○貝沼次郎君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
議題となりました多
極分散型国土形成促進法案について、
総理並びに
関係大臣に若干の質問を行うものであります。
近年の
東京一極集中の実態とこれに対する
地方圏での過疎化、さらに、急速な
産業構造の転換による
地域での
雇用問題などは
地域社会の崩壊をももたらしかねない
状況にあり、まことに憂慮にたえません。本
法案は、このような
社会経済情勢の
変化に対応して、二十一世紀への
国土づくりの指針として策定された第四次
全国総合開発計画の
実施法であります。したがって、その
内容は極めて重要でありますので、明快なる御答弁をお願いするものであります。
さて、第一は、国の
行政機関の
移転等であります。
国土庁が
地方移転の対象として
行政機関を検討したところ、対象約二百
機関、職員五万五千人のうち、半数に近い九十二
機関、二万五千五百人は実際の
移転対象となり得るとしていました。ところが、先般のいわゆる一省一
機関の
地方移転の決定を見ると、十六
省庁三十一
機関、約五千四百人、つまりたったの五分の一にすぎないのであります。その上、
移転リストに上がったものの中でも、石炭鉱害
事業団は、その
業務の九五%以上が既に
移転先となる九州に
集中しており、しかも、その
事業は
昭和六十七年七月に一切終わるものであります。また、本州四国連絡橋公団は、
昭和五十二年の閣議決定で既に合理化が決定されているものであります。関東管区
行政監察局にしても、主な位事とされている
地方行政の監察は、会計検査院や大蔵省の監査で肩がわり可能と見られています。
行政相談は市町村の窓口で処理しておるので、なくても実際は困らないと言われております。農林水産省の東海区水産
研究所や
労働省の
産業安全
研究所、法務省の法務総合
研究所なども余り
分散の効果は期待できません。文部省の
東京外語大も、以前から
移転を決めてその準備を進めてきたところであり、むしろ今回の
地方移転を上手に利用したにすぎないとも言われております。
私は、一省一
機関の
地方移転そのものには期待をし、評価をしておりますが、しかし、詳細に今回の
内容を検討すると、その
分散の効果は甚だおぼつかないものであり、とても期待できるものではありません。いわば形式的、おざなりの
地方移転策であり、
東京の
一極集中が是正されるとは全く考えられません。
総理、もしその効果大であるという計算がおありならば、明確にお示し願いたいと思います。また、今後、第二弾、第三弾と
地方移転を進めるようですが、そのときこそもっと積極的かつ大胆に、ダイナミックに取り組むべきと思いますが、いかがですか。
次に、学者の中に、
地方分散で最も効果的な方策は大学の
地方分散だという
意見があります。例えば、
東京都にある国立の大学の敷地面積はほぼ二百七十ヘクタールもあり、その人数も数万人と言われていますから、一理ある
意見と思います。もちろん、大学すべてを
移転対象にすることはないとしても、幾つかの
移転でもその効果は大きいという見方であります。この点について
政府はどう取り組もうとしているのか、
国土庁長官並びに文部大臣の具体的なお考えをお示し願いたいと思います。
あわせて、首都
移転の問題についてお伺いいたします。
例えば、アメリカ合衆国は、一八〇〇年にニューヨークからワシントンに首都を
移転させております。また、国情は違いますが、スウェーデンは分都を実行して各
地域を活性化させ、首都と各
地域の格差をなくしようとしています。よしあしは別として、いずれも政治の先見性の点で示唆に富んだものだと思います。我が国でも首都
移転問題が各方面で議論されておりますが、
総理はこの問題を今後どのような
方針で検討していくお考えなのか、お尋ねいたします。
第二は、
地方の
振興開発に関してであります。
国土庁長官にお尋ねいたしますが、従来、通産省のテクノポリス法、建設省の民間都市
開発法、通産、運輸、建設、郵政の四省共管のいわゆる民活法など民活導入
事業は、ややもすれば広域的
地域開発の視点に欠けていたり、
地域の
創意工夫が生かされなかったりして、国主導型だと言われてきました。しかし、本
法案では、その
地域を
開発整備するための
基本構想の決定に
当たり、
主務大臣の認可ではなく
承認となっていることは、国主導ではなく、
地域の
意見を最大限に尊重する旨であると思いますが、いかがでしょうか。
次に、
一極集中している行財政権限を
