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1988-03-09 第112回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和六十三年三月八日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月八日  本分科員委員会において、次のとおり選任さ  れた。       稲村 利幸君    上村千一郎君       鈴木 宗男君    林  義郎君       村山 富市君 三月八日  稲村利幸君が委員会において、主査選任され  た。 ────────────────────── 昭和六十三年三月九日(水曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 稲村 利幸君       上村千一郎君    鈴木 宗男君       林  義郎君    池端 清一君       上田 利正君    田口 健二君       村山 富市君    兼務 左近 正男君 兼務 佐藤 徳雄君    兼務 沢田  広君 兼務 新村 勝雄君    兼務 永井 孝信君 兼務 松前  仰君    兼務 遠藤 和良君 兼務 近江巳記夫君    兼務 草川 昭三君 兼務 草野  威君    兼務 春田 重昭君 兼務 青山  丘君    兼務 川端 達夫君 兼務 玉置 一弥君    兼務 浦井  洋君 兼務 中路 雅弘君    兼務 藤田 スミ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         労 働 大 臣 中村 太郎君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生大臣官房会         計課長     多田  宏君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省児童家庭         局長      長尾 立子君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         厚生省援護局長 木戸  脩君         社会保険庁年金         保険部長    佐々木喜之君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       竹村  毅君         労働省職業能力         開発局長    野崎 和昭君  分科員外出席者         総務庁人事局参         事官      河野  昭君         環境庁大気保全         局大気規制課長 浜田 康敬君         大蔵大臣官房企         画官      田村 義雄君         大蔵省主計局主         計官      中島 義雄君         文部省教育助成         局財務課長   奥田與志清君         文部省高等教育         局医学教育課長 佐藤 國雄君         厚生省社会局更         生課長    戸口田三千尋君         厚生省児童家庭         局企画課長   楠本 欣史君         労働省労働基準         局安全衛生部化         学物質調査課長 冨田 達夫君         労働省職業安定         局障害者雇用対         策課長     根本 安俊君         建設省住宅局住         宅建設課長   梅野捷一郎君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  真君         自治省税務局企         画課長     鶴岡 啓一君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 分科員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   村山 富市君     村山 喜一君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     緒方 克陽君 同日  辞任         補欠選任   緒方 克陽君     上田 利正君 同日  辞任         補欠選任   上田 利正君     田口 健二君 同日  辞任         補欠選任   田口 健二君     前島 秀行君 同日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     上田 利正君 同日  辞任         補欠選任   上田 利正君     奥野 一雄君 同日  辞任         補欠選任   奥野 一雄君     村山 富市君 同日  第一分科員沢田広君、青山丘君、中路雅弘君、  第二分科員春田重昭君、第三分科員左近正男君  、玉置一弥君、第五分科員永井孝信君、近江巳  記夫君草川昭三君、浦井洋君、藤田スミ君、  第六分科員松前仰君、第七分科員佐藤徳雄君、  新村勝雄君、草野威君、第八分科員遠藤和良君  及び川端達夫君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)      ────◇─────
  2. 稲村利幸

    稲村主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願いいたします。  本分科会は、厚生省及び労働省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算及び昭和六十三年度政府関係機関予算労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。中村労働大臣
  3. 中村太郎

    中村国務大臣 昭和六十三年度一般会計及び特別会計予算のうち労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。  労働省一般会計歳出予算額は四千八百九十億二千九百万円で、これを前年度当初予算額四千八百八十四億三千五百万円と比較いたしますと、五億九千四百万円の増額となっております。  次に労働保険特別会計について御説明申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定徴収勘定に区分されておりますので、各勘定ごと歳入歳出予算額を申し上げます。  労災勘定歳入予算額は一兆八千三百五十八億四千万円で、これを前年度当初予算額一兆七千九百十九億八千二百万円と比較いたしますと、四百三十八億五千八百万円の増額となっております。  また、歳出予算額は一兆二千百二十四億六千百万円で、これを前年度当初予算額一兆千七百七十九億九百万円と比較いたしますと、三百四十五億五千二百万円の増額となっています。  雇用勘定につきましては、歳入歳出予算額とも二兆四千二十一億八千八百万円で、これを前年度当初予算額二兆二千三百七十億千八百万円と比較いたしますと、千六百五十一億七千万円の増額となっています。  また、徴収勘定につきましては、歳入歳出予算額とも二兆八千五百十三億二千五百万円で、これを前年度当初予算額二兆七千三百五十三億四千六百万円と比較いたしますと、千百五十九億七千九百万円の増額となっています。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定のうち、当省所管分としては、炭鉱離職者援護対策等に必要な経費として二百十八億二千四百万円で、これを前年度当初予算額百九十五億二千四百万円と比較いたしますと、二十三億円の増額となっています。  昭和六十三年度の予算につきましては、特に産業構造転換労働力高齢化等進展に適切に対処した雇用対策等に十分な配慮を行うなど、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択と財源重点配分を行うことにより、きめ細かく、かつ、効率的な労働施策実現を図ることといたしております。  以下、主要な事項についてその概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 稲村利幸

    稲村主査 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稲村利幸

    稲村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────   〔中村国務大臣説明を省略した部分〕  次に、その主要な内容について概略説明申し上げます。  第一は、産業構造就業構造変化対応した労働対策に必要な経費であります。  円高産業構造転換労働力高齢化等進展する中で、産業職業地域年齢間における労働力需給ミスマッチにより、種々の雇用問題が生じるおそれがあり、これに適切に対応した構造転換雇用対策実施が最重要課題となっております。  このため、特定業種雇用安定助成金制度創設雇用関係情報整備等による産業雇用対策充実強化地域雇用開発中心とした総合的地域雇用対策推進、高年齢者雇用特別奨励金制度創設各種助成金制度活用による高年齢者等雇用機会確保及び企業等への委託訓練を初めとする円滑な職業転換のための職業能力開発促進内容とした「産業地域高齢者雇用プロジェクト」を実施することとしております。なお、これに関連して、特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところでございます。  また、第八次石炭政策対応した炭鉱離職者対策推進するとともに、総合的雇用情報システム活用した職業紹介産業雇用情報提供業務等充実等による労働力需給システム整備及びパートタイム労働者労働条件改善雇用安定等を図るためのパートタイム労働対策要綱に基づく啓発指導推進パートバンクによる職業紹介体制の拡充、さらにはパートタイム労働者の総合的な福祉対策検討等を行うこととしております。  これらに必要な経費として一兆六千四百七十四億六千七百万円を計上いたしております。  第二は、総合的な勤労者福祉対策に必要な経費であります。  中小企業福利厚生には、大企業に比べ、なお大きな格差があるなどの問題が見られます。このため、中小企業事業主勤労者が共同して総合的な福祉事業を行うことを援助する中小企業勤労者総合福祉推進事業創設し、中小企業勤労者福祉増進を図ることとしております。  また、立ちおくれが見られる勤労者持ち家取得年金資産の保有を一層促進勤労者財産形成促進制度整備充実を図るため、勤労者財産形成促進法改正し、勤労者財産形成年金貯蓄払い出し制限に関する要件の緩和等を行うとともに、最高貸付限度額引き上げ等改善を行うこととしております。  これらに要する経費として七百六十九億二千万円を計上いたしております。  第三は、労働時間の短縮等労働条件向上対策に必要な経費であります。  週休二日制の普及等労働時間短縮は、勤労者生活充実はもとより消費機会拡大を通じての内需拡大国際化への対応、長期的に見た雇用機会確保等の観点からも重要な課題であります。  このため、改正労働基準法段階的法定労働時間の短縮を踏まえた週休二日制の普及促進基本に、中小零細企業における労働時間制度改善に対する援助等改正法の円滑な施行に努めることはもとより、労働時間短縮に向けての社会的、国民的合意形成及び産業別による週休二日制の推進等労使自主的努力に対する指導援助を積極的に行うこととしております。  これに要する経費として二十六億二百万円を計上しております。  第四は、労働者安全衛生確保対策に必要な経費であります。  近年の著しい社会経済情勢変化は、職場における安全衛生の面に大きな影響を及ぼしており、労働者の安全と健康の確保がますます重要な課題となってきております。  このため、総合的な健康の保持増進対策推進小規模事業場安全衛生水準向上などを内容とした労働安全衛生法改正を行うとともに、労働者健康確保事業助成制度創設し、労働者心身両面にわたる健康確保に必要な人材の養成等に対する援助等を行うこととしております。  これらに要する経費として一兆四百五十八億六千二百万円を計上いたしております。  第五は、職業能力開発対策に必要な経費であります。  急速な技術革新高齢化進展する中で、労働者職業生涯を通じた適切な能力開発実施が極めて重要な課題となっております。  このため、情報処理関連職業訓練実施体制充実、各教育訓練機関をコーディネートするためのシステム整備研究等により、高度の職業能力開発推進体制整備するとともに、地域社会の特性に応じた公共職業訓練施設整備充実職業訓練指導員の資質の向上を図ることとしております。  また、生涯能力開発給付金等各種給付金積極的活用による民間企業における職業能力開発推進を図ることとしております。  これらに必要な経費として千五十一億三千二百万円を計上いたしております。  第六は、長寿社会への対応に必要な経費であります。  本格的な高齢化社会の到来を迎え、経済社会の活力を維持、発展させていくためには、高年齢者雇用就業の場の確保を図ることが重要であります。  このため、六十歳定年基盤として、六十歳代前半層までを含めた継続雇用推進、高年齢者の再就職促進定年退職後等における就業の場の確保に対する援助等、総合的な高年齢者雇用就業対策推進することとしております。  また、高年齢者職業能力開発促進するための職業訓練施設整備を行うとともに、高年齢者職域拡大安全衛生確保等を図るため、高年齢者向けME機器等研究開発、さらには老人介護労働力供給体制充実し、今後急速に増大すると見込まれる老人介護ニーズに的確に対処することとしております。  これらに要する経費として二千百四十億二千八百万円を計上いたしております。  第七は、男女雇用機会均等確保等女子労働者対策に必要な経費であります。  男女雇用機会均等法の着実な浸透を図り、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保対策推進するとともに、育児休業制度女子雇用制度普及促進等女子労働者就業に関する対策推進することとしております。  これらに要する経費として二十七億百万円を計上いたしております。  第八は、障害者等特別の配慮を必要とする人々に対する職業生活援助等対策に必要な経費であります。  障害の重度化等困難の度を増している障害者雇用対策は、的確に対処しなければならない極めて重要な課題であります。  このため、本年四月から施行される障害者雇用促進等に関する法律に基づき、職業リハビリテーション体制強化するとともに、重度障害者精神薄弱者重点を置きつつ、障害の種類、程度に応じたきめ細かな対策を総合的に推進することとしております。  また、輸送革新進展等港湾労働をめぐる状況変化対応した港湾労働対策推進するほか、駐留軍関係離職者及び漁業離職者の早期再就職促進を図るための援護措置を引き続き推進するため、港湾労働法案及び駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案をそれぞれ今国会に提出したところでございます。  これらに要する経費として千百三十一億八千六百万円を計上いたしております。  第九は、労使関係安定対策に必要な経費であります。  我が国が内外の厳しい状況のもとで今後とも発展、繁栄していくためには、良好な労使関係を維持していくことが重要であります。  このため、産業労働懇話会等労使の対話の場を活用することなどにより、労使相互理解と信頼を強化するための環境づくり推進することとしております。  これらに必要な経費として八億八百万円を計上いたしております。  第十は、我が国国際的地位にふさわしい労働外交推進に必要な経費であります。  近年における各国間の相互依存関係の深まりと我が国国際的地位向上に伴い、労働分野においても積極的な対外政策を展開していく必要が高まっています。  このため、民間企業の行う職業訓練分野国際協力に対する援助事業や、ILO等国際機関を通じて行う技術協力を拡充し、開発途上国中心とした国際協力の積極的な推進を図ることとしております。  また、ASEAN諸国等政労使者構成による交流若手労組指導者招聘事業等国際交流推進により諸外国との相互理解友好関係強化を図ることとしております。  これらに要する経費として九十五億四千五百万円を計上いたしております。  以上のほか、総合的な労働政策推進労働行政体制整備及び一般行政事務等に必要な経費を計上いたしております。  以上、昭和六十三年度労働省所管一般会計及び特別会計予算について概略説明申し上げました。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。     ─────────────
  6. 稲村利幸

    稲村主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 稲村利幸

    稲村主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  8. 永井孝信

    永井分科員 まず初めに、同対審答申が出されましてからもう二十三年になろうとしているわけであります。その間にいろいろな施策を講じてきてもらいましたけれども、残念なことに実はまだ部落差別の問題は大変な状況に置かれています。私は兵庫県でありますが、この兵庫県で最近とみに差別事象が多発をしてまいりました。とりわけ昨年の十二月には市役所とか銀行あるいは国や県の出先機関の玄関などに集中的に差別落書きが起きるという事件が起きましたけれども、こういう差別事象について大臣は御承知でしょうか。
  9. 中村太郎

    中村国務大臣 承知をいたしております。遺憾に存じております。
  10. 永井孝信

    永井分科員 この差別落書き事件の中で実は逮捕者も出ているわけでありますが、そういう事実も掌握されているでしょうか。
  11. 中村太郎

    中村国務大臣 承知をいたしております。
  12. 永井孝信

    永井分科員 そういう差別事件が続発をしているという現状をまず御認識いただいて、以下、私の質問にぜひひとつ誠意を持ってお答えいただきたいと思うのであります。  この同対審答申をちょっと引用してみたいと思うのでありますが、その労働行政にかかわる部分を抜粋してみました。「同和地区住民がその時代における主要産業生産過程から疎外され、賤業とされる雑業に従事していたことが社会的地位の上昇と解放への道を阻む要因となったのであり、」というふうに指摘をしているわけであります。そうして、「同和地区住民就職教育機会均等を完全に保障し、同和地区に滞留する停滞的過剰人口を近代的な主要産業生産過程に導入することにより生活の安定と地位向上をはかる」べきだ、こう述べているわけでありますが、このことについて大臣はどのように評価をされているか、お答えいただきたいと思います。
  13. 中村太郎

    中村国務大臣 基本方針にございますように、就職機会均等を完全に保障するということ、それが同和問題の真の解決を図るための最重点課題であるというふうに労働省としては承知をいたしております。
  14. 永井孝信

    永井分科員 ところで、大臣はそのように評価をされたわけでありますが、そのことが果たして具体的に政策の中で生かし切ることができただろうか、これが現在一番問題になっていると私は思うのであります。  その同じ同対審答申の中で、「産業職業に関する対策」という項目がございまして、その中に、これまた引用させていただきますが、このように触れているわけであります。「同和地区のような経済的基盤の劣弱な後進地区では、社会開発経済開発を併行的に行なうかあるいは社会開発経済開発に先行させることが必要である。」こう言い切っております。そして後段の方で、この「停滞的過剰人口を良質の労働力として育成して近代産業部門に就労せしめる人的能力開発が必要である。特に新規学卒若年労働者重点を置いて積極的に実施すること。」このように「産業職業に関する対策」の基本方針の中でうたわれているわけでありますが、これがどのように労働行政の中で政策として取り入れられ、どのように成果を上げ得たと考えていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。
  15. 野崎和昭

    野崎(和)政府委員 先生指摘のとおり、同和地区住民の方の雇用を安定するためには職業訓練職業能力開発が非常に重要であると認識しております。このために昭和四十一年から毎年計画的に同和地区に関しましては職業訓練校訓練科目を増加することにしておりまして、定員の増加、それから内容につきましても、先生指摘のとおり可能な限り近代的な科目を増設するということで努力をしてまいっております。今後とも十分努力してまいりたいと思っております。
  16. 永井孝信

    永井分科員 成果は上がってきていると言われるわけですか。
  17. 野崎和昭

    野崎(和)政府委員 その結果だけとは思ってはおりませんが、総務庁調査によりましても一般常用雇用がわずかずつではございますけれども増加してきているというような数字もございますので、成果は上がってきているというふうに認識しておりますし、今後ともそういうことで成果を上げるようにしていきたいと思っています。
  18. 永井孝信

    永井分科員 今それなりの成果を上げることができているというふうに言われているわけであります。今現在、大分景気は上向いてきましたけれども、円高不況という中で大変な現実が存在をしておって、労働省にも大変汗をかいてもらったのでありますが、特定不況業種であるとかあるいは特定不況地域についての雇用対策などを進めるために特別措置法をつくってまいりました。これは相当きめ細かい雇用対策を進めておりますから、この対策そのものを私は労働省積極面として高く評価をしておきたい、こう思うわけであります。  しかし、事部落差別にかかわる雇用問題というのは、同対審答申の中にもうたっておりますように、これは単なる失業者を救済というそういう次元の問題ではなくて、いわば日本の民主主義を成熟させることができるかどうか、あるいは人権そのものにかかわる問題なのですね。したがって、単なる特定不況業種とか特定不況地域にかかわる雇用対策と違った立場から、当然これは労働行政として推進されるべきだと考えますが、どうでございますか。
  19. 岡部晃三

    岡部政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、労働省におきましては、同対審答申にございますように、就職機会均等実現ということにつきましては最重点的な課題ということで認識をいたしているわけでございます。したがいまして、従来から同和関係住民に対する雇用促進という意味におきまして各般の施策を特段に講じているわけでございまして、その中では、きめ細かな職業指導もございますし、あるいは受講奨励金の支給によりまして不安定な就業状態にある者に対しての職業に必要な知識及び技能の習得というふうな点についての努力、あるいはまた企業内の同和問題研修推進制度の実施あるいは企業のトップクラスに対する研修実施等々を進めてまいったわけでございます。先生指摘のような精神に私どももまさに基づきまして、同対審の趣旨を踏まえた積極的な対応に今後とも努めてまいりたいと考えております。
  20. 永井孝信

    永井分科員 そこで大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、今御答弁がありましたように、労働省としてはそれなりに——私は十分な成果を上げるところまで到達していないと思いますよ、正直申し上げて、こんな状況でありますから。しかし、同対審答申にうたわれている部落差別をなくするために必要なこういう雇用対策といいますか労働行政というものについては、同対審答申そのものを絶対的に尊重する立場でこれからも進めるということでなければいかぬと思うのでありますが、そのことは、大臣、どうでございますか。
  21. 中村太郎

    中村国務大臣 そのことにつきましてはお説のとおりでございまして、私もそういう決意で臨みたいと思っております。
  22. 永井孝信

    永井分科員 私の方から絶対的に尊重してもらいたいという御質問に対して大臣がお答えになったのですが、それは絶対的に尊重するというふうに受けとめていいのですか。
  23. 中村太郎

    中村国務大臣 そのとおりでございます。
  24. 永井孝信

    永井分科員 今大臣の御答弁がありましたように、この同対審答申を絶対的に尊重してこれからも労働行政を進めてもらう。  さてそこで、それだけに今具体的な問題についてここで御提起を申し上げ、今大臣の決意のあったように、同対審答申を絶対的に尊重するという立場でこれからより積極的に対応してもらいたいということで、具体的な事例を二、三申し上げてみたいと思うわけであります。  現在の雇用状況を見てみました場合に、これは一九八四年ですからちょっと資料は古いのでありますが、解放同盟が全国的に調査をしました資料があります。その資料で見ますと、例えば雇用の実態というのは、いわゆる零細企業ですね、五人から十人とか十五人とかいう数の従業員を抱えていらっしゃる零細企業、この零細企業就職している人たちの中身を分析してみますと、いわゆる差別をされている部落出身者が一般の地区の皆さんの、割合としては、一・七倍という数字が出ております。その翌年に総務庁が実態調査をしているわけでありますが、その総務庁調査を見ましても、一人から四人という極零細企業といいましょうか、そういう零細企業雇用されている割合というのは、いわゆる差別されている人たちの部落出身者が極めて高い数字を示しています。これは現実なんですね。しかも、まだそこへ就職できればいい方であって、就職できないでいる失業者の割合というのを比べてみると、これまた圧倒的に被差別部落の人が多いという現状にあります。  このことを考えてみますと、同対審答申が出されて二十年以上経過しているのでありますが、いわゆる不安定就労という被差別部落の実態というものは改善がされていないと言っても私は過言ではないと思うのですが、このことについてどういうふうにお考えでしょう。
  25. 岡部晃三

    岡部政府委員 全体的な雇用の趨勢といたしまして、この同和地域に関しましても、いわゆる近代化と申しましょうか、雇用の安定が徐々にではございますが進んでいるように私どもは実は分析をいたしております。  例えて申しますというと、雇用形態といたしまして一般常用雇用という観点から申しますと、国全体で見ますと約六割が一般常用雇用の形態でございますが、同和関係住民に関しましては、昭和五十二年では四九%、それが六十年には五三%と上昇をしております。一般常用雇用が上昇をいたしております。しかしながら一般の全体の数字にはまだ届いていないということではございますが、改善の動きがあるということを御報告申し上げたいと思うのでございます。  それから、先生の御指摘ございました就職先の事業所規模の点でございまするが、昭和五十二年に同和関係住民の三十人未満の事業所への就職率が六五・八%、これが六十年には四二・四%と、これは低下をしてきております。これは全体の三三・八%に比べましてまだ内容的に十分でないわけでございますが、しかしながら改善の動きにあるということはひとつ御報告申し上げたいと思うのでございます。
  26. 永井孝信

    永井分科員 数字的に見ますと若干の改善の傾向が見られているわけでありますが、同対審答申が出てから、繰り返し言うようでありますが、もう二十年をはるかに超えているわけですから、四分の一世紀近くなってそのことがまだ改善の傾向にあるということでは私は手ぬるいと思うのですね。そういう面で、私は労働省政府により積極的な対応をお願いしていきたい、こう思うわけであります。  そこで、もう一つ例を具体的に申し上げますが、大阪に八尾北高校というのができました。新設高校であります。この八尾北高校で就職状況を調べてみました。これは、進学者は別として、就職される人ですね。大阪府下の各県立あるいは私立を含めての高校に対する求人状況と八尾北高校に対する求人状況とを比較してみますと、八尾北高校には大変求人数が少ないという現実が出てきました。その求人数が非常に少ないという中身は、例えば数字で申し上げますと、三百人以上の企業が募集するのは、一般の高校、大阪府全体で三〇・五%になっておりますが、八尾北高校では二二・一%という数字になっています。これから見ますと、なぜこの八尾北高校だけが求人数が少ないんだろう。いろいろ調べてみると、八尾北高校の校区の中に差別をされている部落というのが非常に数が多い。だから、なるほど買い手市場でありますから、企業の側がどこから何人募集しようかということは、それは一定の自由の枠内であるかもわかりませんけれども、その潜在的な意識というのは、やはり被差別部落の人たちを就職機会から少なくしていく、そういうことが潜在的に働いているんではないかと思うのですね。一人一人のことを証明することはできませんけれども。  ところで、私が最初同対審答申を引用するときにあわせて大臣が御答弁なさったように、我が地元の兵庫県でたくさん起きている部落差別の事象を大臣承知されていらっしゃいました。なぜそのことを取り上げたかというと、この八尾北高校に見られるように、この就職差別の問題が同対審答申から二十三年もたった現在により顕在化してきたということを私は非常に重視するわけであります。  例えばここに朝日新聞の切り抜きがあります。この大きな見出してありますが、ことしの一月二十八日の新聞であります。「またぞろ就職差別」という記事が出てまいりました。この就職差別の具体的な例を申し上げますと、例えば思想、宗教、支持政党、家庭の資産、家族の職業、家族関係はもちろんのこと、戸籍謄本の提出まで求めるという事象が随分ふえてまいりました。この円高不況の中で、企業においても合理化を進めるという状況にもありますけれども、求人数が就職を希望する数よりもはるかに少ないという現状から、まさに買い手市場になってしまっている。この際に差別採用というものがある意味で言うと息を吹き返してきた、こう言っても過言ではないと思う。八尾北高校の事例は私はその一つだと思うのです。そういうことが全体的に改善されていないから、今労働省がお答えになったように、雇用状況は上向いてはきたけれども、一般の平均と比べたらまだぐんと差があるわけです。採用状況に差がある。これに輪をかけて、雇用されることが困難になってきた。しかも就職差別ということがまたぞろ息を吹き返してきた。このことをどのように労働省は認識をされ、どのようにこれからそういう就職差別をなくするための決意を持っていらっしゃるか、お答えいただけますか。
  27. 岡部晃三

    岡部政府委員 そのような事態が差別的な考え方のもとに発生したとすれば、これはまことに遺憾のきわみでございます。そのようなことは決してないように持っていかなければならないわけでございまして、先ほど大臣から対審答申の精神をそのままに実現をしていきたいというお答えがございましたように、労働省といたしましては、そのような事態の発生した地域に対しましてひとつ集中的な指導をまた加えてまいりたいと思っております。  またしかし、そのような具体的なことの結果就職の困難が生じているというふうな場合におきまして、これはやはり求人者の理解を得まして求人の確保に努めるということをまず第一義的に職業安定機関としては行うことにいたしますし、また、いまだ就職決定に至らない生徒につきましては、これは学校とも十分連携を図りながら、職業相談の実施あるいは個別の求人開拓を精力的に実施するということで確保を図ってまいりたいというふうに考えております。
  28. 永井孝信

    永井分科員 私はこの八尾北高校の実例を挙げたのですが、もう一つつけ加えておきますと、千人以上の従業員を抱える大企業で見ますと、八尾北高校では採用数はゼロという数字も出てまいっております。もともと大企業はやはり被差別部落から採用する気がないのかもしれません。私はこれは大変な問題だと思うのです。  これは中身は説明できませんけれども、私の地元の兵庫県において中学校の生徒の進路実態をそれぞれの学校の先生方に大変御苦労をいただいて全部調べてみました。これをきょうここで触れる時間はありませんから、後で労働省に差し上げますので、中学の生徒の進路実態がどういうものかということを部落差別という観点から一回見て分析してもらいたいと思うのですが、よろしゅうございますか。これは後で提出いたします。  ところで、今私は就職差別の問題を取り上げているわけでありますが、この就職差別の問題は私も過去何回も取り上げてきたのです。この国会で取り上げてきました。一番強烈な印象に残っておりますのは、藤尾さんが労働大臣のときでありましたけれども、就職差別の問題を取り上げたときに、例えば戸籍謄本の提出を求める、本籍を書かせる、そこへ身辺調査、身元調査ということで企業の側が本籍を調べに行く、現住所を調べに行くということなどがあって、大変な部落差別問題が出てまいりました。このときに、当時の議事録を見てもらったらわかるのでありますが、当時の藤尾さんは、そういうことは大臣のいすにかけて絶滅させると私に答弁をしているのです。ところが、そういう答弁があって、労働省がそういう大臣の答弁を受けて、最前から何回もやりとりしておりますように、労働省が積極的に同対審答申に基づいて差別をなくする努力はしてきてくれているのでありますが、この新聞に出たようなことが出てきた。これは労働行政の、政府の、あるいは大きく言えば国の権威にかけて、そういう戸籍謄本まで提出させるような採用の仕方というものは絶滅させてもらいたい。そうしませんと、戸籍謄本を調べるということは、とりもなおさず、地名総鑑ではありませんけれども、部落差別ということを念頭に置いての対応だと私は思うのでありますが、これはどうでございますか。
  29. 岡部晃三

    岡部政府委員 私も藤尾労働大臣が御答弁申し上げましたときにたまたまそれを拝聴しておったという記憶が生々しくございます。この点、労働省としてできる限りの努力を続けてまいってきたわけでございまするけれども、先生指摘のような事案がまた生じ始めてきているということは極めて残念なことでございます。これにつきましては、私どもの機関、総力を挙げまして対策を講じたいと考えております。
  30. 永井孝信

    永井分科員 時間がなくなってきましたので急ぎます。  この間新潟で同和対策の問題にかかわる判決が出たことを御承知ですね。その地域は神林というのだそうでありますけれども、ここの判決文の中に、主文の中あるいは判決要旨の中にずっと触れてくるのでありますが、土地もない、そこには事業もない、そういう地域、被差別部落が随分存在しているわけですね。こういうところの雇用対策というものは一体どうなっていくんだろう。現実をいろいろ調べてみますと、季節労働者のように一定の期間出稼ぎをするのではない。こういう地域の人は土地もない。ということは、農村地帯にありながらそこの部落の人は田んぼを持っていない。田畑を持っていない。持たせてもらってないのです。私の地元にもそういうところがあります。一つの集落があるのですけれども、田んぼというものはその村の人は一枚も持っていない。そういう地域の人が事業もなかったら、もう季節労働者でなくて通年的に出稼ぎに行かなくてはいけない。そういう出稼ぎの人がいい就職先が見つかるわけがない。非常に劣悪な肉体労働にのみようやく雇用先を見つけることができるという状態でありますから、同和対策事業が十分に行き届いていないところはいかに悲惨なものかということは十分に認識してもらっていると思います。  今、労働省の進めてきた雇用対策などについて、地対財特法と言われておる地域改善特措法の次に引き続いて今次の五年間の法律が存在しておるわけでございますが、その中におけるそういう雇用対策などについて、予算的に見て十分だと思いますか、どうでしょうか。
  31. 岡部晃三

    岡部政府委員 できる限り労働省としては精いっぱいの予算措置を講ずるべく関係各方面と御協議申し上げているところでございます。  先生お尋ねのそのような地域についての対策ということでございますが、これは国として行うわけでございますので、地域改善対策事業につきましては、地対財特法の規定に基づきまして対象地域について実施しているわけでございます。ただ、先生のお尋ねは、もう一段さらに不況が厳しいような地域についてどうかというふうなことだと思いますが、これは地対財特法に基づく対象地域であるかどうかにかかわりませず、一般的に不況業種が集積している等雇用失業情勢の厳しい地域につきましては、必要に応じまして失業の予防、再就職促進等のための措置を全般的に講じているわけでございます。
  32. 永井孝信

    永井分科員 短い時間で十分な質疑にはならぬわけですが、要は、冒頭に大臣がお約束いただきましたように、同対審答申について、具体的な基本政策基本的な取り組み、これについては答申を絶対的に尊重されると言われたわけでありますから、その絶対的尊重ということが具体的に成果となってあらわれるような雇用対策、とりわけ不況地域とか特定不況業種とかそういうところに対する特別措置法に基づく雇用対策とは別次元の、人権上の問題、民主主義を本物にする、そういう視点からの雇用対策ということを積極的に進めてもらいたい。  なお、この八尾北高校の例で申し上げましたように、あるいは後で提出する私どもの地元の中学校の実態に見られますように、いわゆる若年学卒者についてはとりわけこれから将来長い人生を過ごす若者でありますから、その若者が人生に改めてスタートする時点で就職差別などの悲惨な体験をしないように、十分に生活が成り立つような基盤がつくれるように、就職がうまくいかぬかったら悪循環でだめになっていくわけでありますから、このことを重ねて要望しておきたいと思います。  そして、最後に大臣に私は要求したいと思うのでありますが、どうでしょう、前にも何回か私の方からお願いをして大臣に現地視察をしてもらった経過もあるのですが、ひとつそういう地域も視察してもらえませんか。
  33. 稲村利幸

    稲村主査 永井君、時間が参りました。
  34. 永井孝信

    永井分科員 ひとつそういう地域も視察してもらえませんか。
  35. 中村太郎

    中村国務大臣 かねてからそういう御要望のあることは私も承知をいたしております。したがいまして、今後におきまして十分検討させていただきたいと思います。
  36. 永井孝信

    永井分科員 視察してくれるのですか。
  37. 中村太郎

    中村国務大臣 そういう方向で検討させていただきたいと思います。
  38. 永井孝信

    永井分科員 時間が来ましたので、十分でありませんけれども、どうもありがとうございました。
  39. 稲村利幸

    稲村主査 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、池端清一君。
  40. 池端清一

    池端分科員 私は、まず最初に、アイヌ民族とILO条約の関係について二、三お尋ねをしたいと思います。  ちょうど今から五十年前の一九三八年、昭和十三年七月二十七日、時の枢密院会議におきましてILO第五十号条約が批准をされました。同年九月八日に登録されたわけであります。このILO第五十号条約というのは、特殊ノ労働者募集制度ノ規律二関スル条約と呼ばれるものでございます。ところが、これが戦後、一九五三年、昭和二十八年のILO第三十六回総会におきまして、日本政府は、第二次世界大戦においてその属領のすべてを失い、その結果、属領における原住民または本土における従属した原住民に属するあるいは同化した労働者はもはや存在しない、したがってこの条約は適用しないという報告を実はしておるわけでございます。  このILO第五十号条約にかかわるこの報告内容労働省としては現在においてもそのように認識をなさっておるのか、その後これについての対応変更というようなものはないのか、その点をまず第一にお尋ねしたいと思うのであります。
  41. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 ILO第五十号条約、これは今先生指摘のように、いわゆる土民労働者、これは条約の和文の文言としてそういう名称が使われておるわけでございますが、それを募集する場合の規律を定めておるわけでございまして、国の属地、当時としてはいわゆる植民地がそうだろうと思いますが、あるいは本土地域の自立をしていない土民の労働者の募集を伴う経済計画、開発計画を承認するときに、必要な労働者を得るために当該地域関係住民に圧迫の危険が加えられることを避ける、そういう措置を講ずることを定めておるわけでございます。  御指摘のように、昭和二十七年に、本条約の実施状況報告におきまして、第二次世界大戦後属地を失ったことにより本条約の適用を受ける土民の労働者は存在しなくなったこと等によりまして本条約の適用の余地はなくなった旨を報告いたしております。その後本条約につきましてILOから特段の報告要請を受けておらないところでございまして、そうしたところから、この考え方について検討を加えたということはございません。
  42. 池端清一

    池端分科員 ILOから特段の要請がないから検討を加えたようなことはない、こういう答弁でございましたが、現実の問題として、北海道庁が昭和六十一年度に実施しましたウタリ生活実態調査、これによりますと、二万四千人のアイヌ民族の方が現存していらっしゃるわけでございます。しかも、先般、一月二十九日の参議院の本会議におきまして、同僚議員の質問に対して宇野外務大臣も、アイヌ民族は独自の宗教、文化及び言語を有し、これを保持している先住民族である、この旨を明確に答弁をされておるところであります。したがって、この第五十号条約に言う労働者はいないという認識はもはや誤りである、こういうふうにはっきり言わなければならないと私は思うのであります。  したがって、ILO第五十号条約に言う労働者はいないというこの考え方をこの際明確に改めるべきであるというふうに考えますし、同時に、今また問題になっておりますILO第百七号条約、これは独立国における原住民並びに他の種族民及び半種族民の保護及び同化に関する条約でございますが、この改定も現在ILOの段階で検討が加えられておるわけでございますので、この改定にも積極的に日本政府は取り組むべきである、このように考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
  43. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 このILO第五十号条約は何分戦前に批准をした条約でございます。それからまた、政府が最終的な報告書を提出いたしましたのも三十五年も前のことでございます。また、条約の実質的に規制をしようとするその内容につきましても、戦前に採択された条約であるということ等もございます。現在の我が国の事態に即して見ましても、適用云々という面につきましては、実態的にそういうような事態が存在するかどうかという点は、恐らくこれは実態はないだろうというふうに、条約の規制している内容そのものにつきましては、我が国の現実の実態等は現在見ましても適用の余地がない、そういうふうな感じを持っておるわけでございますけれども、いずれにしても、戦前の採択の条約であり、三十五年も前の報告でございまして、その適用の余地がなくなったとするに至った結論、それに達した経緯につきましては、さらにそういう経緯について検討し勉強してまいりたいというふうに思っておるわけでございますが、今の御質問でお触れになりましたように、この問題につきましては、ILO第五十号条約と同様にいわゆる土民労働者の問題を対象としておりますILO第百号条約、これが現在ILOの場で検討が加えられる、この改正が検討されているという状況でございまして、そのことも十分に考慮に入れてまいる必要がある、このように考えております。
  44. 池端清一

    池端分科員 どうも歯切れの悪い答弁なんですがね。百号条約と言いましたね。これは百七号条約でしょう。
  45. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 百七号でございます。
  46. 池端清一

    池端分科員 百七号条約の改定についても検討しているので、この五十号条約についてもあわせて従来の態度を見直すかどうかについても検討していく、こういうことでございますか。
  47. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 第五十号条約と第百七号条約、同じようにいわゆる土民労働者という方々を対象としての条約でございますが、それぞれ内容はもちろん異なっておるわけでございまして、今日的な課題となっておりますのは第百七号条約ということになろうかと思うわけでございます。この問題につきましては、現在百七号条約の改正がILOの場で検討課題に上ってきておる、こういう状況も考慮をしていかなければならない、こういうことでございます。
  48. 池端清一

    池端分科員 そのILO百七号条約の改定問題で、ILO当局から日本政府は八十項目から成る質問を受けたわけでございます。ところが、それに対しては、労働省は、この条約の適用範囲と定義などについての質問の具体的な意味内容が明確でない、したがって回答を留保するという旨の回答をした、こういうふうに私ども聞いているわけですが、それは事実かどうか。また、その中身はこれは一体どういうことなのか。回答は去年の暮れだと思うのでありますが、その後これについてどのような検討が加えられ、作業が進んでおるのか。その点についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  49. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 このILO百七号条約の改正に関しましてILO事務局から質問事項が参っておりました。この質問につきましては、労働に関する事項にとどまりませず、土地問題、教育等非常に広範な内容に及ぶものでございまして、広く関係省庁とも協議を行ったところでございます。そうしたことで八十項目にわたる質問に対する回答というのも非常に広範囲にわたるわけでございます。  ただ、これにつきましては、質問項目の中で、この条約の基本的な部分でございます条約の適用範囲に関係をいたします部分につきまして、私どもから見ましてその意味が明確でない、そういうところがかなりあるわけでございます。その意味不明確なままで回答をするということは非常に難しいわけでございますので、その点について回答は留保するということにいたしておるところでございますが、その後の検討状況ということでございます。ILOの場におきますこの改正問題についての検討は今年度だけでなしにさらに来年度も含めて行われることになっておるわけでございまして、そうした総会の場での検討の過程あるいはその後もさらに継続的に質問事項等も参ることも予想されるところでございます。そういう過程を通じまして不明確な点をできるだけ明らかにしつつ対処をいたしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  50. 池端清一

    池端分科員 少なくとも本年六月にはILOの総会があるわけですね。これまでには何らかの答えというものを労働省、日本政府としては用意するお考えがあるのかどうか、この点について。
  51. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 条約でございますので、そうしたILOの総会等の検討の場でそうした不明確な事項を明らかにしていかなければ、これはなかなか明らかにしていくということは難しゅうございます。そういう検討の過程を通じて不明確な点をできる限り明らかになるように対処してまいりたい、このように考えております。     〔主査退席、鈴木(宗)主査代理着席〕
  52. 池端清一

    池端分科員 労働大臣、なぜこのILO百七号条約の改定問題というのが出てきたかといいますと、申し上げるまでもないのですが、少数民族の自立を目指す最近の動きというものが同化政策を基調としたILO百七号条約の趣旨と合わない、そういうことから一昨年十一月のILO理事会において改定をするということが決められ、それが加盟国に質問等でいろいろ打診をされてきた、こういう経緯があるわけでありまして、一つの歴史の流れでもあるわけでございますね。  それに対して、まだ日本政府が質問内容が意味不明であるとかなんとかといって回答を引き延ばしをしているということは、私は怠慢のそしりを免れないのではないかとあえて言わざるを得ないと思うのです。しかも、このアイヌ民族の問題は、例の中曽根前総理の発言に出発をして、国会の内外でも非常に議論のあったところでございます。したがって、アイヌ民族に対する明確な考え方というものを確立していただいて、それに対するきちっとした日本政府の態度というものをILOに表明すべきだ、私はこう思うわけでございます。  先ほどの宇野外務大臣の答弁ではございませんが、アイヌ民族が独自の宗教、文化、言語を有し、これを保持している先住民族であるという厳然たる事実、同時に民族の独自性を基本理念としたこういう観点から、ILOの質問に対しても前向きに取り組んでいくべきであるし、この百七号条約の改正の問題についても我が政府も積極的に対応すべきだ、取り組むべきだ、私はこう思うのでありますが、大臣の所信のほどを承りたいと思います。
  53. 中村太郎

    中村国務大臣 先生御案内のとおり、ILOの批准等につきましては、日本はどちらかというと大変シビアに物事を考えているわけで、批准した以上は的確な対応をしなければいけないという基本的な考え方でございます。したがいまして、批准の項目が案外少ないのもどうもそこに一因があるわけでございますけれども、今のこの問題につきましては、先生のお説を十分心しながらなお一層積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  54. 池端清一

    池端分科員 次に、北海道における季節労働者の冬期雇用援護制度の問題について一、二お尋ねをしたいと思います。  この問題の経過はいろいろ長いのでありますが、昭和四十九年十二月に従来ありました失業保険法が雇用保険法に改められまして、季節労働者に九十日分の給付金をそれまで支給されておったものが特例一時金の五十日分になった。したがって四十日分カットされた。それで特に北海道では実はこれが大きな問題になったわけであります。三十万人近い季節労働者、家族を含めると百万人の道民の皆さん方の暮らしに大変な影響を与えたということで大きな問題になりまして、実は昭和五十二年の衆議院の社会労働委員会にも当時の北海道の士別の市長さんあるいは全道労協の議長さんなんかも参考人としてお招きをしていろいろ実情をお聞きして、ようやっと昭和五十二年十二月から、これは三年間の時限措置でございましたけれども、積雪寒冷地冬期雇用促進給付金制度というものが労働省の特段の配慮によって創設をされた、こういう経過でございます。  それからいろいろな紆余曲折がありました。三年間延長あるいは制度も変わる、今のような冬期職業講習助成給付金制度あるいは冬期雇用安定奨励金制度というように制度も変わりましたけれども、それもまた延長をされて今日に至っているわけでございます。  しかし、実はこれが昭和六十三年度で終わりとなっておりまして、これは北海道の季節労働者の皆さん方、六十四年度以降どうなるんだろう、大変な不安に陥っているというのが、鈴木代議士もいらっしゃいますけれども、北海道の季節労働者の切実な声になっておるわけでございますので、六十四年度以降どう対処されるお考えなのか承りたいと思います。
  55. 中村太郎

    中村国務大臣 北海道の季節労務者の問題につきましては、その実情につきましては私なりに勉強させていただいたわけでございます。大変厳しい中に置かれることも十分承知をいたしておるわけでございます。  問題の解決は、工事の通年化といいましょうか、通年施工化といいましょうか、一年じゅう仕事があるという状況をつくり出すことが基本的な解決でありますけれども、ああいう厳寒地でございまして、必ずしも思うようにいかないのが実態だと思うわけでございます。  したがいまして、これからも地方自治体あるいは事業主等の協力をいただきながら、工事等の通年化を図って今後とも努力を重ねてまいりますけれども、今のお話のように六十三年度じゅうでございますから、六十四年度以降は一体どうなるんだという御不安が間々あることもよくわかります。したがいまして、今しばらくその工事の実態、通年化の実態、関係自治体、事業主協力のあり方あるいはこの制度が生まれたゆえん、そういうものを十分それまでに検討を詰めまして、誠意を持って解決に努力してまいりたいというのが今の気持ちでございます。
  56. 池端清一

    池端分科員 誠意を持って解決に当たりたいという大臣の御答弁がございました。  重ねて申し上げますが、今大臣も言われましたように、基本的には、やはり冬期間でも通年施工ができて通年雇用、こういう体制に持っていくことが最も望ましい姿だと思います。そのために、北海道庁でもこれについては今大変努力をされておりまして、道議会におきましても、現在審議中の昭和六十三年度の道予算におきまして季節労働者雇用促進費というものを計上して、とりわけ冬期間の工事について一〇%増のいわゆる増高経費というものを計上して、何とかこれで対応しようということでやっておるわけです。これは審議中でございますけれども。しかし、北海道だけの取り組みだけでは必ずしもこの抜本的な解決ということはできません。国その他関係団体の積極的なバックアップがなければならないと思うわけであります。  ですから、そういう抜本策が講ぜられるまでの間は、現行のような制度が存続されることをみんな非常に期待しておるわけでございます。重ねて申し上げますが、現行の制度を基盤にしてより拡充、拡大といいますか、改善されたものを六十四年度以降もぜひ続けていきたいという大臣の決意のほどを伺わせていただきたい、こう思います。
  57. 中村太郎

    中村国務大臣 これからの検討に当たりましては、先生がお述べになりましたその趣旨を十分体してまいりたいと考えております。
  58. 池端清一

    池端分科員 時間が参りましたので、まだ予定しておりましたものがたくさんございますが、一つだけ、林業労働の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  国勢調査によりますと、林業に従事している労働者は、昭和三十五年当時は四十四万人を数えておったのです。ところが昭和六十一年には、これが十四万人に激減をいたしました。雇用労働者は、総数でも十万人を数えるにすぎないという実態でありました。とりわけ問題なのは、高齢化が進んでいるということでございます。昭和三十五年当時、二十九歳以下が三一・三%を占めておったものが、今は五・五%という状況でございます。六十年度の高卒の就業者は六十四万人でありますが、林業への参入、林業労働に従事した方は、六十四万人のうちわずかに二百五十五人という状況、非常に心もとない実情にあるわけであります。森と緑というのは国民の共有財産であります。この担い手というものをしっかり確保しなければならないと思うのでありますけれども、なぜこういう実態なのかというと、やはり林業労働に魅力がないという状況があるわけであります。例えば労基法も全面適用されておらぬ、最賃も適用されておらぬ、こういうような状況が、魅力のない産業として若者が離れていくという傾向を助長しているのではないか、こう思います。  そこで、ここでは少なくとも他産業並みに労働基準法の適用あるいは産業別最賃制の全面適用について決断すべき時期に来ているのではないか、こう私は思います。労働省どうですか。これについての御見解を承りたいと思います。
  59. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 林業労働におきましては、その業務の性格上、天候、気象等に左右されるということでございますので、一律に労働時間の規制を適用するということは適当でないということで、現行労働基準法においては、時間については適用除外にいたしておるわけでございますが、さればといって長時間労働あるいは過長な時間を働かせるということは適当でないということは、これはもう言うまでもございません。したがいまして、私どもといたしましては、長時間労働の是正あるいは適正な時間管理等につきまして、さらに普及、指導、啓蒙等に努めてまいりたいというふうに考えております。  また、最低賃金につきましては、現行産業別最低賃金は設定されておりませんけれども、六十一年における中央最低賃金審議会の答申に沿いまして、労使の申し出による新しい産業別最低賃金設定の道も開かれている状況でございますので、これらの施策等についても適正に執行してまいりたい、かように考えております。
  60. 池端清一

    池端分科員 時間でございますので、以上で終わります。
  61. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて池端清一君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。
  62. 浦井洋

    浦井分科員 労働大臣、ひとつ私の話をとっくりと聞いていただいて、お答えを願いたいと思うのです。  私は兵庫県の神戸なのですけれども、御承知のように兵庫県の瀬戸内側には、造船、鉄鋼の大企業、大手がずっと並んでおるわけなんです。そこで問題は、そういう大手鉄鋼、造船が競い合って大合理化、あるいは結果としては人減らし、こういうことで今しょうけつをきわめておるわけです。そのやり方が非常にえげつないわけなんです。えげつないというのは、大臣おわかりだと思うのですけれども。それで、職制の人でも愛想を尽かして、早目早目に企業をやめる人もあるし、ほとんどのやめた人は、名目は自己都合になっていますけれども、実際は退職強要されているわけですね。もう泣く泣くやめていっておるわけです。  私、二、三例を挙げますけれども、例えば具体的に申し上げますと、これは去年の四月八日の朝日新聞なんですが、こういう大きな記事が出ている。「あんたらはもう仕事がないんや この枠があんたらの職場や」、こういう川崎重工神戸工場の記事です。建物の外に白い枠をつくりまして、そこへ立っておれというわけです。ひどいですよ。五人の方がこれをやられた。それで「あんたらはもう仕事がないんや。この枠があんたらの職場や。座ったらあかん。枠外に出たら職場放棄とみなす」というふうに命令された。とうとう五人のうち一人の人は退職してしまった。これはもう退職強要ですよ。さすがに兵庫県の労働部長も、「今回のことが事実なら、大変残念だ。早急に会社から事情を聴き注意したい。」こういうふうに言わざるを得なかったわけなんです。  この新聞の絵を見ていただきますけれども、これはもう非常に大々的にセンセーションを巻き起こしたわけですね。これは一例なんですけれども、そのほかにどこでも十数回も退職勧奨をされて、これは強要と一緒ですよね。それから、例の一〇〇%出資の子会社をつくってそこに賃下げで出向させられたり、あるいは家族の状態から見てとても行けないようなところに配転を命ぜられたり、これは川崎重工にしても新日鉄広畑にしてもそういうようなことが頻発しておるわけなんですよ。そこのところを大臣よくかみしめていただきたい。  私は、大臣にまず最初にお尋ねしたいというか、あえてお願いしたいのは、そういう鉄鋼や造船の業界あるいは個々のメーカーに、ずばりそういうような労働者の人権を無視した退職強要をしないように、大臣指導しなければいけないのじゃないかと思うのですが、大臣いかがですか。
  63. 中村太郎

    中村国務大臣 御承知のように、今円高で厳しい経済環境に鉄鋼はあると思うのです。そういう中で、本当に企業全体が生きるか死ぬかぎりぎりの選択の中で、労使が合意の中で決定いたしました例えば退職時期の延期というような問題については、ある意味ではやむを得ないものがあるのではないかなというふうに私は考えます。しかし、こいねがわくは、鉄鋼という大きな日本を代表する産業なのですから、なるべく早い時期に六十歳定年実施するように私どもは期待を込めておる、こういうところでございます。
  64. 浦井洋

    浦井分科員 定年の話になって、期待を込めるということなんですけれども、鉄鋼にしても造船にしても、鉄鋼なんかは後で申し上げますけれども、むしろ活気を呈しているわけなんですよね。だから、今例えば、大臣も御承知だと思うのですけれども、この間の二月十七日に東京弁護士会が石川島播磨に対して、この人員削減計画は、これは退職勧奨ではなしに強要であるという、弁護士会としては異例の警告を発しておるわけでしょう。それから、これは不当労働行為の話ですけれども、JR東日本に対して都労委、東京都の地方労働委員会ですね、ここは三月三日、ついこの間ですが、国労に所属したという理由で降格処分をした、これは明らかに不当労働行為に当たる、こういうふうに認定しておるわけなんです。そういう動きがずっと出てきておるわけなんです。  だから、それは大臣、とにかく労働組合が右傾化しておる中で、今資本の思うままになっておるのですよね、労働者一人一人の人権だとかあるいは労働条件とかいろいろなことが。だから、資本の思いのままで、しかも今お見せしたように非常に陰湿な格好で労働者への抑圧が高まってきて、強められてきておるわけなんですよ。  労働省の任務の一つに、労働者保護がありますね。だから労働大臣として、やはり労働者基本的人権を守る、そういう意味で、私先ほど申し上げたような、もっと毅然とした態度をとっていただいて、そして具体的に企業なり業界に対して指導なり勧告なりをすべきではないかと思うのですがね。     〔鈴木(宗)主査代理退席、主査着席〕
  65. 中村太郎

    中村国務大臣 私どもは、企業の経営というものは基本的には労使の合意、これを最重視しなければいけないというふうに考えております。しかし、一方的に例えば不当労働行為的なものがあったとしますれば、実態を調査した中で都道府県等を通じて指導することもあり得るということは言えると思います。
  66. 浦井洋

