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1988-02-05 第112回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月五日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 浜田 幸一君    理事 奥田 敬和君 理事 近藤 元次君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    甘利  明君       池田 行彦君    稲村 利幸君      上村千一郎君    小此木彦三郎君       海部 俊樹君    片岡 武司君       金子 一義君    木村 義雄君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 静雄君    佐藤 信二君       志賀  節君    鈴木 宗男君       砂田 重民君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    林  義郎君      細田 吉藏君    三ツ林弥太郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    佐藤 敬治君       辻  一彦君    大久保直彦君       坂口  力君    水谷  弘君       宮地 正介君    森田 景一君       森本 晃司君    吉井 光照君       春日 一幸君    田中 慶秋君       永末 英一君    楢崎弥之助君       安藤  巖君    中島 武敏君       正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁長官官房         水資源部長   大河原 満君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   甕   滋君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         運輸大臣官房審         議官      金田 好生君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         運輸省航空局長 林  淳司君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省河川局長 萩原 兼脩君         建設省道路局長 三谷  浩君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     鈴木 宗男君   佐藤 文生君     木村 義雄君   砂田 重民君     甘利  明君   原田  憲君     金子 一義君   藤波 孝生君     佐藤 静雄君   大久保直彦君     森田 景一君   坂口  力君     森本 晃司君   水谷  弘君     吉井 光照君   田中 慶秋君     永末 英一君   楢崎弥之助君     春日 一幸君   辻  第一君     安藤  巖君   藤原ひろ子君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     砂田 重民君   金子 一義君     原田  憲君   木村 義雄君     佐藤 文生君   佐藤 静雄君     片岡 武司君  鈴木 宗男君     小此木彦三郎君   森田 景一君     大久保直彦君   森本 晃司君     坂口  力君   古井 光照君     水谷  弘君   春日 一幸君     楢崎弥之助君   永末 英一君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     藤波 孝生君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 浜田幸一

    浜田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  この際、瓦防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。瓦防衛庁長官
  3. 瓦力

    瓦国務大臣 提供施設整備については、従来より米側の希望を聴取するとともに、安保条約目的達成との関係、我が方の財政負担との関係社会経済的影響等総合的勘案の上、個々の施設ごとに我が国の自主的判断により措置してまいりましたが、御指摘の点も踏まえて、さらに国民理解を得られるよう慎重に検討してまいりたいと考えます。
  4. 浜田幸一

  5. 大久保直彦

    大久保委員 ただいま防衛庁長官から御答弁をいただきましたけれども、昨日、竹下総理は、思いやり予算については無原則ではない、こういうお考えを示されました。その観点からいたしますと、ただいまの御答弁は極めて不十分であり、私はこれを了とするわけにはまいりません。  ただ、今税制の問題に早く入りたいと思いますので、ただいまの御答弁については留保させていただいて次に進みたい、このように思いますが、よろしいでしょうか。
  6. 浜田幸一

    浜田委員長 了解します。
  7. 大久保直彦

    大久保委員 総理、今日本国民は、日本税制のあり方につきましては、言われるところの間接税導入はないものと信じております。それは、国会決議があり、また、くしくもちょうど三年前の本日、この予算委員会でのいわゆる総理並びに竹下大蔵大臣統一見解があり、またそれをもとにいたしました選挙公約がある。明らかに間接税導入され得ないものだと確信をしております。  しかし、どうも世上竹下内閣になりましてからはそれらの約束とは別の方向で、この大型間接税導入されるような気配が生まれ始めてきた。国民は大変深いいら立ちと不信感を今抱いております。この国会決議並びに政府統一見解並びに選挙公約につきましては、非常に問題がふくそういたしておりますので、私は私なりにその今までの我々の論議、また政府の今とられようとしておる立場はこういうことではないかなという、イソップではありませんけれども寓話考えてみました。それはこんなことでございます。  今東京へ行きますといってバスの乗客を募集した。みんな東京へ行くことを信じてそのバスに乗りました。ところが、どこかの高速道路の途中で、ある方が、これは東京には行かない、どうやら群馬に向かっているらしい、こういう話が入りましたものですから、慌てて運転手さんに確認をいたしましたところ、群馬には参りません、うそはつきません、この顔がうそつく顔に見えますかというところまでおっしゃる。そして、自動車は動き出しましたけれども、どうやら気がついたら、また群馬の入り口にいる。幸いこのバスは故障いたしまして、運転手さんもかわられました。今度の新しい運転手さんは、確かに群馬には行こうとされておりません。それでは、初めの約束どおり東京へ向かっているかというと、どうもそれは違う。島根県の方に向かっているらしい。その会社の重役会議も今島根バイパスの研究を盛んに論議していらっしゃる。こういうことではないかと思います。  私は、総理のふるさとである島根県がだめだと言っているのではありません。島根へ行きたければ行きたいで、もう一回皆さんに一言相談があっていいのじゃないでしょうか。東京へ行くという看板を掲げたまま島根へ連れていかれるのは、国民は納得がいかないのです。これはもう大問題だと思いますが、まず総理の所見を伺いたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今の寓話でございますが、例えば、東京へ行こうというのは税制を改革しよう、こういうことであるといたしますならば、群馬といえば大変近いところでありますが、島根といえば、バスで行けば相当な時間がかかりますので、したがって、税制改革そのものにそれだけの距離があるというふうなお考えであったとしたら、必ずしも島根というのはあるいは適切な寓話対象ではないかもしれません。  がしかし、申し上げたいのは、その前に間接税という言葉がございましたので、そもそも税制改革論議というのはなぜ起こるようになったか。それは、個人個人が肌で感ずる水平的公平とか垂直的公平とかいう問題もありますが、総じて不公平感というところから、昭和二十五年のシャウプ勧告以来今日までいろいろなゆがみ、ひずみができてきた中で、不公平感をなくすにはどうしたらいいか、こういうことから税制改革論議が進んできたではないか。そうしますと、税は所得消費資産かに着目して課するものである。で、資産課税を仮にこれは所得消費税制を補完するものであるという位置づけをいたしますならば、所得消費とかいうことになる。  そうすると、今日いわゆる不公平感を感じておる最たるものは、クロヨンとかトーゴーサンとか言われる対象給与所得である。給与所得というのは、まさに物をつくり、あるいはサービスを提供し、それの対価として得た報酬が課税対象となっておる。なぜそれを消費する段階で、かつてのように所得水準が低く、上下格差が大変あるときなら別として、消費段階へ着目したものが余りにもその比率において差があるから、だから結果として勤労者給与所得に不平が起こるだろう、こういうのがやはり私は不公平の原点ではないかということになりますと、消費に着目した税制というものを考えられてくるのは必然的な流れの延長線上にあることではなかろうか。  されば、消費税ということになると、やはり間接税だそしてまた議長さんのごあっせんの際も、直間比率についてよく相談しなさいよと言われておるとすれば、やはり間接税あるいは直間比率、そうしたものが不公正の前提として存在しておるということをやはり否定するわけははいかないではなかろうか、このように考えております。
  9. 大久保直彦

    大久保委員 今総理見解のすべてではないと存じますが、述べられたことについては後ほどゆっくり議論をいたしたいと存じますが、大蔵大臣お尋ねいたしますけれども間接税がいいか悪いかというような議論の前に、今現行税制でも手直しをしなければならない問題が多々あるのではないかと存じます。  一つは、今のサラリーマン減税、かつてサラリーマン経費云々というような議論も長い間してまいりましたけれども、やはり今の累進率が非常に強過ぎるというところから、これは所得税で見るのでしょうか、またはサラリーマン給与控除で見ますか、いずれにしても、サラリーマン減税、また働く婦人課税最低限控除額を、今現行九十万円でありますけれども、私どもはそれは百二十万まで底上げをすべきであるという主張をいたしております。  またさらには、不公平税制の中で象徴的なキャピタルゲイン、これも長い間論議をいたしまして、今導入するかどうかという、もう決断の時期に来ているのではないか。  また、近来の土地高価によりまして持ち上がってまいりましたいわゆる相続税また固定資産税等等の問題については、今我々が早急にこれに取り組み、またそれを実現をしなければならないかと存じますが、余り時間がありませんので、その基本的なお考えだけ、大蔵大臣の御見解を承りたいと存じます。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねのように、ただいまの税制に、改めたいと考えておりますいわば不公平感を呼ぶような部分が幾つかございます。御指摘のとおりでございます。  それから、そうでありませんでも、所得税そのものは殊に中堅の勤労者にとっては累進構造をやはり直すとか、あるいは配偶者特別控除でありますとか、パートタイムの問題もその一つと申し上げてよろしいと思いますが、そういったような問題。それからまた、これは逆に事業所得の方は対しまして、いわゆるみなし法人の問題であるとか、そういったような両方からその不公平感のもとになっておりますような要素を改めたい部分がございます。キャピタルゲインにつきましても、これをいかにキャピタルゲインキャピタルロスを公平にまんべんなくとらえて行政に持っていけるかという問題がございます。相続税につきましても、おっしゃいますように、昭和五十年に今の構造を決めたばかりでございますから、根本的に直す必要がある。  それらの問題がございますことは御指摘のとおりでございまして、私どもはこの際、先ほど総理の言われました所得消費資産という全体の抜本的改革の中でこういう問題もとらえて、改めるべきものは改めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 大久保直彦

    大久保委員 総理お尋ねをいたしますが、総理も今の大蔵大臣の御見解につきましては全く同趣旨でございますか。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大蔵大臣がお答えしたとおりに私も認識しております。
  13. 大久保直彦

    大久保委員 そこで、間接税論議に入りたいと存じますが、論議に入ろうと思いましたところ、これはけさ方の新聞の切り抜きでございますが、何やら、自民党政策の総責任者でいらっしゃいます渡辺政調会長は、昨日、自民党の会合におきまして、一般消費税間接税の中では最適であるのだ、国会決議を見直そう、こういう御発言をされました。  私は、自民党が党内で何をおっしゃるのかは自由ですけれども、しかし国会決議を見直そうという御発言は、これは極めて重大な発言です。国会決議は、一々総理に申し上げるまでもなく、この院におります全会派が一致してつくり上げるものでありまして、自民党だけのものではありません。  まず、そこで伺いますが、この国会決議、これをつくったとき竹下総理は当時大蔵大臣でいらっしゃり、この文案を作成した主役でもあったと私は記憶をいたしております。私も当時、この国会決議をつくるための公明党の国対委員長でございました。この国会決議をまず竹下内閣としては守るのか守らないのか、そこからお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 五十四年十二月、おっしゃるとおり私は大平内閣大蔵大臣でありました。それで、主役ではなく、国権最高機関たる国会議運において各党から代表者がお出かけになっておつくりになるときのオブザーバーであったというように私は考えております。が、それはそれといたしまして、国会決議というものは、それは確かに古くからずっとやってみますと変わってきた問題もございます。例えばあの国会決議にも、その仕組み、構造等について国民理解を得るに至らなかったという表現がございます。仮に、もし国民にその仕組み、構造等において理解を得られるような環境になったとすれば、国会自体の問題としてお考えあることはあり得るでありましょうが、私は今政府でございますので、私の方からとやかく、国会決議についての有権解釈議運でもございましょうし、申し上げる立場にありませんが、今あの国会決議が存在しておる限りにおいてはその制約を私自身は受けるものである、このように感じております。
  15. 大久保直彦

    大久保委員 総理はいみじくもおっしゃいましたように、国権最高機関であるこの立法府の決議は守るべきものであるということになりますと、この自民党政策の総責任者であります渡辺政調会長の御発言は、これは私語ということになりますか。どういう位置づけになりますか。
  16. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 行政府立場を峻厳に守りながらお答えをいたすといたしますならば、有権解釈をする最高の場所は議院運営委員会であろうと思います。国会そのものであろうと思います。が、その中で仮にある人が、既にその時代との変化が生じておって、この辺は相談すべきものだという御発言があったとすれば、これは言論の自由の中にあり得ることであって、そこまで行政府が踏み込んでお答えするものではなかろうというふうに考えます。
  17. 大久保直彦

    大久保委員 ということは、この国権最高機関の意思を総理は尊重されるということでございますね。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 行政府として、国会で指名を受けた、言ってみれば主人の言っておることに対して、当然、尊重するのは当然のことであると思います。
  19. 大久保直彦

    大久保委員 それでは、その国会決議の中には、一般消費税導入しない、こういうことが明確にうたわれておるわけでありますから、今の竹下内閣とすればその国会決議に反するようなことは考えない、こういうことで理解してよろしいですね。
  20. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ただ、あの国会決議そのものは、厳密に申しますと、財政再建に対する国会決議で、その財政再建に当たってはいわゆる一般消費税仮称)の手法によらずということが書いてありますので、その決議が生きておる限りにおいて当然、私ども主人の言うことに従うというのは当然だと思います。
  21. 大久保直彦

    大久保委員 大蔵大臣大蔵大臣は今のこの一般消費税国会決議を見直してもやるべきであるという自民党政調会長の御発言についてどういう御見識を持っておられますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま総理の申されたことに尽きておりますが、行政府といたしまして国会昭和五十四年十二月二十一日の決議を尊重することはもとよりでございます。渡辺政調会長がどういうことを言われましたか定かでございませんが、もし言われたとすれば、一人の議員として、国会を構成する一人の議員としての意見を言われたのであろうかとそんたくをいたしますが、直接承っておりません。
  23. 大久保直彦

    大久保委員 今総理大蔵大臣も明確に一般消費税導入せず、今総理は、確かに括弧がついて仮称となっておりますが、後でまたこれは申し上げますけれども、そういうお立場におられながら、何やら政府・与党の中ではこの間接税導入のためにいろいろな画策が行われておる、そういうことに対して国民は非常に何かいら立ちを今感じておるということでございます。  大変恐縮でございますが、三年前のきょうにちょっと戻っていただきまして、今宮澤大蔵大臣が座っていらっしゃるところに竹下総理はおられ、竹下総理のところには中曽根総理大臣がおられました。そして中曽根総理の御答弁竹下当時大蔵大臣の御答弁はここで食い違ったわけですね。そして、その食い違いを私どもの矢野委員が、現在の委員長でございますが、この席でただしたときにこの統一見解というものが提示された、そういう経緯であろうかと思いますが、その私の記憶に間違いないでしょうか。
  24. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 食い違いと申しますか、確かにニュアンスの差がございました。それに対して、俗に言うストップをいたしまして、そこで私どもの方で整理整とんをしましたものを時の大蔵大臣である、中曽根内閣の大蔵大臣である私が公明党の控室へ参りまして、あなたもいらっしゃったと記憶しておりますが、大体これでどうだ、こういうことを話したことは事実でございます。
  25. 大久保直彦

    大久保委員 私はおりませんでしたけれども、その結果示された統一見解というものは、もう既に大変有名になっております。  「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でやることはしない」云々といういわゆる見解でございますが、ここでお尋ねしたいのは、総理と当時竹下大蔵大臣考え方が違っておったためにこの統一見解が出てきたんですが、この見解は中曽根総理の御意見どおりになったのか、竹下大蔵大臣のお考えどおりにまとまったのか、その辺はどうなんでしょうか。
  26. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは中曽根総理がお答えになった言葉を整理整とんしてお示ししたものでございますから、二人の考えが違っておったわけではございませんが、ニュアンスの相違は確かにあったと自分でも記憶しております。したがって、中曽根総理のお答えになった「綸言汗の如し」、こういうことで整理整とんしたものであるというふうに理解をしております。
  27. 大久保直彦

    大久保委員 この見解について当時大蔵大臣は全く不満はなく、文字どおり統一された内閣の見解としてお認めになったわけですね。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あえて疑問を提示いたしますならば、包括的、網羅的、普遍的という言葉を整理してみますと、本当は全部例外なく、こういうことでございますので、一つで済むなというような気もございましたけれども、しかしまさに「綸言汗の如し」、そういうことは本院のまさに三年前のきょう申し上げたことは事実でございますから、したがってそれを私がそのとおりだと思ったことは事実でございます。
  29. 大久保直彦

    大久保委員 多段階というのは、仕入れから製造から、いわゆる卸、仲卸、小売、消費、このすべての段階から税金を取るようなことはしないという意味ですね。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そのときも私記憶しておりますが、要するに五類型でございましたか、それの税に対しての議論から始まったわけでございます。したがってEC型付加価値税というのは原則多段階である、しかしその中にはいろいろな、それぞれの国々によって相違はございますという答弁も中曽根総理がされまして、そうしてその後ずっと脈絡がございまして、私の念頭にあるものはと言って、いわゆる一般消費税仮称)と取引高税というようなものが私の言っている多段階でございますというふうに、ずっとつながっていっておるというふうに思っております。
  31. 大久保直彦

    大久保委員 多段階と、もう一つは包括的、網羅的、普遍的というのは、今総理がおっしゃったように、例外なく、いわゆる流れとすればすべての段階から税金を取る、そして範囲は例外なく、いわゆる網羅的に取る、こういうことはしないというのがこの統一見解の趣旨だと思います。  総理お尋ねしますが、あれから三年たちましたけれども、このお考えは変わったのですか、変わっていないのですか。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あのときの中曽根内閣としては、これはとりませんとおっしゃったことが厳然とあって、私もあのとき議論しながら思いました。多段階でかつ例外のないということになりますと、一つ例外をつくれば、それでは言ってみればこの読み方が読めるのかな、そういう議論をするのは余り適切でないなと思いました、率直に言って。したがって、それに基づきまして、さあ、どうしようかというので考えて提案したのが売上税であります。  ところが、これは各方面のいろいろな議論があって、国会の中では審議されませんでしたが、外ではいっぱい審議されまして、そうして結果として廃案になった。だから、今度はそういう冷厳なる事実を踏まえて、では国民のコンセンサスは那辺にあるか、言いかえるならば、廃案にならぬようなものを今度はつくらなければいかぬということで、今一生懸命でその脈絡の中で私どもが各方面の意見を聞いておるという段階であろうというふうに思います。
  33. 大久保直彦

    大久保委員 ということは、まだこの当時の中曽根内閣の統一見解は、竹下総理としては変わっていない、全く同じような認識を今日まで持っておられる、こういうことでございますか。
  34. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、あれをぎりぎり読みますと、一つ例外があればいいのですかという開き直りなどをしちゃいかぬという気がございましたので、それ以上突っ込んだ議論はしない方がいいなと思いながら、その脈絡というものは今日まで私の頭の中にはちゃんと存在しておるということでございます。
  35. 大久保直彦

    大久保委員 そうすると、三年前に述べられましたこの政府統一見解としてのいわゆる間接税のあり方については、三年前のこの政府見解は生きておる、このように今私はお伺いをいたしました。  大蔵大臣に伺いますが、この日本の経済全般について極めて優秀であると言われております大蔵大臣宮澤喜一先生として、外国の諸般の事情等も比較検討しながら、我が国においてもし将来間接税というものが検討されるとするならば、どういう種類のものがよろしいという政治信条を持っておられるでしょうか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろないきさつあるいは条件を離れましてのお尋ねでございましたら、我が国のように所得格差が少なく、かつ、所得水準の高い国におきましては、国民がなるべく広く、薄く、複雑でない、わかりやすいような形での消費税が好ましいのではないかと考えております。
  37. 大久保直彦

    大久保委員 広く、薄く、わかりやすい——さっき総理もおっしゃいましたけれども、やれEC型付加価値税、また一般消費税、また売上税等、多段階から取るものがありますですね。そういうやはり多段階形式が望ましい、また、多段階形式はいかぬというお考えでしょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 重ねて先ほど申し上げましたような自由な立場考えさしていただくといたしますれば、今の広く、薄く、簡単でというようなことであればいろいろな方法があり得るであろうと思っております。
  39. 大久保直彦

    大久保委員 一つの形にとらわれないという御趣旨かと存じますが、検討の対象はたくさんあるというようなことかと存じます。  それでは伺いますが、この三年前のいわゆる中曽根内閣の時代に示されましたこの間接税に対する統一見解なるものは、今の大蔵大臣はどのような評価をされますか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かねて総理が言われておりますところでございますが、昨年の二月に御提案をいたしましたものは、この中曽根その当時の総理の言われました考えに沿って検討を重ねて御提案をいたしたわけでございますが、御承知のような結果になりました。そのような経緯を踏まえまして、それならばどういう案であれば国会の御承認を得られるだろうか、国民の納得を得ることができるだろうかということをこの過去の経緯を踏まえながら考えていかなければならない、こう思っておるところでございます。
  41. 大久保直彦

    大久保委員 私のお尋ねしているのは、三年前の本日議論されて明日の朝この見解は提出されました、この見解について現大蔵大臣はどういう評価をといいますか、御認識でいらっしゃいますか。これをきちっと守る立場に私どもはいらっしゃると思いますけれども
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このことは現実に起こりました一つの歴史と申しますか、事実でございますから、そういう経緯につきましては私ども十分注意を払って考えなければならないと思っております。
  43. 大久保直彦

    大久保委員 この見解が出た後の経緯、プロセスを聞いているのではないのです。この見解そのものを宮澤大蔵大臣も継承される立場にある、こういうふうにお尋ねしておりますけれども、それについてはいかがですか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このような見解を中曽根総理大臣が述べられたということ、これは重く考えるべきことでありますし、また、それに従いまして御提案をしたと私どもが信じておりますものが廃案となったということも事実でございますから、私は、こういう見解を決して軽んじるつもりはございませんけれども、そのような経緯に立って、どのような案であれば国会に御承認をいただけるか、国民の納得が得られるかということを考えてみたい、こう思っておるところでございます。
  45. 大久保直彦

