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1988-02-18 第112回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月十八日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    池田 行彦君       稲村 利幸君    上村千一郎君       衛藤征士郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    片岡 武司君       金子 一義君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       左藤  恵君    佐藤 文生君       志賀  節君    自見庄三郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    林  義郎君       原田  憲君    細田 吉藏君       松田 岩夫君    松田 九郎君      三ツ林弥太郎君    村上誠一郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    佐藤 敬治君       辻  一彦君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       森本 晃司君    田中 慶秋君       楢崎弥之助君    岩佐 恵美君       佐藤 祐弘君    辻  第一君       中島 武敏君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       原田 達夫君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         科学技術庁長官         官房会計課長  武田  昭君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         国税庁次長   日向  隆君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         特許庁長官   小川 邦夫君         運輸大臣官房長 棚橋  泰君         運輸大臣官房会         計課長     黒野 匡彦君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房審         議官         兼内閣審議官  福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治省行政局長 木村  仁君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     村上誠一郎君   倉成  正君     自見庄三郎君   浜田 幸一君     松田 九郎君   原田  憲君     松田 岩夫君   藤波 孝生君     片岡 武司君   渡部 恒三君     衛藤征士郎君   大久保直彦君     森本 晃司君   経塚 幸夫君     佐藤 祐弘君   藤原ひろ子君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     渡部 恒三君   片岡 武司君     藤波 孝生君   自見庄三郎君     金子 一義君   松田 岩夫君     原田  憲君   松田 九郎君     浜田 幸一君   村上誠一郎君     海部 俊樹君   森本 晃司君     大久保直彦君   辻  第一君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     倉成  正君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十二年度一般会計補正予算(第2号)  昭和六十二年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は、地方財政の問題を中心にして御質問をいたしたいと存じます。  国の財政昭和五十年ごろから大変逼迫してまいりまして非常に窮状に陥っているのはそのとおりでありますけれども、それと一緒に地方財政もまた五十年ごろから大変な赤字計画に落ち込んでしまいまして、御承知のように非常に四苦八苦している状態であります。昭和六十二年の補正末でもって約六十四兆五千億という、大変な巨額に上る借入金を抱えておるわけであります。よく、国は百六十兆も、百兆を超える大きな借金を負っている、地方はたった六十五兆ぐらいじゃないか、地方金持ちだ、そういうような話がありますけれども、これは国と地方の場合は非常に大きな違いがありまして、国は統一された大きな力を持っておりますけれども地方はいわば集積したのが国と同じような金の量になるだけでありまして、事実は三千三百余のいろいろな団体が集まった、非常に内容が細分された小さいものでありまして、六十四兆五千億というのは大変な大きな額であります。  この原因は、要するに、今までもよく言われておりますように、昭和五十年度以降巨額財源不足に見舞われまして、その補てん交付税特別会計で借り入れ、それから巨額不足金地方債でどんどん増発してきた、こういうことによって現在のような財政窮迫地方財政が発生したわけであります。  ちなみにこれを昭和六十年度の決算で見ますと、借入残高昭和五十年度に対しましてまさに四・一倍、地方財政総額の伸びが二・二倍しかないのに借入金残高が四・一倍という倍以上の大変な大きな額になっておるわけであります。五十年度は借入残高が十四兆であった、それに対して歳入決算額が二十六兆、まだこれは健全であったと言えますけれども、六十年度になりますと借入金が五十七兆三千億、それに対して歳入決算額が五十七兆五千億、わずかに歳入が二千億ぐらい多い。ところが、これが昭和六十二年度になりますと全く逆転してしまいまして、借入金が六十三兆七千億、ところが歳入の方が五十七兆八千億しかない、こういう状態であります。ちなみにこれを六十三年度の予算で見ますと、もっとひどい状態になっておりまして、借入金残高が六十六兆九千億、ところが歳入の方は五十七兆八千億しかない。もうどんどん借入金歳入を追い越してその差を広げていっている、こういう状態であります。  しかし、これは全体として見るとこうなるのでありまして、個々の団体、国みたいに一つじゃありませんので、三千三百一つ一つ調べてみると、もっともっと危険な状態に陥っているのであります。  例えば、地方財政でもって公債費負担借金負担率警戒信号とされているのは御承知のように一五%であります。この一五%以上の危ないぞという警戒警報を発せられている団体が約六割。さらに、二〇%は危険信号と言われておりますが、この危険信号、二〇%以上に達している団体昭和六十年度では千三十六と大変な数に達しております。約三分の一がもう二〇%を超しているという、警戒信号じゃなくて危険な状態に陥っているわけであります。しかもこれが六十一年度になりますと、たった一年間で約三十九もふえておりまして、千七十五団体というものが二〇%を超すという危険な状態に陥っている。こういうような、何といいますか、全体としても非常に危険であるけれども一つ一つを見ますともう壊滅的な財政状態の県、市町村というものが発生している、こういうふうに言われておりまして、地方団体、これから一体この公債費負担の増大のためにどうしてやったらいいのか、これに対する対策というものが非常に重要視されてくるのではないか、こういうふうに思います。  一体、なぜこういうような状態が起きてきたのか。ちなみに国との関係でいろいろ調べてみましたら、まあまあ次から次へといろいろな状態で、いわば地方金持ちだというので国から搾取されている。搾取という言葉がいいのか悪いのかわかりませんけれども、そういう状態になっています。並べてみると私もびっくりしました。  昭和五十七年度以降には例の補助金原則一割削減昭和五十七年には老人保健制度創設補助金地域特例によるかさ上げの六分の一の削減昭和五十八年度には地方交付税借入金の利子の地方導入、一部人件費補助金交付金化義務教育職員給与費国庫負担金負担限度率引き下げ。五十九年度には地方交付税借入金借入制度廃止退職者医療制度創設私学助成費削減昭和六十年度は高率補助引き下げ人件費補助金交付金化、一部補助金一般財源化児童扶養手当の都道府県の負担導入。六十一年になりますと、補助率引き下げ強化延長。六十二年度には義務教育職員共済長期給付金国庫負担率引き下げ、これもまた問題になっております公共事業補助金引き下げ強化延長。  こういうような、並べてみますと数え切れないほどたくさんの地方のいろいろな補助が国から吸い上げられている状態になっておるわけでありまして、まあ地方もこれは大変な、こういう状態になるのは無理もないわいや、こういうふうに考えておるわけでありまして、今六十三年度の財政計画によりますと、公債費が六兆一千億でありますけれども地方債が六兆四千億、何といいますか、これは借金を返すために借金をしている、こういう状態であります。六兆の借金をして六兆の借金を返していく、これじゃ借金をしても何にもならぬ、仕事も何もできない、こういうような大変な状態に陥っている。このことをひとつよく御認識をいただきたい、こういうふうに思います。  なぜこういうことを言うかといいますと、冒頭に申し上げましたように地方金持ちだ、いわゆる地方財政裕福論というのがあって、地方金持ちだ、だからどんどん金を吸い取っても大丈夫だ、こういうような議論がよく交わされておりますので、それに対しまして地方が非常に大変だということをひとつ指摘をいたしておきたい、こういうふうに思います。  ちなみに今度の、六十二年の十二月二十一日大蔵省自治省との間で合意されました不足金に対するところの歳入歳出の見通しですね。これは御承知のように歳出が約五十七兆八千億、歳入が五十六兆一千億、足りない分が一兆七千二百五十九億、こういうふうになっておりまして、これを埋めるのが大変な大きな問題になっておるわけであります。これを見るのに、地方たばこ消費税の一兆二千億、同じようにたばこ一本一円上げましてこれを地方交付税として国から出してよこす、さらにそれに対して建設地方債であとの足りないところを全部埋めておるわけですが、これが驚くなかれ一兆四千億、足りない分の八二%というものを全部借金でもってこれを埋めている。今まででも大変なのに六十三年になりますとまた大変になる。こういうような状態が続いておるわけでありまして、地方財政としてはこれから一体どうしてこれを、こういう状態を乗り越えていくか、こういうことが大きな問題になるということであります。  ところで、問題になりますのは、「昭和六十三年度の地方財政対策」というのがありますが、この中で私どもが非常に注目しておりますのは、六十一年度の補助負担率引き下げ、これによる影響額が一兆四千億でありますけれども、これのうち経常経費が六千三百億ある。投資的経費は七千七百億でありますが、経常経費は六千三百億。こういうものがずっと続いておるわけですが、これが続いていくと非常に地方財政に対する大きな圧迫になってくるのではないか。いわば投資的経費というものは、その財政が苦しければたまにはやらなくてもいいと思いますけれども経常経費というのは毎日食う飯でありますので、こういうことになってきますと飯を食わないで節約しろ、こういう状態がずっと続いてくるのでありまして、これが続いていくと非常に大きな地方財政に対する圧迫になってくるのではないか。  私は、経常経費に対するこういうような削減というものはできるだけやらない、やるならば全体の合理化の中でやるべきであって、単に金が足りないからといっていきなり経常経費を六千億も七千億もぶった切るということは、これから非常に大きな問題になるのではないか、こういうことをやるべきではないと思いますけれども大蔵大臣並びに自治大臣にひとつお伺いしたいと思います。
  4. 梶山静六

    梶山国務大臣 冒頭地方、特に行財政に対する御心配を賜りまして大変ありがとうございます。  御指摘のとおり、六十一年、六十二年及び六十三年に及ぶ補助負担率引き下げ、これが地方財政の一番圧迫の要因でございます。ようやくこの補助負担率引き下げ分を除いては均衡を保つところに至っておるわけでございますが、これも暫定措置でございますので、明六十三年以降をどうするかという問題でございますが、安易な継続はもちろん認めるべきではございませんし、あくまでもこれは国の厳しい財政情勢もとでとられた特定な、特異な状態であるということを認識をいたしまして、これからの対策に万全を期してまいりたいと思います。
  5. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 佐藤委員地方自治につきましては大変深い御経験また学識もお持ちでいらっしゃいますので、そういう立場から地方財政につきまして今お話しなされましたことは私どもも傾聴いたしました。  確かに国の財政も苦しゅうございますので、石油危機があり、その後また円高がございましたりして国も地方も苦しむ中でいろいろ相身互いということから、決して地方金持ちという意味ではなくていろいろ御負担お願いしてまいったことは事実でございます。  それで、今おっしゃいますように、一兆六千五百六十九億円、この中で経常的なものは六千六百七十億円ほどでございます。投資的なものは九千九百億円でございますが、その中で私ども考えまして、投資的経費につきましては建設地方債お願いをする。ただ、その建設地方債の中で国費のカットに相当する部分は臨時財政特例債でいわば見る、こういう考え方経常経費につきましては地方税及び地方交付税特例分を充てまして地方債措置を行っている、考え方としてはそういうふうな処理をいたしておるわけでございます。おっしゃいますように建設地方債交付税特例措置たばこ関連とで全部を見ておるわけでございますが、考え方はそのようにいたしております。  しかし、それはもともと地方にとって決して好ましいことではないとおっしゃいます点は認めざるを得ませんが、まあ国、地方全体を通じまして決して余裕があるので持ってもらってもいいという考え方よりは、お互い困るので相身互いである程度のことをお願いできないか、こういう気持ちであるわけでございます。
  6. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は行革のときも理事をやってここに出ていたのですが、国と地方は車の両輪だといって車の両輪論をよく聞かされました。しかし私どもから言いますと、都合のいいときは両輪になりまして、都合のいいときだけ片棒を担がされている、そういうような感じであります。さっきも申し上げましたけれども両輪といいましても国の方は金の車で、地方の方はがたがたした木の車なんですね、すぐだめになる、こういう感じであります。  私が今お尋ねしましたことに必ずしも的確に答えてはおられないようですけれども、私の言っているのは、金がないからといって経常経費をぶった切るということは大変乱暴なことだ、こう申し上げているのです。仕事をやるときは多少、橋を一年くらい延ばすとか学校を一年くらい延ばす、これはいいと思います。しかしながら、毎日食っている飯を食わないで節約しろという論理は、これは大変乱暴な論理だと思います。ところが、これを今見ますと経常経費をぶった切っているのは非常に多いのですね。こういうようなことはやるべきではないのではないか。特に地方財政を取り扱う自治大臣としてはこういうことをやらせるべきじゃないと思いますけれども、どうですか。その点には何も答えられないで、ただ厳しいからやむを得ないと言っていますが、厳しい中にも一つのやり方なり道理があると思うのですが、いかがですか、梶山自治大臣。——いいです、どうぞやってください。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはむしろ私どもの方が自治大臣にいろいろ御考慮をお願いする立場でございますので、決して自治大臣が進んでおやりになられたわけではないのでございまして、いろいろお願いをして、それで私どもとしては、ただいま申しましたように投資的経費についてあるいは経常的経費についてその補てんの仕方はできるだけのことをやっておるつもりでございますけれども地方にとって決して全体好ましいことではないということは、私どももわかりつつお願いをしておるわけでございます。
  8. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいま大蔵大臣からも御答弁がございましたけれども、実は緊急回避的な措置でございまして、確かに経常経費に対する削減、これは大変な問題でございます。ですから今々財政運営に支障のない対策を講じておりますけれども、この年間おおよそ一兆七千億に及ぶ、投資的経費もひっくるめてでございますが、この補助率カット分につきましてはそれぞれの手当てをいたしておりまして、おおむね約半分程度交付税その他で後々の補完ができるような対策を講じておりますし、今々応分の財政対策は講じながら、この緊急事態を回避するために懸命な努力を払っているところでございますので、御了解を願いたいと思います。
  9. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この見方につきましての議論は後からもう一遍やりたいと思います。  次に、今梶山大臣から話がありましたカットの問題でありますけれども、この補助金カットこつきましては、御承知のように六十一年度のカットが三年間の暫定、六十二年のものは二年間の暫定、こういうふうに合意されております。この暫定措置が六十三年度、今度の予算限りでありまして、六十四年度でこれをどうするかということが非常に大きな問題になっておるわけであります。これも後から議論したいと思いますけれども、普通の常識からいえばこれはもとに戻す、五十九年度の状態へ戻すのが普通の状態だ、こう私どもは思っておりますけれども、これを一体もとに戻す意思があるのかどうか、まず梶山自治大臣からひとつお願いします。
  10. 梶山静六

    梶山国務大臣 佐藤委員指摘のとおり、原則として暫定措置でございますから廃止をさるべきものだというふうに理解をいたしております。そしてこの暫定措置廃止に伴いましては、むしろ税財源配分の問題であるとか事務配分等の問題をめぐりまして討論をいたしまして、これからの補助金のあるべき姿を検討してまいり、地方財政の確立に資してまいりたいと思います。
  11. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 もう一遍梶山大臣にお伺いしますけれども、あるべき姿というのは、これから例えば国と地方の間の事務配分、こういうものを検討し、さらにそれに伴った財源配分していく、こういうようなことを意味しているのですか。
  12. 梶山静六

    梶山国務大臣 御指摘のとおり、事務配分の検討をいたしてまいりますれば、それに伴う税財源配分も当然連動して行われなければこれを完成することはできないわけでございますから、理論としては委員のおっしゃるとおりでございます。  ただ、先ほども委員から御指摘がありましたとおり、外形的には国の借金残高予算規模あるいは地方借金残高予算規模、外形的な比較をいたしますれば地方の形がよいことは御承知のとおりでございます。ただ、今お話しにございましたとおり車の両輪論ということで、都合のいいときだけ両輪論を掲げられてたまるものではないという気持ちは、だれしも地方自治に携わる者は当然腹の中に持っていることでございます。ただ、地方自治のいわば適正な行政水準とは何かという問題をめぐってもっと深刻に我々が討論をし、どういう形であるべきか、それをめぐりまして、あるいは増率というと交付税の増率ということもひっくるめて増税や増収、そういうものと反対的に、あるいは逆に言うとそれができなければサービスの低下をしてもやむを得ないか。そういう二つの問題をいわばバランス論として検討しないと、この問題は片方の理想論だけで片づくものではないという気がいたします。
  13. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この問題は後でもう一遍やりますので、これであれしておきます。  次に、財源不足額の補てん措置、ここに私は非常に大きな問題があると思っております。財源補てん措置はここで説明しなくてもいいし、またこういうふうな表をもらっておりますので、説明する必要もないと思います。  そこで、この中にあらわれている表を見ますと、六十三年度の地方財政の収支、これは財源不足額は量的には完全に補てんされている、こういうふうに言っておりますけれども、しかしこの補てんの内容を見ますと非常に大きな問題が介在している、こう思います。  第一番に、交付団体と不交付団体の間に非常に大きな差がある。二番目は、経常経費投資的経費の間にもかなり大きな問題がある。三番目は、補てん財源の種類にも問題がある。四番目は、地方負担の軽減の仕方、これにもいろいろな問題があるのじゃないかと考えておりますけれども、特にその中で問題になるのを拾い上げてみたいと思います。  この経常経費に係る国庫補助金地方債化、これが私は非常に大きな問題ではないか、こう思っております。これを見ますと、さっきも宮澤大蔵大臣からお話がありましたように、いろいろなのでやっているけれども、最後には建設地方債でこれを埋めておる、こういうことでありまして、八二%ばかりがいわゆる建設地方債というふうな形で充てんされている。ここのところに私は非常に大きな問題があると思います。どうもこれを見ますと、こういうことが言えるのじゃないかと考えているんです。  今、経常経費の基準財政需要額を、国庫補助率引き下げによって生じた分、その分だけが地方負担になるわけですが、その地方負担の分だけ増額している、そしてこの増額に見合った分だけ今度は投資的経費の基準財政需要額を削って減額をしている、そしてその減額した分、これを地方債に振りかえている、こういうことになっているんじゃないか、こう思いますけれども、どうですか。だれにお聞きしたらいいですかね。梶山大臣にお聞きしますか。
  14. 津田正

