○田口健二君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案につきまして、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
地方税は、
住民サービスを担う
自治体の
財源でありながら国による多くの制限を受け、貧弱な税源に甘んじており、またそれゆえに
減税が進まず、最近、
個人住民税に対する負担感が強まっています。私は、税制改革を語る者は
地方税改革に対する明確な
方針を持つべきであると考えますが、その際当然に、国庫支出金等も含めて
行政の最終支出の窓口である
地方財政の拡充
強化を、国の税源の
地方への移譲を含めて
検討、実現すべきであると考えます。例えば国と
地方の
財政の国民総生産に対する比率を見れば、国の一〇・五%に対し
地方は一五・三%を占めております。
国庫補助負担金を除いても、租税の実質的
配分は、国の四六・九%に対し
地方は五三・一%であります。ところが、国税と
地方税の割合は六三対三七であります。国は、税源はたくさん持っておりますが、
行政事務の多くを
地方に押しつけており、しかも、
地域住民の税金を吸い上げながら、それをひもつき補助金などであたかも
地方に恩恵的に与えているかのポーズをとりつつ
地方を支配をしているのであります。しかも、国民の租税負担率を見ると、
昭和三十年に比べ、今日国税の負担率の
増加は二割でありますが、
地方税の負担率は七割も伸びております。
私たちは
地方税源の拡充を主張しておりますが、その第一歩は、国と
地方の税源の再
配分を行うことであります。しかし、昨年の中曽根内閣における税制改革においてもこうした
観点は当初からありませんでした。
総理は、税制の抜本的改革を主張されておられますが、こうした国と
地方の
財政的な矛盾をどのようにお考えになり、また、
地方税拡充の方向についてどのような
方針をお持ちであるのか、まずお
伺いいたしたいと存じます。(
拍手)
昨年の税制改革は、
地方交付税などの成立が九月になるなど、売上税問題によって
地方税制度と
地方財政に著しい混乱を与える結果に終わったのは周知のとおりであります。
政府の税制改革は、税源の再
配分が欠落していることは指摘をしたとおりでありますが、第二に、
所得減税、法人
減税における
地方税、
地方交付税の大幅減収に対する補てん
措置の不明確、また第三に、
交付税の恒常的
不足、税源不均衡等の打開策の欠落、さらに第四に、社会保険診療報酬課税等の不公平の放置、そして第五に、国の非課税
措置等の押しつけによる課税自主権、
財政自主権の侵害などが顕著であります。シャウプ税制使節団報告で示され、その後逆行しつつも、あるべき姿として
評価されてきた
地方税
財政自主権の確立は、最近においてますます否定されてきていると言えます。
そこで、私は、当面する
地方税改革の
課題の幾つかについて具体的にただしたいと存じます。
第一には、
個人住民税については、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の
引き上げにより課税最低限を
引き上げ、
所得税との格差を是正するとともに、その課税について過年度課税を改め現年度課税とし、近い将来においては
所得税と一本化し、総合課税の確立とあわせ国民の負担を軽くし、かつ、簡素でわかりやすい
所得税体系を築くことが望ましいと思います。
野党四党は、六十三年度
政府予算案に対する
共同修正要求において
個人住民税の
減税を
要求しておりますが、その内容は、
個人住民税減税の一年前倒しと
所得税との課税最低限の格差の是正という極めて妥当かつ当然のものであり、
総理は直ちにこれを受け入れるべきと考えますが、いかがでありましょうか。
第二に、租税特別
措置の是正の問題です。
現在においては、国税の租税特別
措置のはね返りだけでも約二千六百億円、
地方税における租税特別
措置と合わせると八千億円余りも存在いたします。また、外国税額控除
制度や
移転価格税制の不備によって、
地方は大企業に対し莫大な税の還付を余儀なくされておりますが、これも国税の不公平是正という
観点からだけではなく、
地方の
財政運営の安定の面からも早急な
改善が求められております。今後どのような整理
合理化計画を立て是正するか、示すべきであります。
さらに、我々
野党四党は、昨年来
不公平税制の是正を
要求してまいりましたが、何一つ手をつけられておりません。そればかりか、そうした税制の不備をついて元
大蔵省
事務次官ですら脱税をするありさまであります。これは、
政府・与党の中にあっては税制の不備に対する
認識が全体的に欠如している象徴であり、この際、
不公平税制の徹底是正の議論を十分行うべきであります。昨年の税制改革
協議会においては、十分な議論を行う、与
野党合意で税制改革は進めるという
約束であったにもかかわらず、
自民党がマル優
廃止を通したいがために
議長への中間報告を強行し、
協議を一方的に打ち切ってしまいました。
総理は税制協の再開を望んでいるかに
伺いますが、まず昨年の反省と
政府統一見解問題の決着がけじめであり、それなしで再び
野党に甘い声をかけるのは虫がよ過ぎます。
不公平税制の是正をどうするのか、
