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1988-02-15 第112回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月十五日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長代理理事 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 野田  毅君    理事 宮下 創平君 理事 山下 徳夫君    理事 上田  哲君 理事 村山 富市君    理事 池田 克也君 理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    池田 行彦君       稲村 利幸君    上村千一郎君       海部 俊樹君    倉成  正君       左藤  恵君    佐藤 信二君       佐藤 文生君    志賀  節君       田中 龍夫君    戸塚 進也君       西岡 武夫君    細田 吉藏君      三ッ林弥太郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    若林 正俊君       井上 一成君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       佐藤 敬治君    辻  一彦君       坂口  力君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    宮地 正介君       田中 慶秋君    楢崎弥之助君       寺前  巖君    中島 武敏君       矢島 恒夫君  出席公述人         杏林大学社会科         学部教授    田久保忠衛君         全日本民間労働         組合連合会事務         局長      山田 精吾君         株式会社テレビ         東京常務取締役         解説委員長   鈴木 幸夫君         上智大学経済学         部教授     岩田規久男君         財団法人食料・         農業政策研究セ         ンター理事長  並木 正吉君         中央大学経済学         部教授     丸尾 直美君  出席政府委員         内閣官房長官 小沢 一郎君         北海道開発政務         次官      上草 義輝君         防衛政務次官  高村 正彦君         経済企画政務次         官       臼井日出男君         国土政務次官  大原 一三君         外務政務次官  浜田卓二郎君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         文部政務次官  船田  元君         厚生政務次官  長野 祐也君         農林水産政務次         官       北口  博君         通商産業政務次         官       浦野 烋興君         運輸政務次官  久間 章生君         郵政政務次官  白川 勝彦君         建設政務次官  古賀  誠君         自治政務次官  森田  一君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     戸塚 進也君   砂田 重民君     若林 正俊君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   岡崎万寿秀君     寺前  巖君   正森 成二君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   戸塚 進也君     小坂徳三郎君   若林 正俊君     砂田 重民君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。昭和六十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず田久保公述人、次に山田公述人、続いて鈴木公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、田久保公述人にお願いいたします。
  3. 田久保忠衛

    田久保公述人 田久保でございます。  私は、最近の国際情勢を顧みまして、観察いたしまして、日本外交防衛、これはどうあるべきかという観点からいろいろ意見を申し述べたいと存じます。  まず、最大の今の問題でございますけれども、米ソ関係であります。米ソ関係は、INF全廃条約に昨年の十二月、レーガンゴルバチョフがワシントンで調印したわけでございます。これで国際情勢が一挙にデタントの情勢に入った、したがって国際情勢緊張緩和の方に向いている、よって日本防衛もこれは余り重視しなくていいんだというような、そうとも受け取れる御議論が私はあったように見受けるわけでございます。現に日本の一部にもそういう意見があるように考えるわけでございます。これは間違いではないかというふうに私は考えております。  それはゴルバチョフ外交をどう評価するかという一点に尽きるわけでございますが、これはスタイルが変化したのかあるいはサブスタンス、態様が変化したのかあるいは実体が変化したのか、この判断がなかなかつきにくいということだと思うのでございます。全核兵器の四%弱が全廃される、これはそれなりに大いに意義がある。それから検証、これも画期的なものであるというふうに思うのでございますけれども、何が変化して何が変化しなかったのかというところから考えますと、これはよく慎重に考えていかなければいけないのではないかというふうに思うのでございます。  私は、INF全廃条約が結ばれましたプロセスを見ておりますと、これはつまり反核・平和の運動が成功してこうなったのであろうか、そうではないんではないかと思うのであります。反核・平和の運動も確かに意義のあるものだと思うのでございますけれども、これはやはりレーガンの力の政策あるいは西側団結というものが大きな役割を果たしたのではないか。  私は四つ問題を挙げたいと思うのであります。レーガン軍事費でございます。八〇年度から八五年度までのアメリカ軍事費、実質三二%の増、これが第一でございます。二番目は、欧州アメリカ中距離核を展開した、この既成事実がございます。それから三番目に、まだ海のものとも山のものともわかりませんが、SDI。これは八三年三月二十三日、レーガンが構想を公表したわけでございますけれども、これがいつの間にか政治的あるいは外交上の武器になった、これが私は三番目の強さだと思うのであります。それから四つ目は、米日欧、この西側団結。これは八三年の例のウィリアムズバーグ・サミット、中曽根前総理が少なからぬ役割を果たされたわけでございますが、あの政治声明を見ておりますと、西側安全保障は不可分であると、すこぶる重要な一句が盛られている。これがゴルバチョフ交渉の場に引き出した大きなてこになったのではないかなというふうに私は判断しているわけでございます。  もちろんソ連内部事情もございましょうが、こういう交渉事になりますと、片方の手でパンチ力がある、その上に立って右の握手をする二路線方式、この左のパンチを忘れた場合にはこういうINF全廃条約というものは実現できなかったのではないかなというふうに考えているわけでございます。  さて、INFが全廃された後の国際情勢はどういうことになるか。これは、私は、通常兵器通常兵力の重視ということに相なろうか、こう思うのでございます。例えば欧州でございます。INF全廃、これが大きなインパクトを与えている。例えば西ドイツフランスでございます。これは一月二十二日でございますけれども、西独・フランス安全保障協議会というものができたわけでございます。ここで仏独合同旅団四千二百人編成が決まっている、こういうことでございまして、通常戦争にどう備えるかということが欧米の大きな関心事ではないかなというふうに私は判断しているわけでございます。  時間がございませんので急ぎますと、日本でございますけれども、一九七八年の指針に基づきまして、防衛庁も盛んに日米間の戦術的協議を進めておられる。私はこれは大変結構なことだと思うのであります。共同作戦計画、シーレーンの防衛計画、インターオペラビリティー、それから今回一月に防衛庁長官カールッチ米国防長官との間でお話しになられた有事来援の問題、次から次へとこういうところで、日米間大変亀裂が深まっておりますけれども、安全保障面では非常に関係が強まっている、結構なことだなというふうに思うのでございます。  そこで、ここで私が少し注文をつけさせていただきますと、戦術面協議が行われている。しかし国際情勢というのはかなり劇的に変わっているのではないか。例えば一月十二日でございますが、例のイクレ国防次官、ウォルステッター前NATO司令官、この二人が幹事になりまして十三人の専門家がつくった「選別的抑止力」という報告書がございます。一月二十日にレーガンが「アメリカ国家安全保障戦略」という報告書を出した。前者は兵器技術、この劇的な変化でございます。世界が変わっていて、どうやら脱核兵器時代、この到来を告げたように私は感ずるわけでございます。  いずれも通常戦争が改めて重視され始めたということだと思うのであります。それからレーガン戦略に関する報告書、これもきちっと国際情勢を踏まえた上での報告書だと私は思うのであります。こういう面で日米間に戦略上の話し合いを持ったらどうか。もっともっとこれから強化すべきは戦略上の話し合いではないか。二十一世紀をにらんだ日本防衛政策、九〇年以降のことも大いに考えていただきたいというふうに思うのでございます。  それから、以上のことから申しますと、来年度の予算でございますが、五・二%の増、極めて妥当である。むしろ、私の考えからいたしますと、少な過ぎる感もあるのではないかな、こう思うのであります。いずれにいたしましても、現在の国際情勢にかんがみまして、日本は粛々と自衛力の整備に努めるべきだ、これを逆戻りさせるような理由は皆無であるというふうに考えております。  二番目に申し上げたいのは、西側一員としての自覚でございます。自覚責任ということでございます。  これはいろんな数字があるわけでございますけれども、日本経済は考えられないぐらいに大きなものになった。一九四五年、日本GNPなんというのは、これはゼロに等しかったのだろうと思うのであります。六〇年、世界に占める日本GNPは三%。これが八〇年になりますと一〇%。今円高でございますから、換算、これをどうするかいろいろ難しいわけでございますけれども、一説によりますと、一五、六%という数字が出る。これだけのGNPを持った国が国際的責任をどう果たすか、ここのところが重要ではないかなと思うのでございます。  一方、アメリカGNPでございますけれども、戦後これはどんどんどんどん落ちる一方である。先ほど六〇年の数字を申し上げましたが、世界に占めるアメリカGNP、六〇年三三%でございますね。八〇年になりますと二二%。これはどんどん下がっていって、日本がどんどん上がるというふうには考えられませんが、どうも日米間に経済の力で地殻変動が見られるということでございます。これで経済摩擦が起こるのはむしろ当然でございます。  これを解消するということから考えますと国際化。後から国際化ということを考えて、やはり日米摩擦あるいはほかの国との摩擦がなかったら国際化という議論は起こらなかったと思うのであります。それで国際化、物、金あるいは人、これは重要でございますけれども、いろいろ難問がございますけれども、どんどん進めなければいかぬだろう、こう思います。  それからODA、これももう諸先生方大変御努力なされて、円高のせいもありますけれども、百億ドルを突破した。私はすばらしいことだと思うのであります。ただ、これを推し進めていくだけでいいのか。やはり経済大国としての責任、これをどういうふうに果たすかということでございます。私は大きく行動で示さなければいけないだろうというふうに思うのであります。例えば、これは余り明るみに、まだ公表されていないわけでございますけれども、大来佐武郎先生がやっておられる民間日本国際フォーラムというものがある。ここで実は大変な報告書が近々出るわけでございます。  これは「日本アメリカアジアNICS間の構造調整」という答申でございます。民間でこれだけのものができている。つまり、日米間の構造調整をする。経済摩擦をなくす。そのかわりアメリカには財政赤字削減を強く要請する。そのかわり——そのかわりがたくさんあるわけでございますけれども、そのかわり日本は、アメリカ側赤字削減、これを本格的にやりますとデフレ効果を生むのではないか、あるいは縮小均衡状態になるのではないか、これをアブソーバーとして日本内需振興で大いにやる。NICSアメリカ経済が直撃する、あるいは中南米を直撃する、その間に日本が大きな国際的役割を果たす。二十一世紀に伸びる私は心意気を示したものだ、こう思うのでございます。こういうような思い切った措置をこれからどんどんとっていかなければいけないのではないかな、こう思うのでございます。  そこで、経済の部門、これは今申し上げたようなことでいいと思うのでございますけれども、問題はそれだけで済まないことがある。例えば昨年大いに問題になりましたペルシャ湾の問題でございます。西側一員——私は自民党の推薦でここに出まして自民党注文をつけるようで大変恐縮でございますけれども、西側一員と大きな声で言って、その役割をどうするかが問われたのが私はペルシャ湾の問題だと思うのです。西側一員、これは例えばアメリカがクウェートのタンカー十一隻を防衛する。これはなかなか我々にできるものではない。アメリカが協力要請したときサッチャーも断った。当然だと思うのであります。  ただし、公海上、オマーン沖アメリカのテキサコ・カリビアン、大型タンカーが触雷した、そのときにイギリスフランス、イタリー、ベルギー、オランダ、これはみんな掃海艇を派遣しているわけであります。ところが日本は何もしない。行動では少なくとも何もしない。西ドイツでありますけれども、西側一員西ドイツNATO地域以外の地域に派遣、海外派兵できない仕組みになっておりますが、地中海に三隻の艦艇を派遣した、これでパトロールを受け持った、こういうことでございます。  日本行動では少なくとも示していない。西側一員というアパートがあって、門に火がついた。一番力の強い男がバケツを持ってこれに水をかけている。今度は玄関に火がついた。これはみんなが火を消している。西ドイツは水道の蛇口と現場をバケツのリレーをしているわけであります。日本はまだ部屋にいる。こういうことで西側一員としてのロジックが通るだろうかどうか。これは憲法の枠内でできるという政府の見解もあるわけでございます。今の体制でできるぎりぎりの行動による誠意、これを示さなかった。今後こういう同じような例が出た場合にどうするのか。私は、ここでひとつ大きな心意気を示していただきたい、これは軍国主義の復活とかなんとかとは全然別個の問題だというふうに考えるわけでございます。  それから、私が最後に申し上げたいのは、どうも今の国際情勢世界バランスが変わりつつあるのではないかな、こういうことでございます。  最近のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン、一月二十七日、八日両日に紹介されておりますけれども、エール大学ポール・M・ケネディ教授歴史学の大家であります。彼が、今のアメリカ情勢というのは、一九〇〇年、二十世紀への曲がり角を曲がったばかりのイギリスに酷似している。実に似ている。以後、イギリス衰退の一途をたどったわけであります。これはボーア戦争、ドイツと対抗した。今のアメリカベトナム戦争ソ連と対決している。実に似ている。経済はがたがたである。  そこでポールケネディ教授——私はこの点は余りポールケネディ教授意見は一致しないわけでございますが、アメリカが一挙に衰退するなんということは考えられない。なだらかに坂道を下がっていくだろう。五十年とか六十年、曲折はあっても大きな没落、衰退というものはなかろうと思うのであります。ただし、世界バランスは徐々に変わっていくという認識を持たなかったらいけないのではないか、こういうことでございます。アメリカも徐々に手じまい状態に入っていくだろう、こう思うのでございます。  実は、最近気になりますのが、レーガン特別顧問をやりましたドーグ・バンドーという人がおる。これがCATOという研究所で在韓米軍段階的撤兵という論文を十二月に書きまして、日本の新聞にも一部紹介されたことがございます。これは五年以内に撤退する、その後、日韓安保条約を結んだらいいじゃないかというようなことをこの結論のところでちょっと言っているわけでございます。これは今の状態だと荒唐無稽ということになると思います。それから、十二月二十六日付のエコノミスト、このエコノミストアジア安全保障という特集がございまして、この結論のところで、中国軍事的に強くなるだろう、その場合に日本中国との間で安全保障条約を結んだらどうかというようなことをちょっと書いているわけでございます。  私は、エコノミストの記事も前のバンドー氏の論文も、これは今のところ現実離れがしているけれども、いずれも、大きく国際情勢バランス・オブ・パワー、一種均衡が崩れていくのではないか、二十一世紀に崩れていくのではないか。経済次元だけをとりますと、これはもう二極構造というのはなくなっている。日本GNPソ連を抜いてしまった。日本のパーキャピタ、一人当たりにいたしますと、アメリカGNPを抜くところまで来ている。EECは、これはEECだけでGNPアメリカを抜いてしまった。つまり、米ソ二極というのは経済次元に関する限りない。こういうところで、この中で政治軍事、このバランスがどう変わっていくか。二十一世紀に目を凝らした対策が私は必要ではないかな、こういうふうに考えるわけでございます。  いろいろ申し上げたいことがございますが、つまり、私が申し上げたいことは日本責任ということでございます。今までの受動的な対応でいいのかどうかということなんでございます。  それは、竹下首相が一月の十三日でございますか、レーガンと会談いたしました後、ナショナル・プレス・ビルディングの記者会見に臨まれた。そこで、「世界に貢献する日本」ということを言われて、私は大変これはいいことだなと思ったわけでございます。  実は、私の記憶ですと、八一年五月五日に、当時の鈴木総理でございますが、ニューヨークのジャパン・ソサエティーの演説でこういうことを言われた。日本は、従来の受動的受益者から能動的創造者になるんだ、行為者になるんだ、第三の開国を迎えましたということをおっしゃった。私は、一種の感慨を持ってこの発言を拝聴したわけでございます。しかし、以後七年たつわけでございますけれども、これは行動で、西側大国としての、あるいは一員としての行動をお示しになったかどうか、私は、これは心もとないと思うのでございます。  この点を竹下総理はお気づきになったかどうか知りませんが、「世界に貢献する日本」ということを言われた。いよいよ言葉ではなく、行動西側一員を示す時期に来ているなというのが私の結論でございます。  ちょうど二十分になりましたので、これでやめておきたいと思います。御清聴ありがとう存じました。(拍手)
  4. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、山田公述人にお願いいたします。
  5. 山田精吾

    山田公述人 山田です。公述の機会をいただきましたことをお礼申し上げたいと思います。  我が国進路につきましては、先行き不透明の中であれこれと議論を呼んでおりますけれども、どちらにしましても、国民生活の質を高めるための内需拡大をどう進めるのか、このことが大方の国民の気持ちではないかというぐあいに私どもは受けとめております。それだけに、今回の通常国会に対しましては大きな期待も寄せておりますし、私たちはあえて、勝手な言い方ですが、生活国会だというような名づけもしております。  ところが、先週の予算委員長辞任をめぐる国会の動きなんかを見ておりますと、果たしてこれで国民期待にこたえられるのかどうか、率直に言いましてこれで大丈夫なのか、大きな不安なり疑問を持っております。このようなことで、ますます政治への不信を強めていくことを大変危惧していると率直に申し上げておきたいと思います。  先ほど、きょうは予算委員長ではございませんけれども、ごあいさつをいただきましたが、きょうの公聴会も一体どうなるんだろうかということを大変気にしておりまして、何か一言触れられるのかなと思いましたが、全然ございませんでした。ぜひ、国民生活に密着しました、そしてわかりやすい国会論議を展開して、政治の信頼の回復に、ひとつ全力を挙げていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  それから、世の中全体が寄らば大樹の陰というような、各界全体を通しましてその風潮が大変強くなっていることも気になります。このことも、今日のいろいろな問題を引き起こしている大きな要因にもなっているように思います。これは、国会皆さん方だけではなしに、我々労働界に所属する人間としても、実は極めて反省をしているわけなんですが、端的に言いまして、経済界にしましてもうち会社は、うち会社は、労働界にしましてもうち組合は、政界もうちの選挙区は、といったミクロ的な選好という、こういう傾向が非常に、余りにも強くなっているんではないかな。もちろん、私は生意気なことを言っていますけれども、うちが大切であるということは、言われるまでもなく十分承知の上で実は申し上げているわけであります。  昨年は、「塀の中の懲りない面々」というのが大変流行語になりましたが、その背景にはいろんな意味合いが含まれているように思えてなりません、私の勝手な思いかもしれませんけれども。今最も大切なことは、マクロ的な視点を大事にすることが我が国進路を切り開く重要なポイントになっているのではないかと反省もし、今最も求められているものではないかと思っております。  予算審議に当たりましては、釈迦に説法かもわかりませんが、前回この場でも私は申し上げましたけれども、まず第一に、中流意識論に浮かれ、国民生活の実態が見失われているのではないか、このことも大変気になっております。前川レポートの指摘を待つまでもありません。経済成長の成果が生活の質の向上に反映されてないということです。  最近各省庁が発表しました各種の生活調査消費調査貯蓄調査などにも見られますように、目標とは裏腹に、逆の方向に向かっているとしか思えないわけです。生活水準が人並みを中流意識と考えた場合、中流意識前回、三年前の調査から二・四ポイントも下がっております。将来の暮らしに否定的な見方をする人は、同じく前回の五七・一%から六五・一%とふえております。十人に七人が将来に対して悲観的な見方をしている。また貯蓄の所得間格差を見ますと、貯蓄高よりも負債高の方が多いサラリーマン世帯は二〇・七%。サラリーマン世帯の五分の一が負債超過の世帯というような現状です。  さらに、昭和六十二年十一月総務庁家計調査報告によりますと、全世帯の実質家計消費支出は前年同月比二・〇%増で堅調でありますけれども、勤労者世帯に限りましては実質〇・八%減。これは二カ月連続のマイナスを記録しておるということです。一方、自営・自由業など一般世帯は八・三%増と、十カ月連続のプラスとなっておる。消費面の格差がこういう面でも顕著にあらわれている。このようなことを挙げますと数限りなくあると思います。  昨年、この場で、公聴会でも、国税庁発表による昭和六十年度の民間給与の実態の一部を御紹介いたしました。昭和六十一年度は、一年を通して勤務した給与所得者は三千七百二十九万人です。平均給与は三百六十三万円です。これは残業手当を含む諸手当、ボーナスを入れてのすべての収入という額であります。平均年齢は四十・八。勤続年数は十一・〇年。事業所の規模を見ますと、本当に驚くような実態であります。一人から九人の規模、八百八十八万人、全体の二一%を占めておりますけれども、平均の収入給与は二百六十七万円です。五千人以上の規模が二百二十三万人おりますが、五・三%を占めて五百二十三万円というような状況です。  両者の格差を見ますと、給与面では一〇〇対六五、ボーナスの面では一〇〇対一七。仮に三十人から九十人で比較しますと、一〇〇対七七、一〇〇対四四というふうに、むしろ年々格差が大変開いているというような状況だということも十分知っておいてほしいと思います。全体に占める規模五百人以上、二二%ですから、圧倒的に中小零細企業で働いている人たちが多いということなんです。年収三百万以下は四九・三%、三百万円から五百万円以下は三〇・七一%、中堅サラリーマンがよく話題になりますが、五百万円以上という人は二〇・一%しかいないということなんです。六百万円以上はそのうち一一・九%というのです。  税制問題とか社会保障の問題を議論する際に、ぜひこういう実態についても念頭に置きまして議論をしていただくことが非常に大事なことではないかということで、私はあえて冒頭に申し上げたわけです。  第二に、円高と購買力平価、そして労働時間の短縮の問題です。  円高メリット・差益還元につきましては、政府は六〇%以上の効果を明らかにしていますが、生活の実感から見ればそんな気持ちには到底なれません。消費者物価の動向から見ましても、そのことを物語っていると思います。横ばいからやや最近は上昇の機運にあるというようなことがそれを示していると思います。殊に円高の急騰によりまして、我が国の名目賃金は世界のトップ水準だと言われておりますが、さらさらそういうような実感は持てません。そういう実態でもありません。  私ども連合は、家庭の幸せを中心にして、総合生活の改善を進めるために欧米並みの生活を目指すことにしております。このことは、欧米との購買力の差が余りにも大きいということです。昨年、経済企画庁が発表しました物価レポートに紹介されていますように、OECD調査、これは五年に一回なんですけれども、一九八五年時点の為替レートが一ドル二百三十九円、購買力平価は二百二十五円、物価水準はアメリカの〇・九四倍でありました。  二年を経過しました。連合でOECDの方式で試算をしてみました。それによりますと、八七年為替レートは百三十八円に上がり、この二年間で消費者物価上昇はアメリカで七・〇%、日本で一・一%をもとにしますと、購買力平価は二百十三円、物価水準は一・五四倍、これはアメリカの一・〇〇に対してであります、大都市における地価高騰を加味しますと、格差は一層拡大をすることになることは皆さん御承知のとおりです。従来の物価対策の強化とともに、ぜひ物価構造にメスを入れ、抜本的な見直しが緊急な課題であります。まずOECDの調査を待つだけでなく、政府としても独自の調査体制をつくり、実態を明らかにしてもらいたいと思うわけです。我が国経済力と社会生活環境の余りにも大きな開きが、このようなゆがみを生み出していることは言うまでもありません。  特に、労働時間の欧米との差はそれを象徴的に示しております。多くの問題を含みながらも労基法の改正が四月一日からスタートします。一九九〇年代の初めには完全週休二日、週四十時間の実現をしなければなりません。その環境づくりのためにも、経済力の社会への還元を政策的に検討する段階に具体的に来ていると思います。時短促進の決め手は、政府責任で実行できます公務員の土曜閉庁による週休二日制の実施を直ちに行うべきだと思います。金融機関についても言うまでもありません。  第三に、土地住宅対策であります。  土地住宅対策を思い切って進めてほしいわけですが、一時期に比べ、国会議論のトーンが非常に落ちているような気がして心配です。その理由は、値下がり傾向にあるという見方が何か左右しているようでありますが、そんなことでは困ります。連合では、首都圏サラリーマンを対象として本年一月十七日から二十日間、緊急な調査を行いました。その内容は、既にきのうからきょうにわたってマスコミを通じて報道されているとおりであります。  時間がございませんから多くを紹介するわけにはいきませんが、下がっていない、まだ上がっているというのが、二十三区では七五・五%、六十キロ圏外でも七九・四%、その間はほとんど八〇%以上の人が、土地は下がってはいない、むしろ上がっているというようなことを端的に私どもに表明をしております。原因と責任につきましては、もう圧倒的に、何もしてこなかった政府にある、六〇・七%。不動産業者による土地転がし、一四・七。金融機関による土地融資の行き過ぎ、一一・五。東京の国際都市が非常にその理由になっておりますが、サラリーマンの受けとめ方ではわずかに五・〇%というような見方ですから、ちょっと国会議論される面とサラリーマン、国民が受けとめる面と、土地が暴騰した理由についての見方にかなりな差があるなということを、この際率直に申し上げておきたいと思います。  対策についても触れたいわけですけれども、時間の関係で省略しますが、一言だけ申し上げたいと思うのです。  本当に涙ぐましいような調査の結果が出ているのですが、サラリーマンは、大都市での住宅、持ち家についてはもうあきらめたと言われるのが一般的なのですが、年収四、五年分でまだ入手できれば、生活を切り詰めても何としてでもマイホームを持ちたいという方が、やはりこの大都市には依然として六〇%おるということが明らかになってきました。もうだめだ、もうあきらめ切っている人は三〇%、どうしていいかわからぬという人が一〇%以上おられるというような実態ですから、ひとつ国会でも大いに私たちの気持ちを受けてもらいましてやってほしい。憲法論議がよくございますが、土地につきましては四人のうち三人までが、土地私有制度のもとで社会的、公共的制約を容認いたしますというような気持ちもこの調査で明らかにされてきております。  さらに、第四には雇用対策であります。どのような対策を進めるにいたしましても、四%から五%程度の実質経済成長率を定着させることが何よりも大事なことだと思います。  環境の暖かでないところでは、産業構造の転換も大変な犠牲を出すことになります。それに、適正為替レートの安定化、産業空洞化を避けるための適切な産業調整等、雇用ミスマッチの厳密なチェックが大事だと思いますし、中高年者の雇用対策、企業海外進出、外人労働者の受け入れの問題など、たくさんの課題が雇用問題を通じまして山積をしております。雇用は全体として明るくなったと言われておりますけれども、産業、業種、地域、年齢といった現状のばらつきに加えて構造転換に伴う先行き不安があります。  昨年十二月、完全失業者百六十一万人、失業率二・六%、有効求人倍率〇・八五倍、全国平均に比べ時点のとり方は若干ずれておりますけれども、九州では失業率は四・〇%、有効求人倍率は〇・五二倍です。北海道は失業率三・六%、有効求人倍率はわずかに〇・三倍というような実態です。全国的に見ましても、年齢の面では五十五歳以上有効求人倍率は〇・一、仕事をしたくても仕事がないという実態にあります。特定地域、特定産業に対する助成政策の実施による地域活性化、とりわけこれらの地域は農産物の自由化の影響を大変大きく受けておるということも新しい問題として一つ加えながら、十分な雇用対策を進める必要があると思います。さらに、産業、地域構造転換を先取りした環境づくりは言うまでもありません。  最後になりましたが、第五に税制改革と減税についてであります。  税制改革、減税は今や天の声でありまして、総理府の世論調査でも不公平、重税感は昭和四十六年で五四%でしたが、昭和六十一年ではどの課題も抜きまして八一・三%になっております。これは圧倒的にサラリーマンの声といいますか、怒りだというぐあいにぜひひとつ受けとめてもらいたいと思いますし、私どもも、もちろんその主張を今日まで続けてまいりました。昭和五十二年から事実上据え置かれてきたということです。  昭和四十年から五十年の十年間で、減税は三兆六千九百二十五億円です。昭和五十一年から六十二年、昨年までの十二年間で、わずかに二兆六千二百七十億円の減税しかなかったということなのです。殊に昭和四十九年の一兆七千二百七十億円の減税は、当時の政府予算規模で見直しますと、約五兆円に匹敵する金額であります。このようなことが、もともとの不公平税制に対する強い不満がある上に、さらに火を注いだ結果が税制に対する不満を一層増大させているということです。もちろん減税だけではなく、税制改革に手をつけなかったことにも大きな原因があります。また今日までのわずかな減税は、減税というよりも、物価上昇による極めて部分的な是正措置だというぐあいに私どもは受けているわけであります。  昨年十一月から私も税制調査会のメンバーに参加しております。竹下総理は、所得、資産、消費の均衡のとれた改革と二十一世紀高齢社会に備えての財源確保を諮問されました。その際に、確かに一切の予見を与えないものとして——だが実際は、予見どころか自民党の首脳の皆さん方は、新型間接税秋口に結論を公然と発言をしておられますし、ちまたでは、政府税調はしょせん自民党税調の隠れみのだということを言われております。もしそういうことであれば、政府税調の責任も問われることになると思います。ぜひこの点は、政府税調が自由にまじめに議論ができるような環境づくりにひとつ御協力をいただきたいと思います。まあ、小倉会長の言うことかもわかりませんけれども……。  私の所属します連合の基本的な態度を率直に申し上げますが、新型間接税秋口に結論を前提とした税制改革は絶対に進めるべきではありませんし、もしその導入を目指すならば、まず国民の信を問うことが議会制民主主義のルールであるということを、連合は一体何を考えているのかなんということをよく問われるのですが、この席で明確にひとつ申し上げておきたいと思います。  本来の税制改革をぜひやってほしいという私たちの気持ちを申し上げたいと思いますが、税制改革は、制度と財政を切り離して、まず制度の不公平税制の是正を中心に徹底した改革をひとつ進めていただきたいということ。特にサラリーマンの立場から四つの不公平。一つは、名目賃金がふえることによる実質大幅増税。二つは、執行上の不公平、いわゆるクロヨン。三つには、資産課税の骨抜きを初めとする制度上の不公平。四つ目、税金の使われ方に対する不公平などが私たちの税制改革に当たっての原則であります。  一番目の所得の問題についてですが、公平の原則はサラリーマン源泉徴収納税を基本としてぜひ考えてもらいたいということです。申告納税者すべてを指すわけではありませんけれども、所得捕捉率にいわゆるクロヨン問題が存在していることは紛れもない事実であります。昭和五十二年から六十二年、十一年間の所得税の推移を私どもは試算をしてみました。サラリーマン給与は三七・九%ふえておりますけれども、税金は九八・五%ふえておりまして、一%に対して二・六%の増です。申告所得者の所得は三〇・一%ふえまして、三六・一%の税金の増ですから、一%に対して一・二%であります。これは間違いのない数字でございますから、こういうことを私どもはクロヨンの背景として実は申し上げているということであります。  制度面からの不公平もあります。記帳義務と総収入申告制の強化。みなし法人税、専従者給与制度、医師優遇税制、こういう制度についてはひとつなくしてもらいたい。推計課税、挙証責任の見直し、悪質脱税の罰則強化、時効の延長、こういうことについて私どもは所得の問題について強調しているということです。具体的にはインデクセーション、物価調整の制度をぜひひとつ導入してほしいということです。  今回、私どもは昭和六十三年度の減税としまして一兆一千億円の所得税減税、四千八百億円の住民税減税を主張しております。この理由は極めて簡単であります。昭和五十二年から消費者物価上昇が三四・六%ございました。そのうち二回にわたりまして減税が行われまして、ちょうどその差し引き残高が一兆一千億円になりますから、ぜひ一遍税制改革の前に整理をつけていただきたいというような考え方であります。  税率構造の見直しにつきましても一〇%から六〇%、このことにつきましては、キャピタルゲインが一体どうなるのかということを見ながら税率の段階についてはさらに我々の見解を明らかにしたいと思います。  資産についても、時間がありませんから簡潔に申し上げます。資産については、キャピタルゲインについてはぜひ原則課税ということを明確にしてほしい、そして漏れがないように。キャピタルゲインについては我々はクリーンカードというような言い方をしておりますが、マル優に対して根こそぎやっちゃったのですから、キャピタルゲインについてほっておくというのは極めて問題だということが一言で言えば私どもの言い分であります。  さらに、アメリカの国税庁では四つの武器を政府に与えております。自民党の皆さん、これは聞いてください、大事なことです。一つは、社会保障番号の導入の問題です。巨大なコンピューターシステム、それから株式の売買によるキャピタルゲインに対する取り扱い、悪質な脱税の罰則強化。ということで時間がなくなりまして、後でまた御質問にお答えする形で申し上げたいと思います。  えらい済みませんでした。(拍手)     〔奥田(敬)委員長代理退席、野田委員長代理着席〕
  6. 野田毅

