、何度も何度も張り紙をするケースですね。それから、これももう随分長いのですけれども、これは福岡でしたか、九州の方の大蔵住宅の差別ビラの大量ばらまき事件、これらについて現在啓発活動がどのような進展を見せているのかをお答え願いたいと思います。
  552. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 具体的事件としてただいま挙げられました三つの事件でございますが、まず地名総鑑の事件でございます。  この図書につきましては、私ども法務省におきましても極めて悪質な人権侵犯事件として調査を行ったわけでございますが、現在までのところ八種類の差別図書が発行されて、これらの差別図書を二百二十の企業が購入したというところまで明らかになっておるわけでございます。これらの図書購入者につきましてはほぼ調査を終わりまして、啓発も実施してきたところでございますが、肝心の発行者の関係につきましては、発行者と目される者が当局の調査に対しまして非協力的な態度をとっているというようなこともございまして、一部未解明の状況にある部分がございます。  法務省といたしましては、人権擁護の立場からなお事案の解明に努力しているところでありますが、現時点におきましてはもうかなりの年数もたっていることもございまして、これ以上の事案の事実の解明は極めて困難な状況にあるように考えております。  今後とも、このような差別が許しがたい社会悪であるということを私ども人権擁護機関といたしましては国民に一層周知徹底させまして、このような事件が再び生ずることのないように、さらに積極的な啓発活動を続けてまいりたいというふうに考えております。  次に、二番目のいわゆる東京今戸差別張り紙事件でございますが、これも極めて悪質な差別事件として、東京法務局が張り紙をしている人に対して強力に啓発を行ってきたわけでございます。この行為者本人は非常に執着心の強い方でございまして、強い説得を重ねてもなかなか耳をかさないという態度でございまして時間がかかったわけでございますが、昨年六月ごろまでに張り紙を撤去するに至ったという状況になってございます。  三つ目のお尋ねでございました、いわゆる大蔵住宅差別ビラばらまき事件、これは九州福岡の事件でございますが、これにつきましては、最初にビラがまかれたのは五十八年だったと思います。私ども人権擁護機関としましても、本人と接触できる都度非常に強力な啓発を行ったわけでありますが、昨年三月にこの行為者本人がまたビラを配布いたしまして、その後は所在が不明という状況になっております。昨年三月のビラ配布に対しましては、地元法務局ではそのビラを回収するとともに、さらに地域啓発を行うための活動をやってきたところでございます。  以上のような状況でございます。
  553. 池田行彦

    池田主査 小澤君、時間が参りましたので、簡潔に。
  554. 小澤克介

    小澤(克)分科員 はい。時間が参りましたので、最後に一つだけお尋ねいたします。  今のお話など聞きましても、悪質なもの、それからまた確信犯的なもの、これらにつきましては、人権擁護当局の労を多とするわけではございますが、しかしやはりこの啓発活動ということにはどうも限界があるのではないかということを痛切に感じるわけでございます。  これに関連いたしまして、懸案となっております人種差別撤廃条約、これはまだ批准がなされていないわけですけれども、これについてはどうお考えなのか。もちろんこの人種差別撤廃条約の中には、差別を流布あるいは扇動するような行為については、これを刑事罰の対象とするということが明記されているわけでございますので、これを批准するということになれば、当然そのような法的規制ということが課題となるわけでございますけれども、それらも含めまして法務大臣のお考え、それから現在のこの批准問題についての検討の進捗状況等をお尋ねいたしたいと思います。
  555. 池田行彦

    池田主査 法務大臣、簡潔に御答弁願います。
  556. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 この第四条で、人種的優越または憎悪に基づく思想のあらゆる流布等を法律により処罰すべき犯罪行為とすること、及び人種差別を助長し扇動する宣伝活動等を違法と宣言して禁止することのほか、人種差別を助長し扇動する団体への参加そのものについても法律により処罰すべき犯罪行為とすることを求めておりまして、これらは憲法で保障する思想及び良心の自由や集会、結社及び表現の自由と抵触するおそれが強いことなど、国内立法上困難な問題がありまして、慎重な検討が必要と考えております。
  557. 小澤克介