    大久保委員 総理大臣もまた大蔵大臣も三年前のこの内閣の統一見解を重く見ておるという御認識でいらっしゃるのです。これに深い思い入れをしていらっしゃるように答弁を今されておりながら、一方では何か新しい間接税を模索しておるという気持ちが言葉の端々にうかがえるのは私のひがみ根性ではないと思いますけれども。  私は、この政府統一見解が生きております間は、また、この統一見解をもとにして国民に信を問い、選挙をやって、大型間接税導入をしないという約束自民党は大勝利をされたわけでありますから、その大勝利された三百四議席という議席に乗って中曽根内閣があり現在の竹下内閣があるということになりますと、この政府統一見解は尊重される、重く見ておられる、しかし、その後の政府としてのこの見解に基づいて国民に信を問うたいわゆる解散・総選挙で、大型間接税導入しないという前提ででき上がっているのが今の竹下内閣だと申し上げても私は過言ではないと思うのです。  にもかかわらず、その国民約束等をほごにして新しい税金を入れるということ、私は、これは行革の歴史から振り返っても、行革なのか増税なのかという議論のときに、増税はすべきではない、今行革なのだといって自民党政府が行革に熱心だった。私どもそれに協力をいたしましたよ。その経緯から考えれば、今増税などという新しい税を考えるときではないのです。  この行革に対する姿勢も後々またお尋ねしたいと思いますが、問題なのは、そういう国民との約束の上に成り立っておる竹下内閣は、竹下内閣である限り、この任期中は、この選挙から選挙までの任期中はこの国民約束を守る義務があり、それが守られてこそ真に議会制民主主義は成り立つんじゃないですか。これが選挙で言ったこととやっていることが違うのでは、この議会は成り立ちません。そういう厳粛な事実を国民はみんな承知していますよ。にもかかわらず、何か出口を探そう、探そうとしておられる。この秋にはそういうものを導入しようという方針をあちらこちらで御党の幹部は述べておられる。現に昨日も、この一般消費税が最適である、国会決議まで見直してというようなことを自民党政策最高責任者がおっしゃっているのですよ。こんなことは私たち国民にとっては、今の政府は何を考えておられるのか、そういうことを考え立場にはない、そういうふうに思います。  総理、今も議会のことはだれよりも詳しいと自任をしておられる竹下総理のことでございますから、この国会決議の重み、またこの統一見解の重み、そして選挙で当時中曽根内閣が約束をして、大型間接税導入しないという約束で成り立って今三百四議席の上に乗っておられるこの竹下内閣、その立場では断じて今この間接税導入の兆しさえも見せることは私は国民に対する約束違反ではないか、このように思えてなりません。このことについて竹下内閣国民をごまかそうとしているなどと私は思いませんけれども、何かその辺に国民立場から見れば割り切れないものがある。  だから、私はさっきバスの話で言いましたけれども、どうしても島根へ行きたい、島根の宍道湖の夕日を見せたい、こういうことでありますならば、もう一回、国民島根へ行きたいけれどもどうだろうかと、堂々と話し合いをされたらどうですか。選挙をやって国民の意思を聞いてみたらどうですか。その上でなさろうということならば、私はそれはそれで一つ考え方だと思います。それがなく、東京へ行くと言って出発したバスが途中で何の相談もなく島根へ着いたならば、国民はびっくりいたします。一体、政治に対する信頼は何なんだ、内閣に対する信頼は何なんだ、こういうことに戻らざるを得ないです。御答弁をいただきたいと思います。
  46. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、一番最初にありました五十四年の決議、これは財政再建に関する決議でありますが、それが今日存在しておることはこれは重いものとして理解しておる。そして、当時の矢野書記長に対してお答えいたしました、これは政府統一見解であれ、あるいは国会答弁であれ、いずれにしても総理の口から正確に読み上げる形で本院で申し上げた、これも重いものであるという認識は私自身持っております。  そして選挙公約、こういうことになります。選挙公約ということになりますと、本当は公約とはどこまでが公約だという議論をしようとは私は思いませんが、いわゆる税制改革は必要であるということは、これはまさに公約そのものであると思います。そして整理整とんをしてみますと自由民主党の支部長・幹事長会議でございますか、それが開かれましたときに、国民も反対し、自民党も反対するようないわゆる大型間接税はやりませんということを総裁の口からおっしゃって、それが文書でもって各県連にこのような発言があった旨を通知しておるわけでございます。したがいまして、そういう事実もよく承知いたしておるところでございます。  それからさらにおっしゃる意味の中で、いわば租税法定主義という憲法に定められた重大なるものがあるから、したがって租税関係はやはり国民の信を問うべきだ、こういう議論もそれはあり得ると私は思います。しかし、そもそも私は選挙というものは、これはお互い憲法で与えられた四年間の任期というものが存在するわけでございますので、お互いどの立場になろうとも、この任期というのは大事に大事にやはりしなきゃならぬものだという基本的な気持ちは存在しておることもあえて申し上げておきます。  したがって私は、そういうものが重いものであるという事実を踏まえても、廃案になったわけですから、なぜ廃案になったかという反省に立って、だれしもが税制改革は必要だ、俗に言う不公平税制の解消は必要だ、こういうバックグラウンドはあるわけですから、そこで国民理解を——いや国会で廃案にならぬようなものは何だろうかというのを真剣に検討するのが今のまさに我々に課せられた使命ではなかろうかというふうに考えております。
  47. 大久保直彦

    大久保委員 大変失礼な言い方ですけれども、それは総理の詭弁だと思いますよ。社会党の山口書記長等も防衛問題いろいろ御質疑をなさいましたけれども、防衛庁なり大蔵省の一局長のいわゆる発言の問題でこの予算委員会がとまったり動いたりしておるわけですね。それほどやはりこの政府見解というものは局長さんの見解であっても大変重要なものです。いわんや総理大臣の見解はそのとおり継承されねばならない。これはもう、それがそうではないというならば、ここで総理発言されたことがいつでもくるくる変わっていく。国民は何を基準に信頼をおけばいいかということが全く不明になります。  いわんや、任期四年を大事にする大事にするというのは私もそれは同感ですけれども、しかしそれは選挙国民公約したこととそのとおりのことをやっているならば、これは全くおっしゃるとおりだと思いますよ。それと違うことをやろうとするならば、任期半ばであっても、もう一度国民に、こういうことをやりたいと思うけれどもどうだろうか、その是非については、別にして、それをきちっと問い直すのが、これは議会制民主主義の根本ではないでしょうか。そこのところが明確にならないで、それはそうなんだけれども実はこうだああだと言う。こうだああだを今いろいろ伺っても、私は国民の混乱は増すばかりだと思うのです。  その公約に反することはしない。竹下内閣は、この選挙で今我々がこの任期、この議席を国民から負託されておるこの期間中にあっては、国民への公約を守るか守らないか、そこだけはっきりしていただきたいと思います。
  48. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 端的な答弁がしたいわけでございますが、ちょっと長くなります。が、要は国民理解と協力が得られるものをつくろう。それにはやはりこの国会で廃案にならぬようなものを考えよう、こういうことでございますので、私は直接この問題が解散・総選挙に結びつくものとは判断をしていない、こういうことを申し上げたいわけでございます。
  49. 大久保直彦

    大久保委員 私がお尋ねしておりますのは、選挙公約竹下内閣は守るのか守らないのか、そのことだけです。
  50. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国民も反対し、自由民主党も反対するようなものはやらない、これはそのとおりであると私もお答えをすべきだと思います。
  51. 大久保直彦

    大久保委員 そうすると、野党も国民でございますから、この野党が反対するものはやらない、こういうことでよろしいですね。
  52. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それを申しますと、例えば一億二千万国民の一人でも反対しておる者があったらやらないというわけにもまいりません。野党というこれは大勢力でございますから、これは大事に大事にしなければならぬと私も思っております。
  53. 大久保直彦

    大久保委員 国民に対する選挙公約竹下内閣は守るか守らないかということだけもう一回お願いします。
  54. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 選挙の際の公約は守るべきもの、このように考えております。
  55. 大久保直彦

    大久保委員 それでは、今の竹下総理の御答弁からいたしまして、一昨年の夏に行われました同日選挙において、自民党が、中曽根内閣が国民公約をされたその公約は守るということでありますと、私どもは、国会決議もあり、政府統一見解もあり、選挙公約も守るということであるならば、この我々の任期中に間接税などというものが導入される理由は何もないし、根拠も何もない、こういうふうに判断をいたします。
  56. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 選挙公約の根源にあるのは税制改革そのものでございますから、したがって、その税制改革ということに対してまず熱心であらなければならないということでございますから、国民の合意を得られるような、また廃案にならないような案は何かということを一生懸命大事に考えることが大事なことだというふうに思っております。
  57. 大久保直彦

    大久保委員 大型間接税導入するかしないかについては、さっきも言ったように、途中で一回問題になったのです。群馬に行きかかったのです、一回。そこでみんなでおかしいじゃないかと言って騒いだら、群馬には行かないということを言いながらまた群馬に行こうとした公約違反があったから売上税は廃案になったのです。売上税そのものは公約違反なんです。ですから国民がみんな厳しい批判をいたしたんだと思います。  そういう意味では、竹下内閣が今存在している以上は、竹下内閣の手でどう理由をつけても間接税を検討したり導入したりするような理由はありませんよ。それをどうしてもやりたいというなら率直に国民にその考えを示されて、どうでしょうか、こういうのをやりたいと言って信を問い直す、国民の意見をお伺いする、これが議会制民主主義の基本ではないでしょうか。もう一度お願いします。
  58. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず国会というのは民意を代表して構成されておる。したがって、まずは四年間お互いが信任をいただいておるその中において、その民意を代表して出ている皆さん方の同意が得られるような、すなわち廃案にならぬようなものを一生懸命考えるのが私は国民に対して忠実な考え方ではなかろうかというふうに考えます。
  59. 大久保直彦

    大久保委員 そういうことを、いろいろああだこうだということをおっしゃいますけれども竹下内閣が今この公約違反の間接税導入をいろいろ画策をされておる、こういう国民の疑いはただいまの総理の御答弁を伺っておりますと一向に晴れるものではないと存じます。  竹下総理がもしそういうことをやりたいんなら、なぜ率直に国民にそういうことを言わないんですか。言ってから新しい出発があってしかるべきではありませんか。それを党の幹部があっちで発言をしたりこっちで発言をしたり、そしてこの予算委員会ではそんなことはしない、公約は守る、どっちがどっちなんだか全くわかりませんですね、これは。この間接税導入は私ども国会決議にも反する、政府統一見解にも反する、選挙公約にも反する、大変遺憾な重大なこれは暴挙としか言いようがない、そういうものであるということを今強く申し上げておきたいと思います。国民の意思を問い直すことのないうちにこういうことがやみくもに日本税制の中に導入されるということは断じてこれは看過できるものではありません。  この議会制民主主義を守るためには何よりも何よりも選挙公約が守られねばならない、そのこととたがったことを断じて行ってはならない、そのように私は強く総理に申し上げたいと存じます。どうしてもその約束と違うことをやりたいというならば、国民に信を問うて当然ではないか、そのように思いますが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  60. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 三年前に矢野書記長に提示いたしましたものに基づいて法律案をつくって、それが結果として廃案になった。まずその反省の原点に立たなければならぬ。その反省の原点に立って、今度は、四年間という信任を与えられておるこの構成された国会の中で廃案にならないようなものはいかにあるべきかということを考えるのであって、その際、基本として所得消費資産ということを提示して、政府としては税制調査会で御議論をいただいておるというのが現状認識でございます。  それから、間接税を画策しておるのじゃなく、直と間と結果として出ました——戦争直後はまだいわゆる所得が低い時代でございますから消費段階間接税が半分を占めておる時代でございますけれども、それからうんと変わってきた今日、そういう不公平税制の前提に存在している、結果として出ておる直接税、間接税比率というようなものを踏まえて考え直していくということで、画策というよりもまさに筋を通した勉強を一生懸命でやっておる、こういう段階であるというふうに御理解をいただきたいと思います。したがって、これでもって解散して総選挙というようなことは、実は私の頭の中には全く今存在しておりません。
  61. 大久保直彦

    大久保委員 国民も反対し、自民党も反対するようなものはやらないというのが公約だとさっきおっしゃいましたね。その自民党の政調会長がやりたがっているのじゃないですか。これはどういうことなんですか。一般消費税は、さっき総理国会決議にきちっと約束してあるからやらないと言っているのでしょう。それを、自民党政策の総責任者がやりたいとおっしゃっている。こういう世論づくりをどんどんやって、そして国民との約束をたがえてもおかしくないんだというようなことを考えておられるんじゃないのですか。そういうやり方が私は竹下内閣にはふさわしくない、やりたいのならやりたいで、やりたいです、どうでしょうか、こう言って国民に信を問わなければこの議会がもたないんだと、こういうふうに申し上げているのです。
  62. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、国民も反対し、自民党も反対する、こういうのは、国民一人一人という意味ではございませんが、自民党も反対するというようなものはやらない。これは政府・与党一体の責任。  そこで、売上税というのは、ああいう矢野当時書記長との話し合いの中でどうしたら工夫ができるかということで自民党の諸手続を終えて提出したものですから、したがって自民党が反対しておるものを提出するわけにはまいりません。しかし、これはまさに廃案になった。だから、原点に返って反省し直そうというので、私どもの方でいえば政府税調、党の方でいえば党税調の方で精力的な勉強のやり直しをやっておるというのが今日の時点であります。  それと、私どもはいずれにしても税制改革はやろうというのがやはり公約の一番大きな点であったと思う。それに基づいて、国民を代表しておられる皆さん方に、廃案にならぬような中身というのはどうしたらいいのかということを一生懸命で勉強していくというのが、そしてそれを実現していくというのがやはり国民の負託にこたえることではなかろうかというふうに私は考えます。
  63. 大久保直彦

    大久保委員 もう私の持ち時間が参りましたから結論を申し上げますけれども国会決議一般消費税導入はしないという内容になっております。また、中曽根内閣当時、大蔵大臣でありました竹下総理も一緒になって、多段階、包括的、網羅的な投網をかけるような税金は、間接税導入しないという国会答弁がございます。政府統一見解です。それをもとにした間接税導入についての自民党見解が示されて、この政府見解に基づいた、間接税導入しないというのが当時の選挙公約でありました。  今の竹下内閣総理大臣の御答弁では、その国会決議も尊重する、統一見解も当然である、また選挙公約は守られるべきものであるという御答弁がありましたので、私は、竹下内閣がこの現在の任期中に国民公約に反するような間接税導入は断じてやってはならない、そのことを強く申し上げまして、私の質問を留保の部分を除いて終わらせていただきたいと思います。
  64. 浜田幸一

    浜田委員長 これにて大久保君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君。
  65. 永末英一

    永末委員 竹下内閣が成立をいたしまして最初の通常国会、あなたは「調和と活力」というのをキャッチフレーズにしておられるようでございまして、調和というのは、総理が方向をちゃんと示して、そしてその方向へ向けて、いろいろな説がございましょうがこれを調整をし、そして同じ方向に向けていくというのが私は調和だと思います。  ところでやっておられることを見ますと、つかさ、つかさに任しておるんだとか、ともかく何でもかんでも言わしておる。あなたが一体どっちを向いておるかが国民にはよくわからない。方向がはっきりしておれば国民全部が一緒に行こうというので活力も生まれましょうが、それでは活力の生まれようがございませんね。したがって、あなたの方向感覚が不明確であればあるほど、この「調和と活力」というのは混迷と無力ということに国民には映る。これは国民に非常に不安を与えておるわけでございます。  今、我々の周辺にはいろいろなことが起こっております。INF、中距離核弾頭の発射機の全廃条約はできましたが、核弾頭は残っておるわけでございまして、一体これで核はどうなるんだろう、今までの米ソ両国を中心とする核兵器は九割以上が残っておるわけでございまして、また我が国がアメリカとともにいろいろなことをやっておりますけれども、アメリカ経済自体が一体どうなるだろうか、いや、世界経済はどうなるだろうか、その中で日本は経済的に一体どうなっていくんだろうという非常な不安が我々の、国民の気持ちの中に入り込んでおります。  かてて加えて、円はどんどん上がるし、また株はああやってブラックマンデーと称する大暴落を昨年十月にやりました。これから一体どうなるだろう。好景気だと言われながら、円高の打撃を受けた企業また地域は壊滅的な状態でございます。失業率も、上がってはおりませんけれども今までよりは高率の横ばい状態である。片一方、金余り、財テクというので金が乱れ飛んでおるようです。これが東京の地価を高騰せしめ、地方に伝染をいたしまして路線価の高騰を招いておる。このままでは固定資産税を払えないのじゃないか、あるいはまた事業の継承はできないのじゃないか、相続をしなくちゃならぬ場合には土地を売らなければならない、自分の住んでおる土地から離れなければならないのではないか、これが庶民の痛切な不安であります。また、受験勉強ばかりをやらされておる子供さんを持っておる家庭では、どうなるだろうという不安がある。かと思いますと、あっちこっちに、銃砲は持ってはならぬという法律があるのに鉄砲の音がしていますね。一体治安はどうなっておるのだろう、こういう不安があります。  この不安解消というのは、私は、日本の政治のリーダーとしてのあなたに課せられた重要な任務であると思うのです。そのためには、あなたが行こうとする政策の中身を明確にやはり国民に示す必要がある。この前の所信表明では、どうもそれがうかがえない。この予算委員会の場を通して、明確にあなたの中身を示していただきたい。そういう意味でこれからお尋ねをいたしますので、それは認識のうちにありますとか、そういう問題意識を持っておりますとかというようなことではなくて、おれはこっちへ行きたいんだ、こういう角度でぜひひとつ御答弁を願いたいと思います。  その意味合いで、まず第一に議員定数の問題をお伺いをいたしたい。  昭和六十一年五月二十一日に本院がこの件について決議をいたしました。要するに、いろんないきさつがございましたが、八名を増員し、七名を減員するということで、あれは暫定措置だと。そして、抜本改正はあのときの国勢調査の数値の確定をもってやるんだということが本院の決議の意思でございました。  そして、昨年の九月二日の公職選挙法による選挙人名簿の登録者数の概要も発表されました。それによりますと、例えば神奈川四区という最高選挙人を持つところと長野三区という最低の選挙人を持つところとの比率は、一に対して三・〇一である。従来、最高裁の判決でも、本院がかつてやった二・九二は、本院がやったんだから憲法違反とは言えないという、合憲とは言っていませんよね、そういう立場の判決が下されました。しかも、これらにつきまして、この前やりました選挙後、既に三つの違憲訴訟が出され、そして三つ判決が下りました。その一つは、違憲だという大阪高裁の判決があるわけでございます。  したがって、これらの問題について、議会政治を重く見ておるという竹下総理にとっては重大な問題だ。しかし、あなたのこれまでの態度は、それは各政党と相談をしてやるんだと、こう言う。私が伺いたいのは、あなたは自民党総裁である。総理としての立場ではなくて、自民党総裁、第一党の総裁としてこの定数是正の問題を、この国会で各党に相談してやりますということをぴしっと言って方向を示すべきではないか。うやむやのうちにやって、またあちらこちらの裁判所で違憲訴訟ができてくる。これじゃ国権最高機関なんて胸を張って我々が議員としての活動ができないじゃないですか。しっかりとお答え願いたい。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 衆議院議員の定数是正に関する決議、これが昭和六十一年の五月二十一日にある。これが私は一番重いものであるという背景の上に立って、私自身選挙学の学問上の学位を持っております。実践選挙学ではございません。まさに選挙学でございます。したがって、いろいろな角度から、各党の選挙学の専門家もいらっしゃいますのでいろいろ相談しながら今日まで来ておりますが、やはり基本的には土俵、自分らが土俵で争ってきた、したがって、その土俵づくりについてはやはり各党間の合意というものがまず一番最初にあるべきじゃないか。第三者機関とかいろいろなことも考えてみました。したがって、そのアクションを起こすためには、私どもの党には選挙制度調査会、これも選挙学の大家であります後藤田さんが今この会長をしておりますが、そのもとでまず案をつくって、それから先を言いますと国会の分野に行政府が介入することになりますが、特別委員会等がある、そこへ働きかけるべきか、そういうことは私が言うべきものではありませんけれども、まずそこのところできちんとした検討を開始しようということが私の考え方の基本にあるということだけは、これは率直に申し上げるべきであろうと思って答えた次第であります。
  67. 永末英一

    永末委員 あなたの方の政党に後藤田さんが会長である選挙制度調査会ができたことは承知をいたしております。私は本院の公選法の特別委員会の委員でございまして、あの事件以来二年以上になりますが、一度だって、そこでひとつ定数問題をやろうじゃないかと、委員長はあなたのところですよ、自民党委員長がおるのに言うたことがない。そして、国会が開かれると特別委員会でございますからその委員長選挙はいたしますが、それで終わりである。これじゃ国民に対して申しわけないじゃないですか。あなた、今は総裁として答えてくれと言ったのにまた行政府の長になっている。これは政治問題ですから、あなたが後藤田さんにこの国会中にやってくれと言わなければやりはしませんよ。言うてください。
  68. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私と後藤田氏との間で、総裁と選挙制度調査会長という立場を離れて深く議論をいたしまして、まず勉強、また勉強、それを本当にやっていこうという話をしておることは事実でございます。その都度いろいろな報告も聞かされておりますけれども、それはいささか党内次元の問題になろうかと思いますので、本当に私と後藤田氏の間で、これが緊急課題であるということで作業を開始しておるということは事実でございます。
  69. 永末英一