    ○野田委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、鈴木公述人にお願いいたします。
  7. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 鈴木でございます。私は、日本経済新聞で長く論説の仕事をやっておりまして、今テレビに参りましてから役員をやっておりますけれども、解説の仕事を兼ねてやっております。専門はマクロ経済でございますけれども、本日は、予算審議に関連いたしまして、内需拡大と産業構造の調整の問題並びに貿易の問題について若干意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、現在為替レートは小康状態を保っておりまして、各国間の協調介入と最近発表されましたアメリカの貿易収支の改善、そういったようなことが背景になって、目下のところは為替レートは百二十円台の後半から百三十円というようなところで大体落ちついているわけでございます。国内景気も予想以上に今のところは好調で、企業の収益率も前年に比べますとかなり大幅に改善されているということで、出荷とかあるいは生産も相当順調であるということで、今のところは内需が一応軌道に乗っているという評価が一般的に大変強いわけでございます。  私はこれについて、今後これがどうなるかということは後で申し上げたいと思いますが、ここでちょっと特に先生方に私として強く指摘したいことが一つございます。それは先ほども御指摘がありましたように、前川リポートあるいは新前川リポート、この新前川リポートには私も実は審議に参加しているわけですが、こういったところで非常に強調されました経済構造の調整の問題、これは内容的には内需主導型の経済に持っていく、貿易の黒字をできるだけ縮小する、あるいはNICSその他の諸国との間で水平分業型の構造に持っていくということが基本的なねらいであるわけですけれども、今までは円高といいますと、専らデフレ的な側面ばかりが強調されておりましたけれども、最近経済構造の調整が物すごく急速に進んでおりまして、私どもの見るところでは、第一段階のいわば円高への適応段階は一応通り過ぎた、いよいよ本格的にこれから二、三年かけて総仕上げの段階に入ってきているのではないかというふうに考えられます。  御承知のように、日本の貿易の黒字も昨年の七月以降ずっとマイナスが続いておりまして、円建てベース、数量ベースではそうですし、ドルベースでも最近少しずつ黒字が減ってきているということでございますが、特に輸出関連産業、製造業、これは大企業も中小企業も含めまして、あるいは東京周辺のみならず地方も含めまして、大変な勢いでもってこの構造調整が進んでおります。特に海外へ生産拠点を移すというのが前年に比べて倍以上のテンポで進んでおりますし、企業の合理化努力あるいは新製品の開拓とかいったようなことで高度化への志向をしたいわば合理化努力というようなものが大変進んでおるわけでございます。  特にプラザ合意で昭和六十年の九月ごろ二百四十円であったのが一年ちょっとの間に百五十円段階まで入り、その後今日まで百二十円台というところまできたわけでございますけれども、特に企業の方々が血のにじむような努力をされたのは、二百四十円から百五十円に至る一年ちょっとの間でございます。ここではもうまさしく死に物狂いで大企業も中小企業の方々も努力されたわけでございますが、その結果としてある程度方向づけができた。その方向に従って徐々に、何といいますか、レールをさらに延ばしていくという過程において、大体数カ月単位で十円刻みというようなことで為替レートが上がってまいりましたけれども、大体企業の方で想定いたしました為替レート、採算レートの方がむしろ現実の為替レートよりも高目に設定されたということもありまして、かなりそういう面で企業の努力によって乗り切ることができたということだと思います。  率直に申し上げますと、今製造業関係構造調整というものは、先生方がもちろん御承知でしょうけれども、一般に想像されている以上に大変広範に進んでおりまして、むしろ進んでいないのは何かといいますと、政府があるいは行政面で介入度の強い、政治の面からの発言力が相当影響しているような産業分野においては構造調整が非常におくれておる。進んでいるのは心しろ政府の息のかからないといいますか、余り政府に面倒を見てもらわないような産業の方が急速に構造転換が進んでおりまして、むしろ政府の息のかかっている産業が逆に合理化がおくれていることによって、せっかくの製造業部門の真剣な努力に対して水を差すようなそういう傾向もないわけではない。そうだとは断定できませんけれども、そういう面があるんだということ。  それから、もう一つ強調したいことは、今仮に、そういうことはありませんけれども、円が百八十円とか二百円に仮に戻るようなことになった場合には、日本の現在の産業界は大混乱を呈するであろう。せっかくここまで円高を通じて一生懸命に構造転換をやってまいりまして、その軌道にやっと乗りかかったというところで、今度は逆に円安に急激に戻るというようなことになると、かえって大変な混乱が起こって、その方がむしろ私どもは心配である。逆に言えば、もちろんあしたから円が百十円になるとかあるいは百円になるということになれば、これまた大変なことでございますけれども、少なくとも数カ月のこのタイムラグでせいぜい十円刻みぐらいのことで、長い期間をかけて円がじりじりと上がっていくということであるならば十分対応できるということでございまして、むしろ百二十円台というこの現在の為替レートというものが構造調整の上において非常に大きな原動力になってきておるということを御理解いただきたいと思います。  それじゃどういうふうに対応しているのかということでございますけれども、言うまでもなく、最近の製品輸入の急激な増加、あるいは海外生産へのいろいろなシフトということから始まって、日本の企業が海外でつくったものがどんどん逆輸入してくるというようなこともございます。先進国との間では、例えばヨーロッパの車、ベンツだとかあるいはアメリカの事務機械とかいったような先進国の得意な分野のものが依然として製品輸入もふえておりますけれども、全体としてNICS関係の製品、これの輸入が激増しているわけでございます。  昨年の製品輸入の統計、これは貿易統計が出ておりますが、その中で日本の製品輸入は四四%という数字が出ております。ところが私どもは、これは少なくともことし五〇%はもちろん超えますけれども、場合によっては五十数%ぐらいまで行くのではなかろうかというふうに感じております。ということは、ことしから来年にかけていよいよ本格的に日本の国内マーケットで外国の製品と日本の製品とが今まで以上に激しい形で販売合戦を展開しなければならないということで、これは企業にとっても大変なことでございますが、しかしこれは、これから先は私の個人的見解でございますけれども、日本の企業にとっては、これは決してマイナスではないのだ、むしろ国際的に見て非常にNICSあるいは先進国との間で水平分業が急速に進んでいる証拠でありまして、そういう面では日本の企業がいわばグローバリゼーションというか国際化、そういうことを進めていく上において、どうしても生きるために必要なことであり、また同時に、今の円高のもとにおいて日本の企業自体が、NICSや先進諸国からの製品輸入あるいは半製品輸入によって相当程度合理化のために役に立っているということが指摘されなければならないのではないかというふうに考えております。  最近の例でございますが、これは八七年の一月から八月までの期間をとりましても、例えば三十五ミリのカメラの製品輸入の比率が四一%、それから電卓が五二%、ポータブルラジオが六〇%、扇風機が五五%、白黒テレビ、これなんかは六七%、ラジオカセットが四五%といったぐあいに非常に製品輸入がふえておりますけれども、この大半はNICSの製品であるかあるいは日本NICSで生産した製品、いわゆる私どもはジャパニックスと申し上げておりますけれども、このジャパニックス製品というものがかなりの比重を占めているということを御理解いただきたいと思うわけです。  今までは日本の企業が下請生産だとかサブアセンブリーの仕事をNICSの諸国に持っていきまして、そこからでき上がったものを輸入して、そして日本が最終製品をつくるという形をとっておりましたけれども、最近は製品そのものまで、いわゆる日本の企業の現地での製品がどんどん入ってくるようになってきたということで、日本の企業のブランドをつけたもの、それから現地の企業のブランドをつけたもの、双方あるわけでございますけれども、NICS諸国のブランドをつけたものの中にも、日本から行った半製品あるいは資材といったものが相当程度入っているということを理解しなければならないということだと思います。  そういう意味におきまして、現在の円高は、企業にとっては製品輸入がふえているということは、もちろん競争が国内で激しくなることの反面、日本の企業にとっても、それは非常にメリットがあることであって、例えば韓国が昨年労働争議がいろいろありましたけれども、企業がストライキを起こしますと、日本のVTRの工場が操業停止をしなければならぬ、そういったことが現実に起こっているわけでございます。それほど依存関係ができているということを理解しなければならないと思います。  同時に、今申し上げたように、円高によって原材料あるいは部品、半製品が非常に安いということと関連いたしまして、原油も昨年は非常に安かった。これも今後の見通しとしては、バレル当たり十五ドルをいつまでも切るような状態が続くということになると、アメリカにとってもあるいは北海油田を抱えているイギリスその他にとっても、やはりいろいろ問題があるわけでございますから、十五ドルを切るような状態がずっと続くということは難しいかもしれませんけれども、スポットその他の面でまだしばらくもう少し弱含みの状態が続くのではなかろうか。ただ、原油の場合は、下がればいいというものではございませんので、余り下がりますと、途上国の問題あるいは世界経済全体に与える影響というものは、むしろ逆にマイナスの影響も出てまいりますので、その辺のことは余り楽観はできないということはございます。  それはともかくといたしまして、先ほどから御指摘がございますように、日本の消費者物価というものが余り下がっていないというかむしろ物によっては上がっているということでございますが、このことは実はいろいろな評価があるわけでございます。西ドイツは、マルクが上がれば卸売物価が下がり、またさらに消費者物価もそれに比例して下がるということで、よく日本では西ドイツに見習えということがあるわけで、私も基本的にはそれは正しい考え方だと思いますけれども、現実に今、日本の企業の構造転換が中小企業の末端に至るまで非常に進んで、しかもなおかつ今日、昨年に比べて製造業も流通業も大変企業収益率が高いというような状態はなぜ続いているのかということを考えてみますと、これははっきり申し上げて、消費者物価が下がっていないために企業にそれだけの構造転換をやるゆとりがあったのだということで、消費者に還元するのは非常におくれているけれども、まあそういう意味において、企業段階においての構造調整を進める上では役に立ったということが言えるかもしれません。  そのことはともかくといたしまして、こういう形で日本の産業界が急激に円高に伴う構造転換ということを進めてまいりました。問題は、一体このままの状態がいつまで続くのかということと、それから、こういう状態政府として一体ほっておいていいのかどうかという問題があるわけでございます。  と申しますのは、今まではともかく、民間の側もこれまで輸出でいろいろ稼いだストックもございましたし、それから昨年は先生方の御努力によりまして七兆円という大型の財政措置というものが進められているというようなことで、いろいろな政策要因と、それから企業努力とが絡み合いまして、どうにかこうにか今日まで急激に転換が進んでまいりましたけれども、問題は、これから先ということになりますと、やはり非常に問題が幾つかあるわけでございます。     〔野田委員長代理退席、奥田(敬)委員    長代理着席〕  昨年からことしにかけて内需が伸びていることの内容を見ますと、非製造業の設備投資がかなり急激に伸びておりますけれども、これはもう最近やや息切れ状態でございます。それにかわりまして製造業関係の設備投資が昨年の中ごろから急激に回復してまいりました。最近、けさも新聞なんかを見ましても、製造業の設備投資が前年に比べて一二、三%ぐらいまでふえるのではないかというような予測も出ておりますが、私もそのぐらいはいくのではないかというふうに考えておりますけれども、実は問題は、アメリカ、ヨーロッパあるいはNICS諸国、それぞれの今後の経済の動きというものがどういうふうに動いていくのかということについて、まだまだ企業経営者の中には不安感が非常に強いということがございますので、製造業関係の設備投資が、もしここで何らかの格好でまた再びアメリカで大きな変動が起こるということがありますと、また再び萎縮する可能性もないわけではないということも心配されます。  そういう面で、まず一つは、アメリカに対していろいろな面で、ドルの安定のみならず、経済の運営についてもいろいろ注文をつけなければならぬということはございますけれども、私が申し上げたいのは、製造業の設備投資のみならず、昨年非常に好調であった住宅投資もことしは相当落ち込んでくるのではないかというふうな感じがしております。昨年伸びましたのは、これは政策努力もいろいろあるかもしれませんけれども、基本的にはやはり土地価格の上昇、それに伴って東京の都心あたりに住んでいた人が家を売ってさらに郊外へ出る、郊外の人がさらにより郊外へ出るというような形で、そういう面での新築需要とか増改築需要もありましたけれども、一番大きなのは、やはりオフィスだとか貸し家というものを当て込んで、非常に貸し家住宅とかオフィス関係のビルが急速に伸びたということが一つあるわけでございます。  時間がございませんから詳しいことははしょりますけれども、ところが、最近都心の家賃も大分下がってまいりましたし、都心の地価そのものも停滞ぎみであるということで、それがまた逆に、これからの住宅建設の面では今までのようにプラスには働かない。これはむしろ望ましいことかもしれませんけれども、特に税の面で、相続税だとか固定資産税との関連で、郊外の地主さんたちがどんどんマンションを建てるというようなことがあって、しかも建てたもののなかなか借り手がないというようなこともいろいろ起こっているようでございます。  それから、昨年からことしにかけて伸びた中のもう一つの理由は、在庫投資が非常に伸びたわけですけれども、これももう既に企業が相当生産をふやしまして在庫投資も大体一巡してきたということだと思いますし、また公共投資についても、一昨年から昨年にかけて、いよいよ政府も思い切って大型の補正を組まれたりしたわけですけれども、ことしも公共投資はその伸びを正常に維持されながらやっておられるということは大変歓迎しておりますが、私どもが懸念しておりますのは、もし万が一今後、アメリカ経済の動向いかんにもかかわりますけれども、大きな変動というものが起こった場合に、財政というものが即座に機動的に対応できるような態勢というものはやはり続けておいていただきたいというふうに考えております。  個人消費につきましては、これはもう最近失業率もやや低下しておりますので、雇用者の数もややふえてまいりました。昨年は春闘で公称三・六%、ボーナスは前年より低かったというようなことがございました。これは当時の環境からいって、企業の経営も構造転換のために必死の状況であり、組合側もまた大変、全体の経済情勢というものを読んで慎重に対応されたということからこういうことになったと思いますが、ことしは企業収益率が前年に比べてかなり今のところは改善しておりますから、企業の支払い能力もある程度はふえてきておる。したがって私は、これは個人的感触ですけれども、四%は超える賃上げはあり得ると思いますが、これも企業によって、支払い能力によって影響されるわけでございます。  問題は、賃金がその程度の上昇であったとしても、雇用者数もふえますから、当然GNP統計で言う雇用者所得というものは相当大幅に伸びるのであろうと思いますけれども、ただ、そのことが個人消費全体にどれだけ強い影響を与えるか。最近は金利も下がっておりますし、アメリカの株式市場のああいう状況、日本の株価の最近の不安な状況ということからしても、日本の場合はアメリカほど一般の個人投資家の比重は高くありませんし、また、株を持っている個人投資家が比較的長く株を持つという傾向がございますけれども、いずれにしましても、金融資産の価値というものが今までに比べて若干落ちているというか、金融資産に対する期待というものがやや弱まっているということもございます。そのことは逆に言うと、先行きについて消費者にとっても不安感もいろいろ出てきているのではないかということで、これが消費の拡大につながるのか、あるいは消費の抑制につながるのか、なかなか微妙なところでございます。  ただ問題は、先ほども申し上げましたように、これから二、三年ないし四、五年かけて、いよいよ本格的な構造調整の段階に入ってくるわけでございます。私は産業構造審議会の委員をやっておりますけれども、中期の構造調整期に入ったということなんですけれども、このためにはやはり、先ほどもほかの方からも御指摘がありましたが、海外需要をできるだけ減らして、年間一ポイントぐらいずつ比重を減らしていって、そして国内の需要をできるだけふやしていく。平均五%ポイントぐらいの内需というものは常に支えていかなきゃならないということになりますと、実質で経済成長率はやはり四%を切るようなことは絶対あってはならない。もし四%を切るようなことになりますと、せっかくここまで進んだ構造調整というものが後戻りする。失業あるいは民間活力の減退、あるいは、稼働率が下がることによってコストが上昇してまいりますと収益が悪化してまいります。地域経済にもそれは影響が出てくるということでございますので、やはり何としてもここは政府が財政その他の支援措置を維持していかなければならないということでございます。  私は、財政が積極的に減税の面だとか公共投資だとかいろいろな面で手を打っていただきたいとは思っておりますが、ただそれについて、最後でございますけれども、一つ二つ注文があるわけでございます。  まず、税制改革については、先ほどからほかの方からも御指摘がございましたが、私は、これはもう絶対に早急に実現していただきたい。同時に、これはあくまで直接税と間接税を、両方一体となって国際化という視点からやはり強く実現していただきたいということでございまして、所得税累進課税をできるだけ簡素化していくということと、法人税の軽減、それも当然だと思いますし、特に、個人、法人の国家離れといいますか、最近は企業の中でも、外地でもって資金を調達し、外地でもって生産し、外地でもって物を売り、そして税金も外地で払うというような企業がだんだんこれから出てくるのではないかというふうなことがございます。そういうことをなくすためにも、やはり直接税の状況というものを国際的にも見直していく。同時に、大型間接税、これもできるだけ広く薄く、私は個人的には、例外措置はゼロにしてもいいからできるだけ広く薄くやるべきだというふうに考えておりますけれども、そういうことをやっていただきたい。  そして、公共投資もぜひやらなければいけませんけれども、ただ、今までのように各省一律の配分といったような総花的なことではなくて、やはり技術開発に関連したものとか、あるいは先ほどから御指摘のあるように本当に長期に、長い目で社会資本の充実として理屈に合うもの、あるいは構造調整に役立つものというものに重点を置いていただきたい。特に公共投資については、これは一種の公共財だというふうに考えていいと思いますが、公共財に準ずるものとしてやはり相当程度政府がバックアップしていかないと、日本の国内の内需拡大と申しましても、要するに海外から、これからNICS諸国の製品も日本にどんどん入ってまいりますけれども、そういうものに対応してできるだけ日本が高度な、より品質の高いマーケットを拡大していくことにおいては、やはりどうしてもそういうことが必要になる。  それから、最後に一言だけ申し上げたいのは、財政を拡大するのは結構ですけれども、その場合に、食糧だとか土地問題を含めて、先ほど申し上げましたように政府がいろいろ介入している分野についての構造調整が大変おくれている。それについての対応をぜひ真剣にやっていただきたいということで、大変抽象的な話に終わりましたけれども、後ほどまた御質問がございましたらいろいろお答えしたいと思いますので、これで失礼させていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。     ─────────────
  9. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸塚進也君。
  10. 戸塚進也

    戸塚委員 自由民主党の戸塚進也でございます。  公述人の皆様、大変参考になる御意見をいただいてありがとうございました。わずか十五分でございますので、三人の方にお伺いいたしますが、ごく簡単にお答えいただきたいと存じます。  最初に田久保公述人にお尋ねしたいと思います。  今般の日米首脳会談は、私もワシントンに行って実感もし、調べてまいりましたが、非常によい印象をアメリカ側は持っている。大変喜ばしいことであります。しかし、これから各論におきまして一つ一つやはり課題を片づけなければならない、こういう立場から、先般、ちょうど竹下総理が訪米の際にワシントン・ポストの意見広告に、アメリカのいわゆるノーベル賞学者たちがサイン入りで日米自由貿易協定というものはどうだ、こういうような提言がございました。これは私は、将来に向けては非常に大事な課題ではないだろうか。今度アメリカ、カナダもいろいろ考えるようでございますが、この点について公述人の御意見を伺いたい。
  11. 田久保忠衛

    田久保公述人 日米自由貿易協定というものでございますけれども、お触れになりましたように、カナダとアメリカの間にはこの協定があるわけでございます。それから、この構想は、数年前にたしかマンスフィールド大使がお述べになった。日本側はこれに反応しなかった。最近も一貫してマンスフィールド大使はこれにお触れになっていらっしゃるわけでございます。私は、全くこれに対しては異存はございません。何とかこれは取っかかりを持ちまして実現に努力していただきたいなというふうに考えております。
  12. 戸塚進也

    戸塚委員 朝鮮半島の問題について認識を伺いたいと思うのですが、大韓航空機事件についてのあのテロ行為というのは、私どもは本当に許しがたいことだと思っております。しかも、それは韓国が演出したなどというような一部の議論はまことに遺憾だ、このようにも私は思っているわけでございますが、ただ、そうだからといって北朝鮮をどこまでもどこまでも追い込めるということではなくて、やはりオリンピック等には、これは平和的にみんな参加してほしい、世界じゅうが全部参加してほしいというような角度からはやはり呼びかけを続けつつ、北朝鮮のああいう暴挙に対しては断固たる措置をとる、こういう自民党や現在の政府のとっておる態度に対して、公述人はどういうふうにお考えになるか伺いたい。
  13. 田久保忠衛

    田久保公述人 私も同感でございます。韓国の発表を、あれは替え玉だとか人間の差しかえだ、こういうことはみだりに言うべきことではないのではないか。例えば日本で丸岡事件というのがあった。これは今逮捕されているわけでございます。これに対して韓国が、あれは替え玉だとか差しかえだと言ったら、これは日本に対する侮辱だと思うのであります。こういうことは軽々しく言うものではなかろう、かように思うわけでございます。  それから、自民党政府がとっていらっしゃる北朝鮮に対する制裁措置でございます。私、全く公平に見るわけでございますけれども、北と日本との間で迷惑を受けているのはどっちかということでございますね。貸した金は返してもらえない、人は誘拐される、その疑いが極めて濃厚である、それから第十八富士山丸事件、これは人質にとられたようなものでございます。これは幾つ例を挙げてもどうにもならない問題である。国交がございませんのでどういうふうにして交渉するか。私は、平和的解決というのはもちろん大賛成でございますけれども、できる限度があるのではないか。これは赤十字を通じて話し合いをする以外にない。  こうなりますと、私は、強い制裁措置、これは制裁措置というのは、我々の意図がどこにあるかということを相手にわかってもらうための、意図を知らせるためのものだと思うのであります。一方で私は握手をしたいと思うのでございますが、この取っかかりが得られない。北朝鮮を追い詰めてはいけないという意見は、私はそれはそのとおりだと思うのであります。ただし、追い詰めるも追い詰めないも、話し合いの取っかかりがない以上は、私は、強い制裁措置に応ぜざるを得ないだろう、かように思っております。
  14. 戸塚進也

    戸塚委員 イージス艦のことについて先生の見解を伺いたいと思います。  先週、アメリカの議会で大きな議論になりましたのは、世界の平和のためにも日米間でイージス艦の問題を解決することがいいということはアメリカはわかっていても、スパイ防止法も何もない日本にこれをやっていいのかねという大きな議論がある。やはり私たちは、言論の自由とかあるいは諸権利はしっかり守らなければいけないけれども、防衛の機密についてはしっかり法律で制定せねばいかぬ、こういう考えを持っておりますが、公述人はどうお考えになりますか。
  15. 田久保忠衛