    小澤(克)分科員 ちょっと一言だけ済いません。
  558. 池田行彦

    池田主査 時間でございます。
  559. 小澤克介

    小澤(克)分科員 ちょっと質問ではなく要望なのですが……
  560. 池田行彦

    池田主査 時間がもう終わっていますから。
  561. 小澤克介

    小澤(克)分科員 まずいですか。それでは質問を終わります。
  562. 池田行彦

    池田主査 これにて小澤克介君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  563. 中島武敏

    中島(武)分科員 私は、きょうは登記事務量の増加とその業務に携わる職員の定数問題に関してお尋ねしたいと思っております。  昭和五十二年度の登記件数は甲、乙合わせますと、何と三億二千二百八十万件に及んでおります。ところが昭和六十二年度の件数は五億二千八百三十三万七千件になっておりまして、昭和五十二年度と昭和六十二年度を比較いたしますと一六四%の増加になっておりますけれども、しかし職員増加はわずかに五%にすぎないわけであります。九千三百二十四名から九千七百九十六名にふえているというだけであります。  また、同じ期間に、東京法務局の場合ですけれども、件数の増加で見ますと約二倍、一九五%、三千五百四十二万七千件から六千八百九十四万二千件にふえているわけです。ところが、その職員の方を見ますと六百五十五名から七百六名、職員の方は七・八%しか増加していない、こういう実態であります。  それから、東京法務局の六十一年度と六十二年度を比較してみるとどうなるか。これは甲号件数では一年間に二十一万六千九百三十二件増加しておる。これは職員の定数でいいますと、六十二名の甲府地方法務局の一年間の取り扱い件数とほぼ同じ件数になる、こういうふうに聞いておるわけであります。  それから、ついでに申しますけれども、乙号件数はどうかといいますと八百八十四万八千六百五十三件の増加、これは一年間の増加ですが、職員定数三十四名の水戸法務局の年間の件数に匹敵をしていると聞いております。ところが、東京法務局の登記関係職員昭和六十二年度の増加分はわずか五名だ、こういう話なんですね。仕事量と定員のギャップが余りにも大き過ぎるのじゃないかと思うのです。  大臣に伺いますけれども、こうした実態を大臣は御存じでしょうか。
  564. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 よく存じております。ことしの予算の編成期に当たりましても先生の党からも陳情、要請を受けました。  そこで私といたしましては、現下の厳しい行財政事情にありまするけれども、財政当局に大いに力説をいたしまして、ある程度の増員を得たわけでございます。これは法務局として五十五名の純増でございまして、そのうちで登記のみの関係は五十三名の純増、こういうような次第でございます。  まだまだ十分ではございませんが、しかし、これは人をふやすのみでやっていくというわけにもまいりませんので、やはり東京のような都市化されておりまする法務局から順次コンピューター化を導入していかなければならない、かように存じておるところでございます。
  565. 中島武敏

    中島(武)分科員 大臣から御答弁ありまして、後でまたその問題についていろいろ伺いたい点もございますが、ちょっと質問を続けさせていただきます。  これだけ非常にギャップが大きい。仕事はどんどんふえてくる。ところが人員はなかなか、努力にもかかわらずふえないということのために、これは私、いろいろ調査をして率直に申し上げたいと思うのですけれども法務省が国民から課せられている国民の財産を守るという責務を果たすという点から見ると重大な事態になっているということを言わざるを得ないのです。  私は、昨年、東京の板橋区、北区の登記所を視察いたしまして、そして実情をつぶさに拝見しました。そしてまたいろいろ伺いました。それで現場もよく見せてもらったんです。それで私、非常に強く感じたことがあります。実際行って見ると、百聞は一見にしかずというんですけれども、実によくわかるのです。窓口でお客さんがたくさんたまっている、待っていらっしゃる。なかなかこれ、仕事がはかどらないのです。それでもう待ち時間が長くなるわ、人数はたくさんの方が待っているわ、こういう実態なんですね。  それから、話を聞きますと、登記申請の受け付けをやってもすぐに処理できない。余りにたくさんの件数が来るものですから、それで二週間ぐらいかかるという場合もあるというんですね。みんなこれは率直な話です。実情なんです。そのために、緊急融資にその謄本が間に合わなかったとか、あるいは古い謄本が渡されて、そして国家賠償事件、国賠事件ですね、これに発展する、そういうケースもあるというふうに聞いているんです。  ちょっと伺っておきたいと思うのですけれども、国家賠償事件件数は、ここ二、三年どんな推移でございますか。
  566. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 登記に関連いたしまして提起されました国家賠償事件は、態様はいろいろでございますが、件数で申しますと、昭和六十年で二十件、六十一年二十三件、六十二年二十件というような推移でございます。
  567. 中島武敏