    ○津田政府委員 地方財源不足に対する補てんの仕万、特に経常経費に対する補てんの仕方でございますが、先生御承知のとおり、六十三年度の地方財政対策におきましては、六十一年度分の引き下げ経常経費分が六千三百億、そのうち地方税たばこ消費税の税率の特例延長で千二百億、それから地方交付税で千二百億、調整債で三千九百億、さらに六十二年分の補助率引き下げに伴います経常経費分が三百六十九億でございますが、そのうち二百九十五億を地方交付税、調整債で七十四億、いずれにしましても、私どもとしましても地方税あるいは地方交付税等で補てんしたい、こういうようなことでございまして、御承知のとおりたばこ消費税の特例税率の延長という非常に緊急的な措置も講じたわけでございますが、残念ながら一部は調整債におきまして措置しなければならないということでございます。  そこで、個々の地方団体への措置といたしましては、経常経費系統によります引き下げ分の影響はすべて基準財政需要額で対応しております。しかし、先生がおっしゃるとおり、調整債で対応しなければならない部分も基準財政需要額で対応した結果、投資的経費の方の基準財政需要額の算入が一部地方債に送っている、こういうような処理をしておるわけでございますが、個々の団体には財政的な影響というものを避けるような仕組みでやっております。
  15. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大体私が言ったとおりでありまして、いわば全体としての基準財政需要額に変化はないけれども地方財政全体としては国庫補助率引き下げた相当分だけが地方債が増加している、こういうことだと思います。したがって、このことは実質的には経常経費についても地方債を充当しているということと全く同じことだと私は思いますけれども、どうですか、梶山大臣
  16. 津田正

    ○津田政府委員 マクロの対策といたしましては、単にたばこ消費税あるいは交付税で対応できない部分がございますが、個々の団体に対するものとしては、あくまで消費的経費は基準財政需要額で算入しておる、こういうような性格を持っております。
  17. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大勢は大体私が言っているようなことだと思います。  そこで、この問題で私がお伺いしたいのは、これはもう長い間の問題でありますけれども、一体この借入金というものが、この地方債というものが、地方財政法第五条の地方債に関する規定から見まして、この地方債を政府が言うように建設地方債、いわゆる五条債と言うことができるかどうか、私はこれは非常に疑問だと思うのです。今の論理からいきますと、非常に巧妙なすりかえでありまして、実際にはこれは赤字地方債である。しかしそれを建設地方債だ、仕事をやるんだからこれは赤字地方債じゃないから、この法律に、地方財政法第五条に違反しないんだ、こういうようなことを言っておるのですが、これは非常に詭弁だと私は思うのです。まさに、これはまさしく赤字地方債だ、こういうふうに思うのですが、いかがですか。これは梶山自治大臣、いかがですか。
  18. 津田正

    ○津田政府委員 マクロの計算は完全補てんをするということでやっておるわけでございますが、個々の財政対策としまして、あくまでこの調整債は、これによって公共事業等の地方債充当を調整することとされておりまして、経常経費財源に充てられているものでないわけでございますので、地方財政法の規定に違反はしていない、このように考えております。
  19. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この問題は随分長く津田さんとやり合ってきた問題ですからあれですけれども、何ぼ聞いてもこれは詭弁なんですよ。それはそれでまた別の委員会でやりますけれども。  もう一つ問題なのは、先ほど申し上げましたように、この補てんのあれで問題なのは、交付団体と不交付団体が非常に区別されている。交付団体にはある程度財源措置をしているけれども、不交付団体は非常に虐待されている、こういうことがあらわれておるわけですけれども、私はなぜこういうふうに不交付団体と交付団体が区別されなければ、差別されなければならないのかよくわからぬのです。その理由というものは、不交付団体金持ちだから、ただそれだけの理由だと思うのです。  しかし考えてみますと、今回のカット措置というものは、国の財政都合で強制させられて補助カットされた、こういう地方負担でありますので、それを不交付団体、交付団体と区別するのはすこぶる私は妥当なことではない、当然不交付団体にも交付団体と少なくとも同じぐらいの財源保障をすべきだ、こう思いますけれども、いかがですか、自治大臣
  20. 津田正

    ○津田政府委員 交付団体と不交付団体に対する財政措置の違いでございますが、例えば六十二年度、六十三年度の不交付団体は、要するに交付団体に対する措置と違いまして調整債で手当てされるわけでございます。しかしその元利償還につきましては、後年度基準財政需要額に一部算入するということになっております。したがいまして、元利償還が具体的に発生するときに、その団体財政が悪化しまして交付団体になれば基準財政需要額で交付税算定上救われる、こういうような仕組みでございますので、御理解賜りたいと思います。
  21. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それはよくわかっているのですが、それは普通のときの状態で、こういうふうに強制的にぶった切られて、不交付団体だからといってこれを何にも財源の保障もしない、これはやっぱり余りにも残酷だと思うのですよ。当然、国の都合で切ったんだから、それぐらいのところは差別しないでやるべきではないか、こういうふうに思います。不交付団体というのは切られっ放し、やられっ放しで何の手当てもしてもらえない、こういうことですからね。普通の場合はこれはいいですよ。しかし今回のような、国の都合で嫌々ながら首を切られたならば、何かしらそれに手当てをしてもらうのが当然じゃないかと思うのです。ただ借金させてやるからおまえら勝手にしろ、これではちょっとひど過ぎると思いますが、どうですか、宮澤先生。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自治大臣のお立場はまたお立場がおありになろうと思いますのですが、まあいわば普通の話といたしまして、国も非常に困って何とかお願いをしたい、地方もそれは困っておられるわけでございますけれども、その中でまあ比較的困っておられないと考えられるのが不交付団体であるものでございますから、限られた金であれば、できるだけ困ったところを厚くして、まあまあ困っておられないところは勘弁をしていただけないかという、ごく平板にはそういう気持ちで私どもおるわけでございます。
  23. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それからもう一つ、三番目に、この補てんの方法について非常に私どもは納得がいかない。今言いましたように、交付団体と不交付団体が区別されている、こういうこともあるけれども、この補てんの方法というのは非常に一貫性のない、でたらめな、政府が勝手気ままにこの補てんの方法を決めている、こういう感じがするのです。  ここに地方財政対策の一覧表がありますが、この注釈を見ると、まことにこれは一目瞭然なんですね。一体どういう方針でもって何をやってどうなっているのか、非常にこれはわからぬ。一番上の、代表的な例を挙げますと、六十一年度の切り下げの経常経費の六千三百億、この中の調整債というのがありますね。これは地方建設債と称しておる三千九百億、これの注釈を見ますと、これのうちの、これは何といいますか、四百七十億と二千五百二十億、これが六十六年度以降で精算すべき交付税の額に加算するということだろうと思いますが、その四百七十億をどうして計算したか、これは私は随分苦労しましたが、なかなかわからぬのですね。そうすると、この三千九百億の中の八〇%が交付団体分で、それが五千四十億になってそれの半分の二千五百二十億、これが二千五百二十億で、その残った半分からまた八百五十億というものと千二百億を足したものを引いたものが四百七十億だ、こういうふうに注釈しておるのです。全然これはわからぬのですよ。専門家に聞いてもしばらく考えないとよくわからぬのです。  あるいはたばこ消費税のこれもありますし、今度は臨時特例債だ。これもまた元利償還の五〇%を国庫で負担する、じゃ残りどうするかというと、これ何ですかよくわからぬのですが、交付税に算入してそして何とかやるとか、まあまあどれを見ても全然普通の人じゃこれはわからぬのですね。  それから、この臨時特例債においても六十一年と六十二年のとでは全然やり方が違うんですね。一体どういうふうなあれにしてやっておるのか一貫性も全くないし、でたらめに、これはこうやれば何とかできるからこうしてみておけ、こっちのやつはこうやればこうやるから何とかみておけと、こういうのでやっているんですね。これはもうことしばかりじゃないのですよ。毎年こういう表が出てきて、毎年何ぼ説明されてもわからぬ、こういうふうな状態が続いておるのです。これはまことにみっともない。しかも複雑でわからない、いつどこでどうなっておるのかわからないような状態なので、どこかでこれを一遍正常な形に整理する必要、切りかえて整理する必要があるんじゃないか、もっとわかりやすいものに整理する必要があるんじゃないかと思いますね。これは恐らく昭和五十年以来十四年ぐらいこれに似たような状態が続いてますよ。今始まったものじゃないのです。いつまでこんなでたらめにわけのわからぬものでやろうとしているのか、これはやっぱり整理する必要があると思いますが、どうですか、梶山さん。
  24. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変難しい質問でございまして私もなかなかそしゃくがし切れないところがございますが、御指摘のとおり大変複雑になっているという現象は私も認めるわけでございますけれども、この赤字対策というか、もろもろの行政需要にいかにして対応するかということで必死に知恵を絞った結果がこういう形になっているというふうに御理解をいただきたいし、単純なもので、シンプルに一本でもいいからぱっと出せれば、それほどの余裕があれば大変よろしいわけでございますが、いろんな法律や政令その他のがんじがらめもございまして、その中で何とか合わせる方法があるとすれば、この細い道を通って今日維持をしているというふうに御理解をいただければ幸いであります。
  25. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 何だかわけのわからない答弁でさっぱり、私もますますわからないんですがね。ますますわかりませんけれども、まあこういうような状態が一年や二年じゃなく何年も続いているというのは、非常に国家の財政の形としては私はうまくないと思うんですよ。今どうも金がないからやり切れないと言うけれども、やはり整理する方法は幾らでもあると思うんです。これは一遍整理したんです。整理したけれども、一年たって次の年、一年置いて次の年になったら、またおかしくなっちゃった。整理すればする方法はあると思うんですよ。だから、私はこういうのはみっともないからなるべく整理して、みんながすぐわかるような形をつくるべきだと思いますよ。大蔵大臣、いかがですか。あなたがやってくれないとこれはできないんですよ。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 正直申しまして、佐藤委員でいらっしゃいますからおわかりになるのでという部分が随分ございます。私どもも大分こう勉強しましても、過去のいきさつが積み重なっておるものでございますからわかるのに骨が折れるのは確かでございます。  それで、五十九年度に一遍整理いたしました。確かに整理いたしましたのですが、また貧乏なものですからやり繰りを重ねたような感じでございまして、大変わかりにくいとおっしゃればそれは率直に、やり繰りをしてますものですからその上に積み重ねて、ごまかしは決してないのでございますけれども、ごまかさないために大変わかりにくくなっておるということかと思うのです。しかし財政事情も少しずつ好転しますし、まあ国が特例公債でも出さずに済むようになりますとやはりこの点はもう少し、もう一遍整理をしなきゃならない問題だろうと私どもも存じております。
  27. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今、ごまかしは決してしてませんと言うんですが、一番根本のごまかしはさっき言った建設地方債というごまかしですよ。これは建設地方債じゃないんです、もう赤字地方債に決まっているんです。それを建設地方債という名でやるというのは、これは最大のごまかしですよ。  それから第四番目に、地方交付税についての問題点を指摘したいと思います。  今、地方交付税は特別会計の借り入れが約六兆円ありますね。ちょっと返して五兆九千億ぐらいになりましたけれども、六兆円ぐらいになります。ピークのときはこれが約七千五百億ぐらい返さなければいかぬのです。その分だけ地方交付税の総額が食われていくことになる。これも非常に大変な状態になっているのは御承知のとおりであります。  それからさらに、次は国の一般会計との間にも交付税の総額を左右するような大きな加算あるいは減額、こういうものが非常に複雑な、不明瞭な形で計画性もなくどんどんどんどん行き来している。これは今ここで申し述べたとおりであります。大蔵大臣でさえもよくわからぬという状態で国と地方の間を金が行き来している、こういう状態が続いておる。  さらに、地方債の元利償還費が基準財政需要額の項目にでんと腰を据えまして、算定項目として独立して設けられている。しかも、これがもう何でもかんでも後から交付税で処置してやる、後から交付税で処置してやるという形でだんだんだんだん大きくなってきているんです。どんどんこういう形が進められていくと最終的にどういうことになるか、こういうことになりますとよく言われているように、地方交付税というものが地方債と一体化してどんどんどんどん補助金化していく、これはもう大蔵大臣よく御承知のとおりだと思います。補助金というものが、事業費補正、こういうものがどんどんどんどんふえてくる。さらにまた、今言いましたように、仕事をやった、金が足りなければ金を貸してやる、その金に対して交付税で払ってやる、こういうふうな特定財源化がどんどんどんどん進んでいる。まあ交付税というものは我々はそういう特定財源ではなくて一般財源だと、こういうふうに考えているわけですが、この交付税一般財源化というものの性格がどんどん薄れてしまっているのではないか、こういう危険性が非常にある、こう思います。  そこで、今問題になっている、これは非常に古くて新しい問題でありますけれども、例の地方交付税法六条三の二項に該当する問題であります。  五十年以来ほとんどこれは兆単位の財源不足が続いております。既に六十三年ですから十四年ぐらい、五十年から今まで大変な財源不足が続いておる。昭和五十年に何兆円か、二兆円だか三兆円だか財源が不足になった、それを政府が六条三の二項を無視して借金でこれを補った。我々は、借金はこれは制度の改正ではない、だから税率を、交付税率をアップしろと、こう言ったけれども、とうとう政府は、法律でもって借金するということを決めたからこれは制度の改正であると強弁をしまして、今までそれを続けてきたわけであります。しかし、これも先ほどの建設地方債の問題と同じようで、全くの詭弁なんですね。  今の状態を見ますと、六十一年度には一兆一千七百億、六十二年度では二兆三千七百五十八億、六十三年度、現在は御承知のように一兆七千二百五十九億の財源不足が出ています。私ども自治省と五十年から五十三年まで争ってまいりましたけれども、一体どういう状態になれば六条三の二項に該当するか。自治省はこう言っております。財源不足が一〇%以上、一割以上の財源不足が二年間続いて、三年以降も財源不足の同じような見通しが続けば六条三の二項に該当する、こういうふうに自治省から答弁がありました。ところが、それが守られておりませんけれども、今や、今申し述べましたように、六十一年度は一〇%を超えています。六十二年度は二〇%を超えておる。六十三年度も一〇%を超えています。そして来年度はどうなるか。急に金がふえて、全くこういう状態はなくなるということは考えられないんですね。全くこの六条三の二項にぴたりと該当するんです。  そういうことで、当然税率もアップをすべきではないか。制度改正をするか、税率アップするべきか、どっちかと思いますが、いかがですか、梶山さん。
  28. 梶山静六

    梶山国務大臣 地方交付税法第六条の三第二項の規定というのは、ただいま佐藤委員が御指摘のとおりでございます。そういう場合でございますけれども、六十一年度及び六十三年度においてはカットがもしもなかりせば通常収支は均衡をいたしております。ですから、財源不足額のほとんどは六十三年度までの暫定措置とされている国庫補助負担率引き下げ措置によるものでありますので、六十四年度以降については、今後補助率負担引き下げ措置廃止を前提と私は考えておりますので、これを前提とすれば普通交付税の総額は引き続き著しく不足する事態が続くとは必ずしも言えないのではないかなという感じがいたします。  逆に言いますと、この前提条件を佐藤議員の言われるように引き続き大幅に超えていくということになれば、今の情勢の中からいいますと、補助率が引き続き引き下げられているという状況にもなりますので、今自治省のスタンスとしてはそんなことを申し上げる気は毛頭ございません。ただ、引き続き我々は一般財源の充実に努めながら、健全化、安定化を図ってまいりたいと思うわけであります。
  29. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それじゃ、こういうことを約束できますか。あなたは今こういうふうに御答弁されましたね。来年は大丈夫だから六条三の二項には該当しない、こういう答弁ですね。それでいいんですか。
  30. 梶山静六

    梶山国務大臣 私が地方財政計画を全部オールマイティーの力で策定をし決定をいたすわけではございませんけれども自治大臣といたしましては、六十三年度までの暫定措置というふうに受けとめて、その実現のために努力をしなければならない立場でございますので、懸命な努力を払うということで御理解を願いたいと思います。
  31. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そんなことを聞いているんじゃないのですよ。こういうことを聞いているのです。  六条三の二項というものは御承知のように、財源不足がうんと続いてきたならば、総額を確保するために制度の改正か、でなければ交付税率をアップしなさいと書いてあるのです。これは総額を確保するということが地方交付税法の生命だからです。地方交付税法で総額を確保できなければ何の価値もないのですよ。だから、この総額確保ということを一項を構えて強くこれは命じているのですね。そこで、自治省はどういうふうになれば六条三の二項に該当するかということに対して、こういうふうな財源不足状態が一割以上二年間続いて、三年以降もそういう状態が続く見通しであれば制度の改正か税率をアップしなければいけない、こういうふうに書いてあるのです。  ところが、先のことは別として今度の状態は、六十一年は一兆一千七百億、一〇%を超えているのですね。六十二年度は二〇%を超えているのです。今回のやつは一兆七千二百五十九億で、これも一〇%を超えているのです。当然、六十三年度のこの状態を見ますと六条三の二項に該当するのです。そうしましたら、あなた今、私は来年は大丈夫だから、六十三年度以降もそういう見通しがあれば該当すると自治省は答えているけれども、三年度以降というのは六十三年のことなんですよ。六十四年も同じような状態が続かないからこれは当てはまらない、あなたはこう言っているのですよ。それでいいんでしょう。いいですね。もう一遍聞きましょう。それでいいんですか。
  32. 梶山静六

