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1988-02-03 第112回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月三日(水曜日)     午後一時七分開議  出席委員    委員長 浜田 幸一君    理事 奥田 敬和君 理事 近藤 元次君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    池田 行彦君       稲村 利幸君    上村千一郎君      遠藤 武彦君    小此木彦三郎君       海部 俊樹君    片岡 清一君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 信二君    佐藤 文生君       志賀  節君    砂田 重民君       田中 龍夫君    谷垣 禎一君       西岡 武夫君    林  義郎君       原田  憲君    細田 吉藏君      三ツ林弥太郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    井上 一成君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       辻  一彦君    山口 鶴男君       木内 良明君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       田中 慶秋君    楢崎弥之助君       児玉 健次君    中島 武敏君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣官房長官 小沢 一郎君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         警察庁刑事局長 仁平 圀雄君         警察庁刑事局保         安部長     漆間 英治君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  紀 嘉一郎君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         青少年対策本部         次長      倉地 克次君         北方対策本部審         議官      鈴木  榮君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 昭六君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中南米局         長       坂本重太郎君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文部省体育局長 國分 正明君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         運輸大臣官房長 棚橋  泰君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         運輸省国際運         輸・観光局長  中村  徹君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         運輸省航空局長 林  淳司君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         郵政省電気通信         局長      奥山 雄材君         郵政省放送行政         局長      成川 富彦君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   倉成  正君     片岡 清一君   藤波 孝生君     遠藤 武彦君   渡部 恒三君     谷垣 禎一君   大久保直彦君     木内 良明君   安藤  巖君     児玉 健次君   田中美智子君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     藤波 孝生君   片岡 清一君     倉成  正君   谷垣 禎一君     渡部 恒三君   木内 良明君     大久保直彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 浜田幸一

    浜田委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ち、日本社会党護憲共同及び日本共産党革新共同所属委員出席を要請いたしましたが、出席をいただけませんので、再度出席を要請いたさせます。しばらくお待ちください。  速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 浜田幸一

    浜田委員長 速記を起こしてください。  出席を要請をいたしましたが、日本社会党護憲共同所属委員出席をいただけません。  この際、暫時休憩をいたします。     午後一時十四分休憩      ────◇─────     午後四時四分開議
  4. 浜田幸一

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  理事会の協議により、山口鶴男君の残余の質問は後に譲り、山下徳夫君の質疑を許します。山下徳夫君。
  5. 山下徳夫

    山下(徳)委員 まず最初に、総理お尋ねをいたしたいと存じます。  竹下総理は、先般の自由民主党総裁選挙におきまして、話し合いによる調整、その結果、中曽根前総理指名という形で極めて円満の中に、いわゆる自由民主党の良識において選ばれたということは、私は御同慶にたえない次第でございます。今、我が国の内外の情勢の厳しさを見まするときに、同じ党内においてこういった問題についていろいろと争い事を生ずるような、そういう選挙が行われるということは決して好ましくない。そういう意味におきましても、私は、先般の総裁選挙はまさに大変円満の中に選ばれたことを、私も一党員として大変うれしく存じておる次第でございます。  また、竹下総理就任後の各種の世論調査を見ましても、こうやって選ばれました竹下総理に対して国民がいかに期待をいたしておるかということが、数字的に世論調査の結果示されておるのであります。しかも、総理はこれにこたえるように、内政で最も大きな問題と言われております土地対策につきましても、関係閣僚を督励されまして真剣にこの問題に早速取り組んでおられる姿を、私は大変結構であると存ずるのであります。  また、外交におきましても、昨年の十二月、早速マニラに出向かれまして、そしてASEAN首脳会議出席されまして、ASEAN諸国との間の友好関係、これを改めて確認された。そして、首脳同士お互いにそこに寄って親睦という場面を私どもはテレビ等において見ましたときに、非常にこれはよかったな、また国民もひとしくあの場面を見てそう理解をいたしておると思うのであります。  さらにまた、年が明けまして、早速アメリカに行かれましてレーガン大統領とお会いになって、両国のきずなを深めるとともに、また、お二人が個人関係においてもさらに友情をはぐくむというようなことに成功されたというふうに私は理解し、これまた大変結構なことであると存じております。  さらにまた、ワシントンのナショナル・プレス・クラブにおきます総理演説一節に、「日本は、具体的に何をやろうとしているのか。一言でいえば「世界に貢献する日本」をつくりあげることであります。私は、他国から指摘されたからということではなく、自らの意志と主体性に基づいて必要な政策を推進してまいります。」この一節につきまして、特に私はこれを聞きながら深い感銘を覚えたのであります。  一方、昨年十一月の米ソ首脳会談におきましては、御案内のとおりINF全廃条約が署名されまして、そのさなかに、また一方におきましては、ソ連機による沖縄上空領空侵犯事件に象徴されたように、世界情勢はなかなか、INFが全廃されたことだけをもって象徴できるような、そんな生易しいものではない、私はかように理解しておるのであります。  また国際経済の上におきましても、保護主義を求める圧力が増大するなど、世界を混乱に陥れなければならないような危険性が依然として内在されておるという現状であります。  こうした中にあって、ひとり日本だけが、自由陣営諸国から脱落をいたしましてひとりよがりのことをするということは絶対に許されない。そういう点からして、この点につきましては前総理国際協調ということを繰り返してこられたのでありまして、こういう点からいたしましても、これらの問題につきまして総理の御決意のほどをまず承っておきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初に、私が自由民主党総裁に選ばれた、そして十一月六日、本院におきまして内閣総理大臣指名を受けたわけであります。皆様方にそれぞれの立場から御声援を送っていただいておりますことを心から感謝を申し上げております。  さて、ただいまの御質疑でございますが、まず私が、いわゆる「世界に貢献する日本」、こういうことを今後の外交基本方針に置かなければならないであろうということは、率直に申しまして、平和も繁栄我が国自身が懸命に汗を流して追求すべき課題であるという認識は今でも持っております。そういう認識のもとに、国民皆様方の努力によって今日の地位を得た。そうすると、それまた意見の中にありました自分の国だけで済んだ時代と、今日の我が国経済力等からしますとおのずから世界全体に果たしていかなければならない役割というものがあり得るということから、私は「世界に貢献する日本」、日本の豊かさと活力をただ自分たちのものだけでなく世界全体に貢献すべきものであるという考え方に基本的に立っておるわけであります。  その上に立ちまして、今御指摘がありましたように、やはり我が国が西側の一員であり、同時にアジア太平洋地域一員であるということから、これは私に対する招聘が来たのではなく、前内閣時代からASEAN首脳会議域外国としては日本国だけが招聘されておったのでございますから、国会等都合で御理解を得ながら、A SEAN首脳会議出席をいたしてまいりました。これはやはり、アジア太平洋地域の一国であるとの基本的立場からの外交一つ方針を具体化したものであります。  それから、今御意見にもございました、INF全廃条約というものが米ソ両国において合意に至った、このことは確かに私は、究極的な核廃絶というもののための第一歩としては大変大きな前進であるという意識は持っております。しかし、御指摘になりましたように、それだけではなく、戦略核兵器の問題あるいは通常兵力の問題あるいは地域紛争の問題、これらが残っておりますので、この一つ前進というものが契機となって、それが全体へさらに拡大していくことを心からこいねがっておるという考え方でございます。  そしてまた、「世界に貢献する日本」ということを考えてみました際、やはりいわゆる南北問題、すなわち開発途上国に対するところの資金還流の問題でありますとかODAの問題でありますとか、そのような問題にも力を入れなければならない、このようなことを総じて施政方針演説でも御理解を得べく申し上げた次第であります。
  7. 山下徳夫

    山下(徳)委員 まず、日米関係からお尋ねをいたしたいと存じます。  私が申し上げるまでもなく、我が国外交基調というものはやはり日米安全保障体制、これが基礎となったものでなければならないと思います。確かに現在日米関係におきましては、貿易摩擦等からくるアメリカにおける保護法案等が用意されているというようなことでいろいろ摩擦はあるのでございますけれども、私は考えてみますると、やはり今後とも日米間がさらに親密の度を加えて、自由陣営担い手としてお互いにもっと密接にやっていかなければならぬ。だから、その間におけるわだかまり、いろいろまたそこにきしむ点があればこれを徐々に改正していかなければいかぬ、こういう意味における摩擦だと私は理解をいたしておるのであります。すなわち、こういう問題は、日本アメリカのある意味において深まりをこれは表現したものである、このように理解してもいいと思うのでございます。  そこで、こういう日本アメリカ経済関係がさらに深まっていかなければならないということ、一つには、今申し上げましたように、世界の平和と繁栄のためにはこういった問題を解決して、繰り返し申し上げますが、日本アメリカがやはり自由陣営担い手としてという意識をさらに両国でしっかりとこれは認識し合っていかなければならぬ、このように私は思うのでございますが、この点におきまして、総理が先般アメリカにおいでになって大統領と初めてお会いになった、その成果について、ここでお述べいただきたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この訪米の評価については人それぞれに意見もあろうし、私もそれぞれの評価に対して謙虚に耳を傾けるべきものである、このように思っております。  そこで、成果というお言葉に答えますならば、お説にございましたとおり、確固たる日米関係を維持することは単に両国のみならずまさに世界のために大変重要である、そういう基本認識の上に立って、レーガン大統領との間で私は首脳としては初めての忌憚のない意見交換を行ってきたわけであります。  そこで、御指摘がありましたとおり、何としても一番最初の御指摘にありましたように、日米はいわば、日本日本我が国安全保障に関する問題を日米安保条約という形で結んでおるわけでございますから、それには何よりも信頼関係というものが基調にあるということは申すまでもありません。そしてまた、経済的に見てみますと、率直に言って両国GNPを合わせますならば世界の三分の一以上、こういうことに相なるわけでございますだけに、まさに経済力の点について世界全体に果たす役割というのは、これは意識するせざるにかかわらず私は大きな位置を占めてくるものであるというふうに認識をいたしております。  おっしゃるとおり、これだけ交流が深まってまいりますと、いろいろな俗に言われる摩擦というものが出てまいります。なかんずく保護貿易主義が台頭してくることを防ぎつつ、しかもこの摩擦を解消するということは、基本的にお互い認識しましたのは、日本責任だ、アメリカ責任だとかいうことでなく、まさに御指摘のあったとおり、世界の三分の一以上のGNPを持つ両国の相互の立場理解しながらも共同作業という形でこれには対応すべきものであるという基本認識を確立することができた、このように考えております。
  9. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、総理の当面する外交日程についてでございますが、先ほど申し上げましたとおり、総理は御就任早々外交面でも着実にその成果を上げられていると私は理解をいたしております。つまり、積極外交を推進されるやに存ずるのでありますが、まず総理外交日程の第一は、当面二月の二十五日に予定されておりますソウルにおける韓国盧泰愚大統領大統領就任式出席されるということでございます。重要な隣国であり、韓国民主選挙によって大統領というものが初めて選ばれた、まさに画期的なことであります。竹下総理がこの式典出席されまして新しい大統領のもとに新しい日韓関係を樹立するということは、両国のために非常に意義深いことであると私は存じます。  さらに、ことしの国際会議のハイライトとも申すものは、サミットが六月にカナダトロントで開かれる。さらに五月の末からニューヨークにおいて国連軍縮特別総会が開かれます。また、サミットの前に西ヨーロッパ訪問される御予定もあるやに伺っておるのであります。また、中国や近隣のアジア諸国早期訪問総理自身のお気持ちとしてはなるたけ早く実現したい、こういうお気持ちがあられると伺っておるのであります。  これらの国々に「世界に貢献する日本」というものを、一人でも多くの国々指導者とお会いになってはっきりと植えつけられる、日本立場というものを認識してもらうということは、大変私は大切なことであると思っております。総理外交日程につきましての今申し上げましたような観点からのお考えについて、この際承っておきたいと思います。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 積極的な外交を進めるというためには、やはり事情の許す限り多くの諸国訪問するという前提の上に私自身も立っておるわけでございます。したがって、今おっしゃいましたように、ASEA N首脳会議に始まり、米国、そしてカナダトロントサミット主催国であるという意味においても私はこれを訪問する機会を得たわけでございますが、当面の問題は今おっしゃいました韓国大統領就任式典に二月二十五日、これはまさに国会のお許しをいただければ、こういう前提でございますが、ぜひ出席をし、現在の良好な日韓関係、そして新たに出発します盧泰愚体制というものに対して敬意を表し、さらに発展させていく一つのきっかけともなれば幸いだ、このように思っております。  その次は六月十九日から二十一日のトロントサミットでございますので、したがって、これも都合が許せばサミット参加国、大体私が大蔵大臣時代に一緒しておりましたメンバーがほとんどではございますけれども、首脳としては初めてでございますので、これらの国々の御都合調整しながら、国会審議に支障のない形でできるだけ訪問をしたい、このように思っております。それから、国連軍縮特別総会出席につきましても引き続き検討をしていこうと思っております。  中国の問題につきましては、これはことしは条約が締結されまして十周年になりますので、福田内閣のときでございますが、したがって、双方の都合のいいときにこれは訪問をしよう、こういうことで準備を進めておる、まずは国会の御理解をいただいた上のことでございますが、内々心準備はしておる、こういうふうに申し上げたが適切であろうかと思います。
  11. 山下徳夫

