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1988-01-28 第112回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年一月二十八日(木曜日)     ─────────────  議事日程 第四号   昭和六十三年一月二十八日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑 (前会の続 )     ───────────── ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑   (前会の続)  田中龍夫君の故議員浜西鉄雄君に対する追悼演説     午後二時二分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ────◇─────  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより国務大出演説に対する質疑を継続いたします。塚本三郎君。     〔塚本三郎君登壇〕
  4. 塚本三郎

    塚本三郎君 私は、民社党民主連合を代表して、さき施政方針演説に対して質問いたします。  激動の世紀と呼ばれ、不確実性時代到来と呼ばれて既に久しい。自由と平和と繁栄のシンボルを名実ともに保持してきたアメリカ世界最大債務国となり、日本反対最大債権国になろうとは、二十年前には何人も予想し得なかった。日本は今、世界の平和と繁栄と秩序を保つために何をなさんとしているのか、世界じゅうから注目をされております。  日本は、アメリカ中心とする西側諸国の中で、自由貿易最大の恩恵を受けた国家であります。よって、今後とも欧米諸国はもちろん、世界各国と協調して自由貿易を守るために全力を尽くし、かつ、ある程度の犠牲を払う覚悟が必要であると信じます。竹下総理が「世界に貢献する日本」との姿勢を打ち出されたことは、評価いたします。問題は、その実行と方向性についてであります。  それとともに、今国内では極めて大きな不安と動揺が起きていることをまず指摘しなければなりません。経済的に大きな繁栄の道をたどりつつも、地域によっては町全体が沈没するとの不安があり、産業別繁栄と衰退の落差が余りにも大きく、かつ、その繁栄さえもいつ崩れ去るかわからない時代となりました。大都会の地価の暴騰は、そこに住むサラリーマンのマイホームの夢を打ち砕き、中小企業経営者は、事業経営について相続税の脅威のもとにおびえております。株価の暴騰、暴落からドルの際限なき下落、加えて極端な情報の洪水は国民の不安を一層かき立て、きょうは人の身あすは我が身と、精神的不安感は意外に広く深いと言わねばなりません。昨年の暮れ発足した連合は、組合運動としてはほぼその目的を達しつつあるが、政治の舞台、すなわち生活と税の面で極めて大きな不満を抱え、欧米並み生活を第一の目標に据えて発足いたしました。政治は、今こそこれらの現象を的確にとらえ、温かい心で、信念を持って国民指導することが望まれます。  昨年十二月の本院本会議において、私は、民社党主張を述べつつ国家基本となる幾つかの質問をいたしましたが、竹下総理の御答弁意味不明の箇所が多く、今回は、その一つ一つ中心にして再度御質問を申し上げます。  竹下訪米はおおむね成功であるとの報道が一般的であります。竹下総理が、訪米に当たっては、事前に相手方要求を聞き、そのほとんどを受け入れるべく担当役人と折衝させ、問題解決の約束をした上で出かけられました。相手方要求が、日本市場閉鎖性を破るべき点に多くあるならば、それは日本にとってもマイナスよりもプラスの点が多い。その意味では、双方にとって成功と言うべきでありましょう。しかし、それでもなお私は次の点について注意を喚起したい。  その第一は、アメリカ議会の休会中に訪問されたことであります。  今レーガン政権上下両院とも少数与党であり、しかもアメリカ政界は、大統領権威は日とともに下がり、とりわけ対日制裁法案の数々は、レーガン大統領の好意ある取り扱いにもかかわらず、議会圧力に押されっ放しで、大統領とて議会対策上、対日制裁に強硬にならざるを得ない。竹下総理訪米の第一の使命たる日米経済摩擦は、このアメリカ議会代表者と会い、その人たちの理解を得なければ成功しないということをなぜ考えられなかったのか。  その第二は、総理訪米は余りにも受け身であり過ぎるという声であります。  日米関係日本外交にとって最重要であることは同感である。しかし、竹下訪米までの日米関係に見るように、アメリカが次々と要求を出し、日本がそれにこたえただけの関係を定着させて、それでよいのか。「世界に貢献する日本」であるためには、アメリカ要求に従うだけではなく、よきアドバイザーでなければならないと思います。今日のアメリカ政界の対日の姿勢は、日本圧力をかけねばこたえない、たたけば最後には譲歩するという悪いパターンが定着してしまっております。日本としては、やはり言うべきことはきちっと言うべきではなかったか。  例えば、アメリカ議会が準備している通商拡大法案の中の東芝制裁条項などは、なぜやめてくれと言われなかったのか。東芝違反に対してひたすら再発防止社内体制をしき、ココム規制遵守の見本となり、間違っても規制物品が売られることのない防止体制をとっております。しかるに、アメリカ国防総省予算案では、全東芝グループの品を買ってはならぬとか、全世界の基地の中のPXは東芝製品を買わせないとしております。これを黙って見過ごすことは承認したことになりはしないか。今回の制裁措置原因のうち、特に、子会社が行った違反に全グループ連座制を押しつけられることが妥当なのか、過去の原因をもって将来に罰則を適用することが法治国家としてあり得てよいのか、個人会社に対する制裁国家間で行って欠席裁判で被制裁会社発言もさせてもらえないなら、なぜ日本政府が代弁しないのか等々の疑問が残ります。  第三に、アメリカサービス市場への参入問題も触れておきたい。  関西国際空港建設業界へのアメリカ参入は、アメリカ主張を受け入れねば報復措置をとるという一方的な主張を黙認して帰ってこられたことであります。また、関西国際空港建設工事の一部をアメリカが請け負ったとして、まさか日本政府が禁止している外国人一般労務者を特別に使わせるということは決してないということをこの場で内外に宣言しておく必要がありはしないか。それはまた、アジアのどこかの国がアメリカ下請工事を請け負ったときも同様であります。  アメリカは、サービス業界への参入を拒否しにくい建設業界の談合を標的にしつつ、目的情報産業から金融業界への食い込みを図ることが考えられます。現に総理が帰国されるや、次々と追い打ちをかけるがごとく難問が投げかけられてきているではありませんか。それなら、当然日本立場から捕鯨問題、すなわち調査捕鯨趣旨ぐらいなぜ合理的な主張をなされなかったのか。また、アメリカ領海二百海里内の日本漁業の操業しかり。日本がせめてアメリカと対等の立場に立ち、話し合うことこそがよきパートナーだと思うが、いかがでありましょうか。  定数是正について。  一昨年の衆議院の議員定数是正の際には、国勢調査確定値が出た時点で抜本的な定数是正を行うべきだとの国会決議が行われ、当時の中曽根総理も早急な抜本是正を約束されました。その後、国勢調査が確定し、昨年の有権者数調査では格差は三倍を超えるに至っておりますが、いまだ抜本是正の動きは見られません。昨年末の党首会談で、早急に抜本是正をすべきだとの私の提案に対し、竹下総理は、各党間で話し合うべきだと答えられ、さらに、ならば与党たる自民党からその話を各党に持ちかけるべきだとの私の意見に同意されました。したがって、与党たる自民党総裁として、いつ、どのようにして私どもに呼びかけられるのか、具体策をお示し願いたい。  また、さき国会代表質問において、私が参議院比例代表制を例にとって高級公務員立候補について追及したところ、竹下総理は、地位利用にわたってはならないので十分配慮していきたいという趣旨答弁をされました。しかしながら、各省高官など高級公務員選挙運動は、実際にはほとんど地位利用にわたるものばかりであります。参議院比例区において、その地位利用なくして選挙ができるとまじめに考えておられるとは思えません。OBと現役の関係を全く使わず、またその官庁が監督業界影響力を一切使わずして選挙運動ができるはずはないではありませんか。  現に自民党は各省庁役所が被監督業界に対して入党運動を進め、その結果、党員の数と党費の量によってその順位を決めていることは、もはや国民常識となっております。例えば前回を例にとれば、第一位が大蔵省、第二位が郵政省、第三位がなくて第四位が農水省、第五位が警察庁、第七位が国鉄、第八位が建設省、第九位が運輸省、第十位が農水省となっており、その他四名の計十二名となっているが、何と一位から十位の中で八名までが事務次官、次いで長官、局長であります。この人たちが、大変失礼な表現になりますが、地位利用なくしてお一人百万票など、到底思いも及ばぬ数字となることは常識でありましょう。かくして省庁ぐるみ選挙は、行政中立性を損ね、官尊民卑の風潮がひいては立法府権威を失墜せしめていると言わねばなりません。一体どうして行政府の長がかくも大挙して立法府を占拠せねばなりませんか。欧米諸国にこんな例があったら教えていただきたい。  この際、総理がまじめに地位利用にわたってはならないとお考えならば、国会の中に地位利用防止のために超党派の監視体制をつくろうではございませんか。それとも、比例区に限って立候補自粛のため退官後三年は立候補しないという、高級公務員民間企業への天下り自粛と同様の申し合わせをなさるおつもりはありませんか。潔い総理の御答弁をお待ちいたします。(拍手)  次に、税制改革についてお尋ねいたします。  今年は好景気に支えられて、昨年来より二、三兆円の税が余っているはずであります。昭和六十五年までに赤字国債をなくするという政府計画も達成できる見通しであります。なのに、どうして反対の声の多い、そして難しい複雑な間接税に執念を燃やしておられるのか。  去る十二月の臨時国会で、私の質問に対し総理は「開かれた議論を通じて税制改革についての国民的合意を形成しながら、まさに所得消費、資産の間で均衡のとれた安定的な税体系の構築が必要であります。」と答えられました。「間接税につきましても、その一環としてその速やかな実現を図りたい」と答えておられます。あれからもう二カ月が過ぎました。しかるに、いまだ野党や関係業界団体には一片の連絡もないまま、今国会法案を出したいとか秋には成立させたいとかと一方的な報道のみが流れてまいります。さき売上税がどうして廃案となったのか、十分に反省なさっての発言だとは思われません。民社党は、今日のゆがんで不公平な所得税法人税を放置したまま間接税議論を先にすべきではないと主張しております。それはさきに述べたごとく、新しく税を徴収する必要はいささかも今日の時点ではないからであります。  また、竹下総理さき国会で答えられたごとく、「去る九月の税制改正でかなりの規模減税を行ったところでございますが、言われるとおり、なお根強い減税要望がありますし、また、法人税につきましては、諸外国において急速に税率引き下げ措置が講じられてきておる中で、我が国負担水準世界的にかなり高いものとなっておりまして、企業活動のゆがみや産業空洞化を惹起するおそれがある」と述べられております。もしそれが真意ならば、なぜ先に所得税及び法人税減税規模と方法を議論されないのでございましょうか。国民要求世界的環境変化対応する措置としての改正ならば、これだけ税率を下げる必要がある、だから財源対策としてどうすべきかと論ずるべきではないでしょうか。  