    浦井分科員 それで定年の問題なんですけれども、正式には高年齢者等雇用安定等に関する法律、いわゆる六十歳定年法ですよ、これが昭和六十一年にできた。ところが、先ほど大臣が言われかけたのですけれども、鉄鋼大手五社は中期経営計画ということで定年延長の一時停止ということで、せっかく六十歳になっておるのに、昭和六十二年、六十三年、六十四年と暫定的に三年間五十九歳にいたしますというような状態なんですね。労使合意でやったと言われるかもわかりませんけれども、やはりそれぞれの企業定年延長、法律で六十歳定年と一たん決めておるわけですから、だからそれに逆行するようなことは私は法の趣旨に反すると思うのですが、これは大臣、どう思われますか。
  67. 中村太郎

    中村国務大臣 先ほども申し上げましたが、企業が存続するためのぎりぎりの線ということについて、労使が合意の上で選択した道というものは私ども尊重しなければいけないな、こういうふうに考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、なるべく早い時期に回復するようにということだけは期待をいたしたい、こう思っております。
  68. 浦井洋

    浦井分科員 回復しておるのですよね、もう既に。労使合意と言われますけれども、大臣は御承知だろうと思うのですけれども、六十歳定年法の中に労使合意が例外規定にあるとか、あるいは政令の中に例外があるというのではなしに、労働省御自身が例外規定を通達で出して、そこで労使合意であればそういう措置もできるというふうにしているにすぎぬわけなんですよ。だから、法律の中では、そういうふうな法律の趣旨に反する場合には、企業に対して要請することができるというふうになっておるわけなんですから、やはりこういう逆行するような措置は、企業に対して早速要請してもらわなければならぬと思うのですよ。私は、勧告でもよいと思うんですがね。定年延長の一時停止、どうですか。
  69. 竹村毅

    ○竹村政府委員 先ほど先生おっしゃいました定年の六十歳への要請でございますけれども、確かに一定の基準と申しますか、それに基づいて私ども事業所を指導しております。それはいわゆる公労委、三者構成によります安定審議会、そういうもので十分論議していただいた基準にのっとってそういう指導をしておるわけでございます。しかしながら、かつて非常に厳しかったものがだんだんよくなったということも報道されておりますけれども、やはり先ほど大臣がおっしゃいましたように、まだまだこれからしばらくは、厳しい情勢が今後も鉄鋼に限らずいろいろ続く業界もあろうかと思います。そういうところにおきましては、各般のそういういろいろな情勢を見ながら、私どもとしては適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  70. 浦井洋

    浦井分科員 やはり労働省というのは、労働者の立場に立って労働者を保護し労働者の権利を擁護するということが、あえて言えば第一になかったらいかぬ。私は、そこに労働省というお役所の存在意義があると思うのですね。  そこで、それではそういうような鉄鋼や造船の合理化、人減らしを具体的に調べてみますと、今度は中高年が圧倒的なんですよね、退職強要されて泣く泣くやめていった人というのは。例えば川崎製鉄。これは鉄鋼大手五社は、定年延長の一時停止は皆共通していますよね。そのほかに、川崎製鉄では五十七歳以上の人に長期休業をやる。主なものを言いますけれどもね。それから出向条件は、これは劣悪なもので、また変える。  それから新日鉄では、これは定年退職の一年前の従業員、広畑でいえば大体二百人ぐらいおられる、そういう人を対象にして長期の教育や休業の実施。だからこれは大臣定年労使合意で五十九歳になって、しかも一年また繰り上がるわけですから、実質定年は五十八になったと同じことになるわけです。おわかりだと思うのです。  それから神戸製鋼なんです。これは私非常にけしからぬと思うのですが、ここに書いてありますけれども、この中期経営計画、特別休業制度。特別休業制度というのは、要するに五十五歳以上の人に全部網をかけるわけです。そして、休みなさい、賃金は何ぼか保障しましょうということなんです。これで、結果を先に言いますと、この制度ができたので神戸製鋼の神戸製鉄所なんかは、五十五歳以上の人が職場におらぬようになったというのです。  具体的に私聞いてみたのです。もうびっくりするし、本当に憤りを感じたのですけれど、山中さんという五十七歳の方で勤続が三十七年、今まで総収入が残業込みで二十九万円あったわけなんです。それが特別休業の網にかけられて適用されたわけですね。現在、七カ月目に入るわけです。そうすると、総収入が二十九万から一挙に十二万になった。手取りは、そこから健康保険料だとか厚生年金だとか税金を引かれますね。手取りが八万円ぐらいになる。総収入二十九万で何とかやっていけたのが、手取りが八万円ぐらいになる。こんなことでこれは生活できますか。  私、これを聞いてびっくりすると同時に、本当にこんなことでよく労働者が黙っておるなと思った。これは企業の都合がいろいろあるでしょう。しかし、企業というのは、やはり労働者にちゃんと賃金を払ってこそ、企業の値打ちもあると思うのです。だから、先ほども申し上げた神戸製鉄所では、六十歳定年でやめた人が今まで一人もおらぬわけなんです。みんなその前にやめておるわけなんです。五十五歳以上の人が職場に一人もおらぬ。これは実質五十五歳定年ということになるわけです。  そこで聞くのですけれども、やはりこういう中高年に対するねらい撃ちの退職強要というのは差別だと思うのです。そういう意味で、先ほども申し上げた六十歳定年に戻すように大臣から企業に積極的に働きかけていただきたい。法律の文面では要請、こういうことになっておるわけですが、これをぜひやっていただきたいと思うわけです。
  71. 竹村毅

    ○竹村政府委員 先ほど先生がおっしゃいました神戸製鋼所その他鉄鋼大手でいろいろ合理化その他による、特に円高の影響を受けてのものと承知しておりますけれども、大変な事態があるというのも事実でございます。私どもの考え方としては、そういうものが特定の年齢層なり特定の階層にしわ寄せが集中するというのは好ましくないという基本的な考え方はございます。しかしながら、先ほど大臣がお答えしたとおり、これはいろいろ厳しい情勢の中で労使が協議を尽くして決定したことであるということで、私どもといたしましては、一日も早くまた労使協議によりまして六十歳定年の復活、そしてその実施について鉄鋼労使が協議されるよう心から期待しておりますし、その線に沿って指導してまいりたいと思います。
  72. 浦井洋

    浦井分科員 最後に指導してまいりたいということなのでありますけれども、やはり労働省の存在意義ということをよく考えてもらわなければいかぬと思うのです。私、もう細かいことを言いません。こんなときにこそ労働者保護、労働者の人権を守るということで、労働省が決起してもらわなければいかぬと思うのですよ、大臣、そういう意味では。  だから、今部長言われたように、特定の年齢層に偏ったらいかぬというわけでしょう。ところが私調べてみたら、特定の年齢層にびしゃっと偏っておるわけです。これは造船の石川島播磨の相生工場なんですが、ちょっと数字を読み上げますと、石川島播磨の相生工場の求職者数、これが二千二百十七名、その中で再就職した人は千二百四十名、就職率としては五五・九%になるわけです。特にその中で相生職安にかかった人、これを申し上げますと、求職者数が千七百七十七人で就職できた人が八百十二人、就職率が四五・七%なんです。この数字も非常に悪い。年齢を調べますと、四十五歳から五十四歳までの人でまだ就職しておらない未就職率が四八・四%、それから問題の五十五歳以上の人は未就職率が九一・八%なんです。だから逆に言えば、再就職できた人は百人の中でほぼ八人ぐらいですね。こういう数字は労働省つかんでおられると思うのですけれども、きちんとした調査をやって対策を講じられますか。
  73. 岡部晃三

    岡部政府委員 石播の相生工場につきましては私どもも調査をいたしておりますが、全体の再就職割合は五四・三%でかなり再就職が進んでいると思うわけでございます。しかしながら、五十五歳以上ということで見ますると、御指摘のとおり八・二%の再就職にとどまっているわけでございます。  御承知のとおり、そもそも高年齢者雇用情勢は、非常に厳しいものがあるわけでございます。これらの求職者につきましても、特定不況業種雇用安定法に基づく手厚い措置もございますので、こういうものを活用する。さらにまた、きめ細かな職業指導実施や特別求人開拓の実施によりまして、このような特定不況業種特定不況地域につきまして、私ども全力投球をいたしたいと考えております。そのことは、これまでの三十万人雇用開発プログラムにおきましても重点にしておったわけでございますが、さらに六十三年度におきましては、産業地域高齢者雇用プロジェクトということで、改めてこれを重点に置くという決意を持って我々は臨んでおるところでございます。
  74. 浦井洋

    浦井分科員 大臣、今岡部さんが、手厚い特別措置だとか何とかプロジェクトだとかいろいろ言われましたけれども、五十五歳以上の人が百人のうちで八人しか再就職できておらないわけなんです、今お認めになったように。これは早急に調査をして、一日も早くもっと具体的な策を政府として講じなければいかぬと違いますか。これは政治の話として、大臣にお聞きしたいと思います。
  75. 中村太郎

    中村国務大臣 先生の言われることも趣旨としてはわかりますけれども、労働省としましては、あくまでも労働者の保護ということが目標の一つでありますけれども、不必要に経営権に介入しないというのも片方の原則でございます。少なくとも、違法の事実があればおっしゃるような調査もしますけれども、通常の経営権の範囲内における運営についてとやかく言うことは望ましくないというのが、労働省基本的な態度でございます。
  76. 浦井洋

    浦井分科員 こういうときにこそ、やはり労働省が積極的に乗り出すべきだということを私は再々指摘しておるわけなんです。大臣はその点を、内心よくわかっておられるのだろうと思うのですけれども、立場上言えないということだろうと思うのです。やはり政治家としてせっかく——せっかくと言ったら失礼になるかもわかりませんが、労働大臣になられたわけですから、早速これは乗り出していただきたい、このことを要請しておきたいと思います。  それから今度は、去るも地獄、残るも地獄の話になるのです。今度は残った方の人なんです。先ほども、まだ流動的、不透明、景気がまだわからぬというようなことを言われたのですけれども、具体的に神鋼の例で申し上げますと、神戸製鉄所ではことしの一月一日現在で三十二名の欠員予定なんです。それに、労使で合意したがどう対応するか、時間外で対応する、さらに作業段取りの調整などで対応するという考え方なんです。ところが生産高を見ますと、一人当たりの月当たりの粗鋼生産高が、去年の三月では五十二トンだったのですが、去年の暮れの十二月には六十二トンにふえておるわけです。  だから、必然的に長時間、過密労働ということになって、これは神戸製鋼に限らぬでしょうけれども、交代要員も減っているし、超勤はふえているし、それから労働省がしきりに言っておられる年休の消化率も、私調べてみましたら、最近の数字では、年間十・八日からずっと低下して、年間八日になっておるわけなんです。これが神鋼の状態です。これは神戸製鋼の数字なんです。やはりこれは労働省の大方針である時間短縮、これに私は反するのではないかと思うのですね。これはもう難しい答弁は要らぬですからね、大臣にこれは反するというふうに答えてもらったらいいと思うのですよ。
  77. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 所定外労働時間は、もう先生承知のとおり、生産量の変動に応じて動いていくというような状況にあるわけでございまして、最近、生産量の増大に対応してふえてきていることは事実でございます。私どもといたしましては、恒常的かつ長い所定外労働時間、これは是正していく必要があるという観点から、時間短縮の観点からさらに努力をしていかなければいけないというふうに考えておりまして、時間外労働の限度に関する指針等につきましても新しい実態調査等を行うことを通じまして、さらに過長な恒常的時間外労働についての改善に努めてまいりたいというふうに考えております。
  78. 浦井洋

    浦井分科員 善意に解釈しても労働省の手の打ち方というのは手ぬるいし、後手後手に回っておるわけなんですよね、大臣、そういう意味では。それで労働者の方は、先ほどからるる申し上げているようにすべての面で、一番極端な場合は首切りですね。実際上、退職強要に応じて泣く泣くやめざるを得ぬ。それから、働いておる者は長時間過密労働になるという状態が現に今起こっておるわけなんです、この瞬間でも。だから、時間短縮一つ取り上げてみても、企業の方は大臣もよく御承知のように、経営状態がよいところであるとかよい時期は、超勤でますます生産を高めてきたわけだ。それで経営状態が悪いところであるとか悪いときには、配転や出向やあるいは退職強要で人減らしをやってきたわけです。これだったら、一体労働省の唱えておる時間短縮というのは、目標は年二千時間ですか、ということではあるのでしょうけれども、いつそれが実現するのか、まさに画餅に帰す、絵にかいたもちだというふうに私は言わざるを得ぬと思うのですよ。  先ほども局長お答えになったように、鉄鋼なんかもずっと活況を呈してきておるわけでしょう。だから、今こそ労働省は、所定時間の時間短縮であるとかあるいは定年延長であるとかあるいは年休の完全消化であるとか、これは労働省の永遠の目標と言ったら言い過ぎかもわかりませんけれども、こういう目標に向かってやはり邁進してもらわなければいかぬ。そのためには、企業に対して今のやり方をやはりチェックするということが大事じゃないですか。私風に言えば、大企業の横暴を規制すべきではないか、こういうことなんですよ。  もうこのままでいったら、労働者だけが犠牲になって、企業は不況だと言い、あるいは景気が直ってきたと言い、常に含み資産も含めてちゃんと安定しておるわけですよね。もうけておるわけなんですよ。こんなことはもう許されないわけなんで、先ほど私示しました鉄鋼で言えば中期経営計画、こういうものなんかのむちゃくちゃな労働者いじめの、労働者殺しと言ってもいいのですけれども、合理化計画、こういうものの撤回であるとかあるいは抜本的な見直し、こういうことをこの際国が乗り出していってやらせるということを私は要求したいと思うのですが、最後に大臣にお伺いしたい。
  79. 中村太郎

    中村国務大臣 企業の横暴であるかどうかということは判断の違いであろうと思うのですけれども、企業というものの利害得失を一番身近に感じているのは、やはり経営者と労働者だろうと私どもは思うのですよ。したがって、その人たちの真摯な話し合いによる合意というものを一番尊重しなければいけない、これが労働省の建前でございます。また、本音でもあるわけでございます。今おっしゃられた御意見なども十分心しながら、これからの行政に当たってまいりたいと考えております。
  80. 浦井洋

    浦井分科員 終わります。
  81. 稲村利幸

    稲村主査 これにて浦井洋君の質疑は終了いたしました。  次に、玉置一弥君。
  82. 玉置一弥

    玉置分科員 本日は、時間が短いので、二点に絞って御質問をしていきたいと思います。  一つは、身障者の雇用状態ということでございまして、先日の新聞で見ましたところ、身障者の法定雇用率が一・五%から一・六%に引き上げられる、これに伴って、今までいろいろな実態調査をやってきたその結果が出ております。それによりますと、六十二年の身障者の実雇用率は、五十一年の身障者雇用促進改正以来初めて前年を〇・〇一ポイント下回っていた、こういう結果が出ております。  今規定では、これはいろいろございますけれども、例えば公的機関におきましては一・八%あるいは一・九%、民間企業は一・五%、特殊法人は一・八%、こんなふうに規定されておりまして、その規定の率を上回るというのが本来の目的でございましたけれども、実態はそれを大幅に下回っている。この新聞によりますと、これは労働省調査だと思いますけれども、一・二五%ということになっているわけです。我々も実際に仕事を通じて、身障者の方々とかあるいは企業の側とかいろいろお話を聞いておりますけれども、確かに身障度合いによっては適材適所というのは非常に難しいと思いますが、一方ではリハビリの意味もありまして、身障者の雇用というのは非常に生活に結びつく重要な柱になっているわけでございます。これが、実態として雇用率を非常に低くしている、こういう結果が労働省調査で出ているわけでございまして、この点について、例えば民間企業でございますと一・五%という数字がありますけれども、なぜそれを下回った状態にあるのか、この辺についてまずお聞きをしたいと思います。
  83. 岡部晃三

    岡部政府委員 身体障害者雇用状況につきましては、御指摘のとおり、昭和五十一年度の法律施行以来着実に改善を見てきているところでございますが、昭和六十二年に一・二五%、初めて対前年〇・〇一ポイントでございますが減少になったわけでございます。これまでずっとこの率は上昇を続けてきておりまして、事態の改善が進んでおると我々は喜んでおったのでございますが、初めてダウンを経験したわけでございます。  この原因と申しますと、思い起こしますとちょうど一年前、円高不況というものが非常に深刻化した時期でございまして、まさしく国会雇用国会と別名がつけられるくらいに不況だったわけでございます。     〔主査退席、鈴木(宗)主査代理着席〕 そういう状況の中で、解雇された障害者が増加をしたということが一つでございます。それからまた、新規採用が非常に減ったということであろうかと思うのでございます。それからもう一つは、産業構造変化が現在著しいスピードで進んでおるわけでございますが、製造業が相対的に労働者数が減少してまいりました。逆に卸売、小売、あるいは飲食店、金融、保険、不動産といったところのウエートが高まってきているわけでございます。従来、製造業におきまして身体障害者雇用率が高く、第三次産業部門におきましては低いという現象があったわけでございます。最近の産業構造変化によりまして、第二次産業が減少し第三次産業が伸びるというようなことが、身体障害者雇用率にやはり打撃をもたらしたというふうにも分析をしておるわけでございます。  さらにまた、先生御高承のとおり、最近身体障害者の重度化、重度の身体障害者がふえておる、それから高齢化が御多分に漏れずこれまた進んでおるわけでございまして、したがって、就職のあっせんが非常に難しいケースがふえておる、こういったようなことが原因で一・二五という水準にとどまったものと思われるわけでございます。
  84. 玉置一弥

    玉置分科員 一つは、身障者の側から見て企業に対するPRが非常に少ないのではないか、こういうことも考えられるようでございますし、逆に言えば、身障者の方でもそういう制度があるということを知らない方もおられる、こういう両面があると思います。  先ほどのお話にございましたように、企業の採算が苦しくなるとやはり生産性の高い一般労働者雇用する、これは我々もよく理解できるところでございますけれども、本来、五十一年につくられました身体障害者雇用促進法の趣旨からいきますと、身障者の方の社会復帰ということがあるわけでございまして、単に各企業状況が悪くなったから解雇するとか、そういうことでは非常に困るわけですね。この辺を、やはり一つはこれから企業に対してPRですね、この辺をもっと労働省として積極的にやっていただくというお願いをしたいのがまず第一点。  それから先ほどの、企業の採算点によって解雇される、この辺をどういうふうにカバーされていくのか。これは非常に難しい問題がいっぱいあると思いますけれども、その辺についてお聞きをしたいと思います。
  85. 岡部晃三

    岡部政府委員 障害者雇用を進めていくに当たりましては、国民一般、とりわけ事業主の理解が重要であるわけでございます。そこで、PR不足だと先生から御指摘をちょうだいしたわけでございますが、労働省におきましては、毎年九月を障害者雇用促進月間として、障害者を多数雇用する模範的な事業所等を表彰するなどいたしておりますし、またポスター、パンフレットの配布、あるいはまた障害者雇用問題につきましての各種媒体を通じましての広報啓発を積極的に展開をしてきたつもりでございます。今後とも、この法の趣旨をさらに浸透せしめるために、この月間はもとよりいろいろな機会を利用しながら、広く広報啓発に努めてまいりたいと思うわけでございます。  そこで、何らその手だてはないのか、こういうお尋ねでございますが、身体障害者につきましては、その法定雇用率よりも多く雇いましたときには調整金というような形で、実は報奨金を差し上げているわけでございます。このシステムと申しますのは、雇用率未達成企業につきましては、未達成一人につき幾らというふうな形で納付金を納めていただいておりまして、それをプールいたしまして、障害者を多数雇用しているところには逆にこの報奨を差し上げる、こういうシステムでございます。こういうやり方をさらにより効果的に実施をいたしまして、先生のおっしゃるような問題解決の実を上げてまいりたい、このように考えております。
  86. 玉置一弥

    玉置分科員 今の報奨金と、罰金ではないですけれども、未達の場合の調整金みたいなものがありますね。企業によってはお金を払ってでも生産性を高めた方が得だ、こういう見方があるのですが、そういう意味ではやはり調整金そのもののあり方というものが問題点じゃないかというふうに思います。これはもう時間がないので、指摘だけしておきます。  まず、今回の一・五%を下回る要因の中で、私の地元で話がございましたのは、ある企業が地元、すぐ近くの方を採用したいということで職業安定所に参りまして、この方をという指名をしたわけです。指名をしたのでございますけれども、職業安定所の方では規定がございまして、登録されてないといけないということが一つと、それから登録をされておりましても、今までに申し込まれた方の優先度合いがあります。ですから、企業がまず雇用の申し込みをして続いて身障者の方が就労のための申し込みをする、こういう手続が必要でございますし、決して自分が希望するところへは行けません、こういう話がありまして、こういうことが日本全国で行われているのではないか。  ですから、余りにも規定、規定という縛りがございまして、そのためにそれぞれ地域から通えるとか、あるいは自分の仕事に合った、あるいはその企業として雇用される方を十分理解できるというところへ行けないのではないか、こういう問題点を感じるわけでございます。そういう手続、ルールといいますか、こういうものがどういうふうになっているのか、またその点で問題点がないのか、その点について他国との比較等も含めてお答えをいただきたいと思います。
  87. 岡部晃三

    岡部政府委員 障害者の場合、ハンディキャップを有しておられるわけでもございますので、一般の求職者に比しまして一層きめ細かな指導援助が必要なことは当然でございます。したがいまして、公共職業安定所におきましては、就職前から就職した後に至りますまで一貫した指導ができるように、障害者求職登録票ということで登録制度をとっているわけでございます。一般の人の求職票よりもさらにきめ細かな情報が盛り込まれているわけでございまして、障害者の身体的なあるいは知的な条件、求職条件、職業経歴等を把握できるようにしているわけでございます。また、場合によりましては身障センターとの連携のもとに職業適性検査等も実施をいたしまして、本人の適性を把握するということまで加えているわけでございます。したがいまして、障害者につきましては職業あっせん計画が立てられるわけでございまして、公共職業安定所におきまして、言うなれば手続が煩瑣ではないかと先生おっしゃいますが、安定所といたしましては、できるだけのお世話をするという考え方でこのような登録制度を設け、そうしてお世話を申し上げているということなのでございます。  ただ、先生、具体的な事例で、地元の人を指名をしたけれども、何か順番があるのだからということでスムーズにいかないというふうな事案を申されましたけれども、そういうようなことは私どももあってはならないことであると思われるわけでございます。これは、雇いたい人、雇われたい人ということで結合しますれば、当然即座に需給の結合ができ上がってしかるべき問題であると考えるわけでございます。ただ、このようなきめ細かな把握及び職業あっせん計画ということでやっておりますために、それが場合によりましては煩瑣であろうかというふうな印象を与えたといたしますれば、さらにまた改善をしてまいりたいと思う次第でございます。
  88. 玉置一弥

    玉置分科員 今のお話でございますと、例えば企業が身障者と連絡がとれればその方を採用して、形式的であろうと届け出をすればカウントされる、こういうことでいいわけですね。
  89. 岡部晃三

    岡部政府委員 さようでございます。身体障害者に関する各種助成金の適用等、これは安定所経由ということが一つの条件でございますので、その場合にはなるべくその条件に合致する形で御利用を賜ればと思います。
  90. 玉置一弥

    玉置分科員 出先まで徹底していないようでございますから、その辺をもう一度また確認しておいていただきたいと思います。  それから大臣にお伺いしますけれども、四月一日から一・五%から一・六%に雇用率が引き上げられるということでございますが、六十二年度の調査によると一・二五%しかない。一・五もクリアできないのに一・六に引き上げて果たしてメリットがあるのかどうか。それから、一・六以上にするためにどういうことをなさっていくのかという点について、お聞きしたいと思います。
  91. 中村太郎

    中村国務大臣 昨年雇用率が下がったという経過、原因等につきましては、先ほど安定局長からお答えしたとおりでございます。実は、私どもも大変心配をいたしておるわけでございます。そういう状況の中で、ことしの四月から〇・一ポイント上がるということでございますから、これには従来に増してより以上の積極的な取り組みが必要であると肝に銘じておるわけでございまして、率直に言いまして、上から下まで小まめ足まめに身体障害者雇用の開拓に向かって力強い展開をしていかなければいけないというふうに考えております。  実は、今月の四日付で、日経連それから日本商工会議所会頭あてに、企業においてぜひひとつ四月から〇・一ポイント雇用率も上がってきますので、これを機会に傘下の会員に対しまして、身障者の雇用を拡充するように一層のお骨折りをいただきたいという意味の要請状を送ったところでございまして、あれやこれや、先ほども局長の方から申し上げましたように、いろいろなPRあるいは中小企業を初めとする事業主の個々の理解を得るような運動を積極的に展開していかなければいけない。何としてでも、せっかく四月から雇用率が高まるわけでございますから、今まで以上の強力な取り組みをしていかなければいけないということを肝に銘じて頑張る決意でおるわけでございます。
  92. 玉置一弥

    玉置分科員 ぜひ、おっしゃったとおりに進みますように、全力でお取り組みをいただきたいと思います。  今度は、時間短縮の問題あるいは週休二日の問題ということでお聞きをしていきたいと思います。  昨年の労働基準法の改正によりまして、今まで一応各企業が二千時間という目標でいろいろな労働協約等進めておりましたけれども、これから千八百時間というものを目標にさらに時間短縮が進んでいく、こういうふうに思うわけでございます。我々の方は、今の日本の全体の進んでいる国際化の道、こういうことを考えていきますと、労働条件はやはりそれぞれ競争のための基礎的な条件でございますから、諸外国におくれをとらないようにしていきたいし、また、それが外国から指摘をされるというのは非常に恥ずかしいことである、こういうふうにも思うわけでございまして、これがどういうふうに変化をしていくのか、また、諸外国に比べて劣ってないとは言えないのですけれども、実際あれだけ働いているから安いんだというふうに言われるようなことはぜひ避けていきたい、こういうふうにも思うわけでございます。  そこで、ごく簡単にお答えをいただきたいのでございますが、民間企業におきます大企業中小企業、零細企業、こういうふうに分けた場合に、それぞれの規模別の過去五年間の実労働時間がどういうふうに変わってきたかということをまずお答えいただきたいと思います。
  93. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 改正労働基準法、この四月から施行されることになっておりまして、お話のように週四十時間労働制を目指しまして、総労働時間の短縮を進めてまいるわけでございます。  経緯を申し上げますと、昨年昭和六十二年の年間の時間でございますが、一人から四人の規模のところで二千二百十六時間、五人から二十九人の規模で二千百七十六時間、三十人から九十九人規模で二千百三十二時間、百人から四百九十九人規模で二千百七時間、五百人以上で二千八十七時間ということで、規模が大きくなるほど総時間は短いわけでございますが、過去五年間の傾向を見ますと、遺憾ながらほぼ横ばい状態にあるという状況でございます。
  94. 玉置一弥

    玉置分科員 それでは週休二日制の方でお聞きを申し上げますけれども、民間企業におきます同じく規模別の五年間の週休二日制の進行度合い、こういうものをお答えいただきたいと思います。
  95. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 民間企業において何らかの形の週休二日制の適用を受けている労働者の割合で見てまいりますと、昭和六十一年の時点でございますが、千人以上の規模の企業におきましては九六・一%、百人から九百九十九人規模の企業におきましては七五・二%、三十人から九十九人の規模の企業で四五・六%となっておりまして、五年前と比べますと、百人から九百九十九人規模におきましては二・六ポイント、三十人から九十九人規模で二・七ポイントということで、わずかながら増加しているという状況にございます。
  96. 玉置一弥

    玉置分科員 今のは民間でございましたけれども、きょう総務庁においでをいただいておりますが、公務員の週休二日制の実施について今現在の状況がどうなっているのかということと、それからその週休二日制、今四週六休制に移りましたけれども、その影響度をどういうふうに見ておられるか、まずその点についてお聞きしたいと思います。
  97. 河野昭

    ○河野説明員 現状でございますが、国家公務員につきましては、ちょうど七年前でございますが、五十六年の三月から四週五休ということでやってきております。六十一年の八月に、人事院から四週六休制の試行をせよという提言をいただきまして、六十一年の十一月三十日から四週六休制の試行というのを今も引き続き実施しているところでございます。なお、四週六休制の本格実施につきましては昨年の八月人事院から勧告がございまして、これに基づきまして昨年の十月二十三日に、この四月から本格的に四週六休制を実施するということを閣議決定しているところでございます。  それからなお、影響ということにつきましては、行政サービスの影響というふうに理解してよろしいかと考えておりますが、行政サービスの影響につきましては、当初国家公務員に週休二日制を導入するとしたら行政サービスには極力影響を与えないようにということで、人事配置の見直しであるとかあるいはもろもろの事務のやり方についての工夫をするということで、こういうことを閣議決定をしまして実施してきているわけでございます。  四週六休制の実施の試行に際しましても、試行前にそのような各省庁で工夫をお願いし、また試行中にぐあいが悪いというような状況があった場合には、試行中にそこら辺の改善をしていただいた。そこら辺を踏まえまして、おおむね四週六休の試行が順調に行われているということで、昨年の十月に本格的な実施の閣議決定をしたということでございます。
  98. 玉置一弥

    玉置分科員 五十六年から月一ですね、今度から二日ということになりました。土曜閉庁の影響度も余りない、こういうふうにお聞きをしたわけでございますが、完全に実施するまでまだどのくらいかかりそうかという今後の計画、もしそういうのがございましたら簡単にお聞きしたいと思います。
  99. 河野昭

    ○河野説明員 先生のは完全週休二日制にはいつ行くかということだと思いますが、私ども国家公務員の勤務時間というのは、基本的に民間準拠ということを考えていかなければいけないと思います。四週六休も人事院が民間の調査をされて、ほぼそれに見合うということで勧告があったわけでございます。したがいまして、私どもとしては今後民間の状況がどうなっていくのか、あるいは人事院がどういう考え方を示されるのか、そういうことを踏まえて考えていきたいということで、現時点でいつの時点で完全週休二日制が実現できるかという見通しは持っておりません。
  100. 玉置一弥

    玉置分科員 先ほどの調査では影響がないということでございますから、あくまでも民間が進んできた状態では実施をする、こういうふうに受け取っていいわけですね。というのは、民間準拠ですから。  先ほどいただいた数字では、大企業の方は九六%くらい進んでおりますけれども、中小企業、零細を含めていくと約半分くらいになってしまうということでございますから、まだ半分だ。ですから、本来でございますと、週休二日制というのは、あるスケジュールでどんどんと進めていくわけでございますけれども、そうではなくて、民間がほぼ七割以上到達できればできる、こういうふうに受け取っていいわけですか。
  101. 河野昭

    ○河野説明員 具体的な数字は申し上げられないのですが、先ほど影響がないと申し上げましたのは、今の四週六休の試行は開庁方式ということでやっておりまして、この四月からもそういうことでやっていくということでございます。そういう面で支障は出ていないということでございます。  ただ、今後閉庁方式の検討をしていかなければいけない。今後において完全週休二日制ということを実現するためには、一つには、時短というものが先生おっしゃるように民間でも進んでいくというのが一つの条件であり、もう一つの条件は、閉庁方式というものが果たして国民の間に十分理解され受け入れられていくかということが一つのポイントかと考えております。
  102. 玉置一弥

    玉置分科員 今まで半舷上陸ですね。半舷上陸から今度閉庁に移る。各企業とも皆そういうことを経験してやってきたわけでして、できるだけ早く、むしろ率先してやっていただきたい。  きょうはお呼びしておりませんけれども、金融機関の週休二日制についても、そういう意味で各企業がやはり周りを見ながらそれぞれやっているわけですね。例えば日本に下請制度がありますけれども、要するに、元請の方が休まなければ休めない、それよりも多く出る、こういうのが一つの方向だと思います。  ただ、今の政府の方針として、経済構造変革と構造調整というのが非常に大きな柱になってくると思いますけれども、そういう中で、今の国際化の時代、特に輸入拡大内需拡大を図っていかなければいけない日本として、時間短縮並びに週休二日制というのは消費拡大のために大変大きな影響を持っていると思いますが、この辺を踏まえて大臣の方で、これからの週休二日制が消費拡大につながっていくと私は思いますし、逆に言えば、日本が諸外国からたたかれない最低の必要条件だと思いますけれども、この辺についてお答えをいただいて終わりたいと思います。
  103. 中村太郎

    中村国務大臣 仰せのとおりでございまして、時間短縮のメリットといいましょうか意義といいましょうか、これは第一義的には勤労者の皆さんの生活にゆとりを与える、質の向上を図る、これがそもそも福祉につながる。その次には、今仰せになりましたように、時間短縮によりまして勤労者のライフスタイルが変わってまいります。消費機会が当然ふえるであろう。消費機会がふえますれば、今一番問題になっております調和ある世界経済の発展への貢献に大きく寄与するだろうということが主眼でございますので、この点を考えましても、私は何としてでも法定労働時間の短縮を図っていく、全力を挙げてまいる所存であります。このためには、今三月いっぱい準備期間でいろいろな方策を講じておりますけれども、四月からこれが円滑にスタートできるように体制を整えたいと思います。  そのためには、国民コンセンサスを得るためにも、学識経験者あるいは労使の代表によるハイレベルの懇談会等を持ちたい。特に一番困難に思われる中小零細企業労使が自主的に取り組むことについて指導助言等を与えるなどいたしまして、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  104. 玉置一弥

    玉置分科員 終わります。ありがとうございました。
  105. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて玉置一弥君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  106. 近江巳記夫

    ○近江分科員 きょうは非常に時間もないわけでございますが、何点がお伺いしてみたいと思います。  まず初めに、育児休業制度、またパート労働法等についてお伺いしたいと思います。  女性の労働権の確立と生活権の保障、こういう立場から、我が国昭和五十年の国連婦人の十年、特に女子差別撤廃条約の批准、また引き続きまして二〇〇〇年へ向けましての将来計画を掲げまして、国内法におきましては不十分ながらも男女雇用機会均等法、またこれに伴う労働基準法の改正、また労働者派遣法制定などを図ってこられたわけでございますが、まだまだ不十分でございます。  例えば育児休業制度、これは欧米諸国におきましては早くから育児休業制度実施されておるわけでございます。また、四野党におきましても、共同いたしまして育児休業法案を提出しておるわけでございますが、政府として現在どのように取り組んでおられるか、お伺いしたいと思います。
  107. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 先生おっしゃいますとおり、最近は出産後も働き続けるという女性がふえておりますので、育児休業制度の普及は重要な課題だというふうに私ども考えております。  現在、私どもでは、育児休業制度につきましては、雇用機会均等法で使用者にその導入についての努力義務を負わせておりまして、そういうものを導入いたしましたところには、奨励制度、奨励金を出す制度を予算措置として行っております。  このほかに、各婦人少年室には育児休業制度の普及のための指導員を置いておりまして、育児休業制度の導入について企業にいろいろと助言その他をいたしているわけでございます。
  108. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それぞれ対策はとっておられるわけでございますが、どうしてもやはりそれだけでは弱いと思います。  そういうことで、諸外国の制度につきましてはもう十分皆様方も御承知のとおりでございまして、そういう点、先ほども申し上げましたように、四野党といたしまして法案を既に提出したわけでございます。ぜひとも立法化を図って根本的にもっと対策を強める必要があろう、このように考えておるわけです。そこまでお考えになっておられるかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  109. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 育児休業制度につきまして、すべての企業にその導入を義務づけるかどうかという問題につきましては、雇用機会均等法につきましての御議論をいただきました五十九年の婦人少年問題審議会で非常にホットな議論があったわけでございますけれども、最終的にはまだまだ日本では育児休業制度の普及が一割ちょっとということで十分でない。すべての企業にこの導入を義務づけるにはやや時期尚早であるので、まず普及を力を入れてやっていくべきだという御意見をいただきましたので、現在、先ほど先生に申し上げましたようなことで、さまざまな対策をとって努力をいたしているところでございます。
  110. 近江巳記夫

    ○近江分科員 今後さらに強力な取り組みをしていただきまして、早い機会に立法化までぜひともひとつ進んでいただきたい。強く要望したいと思います。  大臣、そのことについて一言お願いしたいと思います。
  111. 中村太郎

    中村国務大臣 これからも積極的に取り組んでまいりたい所存であります。
  112. 近江巳記夫

    ○近江分科員 次に、パート労働法の問題でございますが、労働省の財団法人婦人少年協会が昨年パート労働福祉法の制定に関する報告書を提出されまして、現在専門家会議で検討中ということをお聞きしておるわけでございますが、このパートで働く方々の問題につきましては、既に御承知のように、これは総務庁調査でございますが、昭和六十一年で五百三万人に達しておる。日本経済といたしましても、企業もこのパート労働力を無視するわけにはいかない、こういう状態になっております。ところが労働者社会的地位というのは極めて低いわけでございまして、労働条件は悪い。我が党といたしましても、独自のそうした法案も提出しておるわけでございます。そういうことで、早急にこうした低い立場に置かれておる方々の労働権というものを保障するためにも、ぜひ法案を一日も早く成立させる必要がある、このように考えておるわけでございます。現在どういう取り組みをされ、今後どのようにされるか、お伺いしたいと思います。
  113. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 今先生から御指摘ございましたように、パート労働者は急速にふえておりまして、日本の労働力の中で重要な部分を占めるようになってきておるわけでございまして、先ほどお話がございましたような女子パートタイム労働対策に関する研究会で御研究いただきまして、貴重な御提言をいただいたわけでございます。私どもこの御提言にはさまざま重要な部分を含んでおると考えておりまして、現在部内で検討いたしておるわけでございますが、来年度からは、こういう問題につきましての各方面の専門家の方にお願いをいたしまして、パートタイム労働問題専門家会議を行うことにいたしておりますので、できる限り早く御結論をいただきまして、対策をまとめてまいりたいと考えております。
  114. 近江巳記夫

    ○近江分科員 専門家会議で検討され、今後対策を進められるわけでございますが、労働省といたしまして、立法化をして確としたものを築く、こういう考えは持っておられるわけですね。
  115. 佐藤ギン子

    佐藤(ギ)政府委員 パートタイム労働者につきましても、一般の労働者と同じように労働関係諸法規が適用になるわけでございますので、そういう部分で不十分であるのかどうかということをさらに検討を重ねてまいりたいと考えておりますので、専門家会議先生の御意見を十分伺いました上で、法案を提出するかどうかは決意いたしたいと考えております。
  116. 近江巳記夫

    ○近江分科員 現行法でカバーできる点もそれはあるかもわかりませんけれども、到底これは十分でないということは、もう周知の事実でございます。特に心配しておりますのは、雇用保険をパート労働者にどのように適用されるのかあるいは労災や退職金制度、課税最低限の引き上げなどパート税制面の改善等々、いろいろな問題があるわけでございますけれども、現行法ではカバーし切れない問題というのが多過ぎると思います。そういうことで、労働省としても、これは今日までもうかなりの研究をされておるわけでございますが、ぜひともパート労働福祉法を立法する必要がある、私はこのように考えております。野党の各党の皆さんも同様の考えにおられるように聞いておるわけでございますが、ぜひ早い機会に立法化を急いていただきたい、このように思います。この点につきましては、大臣にお伺いをしたいと思います。
  117. 中村太郎

    中村国務大臣 専門家会議の研究の成果等を十分参酌しながら、仰せの趣旨も踏まえて検討してまいりたいと思っております。
  118. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ぜひとも強力にそれを推進していただきたいということを重ねて御要望したいと思います。  次に、母子、寡婦の問題についてお伺いしたいと思います。  まず第一点は、遺族基礎年金あるいは遺族厚生年金、児童扶養手当の子供の受給年齢を高校卒業までぜひとも引き上げてもらいたい、こういう非常に強い声がございます。この点についてお伺いいたします。
  119. 楠本欣史

    ○楠本説明員 お答え申し上げます。  遺族基礎年金あるいは今おっしゃった遺族厚生年金あるいは児童扶養手当の子供の受給年齢を高校卒業時まで延長することにつきましては、中学校を卒業し、就職している児童とのバランスもありまして、延長することは困難であるというふうに考えております。  なお、高校就学中に児童が十八歳に達したことによりまして、児童扶養手当等の給付を受けることができなくなった場合には、高校を卒業するまでの間、母子、寡婦福祉貸付金というのがございます。そのうちの修学資金を無利子により借り受けることができるというふうになっておりますので、よろしくお願いいたします。
  120. 近江巳記夫

    ○近江分科員 しかし、今後の問題としましてぜひ検討していただくように強く要望しておきたいと思います。  次に、母子家庭の母及び寡婦の職業訓練の拡充と就職あっせんの一層の促進を図っていただきたいと思います。それぞれの制度はございますけれども、さらに強力に取り組む、そのためにどういうことをお考えになっておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  121. 野崎和昭

    野崎(和)政府委員 先生指摘のとおり、母子家庭の母等の方は、就職の経験がないのに突然就職を迫られるとかあるいは家庭に子供さんがおられるとかというようなことで、就職に当たって幾つかの困難がございます。したがいまして、私どもといたしましても、こういう方の就職が円滑にいきますように、従来から幾つかの対策を講じているところでございます。  一つは、訓練手当を支給しまして、生活の保障を図りながら職業訓練を受けていただくということでございます。二つ目は、できるだけ条件のよい就職確保されますように、求人開拓を進めますとともに、公共職業安定所に寡婦等職業相談員を配置しまして、いろいろときめ細かい職業指導職業紹介に努めているところでございます。三つ目は、母子家庭の母等を雇い入れた方、事業主に対しましては、助成金を支給しております。  今後ともこういった施策をさらに推進いたしまして、できるだけいい条件で円滑に就職できるように努力してまいりたいと思っております。
  122. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それなりの手当てはしていただいておるわけでございますが、それぞれまだまだ対策としましては弱いと思います。そういう点で一層の充実をしていただきたい、このように思いますので、要望しておきます。  次に、所得税、地方税におきます寡婦控除額を配偶者控除額まで引き上げて、生別寡婦にも適用してもらいたい、こういう声も非常に強いわけでございます。この点についてお伺いいたします。
  123. 田村義雄

    ○田村説明員 ただいま御指摘の母子家庭につきましては、現行の所得税法上はまず基礎控除ということで、先生承知のように三十三万円、さらにその母子家庭の子供を扶養されているという事情で一人当たり三十三万円の扶養控除額が与えられておりまして、さらに御指摘の寡婦控除二十五万円というものが与えられておりまして、既に相当の手厚い配慮が講じられているところでございます。
  124. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 お答え申し上げます。  住民税におきます寡婦控除、それ以外の基礎的な控除につきましては、従来から所得税とその対応を考えながらその水準を定めるようにしてきておりまして、今国税でお答えしたような考え方で私どもも対応していきたいというように考えております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江分科員 これは現行されておることでございまして、それはわかっているわけですね。だから、私は、申し上げましたように、配偶者控除額まで引き上げてもらいたい、こういう強い要望があるからどのようにお考えですかと聞いているのですね。今やっていることを聞いているのではないのです。
  126. 田村義雄

    ○田村説明員 基礎控除あるいは扶養控除、こういったものはいわば基礎的な人的控除でございまして、配偶者控除ももちろんその一つでございます。  基礎的な人的控除として通常その三控除が挙げられますが、今先生の御質問の配偶者控除と同額にということでございますが、寡婦控除は、やはりその基礎的な人的控除ということよりも、むしろ寡婦であるという事情あるいは母子家庭という事情に配慮いたしまして、所得を稼得する際に有形無形の負担がかかるということをしんしゃくして、いわば追加的な費用といたしまして二十五万円という控除額を定めているところでございますので、配偶者控除額と同額にというのはなかなか難しいことであろうと存じます。  ただ、一般的にこれまでも寡婦控除につきましては、累次控除額が引き上げられてきておりますことを追加してお答えしておきます。
  127. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この点も再度引き上げについて努力していただくように、重ねて強く要望いたしておきます。  次に、医療費の公費負担制度におきまして、母子家庭の子の対象年齢を高校卒業まで延長してもらいたい、また寡婦にも適用してもらいたい、この声も非常に強いわけでございます。この点についてお伺いいたします。
  128. 楠本欣史

    ○楠本説明員 御質問の趣旨は、県単事業でやっておられる事業だと思いますけれども、実は私ども県の単独事業について必ずしも十分情報を得ておりませんが、そういった御質問のような県の事情などを早速調べたいと思っております。
  129. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ぜひそうしていただきたいと思います。  次に、聾唖者の問題でございますが、世界スポーツ大会というものがあるわけでございます。御承知のように、パラリンピックといたしまして四年に一度開催されておるわけでございます。このオリンピック競技に世界聾唖者競技大会というものがあるわけでございます。いろいろな、バレー、卓球、陸上、水泳、テニス等々、スキー大会もあるわけでございますが、この大会に選手並びに役員を派遣する場合、どういう補助をされておるかということでございます。これをお聞きしましたところ、同じ聾唖者大会で、夏季の大会のときには選手並びに役員には国から補助がされておる、冬季大会には補助されておらない、これは一体どうなっておるのですか。
  130. 戸口田三千尋

    戸口田説明員 お答え申し上げます。  今先生は夏季の大会、冬季の大会というふうに御指摘になりましたが、私どもの政府委員室を通じてお答えした際は、この夏季大会というものは、聾唖者大会ということではなく、全国の身体障害者スポーツ大会、これは毎年秋季の国民体育大会の後に行われますが、その開催県に対しまして国が補助を行っておるということをお答えしたものでございます。そこで、そのことと聾唖者の大会というものとは若干切り離してお答えすることになると思いますが、この全国の身体障害者スポーツ大会は、肢体不自由、聴覚障害あるいは視覚障害、これらの方々が一堂に会し、各種スポーツを競い合う大会でございます。  なお、お話の中にございました四年に一回のパラリンピックと申しますのは、今回のソウルのオリンピックの後に予定をされておりますが、これも四年に一回あらゆる身体障害者の方々が世界各国から集合し、その場でスポーツを行うということでございまして、これにつきましても、日本の選手団の派遣費用の一部を国庫補助するということで、現在審議をお願いしているところでございます。  なお、冬季につきましては、スキー大会、先日報道されたこと等でございますが、これはそれぞれ任意参加という形で自主的なものをやっておりまして、これには公益補助金やその他日本身体障害者スポーツ協会の補助金等を開催資金に充てまして、支障なく行っているところでございます。ただいままでのところ国に対して主催団体からの補助の要望もございませんので、直ちにこれらに対して補助を行う考えは現在のところ持ち合わせておりません。  以上でございます。
  131. 近江巳記夫

    ○近江分科員 例えば、この冬季大会は国の補助がないということで、北海道あるいは札幌市などは善意に拠出されているわけでございまして、日本ろうあ体育協会は自転車振興会、船舶振興会等にお願いに行っておるということで、いろいろなそういう団体が補助をしてあげる。そのようにばらばらなんですね。基準というものがはっきりしていないわけです。ですから、あるときには補助金もなしで自己負担になるという非常に気の毒な状態になっております。したがいまして、これは政府といたしまして、特にこういう身障者の方々のスポーツ大会等に対しては全面的にバックアップをしてあげる。今まで補助をしてくれている団体等もあるならば、それもよく掌握しつつ、漏れのない体制といいますか、それをつくり上げる必要があるのではないか。言ってこなければ何もしない、言ってきたところにはする、そういう漏れがあるわけでございますから、ぜひその点検討していただきたいと思います。  同じような問題でございますが、日本ろうあ体育協会が、三月二十三日から四月五日、メルボルンでアジア・太平洋ろうあ者サッカー選手権大会があるわけですが、選手が十八名、役員が四名、一人の費用が約四十五万円必要だとなっておるわけでございます。ところが、今お聞きしておりますところでは、全額個人負担でやるということでございます。こういう日本を代表する、しかもそういうハンディを背負った人が遠くへ行って国際親善交流をするわけでございまして、これは一体どうなっていますか。
  132. 戸口田三千尋

    戸口田説明員 世界各国の身体障害者のスポーツに関しまして、これは世界の身体障害者スポーツ協会というのがございます。それから各国に先ほど御紹介申し上げましたそういう団体があるわけでございます。そのほかに、今先生のお挙げになりました、それぞれの障害種別において、また各競技種目別におきまして、同好の士が集まって、世界共通のそういうコミュニケーションを通じて各種の世界大会というものが方々で行われているわけでございます。  こういうものについてどれを国庫補助にするというふうな基準は確かにございませんが、身体障害者のスポーツというものが彼らの社会参加の意欲向上あるいは体力の向上等に非常に重要であるということは、我々厚生省としてもよく認識をしております。また、その補助云々を離れまして、今までも十分相談を受け、また助言指導を行っているところでございますので、今後ともそのような姿勢をとり続けてまいりたいと存じます。
  133. 近江巳記夫

    ○近江分科員 政府としましても、身体障害者スポーツ協会等もあるわけでございますし、一度関係の方々の事情をよく聞いていただいて、できる限りのバックアップをするべきである、このように思います。したがいまして、よく検討されまして、十分ひとつこの方たちの要望にこたえるようにバックアップをしていただきたいと強く要望する次第でございます。この点にきましては、所管の問題もあるわけでございますけれども、大臣、これは非常に重要な問題でございますし、大臣からひとつお伺いしたいと思います。
  134. 中村太郎

    中村国務大臣 身障者の問題につきましては、労働省の所管の一環でございますので、お説の点を十分体しながらこれから努力してまいりたいと思います。
  135. 近江巳記夫

    ○近江分科員 非常に時間がございませんので、何点か本当に走って質問さしていただいたわけでございますが、特にこのパート労働法、あるいはまた育児の問題等非常に重要な問題でございますので、重ねて要望しておきたいと思いますが、ひとつ十分政府で検討していただきまして、一日も早く立法化まで運んで皆さんが安心できるような体制をつくっていただきたい。重ねて要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  最後に、大臣から一言お伺いして終わります。
  136. 中村太郎

    中村国務大臣 いろいろな貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、その線に沿いながら、これからも一生懸命頑張りたいと思います。
  137. 近江巳記夫

    ○近江分科員 終わります。
  138. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて近江巳記夫君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。
  139. 藤田スミ

    藤田分科員 私はまずパートバンクの問題についてお伺いをしたいと思います。  労働省説明によりますと、パートバンクはパートタイマーの就業相談あるいは職業紹介を専門的に取り扱う施設というふうにされているわけです。  そこで、お伺いをいたしますが、このパートバンクの位置づけと、パートバンクとしての専門性を高める方向で発展させるべきだとする方針に変わりはありませんか。  もう一つです。六十三年度は全国で五カ所増設と聞いておりますが、どこに設置を考えておられるのか。また、このパートバンクのその後の計画について明らかにしていただきたいわけです。
  140. 岡部晃三

    岡部政府委員 パートバンク昭和五十六年度からこの六十二年度までに大都市圏及び地方中核都市を中心といたしまして計四十二カ所を設置してきたところでございます。パートタイム雇用というのは大都市を中心に著しく増大する傾向がございますので、このパートバンクの設置も、やはり大都市圏、それから地方中核都市ということにおのずからなるわけでございます。六十三年度五カ所の増設ということでございますが、これは現在その設置場所につきまして鋭意検討中でございまして、またこれは確定を見ている段階ではございません。
  141. 藤田スミ

