運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-05-17 第112回国会 衆議院 本会議 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)     ─────────────  議事日程 第二十一号   昭和六十三年五月十七日     午後一時開議  第一 消防法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)     ───────────── ○本日の会議に付した案件  日程第一 消防法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出)  国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案議院運営委員長提出)  刑事施設法案(第百八回国会内閣提出)、刑事施設法施行法案(第百八回国会内閣提出)、留置施設法案(第百八回国会内閣提出)及び海上保安庁留置施設に関する法律案(第百八回国会内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時三分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ────◇─────  日程第一 消防法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第一、消防法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。地方行政委員長松本十郎君。     ─────────────  消防法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     ─────────────     〔松本十郎登壇
  4. 松本十郎

    松本十郎君 ただいま議題となりました消防法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、危険物判定基準合理化等を図るため、危険物の定義を明確にするとともに、試験による危険物判定方法を導入することとし、あわせて、危険物保安を確保するため、製造所等の許可の取り消し等に関し、所要改正を行うものであります。  本案は、四月二十七日参議院から本院に送付され、同日本委員会に付託されたもので、四月二十八日梶山自治大臣から提案理由説明を聴取、五月十三日質疑に入り、危険物の見直しの適否、救急医療体制を含む消防力充実等について論議が行われましたが、同日質疑を終了、次いで討論、採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、三項目にわたる附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  5. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ────◇─────
  7. 自見庄三郎

    ○自見庄三郎君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。  内閣提出労働組合法等の一部を改正する法律案議題とし、委員長報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  8. 原健三郎

    議長原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。      ────◇─────  労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出
  10. 原健三郎

    議長原健三郎君) 労働組合法等の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。社会労働委員会理事高橋辰夫君。     ─────────────  労働組合法等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     ─────────────     〔高橋辰夫登壇
  11. 高橋辰夫

    高橋辰夫君 ただいま議題となりました労働組合法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、労働委員会制度効率的運営及び機能強化を図るため、中央労働委員会国営企業労働委員会とを統合する等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、  第一に、統合後の中央労働委員会委員の数は、公労使各十三人とすること、  第二に、労使委員は、国営企業を含む関係労使推薦に基づいて、公益委員は、労使委員の意見を尊重して作成した委員候補者名薄のうちから両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命すること、  第三に、現行国営企業労働委員会地方調停委員会廃止し、統合後の中央労働委員会地方における国営企業事件のほか、一般企業事件の一部をも担当する地方調整委員を置くこと、  第四に、労使委員についてはそれぞれ推薦母体別に、公益委員については会長の指名により、一般企業担当国営企業担当を定め、紛争調整開始の決定、あっせん、調停仲裁等に参与させること、  第五に、国営企業事件に関する不当労働行為審査等については、重要な事件を除き、国営企業担当公益委員のみで処理することができること 等であります。  本案は、去る五月十三日付託となり、本日中村労働大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑を終了いたしましたところ、公益委員委員候補者名簿作成手続等について、自由民主党、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合より四党共同修正案が、また、公益委員の数等について、日本共産党革新共同より修正案がそれぞれ提出され、採決の結果、日本共産党革新共同修正案は否決され、本案は、四党共同提案に係る修正案のとおり修正議決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)      ─────────────
  12. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  13. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。      ────◇─────
  14. 自見庄三郎

    ○自見庄三郎君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。  議院運営委員長提出国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
  15. 原健三郎

    議長原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。      ────◇─────  国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案議院運営委員長提出
  17. 原健三郎

    議長原健三郎君) 国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長趣旨弁明を許します。議院運営委員会理事村岡兼造君。     ─────────────  国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ─────────────     〔村岡兼造君登壇
  18. 村岡兼造

    村岡兼造君 ただいま議題となりました国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、議員任期満限または衆議院解散により身分を喪失する国会議員秘書に係る健康保険及び厚生年金保険適用について、その特例措置を講じようとするものであります。  その内容は、議員任期満限または衆議院解散による選挙後再就職する秘書については、これらの期間中、給料が支給される場合に限り、特例として、健康保険については、保険料の二分の一を議院が負担することとして任意継続保険者とみなし、厚生年金保険については、秘書議院各二分の一負担の保険料を納付することを要件として被保険者の資格を喪失しなかったものとすることであります。  本案は、本日議院運営委員会において起草提出したものであります。  何とぞ、御賛同くださるようお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  19. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案を可決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ────◇─────  刑事施設法案(第百八回国会内閣提出)、刑事施設法施行法案(第百八回国会内閣提出)、留置施設法案(第百八回国会内閣提出)及び海上保安庁留置施設に関する法律案(第百八回国会内閣提出)の趣旨説明
  21. 原健三郎

  22. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 刑事施設法案について、その趣旨を御説明いたします。  自由刑に処せられた者、刑事訴訟法規定により勾留される者、死刑の言い渡しを受けた者その他法令により監獄に拘禁すべき者の収容及び処遇につきましては、現在、監獄法規定するところでありますが、現行監獄法は、明治四十一年に制定されて以来約八十年、何ら実質的改正を見ることなく今日に至っておりますため、その間における社会情勢の変化や刑事政策思想の発展にかんがみるとき、内容的に甚だ不十分なものになってきていると言わざるを得ないのであります。  そこで、この法律案は、このような事情にかんがみ、国と被収容者との法律関係を明確にし、受刑者改善更生のための効果的な処遇方法を導入する等、刑事施設の被収容者に適切な処遇を行うため、現行監獄法の全部を改正しようとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、  第一は、被収容者権利及び義務の範囲を明らかにするとともに、被収容者生活及び行動制限を加える必要がある場合につき、その根拠及び限界を定めるものとしていることであります。すなわち、まず、被収容者書籍等閲覧面会及び信書発受については、それが権利として認められる範囲を明らかにし、被収容者収容性質に応じてこれに必要最小限度制限を加え得ることを定めるとともに、被収容者の信教の自由の法的保障を図るものとし、また、刑事施設規律秩序維持に関する原則を定め、規律秩序維持のために必要な行動規制要件及び限界を明らかにするとともに、規律秩序維持のための間接強制方法である懲罰について、その要件を具体的に定め、その種類を整理するほか、科罰一般基準及び科罰手続を定めて、これの適正な運用を期することとしております。さらに、刑事施設のとる措置のうち被収容著の権利制限しまたはその利益に重大な影響を及ぼすものについては、被収容者法務大臣に対し審査の申請を行うことができるものとし、行政不服審査法規定に準じた救済の制度を新たに設けるとともに、被収容者処遇に関するすべての事項につき、刑事施設長等に対し苦情申し出を行うことができるものとし、これに関する規定を整備することといたしております。  第二は、被収容者に対して適正な生活条件保障を図るとともに、その健康の維持のために適切な措置を講ずるものとしていることであります。すなわち、被収容者には食事、衣類、日用品その他日常生活を営むのに必要な物を支給または貸与することを法律上明らかにするほか、被収容者自弁の物を使用し得る範囲を拡大することとし、また、運動、入浴、健康診断、傷病の診療等、被収容者保健衛生及び医療に関する施策を充実することといたしております。  第三は、受刑者について、その改善更生を図るための制度を整備するものとしていることであります。すなわち、まず、個々の受刑者ごとに、その資質及び環境について科学的な調査を実施し、これに基づいて定める計画的な処遇実施要領に従って処遇を行うこととし、また、受刑者改善更生のための基本的処遇として、作業のほか、教科指導、心身に障害のある者に対する治療的処遇及び相談助言等生活指導を実施することとし、さらに、改善更生のための効果的な処遇方法として、一定条件を備える受刑者につき、刑事施設の職員の同行なしに、刑事施設の外の事業所等に通勤させる外部通勤作業更生保護関係者を訪問する等のための外出及び外泊の制度を設けるほか、受刑者自主性を促進するための開放的施設における処遇、釈放前における社会復帰のための指導及び援助等所要規定を新設することといたしております。      第四に、現行のいわゆる代用監獄制度については、刑事施設収容される者と留置施設留置される者の処遇に差を生じないよう規定を整備するほか、代替収容対象を限定する等の制度的改善を加えることといたしております。  なお、この法律案につきましては、この法律制定に伴い、関係法律整理等所要手続を必要といたしますので、これらの事情を考慮し、その施行期日等につきましては、別に法律で定めることといたしております。  以上が刑事施設法案趣旨であります。  次に、刑事施設法施行法案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、同時に国会に提出いたしました刑事施設法案が可決されました場合、その施行期日及びその施行に伴い必要な経過措置を定めるとともに、関係法律規定整理を行おうとするものであります。  以上が刑事施設法施行法案趣旨であります。(拍手)     ─────────────
  23. 原健三郎

