○石橋大吉君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
租税特別措置法の一部を改正する
法律案に対しまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず初めに、総理、昨日は、女性は衆議院議員に不向きなどの発言をめぐって、我が党の土井
委員長からきついおしかりを受けられたようでありますが、本日は、私にとりまして竹下内閣のもとで初めての
代表質問でございますので、冒頭、同郷のよしみをもちまして、このたびの総理大臣御就任に対しまして、改めて心からのお祝いを申し上げる次第であります。総理大臣、大変おめでとうございました。(
拍手)
思えば、郷里島根県選出の初の総理大臣、若槻禮次郎先生が第一次若槻内閣を組閣されたのは大正十五年一月三十日から
昭和二年四月十七日までの一年二カ月余、第二次若槻内閣が組閣されたのが
昭和六年四月十四日から同年十二月十一日までの八カ月間であります。短期間といえば短期間でありますが、この二回にわたる若槻内閣の時代は、大正天皇の崩御、東京渡辺銀行の休業を皮切りとする銀行の取りつけ騒動、鈴木商店の倒産と台湾銀行救済問題などに揺れた泥濘の金融恐慌の時代であり、また、東北六県を襲った冷害をきっかけとする深刻な農村恐慌に加えて満州事変の勃発、橋本欣五郎中佐を
中心とする陸軍桜会の中堅将校らによるクーデター未遂事件など、政党
政治の終えん、大正デモクラシーの崩壊から軍部独裁体制の成立、ひいては第二次大戦への序曲ともなった狂乱怒濤の激動の時代でありました。
直面する状況こそ異なれ、今次竹下政権の時代は、戦後四十年にして世界の経済大国となった
我が国をめぐる
内外の諸情勢は極めて厳しく、一方でまた
基軸通貨ドルの暴落や途上国の債務問題などの動向いかんによっては、
世界経済の大破局の可能性もあるという歴史的な危機と大
転換の時代であります。願わくは、この激動する
内外情勢の中で、国家と
国民のために難局を切り開き、ふるさと島根県人の期待にこたえ、歴史に名をとどめる名宰相としての業績を残されんことを切に期待するものであります。(
拍手)
あわせて、念のために、心して一層女性を大切にされ、再び女性は衆議院議員に不向きなどという発言をして、土井
委員長など世の女性の怒りを買わないように自重をお願いする次第であります。
さて、本論に入ります。
既に御承知のとおり、
我が国は今日世界のGNPの一割を占める経済大国になりました。一人当たりGNPも、昨年に入りまして一段と進行した
円高・
ドル安によりまして、一
ドル百四十円で一万九千四百五十
ドルと
アメリカの水準を超えました。一九八六年末現在の日本の
対外純資産残高は千八百四億
ドル。同年、
対外純資産残高で約二千六百三十六億
ドルの債務超過を抱え、世界
最大の
借金国となった
アメリカとは逆に、今や世界一の金持ち大国となったのであります。
しかし、
国民生活のレベルでこのような金持ち大国の実感はほとんどありません。なぜかといえば、
生産性の
伸び率に対して著しく低い実質賃金の
伸び率、先進国では群を抜く長時間労働、世界一高い
生活費、
アメリカの百倍以上と言われる
地価、
税負担の社会的不公平、社会資本の
不足、余りにも過大な
教育費負担などが、
国民生活の上に重圧となり覆いかぶさっているからであります。
結果、世界各国の厳しい
批判を浴びながら稼いだ金は、ほとんど
国民生活を素通りして、
アメリカの
財政赤字の穴埋めに利用されるか、国内的には株式や土地の投機に集中され、空前の財テクブームの中で株価や土地の暴騰を招き、それが再び
国民生活や社会資本整備の足を引っ張るという悪循環に陥っているわけであります。このような悪循環を断ち切るためには、
地価対策や労働
政策上の個々の対症療法を施すとともに、何といっても
税制における社会的不公平をなくし、税の所得再分配機能を利用しつつ、金の流れを変えることが今日最も重要だと思うのであります。
さて、本日
議題として提案されました
租税特別措置法の一部を改正する
法律案に使われております
租税特別
措置とは、特定の
政策目的を実現するために
税制上の例外規定、特別規定をもって行われる税の軽減
措置、優遇
措置であります。したがって、
租税特別
措置は、
租税特別措置法に規定されている範囲内に限定されるべきものでないことは当然であります。
租税特別措置法が
中心であることは当然としても、それ以外の規定についても、同様のものとみなし得るものについては特別
措置に含めて
考えられなければなりません。
そこで、まず初めに、
租税特別措置法に関連して、基本的な
事項を二、三お伺いしたいと思います。
御承知のとおり、一九七〇年代以降、
税制改革の
最大の論議は
不公平税制をめぐる問題に置かれ、その
不公平税制の
中心に置かれたのが
租税特別
措置であります。そして、
昭和五十年の税調答申が
租税特別
措置の整理
合理化を筆頭に挙げて以来、毎年のようにこの特別
措置の整理
合理化が行われてきたのであります。しかし、整理されたとはいっても、