    山下(徳)委員 日韓関係につきまして一言お尋ねをいたしておきたいと思います。  韓国が新しい憲法のもとで極めて民主的な大統領選挙が行われたということは今申し上げましたとおりであります。そこで、私は虜泰愚さんと先般お会いする機会がありまして、いろいろと御意見、お気持ち等を伺いました。盧さんのお言葉の中で私が非常に印象深かった点を私も幾つかメモをいたしました。  その盧さんの言葉の中に、これからの韓国は普通の人の時代である、すなわち、特権層でない国民がそれぞれの立場役割を果たすことによってこの国の発展が考えられる、さらに特徴というべきことは、反権主義、それから反エリート主義、反独裁主義、つまり例をとって、一人の天才よりも二人の凡人の方が国のためになるんだ、ここまで私に言われたのを記憶いたしておるのであります。まさに哲学的政治信条ともいうべきでありまして、この新しい大統領となる盧さんのこの信条に対して、私は竹下総理も御異存はなかろうかと存じますが、俗に言われる遠き親戚よりも近くの友人、その方が私はいざという場合には非常に役に立つ場合が多い、そういう観点から、韓国に対する総理のお気持ちと申しましょうか、それをひとつお尋ねいたしておきたいと思います。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一つは、御指摘のありましたように、いわゆる民主的な選挙によって選ばれたという意味においては画期的出来事であり、民主化に心から拍手を送りたいというふうに思っております。  それから、先般山下委員が訪韓された事実も私も承知をいたしておりますが、盧泰愚大統領予定者でございますかが日本へいらっしゃったときにも、私どももそれぞれお会いいたしましたが、普通の人という表現をしていらっしゃるときに感じましたのは、これは手前みそでございますけれども、私も普通の人だな、こう思いまして、大変心強いものを感じたことも事実でございます。  したがいまして、今後、これらの対韓問題につきまして友好協力関係を維持発展させていくということが大変大切なことであるというふうに思っておりますし、当面の問題としては、いわゆるソウル・オリンピック成功のための協力に加えて、日韓両国間の善隣友好、親善を進めるためには、ただ政治経済だけでなく、文化あるいは青少年交流、こういうようなことを一層進めていかなければならぬというふうに思っております。  そして、朝鮮半島全体の問題につきましては、南北両当事者の直接対話によって平和的解決がなされなければならないというのが我が国基本的立場であるわけでございます。  したがって、先般の山下委員の訪韓に対する、私は電報でその対話を皆読ませていただくことができる立場にありますので、あの精神をわきまえて、これからも相互協力に努力していきたい、このように考えております。
  13. 山下徳夫

    山下(徳)委員 今、総理の御答弁の中にもありましたように、これからの両国の関係は、ただ単に政治経済にとどまらず、ある面でひとつ協調を保ち、お互いに親善を尽くしていかなければならぬ、そのとおりでありますが、その一環として、九月の十七日から御案内のとおりソウルにおいてオリンピックが開催をされます。まさに人類の大祭典ともいうべきでございますが、四年前のロサンゼルスにおけるオリンピックは百四十カ国が参加いたしました。今回は六百十一カ国ということであります。私も、国連の加盟国が正確に何カ国か存じませんが、これだけの国が参加するということはまさに完璧に近いと思っております。これが非常に円満に行われる、より立派に行われるということは、私は朝鮮半島の緊張緩和にも役立つのではないか、そうなれば大変結構なことだと思っております。  こういうオリンピックに対して、我が国としても積極的に、協力を惜しんではいけないと思うのでございますが、この点について総理の御所見をお尋ねいたします。
  14. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 我が国にいらっしゃいます在日韓国人の方々からも、ソウル・オリンピックを成功さすために自分らも募金をしたい、それについて、指定寄附の扱い等につきましては私が大蔵大臣時代からこの御相談を受けて、この間、話を聞いてみますと、既に五十億円は送金することができて、あと数十億円、こういうようなことをおっしゃっておりまして、本当にそのこと自身にも私大変感激をいたしました。  我が国といたしましては、このオリンピックが成功しなければならない。まさにおっしゃいましたように百六十一カ国。世界の国の数え方はいろいろございますが、百六十九と数える人もありますしいろいろな問題はございますが、これだけの参加の民族の、人類の祭典が行われる。  しかも、翻ってみますと、一九六四年東京オリンピック、昭和三十九年でございますが、そのときにIMF・世銀総会が東京であり、そしてオリンピックがあり、新幹線がつき、黒四ダムができ、名神高速が完成し、昭和三十九年というのは、やはり日本も大きく前進する、あのオリンピックはきっかけになったんだな。貿易黒字もちょうど四十年から黒字になったわけでございますが、今なり過ぎておりますけれども、そういうことを歴史的に見ながら、韓国の友人の方には、ちょうど一昨々年IMF・世銀総会がソウルでありましたし、ことしオリンピックがある。何だか、あの日本の活力があれを契機として出たと同じようなことになることが期待できるというような意見を絶えず吐いておるところでございますので、このオリンピックの問題につきましては、あらゆる角度からその成功に対して我が国として協力しなければならないことである、このように思っております。
  15. 山下徳夫

    山下(徳)委員 朝鮮半島の問題についてもう一点お尋ねをいたしたいと存じます。それは大韓航空機の事件であります。  この問題につきましては、既に韓国の政府から詳細な捜査の結果が発表されておるのでございますけれども、それにもかかわらず、今日なお北朝鮮側の立場に立って、韓国の発表がでっち上げであると言わんばかりの意見が一部にある。私は大変おかしな考え方であると存じます。  私ども自由民主党は、通常の場合、日本の共産党の諸君とは意見を異にしておるのでありますけれども、本事件につきまして共産党が、中心的事実にかんがみて北朝鮮の組織的テロであることは間違いない、こうおっしゃっておる。およそテロというものは合理的な説明が難しい、あるいはすべてのことが一〇〇%明らかになるまでは何の判断もできないということはおかしい、こういう趣旨を述べられて、まことにあっぱれであります。  特に、今回のこの事件につきましては、日本が擬装されていることはこれは明白な事実であります。一部には、北朝鮮にとって事件が何の得にもならないから韓国の陰謀ではないか、こういう途方もない推論をなさる方もあるわけでありますが、この真由美という人物が毒を飲もうとした瞬間に、バーレーンの警察が飛びかかって口からその毒をもぎ取った。これがもぎ取ることができなくて、もしもそのままこの真由美という女性が死んでいたならば、私は事はもっとややこしくなっていたと思うのであります。両人が日本人でないことを証明することは非常に困難になっていったかもしれない、私はかように思うのであります。そうするならば、日韓関係が受けるダメージはもっともっと非常に大きいものがある。  そこで、政府にお尋ねいたしたいことは、今般の官房長官の談話で、明確に北朝鮮の組織テロ行為であるという確信のほどが述べられておりますが、その判断に立たれた根拠につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。これは担当大臣で結構でございます。
  16. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 大韓航空機事件でございますが、今山下さんがおっしゃいましたとおりに、もし真由美なる女性があそこで死んでおったならば、やはり今御推測のあったような事態になっておったと思います。  その意味では、まず日本の在外公館の人たちが緊急にバーレーンに集まりましたが、両人が持っておった旅券がにせものであるということを喝破したこと、同時に自殺現場にいたこと、こうしたことから我々といたしましては有力な判断をいたしたのでございます。しかし、今申されましたとおり、やはり南と北との関係は、韓国が一番犯罪等に関しましては経験も深い、知識も持っておる。その韓国の捜査陣が、有力な証拠に基づきましてこれは北朝鮮のテロである、こう断定されたわけでございますから、まず私たちもその線に沿って有力な確証を得たわけでございます。  二番目には、先ほど来盧泰愚大統領選挙等々のお話がございましたが、あれだけ激しく戦われました大統領選挙を通じて、与野党はこの事件に関しましては、もうほとんどと言ってよいくらいこれは北朝鮮のテロ行為である、こういうふうに現在考えている、判断をしておるというのが実情でございます。これに伴いまして、世界的な情報を持っておる米国におきましても幾つかの有力な情報を持っております。そうしたこともまとめまして、日本の外務省といたしましても既に担当課長を派遣いたしまして、いろいろと直接本人に出会って調査もいたしたことは既に御承知のところでございます。また本日、警察関係からも担当官が韓国に派遣されました。そういう諸種の事情を十二分に判断をいたしまして、我々といたしましてもこれは北朝鮮のテロである、こういうふうに断定したわけでございます。
  17. 山下徳夫