  24. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 留置施設法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  現在、都道府県警察管理運営している留置場は千二百五十六場あり、年間延べ約二百五十万人の被逮捕者、被勾留者等留置されているところであります。しかしながら、留置場留置される被留置者処遇内容留置場設置根拠等法律上必ずしも明確でなかったのであります。  この法律案は、このような留置場の現況及び刑事施設収容される被収容者処遇改善を主な内容とする刑事施設法案国会に提出されることにかんがみ、都道府県警察留置施設留置される被逮捕者、被勾留者等について、刑事施設収容される被逮捕者、被勾留者等処遇と均衡のとれた適切な処遇を行うとともに、留置施設の適正な管理運営を図るため、被留置者処遇に関し必要な事項を定め、あわせて留置施設設置等に関する規定を整備しようとするものであります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明いたします。  第一は、この法律案目的についてであります。  この法律案は、被留置者人権尊重しつつ、被留置者について適切な処遇を行うとともに、留置施設の適正な管理運営を図ることを目的とすることとしております。  第二は、留置施設設置等に関する規定についてであります。  その一は、留置施設設置根拠に関する規定でありますが、これは、都道府県警察留置施設を設置することとし、留置施設都道府県警察警察官により逮捕される者等及びこれらの者で勾留状の執行により刑事施設法代替収容に関する規定適用を受けることとされるものを留置するほか、他の法令規定により留置施設留置すべきこととされる者等留置する施設とすることをその内容としております。  その二は、留置業務捜査との分離に関する規定でありますが、これは、留置施設において留置業務に従事する警察官はその施設留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならないことをその内容としております。  第三は、被留置者処遇に関する規定についてであります。  その一は、被留置者処遇に関する通則としての規定でありますが、これは、被留置者は性別に従い区分して留置すること、被留置者処遇は、昼夜、居室において行うことを原則とすること、留置業務管理者は被留置者に対し留置開始時において一定事項を書面で告知しなければならないこと、留置施設規律及び秩序は厳正に維持されなければならないこと等をその内容としております。  その二は、被逮捕者処遇に関する規定でありますが、これは、被逮捕者処遇に当たっては、その地位を考慮し、逃走及び罪証隠滅防止並びに防御権尊重に特に留意しなければならないこと、被逮捕者には、寝具を貸与し、食事及び湯茶を支給するほか、原則として自弁の物品の使用を許すものとすること、被逮捕者から留置開始時に健康状態につき事情を聴取すること、被逮捕者に対し、医師による健康診断等医療上の措置を受けさせるほか、指名医による診療を許すことができること、被逮捕者の宗教上の行為及び書籍等閲覧制限する場合の要件等を明確にすること、被逮捕者弁護人等との面会については、面会の日時は留置施設の執務時間内、面会場所留置施設面会室、同時に面会し得る弁護人等の人数は三人以内とするが、これによらない弁護人等申し出があるときは、管理運営上特に支障がある場合を除き、その申し出に応じなければならないこと、被逮捕者弁護人等との信書発受に関し、その作成方法等について制限できる場合を留置施設管理運営上必要な場合に限り、弁護人等から受ける信書についてはその弁護人等が発した信書である旨を確認するため必要な限度で検査すること、被逮捕者弁護人等以外の者との面会及び信書発受について必要な定めを置くこと等をその内容としております。  その三は、被勾留者処遇に関する規定でありますが、被勾留者処遇については、原則として、刑事施設法適用されることを明らかにしております。  その四は、被逮捕者及び被勾留者以外の被留置者処遇に関する規定でありますが、その処遇については、その性質に反しない限り、被逮捕者に関する規定を準用することとしております。  以上の規定のほか、警察本部長等実地監査に関する規定警察庁長官の巡視に関する規定警察本部長等に対する審査の申し立てに関する規定留置業務管理者及び警察本部長等に対する苦情申し出に関する規定留置施設の視察及び参観に関する規定、罰則に関する規定その他所要規定を置くとともに、この法律制定に伴い必要となる警察法その他の関係法律についての所要の改廃を行うこととしております。  なお、この法律は、刑事施設法施行の日から施行することとしております。  以上が留置施設法案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  25. 原健三郎

  26. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 海上保安庁留置施設に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  海上保安庁留置施設は、海上保安官が逮捕する被疑者または現行犯人等留置するため、全国の海上保安部署等百九カ所に設置されており、年間約四百人の者を収容しております。  今般、刑事施設法案及び留置施設法案国会へ提出されることに合わせて、これらの海上保安庁留置施設においても、その適正な管理運営を図り、被留置者人権尊重しつつ、その適切な処遇を確保する必要があるため、本法律案国会へ提出することとしたものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、海上保安庁留置施設には、主として刑事訴訟法規定により海上保安官が逮捕する被疑者または現行犯人等で、留置の必要があると思料するものを留置することとし、このうち、船舶に設けられている留置施設には、これらの者であって海上保安部署等に設けられている留置施設にやむを得ない事由により速やかに留置できない者に限り留置できることとしております。  第二に、留置施設を有する海上保安部署等の長を、留置業務を管理する留置業務管理者とするとともに、留置業務に従事する留置担当官は、捜査に従事してはならないこととする等を定め、留置施設の適正な管理運営を図ることとしております。  第三に、被留置者処遇に当たっては、逃走及び罪証隠滅防止並びに防御権尊重に特に留意しなければならないこととするとともに、原則として書籍等閲覧及び弁護人等との面会等制限することができないこと、苦情申し出制度を設けること等を定め、被留置者人権尊重し、その適切な処遇を確保することとしております。  なお、この法律は、刑事施設法施行の日から施行することとしております。  以上が海上保安庁留置施設に関する法律案趣旨でございます。(拍手)      ────◇─────  刑事施設法案(第百八回国会内閣提出)、刑事施設法施行法案(第百八回国会内閣提出)、留置施設法案(第百八回国会内閣提出)及び海上保安庁留置施設に関する法律案(第百八回国会内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  27. 原健三郎

    議長原健三郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。坂上富男君。     〔坂上富男登壇
  28. 坂上富男