    永末委員 この前の本院決議になるまでにいろいろな苦労をして、暫定措置だからというてああいう一応のけじめをつけて選挙に臨んだわけです。あなたの話を聞いていると、また新しく勉強し直している。勉強やってくださいよ。勉強はやらなければなりませんが、この通常国会中に竹下総裁は一切公選法についてイニシアチブをとらなかった、そんな国会にしていいのですか。お答え願いたい。
  70. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この国会決議について何もしなかったというようなことがあってはならないと私も思っております。
  71. 永末英一

    永末委員 もう一度伺います。  抜本改正について、あなたはこの国会中に、この国会決議に即しイニシアチブをおとりになりますね。
  72. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 党首会談等でも話がありました。その各党の土俵で話し合おうという私の話に対して、いや与党たる自由民主党の方から働きかけをしてくれと、今おっしゃったイニシアチブを期待すると、それを後藤田氏との間で話をしておるということでございますので、御趣旨に沿うべきである、このように考えております。
  73. 永末英一

    永末委員 御趣旨に沿うべきであるという御答弁は承りました。我々は、この国会中に定数改正の作業が、あなた方のイニシアチブのもとに我々が一緒に検討するということをあなたが私のこの質疑を通じて国民にお約束になったと承知をいたしました。  さて、あなたは政策の基本に「ふるさと創生」ということを言ってこられました。また、外交の基本軸としては「世界に貢献する日本」などと言っておられますが、その「ふるさと創生」というのがよくわからぬのですね。  昨年の十二月にはマニラへ行かれましてASEANの首脳会議に臨まれ、「ふるさと創生論」を言っておりますが、さあ、あちらの人々にどれくらいわかったかなという感じでございましたが、昨年十二月四日の本院におきます土地問題特別委員会で、あなたはこういうことを言っておられる。ふるさとという言葉、これは「例えば日本人の好きな歌謡曲、その八割以上がふるさとを歌っております。したがって、日本人の耳にも非常になじんだ言葉であるということが、政治家としてかねてから私の考え方の底にあった」、こういうことを言っておられる。あなたはなぜふるさとということが歌謡曲の八割にも出てくるとお考えなんでしょうか。考えたことがございますか。お答え願いたい。
  74. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 カラオケというもの、私は声が悪うございますから自信のある問題じゃございませんが、しかし参加したことがあります。そのときにふるさとに関連するものが何ぼあるだろうかなと思って数えてみたことがあります。それから、私の事務所で明治以来のいわゆる歌謡曲、歌唱も含めてやってみますと、確かにふるさとというものを歌っておるものが多いということを感じたということを率直に申し上げただけのことでございます。
  75. 永末英一

    永末委員 なぜ日本人が愛好する歌謡曲にふるさとという言葉が出るのだろうか。それは、少年時代、青年時代、男女ともに過ごしたふるさとから離れて、恐らくは都会地へ来、そして子供、青年のときに抱いた希望の一つ一つの芽が折られて、あるいは失意のうちに、あるいは落胆のうちに、まあ失恋した人があるかもしれませんね、そういう言うならば悪い環境、その中にたたき込まれたときに、ああふるさとはよかったな、あの希望の時代はよかったな、これがやはりあなたがお調べになったとおり八割もの歌謡曲にふるさとが出てくる原因ではないかと私は思うのですよ。  そこで、政策としてどうするかといったら、この今落胆のうちにいる、失意のうちにいる人々に対して、あなたの言う心の豊かさを、あるいは心の豊かさがわかるような、形而下的なものでありましょうが、そういう施策を考えていくというのが私は本当ではないか。  あるいはふるさとにつきましても、あなたがやろうとしておるふるさと特別対策事業というようなものを自治省でやろうとしておられますが、これを見てみますと、箱物はやめなんだ。しかし、やることは道路を整備するとか、街道を整備するとか、広場をつくるとか、野外劇場をつくる、イベント支援のことには金を出す、公園整備をやる、リゾート施設づくりをやるなどなどのことであって、そして数千万円から数十億円まで、三年間で六千億円を使おう、そして三年で年間百件ずつこなしていこう。 こういうので、地方団体は喜んでいますわね。単独事業としてやる、そのためにちゃんと面倒を見ようというのですから喜んでいます。  しかし、それぞれの地方にはそれぞれの地方の歴史と伝統に基づいてやってきたいろいろな経過があるわけですね。これをこれでごちゃごちゃに崩すことが一体いいのかどうかということもございましょうが、これが一体「ふるさと創生」ですか。そうやってごちゃごゃにして細切れの金をばらまいて、今言うたものをつくって、それでああ「ふるさと創生」と言えるのですか。
  76. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 定型的なものをつくり出そうという考えは最も避けるべき考えじゃないか。今、永末さんおっしゃっていただいたとおり、その地域地域の歴史とか伝統とか文化とかというものを吸い上げて、それが基礎になってふるさととは何ぞやということになりますと、私があえて定義づけてみたわけでございますが、ムード的な生まれ故郷というものだけでなく、いわゆるそこにおることに誇りと生きがいを感じながら活動できる基盤というものがふるさとになっていく。こういうことになれば、当然歴史と文化と伝統、こういうものが基礎にあるべきものであって、それを吸い上げていく考え方でないといけないではなかろうかというふうに考えております。
  77. 永末英一

    永末委員 これは慎重に、ふるさとを攪乱し破壊するのじゃなくて、なるほどふるさとはいいという歌だけであって、現実は変わってしまって、帰ったらえらいことだと思わぬようなことをやはりお考えになるべきだと思います。  さて、これと関連しながら、一省庁一機関地方移転という政策をお進めのようでございます。これは四全総の報告と絡め合わせまして、東京一極集中を改めまして多極分散型の国土づくりをするんだ、こんなことで昨年来、十六省庁二十機関、自衛隊の十一部隊の移転、これの作業に着手しておる。  ところが、これは閣議でも人気悪いですな、皆さん。各省庁とも自分の省としての業務に余り影響のない小さな機関をよりすぐって、これをひとつ移転しましょう、そして一機関出せだから一機関の最低ノルマを果たせば事は済むというような対応をしているのじゃないかと思われる。目的は、何とかして首都にかじりつけばよい。こういうことで、総理大臣の命令ですから各省庁皆やらなければならぬと思ってやっておられるのでしょうが、要するに逃れよう、こういう形でやっておる。  総理は、佐藤内閣のときに一省一局削減があった、あれが頭にあるのだ、こうおっしゃる。あのときだって、要するに一人の局長の首が飛んだだけでございまして、そして部とか室とか統合したものがございますが、あのとき百二十局がございましたが百に減らしました。しかし、今や幾ら局があるか。百二十八あるのです。これが行政機関のやっておる仕事です。  あれから考えますと二十年たっておりますが、さてこういうような分散の仕方で、いや一次はこんなものかもしれぬが第二次にはもっとでかいことを、これは行政機能を素直にすることですか、それとも行政機能を攪乱することですか。呼び水で、地方はこれで大いに極となって発展していくというような筋合いにはならぬではないですか。しかも、その分散の範囲というのは大東京圏ですね。東京区内からは出るというけれども埼玉県や千葉県や神奈川県、そういうところへ行くだけであって、地方移転とは名ばかりではありませんか。こういう問題についてきちんと、やはり何のためにこれをやるのか、何のためにそういう姿で小さな機関を移転するのかわからない。お答え願いたい。
  78. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 具体的な方針の問題でもございますので、私からお答えをさせていただきたいと思います。  今御指摘いただきましたように、昨年六月に第四次全国総合開発計画がつくられまして、その中で国の機関の移転を推進しろと示されておるわけでございます。この四全総は、東京一極集中を是正して多極分散型の国土をつくるべきだという建前に立っておるわけでございます。常に国土の均衡ある発展をうたわれながら、率直に申し上げまして東京一極集中になってきていると思います。また、世界の経済、金融のセンターになったわけでございますから、外国の企業が東京に立地を求めてくることは当然のことだと思うわけでございます。  これを放置しておきますとますます過密になっていくわけでございますので、東京に立地を必要としない民間の施設もぜひ東京から離れてもらいたい、したがってまた、政府が率先して都心に立地を必要としない機関は都心から離れさせていきたいということでございまして、それを円滑に進めていくためには一省庁一機関まず出るということから始めたらどうかというのが総理の手法であると考えております。  そういうこともございまして、それじゃどういう機関が移転すべきかということから四つのカテゴリーを決めたわけでございまして、その四つのカテゴリーに属するものは原則として移転するという方針を決めさせていただきました。  その四つのカテゴリーといいますのは、現在与野党が一緒になって新首都懇談会が設定されております。この新首都懇談会ではむしろ遷都すべきだ、もう現実の問題として踏み切るべきだというような話もございまして、政府機関の移転も遷都と一緒になってやればいいじゃないかという議論もございました。そこで、遷都する場合であっても、それについていく必要のない機関は何か、それが四つのカテゴリーに属する機関でございまして、そういう意味から、この四つのカテゴリーに属する機関は移転してもらおうじゃないかということでございまして、いずれこの四つのカテゴリーに属する機関を具体的に決めまして、全体像を閣議決定してもらおう、こう思っておるわけでございます。  今御指摘になりました機関の移転を考えているのじゃなくて、それを含めました全体像の閣議決定をしたいと考えておるわけでございまして、そういう具体的な機関が明らかになってまいりましたので、地方団体でも、政府もいよいよ本腰だな、地域の活性化を考えている、今までは言葉だけだったけれども現実に具体の機関の移転を考えてくれている、ぜひ自分のところへそれをよこしてもらいたいというようなこともございまして、例えば北東公庫でありますと札幌だ仙台だ新潟だという問題が出てきておりますし、あるいはまた、本四架橋公団になりますと兵庫、岡山、広島、それぞれが言い合っておるわけでございます。醸造試験所も広島に持ってきてもらいたいとかいろいろなことがございまして、機関によりましては東京都に近いところに持っていきませんと、地方支分部局は関東の人たちが来られるわけでございますので、関東以外の地域に持っていくわけにはまいりません。  そういうこともございまして、本当に均衡のある国土をつくり上げていきたい、地域地域が活性化するような施策を講じていきたい、そういう具体的なものに結びついた計画でありますことをぜひ御理解いただきたいと思います。
  79. 永末英一

    永末委員 委員長にお願い申し上げます。  限られた時間でございますので、質問も簡潔にやっておりますが、答弁も簡潔にやってください。一答弁で五分以上も要りません。頼みます。
  80. 浜田幸一

    浜田委員長 この際、注意いたします。簡潔にお願いいたします。  どうぞお進みください。
  81. 永末英一

    永末委員 ただいま奥野国土庁長官は、遷都論が出てきた、そこなんだ、問題は。そしてあなた方、つまり竹下さんのやり方は、やっていると全体像がだんだんできてくる。逆だと思うんだな。この重大な東京の一極集中をどうするんだといったら、全体像を訴えてこれでやろう、その手順として、では一局一機関からやろうかとか、こういうことでないといかない。つまり、そういう全体像をはっきりさせないというところに竹下政治がわからぬ、不安がある、こういうことになるんだと私どもは思うのです。  さて、遷都につきましてはいろいろと議論がある。しかし、これははっきりとその背骨を明確にしておかないと間違う。  東京集中がなぜ今皆の反省を促しておるか。首都ですね。これは政治の中心である。同時に、先ほど触れられたように世界の国際金融の中心になってしまっておることも事実です。そこでいろいろな経済関係のものをここに集中している。この首都としての政治の機能と国際金融都市としての国際的な日本の中心都市の機能が一緒にいなければならぬかどうか。これがまず判断の基準。  第二は、これだけ人口の、大東京圏でいえば二割、そこに集中しておる地域の住民に対する首都のサービス機能は一体どうなっておるか。夏になれば断水だとかいってふうふう言う。そして、この膨大な都民の出す廃棄物の処理も非常に困難になってくる。いわんや、一体危機に際してどういう危機管理能力があるか。これまた、危機は皆嫌でございますけれども考えざるを得ない重大な問題である。  これらの問題について皆が心配しておればこそ、この東京一極集中を考え直そう。過密過多のために地価が上がっておる。むちゃくちゃな世界一の土地の値段になっておる。これも問題です。したがって、全体像を明らかにする遷都論というものを竹下内閣は真剣に考えるべきときが来たのではないかと思います。  あなたはこの前、昨年十二月の委員会で、この遷都論につきましては、「直ちの問題としてこれを具体化するだけの準備は、私にはまだございません。大きな流れとして我々が念頭に置くべき課題である、」こんなようなことを言っておりますが、具体的に今のような角度から、この国際金融市場としての東京はこのままでよろしいが、この首都の機能を分散さしたらどうか。政治機能であります。政府国会、そのほかに司法機関もございましょうが、しかしそれは大きなものを移すのではなくて、小さな政府をやれ、そうしますと、見返りとして、今まで東京に集中され、そしてそれによって補助金行政で中央集権体制をとっておったものを一体どうするのか。地方分散、しかし今の府県制度ではなくて、もっと大きな行政単位、そしてまた、それは財政能力を持つ行政単位、こういうものをつくる、そしてそこに局を置きますから、まさに多極分散ですね、ばらばら分散ではなく。そういう構想を訴えて、これはすぐにはできませんよ、何十年かかるかもしれませんが、我々の新しい国土づくり、これが行政改革の目玉になるべきだと民社党は考えております。そういう全体像をこの際あなたは明らかにする任務があるのではないか。  遷都論につきましてはいろいろな説がございます。関西遷都論とか、私は京都でございますので、文化的、儀礼的機能は京都でという説も大きくございます。 また、東海に移せとか富士のすそ野とか仙台とか、いろいろの土地がそれぞれ考えておる。これらの問題を勝手に放てきするのではなく、やはり今までの東京はこのまま過密過大を続けてはならぬのでありますから、この辺で新しいやはり大きなグランドデザインを示すときが来ておる。あなたは、「ただ聞く耳を持っておるだけではいけません。行政府最高責任者として、決断すべきときはみずからの責任で大胆に決断すべきものである、」立派ですな。大胆に決断してください。
  82. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 永末さんが友人とし、あるいは先輩とし、そういう気持ちを含めて、確かに私の手法というのは、問題を提起して、そうして世論の沸騰を待って、そこで全体像を衆知を集めた中から浮き彫りにさせていくという手法であると私自身も思っております。したがって、申し上げたように、今まではそれでいいかもしらぬ、しかし、しかし今や本院で指名を受けました内閣総理大臣でありますから、決断すべきときには決断しなければいかぬ、こういうみずからに絶えず言い聞かしておる、こういうのが私の実態でございます。  したがいまして、遷都論、この間来私どもも私的には勉強しております。遷都あるいは分都、それから群馬だ千葉だとおっしゃいましたが、そういう展都とか、そういう定義づけから勉強しなければいかぬということになっておりますが、私は、こういう問題が国会においても国民的背景の中に盛り上がってくる、それをまさに受けて出して、衆知を集めながらそこに全体像を示していくというのは私どもは課せられた使命であると、今の話を聞きながらさらに強くいたした次第であります。
  83. 永末英一

    永末委員 今遷都論の検討を申しましたところ、あなたは遷都もあれば分都もある、展都もある、テントか屋根か知りませんが、遷都論というものをやはり真剣に考えるべきときだと問題を投げかけておるのですから、もう一遍お答え願いたい。
  84. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は遷都論を論じて初めて分都論も出てくるし、展都論、展開する都の展部論も出てくるという問題意識を持っておりますから、やはり極限に集中すれば、あなたのおっしゃっているとおりだ、遷都論に議論をすべきものだと思います。
  85. 永末英一

    永末委員 私の言うとおりだとおっしゃったから、しっかりやってください。  さて、もう一つの柱である「世界に貢献する日本」、これは中曽根内閣のときに開発途上国への資金還流計画二百億ドル、今は二八%ぐらい決まっておるそうですね。そして竹下総理が初めての外遊であるマニラ、ASEAN首脳会議に行かれたときにASEAN日本開発ファンド、これが二十億ドル以上。こういうことで今回の予算にも、ODA予算は項目別にいたしますと最高の伸び率で、七千十億円、そして円高でございますから、アメリカを抜いて今や世界一であるという話であります。しかし片一方、ペルシャ湾でいろいろなことができましたが、昨年十月七日、ペルシャ湾自由通航のためには非軍事的貢献をするんだと言って五億ドルほど金を出そうというようなことを決めておられます。みんな金ですな、これは。全部金である。日本は金を出す国である。  しかし、これで一体世界の称賛を受けるでしょか。第一は、この経済協力と称するものは、例えばOECD参加の十八カ国中、そのそれぞれの国の政府開発援助等の国民総生産との比率を見ますと、日本は〇・二九、OECDの平均が〇・三六、十八カ国中十四位という低位ですね、金額は円高で一番だなんて言っているが。しかもその中の日本の贈与比率は四七・五%、OECD十八カ国中最低ですな、これは。最低である。贈与しない。  どうするかといいますと、円借款だ。つまり金利を取るんだ。いわんやその円借款にくっついてやってくるのは日本の企業ではないか。だから、あなたが勢い込んで行かれたASEANの国の中から、円高なんだから金利が払えないよ、だからなかなか乗れないよ、こういう意見すら出ておる。そしてまた、日本の援助は結局日本に全部返っていくんだ、おれのところに来ないんだ、こういうことで評判が悪い。  かつて松尾芭蕉が東北を歩きまして、「奥の細道」というその旅行記をまとめました。こんな言葉があるんですな、竹下さん。「尾花沢にて清風と云者を尋ぬ。かれは富るものなれども志いやしからず。」いい言葉ですね。私は、松尾芭蕉が数百年後のこの日本の世界に対する貢献のあり方を見ていたんじゃないかと思われるほどに、きちっと我々の現在のやり方を見ておると思います。  さて、どこに一体原因があるのか。ODAの基本がはっきりしておらぬではないですか。つまり、我々も敗戦国で金がなかった。そこで、少しずつ海外協力をやってきた積み重ねが現在でありますから、少しも基本がない。したがって、外務省が対外的な窓口のようでございますが、大蔵省も通産も、いや各省ほとんどがこの経済協力をやっておるわけですな。どこに柱があって、何をするのか、まことにわけがわかりません。  昨年九月二十四日、アメリカの上院は次のような決議をいたしました。日本政府開発援助は一九九二年までにその国民総生産の三%に引き上げよ。これに基づきまして、十一月上下両院の協議会の合同決議で次のように決めました。ODAと国防費を一九九二年までにNATO平均、すなわち四%まで増加せよ。これにはレーガン大統領が署名をしておるわけでありまして、つまりアメリカの上院、下院議員の総意は、日本は金持ちになったんだからもっと世界に貢献しなさい、あなたも言葉は「世界に貢献する日本」と言っている。しかし、彼らは政府開発援助と国防費と込みにして物を考えている。そういう目で見られておるんだ、我々は。したがって、この際、防衛の問題は後で触れますが、このODA、政府開発援助、海外協力に対する基本をきちんとする必要がある。  今までの援助は経済援助ですね。技術援助。この中には青年海外協力隊のけなげな活動もたくさんございます。しかし、人づくりが足りませんな、我が国は。留学生を受けておるといいますけれども、その留学生が円高のためにふうふう言っておる。これらの世話をやはりきちんとやらなければ人づくりには役に立たない。相手方に対する、例えばテレビ局をつくっても、そのテレビ局で側はつくったが、そこで流されるソフトは全部ヨーロッパ物であるという国もございますね。この辺が日本の援助の非常に片手落ち、つまりソフトについて思い入れが少ない。  この辺を考え合わして政府開発援助の哲学をしゃんとさせる、我々の国はこういうことでやっているんだ、総理大臣がどこかへ行ってぱんと何ぼもまいてくる、これはあきませんよ、だれも尊敬しませんよ。これはやはり尊敬される日本人だということのためには、まずあなたがきちんとこの方針を示して、この方針に従ってやっていこう、こうやらぬといかぬのと違いますか。お答え願いたい。
  86. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初に一つだけ私自身の反省から申しますと、実は昨日の朝も産労懇において同種のお尋ねがあって、その前にも私そういう発言をする機会を得たことがありますが、私が大蔵大臣のとき、一つの例でございますけれども、世界銀行から借りております一億ドルというものの返済の繰り上げ償還、こういうことを私考えた。そうしたら、世銀側から、日本という優良国に貸しておるということは大変優良債権として評価されるからそのまま借りておってくれ、こういう話がありました。考えてみると、日本という国はあれだけ世界銀行からも金を借りたりしながら、とにかくあれは返す金だったから一生懸命働いたんじゃないかという考えが私にあり過ぎた。そこで、やっぱり円借の方がむしろ励みがつくという考え方に立っておりました、ある時期。  そこで、私調べてみましたら、国会議員の中でもフルブライト、数字全部忘れましたが、フルブライトの留学生が何ぼおったか。それから次はやはりガリオア・エロアのときですよ。私や永末さんの時代はともかくとして、今昭和二十年八月十五日生まれ以後の人が本院においても二十四名いらっしゃいます。この方たちは大体あの粉ミルクでかなりお育ちになっておるんじゃないか。そのガリオアなんかを計算してみますと十九億ドルになるのですよ。十九億ドルといえば、この間の今もおっしゃった二十億ドル以上、それに値するような、やはりそういう無償協力というものがあったんだなということを感じながら、私の、すべていわば返す金だから励みがつくという考え方は、この際意識転換しなきゃならぬというふうにみずからに言い聞かせました。  そこで、今おっしゃったように経済協力そして技術協力、その上のいわゆる文化協力を含む知的協力というようなことを柱として掲げなきゃいかぬだろうということを肝に銘じまして、したがって、ASEAN等におきましても、留学生問題に対するホームステイ等も含めながら、民間の協力も得ながら、いわゆる知的協力といいますか、人材育成、こういうことに力をいたしていかなければならぬというふうな問題意識を自分で整理したことをこの際あえて申し上げます。
  87. 永末英一

