○鍛冶清君 私は、公明党・
国民会議を代表し、ただいま
文部大臣より提案されました
教育公務員特例法及び
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律の一部を改正する
法律案に関し、竹下
総理並びに中島
文部大臣に対し
質問申し上げますので、明快で誠意ある答弁をお願いをいたします。
教育とは一人一人の可能性を開き、人間としての成長を支え、促進する営みであると思います。また、
教育の事業については、当面の効果と大きな展望が必要となります。したがって、どのような
社会、どのような時代におきましても、この
教育の事業は百年の大計でなくてはなりません。この百年の大計は、当然のことながら歴史的基盤に支えられたものでなくてはなりませんし、また最近における身近な
教育状況はもとよりのこと、現今の地球規模の諸情勢の認識と洞察に基づき、またその上に立っての未来展望を土台としたものでなくてはなりません。翻って、我が国の今日の
教育の
あり方を見るとき、果たして百年の大計に立ってのものといってよいのでありましょうか。まずこの点について
総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
今、
学校教育の荒廃が叫ばれ、
国民の間にその
改善を求める声は極めて強いものがあります。
子供たちの無気力、無責任、無感動等の四無主義が言われ、この十年間、
校内暴力、非行問題が全国の
学校に吹き荒れた観がありました。最近では、
学校嫌いや登校拒否、さらにはいじめや中途退学の問題などが顕著となり、
子供の問題行動が質的に
変化してきているようであります。こうした問題の起こる原因が
学歴偏重社会にあるとか、いや
受験地獄にある、あるいは政府の文教政策に原因があるとか、いや
管理教育を強化した結果である等々、さまざまな意見が噴出しており、
臨時教育審議会においてもこの問題が論議されてきました。これらさまざまな意見に言われていることが、直接的にかかわって起きている問題もあるかもしれません。しかし、私たちはこれらの原因が複合的にかかわって起こっていると見るのが正しいのではないかと思うのであります。そしてその根底には、これまでの行政主導の
教育が進められる中で、人間という視点、生命の尊厳を見据えた心の
教育をなおざりにしてきたことが一番大きな原因であると思うものでありますが、
総理の御所見を伺いたいのであります。
二十一世紀を担う主人公は、紛れもなく現代の青少年であります。その彼らを教え、はぐくみ、
個性を伸ばし、心の扉を開いていく主体者は、何といっても青少年と直接かかわり合いのある親であり、
教師であると思います。
親のことはここでひとまずおくとして、
教師の問題でありますが、私どもは
学校教育の
成否は、その
制度やカリキュラムなど枠組みをどう変えようとも、最終的な決め手は一つ一つの教室で行われる
授業であり、それを担当する
教師にあるといっても過言ではないと考えております。古来、
教育は人なりの言葉があります。
学校の施設や設備等々、充実しなければならないことは当然のことでありますが、それよりもさらに大切であり大事なことは、
教師そのものの人格、識見、
指導の
力量ではないでしょうか。
総理は、
青年時代教師をされた
経験がおありであると伺っております。今私が申し上げた
内容について十分理解していただけるのではないかと思いますが、このことについての
総理の
基本的な哲学なりお考えを承りたいと思います。
ここで一つ
総理について言わせていただきたいことがあります。今申し上げたように、過去、
教師をなさった御
経験があるにもかかわらず、マスコミの記事を初め巷間伝わっている話を聞きますと、意外や意外、竹下
総理は
教育に弱く、
教育改革にも熱意がないようだという評価が伝わってまいります。もしこれが事実とすれば、
国民にとって、また日本の将来にとってこれほど残念なことはありません。人の話に耳を傾け、十分に根回しをして合意を取りつけ、事を仕上げていくことについては芸術的であると定評のある竹下
総理です。税制問題だけにこの力をお使いになるのではなく、
教育の問題で、
教育現場の方々や父母の方々の声に耳を傾け、十分な話し合いの中に、私どもが言い続けてまいりました
国民合意の
教育改革をぜひとも進めていただきたいと心から念願するものでありますが、
総理の率直なお考えを聞かせていただきたいと思います。(
拍手)
十三年前、人材確保法ができました。これは
教員に人材を得る上で極めて重要な
法律であったと思います。しかしその後、一部ではありますが、
教師として不適格で、
使命感に欠ける人が多くなったとか、勉強はできるが
子供の心をつかめない
教師が多くなったとの声が聞かれるようになりました。そこで私たちは、この人材確保法に匹敵する
教員の
資質向上のための抜本的な対策を総合的に考えるときが来ていると思いますが、いかがでありましょうか。
これについては、今国会で、確かに
初任者研修を義務づける本
法案や
教員養成
制度とも
関連した
教員免許法の改正の
法案が出されてはいます。本
法案については、どうも
教員の
資質向上についての対応が
教員養成、免許取得、
採用、
研修等々、総合的に考えているのではなく、矮小化され、
初任者研修さえやればすべてうまくいくといった感じで、単品としてそれぞれ提案されているように思えてなりません。このことは安易に考えて取り組んでもらっては困るのであります。
昭和六十一年、我が党で行いました全国の小
中学校の父母に対する意識調査において、
教員の
資質を
向上するにはどうしたらよいと思われますかとの問いに、第一に挙げられたのが、現職の
教員、
新任教員の再
教育や