    梶山国務大臣 言葉の理解に誤りがあればちょっと訂正をいたしたいと思いますのは、六十三年度を私は明年度と言ったわけではございませんで、六十三年度までこの状態が続くという想定がなされるということであります。ですから、二年度続くということは六十一年度、六十二年度、また見通しされる三年度以降というのは六十三年でありますから、三年度以降も引き続きその状態ということになりますと、私どもは六十四年度には少なくとも現行の補助率引き下げ特例措置は直さなければならない、そういう前提に立てば、今ここで交付税率のアップやその他で、恒久的に財源が不足をするという予測をすることは自治省立場としていかがなものかということを申し上げたわけであります。
  33. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 わかりました。そのとおり聞いておきましょう。  そうすると、こういうことを約束できますか。六十三年度は三年目なんです。来年も同じような状態が続けば、一割以上の財源不足が続けば必ず税率のアップをすると約束できますか。あなたの言葉を聞いていると、来年も続けば必ずアップしなければいかぬですよ、裏の解釈をすればね。
  34. 梶山静六

    梶山国務大臣 六十四年度以降も引き続きそういう状態が継続をするということになりますと、国、地方税財源配分、もちろん交付税率もひっくるめてでございますが、あるいは事務配分その他をひっくるめまして、健全化をするために懸命な努力を払います。
  35. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 よろしいでしょう。来年になったらぜひひとつ、そのアップを約束したと、こう考えて差し支えないと思います。ただし断っておきますけれども、以降というのは将来どこまでもありますからね。来年ではなくて、以降は再来年、再々来年、十年後になればよくなるからだめだということでは困りますね。  それから、さっきちょっとお話しいたしました補助金の問題について御質問したいと思います。  これは説明するまでもないと思いますが、六十一年度から六十三年度までの三年間の暫定措置、こういうことで六十三年度、来年度がいよいよ切れる年でありまして、果たしてこれがもとに戻るのか戻らないのか、地方団体は大変な関心を持ってこれを眺めているところであります。  先ほど、これからいろいろ国と地方の役割分担、それに伴う費用分担等を検討して決めたい、こういうふうに言っておられますけれども、これからやはりそういうことを検討して決めることになりますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど自治大臣がお答えになられましたが、国、地方財源配分あるいは役割、行政の再配分等々の問題を勘案しながら、また経済情勢も全体としてどういうふうに展開いたしますか、そういうことにもよると思いますが、できるだけ早急に関係各省とも協議をして検討を開始いたしたいと思っております。
  37. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 検討、検討とされておりますけれども、もう既に六十年からですから三年、六十、六十一、六十二と、四年目に突入しようとしておるわけです。その間にどういうような検討をされましたか。検討しているとすれば、あの補助金はこうなる、この補助金はこうなる、こういうことが一応見当がついておると思いますが、どんな検討をして、どういうふうな結果が出たのか、これをひとつ御報告いただきたい。
  38. 津田正

    ○津田政府委員 暫定期間終了後の昭和六十四年度以降におきます国庫補助金の取り扱いについては、六十四年度予算編成までに自治、大蔵、また各省それぞれの補助金を持っておるわけでございますので、協議して定める必要があるわけでございます。社会情勢の変化あるいは経済情勢、こういうものを考慮しなければなりませんし、また今後の大きな課題でございます税制改革問題というものも見ながら、さらに検討を続けてまいりたい。今、結論が出ておるものではございません。
  39. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今も申し上げましたように、もう四年もたっておるのですね。三年もたっておるのです、丸三年。しかも、六十年度のときには、六十年一年でもってこれの結論を出すと、私はここに国会の答弁の議事録いっぱい持っておりますが、梶山先生、自治省は腹を決めて頑としてやると言って何遍も答弁しているのですよ。それぐらいかたい決意でもって六十年に結論を出すと言いながら暫定に持ち込まれましたね。また暫定を続けておるのです。  私は、暫定を続けたのは別にいたしまして、一年で結論を出すと言ったならば、そこで全部の結論が出なくても、かなりのものは、ある程度のものは検討して、そしてこれはどうする、あれはどうするというのは、全部出なくても何ぼか出ておると思うのです。今の津田さんのお話を聞くと、何もやっていません、これからですという話、これはちょっと聞こえないと思うのですが、どうですか。
  40. 津田正

    ○津田政府委員 六十年あるいは六十一年度におきます検討におきましても、一番深刻な問題は社会福祉系統の生活保護費をどうするか、これは国の責任と地方の責任とどのように考えるかということで、難しい選択を迫られて、暫定的というようなことをされておるわけでございます。  さらに、公共事業関係国庫負担率の問題におきましても、六十一年度一応の結論を見たわけでございますが、六十二年度内需拡大というような要請のために、また見直しをしなければならなかった、こういうようなそれぞれの事態に対応いたしました結論を出さなければならないわけでございまして、私どもとしましても検討はしておりますが、その結論というのは、そういうような諸情勢の判断が必要かと考えております。
  41. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今あなたの言っているのは六十二年のだまされてもう一遍やられたときの話なんですよ。しかし、それまで一年も二年もあるのですよ、時間が。その間に何もやらぬのですか。私はこれずっと見てみたけれども、ほとんど役割分担だとか費用分担、これを検討しなければだめだ、これを検討しなければだめだと言って、三年も同じことをしゃべっているのですよ。三年も同じことをしゃべっている。こんなばかな話がありますか。  しかも、さっき言いましたように、一年でこれを決めると言ってあれだけかたい約束をして、破った。しかし、あのときはみんな決めるつもりでおったと思いますよ。まあおったかおらないかわかりません。口だけ言っていて、本当はそんなことはやるつもりはなかったのじゃないかと私は思いますけれどもね。口先だけではとにかくもう絶対に腹を決めてやると言って何遍もやっているのですよ。それを今聞きますと、何にもやらぬ。そして、ただしゃべっているのは、内需拡大のためにもう一遍直さなければいけない。内需拡大のために直したのは去年なんです。六十二年なんですよ。その前に六十一年度、六十年度、二年間あるのですよ、まだ。その間何もやらぬのですか。私は全部やって完了したと言えとは言いませんよ。その間何かしらの、真剣な討議をしたら何かしらの結論が出てくるはずだ。この補助金はどうするとか、この補助金はどうするとか、何かしらの結論が出てくるはずでしょう。何にもやっていないという、そんなばかな話がありますか。どうですか、一体。
  42. 梶山静六

    梶山国務大臣 財政局長がお答えをいたしましたように、六十四年の予算編成までには精力的にこれを詰めて結論を出すということでございます。過去のことにつきましては、今財政局長がやっていないと言うのですから、私がやっておりましたとも言えませんし、やっていないことは現実でありますが、これから先に向けては懸命にこの問題を、六十四年度交付税率を一%あるいは何%か上げなければならないような状態にならないように、補助率引き下げの問題をひっくるめあるいは事務配分やその他税財源配分をひっくるめて結論を、あるいは部分的な結論を出して、緊急的な事態の回避に努めてまいりたいと思います。
  43. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 梶山自治大臣、そんなことを言っていいんですか。いいんですか。非常に明快な答弁をいただきまして私は本当は喜んでいるのですが、あなたが困らないかと思って今ちょっと申し上げたんですがね。今まで、私はここにこの問題に対する議事録をずっと、本会議やら何やら全部持っていますけれども、そういう答弁をしたのはあなたが初めてです。非常に立派だと私は思います。  それが本音なんですね。要するに、もう、国と地方の役割負担をもう一遍考えなければいかぬとか、費用負担をそれによって配分するとか、そんなことはつけたりの問題で、本当は金が欲しいから、いきなり補助金を一割カットなんというああいう乱暴なことをしたのですね。ところが、それに後から理屈をつけて、いやあ、国と地方事務配分をもう一遍検討しなければいけないとか、もう一遍費用負担の再配分を考えなければいかぬとか、それは後からついた理屈なんです。まず金だけぶった切って取っておいて、理屈は後から貨車で来る、こういう状態なんですね。それをあなたはまさに明言した。本当にあなたは正直な人で、私はすばらしいと思いますよ。だれもそういう答弁をしていないのです。  読んで聞かせましょう。これは全部、もうこれは国と地方の事務再配分、そして費用負担をして、それから決めるものでありますので、もう絶対に金のために、金が欲しいためにやったものではありません、総理もそう答弁しているのです。総理もそう答弁しているし、宮澤さんもそう答弁しているのですよ。困りませんか。——いや、いいです、いいです。  私は、今いみじくも梶山大臣がお話しになりましたように、暫定期間中に国と地方の役割の分担、費用の負担、これを見直して検討して、そしてどうするか決める、こう言って各大臣、歴代の大臣から大蔵大臣から全部そういう話をしているのですが、今、津田局長からもお話がありましたし、梶山大臣に至っては、やってないことは現実であると言うので、何もやってないのです。これは全くもう金を暫定暫定として引き延ばすための理屈にすぎないのですよ。理屈にすぎない。こんなことを、国と地方の役割分担だとか費用負担、これを見直すなんということは、これは大変なことなのですね。  今までやろうとしてやれなかったのです。臨調行革でも答申もできた。いろいろなところから、地方制度調査会第七次答申なんというのは大変立派な答申が来ているのです。何にもやらぬのですから。やったことないです。我々がやれやれと言って幾ら勧めたって全然やらずに、突然これをやろうとしているのです。やれるはずがないですよ。全く後ろからトラックで理屈を積んできた、それだけの話です。暫定で延ばすための口実にすぎない。  だから、私はこの問題につきまして、これから、いよいよ来年なのですね。ことし、六十三年です。あとこれをどうするかという問題は、予算編成は大体夏から、七月か八月から決まるでしょう。今から考えると五カ月か六カ月しかないのですよ、半年ぐらいしか。その間に、今のお話を聞きますと、これから国とあれの役割分担を決めてなんとかかんとかということなのですね。たった六カ月の中に、今まで三年も放置しておいて、これから六カ月か何ぼでこれを決めて、その上に立ってなんという、そういう理屈の立ったことなんかができるはずはないのですよ。自治省、これできると思っているの、一体。どうですか。
  44. 梶山静六

    梶山国務大臣 先ほど来お答えをいたしておりますように、六十四年度にはこの補助率カットの特例がなくなるわけであります。なくなるという表現がいいかどうかはわかりませんが、いずれにしても、それが続くということになれば、制度改正かあるいは交付税率のアップか、何らかの処置をとらないわけにはまいらないわけであります。  ですから、私は今佐藤委員にお答えをしていると同時に、後ろには総理と大蔵大臣がおりますから、清水の舞台から飛びおりるような思いで、ぜひともこれは、今まで両三年間懸命に努力をしてきた先輩ができなかった情景を考えれば、やはり国、地方を通ずる全部の原資が足りないから、その中で内需拡大もいたさなければならない、もろもろの情勢をひっくるめて、国の状況だけが悪くて地方だけよければよいという、先ほどあなたが指摘をしたように、そういうことであってはならないという現実。しかし、我々はやはり弱い地方というその立場を考えますと、これから地方自治立場をもっともっと強化をして、まさに言われるとおり、車の両輪のような立場をつくるために努力をしなければならないわけでありますから、一生懸命努力をすることをお誓いを申し上げます。
  45. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大蔵大臣にお伺いしますけれども、今私が述べたのでおわかりでしょうけれども、あなたの国会の答弁を聞いていましても、役割分担をしなければいけないということを盛んに言っています。しかし、今お聞きのとおりです。正直なところ、そんなことは口実であって、本当は金がないからお願いしたんだ、こういうふうに理解しておいていいのですか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはしかし、地方と中央の行財政の再配分ということは、佐藤委員の言われますように、本当に戦後ずっと言われ続けてきてなかなかこれという実績が上がってこないということはそうでございますけれども、しかし問題があるということはみんなが知っておるところでございますので、やはりこれはそういう問題に取り組むという気持ちをなくしてはいけないと私は考えております。
  47. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そういう原則的なことを言っているのじゃないのですよ。それはやらなければいけないことは、私らもやれやれと言って一生懸命やっているのですが、政府はどうしてもやらないで私どもも困惑しているのですけれども、実際にできないことを、理想的にはやらなければいけないと思っていますよ、しかし、一年や二年や三年でできないことを口実にして、できると言って、そして補助金をぶった切っている。これは一種の詭弁であり詐欺じゃないですか。  やるならば、本当にやればいいのです。何もやってないじゃないですか。今局長の言うことを聞いたって梶山自治大臣の言うことを聞いたって、何もやっていないのですよ。努力さえしていない。そうして、あなたの言うように、そういうことを考えていかなければいけない——考えなければいけないことは当たり前ですよ。やれないのです。現実にやってないのです。そうしておいて補助金だけぶった切っていく。これはまさに金のために補助金をぶった切るための口実じゃないですか。だから私がお聞きしているのは、それは口実で、本当は金が足りないから補助金をぶった切ったのだ、そして金持ち地方から貧乏な国が引き揚げたのだ、こういうふうに解釈してもよろしいかと聞いているのですよ。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三年間やってまいりましたことは、確かにそういう意味では緊急の措置として、梶山自治大臣も言われましたように暫定措置としてさせていただきました。これは、地方中央の行財政配分という視野からと申しますよりは、まさに御指摘のように、中央も非常に困りまして、地方の御協力をお願いしたということでございます。  ただそこで、これは暫定措置であるはずだがどうかというお尋ねに対して、梶山自治大臣が先ほどのような御答弁をなさった。つまりこの再検討に当たっては、そういったようなことも考えながらやりたいのだと言われましたことは、私もそのように思っておりまして、できるだけ早く再検討を開始いたしたいと思います。
  49. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 総理もそれでよろしいのですか。あなたも何遍も答弁していますが、大蔵大臣時代に。どうぞ。
  50. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 大蔵大臣時代に、佐藤さん御指摘なすったように、国、地方まさに車の両輪である、これを恐らく何十遍言ったかわかりません。  それからもう一つは、いわば国のベースにおいては、総体の基準財政需要額と基準財政収入額からするマクロで見がちで、そして現実問題として個々の市町村にはそれぞれの差異があるので、したがって、そこへとかく目の届かない場合は、それこそ自治省なり地方自治体できめ細かな配慮をしてもらう、こういうことを言い続けてきたことも事実であります。  総じて申しますならば、基準財政需要額と基準財政収入額というものから少なくとも出口ベースでこのような手法によって埋めております、だから当面、費用負担のあり方、その事務分担のあり方について検討いたしますので、しばし協力をいただきたい、こういう姿勢を言い続けてきたと私も思っております。  何を検討したかということを、今のお話を聞きながら、やはり一番議論し合ったのは生活保護の問題ではなかったかなというふうな記憶もございますが、総じて、今問答をお聞きいたしておりまして、大蔵大臣自治大臣がお答え申し上げたその線で私も対応すべきものである、こういう理解をいたしております。
  51. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私はこの議論で何を主眼にしてやってきたかと申しますと、今言ったように、これは議事録ですが、議事録のどれを見ても、役割分担、費用負担、こればっかり言っているのです。口をそろえてちいぱっぱだ、本当に。しかし、本音はそうじゃない、それは単なる口実にすぎない、本当は金が欲しいからこういうことをやったんだ、これを言わせようと思って一生懸命やったが、梶山さん、非常に正直なのでいきなりずばりと言ってしまったので、私は余り議論する必要はなくなったようなことになって、本当に大変ありがとうございました。  それで、六十年から今まで六十、六十一、六十二と、六十三年にまだ入らないから三年ですね、この三年間に、私も生活保護なんかが問題になっていることは少し知っていますけれども、他のことについてはほとんどやってないというよりも、これでいいじゃないかというような空気があるんじゃないかという気がしております。例えば公共事業なんか一割カットで、それでいいじゃないかというようなことを言っている節もあるようですけれども、全体の空気として、これをこのまままた来年も暫定に持っていくとか、あるいはまた全くやめてはっきりとした、六十四年には態度を決めてしまう、いずれにしても決着をつける、こういう態度であるのか、そこいらはいかがですか。これは大蔵大臣の方がいいかな。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど梶山自治大臣も御答弁されましたし、私も申し上げておりますけれども、今後の諸情勢、国、地方を通じます経済情勢の推移あるいは行財政の分担の問題等々考えながら、できるだけ早急に各省庁と協議を始めたいと考えております。
  53. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 梶山さんはどうですか。いいですか。  地方団体なんかがみんな非常に心配しているのは、もう既に三年たった、六十三年になると四年になる、暫定もここまで来れば暫定じゃなくて安定だ、だからこのまま決めてしまうのじゃないか、こういう心配を非常にしておるわけなんです。御承知のように、さっきもお話ししましたように、地方財政に対しては非常に大きな影響があります。そして、その影響を借金借金で埋めていっているので、今や地方財政というものは借金で身動きができない、こういう状態になっておるわけですね。そこで、このまま暫定を安定にしてしまうのか、あるいはもとに戻すのか、こういうことが非常に大きな問題になっておるのですが、自治省は一体どういうふうにこの見通しと考え方を持っているのですか。——いや、これは財政局長の事務答弁じゃないのですよ。どういう見通しを持って、これからどうしていくかという大臣のお考えをお聞きしたいですね。
  54. 梶山静六

    梶山国務大臣 再三、先ほどからお答えを申し上げているとおり、六十一、六十二、六十三の暫定措置として受けとめておりますので、六十四年度は新たな別途な観点で、通常であれば復元、そしてまたもろもろの条件があればその条件を加味をして対処をしてまいりたいと思います。
  55. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 通常であれば復元ということは、自治省としては五十九年度の状態に戻してもらいたい、それがあなたの希望であるけれども、そういうふうにするところの自信、覚悟、こういうものはありますか。
  56. 梶山静六