    坂上富男君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、内閣提出刑事施設法案、同施行法案について、総理法務大臣並びに国家公安委員長に対し、反対の立場から質問をいたしたいと思います。(拍手)  本法案は、明治四十一年に制定された監獄法を全面的に改正する法律とされております。現行監獄法には改正すべき点の多々あることは、我が党や日本弁護士連合会などが強く主張してきたところであります。現憲法理念である基本的人権尊重立場に立って、被拘禁者の非人間的な取り扱いを改めるという改正であれば、これに反対すべき理由はありません。しかし、現に提案されておる刑事施設法案は、憲法理念に立脚して、国際的な人権水準を達成したものとは到底評価することはできません。このような内容法案が強行成立された場合、国際的な非難の対象ともなりかねないものと憂慮いたしておるものであります。いかがでございましょう。この点に関して、まず総理の御見解をお伺いをいたします。  本法案は、昭和五十五年十一月、法制審議会法務大臣に答申された「監獄法改正の骨子となる要綱」に基づいて立案されたとされております。しかし、要綱に比して法案人権保障上後退していると評価せざるを得ない点が実に百カ所以上に上っております。  総理にお伺いいたします。本法案法制審議会要綱を忠実に法文化しなかった理由についてお答えください。本法案と同時に提出されておる留置施設法案は、法制審議会審議を経たものではありません。  総理にお伺いいたします。本法案留置施設法案をいま一度練り直すため、これを再度法制審議会に差し戻される御意思はないでしょうか。  次に、内容についてでありますが、まず第一に、代用監獄制度廃止についてであります。  代用監獄誤判冤罪の温床と言われてまいりました。近時、相次いで著名な死刑事件について再審開始され、無罪の判決が下されております。松山事件財田川事件、そして再審公判中の島田事件、いずれも事実に反する自白誤判の大きな原因となっていることは周知のところであります。最近の事件でも、旭川日通営業所長殺人事件お茶の水女子大学寮事件横浜山下事件など無罪が確定しておる冤罪事件が後を絶たないのであります。そして、これらの事件では、常に本人の自白が存在し、その任意性信用性が否定されるに至っております。  国家公安委員長及び法務大臣にお伺いをいたします。なぜ、警察の取り調べにおいてこのような事実に反した自白が強要されておるのか。その原因は、私は、被疑者の身柄を二十四時間管理する代用監獄制度その中にあると断言いたします。(拍手前記六つ事件について虚偽自白に至った原因説明、答弁していただきたいと思うのであります。被勾留者勾留場所は、現行監獄法でも拘置所原則です。代用監獄制度は、監獄法施行当時、拘置所の数が不足していたため、やむを得ず認められた特例にすぎません。その後何回か企てられました監獄法改正草案において、政府はその都度、代用監獄廃止を公約してまいりました。また、裁判官のもとに引致後も警察管理下で被勾留者の身柄を拘禁する制度は、国際人権規約B規約九条三項や一九七九年国際刑法学会ハンブルク決議、第三部会決議七項eに違反し、また、欧米先進諸国には全く類例を見ない特異な制度なのであります。ところが、警察庁、法務省は、捜査上の必要性あるいは拘置所増設予算の不足等を理由に、代用監獄廃止に至る具体的な道筋を示そうといたしません。  総理にお伺いいたします。人権侵害の温床となってまいりました代用監獄をいつまで継続するのか。政府は代用監獄廃止するおつもりがおありなのか。もしそうだとすれば、その時期、具体的な予算措置等を明らかにしていただきたいと思います。また、一定期間、代用監獄制度が存続される間にも、その中で人権侵害が発生しないよう経過措置を定めることが必要であります。ところが、法案には、そのような配慮は全くなく、逆に、留置場内の遵守事項違反の行為に対して戒告の処罰を新設し、拘束具の使用を明確にいたしました。  法務大臣にお伺いいたします。とりあえず、代用監獄廃止までの期間も、否認しておる被疑者や重罪事件被疑者代用監獄対象から除外し、また、懲罰や拘束具の使用等、拷問的に使用される危険性のある規定を削除されるお考えはないのでございましょうか。  第二の問題は、弁護人等との面会制限についてであります。  弁護人と被疑者面会接見交通の権利憲法第三十四条に由来する極めて重要な基本的人権であります。ところが、刑事施設法案百十条は、この面会を平日の官庁執務時間内を原則とし、日曜や祭日、夜間執務時間外の面会は、刑事施設留置場管理運営上支障のない場合に限り、例外的に許されることとなっております。警察の取り調べが深夜に及ぶことは決してまれではありません。取り調べについてのみは時間的制限を設けないで、他方、弁護人の面会の時間を厳しく制限するようなことは到底許さるべきことではありません。  総理にお伺いをいたします。被疑者の弁護人依頼権、防御権尊重して、弁護人との接見について時間的な制限法案から撤廃されるお考えはありませんか、お伺いをいたします。  また、弁護人、弁護士と被拘禁者信書の授受は内容の検閲をしないという扱いは、国際的にも確立されているところであります。ところが法案では、獄中から弁護人、弁護士あての信書内容も検査し、内容によっては削除、抹消することとされております。この点について法案を改められるお気持ちはないか、法務大臣にお伺いをいたします。  第三に、第三者機関の設置についてであります。  刑事施設留置場の中の人権が侵害されやすいのは、これが社会から隔離された密室であるからであります。施設から独立し、独自の調査、勧告等の権限を持った第三者機関の設置は、この行刑の密行性を打破し、被拘禁者の効果的人権救済の決め手と言えるでありましょう。欧米諸国では制度の導入によって大きな成果を上げております。第三者機関の設置を図るお考えはないのか、法務大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。  第四番目に、刑事施設内の規律秩序維持は極めて偏重しております。これについて是正の必要はないか、どのような対策をとられるおつもりか、法務大臣に御見解を承りたいと思います。  第五番目に、被収容者権利保障についてお伺いいたします。  刑事施設内の医療面会信書、図書の閲覧制限受刑者面会死刑確定者の信書面会の相手方を親族等のみに限定し、面会信書の回数制限面会立ち会い、虚偽事実の記載による信書の抹消など、欧米諸国ではおよそ考えられないほど厳しく外部交通が制限されております。図書の閲覧制限要件も広範で、最高裁の判例にも反するものと言わねばならないのであります。このような外部交通の制限は大幅に修正されるおつもりなないか、法務大臣にお伺いをいたします。  第六番目に、受刑者処遇についてお伺い申し上げます。  この点は、法制審答申と法案が最も大きく乖離しておるところであります。法案が、答申にあった「処遇にあたっての受刑者の意思の反映」、「日課と日課外時間の明確な区別」、「作業報酬の一般社会水準への引き上げ」、「収容時からの開放処遇」などの先進的規定を削除してしまった理由法務大臣に具体的にお伺いしたいと思います。  最後に、死刑確定者処遇についてであります。  死刑確定者の拘禁の目的は身柄確保にのみ存在するのであって、その権利を被勾留者以上に制限すべき根拠は何もありません。法務大臣にお尋ねいたします。死刑確定者の処遇現行法どおり被勾留者規定を活用するよう改められる御意思はございませんか。  以上のように本法案は、憲法理念人権の国際水準に達しないばかりか、政府が尊重すべき法制審議会の答申をすら無視し、部分的には現行法より改悪されたものと言わなければなりません。したがって、本法案については、我が党は、いま一度法制審議会審議にゆだね、また、その問題点について在野法曹たる日本弁護士連合会の意見をもしんしゃくして、抜本的に改めた上で再提出すべきことを要求し、国会の場におけるせっかちな審議には強く反対をし、反対の立場から御質問をいたします。  以上の諸点について総理並びに法務大臣国家公安委員長の御所見を求め、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  29. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) 私に対するお尋ねにお答えいたします。  刑事施設法案は、被収容者人権尊重しつつ、収容性質に応じた適切な処遇を行うことをその立法目的としているものでありまして、憲法理念に立脚しており、人権保障の点でも国際的に遜色のないものである、このように考えております。また、実務的にも矯正の現状から問題はない、このように考えます。  次が、法制審の要綱に忠実ではないではないか、こういう御意見を交えての御質疑でありました。  刑事施設法案法制審議会の答申を忠実に法文化したものであるというふうに考えております。答申と形式、表現が異なる点はございますが、これは立法技術的な観点からの整理と関係機関との意見調整の過程で必要とされた若干の整理を施したことによるものでございまして、その実質において答申を逸脱した点はない、このように考えております。したがって、法制審議会に対して差し戻しをするという意思はありません。  代用監獄制度のことに対してのお尋ねであります。  審議会の答申は、被勾留者警察留置場収容する例をだんだん少なくすることを要請しておりますが、その趣旨を踏まえて今後十分検討していきたい、このように考えます。  次は、弁護人接見問題であります。  法案は、刑事施設等の管理運営上必要最小限の制限に限定しているものでありまして、この制限規定法案から撤廃する考え方はございません。  以上で私のお答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣梶山静六登壇
  30. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 坂上議員にお答えをいたします。  私に対する質問は、虚偽自白が強要される原因についてでございますが、御指摘の無罪事件においては、自白任意性信用性に疑いがあるものとされたこと等により無罪とされたことは承知をいたしておりますが、これは取り調べを初めとする捜査活動のあり方によるものであり、代用監獄制度そのものに起因をするものとは考えておりません。判決等で指摘をされた諸点については、これを謙虚に受けとめ、取り調べを初めとする捜査活動について一層の適正を図るように努力をしてまいる所存でございます。(拍手)     〔国務大臣林田悠紀夫君登壇
  31. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 坂上議員の御質問にお答え申し上げます。  第一点につきましては、代用監獄制度そのものに由来するものではないという公安委員長の御答弁がありましたが、私もそのとおり存じております。なお、検察当局といたしましては、これらの判決を謙虚に受けとめまして、個々の事件についての捜査の適正を期し、自白及び客観証拠を十分に検討して、その処理に誤りなきを期するよう今後とも一層努力するつもりでございます。  次に、否認している被疑者または重罪事件被疑者代用監獄収容対象から除外する意思はないかという御質問がありましたが、被疑者留置勾留場所をどこにするかということは、議員御承知のとおり、刑事訴訟法によって決せられるべき事項でありまして、刑事施設法ないし留置施設法で定める事項ではありません。ところで、捜査手続におきましては、制約された時間内に適切な事件処理を行う必要上、多数の証拠品を示して被疑者を取り調べる等の必要があり、また、現在の監獄の数、配置等に照らしますると、御指摘のような被疑者代用監獄への収容対象から一律に除外することは適当でないと考えます。  次に、懲罰や拘束具の使用は、あくまでも留置施設規律及び秩序維持するため必要最小限の範囲内でとられる措置でありまして、捜査のために行われるものではなく、留置施設においても適切な運用がなされるものと理解をいたしております。  被収容者から弁護人または弁護士に対して発する信書の御質問がありましたが、御指摘の規定は、被収容者が弁護人または弁護士に対して発する信書であっても、暗号を使用するものや逃走刑事施設規律及び秩序を害するおそれのあるものなどが想定されるため、場合を限定いたしまして必要最小限度制限を加えようとするものでありまして、関係の規定を改める考えはございません。  今次監獄法改正において、第三者機関の設置を図る考えはないかという御質問でありましたが、刑事施設法案は、刑事施設の長に対し、その刑事施設の適正な運営に資するため必要な意見を学識経験者等から聞くことに努めなければならない旨規定をしておりまして、その運用として、各刑事施設ごとに、定期的に各界の人々により構成される会議を開催することを予定しております。  また、刑事施設内におきましては、被収容者収容を確保し、処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活維持するため、必要な限度におきまして被収容者生活行動について規制を行っており、規律秩序を偏重しているものではありませんが、刑事施設法案では、右の原則を明文で宣明いたしまして、個々の事項につきましても、過度にわたる規制のないよう、その要件限界を明示しているところでありまするので、その趣旨が十分に生かされるようにしてまいりたいと存じます。  現行法のもとにおきましても、刑事施設内の医療は適切に行われていると承知をしておりまするが、刑事施設法案は、刑事施設においては、被収容者の健康を保持するため適切な医療上の措置を講ずることを明らかにした上、被収容者が負傷し、もしくは疾病にかかった場合またはその疑いがある場合には、速やかに医師による診療を行う旨定めており、国の責務をなお一層明確にしております。  次に、刑事施設法案における被収容者の外部交通に関する制限は、すべて法制審議会の答申を忠実に法文化したものであり、被収容者収容目的を達成するために必要かつ最小限度の制約でありまするので、御理解願いたいと存じます。  次に、刑事施設法案法制審議会の答申を忠実に法文化したものでありまするが、答申は、その名称に示されるように、あくまで改正の骨子でありまするので、法文化に当たり、立法技術的な観点から表現の整理等が施されており、御指摘の点はいずれもこのような観点から整理がなされたもので、答申の実質を変えている点はございません。  次に、死刑確定者の処遇についてでありまするが、死刑確定者は、既に刑が確定している点において被勾留者と異なり、また、刑そのものを執行しているわけではない点において受刑者とも異なる特殊な地位にあるものであります。法案は、被収容者収容性質に応じた適切な処遇を行うことを法律目的としており、死刑確定者につきましても、法制審議会の答申に従い、右に述べたその収容性質にふさわしい処遇内容規定しているところであります。(拍手)     ──────────────────────
  32. 原健三郎