また、総理御説のごとく、我が国間接税について見ましても、現行の個別消費税制度が限られた課税対象物品に偏った負担を求める姿になっております結果、税負担の公平、中立性観点から見てこれまた問題があると指摘されていることも理のあるところであります。ならば、それらの物品についても一つ一つ公平に議論を尽くす必要があります。それらの点を時間をかけ国民を納得させることが大切であります。すなわち、欧州諸国が三年かけて間接税導入を行われたごとく、国民の協力こそ大切であります。  税の負担国民の一番身近な政治問題であり、その中身とともに手続こそより大切であると思うが、いかがでありましょうか。その意味で、一刻も早く税制改革協議会を再開すべきであります。それと同時に、さき相続税改正を約束されながら、この新型間接税と抱き合わせで行わんとすることはいかにもひきょうなやり方ではありませんか。  私は、さき臨時国会において竹下総理に、行政改革に取り組む基本姿勢をただしました。政府は、極めて不十分な対策をいかにも前向きに取り組んでいるかのごときポーズを示すにとどまりました。政府許認可件数は少しも減らず、逆にふえております。補助金はこの五年間でわずか二%しか減らず、逆に六十年度以来延べ四兆円も地方負担をツケ回ししております。また、特殊法人規制の見返りとして、公益法人を毎年二百以上も増設し、官僚の天下りの場をふやしておるではありませんか。政府自身行革によりみずから襟を正すことなくして、国民に新たな負担を求めることができるでありましょうか。少なくとも政府は、税制議論をするならば、あわせて次の対策を早急に実施すべきであります。  その第一は、補助金整理縮小現業部門を除く地方出先機関原則廃止公務員大幅純減などを柱として、五カ年で三兆円の歳出削減を図る新たな行革計画を策定することであります。第二は、補助金について終期を設定し、すべての補助金法律に二十世紀末までの終期を付し、国会の判断により特に必要なものに限って存続を図るという方針を確立することであります。第三は、公益法人の設立に総数規制を設け、新設がどうしても必要な場合は既存のものの廃止を条件にするというスクラップ・アンド・ビルドの原則を確立することであります。第四は、法律などにより地方団体の手足を縛っている国の関与、必置規制を緩和し、地方行革徹底強化を図ることであります。  政府は、東京への一極集中是正策として、あるいは総理の言われる「ふるさと創生事業」の一環として、一省庁機関地方分散を進められようとしております。しかし、その内容は、何らの権限も地域経済への波及効果も持たないような研究所や研修所などが多いこと、また廃止対象となるべき地方出先機関移転対象としていることなど、体裁を整えるだけの小手先の対策に終始しております。これでは国土の均衡ある発展も、総理の言われる「ふるさと創生」も期し得ないことは明白であります。地域活性化を図り、国土の均衡ある発展を日指すためには、地方への波及効果が高く、しかも象徴的な機関地方移転を勇気を持って断行すべきであります。この見地から、この際、率先垂範意味を込めて、国会地方移転及び学問・研究の象徴としての東京大学地方移転を図ることを検討されませんか。総理は、さき臨時国会において、国会移転について謹んで拝聴させていただくと答弁されましたが、あれからニカ月、拝聴しただけでは済まされない問題であります。総理は、国会東京大学地方移転についてどのようにお考えか。率直に御見解を賜りたい。  次に、急速な円高によって輸出に関連する産業は大変な苦しみを味わいながら、必死に対応策を講じつつ今日を迎えております。今、民社党では、経済大国から生活先進国我が国を大きく転換していくことを提唱いたしております。これは、欧米先進国並みの豊かでゆとりのある生活環境実現を目指すものであります。この生活先進国実現のためには、円高差益の十分な還元が不可欠であります。そこで、さきに発表された経済企画庁の試算によれば、交通、通信などのサービス業並びに農産物の価格規制及び輸入規制などの緩和がされたときには、実質国民総生産が約三十兆、八六年対比一〇%もふえるとのことであります。  総理は、経済成長の成果を国民生活の向上に結びつけていくとの観点から、円高差益還元をさらに進めてまいると重ねて約束されましたが、政府は、さらに進めるというよりも、まず妨害していることをやめていただきたい。次に述べる数々の物件は、政府みずからが高くしているものばかりを取り上げてみました。  まず航空運賃について、東京からニューヨークまで、日本では二十七万九千円、逆に、香港で買い、東京経由ニューヨークまでは、何と半分の十三万二千円であります。東京-香港間が十万三千円、香港から東京は三万九千円、三分の一であります。東京-ロサンゼルスが十九万余円、ロサンゼルスから同じのに乗っても十三万余円。国際電話は、三分間、日本-アメリカが千二百四十円、向こうからですと七百七十円で済みます。日本-韓国間が三分間千二百円に対して、韓国-日本間は、何と半分の六百八十円。ヨーロッパは、四・一分を平均にして、日本-西ドイツ間ニ千百五十五円、西ドイツ-日本間は半分の千二百二十一円。航空郵便料金は、十グラムまでは日本-アメリカが百三十円、アメリカ-日本間が、何と半分以下の五十七円。日本-イギリスが百五十円、イギリス-日本が八十一円。日本-フランスが百五十円に対して、フランス-日本が百二十七円。さらに生糸についても、中国を初めとする国際価格は、本日、一キログラム約三千八百円、それに引きかえ日本側は、一万一千五百円から一万二千円と三倍に政府がつり上げております。砂糖について、日本の港に着く原糖は一キログラム約三十円、精製して六十円。ところが、輸入税消費税等を合わせて、一キログラム何と三倍の百八十円となっており、欧米の八十円から百三十円とは段違いであります。ついでに、缶ビール、三百五十ミリリットル、小さいのです。日本が二百十五円、アメリカのシスコが六十円、ニューヨークが九十円と三分の一。大きい五百ミリリットル、西ドイツ日本の三分の一の八十一円であります。ガソリン一リットルは、アメリカ、サンフランシスコが一リットル四十二円、ニューヨークが三十九円、日本は、何と百十円から百二十円で三倍であります。ただし、税金だけで五十六円取っております。  経済大国日本を育て上げたと自負する都市の住民は、さらに欧米と比べて約百倍の高い住宅地に住み、その上二・五倍から三倍の食料を食べ、さらに上記のごとき政府干渉の高い料金を支払い、その上不公正な税に追われ、教育費に攻め立てられていることを総理はどう受けとめておられますか。世界に通用するお金が日本国内では何分の一にしか通用しない、これこそまさに政治の貧困と責め立てられても答えるすべがないではありませんか。(拍手)  現在、寝たきりのお年寄りは六十万人を超えると言われ、お年寄りを抱えた家族にとって、たとえ寝たきりであっても、病院施設に入れるだけではなく、自分の家で介護しながらともに暮らしたいというのが切なる願いではないでしょうか。ところが、行政対応は、病院施設に入れれば手厚い介護、看護が保障される一方、在宅では家族がつきっきりで介護しても何の保障もないのが現状であります。寝たきりのお年寄りの半数以上が在宅介護を受けているのにかかわらず、その一人当たり年間介護費は、入院三百十九万円、特別養護老人ホーム二百十二万円に対して、わずか四十三万円にすぎません。家で寝たきりのお年寄りを抱えた家族負担は、精神的、肉体的はもちろんのこと、経済的にも相当重いものになっております。寝たきりのお年寄りはただ施設に収容すればよいという福祉から、家にいながらも介護が可能となるように、ホームヘルプサービスの充実、ケアつき住宅の普及を図るとともに、家族のための介護減税介護休暇制度導入を進める必要があると考えますが、総理の御所見はいかがでありましょう。  今年は人権宣言四十年の年であります。日本国内でも人権問題として、非難の多いジャパゆきさん、すなわちフィリピン女性などの日本で働く人たちの扱いについてこのままでよいとは思われません。また、日本に来ておられる外国人留学生が、円高のために悲惨な生活を強いられている点を直ちに改善すべきだと思います。この人たちはやがて国に帰って指導者となられる人たちであると思えば、日本に対する青春時代の印象は特に政府として留意すべきではないでしょうか。  次に、教育改革について新たなる発想を提言したい。  例えば、北海道の豊かな自然を利用して、子供たちが自然と触れ合い、勤労のとうとさを体験できるような施設北海道内各地につくってはいかがでしょうか。校内暴力のあらしが吹き荒れた東京都台東区のある中学が、先生子供たちが自発的にあいた農家を借りて休日に合宿生活を通じて自然のすばらしさ、お互いに助け合うことの喜び、労働の楽しさと厳しさを学び取り、教育荒廃を克服した例を私は本院で述べたことがあります。北海道の大自然の中で、時には農作業や牧畜に汗を流し、あるいはスキー、スケートや乗馬、釣りを楽しみ、また先生方や友人との触れ合いの機会を持つことは、子供たちの心身の健全な成長に資することが極めて大きいのではないでしょうか。北海道内に農場やスポーツ施設宿泊施設を備えた、例えば東京自然村とか大阪自然学校などをつくり、地元の農家方々にはその管理や子供たちの世話や指導をしていただく、そして一年に一回は先生、生徒、さらには父母の方々を送り出せるようなプランを各学校や自治体で考えていただいて、旅費や宿泊費について国費で補助をする措置をとるならば、次代を担う子供たちの健全な育成と北海道経済の浮揚、さらには北海道自然保護と、まさに一石三鳥、四鳥の策となるのではないでしょうか。(拍手)  最後に、平和と安全保障について。  昨年暮れ、米ソのINFの全廃が首脳会談で合意され核軍縮の第一歩を踏み出したことは大いに評価するとともに、さらに進んで、戦略核兵器削減及び通常兵器削減に向かって一層の努力を期待するものであります。そして、本年の国連第三回軍縮総会竹下総理が直接ニューヨークに出向かれる意思があるか否かをお尋ねしたい。  次に、大韓航空機爆破事件について。  去る一月十五日に行われた蜂谷真由美こと金賢姫記者会見韓国捜査当局の発表は、我々に大きな衝撃を与えました。北朝鮮工作員であった金賢姫は、自殺した蜂谷真一こと金勝一とともに、金正日書記の指令によって大韓航空機に爆弾を仕掛け、これを爆破したというのであります。しかもその目的は、大韓航空機を爆破することによってソウル・オリンピックへの各国の参加を妨害することにあったと言われます。  今回の事件は、決して韓国だけの問題ではなく、我が国にも大きな関係を持っております。彼らが日本人を装い、日本の旅券を偽造したというだけでなく、特に重大なのは、金賢姫日本の習慣を教えたのは、日本から拉致された女性だったとされた点であります。昭和五十三年の夏、数組の若い男女が海岸近くで突然行方不明となり、現在に至るまで何の手がかりもないという事件が発生しております。もしこれが北朝鮮のしわざであり、その中の一人が金賢姫教育に充てられたとすれば事は重大であります。それは我が国に対する重大な主権侵害であり、人道的にも断じて許されない行為だからであります。政府は、全力を挙げてこの事件捜査し、事の真相を国民の前に明らかにすべきであります。先般、外務省の北東アジア課長が訪韓された際、この点についてどのような事情聴取がなされたのか、また、それを踏まえ今後政府としてはどのように捜査を進めていくのか、総理答弁を求めます。  国際化時代年間数百万の日本人が海外に旅する時代であれば、今回の事件は決して朝鮮半島における南北問題として片づけるべき性質のものではないと思います。  そこで、六十年の春、宮崎沖領海で発見された国籍不明の高速艇は、海上保安庁の追跡を振り切って逃走しました。海上自衛隊はその行動を終始監視していたが、海上警備行動は自衛隊法第八十二条により内閣総理大臣の承認を得ることがその都度必要で、このような突発的な事件に現状では対処できません。