    永末委員 問題意識をお持ちになったようでございますが、やってくださいね。これはやはり日本のこれからの歩みに対する重要な問題でございます。  そこで、先ほど申しましたように我々の経済協力は最初ゼロから、つまり我々も貧乏国であった。私はガリオア・エロアの粉ミルクは飲みませんが、芋のつるやらカボチャのつるを食ったことはございますよ。そういうことでございますが、今や我々は名目的にしろ世界第一の経済協力国になっておる。  アメリカでは、この経済協力計画を予算を出すときにきちんと計画書を出して、国会がそれを見、そしてやりました後の報告をとっておるんです。我が国はそうなっていない。かつて通産省が立派な報告書をつくったときには外務省は余り上等じゃなかった。去年は外務省のは二冊にわたりまして立派でしたな。そうじゃないんだよ。国会にやはりきちんと諮り、そして国民を代表する国会議員の意見を聞く、つまり国民の意見を聞いて、その計画をきちんとしたものにし、日本の仕事として間違いのないものにして、やったことは国会に報告をする。そのために法律が必要だと思いますが、その法律を出す御用意はございますか。
  88. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 貴重な御意見だと思います。  事後に関しましては、もう既に御承知のとおり、政府刊行物等によって御報告を申し上げ、また、随時国会の御要請によりまして国会にも出さしていただいておりますが、実は事前ということになりますと、やや今日までの仕組みが、それぞれの国のニーズにも我々もおこたえしなければならぬ、それと協議をする、いろんな段階を経まして、そして日本は自主的に決めておるということでございます。  アメリカでは確かに予算と法案という関係におきまして、これは永末議員御承知のとおり、事前のことも発表されますが、事前のこれを発表するということに関しましては、諸外国からいろいろ混乱を生ずるような問題もありますし、また、おれのところは少ない、あちらが多いというような抗議がないとも限りませんので、今のところ私たちは、事後のことはひとつ十二分に各省と連絡いたしまして、立派に報告というふうなことをしなければならないだろう、こう思いますが、事前に関しましてはもう少しく考えさしていただきたい、こう思います。
  89. 永末英一

    永末委員 外務大臣のお答えですが、それは外務省が経済協力局を持っていますがね、そういう官庁の仕事のことを聞いているんじゃないんだよ。ことしだって七千十億円でしょう。一兆円になりますよ。アメリカなどの先ほどの決議を申し上げたのは、あれをやりますと三兆円以上になりますな、こっちだけで、経済協力だけで。それほどの期待をかけられておるのなら、なぜ国会で事前に計画を出すことを嫌がるのですか。  これは竹下総理だ。あなたの大胆な決断がないとだめだ。そういうものじゃないですか、この経済協力の問題は。いいことを外交にしているとか、総理大臣が気前よく金をばらまくのじゃないのですよ。日本の国家はこういう国家であって、平和の中でしか生きていかれないんだ。したがって、我々がもし経済的にいい状態であるのなら、それはその開発途上国と一緒になって共存共栄をやろうじゃないかということだと私は思いますから、それはやはり国会がきちんと見て、こういう計画であります、これが本当じゃないですか。一兆円以上になったって、事後の報告をします、プリントを出しても読むものじゃありませんよ、それは。国会にきちんと法律で決まって報告をするというのが国民に対する報告でございましてね。総理、お答えを願います。
  90. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、今の段階で申しますと、四百億ドルを決めたのが昭和六十年九月十八日でありました。そのときに決まったのが、その七年倍増の四百億ドルと十八兆四千億の防衛計画でありました。したがって、そういういわば目標が決まった限りにおいて、そのようなものはついての国会での御議論はいただけるものではなかろうか。  ただ、私もプロでありませんのでわかりませんが、個々の相手国のニーズを聞きながらプロジェクト、場合によっては商品借款、そうしたものを決めていく際の事前の計画書というものがどのようなものがつくれるのか。あるいは方向性を明示することは言えるでありましょうが、その限りにおいて私の手元でまず検討させていただくということではなかろうかというふうに思います。
  91. 永末英一

    永末委員 アメリカは、経済協力というものが自分の国の外交上あるいはまた大きく言えば安全保障上重要なことだ。そして、三権分立の体制、まさに立法府は最高の機関でございますから、それはやはり立法府の同意を得る。しかも膨大な額でしょう。今七千億ですが、これは一兆円超えてきますよ。それを、事前に計画書を添えて国会に諮るのは当たり前じゃないですか。何で隠れてやりたいのですか。検討すると言うから、やると言うてくださいよ。その方向で検討してくださいよ。今はばらばらだからね、なかなかいろいろなことがありましょう。それはそのことを外務大臣が言われたので、今はそうだよ。しかし、それを一本化してきちんとやっていかねば日本の歩みを疑われる。  世界に貢献しているなんと言うているのは我々のひとり言であって、その協力を受ける相手方がそう思わなければえらいことじゃないですか。あなたの決断、お答えを願います。
  92. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 おっしゃる意味はわかりますが、私はいささか中途半端でございますので、いわゆる四百億ドルというものを七年間倍増でやった、その計画を私自身も参画してつくりました。したがって、その方向性を明示するということは可能だろうなと思います。それに具体性がどのように書けるかということになりますと、まずは私自身が永末さんの提案を旨として検討するところから始まっていくのかなと、こう思ったわけでございます。
  93. 永末英一

    永末委員 議員は政党を代表して言うているから、いいと思ったらやはり実行してくださいよ。答弁なかなかよくないですな、これは。しかし、ひっかかっているわけにいきませんから、旨として考えるという話ですから、やってください。  為替問題、これは重要な問題でございますが、かつてプラザ合意のときに、これは竹下大蔵大臣ですね、そのときの合意の声明は「非ドル通貨の対ドル・レートのある程度の一層の秩序ある上昇が望ましい」というのが決め手でございまして、そのときにドルは二百四十二円。それからどんどんどんどん円が上がり出しました。  そこで、えらいことだというので翌々年、八七年二月二十二日、ルーブル合意、今度は宮澤さんですね。ここで合意が行われて、「当面の水準の周辺に安定させる」ために協力しよう、こういうことをお決めになった。そのときのドルは百五十三円、これは程度でいいでしょうね。しかしながら、なかなか円高がとまらない、ドル安がとまらない。むしろ円高よりはドル安がとまらぬ、こういうことで、同じく五月一日、日米首脳会談がございましたときの共同声明では、これ以上のドルの下落は逆効果である、こういう声明になっておるわけでございます。  超えて八七年六月十日、ベネチアにおきますサミットの経済宣言では、為替相場がさらに相当変動することは逆効果、このときドル相場百四十円。そして九月二十六日、ワシントンのG7の合意は、今度はまた前のルーブルに返りまして「経済の基礎的諸条件に概ね合致した範囲内にあることを再確認」というような言葉になっておる。このときのドルが百四十三円。そして昨年、どんどんどんどんとドルが安くなった。昨年の十二月二十三日、七カ国蔵相声明では、これ以上ドルが下落すると逆効果だ、こういう声明になっております。そしてことし、竹下さんがレーガン大統領と会いましたときの共同発表には「これ以上のドル下落は逆効果」、こういう言葉で結んでおられる。これが百二十五円ですね、ドルが。  この間、我が国の大蔵省はどういうことをやったかといいますと、六十二年の三月までは、六年間ずっとこの外国為替資金証券発行限度額、これは予算にきちんと出ておりますな、これは十三兆円でございました。ところが、六十二年を迎えるに当たって、当初予算では十六兆円にしてくれろという予算案が出ました。そして、第一次補正で七月には十九兆円になり、今これを二十一兆円にしてくれよ、こういう予算が出ておるわけでございまして、そして来年度の当初予算、今我々が審議しておりますこの当初予算では二十八兆円にしてくれよ、こういうことですね。そうしますと、一年前の三月から計算いたしますと、実に十五兆円もの発行限度額の上昇をお願いしておる。非常なことであり、異常なことだと言わざるを得ません。  そこで伺いたいのでございますが、今までは為替の変動が日本経済に思わしくないので、これを安定させるために努力をする、いわば微調整、そのための介入はやるんだ、こういうことでございました。ところが、先ほど読み上げましたように、これ以上の下落は逆効果だと言いますと、例えばことしの一月十三日、ドルが百二十五円だというと百二十五円以上にドルが下がってはならぬ、こういうことで介入をする、こういうことに変わったのか。  しかも、その下落をすると逆効果だというのは昨年の日米首脳会談のときに初めて出た言葉であり、昨年の十二月にも出てきておる言葉である。そこで、介入の方法はこの言葉によって変わっておると外野におれば考えますね。つまり微調整ではなくて、ある目標の円相場、ドル相場、どっらでもいいのですが、それを考えながらそれを維持さすために介入をする、だから大いに資金が要る、こういうことになってきておると思いますが、いかがですか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 永末委員よく御承知でございますので一言だけ申し上げますと、介入圏というものを考えているという意味ではございませんで、十二月二十二日以降の声明は、これ以上ドルが下がるということが全部の国にとって、G7の国々にとって逆効果であるというのでございますから、これ以上下落することを政策協調並びに市場における行動によって防ぐべきである、こういう合意でございまして、したがってそれは、その下限と申しますかそこのところを押さえておるわけでございます。片っ方の方は、先ほどお話しの一九八五年のプラザ合意、そこまで戻るということはだれも考えませんけれども、あんまり大きく戻ればまた別でございますが、主に言っておりますことは、いわばドルの下落の下限をこれ以上のものにしてはいかぬ、こういう合意でございます。
  95. 永末英一

    永末委員 そのときのドル相場は百二十五円、だからその辺でということですね。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十二月……(永末委員「百二十二円」と呼ぶ)はい、そうでございますね。まあ非常に厳密にそこということを申し上げるわけではございませんけれども、そこらというやはり御理解で結構だと思います。
  97. 永末英一

    永末委員 我が国の為替相場に対する介入の姿勢が明らかにこれは変わってきておる、そのために円が使われておる、こういうことでございまして、介入のために使われた円はどれぐらいになりますか。
  98. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  介入は、永末委員御存じのとおり、為替市場に心理的なインパクトを与えながら需給関係が一方に偏するのをできるだけ防ぐという趣旨で行っておりまして、こういったことにつきまして、ただいまの御質問の数字を明らかにしますことは、これはまたマーケットに大変不測の影響を与えるものですから、従来も勘弁していただいておりますし、その点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  99. 永末英一

    永末委員 これからどうするなんて聞いてない。これからどうするなんていうような日本政府の方針が示されたら、それは為替相場に影響しますが、これまでやったことを言うのは怖いですか。国民は膨大な金、つまりこの一年間で十五兆円もの発行限度額が上がってきておる、どうしておるのだろう、円が本当に有効に使われているのかと思いますよね。予算に関連しての質問ですから答えてください。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように介入というのは、政府側と申しますか中央銀行側と申しますか、それと市場の動きとのいわばやりとりでございますので、市場としてはどういう場合に中央銀行がどのぐらいの買い、売りをやる、どういうときにまたそれをやるかやらないかということを非常に綿密に調べ、また関心を持っておる、これは当然のことでございますが。したがいまして、過去のことを申し上げますと、それによってこれからどういうパターンで政府、中央銀行が出るだろうかということはすぐに想像がつくわけでございまして、そういうことは実は国民的な利益にならないと考えておるものでございますから、その点は御理解をお願いいたしたいと思うのでございます。
  101. 永末英一

    永末委員 私は、為替相場をやっておるわけでも何でもございません。ただ、本院の議員として、予算が出ておる、そしてこの為券の発行限度額を一年間に十五兆円もふやそうということをあなた方の政府がやっておる、それによって介入が行われてきた、百二十円台である、この事実の上に国民は、それなら一体どうしているのだろうと思っても不思議はないのじゃないですか。何も為替相場をどうしようとかああしようとかというのじゃなくて、これは秘密の中で国民に知らさぬでよろしいというものでしょうか。  例えば、日銀の六十二年度中の資金需給の実績から見ますと、外為で五兆四千億円というのが出として残っておるわけですね。これは出入りがあった最終的なものである。しかし、この一年間に十五兆円の限度額の、まあ六十三年ですからそいつを最後をのけますともう少し少なくなりますけれども、この辺の関係を御説明されませんか。そういうことは国民には言われないのですか。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 例えば外為会計のいわば内容でございますとかあるいは日銀納付金の増減といったようなことは、これは文字どおり国会に御報告を申し上げておるわけでございます。それは当然申し上げるべきことでございますが、具体的にある期間にこのぐらいの介入が行われたということになりますと、それは先ほど申し上げましたような理由がございますのでお許しをいただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  103. 浜田幸一

    浜田委員長 それではお諮りいたします。  本問題について理事会等で協議をしたいという旨申し出がありましたので、これを預かり、午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ────◇─────     午後一時三十三分開議
  104. 浜田幸一

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、大蔵省当局から発言を求められておりますので、これを許します。内海国際金融局長
  105. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 介入によります政府資金の対民間収支への影響、外貨準備高という国の資産の増減、さらに外国為替資金証券という形での政府債務残高の増減という、いわば介入によります国民経済への影響に関する数字につきまして、次のように御説明申し上げます。  まず、外為会計の対民間散布超の額は、昭和六十二年において五兆四千二百七十億円でございます。  外貨準備高の増は、昭和六十二年におきまして三百九十二億ドルでございます。  さらに、為券の発行残高の増は、昭和六十二年におきまして六兆一千五百億円でございます。
  106. 浜田幸一

    浜田委員長 質疑を続行いたします。永末君。
  107. 永末英一

    永末委員 ただいま六十二年度におきます外国為替資金関係の残高の説明がございました。我々が知りたかったのは、政府の為替市場に対する接近の仕方が変わってきておる、先ほど大蔵大臣もその旨を申されたわけでございます。それならば、今度はいよいよ多くの円資金を使う用意がなくてはならぬ。そうしますと、国民立場から見ますと、これはちゃんと有効に使われておるんだろうか、こういう危惧の念を持つ人もあります。したがって、この件の経緯を伺ったのでございまして、これからの為替相場に影響があることを知らせよなどというようなことを申したわけではございませんが、一応事務当局から数字の御説明がございました。大蔵大臣、腹を構えて円相場、ドル相場の安定のために努力をしていく、こういうことですね。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年十二月二十二日のG7の共同声明あるいは竹下首相、レーガン大統領のステートメント等の趣旨を踏まえまして、これ以上のドルの下落がありませんように各国との間で政策協調をし、またもし必要があれば市場において共同の行動をとる覚悟でございます。
  109. 永末英一

    永末委員 外国為替資金特別会計から出ていく円は結局市場でドルに変わりまして、そのドルが再びこの特別会計へ返ってまいりますと、政府はこれでアメリカの国債を買っておられると聞いております。  さて、日本の私企業の中ではアメリカの国債を資金運用のために買うている企業がたくさんございますね。ところが、円高すなわちドル安になりますと、私企業は決算をすると欠損になるというのでこの清算の仕方について四苦八苦をしたり、ある生命保険会社等におきましては、その加入者に対する戻し金が少なくなる、配当が少なくなるなどということが行われておる。さて、政府において、今のようなアメリカの国債を購入し、そしてそれがドル安のために非常に値打ちが下がっておる、私企業なら損である、国は一体どうなっておるのですか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国の輸入が現在でも九割方はドルをもって支払いされておりますので、我が国の外貨準備を持つ形としてはやはりドルでなければならない。これは外貨を持っておりませんと外貨準備にならぬものでございますからやはりドルを持っておる、そうしなければならないわけでございます。この会計は実は遠く申しますと、御記憶のように三百六十円の時代からできておる会計でございます。その間円が強くなってまいりましたので、この会計にはいわば評価損が累積をしておるという点は御指摘のとおりでございます。その点はまた、この会計におきましても、外国の証券を買いましたそのものが、仮にTBでございますが、落ちましたときでも同じようなことでございます。それはしかし、この会計そのものがドルを持っていませんと会計としての役割は果たせないということから、やむを得ない一種の制約であろうと考えております。  他方で、アメリカの短期証券を買いまして、そのときにどうなっておるかと申しますと、この外為会計の資金コストは外為証券でございますので、これはかなり低い資金コストでございます。それに対しまして、TBの金利がかなり高いものでございますから運用益を生じておりまして、それは毎年一般会計にある程度の繰り入れをしておる、大体こういう運営になっております。
  111. 永末英一

    永末委員 したがって、アメリカのドルの値打ちが下がっても国民には迷惑をかけていない、こういうことですか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように申し上げることができると思います。
  113. 永末英一

    永末委員 大事な国民のお金でございますから十分ひとつ慎重に、国民に損がいかないようにやっていただきたい、強く要望いたしておきます。  さて、現在のような円高でございまして、この円高のために輸出依存企業の中には壊滅的な打撃を受ける、あるいはまた地域がつぶれてしまう、非常に苦しんでいるところもございます。これは昨年以来、この不況による被害の救済につきましては全力を尽くしてやらなければならぬところであると思います。総理は、一部の業種や地域においては依然として景気は厳しく、雇用情勢も深刻であると言っておりますから、ちゃんとやっておられると思います。  さて、この円高でございますが、普通の経済なら円高は国民生活にメリット、いい影響があるべきものでございまして、現在円高のために、昨年の一人当たりの国民、国内総生産は、経済協力開発機構二十四カ国中総額も一人当たりとも今度アメリカを抜いて第二位になっておる。言うならば、極めて国民生活は豊かになっておるべきものであります。ところが、国民生活は一体実態はどうであるか。  例えば電機労連の労働者に関する調査によりますと、この円高になりましてから勤務時間も超過勤務時間も長くなった。逆に、睡眠時間や趣味や娯楽に使う時間、テレビ、新聞あるいは家族との団らんに使う時間は短くなった。別の労働者の調査によりますと、生活にゆとりを感じない人々が九割を超えておる。賃金が低いと感じておる人々は七割に達する。生活費用が高いという人々は半分近くおるわけでございまして、これは政府が円高差益の還元をやっておるということとは違う状況が一般の労働者の家庭にはあるわけでございまして、また、総理府の国民生活に関する世論調査、これによりましても、円高メリットを感じておるという人々はわずかに八・七%という回答をしておるわけでございまして、ごくわずか、十人に一人いないのです。  過般来、電気料金やガス料金は安くなりました。また、私ども委員長が申しましたように、航空運賃や国際電話、国際航空郵便の切手代などというものに対しては努力をされるようでございますが、私はきょうここにぜひ見ていただきたいものを持ってまいりました。資料を配ってください。  ただいま資料をお配りいたしましたのでそれを見ていただきたい。このパネルはそれが絵にかいてあるだけでございます。これは資料の出どころは経済企画庁の物価局の八七年物価レポートその他であります。その他の資料もございます。  そうしますと、米は十キロ当たり、日本は四千八百三十円でありますが、アメリカは千五百円、イギリスは二千九百十円、オーストラリアは八百六十円。食パン、これは小麦でつくるのでありますが、同じく十キロ、日本は三千七百四十円、アメリカは二千八百五十円、イギリスは二千五十円、オーストラリアは千二百七十円。牛肉は一キログラムが、日本が三千五百四十円、アメリカが千四百七十円、イギリスは二千百六十円、オーストラリアは六百六十円。砂糖は十キロで計算いたしますと、日本は二千六百二十円、アメリカは千六百九十円、イギリスは千三百円、オーストラリアは千円。ガソリンは十リットルで計算いたしますと、日本は千百円、アメリカは三百九十円、イギリスは八百九十円、オーストラリアは四百九十円というようなことでございまして、なぜ日本が高いか。  いろいろ理由がございますね。あるものは食管会計に入れておる。米はまだそういう国際商品ではございませんが、明らかに小麦はそうであり、したがって一般庶民の食べるパンの値段が高くなっておる。牛肉は畜産事業団、これがほとんど一手にやっている部分が多い。つまり輸入統制と価格統制をやっておる。これは今アメリカとの間の一つの問題になっておりますね。砂糖、これもまた国内産のてん菜糖との関係で糖価事業団が扱っており、すなわち価格統制が行われ、輸入砂糖につきましては調整金や関税や砂糖消費税がかかっておる。砂糖消費税は国内産にもかかっております。ガソリン、これもまた諸外国より非常に高い値段は、関税、石油税、揮発油税等がかかっておる。これが半分以上もかかっておるわけですね。  竹下総理、あなたの政府のこういう仕組みによって、これだけ他国の庶民生活よりは我々は高い生活費を払わさせられておるのであります。これらに対して、もしあなたが所信表明で言われましたように円高差益の還元をさらに進めるというならば、御方針がおありでしょう。御方針を承りたい。
  114. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私もかねて考えておりますのは、当然のこととして、今日まで我が国のいろいろな産業構造の中で生産者重視とでも申しましょうか、そこからの発想で今日に至ったものはたくさんあります。しかし、佐藤内閣以来使った言葉として、振り返れば一億二千万最終的には消費者じゃないか、こういう究極的には消費者じゃないかという考え方に基づいて、昭和四十七年から例えば農林省の農政局とか農地局がなくなって経済局とかこういうのができるようになった。それから今日に至っておるわけでございますが、まだ今おっしゃいましたように輸入統制、価格統制というようなものがある限りにおいて、今御指摘なすったような消費者の最終価格における乖離が生じておるということは私も承知をしております。  そこで、まずできるものからやらなければならぬというので電気、ガスというのが一番最初手がけられたものではなかろうか。総じて申しますと、二兆六千億でございましたか、まさにそれそのものは減税である、実質減税であるということが言えるだけに、いわば政府管理のものでないものにつきましてもそれが可能な限り消費者に還元されていくようなことを期待し、また折に触れそれが環境整備等もやっていかなければならぬ課題であるというふうに考えております。
  115. 永末英一