    議長原健三郎君) 中村巖君。     〔中村巖君登壇
  33. 中村巖

    ○中村巖君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております刑事施設法案を初めとするいわゆる拘禁四法について、総理並びに関係大臣に対し質問をいたすものであります。  拘禁四法案は、現在の監獄法にかわるべき刑事施設法案、その施行法案代用監獄たる警察留置場に関する留置施設法案及び海上保安庁留置施設法案の四つを指しておりますが、中心は刑事施設法案であり、他の三つはこれに関連してつくられております。したがって、最も重要なのは刑事施設法案と言うべきであります。  そこでまず、監獄法にかわるべき刑事施設法案を取り上げたいと思います。  現行監獄法は、明治四十一年に制定を見、自来今日まで、日本国憲法施行によっても改変されずに生き長らえてきております。施行以来八十余年、その間に、我が国における人権についての考え方はもとより、世界の刑事拘禁に関する思潮も明らかに変わっているのであります。それゆえ、何人が考えても、監獄法をなお存続せしめておくことは当を得ないものとなっております。その意味で、監獄法廃止して、刑事拘禁について新しい法律制定することは当然であると言うべきであり、法律関係者のほとんどが強くこれを望んできたのであります。  しかしながら、問題は、新しい刑事拘禁法をどうつくるか、その中身であります。刑事施設法案は、自由刑受刑者処遇を中心に、ほかに未決拘禁、死刑確定者の処遇等を定めるものであり、いわゆる刑務所入所者の処遇に関する部分が重要な位置を占めております。刑事施設法案の立法に当たってスローガンとして言われてきたのは、行刑の近代化、国際化、法律化ということ、あるいは施設管理法から受刑者処遇法へということでありました。刑を受けて刑務所に服役する者も人権保障さるべき人間であります。かつて我が国においては、受刑者と国家との関係について特別権力関係であるとされ、かかる関係のもとでは、憲法上の基本的人権、法治主義が否定されるとともに、司法的救済も排除されると解されていたのであります。しかし、現在では、特別権力関係論は否定され、あわせて受刑者社会復帰が重視されなければならないとされるに至っております。今日の行刑思想においては、受刑者にも法律によって人権保障すべきこと、さらに、刑執行の目的社会復帰のための矯正に置くことが明白に要求されていると言うべきであります。  一九五七年の国連経済社会理事会で採択された国連被拘禁者処遇最低基準規則においても、これを改正した一九七三年のヨーロッパ理事会によるヨーロッパ被拘禁者処遇最低基準規則においても、このことは明らかにされているのであります。行刑の近代化とは、受刑者を管理、保安規律対象から社会復帰処遇対象に変えることであり、国際化とは、処遇の水準を人権尊重を基本とする国際的処遇水準に高めることであり、法律化とは、国家と受刑者との関係を権利義務関係に変ずることにほかならないのであります。そして法案評価の基準は、まさにこの近代化、国際化、法律化、さらに処遇法化の達成度にあります。  法務省は立法に先立って法制審議会に諮問をしましたが、その答申である「監獄法改正の骨子となる要綱」の内容は、受刑者と未決拘禁者規定を別々にすることをも含めて、不十分ながらこの面で努力の跡が見られるものでありました。ところが、でき上がった法案は、後に言及する未決拘禁にかかわる部分を含めてこの要綱から大きく後退するものとなり、規律秩序的視点が過剰なものとなっているのであります。  そこで質問でありますが、まず第一に、刑事施設法が真に行刑の近代化、国際化、法律化の要請にこたえているものになっているか、なかんずく国連被拘禁者処遇最低基準規則、国際人権規約等に示された被拘禁者処遇の国際水準をクリアしているのかどうかお尋ねをいたします。  第二の質問は、行刑の目的をどう考えるかであり、法案規律秩序維持に重点を置き過ぎているのではないかということであります。  そして第三は、法案法制審議会の「監獄法改正の骨子となる要綱」との関係でありますが、法案が、後に述べる代用監獄の漸減条項を初め、物品の給貸与、作業報奨金等多くの点について要綱に従った立法化をせず、要綱から大きく後退しているのはなぜか、この点についてお尋ねをしたいのであります。総理並びに法務大臣の答弁を求めます。  次に、刑事施設法案留置施設法案法案に関して最大の問題になっている二点について、以下お尋ねをいたしてまいります。それは代用監獄の恒久化の問題と弁護人の接見交通権の保障の問題であります。  監獄法は「警察官署ニ附属スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得」と定めていたことから、いわゆる留置場は今日まで起訴前取り調べ中の被疑者勾留場所として使われてきたのであります。刑事訴訟法によれば、逮捕、勾留者留置場所は監獄であり、監獄とは法務省の所管で、法務省職員によって監守されている刑務所の一部たる拘置所原則であるはずであります。しかし実情は、取り調べ中は身柄を監獄の代用である留置場に置かれている場合がほとんどなのであります。そして、ここでの勾留は、身柄が終始警察の支配下に置かれているのでありますから、深夜に及ぶ長時間の取り調べ、強制や拷問まがいの行為、心理的圧迫等による自白の強要を可能にし、虚偽の自白をすら生むものとなっております。その結果いわゆる誤判冤罪事件をつくり出したのであって、我々は数々の再審無罪事件を通じてこのことを十分承知しております。それゆえに、弁護士会等はかねてから逮捕、勾留された被疑者原則的に法務省施設たる拘置所留置すべきであると主張してきており、今回、法改正に当たってこの声は極めて強くなっているのであります。これを受けて法制審議会はその答申の中で、留置場を「被勾留者収容するため、刑事施設に代えて用いることができること。」としたものの、被勾留者留置場所は法務省所管の刑事施設であるべきだとし、ただし現時点での収容能力を考慮して「関係当局は、将来、できる限り被勾留者収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被勾留者を刑事留置場収容する例を漸次少なくすること。」としておりました。ところが、刑事施設法案は答申のこの部分を全く無視し、同時に警察庁は、従来警察留置場規律する法律が存在しなかったにかかわらず、今回新たに留置施設法案を提出してきたのであります。かくては、監獄法改正を機に留置場留置をやめる方向を明らかにし、不当な自白追及をなからしめる方途を講ずべきだとする良識論は無視され、取り調べ段階での代用監獄中心主義が恒久的に存続することになると言わざるを得ません。  そこで法務大臣国家公安委員長にお尋ねをいたしたい。今直ちに代用監獄廃止することは当然できないとしても、それが非恒久的、例外的なものであり、将来に向かって廃止さるべきものであるとする考え方を認めるのかどうか、法案の中でこの方向性を明示することができないのか、この点について明確な答弁をいただきたいのであります。(拍手)    次に、弁護人の接見交通権の問題でありますが、日本国憲法刑事訴訟法被疑者と弁護人との接見交通権を保障しており、弁護人に選任され、またはされようとしている者は、被疑者が身柄を拘束されれば原則としていつでも接見ができなければならないはずであります。確かに、深夜等の非常識な時間については管理体制上から接見を不可とする余地はありましょうが、それを超えて、刑事施設留置施設法案規定するように、「日曜日その他政令で定める日以外の日の施設の執務時間に限る」とし、そのほかの日時については「施設管理運営上支障がないとき」にのみ接見させるとすることは不当としか言いようがないのであります。特に逮捕直後、勾留以前においては早急の接見の必要性が高いと言うべきでありますが、この規定のままでは、例えば五月の三連休の前夜に逮捕されれば、被疑者原則として三日半以上も弁護人と会うことができずに取り調べを受けることとなります。これでは弁護人の接見交通権は画餅に帰すると言うべきでありましょう。そこで法務大臣国家公安委員長に対し、弁護人の接見交通権をどう考えているのか、このような法案を改め、弁護人の接見交通権をより保障する措置は考えられないのかをお尋ねするものであります。  最後に、再び刑事施設法案受刑者処遇の問題に戻り、以下二、三点について法務大臣にお伺いをいたします。  第一に、受刑者作業報奨金の問題でありますが、これは従来余りに低過ぎた、そのため、法制審の要綱は、作業報奨金の額は「作業の種類及び内容により同種作業に対する一般社会における賃金額等を考慮して定める金額を基準と」するとしていたにもかかわらず、法案要綱のこの条項を全く立法化していないのであります。