そのとき海上自衛隊に直接対処が認められていたら、まさか逃がすことはなかったと当事者が残念がっていることを総理は御存じでしうか。また、五十五年のソ連原子力潜水艦の事故の際も、沖縄沖の領海を通過されても海上自衛隊はただ眺めているにすぎない。また、十五万人もいる陸上自衛隊とて同様で、防衛出動または治安出動以外に何ら警備の任務を与えられてはおりません。例えば、昭和五十一年のミグ25が函館飛来のときには警察と米軍がこれに当たり、陸上自衛隊は訓練出動の名目で周辺の警備に当たったのみではありませんか。これに比べて、過日のソ連機の沖縄領空侵犯に対しては、自衛隊法第八十四条により対処が認められているから、直ちに航空自衛隊がスクランブルをかけ、ついにソ連をして正式に陳謝をせしめ、主権を守ることができました。だがそれとて、何ゆえ自衛隊法によって沖縄に強制着陸させなかったのか、疑問が残ります。  最近、逮捕された連合赤軍の指導者丸岡を奪回するために、さまざまのテロやハイジャックがうわさされており、加えて、ソウル・オリンピック開催をめぐる南北間の緊張激化など、国際的テロが万一にも発生したとき、総理は、従来どおりに警察力のみで対応できると考えておられるのでございましょうか。総理施政方針演説で自衛力の整備に言及していますが、平和時における緊急事態に対処する自衛隊の運用についてどう考えられますか。  昨年の臨時国会において私が質問いたしましたペルシャ湾の安全航行について、また、メキシコ大地震に対する国際救援活動について、ただただ自衛隊は使わないとの態度に終始しておられるのは、そんな平和時でも国外に出せば、かつての関東車と同様にシビリアンコントロールがきかないとでも思っておられるのか、自衛隊の最高司令官である総理が部下を信用しておられないのではありませんか。四兆円近い防衛費をつぎ込んで、なお領土保全や国民の生命財産などに対して身動きできないほどに法制上自衛隊の手足を縛っておられる本当の意味はどこにあるのか、改めてお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
  5. 竹下登

    ○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初は、政治姿勢の問題でございました。  世界の中で我が国の責任がかつてなく重くなっていること、他方、内外経済情勢の著しい変化の中で、一部業種や地域において景況、雇用などに不安が見られること、そういう内外の現状認識、これは私は基本認識として塚本さんと変わっておりません。そこで、それゆえに解決すべき多くの課題について、国民的合意を求めながら誠実に、しかも忍耐強く取り組んで、「調和と活力」の政治を目指していきたい、このように考えております。  訪米問題についての御意見でございましたが、今次の訪米の日程は、日米双方の都合に照らして十分検討の上決定いたしたものでございます。それは、我が国には予算編成あるいは今日のような国会の再開とかそういう日程もございます。また、米国側には米国側の国会日程もございます。したがいまして、国会議員の皆さん方と多く会える機会を選ぶという常識は私なりに持っておりますが、今回の双方の都合ということになりますと、先日の訪米の日程がぎりぎりでございました。したがいまして、ワシントン滞在中は、上院バード院内総務、下院フォーレー院内総務など、議会の有力指導者とも個別会談をいたしてまいりました。私なりに有意義な意見交換であったと思っております。  それから、先般の訪米の際、レーガン大統領との間で、相互依存を深める両国経済間で当然生じてきます種々の問題、これにつきましては、協力と共同作業の理念に基づいて、しかも縮小均衡ではなく拡大均衡を目指す方向で解決を図ろうという基本姿勢の確認をいたしたところであります。米国との間の個別案件について、今後ともお互いのやりとりを踏まえて、問題解決に努力をしてまいるつもりでございます。御指摘のありましたように、アドバイザー、まさにパートナーシップのそれが一つの重要な点であると思っております。  そこで、米国の東芝制裁問題についての御意見を交えての御質疑であります。  政府としては、米国議会における東芝など外国企業制裁の動きに深い懸念を有しておりまして、今回の訪米時にも、私自身、米国議会におけるかかる制裁の動きに深い懸念を有しておる旨を表明いたしました。御指摘のあった包括貿易法案中のガーン修正条項を初めとする他の東芝など外国企業制裁法案の動向も予断を許さないところ、政府としては、かかる法案が成立しないよう、米国政府議会に対する強力な働きかけなど最大限の努力を行うことも、今後とも要請していく考え方でございます。  サービス業への参入問題でございます。  公共事業への参入問題につきましては、日米首脳会談におきまして、レーガン大統領より、保護主義と戦う上で市場アクセス改善が望まれる例の一つとして言及がございました。これに対して、私から、最近日本側が示しました提案に基づき日米双方に満足のいく解決が得られることを希望する旨伝えました。昨年末、米国の連邦公共工事から我が国を締め出す効果を有する法案が成立いたしましたが、右に関しては、直ちに外務大臣から遺憾の意をシュルツ長官に伝えたのを初め、機会をとらえ、我が方の見解を米側に主張してきたところでございます。  さて、外国人労働者問題でございますが、我が国において、いわゆる単純労働に従事することを目的とする外国人労働者の入国につきましては、これを認めないのが政府の現在の方針でございます。御指摘のように、外国企業が請け負ったといたしましても、その例外ではございません。  調査捕鯨にもお触れになりましたが、鯨の捕獲調査については、国際捕鯨委員会の枠組みの中で処理してきた問題でありまして、日米外相会談において、我が国立場は外務大臣から米側に明確に伝えられたところであります。米国二百海里内の操業につきましては、日米外相会談において、我が国に対し漁獲割り当てがなされるよう、外務大臣から要請をしたところでございます。  さて、次の衆議院の定数是正の問題でございます。  私も、年末行いました党首会談の際、塚本委員長から私に対して御提言があったことを記憶いたしております。衆議院の議員定数是正の問題については、衆議院本会議の決議もありますから、自民党としては党の選挙制度調査会においてこれを検討しよう、先日も調査会長と総裁である私の間で意見交換をいたしておるところでございます。この問題は、選挙制度の基本にかかわる重要な問題でありますので、党首会談の際にも申し上げましたように、各党間相互に十分論議することが必要であるという基本的な考え方に立っております。しかし、その場所が、例えば本院の公選特でありますか、あるいはかつて定数是正の際に話し合いでできました協議機関のようなものでありますか、これらにつきましては、今私自身が政府側の立場に立っては、国会各党間の話し合いで決められるべきものである、このように考えております。  それから、高級公務員地位利用、これは前回も御質問をいただいたところでございます。  各党はそれぞれ国政への代表としてそれにふさわしい人を選んできております。確かに結果として高級公務員が多過ぎるという御指摘になるでございましょうが、問題は、立候補に当たり地位利用にわたる行為があってはならないということであって、この点については、今後とも十分に配慮しなければならぬ課題であると思っております。しかし、制度としてすべての高級公務員立候補を一律に制限するということになりますと、参政権の問題でございますとか、あるいは職業選択の問題でございますとか、平等の原則でございますとか、いろんな問題があろうかと私は思います。そこで、今御提案のあっておりました超党派の監視体制、この問題については、きょうの御提言でございますが、私自身がこれからお話をお聞きして勉強する段階であるということが、今日の段階では申し上げる限界だと思います。  それから次は、税制の問題でございます。  高齢化社会の到来、経済社会の一層の国際化を考えますときに、抜本的な税制改革によって、おっしゃいますとおり、所得消費、資産の間に均衡がとれた安定的な税体系を構築することは喫緊の課題だ、そして、今税収等にもお触れになりましたが、今日のような状況のもとにおいてこそ、あるべき税制について冷静な議論ができる環境であるというふうに私は考えております。間接税の問題を含む抜本改正問題については、昨年売上税法案が廃案になったという経緯、それらの反省を踏まえて、現在税制調査会において精力的な審議をお願いしておって、また、地方公聴会でございますとか、そういうことを通じながら、広く国民各界各層の意見を吸収するという姿勢で進められておるというふうにお見受けしております。したがって、それの審議が進んでいくことを私は心から期待をしておるところであります。  また、お触れになりました物品税その他の現行個別消費税、これにも確かにいわゆる不公平、不平等という御議論があることは、私も承知をいたしております。そこで、所得税法人税税制全般にわたって、税負担水準のあり方及び税制中立性、公平確保、こういうことで、幅広く国会においてもまた議論がなされていくのが一番適当ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。だから基本的には、特定の税の減税のために他の税の増税を考えるということではなく、まずは全体として均衡のとれた税体系の構築ということが前提にあるというふうにご理解をいただきたいと思います。  それから、いわゆる税制改革協議会の問題でございます。  これは私も幹事長時代にお世話になりまして、おつくりいただいて、言ってみれば議長さんのあっせんに基づいて政党間の話し合いで決められたものでございますので、今、行政府立場といたしましては、その組織運営について私からここで見解を申し述べるという立場には残念ながらないではないかというふうに思っております。したがって、国民の理解を得られるような税制の確立という観点に立って、国会における各党間の話し合いを含めて幅広く国民各界各層の意見を吸収していくということで私は期待を申し上げておるということであろうかと思います。  個別問題としての相続税の問題がございましたが、これは早急に実施すべきだという考え方があることは承知しております。しかし、抜本的な税制改革は、所得消費、資産、この間で均衡のとれた安定的税体系を構築することとされております。資産課税の中心税目たる相続税は、他の諸税目と一体として検討をして扱うのが適当であろうというふうに考えております。  それから、行財政改革の推進でありますが、行政改革に向けての民社党の熱意には私ども絶えず深く敬意を表したいと思っております。たびたび御叱正もいただいております。ところで、中曽根内閣は、私は行政改革というものを強力に推進した内閣であるというふうに思っております。私自身もその行財政改革の財の方を扱わせていただいて、時にけちけち大蔵大臣とも言われました。今日及び将来の日本社会のために行財政改革路線を進めてきたのが中曽根内閣だな、こういうふうに私は思っております。そうして、電電、国鉄、たばこ、そういう民営移管等によりまして、ほんとうに果実が実って予算編成にもそれが活用できるということになった。このことは大変喜ばしいことだと思いますが、そこで何となく一段落したというような気分が橫溢することは、私は一番気をつけなければならない問題だと思います。私は引き続きかたい決意を持って、せっかく押し上げました荷車がまた坂の上からガラガラと落ちるようなことがあってはいけない。したがって、六十三年度におきましても、公務員数を三千六百五十五人減らすなどの措置を講じてまいりました。そうして、今御提案にありました四つの提案、補助金整理縮小、それから終期設定の問題から、公益法人の設立抑制の問題、地方行革推進の問題、これらの御提案につきましては、今後とも努力すべき命題であるというふうに私自身も受けとめておるところでございます。  