    永末委員 国民は自分の生活上出てくる、手にし得る物の価格というものが一番生活に響くのでございますから、これはやはり打てば響くような価格政策をとる、しっかりやっていただかなければならぬと思います。  生糸も似たようなことを昨年御質問申しましたのですが、まあ少し基準糸価が下がりましたが、なおその景況はよくありません。これは円建てですからと前の総理大臣は言っておりましたが、外国から売る場合には、それは例えば中国の糸などは世界へ売るのはドル建てで売っておるわけでございまして、我が国は円建てでやっているというだけの話でございますが、これが例えば保税糸としてやってくるのは四千円程度で入ってきます。ところが、これを我々が、例えば実需割り当てなどといって買おうとしますと二倍の八千円以上になっている。しかも実際は現在の価格安定の仕掛けからいいますと、総和は上限の一万六百円以上の値段で取引をされているのが実情でございまして、これはだれが考えてもおかしいですね。  何で現場で四千円が日本だけでこうなるのであろうか、こういうことでございまして、昨年の十月から十一月下旬、そして十二月の初旬から現在に至るまで繭糸価格安定法によって農林省が決めておる安定価格、上位価格の一方六百円を上回った値段で動いているのですね。これがおかしい。何でだろう。それなら、繭糸価格安定法の定めるところによれば、これをその以内におさめなければならぬはずでございます。法律違反の状態が続いている。しかもこれを一元化輸入でやっている事業団は六十年から国庫支出を四十四億円もらっておりますが、現在は五十六億円。いつまで続くんだと聞いてみますと七十四年まで続くというのですよ。おかしい話でございまして、これだけ高い生糸を買いながら、そして国庫支出を事業団に七十四年、まだ十年以上も保証しなければならない。政策としておかしいのじゃなかろうか。  それならこれによって養蚕家が救われ、絹業家も救われているかと調べてみますと、この一元化輸入が実施されました昭和四十九年には養蚕農家数は二十八万一千戸、現在七万四千戸、それから繭の収量は、四十九年は十万二千トン、現在は三万五千トン、製糸工場は、四十九年には四百六十三ございました。現在は百四十五に減っておるのです。生糸の生産量は、四十九年には三十一万六千俵でございましたが、十三万一千俵に現在下がっておる。つまり、このときは議員立法で御相談申しながらつくったのでございますが、この繭糸価格安定法は有効にやっておるのだろうか。生糸の問題は、単に蚕業であるのみならず日本の文化でございまして、これが衰退するというのは、この蚕の部分も製糸の部分もあるいは絹業織物の部分もえらいことでございまして、日本の文化を守るためには、この方法で、こういう傾向でいくならばつぶれてしまう。何とか考えなくちゃならぬ転回点に来ておるのではないか。自由市場がいいと主張する人もございます。それが怖いから今のような方法でやっておりますが、現状は法律で決まっております上位価格の上で相場が動いておる、こういう状況が現在でございまして、これに対してどうするのか、総理大臣の御見解を承りたい。
  116. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 繭糸価格安定法というのは私の地方も、今なくなりましたけれども、当時、私がまだ県議会議員のころでございましたが、繭糸価格安定法成立のための意見書を提出したらどうか、こういうことを議論したことがございます。したがって、この問題も今おっしゃいました矛盾がいろいろ出てまいっておりますが、やはりいかに減ったとはいえ七万四千のいわば養蚕農家というようなものが減ってきたというのも、ある意味においてはソフトランディングして構造転換をしてきたわけでございますけれども、これがやはり軟着陸する形を一つは持っていかなければならぬ。 それからいま一つの文化としての保存ということにつきますといろいろな議論があって、私自身話としてはよくわかります。すなわち、絹織物に対して物品税がかかっていないというのも、あれは文化の保存という意義から最初は行われたわけでございますけれども、この文化の問題というようなことについては、私が確たるこのような思想を持っておりますと言うだけの自信は残念ながらございません。
  117. 永末英一

    永末委員 文化論言うつもりじゃないのです。つまり長い間この蚕業、絹業というものは日本人の大きな生活の部分となり、そしていろいろなものが文化財的扱いを受けてきておる。したがって、今の政府のやり方というもので守れるのかどうか、そういう疑問を私は呈しておるわけでございまして、そういう意味合いで真剣に対処していただきたい。お答え願いたい。
  118. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ただいまの問題は御趣旨の線で私も真剣に検討をさしていただきます。
  119. 永末英一

    永末委員 税制問題に入ります。  昨年の十月十六日に「税制抜本的改革に関する方針」というものを政府は定めました。竹下新政権は十一月十二日、政府税制調査会に次のように諮問をいたしております。今後の高齢化社会の到来を展望し、長寿・福祉社会をより確実なものとして維持するため、いわゆる所得消費資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築することとし、早急に成案を得たい、こういうことでございました。  そこで、まず伺いたいのは、この長寿・福祉社会、高齢化社会の到来、これはいつどういう姿の長寿社会が来ると政府考えておるのですか。そのときにはどういう費用分担をしなけれはならぬのであるか、どう考えているのですか、これをまず伺いたい。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、ただいま六十五歳以上の老人と若い人、いわゆる生産年齢人口との比率は六・六対一でございますから、この段階ではまだ問題はないわけでございますが、二〇〇〇年になりますとその比が四対一になる、二〇一〇年には三対一になると推計をされておりますし、この推計は恐らく間違いのないところでございます。その場合に、生産年齢人口が老人を支えるということが今に比べますと非常に難しい状況になるということを基本に置いております。その場合に国民がどのぐらいの給付を求められるか、したがってそのためにどういう負担をするか等々につきましてはいろいろな選択があろうと存じますが、いずれにいたしましても、六十五歳以上ということは所得税を払うといういわゆる稼得能力が非常に小さくなっておるわけでございますから、その人たちを生産年齢人口が支えるということは大変に難しい状況になってくる。したがって、これはまだお尋ねではございませんが、今からそういうときの社会の共通の費用を全体で負担することを考える必要があるのではないか、大体そういう物の考え方でございます。
  121. 永末英一

    永末委員 今お話がございましたように、西暦二〇〇〇年とか二〇一〇年の状態をおっしゃいました。ことしは何年でしょうか。二〇〇〇年にまだ幅がありますね。十数年ある。しかるにかかわらず早急にと、こう言う。そこがよくわからない。今のように稼得者が少なくなり給付を要求する人が多くなればどういう費用分担がよろしいか、当然日本人全体でこれは考えなければならぬ問題です、おっしゃるとおり。しかし、二〇〇〇年や二〇一〇年の問題をこの一九八八年に今早急にやらなければならぬ、そこのところを説明してください。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわばあと十二年ということでございますが、私ども考えておりますと、どういう費用と給付との関連を選択するにいたしましても、どのような選択をするにいたしましても、社会保障の水準というものを非常に大きく切り下げるということば、これは我が国全体から考えまして得策でもないし、考えられることでもないと考えるにつきましては、やはり何かの形で若い人々が負担をしなければならないということはどうも避けられないことであろうと存じます。  したがいまして、十二年というとそう長い年月ではございませんで、願わくは今から広く薄く負担をしてもらうような仕組みをつくらせていただいて、その仕組みができましたならば、それならばどういう選択が可能であるかというまた政策上の決定ができるわけでございますが、その仕組みができませんと、若い人にどうして負担をしてもらえるかという答えが出てまいらない。そういうことから考えますと、つまり制度の問題とそれから国民経済における負担の問題と、両方を決めますのに十二年というものは決してもう長い年月ではないように考えるわけでございます。
  123. 永末英一

    永末委員 制度はできますとすぐ行われるわけですね。広く薄くなんというようなことを言っておられるのは間接税のことを頭に描いておられると思いますが、大蔵大臣間接税は稼得能力のない年寄りも払うのですよ、これは。若い人だけ払うのじゃないのですよ。これを考えていただかなくちゃならないし、十二年も準備する、それとも何ですか、間接税をつくっておいて、そして十二年後には間接税率をぼんと上げよう、こういうことですか、あなたのお考えは。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申し上げておるわけではありませんで、まず第一に、まさに消費税は老若男女問わず負担をするものでございますので、老人になりまして所得を得る稼得能力がなくなりましても、消費という行為は当然ございますから、そういう意味で薄い負担であれば、やはりそういう方々にもしてもらいませんと、その分が全部若い人の、生産年齢人口の所得税にかかったのではこれは大変であらうと思うわけでございます。第二に、そのときになって仕組みをつくって増税をするか、そういう意味ではございませんで、まず広く薄く負担をしていただくという制度が片っ方ででき上がり、他方で、したがってそれならばどのような社会保障、どういう負担とどういう給付の社会保障の制度が確立できるかという、そっちの制度とも、そういうことを申し上げようとしたわけでございます。
  125. 永末英一

    永末委員 我々もそれを言うておるのです。老齢化社会は来る。その老齢化社会は二〇〇〇年がいいか二〇〇五年がいいか、ある目標を定めて、そこで一体それから以後どういうような人口年齢構成になるか。そのときに、自分で所得を稼ぎ得る人々の層と数と、そしてそれによって支えられる老齢者の層、人数、こういうものを勘案し、そして現在ある年金制度、医療保険の制度、そしてまた企業もいろいろ年金制度があり、外国ではいろいろの個人の積立金制度に対する免税措置も認めているところがございます。そして国庫、財政でやらなければならぬ部分もある。まず、そのいわゆるあなた方の言う長寿・福祉社会、こういうもののグランドデザインと申しますか青写真と申しますか、それを国民に示して、これだからこの部分は税金でお願いしなくちゃならぬ、現在の税制が続くとこういうことになる、こうやって給付と負担のあり方、そのときの老齢化社会の姿、これを示されないで何か早急に広く薄い税金かけるんだという、これはいただけませんよ。大蔵大臣の御意見承りましたが、竹下さん、あなたはどう考えているのですか。
  126. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今朝来、昭和五十四年の決議の話が出ましたが、あのとき議論してつくったのは、国民福祉の充実は重要である、したがって、国民福祉充実のためには安定財源が必要である、こういう前提になっておるわけでありますが、その考え財政再建に関する決議のときの考えでありますから別といたしまして、私は、ちょっと例示をさせていただきますならば、我が方の年金問題は、各党の専門家は集まっていただいて随分議論してできた、そして厚生年金の積み立てをずっとやっておる。  この話をヨーロッパの大蔵大臣諸君と話すと、賦課方式から考えてみれば、毎年入ってくるこれは歳入財源じゃないか、だから使った方がいいじゃないか、いや、そんなことはない、やっぱり二十一世紀を展望して今から有利運用したりしていろいろ構築しておるんだ、これは与野党で一緒になってつくった案だ、こう一生懸命で説明をしました。  したがって、やっぱりあの年金制度というのは、各党の代表者で一生懸命二夏ぐらいやっていただいてできた。やはりそこへ視点を置いた、いわば長寿・福祉社会というものに向けて構築されていくのが私は妥当ではないかということを、年金、今完全に十分だとは申しませんけれども、あれこそ与野党合同の作品であると思うだけに、私はそのことをむしろ外国の諸君に誇りを持って言っておったから、だからこそやっぱりそういう長期的展望に立った一つ議論は今始め、可能な限り早い結論を出すというのが現実的ではなかろうかというふうに考えます。
  127. 永末英一

    永末委員 年金のとき、私も民社党の国対委員長をしておりまして御相談をいたしました。あのときも、とりあえずばらばらの年金を一本化し、そうして基礎年金をつくって、そしてあとは所得に応じた年金をつけるようにその枠組みの基礎をつくろうということでございまして、今私が提起しておる問題、すなわち何年ごろにどういう人口構成になり、そのときの所得構造はどうであり、そして給付と負担はどうであるか。これは年金のみならず、医療もその他いろいろ問題がございます。そこまできちんとやった年金ではございません。年金関係のいろいろな金の固まりを見ながら、これをひとつ一本化してならしていくための出発点をつくろう、こういう苦労をいたしました。  しかし今や、今までの税制を変えてあなた方は間接税導入をやろうとしている。そのときに、この長寿・福祉社会だの老齢化社会の到来などと言葉をされるものだから、まずどういう老齢化社会をお考え国民に明らかにしていただきたいと私は申し上げておるのであって、それを言うてくださいよ。それをしなければ進まぬじゃないですか。
  128. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣からお答えがありましたような統計数字を見ましても、そういう状態が確実に予測される。こういう前提の上に立った場合の、恐らく永末さんは、ではその際の医療のグランドデザインというお言葉をお使いになりましたが、どうなるんだ、年金はどうなるんだ、それを総合した青写真が先ではないか、こういうふうに仮に私が受けとめさしていただいたといたします。しかし、安定した財源というものがあれば、さて負担と給付の問題でどうしていくかという、初めて私はそういう議論というものが展開していくんじゃないか。  それから年金の場合は、若干永末さんは遠慮しておっしゃっているのですよ。私は、ただ出発点をつくっただけじゃない、あんな立派な議論はいつも国会で行われて、個別におやりになっていただければすばらしいものじゃないかと今でも評価しております。
  129. 永末英一

    永末委員 必ず老齢化社会は来ます。皆わかっているわけだ。その負担をどうやってやろうか、こういうことは皆わかっている。ただ、十二年前に早く間接税というものをつくらなければこの問題の費用負担がわかりませんか。今あなたも言われたように、年金の問題、医療の問題、その他の問題いろいろございます。それに対する高齢者はどうそれを消化していくか、いろいろな苦労をしているわけだ。昨年の利子課税のときでも、六十五歳以上にはマル優廃止というものをやめてお認めになった、あなた方も。それはやはり老齢者に対して、高齢者に対してどうするかという一つの配慮のあらわれである。だとするならば、もし間接税のことをあなた方が口にするのなら、この新しい我々が迎えようとする高齢化社会はこうなんだということをお示しにならなければ、対応ができないではないですか。まず取る金を取ってから考えようという、そんなことがありますかね。
  130. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 だんだん議論をしておりますと、何か私の思い違いなら幸いでございますが、いわば福祉目的税的なことを念頭に置きながらの議論は巻き込まれていっちゃならぬなと私も率直に思いました。私自身、五十四年に議論をしましたときに、福祉目的税的な感覚でもって勉強したことも確かにございます。これは野党の先生方ともそういうことも議論してみたことがございますが、今福祉目的税として考えておるわけではございません。  いずれにせよ、そういう時代がやってくる。それにはやはり安定した財源が必要だ。だから間接税ではなくして安定的な財源というものを、しかも、ほうはいとして起こったのは、不公平税制の是正というところから税制改革が持ち上がったわけでございますから、その中で、いわば所得に対する負担と消費に対する負担はいかにあるべきかという税理論の根本にさかのぼって議論して、再び廃案にならないようなものをつくっていこう、こういう基本的な考え方でございますので、福祉目的税的に、私が間違いでありましたらお断りしますが、そういう議論が先行しておるというわけでは必ずしもございません。
  131. 永末英一

    永末委員 私が提起しましたのは、あなたが政府の税調へ諮問された。それに二つのことが書いてあるわけだ。一つは高齢化社会が来るからということと、一つは今の不公正と不公平感ですな、総理大臣の言葉をかりますと。これを是正するために所得資産消費均衡のとれた税体系、二つのことを言っておられる。私は、まず最初の問題、不公正感をなくする、いわば不公平税制を是正する。賛成だ。これはこれから提案いたします。しかし、まず第一に、高齢化社会の到来などと言われるなら、どんなことを考えておられるのか、これはお示し願わなければ進めませんよ。どうですか、委員長。これは一つの要素でしょう。  もう一つ不公平税制の是正だ。これはこれからやりますよ。しかし、高齢化社会の到来と言うておられるのにその姿が見えない。何も二十年後の高齢者の比率だけではだめだ。そのときの負担をも今我々は考えなくちゃならぬのだから、これはやっぱりちゃんと示してくださいよ。それを求めます。
  132. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 統計的にこういう状態になります、こう申しておるわけでございます。その際の医療はどうなります、年金はどうなります。で、年金につきましては長期総合福祉計画というものが一応ございますが、要は今おっしゃったように、不公平感が多いから昭和二十五年のシャウプ以来の改革をやろうじゃないかというのがほうはいとして起きてきた税制改革へのこれこそ基礎の一つであろう。  もう一つは、今度は、税制というものはそうした不公平税制の是正があるが、本来あるべき姿というものがあるはずだ。それは可能な限り安定財源の確保が好ましいという形において、不公平とされておる直間の問題とか、そうした問題を含め、安定した財源への議論が今なされておる、きょうもなされておる、このように私は考えております。
  133. 永末英一

    永末委員 私は、不公平のあらわれが直間なんて考えておりません。直接税と間接税比率は今確かにありますよ。しかし、七対三が不公平で六対四が公正だ、そんなことはありません。直間比率の問題は別の観点から考えたらいいと思っております。議長の裁定は、あのときのいろいろな議論があったのでああいう言葉を使われました。我我は一番初めから、直間比率を五分五分にせよなんというようなことを言うたことはございませんよ。  私が提起しておるのは、高齢化社会の到来についてあなた方がちゃんとしたビジョン、計画を持って、だからこそ、今こそ安定的な財源が必要だと言われてきたでしょう。それならその高齢化社会の中身をちゃんと国民に示せと言うておる。どうして示されないのですか。二〇〇〇年になって年齢構成で四対一になる、二〇一〇年で三対一になる。わかっていますよ、そんなこと。そこに問題があるのではなくて、それに対する費用分担をどうするかということが我々の問題ではありませんか。だからその件に関する青写真をちゃんと示してくれ。無理ですか、ないのですか。ないのに今から間接税をやろうというのですか。お答え願いたい。
  134. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 高齢化社会についてのお尋ねでございますので、私からお答えさせていただきます。(永末委員「費用の方を言うてくださいよ。年齢構造だけじゃだめですよ」と呼ぶ)はい。  高齢化の姿でございますけれども、我が国は、世界に比しまして約二倍から三倍のスピードで高齢化が進んでいるわけでございます。高齢化率で申し上げますと、現在の一〇・三%の高齢化率が一一・九、一四・一、一六・三ということに二十一世紀に相なりまして、昭和九十五年のピーク時には二三・六になります。それに従いまして、六十五歳以上の人口は千二百万人から千五百万人、千八百万人、それから二千百万人に二十一世紀に相なりまして、ピーク時には三千二百万人ということになるわけでございます。これに従いまして社会保障の経費、年金、医療等の経費は、いろいろ効率化、合理化の努力をいたしましてもふえざるを得ないと厚生省は考えておるわけでございます。  ちなみに、その規模がどのぐらいになるかということを試算いたしておるわけでございますけれども、社会保障給付費の対国民所得比でございますけれども、現在一五%程度占めているものが、老人人口が二倍になります昭和八十五年におきまして、対国民所得比で二四・五ないし二七%程度と考えておりまして、昭和八十五年には、国民所得の約四分の一程度が社会保障給付費として必要になるというふうに推計をいたしておる次第でございます。
  135. 永末英一

    永末委員 あなた方の方で六十一年の四月八日にそんな似たような数字を出しておりますね。それだけでわかりますか。それでどういう費用分担があり、どれだけのものを財政でやらなければならぬか。昨日、宮澤大蔵大臣は我が野田委員の質問に答えまして、いいこと言うてますな。同じような趣旨の質問に対して、それは国民の選択でございます。どういう給付でどういう負担であるか、そのときにいいこと言われましたな。やがて高齢化社会が実現する、そのときかなりの部分財政が担わなければならぬ。やがてと、かなりなんだな。これをちょっと明確にしてもらわなければ、一体どういう負担をしなければならぬかわかりませんよ。まずこれを明らかにしていただきたい。同じベースですからね。そうして考えれば別に大げんかする必要はないのですが、これを不明にしたまま高齢化社会を材料にして税制改革の問題に入れない。不公平税制だけですか。これも、あるのでしょう。あるのなら、これの目標をちゃんと示してください。どうですか、委員長
  136. 浜田幸一

    浜田委員長 ただいまの質問につきましては、後刻、永末君の質問に対して的確に答弁させるよう委員長が配慮いたしますので、次の質問にお入りいただきたいと思います。
  137. 永末英一

