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1988-02-27 第112回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十七日(土曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       池田 行彦君    稲村 利幸君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    倉成  正君       古賀 正浩君    後藤田正晴君       佐藤 文生君    杉山 憲夫君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       田中 龍夫君    田中 直紀君       高橋 一郎君    谷垣 禎一君       玉沢徳一郎君    西岡 武夫君       林  大幹君    林  義郎君       細田 吉藏君    松田 九郎君      三ツ林弥太郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    渡部 恒三君       井上 普方君    岡田 利春君       菅  直人君    佐藤 敬治君       辻  一彦君    中西 績介君       草川 昭三君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       田中 慶秋君    楢崎弥之助君       安藤  巖君    中島 武敏君       松本 善明君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局経済部長 柴田 章平君         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         国土庁防災局長 三木 克彦君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 國分 正明君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房審議官    伊藤 礼史君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         林野庁長官   松田  堯君         水産庁長官   田中 宏尚君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省生活         産業局長    鎌田 吉郎君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁石炭部長   鈴木 英夫君         資源エネルギー         庁公益事業部長 植松  敏君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房審         議官      齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省河川局長 萩原 兼脩君         建設省道路局長 三谷  浩君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房総         務審議官    小林  実君         自治省行政局長 木村  仁君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 渡辺  功君         消防庁長官   矢野浩一郎君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行理事) 青木  昭君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   澤邉  守君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     高橋 一郎君   小坂徳三郎君     杉山 憲夫君   左藤  恵君     鈴木 宗男君   志賀  節君     谷垣 禎一君   浜田 幸一君     松田 九郎君   原田  憲君     古賀 正浩君   村田敬次郎君     玉沢徳一郎君   上原 康助君     中西 績介君   川崎 寛治君     岡田 利春君   大久保直彦君     草川 昭三君   藤原ひろ子君     安藤  巖君   山原健二郎君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   古賀 正浩君     原田  憲君   杉山 憲夫君     田中 直紀君   鈴木 宗男君     左藤  恵君   高橋 一郎君     愛野興一郎君   谷垣 禎一君     志賀  節君   玉沢徳一郎君     村田敬次郎君   松田 九郎君     浜田 幸一君   岡田 利春君     川崎 寛治君   中西 績介君     上原 康助君   草川 昭三君     大久保直彦君   安藤  巖君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   田中 直紀君     小坂徳三郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 農林水産大臣にお伺いします。  去年の暮れあたりに、ちょうど営林署の一割統廃合、あの問題がありまして、中川、前の農林大臣農水大臣にならなかったのか、あのときは農水大臣ですね、残していきました一割営林署をつぶすというので、最後の十営林署がつぶれた。私は、あのとき津軽半島の突端のところの今別というところの営林署へ行ってきました。人口四千ぐらいのまことに寂れた町でありまして、こういうところから営林署をつぶすなんということは一体どういうことだろうと思いました。というのは、ああいう過疎の、場末の町へ行きますと、人が働けるところというのは役場と営林署ぐらいしかないのですね。だから、営林署をつぶすということはいわば片腕をもがれるようなもので、大変なショックであります。一方では、ちょうど竹下総理大臣が出てまいりまして、「ふるさと創生論」といいまして、これからは自分はふるさとを何とかしなければいけない、どうも日本人は心の豊かさを失って、東京にばかり人が集まって困るじゃないか、こういうことを盛んに唱えておりましたので、それと対比して、何というか非常に惨めな気持ちを味わってまいりました。  歩いている人、五十ぐらいのお父さんに聞きました。あなた方のこの町から営林署がなくなるんだがどう思いますかと聞いたら、どうせこの町はどうにもならないから営林署もつぶされるでしょうと、大変あきらめ切った気持ちです。息子さんどうしましたと言ったら、東京へ出ていって帰りません、多分帰らないでしょう、こういうような返事なんですね。何とも言えない索漠とした気持ちでほろりとしてきましたのですけれども、私はああいうへんぴなところのあの営林署をつぶしても幾ばく財政の再建にもならないと思うのですね。国の方は大した利益は特に上がらなくても、しかし、つぶされた方のああいう町は大変なショックなんです。いわば過疎によってもうこの町はだめだだめだと思っているところに、もう一遍何というかだめ押しみたいに営林署がなくなる。もうこれでこの町はだめだ、こういうようなショックを受けまして、特に若い人がどんどん、この町はだめだというのであきらめて東京へ出てしまう、こういう現象があちこちにあるのですよ。  私は、一方では「ふるさと創生論」なんて言っているわけですから、しかも営林署一つつぶしたからといって幾ばく国家財政の助けにもならぬのですから、しばらくは、「ふるさと創生論」で立ち直って、そして地方も何ぼかよくなるまでああいうものをやたらにつぶすべきじゃない、こういうふうなことを強く感じてまいったのですが、大臣はどんな感じですか、当事者として。
  4. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 営林署統廃合につきましては、昨年七月見直した改善計画に基づきまして、本年三月、十の営林署統廃合を行うこととしたところでございます。  統廃合につきましては、業務運営簡素化合理化に対応して、営林局、署を通ずる組織、機構の徹底した簡素化を図る所存でございますが、今現場の声を、あきらめ切っている現地ということをお話ございましたけれども、このことを進めてまいる経過、また今後におきましても、林業関係者山林関係者の考えていることを頭に置きながら、また今までの取り運びの経緯といたしましては、地元の声も十分聞くように、私が就任いたしましてからも徹底してその声を聞くように、そういうことで役所側に役人に対しても言ってきたところでございまして、とにかく合理化はしなければならぬ。しかし、山自体森林自体、その持つ機能、これは十分に果たしていかなければなりませんし、こうしたことによって、合理化が図られることによって、将来に希望を失うというようなことは絶対にあり得ないと考えておるところでございまして、端的な例といたしまして、やがて行われる大阪万博につきましても、大阪の箱庭に終わってはならない、これが山、森林、川に通ずる一つの哲学を全国民に、また全世界に知ってもらうことができるような気持ちで運ぶべきである、このようなことも申しておるわけでございまして、気持ちはと言われればそのようなことを申し上げておきたいと思います。
  5. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 合理化合理化と言うけれども、あんなところの営林署をつぶすよりも、もっともっと合理化しなければいけないところがたくさんあるのですね。これはもういろいろな答申なんかでありますけれども、たくさんあるのです。でき得べくんば、ああいうところを絶望させないようにこれからもひとつ考えていただきたいと思います。  それで、林野庁というのは特別会計ですね、特別会計採算をしております。しかし、今の山というものは、これは何遍も言われていることでしょうけれども、戦時中あるいは戦後の戦災復興、こういうもので、木のあるところはみんな切られてしまった。特に、津軽はヒバ、秋田は杉だとか、戦争に協力し、戦後の復興に協力して、もうほとんど木がないんですね。なくなったところへもってきて、木を売って独立採算で勝手に飯を食えということになって、それから四苦八苦の状態が続いておるのです。赤字赤字ですね。  今私どもは時々林野庁へ行くのですけれども林野庁へ行っても全然生気がない。もう赤字で、何とかしてくれといっても赤字で何ともなりません、国からその赤字の分を金をもらってこなければ何ともならないから何とか許してくれといって、ひたすら頭を下げて国から金をもらうことだけ考えている。何とも言えない哀れな状態ですね。戦々恐々としているのです、赤字のために。ところが、今言ったように、実際には独立採算なんかできる状態じゃないのです。それなのに、山の木を切って勝手に生きていきなさい。これはまことに私は残酷だと思うのですよ。せっかく戦中戦後あれだけ協力して、木がなくなってから木を切って飯を食えといったって、これはできないです。それをやれといって、赤字だからといって営林署もつぶす、あれもつぶす。みんなこうして、あそこへ行くと戦々恐々としている、職員が。  こういう状態というものは、問題が山だけに、私は大問題だと思う。国土というものは、これはやはり国そのものですよ。しかも、国土の七割ぐらいは山ですから、山が荒廃するということは国土が荒廃することなんです。しっかりこれは守っていかなければいけない。それなのに、それを守る役目の営林署職員が単なる赤字でもって戦々恐々としているということは、大変なこれは国家的な大きな問題だと思うのです。そう思いませんか、いかがですか。
  6. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 現場の雰囲気は私にもわかります。統廃合をする、何かこう後ろ向き、そして二万人体制もつくっている、こういう中にあって非常な心配を、林野職員だけではなくて家族の方にも心配をかけておるという、そのことは私もよくわかります。しかし、一方で財政当局の理解を仰ぎながら、国有林野事業としてもみずからが汗を流し、そして必ず将来はあるんだということで、我が国の山林森林民有林国有林も含めて、大事なその山の価値森林価値というものを考えれば考えるほど、先行きやりようによっては十分意欲を持って活力ある山村ができ上がっていく、こういうことを私どもも頭に置きながら督励をいたしておるところでございますので、どうかひとつ、先行き不安、一面そういう点はございますけれども、ここを切り抜ければ何とかなっていくんだ、将来は明るい、こう思い込まなければ前へ進みませんので、私は、多少無理であってもそういうことで希望をつないで立派なものに仕上げてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  7. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 木は工場で物をつくるようにいきませんからね、長い時間かかるんです。今ようやく造林木が少しずつ伸びてきたような時代ですが、まだまだ立ち直るためには独立採算なんという状態じゃないと思うのです。私は、国土保全意味から、林野会計全体を独立採算でやれということは到底成り立っていかないと思うのです、しばらく長い間は。だから私は、国土保全に関する部面はやはり一般会計で持ち、そして木を売る営業部面だけ独立採算にする、こういうふうにしないと、そのうちに営林署も何もなくなって結局は山を守るために一般会計が全部持たなければいけない、こういう状態にならざるを得ないと思うのです。  私はそういう意味で、営林署会計というものを国土保全関係のものとそれから木を売ったりする販売、商売の方のものと二つに分けて経営したらどうか、こう思いますけれども、いかがですか。
  8. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 山の持つ機能は、おっしゃるように多岐にわたっております。そういう意味で、それぞれの機能が十分生かせるようにしてまいりたい、こう思っております。  なお、さっき申しおくれましたが、五十三年から、実は三十五の営林署統廃合するということについて四回にわたってやってまいりまして、この三月のことは先ほど申し上げましたが、これで一つのけじめはつけられる、こういうことになっております。
  9. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これからは営林署統廃合するということは、今の計画にはございませんね。
  10. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今申し上げましたように、今まで立てられた、十年前から立てられておる計画を一区切りいたします。今後の事情の推移というものを見なければ、ここで、絶対ない、絶対こうだという言葉は、これは私の立場として使い得ません、正直申し上げて。しかし、その持つ機能、今度、山の持つ機能とあわせて林野庁が持つ行政機能、これはひとつ真剣に取り組んでいただいて進めていけば、これで一節目はつけられるものと考えております。
  11. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 国土庁長官にお伺いします。  今私が、林野会計国土保全のものとそれから営業のものと二つに分けてやったらどうだ、こういう問題に関しては、国土を保管するといいますか、そういう管轄する国土庁長官としてはどうお考えですか。
  12. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は今、全国総合開発計画、これを絵にかいたもちにしないためにはどうしたらいいかということで立法を考えているわけでございます。  その中の一つに、山ではとてもそこで生活できないということで、ばらばらばらばら都市に移っていきまして、一軒家がぽつんぽつんとございます。私は、そういう家がなくなったら、山崩れがあってもわからなくなってしまう、国土保全のためにはだれかがそこに住んでいてくれなければ困る、だから、そういう人たちについても集落形成を考えて、簡易水道をつけてあげるとか、ある程度の、生涯そこに住みつくんだという決意を持てるような体制を整備する必要があるじゃないか、そんな気持ちを込めた条項も置いておりまして、そのためには、ふるさとづくりなどの地方債自治省も応援してやろうというような気持ちを言ってくださっているわけでございまして、今のお話、私にはよくわかります。
  13. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大蔵大臣はいかがですか、今のこの会計二つに分けたらどうかということ。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつて林野は非常に収益状況がよろしゅうございましたこともありまして、特別会計にすることを関係者がむしろ非常に希望された時代がございます。が、まあ世の中こうやって変わりまして、今御指摘のような状況になりました。山の持っております国民経済的な意味から、かつてのいきさつはともかくとして、やはり一般会計でいろいろな意味での支援をしなければならないということを私どもも感じまして、いろいろな一般会計からの支援をいたしております。  もとより、その際に、これは御指摘意味と決して矛盾するつもりで申しておるのではないのでございますが、会計そのもののいろいろな意味での合理化ということは、これはお願いをしなければならない問題でございますから、そういうこともお願いしながら一般会計支援をしているというのが現状でありまして、このこと自身は国民経済的な意味から必要やむを得ないことであろうというふうに考えております。
  15. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 高鳥長官、二月の二十三日の新聞を見ましたら、こう書いておりました。総務庁臨時行政改革推進審議会、ここに、現在審議中の土地対策に関する答申を六月に取りまとめた後の審議テーマについて、「国と地方事務事業の見直しを検討してもらいたい」、こういう意向を表して審議会に申し入れた、こういうことですが、これは本当ですか。
  16. 高鳥修

    高鳥国務大臣 一部新聞にそのような報道があったことは私も見ておりますが、本来行革審がどういうテーマを取り上げるかということについては、行革審自身から御判断をいただくないしは総理から諮問をしていただくということになっておりますので、したがいまして、そういうこともテーマ一つかなとは考えてはおりますが、私の方から行革審に対してそのようなことをお願いした事実はまだございません。
  17. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は、何でまたこんなことを今さら行革審に申し入れたのかなと思って、今不思議に思ったから聞いたのです。行革審は既に出した答申政府が忠実にやるのかやらないのか、これの監視機関みたいなものですね、これは。それに今さら何をやっていいかなんて申し入れするというのはおかしいなと思って今お聞きしたのですが、そういうことはないということですけれども、今、例えば当時一番大きな問題になった国と地方関係で、例の機関委任事務地方移譲の問題ですね。あれはどういうふうになっていますか。
  18. 高鳥修

    高鳥国務大臣 臨調並びに行革審におきまして、それぞれ国と地方機能分担適正化ということで御指摘をいただいているところでございますが、臨時行政調査会から御指摘をいただいたものについては未措置事項はございません。臨時行政改革推進審議会、いわゆる行革審で御指摘いただいたことにつきましては、現在まだ八項目ほど残っておりますが、臨調あるいは行革審を通じまして、両方で二百九十八項目の御指摘をいただいておりまして、そのうち八項目だけが残っている、つまり二百九十事項につきましては御指摘のとおり処理をしたということでございます。
  19. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今東京が爆発しそうだと言って大騒ぎをしているわけですね。私は前からそう言っていたのですが、地方をしっかりとしたものにしなければもういつまでたっても中央集権的なあれが打破できない、こう言って主張してきたのですが、その一つの非常に大きな意味を持つものとして機関委任事務地方に移す、いわゆる国の権力というものを地方に移して、そしてそこに自由にやらせるようにしなければだめじゃないか。こういうことは私だけじゃなくて行革審もそう言っておりますし、また全国知事会なんか詳細な検討をして、かなり分厚な冊子を出して世に問うておるわけなんです。  あの当時、行革審は二年かかって一割ずつ整理しなさい、こう言って出てきた一割というものを私もよく見ましたけれども、全く各省庁では痛くもかゆくもない、あかをちょうどあかすりですり落としたものを出してくるというような、現在死文化している法律あるいはまた全く枝葉でもって関係もないような法律、そういうのばかり数を並べて今あなたが言ったように二百九十八項目やったとかなんとかと言っているわけなんですね。ところが、実際に必要なものはそういうものじゃないんです。そういうものじゃなくて、本当に今現在、各省庁がやっている事務で生きているものを地方に移さなければいけない。そうでなければ趣旨が何にも達成されないのですね。  ところが、そういうものを何にもやっていないのです。そして、さっき営林署の話をしたけれども営林署を切るより、例えば国あるいは県、市町村というこの二重、三重になった煩瑣なレッドテープを切ることによってどれほど経費が浮いてくるかわからない莫大なものだと思うのですよ。それをただ形式的にやっているということは、今日、後から聞きますけれども、今奥野長官がやっておるような趣旨から見ますと、そんなこそくな手段では許されないと思うのです。今後これをもっともっと強力に推し進めるべきだと思いますけれども、私はなかなかこれは面倒な問題だと思いますよ。やれといってもなかなかやれない。各省庁のセクトがあって、出すのは舌を出すのも嫌だ、絶対に、何でおれの権限に干渉するのだとこういう強いセクト意識がありますから、なかなかこれをやれない。これはあなたはやる自信がありますか、覚悟がありますか。
  20. 高鳥修