それから、一省庁機関、この問題は方針が決まったばかりでございます。多極分散型国土を形成する、こういう基本的な考え方に基づいて行なったものであります。したがって、これで済んだなどとは思ってもおりません。  そこで、国会地方移転、こういうことになりますと、遷都問題にかかわる問題になるわけでございます。四全総で述べられておりますように、政治行政機能の相互関係のあり方を含め、国民規模での議論を踏まえて検討さるべき課題であると私は思っております。したがって、いろいろな検討機関ができておることはまことに好ましいことでございますが、今日の時点国会移転――先ほど不規則発言で島根県へというお話もございましたが、そういうことをお答えするような現状にはないというふうに私は思います。  都内所在の大学の移転につきましては、これは一つは大学の自主的判断にまつものではございます。確かに大学自治の問題との議論もございますけれども、今後とも引き続き検討をさせていただきたい課題だ、このように考えております。  それから、経済大国から生活先進国へ、経済成長の成果を国民生活向上に還元せよ、私どもも絶えず同じ考え方であると言って適当であると思います。  そこで、この円高差益還元問題等について個別的な御指摘がございました。御指摘のあった国際航空運賃とか国際電話料金等のサービスや一部の商品について、円建て料金と外貨建て料金との間、あるいは国内価格と外国における価格との間に程度の差はあれ格差が見受けられること、これは事実であります。例えば、国際航空等についてはコストや収入に円建て部分と外貨建て部分とがあることとか、それから生糸の問題につきましては、売り渡し価格が国内の需給、すなわち国内政策の問題もあることは御案内のとおりでございます。そうした制度的な事情もございますので、単純に論ずるわけにはいかない面もあるというふうに私も思います。  いずれにしても、近年の急速な円高の進展もありますので、いわゆる円建て料金国内価格に国際的に見て割高感が強まっていることは御指摘のとおりであります。このため政府としては、これまでも消費者の負担軽減等の観点から為替レートの動向等を踏まえながら、国際航空運賃の方向別格差の縮小とか、そうして国際電話料金の引き下げとか、砂糖の卸売価格の指標となる形成糖価の引き下げ、これらを実施してきたところでございますが、今後とも為替レートの動向を踏まえて公共料金についての差益の的確な反映、関係業界への指導、これは要ることでございますので、これらにより内外価格差の縮小に努めていく。このことは私は、まさにおっしゃった経済成長の成果を暮らしに還元するということであろうと思っております。  次に、寝たきり老人対策の御指摘がございました。  御指摘のとおり、寝たきりのお年寄りについても可能な限り家族とともに暮らせるよう在宅福祉対策の充実を図ることが急務と認識をしております。このため、ホームヘルプサービスの充実、必要時には一時的介護サービスが受けられる高齢者向けケアつき住宅の普及拡大を図るなど、長寿社会対策大綱に沿って総合的な対策を推進していく、こういう基本的な考え方に立っております。また、いわゆる介護減税問題につきましては、現行税制のもとでも寝たきり老人等の特別障害者を在宅で扶養する場合におきましては、通常子供を扶養する場合の控除額よりも相当高額の控除が認められておるというのが、これは現行制度のことでございます。そこで、御提案のありました介護休暇制度につきましては、これは今後の課題として検討させていただくというお答えにとどめたいと思います。  それから、ジャパゆきさん問題がございました。  御指摘のようなジャパゆきさんを含めた外国人の不法就労問題につきましては、現行法令によって厳正に対処すべきものでございますが、これらの方といえども基本的人権の保障が及ぶのは当然でございます。また、ジャパゆぎさんが単純労働に従事することとなりましたならば、こうした労働力は受け入れられないというのが政府の現在の方針でございます。単純労働力の受け入れについては、その定着化の問題もあり、種々の社会的、経済的影響が考えられますので、この方針を踏まえた上で、対外的側面をも含め多様な角度から慎重に検討すべき課題だというふうに考えております。  留学生は、帰国後我が国とそれぞれの国とのかけ橋となって活躍する方々でございます。御指摘のような事実を私も感じ取っておりました。したがって、最近ASEAN各国で国別にかけ橋となっていただける方々の組織ができておる、そういうことはまことに喜ばしいことであると思っております。近年、留学生の増加に対応しましては、留学生施策の充実に努力していくことはもとよりのことでございます。特に最近の円高、これにつきましては、授業料減免措置の拡充、宿舎の整備等を図ることとしておりまして、今後とも各方面の協力を得ながら留学生受け入れ態勢の整備に努力していく所存でございます。  それから、北海道を例におとりになりまして、青少年が自然に親しむ機会ということの御発言がございました。  次代を担う青少年が北海道などの地域において自然に親しむ機会が増加することは、青少年の健全育成や自然、郷土を愛する心をはぐくんで地域社会の活性化を図る観点から大切なことであると私も思います。各地方自治体が地域の実情に応じていろいろな工夫を今一つでも二つでも進めていただいておるということが、新聞紙上で拝見しましても、望ましいことだなと思っております。国としては、青少年教育施設の整備とか自然を生かした教育活動を一層進めていく所存でございます。  さて、INF合意、そして私の国連軍縮総会出席問題についてのお尋ねがございました。  米ソのINF全廃が合意されることになったことについては、私は、塚本さんと同じく、これを核軍縮の第一歩として高く評価する、これは一致しております。私の国連軍縮総会出席につきましては、まだ同総会の具体的な審議日程が明らかになっておりませんので、日程が明らかになった段階でまたお願いをしてみようかと、このように考えております。  それから、金賢姫との面会の内容でございますが、外務省の担当課長が金賢姫と面会した際に、偽造旅券に関すること、日本人教育に携わったとされる日本人女性に関することなど、同人と日本とのかかわり合いを中心事情聴取を行ったが、その内容は今後の調査との関係もあって現段階で明らかにすることは差し控えさせてたまわりたい、このように思います。いずれにせよ我が国としては、韓国政府とも協力して、真相究明のため今後とも最大限の努力を行ってまいります。  大韓航空機事件の性格につきましては、政府として、今般の事件世界の平和と秩序に対する許しがたい行為であって、国際社会により強く糾弾、排斥されなければならない、かかる事件の再発は断固阻止されなければならない。特に今般の事件において、我が国の偽造旅券が行使され、あたかも日本人が関与したかのごとき擬装がなされたことは、まことに遺憾なことであると私も思います。かかる観点から政府としては、今般の事件に対する毅然たる姿勢を示すために、人的交流の制限等を骨子とする対北朝鮮措置をとることにした次第でございます。  さて、平時の自衛隊の警備行動等々に関する御意見を交えての御質問でございました。  陸上及び海上における治安の維持につきましては、現在、それぞれ警察、海上保安庁が第一次的な責任を持って対処し、これらの機関が対処できない場合に自衛隊が治安出動、海上警備行動によって対処することと原則的にはなっております。その中には若干時間がかかり過ぎるやに見えるところもあるかもしれません。自衛隊の活動については、あくまで慎重の上にも慎重に行動することによって国民の期待と信頼にこたえていくべきであるということに結論づけておるところでございます。  ソ連軍機による領空侵犯の問題でございますが、先般のソ連軍機による沖縄領空侵犯に際して、自衛隊は領空侵犯を未然に阻止すべく、また領空侵犯後には強制着陸させるべく、できる限りのことを行ったというふうに私は承知をしております。  さて、自衛隊の海外派遣の問題でございます。  ペルシャ湾における船舶の自由安全航行確保について、非軍事的手段による貢献を行うとの基本考え方に基づいて、去年の十月七日に政府与党首脳会議の決定に従って、政府としてはその貢献策の早急な実施に現在努めておるところでございます。ペルシャ湾は、イラン、イラク間で戦闘が行われておる地域でありまして、かかる戦闘地域へ自衛艦を派遣することについては、慎重に判断する必要があります。昨年成立した国際緊急援助隊の派遣に関する法律によりますならば、自衛隊員は、国際緊急援助活動を行うことになっておりませんが、これは、国際緊急援助隊の派遣については、これまでの経験に照らしても、自衛隊の参加がなくても十分対応が可能であると判断したということでございます。したがって、おっしゃいましたように、政府として自衛隊のコントロールに自信がないから自衛隊を派遣しないというようなことでは全くございません。大変に信頼をしておるところでございます。  以上でお答えを終わります。(拍手)     ─────────────
  6. 原健三郎

    議長原健三郎君) 井上泉君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔井上泉君登壇〕
  7. 井上泉

    ○井上泉君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  私の予定した質問を申し上げる前に、昨日行われました我が党の土井委員長、また公明党矢野委員長、さらに先ほどの民社党塚本委員長の税制改革に関する質問に対する竹下総理答弁の内容というものに対し、私は強く抗議を覚えるものであります。  土井委員長が三回にわたり総理の明確な答弁を求めたにもかかわらず、竹下総理は詭弁とごまかしに終始をし、明確な答弁を行っていないということは、極めて遺憾であり、本院の権威を汚し、国会審議権を冒涜する姿勢と言わなければなりません。(拍手)この姿勢に対して土井委員長がこれでは審議ができないと追及された経緯からいたしましても、私は、まず総理が、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税を投網をかけるようなやり方をしないという政府統一見解について、これを守るか守らないか、はっきりと答弁を願うものであります。  総理は非常に言葉が多いのでありますけれども、こうしたことについて私はあえて多弁を要する必要はない、国会決議を尊重する、各党間の合意の上に成ったことについては尊重する、その姿勢があるならば、間接税の問題につきましても、あなたが大蔵大臣のとき、中曽根総理との間で予算委員会で答弁が食い違って、その結果、統一した見解として出されたものであるから、それを守るか守らないのか、それを、売上税が廃案になったからこのことも流れてしまったというように、いとも簡単にこの問題を処理しようとするその態度というものは、私は日本総理としてのあなたの権威を失わしむる以外に何物もないと思うのであります。この政府統一見解の誠実な履行を求めるものでありますが、あなたはきのうも再三言われた、与えられた議員の任期は四年だからこれを大切にしたいとされている。ところが、公約を破り、有権者の信頼を裏切る政策を強行しようとするならば、内閣は国民に信を問い直すのは当然でありませんか。私ども社会党は、重大な決意を持って、この場において改めて政府統一見解と選挙公約の遵守を竹下総理が明確にするように求めるものであります。(拍手)  さて、戦後四十年余、我が国は歴史の岐路に立っていると言わねばなりません。私は今、明治維新後ひたすら西欧列強に追いつこうと坂の上の雲を見詰めて歩き続けた我が国が、日露戦争の勝利を過大評価した結果、帝国主義の道を歩んで四十余年、太平洋戦争で破滅したという、ある著名な作家の指摘を思い返しています。