    梶山国務大臣 全部の状況を五十九年に戻すという考えは毛頭ございません。財政規模もふえますし、行政需要もふえるわけでございますから、そういう将来の展望に立って六十四年度がいかにあるべきか、そういう状態の中で補助率の問題も総合的に検討さるべきものだというふうに期待をいたしますし、何もなければ、暫定措置でございますから、世の中の変化率をゼロと見ますれば、五十九年度に返してもらいたい、こう思うことは当然であります。
  57. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大蔵大臣にちょっとお伺いしますけれども大蔵大臣次第だと思うのですけれども、今お話がありましたように、要するに理屈じゃなくて金がないから何とかしてくれ、こう言うのでやったということが今の議論ではっきりしたわけですけれども、今梶山大臣が申されましたように、常識で言うとこれはもとに返る、暫定だ、これが常識だと私は思うのですね。しかもあなた方が今まで主張してきたように、国と地方の役割分担、それに対する金の配分、こういうものをやると言ってきているけれども、それも何もやっていないのです。そうしますと、暫定期間というのは、単に金はどうなるかという問題ですから、私は常識として暫定期間が過ぎたら一遍もとに返すのが当然だと思います。  特に、私の申し上げたいのは、これは再三再四にわたって地方が政府にだまされているのですよ。まず六十年にだました。六十二年にだました。そうでしょう。かなりな不信感を地方が持っているのです。だから、そんなへ理屈というものがここで解消したのですから、役割分担だとか費用負担だとか、そういうへ理屈がなくなって本当に金の問題だけですから、みんなそう思っているのだけれどもあなた方はそうでないと言って強弁した、それが今ここで解消されたのだから、一遍地方に対してこの金をもとに戻す、五十九年度に戻すべきだ。  そして、それからあなた方は本当に、今宮澤さん仰せられるように、私も国と地方の役割分担、費用の再配分、こういうものは必要だと思いますよ。それを急速にやる。しかも、それは答えが既に出ているのですよ。臨調からも出ているし、地方制度調査会からも出ているし、非常に立派なあれが出ている。だから、それをどんどんやればいい。しかし、それをやらないのですね。この前の臨調で機関委任事務をできるだけ地方に移管しろというのはどうなりましたか。時間がないから聞きませんけれども、二年かかって一割やろう、そんなことを言っていたら二十年もかかる。やる気がない。あれでやっただけで、後は何も音さたがないのですよ。何もそんなことは今理由にならぬですよ。ただ、必要なのは、国が貧乏だから金持ちのあれから補助金カットして金を引き揚げる、しかもそれを二回も三回もだましてやっている。ここに非常に大きな不信感がある。しかも、それを役割分担だと言って、一生懸命詭弁を振るってカバーしようとしている。地方は国に対する不信感があるのですよ。  ですから、今の場合はこれで決めたのだから潔くすぱっと地方に戻す、五十九年の状態に戻しておいて、そしてそれからいろいろ役割分担でもやって、そしてそれによって事務配分をすればいい。これは臨調の方針でもあるし地方制度調査会の方針でもあるし、いろいろな方針がぴしゃっと一致しているのですから、それをやって、その上で金を削るなら地方団体は文句を言わぬと私は思いますよ。来年度にはこれを五十九年度のところに戻す意思があるかないか、それをお尋ねしたい。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 片方でお話しのように役割分担等々の古くて新しい問題があるわけでございますし、他方で佐藤委員がおっしゃいますように、正直言って、金の問題があるのだろう、それはそのとおりでございます。やはり金の問題はないわけではない、ございます。恐らく六十四年度もまだ特例公債を出さなければならぬという国の財政状況が続く公算が大きいと思われます。そういったようなことをいろいろ考えながら、できるだけ早急に検討を開始いたしたいと考えております。
  59. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 早急に開始をいたしたいと思っても、さっき申し上げましたとおり、非常に時間がないのですよ。今まで三年間じんぜん日を送って、そしてこの暫定の口実にしてきました。後は本当に来年度でこれの決着をつけるということになれば、本当にこれは急速にやらなければだめだと思うのです。そんなことをやるよりも、まず返すか返さないか覚悟を決めた方が、返すことに覚悟を決めた方が私は一番早いと思うのです。そのとおりになると思いますよ。これからあの難しい役割分担、費用負担の再配分なんてやっていたって、そんなことできるはずないのですよ。  梶山自治大臣、今宮澤大蔵大臣からもお話ありましたように、来年もどうもよくなる見通しがないという話です。来年になれば、来年も悪ければ、ちゃんと六条三の二項を適用しますか。もう一遍念のために聞いておきましょう。
  60. 梶山静六

    梶山国務大臣 形式的にお答えをすればそのとおりと言いたいところでございますけれども、社会情勢を無視して政治は行えるものではございません。ですから、経済の状況、それに伴う税収、そういうもろもろの条件を考え合わせ、そして税の配分が適正に行われるかどうか、そういうもろもろの状態を勘案をして、現状よりよくなるという前提、そういう前提のもとでは、当然先ほど私が申し上げましたように、特例はなくなるものだ、そういう期待をいたしております。
  61. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 梶山さん、何回も聞いて申しわけないけれども、そんななまぬるいことじゃないんですよ。さっきも申し上げましたとおり、こういう状態というものは多かれ少なかれ昭和五十年からずっと十四年も続いているんですよ。それをあなたみたいに、世の中の状況を見ましてなんて、そういう状態じゃないんですよ、これは。いつまであれすれば、法律を破っている状態なんですよ、アウトローの状態を十四年も続ければ、どうなりますか。今始まった問題じゃないんです。今言ったのは、私は六十一年からの問題だけ言ったけれども、その前にもあるんです。ずっとこういう状態が続いてきている。さっきも言ったとおりですがね。ですから、これから天下の情勢を見てなんてそんなのんきなことを言っては困るんですよ。真剣にひとつ検討してください。  国民健康保険の問題についてお伺いいたします。  国民健康保険の一番大きな問題になっているのは、申すまでもなく国保の財政が急速に悪化していることであります。この財政が悪化したことによってどういうことが起きてきたか。一つは保険税が大幅に引き上げられたことです。保険税が非常に大幅に引き上げられてきておる。ちなみにこれを申し上げますと、こういう状態です。五十三年度で十九万円だった課税限度額、これが五十四年には二十二万円、五十五年には二十四万円、五十六年には二十六万円、五十七年には二十七万円、五十八年は二十八万、五十九年は三十五万、六十年を飛ばして六十一年には三十七万、六十二年が三十九万で、来年度六十三年には四十万になるんです。物すごい勢いでこれは上がっている。減税を少しぐらいしたって、こっちに全部食われてしまうぐらい。だから、地方へ私どもが行きますと、何よりも一番先に問題になるのは国保の問題です。非常に大きな問題になっているんですね。この保険税の大幅引き上げがまず起きてきている。非常にこれは国民的な大きな苦しみになっております。  それからもう一つ地方自治体が非常に困っているのは、一般会計からの繰り入れがどんどん大きくなってきているんですね、一般会計からの繰り入れが。私はこの国保の決算をよく見るんですが、今度のあれにも、これは新聞ですが、六十一年度の決算で国保赤字の市町村が三百三十七に減少したとか、こう言って書いているんです。これは額面どおり見ればこのとおりかもしれないけれども、私は非常にこれを見て疑問に思った。  例えば、この間の退職者医療制度、あれでもって政府が数字を間違えて大きな負担をかけた。今度の補正でもって一千八億ですか、何ぼか上げたというけれども、あのとき非常に大きな負担を受けましたので各市町村とも料金をばんばん上げて、それでも足りなくてあれしたんですね。税金を上げて、それでも足りなくて一般会計からうんと入れたんです。だから、六十一年度の国保財政が赤字の市町村が減って黒字がふえたなんて考えられないんですよ。なぜこういうことになるか。これはもう言うまでもありません。保険税を上げたのと、今言いましたように一般会計からうんと繰り入れたからですよ。でなければこういうふうになるはずがない。  そこで厚生大臣にお伺いしますけれども、一般会計からの繰り入れを国保の決算に入れない方がいいのじゃないか。これを入れますと本当の状態がわからないのですよ、国保の本当の状態が。そして厚生省は得たり賢しと、一般会計から繰り入れても保険税をどんどん上げても黒字になりさえすればおれの責任は終わったといって、赤字がなくなった赤字がなくなったと宣伝している。しかし現実は真っ赤赤なんです、これは。だから私は、それをはっきりさせてきちっとした対応をするために、一般会計からの繰り入れを一遍除いて決算を出すべきだ、こう思いますが、藤本厚生大臣はどう考えますか。
  62. 下村健

    ○下村政府委員 御指摘のように六十一年度決算佐藤委員がおっしゃったような数字になっておりますが、これは確かに一般会計からの繰り入れも含めて公表いたしておるわけであります。従来からこれはそうなっておりますが、同時にあわせて一般会計繰入額の状況についても私どもとしては公表しておりまして、両方の状況がわかるような形で御説明をいたしております。
  63. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 でき得べくんばじゃない、ぜひひとつ繰り入れのないのと繰り入れのあるのと両方出して、そして比べて実態をひとつ明らかにするような決算を出せばいいじゃないか、こう思います。  それで国保財政の悪化の原因というものは一体何であるか。これはもう言うまでもありません。医療費が非常に膨張している、その中で国庫負担がどんどん減っている、この両方の相乗作用でもって国保財政というものがどんどん悪化しているということはもう御承知のとおりですが、そのとおりですか、藤本大臣。
  64. 下村健

    ○下村政府委員 国保財政の状況が非常に苦しいということは私どももよく認識いたしております。基本的な原因といたしましては、従来から国保には高齢の加入者が多いということが言われておりまして、やはり基本問題としては高齢者の問題ということがあるだろうというふうに思っております。  ちなみに四十七年から老人医療の無料化というふうな形で高齢者対策を実施いたしたわけでございますが、その当時は老人の医療費と一般の加入者の医療費の比率は大体二倍でございます。現在は既にそれが五倍になっておりまして、しかも老人の数がまだどんどんふえていくという状況が続いておりますので、そこら辺が何といっても大きな原因があるだろうということで、私どもとしては高齢者の医療費の負担を公平にするということで退職者医療制度あるいは老人保健制度という形で全体としての負担の公平という形で結果的に国保の安定も図ってまいるということで考えてまいったわけでございます。
  65. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 老人が多いから医療費がどんどん膨張している、これは後から申し上げますけれども、それは医療費が膨張している一つの原因ではあります。しかし、もう一つ私が挙げました。国庫負担がどんどん切り取られて減少していっているのです。これも大きな原因である、そう思いませんか。
  66. 下村健

    ○下村政府委員 国庫負担率を落としているのではないか、こういう御質問ではないかと思いますが、確かに国庫負担についても見直しをやってまいっております。ただそれは従来国保につきまして相当高率の負担をやってきたというのは、事業主負担がないとかあるいは高齢加入者が多いあるいは低所得者の加入者が多いというふうなもろもろの事情を総合いたしましてかなり高率の負担をやってきたという事情があるわけでございます。私どもとしては、そういった特殊要因が除かれた状況、それから国保全体の負担状況というものを考えながら、やはり医療保険制度全体の負担の公平、それから国保の財政状況、両方をにらみながら、国庫負担についても適正な国庫負担は十分確保してまいりたい、こう考えておるわけでございます。  現在のところ私どもといたしましては、国民健康保険はそういうことでいろいろな要因がございますが、基本は保険制度としての運営が健全に確保されるような条件をつくっていこうということを大前提として考えておりまして、保険制度ということであれば保険料と国庫負担、一部に特例的な負担が残っておりますが、総体といたしまして二分の一ずつというところが原則であろうというふうに考えているわけでございます。
  67. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなたは医療費の膨張の方は認めるけれども国庫負担の抑制の方は認めまいとして頑張っておるのですけれども、これは、私が今明らかにしますけれども、そうじゃないんですね。国庫負担というのはいわば医療保険財政の中で制度間の財政力が格差があるのでそれを是正するというふうに位置づけられておるわけですが、これが財政力が弱い国保に集中的に今まで投資されているのです。  こういうふうになっているんですね。昭和五十六年度の予算では、船員保険と各種共済組合を除いた医療保険に三兆九百六十九億円、実収入の実に三〇・六%が投入されているんですね。この国庫負担のうち八〇・五%、これが国保へ入っているんですね、八〇・五%が国保へ入っています。そして政管健保に入っているのは一八・一%、組合健保に入っているのが〇・一と非常に少ない。国保の実際の収入からいきますと、今までの国保の国庫負担が五八・九%でありまして、保険税が三六%でありますから、保険税よりも国庫負担の方が多かったんですね。非常に大きな負担を今までやってきていました。  六十一年度の予算では、老人保健医療を含めても国庫の負担は三兆七千四百二十五億円、実収入に占める割合というものは、構成比というものは二二%。先ほどの三六%から二二%というものに落ちている。最近になって非常に国庫の負担額というものががっくりと落ちてしまっている。だから実収入に占める割合というものが今では二二%、非常に大幅に低下しておるわけです。  これをどうして一体カバーしているか。この国庫負担の抑制をどうしてカバーしているかというと、あなたが今おっしゃいましたように患者の一部負担を導入する、老人医療の無料化を廃止した、あるいは外来を四百円から千円にしたり、入院を三百円から五百円にしたりして引き上げた。そしてまた、今これから問題になります制度間調整の名において被用者保険に負担を転嫁している、こういうことによって国庫負担削減をカバーしてきている、こういうことになってきている、これが実情だと私は思います。  そこで、老人保健の問題でありますけれども、一部負担を導入した大きな目的として、一部負担させれば余り老人が病院にかからないだろう、抑制効果というものを非常にねらっているわけですね。そして、この抑制効果がなければ一部負担を導入した効果がない、こういうふうに言われておるのですが、これの一部負担を導入したためにどのぐらい老人医療費というものの抑制効果があったか、それをちょっと教えてくれませんか。
  68. 下村健

    ○下村政府委員 老人の一部負担の導入というのは抑制効果を期待しているのではないかというふうに言われたわけでございますが、私どもとしてはむだなものはもちろん抑制されることが好ましいということは申したわけでございますが、一方では、世代間の負担の均衡といいますか、結局老人の医療費は若い階層がみんなで金を出し合うというのが現在の老人保健制度でございますので、世代間の負担の均衡というところにも私どもとしてはねらいがあったわけでございます。  一部負担による影響につきましては、昨年の改正による一部負担の引き上げによっては全く受診状況に変化がなかったというふうに見ております。
  69. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いや、抑制効果というものをねらったのじゃないと言うけれども、効果がないからねらったんじゃないと今弁解しているのであって、あの当時はこれによって抑制力が働いて医療費が下がる、こういうことを一生懸命強調しておったのだ。それが結局、結果的には何もないからそれをねらったんじゃないといって逆説的に、結果からまたもとに戻っているというような状態だと思いますけれども、ここのところでも国の方は国庫負担を三〇%から二〇%に引き下げて、そして県に五%、市に五%、こういうふうにやっているのだけれども、実際問題としてもうけたのは国で、あとはそれほど効果がない、こういうことだと思います。  実はもっと詳しくやりたいのですが、時間がないので省略しますけれども退職者医療制度の問題についてちょっとお聞きしたいと思います。  退職者医療制度創設したあの当時、退職の適用者が四百六万人いる、こういうふうに厚生省が考えまして補助率を四五%から三八・五%に切り下げました。ところが、実際に幾らしてもなかなか適用者が見当たらないで、あの当時二百六十二万人しかいなかった。それでその差額というものが国保の財政の非常に大きな圧迫になりまして、先ほどから申し上げておりますように、このときに急激に保険税が高くなり、一般会計からの繰り入れが急激に出てきたのです。あなた方は地方団体に対しまして、この退職者医療制度をつくったために絶対に一文も地方には迷惑はかけません、負担はかけませんと再三再四覚書まで交わして約束しているのです。ところが、とうとう四百六万人出てこなかった。そして最後に厚生省は断念をいたしまして、これは昭和六十年七月二十九日の新聞ですけれども、「「退職医療四百六万人」断念」、厚生省の発表ですね、これは。加入限界が三百万人がめどだ、こう言っているのです。  そこで私は今お話ししたいのは、あなた方が四五%から三八・五%に補助率カットしたのは、四百六万人あるという想定でもってカットしているのですね。ところが、二百六十二万人しかいなかった。それの穴埋めとして何をやったかというと、少しずつ穴埋めして、今度新しい制度を、地方負担させるということとの引きかえみたいにして一千八億か何か今の補正予算に出しましたね。出しました。それで全部済んでおるわけじゃないのですね。私はこの前も今の次官、幸田さんとやり合ったのですけれども、それは一時金なんですね。ところが、この補助金というものの間違いは、毎年出てくるのですよ、毎年。だから私は、これを二百六十二万人あるいはあなた方が断念した三百万人でもいいから、それに合わせて補助率をもう一遍修正しろ、こう言っているのです。間違ったことをあなた方はもう確認しているのですね。確かに間違いましたと言っている。間違ったならば間違ったものに基づいてつくったこの補助率というものを修正するのは当たり前じゃないですか。それを何ぼ言ってもやらぬのだ。最後には、幸田次官は保険局長のとき、いや理屈はないけれどもやれませんと言っているのだ、そしてやりませんと言って頑張っているのです。  私は今ここでこれを論ずるに当たりましては、何としてもひとつ四五%から三八・五%にこれをやった、この補助率削減をせめて三百万人にでも合わせてもいいから修正してもらいたい。そうでなければこれがずっと引き続いて毎年この国保財政圧迫する要因になっていくのです。いかがですか。
  70. 下村健