    田久保公述人 イージス艦の問題もそうでございますけれども、アメリカ日本に情報交換で懸念を持っているのは、今おっしゃったような点だと思うのでございます。  それは、私、一九七〇年に時事通信のワシントン支局長で、あそこで働いたことがあるのでございますけれども、ちょうどニクソンの訪中、あの前後でございますけれども、日本に重大なことを言うと漏れるおそれがあるというのを、当時のロジャーズ国務長官がオフレコの記者会見なんかでしばしば漏らしていた。これはイージス艦の問題だけではなくて機微にわたる情報の交換、これが同盟国の間でもスムーズに行われない。少なくとも先方から疑惑を持って見られる、これも何とかしなければいけないなというふうに考えております。おっしゃるとおりだと思うのです。
  16. 戸塚進也

    戸塚委員 それでは、山田公述人にお伺いいたします。  私は、連合という労働組合の団体は、二十一世紀の、日本のだけではなくて世界労働界を引っ張るようないい労働組合、団体になっていただきたい、そういう非常な大きな期待を持っております。そういう見地からお伺いいたしますが、今回の連合の現在考えていらっしゃる範囲では、日米安保というものはどのように評価していらっしゃるか教えていただきたい。
  17. 山田精吾

    山田公述人 連合の段階では、防衛問題とかそういうことは一切まだ議論の対象にもしておりませんし、触れておりません。
  18. 戸塚進也

    戸塚委員 では、もう一点だけ教えていただきたいのですが、将来においては、現実の社会を踏まえてそういう問題についても御検討されますかどうか。
  19. 山田精吾

    山田公述人 連合と政治とのかかわり合いについて今から議論に入りますが、我々としては、平和憲法を守る問題だとかそれから軍縮だとか非核三原則だとかそういうことは平和の問題として掲げておりますが、さらに突っ込んだ議論というのは今後の課題になると思います。
  20. 戸塚進也

    戸塚委員 では、韓国の問題についてお尋ねしたいのであります。  先週も、土井委員長があえて訪韓をして、盧大統領予定者、もちろんその後大統領になってからのことでございますが、盧大統領とも会談される意思がある、非常に立派なことだと私は高く評価するわけでございますが、社会党推薦にもなっていらっしゃる連合さんでございます。韓国の労働界との交流とか、あるいは韓国というものが国家でないという現実の認識というのは私はおかしいと思うが、この辺については、公述人、どうお考えになりますか。
  21. 山田精吾

    山田公述人 連合は結成と同時に、世界労連ではなく国際自由労連に実は一括加盟をいたしました。韓国の労働組合も国際自由労連に加盟しておりますから、お互いに友好な仲間で、今回土井委員長が行かれることは非常にいいことではないかと見ております。
  22. 戸塚進也

    戸塚委員 税制につきましては、本当にごく簡単にお伺いいたしますが、連合さんとしての先ほどの認識はよくわかりました。しかし、直間比率そのものについては、連合さんではどのように考えていらっしゃいますか。
  23. 山田精吾

    山田公述人 直間比率の問題も、非常に注視しております。ただ、一概に直間といいましても、直の中のサラリーマンの部分が非常に私としましては気になる。一五%から今二〇%の段階に上っておりますから、そのままほうられますと大変なことになるんじゃないかという心配は私ども持っておりますが、今後技術的にいろいろな議論はひとつやっていきたいと思いますし、私どもの見解ももっと整理して申し上げたい。直直の中の差があるということです。
  24. 戸塚進也

    戸塚委員 直直の中については先ほどの御議論もありましたし、よく勉強しなければいけませんが、少なくとも直間の場合に間の方が少な過ぎるではなかろうか、将来においては間の方を何らかの形で改善していくべきではないか、そういう御認識と承ってよろしゅうございますか。
  25. 山田精吾

    山田公述人 ちょっときのう私がNHKのテレビで今のようなことを申し上げましたが、加藤先生がすぐつかまえまして、そうかというようなことで畳み込んでこられますから困るんで、もう少し直の中、間の中を制度的にもやはり見直す中で、どういうぐあいにそのバランスをとったらいいのかということを考えるのが筋ではないか。まさか今、いろいろな議論がありますが、九対一になってもいいよなんて言う調子の人は一人もいないのじゃないかと私は思いますけれどもね。その辺はどうなるか、今からの議論だと思います。
  26. 戸塚進也

    戸塚委員 先ほど、もし秋に間接税をやるなら信を問えというお話があったわけでございますが、それは御意見として承ったわけでございますが、今後税制の問題が国会においたりあるいは各政党において議論される場合、私たち与党といたしましても、やはり連合さんというものは非常に大きな団体であり、意見を伺うべき大きな団体だというふうに評価をしていると思うのです。そういう場合に、その秋口云々の話は一応おいても、今後政府なりあるいは各党、私は自民党ですから自民党でも連合さんの御意見を十分承りたい、こういったような場合には、これに十分おこたえいただけるようなお気持ちがあるかどうか、伺いたいと思います。
  27. 山田精吾

    山田公述人 素直に今の御発言が受けとめられるような行動をひとつぜひとっていただきたいと思います。
  28. 戸塚進也

    戸塚委員 ありがとうございました。  鈴木公述人にお伺いいたしますが、直間比率について随分お触れになったわけですが、鈴木公述人から見た直間比率の理想的あり方はどのくらいでございましょうか。
  29. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 私は、現在のヨーロッパ並みまでいかなくても、今の七、三というか八、二に近いようなこういう状態は、少なくとも六、四ぐらいに変えるべきではないかというふうに考えております。できるだけ早くやっていただきたいというふうに考えております。
  30. 戸塚進也

    戸塚委員 私は週末になりますと選挙区でいろいろな機関の方、団体の方に税制のあり方について意見を聞いておりますが、実は先週聞いたときに、やはり税制改革は今の公述人のお話のような方向で大事だ、しかしその前に国会のあり方とか国会議員のあり方とかいろいろな問題についてよく考えるべきだ、こういう忠言をいただきました。私も自分がこれは身にしみて感じたことでありますが、公述人がテレビのお仕事をやっていらっしゃって、いわゆる一般国民の声というものが今税制改革についてどういうところにあるだろうか、それからまた、仮にもし国会の問題について考えるとするならばどういう点を留意したらいいとお考えになるか、伺いたいと思います。
  31. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 大変難しい問題でございますが、テレビ界を代表するというわけにはいきませんけれども、私の個人的見解を申し上げれば、一体何をやっているんだという感じでございます。先生方の個人個人それぞれの御発言なり行動にはそれなりの意味はあるんだろうと思いますけれども、まあ、それなりと言うと、余計なことを言うとまた失言になりますけれども、少なくとも私は、やはり今一体何を我々国民が求めているのか、何を早急に解決してもらいたいのか。  一つは、せっかく内需主導型で編成しようとしたこの国家予算をできるだけ早く通すと同時に、次の問題としての税制改革についてもっと具体的に議論を展開していただきたい。どうも抽象論とか一種のイデオロギー論に終始しておりまして、入り口でもって絶対反対、絶対賛成——絶対賛成という言い方はおかしいですけれども、そういうようなところで、入り口でとまっているというところに問題があるのではないか。  私どもが一番知りたいのは、一体大型間接税をもしやるとしたならば、どういう税制を、具体的にどういう形でやったらどういう問題が起こるかということをもっと国会議論していただきたい。それを、そういう議論はしないで最初から賛成、反対の議論ばかりやられておられるのでは、これは我々はもう、ともかく一体国会というのはどうなっているのかな。  それからもう一つは、今現実に経営者に至るまでサラリーマンと同じ給与生活者でございます。この給与生活者が今どれほど税金で苦しんでいるかということは先ほど山田公述人も御指摘がありましたけれども、そういう面からいくと、何も高額だとか低所得ということに関係ない。むしろ低所得者の方はどちらかというと今まで比較的優遇されていたわけでございまして、中堅以上の所得者、これがこれからの日本経済を支えていく最大のポイントだと思いますけれども、そういう人たちにとって最大の関心というのは何か。丸の内あたりの中堅のサラリーマンに先生方がもしお聞きになれば、大型間接税の賛否についても、国会で言われているようなことではなくて、意外にサラリーマンに潜在的な支持層が強いということを御理解いただけると思います。御参考までに申し上げておきます。
  32. 戸塚進也

    戸塚委員 終わります。
  33. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、川崎寛治君。
  34. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 三公述人の皆さん方、本当にお忙しいところをありがとうございました。  社会党は三十分の時間でございますが、私のほかに井上一成君がいたしますので、私の方は、田久保公述人にも鈴木公述人にも本当にいろいろお尋ねしたいのでございますが、山田公述人に少し絞ってまずお尋ねをいたしたい、こういうふうに思います。  大きな問題と小さな問題ですが、今不公平税制の是正、これがまず第一だ、こういうことでいろいろお述べになりました。しかし、率直に言われましたように、政府税調が大蔵省の隠れみのだとか政府の隠れみのだとかということを御自身で言われておるわけでございます。そういたしますと、私たちに今配られております提出予定法案というこれを見ますと、実は国会は五月二十五日が会期なんです。この五月二十五日の会期の提出予定法案に税制改革関連法律案というのを出そう、こういうことで実は提出予定法案に入っておるわけです。  今の政府税調の作業の過程を見ますと、今地方公聴会もやられておるし、国民意見を十分に聞くんだ、そして渾身の力を振り絞って、こう竹下総理も言っておられるわけでありますね。そういたしますと、不公平税制の是正ということを根本的にやってそしてさらに税制全体、こういうことになりますと、そのスケジュールの中で実際にできるのかどうか。そして、政府税調というのが隠れみのだ、これば小倉会長も率直に発言をしておられることでもあります。そのことが政府税調の中で実際に、これは大変失礼な質問でございますが、政府税調の中でも隠れみのとされているんだということについての反省というか総括というか、そういう御議論があるのかどうか。そういたしますと、そういうスケジュールの中で今山田さんがいろいろお述べになりましたそういうものが実際に進められるのかどうか、そういうことをお伺いをいたしたいと思います。
  35. 山田精吾

    山田公述人 実は二月五日に政府税調の総会で四つの課題を整理しまして、全体でこれを了承して、そして公聴会の方の一つのたたき台にしております。  サラリーマン関係の問題が第一に挙がっているわけですけれども、大方このことについては反対意見はないのじゃないかというような感じがしますから、内容についての詰めをやればそれなりの整理はできるだろうと、私の個人的感じです。  それから「資産に対する課税の適正化。」ということでイ、ロ、ハと挙げておりますが、これは結構だよということになればキャピタルゲインを初めにした原則課税で、私どもクリーンカードみたいな、言うならば番号制をつくれというようなことを言っているのですが、今から政府税調の研究会をつくるということですね。それから「土地に関連する税制の見直し。」これも今からの大変な作業になるのではないかなというような感じも持っております。  それから三つ目は「現行個別消費税体系の矛盾を是正する方策及び我が国に適した課税ベースの広い間接税の導入の是非。」です。これは「是非」ですから、中については今からまたさらに議論が展開をされていくというぐあいに思いますし、「国際的視点に立った法人税制の確立。」法人税率の先進諸国の動向に合わせた引下げ、それから、国際的取引より生じた所得に対する課税のあり方や租税特別措置の見直し等による課税ベースの拡大、この四つの課題がテーマとしてはまとまっておりますから、これを今から議論をするということ。  もう一つ大事なことは、この四つの課題をどういうふうな手順で今後実行していこうとするのか。ここのところは非常に重要な問題で、我々としては、全体像を描きながらできるものは早くやってもらおう、慎重にやらなければいかぬのはできるだけひとつ時間をかけて、拙速主義に立たずに、内容によっては国民の意思を問いながらやっていくというような段取りが非常に大事だと思います。政府税調でその手順のところまでどうなるのか、次の税調で私はお聞きしてみようと思いますが、私の感じはそういう気持ちです。
  36. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ところが党税調の方なり与党自民党の方の幹部の諸君は、スケジュールがあってどんどん進めるんだ、こういうことになっておりますね。山中自民党税制調査会長などは無視をするんだとかいうことも言っておりますね、政府税調を。  そうしますと、五月二十五日という会期の中に、今言われたもう大変たくさんの税制改革の基本課題ということを一つ一つ進められますと本当にこれは時間のかかる問題ですから、加藤寛委員も間接部門で御発言になっておりましたが、三、四年かけるべきだ、こういう御議論もあるわけですね。そういたしますと、そういう中でなおかつこの与党の方の、政府の方のスケジュールがあって大型間接税をごり押しして入れてくる、こういうふうな事態も、つまり、政府税調というものがそのとき隠れみのになるわけですよ。  今、国民の御意見を伺うんだということで、まだ案はないのですけれども、新型間接税というものを入れる場所として二十カ所公聴会というものが行われておるわけです。これは今度小倉会長においでいただきまして、この委員会でもまたお尋ねしますけれども。そうなりますと、そういうスケジュールで今言われたものを飛び越えて大型間接税、新型間接税、こういうふうなことになった、なるとしますならば、連合としてどういう態度をとられるのか。また、政府税調の委員としてそういう大変難しい事態にぶつかり得ると思うのですが、どういうふうなお態度をとられるか、伺いたいと思います。
  37. 山田精吾

    山田公述人 私ども再三、税制改革に当たりましては、やはり税制改革全体の像を国民に明らかにする必要があるんじゃないか、その前提には基本構想というのが要ると言っているのです。もっと突っ込んで言いますと、本当に税制基本法みたいなものを与野党でつくってほしいぐらいなんです。大原則ですね。そういう大原則が合意できればあと技術的な枝葉の議論というのはそれなりの調整はできていくと思うのですが、その原則のところが一つ狂いますとなかなか議論は私は詰まっていかないだろうという考え方なんです。ですから、今の税制改革は一体東向いているのか西向いているのか、方向を明確にしてほしいなと思います。  それで、ただ財源が足らぬから昨年は大変無理をされてああいうことになってしまったのですが、いろいろなその責任者なり関係者に聞きますと、何であんなに急がなければいかなかったのですか、とにかく何兆円かの金が目の前で欲しかったんだというようなことを正直に言っておられましたけれども、そうであれば、最近の環境もかなり異なってきておりますので、改革の、いわゆる所得とか資産の問題をしっかり是正をする方向を打ち出してもらって、そして消費税につきましても間接税につきましても今の物品税を初めにして矛盾だらけですよ。問題点も多いし、これはこのままずるずるとほっとくわけにいかないでしょう。いつかはこの問題は整理しなければならぬ時期が来ると私は思います。  それにしても、竹下総理の税調に対する諮問というのは二十一世紀の高齢化社会に備えてというようなことで、特に財源絡みがこの問題には絡まってきておる。そうであればあるほど、むしろ国民の皆さんたちには高齢化社会の責任ある政府の姿というのを示しながら、どうあるべきなのかというようなことで議論をしてもらわないと困るなというのが私たちの正直な気持ちで、そういうような気持ちでまじめに税制改革をやってもらいたいし、我々も挑戦をする気構えでおりますけれども、何が何でも新型については秋口ということでいくならば、我々としては、これはこういう国会の場で使っていいかどうか知りませんが、連合の文章の言葉をそのまま言いますと、断固反対せざるを得ないというぐあいに実は我々の見解はまとめておるということです。
  38. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ひとつ大いに税調の中でも頑張っていただきたいと思います。また、国会の質疑もそういう意味では、これから国会が正常化をされましたので、ひとつ大いにやりたいというふうに思っております。  そこで、今度は税制の問題の細かいことについてお尋ねをしたいと思いますが、先ほど政策減税の要求もお出しになっておられたわけでありますが、特に住宅減税が大変重要だと思います。それについて連合がどう考えているか。それから、住宅減税の対象は新築だけでなくて増改築も含めるべきだ、こういうふうに考えますが、御意見を伺いたいと思います。
  39. 山田精吾

    山田公述人 私どもとして当面急ぐ所得と住民減税については先ほど申し上げたとおりなんですが、そのほかに税率構造の見直しも触れまして、これは年収四百万円から八百万円というのを私どもは中堅所得層というぐあいにとらえているのです。その根拠は、先ほど国税庁による各層の給料の内容について示しましたので、さっきの公述人の方は中堅ということを言われますが、中堅というもののとらえ方がみんな非常にあいまいなものですから、この辺の整理もしておきたいと思います。わずかな人のために低所得層が犠牲になるということは、これは私は絶対にだめだし、実現はしませんね。この前の売上税でもあれこれ言っておられますけれども、そこのところを見失いますと、私は圧倒的多数の人の状況はどうなのかということを判断しながら改革するものは改革してはしいなと思います。  それからいま一つは、実額控除について、考え方は前回非常にいいのを出してもらったのですけれども、中身がウナギのかば焼きのにおいだけでさっぱり内容がないものですから、ぜひひとつサラリーマンを対象にした冠婚葬祭なんかについても考えてもらいたいと思うのです。みなし法人やらその他者やっておるわけですから、どうしてサラリーマンにそういうような配慮がないのかどうか、疑問でなりませんので、せっかく実額控除をやられるのなら喜ぶようなことをぜひやってもらいたいと思いますね、言葉だけではなしに。  それから、生命保険の関係についても、現行五万円ですが、限度額をやはり十万円にしてほしい。それから個人年金の保険料のことにつきましても、現行の五・五万円を十万円にしてほしいというようなことをずっと具体的にそろえておりますが、特に政策福祉減税については、一つは住宅取得促進税制の抜本的改善ということで、現行のローン残高税額控除制度、現行は二十万円から五年間ということになっておりますけれども、住宅取得、これは増改築も対象にしまして税額控除制度をひとつ改めて総額の二%を五年間にわたって税額控除をしてほしいし、対象限度額は四千万円分までとして、控除限度額は八十万円にしてほしいというようなことを我々は主張してきております。  それから、財形貯蓄の非課税限度額の引き上げの関係ですが、非課税限度額を現行の五百万円から一千万円にしてほしい。それから、税制改正に伴う財形貯蓄解約に当たっては加入者から手数料の徴収を行わないようにしてほしい。それから、住宅財形については新築だけが対象ですから、ぜひひとつこれは増改築も対象にしてもらいたいというようなこと。  時間がありませんから、あと簡単に申し上げますが、もう一つ私たちが強調していますのは、退職所得控除の引き上げです。現行は勤続三十年で非課税限度額一千万円です。この前マル優がぱあっとなくなりましたから、労働省の発表でも城下町、本当に構造不況で泣いているところなんですが、言うならば、二十数万人中高年齢者が退職をいたしました。その人たちの退職金にがばっとこれが今度はかかってくるのです。片一方の退職金の非課税の範囲はここのところほったままです。償えとは言いませんけれども、一千万円を一千五百万円ぐらいにしてほしいという私たちの要求を出しているわけですが、我々の試算によりますと約九百億円ぐらいになるわけなんですけれども、ぜひひとつ考えてもらいたい。  それから、家内労働者の課税最低限度額の引き上げの問題だとか、障害者、高齢者控除の問題、固定資産税の減免、これは一定規模、二百から三百平米ですね、それから相続税の減税、いろいろなことを並べておりますけれども、また機会を得ましていろいろ問題を提起したいと思います。
  40. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 あと一つ二つ考えておりましたが、もう時間があれですから、あとは井上一成君の方に譲ります。どうもありがとうございました。
  41. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 井上一成君。
  42. 井上一成

    ○井上(一)委員 公述人の皆さん、どうもきょうは御苦労さまでございます。  私は、まず山田公述人に。いろいろと御意見を拝聴いたしました。大変私も意を強くすると同時に、我々も頑張らなければいけないと思っています。  地下経済、いわゆるアングラマネーに対する課税の捕捉、このことについては何か具体的に御意見をお持ちでございましょうか。おありでしたらお伺いをしたい、こういうふうに思いますが。
  43. 山田精吾

    山田公述人 アングラマネーというのはどの範囲のどの程度なのか非常にしゃべりにくいのですが、まあ私どもから言えば、資産課税の範囲で議論をしていまして、キャピタルゲインの問題とか土地の問題だとか、そういう具体的な問題について、ひとつカードもつくってきちんとチェックしながら水漏れのないような体制でやってもらいたい。国民納税者番号というといかにも国民を取り締まるような感じがするものですから、前回グリーンで失敗しまして今回はクリーンで、ガラス張りでひとつ高額所得者なりお金持ちをチェックをして、出すものはちゃんと出してもらおうというのが私たちの今回の主張の一番重要なポイントだというぐあいに理解しております。  御質問とちょっと離れたかもしれませんが……。
  44. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに山田公述人にお伺いをしたいのですが、今、税制改革については、公正論と財源論の財源論の方に、政府は、安定した財源、こういう形でしかまだ踏み込んだ答弁がないわけなんですが、私は、今日の経済状況の中で税収は伸びている、そういう中にあって、秋までにという早まった考え方は本当に財源論に立っての見解なのか、少し疑問を感じているわけなんです。そういう点についてはむしろ急ぐ必要はない、今日的な時点に立ってでもそう思うのですが、山田公述人のお考えを聞いておきたいと思います。
  45. 山田精吾

    山田公述人 私は、税調にも参加をしておりまして非常に板挟みでやりづらいような場面も実はあるのですが、税制改革を私ども積極的にやれと長いこと言ってきたわけですから、それにしり込みする必要は全然ない。そのかわり、今三点の問題が提示されていますね、均衡のとれたというような形ですから。  消費の問題についても大いに私どもは勉強もし、それから、税調の中でも発言をしているような状況なんですけれども、そこで気になるのは、いつも新型間接税導入、九月、九月というような調子で流れてくるものですから、気が落ちつかないのです。それならやめておくか、利用されるだけだったら。しかし、そんなことはないよ、まじめに、ひとつ何年かかってもいいから議論をやろうじゃないかということであれば、私どもはもっともっと積極的に議論にも参加して、国民全体の合意をつくるためにこれは与党も野党もないと思うのですよ。お互いに努力するその構えが今大事なことなので、何か先に銭、銭、お金、お金、この延長線でまたぞろやりましたら、国民から見ましたら一体何を言っているんだということが問われかねないと私は思いますので、今先生から御指摘ありました点については十分ひとつ考えながらやっていく。  一方では、議論に何で参加せぬかと言われるのですけれども、参加してしまったらもう日程が決まって乗ってしまうんじゃないか、そのことが心配で乗れない方も随分いらっしゃるんじゃないか。私どもは厚かましい男ですから乗りますけれども、そのかわり、だめだったらすぐ飛びおりますからね。それだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  46. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私は、地方と中央というのでしょうか、地方自治体の役割というそういう意味から、直間比率なんというのは結果の問題であって、むしろ中央と地方との財源配分についてもこれは税調の中でやはり御議論をいただきたい。もちろん、そのことが地方における行財政両面にわたった改革になっていく、こういうふうに思うのですが、ひとつこの点についても配慮いただきたい。
  47. 山田精吾

    山田公述人 言われるとおりだと思います。  しかし、国税の立場と地方税の立場と両面から政府税調では間接税一つとりましても議論しておりますから、そういう点について、やはり全体の原則的なことと、もう一歩突っ込もうとするとその中に入って議論をしないと、外から単に物を言っているということになりますから、その辺の扱いについても我々としては非常に苦慮しながら今対応しているというような状況です。
  48. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私は、税制改革の議論の特に冒頭で、今後の高齢化社会におけるいわゆる財源論に、こう政府は答えてくるわけです。  これは、当然政府にお尋ねをしなければいけないわけですけれども、山田公述人に、それでは我が国の高齢化社会に向けての社会保障費というものがGNPに対してどれぐらいが妥当であるのか。それは租税負担がどれくらいで、今日の租税負担の率をいわゆる数字的には変えていかないのか。そうすることになれば、社会保険料といういわゆる自己負担というものがさらに拡大をしていく、ふえていく。少しぐらいの減税では、私は、むしろ実質的な減税になっていかない。そういう意味から、この点については、社会保障費に対する、いわゆる高齢化社会に対する財源というのは租税負担プラス社会保険料ですね、租税負担がどれくらいの率をもって是とするのか。ひとつぜひこれも税調の中で御議論をいただければ、こういうふうに思っているわけです。
  49. 山田精吾

    山田公述人 むしろ、私たちから見ますと先生方にお尋ねしたいような立場なので……。  ただ、現状が租税負担率約二五ですか、それから社会保障が一一、三六%ぐらいでしょうかね、今。ですから、私も臨調のメンバーに入っておりましていろいろな議論に参画をしておりましたが、あのときは、ヨーロッパの現状の五〇%よりかなり低いところをひとつ目標にしてやろう。数字としては固められていませんでしたが、大方四五%ぐらいのところをあれこれキャッチボールしておったような感じがいたします。  いろいろな将来の統計が出ておりますけれども、大方社会保障の関係についてはあと一〇%ぐらい要るんじゃなかろうかということも、実は随分話題になっております。算術計算でそれを足しただけでもう四五を過ぎるような現状から見て、もう税金については全く負担率を上げるわけにはいかぬというような状況になっているような感じも私たちは一面では強く持っておりまして、いずれ連合としましても、こういう点を、将来を示すことが税制改革の一つの基本構想の大事なことだということを言い連ねてきているわけですから、ぜひ整理しながらひとつ内部の合意も図っていきたいというぐあいに思いますが、今のところ、まだ明確なものは出していません。ぜひひとつ、政府責任なり国会で、二十一世紀の高齢化社会の姿というものを、お金もまじえながらひとつ出していただいて、大いに税制改革が議論できるようにしていただきたいと思います。
  50. 井上一成

    ○井上(一)委員 どうもありがとうございました。私はやはり租税負担率、こういう点についても政府の見解を明らかにしながら税制の問題については議論を進めなければいけない、こういうふうに思っています。  田久保公述人にお伺いをしたいのです。  先ほどはペルシャ湾の問題に触れられたわけなんです。先生、それはまさに燃える状況、火事の状況で、ドイツは水道の口からずっとバケツリレー。私は、むしろ日本世界的に貢献するそういう役割というのは何だろうか。六十三年度の予算でODA七千十億。むしろそういう緊張状況を起こさせないために予防的な措置を我が国はとるべきだ、こういうふうに思うのです。  もし田久保公述人がおっしゃるように、我が国ペルシャ湾の機雷の掃海に行ったら結果は一体どうなるか。日本船舶に対する攻撃をむしろ誘発するんではないか。そういうことは、日本人のいわゆる船員の危険ということを考えると、実際おっしゃっていらっしゃるような行動を示すべきときだというのですが、むしろ行動を示すべきというのは、予防的な、そういう緊張状況をつくらさないためにも、もっともっと経済大国と言われる日本の果たさなければいけない役割というのはODAの増額を初めとする全方位外交、そういうことが大事だと私は思うのです。何か燃える火を見ながら日本は何もやらない。燃えないような状況をつくることの方が今一番大事ではないか、私はそういう理解をしています。そういう点についていかがでしょうか。
  51. 田久保忠衛