    藤田分科員 今後の計画は。
  142. 岡部晃三

    岡部政府委員 パートバンクにつきましては、地方からの要望も非常に多くございますので、できるだけこれを増設をしていきたいというふうに考えておりまして、今後ともさらに関係各方面と折衝を続けていきたいと思っております。
  143. 藤田スミ

    藤田分科員 大阪は私の地元で、堺・泉北ニュータウンという大ニュータウンにございますが、もう一つ大阪には吹田市に千里ニュータウンという全国でも代表的な大ニュータウンがございます。この千里ニュータウンは非常に要求が強いのですが、今五カ所を具体的に言えといったってなかなか明らかにしていただきにくい時期だとは思いますけれども、千里ニュータウンの増設については検討していただいておりますか。
  144. 岡部晃三

    岡部政府委員 これは各都道府県を通じまして、その設置についての要望はすべてこちらとしては集約をいたしております。したがいまして、そのような地元の御要望がございますれば、当然これは私どもの検討の素材になっておる、こういうことでございます。
  145. 藤田スミ

    藤田分科員 今も言いましたように、私の地元にもパートバンクがございます。そして近くの主婦はもちろんですが、大変落ちついた優しい雰囲気が好まれて、ほかのかなり遠い町からも利用をされているわけです。ところが、この泉北ニュータウンのパートバンクに大阪府は総合的雇用情報システムという端末機を設置しまして、一般紹介も行うという計画になっていると言われているんです。そうなりますと、今でも決して広くないこのパートバンクはますます手狭になりますし、作業量はふえますし、それから少ない職員に負担がかかって、何よりもそのおっしゃるパートタイマーを専門に取り扱うという性格がなし崩しにされて、大きく変わってしまうんじゃないかという心配をしているわけです。パートバンクの専門性を高めていきたいとする労働省の意向にも逆らうんじゃないかというふうに考えますが、これはぜひ調査をし、指導をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 岡部晃三

    岡部政府委員 御指摘は堺パートバンクであろうかと思いますが、やはりパートバンクでございますので、パートタイマーの職業相談、職業紹介を専門に扱うわけでございます。ただ、先生も御高承のとおり、パートタイム求職者というのは、場合によりましては常用就職を希望するということが間々あるわけでございます。したがいまして、そういう方々の利便も考慮いたしまして、常用雇用についての求人情報も適宜提供することがサービスになることもあるわけでございます。総合的雇用情報システムというのは、まさにこの求人情報を提供するものでございまして、住む方々の利便ということも、これまた私ども大事な要素ではないかと考えているわけでございます。  しかしながら、これはやはりパートバンクでございますので、設置の趣旨にかんがみまして、本来のパートタイマー職業紹介業務というものがおろそかになってはいけない、円滑に実施されなければならないということは当然のことでございます。運営に支障のないように十分に配慮してまいりたいと思います。
  147. 藤田スミ

    藤田分科員 今非常に大事な時期ですので、こういうことを申し上げているわけですが、ぜひ指導をしていただきたいと思います。  次にお伺いいたしますが、昨年十二月に「職業安定に関する行政監察結果報告書」というのが発表されました。これは各紙とも「高齢者に冷たい職安」などというような報道がされたわけですが、大臣は新聞報道で「謙虚に反省している。来年度から改善したい。」こういうふうに言っていらっしゃるわけです。具体的にどのように反省をしているのか、また対応についても明らかにしていただきたいわけです。大臣、お願いいたします。
  148. 中村太郎

    中村国務大臣 御承知のように、急激な円高を背景としまして、厳しい雇用失業情勢にあるわけでございます。そういう中にありまして、雇用の安定のために第一線の公共職業安定所というものは、高齢者の就業の場の確保とかあるいは身障者の雇用開発とかあるいは地域雇用対策とか、いろいろな面で精いっぱいの努力をいたしておるわけでございます。それはそれなりに私は成果を上げてきたと思っております。  ただ、一つ残念なことは、昨年行監の監察結果が報告されたわけでございまして、残念に思っておるわけでございます。しかし素直に、その事実はあるわけでございますから、率直にこれは認めて、再びかかることのないように、予算をとったけれども、それが消化できないというようなことのないように万全を尽くしていかなければいけない、こういうふうに考えております。  いずれにいたしましても、あの場合は、要するに、もう少し開発に対する熱意、積極性を示したらば、もう少し効果があったのではないかなという反省があるわけでございまして、そういう面に当たっての厳しい対応、力強い積極的な取り組みというものを第一線に向かっても私どもは要請をいたしておるところでございます。  個々具体的には安定局長の方から御報告をさせていただきます。
  149. 岡部晃三

    岡部政府委員 ただいま大臣から答弁ございましたように、この問題、私どもひとつ大いに見直しを図ろうということで、実は従来から幾つかの高齢者雇用につきましての業務指導通達が出ているわけでございますが、これをすべて見直しまして一本化いたしまして、新しい指針を実は策定をいたしまして、先日各公共職業安定所等に指示をいたしたところでございます。その眼目は、やはりより積極的に各企業を訪問して高齢者の求人開拓等をやれというようなことを内容に、高齢者等——行監の指摘中心もそこにあったわけでございますが、そのような問題にこたえ得るように、私どもとしては体制をこれからさらに固めてまいりたいと考えております。
  150. 藤田スミ

    藤田分科員 せっかくのお話なんですが、私今お話を聞いていても、今のこの職安あるいはまた職安の職員を取り巻いている事態の深刻さを十分理解していただいていないんじゃないかというふうに思わざるを得ません。  現在、円高産業構造転換が急速に進んで、昨年五月の失業者は百九十一万人、中でも雇用調整の対象に真っ先になるのが高齢者であります。まさにこれは前川レポートとその後の政府施策によって高齢者失業者が生み出されているところなんですが、一方、職安の現場はどうか。昭和四十三年に始まった第一次定員削減以降、職安では実に二千人の職員が減少しているわけです。これは職業安定所百カ所に相当する数でしょう。現場では、開庁すればもうひっきりなしに失業者が相談に来られる。終日それに追われて、まさに相談窓口の対応に追われて、なかなか訪問開拓するというような状態になれないという深刻な悩みを持っているわけです。  私は地元の堺職業安定所に行きましたけれども、信じられないなと思いましたが、就職先を訪問開拓しようと思っても自動車もない。所長さんが使われる自動車、これを一台くるくる回しているんですが、とてもそんなものは活用できませんし、非常に広い範囲をバスに乗ったり電車に乗ったり歩いたりして、こんな涙の出るような状況になっているんです。  だから、やはり根本的には職員をもっと大幅にふやしていく。ふやすというか、これはもとに戻すと言いたいわけですが、それから職場開拓ができるような機動力を含む体制を整えていく。何よりも高齢者失業者を生み出すような政府施策と大企業雇用調整をやめさせていく、そういう決意が今本当に求められているんじゃないか、私はそう思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  151. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生の御指摘の点、非常にごもっともな御説と拝聴しておったわけでございます。しかし、現在予算を審議していただいているわけでございますが、労働省が六十三年度施策の中で最重点に掲げております産業地域高齢者雇用プロジェクトというものは、まさしくそのような新しい時代のニーズにこたえて施策を展開いたしたいと考えているからにほかならないわけでございます。  また、その定員、人員の面でございますが、御指摘のとおり、労働省はこの二十年間減員を続けてきていたというふうなことがございます。ようやく今度の予算案におきまして、労働省の定員の純増が図られることに相なったわけでございます。したがいまして、これは職業安定機関について申しますというと九名ということでございますが、九名の増員でございまするけれども、これは従来純減を続けてきておったということから見ますと、一つの歯どめがかかったのではないかということで、私ども職員ともども大いに喜んでいるような次第でございます。  いずれにいたしましても、先生指摘の諸点につきましては、さらに我々重点的にこれに対応してまいりたいと考えております。
  152. 藤田スミ

    藤田分科員 もう一度最後に大臣の御意見をお伺いしたいと思いますが、もう少し具体の問題に入っていきますので、この問題について大臣の答弁は後にお願いいたします。  私の地元の現職業安定所は、今堺の人口八十数万人なんですが、その都市でたった一カ所しかないわけです。それで八十万人といえば福井県とほぼ同じ人口なんです。ちなみに福井県には六カ所の職安があるわけです。堺市の場合は一カ所しかない。しかも市内でも中心部からかなり離れた非常に交通の便の悪い西の端にありまして、利用しづらいところになっています。利用者からも、ぜひもっと利用しやすいところに移転してほしい、何よりももう一つ堺に職安が欲しいという要望は、これは職安自身が行われたアンケート調査の中からも強く出ているということで裏づけられているところであります。ILO八十八号の第三条では、「経済活動及び労働力人口の分布に重大な変化が起った場合」は、その管轄区域等の再検討をしなければならないし、「再検討の結果改正を必要とする場合には、改正しなければならない。」と規定しているわけです。堺は、今言いましたように、戦後当初から現在まで一カ所。この間、御承知のように臨海コンビナートという非常に大きな工業地帯が建設されましたし、一方、ニュータウンの開発等々で労働力人口は五倍、失業者数は四倍にふえています。したがって、堺の社会保険出張所なども六十二年七月に増設をしているわけです。堺市の職安の増設、移転について労働省の見通しを明らかにしていただきたいわけです。
  153. 岡部晃三

    岡部政府委員 現在堺市におきましては、堺市大浜北町に公共職業安定所が設置されているわけでございます。これは堺市一市のみを管轄しているわけでございまして、普通、公共職業安定所というのは複数の市町村を管轄するのが多いのでございますが、この堺市の場合には一つの市のみを管轄するという形に相なっております。  それから、現在の立地条件でございますが、堺市の商工業の中心部にございまして、求人の確保あるいは迅速な職業紹介というような観点からは、概して都合のよい場所にあるというふうにも私どもは一応は考えているわけでございます。ただ、先生指摘のように、最近住宅地域が市の東南部に拡大されておるというふうなことからいいますと、その地域にお住まいの方々がその安定所に来るまでの時間がやや長目の時間であるということは承知をいたしているわけでございますが、しかしながら、各企業と連携をとっていくというふうな形からいたしますと、現在の場所というのは一つの設置についての考え方かな、こう思っておるわけでございます。  しかしながら、この堺の公共職業安定所につきましては、他に合同庁舎計画などもあるわけでございまして、その辺、どのように考えていくかというのが今後の一つの課題であろうかと思っております。
  154. 藤田スミ

    藤田分科員 ほかに合同庁舎建設の考え方がある。これは堺の南瓦町の法務省の建物を壊して、そこに合同庁舎をつくるんだ、こういうことで私も建設省から聞いております。六十六年から着工して六十七年完成ということも聞いておりますが、この南瓦町の法務省の建物を壊して、おっしゃる合同庁舎にその職安が移転するという考え方は、今まだないわけですか、これからなんですか、そこのところをもう少し詳しくおっしゃってください。
  155. 岡部晃三

    岡部政府委員 これは六十六、七年の事業でございまして、現在その結論をすぐ言えと言われましても、私どもまだその用意がないわけでございます。これは予算措置等も今後の問題でございまして、用地もようやく先生指摘の南瓦町に決まったというのもごく最近のことと承っておりまして、私どもその辺の具体的な計画につきましては、まだ白紙の状態ということでございます。
  156. 藤田スミ

    藤田分科員 私は、今の職安の建物の老朽化の問題あるいは職安の町の中にある場所の問題からしても、当然南瓦町の合同庁舎に移されるであろう、そういうことは建設省の方は考えていて、労働省の方も知っていると思ったのですが、これは物すごく不熱心だなと思いますが、もう少しはっきりそこのところをおっしゃってください。
  157. 岡部晃三

    岡部政府委員 実は、場所につきましても、私が承りましたのはごく最近のことでございまして、これにつきましては、さてそれじゃどういうふうな考え方でいくかということは、これから内部で検討をするところでございますので、先ほど申し上げましたように、まだ白紙としか申し上げられない状況であります。もとより利用者の便あるいはまたその庁舎の老朽度等々も十分考えに入れまして、総合的観点でこれを決したいと思っております。
  158. 藤田スミ

    藤田分科員 大臣、お聞きのような計画も一方であるわけです。だから、私はさっき言いましたように、職安に対する指摘というものに対して、今こういう問題を契機にしてもっと積極的に対応していくという点で、ぜひ堺の移転の問題もうんとそういうニーズにこたえていく職業安定所の拡充強化という方向で取り組んでいただきたいと考えますが、この点について、大臣、いかがでしょうか。
  159. 中村太郎

    中村国務大臣 藤田委員からある意味では大変激励を賜ったわけでございまして、出先機関職業安定所等の御苦労についても御理解をいただきまして、感謝をいたしておるわけでございます。  私ども、今の第一線の職業安定所にいたしましても、労働基準監督署にいたしましても、施設設備の点で今で十分だとは少しも思っておりません。大変不備な点もあるわけでございます。何せ御承知の財政上あるいは行革の推進等々の中で大変苦慮もいたしておるわけでございますが、先ほど局長からお話し申し上げましたように、定員の面につきましても、職業安定局で九名、全体では十九名の増員になったわけでございますけれども、今後におきましても定員増を図っていかなければならないと思いますし、同時に施設設備の充実、庁舎の拡充等を行いまして、環境のいい中で職員の皆さんが全能力を発揮するような体制を整えることがどうしても大事だということについては認識は同じでございまして、これからも努力してまいる所存であります。
  160. 藤田スミ

    藤田分科員 私は最初にパートバンクの一般紹介の問題について申し上げました。私も、一般紹介をやる場所、つまり職業安定所を堺市においては増設、もう一カ所ふやすという点で非常に大事だと考えているわけです。したがって、南瓦町への移転という新たな問題もございますが、もう一つ増設して、このパートバンクでお茶を濁すということではなしに、本当に高年齢者の利用できる職業紹介も可能にする増設ということについて要望しておきます。  最後に、これは非常に緊急を要することでございますので、一つ申し上げておきますが、堺の職安には利用者が使える駐車場は一カ所もありません。アンケートの中でも非常に苦情が多くなっておりますし、何よりも地元の町内の自治会からも何度もこの駐車場を何とかしてほしいと言われているわけです。利用者にしてみれば、車を利用しなければ地理的にとても不便だ。まして身体障害者や高齢者になると致命的に不便なところなんです。地図の上だけでは言えない場所になっているわけです。駐車場のない職安を私が調べましたら、四百八十一の全国の職安の中で駐車場を確保していないという職安は三十六しかありません。これほどほかのところは駐車場が整備されています。これはぜひ緊急に、地元の住民のためにも駐車場の確保にもっと積極的に取り組んでいただきたい。  あわせまして、大阪の南部は関西新空港建設に伴って空港島だとか前島建設などで非常に多くの労働者、事業所が流れ込んできています。空港島建設という従来大阪南部にはなかった海上での労働環境を監視しているのが岸和田の労働基準監督署でございますが、ここは本当に昭和三十六年以来と言いたいくらい人数に変化がなく、職員は人手不足で悩んでいるわけです。これは直ちに増員を行うべきだと思いますが、時間がありませんので、二つ一緒にまとめてしまいましたが、御答弁を求めたいと思います。
  161. 岡部晃三

    岡部政府委員 堺公共職業安定所におきます駐車場の問題でございますが、南海電鉄に対しまして、その南海本線の高架の下に駐車場の借用を申し入れて折衝を続けているわけでございます。現在のところまだその見込みは立っていないわけでございますが、さらに努力をいたしたいと考えております。
  162. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 関西新国際空港の建設に伴いまして、当該建設工事を所管しております岸和田労働基準監督署におきましては、これらの建設工事等における安全確保のための監督指導を初めといたしました円滑な行政の推進が必要だというふうに考えております。このため、現在、大阪労働基準局におきましては、局内に関西国際空港対策本部を設置いたしまして、局署一体となって当該工事に対する行政の円滑な推進を図っているところでございます。また、厳しい行財政事情のもとではありますが、昭和六十三年度には大阪労働基準局管内の監督署の組織あるいは定員配置を見直しをする中で、岸和田労働基準監督署についてその組織の充実を含めまして体制整備を図るということによりまして対策の円滑な推進を図ってまいりたいと考えております。
  163. 藤田スミ

    藤田分科員 時間が参りましたので、これで終わります。
  164. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて藤田スミ君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  165. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 次に、厚生省所管について政府から説明を聴取いたします。藤本厚生大臣
  166. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 昭和六十三年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要について御説明申し上げます。  昭和六十三年度厚生省所管一般会計予算の総額は十兆三千二百十一億円余でありまして、これを昭和六十二年度当初予算額十兆二百六十五億円余と比較いたしますと、二千九百四十五億円余、二・九%の増加となっており、国の一般会計予算総額に対し、一八・二%の割合を占めております。  昭和六十三年度一般会計予算においては、国全体として経費の徹底した節減合理化に努め、特に経常部門経費については、六十五年度までの間に特例公債依存体質からの脱却という目標を達成するため、厳しく抑制する方針のもとに編成されております。  厚生省予算につきましても、そのような基本方針のもとに、今後の高齢化社会においても社会保障制度が安定的かつ有効に機能することを基本とし、国民健康保険制度の改革を行うこととしているほか、生涯を通じ健やかな充実した生活を営むことができる明るい豊かな長寿社会を築くため、健康対策福祉対策にきめ細かな配慮を行うとともに、国際化進展、科学技術の進歩に対応するための施策についても必要な予算確保したところであります。  この機会に、各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに、責任の重大さに思いを新たにして、国民の健康と福祉を守る厚生行政の進展に一層の努力を傾注する決意を表明する次第であります。  以下、昭和六十三年度一般会計予算における主要施策につき御説明申し上げます。  第一に、長寿社会対策につきましては、寝たきり老人などの要介護老人ができる限り家庭や地域において生活できるよう、家庭奉仕員派遣事業、ショートステイ事業、デイサービス事業等の拡充に努めるとともに、訪問看護を初めとする総合的な在宅ケアモデル事業や介護技術向上のためのホームケア促進事業等を新たに実施することといたしております。  また、痴呆性老人対策につきまして、調査研究の推進、専門治療病棟の整備等を図ることといたしております。  さらに、生涯を通じて健康を確保するため、新たな国民健康づくり対策「アクティブ80ヘルスプラン」を展開することとし、健康増進指導者の養成や健康増進モデルセンターの整備を図ることといたしております。  第二に、疾病対策につきましては、精神障害者の社会復帰対策推進するほか、エイズ等対策につきまして、研究費を大幅に増額するとともに、啓発・相談などの事業を進めることといたしております。  第三に、医療保険制度につきましては、国民健康保険制度につき、その運営の安定を確保するため、保険基盤安定制度の創設等を内容とする制度改革を行うことといたしております。  第四に、年金制度等につきましては、各種年金及び手当額の引き上げを行うほか、年金積立金の自主有利運用の拡大を行い、年金給付財源強化を図ることといたしております。  第五に、生活環境施設の整備につきましては、NTT株式の売却収入の活用も含め、所要財源確保いたしております。  以上のほか、引き続き医薬品等の研究開発に対する出融資制度の充実、中国残留孤児対策など諸施策推進を図ることといたしております。  なお、冒頭に述べました財政の制約下にあって、やむを得ず厚生年金保険及び政府管掌健康保険の国庫負担について、各制度の安定運営と被保険者等の立場に十分配慮しつつ、特例措置を講ずることといたしております。  以下、厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  167. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 この際、お諮りいたします。  厚生省所管関係予算重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────   〔藤本国務大臣説明を省略した部分〕  次に、厚生省所管一般会計予算を主要経費別に、その概要を御説明申し上げます。  第一は、社会保障関係費のうち、生活保護費であります。  生活扶助基準につきまして、一般国民の消費水準の動向等を考慮し、昭和六十二年度に比し、一・四%引き上げることとしたほか、教育扶助基準の改善等を行うこととし、被保護人員の最近の減少傾向を勘案して、総額一兆八百九十七億円余を計上いたしておりますが、これは昭和六十二年度に比し二百四十九億円余の減額となっております。  なお、生活保護については、引き続き制度の趣旨に沿って適正な運用を図ってまいります。  第二は、社会福祉費であります。  老人福祉関係では、本格的な長寿社会に備えた総合的な施策推進するため、在宅対策重点を置きつつ、寝たきり老人対策等緊要度の高い施策重点的に配慮を行ったところであります。  まず、寝たきり老人等の介護問題への対応が急務であることにかんがみ、ショートステイ(短期保護)事業の拡充及び家庭の介護技術習得を目的としたホームケア促進事業の創設、デイサービス事業の拡充及び痴呆性老人介護加算制度の創設、家庭奉仕員の大幅な増員、総合相談体制の拡充等を図ることといたしております。このほか、引き続き、老人クラブ活動等社会参加促進事業等を実施することとしております。  また、老人医療費については、九千七百七十九億円余を計上いたしております。  心身障害者等の福祉対策につきましては、「国連・障害者の十年」の後半の初年度として、特に、障害者が家庭や地域社会生活しやすい条件を整備するため、在宅障害者デイサービス事業、心身障害児通園事業、小規模作業所に対する助成事業等について実施箇所数、対象人員等の拡充を図ることといたしております。また、身体障害者精神薄弱者の各相談員を増員し、障害者社会参加促進事業、日常生活用具給付等事業等を充実するほか、障害者の住みよい町づくり推進事業の拡充等、社会参加促進対策推進を図ることといたしております。  保育対策、母子・寡婦福祉対策及び児童健全育成対策につきましては、新たに家庭基盤に関する調査研究を実施するほか、保育需要の多様化に対応するための乳児保育の対象拡大、児童扶養手当の改善等を図ることといたしております。児童手当については、昭和六十年に支給対象児童を就学前の第二子以降の児童とするなどの改正を行い、段階的に実施を図ってまいりましたが、昭和六十三年四月から完全に新制度に移行いたします。また、児童健全育成対策の拠点となる児童厚生施設の整備、運営につきましても引き続きその推進を図るとともに、新たに、児童厚生施設地域交流事業を行うことといたしております。さらに、母子保健対策につきましては、先天性代謝異常等検査を充実するとともに、乳幼児健康診査の充実を図ることといたしております。  社会福祉施設の整備につきましては、特別養護老人ホーム等重度施設及びデイサービス施設等需要の多い施設を重点的に整備するとともに、防火安全対策として、スプリンクラー設備や非常通報装置の設置を図ることといたしております。また、社会福祉施設の運営の改善につきましては、施設機能強化推進費の中に新たなメニューとして、総合防災対策強化事業を加え施設の防火安全対策強化を図るほか、一般生活費等の改善を図ることといたしております。  以上のほか、地域社会における民間社会福祉活動の推進を図るため、福祉活動専門員を増員するほか、福祉ボランティアの町づくり事業、婦人保護事業及び地域改善事業の実施等につきましても所要の措置を講じております。  以上申し上げました社会福祉費の総額は二兆八百二十六億円余でありまして、昭和六十二年度に比し六百六十八億円余の増額となっております。  第三は、社会保険費であります。  まず、社会保険国庫負担金でありますが、政府管掌健康保険及び厚生年金保険につきまして、昭和六十三年四月から常時一人または二人の従業員を使用する法人事業所への適用拡大を行うとともに、医療費適正化を図るための施策を強力に進めることとしております。  また、政府管掌健康保険の国庫補助につきましては、健康保険法の規定により算定した額から六百五十億円を控除して得た額を繰り入れる特例措置を講ずることとし、六千五百九十五億円余の国庫補助金繰り入れ、船員保険につきましては、七十五億円余の国庫補助繰り入れをそれぞれ計上しており、総額七千四百六十二億円余を計上いたしております。  次に、厚生年金保険国庫負担金につきましては、昭和六十三年四月から昭和六十二年暦年の消費者物価上昇率に応じて特例的に年の改定を行うこととしております。国庫負担については、厚生保険特別会計法の規定に基づき三千六百億円を一時繰り延べる特例措置を講ずることといたしました結果、一兆五千九百九十四億円余を計上いたしております。  次に、国民年金国庫負担金でありますが、拠出制国民年金につきまして、昭和六十三年四月から厚生年金と同様、特例的に年金額の改定を行うこととしております。  なお、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れの平準化を図るための特例措置が引き続き講じられております。また、福祉年金につきましても、昭和六十三年四月から拠出制年金に準じて年金額の改定を行うこととしております。さらに、旧国民年金法に基づく障害年金等について、受給者に対するサービスの向上のため、年四回支払いを年六回支払いに改めることとし、昭和六十四年二月から実施することといたしております。これらの結果、国民年金特別会計への繰り入れに必要な経費として、一兆四千九百七十三億円余を計上いたしております。  国民健康保険制度につきましては、その運営の安定を確保するため、昭和六十三年四月から所要の制度改革を行うことといたしております。また、医療費支出の適正化対策を引き続き強力に推進することとし、療養給付費等負担金一兆七千六百四十七億円余、療養給付費等補助金一千七百十億円余及び財政調整交付金四千七十九億円余を計上いたしております。これらの結果、国民健康保険助成費につきまして総額二兆三千四百七十五億円余を計上いたしております。  以上のほか、健康保険組合の助成については、運営の安定化対策を講ずることとしております。さらに、児童手当国庫負担等に要する経費を含め、社会保険費の総額は六兆二千四百三十二億円余でありまして、昭和六十二年度に比し二千四百五十二億円余の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費であります。  人生八十年時代を迎え、明るく活力ある長寿社会を築くため、生涯を通じる健康づくりは、ますます重要になっております。このような見地から、新たな国民健康づくり対策「アクティブ80ヘルスプラン」を展開することとし、また、老人保健事業については、基本健康診査の導入を一層促進するとともに、この事業を円滑かつ適正に実施するために必要な保健婦等マンパワーの拡充、市町村保健センターの整備等保健事業の基盤整備強化を図ることといたしております。  救急・僻地保健医療等地域医療対策につきましては、引き続き救急医療体制の体系的整備と機能の強化を図るとともに、僻地中核病院を中心とした僻地保健医療対策推進するための諸施策充実を図ることといたしております。  特定疾病対策といたしましては、まずエイズ対策につきまして、正しい知識の普及、相談・指導体制の充実国際協力及び研究の推進等充実強化を図ることといたしております。また、がん、難病、循環器疾患等に関する研究費の充実、専門医療機関の整備促進するとともに、腎不全対策として、都道府県における腎移植推進体制整備を図ることといたしております。このほか、看護婦等医療従事者の養成確保につきましては、看護婦等養成所の整備、夜間看護体制の強化に伴う処遇改善等を行うこととしております。  次に、精神保健対策につきましては、精神障害者の社会復帰、社会参加を促進するため、新たに、精神障害者福祉ホーム、精神障害者通所授産施設の運営費に対する助成を行うほか、精神科救急医療体制の整備等地域精神保健医療の確保のための諸施策充実を図ることとしております。また、痴呆性老人対策の一環として、痴呆性老人専門治療病棟の整備、スタッフの専門研修等の施策に力を入れることとしております。  原爆被爆者対策につきましては、医療特別手当等各種手当額の引き上げ、健康診査の充実等を図ることとし、所要の経費を計上いたしております。  以上のほか、保健所運営費について、その活動の充実を図るために必要な経費を計上したほか、公的病院の助成費、保健医療施設の整備費、血液対策推進費、エイズ・ATLワクチン開発費、重要医薬品及びアヘンの供給確保対策費など所要の経費を計上いたしております。これらの結果、保健衛生対策費は総額五千六十四億円余でありまして、昭和六十二年度に比し六十五億円余の増額となっております。  第五は、恩給関係費のうち、遺族及び留守家族等援護費であります。戦傷病者戦没者遺族等に対する遺族年金等につきましては、恩給の改善に準じて額の引き上げを行うこととしております。  また、中国残留孤児等の援護対策につきましては、帰国孤児等の定着自立促進対策充実強化するため、中国帰国者自立研修センターの設置を図ることといたしております。このほか、戦没者の父母等に対し交付国債による特別給付金の継続・増額支給を行うことといたしております。  これら遺族及び留守家族等援護費として、総額一千五百二十七億円余を計上いたしておりますが、これは昭和六十二年度に比し三十二億円余の減額となっております。  第六は、公共事業関係費のうち、環境衛生施設整備費であります。  水道施設整備費につきましては、簡易水道及び水道水源開発等の整備等を引き続き推進するとともに、新たに高度浄水施設の整備を進めることとして、八百九十一億円余を計上いたしております。  廃棄物処理施設整備費につきましては、第六次廃棄物処理施設整備計画の第三年度として整備促進するとともに、新たに廃棄物処理輸送の効率化を図るための廃棄物運搬中継・中間処理施設の整備及びクリーンタウン事業を推進することとし、六百十三億円余を計上いたしており、環境衛生施設整備費の総額は一千五百四億円余であり、これは昭和六十二年度に比し二億円の増額となっております。  以上のほか、健康増進施設(クアハウス等)及びシルバーサービス(有料老人ホーム等)に対する融資制度の創設、医薬品、食品等の安全対策、麻薬・覚せい剤対策、環境衛生関係営業対策、厚生科学技術の振興及び国際保健医療協力事業等諸施策推進を図るため、所要の経費を計上いたしております。  以上、昭和六十三年度厚生省所管一般会計予算概要を申し上げました。  次に、昭和六十三年度厚生省所管特別会計について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、政府管掌健康保険につきまして、昭和六十三年度における保険料率を引き続き昭和六十二年度と同様千分の八十三とすることといたしております。また、国庫補助につきまして、健康保険法の規定により算定した額から六百五十億円を控除した額等を、厚生年金保険国庫負担金につきましては、厚生保険特別会計法の規定に基づき三千六百億円を減額した額を、それぞれ一般会計から繰り入れることとし、一般会計から二兆三千七百七十五億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  第二に、船員保険特別会計につきましては、一般会計から七十五億円余の繰り入れを行い、歳入、歳出予算を計上いたしております。  第三に、国立病院特別会計につきましては、一般会計から一千四百四十八億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  第四に、国民年金特別会計につきましては、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れの平準化を図るための特例措置を引き続き講じることとするほか、旧国民年金法に基づく障害年金等について年四回支払いを年六回支払いに改めることとしており、一般会計から一兆四千九百七十三億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  以上、昭和六十三年度厚生省所管特別会計予算について申し上げました。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。     ─────────────
  169. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 以上をもちまして厚生省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  170. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左近正男君。
  171. 左近正男

    左近分科員 どうも、委員長、御苦労さんです。  私、きょうはエイズ問題について御質問をしたいと思います。特に血友病患者のエイズ感染、この問題に絞って御質問をいたします。  今日我が国には血友病患者は何人おられますか。
  172. 北川定謙

    ○北川政府委員 我が国の血友病患者は、これは推定でございますけれども、約五千人と想定されております。
  173. 左近正男

    左近分科員 その患者がエイズウイルスに感染しているのは五千人のうち何人おられるのですか。
  174. 北川定謙

    ○北川政府委員 HIVの感染者は、六十三年の一月末までの数字でございますが、九百四十八名でございます。なお、患者は二月十九日現在で三十七名、こうなっております。
  175. 左近正男

    左近分科員 血友病患者のうちエイズ菌を保菌されて感染されている方が非常に多いわけですね。これは、エイズ菌というのはかなりの潜伏期間がある。したがって、今言われた九百四十八人の感染者のうち、いずれかの時期にはこれはエイズ患者になるわけでして、これは将来厚生省としてはどのような数字を考えておられますか。
  176. 北川定謙

    ○北川政府委員 今先生お尋ねのように、エイズの潜伏期間というのは数カ月から数年、あるいは七年以上もたってから発病するケースもあるというふうに言われております。患者の推定数でございますが、凝固因子製剤受注者の感染者の推計が、これは一九八七年を想定しているのでございますが、約二千名ということであります。八七年では約二千名。それが一九九二年の時点を推定すると、やはり感染者数は二千名でございますが、患者数はそのうち増大をしまして、約百十六から百五十七というような数字が推定されております。
  177. 左近正男

    左近分科員 エイズ菌のウイルスはまだ医学的に十分究明されておらない、こういうことですが、血友病患者にとっては、特にエイズに感染された患者は、まあいえば死刑を宣告されたみたいなものでして、私はこれは重大な問題だと思うのですよ。  そこで、なぜ血友病患者がエイズウイルスに感染をしたのか、これは端的に理由はわかっていますね。なぜですか、これは。
  178. 北川定謙

    ○北川政府委員 血友病患者がなぜエイズに感染をしたのか、こういうことでございますが、現在我々がつかんでおる状況では、血液凝固因子製剤の投与を受けた、これによって感染をしたと考えておるわけでございます。
  179. 左近正男

    左近分科員 だから、このエイズ発病の原因は、アメリカから輸入をした血液製剤が原因なんですね。そこで、アメリカは、昭和五十八年に、アメリカの疾病防疫センター、CDCは、そういう血液製剤を使っておったのではエイズに感染をする、だから加熱処理をした濃縮血液凝固製剤の製造を承認しているわけですね。その事実はどうですか。     〔鈴木(宗)主査代理退席、上村主査代理着席〕
  180. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 アメリカにおきます凝固因子製剤の加熱の経過について簡単に御説明申し上げますと、昭和五十八年三月に肝炎対策のために一品目承認されたという一つの事実がございます。これが加熱の初めでございますが、当時はまだエイズウイルスの状況というものも明らかでなかったので、肝炎のために承認をしたわけでございます。その後、五十八年五月に、やはりエイズの関係でも加熱製剤の早期開発が必要であろうということで指導いたしまして、五十九年の二月末に加熱製剤の全般的な承認という形になっております。
  181. 左近正男

    左近分科員 だからアメリカは、エイズ患者が発生してから二年後に、アメリカのCDCは、やはりそういう血液製剤を使っておったのではエイズになるということで早速加熱処理をしているわけですね。日本の場合はその後どうなったのですか。
  182. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 日本におきましてもエイズに関する情報をできるだけ集めておったわけでありますが、ただいま申し上げましたように、アメリカで五十八年五月にエイズのために加熱処理製剤の開発の指示がなされた、こういう状況を踏まえまして、五十八年六月に日本ではエイズの実態把握に関する研究班を発足させまして、そこで検討を加えた結果、同年八月に関係企業に対して加熱製剤の開発を指示いたしたわけでございます。  その後、この日本における加熱製剤への承認の過程におきまして、やはり日本では加熱製剤のたんぱくの変性等に関する安全性の確認がどうしても必要である、これは専門家もそういう御意見でございまして、一方においてはできるだけ早く加熱製剤を使いたいという要望がもちろんあったわけでございますが、やはり副作用等の心配がないかどうか安全性を確認することがどうしても必要であるという判断で臨床試験を実施することになったわけでございます。  そこで、各企業は直ちに開発に入り、臨床試験等を経た後、昭和六十年四月以降相次いで厚生省に承認申請をいたしまして、厚生省としては、その緊急性にかんがみて他の医薬品とは別に優先的に審査を行って、同年七月に承認を行ったということでございます。
  183. 左近正男

    左近分科員 いずれにしても、アメリカが五十八年の三月、日本は六十年の七月、二年四カ月も日本の場合はおくれているわけです。その間にエイズ菌を含んだ血液製剤を血友病患者にどんどんと投与をしてきた。これが今日日本におけるエイズ患者の大半ではないですか。ほとんどではないですか。これだけ科学が進歩し、医療が進歩しているのに、なぜ二年四カ月の空白期間ができたのか。私は後ほど触れますが、ここにはいろいろな問題点があるのじゃないかと思うのです。まず端的に、二年四カ月日本は開発がおくれた、アメリカは既に加熱したものを患者に投与している、この二年四カ月の空白はあなた方はどう考えますか。
  184. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいま二年四カ月という御指摘がございました。アメリカにおいて最初に肝炎対策のために一品目加熱製剤が承認されたのは五十八年三月でございます。しかし、それはエイズのための開発とは別でございまして、アメリカでエイズのための加熱製剤が承認されたのが五十九年の二月末でございます。このエイズという点で比較してみますと、日本が六十年の七月でございますから、大体一年四カ月前後という差になるわけでございます。  日本でなぜそれだけ差がついたのかということでございますが、日本でもアメリカがエイズのために加熱製剤の開発を指示するのとほぼ同じ時期に企業に対して指示をしておりますが、日本ではまだ加熱製剤をつくるという経験が全くなかったわけでございます。アメリカは、先ほど申しましたように肝炎対策のためではございましたが、ある程度加熱の製剤をつくっているという経験もありました。日本では、そういった加熱製剤を初めて使うということについて、もしそれで副作用が出るようなことがあっては大変だということで、専門家の御意見も伺いながら、最小限必要な臨床試験等はどうしても欠かせない、しかし一方において当時の血液製剤を使わないということは患者の生命にもかかわることであってこれもできない、こういう非常に苦しい選択を迫られたわけでございます。  そこで、私どもとしては、できるだけ安全性を確認しつつ早期に承認がおりるように、メーカーに対しまして、通常の臨床試験よりはもう少し症例が少なくてもいい、こういう説明もいたしまして、できるだけ早期にこれを進めてもらうように指導をいたしたわけでございます。そうして、各社において、それまで未経験であったがためにある程度の臨床の期間も必要でありましたが、早急にこれを実施いたしまして厚生省に申請をいたしました。先ほども申しましたように、厚生省としては、他の場合に比較して異例の速さで承認を行った、最大限の努力をしてまいったわけでございます。
  185. 左近正男

    左近分科員 その空白の期間についてはまたいろいろこれから問題になってくるだろうと思いますが、六十年七月に加熱処理した血液凝固製剤の国内製造あるいは輸入を承認したが、その時期以降非加熱の血液製剤について、各メーカーあるいは厚生省はそれを禁止措置をしなかった、野放しにしておった、このことは事実ですか。
  186. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 先ほども申しましたように、加熱製剤の開発は六十年七月、承認が七月でございますが、実際に承認後生産体制に入るわけでございますので、必要な量が確保されるまでにはどうしてもある程度の期間が必要でございます。その間従来の非加熱製剤の使用をとめるということは、やはり血友病の患者にとっては極めて重大な問題を来すおそれがございます。どうしても凝固因子製剤を使わざるを得ないわけであります。したがって、その間、新しい加熱製剤が出回るまでの間は私どもとしても一斉にそれを回収する、使用ができないようにするということはどうしてもできない状況にあったわけでございまして、ある程度の期間内は、できるだけ新しい加熱製剤が出回るように各社を督励しつつ、従来の非加熱製剤については使用することはやむを得ないという考えに立っておったわけでございます。
  187. 左近正男

    左近分科員 大体、メーカーが在庫で持っている非加熱製剤を全部消化してしまうまでほっておいたのではないですか。その辺どうですか。端的にお願いします。
  188. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 先ほど申し上げましたとおりでございまして、そういうことは私ども一切考慮しておりません。
  189. 左近正男

    左近分科員 実際問題、これは悲劇ですね。その非加熱製剤の中にはエイズ菌が含まれておる。それは患者は知らぬで、あなた方は知っておったかもしらぬ。あなた方は知っておったかもしらぬが、患者は知らぬでそれを投与されてエイズに感染をしている。これは、大臣、どう思われますか。患者団体などからも、こういうことについては、国の責任、製薬会社の責任、これはこれから強く指摘がされるのではないかと思うのですね。予算委員会の中でも竹下総理は政治の力で何とか救済をしたいというような意味のことを答弁されておりますが、厚生大臣として今後この血友病患者のエイズ菌感染による患者の救済問題についどうされようとするのか、見解をお答えいただきたいと思います。
  190. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 血友病患者の中で血液凝固因子製剤を使うことによりましてエイズ感染者になった、この方々については、非常に不可抗力でございまして、極めて同情すべき事情があるというふうに思っております。私どもは、今いろいろ御議論になっております一年四カ月間の、アメリカよりも我が国におきまして非加熱から加熱に切りかえるそのおくれた間の、それによってエイズに感染した人だけではなくて、五十三年からアメリカからこの血友病患者のための凝固製剤を輸入してその使用によってエイズ感染された方全体について、極めて不可抗力で御同情申し上げておるわけでございまして、それらの方々に対しては、何らかの救済、どういう救済ができるかということを事務当局に私は指示をしておるという現状でございます。  総理が先般の予算委員会で御答弁なられました趣旨は、この一年四カ月のおくれによるエイズ感染者に対して、これを薬害として救済基金によって救済をしたらどうかという御指摘に対して、その点については薬害であるとかまた薬の副作用であるとかという問題の究明はなかなか難しい問題でありますので、救済という問題に絞って考えれば、先ほど申し上げましたように、関係者、つまり五十三年以来の血友病患者の中で血液凝固因子製剤によって感染をしたエイズ感染者についての救済はまさに政治的な問題として考慮すべきだということを言われたわけでございます。  総理の御趣旨を体して、私どもといたしましても今後どのような救済ができるかということを今検討している段階でございます。
  191. 左近正男

    左近分科員 僕は銭金で済む問題ではないと思いますよ。実際、患者の立場になったら、これはもう深刻です。したがって、国は今大臣がおっしゃったように最大限力を尽くしてほしい。これは強く要望しておきたいと思います。  そこで、今世間では二年四カ月のおくれ、今大臣は一年四カ月のおくれ、このおくれは、今日のアメリカと日本との医学技術についても交流が非常に頻繁に行われている状況の中で、なぜ一年四カ月ないし世間で言われている二年四カ月の空白期間ができてしまったのか。これについてやはりはっきりさせていかなければならぬと私は思うのです。  世間では、このおくれの原因は、申請したメーカー五社の臨床試験の世話人だった安部帝京大学副学長、この方は国のエイズ班の班長ですか、その安部さんが、ミドリ十字という会社が開発が非常におくれておった、したがって後ろの線を合わせるために配慮したのではないか、こういうように世間では言われているのです。この点については厚生省はどうですか。
  192. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 この一年数カ月のおくれの原因につきましては、今の我が国の制度、つまり、外国産の薬を日本国内で使う場合には国内で審査基準というものを設けております。だんだん簡素化をしてまいりましたけれども、臨床試験という点については残しております。その臨床試験を我が国としてはこの非加熱から加熱にする場合にしなければならなかったという基本的な事情がございます。アメリカでは、先ほど局長から答弁いたしましたように、加熱の臨床試験の治験を持っておった。ですからこの血液凝固因子製剤について加熱に切りかえるときにそういう手続は必要なかった。ところが、我が国ではたんぱく質の加熱についての臨床試験を持っていない。したがって、国民の生命、健康を預かる厚生省としては臨床試験を行う必要があった。これが一年数カ月のおくれの原因である、私はそう考えております。  以下の点につきましては、政府委員から答弁いたさせます。
  193. 左近正男

    左近分科員 大体私は理由にならぬと思うのです。それだったらアメリカの加熱したものを直輸入したらいいのですよ。何ぼでもできるのです。  そこで、今大臣が言われた加熱処理の血液製剤の臨床試験時期に、安部氏が治験を依頼した製薬会社五社から多額の寄附金を求めて財団法人を設立をしておる。これは事実ですか。
  194. 北川定謙

    ○北川政府委員 財団法人血友病総合治療普及会のことと存じますが、この財団設立の構想は既に昭和五十七年当時から進められておったものでございます。血友病患者の治療の普及ということを目的としてこういう構想が進められておったわけでございます。
  195. 左近正男

    左近分科員 大体、製薬会社がエイズの治験を依頼して、その総まとめである安部さんがその時期にその会社、メーカーから多額のお金を取るというか寄附をさせて、血友病総合治療普及会、これは実体があるのかどうかよく私は知りませんが、こういうものをやるということは非常に誤解を招く行為ではなかったかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  196. 北川定謙

    ○北川政府委員 血友病の治療というものはなかなかいろいろと難しい面を持っておるわけでございまして、エイズの問題がたまたま近接をしたという、結果としてそういう考え方はございますが、実際は別々のものと私どもは考えておるわけでございます。
  197. 左近正男

    左近分科員 これは新聞報道ですが、この普及会というのはバラックのこんな建物ですよ。こんなのでエイズ菌をいろいろ検査したりそんなこと実際できますか。立派な研究機関を設けてやっているのだったらいざ知らず、こんなバラックで紙に財団法人血友病総合治療普及会と書いてある、実際世間ではこんなのは通らないですよ。その時期に各メーカーから多額の寄附金をもらっておる。  安部先生はメーカー別にどれだけの寄附金を取ったのか、寄附させたのか、一遍報告してください。
  198. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生の御指摘は、きちんとした研究施設を持って財団活動をやるべきだ、こういうことでございますが、そういうお考えもございますけれども、実際には既存のいろいろな研究者を網羅、組織し、あるいはいろいろな研究、治療の機関を有機的に連携をとって仕事を進めていくというやり方もあるわけでございまして、この財団はその後者のやり方をとっているわけでございます。  それから先生御質問の寄附金の問題でございますが、この財団は、設立時に一億、それから設立後に一千二百万、合計一億一千二百万の基金で運営を始めたわけでございます。その設立時にミドリ十字ほか血液製剤の五社がそれぞれ寄附をしておる事実はございます。
  199. 左近正男

    左近分科員 だから、その時期がちょうど重なるのですよ。だから私今質問しているでょう。製薬会社五社から何千万ずつ寄附を求めたのですか。その金額を言ってください。
  200. 北川定謙

    ○北川政府委員 設立時の一億の内訳でございますが、安部英教授が四千七百万、それから冲永荘一、これは帝京大学の学長でございますが、これが一千万、ミドリ十字が一千万、日本臓器製薬一千万、日本トラベノール一千万、カッター・ジャパン一千万、化学及血清療法研究所三百万、合計一億、こうなっております。
  201. 左近正男

    左近分科員 大体、この安部氏が、エイズの治験期間、非常に大事な時期にそういう普及会を設けて当該のメーカーから一千万単位の寄附を求めておる、これは私は非常に異常だと思うのですよ。そのことがこの加熱製剤をつくるために期間調整をしたのではないかという非常に大きな誤解を世間では生んでおる。そして、特にミドリ十字、普及会が行う学会、主催する催し物、この費用を全額ミドリ十字が負担をしておる。こういうことをやっておったのでは、やはりエイズの加熱製剤の開発について安部氏を中心にして期間調整をしたのではないかという世間で言われておるこのことを否定できないじゃないですか。  このミドリ十字というところは、血液製剤のシェアのナンバーワンのところでしょう。安部氏とミドリ十字、これは気心が非常に合っているというか、悪く言えば癒着をしているというか、この会社の社長は近くかわるらしいですが、現の松下さんという社長は厚生省の薬務局長からの天下りではないですか。そういう会社と厚生省のエイズ班長、この方の関係、またこの普及会、大きな寄附金、学会で全部総もたれの費用を持たしていく、こういうような癒着構造が今日のエイズの加熱製剤をおくらせる背景にあったのじゃないかと私は思うのです。この点いかがですか。
  202. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私は法人のことに関しては十分承知をしておりませんが、先ほども申しておりますように、当時、エイズのために加熱製剤を早期に承認し、これを早く患者の使用に供しようということで国もメーカーも全力を挙げてこれに対応していたということは事実でございます。先ほどから何度も申し上げておりますように、アメリカにおける加熱製剤の経験というようなものが日本にはなかったためにどうしても日本人の患者に対する臨床研究というものが必要であった、このためにある程度の期間がかかったということも事実でございまして、私どもとしては、この加熱製剤の承認時期は全力を挙げて最大限の努力をしたが結果としてこういう時期になった、こういうふうに考えております。
  203. 左近正男

    左近分科員 私が今指摘した安部氏というのは、国の、厚生省のエイズ研究班長。その方が非常に疑惑に包まれるような行為を製薬メーカーとされているんですよ。その事実についてあなた方は安部氏を呼んで事情調査をされたことがありますか。
  204. 北川定謙

    ○北川政府委員 この財団法人血友病総合治療普及会の設立に当たりましては、厚生省といたしましても、財団法人の設立認可等の基準というものを持っておりまして、こういうものに照らしてその法人の目的、事業内容の公益性あるいは事業活動の遂行のための財産確保等について厳正な審査を行った結果設立を認可したものでございます。
  205. 左近正男

    左近分科員 もう時間がありませんから、私がきょう申し上げたこの一連の動きについて、あなた方はそういう機械的な答弁をされておったのでは世間では通用しないですよ。非常に大きな疑惑がここにはある。このことが科学であるべきこういう医薬の開発がかなり疑惑を持って今日見られている。これは深刻に受けとめてくださいよ。特にこのミドリ十字という会社はある特定の政治家を顧問にしているわけです。この会社について、血液製剤についてもシェアはナンバーワンだが、安全な、そういう製薬会社としての正常な使命を果たしているかどうか私は大いに疑問です。この会社を厚生省としては立入検査をしてください。私はこれを要求します。どうですか。
  206. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私どもは、薬事法という法律に基づきまして、医薬品の製造業者、輸入販売業者あるいは販売業者等に対しまして定期的に監督権を行使いたしまして立入検査などを実施しております。したがいまして、このミドリ十字という会社も他の会社に対する監督と同様に私どもとしては検査もいたしておりますので、その限りにおいて、薬事法に違反するというようなものは現在その検査の段階において把握をしておりませんので、この監督につきましては他の医薬品メーカーも同様の立場にあるわけでございます。今後とも、そういう意味での十分な指導監督、これは続けていきたいと思っております。
  207. 左近正男

    左近分科員 もう最後で、時間がございませんが、そういうような機械的な答弁では私は納得できません。これはまた患者団体なんかがもし裁判をされた場合、そこらの因果関係について厳しく皆さん方指摘されますよ。  厚生大臣、最後に、私の今の質疑、私の今申し上げたような点、非常に世間が疑問を持って、国のエイズ対策について、特に安部氏の行動について、国がエイズ班長に指名したわけですから、非常に疑惑を持って見られていると思うのです。大臣は、今の私の質疑、お互いの意見交換、答弁の中でどう思われますか。私の言っていることは的外れていますか。あなた、どうですか。
  208. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私も、今御指摘の事柄につきましては、内容調査する必要があると思いまして、詳しく事務当局から事情を聞きました。  幾つかの点について具体的な説明がございまして、私としては一応そういう心配はないというふうに今判断しているわけでございますが、一、二点のことについて申し上げてみますと、一つは、一人だけであるメーカーに合わすという作業が可能なのかどうなのか。何社もの方が当然関係しているわけでございますから、一人だけでそういうことが現実に行えるかどうかという点については、これは無理だ。  それからさらに、例えば承認時期が一年もの期間あるということであればおくらすことのメリットがあるわけでございますけれども、承認期間の間隔は二カ月ないし三カ月ということでございますからそれをおくらせも現実にはメリットはないというようなことから考えますと、そういううわさは確かに聞きましたけれども、御本人からもいろいろ事情も聞いておるわけでもございますし、また客観的にそういう事情から見ますと、そういうことはなかったのではないかというふうに考えております。  しかし、こういう問題は極めて重要な、重大な問題でございますので、十分に、そういう疑いがかけられることのないように、関係者襟を正してといいますか、慎重に対応していかなければならない問題だというふうには考えております。
  209. 左近正男

    左近分科員 患者は泣いていますよ。よろしくお願いします。  質問を終わります。
  210. 上村千一郎

    ○上村主査代理 これにて左近正男君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤和良君。
  211. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 限られた時間でございますので、答弁は極力簡単明瞭に、めり張りのきいた御答弁をお願いしたいと思います。  私、四年前でございましたが、五十九年三月十二日の予算委員会のこの第四分科会で質問いたしましたけれども、はり、きゅう、マッサージのいわゆる保険給付の問題でございますけれども、その後、医師の同意書を求める件につきまして事務手続の簡素化、どのように進みましたか。御報告をお願いしたいと思います。
  212. 下村健