地方へ大幅に移譲せよということであります。
すなわち、許認可権限は各
省庁にまたがり、事務手続は極めて複雑。例えば各地で積極的に取り組もうとしているリゾート
開発などでも、計画段階で自然公園法、農地法、森林法などの規制を受けます。そのほか、バス停の移動や生活
保護の世話をする民生委員の委嘱、銭湯の営業、犬の登録まで国が主導権を握っており、国の許認可権限事項は何と一万件を超えておるわけであります。こうした
状況ですから、
地方からはこの許認可、規制の意思決定の
情報をキャッチするため
東京に集まり、
一極集中にさらに拍車をかけております。その上、補助金交付を通じて強い権限を持つに至っては、もはや
地方の活性化へのエネルギーや意欲を期待しても無理。まして
地方の
創意工夫など育つわけがないではありませんか。したがって、この行財政権限の
地方への大幅移譲について、どのように取り組まれるのか、
総理の決意と
方針をお伺いいたします。また、
地方の活性化のために不可欠なものは、公共投資の重点的、効率的配分、さらに公共投資と民間
事業を組み合わせた総合的プロジェクトの
実施などと考えますが、
総理の御見解をお伺いいたします。
また、民間活力の有効活用により、
創意工夫と技術革新が期待されますが、民活の活用に際しては、官民分担の
基準を明確にすることが求められています。そして、現状にそぐわなくなった諸規制については、速やかに緩和
措置を講ずべきであります。また、必要な規制についても、許認可手続等の簡素合理化を図ることが急務であると思いますが、
国土庁長官並びに建設大臣の御見解をお伺いいたします。さらに、民間
研究機関の中には、NTTやJRの経験から、高速道路の建設を合理的、効果的に進めるには、首都高速道路公団や阪神高速道路公団を民営化してはどうかとの
意見がありますが、建設大臣の御見解を示されたい。
第三は、
土地問題です。
この問題の重要性は、この
施策の一切の成否が
土地対策にかかっているからであります。端的に言えば、
土地対策には
土地所有利益より
土地利用利益優先の原則を明示し、例えば規制区域の指定など、的確な私権制限を含めた
国土利用計画法の強化や企業保有地に対する資産再評価税の検討等、
土地税制の効果的運用が不可欠と考えますが、
総理の御見解をお伺いいたします。
さらに、この際、
土地に関する憲法ともいうべき
土地基本法を制定すべきと考えます。その
内容は、
土地に関して国、
地方公共団体、
国民の責務を明らかにするとともに、国、自治体の
施策の基本となる事項を定めること、そして
土地問題を体系的に整理して、速やかに解決するための基本的方途を明確にする等であります。
総理の御見解をお伺いいたします。
第四は、
地域間の
交流であります。
去る四月十日、待望の本四架橋が開通し、瀬戸内圏域は新しい時代に突入いたしました。瀬戸内海を囲む各府県は、今こそ
文化、
経済、学術
交流等を通じて一つの圏域として飛躍しようとしています。公明党は、この際、瀬戸内の輝かしい未来を築くために、瀬戸内
文化・
経済圏の確立、瀬戸内
整備促進法の制定、
交通通信網の体系的
整備、
居住環境の
整備など検討中でありますが、このような新しい
地域の活性化に対し、
政府はどのように考え、どのような取り組みをされようとしているのか、その方向性を
総理並びに
国土庁長官にお伺いいたします。
最後に、誇りと愛着を持つ
地域社会の
実現に関してであります。
地方の方々の中で、もしも
東京に対して誇りを持ち切れない要素があるとすれば、それは言葉ではないかと思います。元京都大学教授の会田雄次氏も、著書「リーダーの条件」の中で、個性のある豊かな
地域社会
実現の条件として、まず言葉であると言っていますが、まことに含蓄があります。彼は、ヨーロッパの諸国に標準語はない、有名なダンテの「神曲」もイタリアのフィレンツェ
地方の言葉であるトスカナ方言で書かれているし、ペトラルカもボッカチョも方言で書いたと言っています。そして、方言が伝えられない限り
地方の伝統
文化が維持できる方法はない、小中学校では国語と並んで正しい方言を教えるべきであると言っております。方言に誇りを持つようになって初めて
地域に誇りと愛着が持てるようになるのならば、これは重大問題です。したがって、
政府はこの点について何らかの方策なり工夫があってしかるべきと考えますが、
総理並びに文部大臣の御見解をお伺いいたします。
以上、質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣竹下登君
登壇〕