    山下(徳)委員 多くの人を死に至らしめるこのような忌まわしい国際的なテロ事件は根絶をしなきゃならぬ、そのためには各国が真剣に協調して取り組んでいかなければなりません。特に我が国は、これから二十一世紀に向かって国際的に我が国が負う役割はますます増大していく、それに比例して日本人が、邦人が外国に渡航する例がますますふえてくる。したがって、我が国立場からしてもこの問題については真剣に取り組んでいかなければならないのであります。  今申し上げました官房長官の談話もございますけれども、私は、この談話に盛られたようなことで果たして我が国としては十分なのかどうか、さらに今後国際協調という中において我が国立場も、態度、なすべきことももっともっと強く鮮明に打ち出していかれる必要があると思うのでございますが、重ねてお尋ねをいたしておきます。
  18. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど来ソウル・オリンピックのお話が出ておりましたが、百六十一カ国、この中には香港のような地域も含まれております。これだけの方々が参加される。そしてソ連も中国も参加される。そうした中におきまして多くの選手団が恐らく日本通過、そうしたことがあるだろうと思いますから、まずもって我々はそのような方々に対しまして危害が及ばないような万全の措置をとらなければならぬ、これがこの間官房長官談話で発表いたしました北朝鮮に対する措置でございます。したがいまして、これは単に日本だけではなくして、やはり各国からも同様な措置というものが発表なされておりまするが、今国連におきましても、こうしたことに対してどうするかいろいろ話が進んでおるということでございますけれども、我々といたしまして、仰せのとおり本当に日本の治安はよいわけですから、それがもしもテロによって崩されては大変でございますし、邦人の海外旅行も十分守るよう十二分に手配をいたしたいと思っております。  また、偽造旅券が発見されたわけでございますから、新しい旅券に対する工夫も加えなければならぬ、かように考えております。
  19. 山下徳夫

    山下(徳)委員 朝鮮半島に関する問題で、もう一点だけ簡単にお尋ねをいたしておきたいと思います。  それは第十八富士山丸の問題でございます。この第十八富士山丸の船長それから機関長ですか、この二人は北鮮に抑留されまして十五年の教化労働刑を科せられているということを私は伝え聞いているのであります。この種の問題は、外務省の対応といたしましても事柄の性質上非常にお骨が折れる問題だとは思いますけれども、人道上の見地からも一日も早く解決されるべき問題だと思っております。これについて大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  20. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 第十八富士山丸の船長並びに機関長の抑留に関しましては、私たちはこれは無実である、こういうふうに考えております。しかし、残念にいたしまして、北朝鮮からは我が国の閔兵士を拉致した罪により、ただいま申されましたとおり十五年の教化刑というものが与えられたわけでございます。私たちは、あらゆる方途を通じまして速やかなる釈放を要求いたしております。これに関しましては、昨年の秋に社会党の土井委員長も訪朝されましたときに同様の趣旨を強く訴えていただきまして、まさに与野党挙げてこの問題に取り組んでおるような次第でございます。今後も十分、あらゆるルートを通じまして両人の早期釈放に全力を挙げたい、かように存じます。
  21. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、日ソ関係について承りたいと存じます。  総理は、施政方針演説の中で、日ソ関係については、まず、北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定的な友好関係を確立することができる、こう述べておられるのであります。私も全く同感であります。  先ほども申し上げましたように、米ソ間におきましてはINFの条約も成立いたしました。しかしながら、反面、我が国とソ連との間にはこの北方領土すらまだ解決を見ない、まことに不幸な現象もまだあるのであります。  実は私も、昨年はこの方の担当の責任者、大臣といたしまして、また、政府の北方領土対策の本部長といたしまして現地を視察いたしました。私は二回目の現地の視察でございましたが、今回はその責任者である所管の大臣という立場も手伝ってでございましょうか、ソ連側の監視船も我々を監視するかのごとく数杯出ておりましたが、そのソ連側の監視船ともおぼしき船の地点というものが、当然我が方の領海に属する地域から我々を監視している、私はそう見てとったのであります。私はこれを見て、えも言われぬ非常な不快感と憤りを感じたのであります。  したがって、これらの問題を速やかに解決しなければ、真に戦後は、少なくともソ連との間における戦後というものは解決できていない、こういう認識国民とともに深く持って、さらに強力なこの問題に対する解決の方法をひとつ今後とも推進していかなければならぬ、かように思うのであります。  あと数日後の二月七日が北方領土の日と定められておりまして、全国各地においていろいろな多彩な行事が行われるわけであります。数日後であります。この機会に、この問題につきまして、これは外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  22. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ソ連とは、いろいろな方々がお越しになりますので、その都度、今山下さんが申されました北方領土の一括返還を求め、もって平和条約を早期に締結しよう、それが何よりも両国の親善を深めるゆえんであるということは、従来申し上げてまいりました。  また、一昨年には、シェワルナゼ外相並びに安倍外相の間におきまして二回の日ソ間の外相定期会議が行われましたが、その場におきましても日本側からこれは最重要課題であると言って提起されております。そしてそのときには、領土問題を含む平和条約交渉が再開され、継続されることが合意されました。しかし、残念にいたしましてその後余り動いておりません。しかし、我々といたしましては、この問題は粘り強く対処していかなければならない重要な問題であると考えております。
  23. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、ODAの問題でお尋ねをいたします。  我が国のいわゆるODA、政府開発援助は、ただいま審議されております昭和六十三年度の予算でおよそ百億ドル。この絶対額ではアメリカを抜いておると思います。これはたしか世界一位だと思いますが、この額自体は、我が国のODAの歴史という面から見ますと先進諸国に比べてそう古いものではない、比較的新しい、そういう歴史的な経過から見ましても決して私は少ないものではないと思っております。しかし、GNPに対するODAの割合を見ますると、これはいささか見劣りがする。  ちょっと私はパネルを用意いたしております。  ここでGNPに対するODAの比率というものが、北欧三国等は非常に高い、あるいはイギリス、ドイツ、その他欧米の先進国もかなり高い、アメリカはちょっと落ちておりますけれども。ここにランクされておりますのが日本でありまして、まだこのほかに日本より上位はたしかあったと思いますが、主な国だけここに拾っております。  この表から見ましても、私は、ただ予算の総額ではなくて、GNPに対してはもっともっと私どもは予算を計上すべきではないか、こう思うわけであります。我が国は、平和日本として外国に対して軍事援助に類することは一切やらないということははっきりしたことでありますから、やはりODA等、経済的な援助しかないのでありますから、その日本立場を考えるならば、私はこれでは不十分ではないか、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  24. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 昭和六十年の九月十八日に、七年倍増計画としてODA四百億ドルというものを決定をいたしました。しかしながら、その後の円高等からいたしまして、それを二年短縮しよう、そういうことで今日に至っておるわけでございますが、例えば六十三年度予算政府案においても、前年度五・八%を上回りますところの六・五%、これを確保をいたしました。しかし、今おっしゃったように、量と質という問題が改善すべき課題であるというふうに思っております。  今、パネルでお示しになりましたが、世界全体で十五位、対GNP比にしますと。こういうことが指摘される今日でございますので、したがって、これからも量質ともの改善、こういうことに心がけていかなければならないということは全く同感でございます。
  25. 山下徳夫

    山下(徳)委員 今、総理自身指摘なさいましたように、対外の協力援助というものは、ただ単に量だけではなくて、私は質も大変重要な問題だと思っております。相手が何を欲しておるか、そのニーズに応じなければならぬ、かように存じております。  そこで、無償援助。援助の中における無償援助につきまして、果たしてこれでよいかという問題。無償援助につきましていろいろと我が方は一つの物差しをつくっておりまして、一つの基準によってそれを選別しておるということは、私ども十分わかります。わかりますが、国によって、私も党の経済協力関係の仕事を長くやりまして、そういう非常に貧困な国を、南太平洋、中南米あるいはアフリカ諸国、中近東、随分回りました。これらの国々で言われることは、日本がおっしゃっているようなそういう基準というものはミスリードでございますよということをしばしば言われるのであります。  私が参りました国の中でも、アフリカの、あえてここで国の名前は申し上げませんが、例えば医師の数が十万人に対して二十人という国がある。今、日本におきましては、十万人に対して百六十人近くだと思います。百五十人か百六十人でしょう。これに対して二十人という少なさである。あるいはまた病床の数におきましても、今、日本におきましては十万人に対して千五百床ある。これに対してこの国はわずかに百二十床しかない。そこで、現に私がこの目で見てかなりの重病人と思われる者が、ベッドがないために大きな樹木の下であるとか軒下に横になっているという姿を見て、これらを見ると、やはりこういう国々に対する援助というものは、そのニーズにこたえて、もっと幅広く、あらゆる角度から検討しながら、弾力性を持った援助がなされなければならぬ、かように思うわけであります。  これからの一つの援助のあり方についてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  26. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 援助に関しましては仰せのとおりでございまして、やはり我が国に対する途上国の大きな期待というものに一つ一つこたえていかなければなりません。その意味では、先般ASEANのときにも、総理からASEANに対しまして二十億ドルを下らない資金還流、そうしたことも言明をされまして、非常に歓迎をされております。  しかし、おっしゃるとおりに、やはり相手国のニーズというものにこたえていくことが必要ではなかろうかと思います。だから、先ほど申されましたとおり、援助は多いけれども、何と申し上げましても、まだまだアメリカの八八・九%に対して贈与比率は四七・五%程度でございますが、我々といたしましては、今後努力をいたしまして、次のように考えております。  具体的には、政策対話の強化、二番目には事前調査の拡充、三番目には国別また分野別の援助計画の充実を図るとともに、内貨融資の支援の拡充、そして続いて円借款金利の引き下げ、アンタイ化の促進、ノンプロジェクト資金協力の実施、こうしたもののほかに、昨年申し上げました二百億ドルの還流資金のごとく緊急援助体制等々の整備も必要であろう、こうしたことで今後鋭意努力していく所存でございます。
  27. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、防衛関係で二、三お尋ねを申し上げたいと存じます。  まず、INFの条約調印についての認識我が国のこれに対する対応の問題であります。  昨年暮れの米ソの首脳会談後の国際軍事情勢についてまず承っておきたいと思いますが、私は先般の米ソ両国首脳によるINF全廃条約の調印を、これは全国民とともに歓迎すべきことであることは申し上げるまでもございません。それは、この条約が初めて特定のカテゴリーの核兵器を全廃するということでありますから、まさに前例のないことであります。それだけにまた歴史的、画期的な意義を含んでおると思うのであります。それが例えば両国の核保有量のたとえ何%であったにしても、はっきりとその方向に向かって方向づけが示されたということは、全人類にとってこれは大変な重大な問題である、私は、これはもう手放しで喜んでいい問題だと思っております。  そこで、しかしながら依然として世界の平和は、今申し上げました米ソの戦略核を含む強大な軍事力を中心として、東西間の力関係のバランスと申しましょうか、そういうことによって維持されておるのであります。我が国の一部には、このINF条約調印を契機に、今後まあデタントになるのだから我が国の防衛はこれは見直していいではないか、こういう意見もあるのでありますが、この際、INF条約調印の意義と今後の軍縮の管理、あるいは軍縮の進展に対する一つの見解、こういう点について防衛庁の御認識を伺っておきたいと思います。
  28. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま山下先生からINF条約調印の意義と我が国の防衛政策についてのお尋ねでございますが、アジアを含むグローバルなINF全廃を内容とする条約が昨年十二月の米ソ首脳会談で署名されましたことは、まさに歴史的なことであり歓迎するものでございます。  今回署名されたINF全廃条約は、特定の核兵器の全廃及び現地査察を含む厳格な検証の確保の二点におきまして画期的な意義を有するものと評価しております。さらに、戦略核兵器や通常戦力の分野でも、均衡がとれ、かつ検証可能な形で軍備管理・軍縮が進められることを期待しておるものでございます。  他方、今回全廃することで合意が得られたINFは、世界全体に存在する核兵器の一部にすぎません。今日の国際社会において核兵器を含めた力の均衡に基づく抑止が平和と安定を支えておる、このことは冷厳な現実でもございます。アジアを含む世界の各地域では、緊張や紛争が継続しており、また、我が国周辺においては、極東ソ連軍の質量両面にわたる増強と行動の活発化により、我が国に対する潜在的脅威が増大いたしております。したがって、我が国といたしましては、専守防衛等の基本的防衛政策に従い、大綱に定める平時から保有すべき必要不可欠な防衛力の着実な整備に努めていく、この考え方には変わりはございません。
  29. 山下徳夫

