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1988-02-22 第112回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十二日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    池田 行彦君       石渡 照久君    稲村 利幸君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    片岡 清一君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    佐藤 文生君       志賀  節君    杉山 憲夫君       砂田 重民君    田中 龍夫君       玉沢徳一郎君    中村正三郎君       西岡 武夫君    林  大幹君       林  義郎君    原田  憲君       細田 吉藏君    松田 九郎君      三ツ林弥太郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    渡部 恒三君       井上 一成君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    小林 恒人君       辻  一彦君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       渡部 一郎君    田中 慶秋君       楢崎弥之助君    田中美智子君       中路 雅弘君    中島 武敏君       野間 友一君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁長官官房         会計課長    八木 俊道君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君         青少年対策本部         次長      倉地 克次君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         国土庁防災局長 三木 克彦君         法務省民事局長 藤井 正雄君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省銀行局保         険部長     宮本 英利君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 國分 正明君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   甕   滋君         林野庁長官   松田  堯君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 植松  敏君         運輸大臣官房会         計課長     黒野 匡彦君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         郵政省簡易保険         局長      相良 兼助君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働省労政局長 白井晋太郎君         建設大臣官房総         務審議官事務代         理       中嶋 計廣君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省河川局長 萩原 兼脩君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房審         議官      湯浅 利夫君         自治省行政局長 木村  仁君         消防庁長官   矢野浩一郎君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    内田 秀雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 澄田  智君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     松田 九郎君   倉成  正君     片岡 清一君   後藤田正晴君     杉山 憲夫君   左藤  恵君     石渡 照久君   浜田 幸一君     玉沢徳一郎君   藤波 孝生君     林  大幹君   細田 吉藏君     中村正三郎君   佐藤 敬治君     小林 恒人君   大久保直彦君     渡部 一郎君   岩佐 恵美君     野間 友一君   佐藤 祐弘君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     左藤  恵君   片岡 清一君     倉成  正君   杉山 憲夫君     後藤田正晴君   玉沢徳一郎君     浜田 幸一君   中村正三郎君     細田 吉藏君   松田 九郎君     愛野興一郎君   小林 恒人君     佐藤 敬治君   渡部 一郎君     大久保直彦君   野間 友一君     田中美智子君   矢島 恒夫君     中路 雅弘君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三乗を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻一彦君。
  3. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、農業問題とそれから原子力の問題を中心にして、なお若干日中問題について総理並びに各閣僚の意見をただしたいと思います。  まず第一に、総理にお伺いいたしますが、日米首脳会談において農産物自由化問題を取り上げたレーガン大統領の要求をどのように受けとめたか、このことをお尋ねいたしたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先般の首脳会談におきましてレーガン大統領の方から、農業についても日本消費者が自由に選べるような、輸入障害を除去することが望ましいではないか、その例示といたしまして牛肉とかんきつ、こんな話があったことは事実でございます。  これに対して私の方からは、我が国世界最大農産物輸入国であることを述べますと同時に、我が国としても、もとより政治は、最終的にはみんなが消費者だから、そういうことを考えながら政治は進めていかなきゃならぬものであると思っておるということを大要申し述べまして、そして、今日置かれておりますいわゆる国際的ニーズとでも申しましょうか、国際環境等について自分自分なりとしての理解は持っておるが、また我が国農政そのものを取り巻く環境の厳しさという問題意識自分なりに持っておって、そもぞもの問題につきましては主体的な立場から対応していくべきものであるという大筋お話をいたしまして、私自身も、そうした国際的環境の中にある位置づけと同時に、農業の持つ特殊性というようなものを認識しながらこれからも対応していかなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
  5. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今の御答弁の中にも、総理会談を通して、我が国世界最大食糧輸入国である、こういう発言があったわけでありますが、これは裏を返しますと、世界主要国食糧自給率が最低の国であるということになりますが、これ以上自給率を下げられない、こういうことについて大統領に注意を強く喚起したかどうか。また、国会食糧自給力向上決議、あるいは農林水産委員会におきますところの決議がありますが、これらの国会決議の意思を十分首脳会談に反映したと言えるかどうか、この点をいま一度お尋ねしたい。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 両院における委員会決議がございますし、またその前、これは本会議決議も含めて、米のいわゆる主食としての位置づけ農産物のまさに基幹作物としての位置づけ、これに対しての対応策ということの決議があることは私自身十分に承知しておりますので、私とレーガン大統領との間で決議文の問題にまでは率直に言って触れておりませんが、そういうことが存在しておるという背景を踏まえて話し合いをしておりますし、また、各段階におきますところの日米会談、なかんずく農産物中心とする問題にはそういうことが絶えず言葉の上にも上っておる事項であるというふうに私は考えております。
  7. 辻一彦

    ○辻(一)委員 総理は、レーガン大統領との会談の中で大統領から牛肉やオレンジという例示があったというお話がありましたが、そういう会談の中で総理消費者立場に立って考えるということは結構であると思います、必要であると思いますが、日米首脳会談においてのやりとりの中で牛肉自由化に応じるかのごとき印象を与えたおそれはないか、念のためにお尋ねいたしたい。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 具体的には、何せいち早くテーブルに着くことが大事である、こういうことを申し述べました。したがって、テーブルにのっかるわけでございますが、アメリカ側自由化というものを前提に置いてテーブルにのっかりたいという希望があることは私も承知はいたしておりましたが、そういう自由化問題等について触れることなく、いずれにせよこれらの問題は両当事者が可能な限り早くテーブルに着くことが重要である、問題解決のかぎである、こういうようなやりとりでございました。全体の中でございますから、そう長時間要したというわけにはまいりませんでした。
  9. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一点総理にまずお尋ねしたいのですが、レーガン大統領ウルグアイ・ラウンド議論には総理同調を求めていますが、大統領はどういう意味同調を求めたのか、その中身は何を意味しておるか、あるいはどう受けとめておられるか、これをもう一度お尋ねしたい。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御案内のようにガットには古い歴史がございますが、例えば私流に理解するならば、ウエーバー条項などというものは日本がまさに入ったその年のことでございますから、かなりそれからの歴史的経過を見た場合にいろいろな議論があることも事実でございますので、したがって、ウルグアイ・ラウンドというのはまさにそうした今までの経過の中で、あるいはひずみとかそういうような問題意識でとらえられるような問題も含めて、ここで広範な意味において、国際自由貿易を歪曲するような障害を除去するための総合的な検討ということの必要性というものの認識の上に両者ともに立っておるではないか、こういう感じを受けております。
  11. 辻一彦

    ○辻(一)委員 以下、また具体的な論議の中でお尋ねをいたしたいと思います。  次には、ガット品目裁定一括受諾の件について少し尋ねたいと思います。  政府は、ガット理事会において十品目ガット違反とする裁定一括受諾を表明しました。これは地域農業地域農政経済に与える影響が非常に大きい、また自給力向上に関する国会決議あるいは二回にわたる衆議院農林水産委員会決議にももとるものであって、その点まことに遺憾にたえないと思います。しかし、既にガットの場で裁定一括受け入れたことでありますので、現実的には八品目自由化を約束したことであって、その対応は現実のものにならざるを得ないと思います。  そこで、後でいろいろ上原委員からも沖縄の話があると思いますが、例えば沖縄パイナップルを初めとする地域農業における影響をどう最小限に食いとめるかということが非常に大事だと思いますが、そういう用意が本当にあるのかどうか、大筋でひとつお尋ねをいたしたい。これは総理に改めて伺いたいと思います。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる八品目問題につきましては、これが今おっしゃった趣旨に至るように、すなわち最小限にその影響を食いとめながらしかも自立的な農家の育成という立場から、部内で早速、このいわば八品目受諾後の問題についての検討が行われておる段階であるというふうに私は承知しておりますが、私自身が感じておることを仮にいろいろここで申し述べたといたしましても必ずしも、必ずしもじゃなく本当のところ専門家でもございませんので誤解を生むことがあってはならないと思いますが、大筋今辻さんのおっしゃった筋に沿って鋭意検討し、そしてまさに政府全体の責任で対応しなければならぬ課題だという問題意識は整理しております。
  13. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今度農相お尋ねしますが、農相地域農政禍根を残さないということをしばしば発言されている。ガット裁定を受け入れることが、もう既に地域農政最大禍根を残したことになると思いますが、農相の言う禍根を残さないということはどういうことを意味しているか、お尋ねしたい。
  14. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  私が禍根を残さないようにと申し上げておるのは、それぞれの地域におきまして農政が果たす役割、農畜産物生産体制、いろいろな形があるわけでございます。実態があるわけでございます。そこに今まで生活をし、そして努力をしてきた方々が路頭に迷うようなことがあってはならぬ、そこで生きてこられた方が生きていけるようにしなければならない。もちろん今御指摘のように、ガット品目の受け入れというのは既に混乱を起こさせているのではないかというような御質問でございますけれども、これは先刻来申し上げておるように苦渋に満ちたぎりぎりの選択でございまして、お互いがそのことを理解しながらも、さらに具体的な手だてはどのようにして進むべきであろうかということを、プロジェクトチームも設置をいたしまして真剣に考えておるところでございます。
  15. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この八品目自由化の時期とか国境措置あるいは国内措置等具体策はいつごろ策定する用意なのか、予定なのか、これをちょっとお尋ねしたい。
  16. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今申し上げましたように、プロジェクトチームでせっかく実務的、専門的に検討中でございます。ただ延ばせばいいものではないということは、私自身当然のことと思っております。  しかし、禍根を残してはならないわけでございますから、慎重な対応が必要でございます。二月二日のガット理事会での結果に基づいて直ちに自由化が進むがごときふうに考えておられる方も多いのでございまして、個別にいろいろな地域方々から私も質問を受けておるわけでございます。今また辻先生からも質問を受けて率直に申し上げたいのは、丁寧な取り運びをいたしたい、こういうことでございまして、今時期がどうのこうのということを答える状況にはございません。地域農政禍根を残さないように考えながら進めておるということでございますので、しばらく時間をかしていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  17. 辻一彦

    ○辻(一)委員 専門プロジェクト検討しているのですから、相当な時間がかかるということもわかります。しかし、今この全国の八品目の対象になる農家の皆さんは、非常な怒りとそれからまた不安とを持ってこの国会論議を恐らく見守っておる、一日も早く具体的な対策を打ち出してほしい、こういう願望があると思うのですね。それで国会は、農相は、前のこの場で答弁がありましたが、具体策として新しい金融措置を考えておる、こういう御答弁がここにありましたが、新しい金融措置ということは頭の中でどういうことを構想しているのか、この点をお尋ねしたい。
  18. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 頭の中のことを全部申し上げる状況にはございません。今検討をしておるわけでございますから。たしか先週でございましたか公明党水谷委員の御質問に答えたことを引用されておるのではないかと思いますけれども、同委員からはしばしば金融措置について個別に、またこの場でもお尋ねがございましたので、幅広く検討していく中で金融措置というものも当然考えなければならない、しかし、その金融措置一括やるべきものがあるのであろうか、あるいは個別にいろいろ具体的な金融施策をとるべきことがあるのであろうか、そういうようなことを今考えておるところでございます。
  19. 辻一彦

    ○辻(一)委員 不況産業のときには、例えば構造的な不況産業、この場合に城下町法と言われますか、かなり一括した不況対策がとられたわけですが、今度の八品目もある意味においては地域的に、沖縄パイナップルであるとか、あるいはトマトは長野、千葉というように幾つか地域的に集中しているわけですが、そういう意味では一つの城下町的な発想も考え得ると思いますが、こういうかなり集中した対策をとる用意があるのかどうか、この点いかがですか。
  20. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一括としてということを言われましても、不況産業のときのようなやり方が適当なのであるか、地域的なそういう割り切り方が必要なのであるか、業態別の、我が方から言わせれば品目別の中にあってまた地域別のことも考えながら金融的な措置というのは多角的に考えなければならぬと思っておりますので、そう簡単な問題ではない、こういうことで時間もかかる、こう申し上げておるわけでございます。
  21. 辻一彦

    ○辻(一)委員 蔵相に一つお尋ねしたいのですが、過日の一部の報道によると、農産物自由化対策の財政措置は時限方式で考えなくてはならない、こういうことが報ぜられておりますが、その考え方はどういうことかお尋ねしたい。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのような報道がございましたが、これは私どもの考え方を正確に表現したものではございませんで、私どもの考え方は、基本的には農水大臣が十分いろいろお考えになられて御相談がその末にあろうと思いますので、最善の努力を尽くして農水大臣の御要望に沿わなければならない、こういう基本原則を持っております以外は、御相談を待ちまして決めていきたいと思っております。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)委員 当然農相から、農林省から相談があると思いますが、その際にやはり八品目は短い、何年かでいろいろな転換をしたりやっていける時限的なところもあるでしょうし、しかしまた半永久的になかなか変えていけないという状況もある。沖縄パイナップル等は私も何回か見ましたが、平場は基地に提供している、山の上のやせ土、そして酸性土壌のところに台風に強い、乾燥に強いとなるともうパイナップルしかない。そういう状況の中でなかなか構造的にほかに転換するとかということも容易でない。だから八つの中にもいろいろさまざまに状況が違うので、これらをひとつ十分頭に入れて農相から相談があったときには応じていただきたい。もう一度お尋ねしたい。
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのような事情も承っております。したがいまして、総体的には農水大臣の御所管の問題でございますが、地域の、例えば沖縄開発庁長官のお考えもおありでございましょうし、そういうことも総合的に閣内で検討してまいるべきことだと思っております。
  25. 辻一彦

    ○辻(一)委員 牛肉とオレンジに触れたいのでありますが、三月でこの協定が切れますが、アメリカの方は、輸入枠を三月末までで終わりだ、次は自由化の時期を明らかにしなければ交渉のテーブルにも着かない、こう言っておるのでありますが、四年前にそういうような印象を与えたような、あるいは約束した事実があるのかどうか、簡単で結構でありますからお伺いしたい。
  26. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そういう印象を与えているようなことはございません。
  27. 辻一彦

    ○辻(一)委員 四年前の交渉においてもそういう印象を与えたこともない、約束もしていない、また日米首脳会談において竹下総理レーガン大統領にそういう言質を何ら与えていない。にもかかわらずアメリカの態度は非常に高圧的な態度に出ている。こういうことは私たちとしては非常に遺憾に思うところであります。特に牛肉については、アメリカは自国の輸入が一定量を超えれば、これは国内法である食肉輸入法によって輸入制限をやっている。もちろん輸入制限といいましても、ガットに抵触しますから、自主的な自主規制を押しつけているというのが実態である。こういうことを棚上げにしておいて自由化を高圧的に要求してくる、これは筋が通らないんじゃないか。この点をどう考えるか。アメリカは交渉の場に何としても着かすべきであるし、いかにして交渉の場に引き出すかということについての見解をひとつお尋ねしたい。
  28. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 アメリカだけではなくてオーストラリアからも担当大臣がおいでになって強い要請があったり、いろいろな国々のいろいろな方々がいろいろなことを言われております。そういう中にあって我が国牛肉の需要と供給、こういうことを相手方も知っておるわけでございまして、そのことだけをポイントに置いておるのかどうかわかりませんけれども、相当積極的な、強圧的なというふうには私は感じておりません。友好国同士でありますから、自由諸国の中にあってそういう敵だ味方だという議論はできるだけ出ないようにしていきたいという冷静な対応を進めておるところでございますが、そういう意味におきまして、一日も早くテーブルに着いていただきたいという竹下総理がおっしゃいますような考え方に基づいて、この間も眞木経済局長を派遣いたしたところでございます。しかし、なかなかまだまだテーブルに着こうというようなことにはなりにくい状況にございますが、しかしひとつ一生懸命話し合いにつくようにさらに努力を続けておるということでございます。  なお、足らざるところ、もし実務的に答える必要があれば、畜産局長から答えさせます。
  29. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点から事務局の答弁はまた時間があれば伺うことにします。  いずれにしても牛肉は米と並ぶ基幹食糧である、こういう認識を我々は持たなくてはならない。そういう点で、ウルグアイ・ラウンドで今国際的な農業貿易の大きな枠組みあるいは国際ルールがこれらを含めて論議をされている。だから、そのルールが確立するまでこの牛肉については二国間で安易な妥協をすべきでない、このように思いますが、アメリカのそういう態度に対して屈せずにぜひひとつ頑張ってもらいたい、このように思います。  そこで、総理日米首脳会談直後の日本人記者会見において牛肉の流通問題に言及されておる。今また畜産振興事業団のあり方が問題になっている。こういう中でどういうことを頭の中に置いておられたのか、おられるのか、それをひとつお尋ねしたい。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 流通問題というのは、別にこれは日米会談そのものではございませんですが、従来いろいろなことが言われておりますけれども、今の流通のいわば中間マージンとかそういうものを比較してみますと、別に多くに過ぎるとかいうものではないな、私が見ておる数字だけを見てみますと。したがって、いろいろな議論があるから、どのようなことをすればいいだろうかなということは全く念頭にないわけじゃございませんけれども、今の流通機構における数字で見るマージンとかそういうことは余り不自然なものがないような感じを実は持っております。
  31. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、米の問題に少し入りたいと思いますが、アメリカが十品目にあれだけ強硬であった背景には、もちろんこの自由貿易の原則の問題があったと思いますが、それは牛肉自由化への布石であり、最終的には米の自由化に的を絞っておるのではないか、こういうような感じがいたします。  私が二年半前、六十年の九月に訪米してUSTRを訪ねたときに、彼らはこう言っている。日本は狭い国土で食糧生産をしている、米まで自由化を求めるのは無理だろう、こういう認識を二年半前には示しておる。ところが、去年の九月に再びUSTRを訪ねますと、米は日本の市場閉鎖のシンボルである、こういう発言で、米に対する認識というものが非常に大きく変わっているということを実感をした。アメリカの米自由化の要求は私は今後強くなると思うが、それについてどういうように考えていらっしゃるか、お尋ねしたい。
  32. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 アメリカが米にターゲットを絞って、そしてああだこうだととことんまで言ってくる状況にあるかどうか。アメリカ全体の国内世論というものを推察するに、決してそうではないと私は認識をいたしております。わかっていただけるはずだ、今辻委員から仰せのとおり、わかっておられる方も相当おられる、こういう認識をいたしております。  決して都合のいいところだけ新聞、雑誌等を引用するというつもりで言うわけではございませんけれども、文芸春秋等に出ておりました、アメリカで実際米、稲作経営をやっておる方々の意見なども最近大きな反響を呼んでおりますし、また国内につきましては、国内世論というものが、総理府調査の結果も実は発表になっておるところでございまして、私どもの考えておることが決して間違ってはいないなということを確信を持たしていただいておるわけでございます。
  33. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そうあってほしいと私は念願をしておりますが、またこの見方に甘さもある感じがします。米を自由化しないという日本の強い意思があっても、アメリカは米の自由化を要求する考えは変わらないのじゃないか。十品目がそうである。これは絶対自由化しないといって頑張ってきましたが、やはり押し切られてきた。牛肉もまた今そういう論議になろうとしている。国家貿易品目である乳製品の輸入制限をガット違反とした裁定に、我が国はもちろんこれは承服していません。明確に自由化をしないと言っておりますが、裁定はそういう裁定が出ておる。アメリカはこれに力を得て、さらに米への自由化要求を加速してくる懸念があるのではないか、このように私は感じます。  例えば、私も去年の九月にアメリカのカリフォルニアとアーカンソー州二州を半月ほど米をよく見てきました。米作農協の団体代表とも随分と率直な意見交換あるいはUSTRや米農務省とも交換をしましたが、当時はアメリカは、今インドやタイが干ばつで不作である、そこでは輸出が非常に進んで、国内にあった三百万トンの在庫品はほとんどなくなっている、こういう状況にありました。このためにアメリカは減反三五%を当時二〇ないし二五%に緩和するであろうと言われておった。一昨日、私は農林省を通してアメリカの大使館に確認をしたんですが、今年度はアメリカの減反は三五%から二五%に一〇%緩和をしている。増反をするということでありますが、これをやれば、インドやタイの干ばつが毎年続くならばこれは別でありますが、これが平年作に返れば必ず米が余ってくる。そのときの戦略目標は一体どこになるかといえば、これはやはり日本にターゲットを置くことは言うまでもない。時期的にいっても、ちょうどこの十品目、次に牛肉、そして時間を置いて米という向こうの戦略が私は感じられるのでないか。そういう点で、向こうも中長期的な戦略で市場開放を米に対して要求してくる、このように見なくてはならないのじゃないか。こういう点から我が国も、米の自由化は絶対やらないと言っているだけではなかなか済まされない、中長期の戦略的な対応が必要であると思うが、この点をどう考えているのかお伺いしたい。
  34. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ただ自由化をしない、あるいは国会での御決議を盾にして、それだけでは甘いのではないか、こういうことでございます。  決してそれだけで考えておるわけではございません。アメリカに対して日本の米というものがいかなる位置にあるかということについては重々理解をしてもらわなければならない。しかし、内外格差という点からはいろいろ言われておることもまた事実でございますから、国内における、まず我が家をどう改善をしていくかということについて、米流通研究会の成果も踏まえながら、食管制度の運用の見直しもございますでしょう。それから流通の改善、そういうこともあります。そういうようなことを考えながら、また生産者団体にも減反をお願いして、そして必要な措置をとっておるわけでございますから、しかし、第一次産業であっておてんとうさま次第のところもございますので、昨年のような緊急対策を御理解をいただくような状況もございます。そういうようなきめ細かないろいろな検討の中に日本の米というものがあるということはアメリカにも十分わかっていただけるもの、我が方も相当努力をしている、アメリカからもまたわかってもらう、自由化はできない、こういうことでございます。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ガットあるいはアメリカに対して国際的に、まず第一に米は国家貿易品目であって輸入制限をなし得るというこの主張を強硬に主張して貫くということが大事であると思います。もう一つは、日本のように食糧自給率の低い国では、国内での食糧の安定確保のために一定量の輸入制限をなし得るという国際ルールを確立するということが大事でないか。  サミット参加国の食糧自給率、いわゆる穀物ベースがどういう状況にあるか、ちょっと資料を見ていただきたい。その資料をごらんいただけるとわかりますが、一九六〇年、昭和三十五年には、イギリスの自給率は五三%。以下ありますが、我が国は八二%ある。今、その一九八二年、それを見ますと、イギリスは一一一、倍。小さいイタリアでも八九、ドイツが九五、イギリス一一一、それからフランスが一七九、そしてアメリカ一八三、カナダ二二二、我が国はこの三年間、一九八四年、八五年、八六年で三一%に転落をしている。  この数字をもとにして総理お尋ねしたいのですけれども、我が国世界最大食糧輸入国であるということは、裏返しをすれば世界主要国自給率が最も低いということになります。EC、欧州諸国が過去の苦い体験から高い自給率を持つ中で、一億二千万の人口を擁し、島国である我が国が、主要国世界最低の三一%で果たして安心しておることができるのかどうか。自給率は少なくも六〇%を目指すべきでありますが、当面は食糧の、穀物の三分の一ぐらいはどうあっても自国で生産すべきでないか。私は、食糧の安全保障と言うと古いように言われますが、新しい意味食糧の安全保障という観点から三分の一を割ってはならないと思いますが、総理の御見解をお尋ねしたい。
  36. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 食糧の安全保障という言葉は私は遠慮する言葉じゃないと前々から思っております。しかしながら私自身が、自給率が定量的に何ぼがいいかということになりますと、正確にお答えする自信がそれにはございませんので、その問題は専門の農水省からお答えした方が適切だと思いますけれども、あなたのおっしゃっている論理の流れは私も大体同じことを考えているのじゃないか、こういうふうに思っております。
  37. 辻一彦

    ○辻(一)委員 農相にはまたお尋ねしますから。  総理に、私は、やはり食糧というのは一国の国民の命の糧なんですから、この一覧表で見るように、全部サミット参加国の自給率は一〇〇%以上、イタリアが八九ですが、こういう中で我が国が三一%にも下がっている。しかも、去年私はパリのOECDに行ってビアット農業局長とこの問題でも論議をしましたが、彼も、明らかに日本の穀物自給率は毎年徐々であるが下がっている、世界で、主要国で最低の自給率であるということは認めておったのですね。やはり国民の基本的な食糧確保という点になれば、三分の一をさらに割っていく、こういうような方向には歯どめをかけなくてはならないと思いますが、あえて総理に一国の政治と国民の命を預かるという立場からこの点についての御見解を重ねてお尋ねしたい。
  38. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かにこの資料ナンバー1を見せていただいて、ずっと見ておりまして、三分の一とおっしゃったその三分の一、すなわち三三%というその辺の、かなりの長い間その辺にあるなということを私も感じましたので、一つの目標値としてあるべきものかな。ただ、必ずしも学問的に申しておるわけではございませんが、おっしゃる議論の流れというものは私も同感できることだと思っております。
  39. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その資料の二枚目をごらんいただきたいのですが、戦後我が国の小麦がどういう状況をたどったかということがありますが、最高四九%小麦を自給しておった。ところが下がって、四%に落ちてしまった。最近は転作をやって辛うじて一二%に回復をしておりますが、小麦は外国に依存をして物すごい自給率の低下をしている。私は、米の市場開放を仮に許したということになれば小麦と同じような傾向をたどるのではないか。そのときには恐らく我が国自給率は二〇%台に転落しかねない。かつてイギリスは輸出中心の政策をとって農産物を海外にほとんど求めて、そのために自給率が非常に下がったことがありますが、その結果、農業と農村の衰微とそしてイギリスの民族の活力も失った、こう言われた時期がありますが、我が国がそういうわだちを踏んでは絶対にならないと思います。そういう意味総理からひとつ、米の自由化は絶対に拒否をする、こういう決意をいま一度お伺いしたい。
  40. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 米の問題については、衆参両院、若干後ろの方の言葉の違いはございますけれども、ほぼ同じ趣旨の決議がきちんとされておりますので、その趣旨をやはり遵守するというのが私は私どもの持つべき当然のことだと思っております。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一点、これは通産大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、私は北陸で繊維の産地ですが、アメリカは繊維それから鉄鋼、自動車、工作機械、こういうものの輸入量があるシェアを超えた場合に、これは何らかの形で自主規制を求めてきている。これは繊維、鉄鋼、自動車、工作機械等がどれぐらいのシェアになったときに自主規制を求めているか、数字だけで結構ですから簡単にお尋ねしたい。
  42. 田村元

    ○田村国務大臣 これはケース・バイ・ケースでございますから一概に申し上げることもできないのでありますけれども、大体どの程度でやられる、やられると言うと言葉が悪いかもしれぬが、どの程度で求めてきたかということは資料がございますから、政府委員から答弁いたさせます。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 簡潔に。
  44. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 ただいま大臣が申しましたように、アメリカが輸出規制を求める場合、一概に一つの基準があるとはいえない、ケース・バイ・ケースだろうと思います。  繊維につきましては、八六年時点で一八・一%の輸入比率でございました。しかし、当時非常に問題になっておりました衣料用繊維に限定して申しますと四八%強でございました。鉄につきまして、これは自主規制を始めました八四年は二六・五%でございました。内訳で申しますと、鋼管が五七・一、形鋼が三二・一%……(辻(一)委員「簡潔でいいです」と呼ぶ)自動車が二七・三、工作機械の中でNC旋盤七九、マシニングセンター八二、かなり区々でございます。
  45. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ケース・バイ・ケースであるということは十分わかりますが、総理にもう一度ひとつお尋ねしたいのですが、アメリカでも、工業製品においても輸入量が一定のシェアを超えれば何らかの形で規制、自主規制を求めている、自国の産業と国益を守っている。これは世界各国全部共通であると思いますが、我が国は、先ほど明らかにしたように、食糧の輸入が七〇%に達している。言うならば我が国自給率は三〇%にも下がっている。こういう状況の中で国内生産を確保するために輸入穀物総量の規制を行うというのは独立国家として当然の権利ではないかと私は思うのですが、その点お尋ねしたいと思います。
  46. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 基本的におっしゃるとおりでございますから、ウルグアイ・ラウンドに当たっての我が方の、いわば農水省の提案の中身もそういう線に沿っておるというふうに私は理解しております。
  47. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今言われたそのウルグアイ・ラウンドにおけるガット農業部会に我が国は、農林省は提案をやっている。これも食糧自給率の低い国の権利を認めろと、こういう国際ルールをつくろうというわけですが、これは今世界の各国からなかなか厳しい批判に実際はさらされておりますが、私はこの論理をやはり強く主張して国際ルールの確立を図らないと、これはガットの現行規定からすると米の自由化を迫られる懸念が十分にあるのでないか、そういう点で国民の基本食糧を確保する、こういう点から今総理の、ウルグアイ・ラウンドにおける強力な我が国の主張を行うべしと思いますが、これについて決意のほどをもう一度ひとつお尋ねしたい。
  48. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私はそのとおりだと思っております。
  49. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは一遍外相にもひとつお尋ねします。
  50. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ウルグアイ・ラウンド我が国農業提案をいたしました。今おっしゃった点がやはり一番私たちの主張しなければならない点であると思います。同時にまた、輸出に対しまして補助金をつけておる、こういう国もありますから、これまた不公平な話だということも主張したい、かように思っております。
  51. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、担当大臣であります農相にも一言決意をお尋ねしたい。
  52. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 総理が、また外務大臣が申し述べられました決意と同じ決意でございます。内閣全体の問題である、こういう考え方で担当の役所といたしまして全力を挙げてまいりたい、こう思っております。
  53. 辻一彦

    ○辻(一)委員 去年OECDを訪ねたときに、日本代表部の非常に苦慮していらっしゃる農林関係の何人かに苦労話をいろいろ伺ってみますと、非常に御苦労されているので敬意を表したのですが、そのいろんな話を総合してみると、国際舞台の場で当初は日本の主張に共鳴している国々が相当あるが、アメリカの声が大きくなると、日本にいつまでもつき合っていても何もメリットがない、これだけの黒字大国では農産物ぐらいは買うべきだということになって、日本を支持した声がだんだんと消えてしまう、そうして押しつけられておるのが実態だ、こういうように私も感じたのですが、結局日本農業をどれぐらいの国内の位置づけをして守っていくかということになりますが、その場合に輸出政策、あるいは言うならばバランスある貿易政策がないと、結局そのしわ寄せは農業に来る可能性が非常に強いと思いますが、そういう意味で外需中心から内需拡大への方向は農業という点からも非常に大事だと思いますが、総理、いかがでしょう。
  54. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 当然資源の全くと言っていいほどない国でございますので、それだけのものは国民生活のためにも輸入しなきゃならぬ。で、輸入に値するものの引き当てとしての輸出というものが、まあいわば貿易立国というものとして成長してきた素地はあるいはそこにあったかもしらぬなというふうに私も思っておりますが、それが特殊な地理的条件にある農業と、一方、いわば努力、研さん、ノーハウ、そういうものの蓄積によってうんと製品の価値が違ってくる工業との差がだんだん出てまいりましたのが今の貿易インバランス、こういうことであろうと思っております。  したがって、これからは可能な限り経済成長の基礎を内需振興のために置くべきだ、こういうことで、かつての輸出振興というようなことがうたわれた時代とはまさにさま変わりして内需振興が内外ともから要請される今日になった、我々もそれに対応していくことが、間接的に見た場合、今おっしゃった農業問題に対する風当たりとでも申しますか、そうしたものが結果として和らいでくるということにもなり得るだろうというふうには思っております。
  55. 辻一彦

    ○辻(一)委員 日本農業を考えますと、外圧に適切な対処をするということが今非常に大事でありますが、もう一つは、国内的にはやはり消費者、国民のコンセンサスを得るということが非常に大事であると思います。そのためにこの農産物の内外の価格差を縮小するということが大事でありますが、米もコストダウンをやはりそういう意味では考えなくちゃならない。農家自身も努力をいただくと同時に、政策の面でも、輸出をする農機具、肥料、農薬が安くて、国内で買う農家のこれらの資材が非常に高いという問題がありますが、これをひとつ極力輸出価格に近づけて縮小する、値下げを図るということと、もう一つは、土地改良や基盤整備というものはどうしてもコストダウンの非常に大事な基本であると思いますが、これらに力を入れる必要があると思いますが、これについてひとつ農相の見解をお伺いしたい。
  56. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 昭和五十七年でございましたか、農協中央会におきましては五カ年間、米のコストダウン二〇%の計画を発表した経緯があったかと思います。それがどの程度の実効を上げたのか、またあの時代と今日の時代にどれだけの対応の仕方の変化があろうか、こういうようなことで生産者団体がいろいろまた汗を流して考えようという機運があることを私も承知をいたしております。  一方、行政といたしましても、当然のことながら、今御指摘のありましたようなことについて、稲作の再生産のための資機材、資材、機材、そういうことについて考えていかなければいけませんし、また業界に指導もしていかなければなりませんし、同時に土地改良、いわば基盤整備、このことにつきましては、六十三年度予算におきましても、政府原案におきましてもまずまずの成果を盛ることができた。まだ通っていないわけでございますから、本当の成果はこれからでございますけれども、予算原案に盛ることのできたそれを見ますと、まずまずの成果を上げ得たのではないか、さらにその方向で全力を尽くしてまいりたい、こう思っております。
  57. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、今非常に山陰で問題になっている宍道湖・中海の干拓事業について総理農相に所見をひとつお尋ねしたい。  この中海・宍道湖の干拓事業は昭和三十八年着手以来二十数年を経過して相当な進捗を見ていますが、この間、農業をめぐる情勢もまた非常に大きく変化をしております。さらに現在この淡水化について、ヤマトシジミを初め生態系の破壊あるいは全国有数の汽水湖の水質保全の立場から大きな住民運動、反対運動が展開をされておる。県の景観条例の制定要求には関係十市町村の住民の過半数が賛成をしている。また、松江商工会議所の会頭を初め、広範な層が淡水化に反対を表明している。ここ数日もいろいろ住民の動きがあるようでありますが、こういう大きな変化の中で、中海干拓事業の持つ今日的な意義は一体何なのかということを簡潔にまず担当農相からひとつお尋ねしたい。
  58. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 お答えをいたします。  干拓地の造成、宍道湖等の淡水化による干拓地及び周辺耕地に対するかんがい用水の安定的な確保を目的として進めてきたことは御承知のとおりでございます。特に、経営規模が小さく平たんな農用地に乏しいこの地域において、干拓地を活用して高生産農業を可能とする、あるいはまた周辺農地にかんがい用水を安定的に供給するという意義も持っておるわけでございます。  しかし、今おっしゃるように、非常に難しい局面を迎えておるわけでございまして、現地の県側の集約した意見を昨年来求めておるところでございます。近いうちにそのことが我が省にはね返ってくるということを期待しておるわけでございますが、現在はそれを待っておるという状況でございます。
  59. 辻一彦

