○広瀬秀吉君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を改正する
法律案に対し、総理並びに関係大臣に御質問いたします。
きょうは非常に緊急、差し迫った二つの問題がございますので、昨日
政府に質問通告をいたした以外に、非常に緊急性の高い二つの問題をまずもって質問をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。(
拍手)
一つは、いわゆる農畜産物輸入自由化の問題でございます。
先般、輸入自由化十二品目、そのうち十品目自由化の方向ということで、八品目は自由化が決定をした。そして今取り残されてきた二つの、オレンジに代表されるかんきつ類、そしてまた牛肉の自由化にいよいよ踏み切る、こういうことが行われようとしております。しかも、きょうは農林水産大臣がアメリカに急遽飛んで、今月中にも二国間の妥結をしようという差し迫った状況にあるわけであります。
このことに対して総理大臣に、これでは
日本農業は崩壊をしてしまうのではないか、そしてまた
日本の農民の生活は一体どうなるであろうか、また農業から吐き出される失業者というような大問題も
解決をしなければならない、大変な事態だと私は思います。食糧はやはり手近で、地元の、国内の農民が自給をするということでなければ、本当の意味の安全保障はないと思うのであります。そういう見地に立って、「
国民食糧の安定と安全な供給は国政の基本である。わが国は、すでに世界最大の食糧輸入国であり、これ以上の農畜産物の自由化は断じて容認できない。よって、
政府は、当面の牛肉、オレンジを自由化しない立場を断固として貫くべきである。」これは先ほど自民党の皆さんにも呼びかけたのでありますが、自民党は残念ながら出られなかったのでありますが、野党五党、百三十数人の議員が集まりまして国
会議員のこの点についての総決起集会の、ただいま読み上げましたのが、これが
決議でございます。この
趣旨を体して総理、外務大臣、農林水産大臣はいかに対処をされるのか、この点を明確にひとつお聞かせいただきたい。(
拍手)
第二の問題は、いわゆる奥野発言の問題でございます。
靖国神社参拝の問題が、これが鄧小平さんの発言によって振り回されている、こういう発言は、中国の指導者に対する非礼なことだけではありません。奥野国土庁長官の発言は、もう既に前にも憲法発言もございました。そういうようなことで、これはやはり
日本国憲法を尊重する立場に立っていない、私はこう断ぜざるを得ないのであります。憲法第九十九条は、少なくとも天皇、摂政、国務大臣、国
会議員、裁判官、あらゆる公務員は憲法を尊重し擁護する義務がある、私はこれに反するものではないかと思うのであります。したがって、このような憲法に対して弓を引くような国務大臣に対しては、憲法六十八条の規定に従って総理は罷免権を発動すべきであると思いますが、いかがでございますか。(
拍手)
さて、本来の
議題に戻らせていただきます。
今回提出されました
法案の
内容は、先ほど防衛庁長官から
説明があったとおりでありますから、この問題の具体的な数字などを挙げる議論を抜きにいたします。いずれにしても、
我が国の軍事力増強であることに間違いはございません。
既に
政府は、戦争放棄、戦力不保持の世界に誇るべき平和憲法を持ち、世界唯一の悲惨な原爆被爆体験を持つ国家として、平和国家
日本の象徴ともいうべき防衛費の対GNP比一%枠を六十二年度から撤廃し、六十三年度においてはさらに大きく一・〇一三%と、二年続いて防衛費を大きく突出させ、憲法無視ともいうべき歯どめなき軍事大国化への道を歩み始めたのであります。それのみならず、他国に脅威を与えず、専守防衛に徹するというのが国防の基本方針でありますが、この基本方針を逸脱するかのごとき洋上防衛、あるいはOTHレーダー、イージス艦の導入へ向けて予算
措置を講じたことは、
日本国憲法の真精神に照らして断じて認められません。これらの点について、竹下総理の憲法遵守を定めた第九十九条の規定を基本にした率直な見解を求めます。
次に、総理にお伺いしたい点は、防衛論議において欠くことのできない今日的国際情勢についてであります。
既に先刻御承知のとおり、第二次大戦後今日に至るまで、米ソの二大超大国の両極体制が、時にコールドに、時にホットに対立と抗争を繰り返しながら国際情勢を形づくってまいりました。その結果、米ソの軍備拡張競争、抑止力理論を軸にした核兵器、核弾頭装備ミサイルのとめどもなき開発と蓄積、配備が行われてまいりました。ところが、氷炭相入れずと見られてまいりました米ソの間に、昨年十二月八日、INF全廃条約が