    山下(徳)委員 ただいま長官がおっしゃいましたように、「防衛計画の大綱」には我が国の持つべき防衛力の姿というものがきちんと示されておる、私は大変結構だと思いますよ。ただ、このことについて中国が、一%をオーバーしたことについていろいろな見方をしておられる。中国の報道によると、いささか批判的な報道もあるやに私は伺っておるのであります。  対中国についていろいろ我が国の防衛力についての理解を求めるためには、前栗原長官中国においでになっていろいろと御説明をなさったということを聞いておりますが、この機会に、この中国における我が国の防衛に対する疑念を払拭する意味においても、はっきりと長官からこの問題についてここで言明をしておいていただきたいと思います。
  30. 瓦力

    ○瓦国務大臣 国の防衛という問題につきましては、最終的には我が国がその独立と平和を守るという観点から内外の情勢を総合的に判断し自主的に決定すべきものと考えておりますが、同時に、防衛政策を進めるに当たりまして、中国を含む周辺諸国に相互の理解を増進していくこともまた重要でございます。  我が国の六十三年度防衛予算案につきまして、中国の報道の中に、例えば日本が軍事大国になるのではないかといった懸念を表明するものがあることは承知をいたしております。しかしながら、我が国の議会制民主主義は既に定着しており、国民はすべての分野において極めて健全な判断を行っております。そのもとで我が国政府が専守防衛に徹し、日米安保体制を堅持し、文民統制を確保しつつ節度ある防衛力整備を行っているのでありますので、我が国が将来他国に脅威を与えるような軍事大国になるといったことはあり得ない、かように考えております。  なお、栗原前長官の訪中等も含め、さらに近隣諸国理解を得べく努力をしてまいりたい、かように存じております。
  31. 山下徳夫

    山下(徳)委員 長官は先月半ばにアメリカに行かれまして、新しい向こうの国防長官両国の防衛に関する関係についていろいろと協議をしてこられたということは私も承知をいたしております。  そこで、今申し上げました中国だけじゃなくて、最も親密であるべきアメリカにおいてすら、若干どうも日本の将来にわたっての防衛計画に私どもが首をかしげるような意見があるやに私も聞いておるのであります。例えば、米国の統合長期戦略諮問委員会というのが先月公表したその報告書で、世界第二の経済力を有する日本が軍事大国への道を選択することがあり得るというような見解をこの中に示してあるということでありますが、これはいかがなものでしょうか。特に、この委員であります、委員会のメンバーの一人であるキッシンジャー元国務長官が、紀元二〇〇〇年までに日本の防衛費はGNP二%まで拡大し軍事大国を歩むかもしれないということを言っているということは、極めて重大な問題であると思います。  このことにつきまして防衛庁長官の見解を承っておきたいと思います。
  32. 瓦力

    ○瓦国務大臣 我が国が軍事大国になるおそれはないかということにつきましての御質問でございますが、我が国の防衛につきましては、みずから適切な規模の防衛力を保有する、また、日米安保体制を堅持することによりまして侵略の未然防止を図ることを基本としてきたところでございます。  私は、このような方針が適切であったことにより、これまで我が国の平和と安全が確保され、そのもとで今日我が国の経済的繁栄があるものと考えておる次第でございます。この方針は将来にわたって維持されるべきものと考えております。  米国におきましてのさような見解も承知をいたしておりますが、それはそれぞれのお考えに基づくものでございまして、これに一々反論するそのゆえを持ちませんが、いずれにいたしましても我が国は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、節度ある防衛力整備を行うこととしており、我が国がいわば軍事大国になるといったことはあり得ない、このことを重ねて申し上げておく次第でございます。
  33. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、日米防衛協力を語るについて避けて通れない問題が一つあります。それは、在日米軍の駐留支援の問題であります。  我が国に駐留する在日米軍、これは自衛隊と相まって、我が国に対する侵略を抑止するために大変な努力をしておられる。しかも、その駐留する軍隊の人たちが遠く祖国を離れて日本に駐留しておられる。その心情を思うに、やはり施設その他については十分のものをしてあげるのが我が国立場であろうと私は思うのであります。同時に、この従業員労務費の負担につきましても、ある程度これはふやす措置がとられなければ、私はこの数字等を見ますとまだまだ十分ではないなという感じがしておるわけでございまして、このことにつきまして防衛庁長官のお考えを承っておきたいと思います。
  34. 瓦力

    ○瓦国務大臣 駐留軍経費の問題でございますが、我が国安全保障にとり不可欠な日米安保体制の効果的運用を確保していくことは極めて重要でございまして、我が国といたしまして、従来より在日米軍駐留経費の我が国負担につきましてできる限りの努力を払ってきたところでございます。  昭和六十三年度予算においては、我が国の厳しい財政事情を踏まえつつ、提供施設の整備につきましては、昭和六十二年度予算の売上税を除く予算に比し、対前年度比八・五%増の七百九十二億円、労務費につきましては、現行特別協定の枠組みの限度額いっぱいの額を計上したこと等により、対前年度比一四%増の四百十一億円の予算をそれぞれ計上しておるところでございます。  六十三年度の在日米軍駐留経費の我が国負担につきましては、昨年末、米国防長官がこれを高く評価する声明を発表いたしました。また私、一月に訪米した折、カールッチ長官との会談におきましても、私から六十三年度予算案における措置について説明いたしましたところ、日本側の努力について高く評価する旨の発言がございました。さらにそうした努力もこれから踏まえながら検討してまいりたいと思っております。
  35. 山下徳夫

    山下(徳)委員 防衛問題につきまして、あと一問。  防衛力の重要な一つの問題として、私は人の問題がある、自衛官自身の問題があると思います。この自衛隊員の隊舎とか宿舎、これを年次的に逐次改善していく、これも確かに処遇の改善で大変重要な問題であると思いますが、そういった施設、これは在任中の問題でありますが、むしろ退官後の問題について、さらに私どもはこれは十分考えるべき問題である。  それは、一般の公務員に比べて自衛隊員の定年が非常に早い。五十歳の前半ですか、大部分が。こういった定年制を決めてあるのは、我が国の自衛隊の隊員の一つの精強性と申しますか、そういうものを十分おもんぱかってのことであると思いますけれども、若くして定年でやめた後の一定の保障というものがなければ優秀な人が自衛官を希望しなくなる、そのときにおいてこそむしろ逆に精強性というものが失われていく。こういうふうに考えますと、自衛官の退職後の処遇、例えば年金の問題であるとか、そういう問題について十分これは長官責任を持ってお考えいただかなければならない。三十万の自衛官というものは非常に不安を持っておる。こういう点について最後にお尋ねをいたしておきたいと思います。
  36. 瓦力

    ○瓦国務大臣 山下委員から、防衛政策を進める上で、いわゆる後方の問題につきまして御心配をちょうだいし、感謝を申し上げます。  近年、いわゆる隊舎等を含めて、ようやく生活環境分野における予算等につきましても努力をし、その足跡を見ることができたと、かように思っておるわけでございますが、ただいまは自衛官の退職後の問題等についての御質問でございます。  一般公務員に対しまして六十歳定年制がとられておりますが、自衛官については自衛隊の精強性維持のため若年定年制をとっており、大部分の隊員が五十歳代前半で退職しておるところでございます。御指摘のように、若年定年制の自衛官が定年退職後の生活に不安を抱かず安心して任務に専念できることは、自衛官の高い士気の維持と資質にすぐれた隊員の確保にとって重要な、肝要なことでございます。かかる観点から、年金の問題や就職援護の充実等、自衛官の退職後の処遇についても今後とも十分配慮してまいりたいと考えております。  なお、詳細につきましては政府委員をもって答弁させたいと存じます。
  37. 松本宗和

    ○松本(宗)政府委員 お答え申し上げます。  自衛官の退職後の生活についての政策でございますが、防衛庁といたしましては、年金問題それから再就職の援護、この二つの問題に分けましてきめ細かく対応しておるところでございます。  ただ、やはりこれにも問題がございまして、まず年金でございますが、これは御案内のとおり五十四年それから六十一年、この二回にわたります法律の改正によりまして、一般の公務員につきましては支給開始年齢が五十五歳でありましたのを六十歳に延ばすという措置がとられ、またいわゆる繰り上げ支給の制度もなくなったわけでございますが、自衛官につきましては若年定年ということから従来どおり五十五歳で支給するというように特例を設けてございます。また、繰り上げ支給の制度も特例として残してございます。  ただしかし、このような制度を残しておくということになりますと、これは財源に大きく響いてまいりまして、現在でも既に一般公務員に比べまして約二五%高い掛金率を課せられておるわけでございますが、制度が成熟してまいりますとますますこれがひどくなってくるということになります。これは六十年十一月の衆議院の大蔵委員会でございますかでも、附帯決議で早急に検討するようにというぐあいに御指示を賜っておりますが、私どもこの問題を早急に解決するために、部内に委員会を設けまして現在鋭意検討を進めておる段階でございます。  それから、もう一つの就職に対する援護の問題でございますが、これは来年度、六十三年度からちょうど退職者のピークの時期を迎えます。したがいまして、非常に緊急の問題でございますが、私どもといたしましては、再就職のための教育でございますとかあるいは企業に対するPR、また昨年新しく設置いたしました財団法人でございますが、自衛隊援護協会の就職あっせん業務の支援というようなことを通じまして、できるだけスムーズに再就職ができるようにということを考えてやっております。  いずれにいたしましても、隊員の退職後の生活を確保していくということは、士気の高揚という面だけではございませんで、新しい隊員を確保していくという面においても非常に重要な問題でございます。私どもといたしましては、人事の大きな柱として今後とも鋭意これに取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  38. 山下徳夫