    ○辻(一)委員 総理にひとつお尋ねしたいのですが、ここ二、三日の新聞を見ますと、総理の地元の島根あるいは鳥取におきまして、宍道湖・中海の水質保全という点で大きな住民運動が盛り上がっております。  こういう中で県や市町村当局、行政当局もその扱いに大変苦慮しておるように思われますが、こういう点で、三十年の経過があったということは事実でありますが、国として大幅な見直し、軌道修正をすべき時期に来ておるのではないか、このように思いますが、これについてどうか。特に総理は松江中学の出身でありまして、恐らくこの宍道湖で泳いだ体験もあるのではないか。本問題の対応いかんによっては総理の「ふるさと創生論」の真価が初めて問われることになるのではないか、こう思いますが、「ふるさと創生論」と絡んで総理の所見をひとつお尋ねしたい。
  60. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに中海干拓事業というのは、これは私の地元でございますので、出身地とはちょっと離れておりますが、事情はよく承知しております。  振り返ってみますと、昭和二十年代の、お互い、辻さんもそうですが、青年運動をしておるときに、中海を干拓して、宍道湖を真水にして、かんがい用水に充てて食糧の増産を図っていこうというような計画が持ち上がったときには、今表現すると少しオーバーになりますが、まさに昭和の国引きである、こう言って、県民寄ってこれを推進しようという時代が存在しておりました。その後、私も県議会に議席を置いておりましたが、確かに県民全体のニーズというものはそういう方向に、昭和の国引き、こういうような表現まで使っておったのでございますから、考えてみれば、大変に変わってきておるという現実も本当に無視できないなというふうに思っております。  したがって、この問題につきまして今農水相からお話がありますように、ひっきょうは島根、鳥取両県がまずどのように対応していくかということを、農林水産当局もいろんな提示をなされておりますのに対して、申し出ていくところから問題が進んでいくのじゃないかと思いますだけに、私自身が私見をとやかく申し上げる以上に、県当局自体なり県議会なり、そういうところで今汗をかいていらっしゃる段階ではないかな、かなり詰まった段階ではないかなというふうに私は見ておるところでございます。
  61. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「ふるさと創生論」等もひとつ踏まえて慎重に検討してもらうように特に要望しておきます。  日中問題について若干お尋ねしたいと思います。  この日中関係は全般的に見て極めてよい関係にありますが、光華寮問題等でのどに刺さったとげがあります。私は昨年の二月と十二月に訪中をしたときに、長い友人である呉学謙外相とも率直な意見交換をいたしましたが、これらの問題について竹下新内閣に対する強い期待があるように感じましたが、総理としてはどういうようにお考えになっていらっしゃるか、まずお尋ねしたい。
  62. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 中国問題に対する認識につきましては、今特にお名指しのありました呉学謙さんが青年団長で、辻さんが青年団長で、私が青年団長であったのはちょうど三十二年前ぐらいでございましょうか、当時まだ青年団としての交流なんというのはほんのわずかなものでございましたが、そのとき日本へ訪れた団長が今の呉学謙さんであったことは、私どもにとって長い長いそういう友好関係が続いておるということは、自分でもいいことだなと実は思っております。  したがって、私自身もまだ幹事長の時代でございましたが、呉学謙さんといろいろ意見交換等もいたしておりますが、やはりこれだけいい傾向が全体的に進んでおるときに、この問題につきましては、中国側の主張は政府としても十分認識をしておって、日中関係への影響との観点から本問題をまず重視しておるということが一つ言えると思うわけであります。  しかし、司法の独立が確立されておる我が国におきまして、行政府の介入する、いわゆる三権の問題というようなものも我々としてはちゃんとまた踏まえていなければならぬ。しかし、外交関係の処理を担当するのは政府でございますから、良好な日中関係全体に悪影響を及ぼすようなことがあってはならないと考えておりますので、これからはやはり相互が理解する双方の努力というものが必要ではないだろうかなと思っております。やはり基本的には日中共同声明、日中平和友好条約に示されておりますいわゆる一つの中国、こういう立場を堅持してまいりますので、今後ともこの立場は変わらない。が、三権の問題、一方の裁判問題というのは現実に今存在しておるというところで、やはり相互が意見交換をいろいろする中に相互理解と相互努力というものがこれから一番大事なことではないかなというふうに思っておるところでございます。
  63. 辻一彦

    ○辻(一)委員 中国は、西側のアメリカと並んで、我が国にとってはアジアの最も重要な国であると思いますが、既に総理はASEANの会合に行かれ、アメリカとの首脳会談を重ね、そして近く韓国を訪ねられる。こういう状況の中で、隣の中国を一日も早く訪ねて日中の率直な首脳の会談を行うということが非常に必要ではないか、大事ではないかと思います。そういう意味で、報道関係ではいろいろとその時期が取りざたされておりますが、総理の訪中は、いつ訪ねるつもりであるかということ。  それから、訪中に当たってどういう問題が、例えば第三次の円借款の前倒し等々、中国には西暦二〇〇〇年に現在の農耕生産を四倍にしたいという野心的な計画がありますが、それで前倒しを求めているというようなことも報じられておりますが、こういう問題を念頭に置いて行かれるのかどうか、この点をお尋ねしたい。
  64. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、おっしゃいますように、日中平和友好条約締結十周年、こういうことでございますので、日にちにつきましては今のところ双方の都合のいいとき、こういう表現をいたしておりますが、外交チャネルでそれぞれかなり進んできておるのではないかという印象を私自身も持っておるところでございます。  そこで何を話し合うか、いろいろございます。いわばこの日中両国間の関係のみならずアジア全体あるいはそれこそグローバルな東西関係等々についての意見交換もすることになろうと思っておりますが、問題意識として、今御指摘なすった問題は私なりにそれぞれ心の中では整理をいたしておるつもりでございます。  第三次円借款の問題、これにつきましてはまだ具体的検討に入っていないというようなことでございますが、今おっしゃいました一九九〇年までの現行第二次円借款の円滑なる実施、大体他の国に比較すればという表現が適切であるかどうかは別としまして、全体的には大体消化率といいますか、よろしゅうございます。しかし、未消化になる問題も、なるほどそれぞれの事情があるものだななどということを私も考えながら、それらの組み合わせで、第三次はまだ具体的なプロジェクトについての検討というところまではいっていないにいたしましても、そういうものは十分念頭に置いて今勉強しておかなければならぬなと思って私なりに整理をしておるわけでございます。  それから、当然のこととして留学生交換の問題、いわゆる経済交流に関するいろいろな問題がございますが、それのみでなく青少年交流あるいは留学生交換、そうした問題についても一層進展を図るような気持ちで臨まなければいけないだろうというふうに考えております。
  65. 辻一彦

    ○辻(一)委員 先ほど総理もお触れになりましたが、私も昭和三十年代の地域の青年運動を通して中国の青年との縁がかなり深くありまして、長い日中青年交流の歴史がありますが、今北京に日本政府の協力のもとに中日青年友好センターが建設中であります。総理も中国との緑が青年時代から深いわけでありますので、ぜひこの中日青年友好センターが円滑に建設されるように特にひとつ配慮をお願いいたしたい、外相にもひとつ要望いたしたいと思います。  それから、今日中青年間で非常に大事なのは、やはりこの留学生の問題であろうと思います。私も昭和三十年に北京のアフリカ・アジアの青年学生サナトリウムにしばらく入っておりましたが、そのときに受けた影響というものが非常に大きいし、そのときにおったアジア・アフリカの三百人の青年は、今アジア・アフリカの各地で有力なメンバーになって活躍をしている。こういうのを考えると、日本に受け入れた留学生をどう十分に考えていくかということは非常に大事であると思います。  そういう意味総理にひとつ期待をしたいのでありますが、大平総理は日中友好病院を北京に建設、中曽根総理は北京に日中友好センターの建設に力を入れられた。竹下総理は、内政の竹下と言われるのでありますから、東京にアジアのあるいは中国の留学生を本格的に受け入れる一番問題のネックである宿舎、留学生会館等の大規模な建設をひとつやってこの留学生問題に臨んでほしい、こう思うのでありますが、これについて御見解があればひとつぜひお尋ねしたい。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 こちらの日中友好会館、あれが大変進んできておりまして、別館が六十年四月に、また研修生用の宿泊施設を含めた本館が一月二十二日に完成したところでございますので、この活用を図りたいというふうに思っております。  それで、この中国人留学生は東京だけではもちろんございませんので、したがって、いずれにせよこれらの留学生の皆さんが我が国で安んじて勉学にいそしめるような、そういうことについては十分配慮していかなければならぬ課題だというふうに思っております。
  67. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点からこれ以上は申し上げる時間がありませんが、ぜひひとつ長い時間の中でこの問題は考えてほしいと思います。  そこで、私はもう一つの課題であります原子力の安全性と防災対策についてお尋ねしたいと思います。  この写真は、去年六月、ソビエトのチェルノブイリを私たちが見に行ったときの写真でありますが、御存じのとおり、四号炉は空から五千トンのコンクリートを落として埋葬したという状況で、十二万六千の住民は今なお疎開したまま、その被害は、ソビエトの公式発表で一兆八千億と言われております。  それから、これは去年の九月に見に行きましたスリーマイルの原発二号炉ですが、九年前に大事故を起こして、原子炉の三五%が溶融して、それが三千度の熱の中で溶融して底にたまって、今八年目にしてようやく水の中を通して遠隔操作でその溶けた溶融物を引き出してアイダホの原子力研究所に運んでいるという状況。  言うならば、この二つの原子炉は、アメリカとソビエトが世界に誇った百万キロワット単位、しかも営業して二年以内という最新鋭の原子炉がこういう大きな事故を起こした、これはもう紛れもない事実であると思います。  私の福井県は、御存じのとおりでありますが、今十二の原発がありますし、建設中三を加えると十五、将来千二百万キロワットの原子力発電基地になる。チェルノブイリ、スリーマイル以来、住民の安全性と防災対策に対する関心が非常に高まっておりますが、そういうことを背景にして若干お尋ねをしたいと思います。  近年、原油価格が低落して、原発の発電コストは必ずしも安いとは言えなくなってきました。このために、コストダウンを図るために経済性が安全性に優先する風潮が生まれていると感じます。昭和四十年から五十年前半は、故障やトラブルがありますと常にアメリカへ行かなければ、調査をしなければなかなか対処できなかったと言われた我が国の原発も、最近に至って経験を積んで、軽水型原発についてはその稼働率、利用率は西独と肩を並べるほど高くなってきている。しかし、反面、日本は技術が高いから安全性は心配は要らないという技術過信の風潮も生まれていると思います。この二つの風潮は、機器の故障や人間のミスが重なると大事故の引き金になる心配が、可能性がある。日本の原発にはそういう点で安全性確保につき懸念すべき点が幾つかあると思います。  まず、グローバルな規模に及んでいる今日の原発大事故、原子力災害から原子力の安全性に対する考え方について、総理の所見をひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  68. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 安全確保なくして利用なし、これがやはり哲学として今日まで続いており、そのことは私どもがやはり底辺にきちんと持っておかなきゃならぬ考え方であるというふうに思っております。
  69. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう少しその考え方をお尋ねしたいのですが、それは、じゃ一応の論議を経た上に改めてお尋ねすることにしたいと思います。  最新の統計によりますと、原子力発電と最新の火力発電のコスト差は非常に縮まってまいりました。六十二年の発電の経費では、時間の点からもう私の方で簡単に申し上げますが、原子力は九円、それから最新鋭の火力発電は十円、ほかはいろいろありますが接近してきた。ところが、原子力には廃炉の経費や放射性の廃棄物の処理や保存という経費が入っていない。これを通産で試算すると、概算で電力費の約一〇%、だから九円ならば〇・九円になる。九・九円というのが今日原子力発電のコストとなれば、十円との差はもうほとんど同じと言っていいことになってくる。  こういう状況の中で、原子力発電は非常に安いのだという神話が崩れてくる。こうなりますと、電力企業はコストダウンをやるということが至上命令になっております。稼働率を上げるために運転日数を延長する、それから定期検査百日くらいを短縮をする、緊急停止をやるべき原子炉をなるべくとめないようにする、こういうことが当然企業としては考えられると私は思います。  具体的な例を引いて簡潔にお尋ねしたいのでありますが、例えば関電は、定期検査短縮のために高浜の一号炉、大飯の一号、二号、美浜の三号炉、四つに水室隔離ぶた取りつけ工事を行った。これはマスコミに大きく報道されておるので御存じだろうと思いますが、取りつけ金具の脱落が原因で、結局昨年末には四つの原子炉四百万キロワットが停止をしたという事実があります。スリーマイルのときにもこの大飯一号一つが原子炉が停止をしたということから見ると、四つ四百万キロワットの原子炉がいずれにしてもとまったということは大変大きな問題であると思いますが、これは関電にとっては大変だったと思いますが、損失はおよそ幾らくらいか、通産大臣、ちょっと一言だけ。
  70. 田村元

    ○田村国務大臣 おっしゃったとおりと言えばとおりなのですが、万全を期して対処していかなきゃならぬということで、特に十二月末に手動停止しました大飯二号それから美浜三号につきましては、何ら異常は認められませんでしたけれども、念には念を入れるということで、関電を指導して原子炉の運転を停止させたものでございます。  今後とも通産省としましては、先ほど総理も申しましたように、安全第一を旨として電気事業者を指導監督してまいりたいと考えております。
  71. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私が聞いているのは試算。簡単でいいですから。
  72. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 大変難しい試算でございますけれども、四つの原子炉がとまっておりました間の発電量につきまして、平均の燃料費と原子力によりました場合の燃料費の差を掛けますと大体の推定はできるかと思われます。現在数字をチェックいたしておりますが、おおむね百億円というような報道が一部にございましたけれども、多分大差ないのではないかと思っております。
  73. 辻一彦

    ○辻(一)委員 四つの原子炉が年末にとまることによって電力企業はおよそ百億円の損失を受けたということですね、細かい数字は別として概算ですが。この水室隔離ぶた取りつけ工事によって定期検査を三日か四日短縮できたわけですが、四つの原子炉がとまって、その損失は約百億円。このことを考えると、これは経済優先が裏目に出た一つの例でなかろうかという感じがします。このことから、原子炉の営業炉は定期検査を十分にやって安全を第一に慎重に運転した方がかえって経済的でないか、こういうふうに思いますが、通産大臣、ちょっとこれについての御意見を伺いたい。簡単で結構ですから。
  74. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 経済性と安全性のバランスにつきましては、一方に目を向け過ぎてはいけないという点は先生御指摘のとおりでございまして、そういう方向に沿いまして対応していかなければならないと思っております。
  75. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ところがこの四つの原子炉が結果としてとめた、あるいはとまったにもかかわらず、この金具取りつけ工事が国の何の法的な規制も受けない、電力企業の独自の判断で行われておったということに問題があるのでないか。こういう点で、通産は事前に相談を受けておったのかどうか、お尋ねしたい。
  76. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 事前に相談は受けておりました。
  77. 辻一彦

    ○辻(一)委員 事前に相談を受けたが法的に問題がない、こういう御見解をしばしば受けておりますが、福井県に十二も発電所があると、やはり安全に対する不安や防災の心配がありますから、県では特別に福井県原子力環境安全管理協議会というのを各団体、県、企業が入って構成している。ここで、国でチェックができないなら県の条例でチェックできるようにしよう、こういう意見が出ておるのですね。原子炉の安全にかかわる問題を国でチェックできないなら地方でやらざるを得ぬ、こういうことでは地方の不信は実際問題としては高まるばかり、原子力行政に対する信頼性は生まれてこないと私は思いますが、これだけの原子炉が停止した中で、現行法に問題ないというだけで済ませるのかどうか、後どう対処するか、この点をお尋ねしたい。
  78. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 法令に必ずしも定められておりません事項につきましても、実態につきまして可能な限り把握をすると同時に、関係自治体あるいは地域社会との間のコミュニケーションを密にしていくということが基本的な対応かと考えております。
  79. 辻一彦

    ○辻(一)委員 現地で通産の担当者は、今回の事故を参考に今後対処していく、こう述べているのですが、具体的にチェック体制の欠陥を是正して整備をすべきでないかと思いますが、これについてはいかがですか。
  80. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、各発電所に通産省の職員が駐在をいたしているわけでございまして、各地域、各発電所でいろいろな経験が積み重ねられてきているわけでございますので、今回の問題につきましても、先生の御指摘もあるわけでございますから、改めて経緯を十分レビューいたしまして今後の教訓を導き出していきたいと考えております。
  81. 辻一彦

    ○辻(一)委員 通産省には原子力の技術顧問会議等がありますが、そこで十分論議をして、具体的にチェック体制を整備をするという考えかどうか、もう一度お尋ねしたい。
  82. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま申し上げましたようなことで改めてレビューをしてみようというぐあいに思っているところでございますので、そのレビューの経過あるいはその内容に照らしまして、必要がある場合には御指摘のような手順をとることも考えられるかと思いますけれども、なお引き続き検討させていただければと思います。
  83. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは十分検討して、不備があれば、不備は事実あるわけですからぜひひとつ整備をしていただきたい。  六十一年八月二日に石川―福井送電線に落雷があって、変電所の遮断器の故障が重なって電気が送れなくなった。発電所は電気が送れなくなればとめなければならぬということになりますが、日本原子力発電敦賀一号機はタービンがとまって原子炉が緊急自動停止をした。これは後でまた起動しておりますが、とまったわけですね。ところが、近くの美浜一号、二号炉は原子炉をとめずに綱渡り的な七%という低速運転で切り抜けた。原子炉がとまると数千万円の損失となるというので、この運転員は会社に大きな貢献をしたということで表彰をされておる。これは安全性という観点からこういうことをどう考えるか、通産大臣、いかがですか。
  84. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のような経緯があったことは事実でございます。  先生御承知のとおり、敦賀一号機は沸騰水型でございまして、それから美浜一、二号機はいわゆるPWRでございます。敦賀一号の場合には、タービンバイパス容量が一五%ということで小さいために、負荷が急速に減りますと原子炉が自動停止するという設計になっておりまして、自動停止したわけでございます。  美浜の一、二号につきましては、タービンバイパスの容量とそれから大気逃がし弁というのがついておりまして、その両方の容量が合計をいたしますと四〇ないし五〇%というようなレベルでございまして、敦賀一号機より大きいということで、負荷の状況への対応力が大きいというわけで運転が継続できたわけでございます。  なお、表彰があったことは事実でございますけれども、そういう状況下におきまして日ごろのトレーニングの結果に即しまして冷静に行動が行われたということで表彰されたと承知いたしております。
  85. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それではもう一度お尋ねしますが、普通の運転員であれば、そういう非常に低速運転というのは問題のあるところなのですが、心配がないということですか。
  86. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 炉の設計によるわけでございますけれども、PWRの場合にはただいま申し上げましたような仕組みが働いておりますので、基本的には、先生御指摘のように負荷の変動に対しましてかなりの対応力を持っていると考えております。
  87. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その認識は非常に甘いと思います。私が入手した内部資料によればこう書いてある。「五〇%以上の負荷降下、いわゆる出力降下に対しては設備設計上、原子炉を停止なしに安定させるのは非常に難しいが、運転員の機敏な対応で二機とも緊急停止させることなく単独運転に成功した。」こう言っておるのですね。五〇%はおろかこれは九三%、急激な負荷降下、出力低下で落としている、七%で動かしたわけですから。だからこの原子炉を安定させるのは非常に難しいと内部資料は言っているのですが、これは今の御説明と、設計上安定性があるというのは非常に食い違いがあるが、いかがですか。
  88. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先ほど御説明申し上げましたのは、美浜一、二号機につきましては、タービンバイパスの容量と大気逃がし弁の容量の合計がそれぞれ四〇%あるいは五〇%であるという事実を申し上げたわけでございまして、その程度の対応幅があるということでございます。設計の面につきましてはそういう仕組みになっておりまして、あと運転員の対応によりまして若干の幅があろうかとは存じますけれども、設計につきましてはそういう仕組みになっておると承知いたしております。
  89. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この美浜一、二号炉について、内部の資料はこう言っておるのですよ。今言ったように、五〇%以上の負荷降下は、出力低下は、設備設計上、原子炉停止なしに安定させるのは非常に難しい、これは安定性があるというのとは随分違う、内部資料が言っているのは。そして、それだけではなしに、「当時、百の警報が発信したが、」そして、その中で「蒸気ランプ、SG給水、加圧器圧力水位等の制御状態の確認、補助蒸気の確保、復水流量の手動制御」等々これは十数項目挙げておりますが、こういうものが「逐次、手動で手当てをして、何とかして単独運転に移行した。」こう言っておるのですね。私はこの技術者がこういう場合に対処した高い技術については敬意を表しますが、しかし、こういうときにこの機械の故障だとか人間のミスが重なればこれは事故に暴走していく、そういう原子炉の状況というのは問題ではないか。  この点からいって、今の御答弁ではちょっと私も理解しがたいのですね。この事実は、言うならば経済優先と技術過信のあらわれでないかと思いますが、いかがですか。
  90. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま先生から御指摘のありました事実につきましては、関係の資料等も先生から御提示いただければありがたいと思いますが、事実関係をよく調べまして、私どもなりの判断を改めまして先生のところに御報告をさせていただきたいと思います。  なお、御指摘のようにいろいろな警報が発せられておりましたのは事実でございますけれども、これは敦賀一号の場合も同様であったと承知いたしております。
  91. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一つの技術が過信をされ、それから経済優先というものが結びつくと、日本の技術が高いからといって安心しておれない、私はこういうことを警告しておきたいと思います。  それから伊方原発の出力調整についてですが、通産大臣に一つお尋ねしたいのですが、今日の軽水型原子炉は一〇〇%運転をやっておればかなり安定したものになっている。ところが、出力を上げたり下げたりすると不安定になってくる。これは原子炉の泣きどころであって、電力の需給、いわゆる夜間、休みの日に電力が余ってくる、そのために出力を調整する、こういうものは本来は火力や水力でやるべきものであって、原子炉でこれをやるということは避けるべきでないかと思いますが、こういう点で、原発で出力調整をやらなければならないということは原発の過剰投資あるいは原発のつくり過ぎということにならないか、この点についての見解をお尋ねしたい。
  92. 田村元

    ○田村国務大臣 原子力発電につきまして私からも御説明申し上げることは、辻さんの方が詳しいですから御遠慮申し上げますが、ただ、通産省としましては、昨年十月に策定されました電気事業審議会需給部会の中間報告にもうたわれておりますことでありますが、着実に増大する電力需要に対応するためには、今後とも安全性確保に万全を期しつつ原子力発電の開発を積極的に推進をする必要がある、こういうことでございますが、我々もそのように考えております。  なお、出力調整運転を日常的に実施する必要性は当面ございませんけれども、電力会社によりましては需要が低下する年末年始等において一時的に出力を抑制することはあり得るというふうに考えております。
  93. 辻一彦

    ○辻(一)委員 二、三、尋ねたいことがありますが、かなり時間が過ぎておりますから次に進みたいと思います。  それでは、この原子力安全委員会はチェルノブイリ事故後、チェルノブイリ事故報告書の中にまとめておりますが、営業炉で安易に実験が行われてはならない、こういう観点から、供用開始、いわゆる営業発電をした後の営業炉では、行える試験として三つの試験を挙げておりますが、伊方の試験はこの三つの試験のどれに該当するか、お尋ねしたい。
  94. 石塚貢

    ○石塚政府委員 私から事実関係につきまして御説明申し上げますが……(辻(一)委員「簡単でいいです、入るか入らないか」と呼ぶ)はい。その報告書の中に入っております三つの試験のいずれにも入っておりません。
  95. 辻一彦

    ○辻(一)委員 原子炉は営業後やってもいい試験は例示として三つの種類がある、それに入ってない。  それでは性能を確認する試験なのかどうか、これはいかがですか。まあ詳しい細かい説明は要りませんから。
  96. 石塚貢

    ○石塚政府委員 性能を確認するための試験ということで報告書にございますものは、運転開始前に行われます使用前検査の一環といたしまして施設、装置、そういったものの安全性あるいは機能を確認するために行う試験でございます。しかしながら、今回の伊方で行われましたこの出力調整、試験とは言っておりますけれどもやっておりますことは、既に認められております運転操作、そういったものによる試験でございまして、これは通常の運転の範囲内でございますから、特に使用開始前に行われるべき試験とは別物でございます。
  97. 辻一彦

    ○辻(一)委員 供用開始前には性能確認試験は全部営業発電の前にやらなくてはならぬ、こう決めておりますから、それに反したとなれば大変なんですね。じゃ性能確認試験でもないし、そして営業後に認められておる三つの試験にも入らない。ということは、今言われた通常運転の範囲内である、こういうように言明、説明をされたわけですね。  それでは、私はこれは性能確認試験である。なるほど安全審査の範囲内ではあり、基本設計の範囲内ではあるが、その範囲内にあっても、それはそこまで耐えられるということが審査をされておるんであって、実際その能力があるかどうかを調べるのは性能を確認しなければならない、そのために実験や試験がある。これは供用開始前には、燃料の燃焼度から二、三年たたなければできない試験ですから、供用開始前にやるわけにはいかない、これはわかる。しかし、供用開始後にこの試験は性能確認試験としてチェックと検討をすべきであったと思いますが、内田原子力安全委員長の見解を求めたい。要点で結構ですから。
  98. 内田秀雄

    ○内田説明員 それじゃ御説明申し上げますが、性能確認試験は、先ほど局長が申されましたように法令に基づきました使用前検査の一環として行う試験でございます。一方、今回の伊方の出力調整運転試験は、定期検査や定例試験でもない、施設の特定の系統の機器、性能を確認するためのものではございませんで、通常の運転操作手順に基づいて行いましたものですから特殊試験にも該当いたしておりません。この試験はむしろ原子炉施設、発電施設、システム全体の運転性能と運転保守上のデータの入手等の目的を持っておりますから、試験と称してはおりますけれども、保安規定の範囲内で通常の運転操作手順で実施いたしますことから、安全規制上は通常運転の範囲内のものであると考えております。
  99. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私はゆうべ伊方二号炉の保安規定もさっと目を通してみましたのです。やっていることは保安規定の範囲内ですよ。通常運転の、そうすると範囲に入るというわけですが、それでは、伊方二号炉は総理大臣に、当時の佐藤総理に原子炉の設置申請をしている。使用目的は商業運転、そしてその運用計画においては、申請しているのはこれは基底負荷、しかも高負荷運転を行う。言うならば変動しない、一〇〇%近いところでこの運転をして変動しないということを原子炉設置申請書並びに運用計画の中に出して、通産、総理の承認を受けている。このいわゆる基底高負荷運転と、この承認されている内容と、去年の十月に行われたこの実験、試験は五日間にわたって出力を上下している、上げ下げしている。こんなものを通常運転と言えるのかどうか、この点の見解はいかがですか。
  100. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 今回行われました試験につきましては、法律的な性格づけはただいま科学技術庁あるいは原子力安全委員会の方から御説明があったとおりに私どもも認識をいたしております。  伊方発電所二号炉は基底負荷用として運転するということが予定をされているわけでございますけれども、今回の試験は将来その必要が起きたときにどうするかということを検討いたしますために、挙動を確認しデータを収集するという観点から行ったものでございまして、今後日常的に出力調整運転を行うということは今考えておりませんので、基本的な性格づけには背馳してないのではないかと考えております。
  101. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まあ原子炉申請にあるこの商業運転、そして一〇〇%運転を原則としている。これにやはりこの試験は五日間にわたって、今度は一日でありましたが十月は五日間やっている。こういうものが通常運転の範囲内とは思えない。そういう点で疑義がありますが、これは後にひとつ論議をまた譲りたいと思っております。  内田安全委員長に伺いますが、簡単で結構ですが、法的に、今言った営業炉を研究実験炉に代用することについての違法性はないか、一点。それから二点は、これから電力企業が、こういう出力調整は私はやるべきでないと思いますが、もし電力企業からそういう計画が出た場合にはどう対処するか。簡単で結構ですから二点お願いしたい。
  102. 内田秀雄

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  発電用原子炉で出力調整運転をすることの安全問題は先ほど申し上げたとおりでありまして、これを行うことは違法であるとは考えておりません。しかしながら、将来出力調整運転を日常的に行う具体的な計画が出ましたときには、その時点で念には念を入れる観点から行政庁から説明を受け安全を確認していく考えでございます。
  103. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この伊方の試験結果について四国電力は、事前解析と試験データは一致をして問題がなかった、こう言っておりますが、九州大学の工学部の平井助手は内部資料を入手して、事前解析と試験データに大幅な差異があると言っておりますね。こういうことはデータを突き合わして、そして専門の学者が、政府あるいは電力企業に縁の深い学者だけじゃなしに在野の学者の皆さんもそういうデータを見れば、これは安全であるかどうかということはわかるわけですから、そういう意味で伊方の実験、去年十月の五日間並びに二月十二日のこの資料を日付入りで実際の計測データを公開すべきであると思いますが、いつ提出できるかお尋ねしたい。
  104. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま先生御指摘のいわゆるギャップの問題でございますけれども、PWRの出力調整の場合には制御棒の上げ下げと硼素の濃度、二つの組み合わせで遂行することは御承知のとおりでございます。  今回事前の解析におきましては、硼素濃度の調整につきましてある程度の時間的ラグというものを想定をいたしまして、コンピューターで制御棒の上げ下げというもののパターンを事前解析をいたしたわけでございます。出てまいりました結果につきましては、硼素濃度の調整につきまして……
  105. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと時間が限られているので、その説明は聞かぬでいいです。資料として今言った私の要求に対して出せるかどうか。
  106. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 より速やかに行われた結果でございまして、近日中にその内容を明らかにいたしたいと考えております。
  107. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今私が言った資料は提出できるのですね。いいんですね。一言だけでいいですよ。
  108. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 提出いたします。
  109. 辻一彦

    ○辻(一)委員 安全にかかわる問題で、最後に日本原電の一号機の出力異常上昇の問題についての資料公開を論議をしたいと思いますが、今も資料の重要性が出ておったのですが、六十二年の十月一日に敦賀一号機で、タービンの性能試験後、原子力出力が降下する中で原子炉の圧力、いわゆる出力の下がり方が速くて、これを防ぐために復水脱気装置、難しい名前ですが、その調整弁を締め過ぎた。逆に原子炉の出力が異常急上昇して、原子炉が緊急自動停止をした事実があります。事故がある。これは出力調整に失敗をして、出力異常上昇という点では、原子炉の形は異なりますがチェルノブイリと類似している点がある。  この点で、これを重視した敦賀市民の会が資料の公開を求めたところ、公開された文書は「敦賀発電所一号機異常時発生・終結連絡書」、日本原電敦賀発電所所長名で県や市に提出されたものであります。ところが、提出された資料は二十三ページの文書でありますが、添付資料を中心に原子炉の様子をあらわす肝心の十二ページ分が墨が塗って非公開になっている。これはこういうようにして墨が塗ってありますね。十二ページにわたって墨が塗られておりますね、これはずっとあるんですが。私は、この事故の異常出力急上昇における原子炉の振る舞い、時間的に原子炉がどう動いておったかということを知ることは原子力発電の安全性を審議する上で必要不可欠である、このように思います。このために添付資料を含む全資料を要求しましたが、提出されたのは二十三ページのうちの十二ページ分が、墨を塗ったかわりに今度は白紙で提出されている。これはさっきの墨の部分がこういうふうに白紙で出されている。黒と白の違いはあるが、出たものは同じ。非公開で同じということですね。そこで全文をもう一度ここに提出を要求したい。いかがですか。
  110. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、いわゆる安全問題に関連をいたします資料を公開するということは、国民の理解と協力を得てという観点からも必要不可欠と考えております。ただ、例えば核物質の盗難防止という観点から、極めて詳細な施設の配置図を公開をいたしますこととか、あるいは技術提携相手の方から公開を控えるように求められておりますノーハウをオープンにするというようなことにつきましては、ケース・バイ・ケースに困難な場合もあるわけでございます。  御指摘の件につきましては、第一次的には先生御指摘のような仕組みで県なり市なりが公表をしたものでございます。ただいま申し上げましたような機微に触れます点の判断につきましては確かにケース・バイ・ケースの判断の幅があろうかと思いますので、私どもとしまして、県あるいは市の御意見を改めて聞きながらぎりぎりの幅というものを考えまして、改めて資料を提出をさせていただきたいと思います。
  111. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、それは県は条例でいろいろあるのでしょうから別ですよ。しかも、県がそういう判断をするということは、何も専門的な人が企業の機密を自分で扱っているわけではない。要は、企業の方からここは出したくないということで出されているということは明らかであるのですね。  そこで、なぜこれを私が強調するかというと、今まで政府や電力企業は、チェルノブイリのソ連型は低い出力で運転をすると急激な反応の上昇、出力上昇や暴走を招きやすい性格を持っている、しかし日本の原子炉は設計が違うのであって、低い出力でも安全な運転ができる、暴走しない設計になっている、こう言ってきたのですね。ところが、敦賀のこの一号機は、一七%の低出力でタービン試験後に出力を下げている途中に弁の締め過ぎによって原子炉内の圧力が急激に上がって、水の中の泡が消えて反応が急上昇して出力が七%から異常上昇を行った。それで緊急停止をやったのですね。もしこのときに制御棒等の駆動装置が信号が送られなくて働かなかったり、あるいはソ連のように制御棒が中に入らないということになったならば、大事故に暴走する懸念がある。このときにおける原子炉の振る舞いが時間的にどういうようになっているかということを明らかにすることは日本原子力の安全性を論議する上においてぜひ必要である、こういう観点から国政調査権に基づいて私はこの資料の全面提出を要求します。  同時に、原子力基本法に平和利用三原則、自主、民主、公開という三原則がありますが、この公開は、軍事的に使ってはならないということと、もう一つは、資料公開によって安全性を広く在野の学者、専門家検討する中で確認によってより安全性を高めるということ、原子力行政の信頼度を高める、こういうことによって自主、民主、公開の原則はうたわれている、この公開の原則にも反すると思いますが、私は、資料が提出されなければこの問題について審議をすることはできない。見解を示していただきたい。
  112. 田村元