    田久保公述人 燃えないような状態が予防的にできれば一番いいんでございますけれども、ペルシャ湾状態というのは全く突発的なものでございまして、八月十日——これは七月の初めにアメリカが艦隊で護衛に当たった。その月末でございますけれども、サッチャーさんはこれに対する協力を断っておるわけであります。その後八月十日に全く突発事故でございまして、テキサコ・カリビアンが触雷した。翌日十一日にフランスイギリスがそれぞれ掃海艇の派遣を決めた、こういうことでございます。これをどういうふうに日本が予防する措置があったか、これは私は不可能ではないかな、こう思うのでございます。  それから、先生の御指摘のその前の点でございますけれども、私は政府・与党にも申し上げたいわけでございますが、海上自衛隊を現場に派遣したら、現場で攻撃を受けたらどうかというのは、これは初めからやる気がないからそういうパズルをつくったのではないか。こればそうではないんじゃないかと思うのでございます。実際この事件というのは戦争に赴くものではなくて、公海にばらまかれた汚物を処理しよう、みんなで仲間で処理しよう、こういうことだと思うのでございます。そういうところで日本を除く西側主な国々がみんな掃海作業をしている。  ここで私は気をつけなければいけないのは、イラン自体がどう言ったか。イランは国際世論をおもんぱかって、自分でまいた機雷を自分で掃海作業すると言って実際に手をつけたわけでございます。仮に海上自衛隊が現場に行ったといたしまして、現場だけで攻撃を受けることはあり得るか。それは今でも攻撃を受けることがあるし途中でも攻撃を受けることがある。その行ったところで攻撃を受けたらどうするかというのは、自分でパズルをつくって解けないと言っているにすぎないんではないかな、私はかように思うわけでございます。
  52. 井上一成

    ○井上(一)委員 今ここで田久保公述人のその見解について否定をしたり——私はそういう考え方というのは非常に危険だ、我が国の国益に立ってですよ。水をかけるつもりがより油をかけるきっかけになった。それはどういう状況になるかわからない。少なくとも緊張状況をほぐしていくという役割我が国はしていかなければいけない。田久保公述人と多くを議論をする時間もありませんが、むしろ我が国は緊張状況を少しでもほぐしていくための予防的な役割を背負わされている、私はそう思っているのです。そのことが我が国の果たすべき役割である、こういうふうに思います。  さらに私は、鈴木公述人にもまとめて二点御質問いたしたいと思います。  さっきアジアNICSのお話が出たわけです。今アジアNICSからの輸入が増大している。そのことが、我が国の中小企業にとってどのように影響を受けているか、そしてどういう状況に置かれているか、そこに働いている人たちの立場をどうなっていっているか。さらには、そういうことに関連して企業が海外に進出していかなければいけない状況になっている今、そういうことを考えますと、海外に進出する社員に対する家族の教育を含め、あるいは福祉を含め、そういう状況は一体どうしていくのか。私たちはまじめに働いている人たちの家庭を幸せにするという立場に立つと、このことについてもぜひ御見解を承っておきたい、こういうふうに思うのです。
  53. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 御指摘の御心配は全くそのとおりだと思います。現実にNICSの製品が大量にこれから入ってくることは否定できませんし、そういう面での競合関係というのは非常に強まるであろうということは事実だと思います。しかしながら、だからといってNICSの製品輸入を波打ち際で抑えるということは不可能であるし、また日本経済がこれから全体としてより高度な一つの構造転換をやっていくという上においては、やはりどうしても通り過ぎなければならない必然的なコースであろうというように考えております。そのための一つの大きな方向づけとして、私はこういうふうに考えております。  例えば日本で産業の空洞化ということがよく言われるのでございますけれども、実は日本のマーケットというのは、非常に安い製品をどんどん買い込むという一般的な大衆的な消費市場というものも非常に大きく広がっておりますけれども、一方においては、ある程度高くても、極端に言えば高いから買うといったような、非常におかしなといいますか、非常に高くても買う。しかも非常にぜいたくで、わがままで、非常に口のうるさい消費者というのが、恐らくほかの国のマーケットに比べても日本の消費者マーケットというのはそういう点が非常に激しい面があると思います。こういう面からいいますと、日本のマーケットというのは、例えばNICS諸国が最近非常に競争力が向上してきたといいましても、まだまだ日本の企業全体に比べてみると、製品の歩どまりの面からいっても品質の面からいっても、日本の四十年代、五十年代の前半くらいの、それくらいのレベルであろうかと思います。  そういう面でいきますと、日本の国内産業は、中小企業のこともお触れになりましたけれども、日本の中小企業を含めましてレベルが相当上がっておりまして、最近は海外に生産拠点をつくるということだけでなしに、国内においても高付加価値をつけたものはある程度高くても売れるというものがかなりあるわけでございます。そういう意味においては、今先生から御指摘がありましたが、今私も地方をいろいろ歩いておりまして、新潟だとかあるいはあちこちのいわゆる中小企業、中堅企業と言われる方々に聞いておりますけれども、確かに二百四十円から百五十円になるときは苦しかった。しかし、もうそのときにおれたちはいろいろ覚悟を決めて、自分のところで整理すべきものは整理し、かつ生き延びるためにはどういうふうにしたらいいかということで、おれたちは自分自身が現に海外と、NICS諸国とも自分たちでいろいろな情報をとってお互いに交流しながらいろいろと転換の道を考えているのだということで、そういう面での大きな流れというものがこの二年ぐらいの間に急激にでき上がってきていると思うわけでございます。そういう意味で、私は構造転換が確かに中小企業にとっては苦しかったけれども、一つの展望が少しずつ開けつつある。  ただ、さっき御指摘のように、それぞれの雇用されている労働者の方とか家族の方にとっては確かにいろいろ影響は出てきておりますけれども、まさにそういう面からいえば、日本の国内マーケットをやはり内需の財政的な支援だとかいろいろな面でサポートすることによって、あるいは雇用面からのそういう問題をあれするために、私先ほど申し上げたように経済の成長率はできるだけ四%台に維持していくような政策をとらなければいけない。そのことによって今現実に内需というものが膨れ上がっていますが、それをさらに支えていく形で進めていかなければならない。  私は、やはり今御指摘のような問題というのは、真剣に考えれば考えるほど、どうしてもそれは政策でサポートしなければならない問題だし、そうかといって、企業が前向きの構造転換しているものを後ろ向きに抑えていくということではないと思うのですね。その辺のところをひとつ方向を間違えないように政策転換していくのが重要ではないかというように考えております。
  54. 井上一成

    ○井上(一)委員 どうもありがとうございました。
  55. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、池田克也君。
  56. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。きょうはお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございます。  先ほど三人の公述人の方々のお話を伺いましたが、私は教育に関心を持っているのですが、余り教育の問題はお触れにならなかったようでございますので、田久保先生は大学の先生でいらっしゃるわけで、国際的な状況と今の学生の意識と申しましょうか、韓国などにおきましては、非常に学生の動きが世の中を変えていくのにあずかって力があったように思います。また、山田公述人におかれましては、家計の中で教育費がどんなふうになっているか。今大学入試の時期ですが、入学金等も平均して二十五万円ぐらいになっておりますし、国立大学の授業料も三十三万円に今度値上げされるという状況です。あるいは鈴木公述人、国際的な産業の転換のお話をされましたが、このままの日本の子供たちの育ち方で国際人としてどうなっていくだろうか、こういう問題、それぞれ手短で結構でございますが、お答えいただければと思います。
  57. 田久保忠衛

    田久保公述人 私に対する御質問は、大学の学生が今のような国際化、国際人として育っていけるだろうかということでございます。  今国際化ということを盛んに言っているわけでございます。向こうから教師を呼ぶ、学生も呼ぶ、こちらからも行く、これは、今国際化がはかどらないと言っているんですけれども“どうも実態が先行しているように思うのでございますね。私は特に心配する必要はないのではないかなというふうに考えております。時間はたちますけれども、だんだん育っていくんではないかな、こういうふうに思います。  ただ問題は、こっちから行く場合はいいのでございますけれども、逆がちょっと問題ではないかな。私はプライベートなことを申し上げて恐縮でございますけれども、一九七三年に私はワシントンから帰ってきたわけでございますが、そのとき上の娘が小学校三年生、下の息子が一年生でございまして、千葉県のある小学校に入れたわけでございます。ワシントンは当時日本語学校は余りございませんで、できも悪かったせいか、日本語がよくできないわけでございます。そこで、初めて行った学校で、つい英語が出てしまった。そうしたら、教師が先頭に立って笑って、おまえのあだ名はアメリカ人だ。それで娘が泣いて帰ってまいりまして、以後英語を使うことに拒否反応を示しているわけですね。  私はこれは非常に考えなければいかぬな。逆に娘が幼稚園のときに向こうに入ったわけでございますけれども、私まだ今でも名前を覚えているミセス・シャンクという先生がおられて、泣いている娘をスクールバスの中へ突っ込んで、翌日からにこにこしながら行った。このなぞは何かなということでございます。私は、彼我の教育あるいは国際化国民のメンタリティー、それから教師の質、そういうことを考えまして、やはり考えるべきはこちらの方にあるのかなということを考えております。お答えになりませんが、よろしくどうぞ。
  58. 山田精吾

    山田公述人 私、専門じゃありませんから一言だけ、感じだけ申し上げます。  とにかく家庭にゆとりを持たなければだめだと思います。親子が一緒に生活する、そういう舞台がなければ、ただ学校だけに任してもどうにもならぬな。それからもう一つは、もっと次の世代を信じていいのではないでしょうか。むしろ我々自身が今反省しなくちゃならぬことも相当ありますから、これは手本になっておるので、そのことが一番大事じゃないかと思います。
  59. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 二、三の点、ちょっと意見を述べたいと思います。  一つは、語学教育の問題に関連するのですが、日本では外国語教育というのは日本人の先生がみんな教えているわけで、それが非常に多い。昔旧制中学でも外国人の先生をかなり教師として使っておりまして、発音その他の面でかなり実用的な面もあったと思いますし、また、外国の文化やその他も肌で理解できるようなそういう面もあった。戦後は、どういうわけだか外国人を初等教育、中等教育に余り使わないということがございます。  実は最近、日本語の教師が非常にブームになっておりますけれども、日本語を教えるというので、日本人がもちろん日本語を教えるだけではなしに、外国人も日本語を自分で勉強して、さらに自分の国の人間に日本語を教えるというような傾向が出てまいりました。ところが、一部の役所とかあるいは先生方の間には、日本語は日本人じゃなくちゃ絶対教えられない、日本人だからこそ日本語の微妙なニュアンスは教えられるけれども外国人に日本語がわかるわけがないじゃないか、こういうことを言う先生がいるわけでございます。これは非常におかしな話でございまして、それならば日本人がなぜ英語、フランス語、ドイツ語を学校で教えているのか。それでは外国人がそのネーティブな言葉を教えたらいいのではないか、こういうふうに思う。そういったような面での意識の問題が一つ最近あるのではないか。  それから、私は最近、外国のジャーナリストや先生方を日本の国立大学の研究所なんかへいろいろ案内しておりますけれども、日本がこれだけハイテクの面で非常に世界に大きなシェアを占めるようになった、非常に技術革新の進んだ国だと言われておりながら、実は国立大学の研究施設というのは非常にお粗末で、医学部も理工学部も非常にお粗末である。こんなところでどうしてああいう優秀な学生が育つのか。結局これは企業が全部やっておるわけでございますが、そういう面では、日本は大学教育の、特に専門教育が非常におくれているということが言えるのではないかということが一つあります。  それからもう一つは、これは初等教育でございますけれども、非常に平等ということに重点を置くのは結構でございますが、余りにも画一的になり過ぎているのではないか。しかも中学、高校、大学に至る間には、受験戦争ということでこれまたある面で非常に画一的な偏差値中心型のあれが行われている。一体どこに人間の教養というものをゆったりと育てるあれがあるのか。同時に、画一主義というものは人間の創造性というものの芽を若いときに摘むおそれも非常にあるのではないか。だから、初等教育に平等性を強めるということは、それは悪いことではないのですけれども、それだけで済む問題ではない。もっといろいろな教科の整理その他で教え方があるのではないかという感じがいたしております。  それとまたさらに、日本に来ている留学生の問題あるいは海外子弟が帰国した問題、それにまつわるいろいろな問題がございますけれども、これなんかは、日本の現在の教育のシステム自体が非常に国際性が弱いということを立証しているのではないか。そういう面で、関係方面なり我々マスコミの人間も含めて大いに意識の転換を図らなきゃならないのではないかというふうに考えております。
  60. 池田克也

    池田(克)委員 ありがとうございました。私が単にぽんと教育と申し上げたので、ちょっと質問の意を十分にお酌み取りいただけなかったかもしれません。  先ほど田久保公述人からは、防衛費はもっとふえてもいいというふうな御趣旨のお話がございました。学生たちの中に、戦争というものを本当に恐れる、いざとなれば自分たちが戦場に行かなければならないという年代である。そして国を守ることについてはそれぞれの気持ちはあるでありましょう。もしかしたらないかもしれません。もっとあっけらかんとしているかもしれません。戦後の日本の教育のずっと流れの中で、いろいろと予算はつけるものの、国民の意識、若者の意識というものからいくならば、果たして日本というものをそういう面で、軍事という面で守るということよりも、外交とかあるいは世界といろいろと交流をしていくとか、さまざまな形とバランスのいい防衛というものをしていくべきだ。  私たちはそうした点ではGNPの一%という枠組みは大事にし、その中でぎりぎりといろいろな議論をしながら、本当に抑えた中での平和というものを議論すべきだという立場に立っているわけなんですね。そういう学生の意識はどうかなということをお尋ねしたのですが、ちょっと時間がなくなってしまいました。  実は土地の問題をちょっと山田公述人にお伺いをしたいと思って、けさの新聞でいろいろ統計も出ておりました。拝見しますと、年収四、五年分で何とか入手できればという涙ぐましい希望を持っていらっしゃるとおっしゃっております。私は、土地国会でもこの壇上で政府に対して、賃貸住宅をもっとたくさん建てるべきだ、持ち家はもう限度であるし、仮に持ち家があったとしても通勤時間がどんどん延びていって、これはサラリーマンの健康にもあるいは時間にもロスである、もっとその分自分の勉強に充てられるのじゃないか、そのためには放送大学等を活用して、大学の社会に対する門戸開放もあってもしかるべきだ、こういうふうなことをここで申し上げてきた経過から、山田公述人にお伺いしたいのは、サラリーマンの方の中に社宅あるいは賃貸住宅という問題についてどういう意識があるだろうか、こうしたものをお尋ねしたいのでございます。
  61. 山田精吾

    山田公述人 また詳しい資料は別に御連絡しますけれども、今、先生言われましたようなことは大変大きな希望が出ています。しかし、最近の賃貸の家賃が本当にウナギ登りの状況なものですから、まあ四、五年の年収で持ち家を、ひとつ家賃の方は月収の二割以内ぐらいにおさめてもらえぬだろうかというのが私たちの希望でして、ぜひ賃貸の方を、公営の方もひとつ拡大の努力をしてもらいたいと強い希望を持っていますが、問題は家賃との関係がございますから、その点も十分考えながらひとつやっていただきたい。これは大変強い希望として出ております。
  62. 池田克也

    池田(克)委員 重ねて今の問題でお伺いしたいのですが、会社が最近いい立地条件に持っている社宅をやめまして、そこを営業用のマンションにする、それで社宅はかなり遠いところへ持っていく、こういう例を私身近に幾つも聞いたわけです。会社の経営もなかなか厳しい、円高という状況の中でなかなかいい収益を得られない。となりますと、持っているそうした不動産をいろいろと活用して、そして収益を上げるという傾向にあるように私は受けとめているわけです。したがって、そういう点では、この賃貸住宅に対するいろいろ政府の補助とか制度の見直しとか、そうしたものをやはり組合としても検討されているのかどうか。  私たちは庶民のベースから、やはり賃貸住宅——うちを買ってもボーナスでまとめて払い、かなりの家賃を払っていくと、三十年ぐらいで払い終わるころにはぼろぼろになってしまって、結局賃貸住宅と同じことになるのじゃないか。ただ持っているという意識だけのことだ。この辺は組合の方々にも意識改革というものを迫っていかなければならないし、ある意味ではみんなで変われば怖くないみたいなことで、みんながそうであれば——みんながうち持つからうちも欲しいということになる。そういう点では、組合の意識というのは一体どうなっているのだろうかなという思いでお伺いをしているわけなんです。
  63. 山田精吾

    山田公述人 東京を中心にしまして土地、住宅の議論がありますと必ず農地問題がやり玉に上がってきますね。我々としては、農地の問題もありますけれども、法人が所有している含み資産といいますか、大変な土地が、活用もされていますが、かなりな分野で遊休といいますか遊んでいるというようなこともよく知っているのです。ですから、私どもがやるならば個人と法人と両面からそういうふうな土地の供給について考えてもらわないと片落ちになるよということを大変心配して、そういう面の主張を繰り返し繰り返し実は今日までやってきています。  その中で、どうせほっておくならむしろ住宅でもつくったらどうやということも経済界なり各産業界にも——このごろは子供の迷路みたいなものをつくっちゃって、駐車場やらいろいろなものができていますが、これだけお互いサラリーマンも住宅に泣いているわけですから、もっと法人の面と個人の面と両面から土地問題はやってほしい。  それで、保有税の問題にしましても土地の税制にしましても、やはり真剣に今回税制改革の一環として取り組まなければならぬと私は思います。ある専門家の先生から私の方にもデータをいただきました。これは恐らく農地を中心にした資料だろうと思うのですが、東京都で二千平米以上、四億円まで控除して、それ以上。時価九〇%で五%の税率で四・五%で計算しますと、東京都内で四万二千人対象があるのだそうですよ、それで七兆円以上の税収が計算できる。これは粗っぽい計算ですけれども。全国的に見ると、地方分でも七兆から十一兆あるといいますから、総計で十四兆から十八兆ぐらいは計算上は見込めるということです。果たしてこのままいくかいかぬかは話は別ですけれども、そういうこともありますから、土地の問題の税金問題も大いにひとつ議論をしてもらいたいなと思います。  ちょっと余分なことを申し上げました。
  64. 田久保忠衛

    田久保公述人 先ほど私、先生の御質問を勘違いしたのでございますけれども……(池田(克)委員「時間が来ましたので手短にお願いします」と呼ぶ)はい。実は抑止と均衡という理論が今の学生にわかっていない。大学の教科書、欧米全部、抑止と均衡、これはテキストに書いてあるわけでございます。これはある程度軍事力がないと平和が保てないんだ、このからくりを教えますとよく理解する、このことだけ申し上げておきたいと思います。
  65. 池田克也

    池田(克)委員 ありがとうございました。終わります。
  66. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 公述人各位にお願い申します。  質問者の持ち時間が限られておりますので、答弁はできるだけ簡単にまとめていただきます。  次に、吉田之久君。
  67. 吉田之久

    ○吉田委員 三人の公述人の方々に敬意を表します。  まず初めに、田久保先生にお伺いしたいのでございますが、先ほど先生は、INF交渉の進展、それは非常に結構なことではあるけれども、それがそのままデタントに結びつくとは思われない、むしろ今後、通常兵力がより重視される時代になってくるのではないか、また、日米間の戦略上の話し合いもより重要になるであろう、ともあれ防衛費五・二%の増は極めて妥当である、このように結論を申されたと思うわけでございます。  五・二%の防衛費の増が極めて妥当であるかどうかはかなり論議の分かれるところだろうと思いますが、私は今日、日本国民の大体の総意は、GNPの一%以内の防衛費ならば認めざるを得ないのではないかというところに落ちついているように思います。さて、GNPは少しずつ上がってまいります。だとすれば、それに比例して防衛費も徐々にその範囲内でふえていくことは認めざるを得ないのではないか、大体その辺に国民の考え方の公約数があるのではないかと思うのです。問題は、少しずっとはいえ防衛費が今後ふえていく中で、その防衛費が何に向かって、何に重点を置きながら整備されていくべきであるか、この辺がかなり問われなければならない問題になってくるのではないかというふうに思うわけなのでございます。  一番気になりますのは、例えば防衛白書六十二年版の百二十ページに「万一敵の地上部隊等を沿岸地域で早期に撃破し得なかった場合には、内陸部に通ずる要地において、わが国土の地形を利用して持久作戦を行い、この間に、他の地域から部隊を集結し、反撃態勢を整え、侵略を排除する。」このように書かれておるわけなのでございます。作文としてはわからないわけではありませんけれども、国民感情としては、それはあの沖縄の悲劇の再来なのではないか。  ともあれ、今後我が国において陸上で戦うというようなことはもはやあり得ないことだし、あってはならないことだしという国民感情がやはり非常に強いと思うのです。もっとその前のベースには、二度と再び戦争は嫌だ、それは我々日本だけではなしに外国も含めて嫌だ、そういう気持ち。とは申せ、いろいろ現在の世界情勢を見れば無防備ではおれない、何らかの防衛が必要だ、その防衛がどういう形であるべきなのか、それが国民に本当に理解される防衛でなければ、防衛費の増大あるいは防衛費そのものを国民は否定しかねないと思うのでございます。この辺、先生はどうお考えでしょうか。
  68. 田久保忠衛

    田久保公述人 まことにリーズナブルなお話だと思うのでございます。  私も含めまして国民全体、戦争は嫌だ、これはもう骨の髄までしみ通っていることでございます。ただ、戦争は嫌だ、その次にハウエバーというのがありまして、それだけで平和が実現できるか、その場合にどういう軍事力を持ったらいいか、こういう問題だと思うのでございます。  これは、一%で縛るということは私は反対でございまして、現実にあるいわゆる脅威に対してどういうふうにしたらいいか、ここが私は出発点だと思うのでございます。脅威が完全にないという例証が立ちますれば、これはかなり軍備は縮小してもいいだろう。ただし、大変な脅威があるとなれば、これは一%、二%では済まない場合もある。これはかなり柔軟性があるのではないかと思うのでございます。ただ、これをあるところで歯どめをかけなければいけないというお考え方というのは、私はこれも納得できるというふうに思っております。  ただ、先ほど冒頭申し上げましたように、日米間で戦術面でかなり協議が行われている。これは抑止と均衡プラス日本アメリカとの安全保障条約でペアになって脅威に対しているということでございますから、その辺の見合いで、私は徐々に軍事費を積み上げていったらいいのではないかなというふうに思うのでございます。  それから、防衛白書で、今百二十ページとおっしゃいましたが、私今手元にございませんが、私は防衛庁の代弁をするつもりはございませんけれども、私はいろいろなシナリオを考えた表現があってもいいのではないかなというふうに考えております。  それから、吉田先生はたしか海軍の御出身だと思うのでございますが、私は海重視ということもこれは理解できるわけでございます。ただ、海だけで戦えるか。兵たん作戦というものも重要な部分でございますから、陸海空バランスをとった力が必要ではないかな、これが私の見方でございます。
  69. 吉田之久

    ○吉田委員 およそ防衛を考えられる方々の基本的なお考えは、今先生の御発言に代表されていると思うわけなんでございます。  しかし、私は今、島国である日本、しかもあの戦争を経験した日本、しかも原爆を初めて落とされた国日本、この国の安全を守るためにはただ陸海空バランスをとって守るということでいいのだろうかどうだろうか。  まず「真の防衛は敵をして一歩も上陸せしめざるにありき」という有名な言葉もイギリスにあるようでございますけれども、今後の日本防衛我が国の領土及び周辺海域の航空優勢を断じて維持する。空からの攻撃によって家や財産を焼かれ、親族の生命が奪われることのないようにする、まずこれが一番大事な国民の願いなのではないだろうか。  次に、我が国への原油その他の資源、食糧などの輸送路の安全を確保して国民生活を維持できるようにする、これが二番目の大事な原則なのではないだろうか。  そして三番目には、先ほど私が申しましたように、着上陸侵攻を阻止して、かつての沖縄戦の悲劇を絶対に繰り返さない、こういうところが原点になってくると思うわけなんでございます。  したがって、特に先ほどペルシャ湾の問題について先生もお触れになりましたけれども、まさに日本にとっては原油が命でございます。しかし、ペルシャ湾の掃海に当たるとすれば、それはかえって国益に反するのではないかという御意見も先ほどありました。これを拱手傍観していることもまた国益に反するのではないだろうかという意見も大いに成り立つと思うわけなんでございます。現状、数々の制約のある中で、日本はこのペルシャ湾の問題についてどの辺まで対応すべきであると先生自身はお考えでございましょうか。
  70. 田久保忠衛

    田久保公述人 先ほど井上先生の御質問に私、お答えできなかったわけでございますけれども、それを含めまして申し上げますと、予防できるものと予防できないものがある。一回火事が起こる、火事が起こる前は全力を挙げてトラブルは抑えるべきだと私は思うのでございます。その場合、ODAも有力な武器であろう。ただ、日本はフィリピンに大変なODAを出しておると私は思うのでございますが、この間ガットの総会では、フィリピンが日本攻撃の先鋒になった、こういう事実を踏まえますと、金で国家は、安全は守れませんよという教訓は身にしみて感じるべきだと私は思うのでございます。  それからペルシャ湾でございますが、これは一たん起こってしまった火事であるということでございます。したがいまして、これは海上自衛隊の方が何と言うかわかりませんが、これは今まで白い目で見られておりますので本心は何と言うかわかりません。ただ、海上自衛隊の掃海作業、これは先ほど申し上げましたように戦争とは全然違った別の次元の問題にございます。したがいまして、公海にまかれた汚物を西側のみんなで掃討作戦するのは何らおかしくないのではないかな。今の日本の体制でできるぎりぎりの中でも、最も西側一員としての誠意を示すあかしになるのではないかな、私はかように考えております。したがいまして、掃海艇の派遣というのは是というふうに考えているわけでございます。
  71. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。  次に、山田公述人にお伺いいたします。  連合が誕生いたしました。国民はその連合の今後の進路、そして国家に与える大きな影響力と指導力に非常に期待をかけております。そういう点で、特に山田公述人の果たしていらっしゃる大事なお立場に敬意を表する次第でございますが、きょう、いろいろと税制問題についてもお述べになりました。また、この「正論」の三月号に「不公平税制の是正こそが先決」であるということで、山田さんの税制に対する基本的なお考え方を読ませていただきました。  そこで、私が最近気になりますことは、総理もしばしばおっしゃるのでございますが、所得と消費と資産、これにバランスある課税をするのが一番のあるべき税制の基本の構えだ、こうおっしゃるわけです。山田さんのこの文章の中にも、それを全面的には否定なさっていないと思うのでございますが、考えてみましたら所得、その所得から税金を払うのは、これは国民として当然だれしもが認めるところだと思います。所得のない人からは取れませんし、幸い所得のある者は国家に対してその税を負担しよう。しかし、そこで税を負担してそして可処分所得が残る。それを使うことによってまた課税される、あるいはそれを使わずにためて資産にすることによってまた課税される。どのみちどこまでも課税されるということは少しおかしいのではないだろうか。  労せずして資産を得る人もいます。その人たちがさらにその資産がだんだん増大していく、あるいは土地高騰によってさらにその評価が上がっていく、そういうことに対しては当然課税はあるべきだと思いますが、ただ、所得と消費と資産はそれぞれ必ず課税されなければならないものだというふうに決めつけることができるのだろうかどうだろうかという根本的な疑念を感ずる一人なんでございますが、山田さんはどうお考えでしょうか。
  72. 山田精吾