    山下(徳)委員 外交関連と申しましょうか、そういう立場から農業問題について一、二お尋ねをいたしておきたいと思います。  きのうのガット理事会における十二品目の裁定につきましては、私がここで申し上げる必要もございません。日本政府代表も最善の努力を払われましたけれども、現在の日本の置かれておる立場からすればやむを得なかったというふうに私も思うのでございますけれども、ただ、このことによって受ける日本の農民のダメージということも、これは深刻である。我々国会議員も、十分この点については意を配りながら今後対処していかなければならないと思います。ただ、この中ででん粉と乳製品につきましては自由化を留保する、このような宣言が行われておるのでありまして、この二つは今後の問題に残されている。  そこで、この問題につきまして、今後、主としてアメリカといろいろ協議が行われると思うのでございますが、日本の酪農農家あるいはでん粉に関する生産者、業者、農民等の立場を考えながら、アメリカとどのような交渉をされるのか。これは私は、農林大臣は相当腹を決めてかかってもらわなきゃならぬと思うのでございますが、御決意のほどを承っておきたいと思います。
  39. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今お話がございましたように、昨日、二月二日に開催されたガット理事会において、我が国の農産物十二品目問題についてのパネル報告書が採択をされました。我が国は、乳製品及びでん粉に関する同報告の解釈には異議があり、かかる解釈には同意するものではないとの見解を重ねてーー重ねてと申し上げますのは、昨年十二月のガット総会においても表明をいたしておるところでございまして、重ねて表明し、数量制限の撤廃は極めて難しいとの立場を明確にした上で、採択には反対はしない旨の表明をいたしたところでございます。このことにつきましては各国から種々の意見表明はありましたが、いずれもパネル報告書の採択に反対をする意見はなかったため、パネル報告書が採択されたものでございます。  非常に難しい問題であるので、この後のまた措置についても腹を決めていると思うがというようなお話でございますが、パネル報告の条文解釈等には問題がありますけれども、ガット加盟国としてその紛争処理手続を尊重するとの立場から、我が方の発言のすべて、特に次の点について明確に記録にとどめられることを条件として、我が国はこれにあえて反対はしないとの立場で臨んだものでございます。  乳製品及びでん粉以外の品目につきましては適切な措置をとる、ただし所要の制度改正のためには相応の時間が必要であるということ。さらに、乳製品及びでん粉に関する条文解釈に同意できない、そしてその措置の実施は極めて困難であるということ。さらには、国家貿易に関する解釈はパネル報告が採択されても先例とはならないと理解いたしております。  なお、このパネルの報告には八品目もあるわけでございますけれども、粉乳等の乳製品及びでん粉を除くいわゆる八品目、このことについてはガットに適合する措置に移行せざるを得ないと考えております。私が談話を発表して苦渋に満ちた決断をしたのも実はそこにあるわけでございまして、こうした措置が我が国農業に及ぼす影響、これを十分見きわめまして、不測の悪影響を回避し、我が国農業の将来に禍根を残さないように、関係各方面と密接に連絡をとりつつ、国内措置それから国境措置につき最大の努力を傾注してまいりたいと考えております。  このため省内に早速、二月一日付でございますけれども、農産物自由化関連対策検討プロジェクトチーム、これを大臣官房に設置をいたしまして、検討を早急にいたす、こういうことにいたしております。
  40. 山下徳夫

    山下(徳)委員 ただいま農林大臣の御答弁にもございましたように、今後この問題についてなすべき我が方の問題はいろいろと残っておりますけれども、一応ガットの場における十二品目についての決着はついた、好むと好まざるとにかかわらず裁定が下されたということであります。国際協調と国内産業の育成、相反する問題にどう調和を求めていくかということはまことに難しいということを、私はこの機会にしみじみと感じた者の一人であります。  さて、この次にやってまいりますのが、例の牛肉、オレンジの問題であります。そこで、これは三月末に期限が切れるわけでございますが、これまた我が国の農業にとってまことに重大な問題であります。過去において幾たびかその期限切れのときに大きな政治問題として取り上げられてきた問題でありますが、再びこれが三月にやってくる。そこで、これに対する一つの農林水産省の取り組み方、御決意、これをこの際承っておきたいと思います。
  41. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 牛肉、かんきつについてのお尋ねでございますが、一九八四年の了解事項を誠実に行ってきたものでございまして、本年四月以降どうするかということについては、両国立場で随分違いがございまして、大変厳しい状況にあると認識をいたしております。しかし、二国間による円満な解決、これを目指して、できるだけ早く交渉のテーブルに着くことが重要であると考えまして、早くやろうではないか、こう呼びかけておるところでございます。話し合いに入りましたならば、我が国の牛肉、かんきつをめぐる実情、立場、これを十分説明をして、その理解を得ることができますよう最大の努力を払ってまいりたい、かように思っております。
  42. 山下徳夫

    山下(徳)委員 佐藤さんは、数多い我が自由民主党の国会議員の中における農業の権威者の中でも最高の権威者であると私は大変尊敬をいたしております。ただいまの問題についての真剣なお取り組みをお願いいたすと同時に、最高権威者であるがゆえに、私はこの機会に農業の内政問題についても一点お伺いをいたしておきたいと思います。  今日ぐらい農業の転換期に当たっていろいろと農政についての論議がにぎやかに行われることはない。本屋を見ましても書棚には農政に関する本があふれている、御承知のとおりであります。これらの本を要約してみますと三つの問題に、それぞれの本はたくさんあっても絞られている。これからの農業は一体何かというと、まず一つは補助金農政と食管制度の見直し、二番目は農産物の自由化の促進、次に農業規模の拡大と競争原理の導入とそれに伴う農産物価格の引き下げ、この三つであろうかと私は思うのですよ。  ただ問題は、これは私ども容易に理解することができるのでありますけれども、そこに到達するまでの一つの道程と申しますか道行き、これが大変に難しいと思っております。農民もまたこの道程に、我々そこに到達するまでにどういう方法をとったらいいだろうか、国はどうしてくれるのだろうか、こういう不安を持っていると思うのでございます。もちろん、今申し上げました保護農政の見直しあるいは農民の自助努力というものが必要であることは私も百も承知をいたしておりますけれども、ただ農民の自助努力によってすべてが解決するとは全く思っておらない。  例えば、規模拡大といっても、今、日本の農地の価格を平均してみますと、ECの平均価格の反当たり、まあ反当たりにしても何にしても大体十五倍ぐらいじゃないでしょうか。アメリカの農地の価格にすると、さらにマルを一つつけたぐらい、百五十倍ないしもっとそれ以上ですかぐらいの農地の価格である。一体、これだけの農地の取得に対する金を払って今日の農民が規模拡大する資金的な力を持っているかというと、なかなか問題だ。とてもそんな金はない。  もう一つの問題は、規模拡大をするならば、それにつれて余剰農家人口の吸収という意味における一つの産業、受け入れる産業体制というものができておらなきゃならぬことは、私が申し上げるまでもありません。例えば、今、申し上げました、このEC並みの規模にしても、大体農家戸数は十五万戸ぐらいでいい。今、専業農家は八十万戸ぐらいですか、二種兼まで入れますと四百万戸超しているでしょう。こういう面から見ても規模拡大というのはなかなかこれは容易なことではない。就労の場一つ見つけるのでも今申し上げたとおりでございます。  したがって、ここらあたりで、例を挙げればいろいろございますが、何をつくったらいいか、どうすればいいかというこれからの農業の道標に対する一つの指標と申しましょうか、それをやはりここで農民に示すべきである、自由民主党内閣としてはきちんとこれを農民に示さなければいけないと思うのであります。御決意のほどだけで結構ですから、お尋ねをいたしておきます。
  43. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 簡潔にお答えを申し上げたいと思います。  農業、農政についての内外からの批判は厳しい状況にございます。特に農業生産者におきましても団体筋におきましても、もちろん我が省におきましても、このままの状況でいいのか、そうではない、何がしかの改革、改善を進めていかなければならぬ。こういう点につきましては、先ほど具体的に価格問題やら補助制度の見直しやらいろんな点について、競争原理の導入やら、いろいろ言われたとおりでございます。  そういうものを頭に置きながらこれからの農政ということになりますと、明けましたので一昨年になりましたが、農政審議会の報告、これを受けてさらに具体的に、いよいよことしはできるものから順次ひとつ具体化をしていかなければならない、こういう時期になりました。その一つの例を挙げれば、米流通研究会の研究の結果に基づく提案とかいろんなものがございます。そういうことで、生産者団体も、砕いて言えば自覚症状がございますときに権力でただ引っ張っていっていいものではない。竹下総理もいつも言われておるように、手順を尽くして、そして将来指針、そこに至るその道行きを丁寧に取り運んでまいりたい、かように思っております。  特にまた、規模拡大について触れられましたが、農村、今の農村は、いわゆる昔の農村と同じところもあるし違うところもある。混住社会という名にふさわしいところもある。そういう農村における雇用の場としての問題、農業改革をやるときの雇用の問題との関連性、こういうことも踏まえながら、たまたま昨年策定された四全総、その中にも、日本列島それぞれの地域において農業問題が問題を抱えておるということでございます。そういう中で、それぞれの地域に合った、いわば地域農政、こういう観点に立って私どもは具体的な政策を実践していかなければならない。  一言つけ加えますけれども、今日、厳しい減反の中でみんな生産者の方々が汗をかいてくださっておる。いろんな努力をしてくださっている。そういう中で忘れてはならぬことは、豊作が罪悪視されてはいけない、豊作はいいことであるということで、私は生産調整も甘んじて受けとめてくださっておるその方々に対して重ねて申し上げますが、丁寧に取り運んでまいりたい、かように思っております。
  44. 山下徳夫