    ○下村政府委員 国庫負担のあり方ということにつきましては、私どもやはり保険制度全体としての負担の公平というふうなことと、それから国保の財政状況というものを考えて決めるべきではないかというふうに思っております。御指摘のように確かに退職者医療の影響というもの、あるいはその際に補助率を落としたということの影響額を数字で出しますれば、それはいつまでたっても出ることは出るわけでございます。ただ、それではそれを団庫負担を戻すべきかどうかということになりますと、その後の老人保健制度の改革でありますとかいろいろな条件がありますので、そこだけに着目して国庫負担を戻すという議論は私は成り立たない、こんなふうに考えております。  なお退職者の加入状況でございますが、現在、六十二年で三百四十九万人、六十三年度で三百七十六万人、大体毎年三十万人ぐらいずつふえておりまして、六十四年におよそ当初見込みの四百六万人の水準に達するというふうに見ております。
  71. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなたは今数字的にはいつまでも出てくると言うけれども、いつまでも出てくるのはやはり問題なんです。必ず出てくるのですよ。それで、老人健保にやったからいいというのは、この前幸田次官も言っていましたけれども、老人健保と退職者制度は何も関係ないのです。別の話なんです。老人健保に出したから退職者制度はどうでもいいという理屈は成り立ちませんよ。これは全然別の話なんだ。それが本当の話ならなぜ今一千八億出したのですか。あのときは、老人健保に出すから一千八億、残りは出さぬと言っておったんですよ。そう言っていた。それを今出してきたんじゃないですか。これは関係ないのです、老人健保と退職者健保は。とんでもない話だ。  それから今、六十二年になって三百四十九万人になってだんだん四百六万人に近づいてきた、近づいていいというものじゃないと思うのです。私は、健保をやった五十九年ですか六十年ですか、あのときに、今は四百六万人だけれども何年たてばこのくらいふえるという一つの先行の見通しが、推定があったと思うのですよ。それはどうですか。あるでしょう。ないはずはないのですよ。
  72. 下村健

    ○下村政府委員 一千八億の問題についきましては、あるいは当時の言葉が足りませんでしたら改めて補足をさせていただきますが、当時私どもが申しておりましたのは、直ちにその影響額全額を補てんするようなことは国の財政状況もあってなかなかできません、ただし、国保財政全体の状況を見ながら厚生省といたしましては誠意を持って対処させていただきたいというふうに申していたわけで、全然その影響額について国が措置をしないというふうな言い方はしていなかったというふうに思っております。  それから、今の退職者の加入の問題でございますが、あのときの補助率の計算は、五十九年で一応改正前と合わせて収支均衡ということを目標にしてはじいたわけでございます。したがって、あの際に見込み違いというふうなことでいろいろな議論が出た場合にも、数年たてば均衡するはずだというふうなことは私どもとして申し上げていたわけでございます。どの時点で均衡すればいいかという点についてはいろいろな議論があり得るわけでございますが、私どもとしては五十九年時点で補助率改定前と一応の収支が均衡する、それで退職者の加入者数がどんどんふえてくればその分だけ国保が楽になるのではないか、このように申し上げたわけでございます。
  73. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私はあのときずっとこれはもう何回も議論しましたからよく知っているのですよ。一千八億円の残りを出せと言った。しかし、それは老人健保に出してあるから、そっちの方を出したからこっちは出さなくてもいいと言って頑張ったのです。とうとう最後まで頑張った。それで出さなかったのです。ところが、今出してきたのです。  今出してきたのは何で出してきたかというと、地方負担させる、要するにそれをなだめるために今出してきたのでしょう。大体何も関係ないのです。私は率の問題はどこまでいっても、あなた方は関係ないと言うけれども退職者医療制度は国保の一つ財政負担になってくると思いますよ。あれをやったときに何年たてば何ぼふえるかという、やはりあなた方は将来に対する増加の推計が必ずあったと思うのです。ただここへ来て四百六万人にしかふえませんというそんなばかな計画はないのですよ。先の計画があったのです。何年たてばこのぐらいふえていく、そして下からはこれを追っかけていく、こう雁行しておるのです。それが初めからこう一緒であれば、いつも一緒なんですよ。ところが、最初にこれだけの差がついてしまった、四百六万と二百六十何万の。だから、こっちが上がっていくと、こっちが上がっていったって、いつまでもこの差が残っているでしょう、最後まで。それを四百六万人で絶対ふえませんという最初の計画なんて、そんなばかなずさんな計画はあなた方頭のいい人は立てるはずはないのです。必ず何年たったらこうふえていく。だから今も、六十年から四年だか三年なりたてば四百六万人のが何ぼまでふえていくという計画がきちっとあるのですよ。だから、それは今あなたが言ったようにことし三百何ぼだかにふえていった、それが追いついていくことであって、四百六万に追いついたからといって問題が解決できないのですよ。そういう問題じゃない、私はそういうふうに思いますよ。どうですか。その数字が私はあると思うから、それがあれば見せてもらいたいのです。
  74. 下村健

    ○下村政府委員 おっしゃるように退職者医療制度の加入者数はどんどんふえてくる、これは当初から見込んでいたわけでございます。だから、四百六万のところからふえた分だけ楽になるという計算をしていたわけでございます。したがって、四百六万より下のところからスタートを切れば、その分だけ国保は苦しくなった。したがって、その苦しくなった分だけは補てんをするというのが今回の一千億の措置でございます。
  75. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 国保の問題で時間が足りなくて随分はしょってしまって何も質問できなかったのですが、また改めて一般質問か何かでやりたいと思います。  これで終わります。
  76. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて佐藤敬治君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  77. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤祐弘君。
  78. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 税制問題が今国会の一つの焦点になっております。その中で不公平税制の是正ということが国民の強い要望でもありますし、国政の重要課題であるというふうに考えております。  ところが、まさにそのときに相沢前法務委員長の株売買益二億円のいわゆる申告漏れ事件、こういうものが起きました。そして相沢議員の委員長辞任、こうなったわけでありますが、かねがね政治家による株売買による資金づくり、これが国民の批判の対象になっております。今回の事件はその一端があらわれたものとして強い批判を呼んでいるわけであります。  まず最初に、国税庁にお聞きをいたします。  この株売買益の二億円のいわゆる申告漏れ事件、これは単に申告漏れというだけのものなのかどうか。報道によりますと、家族など四人の名義に分散をしておった、四人の名義を使っていたということであります。相沢議員は、税務当局と株の売買回数について解釈の違いがあった、あるいは私は専ら主計畑で税金には詳しくない、こういうことを言われておるわけでありますが、四人の名義に分散していったということは、明らかに課税逃れをこれは図っていたということだと思うのです。そうであるとしますと、単なる申告漏れとして修正申告で済ませるのではなくて、重加算税の対象、普通なら脱税事件として処理するのが相当ではありませんか。その点まずお聞きをいたします。
  79. 日向隆

    ○日向政府委員 御指摘の件について報道がされたことは承知しておりますが、個別にわたる事柄でございまして、私どもの方から言うことは差し控えさせていただきたいと思います。
  80. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 それだけの答弁では全くおかしいと思うのですね。これだけ国民の重大関心を呼んでおります。新聞の投書欄などにも数々批判的な意見が残っておる。私は政治家の倫理の問題といいますか、そういうものとしてお尋ねをしておるわけであります。こういうケースの場合に過少申告加算で済ませる、そういうのはふさわしくないというふうに考えますが、再度その点で御答弁をお願いしたいと思います。
  81. 日向隆

    ○日向政府委員 本件についての加算税の取り扱いについての委員のお尋ねと思いますけれども、私先ほど申し上げましたとおり、個別の事柄につきましては、加算税の取り扱いを含めまして私ども立場から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ一般論として申し上げますれば、例えば家族名義等の借名で株式の取引を行うことは、私どもいろいろな株式売買についての税務調査を行っておりますが、その調査上往々にして見受けるところでありまして、このような場合には、比較的その取引やその取引に基づく所得の帰属につきまして私ども把握がしやすいわけであります。したがいまして、その実態によりましては、委員も御存じと思いますけれども、国税通則法第六十八条に基づく課税要件に該当する事実の隠ぺいまたは仮装に該当しないという判断に——これは一般論でございますけれども、その実態によりましてはそういう判断をするまでに立ち至らない、そういうケースもあるわけであります。  以上でございます。
  82. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 国税通則法にも触れて御答弁があったのですが、私は大変これは疑問に思います。国税通則法六十八条というのは「税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、」ということであります。また所得税法では、二百三十八条ですが、「偽りその他不正の行為」ということがありまして、これは処罰の対象になるというふうになっております。  過少申告加算というのは、普通にいいますと計算違いがあったとかあるいはつけ忘れがあったとか、そういう故意でない場合に行われるものだというふうに思います。今回の場合は明らかにそうではありません。本人だけではなくて名義を四人に分けておった。これは意図的なものじゃありませんか。相沢議員自身も、四人に名義を分けておったけれども、同一人による取引であるということを認めて追徴金に応じておられる。これは事実ですから、これを意図的でないだとか、たまたま計算がミスがあったときと同じような扱いが妥当だと言われるのは、どうにもこれは納得できません。  こういうことでありますと、ますます国民の疑惑が広がる。国税庁は政治家のこういう問題については特に甘いのじゃないかという疑惑さえ生まれかねないと私は思うのです。もう一度明確に、どうして意図的でないと判断をされるのか。客観的な事実は明らかに四人に名義を分けているわけですよ。合算すれば超えるかもしれぬというので、超えないように配慮をするために分けるわけですね。だからこの場合は、申告漏れといいますが、無申告だったわけでしょう。そこまで明らかになっていながら、今の御答弁では納得できません。
  83. 日向隆

    ○日向政府委員 私どもといたしましては、常日ごろから課税上有効な資料、情報の収集に努めておりまして、これら資料と申告書とを突き合わせまして問題がある場合には実地調査などを行いまして適正に処理しているわけでございまして、政治家の場合でもこれの例外ではございません。  今お尋ねの件について申し上げますれば、その具体的な内容について私どもからお答えすることは、御存じのようなこと、守秘義務その他の観点から差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として私が申し上げましたのは、株式の売買益等について重加算税をかけるかどうかということは、まさに国税通則法第六十八条のその課税要件たる事実について隠ぺいないしは仮装があるかどうかというその事実認識の問題であります。  私が申し上げましたのは、家族名義等——一般論でございますが、その取引及びその取引に基づく所得の帰属について比較的容易に把握しやすいようなケースにありましては、その課税要件たる事実について隠ぺいまたは仮装があったという判断にまで立ち至らないということがあるということを申し上げたわけでございます。
  84. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 どうも納得できません。こういう御答弁では国民の疑惑も私はかえって広がるんじゃないかと懸念をします。もともと相沢議員につきましては、税金に詳しくないというようなことを言われたことが非常に反発を受けているわけです。白々しい議員弁明というような見出しの報道もありました。大蔵省で税務署長をやられたり、大蔵次官もやられたり、議員になられた後も、私ちょっと調べたのですが、昭和五十七年に衆議院議長見解に基づいて大蔵委員会に設置されました減税問題に関する特別小委員会、これのメンバーにもなっておられるわけです。また、昨年夏ですが、自民党の軽井沢セミナー第七回が行われました。ここの第三分科会、税制改革における講師のお一人になっておられるというような方でありまして、文字どおりこれは専門家であります。  そういうことから新聞の投書でもさらにこういう踏み込んだ意見までが出されておるのです。「今国会の最大の焦点である税制改革問題で、キャピタルゲインに対する課税が、政治家と株をめぐる黒いうわさが絶えないのにもかかわらず、政府・自民党によって実施できそうにないのは、巨額な政治資金とも連動して、現行優遇措置税制を政治資金づくりに利用したいからではないか。」このようなことが続くならば、ここに持ってきておりますが、国に協力する気持はうせてしまう、そういう厳しい指摘までがあるわけであります。こういうことが行われますのも、私は現在の株などキャピタルゲイン課税が原則非課税になっている、ここに大きな問題があるというふうに考えます。  それで、国税庁にもう一度お尋ねいたしますが、例外課税となっております例の五十回以上かつ二十万株以上の取引、これがことしからは狭められまして、三十回以上かつ十二万株以上というふうになったわけでありますが、その継続取引の課税状況はどうなっているかという大蔵委員会での我が党議員の質問に対しまして、昭和六十年は申告件数が約七十件、取引額約二百六十億円、売買益約五億円という答弁がありました。六十一年分はどうなっておりましょうか。
  85. 日向隆

    ○日向政府委員 委員承知のとおり、株式の売買益については原則非課税とされておりまして、この中で年間五十回以上二十万株以上のいわゆる継続的取引について売買益が発生し、かつ他の所得と合算して納税額がある場合には雑所得等として申告されるということになっております。したがいまして、全国の税務署に提出される膨大な申告書、これは直近の六十一年分で見まして約千六百万件に及びますが、申告面で見て株式の継続取引に係る売買益を申告している者を拾い上げてみますと、その件数は、今お尋ねになりました直近の六十一年分でございますけれども、これは百八十六件でございます。さらにその課税状況についてのお尋ねでありますが、今申し上げましたように株式の売買益に係る所得金額は雑所得等と区分されておりまして、他の所得と総合して申告されているわけでございますので、申告面で見てその中から株式の売買に係る収入金額及び収入金額から経費等を差し引いた売買益のみを取り出して正確な金額を把握することは大変難しいことでございますけれども、先般も申し上げました六十年分につきまして一定の推計をして、あえてその申告面であらわれた数字を概算で申し上げますと、今申し上げた百八十六件に係る収入金額は約九百三十億円、経費等を差し引いた売買益は約六十億円であります。税額等につきましてはもう御案内と思いますが、こういった所得を合算して税額が算出されておりますので、これを申し上げることは難しいということを御理解賜りたいと思います。
  86. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 株の取引高というのは今大変な額になっています。去年は約三百兆、今数字がありました昭和六十年でいいますと九十五兆ですか、それだけの取引がある。六十一年でも百九十三兆ですから約二百兆ですね。その中で課税されているのは、例外課税の対象になっているのはわずか五億円であったり六十億円であったりというように、売買益は非常に大きいのに課税対象はほんのほんのごく一部だというのが現実であります。こういう点で大金持ち優遇の不公平税制の最たるものだということが指摘をされておりますし、また、今回のような事件も起きるということであります。  これは私が言っているだけではありませんで、実はほかでもなく政府税調の小倉武一会長が言っておられます。ちょっと御紹介しますが、これはことし一月十日の朝日新聞のインタビューです。そこで記者の日本の税制は公平であるとお考えかという質問に対して、「あまり公平とは言えないでしょう。不公平が明瞭なのは、株でもうけた所得への課税」これを第一番目に挙げておられる。さらにまた「有価証券売却益の原則非課税という不公平——いままで手つかずだった本当の理由は何ですか。」という質問に対しましては、「大きな声では言えないが、株でかせいで政治資金とかにしている人が困っちゃうんじゃないか、」その後「それが本当かウソかわからんがね」というふうに言葉を注意深く足しておられますが、おっしゃりたいことはよくわかるわけであります。こういう現状であります。  この問題の最後に総理にお聞きをしたいわけですが、この際、不公平税制の是正としても、同時に、国民の疑惑を呼び起こしている不明朗な政治資金づくりの根を断つ、こういう上からもキャピタルゲインへの原則課税を断行すべきだと思いますが、いかがです。
  87. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 キャピタルゲイン、今の恐らく株式売買益でありますが、総じて言えば、譲渡所得に対する課税という問題であろうと思っておりますが、それらをすべて検討していくというのがこのたびの税制改正の進め方の一環として存在しておるわけでございます。
  88. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 国民の要望にこたえる、不公平税制を是正する、そしてまた、今申し上げましたように国民の疑惑を招くようなそういう要素をなくしていくという上からもぜひキャピタルゲイン課税の原則課税、これを断行されるように重ねて求めたいと思っております。  次に、地価高騰に関連する問題でお伺いをしてまいります。  地価の高騰によりまして国民の暮らしにさまざまな影響が出ております。そのもとであります地価高騰そのものにつきましては、昨年の土地特別委員会などで議論をされてきました。総理も繰り返し答弁をされておられます。  問題は、こうして引き起こされました地価高騰によるさまざまな影響が国民生活にあらわれております。それは順次後でお伺いしてまいりますけれども、これからどう国民の利益を守るのか、救済するのか、このことが今問われているんだというふうに思うわけです。総理は施政方針演説で、幸い、東京の都心部では地価上昇の鎮静化傾向が見られるという認識を示されて対策に言及をしておられます。確かに昨年秋ごろから余りにも上がり過ぎたところでブレーキがかかり始めました。昨今の報道によりますと、大きな不動産の物件では三割、四割値下げが行われているというような事態も一部に起きているようであります。同時に、一月十八日に東京都が発表しました地価の動向調査あるいは二十一日に国税庁それから東京国税局、こういうのが発表されました最高路線価ですね。路線価が相続税算定の基準になるわけでありますが、これを見ますと、東京の周辺部とか多摩地域で非常に大幅に上がっているわけです。東京の東部、足立、葛飾、江戸川、荒川といったあたりは割合影響が少なかった地域だったわけですね。ところが、先日の路線価の発表では八〇%とか一〇〇%、一〇〇%というとつまり二倍ですね、そういう大幅な値上がりということになっておるわけです。  それからまた、ことしは固定資産税の評価がえがある。これはもう凍結をすべきだという要求も強く出されております。  総理にお尋ねしたいのですが、そういう諸点を考えますと、国民への影響という点では、都心部を含めて鎮静化とは言えない。むしろさまざまな形であらわれているというふうに私は考えるのですが、どうお考えでしょうか。
  89. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 お触れになりましたような事態から、確かに、余りにも急激であっただけに、鎮静化傾向が見られるもののという前提の上に立って私の所信表明も申し上げたわけでございますが、さまざまな影響、いわゆる悪影響が起きておるということは私も承知しております。
  90. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 具体的にお聞きしていきますが、第一は相続税の問題です。  この補正予算で相続税は二千八百億円の増額補正が行われております。この要因は地価高騰にあるというふうに考えますが、大蔵大臣いかがですか。
  91. 水野勝