    永末委員 この問題は国民ひとしく知りたがっている問題だと思いますので、委員長におきましては十分ひとつ政府を督励して、国民にわかる目標を示していただきたい。強く要望しておきます。
  138. 浜田幸一

    浜田委員長 承りました。
  139. 永末英一

    永末委員 さて、そういう前途がわからぬものですからいろいろな問題が起こるんですね。医療保険の話にいたしましても、国保の財政赤字をだれが持つかでことしも苦労いたしまして、国保関係の予算ができております。これもどうやっていくかという筋道がはっきりしないものだから、今の財政赤字をどこでツケ回すかということの問題になってしまう、これはやっぱり考えてもらわなければいけませんですね。  それに関連いたしまして一つ伺っておきたいのは、昨年十二月、中央社会保険医療協議会、中医協で二年ぶりに診療報酬が〇・五%程度上がりました。国民の一人としてこれを見ておりますと、医科は上がりましたが、歯科は上がっていないのですね。どうして一緒に上げないのだろう、こういうことを感じました。そこで、上げるならば同じように上げていくのが当然であるし、どうしてこういうへんぱなことが行われておるのかお伺いをいたしたい。
  140. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 お尋ねの歯科診療報酬についてでございますが、これはさまざまな経緯がございまして今回のような取り扱いとなっておるわけでございますが、一日も早く関係者の間で合意ができまして、中医協の結論を得て、円滑な改定が実施されるよう努力を惜しまない所存でございます。
  141. 永末英一

    永末委員 この問題の底に、我が国の診療報酬に関しまして医師の技術料というのは少ないのですね、これはソフトですから。わかっているものの代金はわかるけれども、技術料の算定が非常に少ない。例えば、これは医にも歯にもあることですが、歯医者で言いますと総入歯と称しておるもの、これは日本の場合ですと、医師の技術料は総費用の三七%で、中身をつくるのが六三%。西ドイツでは逆に医師の技術料の方が六七%で、中身をつくっているのが三三%。スウェーデンでは大体半々でございますが、そういうぐあいに、日本は医師の技能、この技能、技術に関する報酬が少ないために今のようないろいろなトラブルが起きてくる。だから、医にも歯にもこういう技術料の評価を的確に診療報酬体系の中でやれという議論はずっと長い間あるわけでございまして、私はこれを中心に考えていかねばならぬ。  これは財政と関係ございますが、しかし先ほどの老齢化社会の費用分担、ここにもあるわけだね、どういう形にしてくれるんだ。金がなければ高齢化社会の高齢者にすぐ自己負担を上げるとか、あんなことばかり考えているでしょう。それじゃ安心して年寄りになれませんよ。皆さん皆年寄りになるのですよ。だからこの問題一つにもあらわれている。お答え願いたい、技術料を中心に考えていくと。——大臣、大臣の答弁が欲しいんだよ。局長なんかいいですよ。
  142. 浜田幸一

    浜田委員長 お腹立ちなく、しばらくお聞きください。
  143. 下村健

    ○下村政府委員 診療報酬の上で技術料を重視する方向で考えるべきだという御意見でございます。私どもといたしましては、技術料重視ということにつきましては、医科につきましても歯科につきましても基本的にはそういう考え方で、診療報酬改定の都度、新しい技術の評価というふうなことも含めまして努力をいたしているわけでございますが、今後もそういう方針で進めてまいりたいと思っております。
  144. 永末英一

    永末委員 厚生大臣、それでよろしいな。
  145. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 そのような方向で努力いたしたいと思います。
  146. 永末英一

    永末委員 せっかく十分な努力を要請しておきます。  さて、所得税でございますが、先ほど述べましたように、我が国は今内需拡大ということを迫られておる。この内需拡大の意味でございますが、今まで我が国は、貿易立国ということで一生懸命、資源がございませんから、輸入して加工して売り出してきた。いわば他の国を巻き込む形で進んでまいった。これで経済大国になってきましたが、片や貿易摩擦が起こっていろいろな問題が起きている。どうするのか。今、この貿易摩擦をやめさせるために、声を静めるために内需振興と言っているが、そうだろうか。一歩下がって、我々は今、敗戦後の荒れ果てた経済からやってきたこの道がなお続けられるのか。少し内需拡大をすれば、また我々が貿易立国として外の国を巻き込むような形でいけるんだろうか。先ほど触れました開発援助、この問題もこれに絡んでおるわけでございます。  そうしますと、今私ども民社党としましては、内需拡大というのはこれからの国際社会に対する我が国の国の方向というものを示している重要なものではないか。つまり、他国を巻き込まないで我々の国の経済、これをちゃんとしていかねばならぬ、そういう課題がある。基本的には資源を輸入し加工して売らねばなりませんが、それだけではなくて、そういう我々が自己完結した国をやっていく。そのための内需拡大といえば、国民の一人一人が自分で使い得る金、まあ可処分所得という言葉がございますが、使い得る金を十分持っていることが必要である。  そういう目から現在の所得税法、税率を見ますとまことに厳しい状態でございまして、所得税減税というのは、国民の中堅所得者以下の人々に対してもっと可処分所得を持たす、これが最大の目標であって、このことをやることが内需拡大、内需振興の柱であると私は思いますが、総理大臣、どう思いますか。
  147. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 可処分所得がふえていくというのは、それが消費を刺激するわけでございます。したがって、これが内需拡大の一つの大きな柱であるということは私も承知いたしておるところであります。
  148. 永末英一

    永末委員 この不公平税制の是正、人々の税に、対する不公平感の是正、こういうことになりますと、まず一生懸命額に汗して働いて勤労で所得を受けている人、この人に、おれは十分に働いただけ報われておるんだ、税はそうむちゃくちゃに取られていないんだ、まずこの感じを与えることが政治として重大だと思いますが、あなたもそう思いますか。
  149. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その考え方は私も一緒です。
  150. 永末英一

    永末委員 そして、税を払う場合には能力のある者から取るのであって、能力のない者から取ったんじゃかないませんわね。お金があるから国にもそのお金の一部分を出して税金を納めよう、こういうのであって、金のない人から取ろうなんていうようなことになるとえらいことになる。応能負担という言葉がございますが、あなたはこれは賛成ですか。
  151. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 応能負担とか応能主義とかいう言葉を知っておりますが、ちょうど昭和二十三年に時の自由党の青年代議士原健三郎先生が、今永末先生のおっしゃったと同じ議論を取引高税のときにしていらっしゃいます。それで、お答えなすったのは時の労働大臣加藤勘十大先輩でありまして、私もその速記録を絶えず演説に使いますのでよく読んでおりますので、今その当時を思い出しましたが、おっしゃる応能主義、応能負担、これは私も承知いたしております。
  152. 永末英一

    永末委員 承知しているじゃいかぬのですよ、総理大臣。承知しておられると思うから聞いたんですが、そのとおりやりますと言うてください。
  153. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その永末先輩の論理の誘導の仕方が、したがって逆進性のある間接税はやるべきでない、こういうところへ誘導されてはいけないという考え方でありますが、応益負担と応能負担というものは私もしかと承知しております。
  154. 永末英一

    永末委員 承知をしておったらやらないけませんわね。知りて行わざるはという言葉御存じですな。  さて、我が国の雇用労働者、一生懸命働いておる人々の所得は一体どういう勢いで伸びてきておるかと調査をしてみますと、びっくりしましてね。六十年度が全部の費用で、これは経済企画庁、中尾さんのところだ。それの国民経済計算による数字でございますが、五十九年度が百六十六兆円、六十年度が百七十五兆円、六十一年度が百八十三兆円、六十二年度が百九十一兆円。膨れている、増加した率が十兆円はないんです。  ところで、例えば株式はどうなっているかと似たようなことを調べてみますと、五十八年から五十九年へ向けて、これも同じ経済企画庁、国民経済計算でございますが、四十三兆円ふえておるんですな、株式の資産残高。それから六十年と五十九年との差は三十八兆円、それから六十一年と六十年の差は百三十三兆円とふえておるんですね、資産残高。六十二年は、残念ながら経済企画庁がまだ計算していないというので、数字をいただくことができません。できませんが、例えば逆に政府が予算案、並びに決算もございますが、出しておる有価証券取引税、これを言うならば、その税額から取引高、取引の全貌を推察をいたしますと、今一万分の五十五ですから推察をいたしますと、当たらずといえども遠からざる数字というのは、六十年度には一千七十二兆円程度の取引があったと思われる。これは予算から出てくる数字の逆算ですからね。それから六十一年度は一千七百六十二兆円の規模の取引があったと思われる。六十二年度はわかりませんが、今のような計算で推定いたしますと、二千六百四十九兆円の取引があったと思われる。六十三年度はこれからですからわかりませんが、まあまあ六十二年度の有価証券取引税が一兆一千七百九十億円だということになりまして、今度の予算が一兆六千億円ですから、推察しますとまあ二千五百兆円ぐらいあるだろう、これからですから動きますが。こういう大きな取引がある。  これがそれぞれまた資産残高に出てきましょうが、土地はどうかといえば、五十九年は五十八年に比べて四十五兆円、六十年は五十九年に比べて七十五兆円、六十一年は六十年に比べまして二百四十七兆円ふえておる。これらは一体これを持たぬ人々、株を持たない、株取引もしてない、土地を持たない人から見ますと、こういうふえておるところから政府はちゃんと税金を取ってくれているのだろうか。一年に八兆円、九兆円しかふえない雇用者が一〇〇%つかまえられて、月給袋もらうときに完全に税金払えと。ところが、自分たちはそんな少ないのだが、土地や株の取引では大きな金が動いておる、もうかっているに違いない、これをつかまえておるのだろうか、非常に心配するわけですね。この辺はやはり明らかに国民に示していただくことが税の不公正を正す重要なポイントだと私は思います。そう思いませんか。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりと思います。
  156. 永末英一

    永末委員 サラリーマンはこんなことになっているのですよ。昭和五十二年から昭和六十二年までの十年間で自分たちの月給は三七・九%伸びたが、税金は九八・五%伸びておる、こういう数字が出ておるのですね。自主営業者はどうか、申告納税の方はどうかというと、この十年間でふえたのが三〇・一%ですが税金は三六・一、ちょっと多い。しかし大体とんとんですね。ふえたと思われる金が税金に、比率としてはですよ。ところがサラリーマンの方は、自分の所得がふえた割に税金がぐんと上がっている。これが累進税率のなせるわざですね。これははっきりしておる。そういう意味合いで、私は所得減税というものの必要性、これが不公正税制を正す一番のものだと思います。  さてそこで、株式について現在原則非課税でやっております。六十二年度も、改めましたと言うけれども原則は変わってないのでありまして、これは今度変えますね、原則課税でやるつもりですね、総理大臣。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来、株式の譲渡所得所得税対象になるべきものでございますが、御承知のような事情からそれがなかなか全面的に行政対象になりかねておりまして、昨年お願いをいたしまして対象を強化したところでございます。  残りました問題は、キャピタルゲインキャピタルロス等を間違いなく、行き当たりばったりでなく、どのようにしたら把握ができてそれを行政対象にできるか、そこのところの方策いかん、仕組みいかんというところになっておりまして、課税をするのが原則であるということは御指摘のとおりでございます。
  158. 永末英一

    永末委員 これはぜひ原則課税にしてやっていただきたい。不公正を正す一番目についておる一つがこれでございます。  竹下総裁、あなたのところの政調会長は、原則課税にしたら株が下落して困るんだ、そんなことはしちゃいかぬようなことを新聞に出しておりましたが、あんなことを信じますか。
  159. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる所得税法における所得の種類を十種類といたしますと、その中の譲渡所得の中にある一つキャピタルゲイン課税である。したがって、譲渡所得というものは所得に着目するというのは当然のことでございますが、いわば特例としてそれが制限が付されておる。かつては五十と二十、今は三十と十二でございましたか、そういう経過を経ておりますが、キャピタルゲイン課税というもののむしろ難しさというのは、キャピタルロスとの計算をどうするかとか、それからもう一つは、いわゆる背番号制度とでも申しましょうか、そういうことをどうするかというような議論の方が大変かまびすしい議論であって、それが直ちに株の下落につながるというふうには私は理解しておりません。
  160. 永末英一

    永末委員 株の取引をする人は、あらゆる条件を引き受けて、それを乗り越えて商売をやっているのですからね。何かやったら下がる、そんなものじゃないんじゃないですか。賢いですよ、みんな。だから、今おっしゃったように、ポイントはキャピタルゲインというならロスをどうするか、正確につかまえるならば番号制度を入れなければならぬ、これをどうするかはございますが、それをあなたは乗り越えて、やはりこの際この不公正を直す一番のポイントとしてキャピタルゲイン課税をします、この方針をやはり明示をしていただきたい。  この一月の十日の朝日新聞を見ておりまして、小倉武一政府税調会長との一問一答が載って、読んでおりましてちょっとびっくりしたことがあるのです。「有価証券売却益の原則非課税という不公平——いままで手つかずだった本当の理由は何ですか。」という問いに対して、この人はこういうことを答えておられる。「大きな声では言えないが、株でかせいで政治資金とかにしている人が困っちゃうんじゃないか、と。それが本当かウソかはわからんがね。」こうおっしゃっている。それはようわかりません、僕は株をしたことがないので。  ところがけさの新聞によりますと、竹下総裁、あなたのところの議員、しかも大蔵省の事務次官をされた相沢さんが、今の原則非課税であるが申告しなさいという限度を超えて株の取引をされまして、そして二億円以上の申告漏れがあった。これを修正申告しておられた。相沢さんは現在本院の法務委員長というわけで、法律を厳正に守っていくそのナンバーワンでございまして、これは自民党総裁としてどう思われますか。
  161. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる税務当局自身の言葉をかりますならば、個別案件について触れるわけにはまいりません、こういうのが原則であろうと思います。  今おっしゃった政治問題でございますが、これは今報告がありましたのは、本日午前二時、安倍幹事長に対し法務委員長辞任の意向を伝えられたという報告は受けておりますが、事実確認はまだいたしておりません。——大変失礼しました。午前二時じゃございません。午後二時過ぎ、こういうことでございます。
  162. 永末英一

    永末委員 午前二時というのでびっくりしたのですが、午後二時、承りました。  つまり、それほど国民の中にはキャピタルゲインに対する課税の公正というものを望んでおると私は思うのですね。したがって、この際いろいろな問題ございましょうが、ぜひキャピタルゲインに対する原則課税、これを実現すると御確約を願いたい。
  163. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる所得税法上の中における譲渡所得というものがそもそも原則課税でございますので、税制調査会で今審議しておる段階に私から中身に至った議論はできませんが、御趣旨のような議論があったということは、これこそ私も承知させていただいたというふうにお答えをすべきだと思います。
  164. 永末英一

    永末委員 あなたは予見を与えるようなことは言わぬとおっしゃるが、あなたの周辺の自民党のれっきとした幹部に予見を与えるようなことを言わせておいていいのですか。それはどうですかね。
  165. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これはおのずからそこに節度というものがございまして、私は、大改正といえば五十九年度税制改正が近いところでは大改正でございましょうか、そうして今日に至っておるということになりますならば、税制調査会に対しては予見を挟まないという姿勢をとってまいりました。それは人それぞれが見識、学問を披瀝していろいろな議論をされるというのは、税制論議を高める上にも私はそれは好ましいことじゃないかな、国会などでうんと税の論議が今のようになされていくというのは大変好ましいというふうに思っております。
  166. 永末英一

    永末委員 キャピタルゲインにつきましては十分ひとつ大胆に取り組んでいただきたい。これは今回におきます税制抜本改革の一つの大きな目でございますので、やっていただきたいと要請をしておきます。  土地問題にも触れたいのでありますが、先般の国会でいろいろ問題になりました。土地の問題は、まず土地の価格を安くすることを政府の努力でどこまでやるかということが問題でございまして、なかなかこれが難しい。同時に税制の面でどうするか、あちらこちらの新聞の社説等で土地の利益に対する課税が甘いんじゃないかというようないろいろな記事が出まして、我々も胸を打たれてどういう議論かというて見るのでございますが、しかし同時に、いろいろな東京の土地の価格の上昇が地方へ移りまして、路線価がずっと高くなってくる。  そうしますとそれが、ことしは固定資産税の評価がえの期日でございますから、普通の庶民は固定資産税払えずに、払おうと思ったら土地を売らなくちゃならない、おれはそこに住めなくなるという心配をする人もある。また、それらについて相続が起こりますと、普通の庶民が、相続税が土地の評価が高いために払えずに売りっ放さなければならぬという人も心配をしておるし、また、事業をしておる人で中小企業で、その土地の評価の高いために事業用の土地を売らなければ承継ができない、どうするのか心配しておる人がある。  すなわち、土地問題には二つあるわけです。投機でむちゃくちゃに売ってもうけている人々と、そうでなくて、営々辛苦の結果わずかな庶民生活の中心とし、事業の中心としてちっちゃな土地を持っておる人と、これは区別して税制も対応しなければならぬと思いますが、いかがですか。
  167. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはまことにそのとおりでございます。  土地の問題は、重課をいたしますと、やりようを間違えますと出るべき土地が出てこないということになります、譲渡所得につきましては。それから、非常に軽課をいたしますと、今度は土地が有利な投資物件であるということになりまして、土地は対する需要をつくり出してしまうということがございまして、事を分けまして、長期、短期、またその場合かなりきめ細かに、傾向的でなく税制をつくっていく必要がございます。
  168. 永末英一

    永末委員 土地問題は、慎重にかつ大胆にひとつやっていただきたい。  税金の中で、昨年の十一月十一日に、日本とECのアルコール飲料問題ということに関しましてガットの理事会の決定が出ました。それ以前から酒税改正はいろいろやっておられたようでございますが、一応案がまとまりつつあると聞いております。  二月の二日には、日米農産物に関する十二品目の問題についてガットの理事会の決定があり、これからは日本の農業者も非常に厳しいところに差しかかってくるのでありますが、この農産物の問題はいろいろ世論の問題になっております。ところが、アルコール飲料の問題は余りどうも世論化していない。アルコールの好きなたくさんの日本人にとっては、これは大問題でございます。  というのは、ECの方は、ともかく自分のところの酒を売り込むために、おまえのところは無差別の原則をやっておらぬ、殊に税制で差別するじゃないかという理由で攻め込んできておる。大蔵省側の対応は、それならひとつ今までの従価税をやめる、従量税にする、税率をひとつ丸めて一本にする。安くなるならいいのですが、高くなる。その高くなる方は、二級酒と称せられた大衆酒のところでこれが高くなるのですね。そうしますと、これは今まで安心して安い酒を、わずかの給料でございまして、先ほど紹介しましたように、団らんの時間もないが帰ってきたらちょっとでも安いしょうちゅうでも飲もうか、二級のウイスキーでも水割りで飲もうか、こう思っている人々が、がっと上げられたら困りますね。したがって、この大衆酒を守る、こういう気持ちが酒税の改正にはなくてはならぬと思いますが、いかがですか。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、ウイスキーの級別を廃止してくれというようなことがございまして、そういう方向を検討しておるわけでございます。それから、及びしょうちゅうの税率がいかにも安過ぎるということも検討の対象でございます。とは申しましても、上げるといいましても限度がございます。しょうちゅうを今永末委員の言われるようにどうしても必要とされるという階層に対して、そんなにむやみにしょうちゅうの値上げができるわけではございませんで、そこは考えさせていただきたいと思います。
  170. 永末英一

    永末委員 大衆酒を守るために全力を尽くしてください。私も大衆酒の愛好家であります。  さて、この酒税の改正に、あなた方の案を見ると気になることが一つある。従価税を廃して従量税にする。それはかつて、売上税が昨年問題になったときは、売上税をやるんだからそれと一緒にやる、こういう案がございました。今度は間接税と一緒にやる、こういうことが書いてあるのですね。間接税と一緒にやるのですか。問題は違うのじゃないですか、酒税の改正と間接税導入とは。ところが、あなたの方は間接税導入と一緒にこの酒税の改正をやろう。どっちが本当ですか。別々にやられますか。
  171. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の従価税の廃止につきましては、いずれにいたしましても先般御提案したところでございますし、今般税制改正要綱として閣議決定をお願いをいたしております酒税改正の基本方針でも、従価税を廃止するという点につきましては既に明確にされておるところでございますので、この点については、今後の改革作業とは一応切り離されておるところでございます。
  172. 永末英一

    永末委員 一応今後のやつと切り離すのですな。大蔵大臣、切り離しますね。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 切り離します。
  174. 永末英一

    永末委員 それならば間接税論議は別でありますが、竹下さん、あなたのところの幹事長やら何か、よそで今国会中に間接税の法案を出すんだ出すんだと言っていますな。あなたもそのつもりですか。
  175. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 議院運営委員会へ提示しております法案調べにおきましては、検討中のものという中に税制の抜本改正に関する法律案というものを提示さしていただいております。なぜ検討中のものとして提示したかといえば、今税制調査会へ諮問申し上げておる、したがって、その答申がいただけたならばそれに対応しなきゃならぬという、諮問をした限りにおいては受けて立つだけの姿勢は絶えずお示し申し上げておかなければいかぬというので、あえて検討中のものということで議院運営委員会へお出ししておるということでございます。  したがって、税制調査会というのは予見を挟まないと申しましたが、私は、六十三年度税制のあり方、六十二年度税制のあり方、これは読んで字のごとく、おのずからそういうときに答申ちょうだいしますけれども、抜本ということになると、これまた何月何日までにということを期限を付すべきものでもないということでございますので、ただ精力的に審議していただいておるということに心から感謝を申し上げながら、今いつまでに答申を下さいということを言うべきでないという考え方でございますから、いつ出しますということを明確に言うわけにはまいらない、したがって検討中のもの、こうなっておるわけでございます。
  176. 永末英一