    山田公述人 基本的には先生が触れられましたような考え方と私は同じような考え方を持っています。性格はそれぞれ違うと思うのですね。一しかし、所得と資産の関係は非常に関連しているのです、これはキャピタルゲイン一つとりましても。所得をさわろうとすると、例えば税法上の上限を少し緩やかにしよう、それはある程度わかりますよといった場合に、今度は資産の方はどうなっているのか。高額所得者というのは、これは必ず資産との裏表の関係にありますから、ある意味では両面からきちっととらえて改革内容を検討したりまとめる方向でやらなくてはならぬと思いますが、今の間接税と消費の問題、ちょっとまた性格が違う。  ただ、先ほど申し上げましたように、現行の物品税なんか見ますと、いつも言われるように、コーヒーにかかってどうして紅茶にかからないのというようなことのいろいろなデータをもって議論しますと、その点については私ども大変矛盾も問題点も持っていますから、私らはどちらかといいますと個別品目に対して、個別項目に対して、だれが一体こういうことにしてしまったんだ、そうであれば、どうしてこうなったのか、その原因も国民に明らかにしながら、時間がかかりますけれども、汗を流して、やはりお互いの納得なり合意をつくるということが、将来どういう形にいくにしても非常に大事なことだということで主張を繰り返しておるというような立場ですから、均衡をとるというのは、必ずしも同じような性格のもので均衡をとるというようなことはちょっと不自然だな。だから一言追加しますと、所得と資産についてはひとつ急いで改革をやってもらいたいというのが私たち、消費については時間をかけてやってほしいということです。
  73. 吉田之久

    ○吉田委員 いろいろお聞きしたいのでございますが、時間が参ったようでございます。ありがとうございました。
  74. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、矢島恒夫君。
  75. 矢島恒夫

    矢島委員 公述人の皆さん御苦労さまです。日本共産党の矢島恒夫でございます。  最初に、鈴木公述人にちょっとお聞きしたいのですけれども、公述人は産業構造審議会だとか、あるいは経済審議会というところに参加されております。そこで、今政府経済構造調整推進の最大の理由といたしまして、輸出志向型の日本経済構造転換を図るため、こういうふうに説明している。大企業の生産拠点を海外にどんどん移していく、これを柱としている、こういうふうに思うわけです。  ここで考えるべきことは、大幅な黒字を生み出している輸出について考えてみますと、年間四十兆円の日本の輸出、その半分以上、五一%というのが大企業三十社によって占められている。構造調整というものを問題にするのであれば、大企業の輸出志向というものの根源にあるのは、先ほど山田公述人の方からも指摘がありましたけれども、労働者の低賃金あるいは長時間労働、さらには下請への締めつけ、こういうところだということを各界から厳しく指摘されている点だろうと思うのです。もちろん労働者の賃金でいえば、日本の労働者の購買力平価で見ますと、アメリカの五四・三%くらい、西ドイツと比べますと六四・一だ、こういうような状況にあるということや、あるいは労働時間でいえば、年間労働時間がアメリカよりも二百五十時間あるいは西ドイツよりも五百時間も長い。こういう点にこそ根本的な改善が必要じゃないかと思うのですが、この点について。
  76. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 お答えします。  二つの点、お答えしたいと思います。  一つは、海外にいろいろ生産拠点をつくったりしているものの中に、これは大企業だけではございませんで、最近はいわゆる中堅企業、従業員二百人、三百人くらいの企業でもどんどんと海外に生産拠点を移しておりますので、この構造転換というのは必ずしも大企業だけではないということが一つございます。  それから、先ほど御指摘がありましたように、アメリカその他に、ともかく日本の大企業の輸出のウエートが非常に高いために、そのことが経済摩擦を生み、またこういう円高を生むということになった。これは確かに、少なくとも昨年前半までの段階、先生の御指摘のようなことがございました。私どもも産業構造審議会その他で、やはり大企業の輸出のビヘービアというものを少し反省したらどうかといったようなことを発言したこともございます。急激な円高の中で、御承知のように大企業も急激に変わりまして、最近は現地へどんどん生産拠点を移したところも国内に逆輸入するということもございますけれども、輸出そのものが相当数量的に減ってきているということでざいまして、これはやはり企業の自粛というよりも、やはり円高が結果としてそういう方向をもたらしたということがあるのではないかというふうに考えております。  日本の国内での賃金の問題、御指摘になりましたけれども、実はこれは実質的に国民生活の質の面からいきますと、確かに先生御指摘のように、名目の所得は上がっても、実質の消費レベルなり生活のレベルは、住宅とか食糧とかそういったものを含めていろいろ考えますと非常に低いということ、これはもう先ほど山田公述人も御指摘になったように、そういうことでございます。しかし、そのことと企業における賃金が高いかどうかということは別な問題でございまして、企業の賃金ベースは、もうはっきり申し上げてドルベースで考えますと世界一高い。一人当たりの所得もそういう状況になってきているということ、そのことが今日海外への生産拠点を中小企業に至るまでどんどんやらざるを得なくなったという最大の原因であるだろうと思います。  そういうことから考えますと、私は、高いことが悪いと言っているわけじゃございませんで、結果としてそうなってきている状況に適応して、企業がいや応なしにそういうふうに構造転換をせざるを得なくなったというところをまず着眼していただきたいというふうに考えております。  余計なことを余り申し上げるわけにもまいりませんが、その点だけひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  77. 矢島恒夫

    矢島委員 中小企業も海外進出の方向というのをずっと打ち出しているという話ですが、続いて、同じく鈴木公述人にお聞きしたいのですけれども、今、海外へどんどん進出していくという状況の中で、空前の失業とかあるいは雇用不安というのが広がっているわけなんですね。  私、調査したいろいろな資料を調べてみたわけですけれども、例えば三菱銀行などが雇用創出をどういうふうに見ているかというと、一九九〇年までには製造業で三十六万、非製造業では十六万人、合計五十二万人の失業者を予測している。経済企画庁の統計で見ましても、円高になりましたこの二年間だけをちょっと取り出してみましたが、第一次産業で二十九万、第二次産業で二十八万減っている。企画庁が年平均二万八千人という予測をしましたけれども、これに比べて大変なスピードで人減らしが進んでいる。こういうことにこそ対策を急がなければならないと思うのですけれども、この点について。
  78. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 これだけ大きな円高構造調整の過程の中で、先ほども指摘しましたように、実際に失業率はふえておりません。むしろ、私はさっきから指摘しているように、失業率がこの程度で済んで構造調整がこれだけ進んできたということは、企業の自己努力と労働組合の協力ということがあったわけですが、これだけに頼っていたのでは今後はやはりやっていけないよということで、政府がもう少しいろんな面で政策的な支援措置が必要であるということを申し上げたわけでございます。  それと私が指摘したいのは、企業の倒産件数というのは現実にはそんなにふえておりません。むしろ、こういうことだと思います。例えば、一次産業は縮小していく。しかし一次産業そのものが、従来の生産システムのままでは生きていかれないけれども、最近、一・五産業だとかあるいは二・五産業だというように言われておりますけれども、ソフトの面あるいはいろいろな技術開発その他の付加価値をつけていくような面でのいろいろな工夫をやりまして、企業自体が非常に多様に変わっているわけでございます。二次産業自体も三次産業的な要素を持ち、あるいは一次産業的な要素を持つものもいろいろ出てきておりまして、いろいろな形でこの広がりが出てきている。その広がりの中で雇用というものがいろいろ動いているわけでございます。  そういう動いている中で何が起こっているかというと、実は求人の面で、本当に必要な産業分野に人が足りなくて、衰退産業の場合は人が余ってくる。その余ってきた人たちがどういう形で転換していくかということが重要な問題であって、そのことについては確かに先生の御指摘のように、労働者にとっては大変厳しい状況にあることは事実でございますけれども、しかしそれにもかかわらず、なお今日どうやら何とか失業率を上げないでいっているということは、やはり労働者側の方の自己努力もいろいろあるのだろうと思いますが、企業も相当そういう面でカバーしているという面があるのではないか。  これは余計なことかもしれませんけれども、日本では今までダーティーな産業とか、いわば非常に手間のかかる労働というものはできるだけロボットに移すというようなことで、二次産業の場合は非常にロボットとか自動化が進んできたということがあるわけです。建設労働とかその他いわゆる一般の単純労働に至っては、そういう方面に就職しようという人たちがだんだん日本国内で減っておりまして、そういう分野はどういう人たちがカバーしているかというと、御承知のように第三国の、日本語も十分できないような人たちが東京の地下の工事現場なんかで大分働いているというような状況でございます。  そういうことでいった場合に、これは確かにニーズがあるからそういうことになっているわけですけれども、問題は、今日本の、海外の労働力をどういうふうに受け入れるべきかという問題について労働省等もいろいろ検討されておるようでございますけれども、そういうニーズが一方にある、しかもなおかつ途上国側からもそういうふうなことを求めていろいろやってくるというようなことで、その辺のことをどういうふうに考えたらいいのか、私ども大変難しい問題だと思っておりますけれども、そういうふうな事態になっているということでございます。  ですから、雇用問題というのは、確かに個々の労働者にとってこの構造転換というのは厳しいことでございますけれども、それに対応しながら大部分の人たちはやってきているわけだし、中小企業の場合も、ともかく食っていかなきゃなりませんから、食うためにどんどんどんどん合理化をやっておられる。私もそういう面でいろいろな実績は知っておりますけれども、そういう面では私は、今そういうことがやっと一段落して、いよいよ最後の仕上げ段階に入ったんだということを申し上げましたけれども、そういう時期に来ているのではないかというふうに考えております。  以上です。
  79. 矢島恒夫

    矢島委員 時間がありませんのでもう一つだけ鈴木公述人にお聞きしたいのですが、「二十一世紀産業社会の基本構想」というのを発表されました。これは一昨年の五月だったと思いますけれども、この中に「海外直接投資の拡大が雇用等国内経済に与える影響」という項目がございます。そこのところで、二〇〇〇年度におきます状況について、産業界の海外直接投資の平均伸び率といいますか、これを一二%として試算して、雇用機会の減少は約五十六万人と見込まれる、さらにその次のページでは、一五%に引き上げた場合に同様に試算すると九十七万人というふうにこの雇用機会の減少を推定されている。  ところが、実際にその後起きている状況を見ますと、六十年度は海外投資の伸び率が二〇・三%ですか、さらに六十一年度になりますと、海外投資二百二十三億ドルを超えまして、伸び率でいきますと八二・七という、これまた莫大なものになっているのですが、非常に基本構想の試算とかけ離れた現状が進んでいるわけなんです。  こういうふうになりますと、どうも雇用機会の減少を低く抑えるためにわざわざ計算をしたのではないか、こういうことが極めて疑われるわけですが、ごまかしではないかと思うのですが、いかがですか。
  80. 鈴木幸夫

    鈴木公述人 先生に口答えするわけじゃございませんけれども、今御指摘のように、二十一世紀にかけて確かに一次産業、二次産業の分野で海外投資がふえていくことによって雇用者数がそれだけ減るという数字が出ておると同時に、他方においては、ハイテク部門を中心とした新しい産業分野が開拓されることによってそういう人たちが相当程度吸収されていくということも指摘しているわけでございます。現実に我々が予想していた以上に円高が進み、しかもその円高の中で我々が予想していた以上に構造調整が進んだということでございます。それはだれがやったのでもなくて、中小企業も含めて企業の労使が懸命に努力してそういうふうにやったわけでございまして、結果として失業率は決してふえてはおりません。そこのところが実は私たちがある意味で誤算したところでございまして、その誤算というのは、これだけのやはり企業の適応力があったのかということを今さらながらに我々が驚いているというようなことでございます。  ですから、逆に言えば、私たちはこれからこういうテンポでいけば日本経済というのは内需志向型、貿易黒字縮小型の経済に意外に早くいくのではないかな。もちろん楽観はできませんけれども、そのためには、やはりさらに内需を支えるための財政的な支援とか政策的な支援が必要なんじゃないか。そのこと自体が雇用の維持にもつながっていくというふうに考えているわけでございまして、時間がございませんから余り細かいことを申し上げられませんけれども、そういうふうにお答えします。
  81. 矢島恒夫

    矢島委員 今お聞きしたのですが、サービス産業などの雇用は伸びていませんし、造船大手七社、八六年度で削減した人数二万四千人、あるいは鉄鋼大手五社だけで四万四千人、全従業員の四分の一に達するというような大変な人減らし、合理化をやっている。これは別に構造不況業種に限ったことじゃなくて、輸出ラッシュで大もうけした自動車とか電機、こういうのが急速に大規模な生産拠点の移行を行っている、こういう状況の中で人減らし、合理化が進んでいるわけなんですね。非常に、産業構造調整というのが産業の空洞化と失業天国をつくっていくんじゃないかという危惧を持っておりますし、楽観的な報告は、六十一年十二月にやはり経済構造調整部会が、恐れることなかれというのをやっておりますけれども、サンケイ新聞では、経済の実態を知らずに無責任なことを言い過ぎるという批判も出ておりますが、十分その辺は今後御検討いただきたいと思います。  あと時間がありませんので、一つだけ山田公述人にお聞きしたいのですが、先ほどお述べになりました、皆さん方が行いましたアンケートの結果が、持ち家問題ですが、出てきておる。私も見せていただいたのですが、最後に一つだけです。  政府の無策について非常にアンケート調査の中で出ておりますが、ひとつその無策という部分について、アンケートの内容から考えてどんなことが多くの労働者の考えであるか、その辺をちょっと一つだけお伺いしたい。
  82. 山田精吾

    山田公述人 まさに無策そのとおりで、何もやらなかったというような受けとめ方です。個別に言いますと、それはたくさんありますが、結論はそういうことです。
  83. 矢島恒夫

    矢島委員 時間がありませんので、もう少しお聞きしたいと思いますが、これで終わります。
  84. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ────◇─────     午後一時三十一分開議
  85. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和六十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず岩田公述人、次に並木公述人、続いて丸尾公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、岩田公述人にお願いいたします。
  86. 岩田規久男

    ○岩田公述人 岩田です。よろしくお願いいたします。  私は、土地政策に関しまして今後検討していただきたいと思うことを少し述べさせていただきたいと思います。これから申し上げますことは、一、二年というような時間の中ではなくて、もう少し長い目で見た、中長期的に見たときの土地政策のあり方をお話ししたいと思いますが、特に中心は土地の税制に置きたいと思います。  土地の政策ということを考える場合に、原則といいますか、それを三点ばかり最初に申し上げたいと思います。  まず土地政策というものの目的ですが、目的というものは、土地を有効に利用していく、そういう一つの目的があります。それからもう一つ、土地にまつわる分配の面、その分配を平等化していくという、その二つの目的があると思います。目的がそういうふうに二つ以上、複数である場合には政策手段というものも複数なければいけないということで、いろいろな政策を基本的には組み合わせなければいけないということが原則でありますし、その意味では土地政策というものは総合的なものでなければいけないということであります。  第二番目の原則は、これから国民に最低限保障していくべきものは最低限の住宅サービス、ナショナルミニマムとしての住宅サービスであって、決して土地の所有ではない、この点が原則の二として申し上げたいというふうに思います。  それから、実は今申し上げました原則の一と原則の二から当然出てくる問題なのですが、土地の有効利用というものと分配という二つの目的があるわけですが、この政策手段を分けて考える必要があるということであります。つまり、分配を目的とするために土地の有効利用を阻害するということをしない。逆に、土地の有効利用は促進しつつ、なおかつ分配が平等になるような政策を組み合わせて用いるべきである、これが第三の原則であります。そういう原則に立って、土地の税制が中長期的にどうあるべきかということを少しお話ししたいと思います。  まず、土地の税制というのは幾つかあるわけですが、基本の原則としては、有効利用という面から見れば、土地の利用というものを有利にしていって所有することは不利にする、まずそういう大前提があるわけです。それでは、所有を不利にして利用を促進するためにはどういうふうな税制が望ましいだろうかということを考えますと、まず土地には固定資産税と譲渡所得税と相続税というような三つの大きな税があるわけです。贈与も含めると相続・贈与税というのがあるわけですが、まず固定資産税ということからお話ししたいと思うのです。  固定資産税というのは、地域的な社会資本、道路であるとか歩道であるとか公園であるとかオープンスペースといった、そういう社会資本を整備する上での非常に重要な財源であります。そういう意味で、固定資産税はそういう財源としてまず使うという機能を持っているわけですが、もう一つ、土地の保有コストを上げる、保有の費用を上げるという面で、人々が単に土地を持って値上がり益を待つとか、あるいは非常に高い資産を子孫に相続させるというだけの目的で持つよりも、何か土地をもっと活用していくという、そういう活用を促進する面があるわけです。そういう面から見ますと、先ほど申し上げました土地の有効利用という面から見ますと、固定資産税というのは低ければいいというわけではまずないということであります。  それでは、土地を活用しながら、かつ分配の面での不平等をなくしていくのにはどうしたらいいだろうかということは、土地を活用するという面では、例えばむしろ現在よりも借地・借家法などを少し改正して貸しやすくするということが必要であります。  そのようにしたときによく問題になるのが、非常に小規模宅地に対して固定資産税をどうするかという問題であります。  さきの国会でも、例えば固定資産税は、非常に地価が上がったので激変緩和措置をとる、あるいは二百平米以下のような小規模の宅地に関してはむしろ固定資産税を安くしていくという方向がとられているわけでありますが、これは緊急避難的といいますか、短期的にはやむを得ないところがあるということは私も認めるわけでありますが、しかし、今言ったような形で激変緩和措置や固定資産税を安くするという方向をとりますと、それは土地の有効利用を阻害していく、非常に土地の小さな宅地に細分化をしていって、細分化すると非常に町づくりはやりにくくなるという面があるわけであります。  しかし、そうなりますと逆に低所得者層は大変ではないかという問題が出てくるわけですが、これは基本的には先ほど申しましたように原則の二、保障すべきは住宅サービスであって土地所有ではないという点と、原則の三として申し上げました有効利用というのと分配手段というものを政策を分けて考えなければならないというところに注目しますと、次のような政策が考えられるわけです。  つまり、住宅サービスを保障するのでありますから、土地の所有というものを必ずしも保障することはない。非常に小規模宅地でやっと住めるという、それでも最近では相当の高所得者でなければ住めないわけですが、そうした問題も、例えば民間の住宅に住んでも、適正な家賃というものを決める、それと市場家賃との差額をある一定の所得以下の所得層には家賃手当として支給するということによって、住宅サービスをナショナルミニマムで保障することができるわけでありまして、決して土地所有を保障する必要はないわけであります。あるいは、公的な住宅というものを供給することによっても住宅サービスはナショナルミニマムを保障することができるわけでありますので、したがって、中長期的には零細な土地の所有というものを必ずしも保障するという形をとらなくてもよろしい。あるいは、固定資産税がそれだけ上がって、なおかつどうしても自分は賃貸住宅などよりも持ち家に住みたいという場合には、ある程度の共同化をして、共同住宅の中で住んでいく、それによって固定資産税を負担していくというような方法も考えられるわけであります。  しかし、固定資産税を今言いましたようにただ上げれば、全体で、あるいは家賃手当とかそういうものも含めて考えればいいかといいますと、それだけではやはりまだ十分ではないという面があります。それは、土地というものはお互いにどういうふうに利用するかによって非常に影響を及ぼし合って、都市環境、住環境に非常に大きな影響を及ぼすという点から見ますと、やはり都市計画というものをきちんとつくって、その中で開発を進めていかなければならないという意味では、その場合の計画に日本の場合には住民が全然参加できないようなシステムになっていますが、これをもう少しヨーロッパ型、特に西ドイツなどに代表されるような形で、計画を住民参加のもとにつくってその中で開発していく。そうしませんと、現在の日本のように、何か地上げ屋が出てきて、それが経済計算のもとに個々てんでんばらばらに開発をしていくと、コミュニティーが崩壊していったり住民がただ追い出されるだけになってしまう。むしろそれよりも従来の住民が少し共同住宅化をしたり、そういうことによって相変わらず住んでいける、そういうような仕組みというものを考える、そういう中で固定資産税を少し上げて、あるいは時価評価をしていって、固定資産税を課税する場合にむしろ時価評価をしていって、それで税収を得たらその税収でもってその周辺の社会資本を整備していく、そしてそれでなおかつ生活に困るような人は、やはり今言った財源が確保されていますから、それでもって家賃手当を公的に支給していくとか、それでもなかなか大変であるというような場合に公的な住宅の供給をしていくというような形をとったらどうかということであります。  それから、固定資産税がそういうふうに上げられますと、今度は逆に住民税の方は下げることができます。そういう意味で、それほど住民の負担がふえるわけではありません。むしろ固定資産税でもって土地の有効利用は促進されて、社会資本の整備の財源もできるという意味では、固定資産税の方が住民税よりも地域税としては望ましいわけであります。また、固定資産税が高くなって大変であるというような階層に関しては固定資産税の延納を認める。それはいつまで認めるかというと、売却ないし相続まで認めるというような政策をとることも可能でありまして、そのようにしていけば土地の有効利用と土地にまつわる分配の問題が同時に解決できるのではないかというふうに思います。  以上が固定資産税を中心の話ですが、もう一つ土地譲渡所得税という税金があるわけであります。  この譲渡所得税に関しては、土地を売ってキャピタルゲインが実現すると税金がかかるというので、むしろ税金を払うくらいなら売らないということで土地の供給を阻害するというふうに言われておりまして、その意味からは土地譲渡所得税は緩和をせよという声が強いわけでありますが、私は必ずしもその方に賛成はいたしません。むしろ固定資産税を上げていくということによって、結局大して利用もしていないけれども値上がり益を期待してずっと売らないでいくということを抑えることができますので、固定資産税をもう少し時価に長期的に近づけていけば、譲渡所得税があるためにかえって土地の売却が出てこないという問題は解決できるのではないかというふうに思っております。  この譲渡所得税に関連しまして、私自身は新しい保有税というのを考えているのですが、それは固定資産税をこれから時価評価にいたしますと、固定資産税というのは次のような二つの部分に分けて考えることができます。  つまり、まず自分が土地を買ったときの取得価額にかかる税金と、それから時価で評価しますと、時価と取得価額の、つまり含み益に関する税金とに、二つの部分に固定資産税を分けて考えることができるようになります。土地投機を抑制するためには、一番望ましいのは、実は今言った土地を時価評価をしたときの含み益の部分の税率を高めて、取得価額にかかわる税金のところは低めるというような、そういう保有税が実は一番望ましいのでありますが、そこまではいかない場合にも、これから時価評価を、土地の固定資産税をかける場合に時価評価をしていけば、固定資産税というのは含み益に対する課税という役割を果たせるようになるということでありまして、それによって土地の投機といったもの、あるいは値上がり益期待で持つということをかなり抑制できるようになるわけであります。  この含み益に課税する部分に関しては、個人の場合ですと相続や売却時まで延納を認めることをしてもいいと思いますが、法人の場合は相続ということはありませんので、何年か置きに再評価をしていって税金をかけるということになるわけであります。  もう一つ、最後の相続税の問題がありますが、私のような考え方からすると、基本的には、財産として残すときに土地と金融資産では土地の方が有利だというような差別化をすることは一番望ましくないことであります。つまり、現在ですと土地の場合は割合相続税の場合に評価額が比較的低くて、金融資産の場合は完全な時価評価をされるというようなことでありますと、むしろ金融資産よりも土地で子供たちに残した方がいいということになって、余りにも土地の所有というものを促進し過ぎる嫌いがありますので、むしろそれは両方の税金に関しては差別をしないという、これが重要な原則ではないかというふうに思います。  以上述べましたように、土地の政策というのは、私が申し上げているのは、所有よりも税金としては利用を促進するような税金にすればいいということでありますが、それを現在ほかの政策がないままにやりますと、ただ乱開発が起こってくる、あるいはミニ開発が促進される、あるいは農地の宅地並み課税にしても、農地の宅地並み課税をすることを私は当然だと思いますが、それでもそれを計画的な開発の手段、現在日本にも例えば地区計画などという手段があるわけですが、そういったものを利用しないで、ただただ固定資産税を上げるということだけをやれば、やはりミニ開発や乱開発を促進することによって、社会資本も整備されぬまま日本の都市環境が非常に悪化するというような問題が出てきてしまうのではないかというふうに思いますので、今後は計画的な開発の方は税制上有利に、あるいは補助金を与えて、余り小さなミニ開発のような場合にはある程度開発負担金などを徴収するということによって少し抑制するというようなことも必要でありますし、もう一つ、住民参加型でもう少し町づくりをしていく、その中で初めて公共性というものが出てきて、それによって私権が制限されるというような方向が望ましいというふうに思っております。  以上です。(拍手)
  87. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、並木公述人にお願いいたします。
  88. 並木正吉