戦後の我が国もまた、GNPという坂の上の雲を見詰めてひたすら歩き続けた結果、経済大国と言われるまでになりました。今、我が国は登ってきた坂道を振り返り、今後の進むべき道を誤りなく選択しなければならないのではないでしょうか。  世界は画期的なINF廃棄条約に示されるように、軍縮とデタントの道を歩もうとしています。世界に誇るべき平和憲法を持ち、また最初の被爆国である我が国こそ、軍縮と平和のイニシアチブを発揮し、とりわけアジアにおける軍縮とデタントに率先して貢献すべきときです。戦前の我が国は、戦争への道を選び、世界各国、殊にアジア諸国に多大の被害を与えたことを反省するならば、竹下総理、今こそあなたは、故浜口雄幸首相が財政難打開の道は増大しつつある軍事予算に対する歯どめをかけることであると考え、軍縮の道をとらねばならないと決意し、ロンドン軍縮条約を軍部や政友会の猛反対を押し切って調印にこぎつけ成功させたことに思いをいたすべきです。その浜口首相は、軍拡論者の意を受けた右翼の凶弾に命を奪われましたが、しかし、その勇気、決断力こそが今日高く評価をされているのです。(拍手)  また、戦後、自民党総裁として短い期間でありましたが首相になられた、竹下総理の大学の先輩、早稲田の先輩の石橋湛山先生は、一九二一年「大日本主義の幻想」という論説の中で、植民地を放棄せよ、軍事費を削減し、国の経済力を高め、平和的な貿易を進めることにより国民の暮らしを豊かにせよと論じました。今日は過去との連続であり、過去に対する認識は今日これからの政治の上に重要なことなので、あえて総理、あなたの先輩、石橋先生の論を引用して総理の見解を求めるものであります。(拍手)  ところが、最近の自民党政府の選択はこれと違ったものであることは極めて遺憾であります。昭和六十二年度予算に続き、六十三年度予算案でも意図的に防衛費のGNP一%枠を突破し、三兆七千三億円という巨大なものとなっています。これがいかに巨大なものかは、韓国の予算総額の一・三倍に当たる天文学的数字という韓国紙の論調からも明らかであり、中国を初め近隣諸国に、この姿はやがて軍事大国への道を歩むのではないかと警戒と懸念の声が強まっているのもけだし当然ではないでしょうか。歴史の岐路に立つ今こそ、昭和六十三年度以降の防衛予算は、三木内閣が最小限の歯どめとした対GNP一%枠以内に戻し、さらに軍縮への道に国政の方向づけをなされてこそ、あなたの総理としての真価が発揮されたものとして高く評価されるでしょう。あなたの決意のほどをお伺いします。(拍手)  次に、外交問題で若干の質問をいたしたいと思います。  総理は、日米関係我が国外交の基軸と言われておりますが、基軸ということは、その他の諸国との外交関係に対してもやはりアメリカの意向というものを中心にこれを考えねばならないということであるのかどうか、この基軸の意味について御説明を賜りたいと思います。  米ソがデタントに向かおうとしているとき、ひとり日ソ関係だけが旧態依然であることは異常であります。世界地図を見るまでもなく、ソ連は最大の隣国です。政府は、SS20の極東からの撤廃という情勢を踏まえ、新たな日ソ外交を展開すべきです。領土問題は最大の懸案事項でありますが、入り口論としてこれに固執をしているだけでは百年河清を待つ結果ともなります。レーガン大統領も、国家は武装しているから相互不信になるのではない、不信が武装させるのだと語っています。日ソ間のあらゆる面での交流を活発にして不信を取り除くことが求められています。政府の対ソ外交の転換に英断を期待するのですが、いかがですか。(拍手)  続いて、光華寮の問題について伺います。  先般、我が党の金子みつ副委員長の質問に対し、総理、あなたは、中国側の主張を十分認識していると言われていますが、それならば、その認識に基づいてなぜ行動しないのかということであります。行動の道は幾つかあります。この問題解決に対する政府の消極的姿勢は極めて遺憾であります。三権分立、司法権の独立を前提としつつ、日中共同声明、日中平和条約の中国は一つの原則に立ち、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第四条に基づいて、総理は法務大臣をして政府の意見を裁判所に陳述するなど前向きに解決の姿勢を示すべきだと考えますが、総理の明快な答弁を求めます。(拍手)  次に、経済と国民生活について伺います。  急速な円高の中で、国民一人当たりのGNPが世界第一位となりました。国民にはしかし全くその実感はありません。竹下総理も、著書「私の「ふるさと創生論」素晴らしい国・日本」の中で、「物の豊かさと心の豊かさの調和」を強調されています。しかし私は、この二つの間に社会の豊かさがなければならないことを指摘したいと思います。豊かさの実感がない理由の大きな原因の一つは老後に対する不安ではないでしょうか。総理は「ふるさと創生論」で「好老社会」の発想を強調されています。「好老」という字は読まなければ意味のわからない総理の新語だと思うわけでありますけれども、その中で「汗する勤労の中に豊かな老後がある、」と美しく語っておられます。しかし一体、国民が汗して働いた後の老後はどうなっておるのか。例えば年金一つにとってみても、いまだ現在の年金が暮らせる年金となっていないことは、経済企画庁の報告でも明らかであります。ところが総理、今年度予算案国民年金の老齢年金を見ても、二十二年間加入の夫婦が月額九万五千三百円、十万円にも満たないのであります。こうした国民年金の基本設計自体が問題ではないでしょうか。総理の言う「好老社会」とは何なのか明らかにして、その対策を表明をしていただきたいと思います。(拍手)  さらに指摘したいことは、新しい格差、不平等の問題が生じつつあることです。民間法人企業の利潤は、一九八六年度で三十兆円に上ると言われます。この原因の一つは、利潤が勤労者に不十分にしか還元されていないことです。それはここ十年間、八六年を除いて労働分配率が低下していることでも明らかであります。七五年以降八六年までの労働生産性の伸びが五四%なのに賃金の伸びは一三%にとどまっています。今日の円高はこうした中での国際競争力としてもたらされたと言わねばなりません。(拍手)  第二は、中曽根前政権の一貫した縮小均衡路線の中で投資が実体経済に向かわず、財テク、マネーゲームに向かったことであります。しかも、こうした財テク、マネーゲームによって資産の格差、新たな持つ者と持たざる者の問題が生じていることに対し、総理は一体どう考えていますか。  これらの是正のために、経済政策の大転換、具体的には国際公約である内需型経済への転換を進めるべきであります。その場合、何のための内需拡大かが問題であって、国民生活の質の向上を目的としなければなりません。そのため、第一に、賃金の引き上げ、所得減税などにより可処分所得をふやし、消費の拡大を図ることであります。第二は、生活関連の社会資本の整備を思い切って進めることです。そのため、公共事業のあり方を抜本的に見直すことであります。第三は、以上のための阻害要因となっておる土地問題の解決を図ることだと考えるものであります。総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)  さて、我が国経済大国であるならば、それだけ国際的責務も大きいことを自覚しなければなりません。そこで、二点についてお尋ねいたします。  一つは、留学生の問題。中曽根前内閣は留学生十万人の受け入れ政策を打ち出しました。しかし、アジア諸国や関係者の反応はクールであります。昨年、日本留学を夢見て来日したバングラデシュの青年が餓死するという痛ましい事件総理も御記憶のことでしょう。寄宿舎の問題、奨学金等々、欧米に比して著しく立ちおくれている諸条件の整備を具体的にどう進めるかが問われています。中曽根総理の政策だから私は知らないというのでありましょうか。中曽根総理のときの主要閣僚であり、この十万人計画は承知をしておるはずでありますが、この具体的な施策というものが明らかにされなければ国際的な信用を失墜をいたします。  また、ユニセフの白書によれば、昨年だけでも千四百万人の子供が死亡し、その三分の一が栄養失調によると言われます。こうした現状に対しユニセフは「子供のための大同盟」を呼びかけていますが、我が国は積極的にこたえるべきと考えますが、総理はこれに対してどうなさるのでありましょうか。(拍手)  次に、国土の均衡利用と地域経済活性化の方策であります。  今、東京一極集中是正のために一省庁機関の移転が言われています。しかし、この程度では焼け石に水の気がいたします。中長期的な計画に基づいて、立法、司法、行政の三権の中枢を移動させることを含め、思い切った遷都を考えるべきではありませんか。国土の均衡利用、地域経済活性化のために、地域に根差した産業活性化が今必要ではないでしょうか。  私は、今後の重要課題といえば幾つかの問題がありますけれども、農業問題は我が国の極めて重要な、そして我が国民族の存亡にかけて考えねばならない問題だと思います。  我が国の農業は、今重大な岐路に立たされています。昨年は、主要農産物の政府支持価格が米を初めとしてすべて引き下げられるなど、政府の農産物価格支持政策が根本的に変わった年でありました。価格政策は、構造政策と結びついてこそ初めて農業改革の契機となります。単に価格を引き下げればいいという考えならば、農業以外に収入源を持つ兼業農家よりも先に専業農家がつぶれてしまうことになりかねません。この点については総理はどのようにお考えでありましょうか。  社会党は、地域農業の振興を主張しております。地域の生産者が主体となって、いわゆる産直など消費者との連携を進めながら、その地域の特性に合った作物を協業化や規模拡大を行いながら生産をしていく。そして細か過ぎる政府補助金は整理し、地域の営農集団に対する総合的な補助金、または交付金あるいは政策融資に切りかえていく。生産者の自主性に基づいた地域の特産物としての農産物の生産を振興する。そして国内の産地間の一定の競争により価格、品質、安全性などの面での向上を図っていく、これこそが日本農業の再生の道であると考えます。「ふるさと創生論」を唱える総理の御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)  さて、この地域農業の振興が必要なときに、地域農業の根幹的作物と競合する農産物輸入制限十二品目の自由化を受け入れることは、我が国の農業の未来を失わしむることになります。政府は、ガットのパネルがクロと判定した十品目のうち、粉乳・練乳とでん粉を除く八品目について自由化勧告を全面的に受諾する方針であったと聞きます。我が党は、日本農業再生のために十二品目すべてにわたって自由化拒否を貫くよう改めて強く求めるものであります。(拍手)  また、多くの畜産農家が累積負債を抱えて苦しんでいるときに、そしてミカン農家が過剰と価格暴落に苦しんでいる現在、牛肉、オレンジの輸入枠の拡大、ましてや輸入枠そのものの撤廃などは絶対に許されるものではありません。  米については、国内で七十七万へクタールにも及ぶ減反が行われております。このような状態で米の輸入自由化が行われれば、民族存亡のかぎを握ると言われる食糧は、すなわち米の生産は壊滅的な打撃をこうむることになります。政府は米の自由化は行わない方針であると聞いておりますが、この方針を貫くつもりであるのか、改めるつもりであるのか、改めて伺っておきたいと思います。(拍手)  食糧の自給体制をとることは農政の基本でもあります。既に国会決議がなされているにもかかわらず、食糧自給への道筋がいまだに示されていないということはどういうことでしょうか。独立国家として、食糧を外国に依存するほど危険な道はありません。