    永末委員 先ほど私は、抜本改正の基本、所得税減税キャピタルゲインへの課税、直接税間の不公平の是正という面があるではないか。あなた方の税制抜本改正の理由の一つはこれであり、あなたは半分ぐらいそうだとおっしゃった。しかし、先ほどの長寿・福祉社会を迎えるに当たっては、グランドデザインがはっきりしておる。これは後で委員長が御努力されて示していただけるだろう、我々は待っておりますが。したがって間接税問題は、あなたが諮問になった二つが合わして一本化するまでは出さぬ、出せないでしょう。片っ方だけで出してはおかしいと思いますが、そうじゃありませんか。二つのあなたの諮問が合わさってきちんとしたことにならなければ出せない問題だと私は思いますが、あなたは片っ方でも出すつもりですか。あなたの諮問がちゃんと二つながら満足せられる回答になって、それで初めて出そうというのですか。はっきりしてください。
  177. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 諮問した限りにおいては、答申があればそれを尊重して作業に入るというのは当然のことであろうと思います。答申そのものがどうであるかということの中身がはっきりしない場合に、こういうものが出てきたら採用しないとかこういうことであったらどうかとかいうのは、やはり予見の範疇に入るものじゃないかなというふうに、これはもうここのところ十年ぐらい申し上げておることでございます。
  178. 永末英一

    永末委員 我々民社党としましては、まず直接税間の不公平税制を改める、これをきちんとやって、国民がなるほど不公平税制は改められつつある、これが先であって、それから財政全体を見ていろいろなことを考えよ、これはあなたにきっちり申し上げておきます。あなたは提出時期はよう言わぬよう言わぬと言うのですが、今形式的に、諮問しているから諮問がまだ返ってこないからよう言わぬのだ、来たらやるんだ。来たらやるんじゃない、二つ諮問して一つ満足されたらやるというのだったら、諮問はいいかげんであって初めからやるつもりだ、こうなりますよ。だから聞いておるのです。わかっていますな。おわかりなら、ちょっと今の私の手順を賛成かどうか、お答え願います。
  179. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは諮問を申し上げておる、しかもその税制調査会というものの構成は、それこそ学者さんはもとよりでございますが、経済界、労働界、それはすばらしい方々のお集まりでございますので、私は、税制調査会に私が諮問したことは、その諮問の意味を踏まえて答申していただけるものであろうという期待をしております。
  180. 永末英一

    永末委員 諮問が今審議されておるようでございますが、我々も注意しておりますが、我々の手順はしかとあなたに申し上げました。  さて、あなたがこの前レーガン大統領にお会いされましたときに、一月でございますが、その前の十二月二十二日に、一つは歳出法案、長期暫定予算決議に関して修正条項があり、これはうちの委員長が本会議で申し述べましたが、いわゆる東芝に関する条項でございました。もう一つは、国務省の権限法に関する修正条項でございまして、これもこれに対してハンター下院議員が修正条項を出した。これは二十二日、上下両院を通過して大統領署名を得て成立し、発効しております。表題は「技術の不正移転に関する報告」というのでございまして、その第二項に次のような言葉がある。「国務長官は、国際諜報事案により生じた米の安全保障上の損害への補償につき、」これは賠償ですな。損害賠償につき、日本及びノルウェーも書いてございますが、「日本政府との話合いを開始する。」これについて国務長官は、本法発効百八十日後に上下両院歳出委員会に対し、その話し合いの状況について報告を提出せよ、こういうことでございまして、その前に本法発効、つまり十二月二十二日発効後三十日以内に東芝機械に対して日本政府がどういうことをやっておるか報告せよ、こうなっておる。既に二月の本日は三十日を超えておりますが、一体このことについて、アメリカの国務長官は上下両院に東芝機械に対する日本政府のやったことの調査を報告したのですか、まず伺いたい。
  181. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 報告をしておると思っておりますが、内容に関しましては我々にはまだわかっておりません。
  182. 永末英一

    永末委員 この重要なことがわからぬでいいのですか。総理大臣はレーガン大統領に会ったときにこの件について深い懸念を表明したということを出しておりますな、ディープコンサーンなんて書いてあるが。そして彼らのやっていることはこういうことをやっている、そして外務大臣はどういう報告したか知らぬ、こんなんでいいのですか、総理
  183. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 総理とレーガン大統領、あるいはまたシュルツ国務長官、さらにはカールッチ、総理大臣はあらゆる人々に対しまして東芝問題に触れておられます。ただ、今申されましたいわゆるハンター議員のそうした国務省に対する要請に関しましては、報告をすべし、その報告は外には漏らさないというふうな形になっておりますから、いかなる外国の政府といえどもこれを漏らすことあり得べからず、こういう建前でございますので、私たちもいろいろとこの点は検討しております。もちろん懸念は表明いたしております。
  184. 永末英一

    永末委員 報告の方はわからぬ。遺憾ですな、これは。しかし、この第二項のアメリカの安全保障上への損害賠償について日本政府に話し合いを開始する。話し合い来ましたか。——大臣答弁だよ。政治問題じゃないか。
  185. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お許しを得て御報告をさせていただきます。  先生今御指摘の点につきましては、まだアメリカ側から申し入れはございません。  以上でございます。
  186. 永末英一

    永末委員 あちら側の法律は、東芝機械のやった行為がアメリカの安全保障上への損害賠償の請求に値する、こういう言葉になっておるわけです。損害賠償といえば、因果関係をあっちは認めておるわけですね、損害賠償だから。それを受けてまだ話し合いはないと言うが、来るに決まっておるんだ。日本政府は一体そういう申し入れが来たときどうするのですか。因果関係を認めておるのですか、既に。竹下総理はレーガン大統領にそのことをはっきり言うたのですか。はっきりお答え願いたい。
  187. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと委員長答弁の前に。
  188. 浜田幸一

    浜田委員長 それではお願いします。——ただいま民社党永末議員の質問に対して申し入れがありました。答弁に対して不満があるので理事会において協議をしてもらいたいということでございますので、暫時休憩をして理事会を開会させていただきます。御了承願います。     午後二時五十七分休憩      ────◇─────     午後五時開議
  189. 浜田幸一

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣。
  190. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先ほど永末委員から御要請のありました二十一世紀の社会保障の展望につきましては、二〇〇〇年及び二〇一〇年の時点における老齢人口数、勤労者数及び社会保障給付費などの見通しについて、大蔵大臣とも協議の上、およその姿を予算委員会終了までに御報告申し上げるようにいたします。
  191. 浜田幸一

    浜田委員長 次に、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宇野外務大臣。
  192. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 国務省権限法ハンター修正条項のうち、第二項、すなわち「国務長官は、国際諜報事案により生じた米国の安全保障上の損害への補償につき、日本及びノルウェー政府との話し合いを開始する。同長官は、本法発効百八十日後に上下両院歳出委員会に対し、右話し合いの状況につき、とりあえずの報告を提出し、本法発効三百六十日後に最終報告を提出する。」との点に関する御質問でありました。  御指摘のとおり、本権限法は去る十二月二十二日成立いたしておりますが、今日現在、米国政府より本件についての話し合いを開始するとの申し入れには接しておりません。  なお、右に関連し、東芝機械の不正輸出とソ連潜水艦のスクリュー音の静粛化との因果関係につきお尋ねでありましたが、本件に関しましては、本委員会においても政府側よりしばしば答弁してまいりましたとおり、これまで米国から受けてきた説明等も踏まえ、政府として、具体的証拠は入手しておりませんが、濃厚な嫌疑があるとの認識は立ち至っているものでございます。  いずれにせよ、極めて高度の工作を行うことができ、潜水艦を含む海軍艦船の性能向上に利用することができる工作機械が、我が国の法令に違反してソ連は不正輸出されたこと自体が、我が国を含む西側全体の安全保障上、重大な問題であると認識いたしております。  以上でございます。
  193. 浜田幸一

    浜田委員長 質疑を続行いたします。永末君。
  194. 永末英一

    永末委員 ただいま厚生大臣のお話は、大蔵大臣と協議をしてということでございますが、あなたの方はつまり給付のことを考えている。大蔵大臣は負担の方を考えなければいけませんね。 これはきちんとまとめて本委員会に御提出を願いたい。  それから外務大臣のお話でございますが、相手方は、米国の安全保障に損害を与えた賠償と、こう言っているわけですね。あなたの御説明では、我が国を含む西側全体の安全保障と、ぼうっとしておりますが、相手の方はきちんと言ってきておる。まだ申し入れがないという話でございますが、申し入れをしてくれば極めて真剣に対処しなければならぬ問題であるから、覚悟があって対処されたい。あなたのお話を了解するわけではございません。テークノートいたしまして、時間の関係上、前へ進みます。  この際一つ総理大臣に申し上げておきたいのは、二十一世紀へ向けての今のような老齢福祉社会の大きな青写真ができる、それに向けて今から広く薄い安定財源をなどと言っておられるが、国民の反対するようなものはやらぬとおっしゃるが、国民が反対しておるかどうかは選挙をやってみなければわからぬのでありますから、我が党は、その前に必ず国民の信を問うてやるべきことである、国民に新しい負担を背負わすためにはこのことをきちんとやらなければやれないのだ、必ず信を問えということを強くあなたに申し上げて、進みます。  さて、中距離弾道弾の全廃条約は調印をされました。子細にこれを見ますと、弾頭はそのままで発射台がなくなる。果たしてこれで核兵器が全廃される方向に進むんだろうか、いや、これが全廃されることによって通常兵器のお互いの均衡にどういうような変化が起こるだろうか、いろいろな推測がございます。我が国の防衛方針は、昭和五十一年にできました「防衛計画の大綱」に基づいて今なおやっておるのでございますが、ソ連が設置いたしましたSS20というのは、五十二年に設置をされ、そして今やこれはなくなろうとしておるのでございます。我が方の防衛方針にも極めて重要な影響のあるべきものであります。さらにまた、ソ連の意図が果たしてこれから、彼らの経済事情もございましょうが、デタント、緊張緩和を目指して進むものであるかどうか、いろいろなことがございました。  それらを考えつつ、我が国の方針もまたアメリカ、ソ連、中国等の間にあり、また緊張状態の朝鮮半島を抱えている、こういうことで、重要で慎重な対処が必要でございますが、この際一つ伺っておきたいのは、この条約は、ワシントンでレーガン・ゴルバチョフ両首脳の間で調印されましたのが日本時間九日三時四十五分からでございました。  ところが、この後で、同じ日、十一時二十四分から二回にわたりまして、ソ連の四機飛んでまいりました偵察機のうち一機、バジャーTU16Jと称する航空機が九日十一時二十四分から十一分二十五秒の間沖縄の領空を侵犯をいたしました。この間、これに対して、自衛隊法により緊急発進いたしました我が方の航空機から、通告五回、警告四回、そして信号発射二回をいたしましたが、ソ連機はすべてを無視して悠々と北方に飛び去り、平壌に着陸をしたと言われております。そして、これについていろいろなことがございましたが、結局総理はこのことを了としておられますか。
  195. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この問題につきましては、今の永末さんのお考えというもの、これを受けとめなければならぬ、そういう考え方は。したがって、先般の問題、技術的ないろいろな問題もございますが、私は、自衛隊と外務省、こういうものがこれに当たった。しかし、それが仮に、仮に地上へ着陸するとかいうような場合に、いわゆる安全保障対策室というものがどういう役割を果たすべきかということで今のような考えを受けて早急に鋭意検討しておる。したがって、仮に概略を御説明するような時期があれば、それは極めて近い時期に御説明できるようになるであろう、こういうふうに思っております。
  196. 永末英一

    永末委員 我が方は、この領空侵犯機を発見いたしましてから、彼らが領空侵犯を開始するまで一時間近くの時間がかかっておる。今あなた安全保障室のことを言われましたが、安全保障室なんというのは、一体緊急のこの事態に動くような仕掛けになっておるのかどうかは疑わしいが、この際伺いたいのは、自衛隊法第八十四条によりますと、領空侵犯の航空機を発見したときは、「これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせる」のだ、こうなっている。この条文のとおり行われたとあなたは、好きな言葉ですが、認識しておられますか。
  197. 瓦力

    瓦国務大臣 ソ連軍用機の領空侵犯の問題でございますが、無線並びに視覚信号、いわゆる国際的に文言がございますが、これらをもって、これより進めば我が領空に入るということで、進路を変えろという例えば合図をするとか、さらに我が機に従え、かような合図をするとか、それぞれの信号を送り、なおかつ信号射撃を繰り返したわけでございます。  なお、ソ連機はこれらの行為を無視いたしまして領空侵犯した事案でございまして、極めて遺憾な事件、かように考えております。
  198. 永末英一

    永末委員 自衛隊法の定めるところに従って、緊急発進をいたしました我が自衛隊機は行動したと思うのです。しかし、我が自衛隊法の定めるところは、先ほど読み上げましたとおり、着陸させるか上空から退去させるかの二つでございました。したがって、伺っておるのは、経過はよろしいですよ。つまり、我が方が三兆七千億円の国民の税金からこの自衛隊を維持管理しておるわけでございますが、この領空侵犯のときには、つまりこの自衛隊法の定めておることをやれば任務完了ということで彼らは悠々とどこへ行ってもいい、こういうことを認めておられるのですか、伺いたい。
  199. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたしますが、領空侵犯措置については、先生御指摘のように……(永末委員「もう経過はいいんだよ、時間がないから」と呼ぶ)いや、経過じゃございませんで、八十四条に基づいて措置するわけでございますが、やはりその態様なり、領空侵犯が起こった時期にどういう情勢にあるか、例えば我が国周辺で武力行動の起きそうな状況にある、そういう緊迫した状況にあるか、あるいは侵犯している航空機が一機なのか編隊なのか、爆撃機なのか偵察機なのか輸送機なのか、いろいろ場合がございますが、我々としては、先ほど防衛庁長官が述べられたような措置をとり、先ほど申したように態度をしておるわけでございますから、この措置はそれなりに正しかったというように考えております。
  200. 永末英一

    永末委員 総理、あなたに伺いたいんだ。今自衛隊は我が方の法律、それに準ずる自衛隊の内規等々に従って行動しておる。国民が見たのは、それでやっておるが、領空侵犯機は悠々と目的を達してどこかへ行っちゃった、こういうことだ。この状態が何遍も続くことをあなたは認めますか、何事かしなければならぬことがあるとお考えか、それを答えていただきたい。時間がございませんから、簡単でいいですよ。
  201. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先般の措置は、おおむね適切の措置であった。しかしながら、このような情勢が、侵犯が頻々と繰り返される等の状況に応じたら、適切なさらに対応をしていかなきゃならぬというふうには考えております。
  202. 永末英一

    永末委員 頻々と起こったらじゃないですよ。既に起こっておるわけだ。そして我が方の対処の仕方もわかっておるわけだ。私は、ソ連と事を起こそうなんて一つも思いません。隣の国でございますから友好的にやりたい。しかし、それについてはソ連機は領空侵犯機を、大韓航空機は二回撃墜をしておる。そしてアメリカの旅客機は強制着陸を国後島にせしめたではありませんか。私どもは、領土を守るための厳正な任務というものは何であるかということをやはり国民の皆様にわかってもらえばこそ、防衛予算に対する支持があるんだと私は思います。だから、頻々となんて言わないで、今問題が起こっておるんだから、もう一度お考えを願いたい。
  203. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 二度にわたって侵犯したというのは重大なことであるという問題意識の上に立って、今後適切にきちんとした対応をします、こう申し上げるわけでございます。
  204. 永末英一

    永末委員 取り上げましたこの領空侵犯が二度にわたっている、それは先ほどの頻々に該当するような御解釈でございますが、要するにきちんとした体制をとっておるのが日本国であるぞ、これをやはり全世界に示しつつ、我々の防衛の基本をしゃんとしてもらわなければ、あいまいなことでやれることではございません。竹下内閣のこれは大きな背骨でございますので、しゃんとして実行をお願いしたい。  あと我が春日一幸議員から関連質問がございますので、春日議員に席を譲ります。
  205. 浜田幸一

    浜田委員長 この際、春日一幸君より関連質疑の申し出があります。永末君の持ち時間の範囲内でこれを許します。春日一幸君。
  206. 春日一幸

    春日委員 この際、私は、衆議院の解散、あわせて衆参同日選挙について、政府の所信並びに態度、方針をお尋ねしたいと思います。  まず冒頭に、一言お願い申し上げたいことは、私ども党の持ち時間は切迫いたしております。私も質問の要点をごく簡潔に絞って質問をいたしますが、総理の御答弁も、願わくば電報文程度に御集約を願ってお願いをいたしたい。  そこで、まず憲法第七条三号の規定でございますけれども、これは国事行為として天皇が内閣の助言と承認によって衆議院を解散することと規定いたしております。しかし一方、憲法四条一項におきましては、天皇は国政について権能を有しないと規定されておりますから、天皇に衆議院を解散するか否かの決定権はないものと見なければなりません。したがって、この憲法七条第三号の規定は衆議院解散権の所在を決めたものとは思いませんが、内閣、総理見解はいかがでありますか。
  207. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 電報的にお答えを努めてしようと思います。  まず、第七条の規定が、衆議院の解散権について内閣が実質的決定権を有することの根拠規定であるというのが第一であります。  このように天皇が行う衆議院の解散は、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が実質的に決定したところに従って形式的、名目的に行うものでございますから、国政に関する行為を行うこととなるものではなく、憲法第四条第一項の規定に触れるものではない、このように理解しております。
  208. 春日一幸

    春日委員 依然として意味不明でございます。  私が質問いたしておりますのは、四条一項では、天皇は国政に関して権能を有しないと規定されておりまするので、したがって、七条三号の規定なるものは、天皇に解散権があるとか、あるいは助言と承認によって云々とか、そういうものではなくして、第七条三号の規定は解散権の所在を規定したものではないと解されるが、総理見解はどうか、こういうことでございますから、どうかそれにお答えを願いたい。  なお、周辺の御説明は、あなたもベテランであり私もベテランであり、周辺のことはお互いに承知しておる。そのように思うか思わないか、御答弁願いたい。
  209. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 やはり私は形式的、名目的に行われるものであるというふうな理解の仕方で七条三号というものを読んでおります。
  210. 春日一幸

    春日委員 それでは解散権の所在についての規定ではないと解釈されるが、総理大臣の見解はどうか。解散権の所在についての規定ではないと思うがどうか。
  211. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは実質的決定権を有することの根拠規定であるというふうに私は先ほど申したわけでございます。
  212. 春日一幸

    春日委員 それじゃ、天皇に衆議院を解散する実質的権能がある、こう判断されておるのでありますか。
  213. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私が申しておりますのは、七条三号というものはいわゆる実質的な権能であるというふうに考えております。
  214. 春日一幸

    春日委員 それでは、憲法第四条一項は、「天皇は、」「国政に関する権能を有しない。」権能を有しない天皇が解散権について実質上の権能を持つ、こういうことでよろしいか。
  215. 味村治

    ○味村政府委員 憲法七条第三号は、その柱書きにおきまして、天皇は、内閣の助言と承認により、衆議院の解散を行う、こういうことを規定しているわけでございます。この規定は、憲法第三条で、天皇の行うすべての国事に関する行為については内閣の助言と承認を必要とするという規定と相まっているわけでございます。その場合、内閣の助言と承認を必要とするということは、内閣が実質的にこれを決定するということでございまして、天皇はその内閣の実質的に決定したところを形式的、名目的に行われるというふうに解釈をしているわけでございます。したがいまして、第四条の第一項には私どものような解釈は違反しないということでございます。
  216. 春日一幸

    春日委員 私が質問をしておるのは、そんなことじゃございません。  第四条一項は、「天皇は、」「国政に関する権能を有しない。」だから、七条第三号の規定は、天皇御自身に、すなわち衆議院を解散するか否かを決定する権能はない、このように解釈せなければならぬが、したがって、この第七条三号の規定は解散権の所在を規定したものではないと解釈されるがどうか、こういうことですから、いかがです。——いや、ちょっと法制局長官、君は静まれ、総理大臣に質問しているのだから。これは政治問題として、法律問題は法律家に聞く。何で来るのだ。求めていないものをどうして来るのだ。
  217. 浜田幸一

    浜田委員長 ちょっと静粛に願います。——どちらがしますか。
  218. 春日一幸

    春日委員 時間がないから、指名した人が答弁するのがしかるべきだ。法制局長官、関係ない。政治問題だ。政治論だ。
  219. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは法制問題でないとは言えないと思いますが、七条は、天皇は、内閣の助言と承認によって、国民のため、左の国事行為を行う、その第三号が「衆議院を解散すること。」そういうことであると思います。
  220. 春日一幸