    中島(武)分科員 今おっしゃっていただいたように、膨大な数ということじゃないのですけれども、やはり国賠事件が起きるというような事態になっているんですね。  それで、これも率直な話なんですけれども、登記官の登記簿記入ミスというのもふえちゃうんですね。それで、私も現場をいろいろ見て思ったのは、登記簿を見ますと実に訂正印を押してあるんですね。忙しくて書き間違えたりなんだりして訂正印を押すというようなことがあるんじゃないかということを思うのです。  ところが、それだけじゃないんです。不正事件もふえているという憂うべき事態があります。実は私のところに全法務の労働組合から目黒区柿の木坂の土地登記簿の偽造のコピーが送られてまいりました。ことしの二月のことですけれども、これなんですね。これはコピーですけれども、壱のところはそのとおりなんですけれども、弐、参、四、これは全部偽造なんですね。偽造をやっているのです。それで、土地を新たに売ろうということをやって職員の人に発見されたのです。これは実は御存じないかもしれませんけれども、実に驚くべきことなんですね。  職員の方の努力によって発見されたということはよかったと思うし、その努力は私は大いに多とするのですけれども事態は非常に深刻な事態になっている。何でこんな事件が起きるのかという問題なんです。この点なんですけれども、登記簿の閲覧は登記官の面前で行うということが不動産登記法施行細則第三十七条「閲覧の方法」というところで定められているのではありませんか。
  568. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 施行細則三十七条に御指摘のような定めがなされております。
  569. 中島武敏

    中島(武)分科員 確かに局長が認められたとおりなんでありまして、三十七条には「登記簿若クハ其附属書類又ハ地図若クハ建物所在図ノ閲覧ハ登記官ノ面前二於テ之ヲ為サシムヘシ」ということが明記をされておるわけであります。  定員が、職員数が非常に少ないということのために、国民の財産権を保護するためにつくられている法律さえも、国がつくった法令を国自体が守れない、こういう事態になっているのです。これは現場を御存じの方は私が申し上げるまでもないのですけれども、人数が少ないでしょう。少ないですから、ほかのことで忙殺されてしまって閲覧のところには人間はおれないのです。こういう事態になっている。非常に深刻な問題だと考えるのですけれども、大臣、どうですか。
  570. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 私も法務局へ見に参りまして登記の状況をよく存じております。そういうふうな場合には補助員と申しますか、雇い入れましてその衝に当たっておるわけでありまするが、十分ではございません。したがって、今後とも登記官の増員につきまして大いに努力しなければいけないと存じております。
  571. 中島武敏