食糧自給をどのように実現をするつもりであるか、総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)  次に、森林・林業問題についてお尋ねします。  日本の森林は、戦後の乱伐によって荒廃し、山崩れ等が多発しております。また、山崩れ等がない場合でも、浮き上がった林地の表土が雨に流され、おびただしい土砂が流出し、ダムの水を汚し、美しかった川を泥の川に変えているのが現状であります。このような現状を見るとき、森林の整備にもっと人手をかけなくてはなりません。ところが、政府はそれと全く正反対に、昨年の秋、十営林署の統廃合を断行し、しかも、一九九三年までに国有林野事業の職員を現在の半分以下の二万人に削減する計画で全く逆の方向で進んでいるのであります。これは許されないことであります。(拍手総理、今こそあなたが指導力を発揮して、間伐など手入れができない森林に手を入れ、森林の機能がより発揮できるようにするとともに、保全すべき森林の収益を保証するための森林基金を創設すること、あるいは民有林が相続のたびに細分化されていくことを防ぐための森林の相続税制度の改革を進めることが大事ではないでありましょうか。その点についての御見解を承ります。  国際的にも森林の問題は大変重要なものであります。二十一世紀までには地球の緑が大幅に失われ、人類生存にとってゆゆしき問題であると言われておりますときに、世界の丸太貿易の四割を我が国が占め、かけがえのない熱帯雨林の消滅に手をかすような現状は放置できません。我が国が国連に対し熱帯林を守るための熱帯林防衛基金の提唱を行い、我が国としてもこれに対して一定の金額を基金として拠出し、政府資金を加え、国際協力事業団等を通じて東南アジアの緑の再生に寄与すべきと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)  竹下総理の「ふるさと創生論」の中で一番希薄なのは、自然についての意識です。かつての山紫水明の自然は失われていく一方です。自然を喪失をして果たしてふるさとがあるでしょうか。戦後一番ひどい変わり方をしたのは河川です。我が高知県の四万十川が我が国最後の清流とテレビでも伝えられておりますが、これとても残念ながら昔の流れではありません。また、河川の汚染はそのまま海の汚染につながります。今、河川本来の姿に取り戻すために、ダムの管理はどうするか、周辺の水源地域はどうなのか、清流をよみがえらせる根本的な対策を立てるべきであります。水は人類生活に不可欠の命です。今、この命を守るために徹底的な調査研究と対策を内政の重点課題として取り上げるべきだと考えるものでありますが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)  次に、教育問題について文部大臣にお伺いいたします。  臨教審は昨年、三年間の幕を閉じました。国民は臨教審の審議に冷ややかであります。教育荒廃に悩む父母、国民の心情と全く遊離したものだったからです。偏差値でいうできる子もできない子も、子供は子供なりの人間としての生き方を強く求めています。去年の大みそかから元旦にかけて学習塾でテスト攻めに遭っている小学生の姿を映したテレビを見た方も多いでありましょう。あの進学塾の姿に我が国教育の現状が浮かび上がっています。塾を批判するのは容易です。しかし問題は、塾に行かざるを得ない学校教育と入試制度、学歴社会にあるのではないでしょうか。ところが、臨教審はこうしたことにメスを入れず、教職員が反対をする初任者研修制度などを答申し、これを受けて、本国会では臨教審関連法案がメジロ押しの予定であります。政府はこのような法案を提出すべきでなく、四十人学級の早期完結、受験地獄の解消など国民合意の改革を目指すべきだと存じます。  なお、数日前に国公立大学の共通一次試験が行われました。試験方法が猫の目のように変わり、受験生は多大の被害をこうむっています。共通一次の導入自体が大学の序列化に拍車をかけたことも明らかであります。共通一次試験は廃止されるべきでありますが、大学入試の抜本的改革についてどのように考えておるのか、見解を示していただきたいと存じます。(拍手)  冒頭私は、我が国が今歴史的岐路に立っていることを指摘しました。それは端的に言えば、あなたの選択すべき道は前任者の中曽根政治の継承であってはならないということです。特に強調したいのは、日米運命共同体論からの脱却であります。日米関係の重視と運命共同体とは異質のものです。経済の対米依存路線のツケは政治、外交の面での対米追従となり、また軍備力増強の圧力となってはね返っています。今重要なことは、日本の貿易構造を中長期的に多角化するとともに、政治、外交の面でもっと日本は自主性を持つことであります。そのことが日米間の真のパートナーへの道でしょう。経済に政治が振り回される時代は過ぎ去りました。政治及び政治家の役割が今ほど高まっているときはありません。このことを強調して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
  8. 竹下登

    ○内閣総理大臣(竹下登君) お答えをいたします。  まず最初の問題は、アジアにおける軍縮と平和への貢献でございました。  平和の維持と軍縮の促進は、人類共通の重要な課題であります。アジア地域におきましても、真に実効性のある軍備管理、軍縮が実現することは、長期的に適切な目標であると考えます。他方、現状において、この地域には日ソ間に北方領土問題が未解決のまま残されておるのを初め、朝鮮半島の緊張、アフガニスタン問題、カンボジア問題などの諸問題が存在しております。実効性のある軍備管理、軍縮を進めるためには、まずかかる地域の国際政治状況を改善して、情勢の安定を図ることが肝要との認識でございます。我が国としては、アジア地域における諸問題の解決のため、二国間及び国連など多国間の場において積極的な外交努力を行ってまいりましたし、これからも続けてまいりたいと思います。  それから、次の問題は、本院の先輩であります石橋湛山先生の問題でございます。  御指摘のありました論説「大日本主義の幻想」、この中で軍事費を削減して国の経済力を高めよ云々と主張されておりますが、これは一九二一年でございますから私どもが生まれる前、こういう御発言を堂々と行われたということは、やはり強い印象を受けた論文であるというふうに理解すべきであると思っております。  そこで、六十三年度の防衛関係費は、厳しい財政事情のもと、国の他の諸施策との調和を図りながら、中期防を着実に実施していくため所要の経費を計上したものでございます。これを削減することをもとより考えてはおりません。政府としては、昨年十一月の閣議決定にありますとおり、今後とも節度ある防衛力というものの整備を図っていくという考え方であります。  対ソ外交についての御指摘がありました。  最近の日ソ関係は、貿易、経済、文化など実務関係の諸分野は着実に進展しております。しかし、ただいま百年河清を待つという表現でございましたが、北方領土問題など基本的問題についてソ連の対日政策に変化が見られないというのが現状でございます。我が国としては、この原則というものはあくまでも基本方針として堅持すべきものである、このように考えております。  光華寮問題についてでございますが、中国側の主張は十分認識しております。日中関係への影響との観点から、政府としても本問題を重視しております。ただ、これは御承知のとおり、現在、最高裁で係属中のものでございます、この訴訟が。権限法第四条の「法務大臣の意見陳述」につきましては、三権分立の建前からして慎重であるべきでございまして、現段階で見解を述べるということは差し控えさしていただきたいと思います。  いずれにしましても、政府としては、日中共同声明、日中平和友好条約に示された一つの中国との立場を堅持しておりまして、今後ともこの立場は不変でございます。本問題のゆえに良好な日中関係全体に悪影響を及ぼすようなことがあってはならないとの考えでございますので、これから日中双方の努力が必要であると考えております。  それから、私が書きおろしの著書で「好老社会」という言葉を使ったことは事実でございます。そして、それについては、「汗する勤労の中に豊かな老後がある、」というようなことを述べたことも事実でございます。言うなれば、年老いることを嫌う、私も間もなく老人の域に達するわけでございますが、そういう嫌うというようなことに対する反語から「好老社会」ということを書きおろしたわけでございます。いずれにせよ、老人の方がそれらの蓄積とか経験とかを生かして、生きがいを持って生きていく社会、こういうつもりで使った言葉でございます。  それから、国民生活の質の向上の問題について、経済活動から説き起こされたわけでございますが、経済活動の成果が財テクなどに向かうことなく国民生活の質の向上に充てらるべきであるとの御意見は、これは同感でございます。その意味において、経済発展の成果が賃金等に適切に配分されることが望ましい、これもそのとおりであると思います。ただ、企業における個々の具体的賃金につきましては、労使が自主的に決定することである、これは原則的にそう考えていなければなりません。  そうして、所得減税につきましては、昨日も申し上げましたが、昨年九月の税制改正各党の合意をいただきまして、昭和六十三年度において住民税を合わせますと二兆円を超える減税、これを実施したということでございます。  それから、公共事業事業別配分につきましては、生活環境の向上に資する下水道とか公園事業とか、これに重点的に配慮をいたしております。  なお、土地対策の重要性は私も十分認識しておりますが、当面、昨年秋決定の緊急土地対策要綱、そして今後とも国会議論等を通じましてその環境整備がなされ、法律等をお出しするというような総合的な観点でこれに当たりたいと思っております。  それから、留学生受け入れ態勢の整備の問題でございました。これは、昭和六十三年度予算において、対前年比二六%増の百八十三億円の留学生関係予算を計上したところでございます。  ユニセフへの我が国の貢献でございますが、これは一九八八年版世界子供白書の中心テーマであって、私自身も右白書の第一号をちょうだいいたしました。我が国は、従来より児童の福祉の向上等にユニセフが果たしてきた役割は承知しております。戦後このユニセフの果たした役割の中で、粉ミルク等でお育ちになった方も既にこの国会にいらっしゃるわけでございますから、これらにつきましては、今後とも応分の貢献をしていきたい、このように思っております。  それから、遷都問題につきましては、これは再三申し上げますように、国民生活全体に大きな影響を及ぼす問題でございます。東京一極集中への考え方が、多極分散、この考え方まではお互い整理整とんができるところでございますが、これからは、各方面でも行われておりますように、やはり国民規模での議論を踏まえて検討すべき課題だというふうに考えております。  中央、地方情報格差の是正、この問題は、国土の均衡ある発展を図るために当然のことであると思っております。したがって、これらの拠点整備等には重点的に取り組んでまいります。  農産物価格支持政策でございますが、これは農政審議会において、内外価格差の縮小や需給の均衡化を期するとともに、農業の担い手の育成にも十分配慮した合理的な価格形成を目指すとの観点から種々の指摘がなされた。おととしの十一月の農政審の答申のことでございますが、したがって、納得の得られる価格で食糧の安定供給に努めることを基本として、与えられた国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図っていこう、こういうことでございます。  そこで、いわゆる自由化問題でございます。この問題につきましては――失礼いたしました。その前に一つ、地域農業の振興の問題もお述べになっておりました。  