    ○田村国務大臣 基本的な問題でございますから、私からお答えをいたします。  先ほど来各政府委員が申しましたように、一部の情報につきましては、核物質の盗難防止、これは恐ろしいことでございます、またノーハウ等の財産権の問題等がございます。でございますから、そこに非常に難しい問題がありますので、これは慎重に取り扱わざるを得ない、このように思います。しかし、私の考え方を申し上げるならば、この場合におきましてもなお企業機密等に名をかりていたずらに非公開とすることはいかがであろうかという感じがいたします。でございますから、きょうの御議論の経緯、また本件の経緯等を踏まえまして、県当局等と十分相談の上、可能な限り資料を提出する方向で再度検討を命じます。
  113. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう十分ほど時間があればこの問題をもっと詰めたいのですが、もうあと一、二分では残念ながら詰まりませんから、一般質問にこの問題は移して論議を継続したいと思います。  私は、この防災対策について、いろいろな日本の防災対策がなお立ちおくれのある心配がありますので、こういう問題について触れるつもりでおりましたが、残念ながらその時間がない。一般質問の中にその論議を移したいと思いますが、一言だけ総理に、これだけの安全論議をした中で技術革新や経済優先の経営風潮が非常に強いという問題を考えると、これについて当初の御答弁では私は不満足であるので、一言やりとりの中での考えをお示しいただきたい。
  114. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 原則だけを申し上げましたが、やりとりの中で問題がいろいろ煮詰められ、通産大臣の答弁もあった、そういう問答の中で一層その重要性を認識させていただいたということに尽きます。
  115. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  116. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて辻君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ────◇─────     午後零時五十一分開議
  117. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田克也君。
  118. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。よろしくお願いをいたします。  私は、このところ四年間この委員会に籍を置きまして毎年この総括質疑で教育の問題を伺ってまいりました。ことしもまた、ポスト臨教審の法案あるいは共通一次試験を改革する新しい国立学校設置法の提案等もありまして、ぜひそれをやりたいと思っておるわけでございます。御承知のとおり、大学の入学金が平均して二十五万円であったり、あるいは学納金が平均百万円に近づいたり、非常に家計負担が厳しい。これを何とか改善しようと政府にもお願いをし、ここでお話をしてまいりましたが、それ以上に、新しい税がかかるということになりますと、教育関係者、父母、あらゆる教育関係者も含めまして幅広い国民の負担というものがふえるのではないか、これはゆるがせにできない、こういう思いでいっぱいでございます。したがって、後ほど教育問題に触れることになると思いますが、それに先立ちまして税制の問題を若干お伺いをしたいと思っております。  最初に、実は私、昨年の秋に中曽根総理から竹下総理にかわられまして、この委員会で竹下総理のいろいろなお振る舞いを拝見をしておりました。あるときこの委員会が終わりますと、普通は中曽根総理の時代でしたらさっさと一番先にお立ちになってお帰りになるのですが、竹下総理はそうじゃなくて、ゆっくり場内でいろいろと懇談をされておられました。廊下の衛視さんが道をあけて待っておりまして、はてな、随分違うのですねということを私にささやきました。ほどなくして、我々議員が全部出ましてから総理はお立ちになったようでありますが、私は何か、竹下新政権は国民の声をじっくり聞く、そしてさまざまな状況をよく見比べ調整をなさり、そうして言うならば石橋をたたいて渡らないぐらいの堅実さでお動きになるのじゃないかな、こう期待をしておったわけでございますが、きょうは半ばぐらいで総理お立ちになったようでございますが、最近見ておりますと、そうしたじっくり構えてさまざまな声、さまざまな議論というものをお聞きになるというよりは、少し御自身がお動きになっているというふうな感じも持つわけでございますが、総理の率直な御自身のスタンスについてお述べいただければと思うわけでございます。
  119. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 少し饒舌にわたるという批判を受けるかもしれませんが、お話ししてみたいと思っております。  きょうは、実は先輩の小山長規先生の葬儀委員長を務めておったものですから少し早目に立たしていただきました。  池田さんと私にはかなりの年齢差がございますが、私は、大正二けたというものは言ってみれば戦前を知っております。そうして戦中を知って、そして戦後、あの超インフレの中で自分たちの身をどういうふうに世情に合わせていくがいいかというような、言ってみれば現状に対しての調和性というものは大正十三年、村山先生もそうでございますが、大体非常にあると思うのでございますけれども、明治の方のようないわゆる気宇壮大性、あるいは昭和二けたの方のような気宇壮大性というものに欠けておるのではないか。したがって、おれについてこいという、世間の移り変わりがそういうものよりも調和性を余計必要とする中に生きてきたのじゃないかな。そうなると、昭和二けたのように、あるいは明治、大正一けたのような気宇壮大性を自分で求めてそれを身につけるよりも、やはり調和性の中でみずからの長所を生かしておった方がいいんじゃないか、こんな気持ちをかねがね持っておるということが、いささか饒舌にわたりましたが政治姿勢にもあるいは反映しておるかもしらぬというふうに考えます。
  120. 池田克也

    池田(克)委員 そういう調和性をお持ちの総理でありますが、このところの報道を幾つか見ますと、今私が申し上げましたようにちょっと違うのじゃないかな。例えば一つは、小倉税調会長が発言をされております。新聞報道でございますし、この委員会にも先日お見えになりまして川崎委員質問にお答えになっておりましたが、「EC型付加価値税に決まってる。他(の類型)は堕落型だ」とまで言っている、こういう報道がございました。この席でもEC型付加価値税がいいという意味のことをおっしゃっておられました。ただし、それが通るかどうかはわからない、むしろそういう意見が通らないのが余り気に入らないようなそぶりのお話でございました。  かつて中曽根総理も臨教審等に、荒法師とかそんなようなことをおっしゃったと思いますが、かなりはっきり物を言う方を入れて、そこで自由化論とかそうしたものを展開し世論を巻き起こすという諮問機関を活用されたように思っておりますが、私は、今総理がおっしゃった調整型という点に立つならば、この税調会長の発言というのは大変迷惑だという気がしてなりません。予見を与えず、国会における各党各会派の意見はもとより、幅広く国民各界各層の御意見を伺いながら、成案を得べく今後とも努力を続けてまいりたい、これが竹下総理のスタンスではないんですか。国民に対してこういう予見、税調会長といえばもう随分長いことおやりになっていらっしゃるし、この道の大変な権威でいらっしゃると私は思います。そういう点から見るならば、かつて中曽根総理がおやりになったようなそういう立場の方に発言をさせていらっしゃるのかな。私は、もっとフラットに、本当に予見を持たないならばないで、そうした状況をつくり上げられるべきではないか。  また、これも報道でございますが、札幌の会場でいろいろとあったそうでございます。主催者側の税調委員が反対の意見の発表者に反対尋問をした。「「行革や経費節減が先決だとおっしゃるが、お題目だけで具体的な内容がわからない」「新型間接税導入の場合、所得税が減税されることをお忘れになっているのではないか」こんな調子で、三十分近く問い詰めてしまったので、会場がざわつき始め、とうとう傍聴人の中年男性が立ち上がって叫んだ。「不愉快だ。公聴会は国民の意見を聞く場であって、あんたがたの意見を押し付けられる場ではない」」こういう状況というのは、私はフェアではないと思います。偶発的に起きたのかもわかりませんが、この税調のそうした動きについて、私は何らか総理から御指示があってしかるべきではないかな。予見を持たない、こういう状況総理はどうお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  121. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 小倉税調会長さんがEC型はという御発言をなすったのは、かねて毎年毎年出てまいります税調からの答申、そのコンセンサスのものは予見ではもうない。実は私自身もその辺の整理をしておりますが、いわゆる税構造上論理的にこれが正しい、こういうお考えをお述べになったんじゃないかなというふうに思っておるところでございます。  この税制調査会の運営そのものにつきましては、自主的に運営されるわけでございますが、税調会長のお話を聞いておりますと、個人の発言はそれなりにしてもよろしいが、お互い出かけた税調の委員の中のやりとりは公聴会ではやめようや、こういう話をなすっておるようでございます。  そこで、今一例が札幌のお話がございましたけれども、問い詰めるということになりましたかどうですか。公聴会というのはできるだけ多くの方の意見を平静に聞く立場にあるわけでございますが、特に私ども、国会等でお聞きするということに徹して、時にあれっと思うことがありましても、問い詰めるようなことは非礼だからしちゃいかぬというふうに徹しておるわけでございますけれども、幾ばくか我々の方がそういう姿勢になれておって、税調の先生は必ずしも、ふなれの面も多少はそれはあるのかな、こんな感じでございます。
  122. 池田克也

    池田(克)委員 けさの新聞でございますが、きのう大阪へおいでになって、総理が会見をされておっしゃったそうです。新型間接税の導入を柱とする税制の抜本改革は、一般消費税を否定した昭和五十四年の国会決議に抵触しないばかりでなく、むしろ決議の趣旨に沿うとの見解を表明された。これはびっくりいたしました。たしか、この問題を先日我が党の大久保書記長がお伺いをいたしましたときに、「その制約を私自身は受けるものである、」「言ってみれば主人の言っておることに対して、当然、尊重するのは当然のことであると思います。」こうこの席で明言をされたばかりでございますが、これを見ますと、逆手にとられたと申しましょうか、いや、逆にこの話は、国民は、国会決議して新型間接税導入しろ、こう言っているじゃないか、これによって財政を改善しろと言っているじゃないか、こういうふうにおっしゃるのは、これは大変な御自身の発言の違いがここに出てきた。これをどう説明なさいますか。
  123. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 せっかく池田さん、私に発言の機会をお与えいただいてありがたいと思っております。  私が申しましたのは、昭和五十四年、私当時大蔵大臣でございました。大平内閣のときでございましたが、各党の専門家の方とお話し合いをいたしまして、財政再建に関する決議をつくった。あくまでも財政再建でございますから、あのときの順序をただしてみますと、財政再建は一般消費税(仮称)によらないで、まず行政改革による経費の節減をやりなさい。それから歳出の節減合理化をやりなさい。そして税負担の公平の確保、既存税制の見直し等を抜本的に推進することにより財源の充実を図るべきである。ですから、やはり財政再建ですから、一番出だしがまず国民福祉充実に必要な歳入の安定的確保を図ることが大事である、こう書いてあって、最後のところ、そういう抜本的に推進することにより財源の充実というところにやはり当時の考え方の基本はあったなと私も思っております。  したがって、財政再建のためにもこの既存税制の見直し等をやっていかなければならぬということでございますから、その中には、抜本的な既存税制の見直しをやるわけですから、いろいろな問題が入ってくるわけであります。がしかし、私も言葉を注意しておりますから、いわゆる一般消費税(仮称)は財政再建の手法としてはとらないことになっておりますから、財政再建の手法としては、それはこの決議が存する限りにおいては私も主人の決議に対して忠実であるべきであるという線は守っていかなければならぬなと思っておるわけであります。しかし、その後議長裁定などに至りますと、もう直間比率という言葉まで出てきております。したがって、既存税制の見直しというようなことはこの間接税論議等を否定するものではないだろうというふうに私自身も思っております。  饒舌にわたりますがもう一言つけ加えさせていただくならば、いわゆる一般消費税(仮称)ということを各党の専門家の方に合意をしていただいた、合意していらした、私はオブザーバーでございますから。これはやはり、ははあ、消費一般にかかる税制を否定することはこれは税理論上間違いだなというのが念頭にあるから、工夫して工夫していわゆる一般消費税(仮称)とこうお使いになったのだな、立派な見識だなというふうに考えておったことを、ちょっと思い出話になりましたけれども整理をしたわけでございます。
  124. 池田克也

    池田(克)委員 十年もたつと総理もこの辺のいきさつをお忘れになったのかなと思いますが、この年は選挙があった。そして、私どもの地域でも大変雨の激しい選挙でしたのを覚えておりますが、この選挙のときにこの一般消費税(仮称)の話が出ました。猛烈な反発がございました。たしか与党は過半数を割られたんじゃなかったでしょうか。私は、こういうような状況下において、一般消費税は国会決議で、そうして別の方法で財政を再建するんだ、こうしたことを記憶をしております。確かに文言としては、当時財政再建の問題もいろいろございました。けれども、力点は一般消費税によらずということにあくまでも置かれていた。  私は、これを十年もたったからすりかえて、周りにある、税負担の公平の確保とか既存税制の見直しとかいろいろな修飾がついております。確かにこういう修飾がつかなければ与党、これは全会一致で決めているものです、与党としても恐らくおのみにならなかったと思います。さまざまな状況の中ではありますが、全会派が一致して一般消費税によらないでやっていこう、国民がこれほど怒っているんだから一般消費税はやめようと決議したのがこの決議じゃありませんか、どうですか。  私は十年たつと議論が風化するなと思います。こういう活字の記録だけではだめだな。本当に去年の売上税のあの牛歩の熱い思いを感ずるときに、いわゆる学問的な議論だとか、全部消費税を一般消費税から何消費税から否定すれば学問的な理論はどうだとか、それは学者に任せればいいです。国民の声を背に受けた国会議員の感情というものはここにない。これをどう受けとめられますか。大変大きな声を出して恐縮ですが、私は十年前ですがありありと覚えています。もう一度御答弁いただきたいと思います。
  125. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 五十三年にこの答申が出まして、五十五年からいわゆる一般消費税(仮称)を導入する準備をしろ、こういうのが答申の中身であったと思っております。そうして選挙が行われました。選挙の結果、したがって、まさに政府が、閣議決定により、五十五年度に導入するための具体的方策としてこれまで検討してきたいわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等について十分国民の理解を得られなかったというのが前提であることは事実であります。財政再建に関する決議でございますから、じゃ財政再建はどうするかということで、まず行革をやりなさい、そして歳出の削減をやりなさい、その上で不公平税制の是正から出発する抜本的な税制改正をやりなさい、しかしそれもやはり財源というものにくっついた表現になっておりますから、あくまでも財政再建に関する決議であって、財政再建の手法としてあの際一般消費税(仮称)をとってはいけませんよということはだれしもが認めたことでございます。  そこで、いわゆる一般消費税(仮称)のことにこだわりましたのは、やはり国会決議でございますから相当権威がなければいかぬし、やはり理論的にも、消費一般にかかる税制は既にあるわけでございますから、したがって、それが否定されたような書き方ではいけないということで苦心をちょうだいしたなあというふうに覚えておるところでございます。したがって、それは世の中十年もたてばいろいろ変わってまいりましょう、二十年もたてばもっと変わるでございましょうけれども、まさに風化してしまったというふうには私は考えておりません。御主人様のこれはお諭しであるというふうに思っておりますし、そしてこれは衆参同じ文言でございます。それから、参議院では一遍、じゃあ有権解釈はどこにあるか、これは当然議運にございますので、そういう会合が開かれたことも記憶いたしておりますが、風化したとは思っていない。  ただ、税制改正を一生懸命で議論しようというのは、財政再建のためではございますが、それは今次の流れとして存在しておる。今、税制改正は、それよりもあるべき税制の姿は那辺にあるかというふうにもっと議論が大変高度化してきたというふうに私は問題意識を整理しております。
  126. 池田克也

    池田(克)委員 最後のところで主人の意見はというふうにおっしゃっておりますが、総理が、先ほど私が触れましたように調整型のスタンスだとおっしゃるのから非常に踏み込んで、国会決議についても言うならば今のような解釈をなさる。私は、税の問題というのは、専門家の意見もありましょうが、非常に幅広い国民の支持と理解がなければこれは進んでいかないのではないかと思う。ですから、そうした点では、先ほど来から申し上げておりますように、じっくり腰を据えた幅広い国民の理解、まさにそのコンセンサスが那辺にあるかということを総理は探っていらっしゃるようなわけでございますが、それについても思いますことは、参議院で二十日の予算委員会で、機は熟した、報道ですから、総理の改めてのお話を伺いたいわけでありますが、「「客観的にみて機が熟している」との認識を示すとともに、新型間接税の導入がサラリーマン層の税の不公平感の是正に役立つとの見方を強調した。」総理あれですか、率直に申し上げて、間接税導入の機は熟したというふうに認識してらっしゃいますか。
  127. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 機が熟したと申しましたのは、これは参議院でございましたが、衆参を問わず五十一年以来税制論議が大変行われるようになり、最近はもう税制論議があらゆる論議よりも数層倍する論議になっておりますから、これほど国民各界各層の代表の方がお集まりになって議論していただいておるというのは、だれが見ても税制改革の機は熟したり、こういうことを感ずるではないかなというふうな思いで申し上げたわけでございます。  ただ、その前段がございまして、いわば直接税、間接税間におけるおまえが言っている不公平感とはどんなものか、こんな質問がございましたので、それに答えましたのは、税の不公平感というのが象徴的にあらわれておるのは勤労所得である。その勤労所得には、言ってみれば垂直的公平と水平的公平がある。水平的公平というのは、他の所得に同じような暮らしをする人が納税額について自分より少ないとかあるいはないとかいうところに水平的な不公平感というものがあって、垂直的不公平感というのは、おれはこれだけの所得の差があるが、その差があるのにこれだけの累進構造がきいて余計納めなきゃいかぬというのが垂直的不公平感、こういうものがあります。いずれにしても、不公平感の原点というものは、勤労所得に対する、クロヨンにしても、そういう言葉が出るのも不公平感から発してきたということになると、やはり公平性の一つのあり方として非常に公平であるものがいわば間接税である。  そこで、直接税と間接税からくるところのいわゆる不公平感というものがありはしないかというふうな問題提起をいたしましたら、それに数字を入れて説明したらなお迫力があるという激励も賜りましたけれども、不幸にして数字の用意までしておりませんでしたので、間接税そのものとか直接税そのものとかいうことの論議に触れて、直接税の勤労所得の不公平感というものが間接税論議というものに議論がつながっていくということをお答えして、それに対して激励していただいたというような感じでございましたので、機が熟したというのは、事ほどさように国会議論がされるようになったというのはまさに税制改革やろうなというのが、機が熟すどころか大変なものだ、とうといものだというふうに感じておるということを申し上げたわけでございます。
  128. 池田克也

    池田(克)委員 重ねてお伺いしますが、そうすると、税制改革の機は熟したのであって、間接税導入の税制改革、これは間接税導入というのが頭にくっついているのです。これはいかがでしょう。
  129. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 速記録を調べてみなければわかりませんが、その前に間接税の議論をしておったことは事実でございますから、間接税の議論もこれほど行われるようになったということから、機は熟したというあるいは印象を素直に申し上げたかもしれません。
  130. 池田克也

    池田(克)委員 印象をどうお持ちになろうとそれは結構ですが、予見を持たずですね。それは学問的ないろいろな状況はあるとおっしゃいましたけれども、いわゆる所得あるいは資産、消費、それがどのようなバランスになるかを諮問していらっしゃるはずですが、私は、総理の頭の中には消費を何とかつかまえよう、消費に着目しよう、そしてそれは間接税であるという予見が初めからある、そしてそれがこういうところに少しずつ出る。これは、先ほど申し上げたような予見を挟まずにとおっしゃる、先ほどの調整型の総理お話としてもっとものように見えながら、少しずつブルドーザーで地ならしをされて、間接税だ、機は熟した。私はこういうふうな状況というのはフェアじゃないな。  やはりこれだけの売上税を議論し、そしてそれが廃案になってまだ一年たっていません、たかだか十カ月ぐらいのこういう今の時期に、総理はこの売上税をどう反省されているんだろうか、あれほどの牛歩というものを十何年ぶりにやらなければならなかった、こういう状態というものの反省なしに議論をいろいろ積み上げて、そして時間はかかってきたんだからそろそろ機は熟したというのは、国民から見たら随分ひどいな、調整型の総理にしては随分強引な手法だなというふうに受け取られるだろう。私自身政治家として率直に、これは竹下総理、意外な面だな、こうお見受けするのですが、いかがでしょうか。
  131. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 予見といいますと、やはり所得、消費、資産の段階に着目してそれの均衡のとれた税体系というところまでは、予見以前とでも申しましょうか、これはコンセンサスに完全になっておるということだと私は思っております、どう区分するか、シェアがどれくらいになるかは別といたしまして。したがってこれは私は予見の内ではないと思っております。まさに所得、消費、資産、ほかに着目するところはないわけでございますから、三つを着目したところに税制が構築されていくわけでございますから、そこのところまでは予見以前の問題だなと思っております。  そこで、したがいまして、初めに何々ありき、あるいは初めにこれだけはいけないありきでもよろしゅうございますが、そういうすべて初めに何々ありきということは予見になりますので、可能な限り初めに何々ありきということがないような自由な意見をお聞きして、そして税制調査会がそれを反映して、それで立派なもので、しかも、一年にまだなってないじゃないかとおっしゃいましたあの売上税の反省に基づいて、何で廃案になったかというところをよく考えて、今度こそ税制改革は喫緊だということになっておるわけですから、廃案にならないようなものはどういうものがいいかということを一生懸命朝な夕なに考え続けておるというのが私自身の心境でございます。
  132. 池田克也

    池田(克)委員 資産、消費、所得という三つのバランスという話が出ました。総理は、これは本当にフラットに、この三つのどれにというふうなそういう力点を予見としてお持ちじゃないのですか。野田理事質疑の中で、こうおっしゃっているのですね。物をつくったりサービスしたりすることに対する努力に対する報酬としての対価が、税というものに着目きれ、それを使用する側に対する着目の度合いが非常に少ない、こうはっきりおっしゃっているのです。ですから、私は総理の頭の中には、所得、資産、消費、この三つ、これを諮問してどれだ。私どもは資産課税はもっと足りないということを主張しているのです。また、ここにお見えになった公述人の方もそうおっしゃった方もいらっしゃいました。私はそういう意味では、総理がこの間接税、そして消費に着目するということにかなりの予見を持っていらっしゃる、これは学問的予見じゃなくて、政治家としての予見を持っていらっしゃる、こう受けとめますが、いかがでしょうか。
  133. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いささか饒舌にならぬようにお答えしようと思いますが、資産課税というものの考え方、かねがね池田さん主張していらっしゃるいわゆる所得税法上の中の十種類のうちの譲渡所得というものに対する、これはキャピタルゲインであれ何にいたしましても、資産課税についての考え方は恐らくお持ちであることは承知しております。それから資産課税の一つの問題点であります相続税、これも資産課税の大きな分野を占めるものでございますが、かつてイデオロギー的には私有財産否定の政党も相続税のことをおっしゃる時代になっておりますから、大変世の中も変化したなと傾聴させていただいておりました。  そうなると、今度は所得というものに着目したところで、今日まで構築されたというのは、いわゆる所得の再配分機能というのがあるな。しかし、その再配分機能というものが執行上の問題からする不公平感と、それからやはりなかんずく給与所得者が非常に捕捉がしやすいというようなことからする不公平感というようなものが生じますと、間接税というものの特徴は、累進構造というものが存在する限りにおいては、逆進性があるというのは一般的に言えます。しかしながら、非常に公平であるという議論、また選択の自由があるという議論もあり得るわけでございますから、その辺の不公平感というものが、所得に対する不公平感というものが、やはりこの努力に対する報酬に対して着目した税制ということが不公平感の基本にあるとすれば、やはり消費に着目した公平な間接税ということに対する関心が深まっていくというのは当然のことではないかな。  しかも個別物品税でございますと、それぞれの物品ごとの今度は水平的不公平感というものもありますから、そういうものをこの際、本当に詰めた議論をして直したいものだなというのが私は私なりの考えでありますが、予見というよりもそこのところまでは、予見以前の問題として許容してちょうだいできることではないかな、こう思っております。
  134. 池田克也

    池田(克)委員 私がお伺いしたのは、極めて簡単なのです。所得、資産、消費、このどれに力点を置いて総理は関心をお持ちかな。それは学問的な論理は、私は議論は自由だと思います。政治家の判断として、間接税に私は異常な執念をお持ちじゃないかな。要するに、国民のコンセンサスは那辺にあるかなとおっしゃる。そして予見を持たずとおっしゃっている。私たちは、そっくりそのまま本会議での総理の演説ですから、答弁ですから、受けとめているのですが、今のお話、いろいろ伺いますと、大学の講義を受けるみたいで、学問的にはいろいろあると思います。  しかし、今の日本の社会の状況の中で、しかも去年売上税という間接税の議論と大きな政治的な活動があった中で、今間接税になぜ特別な力点を置いて関心をお持ちかな。あるいはそうじゃなくて、三位、三者というものを均等に、どういうバランスかということを議論してくれとおっしゃっているのか。私はどうもそれが疑問だからお伺いしている。間接税に特段の力点はないとおっしゃるなら、それならそれでわかります。今のお話を聞いていると、ますます間接税への地ならし、機は熟した、論理的にもそうだ、こうおっしゃっているように思えるのですが、どうでしょうか。
  135. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 勤労所得に限ってみますと、現行の税制がそのまま続いた場合、十年後にはどうなるかといいますと、またこれはいわゆる租税弾性値というものの相違からいたしまして、直と間の比率はさらに高まっていくということからして、直間比率の見直しという言葉が使われるというのは、今の直接税がやはり比較、間接税に対して高過ぎるというのは予見の前の段階のものではなかろうかな。なかんずく現行の税制そのものに年々の経済成長率を掛けてそれに弾性値を掛けていってまいりますと、その比率はますます違ってくるという本来そういうものでございますから、税制協議会等で直間比率ということが書かれておるというのは、それを直すように、言うなれば、やはり間接税比率という方へ傾斜が少しかかっていくというような流れではないかなというふうに、私自身が承らせていただいておるということであります。
  136. 池田克也

    池田(克)委員 何度聞いても総理はそういう講義ですね。政治判断はどうなのかということを伺っているのです。これはどうでしょうか。
  137. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 講義するほど賢くはございませんけれども、政治判断ということになれば、まさに政治判断というものは租税弾性値というものの傾向からすれば直と間の比率がますます直が高まってくるから、間というものに対しての考え方が政治判断として余計高まっておるのじゃないかなというふうに私は考えております。
  138. 池田克也

    池田(克)委員 重ねて伺います。  政治判断として間接税導入が一番必要である、こういうことなんでしょうか。予見を持たずフラットに議論をして結論はやがて出す、けれども、今の時点で間接税という認識を総理はお持ちなんでしょうか。私はこれは非常に重大だと思うのです。  後から申し上げますけれども、国会決議の問題もありあるいは中曽根総理の統一見解の問題もあり、さまざまな状況が今日までありました。私は、政府がやがて答申を得られて法律案が出されるでしょう。選挙を経ずして公約違反のそうしたものが出てきた場合には、また本当に国会での激しい闘いや牛歩ももう一遍起きざるを得ない。私はもうこれを民主政治の中で繰り返すことは決して好ましいことだと思いませんが、国民全体の理解を得て十分な議論を尽くす前に総理が、この三種類の一つのバランスの問題が出ておりますが、それに特定の判断を今の段階でお下しになるということは極めて危険なことだ、こう思いますが、いかがでしょうか。
  139. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私が思っておりますことも、おっしゃる意味とそう違わないなという感じがして聞いておりましたのは、いわゆる所得、消費、資産に着目したどういう形のものがいいか、こういうことが一つありまして、そうして一方税制協議会等のまくら言葉にあります直間比率というような問題があれば、直間比率の中で議論されるのは当然間接税というものもまた大きな関心で議論されるのだな。しかし、初めから五分五分でございますとか五分五厘と四分五厘でございますとか、そんなようなことを申し上げる考えはございません。やはり間接税論議というのは必然的な流れとして起こっておるし、また実際あるわけでございます。そうして本当に私も池田さんと思いをひとしくいたしますのは、国会がある意味において機能しなかった、野党の責任だなどということを申し上げるほど愚か者じゃございません。私どもの責任がもちろんありまして、とにかくああいう国会になった。今度はああいう国会にならないようなものをみんなで工夫してみようというのが何よりも前提に置かるべきではないかな、こう考えております。
  140. 池田克也

    池田(克)委員 先日、公聴会の中で公述人の方がこうおっしゃっておりました。「資産課税に対する税というのが日本では一番おくれておりまして、この点はもっと早期に具体化されなければならないわけであります、キャピタルゲイン課税という点でいいましても、あるいは個人、法人の財産課税という点からいいましても、諸外国からおくれているといえばこの点が一番おくれている税制のところでありますので、むしろ具体化が一番急がれるところだろうと思います。」  いろんな議論があります。ですから私は、政治判断としてこれがこうということは総理が今いろいろと講義をしてくださいました、理論としてはあると思います。しかしながら、それを国民が理解をし、そして我々が国会議論をする。もちろん学問的なものも必要でありましょうが、国民がどう受け取るか。そして去年のことしというわずかの期間を経て今どういう気持ちでいるか。その間に選挙はございませんでした。そういう点を考えるならば、予見を持たず、税調の会長もあるいはまた税調の動きも総理の御発言ももっともっとこれについて慎重であるべきだ、こう私はあえて申し上げたいのです。この問題締めくくりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  141. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 おっしゃるように、慎重の上にも慎重に私もこれには対応しなければならぬ。したがって、時に、言語明瞭、意味不明などと言われますのも、慎重の上に慎重に言葉を選び過ぎるからかなという反省をもいたしておるところでございます。したがって、これはやはり国民のコンセンサスが那辺にあるかを見きわめることでございますから、慎重の上にも慎重に対応していこうと思っております。
  142. 池田克也

    池田(克)委員 慎重の上にも慎重ということは、この三者は今の段階で同一線上であるということですか。
  143. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 所得、消費、資産が同一線上というと、少し私も解釈しにくいのですが、スタート台に用意ドンで並んでおるというような見方でございますのか、やはり同一線上という表現も正確な意義づけは難しゅうございますけれども、あくまでも所得と消費と資産と、というもののあんばいがどうなるかという意味においては、総合的に三者がインクルードされておる、こういうことだろうと思います。
  144. 池田克也

    池田(克)委員 意味が不明瞭なんです、ここのところは。さっきから十分講義を伺いました。私はもう一度伺います。確かにいろんな現状で学問的な――過去はあったと思います。今議論しているその議論のスタンスとして同一線上と私は申し上げたのです。まだ始まったばかりだと思います。確かに長い歴史はありましょう。けれども、売上税が終わったのは去年です。そして新政権ができたのは去年の暮れに近かった。それまでは売上税という一つの大きな言うならば傷をしょった状態だった。さあ新しい政権でどういう税の話が出るだろうかと出発したのがこの国会です。二月からやっている。まだはっきり言えば二十日ぐらいしかたっていない。その間にブランクもございました。ですから、議論のスタートの段階ですから当然この三者は今スタートラインに立った、ほんのちょっと走ったところだ、こう私は思っているのですが、間違っていますか。
  145. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 三位一体のものであるからスタート台で一緒かと言われれば、それはそれなりにうなずけると思います。ただ、今までの練習量の違いはあるいはあったかもしらぬな、こういう感じがしないでもございませんけれども。三位まさに一体のものであるということにおいてのスタート台一緒だとおっしゃる意味は私も理解できます。
  146. 池田克也

    池田(克)委員 我が党の矢野委員長が一月二十七日の代表質問で、中曽根前総理が言われた政府統一見解を政府は果たして厳守されるのか、白紙撤回されるのか、こう質問をいたしました。総理はこれに対して、本当に重いものであるということは十分感じております、こうおっしゃっておる。また大久保書記長に対しても坂口政審会長に対しても、重いとか重い意味を持つとか、こう答弁を繰り返されておりまして、決して守るというふうに答弁をされていないんです。この点は総理いかがでしょうか。
  147. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そこのところがよく最近いろいろ議論されてきておって、整理必ずしもされておるとは私自身の方から申す筋合いのものではございませんけれども、あの中曽根前総理のおっしゃったものは、これが政府統一見解であれ国会答弁であれ、総理大臣の答弁でございますから、これは重い意味を持つものであるということは事実です。そこで、それに基づいて工夫して税制改正案として売上税というものをつくりました。ところが、それは国会で結果として廃案になった。したがって、そういう一連の事実全部を踏まえて、さあそれでは本当に国民のコンセンサスがどこにあるかというのをもう一度考え直そうじゃないか、こういうことで今その税制改正論議がしきりに行われておるというふうに思っておるところでございます。  私も、この問題について厳密に言葉の上の論争になったと仮にいたしまして、多段階かつ、あとの整理は言葉を全部例外なしという言葉にいたしますと、では例外が一つあればいいんですかとか、またこんなような議論になるとむしろ税制の建設的な論議が横へそれてしまうんじゃないかな。あれはあれとして、中曽根内閣のときにはしたがってそれはとりません、こうおっしゃって、そしてとれるようなものを工夫して出した。それを、そこのところでそれそのものが公約違反だとおっしゃる、いや、手続上こうしてまいりましたのでこれは工夫したものでありますというところの差異はあるにいたしましても、やはり一連した事実全部を踏まえて、では具体的には廃案にならぬような税制あるいは国民のコンセンサスが耶辺にあるかというのを議論をしながら構築していこうというのがまあ前向きな、私どもが選挙以来四年間の任期を与えられておりますので、その中で国民に果たしていく一番大きな役割じゃないのかなというふうに考えております。
  148. 池田克也

    池田(克)委員 この質問に対する答えは今と同じなんです。この発言の、つまり中曽根見解の考え方によって一生懸命で成案を得たわけです、ところが、結果において廃案になった、こうことしの一月二十七日の本会議で述べておられます。また去年の十一月三十日には、あの見解に基づいて種々工夫して出された案が、結果として審議未了、そして廃案となった――これはわかっているんです。何度もその話はもう伺っております。  ところが、矢野委員長は再質問でこうお尋ねしたのです。売上税が廃案になったのは、大型間接税をやらないという選挙公約の違反という事実に国民が大反発をしたので、政府統一見解が間違っているといって国民が反発したのではない、売上税が廃案になったから統一見解もあわせてほごにするという言い方はおかしい、こう質問したんですが、総理から明確な御答弁はないまま今日に至っているのです。いかがでしょうか。
  149. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あのとき私自身が大蔵大臣でございましたので、綸言汗のごとし、総理大臣のおっしゃった言葉ですから、それを整理して当時矢野書記長にお見せをして、これならばよかろう、こういうことでまとめました、それを総理大臣の答弁の形で行った、こういうことでございます。それに基づいて自由民主党あるいは政府としては種々工夫を凝らした売上税というのをつくったわけです。しかし、それは結果として廃案になった。だから廃案にならないようなものはどういうものかということをこれから議論してつくろうじゃないか、こう言っておるんでございまして、矢野さんに対するお答えなんというのはもういわば白紙撤回になってしまったというふうには私は考えておりません。  そういう重いものがあって、それに基づいて案をつくって、その案が結果として廃案になったから、さて国民のコンセンサスは那辺にあるかということをこれからますます考えていくというのが我々に与えられた使命だ、こう考えておりますので、この矢野さんに対する答弁なんというのは、これはよく白紙撤回とかいう言葉が使われますが、もうすっ飛んでしまったんだというようなことは考えておりません。
  150. 池田克也

    池田(克)委員 白紙撤回ということはないというふうにおっしゃいましたが、続いて矢野委員長は再質問の中でこう言っているんです。総理は「税調に予見を与えてはいかぬからという言い方をされていましたが、政府の公式見解は当然税調の御審議の前提としてあるべきものだと私は思います。」政府と税調とどちらが偉いかと伺いたいくらいです。どうですか。税調審議の前提に中曽根前総理のいわゆる統一見解があるべきだ、こういう質問を再質問のときに矢野委員長はしているんですが、これにもお答えがなかったんです。今それをちょうだいできますでしょうか。
  151. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これはまさに、税調に新たに諮問いたしましたのが、それこそ所得、消費、資産についてあるべき税制の姿を考えてください、こう諮問をしたわけですから、その諮問から私はこの今の審議が始まっておるというふうに理解をいたしております。
  152. 池田克也

    池田(克)委員 私がお伺いしていることと違うんですね、総理のお答えは。要するに、去年のことしですね。国民はタホモフ大消投、こう言うんですけれども、多段階、包括的、網羅的云々と、こういうところの頭文字をとるとそういうことになるのですが、この有名な中曽根前総理の統一見解、これが今、これから新しい税を考えるときのベースだ、ベースであるべきだ、こう矢野委員長が指摘をして、総理はそれに賛成なのか反対なのかをお伺いしたわけです。もう一度お伺いします。こういうものを前提に考えるべきだ、この見解は正しかった、そしてそれにいろいろと工夫して案をつくった、この辺はどうなんでしょうか。
  153. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会議論というのは、正確に税調へ伝えるわけです。その税調がどういうふうにそれを取り上げたりされるかどうかの自由裁量は別といたしまして正確に伝える、それらの正確に伝えたものにおいて案ができた、それが廃案になったという全体の事実を踏まえていらっしゃるのは当然だと思いますが、そこで私どもとしては、最大公約数になっておるものとは何ぞや。それは所得、資産、消費というもののいかなるバランスをとるべきかということだけを、あるべき税制の姿として政府税調には諮問をした、こういうことでございますから、矢野さんに対する中曽根答弁というようなものがずっと継続して廃案になったという、その事実も踏まえて税調の中では御審議がいただけるものであろうという期待をしております。
  154. 池田克也