研修を充実するという答えで、五〇・一%もございました。こうした父母の意識を軽視することはできません。
教員の
教育的
力量などの
向上が強く期待されていることを真剣に受けとめていく必要があると思うのであります。この意味で、
総理に、これに取り組む総合的な考えと政策体系を、さらには取り組む姿勢を含めてそのビジョンを示していただきたいと思うのであります。
これからの
質問は、
文部大臣にお答えをいただきたいと思います。
本
法案の通過により
初任者研修が
実施されることになりますが、この
研修を通じて、百万余の小中高の
教師が使命に目覚め、
自覚を持ち、
学校現場を変えていく一助となるとの認識のもとに、
初任者研修のみではなく、
教員の
資質向上に対する取り組みが必要であると思いますが、いかがでありましょうか。
また、本
法案によりますと、
初任者研修制度の
実施に関し、
条件つき採用期間を一年間に延長することとしているのでありますが、他の
公務員との差が生ずることについてどのようなお考えなのか、お伺いをいたします。
また、当
制度が、いわゆる試補
制度とどう異なっているのでありましょうか。試補
制度の
導入については、明治以来多くの
答申や建議の中でその
実施が提言されてきました。今回、これを
初任者研修制度として本
法案が
提出されていますが、これを試補
制度としなかった
理由はどこにあったのか、お伺いいたしたいと思います。
今、
初任者研修が義務化されることにより、一年間の
研修の後一人一人の評価がなされ、その結果、
教員として正規に
採用される者と不
採用の者と厳しく振り分けられるのではないかという身分上の不安が大きな問題として提起されています。そこで、これまでの半年間の
条件つき採用期間において免職された事例があれば、伺っておきたいと思います。また、一年間という長い期間では、病気にかかり交通事故に遭う率が他の
公務員と比べて高くなることは明らかであり、病気等による欠勤はマイナス要因となるのでありますが、こうした事例についての対応をどうなさるのか。私どもは
原則として解雇すべきではないと思いますが、その対応についてお聞かせ願いたいと思います。
次に、
初任者研修について、官製
研修であり、管理主義的な押しつけ
研修であるという声が強くあります。
研修は本来自発的なものであり、
教職に伴う責任や
使命感に基づいて行われるものであるにもかかわらず、
初任者研修を義務化することによってこの自主
研修を無視するものであるとの批判が強いのでありますが、これについてどう考えておられるのか、お聞かせをいただきたい。
そこで、
教員の要求に応じた資料や情報の提供、自由な
研究あるいは
研修に参加できる体制を整備する中で、
初任者研修や
現職研修の体系化等が計画、
実施されるようにする必要があると思いますが、
文部大臣の所見をお伺いしたいと思います。
文部省では
初任者研修の試行を
昭和六十二年度と六十三年度に行うこととしていますが、既に六十二年度の試行の結果が報道されています。試行
対象教員の大方は、
研修してよかったとの声が強いようでありますが、その中でさまざまな課題が提起されております。ここで、提起されている中から二つの点についてその対応を伺っておきたいと思います。
試行
対象教員は、年三十五日間程度の
教育センター等における
研修と、
指導教員による
指導を年七十日程度受けることが義務づけられるとともに、
学級担任をいたします。この中で
子供との人間関係を早期につくらねばなりません。しかし、四月から出張
研修が行われ、
子供との接触が他のクラスと比較しどうしても希薄になることは避けられないようであります。また、
学校行事との重なりが多く、どちらに出席すればよいのか、その判断に苦しむことも多いようであります。これは、地方の
実情を考慮し、校外
研修三十五日と
指導教員による
研修七十日を、程度という言葉に幅を持たせ
研修を行うようにするなど、弾力的に考えてもいいのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
さらに、試行
対象教員に対する
指導体制は、マン・ツー・マンあるいはグループ方式など、さまざまな形態が行われているようでありますが、それぞれに長所、短所があると思うのであります。私は、
研修の責任の所在をマン・ツー・マンによる
指導教員にあると明確にした上で、校長のリーダーシップのもと、
学校全体としての
指導体制を確立し、
指導教員をバックアップし、
先輩教員が適宜
指導に当たれるようにすることが、
学校を経営する上からも、また
指導教員が自分の
学級を担任しながら
指導に当たることの負担を軽減する上からも、よりベターな
あり方ではないかと思うのであります。このことについては各
教育委員会、各
学校で十分工夫し、
実施できるよう柔軟に取り組んでもよいのではないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
最後に一つ、
総理に提案をしたいと思います。それは、新しく「
教師の日」を設けてはどうかということです。この日は、
国民皆で
教師に感謝し、尊敬の気持ちを新たにする、
教師はみずからその使命を思い起こし、
子供を預かる専門職という
立場をかみしめて、新たに気力を充実させ、
子供を育てていただくという決意の日にしてはどうかということであります。
教師の
資質向上の上からもぜひ実現していただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
以上をもって私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣竹下登君
登壇〕