    ○水野政府委員 そういう要因が大きいのではないかと思われます。
  92. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 この地価高騰で、相続税問題でいろいろな形で悲喜劇が起こっておると思うのです。相続税を払うために家を手放さなきゃならぬ。また土地を売らなきゃならぬ。あるいはそこで住んでいようと思いますと、三千万とか五千万のローンをしなきゃいかぬ。借金、ローンの負担に苦しむ。いろいろなことが起きております。中には、相続税対策として、にわか養子縁組をしまして、三人も五人もとか、ある新聞報道では七人も、孫まで入れて、ひ孫まで入れたのかな。それから、にわか養子縁組をしまして、今度は逆に相続争いが起きるというようなそういうことも起きておるわけです。  こういう問題で、我が党の村上委員長が代表質問で総理にお尋ねをいたしました。それに対して、抜本改正の中で議論されることを期待しているというふうにお答えになったわけですが、この相続税の減税自体はやるというお考えですか、どうですか。そこをまず聞きます。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在の相続税の課税構造は昭和五十年に決めたものでございますので、その間の時間の経過並びに最近における御指摘のような都会地における地価上昇等々を考えますと、抜本改正におきまして、軽減に向かいまして改正をさせていただきたいとただいま検討いたしております。
  94. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 非常に事態は重要な変化が起きているわけですから、それにふさわしく改正するということは私は必要だというふうに思うのです。  ただ、今の御答弁もそうですが、抜本改正ということで一くくりにして先送りになっていると思う。解決を要する事態は特に昨年来急激に起きているわけです。国民は早急な解決を求めている。現実に間に合わないのじゃないか。それにどうこたえるのかということと、抜本改正とおっしゃいますが、その中身はいまだに定かでないわけです。いろいろ明らかになっていないわけです。ただ、竹下総理が意図しておられる新型の間接税導入、そういうことが大きな内容になるというふうに言われておるわけですが、そういうものと一体のものとしてやるということは、私はこれは違うと思う。やはり国民が今解決を求めている相続税対策、これを、国民が望んでいないといいますか強い反対がある新型間接税とセットでやろうというのは、いわば人質にとるというようなやり方だというふうに思うわけです。そうではなくて、そういうものとは切り離して相続税の減税対策を急ぐべきだ、そう思いますが、大蔵大臣
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもが相続税の抜本改正をお願いしたいと考えておりますのは、主たる理由は、先ほど申し上げましたように、昭和五十年に決めましてそのままになっておりますので、この際抜本的な改正をしたいということでございますが、御指摘のように、その間に土地価格の上昇の問題が都会地においてございまして、それに対応いたしましては、例えば小規模宅地についての軽減とかそういう措置を講じておるわけでございますけれども、それでもここでかなり上昇が急激であって、そのことはそのこととして対応しなければならないとは考えております。  そのことを決して軽視しておるわけではございませんが、立場を変えて申しますと、しかし土地を持っておるということはある意味ではかなりの財産を持っておるということでございます。ローンをしなきゃならぬという、そういうこともございましょうが、ローンを受けられるだけの資産があることでもございます。ですから、現状を私、軽く申しておるわけではないのでございますけれども、国全体の問題あるいは相続税そのものの立場からいいますと、それはやはり軽視はいたしておりませんが、その一部の問題である、こういうふうに考えております。事態を軽視してはおりませんので、それなりの対策を考えてまいらなければならないと思っておりますが、抜本改正の基本的な理由は、昭和五十年以来放置されておるということでございます。
  96. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 軽視はしていないというお話でしたが、やはり私は、現状の深刻な具体的な事態を余り十分受けとめていらっしゃらないのじゃないかと言わざるを得ないのです。  こういう事態まで起きているのですね。それは、自分の家族では相続問題が起きていない、しかもアパート住まい、借家住まいだ。だから、相続税の問題は余り関係ないよと思っている人に降りかかってきているということがあるのです。やはり足立で具体的にあるのです。東京の足立区で、これは大家さんで相続問題が起きたのです。かなり借家を持っておられるわけです。そうしますと、そこに多額の相続税がかかりまして、だから家を売らなきゃならぬということになったのです。それで、ある日突然その代理人の方が借家のたな子さんのところへ見えまして、これをあなた買うか、借地権でも千九百万円ですね、二十九坪で。そういう値段です。借地権を買うか出ていってくれ、こういうことが突然降りかかってくるというような事態まで起きているわけです。極めて深刻ですし、そういう事例がほとんど連日どこかで起きているわけです。だから対策が急がれるということだと思うのです。  大蔵大臣は、土地特などでは遡及の問題とか六カ月間の申告期間の問題などもお触れになっておりましたが、あれはその後発展がありますか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで決して軽視をしておるわけではございませんので、抜本改正を国会でお認めをいただくことになります際に、現実に進行しております都会地、大都市における土地価格の上昇について、新しくなりました相続税の適用をできるだけそのような事態救済のためにいわばさかのぼらせていただくことができないかということは、法案起案に当たりましては考えてまいらなければならないと思っております。
  98. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 その問題でも、事態はきょう起きている、あす起きるというのがあるわけです。だから、遡及するといいましても、そのことが早く決まっていなければ、きょう何とか対応しなければならぬという問題は解決しないわけです。そうでしょう。だから、土地特の答弁では遡及も考えている、申告期間の六カ月についても検討しなくちゃいかぬかわからぬ、しかし、それは法案提出の前までには考えますというふうな御答弁で、それでは全然実態に間に合わないということを私は指摘をしておかなきゃならぬと思うのです。遡及をするあるいは六カ月間を検討すると言われるならば、今その目安を出さなきゃならぬ。そうでなければ現在の事態は救えないわけです。  それと同時に、やはりより根本的には抜本改正なるものの中身の問題、これが大事だと思う。この問題で私は総理の発言に非常に注目をしたわけであります。昨年の土地国会で、土地特別委員会で総理は、日本を見渡すと土地が高騰するところあるいは上がらないところ、逆に下がるところ、こういう日本列島の中に二つの体制の違った国が存在する印象を受けております、こういう答弁をしておられる。やはり私は、そのことはつまり、この対策としては全国一律の基礎控除額の引き上げとかそういう手法だけでは対応できない、こういうことを示しているのじゃないか。二つの違った国があるほどに極端な地価上昇が一方で起きているわけですから、これを全国一律の控除額の引き上げでは逆に悪平等になるという問題も起きてくるわけです。ですから、今求められておる抜本改正というのは、そうではなくて、急騰している都市部、これは別の手法が必要だというように考えるわけです。  具体的に申し上げますと、先ほど大蔵大臣の御答弁で、小規模住宅地には一定の減税措置が行われている。これは従来からやられてきたわけです。それでは今間尺に合わないんだという認識でお尋ねをしているわけですが、この際思い切った措置をとっていただく必要がある。つまり相続人が引き続き居住するという場合は、それが何億円に評価されようとも日常生活は関係ないわけです。日常生活はサラリーマンであったり八百屋さんであったりするわけです、幾らに評価されようとも。そこに住み続ける限りは二百平米以下、よくこれが基準になるわけでありますが、それは時価に左右されない評価をする、定額評価。こういうことをやはり実行しなければ救済ができないんだというふうに思うわけです。  もちろん宅地と一体になりました商店、小規模な業者の方、こういうものは宅地扱いにしていくということも必要だろうと思います。もっともそういうケースの場合も、相続人が将来その土地を転売とか他用途に使われる、そういう場合には当然それに相応する追加課税をするということになるだろうと思いますが、そういうことも含めて、やはり総理の言われる、まるで二つの違った国が存在すると言われるほどの状況に対応していくということが必要だと思いますが、考え方の問題としてその点をお聞きしたいと思います。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうわけにはまいらないと思います。
  100. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 法改正というのは現実にどう正しく即応するかということが重要なのでありまして、これも国民的なある意味で共通の認識といいますか、広がっているというふうに私は思うのです。  一つ具体例を挙げますが、これはほかでもありません、自由民主党の東京都連が昨年、地価高騰、土地問題に関する都連の決議というのをなさいました。それで都知事とか党三役あるいは関係大臣に申し入れをされたわけです。現在大臣席にいらっしゃる粕谷さんが都連の会長ということで申し入れになっておりますが、そこでも相続税及び贈与税の問題で「全国一律の金額による控除方式について根本的に見直す」こと、要望が出されているわけです。これはだれが考えてもそういう二重制といいますか、特別に高騰した地域には特別の対策をとるということの必要性を示したものだと思うわけです。  大蔵大臣は先ほどそういう答弁でありましたけれども、私は総理にお聞きをしたいのです。総理は、先ほどから繰り返し引用しておりますように二つの違った国が存在するような、こういうふうに認識をしておられるわけで、やはりそれにふさわしい相続税改正、これをやることこそが国民の期待にこたえ、利益を守る道になるのではありませんか。総理の御答弁をお願いします。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどああいうお答えを申し上げましたのは、佐藤委員のようなことをやるといたしますと、大都会の土地を買うことは非常に相続税対策としては有利になります。財産はいろんな持ち方がございますわけでございますが、土地をうんと買ってそこへ住んでおれば税金は払わぬでいい、そういうことは私どもの経済政策ではいいことと思いませんが、佐藤委員の経済政策のお立場からどうなるか存じませんが、どうも私は賛成できない。
  102. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 どうも違った理解をしておられるようです。私は、現在の生活者、現に住んでいるその市民生活者をどう相続税の莫大な影響から守るかという観点でお話をしておるわけです。小規模住宅地ですよ、現に二百平米以下。小規模住宅地でもあるいは二百五十平米、三百平米あるかもわかりません。その場合でも二百平米以下に関してはそういう限定を設けて、その市民を守っていくという特別の対策が必要ではないかということを言っておるのであって、不当な土地買い占めまで減税にすべしなんということは言っておりません。そこははっきり認識を改めていただきたいと思う。  いずれにしましても、この問題で私が強く要望しておきたいのは、抜本改革が必要だからということで先送りして新型間接税とセットにするということは正しくない。国民の願いに反するものだ。本来違うわけですから、その問題は。ですから、早急にこの問題の対策を進めるべきであるということを再度強調をしておきたいというふうに思います。  次に、自治大臣にお伺いをします。  これは東京の都市計画税の問題です。地価高騰の影響でこれも非常に負担が大きくなっておるわけです。そのために東京都ではやはり二百平米以下の住宅地に対しては都市計画税を二分の一に軽減する、こういうことを計画をしておられます。ところが、これに対して自治省が難色を示しておるという報道がありました。私は、地方自治体が、非常な地価高騰の中で都民が追い出されるといいますか、そういう事態があちこちで起こっている中でどう定着を図っていくか、都民を救う、負担を軽減するという立場で自主的に行おうとしているわけでありますから、これに自治省として難色を示すとか干渉をするべきではない、そういうふうに考えるのですが、どうでしょう。
  103. 梶山静六

    梶山国務大臣 東京都は特別区における人口定住の確保を図ること等を理由として、不均一な課税の方法により都市計画税について負担の軽減を図るよう、臨時緊急の措置として、地方税法第六条第二項によって東京都条例と都税条例の改正を準備しているというふうに聞いております。  都市計画税は、都市計画事業等の実施により一般的に課税区域内の土地及び家屋の利用価値が向上するという受益関係に着目して課する目的税であり、当該区域内の土地及び家屋に対して一律に課することが適当であると考えられているものであり、今回東京都において準備を進めている不均一な形での軽減をする措置は、文理上の解釈としては違法ではないが、必ずしも適当であるとは言えません。そして一月十一日、一月十二日、鈴木都知事が大臣室に御来訪になられ、主税局長を伴って、その趣旨を説明をされたわけでありますが、ぜひこの趣旨を撤回をするように、私からは申し入れをいたしたところであります。
  104. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 大変ふさわしくない御見解だというふうに思います。都市計画税というのは、本来〇・三%という上限が決まっているだけでありまして、あとは自治体の自主性、判断に任されておるわけです。現在でも、都市計画税を取り得る自治体で取っていないところが千以上もある、あるいはこの一年間の間にも下げられた自治体が幾つかあるわけです。そういう際に自治省としては、もちろんこれは干渉すべきものではありませんから、何も言っていないということです。  東京都の場合に、やはり東京都の自主的な判断で地方税法の第六条、今もおっしゃった地方税法の第六条でありますが、これは「地方団体は、公益上その他の事由に困り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」と明確に規定をされているわけです。ですから、これは違法ではない、違法とは言えないというふうに大臣も答弁をされたわけでありますが、緊急の今の事態の中でこういう条文の見地を生かしてやられようとすることに干渉すべきではないということを、重ねてこれは要望をしておきたいというふうに思います。  次に、お年寄りの問題をお伺いしたいと思います。これも地価高騰との関連です。  東京都内では、地価高騰、地上げが始まりまして以来、各地でいろいろな事態が起きているわけですが、その一つの非常に厳しい問題が、この老人世帯の問題なんです。アパートを取り壊す、建てかえる、借家をなくしてまた新築のマンションをつくるとか、いろいろな事態がありますと、どんどん追い出されるわけですね。ところが、お年寄りの世帯、お年寄り夫婦だけでありますとかお年寄り一人の世帯、この人たちは、皆さんもう御存じかと思いますが、不動産屋へ行きましても相手にされないわけです。お年寄りの一人住まい、あるいは夫婦の場合でもなかなか相手にしてもらえない。恐らく、普通に行ったのでは一軒も借りることができないんですね。一方で、家主からは矢の催促で出ていけと迫られる。しかし、どこの周旋屋へ行ってもあっせんを受けられない、こういう深刻な事態が起きておるわけです。これについて、厚生省はそういう実態についてつかんでおられるでしょうか。
  105. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 全数を把握しておるわけではございませんが、東京都でいろいろな相談の機関がございます。例えて申しますと、東京都の社会福祉総合センターという機関がありますが、そこでいろいろな御相談を受け付けるわけでありますが、その中に土地問題にあるいは住宅問題に関係する相談があるという、その件数もありますし、それからまた都の社会福祉協議会というのがございまして、そこに心配ごと相談所という機関が設置されておりますが、そこへの御相談の中でも土地問題がかなりの数を占めているということで、概要は承知しているつもりでございます。
  106. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 結局、数はわからない、そういう意味での実態はわかっておらぬ、こういうことですか。
  107. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 東京都の今申し上げました件数を申し上げますと、最初に申し上げました社会福祉総合センターにつきましては、年間五千五百八件の中で土地、住宅関係は百三十六件ございます。それから、都の社会福祉協議会の心配ごと相談所の相談につきましては、六十一年で申しまして総数二千八百二十三件のうち二百十一件が土地、住宅問題ということになっています。
  108. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 非常に少ないですね。これは実情が全くつかまれてないというふうにこの問題は言わざるを得ないと思うのですね。今、こういう方たちが追い出されて大変困って、行く当てがない。結局どこへ頼るかというと、身近な自治体であります。東京の場合で言うと、各区役所に行くわけですね。区役所に行って、何とかならぬだろうかという相談をされる。しかし、受け入れる物がないというのが現状なんです。東京二十三区のうち十六の区で何らかの独自施策として老人住宅、こういうものをやっておられます。これはいわゆる福祉の対策としてこれまで進めてこられたものです。それに加えて、地価高騰の影響として立ち退きを迫られているお年寄りがそこに駆け込んできておられる、こういう状態になっておるわけです。  私は、実際にあちこち行って現場も見、担当者のお話もお聞きしたのですが、例えば目黒区で、この目黒区は老人住宅を独自施策としてある程度やっておられるわけです。そこで昨年一つ空き部屋ができたんですね。それを公募したところが二十五人のお年寄りが応募されて、そのうちの十八人までが立ち退きを迫られている方だったというようなことが起きているわけですね。福祉の担当の方としては、何とかしたいんだけれども物がないということで非常に苦労もしておられるという状況であります。  何といっても絶対数が少ないということで、お年寄りの方が非常につらい思いをしておられるわけでありますが、これは区の単独事業だけではもう限界があると思うのです。東京都の方も問い合わせて見ましたところが、ようやく都営住宅の一部に老人住宅、老人世帯用のシルバーピアと名づけてそういうものを設けるということが始まっておりますが、これも入居は六十五年度からなんですね。わずか二十四戸だけ、そういう状態、非常にお寒い状態になっているわけです。こういう問題について、厚生省並びに建設省はどういう対策をお持ちか。何らかの対応を当然しなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  109. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 これは建設大臣からまずお答えいただいた方がいいかと思うのでありますが、まずお年寄りに対する住宅対策といたしましては、建設省を中心といたしまして老人世帯向け公営住宅の供給などの施策がまず講じられております。  そこで、厚生省の関係につきましては、住宅事情などで居宅で生活できないお年寄りにつきましては、生活保護世帯であるとか住民税非課税世帯の場合には、御承知のように養護老人ホームへの入所措置、一定範囲の所得のある場合には軽費老人ホームへのあっせんなど、老人福祉対策といたしましても必要に応じて対応しておるところでございます。
  110. 越智伊平