    池田(克)委員 どうも私は総理のおっしゃっている意味がよくわからないんですね。要するに、まあ単純な話なんです。この中曽根見解を守るか守らないかというこの一点なんですね。私、こういうふうにいろいろな分析もしてみたんですけれども、包括的、網羅的、普遍的、こういう要素がありました。確かに例外をつくりましたから、売上税は包括的、網羅的、普遍的という面では、随分とそういうものをやらないとおっしゃった中曽根前総理の見解に沿っていると思うのです。ところが、多段階という分は、多段階なんですね、売上税は。ですから、これを何とかしてこの発言の考え方に沿って成案を得た、こういうふうに言われておりますが、この売上税は中曽根見解の中で多段階という分はクリアできなかったんじゃないでしょうか。
  155. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 非課税品目が存在した場合には多段階というものもなくなってしまうわけでございますが、これの議論は私も極めて避けるようにしておりましたけれども、あれは多段階で例外のないものはいけない、多段階かつ例外のないものはいけない。だから、本当に理屈上読めば、一つだけでも例外があればあれはクリアできる、こういう議論に入っていくのは言葉の議論であって実質的な税制議論にはならないと思って、避けよう避けようと思って今日まで来て、これからも避けたいものだと思っておるわけでございますが、売上税の持つ性格といたしまして、多段階的性格の、多段階のものであるということは、これは私もそのとおりだと思っております、若干の例外は別といたしましても。
  156. 池田克也

    池田(克)委員 そうすると、中曽根見解の中で、多段階というものがクリアできなかった、私はこう思っているんですけれども、これはお認めになりますか。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の速記録がございますので、ちょっと読ましていただきますが、「「包括的」、「網羅的」、「普遍的」あるいは「投網をかけるようなやり方」というのは、いずれも、製造から小売に至る各段階の縦横すべての取引をカバーし尽くすといった意味合いのことを、私の素直な感じとして申し上げたものでありますので、包括といい、大規模といいましても、事前に定量的で厳密な定義があるという性格のものではないことを御理解いただきたいと思います。」「なお、矢野委員に申し上げたとおり、EC型付加価値税は多段階のものでありますが、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますので、多段階という理由だけでこのような消費税をすべて否定する趣旨のものではございません。」、こういう答弁になっております。
  158. 池田克也

    池田(克)委員 今の答弁は中曽根前総理答弁でしょうか。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和六十年二月二十日の予算委員会における中曽根総理大臣の答弁でございます。
  160. 池田克也

    池田(克)委員 これはだれに対してのやりとりですか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この答弁そのものは大内委員に申し上げたのでございますが、その答弁の中で、矢野委員に申し上げましたとおり云々と、「多段階という理由だけでこのような消費税をすべて否定する趣旨のものではございません。」というふうに答弁をしておられます。
  162. 池田克也

    池田(克)委員 このEC型付加価値税はいろいろございまして、議論があったんですね。二月の五日です。そもそもうちの矢野委員長議論をしたのが出発点だったと私は理解をしておりますが、ここで梅澤主税局長が「付加価値税と申します場合には、所得型の付加価値税というものもございますから、一概に付加価値税全部多段階ということではございませんけれども、消費課税として考えた場合にはEC型が典型的なものでございますから、これはやはり多段階であろうということになると思います。」明らかにEC型は多段階だ、こうおっしゃっているわけですね。  話がちょっとそれました。それましたが、多段階という点は中曽根前総理の見解を売上税はクリアしていなかった、私はここが一番国民が強烈に反対をした部分ではなかったか。この委員会でも我が党の大久保書記長が立ちまして、税額控除票の話が出ました。たしか何年保存するという保存の期間が政令にゆだねられたという話が出ておりました。この保存をしていなければ、たしか罰金が科せられるというのが売上税の中にございました。したがって、大きなデパートなどではそれを保存何年するかによってどれほどの準備を必要とするか、どれほど経費がかかるか、重大な問題であったというような議論がここで出たわけでございます。  この多段階という問題は非常に大きな議論を呼びましたが、中曽根総理はこうおっしゃっているのです。「私がなぜそういうことを申し上げるか、裏の面から申し上げますと、日本はこのように中小企業、流通面におきましても幾段階もあるわけで、ヨーロッパみたいに割合に簡単な流通過程を持っておるところではない世界です。特に中小企業や小売、卸の段階にはいろいろな中間的な介在物の多い社会でございます。」「そういう面もよく考えてみまして、流通の各段階に、そして投網を打つように網羅的に、そういうふうな表現を特に使ってあるというのは日本経済構造の特殊性、特に中小企業や小売の皆さんのことも頭に入れて実は申し上げておる、」こう述べております。  実は、こういうふうに中曽根総理がおっしゃったのは、たしか竹下大蔵大臣と中曽根総理の間に議論の食い違いがあった。当時の竹下大蔵大臣は、EC型は必ずしも中曽根見解と抵触しない、こういう御議論を展開されていたように思うのです。EC型付加価値税は、多少国によって若干の相違はございますが、それも全部否定されていないというふうに当時竹下大蔵大臣は答えていらっしゃる。これは食い違いがあった。ですから、五つの類型を矢野委員長が示しまして、そして中曽根総理のおっしゃっているいわゆる多段階、包括的なのはどれが該当するかとお伺いしたのですが、それに、五つに加えて、わきにもう一つ一般消費税(仮称)というのを加えられまして、竹下総理は六種類にされました。これはだめだけれども五つはいいんだというふうに一時おっしゃった。  そうしていろいろ議論をいたしました結果、EC型、そして主税局長はEC型も多段階だとおっしゃる。そしてそこでかみ合わないということになりましたが、改めて中曽根総理は、日本経済社会がヨーロッパ的でないのだ。確かにョーロッパは会社の数も少ないです。日本は莫大な数の会社がありまして、商法改正でも問題になっていると思います。非常に多段階の流通経路がある。その一つ一つに税を課し、その事務処理をする。大変なことである。それはとても日本経済になじまない。EC型はヨーロッパでは通用するが、日本の社会は経済構造が非常に違うので、日本経済構造の特殊性、特に中小企業のことも考えてこれはやらないと中曽根総理が明確に答えられているのです。  私は、この多段階問題というのは非常に重要だと思う。竹下総理は当時大蔵大臣でいらっしゃって、私は今でも思うのですが、EC型にかなり御関心を持っていらっしゃるのじゃないかな、これは中曽根見解をクリアできるんじゃないかな、こう私は当時思っておりました。しかし、総理と大蔵大臣とで詰められまして、そして最終的には総理の御意見に沿ってあの見解ができた、こう私は理解をしておりますが、この統一見解というものは、一たん政府がお決めになった以上は極めて重要な意味を持つものだと私は考えますが、いかがでしょうか。
  163. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 要するに、「EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますが、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくないと考えております。」こういう答弁でございます。確かに池田さん今思い出していただいたように、若干の答弁のニュアンスの食い違いがありました、大蔵大臣である私と。それで、よく相談してこい。それで綸言汗のごとし、総理大臣に任命された大蔵大臣でございますから、したがってそれを整理整とんをして、それでこのようなものでございます、こう言ったわけであります。  ただ、そこのところで詰まった議論、その前後の脈絡からいたしまして、多段階なものは一切やりませんというふうにとられてはならないということが中曽根総理の頭の中にありましたので、一連した流れの中で、あれは二月の五日それから六日に出して、それから流れの中で二十日にこの矢野委員に対するお答えということを前提に置いて、今大蔵大臣が述べられたような答弁で整理がされたというふうに、最近僕が振り返って整理をしてみたわけでございます。
  164. 池田克也

    池田(克)委員 私がお伺いしているのは、この中曽根見解は政府統一見解ですかということなんです。どうでしょうか。
  165. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる政府統一見解というものにも定義がございませんで、そこで、一応統一見解を示せ、こう国会などで言われて、それで政府側が作業をして、それを政府統一見解を申し上げますと言って読んだものは、これはまさに政府統一見解だ。あの場合も同じなんです。同じでございますが、政府統一見解という定義が必ずしもございませんから、政府統一見解であれ、答弁の場をかりて答えたことであれ、同じように重いものでございます、こう答えておるわけでございますので、政府統一見解の方が重くて答弁が軽いとかそういう考えは全くございません。ただ、政府統一見解という定義を探すと、これもなかなか法律に論拠するところもございませんので、どっちであろうと大変重いものです、こういうことで整理させていただいたわけでございます。
  166. 池田克也

    池田(克)委員 政府統一見解というのはだれが決めるのです、決めるとすれば。
  167. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは法制局長官にお聞きするのがいいかなと思いましたが、ちょっとそういう法制上の権威づけというものでも必ずしもございませんので、やはり質問に対して食い違い等が生じた場合に、お互いが相談してお答えするものを、それが政府統一見解であると受けとめられるのも結構でございますし、ただ、定義そのものはないじゃないかなと思っております。どういう形であれ重いものであるというふうに理解しておるところでございます。
  168. 池田克也

    池田(克)委員 法制局長官、何かございますか。
  169. 味村治

    ○味村政府委員 政府統一見解というこの言葉は法律の中にはございませんので、私の方から申し上げますといささか越権ということになるわけでございます。それで、従前、政府統一見解として国会でそういうふうにお取り扱いになっているという実績がおありになるわけでございますが、この場合にいろんなお考えの方があるように思うのでございます。  それで、ただいま総理がおっしゃいましたように、政府として、これは政府統一見解である、こういうふうに前置きをされて述べられた答弁というのは、これはいろいろございます。これが政府統一見解であることは否定はできないわけでございます。しかしながら、そうではなくて、国会の場でいろいろ議事が紛糾いたしまして政府の統一見解を示せということで、そこで政府側が、関係閣僚がお集まりになりまして、それで見解をつくりまして、その上でどなたかの閣僚が御答弁申し上げる、時には総理が御答弁申し上げるという場合、これを政府統一見解と受け取られる向きもございますし、そういうふうなお取り扱いとして暗黙裏にと申しますか、そういうふうに御解釈なさる場合もあるということでございまして、はっきりしたものは、ただいま申し上げましたように、政府側が政府統一見解として述べたというもの以外は国会の先生方のお考えによるものであろうかと存じます。
  170. 池田克也

    池田(克)委員 法制ではないのですよね。やはり、国会の今までのいろいろな歴史の中でできたものです。  国会にお詳しい総理、どうですか。総理大臣がかまない統一見解というのはないですね。必ず総理大臣が関与していらっしゃいますね。ですから、統一見解ということは、やはり一つの、そのときの状況に応じていろいろあるでしょうけれども、はっきりとその御本人が統一見解とおっしゃっていれば統一見解になるのじゃないでしょうか。
  171. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それは、法律の中に政府統一見解とは法第三条第何項によりなんというのはないわけでございますが、そういうふうにおとりになるというのは、私はそれなりに結構じゃないかと思っております。ただ、行政府によりますと窮屈になりまして、もし何か法律にないようなことを法律があるような話をして後の世にまたとっちめられたら大変だというような警戒心も多少働くでございましょうが、言葉を選び過ぎますので、厳密な意味における政府統一見解というのは法制的には確かにないと思います。したがって、私も心の中で整理をして、それでは政府の統一した見解を申し述べますと言って読んだものであろうと、総理大臣が答弁の形で言ったものであろうと、同じように重い重いものでございますというのが一番正直なお答えなのかな、こう思っております。
  172. 池田克也

    池田(克)委員 総理のその発言というのは重いことは私たちも承知をしておりますが、それがそれからのいろんな施策を縛るか縛らないか、また、国民の側から見ればどういう道筋をたどるか。それは、毎回総理大臣がおかわりになるごとにそれが変化していくということでは、外国もあるいは国民も、これは長いスパンの政策はいっぱいあるわけでございます。準備した途端にあれはやめたんだということではたまらない。  我々はこの場でいろいろ勉強してきて総理にお伺いする、一年間にこうやって総理とさしでいろいろお伺いできる期間は何日間もないわけでございます。やはりそうした点ではそこで発言される総理の一言というのは千鈞の重みがある。そしてそれはずっと日本政治影響を与えていくと私は理解しております。ですから、総理答弁というものの重み、単なる重い意味を持つということだけではなしに、特に中曽根前総理のこの話は、「私はかねてから、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でやることはしないと申し上げてきていることは御指摘のとおりであります。」前からの持論としておっしゃっているのですね。  ですから、途中でこれが気に入らなければ閣議ででもいろいろと御疑問を挟めたでしょうし、あったと思うのです。これについては、六十年から売上税をおつくりになる六十二年までの間ずっと続いてきた話だと思う。私は、そうした意味ではこれは定着をしたものだ、そして、日本の内閣としてこれは一つのきちっとした見解として、異論の余地なく六十年から六十一年、六十二年へとずっとこれは生き長らえてきたものだ、やはり私はこれを統一見解として理解されるのが素直な道筋だ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  173. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 おっしゃる意味はよく私もわかります。が、大事なことは、それに基づいて一遍諸手続をクリアいたしまして法案を提出したのですから、その法案そのものが結果として廃案になった、その一連したそこまでをまず私どもの反省材料に置くべきものではないかなというふうに思っております。  ただ、字句の議論になりますと、中曽根内閣としてはとらない、こう書いてあれば、それじゃあ内閣がかわればいいのかとか、そんな議論は私は触れない方がいいなと思って、言わないように、言わないようにいたしております、率直に申しまして。だから、そういう字句のぎりぎりした議論をする以上に、やはり廃案になったという偉大なる反省の原点から出発すべきものではないかなというふうにいつも我と我が身に言い聞かせております。
  174. 池田克也

    池田(克)委員 総理は私の聞いていることにお答えにならないで別の話をされている。統一見解と認めるべきではないですかと、こう伺っているのです。現に、これは一九八七年の二月十日に自由民主党税制改革推進全国会議というお集まりがあったそうですが、ここで中曽根総理があいさつをされておりまして、  「中曽根は大型間接税、やらないといったじゃないか」といわれることでありますが、私は、国会でその問題の質問がうんと出ました時に、政府としての統一見解を出しておる。それは、よくいわれますように、多段階で、普遍的、網羅的、包括的で、縦横十文字に投網をかけたような形で、大型の消費税を取ることはしません。これが定義です。大型間接税という定義は、こういう定義です。そういうふうに政府として統一見解を出しておる。これは矢野書記長にも、大内書記長にも、正式にそういう見解を述べておる。これが私らがいう、この大型間接税という内容なんです。極めて明快に中曽根総理自身が、これが統一見解だと。いかがですか。
  175. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今非常に明快なお話をしていらっしゃる。だから中曽根総理はいわゆる統一見解という言葉を使われて私は結構だと思っておりますが、ただ、私がちゅうちょしておりますのは、政府側に立ちますとよくあるのです。  例えば、国是か国是でないか。国是というのも随分議論しましたら、ナショナルポリシーと言えるものは国是という範疇に入れるかなというので、国是です、こう答えたことがございますが、統一見解とはということになりますと、また議論を呼んでもなりませんので、ここで統一見解を申し述べますと言って読んだものも、そしてそれがたとえ総理答弁の形で行われたものも、同じように大変な重い意味を持つということで御理解をいただいた方が、字句論争になりますと、統一見解とお思いになって結構だと思いますし、私も国会以外の場で仮にあれは一つの政府の統一見解であったという言葉を使っても非難は受けないじゃないかと思いますけれども、国会というものは、やはりここでは正確に法律何に基づいてという基礎に置かないと、政府見解という言葉を使っていいのかな。  同じようなものですとまでは言えますけれども、定義のないものをということで、国是かどうかという質問がありましたときに、その質問をなさったお方に何回もお話を聞いて国是という定義をつくりましたときも、随分、これは私官房長官の時代でございましたか、苦労をいたしましたが、統一見解と言ってよく読むと、同じように重いものでございますということで御理解いただくのが一番いいんじゃないかな、いい答弁じゃないかなとも思うわけでございます。
  176. 池田克也

    池田(克)委員 答弁と統一見解が同じですか。それは両方重いでしょう。しかし、統一見解と言えば随分いろいろな例もございます。敵基地攻撃と自衛隊の範囲、三十一年二月、鳩山総理とか、自衛隊での原子力利用は認められないとした原子力利用に関する統一見解、四十年四月、愛知科学技術庁長官とか、武器輸出に関する政府統一見解、五十一年二月、三木首相など、こういうものは随分とある。そして、それが外交にも諸外国の信用にもつながり、ずっと日本政治、行政というものを縛ってきた。ですから、単なる答弁ということでは私は済まない。  中曽根総理はここに明確におっしゃっているし、これは中曽根総理政治をくくってきた一つのはっきりした哲学です。たまたまぼろっと出たものじゃありません。しかも、EC型と対比して、あの大変な流通機構を持つ日本の社会とヨーロッパ社会とは比較できないんだ、どうしてもこれはやってはならないんだということまでおっしゃっている統一見解でありますから、総理、今両方とも重いものだ、中曽根総理がそうおっしゃっているのはそれは結構だけれども、両方とも重いものだ、私はそれは納得できませんね。いかがでしょうか。
  177. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、それは答弁にせよと、こう申しておりますのは、実際あの場面に直面しておりまして、普通あの後大蔵大臣である私が、あるいは中曽根総理政府統一見解を申し述べますと言って申し述べられても、決してあの場合おかしい、不自然なものじゃなかったと私自身も思っております。ただ、統一見解という必ずしも定義がないのに、統一見解でございます、ございませんと言うこともおかしいし、要するに、統一見解を申し述べますと言って申し述べようと、そういうまくら言葉がなかろうと、一生懸命に相談して矢野当時書記長にもお見せをして、それならよかろうということで読んだわけですから、それは同じように重いものである、こう言っておるわけでございますので、先ほどの答弁ちょっと取り消しますというようなものであるという意味では決してこざいません。
  178. 池田克也

    池田(克)委員 この問題について私は非常に納得しがたいのは、今までの税の議論の中で、この多段階、包括的、網羅的というのは非常に国民の中によく知られた話になってきた。したがって、そういういろいろな議論の中で一番鮮明に国民に私は映っていると思う。なかなかごろもいいんですね。多段階、包括的、網羅的。そしてそういう税というものはとらない、そう言われて、しかも選挙公約になって、できてきたらこういう状態だ。非常に複雑だ。  たしか宮澤大蔵大臣も、先日私どもの大久保書記長の質問に一般論としてお答えになったと思うのですが、今後の税のあり方として、広く、薄く、わかりやすいということを挙げておられました。やはり頭の中にはわかりにくい売上税だったなということが少しはおありになったのじゃないかなという気が私はしているのですが、やはりこういう議論をしていく一つのベースにこれがある。もしこれが気に入らないということがあるならば、重いとか軽いとかという話じゃなしに、これは捨てる、中曽根総理がおつくりになったこの見解はもうやめるのだという新しい決定をなさったらどうですか。
  179. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 やはり、当時総理大臣がおっしゃったものを、しかも自分で、場所こそ異なれ、統一見解というまくら言葉さえつけておっしゃったものは、これは重要であると思っております。  私どもが言っておりますのは、あれを一つ一つ議論するのはやめようやなどと私もたびたびこう申しましたのは、じゃあ一つ例外があればすべてセーフなのかとか、そういう議論は言葉の上の議論であって、著しく主義主張、イデオロギー、よって立つ基盤が皆違う者がやるならともかくも、同じ日本人仲間、日本人仲間というか、この国会の中で同じ日本のことを考えながら議論をしておるお互いの議論の中で、言葉の問題の末節をとらえながらの議論は余りしない方がいいんじゃないかなと思っております、率直なところが。が、しかしながら、中曽根さんがお答えなすったことは、やはり、政府統一見解であれ何であれ、政府統一見解であると確定をいたしたといたしましても、それは重いものであって、なおそれに基づいて種々工夫をして出した法案が結果として廃案になったという総合したその重い事実というものを踏まえて、まず税制はいかにしたら廃案にならぬようなものができるでしょうかと、まあそういうことを相談していこうというのが今の実情じゃないかなというふうに思っております。
  180. 池田克也

    池田(克)委員 今のお話を伺っていますと、統一見解であるにせよ答弁であるにせよと繰り返し竹下総理はおっしゃるのですね。竹下総理の認識には、統一見解というのはそんな、あれですか、言うならば、重くないのですか。取り消さないという、それはわかります。しかし、それが次々の政府をやはり一つの基準として縛る、こういうようなもの。私はこういうふうに軽いものだというふうに理解してなかったんです。だれに聞いても、統一見解というものはやはりずっと縛ってきた。それが気に入らなければ、また新しくつくるか、それを破棄するか、きちっとした見解を出すべきだ。国民が政治を判断する場合に、いろんな議論があるにせよ、やはり統一見解とされて打ち出されたものは一つの結論として出てくる、こういうふうに私は思うのですが、いかがですか。
  181. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私が申しております統一見解というのは、確かに法制的な定義はございません、したがって、中曽根さんが政府の統一見解を申し述べますといっておっしゃらなくても、答弁の形でおっしゃっても、同じように重いものでございますと、こう言っておるわけでございます。ここのところまでは大変はっきりしております。  それで今度は守る守らぬの議論をいたしますと、じゃあ一つ例外があればいいですかとか、そういう議論はお互いこのベースでする議論としてはむしろ避けた方がいいんじゃないかなと、前々から私そう思っております。そうして、今日までも、じゃあ政策転換した方がいいじゃないか、これも一つの見識だと私思います。いわゆる武器輸出三原則とかいうような問題もございましたが、政策転換を行ったこともあるわけでございますから。政策転換を行ったことはあるわけでございますが、あの文言そのものが、ムードとして、おもしろい言葉でございますから、それが定着しておるという面もございますけれども、私はあの文言そのものを政策転換をしてこのように変えましたという性格のものではないなと、こんな感じがいたしております。
  182. 池田克也

    池田(克)委員 委員長、私さっき申したように教育問題もあるのですけれども、とてもこの話は総理と幾らやっても、私は統一見解をこんなふうに総理がお考えになっていらっしゃるのは極めてこれは遺憾です。私は、今までもいろいろな方に伺って、統一見解については、政治判断、どこでどういうふうな統一見解が出されたか、場所、あるいは国会なら国会委員会なら委員会、政府は内容について政治的かつ道義的な責任を負う、こう明言している人もいます。特に中曽根総理竹下新政権との間には、いわゆる総裁選におきましてバトンタッチされた、私はこう理解しております。外形的にも、国民から見ても、大きな政策の違いがあって争ってという形ではなかったはずです。ですから、そういう意味では、中曽根前総理が統一見解とおっしゃった、そして非常に苦しまれながら、そこで税をつくって、ああいう事態になった、私は、この事態というものは竹下総理に引き継がれ、そしていろいろなまた議論があると思います。  しかし、一たん国民がこれを知り、そしてその枠の中で、まあ多段階の部分だけは私は残ったと思いますけれども、一つの税の話が出てきた。とするならば、私は、これについては、中曽根総理に対する竹下総理の姿勢というものがここで出てくるんじゃないか。これはだめだったんだからもうこの見解はだめだった、はっきり言うならば、中曽根総理のあの見解が売上税をああいうふうにしちゃったんだというふうに、私はとりたくないですけれども、そういうふうな言い方もあり得るだろうと思うのですね。私は、そういう意味では、国民が見て、この多段階、包括的、網羅的という一つの大きな政府の統一見解というものは断じてお守りになるのが礼儀であろう、また継続性であろう、こう考えますが、再度御答弁をいただきたいと思うのです。
  183. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大変に重いものであるという認識を持っておりますし、それに基づいて工夫して法案をつくりました、そして各方面からの批判を受けました、本当のことはお互い理解しておるのは国会では審議に上らなかったのですけれども、審議以前でございましたけれども、とにかくいろいろな意見がございました、したがって、これが廃案になりました、そういう一連したものの反省の上に立って、本当に国民のためにどうしたらいいかというのをお互いが語り合う、これが一番大事で、あのものを仮に、はい、あのものは捨てました、捨てましたと言うとどういうことになるのか。じゃああのものを仮に、守りますと、こう言ったところで、理論的に、いや、これとこれとこれとが欠けておりますから守ったことになります、とかいうような議論はやっぱりしたくないと思うのです、率直に言って。  したがって、私なりに、何遍聞かれましょうとも、池田さん、あなたのおっしゃるとおりでございます、が、しかし、それに基づいて案をつくったものが廃案になりました、そういう反省の上に立って、まあ廃案にならぬようなものをつくりましょうと言うのは国民に対しては失礼なことでございますが、国民に理解を得られるような税制を構築しましょう、これが私の誠心誠意のお答えではないかな、こう思っております。
  184. 池田克也

    池田(克)委員 また最初に戻っちゃったのです。あれに基づいて法案をつくった。私は多段階という要因は残った。そうお認めになったはずです。ですから、あれに基づいてベストなもの、確かにベストであったかもしれませんが、あれは中曽根見解を完全にクリアしているものではなかった。まだまだこの見解は間違っているんではないんだ。  いかがですか。見解、間違っていると思いますか。
  185. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いや、多段階のことも、先ほど宮澤大蔵大臣からも答えがありましたように、二月の五日から始まりまして六日に来まして、ずっと議論をいたしまして二十日に来まして、その中の脈絡の中で整合性そのものはついておるというふうに私は思っております。ただ、だからそれらに基づいて出したんだ。それであの考え方からこういうものが例外として存在しておるというような議論は、私自身、本当は余りしたくないのですが、しかしながら、やっぱり言葉にとるまえられるよりも、廃案になったという事実から、その反省の上に立ってお互いが相談していくというのが一番大事なことじゃないかなと思っております。
  186. 池田克也

    池田(克)委員 ですから、その反省の上と今おっしゃった、その反省が大事なんです。あの見解があった。その見解と売上税とを検証して、どこがどうだったのか。これはいろいろな例外の一つや二つの問題とか、いろいろ議論はあると思う。これが私は不十分だと思う。矢野委員長が指摘をしておりますように、廃案という事実のもとにあの一つの中曽根見解、統一見解ですね、というものも一緒に押し流してしまっていらっしゃるのではないかな。これを残す、これを残して、そして新しい案というものは当然あるはずで、それが前提になるべきだという矢野委員長質問があった。私はそれをきょうは伺っているのです。堂々めぐりになっている。  この統一見解という一つの評価あるいはまたあの見解をもとにして成案を得た、この部分がどうしてもかみ合わないんですね。私は、この問題は我が党の矢野委員長が取り上げた問題であるだけに、簡単には引き下がれません。非常に重要なことであり、これから国民に税を説明して、こういう税がこれからできる、これはどうだという場合に、あれはどうなったのですか、あれだけのことがあり、あれだけの議論があり、本当に呻吟しながら恐らく政府も例外をおつくりになったりいろいろなことがあったろうと思います。そういう結果の去年のことしであるだけに、この問題をはっきりしないで、統一見解であるけれどもそれはそれとして、重いけれどもそれはそれとして、こういうふうな御答弁は私は納得できません。再度御答弁を求めます。
  187. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一党の書記長の御質問に基づいて整理整とんをいたしまして、時の大蔵大臣であった私も参画いたしまして事前にお示し申し上げ、そして、統一見解というまくら言葉はないものの総理答弁の形で申し上げたものである、これは事実そのとおりであります。したがって、それに対するいささかの疑念でも払拭されない限りにおいては、これについては自分はすとんと心に落ちない、その気持ちも私はそれなりに理解できるところでございます。こういう論議を重ねてやっておるうちに、税制そのものの論議というのがなお深まっていくんじゃないかな、こんな感じもしながら、大変傾聴させていただいた次第であります。
  188. 池田克也

    池田(克)委員 先ほど来の議論の中で、中曽根総理がみずから統一見解とおっしゃっている、竹下総理と打ち合わせをされておつくりになったあの文言ですが、統一見解だった、あるいはである、現在もですね、というふうにお認めになりますか。
  189. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 統一見解であると池田さんがお認めになるのは、私はそれは結構だと思うのです。ただ、私自身が、定義のないものを、統一見解を申し述べますというまくら言葉で申し述べればよかったのでございますけれども、定義のないものを統一見解ですと言うことはやはり避けるべきかなと思っておりますので、この統一見解であれ、それを総理答弁の場をかりて言ったことであり、同じような重いものです、こういう表現で御理解を、それこそ何百回そういう発言をしてきておるということであります。
  190. 池田克也

    池田(克)委員 中曽根総理が統一見解だとおっしゃっておりますと私が言うのは自由だ、こういうことですが、竹下総理は、中曽根総理がおっしゃっている統一見解という一つの当時の総理の決定、これをお認めになりませんか。
  191. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 正確にその場所を、どこでどういうふうにおっしゃったかというのは私、必ずしも正確には理解をしておりませんが、中曽根総理がそうおっしゃっておるということは、それで私は結構な表現だと思います。
  192. 池田克也

    池田(克)委員 ちょっと必要であればこれをごらんに入れて……。  今のお話委員長もお聞きだと思いますけれども、統一見解、私はこれは非常に重要な問題だと思うのです。これからの日本政治を考える上に、統一見解というものが守ったり守られなかったり、こういうふうな異常事態を、これからの日本政治を考える場合に、こういうあいまいな状態では私は許せないと思うのです。また、統一見解については規定がなければ、これからも何らかの検討をされるべきだし、統一見解という言葉は国民は知っております。何かあったときには統一見解というのが出てくるんだなと。我々も国会でいろいろ議論をして、何年か前でございましたけれども中曽根総理の統一テストの問題、そんなものは要らないとおっしゃった。海部文部大臣と食い違いました。臨教審の答申と食い違いました。しばらくたってから統一見解を出していただいた。こういう覚えがございますけれども、そういういろいろな経過の中から、今後の日本政治を占う上で統一見解というものは私はもっと大事にすべきだと思いますし、きちっとした政府の態度をお示しになるべきだと思います。  改めて委員長におきまして、この統一見解とは何か、そして中曽根統一見解というものが事実あったのかどうか、この問題について委員会としての御判断をいただくようにお取り計らいをいただきたいと思います。
  193. 奥田敬和

    奥田委員長 池田委員理事会で協議するように処理したいと思いますけれども、先ほどから論議の推移を聞いておりまして、総理は、統一見解は法的にどうあれ重いものであるという認識の上に立って、しかし、廃案という厳粛な事実と同時に新しい事態に至ったという認識の上でお答えになっているような気がいたします。  それで、予見を与えないで合意を求めて議論をしてほしいというお二人のやりとりの中で、よく理解できましたけれども、統一見解が法的にどうあれ重いものであるという認識は示されておる、この事実だけは議論経過ではっきりしたんじゃありませんか。
  194. 池田克也

    池田(克)委員 委員長のそういうような御見解は私、求めておりません。取り計らいを求めているのです。  ですから、状況として統一見解は重い軽いの問題はなしだと思います。統一見解は守るか、あるいはそれが不要ならば再度統一見解をつくりかえるか、あるいは統一見解はもう効力ないんだというふうに政府がお決めになるか。我々は、あった以上はそれは守られると今まで思ってきました。きょう初めてです、これが守られるんだか守られないんだかという。統一見解というのはこんなものなのかという話は初めて伺いまして、大変に驚いているところです。ですから、そういう意味からはもうこれ以上私、この問題では質問できません。委員長にひとつこのお取り計らいをお願いいたします。
  195. 奥田敬和

    奥田委員長 では、本問題は重要でございますので、理事会の協議にゆだねるようにいたします。――ただいま理事間から御提案ございまして、本問題は大変重要でございますので、理事間協議にゆだねたいということでございます。  質問を継続してください。池田君。
  196. 池田克也

    池田(克)委員 これで一時間半経過をいたしまして、ぜひとも理事会でいろいろお取り計らいをいただきたいと思っている次第でございます。  大変短い時間になりましたのですが、駆け足で教育問題をお伺いしたいと思います。  竹下総理の所信表明並びに施政方針演説をお伺いいたしまして、教育についてお述べになったくだりを何度も読み返しました。総理の教育観が鮮明に浮かんでまいりません。お若いころ教壇にお立ちになった御経験もおありで、この際改めて総理の教育に関する御所見を承りたいと思います。
  197. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それは、子供たちがそれぞれ個性を伸び伸びと伸ばしていく、そういうことを客観的に支えていくのが教育のあり方だなということは漠然と私の考えの中にもございますが、基本的には、私も若いころ文教委員会に長らくおりましたけれども、憲法に基づき、そうしていろいろな経過を経ながらできた教育基本法というようなものの精神というのが、やはり文字に書いたものでは、哲学は別といたしまして、一番根底に置くべきものじゃないかな、こう思っております。
  198. 池田克也

    池田(克)委員 中曽根前総理は教育改革を「戦後政治の総決算」こうとらえておられました。私は、戦後政治といいますと、子供のころ習いましたが、軍部の解体と完全な武装解除とか財閥の解体とか独占資本の排除とか農地解放とか地方自治による権力分散、教育改革、六・三制の発足、労働運動の育成等教わってきましたが、なるほど見てみますと、教育を残す他のいろいろな部分というのは、戦後政治大きく変わってまいりました。もちろん教育も変わってきてはおりますが、六・三制を中心とした今日の学校制度、いろいろと問題もあり議論されておりますが、竹下総理は中曽根前総理と同じく教育制度の大改革、教育基本法の見直しなどをお考えになっていらっしゃるかどうか、重ねてお伺いをしたいと思います。
  199. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 「戦後政治の総決算」ということに対しても、それぞれ人によっていろいろな意見があろうかと思いますが、私も戦後の三大改革、それは一つは憲法改正でありますが、第二の柱、あるいは農地解放と教育改革ではなかったかな。占領下にあったときとは言いつつも六・三・三・四制というものができて、それが今日定着してきておるということは、私は旧制時代の人間ですけれども、素直にそれは思っております。  ただ、そこにいろいろなひずみ、ゆがみ、これは税法上のひずみ、ゆがみとは違いますけれども、できてきたということは私も認めておりますだけに、それらを文教委員会等におりました際も今日も一生懸命各位が努力して、それの是正の方向を模索しておられる。そこにまた臨教審というものもできて一つの役割を果たして答申に至ったというのが、今の段階じゃないかなと思っております。
  200. 池田克也

