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井上(普)
委員 しかし、これを見てみますと、
昭和四十年の十一月に、閣僚協が初めてつくられて
地価対策について
答申を出しています。それから、その次が
昭和四十三年の十一月に
地価対策についてこれまた閣僚協が
答申を出しております。それからその次は、
昭和四十五年の八月にこれまた
地価対策について
答申を出しております。
昭和四十八年にこれまた出しております。四十年代はこのようにたくさん出しているのです。しかし、五十年に入ってからの
地価対策閣僚協議会というのはなくて、六十二年の三月に初めて
地価対策関係閣僚
会議というのが出されておる。この間、自民党の、
政府の
地価に対する無関心さというのが十年続いてきたと思うのです。五十八年からそれだけ上がったのであれば、当然過去の経緯からするならば閣僚協がつくられ、
答申が出されなければならない、
対策が出されなければならない。それが六十二年の三月になって初めて
対策が出されたというところに今度の
地価狂乱の責任がある。
政府は、上がってしまってから何しようかという
態度に終始したと言わなければならない。とするならば、このたびの
政府の責任たるや甚だ重いものがあると申さなければなりません。しかしその根底には、
地価、
土地に対する理念が欠けておるんじゃないだろうか、私はそのように思われてならないのであります。
地価に対する理念といいますのは、実はイギリスにおきましては、今世紀初頭に田園都市構想というのが発表されました。当時、その前後でございますが、ロイド・ジョージのごときは、道路であるとか港湾をつくったら
地価が上がる、その増価した分が個人の所有になるのは不届きだ、
地価増価利益、開発利益の吸収ということをロイド・ジョージは言っています。残念ながら
日本はそういうことはなくて、開発利益の吸収を
政府がやるべきだという論議が行われ出したのは
昭和四十年ごろからにすぎません。実に六十年おくれている。そこにはやはり
地価に対する理念というものが歴代
内閣にはなかったのではないだろうか、私はこのように思われてならないのであります。
実は、私もこの国土利用計画法というのを
昭和四十九年につくりました。奥野さんにはこの前申し上げたのですが、ひとつもう一度お聞き願いたいと存ずるのであります。
この国土利用計画法というのは、
田中内閣が国土総合開発法という法律を出してまいりました。これは開発と規制と両方含めた法律であったので、国会におきましてこれを廃案にした。しかし、
狂乱物価のこの際において
土地の規制、
地価の規制というものはやらなきゃならないという
国民の
合意といいますか、そういうもとにつくられたのがあの国土利用計画法であります。言いかえますならば、
地価規制法があの
土地利用計画法であるのであります。私ども、当時議員立法でこれをつくりました。もちろん、
経済企画庁の御助力を得ましてこの国土利用計画法はつくりました。しかし、これは
地価抑制法なんです。そのときに各党、共産党は除いておりますけれども、自民党から、社会、公明、民社に至るまで、この法律の第一条にうたってございますけれども、
土地というものは
国民共有の資産である、だから公共の福祉に
土地というものは使わなければならないという論議、大論争が起こりまして、現在の自由主義
経済、社会主義
経済のもとにおいて、少なくとも最大公約数の
土地に対する理念というものがあの国土利用計画法の一条、二条には盛り込まれたと私は思っております。あの
土地の理念に対しては、私自身は異論を持っております。異論は持っておるけれども、少なくともこの国会においての最大多数が
合意した理念があれに盛られておるはずであります。
私も先日、久しぶりにこれの読み直しをいたしました。そうすると、四十九年の十二月の二十四日に、国土庁の事務次官の「国土利用計画法の施行について」という通達がなされております。下命通達だと出しております。これは私も読み返しますと、当時のこの立法に至るまでの間の各党の
合意が全部ここに出ています。私はこれに異論があったのでありますけれども、客観的に見ますと、
合意がここに盛り込まれておると思います。すなわち「目的」「基本理念」につきましては、「法は、第二条に国土利用の基本理念に関する規定を設け、この基本理念に基づいて総合的かつ長期的な国土利用
政策の展開を目指しているものである。従って、この基本理念は、およそ、国、地方公共団体を通じて国土利用に関するあらゆる計画の作成に当たって尊重されなければならないことはもとより、官・民、法人・個人の別なくすべての
国民の
土地に関する行動の指針となるべきものであって、
国民のための限られた資源である
土地について、公共の福祉優先の思想の定着を図ろうとしているものである。」「
国民のための限られた資源である
土地について、公共の福祉優先の思想の定着を図ろうとしているものである。」したがって、「国土利用計画」というものは、「基本理念に即して、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、長期にわたって安定した
均衡ある国土の利用を確保することを目的として策定されるものであり、国土の利用に関する行政上の指針となるものである。」きっちりと書かれているのです。当時の国会の大多数の政党の大体の客観的に
合意したことが忠実にここに書かれています。
それに基づいて他の公法、私法というものがその後直されたかといいますと、直されていない。甚だ残念に思う。
土地というものは
国民共有の資産であり財産である、したがって、これを利用する際には、常に公共福祉優先の思想というものを先に立てて
土地利用というものを図らなければならないということが、あの国土利用計画法の
合意であります。
しかし、その後の考え方、
政府のやったことはどうだ。
土地は単なる資産である、商品であるという考え方に貫かれておったのではございませんか。ここに今日の
土地、
地価混迷の原因があると思うのでございますが、国土庁の
長官、いかがです。