政府の資料によりますと、昨年三月末現在で、国税関係で百六十八項目、地方税関係で百八十項目もの特別
措置事項があると言われているのであります。
そこで、第一にお伺いしたいと思いますのは、毎年各省庁から大蔵省、自治省に対し
租税特別
措置の要求が出されているわけでありますが、この要求の査定基準、手続等を明確にし、その減収状況、期限を示す
租税支出制度を確立すべきではないかと
考えますが、いかがでしょうか。
第二に、期限が
到来したものはもちろん、途中で目的を
達成したり、状況の変化によって意義を失ったものなど、かなりそういう事例が出てくると思いますが、そういうものを含めて全体の整理をどうするのか、関係者の恣意的な判断に任せるのではなく、合理的な整理
計画に基づいて逐次改廃整理していくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
第三に、国税と地方税を含めまして特別
措置全体の利用状況をわかりやすく公表すべきではないか。そのために税金白書というようなものを公表すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
以上三点につきまして、総理大臣並びに大蔵大臣の御見解をお伺いをいたします。
次に、
法人税関係の特別
措置について若干お尋ねをいたします。
まず第一は、最近問題になっております外国税額控除制度についてであります。
日本を代表する九大商社のうち三菱商事など七社が
昭和六十
年度の
法人税納税額がゼロと言われております。赤字ならともかく、巨額の利益を上げながら外国税額控除制度を利用したり、
拡大解釈したりして、
法人税を納めていない。個人の場合には税務当局は税額を公表するが、法人の場合には課税所得だけが公表される。それによって、
国民は
法人税が所得に応じて納められているというふうに思い込まされているが、実際には納められていない。そして、その実態は、税務署の守秘義務、会社の企業秘密でしっかりガードされているというわけであります。このような
国民を欺く外国税額控除制度は適切に見直すべきではないかと
考えますが、総理の御所見を承りたいと思います。(
拍手)
第二は、受取配当益金不算入制度と支払い配当軽課制度についてであります。
本論に入る前に、この問題に関連して、所得課税上のいわゆるキャピタルゲイン課税についてお伺いをいたします。
個人の場合、株式の売却によるもうけである譲渡所得については、幾ら大きくとも原則として
所得税が課されていない、株式の売却益が原則非課税となっていることは、個人所得課税に大きな空洞化をもたらし、極めて大きな不公平をもたらしていることは言うまでもありません。株式保有が機関、法人に集中しているといっても、個人保有の株式の時価
総額は
昭和六十一年三月末で七十一兆三千億円に上り、個人の売却益は三兆円を超えるとも言われております。膨大な所得が課税外に放置されているわけであります。このような実態から、株式売却益二億円申告漏れ事件なども起こってくると
考えられるわけであります。この際、公平を期するために、個人の株式の売却益については、原則課税の方向に
所得税法の抜本改正を行うべきだと
考えますが、いかがでしょうか。総理の御見解を承りたいと思います。
本論に返りまして、
法人税の関係ですが、法人が他社の株式を保有し配当金を受け取る場合、受取配当益金不算入制度により、法人間配当は原則非課税となっており、また、配当軽課制度により、不算入額を超える支払い配当については低率課税となっています。さきの
政府税制改革案では、法人間の受取配当についてはその二〇%を益金に算入するとしていますが、これでは不十分であります。もっと思い切った是正を行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。総理並びに大蔵大臣の御答弁を承りたいと思います。
第三は、賞与引当金、貸倒引当金、退職
給与引当金など、各種引当金の是正問題であります。
これらの引当金については、全体の額が巨額であること、主として大企業に偏っていることなどから、
不公平税制の最たるものの一つとして世の
批判を浴びてきたところであり、若干の是正
措置はとられてきたものの、まだ不十分であります。合理的、必要最小限度にとどめるよう早急な是正が必要であると
考えますが、大蔵大臣の答弁を求めます。
最後に、今
国会におけるこれまでの
税制改革に関する答弁を伺っておりますと、総理は、中曽根前内閣の
大型間接税は
導入しないとの
政府統一見解や衆参同日選挙の公約には拘束されないとして、
新型間接税の
導入に非常に意欲的のようでありますが、民意の方向は、その後の
政府税調の公聴会でも明らかなように、
不公平税制の是正が第一であります。このような民意に沿って、大胆に
不公平税制の是正を図り、
新型間接税の
導入を断念されるべきではないかと
考えますが、いかがでしょうか。重ねて総理の御見解を承りたいと思います。
言語明瞭、意味鮮明なる御答弁をお願いいたしまして、私の
代表質問を終わります。(
拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君
登壇〕