これはなぜか。受刑者作業報奨金についてどう考えているのかをお尋ねをいたします。  第二に、懲罰でありますが、法案第百三十五条は「受刑者にあつては、正当な理由がなく、作業を行わず、又は教科指導等を受けないこと。」を懲罰事由とし、教科指導はもちろん、生活指導に従わなかった場合にも懲罰できることとしております。しかしながら、作業をしないことを懲罰の対象とすることは当然としても、施設内における受刑者の全生活時間について施設側の指示、命令を強制しようとすることは行き過ぎではないのか、作業時間以外では可能な限り受刑者の自由な生活時間を認めるべきではないか、この点をお尋ねをいたします。  第三に、法制審の要綱は、刑事施設の職員に関して、医療、衛生、人格調査、作業教科指導処遇に関する専門的知識と技能を有する職員の確保、処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識と技能を習得、向上させるための研修、その他の教養訓練についても立法化すべきであるとしていましたが、法案においてはこれらの規定は設けられなかったのであります。なぜ規定を設けなかったのか、これらの施策について今後どのような措置をとるつもりなのかについてお伺いをいたしたい。  以上、何点かについてお尋ねをいたしましたが、総理、関係大臣の真摯な御答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  34. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) 私に対するお尋ねを三つに集約させていただきます。  刑事施設法案は、行刑の近代化、国際化、法律化を図る内容のものとなっておりまして、国際的に遜色のないものである、私はこのように理解しております。  それから次の問題は、御指摘のような条件を考えながら、一般社会に不安を与えることなく受刑者改善更生を図りますことが矯正に対する基本的な要請であると考えております。そうした観念から、刑事施設規律及び秩序維持につきまして必要最小限の規定を設定したものである、このように考えます。  さらに、要綱との関係についてでございますが、刑事施設法案は、立法技術上の制約の中で実質的に法制審議会要綱を忠実に法文化したものでございまして、これをして後退しているというふうには考えておりません。(拍手)     〔国務大臣林田悠紀夫君登壇
  35. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 刑事施設法案は真に行刑の近代化、国際化、法律化の要請にこたえているものになっておるかどうかという御質問でありまするが、ただいま総理大臣がお答えになりましたとおりでございます。刑事施設法案は、法律の形式と内容の近代化を図り、被収容者の法的地位に応じた権利義務関係を明らかにし、受刑者について国際的に承認されている各種の処遇制度を確立しようとするものであり、御指摘の行刑の近代化、国際化、法律化の要請にこたえており、国際水準から見てもまさるとも劣らないものと考えております。  行刑の目的をどう考えるかという御質問でありまするが、これも総理大臣がお答えになったとおりでありまするけれども、所与の条件の中で受刑者改善更生することが行刑の目的として重要であると考えており、刑事施設法案におきましては、このことを受刑者処遇原則としております。刑事施設規律及び秩序が厳正に維持されなければ、刑事施設の正常な運営が阻害され、ひいては受刑者改善更生を図るべき刑事施設の機能を果たし得ないことにもなりまするので、この目的を達成するためには、被収容者収容を確保した上で、被収容者に対する適正な処遇の実施とその人権保障するために本法案におけるように制限要件限度を明示いたしまして、必要最小限度規律秩序維持に関する事項を定めることが必要不可欠であり、規律秩序維持に重点を置き過ぎてはいないと考えております。  法案は、多くの点について要綱に従った立法化をしていないという御指摘でありまするが、刑事施設法案は、法制審議会要綱を忠実に法文化したものでありまして、形式、表現において若干要綱と異なる点がありますものの、これは要綱がその名称に示されるように、改正の骨子として作成されたものであることから、その法文化に当たり、立法技術的な観点からの整理と関係機関との意見調整の過程で必要とされた若干の整理を施したことによるものであり、その実質において要綱どおりであり、それから後退をしておるものではありません。  次に、代用監獄につきまして法制審議会の答申は、新法の運用上の配慮事項として、関係当局に拘置所の増設等に努めて被勾留者警察留置場収容する例を漸次少なくすることという方向を示しておりますることから、法案には法文として掲げなかったものでありまするが、このような趣旨理念として尊重し、今後十分検討、努力していきたいと考えております。  次に、弁護人の接見交通権が刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものでありますることは十分承知をいたしております。刑事施設法案は、この接見交通権の制限刑事施設管理運営上必要最小限に限定をしておりまして、その内容において十分に適正なものと考えております。身柄を拘束された被疑者と弁護人との接見交通権が、施設の管理者の恣意によって侵害されることはないものと考えまするが、なお適正な運用が確保されるように検討しているところであります。  次に、作業報奨金の問題でありまするが、作業報奨金の額の算出基準に関しまする規定として、法案は第七十二条第三項を設けておりまして、同条項において具体的な基準は法務大臣が定めることとされております。御指摘のように、要綱では「同種作業に対する一般社会における賃金額等を考慮」とされておりまするが、受刑者生活費がすべて国費で賄われていることからも明らかなように、このことは一般社会の賃金額を直接の基準とするものではないことから、これをそのとおり明記することが必ずしも適当でないためでありまして、法務大臣が定める具体的な基準は、種々の要件を勘案した上で、当然のことながら法制審議会の答申の趣旨に従ったものとなります。  次に、懲罰の問題でありまするが、法案は、受刑者改善更生を図るための矯正処遇として、作業のほか教科指導等を実施することとし、受刑者にこれを受けることを義務づけておりまするが、教科指導等は、矯正処遇の時限として、例えば懲役受刑者についていえば、作業にかえてこれを実施するものであります。なお、正当な理由がなく教科指導等を受けない行為が懲罰の対象となり得ることは、法制審議会の答申におきましても遵守事項内容として予定されているところであります。  最後に、刑事施設法案は、被収容者処遇に関する規定を中心とした法律であり、純粋に刑事施設の職員に関する規定は、この法案法律事項にはなじみにくいので、別途組織法令の系統で整理することを考えておるのであります。新法の運用に当たり、御指摘のように職員の要素、とりわけその確保と研修が重大であることは十分認識しており、御見識には敬意を表します。当省といたしましては、今後、答申が要請する努力義務を最大限に遂行していく所存であります。(拍手)     〔国務大臣梶山静六登壇
  36. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) お答えをいたします。  第一の質問は、代用監獄についての考え方でございますが、いわゆる代用監獄制度については、現実の制度の問題としては維持せざるを得ないと考えておりますが、将来、刑事施設の増設等に努め、被勾留者留置施設代替収容する例を漸次少なくすることについては、理念として十分理解しているところでございます。  次に、接見交通権の保障についてでありますが、被留置者弁護人等との接見交通権は、刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであると考えております。留置施設法案においては、被逮捕者弁護人等との接見交通権の重要性にかんがみ、留置施設管理運営上の制限を必要最小限に限定することを法文上明らかにしており、施設の管理者の恣意によって被逮捕者の接見交通権が侵害されることはないと考えておりますが、なお適正な運用が確保されるように検討しているところでございます。(拍手)     ─────────────
  37. 原健三郎