    高鳥国務大臣 佐藤委員地方自治の経験者でいらっしゃいますし、また地方行政委員会では私も一緒に、いろいろと御指導をいただいたこともございます。私自身地方自治経験者であります。そういう立場からいたしまして、佐藤委員の御主張については私も大いに同感な点がたくさんございます。そういう方向で進めなければならないと存じますが、これは一総務庁だけが幾ら努力をしましてもできることではございませんで、政府全体として真剣に取り組んでいかなければならない問題でございますし、かつまた地方自治体からも御協力をいただかなければならない問題である、そのように理解しているところでございます。  なお、中央と地方との事務分担の見直し等について今さら検討するというのはおかしいではないかというふうな御趣旨の御指摘が先ほどございましたが、これは臨調あるいは旧行革審において既に指摘されていることではございますが、しかし、それが今お話しございましたように完全にその趣旨を達成しているかどうかということについては、これは新行革審で見直しをするということはあり得べしということでございますので、それらも将来のテーマ一つかなというふうに私は考えておるということを申し上げたところでございます。  とかく総論賛成、各論反対になりがちなことでございますが、私どもとしては一生懸命取り組んでまいりたいと思っております。
  21. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 国土庁長官にお伺いします。  今長官は政府機関の移転問題で大変に一生懸命努力されておるようでありまして、この予算委員会でもここで熱弁を振るわれておりまして、大いに敬意を表しているところであります。しかし、今もお話し申し上げましたように、この問題は大変難しい問題だと思います。恐らく今まで行革やろうとして、これを成功した人はほとんどいない。高鳥さんに今お話ししましたけれども機関委任事務をちょっと移す、ちょっとでもないでしょうが、移すだけでもどうしてもやれないでひっかかっているのですね。ましてや、省庁、政府機関を最初は七十ぐらいでしたか、今度は第二弾で二百とか言っているでしょう。二、三百という省庁をまとめて短期間に移してしまう、こういうことは非常に難しいと思うのです。しかし、長官の熱弁を聞いているとできそうにも思えるのですが、どうですか、これはやれる自信がありますか。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 最初に総理の方から、一省庁一機関とにかく移転できる機関を決めてくれというお話がございました。幸いにして、大変円滑にその話が具体化してまいりましたので、今や全閣僚一致してこの政府機関の移転問題を政策として実らせなければならないということになっておりますので、私は必ず実現できると思っております。  ただ、現実に移転を完了いたしますのには受け皿でいろいろなものをつくっていかなければなりませんので、早く移転完了できるところもあれば数年後に移転を完了するということになるところもあるということは御理解いただきたいと思います。同時に、数の多いことがいいのではなくて、一応洗いざらいいろいろな審判機関まで挙げていきますと多くの数になるわけでございますけれども、実質的に東京の過密の解消、需要の分散、そういうことに役立ったという形であることが一番大事じゃないだろうかな、こう思っておるところでございます。
  23. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 長官に非常に楽観的とも思えるようなことをおっしゃっていただいて安心なんですが、今ちょうど機関委任事務のとき申し述べたと同じように、出してきているのを見てみますと、各省庁とも痛くもかゆくもないものを東京近郊に移して、それでお茶を濁そう、こういうようなことが非常に強く感じられるのです。だから、ぜひひとつこういうところを打ち破る強力な施策をやっていただかないとなかなかできないと思うのです。今「ふるさと創生論」に便乗して各省庁がいろいろな地方を何とかせよという地方法案をつくっていますね。あれだって、地方を何とかしてやろうというのではなくて、勘ぐれば自分のところの勢力をこの際伸ばしてやろう、こういう策謀だとも言えないこともないのですね。なかなか各省のセクトをぶち壊すということは難しいことだけれども、しかし、これをぶち壊さなければ東京の分散だとか多極分散だとかそういうことは私はできないと思います。  今私ども地方で育っておりますけれども、中央集権というものはいわば格子なき牢獄というか、見えない鎖でつながれているというか、がっちりと中央集権のあれでもって縛られて身動きができない状態ですね。そしてまた、全部皆、中央に、東京に集まっている。東京はブラックホールだと評している人もある。何でもかんでも皆東京は食ってしまう、こういうことを言われていることもあるのですけれども、やはり中央集権というものを打破する、こういうしっかりした根強い思想というものがなければ私はこの仕事はなかなかできないと思います。これは大変難しいことだと思います。  今、日本というものは、明治時代、いわば富国強兵でこれを達成するためにがっちりとした中央集権の形をつくって一応成功してきました。しかし、今やそのツケが回ってきて、東京はこのままでいけばあらゆるものを集めて、それこそブラックホールの星みたいに爆発しかねない。今やらなければいけないのですね。それをやるためには、今言ったようにやはり中央集権というものを打破する、こういうしっかりとした哲学を持ってこれをやらなければ私はできないと思うのです。  今一省一機関移す、こう言っております。ただ、私は形式的にこれを地方に移しても何もならぬと思うのですよ。その命令権、人事権も含めた管理権あるいは予算、金ですね、こういうものは中央で握っておいて、そして建物だけそっちに移しても、結局は中央にお伺いを立てるために、金をもらうためにしょっちゅう来てなければいかぬ。私はかえって金をかけて混乱する結果にならないか、こういう心配をするんです。やるならば、もう管理権、指揮監督権、人事権からみんな含めて向こうへやって、金もつけてやって勝手にやれ、これぐらいのことをやらないと、全部ひもつきでやったんじゃ私は本当の意味政府機関の地方移転なんかにはならない、こういうふうに思うのです。  今、何といいますか、東京東京と言って何でも集まってくる。その表徴的なものは、ちょうど国会の周辺に予算編成期になると物すごく人が集まってきますね。特にこの間の補助金をぶった切ってから、ますます人が余計集まるようになってきた。前は銀座ぐらいの雑踏だったが、今は新宿西口ぐらいの雑踏になってきたんですね。大変な雑踏です。なぜ来るか。金をもらいたい、何とかして金をもらいたいと言って来るんですね。権力と金と情報があるところに人が集まるのは、これは自然なんです。集まってくるなと言っても私は集まってくると思うのです。だから、本当に東京から地方に分散する、多極分散ということをするならば、東京にあるところの権力と、それから金と情報というものを地方に分散すれば、ひとりで私は行くと思いますよ。それを何にもそういうことをしないで、相変わらず中央集権の実態を残しておいて、東京へ来なければ何もできないようにしておいて、そうしてただ向こうへ、あっちへやれ、こっちへやれと言って移しても、私はこれは何にも成果が上がらない。相変わらず別のものがまたどんどんどんどんと東京へ出てくる、こういうふうに思います。願わくば、中央集権というものの実態に切り込んでこれを分散するような方法をしなければだめだ、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  24. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が、四全総を絵にかいたもちにしないで、これを実現させる手法を考えたい、そういうことで何人かの知事に意見を求めたことがございました。異口同音に言いますことは、地方分権を徹底してくれなければ何もできませんよ、中央の権限をおろしてくれなければ私たちは責任を持って地域開発に取り組めないんですよ、こう言いました。私は、一つの権限を地方におろすだけでも何年もかかるよ、そんなことに基本を置いておったのじゃこの法律はできないんだよ、何かかわる知恵は出せないものかな、こう言っておったわけでございまして、今もそういう意味で知恵を絞ろうとしているのですけれども、なかなか難しいことでございます。そういう意味において今おっしゃっていることは私も同感でございます。中央政府人たちはそれなりにその方がいいんだと思ってやっておられるんですけれども、やはり移すべき権限は、中央でかじを取るよりも、思い切って地方に与えた方がいいんじゃないかなと思うことがたくさんございます。  同時に、今機関委任のことをおっしゃっておりますが、私は地方団体の知事に委任しようと、地方団体に譲ろうとどちらでもいいから、とにかく地方へおろすべきである、そういうことに力を注ぐべきであるということを後輩の自治省の諸君には絶えず言っているものでございます。これからも、時間がかかってもその方向で努力した方がいいと思っているわけでございます。殊に四全総の問題になりますと、地域地域の特性を生かして創意工夫を尽くしながら魅力ある地域社会をつくろうとするわけでございますだけに、地方団体に権限をゆだねなければ責任を持ってそういう仕事に取り組めないという問題がございますので、一層大切なことではないだろうかなと思っているところでございます。
  25. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 奥野先生は地方自治の大先輩でありますので、釈迦に説法になることを言っても何もなりませんけれども、今言われましたように地方というものを独自な発想でもって自由にやれるようにするためにも、私は中途半端なことじゃなくて、さっき言いましたように、しっかりとした中央集権を打破するんだという哲学を持ちまして、できれば地方を半分独立国みたいな状態にして、そしてそれに金を与えて、そして自由に、それこそこっちから、省庁からあれをやれ、これをやれじゃなくて、やはりあなたの言われるように自由に自分たちの発想が生かせるような方法にしてやらなければ、ちょっとやそっとのことじゃ、これだけの大きなブラックホールになった東京から多極分散なんということはできないと思うのですよ。  だから、そういう意味でもひとつ腰を据えてやっていただきたいのですが、さしあたりそれでは何をやるかということなんですが、宮澤大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、今の国と地方関係、よく言われているように七、三の関係でありまして、地方は七割の仕事をやっている、ところが金は三割しかない。いわゆる三割自治ですね。そして逆に国が七割金を握って、三割しか仕事をしない。その間に四割の差があって、その四割でもって中央集権の実を上げている、こういうことがよく言われているのですけれども、私は、今言いましたように、奥野先生も言われましたように、やはり自由な発想をするためには自分で自由に使える金を持っていなければいかぬと思います。しょっちゅうここへ来て、中央へ来て、省庁に頭を下げて補助金をもらっていくようでは、これはやはり中央の発想でしか物ができないのです。だからできるだけ地方に金をやることが必要じゃないか。さしあたりこれを何ぼやれと言うことはできないけれども、私どもが前から唱えておりますように、もちろん仕事の見直しをしなければいけませんけれども、さしあたり国と地方というものをフィフティー・フィフティーに、半分ぐらいの配分をしたらどうか、こういうことも考えられると思いますが、いかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国と地方との間の行財政の再配分ということは、戦後ずっと言われてまいりましたし、またそれについてのいろいろな努力も行われてはまいりましたが、今日までいわば根本的な解決と申しますか、再配分の答えは出ていないように思います。したがいまして、そこから何割自治というような甚だ残念な実態、これは実態だとやはり思わざるを得ませんが、あることもよく存じておりまして、決してそのこと自身は好ましいことではありません。先ほども新宿西口のようなということで言われましたああいう風景は、もう私どもが見ましてもいかにも残念でありまして、これでは地方自治といいましても、いわばある意味東京もうでをしなければならぬということは本当の意味での自治ということから言えばいかがかと思われることでございますので、あれだけああいうことが目につくようになりますと、いかにも残念なことで、何とか根本的な解決が図れないものかということはいつも心を痛めております。
  27. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 答えにはならないのですが。  もう一つ、これはなかなか実現が難しいだろうけれども、私、もう長い間地方自治に携わってまいりまして感じているのですけれども、今の地方税法というものは、東京みたいな物すごい世界一の大都市から我々のところの田舎の三千人か二千ぐらいの小さい村まで、同じ一つの法律でもってやっているんですね。東京の方は、取れる客体が幾らでもあるにもかかわらず地方税法に縛られて取れない。ところが小さい村の方へ行きますと、法律で取ってもいいといっても客体がないから取れないんですね。非常に大きなギャップがそこに生じていると思うのです。私は、東京だとか大阪だとか、ああいう大きな都市に来ますと、固定資産税一つにしても本当にシラミつぶしに調べたら大変な財源があると思うのです。そう言われていますね。だから、私はどこに基準を置いたらいいかわかりませんが、いいかげんな基準でありますけれども、五十万以上ぐらいのかなり大きな都市には地方税法に縛られない独自の税法をつくって、そこで独自にやる、そして一方では、今の交付税みたいなものは財政力の何にもない小さい自治体に傾斜配分して、そこを何とか金持ちにして仕事ができるようにして活性化を図る、こういうふうなことをしたらどうかなということも考えるのですが、大蔵大臣はそれについて御感想はございませんか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは直接に私が答えるべきことではないのかもしれませんけれども、おっしゃいますような発想は、シャウプ氏が日本に参りましたときに、昭和二十四年が最初でございますけれども、この地方と国、それから地方相互間の財源という問題は、やはり非常に日本じゅうを見て回りまして指摘いたしまして、そして、今そういう言葉はなくなったと思うのでございますが、平衡交付金という、平衡という言葉をあそこで編み出したわけでございます。その考えの中にはやはりそういうものが私はあったのであろうということを今御指摘があって想起いたします。  具体的な地方税のことを私はかれこれ申すべきでないと思いますけれども、やはりシャウプが指摘したことは、あのときいっときある程度直ったのかもしれなかったのでありますが、今になりますと、まさにおっしゃるような問題がまた大変に目につくようになっておると思います。
  29. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 自治大臣の御感想は。私が今言った、こういうことについては何かコメントはありませんか。
  30. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 税全般の問題でもございますので、ただいま大蔵大臣がお答えになったとおりでございますが、何がそのあるべき姿かという実は理想像を見ることがなかなか困難でございます。現実にある地方自治の役割、こういうものを運営するためにどれだけの財源が必要かということは当然積算をされて、それが財政需要額になっているわけでございますが、御指摘のとおり地方税法、千差万別でございまして、それぞれの市町村、都道府県、その税収は極めてまちまちでございます。それを補完するというか、均衡させるために交付税制度があるわけでございますが、いずれにしても十分ではございません。  ついこの間、新聞を見ておりましたところ、昭和三十五年の東京都の都税収入は全国シェアで二三%弱であったわけでありますが、二十年たった昭和五十五年には一七%強までに低下をしたわけでございますから、四分の一程度全国拡散ができたわけですから、その意味では地方分散というものがある程度成果を上げたと思うのです。しかし、ごく最近に至りまして急速にまた一七・八あるいは一九・何ぼ、恐らく昨年は二〇%になるのではないかということになりますと、二十年かけて多極分散というか地方に力が、必ずしも税の収入が地方の力というイコールでは結ばれませんけれども、少なくともこの三年の間にその半分が戻ってしまったという現実を考えますと、一極集中が大変加速をしているという現象がございますので、いわゆる不交付団体、青天井に取れる形がいいのかどうなのか、私は多いことは悪とは申しませんけれども、他方、少ない財源であるいは必要最小限度の行政水準すら維持できないところに何らかの厚みを加える方式を、むしろ税の抜本改正があるとするならば、その配分もひっくるめてこれから検討しなければならない大変難しい問題だというふうに理解をいたしております。
  31. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなた、もうお帰りですか。
  32. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 最後までおります。
  33. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ああそうですか。ありがとうございます。  大蔵大臣にお伺いします。大蔵大臣と言ったらいいのか、副総理と言ったらいいのかわかりませんけれども、お伺いしたいのです。  今の税制改革の問題ですけれども総理も大型消費税、大型間接税という言葉は全然使っていませんね、諮問をしたときに。官房長官が検討しているというようなことを発言しておりますけれども、実際に諮問した中に大型間接税なんという言葉も何もないけれども、現実の問題として大型間接税がひとり歩きしているという状態なんですね。  きのう我が党の上田理事総理に聞いて、あれを見てびっくりしましたけれども、大型間接税の定義、これ、この前聞いてきのう返事をもらえるかと思ったら、まだわからぬ、大変苦悩して苦吟している、こういうような話をしておりまして、私はびっくりしたのです。総理大臣もわからないようなものを諮問して、あちこち今地方公聴会をやっているのですが、一体どういうふうなことになっているのかなと、総理がわからぬで苦吟して、実体もまだわからないのに、正体もわからないのに、売上税の幽霊みたいなのがひとり歩きしているのじゃないか、こういうふうな感じを持っているのです。  それから、こういうものを、政府税調が公聴会を開いて一体何を国民に聞いているのだろう、内容も何もわからない、諮問している総理大臣も正体がわからないようなものを、一体何を聞いているのだろう、こういうふうな疑問を持ってきのう聞いておったのですが、これは、内容を出さないでおいて、国会で議論をするのは勝手だ、そういって気分だけどんどん火をつけておいて、成立の雰囲気をつくって何か有利にこれをつくることを誘導していこう、こういうような気でもあるのですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般、上田委員がお尋ねをされました際に、総理大臣から、これはなかなか難しいことでございまして、自分としてどういうお答えができるか、ひとつ一生懸命考えてみるということを言われました。実は、私ども総理大臣を補佐するという立場から、総理大臣が考えを詰めていかれる上での、何と申しますか、過去のこの問題についての経緯等々はいろいろに整理をいたしまして資料としては作成をいたしておるわけでございますけれども、実はいかに資料を作成をいたしましても、この定義そのものあるいは問題の核心に迫るということが総理がまさに言われましたようになかなか困難でありまして、そうかといって、ああいうお答えをしておられますので、これはある時期には何か総理なりのお答えをなさらなければならないという、大変に、実は私どももなかなか知恵がございませんで苦吟をいたしておるというのが本当のところでございます。  ところで、しかし、地方で公聴会が行われておることとの関連でございますけれども、これは別に大型間接税をどうすればいいかということを御承知のように地方に聞いておるわけではございません。先般も御紹介いたしましたけれども、公聴会に臨むに当たって、税制調査会で「税制改革の基本課題」という、いわば内部で意思統一をされたようなものに基づきまして公聴会をやっておられるわけでございます。これは長うございますので御紹介いたしませんけれども、いろいろな背景の中から、今の間接税に関しましては、「現行個別消費税体系の矛盾を是正する方策及び我が国に適した課税ベースの広い間接税の導入の是非。」導入するという立場からではなく導入することの是非について意見を聞きたいということ、この問題に関してはそういう立場で税調の委員は公聴会をやっておられる。  でございますから、御指摘のようにたたき台は持っておりませんで、昨年ああいう廃案に至りました経緯、何が誤っておったのかということについての国民の持っておられる感想、それから、しかし今それでも問題があるという問題意識を持っておられるかどうか、問題意識を持っておられるとすれば、ただいま申しましたように、それについてのどういう考えを持っておられるかといったようなことを、テーマを余り厳密に限定いたしませんで、広く国民の御意見を伺っておる、文字どおりそういう目的の公聴会でございます。したがいまして、例えば、いわゆる大型間接税というものについてこうこうしたい、あるいは具体的にどうやればよろしいかといったような、そういう問題を絞りました公聴会をいたしておるわけではございません。
  35. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 総理が諮問していることも、所得、消費、資産等の間で均衡のとれた安定的な税体系の構築を考えてくれ、こういうふうに言っているのですね。ところが、実際にやっていること、出てきているものというのは、ほとんど新型間接税の議論ばかりされているのです。なぜこういうふうに新型間接税だけが飛び出して先行して走り回っているのか、こういうことなんですけれども、これは要するに、この前、売上税がつぶれた。今度竹下さんが総理大臣になりまして、売上税から新型間接税と名前を変えて、大型消費税に自分の政治生命をかけて、国民の合意も何も得ないで秋にもこれを強行して通過させるのじゃないか、盛んに秋にやる秋にやると言うので、そういう国民の疑心暗鬼というものがこういうような新型間接税、新型間接税という声になって出てきているのではないか、こういうふうに思います。  特に、今申し上げましたように、政府の諮問を受けて地方公聴会を開いている政府税調というのは、あなたは今否定されましたけれども政府の意向を受けて大型間接税の宣伝をしている、この前どなたかから質問がありましたけれども、こういうような感じさえ受けているのです。総理は何と言っているかというと、予見を抱かせない、予見を持たせない、こういうふうに言っているのですが、予見という言葉がいいのか予断という言葉がいいのかわかりませんが、とにかくこれは固定した観念を持たないで自由に議論させたいということだろうと思います。それにもかかわらず大型間接税のことばかり盛んに宣伝している、こういうことなんですが、何かこっちの方では今大臣が言われたようにそんなことはないと言うけれども、実際に諮問を受けた方では一生懸命話をしている。  特に小倉会長の発言というものは、一体あれは何かと思うのですね。特に今大臣の言うように、絶対にそういう予見を持ったりそういうようなことはないと言いながら、まことに具体的な発言を至るところでやっている、こういうことが新聞に毎日出てきておるわけです。  小倉さんは何と言っているかというと、欧州共同体のEC型の付加価値税が理想だ、これはまさにぴったりだ、こういうことを盛んにあちこちに行って言って歩いているのです。私は、政府税調が今改めて言ったような予見を持たない、予断を持たないで白紙でもって公聴会で国民の意見を聞くというのならば、会長みずからが、EC型付加価値税というものは全くぴったりだ、これ以上理想的なものはないというようなことを盛んに言って歩いていることはまことに不見識なので、何かあなた方――あなたとは言わないけれども、竹下総理と何かツーツーカーカーで、こっちでは否定しながらそっちでは宣伝させているのじゃないかという感じを持っているのですが、そんなことはありませんか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは参議院の予算委員会であったかと思いますけれども、もっと突き進んで総理大蔵大臣は小倉税調会長に何か根回しでもしているのかというお尋ねがございまして、私は、いやもとよりそういうことはございませんし、そういうことのできる方でもありませんということを大変率直に申し上げたのでございますが、それは事実そのとおりでございます。  小倉さんがいろいろ発言をしておられますけれども、もともと税調の委員の皆さんのお申し合わせが、地方の公聴会においてはお互いが個人の意見を言うことにしよう、こういうお申し合わせがあります。それは、いろいろこちらの意見も言われることによって公聴会に来られた方々の間からいろいろな反応を読み取りたい、またいろいろな御議論が出る、その御議論をいわば誘発したい、こういう見地から発言をしておられるように存じます。したがいまして現に小倉会長も、この方は一番税調ではお古い、大変長いことこの問題の経緯を御存じの方でありますので、例えばEC型の付加価値税ということも言われました。言われましたが、しかしまた他の場所では、理屈はそうのはずなんだけれども現実にはなかなかそれがそういかないんだというようなことも言っておられる。それは恐らく、いろいろなことをいろいろな角度から言われながら公聴会でできるだけ自由な発言、発想をしていただいて、それを持って帰って参考にしよう、こういう意図を持って言っておられるものと思います。  現に、公聴会に出られます前に委員の間でいわば内部の意思統一をされましたこの文書によりますと、この問題につきましては先ほど申し上げましたが、「我が国に通した課税ベースの広い間接税の導入の是非。」ここだけ是非ということがついておりまして、導入するという前提に立っているのではない、その前提に立って公聴会をするのではないということを明確に基本問題の中で言っておられまして、この是非という言葉がつきましたのには、実は内部でいろいろそれなりの御議論があって、こうすべきであるというかなりはっきりした御議論の経緯があってこうなっておりますので、税調自身がそういういわば予断を持っておられるということはないということがはっきりいたしておると思います。
  37. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ところが、我々は資料をもらっていないので、地方公聴会のことは新聞でしかわかりません。新聞を見ますと、いろいろなことが書いてあるのです。ある新聞では「EC型付加価値税が最適」という考え方、これを小倉会長が言って、「(政府税調では)みんながわかっていることだ。あとは時間稼ぎだ」こういうふうなことまで言っているんですね、政府税調はみんなだと。小倉さんが一人言ってほかの人は別のことを言っているのではなくて、政府税調はみんながわかっていることだ、あとは時間稼ぎだ、こういうことを発言したと言っているのです。これは今あなたの言われたこととは大分違うのです。大分違うんですよ。  そしてさらに、別の公聴会では傍聴人から、「税調の腹の中は(導入で)決まっているのではないか」「公聴会を開いているのに国民を愚ろうしている」、こういうふうな批判まで飛び出している。これに対して税調委員の飯島清さんは「税調では(小倉発言を)了承していない」と弁明に必死で、「会長発言は軽率だったと認めざるを得ない」とまで言い切ったなどという、こういうのが出ているのです。  こういうものを見ますと、国民はあなたの言ったように理解はしていないのです。そこに非常にずれがあるというか、果たして今副総理の言ったようなことかなという疑問がまだまだ晴れないのです。今、どこかで別のことも小倉さんは言っているというけれども、それはあれを見てみると別に別のことでもないのですね。いいのはやっぱりEC型の付加価値税だと。しかし、あれは余り完璧過ぎて、余り立派過ぎると悪いかもしれないというようなことを言っているのですよ。否定していないのです。最も立派だと。しかし、余り立派だからといって必ずしもそうできるとは限らないということを言っているのです。これはまさに予見そのものなんですね。ところが、こんなことを余り言うものだから、ほかの委員がこれは困ると。何とか税調の内部からも注文をつけて余りボルテージを上げないでくれと言ったけれども、それでもなおかつどんどんEC型だ、EC型だと言っている、こう言っているのです。  こんなのがあるのですよ。「反発続く小倉発言」と書いてまして、小倉さんの新型間接税に対するEC型が一番いいという大胆発言に対して、内部の政府税制調査会の加藤寛間接税特別部会長が十六日に、「私どもの部会ではまだ全然、議論してないことを発言している。真意がわからない」と批判した上で、「会長の個人的考えがどうであろうと、予断をもたずに議論を続ける。自民党などから何か言ってきても、つっぱる」こういうふうなことも言っているのです。  「私見」と断りながら「EC型付加価値税が最適だ」「新型間接税は衣食住、教育、医療の生活必需品を例外にすべきだ」と大胆な発言をして波紋を呼んでいるけれども、この加藤さんは、「私見といっても、会長の発言であれば影響は大きい。われわれは何のために議論しているのかわからなくなる」、こういう不満が続出したと。また加藤さんは、「まだ間接税論議の入り口の段階。(自民党などから)五月にまとめろ、といってきても気にしないでじっくりと審議する」、こんなことまで言っているんですね。税調内部でも大変困っている、こういうようなことがこの中でありありと見えておるのです。  それで、竹下さんもあなたも、そんなことを小倉さんには何も言っていないのだと。そうすると、予見を持たせないように、予断を持たせないという竹下さんの言うことも聞かない。また税調内部の人の言うことも、もう少し穏やかにしてくれと言っても、それも聞かない。一体こういうような会長が、これでいいんですかね。こんな会長だったら、私はもうやめていただくのが当然じゃないかと思いますが、いかがですか。おかしいですよ、これは。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 小倉税調会長が、国会、これも参議院の予算委員会の席だったかと思いますけれども、御自分で言っておられましたが、会長がいろいろ物を決めるわけではないんで、私の言うとおりに決まるなんてことではないんです、皆さん自由に議論をこれからなさるのですからということを言っておられまして、それはまさに私はそのとおりであると思います。小倉会長は税調の中で、今御議論ありましたように、随分自由な議論もあり反論もありというような雰囲気で税調をやっておられまして、それでこそ大変に自由な税調の審議が行われているというふうに私は思っております。
  39. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 自由にやっているかどうかわからぬけれども、国民からはこういうふうなけしからぬというような批判まで出ている。新聞を見ると私どももそう思いますよ。だから、もしそうでないとするならば、そういう誤解を与えないように政府の方からやはり注意をすべきじゃないかと思いますよ。  それから、政府税調の公聴会の記事をずっとみんな読んでみました。今までここにあるやつを全部読んでみました。その中からの感想でありますけれども、この中で国民の意見として、一応この記事の中からまとめてみますと、一番多いのは不公平税制の是正を求める声、これがやはり圧倒的に多いんですね。二番目は、この新型間接税に賛成する人が多くなったと新聞に書いてありますが、確かにあります。しかし、これを見てみますと、無条件で賛成という人はほとんどないんですね。賛成の内容を読んでみますと、ほとんどが何か条件をつけているのです。私は、この賛成についても必ずしも手放しに賛成しているのじゃないということがよくわかるんですよ。大体、先ほどから言いましたように、新型間接税というものの具体的な内容が何もわからない。総理でさえ正体がわからないものを国民に出して、どうですかと聞いたってわかるはずがないのです。わかるはずがない。ただ、政府の言うことだし、この前失敗したから、竹下さんのことだから今度はうまくやるだろう、そういうので、うまくやるなら賛成しておけというので、漠然とした賛意を消極的に示しているんじゃないか、こんな気がするんですね。雰囲気が出てきた、雰囲気が出てきたと言って、あなた方は国民に対して合意の空気が生まれてきたと言うけれども、私は、具体的な内容が出ていけば必ずしもそうじゃないんじゃないか、こういうふうに思います。  時間がありませんので前に進みますが、だから結局、私は今までの公聴会の記事を集めて読んでみた感じでは、国民が一番求めているのはやはり不公平税制度の是正である。これを一番国民が求めているんだと思います。しかし、それに反して政府が企図しているのは、間接税を何とかして成立したい、こういうことを一生懸命考えているので、かなりこの中には政府と国民の間にギャップがあるんじゃないかな、こういう感じを抱いておるわけであります。  だから、私は、まず不公平税制を是正する、これが一番今までの公聴会の中からくみ出すところの国民の意思ではないか、不公平税制をまず是正するということが国民の意思に沿うことじゃないか、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは御指摘のとおりだと思います。税というものはだれしも受け身に考えるものでございますから、いわんや新税となればますますそうでございます。みんなが公平に税を負担しているので、隣もこっちの隣もそうだから自分もまあやむを得ないというふうな、そういう性格のものでございますだけに、公平ということが税のいわば命でございます。そこで、今具体的に国民の側から不公平税制についてのいろいろな御批判が上がっていることを私どもはよく存じておりまして、このことを飛び越えて新税という話には、なかなかこれは国民感情として受け入れにくいという点がありますことは、よく気がついております。
  41. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そこで、私は具体的に申し上げますけれども、この不公平税制をきのう大臣挙げられましたね、いろいろな不公平税制、こういうのが不公平税制だと。ああいうものについて具体的にこうしていくということを、はっきり筋道を国民の前に具体的に早く示すべきだと思うのです。それを示さないでおいて間接税、間接税と言うから非常に混乱が出てくる。まず、間接税を強調する前に、今何が不公平であるかということはわかっているのですから、それをはっきりと筋道を、直すという筋道を国民の前に示せば、かなり私は理解を得られることになるのではないか。しかも、この間の衆議院の公聴会のときに和田教授なんかが、もう六十三年は歳入構造がかなり好転しておって財源があるから不公平税制は何とかやれるんじゃないか。またあなたも、軽課税を何とかすれば法人税も何とかできる、こういうようなことも発言しておられます。だから私は、間接税を強調する前に、この不公平税制をどういうふうにしてやるのかということをはっきりと国民の前に提示すべきだと思いますが、いかがですか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、昨日も御質問がございましたときに、私が、不公平感を生じておると考えられる税制はこれこれの領域についてでございますということを申し上げました際に、もっと具体的にそれを示すべきであるというお尋ねがございました。私が申し上げましたのは、具体的にそれをどのように改めるべきかということは、法案の形においてやがて政府が各方面の御意見を聞きながら時期が来ましたら御提案をいたしたいと思っておりますのでと申し上げましたが、しかし、その領域の中でもう少しそれを具体的に言えないのかという御指摘がございまして、私どもの方で、ある程度のいわば問題の、何と申しますか、もう少し具体的な分析といったようなものは資料をもってお答えすることができますかどうか検討をいたしますということを申し上げておりまして、検討ができましたらまた資料をお手元に差し上げることができるかと存じます。
  43. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これも公式に出ているのかどうかわかりませんが、秋に臨時国会を開いて大型間接税というか新型間接税を出して、これをどうしても通さなければいけないというのが政府の意思のようですが、それが一歩前進しまして、今国会にもこれを出さなければいけない、こういうようなことを強調しておられるようですけれども、本当に今国会に新型間接税の税制改革が出てくるのですか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府と申しますよりは、自由民主党の内部で秋ということが望ましいということを申したことはございますのですが、政府自身としてはそのことをそのように申したことはございません。  現実には、税制調査会に先ほどおっしゃいましたような諮問をいたしまして、それを検討していただいておる。いつまでに答申をということを申し上げておりませんので、御承知のように今十分公聴会等々で検討しておられる。政府として申しましたことは、昨年の十月十六日に、早急に成案を得て速やかな実現を期したいと言っておりますものの、昨年のような経緯もございますものですから、この際大事なことは十分に時間をかけて国民に対するこの問題についての理解を深めていただくということが何よりも大事であると考えておりますので、したがいまして時間は、締め切りというものは二の次の問題だと考えております。なるべく速やかにいたしたいということは考えておりますけれども、ただいまどの国会というようなことを申し上げる段階には至っておりません。
  45. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 具体的なこれからの日程を考えてみましても、今の政府税調の公聴会がいつ終わるかわかりませんが、三月三日が最後だと言っていますが、それからいわば答申案をつくって、それを受けて政府の法案の骨子をつくって、また公聴会をやると言っていますね。そうしてやってきますと大体会期が、本会期を延長しなければ全くの末期になってしまうのですね。会期末になってしまう。しかし、これほど重要な法案というものを会期が終わりそうなときにいきなり出してきて、しかも審議もしないで継続にしてくれ、こういうことは法案の内容からいってもとてもできる話じゃないのですね。私は、だから延長しない限りこの法案というものは本国会に出ないものだ、こういうふうに理解していますが、そういうふうに理解してもいいのですかね。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、政府としては税制調査会ができるだけ国民の意見を聞かれた上で成案を得られることをお願いをしておるわけでございまして、いつまでということを事柄の性質上申し上げてございません。もとより、諸般の事情を考えますとなるべく早くということは望ましいことでございますけれども、昨年の経緯もございますから、余り時間ばかりのことを申し上げるわけにもいかないという気持ちで、税制調査会の御審議にただいまのところお任せをいたしておる。したがいまして、再度のお尋ねではございますけれども、確たるお返事を申し上げることができないというのがただいまの実情でございます。
  47. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 別の、国保の問題に移ります。  この間は時間がなくて、総括のとき申し上げられませんでしたけれども、取り残したところを少し御質問をいたしたいと思います。  この前は、国保の最大の問題が財政の急速な悪化である、その悪化の原因というものは、一方ではどんどん医療費が高くなるのに、一方では国の補助率をどんどん切っていって国庫負担を引き下げているのだ、これが両々相まって国保財政が悪くなっているのだということを言ってまいりました。それで、それではそういうところが何でもって埋められているか、こういいますと、これもこの前ちょっと申し上げましたけれども、いわば老人保健の、無料化をやめて一部負担させるとか、あるいはまた被用者保険に転嫁していくとか、こういうことでもってこれをカバーしていっているわけなんですね。しかし、実際問題としてこれをずっと見てみますと、いろいろな問題が出てきているのじゃないか、こういうふうに私は思われてなりません。  例えば、加入者按分率、これがばっさりと削られました。加入者按分率ができてから、国の負担というものが随分軽くなりましたですね。時間がないので急ぎますけれども、最終的に老人保健改正のためにどういうようになったかというと、被用者保険の負担が三千百七十四億円ふえているのです。それに反しまして国庫負担が二千六百八十一億円減っているのです。これを一つ見ましても、いかに国庫の負担を軽くしてそしてほかのところに費用を転嫁させているかということがよくわかりますね。被用者負担を三千億円もふやして自分の方では二千億円も国庫負担を減らしていく、こういうようなからくりが次から次と出てきて、それでようやくもとのもくあみという状態になっているのです。これは退職者医療制度でも同じでありまして、一方では国保に対しまして何かしらのプラスを与えて、一方ではそのプラスになった分を引き抜く、こういうことをこの二つの制度でもってやっているのです。  私が申し上げたいのはこういうことなんです。時間がないのでまことに失礼でありますけれども、今まで例えば老人保健に対して国保財政赤字赤字だと言って大変繰り入れてきました。その赤字の原因は病気になる年寄りが多いからだ、老人が多いからだ。何とかこの老人の健保をつくって、そして国保から切り離してくれ、そうでなければ助からぬと言って一生懸命嘆願してきました。何十年たって、ようやくこの間者人保健法ができまして、この制度ができました。私ども国保の関係者というものはこれで大変ほっとした、これからは何とかなるだろう、こう思っておりました。ところが何ともならなかったのです。何にも国保の財政はよくならなかった。なぜよくならなかったかというと、与えた分だけ、プラスになった分だけ厚生省が補助金をカットして皆持っていったからなんです。もとのもくあみなんです。今でも苦しい。それに対して老人保健法というものができて何ぼかプラスになった、だから何ぼか楽になる、こういうことなんですね。それを、プラスになった分だけ引き揚げていけば、もとのもくあみだ。そういうことを今あなたがやっているんですね、厚生省がやってきた。だから、年来の宿願の老人保健制度ができたにもかかわらず、国保の財政というものは何にもよくならない、ますます悪くなる一方ですね。  これはどういうことか。この国保だけで言うと何にもこれは大したことじゃない、当たり前じゃないかというようなことを感ずるかもしれませんけれども一つの例をとってみるとこういうことです。  佐藤敬治という大変人のよい人がおりました。二百万借金して百万しか金を持っていない。そこに藤本さんという人が来まして、金を貸してやると言って百万貸してくれた。ああこれで喜んで借金返せるなと思ったら、あに図らんや、おまえの持っている手持ちの百万をおれによこせと言って百万取り上げた。もとのもくあみですね。こんなばかなことは、これで考えると非常識きわまることなんですね。ところが、今厚生省がやっている老人健保のときにとった行動というのは、まさにそれなんです。与えておいて、ぬか喜びさせておいて、喜びも実らないうちにみんな引き揚げてしまう。だからもとのもくあみと言うんだ。何ぼやっても、いつまでたっても、宿願の老人健保ができても国保財政はよくならない。  もっとひどいのは退職者医療制度です。もっとひどいよ、これは。退職者医療制度をつくりました。これも、企業は若いとき、給料の高いとき、病気にならない人を給料が高いのでどんどん料金取ってやっているものだから、病気にならないし金が余ってしようがない。ところが定年になって、これから病気になろう、定年になって給料も少なくなったとき、全部国保に皆ぶち込んでくる。国保はたまったものじゃない、何とかこれをやってくれと言って、これも年来の宿願でした。途中で大平内閣のあたりに任意継続制度なんかつくったりしましたけれども、十分なものでなかった。ようやく念願かなって退職者医療制度というものができました。しかしこのときも、プラスした今の二百万と同じ論理が通用しているのですよ。加入者按分率だとかそういうものを使って、そして、何ぼかプラスになった、こう思いましたよ。ところが違うのですね。これをやってもなおかつ何にも国保財政というものはよくならない。よくならないどころか、四百六万人いると思ったものが二百六十何万人しかいないで、物すごく悪くなってしまった。しかもそれを補てんもしない。ようやく今一千八億ばかりやりましたけれども、時既に遅しですよ。あのときの財政的なプレッシャーに耐えかねて、各自治体というものは全部大幅な一般会計からの繰り入れをしたのです。その前に保険税の大幅の値上げをした。それでも足りなくて一般会計からうんと繰り入れたのです。  ここに今持っていますが、新聞等では、この間厚生省が出した決算ですか白書の中には、国保の赤字の団体が減った、こうして大変喜んだ記事を出しているのですが、とんでもない話で、あの中から一般会計の繰入金を取ってごらんなさい。みんな赤字、軒並み赤字ですよ。  そういうような状態の中でどういうようなことが行われているかといいますと、時間かないから簡単に言いますけれども、退職者医療制度でもって何ぼかプラスになったのです。ところが、プラスになったといって今度は今までよこしていた国からの補助金をぶった切ってしまった。これは何ぼでしたっけ四〇%から三八・何%かにぶった切ってしまったのです。これは、私は大問題なのでこの間追及しましたけれども、時間がないのでしり切れトンボになってしまいましたけれども、とにかく切ってしまった。切るのはけしからぬことだけれども、ただのけしからぬさじゃないのです、これは。非常にひどいことをやっているのです。というのはなぜかといいますと、退職者医療制度と全然関係のない、老人医療に対する政府の拠出金の補助金を切っちゃったんです。退職者医療制度と全然関係ないですよ。老人保健の国保から出すところの拠出金の補助金も同率に、三四・八%か何ぽでしたっけ、退職者医療制度の補助金と一緒にしてしまったのですよ。これは地方から大いにブーブー文句が出ました。しかし、強引に切ってしまった。退職者医療制度を切ると一緒に関係のない老人医療の補助金をカットしたのです。  これはどういうことかといいますと、さっきのやつよりもっとひどいのです。さっきのやつは二百万あるのに藤本さんが百万貸してくれた。ところが、今度のやつは二百万あって、百万手持ちに持っている佐藤敬治に藤本さんが百万貸した。そして今度は百万よこせじゃなくて百二十万よこせと利息つけて持っていっちゃった。そうですよ。退職者医療制度だけの問題じゃないのです。老人医療制度のものからかすめ取っていっちゃった。こんなひどい話ないですよ。だから、退職者医療制度もやって、これでやれ安心と思ったらとんでもない。もとのもくあみどころじゃないですよ。  もとのもくあみというのは、昔筒井順慶のおやじさんが亡くなった。筒井順慶は若いので、盲人の木阿弥という人を連れてきて影武者にしたのですね。ところが、筒井順慶が年とって大きくなってきたものだから、これなら大丈夫と思ってそれをほっぽり出した。そこで、もとのもくあみになっちゃった。  それで、もとのもくあみと言うのですが、もとのもくあみは何ぼかいい目をしたのです。これは何もいい目をしない。やたら取って利息つけて持っていかれちゃう。こういうようなことをやっておって、何ぼ退職者医療制度をつくろうがあるいは老人保健をつくろうが、国保財政というのはよくなるはずはないのです。よくなるわけありません。よくならないどころかますます、片一方ではどんどん医療費が膨張しますから悪くなる一方なんです。こういう残酷無残なことをやっているので、今度でも簡単に地方人たちは引き受けなかった。知事会なんかも猛烈に抵抗したでしょう。これは単なる国の負担の地方に対する転嫁である、こう言って猛烈に反駁しました。反駁するのはもっともなんです。よくしてやるぞよくしてやるぞといって、どんどん悪くしていっている。  こういうことを厚生省がやっている。人を助ける厚生省が国保の財政を殺しているのですよ。何ぼいろいろなことをやったって、絶対にあなた方の考えでは国保財政というのは立ち直らない。しかし、そのうちに国保財政というのはこのままで行けばつぶれてしまいますよ。私がこの間も話しましたように、国保税というのは高くなっていく、どんどん高くなっていく。この間話しましたね、猛烈に高くなっていく。今や、今度は六十三年になりますと四十万でしょう。大変な金額なんです。これはいろいろなところを調べてみましたけれども、今や国保の方が政管健保だとか組合健保のあれよりもずっと高いのです。これは御承知のとおりだと思います。  私は一つの指標を調べてみたのです。どのくらいになっているかと思って調べてみました。限度額は三十九万のときですから、去年のやつを調べてみました。その町では三十九万の限度額を納めている人はどのくらいの所得額だかと思って調べてみた。そうしたら四百十五万です。四百十五万の人が限度額まで、それ以上の人は皆納めているのです。四百十五万というと、これいささかなものです。それで課税控除額、四百十五万から控除されるものが百三十二万。課税対象額が二百八十三万です。わずか二百八十三万から三十九万税金を取られるのです。これはもう一一%くらいです。大変な金額。わずかこのくらいの金額の中から――いや三百五十四万。だから一一%くらいの国保税を取られているのです。  それで、もう一つ調べてみた。この町で一体保険税の平均額がどのくらいになっているだろうと。そうしたら十三万二千四百円。この十三万二千四百円に該当する所得の階層はどのくらいだと思ったら百三十万六千二百円ですよ。百三十万。これから控除の五十七万引くと課税対象額が七十三万六千二百円。そうすると手取りが何ぼになるかというと百十一万八千九百九十円なんです。たった百十八万しかない人が十二万三千円税金を取られているのです。これも一〇%を超えています。とにかく大変な税率なんです。納められない。特に国保税というものは昔のあれみたいじゃなくて、賦課してあればみんな取られるのですからね。そういう強制的なあれを持っているのです。  そこで、今私が問題にしようと思ったのは、収納率がだんだん悪くなっていくのです。九三%ぐらいになっていく。そこで、これを高めようとして悪質滞納者と称して医療給付を差しとめるという制度を八六年か七年あたりからやっているのです。これは、さっきからの話じゃないけれども非常にひどい話だと思うのです。納められないのです、実際に。しかも、田舎へ行きますと、所得にかけるのじゃなくて、資産割というのがあって資産課税なんです。財産はあるけれども、金はないのです。それで財産を売って一々これをかけなければいけないというような状態の中で、とても納め切れない。納め切れない人が悪質滞納者として医療給付をどんどん差しとめられていく。こうなりますと、これは国保というのは内部から崩壊していく、こう思うのです。さっき申し上げましたいろいろな、厚生省がいいことをしてやるといって悪いことをしている。あれと比較してみて、一方ではあなた方はああいう無残な仕打ちをしてやっていれば、国保財政がだんだん悪くなっていって、一方ではこういう脱落者がどんどんふえてくるのです。これを一体どういうふうにするか、これが非常に大きな問題になると私は思っています。  あと一分ありますから申し上げますけれども、退職者医療制度だとか老人健保だとか、私は多少いいところがあると思います。退職者と老人を差し引いてみますと、組合健保、政管健保とそれほどの差がないのですよ。だからある程度よくなっていると思いますけれども、それにもかかわらず国保財政というのはよくならない。これはなぜかということですね。やはり最後には医療費の膨張というものをどこかで抑制する、これがなければ何ぼやってもよくならないのです。そこで、六十六年か五年になりますと、厚生省が何かこれを全部の制度を見直す時期ですね。あれで一体どういうふうな立て直しの方法を持ってくるのか、考えているのか、それをちょっとお伺いして終わりたいと思います。
  48. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 非常に広範な問題提起、御指摘でございました。私も郷里へ帰りまして各市町村長の話を聞きますと、何が一番頭が痛いかといえば国保問題だと言われます。私もそうだと思います。  そこで、国保の財政の長期安定化、これは最も重要な問題だと思うわけでございまして、その対策につきましては最善の努力を払ってまいりますが、やはり何といっても、先ほど佐藤先生の御指摘にございました国保財政悪化の原因の上に私は構造的な問題があると思うわけでございます。老人が多い、これは老人医療、老人保健制度で一応対応した、あとの医療費の地域差の格差と低所得者の問題、この低所得者の保険料の減免がその地域の保険者の上に上乗せされておるということからしても、他の医療保険制度の加入者に比べまして国保の加入者の保険料が高い、これはそういう理由もこれあるわけでございまして、当面は国保改革によりましてこの国保が抱えている構造的な問題、地域差の問題と低所得者対策、これに対応してまいりたい。六十五年には御承知のように老人保健制度による見直しもございますし、また、初めて国と地方が共同してこの国保改革に取り組むわけでございまして、初めての試みでもあるわけでございますので、その実施状況を十分見まして、六十五年には国保の長期安定のために所要の措置を講じてまいりたいと考えております。  なお、国保の財政長期安定化のためには、現在社会保障制度審議会にお願いをいたしておりまして、いろいろな各面についての御審議もお願いをいたしておるところでございまして、今後御指摘のように国保財政の安定化のために全力を尽くしてまいりたいと思いますし、そのことが我々が目指している、医療保険制度は別々でありましても各加入者の給付と負担の公平が図れる、この目的を達成するためにぜひとも国保の改善に取り組んでまいりたい、かように考えておりますので、この上とも御理解と御支援をお願いいたしたいと思います。
  49. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 終わります。
  50. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  51. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず、日銀においで願っておりますので、簡単に、これまでの大幅な円高によって巨額な円高メリットというのが生まれておるわけでございますけれども、なかなか国民生活の我々の立場から実感として物価面に十分還元されているとも思えないわけでございます。そこで円高メリットの還元の面で特に問題が多いと言われます個別品目についてこれから申し上げたいと思うのでございますが、その前に、日銀は物価の番人でもあられるわけでございますのでお伺いをしたいのでございますが、まずマクロ的な見地から、国内物価の現状及び先行きの見通しを簡潔に御説明を願いたい、こう思います。
  52. 青木昭

    ○青木参考人 お答えをいたします。  最近の物価動向でございますけれども、卸売物価で見ますと、昨年の半ばから秋口あたりまで木材、鋼材といったような建設資材、それから化学品といったようなものが上昇いたしまして、かなりの上昇を見ておったのでありますけれども、その後は一段の円高の進展、それからそのもとでの競合の輸入品の増加、それから原油価格の軟調といったような事情がございまして、再び弱含みに転じておるわけでございます。  ちなみに、先ごろ公表をいたしました一月の卸売物価につきましても、為替の円高の影響それから建設資材の増産等による市況軟化、さらには電力、ガス料金の値下げ等ございまして、前月比マイナス〇・七%ということになりまして、十一月、十二月もおのおの〇・五%ずつ下がっておりましたので、三カ月連続の下落ということになったわけでございます。  また消費者物価につきましても、こうした卸売物価の落ちつきを反映いたしまして引き続き前年比一%程度ということで、目下のところ上昇テンポが強まるという動きは格別見られないわけでございます。  最近の物価情勢、このように総じて落ちついた動きでございまして、当面こうした物価の安定が大きく崩れるという心配はないものというふうに思っておりますけれども、やや長い目で見ますと必ずしも手放しで楽観できない面もございます。  まず経済の実態面では、内需中心にかなり景気がよくなっておりますので、製品の需給あるいは労働需給といったようなものが全体として次第に引き締まってきておる。それから金融面では、昨年来マネーサプライが相当の伸びを示しておりまして、M2プラスCDの平残の前年比という数字で見ますと一月の伸びが一一・九%ということでございまして、かなり伸びが高い。こういう景気面、金融面の動向を見ますと、やや長い目で見た話といたしましては、引き続き物価については目配りを怠れない、こういうふうに思っております。
  53. 草川昭三

    草川委員 今、通貨供給量の増加の問題の御心配、これは以前から出ておるわけでございますし、それが利子にどう反映するか、また今後十分な時間をかけての議論が必要だと思うのでございますが、たまたま一月の日銀の情勢判断資料等を拝見をいたしますと、内外の価格差の大きい品目が少なくないという趣旨の論文が出ております。今申し上げました円高メリットの還元が十分でないという点を裏づけられているのではないだろうか。そしてまた、私は後ほど政府が持つところの諸規制の影響というもので国内品価格と輸入品価格との差の乖離が大きくなるのではないかということをきょうの議論の中心にしたいわけでございますので、まずもう一回日銀の御見解を賜りたい、こう思うわけでございます。
  54. 青木昭

    ○青木参考人 御指摘のとおり、これまでの円高の結果、輸入品の価格がかなり下落しているにもかかわりませず、農畜産物など輸入制限の存在する品目あるいは国内の規制か価格支持が行われている品目などにつきましては国内の価格が余り下落しないという状況が見受けられるわけでございます。私どもの調査月報の一月号におきましても、そのあたりを御指摘のとおり分析の上指摘をしたということでございます。  円高メリットと申しますのは、価格面だけでなくて企業収益の面あるいは個人所得の面にもあらわれるものでございますから、価格面だけ見て円高メリットが出てないというふうにも必ずしも言えない面もあるわけでございますけれども、少なくとも輸入品ないし輸入競合品につきまして、そうした商品の国内価格に十分に円高を反映していないものがあるということは否定できないところであろうかと思います。  個別品目に対する価格支持などのいろいろな制度にはそれなりにいろいろなやむを得ない御事情もあるのではないかというふうにも思いますけれども、これまでの円高の物価安定効果を十分生かしてまいりますためには、国内の競合産業の効率化とか生産性の向上を図るとともに、国内の諸制度、慣行の見直しといったようなことについて粘り強く取り組んでいただくことが大事だというふうに私ども思っております。
  55. 草川昭三

    草川委員 日銀さんへの御質問は以上でございます。どうもありがとうございました。  そこで、今の御説明を受けた形で、せっかくこう安いものが輸入をされてきた、それが例えば消費物価に最終的には行くわけでございますけれども、農作物の問題についてそれがどういうような状況になっておるか、あるいは農作物に関する諸問題がどう影響を受けるかということ二、三点申し上げてみたいと思うのです。  まず、今回のガット理事会でもいろいろと議論になっておるわけでございますが、たまたまそれから離れておりますけれども、小豆あるいは雑豆というものの輸入の状況はどういうことになっておるのかということでございます。これは、本来ならば政府の諸規制がきちっと法律的な裏づけでかかるべき豊作物の内外価格差を保護するのではなくて、民間団体がいわゆる一種の調整金というのをかけて実質的に内外格差を縮めていく、あるいは農家を保護するという、こういう状況があるわけであります。  かつて、昭和五十三年でございましたか、この委員会でも公明党の市川議員が提議をしておることでございまして、雑豆の輸入の仕組みというのは輸入商社四十五社というのが指定をされておるわけであります。その指定をされておるのは、だれが指定をするかというと、雑豆輸入基金協会という財団が発行する確認書を出さないと、四十五社という輸入商社は雑豆が輸入できない。そこで、この雑豆輸入基金協会というのは財団法人なんですね。これは通産省所管でございます。ところが、実際上のルーチンワークというのですか日常業務はやってないわけです。いわゆる瞬間タッチで本当に書類が通るだけの機構でございますが、ここで二〇%の課徴金がかかる。課徴金というのでしょうか、調整金というのがかけられるわけです。おかしいですね。瞬間タッチで二〇%、年間約六十億ここへ入るわけです。その金がどこに行くかというと、三分の一は日本貿易振興会、ジェトロへ行くわけであります。それからもう一つは、農林省所管の日本豆類基金協会へ行くわけであります。あとの三分の一は税金になるわけであります。国税の場合は、我々もレクチャーをやったのですが、いろいろと計算するとちょうど三分の一になるのです。  何かちょっと見たところでは、瞬間タッチ二〇%を国税が三分の一、通産が三分の一、農水が三分の一、こう分捕り合うような形に思えてしようがないのですが、これはいささか、今日的な国際経済に対応する中で政府としてどういう申し開きを海外にすることができるのか。法律で裏づけられる、あるいは蚕糖事業団のように、あるいは肉あるいはお米というような事業団方式でも今問題になっておるわけですが、それに隠れたこういう制度というものをいつまでも続けることは、私は国際的な批判を招き問題が残るのではないかということを言いたいわけです。これは通産省、どういうようなお考えでございますか、お答えを願いたい、こう思います。
  56. 畠山襄

    ○畠山政府委員 雑豆の輸入割り当てに関しまして今草川委員が御指摘になりましたことは、細部を除きましておおむねそういう事実関係になっておろうかと思います。  今御指摘にございましたように、昭和五十三年、四年、五年、公明党からいろいろ御指摘もございまして、私どももこの制度について種々改善措置を講じてきたところでございます。例えば、輸入の枠の公表をしろでありますとか、あるいは消費者の利益を考えてもう少し需要割り当てと申しましょうか共同輸入方式を導入しろとか、あるいは輸入価格、国産価格について報告を徴収をするようにしろとか、種々御指摘を受けまして改善をしてきたわけでございます。  今御指摘の国際的な関係、雑豆につきましては、一応今回のガットで大方の理解を得た品目にはなっておるわけでございますけれども、今後ともいろいろ改善すべき点がございますれば、そうした関係も考慮しながら農林水産省とも十分相談をいたしまして、過去同様にまた改善していくべきところがございますれば改善をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  57. 草川昭三

    草川委員 長々とこの種の話は申し上げませんが、ひとつ通産も農水も、特に通産の場合も非常に厳しい経済外交を今やっておみえになるわけでありますから、自分の足元のかかる仕組みというものは何らかの知恵を出して新しい対応を立てられたい、私はもっとオープンに競争をすべきではないだろうかと、こういう提案を申し上げておきたいと思うのです。  それからその次に、砂糖の問題はきょうは答弁はとりません、時間がございませんから。  砂糖についても実は安定資金というのが千二百四十九億ももうたまってきておるわけであります。しかも、国際価格との比較をしまして、その国際価格との差について輸入業者にそれぞれ、あるいは輸入業者ではなくて消費者団体、加工メーカーに対してその安定資金を出させるわけでございますが、そのスケール、いわゆる物差しというのが百五十九カ月さかのぼってロンドンの砂糖市場の価格を判定するわけであります。少なくとも国際価格の水準が一体幾らかという統計は過去三カ月とか半年とか一年とか三年とか、まあそんなところが相場じゃないですか。しかし百五十九カ月ですからぬ。なぜそんなに長いスケールが要るんですかと、こう聞いたら、実は円高の昭和四十九年の一番高いところの水準をどうしてもキープしておきたい、だからスケールがずっとこう伸びるわけですね。こういう恣意的な砂糖の基準というんですか物差しをいつまでも使うべきではない。そして、まあこれは国内の砂糖生産者との調整という問題、難しい問題、お米と一緒の問題がありますけれども、少なくとも高い砂糖を我々が食べるということですから、御存じのとおり、あんパンのあんこはほとんど中国だとか台湾だとか韓国で製あん、あんこがドラム缶に詰められて日本にやってきて、我々がそのあんパンを食べるということになるわけですよ。だから、そういういわゆる空洞化現象というものも非常に深刻でございますから、この砂糖も同様に私は農水省に変えていただきたいと、こういうことを申し上げてみたいと思うのです。  さらに私は、これも何回か問題提議をしておりますが、生糸の問題。  これは過日民社党の永末委員も御発言なすっておみえになりますから簡単に申し上げますけれども、昨年の秋から生糸の価格というのは非常に暴騰しておるのです。農水省は御存じのとおりの安定基準価格というのをキロ当たり一万六百円、こう抑えておりまして、蚕糖事業団の方から生糸の在庫を放出しております。これが二月の二十三日までということでございますが、十三回、一万二千六百十俵放出しております。しかし、生糸の一つの価格の指標となる先物市場の現況というのは一向に下がっていない。ここ最近ちょっと下がったようでございますけれども、非常に高くて基準価格をオーバーをしておる、こういうことになりますと繭糸価格安定法の精神にも反することになるのではないか。要するに、約半年近くも上位価格以下にその相場というものがおさめられないのは制度的に欠陥があっておる。思い切って、非常に量が少なくなってきたんだから、先物相場というものは実情に合っていないんだから、もうこの際抜本的に見直したらどうだろうかと思うのでございますが、その点についてはどのようにお考えになられるのか、お答え願いたいと思います。
  58. 吉國隆