今後、農政を推進するに当たって、国民の納得を得られる価格で食糧の安定供給に努めることを基本として、そうして、農政審議会の方向を踏まえて、経営規模の拡大等による農業の生産性の向上と体質強化、それから食生活の多様化に対応した農産物の高品質化、高付加価値化、こういうことを推進のための各般の施策を実行していくということであります。農業補助金についても、これら施策に焦点を合わせて、その重点的効率化を図ってまいる所存であります。  その後が自由化問題でありました。  我が国は、世界最大の農産物の純輸入国でございます。国内における農業の役割は、食糧の安定供給、それから活力ある地域社会の維持、そうして国土、自然環境の保全など、極めて重要であります。農産物市場開放問題への対応は、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といった観点を踏まえ、このような我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける交渉との関連を十分考慮して、適切に対処してまいる所存でございます。その中にございまして、いわゆる十二品目問題について、我が国として二月の理事会において、ガットの精神を守り、国内産業への影響、国際的な経済関係に十分配慮して、適切な対応をする考えであります。  さらに、牛肉、かんきつ問題についてもお触れになりました。両国の立場の違いはございますが、円満な解決を目指して一日も早く話し合いのテーブルに着く、こういう必要があると考えております。  また、米の問題につきましては、国会における米需給安定に関する決議等の趣旨を体して、国内産で自給する方針で対処する基本的な考えでございます。  食糧自給の実現の問題でございますが、昭和五十五年の食糧自給力強化に関する決議の趣旨をも体しつつ、農政審議会の報告を踏まえ、生産性の向上を基本として、国内での基本的な食糧供給力の確保を図るため、すぐれた担い手、優良農用地等の確保や農業技術の向上など、各般の施策の展開に努めてまいる所存でございます。  国有林野事業にお触れになりましたが、森林の健全な育成、これは、木材の供給のみならず、私は、特に国土の保全、水資源の涵養等の観点から重要であるという認識を持っております。国有林野事業については、国民の多様な要請にこたえて、その使命を十分に発揮するため、昨年七月見直しました経営改善計画に基づいて適切な森林施策を推進いたしますとともに、最大限の自主的改善努力を尽くすことなどによりまして、経営の健全化に鋭意努力したい、このように考えます。  森林基金の創設の問題でございますが、最近における森林に対する国民的な関心の高まりなどを踏まえまして、国民参加による森林整備を進めるという観点から、広く国民、企業などからの任意の拠出によりまして森林整備のための基金を創設することとして、現在その準備を進めておるというところでございます。  それから、山林の相続税の問題でございますが、立木の特殊性を考慮して、従来から課税面、そうして納付面で優遇措置があるわけでございます。さらに、これの見直しにつきましては、税制調査会等で検討がなされておるということでございます。  熱帯林の保全の問題もお触れになりました。  熱帯林の保全などの地球環境の保全は極めて重要な問題であると認識しております。従来より我が国は、熱帯林の持続的利用と保全が図られるよう、国連などを通じた多国間協力及び二国間協力、ともに努力をしてまいっております。なお、我が国に本部を誘致いたしました国際熱帯木材機関に対しては、加盟国中最大の拠出国でございます。御指摘の点につきましては、貴重な御意見として承らしていただぎます。  最後に、河川汚濁防止対策にお触れになりました。  河川やダム、水源地は、貴重な水資源を提供しますとともに、快適な生活環境を確保する上で重要な国民的資産でありますが、改善すべき水質汚濁等の問題があることは認識をしております。これらの問題に対しては、従来から浄化対策などを積極的に実施してまいりましたが、より徹底的な調査研究を含め、今後さらに環境改善に努めてまいりたいと思います。  これは今お述べになった一つ一つの問題に対し、また事前に質問通告をちょうだいをいたしましたものに対する、私の整理いたしましたお答えでございます。  その前に御発言がございましたのは、詭弁とごまかしと。まあ言論は自由でございますから、その表現は私そのままお受けしてもよろしゅうございます。国会議員はまさに言論は自由でございます。しかし、矢野委員長の質問から始まった問題につきまして、土井委員長、矢野委員長からの再質問に対しては、私は私なりに誠意を持ってお答えしたつもりでございます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  9. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆるマネーゲームの行ぎ過ぎについて御懸念の御表明がございました。  いわゆるマネーゲームは、コンピューターの発達などによってこのように広く行われるようになったものと思いますが、御承知のように、昨年十月のニューヨークの株価の暴落以来、いわゆるプログラム取引でありますとかそういう現状について、いろいろな改善論、議論が生まれているように承知をいたしております。我が国におきましても、このような取引がいたずらに投機的な風潮を生むことになりませんように、今後とも十分注意いたすべきものと考えております。  それから、内需拡大のための減税につきましては、先ほど総理大臣がお答えになられましたように、昨年度と今年度、二兆円を超える所得税、住民税の減税がございます。これはかなりの程度に消費にプラスの影響を与えつつあるものと考えております。  それから、公共事業事業別配分でございますが、これは当然そのときどきの社会の需要に基づいて配分せられるべきものでございますし、現在でありましたら、やはり生活関連の社会資本の整備が重点的にならなければならないということは御指摘のとおりであると思います。先般来、NTTの株式の売却益を公共事業に活用することになりましてから、具体的には下水道、公園、治山治水につきましてかなりの配分の改善をいたしております。まだ十分とは思われませんので、今後とも努力をいたします。  最後に、税制改正、殊に間接税消費に及ぼす影響について御指摘がございましたが、これは間接税の内容にもよることでございますし、同時に直接税、法人税、個人所得税等の減税がどういうふうに行われるかといったようなこととも関連いたしますので、いわば税制改革全体で議論をいたすべき問題ではないかと考えております。(拍手)     〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
  10. 中島源太郎

    国務大臣(中島源太郎君) 私に対する御質問は五点ございました。  まず留学生につきまして、総理もお答えになっておりますが、最近は、六十二年の五月で二万二千人を受け入れております。二十一世紀初頭に十万人の留学生を受け入れるということを目途にいたしまして、総理もおっしゃいましたように、六十三年度予算は二六%増の百八十三億円を計上をいたしております。これにつきましては、大学等の教育指導体制の充実、それから宿舎の整備、私費留学生対策でございますが、特に宿舎につきましては、大学留学生宿舎の増設、それから日本国際教育協会の新留学生会館を現在建設いたしつつございます。また、留学生の方と日本の青年が一緒に共同生活をするということも大変よろしいということで、民間企業の社員寮の開放等を含めまして、民間からも宿舎の提供を御要望申し上げておるところでございます。また、国費留学生の拡大とともに、私費留学生に対しましては授業料の減免と同時に学習奨励制度を拡充をいたすことにいたしておるわけでございまして、今後も一層整備に努めてまいります。  次に、臨教審に対する御指摘でございました。臨教審は、現在の教育が抱える諸課題と、それから二十一世紀に向けての社会の変化に対応し得る教育の二つの柱から、学校、家庭、社会にわたります幅広い教育基本的あり方を御審議いただき、御提案をいただいたところでございまして、私どもは大変高く評価をいたしております。御指摘の学習塾通いの過熱化の問題、あるいは入試制度の改革、学歴社会の弊害是正等の問題は、これはまさに臨教審におきまして幅広く意見を聴取して、それぞれ具体的な御提言をいただいておるところでございまして、これらの提言を受けまして、私どもは既に大学入学者選抜制度の改革を初めといたしまして改革を進めておりますが、さらに引き続き教育改革の着実な推進に努めてまいります。  次に、初任者研修に関する御質問でございますが、申し上げるまでもなく教育改革の推進はまことに重大なことだと考えております。特に、教育は人づくりでございますし、教育は人なりという言葉もございます。学校教育の成否は、まさに教員の使命感や指導力に負うところが非常に大きいものでございますから、初めて教壇にお立ちになり教鞭をとられる方にとりましては、その指導力と使命感を深めていただき、そして幅広い知見を得ていただくことを目的とした研修期間を設けることは当然のことだ、このように考えておるところでございます。文部省としては、昨年十二月の教養審の答申をお受けしておりますので、これを踏まえつつ教育公務員特例法等の改正案を提出いたす準備をいたしておりますので、御理解と御協力をお願いを申し上げる次第でございます。  次に、四十人学級でございますが、これは、小中学校の四十人学級の実施を含みます教職員定数改善計画の着実な推進に努めてまいります。  最後に、大学入試の件でございますが、大学入試の改善は、大学、高等学校関係者の合意を得つつ、高校以下の教育の適切な展開にも配慮しながら着実に進めていく必要があるものと認識をいたしております。共通一次試験については、幾つかの評価をいただいておりまして、その一つは、難問奇問がなくなりまして良質な出題である、こういう御評価であります。また同時に、出題に合わせまして入試方法が多様化されまして、例えば面接、小論文の導入が大幅にふえました。また、推薦入学あるいは帰国子女の入試、それから社会人の入試を増加するなど多様化をいたしてまいったところは大変評価をいただいておるところでございます。また一方、いわゆる大学の序列化が顕在化したのではないかという御批判もあるわけでございまして、その点では、まさに臨教審におきましてこれまでの利点を生かしながら入試改革の御提案が行われておるところでございます。その御答申を得まして、私どもはかねて大学、高校関係者等によります協議の場を設けておるところでございまして、文部省としてはその結論を得ましてさらに改善のための努力を重ねてまいる所存でございます。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  11. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 村上弘君。     〔村上弘君登壇〕
  12. 村上弘