    議長原健三郎君) 加藤万吉君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔加藤万吉君登壇
  38. 加藤万吉

    ○加藤万吉君 私は、ただいま議題となりました留置施設法案並びに海上保安庁留置施設に関する法律案につきまして、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  冒頭、私は、この拘禁四法が、私たちの強い反対を押し切り、本日の本会議議題とされましたことについて強く抗議をいたします。本案件は、我が国の司法制度に重大な影響を与えるものであり、国会審議がこのような形で行われること自体、司法と民主主義の危機として深刻に受けとめなければならないからであります。(拍手)  さて、現行監獄法が古い行刑思想、すなわち、刑務所は犯罪者を隔離、懲らしめる所として、受刑者秩序行動規制を中心とする戒護主義に基づくものであるのに対し、今回の改正に当たっては、行刑の現代的理念である矯正と社会復帰に基盤が置かれなければならないのは当然のことであります。今日まで警察行政、司法制度のゆがみによってあまたの冤罪事件が発生し、罪なき人々の一生がまさに塗炭の苦しみの中に終わり、家族の方々はいまだに悲嘆をかこっているのが現実であります。したがって、改正においては、我が国の司法制度を健全な社会を培う一環として、人間の尊厳を確認し合うものとして確立を目指すという基本理念が必要と考えます。この際、竹下総理に、拘禁四法に対する基本的理念をお示しいただぎ、本案がそれに合致しているか否か、お答えをいただきたいと存じます。  私がなぜこのようなことを総理に最初にお尋ねするかと言えば、改正案が、残念ながらゆがんだ現状をさらに法的に追認するかの内容になっているからにほかなりません。その最たるものが代用監獄の恒久化、すなわち留置施設法案であります。国際刑法学会はハンブルク大会において、「何人も逮捕もしくは身柄拘束を受けた場合にはすみやかに裁判官ないしそれに代わる司法官憲のもとに引致され、被疑事実を告知されなければならない。右司法官憲のもとに出頭後においては被疑者捜査官憲の拘束下に戻されてはならず、通常の刑務職員の拘束下に置かれなければならない。」と決議をいたしております。国際法曹委員会のデリー宣言においても同様の趣旨が採択をされているのであります。法制審議会におきましても、五十五年要綱案においては代用監獄の漸減条項が規定されておりました。ところが、廃止に向かうはずの代用監獄を公認、恒久化しようとしているのが五十七年に国会に提出をされた留置施設法案なのであります。法曹界も寝耳に水の話として大問題となり、本案は一年後に審議に入れないまま廃案となったところであります。  法務大臣にお伺いします。法制審が制定を予定、意図もしていなかったこのような法案がなぜ突如として生まれてきたのですか、日本政府はハンブルク決議、デリー宣言をどのように受けとめておられるのか、また、国際潮流に真っ向から反する本案となったのか、明確にお答えをいただきたいと存じます。  また、総理は、就任以来、世界に開かれた日本、我が国の国際化を強調されておりますが、みずからが責任者としてこのような世界に恥じるべき制度を追認、法制化をし、代用監獄を恒久化することは総理の施政方針と矛盾はしていませんか、所見をお伺いいたしたいと思います。  さらに、本案はその策定、国会提出の経過においても極めて異常なものと言えます。刑事施設法改正は、審議会において四年、法案提出まで二年をかけ、関係者と協議、検討が行われ、原案修正が行われてまいりましたが、いまだに不十分とする声が強く残っているのであります。この点につきましては、法務大臣はどのような御所見をお持ちか、お答えをいただきたいと思いますが、より問題なのは留置施設法案であります。本案に至っては唐突に国会提出が強行され、関係者との意見交換、協議は一回も行われなかったのであります。また、今回の提出に際しましては警察庁と日弁連との間で意見の交換会が持たれたものの、警察庁が一方的に話し合いを打ち切り、法案提出を一週間後強行しているのであります。本院及び参議院の法務委員会においては、司法制度の改革に当たっては法務省、最高裁、日弁連の三者の合意を前提にせよという決議が行われております。本案はこの決議に明確に反しているわけであります。法務大臣国家公安委員長はこの問題をどうとらえているのか、御答弁を求めます。  経過においてさらに異常なことがあります。法案提出後、警察庁は、日弁連が再々否定しているにもかかわらず、日弁連が本案を了承しているかの宣伝をしきりに行い、警察庁と日弁連の関係が悪化しているという点であります。私は、行政府がデマ行為を行い、しかもそれを国会審議のてこに使おうとするならば、これは極めてゆゆしい問題と考えます。この点に関しましては政府全体にかかわる問題でありますから、竹下総理の明快な所見を要求いたします。  さて、総理、もう一度強調しますが、留置場における自白の強要が裁判で白日のもとにさらされ、無罪となった事件は枚挙にいとまがなく、死刑確定後三十年、ようやく再審公判開始をされました赤堀被告の弁護団は、早朝から深夜までの拷問を交えた厳しい取り調べがうその自白原因となり、これがなかったなら原一審で無罪となったことは疑いない、そして刑確定後も弁護人との立会人がいない面会と自由な通信ができていたならもっと早期に再審の道が開けていただろうとしているのであります。警察庁は今はそのようなことはないと言っておりますが、さきに同僚議員が述べましたように、五十九年の山下事件、六十年のお茶の水女子大事件など、冤罪による無罪判決事件は引きも切らないのが実際であります。今回、捜査と身柄拘束の任務を明確に分離すると言っておりますが、同じ警察署内での単なる役割分担の違いで自白の強要に対する防御権が確立をするのでしょうか。国家公安委員長はこの実態をどう受けとめ、こうした警察の恥部を公認、助長するかの代用監獄の恒久化を図ろうとするのか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)  そして、こうしたことを考えるなら、代用監獄は一刻も早く廃止をされなければなりません。刑事施設の現状も予算の問題もわかりますが、問題は、捜査と身柄拘束の分離、防御権が問題なのであります。しかも、これは世界に恥ずべきものであり、国民の基本的人権を侵しているものであります。年間延べ二百五十万人もの人々が留置場収容されていることを考えますならば、代用監獄廃止の決意を政府が固め、その漸減の意思を明らかにし、目標年次を定めて具体的なプログラムを策定するとともに、その間、留置場収容者制限すべきでありますが、法務大臣の決意と所見を求めたいと思います。  さらに、具体的な三つの問題についてお伺いをいたします。  第一は、拘束具等の使用及び懲罰の問題であります。こうした規定被疑者に強迫感を与え、精神的な拷問につながることは明らかであります。覚せい剤等の事犯者の例はわからないことはありませんが、やはり原則禁止、特別の場合には警察の判断によることなく裁判所の許可を求める等が適切と考えますが、公安委員長の所見を求めたいと思います。  第二に、弁護人との接見交通権の制限の問題であります。弁護人と接見することは被疑者人権を守る根本的な問題であり、原則は自由とすべきであります。また、通信権についても同様であります。この点につきましては国家公安委員長の所見を求めたいと思います。  第三に、勾留請求及び留置事務は本来国の事務であり、留置事務が自治体警察において行われてきたこと自体に大きな疑問があるにもかかわらず、今回団体委任事務としてこれを法的に追認をするのみならず、予算も警察庁予算とするのはどういうことでございましょうか。法務省の事務として予算を従来どおり国から償還すべきであると思いますが、法務大臣の所見を求めたいと思います。また、自治省はこうしたことをどのように考えているのか、さらに地方自治法の改正が含まれていますが、今回の改正について地方公共団体の意見はどのような形で聴取をされたのか、自治大臣の答弁を求めたいと思います。  私は、以上、本案に対する所見を述べながら質問をしてまいりましたが、我が国の警察はその捜査能力において国際的にも高く評価をされ、またお巡りさんと呼ばれる現場警察官の献身性、勤勉性も評価されているところであります。しかし、一方において警察による不祥事件も頻発しております。私は、国民が安心して安全に暮らせる司法制度の確立のため、警察行政の抜本的改善を含めまして司法制度の改革が必要であり、そのためにも刑事施設法については関係者協議の上で抜本的修正を図り、本留置法案については撤回をし、関係者、とりわけ日弁連との協議を再開すべきと考えます。総理並びに法務大臣国家公安委員長の決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  39. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) まず最初に、四法案の基本的理念について、こういうお尋ねでありました。  今回提出の各法案は、すべて各施設収容された方々の人権尊重しながら収容の精神に応じた適切な処遇を行うことを立法の理念としておるものである、このように理解しております。  次に、代用監獄制度と国際潮流にお触れになりました。  各国におきましてはそれぞれ異なった刑事法制を有しております。その法制全体との関連でそれぞれの未決拘禁制度を採用しているものであると考えております。我が国の刑事法制のもとにおきましては、現実の問題としていわゆる代用監獄制度維持せざるを得ないというふうに考えておるところであります。  それから、審議会四年、そして法律提案に至る経過についてお話がございました。  警察庁としては、日本弁護士連合会との意見交換の状況等も踏まえまして留置施設法案に相当の修正を加えたところでございまして、法案再提出の直後には日本弁護士連合会一定の評価をしていただいておったことなどから、相当の御理解をいただいたという感触を得ておるのではないかというふうに考えます。  それから、刑事施設法案の取り扱いでございます。  それこそ関係方面の意見を十分聴取して再提出したものでございますので、せっかく国会手続に従って審議が始まった今日、撤回などということは毛頭考えておりません。(拍手)     〔国務大臣林田悠紀夫君登壇
  40. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 加藤議員の御質問にお答え申し上げます。  御指摘のハンブルク決議、デリー宣言は承知しておりまするが、各国におきましてはそれぞれ異なった刑事法制を有しており、その法制全体との関連でそれぞれの未決拘禁制度を採用しているものと考えております。我が国の刑事法制のもとにおいては、いわゆる代用監獄制度廃止することは、現実には極めて困難な問題があると考えており、留置施設法案内容法制審議会の答申に沿うものと理解をしております。  次に、留置施設代替収容される者が存する限り、これらの者の処遇に関して法律で定める必要があります。その処遇に関する事項をすべて刑事施設法案において規定するか否かは立法技術上の問題であり、代替収容にかかわる特別視定が、留置施設における被逮捕者処遇等に関する定めとともに留置施設法案規定されることとなったものであります。  次に、漸減条項を法文中に規定しないことについての御質問でありまするが、法制審議会の答申は、関係当局に拘置所の増設等に努めて被勾留者警察留置場収容する例を漸次少なくすることを要請しておりまするが、これはあくまでも新法の運用上の配慮事項としたものでありまするので法文化しなかったものであります。  次に、法制審議会の答申は、新法の運用上の配慮事項として代用監獄への収容の漸減を関係当局に要請しており、その趣旨は十分尊重してまいる所存であります。  最後に、勾留被疑者収容業務は本来国が行う事務ではありまするが、地方公共団体の秩序維持にもかかわるものでありまするから、代替収容業務として国から都道府県に事務を委任することとしております。このような収容業務に要する経費については、現在、警察署内ノ留置場ニ拘禁又ハ留置セラルル者ノ費用ニ関スル法律により国から都道府県に償還されているところでありまするが、新法においては、都道府県警察に要する他の経費と同様に、これを警察法の定める仕組みの中で国庫から支弁することが合理的であると認められまするので、警察庁の予算から支弁することになっておるものであります。国が負担する点は変わりはございません。(拍手)     〔国務大臣梶山静六登壇]
  41. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 加藤議員にお答えを申し上げます。  第一の質問は、捜査留置業務の分離と防御権の確立についてでありますが、留置業務は犯罪捜査と別個独立の立場で適正に行われるべきものであり、被留置者人権保障を図る観点から、留置業務捜査に不当に利用されることがあってはならないと考えております。留置施設法案は、留置業務捜査の分離の趣旨を明文をもって規定しているところであり、この分離の厳正な実行を図るために、第一線に対し具体的な指針を示し、徹底した指導と教育を行うこととしているところでございます。なお、留置施設法案は、御指摘のように代用監獄制度の恒久化を図ろうとする性格のものではございません。  次に、拘束具等の使用、懲罰についてでございますが、拘束具の使用や戒告は、あくまで留置施設規律及び秩序維持するため必要最小限度範囲内で留置業務管理者または留置担当官により厳正な手続のもとにとられる措置であって、捜査のために行われるものではないので、自白強要のために使用されることは全くあり得ないところでございます。  次に、弁護人との接見交通権でございますが、被疑者と弁護人との接見交通権が刑事手続上長も重要な基本的権利に属するものであることを理解しているが、留置施設管理運営上最小限度制限は必要であると考え、留置施設法案においては所要規定が設けられるところであります。なお、この制限については、適正な運用が確保されるようさらに検討をしてまいりたいと思います。  次の三問については、自治大臣としてお答えをいたします。  地方自治法第二条第三項第一号は、地方公共団体の事務として、地方公共の秩序維持し、住民の安全等を保持することを定めているが、御指摘の事務はこのことと関連があるものでもあり、法律規定に基づき団体委任事務として行うこととしても、地方公共団体の事務処理に関する制度としては特段の問題はないものというふうに考えております。  次に、勾留事務に要する経費についてでございますが、留置施設における代替収容事務の基本的な性格は団体委任事務と理解しているが、食費その他被勾留者留置に直接要する経費については、国家的要請に負うものとして警察法第三十七条第一項の経費として定めることとし、国が支弁する経費としているところであり、その他の経費については、この事務の性格から地方団体が負担することに特段の問題はないと考えております。  次に、地方公共団体の意見聴取でございますが、留置施設法附則第六条による地方自治法の一部改正は、留置施設法の制定に伴い、従来の「留置場」が「留置施設」に改められることから、地方自治法第二条の地方公共団体の事務の例示に関する規定中の「留置場」の用語を「留置施設」に改めるものであり、格別地方公共団体の意見を聴取する必要はないと思います。  最後に、法案は撤回をして協議、合意を形成すべきではないかという問題でございますが、総理大臣が答弁したとおり、留置施設法案法制審議会の答申の内容などにも沿ったものとなっており、また、今回の法案の再提出に当たっては、日本弁護士連合会と意見を交換することが重要と考え、警察庁においても日本弁護士連合会との間に十回にわたる意見交換を行っているところであります。今回再提出をした法案は、この意見交換の状況等をも踏まえ、相当程度の修正が加えられており、これらの修正によりその成果は十分反映されているものと考えており、同法案を撤回する必要はないと考えております。(拍手)     ─────────────
  42. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 安倍基雄君。     〔安倍基雄君登壇
  43. 安倍基雄