    山下(徳)委員 御決意のほどよくわかりました。ひとつ最高権威者である大臣のこれからの農政、農業をいかにしてリードしていくか、大いに期待をいたしております。  次に、行政改革あるいは行政監察について総務庁にお尋ねをいたしておきたいと思います。  国民の行政に対する負担を軽くする、そのために組織を簡略化し人員を削減していくというのが大筋でありましょうか、私も在職中常にそのことを頭から離さずに微力を尽くしてきたつもりであります。  そこで、総理も施政方針の中で行政改革を強力に推進するとおっしゃっている。しかも、今この行政改革は、これを例えてみるならば富士山の八合目くらいまで大八車を押し上げたところである、手を離せばこれがまた逆に降下して下までどすんと行き当たるよということをおっしゃったのを私は聞いておりますが、まことに言い得て妙と申しましょうか、非常に適切なる表現。いわゆる行革というものは、これは常在、常になきゃならぬ、常在行革と申しましょうか、そういう気持ちで取り組んでいかなければならないと思います。六十三年度の予算におきましても三千六百五十五人という実人員の削減をしたということは、これは昨年よりも少し多い。既に七年間でもって二万五千人の縮減を行ってきているところであります。あるいはまた、機構におきましても三公社等の民営化もやってまいりましたが、今後とも、今総理のおっしゃるように大八車をもとに戻さないようにみんなで支えて推進していかなければならないと思います。この点について総務庁長官の御所見を承っておきます。  さらに、これは行政監察の分野でございましょうか、さわやか行政サービス運動というものを先般打ち出されて、これは閣議で決定されたのですね。大変結構だと思います。何か、ただこれだけを見ますと気持ちの問題みたいですが、そうではなくて、内容に立ち至って具体的にお示しになっているということですから大変結構であると思います。  ただ、一つの例をとりますと、これは九州の例でございますけれども、盲人用点字ブロックというのがありますね。盲人用の道路というのでしょうか、これをずっとそのまま行くとブロックが外れて、その先に電柱があったとか、そのまま行くと車道にはみ出るとか、まことに親切さが足りないような面が今日あるのですよ。こういう点もひとつどうかさわやか運動で細部にわたって私はチェックしてもらいたいと思います。あるいは中期行政監察テーマ、食管、農協、宅地供給あるいはODA、非常に大きな問題に取り組んでおられるのは大変結構であります。  時間がございませんから若干はしょってまいりますが、今申し上げました中央省庁が行っております全国規模における監察、いわゆる中央計画監察、これは非常にスケールが大きいものでありますけれども、国民生活にもっと身近なところにいろいろな問題がある。これは各地方行政監察局でそれぞれやっている地方監察と申しましょうか、その問題がある。  これも先般九州管区監察局で行ったもので、管内でたしか大分と福岡、二県くらいだったと思いますが、中高等学校の理科で使う毒物、劇物の保管状況をチェックした。私、数はちょっと覚えておりませんが、たしか百校足らずであった、八十か九十くらいの学校であった。このことにつきましては、文部省からきちんとその保管の基準というものが示されているにもかかわらず、きちんと錠をかけて規定どおりにやっておったのはたったの一校しかなかった。中には、青酸カリが紛失をしていたという、まことにどうも大変な学校もあったようであります。  こういった行政監察につきましても、さっきの行政改革と同じようにやはり今後ともどんどん推し進めていかなければ、行政に対する国民の信頼というものはどうかすれば薄らぐ。この点について長官のひとつ御決意のほどを承っておきたいと思います。
  45. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 私の前任の長官であります山下委員から力強い御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。  御指摘ございましたように、行政改革というのはまさに永遠のテーマであるというふうに私ども覚悟いたしておるところであります。私が総理から総務庁長官を拝命いたしました際にも、中曽根内閣は行政改革について実に注目すべき大きな成果を上げられた、しかし、まだまだ行革はこれからやらなければならないことがたくさんある、したがって、広く国民皆様方の御支持を得ながら、ひとつ積極的に取り組んでほしいという御指示がございました。その御趣旨を体しまして一生懸命やっているところでございまして、六三行革大綱などにつきましても、スクラップ・アンド・ビルドを徹底する、いろいろな新しい行政のニーズがある中でそうした態度を貫いてまいったところでございます。  それからまた、新行革審におきましては、瀬島さんに小委員長をお願いいたしまして、公的規制の緩和の問題などにつきまして積極的な御検討を始めていただいているところであります。  さらにまた、さわやか行政サービスの問題につきましてもお触れいただいたところでございますが、九州の行政監察局がなかなか一生懸命やっておるようでありまして、これは前長官のおひざ元であるためもあろうかと思いますけれども、先般も病院の給食改善の例でありますとか、いろいろ非常にサゼスチョンに富む報告をいただいているところであります。点字ブロックの問題などを含めまして大いに積極的に取り上げてまいりたい。  総理からは特に、日本はある程度物の豊かさというものは実現したが、心の豊かさこそこれからもっともっと目指すべき政治課題ではないかということを言われておるところであります。そういう点について、まず行政サイドからどのような取り組みができるかという意味合いにおいて考えたのが、このさわやか行政サービスであります。  さらにまた、もう時間も限られておりますのではしょって申し上げますが、これも一つの行革である、そういうことからいたしまして、サービスの向上は目指すが人員、機構等の増加はしないで何とかやりくってやっていこうというふうに考えているところであります。  また、地方監察の強化の問題についてお触れがありましたし、理科の問題についてもお触れがございましたが、とかく地方監察については無用論なども言われておるところでありますが、そういうことのないように、しっかりとやるように指示をいたしているところであります。  それから、ODAの監察などにつきましても、既にアジア、アフリカ各三カ国について監察をいたしてございます。それらの結果のただいま取りまとめをいたしているところでございまして、六十二年度末までにはその結果について報告ができるというふうに承知をしているところであります。ぜひ今後ともいろいろな面で御鞭撻賜りますようにお願いいたします。
  46. 山下徳夫

    山下(徳)委員 青少年の行政は多元的でありまして、各省庁幾つかの省庁にまたがっておりますが、総務庁が包括官庁ということでお尋ねをいたしておきたいと思います。  私は、昨年、ソウルの空港で大変感激的な場面を見たのであります。それはソウルの空港で、おりてきた日本の青年たちと韓国の青年たちが、お互いに抱き合って喜んでいる。何組も抱き合って喜んでいる。そういう光景を見たのであります。そのことについて聞いてみましたらば、ソウルと福岡、双方の市が、毎年ホームスティという形で二十名ずつ青年を一定期間預かって親睦を図っている。この韓国の青年たちは、その数カ月前まで福岡に滞在して、そして郷里に帰った。故国に帰った。その後で今度、お世話した方の福岡の青年が二十名、今度は韓国訪問した。そこで再会を喜び合っている姿であったのであります。しかし、私はその光景をじっと見ながら何かじいんとくるものを感じた。こういう相互理解お互いの国をそういうことを通じて理解を深めていくこの人たちが、やがては両国の間の二十一世紀の新しい一つの方向をお互いにしっかりと結び合ってつくってくれるかな、そんな感じを私は持ったのであります。したがって、今後とも青年の一つの結びつきということは大切である。  現在も青年の船、二種類ございますが、いよいよ来年度から世界青年の船が発足するわけであります。最初はたしか中南米を予定されているということであります。  実は、私は日本とホンジュラスの議員連盟の会長をいたしておりまして、ホンジュラスには何回も参りましたが、最初に行ったころ、ホンジュラスには日本から青年協力隊が非常に大勢行っておりますが、その一人が伐採業務に従事している向こうの青年たちの指導をやっている。そうすると、向こうの青年が日本から行ったその協力隊に何と尋ねたかといったら、日本というのはチャイナのどの部分ですかと聞いたということを聞いて、まことにどうもがっかりしたということを言っておりました。  したがって、やはり私どもはなるたけ半径を広げて、世界の隅々まで青年が出かけていって、日本という立場をよく認識させる、そしてこれらの国々とまた親睦を深めるということは非常に大切である。来年度の予算は六億数千万円だったですか、十分ではないかもしれませんが、小さく産んで大きく育てるということで、青年の輪をこういう制度の発足に当たってさらに進めていくという点についての、ひとつ御決意を承りたいと思います。
  47. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 ただいま山下委員指摘のとおり、日本の青年から世界を知ってもらう、また世界の青年から日本を知っていただくということは極めて意義あることであるというふうに思います。日本の青年もまた世界を知ることによって日本を知ることができるというふうに思うのでございまして、そういう意味合いにおいて、今まで続けてまいりました東南アジア青年の船はそれなりに大きな成果があったと存じます。特に、この船に参加された東南アジア各国の青年たちは、それぞれの国においてその後指導的立場に成長しておるということは、非常に日本にとって有意義なことであるというふうに思っておるところであります。  さらに、山下長官が特に置き土産として、六十三年度予算で、御自身の御提案で、世界青年の船をやれ、こういうふうにおっしゃっていかれたわけであります。その御趣旨を体しまして予算要求をいたしまして、額の面では若干これは円高の影響で減額をいたしましたが、ほぼ予算要求どおりに認めていただきました。したがって、青年の船については計画どおり実施ができるというふうに考えておりますし、今後ともさらに継続して一層幅広くこれを実施することは極めて意義あることである、このように考えておりますので、よろしく御鞭撻のほどをお願いいたします。
  48. 山下徳夫

    山下(徳)委員 時間がだんだん迫ってまいりましたので、少しはしょってお尋ねをいたします。  国土庁長官お尋ねをいたしたいと存じます。  大都市圏、特に東京圏における地価の高騰は私が一々申し上げるまでもございません。田中内閣のころの列島改造論の急激に上昇した、あれから十五年ぐらいたっていますかね。当時と比べると、また格段の開きが上昇率においてあるということでありますが、現在のこの地価の動向、これについてひとつどのように理解しておられるかということを、御認識をまずお尋ねをいたしたいと思います。
  49. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御指摘いただきました列島改造論、昭和四十七年、四十八年、全国的に三割ぐらいずつ地価が高騰いたしました。  今度の場合には、東京を中心に地価が高騰したわけでございまして、過去五年の間に東京の地価は、二十三区をとりますと三倍になっているわけでございます。大変な高騰ぶりでございます。  昨年の七月からことしの七月まで、都道府県が行っております地価調査によりますと、東京から名古屋圏、大阪圏と広がっておるわけでございまして、この三圏をとりますと、三四・四%の上昇でございますが、それ以外の地域は一・三%の上昇にとどまっているわけであります。むしろ下がっているところもあるわけでございまして、二極分化、際立っておるわけでございます。しかし、その後の地価対策、幸いにして国会も大変御協力いただいてまいりましたので、鎮静化してまいりましたし、この鎮静化の範囲が漸次広がってきているという状態でございます。もちろん、かなり離れたところにおきましてなお注意していかなければならない地域もあるわけでございますけれども、効果を上げてきている、鎮静化の範囲が広がってきている、こういうふうに御理解いただいたらいいんじゃないだろうかな、こう思っております。
  50. 山下徳夫

    山下(徳)委員 地価問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、御就任早々総理も非常に真剣にこの問題に取り組んでおられる。私はこれは大変敬服をいたしておりますが、また同様に国土庁長官の意気込みも私どもはあらゆる機会にこれは承知をいたしております。ただ、国土庁長官の所管だけでは私はすべて解決できると思っておりません、いろんな要素がこれにはあるわけでございますから。その中の一つとしてやはり地価に対する各種の税制、税の問題があると思うのでございます。  時間がございません、もう簡単にしか申し上げませんが、この地価税制についてどうすればいいんだということ。これはむしろ大蔵大臣でございましょうか、あるいは国土庁長官でしょうか、どちらからでも結構です、一言。
  51. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 税制の問題で逆に地価高騰に力をかしておったような面のありますのが、住宅を売って買いかえ特例がある、都心の高い土地を売って、かなり離れたところでそれで買えるだけの土地は買いあさるというようなことで高騰に拍車をかけました。これは今度改正していただきまして分離課税の制度をとることになりますので、四月からは、この点むしろ土地の提供によい影響をもたらして、土地高騰に拍車をかけるような悪い点は是正される、こう思っているわけでございます。さらにまた、住宅地を売却する、それに対して分離課税の特例、恩典もあったわけでございますけれども、単に住宅関係に限られておったわけでございますが、これを再開発する方々に譲渡する場合にもこの特例が受けられる。したがって、事務所用地などをつくる場合にもこの恩典が適用される。しかも、これが若干軽減されるというふうなことになりまして、これまた土地確保によい影響をもたらしてくることになる、こう思っているところでございます。
  52. 山下徳夫