    吉國政府委員 生糸の価格が安定上位価格を昨年の秋以降突破いたしまして上昇しているという点につきましては、ただいま先生がお触れになったとおりでございます。  今お話ございましたように、生糸の繭糸価格安定制度の趣旨に照らしまして、私ども価格安定帯の中にできるだけ価格が安定的に推移をするようなことを目指しまして、事業団からの売り渡しに努力をいたしておるところでございます。先生もお触れになりましたように、相当多量の生糸を放出いたしておりまして、一月、二月は月間の生糸生産量の半分以上に相当するような売り渡しをいたして、制度の趣旨に沿った価格安定に努めておるところでございますし、今後も適正な売り渡しに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  59. 草川昭三

    草川委員 もう一つ、今の答弁に私の方からの提案をしたいと思うのですが、私の考え方では、それだけ放出をしてもなかなか値が下がらないということは、いわゆる生糸、供用品が不足をしているのが原因だと思うのです。六十年に繭糸課長の通達で、事業団放出の生糸のいわゆる再検査というのが禁止をされておるわけです。思い切ってそれを外して、いわゆる現物市場というところに事業団放出のものを出したらどうなんだろう。そういうことをしない。あるいはそういう仕組みの裏を利用した大量の買いを入れた相場師というのが非常に制度というのを利用している。だから、私どもが数年来決算委員会でも申し上げておりますように、蚕糖事業団のあり方というのが会計検査院からも批判をされる、臨調からも批判をされる、こういうことになっているのではないかと思うのですが、供用品が不足をしていたら再検査を認めるという考え方は持たないのか、お伺いをしたい、こう思います。
  60. 吉國隆

    吉國政府委員 ただいまお話の供用品の再検査の問題につきましては、先生御案内のとおり非常に価格形成との関係で微妙な問題点をはらんでいるところでございます。  先生もお触れになりましたが、この生糸の検査問題につきましては、品質に応じた生糸の円滑な流通を確保していく、また適正な価格形成を確保していくというような観点を踏まえまして、総合的に勘案してあり方を考えるべきであるというふうに考えておりまして、現在は再度の検査を受け付けないという考え方を基本といたしているところでございます。
  61. 草川昭三

    草川委員 生糸の問題は余り深入りをせずに、これで終わりますけれども、一番最初に申し上げましたように、いわゆる今日の先物市場というもののボリュームが小さくなる、あるいは信頼性というのが非常に薄くなる、そして実情に合っていない。この先物市場は生糸ばかりではありません。小豆も同じであります。そういう基本的な先物市場の現状というものをもっと農政当局は憂えてもいいと私は思うのです。そして、本当にこの開放経済体制に対応するもの、しかも一方では価格形成というものが法的にあるわけでありますから、それを考えていただきたいということを申し上げて、肥料の問題に移りたいと思うわけであります。  私は、日本の農業にとって肥料というのは非常に大切である、当たり前のことですね。硫安、尿素及び最近では高度化成の位置づけというものが非常に大きくなってきておるわけでございますが、価格カルテルを容認する肥料価格安定臨時措置法というのがあるわけであります。この問題について少し触れてみたいと思うわけであります。  最初に、日銀からもお話がございましたように、日本の国のメーカーの中にも国内で売る価格と輸出をする価格との間に大変な乖離があるというのを今資料でお配りをいたしました。あるいは製品として、あるいは原料として外国から、特に最近では韓国から非常にたくさん入ってきておりますが、日本の製品に比べると非常に安いものが日本に入ってきます。にもかかわらず、一番末端のお百姓さんが使う肥料というものが非常に高いわけであります。  その下のところにも数字がございますが、これはある県の単位農協の肥料の水稲十アール当たりのパーセントを出しておりますが、平均いたしまして、収入に占める肥料の割合というのは七、八%だと言われております。これがもし円高のメリットというのがもっと反映するならば、肥料は若干安くなっておりますが、もっと幅広く安く農家の手元に入るならば、随分農業経営というのは楽になるわけでありますね。なぜそれが反映をしないのかという議論をしたいと思うのです。  それで、最近の円高、今言ったように非常に安くなっておるわけですが、価格取り決めに一体どのように反映しておるのか、これは通産省にお伺いしたいと思うのです。
  62. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 肥料の価格につきましては、先生御存じのとおり肥料価格安定臨時措置法、今お話がございましたが、それに基づきまして毎年生産業者と農業者団体との間で取り決めが行われております。その取り決めを私どもいただいているわけでございますが、これまでのところ、おっしゃいました円高が発生いたしました六十年以降、円高のメリットの還元につきまして必死の努力を重ねておりまして、適正な価格の実現ということに努力しておるわけでございますが、具体的には、六十年を仮に一〇〇にいたしますと、例えば硫安につきましては二二%、尿素につきましては三五%、高度化成肥料につきましては二割弱価格引き下げの努力が行われていると私ども存じております。基本的には両業者間でお話があるわけでございますけれども、いずれも農業の方々の重要な原料であるというようなこと、産業の方も円高の還元について努力する、双方とも必死にそういう観点で努力していると私ども存じております。
  63. 草川昭三

    草川委員 必死に努力をされてみえる結果の数字を今申し上げますと、例えば昨年の七月から十二月の、一番右の欄を見ていただきたいのですが、輸入と国内価格との差が二・三倍あります。輸入は一万九千円、これは尿素の場合ですね。国内価格は四万三千円。それから高度化成、一番下の方へ行きましょう。国内では六万三千円、トン当たりですね。輸入は二万九千六百二十七円、二・一倍ですね。これは六十年を書いてないのは、六十一生からずっと韓国から入ってきておるわけであります、高度化成の場合は。硫安の場合でも、今努力をされたという結果、国内と輸出の価格は二・七倍になるわけであります。  これは私どもどこからとってきたかといいますと、大蔵省の貿易月表あるいは全農の資料との対比であります。もちろんこの中には包装代だとか、やれ運賃がどうだとかといういろいろな御意見があるのです。それから、品物の質が違うという答弁を多分農水も通産省も用意をしてみえると思うのです。どうせそういう答弁はわかっておりますから、私の方から時間がないので申し上げますと、品質が違うとおっしゃいますが、ほとんど品質は違いません。私どもも韓国から入ってくる高度化成を調べてみました。韓国から入ってくる高度化成は水田にまくと浮くと、こう言うわけです。だから国内と違うと、こういう答弁をするのですよ。あるいは固結をする、固まると、こう言うのです。確かにそういう時期が三年から四年前にあったのです。だけれども、この一月あるいは去年の十二月の暮れの韓国から入ってくる高度化成は、高度化成といっても一五、一五、一五だとか一五、一三、一二だとか、いろいろな組み合わせがありますが、一般的に、高度化成を私も手でつかんでみても、袋を払った最後に袋の隅っこに粉が出る程度なんですよ。しかも、それを水田にまいても浮きっ放しで肥料にならぬということはないのですよ。こういう事実を本当に御存じかどうか。こういう事実は余りお百姓さんは知らないのです。  私も、きょうのこの質問の前に農家の青年とずっと会って話をしてきました。特に青年は一体これからどうなるのだろうという心配ばかりですよ、農村青年というのは。そして合理化という言葉なんか少しも出ぬようにしてもらいたいというぐらいの注文をつけて私は心配をしながら今質問をしておるのですが、末端の農民というのは知らないのですよ、こういう仕組みは。今通産省が言われたように、円高メリット少しやりましたよ。事実下がっているのですよ。しかし、私が今言ったようにこんなに内外格差があるとは思っていない。この格差が、ストレートとは言いませんけれどもお百姓さんのところまで行ったら、随分農業経営というのは楽になる。なぜそれができないのか。その輸入をする一番大きい力というのは実は系統農協ですよ。全農ですよ。これが七五%から七六%のシェアを持っておるわけです。そして商人系と言われる一般の小売商の位置づけというのはわずか二四%、輸入をする場合でも。しかし、それが県の段階へ行き、単位農協へ行き、本当にお百姓さんの手元でどこから肥料を買うかというと、九十数%は単位農協から買わざるを得ないわけです。選択の自由が実際はないわけですよ。もっと情報を教えてくれというのですよ農村青年は、こういう話を。これは私は非常に深刻だと思うのです。  なぜそういう流通形態になっておるのか。それは、今日の全農というような組織が自分で肥大化してしまった。だから一定の高額な手数料を取らなければ経営できないわけですよ。全国で四十万人でしょう、専従職員を含めると、そういう方々は。もちろん保険もやっていますし、いろいろなことをやっていますけれども、肥大化してしまった。一番農村青年の胸にぐたっときたのは、私どもが今、県の農協、全農の本部に行けないというのですよ、余りにも建物が立派だから。県庁より立派だ、こう言うわけですね。本当に我々農民の声が反映しておるのかどうか、それを国会で取り上げてもらいたいというので、私はそのような趣旨で今申し上げておるのですが、一体農水省はこの肥料格差の問題、内外格差、そういうことについてどのようにお考えか御答弁を願いたい、こう思います。
  64. 吉國隆

    吉國政府委員 肥料の価格の問題につきまして、農業生産上非常に重要な資材でございますし、また農家の方々が大変心配しておられるのも、私どもただいま先生がおっしゃったとおりの状況ではないかというふうに認識をいたしております。  この肥料の内外価格差については、先生もお話しになりましたが、品質なりあるいは銘柄の品ぞろえの面、そういった面で格差があるというふうに考えておるわけでございまして、裸の価格比較どおりの格差ではないのではないかというふうに思っております。また、輸入につきましては特段の制度上の制約はございませんので、また、全農におきましても輸入品の販売とか、あるいは高度化成等につきましても、農業者の要望に応じた品質のものについての供給をしていくというようなことも取り入れてやっておりますので、今後とも今先生がお話しになりましたような問題が生じないように、農協の事業運営の指導も含めまして努力をいたしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  65. 草川昭三

    草川委員 今、輸入は自由だとおっしゃいましたけれども、例えば、先ほど申し上げました高度化成は韓国から入ってくるのです。韓国は三社です。三社から入ってくるのですが、それを実際だれが受けとめるかというと、輸入カルテルとは言いませんけれども、非常に有力な肥料の団体あるいはそこのリーダー、そういう方々が大手商社と組み、そしていわゆる系統農協系の商社と組んで、実質的にはもう一元輸入なんですよ、今申し上げたように。しかも、韓国から入ってくる高度化成がどのように日本のメーカーの中で加工されて高くなるかというと、私が少なくとも見てきた範囲では、リパックですよ。袋詰めの袋が変わるだけですよ。まあ少しまぶす程度ですね。だから、そこで三倍も値段が上がるわけですから、私は、これはお百姓さんもう腹が立つと思うのですね、こういう話を聞けば。  今、肥料業界は景気がよくないのですよ。しかし、そういうことをやっている肥料会社というのは、多くの景気の悪い肥料会社の中でも高収益を上げておるのですよ。私は、そういうのは徹底的に農林省は指導してもらわないと困ると思うし、このもとになりましたのは何といっても肥安法、五年間の時限立法として昭和三十九年に成立をしていますけれども、その後四回も延長されて現在に来ております。肥料に対する統制は三十年以上も続いておるわけでございます。  まず、公正取引委員会委員長にお伺いをしますけれども、肥安法の価格カルテルについては一体どのように考えられるのか、この際お答え願いたい、こう思います。
  66. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になった問題でございますけれども、言うまでもなく、一般論として申し上げますれば、経済取引というのは、基本的には自由かつ公正な競争ということが原則でございまして、競争政策上は、この原則に基づく限り、各種の政府規制なり、あるいは競争政策の基本になっております独占禁止法の適用除外のような事例というものは必要最小限度にとどめられるべきであるというのが基本でございます。  今問題になっております肥料価格安定の臨時措置法でございますけれども、御承知のとおり、これは随分長い歴史がございまして、それぞれの段階、ステージにおきましてそれなりの役割も果たしてきたというふうに評価されるわけでありますけれども、現時点においてこれをどう考えるかという問題でございます。  さしあたり、御承知のとおり今の法律が生きておりますのは、五十九年の期限到来のときに延長の措置が講じられたわけでありますが、当時もいろいろ議論がございましたけれども、時あたかも肥料化学工業の構造改善を徹底してやる、そういう作業が並行いたしておりまして、したがって、望むべくんばこういう法律がなくても済むように、そういう状況をつくるんだという前提のもとで、当時、法律の延長やむなしという結論になったというふうに私は承知をいたしておるわけでありますが、この種の例外措置というものにつきましては、これはなるべくない方がいい、あるいは再度延長のような問題が起こりましたときにも、この延長の問題というのは回避されることが望ましいというのが当委員会の基本的な考え方でございます。ただ、現在の法律期限が参りますのが来年でございまして、まだ若干の時日がございますので、関係省当局と今後入念な意見の調整を図っていきたいというふうに考えております。
  67. 草川昭三

    草川委員 それなりの御答弁はわかるのでございますけれども、要するに、今関係省庁とのいろいろな協議をしたいとおっしゃっていますが、委員長も触れておられますように、いろいろと問題がある、もうそれは卒業をしたらどうだろうということを言外に言っておみえになりますが、公取として回避をするということが望ましいのかどうか、そう思っておみえになるのかどうか、再度念を押したい、こう思います。
  68. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど冒頭にも申し上げましたように、回避することが望ましいというふうに考えております。
  69. 草川昭三

    草川委員 そういうことで新しい時代が来ると思うので、ここであえて通産なり農水の御意見はとりませんけれども、私は今、一つ肥料の問題を出しました。こればかりではなくて、たくさんの内外格差問題がございますし、新しい問題、ガットの問題等に対する対抗措置として数量制限だとか、その他の品目につきましてもいろいろと調整金を取るというような話が出てくると思うのでございます。  外務大臣にこの際ちょっとお伺いをしたいと思うのですが、外務大臣、大変この種のものに対して今後御苦労なされると思うのでございます。やはり現場を持つ省庁と多少意見が違うと思うのでございますが、国際的な風圧というものを小手先細工の形で回避することはいかがなものか、私どもはそう思うのです。もっとじっくりとうみを一回出して、そういう肥大化した組織というものがあるならば、それを一回原点に戻して対応していかないと二十一世紀へ向かってのあり方というのは生まれないのではないか、こう思うのですが、その点、外務省どのようにお考えになられるか、お伺いしたいと思います。
  70. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど来のいろいろな農産物並びにそれに関連するお話をまとめての御質問だ、こういうふうに受けとめてお答えをしたいと思いますが、もちろん、他省の所管で外務省の所管でありませんから余り深入りはいたさない方がいいと思います。しかしながら、現在、自由貿易推進のために世界がいろいろな機関において努力しておることは、私たちも十分認識をしなければならない時代が来ておると思います。日本は、特に戦後四十三年の間、自由貿易ということで大きく伸びた国家でございますから、したがいまして、その国家が今ガットにおきましても、言うならば三人の大物がいる、一つは日本、一つはアメリカ、一つはECと言われる時代でございますので、やはりガット体制というものにくみしてこそ今後の発展もあろうか、かように存じます。  ところが、残念にして制度がなかなかそれに追っつかないというふうな面があるのではないか、私かように考えますから、いずれにいたしましても、やはりガットという一つの大きな骨組みが世界機関としてある以上は、それに沿うよう、それに整合性を持たすよう、そしてまた市場メカニズムというものがいずこにおきましても発揮せられまして、それが言うならば生産者にもまたそれだけのメリットがございましょうし、さらにはまた消費者にもそれだけのメリットが欲しいものである、こういうふうに私たちは考えて今後対処したい、かように思っております。
  71. 草川昭三

    草川委員 外に対する外務大臣お話がございましたが、いずれにいたしましても、そういう厳しい体質の中で日本の農業経営というのは深刻な事態になっていくわけであります。いずれにしても体質を改善をしなきゃいけないわけでありますが、今の農民はどちらかというと戦前非常に苦労をなされた。だから戦後農協組織というものをつくって、購入者に対しても、あるいは売る場合でも団結して強くならなければならないというので、大変な御苦労があったと思うのですね。そして日本の農業というのを支えていただいた。しかし、それがいつの間にか組織が肥大化してしまったということを私は言ったのですが、逆にそれは農民にとって今重荷になってきておるのではないだろうか。安い物が手に入らない、こういう状況になっておるということがいろいろと言われておりまして、総務庁は行政監察をしようということで、前長官のときにいろいろな提案をなされたようでございます。  それで、これは私どもが漏れ承ると、ことしの二月にはもう出るだろう、特にその内容については、営利主義に傾く組織というものについては強く言おうというようなことであったやに聞いておるわけでこざいますが、それがどうも延びて、一体これがいつになるのか、三月に発表できるのか、四月に発表できるのか。何か私どもが聞きおるところでは、総務庁に対して協力をした全中さんなんかがかなり強い注文をつけておるというようなことを聞くわけでございますが、私はやはり総務庁は、長官はお見えになりませんけれども、これはきちっと答えるべきものは答えていかなきゃいかぬと思うのです。中身はもう大体わかっておりますが、いつ、二月中にやるのか、三月中に発表できるのか、その時期だけ総務庁答えてください。
  72. 山本貞雄

    ○山本(貞雄)政府委員 お答えいたします。  農協行政監察につきましては、御案内のとおり、農協が農業生産の増進と組合員に対する奉仕という目的に即したものとなっているか、そういいました観点から、農協の事業運営の実態と、国、県の指導監督状況につきまして実施しておるわけでございます。  私ども、二十六の都道府県にわたりまして約百数十の単協等含めまして調査をいたしておりまして、調査のデータが相当膨大でございます。そういうことで、そのデータの分析あるいは問題点の解明、そういったことをやっておりまして、さらに、この内容につきまして農水省あるいは全中等――私どもの行政監察は、あくまで事実、実態と問題点というものを分析した上で関係者と十分これを詰めてまいります。その上で勧告案をまとめますので、そういったことに手間取っておりまして、私どもは何月とは現段階では申し上げられませんが、できるだけ速やかに農水省に対してこの勧告を出したい、このように現段階で思っております。
  73. 草川昭三

    草川委員 時期は明言されませんでしたが、とにかくきちっとしたものを出していただきたい、こういうように思います。  そこで、最後になりますが、農林大臣にお伺いしたいと思うのですが、今私がいろいろと問題を提議いたしました。非常に農家経営も苦しくなってきておるわけでございますが、そういう中でひとり農協組織のみが組織というものを肥大化させてしまった、そして農家への奉仕という原点を忘れたのではないかと私は思うのです。この際、農協は設立の初心に立ち返って、組合員農家から支持される組織にすべきではないだろうか、このことについて大臣の率直な見解を欲しいのです。  そして同時に、これはしっかりしないと都市の労働者は本当に怒るわけですよ。そうすると対立が始まるわけですよ。私どもが農家青年とひざを突き合わせると、水耕栽培の連中なんかはこう言うのです。私は年収入千二百万あると言うのです。ひげ生やした工場労働者みたいなんです。彼らは、補助金をもらうから日本の農業はつぶれるんだ、こう言っているんですよ。水耕栽培の若い連中がそう言うのですよ。そういう声を知ってくれ、こう言っているわけですよ。だから思い切って体質を強化したい、しかし、青年はおっかなびっくりなんですよ。そういう意味では、今のこの肥大化した組織がひとり歩きをするというところに農林省は的確な指導をしていただきたい、こう思うので、大臣の見解を求めたいと思います。
  74. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 いろいろ御指摘をいただきましたが、今、最後の部分だけについて答弁をせよということでございますので、率直に申し上げます。  総務庁からあるいは監察という形、いろいろな形で指摘を受けるまでもなく、我が省といたしましてはそれなりの自覚をいたしております。そして、先生おっしゃるような実態も確かにあるということを率直に認めます。であればこそ私どもは積極的に、農協批判が那辺にあるか、その原因は何かということに大きな関心を持って行政指導をしなければならぬ、こう思っております。それは農協だけのためではなく、また国民のためである、こう思っております。  と申し上げますのは、今米をつくっている農家は米だけが生産者であって、あとは全部消費者でございます。そういう部分が非常に多うございます。あるいは、小豆をつくっている人たちは、畑作輪作体系の中で畑作のみが生産者であって、ほかの部分は全部消費者である、こういうことで時代が変わっております。と同時に、あわせて国際化の中でいろいろな問題もございます。でありますから、一口に言えば、今日の農協は、戦後の農業協同組合というものは、やはり戦前の設立当初といいますと産業組合運動を進めてきた当時の精神に立ち返った生産体制というものを考える、それが原点であり、そして購買、販売の努力もあわせて進めていく、こういうことでなければならぬと思っております。
  75. 草川昭三

    草川委員 大臣ははっきりと原点に戻る、こういうことをおっしゃいましたので、以上で農水関係の質問を終わりたいと思います。  そこで、外務大臣が長く待っておみえになりますので、ちょっと順番を変えまして、パレスチナの問題をやって、外務大臣に御退席願いたいと思うのでございます。  きょうもニュースでやっておりましたけれども、パレスチナ問題についての残虐なイスラエルの仕打ちというのは目に余るものがあると思うのです。これはヨーロッパ等では連日大きく報道をされておりまして、関心が非常に高まっておるのですが、我が国は非常に遠い国だというところもございますし、オイル問題等も安定をしておりますから非常に関心が薄い。しかし、やはり同じ人類としてもっとこのパレスチナ問題については関心を持つべきであり、憂慮の意を国としても上げることが必要だと思うのでございますが、我が国政府の対応をお伺いをしておきたい、こういうように思います。
  76. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 西岸、ガザの騒擾事件、国連の決議があったにもかかわりませず一向におさまらない、まことにこれは遺憾なことだと思います。したがいまして、日本といたしましても、既に私自身の所見も広く世界に述べましたし、なおかつ、イスラエルの大使を二度にわたりまして外務省に招きまして強く抗議をいたしております。当然これは、今草川委員が申されますとおり人道上の問題として、私たちはやはり国際ルールにのっとり速やかなる和平の実現に最善の努力を尽くしていかなくてはならぬ、かように思っております。  今、日本は、この間も私申し上げましたが、外務大臣の外交方針演説におきましても、南極と北極にさわらなかっただけで、ほかは全部さわったねというふうな感想を漏らしてくださった人がいるほど、東西南北を問わず、やはり今、日本の国際社会における地位のことを考えますと、いろいろな面で努力をすることは必要でございますし、国連等を通じ、さらに財政的、経済的な面におきましても今後努力を惜しんではならない、むしろ積極的に取り組んでいきたい、かように存じております。
  77. 草川昭三

    草川委員 ぜひそういう形で外務省としても取り組んでいただきたい、要望を申し上げておきます。  厚生省に医療問題についてお伺いをいたします。  薬でございますけれども、六十二年十月一日付で制がん剤の再評価が指定をされております。中央薬事審議会の抗悪性腫瘍剤調査会で制がん剤の三十成分について検討した結果、十成分について問題があるとして指定をされておるわけでございます。これらの中に有名な薬があるわけでございますが、免疫性制がん剤のクレスチン、ピシバニール、これがデータを出し直すということになるわけでございますが、このことについて詳しく聞いておりますと、きょうは時間が大分食い込んでしまいましたので、私がきょう言いたいのは、このクレスチンに対する再評価の指定の直前に、クレスチンの後発品、いわゆるゾロでございますが、二社承認をされておるわけですが、これはおかしいじゃないか。要するに、再評価をしなければいかぬというのは問題があるから再評価をする。しかし、これが決まっておるにもかかわらず二カ月前に同じような薬が二社承認をされるというのは一体どういうことか、厚生省からお伺いしたい、こう思います。
  78. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 医薬品の再評価の問題でございますが、この制度は、承認を受けました医薬品がその後何年かたちまして、その時代における医学的、薬学的水準に照らして果たして妥当なものかどうかということをもう一度見直そう、その必要のあるものについて行うものでございます。  今御指摘のございましたように、六十二年の十月一日にクレスチンが再評価の対象として指定されまして、また同時に、その以前、六十二年の八月にクレスチンと同様の医薬品が新たに製造を承認されておるわけでございます。私どもといたしましては、一方においてこの承認申請、一方において再評価という制度を持っておりますからその関連になるわけでございますが、医薬品の承認申請につきまして従来より申請順にこれを行ってきておりまして、八月に承認いたしましたものも、そのルールにのっとって承認の順番が参りまして、審査の結果承認をしたものでございます。  この期間につきましては、申請から承認までの大体の標準的な事務処理期間を決めておりまして、医療用の場合には大体一年半ということでございます。今御指摘のありました承認された品目は、ちょうどその期間が六十年八月どろに大体来たわけでございます。一方、クレスチンの再評価の指定につきましては十月一日でございますが、その前に中央薬事審議会におきまして、六十二年の九月に再評価に指定すべきであるということで指定したわけでございますので、この十月一日以前においては、再評価の手続において、中央薬事審議会で再評価として決定すべきであるという時点において初めて明確になったわけでございますので、後発の品目が承認された時点ではまだ再評価の決定までには至っていなかった、そういう時点において新製品の承認のルールに従って承認をした、こういうことでございます。
  79. 草川昭三

    草川委員 六十二年の八月にカルボクリン末、これは大洋薬品ですね。それから同じ時期にエトール末、東菱薬品工業、これも今言われたように、八月段階ではわからぬから自動的に認めた。ところが、あと二カ月たって十月に再評価になりましたから、二カ月前に製造承認になった薬も再評価になるわけです。そうでしょう、そういうことでしょう。
  80. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 再評価に指定されました医薬品と同一のものでございますので、再評価を受けることになるわけでございます。
  81. 草川昭三

    草川委員 これはどう考えてもおかしいですよ、我々国民の立場から言うと。  それで、再評価になりますと、この申請している後発の製薬メーカーはもう権利放棄で待機なんですよ。製造承認されないわけですから、この会社が独占的にいく、約二年間だと思いますけれども。ここら辺が私は幾ら考えてもわからぬのです。それは知らなかったとは言えませんよ、厚生省ですから、二カ月後に再評価になるというのは。しかし時期が来たから認めました、これは私は納得できない。おかしい。しかし、これは幾ら議論をしてもだめなんですね。  またおかしいのですよ。ピシバニールというのがありますけれども、これも後発品として申請をしたメーカーがあるのです。販売名バシロニン5KEその他がありますが、これはたしか鐘紡だと思いますが、申請を五十七年六月にしておりますが、取り下げられておるのですね。厚生省が、おい、君はやめておけよと言って取り下げた、こういうわけです。新しく今度できた二社というのは、五千種類のキノコの株、サルノコシカケですが、難しいのですが、その菌が五千種類あるんだが、たまたまぴったり一致したというのですね、五千種類の菌が。それだから仕方がないので認めたというのですが、ここらあたりも私は納得できないものがあるのですが、きょうはどんどん時間が過ぎていきますので、これはもう深追いはやめて問題提議だけにしておきます。  それから、過日来から血友病問題について問題が出ております。きょうは絞って、その際出ました血友病の問題について、財団法人血友病総合治療普及会というのがございますが、これは安部先生がやっておみえになる財団でございますが、事務所というのが大学の近くにあるのでございますけれども、実質的に、私どもが調べた範囲では、その事務所で財団活動をやっていない。研究活動というのはほとんどが帝京大学と委託をしておりまして、そこでやっておみえになる。しかも、財団の経費についてはかなり強いプレッシャーがかけられまして、各メーカーがお金を拠出しておる、こういうことになっておるわけでありまして、この財団というのは、今は血友病の患者の方々のフォローアップをいたしておりますけれども、いわゆる財団としての事務所の場所での活動というのはない。事務員の方々も大学の副学長室で御勤務をなすっておみえになる。これは単なるトンネルの法人ではないか。もう少し厚生省はそこらあたりの厳格な監査があってもしかるべきではないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  82. 北川定謙

    ○北川政府委員 この財団法人血友病総合治療普及会は、血友病患者の血友病に関する研究を行うことによりまして、その患者の障害の軽減、それから社会参加の促進というようなことを目的として活動をしておるわけでございます。  ただいま先生から御指摘がございました点、いろいろと問題があるわけでございますが、財団法人が特定の事務所を持つ、独立をした事務所を持つ、これは一つの基本的なことでございまして、当財団もその点はきちんとしておるわけでございます。ただ、財団と申しましてもいろいろな活動形態があるわけでございまして、この財団は血友病に関するいろいろな研究活動を助成する、あるいは患者のそのためのいろんな問題について活動をする、こういうことでございますので、必ずしもその財団の事務所ですべての仕事をするということではございません。ただ、先生御指摘の中にも一部ございましたが、その事務所がきちんとした連絡の拠点になる、これは非常に必要なことでございますので、その点につきましてはなお一層問題のないようにということで、厚生省としても指導をしてまいっておるところでございます。
  83. 草川昭三

    草川委員 問題があるから私ども提議をしておるので、この先生ばかりじゃないのですよ。私どももいろいろとおつき合いをしている先生がいるわけでございますが、大学の研究をなすっておみえになります教授の中には、かなり問題のある資金集めをなすってみえる先生方がおみえになります。  この点についてはさらに問題を提議をしたいと思うのでございますが、その前に、過日二十三日のこの委員会で、私どもの同僚議員の宮地先生がこの血友病の問題について取り上げられまして、九州の小学生のケースを質問をしました。その際薬務局長は調査中だという答弁があったわけでございますが、その後この調査はどうなったのか、明快にお答えを願いたい、こう思います。
  84. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいま御指摘のございましたケースでございますが、これは昭和六十一年度の厚生省のHIVキャリアの発症予防・治療に関する研究班の報告書に記載されておりましたケースでございまして、昭和六十一年五月にはエイズ抗体検査は陰性であったが、昭和六十二年五月に今度は陽性になった、こういう事例について調査をいたしたわけでございます。  私どもが調査をいたしました結果、この患者を診療しておりました医療機関の診療録に基づきまして病院長から報告が参りました。それによりますと、昭和六十年の八月二十二日以前は凝固因子製剤のうちの非加熱製剤を用いておったわけでありますが、昭和六十年八月二十三日以降は、病院で注射をする分と患者が持ち帰る分、これら両方を含めましてすべて加熱製剤が使用されているという報告がなされております。  一方、この患者の母親の記録によりますと、その八月時点以後において非加熱製剤を使用したことがある、こういう記録があるということも同時に報告されておるわけでございます。  このケースにつきましては、この研究班の報告書におきまして、一つは、エイズ抗体になりやすい人となりにくい人といるということも同時に書かれておりまして、やはり体質によってそういう差があるということは事実のようでございます。したがいまして、六十一年五月に陰性であり六十二年五月に陽性であったというこの結果をもとに、非加熱製剤の使用がいつまでであったかということを判断するのは大変難しい問題でございます。したがいまして、いろいろな可能性が考えられるということでございますので、私どもは、この報告の結果によって断定的な結論を得るということは極めて困難であると考えておる次第でございます。
  85. 草川昭三

    草川委員 実は、この母親は大変熱心な方でございまして、五十八年の九月に帝京大学の安部という先生が、「患者と家族の皆様へ」というチラシをまいて、そのチラシの中には、大変神経質に家族は思っておるけれども、実際はそれほど心配することはないということを言っておるわけですね。だから、こういうものを持ってみえておりますから、母親の記録というのは非常にしっかりしておるわけです。しかも、これは大学の京英会という二十二回の会合報告が、六十年の三月二十四日に開かれておるのでございますが、ここでもこの教授は、いろいろとあるんだけれども、奥さんなどにうつる可能性はまずないと言っていいし、万一そうだとしても生まれてくる子供さんに感染する確率は数百万分の一だというような、そういうレポートも出しておみえになる。しかし現実はそうではないというのがずっと問題になりまして、今は加熱製剤になってきておるわけであります。  最近いろんな問題もありますが、私どもは本当に、わからない病気については、難病については大学の教授に頼る以外にはない。しかし、その大学の教授のやっておるのは、メーカーに、まず、おい、金を持ってこいよ。そして治験をする場合には、私がその順番を決めるんだよ。アメリカの先発のメーカーがあると、おまえ、ちょっと待てよ、おくれておるメーカーと一緒にひとつ仕切ろうや。土建屋と同じですね。調整をするという言葉があるわけです。我々はその調整をするという言葉を証明できる資料があるのです、実は。だけれども、きょうはこういう席上ですから申し上げませんけれども、それは厚生省には私は申し上げました。厚生省には申し上げましたので、私はその教授のあり方というものは一回きちっと反省してもらいたい。  だから、本来ならば、開発費用がなければプールして基金をつくって、厚生省なり文部省が中心になって、何々先生にその研究費を出したらどうですか。ところが、その教授とメーカーは個人的に癒着をして、そこで研究費をもらう、そのメーカーが得をする、こういう形がずっと続いておるわけですから、ここにメスを入れないと、幾ら薬価を下げても、新しい薬が出てきますから、それを使いますから、医療費の中における薬剤費の比率というのは下がらぬわけですよ。  これは何回か申し上げておるのですが、そこらあたりを最終的に厚生大臣に申し上げて答弁を願いたい、こういうように思います。
  86. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 メーカー間の治験と認可時期をめぐって調整があったのではないかという記事も拝見いたしまして、私も早速事務当局からいろいろ説明を聞きました。  結論といたしましては、一人の人でそういうことはなかなかできにくいし、またその人がやるという場合であれば別でありますけれども、また、その審査の申請の時期も、例えば半年とか一年とか、そういう長い間隔があればこれまた調整するというメリットが生まれるわけでありますけれども、二カ月程度のことでもあるということから、この問題については、そういう議論はありましたけれども、なかったものだというふうに理解をしております。  しかし、問題は、そういう議論も起きたわけでございますので、現在、治験の依頼基準というものを定めまして指導をしておりますけれども、さらに今後の問題として新しく医師と医療機関も含めた遵守事項というものをつくりまして、適正化のために一層努力をすることといたしております。
  87. 草川昭三

    草川委員 厚生省関係の質問は以上で終わりますけれども、この医薬品の開発問題、そしてメーカーとの関係の問題等は、私どもも取り上げてきておりますけれども、なかなか理解ができません。事は国の医療費に結論的には来るわけでございますし、患者の生命、命というところにも来るわけでございます。功名争いがあっては相なりませんし、あるいは利益追求ということがあっては相なりません。ぜひ厳格な行政指導を求めて次に移りたい、こういうように思います。  きょうは、最後になりますが、残る時間を競馬法の問題について聞きたい、こう思っております。  きょうは中央競馬会からもおいでを願っておりますので申し上げたいわけでございますが、競馬というものについては、まず昔はギャンブルという発想から競馬というものを連想いたしました。しかし、今日ファン層は随分変わりまして、私自身も驚いておるのでございますけれども、OL、若い女性事務員というのですか、現場で働いておみえになる方ではないのでございますが、とにかく幅広く働いてみえる若い婦人層に大変この競馬というのは人気が出てきております。あるいは高齢化社会になりまして、リタイアされた方々も、自分のわずかな小遣いだけれども馬券を買って楽しもうではないか。何か英国の本来のあるべき競馬場が頭に浮かんでくるように、非常にファン層というのは変わってきておるという前提で私きょう質問をさせていただきたい、こう思うのであります。  そこで、馬主というのがいますね、当たり前の話でございますが、この馬主というのは、これは日本競馬会におきましても非常に厳格な内部基準がありまして、過去に犯罪経歴がある人は馬主にしないとか、あるいは脱税をするというような実績があった方々はしないとかという非常に厳格な馬主の選定基準というのがあるわけであります。ところが、今新聞で非常に社会的に問題になっております土地転がしというのでございますか、土地特別国会でも名前が出ました最上恒産の早坂太吉さんという方がおみえになりますが、この方が五十九年六月十一日付で馬主登録になっておるわけでございます。これは、私どもはそういう方々のお集まりが今の馬主協会なのか、こう思うのでございますが、それでいいのかどうかお伺いをしたい、こう思うのでございます。
  88. 澤邉守

    ○澤邉参考人 ただいまのお尋ねの件でございますが、ただいま御質問になりました人物は五十九年六月十一日に馬主登録を受けたというふうに言われましたけれども、申請をいたしまして、私どもで厳重な馬主登録審査委員会の審査を経まして、同年十一月十九日に登録をいたしました。  私どもとしましては、ただいま先生のお話にございましたような人物が馬主として登録を受けて馬を出走させておるということにつきましては、中央競馬の公正で健全な施行なりあるいは発展という観点からいたしますと決して好ましいことではないというふうに思っております。  ただ、五十九年十一月十九日に登録した当時はそういうような今日のような大きな社会問題になってはいなかったと思いますし、また、当時私どもとしては、馬主の登録をする際には競馬法並びに競馬施行規程によって要件が定められておりますので、その要件に従って登録するかどうか。さらに資産状況なり所得なり、あるいは人物という点ももちろん審査をいたしまして、審査委員会の議を経て決定をいたしておるわけでございます。そういうことで五十九年十一月十九日に登録をいたしておりますので、これが現在もなお馬主として資格を持ち、馬を出走させておるという現状でございます。  私どもといたしましては、これを抹消すべきだというような議論も確かにあるわけでございますが、ただし、これも法律なり規程によりまして規定がございますので、私どもとしてはそういう要件に該当するような事実が明らかになれば当然そういう措置はとり得るわけでございますが、現在のところそういう該当するような事実がございませんので、抹消などということは今直ちにとり得ない現状にございます。  ただ、私どもといたしましては、そういういろいろ問題を起こしておることは事実でございますので、馬の保有頭数なり、あるいは競馬場その他におきます行動なり等について自粛をするように指導をいたしておりますし、今後も十分に注意をして見守りまして、該当するような事実がもしあるとすれば、そのときには抹消ということもあり得ないことではないわけでございますが、特に現状において直ちにそのような措置をとる考えはございません。
  89. 草川昭三