    池田(克)委員 先日の本委員会で山口書記長に対して憲法八十九条、私立学校に対する補助について触れておられますが、現在の私学助成を疑問とするのか、あるいは寄附講座の設置とか、教育に関する国家百年の大計に基づいた別枠予算をお考えになっているのか、何らかの竹下総理としてのこの私学にまつわる、非常に重要な課題でございますが、憲法八十九条を問題としてお話しになっておりましたので、それについての御所見を承りたいと思います。
  201. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私学問題についての御意見を交えた御論議でございましたが、私自身、私学助成というものを行うべきだという議論が行われた際に、本当は私学助成というのはノーコントロール、ノーサポートであった方が、私学の建学の精神というのは一番生きるんじゃないかな、こういう感じを持っておりましたけれども、私の意見がだんだん少数意見になりました。同じ母校を持っておりますが、それは慶応、早稲田的発想だなんて言われまして、私自身もその考え方を引っ込めざるを得なかったことがございます。これは八十九条の問題とは別の議論でございますが。  八十九条の問題については、大体財団というものでクリアできておるんじゃないかと私は思います。そこで、やはり基本にあります国にかわって私学が教育に当たっておるという、そういう位置づけから考えると、私学助成というのが効率的に行われていくというのは好ましいことだ。そこで御意見にもありました、恐らく指定寄附制度なんかもっと考えたらどうだとかいう御意見でございましょう。それから、おまえ大蔵大臣の時代に厳しいシーリング設定をしてきたが、別枠というようなことを考えたらどうだ、こういう御意見もございましょうが、今のところ私から来年度予算の概算要求基準設定のはるか前に、何々は別枠にしますと言うほどの心の準備ができておるわけじゃございませんけれども、教育の重要性という観点からおっしゃった御発言として、私も十分理解を得る努力をしなければいかぬとは思っております。
  202. 池田克也

    池田(克)委員 ポスト臨教審、俗にそういうふうに申し上げているわけですが、臨教審の後、答申の実施を促進する機関の設置ということがありまして、これについてはいろいろ議論があったようでございますが、ことしの総理の施政方針演説の中にこれに関する発言が全くないんですね。初任者研修とか教員免許に関するものについては教員の資質向上として挙げられておりますし、入試センターを改正することについては大学入試制度の改革として法案を提出すると明示されております。しかし、ポスト臨教審については一言も触れていないのはどういうことか、お伺いをしたいと思います。
  203. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆるポスト臨教審という問題につきましての法案、これを臨時教育改革推進会議設置法案(仮称)、こうして三月中旬までに出そう、こういうことになっておるわけでございますので、私は、その段階でそういう問題についての大体の議論は出尽くしておったわけでございますけれども、改めて法案提出の時期等にポスト臨教審問題については言及できる機会があると思って、特にそれを言葉として取り上げなかったというだけだとお考えいただきたいと思います。
  204. 池田克也

    池田(克)委員 ポスト臨教審法案、これは二つの説があるのですが、一つは臨教審答申を実施するための機関車と申しますか牽引車として、もう一つは、既に今幾つかの法案が臨教審絡みで今国会出ておりますが、わきから進捗状況をチェックする、こういう二つの見方があるのですが、総理はどちらをおとりになります。
  205. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる教育改革の側面から旗振りをする役割、こういうような議論もございますけれども、私も専門家に対してそれをことで判然と、整理整とんしてお答えして間違いを犯してもなりませんので、これは文部大臣の方からお答えした方が適切だろうと思います。
  206. 中島武敏

    中島国務大臣 ポスト臨教審と申しますと、まさに臨教審で御審議をいただいたその後のフォローでございますので、素直にそのように考えておりまして、言葉で申しますと、臨教審で三年間御審議をいただきまして、これから二十一世紀に向けて非常に示唆に富んだ幾つかの御指摘をいただいております。それをもとにいたしまして、教育改革推進大綱として当面進めるべき八項目に絞っていただいておりますので、この八項目を具体的に着実に進めていくということが私どもに与えられた使命である。したがって、ポスト臨教審というのは、それを着実に進めるための推進の役割を持っていただくべきものである、スクリュー役と申しますか応援団的な役割と申しますか、推進するのを着実にスムーズに進めていただくべき会議グループであるというふうに判断をいたしております。そして、今おっしゃった第三者的にウオッチするものであるかということについては、そのように考えておりません。
  207. 池田克也

    池田(克)委員 そういうふうな推進というお話でございますが、私は、ポスト臨教審としては三年間というのは非常に短いのじゃないかと思うのです。教育を改革するのは非常に時間がかかると思うわけで、なぜ三年間なんでしょうか。
  208. 中島武敏

    中島国務大臣 私どもの教育そのものは国家百年の大計である、これは確かでございます。しかし、明治以来日本の教育の水準は非常に高まってまいりました。高い上に、じゃ何を変えるかと申しますと、二十一世紀に向けて社会が習熟度を増しておりますので、習熟度を増した社会というのは社会そのものが多様化、個性化しております。それに対応できる心豊かなたくましい青少年をつくるために、教育そのものが多様化、個性化に向かっていくべきである、そういう大前提があるものでございますから、それに向かってどうしたらいいかという御議論を三年間いただいたということは、非常に貴重な三年間であったというふうに理解をしております。
  209. 池田克也

    池田(克)委員 先ほど来、私も教育問題をお伺いしてきたのですが、持ち時間大変わずかになってしまいまして、きょうの御議論を聞いていらして、非常に時間がかかりました。  そして、先ほどの政府統一見解、総理、私コピーをお渡ししましたけれども、中曽根総理は明確にそうおっしゃっていらっしゃる。お認めになりますでしょうか。その件について御答弁いただけますか、その文章につきまして。はっきりと政府統一見解、こうお述べになっていらっしゃいます。自民党さんの機関誌であると理解しておりますが……。
  210. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、二月十日、中曽根さんが自由民主党税制改革推進全国会議でお話しなすって、宮澤現大蔵大臣もこれを聞いていらしたということで、今、国会がどうなっておるとかいうような議論ではなく、何となく非常に自分なりにかみ砕いたわかりやすい表現としてお使いなすっておった言葉ではないかと思っております。したがって、今の統一見解とは何ぞやということは、また委員会、理事会でいろいろ御議論いただけると思いますので、それを待つといたしまして、こういうお話をなすったということは、私も池田さんからこれをもらい、そして確認をいたしたところでございます。
  211. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十六分休憩      ────◇─────     午後三時三十分開議
  212. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  池田君御指摘の件につきましては、引き続き理事会で協議することとし、池田君の残余の質疑は後に譲り、川崎寛治君の質疑を許します。川崎寛治君。
  213. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 きのう民放を夕方見ておりましたら、「百日目の竹下政権」という特別番組がございました。あるいは総理もごらんになられたかとも思いますが、私、その中で大変注目しましたことは、アンケートの中に竹下総理については「わかりやすい」「わかりにくい」という項目があるわけでありますけれども、「わかりやすい」が四%、「わかりにくい」が四七%、こう出ておりました。総理の御見解を伺いたいと思います。
  214. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに言語明瞭、意味不明と言われたのもその辺にあるのかなという自己反省をいたしておりまして、これからできるだけわかりやすくしなければならぬなと思っております。
  215. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 先ほど来の池田委員質疑の問題もやはりそうだと思います。現代というのは内外ともに大きな大変な変革の時代でありまして、枠組みが世界日本も大変大きく揺らいでおります。そういたしますと、それだけに不安定ですし不透明ですし見通しがつきにくい。そういう時代の中における日本のトップリーダーでございますから、言質をとられまいということで言い逃れをするという論議の進め方をされてはいけないんじゃないか。やはりトップリーダーとしての指導性というものは要求されるわけでございます。それで、大変大きな不透明な時代であるだけに、最高の指導者として問題がどこにあるのか、どこに行こうとしておるのか、どこに進めたいと考えておるのか、竹下総理は今自戒を込められてお答えになられましたが、そういうことを明確にしていただきたいということを私はまず冒頭お願いをしておきたい、こういうふうに思います。  先ほど来の税制の議論で、五十四年の国会決議の問題もございました、中曽根首相の統一見解の問題もございましたが、五十二年十一月二十二日に当時の福田総理政府税制調査会に諮問をいたします。その諮問は、「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」いかんというのが福田総理の諮問でございました。それに対して一般消費税という、政府税調からの検討しなさいという答申があって、大平内閣のときに導入しようとして失敗したわけですね。そういたしますと、財政体質改善に関係のない税制改革というのがあるんでしょうか。伺いたいと思います。
  216. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 結論的に申しますと、租税を主として歳出の財源に充てるべきものであるという意味においては、私は財政ということを抜きにした税制、全くネグった税制というのはあり得ないのではないかと思っております。  今私どもが主張しておりますのは、この五十二年、それから五十四年にしても、財政再建のためのあるべき税制の姿ということであった。今は税構造そのものについて所得、消費、資産のバランスのとれた税体系という、表現の仕方とニュアンスの相違はございますけれども、全く財政ということをネグった税制というのはないというふうに私も思います。
  217. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ですから諮問は財政再建のためにという諮問をしているのではないんですね。財政体質改善のためにはと、こういう諮問をしておるわけでありますから、今は財政再建のためにこの決議はクリアできるんだ、こういう論理をお立てになっておりますけれども、それは大変間違っておる、私はそう思います。  そして私は、やはり大平さんというのは立派だったと思います。つまり、民主主義というものを十分踏まえておられた。これは後で大蔵省にだまされた、こう言って恨みを言われたという裏話もございますけれども、しかし大平さんはやはり国民に問うた。そして敗北をした。そこで国会決議になったわけです。そういたしますと、そういう手続というのが、私はこの間も補正の審議の際に申し上げましたが、税制改革と民主主義、その手続というのが私は大事だ、こう思うのです。でありますから、そういう手続を、つまり国民のコンセンサス那辺にありやと、よく総理は使われます。国民のコンセンサス那辺にありやというその問い方、それはどういうものであるべきでしょうか。
  218. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国民を代表して構成されておるのが国会である。したがって、国会議論が煮詰まってある種の方向が出るということは、私は一つの国民のコンセンサス那辺にありやをつかむ一番大きな舞台の一つではないかなと思っております。  そもそもが御指摘があっておりましたように、国会というのができたのは、イギリスで税金の使い方によって始まったのが国会でございますから、その出発の意義からいって使い方、使い方となれば当然それの調達の仕方というようなことが国会の場で議論されていくというのがやはり一番好ましい姿じゃないかなと思っております。
  219. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今イギリスの例をお出しになりましたので、イギリスにおける税制改革というものを、つまりイギリスをモデルにされた御議論だったと思いますから、そうしますと、イギリスにおける税制改革、この間もちょっと触れましたけれども、そこを私は問いたいと思いますね。  大平さんは一般消費税を選挙に問うて、途中で下げられた。そして国会決議、こういう段階をとられました。中曽根さんはベストだ、こういうことでしたが、中曽根さんの方は、これは統一地方選挙で、いわば国政選挙ではございませんでしたが統一地方選挙で国民の審判が下った。そして廃案という経過をたどったわけです。そうしますと、一般消費税もそれから売上税も国民の意思那辺にありやという問題については選挙に問うているわけです。私はやはりこれが民主主義だと思うのです。いかがですか。
  220. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一つの考え方であると、私は否定するものではございません。しかし、やはり国会自身で国民の代表であられる皆さん方のコンセンサスがおのずからできていくということは、私は税制改革のその都度総選挙で意思を問うというものとは別の角度から大事なことじゃないかなと思っております。
  221. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 中曽根内閣は、六十年の九月二十日に諮問して、税制の抜本的――抜本的ですよ。つまり今は抜本的じゃない。もう中曽根さんのときに抜本的見直しについて、こういうことで諮問に対して答申をもらっているわけですね。答申をもらっているわけです。だからそれをまたあなたも受けて諮問をしておられるわけでありますけれども、この中曽根さんの諮問に対して、答申が出ます前に選挙が一つ入った。しかし、その中曽根さんは選挙を意識しておられますから、まあ福田さんが、今読み上げましたような「国民経済の健全な発展を目途としつつ、国、地方を通じて財政体質を改善するため、税制上とるべき方策」こういうのを福田さんは諮問をされたわけですが、中曽根さんは長々長々と書いて、そして「税負担の軽減、合理化のための方策について明らかにし、」という、減税を先にしてくれ、こういう選挙を意識をしたのを出されたわけですね。そして選挙があった。同日選挙になりましたね。その同日選挙は、大幅減税をやります、大型間接税導入しません、この二つがセットになって同日選挙で問うたわけですね。そして大勝利された。それで大勝利をすると直ちに、この間もちょっと触れましたように、七月の八日でしたかにはもう税制調査会の小委員会が動き出すわけですから、つまり三百議席を背景に今こそ押し通せ、こういう方向に走ったわけです。  そうしますと、そのときの国民の御判断というのは、つまり同日選挙で問うたときの国民の御判断というのは、減税と大型間接税を導入しないというこの二つをセットにして国民の皆さんは受けとめたわけです。そうしますと、内閣がかわったからといって統一見解を外したり、あるいはさらには五十四年の国会決議は構わぬのだ、こういうことには私は民主主義の原則からいけばならない、こう思うのです。いかがですか。
  222. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 中曽根内閣の選挙の前は、非常に整理して分析していらっしゃいましたが、確かに減税問題というようなものが公約の中にうたわれております。大型間接税、これも言葉で申し上げるわけじゃございませんが、公約の文書には載っていないにいたしましても、国民も反対し党も反対するようなものはやりません、こういう発言があったことも事実であります。それらが、やはりそれだけが選挙のテーマじゃございませんけれども、一つのテーマであったというふうに私も思っております。  それからいま一つは、五十四年の決議の問題でございますけれども、私は、あれはあくまでも財政再建を進めていくための手順とでも申しましょうか、そういうことが書かれておったものであって、それについていろんなことがやられてきて、それにさらに、議長あっせん等にもございますように、あるべき税制の姿というものを本格的に議論すべきだというので、あのときの税制も議論しなさいよということがさらにこれが拡大されて今税制改革の論議になっておるというふうに思いますので、それぞれの歴史的つながりというものはあると思っております。したがって、その一つ一つにつきましてこれは出直して民意を問うべきだということには必ずしも私はくみさないではなかろうかというふうに思っておるところでございます。やはり四年間の、それこそいつも言われますが、与えられた大事な大事なこの期間というものの中で、あるべき姿というものをお互いが苦吟しながら議論して構築していくというのが本筋じゃないかなと思っております。
  223. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 四年間の任期は確かに大変大事な、国民から負託をされた任期だ、こういうふうに思います。  ただ、イギリスの例をまず言われておるわけでありますけれども、そうしますと、イギリスとアメリカは確かに違うのですね、税制改革の手法というのが違います。アメリカの場合は大統領が一般教書で出し、財務長官が原案を出し、そしてさらに大統領原案にして国会の中で二年、三年という議論をして成立をするという、しかし、それは国民参加ですね。ですから選挙にも問うておりますし、さらに国民の参加もしてもらっているというやり方をしている。  イギリスの場合は、これは宮澤大蔵大臣が二十日の参議院の予算委員会でお答えになっている問題とも絡む点でございますけれども、イギリスの場合は、私は、大変やはり民主主義というか国会の先輩としてのやり方をしているな、こういうふうに思います。でありますから、付加価値税を導入いたします点についても、まずグリーンペーパーを出しました。そのグリーンペーパーというのは、今の税制の問題点は何か、どこに欠陥があるか、どこを改めなきゃならぬと思うかというふうな、いや、改めるというよりも今の現状の問題点はどこかという税制の今の問題点というものをグリーンペーパーとしてまず出して、そして国民の参加を願い、国民の議論を求める。そしてその上でそれを政府側が受けとめて、これは法律案大綱、税制改革案大綱というホワイトペーパーにしますね。ホワイトペーパーにして今度は、つまりですからもう税制の大きな方向というのははっきりしているわけです、それを今度は国民に示して議論をしてもらう。私はこれが国民の意思那辺にありやという問い方としてはまさに民主的な手続の問題だ、こういうふうに思います。そしてそれを議会が受けとめて、今度は議会の議論にしていく。やはりまず三年かけておりますが、そういう過程を通っておる。  それで、十年来にわたって税制の議論をしておるんだ、こう言いましたけれども、とにかく言語明瞭、意味不明の論戦を繰り返している。そして今度の地方公聴会でも政府税調委員自身が、案がないんだからこれはどうにもならない、お題目だ、こういう言い方をして物議を醸したりもしておりますけれども、今度の地方公聴会もそういう国民参加になっていない。これは政府税調の説明の会か、こういう憤激も出ているわけですね。あるいは農村地帯ではマル優廃止けしからぬという農家の皆さんの声も出てきている。退職金のない自分たちにはマル優を廃止されてどうなるんだという不安も訴えられているわけですから。  そうしますと、そういうイギリスの、今総理はいみじくもイギリスを冒頭例にとられました、だから私はやはり、イギリスの議会制民主主義というものを念頭に置かれてお答えになられたんだ、こういうふうに思いますから、そういたしますと、やはりイギリスのようなそういう、つまり国民に問う。その問い方はいろいろあると思いますよ。それは、一般消費税なり売上税なりという経過からすれば、私は選挙という問い方が一番国民の隅々にまで議論いただけるやり方だ、こう思います。  でありますから、これは大蔵大臣にお尋ねしましょうか、当面の責任者なんですから。つまり、今の税制の問題点はどこにあるのか、あるいは売上税の失敗は何であったのか、そういう問題点を明らかにしてもらう。そしてそれは政府税制調査会との関係もプロセスとしてはあると私は思いますけれども、そういうことを明らかにして国民の皆さんに示す。この間お示しになられました「税制改革の基本課題」というのはそれになっていないわけでありますから、そういたしますとそういうプロセスをとるべきであると私は思いますが、いかがですか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 終局的にはどちらの国におきましても国会において御議論をいただき、御決定をいただく問題でありますが、それに至る前に国民的な議論あるいは国民に対する情報の提供といったようなことが必要であるということは、おっしゃることに全く私も異存がございません。  イギリスの場合には御承知のように、御指摘のようなことで白書などでそれを国民に問題の所在を知らせる、それによって世論の起こるのを待つ、こういうことでございましょうし、我が国の場合には、例えば政府の税制調査会といったようなものは、政府自分だけの狭い判断に立たずにできるだけ多くの各界を代表される人々にお集まりを願って、それも一年や二年ではなく長いこと問題を御議論を願うという、これはやはり私は一つの世論を吸収する方法である、そういう意味合いを持っておるものではないかと考えております。  殊に、今回のようにその税制調査会が問題の重要性にかんがみまして地方においてかなりの回数地方の人々の意見を聞かれる、その開催のあり方につきましては国民の間に賛成もあり御不満もあるようでございますけれども、ともかく十分に議論を言っていただくあるいは闘わす場をこうやってつくりつつあるということは、事の重大性にかんがみまして世論に聞いておるのであろうと思います。その案を持たずにということは、考えようによっては国民が答えを出されるのによりどころがないということでもあろうかと思いますけれども、前回ああいう失敗をいたしておりますから、それについて国民がどう考えておられるのかということをまず聞きたい、問題の所在を国民はどう考えておられるのかというようなことを聞くのには、一つの案を出しませんでいろいろなお考えを聞くというのも一つのやり方であろうと私は思うのであります。  恐らくは税制調査会は、その後の段階で、今回のヒアリングを全国でやられました後、何かの形で幾つかのタイプに案を分類しまして、もう一度きっと国民の意見を聞かれる場を持たれるのではないか。まだ何も決定してないようでございますが、そういうことをお考えのようにも聞いておりますが、そのような手続を尽くしまして、無論政党として政党自身がいろいろな意味での国内の各団体の意見を聞くことは、これはまた政党としての務めでございますから、それはそれで私どもの党でいたすわけでございますけれども、そのようなことは、川崎委員の言われました我が国における我が国なりの世論に対する訴えあるいは吸収の仕方ではないかと考えておるわけでございます。
  225. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 政府税制調査会も会長さんが突っ走ってどんどんやってみたり、宣伝の場所に公聴会をやったりもして、小委員会でも物議を醸したりもしておりますね。それならば、政府税制調査会で御議論を願ってと、こういうお話でございますから、公開にしてください。そして、公開にしてその政府税制調査会の御議論というものを国民に明らかにしてもらう。そうすれば国民も、ああ、どういう議論があるんだな、つまり新聞に出てくる都合のいいところだけじゃなくて、政府税制調査会の全体の議論、審議を公開してもらう。それはいかがですか。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府税制調査会は、会合がありました後、責任者が一応ブリーフィングをしておられるわけでございますけれども、これを公開にいたしませんのは、率直に申して、それだけ自由に議論をしていただきたい。と申しますのは、いろいろな方がおられますとおのずから何かの利益を代表される委員と考えられやすい。実はそうではないのでございますけれども、そう考えられやすいということ、公開でございますとどうしても御発言がしにくいということが、これは人情でございますからあることでございまして、そういう意味で、立場にとらわれずに、特定の利害関係にとらわれずに審議をしていただきたいということで公開をいたしておらないというふうに承知しております。
  227. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 総理お尋ねをしますが、今大蔵大臣からも御答弁ございましたけれども、やはりこれは、国民に知らせる、どこに国民の意思があるかという問い方としては大変不十分だと私は思います。でありますから、二つの選択、つまり一つは、イギリスのように税金白書を出して、そしてその白書による国民の反応というか要望なり意見なりを聞く、その上で税制改革案を公表する、そういう手続をきちっとする、あるいは、案ができたら国民に信を問う、私はいずれかだと思う。総理の御見解を伺いたいと思います。
  228. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いずれかとおっしゃった。私もいずれかという考え方はわかります。が、やはり国会というところが国民を代表し、そこでいろいろな議論があったものを整理整とんして、その上でそれこそそれらの意見を正確に専門家のお集まりであります税制調査会に伝え、そこで吟味してもらったものが、方向が指示されて、それに基づいて手順としては大綱が出、そうして法律案そのものが国民の前に提示されていく、手順は大体そういうことになるのじゃないかなというふうに思っております。  ただ、一つだけ。私がイギリスのことを申し上げましたのは、もう少し、ちょっと古い話になりまして、そもそも国会というのができたのは何世紀でございましたか忘れましたけれども、羊毛の税をどう使うかということからイギリスにおいて国会というものができたという意味で、今のイギリスの手法の話ではないお話をいたしましたので、そのことはこの際つけ加えさせていただきます。
  229. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 マグナカルタからの議論をするわけにはまいりませんけれども、それじゃ私、国会の五十四年の決議について伺いたいと思うのです。  六十年の二月五日、当時の矢野書記長と大変議論をした、その中で竹下大蔵大臣「しかし、国権の最高機関たる国会で、この手法はとってはならぬよと議決されたものについては、私どもはその手法をとるわけにはいきません、その国会決議が変更されれば別でございますけれども。」こうあります。でありますから、きのう大阪で御発言になられた国会決議に縛られないというお考えは、御自身が六十年の二月五日、十年さきの話じゃないんです、本院で、「その国会決議が変更されれば別でございますけれども。」こういうふうに言明をしておられるのです。でありますから、きのうの発言を取り消していただきたい。
  230. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 正確に速記録をとったわけじゃございませんが、私が申しておりますのは、財政再建のための決議がなされた、そこには行政改革、歳出の節減合理化、そうして税の改正、こう書いてある、その順序を進めていくことは一向に差し支えない、こういう意味のことを申しまして、一般消費税(仮称)をとってもいい、こういうことを申したつもりはございません。  だから、財政再建に関する決議を読めば税の議論は当然していかなければいかぬ、あのときの模様から考えまして直ちにやれというのが行政改革であり、そしてゼロシーリングと言うと、そこまでみんなが考えておったかどうかは別として、歳出の節減合理化をやれ、そうしてもう一つ念頭にあったのは、五十九年度税制改正ぐらいに間に合うように既存税制の見直し等をやったらいいのじゃないかな、こういう感じがあのときの原案作成時に皆さん方におありになったんじゃないかな。オブザーバーとして私はおりましたので、そういう感じを持っておるわけであります。  したがって、一般消費税(仮称)、あのときそのものの仕組みを、決議というものを度外視して法律にして直ちに出すということは、私も今でもそれは慎むべきことだと思っております。あれからこういう事情の変化がございましたからいかがでございましょうという話し合いによって出せる環境になれば別でございますけれども、したがって、それは自分なりに節度をちゃんと区分して申し上げておるつもりでございます。
  231. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 この決議は「いわゆる一般消費税(仮称)」こうあるわけですね。これは「その仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかつた。」こうあるわけです。そして、私は冒頭、諮問の文句を申し上げましたように、これは「財政体質を改善するため」、こうあるわけですね。そうすると、その財政体質を改善するための税制、これはもう不即不離の関係でございます。でありますから、三百代言のような、言葉がどうだからという形で議論を進められようとする姿勢がいけない。それが間違いだと言うのです。だから竹下さんのはわかりにくい、こう言うのですよ。  それで、売上税は今度はしゃにむにやって、これも国民の理解を得られなかったのですよ。つまり広く浅く、そして多段階というものが二度、一般消費税と売上税、しかもこれはベストだ、こう中曽根首相も言い、あなたも幹事長としてそれを支えられた。宮澤さんも大蔵大臣として、責任者としてやってこられたわけです。そうなりましたら、やはり一般消費税、売上税、そして選挙、そういうものを、経ておる手続というものを大事にしなければいけない。それを一言一句を言葉で曲げようとする、そういうやり方は私は民主主義の民主政治ではないと思うのです。だから、そういうこそくなことをされてはいけない。  あなた自身も言っておられるように、独立以来初めての税制改革だ、こう言われるでしょう。三十数年ぶりの、独立以来の大改革なんだ。それならばやはり国民のみんながわかる、国会議論をしておるそれだけではなくて、国会議論をしたものを土台にしながら、あなた方が案にするならそれを国民に問うということでいかなければいかぬし、そしてまた、決議に対するあなたの国会決議が変更されれば別ですがというのは、これを素直に読むべきだ。諮問にある文句で、あるいは決議にある文句で、それを解釈で持っていこうとする、それは私はやはりこそくだと思うのです。もっと堂々と国民に信を問うていく。独立以来の税制改革なんですから、当然そういう手続をとるべきだ。  つまり、税制は政治そのものだ、竹下総理も何遍も言ってきておられるわけです、政治そのものなのです。そしてこのことは、日本国民の隅々にまで及ぶわけですから、生活のあり方にも変化があるわけです。仕事の上にも、生きていく上にも大変変化があるわけですね。その変化を要求するわけです。権力で、強権で要求するわけですから、そういたしますならば、やはりそれは国民の信を問うあるいは手続をちゃんとする、そして国会決議の解釈もこそくな解釈をしないということが私は大事だ、こう思います。いかがですか。
  232. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会決議の問題、別に私、ごまかす考えもございませんし、書いてあるとおり既存税制の見直し等をやることはそのまま継続して今日に至っておるということを常日ごろ考えておるだけでございます。したがって、財政再建の手法としていわゆる一般消費税(仮称)をとらないという決議も生きておるということも十分承知しております。ただ、税制改革そのものの論議をやってはいけないということではないと思っておるわけでございます。  手続論は私も賛成でございます。その、いわば時間的な問題は、議論してみればそれは短過ぎるとかいろいろな議論はございましょうけれども、手続は、国民のニーズを最も吸い上げてきていらっしゃるのは国会の構成メンバーだ、その方々等の問答を正確に専門家のところへ伝えて、そこで練り上げたものに基づいて大綱をつくり、法律そのものをつくって国民の理解を得る回数をできるだけ多くするようにしながらやっていくという手続は賛成でありますが、しかし、ずばりそれが選挙に、いわゆるそれをテーマとして総選挙をやるべきだということには、私は必ずしもくみさない、こういうことを言っておるわけでございます。
  233. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これはあなたと議論しておっても、まさに平行線をずっとどこまでもたどると思います。しかし、もう今の御答弁ですと、国会決議の問題については少しバックをしてきた感じもありますけれども、この民主主義、税制というものについては、あくまでもこれはきちっとした方向をとるべきだ。それから政府税調の問題につきましても、そういう方向をとるべきだ。  それから宮澤大蔵大臣には、法律が通ったら国民に知らせる時間を、これは私は順序が逆だと思うのです。つまり、法律が通る前に今手続が必要である。法律が通る前に、法律を国会に上程をしてくる、国会議論をする、そして国民の意見を聞くというそこの前の方が大事であって、法律が通ったらというところは私は結果論だと思いますね。ですから、その前のところをきちっとする。その点については、法律が通ったら周知の期間を、そういう考え方ではなくて、その前に民主的な手続をきちっとするということについてはっきりしておきたい。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほど申し上げましたとおり、川崎委員の言われるとおりであると思います。  参議院の予算委員会でございましたことは、ちょっと報道が簡略になっておりましたので、実は昨年売上税等々を御提案いたしましたと同じ時期にその歳出歳入を予算に計上した、そのことが適当でない、こういう御批判がありました。それは、施行時期を非常におくらせてございます場合には予算には当然計上いたさないわけでございますが、昨年の場合には年度内の施行が予定されておりましたために、これを予算に計上いたしませんと整合性を欠くことになる、そういうことでございましたという答弁をいたしましたのがあのように報道されました。川崎委員のおっしゃいますことは、私も同感でございます。
  235. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そういたしますと、予算編成に当たっては税法改正は、つまり、今まで予算と税法、こういうものがいつも出ましたね。こういうとり方はしない。つまり税制が、つまりアメリカもそうですね。アメリカも税制改革があって、そしてそれが予算に入る、仕組まれる、こういう形ですから、そのことについては、これはつまり税法改正というものの手続をきちっとする、こういうことで理解してよろしいですね。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はもう少し話が細かいところがございまして、参議院で御提起がありましたのは、何ゆえ昨年法律も出し予算にもそれを計上したか、ああいうことをするから法律が通らなかったときに予算はいわば空振りになってしまって補正をしなければならないではないか、こういういわば御批判であったわけでございます。  それで、私が申し上げましたことは、それは二つの問題を実は提起しておられると思います。一つの法律を国会に御提出して、その成立後、発効までの時期をかなり長く置く場合には、これは予算には計上されないのが当然のことでございます。しかし、年度内に発効、施行されます場合には、それは予算が整合性を保つ上で予算にどうしても歳出歳入とも計上されることになります。恐らく質問者が御提起になられましたのは、昨年の場合で申しますと、ああいう新しい大きな税法を出した、それがすぐ予算に歳出歳入とものるようなそういう性急な施行というものを考えるべきではなかったか、そういうお尋ねとしてであれば、おっしゃいますことは一つのお考えだと思います、こう申し上げたのでございます。
  237. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私たちは、これは税制改革と民主主義ということでやはり信を問うべきだということを今後も繰り返し要求していきたい、こういうふうに思います。  次に、円高の問題に入りたいと思います。  一九八五年、これは日本にとって非常に大きな大転換の時期であったと思います。一九八五年九月のプラザ会議というのは、あなたが大蔵大臣で行かれた、そしてプラザ合意というもので急速な円高に入っていくわけですね。大変な年であったわけでありますけれども、当時二百四十二円、それが今日においては百三十円、この大きな変化というものを、あなたは当時大蔵大臣として、今総理としてどういうふうに日本経済のこの大きな変化というものをお考えになられるのか、そして進めてこられた政策は正しかったと思われるのかどうか、伺いたいと思います。
  238. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、今日まで私というよりも政府が進めてきた政策というものが正しかったかどうかということをプラザ合意の時点にさかのぼって、それを起点として考えるには、まだ少し評価は早いのかな、後世の史家これを評価するというようなことを私言っておりますけれども、今直ちに評価するのはまだ早いかなという感じはいたします。  そこで具体的な問題としては、プラザ合意の際二百四十二円でございました。そのときの基本的な考え方は、やはり幾ら何でもドルの独歩高だ、極端に言いますと、他の通貨に比べ、幾ら何でもドルが独歩高である。したがって、この際正常な価格というものに移行していくならば、いわゆる数字上における貿易バランス等についても影響を与えるであろうという考え方が基本にあったわけでございます。  ただ、その政策全体から見ますと、その後私なりに率直に申しますと、余りにも急激であったということは私自身たびたび申しておるところでございます。したがって、円高メリットというものが、仮に日本経済にとって見た場合には、やはり十五カ月とかあるいは二年とか、私は最初、勘で十五カ月ぐらいすればというようなことを言っておりましたが、やはりメリットが出てくるのはそれ相応の期間が要るだろうなという感じで今日に至っておりますが、その間輸出産業、特別な地域等々にいろいろな摩擦が起きたということについてのことは十分認識をしながら、それなりに対応する施策はその都度とってきた課題ではなかろうか。  ただ、総合して、プラザ合意というものが一つの起点として大変な変化をもたらしたが、これは政策としてよかったと言うには少し時間がまだ、後世の史家これを論ずるというような感じがしてしようがございません。
  239. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 このときはあなたはゴルフ場からひそかに行ったわけでありますけれども、今日になってみますと、今言われたようにこれは大変大きな、まだ評価もできぬと、こういうようなお話でございますけれども、急激な円高、つまり円高というのが国民の暮らし、国民経済という面で見ますならば、産業と雇用、国民の暮らし、そういうものに大変関係が深いわけですね。あなたは、通産大臣あるいは特に労働大臣あるいは経済企画庁長官、そういうものに、円高に移るということについて、当時の中曽根内閣としてこれをどう受けとめるかということについてきちっとした意思を持たれて行ったのですか、それとも国際通貨マフィアと言われる国際金融の諸君だけで行っちゃった、当時現実はそうですね。その影響が今日こうきているわけです。  通産大臣、これは通産省として事前の話があったのか。労働大臣、事前の話があったのか。あるいは全体の総合官庁としての経済企画庁にそういうのがあったのかどうか。これは今後の問題としても私は大きいと思うのです。いかがですか。
  240. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そのとき参ったのは私でございますから私からお答えするのが適切かと思いますが、総体的な、各省、各閣僚の皆さん方が、いわゆるドルの独歩高に対する批判は、これは国民次元にもあったではないかというふうに私は思っております。  ただ、通貨問題でございますから、最初、もう済んだことでございますから、私はその後二週間後に行われるソウルにおけるIMF世銀総会の際に会えないかなとも思ってみましたが、その前にベーカー財務長官が東京へ参りました折に、私自身の口からこのいわゆる為替問題について、G5あるいはG3でもいいような表現もあるいはしたかもしれません。そうしたことをやることが大事だということを申したことも事実でありますし、またこれほどだんだん習熟してきましたからと思いますけれども、あのときは、率直に言って相談をかけていった場合にこの効果というものがどうなるだろうかという疑問はございましたので、大蔵大臣臨時代理もお願いしないで、総理自身の兼務にしていただいて私が出かけていったことは事実でございます。  いろいろな、議会人として議会制民主主義の中に習熟した自分自身を考えたときに、本当に小人数の会合で、通貨マフィアという言葉がございましたが、その一つのドラスチックな変化が行われていくということについては、やっぱり通貨社会というのはやむを得ぬのかなという自分の身に問いながら出かけていったことは事実でございますから、可能な限り将来の方向に対する、絶えず経済関係に影響というものをお互い日常意見交換しながら対応する方がいいだろうと思いますが、あのときはその努力が欠けておったと言われれば、そうでございましたと私も素直に言うべきじゃないかと思います。
  241. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 あとは通産大臣、代表してあれですか、通産省があったのかないのか。――いや、わかったです。いいです。  そこで、日銀総裁、大変お忙しいところありがとうございます。日銀総裁には二、三点お尋ねをいたしたいのでありますが、G5の後の翌年の二月の予算委員会で、私は当時の澄田総裁にお尋ねをしたのです。  「ドルの急落ということがもし万が一にもありますれば、それは非常に影響の大きいことでございます。」ボルカー議長云々と、こういうアメリカの姿勢も言っておりまして、最後のところで「そういうことを考え合わせますとドル急落等のおそれというものは全くない、こういうふうに思うわけでございます。」これがG5の後三、四カ月後のあなたのここでの御答弁なんです。  しかし、今日こういうふうな状況になっておるわけでありますけれども、つまり急落等のおそれというものは全くない、こう断定をされた、しかし今日、五割近い円高になっておるわけですね。どうお考えになりますか。そして、これは正しかったとお思いになるのかどうか、いかがですか。
  242. 澄田智