    ○下村政府委員 お話のように、はり、きゅうの保険適用につきましては、医師の事前同意があった場合に認めるということになっておりまして、昭和四十二年にも一定の診断書をもってかえることができるというふうな措置をとっているわけでございますが、さらに昭和六十一年に、円滑な実施を図るというふうなことで、それまでまちまちであった同意書の様式を統一する、それから、初療の日から三カ月経過した時点でさらに継続をしていくというふうな場合には、実際に医師から同意を得ていれば必ずしも同意書そのものは必要としない、それから、この場合患者にかえて施術師が医師の同意を確認することができるというふうな簡素化の措置をとっているわけでございます。
  213. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 確かに医師の同意書があれば保険の給付が可能であるということになっているわけでございますけれども、具体的には事務手続がなかなか難しいものでございますので保険の給付をしていない方がたくさんいらっしゃったわけでございますね。この事務手続の簡素化が進みました結果、具体的に保険を利用する方々はふえていますか。
  214. 下村健

    ○下村政府委員 はり、きゅうの療養費の支給件数でございますが、様式の統一等を行った六十一年四月の前後ということで比較をしてみますと、これは政府管掌健康保険でございますが、六十年十月が七千六百六十七件、六十一年十月には九千四百六十七件ということで、約二千件近く増加しているという結果が出ております。
  215. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 私四年前に質問いたしましたときに、当時の保険局長の御答弁では、いわゆる東洋医学の研究が進みまして、はり、きゅうのいわゆる治療の因果関係が研究によって明らかになればこれは独立した医学として認めることができる、したがって医師の同意書なしでも保険の給付はあり得るという旨の答弁をされたわけでございますが、その考え方は今も変わっていないのでしょうか。
  216. 下村健

    ○下村政府委員 保険で扱う医療というものの場合、西洋医学と申しますか近代的な医学が基本というふうな格好になっておりまして、一応主治医がおりまして、その主治医のもとで医療が行われるというふうに一般的には考えられておるわけでございます。したがって、主治医の同意のもとに範囲を限定して施術をするというのが現在の格好でございまして、それと別個の体系の医療というふうなものを認め得るような事態があればそれは考えられることではないかというふうに当時の保険局長はお答えしたのではないかと思います。その点については、今日でもそのとおりでございます。
  217. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 そこで、明治以来、東洋医学と西洋医学というのは、どちらかといいますと西洋医学の方が治療のメカニズムというのが解明されやすいものでございますのでそちらの方が偏重されてきた嫌いがあるわけでありますけれども、国民の側から申しますと東洋医学も西洋医学も大変大事な国民の健康に奉仕するものでございまして、東洋医学に対する研究をやはり今後も進めていく必要があるのではないか。これにつきまして、今後の研究の方向というものはどのように考えていらっしゃいますか。
  218. 仲村英一

    ○仲村政府委員 これまでの鍼灸に関します研究でございますが、伝統的な証とか経穴とかそういうものの実証等の観点から研究が行われてきておりましたけれども、ある程度の、一定の治療効果は認められているように考えられますけれども、今おっしゃいましたような治療のメカニズムというのですか、そういうのが非常に研究が難しいということもございまして必ずしも明確でない、成果が上がったというふうには言えない部分があるようでございます。  西洋医学とどのように合体させるかということは、研究手法とも関係いたしますが、恐らく神経学的なアプローチとかいろいろなことが考えられるわけでございまして、鍼灸の治療効果発現のメカニズムというのはまだまだ解明されるべき分野があるということは御指摘のとおりでございまして、私どもとしても今後さらに基礎的な研究、方法論の確立等を含めました研究を進めたいということで、来年度も科学技術庁と相談してそのような研究を進めたらいかがかということで考えております。
  219. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 かつて北京の日中友好病院でこうしたことをテーマにいたしまして日中の共同研究を行うという話があったと記憶しておるわけでございますが、今はどういうふうになっておりますか。
  220. 仲村英一

    ○仲村政府委員 当時どのような形でそういう話が出たか、私、直接存じ上げないでまことに申しわけないのでございますが、恐らく共同研究の内容につきましては外務省あるいは国際協力事業団等で担当しておられると思いますので、その後どのように進んだか、なお調べまして、改めてお答えさせていただきたいと考えております。
  221. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 大臣、この東洋医学というものがやはり伝統的に国民の間には大変浸透しておりまして、西洋医学で治らなかった病気も治ったというふうな報告も私は受けているわけでございますけれども、大変大きな立場から中国との共同研究であるとか日本の国内でいわゆる東洋医学の研究をもう少し積極的に進めていってはいかがかな、こういうふうに思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  222. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私も御意見に全く賛成でございます。それぞれの長所を組み合わせて国民の健康の増進を図っていくということは非常に重要な問題だと思いますし、また、医学そのものが一つのその国の文化、長い歴史を積み重ねたものでございますからいろいろ違ったものがあってもいいわけだと思うわけでございまして、この東洋医学のメカニズムについての研究については、非常に難しい点もあると思いますけれども、科学技術庁その他関係省庁と相談をして、これから大いに前進するように努力を私としてはしてまいりたいと考えております。
  223. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 これは日本国内のお話でございますけれども、きょうの新聞報道でございますが、「日本鍼灸師会など、はり、マッサージ師らの関係業界七団体の法改正協議会と日本柔道整復師会は、」「都道府県が実施している資格試験を国家試験とするなどの内容を盛り込んだ関係法令の抜本改正を九日、自民党社会部会に陳情する。自民党はこれを受けて「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」、「柔道整復師法」の改正案をまとめ、議員立法で今国会中に提案、会期中での成立を図りたいとしている。」こういうふうな報道があるわけでございますけれども、このはり、きゅう、指圧師の技術とか資質のいわゆる全国的な統一あるいは資質の向上というものは大変重大な問題ではなかろうかと思うわけでございまして、このように資格試験をいわゆる厚生大臣が行う国家試験にしたらどうか、こういうふうな考え方についてどういうふうにお考えになりますか。
  224. 仲村英一

    ○仲村政府委員 今お話のような動きが立法府の方であるということは私ども聞いておるわけでございますが、鍼灸師等の資質の向上を図る観点からいたしますれば、資格試験の統一でございますとか大臣免許にすること等につきまして一般的に非常に好ましいことだと考えておりますが、実施体制その他、まだ若干の問題もあるのではないかと思いますので、そういう点も含めまして、私どももそれなりの検討をさせていただきたいと思っております。
  225. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 大臣も同じような意見ですか。
  226. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 同じでございます。
  227. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それでは、アスベストの問題につきましてお伺いしたいのでございます。  最近アスベストの公害が大変注目を浴びているわけでございまして、文部省は昨年公立の小中高等学校における使用実態調査を行いました。その結果、千三百三十七校がアスベストを使用していると判明いたしまして、ことしの予算にもその除去に対する補助予算を計上したわけでございますけれども、厚生省としては、この問題について、大臣、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  228. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 アスベスト問題でございますが、極めて重要な問題だと認識しております。  厚生省所管につきましては、昨年暮れに福祉施設の関係については全国的に調査をいたしまして、改良できるところから処理をしてまいりたい。また、病院その他の関係につきましては、現状につきまして早急に調査をして改善してまいりたい、かように考えております。
  229. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 厚生省が所管をされておるのは、いわゆる病院、それから特別養護老人ホームあるいは保育所などの社会福祉施設でございますけれども、これの総点検は行いましたか。
  230. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 特別養護老人ホームと保育所等のいわゆる社会福祉施設につきましては、昨年の十二月に使用実態調査を行いまして、その結果、アスベストを使用している施設は、全国の社会福祉施設総数の大体二・四%、施設数で申しますと九百五十八カ所である。そのうち、全面または部分的に表面が剥離状態になって緊急に対策を講じる必要があると思われる施設は全部で三百十カ所でございました。  これら緊急に対策を講ずる必要がある施設につきましては、特別措置といたしまして六十三年度から施設整備の補助対象基準を引き下げまして予算対応をしたいということにしております。
  231. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 病院についてはいかがですか。
  232. 仲村英一

    ○仲村政府委員 病院につきましては、社会福祉施設のような形と違いまして民間の施設もございますので、総点検という形では行っておりませんが、この問題が出ました直後に、各病院団体を呼びまして、そのアスベストを使用している部分についてはマニュアルに従って適時処理をするようにという指導をしたほかに、今年に入りまして通知を出しまして、各管下の病院にそれぞれの対応をするような指導をいたしましたが、国立病院・療養所におきましては、現在使用実態を調査しておるところでございます。
  233. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 病院は今調査中というお話でございましたけれども、病院の中にはいわゆる公立の病院と私立の病院とがありまして、やはりそれぞれ対応は変わってくるのではないかと思うのですが、基本的にどういうお考えで対処される予定ですか。
  234. 北川定謙

    ○北川政府委員 保健医療局所管は国立病院及び療養所でございますが、国立病院・療養所におきましては、二百五十一施設のうち百三十八カ所がアスベストを使用しておる。しかし、主な使用箇所は機械室とかボイラー室、浴室等でございまして、直接患者さんに密接に接触する部署は割合に少ない、こういう認識をしておるわけであります。  なお、本年の一月に先生御存じの建築物内における健康に影響を及ぼす粉じんの実態とその抑制に関する研究班の中間報告があったわけでございまして、その状況に応じていろいろ対応の仕方が異なるということでございまして、現在この報告を踏まえて再調査を進めておりまして、必要な場合には施設整備費等の中で対応できることになっております。これは国立病院の問題でございます。
  235. 仲村英一

    ○仲村政府委員 私立の病院等につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように社会福祉施設とやや性格を異にすることもございまして、団体を通じての指導あるいは適切な、今保健医療局長からお答えがありましたような、建築の態様からいたしますと非常に似たような部分もあろうかと思いますので、通知等をもって各病院ごとに対応をするようにということで指導をしたいと考えております。
  236. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 病院にいたしましても、あるいは特別養護老人ホームにいたしましても、あるいは保育所にいたしましても、例えば病院というのは病気を回復するために行くところですね。あるいは特別養護老人ホームにはお年寄りの方がいらっしゃるわけですし、また保育所には子供さんがいるわけです。それぞれ健康的に言うと弱者の方々が多いわけでございまして、こういうところにアスベストが健康に大きな被害を及ぼすということは大変憂慮されるわけでございまして、文部省に負けず劣らず厚生省といたしましてももっと積極的にこの問題に対して対処するべきではないか、このように思いますが、大臣どうですか。
  237. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 おっしゃるとおり、これは非常に重要な問題でございますから、私どもも全力を挙げて対応したいと考えておるわけでございまして、今後適切な対応を強力に行ってまいりたい、かように考えております。
  238. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 東京都の水道の水の中に、アスベストが多量に含まれているという研究発表がございました。昭和女子大学の長澤教授らが都内の水道水一リットルの中から約五万本から百八十万本という多量のアスベストを検出した、こういう事実を発表されたわけでございますけれども、これを飲んで健康に影響はないのでしょうか。
  239. 古川武温

    ○古川政府委員 アスベストの経口摂取といいますか、飲み水からアスベストをとった場合に健康影響がないか、そういうふうなことでございます。経口摂取による健康影響については、因果関係に関する結論を出すところまではいっておりません。一般的には吸入、肺の方に吸い込む、こうしたものの影響に比しては極めて少ない、こう考えられております。現在、アスベストに関し水質基準を定めた国はございませんが、米国においては十ミクロンを超える、長さで言えば比較的長い繊維、それと短い繊維に分けて考えておりますが、十ミクロンを超える長い繊維について、先ほど調査結果のお話がございました、一リットル中に七百十万本というところを一つの目安にして水質基準をつくろう、そういう提案をしていると承知しております。  昨年公表された東京都内の水道水のデータでございますが、東京都の方も同時に検査をしてございますが、いずれの調査も十ミクロンを超えた長い繊維というのは水道水の中からあるいは原水の中から、浄水の中から見つかっていないわけでございます。現在のところそういうふうなことで問題は少ない、こういうふうに考えております。  しかしながら、当省としてもこの問題については関心を持っており、現在内外の治験集積に努めるとともに、水中のアスベストについての分析報告、これは大変難しく時間を要する検査でございますので、この簡易な検査法の確立のための検討を行っているところでありまして、こうした検査方法を確立して実態の把握に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  240. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 アスベストが肺の中に蓄積をして肺がんになるということは、病理実験等でも明らかにされているわけでございますが、要するに経口、口を通して入ったものについても、例えば新潟大学の大西義久教授等の研究グループの調査では、これは昨年の四月八日でございますけれども、日本病理学会で発表されたレポートによると、アスベストの繊維が肺の中に入っている人では、同時に血液によって他のいろいろな臓器、食道だとか胃だとか肝臓だとか心臓だとか脾臓だとか骨髄などにも蓄積をしておりまして、特に食道がんは三倍も高い確率で多発している、こういうようなレポートもあるわけでございまして、今経口の場合は余り因果関係が認められないような発言がありましたけれども、具体的に学者の中ではそういう指摘をしている方もいらっしゃるわけですね。もっと正確に調査する必要があるのじゃないですか。
  241. 古川武温

    ○古川政府委員 水道水から経口的にとりましたもの、それからもう一つ、委員指摘のございましたように肺の細胞の中に取り入れられた繊維が血中に入るのではないか、こういうふうな研究もあるという御指摘でございます。  私どもの方も担当の部課におきまして、国内あるいは国外の研究報告というものを集めまして、それらについての情報の収集もしておるところでございます。     〔上村主査代理退席、鈴木(宗)主査代理着席〕 いろいろな報告もございますが、それらの報告を評価して、結果としてこれは国際的にもそのような評価でございますが、先ほど申し上げましたように現在の治験の範囲内では人体への影響は少ない、あるいはさらに言ってみるならば、肺から取り入れるこのアスベスト繊維の害毒に比べればはるかに少ないものではないか、これが定説になっていると承知しております。
  242. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 余り楽観的なことは言わない方がいいと思うのです。水道の水にアスベストが何で含まれているのか。その主な原因は、例えば石綿・セメント管と言われる水道管、これは現在製造中止になっているようでございますが、今も全水道管の二〇%、約九万キロのものが布設されておる、しかも老朽化が進んでおりまして、ここからアスベストが漏れてきているのではないか、こういう心配が言われています。あるいはダクタイル鋳造管、これは現在も製造中でございますが、大体全水道管の三分の一くらいですか、この水道管の内側に塗ったモルタルが剥離をいたしまして、モルタルの中に含まれていたと言われるアスベストが溶け出ているのではないか、こういう指摘があるわけでございますけれども、この原因説についてはどういうふうに考えますか。
  243. 古川武温

    ○古川政府委員 水道水中に多量のアスベストの繊維が見つかっておる、繊維の長さは別にいたしまして。その由来はどこかということでございますが、先ほど御指摘調査におきましても、原水中からも、あるいは浄化されたところからも、あるいは水道の栓をひねったそうした末端からも同じように出ているわけでございます。したがいまして、それがどこからという決め手は今ございません。  先生指摘がございました、ダクタイル鋳鉄管のライニングのアスベストといいますかモルタルの点でございますが、これにつきましては、製造業者の方ではこれに石綿は混合していない、混ぜていない、こういうふうな回答でございます。そう言いましても、これはセメントを主体にしたものでありまして、そこにアスベスト繊維が混入される可能性なきにしもあらずでございます。そういうふうなことで、犯人が御指摘のダクタイル鋳鉄管ではないかというふうなことについては、もう少し実態を見なければわからない。
  244. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 業者の説明をうのみにするのではなくて、やはり科学的な治験に基づいてのお話というのが大事なわけでございまして、これは調査する必要があるのではないか、このように思いますけれども、どうですか。
  245. 古川武温

    ○古川政府委員 生活衛生行政、特に水の問題、毎日取り込むものでございますから、まさに委員指摘のように科学技術行政の最たるものでなければいけないと承知しております。委員の御指摘については、今後心してまいりたいと思っております。
  246. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 心してまいりたいというのは国会用語なんですね。もう少しはっきり、調査するとかしないとかわかりやすい表現で御答弁を願いたいのですけれどもね。
  247. 古川武温

    ○古川政府委員 端的に答弁しろときついお話でございます。ダクタイル鋳鉄管のライニングに使いましたモルタルについてさらに調査をしてまいります。
  248. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 これはことしの二月一日でございますが、都道府県等に対しまして「建築物内に使用されているアスベストに係る当面の対策について」という通知を出されていますね。ここで私、問題だと思いましたのは、アスベスト対策フローチャートというのがあるわけでございますが、対策について三つの方法がある。一つは除去することだ、もう一つは封じ込めることだ、あるいは囲い込むことだ。イエスかノーかできまして、このものについては除去する、あるいはこのものについては封じ込め、あるいは囲い込み、いわゆる管理、記録にとどめる。こういうふうなことを判断する方は、例えば保育所であれば保育所の管理責任者ということになりまして、アスベストの除去について専門家ではない方なんですね。これが果たして十分な判断ができるのかという心配があるわけでございますが、その点はどのように考えているわけですか。
  249. 古川武温

    ○古川政府委員 私どもの方が二月の初めに、各県あるいは業者等にこのことについて御通知、御指導申し上げた一番核心になるフローチャートについての御質問でございますが、その前に一言、その真意、どこに我々の心配があったかということを申し上げてから御答弁させていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。  まず今の、一番心配なものは何かということになりますと、やはり国際的にすべて合意されていることは吹きつけアスベストが一番心配だということ。その吹きつけアスベストも、吹きつけた後長年たちまして劣化したものがある。これが現下の最大の問題である、こういうふうなことでございます。そして、それについてはその場所、場所に適したいろいろな対応方法があるわけですが、それについては御指摘のように、日本において専門家は少のうございます。私どもから申し上げる専門家というのは、指を折る数もございません。そのようなことでございますから、一般的な各府県におきましても現場でその三つの方法、どれをとるかを決めていくというふうなことを簡単に判断していただくためのものが、実はこのフローチャートでございます。フローチャートにしても判断の基準は難しいじゃないかというふうなことで、そのフローチャートの各段階にまた注書きをしたりして努力しているところですが、そのような御指摘については確かにそのようなことがありますので、今後とも十分に指導を重ねてまいりたいと思います。  ただ、ここで敷衍させていただくならば、やはりこうした繊維が空中でどういうふうに浮遊していくか、それがどのくらいの期間浮遊しているか、そういうふうなことを考えますと、このアスベストを除去するということは大変な問題である。このことを十分注意してくれ、ここを一番注意してくれというねらいがこのチャートにあらわれているわけですので、御理解を賜りたいと思います。
  250. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 質問時間が参ったようでございますが、せっかく建設省にお越しいただいておりますので……。  このアスベストを適正に処理できる専門業者が今非常に少ないわけですね。その養成とか技術指導というのは建設省としてはどのように行っていくのか、御答弁を願いたいと思います。
  251. 立石真

    ○立石説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、アスベスト問題についての社会的関心が急激に増大しているわけでございますが、これを処理する側の体制、処理技術の確立の問題、また技術者や事業者の体制整備の問題、現在十分とは言えない状況にあるというように考えておるところでございます。  建設省といたしましては、これまでは特に技術面に着目いたしまして、吹きつけアスベストの除去する工法等につきまして、民間の関係団体の協力を得まして留意点をまとめまして、地方公共団体を通じて指導してきたところでございますが、現在さらに、例えばアスベストの劣化状況についての診断の技術あるいはまた除去工事等についての対応するための技術、そういうものについて体系的な検討を進めております。これらの結果をできるだけ早く取りまとめまして、関係機関、関係団体等と協力して適切な対応方法を指導してまいりたいというように考えております。
  252. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 質問を終わります。ありがとうございました。
  253. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて遠藤和良君の質疑は終了いたしました。  次に、川端達夫君。
  254. 川端達夫

    川端分科員 どうも御苦労さんでございます。よろしくお願いします。  本格的な春になってまいりました。季節的にちょうど今卒業シーズンということで、あちこち卒業式の季節ですが、来週あるいは四月になりますと、社会人一年生ということで世の中に、実社会に巣立つ人が数多く出てくるわけです。  昨今の、特にことしの就職状況なんかを見ますと、いわゆる雇用機会均等法が施行されたというふうな影響がいろいろな面で非常に出ている、効果としてもあらわれているということで、やはりそういう男女雇用機会均等というふうな考え方というものが浸透してきたなというふうに思いますし、きょうも女性の方、来ていただきまして非常にうれしいのですが、特に最近の女性の社会進出というのは非常に顕著になってきている。結構なことだと思うのですが、客観的にはまだまだ女性に対する不平等あるいは社会的な障壁、習慣等々数多くあって、社会的な女性、婦人の地位向上というのが努力さるべきだというふうに考えているわけです。  そういう日本社会の中、今、時の流れの中で、女性に対して福祉の手を差し伸べようというふうな観点あるいはその他いろいろあるのですけれども、そういう中で母子寡婦福祉法あるいはそれと関連が非常に強い児童扶養手当法というふうなものがあり、非常に有効な機能を発揮しているということで評価をしているわけですけれども、この法律自体は、児童扶養手当法は昭和三十六年あるいは母子寡婦福祉法はスタートは昭和三十九年ということで相当の年月を経ております。制定された当時の社会情勢と今日の社会情勢、環境というのは大きく変化をしているのではないかなというふうに考えるわけですが、この法律の持っている、果たしている機能、使命というものと、それのバックグラウンドとなる理念というようなもの、ちょっと抽象的なんですけれども、お答えをいただきたいというふうに思います。
  255. 長尾立子

    ○長尾政府委員 先生から婦人の地位向上につきまして大変ありがたいお言葉をいただきまして、まずお礼を申し上げたいと思います。  私どもの所管をいたしております母子寡婦福祉法、児童扶養手当法、こういった母子家庭に対します法律基本的な理念はどういうところにあるのかという御質問かと思います。  先生指摘いただきましたように、女性の方の就業雇用促進法もできまして、いろいろな意味で改善が図られているわけでございますが、社会的に見ますと、やはり恵まれない面もまだ残っておるように思うわけでございます。  母子寡婦福祉法の理念は、法律の第一条にも書いてございますように、子供さんを抱えてその家庭の生活を支えていかなくてはならないという、社会的、経済的な意味で大変な御苦労を抱えておられるわけでございますので、そういった母子家庭の方の生活の安定と向上のための必要な措置を講ずるということを、基本的な理念として掲げておるというふうに理解をいたしております。
  256. 川端達夫

    川端分科員 おっしゃるように、幾ら最近女性の社会的進出が目覚ましいとはいえ、やはり母子家庭にとっては職業の問題、あるいはそれにも付随しますが、収入等々に大きなハンディキャップを背負わざるを得ない、あるいは家庭生活においてもいろいろな部分で精神的に支えが必要である。そういうようなことから、現実に今の時点でこの法律が果たしている機能というのは非常に大きいし、まだまだ充実していかなければならない。  そういうふうに考えてまた評価をしているわけですけれども、またおっしゃるようにそれが立法の趣旨の一つでもあるし、経緯としてはそうであったというふうに思うのですけれども、本来福祉のあり方というものを考えていった場合に、この問題が、経緯は別にして今果たしている役割というのは、母子家庭に限定をされて福祉をやっていくものではない機能を果たさなければならないときに来ているのではないだろうか。母子家庭じゃなくて、単身赴任じゃなくてシングルペアレント、いわゆる親御さんが一人であるという家庭の問題として考えるべき時代に来ているのではないだろうか。  終戦後には、非常に数多くの戦争未亡人がおられた。今ももちろんたくさんおられますし、そういう国の犠牲になった御家庭に対して生活を守り保障していくというふうな観点から、あるいは皆さん方の熱心な運動の中からこういう法律ができてきたという歴史的な経緯はあると思うのです。  例えば母子家庭の調査で、そういう母子家庭の発生した理由の中で、昭和二十七年には御主人が亡くなった、死別という方が八五%、そのうちでも戦争によって御主人が亡くなったという母子家庭が三八%、離別いわゆる離婚をしたというのが七・六%。それが、この法律ができた時点の昭和三十六年で見ますと、それでもやはり死別が七七%、離婚が一六・八%。ところが、昭和五十八年の厚生省調査では、死別は三六%で離婚が四九%というふうに、大きくさま変わりをしているわけです。  そういう社会的な環境の変化で今問題とすべきは、いわゆる単親家庭の生活を守り、経済的な自立を促進していくという観点で福祉を見ていくべきであって、その中の一つとして、いろいろな経緯の中で先行した法律として母子寡婦福祉法なり児童扶養手当法というのが位置づけされるべきではないかなというふうに考えるのですけれども、その点の御所見を賜りたいと思います。
  257. 長尾立子

    ○長尾政府委員 先生の御指摘は、現在、母子世帯という形でいろいろな福祉対策を講じておりますが、これをもう少し概念を広げて対策を考えていくべきではないかという御指摘かと思います。  もう一つの、いわば単親の世帯ということでは父子家庭があるわけでございますが、父子家庭につきましては、その実態がやや母子家庭とは異なっているのではないかというふうに認識をいたしておりまして、母子家庭におきます対策のすべてのものが父子家庭に必要な、また適切な対策であるかどうかということにつきましては、私どもも必ずしも適切なものばかりではない、父子家庭には父子家庭の問題として考えていかなくてはいけない問題があるのではないかというふうに思っておるわけでございまして、いわば単親家庭という観点から、こういった児童の養育に当たります家庭の問題を視野にとらえて福祉対策充実していけという御指摘は、そのとおりと思うわけでございますが、同じような対策そのままが適切かどうかという点については、必ずしも先生のおっしゃるようには考えていないということでございます。
  258. 川端達夫

    川端分科員 昭和五十八年に全国母子世帯等の調査というのをおやりになった。これは五年ごとにずっとやられていて、ちょうど直近が五十八年だったというふうに理解をしているわけですけれども、このたぐいの調査としては初めてこの時点で父子家庭の調査も含めて実施をされているわけです。特に父子家庭をお入れになったという部分で、この調査結果について、調査の目的と、その父子を含められた理由、それからそういうことで対比する中で、結果としてどう分析し、問題把握をしておられるのか。それから約四年、五十八年夏に調査が報告されてから約四年を経過しておるわけですけれども、その間に分析され、問題把握をされた中でどういうふうな手を打たれてきたのかということについてお尋ねをしたいと思います。
  259. 長尾立子

    ○長尾政府委員 この父子世帯の調査をいたしましたのは、先生指摘のように昭和五十八年が初めてでございますが、この調査に着手いたしましたのは、先ほど来に申し上げますように、やはり児童家庭局といたしましても、父子の問題を施策の中に取り上げていかなくてはいけないという問題認識があったことは事実でございます。  この調査結果の内容について申し上げますが、全体といたしまして所得のレベルは、一般の世帯に比べますと確かに低いということが言えるかと思います。五十七年の年間収入で見まして、世帯平均で二百九十九万円と大体三百万円程度でございまして、これは一般家庭の場合と比べますと、一般家庭がこの時点で四百四十四万円というふうに理解をいたしておりますので、低いと思います。  しかし、その家庭の父親の一番困っているということについての意識の面で見ますと、一番困っているということの答えは、家事の問題が五四・〇%、子供についてのしつけの問題、これが三〇・八%ということで大変多いということが言えるように思うわけでございます。それで、その父子家庭につきましては、今言いましたような状況にかんがみますと、私どもは経済的な問題、もちろんこれもあるとは思うのでございますけれども、家事や育児面の問題が一番困難を感じておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  父子家庭のこういったニードに対しまして、どういうふうに対応していくかという方法論でございますが、これはなかなかに難しい問題があると思うのでございますが、第一点は子供の養育の問題でございます。この場合、お父様がほとんど就業しておられますので、この間、子供さんの面倒をどういう形で見ていくかということがあるわけでございますので、保育所に対します優先的な入所というようなことを勧奨いたしましたこと、それから必要な場合には養護施設におきまして子供さんをお預かりするということも、対策として講じてきたわけでございます。  また、家事という点では、こういったお父様自身が何らかの形で病気になられましたときの対応というのが大変困られるわけでございますので、母子家庭について既にございました母子家庭の介護人派遣事業、これにつきまして、これを父子家庭にも拡大するという形で対応はいたしてきているわけでございます。
  260. 川端達夫

    川端分科員 確かにこの調査では、比較してみますと、世帯数では母子家庭が七十二万に対して父子家庭が十七万、約四・二倍というのですか、母子家庭の方が多い。しかし、平均的な年齢あるいは家族数あるいは就労率など、家庭の実態にはほとんど差がなくて、今局長がおっしゃったように顕著に差があるのは、私も分析してみますと二つだろう。一つは、おっしゃったように年収の問題ですね。母子家庭が平均二百万に対して二百九十九万、約一・五倍の収入がある。一方、困っていることは、母子家庭の場合は、家計が困っていますというのが三九%、仕事のことあるいは住居のことというのは二〇%台。父子家庭の場合は、家事に困っていますというのが五四%とダントツに多い。  家事はだれがするのかという場合に、母子家庭の場合はお母さんが八二%やりますというのですが、お父さんは三四%、その他が三六%というのは、恐らくおばあちゃんであるとか身内の方、多分女性だろうというふうに推測するわけです。そういう意味では、経済的には母子家庭の方に福祉の面ではウエートをかけなければいけない、日々の家庭日常生活というのでは、父子という部分に注意を払わなければいけないということはそうだと思うのです。  その中で、今おっしゃったように、母子家庭に関しては児童扶養手当法あるいは母子福祉法など、いろいろな法的なバックアップがある。経済的な面でいいますと、例えば御主人が亡くなった場合ですと、ほとんどの場合は御主人が国民年金保険あるいは厚生年金保険に入っておられるということで、母子年金、母子福祉年金、遺族年金等々の対象になる。それから、お子さんがおられるということで、児童扶養手当あるいは母子福祉資金の貸し付けがある、生活保護の母子加算がある等々でバックアップする。職業の面でも、もともと仕事についていない専業の方が母子家庭になられた場合のことを考えて、いろいろな母子福祉資金の貸出制度がある。あるいは公共施設内でいろいろな営業ができるように配慮しましょう、あるいはたばこのお店を開くのだったら優先的に考えましょう、あるいは住宅の問題、教育の奨学資金の貸し付け、生活相談、母子相談員を置こう、いろいろと配慮されておる。長年の御努力の結果だというふうにも思うのです。  一方、父子家庭を見ると、ほとんど何もないと言ってもいいんじゃないかなと思うわけです。これは冒頭言いましたけれども、母子という視点で今までの機能というのは十分評価をするのですけれども、先ほどの調査結果で、いわゆる単親という見方で余り見ていただいていないな、父子というものがかなり置き去りにされておるのじゃないかな。昔のというのは語弊があるかもしれませんが、今までどちらかというと、日本社会の中では両親がいて子供がいるという家庭が健全というか正常な家庭であって、片方の親がいろいろな理由でいなくなる、要するに親が一人になるという部分は、正常でない家庭であるというふうなことが昔は言われたと思うのですね。今の時点では、そうじゃなくて、そういう片親、いわゆる単親の家庭であっても、その家庭で本来の家庭生活を営む権利もあるし、福祉を受ける権利もあると思うのです。男性が家事ができない、例えば不幸なことに奥さんがお亡くなりになったあるいは離婚をした、そして子供を抱えているというときには、いろいろな例を聞くのですけれども、いろいろな相談に行きますと、後また奥さんをもらいなさいよというふうに御指導される方が非常に多い。しかし、考えれば、それは両親がいるのが普通であって、奥さんがいないのは普通でないんだというふうに勘ぐれば考えられるが、それはおかしいのじゃないかなと私は思います。  そういう中で、例えば具体的に、先ほど収入の面では父子家庭は二百九十九万、母子家庭は二百万、こういうことを言われました。平均的には確かにおっしゃるとおりです。しかし、今年度の予算の原案では、児童扶養手当は年収三百二十万八千円を上限として、それ以下の方には月額三万四千円の児童扶養手当を支給しましょう、母子だけですと。五十八年の調査で、この年収、切りますと三百万以下の母子家庭は全体の母子家庭の八一%あるわけですね。ですから、ほとんどの方が受けられる。父子家庭は、確かに平均は二百九十九万だけれども、年収三百万以下の人が五四%おられる。ということは経済的に、平均的には男性の方が高いけれども、実際に低所得者の方もおられるわけです。そういう人が今は無情にも切り捨てられるというか、同じような福祉は受けられないという形になっているわけです。  例えば、一番経済的に厳しいということでいいますと、生活保護世帯。これは、いろんな事情で仕事ができないという場合に生活保護をもらう。そのときに、母子加算は、一万九千円プラスいろんな条件がありますけれども、まあ一万九千円プラスアルファぐらいあるわけです。しかし、お父さんと子供さんで、いろんな事情で生活保護を受けた場合にはそういうものはないというのは、これはどういうふうに考えておられるのか、どういうふうに説明されるのか。同一所得水準においては、同一の保障というものがあってしかるべきではないかというふうに考えるのですけれども、いかがでしょうか。
  261. 長尾立子

    ○長尾政府委員 これは我が国に限りませんで、いわば母子家庭の所得対策というものを考えていきますと、やはり一番中心になります例えば年金制度というものを考えましても、また経済的な自立のための職業訓練ということを考えましても、母子家庭に着目してやってきたというのが全体的な傾向ではないかと思います。それは全体としての母子家庭を見ますと、これは個々にもちろんいろいろ例外はあろうかと思いますけれども、経済的な意味で、自立して家計を支えていくことが困難なケースが非常に多いということに着目いたしまして、こういった対策をとってきたということが言えるのではないかと思います。  父子家庭の場合には、お父様の方が働かれまして家計を支えておられるというのが通常のケースでございますために、奥様が亡くなられたということだけをもちまして、その家庭に大きな経済的な危機が来るというふうな認識が伝統的にはなかったという経緯があろうかと思います。今先生が御指摘になりました、生活保護におきます母子加算または児童扶養手当といったものも、ある意味では我が国の社会保障全体の中で、例えば国民年金に死別の母子について母子年金、母子福祉年金が創設をされたけれども、離婚をした母子に対しては何らの手当がなかったというようなケース、生活保護を受けております母子家庭に対しても、こういった福祉年金制度の創設に伴う福祉の具体的な国の対策が及ぶようなことが必要だというような沿革、そういったものがあったことは事実だろうと思います。  では、今先生が御指摘のように、現時点に立ちまして、それでは父子家庭に対して何らか一律の経済的な所得対策というものが必要であるかどうかという問題になりますと、これは先ほど、私は冒頭に、父子家庭につきましては、やはり母子家庭とは違う観点の対策が必要ではないかと思っておるということを申し上げたわけでございますが、私は、経済的な意味におきますと、父子問題といいますよりも、父子家庭におきます低所得層の問題というふうに理解をいたしまして対策をとるということが、現実的ではないかというふうに考えております。もちろん、父子家庭におきまして低所得層の方が、先ほどの平均年収でございますので、おられることは当然でございますが、こういった方々には、例えば母子福祉貸付金と同様な意味の内容を持っております世帯更生資金というもので、低所得者層の対策は既にとられておるわけでございます。  こういった対策が低所得という観点に立ちまして、また家計を維持する上にお父様自体にいろいろ問題がありますケースにつきましては対応がとられておるわけでございますので、私ども児童家庭局の観点からいいますと、父子家庭の子供さんは、先生は、単親であるから子供が健全に育たないという偏見を持つべきではないという御指摘ではございますが、やはりお父さん、お母さんがそろわれて子供さんを育てるということが、ある意味では望ましいのではないかという考え方を持っておりますので、こういう観点では、父子家庭につきまして子供さんを健全に育てるということにおいて何らかお悩み、問題を抱えておるならば、その対策を講じていくということが我々の施策中心になるということを考えておるわけでございます。
  262. 川端達夫

    川端分科員 今までずっと、割に経済的なお話で御質問を申し上げたのですが、確かにおっしゃるように困っていることが家事である、こういうようなことが一番に出てくるということで、非常に問題が難しい。お金を出せばいいというのはちょっと変な言い方ですけれども、そういうものではなかなかカバーできない問題を非常に抱え過ぎている。特に父子の場合は、それが大きくなってきているというふうに思います。  本来、これは私が自分の身において考えるので間違っているかもしれませんが、大体家事は不得手であります。収入が多い、一・五倍あるということは、逆に言うと、やはり仕事での役割というのを非常に大きく結果的には果たしているという男性。仕事のウエートが生活では今まではやはり高かった。きのうみたいに急遽国会が正常化をするというと、夜中まで仕事で駆けずり回るという男性が非常に多かった、女性よりは多かったと思います、恐らく日本で、このかいわいでも。そういう中で、例えば家に帰って子供の御飯をつくり、ふろに入れてということをしなければならないということに現実に直面したらどうなるんだろうか。ということは、父子になれば仕事を相当犠牲にせざるを得ない、そうは言ってもという部分の葛藤というのは、随分あると思うのです。  そういう中で、例えば先ほど若干言葉として出てきました児童の養護施設というのがある。この内訳として、母子家庭から引き取ったというお子さんと、それから父子家庭から引き取った、両親ともお亡くなりになった、いろいろあると思うのですけれども、そういう実態というのはどういうふうに把握をしておられますか。
  263. 長尾立子

    ○長尾政府委員 養護児童の実態調査の数字を申し上げたいと思いますが、里親に委託しておりますケースについて見ますと、里親に委託前に実母と同居しておられた方というのが全体で見まして七・五%、実父のみとの同居が一四・三%でございます。この里親委託児の圧倒的な多数は、養護施設等に入っておられたお子さんが多いわけでございます。養護施設のお子さんで見ますと、父親と同居しておられた方が三六・二%、実母と同居しておられた方が一〇・二%でございます。確かに先生がおっしゃいましたように、父と同居していたケースが多いように思います。一番圧倒的に多いのは、乳児院等から養護施設に措置がえといいますか、そういう形になったお子さんが多いわけでございます。  乳児院でございますが、これは赤ちゃんでございますけれども、これで見ますと、実父のみとの同居三〇・四%、実母のみとの同居三七・九%という数になっておりまして、実は母と同居しておったケースの方が多いわけでございます。
  264. 川端達夫

    川端分科員 乳児院で二割ほど母子家庭の方が多い、ほかのケースでは大体倍から三倍くらい父子家庭の方が多いということなんですが、もともとの母子家庭と父子家庭の数は四倍以上違うわけですね。ノーマルな比率でいえば四分の一であって、比率的には同じというのが倍あるということは、父子家庭からそういう施設に、とてもじゃないが子供を育てられないということでお預けをされる方というのが倍あったということは、算数でいえば八倍の比率だということですね。そういうことでは、要するに父親が収入を得る仕事という部分と実際に家庭で子供を育てる部分、先ほど低所得者とおっしゃいましたけれども、必ずしもそういう部分だけじゃない部分、父子家庭の大きな問題がここにあるというように考えるわけです。  そのことに関して、政治といいますか、法律だけじゃなくて、いわゆる福祉施策としてどういうことができるんだろうかということを非常に考えるわけです。だから、経済的な側面で低所得者にはいわゆる低所得者としての施策があるとおっしゃいますけれども、やはりそれだけでは十分にカバーできないのではないかというふうに思います。精神的な部分のことでいえば、その部分は非常に大きなハンディを背負っているというふうに考えざるを得ないと思うのです。そういう意味で、例えば母子福祉団体というのがあって、各都道府県、市町村で非常に熱心に一生懸命活動されている。ちょっと調べたんですけれども、ある母子福祉団体でいろいろやはり母親と子供の触れ合いの場をということで、家庭のぬくもりということで、一年間に、母と子の運動会、母と子の憩いの家、母と子のクリスマス、おめでとう一年生の集い、母と子のハイキング、こう盛りだくさんにやっておられる。父と子はどこへ行ったんだろう。こうなるわけですね。そういう意味では、やはり行政としていろいろな角度から考えられた施策というものがもう少し具体的にあってもいいのではないだろうか。  地方の施策を調べますと、こういうものは都道府県でやりなさいとか、市町村云々というので貸付制度とか、ずっと母子及び寡婦福祉法で決めていますね。そういう中で、地方自治体がやはり福祉の問題も大変だということで、独自にいろいろやっておられる施策があるわけですね。むしろ、国を先取りしているのではないかというふうに思うのですけれども、この実態はどういうふうに考えておられるのかということ。もう時間が来てしまいましたけれども、そういう面ではむしろ地方の方が先取りをしている。本来望ましいのは、中央で法的な福祉の芽を、何も経済的なものだけじゃなくて——母子相談員というのは書いてあるおれども、父子相談員というのはない。それを地方自治体で特別に父子相談員を設置をしているということもありますけれども、そういうふうなこと等々に広く施策を講じるべきだというふうに思うわけです。  時間が来てしまいました。ことしですか、また実態調査をおやりになるということですけれども、そういうことで父子家庭が抱える問題、それが具体的に実を結ぶようなことを本腰を入れて御検討いただきたいということを切にお願いしますので、そのことに関しての大臣の御所見をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  265. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 段々のお話を承っておりまして、親としてはどちらも一人、しかし内容は相当違う、これはまさに男性と女性の違いかなと思いながら承っておったわけですが、制度として、その制度の中でどう対応するかというのはなかなか難しい点もあると思うのです。しかし、今後御意見のように、つまり所得は高いけれども家事とか教育に困っているというような点が中心であると思いますので、そういうニーズに具体的にこたえる方策として今幾つかお答え申し上げたわけですが、そういう方策をもっと有効に進めていくにはどうしたらいいだろうかというようなことも考えてみたいというふうに先ほどから考えておった次第でございまして、お答えといたします。
  266. 川端達夫

    川端分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
  267. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。  次に、松前仰君。
  268. 松前仰

    ○松前分科員 私は、大変地味な問題について質問をさせていただきたいと思います。  この問題は、すぐに解決するという代物ではないかもしれないけれども、とにかく非常に大きな問題でありますので、十分認識をしていただいて、厚生大臣のお考えといいますか、それをまとめていただいて今後に対処していただきたい、そのように考えておるわけでございます。  この問題は、社会福祉・医療事業団の貸し付けの問題でございますが、ある保育園の経営者からの訴えがあったわけなんです。この事業団のやっています貸し付けというのは非常にいい制度であって、大事であるということから始まっておるのでございます。男女雇用機会均等法等がありまして女性が社会に盛んに進出しておる、そしてまた、パートがいいか悪いかというのはまた問題があるかもしれないけれども、パートも今随分たくさん出ておる、そういう形で女性がどんどん社会に今進出をしてきているということになると、保育所というものがやはり非常に重要な位置を占めてくるわけでございます。  今現在は、民間の保育園等の入園は随分少ないと言われております。定員に満たないとか、そういうこともあるようでございます。現時点はそうかもしれない。しかし将来は、女性の進出、そしてまた核家族化が進行するということがありまして、こうなると家庭の養育機能、これはまた問題なんですが、そちらの方をしっかりすればいいわけなんですが、しかしながら養育機能が低下をすることもある。そうすると、どうしても保育園に預けておきたい、預けた方がいいということにもなる。それがいいか悪いかはまた別ですよ。それから保育内容が非常に多様化するであろう。というのは、女性の雇用機会がふえるということでございますから、乳児保育、赤ん坊のときからの保育が必要になってくる。それから障害児の方々の保育ということも出てくる。非常に高度化してくる。質問は非常に簡単でございますから、聞いておいていただければわかると思いますけれども、障害児保育などは非常に高度化するということでございます。そうなりますと、やはり保育園は将来非常に重要な位置を占めてくる。  それで、私の地元あたりでは、将来に備えて保育園をやりたいとか、この保育園の経営者はもうちょっと拡張したいということがありまして、それをやろうとして、やはりいろいろ資金を調達しなければいけないということになりまして、資金を調達する具体的な検討を始めた。そうしますと、補助は二分の一出る、県からも四分の一出る、こうなります。残りの部分についてお金を借りようと思って調べたら、社会福祉・医療事業団が貸しているのは前から知っていて調べました。そうしましたら、この金利が昔からほとんど変わってないということなんですね。これは高いじゃないか。  この方は、昭和四十五年にお金を借りたわけなんですけれども、厚生省のこのための金利が四・七%、そのときの市中金利はたしか八%ぐらいだったというわけです。これは厚生省福祉に対して非常に面倒見てくれているということで、非常に喜んで借りて保育園を始めたわけなんです。かの保育園は非常にはやっております。ところが、今現在も四・四%ぐらいですか、四・一だか四・四だかちょっとはっきりした数字はわかりませんけれども、大体その辺で、ほとんど変わってないのです。市中金利は随分変わっている。物すごく下がってきている。市中金利の方は下がっておりながら、この厚生省の管轄の貸付金利は下がっていない、ずっと同じような値だということで、大変魅力が減退をしてしまっておるというのがその方のお話でございます。この利子については、県から利子補給されるところもあるわけでして、私の静岡では建物には利子補給されるけれども土地はだめなんです。ですから、やはりその利子というものはかなり負担しなければいかぬということなんです。市中金利も下がるような今のこの時代で、福祉の貸付金利が硬直化しているじゃないか、厚生省もっとしっかり考えてもらえないだろうか、こういう訴えがあるわけでございます。この辺について厚生省はどう考えていらっしゃるのか、まずお答えをお伺いしたい。
  269. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先生も十分御承知の上での御質問だと思いますが、福祉貸し付けの金利につきましては、政策金融の観点から常に市中金利より低目の固定金利ということで設定しております。お話ございましたように、従来四・六%で長く続けてまいりましたけれども、最近の市中金利の低下を勘案いたしまして、ことしの二月から四・四に引き下げたわけでございます。ただ、昔に比べますと、おっしゃるとおり市中金利の方が下がってまいりましたので、その差が減ったことは事実でございますが、そういうことで市中金利も見ながら引き下げを図ったわけでございます。  また、もう一つ申し上げておきたいのは、金利面での配慮のほかに、例えば償還期間を最長二十年、無利子期間については最長二年という措置も講じておりまして、例えば緊急でかつ必要性の高い老朽民間施設、保育所も該当になりますけれども、そういったものの改築とか、あるいは最近やっておりますスプリンクラー整備というものにつきましては無利子という措置も講じておりますので、全体として見ますと政策金融としての意味があるのではないかというのが我々の考え方でございます。
  270. 松前仰

    ○松前分科員 全体としてはというお話でございましたけれども、前は市中金利八%、ここにデータもいただいておるわけですが、昭和四十五年あたりは長期プライムレートが八・五、貸し付けは五・一ですね。かなりの差がある。それがずっと来まして、昭和六十年ぐらいまではこの福祉貸し付けはかなり優遇したわけですね。ところが六十三年になりますと、プライムレートが五・五で福祉貸し付けが四・四、ほとんど差がないですね。市中の方はどんどん下がっておるということでございます。資金運用部の貸出金利もぐっと下がってきて五%ですね。全部下がってきている。資金運用部の貸出金利でさえも下がっているというような現状なんですね。それに比べて、この福祉貸し付けは全然——全然と言ったら語弊がありますが、変動がないという感じなのです。となると、かなりサボっているのではないかという感じがする。  大蔵省、この資金運用部の貸出金利は、いろいろ市中金利が自由になってきてかなり下がってくるということで、市中金利がこんなに下がったにもかかわらず政府ばかりおかしな金利では困るよということで、そこを勘案して、いろいろ考えられて、法令から政令に変えたとか、そういうことをやられたわけでしょう。政府の運用部のお金の貸し出しについてでさえ市中金利と合わせなければいかぬというお考えは持っておるわけでしょう。その辺も含めて福祉の方はどう考えるか、その辺をちょっとお願いします。
  271. 中島義雄

    ○中島説明員 政策金利についてのお尋ねでございますが、まず資金運用部の金利について一般的な考え方について申し上げますと、御指摘のように、市中の金利情勢になるべくこれを合わせるということが私どもとしては望ましいと考えております。しかしながら、他方、この資金運用部資金の原資を考えますと、これは国民の皆様からお預かりする郵便貯金あるいは年金の積立金でございます。したがいまして、郵便貯金の金利でございますとか、年金をお預かりするときの預託金の金利とか、こういったものも考慮に入れて決めませんとなかなか適切な水準が定まってこないということでございます。  現在、資金運用部貸付金利は五%でございまして、かつての六・五%に比べますと、市中金利の低下を反映してかなり低いものとなっておりますけれども、現時点においては、今申し上げました郵便貯金金利、それから年金の預託金金利などとのバランスから見て適切な水準ではないかと考えております。  ところで、福祉貸し付けの金利でございますが、先ほど社会局長からもお答え申し上げましたように、市中の長期プライムレートが五・五%、それから資金運用部貸付金利が五%というようなレベルと対比いたしますと、福祉貸し付けの四・四%というのは相当程度優遇された金利でございまして、政策の目的を十分果たしているのではないかと考えております。  ちなみに申し上げますと、先生お尋ねの昭和四十五年は資金運用部貸付金利が六・五%で、その折の福祉貸付金利が五・一一%でございましたから、その開差が一・四ポイントあったわけでございますけれども、今日、資金運用部貸付金利は五%、福祉貸付金利が四・四%ということで、その開差を考えますと〇・六でございますが、全体としての金利レベルがずっと下がってまいりました中でなおこれだけの開差を持ち得ているということについて、私どもなりの努力というものを御評価いただきたいと思います。  それから、申し上げるまでもありませんが、資金運用部金利と政策金利との差は財政資金で埋めておるわけでございます。この財政資金といいますのは、言うまでもなく税金でございますが、この福祉貸し付けに係る利子補給金は六十三年度予算で八十五億円でございまして、こういった税金の使い方あるいはその配分の仕方ということも考えながら金利水準を設定していく必要があるわけでございまして、そういったものを総合的に考えますと、現在の金利水準については適切な金利ではないかと判断いたしておるところでございます。
  272. 松前仰

    ○松前分科員 昭和四十五年の例を出されてお話しされたので、今とは余り違わないみたいに思う人が多いのですけれども、昭和五十年は資金運用部資金の貸出金利というのは八%ですね。福祉は四・六%ですよ。これはかなりの差があるのですね。市中金利もこのときは九・九%ですから福祉はかなり優遇されておった。その時代から現在、十三年たったこの時点、物すごく福祉が後退しておるわけです。こういうものを見ますと、この面でも。しかも運用部資金の貸出金利、これは郵貯とか年金とかそういうものの金利を考えてと言われながらも一生懸命努力されて八%から五%まで下げたのですね。これは大蔵省としては珍しいことで、努力されているわけです。ところが、本来努力しなければいけない、本当に人間としてやらなければいけない人道的な面、福祉貸し付けというものはさっぱり努力の跡が見えないということです。これは昭和四十八年からずっと動いていない。ことし四・四です。四・六から四・四になったくらいですから、全然動いてないと見ていい。こんな調子です。それで利子補給をしている。それは一般会計から補給しているのでしょうけれども、その額をふやすことを厚生省がもうちょっとしっかりして要求してもらわなければ困ると思うのですが、厚生省はどう考えていますか。
  273. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先ほど申しましたように、確かに最近の市中金利の低下に伴いまして長期プライムレートあるいは資金運用部資金との差は縮んできているというのは事実でございますが、先ほど大蔵省の主計官もお話ししましたように、現在の段階でも一番低利のグループになっているわけでございまして、そういう意味では社会福祉の重要性は我々も十分念頭に置いていると御理解いただきたいと思います。
  274. 松前仰