    草川委員 今、十一月十九日、これは五十九年でございますが登録をしたとおっしゃいました。五十九年十一月二十二日に早坂さんは、詐欺、有印私文書偽造・行使、公正証書原本不実記載で荏原警察署、警視庁捜査四課に逮捕されておるわけでございますが、そういうことを承知の上で厳格な審査をなされたということになるのでしょうか。
  90. 澤邉守

    ○澤邉参考人 ただいま申し上げましたように、五十九年十一月十九日に登録いたしておりまして、その前に審査会の審査も経ております。したがいまして、ただいま言われましたような事実は審査の段階ではわかっておりませんので、そのような事実を審査の際に考慮してやったということはなかったというふうに思います。  ただ、今おっしゃいましたけれども、法律によりまして、競馬法関係法規に違反して「罰金以上の刑に処せられた者」あるいは「一年以上の懲役に処せられた者」、これは競馬関係法規だけではなしに一般あらゆる法規に違反をいたしまして「一年以上の懲役に処せられた者」ということでございますので、逮捕されたとかあるいは起訴されたという……(草川委員「逮捕されておりますよ」と呼ぶ)逮捕されたということだけで登録を行わないという要件には直ちに該当しないというのが法律の規定になっております。  また、施行規程におきましては、ただいま申しましたような要件のほかに、登録を受けようとする者が競馬の公正確保上馬主として適格でないと認められるときには登録を行わないという規定は確かにございます。ただ、当時は、そういう公正確保上馬主として適格でないかどうかということについてもちろん審査をいたしましたけれども、そういう事実が認められなかったということで登録をしたというのが当時の経緯でございます。
  91. 草川昭三

    草川委員 参考人の方でございますから余りぽんぽん物を言いたくないのでございますが、それは答弁にならぬです。  それで、この方というのは東京都庁の方からも国土法違反でいろいろと告発をされておることは御存じのとおりでございますし、今は第一相互銀行との関係をめぐりまして社会的に大変な話題になっておみえになる方です。その方に対して今のような弁護をなされますとおかしいと言われますよ。私どもが調べた範囲ではこの方は何回か申請しているのですよ、窓口で。いわゆるヒアリングをやっておるわけですよ。その都度競馬会もちょっと困ると言ってきておるのですよ、何回か。少なくとも二回ほどあるのですよ。証言するという人がいますからね。そういう事実があるんだけれども、ある日、もういいかげんにしてやれよという声がかかったのでしょう、おたくのところへ。だからそういうことになった。しかもその二日後に逮捕された。まずいと思ってみえるのです。議論になっているのですよ、今。だから一番最初の答弁の中で、実は問題がありましたと言われたでしょうが。だからそれは私が今一番最初に申し上げたように、若い人も随分ファンになってきておる。競馬界で、馬が好きだといって投票したいという人もたくさん出てきた、驚くぐらい。リタイアした定年過ぎた人も、楽しみだ、我々が買えるような、参加できるような競馬界にしてくれ、こう言っているのですよ。きょうはその話はもう時間がなくなるのではしょりますけれども、それはひとつ真剣に考えていただきたいと思いますね。これは今やっても押し問答になりますから……  そこで、農林省にお伺いをしますが、この競馬法ができてから随分になります。もういいかげんに手直しをすべきではないだろうかという前提の問題点を申し上げますが、今のようなファン層が、非常に新しいファン層がふえてきておる。農水省はどう思われますか。
  92. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 最近の競馬をめぐる状況でございますが、ただいま先生からお話ございましたように、大変広範なファン層の広がりを持ちつつございます。健全な国民レジャーとして定着をしてきておるというふうな認識を私どもも持っておるわけでございます。
  93. 草川昭三

    草川委員 ファンの声を私ども聞きますと、同枠取り消し問題というものに対する関心が大変深いわけであります。中央競馬会ではかつて競馬懇談会の答申というのを受けて限定一枠一頭方式を採用する、こういうことで今やっておるわけでございますが、こういうのになりますと、人気馬が欠場をした場合にファンの期待を裏切るというようなことがございまして、同枠取り消しの元返しだとかいろいろな意見があるのです。私どももいろいろとお話を聞いておりますとたくさんの提案がございます。英国のようなものはどうだろうとかフランスのようなものはどうだろうとか、もっと新しいニーズにこたえる売り方というのがあるのじゃないか、こういうことを言っておるのでございますが、いずれにいたしましても現行方式の改善ということを考えていかなければいかぬ時期に来ておるのではないか、こう思うのですが、その点どのようにお考えになられているか、お伺いをしたいと思います。
  94. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま御指摘の同枠取り消し問題でございますが、御指摘のとおり四十八年に競馬懇談会の答申を受けまして、四十九年からこの同枠取り消し問題に対する一つの暫定的な方式として限定一枠一頭方式という方式をとっておるわけでございまして、自来十三年を経過しましてこの体制がそれなりに定着をしておりますけれども、一部にこれにつきましても不満があるというふうな話を私ども承知をしております。  私どもとしましても、中央競馬会ともいろいろ検討、意見交換をしてきておりますけれども、これにかわる現在の改善策として、例えば取り消し馬が発生をしました枠の勝ち馬投票すべて元返しにするというふうな方式が一つあるわけでございますが、これにつきましては、残った馬が人気馬の場合にはファンのいろいろな御期待にこたえがたいというふうな問題がある。また、すべての出走馬を一枠一頭にするというふうな方式も考えられるわけでございますけれども、この場合には勝ち馬投票の組み合わせの数が大変大きくなりまして的中率が低下をする。その結果、何と申しますか払戻金が大変多額になるという、いわば賭博性が非常に高くなるということで競馬の健全性との調和の観点でいかがなものであろうかというふうな議論がございまして、率直に申し上げましてにわかには結論を出しがたい、こういう状況でございます。  ただ、先生からお話ございましたように、現在の限定一枠一頭方式というふうなものについて、その運営の仕方についてもう少し改善工夫を加えるべきではないかというふうな点につきましては、私どもとしても競馬会とも相談をして、一つの検討課題として検討してまいる必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  95. 草川昭三

    草川委員 現行に問題点があるということをある程度お認めになって、それから現行方式の改善も検討課題とするという今の答弁であったわけであります。  そこで問題は、四十何年でございますか、この話が出ましたのは、四十八年ごろから、もうそろそろ競馬法についてあり方を考えたらどうだろう、法律改正でいくのか、もし現行の枠組み方式を変えるならば今の競馬法の枠内でできるのか、いろいろなことが言われてきたわけであります。ですから、いま一度今の局長の答弁に踏み入ってお伺いをしますが、もし現行方式の改善を検討したいという意思があるならば、それは法律改正をしなければならないものか、あるいは現行法規の中でも解釈として行うことができるのか、突っ込んだ意見をお伺いしたい、こう思います。
  96. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 現在行っております限定一枠一頭方式についていろいろ御議論があるということを申し上げましたし、また私どもいろいろ検討をしておるわけでございますが、その例示として私が申し上げた中で、取り消し馬が発生した場合にその枠の勝ち馬投票すべてを元返しするという方式をとることになりますと法律改正の問題になります。その他の問題については省令の改正とかあるいは事実上の運営改善ということで対応できるのではないかというふうに考えております。
  97. 草川昭三

    草川委員 今の答弁の範囲の中でも、私はいろいろなやり方というのが変えることができると思うのですね。これは国会でも何回か提案されているのです。六十一年の四月九日の農水委員会でもこの問題について議論になっておりますが、なぜ今日までずっと延びてきて何らのアクションを起こしていないのか。これは農水省の怠慢と言わざるを得ないと思うのですが、その点どうでしょう。
  98. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のとおり、かなり長い間の懸案になっている問題でございますが、やはり現在の限定一枠一頭方式というものが十三年間ともかく定着してきておるということもございまして、検討課題として認識をしながらなかなか最終的な結論を得られないという状況であることをひとつ御理解いただきたいと思います。  私どもも、今申し上げました点についてさらに検討を進めまして、競馬会の方とも相談をしながら検討を進めて結論を出すべきものと考えておるわけでございます。
  99. 草川昭三

    草川委員 もう時間がなくなったのであれでございますが、何せ今競馬の売り上げは一兆八千億、やがて二兆円になるわけでありますね。国庫収入が二千三百億ですか、相当な財源に今なっておるわけです。それはファンの方から二五%、これも国際的には世界的には二五%の国の取り分というのは非常に大きい。せいぜい一五%ではないか、こういう声がファンの中には不満としてあるわけであります。それから端数切り捨て、四捨五入ではありませんから、それが一年間で約九十億。本来はファンのところに入らなければいかぬ金が九十億そのまま国庫収入になるわけです。ファンですから、労働組合と違いますから、そんなに強い団体というのはありませんから、散発的な声ですよ。しかし、そういう散発的な声というのは我々のところへ随分上がるのです。私の地元にも中京競馬場というのがございまして、選挙区へ帰りますと、今のような端数切り捨て、どないするんだ、国は我々のものを持っていったではないか、そのかわりサービスが悪いじゃないかというような話もあり、今いろいろと問題になっております同枠取り消し問題等についても、下手をするとこれは暴動になるんですぞ、本当の人気馬に買ったんだけれどもそれがパァになったらえらいことだと。そのための方法はたくさんあると思うのです。  いろいろな意見があるという答弁がありますが、それをどこかでもっとファンの声を聞きながら議論をする、そういうことをなぜ中央競馬会はしないのか、こう思うのでございますが、同枠取り消し問題等について、ひとつ農林大臣の御見解を賜りたい。ついでながら、農林大臣は競馬の御経験があるかないかも、御私見もあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  100. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 率直にお答えしたいと思いますが、私が競馬場に足を踏み入れたのは、最初の田中総理総理大臣賞を府中の競馬場で渡した、同時にそれからその一週間ぐらい前、あれはオークスというのですかよくわからないのですが、佐藤榮作総理大臣最後の総理大臣賞も私、府中の競馬場で渡した経験があるだけでございまして、私は馬券は買ったことはないので今度買ってみようかと思ったら、今かみしもをこうして着ておるときに馬券は買うわけにはまいらぬ、買ってはいけない、こういうことになっておりますので……。  しかし、今いろいろ段々の御議論をちょうだいいたしました。また、長きにわたる問題を放棄しておった、怠慢ではないかという厳しい御指摘もいただきまして、なるほどそういう言い方もできるなと私も拝聴いたしておりましたが、馬主登録の問題についても適切なひとつ行政指導をやらねばならぬなと思っておりますし、同枠問題につきましても、これは健全娯楽、大衆の健全な娯楽ということの大きな範囲の中での競馬、それが世の指弾を浴びるようなことがあってはならぬということでございます。先生の御指摘、率直に受けとめながら、多くの関係者の方々、ファンの一部の方々の意見も含めてひとつ意見を聞いてちゃんと検討をするということをここで率直に申し上げておきたいと思います。
  101. 草川昭三

    草川委員 では、あと三分しかありませんので澤邉理事長に最後にお伺いをして終わりたいと思うのですが、今申し上げましたように、年に二兆円近い売り上げになるような時代になりました。特にファンの声を大切にしてもらいたい。今も大臣から非常に明快な御答弁が出たわけでございまして、中央競馬会が余りファンの声を聞かないようなことになると、中央競馬会も民営にしたらどうだろう、JRのように民営化したらあれだけサービスができるんだからという皮肉めいた話も寄せられるわけであります。ですから、中央競馬会は農林省所管の団体では最大の力のある団体でございますから、今の大臣の答弁をきちっと受けとめられて馬主の問題についても厳格な対応をしていただきたい、こう思いますし、それから同枠取り消し問題についても中央競馬会においてアンケート調査を一回やったらどうだ、こういう御提案を申し上げたいと思うのですが、その点どのような御答弁になるかお伺いをしたい、こう思います。
  102. 澤邉守

    ○澤邉参考人 私ども、公正でかつおもしろい競馬をやるということを目的に努力をしておるところでございます。ファンの方がごらんになっておもしろい競馬という意味で努力しておるわけでございます。そのためにいろいろなことをやっておりますけれども、特にここ数年来はサービス向上ということについては及ばずながらできるだけの努力をいたしておりますが、なお不十分な点がいろいろ御指摘があったところでございますので、その点は今後さらに一層努力をしてまいりたいというように思います。  それから、馬主の登録につきまして、先ほどお答えしたとおりでございますが、私どもも公正確保の原点の一つだと思っておりますので、厳正にやるということにさらに一層努めたいというふうに思います。  なお、同枠取り消し問題につきましては、畜産局長からお答えいただいたとおりで私ども考えております。学識経験の深い専門家の意見もいろいろ徴さなければいかぬと思いますけれども、御指摘がありましたように、ファンの意向といいますか声というものは十分反映させる必要があると思いますので、何らかの方法で調査もしてみたいというふうに考えております。  その他、同枠取り消し問題以外につきましても、できるだけファンの声を聞きながらサービス推進には一層努力していきたいというふうに考えております。
  103. 草川昭三

    草川委員 これで終わりますが、きょうは時間がございませんでしたので、この競馬会の問題についてはまた時間をいただいたときにもう少し今後のあるべき問題等について議論を深めていきたい。  最後になりますが、くれぐれもファンあっての競馬会でございますから、全国のファンを大切にする運営をしていただきたいということを要望し、終わりたい、こう思います。  どうもありがとうございました。
  104. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  105. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  106. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、若干の与えられた時間、エネルギー問題と石炭問題についてお尋ねをいたしたい、かように存じます。  政府は、昨年の十月に「長期エネルギー需給見通し」の改定を行われまして、いわばその基本方針は、セキュリティーの確保、さらにコストの低減、またニーズに適合する対応を基本方針とする、こう定められておるわけであります。したがって、石油の安定供給の確保を図ること、また代替エネルギーの開発導入を図ること、そして省エネルギー政策をさらに推進をする、これがこのときに定められた一つの基本方針ではなかろうかと私は受けとめておるわけです。  そういうような方針を踏まえて、今年度エネルギー関係の予算の策定に当たっては、今までの財源でありました石油税の従価税を従量税にこれを切りかえる、八月一日からこれが実施をされて、しかも一年間の暫定措置であると定められておるわけです。石油税を基礎にするエネルギー政策のこの財源が一年間の暫定とはいかがなものかという気がするのであります。もちろん、税制の抜本的な改革とその期間を合わしておることは間違いがない事実だと思いますけれども、しかし、従価税から従量税に基本的に税制、財源の取り方を変えたということは、やはり一つの恒久的なものでなければいかぬのではないかな、こんな私は感じがするのであります。  しかし、最近のエネルギー動向を見ますと、当初予想よりも石油の緩和基調は続いておりますし、価格も軟化の傾向をたどっておるように我々は承知をいたしておるわけです。そういう認識の中で、しかしなおかつ、昨年の十月に決めたエネルギーの基本的な考え方というものは、中長期に考えればやはりこれを堅持をしていくという姿勢が私は大事ではなかろうか、かように存じます。  そういう立場に立って、今年度、少なくとも当面の我が国のエネルギー政策、このエネルギー政策を進める上において重要な課題となる点についてこの機会に明らかにしていただきたい、かように思います。
  107. 田村元

    ○田村国務大臣 今の御質問は、来年度のエネルギー政策の重点問題ということだろうと思います。  大体岡田委員、私がお答えする答弁の大半を既に疑問点として投げかけられたわけでありますが、原油価格は、一昨年の大幅な変動の後、昨年来比較的に小康を保っております。しかしながら、緊迫したペルシャ湾情勢等がございまして、我が国を取り巻くエネルギー情勢はまことに流動的であります。また、中長期的には国際石油需給の逼迫化や石油供給の不安定化が予想されております。これはIEAでもその旨の指摘があったわけであります。このために、脆弱なエネルギー供給構造を有する我が国としては、昨年秋に策定されました、先ほどおっしゃいました「長期エネルギー需給見通し」にのっとりまして、もう既に御指摘がありましたように、セキュリティーの確保、コストの低減、ニーズ適合性の向上等を基本的な目標とした総合エネルギー対策を一層着実に推進する必要がございます。  具体的には、石油備蓄の拡充、石油自主開発の推進等によりまして石油の安定供給の確保に努めますとともに、安全性の確保を大前提とした原子力利用の推進、石炭利用の拡大、新エネルギーの技術開発等の石油代替エネルギーを推進して、さらに国民生活の質的向上を図りつつ、一層省エネルギーに努めることといたしております。  また、石炭政策につきましては、昭和六十二年度からスタートしております第八次策の着実な推進を図りまして、生産体制の円滑な集約化を行うべく所要の施策を講じてまいりたいと考えております。  それから、今一つ指摘がありましたので簡単にお答えしますと、従量税ということで疑問を投げかけられましたけれども、これもやはり、石油税というものを安定化させるためにはこれがよいだろうということはもう申すまでもありませんが、その面で、従量税化する場合におきましてもなお税制の抜本的な見直しの枠組みの中でということになりますれば暫定的ということにならざるを得ないわけでありますが、我々としては、従量税化というものが将来とも根づいていくことを希望いたしております。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 エネルギー価格の場合は、円高差益の還元というだけではなくして、大幅なエネルギー価格の低下が見られておるのでありますから、いわば円高とちょうどダブルの形で価格が安くなっておるわけです。したがって、今年一月一日から電力料金の改定もそれに見合って行われたわけですが、それでもやはりレートは百三十八円で、石油は十八・五ドル、前三カ月をとって最終的に価格の認可が行われておるわけです。そうなりますと、やはり最近のレートの動向やこれからの石油価格の動向を考えますと、さらに電力料金の値下げが期待されるのではないか、こんな感じもします。  ただ、その中で私が特に問題視しなければなりませんのは、これだけ価格が下がり、円が上がっていても、小売価格の下がらないものが実はあるのですね。その最も顕著な例はLPGの価格であります。私の調査によっても、昭和六十年輸入価格が五万八千五十一円のものが昨年十二月には二万二千百六十五円になっておるのでありますが、家庭の小売価格で見ますと、十立方当たり五千五十八円が、昨年十二月には四千五百九十六円、ほとんど下がっていないと言っていいのであります。卸売物価指数で見ますと、六十年の一 〇〇に対して昨年の十二月は五五・四という卸売物価指数の動向であります。  これは、小売店がもうけ過ぎなのか、あるいはまた行政指導とかそういう指導というものが全然行われていないのか。特に需要期なるがゆえに敏感にこれは対応しなければならない問題だと思うのですね。これはやはりエネルギー政策を進める面においても、今までの政府の怠慢にも帰するものではないか、こう思うのでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  109. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、LPGの輸入価格は昭和六十年以降大幅に低下をいたしておりますけれども、末端価格が十分に低下してないというところは私どもも大変問題視いたしているところでございます。ほかの石油製品と違いましてメーター販売でございますので、継続的な供給が行われておりますとかあるいは人件費などの流通コストがかさむというような事情がございますが、放置できないと考えております。  既に六十一年の五月、さらに同年の十二月に価格引き下げ要請を行ったところでございますけれども、まだ十分でないというぐあいに考えておりまして、今般、二月十五日でございますけれども、さらに引き下げを行うようにということで強い要請を行いました。  六十一年四月ぐらいを目安に考えてみますと、円高の進行と輸入価格の低下をにらみますと、少なくとも一三%程度の値下げができるはずだというぐあいに見ております。現在までのところ九%前後の引き下げを行っているところもかなり見られるわけでございますけれども、そんな状況でございますので、少なくとも一三%ということをめどに強力に取り組んでほしいという要請をいたしております。引き続き、その実施状況を十分監視をしてまいりたいと考えております。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 プロパンの場合には概して庶民のいわゆる燃料でありますので、そういうところに敏感にやはり対応する、こういう姿勢が極めて大事だ、私はこう思いますので、象徴的にこの問題を取り上げて申し上げた次第であります。  次に、私は最近の石炭情勢についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますけれども、まず第一点は、日米エネルギー委員会、レーガン・中曽根会談による共同声明で設置をされたものでありまして、その後エネルギー作業部会というものが日米間で持たれているわけです。その中で、特に石炭問題についていろいろ議論もなされているように承知をいたしておるのでありますが、どうも議論と日米間の石炭の貿易とは、現状が合っていないのですね。一千万トン論というのが日米間で出ておりますけれども、しかし原料炭のごときはもう、六十一年と六十二年を比較しますと七七%ぐらいにむしろ引き取りがダウンしているわけですね、八百八十万トンぐらいにもうダウンしている、こういう状況になっているわけです。暦年で、ようやく昭和六十二年で一千万トンになるかどうか、こういう状況なわけです。ですから、政治的にこういう問題を決めても、経済的にはやはり安定供給で安い方がいいのでありますから、なかなかそういうわけにはいかぬのだと思うのです。  一方、アメリカの方は、暦年で六十二年は実に九億一千六百万トンの石炭を生産したのですね。これは史上最大のものであります。一年前と比べると二億トン程度増産をしていますから、もう驚異的な数字なのですね。そういう動向というものが今後のいろいろな政策に私は波及していくのではないかと心配をいたしておるのであります。この動向を、この問題をどう理解したらいいのか、そういう点が第一点であります。  同時にまた、そういういろんな動向から判断をして、今石炭政策を支えているIQ制度というものについていろんな意見が寄せられておるように承知をいたしておるのでありまして、このIQ制度というものがもし崩壊するということになりますと、農産物と同じように国内炭は即時にもう店じまいをしなければならないという危機に追い込まれるのであります。したがって、そういう日米関係の動向、同時にまた、そういう中からもいろいろ心配をされてまいりますIQ制度の堅持という問題についてこの機会にお伺いをいたしておきたいと思います。
  111. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 日米エネルギー・ワーキング・グループの場におきましてはいろいろな問題が取り上げられておりますけれども、その一環といたしまして、米国側は日本に対する石炭輸出の維持、さらには拡大というテーマを非常に重視いたしておりますことは御指摘のとおりでございます。しかし、残念ながら米国炭は一般に他の供給源と比べますと割高でございまして、日本の引き取り量はやや年々逓減をしているというような状況でございます。私どもは、基本的には石炭取引は商業取引でございますから、やはり商業ベースの判断というものを尊重をしていくべきだという姿勢で、米国側の品質向上、価格引き下げの努力ということが基本だということを主張し続けているわけでございます。御指摘のとおり、特に原料炭一千万トンの維持ということにつきましては、米国内におきましても大変強い要請があるようでございます。しかし、基本的には今申し上げました考え方に立ちながら、関係業界の適正な判断を求めていくということで対応してまいりたいと考えております。  なお、国内炭の引き取りに関連をいたしますIQの問題でございますけれども、御高承のとおり、第八次石炭対策の答申におきましても、当面輸入割り当て制度の適切な運用が必要である、これによって対処していくべきだという御指摘をいただいているわけでございますので、この考え方に沿いまして今後とも適切に対応してまいりたいという考え方は変わっておらないわけでございます。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和六十二年度の三月末の貯炭の動向を見ますと、大体当初予定どおりの四百五十万トン前後の貯炭量に達するのではなかろうか、こう見られておるわけであります。  そこで、第七次政策が終わらないうちに鉄鋼の引き取りが半減をし、しかもまた最近さらに六十一年から六十二年にかけて五十万トンの削減が行われるという傾向が続いておるのであります。しかし、最近の鉄鋼の動向を見ますと、粗鋼生産で九千八百五十一万トン、大体前年並みの水準を維持する状況にございます。また、国内向けの鉄鋼関係の需給についても、輸出が鈍化しておるにかかわらず内需拡大によって引き取りが非常に活発化している、こういう傾向が出ておるのであります。  したがって、そういう産業界の動向とも考えますと、もう少し、同じ原料炭撤収するに当たってもなだらかに撤収するというのが基本原則でありますから、そういう状況に合わせて撤収方向に対してなだらかに生産を減ずるようにもう一度見直しをして検討すべきではないかと思うのです。昨年、一昨年の急速な減少から、これをできるだけ横ばいのようにしていって最終的には撤収をする、こういう形に来年度は検討すべきだ、こう私は思うのでありますけれども、この点についての所見を伺っておきます。
  113. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 初めにお尋ねの六十二年度の石炭需給でございますけれども、これは昨年十月末に定めました石炭鉱業合理化実施計画等で見込んでおりました線にほぼ沿って動いていることは御指摘のとおりでございまして、年度末の在庫は多分四百五十万トンをちょっと割るかもしれませんが、大体そんなレベルに落ちつくと見ているところでございます。  そういう状況でございますので、鉄鋼業界の引き取り問題でございますけれども、第八次対策策定時におきまして六十二年度から六十五年度まで漸減の方向で毎年度需給両業界で話し合って決定するということになっているわけでございますが、六十三年度大変重要な課題であると考えております。  先ほど来ちょっと取り上げられております米国の非常に強い引き取り要請もございますし、またオーストラリア、カナダ等からもそういった要請が強いわけでございますけれども、やはり国内炭業界の状況というものも十分勘案をしていただきたいというぐあいに思っております。基本的には、まず石炭業界と鉄鉱業界の交渉ということで始まるわけでございますけれども、その推移を見守りながら、必要に応じましては石炭鉱業審議会の需給・価格部会を開くというような対応を講じまして、いい落ちつきになるように十分注意してまいりたいと考えております。
  114. 岡田利春

    岡田(利)委員 今私の質問した点が考慮されますと、同じ縮小、撤収する場合においても随分状況が変わってくるのだと思うのです。したがって、その点について特に検討されますように強く期待をいたしておきたいと思います。  そこで、今残されている主力八炭鉱の中で考えてみますと、退職金の未払い問題が依然として解決のできない状況が続いておるのであります。はっきり言いますと、これは幌内炭鉱でございますけれども、六十二年の十二月末で七十四億円の労務債の未払いがございます。これをどうするかということが大変重要な問題であって、しかもこれは法律的にいうと、労働省では基準監督局がこれに支払い命令を出す、出すといっても財源がない、こういうことが繰り返されてきておるわけです。しかし、実際、該当者の不安は募る一方であります。また、石炭政策を進めている側からいっても、このことは放置のできない問題であります。したがって、この解消は、何といっても、膨大な債務があるのでありますけれども、もちろん政府の債務もございますけれども、債務の中でも最優先にこの支払いをする、させる、こういう点が政策上合意がなされなければならぬのではないのか。もちろんこの北炭問題については、石鉱審の中でも専門的な経理小委員会も持たれておりますし、そういう手続も必要であろうかと思いますけれども、まず最大債務者である政府の決意がやはり重要であろうかと思うのです。ぜひこの点一歩踏み出して、この退職債務の処理に向けて政府の決断を求めたいと私は思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  115. 中村太郎

    ○中村国務大臣 北炭の幌内炭鉱の未払い退職金の件につきましては、労働省といたしましてもかねてから再三再四、勧告、指導を行っているところでございます。六十一年の十二月から今日まで五回にわたって文書による指導監督、口頭では毎月一回程度催促をいたしておるわけでございます。しかし、残念ながら今日まで解決していないことは大変遺憾に思っておるわけでございまして、今度六十三年度の経営計画の策定に際しましては、何としてでも未払い退職金の支払いを盛り込ませるような、なお一層きつい要請をしてまいる所存であります。
  116. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 私どもも極めて重要な問題であると考えております。先ほど十二月末の数字を御指摘いただいたわけでございますが、ことしの一月末でも、若干は減っておりますけれども、九百八十名分、七十億円が残っていると承知をいたしておりまして、大変遺憾なことであると考えております。これを着実に減少していくということが必要不可欠でございまして、労働省と緊密に連携をとりながら、強く会社を指導してまいりたいと考えております。
  117. 岡田利春

    岡田(利)委員 前の国会において田村通産大臣から、炭鉱における下請関連労働者の閉山時の取り扱いの改善問題について、それぞれ受益者の意見も聞いて善処をするという前向きの御答弁をいただいたわけであります。その後、それぞれ関係機関でも議論をされておるようでありますけれども、私は、やはりこの結論は一定のめどを設けることが大事になってきているのではないかと思います。したがって、私は、せっかくそういう措置をとられるよう努力をされておるのでありますから、次の炭鉱の閉山前までにはその結論を得て、この改善方についての結論を下すということをこの機会にお約束願いたいと思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  118. 田村元

    ○田村国務大臣 この炭鉱下請離職者問題検討委員会を発足せしめましたのは、強いたっての御要請があって、私が決断した問題でございます。ことでは、就業実態、退職金の支払い状況等実情把握をして、そして分析をして、炭鉱下請離職者問題への対応のあり方について結論づけていかなきゃならぬ。今めどはいつごろかということでございますが、そういう作業というものを順次計算しますと、五月ごろをめどにすればいいんじゃなかろうか、それなら今おっしゃったことに大体そぐうことができるんじゃないかというふうに考えております。  これはもう既に十分御承知のところでありますけれども、この検討委員会は大変労働省の御協力もいただいております。オブザーバーとして労働省の職業安定局の課長も出てもらっておりますし、また労働保険審査会委員高橋久子さんなんかにも出ていただいておるわけでありますが、でき得る限りのいい成果を上げていただくようにと祈る気持ちでおるわけであります。
  119. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近の我が国の炭鉱災害は、統計上は非常にいい成績になっておるわけです。百万人当たりで見ますと、昭和六十年は七十二人、六十一年が五十人です。そして六十二年、暦年で三十七人。一番いいところは二十五人という炭鉱もございますから、この面で見ると、非鉄金属が二十九人でありますから、それよりも上回る炭鉱も出てきたという成績であるわけです。非常に結構なことだと私は思います。だが、残念ながら、去る一月十四日、三菱南大夕張炭鉱において三卸九片下層一号上段払いで、ゲート五立て入れの上段払い、ここで山はねが起きて、死者二名、重傷者一名、軽傷者七名、軽微三名、こういう災害が発生いたしたわけであります。山はねという現象は余り多くない現象でありまして、かつての三池の四ッ山あるいはかつての三菱の美唄炭鉱などでも山はね現象がありました。  私は、こういう事故というものが的確に報告されて即対応的な対策がとられなければならない、こう思うのでありますけれども、残念ながら同鉱では、この事故以外にも重傷者、軽傷者を出した山はね事故が発生している、そういう事実があるということを、ある報告を私は受けておるわけであります。これも一度や二度ではないということであります。しかも人命損傷については二度もあるというような報告も私はいただいておるわけであります。現在、本件については通産省保安監督局が捜査中と聞いておるのでありますけれども、一体この結果はどうなっておるのか、その捜査の過程は一体どうであるのか、同時にまた、保安監督官はたしか夕張には一名配置をされておるわけでありますから、一炭鉱一名でありますから、随時入坑検査も行われておると思うのでありますけれども、この点の実態はどうか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  120. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 先生今御指摘いただきました点でございますけれども、一月十四日に大変遺憾な事故が起きてしまったわけでございますが、現在までの捜査の過程におきまして、実はその一月十四日の災害の発生前の六カ月ぐらいの間に、同じ当該深部の区域におきまして、罹災者を伴う山はね災害ではないかと思われる災害が四件発生したという事実を把握しております。このうち少なくとも二件については報告がなされておらなかったわけでございますが、そこでこれらが鉱山保安法に規定する監督局に報告すべき災害に該当するのではないか、あるいは報告がありました報告内容について事実に反するものがあるのではないかというような問題がございまして、現在この点について鋭意捜査を進めているところでございます。  また、先生のもう一つ指摘いただきました、鉱山保安監督局といたしまして、監督官が入坑検査をちゃんとやっているのかどうかということでございますけれども、この炭鉱の場合には六十年の五月にガス爆発災害で大きな災害があったわけでございますけれども、特にその後も巡回検査の頻度をかなり上げまして、従前月一回であったものを二月に三回行くということで監督の検査を強化して実施してきているところでございます。  特に同鉱の場合には、深部の採掘を行っていたわけでございますから、ガス爆発の防止対策のみならず、山はね、ガス突出あるいは自然発火防止対策等々重点監督事項を決めまして、これについて監督をやってきたわけでございます。  実は、この一月十四日の前の十一日から十四日にかけてもこの巡回検査を行って、現場検査とそれから関係書類の検閲等を実施したところであったわけでございますけれども、今調査中ではございますが、一月十四日の事故が起きてしまったということになっております。
  121. 岡田利春

    岡田(利)委員 こういう炭鉱にとって重要な災害が報告をされない、しかも働いている従業者が現実に負傷しているということになりますと、ゆゆしき問題だと私は思うのであります。  しかも、この保安監督行政というのは、単に監督するというだけではなくして、法の定めに従って鉱業権者が保安統括者を選任し、保安技術管理者を選任し、副保安技術管理者を置き、またサイドからチェックするために保安監督員が置かれ、そしてまた保安監督員補佐員が置かれている、こういう二重三重のチェック体制になっておるのであります。それがこういう事件が起きてまいりますと、今後の炭鉱保安の行政にとっても、また信頼度にとっても大変大きな問題を投げかけておると私は思うのです。  一体この責任というのはどこにあるのだろうか、法的にいって鉱業権者なのか、あるいはまた保安の統括者、あるいは保安技術管理者、保安監督員あるいは補佐員、そしてまた行政官庁である鉱山保安監督局長、その権限を代行できる保安監督官、いずれにもこれはこういう事件ができていくということになりますと重大な責任があると言わざるを得ないと思うのですけれども、この責任については私のそういう認識は誤りでしょうか、伺っておきたいと思います。
  122. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 特に今回の報告違反があるかもしれないという問題につきましての責任の問題でございますけれども、先生今いろいろ御指摘いただきましたように、鉱山における保安は自主保安が原則でありますので、災害の報告義務について言いましても、鉱山保安法の規定によりまして一応鉱業権者の責任というふうになっているわけでございます。今般の報告義務違反の疑いにつきましては、先ほど申し上げましたように現在鋭意捜査中でございまして、もし法令違反の事実があったとしますれば、鉱山保安の管理体制そのものの中でだれがどういう責任があるのかという、その責任の所在をきちんと追及していかなければならないということで、今捜査を進めているわけでございます。  国といたしましても、監督をきちんとやっているということでやっているわけでございますが、特に災害発生については直ちに鉱山保安監督部の方に報告を行うようにという鉱山保安法の規定がございまして、そういう規定をきちんと徹底して守るようにということは常日ごろ鉱業権者に対して指導をしているところでございます。したがいまして、仮に今そうかもしれないという調査中のものが、本当に報告義務の違反であるという事実が判明するとすれば、これは極めて遺憾なことでございまして、そういう観点で今鋭意調査を進めているところでございます。
  123. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、この捜査は一体いつごろ終了する見込みかどうか、今の進捗状態から考えていつごろ終わるかどうか、この点が第一点。  同時にまた、本件は保安法の三十八条に基づく一般からの本件に関する申告があったかどうかという点についても明らかにしていただきたいと思います。
  124. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 まず、先生今御指摘いただきました申告の問題でございますが、鉱山保安法におきましては、法令に違反する事実があったときは、鉱山労働者も鉱山保安監督局長あるいは部長に対しまして申告をすることができるという規定が鉱山保安法の第三十八条にあるわけでございます。しかし、今回の一月十四日の山はね災害前の問題につきましては、この規定に基づく申告はございませんでした。したがって、先ほど申しましたような形で鉱山保安法規の報告義務違反等の問題があるのではないかということで捜査しているわけでございますが、できるだけ早くこの捜査を終わらせて処置したいということで、一応三月じゅうに結論を出して、そういう義務違反の事実が判明した場合には書類送検なり必要な手続を進めるという方向で今捜査をしているところでございます。
  125. 岡田利春

    岡田(利)委員 本炭鉱はこの災害によって三卸九片部内の採掘放棄を既に決定をした、したがって、この部内からの撤収作業をしておる、そして浅部、浅い部分、上部本層の一片四号七段あるいはまた五号、それぞれに切り羽を設定をして浅部に転換をするという方針を決められておる、こう承知をいたしておるわけです。浅部の炭量というのはそう多いわけではありませんけれども、しかし私どもの把握では、六十万トンずつ掘ってもまだ四年程度の炭量はある、こういうことを聞いておるのでありますけれども、そういう認識でよろしいかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  126. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 あの山の生産可能性等につきましては、ただいま先生が御指摘になりましたと同様の認識を私どもも持っております。
  127. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣、今、私、炭鉱の保安問題について質問、やりとりをしておりまして、お聞きになったと思うのですが、本件に関する感想があればお聞きいたしておきたいと思うのです。
  128. 田村元