    ○澄田参考人 ただいまお尋ねの件でございますが、六十年の九月から今日までの間においてドルがかなり結果的に、この間のドルの下落幅ということになりますとかなり大きいことはもちろんそのとおりでございます。ただ、これだけの期間をかけて、そしてこうドルが下落をしていくというのは、あの当時非常にドルが過大に評価をされておった、そして日米を初め主要国の対外不均衡というものが非常に大きかった、なおあのときは大きくなりつつあった、こういう状況のもとにドルが下落をしていくということは、これはあのときの経済情勢としてそういうのは自然な動きである、こういうふうに思っておりました。  そして、今お尋ねのように急落という言葉でございますが、これはまあ私などの判断といたしましては、今までのドルの下落はこれは決して急落ではない、こういうふうに思っているわけです。急落とその境目は何かというようなことになるのでございますが、これはドルの信認が著しく失われてドルによる取引が行いがたくなる、あるいはドルが基軸通貨としての役割を果たさなくなる、こういうようなことになるような事態が一朝にして起これば、これは明らかにドル急落である、こういうふうに思っておりますが、今日までのドルの動きというものは、その間いろいろ曲折は経てまいりましたが、決して急落であるというふうには思っておりません。
  243. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 総裁は二月十日の記者会見で大幅賃上げに対する警戒を言われているわけですね。賃金を上げちゃいかぬ。これは通貨当局の日銀、元来中立的な立場であろうと思うのでありますが、その日銀総裁が日経連の賃金政策と同じことをつまりこういう記者会見で言われるということは、私は大変適切じゃないと思うのです。景気拡大を息の長いものとするという観点に立って、大幅賃上げでは、景気が過熱すれば、短いものになってしまう、こう言って賃金の抑制、賃金を抑えなさい、こういうことを言っておるわけでありますけれども、これは私は日銀総裁としては大変適当でない、こう思いますが、いかがですか。
  244. 澄田智

    ○澄田参考人 記者諸君の質問に私答えまして、そして今、日本経済における最大課題は対外不均衡の是正である、そして対外不均衡を是正するためには内需中心の景気の持続、できるだけ長い期間内需の拡大を続けるということが必要である、そういう観点から考えまして、賃金の上昇というような点につきましても、持続的な内需の拡大ということに支障になるようなことのないようにしていくことが望ましい、こういうふうに私は申し上げた次第でございます。それ以上のことを申し上げているわけではございませんし、まして、賃金が労使双方によって決定されるものであるということはもう当然の原則である、こういうふうに考えているものでございます。
  245. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 自後こういう大変な、しかも春闘の時期でございますから、そういうときに、中立的な機関である通貨当局の日銀総裁がこういうものについて介入に近い発言は慎まれたい、こういうふうに思います。  次は、その前の一月二十七日の記者会見でございますが、アメリカの国債入札に関連をして、日米金利差は四・五%内外に開いている、こういうふうに指摘をされた上で、「十分に対外債券投資が行われる金利差だと思う」、こういうふうにして対米投資環境が整っている、こういう記者会見をしておられるわけでありますが、債券投資の問題については非常にいろいろと議論があるところですね。日米政策協調として続けなきゃならぬのだ、アメリカの経済に対する日本側からのファイナンスが必要だというお考えでこういうことを言ったと思うのでございますけれども、しかし、この債券投資を奨励をするという総裁の発言というものは私は適当ではない、こういうふうに思います。いかがですか。
  246. 澄田智

    ○澄田参考人 記者会見の内容につきましていろいろ御指摘をいただいて恐縮いたしておりますが、あの場合におきましてはアメリカの国債入札の定期的な入札を控えた時期でありまして、非常に日本からの投資が減るのではないか、こういうことがアメリカはもちろんでございますが、日本においても非常に関心を持たれていた時期でございます。私は、金利差という点についての指摘がございましたので、金利差は、ドルが落ちついているならば十分に対外投資、対米債券投資を含む対外投資が行われ得る、そういう金利差であるということを申した次第でございます。  もちろん、これは申すまでもないことでありますが、対外投資はこれは投資家が資産の運用として行うものでありまして、判断はすべて投資家の判断でございます。そういう投資家の判断ではございますが、環境として金利差という点から見れば投資が行われる環境である、こういうことを申したわけでございまして、私自身対外投資、対米債券投資を勧めるという立場にはございませんし、そういうつもりで申したわけではございません。
  247. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 しかし、新聞の見出しは「米債投資環境整う」、どの新聞見てもそうなんですね、あなたが言われたときは。だから、そういうつもりではありませんと言っているけれども、実際はそうなっているわけです。これは時間の関係もございますが、G5以降、物からマネーに移る、さらには、日銀が超金融緩和政策をとる、そういうことの結果、今日の金余り現象というものも生まれているわけなんです。  先般もこの委員会でも議論になりましたが、外為会計の国庫への支出もうんと減ってしまう、こういう状態の中で金余りを日銀が――でありますから、円高と日銀と、こういうもとに今日の金余り状況、異常な株の上昇、土地の値段の上昇というものも今日までつくってきているわけでありまして、大変私は責任は大きいと思うのです。これはまた改めて議論をさせていただきたい、こういうふうに思います。  では、今のようなアメリカへの債券投資、レーガン・ボンドの議論もございました。しかし、そういうのはではどこまでいけばいいのか。今日、百三十円ですが、竹下総理が言われたように、二百四十二円で始まって、この二年間で百三十円ですね。日本経済はどこまでいけばいいのですか。ドル安に従っていくわけでありますが、どこまでいけばアメリカのあれが安定をし、そして日本経済環境というのが安定をするのですか。ではどこまでいこうとするのか。これは大蔵大臣と日銀総裁と両方にお伺いしたいと思います。
  248. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 対米債券投資が行われておりますが、これは先ほど日銀総裁も言われましたように相当の金利差がある、四ポイントあるいはそれ以上の金利差があるという場合に日本の投資家が自由な判断でしておられることであります。政府としてはこれをとめたこともございませんし、勧めたこともございません。それは日銀も同じことでございまして、どこまでいくかというお尋ね意味でございますが、日本の投資家が考えられる為替リスクと現実の利回りの差というものを計算をしてみて、これは投資をした方がいい、これは危ないというふうな判断をされる、政府としては基本的に投資家の判断に自由に任せていいものであると考えております。
  249. 澄田智

    ○澄田参考人 日米間のみならず主要国の間でそうでございますが、物やそれからサービスの面、そういう面でそれぞれ対外不均衡があるという場合に、ある程度そういう経常収支の不均衡というようなものを資本の動きでこれがカバーされるというのは、これはある程度自然の流れである、こういうふうに申し上げることができると思います。したがいまして、対外不均衡というようなものがあれば、資本の流れというようなものはある程度、これがあることによってかえって自然に均衡がとれていくという面は当然あるわけでございます。しかし、これは先ほども申し上げておりますようにあくまでも投資家の判断によるものでございますし、これは大蔵大臣も言われましたように、政府はもちろんでございますが、日本銀行としてもとの資本の流れをとめるとかあるいはこれを奨励するとか、そういうような立場には全くないわけでございます。
  250. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 円高で差益というのが、これはいろいろ議論があるわけでありますけれども二十兆円、円高マネーが言われておるわけです。この円高というのは、輸入価格の下落あるいは石油価格の低下、そういうものを含めてでございますが、円高差益というものとしてプラザ合意以来の差益は大体二十兆、こう言われるわけですが、ではこれがどこへいっているかということは、円高差益の問題として消費者への還元という議論がございます。  もう一つ私は、これは後ほど家計調査の問題とも関連をいたしますが、二十兆円の円高マネーがどこにいったかということは大変大きな問題だと思うのです。日銀が金余り現象に大きな役割を果たしたということを先ほど申しましたが、円高マネーが、つまり輸入段階の水際と小売という消費段階の中間、すなわち輸入業者、メーカーそれから卸売業者、小売業者など企業並びに個人事業者の懐に二十兆円が入り込んでいる。そうしますと、二十兆円はいわば企業減税と同じ効果を持つ、こう私は考えます。いかがですか。
  251. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 川崎委員にお答えいたします。  その前に、円高の問題も含めまして私どもの考え方でございますが……(川崎(寛)委員「聞いておらぬことをやらぬでいい、時間がないから」と呼ぶ)円高差益の還元につきましては、御承知のように三度にわたるガス料金の引き下げあるいは各般の還元策を通じましてかなり浸透しているものと、私どもは大体七割と踏んでおりますけれども、円高メリットの程度は、多少の差はございますけれどもそのような判断で考えておるわけでございます。  さらにまた、先ほども委員申されましたように、原材料の低下などを通じた円高効果というものも著しく上がっておる。これも相当タイムラグがございます。大体七カ月間か八カ月間くらいのタイムラグを考えていただかなければならぬだろう、こう思っております。また、一部のブランド品につきましては、高級品イメージの維持のために値下げされてないという面もございますし、いわゆる内外格差等の問題もあることから、消費者にとりましては必ずしも円高メリットの効果が実感されてないということもあるのは御指摘のとおりかとは思います。  いずれにしましても、私どもとしましては、為替レートの動向の的確な反映を図ること、また、必要に応じまして輸入消費財価格動向調査、これを実施、公表すること、あるいは広く消費者に情報提供をしていくというようなことで考えていきたい、こう思っておりますので、よろしくどうぞお願いいたします。
  252. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは答弁になっておりませんから、大蔵大臣。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 円高そのもの、つまりこれに伴う為替介入とかいうようなことを別にいたします円高そのものは、消費者に還元されていない限りどこかの企業の利益になっておるはずでございます。それはまたそれとして納税の対象になっておるはずでございます。
  254. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは議論しておりますと長くなりますからね。しかし、実際には今言ったように滞留している。それがマネーとして動いておるということは事実ですよね。  そこで、それは今度は勤労者世帯の家計動向に出てきますね。ですから、これは労働大臣にお尋ねすることになりますが、結局、勤労者世帯と一般世帯、つまりその間に大変格差が出てきておる。それは労働省が去年の十二月発表しておるところでも明らかでございます。物価が安定基調で推移しておりますけれども、世帯類型別に見ると一般世帯で消費の伸びが高い、それから勤労世帯の伸びが小さいという世帯間の格差が今出てきているわけです。  そういたしますと、これからの日本経済を見ます場合に、これは労働省の方はそういうふうな発表になっておるわけでありますが、個人消費の動向というものを見ますときに、つまり春闘、賃上げの問題について、円高だから賃金を上げては困るというのが日経連の意見ですね。しかし、現在もう消費動向の中にはっきりと一般世帯、つまり恩恵を受けておるところと勤労者世帯の間に格差が非常に出てきている。そうなりますと、これは賃金の引き上げという問題が大変大きい。それをやらなければ消費の拡大というのは私はいかないと思うのです。労働大臣いかがですか。
  255. 中村太郎

    中村国務大臣 昨年の一月から十一月の家計における消費支出の伸びを見ますると、一般世帯が三・八%でございます。これに対しまして勤労者世帯は〇・七%という数字が象徴いたしておるわけでございます。私どもは、国民生活の向上のためにも、経済成長の成果というものを勤労者の賃上げあるいはまた時間短縮等に適正に配分することは極めて望ましいことであると考えております。しかし、御承知のとおり、これらの決定というものはあくまでも最終的には労使の円満な話し合いによって解決すべき問題であると承知しております。したがって、私どもといたしましては、これらのことにつきましては労使で本当に真摯に話し合いまして、合理的でかつ円滑のうちに適正な決定がなされることを期待をいたしておる次第であります。
  256. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今言われましたように格差が出てきているわけですから、これは労使の問題でもありますけれども、抑えるというふうなことがあってはならない。成長の成果というものを時間短縮と賃金に及ぼすということは、これは内需拡大のためにもむしろ政府としては積極的に推進すべきだということを私は要望しておきたい、こういうふうに思います。  では次に、竹下首相に地域開発の問題を少しお尋ねをしたいのです。四全総あるいは「ふるさと創生論」というものの本質を伺いたいと思います。  NHKの「ウィークス」という雑誌があるのですが、その三月号に――澄田さんどうぞ、ありがとうございました。今、澄田と見たものですから思い出して、申しわけありません。澄田島根県知事が「ふるさと創生論」について、島根県が原点だ、こう言っているのです。「発想の根幹は、島根県が過疎と高齢化に直面していることです。」私、まさにそのとおりだ、こう思います。それは我が鹿児島県と置きかえてもちっともおかしくない、こういうふうに思うわけですが、総理お尋ねをいたしたいのは、あなたの生まれ故郷の掛合町の役場の周辺の地価は幾らですか。
  257. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 残念ながら定かにしておりません。
  258. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ちょっと調べさせてもらいました。そういたしましたら、掛合町の役場周辺の評価額は一平米当たり二千四百十五円、時価が一平米で大体四千三百四十七円だ、こういうふうな役場のお答えですね。高齢化率は一八・二%。私の郷里の方の大浦町、これは時々ここでも名前を挙げて私は郷里から、大浦町の諸君にはしかられるのですが、大浦町は一平米四千円、時価が大体一万円、高齢化率は二九%、より高齢化しているわけですね。銀座は、これは坪になりますが、一坪一億円ですね。なぜこういう大きな格差ができたのか、なぜ生まれたのか、いかがですか、伺いたいと思います。
  259. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一概に断ずることは難しいと思いますが、いわば事ほどさような需給関係の中で集中して供給があったということでございましょうし、我が方は需給関係といったって供給はないわけでございますから、したがってそのような差ができたであろう、経済原則からいうとそういうことでございますが、それ以上いろいろ私どもにも反省するところがございます。
  260. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 まさに東京は債権大国ですね。金融大国です。あなたの島根県や私の鹿児島県は地方小国です。そして、その地方は不安と疲弊です。展望がないのです。これはやはり、東京一極集中の議論がいろいろございますけれども、今までの自民党政府が進めてきた政策というのは、まさにこれをつくってきたわけです。だから、東京遷都や分都などというのも、私大変一つの大きな課題だとは思いますけれども、今、日本列島というものを考えましたときに、国民経済立場からどう考えるべきか、それが今切れている、段落しているのですね。国際に貢献をする日本というのは、考え方として、もう大変、先ほどの円高の問題、いろいろございますけれども、しかし今日地方が崩壊しつつある。  それで、先ほど言いました大浦町というところは、人口が一九五〇年には約七千六百人ぐらいおりました。今は三千五百なんですね。そして、ことし成人式に正月三日行きましたけれども、六十人です。私は、今つくづく思いますのは、そういう地域で友人の諸君に、私は当選をしたまだ若いころから、郷里で頑張れ、農業をやれよ、そして豊かな郷土をつくれよ、それで残ってきている友人もおるわけです。恨みを言われますね。こうなっちゃった、どうしてくれるんだ。今、総理は掛合町にお帰りになって、その成人式などで、諸君、掛合町に残って農業頑張れと言えますか、いかがですか。
  261. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそも私はそういう農村の青年運動をしながら今日に来てまいりましたので、やはり世の中の推移の変化はございましても、それなりのいろんなビジョンを掲げて頑張れということは問いかけるべきだと思っております。
  262. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 問いかけるべきだということは、べきでしょう。しかし、これは責任のある発言としてはなかなか言えないのですよ。その青年の悩みなどを考えれば、安直には言えないと思うのですね。  そこで、そういう今の状況というものを考えますと、例えば九州。九州はどんどん格差が出てきたのです。それは九州各県の県民所得を見ましても非常に出てきております。つまり伸び率がうんと極端に落ちてくるわけですね。  それを一つ一つ言っておりますと時間がありませんから触れませんけれども、結局九州を見ますと、整備新幹線の問題について少し触れてまいりたいと思いますが、その九州全体を活性化をする、高速交通体系というものを考えますときに、鹿児島には高速道路もまだ通り切ってないわけですね。切れているのです。新幹線は今もう御承知のような状況で続いてきておるわけです。要するにインフラがないわけです。そうすると、九州というものを一つの地域として、一千万の人口があるわけでありますが、それを発展をさせていくという場合に、私は整備新幹線というものは、やはり地域で要求されておりますように大変大きな役割を担うんじゃないか、こう思います。でありますから、整備新幹線の地域開発に果たす役割というものを総理としてはどうお考えになられますか。
  263. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 四全総にも書いてありましたが、要するに高速交通体系の整備というものが地域開発にもたらす影響は甚大であるということからこれを進めるべきであるということが書かれてありましたが、私もそのとおりであると思っております。
  264. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 東海道は世界銀行から八千万ドル借りまして、当時一ドル三百六十円です、でありますから円計算すれば二百八十八億でございますが、借りて建設をした。そのころこれを返すという方向は明確じゃなかったわけですね、いつになったら返せるか。しかし、東海道についてはそういう国の責任でやってきた。今日六十一年度の損益を見ますと、四千三百十八億の利益を上げているわけです。山陽新幹線は千三十億の利益を上げておるわけです。そうしますと、今日一極集中できたこの状況というものを変えていく、そのために整備新幹線の役割というものは今総理がお述べになったとおりです。  そういたしますと、問題は財源論です。財源論が繰り返しなされてきておりますが、私は、財源問題については発想の転換が必要だ。それは中央の論理ではだめだと思うのです。今日の金余り現象の中でもありますように、東京は土地の希少価値なども出てきて大変な値上がりをしている。株の異常な値上がり、こういう状況にあるわけですから、やはり今地方の論理というものが、これは澄田知事もそこを言っておられるわけでございますけれども、結局基盤が弱い、経済基盤が弱いから整備新幹線をぜひ、ところが採算がとれないからだめと、今悪循環を繰り返している。そして、その間に日本経済は国際化、国際に貢献する日本ということで金融大国、債権大国としての方向を走っているわけですね。そうしますと、これまでの十年というのとこれからの十年というものは、先ほど来G5以降の、プラザ会議以降の日本経済の姿についても少し質疑をいたしました。しかし、これは日本経済自体が大変大きな変化を今進めているわけですね。これまでの十年間の変化とこれからの十年間の変化、スピードが違うのです。そのスピードが違うときになおかつ置いてきぼりを食う、こういうことになりますと、ますます支払い能力のない、採算のとれない地域に落ち込んでいくわけです。しかも、アメリカの債券に対しては同兆円と投資されているという今日の状況の中で、なおかつ一方ではどんどん落ち込んでいく。だから、これをどう変えるかということを考えなければ国民経済としてはだめなんですね。  そこで、私は、先ほどちょっと東海道なり山陽なりを申し上げましたが、やはり発展をしておるところに負担をしてもらう、あるいは国全体の交付金なり公共事業なりのあり方というものも検討し直す、そういう発想の転換をしなければこういう地域というものの開発はできない、こう思います。ですから、全国共通の財源からどう配分をし直していくか、あるいは首都圏や南東北や信越や上越などという整備新幹線、高速道、そういうもので発展をした、あるいは発展しつつある、そういう地域、そこは少し落としてでもこの必要な地方に回していく、こういう、つまり財政のあり方というものを従来どおりというのじゃなくて少し発想の転換をやるということが私は必要だろうと思う。掛合町が置かれている状況、私の郷里の大浦などが置かれておる状況というものを考えますと、そういう発想の転換をしなければ、これは解決をしていくことはできないと思うのです。でありますから、そういう発想の転換というものをぜひしてほしい。いかがですか。
  265. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 おっしゃる意味はよく理解できますが、これを財源の上での、いわゆる傾斜配分とか、これは私ども容易に理解できるところでございますが、目的財源的なものを国民連帯の中で他の地域に求めていくということになりますと、これはやはりそれこそ発想の転換の大転換というようなことを必要とするであろう。しかし、たしか高速道路等につきますと、三%路線とかそういうようなもので、今おっしゃった形のプール計算の中で合理性が成り立つような工夫がされておるというふうに私は承知しております。
  266. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 財源検討委員会とか準備委とかなんとか、いろいろ機関がございますね。しかし、そこのそういう技術的な議論は自民党さんの方でやっておられるわけでございますけれども、総理としてひとつぜひそういう地域の、これは私は、九州だけ、鹿児島ルートだけというようなことは申し上げません。今三線が問題になっているわけでありますが、そういう問題について展望を与える、それは私は総理の責任だと思います。でありますから、十年も二十年も先にまた延ばされるということのない展望を与えていく、そのために傾斜配分とかいうことも私、申し上げましたけれども、目的財源ということではなくて、そういう仕方というのは私はやり得る、財政制度の中でもやり得るんじゃないか、こう思います。  でありますから、そういう希望を、つまり竹下流にじりじり残しておいて、そのうちに嫌になって、もうあきらめて手を上げちゃうというふうなことでは困るのですから、ぜひひとつ総理として、私が申しましたようなそういう方向で地域開発の大きな柱として考えていただくということを、この問題については最後に伺いたいと思います。
  267. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 例えば私どもの地方では、これは山陰新幹線などというのは整備新幹線の段階にもちろん至っておらないわけでございますけれども、いつも考えますのは、そうしたいわゆるともしびを消すようなことをしてはいかぬというので、それが達成のために衆知を絞っていくということが大事であろうというふうには私も意見を等しくいたしておるところであります。
  268. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 次に私は、ことしの国会における教育関係法案の中での大きな問題にもなります初任者研修制度という問題について二、三お尋ねをしたい、こういうふうに思います。  その前に、まず文部大臣にお尋ねをいたしますが、義務教育費国庫負担制度、これは財政当局が執拗に、義務教育費国庫負担制度から事務職員、栄養職員の国庫負担の除外をするということが繰り返し続けられてきておりますが、年末の予算編成の一番忙しいあの時期に学校現場にこういう混乱をいつまでも続けさしてはいけない、こう思います。学校の運営というのは、これはこれまでも、中曽根首相も歴代の文部大臣と同じお考えでございましたけれども、事務職員、栄養職員、それから教壇に立つ教員というもの三者一体になって初めて円満な学校運営が行われる、こういうふうに私は考えます。でありますから、その三者とも学校における基幹職員であるという考え方に立つのでございますが、新しい文部大臣としてその点を明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  269. 中島武敏

    中島国務大臣 学校の栄養職員、事務職員は、おっしゃいますように学校教育の基幹的な職員であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、義務教育費国庫負担制度の対象にすべきものと考えておりますし、この考え方とスタンスは堅持をいたしてまいりたい、このように考えます。
  270. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 堅持をいたしてまいりたい、こう言うのでありましたならば、こういう問題を続けないというために、打ち切る、そういうための財政当局と話し合うことについての決意を伺いたいと思います。
  271. 中島武敏

    中島国務大臣 おっしゃるような方向でありたいと思っておりますけれども、これは単年度予算でございますし、予算時期には反対の御意見も出てくるわけでございますから、出てきた場合には、文部省としては今申し上げたスタンスで貫きたいと思っておりますし、また関係省庁とよく協議をしてまいりたい、このように考えます。
  272. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは単年度予算じゃないんですから。昭和二十年代からの義務教育費国庫負担制度に係る問題でございますので、ひとつ財政当局とはきちっと決着をつけるということで御努力いただきますことをまずお願いしておきたいと思います。  次に、初任者研修制度でございますが、六十二年に七%、そして六十三年度は一〇%試行しよう、こういうことでございますけれども、来年から今度は全員ということで法律の準備をしておられるわけですね。私は大変不思議だなと思うのですけれども、三万人の新採用者というのは、四年の大学教育を受ける、そして教育実習をやる、そしてさらに、それぞれの職種によっては違いますけれども、四倍、五倍、六倍という大変激烈な選考試験を通って採用されているわけですね。そういう選考をくぐり抜けて採用された人が全員だめだ、全員文部省としては気に食わぬ、だから研修し直すということだと思いますね、進められる進め方としては。そういたしますと、これは教員養成を大学で行うという原則の否定だ、大学の教員養成に対する不信だ、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  273. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘の点でございますが、その方々の資質あるいは学ばれた内容につきましては、十分評価でき得るものと思います。  ただ、人づくりというのは、人が人を教えるものでございますし、それからまた教育現場、新しい社会に出られるときには、新しい社会での実践に即した能力も深めていただかなければなりませんし、その職場にはまた指導に長年従事されております先輩方もいらっしゃるわけでありますから、そういう先輩方の指導を受けることによって、幅広い知見とそれから実践的な指導能力それから意欲をさらに持っていただこうということで、決して否定はしておるわけではございません。プラスアルファで、それを初任者に研修をすることでさらに資質を伸ばしていただく、そして教育される側にとりましてよりよい指導者であってほしいということを望んでおるところでございます。
  274. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そうすると、四年の大学の教育、教員養成を大学で行うというその点については否定をされている、あるいは大学の自主努力によって教員養成の充実を図っていくべきだ、こう思いますね。そうすると、大学における教育実習の改善というものについてどれだけ努力をしてこられたのか、伺いたいと思います。
  275. 加戸守行

    ○加戸政府委員 教員になりますためには、大学におきます基礎的な理論的な教育のみならず、学校現場でのそういった教育実習を中心としました経験も必要とされるところでございます。  現実におきましては、例えば小学校の教員につきましては四週間、中学校、高等学校の教員につきましては二週間の教育実習を必要要件としているところでございますが、実態的に見ますと、例えば毎年免許状を取得される方、実数といたしまして十四万五千人もいらっしゃいまして、現実に教職につかれる方はそのうちの三万人でございます。そういった点で、学校におきましては一種の実習公害的な、学校には実習にいらっしゃってもそのうちの何分の一しか教員に、職におつきになっていない、そういった点の問題も一つあるわけでございまして、かつてこの教育実習の期間を大幅に延ばすというような審議会等の御意見もございましたが、実務的には学校現場では拒否的な反応を示された、そういうような経緯もございます。  したがいまして、この教員の資質の問題につきましては、養成、採用、研修、すべての段階で必要でございますので、教育職員養成審議会で御審議いただきました中で、今回の答申では教育実習についてはわずか一単位ずつをふやすということでとりあえずの対応をしたい。そのふやします一単位は、学校現場への迷惑をなるべく避ける形で、学校以外の施設等におきます経験あるいは事前、事後の指導というような形で、実践的な経験に役立つようなものという形でとりあえずお願いいたしまして、大学を出られました教員についての初任者研修において実践的指導力を身につけていただきたいという考え方で対応している段階でございます。
  276. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今、国民や父母が一番望んでいること、それはつまり、教育の荒廃として本委員会でも繰り返し議論されてまいりました、あるいは文教委員会でも議論されておりますけれども、いじめであるとか登校拒否であるとかあるいは中途退学であるとか、さらには校内暴力であるとか低学力とか、そういういわゆる教育荒廃というのは深刻ですね。これはいまだ非常に深刻な状況にあるわけでありまして、先般警察庁からも発表がございました。なかなか厳しい今の状況というものの調査発表があったわけでございますけれども、そうしますと、この初任者研修制度というものが、一番深刻な今日の教育荒廃、そういうものの克服にどれだけ役立つのか、文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  277. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘のような校内暴力とかいじめの問題、これは大分減ってはきております。まだしかし、そういう問題に対処すべき点は残っております。そういう子供たちからは、日々いろいろなシグナルが出されておるわけでございますね。家庭の問題とかあるいは自分との仲間の問題とか、それから環境に対する、子供たちは子供たちなりに無言であってもいろいろなシグナルを家庭にも教師にも送っておるわけでございます。だから、いち早くそのシグナルを人間として受け取れるような、そういう教員であってほしいというのが私どもの願いでございます。したがって、そのためには四年間修業はされましても、新しい現場に立ってそういう子供たちとの心と心のつながり、それからそういう実践的な指導というものを初任者の間に早く学び取っていただこうということが、非行、校内暴力をなくすためにも有効であるという考えに立っておるところでございます。
  278. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 答えになっていないのですよ。それなら、新任の教師が学校の現場で子供たちと接触をしていく、子供から学んでいく、子供の悩みを受けとめる、それを一生懸命やらなければいかぬ。しかし、今日の六十二年度における試行という試みを見ますと、今、年間の授業日数は二百十日ですよね。ところがこの初任者研修で七十日つぶされるわけです。校内で七十日、それから教育センターなどの校外に対するのが三十五日、さらには宿泊研修が四泊五日、あるいは洋上研修十四日。こういうふうになりますと、二百十日のうち何と百二十四日離れなければいかぬ。あるいは指導教員が後ろにおるにしても、一人で大学を出て、そして教育への情熱を持って、確かにまだ技術的にはまずいかもしらぬ、しかし子供から学ぼうとしておるその教師が後ろから監督をされ、そして鋳型にはめられていく。そうしますと、名前も覚えられない、あるいは運動会にも出られない、あるいは父母の教育参観の日もいないとか、そういう状況を続けて、何で子供のシグナルを受けとめられますか。  私は、先ほど中島文部大臣の言われたこと、大変そうだと思いますよ。思いますけれども、初任者研修で何でそういう子供のシグナルを実際に受けとめるということができるのか、私はおかしいと思うのです。でありますから、実際にはこの初任者研修の試行というものを全国的に見ますと、大変にたくさんのいろいろな問題が起きておる、こういうふうに思います。  例えば、対象者自身は、私も全国的にいろいろ調べてみました。そうしましたら、初任者の対象者になって、これは鹿児島でもいろいろあるわけですが、ロボットになるのではないかという不安、あるいは負担が大変重い、子供との接触不足、自主計画が立たない、家に仕事を持ち帰る、父母の参観日に出られない、部活動に出られない、マン・ツー・マンで精神疲労、父母、子供からの不信、いつもいないのですから。いつもというか、しょっちゅういない。そして、あの先生は半人前の先生だろうか、どっちが本当の先生だろうか、こういうふうなことを言われておるわけです。  学校の現場の一般教職員は、学年、学校行事が組めない、対象教員や指導教員にならずほっとしたとか、さらには年休がとれない、五経年研修などがぶつかると行事不能、あるいは対象教員の活力不足で校内が暗い、こういう問題が次々起きているわけです。  そしてさらには、指導教員自身は、指導教員にされたその人たちは、計画指導で多忙、悲鳴が出る、免許外の指導はできない、精神的に疲れる、超過勤務になる。  あるいは、一番大事なのは子供ですね、子供がどう受けとめているか。子供を見ますと、自習が多い、他教科の先生は嫌だ、出張ばかりで先生はいないという不信感、授業がおくれる、先生になぜ先生がつくんだろうか、運動会の練習にもいない、困る、行事本番不在で不信感が出る。  では、父母はどうか。父母の方から言われておりますのは、いつまで先生の卵なんだろうか、家庭訪問をどんどん変更してくる、あるいは授業参観日になぜ先生はいないのだろうか、こういう不信が投げかけられておるのです。  そこで、残り時間がありませんから、私がお尋ねをしたいのは、今現場でそれぞれこういう問題が起きている。六十四年度全面施行、こういうことになりますならば、当然六十二年度の総括というのがなされるのだろうと思うのですね。それはいつやられますか。
  279. 中島武敏

    中島国務大臣 今御指摘いただきましたけれども、そういうことも含めまして試行というものをやっておるわけでございます。六十二年は三十六都府県並びに指定都市で行いました。そして、念のためにその御意見をいろいろ伺っております。大要から申せば、各都府県あるいは市からは、対象教員の資質、能力の向上が大変著しいとか、校内の活性化が図られたなどの意見が寄せられておりますが、その意見は、いろいろとまた改正意見も含めまして大方評価をされておるというふうに認識をいたしております。運用面での改善工夫につきましてはさらに検討をしてまいりますが、全体から見ましてこれは喜ばしい方向というふうに認識されておると考えております。  なお、アンケート、意見調査をいたしておりますので、細かい点は政府委員からお答えさせます。
  280. 加戸守行