    ○並木公述人 並木でございます。  まず、六十三年度の予算案についてでございますが、その農林水産省関係予算につきましては、全体の流れといたしまして望ましい方向に向いていると思いますので、賛成いたします。  それから、このことと関連いたしまして、つまり予算と関連いたしまして最初に二点ほど申し上げまして、その後、当面の農業問題についての私の考えをお話ししてみたいと思います。     〔奥田(敬)委員長代理退席、宮下委員    長代理着席〕  第一点は、最近六カ年くらいの動きでございますが、農林予算の中の価格支持、所得補償関係予算の割合が二五%から一五%というふうに減っておりまして、逆に生産性を上げるための経費は、これは土地基盤の整備等が主でありますけれども、四四%から五五%に上がっているということがございます。この点はアメリカとかヨーロッパの動きと比べてみますと非常に顕著な動きのように思います。最近六カ年くらいでございますけれども、アメリカの場合ですと、価格支持、所得補償のための予算が約十倍にふえておりますし、ECでも約二倍にふえております。日本の場合にはこの間にむしろ四割減っているということがあるわけでございます。  その点で一つ私も数字を見てびっくりしたことがありますので御参考までに申し上げてみたいと思いますが、アメリカの価格支持、所得補償のための予算でございますが、一九八六年におきまして二百五十八億ドルという水準にございます。この二百五十八億ドルと申しますのは、アメリカの農家戸数、正確には農場数と言った方がいいのでありますけれども、一農場当たりにいたしますと約一万二千ドルということになります。これは日本円に直しまして百五十万円ということになるわけでございます。それに対して日本の場合は、農家一戸当たりの価格支持による所得の補償というのは約十二万円でございまして、その間非常に大きな差がございます。それからアメリカの場合は、今申しましたように平均して一農場当たり百五十万ということを申し上げましたが、米作農家になりますと、これが一千百万円くらいに達します。非常に大きいわけです。  そして、もう一つ驚くべきことは、アメリカの農家あるいは農場の農場所得、日本的に言えば農業所得ということになるわけでございますが、これが一戸当たりで現在大体一万ドルをやや上回っている程度ということになりますので、アメリカの農家について申しますと、もし予算による価格支持がなければ農業所得はゼロになる、つまりアメリカの農業所得は一〇〇%価格支持によって賄われているという驚くような事実がございます。これは余りにも重要な問題でありますので、最近はアメリカにおいてもこの価格支持の水準を下げようという努力がやられておるわけでございますが、そういうことで財政負担による農業の保護という点で申しますと、日本は一部に伝えられているような過保護という状態はないというふうに御判断いただいた方がいいのではなかろうかと思います。  しかし、内外の農産物価格の開きは、これは生産者価格で見まして非常に大きなものがあることもまた事実でございます。しかし、この価格差の半分は最近二カ年間における円高によってもたらされたものというふうに考えることができますし、それから他の価格差は、これは残念なことですけれども、生産性の格差を反映した価格水準の相違である、こういうふうに考えてよろしいかと思います。  そういう意味で、日本の生産者価格をできるだけ引き下げていくということは大事な政策目標になるわけでございますけれども、そのことによって消費者価格にどのような影響があるかという点についてやはり考慮しておかなければならない一点がございます。  それは、小売価格を一〇〇といたしまして、生産者価格は平均しまして約三割という状態だということでございます。したがって、生産者価格を仮に半分に下げたといたします。そのときに流通、加工、外食等の価格がもとのままであるといたしますと、末端の消費者価格は平均して一五%下がるにすぎません。そういうことになります。そういう意味で、消費者価格を下げるということを考えますと、生産者価格だけではありませんで、流通、加工、外食等、よく食料システム、フードシステムということを言いますが、その食料システム全体についての効率化を図らなければいけないということがあろうかと思います。  以上で予算に直接関係することについての私の意見を終わりまして、当面する農業問題、重要な農業問題について意見を述べてみたいと思います。  一つは、十二品目に始まります日本の農産物の自由化問題でございます。  アメリカが提訴いたしました十二品目の中で、二つがシロ、もっと正確に言えばやや灰色というところがあるわけでございますが、残りの十品目についてはクロという判定が出たことはもう御案内のとおりでございますが、それに対して日本政府の方で二品目については承知できないという通知をしたことも御案内のとおりでございます。  私は、その理由を読んでみまして、ガットの条文について精通しておるわけではありませんけれども、それなりに根拠のある理由を述べていると思います。しかし大事なことは、そのように根拠のある意見を述べておりましても、ガット体制のもとで一番得をしたといいますか、一番経済成長を遂げてきたのが日本であって、その日本がガットの条文の中で農産物について多少は我慢をしてもいいのではないか、そういうガット加盟国、九十数カ国あるわけですけれども、そのほとんどの、日本を除くすべての国がそういう印象を、感じを持っている、その事実が私はこの問題を考えるときに大事なことだというふうに思っております。  したがって、牛肉でございますとかあるいは米についても自由化要求あるいは部分的な輸入、日本からいえば輸入でありますが、それを要求する声はこれから先も強くなる一方でありまして、それに対して日本がどこまで現在の輸入制限措置を貫き通すことができるかどうか、これは、日本の置かれました国際的な環境を考えますと、非常にシビアに考えざるを得ないというふうに思います。恐らくこれは政府が懸命な努力を傾けてもなかなかその目標を達成することが難しいと言っていい国際的な環境にあるということが私は大事なことではないかと思います。  そこで、どのような推移をたどるかわかりませんけれども、牛肉について最近の顕著な動きを一つ申し上げてみますと、総務庁の小売物価統計というのがございますが、それによりまして国産牛肉、これはその主力は乳牛の肉とお考えいただいていいと思いますが、その牛肉の場所は肩でございます。肩肉でございますが、それの価格が、一番新しい昭和六十二年の十二月で、百グラム三百五十円台ということになっております。これは、昭和五十年現在ではたしか二百八十五円でございました。つまり、それに比べて上がっているわけでございます。ところが、輸入牛肉、これは食肉指定店で調べました輸入牛肉の値段でございますが、これが昭和五十年には二百四十五円ということで、国産牛肉に対して約一割くらいの開きしかありませんで、差とすれば百グラム当たり四十円の差ということであったのですけれども、一番新しい統計によりますと、輸入牛肉は今や百三十円を割っております。そういうことで非常に大きな開きがあるわけでございます。これは、輸入牛肉が国産牛肉の価格を下げる効果といいますか影響力が四年前の日米農産物交渉が行われたときに比べてみますと予想外に小さかったということを私は示しておるように思います。  昨年の下半期には輸入牛肉の割り当てを三万七千トンふやしましたが、その効果は多少出てはおりますけれども、しかし、今申しましたような大きな開きがあることも事実でございます。これは私は、主として国産牛肉が食べられる場所と輸入牛肉が消費される場所が違っているということが大きく響いていると思います。家庭の主婦が小売店で買う場合の牛肉は、主として国産牛でございます。小売店で買う牛肉の中で輸入牛肉の比率というのは、これはいろいろな推計でおおよその見当がつくわけでありますけれども、約一割五分にすぎません。輸入牛肉は主として加工仕向けとか、一番多いのは外食の方へ向きます。そういうことで輸入牛肉と国産牛肉が、ある意味ではすみ分け——すみ分けのすみは、一茶が「これがまあ終の栖か雪五尺」だったですか言いましたが、あのすみでございます。そのすみ分け的な状況があるいはあるのではないか。このような状況があるいは見られるといたしますと、今後の牛肉交渉のいかんによるのでございますけれども、私は、この状況を頭に置いた対策を考えて、この状況を利用する場合には、消費者に対しても生産者に対しても納得できるような対策がどうしたらとれるだろうかというその検討をできるだけ早く進めていただく必要がある、このように思っております。  それから二番目は、食管制度ないしは米をめぐる問題でございます。  食糧管理制度が当面しております一番大きな問題は、もう二十年近く続いております米の生産過剰でございます。これに対しては転作のための奨励金を支出するという形を中心にして需給均衡を図るようにやってまいりましたが、転作のための奨励金、現在の予算上の言葉では水田農業確立対策助成金ということになっておりますが、この経費が昭和五十五、六年ころには十アール当たり七万円くらい出ておりましたが、昭和六十二年になりますと二万七千円というふうにかつての四割に落ちております。しかも、転作をしなければならない水田面積はふえて、しかもその場所が転作の難しいところにふえておるわけでありますから、今後は米の需給均衡を図るためにはどうしても価格政策のサポートが必要だと思います。そういう意味では価格政策を需給均衡的な方向に運営しでいただくということが私は何よりも大事なことではないかと思っております。  ただ、そのことによって構造政策といいますか、これから先、日本の米作農業を担ってもらわなければならない農家が価格の引き下げにたえられない、そして第二種兼業農家がむしろ抵抗力が強くて残るというような事態が起こった、ないし起こるとすれば、これは避けなければならないことでございますから、構造政策に対しては、私はどうしても今の価格政策とは別個に構造政策を助長するための奨励措置をとるべきではないかというふうに思っております。  今の価格補償ということで先ほど一つ言い忘れたかと思いますが、十二品目を中心にいたしまして非常に急激な影響が農家に来るわけでございますから、その影響を緩和するための最低限の財政的な措置は、これは何でも一律ということではありませんで、できるだけ効率的な、効果が発揮できるような形でお考えいただくことは、私はやはり必要なことかと思っております。  話がちょっと前後いたしましたが、最後に一点、日本の農業の当面する、ある意味では基本的な問題だと私が思っていることについて申し上げてみたいと思います。それは、戦後の食生活の変化、つまり消費の変化と生産の方向といいますか、消費の変化の方向と生産の変化の方向とがすれ違っておる、そこには大きなミスマッチがあるという点でございます。  御案内のように、食糧の消費の方向は、加工食品がふえる、外食がふえるという形で変化をしてまいりました。しかし、農産物を生産する農家の立場で考えますと、加工食品の原材料でありますとかあるいは外食のための素材を供給するよりは、生で消費されるものを供給する方が価格がはるかに高い、採算がよかったということで、生産者は消費の方向とは逆の、むしろ消費の方向とは違った方向を選びました。そのために、食品メーカー、食品産業は自分たちの必要とする原料を、国内から自分たちの必要とする量を、必要とするといいますか望ましい価格で調達することができませんで、それを外国から調達するという大きな方向をたどったわけでございます。つまり、消費と生産の方向のミスマッチが農産物の輸入を呼び込むという構造になっているという点が私は大事だと思います。  そして、そのことによって農産物の輸入がふえ、そのことが日本の生食を中心とした農業をも圧迫してきた、そういういわば悪循環が行われていたように私は思います。これを何とかいたしませんと、日本の食品産業は日本の農業との結びつきがない形で発展せざるを得ないということになりますし、またその原料農産物について、これはいろいろな日本の農業を守るための保護措置ないしは農業を発展させるための奨励措置がとられておりまして、その関係で食品産業の原料を高く購入せざるを得ないということになりますと、原料の海外からの調達あるいは企業そのものの海外立地ということが進んでまいりまして、日本のいわば食品産業の空洞化ということが進みかねないということが心配されるわけでございます。これは基本的には消費の方向と生産の方向とのミスマッチという構造がございますので、これに対してどのように対処していくかということは、私は、余りにも問題が大き過ぎてそして困難であるために真剣に討議はされておりませんけれども、大事な問題だというふうに思っております。  そのことを申し上げて私の意見を終わりたいと思います。(拍手)
  89. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、丸尾公述人にお願いいたします。
  90. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 予算についての印象をちょっとだけ申しまして、その後税制改革の問題と社会保障問題についてお話しさせていただきたいと思います。  まず、予算の規模につきましては、現在個人消費と住宅の動きというものが若干流動的でもありますし、諸般の情勢から見て、規模としてはこの辺のところで決めておいたのは妥当ではないかと思っています。  ただ、個人消費に関しまして、政府は六十二年度の三・六%に対して三・八%を期待しておりますけれども、資産効果がなくなるという点、それから消費者物価上昇率が少し、〇・五%以上高くなるだろうという点、そういうことを考えますと、春闘賃上げ率が五%を起さないような事態でもありますと、やはり相当個人消費に関して場合によってはてこ入れできるという体制をとっておくことが必要ではないかと思います。  それから、住宅に関しましては、六十二年度のような二〇%近い増加は政府ももちろん考えていないわけでして、これをある程度継続させるために後で言いますようなてこ入れが行えるような政策を準備しておくことが必要ではないかと思います。  次に、税制の問題ですけれども、午前中に山田公述人から話があったと思いますけれども、私も、所得税減税とセットにするだけで新型間接税を導入していくということに関しては非常に疑問を持っております。やはり資産問題についての不公正に対して何らかの対処をする必要がある。土地と株だけで資産価値が一年ないし一年半でGNP相当ぐらいふえるというようなとき、そして勤労者の四千五百万のサラリーマンの所得は年間で十兆もふえないときそういう資産が非常にふえるというようなことは、やはり常識的な公正観からも何らかの対応がなければ賛成できないというのは当然ではないかと思います。  一つは、そこで資産に対して、広義の資産ですけれども、株に対するキャピタルゲイン税の問題ですけれども、これに関しましては、一種の背番号制と俗に言われる社会番号といいますか納税番号票が必要だということから批判もあるようですけれども、考えてみますれば、プライバシーという観点から見れば、日本は戸籍制度という極めて籍がはっきりしている登録制がありますし、社会保険のカードもありますし、そういうことと基本的には変わらない点もあるわけでして、プライバシーの点はしっかりとした保護法とセットにすれば基本的な反対にはならないと思います。  それから、株が下落するというような話もありますけれども、これに関しましては、後で言います勤労者資産形成等とセットにしていくということも考えられるわけです。貯蓄に対する影響等に関しましては、これは貯蓄が非常に不足な国の場合には問題になりますけれども、我が国の場合は若干事情が違うと思います。ですから、今言われているような問題でキャピタルゲイン税と納税番号制に対して根本的な批判ということにはならないのではないかと思います。ほかの国に逃げていくという話もありますけれども、ほかの国が、先進国でやっているわけですから逃げていっても、向こうの方がむしろ恐らく日本が導入するキャピタルゲイン税より高いわけですから、そういうことも理由にはならないのではないかと思います。  それから、私は資産に関して二十年来提唱していることがあるのですけれども、これは資産を公正にするというのは、資産にかかわる税金を非常に強くする、重くするということが一つ。それからもう一つは、勤労者もだれもが多く資産を持てるようにするということであるわけです。  私は、イギリスのサッチャーの政権には批判的ですけれども、しかしサッチャーさんは、むちの政策を、労働組合に対して非常に厳しいことをやったりして福祉も抑えていますけれども、他方、勤労者の株式所有については三つの制度を導入してそれを助成して、イギリスでは勤労者の株式所有がふえ、国民の九百万、対世帯比では約五〇%が株を持つようになっています。プロレタリア、二つの階級の国というような国としては非常に顕著な発達であります。アメリカでも、それから非常にラジカルな形ですけれどもスウェーデンのような国でも資産の所有ということに関して非常に関心が出てきておりますけれども、日本で全くその問題について関心が出てこないというのは非常に残念でありますので、この機会に何らかの形で、マル優も廃止になりますし、勤労者の資産形成はそういう意味で非常に限定されたものだけが残りますけれども、この機会に株を勤労者も持てる、それに税制的な優遇を、大抵の先進国で今やっていますね、そういうことをセットにしていくということが考えられると思います。ただ、株式を勤労者に持たせていくということになると株が暴騰するからという批判があるわけですね。キャピタルゲイン税を出すと株が暴落するという議論があるわけです。両方うまくセットにすれば相殺されるのじゃないかということも考えられるわけです。  それから土地に関しましては、やはり日本の地価が高いことに関しましては人口密度が高いからとかいろいろなことがありますけれども、これは口実にはならないと思います。シンガポールのように日本の人口密度の十四倍近い国でも、住宅満足度は比較した国の中では非常に高いという結果が出ています。あるいは韓国、台湾などを見ましても、日本の土地政策はそういう国以下、発展途上国以下の土地政策しかとられていないと私は考えています。やはり基本的なことをやっていないということですね。要するに土地を持っているだけで棚ぼた式にもうかる、そういうことが金輪際ないような制度にするということが基本であるわけです。  厳しい国では、スウエーデンのような国では、地価が、地下鉄ができるとか何か社会資本投資が行われて上がる、そういう場合の利益を阻止するために、例えば十年前の地価で購入します。若干その間の物価上昇を考慮に入れますけれども、要するに、計画が決まってから上がった地価でそこの人がもうかるということはない。経済学的に見ましても、そういう利益は内部化される、あるいはその社会資本投資の結果であれば社会に還元されるというのが原則でありまして、この原則を守りさえすれば問題はないわけです。  それに、具体的に言えば、例えば一定率以上のキャピタルゲインというようなものに関しましては、もう禁止的な重税を課するということがあっていいと思うのです。お金を貸すに関しましては、例えば一年間二〇%以上の高利貸しは禁止されているわけです。土地に関しては何倍になっても禁止されていないというのは、考えてみればおかしな話です。やはり前に買ったときから一年当たり何%、あるいは公示価格に対して何%、それを超す部分に関しては禁止的な重税を課するというようなことがあっていいんじゃないかと思います。  あるいは空閑地に関しましては、一定年数たてば、時間累進的に税率を高くする、これは韓国でやっておりますけれども、そういうことがあっていい。囲った空閑地がずっと残って地上がりを待っている、値上がりを待っているというようなことはあり得なくなってくる、そういうことが必要ではないかと思います。  それから福祉目的税をセットにすることに関しましては、福祉目的税が会計上はっきり分離されて、その目的で入った収入が流用されない保証がある制度的な措置がとられる場合には、私はセットにすることには賛成であります。  以上が私の税についての感想です。  次に、社会保障に関しまして見ますと、やはり高齢化ということが一つの大義名分となり、そういうことが新型間接税等に直接結びついていくという傾向があるわけですけれども、どうもその間の数字が非常に不明確だ。国民所得に対して社会保障費が現在の一四、五%から将来どれくらいになるかという一応の見通しは出ておりますけれども、それでは例えば政府予算うち社会保障費に回す比重はどうなるのか。例えば今の場合は、ことしの予算で見ますと一八・三%になることになっていますね。要するに政府の一般会計の中での社会保障費ですね。十年前の一九七八年には一九・七七%であった、これは傾向的に下がっていくというふうに計画しているのかどうかとか。あるいは社会保障費、費用全体のうち政府の負担費は今二三%ですけれども、やはり十年前には二八・六%だった、それが二三%に下がってきた。こういうふうにだんだん政府の比重を下げていく計画になっているのか、あるいは新型間接税を入れれば再びこの政府の負担費を上げていくという計画になっているのか。そういったようなこと等が非常に不明確。社会保障の将来予測に関しましても、給付者対保険料や税金を払う人の比率等々について極めてあいまいなものが数字の上に出て、一たん出た数字がひとり歩きしているというようなことがあるわけです。  もう少し詰めた数字を出して、それと税金、社会保険料、そういう配分比を明確にして、その上で税金がこれくらい要る、そのためには福祉目的税が必要だ、そういうところが明確にきちっとなっていれば、私もそういう形での増税というのは少なくとも中長期的には必要であると考えています。その辺がどうも不十分ではないかという印象を持っています。  それから福祉に関しまして、基本的に社会保障というのはナショナルミニマムだけでいいのか、あるいはそうじゃないのかということが問題になってきますけれども、年金などに関しましては、公的なところ、基礎的なところはやはり公費をもう少しつぎ込んで中心的にやっていくということがいいのだと思いますし、二階の部分に関しましては、制度的にはそこを年金のように保障し、実質的には社会保険料等でやっていくということになると思うのです。  しかしながら、医療に関しましてもあらゆることに関しましても、生活の質がだんだんと高次化するにつれて社会保障、福祉生活についても質が問題となってきている。これを財政で全部賄っていくというのは非常に困難である。そうでなくても困難であるわけですね。ですからそういうことを考えますと、やはり民間のいわゆるシルバー産業等に頼らざるを得ないわけですけれども、そういう場合にどういう形でシルバー産業を導入し、それにどういうふうに公的に助成していくかということですね。  例えば、今後ケアつき集合住宅が非常に需要が見込まれるのですけれども、今のところ日本民間にほとんど任している。東京と横浜、神奈川県でほんのちょっと公的なものもでき始めたわけですけれども、こういうものを公的に若干のヨーロッパの国のようにやれと一言いましても非常に無理であるということですから、民間でやるという場合にはどういうふうにしてそれを助成していくか。ことし、ケアつき集合住宅についてたしか三十二億かなにか利子補給がつきましたけれども、もっとそういうことも、どれだけケアを必要とする老人がいるかということ、これは大体出ているわけですから、それに応じて特養、中間施設あるいはケアつき集合住宅がどれくらい必要になるかという、そういうことをしっかり出して、そのうち公的にどれくらいやるか、それでそのために税金がどれくらいかかるか、そういうようなことをそろそろきちっと出していい段階ではないかと思うのです。そういうことを納得していけば、国民ももっともっと福祉に理解を持ち、お金を出してもいいということになりますし、新型間接税が福祉目的税としてそういうことに使われるなら結構ということにもなっていくのではないかと思います。     〔宮下委員長代理退席、奥田(敬)委員    長代理着席〕  それから、年金の積立金が国民経済のマクロバランスにも非常に大きな影響を与える。ここ数年間、厚年基金を加えますと七兆から八兆の積立金がふえてきた。これが国民的なマクロ経済バランスに大変な影響を与えてきたわけですね。今後もまだしばらく続きますけれども、これをいかに動かすかということで、私の考えは、今一部還元融資が行われていますけれども、内部補助をやっていいんじゃないかという考えですね。一方で有利運用をする、五兆円なら五兆円有利運用をする。そして、そうでないものよりも二%ぐらい運用利益を多くとる。他方で、五兆円ぐらいを住宅とか老人ケアつき住宅とか中間施設とかに融資する、二%ぐらい利子補給をつける。そうすれば一般会計からお金をほとんど持ち出さなくてやれるわけですね。そういうような工夫をしていくことによって、一方で一般会計からの持ち出しを少なくして、他方、日本の貯蓄過剰の問題を若干なりとも緩和するという発想があっていいのではないかと思います。  利子補給に関しましてはかなり思い切った発想があっていい。特に住環境に関しましては、まだ日本政策は土地を含めて発展途上国だ。確かに、社会保障で老人福祉政策、障害者福祉以外を除けば制度的、構造的には先進国並みになりましたけれども、老人福祉サービス等の問題、それから土地住宅政策に関しましてはまだ発展途上国だ。これは住生活の福祉ということから重要なだけでなくて、内需拡大という観点からも、あるいは日本の物価、総合しての物価、ストックの物価も含めた実質購買力を高く維持して一人当たりGNPに見合う生活水準にするためにも、土地住宅に関してもっと思い切った政策をとることが必要ではないかと思うわけです。  思い切ったというのがちょっと数字的に言わないとぴんとこないかもしれませんけれども、これはいい例ではないけれども、例えばという例で私がたまたま知っているスウェーデンの例で見ますと、数字的に見ますと日本の場合、一般会計から住宅費として使っているお金は〇・二二六%ですね。それに対応する数字がスウェーデンの場合は、公営住宅費は入っていませんけれども、利子補給と住宅手当中心ですけれども大体一般会計から四・一%、ここ数年それくらい住宅費に使っている。それから利子補給について見ますと、一般会計から少なくとも日本で直接出ているのは、隠れたのはいろいろありますけれども出ているのは〇・〇九五%、〇・一%弱、スウェーデンの場合は、一般会計から利子補給として明示されている額が一・四六%ですね。かなり量的に違いがある。これは基本的に住宅というものは自力でやっていいのかどうか、やるべきかどうかということと関係がある。  日本の場合は、自力で住宅を建てさせて持ち家にする、そのためには一生懸命蓄積しなさい、その蓄積したお金を銀行等へ持っていってそれで産業が発展してきた。それはそれで一つのいいやり方だったと思うのです。しかし、今産業は必ずしもそういうお金を必要としていない。少しやり方が変わってもいいのではないかと思います。  ただ、税金を上げて住宅に回すといいましてもなかなか納得していけませんから、今挙げたスウェーデンと日本との場合は極端な場合をいう例えでして、私がむしろ言いたいのは、利子補給というやり方はまだまだ有効に使える余地があるということです。比較的数千億円のお金で巨額な内需を動かすことができる。そういうことを考えますと、個人消費を動かす減税の問題とそれから住宅投資を動かす利子補給に関してはかなり弾力的な措置を準備しておいて、景気が思わしくない場合、この二つの動きが思わしくない場合には弾力的に相当の政策的てこ入れができるような予算措置をとっておくことが必要ではないかと思います。  これで終わります。(拍手)
  91. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。     ─────────────
  92. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若林正俊君。
  93. 若林正俊

    若林委員 岩田先生、並木先生、丸尾先生、お忙しいところどうもありがとうございました。それぞれ専門的な立場で大変に含蓄のある有益なお話を伺ったところでございます。それぞれの先生方に若干の意見を交えながら御質問をしたいと思いますが、私の持ち時間はお答えも含めて十五分ということでございますので、簡潔にお願いをしたいと思います。  まず岩田先生でございます。先生が土地政策の目標を、土地の有効利用とその分配の平等化といいますか公平化というところに基本を据えまして、そして総合的な政策手段を講じなければならない、また住宅政策に関して言うならば、土地所有というよりも、住宅サービスにおきますナショナルミニマムの確保において住宅水準の向上と住宅供給の安定を図っていく、こういう視点で税制を初めとしてお話をされました。  また先生の所論につきましては、今までいろいろなところで先生御自身が発表しておられますお考えも読ませていただいており、基本的な中長期的な方向として私も望ましいことではないかと思いますが、お伺いの一点は、それらの政策を展開する場合の前提として、都市計画あるいは土地利用の公的規制を説いておられます。私もそのことが大事だと思いますが、その際先生は、住民参加による土地の公的利用規制ということをおっしゃっておられます。西ドイツの例などをお述べになっておられますが、もう少し我が国の場合、それを現実化する場合にどのような形の住民参加方式を考えておられるのかというのを簡潔に御説明をいただきたいのが一点。  二点目は、土地保有税におきます提案もあるわけですが、固定資産税について言いますと、資産保有の保有負担を高めていく方向として、固定資産税をもっと負担を上げていいじゃないかということをおっしゃっておられます。その場合、評価額を上げる方法と税率をいじる方法とあるのでしょうけれども、それはともかくとして、全体として今かなりの国民が固定資産、土地所有者になっているという現状等々を考えながら、当面中期的に目標とする固定資産税、税負担の限界といいますか、どの程度まで先生は描いておられるのかという点をお聞きしたいと思います。  並木先生には、実は私、農林省時代に農業総合研究所の研修員を長期にさせていただいて教えを受けたいわば私の恩師でありまして、久方ぶりに農政に対します先生のお話を伺ったところであります。  私もかねて気にしておりますし、心配しておりますのは、地方におきまして、最近、商工業者あるいはサラリーマンも含めまして大変に農業過保護論が出てまいります。そして、地域社会の中における農業者と非農業者の間にお互い十分な理解をしないままの対立感情が生まれているということを大変心配をいたしております。両方とも、農業者もあるいは商工業者、サラリーマンを初めとします地方の居住者は地域社会を支えているお互いに大切な担い手であります。この担い手が農業政策をめぐりまして、過保護である、いや、まだまだ我々は十分な見通しを持った生活ができない、苦労が報いられないという意味での対立が深まっていることを憂慮しているわけであります。  そういう意味で、先生がアメリカの例をおとりになり、特にアメリカの米作農場の例をおとりになりながら、アメリカが、決してそれがいいことであると思いませんが、大変大きな国家助成をして農業を支えている、こういうお話をされました。ECにおきます農業保護費の負担の増に、EC内部がことしも大変に荒れております。意見も対立しておりまして、どうして農業保護費を減らしていくかということで大変苦労しているわけでありますけれども、欧米諸国と比して日本農業の農業保護の程度というのが、一般に非農業の経済界あるいは労働界がおっしゃられているような意味合いで、過保護の中で非常に甘やかされてきて今のような体質になっている、こういうふうに言われていることについて、もう一度確認的に先生の見解を伺いたいと思います。  もう一つお伺いしたいのですが、それは、日本農業が構造政策を重点に置きましてその生産性向上を図るという視点で政策展開をしてまいっておりまして、このことは、さらに国際競争力をつけていくという意味からも、あるいは消費者の納得を得るという意味からも構造政策の推進は必要だと思うのですけれども、しかし、その陰で私が大変心配しておりますのは、傾斜地に代表されます大変ハンディキャップのある中山間地帯あるいは離島などにおきます農業のあり方であります。  これらの農業は、食糧供給産業としての立場と同時に、むしろその立場よりもその地域におきます国土保全でありますとか、地域コミュニティーをそのことによって支えている、そういう役割というのが大変に大きいわけでありまして、政府、農林省も農業白書などで十年来、農業、農村の持っている役割としてそのような多面的な役割を強調しておられますが、一方で生産性を高めていくための政策に重点志向していった場合に、どうしても国内においてすら競争的に成り立ち得ないこれら傾斜地等のハンディキャップ地域の農業につきまして、先生はどのような政策方向、手段を講ずべきでありますか、この点を伺っておきたいと思います。  それから丸尾先生に対してでございます。丸尾先生の社会福祉を中心にいたします所論につきましては、やはりかねて種々の論文などを読ませていただき、その卓見に敬意を表するところでございます。  税制改正に当たりまして、先生は、区分を明確にしながら、かつまた将来の社会保障の負担の数量的分析というものを明らかにしていくのであるならば、特別会計方式を含めまして間接税の導入ということも、そのことはやむを得ないんじゃないかという御見解と理解をいたしております。  私は、実は特別会計を設け、目的税にすることがいいのかどうかということについてはやや疑問を持つものでありますが、その点はさておくことといたしまして、今国民の中で一番の関心事といいますか不安なことは、それぞれ長寿高齢社会を迎えておりまして、みずからの健康の管理と老後におきます生活の安定、さらにわかりやすく言えば、寝たきり老人にならないで安定した幸せな老後をどうやって送っていくか、またそのことのために国の財政負担、国民の負担というのはどうなっていくかということと関連して、税制について大変強い関心を今示していると思います。  そういうことからしまして、いろいろと前提諸条件がおありだと思うのですけれども、新しい社会保障の負担を求めるに当たって、内容はいろいろございましょうが、今の直間比率の是正と間接税への傾斜といいますか、そちらの方向をやはり方向としては選ばなければいけないというふうにお考えであるかどうかということと、あわせまして、今申し上げました、先生も御指摘になりましたいろいろな問題がありますけれども、このことは人によっては、二十一世紀の問題であるからもう少し時間をかけていいじゃないかという御意見がございます。種々の前提を置きながらでありますが、私は、なるべく早く、一年でも早く新税制体系への切りかえをしていかなければならない、こう考えているものであります。できれば六十四年度実行に着手できるような形での税制の検討を急ぐべきだと思っておりますが、この点についての先生の御見解をお伺いいたします。  短い時間でございまして、御答弁は委員長において適宜お願いをいたします。御質問は以上で終わります。
  94. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 公述人各位にお願いします。  質問者の持ち時間は限られておりますので、できるだけ答弁は簡単にお願いいたします。
  95. 岩田規久男