    ○松前分科員 社会福祉の意味をなしているじゃないかと言うけれども、それならほかの金利をどんどん下げているのは何なんだと言いたいのです。それで民活なんというと無利子融資がどんどん出ている。ところが、ここはこういうぐあいに無利子はほんのわずかの期間という格好になっている。福祉をとにかく切っている。私らそういう言葉で言うけれども、そういう形になっているのです。  それだけ言っていると、大きな話だからどうしようもないんで、お聞きしますが、社会福祉・医療事業団の貸付金利はどうやって決めていくのですか。どういうシステムで決まっていくのですか。
  275. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 福祉貸し付けの金利でございますが、社会福祉・医療事業団の業務方法書において定められております。その業務方法書の作成、変更は事業団が厚生大臣の認可を受けて行うという手続になっております。なお、厚生大臣がその認可を行おうとするときには大蔵大臣に協議をするというシステムで決めているわけでございます。
  276. 松前仰

    ○松前分科員 そうしますと、法令でもない、政令でもない、こういう形でかなり自由に決められる。自由というか厚生省の考え方で決めていけるということなんですか。それとも大蔵省のひもつきが物すごくあるということですか。どっちですか。
  277. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 業務方法書で決めるという意味では、御指摘のとおりの面もございますけれども、先ほどお答えもありましたように、利子補給金の問題がございますので、予算の制約があるということはございます。それからもう一つは、大蔵省に協議する場合に、各種の公的な政策金融のバランスと申しますか、そういうものも考慮に入れられるのではないかと思います。
  278. 松前仰

    ○松前分科員 かなり自由に厚生省が主体的に決めることができるものだと私は感じたわけでございまして、そういう意味からいうと、この金利の動きをずっと並べてみますと、厚生省努力不足ということがどうしても見えてしまう、きっとそれを認めないでしょうけれども。だけれども、数字を見ればわかるのですよ、全然動いてないのだから。資金運用部貸出金利は六・五%から五十年に八%になって、六十三年は五%です。長期プライムレートは四十一年八・四から五十年九・九になって、六十三年五・五と大きく変動している。福祉貸し付けは五・一から四・四、この間しか動いていない。そこから飛び出しもしていないということでありますから、福祉だからこうやって安定した形にしなさいという話もあろうかと思いますけれども、しかし現時点ではもっと下げてもいいじゃないかということが感じられるわけなんですね。ですから、その辺いろいろ絡みがあろうかと思います、大蔵省と金利の補てんとか。そういう感じであろうと思いますので、どうか厚生省の力といいますか、これを見せていただく、福祉に対する姿勢をここで見せていただくようなことをこれから考えていただきたい。ここで金利を下げろと言ったって下がりっこないのでありますから、そういう点があるということ。恐らく余りこの辺を問題にした人はいないだろうと思います。ただ、保育園やら福祉施設やらをやっていこうとする人にとっては大変な問題なのです。この人たちは何も利益を追求してやるわけじゃないのですね。本当に困っている人たちを救おうという真剣な気持ち、これでもってやろうとしているわけですから、その人たちが本当にこういう仕事ができるように、政府だって県だってやってもらうということは得するわけですよね。得するというか、財政にとっては、その人たちに任した方がいいということもあるわけなんですから、そういう点を勘案して考えてもらいたいな、そういうふうに思うのです。  それで、もう一つ、資金運用部資金というのは、大蔵省入ってきておりますけれども、こういう福祉については、金利等につきまして変えようということになると、やはりどうしても大蔵省との関係が出てくるということになって、郵貯とか年金とか郵便年金とか、こういうものについて地方還流、我々が言っている言葉ですが、要するに、直接地方へ使ってもらうという財投ですね、地方財投といいますか、そういう形になった方が直接市民との間のやりとりという形になるので、金利についても適切な金利をつけることができるのじゃないか、そんな感じがするのですよ。それは検討をがっちりしないといけないと思いますが、その辺、感じとしてちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  279. 中島義雄

    ○中島説明員 大変大きな問題についての御意見を賜ったわけでございますが、金融は、政府のやっております政策的な金融と民間の金融と一つの秩序と申しますか、そういった形の中で流れているものでございまして、余り極端な事情変更をいたしますと、どうしてもひずみが出てきたりしわ寄せが出てきたりというようなことがございます。そういったことも十分見きわめながら、国民の皆様からお預かりした資金を一番うまく生かす方法は何かというような観点を総合的に検討いたしまして、今御提示のありました大きなテーマについて研究を進めてまいりたいと考えております。
  280. 松前仰

    ○松前分科員 一つ保育所の建物、土地、それを買うとか建てるとかということを考えていっただけでも、こういうふうにもう大蔵省まで引っ張り出さなければいけない。大変申しわけないのですけれども、そこまでいかなければいけない。そして結局は、何のことはない全然高い金利で、高いといってもほかより安いと言われればそれまでですけれども、余り動いていない、努力の跡の見えない金利を使わざるを得ない、こういうことになってしまうということなのです。やはりすぐ大きくなって解決しないのでありますけれども、しかし、こういうのはやはり頭の中へ入れておいて、これからの厚生省の行政に生かしていっていただきたいと思うわけなんですね。もっと私も勉強しなければわからぬですけれども、さらにこれから勉強して、この問題は広がりが大きいでしょうから、いろいろ御意見を申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。  きょうは大体そのぐらいにしてやめさせてもらいたいと思いますが、最後に、厚生大臣、大きな問題についていろいろしょっちゅう取り扱ってきていらっしゃいますので、この問題についての御所見をちょっとお伺いしたいと思います。
  281. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 確かに御指摘のように社会福祉施設の運営をされておられる方は、福祉向上のために利潤、利益ということを度外視してやられておるわけでございますから、そういう方々が施設を整備したり運営をしたりすることについては十分に配慮をしていくべきだという御指摘については、私も全く同感でございます。  それから、貸付条件につきましては、一般的に他の金利と比べてみますと、確かに償還期間が長いとか金利が低いとか優遇されておりますけれども、過去にさかのぼってみると問題があるではないかという御指摘も、私なりに拝聴させていただいたわけでございます。  そこで、我々としても、今後さらにこういった社会福祉施設の運営が、その運営をされている方々の努力が十分に報われるように総合的にいろいろと配慮してまいらなければならぬと考えておるわけでございまして、金利等の貸付条件につきましても、今後一生懸命に努力をいたしてまいりたい、かように考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  282. 松前仰

    ○松前分科員 終わります。ありがとうございました。
  283. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて松前仰君の質疑は終了いたしました。  次に、田口健二君。
  284. 田口健二

    田口分科員 私は同和問題を中心にして幾つか厚生省の見解をお伺いいたしたいと思います。  昭和四十年八月に同和対策審議会の答申が出されまして、これを受けて同和対策事業特別措置法が施行されました。引き続いて地域改善対策特別措置法、さらにまた、昨年の四月からは地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律が施行されておるわけでありますが、この十八年間にわたって同和対策事業というものが実施をされてまいりました。  私はこの同和問題の解決には同和地区住民生活の安定向上福祉増進が極めて重要であるというふうに思っています。そういう意味では厚生省が果たす役割もまた大変大きいというふうに思いますが、この点についての厚生省の御認識についてまずお伺いをいたしたいし、同時に、今日までの十八年間、生活の安定向上福祉増進という観点から見た場合に、一体これがどの程度達成をされておるというふうにお考えになっておられるか、この辺の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  285. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 お話がございましたように、同和問題というのは大変重要な問題でございます。その問題の解決のためには、同和地区住民生活の安定向上福祉増進がとりわけ重要である、この点も御指摘のとおりだと思っております。  厚生省といたしましては、昭和四十四年の同和対策事業特別措置法以降、お話にございましたように、十八年間の成果を踏まえまして、六十二年三月に制定されました地対財特法に基づきまして、具体的に言いますと、地域生活環境の改善、経済向上等を図るために必要な地区道路あるいは下水、排水路、さらには共同作業場等の整備などの事業の重点実施努力してまいったところでございます。したがいまして、今後ともこの地対財特法の期限内での事業完遂ということを目指して努力をしてまいるつもりでございます。  次に、この十八年間にわたっての生活の安定向上福祉増進の観点からどの程度達成されたかという第二番目の御質問でございますが、厚生省は、昭和二十八年に隣保館の整備費を初めて予算計上いたしまして以来、地区道路、下水、排水路等逐次その対象事業を拡大し、生活環境の改善に努めてきたところでございます。これによりまして、生活環境面におきましては相当程度改善されてきているという認識を持っております。これは六十一年十二月の地対協の意見具申にも同趣旨のことが述べられております。我々も同様の認識でございます。しかし、なお必要な事業がまだ残っているということも事実でございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、今後とも早期実現に向かって努力をしたいということでございます。  生活の安定向上を図るという意味ではいろいろな施策がございますけれども、例えば教育、就労等も重要でございます。この辺は、第一義的には関係の省庁でやるべきだと思いますけれども、厚生省といたしましても、その経済的対策としまして、先生御案内の共同作業場の整備といったものについて安定向上を図っていきたいということでやっております。
  286. 田口健二

    田口分科員 同和地区の中には、いわゆる未指定地区というのがまだかなり存在をしておるというふうに言われています。私もまだ詳しい実数は把握をしておりませんが、全国でもまだ二千カ所くらい未指定地区があるのではないか、こういう話もあるわけであります。とりわけ本年一月二十六日に新潟の神林裁判で、未指定を理由に事業拒否をするのは憲法違反であるという裁判所の判決が下されているわけです。  こういう点について、この未指定の問題を含めて、厚生省としてはどういうお考えを持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  287. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 いわゆる未指定地区の問題でございますが、これは地対財特法の成立の過程におきましてもいろいろ議論があったと聞いております。いろいろございましたけれども、最終的には、既に確認されている対象地域について昭和六十年以降も引き続き実施することが特に必要と認められる事業を処理するための最終の特別法という形で立法をされたわけでございますから、厚生省としては、この事業の早期完遂に努めるという方向で努力をしていくという方針でございます。
  288. 田口健二

    田口分科員 ちょっと今の答弁、私としては不満足なんですが、時間の関係もありますので、次に行きます。  先ほども申し上げましたように、同和対策事業が実施をされて十八年経過をしているわけですね。この事業の結果、今もちょっとお答えがありましたが、部落の環境改善という分野ではかなり大きな力を発揮したのではないかというふうに思います。道路であるとか下水、排水あるいは住宅、各種公共施設、こういうものなどは、前から比べますと随分大きく変貌してきておるというふうにも私は思っています。  しかし、問題は、そこで生活をしておる住民の方の生活水準は決して改善をされたとは言えないのではないかというふうに思うわけであります。そのあかしの一つが、従来と変わらない高い受給率を保ち続ける生活保護の問題であります。  一九八五年に総務庁調査をした中身でありますが、生活保護世帯を含めた住民税非課税世帯の割合というものを見てみますと、一九七一年で二〇・四%、一九七五年で二〇・五%、一九八五年で二一・八%でありますから、ほとんどこれは変わってないのですね。また、一九八五年における国民生活実態調査の中では一一%という数字があります。ですから、率としても非常に高いし、一般との格差も極めて大きいのが今日の現状ですね。ですから、こういう点から見て、地区住民の生活の安定向上福祉増進というのはまだまだ多くの問題を抱えておると私は思うわけです。  確かに住民の不安定な生活を救済するために、生活保護というのは非常に重要な役割を果たしておることはもう間違いがないと思います。ただ、ここで問題になるのは、被保護者の職業的な自立を保障していく。そういうために、今もちょっとお答えがありましたけれども、教育の保障の問題あるいは職業的技能の保障の問題、能力開発の問題、健康保障の問題、こういうものをもっともっと強化をしていかなければならないというふうに考えるのですが、地対財特法の中で見ていきますと、どうもそのことがやや後退をしておるかのような感じも率直に言って持つわけですね。  まず、この辺についての厚生省の御見解を伺いたいと思います。
  289. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先生にもお認めいただきましたように、この十八年間の成果といたしまして、生活環境部門の改善状況というのは一応かなり成果を上げている。ただ、残された問題もあることも、先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、したがって、そういう残された事業について、これから地対財特法の法律の期限内に全力を挙げて完遂するということでやってまいりたいと思っているわけでございます。  それから、具体的なお話でございまして、就労あるいは教育といった問題、これは確かにこれからさらに推進すべき大きな課題の一つだと考えております。これにつきましては、先ほどもちょっと私、答弁で触れましたけれども、第一義的には労働行政なり文部行政といった面でその充実に努める必要がある部門だろうと思いますけれども、厚生省といたしましても、これは重大な関心を持っております。  一つは、被保護者が職業に従事して自立した生活を送ることを助けるために、これからも被保護者の状況を的確に把握した上で、適切にケースワークを実施するということによりまして、いろいろなこれらの施策が十分に有機的に生きる、そういった面の努力をこれから続けたいというのが一つ。  もう一つは、具体的に厚生省独自の施策でございますが、例えば体力がない等の理由によりまして働いていない被保護者に対しまして、いわば体ならしと申しますか、あるいは職場適応訓練と申しますか、そういったものを行うことを目的といたしました勤労意欲助長事業というのを現在やっておりまして、これをこれからも大いに進めたいということ。  それから、これは先生も十分御承知ですが、対象地域住民の経済向上を図るという施策の一つとしまして、就労の場の提供等を目的としました共同作業場、これは非常に関係者からも要望が高いわけでございますので、そういったものの設置を推進する、こういうことでこれからもその充実努力をしていきたいというふうに考えております。
  290. 田口健二

    田口分科員 今お答えがありましたように、確かに縦割りで眺めてまいりますと、文部省の問題あるいは労働省、それぞれ関係する省庁があるわけですけれども、私が冒頭申し上げましたように、同和問題の解決ということについては、地区住民の生活の安定、あるいは福祉増進、これがなければ基本的な解決にはなかなかなっていかない。そういう点では、やはり厚生省が持っておる役割というのは極めて大きいということを冒頭申し上げたのですが、そういう立場からぜひとも今後この問題については積極的に取り組んでいただきたい、これは要望として申し上げておきたいと思います。  そこで、この問題の最後でありますが、大臣にぜひ所見をお伺いいたしたいと思います。  今後の同和対策を進めていく上で、やはり実態というものを正しく把握することが必要であると私は思います。そういう意味で、ぜひ厚生大臣として部落の視察を行っていただきたい。そのことについてどのようにお考えでいらっしゃるか、まずお伺いをしたいと思いますし、とりわけその中で、先ほどちょっと答弁の中でありましたけれども、やはり未指定地区についても実態を知っていただくために、そのことも含めてぜひ視察をしていただきたいというふうに思うのですが、この点について大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  291. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 同和問題につきましては、極めて重要な問題であると私も認識しておりますし、私の選挙区にも何カ所かございまして、選挙の関係もございまして、よく訪問した経験を持っております。  この十年間ぐらい、考えてみますと環境は非常によくなってきた。例えば住宅が建てかえられたり道路が整備されたり、随分よくなってきておることを実感として感じております。また職業の点についても、いろいろ手広く商売されておる方もいらっしゃるし、そういう点については喜んでおるわけでございます。  しかし、百聞は一見にしかずという言葉もございまして、御指摘のように、実情、実態を知る必要があるということについては、私もそのとおりだと思いますし、また私なりに自分の選挙区でそういう経験がございますから、知っておるつもりでございます。  なお、今後の問題につきましては、先ほど来政府委員から御答弁いたしておりますように、残されている問題も多いわけでございますので、そういう点につきましては、これから力を入れて解決してまいりたい、かように考えております。
  292. 田口健二

    田口分科員 そこで、同和関係の問題は一応これで終わりまして、あと一点お尋ねをいたしたいと思います。  通所授産施設の措置費並びに補助金の問題についてお尋ねをいたしますが、同時にこのことはぜひともひとつ御検討いただきたいと思うのであります。  通所授産施設というのは、日常雇用がなかなか困難な人々が何がしかの収入を求めて働く場所でもありますし、また障害者の方に働く喜びを与える場所でもあるわけでありますが、収容施設と違いまして、この通所施設の場合には衣食住がすべて自前であります。ところが、この身障通所施設につきましては、他の施設に比較をいたしまして、補助金、措置費の中で私は随分差があるような気がしてならないのであります。例えば精薄通所施設、これは三十名を一つの基準だと思っていますが、これに対して事務費が一人当たり月額十万二百七十五円出ている。事業費が一万三千九百五十円出されておる。また暖房費として、これは十月から三月までだそうでございますが、一人百五十円出されておる。ところが身障者の通所施設につきましては、事務費は一人当たり月額七万八百五十円、事業費ゼロであります。暖房費もゼロであります。また身障者の収容と通所の併設施設の場合を見ましても、事務費で四万八千四百円、事業費が一万五千四百円、暖房費は、これは収容施設と一緒でありますから、特にないのであります。こういう差が出てきているわけですね。  そういう意味では、今日費用徴収の問題も出てまいっておりますが、身障者通所施設の利用者やあるいはそこに働いておる人々、職員に大変なしわ寄せが来ている。多くの人が、せめて精薄通所施設と同じくらいの事業費、まあ事業費は全然出ていないのですから、事業費を出していただきたい、こういう強い要望を持っておりますが、これについてなぜこんなに差があるのか、あるいは今後の考え方についてはどういうお考えを持っておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  293. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 措置費の内訳の話になりますので、若干細かくて恐縮でございますが、つまり事業費と申しますのは、俗に言えば食費でございます。それについて、精薄の通所施設と身体障害者の通所施設で差があるのはなぜか、こういう御質問と理解いたしましてお答えいたします。  結局、施設の相違というふうに一言で言えば言えるわけでございますが、精薄の通所授産施設につきましては、生活指導という面とそれから作業指導という面の二つの面をあわせ持っているわけでございます。したがいまして、食事をとることもいわば生活指導の訓練の一環という考え方が昔からございます。そういうことから施設における全員給食制というのをとっていまして、そのための事業費が出ている。これに対しまして、身体障害者の通所授産施設の方につきましては、いわば必要な訓練を行うこと、それから職業を与えて自立をしていただく、こういった面でございますので、食事代というのはいわば自主的にやっていただく、こういうのが昔からの考え方でございまして、いわば両施設の性格の違いというのがここにあらわれているというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。  ただ、来年度予算から、例えば身障通所授産施設につきましては、精薄授産施設にないような経費も新たに計上しております。例えば更生訓練費でありますとか就職支度金の支給、こういったことをやっておりますので、全体として見ると、私どもは一応バランスはとれているんじゃないかと考えておる次第でございます。
  294. 田口健二

    田口分科員 私は少し機械的過ぎるんじゃないかという感じがするんですね、現実にそこを利用されておられる方あるいはそこで働いておられる方の立場に立ってみますと。  それで、収容施設の場合は、通所と併設をしておる場合には通所の方もそこで事業費が出ている。いわゆる食費が出ているんですよ。ところが通所だけの施設だったら事業費、いわゆる食費もないわけです。それは確かに収容施設の中で分けるというのは、差別はできませんよね。それはわかりますよ。しかし、そういうものと比較をすると、私は何か通所施設を、差別とまでは言いませんけれども、少し差があり過ぎるんではないかというふうに考えるのです。これはもう今ここで言ってもなかなか即答はできないと思いますから、今局長の方からも来年度予算についての幾つかの問題点も出されましたので、ぜひそういう点について積極的に取り組んでいただくように要望をいたしまして、若干時間がありますけれども、協力して、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  295. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて田口健二君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  296. 草川昭三

    草川分科員 草川昭三でございます。  まず最初に、長寿科学研究組織の問題について二問御質問したいと思います。  高齢化社会を迎えて、我々も年金、医療あるいは経済社会全体に総合的な対応を立てなければいけないわけでございますけれども、特に、明るくて健やかな長寿社会を築く、こういう基礎の研究体制の整備が重要ではないかと思うのでございますが、当局の見解をお願いしたいと思います。
  297. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 御指摘のように、私どもも高齢化社会を迎えまして、明るく健康な長寿社会を築くためにはどうしても長寿科学の振興を図っていくことが重要な課題だと認識をいたしておる次第でございます。そのため学識経験者から成ります検討会をずっと開催をしてきたところでございまして、その報告が長寿科学研究センター、仮称でございますが、その基本構想として昨年九月に取りまとめられたところでございます。現在、厚生省といたしましては、この基本構想の具体化に向けまして、実務的に省内で検討を進めているという段階でございます。
  298. 草川昭三

    草川分科員 愛知県は高齢化社会対策として老人総合施設の「あいち健康の森」構想を熱心に打ち出しておるわけであります。この中には、老人の専門的なリフレッシュセンターだとか高度専門病院とか老年学研究所、いろんな総合的な大きな森をつくろうではないか、こういう構想を打ち上げておるわけでありますが、長寿科学研究センターを愛知県に設置をする考え方を我々は熱意を持って誘致をしたいと思っておるのですが、その点について大臣の見解を賜りたいと思います。
  299. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 内容につきましては、今黒木審議官からお答えしたとおりでございます。  実は、この長寿科学研究センターは、私が大臣に就任いたしまして最初に陳情を受けましたのがこの件でございました。愛知県にぜひ誘致をしたいからよろしくというお話でございました。非常に御熱心だということをよく承知いたしております。なお、その他数カ所からそういう陳情もございました。我々としては、今黒木審議官から申しましたように、基本構想の段階でございますので、今後そういう検討を進めていく中で十分に考えてまいりたい、そういうふうに考えております。
  300. 草川昭三

    草川分科員 ぜひよろしくお願い申し上げたいわけでございます。  第二番目に、実はエイズ問題を今度の予算委員会でもあるいはまた前回の一般質問でも私は取り上げたわけでございますが、非常に重大な問題になってきておりますので、続いて御質問したいと思うのです。  三月五日の報道によりますと、厚生省エイズ対策専門家会議委員長でエイズサーベイランスの塩川委員長が「財団法人「日本熱帯医学協会」の保存していた在外邦人八百六十三人分の健康診断用血清を本人たちに無断で流用、エイズの感染検査をした」という報道が出ておるわけであります。実はこれはWHOの勧告を無視した行為ではないかということが報道されております。  そこで、私は実は厚生省北対して、この問題はWHOの勧告に違反するのかどうか、こういう問い合わせをしたわけであります。そうしたら厚生省の担当官がお見えになって、実はこれは問題ないんだ、WHOは勧告をしていない。いわゆるレポートはあるんだけれども、そのレポートの内容を見ると、「このような疫学調査は別の目的で集められた血清を用いて行われる場合もある。ただし、このような場合では、匿名であることと、個人を特定できるような一切の情報が秘匿されていることが条件となる。」という一九八七年、去年の五月二十日、二十一日のWHOの専門家委員会の報告書を私のところへ持ってきたわけです。ところが、実はこの報道が報じておるのは、WHOは六十年四月に米国で専門家会議を開いて、エイズ患者のプライバシー保護ということを中心にして無断検査を禁じておるという趣旨のことが書いてあるわけですから、私はこれは食い違うのではないかと言ったわけであります。ずれがあるわけですね。しかも厚生省が私のところへ持ってまいりましたWHO専門家委員会の報告の原文の中に抜けておる点があるわけであります。いわゆる「血清を用いて行われる場合もある。」と厚生省は訳してきたわけでありますけれども、ここの前に幾つかの国ではという言語が入っているわけであります。「イン・サム・カントリーズ」こういう言葉がありますから、幾つかの国ではそういう場合もあるという、この「イン・サム・カントリーズ」という言葉を抜かして、「行われる場合もある。」という訳を持ってきました。おかしいじゃないかというので議論をしまして、本日の午前中にまた厚生省の方は、直訳というので、そのことを含めて、私の指摘に応じて、「いくつかの国々では、このような疫学調査は、」という訳を持ってまいりまして、「匿名で、かつ、個人を特定できる情報につながるすべてが削除された、」という、そういう言葉を持ってきたわけであります。  しかし問題は、WHOは六十年四月に米国で専門家会議を開いておる。しかもその専門家会議に日本から厚生省の職員であられるところの北村予研部長が御出席になられまして、その北村部長も参加をなすって議論をなすっておみえになります。そのときのWHOの内容を、三十八人の専門家会議内容を、国立予防衛生研究所の部長である、ただいま申し上げた北村敬さんが朝日ソノラマにどういう議論をしたかということを文章で書いておみえになるわけであります。その文章の最後を見ると、「血清の採取と抗体検査は、本人の同意の上に行われなくてはならない。」本人の同意が必要であるという、そういうことを決めたんだよという報告をなすってみえる。これは日本語ですがね。そして「エイズ患者の個人情報に関して、秘密保持を優先させなくてはならない。」とも書いてあるわけですね。「本人の同意なしに行ってはならない。」と、昭和六十年五月でございます。このWHOの専門家会議、その前に三千人集会の大きな会議があり、その後の専門家会議、しかも厚生省が参加をなすってみえる、こういう経過があるのでございますけれども、そういう経過があるにもかかわらず、塩川委員長が在外邦人の血清というのを八百六十三人分、自分がデータをとって、そして学会で発表されるというのは、明らかにこの勧告を無視したことになるのではないかと私は思うのですが、一連の今の私が申し上げた経過、指摘を踏まえて厚生省の答弁をお願いしたい、こう思います。
  301. 北川定謙

    ○北川政府委員 まず、エイズの問題というのは、先生十分御承知のとおり、全世界を大変恐怖に陥れておると言うとちょっとオーバーでございますけれども、人類始まって以来の非常に大変な状況にあるわけでございます。こういうものに対応するためにはいろいろな情報を集めなければならない。そのためには疫学的な調査というものが非常に重要な意味を持つわけでありますけれども、WHOもそういうことに着目していろいろな場面で会議を持ち、それぞれの会議の結果を報告あるいはリコメンデーションというような形で発表しているわけでございます。  その間に、先生が今御指摘のように、私どもの方と先生の御指摘との間で二、三いろいろ食い違いがあったことは大変申しわけないわけでございますが、要するに、この問題というのは、こういうエイズという疾病の特殊性から、感染者あるいは患者のプライバシー保護ということを本当に慎重に考えていかなければならない、こういうことが一貫した流れであるわけでございます。  そういう観点に立って、今回の塩川名誉教授の研究について考えてみますと、塩川先生の研究がどういう形で行われたかということはまた別の議論としていただいて、こういうエイズに関する国際的ないろいろな疫学情報を集める、これは非常に重要な意味があるわけでございます。それから個人を特定できない形でデータを発表しているわけでございますし、それから検体の検査の過程でも個人の名前は消去をした格好で取り扱っておるわけでございまして、人権への配慮は十分に考えられておると私どもは考えておるわけでございます。  そういう状況でございますが、人権の問題というのは慎重の上にも慎重に考えていかなければいけない、こういうことで、WHO専門家委員会の勧告の趣旨の周知ということについては、厚生省としても、今後さらに努力を重ねていきたい、このように考えておるところでございます。
  302. 草川昭三

    草川分科員 個人を特定できる情報を削除する、あるいは人権を損なわない方法で果たしてやれるかどうか。例えば、今答弁がありましたけれども、塩川委員長がやられた外国の邦人の検査の場合でも、ビルマの例がありますけれども、ビルマは一カ国で四人ですよ。この四人が陰性ということになっておりますから、今回は問題がなかったわけですけれども、もしそうでないという場合だったら、四人だったらもうそれは特定できると同じですよ。そんなことを勝手に学会で発表されていくということは、今エイズ法案が問題になっておりますけれども、人権上の配慮というのは非常に問題があるわけですよ。特に日本の場合は血友病患者の方々が多いわけですからね、四割近い方々ですから。例えば、この永田町で我々が健康診断をした、その血清というものがどこかの大学の先生に使われた、こういう場合だってあるわけですよ、ひとり歩きをするわけですから。だから、今WHOの勧告の趣旨を周知徹底せしめると言いますが、これは大臣から答弁してもらいたいのですが、どこの研究機関でやるのか、きちっと大きな声で人権上の配慮ということをやっていただきませんと、学者ですから、研究したいわけですから、ひとり歩きしないように、本問題の処置のけりをつけていただきたい、このように思います。
  303. 北川定謙

    ○北川政府委員 エイズの問題について、現在私どもも専門家の先生方にお願いをして、いろいろな情報の整理あるいは情報の分配、こういうことをやっておるわけでございます。そういうルートを通じまして、今後そういう問題についても、当然のことながら委員会の中でも議論は重ねられておるわけでございますので、さらにその点について本日の議論も踏まえまして慎重に対応していきたい、このように考えております。
  304. 草川昭三

    草川分科員 大臣、慎重はいいのですけれども、この問題は本気でやりませんとエイズ法案に非常に影響を与えますから、今の程度の局長の答弁ではエイズ法案はうまくいきませんよ。大臣、一言答弁してください。
  305. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズ対策には幾つかの柱があるわけでございますけれども、その中の大きな柱として、患者、感染者のプライバシー、人権を守る、これは大きな柱であるわけでございますので、そういう点については十分に配慮が行き届くように私も考えてまいりたいと思います。
  306. 草川昭三

    草川分科員 では、次に副作用の問題に行きたいと思います。  時間がありませんので、簡潔に質問をしますが、エイズと肝炎というのはいずれも汚染した血液から感染する病気、こういうふうに我々は理解をするわけですが、二つの病気は感染経路が似ておるということも言えるわけです。この点について今度の予算委員会でも、宮地さんの質問に対して坂本薬務局長は、エイズウイルスが混入した血液製剤によるエイズ感染は副作用ではなく、したがって薬害ではないというような答弁をしておみえになるわけですね。これからの被害者救済あるいは被害者救済基金制度、こういうような問題の関連で、私どもここが非常に重要だと思うのできょうは申し上げたいわけでありますけれども、本当にこの血液製剤によるエイズ感染は薬害でないのかどうか。私は素人ではありますけれども、ここに「医薬品の副作用大事典」という本のコピーを持ってまいりました。これはメイラーさんという有名な人の書いた本で、医科大学の基本的な基礎教育の本になっておるわけでございますが、この「医薬品の副作用大事典」の中には、「血液製剤による伝染性疾患」という中で、血液製剤の副作用として明確に肝炎が挙げられているわけであります。これを受けた形だと思いますけれども、厚生省の薬務局の生物製剤課の「血液事業の現状」というのが毎年か、二年か三年に一遍ずつ出ておるわけでありますが、この「血液事業の現状」という中を見ましても、「輸血による副作用・合併症の防止対策」というアイテムをわざわざ起こして、「輸血後肝炎の防止対策」、輸血の副作用として最も重要な課題は輸血後における肝炎だ、こういうふうに位置づけておみえになるわけでございます。でございますから、私どもは、こういう内容を見ていくならば、厚生省自身が今申し上げたように認めておるわけでありますから、エイズも肝炎と同じように汚染した血液から感染する病気だということを今申し上げましたが、同様な取り扱いからいって、血友病患者のエイズ感染は血液からつくられた血液製剤によるところの薬害と位置づけてもおかしくないのではないかと私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  307. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 血液凝固因子製剤によって、エイズウイルスがその中に含まれていたために血友病の患者の方がエイズに感染されたという事例について、薬害かどうかというお尋ねは以前からございますが、やはり私どもとしては、医薬品を使ったことによってエイズ感染というそこの因果関係自体は否定はできませんけれども、本来凝固因子製剤というものはエイズウイルスを含むようなものではございませんで、エイズ感染者から採血をした場合に、そのエイズウイルスが付着していることがあったということでございます。したがいまして、私どもが副作用と解しておるものは、本来の医薬品の成分の作用、それが人体に対して好ましからざる影響を与えるもの、こういう理解をしておるわけでございまして、やはりエイズウイルスというのは血液凝固因子製剤の本質的な成分ではございません。たまたまそこに付着をしておった、これがいろいろな理由で完全に除去できなかった、こういうものでございますので、やはり本来の医薬品の成分の作用という意味での副作用ということは言えないというように解しておるわけでございます。     〔鈴木(宗)主査代理退席、上村主査代理着席〕
  308. 草川昭三

    草川分科員 今局長はどういう意味でおっしゃっておるのかわかりませんが、医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の中に、「この法律で「医薬品の副作用」とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応をいう。」というふうに書いてあるわけです。だから、これを受けて厚生省が、勝手にと言っては悪いのですけれども、勝手に今のような展開をなすっておみえになるわけでありますから、これは、こういう制度がある、そのものとの整合性がまるっきりないわけではないので、こういうものを使っていったらどうだろうということを私は言いたいわけであります。  そこで、この問題をもう少ししたいわけでございますが、時間の関係もございますので、ちょっとこれは厚生省に聞きますけれども、今までの議論の中で、いわゆる非加熱製剤を一体いつ回収したのかあるいは命令をしたのかという議論があるわけですけれども、国会での答弁の中では、その点が明確になっていないのですね。メーカーに聞いてみたら九十何%は回収したと言っているからいいじゃないかということで終わっておるのですよ。だけれども、一連の流れから言うならば、そのときの情勢から、厚生省は当然回収命令を出すべきではないか。したのかしないのか、言ったのか言わないのか。口頭で言ったという答弁もありますね。しかし、口頭では話になりませんから、正式に文書でやったのかやらぬのか。今後のために、いつやったのかひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  309. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 非加熱製剤から加熱製剤に切りかえました際に、その扱いについていろいろ問題があったわけでございます。  一つは、非加熱製剤といえども、加熱製剤がまだ十分な需要を満たすまでに至っていない段階において、これを使用しないということは、逆に血友病患者の生命に危険を及ぼすおそれがあるということで、非加熱製剤というものはどうしても必要であったということでございます。したがいまして、昭和六十年の七月に承認をいたしまして、各メーカーが全力を挙げて新しい加熱製剤の生産を始めてからしばらくの間は、どうしてもこれが十分に行き渡るまでは非加熱製剤の使用を中止するあるいは全部回収するということは、やはりできなかったというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、全国一斉に回収してしまうあるいは病院などにおいても使用を禁止する、こういうことまでは私どもとしてはできなかったという事情があるわけでございます。そういう意味におきまして、何月何日に一斉に回収を命じたという措置はとっていなかったわけでございます。
  310. 草川昭三

    草川分科員 今の局長答弁で初めてわかったわけですが、要するに、厚生省は回収命令をしていなかった、そういう事情があった。その事情については、我々は患者の人権を守るために非常に強い不信感を持ちますね。しかし、きょうは分科会でございますし、時間がありませんので、いずれ今の答弁に対して我々は厳重な抗議なり厚生行政に対する強い批判を申し上げたい、こういうように思うわけであります。  そこで、どうしても聞いておきたいので申し上げるわけですが、竹下総理はこの予算委員会で、血液製剤によるエイズ感染者には政治の力で対応すべきだ、こういう趣旨の答弁をなすっておみえになりますし、その後与党との間でもいろいろと万全を期すよう指示をした、こういうことを言っておみえになるようでございます。  厚生大臣、それを受けて、血液製剤によるエイズ感染者は大変な犠牲者でありますけれども、今のような経過も含めて感染者に対してどういう対応を立てられるのか、答弁を願いたいと思います。
  311. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 総理が先般予算委員会で答弁されましたのは、血液製剤によってエイズに感染をした方々に対しての救済の問題で、これが薬害であるとかないとか、こういう議論のやりとりがあったわけでございます。そういうやりとりの後で、総理から、救済ということに焦点を当てられまして、不可抗力でまことに同情すべきことであるからまさに政治そのものの力で対応すべきものである、こう言われたわけでございます。私は、五十三年からアメリカから非加熱製剤が我が国に入ってきておるわけでございまして、それ以来、この非加熱製剤の関係で不幸にしてエイズに感染された方々については非常にお気の毒なことでもありますので、どういう救済方法があるかということを事務当局に検討を命じてきておるわけでございまして、そういう私どもの考え方を一歩前進させて、総理が、救済の問題について政治そのものの力で対応すべきものだ、こういうふうにお答えされたわけでございます。
  312. 草川昭三

    草川分科員 これは真剣に対応を立てていただきたいと思うのです。  残り三分しかありませんので、最後に大臣に聞きますが、大臣は、多分大臣だと思うのですけれども、今の話で、救済はしなくてはならない、私もそのつもりだというような趣旨で、歴史にもしとかあるいは何々だったらとかというようなことは無数にある、後からそういうようなことを言っても余り意味はない、当時としては厚生省は最善を尽くしたと思う、ぎりぎり詰めていけば裁判になる、第三者に判定してもらうしかないという趣旨のことをおっしゃったやに報道されておるわけであります。もしとかそのときに何々をやったらというようなことは後から言っても意味はないというような発言というのは、過去の薬害裁判でも争点となったいわゆる過失責任論、こういうものを無視して、判決でも出ておるところの被害者側の論理というのを否定するということになると思うし、私は軽率ではなかったかと思うのですが、大臣の見解はどうでしょう。
  313. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 一般的な問題としていろいろお話し申し上げた中で活字になる部分は極めてそのところだけになるわけでございまして、その活字になったところだけの判断と前後の文脈といいますか、言ったことの脈絡はむしろ逆の場合もあり得るわけでございます。この問題につきまして私が特に申し上げたかったことは、その時点、その時点で最善を尽くしたかどうかということがより重要であるということをまず強調したわけでございます。それからまた二つ目には、非常にお気の毒なことであるわけでございますので、救済にはできる限りのことをしなければならないということ。この二つが、私のこの問題についての発言の主な点でございまして、もしとかなんとかいうことは私の申し上げた中の余り重要な部分ではないわけでございますので、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  314. 草川昭三

    草川分科員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、そのときそのときに最善を尽くしたかどうか。行政はどんな場合でも最善を尽くすのが当たり前だと思うのです。どんな場合でも、いついかなる場合でも、自分の日常業務が将来どういうことになるのだろうか。もしも被害が大きくなるならば事前にどのような対応を立てるべきか。海外からの情報もとりながらあるいは関係するメーカーの皆さんにもいろいろな行政指導をする。事実しておる場合もあるわけでありますから、後からどうのこうのというような議論ではなくて、真摯に問題点を受けとめて、そして被害者の方々に対する痛みを我が物に受けとめていただいて行政の処置をとっていただきたいということを強く申し上げまして、時間が来ましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  315. 上村千一郎

    ○上村主査代理 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤徳雄君。
  316. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 私は、中国残留日本人孤児、そして残留者、とりわけ残留婦人の問題に焦点を当てて幾つかお尋ねしたいと思います。  きょうのテレビを見ておりましたら、御承知のとおり今肉親探しに五十名の方がいらっしゃっているわけでありますが、きょうは所沢センターを見学されているというニュースが流れてまいりました。これまた始まったときとは大分異なりまして、肉親が判明する率が非常に低下をしているというのは御承知のとおりであります。  そこで、私はまず最初にお尋ねいたしますのは、六十一年三月七日、ちょうど予算委員会の第二分科会におきまして、当時の安倍外務大臣に対して質問をいたしました。それは日本の中国に対する侵略戦争とその戦争責任についての見解を求めたのであります。そういたしましたら、当時の安倍外務大臣は次のように答えられました。過去の日本が犯した過ちというものに対して深刻に反省をしなければならない、日本もこれまでの日本が過去の歴史において犯したことへの責任というものを痛感しながら残留孤児問題に対して対応をしなければならないと答えられたのであります。とりわけ残留孤児の問題あるいは残留婦人の問題についての所管大臣であります厚生大臣に改めて見解をお尋ねしたいと思います。
  317. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今お話がございましたように、安倍外務大臣の見解と私の見解は同じでございます。まさにさきの大戦の犠牲者であるわけでございまして、今後、政府といたしましても、十分に関係者と協力をした上で、重要な課題として全力を挙げて取り組んでまいらなければならない問題だと考えております。
  318. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 中国残留日本人孤児及び残留婦人の方たちは、当時の国策によって中国大陸に渡られたはずであります。そして、一九四五年、昭和二十年八月十五日以降、つまり第二次世界大戦終結時における混乱によりまして中国大陸に残留を余儀なくされたわけであります。まさに、自己の意思ではなくて、国策に基づいて中国に渡り、そして混乱によって残留せざるを得なくなったという事実であります。この歴史的事実をどう大臣は理解されますか。
  319. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 まさに戦争の犠牲者であるというふうに考えます。
  320. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 戦争の犠牲者、この種の問題について解決する起点はそこに置かなければならないと私は今でも判断をしているところであります。  さてそこで、孤児の場合、判明、未判明にかかわらず、帰国を希望し中国側が出国を許可した場合帰国することができるようになっていると思いますが、いかがでしょうか。
  321. 木戸脩

    ○木戸政府委員 中国残留日本人孤児の肉親調査及び残留孤児及び残留婦人の帰国につきましては、中国側の全面的な協力を得まして、希望する孤児の人、残留婦人の人は日本に永住帰国をできるようになっておるわけでございます。
  322. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 当面帰国希望者は一千世帯、約五千人と推定をされているようであります。それで、所沢センターを初め全国五カ所のサブセンターにこれを受け入れるようになっておりますが、現在、何世帯、そして何人が帰国をされておりますか。
  323. 木戸脩

    ○木戸政府委員 数字を申し上げますと、孤児の方につきましては、現在、これは二月の初めのデータでございますが、国費を支給されまして永住帰国をされた方が約六百八十名でございます。このうち、身元判明者が三百八十二名、それから身元の未判明の方が二百九十八名ということで、判明、未判明ほぼ同様の数字になっておりますが、最近におきましては圧倒的に身元未判明者の帰国が目立っておるところでございます。
  324. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 今後、何世帯、そして何人が帰国を希望しておられるのか、あるいは推定でも結構でありますからお答えください。
  325. 木戸脩

    ○木戸政府委員 現在何人が帰国の希望を持っておられるかという点につきましては、私どもの方で、訪日調査実施いたしました人々につきまして、適当な機会に永住帰国の案内書、いわば永住帰国をする人は応募してくださいということで案内書を送っているわけでございます。そのような数、あるいは現在までに訪日参加をした人のうち帰国をした人の実績、それから帰国の希望の状況、これを勘案いたしまして、私どもといたしましては、六十二年度以降、六十二、六十三、六十四の三年度間に約千世帯の孤児の人が希望をするものというふうに推定いたしまして、三年間で受け入れられる体制として、所沢の定着促進センター、さらにはそれ以外の五カ所のサブセンターを整備したところでございます。
  326. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 これは正確な数字はわからないと思いますけれども、局長承知のとおり、私はかなり孤児問題について今日までいろいろやらさせていただきましたから大方のことは承知しているつもりでありますが、どうも千世帯五千人ではきかないんじゃないかという感じがするわけであります。これは確かな数字でありませんから推定として申し上げるしかないのでありますが、仮に五千名を超えた場合、あるいは超える場合、そういう場合につきましては、五千名で打ち切るということではなくて、千世帯で打ち切るということではなくて、受け入れ延長をする用意がありますか、ありませんか。
  327. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもが六十二年度から六十四年度までに三年間に千世帯というふうに積算をいたしましたのは、実は六十二年度の予算を編成する際に、とにかく希望しているけれどもまだ日本の受け入れ体制が十分でないということで待っておられる方が大変おられたわけでございます。そこで、私どもといたしましては、六十二年度から三年間でとにかく現在帰国をしたいんだという方は全員受け入れるということで三年間に千世帯という計画を立てたわけでございます。したがいまして、これから数は減ってくると思いますが、今後もまだ、訪日調査で日本へ来てやはり日本に帰りたいという人もございましょうし、あるいは養父母がお亡くなりになる、あるいは子供が独立した、そのことによって初めは帰らないつもりでも帰りたいという方は、数は少なくなると思いますが、これからも出てくることは事実でございます。十分に予想しているわけでございます。厚生省としては、三年間で打ち切るというような考え方は全然持っておりません。今後とも、帰国希望する孤児につきましては、残留婦人とともに、時期を問わず受け入れをしてまいる考えでございます。
  328. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 そういたしますと、今のお答えで大体わかったわけでありますが、五千人というのは一応の目安であって、さらにふえた場合について、希望者が出た場合については、原則として全員を受け入れます、こういうふうに理解してよろしいですね。
  329. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもといたしましては、年間の受け入れ人数というのにはあるいは限界があるかもしれませんが、希望する人がいる限り帰国受け入れ対策というものは今後とも続けてまいる所存でございます。
  330. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 それでは次に入ります。  身元保証人は全国的に一体どういう状況になっておりますか。そして、身元保証人がいなかった場合はどのような措置をおとりになっておりますか。
  331. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先生指摘の身元保証人、私どもそれを身元引受人というふうに考えますと、現在身元引受人として登録をしておられる人の数は八百九十一名でございます。
  332. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 身元保証人がいなかった場合はどういう措置ですか。そういう事例がありますか、ありませんか。
  333. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先生の御質問を私考えまするに、先生おっしゃっておられるのは、帰国をする際に日本に帰国を受け入れる身元保証人ということでございますれば、まず肉親が判明している方は原則として肉親が身元保証人になる。身元未判明の人につきましては、日中両国政府で、身元保証人がなしに帰国をして所沢のセンターなり五カ所のサブセンターに入っていただく、こういうことになっているわけでございます。  判明された方々で身元保証人の肉親が反対して帰れないという方がおられる場合は、肉親にかわるべき身元保証人というのを厚生省が関係の都道府県と相談をいたしましてしかるべき身元保証人を立てるわけでございますが、現在肉親でない身元保証人を立ててどのくらいの方が日本に帰ってきているかということについては詳しい数字は私ども把握をしておらないわけでございますが、しかし、私どもの方に判明した孤児で帰りたいという人からどうしても肉親と話がつかないということで相談がありまして、県と相談しながらいろいろ調整をしておるというのは、現在でも数件ございます。
  334. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 身元未判明の方が大分帰っていらっしゃいますね。そして所沢センターを初め全国五カ所のサブセンターに入っておる。私の地元にもありますから私も時々訪問いたしますのでその事実はよく知っています。したがって、先ほど数字を明らかにしていただきましたが、登録された八百九十一名のどなたかは別にいたしまして、引き合わせをしてそれで両方がよろしいということになればセンターが終わった後に行きますね。これが通例ですね。この問題については、残留婦人とも関係がありますから、後ほどお尋ねをいたします。  さてそこで、センターに入所。私は所沢センターに三回ほど実は実態調査や訪問をしてその中身をよく知っているつもりであります。現在は四カ月サイクルで組んでおられて、四カ月間で日本語をマスターをしてそれぞれの目的地へ向かう、こういうことになるわけでありますが、四カ月間で日本語をマスターできる、習得できるという確信が厚生省にはあるのですか、ないのですか。
  335. 木戸脩

    ○木戸政府委員 日本語のマスターといってもいろいろな段階の日本語がございます。それから、日本語を覚えるといいましても、非常にまだ頭がいわばやわらかくて非常に覚えやすい小学校の高学年から中学校の低学年ぐらいの方と、それからいわゆる孤児として五十代に入ってから帰ってこられる方では差がございます。それから、孤児の方でも、非常に知識階級の方と、いろいろな事情で余り中国語の読み書きも自由でないという方の間には差がございます。したがいまして、私どもは、所沢のセンターで学ぶ日本語というのはいわば初歩的な、初期的な日本語というふうなことで、そしてある程度の読み書きができる大人の人、それから小学校の高学年から中学の一、二年の方の初歩の日本語ということでは四カ月ということでほぼ妥当なのではないかと考えておりますが、決してそれであそこを卒業をしまして全国各地に行かれる方の日本語が十分になっているというふうには思えません。むしろ、いろいろやはり日本語がよく覚えられなかったという方がございまして、この方たちに対するフォローというものは非常に大切なことだということが今課題になっているわけでございます。
  336. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 私は四カ月で妥当とは思いません。おっしゃるとおり子供は早いですね。先般私は、東京江戸川区立の葛西小学校の日本語特設学級に行ってまいりまして、授業参観をしたり、あるいは直接子供たちとも話をしてまいりましたけれども、子供は早いですよ、御指摘のとおり。私が行ってお聞きしましたら、わずか四カ月で、相当とは言えませんけれども、もうかなりの日常語を話すことができるという状況であります。しかし、残留孤児といいましても御承知のとおり子供でありませんで、もう大方の方はみんな四十歳代あるいは五十歳代に入った方もいらっしゃるわけであります。年齢的にいってもなかなか習得できるという状況にはないと私の経験では判断するわけであります。  そこで、先般新聞にも大きく取り上げられましたけれども、所沢センターでトラブルがありました。トラブルの中身について私はきょう言及しようとは思いませんが、しかし、少なくとも日本の風俗、習慣、こういうものも身につけながら、そして日本という国、つまり彼らにとっては自分の祖国を理解する、そしてそのために日本語を習得する、それには年齢的判断からいいましても四カ月というのは非常に厳しいというふうに私は思うのであります。少なくとも最低一年は必要じゃないか、こう思っているのでありますが、自立をさせていくためにも、大臣が最初にお答えなされましたように戦争責任でありますから、そういう意味では万全な対策をとるべきだ、こういう認識を私自身持っているわけであります。大臣、いかがですか。
  337. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私の方から若干詳細に御事情を御説明をいたしたいと思います。  定着促進センターの研修期間について延長を求める声があることは事実でございます。しかし、この定着促進センターというものの性格を考えてみますと、もともと帰国後全国各地で定着するまでの間に初歩的な日本語と基礎的な生活習慣を習得するという、いわばソフトランディングをするための中間着陸の場所だという性格がございます。それから、これは実際問題として私ども五十九年からセンターを運営してきた経験でございますが、非常にいろいろな事情を抱えた生活歴の方がおられます。それから、家族構成が、二人家族の方もおられれば、養父母から小さな子供さんまでたくさん抱えておられるような家族がございまして、こういう家族の人が二十四時間いわば起居をともにして生活するという実態から見ますと、余り長いとやはり逆にいろいろなトラブル、フリクションが起こってまいるわけでございます。そういう実態から見まして、私どもは、これから申し上げます定着促進センターを出ました後のフォロー体制をきちっとするという前提で見れば、今の定促センターとしての四カ月というのは妥当なものと考えているわけでございます。  私ども、今後の課題は、むしろ定着促進センターにおける研修というものを、定着後の帰国孤児とその家族が日本語や生活習慣の習得に努力をしなければいけないわけですが、その努力に対する支援というものを効果的に結びつける、つまり、センター卒業後のフォロー体制というものをしっかりするということが何よりも大切なわけでございますので、厚生省としては六十三年度に設置を予定しております自立研修センター、これは、一たんセンターを出まして地元で住宅をあっせんして住宅に住んでいただく、そこから通っていただく通所の施設でございますが、そういう自立研修センターや、さらにそのセンターを出た後も、あるいはセンターのないところにつきましては、個別指導による自立指導、こういうものを通じて帰国後一年から三年までの間の継続した自立支援体制というものをつくっていきたいというふうに考えているわけでございまして、私どもは定着促進センターとその後に続くフォロー体制というものをあわせて自立支援体制というものを確立をしていきたいというふうに考えております。
  338. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 時間がありませんから簡潔にひとつお答えいただきたいのでありますが、私は認識の違いじゃなくて認識不足だと指摘せざるを得ません。四カ月で妥当だなんと言う人はだれもおりませんよ。そんなことを言うなら、所沢センターでもあるいはサブセンターでも一週間いてごらんなさいよ、はっきりわかりますから。だから、私は冒頭お尋ねしたのは、日本に戦争責任がある。戦争責任があって初めてこういう状態が起きたのだから、そうだとすれば、何年もとは言いませんけれども、——御承知のとおりかなりのトラブルがセンターだけではなくて出所した後だって起きているわけでしょう。その基本的な原因は何かといったら、言葉ですよ。皆言葉の不足からこの問題が起きていることは幾つも事例があるじゃありませんか。だから、私は、妥当だなんと言うのは、認識不足じゃない、認識の間違いだということを指摘しておきます。  さて、その次に残留婦人の問題についてでありますが、現在中国に残留婦人はどのぐらいおりますか。
  339. 木戸脩

