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柴田(弘)
分科員 続いて、国税庁にお尋ねします。
今や税制全般にわたる抜本的な見直しというのは国民が求める課題であると私は思います。国民の多くがなぜ税に対する不公平感を抱くようになったのか、その要因というのは大きく分けて三点あると思います。第一点は、大幅な減税措置を適宜的確に行っていったかどうか、これはノーと言わざるを得ません。第二点は、税制全般の
制度上の不公平を是正する努力を行ってきているかどうか、これも残念ながらノーと言わざるを得ない。第三点は、法人や事業所得者と勤労所得者の間における所得の捕捉率の不公平感解消に向けて改善を行ってきたか、これも、努力はされておみえになりますが、ノーと言わざるを得ない。
そして、ここにそれを裏づけるデータがあります。つまり、
昭和六十一年二月
総理府広報室が実施いたしました税金に関する世論調査、これを見てまいりますと、不公平があると思う、税金の不公平感、そして、ある程度不公平があると思うと答えた人は調査者数の八一・三%に達している。その中で、自営業者はその平均よりも低い七九%。ところがサラリーマンは平均より高い八八・五%である。それから、同じく
総理府の調査でありますが、自分の収入に比べて負担額が大きいと答えたのが四七・六%、税金の仕組みや徴収の仕方に不公平があると答えたのが三一・二%であります。それから、三つ目の資料でありますが、最も負担に感じている税金の種類、これは所得税が六三・三%、それから住民税が一四・四%であります。そして、この不公平があると思う、あるいはある程度あると思うと答えた人、これが三千百七十五人あったわけでございますが、その不公平があると思う
理由を聞いたところ、サラリーマンと商工業、農業等の自営業者の間の納税方法に違いがある、五二・四%で最も高い。以下脱税がある、あるいは脱税が摘発されていないというのが三七・四%、このようにあるわけであります。
このように考えてまいりますと、このデータを見まして、いわゆる所得捕捉問題についてどう考えるかという問題でありますが、申告納税
制度は定着したと考えられているわけでありますが、この実地調査を見る限り、所得を過少に申告し納税している者が大半である。これはまた後から申しますが、そういうことが言えます。そして二つ目には、実地調査は直接的には税の脱漏を補正し、間接的には適正な申告を促すための牽制効果を持ち、公平確保の面から重要な手段ではないか、私はそのように評価をいたします。
具体的に各税目の実地調査
状況を見てまいりますと、例えば
昭和六十二年、法人税、申告件数が二百六万四千件、このうちの調査件数が十九万二千件、実地調査
割合、つまり実調率がわずか九・三%であります。そして更正決定件数が何と驚くなかれ十六万件もある。その
割合は八三・三%、申告漏れ所得金額は一兆二千二百五十六億円であります。そのとおりですね。それから所得税、更正決定
割合が九五・三%、実調率がわずか四・〇%です。しかも申告漏れ所得金額が五千七百六十二億円。譲渡所得、これは更正決定
割合が七〇・八%、申告漏れ所得金額が五千三百十二億。相続税、九八・四%の更正決定
割合、そして申告漏れ所得金額が三千百十億円。各税合計で二兆六千四百四十億円の申告漏れ所得があったわけであります。
先ほど申し上げましたように、現在の実調率が法人で九・三%、所得で四・〇%、こう言われておりますが、このことが公平さを喪失している原因になっている。これは僕は断言してもいいと思いますね。しかも国税の時効は国税通則法第七十条、国税の更正、決定等の
期間制限の五項によりまして七年であります。最長の除斥
期間である七年以内に調査を一巡するには、実調率を年間一四・三%に持っていく必要があるわけであります。だから、実調率が今の法人で九・三、所得で四・〇でありますから、毎年積み残しがあるわけですね。
一方、申告納税者はどうなっているかというと、
昭和五十年から六十年の十年間に申告納税者数は一・六倍、還付申告者数が二・二倍、法人数が一・四倍、源泉徴収義務者数が一・四倍、このようにこの十年間に
増加をしている。ところが一方、国税
職員は微増です。
昭和五十年度は五万二千四百四十人でありましたが、
昭和六十年度は五万二千八百五十二人、四百十二人しか
増加していない。最近、六十一年度では六十四名、六十二年度は百九十九名、六十三年度、今年度はがばっとやったと言われておりますが、三百七十四。全国に税務署が幾つあるかといえば、長官、五百十五あるのですよ。一つの税務署に一人増員できないわけなんです。配置ができない。それでやったやった、六十三年度は大幅にやりましたと言って胸を張っていただくのもいかがかと私は思います。結果、急増する納税者数、事務量の
増加に対応できず、内部事務の切り捨て、機械化処理に努力をしているわけでありますが、また、一件当たりの調査日数も極端に減らして税務執行を行っているため、新たなる不公平が生じつつあるわけであります。
結局、私は、この不公平を執行面で是正するためには、定員を
増加することが不可欠である、このように考えるわけであります。今の一四・三%の実調率をやろうとしますと、あと一万五千七百六十六人ふやさなければならない。これを控え目に見て五年間で一万人と言っているのです。一年間で二千人。だから、なかなか大変な数でありますけれども、とにかく私は、
制度面も大事でありますが、執行面の不公平税制の是正という観点から国税
職員の増員ということは大事なことである、このように思います。ひとつ国税庁の方から、もう時間がありませんので簡潔にお答えいただきたい、このように思います。簡単で結構です。