    ○岩田公述人 二点ありますが、まず住民参加型ということですが、現在の日本の都市計画では、例えば公聴会などは必要に応じてならやれるということでありますが、そういうものは必ずやる。一番そういう場合に問題なのは、日本では情報がきちんと公開されていないという点であります。  例えば公聴会でどういうことが話されたのか。一般の市民というのは大体仕事を持っていますから出席できないわけでありますので、そういうところでどういうことが話されているか、そういうふうな公開の場で実際どういうことが話されたかというのが、例えばコミュニティーあるいは市の市報などで詳細にわかる。例えばここで私がちょうど公述人で言っているようなことがきちんと新聞に出るということでありますが、そういうふうな公開制のもとでやっていけば、密室的なところですと非常に非合理的なことを主張しても通るのでありますが、公開になってくるにつれて非常に非合理的な、ただただ引き延ばしをするとか、そういった問題というもので頑張るということはだんだんむしろできなくなって、かえって民主的になっていってより進むのではないかというふうにその点は思っております。  それからもう一つ、固定資産税の限界ということでありますが、実は固定資産税というのは税制としては公共サービスに対する対価でありますので、したがって、公共サービスに対する実は対価分が本来の限界になるかと思うのです。ただ、地価のうちの公共サービスの部分はどこのどれにだけ当たるかということはなかなか難しいわけでありますが、目安としては現在の例えば地代の大体一〇%からせいぜい二〇%ぐらいかと思います。ところが、実は地価というものは将来の地代がどれくらいかという予想を含んでついてまいりますので、実際は公共サービスが少しもないのにもかかわらず地価が非常に高いという状況が生じてしまうわけであります。ですから、本来はその分に関しては先ほど申しました含み益の税金の方にして、現在は例えば公共サービスがないのに固定資産税が高まってくるというようなことを防ぐのには、含み益の税率と分けまして、含み益の部分に関しては売却や相続した場合に個人の場合には払うというような制度にしておけば、実はそういう大体現在の公共サービスの対価に見合った税金を取れるようになる、そういう点がございます。  以上です。
  96. 並木正吉

    ○並木公述人 簡単にお答えいたします。  財政支出による農業の保護の程度が日本が高いということはないということは、申し上げたとおりでございます。問題は農産物の内外価格差が大きな問題で、その半分は急激な円高によるものであることも申し上げたとおりでございます。しかし、その根底に生産性が低いという問題がありますので、その点については、私はもう少し市場原理を慎重ですけれども入れて、体質を強化するということは必要だと思っております。  それから二番目の問題につきましては、一般論といたしましては、農業がよくならなければ地域社会の活性化はないというふうに私は考えておりますが、しかし、山村ということになりますと農業から入るということは難しいと思いますので、都市住民の山村に対するさまざまなニーズが出てきておりますから、それに十分に取り組んでその面から山村を活性化する、それを通じて農業もまた活性化していくという考え方が大事だと思っております。  以上でございます。
  97. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 私が幾つか条件を申しましたけれども、その条件がその期間中に間に合うようにある程度納得的に準備できるならば、それは結構なことです。ただ、かなり難しいのじゃないかと思います。
  98. 若林正俊

    若林委員 ありがとうございました。
  99. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、菅直人君。
  100. 菅直人

    ○菅委員 私は、後の村山先生の方からの質問とあわせてということですので、特に岩田公述人の方に土地政策を中心にして何点がお尋ねをしたいと思います。  先ほどのお話あるいは岩田先生が書かれているものを読ませていただきまして、大筋の先生の主張について私も同感するところが多いわけですけれども、この一年の間で非常な土地の値上がりのために、国会でもいろいろな場を通して議論がされております。しかし、率直なところ、現在まで打たれている手というのは、いわゆる売買の規制という面ではあっても、まさに先生が言われているように、抜本的な土地政策にまで踏み込んでまだ十分にいけていないのが実態ではないかというふうに思っております。  特に、今国会政府が出している案の中に土地税制に関する部分が幾つか含まれておりますけれども、内容は御存しかと思いますが、一部譲渡益課税の緩和、保有税、固定資産税については、これは法制ではありませんが、評価を余り引き上げないで据え置く等の措置がとられているわけですけれども、こういった政府のこの国会に出している土地政策について、あるいは竹下内閣の中での土地対策要綱ですか、そういうものについてどういうふうに評価をされているか、まずその点からお尋ねをしたいと思います。
  101. 岩田規久男

    ○岩田公述人 固定資産税の緩和措置に関しては既に申し上げたので、中長期的にはむしろ引き上げる方向の方がいいのであろうかということであります。  それから、一部譲渡税の緩和措置をとっていて、優良宅地の供給に関しては譲渡税を安くするということでありますが、それによって確かに優良な宅地の供給が若干ふえるかとは思いますが、私自身は、土地の有効利用を図りつつ分配の平等という立場からいいますと、何も土地でもって非常に膨大なキャピタルゲインを現在のように得るようなシステムをつくらなければ土地が有効に利用できないわけではないので、私は譲渡所得税はそれほど緩和せず、むしろさっき言った固定資産税の引き上げ、及びできるならばさっき言った含み益の税率と分けた税金ですね、それによって譲渡所得税があるためにかえって土地を売らないという効果をなくすような税の方が望ましいのではないかというふうに考えております。それがどうしても政治的な状況でできなくて、私の言うようなのはむちばかりであめがないじゃないかとよく言われるのですが、そういうむしろ経済学的な原因よりも政治的な問題として考えるならば、固定資産税を引き上げつつ、優良な宅地、住宅に関しては若干譲渡所得税を緩めるということも全然評価できないわけではない。しかし、そうでない政策、もっと望ましい政策があるのだということであります。  それから、居住用の住宅に関して今度税金が強まったわけでありますが、これもむしろ固定資産税を強める中で買いかえのときには譲渡所得税の少し延納を認める。しかし延納した場合には利子を後で徴収していくということをすれば、これも実は今回の方法よりももっと土地の供給を阻害せずに、買いかえを楽にできるようなシステムが構築できるということであります。
  102. 菅直人

    ○菅委員 今の議論に関連して、土地増価税というものが幾つかの国で採用されていて、その内容も国々によっていろいろ差があるわけですけれども、今言われました譲渡益課税を必ずしも安くすべきではないのではないかという先生の考え方を積極的な形で採用するとすれば、土地増価税ということにもなってくるのかと思いますが、その点についてはどんなふうにお考えですか。
  103. 岩田規久男

    ○岩田公述人 一番最初、先ほど申し上げました私のは税金なんですが、ちょっと書いていただけますか。要するに、保有税というのを新しくこういうふうに考えたらどうかということです。  まず、固定資産の税率掛ける取得価額と書いていただけますか。それプラス含み税率掛ける(時価マイナス取得価額)としていただくと、結局その二番目の項の含み税率掛ける(時価マイナス取得価額)のところですね、そこが土地増価税になっているわけなんです。時価で評価しましたからね。つまり、固定資産税が、その私の税体系ですと、要するに時価評価した場合にはそこのところが土地増価税の役割を果たす。しかも土地の投機を抑制して有効利用を促進するためには、その第一番目の項の固定資産税率掛ける取得価額の部分よりも、第二項の含み益の税率の方を高めた方が、土地投機を抑制しながら土地の有効利用を図れる。ところが、そのようにして増価税というのを固定資産税の中に少しそういう作用を入れますと、持ち家などの人はなかなか払えないという問題が出てくるので、その部分は売却や相続のときまで延ばしてもよろしい。ただ法人の場合には相続がありませんので、永遠に引き延ばすことができるので、何年かごとにそれを評価したものを払っていかなければならない。もしも含み税率と固定資産税率を税率を同じにすれば、結局時価評価の固定資産税ということになります。そういう税金です。
  104. 菅直人

    ○菅委員 かなり技術的な問題になりましたが、そうすると増価税はいわゆる売買のときに必ずしも限らず、再評価をして保有税の形で吸収していこう、基本的にはそういう考え方で、ただ実際的には個人の場合は売買のときに、前回買ったときそして今回売るときの差額を、結果的には含みになりますから、それを延納を認めておいて一括で取る。しかし、法人についてはいわば固定資産税に上乗せをする形で含みの再評価をやって年々取っていく、大体そういうふうに理解してよろしいですか。
  105. 岩田規久男

    ○岩田公述人 基本的にそういうことですが、上乗せというのをどういうふうに考えるかというのは、税率が違えば上乗せになるのですね。固定資産税を時価評価でして、固定資産税の税率の部分と含み益の税率の部分が同じになれば、それを上乗せというよりも、単なる時価評価の固定資産税をかけるようにするということです。上乗せということであれば、含み税率の部分の税率の方を高める場合には上乗せになるというふうに考えたらいいと思います。
  106. 菅直人

    ○菅委員 それともう一点、先ほども質問がありましたけれども、土地問題という場合には、土地税制とあわせて都市計画の必要性というか、そういう点が大変強くあると思うわけですが、先ほどの話の中にも住民参加という問題が非常に日本の場合に不十分だということがありました。  その点を重ねてお尋ねをしたいのですが、今の日本の都市計画というのは、よくそういう専門家の皆さんの話を聞きますと、原則がいわば自由で例外的にだけ規制をしている、あるいはゾーンのような形で建ぺい率とかの規制はあるけれども、いわゆる地区計画とか詳細計画というのがないことが今のような野方図な地上げとかあるいは土地転がしを招いているというふうな議論がありますけれども、そのあたりの都市計画について先生のお考えを重ねてちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  107. 岩田規久男

    ○岩田公述人 計画が必要だというのは、市場機構の中で、土地以外の問題というのはかなり市場機構に任せても割合うまくいくところが多いと思うのですが、土地に関してだけはどうしても土地のお互いの利用の仕方というものが都市の住環境に非常に大きな影響を及ぼすということから、どうしてもある程度の規制や計画が必要になってくるわけですが、現在の日本の計画というのは、実は計画というのはあってなきがごとくでありまして、個別のいろいろな道路計画だとか駅前再開発というものが、しかも二十年も三十年前にもあったようなものが、その後の経済状況が変わっても依然としてその計画は存在していて、そしてその計画があるところに何かをすることが必ずしも二十年、三十年後になって一番いいとは限らないのに、もう既に計画があるからといって、とにかくそれを二十年後、三十年後に実現しようというわけなんですね。  このように全体の総合的な計画がないし、その後の時代の変化というものも考えていなくて、それが上からの計画ということになっているのですが、またそのような長い計画がほったらかしでずっとできるというのは、一方に補償を全然せずに日本の場合には規制をかけられるということが非常にあって、政府当局の方に、規制をかけても何ら負担がないので、いつまでも実行しないけれども規制しておくこともできるというような、そういう面がございます。今後は、損をする人にはきちんと補償する、そして余り土地でもうける人にはさっき言ったキャピタルゲインの全体の税で吸収していくというふうにして、土地にまつわる損とか得という問題をもっと小さくしていくということですね。その中で計画というものをもう少し、地区計画なんてあるわけですので、そういったものを利用した方が、日本の場合にすぐ西ドイツ型に、もう計画がないから禁止ですというふうには、恐らく既得権益の壁が厚いですからすぐいくとは私も思いませんので、今後はむしろ経済的なインセンティブ、地区計画などの方が補助金もつくし、周りの基盤整備などにも補助金がいろいろ出て進みやすい、そういうところの方が住宅地として良好として評価されて、よく売れるというような方向で経済的なインセンティブの政策をもう少しつくりながら、そうすると、そういうふうな計画で開発した方が住民が有利だということになれば、そちらで積極的にそういうものにも参加していくだろうし、都市計画が進むだろう。現在のように、計画をしないで、単体で自分ひとりで開発した方が絶対有利だというような状況を直さないと、計画計画と幾ら言っても、計画をしながら町づくりをしていくというふうにはいかないのではないかというふうに思っております。
  108. 菅直人

    ○菅委員 最後にもう一つだけ岩田先生に。  もう一度税制に戻りますが、一つの考え方として、これは多少個人的な部分も含みますけれども考えていることとして、先ほど小規模宅地についての緊急避難的な軽減はわかるけれども、原則は余りそれを認めると細分化を生じて、必ずしも好ましくないんではないかというようなことをおっしゃられたわけですが、この部分は逆に言えば、非常に多くの人たちにとって、小さな家をやっと手に入れたという人が多い日本の現状からいうと、私は、例えば百坪ぐらいを一つの基準にして、それ以下の面積の住宅用の所有については、ナショナルミニマム的な点から減免、例えば低額の固定資産税にすべきではないか。またこれは相続においても、同じように例えば百坪までの相続税は面積で控除をするという考え方はどうであろうか。それからあわせて言いますと、その場合に相続税、特に土地の相続税についてこれを地方税化して、物納の方を有利なように今の評価の仕方を逆転させて、物納によって公有地拡大の一つの道に土地についてのみ相続税を変えていったらどうであろうか。  若干ばらばらになりますが、この三つの考え方について、もし何らかのコメントがいただけたらお願いしたいと思います。
  109. 岩田規久男

    ○岩田公述人 小規模宅地の問題ですけれども、これは基本的に私の原則と申し上げた土地所有でなくてサービスを保障すればいいんだということからしますと、どうもぐあいが悪いのです。というのは、百坪以下を税金を安くするというのを長期的にもするということは、要するにそれを促進するということでありまして、日本の町が全体がそういう町になってくる。これを全国で可能にするのであれば、恐らく相当のまず地方分散と交通網と道路の整備をして、東北の方までずっと一戸建てが続くような、そういうことを構想しなければならないんじゃないかというふうに思います。それができないのであれば、少しやはり共同住宅化などをしながら進んでいく。せっかくやっとこさっとこ買った家が今度だめになっていくというのは大変だというので、土地問題というのは結局そこに突き当たるわけなんですね。ですが、その場合には、それでは相続ぐらいまでは、一応一代限りぐらいまではというのはわかるのですが、しかしその子供もまたその小さな宅地にずっといる、そういうことは結局は土地の利用を変えないということになるわけなんですね。そうすると、土地問題というのはやはり解決しないのではないか。  それから、地方税化して物納をするというのは私もいいと思うのですが、物納ということになりますと、自分は土地は持っているけれども物納をして、そこで例えばサービスだけ受けるので、今度は逆に国に地代を払ってそこへ住むということになりますと、やはりこれはサービスというもののナショナルミニマムというのを保障するシステムにつながってくるんじゃないかというふうに思います。
  110. 菅直人

    ○菅委員 ありがとうございました。
  111. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、村山富市君。
  112. 村山富市

    村山(富)委員 社会党の村山でございます。  きょうは、公述人の先生方には貴重な御意見をありがとうございました。  まず私、きょうは社会保障問題に限ってお尋ねをしたいと思うのですけれども、丸尾先生お願いいたします。  現在の我が国における社会保障や社会福祉のあり方について、あるいはまたその仕組みについて、先ほど先生は、予算を見ましても十年前は一九・七七%、六十三年度は一八・三%に下がっておる。それから公費負担についても、二八・六%から二三%に下がっておる。公費の負担が下がった分だけ国民負担はふえていくわけですからね。ですから私は、質的にはだんだん後退しているのではないかというふうに思うのですけれども、現在の我が国の社会保障や社会福祉のあり方について、どういうところに問題があるというふうにお考えになっているでしょうかということをお尋ねをしたいと思うのです。  例えば国民年金なんかを見ますと、これは定額保険料になっておりますから、六十一年度で免除者が申請免除、法定免除者を含めて一一・九%にふえています。それから保険料が払えない未納者が一七・九%、合計しますと二九・八%あるわけです。こういう状態が、毎年毎年保険料が上がっていくわけですからさらにふえていくんじゃないかということを心配するわけでありますが、そうなってまいりますと国民年金の基礎が崩れてしまうということが考えられるのではないかという気もするわけですけれども、こういう問題も含めてどういうところに問題があるというふうにお考えになっていますか、お尋ねしたいと思うのです。
  113. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 確かに公費、特に国の負担費が、予算の中での社会保障、それからまた社会保障全体の中での国の負担費というのは下がる傾向にある。最近の政府政策というのは、中間施設なんかの場合にもよく見られますように、結果的には国の持ち出しを小さくするという、これは財政上の要請でやむを得ないところもあるかもしれませんけれども、そうなってきています。  そうなってきますと、次の問題と関係して、お金を払えない人が、年金でも医療でも社会保険料を払えない人がだんだんふえてきますね。ですから、そういう最低の生活の人あるいは年金生活者の場合等に関しまして保険料等を保障する、保険料等が払えるようにするためには、やはりナショナルミニマムにかかわる部分に関しては公費で支えるという、それが原則として貫かれなければならないんじゃないかと思います。  それは全部とは言いませんけれども、今のままでいきますと、このまま国民年金も、医療の保険料が高くなってきますと払えない人がどんどん出てきますから、その部分に関しての公費のてこ入れというのは必要になると思う。今度若干医療に関して御承知のような制度ができてきましたけれども、年金に関しても必要になる。その場合の財源として何らかの形での福祉目的税的なものがセットされて、確実にそれがリンクされていくということになるならば、それは悪い制度ではないんじゃないか。いつかはそこの保険料を払えない人に対する対応、それから年金の場合も羊頭狗肉の基礎年金をもう少し羊に近づけるようなそういうこととか、今後ふえていく老人医療や介護についての基礎的なサービス、そういうところに関しての公の負担というのはどうしても高めざるを得ない。そういうことを考えますと、これまでの傾向のように、ずっと社会保障の中の国の負担費を下げ続けていくことができるかどうかということには若干問題がある。あるいは国でなくても地方でいいんですけれども、その場合には地方にそれだけの財源を確保できるような措置をしっかりと持たして、何らかの形で公で基礎を支えていくことが必要じゃないかと思います。
  114. 村山富市

    村山(富)委員 次に、来年度国民健康保険の改正が意図されているわけですね。今の国民健康保険に都道府県分の負担を導入するというのが一つの柱になっているわけです。  これはいろいろな考え方があると思いますけれども、今国民健康保険に入っている方で軽減措置を受けている分について、国と都道府県と市町村で負担をし合う。私は、今の日本の保険制度からしますと、全部縦割りになっていますから、老人医療について国民のすべてが平等に負担をしようということは、ある意味では当然だと思うのです。しかし、国民健康保険の医療費を健康保険や被用者保険に入っている方が二重に負担をするというようなことになりますと、保険の仕組みそのものを、建前そのものを崩してしまうことになるのではないかという考え方もあるのではないかと思うのですが、そういう問題について先生はどのようにお考えでしょうか。
  115. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 保険基盤安定といいますか、そういうことのために、それを何らかの形で保障するということで地方にも若干責任を持たせるというのは、地方の経営努力を刺激するという意味ではよく考えられている面もあるとは思います。しかし、近年の傾向を見ますと、国が地方と社会保険と自己負担にだんだん肩がわりさせていくという傾向がありますから、それは財政的な理由だけでどんどん肩がわりしていくということではなくて、何かはっきりとした、それをすることによって効率化が促されるとか、そういうときはある程度やむを得ないと思います。  国保も基本的には、将来は被用者保険も上が六十五にいって、老人保健が六十五に下がってきて、そこへ全部いってしまえば非常にすっきりとした解決になるわけですけれども、原理なき健保からの持ち出しというようなことはやはり慎まなければならないし、そういう場合にはやはり国がある程度責任を持って最低のところは保障していくというのが筋ではないかと思います。
  116. 村山富市

    村山(富)委員 それから、また年金に戻りますけれども、厚生年金のいわゆる在職老齢年金制度がありますね。これには負担と給付の関係でやはりいろいろな問題があるわけです。  先生は、スウェーデンですか、部分労働、部分年金、仮に週四十時間で三十時間働けば三十時間分の賃金をもらう、そして残りの十時間分を年金でもらう、こういうようなことをお書きになっている論文を見たことがあるのですけれども、もしよければ、その問題についてお考えをお聞きしたいと思うのです。
  117. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 これから非常に検討しなくちゃならない問題ですね。まだ今のところは年金支給開始年齢を六十から六十数歳あるいは六十五に延ばすということが決まってないからはっきりと言い出せない問題ですけれども、それが決まるときは、一つの条件として部分年金、部分就労の方式を導入しなければならない。  今の在職年金もそうではないかと言うけれども、基本的に考えが違うのです。日本の場合は、もう年金が出たじゃないか、出たから、それがあるから賃金は低くしていいんじゃないか、まずこういう感じですね。  そうでなくて、やはり就労を自分である程度選択できる、しかも権利として選択できる。そしてそのために所得が少なくなった分を年金で補う、そういう感じとは基本的な理念が違います。今後定年延長、年金支給開始年齢延長問題と絡めて、仮に年金支給開始年齢を延長するとしたら、少なくともそれと定年延長というのは絶対の条件になるということで、大いに議論していただきたいと思います。
  118. 村山富市

    村山(富)委員 最後に、社会保障と財政負担等の関連の問題についてお尋ねしたいと思うのですけれども、今一番問題になっておりますのは、これは竹下総理が税調に諮問している中身を見ましても、高齢化社会に備えてということが強調されているわけです。高齢化社会に備えて財源を今から用意しなければ大変だという言い方ですね。これはある意味からしますと、それを口実に使って間接税の導入を図っておるというふうにも言われておるわけですね。  よく言われますけれども、一体二十一世紀なら二十一世紀に向けて日本の社会保障の水準、社会福祉の水準をどの程度まで守っていって、そしてその場合に国民負担は一体どうなっていくのか、租税と保険の負担ですね、こういうビジョンを何も示さずに、ただ高齢化社会が来るから今から財政の準備をしなければいかぬということだけを強調するのは本末転倒であって、最初に売上税ありきというのではやはりいけないのではないかと私は思うのですね。  一体これから二十一世紀に向けて医療や年金や福祉等の水準をどの程度に維持して、そして、その場合に負担がどうなっていくのかというようなことが先に示されて、そして今の例えば租税と保険料の負担が大体三五%程度だ、それがその水準を維持していくためにはどの程度の負担になる、しかしそれでは負担が重過ぎるから国民の保険料負担というものはどの程度でとめるべきが至当だ、その場合に財源は一体どの程度かかるのかというようなことで、先にやはりそういうビジョンを示して、給付と負担の割合等についても明らかにして、その上で将来に備えて財源をどうするかということを十分国民の間で議論をし合って、そして国民のコンセンサスをつくりながら考えていくということが当然ではないかというふうに思うのですが、丸尾先生はそうした将来展望についてどのようにお考えになっていますか。
  119. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 まことにおっしゃるとおりでして、私も最初に申し上げたとき、それとちょっと関連したことを申し上げたのですけれども、社会保障費がこれくらいかかるという見通しは出ていますけれども、それと税金がこれだけかかるとの間の中間項の数字が非常に欠けているということですね。先ほど言いましたように、それでは全体の社会保障のうち政府は何割を見るのかとか、それから負担者と払う人との比率がどうなるのか、これは年齢だけの問題じゃないですからね。いろいろな点で中間項が欠けたままで一遍に高齢化と税金の、しかも間接税につながるというのは、非常に中間が抜けているという印象を持つわけです。まあ財政的にそういう事情はあるでしょうけれども、おっしゃるとおり、私もそこが納得いかないところです。
  120. 村山富市

    村山(富)委員 これで終わります。
  121. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、坂口力君。
  122. 坂口力

    ○坂口委員 公述人の先生方には大変お忙しい中をきょうは御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。十五分という限られた時間でございますので、三人の先生に何問かずつお聞きをさせていただきますので、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  まず最初に、岩田先生に御質問をさせていただきたいと思いますが、かねがね先生のお書きになりました論文等も拝見をいたしておりますし、お話を伺ったこともございます。ただいままた先生  から非常に論理的なお話を伺ったわけでございますが、私ども日ごろから考えておりますことの中で、非常に考え方で行き詰まっている面、そんな面も実は持っているわけでございますので、そうした点を中心にしまして先生の御意見をひとつお聞かせをいただきたいと思います。  一つは、所得の方は、五分位別で見ました場合に、第一分位と第五分位の比較で見ますと、これは戦後の昭和二十五年当時に比べますとかなり接近をしてきた。上下の差が確かになくなっている。ただ、昭和四十年ごろ以降からは決して縮まってはいないわけでありますけれども、少なくとも戦後二十五、六年ごろと比較をすると縮まっているということは言えるわけでございます。  一方、しかし資産の方はむしろ最近拡大の傾向にある。こうしたことから、資産の格差を少なくとも今よりは拡大をさせない、あるいはさらにこれを縮めていくというためにどうしたらいいか。資産の場合にはその中心に土地があることは、もうこれは言うまでもないわけでございまして、それをどうするかということでございますが、先生もお話しになりましたように、税制というのは有力な手段ではありますけれども、税だけではこれは解決のできない問題であろうと私たちも考えております。そこで、税制と他のどんな政策を組み合わせることによってこの拡大を防ぐことができ得るのか、その辺をひとつ端的な御意見をお聞かせをいただきたいと思います。  それからもう一つは、きょうは遷都についてのお話は出なかったわけでございますが、この遷都につきましての先生の御意見もひとつお聞かせをいただければ、あわせてお願いをしたいと存じます。  以上、二点につきまして、まずお聞きをしたいと思います。
  123. 岩田規久男

    ○岩田公述人 資産課税に関して、土地に関して私はむしろ強化論ですので、土地の値上がりから得る膨大なものは社会公共に還元されるという仕組みを一つ考えているわけで、土地の税制というのは資産の格差を拡大させない重要な一つの要素だというふうに思いますが、もう一つ、土地の関連税で集めた税金を、一つは社会資本の整備に使っていって、公園であるとか緑地とかそういった公共的なサービスを充実していく、そのことによって人々の福祉を高めていく、それから、そういうものを財源にして、例えば先ほど言った公共住宅をつくっていくとか、あるいは、住宅の適正家賃と市場家賃の差額などを低所得者層に支給していくといったような住生活のサービスの面での供給をしていくというふうに使うということが非常に重要だと思います。  それから、税金で先ほど菅先生とのときにちょっと言い忘れたのでついでに申し上げておきますが、小規模宅地の場合にも、先ほど言いましたが、税金を高めても相続まで延納さえ認めておけばさしあたりは別に困らないわけでありますので、問題は私はないというふうにつけ加えさせていただきます。  それからもう一つ、遷都の問題に関しては、私自身は、地方をもっと活性化するようにしない限り、遷都をしてもそこへそれほど一極集中という問題が回避できなくて、また遷都先と例えば東京に残ったところの間の往復ばかり非常にしていて、そこへ交通機関をつくってしょっちゅうみんなが往復しているというような状況になるのではないかと思いますので、実際一極集中をとめるのに一番必要なのは、やはり地方へもっと自治を拡大していく。  なぜ東京に集まるかというのは、考えてみれば、東京がほかの地方とどこが違うのかということを考えてみますと、ここには中央政府があり、それを支える膨大な官僚機構があって、それが許認可から補助金を持って企業と地方自治体をコントロールしているわけでありまして、そういう状況であれば、そこへ企業が集まってきて、いつでも中央官庁などと接して情報を得、逆に中央政府政策に自分たちの影響を与えるということを常にしていないと企業は絶対損するわけでありますので、そこへ集まってくる。そして、そこへ企業が集まってくれば、それの第三次産業がまた営業ができるということで集まるということで、基本的には地方の自治、地方へ財源を移譲して権限も移譲する、それから政府全体の権限を縮小するというのが一番重要な問題ではないかというふうに思っております。
  124. 坂口力