    山下(徳)委員 特に東京における地価の高騰の最初のこまをつついたのは、私はやはりオフィスの需給のアンバランスだと思いますが、このオフィス供給についてのバランスの問題は、最近いかがでございますか。
  53. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 昨年、昭和七十五年までの事務所床の需要の見通しを千六百ヘクタールないし千九百ヘクタールという実情を明確にしますとともに、これに対する供給は十分あるんだということも明確にしたわけでございました。同時に、事務所床を求めるその動きが非常に激しかったものでございますから、民間でも次々にこれを増設する方に進まれたわけでございまして、その結果、固定資産税の台帳から見ました事務所床も二倍ぐらいにふえてきているようでございます。また、建築統計から見ました事務所床の着工の面積も六十一年から二倍内外にふえてきているようでございまして、供給面がかなり強く出てきているわけでございますので、混乱事態は避けることができたのではないかな、こう思っております。  さらに、大規模プロジェクトで将来の見通しが明確になってきているわけでございますので、買いあさりしてかえって失敗をするという姿も出てきておるわけでございますので、幸いにして買い控えというような状態になってきているのが今の姿じゃないだろうかな、こう思っております。
  54. 山下徳夫

    山下(徳)委員 残念ながら、土地問題は時間の関係で以上にとどめたいと思います。  文部大臣に一、二お尋ねをいたしておきたいと思います。  教育が国家百年の計であることは、今さら私が申し上げる必要もございません。その振興充実には国を挙げて取り組まなければならぬことは当然のことであります。この国民の教育改革に対する強い期待にこたえて、去る五十九年の八月に発足しました臨教審、三年間にわたる審議を重ねて、四次にわたる答申が行われた。昨年の八月にその使命が一応終わったわけであります。  教育改革は今や本格的な実施の段階に至っておると思うのでございますが、今後どのようなスケジュールでこの教育改革をお進めになるのか、これについて文部大臣からお答えいただきたい。
  55. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の教育改革に対する取り組みでございますが、おっしゃるように、臨教審、三年間御審議をいただきまして、その後、今当面進めるべき八項目についての教育改革の推進大綱をお決めいただいておりますので、それを着実に進めるということが私どもに与えられた課題だ、こう思っております。  特に、我が国の教育水準はおかげさまで高いところにございますが、しかし社会そのものが成熟度を増してまいりますと、社会自体が変化し多様化しておりますから、その社会の変化にみずから対応できるような、たくましく個性的で心豊かな青少年を育成しよう、これが一つの柱でございます。またもう一つは、人生八十年の時代でありますから、八十年の人生をいかに意義ある社会人として過ごし全うするかということで、いつでもどこでもだれでも学び加えられる環境をつくろう、これが生涯学習でございますが、そのすべてを含めまして、教員の資質の向上、教育の内容の改善、そういうものを含めまして進めてまいりたい、こう思っております。  また、本国会にもそれぞれ法案を提出いたしまして御審議をいただく用意をいたしておりますので、よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
  56. 山下徳夫

    山下(徳)委員 私が質問いたそうと思った点まで触れられました。ライフサイクル計画の中における生涯教育、結構でございます。  そこで、もう一つお尋ねをいたしておきます。それは、教員の資質の向上の問題であります。  臨時教育審議会第二次答申で提言されました初任者の研修制度、私は、新任教員の段階で一年間にわたって充実した研修を行うというこの制度は大変制度的に立派であると思います。この初任者研修制度の創設あるいは教員の養成、免許制度、こういったものの改善とか教育制度自体の改善、そういうことから教員の資質の向上、こういう面に早急に取り組むべき段階である、このように理解いたしておりますが、いかがでございましょう。
  57. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘のとおりでございます。教育は人なりと言われますので、特に学校教育は教員の資質に負うところが非常に大きいと思いますので、そういう意味で、新たに教鞭をとっていただく方々、こういう方々にはその指導力、それから特に実践に即した指導力あるいは意欲、それから幅広い知見を備えていただいて、そして教鞭をおとりになるにふさわしい資質を持っていただくために初任者の間に研修期間を設けるということはごく当然のことであろう、こう思いまして、約一年間の研修期間を設ける、こういうことにいたしたいと思いまして、これまた法案を用意をいたしておるところでございます。
  58. 山下徳夫

    山下(徳)委員 文部大臣にあと一問。それはスポーツの振興についてであります。  人生八十年の時代を迎えまして、もう今や履歴書なんかに、結婚の媒酌人の紹介の中に趣味はスポーツなどとは言わないぐらい普及している、そんな時代でありますね。普及率何%ぐらいか、それはもう答弁要りませんよ。お年寄りのゲートボールまで含めると、国民すべてスポーツというような時代でございます。ただ身近なところに適当な施設がないとかいろいろ障害がありますが、これらの障害を早く除去しながらひとつさらにスポーツの普及を図ってもらいたい。これは要望にとどめておきます。  ただ、ソウルのオリンピックがありますが、日本の選手のこれに対する期待はどうだろうかと私自身やや不安に思っておる次第でございます。御案内のとおり、この世界大戦の後で日本が打ちひしがれて途方に暮れているときに、フジヤマのトビウオと言われた古橋広之進が出まして次々に世界記録を塗りかえていった。このことによって、たった一人のスポーツの選手によって日本人全部に非常な自信と勇気を与えてくれたのは私ども十分今日記憶をいたしているところであります。それほどスポーツというのは国民に対して非常な励みとか、そんな要素を持っているわけでございますから、そういう今日すべてスポーツをやる時代ならば、底辺が広がるだけ頂点もやはり高くなければいけませんね。  ここにひとつパネルを用意いたしておりますが、アジア・オリンピックというのかアジア大会、これはスポーツの利用人口ですが、ここに表がございます。これで見ますと、九五%ぐらいが何らかのスポーツをやっているということでありますが、さあ、このスポーツの普及に対してアジア大会におけるメダルの獲得率は、競技種目に比して開催するたびに日本は少なくなっている、メダルの獲得率が。オリンピックじゃないですよ、アジア大会、ASEAN諸国国々と、AS EANだけではありませんが。見るというと、一体、これだけスポーツが普及しているのにかかわらず、国民の生活も豊かになっていると思うのですが、なぜこの頂点がそう高くならないのか。  オリンピックに対して従来、例えば水泳だあるいはマラソンだとか体操だとか幾つかの競技において戦えば必ず日の丸という時代があったけれども、影を潜めてしまった。日本のカロリーの摂取の量が少ないのですか、一体これは何ですか。
  59. 中島源太郎

    中島国務大臣 スポーツ並びにスポーツ選手の育成についての御指摘だと思いますが、これは両々相まちまして、一つには国民すべてスポーツという底辺と層を厚くすることも必要であろうと思いますし、その中からエキスパートを育てるということも必要だと思いまして、御質問の前段は、生涯スポーツと申しますか国民皆スポーツと申しますか、この施設並びに指導員の層を厚くしたい、こう思っております。  また、後段のスポーツ選手育成の面につきましては、確かに御指摘のとおりでありまして、前回のロス・オリンピックではメダル三十二個と思いますが、そのときには東欧圏が参加しておりませんオリンピックでございました。今度は百六十一カ国の参加のソウル・オリンピックでございますし、また近隣諸国もそれなりに相当水準が上がってきておりますので、日本選手が優秀な成績を上げるというのは相当困難な状況だろう、こう思いますが、しかしそれにはまずソウルを目指しまして、またその後も目指しまして幾つかの対策を立ててございます。  その一つは、ジュニア対策でございまして、小さいうちから育てよう。それから、さっき申し上げましたように、指導員の養成、これは指導員に資格付与制度を設けまして、それぞれの分野で有能な指導員を育てる。それからもう一つは、スポーツ医科学の点で医学的にも科学的にも即応した指導をしていこうということ。もう一つは、スポーツカリキュラムと申しますか、段階的にまた種目別に一番効率のいい指導訓練をしていこう。こういうことをあわせまして、総合的に優秀選手を育ててまいろう、また今後とも計画的にこれを進めてまいろう、こういうことに力を注いでまいるところでございます。
  60. 山下徳夫

    山下(徳)委員 運輸大臣 に二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。  御案内のとおり、我が国の国土面積は非常に狭い。限られたこの国土を有効利用するという面におきましては、交通の発達はこれは最も大切な問題である。ことしはたまたま本州と四国に橋がかかる、そして青函トンネルも開通するということで、四つの日本の島が全部陸で結ばれるということはまさに日本の歴史の中でも画期的な年であろうかと思うのであります。同時にまた、昨年四月に新しく発足いたしました民営の鉄道JRでございますが、大変な努力、労使一体となって新生JRに汗を流しているという姿を私は見聞きして、将来にわたって大きく期待をいたしておる次第でございます。  ただ、この中で清算事業団の職員の再就職の問題とそれから長期債務、これは私が在職中から最も大きな問題でありました。さらにJRの将来のためにもこの問題はやはり解決すべき大変重要な問題だと思っておりますが、これはいかがなものでしょうか、大臣としてどのようにお取り組みでございますか。
  61. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おかげをもちまして、国鉄改革の後のJR、順調に進んでおりますが、一方、今御指摘の清算事業団が抱えている問題があるわけでございます。  国鉄等の職員の再就職対策につきましては、再就職先未定の職員が六十三年一月一日現在で五千二百九十人となるなど一応順調に推移はしておりますが、今後引き続き各方面の御協力をいただきながら、全国的観点から再就職対策を行うことが必要だと思っております。  また、国鉄清算事業団の長期債務の処理につきまして、基本的な方針は一月二十六日の閣議決定において明らかにいたしまして、六十三年度の予算案においてもこの基本的な方針に従って事業団に対して千六百四十三億円の助成を行うとともに、資金繰りの円滑化を図るために一兆三千八百十億円の財政投融資を行う等処置しております。
  62. 山下徳夫

    山下(徳)委員 先ほども触れましたが、狭い日本を有効利用するためにはやはり交通の発達が大切である。国土庁長官から地価問題についてもるる御説明がございましたが、極端な意見の中、あるいは極端というよりも実現すれば結構でございますが、リニアモーターカーが発達すると大阪も東京の通勤圏に入るという議論すらあるわけでございます。新しいこの日本におけるリニアモーターカーという交通は、これは今後の交通体系の中に非常に期待されるべきものであると思うのでございます。  大臣は先般西ドイツですかのリニアモーターカーを視察されました。いろいろな御感想を述べられておるのを私も拝見いたしました。その発言が一部では物議を醸しているということでございますが、その真相は一体どうなんですか、この際はっきり……。
  63. 浜田幸一

