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上田利正君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
原子力の
平和的利用に関する
協力のための
日本国政府と
アメリカ合衆国政府との間の
協定の
締結について
承認を求めるの件に、
反対の
討論を行います。(
拍手)
本
協定は、
原発から出る
使用済み核燃料の再
処理による
プルトニウムの抽出と
輸送と
利用の本格的で大
規模な展開を図り、
推進するためのものであります。当面は、再
処理を委託した
フランスと
イギリスから
プルトニウムを本格的に
我が国に常時空輸し、
利用するための
条件整備であります。
したがって、次のような重大な諸問題を有しております。
その第一は、再
処理と
プルトニウムの商業的大
規模利用は、
平和利用といえども大きな
危険性をもたらすものであるということです。
プルトニウムは、一回に
輸送される二百五十キログラム程度の量で全世界の人々に
がん被害を与えるほど毒性の強い
物質であり、しかも
半減期は二万四千年と極めて長い
放射性物質であります。これが
商業的規模で抽出され、
輸送され、
利用されるようなことになりますと、
大気や水や食物は取り返しのつかない汚染を受け、人類の生命と健康に子々孫々にわたって重大な影響を及ぼすことになるのであります。
輸送だけを見ましても、
フランスや
イギリスから
日本に空輸するのに、
アメリカ領空を飛びさえしなければよいなどという性格のものではございません。
フランスや
イギリスや
日本の上空を必ず飛ぶのであります。
アメリカ国民が猛
反対をしている
アンカレッジへの着陸はなくとも、
日本のいずれかの空港へは必ず着陸することになるのであります。最近
航空事故が多発しておりますが、何らかの
事故で墜落した場合は、たとえ公海上であっても、その
プルトニウムで、サケやマスや
タラ等のかけがえのない
水産資源が長い年月にわたって汚染されるおそれがあるのであります。万一、航空機が爆発するような
事態ともなれば、
プルトニウムが
大気中に飛散しないという絶対の
保障は得られません。したがって、このような危険な
プルトニウムの
大量輸送などが安易に許されてよいものでしょうか。断じて許してはならないのであります。(
拍手)
その第二は、
アメリカから強く求められる
核拡散防止のための
防護措置の強化による
プルトニウム等の厳格な
管理は当然必要でありますが、しかし、そのことを
理由に
管理社会化が進行し、
核ジャック防止の美名のもとに、市民のさまざまな
意思表示や運動の自由と正当な
権利が奪われる
危険性をはらんでおります。
国民の持つ
権利と自由が狭められること自体、決してあってはならない重大な
事態でありますが、問題はそれにとどまりません。
原子力基本法による自主、民主、
公開の
平和利用三原則に基づく
国民の行動が抑圧されるということになりますと、今日まで確保されてきた
原発の
安全性も根底から損なわれ、
経済性追求の前に大
事故発生の確率が大きくなることは避けられないのであります。
その第三は、
プルトニウムの
利用を世界で最初に手がけた
アメリカでは、
原発使用済み燃料の再
処理と高速増殖炉による
プルトニウム利用の開発をとっくに中止をしております。なぜでしょうか。
アメリカは
アメリカ国民の
安全性確保を最優先したからであります。
近年
フランスでも、スーパーフェニックスでのナトリウム漏えい
事故により開発を凍結せざるを得なくなっており、ヨーロッパ諸国全体が否定的になっております。それは余りにも高価であり、余りにも
危険性が高い
プルトニウムであるからであります。二年前のソ連におけるチェルノブイリ
原発の大惨事は、今日も西ヨーロッパを中心に放射能による被害が広く深く進行しています。許されざることであります。
この現実から、
我が国においても、
プルトニウムの抽出や
輸送や
利用に対する懸念と
反対の
国民の声が急激に高まっております。高速増殖炉はもとより、それ以前の過渡的
利用法ともいうべき軽水炉におけるプルサーマル、つまり
プルトニウムとウランの混焼にしましても、またチェルノブイリ型炉に類似した新型転換炉にしましても、
我が国の電力業界自体がすっかり消極的になっております。私どもの指摘で明らかにされたとおり、低濃縮ウランの国際価格に比べて再
処理費や
輸送費に多額の費用を要して精製される
プルトニウムは極めて高くつくからであります。
さて、かねてからの我が党の先見性ある警告にもかかわらず、やがて
原子力商船が七つの海に浮かぶようになると想定をし、
原子力船「むつ」の建造や修理、母港問題や附帯設備に巨額の費用を投じてきた
政府と関係省庁の皆さん、その結果は廃船の道をたどることとなりました。そして今また、高速増殖炉を本命とした
プルトニウムの商業的大
規模利用をまたもや想定をして、再
処理による抽出や
輸送等を本格的に開始するとなると、その誤りは
原子力船「むつ」の誤りとは比較にならないほど重大であり、かつ深刻であります。なぜなら、それが持つ潜在的な
危険性はけた違いに大きいからであります。
今、賢明なる竹下内閣に求められているのは、過去において想定した軌道の上を猪突猛進することではありません。勇気を持って世界の教訓に学び、耳を澄まして
国民の声をじっと聞き取り、
原子力開発
計画について根本的な再検討を加えることであります。今なら間に合うのであります。
以上が
反対する主な
理由であります。
党派を乗り越えて、国際社会に貢献する平和
日本国の立場から、本院の総意として
反対されますよう切望いたしまして、ちょうど時間となりましたので、私の
反対討論を終わらさせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(
拍手)