    ○田村国務大臣 こういう問題についてはやはり徹底的に調べて、そのよって来る原因を追及する、そして再びこのようなことが起こらないように、時に過酷かもしれない厳しさをもって対処する必要があるのではないでしょうか。人命にかかわる問題、労働大臣と話をしておったのですが、この炭鉱の災害というのは死ぬんだからね、大量に。これは普通の心構えでは大変なことだ、本当にふんどし締め直して取り組まなければならぬ問題だなと二人で今話し合っているところでございます。それが私の偽らざる感想でございます。
  129. 岡田利春

    岡田(利)委員 最後に、炭鉱離職者の就職あっせんの状況について、特に要望を含めて質問いたしておきたいと思います。  十二月末の炭鉱の縮小、閉山による休職者の総数は六千五百七十五名と私は承知をいたしています。そのうち就職できた者が一千四百三十九名でありまして、五千百三十六名に及ぶ人々がまだ未就職である。あるいはまた昨年、一昨年閉山をいたしました三菱高島の場合には依然として九百二十四名の方々がまだ未就職である、三井砂川の場合には八百三十三名、最近の北炭真谷地については一千名に及ぶ、このように統計上私どもは承知をいたしておるわけです。特に離島、北海道、こういう意味では産炭地振興についても企業の誘致についても非常に困難な面があるでしょう。しかしながら失業者はそこに滞留しておる、こういう方々が多いのでありますから、職業訓練や集中的な就職あっせんの指導強化をするという点で、今ずんずん時間がたつごとに社会問題化しようとしておるわけですから、今年度の労働行政の最大の重点課題の一つとして対処していただきたいと思うのですが、労働大臣の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  130. 中村太郎

    ○中村国務大臣 炭鉱の所在する地域は、長年にわたりまして専ら炭鉱のみに依存してきた地域が多いわけでございます。現段階においては多くの雇用の場は見込めないなど、炭鉱離職者の再就職をめぐる環境は大変厳しい状況にあるわけでございます。実は私はけさテレビを見ておりまして、たまたま石炭の炭鉱離職者の問題を取り上げておりまして、気持ちを新たにしてしっかりしなきゃいけないなというふうに思った次第でございます。  そういうことでございますので、労働省としましては手帳制度に基づく生活の安定と再就職あっせん措置の活用、あるいは全国的な規模での求人の確保及び必要な住宅の確保等による広域職業紹介の推進、さらには効果的な職業訓練の積極的実施等の施策を強力に推進することといたしておるわけでございます。また地元雇用につきましては、地域雇用開発等促進法に基づき産炭地域を特定雇用開発促進地域に指定して、地域雇用開発助成金の活用等によりまして雇用機会の開発に努めてきておりますことは先生御案内のとおりでございます。さらに六十三年度からは、地域関係者を構成員とする都道府県レベルの地域雇用開発協議会に対し、地域雇用開発を効果的に促進していくための諸事業を委託していくという制度を創設をしてまいりたいと思っておるわけでございますが、これらの施策を強力に推進しまして、炭鉱離職者の地元での再就職の促進に一層力を注いでまいりたい、こういう決意でございます。
  131. 岡田利春

    岡田(利)委員 ありがとうございました。要はメニューがあってもこれは実際に食べられなきゃどうもなりませんし、実効が上がりますように特段の御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  後、中西君に譲ります。
  132. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 この際、中西績介君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中西績介君。
  133. 中西績介

    中西(績)委員 私は、今問題になっております留学生の問題について、大蔵大臣あるいは文部大臣さらに外務大臣など、重要な点のみについて質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、日本の対外援助、特にODAについて見ますと、六十三年度予算では一般会計で六・五%の伸びで七千十億円、予算総額にしますと一兆五千億を超えるわけでありますけれども、このように増額されて、世界第二位だと言われる状況にまでなっています。  そこでお聞きいたしますけれども、何を目的とし、何びとのための援助であるかということを外務大臣にお聞きしたいと思います。
  134. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 現在、東西問題、南北問題ございますが、特に南北問題の根底にある相互依存、さらには人道上の考慮、こうしたものを理念といたしまして援助制度というものが設けられておりますが、その目的は当該相手国の経済の安定であり、社会の安定であり、同時に国民福祉の向上である、こういうふうにお考え賜ればいいのじゃないかと思います。
  135. 中西績介

    中西(績)委員 優等生的な答弁でありましたけれども、ということであれば、日本のこうした援助は、規模が相当拡大されてきたにもかかわらず余り好評を博しておらないという結果が残念ながら出ておるのではないか。特に腐敗政治に対する政権維持のために、例えばフィリピンのマルコス政権当時における状況等を考えてまいりますと、まさに政権維持のための援助であったし、あるいはフィリピン等におきまして、私調査に参りましたけれども、出ておるのは、援助による日本企業の進出が国民を大変苦しめておるという状況等が出てきております。こういうところに不評の原因があるのではないか、こう考えるわけです。したがって、援助の中で大型プロジェクトなどあってもいいわけですけれども、一番大切なのは、その国の人々がいかに自立し、発展するかということが極めて重要ではないか、それをどう援助し、手助けしていくかということが中心にならなくてはならないだろう、こう私は考えるわけです。  ということになってまいりますと、今のように国際化時代に突入をしておると、絶えず口癖のように言っておるわけでありますけれども、友好の基本というのは人と人との関係になってくるわけです。したがって、そのためには何といっても人づくりが一番大事ではないかということを考えるわけですが、この点どうでしょう。
  136. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 国づくりの基は人づくりにありとよく言われますが、そのとおりだと私思います。なおかつ、我が国の援助は非常に感謝されておりまして、その一例をやはり申し上げておかなければならないと思いますが、この間もWHOの事務局長に初めて日本人が選挙によって選ばれました。戦後久しく国際機関の長になった人は皆無であったわけですが、この投票はほとんどの途上国が投票をしてくれたという結果を得ておりますので、日本がそうした人を選ぶのなら協力しましょう、こういうところにもあらわれておるのではないか、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  137. 中西績介

    中西(績)委員 ところが、留学生、私は留学生という言葉を余り使いたくないのですけれども、この論議はまた別のところでいたすとしまして、留学生の受け入れがどうなっておるかということが大きな問題になるのではないか、こう思います。特に、一九八三年五月、中曽根総理のASEAN訪問のときに二十一世紀のための友情計画を発表いたしました。それを受けて八月に懇談会の五人の方々の提言がございました。さらに、一九八四年六月に協力者会議による「二十一世紀への留学生政策の展開について」というのが、これは答申と言っていいかどうかわかりませんけれども、発表されたわけであります。  そこで、この内容について、十万人計画などがずっと入っておるわけでありますけれども、その内容について御存じであれば感想をお聞かせ願いたいと思います。
  138. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私も一読いたしましたが、今委員が申されまするとおり、やはり人づくりのために日本が貢献する、これは今後一番大切なことになるのではないだろうかと存じます。したがいまして、もう既にその提言の中には、九〇年代にはせめて現在の西ドイツ並みの五万、さらには二十一世紀にはフランス並みの十万、そういうことでございまして、現在は二万ちょっとだろうと私も思いますが、特に私費留学生がそのうちのほとんどである。  こう考えてまいりますと、必ずしも我が国の留学生受け入れの態勢は今日万全であるとは申し切れませんので、したがいまして、こうした面においてさらに私たちはその提言に基づいての努力をしなくちゃいけない、かように存じております。
  139. 中西績介

    中西(績)委員 今大臣お答えいただきましたように、人づくりを中心に据えてやるわけです。ところが、この「提言」あるいは「展開」に示されておりますように、留学生政策というものは文教あるいは対外政策の中心に据えるべき重要国策の一つだ、こういうように言われています。そしてさらに、これを受けましてガイドライン及び留学生受け入れの増大に対応しての講ずべき基本的な方策などについて整理がされてこうしたものが出されています。  ところが、私これを十分検討いたしますと、十万人がひとり歩きし始めたのではないかという感じがしてならないわけです。というのは、総理等がそうした発表なりあるいは発言をいたしますと、それのみが誇大にあるいは喧伝されるというような状況等が出てくるわけでありますから、この点私は一番心配をいたします。私は、そうであればあるほど、それ以前に今まで三十年間の多くの問題、反省すべきところがあったのではないかという、こうした問題が中心になって、その障害を取り除き、環境づくりからまずどう始めるかということが中心でなくてはならないだろう、こう考えます。したがって、このためには、この「提言」の中にもあるいはこの「展開」の中にもこれから留意すべき多くの問題が記述されてあります。これ以外にもまだまだ学位授与の問題からたくさんの問題があるわけでありますけれども、きょうは時間がございませんから、その中の幾つかについて私は論議をしてみたいと思います。  そこで、感想として、この十万人がひとり歩きしているんじゃないかという感じなんですけれども、この点についての感想はどうでしょう。
  140. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ひとり歩きさせてはならない、こういうふうに思っておるのです。
  141. 中西績介

    中西(績)委員 私は、今言われるようにひとり歩きさせないための手だてというのが、それではどうなるかということになるでしょう。  そこで、もう一つこの問題について確認をしておきたいと思うのですけれども、このように留学生問題というのは、先ほどから申しておりますように、数なりあるいは枠づくりの問題ではない。あくまでも留学生は、ふえることとふやすこととは違うわけですね。日本は二十年前と全く同じような形でふやすことに中心課題を据えましてやるということになると問題が解決しないし、今大臣が言われたような答弁にはなりにくい、こう私は考えます。  そうしますと、本当に学び、そして日本というものを知って帰ろうとする若者を日本に迎えて、その人の素質を、あるいは希求を十二分に出させて育てていくという、ここがやはり問題であるわけでありますから、この十万人というものを前提にして物を立てていくということについて私はむしろ慎重であるべきであるし、それ以前の問題として片づけなければならぬ問題を声高に、きょうは総理はいないのですけれども総理あるいは関係の皆さん、政府の皆さんが特に留意をして発言をしてほしいと思うのだけれども、この点についてどうでしょう。
  142. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今非常にいいことをおっしゃったと思いますが、ふやすよりもふえるという気持ちを持たなくちゃいけない、そのとおりだと思います。現在はふやすことに余り頑張りましても、もう少しく劣っているところが多々あると私は考えております。もう簡単なことでございますが、まず東京のような高いところに住めないじゃないか、下宿代はどうするんだというような問題もございましょう。さらには、その過程におきまして、アメリカへ行くと人文社会科の博士号を随分とくれるが日本じゃなかなかくれないね、そういうこともあるいは日本へ来たくても来られない状態をつくっておるのじゃなかろうか、かように思います。お隣の国の韓国においても、やはり日本よりはアメリカ、ヨーロッパへと、こういうふうな傾向が強いということを聞きますと、やはり今おっしゃったように速やかに来ていただくという環境をつくることが必要であろう、こういう気持ちでやらねばならぬ、私はさように思います。
  143. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、私はもう一つだけ例を挙げますと、今、十万人計画が発表されましてから特に東南アジア等で問題になっている点あたりがございますので、不信をいろいろ生んでおるのではないかということを私一番恐れるものです。特に経済大国的な手法によって、経済大国だからやらなくてはならぬとかあるいは学生の減少による、これはこういう言葉が誤解を生んでおるのではないかと私は思うのですけれども、文部省が出しておるものの中に、「基本的見通し」というのがございまして、その中に十万人を達成するために前期と後期に分けまして、その後期の部分に「受入れ態勢、基盤の整備の上に立って、受入れ数の大幅増を見込む。なお、十八歳人口は減少に転じるので、大学側も前期に比べて留学生受入れが容易になると考えられる。」という表現があるわけです。  これは我々からすると何でもないような感じだけれども、今度は東南アジアの人たちの中ではそのことは逆に、日本の学生が減少期に入ったときにそれを補完するのが留学生なんだ、そのために東南アジアなりこういうところから十万人計画を立ててでも入れるのではないかというこうした発想というのが、今までの経過があるだけに――これはなぜそういうのが出てくるかといいますと、もと日本に留学していた方が、息子が留学をすべきかどうかということで論議をした際に、日本にはやらないということをある人に漏らしていますね。ですから、こういう点等を考えますと、これが私の――そうではないと今そこで言っていますけれども、杞憂でなければいいがな、こう考えます。ですから先ほど大臣が言われたことを完全に遂行していただくということが今極めて大事ではないか。また、あるいは発言、表現がそうした面での危惧を生むことの結果になりかねない。したがって、この点十分御注意いただきたいと思うわけであります。この点について、もう大臣はわかりましたので、文部大臣ひとつ。
  144. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘の点はよく理解できます。特に、日本に来ていただく学生諸君はやがて国際理解のかけ橋になっていただく方でございますから、その点はよく留意をし、政策だけでなく心の問題でよく理解をしていただくように、ましてほんの少しの言葉であっても誤解を生むようなことのないように、十分注意をいたしたいと思います。
  145. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、この「展開」の中でいろいろ出ておりますけれども、特に私が問題になる点等につきまして、二、三質問を申し上げたいと思います。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕  この中で「留学生受入れの拡充に対応する基本的方策」というのがございまして、「大学等における受入れ態勢の整備」というのがございます。大学におきましてまず始まるのは、入学の選考から始まります。そうすると、出身国の学歴が通用しないとか、あるいは我が国の国立大学が極めて閉鎖的であるとか、あるいは私費、国費生における格差ですね、こうした問題等がたくさん入学選考に当たって出てくる可能性があるし、あるいは選考及び大学の選択等におきましてもいろいろ問題が出てまいります。  さらに学位の認定などを挙げますとたくさんあるわけでありますけれども、私は、この中で特に大事なことである、一のところに「世界に開かれた教育機関としての整備充実」ということがございます。受け入れの時期から選考方法、単位の互換認定、学位授与など、ことには入っておると思うのですが、これらについて、既に三年を経過することになつたわけでありますけれども、何か具体的に手がけたことがございますか。
  146. 植木浩

    植木(浩)政府委員 留学生が日本の大学に入る場合、あるいは入った場合の大学等におきます受け入れ態勢の問題でございます。  まず、留学生が日本の大学に入るに当たりましては、私費留学生統一試験というものが私費留学生にはございます。それから、国費留学生は在外公館を通じて選考試験等を行って、文部省が大学に配置する、こういうチャネルになっておりますが、これは従来からそういう仕組みでやっておりますけれども、特に先ほど来先生から御指摘のございます本格的な留学生政策を展開をするということに当たりましては、外務省ともよく連絡をとりながら、そういった留学生の日本の大学の受け入れの充実に配慮してきております。  私費留学生等が日本語の能力が問題になりますが、日本語能力試験につきましては、文部省関係の団体と外務省関係の団体と共同で、近年では外国でも受験生が受けられるようにというような改善も、こういった提言を踏まえまして行ってきているわけでございます。  なお、大学内におきます教育指導体制の充実という点では、留学生数の多いところには専門の教員を増配をしたり、あるいはチューターという形で留学生と一対一で仲間になれるような日本人の、いわば何といいますか留学生が日本の社会に溶け込みやすいようなシステムもさらに充実をしている等々、できるだけの体制を整えておるわけでございます。
  147. 中西績介

    中西(績)委員 私は、今具体的なこの「世界に開かれた教育機関」だけでお聞きをしようと思ったのですけれども、個々については余り深い説明はなかったですね。例えば入学のときの選考方法だとか、それから単位の互換だとか学位の授与だとか、こうした問題等について、個々には指摘がされておるのだけれども、どれだけ前進があったのか、あるいは手がけられたのか、この点についてのみ一応聞いたわけですけれども、この点どうでしょう。
  148. 植木浩

    植木(浩)政府委員 入学の選考につきましては、先ほど二つのチャネルということで、年々充実をしてきているわけでございますが、学位の点につきましては、先ほど来話題になっておりますので申し上げますと、留学生の学位につきましては、修士課程では文科系で既に九六%、それから理科系で九八%の方が学位を取得をしております。それから博士課程では、文科系が二六%ということでまだ低いわけでございまして、先生の御指摘の点はここにあろうかと思いますが、理科系では既に八四%ということで、私どもが持っているデータでは、この提言が出ましてから今日まで数年間の間にこの点も数字が次第に高くなってきておりまして、改善されつつあるというふうに認識いたしております。
  149. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、先ほど外務大臣の答弁の中にございましたけれども、文科系統ではこういう博士課程をとることが大変困難だということでもって、それなら奨学金なども整っておるアメリカに行こうかということになる、こういう現象等が今までたくさん見受けられたわけですね。ですから、そうした文科系統がなぜそのように低いかということ。これを具体的に進めるためには、日本語でこれをやらなくてはならぬということもあるでしょう。論文をそのようにして困難な状況の中でしたためなくてはならぬということもあるわけですから、これが例えば英文でできないのかとか、いろいろそういう具体的なものがあれば、さらに私はこれは改善されるのではないか、こう思うわけですが、この点どうでしょう。
  150. 植木浩

    植木(浩)政府委員 まさに先生御指摘のとおりでございまして、文部省といたしましても、大学に対して、留学生の教育指導に当たる場合に、必ずしも日本語だけによらずに英語等による論文の執筆を認めることを促進をしてきております。そういうわけで、最近では修士課程あるいは博士課程で英語等外国語による論文執筆がふえてきておりますし、また外国語という科目についての試験につきましても、日本語を外国語扱いにして留学生の教育上の負担を軽減するというような措置も年々拡充をしてきております。今後とも先生御指摘のとおりそういった点につきまして、文部省としてもさらに指導を充実してまいりたいと思います。
  151. 中西績介

    中西(績)委員 したがって、徐々に進みつつあるわけですが、大学によってその点の格差があるという、残念ながらそうした問題等が依然として残っているわけですね。したがって、この開かれた大学ということを志向する場合には、こうした問題等についても十分考慮すべきではないか、またあるいは文部省としてできる限りの指導体制を強めるべきではないか、こう考えます。  それからさらに、私費留学生の統一試験を海外で実施をするとかあるいは留学生相談の受け入れ世話業務だとか、こういうものが出されておりますけれども、この点私は外務大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、定数によって在外公館、こういうところが全く拡大をされていかないという、他の国々に比較すると在外公館の数、館員の数が非常に少ないという状況等がございますね。したがって、こうした問題について窓口を開いて、留学生に対するセンターなりいろいろな形でのこうした問題に対応する措置というのが、徐々にふえてはおりますけれども、これが依然としてまだ不十分だということが言われています。  これらについて、ほとんどと言っていいほど、例えば一番いい例が専修学校なんかの例になってくると思いますけれども、これらは、日本のそうした主体的な説明でなしに、すべて何か人入れみたいな人が日本語の云々ということ、日本語学校だとか、そしてそれが最後には就職までというようなことまで含んでいろいろやっているわけですね。したがって、そうした情報等を十分得ないということが、どのように多くの人々を悩ませ、そしてトラブルを生ぜしめておるか、こういうことがまた出てくるわけです。  そのことは、今度は大学で言うなら、文部大臣、大学の、人員は相当ふえてはおりますけれども、そういう留学生を世話をする人が少ないわけですね。ところが、外国の場合には専門職として、専門家としてそういう人たちがちゃんと配置をされてやられておるわけですね。こうした点等がまだまだ不十分な面があるわけであります。したがって、この点、こうした問題等について何か具体的なものが外務省なりあるいは文部省なりにあるとすればお答えください。
  152. 植木浩

    植木(浩)政府委員 まず、現地におきます日本の大学とか教育の事情について、もっと情報を的確に現地の留学希望者に対して与えるべきである、こういう御指摘かと思いますが、この点も文部省と外務省、協力しながらやってきておりますが、ごく近年、かなり分厚い英文の大学一覧、日本の大学一覧を日本国際教育協会というところでつくりまして、これを在外公館にお配りしたり関係の大学等にお配りして、日本の大学の事情がさらによくわかるように努力をしたところでございます。  それから、日本の大学での受け入れ態勢、特に留学生についていろいろと世話が余計かかる場合の受け入れ態勢、組織はどうかという御質問でございますが、文部省関係では、大学に留学生の担当職員を年々増配をいたしまして、まだまだ不十分でございますが、留学生にきめ細かい世話がいくように努力をしております。なお、さらに留学生に対する日本語教育等を含めまして、留学生の数の多い大学には留学生教育センターなども年々新設をしているということを行っております。
  153. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、そのように職員の配置はしておるけれども、諸外国のように専門職としてこれをやはり配置をしておく必要がこれからあるんではないか、こう思うわけです。この点について、少なくとも今までの対応というのは、やはり職員が配置がえだとかいろいろなことによって短期間だけそこに在籍をするというようなこと等もあって、十分それを果たし得ないという状況があるわけですね。したがって、そうした問題等をこれから後含めて十分な施策というものが施行されるべきだということを私は主張したいと思うわけであります。この点について十分これから、だんだん多くなってくるだけに、ぜひ措置をしていただくよう、要求したいと思います。  それから、今言われておりました在外公館におけるそうした問題等でありますけれども、例えば、今言うように、大学のそうしたものが英文で示されたということは、今まで全くなかったわけですから、ある一定の前進であるわけでありますけれども、日本のいろいろな住宅事情だとかあるいは奨学金の問題だとか、あるいは授業料の問題から、すべてのそうした問題が情報として提供できるという体制をどうつくるかということが、これから後、問題になっておる日本語教育とあわせて大変重要ではないか。  なぜなら、特に文化は違い、住む環境が違うし、言語はもちろんでありますし、こうしたことを十分補える体制、あるいはある程度、十分と言わずとも、地域として持っておる場合の対応の仕方というのは違ってくるわけですから、こうした問題等について、これからより具体的に日本語問題とあわせてどのようにお考えになっておるのか、この点どうでしょう。
  154. 中島武敏

    中島国務大臣 基本的なことでございますが、よい御指摘だと思います。  まさに留学生というのは、受け入れと同時に、先ほどの御質問でございますが、人員の配置もさることながら、同じ配置であっても、それに専門職として当たれるような心の通ったものになることは必要でありましょうし、それから今の御指摘でありますが、まさに受け入れ前の態勢それから受け入れて今度帰国された後のアフターフォローと申しますか、その三つが相まって日本に対する理解度も深まると思いますので、特に今御指摘の、受け入れ前と申しますか、日本に来られる前段階のいろいろな情報あるいはいろいろなフォローというもの、これはもうぜひ重要なことだというふうに考えます。
  155. 中西績介

    中西(績)委員 私は、そうした情報の提供等について、今まである程度努力はしたということがあったとしても、不十分であるということのそうした反省を十分生かし得る体制づくりがこれから極めて重要ではないだろうか、こう思います。さらにその次であります日本語教育についても、時間がございませんからきょうはやめにしますけれども、十分な検討をさらに加えていただければと思います。  そしてもう一つ具体的な問題として、宿舎問題ですね。宿舎問題は、もう既に各大学なりあるいは民間なりでいろいろ、昭和五十年代、一九七五年ごろからだんだん傾向としてはふえておりますけれども、私はやはり一番の問題は、アジア人だとかアフリカ人がべっ視されておるという我々社会の現状というものをもう一度とらえ返す必要があるのではないか、そうしないとこの問題についてなかなか片づきにくい、こうした問題があるわけであります。特に私は、宿舎の現状を考えてみますときに、留学生のみの寮とそれから日本人学生との同居寮との関係があるわけですが、隔離された状況の専門の留学生の寮よりも、むしろ小型で、日本人と同居し、そこで交流が深まるということがまた大きな意味を持っておるのではないか、こう考えます。  これは、ある調査によりますと、留学生のみの寮を希望するかどうかということを聞いたところが、五〇%の人はこれを望むという。留学生の寮における調査では五〇%。ところが、日本人と同居をしておるところでは、日本人と同居した方がいいと答えた人が大部分だし、一〇〇%だったということを言われています。ということであれば、このような隔離の状況でなしに、交流のできるような宿舎というものを考えなくてはならぬけれども、今つくられておるのは、マンション風に、しかも隔離された状況の中でつくられておるということが言えるわけです。私は、これはむしろだんだんこれが強まってくると害の方が出てくるのではないかということを懸念をいたします。ですから、こうした問題等についてどのようにお考えになっておるのか、この点ひとつお答えください。
  156. 中島武敏

    中島国務大臣 おっしゃった点は、私もデータを詳しく見たわけではございませんけれども、向こうを出られて初めて留学生活をなさる方は、やはり留学生だけの方がという安心感がありまして、留学生同士という御希望もあるでしょうけれども、こちらへ来られた方は、私直接お会いしますと、ぜひ日本人の青年諸君と一緒に生活をしたい。それは、語学だけでなくて、心の交流もありましょうし、それから日本の習慣、風習も学び取ることができるということで、まずデータで何%とは言えませんけれども、恐らく多くの方々が一緒に住むことを希望なさっていると思います。  そういう点で、それを言ってしまいますと、結局、今どんどん留学生会館を留学生の数を追っかけてつくっておりますから、せっかくできたところは留学生諸君に開放したい、こういうことでどうしても留学生の方々オンリーになるところが多いわけでございますが、できるだけ宿舎の充実をいたしますのと、それから、民間の社員寮などをかえって開放していただいて、日本の社員の方と共同生活をしていただくこともいいのではないか。そういうことも含めて、一言でどちらがいいかと言われますと、共同に日本の青年と一緒に生活をしていただく方がいいであろう、私自身もそう思っております。
  157. 中西績介

    中西(績)委員 それであれば、大型のものがいいかどうかということから含めて、さらにまたそれを十分まだ措置されておりませんから、これはODAの関係になるわけでありますけれども、防衛費の中に思いやり予算が相当量入っておるわけですね。ところが、こういう問題等については余り措置されておらない。ですから、私は、予算面におけるこうした問題等について十分措置されるべきではないか、こう考えます。  こうした問題等を含めて、外務大臣、これから後特に重点的な施策として、今予算を見てみますと、全体的な問題としてもわずかに、ODAの予算でありますと、文教関係におきましては、六十二年度が百五十四億円で六十三年度が二百三十億円、確かに増額はされておりますけれども、全体の額、七千十億円という額からすると、まだまだ僅少な額にしかなっていません。したがって、先ほどから言われるような、内容的に大変重要な施策であるということであれば、この点についての増枠、これをぜひ私は強めていただきたいと思いますけれども大蔵大臣、こうした問題等についてどうお考えですか。――まず、それなら外務大臣お答えください。後で聞きましょう。
  158. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 我々といたしましては、今のお考え方、本当にうれしく存ずる次第であります。  これからの日本はやはり援助で頑張っていかなくちゃなりませんし、援助も無償が多ければ多いほどよい、これが世界の趨勢であろうと思います。その中において人の交流、人づくり、それは非常に大きな部面を占めなくちゃならぬということでございますから、私もいろいろな人たちと実は御懇談申し上げますが、ほとんどの人がそういうことを最近大きく発言をしていただいておるということでございますので、外務省といたしましても今後最大の努力をいたしたい、かように存じます。
  159. 中西績介

    中西(績)委員 私は、こうした問題は、特にやはり声高に世論が大きくそうした問題等について指摘をし、そうして動くことによって皆さんも政策として実施するに当たってはやりやすいのではないかと考えるわけです。特に、大蔵省はそうした財源を握っておるわけですから、今もずっと論議をしてまいりましたように、まだまだ十分ではございませんけれども、時間がありませんから。こうした問題でODA予算の中に占める割合からいたしますと、留学生の費用などということは本当にもうごく小部分です。先ほど私が申し上げましたように、思いやり予算などからいたしますと、これはもう比較にならぬ程度なんですね。したがって、問題になっております円高の問題だとかあるいは土地騰貴による家賃の上昇の問題などを含めて、基本的なこうした問題に対する予算の増額をぜひ私たちは強めなくてはならぬ、こう考えておるわけですけれども、この点についての御感想。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もうこれは御承知のことでございますけれども、文部省におけるODAの予算額はここのところ逐年かなり大きく伸びておりまして、これは全体の一般歳出の伸びがゼロでありあるいはマイナスであった時代、今日もそれに近うございますが、それに比べますとかなり顕著な伸びでございます。このことはこの問題について政府全体が非常な重点を置いておるということの象徴ではございますが、まだまだ一般会計のODA七千十億円から見ますと決して大きな額とは申せない。  先ほどからるるお話しのように、こういう関係の施策こそは今後の我が国の、世界各国、殊にアジアの周辺の国々はそうでございますが、に対して果たさなければならない一番大事な務めであると考えております。したがいまして、そのために金を惜しんではならないであろう。先ほどからお話しのように、そういう我々の施策が先方らも十分理解され、受け入れられ、また国内でもそういう人たちを温かく受け入れるような、そういういわば全体の理解というものができ上がりますならば、金はもう決してこういうことで惜しむべきものではないというふうに考えております。
  161. 中西績介

    中西(績)委員 増加させるのでなくて、自然に増加するという体制をどうとるかということが今大臣が答弁なさったことと私は合致すると考えておりますので、ぜひこの点について強力に推し進めていただければと思います。  最後に私は、大変これは重要なことでありますけれども、十万人という問題が表面化してからこれが大変重要な論議になってきたような気がいたしますけれども、量より質ということを考えながらこの受け入れ態勢をどうするのかといったときに、国費制度による留学生、これを中心にし、大学院生を中心にしておるわけでありますけれども、この点を一度見直すべきではないか。というのは、これが果たして牽引的な役割を果たすかどうかという、ここに焦点を当てる必要があるのではないか。  ということは、むしろ私費留学生にも進学するときに成績によっては奨学金を与えるということ等を含めまして、できるだけ今推進しておる学習奨励金制度などについても、学部の三年、四年ということになっていますけれども、これを切り下げて拡大をするとか、そうしたものを含めて、私費制度の留学生についてもう少し厚い手だてというものを考えていかないと無理ではないだろうか、こういうことを含めて、一本化すべきだ。その中でどうなのかということを考えなければならぬと思うのですね。ですから、差をつけるとするなら奨学金ぐらいで、ほかのところに余り大きな差をつけたりなんかすることは、決して拡大できるという、こうしたことにはならない、こう考えます。これが一つ。  それともう一つ体制づくりです。体制をどうするかということですが、この十万人体制でいきますと、これを読んでいますと、さらに将来は国費生が中心ですから、どうしても政府主導的なものに陥りがちになる。だからこの点を、国際文化交流事業の一元化を目指しながら、特に教育機関が主導的に大学だとか、いろいろなところでもう少しこれを総合的に考えるべきではないかということを提言をしたいと思います。  そして三つ目は、先ほど申し上げておりましたように、ODA関係の予算については大体確認できましたから私も了とするわけでありますけれども、こうした問題等について当面、特にまた我々は予算修正の中で三十億円というのをさらに提起をしております。それは先ほど申し上げた円高あるいは家賃の上昇、外国の物価等に対応するいろいろな問題等を含めて出されておりますので、こうした問題等についてぜひ再考していただければ、そして前二問については、これからあとまた委員会なりでお聞きをいたしますので、十分な御検討をいただければと思っております。  以上です。
  162. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて岡田君、中西君の質疑は終了いたしました。  次に、田中慶秋君。
  163. 田中慶秋

    田中(慶)委員 土地問題を含めて若干きのうの質問の中で、時間の関係で、通告に対して質問できなかった部分がありますので、まず冒頭にその辺からきょうはやらせていただきたいと思います。  きのう申し上げましたように、首都圏の土地が大変高騰していることは事実でありますけれども、しかしそれも許認可や、あるいはまた制度上の問題でもっともっと地価を抑制することができるということをきのう申し上げたわけであります。例えば、きのうの例でも、調整区域の活用等で、一つには調整区域のマスターテーブル、基準というものがあってしかるべきじゃないか、そのことによって都道府県に、あるいは地方自治体に対する指導というものができる、こういうことを申し上げたと思います。ところが答弁は、それぞれの場所によって違うんだ、こういう答弁であったわけですけれども、それはお互いの意見のどうしても合わないところかもわかりませんけれども、やはり行政のセンターとしてやるならば、そういう一つの心棒があってしかるべきだと思います。それが現実には調整区域というものに対する基準というものをとったときにないわけでありますから、その辺をこれからつくっていただきたい、まずそれが一つ。  もう一つは、許認可の簡素化等の問題で申し上げました。例えば開発に対する問題は、大体土地が宅地として利用できるまで大体四年ぐらいかかる、これでは余りにも長過ぎるし、その間における行政の事務的な問題、簡素化できる問題があるわけであります。きのう申し上げたように、建築があり、開発があり、道路があり、河川があり、公園があり、教育があり、あるいは衛生があり、公害があり、さらにはまた農水の問題がある。  特にこの農水問題、冒頭に農水大臣にお聞きしたいわけでありますけれども、例えば二ヘクタール以上の開発問題になってまいりますと、農水が、例えば首都圏であるならば関東農水局のところに行ってこの許認可を受けなければいけない。そのために要する日時というのは大体平均で二カ月ぐらいかかるわけであります。長いので九十日もかかるわけですから、そういう点では、こういう問題を含めて余りにもかかり過ぎる。もう少し短縮するか、あるいはまた地方自治体にそれぞれ農業委員会があるわけだし、農政事務所もあるわけでありますから、そういう点をもっと有効に使うならばこういう問題についてももっと縮小できます。まずその点について農水大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  164. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農地の宅地転用の許認可権限を地方自治体に移してその迅速化を図れ、こういうことでございます。農地転用は、市街化区域について許可は不要であり、農業委員会への届け出のみで足りることとしております。その他の地域について、今お話しのように、二ヘクタール以上のものというお話もございましたが、二ヘクタール以下のものは都道府県知事に農地転用の許可権限が委任されており、農地転用許可件数の九九・九%がこれに該当いたします。二ヘクタールを超えるものについては、事柄の性格上国が責任を持ってその可否を判断する必要があると考えておりまして、これを知事に委任することはいかがなものかな、適当ではないと実は考えておるわけでございますけれども、おっしゃるように、事務の迅速化を図るために私自身大臣権限ではなくて、この権限を実は地方農政局長に委任をして、任せておりますので、それによって迅速化を図っておる、こういうことでございますけれども、なお一層こういう問題は努力を重ねなければなりませんので、今平均しても六十日、こういう話がございましたが、私が事務当局から説明を受けているのは、大体平均して五十日ぐらいじゃないか、こう言っているのですが、もうそれでも十日、ちょっと違う。しかし、ここで先生がお調べになっておっしゃることもまた事実でございましょうから、そこらはなお督励をいたしたい、こう思っております。
  165. 田中慶秋

    田中(慶)委員 建設大臣に、きのうの調整区域の基本的な一つの基準、こういうものに対して明確にしていただきたい。
  166. 越智伊平

    ○越智国務大臣 昨日お答えいたしましたように、市街化区域と調整区域の線引きの問題、これの基本といいますか、これをどうすればいいかという御質問でございまして、ここがちょっと御質問の要旨と私の答弁と食い違った、こう思うのであります。といいますのは、私が申し上げましたのは、その都市都市によりまして、その地域の方々、また県、市町村が、この地域は住宅街にしようとか、この地域は商店街にしようとか、この地域は工場にしようとか、そういういろいろ計画もありましょうし、また非常に人口がふえるところ、また人口密度がふえていくところ、そのことについてはその市町村でお決めいただいてやっていくことがいいのでないか、こういう趣旨の御答弁をしたわけであります。  例えばどこかに駅が新しくできるといたしますと、駅前を何キロといって私が、建設省の方で定めるというのはどうであろうか。要は駅ができますと駅前は大体商店街にそれぞれ皆なっておりますので、そういうところでその特性を生かして、その県、市町村でお決めいただいたらどうであろうか、こういう御趣旨の御答弁をしたわけであります。  それから、あとの二点目の開発の期間の問題でございますが、これは私どもも、建設省といたしましても、できるだけ早くやれ、早くやってくれ、こういうことの通達を何回も出しておりますけれども、実際は長くかかっておる。先生のお説の点が多々あると思うのであります。最近に至りましても、私のところに陳情に来ておりますけれども、開発をしようということで申請をしておったが、大変おくれてきた、そのうちに今度は金融の問題で、いろいろ土地問題で議論が出て金融を抑えられてどうにもならない、何とかならないかという陳情があった次第であります。  こういうことを考えますと、先生の言われるように速やかに、これは申請書が出てからということよりも、実際に事前協議の段階から速やかにやっていく。最近のように、非常に急速にいろいろ経済も変化いたしましょうし、いろいろ変化がございますから、速やかにやっていく。この点について今後とも指導をしていきたい、かように思う次第であります。  そのためには、第一番に、窓口を一本にいたします、それから、いろいろの協議、これを各部署部署で同時にやっていただく、こういうことにして、今の時代でございますから、速やかに、そのことが地価抑制にもつながる、こういうふうに思いますので、この点はもう全く先生の言われるとおり、御意見のとおりである、かように思う次第であります。
  167. 田中慶秋

    田中(慶)委員 調整区域の基本的な考え方で、それぞれの地方自治体の要請というのはわかりますけれども、例えば建設省が神奈川に調整区域の見直しをしてくれ、こういう通達を出したって基本姿勢がないものですから、やりませんよというお返しだけでしょう、こういうことであっては、お互いにイタチごっこだと思うのですね。私は、一つの例題として申し上げたわけですよ。駅から何キロであるとか、幹線道路、国道とか地方道とか大きい道路から何メーターとか、こういう形の見直し基準があってしかるべきだということ。何もそれを全国画一的にやれと言っているわけじゃない。  そういうものがないものですから、現実に見直しといっても、ただ見直し、見直しという言葉だけに走るだけであって、その一つの基準が決まれば、こういう方向で検討してくださいと言うことだってできるでしょう。現実には今何にもできない。ただ笛や太鼓をたたいているだけで、これであっては行政としての役割を果たさぬ、私はそう思うのです。ですから、その辺は明確にしてください。幾らこれ、建設大臣であってもその辺をぴしっとしていかないとだめだと思いますね。簡単でいいですよ。
  168. 越智伊平