    中島(武)分科員 もう一つ実は申し上げたいのです。  これも驚くべきことなんですけれども、これは東京の港区です。ある一人の申請者が一週間の間に西麻布一丁目から四丁目、それから南麻布六丁目から七丁目の全部の謄本の申請をしたのです。そうしましたら、申請書だけでバインダー三冊分の申請書になった。これを謄本でいいますと二千六百九十四通、それでコピーの枚数は九千八百七十三枚、これを真っすぐこういうふうに積み上げますと、御存じのとおり謄本は二つ折りになされておるものですから、ちょうど二倍の高さになるのですけれども、何と二メートルを超えるのですね。しかし申請があればやらなければならぬわけですよ。だけれども、これは大変なことなんですね。こういう例が非常にふえているのです。  これは土地の値上がりというような問題、これは後でまたやりたいと思うのですけれども、土地の値上がりが一言で言ってやはり大きな原因をなしていると思うのですね。こういう状況のためにもう残業残業という事態が生まれてくる。しかも、先ほど東京法務局の具体例も述べましたけれども、どだい少ない人数でやるものですからとても間に合わない。それで、法務局の中でも他の業務の人たちをそこへ回さざるを得ないというようなことが起きてきましたり、それでも足りないというので民事法務協会に下請に出す。それから、これも御存じだと思うのですけれども、部外応援という格好で司法書士だとか土地家屋調査士だとかあるいは自治体の職員の方だとか、こういう人たちの応援を得る、あるいは賃金職員を設けなければならない、こういう問題になるのですね。こんなことをなくして法務省できちんと処理をするには、登記関係職員は全国で一体何人ぐらい必要だというふうにお考えでしょうか。
  572. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 ただいまお話のございましたように、登記事件が非常に急増いたしておりまして、大都市圏を中心に非常に繁忙な状態となっております。これを適正に、かつ迅速に、円滑に処理していくためにはやはり相当数の登記従事職員の増員を図らなければならないというふうに考えまして、その点を鋭意関係当局にお願いしているところでございます。  どのぐらいの数でなければならないかと申しますと、適正、円滑の度合いをどの辺のレベルに置くかということによっていろいろ考え方、計算の仕方に違いが出てくるかと思いますので、必ずしも一概に申し上げることはできないと思いますが、相当数の増員をお願いいたしたく思っておるところでございます。
  573. 中島武敏

    中島(武)分科員 局長は相当数とおっしゃるわけです。実は安藤議員が昨年十二月九日法務委員会質問したときに、民事局長は、間接的な表現ですけれども、三千名ぐらい必要としているのじゃないかというのを否定されなかったというように私は会議録で拝見をいたしております。これはそうでございますね。
  574. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 前回安藤先生に御答弁申し上げたところでございますけれども、かねて前局長は三千名ほどの増員が必要であるというふうに申し上げておるところでございまして、私も同様に考えております。
  575. 中島武敏