    ○木戸政府委員 大変申しわけないのでございますが、残留婦人がどのぐらいおられるか、あるいはそのうち永住帰国希望を持っておられる方がどれだけおられるかということで、私ども外務省あるいは北京政府あるいは東北三省の政府にいろいろな機会に聞いておりますが、なかなか全体的な数字を把握することは困難でございます。私ども、今まで一時帰国をしておられる方がかなりおります、その一時帰国の実績等から見て、三千五百人ぐらいはいわゆる孤児でない残留婦人の方がいられるのではないかというふうに推計しております。
  340. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 具体的に事例を挙げて申し上げます。私は、昭和六十年の八月に中国残留日本人孤児の現地実態調査実施してまいりました。黒竜江省ハルビン、チチハル、この二つの市に行ったわけでありますが、いつかも申し上げたと思いますけれども、例えばチチハルの場合、残留孤児が九十二名、残留婦人が九十七名であります。残留婦人の方が多いのですね。もちろん、現在の時点では減っておるかもしれません。永住帰国をしてきたという知らせが私のところにもありますから何人かは減っていると思うのですが、それでも私が行った時点では残留孤児よりも婦人の方が多いということなのであります。お会いをいたしました。向こうからもぜひ会ってくれという依頼もありました。そして、みんな共通しているのは、生きている間にせめて祖国日本に帰りたい、死ぬときは日本で死にたい、この願いは共通しておりますね。みんな日本語は忘れません。そして、お互いに残留婦人同士が集まって、日本語を忘れないように、そしてふるさとを懐かしむ。この話を聞いて、私はまさに悲劇だなという感じを受け取ってきたわけであります。  ところが、ある老婦人といいましょうか、もう七十に近い方であります、この方が、弟さんがいらっしゃることは判明しております。ところが、その弟さん夫婦が面会を拒否する。一時帰国をした経験があるのでありますが、面会を拒否し、身元保証人にもならない。あるいは身元引受人すら拒否している。泣く泣く中国に戻りました。つまり、この人は身元保証人がないために日本に帰れないのですよ。せめて死ぬときは日本で死にたい。そして御承知のとおりかなり老齢であります。自分の働きで暮らしを立てるという条件も薄くなってまいりました。そういった場合に何らかの手を、温かい手を政府が差し伸べるべきだ、私はこういうふうに思いますが、大臣、いかがですか。
  341. 木戸脩

    ○木戸政府委員 大臣からお答えをする前に、現在の厚生省の考え方を申し上げておきます。  結論から申し上げますならば、第一義的には、できるだけ親族と話し合いをして円満に帰ってきてほしいということで、親族の話し合いに期待をしております。しかし、どうしてももうこれ以上両方に話し合ってもらちが明かない、それでも何としてでも帰りたい、こういう場合には、在日親族にかわって友人、知人、ボランティアなどの関係者が身元保証人となって帰国旅費等の申請を行うという道は開けてございます。具体的な事例がございますれば、具体的に関係の都道府県を指導してまいりたいと思っております。
  342. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 私が冒頭質問をしたのは、戦争責任があるということだから、そうだとすればその原点に返ってすべてを解決しなければいけないということを申し上げたいためにお尋ねをしたのであります。ところが、こういう不幸な人が何人かいらっしゃるんですね。帰れない。知人、友人すらも引き受けないという状況だってないわけじゃありませんよ。しかし、仕方がないで済まされない。まさに日本政府の責任であると私は思うのであります。大臣、いかがですか。今度は大臣が答弁してください。
  343. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今局長から御答弁申し上げましたように、身内の方でそういう身元引き受けを拒否される場合にきましては、先ほど答弁申し上げましたように、かわりましてボランティア等の関係者が身元引き受けを行えるということでございますので、そういう場合には私ども喜んでお世話したいと思います。
  344. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 もう時間がありませんからやむを得ませんが、さきの問題にかかわって最後にお尋ねをいたします。  現地に赴きますと、厚生省の方も何人かいらっしゃっているから御存じかと思いますが、理想的なものは、やはり孤児の皆さん——婦人は別です。残留婦人は日本語を忘れないのでいつでも対応できるようになっていますから別でありますが、特に残留孤児で帰国を希望している皆さん、所沢センターやその他のセンターに入る以前に、現地で日本語をある程度習得するようなことが可能であれば、自立の道は帰ってきても早い、実は私はこう思っているわけであります。ボランティアの皆さんでも非常に本気になっていらっしゃる方があります。特に大阪の竹川さんという、本も出していらっしゃる方で、局長御存じだと思いますが、黒竜江省のハルビンに何とかこういう施設をつくりたいと思って今奔走しているはずであります。黒竜江省の省政府ともかなり詰めた話をしているのでありますが、私はボランティアの人がやるから政府は黙って見ていていいということにはならないと思うのであります。これは外交上の問題がありますから難しさがないとは言いませんけれども、しかし、少なくとも何としても政府が乗り出すべきだ、援助の手をこういう場合について差し伸べるべきだ、こう思っているのであります。長い時間がかかろうともこれは解決しなければいけない。しかし、余り長い時間をかけてしまうともう間に合わなくなってしまうという物理的な問題も実はあるわけであります。最後の締めくくりでありますから、この問題について厚生大臣のお答えをいただきたいと思います。
  345. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 日本語の教室がボランティアの努力、尽力によって設置されている例もあると聞いております。しかし、これは中国の内政にかかわる問題でございますので、私どもといたしましても十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  346. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)分科員 終わります。
  347. 上村千一郎

    ○上村主査代理 これにて佐藤徳雄君の質疑は終了いたしました。  次に、中路雅弘君。
  348. 中路雅弘

    中路分科員 私は、きょうは、これは生活衛生局の主として所管になりますけれども、公衆浴場に関する問題に絞って御質問したいと思います。  我が国の気候や風土にも合って、日本の国民は入浴というのを非常に楽しむわけですが、こうした国民性に根差したふろの問題なんですけれども、その中でも公衆浴場は、住民の清潔な暮らしの上でも、また地域の人々の触れ合いの場としても、非常に大事な社会的な役割を果たしていると私は思いますが、最近、朝日新聞の一月二十五日号に大きなスペースで「銭湯生き残り策」という題で記事が出ております。この中で、厚生省のまとめということで、最近の公衆浴場の推移、非常に廃業が多いわけですけれども、資料が出ていました。厚生省の方、全国的な公衆浴場の推移について、とりわけできましたらこの十年ぐらいのを含めまして、最初に現状をひとつ教えていただきたいと思います。
  349. 古川武温

    ○古川政府委員 公衆浴場は自家ぶろを持たない世帯を初めとして住民の日常生活に欠くことのできない施設ですが、最近自家ぶろ保有世帯の割合がふえておりますので、これに伴いまして非常に減少をしております。  十年間の経緯をということでございますので申し上げますと、ちょうど手元に、切りのいい数字でございますのでお許しいただきますが、昭和五十年に全国で一万九千百六十一、以下細かい数字は省略して経緯を申し上げますが、五十五年に一万五千七百、六十年に一万三千八百、六十一年に一万三千四百と推移してございます。
  350. 中路雅弘

    中路分科員 後の具体的な質問との関係もありますので、もしその中で都道府県でわかりましたら、神奈川県は今どんな推移ですか。わかりますか。
  351. 古川武温

    ○古川政府委員 ちょっと資料を見ております。申しわけありません。
  352. 中路雅弘

    中路分科員 途中でもいいです。後でわかりましたら。
  353. 古川武温

    ○古川政府委員 数字がおくれまして申しわけありません。六十一年十二月末の数字で申し上げさせていただきます。  全国が一万二千八百八十二ですが、神奈川県を申し上げますと六百五十、東京が二千百五十三、大阪が千九百三十六という各計の数字がございます。
  354. 中路雅弘

    中路分科員 先日の朝日新聞を見ましても、これは昭和三十九年から六十一年までが出ていましたけれども、全国で三十九年が二万三千十六、六十一年が一万三千三百三十一と、二十二年間で約一万軒減っているわけです。今の御説明でも、この十年が特にまた減り方が激しくて、この間に五、六千減っているということです。五十八年の総務庁の住宅統計を見ますと、全国都道府県の都市部で八六%の世帯が自家ぶろ、内ぶろを持つようになっている。神奈川県でも約八九%の世帯が内ぶろを持っています。  とりわけ浴場がずっと大きく広がった昭和二十年代から三十年代に建てられた銭湯が大変多いわけですので、ちょうど今建てかえの時期に差しかかっているということもありまして、再投資をして改築するかどうかという選択に今迫られているところが多いわけです。燃料費や諸経費の上昇に、とりわけ地価高騰がここ二、三年出てきまして、これも最近の三月七日の地元の神奈川新聞ですけれども、地上げ屋が銭湯を一番ねらっていて、これで廃業になるところの例が挙がっています。銭湯に目をつけて、商業地や第一種住居専用地域に多いわけですから、平均して大体百数十坪ぐらい持っていますから、地上げ屋の対象にもなっているということで、神奈川県内で見ますと、改築で見ますと年に二十軒ほどずつ改築をやっていますが、改築の費用も平均して五千万以上かかるわけですね。だから、これに見合う収益があるかどうか。それから後継者の問題もあります。非常に長時間の労働もありますから。次代にわたってこれを返済するかどうか、あるいは後継者の問題もありまして、アパート経営にかえるとかいう形で廃業のケースが多くなっています。  先ほど全国の統計をいただいたのですが、神奈川県の場合、私が見ましたら昭和四十四年に八百二軒あった公衆浴場が今は六百二十二軒、この間に百八十軽減っているわけですね。しかし、ないと困る利用者もいるわけです。特に工業地帯は働きに出かけてきているという方が多いですから、私聞きましたら、タクシーを使って遠くまで入浴に行かなければいけないというところもあるのですね。一つの地域で銭湯がなくなるということが社会生活にも影響しまして、場合によっては逆に公営の銭湯をつくらなければいけないというような深刻な問題も出てきているというのが現状なんです。  しかし一方で、最近は温泉ブームやあるいは広い浴槽の魅力というのがありまして、内ぶろを持っている人もたまには浴場へ行こうという関心も高まっているわけです。こういう中で、今の公衆浴場の果たしている役割とかあるいは置かれている現状、これをどのように受けとめておられるかということを最初にお尋ねしたい。
  355. 古川武温

    ○古川政府委員 ただいま委員詳細に現状を分析されました。委員指摘のとおりの状況でございますが、改めて申し上げさせていただきますと、公衆浴場は地域住民が必要とする保健衛生サービスを提供する非常に公共性の高い営業であります。したがいまして、戦後ございました物価統制令、この残り少ないわずか一つの対象品目として残っているわけでございまして、公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律、これを特に定めまして対策を進めているところでございます。  実態としましては、先ほどの数字、全国でいいますともう八八%、神奈川八九%ということですから、全国ならしても八八%が自家ぶろでございますし、したがいまして、本来おふろというのは身近に手ぬぐい一本で利用するのが理想でございますが、なかなかそれもかないません。そういうことで、委員指摘のように、自家ぶろがある者にとっても魅力ある、あるいはさらに積極的な、健康ぶろといいますか、健康銭湯といいますか、そういうふうな形にまで銭湯を魅力あるものにしていく必要があると思います。  これらにつきまして、施策としては、一つは環境衛生金融公庫による長期低利の融資がございます。公衆浴場につきましては特別の手だてを講じております。それから、地方税における特別措置、固定資産税の軽減、こうしたこともとられております。また、地方公共団体からそのほかの助成措置、これは上下水道料金を軽減したり、環境衛生金融公庫からの借入金の利子を補給したり、それぞれ府県が努力をして公衆浴場の確保のために努めているところでございます。
  356. 中路雅弘

    中路分科員 今おっしゃいましたけれども、地方自治体等も大変関心が強くて、要望もありますからいろいろ施策をやっているわけですね。私の地元でも、市の方が例えば高齢者に公衆浴場の一定の無料の回数券を配るとか、あるいは毎月二十六日を「ふろの日」としましてその日だけ無料にするとか、祭日を無料にするとか、とにかく利用者が増加しなければいけませんし、内ぶろがある方もたまには来てもらうというような浴場にしなければいかぬということから苦労しております。  先ほど固定資産税の軽減の問題や幾つかお話しになりましたけれども、もっと思い切った生き残り策が今必要だということで、いろいろ研究がやられているのですね。銭湯の活路を開拓しなければいけないということで、自治体等でもまた経営者自身も今いろいろ真剣な模索と検討をやっているわけですけれども、私が拝見したので最近では昭和五十九年に富山県の公衆浴場の環境衛生同業組合が報告書を出しておられます。これも見たのです。それから六十一年に全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会が「公衆浴場の活性化方策について」というのも出されております。最近、二月末ですけれども、神奈川県の浴場組合が出した大変膨大な調査をしてまとめた提言といいますか、「活路開拓ビジョン調査事業報告書」というのですが、「現代銭湯商人道入門」という題の大変立派な冊子なんです。専門家等も含めて、相当膨大なものですけれども、ここでいろいろ活路についての提言をしているわけです。  今挙げたこうした提言の中で共通していますのは、例えば浴場にいろいろ施設を併設する。サウナバスとかマッサージバスとか休憩サロン、健康器具のコーナーを置くとか、健康ランドにしていこうという衣がえをこの中でいろいろ検討されているわけですね。あるいは脱衣場の中仕切りを少し移動できるようにして集会所にも使えるというようなそうした提案がなされているわけですが、こうしたいろいろな提言についてどういうふうにお考えなのか、また厚生省としても今具体策について検討もされているというお話も聞いていますので、どのような検討がやられているのかを含めてお尋ねしたいと思います。
  357. 古川武温

    ○古川政府委員 ただいま浴場組合あるいは各府県の組合のいろいろな検討結果の御紹介がございました。厚生省においても、六十二年度の厚生科学研究費、これをもちまして公衆浴場の活性化に関する調査研究を行っているところでございます。各県のそうした検討の結果をまとめたものあるいはこのスタックの調査研究の成果を踏まえ、公衆浴場を地域住民にとって一層魅力あるように活性化対策を講じてまいりたいと思っております。
  358. 中路雅弘

    中路分科員 今幾つか紹介しました公衆浴場を主体にしてそれにいろいろ施設やあるいは器具等も併設して健康ランドみたいにしていくという方向がいろいろ共通した提言にあるのですが、こうした提言についてはどのようなお考えですか。
  359. 古川武温

    ○古川政府委員 浴場そのものあるいはその衛生面の改善というふうな理由を立てまして、公衆浴場について特別の融資、環境衛生金融公庫の融資が四・五%といいますと、五・五%の基準金利に対して一%も安い措置がされております。昭和五十九年にこれは健康コーナーを設ける場合に融資の対象に加えるということを講じておりますが、こうした面についてスタックの研究成果等を踏まえまして新しい施策を講ずることができるようになれば、そうしたものについての拡大を図っていきたいと考えております。
  360. 中路雅弘

    中路分科員 融資の対象としては先ほど私が取り上げたようなものも今対象にはなってきているのですけれども、関係者の話を聞きますと、とりわけ要望が強いのは今おっしゃった特別利率の四・五%です。浴場の点ではこれが入っています。活性化を進めていく上でこうした提言に基づいていろいろ施設をつくっていく場合に、浴場と同じようにこの部分も、一%というと大きいですから、特利の対象にしてほしいという要望が非常に強くあるのですね。厚生省でも今度いろいろ活性化の検討もされていると言われているわけですが、こうした問題の検討の結果とあわせて、こうした要望が業界の方から出た場合に、その点についてもあわせて、これを具体化するためにはそういう施策の面での助成や援助が必要ですから、ぜひ御検討をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  361. 古川武温

    ○古川政府委員 具体的に喫茶サロンですとか施設の種類を挙げて、特別の利率を適用せい、四・五%を適用したらどうかという御提言でございますが、公衆浴場の適用、公衆浴場の中のそれぞれの施設あるいは他の業種との絡み、例えば喫茶店もございますし、そういうふうなことで、何をどうするかということはなかなか難しい面がございます。ですが、そうしたいろいろな報告書等がまとまりつつございますので、そうしたものを参考にしながら今後の融資の枠の拡大について考えていきたいと思います。
  362. 中路雅弘

    中路分科員 私も、独立した、浴場とかいうことの活性化とは全く切り離して何かそういうものができてきてそれに特別融資とかいうことになると、ほかの同業者との間でもいろいろ問題になりますから、私の提案は、あくまで社会的な役割を持っている公衆浴場を活性化していく、その施設として提言の中に出ていますから、その対象については、ぜひこれを具体化していく上で、枠の拡大、あるいは利率の問題についても、公衆浴場と同じように検討していただきたいという要望なのですが、大臣、いかがですか。
  363. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私も浴場関係者に郷里で非常に長い間つき合っている友人がおりまして、もう二十年ぐらい、その都度浴場の経営について相談を受けたり、また傾向としましてはどんどん浴場が減ってきておるということについては非常に心配をしておるわけです。  中路先生非常にお詳しいわけですから御存じのとおり、住宅の中におふろを保有している率が高くなるに従って浴場が減ってきておる、これは相関関係があると思うわけでございまして、自家ぶろを持っている人も公衆浴場に来るということが一番大事だと思うのです。そういうことになりますと、相当思い切った発想の転換というか改革をしていかなければならぬわけでございまして、そういう考え方からすれば御指摘のことよくわかるわけでございますので、私も私なりに勉強してみたいと考えておりますので、しばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  364. 中路雅弘

    中路分科員 これはぜひ具体化へ向けて検討していただきたい。  あと若干の時間で具体的な問題で幾つかお尋ねしたいのです。  今、公衆浴場法の施行規則、厚生省令で、公衆浴場の種類、白湯もしくは薬湯の場合、物質だとか医薬品の名称、成分、用法、そういうものがいろいろ規定してありまして、私も専門でないので具体的なことはよくわからないのですが、一度届け出ると変更が事実上できない仕組みになっている。あるいは薬湯でも、湯の花を変える。例えば、具体的な話を聞きましたけれども、今週は箱根の湯にする、次は草津だとか有馬だとかいうことで、名湯めぐりとかいろいろな企画も考えている。そういう場合に、今の厚生省令で厳格にやられると難しいので、保健所との衛生上の問題もありますからその点のバランスも十分考えなければいけないのですが、こういった面で弾力的な運用をしていただけないかという要望もあるわけですが、この点はいかがですか。
  365. 古川武温

    ○古川政府委員 公衆浴場の活性化の一つとして、名湯めぐり、大変売れているようでございますが、そういうふうなことが弾力的にやれないか。私どもも公衆浴場の確保対策というのは重要だと思っておりますからいろいろ努めているわけでございます。例えば温度につきましても、従来四十二度以上というふうな規定がたしかございましたが、それも四十二度程度というふうにしたり、工夫はしております。そういうふうなことに絡めまして弾力的な運用、今のあり方にとってより好ましいものがあるならば検討させていただきたいと思います。
  366. 中路雅弘

    中路分科員 今温度の話が出たのですが、これも確かめておきたいのですが、六十二年三月の改正で、「公衆浴場における水質等に関する基準について」という局長通知ですか、これから「衛生管理要領」に移しかえられましたね。その中で、上がり湯等、原湯、浴槽水の温度は営業中常に四十二度以上を保つことという意味の規定があるのです。もちろんこれは雑菌等の関係だとかそういうのがあるかと思いますけれども、最近はろ過器を入れたりカルキを入れたり、いろいろその対策もやっていますし、もう一つは、私この神奈川県の提言を読んでみまして、提言の中に作成に加わられた植田理彦さんという方が、この方は日本健康開発財団の専務理事で医学博士ですが、この中で書いておられるのです。  四十二度ということを取り上げまして、四十二度以上という高温浴は一日のストレスや疲れを直すために医学的に言うと逆効果の面があるのだ、それから動脈硬化症や高血圧症、高齢者等は、この四十二度以上という高温浴は避けるべきだという意見もこの中で述べておられますね。だから、厚生省が四十二度以上にしなければいけないという規定、この点は医学的な点でもこういう提案もあるわけですし、もちろん、雑菌が入らないようにしなければいけないというものもありますからこの点研究していただいて、さっき四十二度程度というふうにするというお話でしたけれども、余り画一的な基準にしてしまいますと、利用客の若い人なんかの場合もどうかと思いますので、この点は、医学上のこと、衛生上のことは私詳しくわかりませんけれども、そういった点も十分バランスをとりながら、やはり画一的な基準については再検討された方がいいんじゃないかというふうに思うのですが、いかがですか。
  367. 古川武温

    ○古川政府委員 委員指摘の四十二度論争でございますが、やはりいろいろな学説等もありますし、四十二度、高血圧の人にはということは大分昔から言われていることでございますが、そうした新しい考え方につきましては、これを公衆が利用するというふろの立場から、どこまでそれを取り入れられるかということは、御指摘のようなことを体しまして進めさせていただきたいと思います。
  368. 中路雅弘

    中路分科員 そろそろ時間が来ているのですが、もう一点。  浴場についての主要な設備、ボイラーとかバーナー、こうしたろ過器等に今神奈川で言いますと県が二分の一、それから川崎市がその二分の一ですから四分の一補助金を出しているわけなんですよ。ただ、それが基準価格に対して補助金が出ているのですが、実勢価格と基準価格の差もかなりあって、いろいろ全国を見ますと県によるアンバランスもあるのですね。先ほど固定資産税とか地方税等でも、融資の点でも国もいろいろ面倒見ているわけですけれども、国のこうした点での、県、市がやっているわけですけれども、助成施設なりあるいはもう少し基準を明確にしてこうした点も、今ちょうど全国的にも設備の改修期にあるわけですから、その点についても検討をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  369. 古川武温

    ○古川政府委員 各県において、公衆浴場の確保のためにそれぞれ努力をされておられます。また、公衆浴場が減り始めたのはもう大分たってのことでございますから、各県ともそれぞれ経緯がございます。それから、県内における公衆浴場の立地の状況等もそれぞれさまざまで、対策が異なっているのはやむを得ないことだと思っております。そこで、そうした各県の今までの経緯の積み重ね、それからそれぞれの地域状況によりまして補助、育成の方途が講じられておりますので、これを国が一つの基準で横へ倣え、こういうふうなことは適当でない部分もございます。  そういうことでございますので、この点に関しましては委員指摘ではございますが、各県の自主的な運用にまちながら、また各県も周辺あるいは似通った府県の状況等を参考にしながら、この確保対策を進めるよう指導してまいりたいと思います。
  370. 中路雅弘

    中路分科員 これで終わりますが、大臣、先ほどのお話で浴場についてはいろいろ関心もあり、よく御存じのようなんで、ひとつ今大臣のもとで大きな転換をしていかなければいけませんからね。そうしないと、やはり廃業廃業が続いて社会的にも、地域でふろがなくなるというふうなことになると大きな社会問題になってきますから、新しい活路をどういうふうに見出していくかということについては、厚生省も検討されていると言われておりますので、具体的なまとめをいつごろになるかわかりませんが一つまとめていただいて、それに基づくいろいろ国としての、先ほど特利の問題もお話ししましたけれども、助成、補助等含めて、ひとつこの問題の対策を具体化していただきたいということを最後にお願いしたいのですが、いかがですか。
  371. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 自分なりに勉強いたしたいと申し上げたわけでございまして、ぜひ検討してまいりたいと考えております。
  372. 中路雅弘

    中路分科員 それでは終わります。
  373. 上村千一郎

    ○上村主査代理 これにて中路雅弘君の質疑は終了いたしました。  次に、上田利正君。
  374. 上田利正

    上田(利)分科員 私は、注射による大腿四頭筋短縮症、医学名は拘縮症と言われておりますが、以下短縮症ということで申し上げていきたいと存じます。  既に厚生省も御承知のとおり、昭和四十八年、ちょうど今から十五年前でございますけれども、山梨県で薬剤の害と注射の乱用によりまして、筋短縮症で四百名にも及ぶ被害児が集団発生をいたしました。本院でもいち早くお取り上げになりまして、その後全国的にこの問題の発生状況が明らかになりました。被害者救済と医療行政のあり方をめぐりまして、社会的にも大きな問題となって今日に至っておるのであります。  現在、大腿四頭筋短縮症あるいは三角筋短縮症の被害児は、全国で私ども調査した中ではおおよそ一万五千人くらいというようなことが言われておるわけでございます。再び注射による筋短縮症の被害児を発生させないために、そして日本の未来を背負う子供たちのためにこのような医療公害から子供を守っていく、そしてそのために社会的責任をみずから背負ってこの患者である子供と親が一体となって、全国的に、いろいろと聞きますと聞くも涙あるいは語るも涙ではございませんけれども、民事裁判が今日行われておるわけでございます。  山梨における訴訟では、第一審で医師と製薬会社に対しまして、その過失責任が認められる一審判決がなされましたけれども、さらに国の責任について東京高裁で今係争中でございます。きょう、この裁判のことを申し上げる考え方はございません。  私は、再びこのような悲惨な注射による短縮症児を発生させないためと、苦しみながらも健常児と同じように負けないぞということで、一生懸命学校で努力を続けている障害児とその家族に温かい手をみんなで差し伸べて救済するため、以下、政府の考え方をお聞きしていきたいと思うわけであります。  まず一つは、昨年十月三十日、福島県内で、子供三人とその家族が国と製薬会社を相手取りまして被害賠償を求めていた訴訟は、仙台高裁で和解ということになりました。厚生省大臣も御存じのとおりでございますけれども、その際国が表明しました国の態度というのがあるわけでございますが、それはすなわち「国は、筋肉注射による筋拘縮症の発生を認識し、今後も公衆衛生の向上に努める」、こういう和解条項に国側としてはなっておるわけでございますけれども、若干玉虫色とかいろいろなことが言われておりますが、この国の態度表明、これを医療行政の中で今日までどのように、これからどう具体的に進めていくのか、まずこれをお尋ねをしたいと思います。
  375. 仲村英一

    ○仲村政府委員 昨年の十月三十日に仙台高裁におきまして和解が成立したわけでございますが、その際、ただいま御指摘のように第四項で、「国は、筋肉注射によって筋拘縮症の発生したことを認識し、今後とも公衆衛生の向上及び増進に努める。」こういう第四項が入っているわけでございます。私どもといたしましても、裁判所が提示されましたこの和解条項を厳粛に受けとめておるわけでございまして、今後ともその趣旨を十分尊重しながら、従来から厚生省の任務とされております公衆衛生の一層の向上及び増進を図るために、所要の施策推進に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。  具体的には、これまでも筋短縮症の診断基準をつくることとか、さらにそれを普及させること、あるいは患者に対する育成医療の適用など、行政としてとり得る施策は逐次講じてきておるところでございますけれども、今後とも今おっしゃいましたように、こういう悲惨な事例が再び起きないように諸般の行政施策を講じなくてはいけないと考えておりますし、似たような患者さんの発生の防止でございますとか、さらには使用される医薬品の安全対策等、いろいろなことで努力を続けてまいりたいと考えております。
  376. 上田利正

    上田(利)分科員 今厚生省の御答弁をいただきましたけれども、ぜひこのような悲惨な不祥事が発生しないために、さらに厚生省として努力をしていってほしい、こういうことを重ねてお願いしておきます。  二つ目の問題でございますが、現在の全国の被害児の実態、これが山梨を中心にしながらずっと全国的に被害児が出ておりますけれども、これらの実態について地域別と申しますか県別、年齢別あるいは部位あるいは症度等別に、わかっておったら明らかにしていただきたいと思います。     〔上村主査代理退席、鈴木(宗)主査代理着席〕
  377. 長尾立子

    ○長尾政府委員 筋拘縮症の調査昭和五十九年の調査内容について御説明を申し上げます。  地域でございますが、北海道、山梨県、神奈川県等で患者が登録されておりまして、全数といたしまして三千九百八十二件というふうに承知をいたしております。患者さんの年齢でございますが、四十二年一月一日から四十六年十二月三十一日生まれの患者さんが全体の五一%を占めております。すなわち、十七歳から二十一歳までの年齢が半数であるということでございます。部位でございますが、大腿四頭筋が八一・五%で圧倒的多数でございます。三角筋一五%、臀筋三・五%でございます。それから、医療機関を受診するように指導するべきある程度のレベルの症状という症度でございますが、これが五〇%というふうに考えております。
  378. 上田利正

    上田(利)分科員 今、局長から把握の状況を回答していただきましたけれども、三地域しかないというような形で、これは五十九年の調査だということでございますが、私どもが調査したら今も訴訟を起こしているものが六つ、一つ仙台が終わりましたから、訴訟関係でも五つが争われてきている。愛知であるとかあるいは静岡にも発生している事例がある。九州にもあります。したがって、きょうはいいわけでございますけれども、ぜひ一度厚生省として特別の調査をやっていただきたいということを、時間の関係もございますから要望だけしておきます。  それから次に、文部省にお尋ねをいたします。  文部省の方にこの障害児の生徒数のものをあらかじめお渡しをしてございますけれども、全国一被害が多く集団発生した山梨、これは六十年でございますが二百四十名おります。これは町村別、小学校別、中学校別に、全部私どもが把握した資料でございます。あるいは、高校へその後何人入ったのかも全部あるわけでございます。これは六十年の時点ですから、現状とはちょっと違いますけれども、そうは狂っておりません。これがずっと上に、中学は大体高校へほとんど入ってきている、こういうふうに見ていただければいいのでありますけれども、それで約二百四十名。  山梨では県当局が、被害児の教育指導が最も大切だということで、小中学校の生徒のために山梨県筋短縮症児教育研究会というものを設置いたしまして、小学校に二名の特殊教員といいますか、これを県単独で配置しました。現在中学は二名だけ、小学校は一人もおりませんから、今度は中学に一人専門の先生を置いております。これを配置して、教育委員会と親とが密接な連携をとりながら、いろいろな悩みもありますし、進学の問題もありますし、手術したらいいとかどうだとか、いじめの問題とか、あるいは自分が挫折してもう学校へ行きたくないとか、そういうふうなもろもろの問題と対応してまいりまして、実は非常な成果を上げてきているのであります。本当は国でやっていただきたかったのでございますけれども。  そして、親も子供も元気いっぱい頑張ろうということできて、二百四十名がおるわけでございますけれども、現在は、先ほど申しました中学生が二名で、そして来年高校へ行ってしまうと中学にはなくなる。そこで、県と交渉を親の会などがやってきておりますけれども、義務教育でなくなる、あるいは高校の場合は私学なんかもある。資料にもありますように、高校は全県的にいろいろな学校へばらつく、したがってこれはちょっと県の段階では難しい、文部省との関係も含めて難しい、こういうことの中で今日に来ておるのです。中学の先生も異口同音に、何とか高等学校にも今度これを置いておいてほしい、こういう形が出ておりまして、そうやりましても高校ですから三年だけでございますね。三年といっても、この二年生が来年行って四年だけですね。大学までとかは申しませんから、高校四年間だけでいいわけでございます。そして、進学とか就職とかもろもろの指導に当たっていただく。ちょうど竹下内閣が思いやりの政治をやっていこうということの中で、そしてその中心を厚生大臣中心にやっていただく、こう思うのでありますが、ひとつこの点について実施をぜひしていただきたいと思うのであります。
  379. 奥田與志清

    ○奥田説明員 お答えを申し上げます。  御指摘の生徒につきましては、普通学級におけるところの授業におきまして教育ができるということから、先生御案内だと思いますが、普通学級に就学をしていると聞いております。山梨県の教育委員会におきましては、先生指摘のこういう子供たちの教育の実態等を踏まえまして、どういうふうにすれば適切な教育ができるのかということを現在鋭意検討しているというふうに聞いておりまして、私どもとしましても、山梨県におきまして適切に対応していただくことを期待しているところでございます。
  380. 上田利正

    上田(利)分科員 いや、それができれば、そんなことを私も申さないのですよ。親の会とか子供もそうは思わないのですよ。なかなか今の財政の中で、義務教育でないものまで県でやれといっても無理ではないか。そのために文部省があるのではないか。そんなに大変金がかかるわけではない。しかも、子供のためには非常にいいことなんです。小中学校と山梨でやってきた。普通では自殺が出るとかいろいろなものが出てくるのですが、それがない。これから高校の中でも難しいのです、進学だとか、後で就職の問題、労働省にも聞きたいのですけれども。ですから、ぜひ大臣にこれは検討していただいて、きょう結論は出ないと思いますけれども、そんなに金がかかってどうにもならない、文部省がひっくり返ってしまうという問題ではないのです。県でさえやったのだから、山梨の八十三万人しかいない県で。小学校、中学校というのは長いですよ、九年間なんですよ。高校は三年間だけなんです。ぜひ思いやり政治で、これをひとつ宿題にしてやっていただきたいと思います。
  381. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 よく勉強してみたいと思います。
  382. 上田利正

    上田(利)分科員 それでは、よろしくお願いしたいと思います。  それから、労働省にお尋ねいたしますけれども、今申し上げましたような被害児でございますが、もう十五年、十五歳以上に皆なっております。現在は高校がほとんどでございまして、そのほか大学、就職した方もおります。零歳でなった者が今中学三年でございますけれども、四歳とかそういうので障害児になった者が一番、大体九九%が高校、大学、就職、こういうことになっておるわけでございます。この子供たちの今の問題点、悩みというのは何かといいますと、手術をするためには一、二カ月学校を休まなければならないのです。そして、この手術は医学上からいっていろいろありますけれども、山梨ももう国立病院とか県立病院とか市立病院、指定病院で全部やって、甲府の市立病院などは県外の静岡からも、名古屋の方からも来て手術をやって、うまくいっているのがあるのですよ。  ただ、子供はどうしても十二歳以上にならなければだめだということなんですね。本当は二十とか成長がとまった二十二、三でやればいいのですけれども、もうスポーツはできない、何はできない、だから早くと言って、高校一年、二年ぐらいで手術をするのが多いのです。これはもっと遅くやれば一番いいのですが、それではもう何もできなくなってしまう、座ることもできない、こういうことですから手術をするのです。したがって、六回やった人もあるわけですね、その資料もお渡ししておりますけれども。  そういう中で悩みがあるのは、これが就職するときに調査書を出すと、何で一カ月半もおまえは休んだのだ、こうなるのです。そうすると会社によっては、これは採用をちょっと見合わせたい、四頭筋などということではということやら、あるいは黙って入った者が後になって、おまえは注射による筋短縮症児ということを何で隠して入ってきたのだと社長に追及されて、毎日言われるからもう嫌になってやめていったとか、こういうもろもろのものが出てきているわけなんですね。  したがって今は、私どもとしては親と相談をしまして、そして執刀医師の証明書をちゃんとつけて、就職先とかなんとかみんなやっているのです。それで、大体これでうまくなりつつあるのですが、まだまだ中小企業そういうところでは、そんな者はだめだ、そんな足の不自由な者を採用なんてできない、こういうものもやはりあるのです。あってはならぬのですけれども、そういうものがある。したがって、そういう差別的な問題に家庭は悩む。  しかも、子供が三人いて、三人手術をしてしまっているというのもいますね。二人の子供をやっているといううちもある。そして六回もやる。大体三分の二は二回以上やっているのです。子供がどうしてもやってくれ、やってくれと言うからやるわけで、本当は大きくなって二十二、三でやればいいのですけれども。  こういうことの中で、差別や嫌がらせとかそういうものが出てきておる。僕が、私が何も悪いことをしていないのに何だ、彼らにしてみればこうなるわけだ。こんなものは国やあるいは医者がやったからそうなんだ、自分の過失ではないじゃないか、ここのところが非常に大きな問題、ちょうど青少年の人たちですから。したがって、労働省は、そういうものについての政省令であるとか行政指導だけではだめです。ここのところを真剣に労働行政の中でひとつ考えてもらいたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  383. 根本安俊

    ○根本説明員 お答えいたします。  身体に障害を持っている方々につきまして、その適性あるいは能力に合った雇用の場を提供する、確保するというのは、私ども労働行政の最重要課題の一つとして施策を進めているわけでございます。  公共職業安定所におきましては、筋短縮症の方々についても、綿密な職業相談あるいは障害状況また本人の適性、能力といったものを十分に把握いたしまして、その適切な職業紹介に努めているところでございます。  また、障害者を雇います事業主は、本来能力と適性にのみ基づいて採用選考を行うべきものであるというような考えを持ち、また指導もしておるわけでありますが、筋短縮症を含めて身体に障害を有することを理由として採用選考の対象から除外するというような場合においては、まず採用予定職種の職務遂行にどの程度支障を生ずるか具体的に検討していただく。そしてまた、身体の障害が職務遂行上の障害とならないように職務の内容を工夫するなどしまして、就職差別のないように十分な指導を行い、円滑な就職促進を図っているところでございます。  先生今御指摘のように、障害者就職というのは大変困難な面がございます。私ども第一線の職業安定所においても、この障害者職業問題、障害者雇用促進については専門の職員を配置いたしまして、万が一にもこの障害者就職差別といったことのないように十分に指導しておるところでございます。
  384. 上田利正

    上田(利)分科員 御答弁いただきましたが、まだまだ問題があると思うのです。しかし、時間の関係もございますのでひとつお願いですけれども、私も山梨労働基準局の最賃委員やらその他やっております。山梨の基準局、監督署もいろいろな点で一生懸命やっております。一回この問題について、本省から来ていただいて実態をちょっと見ていただいて、そして親と子供に会ってもらって、それでまた労働行政に生かしてもらうということをぜひお願いしておきたいと思うわけでございます。よろしゅうございますか。——確認だけさせていただいております。時期やその他は、また別途ということにいたします。  次の問題は、もう時間がありませんが、先ほどもちょっと御答弁の中にありました育成医療費の問題でございます。  これは手術をいたしますと、片足やりますと五十万から六十万かかるのです。それで、十二歳で手術をして十八歳で終わってしまうのですね。これは今の法律では育成医療が適用されない。そうすると、高校生でも早生まれの高校生は——三年生でやる場合には、夏休みを利用するのが今うんと多くなったのです。何といったって、休んだといえば就職に響くものですから、夏休みの四十日間で手術をするのです。そうすると、四月から八月に生まれた方はもうだめなんです。育成医療費が適用されないのです。それで、家族のいわゆる国保でもってやるということです。  こういう形になって、三人もやるには、親は一時払いで百五十万も払わなければならぬ。後で高額医療ということで、今幾らですか……。そういうことで、高額医療のものは一たんは納めなければならぬわけです。したがってお願いしたいのは、この前五十六年の四月二十七日、園田厚生大臣のときに、親や子供が来まして厚生省に陳情いたしました。そのときに、当時の園田厚生大臣は親や子供に向かいまして、同じ病状でありながら年齢がかわれば支給の打ち切りをするということは、そんなものおかしいじゃないか。厚生省局長課長もおりました。局長課長、これはすぐ検討してちゃんとやりなさい。こうなってもう六、七年たつのでありますけれども、一向にそれが出ていない。  これは親としても非常に悩む。金がなければできないことですし、しかも自分もいろいろなことがかかるわけで、親も仕事を休んだりとかいろいろなことがありますけれども、ぜひ高額医療について、これが私の考えとして、お願いとしては、大学卒業までですから、標準でいきますと、浪人すれば別ですけれども、二十二歳まではぜひ高額医療を適用できるように、それ以上とは申しません、十八歳を二十二歳までにやっていただく。そうすると、大学卒業で、在学中に手術をする、一年、二年のときにやるという形も出てくる。これはおそくなればなるほどいいのです。ですから、就職したものについてはいわゆる共済とか国保で見ることになるわけでございますけれども、ぜひそういうことで高額医療を二十二歳までという、そしてこれらの一生懸命頑張っている人たち、親や子供を励まして、これが政治か、ああ、こういうのが政治だなという、こういうものをこれで実証させていただきたい、こう思いますが、最後に藤本大臣のお答えをひとつ聞きたいと思います。局長でなくて大臣のです、これは重要な問題ですから。
  385. 長尾立子

    ○長尾政府委員 恐縮でございますが、制度の仕組みだけ御説明をさせていただきます。  先生お話しの育成医療でございますが、これは児童福祉法の中で行われておる措置でございます。児童福祉法は、満十八歳というのを児童福祉法の体系の中で考えておりまして、本来育成医療は、例えば子供さんがお生まれになったときに口唇裂があるとか股関節脱臼があるとか、そういうものをお子さんが小さいうちに治療いたしませんと、大きくなってから障害が残りますので、そのときにお父様たち、お母様たちも収入が余りありませんから、その段階で医療費を負担いたしましてそういう医療を受けていただいてお子様に障害を残さないように、こういう趣旨で設けられている制度でございますので、そういう児童福祉法の体系ということを考えますと、ある一定の年齢の線は引かさせていただくということではないか、こう思うわけでございます。  児童福祉法全体として考えますと、十八歳ということですべての対策をやっておりますので、そういう意味ではなかなかに難しいということを御理解いただきたいと思います。
  386. 上田利正

    上田(利)分科員 それはもう百も承知でございまして、できぬことは承知なわけです、できぬからお願いをしているのでありまして、やはり本当にこういうのが政治だという、これが人間がやることなんですから、人間がいいと思ったら、しかもそれがそんなに何億も何十億もかかるという問題ではないのですから、生きた政治をやっていただくということでお願いをしておるのです。ぜひ、大臣の御所見をひとつお願いします。
  387. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 大変お気の毒な事情はよく理解をしておりますが、今の制度の中で、それにいかに対応していくかということになりますと、今局長が申し上げたようなことにならざるを得ないわけでございまして、その点について私なりに勉強してみたいと考えております。
  388. 上田利正

    上田(利)分科員 もう時間がございません。委員長、ありがとうございます。園田先輩の厚生大臣時代、園田大臣からもああいうものがございました。ぜひ検討をして前向きな形になるようにお願いして、質問を終わりたいと思います。委員長、御協力本当にありがとうございました。
  389. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて上田利正君の質疑は終了いたしました。  次に、草野威君。
  390. 草野威

    草野分科員 私は、社会福祉施設の防災対策についてお伺いをいたしたいと思います。  一昨年の七月、神戸市の養護施設陽気寮で火災が発生いたしまして、男子園生八人が焼死するという痛ましい事故がありました。また、昨年六月の東京東村山市の特別養護老人ホーム松寿園火災では、死者十七名、負傷者二十五名という大惨事が起きました。  この二つの施設は、消防用設備面、防火管理面でもさほど問題がない施設とみなされておりました。しかし、水準以上の施設から大量の死傷者を出したことは、防火対策面から見ても、現行の法制上、行政指導上の問題点が少なくないものと思われます。  そこで、我が党は昨年の九月、社会福祉施設の防災面の現状を把握するために、千葉県内の全社会福祉施設の防災対策についてアンケート調査を行いました。  その調査から明らかになった特色は、一つは、スプリンクラーはわずか六・六%しか設置されていない。二、防災対策で不十分である、十分でない面もある、この両方を合わせますと七三・七%になる。三、スプリンクラー、ワンタッチ通報装置などは、財政的に困難でも国、県から補助金が出れば設置を考えるというのが七四・九%になっていたわけでございます。  今、高齢化社会が進む中で、社会福祉施設の充実は大変重要な課題でございます。特に安全対策の面につきまして、ハード、ソフトの両面から緊急にその対応策を講じる必要があろうかと思います。  そこで、今二つの悲惨な火災事故につきまして申し上げましたけれども、これを教訓として、厚生省としてその後社会福祉施設に対する防火対策面につきましてどのような取り組みをされてこられたか、まず初めにお尋ねをいたしたいと思います。
  391. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 お話にございました松寿園の事故の反省の上に立ちましていろいろ手を打ったわけでございますが、まず、消防庁と共同で設置をいたしました社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会というところでの検討結果報告を踏まえまして、昨年九月に各都道府県に対しまして防火設備、消火設備の充実、夜間の防火管理体制の充実等につきまして徹底指導を通知いたしました。  同時に、六十二年度の補正予算等によりまして、自力では避難が困難な重度の方が多数入所する施設にスプリンクラー設備を設置することといたしまして、急遽四十七億円の予算確保したわけでございます。  また、六十三年度予算におきましては、いろいろな対策予算化しているわけでございますが、第一に、スプリンクラー設備を設置する経費として九十億円、箇所数で申しますと大体七百三十カ所程度でございますが、これを予算計上いたしました。  第二に、施設と消防署等に迅速かつ確実に火災等災害が発生したことを連絡して出動を要請できる非常通報装置、今先生のお話もございましたが、これを我々ホットラインと呼んでおりますが、これの設置に要する経費として十八億円、これは入所施設は全数七千百カ所全部でございますが、これを予算に計上しております。  第三に、夜間における巡視体制、それから地域住民等による防火支援協力体制の充実強化を図るために、社会福祉施設の措置費の中に総合防災対策強化事業というものを設けまして、これに約二億円を予算計上しております。  さらに第四としまして、スプリンクラー設備を設置した施設に対しまして、これは社会福祉・医療事業団から融資がございますけれども、その融資に当たりまして六十二年度から利子を徴しない、つまり無利子融資をするという措置も講じておりますし、償還期間も通常より長い二十年の扱いとする、こういったいろいろな対策を六十二年度、六十三年度において講じておるところでございます。
  392. 草野威

    草野分科員 厚生省としましても、防災面については非常に力を入れて取り組んでこられた、その点は評価をしたいと思います。特に予算面を見ましても、今御説明がございましたように、六十三年度で百十億円、昨年は当初予算ではゼロであったわけでございまして、非常に力を入れて取り組んでおられるな、こういう評価はさせていただきたいと思います。  そこで、いろんな対策を立てていらっしゃるようでございますけれども、まず、厚生省としてこの福祉施設の防災設備面について状況をどのように掌握されていらっしゃるか、掌握されていらっしゃいましたら御説明をいただきたいと思います。  それから、あわせて全国の福祉施設の数、また今回この防災対策重点的に取り組んでいる福祉施設の種類とか数、こういうものにつきましておわかりになっていれば御説明をいただきたいと思います。
  393. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 社会福祉施設における防災の現状でございますが、昨年の八月にスプリンクラーにつきましては調査をいたしました。その結果を申し上げますと、自力避難困難者が入所する施設、これは全部で四千八百三十六施設ございます。その中で、スプリンクラーが設置されていましたのは九十五施設でありまして、二・〇%でございました。また、今回の消防法の施行令の改正によりまして、新たに設置が必要となった施設は千八百七十一施設でございまして、率で申しますと三八・七%でございます。このうち、国庫補助で六十二年度に三百八十カ所整備をしておりますし、それから六十三年度、先ほど予算のことを申し上げましたけれども、その予算を使いまして六十三年度にさらに七百三十カ所を整備する予定でございます。以上がスプリンクラーでございます。  それからホットライン、非常通報装置でございますが、これは昨年の段階では、設置をしている施設はほとんどなかったと言っていいと思います。そこで、来年度予算におきまして、入所施設は全数六十三年度のうちにつけていただくということで、それに必要な予算措置を講じたところでございます。
  394. 草野威

    草野分科員 スプリンクラーとそれからホットラインにつきまして、今お話がございました。  そこで、先ほども申し上げましたけれども、我が党が昨年の九月、千葉県内の福祉施設につきまして調査をいたしました。かなりの量になりますが、簡単に調査結果を申し上げたいと思います、  この調査の対象は全部で百七十カ所ございまして、その内訳を見ますと、老人の福祉施設、これは特養を含めまして八十一カ所ございます。それから身障者の施設が十一カ所、それから精薄者の援護施設が二十四カ所、児童福祉施設が四十六カ所、その他の施設を含めまして全部で百七十カ所を対象としまして、調査を行ったわけでございます。  この調査内容を私どもなりにまとめてみました。こんなような結果が出ております。これは、主なものだけを拾いまして十二項目にまとめてみました。  その特色を申しますと、第一点は、スプリンクラーはわずか六・六%しか設置されていなかったけれども、消火器はすべての施設で設置されていた。  二番目は、防災対策は「不十分である」六・六%、「十分でない面もある」六七・一%。これは両方合わせますと七三・七%になりまして、約四分の三の施設が防災面では十分でない、こういう結果が出ております。  三番目は、ハード面で不十分な設備のトップはスプリンクラーです。それから、次いで非常用通報装置、防煙マスク、屋内外の消火栓、こういう順序になっております。  四番目は、ソフトの面で不十分な項目は「夜間警備体制」が一番多くて、その次が「夜間訓練」となっておりました。  五番目は、夜間警備体制は一人ないし二人というのが五六・五%、半数を超えておりました。  消防訓練は、年三回以下というのが一番多いようでございます。夜間訓練は年二回以下、これが五六・六%、最も多い数字でありました。  それから、「スプリンクラーの設置を必要と思う」七二・四%になっております。また、「ワンタッチ通報装置の設置を必要と思う」、これも八割を超えておりました。このスプリンクラー及びワンタッチ通報装置の設置の予定がないという人たちがこの調査の中に出てくるのですけれども、その理由としては「財政的に困難だから」、これがスプリンクラーの場合は八八・七%になっておりまして、ワンタッチ通報装置については七八・一%でございました。  屋内外の消火栓、スプリンクラー及びワンタッチ通報装置について「財政的に困難だから設置の予定がない」、こういう回答の中から、「国・県から補助金が出るときは設置を考えてもよい」、こういう答えが七四・九%を占めていたわけでございます。  以上が簡単な調査結果の内容でございます。  この調査結果に基づきまして質問を続けさせていただきたいと思います。  まず初めに、松寿園の場合、夜間の火災でございまして、数々の悪条件が重なった。特に、夜間の宿直管理体制に問題があったことが指摘されているわけでございます。このアンケートの調査の中にもありますように、夜間の警備体制は一人から二人というのが千葉県内の場合五六・五%ということで、半数を超えているわけでございます。また、夜間訓練は年二回以下、これも五六%ということで一番多い。こういうようなアンケートの結果が出ているわけでございますが、厚生省はこの先般の松寿園の火災等を見まして、夜間の宿直管理体制について何か問題がなかったのか、この夜間の管理体制について今後どのような指導を行っていくつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  395. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 福祉施設におきます夜間における職員の勤務体制でございますが、これにつきましては、施設の性格、規模あるいは介護需要の必要性等にかんがみまして、各施設の実態に応じた体制がとれますように、現在措置費で必要な予算措置を講じておるわけでございます。その予算措置の水準というのは、我々はおおむね妥当な線だと思っております。ただ、松寿園のケースに見られますように、実際に交付される予算の人員以下の勤務体制があるというケースもございますので、ぜひそれは措置費の積算に決められた必要な人員を配置するようにという指導をこれからは徹底してまいりたいと思っております。  それからさらに、先ほどもちょっと触れましたけれども、措置費の中に総合防災対策強化事業というのを設けたということは先ほどお話ししたとおりでございますが、この内容としましては、例えば宿直員の雇い上げとかあるいは近隣の人たちとの協力体制の確保とか、いろいろな面で使える予算としてこういう事業費を計上しているところであります。  それから、夜間における訓練でありますが、これは熱心な施設におきましてはかなり頻繁にやっておりますので、そういう意味では、実際に火が出ますと職員も非常に動転いたしますので、実際にやってみるということが大変必要だということが前々から言われていますので、これについてはさらに訓練の強化を行うように、その充実を図るように我々も指導を徹底してまいりたいと思っております。
  396. 草野威