    ○越智国務大臣 先生お話しの点は私もよくわかりますので、先般も近郊の知事さん、それから市長さん、お集まりいただいて、いろいろとお願いをいたしました。  神奈川県につきましては理解をしていただいたようでありますけれども、また、いろいろ事情がございまして、事情といいますのは、実はこういうお話がございました。神奈川では高等学校を百校以上ですか、ようやく建てたので、でき得れば企業と人とが一緒に来てもらいたい、人だけよこしてもらったんでは困るというようなことで、実は先ほど申し上げましたように、開発の問題も二十ヘクタールを五ヘクタールに下げておりますけれども、神奈川はなかなか五ヘクタールを実際はやってもらいにくいというようなことでございますので、その点につきましては、実はよくお願いをいたしまして御理解をいただいた、こういうふうに思っておりますが、実際はなかなか難しいのではないかと思いますが、今後ともよく御理解をいただくようにお願いを続けていきたい、かように思う次第であります。
  169. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この法律の施行が昭和四十五年の六月十日以降でありますけれども、その時点では投網のようにただかけるだけであったし、そして、それぞれの個人の意見をそんたくしたわけであります。その後五年後に見直しをする、十年後に見直しをする、ただ、そういうことだけしかないわけでありますから、今言ったように、一つの指針があれば、それはこういう形でこうしてもらいたいと言うこともできるわけですから、この問題で議論ばかりしていては次へは進みませんから、やはり前向きに検討することをお約束してください。ただそれだけでいいです。
  170. 越智伊平

    ○越智国務大臣 全国的な問題もございます。全国的な問題は先ほどお答え申し上げた次第でございますけれども東京都と神奈川県とかこの周辺の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、前向きに各県、市町村にお願いをする、こういうことで進ましていただきます。
  171. 田中慶秋

    田中(慶)委員 さらに、きのうも若干申し上げましたけれども、地価を抑制するためには公的機関と民間との役割分担をしたらいいじゃないか。例えば公社公団を含めてそれはむしろ調整区域を主体としたすばらしい町づくり計画をしてもらう、民間においてはむしろ既成市街化区域の中でやっていただく、こういうことをある程度した方が地価は抑制できるのじゃないかと思う。  きのう申し上げたと思うのですけれども、民間と公的機関といいますか公社公団と買い上げの時点でお互いに競り合うようなことがあってはいかぬわけであります。片方は租税特別措置法がある、こんな形で結果的に高いものを買っている状態になりますから、私は、基本的にそういうことを役割分担、画一的にできませんけれども、そういう姿勢が望まれるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  172. 越智伊平

    ○越智国務大臣 この点はお説のとおりであります。住都公団とかあるいは地方にあります住宅公社とか、こういうところが民間と競合するようなことがあってはならない。民間につきましては、先ほどちょっと触れましたけれども、やはり民間で優良な宅地を優秀な業者がやろうとすればそれはやっていただく、このことが大事である。すべて公団とか公社、これがやるというのは適当でない、民間を大いに活用していく、こういうことであります。お説のとおりであります。
  173. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、これからのサラリーマン初め皆さんが良好で安い住宅を求められるように、きのうも総理もそれぞれお話しされておりましたし、それは政治的な大きな課題だろうと思います。そういう点で今後とも規制の緩和や、あるいはまた現在の事務的な問題について積極的な見直しをして、より簡素で安いものを、こういう形でやっていただきたい。  きのうも再開発の減歩方式も申し上げました。例えば再開発でも大体八年、十年かかるわけであります。そういう点では現実問題として本当に高いものになってしまう、これが現実でありますから、行政が関与し行政が許認可を与えること、こういう問題を含めてもっともっとこれらの問題に――地価は、国土長官じゃないですけれども、もっと下がる、私はこういうふうに信じておりますし、そのやり方だけでありますから、もっと工夫をしていただきたいと思います。  そこで、道路問題について若干お伺いしたいと思います。  今の有料道路、高速道路、こういう道路が計画的に建設をされておるわけでありますけれども、例えば首都高にしても、あるいはまたこの近辺を走っております高速道路にしても、マンネリ化している交通渋滞を、施行の責任者としてどのように考えているのか。例えば横浜新道一つとっても、もう一年じゅう交通の渋滞がマンネリ化しているわけであります。あるいはまた、季節的に交通渋滞を招いているということであるならばともかくも、大変これはお金を取りながらもうずっと一日じゅう交通渋滞を来している、こういう問題がありますね。  もう一つは、例えばだれが見てもおかしい設計不良的なものがある。今度湾岸道路が首都高にジョイントされました。あそこだって箱崎のジャンクションを見ていただければわかるように、三カ所が一カ所に絞られておりますから、どうしても込むのは当たり前ですね。あるいは三ッ沢のジャンクションを見てください。首都高があり第三があり一般道が一つのところへ来ていれば、どんなにしたって込むのは当たり前でしょう。こういう問題が平気で設計をされて、現実にはこの交通渋滞により拍車をかけて、なおかつお金まで取っているのですから、そういう点ではちょっと発想を変えていただくなり、あるいはもっと工夫をしていただければ効果的な役割を果たせるんじゃないか、こんなふうに思うのですけれども大臣はどう考えているのですか。
  174. 越智伊平

    ○越智国務大臣 東京都内の二十三区の一日の車がおおよそ五百万台動いておるようであります。そのうちの約百万台が高速道路に乗っておるようであります。これは道路計画をいたした当時よりも非常に都市化、密集が早くなりまして、一方、道路の方は用地の問題等々これあり、大変おくれている、こういうことで大変御迷惑をかけているわけであります。  これを解消いたしますためには、中央環状線ですね、これを早くやる。そして、直接郊外から来て郊外に出る車も、一日高速道路に乗る三分の一は都内をおりないそうであります。でございますから、こういうものを早く解決して、今先生の言われましたようなところを解消するべく外を通していく。そして湾岸道路、横浜にいたしましても湾岸線を早くやる、あるいは横浜新道ですか、これを拡張する、こういうこともできるだけ早く努力してやっていかないといけない、こういうふうに思う次第であります。  幸い今度御承認をいただくべく十次の道路五カ年計画も提案する予定でございますが、どうぞ御協力をいただきまして、特に各県あるいは市町村、そういうところ、東京都でいいますと各区ですね、その地域の方の御協力をいただいて用地の問題、用地を早く解決いたしますとすぐできるわけでございますが、用地が大変難しい事態になっておりますので、御協力をいただきたい。先生の御趣旨をよく体して努力をしていきたい、かように思う次第であります。
  175. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣が御苦労されているのもわかりますけれども、例えばこのジャンクションのところ、一カ所に集めなくたってできるわけですよね。例えば五百メートル間隔につないでいったってもっとスムーズに抜けられるわけですね。全部、三つも四つも一カ所に絞っていたら、どんなにしたってこれは込みますわね。せっかくつくった道路を交通渋滞なり事故防止のためによりまた狭くして現実にはやられているわけでありますから、やはり設計上こういう問題も含めて、それはペーパープランニングの時点と実態というものをもっと調査をされた中でやらなければ私はいつまでたっても、この設計の段階の発想を変えていかなければ、解決しないと思いますので、これは現実問題として随所に出ているわけですから、そういうことも含めてこれは検討してください。要望しておきます。  そこで、実は河川の問題、大臣、ここに河川法という法律があるわけでありますけれども、河川法が明治に施行されて今日まで二回ですか、見直しをされた。ですから、大変いろいろな問題なり無理があるわけですね。例えば、三メーターの河川も五十メーターの幅の河川も百メーターの幅の河川も、極端なことを言えば同じ法律であります。一級河川、二級河川あるいは都市小河川というものを区別をしながら、もっともっと整備をしていかなければいけないし、その障害が、あるいはまた都市の道路の問題やあるいは駅前広場の問題等々にも出ているわけでありますから、そういう点でこの法律の見直しをする意思があるかどうか。
  176. 越智伊平

    ○越智国務大臣 お説のように、河川法、大変古い法律でございますけれども、今、御承知のように一級河川、二級河川また準用河川、こういうことでそれぞれの分野を分けまして管理をいたしておる次第であります。河川も、大変今まで率直に言って金の入れようが少ない。でございますから、非常に荒廃をしておる。その上に、山が大変荒れております。一方、道路や宅地は舗装をしておる。でございますから水が一度に出てくる、こういうことでございますから、河川管理は十分考えてやっていかなければならない、かように思う次第であります。  さて、河川法でございますが、よく検討はしてみますが、今直ちに河川法を改正するという御提案を申し上げるまでには至っておりませんが、よく検討をさしていただきたい、かように思う次第であります。
  177. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、明治から二回の見直し、行政の中でも一番古いのは河川じゃないかと言われております。そういう点では、時代が大きく変わり、そしてまた社会のニーズも変わっているわけでありますから、そういう点ではその河川法という法律の見直しは、私は、地方自治体を含めてその見直しの声が大変大きいわけでありますから、そういう点では早急に着手することを要求しておきます。答えてください。短くていいですよ。するか、しないかでいいです。
  178. 萩原兼脩

    ○萩原政府委員 お答えをいたします。  昨年も、実は十五年ぶりでございますが、先生の御趣旨に沿った方向で、例えば一、二級河川でも市町村長がその地域の実態に応じましていろいろ整備ができますようにという一部法律改正を行っております。時代の動きにつれて法律を見直すべきだという考え方は全くそのとおりだと思っておりますが、すぐまた来年やるかというお話は、十分時間をいただきまして検討させていただこうと思っております。
  179. 田中慶秋

    田中(慶)委員 他の質問もありますから。いずれにしても、やはり法律というのは、実態に合って民意を反映することが法律の趣旨だと思いますので、その辺を含めて積極的に取り組んでください。  そこで、実は昨日も時間がなくて余り詰めることができませんでしたけれども、留学生の問題であります。今の十万人の受け入れ態勢の問題や、「世界に貢献する日本」という形で、それぞれ総理が意欲的にこの問題を進められているわけであります。そういう点で、私はきのうは、国がやるものと民間がやるものと、こういう形で区別をする、そこでその中の一つに、例えば民間で御協力する場合においては、一つには、全体的な海外進出している企業やあるいはまた輸出にウエートを置いている企業がこれらに対して積極的に取り組むべきであろう、その中で租税特別措置の問題を何とかして検討していただいたら、これらの問題がより積極的に推進をされ、民際外交として役立つんじゃないか、こういう問題を申し上げました。  これに対するお答えは大蔵大臣だろうと思いますし、もう一つは、やはり全体的に日本が今日、例えばお祝い事でも結婚式でも大変華々しくなっております。そういう点では、こういう華々しい豪華な部分と、逆に留学生なんというのは、この前言ったようにこの六年間で仕送りが半分になっているのと同じなんですから、大変そういう点で日本に対して、取り扱いの問題やら、ひんしゅくを買っている部分もあるわけであります。そういう点では、私たちは少なくとも全体的な呼びかけをして、豪華な結婚式や豪華な宴会の一部でもそういうところに還元をしてやれないか。こういう留学生援助といいますか、こういうことを政府として、国として呼びかけをすることが必要じゃないか、こういうこともこの留学生問題については考えているわけであります。こういう問題が文部省になるのかあるいはどこになるのかわかりませんけれども、これらに対する見解をお伺いしたいと思います。
  180. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘の点はよくわかります。国でやるだけではなくて、民間企業あるいは国民的な総意で留学生を温かく迎えるようにしたらどうかという御指摘でございまして、そのお心はよくわかります。  一つには、民間企業の寮を開放して日本の青年と一緒に住んでいただくということも、心の通い合い、それから習慣をお互いに知り合うという点でもいいのではないか、そういう意味も含めまして、御趣旨の点は心に置いて進めたいと思います。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知かと思いますけれども、寄附金の中でいわゆる試験研究法人等に対する寄附金、ちょっと名前が妙な名前なんでございますが、そういう特別の制度がございまして、これは、公共法人、公益法人等のうち、教育または科学の振興、文化の向上等々の推進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対するその法人の主たる目的である業務に関連する寄附金というのが特別にございまして、留学生に関連いたしまして、留学生に対する学資の支給、貸与、学生寮の設置運営を主たる目的とする法人に対しまして民間企業が寄附金を出しました場合には、ただいま申し上げました法人に該当するものとして、別枠で損金の算入を認めておるわけでございます。もちろん、それより別にまた指定寄附金制度がございまして、一つ一つ指定をすることもできますけれども、一括してそのような制度を設けております。
  182. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私が提案したのは、そういう一つの租税特別の関係もあろうと思いますけれども、そうじゃなくして、今から新たに、企業として合理化をしたり、あるいはまた技術革新によってそれぞれ人員が削減されたりいろいろなことをして、あるいはまた海外進出したりして、既存の住宅その他が現在あいている。こういうところで、全体的な呼びかけをしながら、しかしそこには管理をしたり、あるいはまたそこには固定資産税もかかる。寄附行為という形の問題もあろうと思いますけれども、換算をして寄附行為にするのかどうかわからぬけれども、そういう一連の問題を含めて、貸与したものに対して、あるいはまた、積極的にこの留学生問題に参加をすることによって税制問題についても具体的にはこういう措置ができますよという、このPRも恐らくないと思いますから、そういうことをもっとPRすることによって民間の協力が得られるのではないかということを申し上げているわけです。それらに対して大蔵省としてどのようにお考えですかということを申し上げているわけであります。
  183. 水野勝

    ○水野政府委員 特定の法人に拠出をされた場合につきましてはただいま御答弁申し上げたところでございますが、企業がその施設をそうした目的のためにお使いになる。これは厳密に申し上げますと、やはりそれがその事業の本来の目的の範囲内であるのかどうか。もしそうでないといたしますと、それはやはり一般的な寄附金というふうに、厳密に言えば扱われることになるのではないかと思うわけでございます。  ただ、その金額が、その規模にもよると思います、小さな金額でございましたら、少額不追求ということで、そこは普通の経費として認められるかと思いますけれども、ある程度まとまったものになると、やかましく申し上げるとそれは寄附金扱いになる、こういう扱いではなかろうかと思いますので、そういうふうに大きなものとして組織的にやるということでございますと、その寄附金の扱いの方の道を今のお話のように換算してそうされるのかということになります。  ですから、そこはよく執行当局と文部省、文部当局の方とで御相談をして、組織的にされるならば、それは一定の団体を適していただく形にすればただいま御答弁申し上げた寄附金の扱いになりますし、そうでない場合に、それは便宜、扱いの問題としてどのような出口が見つかるかどうか、それは執行の問題として今後検討をさせていただくべき話ではなかろうかと思うわけでございます。
  184. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、十万人の受け入れ態勢ということを大きな目標にしているわけですから、今のままでは国も余り積極的に施設をつくってやるわけではない。そういう点で考えてみますと、現実に国が、あるいはまたそういう点で民間企業に働きかけることが、より現在の留学生の住宅の問題の解消になると私は思うのです。  そういう点では、一方においてはそういうことを促進しながら、一方においては税制の問題をちゃんとした方がいい。そのことに対して現行の法律の整備をしなければいけなければ、法律ですからそういう点で整備をすればいいんだと僕は思う。どの条文、どの部分に当たるかということを検討する云々じゃないと思うのです。これは一つの留学生十万人の受け入れという大きな目標に向かってやるのですから、それは現行の法律で整備できるものもあるでしょうし、できないものもあるわけですから、そういう点で、この税制面の問題で余りにも消極的であると、恐らく民間の協力はそんな形だともらえないと思うのですね。やはりもっともっと、税務当局も、こういうものは恩典がありますよと、文部省も含めて総力を挙げてPRすることが、十万人の問題やいろいろなことを含めて解決をできるのだろう、こんなふうに思いますので、もう一回答弁してください。
  185. 中島武敏

    中島国務大臣 国の方でも積極的にやっておるわけでございまして、新しい留学生会館などはもう積極的にやっております。ただ、留学生の数が、幸いと申しますか、私費留学生も含めて二〇%ずつふえてまいります。ですから、これからのふえ方を見ますとさらに一生懸命やらなければいかぬという状態でございます。  その場合に、留学生の方々の希望としても日本の青年と一緒に住みたい、こういう御希望が多いわけでありますので、さらに今おっしゃったような民間企業の協力を得やすいような形はぜひとるべきだ。積極的に関係省庁と調整をしてまいりたいと思います。
  186. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひそんなことでお願い申し上げたいと思います。  そこで、実は教育問題、ちょうど今の時期になりますと大学入試を初めとする教育問題が一年の中で一番関心が高い時期じゃないか、こんなふうに思います。  そこで文部大臣にお伺いしたいのですけれども、最近の傾向として、受験生の志向ですね、これが国公立から私学志向に変わっている、これは顕著にあらわれていると思います。こういう問題について文部省としてどのように受けとめているのか。ただ難しいとか易しいとか、私はそんな問題じゃないような気がするわけです。難易度の問題じゃない。そこで、文部省としてこういう問題について、その原因をどのように受けとめているのか、お伺いしたい。
  187. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  先生御案内のように、日本の大学制度というのは明治以来でございますけれども、当初は大学というのは国がやるんだという感覚が強くて、国立の大学ということでスタートいたしまして、大正七年に大学令というものができましたときに初めて、私学でつくることも例外的に認めるというような仕組みになったわけでございます。それ以来、長い歴史を経ております間に、早稲田、慶応とかいったような著名な私学が逐次充実をしてまいりまして、国公立と肩を並べるように内容的にも充実をしてまいったというようなことが、今日の私学に対する学生の志向がかなり移っていっている大きな原因の一つであろう、こういうふうに思っております。
  188. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大体、文部省は、そんなことを考えているからだんだん私学志向になっていくのですよ。私学には建学の精神があるからなんです。国公立に建学の精神がありますか。具体的にそれはもっともっとそれぞれの特徴のある教育ということを目指してやらなければいけない。明治時代からの問題云々じゃないわけですから。  そういう点で、やはり私学志向というものがこういうふうに変わってきたというのは、今の時代に私学がいかに時代の先端を受け入れているかというところに私はあるのだと思うのです。そういう点で、今の文部省が大学の施行令の形の中で、例えば私学全般にわたって国としてのもっと政策的な取り組みをしていただきたいと思うのです。  例えば、今までの既存の学部がある、これは一つの例ですが、同じ百人なら百人の募集で始まる。ところが、新しい時代だからということで、そこに何の施設も変えることもなくして要求して新しい学部を設置しようとすると、そこにまた大変な制約があるわけです。例えば財政的な問題がある。ある程度の新しい学部をつくるときには六十億とか八十億、その資金としてプールされているかどうか。しかしそれは現実にスクラップ・アンド・ビルドですから、古い学部をなくして新しい学部を、同じ施設を使ったらそんな費用は要らないわけです、だれが考えても。先生方もいらっしゃるわけですし。そういう点で、こういうものをやろうとしても、それに対してなかなかオーケーという、こういう形にならない。ですから、やはり僕は文部省はもっともっと時代を先取りした、時代的な背景というものをにらんでそういうものも積極的に取り組むべきじゃないかな、もっと、臨教審が言っているように、許認可じゃなくして政策省として私は脱皮する必要があろうと思うのですが、その辺はどうでしょう。
  189. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘は、大学設置基準の問題になると思うのでございます。  そして先ほどの御質問ですが、これは国公立、私学一緒に相まって高等教育の向上に資していただくものと思っておりますが、後段の大学設置基準は、高等教育機関ができますときに一応の水準、規模は確保しなければいかぬということで、昭和三十一年に大学設置基準をつくったものでございますが、その後の推移で逐次弾力化はしております。  しかし、臨教審でも言われましたように、これからの社会の変化に対応いたしまして大学そのものが個性化、多様化、活性化をしていくという時代でございますから、大学設置基準そのものを、余り細かく厳しくというものから大綱化、簡素化してまいろう、こういうことでありまして、大学審でもその方向で御審議をいただいておりますし、それに沿って大学自体が新しい創意工夫をしていただくということを望んでおるところでございます。
  190. 田中慶秋

    田中(慶)委員 文部大臣の考え方、述べられたこと、私は大変評価をしたいわけです。ところが、現場はなかなかそういってないところに問題があるわけですね。やはり新しい、最近のこの時代に、科学技術の変化もあるでしょうし時代の環境の変化もあると思います。そういう点ではやはり政策的にそういうものをやって、余り縛りをかけないでほしい。  例えば実例として、医学部の学生を募集しますね。大体定員が百人くらいです、はっきり申し上げて。ところが、今の定員の中で、二またをかける人もいらっしゃるでしょうし、そういう点では歩どまりを考えて、大体これは一割ぐらいアップを認めておりますね。ところが、大体一割アップを認めたところでも、一一〇%ですから、その一一〇%という基準をオーバーしちゃうとこの補助金がもらえない、こういう問題が現実に出てくるわけね。ところが一一〇%、二人オーバーしても、そんなものじゃないと思うのです。例えば、はっきり申し上げて五人の同点数の者がいたとします。ところが、同点数の中で五人いたうち二人、あと三人入れちゃうとこの一一〇%をオーバーしてしまう、どの人を採用していいかわからない、現実にこういう問題があるという悩みも聞いております。それを採用すると補助金がもらえなくなる、これが現実です。  ですから、そういう縛りというものをそんな形で余りやる必要はない。今大臣が言ったような形で、ある程度の弾力性を持てるような形のものがあってしかるべきだと思うし、これからぜひそういう方向で積極的に、これからの政策の省としてそんな形で見直しをしていただきたい。もう一度、大臣
  191. 中島武敏

    中島国務大臣 御趣旨は大学設置基準という点でお受け取りをさせていただきまして、後段の具体例は私もつぶさに存じませんので、もしあれでしたら政府委員からお答えさせます。
  192. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 後段の入学定員の管理の問題についてお答えさせていただきます。  御承知のとおりに、大学の教員組織それから施設設備というのは入学定員に合わせまして基準が設定されております。したがって、学生の入学定員を余計採るということは、言いかえれば、一般的に言えば教育条件を低下させるということで、私ども入学定員を厳守するように指導はいたしております。そして、ある一定限度の入学定員を超える場合については、私ども補助金を先生御指摘のようにカットするという措置を講じております。  ただ、その一定限度の入学定員を超える場合にカットするときの限度につきましては、私学振興財団に運営審議会というのがございまして、この運営審議会委員の大半は私学の関係者でございますが、私学の関係者の方に議論をしていただいて、そしてその限度額を決めておるというのが実態でございます。  六十二年度、本年度六十三年度じゃございませんで、昨年の六十二年度の入学者にかかわるその一定限度というのは、一般の学部は二・〇倍、それから医学部、歯学部につきましては、教育研究条件を向上させるということと、医学部、歯学部の需給関係、医師の需給関係の問題がございますので、一・二倍ということで抑えているわけでございます。  この一・二倍ということにつきましては、昭和五十六年度からこの率を使っておりまして、この点につきまして、特に医学部関係、私立医科大学関係者から厳し過ぎるという不満は私ども聞いておりませんし、むしろそれ以上に、六十二年度につきましては、私立医科大学協会というのがございますが、医科大学協会が医師の需給関係を何とかするという観点から定員を厳守するということを自主的に決めております。したがって、六十二年度で申し上げますと医学部全体の平均は一・〇二でございます。二%しかオーバーしておりません。そういう意味で、私どもとしましては一・二倍というこの基準は今のところ動かすという考えはございません。
  193. 田中慶秋

    田中(慶)委員 長々とそういう御答弁、親切なようでありますけれども、そういうことを申し上げているわけじゃないのです。  今、一・二倍という問題であっても、今のように、はっきり申し上げて同点の者が五人いたとしても一人しか入れない、あと四人は、極端なことを言えば三人救うことができても一人は救うことができない。同じ条件でそういう問題が出てくるわけです。ですから、そういうことを含めて、何も拡大しろとかそういうことを言っているわけじゃありませんで、その一人とかあるいは二人とか、そういう問題を含めて大変問題が出てきていたということで、今現実に、私は私学振興財団の方で事務的な話も聞いてきました。そういう点であるものですから私は申し上げたわけで、いま少し、先ほど大臣が言ったように弾力的な運営というものをやるべきだろう、こういうふうに申し上げたので、何も事細かくどうのこうのじゃないのです。  先ほどの設置基準の問題も同じことなんです。ですから、そういうことで申し上げているわけですから、そのことについて事細かく見直しをしろとかそういうことで申し上げているわけじゃないので、運営の中でもっと弾力的にされることがよりベターじゃないか、こういうことで申し上げているわけですから、その辺はぜひそういうことをしていただきたいということを要望しておきます。  そこで、実は教育関係に絡んで申し上げたいことは、今一億総国民がスポーツの時代と言われておりますね。子供たちの非行の問題やあるいはまたお年寄りの健康管理にもこのスポーツというものが大変大きな役割をしているわけであります。現在、幼児からお年寄りまでこのスポーツの時代という表題に合うような形で大変な社会的なニーズ、こういうことでありますし、またこれらに対する取り組みもテレビや新聞、マスコミあるいはまたスポーツ報道等を通じて、日本のアマチュアスポーツという問題に対して大変多く評価をいただいているわけであります。  ところが、この中でも幾つかの問題点が出てきているわけであります。例えば、先般も山下先生がここでお話しになられたように、日本のオリンピックの問題も例題にとられました。東京オリンピックからずっとメダルが減っている、一億総スポーツ時代と言われながらそんな感じがしている、これも一つであります。アジア大会の問題も、まさしく一九六二年からずっと日本は優位だったのですけれども、一九八二年からはむしろ日本のメダル数がずっと減ってきている、これも現実であります。  こういう中で、一つには、スポーツ人口がふえておりますけれども、あるいは国民の関心が高いことは事実でありますけれども、このスポーツに対する全体的な国の取り組みというものが、私は非常に悪い、はっきり申し上げて悪い、表現がいいかどうかはありますけれども。例えば予算的な問題一つとっても、文部省が出している体協に対する予算が昭和六十一年度で十一億六千七百万円、お隣の韓国が大体八十億、中国が百十億であります。こういう形で、お金をつけたからいいというわけじゃありませんけれども、こういう問題も含めてそれらの環境というものが非常に悪い。  あるいはまた競技についても、財政的に厳しいものですからそれぞれのスポンサーを見つけてやります。そうしますと試合の数も非常に多くなってきた、こういう問題の悩みがある。そうすると基礎体力や基礎という問題に対する問題が非常に弱いわけであります。そういう点で全体的なレベルアップができない。例えばことしのソウル・オリンピックに対するアジア予選で勝ったチームであっても、財政的に厳しい、海外遠征の強化をするに当たっても予算がない、そういう点では役員や選手等々含めて、カンパをしたりあるいはいろいろな形で財政援助をいただく、こういう形で学校のOB等々資金集めをしなければいけない。  これであっては、スポーツ団体、スポーツの現状ということを考えたときにも、余りに日本としての取り組みというものが弱過ぎるのじゃないか。片方においては一億総スポーツ時代と言われながらそういう問題がある、こういうことについてどのように認識し、考えられているか、お伺いしたいと思います。
  194. 中島武敏

    中島国務大臣 細かい内容は後で政府委員からお答えさせますが、まさにおっしゃいましたように国民皆スポーツと申しますか、それは生涯学習の中でもスポーツを取り入れておりますし、これから生涯を通じていつでもどこでもスポーツに親しめるということを目指しまして、生涯スポーツ課を設置いたしたいと思っております。  同時にまた、生涯スポーツ、皆さんがスポーツに親しまれますけれども、確かにかつて女子バレーが活躍されますとママさんバレーが非常に多くなった、あるいはサッカーで選手が活躍されますと少年サッカーが非常に盛んになるという意味で、相互補完の関係にございますから、国民のスポーツ志向と同時に、やはり競技スポーツの点で強化するのも国民のスポーツへの関心を高める上で相互効果がある、こう考えますので、今の強化費が多いか少ないか、これは実際また答弁させますが、東京オリンピックで二十九のメダル、ロス・オリンピックで三十二のメダルで、ふえてはおりますけれども、これは片肺オリンピックでございまして東欧関係が出ていないという中でありますから、今度のソウルは非常に厳しいと思います。まずソウルを目指し、またソウル後を目指しまして計画的に取り組んでまいりたい。  その内容は、簡単に申せば、小さいうちから素質を発見をするというジュニア対策、それから優秀な指導員を育てようということでありますし、第三番目は、これを医学的にも科学的にも、スポーツ医科学の点で科学的な分析をし指導をしよう、第四番目は、それぞれの種目あるいは年齢に応じたカリキュラムをつくってまいろう、こういう大体四つの点を育てていきたい、こう考えております。
  195. 田中慶秋

    田中(慶)委員 まあ積極的な取り組みといいますか考え方を述べられておりますけれども、現実にはもっともっと現状は厳しいですね。  大蔵大臣にお伺いしておきますけれども、先ほど申し上げたように、これだけスポーツに対する関心が高いわけですね。特にことしなんてオリンピックを目前にしております。先ほど申し上げたように、昭和六十一年度の予算を見ても、国としてこれだけ国家予算あるいは全体的な予算が多くなっている、にもかかわらず日本が十一億台、お隣の韓国が八十億、中国が百十億、中国と日本と比較しても、十分の一が日本ですわね。こういう一連の問題で、財政当局として率直に見て感想はいかがでしょう。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ体制の違う国との関連なんかもございますのでいろんな考え方があると思いますけれども、まあその点は文部大臣が今言われましたようなお考えに、私どもそれを中心に考えていけばいいのであろうと存じます。  なお、総理大臣のもとにこういう問題につきましての懇談会が過般設けられました。学識経験者から、ただいまおっしゃいましたような問題を問題意識にして答申を、答申といいますか意見を求めておられますので、やがてそれも出てまいりますと思います。それらも中心に、これも金で申せばそんなに大きな金のかかる話じゃ実はございませんので、意義のあることであれば、それはお金を惜しむことはないと思っております。
  197. 田中慶秋

    田中(慶)委員 文部大臣、実は東京オリンピックのときに代々木に選手村をつくられましたね。あの選手村でさえも現在では強化合宿の施設としてフルに使えないんですよ。今、企業の研修センターになってみたり、あるいはまた青少年スポーツセンターとしてそれぞれの研修センターに――ですから、日本の今の選手たちはジプシーで、自分たちの自前で、あるいは企業の援助をいただいて、そして自分たちのあるロマンに向かって頑張っているわけです。ですからこういう実態を日本の国民あるいは我々がもっと知って、これらに対する対策を立てておかなければいかぬじゃないか、こんなふうに思っております。  私は自分たちの仲間がスポーツ界に多いものですから、例えばオリンピックで金メダルをとった人間、国のために、そしてまた自分の生涯のために金メダルをとって、しかし二年か三年すると自分たちの話題はどこかに消えてしまう、しかし自分は心身ともに疲れ果て、ぼろぞうきんのように、そしてまた、ぽいと捨てられるような形でわびしい気持ちがある、これが選手の現実の気持ちなんですね、はっきり申し上げて。  こういうことを考えたときに、幾らこの物の時代とかいろいろ飽食の時代と言っても余りにも、このスポーツというものにいちずに向かっている選手、青少年、その気持ち、そういうことを考えてやったときに、もっともっと国としてやることが必要ではないか、文部大臣、どう考えますか。
  198. 中島武敏

    中島国務大臣 二つの御指摘があったと思いますので、最初の方は今の施設では総合的にトレーニングする場もない、こういうことでございますので、これに対しては国立総合体育研究研修センター、これは仮称でございますけれども、これを西原中心に、西原というのは渋谷区の西原のことでございますが、つくってまいりたい、これを軌道に乗せることが一つでございます。  それから、後段のことでございますが、これはまさに活躍をされた選手諸君がその経験と人格を全うできますようにこれは考えていかなきゃなりませんし、さらにその経験を後輩のために生かして、そういうことによって活躍された選手が生涯生きがいを持って全うしていただけるようなことは十分考えていかなきゃならぬと思います。これも先ほど申し上げました計画的にスポーツ振興をするという中の重要な 一環であろう、こういうふうに考えております。
  199. 田中慶秋

    田中(慶)委員 まあ、積極的に大臣 としてこれらに対する取り組みをしていただきたいわけでありますけれども、例えば今回ソウル・オリンピックで一番有力であると言われる柔道界一つとっても、きのうも若干申し上げましたけれども、世界各国の注目を浴びているこの日本の柔道。ところが、お家芸でありますこの柔道が、残念ながら、全柔連、学柔連、こういう問題を含めて内部の争いをし、そして裁判で、しかし裁判の結果が出てもなおかつ高裁まで、最高裁まで争う、これじゃスポーツ精神に欠けていると思うし、当然文部省はその間大変な御努力をされているわけであります。  私は、少なくともこの文部省の柔道界の改革のための基本的な考え方やあるいはまた柔道問題に対する懇話会で取り組んでいるこの姿勢というのは高く評価したいし、一日も早くその方向に進むべきであろう、こんなふうに考えております。そのことがやはり選手あるいはまた柔道を志した人たち、これに対する安堵感やあるいはまた新たな希望を持たせることになるんじゃないか、こんなふうに思うのですけれども大臣としての考え方をお伺いいたします。
  200. 中島武敏

    中島国務大臣 まさに御指摘のように、スポーツの中で、ことしは世界のスポーツの祭典を目前にしております。そういう中で柔道界、今、目に見えるところでございますが、これに対しましては、歴代文部大臣を初め大変心を痛めかつ努力をしていただいてきたところでありますけれども、本来スポーツの祭典を目前にして、そして選手諸君が後顧の憂いなく全力を発揮でき、そして国民的な視野でそれを応援できる体制ができていないということは非常に恥ずべきことでございます。  本来、これはスポーツ界内部で自主的に解決をしていただくべきものでございますし、また体協傘下にある以上は体協そのものもこれに全力を挙げていただかなければならぬ。まさにそういう点で文部省としても今までもやってきたわけでございます。しかし、いまだに解決してないということは大変残念でございますし、またきのうの訴訟経過も御指摘でございますが、これを見ましても、スポーツ界内部で自主的に解決できなかったということは大変残念に存じております。  詳しいことは担当政府委員からお答えさせますが、私はどちらがどちらということはここであえて申しません。そういうことがありましても、スポーツの祭典を前にして大同団結していく決断がここでなされなければおかしい、これだけ申し上げておきます。
  201. 國分正明

    ○國分政府委員 お答え申し上げます。  基本的な考え方はただいま大臣からお答え申し上げたわけでございますが、先生の御指摘にございましたように、文部省でも一昨年柔道問題懇談会というものを開きまして、各界の方に集まっていただきまして基本的な考え方をまとめたわけでございます。  いろいろございますが、基本は各柔道団体が一致協力してそして新しい法人をつくるということが基本でございまして、このことを現在当事者でございます学柔連あるいは全柔連に対し示し、これを受け入れるよう説得しているわけでございますが、学柔連は基本的にこれに大賛成、全柔連につきましては、いろいろ改革は加えることについてはやぶさかではないとしながらも、なお自分たちが中心になって主体性を持って法人をつくりたいという点で受け入れがたい、こういうのが現在の状況でございます。  私ども、引き続き関係団体を説得して粘り強く解決に向けて努力してまいりたい、こんなふうに考えている次第でございます。
  202. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ努力いただきたいし、スポーツの祭典といいますか平和の祭典といいますオリンピックを目前にして、日本のお家芸がそんな形であったのでは世界に対して恥だと思いますから、文部省が一生懸命努力をされ、片方はそれでいい、片方は嫌だ、これじゃ余りにもフェアじゃないと思います。そういう点ではぜひそういう問題を含めてやはりより一層の大臣の努力をここで要請をしておきたいと思います。  そこで、実は私はこういろんな形でこのスポーツ界を見たときに、フランスでもあるいはまた外国でも、まあ行革の精神には反するかもわかりませんけれども、スポーツ省というものが結構ありますね。日本はもう一億総スポーツの時代であります。青少年の非行もスポーツを推進することによって抑制できます。医療費が十九兆円になっている医療問題、老後の、お年寄りの老人医療もスポーツの振興でこれまた抑制することができます。今厚生省はどちらかというと十九兆円ことしはかかるであろう、こういうことでその現象論しか、まあ極端なことを言ってみればそれだけを追っているわけであります。ところが、私はもっと突っ込んで言うならば、このお年寄りの人たち――実は私はある特別養護老人ホームを訪問させていただきました。ボランティアで来ていた民謡のおばさんたちが一生懸命努力をされてその人たちに踊りを教えました。大変喜んで、踊りを習ったことによって健康になり、そして今まで寝たり起きたりしていた人が踊りを踊るようになり、そして表へ出て今度はゲートボールをやれるように健康になってきているわけです。ですから、やることによってスポーツをそういう形で結びつけていけば私は医療費でも相当削減できるであろう、こういうふうに信じている一人であります。  そういう点では、総体的なことを考えてみますと私は当然、もうこの一億総スポーツ、国民スポーツ時代でありますから、スポーツ省というものをつくることによって、それが専門分野で指導者の問題やら教育の問題やらいろんなことを含めて私はできるんではないか、こんなふうに思いますけれども、文部大臣、大変酷ですけれども、その辺に対する考え方、いかがでございましょう。
  203. 中島武敏