総理の明快な
答弁を求めます。(
拍手)また、この点については、
大蔵大臣、
自治大臣からもおのおのの所管から
お答えをいただきたいと存じます。
第三に、
地方税独自の
不公平税制が存在いたしますが、その象徴が社会保険診療報酬課税の非課税の問題であります。これはくどくは
伺いません。
所得税とは異なり、非課税という特異な状態をどうするのかという問題であり、
政府税調においても再三問題になっているところであります。新聞など七業種に対する適正化が一昨年行われたと思ったら、六十三年度の
改正案で再び経過
措置の
延長が行われようとしています。こんなことで税制改革ができるでしょうか。
自治大臣の
決意をお
伺いをいたします。
第四に、法人事業税について
伺います。
私は二つの問題に絞ってお尋ねをいたします。一つは税源の不均衡の問題であり、東京の法人事業税は伸びているのに
地方においてはよくても横ばいという状態をどうするのか。また一つは、一昨年の
政府税調はもとより、五十年代前半より提起されている事業税における外形標準課税の導入をどうするかという点であります。この際、
自治大臣に改革の方向をお示しいただきたいと思います。
今日、
地方の
財政状態は極めて困窮しており、
地域存続の死活問題となっております。私の出身地長崎県においては、
造船不況、高島鉱の閉山を初め炭鉱
合理化などで
情勢は日増しに悪化をしております。
私は、ここでお許しをいただいて一言申し添えさせていただきます。
この一年有半、炭鉱閉山という重圧の中で
地域振興のために日夜骨身を削る思いで頑張ってこられました星野高島町長が、ついに過労のために倒れ、昨日逝去されました。大変痛ましいことでございます。このことはまさに国のエネルギー政策
変更の犠牲者とも言えるのではないでしょうか。私は、ここに謹んで哀悼の意を表したいと存じます。
長崎は
過疎、離島を多く抱えております。税源の再
配分、そして
交付税の拡充は
財政窮乏
自治体全体の切実な
要求であります。
第五に、
住民の負担減については、例えば
固定資産税、
都市計画税の
軽減、また料理飲食税の
免税点の
引き上げ、娯楽施設利用税の国民の趣味の多様化に合致した
軽減、適正化などの問題があります。私は、日本のこれからの道を考えるならば、日本の国民が文化活動や芸術、スポーツを本当に楽しみ、つくり出していくことは、ただ遊びではなく、立国の
基本だと思います。
総理は
ふるさとを強調されていますが、文化や芸術のない
ふるさとなど存在いたしません。国税ではありますが、演劇や音楽会にかけている入場税の収入はわずかに七十億円です。なぜこれが撤廃できないのでしょうか。アメリカがちょっと
要求すれば巨額の兵器を購入し、逗子や三宅島に
住民が要らないというものをつくろうとしているではありませんか。また、スポーツにおいても娯楽施設利用税という
地方税があります。高齢化が進むとともに成人病や子供の体力が落ちていることが問題にされていますが、
政府がスポーツに税金をかけているようでは国民の健康は維持できません。ギャンブルやマージャン、パチンコの税金をなくせとは言いません。
総理が音頭をとり、
大蔵大臣、
自治大臣に指示するくらいの気持ちはないでしょうか。
総理の
所見をお
伺いいたします。(
拍手)
第六に、
土地税制について
伺います。
政府の六十三年度税制
改正案では、買いかえ
特例の
見直しが入っております。私どもも前提としては賛成であります。しかし、なぜ事業用資産の買いかえ
特例には手をつけないのでしょうか。その理由をお示しいただきたいと思います。また、今回は、祖父母や親から相続したものは一部
特例を存続させていますが、本人が汗水流して築いたものや夫婦で協力して得たもので配偶者間で相続したものは除外されています。全部を
廃止するか、指摘したケースも含めて金額の上限を定め存続させるかにすべきです。
大蔵大臣の
所見をお
伺いをいたします。
また、相続税についてでありますが、最高
税率の
引き下げなどは軽々しく行うべきではありませんが、小規模な住宅地や配偶者の負担については思い切って
軽減する、そして富の平準化のために取るべきものは取るという
姿勢が大切であり、国民を安心させるためにも今年の一月一日から直ちに実施すべきであると思いますが、あわせて
お答えをいただきたいと思います。
第七に、
自治大臣に
地方の具体的な
要望についてお
伺いをいたします。
指定
都市からは、大
都市における特別とん税、日銀納付金の
改善などが既に十年来
要望されています。また、観光
都市からは、清掃
事業費等が重く、せめて料理飲食税の一部でも交付してほしいという切実な希望が示されています。この際ぜひ前向きな
検討の
姿勢をお示しいただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。(
拍手)
以上、私は
地方税を中心にして
質問をしてまいりましたが、
地方税源の拡充と
個人住民税の大幅
減税は、内需
拡大、
地域経済の
活性化にとって緊急不可欠な
課題と言えます。ぜひ
野党の六十三年度
予算案修正要求に誠意ある
回答を示されるよう
要望し、
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣竹下登君
登壇〕