    草野分科員 今の夜間の管理体制でございますけれども、厚生省のこの通達によりますと、こういうことですね。特別養護老人ホーム、定員が五十人の場合、宿直手当、これは宿直者というのですか、宿直手当一、それから当直手当が二、このようになっております。それから、身体障害者養護施設ですか、これも同じような数になっております。この特養ホームと身障者の施設、この二つについては宿直と夜勤が一名、二名、このような体制が目安として決められているようでございます。しかしそのほかの、養護老人ホーム以下その他の施設を見ますと、宿直者だけであったり夜勤者だけであったり、こういうふうになっているわけですね。こういう内容を見ますと、確かに寝たきりだけの人ではないのかもしれませんけれども、かなりのお年寄りの人それから身体障害者の人、精薄者の人、こういう施設でございますので、果たしてこういう体制で万全なのかどうか、こういうような危惧があるわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  397. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 今例に挙げられました養護老人ホームでございますが、これは虚弱ではございますけれども自分で避難できるという施設でございますので、これは宿直で足りるということだと思います。あと、重度の施設で確かに夜勤手当が出ていないところがございますが、これはいずれも三交代制とか二交代制をとっている、つまり夜中に勤務している、そういう形態でございますので夜勤手当は出ていない、こういうことでございます。
  398. 草野威

    草野分科員 やはり万が一ということを考えて、こういうことは考えてもらわなければならないと思うのですね。ですから、今までは規定も目安もそういうものは全然なかったわけでございますので全部任せっ放し、そういうことでああいう事故が起きた。私は、今アンケート調査を発表いたしましたけれども、これは去年の九月の時点ですから、厚生省のこういう指導がされる前の調査だと思います。そういう調査の時点で夜間体制というのは一人ないし二人というのが五六%ということで一番多い、こういう状況が出ているわけですね。したがって、この今の目安というものを見まして、果たしてこれでいいのかなという気がしてならないのですね。万が一ということを想定して、やはりもう少し十分な体制というものを考慮した方がよろしいんじゃないか、私はそのように思いますので、これは要望として申し上げたいと思います。  それからもう一つは、設備面でスプリンクラーの問題、先ほどお話がございました。千平米以上については今回から義務づけとなった。このお話を伺いまして、確かに今までは六千平米以上だったわけでございますが、遅きに失した感がございます。しかし、何といってもこのスプリンクラーの場合は、初期消火においてはもう最高の威力を発揮するわけでございますので、この設置はぜひとも必要であろうと思います。ただし、八十人収容の施設で何か一カ所三千万くらいかかる、こういうことですね。非常に高額のものでございまして、自己負担ということでは非常に無理だと思います。先ほど国の方でもかなりの補助をされるというお話でございましたので、もう一回その補助内容についてひとつきちっと御説明をいただきたいと思います。  それからもう一点は、このスプリンクラーの設置を義務づけておりますけれども、国としての補助対象の施設の種類はどこまででしょうか。例えばこういうものは除くんだとかそういうものがありましたら……。
  399. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 後の方の御質問からお答えしますが、先ほど申しましたように、自力では避難することが困難な、いわば重度の方が多数入所している施設でございます。十五種類ございますが、例えば特別養護老人ホーム、身体障害者の養護施設、重症心身障害施設、そういうものが十五ございますが、要は、自分では避難できないという重度の方が入られておられる施設、こういうことでございます。  それからあと、スプリンクラーを設置する際の予算措置でございますが、これは国が二分の一出しまして県が四分の一出す、四分の一が自己負担になるわけでございますが、これも先ほど申しましたように、自己負担分につきましては社会福祉・医療事業団からの融資に当たりまして、無利子融資という特例をつくっておるわけでございます。
  400. 草野威

    草野分科員 平家の場合でも融資の対象になりますか。
  401. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 平家につきましては、消防法令では義務づけされておりませんけれども、施設等の立地条件等によりまして、特に緊急に整備する必要があるということであれば、国庫補助の対象にしたいと思っております。
  402. 草野威

    草野分科員 もちろん木造ではなくて、内容も五十人以上の人を収容しているきちんとした施設であって、やはり安全上スプリンクラーを設置したい、こういうような希望する施設については厚生省の方としては補助の対象にしたいと思う、こういうお話でございますけれども、実際に我々が耳にすることは、都道府県の段階においてはやはりそういうものはだめだ、こういうような例が幾つかあるようでございます。そういう点いかがでしょうか。
  403. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもとしては国庫補助の対象にしたいと思っております。もし個別に何かございますれば、御連絡をいただければ私の方で調べます。
  404. 草野威

    草野分科員 スプリンクラーについて設置の考え方が、先ほどお話ございましたけれども、三年計画で進められるということでございますが、各年次ごとの施設の数、もしおわかりになったら示していただきたいと思います。
  405. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先ほど申しましたような対象施設が全体で千五百四十カ所ございます。それを六十二年度、六十三年度、そして六十四年度と三年間で全施設にスプリンクラーを設置したい、こう考えておるわけでございます。六十二年度は既に実施済みでございますが三百八十カ所、六十三年度予算に計上しましたのが七百三十カ所、残りが四百三十カ所でございますが、これを六十四年度に設置をしたいというのが我々の計画でございます。
  406. 草野威

    草野分科員 三年計画でスプリンクラーの設置がすべて完了する、このように了解してよろしいですね。それから、スプリンクラー以外に厚生省として、特にそのほかに重点的に指導しているものはどういうものがございますか。
  407. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 一つは、これも繰り返しになりますけれども、ホットラインでございます。非常通報装置、ボタン一つ押せばすぐその施設から消防署へ連絡がいくというものでございますが、どうしても火災が起きますと職員も動転いたしまして、なかなか電話がかかりにくい、そういう反省もございまして、ボタン一つですぐ通報できるという装置を今度六十三年度予算で、これは入所施設全部でございます。一年間で全部つけてしまおうということで、これを推進したいということが一つ。  それからあとは、設備面で、ハード面でいいますと、防災対策配慮した施設の内部改修というのがございます。例えば居室とベランダの間が、せっかくベランダがついておりましても段差があるものですから、なかなか車いすが出ないとかいうケースもございます。それから、自力では避難が困難な人の居室を例えば一階の方に移せば安全性が高まるわけでございますが、そういった面でも改築が必要な場合がございます。そういった防災対策配慮した施設の内部改修をする場合には予算で補助をしよう、こういうこともやっておりますので、これも推進をしたい。さらに、ソフト面でございますが、これも前に申し上げましたが、総合防災対策強化事業というのが予算化しておりますので、これの有効活用ということを指導してまいりたい。大体こんなことが残された問題だと思います。
  408. 草野威

    草野分科員 最後にお尋ねします。  もう一つ、職員の定員の問題なんです。職員の定員の基準というものがもちろん決まっているわけでございますけれども、現在の基準で果たして十分なのかどうかという問題なんですね。お話を伺っておりますと、十分ではないかということなんでございますけれども、やはりこれは我々が直接いろいろ耳にするところによりますと、決して今の人員では十分とは言い切れない、こういうような声が非常に強うございます。したがって、この職員の定員の基準の面につきまして、やはり見直しをすべきじゃないかな、検討すべきじゃないかな、このように私は思うわけでございます。  例えば、ヨーロッパの場合、収容されている老人の数と職員の数と比べますと、収容される老人の数にほぼ近い職員の数が配置をされている、こういうところが非常に多いということを伺っております。日本の場合は、それに比べるとかなり開きがある。そういう面からもう一回見直すべきではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
  409. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先ほども申し上げましたけれども、各施設の職員の配置基準と申しますのは、措置費で全部手当てをしているわけでございまして、そのレベルというのは、私は決して低いものではないというふうに思います。現に施設関係者からもいろいろお話を伺いますけれども、職員が少ないという声は余り聞かないわけでございます。ただ、強いて言えば、夜間の勤務体制がやや難しいという面は一部にあるように思いますけれども、それは先ほど来申しておりますようなハード面の充実あるいは措置費の充実等によりまして十分カバーできるものではないか、このように考えております。
  410. 草野威

    草野分科員 最後に、大臣に申し上げたいと思いますが、今いろいろとお尋ねいたしましたけれども、福祉施設の悲惨な火災事故、こういう事故は二度と再び起こしてはならない、当然だろうと思います。したがって、全施設の防災設備のハード、ソフト両面からの充実がこれから大変重要になってくると思います。中でも特養老人ホーム、精薄児、こういう自力で脱出が困難な人の施設については、その実態を十分に把握しながら、今後も対策を強めていかなければならないと思いますけれども、こういう面につきまして大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
  411. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘のとおり、昨年六月の松寿園のあの痛ましい事故を教訓にいたしまして、二度とこのようなことが起こらないように万全の対策を全力を挙げて講じてまいりたい、かように考えております。
  412. 草野威

    草野分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  413. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて草野威君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  414. 新村勝雄

    新村分科員 最初に、いわゆる診療報酬を担保にして金融を受けているという問題があるわけでありまして、これについてかなり問題になっておるわけであります。これについては去年の二月に質問主意書で当局の御見解をただしたわけでありますが、そのときもそういった状況についてはお認めになっておる。そして、その後善処をするということだったわけでありますが、その後になりまして、昨年の末になりまして、また同じような事犯が発覚をし、しかも逮捕されるという事態になったわけでありますが、この問題について当局はどういう認識を持っておられるのか、また現状をどういうふうに把握をしておられるか、まず伺いたいと思います。
  415. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ただいまおっしゃいましたような事案が幾つか出たという事実は承知しておりますし、先生からも質問主意書を二回にわたってお出しいただいたことも十分承知をしているわけであります。  その中で、私どもといたしまして今後適切に指導するということでお答え申し上げたわけでございますが、その具体的内容について申し上げますと、私どもとしては、医療機関が健全に経営されることは、その地域の医療を確保するという観点で非常に重要だという認識のもとに、健全経営についての指導をしてまいってきておるわけでございますが、これは医療監視の機会をとらえたりいたしましてやっておるわけでございます。昨年の貸金業法等の違反の業者検挙事犯があった後には、改めて指導の徹底を図る通知を都道府県にお出ししたところでございますし、また全国の衛生部長会議においても、医療機関に対する指導の徹底を指示したところでございまして、今後ともこのような方向で努力を引き続きしてまいりたいと思います。  また、そういう場合に一番迷惑をこうむってならないのは、そこの病院に入っておられる患者さんでございますので、そういう医療の確保の点につきましても、地域の実情をよく勘案しながら、患者さんに迷惑のかからないようにということで、個別に指導してまいりたいと考えております。
  416. 新村勝雄

    新村分科員 そういう事態がかなり多数見られるわけでありますけれども、現在どの程度であるか。件数、それから金額の累計を伺いたい。
  417. 仲村英一

    ○仲村政府委員 最近三年の数字をちなみに申し上げさせていただきますと、病院と診療所とを合わせまして、六十年には四十七件、三百七億一千六百万、六十一年が五十件で二百二十七億八千八百万、六十二年が三十九件で百四十億四千万でございます。  病院の件数だけ申し上げますと、六十年が十一件、六十一年が八件、六十二年が六件ということでございまして、若干減少しております。ただいまのは倒産の数字でございます。
  418. 新村勝雄

    新村分科員 今のお話ですと、年度ごとに若干減少の傾向ということは結構なわけでありますけれども、依然として後を絶たない。しかも昨年末には検挙者を出す。検挙されたことについては、これは貸金業法違反ということで、この問題と関係はありますけれども、この問題の本質とは違うわけですけれども、それにしても、これに関連をして逮捕者を出したということでありますから、決して好ましいことではないわけであります。  そこで、減っているということで、その点はいいのですが、去年の十二月十八日にいただいた答弁書によりますと、当局の姿勢が甘いように思うのですね。こういう事態は明らかに健全な医療体系を毒する、害することは疑いのないことでありまして、こういうことは本来根絶をしなければいけない性質のものであります。ところが、「当該医療機関の医療の質の低下が生ずるかどうかについては明らかでないが、」と、こういう甘い認識なんですよね。そうじゃなくて、たとえ一件でもこういうことがあることは医療の質を低下させることはもちろんでありますから、こういう事態が発生した病院の経営者はもとより、職員もこういう事態に病院が巻き込まれた場合には、本来の仕事どころではなくて、金策に奔走しなければいけないという事態になりますから、したがって、直接被害を受けるのは患者ということですから、「質の低下が生ずるかどうかについては明らかでないが、」という認識ではまずいと思うんですね。そこらをもう少し厳しく認識をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  419. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御指摘のように、医療機関がこのような状態になること自体、私どもとしては決して好ましいと考えておりません。ただ、病院長さん等経営側に、患者に対する医療提供以外に、これは一つの企業体としての経営ということもあるわけでございまして、そういう関係の乖離が起きて、単純に暴利の金融に乗ってしまって、後で乗っ取られるとか、いろいろな事案があるのではないかと考えておりますので、そういう観点から「医療の質の低下が生ずるかどうかについては明らかでない」という表現を使わせていただいたつもりでございますが、もちろん放漫な経営によって医療の質が低下するとか、いろいろ直接間接にそういう問題点も起こり得るわけでございますので、今後私どもとしては、このようなことのないように、経営管理の指導というものをもっと徹底すべきではないかということで、おっしゃるようなことで努力をしてまいりたいと考えております。
  420. 新村勝雄

    新村分科員 それで、この事態についてはもう少し厳しく受けとめていただきたいということですよね。「好ましいことではない」、「医療機関の医療の質の低下が生ずるかどうかについては明らかでない」、これは明らかなんですけれども、「明らかでない」という非常に甘い認識。それからまた「医療機関の経営にとって好ましいことではない」、これはまた極めて甘い認識であって、「好ましいことではない」どころではなくて、これは絶対に根絶をしなければならないことだと思うんですよ。そういうことで、もう少し厳しく受けとめていただきたいわけです。  それと問題は、将来生ずべき請求権を担保にすることについては、これは裁判所の判例では一般的には許されている。その一般的というのは、一般の経済取引あるいは一般の経済活動における将来生ずべき債権ということだと思うのですね。そういう原則があったにしても、医療については許すべきではないと思うんですがね。これは御承知のように、まだ実現しない将来の診療報酬を担保にするわけですから、その病院が正常に今までの実績どおりに運営されていた場合に生ずるだろうということ、生ずるだろうという推定はされますけれども、生ずるかどうかは不確定なわけですね、かなり不確定である。そういう将来の請求権を担保にすること自体、これは一般の経済活動とは違う性質のものだと思うのですけれどもね。その点はいかがでしょう。
  421. 下村健

    ○下村政府委員 最高裁の判決でございますが、診療報酬の譲渡については、将来の診療報酬であっても、それほど遠い将来のものでなければ、始期と終期を特定して、その債権の範囲を確定することによって、これを有効に譲渡し得るということになっているわけでございます。過去の診療報酬については当然譲渡し得るということを前提にしての話でございます。  医療については一般と多少違った面があるのではないか、これは確かに考えられることでございます。しかし反面、医療機関自体もいろいろな経済活動の主体になっておりまして、金を一切借りるな、それから金を借りた場合に、その担保として診療報酬を充てるな、これを全面的にやるということもなかなか困難でございます。それでは、そういう暴力団が絡むような不良金融の金を借りるな、これは指導でできる限り私どもとしては徹底してまいりたい、このように思っておるわけでございますが、法律上の問題といたしまして、これを禁止するということは、先生の御指摘も受けまして私どもいろいろ考えてみましたけれども、なかなか難しいのではないか、このように思っております。
  422. 新村勝雄

    新村分科員 それは一つの理屈であって、それがそういう形でどうやら運営がされている、あるいは制度が維持をされているということであればいいんですけれども、実際はそうではなくて、それが契機になって病院が破産をした。その破産をした病院が乗っ取られる。その背後に暴力団がいるという実例がたくさんあるわけですね。こういう実態にかんがみて、ただ最高裁の判例があるからいいんだということでは済まされないと思うのですがね。ですから、そこに何らかの規制なり強力な指導が必要だと思いますが、大臣はどうお考えですか。
  423. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 なかなか難しい問題だと思いながら拝聴しておりました。しかし、このような事例が起こることはまず遺憾なことでございまして、それはぜひとも避けなければならぬ、それに対してどこまで行政としてかかわりができるのかなということだと思うわけでございますが、まず第一番目の問題としては、経営悪化というものがその背後にあるわけでございますから、経営指導ということについてもっと強力に関与できないかなという気持ちが先ほどもしておりました。  それから、今の法律的な問題については、下村局長の答えたこと、なかなか難しい問題でございまして、いろいろ検討した結論としてはやむを得ないのかなというふうに考えております。
  424. 新村勝雄

    新村分科員 現在の医療機関の経営というのは、一時と違って必ずしも楽ではないのですね。将来の診療報酬が普通に入ってきても経営は大体いっぱい、そんなに残るほどの収入はないわけですね。ですから、一たび将来の報酬が押さえられるということになると、全面的ではないにしても、半分あるいは三分の一押さえられるということになると、病院の経営は危機状態になることは必至ですよね。そうなると、そのしわ寄せが直接患者に及ぶということですから、これは一般的な議論で論ぜられる問題ではなくて、何らかの強力な指導が必要だと思うのですが、この答弁書によりますと、「医療の確保に支障の生じないよう、必要に応じ、適切に指導してまいりたい。」ということですが、適切な指導をしておられると思いますけれども、具体的にはどういう指導をなさっておりますか。
  425. 仲村英一

    ○仲村政府委員 経営指導というのはもちろんなかなか難しい部分もあるわけでございますが、私ども経営管理指導内容について昨年の八月に通知を出しておるわけでございます。その中では、財務管理をもっと強化をしたらどうかということでの通知が出されているわけでございまして、具体的にそういう場合には、内部監査をよく実施することでございますとか、経営あるいは財務に関する講習会とか研修会がいろいろやられておりますので、そういうところへ管理者あるいは事務担当責任者等が積極的に参加していただくよう、あるいは自分の病院の経営成績の分析をみずから行う等の経営の合理化、健全化に努めるというふうなことを県を通じて指導したりというふうなこと、あるいは昨年の十一月には、ただいまお尋ねの医療機関に対する金融業者の出資金法等違反による事件があった際でございますけれども、医療機関の経営にとって好ましくないという観点から、患者の医療の確保に重大な支障を及ぼすことのないように、都道府県を通じてさらに指導を図ったらどうかということでの通知を出しております。  それから、ことしの一月になりまして、全国の衛生部長会議があったわけでございますが、その中でも同様なことで、医療機関に対する出資金法等違反の貸し付けまたはそのあっせん、診療報酬債権を担保とすること、または譲渡すること等で医療機関の経営にとって好ましくない事例が見受けられるので、そういうものについて地域医療の確保という観点から、さらに指導を徹底して、病院の経営の健全化を図ってもらいたいということで通知を出しているわけでございます。なかなか個別の事例につきまして私ども立ち入るということの限界もあるわけでございまして、おっしゃるように、皆無にはなっておらないわけでございますが、今後ともそういう観点あるいは病院団体等を通じての指導等を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  426. 新村勝雄

    新村分科員 次第に件数、金額も減っているということについては、これは結構なことでありまして、ぜひこの問題に注目をしていただいて、望むらくは一件もない方がいいのでありますから、これをなくするように御努力をいただきたいと思います。  次に、廃棄物の問題ですが、廃棄物については廃棄物の処理及び清掃に関する法律がございます。さらにそれに関連をする省令等もありまして、一応の整備はされているわけでありますけれども、実際には必ずしもそのルールが確立をされていないという実態がございまして、特に大都市圏、東京圏の産廃あるいは時によっては一般廃棄物あるいは残土というようなものが特定の地域、特に千葉県がその被害を大きく受けている実態があるわけであります。こういう実態について当局はどういうふうに把握をされておりますか。
  427. 古川武温

    ○古川政府委員 東京から千葉の方へ建設の残土あるいは産業廃棄物が動いているという御指摘でございますが、そのとおりでございまして、東京都産業廃棄物処理実態調査報告書にもございます。ちょっと古いものでございますが……。また、私どもの方で東京都の方からヒアリングした結果でも、ほぼ同じような数字が出て、東京から産業廃棄物でいうと八〇%ぐらい、残土ですと五〇%、大変な問題だと思っております。  今、委員指摘の点でございますが、問題が二つあるように思います。  一つは、建設残土と称して東京から千葉に建設廃材等の廃棄物あるいは一般廃棄物のお話もございましたが、多量に流れているというお話でございますが、この廃棄物が混在する建設残土というものは、廃棄物処理法に規定する廃棄物として処理しなければなりません。残土ではございません。したがいまして、所定の基準に従って適正な処理をしなければならないものでございますし、これは県、都のそれぞれの所管において厳正に対処しなければならないし、そのようにこちらも指導していかなければならない、こう考えております。  それから、そういう大きな量が東京都から動いているわけでございますが、産業廃棄物の適正処理を確保するために最終処分場の確保が極めて重要であるということは十分認識をしておりまして、各都道府県等を指導してまいっておりますが、さらに強力に指導していかなければなりません。ただ、この廃棄物の処理につきましては、東京都の首都圏というふうな考え方に立ちますと、その首都圏の中で処理できるのは、近畿圏も同じように九八%あるいは九九%、大きな量が圏域内では処理できておりますが、各県ごとに見ますと、それが六〇%であったり、今申したように八〇%であったり、こういうふうなことでございます。したがいまして、この点に関しましては、運輸省と共同して、首都圏につきましては東京湾フェニックス計画、こうした基本構想を昨年四月ですがまとめまして、関係の地方公共団体に提示をし、その実現方を働きかけておるところでございます。今後とも所要の調整に努力してまいりたいと思っております。
  428. 新村勝雄

    新村分科員 フェニックスの話が出ましたけれども、これは十分に事前の準備をし、地元自治体との協議を十分にしていただかないと、また拒否反応があらわれるということになると思います。  それと、これはエゴを言うわけじゃありませんけれども、首都圏の中で千葉県だけが今おっしゃったように、大量の東京のごみを引き受けておるわけですから、これは政治的な配慮がなければ地元としても納得ができない問題であります。またフェニックスにしても、十分な準備と地元との協議をぜひお願いをしたいと思います。最初からすべて拒否ということは申し上げませんけれども、大変難しい問題であるということをまず御認識をいただきたい。  それから、時間がありませんので、簡単に申し上げますが、要するに、ごみ処理のポイントといいますか、その基本は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第三条でありますが、「事業者の責務」の二項の後ろの方に「製造、加工、販売等に係る製品、容器等が廃棄物となった場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。」ということですから、いわゆる過剰包装であるとか、包装用具にしても包装資材にしても、処理に困るような資材はつくらない。つくるのだったらつくった者が責任を持って末端における回収をするというくらいの強い指導、あるいはこの三条をもっと改めて、メーカーが最終処理をするというようなルールをつくらなければ、これは地方自治体の負担になるし、大きく言えば税金のむだ遣いということになって大変なことになると思うのです。これからは地方自治体においては各家庭の協力を得てできるだけ完全な分別をしていくということ。ごみ処理の問題は、分別が完全にできれば八割方解決だと言われておりますから、分別をするということ。それから事業者の責任をもっと明確にして、それを製造した事業者が末端の回収まで責任を持つ、あるいはそれができないのだったら、そういう手間のかかるあるいは処理の困難な品物はつくらない、こういうルールをつくっていかなければ行政費だけがかさんでどうにもならないということだと思います。  そういうことで、ごみ処理についての一つの転機に今来ているのではないか。今までは大量消費、したがって大量投棄、大量焼却ということをずっと言っていたわけですけれども、これからは大量消費にしても、その消費の質を変えていく、最終処理が最も容易にできるような品物あるいは包装を考えていくということが必要だと思うのです。今までのような大量投棄の繰り返しでは、行政費だけがかかってどうしようもないという事態になると思いますが、その点いかがですか。
  429. 古川武温

    ○古川政府委員 委員指摘のとおりでございまして、地方自治体、我々、また事業者ともに努力していかなければならない。特に御指摘の三条関係でございますが、「事業者の責務」というのを明確にされております。この件につきましては、昭和五十八年でございましたが、生活環境審議会で答申がございまして、具体的な処理のあり方について検討する必要がある、こういうふうな答申をいただきまして、この審議会の中に廃棄物調査専門委員会を設置いたしまして検討してまいりました。  その要点は、処理困難な廃棄物について、その事業者による自己評価実施したらどうか、こういうふうなことの具体的な検討でございまして、六十二年六月にそのガイドラインとしての報告がまとまりましたので、早速昨年暮れ、十二月でございますが、所要の通知を出しました。そのガイドラインが有効に実施されるよう努めておるところでございますが、昨年末にそうしたものをまとめております。それで尽きることではございませんので、委員指摘のようなことで我々も努力してまいりたいと思っております。
  430. 新村勝雄

    新村分科員 時間がありませんけれども、ごみ焼却場の設置について住民との間にしばしばトラブルを起こす例がございます。焼却場は必要なものでありますから、住民は受忍をしなければいけないわけでありますけれども、なかなかそうもいかない場合もあります。  それから、何よりも住民に納得をしてもらう、説得をする。その説得も通り一遍のものではなくて、粘り強く説得をして、最後にどうしてもだめだという場合には、これはまた別の考えがあるでしょうけれども、でき得る限り辛抱強い説得を続けることが必要ではないかと思うのです。それででき得る限り、いわゆる迷惑施設の設置については、住民の反対がある場合には強行しない。一人も反対がなくなるまで待つということは難しいと思いますけれども、一定の勢力が反対をしている場合には強行しない。その問題のある自治体にはよく指導をして、強行しないように、政府として、大臣として、そういう方針をひとつ堅持をしていただきたいということをお願いをいたしておきます。  大臣からも、ひとつその問題についてのお考えをいただければ幸いと思います。
  431. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 一般的なお話でございまして、私も一般的にお答えせざるを得ないわけでございますが、大勢の住民のために必要な施設、しかしそれは非常に迷惑施設だ、それを建設するということは行政の大きな責任だと思います。  しかし一方で、御指摘のように、それについていろいろ意見が分かれる、そういう段階においては粘り強く説得をし、その施設をつくっていくという姿勢は当然のことだと思います。
  432. 新村勝雄

    新村分科員 終わります。
  433. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて新村勝雄君の質疑は終了いたしました。  次に、春田重昭君。
  434. 春田重昭

    春田分科員 私はアスベストの問題でお伺いいたします。  アスベストの問題につきましては、各省庁、また各都道府県等非常に広範に広がっております。厚生省は、昨年の十月二十六日、「アスベスト廃棄物の処理について」、さらにことしに入りまして二月一日、「建築物内に使用されているアスベストに係る当面の対策について」ということで、いずれも環境庁と共管して都道府県に御通知をなさっております。そういった観点から大臣並びに政府委員に御質問いたしたい、こう思っておるわけでございます。  アスベストの粉じんを吸入いたしますと、じん肺とか肺がんとか中皮腫等の疾病の原因になると指摘されているわけでありますが、このアスベストと疾病の因果関係につきまして、大臣はどういう御認識、御見解をお持ちなのか、まずお伺いしたいと思います。
  435. 古川武温

    ○古川政府委員 大臣の御答弁の前に、医学的な面について申し上げたいと思います。  アスベストの健康被害につきましては、非常に古い歴史がございます。当初は、労働環境の場でじん肺の一つとしてアスベスト肺、こういうふうなものが問題になったわけでございます。  現在問題になっておりますのは、そうした高濃度の汚染ではございません。低濃度の非常に長期間をかけてじわじわ来る障害、健康被害があるのではないか、こういうふうなことでございまして、二十年あるいは四十年という長期間を経た上で肺に吸収されて、肺の中に残っております繊維をもとにするのでしょうか、肺がんの発生あるいはこれに類似する悪性新生物の発生が見られます。このようなことでございます。
  436. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今局長からお答え申し上げましたとおりでございまして、私といたしましては極めて重要な問題であると認識をいたしております。
  437. 春田重昭

    春田分科員 ことしの二月一日に出されました当面の対策の中でも、固定された状態、いわゆる空気中に浮遊しない状態では健康障害はないであろう、こういった考えが示されているわけでございますが、アスベストの製品製造の現場、また廃棄物の処理場、こういった発生源の周辺等には非常に高い濃度のアスベストが環境庁のモニタリングの中でも出ているわけですね。  そういったことで、こういった発生源の周辺に従事する方々、しかも長時間といいますか、長期間労働に従事する方たちの健康被害、これはもう全く心配ないのかどうか、現時点でどのように御認識なさっておりますか。
  438. 古川武温

    ○古川政府委員 労働衛生の場、そうしたじん肺が発生する場のお話がございました。それにつきましては、ILOの提言もあり、昔からありましたものを、その勧告に従って労働省は逐次改正しながら、その規制をしてきているところでございます。
  439. 春田重昭

    春田分科員 環境庁がおいでになっておりますが、これは六十年度にモニタリングをおやりになっております。私は、こういった発生源の周辺等では非常に高い濃度が出されておりますから、今後ともそういったアスベスト疾病等の原因等のことをきめ細かくやる必要があるのではなかろうかと思っておりますが、どうでしょうか。
  440. 浜田康敬

    ○浜田説明員 環境庁におきましては、今も先生指摘のとおり、昭和六十年度に全国的なモニタリング調査というのを実施いたしました。環境大気中のアスベスト濃度の測定を行ったわけでございます。  その結果では、従来やっておりました結果とほぼ同様のレベルでございまして、私どもといたしましては、一般環境におきますアスベストの健康へのリスクというのは小さいのではないかという従来からの判断は、それでもって変わってはおりません。  しかしながら、先生指摘のとおり、その調査におきましても、一部他と比較しまして、やや高いような値も発生源周辺で見られるということもございまして、それにつきましては、六十二年、昨年の三月でございますけれども、関係省庁等に対しましてできるだけ排出を抑制してほしいという要請を行っておりますし、また本年度には、そうした発生源周辺におきますより詳細な調査を環境庁として実施しておるところでございます。  今後は、これらの調査結果も踏まえまして、必要な対策をさらに検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  441. 春田重昭

    春田分科員 昨年から社会問題になりまして、各省庁並びに各都道府県においてはアスベストが建築物に使用されているかどうかの実態調査を行っておりますけれども、厚生省としてそういったものを把握しておりますか。
  442. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 特別養護老人ホームあるいは保育所などの社会福祉施設につきましてアスベストの使用実態を調べております。これは昨年十二月に実施したわけでございますが、その結果を見ますと、アスベストを使用している施設は全国の社会福祉施設総数の二・四%に当たる九百五十八カ所でございました。そのうち全面あるいは部分的に表面が剥離しておりまして、緊急に対策を講ずる必要があると思われる施設は三百十カ所でございました。
  443. 春田重昭

    春田分科員 当然厚生省所管の施設についてはお調べになっていると思いますが、他の省庁並びに都道府県のそういった実態調査を吸い上げて、厚生省として一本でそれを把握しているかどうかということです。
  444. 古川武温

    ○古川政府委員 この問題については、委員の御質問の中に含まれておりますように、それぞれの責任は各省庁に分かれております。そこで環境庁が音頭をとりまして連絡会等を開きまして進めております。  そこで、健康については厚生省が一括把握しろ、こういう御趣旨であろうと思いますが、厚生省の中における窓口、生活衛生局長がやっておりますけれども、各省庁の状況を一本に集めるというところまではいっておりません。
  445. 春田重昭

    春田分科員 環境庁、どうでしょうか。
  446. 浜田康敬

    ○浜田説明員 先生指摘の建築物内の吹きつけアスベストの実態調査に関しましては、お話しのように、各省庁がその所管に応じまして実態調査を逐次やっておるところでございまして、今も厚生省の方からの御答弁にもありましたけれども、そうした調査結果など、適宜連絡会議等を持ちまして情報交換を行っているというようなことでございます。今後ともそうした情報交換を密にしながら、できるだけ関係省庁間の連絡がよくなるよう私どもとしても努めてまいりたいというふうに考えております。
  447. 春田重昭

    春田分科員 私は連絡会を持つことについて否定するわけじゃない。情報交換も必要でありましょう。しかし、やはり政府として一本で、こういったいわゆる大きな社会問題になったアスベストの問題につきましては、厚生省なり環境庁が窓口になって、当然各省、各都道府県が実態調査をやっているわけですから、これを吸い上げてまとめるぐらいの前向きの姿勢でやらなければならないと思うのです。なぜかといえば、実は文部省は、学校施設が相当クローズアップされましたから、これは昨年実態調査をやりまして、もう既にいわゆる処理工事を行っているところもあるわけです。幼稚園等も実態調査を終わりました。また厚生省は、先ほど言われたとおり、老人ホームまたは保育園、精薄や身障の施設でそういった実態調査を行いまして、今年度からそういったいわゆる処理工事を行おう、こういった形になっておるわけでございますが、その他各省の対応がまだそこまでいってないところもあるのですね。  例えば、きょう建設省の方がお見えになっていると思いますので、お伺いをいたしますが、建設省所管の場合は公共住宅並びに市役所等の営繕の建物等があると思いますが、この実態調査は進んでいるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  448. 梅野捷一郎

    ○梅野説明員 お答えいたします。  私どもの所管の中で公営住宅等の公共住宅がございますけれども、これにつきましては、昨年の暮れから吹きつけアスベストの使用の有無を把握しようということで調査実施しております。全体的な調査の取りまとめはまだ最終的には終わっておりませんけれども、既に一部の団地におきまして、吹きつけアスベストの使用というものが把握されてきております。  それから、官公庁施設の中の私どもが所管しておりますいわゆる国の施設でございますが、これにつきましても、今年度内に把握しようということで、現在調査実施している最中でございます。
  449. 春田重昭

    春田分科員 ただいま答弁のとおり、調査は行っているが、結果は出ていないわけですね。  時間がございませんので、こちらから説明いたしますが、建設省においては数多くの市営住宅や府営住宅、いろいろな公共住宅、公団等の住宅もあるわけですね。こういったいわゆる実態調査もまだ明らかになっていない。しかも、六十三年度予算の中では、こういった吹きつけ塗装等の処理につく補助金等もまだ明確に、厚生省なり文部省と同じようなそういった補助金がついていないわけです。こういったように、各省によって対応は違うわけですね。終わったところ、もう既に工事を行っているところ、実態調査をやって六十三年度補助金をつけるところ、こういったいわゆる早い遅いがある。こういったことで、政府として窓口を一本化にして、アスベストがいかなるところで使われているか、そしてそれをいつごろまでに計画的に工事を行っていくのかという把握が必要じゃなかろうかと私は思うのです。それがばらばらになっているという状況でございますから、厚生省なりまた環境庁がその窓口になりまして、いわゆるばらばら行政でないようにしていただかなければならないと私は思うのです。大臣、どうでしょうか。
  450. 古川武温

    ○古川政府委員 この件につきましては、環境庁の方から答弁するのが適当かもしれませんが、現在環境庁が世話役となって連絡会を持っております。こうしたことで、それぞれの事業等につきまして連絡しながら対応することによって、今後も委員指摘のようなことがないようできるだけ前向きに進めてまいりたいと思っております。
  451. 春田重昭

    春田分科員 環境庁、どうですか。
  452. 浜田康敬

    ○浜田説明員 先生指摘の点も踏まえまして、今後とも関係省庁と十分連絡をとって適正に対処するよう努めたいというふうに思います。
  453. 春田重昭

    春田分科員 建設省にさらにもう一点だけお伺いいたしますが、吹きつけ塗装の処理については三通りある、こう言われております。一つは、カバーリング処理、二番目は封じ込め処理、三番目は完全な除去処理、この三通りでありますが、これが当面の対策として出ている。状況によってそれぞれの処理を行いなさい、こういったいわゆる通知、通達が出ているわけです。しかし、一番のカバーリング、二番目の封じ込めといっても、これはやはり将来的にアスベストが飛散するおそれがある。そういった面で完全除去が一番必要ではないかと私は思うのですけれども、この辺のお考えはどうでしょうか。
  454. 梅野捷一郎

    ○梅野説明員 お答え申し上げます。  ただいまお話しございましたようないろいろなやり方があるわけでございますが、私どもただいまできれば今年度中というようなことを考えておるわけでございますけれども、その吹きつけアスベストの診断、どういう状況であるか、それに応じてどういう改修の仕方、やり方があるかというようなことを、技術的な問題を含めてなるべく早く取りまとめようということで検討中でございます。そういう結果を受けまして、さらに実態との突き合わせ、先ほどの吹きつけアスベストがあるかないかというような調査、一時的に現在やっておりますけれども、さらに実態と今申し上げました検討中のものを突き合わせをしまして、どうやるかというようなことで進めていきたいというふうに現在予定をいたしております。
  455. 春田重昭

    春田分科員 なるべく早い時期ということで御答弁ございましたが、会期中にそういった方針が出るのですか。
  456. 梅野捷一郎

    ○梅野説明員 先ほど申し上げました診断、改修技術というのはできるだけ早くということでございまして、できれば年度内とかそういう単位でのなるべく早い機会ということを目標にいたしております。
  457. 春田重昭

    春田分科員 建設省結構です。  続きまして、労働省の方がお見えになっておりますので、そちらにお伺いいたします。  アスベストを処理する施工業者がいるわけでございますが、施工業者が非常に不足して需要に対応できないのではないか、間に合わないのじゃないかというふうに一部報道されております。そういった懸念はございませんか。
  458. 冨田達夫

    ○冨田説明員 施工方法につきましては、昨年六月から具体的な作業方法等について講習会その他業界指導をやっております。この結果に基づいて十分対応できる体制をつくりつつございます。
  459. 春田重昭

    春田分科員 この施工業者は国の資格というのが必要なのでしょうか。
  460. 冨田達夫

    ○冨田説明員 業者に対する資格はございませんけれども、作業を行う場合に、一定の講習を修了した者を特定化学物質等作業主任者といいますが、その者を選任して、その者が労働者を指揮し、また保護具の着用状況等を監視するなど直接的管理を行うよう義務づけております。
  461. 春田重昭

    春田分科員 施工業者には現場監督として特定化学物質等作業主任者の選任が必要である、こうですね。作業主任者がいない施工業者というのは、例えば公共事業等では当然指名されないし受注できない、こう考えていいわけですか。
  462. 冨田達夫

    ○冨田説明員 受注、指名等についての制約はございません。しかし、特定化学物質等障害予防規則の違反になります。したがって、我々は監督指導を通じて、選任されていないところについては早急に選任するように厳重に指導しております。
  463. 春田重昭

    春田分科員 公共事業の場合は、それぞれの機関を通してそういった労働省指導ができると思うのですが、例えば一般のビルの解体、修理、そういった一般の建物の補修といったものについては、どこでそういった指導監視をしているのですか。
  464. 冨田達夫

    ○冨田説明員 建設業労働災害防止協会という協会がございます。さらには建設業協会、あるいは建築物の解体業務の団体等がございまして、そういうような団体を通じて指導するとともに、場合によっては個別監督指導を行って、その徹底を図っていっているところでございます。
  465. 春田重昭

    春田分科員 需要供給の関係で、こういったいわゆる社会的問題になりましたことでかなり需要がふえてくる。労働省は特定化学物質等作業主任者の講習会等を相当開いて、こういった資格を取るように促進なさっているわけでございますが、それもすぐ間に合うわけじゃございませんので、一部そういった現場監督の作業主任の資格のない施工業者がやっておるやに聞いておるわけでございます。そういった面につきましても十分監督し監視して、そういった認識がない方の施工については十分注意していただきたいと思っておるわけでございます。  なお、現場監督がおるわけでございますが、実際の作業をやるのはいわゆる作業者でございます。この作業者に対する講習とか教育とかというものはやられているのでしょうか。
  466. 冨田達夫

    ○冨田説明員 昨年六月から行ってきている関係者の教育については、とりあえず現場における管理監督者の教育から始めておりまして、さらに石綿等新たに暴露される作業に従事する者については、従前から就業教育を義務づけて、その実施を図っております。
  467. 春田重昭

    春田分科員 公共の場合はある程度厳しくやっていると思いますが、民間の場合はともすれば緩やかになるおそれがあるわけでございますので、その辺は十分指導徹底をよろしくお願いしたい、こう思っておるわけでございます。  時間がございませんので、先へ進みたいと思います。  そこで、アスベストを三通りによって処理する、処理した廃棄物を処分していくわけでございますが、このアスベストを含んだ廃棄物について、その処分方法につきましてひとつ厚生省の御見解を承りたい、こう思います。
  468. 古川武温

    ○古川政府委員 委員最初に御紹介ございましたように、当面の対策として、昨年十月ですか、アスベスト廃棄物の処分について当面の対策を通知したところでございます。この問題につきましては、「当面」と書いてございますように、この夏をめどにして詳細なガイドラインまで持っていきたい、こう考えております。  それから、この二月一日の通知についてお話がございましたが、これにつきましては、私ども一番恐れているのは、ただいまいろいろ御意見ございましたように、これについての専門家といいますか、正しい処理ができるというふうな体制が十分整っておりません。そうした中で安易にアスベスト吹きつけを除去いたしますと、そのために空気中にこの繊維が長い間浮遊して環境を汚染する、それがひいては健康に被害があるかもしれません。そういうふうなことでございますから、とにかくそれを除去するには最大の注意を払ってやってほしいというのが我々の考えでございまして、建築物内アスベストをどういうふうにするかのフローチャートを中心にして通知を出したわけでございます。これが完壁なものとは考えておりませんが、このチャート、ごらんいただきますように、実用的といいますか、実践的といいますか、そうした形にこれを御活用いただきたい、こう思っております。
  469. 春田重昭

    春田分科員 この通知を見ますと、アスベストの廃棄物につきましては、大まかに言って、一つはプラスチック袋で二重にこん包する、二番目としては堅牢な容器に密閉する、三番目はコンクリの固化も必要でありましょう、こういった形で御通知いただいているわけであります。しかし、考えてみれば、コンクリート固化というのは大変な費用がかかる。また二番目の堅牢な容器等につきましても費用が高くなる、手間もかかる。こうなれば、一番簡単なのはプラスチックの袋で二重に巻いて、そして処分場に持っていく、このやり方が一番簡単でありますし、費用も安くなるのではなかろうかと思うのです。プラスチックもピンからキリまでありまして、一応強いプラスチックでという形で書いてありますけれども、いわゆる破損するおそれのあるプラスチックもあるわけですから、こういった点で当面の対策になっておりまして、夏までに大体ガイドラインをおつくりになるということでございますが、この廃棄処分場まで持っていく運搬の方法につきましては、さらに詰めていく必要があるのではなかろうかと思うわけであります。  さらに、処分場では一定の場所を確保しなさい、そして溝を掘ってそこへ埋めなさい、そこに土をかぶせて、二メートル以下に埋め立てなさい、こうなっておりますけれども、先ほどの委員の質問にもあったように、今廃棄物の処分場というのは、もう地方自治体手いっぱいなんですね。そこへもってきて新たな場所を設けなさい、さらに深く掘りなさいとなったら大変です。東京湾でも大体七十年までに限界が来ると言われております。まあフェニックス計画等も進んでいるみたいですが、しかし、何ぼこういった立派なことを書いても、そういった処分場が満杯の状態では大変なんですよ。そういった処分場については厚生省に最終責任があるわけですから、そういったいわゆる手厚い地方自治体の保護も必要ではなかろうかと思うのです。この点どうでしょうか。二点。
  470. 古川武温

    ○古川政府委員 一つは、先ほど実践的にと申し上げましたように、実践的な対応を示したわけでございまして、プラスチックの評価もいただきましたけれども、強靱な、堅牢なプラスチック、この基準を示していないというふうなところもございますが、輸送途中あるいは処理場において直ちに覆土二メートルをするとか、そういうふうなことで処理されましたアスベストが飛散しないように、この辺の基準につきましては、イギリス等も同じような基準でございまして、十分だろうとは思っておりますが、完全というふうなものとは心得ておりません。  そこでもう一点は、廃棄物の処理場は大丈夫か、こういうふうなことでございます。最初に御質問ありましたように、産業廃棄物あるいは残土の廃棄というものは、各県単位に申し上げますと大変不足でございます。しかし、事アスベストについて言うと、役人ぶりに申し上げますけれども、六十一年四月現在の数字ですが、ほぼ千八百程度の処分場があり、年間六千五百万トンの処理が現時点で可能でございますので、現時点アスベストを埋める余地がない、こういうふうなことではございません。将来につきまして、あるいは今後のアスベストの処分の状況によりましては必要が生ずる場合もございますし、そうした長期的な観点に立ち、また逐次そうした情報等を得ながら処分場についての対応をしていかなければならない、こう心得ております。
  471. 春田重昭

    春田分科員 最後になりますけれども、これは別の問題です。  実は身体に障害を持つ方につきましては、ほとんどの交通機関で運賃の割引制度が適用されております。ところが内部障害者、いわゆる内臓疾患者は、障害者手帳を持っている方でも、昭和四十二年に身体障害者福祉法が改正されまして、一部地方自治体では公営地下鉄や公営バス等の無料パスが出されておりますけれども、JRや私鉄においてはこの制度の適用は現在ございません。国鉄は民営化後財政的にも改善されてきているようでもありますし、公平の原則からしても、この際、いわゆる障害者手帳を保持する内臓疾患者にもこの制度の適用を認めるべきである。直接の所管は運輸省でございますけれども、そういったいわゆる障害者を把握したり救済する厚生省としても強く運輸省に進言をしていただきたい。昭和四十二年に法が改正されて、こういった方たちにも運賃の割引制度を適用しなさいとなっているのです。ところが財政悪化でできなかったということですから、財政がよくなってきた今日の状況を考えて、再度私は厚生省なり大臣から運輸省に強く進言をしていただきたいことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。  答弁だけ、ちょっと……。
  472. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 交通機関には、身体障害者に関しまして、これまででも、例えば運賃割引でありますとかあるいは駅舎の改善等につきましていろいろな面での御協力をいただいているところでございます。今お話のございました内部障害者に対する運賃割引、これもなかなか経営上問題があるということで難しい面も多いようでございますけれども、我々としましてはぜひ協力していただければありがたいと思っております。
  473. 春田重昭

    春田分科員 どうもありがとうございました。
  474. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて春田重昭君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  475. 沢田広

    沢田分科員 最初に、予定として出してありますから、それでお伺いをしておきますが、現在生活保護世帯は相当な数になってきておりますが、いわゆる生活保護を受けるまでにはそれなりの手続というものが必要だと思うのです。相互扶助の義務というのが民法にあるわけですが、その相互扶助の義務が果たしてどれだけチェックされているかということになりますと、極めて疑問視する向きもあります。  そういう意味で、きょうも大蔵の委員会でも若干この点に触れておきましたが、これは相続と関係してまいりますので申し上げたわけでありますが、その点厚生省としては、第四条でありますか、法律上の立場というものはどのように把握をしてそれを律しているのか。私も県会のときには、この民生委員審査会のあれをやりましたけれども、どうもその辺ちょっと甘くなってきたのか、あるいはそういう傾向なのか、その点どういうように考えておられるか、お伺いをいたしたいと思います。——次に行っているからいいです。準備があるだろうから。だけれども、一応通告してありますから、大臣の前で確認をしておきたいと思ったので、そのとおり申し上げたわけであります。じゃ後で結構です。  次に、この間オリンピックも行われてきたのですが、活躍する場は少なくて、これから韓国のオリンピックへ行っても若干心配じゃないのかなという気がするのです。日本の特に短命な職業についておられる、オリンピックの選手なんかもそうなんでありますが、六十になってオリンピックで優勝したなんという話は聞かないわけですから、そういう意味においては極めて短い時間である。相撲の選手もそうですね。まあ政治家なんかもそうかもしれないが、政治家は案外長生きしてずうずうしく生きているという場合もなくはありません。これは冗談ですよ。本当にされちゃ困るのです。例えば相撲にしても競輪の選手にしてもプロ野球の選手にしても、やはり四十、五十でやるというのはまれなんですね。やはりそういう人の年金について特別に考慮してやる。加算をつけるとかあるいは一時金を納めて、二十五年たったならば六十歳になったら年金がもらえるとか、六十五になれば、将来六十五でもらえるとか、そういう仕組みを特別な職業についている人には制度として設けてやる必要があるというふうに私は思うわけであります。オリンピックの選手は一応別として、特別な職業についている者、これについてまずお答えをいただきたい、こういうように思います。
  476. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  恐らく野球の選手だとかあるいは相撲の選手というのは、雇用契約ということではなく、請負契約という形態をとっておられると思いますので、基礎的な年金としては国民年金にお入りになっておられると思うわけでございます。プロ野球の選手にしろあるいは相撲の選手にしろ、あるいは弁護士にしろ医師にしろ、そういう職能グループにつきましては、国民年金の上に上乗せした形で老後の生活を保障するような機能が働くような工夫をすべきではないかという御指摘であろうかと思いますが、現在それにこたえるために国民年金基金という仕掛けがございますが、この国民年金基金というのは、全国一本でかつ三分の二以上の同意を要するということで要件が非常に厳しいために、現実には動いていないという問題がございます。一方、そういう職能グループに属さない人々も、やはり国民年金に上乗せできるような道を開いてくれ、こういう声もございますので、私ども現在年金審議会で、この国民年金基金をどういうふうに改組改善しながら、今先生の御指摘のような問題にこたえ得るかというようなことで検討をお願いしておる最中でございますので、その答えを見きわめながら、またそういう道を開くことについてさらに検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  477. 沢田広

    沢田分科員 今の問題をもう少し詰めさせてもらいます。  例えばヤクルトにしても西武にしても、どこも皆ちゃんと雇用者がいるわけです。請け負ってはいるというけれども、雇用契約というものは成立しているわけですね。ですから、その意味においては、当然勝手に途中で終わらして帰るというわけにもいかないですから、九人でやっているんですから、一人おれは嫌だよと言って抜けられたら、これは仕事にならないわけですから、やはり雇用契約が成立している限り当然それは厚生年金の対象になる、常用雇用である、こういうことになるので、確かに税制ではあるいは特別契約ということで金をもらっているかもしれない。これも年俸でもらっている限りやはり同じだと思うのですね。ですから、今言った特殊な業務に扱うのが正しいのかどうかというと、私はやや雇用の方に——今のやり方はほとんど自分の希望するところに行けないんですからね。ですから、あれは拘束された雇用ですよ。自分がやりたいところの職場へも入れないということでやっておるわけでしょう。ですから、今おっしゃられるようなことではない。だから私はやはり厚生年金を適用させてやるべきだ。ただ、掛金の問題について何かここは工夫をする必要はあるだろうというふうに思いますが、特に短命な職場につく者については、今おっしゃった中には長く勤められる方も、弁護士とか何かは六十になっても七十になってもやれるのですから、士(さむらい)がついている間はずっといいですから、そうでない人の方をそういう心配をして対応してやらなければいかないのじゃないか、こういうふうにも思いますが、ちょっとこの点お考えいただきたいと思うのです。雇用関係は……。
  478. 水田努