    中島(武)分科員 先ほど大臣から、コンピューター化でカバーしていきたいというような努力もしているのだというお話がありました。それで、実は私、板橋へ参りましたら、あそこは全国でただ一つコンピューターの研究をやっているところなんですね。私、ずっと詳しく見せてもらいました。それから、これで人員は一体どういうふうに浮くのか、省略できるのかという話も聞いたのです。ところが、なかなか人員がそれによってうまく浮かないのだという率直な話もありました。といいますのは、確かに全体として見れば幾らか合理化されるという面を私も決して否定するわけではないのです。ないのですけれども、細かいことは省きますけれども、船橋の情報センターに全部集中する、そのためにはバックアップセンターをつくる。つまり地方法務局ですね、五十あるのですか。ここに人員を三名なら三名ずつ、東京は七名か八名か何かそんな数だったかと思いますけれども、張りつけなければならない。そうすると、三名平均としても百五十名そこに出さなければならない、こういうことになってくるのですね。そうすると、先ほどから言っているみたいな物すごい状況の中で百五十名を捻出しなければならない。これだけでも大変なんですね。  私も行ってみたのですけれども、登記簿謄本を要求されたらコンピューターでやるときはどうするんですかと言ったら、コンピューターのボタンをぽんぽんと押してばあっと出てくるのです。なるほどそれは棚からおろしてきてコピーをしてという、その時間は減ることはわかるのですよ。わかるのですけれども、入力するまではどうするのかといったら、これはまた一々やらなければならないという大変な仕事量になるわけなんですね。だからコンピューター化によってかえって仕事が激増するんだ、そんなことを決して私は言うつもりはない。けれども、人員が非常に足りないという状況のもとでコンピューター化によってこれがカバーできるのだというのは、そこまで大臣おっしゃったかおっしゃられなかったか、先ほどの答弁ではそこまでははっきりしないのですけれども、私はそれは無理だと思うのですね。やはり人員の問題というのは大いに重視していかなければならぬ。それで、全法務の労働組合は、登記関係だけであと一万三千何百名必要だというようなことさえ言っているわけです。私はこの数字の当否は知りませんけれども、労働組合の、職員の置かれている大変な状況、これを反映してやはりきちっとはじき出しているものだろうと思うのですね。  先ほどから大臣もいろいろと努力しておられる、ことし五十五名純増したというお話も最初に伺ったのですけれども、実のところを言って仕事量が何しろどんどんふえていくものですから、これは大変なんです。ここ二、三年間何で急速に登記の仕事がふえるのかということについて伺いたいと思っているのですが、私の見解を先に申し上げさせていただきますと、東京を中心とした土地問題が非常に大きな原因をなしている。四全総あるいは首都改造計画、ここでは何を書いているかというと、東京の場合ですけれども、東京の位置づけとして国際金融情報都市にする、こういう位置づけをやっているわけですね。それから、さらに東京でいいますと、東京都庁が新宿に移転をする、あるいは東京都心部の再開発が計画される、あるいは臨海部の開発が計画される、あるいはさらに分割・民営の国鉄の跡地の払い下げ問題が問題になる。非常に大きな国土政策、都市政策、この大改造計画が次々と発表されるものですから、そのたびに非常に大企業が土地の買い占めを行うとか、あるいは地上げ屋が暗躍をするとか、土地転がしというような問題まで含めて土地の売買が激増した、これがここ数年の東京を初めとする大都市の大きな原因だというふうに私は考えているのです。この点はどうでございますか。
  576. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 おっしゃることが相当な原因をなしていると思います。やはり土地建物の異動によりまして登記をやらなければいかぬ、あるいはまた最近は金利が下がってきましたので抵当権設定を、移転すると申しますか、やり直すわけでございます。そういう権利の変動によりまして登記件数がふえておるわけです。やはりこういう都市を中心にしましてふえておりまするので、それに対する対策を中心に考えていかなければならぬ、かように考えております。
  577. 中島武敏

    中島(武)分科員 重ねてちょっと伺いたいのですけれども法務省としましては、今後の問題ですけれども、これから土地登記はどういう動向をたどるというふうにお考えになっておられますか。
  578. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 登記事件がこれまで増加した原因について、私ども必ずしもその原因を正確に知り得る立場にもございませんが、おおむね都市周辺地域における宅地需要の増加とかあるいは投機的な動きとかといったようなものが相当の原因を占めてきたであろうと考えます。今後の予測ということになりますと、そういった傾向が今後も続くのかどうかということにかかってくるわけでございまして、これは私どもとしてそう軽々に予測を申し上げるだけの知識を持ち合わせておりませんので、この程度で御勘弁いただきたいと思います。
  579. 中島武敏

    中島(武)分科員 いや、私が何でこんなことを聞くかというと、どうも行政もそうだし人員増の問題もそうなんですけれども、後追い後追いになるわけですね。だからもうちょっと先取りして、これからの予測はこうだ、そうするとこれくらいの人間をふやさなきゃいかぬというようなことを計画的に立てるべきじゃないのかという考えがあるのですよ。そうでないと後追いばかりになるのです。それでもうしわ寄せは職員の人たちとか国民とか、こういうことになってしまうわけで、それで私はこの問題についてお尋ねをしたわけであります。そういうものをちゃんと計画的に立案をしてやるという考え方についてはどうでございますか。
  580. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 予算あるいは人員の増の要求につきましては、どうしても後追いにならざるを得ない部分があろうかと思います。しかし、御指摘のような点を踏まえまして今後検討させていただきたいと思います。
  581. 中島武敏