    浜田委員長 運輸大臣石原慎太郎君。慎重に御答弁願います。
  64. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 せんだって西ドイツのエムスランドというところに参りまして、向こうの技術をつぶさに見て参りました。翌日、ちょっと時差ぼけが残っておるときに記者会見いたしまして、言葉が不十分で大変誤解を招きまして、また一部の方々に御迷惑をおかけしたこと、申しわけないと思っております。  特に宮崎県には私、じかに本意を釈明、説明いたしましたが、私、向こうへ行って非常に強いショックを受けました。それは、日本の実験の施設に比べて、こちらは七キロ、向こうは三十一キロという路線を敷き、敷地もゴルフ場が十も二十も入るぐらい広大な敷地で実験をしておりまして、しからばどちらが技術的に優秀かというと、はるかに日本の方が優秀でございます。  それだけの成果を上げていながら、実は先般、ラスベガス市がロサンゼルスまで二百数十キロの路線を敷くに当たりまして、どういうわけかカナダの技術陣に調査を依頼しました結果、その報告でドイツ側の技術が採択をされることになりまして、その報告には奇妙なことに、論理的にも技術的にもはるかに日本の方が上であるが実験が足りないようだ、よって実用性はドイツの方が先であるということでありました。これは日本の技術陣にとって非常に不本意な報告でありまして、日本の技術陣の努力の結果、日本のリニアというものは、ドイツが幾つかの障害を想定して放棄いたしました低温超電導というものを見事にこなしました。例えば席当たりのコストでありますとか電力でありますと、これははるかにドイツより低いし、また浮上いたしますすき間が向こうは一センチ、こちらは十センチということで、非常にすぐれた技術を現に実験で示しております。もしこれがヨーロッパのように平たんで直線に近いコースならば日本の技術はすぐにも活用できるわけでありまして、ただ、日本の地形からいって、長距離を引くためにはトンネルとかあるいはすれ違いの技術をこれから開発しなくちゃなりませんが、ドイツに聞きますと、ドイツは、ヨーロッパは平たんであるからトンネルの必要はないということで、これは実際に実験をせずにモデルで済ますようでありますけれども、もう既にはっきりと国際的な商品価値を持っておりますこの日本の技術が、実は第三国によってそういうふうに正当に評価され得ないということは、これを開拓した技術陣にとっても申しわけないし、また国民の期待にも背くものだと思いますので、何とかこれをできるだけ早く実用に供したいと思うばかりにちょっと失言もいたしましたが、本意はそういうところでございました。  ただ、これから先どこで次の実験をするかということは、これからそれを調査するために新規に二億円近い予算を構えたわけでございまして、これから技術陣と諮りまして調査し、進めていきたいと思っております。
  65. 山下徳夫

    山下(徳)委員 航空問題について一点だけ触れておきたいと思います。私も党の航空対策特別委員長という立場からいろいろお尋ねしたい点はあるのでございますが、時間が参りました。そこで、私がお尋ねしたいのは航空運賃の問題でございます。  これは山口社会党書記長もちょっとお触れになったのでございますけれども、今国際線の運賃について、日本で発券する場合と外国で発券する場合、同じ成田と一定の区間において非常に差がある、差が大き過ぎる。  一つの例を申し上げてみましょう。こういうことを言うと与党質問らしくないのでございますが、どうも私も、国会議員各位あるいはまた国費を有効に使うという立場から、これは聞いておかなければならぬ。例えば日本とシドニー。これは日本で買いますとシドニーまでエコノミーで二十八万一千百円、シドニーで成田までの切符を買いますと十三万三千七百円、半分以下ですよ。ファーストで買いますと日本から四十三万六千四百円、シドニーからは十九万八千三百円でございます。  こんなのはたくさんあります。これにはいろいろの理由があるでしょう。両国間の為替の問題もありましょう。しかしながら、今のような運賃をちょうだいしなければ、現在の為替レートが妥当でないという意見もあるかもしれませんが、しかし造船にしても何にしても苦境を切り抜けて頑張っているのですよ。百五十円になればもう日本の、造船はだめだと言われながら歯を食いしばって皆が頑張る、百二十円台になっても落後しないように頑張っているじゃありませんか。そうするならば、ぬくぬくととは言わぬけれども、やはりこれはもっと合理的な運賃に改定をしなければならぬ。  例えば円ドルの相場の推移にいたしましても、一九八五年、一昨々年の一月と現在と、円の価格がちょうど二倍になっておりますね。その間これらの国別について一体何回改定したのか、怠慢はなかったかということであります。  また、例えば来年度、六十三年度の国の予算に占める外国旅費、公務員が外国に行くこの旅費が三十七億八千万円ある。向こうから買えば半分で済むのですよ。本当に旅費がなくて、国のためにいろいろ外国と交渉している外交官がパックでもって行っているような例があるじゃありませんか。ですから、そんなことを考えると、私はもっと合理的な運賃制度に直すべきであると思うのです。この点ひとつはっきり答えてください。
  66. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 詳しくは政府委員から御答弁いたしますが、これは元運輸大臣であります山下委員に釈迦に説法かもしれませんけれども、昭和四十八年の変動相場制移行に従いまして、発地国の航空企業の費用をベースにし、発地国の通貨建てで運賃が設定されることに国際的に決まったわけでございます。この原則というものをこれから問題にすべきかもしれませんけれども、一応その原則に従いますと、大変不本意ではありますけれども、この為替変動に従って円がやたらに高くなりまして、結局、日本発と外国発の同じ航空会社でも運賃に非常に差を生ずることになりました。  例えば、隣の香港なんかとは一時期、日本の同じ会社に乗りましても三分の一というぐらいの格差がございましたが、こちらが運賃を下げ、また向こうを上げさせることで——上げさせたのです、実際に。香港側で上げさせたのです。そして四O%台にまでこぎつけましたが、それでもかなり格差がございます。ただ、これはけしからぬというお言葉もありましたが、決して日本の航空会社がそれで暴利をむさぼっているわけでもございませんで、運輸省も、やはり国民の感情というものもございますので、今まで数度にわたりまして指導いたしまして、為替の現況に近い程度まで値下げもさせましたが、なお非常に技術的な問題もございます。それをひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。  あとは、詳しくは政府委員から答弁いたします。
  67. 山下徳夫

    山下(徳)委員 もう時間が参りましたから、政府委員の答弁は必要ありません。私も与党の議員としての質問の限界を承知しておりますから、きょうはこの程度でとどめておきますが、この問題は後日またただしますよ。  そこで、最後にもう一点、郵政についてお尋ねをいたしておきますが、郵政の取り組む課題はたくさんある。私は質問するためにいろいろ資料を取り寄せたりいたしましたが、郵政ほど多くの問題を抱えているところはない。その中で、ただ一つだけお尋ねをしておきます。  それは、特定郵便局の制度であります。全国に一万八千という特定郵便局がある。この歴史は恐らく百年ぐらいたっているでしょう。どんな山の中にも谷合いにでも特定郵便局というものがあって、地域住民に奉仕をしている、利用されている。まさにこれは生活の拠点であります。それが、ややもすれば生活の拠点が薄らぎつつある。それは、取り扱うその種類が非常に魅力の少ないものになりつつある、貯金にしても何にしても。やはり特定郵便局制度というものを今後ともこれを厳として存在を認めていくならば、活用すべき方途を郵政大臣もっとお考えになるべきではないかと思うのであります。もっとここに働く人たちに、何か勇気づけるような、新しい商品を開発したり、いろいろやるべきであろうと私は思うのでございます。  もう一つの問題は、例えば今どれだけあるか、これも私よく知りませんが、少なくとも六〇%ぐらいあるでしょう、借り上げ庁舎ですね、ほとんどの郵便局は。さっき国土庁長官から地価についてお話がありましたが、これはたしか三年に一回しか改定されておらない。大都市と言わずともかなりの地価の変動が起きつつあるわけでございますから、しかもその物差し、家賃ですか、借り上げ料の基準にしたって、どうも私は納得いきかねる。  こういう点からでも、まずもう少しこういうところに働く人たちに、本当に奮い立たせる、勇気を出させるようなことを、親心を示されたらどうかと思いますよ。あるいは、この人たちの栄典制度等にもなかなか不十分な点がある。この点をもう一点だけ、時間が参りましたからお尋ねをいたしておきます。
  68. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  党の方でも郵政懇話会の会長として大変御努力をいただいておりますことに心から感謝を申し上げたいと思いますが、前島密という方がこの郵便制度というものを創設されまして、私、榎本武揚初代逓信大臣以後百八代目になるわけでございますけれども、全国に二万四千カ所の郵便局があります中で、今御指摘のありました一方九千足らずの特定局の皆さん方が大変今日まで御努力いただいた。その長年の伝統に報いるということが確かにおっしゃるように必要ではないかと思います。借り上げ料につきましても、六十一年に固定資産税、御承知のように三年ごとの改定でございますので三・九%か上がっておるはずでございますが、その全国、毛細血管のように日本じゅうに張りめぐらされた特定局の皆さん方、郵便局の皆さん方の御努力の結果で今百十六兆円という郵貯の資金がございますし、簡保の契約高百兆円でございます。六十三年度の予算で申しますと、七兆九千億ぐらいの郵貯からの資金が財投の三十三兆の中で出ておりますし、それから四兆五千億、簡保から出ております。そういう日本の経済を支えるための大きな柱でございますので、私ども、その方々に意欲を持っていただくような、例えば、金利の自由化に連動するような小口の預金に対しても配慮するようなことが必要ではないかと思います。  定額貯金に対しましても、大体貯金の九〇%が定額貯金でございますから、貯金という名称は明治八年にできておりまして、特に、御承知のように預金というのは銀行が使っておりますが、貯金というのは国家しか使えなかったという伝統があるわけでございます。その貯金という名前の名誉を守るために頑張ってまいりたいと思います。よろしく御支援をお願いいたします。
  69. 山下徳夫

    山下(徳)委員 以上で私の質問はもう終わらなければなりません。時間が参りました。残余の時間はあす同僚の野田議員から、専門の脱あるいは財政について関連として質問があることになっております。ですから私はこの問題に触れませんが、ただ、最後に一言、大蔵大臣にお尋ねいたしておきます。  税の改正につきましては、国民の素直な気持ちというのは、どうして改正しなきゃならぬだろうか、改正しなければ年金ももらえなくなるのだろうかという素直な感情がある。あるいは直間比率が外国に比べてどうも直税が多過ぎる、だから直さなきゃならぬ、しかしそれは弱い者いじめになるのじゃなかろうかという単純な、素朴なそういう気持ちも私はあると思うのであります。したがって、具体的な問題に入る前に、こういった素直な率直な国民の疑問に対してわかるような、まず大蔵大臣と申しましょうか、大蔵当局の国民に対するそういう説明からこの問題は入っていただかなきゃならぬと思うのでございます。この点だけは一言だけお尋ねいたしまして、私は終わりたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 年金がもらえなくなるのだろうかというような御心配を国民にかけてはならないのでありまして、ただ、我が国の社会が急速に老齢化をいたします。六・六人の若い人が年寄りを支えている今から、二〇一〇年には三人に一人ということになりますと、若い人にそれだけの負担をかけるということは大変なことで、そういうことから、我が国のように所得水準が高く、また所得格差の少ない国では、今からみんなが社会共通の費用を薄く広く負担するようにしておきませんと、今御心配のようなことを国民が将来心配されなければならない。ただいまからそういうことに備えておきたいという点が一つ。  もう一つは、シャウプ勧告以来ほとんど基本的な改正をいたしておりませんために、所得税について非常にサラリーマンに重税感が強い。あるいは法人税について、世界どこでも本社が置けるようになりました今、日本の法人税だけが高いというようなことが起こっておりますので、この点もやはり直していくべきではないか。これは国内における重税感と国際間における競争関係等々からそのようなことを考えておる次第でございます。
  71. 山下徳夫

    山下(徳)委員 終わります。
  72. 浜田幸一

    浜田委員長 次回は、明四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十五分散会