    ○越智国務大臣 今、厚生大臣からお答えがございましたが、建設省といたしましては老人向けを何とかいたしたい、こう思っておりますけれども、第一番に、お話のございましたように、アパートの建てかえ等によりますものは家主と入居者の話し合いを持って、第一義にそれをやってもらう。もう建てかえ時期が来ておりますし、あるいは周囲の環境、こういうものを考えて建てかえをする、それを全部公営住宅なりあるいは公団住宅に持ってこられましても、これはちょっと処置のしようがない。でございますから、やはり家主と入居者が十分話し合って対策を考えてもらう、その上での話にしていただかないと、全部建設省で賄え、こう言いましても、これは無理である、こういうふうに思います。
  111. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今のようなことで解決するならさほど問題ないのですよ、本当に。そんな話し合いがつかない状態がたくさん起きているから問題なんです。暴力地上げ屋までいるのですよ。隣の部屋でがんがんがんがん音を鳴らしたり、出ていけと。話し合いどころの話じゃないわけですね。そういう認識で言ってもらったのでは本当に困ると私は思う。もう親子三代ずっと住んできていた、ところが、突然ある日追い立てを食って本当に途方に暮れるというような人はいっぱいいるわけです。人間の生活というのは、総理はよくふるさとということをおっしゃいますが、やはり人と人とのつながりというのは非常に大事なわけですね。別に適当な場所があるから行けばいいというものではない。特にお年寄りの場合は、いろんな人とのつき合いの中でその場所で暮らしてこられたわけですね。それが突然追い出される。こういう状態に対してそういう御答弁だけで済まされるというのは、冷たい政治だと言う以外にないと私は思うのです。
  112. 越智伊平

    ○越智国務大臣 先生の今の御質問でありますけれども、そういうことを言われましても、建設省としてはあくまで家主と入居者の話し合いを第一義にしないと、今のお話のようなことでございますと、悪質な家主あるいは暴力団の手助けを国がする、こういう結果になる、私はこう思うのであります。でございますから、本当に困窮した人には処置をいたしますけれども、第一義的にはやはり家主、入居者が御相談をしていただく、こういうことをお願いしたいと思います。
  113. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 話になりませんね、これは。高齢化社会対策とかいろんなことをよくおっしゃる。おっしゃるが、現実はちっともそれに即応していない、こういう問題です。  私が特に今強調しているのは、家主との話し合いの問題、それは一つの問題としてはあるでしょう。そういうふうに解決しなきゃならぬ面もありますよ。しかし、現実にはそれがうまくいかずに追い立てを食っている。それで区役所へ泣きついてきておられる。こういう状態をどうするのか。こういう方たちからいえば、厚生省でも建設省でもどこでもいいわけですよ。どう救ってくれるのだ、政治がどう私たちを救ってくれるのだということなんです。これに対して、それぞれのセクションでどうそれに真剣にこたえていくかということが今問われているんだと思うのですね。  ですから、一般的な対策ではないし、緊急の対策、私は具体的に提案もしたいのですが、例えば目黒区の場合で言いますと、民間が建築するアパートを区が借り上げる。毎月一部屋五万円なりの家賃を区が支払う。入居されるお年寄りには低価格で、大体五千円から一万五千円くらいだそうです、それでお貸しするというやり方をとっておられるわけです。ところが、昨今はその用地取得も容易でない。自治体として建てるにも用地取得から困難を来すというような問題も起きております。  いずれにしましても、一番身近な自治体が対応していくことがこれはお年寄りの要望にもかなうわけですね。そういう意味で自治体への補助、こういうものをぜひ検討すべきだと考えますが、いかがでしょう。
  114. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 民間から住宅を借り上げまして、それを提供するに際し国が補助金を出す、いわば公営住宅扱いにするという御提案かと存じますけれども、公営住宅につきましては、法律でもって買い上げまたは借り上げはすることができないことになっております。また、これを検討する際には、公営住宅につきましては適正な水準を確保するという観点から、規模なり水準あるいは適正な価格の確保というようなことで一応の基準がございまして、民間からこれを直接借り上げる、こういう場合につきましては、これの基準を全うするかどうか、なかなか問題が多うございますので、なかなか困難なことと考えております。
  115. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 やはり実態を知らない答弁ですね。どれだけ自治体の方で努力をされているかというのをひとつ皆さんに知っていただくために御紹介しておきますと、民間から借り上げるという場合も、でき合いの粗末な住宅を借り上げるというのではないのですね。建てかえの要望が出たときに自治体の方でその家主さん、地主さんと話し合いを持たれるわけですよ。これは老人住宅用にしたいと区は思っている、だから協力してくれないかということで、先日見てきましたコーポ聖というのがあるのですが、そこの場合には設計段階から自治体の意図を入れた建設計画になっているわけです。お年寄りばかりの世帯でありますから、いろんな火災事故などが起こらないように、ガスは一切使わずに電気だけですべてのことが賄えるというようになっておるわけですね。しかも、一部屋や二部屋には福祉あるいは区役所の職員の方が住まれて夜の緊急事態にも対応する、そこまで気配りをした計画をやって現に進めておるわけです。今の答弁のように基準に適合するかどうかわからない、そういういいかげんなことでやっているわけではないのですね。そういう実態もよくつかんで対応しなければならぬ。熱意があるのかどうかというところが私は大問題だと思うのです、今の問題での答弁を聞いておりまして。  総理も施政方針演説でも、長寿社会の到来を控えてより豊かな老後の生活、こういうことを強調されました。また、ふるさととおっしゃいますが、東京に住んでいる人にとっては東京がふるさとなんです。しかも、お年寄りは、先ほど申しましたが、生まれ育った場所で近隣のいろんなお年寄りとのつき合いの中で生きていくのが一番生きがいもあるわけです。そういう点で、そういう大きな見地に立ってこの問題も前向きに積極的に緊急の対策として対応をしていただきたい、私はそう思いますが、総理、いかがでしょう。
  116. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 今の問答を聞いておりまして、私自身正確にこの今の仕組みの理解等ができておりません。したがって、政策執行上の措置として、今補助金という言葉がございましたが、そういうものの対象になり得るものか、あるいはまさにより身近い自治体独自の構想の中で検討されていくものかというような印象を持ってお話を承っておったというのが、今日お答えする私の限界でございます。
  117. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 御答弁をお聞きしておりまして、各省の御答弁も含めましてですが、こういう状況についての認識自体が非常に不十分だということを私は痛感しました。やはり、実際にどんな問題が起きているのか、現地にも足を運ばれて実態をつかんで対応をしていただきたいというふうに、本当に深刻なんです。不動産屋へ行って断られたというお年寄りにも会いましたが、私はこれからどこへ行けばいいのですか、こういう状態があるわけですね。だから、これをどうそういう状況に対応していくのかというのを真剣にぜひ検討していただきたい、それぞれのパートでこれは検討していただきたい、そのことを重ねて要望をしたいと思います。  次の問題に参ります。委員長、資料を。  ここ数年、AT車、オートマチック車、これが暴走するという問題ですね。急発進、急加速、こういうことがありまして、それによる事故が多発をしておるわけです。しかもこの暴走事故というのは、すべてのメーカーのすべての車種で発生しているというのが今の大問題だというふうに私は思っております。  まず、実態をお聞かせいただきたいわけですが、運輸省がユーザーやメーカー等からの苦情、報告、そういうものでつかんでおられるAT車の暴走事故、故障等のトラブルの件数、これは年度別にお願いをします。それから急発進、急加速ですね、これも年度別の件数とメーカー別の件数を、車種別まで言いますと大変煩雑になりますから、メーカー別の件数でどうなっておるのでしょうか。最後にもう一つは、そのうち道路運送車両の保安基準に抵触するケースですね、これがどのくらいあるのか。  以上、お答え願います。
  118. 熊代健

    熊代政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、メーカー等その他直接運輸省に報告されたものを合わせた数字で申し上げます。  AT車の急発進、急加速に関する苦情件数でございますが、年度でなくて暦年でございますが、五十九年四十四件、六十年六十一件、六十一年六十六件、六十二年は一月から九月までの件数二百九十三件となっております。  それから、今申し上げた五百数十件につきまして足したものをメーカー別に言いますと、トヨタ百九件、日産百二件、本田九十九件三菱三十件、マツダ二十八件、富士重工十六件、いすず八件、鈴木四件、ダイハツ四件、ヤナセ四十五件、ベンツ十六件、ボルボ一件、BMW一件、フォード一件となっております。  それから、御指摘の保安基準に抵触するものはどうかということでございますが、これにつきましては、このAT車の急発進、急加速現象の原因究明を二つのところでやらせておりまして、一つは社団法人日本自動車工業会、それと当省附属の機関でございます交通安全公害研究所で直接やる、二通りでやっております。したがって、今申し上げた五百三件の中でそういったものがどうあるかということは、その原因究明の実験調査等の解明を待ってからでなければ判定はし得ない。昨年の七月の国会におきまして、その時点で苦情等の件数が百七十八件ございました。当時運輸大臣から、そのうち主体は誤操作によるものが多いわけでございますが、誤操作だけでは説明ができないものが六件ございます、こういう御答弁を申し上げました。  その後、そういう新聞報道等で出たものですから、苦情件数は急激にふえてまいりました。しかし、これらを含めまして、その後のものは全部交通安全公害研究所に資料を渡しまして厳密な調査検討をしてもらっておるところでございまして、先ほど申し上げました百七十八件中、誤操作だけでは説明し切れない、先生の御指摘では保安基準に違反するおそれがあるかどうかという点の疑問を持った件数は、その時点では六件と申し上げたのですが、その後のものについては、今申し上げたようなことで、交通安全公害研究所の方で全データについて調べてもらっているということでございます。
  119. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 経済企画庁、国民生活センターが受理したAT車に係る苦情件数ですね、安全、品質、機能に係るものについて、年度別及びメーカー別の件数をお願いします。
  120. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 佐藤委員にお答え申し上げます。  この種のものは国民生活センターにおいて聴取しておるわけでございますが、今の御質問はオートマチックトランスミッション、すなわちAT車の安全の問題、これの件数だ、こういうことでございます。  苦情の受け付け件数は、先ほどもちょっと御答弁があったかと思いますけれども、五十九年度は二十七件になっております。それから、六十年度は二十九件、六十一年度は三十三件、六十二年度は六十三年一月現在で七十一件でございます。全部細かく申し上げますると、五十九年度は二十七件、六十年度は二十九件、六十一年度は三十三件、六十二年度七十一件。六十二年四月一件、五月四件、六月七件、七月六件、八月十一件、九月十一件、十月八件、十一月九件、十二月九件、六十三年一月に五件、このようになっておるわけでございまして、そのメーカーの問題につきましては政府委員から答えさせたいと思っております。
  121. 海野恒男

    ○海野政府委員 ただいま大臣からお答えいたしました国民生活センターの苦情受け付け件数でございますが、その内訳は、私どものセンターの方ではメーカーごとにとっておりませんので、現在手持ちに持っておりません。
  122. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今報告されました数字でも明らかなように、これは非常にふえているわけです。最初の時期には専ら運転者の操作ミス、誤操作というように言われておったのですが、どうもそれだけでは事態に合わない、正確でないということで、昨年橋本前運輸大臣から、さっきもありましたけれども、運転者の誤操作というだけではどうやっても説明のつきにくい事例があることも事実であるという答弁があったわけです。しかし、それ以降も引き続き問題が起きているわけですね。やはりこれは人命に直接かかわる問題ですから、私は非常に大事なことだというふうに思っておるわけです。  具体的な問題で一つお聞きしたいのですが、おととしになりますが、東京の環七の交差点で大きな事故が起きました。これはAT車でありまして、三人の方が亡くなられて九人の方が重軽傷を負うという事件です。いわゆる種市事件というふうに関係者の間で言われておるわけですが、この問題では、その年の十一月に運転者に業務上過失致死傷害で禁錮二年の判決が下されたわけです。それに対して、関係者から検事総長あてに再審請求の請願書が出されております。これにつきまして政府は、その後別の議員から質問主意書も出たわけですが、答弁書で検討中であるというふうに答えておられるわけですが、このケースでは事故車は既に処分されてしまってなくなっているというふうにも私は聞いておるのですね。これに対してどういう検討をなされておるのか、やはり速やかに結論を出すべきじゃないかと思いますが、どうなっておりましょう。
  123. 熊代健

    熊代政府委員 お尋ねの件につきましては、私、事実関係はあれですが、これは検察、警察の方で調査をしていただいている問題でございますので、運輸省といたしましてはこれに直接関与するという状態でございません。
  124. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 法務省は来ておられませんか。
  125. 奥田敬和

    奥田委員長 佐藤委員に申します。  法務省、質問通告がなかったために見えておられないようですから、法務大臣のお答えを求められますか。
  126. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 いや、いいです、わからなければ。きのうはちゃんと御説明はしてあったと思うのです。質問レクできちっとお話をしてありますから、当然用意されておらなければおかしいのです。  では運輸大臣にお伺いします。  その後も、お配りした資料にもありますが、相当重大な事故も引き続き起きているわけです。これはいろいろな場合があると思いますが、いずれにしましても、AT車というのは普及がだんだん広まっておりますし、人命にかかわる重大問題として施策の抜本的な強化といいますか、そういうことが必要だと思いますが、大臣はいかがでしょう。
  127. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃるように、このAT車というのは一千万台を超しまして大変な数になりました。ただ、先ほど局長がお答えしましたように、過半の事故の原因がどうも操作ミスによるものであるということでありますけれども、同時にまた構造上の問題も明らかにありまして、それは研究し、原因を突きとめた上でそういう事故の起こらぬように生産の過程で処置するような指導をしておりますが、一方、かなり老齢の方とかが運転されたりしまして、あるいはペーパードライバーもいまして、それがいろいろ人の車を借りたり云々ということで事故があったりするようでございますが、ともかく間違った操作をしないように、例えばキーインターロックつきのシフトを装置するとか、あるいは後退するときにギアがそこに入っているぞということを音で示すような、そういう装置を積極的につけるように生産側に指導しております。
  128. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 欠陥車問題ですね。先日ゴルフのリコールの問題もありましたけれども、ヤナセが非常にこれを怠っておったという問題が指摘をされてリコールということになったわけですが、どうも日本のメーカーの場合、積極的に対応しないところがあるというように思っておりますし、運輸省の対策も、どうも後手後手になっているんじゃないかという気が率直にするわけです。  一例で申し上げますと、昨年、日産のサンタナと、それからフォルクスワーゲンのアウディ、これのリコールがありました。これは、実施が十月ですね、三万台のリコールがあったわけですが、この場合にもユーザーからいろいろ提起があるということがないとなかなか動かないというのが現状だと思うのです。自動車ユーザーユニオンが昨年の七月に、これにはこういう欠陥があるという解析をしまして、日本とアメリカの両運輸省に詳しい資料をつけて提起をした。それからようやく三カ月後になって、そのリコールが行われるというようなこの場合はケースです。ほかにもいろんな事例はありますけれども、非常にそういう傾向が濃いというふうに私は思うのです。やはりそうではなくて、積極的に対策を立てていくということが大事だと思うのです。  さきの答弁にあったのですが、自動車工業会とかあるいは交通安全公害研究所でいろいろ検討しているということでありましたが、これにつきましても私は非常に疑問に思っているんです。非常に悠長だといいますか、自工会のAT車問題検討予定というのをいただきましたが、これによりますと、最終結論が出るのが六十四年の十二月ということになっております。六十四年ですよ、来年。今本当にいろいろな検討が必要なのに、そういう悠長なことでは困るのではないかということを一つは申し上げたい。  それからまた、交通安全公害研究所でいろいろやっているということですが、昨年の十二月にも公開試験が行われたわけです。これがまた非常にルールに反しているといいますか、こういうことがありまして、一部では大変失笑を買っているといいますか、そういうことまであったわけです、大臣、御存じかどうかわかりませんが。このごろはいろいろな新しい機械、電子的なものを使うわけですね、昔の自動車のように単純なギアチェンジだけでなくて。そういうことから、かえって予測外の影響が起きるということもあり得るわけです。  それで、配付しました資料の最後から二枚目になりますか、つけておきましたけれども、例えば昨年十二月のテストでは異常電磁波による装置の誤作動をテストするというのがあったわけです。これはインパルス雑音印加試験というふうに呼ばれておるわけですが、その場合にほんの数ボルトか、せいぜい百数十ボルトをかければいいところに、千ボルト、二千ボルトかける。そんなことをする必要は毛頭ないのにそういうことをやっているというようなこともあります。ほかにもいろいろな点があるのですが、そういう現状があるわけです。  そういう点で私は再度大臣にお伺いしたいのですが、今度予算などを見ておりましても、非常にまだこれでは不十分だという気がするのですね、その対策の定員にしましても。そういう点をぜひ強化をするという方向で進めていただかなければならぬ、そう思いますが、いかがでしょう。
  129. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃるとおり、人間の生命にかかわることでございますから、速やかに原因を究明し、それを取り除かなくてはいけないと思いますが、また、ディーラーとか生産者が体面もあって隠すようなことが実際にあるのかないのかつまびらかにいたしませんけれども、そういう傾向がないでもないという気がいたしますし、それは絶対に避けなくてはいけないということで、事故の現象が起こってそれが解決されるまでの時間の短縮には挙げて努力するつもりでございます。
  130. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。  メーカーといいますか、先日はヤナセの場合でしたけれども、こういう実態があるのですね。この機会に御承知いただくといいと思うのですが、ゴルフの場合、アメリカでは八六年の十一月までの間に十三回リコールしておるのです。ところが、その間、日本の場合には三回しかリコールをしてないのですね。ですから、この間のリコールの場合も、あれはエンジンオイルがブローバイガス、吹き抜けガスと言われるわけですが、それにまじって多量にエンジン内に還流して異常な燃焼を起こすというのが原因のリコールなんです。しかし、それ以外にもいろんな欠陥が指摘されているわけですね。ですから、そういう点も十分厳密に対応されるように要請をしておきたいというふうに思います。  配付しました資料に詳しくいろいろ載っておるわけですが、今大臣の答弁でも、メーカー側が必ずしも正確に報告していない、これはあるわけです。現にあるわけです。ですから、いろいろな必要な資料を全部出させて、そして全メーカー、全車種にわたっているという事態ですから、これの対策を速やかにとっていくことが必要だというふうに思います。  この問題で最後に総理にお伺いをします。  中曽根前総理もやはりこの問題につきまして、原因の科学的究明が安全確保と運転者の名誉に関して大事である、徹底的な原因の解明に努めるという答弁を国会でされております。まさにそのとおりで、運転のミスではないのに、車に欠陥があるのに事故を起こして、禁錮二年の判決が出ているというような例もあるわけです。オートマチック車は、乗っておられる方が多いと思うのですが、いつそういう事態になるかもしれぬという危険性を持っているわけですね。そうしますと、その事故だけでなくてその人の名誉にもかかわるということがあるわけで、そういう点で、中曽根前総理もそういう答弁をされたわけでありますが、今のような状況をお聞きになって、竹下総理のお考えを最後にお聞きしたいと思います。
  131. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 いわゆるAT車の急発進、急加速事故、こういうことで、昨年から関係省庁においてその対応を図らせておる、その経過が今の一問一答の中に聞かれたというふうに私も関心を持って伺っておりました。
  132. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 終わります。
  133. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて佐藤祐弘君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして三案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  134. 奥田敬和