    ○加戸政府委員 補足させていただきます。  先ほど日数のことで、子供たちとの接触を断たれるという御質問がございましたけれども、現在文部省が六十二年度から試行いたしております初任者研修のガイドラインといたしましては、先生おっしゃいますように七十日間の指導教員による校内研修及び三十五日間の校外研修ということでございますが、そのうち七十日間の校内研修につきましては、学校の新任教員がそのまま通常の教育活動を展開しながら先輩教員がそれに付き添って指導助言を与える、そういう体制でございますので、まさに教室で子供たちと接触している状況でございます。それから残り三十五日につきましては、確かに校外研修でございますが、先ほどの例えば四泊五日の宿泊研修を含めて三十五日間でございますし、私どもいろいろその校外研修の問題につきましては、例えば代替教員の充当あるいは先輩教員その他のかわりの先生が授業を持つという体制を仕組みますとともに、できれば夏季休業期間中とか子供たちへの影響のないような時期にその一部を実施していただくというような工夫も各県でお願いしておるわけでございまして、決して子供たちとの接触が大幅に断たれているという状況ではないと思っております。  なお、いろいろな問題点も指摘を受けておりますけれども、それは制度の問題と申しますより、今現在試行の中で解明をし、現実に運用の問題としておおむね改善できる事柄ではなかろうか、そういう意味の各都道府県における段階の工夫を期待しております。  なお、現在試行中でございますので、年度末にいわゆる六十二年度の試行が終了しました段階で各実施をしました三十六都府県市から報告をちょうだいいたしまして、六十三年度の試行並びに六十四年からの本格実施に対する参考材料として運用の改善を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  281. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは総理並びに大蔵大臣はよく聞いておいていただきたいのですが、仮に来年文部省が言っているように初任者研修制度というものを全面的に実施する、こういうことになりますと、国、地方合わせて一年間で約八百億円かかるのですね。財源を必要とするのです。だから、十年やれば八千億ですよ。四十人学級がまだ進んでないのです。あるいは中学校の免許外、小学校の専科、そういうものを見ますと、小学校の専科はまだ充足率が二一・九%、中学校の免許外解消は二七・六%。そして、いじめ、非行のときに、子供が率直に自分の悩みを訴えるという意味で養護教員の充足は必要だという議論もございましたね、大蔵大臣にお聞きになっただろうと思うのですが。その養護教員は三四・八%、事務職員は二二・三%、栄養職員が三一・七%、特殊教育諸学級が四七・三%。こういうものをそのままにしておいて八千億。まあ六十六年で終わるんだ、こういうふうな言い方になっておりますけれども、なぜこっちを急がないか。  あるいはヨーロッパを見ますと、ヨーロッパは既にオランダが一学級当たり四十人、中学校ですと二十八人、ギリシャ、スペイン、ノルウェーは三十人、それからデンマークは二十八人、イタリアが二十五人、スイスが二十五人、フランス、アメリカが二十五人から三十五人、スウェーデンは二十人以下。これは今の場合小学校ですけれども、こういうぐあいになっておるわけです。それなら、十年間で八千億もかかるようなお金をなぜそうした今の改善の方にやらないのか。そうして、本当に教育内容を豊かにしていくということを進めないで、こういう初任研という枠にはめた教育をやろうとしておるのか。私は財源の面、財政の面からいいましても、お金がない、お金がないと言いながらもこういうものにお金を使う恐ろしさというものを感ずるわけです。  そして一方では、地元の負担がまた大きいのですね。現在で、試行の段階で一億二、三千万ですね。これが全面施行ということになりますと、平均をいたしまして七億五千七百万の地元負担、各県市の負担というものが出てくるわけです。そういたしますと、今四十人学級を急ぐ、さらには三十五人学級を目指すという方向に行くべきだと思います。総理の御見解を伺いたいと思います。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 財政も確かにいろいろ苦労をいたしておりますが、しかし、教育はまた国の大本でございますから、苦しい財政の中ですべきことはいたさなければならない。どれに優先順位を置き、どのような重点施策を考えられるかについては、文部大臣の御判断を尊重してまいりたいと思っております。
  283. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 もう時間がございませんので、最後に総理お尋ねをいたしますけれども、「世界に貢献する日本」、こう言う場合には、豊かな人間性あるいは画一性や閉鎖性を打破して、個人の尊厳、自由・自律、自己責任の原則、個性重視の原則、これが臨教審の第一次答申で「教育の世界にいきいきとした活力と創造性、豊かな人間性」を回復し、こうきておるわけです。でありますから、今臨教審の第一次答申を申し述べましたが、個性の豊かな教師というものをつくることが今日、二十一世紀に向かう日本としては求められておる、こう思います。総理の御見解を伺いたいと思います。
  284. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大要は、文部大臣なりまた大蔵大臣からお答えがあったとおりでございます。  確かに、昭和五十五年、私が大蔵大臣のときから、十二年間で四十人学級を実施する、これはそれなりに着々と進んでおる。したがって、よく私どもが教わっておりますまずは教育に対する愛情と使命感と指導力という三つのことを言った場合に、私は、初任者研修というものは、教育が国の大本であるという考え方のもとに構築された論理であるなというふうに感じておるところであります。  それから、「世界に貢献する日本」というところで、何と申しましょうか規格品とでも申しましょうか、そうしたものよりも個性豊かなそれぞれの教師像というものが言われておるということも、私なりには承知しておるつもりでございます。
  285. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 最後に、そういう個性ある教師、そして国際に貢献をする教師をつくっていく、そういう意味においては、この初任者研修制度というのは私は大変マイナスだ、こう思いますので、制度を撤回されるということを強く要求をして、終わります。
  286. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  287. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はきょう何点かにつき政府の施策につきましてお尋ねいたしたいと存じますが、まず最初に、国連の問題につきましてお尋ねしたいと存じます。  国連の問題につきましては、総理も所属していただいております国連議員連盟は国会の中で二百三十九名という多数を占め、各党の首脳を超党派的に網羅する団体でございますが、ここ数年、国連外交について認識をまた新たにいたしまして、この問題がただ日本の将来に対して影響性があるだけでなく、国連問題というのは外交の中の二国間外交でなく多国間外交という、これから日本が当面しなければならない一番大きなテーマを扱っているものであるとの認識から、これに対して精力的に取り組むことは我が国の外交能力を一段と充実するものであるとの認識に立ちまして、これを推進してきたところであります。幸いなることに党派を挙げての合意というものが何となく存在しているわけでございまして、これを正確に今後どういう立場で行くかにつきまして、総理お尋ねをしたいと思うわけであります。  まず、国連加盟の当初より、日本は外交の三本柱の一つとして国連重視、国連主義というものを唱えてきたわけでございますが、中曽根内閣の直前になりまして、約七年間にわたり国連重視の言葉がなくなりまして、施政方針演説にもとの言葉を見失ったところであります。竹下内閣とされましては、この中曽根内閣の一番最後に言われました国連に対する御関心を継続されて、新たなる立場から国連重視の姿勢をおとりになっているものと伺っているわけでございますが、総理に、我が国外交における国連外交というのはどういう比重のものであるか、まずお示しをいただきたいと存じます。
  288. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会でもそのことが認識され、今お話しになりましたごとく超党派でもって、それこそ渡部委員などそれに大変なお力をいただいて今日に至っておるわけでございますが、国際社会には、政治経済それから社会等の面で課題はなお山積しております。我が国はその解決に貢献し、「世界に貢献する日本」を実証するという考え方に立ちますならば、まさに国連中心主義、かつての国連中心主義とはまた違った意味でそうしたことを貫き通すべきである、このように私は考えております。
  289. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今国連は、予算全体の約四分の一に当たる八億ドルのうちの約二億ドル前後が加盟国より支払われておらず、昨年末の給与にすら事欠く状況であるというので大変問題になったところであります。我が国としては、賢人会議の提案を初めとして大変立派な国連の行財政改革を主張し、実行してこられた御様子でございますが、最近における国連の財政状態のこの危機的状況はどうなっているのか、どれぐらい足らないのか、どの国が支払っていないのか。聞くところによると、ソビエト政府は分担金の不払いを全部払ったというような宣伝は承ったことがあるが、その後どうしたかはわかりませんし、またアメリカとしては、先日私どもがニューヨークを訪問した際に、九千万ドルを支払うよという元気のいいお話もちょうだいしたわけでございますが、その後どうやらそれは一部にとどまっている様子でもございますし、その辺のところをこの際明示していただきたいと存じます。
  290. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 詳細は政府委員よりお答えさせますが、まず、渡部委員が本当に国連に対しまして献身的な努力を払われていることに対し、我々といたしましても敬意を表します。  今おっしゃるとおり、非常に不払い、また滞納が多いような現状でございます。特に日本の分担率はアメリカに次いで第二番目でございまして、これは国連で高く評価されておりまするし、また緊急に国連を救済しなくちゃいけないというので、先般成立いたし、御審議を賜りました補正予算におきましては二千万ドル特別拠出もいたしております。我々といたしましては非常に努力を払っておりますが、他国のことでございますから、政府委員より答弁をさせます。
  291. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 現在の国連の財政状況でございますが、客年の末の時点におきます分担金滞納額、これは通常予算で三億五千万ドルでございます。それからさらに平和維持活動につきましての分担金滞納分、これが約三億六千万ぐらいございまして、両方合わせますと大体七億ドルの滞納分がございます。そういうふうな状況でございまして、現在非常に深刻な財政難に陥っているということでございます。  昨年暮れに国連へ議員の先生方が行かれまして、アメリカの代表部等ともお話しいただきました。また政府の方といたしましても、随時米国その他と、できるだけ早期に分担金を支払うようにという督促を行っておりますけれども、現在まだアメリカの方が通常予算の分担金で二億五千万ドル、平和維持活動の分担金で六千八百万ドル、それからソ連が通常予算の分担金で千百万ドル、平和維持活動の分担金で一億七千六百万ドル、これが滞納という状況でございます。  なお、先ほど委員御指摘のございました年末に九千万ドル払うという件でございますが、これは若干の部分が十二月に払われまして、その残りの部分は今年に入ってから払われるというふうに承知しております。
  292. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国連外交で一番面倒くさいのは、アメリカとソ連が非常に大きな力を持っておられるということに対しまして、日本は後から加盟したこともございますし、何か口のききにくい立場にあるという状況にあって何となく肩をすくめているようなところがあるわけであります。ところが、今や分担金の比率で世界の二番目、しかも一番経済的にはしっかりやってきたこの日本といたしましては、こういうお金の問題についてアメリカとソ連にいろいろ申し上げることのできるのはやはり日本ではなかろうか、特にここに座っておられる皆様方ではなかろうかと私は思っているわけであります。  ですから、国連協力というのはお金を出すだけではなくて、やはり言うべきことはちゃんと言う。今世界の平和維持のために少なくとも話し合いの場を持ち、世界の立法の立場においても話し合いをまとめ、合意し、一つのルールをつくり上げる世界議会とでもいうべき機能を持つものは国連しかないわけでありますから、この機能がしっかりするように防衛し、これを援護射撃していくというのは我が国外交の偉大な特色になろうかと思っているわけであります。分担金を払わないなんてもってのほかなのでございまして、こういうことについては今後しっかり各国に対しても督励していく、ほかの国々とも協力して督励していくというお立場に立っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  293. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私も国際会議にしばしば出たり、あるいはその総裁、理事長というお方ともお目にかかっておりますが、国連のみならず他の国際会議におきましても、ある国は年度末に払う、年度末に払うというような話で、このような調子では年初はどうなるのだというようなことを嘆いておられました。したがいまして、我々といたしましてはきちっとやっていきたいと思いますが、渡部さんも御承知のとおり、出会うたびに言いますが、なかなか言いにくい話ではございますけれども、やはり国連というものがあってこそ初めて世界の秩序、世界の平和、その安定、これが期せられるということを考えますと、何かの機会には私からも、今こういうような議論日本国会ではあるよということはお伝えしてよいことではなかろうか、かように思います。
  294. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に、国連の職員の中で日本人の職員が極端に少ないことについて言及したいと存じます。  これはいろいろなペーパーがございますけれども、国連資料Aの四十二の六百三十六によりますと、昨年の六月三十日現在で日本人の職員の数は九十一名、望ましい範囲は百四十五名ないし百九十六名と国連の手でカウントされているところであります。つまり、ほぼ半分しかいないということであります。また、高級職員は決して数が多くないのでございまして、各国、特に先進諸国におきましては非常に比重が多うございます。この人数の少ないことに対しまして、もう少し国連職員を採ってもらいたいと我が国で要求したいところでございますが、ちょうど行政改革の波とぶつかっておりまして、交渉のしにくい最中かと存じます。しかし、ぜひ御努力をいただきたいと思っているわけであります。  ところが、この職員の増加を妨げているもう一つの理由があるわけであります。それは国連側が採らないというだけではなく、日本国民の方に国連職員になろうという気分が少ないわけであります。例えば、昨年の八月三十日の各紙の報道によりますと、国連が若手日本人を対象として募集している職員採用試験の応募数が極端に低く、従来の七分の一から八分の一、そのため、窓口の外務省としては締め切り日をほぼ一カ月延ばしてこれに対応したという記録が残されております。  私が国連に参りまして職員からお話を伺ったところでも、実情が非常に特徴的にあらわれております。それは国連の職員の給与が激減していることであります。御承知のように、ドルとの換算率が二百四十二円であった二年前と比べまして、一ドルが百三十円段階の今日と比べますと、もうほぼ半分というふうにドル払いでなっているわけであります。国連職員に対してはノーブルメーヤーの原則というのがございまして、一九二〇年の国連総会で設置された委員会の委員長ノーブルメーヤーは、加盟国から職員を採用するとき、優秀な人々が集まるよう、国際機関の給与は最高給与国の公務員給与を基礎に定め、そして職員の国籍に基づく給与差は認めない。したがって、アメリカの大体二〇%アップというような内々のルールが決められた様子なのであります。ところが、今はとんでもない、半額になってしまった。また、日本の公務員の給与よりも在外活動の日本人の会社の給与というものは極端に大きいものでございますから、極端な差がある、優秀な人がどんどんやめてしまう、そんな状況があるようなのであります。これは日本だけではない。  甚だ言いにくいことでありますが、国際公務員の忠誠義務、中立という点を考えますと、日本政府が下手なお金の出し方をすることは好ましくないと思います。そしてそれに対しては、最近もデクエヤル事務総長から十二月二日付で各国連大使あてに、最近、各国政府が自国民たる国連職員に対して金銭援助をしているということは遺憾だ、制御してもらいたいという意思表示をしたようであります。まことにそれももっともなことでございますが、現行どんなことになっているかと申しますと、国名をここで挙げさせていただくのは控えきせていただきますが、自分の公務員としてまず雇って公務員の給与を与えて、それから国連職員へ派遣して国連職員としての月給を二重払いでもらわせている国、それからまた、自分の国民の職員を呼び出して、君の銀行通帳のナンバーを教えなさいと言って聞き出した上で、そこに後から名目のわからない金を払い込んでいる国、中にはスイスのナンバーコードを指定して、あてがって、そしてそこに払い込んでいる、まるである種類のギャング同士の支払いに使うようなやり方だと笑われているようでありますが、そうしている国、まことに何とも言いがたいのであります。  その中で我が国ひとりが清潔な顔をしておりますとどういうことになるかというと、優秀な職員に限ってやめてしまう。若いうちはいいのですけれども、優秀な職員になるとやめていく。そうすると、我が国は国連に対する影響性においておのずからある種の減価を生ずることになるわけであります。私はそこで人数をふやすためにも、この職員の給与の問題はぜひ考えていただきたい。これは日本政府がやるという方式は多くの障害があることは明らかでございますけれども、政府が直接でなく、いろいろな立場の工夫があってしかるべきものではなかろうか、そしてそのきっかけをひとつ御配慮をいただけないものか、考えてもいただけないだろうかとお願いしているわけでございますが、よろしくお願いいたします。
  295. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 御指摘のとおり、邦人の国連職員とそれから海外その他におります日本人の給与、その間に円高・ドル安の関係で大変に格差が生じてきているということは事実でございまして、これが確かに国連職員になろうとする者の気勢をそいでいるという点があろうかと思います。  他方、委員御指摘のように、国際公務員でございますので、これが国際公務員としての義務、忠誠義務とそれから出身国に対しての義務、こういった二重忠誠というふうな関係になることは好ましくないということから、国連事務総長を初めといたしまして国連の場でこれが問題になっているわけでございます。ただ、各国の場合はどのような方法でやっているのか、先生から幾つか御指摘ございましたけれども、必ずしも分明ではございません。したがいまして、この忠誠義務といった国連職員としての忠誠義務を害しないという前提のもとにどのようなことができるかということは、識者の方々ともいろいろと御相談をしたいと考えております。
  296. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、よろしゅうございますか、今のお話のとおりで。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  297. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いや、私は今までの国際会議といいますと本当は出資比率による投票権のある金融関係が多かったものでございますから、したがって、日本人職員の問題等につきましても、いろいろその都度主張してまいりましたが、国連の実情については今渡部先生のお話をしかと承りまして、私も問題の複雑なところもよく理解さしていただきましたので、これからも先ほどの答弁を聞きながら、私どもで可能な努力はしなければならないと思っております。
  298. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、今後の御活躍をお願いするようにいたしたいと存じます。  次に、竹下総理に今度は集中的にお伺いするわけでございますが、もちろん外務省やその他の方で追加してくだすって結構でございます。  竹下総理は今回の施政方針演説におかれまして、みずからの主体的判断で「世界に貢献する日本」を目指すと格調高くうたわれました。また外務大臣は同じ言葉を引かれまして、「世界に開かれ、世界に貢献する日本」を目指すと言われました。世間の批評の中では、米国の圧力で米国に貢献する日本にするのではないかなどというやじも飛んでおります。  私は、そういうやじはともかくとして、今総理に対して、この「世界に貢献する日本」という表示をなさったということは、竹下外交の非常に見事な方向を示されたものではないか、まさに歓呼して拍手して迎えるべきものではなかろうかと、高く、高く、高く評価するものであります。こんなに褒めまして、今度は、じゃその中身についていろいろとちょっと申し上げたいなと実は思っているわけであります。  私は、この「世界に貢献する日本」という立場におかれましては、まず我が国の特性を考え、我が国が貢献すべき内容は何なのかなとあれ以来考えておりました。  一つは、我が国は、勝手でございますが、私の方から言わせますと、日本は平和国家であり、財政健全国家であり、文化国家なのではないかというところが非常に大きな特色ではないかと思うわけであります。平和国家といたしましては、日本は唯一の被爆国としての立場がございまして、そして国際紛争の上には武力を行使しないという日本国憲法の立場があるわけであります。この二つを持っている国家というのは、従来の世界の各国にあり得ぬ格調の高さでございまして、この二つを貫くことが世界に貢献する第一の道であろうと思っているわけであります。  第二は、今経済の調整が続いておりますけれども、内需を拡大し、経済協力を拡大し、世界の財政を調整し、節度ある財政秩序を建設していくために努力をしている立場でございまして、日本の企業家の努力と相まちまして、経済国家として日本は立派な地歩を占めてまいったと思うわけであります。  第三に、私は、お金で威張っているだけではなく、文化国家でなければならないのではないかと考えているわけであります。金持ちで長続きをした国家は、地球上わずか千年の歴史を考えましても永続したケースはないのでございまして、世界の各国の文化によい刺激を与え、それを発展せしめ、むしろお金でなくて、そして知恵を協力の対象としてささげていく高度な精神と哲学と考え方、暮らし方の国であるべきではなかろうかと思っているわけであります。  私はその意味で、平和国家としての日本経済財政国家としての日本、そしてその次に文化国家としての日本が今や方向性として世界に貢献する日本の内容なのではなかろうかと思うわけであります。その点、総理が細かいことは何もおっしゃいませんでしたので、私は総理のお立場、御見識を伺いたいと思うわけであります。
  299. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 端的に申しまして、私が言わんとしておることを三点に整理整とんして位置づけをしていただいておる、そのものずばりであると思っております。  ただ一つだけ、財政健全国家という表現が最初ございましたが、その点については、私も長らく財政を扱っておりましたが、健全国家として肩が張られるほどのことにはなっていないな。しかし、よくお話を聞いておりますと、いわゆる経済大国あるいは経済財政国家、こういう御表現でございましたので、この点についても別にちゅうちょを感ずるものではございません。  特に文化問題につきましては、各国文化に対するよりよい刺激を与えるということももとよりでありますし、また、各国に存在する文化をいわば受け入れていくという貢献もしていかなければならないではなかろうかと、このようにも整理いたしておるところでございます。
  300. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理は二十五日に韓国にお行きになりますようなので、それにもう一つ、くどいようですが、つけ加えて申し上げますならば、日本は非軍事大国、軍事大国にならないよと何回かここのところで声明してまいったわけでございまして、福田総理のASEANにおけるごあいさつを想起するまでもなく、幾つかのこの種類のお話は出ているわけでございますが、総理が外遊され、特にASEANあるいはアジアあるいはアフリカ等にお出ましになるとき、この問題は重要ではなかろうかと思うわけであります。教科書問題あるいは日本軍国主義侵略問題等、たくさんいろんな問題がしょっちゅう出るのを拝見しておりましても、日本に対する恐怖感、警戒感は根強く残存しているわけでございますし、私どもはみずから述べてその疑いを晴らすとともに、改めてそれを決意しなければならないことであり、総理は、国連におけるSSDIIIの演説にされましても、韓国におかれましても、その辺は御言及なさることが好ましいのではなかろうかと思っているわけであります。  特に、最近アメリカの長期統合戦略に関する諮問委員会が選択的抑止の話をされましたが、今後数十年間の世界の戦略バランスは日本が軍事大国になるかどうかが問題なのだと言っておりまして、まさにアメリカもまた日本を注目している様子なのでございます。  ここで竹下総理がどういう決断を述べられるか、今知らざる注目が、見えざる注目が総理の言動に集まっているということを我々は理解しなければいけませんし、その姿勢を明示しないととんでもないことに、ここ二十年まずいことになるんではなかろうかと思うわけであります。そこで、今申し述べました軍事大国にならないとの御決意につきまして、もう一回ここでお示しをいただきたいと存じます。
  301. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに今御指摘がありましたように、過去の歴史からいたしまして、いろいろな批判とかあるいは我が国に対する懸念とかいうものが存在をしておるということは否定することはできないと思っております。したがって、私どもといたしましては、やはりそれをいわゆる国是として、我が国が軍事大国の道を通らない、こういうことを機会あることにとらえて、これをまずは主張すべきであろうと思っております。その私にとっての第一回の場所はASEAN首脳会議ではなかったかというふうに思っております。これから韓国にもお許しを得て二十四日から参るわけでございますが、いずれ中国の訪問等も相互の都合のいいときに予定されておることでもございますので、そのことだけは口を酸っぱくして私は言うべきことであるというふうに思っております。  ちょっと饒舌になって申しわけありませんが、私自身が書物の中で、軍事大国にはならないし、なろうと思ってもなれるものではないという表現を一遍使ったことがありまして、なろうと思ってもというような表現も使うべきでなかったというような私自身の自己反省もいたしたことがございます。
  302. 渡部一郎

    渡部(一)委員 立派な御答弁をいただいて恐縮であります。特に最後の項目は、私が最後にもう一つ言おうかなと思っていたところでございまして……。  もう一つ、今度はもっと話を具体的にお述べしますと、日本の姿勢がここのところでいろいろごちゃごちゃ言われている数項目がございます。七つばかり一遍に申し上げますので、適宜御答弁をいただきたい。これは総理が御答弁になるだけでなく、通産大臣にも外務大臣にも大蔵大臣にも御関係が出るかもしれません。  一つは、南ア連邦に対して。これは国連で制裁決議が行われておりまして、南アの反省を求めるため世界じゅうの国々が協力しているのでございますが、日本政府はここのところで何と貿易が世界の中で一番になるような状況を放置したと非難されているところであります。  私が特に心を痛めておりますのは、先日南アの独立運動の映画会の席上、浩宮様がこれをごらんになった席上、制作者が日本の行動に対して批判を加えたという記事を雑誌で見たところであります。こういうような状況を放置していくということは私は甚だ心が痛むのであります。皇太孫の立場にある方だから特に申すだけではなく、日本の次の世代の人々に日本はそんな残虐だったのかなと思われるような処置をとって、しかもそういう雰囲気を残すことが問題だなと強く思うからであります。まず一番。  二番目はフロンガスの件であります。  頭などの化粧品とかあるいは冷蔵庫とかいろいろ使っているフロンガス、このフロンガスが空へ舞い上がってバンアレン帯をぶち壊して、そして紫外線が強く来て人間に打撃を与えるぞというので、欧米系の学者の一部はひどく心配をしていたわけでありますが、日本側はその証拠がないという理由でこれに抵抗した。かなり抵抗いたしまして、まとまるのがかなりおくれた。結局ようやくにして一九八六年水準で凍結するということが決まりました。  日本もそれに署名したようでございますけれども、このフロンガスのときのやり方は、日本国の産業の権益を守るというためで御発言になったものはいいといたしましても、日本環境保全に対する熱意を表明するものとしては甚だ納得できない行動だったのではなかろうかと残念に思っております。この件で、外国へ行きまして私どもがどれだけ非難されているかわからないのであります。フロンガスはかわりをつくることは決して不可能ではなく、同種製品の開発は日本の技術力をもってすれば数年を出ず出るというのが業界の常識でありますのに、何でそんなに頑張り過ぎたのか、残念なのであります。  第三番目。ワイダー計画に基づく日本版のマーシャル・プランの件であります。  日本版のマーシャル・プランと、でかい言葉で言われてしまったために、世界じゅうから例の三百億ドル還流計画というものは、これはもうお金をただでくれると錯覚されてしまって、御担当の方はひどい迷惑を受けられた御様子であります。事実は、真水の部分はかなり少ないことも事実でございますし、それからその構想というものがかなり立派でないとお金を出さないいきさつもございまして、昨年の未発表されてから約半年後の様子では、四十六億ドルしかまだ行き先が決まっていないというお話も承ったところであります。  我が国としては、世界を助けるためにこの三百億ドルのルールを、今までと同じようなルールだとさっぱり伸びていかないのではないかという心配があるわけであります。これを何とかもうちょっと早目に、もうちょっと借りやすい形で、ある場合は無償の形に切りかえて、言ってみれば、三百億ドル計画を今から直すことはできませんが、別の形で無償協力を中心にして協力するようなやり方で世界の貧困国のてこ入れのために貢献をするという、明示された鮮やかなお金の出し方、アンタイドローンを中心として出すべきやり方、そうしたものを行うべきではなかったのかと今識者の間で言われているわけであります。こうしたこともひとつお考えいただいてはどうだっただろうか。  それから武器の禁輸なのであります。  イラン・イラク紛争の様子を見ておりますと、いつまでたっても戦闘がやまない。戦闘がやまないだけではない、調停にかかっている超大国あるいは大国のような国々からまでも、イラン・イラクに両方ともお金が、どんどん武器弾薬が売り込まれておる。今度国連で、いよいよイラン・イラクの紛争調停がうまくいかないから、何とかこれを食いとめるために、ひとつ武器弾薬を売らない決議をしようかなというお話が出ておりますが、自分の手が汚れてよくもまあ言えたものだと私は思っているわけであります。手の汚れない日本こそが大手を振って、先頭を切ってそれをもっと言うべきではなかったのかな、私はそれを強く思っているわけであります。つまり、武器輸出を禁止したりあるいは化学兵器禁止条約を推進したり地下核実験の停止を呼びかけたり、日本でしか言えないこういうせりふをもっと大声で言うことが大事なんじゃないかな、こう思っているわけであります。  それからその次、人種差別撤廃条約のことであります。  人種差別撤廃条約は外務省はサインして帰ってきました。日本の言論の自由と関連があるというので調整が続けられているそうでありまして、その御努力に敬意を表します。しかし、時間が長過ぎます。もう日本は人種差別撤廃条約が嫌いなので、あれを引き延ばしているのだとわあわあ言われているわけでございまして、決してよろしくないなと思っているわけであります。  それからもう一つ、熱帯樹林が世界じゅうで切られています。そして緑が丸裸になっている。熱帯樹林が切られていて丸裸になっているぞという話が続いています。それで、日本は国連の熱帯樹林に関する会議の本部を日本に招聘することに決めまして、この間会議までやりました。しかし、一番たくさん切っているのは日本だと言われている。そして、日本の監督官庁はそれに対して、切るのをやめるとも、切ったら後に何か植えるとも、何もまだ指図なさっている段階ではないのであります。  私が今申し上げたのは七項目か八項目になったはずでございますが、こうしたことをてきぱきおやりになりませんと、「世界に貢献する日本」と言うたびに、「世界に貢献する」という言葉の裏でそれをかいくぐっている嫌な感じの日本というイメージが定着するのではなかろうかと私は思うわけでございまして、こうした問題につきましてぜひ御配慮あるいは適切な御施策をお願いしたいと思うのでございますが、できるところから御返事をいただきたいと存じます。
  303. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 順次お答えいたします。  まず、南アでございますが、いろいろこの間も御質問がございまして、私も外交演説で申し上げましたが、アパルトヘイトには断固として反対する、こういう立場を貫きたいと思います。ただ、円高のために昨年度よりも一九%経済貿易がふえたということが、これが日本非難というような決議にもなっておりますから、近くそうした関係におきましては通産省と十二分に連絡をとりつつ、自粛を促すつもりでございます。また、アパルトヘイトの被害者に対しましては、我が国は積極的に取り組んで人づくりに大いに尽くしたい、こういうふうに考えております。  その次は還流資金でございますが、一応前年の百億ドル世銀にファンドとして預けてあるのと昨年のとで、おっしゃるとおり三百億ドルでございます。その三百億ドル、現在はどうなっておるかということでございますが、二百億ドル以上の官民アンタイド資金の還流措置は約三二%が具体化しておりますし、三百億ドル以上の還流から見ますと、五割が具体化しておるということでございます。このうち、御承知のとおりに総理がASEANに行かれたときには二十億ドルを下らない貸し付けをASEANにいたしましょう、また中南米に対しましても四十億ドル程度を私たちは考えていかなければならない、かように思っておるような次第でございます。  その次に人種差別条約でございますが、今みずから御指摘なさいましたとおり、憲法におきましては表現の自由あるいは集会の自由、言論の自由、いろいろなそうした基本的人権が我が国の憲法の特色でございまして、これにはきつい処分がついておりますので、その処分の条項とこの基本的人権との調整をどうするかということに鋭意努力しておりますから、確かに一日も早くそうしたことが調整がつくように我々も今後頑張っていきたいと思っておる次第でございます。  また、地下実験等々に関しましても、我々は常にやはり核実験全面禁止という方向で今後努力をしなければならないと思いますが、ステップ・バイ・ステップ方式といいましょうか、そういうことを提案して、国際的には核実験が検証し得る能力向上のために地震データの交換を一九八五年の末より開始しておる、そういうことも日本の一つの特色ではないかと思っておるような次第でございます。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕  その次は武器でございますが、イラン・イラク両国の紛争に関しましては、特に昨年日本は安保理の議長国でございましたから努力しております。しかしながら、はっきり申し上げまして、イランがなかなか五九八号の決議をのもうといたしません。こうしたことでございますから、安保理におきましても、速やかに武器輸出禁止等の措置をとることにおいてやはり一日も早く五九八の決議をのみなさい、速やかに撤兵、速やかに停戦、大きく言えばその二つのことを守りなさい。私たちも懸命の努力をいたしておりますが、武器輸出に関しましても、五大国の意向もあるわけでございますが、我々といたしましてもこれに対しましてやはり積極的な立場をとらなければならないな。ただし日本といたしましては、やはりイラン・イラク両国に対しましては等距離で今臨んで、その方がかえって、あるいは紛争を解決する一番よい方途であるかもしれぬ、こういう思いも抱いておりますので、そこをうまくバランスをとりながら今後やっていきたい、かように思っておるような次第でございます。  そのほかは、それぞれ担当の方々から答弁せられると思います。
  304. 田村元

    ○田村国務大臣 まず、フロンでございますけれども、昨年の十月に化学品審議会にオゾン層保護対策部会を設置いたしまして、この部会においてフロンなどの規制を円滑に推進していくための国内体制のあり方に関して検討していただいております。法的措置につきましては、この審議会の検討結果を踏まえて、でき得れば今次国会に法案を提出し、御審議いただく所存でございます。  それから、南アの問題がございましたね。おっしゃるとおりでございますけれども、多いといえばそれまでなんですけれども、円高というのが非常に影響いたしまして、一九八〇年からを見てみますと、八一年が八千六百九十一億円、それがドルベースで三十九億五千万ドル、それが八六年では六千七十一億円と二千数百億円減っておりますが、ドルベースでは三十五億八千四百万ドル、それから一九八七年の通関統計で申しますと、円ベースで六千百九十六億円、それがドルベースで四十二億七千五百万ドルというふうにはね返っておるわけでございまして、非常に苦慮いたしております。しかし、率直に言って多いことは多いのですから、渡部委員のおっしゃったことは当然の御指摘として我々も努力をしていかなければならぬと思っております。
  305. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 環境庁の関係しますのは、フロンの問題と熱帯雨林の二つがございます。  フロンガスの問題は、先ほど通産大臣からお話がございましたが、私どもとしてはオゾン層の破壊という問題について対処するわけでございますが、まず中央公害審議会の答申も得ましたので、通産省と共管してフロンガスの規制の立法化に踏み切ることにいたしました。  また一方、オゾン層の状態というものを我が国でも独自で調査する必要がありますので、現在その器械を据えつけておる最中でございますけれども、来年度にはこの測定を実施して、みずからの手でこの調査を進めることにいたします。  次に、熱帯雨林の問題でございますが、御指摘のように、十一万平方キロと我が国本州の半分くらいが今砂漠化しておる状態であるし、この熱帯雨林には世界の珍しい昆虫あるいは爬虫類等約五〇%も生息しておると言われる大事な自然環境でございます。ただ、ここで今砂漠化が進んでおる一番大きな原因は、その地方はほとんど焼き畑農業をしておりますので、移動しておりますから、そういうために進んでいく問題、それと切る木の約八割までが薪炭用として地元で使っておるという状況がございます。しかしながら、輸入しておる四三%まで我が国でございますから、我が国にもそれ相応の責任が存在しておると思っております。したがって、我が国としてはUNEP、国連環境計画等を通じて技術指導するなり、あるいは資金の援助をするなり、そういう方法をとりつつあるのが現状でございます。
  306. 渡部一郎