    中島(武)分科員 もう今まで申し上げてきたところで十分おわかりかと思うのですが、これも本当に率直な話なんですけれども政府の政策といいますか国の政策といいますか、そういう国土政策あるいは都市政策というようなものによる地価の値上がり、これは私も土地特別委員会でいろいろとやったところなんですけれども、無関係じゃないのです。やはり大いに原因をなしているわけでありまして、国民の期待にこたえるためには政府の責任で増員をさらに行わなければならないと、いうふうに私は思っております。  ちなみに、大蔵省の昭和六十三年度の定員増を聞いてみますと、差し引き三百七十四名ふえる、こうなっておるのですね。随分ふえるのです。どこでふえるのかと思って調べてみましたら、国税庁の職員なんですね。なぜ国税庁の職員がこんなにふえるのかと思いましたら、いろいろ調べてみるとマル優が廃止される、それで人員が大変必要だ、こうなっている。私どもはマル優の廃止は反対でありますけれども、きょうはその議論はやりません。やりませんが、しかし、政府の政策を実行するために職員の配置を行う、こういうことであることはもう間違いないのですね。  私先ほどから申し上げてきましたように、国民の財産を守るというのは法務省の仕事であります。そういう点ではそこの方も国の責任で、政府の責任でやはりちゃんと人員をふやすべきなんじゃないか。銭を取ると言っては言葉は悪いかもしれませんけれども、そっちの方は大いに人員はふやすけれども、国民の財産を守る方はどうもそれに比べると非常に熱意が少ない、こういうふうに思われてもこの問題は仕方がないと思うのです。  それで、総務庁、来ていらっしゃいますか。国家公務員の定員枠の削減、この対象から登記部門を外すとか、あるいは必要な人員を大幅にふやすとかいうような対策を講じるべきじゃないかと思うのですけれども、先ほどからの議論を聞いておってどうですか。
  582. 伊原正躬

    ○伊原説明員 お答えいたします。  法務省定員につきましては、従来から厳しい定員事情の中にあっても特に登記部門等を中心に相当の配慮をしてきているところでございまして、これを具体的な数字で申し上げますと、六十三年度予算案におきまして国家公務員全体で三千六百五十五名の純減を図る、こういう厳しい定員事情のもとで、法務局等の登記部門の職員につきましては、事件数が増加傾向にあり、繁忙登記所において事務処理の遅延等が見られることから、これを極力改善されますよう、百七十七人の増員を認めたところでございます。また、これから計画削減による減を差し引いたといたしましても、先ほど法務大臣がお答えいただきましたように登記部門で五十三人の純増となっております。  また、定員の削減の対象から登記関係定員についてはこれを除外して考えられないか、こういう御指摘でございますが、定員削減というのは御承知のように政府における定員削減計画というものに基づきまして実施されているところでございまして、これは行財政の簡素効率化といういわゆる臨調、行革審の基本理念のもとに実施されます計画でございまして、政府全体として総定員を抑制する上で行政各部門を幅広くカバーするものであることが要請されまして、登記部門をその対象外とすることは非常に難しいというふうに考えます。しかし、各行政部門における行政需要には変化がございますことから、定員削減計画の実施を通じましてこの変化を踏まえた定員の適正配置を推進していくということで、先ほど申し上げましたように登記部門等につきましては業務量の推移等を考慮しつつ毎年純増を確保してきたところでございまして、今後とも法務省御当局と御相談しつつ努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  583. 中島武敏

    中島(武)分科員 もう時間が参りましたので、最後に私は簡単に法務大臣の決意をもう一度お聞きしたいのです。といいますのは、国会は毎回毎回もっと人員をふやさなきゃいかぬという請願を採択してきているのですよ。今総務庁から答弁ありましたけれども、厳しい厳しいと言うのだけれども、私に言わせれば、さっきからの実情に応じればさっぱりふやしてないのですね。最後に法務大臣の決意を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  584. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 今国会には不動産登記法、商業登記法の改正案を提出する予定でありまして、そういう問題も含めまして人員をさらに合理的にふやしていくということで努力をいたします。
  585. 中島武敏