    ○安倍基雄君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました刑事施設法案、同施行法案留置施設法案海上保安庁留置施設法案の四法案に対して、我が党の基本的見解を述べつつ、総理並びに関係各大臣に質問をいたします。(拍手)  言うまでもなく、我が国憲法は第十一条以下において、すべての国民が基本的人権を享有するものと規定しております。この原則は、刑に服している者に対しても可能な限り貫かれるべきであり、ましてや、捜査を受けている段階の者、公判の段階にある者は無罪の推定を受けるのであり、彼らの基本的人権を注意深く守る必要があります。また、特に十分な弁護を受ける権利を彼らに対して保障していかなければなりません。また、刑が確定した受刑者については、その更生について十分な配慮がなさるべきであります。  現在の各種施設の被収容者処遇を定めている監獄法は、明治四十一年に制定された古い法律であり、大幅な改正を経ることなく現在に至っております。いわば旧憲法人権無視の規定が数多く存在しており、被収容者権利義務が不明確であるばかりではなく、運用によって法律を超えた処遇措置がとられているのが現状であります。我が党もまた、被収容者人権を確保するとともに刑事政策の近代化を進めるため、現行監獄法の抜本的改正が必要であると主張してまいりました。今回の四法案について、政府は、人権確保の上において大きな前進をしたものと説明しておりますが、果たしてそのような前進が見られるのかどうかについて逐次質問いたします。  まず第一に、今回の改正によって、我が国の刑事施設及び留置施設収容されている被収容者人権が十分守られることになるのかどうか、欧米諸国のそれに比し、法制面でもまた実際上の取り扱いにおいても、すぐるとも劣らないものになるのかどうか、また、国際連合が定めた被拘禁者処遇最低基準規則を上回るものとなっているのかどうかについて、総理大臣、法務大臣及び国家公安委員長にお尋ねいたします。  第二に、法案提出に至るまで、政府は、多年にわたる法制審議会審議を経て、かつ、日本弁護士連合会いわゆる日弁連との意見交換を行った後提出したと説明しております。国民の人権擁護に最も大きな役割を占める日弁連との意見交換ないしは合意は、本案作成のために最も重要なことであると考えますが、日弁連は、法務省及び警察庁が意見交換を中途で打ち切り、日弁連との合意を得ないまま、五十八年に廃案となった法案を部分的に修正したのみで強引に再提出したと主張しております。この間の経緯及びどのような形でこの意見交換の成果を新法案に反映させたのか、また、これまでの修正で十分であるのか否かについての見解を法務大臣及び国家公安委員長にお伺いいたします。  第三に、日弁連は、今回の法案法制審議会の答申と比較して随所で後退していると指摘しております。法制審議会の答申と本法案との規定が、どの部分について特に異なるのか、その相違は単なる立法技術的な理由に基づくのか、内容に及ぶ場合があるのかについて、法務大臣及び国家公安委員長にお伺いをいたします。  第四に、なぜ刑事施設法案留置施設法案を分離して提出したかについて伺います。  現行監獄法は、警察留置場代用監獄として用いることができるという規定を置くのみで、警察留置場については独自の法律を定めてはおりません。これを今回別々の法律で定めようとすることは、いわゆる代用監獄の恒久化をもたらすのではないか。つまり、従来は監獄の代用であったものが独立の法的な根拠を持った恒久的な施設とされるのではないかという懸念が広く抱かれております。この二法案を分離する必要がなぜあるのか、これが留置施設代用監獄としての恒久化をもたらすものではないのかの点について、法務大臣及び国家公安委員長にお伺いいたします。  また、これと関連して、前回提出されなかった海上保安庁留置施設法案が、なぜ今回分離して提出されたのかを運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。  第五に、法制審議会答申の中には、代用監獄を漸減させるべきであるとの条項が明記されているのにかかわらず、本法案にはそれに対応する条項がなぜ存在しないのか、これは答申からの明らかな後退であるのみならず、既に述べましたように、刑事施設留置施設をそれぞれ別の法案として提出したことと相まって、代用監獄留置施設の名において恒久化するのではないかという懸念をさらに強めております。  捜査機関と、被疑者、被告人の勾留機関とは、勾留が捜査自白を得る目的で利用されることを防止するため、分離するのが人権保護上最も大切なことであります。欧米諸国においてはこの二機関が明確に分離されております。我が国の場合、拘置所収容能力が極めて貧弱であり、またその増設が遅々として進まないこともあって、勾留被疑者のほとんどすべて、及び勾留被告人の相当部分が警察留置場、すなわち代用監獄収容されているのが実情であります。この捜査機関と勾留機関が現実には一つになっていることが、自白の強要などの事例を生ぜしめ、ひいては誤審を生む原因となっております。留置施設法案においては、警察署内の留置施設について、捜査担当者と留置担当者との分離が明文上うたわれてはおりますが、果たしてこれにより勾留被疑者、勾留被告人の人権が十分守られるのかどうか、勾留が捜査に不当に利用されることがないのか、この不当利用を防止するための具体的措置がとられ得るのかの諸点について、国家公安委員長のお答えを承りたいのであります。  こうした変則的ともいうべき警察署内における留置施設への勾留を漸減し、欧米一般に見られるような拘置所を中心とした体制、すなわち捜査と勾留とを完全に分離した形に移行するという方向をなぜ法文上明らかにしなかったのか、法務大臣にお伺いいたします。そしてまた、本法案についての最も大きな争点となっている、代用監獄を恒久化するのではないかという懸念がないのか、本来、代用監獄原則として廃止する方向で漸減し、拘置所を中心とする体制に移行していく方針であるのか否かについて、総理大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)  第六は、弁護人と逮捕被疑者ないしは勾留被疑者との接見交通権についてであります。  これら被疑者たちにとって、弁護人と自由に接見できることが彼らの権利を守る上に不可欠であることは言うまでもありません。米国等においては、逮捕直後の接見交通権がすべてに優先するという制度になっております。弁護人との交流が絶たれたとき、彼らはみずからの主張を十分なし得ないままに罪人となる可能性があります。今回の改正についての懸念は、刑事施設留置施設において、施設管理運営上必要があるときは、この接見交通権が制限されるとの規定が設けられていることであります。この施設管理権が恣意的に運用されれば、接見交通の自由が大きく妨げられるおそれがあります。刑事施設法では「支障があるときを除き、」留置施設法では「特に支障があるときを除き、」弁護人との接見を認めると規定しておりますが、管理者の恣意によってこの基本権が侵害されないよう保障できるのかどうか、法務大臣及び国家公安委員長にお伺いいたします。さらに、この弁護人との接見交通権が被疑者等の基本的人権保護のために不可欠であるということを十分認識しておられるかどうか、総理大臣の答弁を求めます。  第七に、被収容者のうち、未決、既決、そして起訴前の被疑者の段階にある者についての処遇の差がどのように確保されているかについてお伺いいたします。  受刑者適用される厳しい管理を被疑者あるいは被告人にそのまま適用することとなると、捜査の過程において行き過ぎが生じるのではないかという懸念が生じるのであります。被疑者あるいは被告人は本来無罪であると推定される者であって、その基本的人権は注意深く確保されなければならないと考えます。このためどのような措置がとられているのか、特に、逮捕され勾留に至らない被疑者については、弁護人との接見交通権の確保を含めその処遇について特別の規定を設けるべきではないか、法務大臣及び国家公安委員長にお伺いいたしたいのであります。  以上が個々の問題についての主たる質問でありますが、最後に、基本問題に触れたいと考えます。  法と秩序の問題は国家の基本であり、これをどのように維持していくかは、社会にとり最も大切なことであります。我が国は、ともすれば、利害得失の明白な経済問題については関心が深いが、法秩序維持については比較的関心が薄いという傾向が見られます。我が国の犯罪件数が少ないこと、一般市民の生活が守られていることは、我が国社会の最も大きな特色であり、その活力の根源であります。政府として、この法と秩序維持にさらに大きな関心と努力を払うべきであると考えますが、総理の御決意をお伺いしたいと思います。  これとともに、我が国の司法及び警察は、一方において法と秩序維持の上で信頼されている反面、被疑者捜査、取り調べにおいて人権を無視する面があるのではないか、また、施設の被収容者処遇において前近代的な面があるのではないかという懸念が持たれております。これが本法制定についての日弁連等からの反対を生んでいるゆえんであると考えます。戦前の司法及び警察が持つ暗いイメージを払拭することが、司法及び警察に対する信頼を高めるゆえんであります。本法案の基本的考え方がこうした人権尊重立場に立っているのであるのか否か、また、その運用においてもこの精神を貫く方針であるのか否か、総理の明確な御答弁を承りたいと思います。  以上で私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  44. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) 最初のお尋ねは、人権保障と国際比較、こうした御意見でございました。  今回提案いたします各法案は、すべて各施設収容されております方々の人権尊重を立法の理念としております。したがって、人権が十分守られることによって国際的に遜色のないものとなる、このように考えます。  次は、代用監獄制度についてでございます。  両法案は、現行代用監獄制度改善しようとするものであります。現実には極めて困難な面がございますが、今後とも問題の解決には一層の努力を払う所存であります。  それから、弁護人との接見交通権の問題にお触れになりました。  御指摘のように、身柄を拘束されておる被疑者の弁護人との接見交通権は、刑事手続上まさに重要な基本的権利に属するものである、このように理解をいたします。  最後に、法秩序の問題についてお触れになりました。  国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立されて、国民の権利がよく保全されていることが何よりも肝要なことである、このように考えます。  そこで、法案の運用についてお触れになりました。その目的規定からも明らかでございますように、運用におきましてもこの精神を貫く方針であります。  以上でお答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣林田悠紀夫君登壇