    ○坂口委員 もう一問だけお聞きしたいと思います。  岩田先生は大学の先生でございますが、大学も例えば東京なら東京に非常に集中しているわけですね。先生のところの大学というふうに指摘するわけではございませんけれども、大学なんかも東京集中から少し広げてはどうだという意見もあるわけでありますが、先生、教鞭をとっておられまして現実問題として可能であるというふうにお考えになりますかどうか、一言だけお聞きをしたいと思います。
  125. 岩田規久男

    ○岩田公述人 矢が何かこちらに向いてまいりましたけれども、上智大学は一等地に控えておりまして、あそこが一番問題かと思いますが、大学が集中しているというのも、やはり東京に情報機能がすべて集中している、そこに一つの原因があるかと思いますめで、地方へ権限を移譲していくというふうにして、例えば地方の大学などへも研究費などの配分とかそういうものをもっと持っていく。現在は、東京大学を初めとする中央へほとんど研究費が集まっているというような状態です。ですから、全体に地方の都市が発展していけばそこでの大学というのがまた魅力が出てくるし、そこでの研究というものが盛んになってくるのじゃないかと思うのです。  現在ですと、例えば地方の研究をするということよりも東京を中心とした日本全体を研究する方が圧倒的に魅力的なわけなのです。それは、やはり日本というところでは東京だけが非常に魅力的だというところに問題があるのかと思います。
  126. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  それでは、次に並木参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほど生産と消費のミスマッチというお話をしていただきまして、大変興味深く聞かせていただきました。それで、これは生産に対する政府の取り組みに問題があったのか、それとも生産者自身に問題があったのか、そこはどのようにお考えになっているのかをひとつお聞きをしたいと存じます。
  127. 並木正吉

    ○並木公述人 私は、地価が非常に高い、農地面積が非常に小さいというところで他産業で従事する人と所得均衡をやろうとすれば、やはり生もの、新鮮なものを中心につくった方が採算がいいという面が基本的にありますので、それがやはり第一だったと思います。しかし、そういう形で進んでいったらどういうことになるのかということを考えたときには、政策的に今の動きを促進するといいますか、それだけでいいかどうかという問題はあったというふうに思います。
  128. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  それでは、時間がないものですから、丸尾参考人に最後にお聞きしたいと存じます。  丸尾先生のお書きになりました論文もたくさん読ませていただきました。しかし、今までどういうわけか丸尾先生にお目にかかる機会がございませんで、きょうは楽しみにしていたわけでございます。  先ほどいろいろな御意見をお述べをいただきましたが、一つは先ほどの村山先生の御発言にもありましたけれども、租税と社会保険料、これを合わせて現在三六%ぐらいでございますか、高齢化がこれから進んでまいりましたときにこれはどのぐらいまでは先生はやむを得ないとお考えになるでしょうか。  と申しますのは、ある程度でこれを抑えるということになってくれば、これは政府の側の支出としては抑えるわけでございますけれども、個人の側からしますとその分ば自己負担をしなきゃならない。例えば年金にいたしましても医療にいたしましても、その分は自己負担をしなきゃならないことになりますね。ですから、これはどこまで公的なことでこれを補い、そしてどこまで自分で覚悟をするかということになる一つの限界線みたいなものだと思うわけでありますが、先生はその点どのようにお考えになるかということが一つ。  それからもう一つは、税と保険料との割合というものは現状程度を維持をするのか、それとも租税の分をふやすのか、そして社会保険料の方を減らすのか、あるいは逆に社会保険料の方を今よりも割合を高めて租税の方を少なくするのか、その辺に対する先生の御意見もございましたらお聞かせをいただきたいと思います。そのことが今後の税制のあり方というものに非常に大きく影響してくるというふうに思いますので、ひとつ御意見を承れればと思います。
  129. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 まず、税金が国民所得の何%ぐらい、あるいは家計の何%ぐらいが上限かということなんですけれども、対国民所得比の場合には非常に技術的な問題もありまして、例えば間接税が導入されますと、それはGNPからの控除項目になりますから国民所得が小さくなるのですね。ですから、結果的に社会保障の比重が非常に高く見えるようになる。スウェーデンのような国では間接税の付加価値税が非常に高いものですから、国民所得の七〇%ぐらい税金と社会保険料でなっていますけれども、日本流に計算すると、それはもうちょっと低いわけですね。そういう技術的な問題がある。  それからもう一つは、だんだんと社会保障が豊富になってきますと、社会保障の給付自体に税金がかかります。ですから対国民所得比の実質上の分母は、国民所得に対して国民所得プラス社会保障給付になるのですけれども、しかしこれは統計上は出ないわけですから、分子だけ出ますから、その関係もあってますます対国民所得比は計画したよりは多くなると思います。ですから、四五%臨調で計画しているけれども、それは結果的には五〇%を憂に超すことになると思いますね、間接税を導入すれば。そういう意味では、四五%というのは結果的な数字としては全く私は無理だと思いますね、将来の人口高齢化が高度化した段階ですね。特に日本の場合、人口高齢化の程度が非常に高いものですから、努力目標として、そして今のような租税の技術的なことを前提としてやった場合に四五%というのは、話はわからないことはないですけれども、事実上はそれはできないと思っています。  それから、どれくらい負担するかというのは、税金と保険料ですけれども、税金が基本的には基礎年金の重要部分とかあるいは医療や介護の基礎的な部分ですね、広くあまねく行われる、そういう部分は公的でやって、その上の部分を社会保険でやる、さらには三階部分が民間ということになると思うのです。日本の場合、近年の十年間、国が負担する比重が非常に低下し続けてきましたけれども、これは、一つには国債費などがふえましたから、結果的に予算の中での国の費用が減っていくということがありますけれども、そういう問題が少し解決してくれば、予算の中に占める社会保障費の比重が一八%というのは国際的には先進国の中でも低いし、まだ二十数%まで、二五%ぐらいまでは十分上げる余地はあると思います。ですから、この傾向がずっと続いていくとは思わない。社会保険との比重では、国の負担自体は、大体年金でも何でも、基礎年金か何かずっと政府が出さない限りそれほどふえませんから、傾向的にいけば国の負担費は少し減ってきますね。しかし、基礎年金のところに政府がてこ入れをするとか、あるいは国保とか老人医療、老人介護の基礎的なものをやっていくとすれば、少なくともこれまでのような低下傾向は阻止されるだろうし、間接税を導入した場合には、特にこれまでのようにだんだんと全体の中での国費の比重が減っていくというのは、少なくとも当分は阻止されるのじゃないか。間接税を導入して、しかもそれが下がっていくということになったら、これはかなり重大な問題じゃないかと思います。
  130. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  まだお聞きしたいことございますけれども、時間が参ったようでございますので、これで失礼します。
  131. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、田中慶秋君。
  132. 田中慶秋

    田中(慶)委員 三人の先生方、本当に大変御苦労さまでございます。  まず最初に、岩田先生にお伺いしたいわけであります。  土地問題でありますが、今の土地問題を考えて、今回政府が一省庁一局削減、こういう問題を発表されているわけでありますけれども、果たして一省庁一局というこの発想は私は余りにも場当たり的な発想ではないかなと、こんなふうに思うのです。それぞれ一局、部が削減されたところで大変いろいろな問題が生じるではないか、こんなふうに考えておりますので、冒頭にこれらについてお伺いをしたいと思うのです。
  133. 岩田規久男

    ○岩田公述人 その問題は、まさにおっしゃるとおり私も場当たり的であると思いますし、こういう場合に実際に行われるのは一番問題のないところが対象になって、例えば首都圏の集中などには何の役にも立たないところが大体対象になるということにならざるを得ないというふうに思います。というのは、その各省庁にとってみれば一番問題のないところに対応するというのは、これは常識的であると思います。
  134. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先ほど削減と言いましたけれども、移転ということになろうかと思います。ですから、私とすれば、例えば研究機関であればその研究機関をすべて筑波に持っていくとかいうふうな発想であれば何らかの効果が出るというふうに思うわけでありますけれども、いずれにしてもこういう問題があるということでありますね。  もう一つは、やはり土地問題で権限の移譲という問題が、地価の問題に対してもあるいはまた開発、住宅の問題についても大きく左右されております。例えば五ヘクタール開発しようとするときに許認可申請をしますと、一年から一年半、こんな形でかかるわけであります。そして、それに要する図面やら書類、何と二トン車一台とまでは言いませんけれども、相当数がかるわけであります。こんなことを考えてみますと、権限の移譲ということをもっともっとすることによって地価を抑制し、あるいはまた安い住宅もできるのではないか、こんなふうに思うのですけれども、先生の見解をお伺いしたいと思います。
  135. 岩田規久男

    ○岩田公述人 基本的に同感でありまして、まず権限の移譲だけでなくて縮小ということが必要じゃないかというふうに思います。それから移譲するというその二つをしないと、依然として、例えば研究機関にしても筑波に全部移転すると今おっしゃったのですが、それでも相変わらず中央が非常に権限を持っていろいろ影響を持っているときには、現在筑波の研究者というのはしょっちゅう東京との往復にただただ時間を割かれているということがあるわけなんです。もう少し、地方にいていろいろな情報が集まるし、そこでも取り決めがいろいろできるというふうにすれば、そういう往復に時間を割かれてしまうというような問題もかなり軽減されるのではないかというふうに思います。
  136. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  並木先生にお伺いしたいわけであります。  日本の農業の置かれている立場というものをよく理解できるように説明いただいて大変ありがたく思っておりますが、端的に申し上げれば、日本の農業がこれから食べられる農業をするかどうか、こういうことにつながるのではないかと思うし、もう一つは、後継者が喜んで農業の経営に今後とも参画をするか、あるいはまた引き続き農業を営むかどうかという問題があるのではないかと思います。そういうことが、今先生がおっしゃられたようなミスマッチの問題を含めてであろうと思います。  ガットの問題についても、私どもが昨年の時点でもっと日本の立場を鮮明に訴える必要がある、日本の農業というものに対してもっともっと鮮明に主張することが必要であろう、こういうことを申し上げた経緯があるわけであります。  そんなことを含めて、先生の、食べられる農業をするためにはどのようなことをするか、具体的にお教えをいただきたいと思います。
  137. 並木正吉

    ○並木公述人 非常に難しい御質問でございまして、一つは後継者の問題でございますが、後継者の残っている農業のタイプを調べてみますと、いわゆる施設利用型と言われるような農業、そしてその中でも園芸的なものとか、その中でも花だとか、そういうふうに土地の制約のない部門においては後継者がきちんと残っているというふうなことが言えると思います。したがって、農村に適切な後継者がいないのではなくて、その後継者が働く場が用意されてないということが問題だと思いますので、やはり基本的には土地利用型農業を中心にして後継者が能力を発揮できるような体制をつくっていくということが大事であります。  そういう意味では現在は、米で申しますと、米についての生産調整というのはだんだん先細りになっていくようなやり方であって、そこへ若い人たちが行って、できるだけ水田で自分の思うような農業をやってみたいということには必ずしもなっていないわけですね。そしてそのためには、価格を支持してもらってやるのではなくて、もう少し生産性を上げてやっていくという方向に後継者の方も方向転換しなければいけませんし、それをサポートする人たちもそういうふうに方向転換をしなければいかぬ、基本的にはそのように思っております。
  138. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても私は、農業問題というのはこれから避けて通れない問題が出てくると思います。そういう中で、後継者問題を初め農業経営問題も含めながら、もっともっと政治的にいろいろなことに取り組んでいかなければ、農家の人たちに任せっ放しではいけないのではないか、こういうふうに考えておりますので、またの機会に先生の御意見をちょうだいしたい、こんなふうに思っております。  そこで、丸尾先生にお伺いしたいわけでありますけれども、私どもは、今国内の産業や内需拡大を前提とするならば、一つには減税問題をちゃんとしなければいけない、こんなふうに考えております。もう一つは、国際化という形の中で言われている、あるいは世界に貢献するとか竹下総理は言われているわけであります。そういうときに日本の法人税の減税、すなわち法人税が国際化と言われるような形の中で欧米に比較してもっと減税をしなければいけない、そのことによって国際競争に勝てるのではないか、こんなふうにも考えるわけであります。  もう一つは、私は、地価の高騰等を含めて固定資産税や相続税の問題については、やはりここにも減税要素が導入されるべきではないか。まず税制の問題、こういう問題を初めに行った後で長期的には制度の問題について議論をすべきではないかと思うのですけれども、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  139. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 それぞれの税につきまして、減税すべき面とむしろ強化すべき面と両方あると思うのです。確かに税金そのもの、法人税そのものは低くすべきです。しかし、法人の五五%が課税されないとかそういうようなことは問題がありますから、もっと広く課税されるようになる、そういうようなことが必要です。それから、法人税自体は国際的に低いけれども、例えば社会保険の企業負担分を入れますと必ずしも低いわけではないわけです。ただ長期的にはどんどん上がっていきますからね。ですから、そういうことを両方考えながら適切な水準を選ぶべきだと思います。  それから固定資産税と相続税に関しましては、先ほど岩田先生もありましたと思いますけれども、私の考えも基本的には、日本国民の六割とか七割とか土地を持っているわけですから、それを敵にするようなことはしちゃいけない。やはり小さい土地に関してはむしろ値上がりによる重税化を避けなくちゃいけない。しかし、そうでない空閑地とか過大な土地を持っているとか、そういうことに関してはむしろ私は増税論者であるわけです。  それから、税金に関しましては、景気変動との関係もありますから、タイミングに関しましては一般所得税に関してはある程度弾力性を持たすべきであろうと思っております。
  140. 田中慶秋

    田中(慶)委員 長寿社会を迎えるから、そういうために税の見直しを行わなければいけないということを政府はよく言われます。しかし、今福祉、長寿社会について、将来の年金や医療の問題も含めて、青写真が余りにもなさ過ぎると思います。  また一つには、医療費がかかり過ぎると言っておりますけれども、確かにかかっておりますが、医療費を削減するための努力をしてない。それは健康づくりという面で、例えば今、子供からお年寄りまで総スポーツの人口であります。ところが、それに対する投資が何もされていない。健康づくりというものはそういう形でやるべきだろう、僕はこんなふうにも思っております。こういう長寿社会という問題と税金という問題、私はこういう一連の問題もやはり相関関係をつくっていくべきじゃないか。  もう一つは、例えば国民年金、ことしで六十二兆円あるわけでありますけれども、この自主運用はわずか一兆円、あと残りが財投とかそういう形になっているわけでありますが、厚生年金等については自主運用が認められておりますから、そういう点ではその財源を改めて生んでいるわけでありまして、こういう点の問題もいま少し知恵や努力をして、全体的な将来の税という問題を考えるべきじゃないか、こんなふうに考えておりますけれども、先生の見解をお伺いしたいと思います。
  141. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 後の方の積立金の自主運用の問題は私も同感でして、先ほどもちょっと言いましたように、うまく使えば有利運用の機会というのは非常にある。それを生かして、他方で自主運用の還元融資的なことをやれば、それだけ政府の福祉関係の財源も節約できるわけですね。そういう努力とか、あるいは供給システムで健康維持による予防とかスポーツ関係とか、それからよく言われる医療部門における一種の「神の見えざる手」と逆の、利己的に行動すれば結果的に浪費が生まれるようなそういうシステム、社会的入院とかバルクライン方式とか診療報酬の支払い、出来高払い制とか医療保険の適切化とか、一応政府は対策は出しているけれども、どうもまだ実効性が乏しい。やはりそういうことについて本当に努力して、それでその結果どれくらいの節約が得られるとか、もうちょっと国民が供給システムに関しましても納得して、やるべきことはやっているということもやはりおっしゃるように、負担増加の一つの条件であると思いますね。  その二つおっしゃられたこと、例として二つ挙げられたのでしょうけれども、供給システムの効率化と大きな積立金の有効利用、そういうことによっても節約できる余地がある。そういう節約できるものを十分にやった上で負担の増加ということを言うべきだ、おっしゃるとおりだと思います。
  142. 田中慶秋

    田中(慶)委員 行政改革の問題でお伺いしたいと思うのです。  今税制問題を論じているわけですけれども、いろいろな形で論じられますけれども、私は行政改革はまだ入り口論じゃないか、こんなふうに思っております。もっと徹底した行政改革をすることによってスリムにもなりますし、あるいはまたむだ遣い、こういうことも削減できると思います。  そんなことを含めて、徹底した行政改革というのは今一番政府としてやらなければいけないし、またその論議をもっとやるべきではないかと思いますが、先生の御見解をお伺いしたい。
  143. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 我々の印象も、だんだんやりやすいところから、力が弱いところ、やりやすいところからいって、一番、官僚の権限とか、場合によっては政治家の方の陳情とつながるところとか、そういうところでまだやるべきことが多いのではないか。先ほどお話がありましたけれども、ちょっとした許認可にも大変な書類が要るとか労力が要るとか、そういうことは、中央官庁にここまでいろいろなことをやらなくちゃいけないというのはちょっと異常ですよね。その問題だけでもかなりやるべきことは多いという印象は持っております。
  144. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  145. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、矢島恒夫君。
  146. 矢島恒夫

    矢島委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。共産党の矢島恒夫でございます。  最初に丸尾公述人にちょっとお聞きしたいのですけれども、軍事費と社会保障との問題なんですが、来年度予算について政府原案を見ますと、五・二%の軍事費を伸ばすということです。中曽根内閣から竹下内閣、六年間を含めてみますと、軍事費の伸びは四三・一%、ところが社会保障関係の方につきましては当然増費まで削られまして、その伸び率が一三・四%、こういう状況にあるということです。  国際的に見ましても、今日世界軍事費というのが一兆ドルと言われておりますが、そうなりますと、一分間に三億円ぐらいずつ使っている。また一方、貧困とか飢餓によって二ないし三秒ごとに死亡している、こういうような事態もあるわけですね。昨年暮れのINFの条約調印ということについては、これは核軍縮の一歩として大いに評価できると思うのですけれども、同時に、軍拡から軍縮への転換ということは、ただ単に世界の平和という問題だけではなくて、暮らしだとかあるいは経済にとっても重要な問題になっていると思うのです。  先生のいろいろ書かれた「週刊社会保障」の論評なども読ませていただきました。社会保障の問題をマクロ経済学的な見地から研究されていらっしゃるわけですが、社会保障とか福祉という問題と軍事費との関係について、先生何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  147. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 私は、社会保障の方に関しましては経済的な面の専門家でありますけれども、正直に申しまして軍事に関しましては確たる客観的証拠とかそういうことがないものですから公式には発言を控えておるわけですけれども、個人的には、お金をそういうところに使うなら、もう少し民事的なことで国際的なことで日本は使えるものが非常にあるのではないか、そういうことが意外と間接的に防衛に役立つのではないかという、そういう印象は非常に強く持っております。  そして今回のことに関しましても、もちろん個人的には軍事を抑えて福祉の方に回してくれたらもっといいのになという気持ちは持っております。ただ、私、それだけの専門家としての知識が軍事の方にありませんから、発言は控えておきます。
  148. 矢島恒夫

    矢島委員 続いて丸尾先生にお聞きしたいのですが、「今後の医療保障を考える」という論文の中で、「高齢化と医療・福祉総合化政策の課題」という論文を読ませていただいたのですが、寝たきり老人のための施策といたしまして政府、厚生省が老人保健施設、いわゆる中間施設、これを二〇〇〇年までには二十六万とか三十万とかベッドをふやす計画、こういうのを持っているわけなんですけれども、しかし、老人保健施設の多くを病院、病床の転換で進めるというのでは、生活の場として不十分であると思うのですね。ですから、抜本的な見直しが必要ではないかと思うのですが、この点についてはいかがでしょう。
  149. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 中間施設、老人保健施設をつくることに関しましては、私も社会保障制度審議会、そのころ臨時委員だったものですから、責任もありますし、必要なことだとは思っております。ただ、私が考えたほどにはなかなか予算上いかないものだという感じは持っております。  あれは老人病院と老人施設の中間であるだけではなくて、住居とも中間である、よりノーマライゼーションの観点に立った政策でなければならないわけですけれども、どっちかといいますと、結局あれによって入院よりは平均費用が安くなる。それから自己負担が一万二千円から五万円程度になる。それから基本的なところを特養でしたら国がやらなくちゃいけないけれども、あそこに行けば社会保険になるというようなことで、国費節減の方策としての色彩が非常に強いということで若干失望しているのですけれども、しかし、やはり日本人の意識が福祉生活の質に目覚めないと、なかなかそれだけのお金は出ないと思うのですね。今、日本は住生活の質には目覚め始めたけれども、病院に入ったときは、飯も五時で仕方がないんだ、画一的なもので仕方ないんだ、窮屈な生活で仕方がないんだ、老人施設に入ってもそうだという意識である限り、今の予算ぐらいしか出ない。そこの意識に目覚めて、そういうときに自分がそこに入るということを考えて、もっと福祉生活の質を高くしようという意識になれば、もうちょっとやれると思うのですね。  長期的にはもう少し、一人当たりGNPが北欧よりも多くなった国で、そういう施設の一人当たりの平均面積が北欧の半分以下だというのはちょっとおかしいんじゃないかという意識、気持ちは持っております。
  150. 矢島恒夫

    矢島委員 もう一つ丸尾先生にお聞きしたいのですが、寝たきり老人問題なんですけれども、このほとんどが家庭において介護されているというのが現状だと思うのです。例えば訪問看護だとかあるいはホームヘルパーだの、身近に機能する施設を地域にきめ細かにつくっていく、この在宅医療というものを支援するというような施策が重要ではないかなと思うのですが、その点先生のお考えをちょっとお聞きしたい。
  151. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 基本的には、世界的に見ても先進諸国の動きは在宅ケアである。在宅ケアこそノーマライゼーションの理念に一致するということで、おっしゃるとおりと思います。  ただ、その割には、その前に入所型の施設も余りにも少ないという意味で、両方並行していかざるを得ないんじゃないかということですね。ですから、在宅ケアシステム、それを在宅看護も一緒にして、医療圏、福祉圏一緒にしてケア・看護のネットワークをつくっていく、それにボランティアや家族機能をうまく組み合わせ、それから民間サービスも入れた一種の福祉ミックスでそれぞれの長所を、公的なあまねく広く公正な、民間の活力や弾力性、それに人間的なインフォーマルウォーム、家族、ボランティアの温かみ、それを加えたそういうシステムを構築していくということが理想であるという考えは持っております。
  152. 矢島恒夫

    矢島委員 どうもありがとうございました。  並木公述人にお聞きしたいのですが、先ほど十二品目の問題で、いわゆる農産物の輸入自由化の問題ですが、急激な影響を受けるのでこれの補償というものを考えていかないといけないんだ、こういう御意見がございました。  けさの新聞によりますと、牛肉、オレンジ問題なんですけれども、アメリカとの協定が三月末で切れるわけですけれども、この新聞の報道によりますと、四月一日にも我が国の牛肉輸入制限をガット違反としてガット事務局に提訴する方針である、こういう通告をしてきた、こう書いてあるわけですが、十二品目に加えてさらに牛肉、オレンジの自由化ということになりますと、日本の畜産農家やあるいは果汁をやっていらっしゃる農家が多大な影響を受けると思うのですが、この問題についてちょっと御見解を承れればと思います。
  153. 並木正吉

    ○並木公述人 これからの牛肉それからかんきつですね、それについては私はガットの条文について本当に知悉しているわけではありませんけれども、今度のガットのパネルの裁定で申しますと、牛肉につきましては生産制限という措置をとっていないということがクロの判定の理由になっておりまして、その点はかんきつの方は生産制限ということをしておりますので、ガットのパネルの判断だけでいえば、牛肉の方が厳しくてかんきつの方はやや見込みがある、恐らくそういうことじゃないかというふうに思います。しかし、影響という点で考えますとむしろ逆で、牛肉の方が大きくて、かんきつの方はまだテレビオレンジといったような言葉があるように、いわば消費者が使い分けるという面があります。  ただ、一番問題になっております牛肉につきまして、日本の農業者から見て非常に深刻な事態になった場合には、先ほど私が申し上げたことですけれども、国産牛肉と輸入牛肉についてすみ分け的な現象が起きておるようだ。これがどういう条件のもとにそうなっているかということは調べなきゃいけないことですけれども、その事実を十分に調べて、どういう対策をとったら消費者、生産者両方にとって一応満足ができるような施策になるかという検討を早急に始めていただきたいというふうに申し上げた次第でございます。  以上でございます。
  154. 矢島恒夫

    矢島委員 今生産者の立場ということでお聞きしたのですが、消費者の立場から考えましても、この牛肉、オレンジの輸入自由化というのは大変な問題になるんじゃないかと私思うのです。といいますのは、昨年七月輸入されました冷凍果汁から日本の指定外添加物が出てきた、あるいはその翌月の八月にはオーストラリアからのいわゆる牛肉ですけれども、これが日本で禁止されている農薬の残留が発見されて大問題になりました。  厚生省の輸入食品の衛生を監視するところの検疫所というのは全国で二十カ所だと思うのですけれども、しかもそういうところで監視している衛生監視員というのが全部で七十五名とか聞いております。こういう現状を考えますと、先ほどの農産物十二品目の自由化もそうですが、牛肉、オレンジの自由化ということになりますと、日本に一層汚染されたいろいろな食糧が入ってくる可能性というのが出てくる。要するに、消費者の立場から考えてもこのことは非常に大きな問題ではないかと思うのですが、これについての御意見を承りたいと思います。
  155. 並木正吉

    ○並木公述人 今の安全性の問題について消費者の関心が非常に高まっているということ、特にこれから子供を産む年齢の、特に高学歴者の女性については非常に安全性に対する意識が強くなっているということは私も十分承知しております。  ただ、外国から入ってまいります今の牛肉とかかんきつについて、これは安全性の点から見て非常に危険なものだというふうに割り切ってしまうのもどうかという気がいたしまして、その点については十分配慮をしながら防疫体制を整えて対処をしていくということが、消費者の方は安全性と同時に、もっと安いものをリーズナブルな価格で欲しいという二つの要望を持っておりますので、その二つの要望にはやはりこたえる必要があるのではないか、私はこう思っております。
  156. 矢島恒夫

    矢島委員 まだちょっとお聞きしたい点もありますけれども、ちょうど時間になりましたので、終わりたいと思います。
  157. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  明日は、本日に引き続き午前十時より公聴会を開催いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時散会