    渡部(一)委員 とりあえずお答えいただいたという感じで、総理ごらんいただいたとおりです。  要するに、くっきりと対策が立てられていないために印象が悪く伝わっている。これはやはり、行政というものはそんなくっきりはっきりいくものでない点が十分あるのを認めておりますが、ぐあいが悪いなという感じがして仕方がない。  例えば熱帯樹林の御答弁を最後にやり玉に上げて恐縮ですが、一番最後だったのであれだけ批評いたしますが、熱帯樹林をどうして切るか、その熱帯地帯における庶民が薪炭がないという状況です。薪炭がなぜないのか、切る木が横にないと言ったって、ほかに何か料理の方法がないのかといいますと、かまどが非常にレベルが下がっております。インドの国連関係職員の言っておりますのは、太陽の熱を利用して反射する反射なべ、太陽熱反射なべというのを鋳物でつくったら、この人たちはもうそんななべを温めるのに木を切らないのだと叫んでいるグループがあります。また、かまど、本当にもう土かまどの小さいのの作り方を日本式のを教えますと、薪炭の量が十分の一で済む、こういうのも報告されております。そういう簡単なことを教える手続までやっていかなければいけない。また、切った後植えるというルールを日本の業者に持たしたとして、その業者に対する負担はどのくらいになるかといいますと、全体で三%ないし四%という数字がもう出ております。それを日本は行政指導やらその他でしていないという実情がございます。そういうのは外側で言われて、なかなか日本側には聞こえてこないのでありましょう。  私は、これは熱帯樹林だけでなく、アメリカやソ連の松あるいは杉、ヒノキ、そうしたものについても同じニュアンスの攻撃が最近巻き上がり始めたというのを感じております。こういうのをてきぱきと明示した明瞭な形で解決していただきたいなとぜひお願いするわけでございますが、いかがでございましょうか。
  307. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それぞれの問題につきまして御質疑があり、それに対して各担当大臣からお答えがあったことでございますが、いわゆる「世界に貢献する日本」と言えば、声高々にそれを掲げても、現実の措置としてもっともっときめの細かい措置を行うことによって、外から見たときにも、いかにも日本が実態としてそういう方向に動いておるということを示さなければならないという御指摘でございますが、私も全く同感でございます。  強いて申しますならば、私自身一つ例示をいたしますならば、日本版マーシャル・プランという言葉を使っていただきましたが、実は私も一遍便ってからやめたことがございます。と申しますのは、個人的にもお話ししたことがございますように、何か結果として輸入先を獲得したと、こういう批判を受けてはならぬ。ところが、最近レーガン大統領もマーシャル・プランなんということも言っていらっしゃいますから、余り輸出先問題というのは考えなくてもいいんだな、こういう多少印象を変えたところでございますけれども、先般もASEANへ参りましても、何分ブルネイのように日本のあるいは一人当たり所得それ以上というような国もあれば、また、人口の規模も一億六千万人のインドネシアから、三十万人、二十五万くらいですかのブルネイまであって、いろいろそのまたニーズも違いますけれども、その中へどういうふうにして資金還流問題を溶け込ましていくかというのは大きな課題であるという問題意識は持っております。  それと、おっしゃいましたように、さようしからば無償というものでむしろ大きくクローズアップした方がよかったのじゃないか、こういう御指摘もございましたが、ODAの四百億ドルの計画というものを縮めていくはもとよりのこと、いわゆる質的改善という点にこれから意を注がなければならないことであるというふうに考えております。
  308. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほどから提案の多い話ばかりしておりますのですが、私は竹下内閣の大筋について伺うものですから、どうしても提案が多くなり、言葉が多くなり、恐縮であります。  先ほどテレビを見ておりましたら、いいニュースがございました。アメリカ大統領選挙に出ておられましたゲッパートさんのゲッパート条項が、アメリカの議会におきまして、ゲッパートさんの大統領候補になるかどうか関係なく、これは取りやめるよというお話があったそうであります。私はこの場をかり、米国議会の好意に対して感謝の念をあらわしたいと思います。  私は一人の庶民として、日米間のこの紛争の処理というのは恐らく当竹下内閣の最大の難問であろうかと思います。この日米間の紛争は、今や経済、貿易、金融など拡大中でございますし、貿易戦争とか日米経済戦争などという用語を用いている方もあるわけであり、私はこういう用語はつらくてとても用いる気にはなれませんけれども、長くますます深刻な状況であります。  第二次大戦まで先進産業諸国間では、よく銑鉄の出銑量が二つの国家で入れかわるたびに両国間に戦争が起こったとヨーロッパ各国で指摘する例があるわけであります。時代が変わりまして、今、日米間を眺めてみますと、そんな鉄鋼の生産量が変わったどころではない。一九八一年に千四百十一億ドルという世界最大の金持ち国だったアメリカが、今、一九八六年の末ですからわずか五年目に二千六百三十六億ドルという世界最大の債務国になってしまった。八七年末はおよそ四千億ドルだろうと言われているわけであります。それに対して我が方は、在外資産がほぼそれに見合うぐらい、三千億ドルぐらいそろそろたまっているのではないかと思われるわけであります。  こういう第二次大戦の敗戦国日本が大金持ちになる、そのときの勝利者が劇的な形で債務国になってしまう、これは私たちの想像以上に感情を刺激し、そして紛争の種になる基本的状況があるのではないか。一つずつの交渉をしておられると、恐らくそういうテーマでいっぱいになってしまわれるとは思いますけれども、この舞台背景がある以上は、あらゆる彩りが陰惨な彩りになってくるということは、先方の立場になればわかるのではないか。  しかも、依然として世界最大経済国家であり、軍事国家であり、ある種の文化大国であるアメリカとの関係を日本は第一義的に顧慮する以外に、日本の生存を安定たちしめることはできないのではないかと思うわけであります。したがって、私は、原則がなければいけない、必ず紛争は処理しなければいけない、紛争はむしろその背景を含めて予防しなければいけない、そして第三番目に、いかに両国間に紛争が起きても常に適切な処置で解決されるぞという認識が両国民の中に行き渡るようにしておかなければいけないと思うわけであります。  誤解を解き、挑発を避け、双方の文化的伝統を尊敬するところまで至らなければいけない。今や文化的伝統は軽べつとののしりの種になるようではいけないと思うわけでございますし、こういうときこそ、私どもはやけくそぎみの投げやりな発言を交渉者としては慎んでいかなければならないと深刻に思っているわけであります。  そこで、その立場から、私はあえて大胆不敵にばらばらな話を固めて提案するのでございますが、いかがでございましょうか。  一つは、私は、こういうふうにお金が急激にがあっと入れかわってなくなった場合の向こうの雰囲気からいうと、頭を下げて日本にお金をくれとか、ギブ・ミー・マネーなどと言うことは、それはもうとてもできるものじゃございませんでしょう、腐ってもタイという言葉だってあるのですから。やはりこれは適切な口実のつく立場に置いて、私どもはアメリカ経済について一定の好意を示さざるを得ないのだろうと思います。  そうすると第一番目に、日米摩擦、あらゆる摩擦をまず包括処理する。包括という言葉をわざわざ使いますのは、包括貿易法案でさんざん苦しめられたので包括とわざわざ言うのでありますが、包括処理するプランを日本がアメリカと相談してつくり上げるという提案をされたらいかがかなと思っているわけであります。その包括とは、私どもの立場からいえば、全面解決を目指す包括案というのをお互いに合議する必要があるのではなかろうかと思っているわけであります。  第二番目には、商品ごと、事件ことのMOSS協議というものは決して悪くはありませんけれども、この交渉のときにしばしば大紛糾いたしますのは、先方の意見でございますよ、責任者が出てこないで官僚が出てくる、その官僚がいいかげんなことを言う、そういうふうに猛烈な反発を招いているわけであります。我が国の官僚は優秀ですから、交渉者が官僚を帯同するのは当たり前でありますけれども、その官僚だけに責任を負わせておきますと、権限のない人が交渉するという、外交では一番嫌われる交渉だと錯覚される可能性があると私は言わざるを得ないのであります。権限のある担当者が官僚も引き連れて交渉に行く、このルールをひとつおつくりになることが要るのではないかと思います。  次は、三番目は、急速に起こる集中豪雨的な輸出に対してコントロールをするシステムをつくり上げなければいけないと思います。ドイツ式でいけば輸出超過税でありましょう。しかし、我が国では輸出超過税というのをつくろうとしたら、とてもではないけれども時間がかかり過ぎて討議の対象にならないものと存じます。したがって私は、こういう集中豪雨的にがあっと来たときに対抗するこちらのシステムを持っておく、持っているということを先方にも明示しておくことが要るのではないかと思うのであります。  第四番目に、円建て取引を強化したらどうか、私はそう思います。世界の国際通貨はドルです。弱いドルが世界の国際通貨としてたった一つ頑張っているわけであります。これは日本の方からいえば、ドル建てで輸出しておけば何かと安全です、ドルは今まで下落し続けてきたのですから。そうするとドルの使用額はふえます。その責任と重圧はアメリカの財政当局を襲撃しているということを考えなければいけない。これはアメリカの財政当局とも相談しつつやる必要はありますけれども、少しは日本が国際経済の中で円建て取引というものをかばう立場があってもいいのではないだろうか、こう思います。  五番目。今ハワイとニューヨークで日本の不動産業者が軒並み大きな建物を全部買ったのは皆さん御承知のとおりであります。地元の新聞には、円がニューヨークを支配したというので見開きページに写真が載っておりました。そんな目立つところを一発買っていただくということは、いいのか悪いのかは存じませんが、ナショナリズムを刺激するというような商売のやり方というのは我が国の国益に合致しないと私は大声で言わなければならぬと思います。それは私が言うのではなくて、与党が言う、政府が言わなければならぬことであります。商売は自由です。しかし、それはやり過ぎであります、そんなことは。ハワイのワイキキの浜を歩いたら全部のビルディングが日本の所有であり、ゴルフ場は一つ残して全部日本の所有だ、これはちょっとやり過ぎです。どう考えてもいい感じがするはずがない。人の痛みを感じるのが日本文化の特色であったなら、その文化の特色に敬意を表して我々は判断というか仕事が行われていいのではないか、そんなときだけ自由貿易などと言うのは当たらないのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。  また私は、ここのところで、どうしても我が方の持っている許認可権あるいは行政指導、レギュレーション、官僚の持ついろいろなルール、そうしたものに対して先方の目が大きく攻撃の眼を向けようとしていることを心配しております。私が心配という文字を言いますのは、全部行政指導というものを取っ払ってしまったら、それは混乱するからであります。多年にわたって積み上げてまいりました日本国の伝統的なシステムというのを一発で外していいはずはない。しかし、それがアメリカの要求を抑えるためだけに行政のレギュレーションが発揮されていて、こうしたいというアメリカの希望を抑えつけるときだけ発揮していると思われるようだったら、私はマイナスではないかと思います。したがって、当然このレギュレーション、規則、法律、法令等を、先方の言い分、いいものもあるし悪いものもあるのを含めて、デレギュレーションを検討するシステムをつくるということもまた先方に意思表示をしておくということが大事なのではなかろうかと私は思います。  その次。両国にとって公平な紛争処理機関があってしかるべきだと思います。欧米の間では、両国関係が非常に微妙な関係でございますと、紛争処理機関を必ず設けて両国関係を調整していくというのはしばしば行われることであります。ドイツとソビエト、ドイツとフランス、フランスとイギリス、こうしたところにおける紛争処理は各種類の紛争処理機関が現存しておりますし、社会的にも機能を発揮した例があります。我々もそういう例に倣うべきではないかと存じます。対日強硬路線を生んだ大統領選挙のときのある候補者の主題、テーマになるような失敗を招いてはなりませんし、また、今アメリカ政府が一番心配しているアメリカの株価、むしろ為替より株価を心配しているアメリカの財政当局のこの気分というものを我々は理解しなければならない。株価は操作できるような簡単な代物ではありませんけれども、これについて十分な配慮を払う必要があるのではないか。  私は、レーガン・ボンドを円建てで出せというふうに日本のある方が言っておられるのを伺いましたけれども、そういうことは非常につけつけとした嫌な言い方でありまして、その前に日本側がこういう調整するために話し合いをしよう、全面解決しようという姿勢を示すことが、竹下内閣にとってひどく大事なのではなかろうか。公共事業の開放は不十分だとこの新聞の切り抜きには書いてあります。竹下さんが御訪米になった直後なのに、もうこういう批判が出てきました。何かいいことを言ったって向こうはまた批判するぞというふうに受け取ることは簡単ですが、従来型のやり方でやりますとこういうことばかりになり、そのたびに日本に対する不信感が増強するとなれば、我々は先方も立ちこちらも立つ立場から物事を考える必要があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。  これは一つずつの問題についての御答弁は要りません。なぜかと言うと、一つずつ答弁する前にたくさんの検討が要るからだと思います。そして、私の今の提案は全部いいなどとは私は言っておりません。ある素人の思いつきと思っていただいて結構です。笑っていただいて結構です。しかし、そういう何かのポイントをお酌み取りいただいたら、日米関係の紛争を処理するための何かの施策を政府にぜひともお考えいただきたいと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  309. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、私から総括的にお答えしてみたいと思います。  包括的処理機関と申しましても、確かに難しいことがございます。MOSS協議の問題もある。強いて私の経験からいえば、金融の自由化、国際化、すなわち円ドル委員会、これが、金融に限りますけれども、幅が広いだけにある意味において包括的機関であったのかなと、こういう、これは私なりに幾ばくか比較的うまくいったという前提の上に立って、私の経験から申し上げたわけでございますが、やはりMOSS協議というものがそれなりに機能してきたことは事実でございますが、おっしゃるように権限なきものの交渉はこれは児戯に等しい、こういうことでございますものの、今日もいろいろな交渉をやっておりますが、それぞれの権限を与え、そしてみずからの権限の及ばざるところはいわゆる請訓、訓令を求めることによって対応しておるということで、逐次理解は増しつつあるではなかろうかというふうに考えます。  それから、輸出課徴金の問題になりますと、これは大変な議論になりますけれども、いわばこれに対してかつてお亡くなりになった稲山さんは、そのときに自然に自主規制が働くようなお互いの良識の世界で勝負したらどうだ、こういうことをおっしゃっておりましたけれども、考え方としてわかりますが、国内でそれが調整できるという措置というものについては、やはり最後におっしゃっておりました行政指導の範囲内における良識を喚起していくというのが重要ではなかろうかなと思っております。  それから、円建て決済をするように奨励しろと。これは私も考え方としてそういうことは――ただ、長年の国際的貿易慣行の中で円建てというものでやるということについては、おのずから限られた分野ではございますけれども、逐次広げていくという努力はしなきゃいかぬと私もかねてから思っておるわけであります。  それから、やたらとニューヨークにしろホノルルにしろ、ビルを日本人が所有権を取得する。それは自由でございますものの、少なくともそれがその地方の方々の雇用の場につながっていくというようなものであらなければならないというふうにかねて考えております。苦々しい気持ちというのは、これは渡部さんのみでなく、多くの人が感じておるところではなかろうかというふうに思っておるところでございます。  それから、行政指導というのは、本当は最初は日本には行政指導というのがあってけしからぬというので、いつの間にかギョーセイシドーという英語ができた、こういうことでございましたけれども、今は、今おっしゃったように相手側が行政指導によって妨げられるのではなく、国内の行政指導によって相手側に対しての幾ばくかのメリットが上がっていくというようなことは、私は考えられ、逐次実行に移されているのではないか。考えてみますと、法定主義のところで行政指導というのが余り幅をきかすのはいかがかという議論もございますけれども、私は、今渡部さんいみじくも長年積み上げてきたと、確かに日本という国は行政指導というのを大変に積み上げたと思います。国会答弁の中でもその点においては、法律、政令は別といたしまして、行政指導の範囲内においてというようなことがよく言われるわけでございますから、これがもっともな形で機能していくということも好ましいし、そういう意味におけるデレギュレーションというのは必要であろうと思っております。  それから、紛争処理機関。ずばりではございませんが、OTOなどがある程度私は機能してきたのではないかというふうに思っておるところでございます。  それから、レーガン・ボンドの問題でございますが、これは強いアメリカ、強いドルという考え方から、かつてカーター・ボンド、西ドイツ、スイスでございましたか、そういう批判にアンチテーゼを掲げて選挙で戦われたという歴史もございますけれども、恐らく渡部さんのお考えになっているのは、最初はそれでは一対一で双方がその国の通貨でボンドを発行したらどうだ、それで二回目になったら日本の方が半分にして、三回目になったら相手だけが残っておるというような、メンツといいますか、そうしたものにとらわれざるような意見などは、恐らく宮澤さん初め大蔵省の皆さん等がよくおやりになっている議論だと思いますけれども、この問題についてはレーガン・ボンドそのものを今論ずることはさておくといたしまして、いろいろな提言は私はあってしかるべきではなかろうかと思っております。  それから、最後に公共事業の問題でございますが、これは私は両国の事情の相違というものがいわばどこまで理解されていくか。ちょっと報告を聞いただけでは、その一連した大きなプロジェクトの中に民間部門が存在しておったとき、日本は民間部門に対して政府がそれにとやかく指図しないという建前であるが、ある地域にインクルードされるようなものは民間部門も適用すべきであるとかいうような議論、そういう議論にまで入ってまいりましたから、いましばらく時間をおかしいただきたいものだなというふうに感じておるところでございます。
  310. 渡部一郎

    渡部(一)委員 細かく総理が御答弁いただいて恐縮でありますが、私の従来の考えをまとめてお述べいただき恐縮であります。今後、紛争を処理するというその精神に立って、前向きにそれこそ処理をしていただきたいなと私は希望するものであり、総理のお言葉の中からもそのニュアンスがうかがわれておりますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思っているわけであります。  時間がちょっとなくなってまいりましたので少し飛ばしぎみにいたしますが、まことに恐縮でございますが、この間我が党の同僚議員も述べました在日米軍の施設及び労務費に関する問題に触れたいと存じます。  このいわゆる思いやりに属する部分につきましては、政府に対し本委員会でも種々の質問が行われてきたところでありますが、ちょっとその範囲が無制限に行われるようなニュアンスというものが感じられまして、委員の間に釈然とせぬものが残っているわけであります。同僚議員の質問に重ねてで恐縮でございますが、政府の御見解をまとめて承りたいと存じます。  我が公明党といたしましては、日本国憲法のルールに乗って自衛隊を承認するものであり、安保をその意味で支持しているものではこざいますけれども、したがって労務費などにつきましても、日本人従業員の生活防衛に資するところであるという点は承知いたしているところでございますが、総理自身質疑の中で述べられましたように、無制限であってはならないのであります。この無制限であってはならぬというお話は、運用面でも一定の節度あるいはルールが必要ではなかろうかと、こう思っているところでございます。  この問題についての御担当が外務大臣だと承りましたので、大臣にこの問題に関します御見解を、時間がありませんのでまとめて御返事をいただきたいと存じます。
  311. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 過般来、公明党の書記長初め今また渡部さんから、安保体制は支持しますよ、また思いやり予算、このこと十分わかります、わかるが無制限ではいけない、全く私たちといたしましても一つの大切な御質問だろう、こういうふうに考えますから、この機会にひとつ私どもの考えを改めて明らかにしておきたいと思います。  安保体制が我が国の繁栄、平和、すべてに大きな貢献をしたということはもう今さら申し上げるまでもございませんが、そうした環境の中において政府としては、この観点から在日米軍経費の負担についてできる限り努力を行ってきたところである。  他方、在日米軍経費が無制限に拡大するとの御指摘については、政府としては、厳しい財政的な制約や社会経済影響を真剣に考慮しつつ、安保条約の目的達成を図る範囲内で、国会の御審議を経つつ経費負担を行ってきている次第であり、御懸念には当たらないと思う。  労務費負担に関連して、政府は特別協定の締結ないし改正により経費の肩がわりを一層拡大していくのではないかとの御指摘もあるが、今般の労務費特別協定改正に関する政府の方針は、日米両国を取り巻く経済情勢が最近において一層の変化を見せており、そのために在日米軍経費が著しく圧迫されている事態等にかんがみ、とられる暫定的、特例的、限定的な性格のものであり、今般明らかにされた措置以外の措置をとることは検討していない。  また、施設面につきましては、提供施設の整備は、従来から宿舎、隊舎、環境関連施設、後方支援施設等を中心に行ってきており、今後ともそうした施設を中心に整備を行っていくこととなろうが、個々の事案の採択の際には、そのときそのときの状況等を勘案しつつ、一層の国民の理解が得られますよう慎重に検討してまいりたいと思います。
  312. 渡部一郎

    渡部(一)委員 労務費の負担に関しましてただいまお話をいただきましたように、暫定的、特例的、限定的な性格のものであり、今般明らかにされた措置以外の措置をとることは検討していない。また、施設面につきまして、従来から宿舎、隣舎、環境関連施設、後方支援施設等を中心に行っており、今後ともこうした施設を中心にして整備を行っていくことになろうが、個々の事案の採択の際には、そのときどきの状況を勘案しつつ、国民の理解が得られるよう慎重に検討する。こういうまことに明快なお話をいただき恐縮でございますが、防衛庁長官、恐縮でございますが、この外務大臣の御答弁、このまま防衛庁としてもよろしゅうございますか。
  313. 瓦力

    ○瓦国務大臣 外務大臣答弁、そのまま結構でございます。了解いたしました。
  314. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは御担当の両省の御意見だと承りましたので、次のテーマに移らしていただきたいと存じます。  ただ、防衛庁長官、今回の措置によりますこういう労務費とか施設費とか思いやり予算を含めまして、こうした駐留経費分の負担増につきましては中期防の中で、十八兆四千億という制限はございますが、その中で、当然その枠の中に組み込まれているものである、こういうふうに理解してよろしいわけでございますね。
  315. 瓦力

    ○瓦国務大臣 さように考えております。年々の予算に精査しつつ取り組んでまいりまして、十八兆四千億、中期防の中でおさめるように努力をしてまいらなければいかぬと思っております。
  316. 渡部一郎

    渡部(一)委員 またこれが出るだろうという顔をしておられますが、例によってGNP一%の話をもう一回申し上げておきたいと思います。  GNP一%という数字、今は中期防という形で十八兆四千億となっておりますが、あの数字を見るたびに、私は最近、別の意味の心配を生じてきたわけであります。それは、十八兆四千億という金額の前に、この一%というのが何だったかということであります。それは、外国の方々お話しするときに、日本は防衛費が一%しかなく、大変少なくてけしからぬ国だなという話を外交交渉時等に受けるわけでございまして、まことに恐縮でございますが、この一%でひどくやりにくい感じを担当官等がしておられる御様子を見聞してまいりました。事実、世界的には統計が統一されておりませんので、同じ数字を挙げるために国民総生産も、GNPで言うところもあればGDPで言うところもある。ひどいところでは、GDPと称して輸出勘定によるところの利潤を全部カットしてしまって、八%ぐらいまでマイナスにしている先進諸国もあるのでありまして、そういう国と一%で論争するなどということは全くナンセンスであります。また、日本で計算すると、GNPとGDPは非常に近接しているのでございますけれども、このGNPの勘定の仕方すらわからない国がたくさんあるわけでありまして、そうすると、一体、この統計数字をもって外国と話し合うことの困難さを感じているわけであります。  私がもう一つ嫌な感じがしておりますのは、この日本での防衛費の勘定に対して、NATO諸国はNATO型の勘定の仕方をするわけであります。  このNATO型の勘定を見ておりまして最近ますますわかってまいりましたことは、例えばスイス等におきましては、モンブランのような高い山のところに農民を、農業をやる酪農農家を張りつけてある。張りつけるという言い方は非常に恐縮なんですが、ここで新作をしている人は広義の防衛能力だという立場から、その人々に対して防衛費から拠出が行われておる。農民に対する拠出であります。また、ヨーロッパのある国では鉄道兵がありまして、採算のとれない山岳地の鉄道は全部防衛担当省の所轄になっておりまして経費が支払われておる。我が隣国のアメリカにおいても、大学に対する研究費の支出というものはことごとく防衛に広義に換算することができるというので、その九割以上の費用が防衛費の中に入っておる。  そうすると、我が国ばかりが何だかやたらとそういうものをみんな落として小づくりになっておる。これは、防衛経費を勘定するときに、我が国はそんな防衛をしていない、むしろ日本国精神の、憲法九条に基づく平和国家であるということを殊さらに言うために小さく勘定する合意があったのではないかと思われるわけであります。  そこで私は、もう今となっては一%がどうこうという議論政府もなさっておられませんので端的に伺うのでありますが、まず第一に、NATO方式で勘定するとどれぐらいになるのか。  二番目。我が国ではしょっちゅう言われておりますように、軍人恩給ですね、軍人恩給のたぐいのある部分がNATO型でいくと防衛経費に入っているようでありますが、それを入れ、また我が国では、防衛庁所管ではありませんけれども、運輸省の所管である海上保安庁がいよいよのときに防衛能力があるという点を考慮してこれの経費を入れるとすると、NATO式でどれぐらいになる、今の素のまま計上すると幾らになる、また、こうしたものを幾つか加えると幾らになるか。それをまず二つ、GNP換算で幾らになるか承りたい。
  317. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、防衛費のNATO定義の具体的内容といいますのはNATOの中で秘扱いとされておりまして、その詳細は必ずしも明らかでありませんので、我が国の防衛費をNATO定義によって算出するということは正確には困難でございます。しかしながら、かねがね御議論もいただいておりますので、私どもとしましてはNATO定義についていろいろ調査をいたしてまいりまして、現在までの調査検討の結果を踏まえまして、あえて我が国の防衛費をNATO定義によって試みに算定したらどうなるかという点を、先生ただいまの御質問の趣旨も踏まえましてお答えを申し上げたいと思います。  まず、委員が御指摘になられました恩給費、軍人恩給の取り扱いでございますが、恩給費につきましては、NATO定義では、職業軍人と軍に雇用された文官に対し政府が直接支払う恩給が含まれていることは事実でございますが、戦争被害の補償に関するものは含まれていないようでございます。そこで我が国の場合を考えました場合に、自衛官の年金というものは、国家公務員共済組合負担金といたしまして防衛関係費の中に既に入ってございます。  そこで、旧軍人恩給の取り扱いがどうなるかということでございますが、これにつきましてはただいまも申しましたように戦争被害の補償に関するものは含まれていないという点がまずございますのと、もう一つは、我が国の場合、旧軍と自衛隊の不連続性というものがございますので、果たしてこれを合算することがどうかという問題がございます。しかしながら、委員お尋ねでございますので、あえてこの旧軍と自衛隊との不連続性というものを無視いたしまして合算するといたしましても、今申しましたように旧軍人遺族等恩給費の中の普通恩給と普通扶助料を合算するにとどめるのが妥当かと思われます。そういう計算をいたしますと、約二割程度の増になります。  しかしながら、さらに厳密に申しますと、NATO定義の中には職業軍人に係るものしか入っていないと申し上げましたように、ただいま私が合算いたしましたものは徴兵に係るものも含まれております。我が国の予算上はこの区分がなされておりませんので、そういう意味では一・二倍程度になると申し上げた数字は、実はNATO定義よりも大きな数字になっているのではないかと思います。  次に、委員御指摘の海上保安庁等の経費でございますが、これらにつきまして、沿岸警備隊等の準軍隊に係る経費になろうかと思いますが、果たしてNATO定義に含まれているかどうかということは必ずしも明らかでございません。ただ、我が国の場合、海上保安庁につきましては、海上保安庁法から見ましてもおわかりのように、少なくとも準軍隊というような性格を持っているというふうには言えないのではないかと思いますので、これを合算して仮に計算するといたしましても計算することはいかがなものであろうか、かように考えている次第でございます。
  318. 渡部一郎

    渡部(一)委員 我が国は――そんな余りびっくりしないでいい、これは聞いているだけなんだから。もう警戒心が旺盛で、頭隠してしり隠さずみたいな話が多過ぎるので議論がやりにくいのですが、私が言うのは、我が国は安保条約において施設あるいは路線あるいは港、こうしたものを全部提供する義務を負っているわけですね。要するに、そういうのは軍用にいよいよのときはするよという意味でありますから、港湾であるとか飛行場であるとかJRであるとか、いよいよになったらお願いしてそれを提供しなければなりません。これはある意味の軍用であります。そういう義務を負っているのですから、総合安全保障の立場からいけば、これは当然軍用経費に、NATO型に見積もらなきゃいけない。こういう議論は今までされたことはない。そうすると、そういう面まで含めると幾らになるか。しかし、JRの何分の一の費用をちょん切って軍用費にするか、それはわからないことでありますから、ここのところではきょうは問い詰めるのはやめたいと思います。  しかし、総合安全保障閣僚会議があり、総合安全保障を論ずる事務局があり、総合安全保障対策があって、総合安全保障経費がない。そんなことはとてもじゃないけれどもそれはもうナンセンスであります。だから私は、そういうものを見積もった上での我が国の総合安全保障経費は何ぼであると、これは諸外国にやはりちゃんと説明するときは説明すべきだと思うのです。そうしないと、アメリカへ行かれましたときに、日本は一%でないか、我々は五%だ、何で貧乏人が金持ちを守らなければならないか。そういう言い方はなさらぬとは思いますけれども、向こうはがんと言ってくる。そして、何というおまえたちはずるいやつだ、こうきますでしょう。  それは私は、日本としての勘定の仕方があることはあるけれども、外国と話すときは、外国とわかりやすい数字を出して議論するのが当たり前でしょうと申し上げたいのです。これはもう本当に、野党から一%を守れと言われたので、ともかく減らすのに熱中し続けた何十年でしょうか十年があったので、後遺症が残っておって、アメリカに行ってまで同じ数字を言ってはしかられてくるなどというのは漫画でしかない。これは私は、ちゃんと言うべき数字はちゃんと言うべきだと思う。それを聞いてから我々は怒ることにしたいと思っています。  これは、数字がごまかされ始めるとろくなことがない。今、国連においては、経済社会理事会において、各国の指標という指標を統一しようという動きが起こっているけれども、我が国の政局を担当される方は、我が国の従来の一%というのが決して一%でなかった。当地にいるマンスフィールド大使が、何と日本の防衛費は一・三%と言い、あるときは一・五%に当たると堂々述べておる。日本政府はそれに別に怒りもしない。注釈も加えなかった。そういうふうに外国の大使に言わせておいて知らぬ顔をしておる。そして、アメリカへ行って、一%は少ないと怒られて、へいなんと言って謝って帰ってくる。それは私は何という、適切な批評の言葉がないですが、おかしいなと思っているのです。これを直していただきたい。そして、その上で議論をいたしましょう。きょうはその提案をしておきます。この次私が質問したときに、総合安全保障経費がわからないなんということは許されませんですよ。委員会とめますよ、そのときは本当に。ちゃんと私は紳士的に予告しておきますから、どうかちゃんとやっていただきたいと思うのです。  その次にいきましょう。私は、ちょっと時間がなくなってきてしまいましたので、残念ながら相当飛ばしまして、エイズのことをちょっと申し上げたいと思います。  エイズは大変深刻な病気であります。その深刻さというのは、病気が重いというだけではありません。これを治療するのに当たり、対策を立てるのに当たり、社会的な影響を極端に考えなければならないし、患者とみなされた人は、保菌者であろうと発病者であろうとその差がなく、社会的な制裁を加えられることであります。  また、我が国は特にプライバシー保護について慣行が樹立しておりませんので、もう惨たんたる結果になります。神戸における最初のエイズ患者におきましては、ついにその氏名が公表されたのみか、写真まで掲載されまして、そうして、その一族は町に住めないような惨たんたる状況に追い詰められたのであります。どこの町でも、エイズ患者が発症したとなるとそういう目に遭わされるでありましょう。ある外国帰りの外交官がエイズでないかという話がこの町でぱっと広がりまして、その人を追っかける週刊誌の記者が山ほど私のところ等を訪ねてきたことがございます。私はちょうど知りませんのでして返事することもできませんでしたけれども、そういうことを言われるようになりますと、社会生活は全く惨たんたるものであります。  ところが、現在その中で一番悲惨な話があります。それは血友病患者であります。この方々は、血友病治療のために血漿製剤を自分に投入しなければ生きていけないため、お医者さんの指導によって、厚生省の認可した製剤を自分の体に打ち続けておられたわけでございますが、そのうちの相当部分、少なくともこの何割かを申し上げることもためらわなければなりませんが、相当の数がこの保菌者になられたわけであります。発症者はそれほどではありませんけれども、そのために、血液製剤を輸入を許可し販売を認可した政府の行政責任に対して非常に大きな不満があるわけであります。政府、厚生省に対しても治療費、賠償を求める動きがあるわけであります。特に、アメリカで血液からエイズが感染することが判明し、加熱処理することがあればエイズが死滅するとの発見が行われた。それに対して、日本の厚生省はいろいろと検査をし、その新しい血漿製剤が患者に対して有効であるかどうか、あるいは危険性があるかないかなどと検査をしておられるため、その他の理由もございましたでしょうが、時間がかかり、余計にふんまんが増幅いたしているところであります。  ところが、従来の薬害訴訟、薬品の訴訟の例によりますと、何とこの訴訟によりますと、サリドマイド児のような場合、まだ子供を抱えてある程度は裁判所に出て名前を出すことは可能でありますが、この人たちは訴訟場裏に出ますと、ほとんど訴訟不能であります。自分の名前が出る、自分が社会的にオミットされる、就職がだめになる、子供の就学がだめになる、村のおつき合いから排除される、あるいは会社から追い出される、あるいは離婚状態に持ち込まれる等の衝撃が一遍で爆発しそうな可能性があるわけであります。したがって、みんなの大衆の見ている前で裁判所に行くわけにいかないのであります。  しかも、厚生省側の御説明を事前に承ったところによりますと、時間を節約するために先に申し上げますと、薬害訴訟の例によって、いわゆる医薬品副作用被害基金の中から医薬品の場合は副作用ということでお金を出すことができるけれども、薬理作用に基づく被害でないエイズビールス混入というのは副作用とは種類を異にするということで、従来ともその基金からの拠出金でかばうことができないんだそうでございます。したがって、厚生省とされては、感染しても発症しないように何かの手当てをするとか、患者の治療は保険にない項目も治療研究の手当てをするとか、個々の相談事に全力を挙げて相談事業を行うとか、六十三年度予算にも二・六億円程度をあてがった、こういうお話なのであります。  ところが実際は、これは悲惨です。というのは、訴訟することができないので、これは訴訟することができないと、クラスアクションのように代表者が一人出てきて、裁判して判決が行われて全部適用するような法律が日本にあるのか。先ほど法務省にも承りましたら、そういうのは日本にない。また、法務省に伺うところによりますと、選定当事者裁判といって、仲間うちの一人を選定して、その人が代表で裁判してその結論を全部に及ぼすというルールがあるんだそうでございますが、その場合も本人の名前は出る。反対尋問をやるために呼び出す、あるいはその結果によって利益を受ける何十人かの人の名前は全部公示される。秘密裁判を拒否する日本の憲法のよさが、この場合は当人たちに致命傷になる。だから、裁判不能になってしまう。裁判によらず助けようとすると助けるルールがないということなんだそうでございまして、法務省側からは、残念ながら裁判においてプライバシーを保護することはできないという明快な御答弁をいただいております。  この場合、じゃどうしたら抜けられるのか。私、ヨーロッパやアメリカの例を見てまいりましたけれども、全部が全部うまくいっているわけでは決してございませんが、プライバシーに対する保護立法がかなり強力、完璧にでき上がっているところでは何とかなる。我が国では総務庁でコンピューターに入力する情報に関する規制法というのが考えられているそうでございますが、全体的なプライバシー保障法というのはない、こういうことなんだそうでございます。  そこで、こういう患者のプライバシーの保護のために、また患者の治療を何とかしてあげるために、私はきょう非常にここから先言葉を選んで言わなきゃいかぬのでありますが、下手な言い方をするとさらに患者の方々の人権を傷つけるおそれがありますのでこれ以上は慎んで申し上げたいのでありますが、プライバシー保護について、あるいはこの方々の社会的な打撃を回復するために足る何かの措置と、そして治療に関する何かの創意工夫をぜひともお願いしたいと申し上げるのでございますが、いかがでございましょうか。
  319. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズ問題につきましては大変お詳しい渡部先生でございますので、まず敬意を表したいと思います。  時間がございませんので簡単に申し上げますが、確かにエイズ問題は、全世界におきましても日本におきましても大変深刻であります。そこで、私どもといたしましては、何よりもこれ以上蔓延を防ぐという観点からいろいろな対策を立てているわけでございますが、同時に、今御指摘の血液凝固製剤に関する問題につきましては全く不可抗力でございまして、まことに御同情すべき事情があるわけでございます。その点は、今後エイズ予防対策を進めていくことと並行いたしまして、十分にその問題については考えていくべきものと私は承知をいたしております。
  320. 北川定謙

    ○北川政府委員 ただいま大臣から御答弁をいただきましたとおりでございますが、政府といたしましては、今国会にエイズ予防法案を提案をしておりますので、そういう中でもプライバシーの保護という問題については十分に考えていきたいということで進めておるところでございます。
  321. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 渡部先生よく御存じでございまするので、現行の法制のもとにおきましてはやはり訴訟当事者を特定しなければなりませんので、先生のようなプライバシーを保護するということをお考えいただくのでありましたならば、また特別の考え方を持たなければならない、かように存じます。
  322. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、この問題は難問であります。既存の法制と既存の行政では解決しないわけであります。これに対する解決策は、法案の提出とも絡んで非常に面倒な手続を要することは御承知のとおりであります。  しかしながら、きょう血友病の方々の問題について私どもが触れている問題は、ここから数年後、全国民の大きな課題でありまして、これに対する適切な処理が行われませんととんでもない問題になる。プライバシーの保護について、あるいはやむなく病気にかかられた方々の補償について特段の御検討、御研究をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  323. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 専門的知識を持たないままにも私も御意見を聞かしていただきまして、十分同じ問題意識に立ったということだけは申し上げたいと思います。
  324. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間が参りましたので、質問がたくさん割愛されており、御勉強いただいた方々に恐縮に存じております。特に防衛庁長官には山ほど御勉強いただいたのに、こんなちょっぴりでまことに申しわけなく存じております。GNP一%の問題につきましては、私はこれからこのGNP一%の可否の問題を含めまして十分この次の会合の際に論議さしていただきたいし、そして今の問題の危険性等につきましても、四方八方に気を配っていただかなければならない日本の防衛の御担当者としても十分の御活躍をしていただきたいと思うと同時に、この問題については仮借なく次回議論さしていただきたいとお願いをいたしまして、質疑を終わらしていただきます。
  325. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会