締結されるに至ったのであります。それは、なるほど米ソの保有する核ミサイルの数%程度にすぎないかもしれません。しかしながら、少なくとも中距離核ミサイルはまさにグローバル・ゼロになったのであります。私は、すべての核兵器廃絶を切望する立場から、その第一歩としてこれを高く評価するものであります。しかも米ソは、さらに百尺竿頭一歩を進め、ICBMなどの戦略核兵器削減を目指して、近くモスクワで首脳会談が開かれる見通しになっております。
総理、事はまことに重大であります。世界人類の生き残りがかかっているのであります。世界唯一の原爆被爆国家の総理として、画期的なINF全廃条約調印をどう評価されるのか、御所見を表明していただくとともに、次なる戦略核ミサイル縮減交渉に対して、
日本国総理としてその成功に向けて何をなし得るか、いかなる貢献をなすべきか、核戦争に勝者は絶対にあり得ない、人類共減という惨たんたる結果だけしかないとの見地に立って、総理のお考えを示していただきたいのであります。
私は、少なくともこの問題と関連して、
我が国の非核三原則の厳正な運用が今日こそ
確保されるべきであると思います。すなわち、核兵器はこれをつくらず、持たず、持ち込ませず、この原則は厳粛な国是であります。今や核持ち込ませずの原則は事前協議という隠れみのによってなし崩し的に米国によって打ち破られていることは明白であります。日米安保のもと、相互信頼の美名のもとに
我が国の独立と主体性を放棄し、米国の申し出がなければ核持ち込みなしとする態度は、まことに遺憾のきわみであり、日米の真の友好を
確保する道では断じてないでありましょう。少なくとも核搭載と常識的に考えられるロサンゼルス級原子力潜水艦、スプルーアンス級の駆逐艦、空母エンタープライズなどの寄港及び母港化はニュージーランドのロンギ首相並みにこれを拒否する、このくらいのことを
日本の態度としてとるべきではないでしょうか。総理及び外務大臣にお伺いいたします。
次に、八年間続いたソ連のアフガニスタン侵入による戦争状態、数百万の難民のパキスタンへの流入などアフガニスタンの不幸な紛争状態が今月十四日、アフガニスタン、パキスタン、ソ連、米国、関係諸国間において和平合意が調印されました。侵入したソ連車も今後短期間のうちに撤退する見通しになりましたことは大きな地域紛争の一つが
解決されたことであり、喜ばしい限りであります。いまだ難民帰還問題、
政府軍対反
政府ゲリラの戦いなど、なお不安材料は多いが、米ソ両国の
協力と国連事務総長の
解決への真摯な努力は、これから先のイラン・イラク戦争あるいはベトナム・カンボジア紛争
解決などについて大きな示唆を与えるものと思います。それだけではなく、ソ連ゴルバチョフ書記長のペレストロイカを基軸にした外交戦略の大転換、革命は輸出せず、民族の自主権尊重という国際社会の道義と正義を容認をする、このような外交姿勢への変換が事態打開の底流にあったと思うのでありますが、総理及び外務大臣の所見はいかがでありますか。
総理、かくのごとく、今世界はソ連のペレストロイカ、グラスノスチ政策の着実な進行過程にあり、外交政策への反映として、米ソを頂点とする東西の軍事的対決の時代から政治経済重視、特に
国民生活向上に向けて相互信頼、相互依存への大きな流れへと変化を見せ始めていると考えるのは私の楽観に過ぎるでありましょうか。アメリカにおいては、強いアメリカを標榜し、対立するソ連に対して圧倒的軍事的優位を確立するため必死の努力を惜しまなかったレーガン大統領が、任期切れを前にして財政赤字と貿易赤字という双子の赤字に悩まされ、円高・ドル安、そして四千億ドルを超えると言われる世界一の対外債務国に転落し、強いアメリカの象徴であった軍事予算の削減を断行せざるを得なくなったのであります。一方、ソ連のゴルバチョフ政権の国際戦略の転換も、せんじ詰めればとどまることなき軍事増強、軍事費への国家資源配分をこれ以上増大させることが、生活向上を願う
国民の熾烈な要求と相入れない限界に達したことを深刻に認識したからにほかならないと確信するのであります。アフガン撤兵もINF合意も、ここに大きな誘因があったと見て差し支えないでありましょう。
もちろん東西間に、米ソの間にはいまだ根強い相互不信があるでしょう。したがって、今直ちに第三の新デタント時代に入ったと手放しの楽観はできないでありましょうが、少なくともこのような平和志向への国際的な大きな流れは大事にしたいものであります。日ソ外交の積極的展開が今こそダイナミックに行われるべきではないでしょうか。