    春日委員 この問題にかかわっておっては質問が先へ進みませんから。答弁は全然なっていない。釈然たり得ないのみならず、むしろ私は甚だ不満である。そして、そのような解釈こそは、我が国の民主的議会運営を大きく過たしめることになるのおそれはないかと私は非常に不安感を抱かざるを得ないのでございます。  質問を続けますけれども、次は六十九条の規定についてでございまするけれども、これは内閣不信任案が成立したとき、内閣信任案が否決されたとき、この規定でございますけれども、これは解散権の根拠を示すものとして、この条項に基づいて解散を行うことができるであろうが、しかし、憲法は解散をこの条項だけに限定していると言えるものではございません。すなわち、この条項以外の場合でも、例えば民主政治の運営上、新たに国民の総意を問う必要ありと積極的に判断される十分なる理由があるときには衆議院を解散することができるというこの解釈、これは学説的にも政治的にも法律的にもいつしか一個の定説をなして、これに基づいて現実に解散が行われております。いわゆる七条解散でございます。この解釈が七条解散に道をつけておるものと思います。  けれども、我々がここで大いに重視せなければなりませんことは、申すまでもなく、我々衆議院議員は主権者国民によって選ばれた国民代表者である。憲法は、国会国権最高の機関と位置づけておる。その国会の一院である衆議院である。その衆議院議員全員を内閣の総理大臣が一斉にその身分を剥奪する、その権限を剥奪する、一時的にしろ国会の機能を停止する、この重大な行為は、これは民主政治運営上の根本問題であるぞ。これに対しては当然公正妥当な基準と制約がなければならぬと思うが、内閣はこれについて、すなわち解散権の所在並びに解散を行う事由並びに解散権行使の制約についてどのように取り定めておるのか、御答弁願いたい、御説明願いたい。
  221. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先生御指摘になりました第六十九条解散、選択権はあります、総辞職するか解散するか。しかし、これは私は厳然と存在しておる。がしかし、この七条と六十九条問題について、これは古くて新しい問題、先生は私よりはるかに古いわけでございますが、このいろいろな議論を積み上げて今日に至った。したがいまして、やはり国会の機能を停止するという大変なことでございますから、軽々に判断すべきものではもとよりありませんが、そこに基準というものを設定するというのは非常に私は困難だというふうに考えます。
  222. 春日一幸

    春日委員 このような民主政治の運営の根幹に触れる根本問題、これについて何にも基準も制約もないということはゆゆしいことと申さなければなりません。ただいま申し上げましたように、内閣に権限があるということになるでございましょうけれども、その内閣総理大臣たるや、これは我我が国会で指名をしたのである。アメリカにおいての解散権の問題でございますけれども、主権者国民が選んだ国民の代表、それに選ばれたところの総理大臣が、それを指名する、指名された者のその身分を剥奪するというようなことは、まあ親族何々罪というようなことは言いませんけれども、とんでもないことなんだ。だから、アメリカの制度では国会を解散するなどというようなことは思いも及ばぬこと、全然そんな法令は規定されておりません。  しかるに、我が国においては解散が行われる、七条解散という解釈で行われておるが、それに対して何らの基準も制約もない。さらに端的に言うならば、内閣総理大臣の専恣的恣意によって衆議院を解散することができる、こういう結論になるが、これでは民主政治は崩壊する、あるいは権力的独裁政治にはめ込まれていくおそれなしとはしないと思うが、いかがでありますか。
  223. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私も読ませていただいたことがございますが、要するに、主人が私を、内閣総理大臣国会において指名する、その指名した主人を指名された者が首を切るということは矛盾ではないかというのは、昭和二十三年、四年の議論にたくさんあることは承知しております。したがって、それこそまさに慎重の上にも慎重を期して行うべきものが私は解散である、このように考えます。
  224. 春日一幸

    春日委員 それでは伺いますけれども、内閣がその解散権を発動する、行使するときには閣議においてどのようにしてその決定がなされますか。
  225. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は解散閣議には二回しかおりませんが、閣議に議定書を回して決定、いわゆる全会一致とでも申しましょうか、全員の同意を得て行います。
  226. 春日一幸

    春日委員 問題はそこにあると思います。旧憲法のもとにおいては、各閣僚はすなわら天皇の親任を受ける。そうして天皇に対して個々に輔弼の責任に任ずるものとされておりました。したがって、内閣総理大臣はすべての閣僚とともどもにそのような責任を連帯して負うものであり、端的に言うならば首席閣僚と言っても過言ではないと思う。  ところが、新憲法のもとにおける内閣総理大臣とここにお並びになっておる各閣僚との身分関係は、それとも全然違う。すなわち、我々が指名した内閣総理大臣が任意に任命された大臣である。しこうして、総理大臣はその罷免権をも持っておられる。かつて我々の片山内閣当時に平野農林大臣が罷免されたし、中曽根内閣のときに藤尾文部大臣が罷免されておる。だから、各閣僚には失礼かもしれませんけれども、閣僚諸公の身分は内閣総理大臣の手中にあると言ってもいい。さらに言うならば、自家薬籠中のものであると言ってもいい。だから、閣議で解散しようという発議を総理大臣が行って、そこでもしも異論のある者があったとしても、そのような者は、総理大臣が一たび解散を行おうと判断したときには、反対をしたならばそれを罷免することもできる。そうして閣議は全部一致、議決を取りつけることができる。  ところが、旧憲法時代においては一人の閣僚といえども個々にそれだけの権能を持っておるから、閣議が不一致になったときはそのままこれは総辞職に直結した。しかし、今この我が国政の根本の大問題が、今申し上げましたような実態論にかんがみて、総理大臣の専恣的な判断で、意図で解散を行うことができる。内閣という名の総理大臣の専恣的判断でも解散という我が国権の大本に関する問題がそのように行使することができることになるが、これについてただいまの御答弁によりますると、何ら内閣にもそのようなことについて基準もなく制約もない。だから総理大臣オールマイティー、こういうことになりますか。民主主義の本山とも言われるアメリカにおいては、国会を、連邦議会を解散するなんていうことはとんでもない、思いも寄らぬこととして規定されていないことが、今、日本においては規定され、しかもそれが内閣という名の総理大臣の専恣的行為によって行われるということはゆゆしいことだ。どうお考えになるか。
  227. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私もその勉強をさせられたことがございます。仮に一人が反対したといたしますならば、今春日先生の申されたとおり、いわゆる任免権があるわけでございますから、それを行使することによって、もっと極端に言えば一人になって全部を兼務してということも可能である、それだけのいわば大権でございますから慎重に慎重に、それこそたびたび申し上げますように、与えられた任期を大切に大切にすべきものである、このように考えます。
  228. 春日一幸

    春日委員 この問題について、戦後初めて憲法が公布されましたとき、憲政の神様尾崎行雄先生の本会議における演説の中にこういう記録が残されております。それは、六十九条に基づいた内閣不信任案が成立したときは、内閣は総辞職するよりほかに道のないものである、そんな内閣を解散するなんてとんでもないことだ、こういうことが尾崎先生によって論断されております。だから、今あなたのお説のように総理大臣の責任は重いので慎重に慎重にと言ったところで、尾崎先生のその演説の中には、すべて立派な人が総理大臣になるとは思うけれども、もしも悪い総理大臣がその重責を担ったときには、すなわちよこしまな判断で、党利党略、みずからの権力を強化することのために解散権もふんだんなく行っていって、そのために民主政治は結局崩壊するのおそれがある、成り立たぬ心配がある、このようは指摘されておりました。あなたは善良でよろしい。けれども制度、問題は制度である。だから、内閣総理大臣があなたのような善良無垢な人ばかりとは限らない。ということは、これは笑い事ではないけれども、二十七年の抜き打ち解散を何と見るか、あるいはあのばかやろう解散を何と見るか、これは実に、すなわち民主政治の運営上新たに国民の意見を問わなければならない事由が客観的に十分に存在すると認められるような場合とは断じがたい。そのために、あのように苫米地さんがあの七条解散は憲法違反なりと判断をして救済を求めるというか、その違憲行為をただすために裁判所に向かって違憲訴訟を提起いたしておる。問題はここにあります。  すなわち、善良にして責任感の強い、民主主義の何たるかを心得ておる総理大臣ならいいけれども、そうじゃない人が抜き打ち解散をやったり、ばかやろう解散をやったり、あるいは中曽根さんの批判をするわけではないけれども、あのとき定数是正を我々は急いで行った。あのとき総理大臣は、この定数是正法案が成立したからといって解散するなどのごときことは頭の隅っこにも考えていないと党首会談でも述べておられた。本日ここにお座りになっておる領袖諸君の中にも、大義名分のない解散は断じて許されないと言われておった。けれども、結局、我々があのような定数是正を行ったら、返す刀でずばりと解散が行われた。本会議も開かれることなくして、あの議長室において解散詔書が公布された。これを何と見るかということでございますね。お答え願いたい。
  229. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今春日先生は、いわゆる解散権と統治行為論というあの裁判のお話にもお触れになりました。そこで、私自身の理解を申し上げますならば、悪人といいますか、が総理大臣になることはないだろう。なぜならば、国権最高機関たる国会で選ぶものでございますから、それに悪人がなるであろうという仮定を置くのは、私も国会議員の一人として慎まなきゃならぬと思います。
  230. 春日一幸

    春日委員 悪人なるものの定義にはいろいろバラエティーがありまして、要するに本当に悪党的な悪人もおるし、民主主義を正当に履行しないようなのも悪人とも言えるであろう。立場によって、観点によって善悪というものの鑑別はおのずから変わってくる。だから尾崎先生が指摘されたのは、よこしまな判断で押し切っていこうとするような強引な総理大臣があらわれてきたときには処置ないことになるから、六十九条において不信任案が成立したときには内閣は総辞職する以外にほかに道はないと断じてそのように述べられておることは我々として十分教訓として受けとめて判断せなければならぬ。私が言っておるのは、そのような場合、議会制民主政治が成り立たなくなって、権力的な独裁政治にはめ込まれていくおそれがあると思うから、したがって問題は、制度としてきちっとその基準をつくり、制約を設けていかなければならぬ、このことを指摘いたしておる。  そこで、時間の関係で質問を前へ進めますけれども、話がそこへ参りましたから、いわゆる統治行為とそれから九十八条との関係でございますけれども、九十八条とは、すなわち司法、立法、行政三権全部にまたがって、この憲法に違反する行為はすべて無効であるという宣言規定でございます。そこで、あの苫米地訴訟に対して、裁判所は一審、二審を経て、最高裁の判決においてあのように判断を下しておる。というのは、解散という行為は高度の政治性を持つ、すなわち統治に関する基本的な問題である、よって裁判所の判断になじまないとか裁判権の及ばないところであるとして、これが合憲であるともあるいは違憲であるとも、判断も下すことなくしてこの訴訟を却下いたしております。  そこで問題は、このような大々問題がそのように却下されておるということは、国民は釈然たり得ないのみならず、これがそのまま容認されることによって我が国の議会制民主政治は一体どうなっていくのか、国民は不安感の中で大きな深刻ないら立ちを感じておると言わなければならない。そこで問題は、この解散が超憲法的、すなわち統治行為として超憲法的な行為だとみなされるときはどういうことになるかということなんでございますけれども、かつて超法規的行為として行政府が行った行為の中に、数年前でありましたけれども、バングラデシュのダッカにおいて、クアラルンプールにおいて航空機ハイジャック事件がありました。あのとき政府は、これは人命救助のため緊急避難行為として超法規的に、すなわちあの無法なテロリストの要求をことごとくそのまま受け入れておる。  それと同じように、一たび解散が行われたら裁判所の判断はそこへ及ばない。それは、合憲あるいは違憲の判断は及ばないと見ることは、これあたかも一たび解散が行われたならば、憲法はそれを容認するしかないということ。ということは、一たび解散が行われたらこれに対する対抗手段もないし、あるいは救済手段もない、そういうことでございましょう。一たび解散が行われて、衆議院議員が生まれてくる。その間には時間、スペースがございましょう。行政府はどんどん行政する。司法は司法で行っていく。新しい国会はまた新しいことをやっていく。そのときにこれを全部無効だと言えば、さかのぼって一体どうなるか。すなわち、そこに国政は根本から国民生活も大混乱を生じて収拾しあたわざることになる。だから、最高裁がおもんぱかって、一たび解散が行われた以上はこれはやむを得ない。あたかもバングラデシュのときに時の行政府がこれは緊急避難的に超法規的行為としてあのテロリストの要求をそのまま受け入れたがごとくに、解散が行われたらもうどうにもならぬのだ、容認するしか仕方がないのだということは、言うならば内閣が衆議院を解散するということは内閣によって憲法がハイジャックされたも同然の事態と、このように受けとめざるを得ないことになるが、この点どうですか。
  231. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、尾崎先生の演説、私も質問があるという前提で読ましてもらいました。それからその次、苫米地事件の問題、おっしゃるとおり司法裁判所の権限の外にありと解すべきである、これのことをおっしゃった。それからもう一つは、やはり春日先生から指摘されておりますのは、いわゆる法規委員会ができたというのも、そういうことがあったから昭和二十七年の法規委員会の勧告になっているのではないか、こういうことは私も流れとしてはわかっております。しかしながら、やはり長い歴史の中でかつて六十九条と七条と二つの文言で解散詔書がなされたのはたった一回ございますが、七条解散というものが今日定着したというのは、今おっしゃったようなすべてのことを考えながらやはり私はこれは定着したものである、また、したがって憲法をハイジャックするなどというようなことは断じて考えてはならないことである、このように思います。
  232. 春日一幸

    春日委員 私は質問に対してまともな御答弁を得ておりませんけれども、解散に対する内閣の言うならば一定の制約、一定の法則なるものが事の重大性にかんがみて当然あってしかるべきである、このように質問をしたのですけれども、何もないという話である。その証拠に、これは委員長も聞いてもらいたい。各党の皆さんもお聞きとめをいただきたいが、戦後、新憲法に基づいて十四回解散が行われておる。第一回の解散は六十九条に基づいて解散が行われておる。そのときの解散詔書には、衆議院は、不信任案が可決された、よって、第六十九条、第七条によって解散する、解散詔書にそのように表示されておる。ところが、衆議院の解散が、決議が成立をしておる解散は、すなわちあのばかやろう解散、昭和二十八年のばかやろう解散並びに五十五年のハプニング解散。二回ともその背景には六十九条による内閣不信任案の成立という根拠がある。  にもかかわらず、その解散詔書にはすべて七条解散による、憲法第七条によって解散する、そのような表示にとどまっておる。実態が同じであるにかかわらず、二十三年解散は六十九条のその根拠が明示され、同じ条件のもとにおいて解散された二十八年選挙と五十五年選挙、これが内閣の不信任案という、この可決の事実がありながら、そのことが殊さらにサイレントにされておるということ。この事態は、内閣において解散に対する一定の方針もないし、制約もない、そのときばったりというか、総理大臣の思う存分というか、極端なことを言えばやりたいほうだいというか、そんなことでよろしいか。これは非常に重大な問題であると思うから深刻にお考えを願いたい。  そこで、私は質問をいたしまするけれども、参議院選挙と衆議院選挙の同日選挙の問題についてでございますけれども、この問題については参議院の抜山映子さんの質問にも総理大臣お答えになっておりまするし、また党首会談においても若干の意思御表示がなされておる。けれども、問題の重大性にかんがみてここで明確にいたしたいと思います。  我が国憲法は国会に衆議院と参議院との二院制を設けておりまするけれども、その心は、すなわち参議院に衆議院の抑制というか、補完というか、そのような使命、任務を期待しておると思われる。すなわち、衆議院に対しては数の政治、参議院に対しては理の政治が期待されておると思います。したがいまして、憲法は参議院議員の任期も衆議院議員の任期も殊さらに相異ならしめておる。選挙方法も当然そのように相異ならしめておる。同日選挙のごときは夢想だにしていないところである。ところが、もしそれ七条解散が総理大臣の専恣的、ほしいままな意図によってこれが可能ということになりまするならば、時には総理大臣がその権力を保持、増強のため、党利党略、与党の勢力を増大、増強せしめるたくらみをもって同時選挙が行えるように七条解散を乱用することになると思う。かくては、前にも申し上げたとおり、日本のこの民主政治は成り立たないというか、現在あるものもこれは権力的独裁政治に本当にのめり込んでしまう。実に重大な問題だと思うが、同日選挙、衆議院と参議院との同時選挙に対する総理見解それから態度、方針、これはどのようなものか、この際明確に御答弁願いたい。
  233. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 解散権の問題をさておきまして、まずいわゆる同時選挙という問題は、これが定着することは、二院制そのものを否定する雰囲気が強まってくるということからして、私は意図的に軽々に行うべきものではない、このように考えております。  過去二回行われましたことについて私なりに心の整理をいたしましたのは、第一回の解散は六十九条に基づいた際、たまたま参議院の半数改選の任期とほぼ一緒であった。したがって、二度足を運ぶよりも一度足を運ぶ方が適切だという判断に基づいて同時選挙が行われたというふうに思います。一週間ずらせないことはなかったと思います。それから、二回目のものは、ちょっと春日先生もお触れになりましたが、あれほど違憲状態を前提にして各党が緊急避難的につくったあの選挙法というものによってできるだけ早い機会に洗礼を受けるということが妥当であろうというので、それが事実上同時選挙となったというふうに、私は二つのことは理解しております。
  234. 春日一幸

    春日委員 もうすぐ結論。  問題は、今同日選挙が何となく余儀なさものであったとか、あるいは適切妥当なものであったとか、二回の選挙を一回でやった方がいいとかなんとか、たわけたことが通りますか。国民はその主権を行使するために、厳然として衆議院議員はこれこれ、参議院議員はこれこれ、選挙区も選挙法も全部違う。独自の判断で、個別の立場でこれは判断しなければならぬ。一緒くたに何でもやってしまったらいいというようなたわけた理論、そんなものがずっと拡大されるならば、地方議会の選挙も一緒にやってしまった方がいいというようなことにも拡大解釈がなされてけじめのつかぬことになる。だから、詭弁を弄してはいけません。あなたは、何だ、おしん、竹下、隆の里と言われたぐらいなかなか辛抱強い、また思いやりの深い、経験も深い方だけれども、いいものはいい、悪いものは悪い。断じて詭弁を弄してはいけません。  まだ竹下内閣は滑り出したばかりだから、そんな同日選挙があのときはやむを得なかったものか、別々に選挙をやるよりも一遍にやった方が国民に喜ばれるなんて、たわけたことを今後夢にも思ってはならぬし、言ってはならぬ。  そのことは警告をいたしておきまするけれども、そこで質問は、竹下総理大臣の態度、方針は今後において同日選挙になるようなたくらみで、あるいはよほど余儀なき事情があったとしても、これは憲法の精神と規定に基づいて断々固として避けなければならない問題であるが、新たな同日選挙をやる意思というか危険性がなお残っておるのか、そういうようなことは毛頭考えてもいないし、断じてやらぬというのか、ここで明確に御答弁願いたい。
  235. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私がいつまでも総理大臣しておるわけではもとよりございませんが、解散の権能というのは、私はきちんとやはりまず確立しておくべきである。しかし、私自身、同時選挙というものが恣意的に、あるいは専恣的というお言葉もお使いになりましたが、行われることは好ましいものではない、このように考えております。
  236. 春日一幸

    春日委員 もう時間がないようでございますから、結論といたしますけれども、ただいま総理が触れられたように、この問題は古くて新しい問題、御指摘になったように、昭和二十七年の六月の十何日でございましたけれども、両院から成る衆参両院法規委員会は、このような多くの憲法上の疑義が実在することにかんがみて、このような疑義を一掃するために議長に対して勧告を行っておる。すなわち、解散に対する民主的な制度について明文を設けて、そうして憲法上の疑義を一掃するように善処されたい、このように勧告を行っております。この法規委員会はその後廃止されはいたしましたけれども、この勧告の中身は本日歴然として生きておるばかりではなくして、本日いよいよその必要性、重大性は増大しておると思います。よって、国会と内閣はこの両院法規委員会の権威高き切実なる指摘、これにこたえて、すなわち憲法上の疑義を一掃して、解散が民主的にきちっと行われるように取り組むべきであると考えるが、この両院法規委員会の両院議長に対する勧告に対する総理大臣の見解並びに今後の態度、方針はいかがでありますか。
  237. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 率直に申しまして、この両院法規委員会というのは、「両議院は、充分の考慮を払うことが適当であると思料せられる。」というのが結論でございますので、行政府立場から申しにくいなと思いながらこれを読んでおりました。そして、やはり今おっしゃいましたように、民主政治の運営上、新たに国民の総意を問う必要があると客観的に判断され得る十分な理由という問題についての判断というものはまさに今日内閣にあって、したがってそういうことが前提に置かれておるということを十分承知してやはり今日まで行われてきたのではなかろうかと思います。  ただ、一回の六十九条の問題のときは、私は、占領軍との憲法解釈の違いがあったというふうに佐藤達夫先生の書物で読んでおります。
  238. 春日一幸

    春日委員 国会法に基づいて設定された両院法規委員会が長い間検討に検討を重ねて、私は全部速記録を読みました。すなわち法律家も政治家もあらゆる頭脳を結集してそこで得ました結論が、あの両院議長に対する勧告でございます。したがってその勧告の趣旨にかんがみて、事の重大性にかんがみて、当然それは国会に対する勧告でありまするけれども、事は国会と内閣にまたがる問題でございますから、すなわち国会と内閣が良心的にこの問題の解決を図ることのために、この両院法規委員会の生きておる勧告、これに対応し、すなわち良心的に取り組むべきであると思うが、しかしこのことも強く国会側並びに政府に要請いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  239. 浜田幸一

    浜田委員長 これにて永末君、春日君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十七分散会