    奥田委員長 これより討論に入ります。  三案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。宮下創平君。
  135. 宮下創平

    ○宮下委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度一般会計補正予算(第2号)外二案に対し、賛成の討論を行うものであります。  御承知のとおり、大幅な対外不均衡等を背景に諸外国との間に種々の摩擦が激化する中で、我が国の取り組むべき最重要政策課題は、内需を中心に景気の積極的な拡大を図ることでありました。  このため、政府は、一昨年九月の総合経済対策に引き続き、昨年五月には総額六兆円規模の緊急経済対策を決定し、七月にはその予算措置として公共投資の追加を中心に二兆円を超える大型補正予算を成立させるなど、内需の拡大に向け最大限の努力を払ってまいったところであります。  これら一連の経済対策によって、我が国経済は円高の進展にもかかわらず昨年の中ごろから大きく好転し、景気は個人消費、住宅建設といった国内需要を中心に急速に回復を見せ、今や拡大局面に移行するまでに至っているのであります。  また、円高を背景に産業構造調整が進展する中で雇用情勢の悪化が懸念されたのでありますが、これも政府のきめ細かな雇用対策あるいは適切な景気対策によりまして、完全失業率が一時の高水準を脱して低下に向かうなど、緩やかとはいえ改善を見せているのであります。  私は、このような政府の的確で、しかも機動的な政策対応に敬意を表するとともに、このことは責任政党たる我が自由民主党の適切な政策選択の結果であると確信するものであります。  今回の第二次補正予算は、歳入面において、税収の増加分として一兆八千九百三十億円を追加計上するほか、六十一年度剰余金一兆九千三百四十億円を計上し、一兆三千二百二十億円の公債金を減額するとともに、歳出面においては、昨年発生した災害復旧のための経費、給与改善費、国民健康保険特別交付金、義務的経費の追加等、特に緊要となった事項について追加措置を講じようとするものであります。  本補正予算において一兆三千億円余の公債金を減額した結果、六十二年度の公債依存度は、当初の一九・四%から一八・一%に引き下げられることになるのであります。  なお、公債金の減額を全額特例公債で行うことができ、提出中の六十三年度予算における特例公債一兆八千三百億円の減額とあわせ、財政改革は着実に前進しているのであります。  さらに、前年度剰余金の処理について、財政法の規定どおりその二分の一が国債整理基金特別会計に繰り入れられることになっております。  このように、歳入歳出の両面にわたり財政の健全化を図ろうとする政府の姿勢を高く評価するものであります。  終わりに当たり一言つけ加えますならば、高齢化社会の到来を控え、また、変転きわまりなき国際情勢の中で、我が国経済、なかんずく財政に対する内外の期待はますます大きなものとなっておりますが、こうした中で、税制の抜本的見直し、財政改革は、避けて通れない課題であるということであります。  私ども自由民主党は、政府と一体となってこれらの課題の解決に向け積極果敢に事に当たり、難局を乗り切り、国民の負託にこたえるとの決意を改めてここに表明し、本補正予算に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)
  136. 奥田敬和

    奥田委員長 辻一彦君。
  137. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和六十二年度第二次補正予算案に対し、反対の討論を行うものであります。  以下、本補正予算に反対する具体的理由の主なものを指摘いたしたいと思います。  六十年九月G5合意以降、アメリカの赤字財政とドル安政策の放任、我が国の内需拡大政策の立ちおくれにより急激な円高を招き、日銀収入の低下、日銀納付金を激減させました。二次補正減額後、差し引き五千五百十億円となり、これは六十年度日銀納付金決算額一兆六千三百二十三億円に比べれば、実に一兆八百十三億円の激減であります。言うならば、急激な円高政策により、六十二年度のみでも一兆一千億円の損失を国民に与えたことになります。  これはまさしく経済運営の失敗と言わなくてはなりません。日銀納付金にこのような激減がなかったならば、第二次補正予算の中身はもっと変わったものになっていたでありましょう。この矛盾を糊塗するために本補正予算が編成されていることは明らかであります。  これが反対の第一の理由であります。  第二に、三兆六千億円近くの税収等の増が計上されておりますが、これは国民に還元するのが本筋と言えます。  確かに六十二年度の税制改正によって一兆六千億円余り減税されておりますが、なお不十分だったと言わざるを得ません。もちろん、膨大な国債の累積という財政状況にかんがみれば、国債発行の減額も重要であり、全額を減税すべきだと主張するものではありませんが、我が党などが要求した数千億円の中低所得者を中心とした所得減税の上乗せは十分に可能だったと言えましょう。  政府があえてこれを実施しなかったのは、税制改革を口実に、所得減税などの減税と抱き合わせで新大型間接税による増税を予定しているからにほかなりません。こうした態度を容認することはできないのであります。  第三に、防衛費の対GNP比一%枠の突破が強行されているのであります。  防衛関係費は第一次の補正削減され、今回売上税の歳出計上分が削減されており、さらに為替レートの変動などを考慮すれば、百数十億円の削減は十分に可能であったはずであります。政府がそれをなさなかったのは、一%枠を守ろうとする考えが全くなかった証左であると断ぜざるを得ません。  米ソ核軍縮の合意を踏まえ、率先して軍縮、平和のために貢献するのが我が国の責務であるにもかかわらず、あえて防衛費対GNP比一%枠の突破を図り、軍備増強への道を切り開こうとする政府の姿勢に強く反対いたします。  第四に、本来、公務員給与改善費は当初予算に計上すべきでありますが、それが計上されず、本補正予算によって処理されているのであります。  公務員給与は民間給与に準じて改善されるとの建前があり、政府の責任で人事院勧告は完全実施されなければならないことからすれば、当初予算にある程度その経費を計上するのが当然であります。政府は、公務員給与の引き上げの実施を当初予算に計上することによって内需拡大への姿勢を示すべきときであります。  最後に、現在の財政運営を国民生活向上を目指したものに抜本的に転換させるよう強く要求し、私の討論を終わります。(拍手)
  138. 奥田敬和

    奥田委員長 池田克也君。
  139. 池田克也

    池田(克)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度第二次補正予算三案について、反対の討論を行います。  本補正予算案に反対する第一の理由は、税収見積もりの誤りにより、多額の自然増収を得ながら所得税減税が極めて不十分であったことであります。  我々は、六十二年度において実現した一兆五千四百億円の所得税減税では、持続的な内需拡大を図り、かつ、重税と不公平にあえぐ中堅サラリーマン層の税負担を軽減するには不十分であるとして、二兆円規模の所得税減税の実施をこれまで一貫して要求してまいりました。  しかし、政府・自民党は、我々の主張に耳を傾けず、逆に、マル優制度の廃止など、庶民、弱い者いじめを強行したのであります。しかも、せっかく実現した減税の効果は、社会保険料等の増大などから帳消しになっているのが実情であります。それだけにとどまらず、政府・自民党は、今や、税制の抜本改革と称し、不公平税制の是正を放置したまま、国会での政府統一見解に反し、国民に対する公約違反の大型間接税の導入を画策しようとしているのであります。  本補正予算案で、所得税、法人税などの減税分、売上税削除分を差し引いた上で、なおかつ一兆八千九百三十億円に及ぶ自然増収を計上するのであれば、我々が当初から要求していた二兆円規模の所得税減税の実施は十分に可能であったはずであります。したがって、私はこの際、本年度内において追加の所得税減税の実施を改めて要求するものであります。また、大型間接税の導入の画策に対し、我々は断固として反対するものであります。  さて、その第二の理由は、歳出面で本来六十三年度予算で計上すべきものを、便宜的に前倒しで本補正予算案に計上している点であります。  本補正予算案で、自賠責特会、食管特会への繰り入れ、外航船舶利子補給金などを計上しておりますが、これらは過去の借金の返済であり、本来六十三年度予算案に計上し処理すべきものであります。にもかかわらず、六十二年度において多額の自然増収を得て財政に余裕ができたからといって、本補正予算案に計上し借金を返済しようとする手法は、財政法第二十九条の趣旨からいって補正予算の性格を逸脱するものと言わざるを得ません。一兆円を超える規模で赤字国債を減額しているとはいえ、特別会計への移管や後年度への繰り延べというつじつま合わせの歳出削減策による見かけ倒しの財政再建策を従来どおり繰り返している政府の財政運営の姿勢には、やはり基本的かつ重大な問題があるのであります。  第三には、内需拡大を持続させる施策が盛り込まれていないことであります。  我々は、本年度当初予算の審議に際して、日本経済が直面している最大の課題は、いかにして中長期的かつ持続的な内需型成長を図るか、そして産業構造の転換、日本経済の構造転換をいかにして実現するか、この一点に集中していることを繰り返し繰り返し申し上げてまいりました。  しかし本補正予算案では、何ら内需拡大を持続させるための具体的施策が講ぜられていないばかりか、公共事業の円滑な執行とその効果的配分についての改善が全く行われておりません。これでは、せっかく上向きつつある我が国経済が今後とも持続的に安定成長できるかどうか、極めて不安であります。  第四に、防衛費の減額修正が極めて不十分な点であります。  本補正予算では、廃案となった売上税分、不用分などを差し引いておりますが、防衛関係費については、対GNP比一・〇〇七%と、依然としてGNP比一%枠を突破したままであります。  円高差益分の適正な還元や在日米軍の駐留経費負担における無原則な思いやり予算等の適正化を図ることで、GNP比一%枠内におさめることは十分に可能であります。防衛力増強への歯どめであり、平和政策の一つである防衛費のGNP比一%枠の突破を行ったことは断じて容認できません。改めて一%枠突破分の削減を強く要求するものであります。  以上、反対の主な理由を申し述べまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  140. 奥田敬和

  141. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度補正予算三案について、反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、本予算案が内需拡大及び貿易摩擦の解消などの今日の緊急課題の解決に何らこたえてないからであります。国民の期待を裏切るものと言わざるを得ない多くの問題点を抱えているわけであります。  私たち民社党は、経済大国から生活先進国への大転換を図るために、まずGNPと国民生活の実態との生活水準のギャップを解消し国際協調への道を開くべきだとして、昭和六十二年度においては国民の生活向上に直結する大型補正予算を編成するように要求してまいりました。  そして、昨年の七月、臨時国会で成立した第一次補正予算は、一応五兆円規模の公共事業等評価をできるものの、内容については決して満足するものではありませんでした。  社会資本整備についても、国民生活の質的向上を第一に考慮すべきであるのに、すべてばらまきあるいはまた総花的と言われてもやむを得ない部分があるわけであります。まして、高騰する用地取得については、せっかくの投資が消えてしまっては何にもなりません。また、その手法も相変わらず固定的、硬直的なものから一歩も進んでおりません。  このたびの第二次補正の編成に当たっては、公共事業の配分を新しい観点から大幅に手直しすることが先決であったと思いますが、残念ながら本予算案においてはしかるべき措置が全く織り込まれておりません。  内需拡大を進めるためには、大幅な減税を断行することが今や不可欠であります。今までにも約一兆五千四百億円の所得税の減税が実施されてまいりましたが、これでは無論不十分であります。しかも、我々が強く反対したにもかかわらず、国民への増税の道を開くマル優制度の廃止が強行され、国民は減税で一息ついたと思ったやさきに、その減税は相殺されることになりました。  その上、政府・自民党は、この国会において新型間接税の導入を柱とする税制改革案を提出しようとしておりますが、改めて税制改革に対する我が党の方針を述べておきたいと存じます。  今、全国で四千五百万人のサラリーマンが、日夜、国のため、会社のため、そして家族のため奮闘、努力しております。その中堅所得層を中心に現行税制に対する不公平感及び重税感が一層高まっているわけであります。今中堅所得層ほど、マル優もなく、住宅費、教育費に追われ、働きに出た主婦にも課税され、扶養控除すらカットされている状態であります。今こそ中堅所得層に大幅な所得税減税を進めることが最優先課題であります。  また、欧米諸国と比較しても高い日本の法人税を軽減することによって、企業の活力を高め、内需主導の経済運営を実践することが急務でありましょう。  さらには、政府の無策により土地の高騰を招き、その結果、固定資産税や相続税に苦しむ人々をふやし、果ては国民一人一人の持ち家の夢を打ち砕くことになりました。一刻も早く、住宅減税の拡充、相続税、固定資産税の減税が緊急の課題であると思います。  ただいま述べましたように、税制改革の基本は不公平税制の是正及び大幅減税であり、増税ではなかったはずであります。ましてや、新型の間接税導入は絶対に容認できるものではありません。  反対する第二の理由は、行政改革を実行しようとする姿勢が相変わらず見られません。今国民は、簡潔でわかりやすい、そして親切な行政府を望んでいるわけでありますが、この予算では、経費の節減はおろか、その安易な体質にメスが入っておりません。  反対する第三の理由は、今までの二点を踏まえての財政再建が基本であるべきなのに、そのような計画性が見られません。国の財政は場当たり的に、あるいはまた現象的な面だけを追っているにすぎないようであります。一向に解決が進んでおりません。  民間の会社では、五年なり十年の中長期的な経営計画を掲げ、実行に取り組んでいるわけであります。それを最高機関である国政が、当面税収が好調だからといって少々の国債費を削減したりするだけで、確たる最終的な計画を示すに至っておりません。今ここで竹下内閣に対し、今までの赤字国債脱却一本やりではない、もっと総合的な指標を掲げ、新たな財政再建計画を策定することを提唱いたします。  今回の予算案は、昭和六十三年度予算案に先駆けて審議されたものであり、竹下内閣が初めて取り組む予算となりました。しかし、この予算案は、竹下総理が声高らかに主張している「活力と調和」というスローガンに全く反し、国内外の期待に背くものとなっておりますことを明らかに申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
  142. 奥田敬和

  143. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和六十二年度第二次補正予算三案に対する反対討論を行います。  今回の補正予算に何よりも求められたものは、INF全廃合意を初め、激動する内外情勢と国民の切実な要求にこたえ、大軍拡、大増税の当初予算に抜本的なメスを入れ、平和と暮らしに真に奉仕する予算への転換を図ることでありました。ところが、政府が提出した本補正予算案は、このような国民の期待に何一つこたえようとしなかったのであります。  以下、具体的に反対理由を述べます。  第一の理由は、核兵器廃絶という人類と被爆国民の悲願に背を向け、当初予算で三兆五千億円に達し、NATO基準では既に世界第三位になっている軍事費に何ら手をつけないばかりか、GNP一%を突破する歯どめなき大軍拡を強行していることであります。  また、当初予算から五兆三千億円も増額され二十一兆円にも上るドルの買い支え資金調達のための外国為替証券の大量発行は、財政赤字の上に成り立っているレーガン政権の大軍拡を日本政府が支えていることにほかなりません。  第二の理由は、国民の総反撃を受けて廃案となった売上税の削減を年度末ぎりぎりまで棚上げし、増税強行の執念をあらわにしていることであります。  国民が今税制に求めていることは、公約違反の大増税計画を撤回し、増税なしの三兆円減税を実現することであります。マル優廃止抱き合わせの今年度の減税は、大金持ちには大変な利益を与えましたが、中低所得者にはほとんど恩恵をもたらしませんでした。政府は、減税どころか、性懲りもなく公約違反の大型間接税の導入をあくまで企てていることは断じて容認できません。  第三の理由は、国民生活破壊予算というべき今年度予算をさらに突き進めていることであります。  中曽根内閣以来、老人医療の有料化、健保、年金の大改悪など社会保障、社会福祉は最も集中的な攻撃を受け、国民生活を守るべき制度が国民収奪ともいうべき制度に変質させられています。生活保護受給者はこの三年間で二十万人も減らされています。本補正予算案においても、支給制限の強化による生活保護費九十五億円の減額を初め、児童扶養手当、私立学校助成費など福祉、教育に軍拡優先予算の犠牲が押しつけられているのであります。  第四の理由は、大企業に対する優遇措置が徹頭徹尾貫かれていることであります。  大企業のための民活事業への五百八十億円もの無利子貸付金はほとんど支出されていないにもかかわらず、減額修正は行わず、大企業へは優遇の上に優遇を重ねているのであります。  日本共産党は、対米従属、軍拡優先、財界奉仕の政治を根本的に改め、核兵器廃絶、軍縮への歴史的転換、公約違反の大型間接税を阻止し、三兆円の所得減税、国民生活防衛のために全力を挙げて奮闘する決意を表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  144. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  145. 奥田敬和

    奥田委員長 これより採決に入ります。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して採決いたします。  右三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  146. 奥田敬和

    奥田委員長 起立多数。よって、三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  148. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十八分散会