    ○水田政府委員 雇用関係の適用につきましては、よくまた社会保険庁の方で検討をしていただきたいと思いますが、私どもが承知している限りにおいては、野球の選手は雇用関係というよりも、むしろ一年あるいは二年という短期の請負契約であるというふうに私ども理解いたしております。また、その適用関係については社会保険庁の方がこの業務を担当しておりますので、厚生年金を適用するのが正しいのかどうかについては、一応検討させていただきたいと思います。
  479. 沢田広

    沢田分科員 相撲も同じだと思うんですね。恐らくその部屋に入ったら一生そこで、ほかの部屋へ移るなんというわけにはなかなかこれはルールがあっていかぬのだろうと思いますね。内弟子みたいなものですから、当然雇用契約は成立するんだろう。法律上はそうなるんだろうと思いますね。ですから、そういう適用は当然なされてしかるべきものなのではないかというふうに思いますけれども、これは社会保険庁の方に聞いてみるということですか。——いるんですか、いるんなら答えてください。
  480. 水田努

    ○水田政府委員 相撲の力士にしろ野球の選手にしろ、雇用関係を前提とした社会保険の適用というのは、労災、失業保険その他を含めて全部関連する問題でございますので、これはよく社会保険庁の方でその実態を把握した上で検討をさせていただきたい、このように思います。
  481. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 私どもの方で調べましたところでは、例えば先生がお尋ねの相撲でございますが、これは協会の職員は厚生年金の適用をしておる、それから一般の力士は使用関係にはないのでしてない、こういうような事実関係でございます。ただ、この辺は事実関係でございますから、この事実関係によりまして適正に判断をしてまいりたいと思います。
  482. 沢田広

    沢田分科員 使用関係にないということはどういうことですか。
  483. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 協会から給料を受けていない、こういうことでございます。
  484. 沢田広

    沢田分科員 親方との関係においては雇用関係はあるでしょう。
  485. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 厚生年金は事業所単位で適用しておりまして、ただいまお尋ねの親方というのはちょっと事業所ということには現在なっていないということでございます。
  486. 沢田広

    沢田分科員 それはおかしいよ。それはやはり事業所だ。ちゃんと一部屋持って、そこでみんなと練習をしながら、九重部屋は九重部屋、高砂部屋は高砂部屋としてやっているのですから、当然そこで親方がいて、それに雇われてきているのですから、協会の雇用者ではないですから、そこの雇用関係になるので、あなたの認識は間違っている。とても間違っているから、それは改めてもらって、これはもし希望があればのことですよ。事業所として希望があればのことなんであって、それを頭からないとあなたの方で断ずることはちょっと行き過ぎじゃないかと思いますね。やはり一つの事業所であることには変わりはないと思いますよ、法律上の。その点、もう一回あなたの方で十分調べてやるなら調べてやるで結構だが、あなたが断定してしまってはいかぬ。
  487. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 事実関係として、相撲協会の方で申しておりますことを調査した結果を申し上げたわけでございまして、私どもの方は事実関係に即して適正に実施をしてまいります。
  488. 沢田広

    沢田分科員 希望があればだから、その適用になることはあり得る、こういうふうに考えでいいですか。
  489. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 要するに、使用関係にあるかどうかでございますので、雇い人と雇われている者、こういう関係にありますれば、当然これは適用するということでございます。
  490. 沢田広

    沢田分科員 これは手芸というようなもの、家内工業というようなものは皆そうなんですよね。漆工もそうなんですし、そういう一つの日本の伝統の工芸とか、あるいは美術なんかもみんなそうなんです。内弟子に入るようなものですから、ほとんど雇用関係は確実に存在するが、修業ということがあるから給与の面において厳しいのであって、雇用関係を否定する論拠にはならないだろうと思います。ただ、できるだけ公的年金というものの適用を、やはり解釈を広げてやって適用をしてもらいたいと思いますから、その点は余り狭く考えないでほしい、こういうことをお願い申し上げておきます。その点はいいですね。
  491. 佐々木喜之

    ○佐々木(喜)政府委員 よく調査をいたしました上で、御趣旨を体してまいりたいと思います。
  492. 沢田広

    沢田分科員 レクチャーのときに申し上げたから、いわゆる生活保護関係は一応ここで、厚生大臣の前できちんとしておかないと、これからの指揮監督に影響するから、やはりここできちんと答えておいてください。
  493. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 御答弁が遅くなりましたが、生活保護の御質問にお答えいたします。  生活保護法におきましては、民法に定める扶養義務の履行が生活保護法による保護に優先して行われる、これは先生指摘の法四条に明確に規定があるわけでございます。したがいまして、扶養義務者がいれば、まず扶養義務者が援助を行って相互に助け合うというのが基本でございます。このため、生活保護申請があった場合に、福祉事務所は、扶養義務者のあるなしの確認をまず行いまして、扶養義務者がある場合には、扶養能力があるかどうか等について扶養義務者に対して照会を行うなど、扶養義務の履行の徹底に努めているところであります。  それから、生活保護受給者の扶養義務者が扶養義務を履行しないのに遺産相続を受けるという先生のお話もございました。これは確かに問題があると私どもも考えております。このため、今後とも扶養義務者の扶養能力調査なども十分に行って、扶養義務の履行が十分に行われますように、さらに指導を徹底してまいるつもりでございます。
  494. 沢田広

    沢田分科員 今の答弁のとおりでして、このごろは核家族化して、個人主義が横行して、親族のそういういわゆる友好関係といいますか友愛関係というものが薄らいでいる今日であります。そういう法律の基礎というものをやはりきちんとわきまえながら対応してもらうことは、今後のためにも必要なことだろう、こういうふうに思っております。  時間が極めて少ないのでありますが、続いて重度心身障害者等の、これは大人も子供もでありますが、需要と供給といいますか、施設と入るべき人員、それをまずお答えいただきたいと思います。施設の収容人員は幾ら、それから申し込みの予定人員は幾ら、お答えください。
  495. 長尾立子

    ○長尾政府委員 重症心身障害児の全体の数でございますけれども、私どもは大体一万七千人程度というふうに理解をいたしております。このうち現在一万一千七百人程度の方がお宅におられまして、そのほかの方が施設に現実に入所しておられるということでございます。  先生の御質問の待機の状況でございますが、これは地域によって相当の差があるようでございまして、首都圏は正直申し上げまして相対的には施設整備がおくれておりまして、この分につきましては相当の待機があるように思います。しかし九州地域におきましては、全体として見ますと、施設のベッド数とそこにおられます重症心身障害児の数から見ましてややゆとりがあるというような状況にございますが、これは地域の関係がございますので、なかなか東京の方を九州にということにはいかない実情にございます。
  496. 沢田広

    沢田分科員 これは提案なんでありますが、やはり余り長く入っておりますと、親子の情も薄くなる関係もなくはない、あるいはかえって面倒見なくて済んでしまうという安易感に陥ることもあり得る。だから半年か一年ぐらいたって二カ月ぐらいはまた自宅に帰って、その二カ月間でもまた他の申込者に提供をしてやるということをある程度繰り返していく方が、施設をつくることももちろん大切なことですが、当面の急務としては、循環も必要なことではないかというふうに思いますが、そういう考え方については担当されている立場としてどのようにお考えになりますか。
  497. 長尾立子

    ○長尾政府委員 重症心身障害児の方につきまして、こういった施設に入所せざるを得ない御事情というのが御家庭にもある場合があると思います。御家庭で御両親が相当な老齢に達せられたというようなケースもございますので、御家庭が今先生が御提案のような一定期間引き受けられるような余力がない場合に、そういうことが実際でき得るかどうかということは問題としてはあると私ども思います。しかし、先生の御趣旨は、重症心身障害児が両親との関係を保っていく、それから親御さんとの家庭的な雰囲気の中で過ごす時間を多くしていくべきだという御趣旨であると理解しますと、この点につきましては、おっしゃるとおりだと思いますので、例えば盆暮れといった期間でございますとか、それから休日には、土日というときに御自宅に帰っていただくというようなことは、各施設で御工夫をいただくようお願いをいたしております。また基本的には、そういう意味では通所の施設をふやしていくということは、私どもの必要な課題ではないか、こういうふうに考えております。
  498. 沢田広

    沢田分科員 時間をなるべくきちんとして、ルールですから、委員長きちんと守らせるようにして、おくれたりなんかしないようにしてもらいたいと思うのです。私はほかの分科会で一つ抜けてしまったのです、とうとうおくれて。やはりこれはお互いの問題ですから……。  では、いいお言葉ではありますけれども、その場合の医療補助の分を面倒見てやることを忘れないで考えてやってほしいのです。だから一日、二日というとなかなか難しいのですが、一カ月とか二カ月ぐらいになれば医療補助の方も一応考えてやれる。それは資産の能力にもよりますし、家族構成にもよりますよ。しかし、そういうことも頭の中に描きつつ、いわゆる家庭との対話あるいはスキンシップといいますか、そういうものを続けていくような療養、こういうものを考えてほしい。またその間も入れないでいる人に、例えば二カ月だけであっても入れてやれるという場合は、入れてやれる道を開いてやっていただきたい、こういうふうに思います。  以上、情け深い局長さんですから、頭を縦に振っていますから、それでいいと思うのですが、大臣、最後に、趣旨が理解できましたら大体そのような方向は可能だというふうに思っていいかどうか、ちょっと一言お答えをやはり権威ある大臣から言ってもらって終わりたいと思います。
  499. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘の方向で努力をいたしてまいります。
  500. 沢田広

    沢田分科員 終わります。
  501. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、青山丘君。
  502. 青山丘

    青山分科員 厚生大臣を初め皆さん大変お疲れでしょうが、少しだけひとつ御辛抱をお願いいたします。私は歯科の診療報酬改定が見送られた、そのことについて少しお尋ねをいたします。  外注委託技工料の問題が未解決である、そういうことが理由で歯科の診療報酬の四月改定が見送られました。しかし、このことは外注委託技工料の問題と診療報酬改定が何か密接な関係があるかのような錯覚に陥るのでありますが、本来的には全く別個の問題だと私は理解しています。かつて、歯科の場合の診療報酬改定が見送られたことは、差額問題で紛糾いたしました昭和五十一年以来のこと。しかし、これは開業歯科医師にとっては大変重大な問題であります。これまでの経過も幾らか仄聞はいたしておりますけれども、しかし、委託技工料の問題に絡み合った形で歯科の診療報酬改定が見送られてきた、どうにも納得いかない、一体なぜかという印象が非常に強いのです。私もそう思っていますが、いかがでしょうか。
  503. 下村健

    ○下村政府委員 診療報酬の改定につきましては、昨年末の予算編成期に中医協の意見を踏まえまして、医科が三・八、調剤が一・七ということで、歯科を別にいたしまして決まった、御指摘のとおりでございます。  歯科につきましては、中医協におきまして技工料問題がかねてから懸案になっていたということでございますが、技工問題というのは中医協で昭和五十年代の初めからいろいろ議論がなされておりまして、六十一年の二月、前回の診療報酬改定の際に、またこの問題が中医協での議題になりまして、所定点数の範囲内で別に定める方向で七月実施を目途に引き続き協議するというのが実は前回改定の際に中医協で決定をされております。これはもちろん歯科の代表を含めてそのように決定をした。  そもそもの議論としては、前回の六十一年も四月に診療報酬改定をやっておりますが、その改定と同時に実施しようというふうな議論もあったわけですけれども、しばらくそれを延ばしてほしいという歯科側の要請もあって、最終的には前回改定の際に七月、こういうことになったわけでございます。しかし六十一年の夏になっても技工料問題が解決しない。中医協としては、関係団体間で一応協議をするというふうな申し出もございましたので、その協議の推移を見守っていたわけでございます。その後数回にわたり歯科の診療側を代表する委員からは、この問題は解決をする、これを解決しないでそのままにしたい、こういう意見は今のところ出ていないということでございます。年末の予算編成期に至りまして、歯科の担当委員から経過の報告を中医協で正式に聴取したわけでございますが、関係団体間の調整が十分でないというふうな状況が確認できただけで、その解決をもって対処をすべきだという意見が中医協の大勢を占めたわけでございます。  そのような結果から中医協としては、前回改定の際に、技工問題の解決は所定点数の範囲内で別に定めるということで合意が成り立っておりますので、この決着を早急につけるべきではないかということで、歯科の診療報酬の改定を延ばすべきだというふうな観点からの議論はなかったのでありますけれども、しかしこの問題が、前回改定のときの宿題が済まないということではどうも中医協としてもやや身動きがならないと申しますか、そんな状況になっているわけであります。  厚生省としても、このままいつまでもというのは大変困ったことだと思っておるわけでございますが、なお関係者の間でいろいろ話し合いも行われておるような状況でございますので、その状況をまって中医協の方で審議を軌道に乗せてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  504. 青山丘

    青山分科員 外注委託技工料の問題が解決したらということは、過去の経過の中であったようです。しかし、本来的には、この歯科の診療報酬改定とは全く別個の問題であるというふうに私は理解していますし、全国の開業歯科医師の立場から見ますと、そういう経過があったことは聞いてはいるけれども、しかし本来的に全く別個の問題ではないか、これは中医協の中で話し合われてきたことであって、中医協の中でどのような話し合い、経過があったにしても、全く納得いかないという印象が非常に強く今実は出ております。まさにこれは、厚生省のこれからの取り組みが問われているわけです。  特に政府は、今財政抑制策で大変努力をしておられる段階でありますから、委託技工料の問題で歯科における診療報酬改定がおくれてきた、こういうことはいわば渡りに船、しめた、まさかそういうふうには思っておられないとは思いますけれども、しかし、この間あるところで試算されたという数字を聞きますと、これがおくれることによって九十億円の国庫負担の軽減につながる、大きな金額であります。これはどこまで積算されたものか、私自身はまだ確認しておりませんけれども、問題は、この委託技工料の問題を中医協も歯科医師側に一方的にげたを預けるような形で任せてきておる、当事者同士が解決をようしない、だから診療報酬改定もおくらせてもいいんだという考え方は、私はどこか基本的に欠落しておるのではないかと思います。  それは重要なことなんですけれども、問題は、現行の点数の枠内における技工士側と歯科医師側の取り分を決めてもらうんだ、こういうことですから、大変低い点数の分け方でございますから、双方が大変な努力をしてもなかなかこれが解決をしない。歯科医師側も技工士側も大変な努力をしておる。決して双方がわがままを言ったり、努力が不足しておる、だからこういう問題が解決しないというふうじゃないのです。もともとの点数が小さいものですから、なかなかこれは深刻な問題として話し合いがついておらない、そういう受けとめ方をしていただくのが本当ではないかと思います。そのあたりはいかがでしょうか。
  505. 下村健

    ○下村政府委員 やや繰り返しになりますが、厚生省としては歯科の診療報酬問題は早急に解決すべきだ、そのように考えておるわけでございます。確かに国の財政も厳しゅうございますし、医療費については適正化をしなければならないというふうに考えているわけでございますが、私どもとしては不合理な点は是正をする、必要なものはそれなりの評価を行って診療報酬を決めていくというのが基本的な態度でありまして、歯科問題を延ばして金を節約しようというふうなことは毛頭考えてないということをまず申し上げたいと思います。  それから二番目は、中医協と厚生省との関係でございますが、確かに厚生大臣は診療報酬の決定権を持っておりますけれども、過去の例に徴しましても、中医協の意見を抜きにして診療報酬を決定することはできないということになっておりまして、いずれにせよこの問題は、中医協での議論を経た上でないと解決をしないという事情がございます。  それから三番目は、ただいまの低いからそれは分けられないのではないか。確かにそのような意見も承っておりますが、しかし、低いならば低いなりにその中で一応のルールをつくろう、ルールをつくるということに前回の診療報酬改定の際の一連の話の中で、いわば歯科の診療側代表の委員も含めまして合意ができた。それがそのまま実行できない。いつまでも実行できないということになれば、それではどうするのかという問題もあろうかと思いますが、現在の状況として見ますと、中医協としてはまず前回の問題を一応決着をつけた上で取り組むべきではないか、これが大勢としての意見になっております。  その点、なお大変難しい問題であると思います。五十年代の初めから、いろいろ議論が出ながら解決をしなかったということでございますので、確かにそう簡単な問題ではないわけでございますが、たまたま前回改定の際にこれが解決しそうな機運が出てきて、全体の合意ができたということが今回の発端になっております。別物だとおっしゃるお話も私どもとして理解できないわけではありませんけれども、今回の件に関しては完全に別物なので、これはこれでほっておいて中医協として一遍決めたものをもう一遍白紙に戻す、これも今の経緯に即して考えますとなかなか難しいことではないか、このように考えております。
  506. 青山丘

    青山分科員 私も、実は昨年秋ごろから、外注委託技工料の問題は早く決着をつけなければいけない、双方ひとつぜひ努力をしてほしいという立場で静かに見守っておりました。しかし、なかなかうまく進まない。それはどこに原因があるのか、いずれも怠慢であったのか。そうではない、やはりもともと低い点数の中での取り分を決めるというところにこれは問題があったのではあろう。そういうところでお互いに話し合おうとしても、技工士側においても歯科側においても、十分納得できる結論というのはやはり出ないという一面があるということを、ひとつぜひきちっと受けとめておいていただきたいと思います。  今、七対三の調停案なるものが出ておるようでありますが、この七対三の調停案を仮に受け入れたとして、例えば全部鋳造冠の技術料が三百七十点、この三百七十点を七対三で分けますと、技工士側には二千五百九十円、歯科医師側に千百十円という分け方になっていきます。しかし、分け方だけで見るのではなくてその数字そのものをよく見てまいりますと、二千五百九十円の技工士側においても、それこそ睡眠を削り、休日を返上して働いて、そしてようやく経営が成り立っているというのが実態である。ましてや歯科医師の立場では、全部鋳造冠の場合ですと千百十円になりますけれども、この中から歯科医院に働く人たちの人件費が出てまいりますし、また、建物や診療、治療に使われる器械器具の償却が出てまいります。また、消耗材料、中間材料といいますか、そういうものも削ってまいりますと、千百十円から一体幾ら残るのかという気持ちが非常に強くあるのです。やはり、もともとこの低い点数の中での配分ということに無理があったなというのは、実は私自身も率直に感じております。  ですから、そういう中で早くこの技工料の問題を解決しなさいと言っても、私はかなり無理だ、技工士側においても歯科側においても十分納得できる結論というのは、もともと無理じゃないかという印象が今非常に強くある。にもかかわらず、中医協でこの問題を解決してから診療報酬改定に取り組むんだということになってきますと、まさに踏んだりけったりのような思いであります。そのあたりの厚生省側の受けとめ方はいかがでしょうか。
  507. 下村健

    ○下村政府委員 確かに大変長年の懸案でございまして、難しいところはあるのですが、七、三というふうな考え方が出てきている背景には、これは実態をある程度背景にしての議論で、全国的な平均からいってそんなところではないのか。その辺の現実を余り急激に変更するということでなくて、低いか高いかということについてはまたいろいろな御意見もあろうかと思いますが、現実にそのほかに差額を取っているとかなんとかいうふうな話があれば別ですけれども、現在の保険点数の範囲内で技工料金を払い、歯科の取り分を取って現実の保険診療が行われている、それが大体のところ七、三くらいではないかというふうな実態を踏まえて、その実態をある程度ルール的なものとして決めてはどうだろうかというのが、七、三というふうな議論でございます。したがって、それで決めましょうということで一応決まっておりまして、これを白紙に戻してほしい、こういう申し出は実は中医協の中では全く出ていないわけでございます。  したがって、中医協もそれぞれの立場の方で構成されているわけですけれども、白紙に戻すというふうなことができるかどうか、その辺はなかなか難しい問題だと思います。今まで歯科の代表委員から出ている話は、やはりもう少し猶予が欲しい、中医協で二月に決まった方針に沿って解決に努力をするということがこれまでも言われ続けているというふうな状況でございますので、これまでの推移から見ますと、まだ現在までのところは、これを全く別個の問題として切り離してやれというのもなかなか難しいのではないか、こう思うわけでございます。
  508. 青山丘

    青山分科員 厚生省は、国民医療を統括するという大変大切な役割をこれまで担ってこられておりますが、中医協における歯科医師側の委員は、これまでの経過がありますから、委託技工料の問題を早く解決して診療報酬改定へ結びつけていきたい、これは経過があってそういう立場をとっておられるのであろうと思います。中医協の立場もよくわかりますが、しかし問題は、歯科医師側にこの問題を一方的にげたを預けるというような立場をとっていかれる、厚生省としては、みずからその責任を回避しておられるかのような受けとめ方を実は私はしております。それはよくない。やはり厚生省も、それなりの役割をきちっとひとつ果たしていただきたい、こういう印象が私には非常に強い。中医協ではああいう話し合いになっていましたから、その問題は、私たちと関係なく中医協でこれまで決められてきた経過にかんがみて進められるべきもので、我々とは何ら関係ないというようなことは、ひとつぜひ一考をしていただきたいと私は思います。  それから、先ほども申し上げたように、現行の補綴の技術料が非常に低いということをひとつぜひ念頭に入れていただきたい。基礎的な技術料の評価を上げていただく、まずこれが基本であって、そうしてなお技工料の問題が解決しないというようなことになってくれば、これは社会的にも当事者双方に責任があると言われることは避けられません。しかし基本的には、やはり今の技術料評価が非常に低いということを、ひとつぜひ厚生省の立場で理解をしておいていただきたい。そのことが今の開業歯科医にとっては非常に切実な問題であり、一日も早く診療報酬改定をしてもらいたい、こういう強い要請を持っておられる、このこともぜひひとつ受けとめておいていただきたい。そのことは、日本の健全な歯科医療行政を進めていく上にも大切なことだというふうに私は思うからであります。いかがでしょうか。
  509. 下村健

    ○下村政府委員 最初にもちょっと申し上げたわけですけれども、このまま解決しなければほっておくのかというふうな趣旨の御質問だと思うのでありますが、歯科医師会側はそういうことで解決するというふうな姿勢をとっておりまして、現実にそれじゃ解決する努力を何もやっていないかといえば、これはやっているわけであります。そういう状況からいたしますと、今の段階であの問題は棚上げにして診療報酬改定をやるべきだというふうな判断を私どもとしてするのはできないのじゃないだろうか。今の状況としては、私はそう思っておるわけでございます。  先生お話しのように、歯科の問題がまだこの先もこじれ続けるというふうなことがあれば、これは何か考えていかなければならぬというふうなこともあるいはあるかもしれませんが、現状は歯科医師会はこの問題を解決するという姿勢をとって、その解決のための努力もいろいろやっておられるわけであります。やはり、その努力状況を見ながら私どもとしては対応せざるを得ないというのが、今の状況としてはやむを得ないことではないか。  ただ、私どもとしては歯科問題を早急に解決していきたい、これはもうそのとおりでございまして、ぜひとも努力を続けていきたい。中医協も、十二月に出ました方針でも、技工問題を解決して取り組むべきであるというふうな表現をわざわざとって意見書を出しておられまして、歯科に取り組むべきでないとかおくれていい、こんな考え方は中医協の中でも実際問題としてはないということでございます。  それから、技術料の評価という問題につきましては、技術重視という形の診療報酬体系をつくっていくというのが中医協の基本方針でございまして、これは医科も歯科も含めまして、そういう方向で改定の都度最大限の努力をしていくというのが基本方針になっておるわけでございますので、今後もそういうことで十分努力をしていきたい、こう考えております。
  510. 青山丘

    青山分科員 時間がありませんから、私は二点だけ確認をしておきたいと思います。  委託技工料と診療報酬改定は性質の異なる問題であって、これを理由に改定をおくらせておられるような印象を与えております。もともとこれは別個の問題だという認識をひとつぜひ持っていただきたい、これが一つ。それから、技工料問題の本質というのは補綴技術料の低い評価にあるという点について、一つぜひ申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、先へ急いで進みます。  歯科医師の過剰問題でありますが、百年も続いてまいりました歯科医師不足時代、過少という状態から、このわずかな期間に歯科医師過剰時代という新しい事態に入ってきました。昨年四月に行われました第八十回歯科医師国家試験は、受験者数三千六百六十八人に対し、合格者数三千三百六十一人、合格率九一・六%となっております。歯科医師年三千人時代がこれからも続いていくわけであります。歯科医師急増対策は緊急の課題となってまいりました。  厚生省の「将来の歯科医師需給に関する検討委員会最終意見」は、「昭和七十年を目途に歯科医師の新規参入を最小限二〇%削減する必要がある。」との見解を示しております。この目標を達成するためには、昭和六十四年度を目途に歯科大学及び歯学部の定員を二割削減することが必要になります。これまで六十二年、六十三年と二回の入学試験が行われ、また行われようとしておりますが、厚生省及び文部省はどのように対応してこられましたか、これが第一点。  時間がありませんから一挙に質問します。  国公立大学に比べて、私立、私学の定員削減は、経営の問題などがありましてなかなか進みにくい点があります。六十一年度に比べまして、私立の大学の入学定員、入学者数は何%減っておりますか。  第三点。私立の場合、国立大学の入試制度変更の影響などもありまして削減しにくいことはよくわかりますが、目標はぜひ達成させなければならない。その意味で、六十三年度の入試結果が注目されているわけでありますが、その結果いかんによっては新しい措置も検討される必要が出てくるかもしれない。文部省の御見解はいかがでしょうか。  第四点。歯科医師養成数を削減することによる私立大学の経営面でのマイナスを、歯科の診療能力の向上という面に振り向けていくことが必要であります。医師の場合、卒業後二年間の臨床研修が医師法に規定されております。歯科の場合も、医療技術の進歩から見て、卒業直後の臨床研修は必要性を増しております。厚生省は、六十二年度から一般歯科医の臨床研修を予算化しているということでありますが、その一般歯科医の臨床研修の運用状況はどのようになっておりますか。補助単価を引き上げるなどの内容充実を図るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。  最後。六十四年度には、歯科大学と歯学部の入学者数を二割削減するという政府の方針を実現していただきたい。あと一年努力していただきたいと思いますが、厚生省及び文部省それぞれの決意をひとつぜひ聞かせていただきたいと思います。
  511. 仲村英一

    ○仲村政府委員 歯科医師は、御指摘のように非常に急増しておるわけでございまして、私どもといたしましては、七十年を目途に二〇%最小限削減するという検討委員会の御意見をいただいておるわけでございまして、この目標に従って、文部省、私立歯科大学協会等の御理解を得ながら、定員の削減に努力してまいりたいと考えております。第一の御質問がそれだったと思います。  それから第二、第三、文部省からお答えいただけると思いますが、一般歯科医師の養成研修でございますが、六十二年度を初年度といたしまして開始いたしたところでございまして、予算額としては二億二千百万円を確保いたしまして定員五百人ということでやっておりますが、実績はまだ五百人までいっておらない状況でございます。来年度六十三年度におきましても、引き続きこの研修の予算確保してまいりたいと考えております。  それから、今後引き続き、おっしゃるような観点から、歯科過剰の国がたくさん西欧諸国にもあるようでございまして、そういうことは招来しないような形で私どもも引き続き努力を重ねてまいりたいと考えております。
  512. 佐藤國雄

    佐藤説明員 歯科医師の二〇%の削減の問題につきましては、これまで国立大学につきましては六十一年度から六十三年度まで、これはただいま予算にかかっておるわけでございますが、六校で百二十人の減をやった。それから公立大学につきましては、この六十三年度から、一つの大学しかございませんけれども、二十五人の減を行うことになっております。また私立大学につきましても、六十二と六十三年度両年度で計八十人の減を行いまして、合計で二百二十五人の減をしたわけでございます。先ほど先生がパーセンテージのことがございましたけれども、もし仮に新規参入を調整するのに定員だけでやるということで算定をいたしますと、大体三分の一程度の達成ということになるかと思います。  先ほど先生が御指摘のように、私立大学の方でも経営の問題がございまして、現在、私立の歯科大学協会におきまして、これまでも定員を厳守するということから始まりまして、ただいま六十二年度、六十三年度につきましては募集定員を一〇%減ずるということで、六十四年度に向けての足ならしということで努力をしているところでございます。六十四年度につきましては、現在のところ、六十三年度の入学者もまだ確定されない状況でございますのでわかりませんけれども、私どもといたしましては、引き続き私立につきましては歯科大学協会の方にお願いをしながら、削減というようなことについて努力をしてまいりたい、こう思っております。
  513. 青山丘

    青山分科員 ありがとうございました。いや、もう時間が来ました。ありがとうございました。
  514. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて青山丘君の質疑は終了いたしました。  次に、村山富市君。
  515. 村山富市

    村山(富)分科員 遅くまでどうも御苦労さんです。私は、きょうは国保問題について若干お尋ねしたいと思うのですけれども、これはいずれ国会に上程されれば関係委員会でまた審議することになりますから、その国保問題に関連をして一点だけお尋ねしたいと思うのです。  この国保問題の改革の中で、地域医療適正化プログラムというものを策定をして推進をする、こういう内容のものがあるわけです。私は、これまでの日本の医療というものを考える場合に、医療費がふえ続けていく、こういう原因というのは、一つはやはり診療報酬の支払い方式にある。もう一つは、医療が非常に偏在している、医療機関が偏在しているというところにもあるのではないか。こういう問題はこれまでの経過から考えてみて、地方、県、市町村にそれぞれ責任があるのではなくて、むしろ中央に責任がうんとあったのではないか。  診療報酬の支払いについてはさっきも御意見がありましたけれども、これは中医協で決めるわけですね。それから医療機関の偏在という問題については、これは自由開業医制度をとっている限りにおいては必然的にもたらされる結果であって、県や市町村ではどうにもならない問題だというふうにも思われますので、こういう問題に対する今の日本の医療のあり方に対する責任と言っては語弊がありますけれども、影響力をうんと持っておるのはむしろ国であり地方ではないかと私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  516. 下村健

    ○下村政府委員 診療報酬の適正化につきましては私どもとしても当然責任は持っている、国も診療報酬の合理化でありますとか、その他いろいろの方法で適正化の努力はやっていくというつもりでございます。ただ、その場合に、今出来高払いというふうな点もございましたけれども、同じ診療報酬制度のもとでもやはり地域によって相当の高低がある。それについては地域的な要素等もいろいろ関係してきているのではないかと思っているわけでございます。  保険の方の責任とか権限とかいうふうな問題になりますと、例えば現在の国保の医療費の増加というのは、私どもは高齢者の増加あるいは高齢者の処遇がどうなっているかという問題と非常に密接に絡んでいるというふうに考えているわけでございます。保険制度の上からいきますと、例えば入院の給付については、保険者、国保の場合には保険者というと市町村でございますから市町村長ということになるかもしれませんが、入院については保険者の承認が要る。例えばそんな形になっているわけでございます。実態は、これは主治医の判断に基づいて決定したらいいだろうということで、医療機関が決めるということになっております。したがって、例えば権限とか責任とかいうことだけでいけば、いわゆる社会的入院のようなものについては承認をしなければいいじゃないか、こんな議論もあるかと思うのですけれども、私どもとしては、そういった側面ばかりではなくて、やはり現在の状況から見ますと、老人が入院する要因というのがいろいろあるわけですから、診療報酬制度の問題も当然でございますが、例えば福祉施設の整備でありますとか、在宅サービスの問題でありますとか、老人にふさわしい処遇体系をつくっていくというふうなことを地方団体にもぜひお願いしたい。それが老人に対して適切な処遇を与えるということにもつながるし、医療費の適正化にもつながっていくのではないだろうか、このように考えておるわけでございます。
  517. 村山富市

    村山(富)分科員 いろいろな背景と要因が私はあると思うけれども、基本的には、日本の医療制度の中では、医療費は、さっきから御意見がありますけれども、中医協で決めてそして大臣が告示する、こうなるわけでしょう。これはもう地方には権限がないわけですよ。それから、医療費の地域間の格差があるというのは、いろいろな要因があると思いますけれども、その要因の一つには、医療機関が偏在しておる。非常に多いところと少ないところがある。こういうものについては県や市町村というのはどうこうする権限はないわけです。極端に言えばないわけです。ですから、こういうものをこれから是正していこうというわけですか、どうなんですか。  私が聞きたいのは、この地域医療の適正化を進めていく、プログラムを推進するのでしょうけれども、それで大臣が指針をつくるということになっていますね。指針というのは一体どういうものなのか、国は適正化に向けてどういう責任を持って何をするのか、県は一体何をするのか、市町村は何をするのかということを少し明確にしてもらいたいと思うのです。
  518. 下村健

    ○下村政府委員 御指摘のように、医療費が高いと申しますか、こういうふうな地域については、いろいろな要因があろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、安定化計画ということで法律上は言っておりますが、安定化計画をつくっていく上での大前提としては、市町村ごとの医療費の要因の分析ということをまず十分にやっていただこう。厚生省といたしましては、指針を示す中で、ある程度一般的な要因分析というものは各市町村ごとの具体的な分析を含めて提供できるような体制に持っていきたい。その上に立って、さらに市町村ごとに精密な要因を分析してもらってはどうだとか、その中に当然供給体制の問題が入ってまいります。  ただ、じゃ、安定化計画の中でその問題をどう取り扱っていくかということになろうかと思いますが、実際に過剰地域で医療費が高いという場合に、直ちにそれをほかに転換するとか、あるいはそれの利用の仕方を変えていくといいましても限界がありますので、供給体制に起因する要因についてはある程度の幅、相当の幅を持たして取り組む、努力目標を設定するというふうな考え方でやっていってはどうだろうかということで安定化計画の指針の中では考えていこうというふうな考え方で進めているわけでございます。  県、市町村は権限がないではないかという御指摘でございますが、反面からいいますと、実は医療に関しては地方もいろいろなことを考えておられるわけです。県も大体の県はそうなっていると思いますし、市町村も、医療施設の整備計画でありますとか整備目標でありますとか、あるいは福祉施設についてどういう整備をやっていくとか、一応の考え方を持って行政に取り組んでおられるのが大体の姿ではないかと思います。したがって、私どもとしては、地域医療計画もできますし、そういう地域医療計画というものも頭に置きながら、現在持っておられる整備計画のようなものもそういう新しい観点から見直しを行って行政的な取り組みをやっていただこう。確かに権限に絡む問題もございまして、レセプト点検でございますとかいうふうなたぐいのことは十分やっていただこう。これも要因分析に基づいてもう少し重点を決めて取り組んでもらってはどうだろうかというふうに思っておりますが、さらにその周辺に関連する問題として、ただいまの直接の権限という意味では別でございますが、医療費に関連する問題がいろいろございますので、そういった点も安定化計画の中ではできるだけ幅広く取り上げていただいて、そのため、適正化という方向に向かっての努力をお願いしてはどうだろうか、こう考えております。
  519. 村山富市

    村山(富)分科員 ちょっと聞いていても僕はわからないのだけれども、この要綱を見ますと、「医療費が極めて高い地域において、国と地方が一体となって適正化に取り組むシステムの導入」、それから「高医療費地域において、六十三年度から医療費水準の是正計画を策定」する、「六十三年度以降の医療費実績に基づき、六十五年度以降、地域的に著しく高い医療費のうち一定部分に限定して国の負担とあわせ地方の負担を求める」、こういう中身になっているわけです。  ですから、さっきから言っていますように、今県段階で地域医療計画をつくっていますね。そうすると、その地域医療計画と今度適正化プログラムとの関連性は一体どうあるのか。それから、医療費を適正化するという大きな範疇から考えれば、例えば保健所をどうするとか、それから健康指導をどうするとか、市町村の市町村保健センターですか、それをどうするとか、いろいろな要因があると思いますよ。あると思うけれども、ここでそんなことまで含めるんじゃなくて特に医療機関を主とした医療費の適正化を図っていくということに限定しておるのか、もっと広い範囲で適正化を推進していくのかはっきりしないものですから、そういう概念を一応明確にしていただきたいというように思うのです。その概念が明らかになれば、ああこれは国が責任を持ってやるんだな、これは県が担当するんだな、これは市町村がするんだなということがわかりますが、これだけじゃ漠然としておって、一体適正化のために県は何をしたらいいのか、どんな権限があって何ができるのかというのがさっぱりわからぬでしょう。だからちょっと判断のしようがないんですよ。そういう意味で御説明いただきたいと思うのです。
  520. 下村健

    ○下村政府委員 私どもとしてはかなり幅の広い形で取り組んでいただこうと思っておりますので、確かにわかりにくい面はあろうかと思いますが、国としては診療報酬の合理化あるいはその他の制度面での対応を通じまして適正化に取り組む、そのほかに、従来いわゆる適正化対策ということで言っておりました審査充実でありますとかそのための条件づくりといった面で国としては十分な努力をやっていくということになろうかと思います。  それから、現在都道府県が持っている権限という側面で言いますと、一つは、国民健康保険の指導という意味で、国民健康保険の運営に対する指導監督という面の権限があります。この中には、例えばただいまの医療費の審査に絡んで審査委員の任命をやる、あるいはそのための審査の組織をいろいろ考えるというふうな面も含まれてまいります。もう一つは、医療機関に対する指定、取り消し、そういう面での監査をやるとかという権限が知事の権限ということになっております。それから三番目は、診療報酬の上で現在いろいろな基準を決めまして、基準看護、基準給食とかいうふうなたぐいのものがあるわけでございますけれども、そういったいろいろな基準に基づく医療機関の指定とかのたぐいのものがございます。そういう診療報酬絡みの権限。大まかに言って県が保険制度の上で持っている権限ということになるとそういった面で従来いろいろ努力をお願いしているわけでございますが、それを当然やってもらう。さらに、周辺の問題としては、非常に観念的な言い方でございますが、適切な地域ごとの需給体制をつくっていくということが何といっても大きいのではなかろうかと私どもは思っております。  市町村の方も、市町村における適切な需給関係をつくっていくということが当然一つ入ってまいりますが、これは地域医療計画に沿って、もう一つは今の安定化という目標を頭に置きながら取り組んでいくというところが一つの新しい要素として入ってくるのだろうと思っております。保険制度に即して言いますと、病院の分析を通じて出てまいりました、例えば一般に東日本は高血圧が問題であるとか、疾病の地域差のようなものも言われているわけでございますけれども、そういった問題を中心にして、レセプト点検等の適正化と、そういう問題点に重点を置いたヘルス事業あるいは福祉事業をやっていただく。もう一つ重要な問題は、先ほど老人の問題もちょっと申し上げたわけですけれども、被保険者に対する適切な指導という側面が市町村の仕事としては入ってくるのではないか、概念的に申しますとそんなことを考えております。
  521. 村山富市

    村山(富)分科員 これはやがて大臣が決める指針というものが明らかになればつかめてくると思うのですが、今局長の答弁を聞いていますと、いろいろな部面を思い出しながら言うような格好です。これは時間がありませんからもう議論を深めませんけれども、せっかく適正化をして地域格差をできるだけ是正していこうというのなら、単に医療費を県や市町村に負担を転嫁していくだけに終わるのではなくて、やはり実効あるものにしなければいかぬと思いますから、もう少し詰めた形で議論をさせてもらいたいと思ったのですけれども、時間がありませんからこれで打ち切ります。  ただ、六十五年からですね。老人保健法の見直しも六十五年になっているわけです。そういう意味から申し上げますと、例えば医療の一元化といった問題とも関連をさせて、六十五年を一つの節目にしていろいろな角度から見直しをしていこうというふうな考えがあるのかどうか、その点はどうですか。
  522. 下村健

    ○下村政府委員 今回お願いをしている国保の改革案からしますと、これも六十五年に見直しをせざるを得ないという状況でございます。したがいまして、国保の問題それから老人保健制度の問題を含めて保険制度全般にわたって六十五年に一つの焦点を置いていろいろな角度から検討していくことになるのではないかというふうに私としては考えております。
  523. 村山富市

    村山(富)分科員 次に問題を移しまして、中医協が診療報酬の改定を行いまして、四月一日から実施をされる予定になっております。その中で幾つかの問題があると思われるのですけれども、今回改定された中に、大学病院等高度専門病院における紹介外来制の導入というのがありますね。これは希望するものについて個別指定をするわけでしょう。個別指定をされた病院は、外来の場合には紹介を持っていく。紹介があるものについては別だけれども、紹介がなくて来た人については初診料相当額を実費で徴収する。同じ医療機関で保険が使えるところと使えないところがあるというようなことが起こるのはどうかと思うのですが、その点はどうですか。それで、この指定病院というのはどういう条件で指定されるわけですか。
  524. 下村健

    ○下村政府委員 具体的なやり方についてはまだこれから協議を続けていくということになっているわけでございますが、大学病院等の高度専門病院は、これまでいろいろな先駆的な役割を果たして、高度医療という面で特に重要な機能を果たしているわけでございます。ところが、現実を見ますと、現在大学病院にはとにかくいろいろな患者が集まる。保険で給付しております外来患者数を見ますと、ここ数年は総体としてやや頭打ちの感じですけれども、その中で大学だけの患者数が非常にふえる。これは大学病院がふえているという関係もございますが、結果としてどうなっているかということで見ますと、大学病院の医療費は他の一般の医療機関に比べると比較的高いわけでございます。高いのに、それでは患者の方は全部そういう高い診療を必要とする患者だけかというとそうでもない。私どもは、保険の方から見ますと、どうもそこは問題があるのではないか。一般のプライマリーケアのような形で済む患者も、大学に行った場合には高いコストを必要とする。これは現実には患者がそういうことを選択して行っているということでございますので、一方からしますと家庭医のようなところに登録をするというようなシステムをとったらどうかという考え方もあるのですけれども、日本の保険制度はこれまで医療機関に非常にアクセスがいいというところが一つの特徴だと言われておりまして、そこを制度的に余り強制するという形をやらないで、しかし患者の選択も生かす、保険制度も成り立つということは考えられないだろうかということで、患者の選択ということを一つの前提として今回のような制度、医療機関の指定ができるという道をとりあえず開いたというのが今回の趣旨でございます。  したがって、大学病院等で高度医療が必要かどうかをまず一般の病院、診療所で診断して、その結果必要と判断された患者については従来どおり保険で給付をいたします、そういうプライマリーケア部門の診断を経ないで直接大学病院に受診をした患者については、自分の選択で現実的に言えばやや高級な選択というかそういうことをされたわけですから、その場合には初診料相当部分は自己負担ということで保険の給付外にしてはどうだろうかという制度の枠組みをつくったということでございます。  あと具体的な条件については、これは大学病院と申しましても実はいろいろな病院があるというふうな状況もございます。地域的な状況も当然考慮しなければなりません。ただ大学側がやりたいと言ってきたらやるということにもいかないと思いますので、さらに大学病院側とも協議を重ねてもう少し具体的な結論を出してまいりたいと思っております。
  525. 村山富市

    村山(富)分科員 これはもう時間がないからこれ以上詰めませんが、やはり外来診療なんかはどこの病院を選ぶかというのは患者の選択権が重要ですからね。総合病院や大学病院に患者が偏在していくというのは、ある意味で日本の医療制度のあり方の根幹に触れるような問題もあるのではないかと思うのです。そういうものを抜きにして、そして金の支払いでもって患者を誘導していこうなんて考え方がもしあるとすれば、それは問題ではないかというふうに思いますから、意見だけ言っておきます。  それからもう一つは、患者をサービスする選択の幅の拡大ですね。一つは差額室料の問題、差額ベッドの問題ですね。今までは差額ベッドはなくせという方向で最大限二〇%ぐらいにとどめるという指導をしてきたわけでしょう。今度は逆に三〇%に広がるのです。そうすると、これはやはり保険診療の枠がだんだん狭められて自由診療で枠が広がっていくような格好になっていくのではないだろうか。二〇%の枠を締めても現実には二〇%は守られていませんよ。三〇%にするともっと広がっていくのではないか、こういう気がしますけれども、その点はどうかということが一つです。  それからもう一つは、病院における給食です。給食も、これはメニューをつくって、自分が金を払えばいろいろなものをもらえる。基準給食というのですか、その基準給食は保険で見るけれどもそれ以上のものについては自分で払う。しかも病院の給食というのはだんだん民間に委託して民間が入ってきますから、そうするとだんだん金を払わなければうまいものは食えない、いいものが食えないということになっていって基準給食というものが余り意味をなさなくなってくる、だんだん質が下がっていくのじゃないか、こういう気がしますけれども、こういう点もやはり問題だと思うのですが、その二点についてはどうですか。
  526. 下村健

    ○下村政府委員 差額ベッドについては、ただいまお話しのように、三人室以上の差額徴収は認めない、それから差額ベッドの割合が全病床の二割以内という指導を行ってきまして、その結果総体的には大体指導の範囲におさまってきているというのが現状でございます。  ただ、差額ベッドの比率が地域によって相当異なっておりまして、特に都市部においてなかなか二〇%という枠におさまり切れないという格好になっているわけでございます。こういった地域におきましては、例えば差額ベッドから埋まっていくというふうな実態も医療機関側からは主張としてなされておりまして、確かに東京のようなところでは患者のニーズがかなりそういった高度なものに強くあるというところは実態としても認められるのではないか。そこで、患者のそういった要求と差額徴収のルールをどうやって適合させればいいかというふうなところでかねてから中医協でいろいろな議論が行われてきたわけでありますけれども、今回の改定を機会に従来のルールを見直して地域の実勢に即して弾力化を行う、そのかわり決めたルールは必ず守らせるというのが中医協の一致した意見になったわけでございます。  こういった議論を踏まえまして、したがいまして、今回、個別の承認である、それから地域の実勢に即した形で枠の弾力化を行うというふうな制度をつくったわけでございます。これで差額ベッドが無限定に拡大しないように、三人室以上の差額徴収は行わない、それから地域における保険病床が充足されているかどうかというふうな、枠の拡大によって患者の保険診療の機会が制限されないということを確認した上でやっていってはどうかというような前提条件については、地域ごとの状況に応じて医療の実情に支障を生じないようなことで運用をしていきたいというふうに思っているわけでございます。  なお、従来は差額の問題というのは一応行政指導という範疇で対処をしてきたわけでございますが、今回は一応差額につきましては療養担当規則それからこれに基づく告示で明確化しまして、その遵守を制度的に担保するということにしておるわけでございます。また、地方医療協への報告ということも制度化いたしまして、御懸念のような問題が生じないようにやっていきたい、こう考えております。  それから給食でございますが、実は現在の基準給食のもとでも一部の病院では複数メニューというようなことをやっているところもございます。したがって、今回この辺をどう考えていくかという点はいろいろ議論があったわけでございますが、できるだけ日常生活に近い療養を送りたいというふうな、これも患者の希望がかなり強いわけでございます。早い、まずい、冷たいというふうな悪口も言われているようなこともございますので、患者の要求にこたえて希望によって一品追加、二品追加というふうな形で食事のバラエティーを持たせるという道をこれも開いた。したがって、病院の状況も見ながら慎重にやっていってはどうだろうかと私どもとしては思っているわけでございます。  この場合、基準給食の質が落ちはしないかという御懸念でございますが、個別に医療機関の承認を行うということでその辺は担保していきたい。その際、従来の基準給食の内容と追加品目との内容を十分チェックいたしまして、内容が低下しないように、運用面で十分適正な基準給食が保たれるという点は考えていきたいというふうに思っております。
  527. 村山富市

    村山(富)分科員 理屈の上ではそういうことが言えると思いますけれども、実際は、僕は一番心配するのは、差額ベッドにしても給食にしても本来ならば保険で給付せられるべきものですね。しかも、どの部屋に入れるかというのは、患者の病状によって、これはやはり大部屋じゃ悪い、小部屋でなければいかぬというふうに病状によって判断をしていくということが一つ、もう一つは、私は金をうんと持っているから、金を払うからと本人が希望して特別な部屋を選ぶという、この二つに分けて判断をしてもらわなければいかぬ。あくまでも保険で給付することが原則だということで考えていかなければならぬという立場からすれば、いたずらに差額ベッドをふやして、そして金を払えばぜいたくができる、しかも保険だけでは余りいい部屋に入れぬというようなことになったのでは、これは保険診療そのものを壊すことになりますから、その点を心配するわけですよ。  それから給食にしても、これは療養のための給食でしょう。健康人がどこかで食べるのと違うのです。療養に必要な食事を提供するというために基準給食というのがあるわけです。ですから、それはやはり保険でもって最大限保障する。それ以上に必要な栄養をとるとか本人が食べるとかいうものについては、本人が金を払うのはいいでしょう。だけれども、あくまでも原則は基準給食にあるというふうに考えてもらわなければならない。  今のような傾向を見ておりますと、さっきも言いましたように、だんだん保険の給付が狭められていって、低下していって、そして金を払えば何でも自由にできるような範囲がどんどん広がっていくということになっていく傾向にありますから、私はその点を特に強調して申し上げておきたいと思うのです。  もう時間がありませんから申し上げませんけれども、基準看護料の問題にしても、日数によって看護料が下がるなんというのはもってのほかであって、必要ない患者さんは医療機関が誘導してうまく退院させればいいし、退院ができないような社会的要因があって病院に入っているわけでしょう。ですから、それはある意味からすると患者の責任ではないのですよ。患者の責任でないのに、日数が経過したら看護料が下がってサービスが悪くなるというふうなことで患者を追い出していく。表現は悪いですけれども、そんなことでないと思うけれども、しかし客観的に見ればそうしか見られませんからね。したがって、入院日数が長過ぎるからそれをできるだけ短いものにしていこうという考え方でいろいろ工夫をするのでしょうけれども、こんなやり方はやはりよくないというふうに思いますから、この点も含めて意見だけ申し上げておきます。もう時間がないものですから答弁は要りません。  それから最後に、これはもう答弁は余り要らない、これは要望しておきますけれども、国会議員の秘書の問題です。  この秘書は、衆議院が解散をしますと一応雇用関係が切れるわけです。そして、また当選をしてきますと身分がつながっていくわけですね。解散の間は保険も年金も適用がないわけです。これは長くて一カ月ですね。ですから、法律上の身分は解散で失われますけれども、秘書は選挙活動に従事したり、予想される普通の失業者とは若干違うのじゃないか。それで、任意継続という制度があるから任意継続すればいいじゃないかという意見もあると思いますけれども、これは掛金が高うなりますし、手続が面倒ですから、わずかな期間ですからその必要もないのではないか。当選をしなければそれで切れるわけですね。当選をしますと身分はつながっていって、給料なんかはもらえるわけですからね。その間のものももらえるわけです。したがって、ある意味では身分が継続したような格好になっていますから。落選すればはっきり身分は切れますからこれは問題がないわけです。この辺の方は当選する方ばかりですからその点の心配はないと思うのです。余り類似した職種が少ないから他に余り影響もないのじゃないかと思うので、これは特殊な職種ですから何らかの工夫があっていいのじゃないか、こういうふうに思うのです。  これは、私どももいろいろ検討して、必要があれば立法上の措置もとった方がいいのじゃないかという気もしますけれども、そうでなくて、行政上の扱い、措置で何かできる方法があれば検討してもらいたいと私は思うのです。今皆さん方のところで十分検討もしていただいていると思うのですが、できれば次の解散時点ぐらいまでには何らかの結論を出してこの適用ができるような方法を講じていただければ皆さんも大変助かるのではないかと思いますし、これは国会議員共通して思っていることだと思いますから、私が全国会議員を代表して要望しますから、十分の御検討を心からお願いいたしまして、質問を終わります。
  528. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 ただいまの村山委員の質問は極めて重要でありますので、厚生省におかれましては鋭意検討していただきたいと思います。  これにて村山富市君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、厚生省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚くお礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時三十一分散会