  45. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) お答えいたします。  今回の改正によりまして被収容者人権が十分守られるかどうかという第一点の御質問でありまするが、刑事施設法案は、被収容者人権尊重しながら適切な処遇を行うことを立法の目的としておりまして、法制面におきましても、また実際上の取り扱いにおきましても、欧米各国と比較して劣るところはなく、国際連合の被拘禁者処遇最低基準規則を充足することになると考えます。  次に、法務省と日弁連との意見交換の経緯でありまするが、刑事施設法案は、法制審議会におきまして慎重に審議した結果全員一致で決議された「監獄法改正の骨子となる要綱」を忠実に法文化したものでありまして、これには日弁連の推薦による弁護士委員も加わっていたものであります。ところが、昭和五十七年、第九十六回国会刑事施設法案を提出いたしましたところ、日弁連が反対決議をいたしましたので、日弁連の理解を得るため法務省から意見交換を申し入れ、昭和五十八年二月から昨年四月までの間、合計二十六回の話し合いの機会を持ってその意見を十分に聴取し、これを参考として二十一項目に及ぶ修正を加えて再提出したものでありまして、日弁連の理解も得ており、意見交換の成果は法案に十分反映できたと考えております。  次に、法制審議会の答申と法案規定とがどういうふうに異なるかという御質問でありまするが、刑事施設法案は、法制審議会の答申を忠実に法文化したものでありまして、編別その他答申の形式、表現と異なる点がありますものの、これは答申がその名称に示されるように改正の骨子として作成されたものでありまするから、答申の法文化に当たりましては、立法技術的な観点からの整理と関係機関との意見調整の過程で必要とされた若干の整理を施したものにほかならないものでありまして、その実質において答申を逸脱した点はありません。  いわゆる代用監獄制度が現状のままで推移するものと考えておるかどうかということでありまするが、考えておりません。留置施設代替収容される者が存する限り、これらの者の処遇に関して法律で定める必要があります。これらの者の処遇に関する事項をすべて刑事施設法案において規定するか否かは立法技術上の問題であると考えており、専らこの観点から、留置施設代替収容された者の処遇に関する一定の特則が、留置施設における被逮捕者処遇等に関する定めとともに留置施設法案規定されることになったものであります。  代用監獄への収容を漸減するかどうかということでありまするが、法制審議会の答申を忠実に法文化したものでありまするところ、右答申は、確かに関係当局に拘置所の増設等に努めて被勾留者警察留置場収容する例を漸次少なくすることを要請しておりまするが、これはあくまでも新法の運用上の配慮事項としているものでありましたので法文化しなかったものでありまするが、その趣旨は十分尊重してまいる所存であり、御見識については敬意を表します。  最後に、被疑者または被告人の基本的人権を確保すべきことは御指摘のとおりであります。刑事施設法案は、被逮捕者、被勾留者について、既決とは別に、その収容性質に応じた適切な処遇を行うことを規定上明らかにしており、弁護人との接見交通権を含め、被疑者または被告人の人権を十分確保しておるところであります。(拍手)     〔国務大臣梶山静六登壇
  46. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) お答えをいたします。  問いの第一は、法改正による被留置者人権保障の確保と国際比較についてでございますが、既に総理大臣が答弁したとおり、留置施設法案は、被留置者人権尊重しつつ適切な処遇を行うことを目的としているものであり、その内容は国際的にも遜色のないものであり、国連の被拘禁者処遇最低基準規則を充足することになると考えております。  第二に、法案提出までの日弁連との意見交換についてでございますが、今回の法案の再提出に当たっては、日本弁護士連合会と意見を交換することが重要と考え、昭和六十一年七月から昭和六十二年四月までの間に警察庁において日本弁護士連合会との間で十回にわたる意見交換を行い、広範囲の論点について率直かつ真摯な意見交換がなされたものと承知をしております。今回再提出した法案は、この意見交換の状況等も踏まえ、留置主任官に関する規定の新設、弁護人との面会に関する規定の整備など、相当程度の修正が加えられており、これらの修正によりその成果は十分反映されているものというふうに考えております。  次に、法制審議会の答申と法案規定との関係についてでありますが、刑事施設への収容にかえて留置施設留置される者について、留置施設法案に設けられた規定の表現が法制審議会の答申と異なる部分があるが、これは留置施設の構造等の観点から刑事施設法案規定特例を設ける必要があったことと、刑事施設法案と同様、立法技術上の観点及び関係機関との意見調整の過程において必要とされた整理が行われたことによるもので、その実質において答申から後退しているものではございません。  第四は、二法案に分離して提出した理由でございますが、留置施設法案刑事施設法案と分離して提出したのは、留置施設における被逮捕者処遇等についても法律の定めを置くことが望ましいと考えたことと、そのような考え方に立てば、留置施設代替収容された者の処遇について必要な一定の特別の定めについても、これを一括して留置施設法案とすることがわかりやすく、簡明であるという立法技術上の理由によるものであります。なお、留置施設法案は、被勾留者等留置施設留置する根拠を定めるものではなく、いわゆる代用監獄制度を恒久化しようとする性格のものではございません。  第五に、捜査留置の分離措置についてでございますが、留置業務は犯罪捜査と別個独立の立場で適正に行われるべきものであり、被留置者人権保障を図る観点から、留置業務捜査に不当に利用されることがあってはならないと考えております。留置施設法案は、留置業務捜査の分離の趣旨を明文をもって規定しているところであり、この分離の厳正な実行を図るため、第一線に対し具体的な指針を示し、徹底した指導と教育を行うこととしておるところでございます。  次に、第六の質問でございますが、接見交通権の保障について、たびたび申し上げておりますとおり、留置施設法案においては、被逮捕者弁護人等との接見交通権の重要性にかんがみ、留置施設管理運営上の制限を必要最小限に限定することを法文上明らかにしており、施設の管理者の恣意によって被逮捕者の接見交通権が侵害されることはないと考えるが、なお適正な運用が確保されるように検討しているところでございます。  最後に、無罪の推定を受ける未決拘禁者、特に被逮捕者についての人権保障措置でございますが、留置施設法案は、被逮捕者及び被勾留者については、刑事訴訟法規定により逮捕されまたは勾留される者としての地位を考慮し、その防御権等に特に留意しなければならないという観点から、その適切な処遇について規定を置いているところであります。とりわけ被逮捕者については、逮捕直後の弁護人等との接見交通権の重要性にかんがみ、施設管理運営上の事由により、弁護人等との接見交通権が制限され得る場合を特に限定しているところでございます。  以上です。(拍手)     〔国務大臣石原慎太郎登壇
  47. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 海上保安庁留置施設は、施設の管理者及び被収容者範囲等の点で都道府県警察留置施設及び刑事施設とは異なるため、立法技術上の観点から、他の二法案とは別の法律として立案し、昨年の第百八国会に提出したものでございます。  なお、前回、他の二法案が提出された時点においては、留置されている者の適切な処遇をどういう形で行うべきかについてなお検討を要したために、法案提出には至らなかったものでございます。(拍手
  48. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) これにて質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  49. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時十三分散会