    中島(武)分科員 終わります。
  586. 池田行彦

    池田主査 これにて中島武敏君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  587. 沢田広

    沢田分科員 大臣初め委員長、御苦労さまです。いよいよ最後ですから、簡単に済ませたいと思います。  一つは、公共用地取得に当たっての登記の手続、この点について、未登記が極めて多くなって、公共団体としても苦労しているところで、時によれば二重売買しなければならぬという状況すら生まれております。その点の手続について解明をしていただきたい。お願いいたします。
  588. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 公共用地の取得でございましても、任意買収で行われる限りは私人間の売買と同じでございますので、未登記のままでございますとその所有権の取得は対抗力を持ち得ないことに相なります。したがいまして、相続があったりしていろいろ御苦労はあろうかと思いますが、相続人を探求していただいて所有権の移転登記を得るように努めていただくほかはないのではないかというふうに考えます。
  589. 沢田広

    沢田分科員 強制執行ができる土地で、税制上も優遇措置を講じてやった場合についてはいかがでありますか。
  590. 藤井正雄

    藤井(正)政府委員 公共用地につきましては、税制上いろいろな措置が講じられておりますが、所有権の取得、そしてそれを保全するための登記という面では一般の売買の場合と特に異なることはございませんし、これについて特別の手当てができるというような法制にはなっていないというふうに承知をいたしております。
  591. 沢田広

    沢田分科員 あとはもう要望であります。  一つは、やはり国の財政を使って市町村なり県なりが、河川であれ道路であれいろいろ用地買収をするわけですが、例えば借り入れをしておったために抵当権が設定してある、あるいは相続ができないで名義が変わっておる、あるいはその間第三者の手に移ってしまった、こういうようなことになりますと、この地価の高騰ですから、なかなかこれは一様や二様では判こを押してくれない。時にはお金を出さなければだめだ。あるいは、年数がたつともう新たに購入しなければだめになる。こういうようなことで、提案としては、何らか登記事務の中に公共事業で取得した土地であるということを証明するものだけでもつけておいてもらいたい。これは将来訴訟やその他を行う場合に、やはり一つの証拠物件になる。その証拠物件は、登記ではないけれども登記所においてそれを証明だけ、こういう事実があったということを記録にとどめておく。こういう手続について検討してもらいたいということです。だめですとか今はだめですという返事しか出てこないだろうと思いますけれども、それを検討してもらいたいというふうに思います。  それからもう一つは、これは本当に細かい問題ですが、法務局の施設、備品は極めて古いですね。タイプを使っているところもあるのですよ。御存じですか。昔のタイプライターを使っているところ、大臣御存じですか。そういうくらいですから、極めてこれは嘆かわしいと思うのですね。ワープロならいいけれども昔のタイプを使っておる、こういうことですから、これは後はもう要りませんので、善処してください。  それから、もう一つ法務大臣にお願いしたいことは、大赦の問題です。  いわゆる恩赦、大赦の問題は恩赦法なりそういうものによってやっているわけでありますが、基本的に見れば三権の上に立って措置する行為である。特に、法律の、裁判所で決定したものを軽くしたりあるいは赦免したりということになるわけですから、いわゆる大権の行使なんです。立法府を越え、あるいは司法を越え、あるいは行政府を越えるという、極めてこれはもろ刃の剣だと私は思っている。時変わり、移りまして、例えば違う者が使う場合は極めてこれは危険なものになり得ることにもなるわけでありますので、恩赦、大赦というものの扱いについてはあらゆる場合を想定して慎重に対応することが望ましい、こういうことが言えると思いますので、法務大臣の良識を信頼しながら、私はお答えはもういただきませんが、中身はわかっていただいたと思いますので、以上をもって、一番最後ですから、私は七時半が質問の予定でありますが、大変皆さんが、職員も長い間我慢、忍の一字で御苦労されたものであろうと思います。  きょうの一日、大変御苦労さまでした。お礼を申し上げまして、終わりたいと思います。
  592. 池田行彦

    池田主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を予定の時間前に無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時二十六分散会