    中島国務大臣 スポーツというのは非常に幅広いものでございます。激励の意味の御指摘というふうに受け取らしていただきますが、確かに先ほど言ったジュニアと申しますかもう小さいときから、それから八十年の生涯を通じましてスポーツというものはございますから、その機構を整備し、向上するということにつきましては全国規模になるわけでございます。確かにそれをまとめていくということは相当な気力と意欲が必要であるぞと、こういう点はよくわかります。そうなればスポーツ省が必要であろう、こういうことでありますが、まさにそれだけの意欲をいただくということに受け取らしていただきまして、ただそのスポーツ省という言葉がひとり歩きして、スポーツ省ができたら意欲があると、できなければ意欲のない証拠と、こういうふうに御判断していただきませんように、スポーツ省という名前がなくともその意欲をいただいて頑張るということだけ申し上げておきます。
  204. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ各分野にわたって私は――今のスポーツというのも民際外交であります。ピンポン外交じゃありませんけれどもスポーツも民際外交でありますね。そういう点では青少年の問題やら医療、老後の生きがい問題を含めて、私はそういう点でもうスポーツ省があってもいいな、こういうふうに私なりに信じている一人でありますので、これからも繰り返し繰り返しそういうことは申し上げてまいりたいと思いますので、大臣の方もぜひそんなことを含めてより格段の御協力をお願い申し上げたいと思います。  質問はまた通告に従いながら、いずれにしても時間の関係で次に進ませていただきます。  実は今、日本の経済は大変大きな発展を遂げております。そういう中で、従来までそれぞれの施策を講じられてまいったと思いますが、その一つに工場等制限法という問題があるわけであります。工場等制限法は御案内のように昭和三十四年の四月、首都圏の既成市街地における工業等の制限、いわゆる工業制限区域をつくって、工場等の新設及び増設を制限し、産業及び人口の過度の集中を防止することを大きな目的としてこの法律かつくられました。大変その役割も大きく、またこの法律の精神に基づいてそれぞれの地方自治体も努力をされてまいったと思います。しかし、今日では技術革新やあるいはまたいろいろな問題が、逆にこの工場等制限方があるために大きな都市の問題になってきていることも事実であります。  例えば技術革新になって、新しい設備投資をしようとするとこの問題がひっかかってまいります。従来まで京浜工業地帯という大きな日本の産業の動脈とも言われました地区でありますけれども、この地区が現在この工場等制限法の網にかかって、新しい施設なり新しいものを何とかしようとすると、そこにはこの工場等制限法規制がかかって、現実には今まで住みなれたところを逆に地方に移転をする、こういう問題が随所に出ているわけであります。大体この十年間で大きな工場だけでも六十近い工場がこの京浜地区でも移転をしているわけであります。  こういうことを考えてみますと、総理が言う「ふるさと創生論」あるいはまたいろいろなことを含めて、地方自治体の財政の問題を考えても大変大きな問題が出てきております。  例えばその一つの中に、製造業人口について横浜、川崎、神奈川全体の問題を比較対象してみますと、四十五年対六十年、神奈川の川崎市が四十五年に製造業に従事されていた人が全体の中で二九%おったわけですけれども、今日では二〇%、人口にしますと約二十三万の人がおりましたけれども、今日では十四万台に減っているわけであります。これが現実であります。組織労働者にしても、今までこの川崎地区を一つの例にとってみますと、二十万の組織労働者がおりました。今日では十二万に減っております。それは、企業がそれぞれ制限等によって地方に分散をされる、こういう結果だと思います。  そこで、地方自治体は国に対し、この工場等制限法の見直しをぜひしていただきたいという要望を出しております。これは国土庁の管轄であろうと思いますし、もう一つは通産として産業育成指導、さらに従来から京浜工業地帯という日本の産業の動脈を考えたときに相矛盾するものがあろうかと思いますけれども、今後こういう問題に対する取り組み、これについて国土庁長官及び通産大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  205. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今お話しいただきましたように、この法律はそれなりにその法律の趣旨としたところをかなり実現してまいってきている、こう思うわけでございます。そういうこともまたいろいろな数字をお挙げになりましたように結果としてもあらわれているんじゃないかな、こう思います。なお過密の解消の問題、秩序ある市街地を形成していくという問題、まだまだこれからも努力していかなければならないことでございます。  ただ、おっしゃいますように、大きく経済構造が変わっていくさなかでございますので、若干そういう面からこの法律を見直してもらいたいという要望の出ていることも事実でございます。そういうこともございまして、今実態を調査しているさなかでございまして、その結論を得て、この法律を改正するかしないかということを考えていきたいなという段階にあるわけでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  206. 田村元

    ○田村国務大臣 工場等制限法、これは今国土庁長官から御答弁があったように国土庁の所管でございます。しかし今、通産省として、産業を担当する省としてどう考えるか、恐らくその御趣旨の中には再配置促進法等も絡んでの御質問かと思います。  四全総にも示されておりますように、多極分散型国土の形成を図るという観点から、基本的方向としては工場等の地方分散を促進するということが必要である、これは我々もそう認識しておりますけれども、このような趣旨の世論がほうはいとして沸き起こっておることはまた事実でございます。それが今日の土地対策の基本的な考え方にもなっておるということは申すまでもないところでございます。  通産省としましても、工業再配置促進法等によりまして過度に工業が集積している地域からの地方への工場の移転というものをこれはもちろん推進してきたところでございますけれども、今後とも全国的に見て工業再配置の必要性は高いことから、工場移転を抑制する方向での見直しを行うということはちょっと考えにくい。率直に言いまして、一つの今の世論のうねりというものもございますし、また事実、四全総がそれを先取りして志向しておりますように、そういうことは真剣に考えなければならぬ、もちろんその土地、土地によるケース・バイ・ケースはございますけれども。  一つの地域において、その地域の有する資源や特性を生かして研究開発等のいろいろな施設整備を図る場合には、これは民活法によって助成措置を講じて、地域の活力を失わせないようにするというようなことも考えなければならぬかと思いますが、今御質問がございましたので、奥野長官の御答弁で十分と思いましたけれども、あえて私から意見を申し述べさせていただきました。
  207. 田中慶秋

    田中(慶)委員 奥野長官に再度質問させていただきます。  確かに工場等制限法の問題、この法律の役割は果たしたと思います。しかし、工場が移転することによって工場跡地の土地はどうなっています。地価高騰といいますか、そこは大変な地価高騰を招き、マンションが建てられる、こういう状態ですよ。国土庁長官はやはり地価の抑制を担当する長官ですわね。そういうことを考えてみますと、この見直しをすることによって逆に地価の抑制というものにもつながっていきますわね、はっきり申し上げてマンションが建つわけじゃありませんし。  そういうことを含めて、私はもっともっとこの工場等制限法を見直しすることによって、今まで長いこと住みなれたところを離れなくても済む。そしてまた条件とすれば、日本の産業の動脈とも言われたこの京浜工業地帯であります。ましてやその素地というものが十分あるわけであります。  先般もこの地区の、川崎、横浜あるいは神奈川の首長が集まりサミットも行ったわけであります。そういう中で、私はやはり地方自治体が今多くの悩みを抱えている一つに、この工場等制限法というものがあり、それぞれの政策、産業の発展、地域の振興、こういうことに非常に多くの影響を与えているということは事実であります。こういう問題を含めて、再度大臣の答弁を求めるものであります。
  208. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 対象工場をどういうところに置いてお考えになっているのか存じませんけれども、中小企業につきましては、いろいろな条件を示しておりますけれども、五百平米前でありますと、新増設認められることになっておるわけでございます。それ以上のものにつきましても、いろいろな条件を加えることによって新増設可能であるかどうか、そういうことを実情を検討した上で結論を出したいという意味合いを込めて申し上げたわけでございました。  同時に、工場跡地の問題につきましては、今度建設省もさらに立法措置をもって再開発を促進して、環境のよい住宅地の造成なども考えていただいているようでございまして、工場跡地がそのままになっているところがかなり目につくわけでございますが、私もこれらの問題の解決を促進することが今の地価問題に大きく役立つんじゃないだろうかなと考えておる一人でございます。
  209. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ積極的な見直しを心から御期待申し上げたいと思います。  そこで、実は最近よく長寿社会、こういう問題が言われるわけであります。今回も、厚生省が厚生白書というものを出したわけでありますけれども、これは今月の二十三日に出たばかりであります。この予算委員会を通じて、我が党の永末副委員長及び米沢政審会長からも、総理初め関係大臣にその長寿社会の対応という問題について見解を求めたものであります。  実は、この白書をつぶさに読ましていただきました。この中で、一番特徴たるものは「社会保障を担う人々」という項目があり、この項目の中で、マンパワーの確保、率先して先取りをする、昭和七十五年までには百五十万人の社会保障マンパワーが必要であるという、こういうことを述べられているわけであります。これらの問題について、その根拠というものが余り明確にされておりません。まず、この根拠を示していただきたいと思います。
  210. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 六十二年版の厚生白書についてのお尋ねでございます。その中で、七十五年までに百五十万人の社会保障マンパワーが必要であるというふうに推計をいたしておりますが、その根拠についてのお尋ねであろうかと思っております。  私どもは、社会保障に携わっておる人々につきまして、これまでの実績、どれぐらい過去伸びてきたかということを分析いたしました。そういたしますと、例えば保健、医療及び社会福祉関係者につきましては老齢人口の伸びとちょうど同じぐらいに伸びているということで、今後の展望投影ということでその数字に対応さして伸ばしています。そのほか、公衆衛生、環境衛生等の関係者については人口の伸びと相関があるということで、その同程度で伸ばしておりますし、その他の社会保険関係者等については、従来横ばいであったということで横ばいの計数を使いまして、合わせて二十一世紀に百五十万人のマンパワーが必要というふうに厚生白書で記述さしていただいているわけでございます。
  211. 田中慶秋

    田中(慶)委員 二十一世紀にどのような福祉、どのような社会保障、こういうものが今青写真としてないわけですね。そういうものがあって、どれだけのマンパワーが必要である、こういうものが明確になるべきだと思うのです。  例えば、今度の白書でもボランティアの拡充について触れております。具体的にどのような方針でこのボランティアを拡充されるのか。例えば、現在四百万と推定されているボランティア、さらに育成していくということでありますけれども、このボランティアも長寿社会という前提でどれだけの数が最終的には必要なのか、こういうものも明確じゃない。やはり一つ一つ積み上げて、こういうものについてはもっと具体的な青写真が必要だと思います。例えば白書の中で「公民ミックス」と書いてあるわけでありますけれども、それぞれの分野で役所、国がどういうものをやるか、地方自治体がどういうものをどういう分野でやるか、さらにはまた民間がどのようなサービスを行うか、家庭やボランティアにどの点を頼るのか、こういうことが明確になっていないわけであります。  こういうことを含めて、私は今回の白書を評価する部分と、やはり一つには長寿社会に対する青写真の欠如がこんな形であらわれているんじゃないかな、こんな感じを受けておりますけれども大臣、どうですか。
  212. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 六十二年版厚生白書につきましては、いろいろ御評価もいただいておりますし、また、御指摘のマンパワーの問題、それからボランティアの問題、確かに具体的に財源等の問題も含めて記述がございません。しかし、白書というのは問題点、また行政の実情といいますか、内容を示す、そういう性格があるわけでございまして、限界があるのかなと思いますけれども、御指摘の具体的な点についての指摘がないということは、私も同感でございます。  マンパワーの問題は、やはり厚生省五十年の歴史を振り返ってみますと、非常に社会保障というものが定着し、発展し、欧米に肩を並べるところまで来ましたが、それは、いろいろな要素がありますけれども、福祉の第一線で活躍してくれた方々のその力に負うところも大きいわけでございまして、なお今後ひとつ大いに頑張ってお願いしたいという期待も実は含まれているわけでございます。  また、将来の社会保障のビジョンにつきましては、たびたび御議論があるところでございまして、政府全体としては長寿社会対策大綱、厚生省につきましては高齢者対策企画推進本部報告ということで、医療、年金の今後の方向については明らかにしておるわけでございますけれども、お金の面につきましては、なかなかこれは計算しがたい点もあります。よく御承知のとおりでございまして、医療費一つとりましても、老人医療費をどう見るかということによって大きく変わってくるわけでございまして、今、一生懸命作業中でございます。予算委員会の終了までに給付費並びに負担についてはお出しするわけでございます。  それから公、民の負担の問題、これは私は今後の社会保障を進めていく上で非常に大きな課題だと思っております。政府が、また地方がいわゆる公共サービスとして受け持つ分野というものをはっきりすることによって民間の活力も導入しやすくなるという面もあると思うわけでございます。ただ高齢化社会の本格的な社会に向かっておるわけでございまして、過渡期という点ではなるほど医療、年金、特に年金なんかにつきましてはある程度姿がわかるわけでございますけれども、過渡期の段階においては最終的な姿はわからない。そこに公共と民間との役割分担もなかなかその姿が見えないという点もあるわけでございます。しかし、そういうことを念頭に置いて、今後公共と民間のサービスの役割分担ということについてはしっかりとやってまいりたい、かように考えております。
  213. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間もありませんから、いずれにしてもこれだけ長寿社会が叫ばれ、長寿社会が検討されてはいても、しかし今度の白書も中身は余りにも抽象的であるということを申し上げておきたいと思います。  少なくても、これからの長寿社会におけるビジョン、福祉はどうなるんだ、医療はどうなるんだ、年金は、保健サービスは、雇用は、住宅は、そこで国がやる部分、民間がやる部分、そしてまた個人がやる部分、こういうことが明確にならなければいけないと思います。例えば、政府が今回、経済計画に対する昭和六十三年度からの新経済五カ年計画を具体的に打ち出しているんです。しかし、その中には長寿社会の問題について、高齢化社会に今後どう対応するかという問題に触れてない、中身に具体性がない。やはりこういうことがあって初めて長寿社会の問題、これが論じられるんだ、こんなふうに思います。  いずれにしても、この問題について私はもっともっと厚生省が、長寿社会やいろんなことを考えると、厚生省だけのセクションではなくして、経済政策にも影響する、これからの財政の問題、大蔵にも影響する、全体的にそういうものをチームワークとしてやっていただきたい。これは後でその考え方を最後に述べていただきたい、時間の関係でこちらからそれぞれ申し上げますから。  さらにまた、例えばことし、もう既にベースアップの時期が来ていますね。労働組合も連合の時代、こんな形で叫ばれております。そういう中で、例えばここ数年来の国民総生産というものがそれぞれ上昇しているわけでありますけれども、これに対する配分といいますか、労働分配率、下がる一方であります。こういうことであっては、現実には内需拡大にならないと思います。欧米の先進国というものは極めてその辺を、この労働分配率に対して具体的にそういうものを近づけてベースアップをされております。  こういう一連の問題を含めて、私は、少なくともこの問題、分配率を適正に分配しないことが、今回の財テクあるいは土地の投機、こういうところまで影響されて地価の高騰まで及んでいると思います。私たちは生活先進国という大きな柱に向かって進んでいるわけでございますので、まずこれらに対して今後の――ことし労働組合あるいは連合という形の中でやられております、一方においては経済界が賃上げに対する抑制をしようとしております、こういう一連の問題に対して、これは労働大臣に見解をお伺いしたい。  また、昭和六十三年度の経済見しについて、これは経企庁長官にお伺いをしたい、こんなふうに思います。  時間の関係で、それぞれの省庁に御答弁をお願い申し上げましたけれども、そんな形でぜひ皆さん方の見解をお伺いしたいと思います。以上です。
  214. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 本格的な長寿社会に向かいまして、一人一人が安心して生きがいを持って生活できるような社会、これは政府全体として取り組まなきゃならぬ、御指摘のとおりだと思います。  それから、今後の社会保障が充実して機能していくことはもちろん大事なことでございまして、そのためには、御指摘のように、自立自助という分野と、それから職域、地域社会での相互扶助、それから国、地方の公的サービス、この三つがお互いに補完し合っていかなきゃならぬわけでございまして、特に国、地方が行うべき公的サービスについては今まで以上に充実さしていかなければならない、かように考えております。
  215. 中村太郎

    ○中村国務大臣 勤労者の福祉、生活の向上の面からいいましても、あるいはまた我が国経済を内需主導型にしまして均衡のある経済発展を遂げる、こういう面から考えましても、経済成長の成果というものを賃金等に適正に配分することは極めて大事なことであると承知をいたしております。ただ、この最終決定におきましては、御案内のとおり、労使双方が納得の中で決定されることでございますので、私どもとしましては、合理的に円満の中で解決されるよう、強く見守っておるということでございます。
  216. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 答えいたします。  田中委員の六十三年度の経済見通しということではございますが、経済見通しは非常にブロードな意味にとられますので、恐らく雇用者所得の伸びというようなものも含めてのことかと解釈いたします。  六十三年度の経済見通しの中における雇用者所得については五・二%程度、これから雇用者数の増加を除いた一人当たりの雇用者所得につきましては三・七%程度ということの増加を見込んでおります。  雇用者所得には、もう御案内のとおりでございますが、賃金、俸給のほかに社会保障の雇い主負担分等が含まれるわけでございますけれども、雇用者所得の見通しは、経済成長率、労働力需給、あるいはまた消費者物価等の諸要因によって全体として推計をとる、また統計をとっていくというものでございまして、その内訳などについての推計をしているわけでは別にございません。したがいまして、内訳の項目でございます賃金の伸び率につきましては、お示しするようなことができないことを御了解願いたいと思います。また、細かい点は政府委員にでもどうぞお願い申し上げたいと思います。
  217. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  218. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  219. 辻一彦

    ○辻(一)委員 前回の総括に引き続いて、まず私、原子力発電所の防災対策、原子力災害対策について質問したいと思います。全体としては前回の流れである、こういうように御理解をいただいてお答えをいただきたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕  前回もちょっと発言をしましたが、ソビエトのチェルノブイリとアメリカのスリーマイルの両原発を見てまいりまして、そして二月の三日、四日に夜のNHKはチェルノブイリの原発事故の食物汚染の生々しい事実を伝えておりました。チェルノブイリが、直接被害四十億ルーブル、生産等に与えた被害四十億ルーブル、全部入れて一兆八千億、八十億ルーブルと公表していることも御承知のとおりであります。スリーマイルの原子炉は三五%が溶けて、もう一時間水が来るのがおくれたら炉心溶融が起こるのではなかったか、こういうようにも言われております。  私は、この二つの原発を見て感じましたのは、原発の事故を絶対起こしてはならない、起こさせてはならない、これが大事であります。しかし、あってはなりませんが、万が一に事故が起きたときにそれに対する備え、防災対策がぜひ必要である、こういう観点から、総括では安全性を中心に論議をしましたので、ここではひとつ防災対策を中心に論議をしたいと思います。  ソビエトのチェルノブイリ原発に行きまして、事故当時、二日目に事故処理にほかの転勤先から呼び戻された前のチェルノブイリ原発の副所長が、生々しい二日目以後の事故処理の実感を詳しく語ってくれましたが、ほかのことは別として、災害問題について言うならば、人間は原子炉災害が起きたときに心理的な余裕を失ってどういうようにしていいかわからなくなる。警告灯が四百、一遍に点滅したわけですから、いや、これはスリーマイルでありますが、チェルノブイリでは余裕を失った。それでぜひ必要なことは、事故のときにまず社員というか従業員に、原子炉事故はどういうことが起こるのか、起きたならばどうすればいいのかということをよくよく教えていかなくてはいけない。第二には、住民に、この事故が起きればどうなる、どうすればいいかということを知らせておかなくてはいけない。第三には、住民が参加する実際の防災、災害訓練をぜひ定期的に行うべきであった、このように実感を込めて語っておりました。  ちなみに、このスリーマイルの原発では、事故が起きたときに四百の警告灯が一遍に点滅した。私もその二号炉の現場に行って中央制御棟に入って見ましたが、とにかく四百ある警告灯が全部点滅すればもうどうしていいかわからない、お手上げになったというのでありますが、そういうように事故が暴走すれば本当に心理的余裕を失う、こういう状況になるだろうと思います。  さらに、アメリカの原子力規制委員会、これはかなり厳しい態度をとっておりますが、いわゆるNRCのゼック委員長に会いましていろいろな状況について懇談しましたが、ゼック委員長は私に、アメリカでは原発は一〇〇%、営業運転の前に自治体による防災計画と住民参加の緊急避難計画と実際の訓練が法的に義務づけられている、こういうように語っております。これらを踏まえて、我が国の原子力発電所に対する防災対策において立ちおくれはないかどうか、このことを科学技術庁長官からひとつ伺いたいと思います。
  220. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お話しのとおり、原子力の事故は絶対にあってはならないわけでございまして、万が一にもそんな事故が起こらないように万全の対策を講じておりますけれども、その万が一の防災対策につきましても、我が国は災害対策基本法というものに基づきまして、中央防災会議決定、原子力安全委員会決定等を踏まえ、住民の安全を確保するためのさまざまな措置が講じられているところでございまして、原子力の防災対策につきましては十分な対策が講じられているものと確信をしております。また、このような我が国の原子力防災体制は、国際原子力機関等が示しております国際的な基準、考え方にも十二分に沿ったものとなっておりまして、諸外国に比べても決して遜色のないものと考えております。  個々の措置等の比較等ではあるいはいろいろ御意見があろうと思いますけれども、防災対策というのはやはりそれぞれの国の国情等に応じた体制がとられることが基本的に正しいと考えておりますので、その確信のもとに、万が一あってはならない事故に備えまして十分な体制をしておりますことを重ねて申し上げてお答えとしますが、なお、細かいデータ等で御必要でありますならば政府委員から説明させていただきます。
  221. 辻一彦

    ○辻(一)委員 細かいのはまた必要に応じてお尋ねすることにしましょう。  確かに私も、我が国の原子力防災対策、基準書といいますか指針書も、それからこれに基づく県へのマニュアル、それに基づいて県や市町村、原子力発電所がそれぞれどういう防災計画を立てておるかということも、全国の発電所の資料を全部政府当局から求めて目を通して見ました。一定の努力はされておるということは否定はいたしません。それは理解します。  しかし、例えば原子力安全委員会が基本とする「原子力発電所等周辺の防災対策について」という、五十五年の六月に出したこれが基準になっておりますが、これと、そしてそれに基づいて「地域防災計画作成マニュ アル(県分)」という、これは五十五年の九月に出されておる、大体これが基準に、手引になって県や立地市町村の防災計画が立てられておるように思いますが、これは一九七五年、昭和五十年の九月にアメリカのEPA、環境庁が出したところの「原発事故の防護活動指針と防護活動」これに基礎を置いておる、このように思いますし、現に我が国のこの四十三ページに出典としてこの文献が挙げられておる。だからこれを基準にしたものと思われます。  ところが、これはいろいろ見てみると、改正もしておりますが、かなり古い。例えば、我が国のこの三十九ページに「周辺環境に影響を与えるような大規模な異常事象の発生する確率については、」と、その原典を挙げておりますが、「仮りに米国の原子炉安全研究(一九七五年九月)のデータを用いて、現実に起こりうる種々の気象条件の下で、放出源から八キロメートル及び十キロメートルの距離において防護対策指標線量を超えるような事態の発生確率は、」極めて小さい。言いかえると、八、十キロを超えて何らかの防護対策を行う必要性が生じることは極めてまれであるというように示唆することができる、こういうように言っておりますが、これは私は、スリーマイル、チェルノブイリのあの事故が起こる前に考えておった時代の、いわゆるああいう大事故は起こらないと考えておった時代のものであって、そういう意味においてはかなり古いというように思いますが、いかがですか。
  222. 石塚貢

    ○石塚政府委員 チェルノブイルの大きかったあの原子力事故を踏まえた防災対策というものは、今見直されるべきではないかという御質問の御趣旨かと思いますけれども、チェルノブイルの原子力事故につきましては、原子力安全委員会におきまして、その事故の状況の詳細な検討を踏まえまして、我が国の原子力発電所の安全確保対策の現状につきまして調査検討が行われたわけでございます。  その結果、防災対策につきましては、我が国の原子力発電所の特徴等を考慮して定めました現在の原子力防災体制及び諸対策を基本的に変更すべき必要性は見出されないという点、それから第二に、しかしながら今回の事故を契機として、各種の防災対策に関し、その内容を充実し、より実効性のある対策とすることが重要である、そういうふうに結論が得られたわけでございます。  そこで、現在原子力安全委員会におきまして、この報告書の指摘事項を踏まえ、専門的事項について調査、審議が行われているところでございます。また、当庁といたしましても、チェルノブイル事故を踏まえ、防災研修の充実あるいは防災資機材の充実等原子力防災対策の強化に努めておるところでございますが、緊急時の放射線モニタリングの充実など、今後とも防災対策の一層の充実に努めてまいることといたしております。
  223. 辻一彦

    ○辻(一)委員 細かいことは別として、アメリカはその後、一九七八年十一月、昭和五十三年、スリーマイル事故の数カ月前に、いわゆるNRC、米原子力規制委員会とEPA、アメリカの環境庁でこういう文献を出しておる。これは行って私がもらってきたのですが、これは「軽水炉原発の放射能災害についての州政府並びに地方政府の作業の計画と基本」という指針を出しておるのです。  この中に緊急時計画に関するNRCとEPAの特別調査団の報告書としておりますが、ガイダンス、指導要領があって、この緊急時計画に関するNRC決定規則中にその指導要領が反映されているというように規定をしております。この中身はこの青い七五年のこれに比べてさらに厳しくなっておるが、私はこの五十五年の、それから二年後に出されている原子力安全委員会のこの防災対策の基準書を見ると、どうもこれを参考にしているように思えないが、これはどうなのか。
  224. 石塚貢

    ○石塚政府委員 ただいま御指摘の指針の内容につきましては、先刻御答弁申し上げましたとおり、いろいろな御指摘を踏まえまして、現在原子力安全委員会の防災対策専門部会等におきまして、そういった数値の見直しを含めまして現在検討を進めておるところでございます。
  225. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この中に、緊急計画区域というものをこういうように定義しておるのです。「事故発生時に公衆を防護するために即時効果的措置がとられ得ることを保証するために計画が必要な地域」と定義されている。そして、その区域は、短期の浮遊物被曝経路、これはヨード等の空気中に浮遊するのを言うのですが、半径約十マイル、十六キロ、それから長期の摂取食物被曝経路については五十マイル、半径八十キロをその区域に規定をして対処をしている。我が国のこれを見ると、いずれも八ないし十キロということが規定をされておるのですね。  なお、少し敷衍をしますと、七八年に出されたこの計画の基礎は、原子炉安全性研究の炉心溶融事故を含めて多数の事故の記述が指導要領、ガイダンスの展開において考慮をされている、こう述べていますね。  アメリカは、スリーマイル事故の数カ月前にこれを決めて、スリーマイル事故にこれを適用しておりますが、一九八七年の三月、去年の三月にこれの改訂版を出しておるのですが、その序文に、一九七八年のガイダンスでこのスリーマイルに対処することができた。そしてさらに、チェルノブイリの経験を参考にして改訂版を出している。我が国は今検討中ということでありますが、これは依然として八キロないし十キロを一つの区域として、それで想定していろんな対策を立てている。アメリカは既に、短期の空気中に浮遊する関係については十六キロ、それから食物摂取の被曝範囲については八十キロを指定をして対策を立てている。  私は、アメリカのこういう対策に対して、さっき長官は国情に応じてと言っているけれども、広大なアメリカでこういう範囲をとってやっておる中で、この狭い、人口周密の我が国において八キロや十キロにおいて考えておるということは、これは国情に全く合わない。しかも、まだ我が国にはそういうような事故は起きないという考え方がやはりこの底に流れている。だから、依然として八キロ、十キロ、こういうところにあるのじゃないかと思いますが、これについてはどうなんですか。
  226. 石塚貢

    ○石塚政府委員 御指摘のとおり、チェルノブイルのようなあのような大きな事故は、日本の原子力発電所では極めて考えにくいという考え方が、日本のこの八キロ、十キロを変更する必要がないという考え方の根底にございます。
  227. 辻一彦

    ○辻(一)委員 あなたがいつもお手本にしているアメリカでは、早くからこれをやって、スリーマイルに対応して、さらにチェルノブイリの経験を組み入れてやろうとしておるのですよ。やっておるのですよ。依然としてそんな八キロ、十キロの範囲内で、事故は起こりませんと、そんなことで済むと思うのかね。もう一度答弁を伺いたい。
  228. 石塚貢

    ○石塚政府委員 八キロ、十キロの妥当性を御説明いたしますためには、どうしてその八キロ、十キロに決まってきたかという根拠につきまして少しく触れなければちょっと御理解賜ることができないのではないかと思いますので、ちょっと……(辻(一)委員「細かい説明は要らぬよ」と呼ぶ)はい。この距離を目安として提案いたしましたのは、防災対策を重点的に充実すべきその地域の範囲、それを選定するに当たりましては、技術的な側面に加え人口分布、行政区画あるいは地勢、そういった地域に固有の特徴でございますとか、あるいは災害応急対策実施上の実効性など、そういったものを総合的に考慮する必要があるということで、これらの要件を総合的に検討いたしました結果、この地域の範囲を選定する場合に、原子力発電所等を中心といたしまして半径八ないし十キロの距離を目安とするのが適当である、そういう御判断を原子力安全委員会の専門部会でいただいたわけでございます。  このような距離を技術的な側面から検討するに当たりましては、極めて発生の可能性が低いと考えられますこういった大量の放射性物質の放出が仮にあったとし、また、かつ極めて発生の可能性の低い厳しい気象の条件、拡散条件下であっても、この八ないし十キロメートルより外側の地点における被曝線量というものは、退避等の防護対策を必要とする指標というものを決めておりますけれども、その最下限値はそれよりも十分小さな値になってしまうということでございますので、この八キロないし十キロの半径内において重点的に防災対策を充実しておけば十分であるというふうに考えられたわけでございます。  なお、諸外国におきましても、それぞれの国情に応じまして独自の判断に基づきましてこの緊急時計面の区域の範囲というものを定めておりまして、我が国と同程度の区域を定めておる国も多いというふうに承知をいたしております。
  229. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この中をかなり訳して調べてみたのですが、なぜアメリカは半径十マイル、そして食物摂取の範囲では半径五十マイルをとったかということが詳しくここに書いてあるのですね、項目を挙げて。こういう理由でアメリカは十六キロと八十キロをとっている。まあ時間の点からこれを全部読み上げることはしませんが、指摘をしておきたいのは、日本は日本の理由で八キロ、十キロと言っておるのでしょうが、アメリカはああいう広い国、人口は日本から比べれば一定の地域には非常に人口は少ないのですが、そこでも十六キロ、八十キロを指定をして、この区域として対策を講じている。この違いがあるということだけ明確にしておきたいと思います。  それからもう一つ。アメリカのいわゆるNRC、規制当局、原子力規制委員会は一九八〇年に、昭和五十五年の十月に「原発の放射能災害対策計画と準備の基準」という、州政府地方政府、日本でいうと県や市町村になりますが、これの防護計画と、それをどう実行したかを具体的な項目でチェックをして、これだけのチェックをしてなければだめだというのを出しておるのですね。それはこの資料に詳細に、国はどういう点をチェックするか、州政府地方政府、市町村はどういうことをチェックするかということを厳しくチェックしておるのですね。  我が国では、こういうように一つのチェックを設けて具体的に防災計画はどういうように計画をされ、どういうように実行をされたか、そういうことを県並びに市町村の段階でチェックをしていく、そういう基準を政府は持っておるのかどうか。いかがですか。
  230. 石塚貢

    ○石塚政府委員 お答えいたします。  国におきましては、先ほど先生からも御指摘のございました、原子力安全委員会が定めました「原子力発電所等周辺の防災対策について」といった防災指針、あるいは昭和五十五年に作成しました「地域防災計画作成マニュアル」、あるいは昭和五十九年に作成いたしました「緊急時環境放射線モニタリング指針」等を作成してまいっております。こういったものに基づきまして地方公共団体が地域防災計画を作成するよう指導をしてきておるわけでございます。  さらに、地方自治体の地域防災計画の作成及び改定の際には、これにつきましては地方公共団体から協議を受けております。この際、種々必要な指導をしてまいっております。このような方法によりまして従来から地域防災計画についての指導を私ども行ってきておりますが、今後ともより充実したものをつくっていただくよう努力をしてまいりたいと思います。
  231. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、原子力安全委員会が出しているこの五十五年六月の基準、それから九月の県のマニュアル、それからこれに基づいて各原子力発電所、それから県の防災計画、市町村の防災計画がどういうようになされておるかということを一応さっと目を通してみました。これは要するに手引書をつくってやりなさいということなんですね。そして一番大きな開きは、住民参加の防災訓練は何も行われていないということですね。やっている中身をずっと見ると、通信訓練、モニタリングをどうするかということですね。こういうものがやっている中身になっている。  だから、この立派な――これは余り立派でないと思う、この程度では。この市町村のやあれじゃどこへいっても似たようなもので、この程度ではそんなに立派とは言えないけれども、仮に立派なものとしても、これで住民参加の防災訓練をやらなければ机上のプランにすぎない。実際原子炉に事故が起きたときに、防災訓練が必要だということはチェルノブイリの現地の元の副所長も指摘をしているし、アメリカでも、さっき言ったようにとにかく日本と同じ型でしょう、アメリカの原子炉は。最新鋭の原子炉が四百も警告灯がついて、どうしていいかわからぬ。ここの電気がこういうふうについたのだと言って説明をしてくれましたが、そうなったらどうにもならぬ、こう言っているんですね。  だから私は、この全国の原発立地の県並びに市町村で住民が参加をする防災訓練をぜひ本格的に実施すべきであると思いますが、いかがですか。
  232. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 原子力に係る地域防災計画については、その作成マニュアルを示し関係地方自治団体を指導しているところであり、現在作成されている地域防災計画では既に防災訓練について規定しているところでございます。  原子力防災訓練においては、周辺住民に指示する立場の防災業務関係者が沈着冷静かつ適切な対応を行うことが最も重要であり、周辺住民がこれら防災業務関係者の指示を守り、秩序ある行動をとることにより、一般防災と同様に実効性のある避難誘導措置を講ずることができると考えております。  このような観点から、現在、原子力発電所所在の地方公共団体においてはそれぞれ実情に応じて地域防災計画に基づき種々の訓練が行われているところであるが、自治省としても今後避難訓練等防災対策の一層の充実について指導を深めてまいりたいと思います。  なお、具体的な細目については消防庁長官からお答えをいたさせますけれども、辻委員も福井でございますし、私も実は選挙区に東海村を持っている。私の自宅も十キロ内に発電所を持っているわけでありますから、原子力については門前の徒として人一倍の関心を持っているつもりであります。特にあのスリーマイルアイランドあるいはチェルノブイリの事故以来、動揺があるかどうか、私も大変関心が深かったわけでございますが、三十年来にわたる長い安全第一の政策もこれあり、意外と信頼感が定着をして、私の地域ではそれほどの深い動揺を持っていないことは幸いなことでありますが、これを絶対裏切らないように、まずもってどんなことがあっても安全第一、事故が起きてどうこうということには、まさに無傷であるはずがございません。私も十キロ内に住む住民の一人として大変深い関心を持っておりますので、これからもこの安全第一の政策の展開をし、最悪の場合にも備えるための準備をさらに進めてまいりたいと思います。
  233. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げました。原子力発電所の所在県全部で十県でございますが、これらの県におきましては、国や市町村そのほかの防災関係機関と連携をとりまして、先ほどお示しのような緊急時の通信連絡訓練とか緊急時の環境モニタリング訓練とかあるいは避難誘導訓練、住民に対する情報伝達訓練等を実施しておるわけでございます。  六十一年中の数字で見ますと、愛媛、宮城、鹿児島、新潟、島根、静岡、佐賀の七つの県において訓練を実施いたしております。御指摘のように住民そのものが全面的に参加した訓練というような形のものはほとんど行われておりません。一部におきまして希望する住民が参加したことはございますが、そういうケースは我が国にございません。  ただ、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、やはり防災機関、防災業務関係者側が沈着冷静に行動する、その訓練がやはり一番大事だという観点から、私どもの方としてはそちらの方に重点を置いて地方団体として訓練をやっておるもの、こう考えております。  なお、場合によりましては、消防職員とか消防団員あるいは電力会社の社員などをいわゆる模擬住民に見立てて避難誘導訓練を実施する、そういうケースはあるわけでございます。
  234. 辻一彦

    ○辻(一)委員 自治大臣のその気持ちはわかります。しかし、やるんだ、やりなさいと言っても、これで果たして地方が本格的にどれぐらいやれるか、これは私は十分でないと思うのですよ。確かに原子力防災の訓練実施状況というのは十県ほど資料として出されておる、これは全部中身は通信訓練とモニタリングの訓練ですね。これでは本格的にとてもやれない。  そこで、一つ私は例を申し上げますが、アメリカのニューハンプシャ ー州最大の電力会社パブリックサービス社が一月二十九日にアメリカの州裁判所に破産申請をした。なぜかというと、一九八六年、二年前に五十二億ドル、六千億余円の巨費をかけて百十五万キロワットの原発を建設したが、法によって義務づけられている緊急避難計画が作成できずに、NRC、規制当局から営業運転の許可が一年七カ月にわたっておりない。とうとう赤字を出して倒産をした。  アメリカはこのように、原子力規制当局はこれほど厳しく緊急避難計画とその訓練を義務づけている。これは日本の状況と随分違うわけですよ。大手の電力会社が倒れてもこの防災計画と住民緊急避難計画がきちっと出されて承認しなければ一〇〇%営業運転を与えない。だから、六千億もお金をかけてつくった発電所を二年間もとめておけば赤字になって倒産するのは当たり前。倒産してもここまで規制しておるのですね。この緊急避難訓練というものをきちっと義務づけている。これをきちっと私は見習うべきじゃないか、参考にしなくてはならぬじゃないかと思います。何々をやりますとか府県に期待するだけではならない。  これはひとつ、自治大臣それから科学技術庁長官から、この防災計画についての直接の共管であるから、どうお考えか聞きたい。
  235. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 委員指摘のとおり、訓練を行うことは大切な条件だと私は思っております。  ただ、アメリカの事例で、きょうは通産大臣がおいででございますから、あるいは通産大臣の所管かもしれませんが、アメリカの電力会社、特に原子力発電所を見てまいりますと、小規模なというか、一発電所をもって一電力会社というような事例がございます。ですから、人事の交流やあるいは研修その他に大きな欠点があるのではないかなという感じが私はいたしますけれども、その点、日本の九電力あるいはそれに原子力発電株式会社あるいは電発、こういうものを加えても適正規模を維持し、しかもそれが集中的にコントロールして教育訓練の場があるということは、ある意味で運転技術の面においては世界に誇り得る技術があるのではないかなという感じがいたします。  いずれにしても、防災の最善のあれは事故を起こさないことでございますから、私は、これからやはり一番安全になれて、あるいは経済性の追求が強まりますとそういう懸念が出てまいるわけでありますから、どんなことがあってもまず安全性を第一にするという姿勢、これを科学技術庁と相ともにこれから堅持をしてまいることが防災の第一義だというふうに考えておりますし、もちろん我々、地方住民を安心させるために防災訓練をこれから行って不慮の大事に備えたいという気持ちでございます。
  236. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 会社が倒産するくらい厳しい規制をしているというアメリカの事例のことにつきましては私も承知をしております。事例そのものは違いますけれども、我が国もアメリカに負けないくらいの全体として厳しい規制のもとに原子力発電の設置あるいは運営等をやっておりますので御安心をいただくとともに、さらに御意見等を踏まえまして、念には念を入れた原子力行政の安全性の確保にさらに努めてまいりたい、このように考えております。
  237. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今長官のように安全性の面でアメリカを引き合いに出してそれに劣らないぐらいやっていると言うなら、なぜ防災対策でアメリカにおくれをとる。アメリカは会社がつぶれても避難計画が出されなければ承認しないという。我が国はそんなもの全然ないでしょう。これはもう、これをひとつ参考にして住民参加の防災訓練を法によって義務づけるべきだと思いますが、いかがですか。
  238. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 各大臣あるいは政府委員からもお答えを申し上げておりますけれども、原子力発電所の万一の事故に対する防災対策につきましては、先ほど私自身も触れましたけれども、災害対策基本法に基づいて国、地方公共団体等がそれぞれの責任及び役割分担のもとに防災計画の策定等所要の措置を十分に講じております。  すなわち、各地方公共団体におきましては、原子力発電所の運転開始に先立って原子力防災対策に関する地域防災計画を策定し、緊急時モニタリング体制の整備等を行つております。  また、これも先生お触れでございましたけれども、スリーマイル島の原子力発電所事故以降は、原子力防災訓練につきましても原子力発電所の運転開始前に実施するとともに、防災関係者関係従事者に対しましての研修、講習会の開催、緊急時連絡設備の整備等の諸対策を講じております。  このように、原子力発電所に係る防災対策につきましては、災害対策基本法に基づきまして現行の法体系下におきましても十分な措置が講じられておりまして、改めて特段の法的措置を講じる必要はないものと認識をしております。  さはさりながら、さらにこれからの防災対策の内容につきましては御意見等も踏まえまして十分に一層の充実に努めてまいる所存でございます。
  239. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まああなた、この県の防災計画を見たって、「訓練」というところへいけば何て書いてあるかといえば、「次に掲げる訓練を実施する」として、緊急時通信連絡、環境モニタリング、住民に対する情報伝達を組み合わせた訓練、国の支援体制を含めた訓練等々を挙げていますが、こういう項目を挙げている程度で、住民参加等の防災訓練は原子力の場合には行われていないというのが状況ですね。  私の言っているのは、アメリカはその計画を出して実際に訓練をやらなければ一〇〇%営業運転を許可しないぞとゼック委員長も言っているし、実際一年七カ月それをやってきたのですね。それと日本の開きが余りに大きいじゃないか、安全性でアメリカに負けぬくらい開きがないというならば、なぜ防災対策でもさらに一歩進めることができないのか、これを聞いているんだけれども、答弁では私の言っていることに全然答えられていない。  もう一つ申し上げたいのですが、アメリカの一九七八年のこの指針は、スリーマイル事故の前年につくられたものですが、確率論を使って、九つの重大事故のうち冷却水喪失事故は一万炉・年に一回、炉心溶融事故は二万炉・年に一回と考えておったのですね。炉・年は御承知のとおりですが、今世界に運転中の原子炉が三百八十九、建設が百四十六で五百三十五ありますが、簡単に言えばこれを五百と見て、五百の原子炉が十年動けば五千炉・年というわけですが、そういう計算になりますね。ところが、スリーマイル事故は数千炉・年に一回の割合の確率で起こった。チェルノブイリも起こったのですね。すなわち約十倍の確率で早く起きた、高い確率で起きたことになりますね。換言すると、アメリカでは二十一世紀に入らなければ起きないだろうと思われていた原発事故が三十年も早く事実として起きた。  この様子では、我が国においても二十一世紀に入ってすぐ事故が起こる可能性が確率論からすればある、あるかないかは別として。それは断定できるわけじゃないのですが、確率論というものを使えばアメリカの数字はこういうことを示しておる。だから日本は、今言ったように、いろいろな経験を積み上げて技術も高くなった、稼働率も高くなったから心配かない、こういうようなことでは済まないときに来ておる。  だから、安全性第一ということは、これは私、この間総括で言って、経済優先と技術過信の憂い、おそれありということを警告したのですが、それと並んでこの防災対策を真剣に考えなければならないときに来ている、こう私は思うのです。総理がおれば私はもっと、皆さんに一人ずつ聞かぬでも済むわけですが、残念ながらそういうようにもいかないので一人ずつお伺いすることにして、通産大臣並びに国土庁長官からもひとつお尋ねしたい。
  240. 田村元

    ○田村国務大臣 昨年五月の原子力安全委員会ソ連事故調査特別委員会報告においても指摘されておりますように、我が国の原子力防災対策の基本的な枠組みは既に確立されておりまして、それを変える必要はないとは言いながらも、通産省としてはその内容につきまして今後ともより一層充実するように努めてまいる所存でございます。いずれにしても、完全を求めて層一層の努力をすることは当然のことでございます。
  241. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御承知のとおり災害対策基本法の対象となっている災害でございますし、したがってまた、国、地方公共団体、関係事業者等は防災業務計画あるいは地域防災計画をつくっております。またそれらに基づいて防災訓練を行わなければならないということになっておりますし、また災害予防責任者は「住民その他関係のある公私の団体に協力を求めることができる。」という規定もあるわけでございます。  今いろいろお話を伺っておりまして、自然災害でも忘れたころに来るというお話がございますし、ないと決めてかかっておることはないかという御指摘もあったりしたわけでございますので、今後も原子力発電所のある地域における防災の訓練がどうなっているかということにつきまして私なりに留意していきたい、こう思います。
  242. 辻一彦

    ○辻(一)委員 国土庁長官が災害対策本部長であることも存じておりますし、私も参議院では災害対策の委員長もしておりましたからよく知っております。  ちょっとその本部長、国土庁長官にお尋ねしますが、この災害対策基本法第二条第一号にずっと、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火」、こう並べていますね。「その他の異常な自然現象」あるいは「政令で定める原因により」、こうして、原子力の放射性物質の大量放出は「政令で定める原因」というところに入っておりますね。これはどうですか。少なくともこれだけ原子力の災害というものが関心を引き、不安、心配もする中で、この条文の中に明確に「噴火」、その次に原子力災害、まあこれは「放射性物質の大量の放出」を意味するのですが、一項加えて明確にして、私はまず法体系の整備を図るべきではないかと思いますが、いかがですか。
  243. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 原子力発電所の事故に関しましては、アメリカのスリーマイル島の事故の後で中央防災会議において対応措置を決めておるわけでございます。そういうこともございますので、原子力関係の問題が災害対策基本法の関連の災害であることはもう十分知られていると思うわけでございます。しかしながら、災害対策基本法を見直すような場合には今の御指摘の点も考えて対処していきたいな、こう思います。
  244. 辻一彦

    ○辻(一)委員 事故が起きてからではもう遅いんですよ、起こった後では。やっぱり私はこれは検討してもらいたいと思いますがいかがですか。
  245. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今申し上げましたように、災害対策基本法を見直しますときに今の問題一緒にして検討していきたい、こう思います。
  246. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その見直す時期、そんなもの何年も先じゃ意味がないんで、早い時期に見直しの検討が行われますか、もう一度念のために。
  247. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 災害対策基本法についてどういう問題があるかということをさらに事務当局等についてただしてみたいと思います。
  248. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは検討して前向きでひとつきちっとやってもらわなくてはいかぬと思いますね。  重ねてひとつ自治大臣にも尋ねますが、このスリーマイル、チェルノブイリ以降、原発の立地市町村と住民の防災に対する関心は一段と高くなっていると思います。今まで全国の原発立地の市町村は原子力防災計画や防災訓練を言うと住民に不安を与えるのでこれをタブー視しておった、今までですね。ところが、スリーマイル、チェルノブイリ以降、原発立地の市町村は、国の一元的責任のもとに原子力防災対策の確立のため特別立法の制定を求めておる。現に、全国原発立地市町村協議会ではこの旨の決議を行って私のところにも持ってきておるし、政府にも当然提出をされておるはずですね。  以上のことを考えれば、この住民参加の防災計画と緊急避難計画とを含んだ訓練を義務づける法的な措置を私はやはり検討すべきときに来ておると思いますが、これはひとつ、原発市町村がみんなこう言っている、一体どう自治大臣考えるか、伺いたい。
  249. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 御指摘のように市町村側からそういった特別立法をというような声もあることも私どもも聞いております。  ただ、先ほど来お答え申し上げておりますように、防災対策の面での訓練については原子力安全委の決定等を踏まえましてマニュアルをつくり、それが地域防災計画ということになっておるわけでございますが、やはり防災関係業務者、防災機関側の沈着冷静な訓練、それによって緊急事態における事態に対応できるように習熟をしていく、これを中心にいたしておるわけでございます。  そういうことで、原子力の防災対策に対する基本的な姿勢としては、先ほど来科学技術庁等からもお答えがございましたような形で目下行われておるわけでございます。さらに検討も進められておるということでございますが、現段階におきましては、私どもの方はそういった形での訓練を地方公共団体においてしていくのが普通だと思います。また、そのように注意いたしたいと思います。
  250. 辻一彦

    ○辻(一)委員 自治大臣、私も福井県で、今まで十二原発があって、三つ今建設中ですから十五になるのです。千二百万キロワットというと世界一なんですよ、これだけ集中するのは。七十キロの間にそれだけあるのですから。そこの市町村や議会は、初めは、私も言ったように、防災訓練や計画を言うと、そんなことを言うと不安が出てくるからもうやめてくれという空気だったんですね、ずっと。ところが今、市町村の議会や地方が決議をして、それだけではなしに、全国の原発を持っている全部の市町村が集まって協議会をつくっている、そこが国の法的裏づけによる防災の一元化を求めておるという状況は、非常に変わってきておるのですよ。そんなことを、今の消防庁長官の答弁では、これはとても答えにならぬ。こういう原発立地の市町村の声を受けて、法的な措置の検討をすべきだと私は思いますが、もう一度ひとつお尋ねしたい。
  251. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 冒頭申し上げましたように、防災業務関係者のいわば第一義的な努力が大切でございますけれども、まさに辻委員が、恐らく日本で一番専門家でございますし、大変関心が高い、二番目にはこの私かなという自負もあるわけでございますけれども、いずれにしても万一事故が起きたときには私の一家眷族を犠牲にするわけでございますから、私の職分にある間に何とかこの問題の検討をして、一家眷族が楽に安心して暮らせるようにしたいと思いますので、御協力を願いたいと思います。
  252. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは自治大臣、市町村のそういう要望にこたえて今の発言は、任期中に検討すると。なるべく長い任期をひとつ期待しております。間違いないように頼みますよ。――かわらぬといかぬかね。  国土が広いアメリカ、そしてこれだけの対策を立てておるのだから、国土が狭くて人口が周密な我が国ではアメリカと少なくとも並ぶ、より以上厳しさを持つように、安全と並んで防災対策がならなくてはならない。こういう点で、先ほど科学技術庁長官は国情に応じてと言いましたが、まさに国情に応ずるならば国土広大なアメリカに比べて国土狭小の我が国の国情に応じた防災対策を早急に検討すべきである。もう一度ひとつ、今度は長官にも伺いたいと思います。
  253. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 申し落としましたので追加させていただきますが、私のところですべての権限があるわけではございません。原子力委員会と十分に協議をいたしてまいりたいと思いますし、狭い国土でございますから、まさに水際と申しますかどんなことがあっても安全第一、どんなことがあっても起こしてはいけない。利便なものほど危険度は高いわけでございますから、狭い、稠密な日本社会でございますから、起きること自身を考えることが大変な冒涜だ、そういう気がいたしますので、どんなことがあっても起きない対策をまず行うことに全力を挙げるようにこれからも頑張ってまいりたいと思います。
  254. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 自治大臣からもお話しのとおり、災害対策、まさに重要でございますけれども、一般の災害につきましては、消防庁長官からもお話しのとおり、いろいろな形で訓練が行われておりまして、そういう訓練が行き届いておりますので、原子力防災訓練におきましては、何よりもまず防災業務関係者を対象として原子力特有の訓練を中心に行い、これら防災業務関係者が原子力そのものに関する知識経験を十分習得し、また原子力特有の防災対策に習熟することによって周辺住民に対する適切な指示、対応ができるようにすることがこの場合には極めて肝要であると思います。  そしてまた、これにあわせまして、周辺住民に対しまして日ごろからの原子力に関する知識の普及、啓蒙が行われておるならば、万一の放射性物質の大量放出という事態に対しましては所要の適切な対応ができるものと考えまして、こういう考え方でこれからも原子力の防災対策に努力をしてまいりたい、このように考えます。
  255. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そんな後ろ向きなことを言いなさんな、何回も何回も。検討して前を向こうというときに、そんな事務局の答弁を読み上げたってだめなんだ。  総理がおられぬのでまとめた御意見を聞けないけれども、副総理、ひとつここを総括して、重大な問題ですが、大蔵大臣でなしに副総理として、皆さんの意見をまとめて御意見を伺いたい。
  256. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、かねて御造詣の深い辻委員からいろいろ御発言がありまして、政府側も各大臣からおのおの所信について御答弁がありました。いろいろ適切な御指摘もございましたので、それらのことを慎重に検討しながら誤りなきを期していくべきだと思います。
  257. 辻一彦

    ○辻(一)委員 納得はなかなかできませんが、とにかく前に向いてひとつ前進をしてもらうようにお願いをしたいと思います。  それから、科技長官にひとつ伺いたいのですが、伊方の原発の出力試験は終わったのですが、今回の出力試験に住民の広範な不安があったということは事実です。これは新聞では、長官は、説明不足であった、こういうふうに言われておりますが、それではちょっと済まないと私は思うのですね。まず第一は、住民の不安は、本来試験用の実験炉でやるべき試験を営業炉でやることに不安が一つ生まれておる。第二は、しかもその実験炉における試験がほとんど海外のデータに依存し、国内のデータの積み上げとは必ずしも言えないということ。三つ目は、試験の実験データが公開が十分なされていない。こういうところに住民の不安があったと思うのですが、長官、ひとつこれについての見解をお伺いしたい。
  258. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今回の試験に際しまして一部国民の間で反対運動が起きましたり不安の声がありましたことは承知しておりますけれども、そのことにつきましては、二月十日の原子力安全委員会の委員長の談話でも申し上げておりますとおり、ソ連の実験と今回の出力調整運転試験とは全く範疇の異なる実験でございまして、比較し得るものではございません。したがって、何ら問題のあるものではございません。  そしてまた、今回の試験は、安全審査の段階で既に安全性が確認された範囲内のものでございまして、出力調整の安全性に関する諸データは国内でも十分蓄積されておること、また資料の公開も試験の前後に十分行われておりまして、そのような点におきまして問題があったとは考えておりません。  しかし、今後とも、原子力の開発利用を進めていくに当たっては、安全の確保に万全を期していくとともに、私自身も記者会見等で申し上げましたけれども、住民の立場に立った懇切丁寧な広報活動を心がけていくことによって、原子力に対しましての国民の御理解をさらに深めてまいる所存でございます。  繰り返しますけれども、今回の出力調整運転試験は、安全審査の段階で安全性が確認された出力制御の能力の範囲内でありまして、かつ、保安規定を遵守しながら通常の運転操作で行われたものであり、安全上の問題はないと考えております。  また、データの問題でありますけれども、我が国におきましては、出力調整の安全性に関連するさまざまな研究が日本原子力研究所を中心に材料試験研究炉やハルデン炉等における国際共同研究において実施されてきたところでございまして、十分な試験データの蓄積がなされているところでございます。  また、今回の試験は、安全審査の段階で安全性が確認された通常運転の範囲内で運転保守上のデータの入手等を目的として行われたものでございまして、試験に先立って実験炉で特別なデータをとらなければならなかったという性格のものではございません。また、今回の試験につきましては、事前に実施主体でございます四国電力が地元の愛媛県及び伊方町に必要な説明を行っていると聞いております。  また、今回の試験に先立ち昨年の十月に行われました第一回目の試験の結果が本年の一月に公表され、今回の試験結果も十日後には公表されておりますことから、資料公開が十分行われていないとは考えておりません。  また、これも繰り返しますけれども、しかし、原子力行政の問題につきましては、慎重にも慎重、懇切にも懇切をきわめなきゃなりませんので、今後とも原子力の開発利用を進めていくに当たりましては、安全の確保に万全を期していくとともに、住民の立場に立った懇切丁寧な広報活動を心がけてまいりますことによりまして、原子力に対する国民の理解を深めていく所存でございます。
  259. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この論議はきょうは時間の点からやめますが、一つ資料公開で。  確かにこの間委員会で資料要求をしてこのデータが出されておりますが、これは事務局にごく簡潔に聞きますが、実測データであるのか、それを書き写したものか、どちらなんですか。
  260. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 実測データを書き写したものでございます。
  261. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは書き写したのではだめなんです。私の要求したのは、委員会で明確に記録に残っておるはずですが、実測のデータを日付のとおり全部出してもらいたいと言ったのです。これは実測データをいろいろ書き写してあるのです。実測データを出してもらいたい。いかがですか。もう要点だけでいいから。
  262. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御趣旨につきまして、さらに詳細に御意向を確かめさせていただきまして、御相談をさせていただきたいと思います。
  263. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つ資料の問題ですが、この間かなり論議をして、通産大臣は、資料提出を前向きに検討を命ずる、こういうことだったのです。私はあのときに一般質問にこの問題を持ち越すと明確に申し上げておったのですが、なお提出はされていないけれども、今どういう状況か、ごく簡単に状況を聞きたい。
  264. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 基本的には前回申し上げたとおりの姿勢で検討いたしております。一つずつのデータの扱いにつきまして判断の幅がございますので、県あるいは市の前回の判断もあるわけでございますから、それとのすり合わせをやっておりますが、基本的には大変前向きに検討いたしておりますので、もう少し時間をいただければと思います。
  265. 辻一彦

    ○辻(一)委員 前向きという言葉はなかなか便利にできておりますが、県や市はそれは条例でいろいろ決めておるのだけれども、私の要求しているのは、政府にその資料があるならば国政調査権で出してもらいたい、こう言っておるのです。通産省あるいはさらに科学技術庁にこの資料は保有されておるのかどうか、簡単に。
  266. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 もちろん通産省にも提出されております。県、市と同様の資料が提出されているわけでございますけれども、県、市の第一次的な御判断があったわけでございますが、今後資料公開についての共通の考え方が必要だと思いますので、一つずつのデータの扱い方につきましてぎりぎりどう考えるかというところのすり合わせをやっておきたいと思っておりますので、そういう考え方から一つずつ判断のすり合わせをやっているところでございます。
  267. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、あるのかないのか、どうなの、政府に。質問したのはそれを聞いている。――あった。失礼しました。
  268. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもも資料は持っております。
  269. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと今思い違いしてごめんなさい。  これは県や市の判断といったって企業の判断ですよ。電力会社の。なぜこの資料はぐあいが悪いかなんて、県や市が何で原子炉の動きやそんなものを出して悪いかなんて判断をしてないのだ。それは企業が何らかの事情によって判断しているんですよ。だからこれは、資料公開という観点からいえば、まず第一に、原子力の平和利用の三原則にありますが、軍事的な使用に使わないということが一つ公開のねらいであるけれども、もう一つは、政府関係、企業関係の学者も専門家も検討する、と同時に在野の学者や専門家が同様データを検討すれば、科学的な資料ですからそれは共通の土俵になる。お互いにこれが安全かどうかということを確認すれば、これは住民の信頼も得られるようになっていく、安全であるとなれば。それを無用にこれは企業機密であるなんて企業の判断で隠そうとするから難しくなる。今言われるようなデータは、アメリカ等においてはほとんど公開されている。何でこれを企業機密だと云々して出せないのか私にはわかりがたい。これは当然出されるべきものである。そういう点で、いつ出すか、ひとつ明確にしてもらいたい。
  270. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 前回大臣から御答弁がございましたように、企業機密等にいたずらに藉口いたしまして公開を怠るというような姿勢はとるべきでないと私どもも思っております。  ただ、一つずつの資料につきまして、やはり個別の施設の詳細な配置図でございますとか、あるいは技術提携先から具体的に指定をいたしましてこういうデータの公表は避けてくれと言っているようなものが若干あるわけでございますので、その辺の調整をいたしております。御指摘のとおり、企業、自治体、国等々の関係者があるわけでございまして、今後とも資料公開の問題があるわけでございますから、やはりぎりぎりここまでやろうという判断はみんなが共通にいたしておきまして、今後この問題につきましてより積極的に、前向きに対応していけるようにという気持ちでやっておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  271. 田村元

    ○田村国務大臣 今の浜岡君の答弁で尽きておるわけでございますが、核盗難防止については、これは絶対論でございます。これは我々お互いに気をつけなければいけない。企業の機密、ノーハウの機密というような問題につきましては、我々がちょうど我々のプライバシーが公職者であるがゆえに制限を受けるというのと同じことだと思うのですね。でございますから、長官には、その点、思いを新たにして対応しなさいということを言ってございます。
  272. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ひとつ早い公開を待ちます。  それから、原発についてもう一つだけ伺っておきたいのですが、有沢広巳日本原子力産業会議の会長が、二年前の発言では原発の防護について消極的な発言があったのですが、ことし一月の新年の会合では、経済性が安全性に優先するようなことがあってはならない、こういう発言をされている。ちょっと簡単に新聞を読んでみますが、これについて私は科技長官の見解を一言聞きたい。  日本原子力産業会議の有沢広巳会長は五日、東京都内のホテルで開かれた同会議の新年名刺交換会で「原発の稼働率向上に腐心するあまり、安全性が損なわれるようなことがあってはならない」と述べ、安全性より経済性重視に傾きがちな風潮にクギを刺した。同会長は二年前、原発の安全性確保に関して「過重な付属設備は除去すべきだ」と語り、慎重すぎることにはやや消極的な姿勢を示したが、ソ連・チェルノブイリ事故を経て、改めて「経済性より安全性」の考えを強調したものだ。私は、この二年後の有沢会長の発言を歓迎しておりますが、非常に大事なことを言われておると思いますが、長官、いかがですか。
  273. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 六十一年の四月の発言、今お読みいただきましたけれども、この発言は、我が国の軽水炉技術が成熟期に入った現在、初期段階においては十分に解明されていなかった原子炉施設の挙動を最新の科学技術的知見に照らして見直し、安全確保を前提に軽水炉技術の高度化を図るべきであるとの主張であると理解をしております。一方、昭和六十三年、ことしの一月の原産会議の年頭あいさつにおきましては、今もお話しのとおり、稼働率の向上やスクラム回数を減らすことに腐心する余り安全性が損なわれることがあってはならないという御発言でございます。  いずれの発言におきましても、首尾一貫して、原子力開発利用の推進に当たっては安全確保が大前提であるとの考え方をお述べになったわけでございまして、我々としても経済性の向上を図るために安全性を犠牲にするというようなことがあってはならないということは言うまでもないものでございまして、今後ともこの基本精神にのっとって我々も原子力開発利用の推進に当たってまいりたい、このように考えております。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  274. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まだ問題は残しておりますが、原子力安全性、防災関係はこれで終わります。  通産大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、繊維問題であります。  日本の繊維の産地は、綿を中心の静岡、毛を中心の愛知、いわゆる東海地方、それから、長繊維、合化繊を中心とする北陸三県というように主な産地がありますが、天然繊維志向という中で綿、毛はやや伸びてはいるのですが、合化繊、長繊維は韓国と台湾の追い上げの中で非常に困難な状況にあります。特に韓国、台湾の設備が非常に高度化されておりますが、高速織機、革新織機、ウオータージェットルーム等を見ると、かつて日本一、世界一の産地であった北陸産地の革新織機は二万四千五百台、韓国、台湾は合わせて二万八千八百台、総量でも韓国、台湾はこれをしのいでいる。さらに内容を見ると、五年以内の革新織機が、北陸では二九%に対して、韓国は四七・七%、台湾は六二%というように、新しい五年以内の高速革新織機が非常に設備が高度化されて入っておる。それから、日本の織機メーカーの状況を見ると、津田駒等々の有力な織機メーカーの八〇%は韓国、台湾への輸出で、三年間は注文でもういっぱいだ、こう言っているのです。  こういうように我が国の合化繊、長繊維の有力な産地と韓国、台湾との差が今大きく拡大しようとしておる、こういう状況の中で長繊維産業の今後をどう考えられるか、通産大臣にお尋ねしたい。
  275. 田村元

    ○田村国務大臣 今おっしゃいましたとおり、我が国の化合繊維物産業は輸出に相当程度依存しながら発展を遂げてまいりました。しかしながら、円高によりまして競争力が低下し、発展途上国の追い上げの激化など、今おっしゃいましたように、それを取り巻く情勢には厳しいものがあることは事実でございます。  しかしながら、化合繊織物業界におきましては、一層の内需転換を行うなどによって対応しつつあります。今後とも製品の高付加価値化あるいは多品種、省力生産を進めることにより厳しい環境を乗り切っていくことが可能と思料しております。通産省としましても、構造改善事業の促進などを通じましてこうした事業者の努力を支援してまいる所存でございます。
  276. 辻一彦

    ○辻(一)委員 余り詳しくはどうも時間の点からやれないのですが、要点だけ二、三お尋ねしたいと思います。  登録制の問題があるのですね。いろいろと今までも経緯がございましたが、ここ数年ずっと織機の登録制が問題になっております。一部風穴があいておるわけなんですが、五年前の繊維のビジョンを出されたときと国際的な状況が非常に今変わってきているというように思います。当時は日韓両国の繊維、長繊維における生産能力がかなりの差があったわけですが、今数字を見ると、長繊維では世界の中に日本は三〇%、韓国三〇%、台湾一〇%、七〇%をアジアの国で占めておりますが、日韓の生産能力はほぼもうつり合っているという状況にあります。  そこで、今まで韓国は日本に追いつき追い越せというのみだったのですが、やはりこれは両国の産地間の調整を図らないと両方ともだめになってしまう、こういうことを理解をして、ここ数年北陸産地と韓国産地の交流がかなり深まっておったようであります。こういう中で、最近韓国は登録制を導入して、韓国と北陸産地の間にようやく国際調整が進んできた。ところが、こういう段階で登録制が廃止をされると、せっかく進んだ国際調整が御破算になるおそれがある、こういうような新しい国際情勢の変化の中で登録制の存続が必要でないかと思いますが、これについてこれから繊工審、産構審等で論議がずっとされるわけでありますが、まずは大臣のひとつ見解を承りたい。
  277. 田村元

    ○田村国務大臣 この登録制は、当該業種の過当競争を防ぐという緊急避難措置として認められたものであります。しかしながら、織物業における設備登録制につきましては約三十年間も長い間にわたって継続しておりまして、昭和五十八年の繊維工業審議会、産構審繊維部会の答申におきましても、登録制の現状固定的な問題点について強く指摘されたこともございます。  通産省としては制度の漸進的な改善を図るという方針のもとで登録制の見直しを進めてきたところでございますが、今後の設備登録制のあり方につきましては、現在検討が進められております繊維ビジョン策定における主要課題の一つとして繊維工業審議会、産構審の繊維部会に審議をお願いしているところでございますが、我が省としては審議会での検討結果も踏まえながら今後のあり方について検討してまいる所存でございますが、いずれにしても、こういう問題は長い歴史を持った問題でございますから、また一つの秩序をつくってきた問題でございますから、慎重に検討をする必要があろうかと思います。
  278. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと時間の点から要望だけ申し上げてこの問題を終わりたいと思いますが、革新織機が入って生産は上がったのですが、それも時間がたつと、さっき数字を読み上げたように革新織機は古くなってきたのですね。十一年以上というのが三六%もある。革新織機といいながらそれが古くなってきている。そうすると、それを入れかえするのに革新織機の一部廃棄というもの、全部利用を転換してしまうのじゃなしに、革新織機といえども古くなったのを一部廃棄をしてさらに推進をしたい、こういう考え方がかなりあるわけですが、これはなかなか難しい問題でありますが、十分ひとつこの問題も検討をいただくように要望して繊維の問題は終わりたいと思います。  次に、続いて農林水産大臣にお尋ねしますが、政府は本会議で、森林・林業の活性化が必要、こう答弁しておりますが、森林の活性化は、木材供給面だけじゃなくて、国土の保全、水資源涵養などの公益的な機能を果たす上でも不可欠でありますが、活性化のために、一つは国産材需要の拡大、それから二は間伐など資源充実対策、全国森林計画の実行を担保する林道の開設、林業公社や森林開発公団の負債償還問題、相続税の軽減、後継者の問題、国有林対策等々、多くの課題があるのですが、詳しくは伺う時間がありませんが、こういう問題について農相としての決意をひとつ伺いたいと思います。
  279. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 森林・林業をめぐる情勢は最近木材需要が回復傾向にあるなど明るい一面もありますけれども、このような中で林業、木材産業の一層の体質強化、活性化を図るとともに、多様化する国民のニーズにこたえて森林を整備することが必要となっております。このため、農林水産省といたしましては、木材需要の拡大、造林、林道等、林業生産基盤の整備、後継者の育成や就労条件の改善による担い手の確保等々、これはちょっと時間が長くなりますから、などなどということでございまして、今後ともこうした振興施策を推進していく考えでございます。  また、国民経済及び国民生活にとって重要な役割を果たしておる国有林野事業につきましても、昨年七月見直した経営改善計画に基づいて最大限の自主的改善努力を尽くすとともに、所要の財政措置等を講ずることにより経営改善に鋭意努力する所存でございます。
  280. 辻一彦

    ○辻(一)委員 農相にもう一問お尋ねしたかったのですが、御要望申し上げておきます。  それは熱帯雨林の問題なんですが、私もちょっと前にインドネシアの方に行って随分乱伐で洪水が起きたりした実態を見ました。焼き畑や薪炭の消費等々による現地側の事情もありますが、日本が大量に輸入したという原因も非常に大きいのではないか。こういう点で、ひとつ熱帯雨林の再生のためにより国際的な役割を果たすように努力をいただきたい。これは要望して終わります。  水産関係は割愛させてもらいます。また水産の問題は別の機会に譲りますから、どうぞ……。  それでは最後に、留学生とODA、円借款の問題ですが、これはさっき同僚委員から詳しくありましたので、時間も限られておりますから、ごく簡単に伺いたいと思います。  この現在の円高の中で餓死をしたという留学生が新聞にも出ている。非常に痛ましいことだと思います。また、生活費を切り詰めて栄養失調になって救急車で病院に担ぎ込まれても負担を恐れて輸血を受け付けなかった、こういう例も報じられているというように、大変残念な実態が日々報じられております。私もこの間大久保の国際学友会の寮等も見ていろいろお話も聞いてみたのですが、個室は狭いけれどもあそこにいらっしゃるのはまだいい方で、多くはあの周辺のアパートや狭いところに何人かが同居しているという状況があります。こういうのを見ますと、何といっても留学生の問題は宿舎を心配のないようにするということが一番最初に大事ではないか、こう思います。  そういう点で文部大臣にお尋ねしたいのですが、各国立大学の構内は相当広いのですが、そういう敷地を活用して留学生会館等をもっと建設をして、その大学の留学生のみならず広くこれを開放することによってこの問題はかなり前進するのではないかと思いますが、まず文部大臣からこれについてのお考えを伺いたい。
  281. 中島武敏

    中島国務大臣 確かに一つの御指摘だと思います。現在三十六大学で四十六の留学生会館がございます。国立大学、それから私立もこれをつくっているところがございまして、現在収容人員が二千七百名程度だと思います。ただ、おっしゃるように今二万二千人の四分の一程度がこういうところに入られる留学生さんでございますので、これを拡充することは確かに結構なことだと思いますが、もう一方で、来られる留学生の方々も、日本の青年と一緒に生活したい、こういう御希望が多いものでございますから、それと同時に、やはり民間企業、民間団体の寮とかそういう宿舎を開放して、できるだけそこに入っていただくということもあわせて進めていくべきではないか、こう考えております。
  282. 辻一彦

    ○辻(一)委員 東南アジアの留学生の中に、各国で世界銀行から資金を借りてこれを学資に送ってくる、そのために年度の終わりでないと国から資金が送られてこない、こういう例がかなりあるということもこの間いろいろ聞きました。こういう点から、日本の政府の開発援助、ODAは今大きな額になっておりますが、きょうは新聞で円借款の活用等も出ておりますが、開発や建設、施設などももちろん大事でありますが、もう一つは人をつくるということが何といっても一番大事だ。  そういう点で、さきの留学生会館の建設やあるいは学資にODAの資金、あるいはきょうも円借款等も出ておりましたが、そういう資金を充てて、今までやっておりますが、よりひとつ大幅にできないか。この間、ここの公聴会でも、ODAの資金をそういう面によりひとつ生かすことができないか、こういう要望も公述人から発言がありましたので、そういう点も踏まえて、これからひとつぜひ力を入れてほしいと思うのですが、これは外相の所管と思いますので、ひとつお尋ねしたいと思います。
  283. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほども中西委員から内容の充実した御質問をいただきまして、また同様の立場で今辻委員からも留学生に対しまして格段の御指摘がございました。  政府といたしましても、こういう御意見を本当に尊重して、やはり日本が単なる経済だけではない、そうした人材の交流を通じて、人づくり、すなわちその国の国づくりなり、永久に日本をよい国の思い出として持っていただくように、私は、今おっしゃったようなことにも外務省は今後力を入れなくちゃいけないと思います。  幸いことしは財政当局の格段の御理解で一兆七千億台という大きなODAの予算も獲得したわけでございまして、この一部が留学生会館等に使われるということになりましたけれども、今後そうした面がさらに分野が広がるよう努力をしていきたいと思っております。
  284. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、この間もちょっとお話ししたのですが、留学生ではないのですが、北京のアジア・アフリカのサナトリウムにしばらくおって、三百人アジア・アフリカの学生が三十年ほど前ですか一緒だったのですが、同じように暮らして、そこで生活した印象と思い出とそういう経験というものは何十年にわたって生きているという感じがします。そういう点で、アジアの、また中国の留学生をよりいい条件で受け入れて、よい印象を持って帰ってもらって、大いに友好的に努力してもらうということが大変大事だと思うのですが、何といっても経費が要るわけですから、蔵相、ひとつこの面に大いに力を入れていただきたいのですが、ちょっと決意のほどをお願いしたい。
  285. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、先般来、殊に本日は何度も大変有益な御示唆がありまして、外務大臣、文部大臣がお答えになっておられましたが、私も実は同じような気持ちで伺っておりました。これは我が国の将来にとって、また、そういう各国の人々にとってはもちろんでございますが、最も大事な施策の一つでございますので、有効に使われますならば、これはもう財政はできるだけの努力をしなければならないと考えております。
  286. 辻一彦

    ○辻(一)委員 じゃ、まだ一分ありますが、もうお尋ねしても無理と思いますから、これで終わります。どうもありがとうございました。
  287. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて辻君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十九日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会