    ○村上弘君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、竹下総理質問いたします。  総理は、さきの日米首脳会談でも施政方針演説でも、「世界に貢献する日本」なるものを強調いたしました。では、日本はどのような立場世界の何に貢献をするのか、これが問題であります。  私は、まず第一に、それは、日本が過去の侵略戦争に対して誠実な反省の立場に立つことであり、これを大前提に据えることだと思います。昨年の臨時国会総理は、あの十五年戦争について、回避されるべきものであったと答えました。十五年戦争が侵略戦争だったからやるべきではなかったと言われるのか、それとも、負けた戦争だから結果として回避すべきであったと考えておられるのか、どちらなのでありますか。日本世界に貢献するためには、過去の侵略戦争をきっぱりと反省し、再び侵略戦争の発火点にはならないという決意をこそまず内外に明らかにすべきではありませんか。(拍手)  第二に、日本世界で唯一の被爆国として、非核の立場にはっきりと立つべきであります。昨年十二月、米ソ両国間で結ばれたINF、中距離核戦力全廃条約は、極めて限られた分野であるとはいえ、歴史上初めて実際に核兵器を削減することを取り決めたものであり、重要な意義を持つものであります。  世界の大勢が核兵器廃絶、核兵器の大幅削減に向かいつつある今こそ、日本政府は全世界に向かって、核戦争阻止、核兵器廃絶を訴えるべきであります。しかし、総理は、さきの日米首脳会談では、国民のこの切なる願いについては一言も触れませんでした。なぜレーガン大統領に対して、核兵器全廃、核兵器大幅削減への努力を具体的に求めなかったのでありますか。施政方針演説で述べたように、総理はただアメリカのやることを支持するだけなのでありますか。私は、人類の悲願である核戦争阻止、核兵器全廃の実現の先頭に立つことこそ、被爆国日本が真に世界に貢献する道であると考えますが、以上の根本問題について、まず総理の所信をはっきりとお聞きしたいと思います。(拍手)  あわせて、先日の自民党大会が採択した活動方針は、またもや非核都市宣言運動はまやかしだと述べています。これは重大であります。今日、非核自治体宣言をしている地方自治体は千二百を超え、そこに住む住民の合計は全人口の五八%を超えています。これらの自治体の意思と行動は、日本世界の非核化への道に積極的に貢献するものであります。自民党は何をもってまやかしと言うのでしょうか。これに賛成した自民党議員はまやかしに手をかしたことになるのですか、お聞きをしたい。総理は外に向かっては言うべきことも言わず、内に向かっては被爆国日本国民の貴重な国際的貢献を敵視さえする。これは、あなたの言う世界への貢献なるものこそがまやかしであることをみずから暴露するものではありませんか。総理及び自民党総裁として真剣な答弁を求めます。(拍手)  ところで総理米ソ間でINF全廃条約が合意されたとはいえ、日本列島全域は日米軍事同盟のもとで、アメリカアジア・太平洋における核戦争計画の最前線拠点としてますます強化されています。核空母ミッドウェーの母港横須賀は、ニミッツ級核空母の母港としてさらに強化され、また、米核空母護衛のためのイージス艦導入や、ソ連沿海州まで探知範囲に入るOTHレーダーの設置など、次々と強化されつつあります。三宅島や逗子では、圧倒的多数の住民の意思に反して米軍基地建設が強行されようとしていますが、我が党は、これらを直ちに中止することを強く要求します。(拍手)  総理は、アメリカのペルシャ湾軍事分担要求に応じて、在日米軍駐留経費を大幅に増額することまで訪米の手土産にしました。アメリカに加担して国際紛争に事実上介入することは、憲法が明確に禁じている集団自衛権行使の立場に立つものではありませんか。それぞれ明確な答弁を求めます。  今多くの国民は、戦争開始に備える米軍の有事来援や事前集積など日米共同作戦計画具体化の進行のもとで、日本アメリカの戦争に巻き込まれる危険を強く感じています。しかし、歴代総理訪米は、こうした国民の声や不安とはますます縁遠いものになり、アメリカレーガン大統領の意向への迎合と先取りにきゅうきゅうたる観を呈するまでに立ち至っています。新聞も、日米首脳会談で首相は日本として言うべきことをほとんど言っておらず、今後に大きな禍根を残した、訪米で成果があったという政府の発表は戦前の大本営発表と同じだという批判の声を報道しています。  総理、あなたの言う世界とは西側世界のことであり、貢献とはレーガン政権要求にこたえることではありませんか。私は、日本が西側の一員としてではなく世界の一員として、今こそ核兵器廃絶と軍縮という世界の大勢を進める先頭に立ち、軍事ブロック解消の道に進むこと、これこそ被爆国日本が真に世界に貢献する道であると考えますが、総理の真剣な答弁を求めます。(拍手)  ところで総理、今、西側は経済の面でも大きな矛盾に直面しています。その最大の要因がアメリカの膨大な財政赤字と貿易赤字、いわゆる双子の赤字にあることは、今や世界常識であります。ところが、レーガン政権はこの根本原因には何ら手をつけず、異常円高の押しつけを初め、専ら他国に犠牲を転嫁することで困難を回避しようとしているのであります。総理、西側経済の当面する矛盾を打開するためには、まず第一に、アメリカに対して膨大な財政赤字の削減、とりわけその主因となっている国家予算の三割近い軍事費の大幅削減を強く求めるべきであります。首脳会談で、なぜあなたは軍事費の大幅削減アメリカ要求しなかったのですか。恐れ多くて言えないのですか。納得できるようにお答えをいただきたい。(拍手)  周知のように、戦後の日本経済が比較的速いテンポで発展してきた大きな要因の一つは、戦後憲法の恒久平和原則によって、国民世論が非生産的な浪費である軍事費の増大を抑えてきたことにあります。日本が経済の面でも世界に貢献するためには、この教訓をこそ世界に向かって推し広げるべきではありませんか。ところが、逆に今や日本の軍事費は、日米軍事同盟強化のもとで、NATO並み計算では世界第三位にまでなり、国民総生産の一%を超え続けておりますが、このようなやり方を続けるなら、福祉や教育を後退させるだけではなく、日本経済もいずれアメリカ同様の状況に陥ることは明らかではありませんか。我が党は、この軍事費を少なくとも半減することを強く要求します。(拍手)  総理はまた、経済援助の名のもとに、米軍事戦略を補完するための莫大な政府開発援助まで訪米の手土産にしました。我が党は、飢餓に苦しむアフリカ人民の救済を初め、発展途上国の国民生活と経済の発展に真に役立つものにする立場から、これも抜本的に見直すべきであることを主張します。以上、答弁を求めます。  西側経済の矛盾の第二の焦点になっているアメリカの貿易赤字の問題について言えば、まず、アメリカ企業の多国籍企業化による米国経済の空洞化をこそ問題にすべきであります。日米貿易摩擦についてよくアメリカは、日本が閉鎖的だからとか、輸入をもっとふやすべきだとか言っています。しかし、関税負担率の国際比較でも、我が国世界で最も市場開放の進んだ国であります。日米双方の多国籍企業が相手国で行っている生産と販売高をそれぞれの輸出輸入とあわせて計算するならば、日本人一人当たりのアメリカ商品購入額は、アメリカ人の日本商品購入額の二倍近くにもなっているのであります。これでも総理は、アメリカが言うように、日本市場は閉鎖的だと思われますか。米国経済の空洞化をこそ批判すべきではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)  さらに、竹下内閣は、日米貿易摩擦打開のためとして、内需拡大の声を大にしています。もし竹下内閣が国民本位の内需拡大に真剣に取り組むのであるならば、これは日米摩擦の国内的要因を取り除く上でも重要な意義を持つでしょう。なぜなら、内需の第一は、その六割を占める国民消費購買力を引き上げることにあり、何よりもそれは、日本の労働者の低賃金、長時間過密労働、下請企業の低単価の引き上げに向けられなければならないからであります。しかも、ここにメスを入れることこそ、世界に冠たる日本企業の国際競争力の秘密を暴くことにもなるのであります。  しかし、総理、先日の日経連の総会は、ことしの春闘は定昇だけで賃上げはやめるべきだと公言していますが、これはあなたが約束した内需拡大にも全く逆行するものではありませんか。  また、あなたが実行を約束した前川リポートなるものは、専ら大企業の海外進出を促進し、それと引きかえに日本市場開放を進め、石炭、日本農業、中小企業を無残に切り捨て、国内経済の空洞化とも相まって膨大な失業者を製造し、国民生活を苦境に追い込み、内需を一層冷え込ませることにしかならないのであります。(拍手)  特に許しがたいことは、農産物十品目の輸入自由化を約束したことであり、これが実施されれば、三十万戸近い農家に七千億円を超える被害を及ぼすのであります。それだけではなく、今後アメリカは、これをきっかけに、我が国に対してこれまで以上に牛肉、米の自由化を迫ってくることは確実であります。農業は、一国の経済、国民生活安定の基礎であり、世界広しといえども自国の農業を保護育成する政策をとっていない国はありません。現にアメリカは、日本に対して輸入自由化を要求した十二品目のうち、六品目についてはみずから輸入制限をしているではありませんか。北海道や沖縄を初めとする日本の農業、酪農を崩壊させないためにも、何よりも日本農業の自主的基盤の確立を国の最優先課題とする見地からも、農産物十品目輸入自由化の約束は撤回すべきであります。また、日本の内需を冷え込ませ、アメリカ同様国内経済の空洞化を加速する前川リポートの撤回を強く要求します。答弁を求めます。(拍手)  内需拡大を国民本位で進める積極的方向は、言うまでもなく国の経済を対米従属、大企業本位ではなく、国民本位の方向に転換し、減税、福祉の充実、生活密着型公共事業等を優先的に行うことにあります。  ところが政府は、減税どころか、性懲りもなく公約違反の大型間接税導入をあくまで企図しているのであります。その最大の動機が、福祉目的などではなく、ますますふえ続ける膨大な軍事費の財源を安定的に確保する仕組みをつくるためであることは明らかであります。自民党の国対委員長がこの本音を隠すために、ある会合で、どうしても五十歳で死にたいという人は共産党に投票するなどと暴言を吐いていますが、総理、約百五十兆円を超える国債発行残高のある中で、さしあたりでさえ十八兆四千億円にも上る大軍備拡大計画を遂行する軍事費を政府は一体どこから調達するつもりでありますか。三%の税率としても四人家族で年十万円もの負担を強いる最悪の大衆課税である大型間接税導入の準備や計画は、平和のためにも暮らしのためにも真の内需拡大のためにも直ちに取りやめるよう強く要求するものであります。(拍手)  言うまでもなく、大型間接税はやらないというのは中曽根前内閣の公約であります。今竹下内閣が掲げている税制の抜本改革なるものの中軸は直間比率の見直しであり、それは間接税を抜本的にふやすことであり、売上税であれ付加価値税であれ、いかなる形になるにせよ、大型間接税となることは明瞭であります。直間比率の見直しということは自民党の一昨年の選挙公約の中には全くありません。このことは確認をしておきたいと思います。したがって、直間比率の見直しによる大型間接税導入は、大型間接税はやらないという中曽根前内閣の公約にも反するものであることは明瞭であります。答弁を求めます。(拍手)  また、このような直間比率の見直しを行うための税制議会は、公約違反を強行するための画策の場となることは明らかであり、しかも国会の正規の機関でもありません。自民党であれ何党であれ公約違反の大型間接税反対する政党であるならば、直ちに税制協の解散を要求すべきでありますが、自民党総裁としての答弁を求めます。(拍手)  ところが竹下内閣は、口では前内閣の公約を守ると言いながら、税制改革法案なるものの提出時期を事もなげに語っていますが、これは言語道断であります。もし既に明らかなこの公約違反の大型間接税を内容とする法案提出を考えているのであれば、まず国会を解散し、主権者国民の意思をこそ問うべきであります。我が党は、政府は公約を守れ、さもなくば国会解散・総選挙を断行し、国民にこそその信を問えということを強く要求するものであります。民主政治の名において真剣な答弁を求めます。(拍手)  我が党は、政府が大型間接税導入をきっぱりと放棄し、増税なしの三兆円減税とマル優制度の復活を断行することを強く要求します。これは、政府国民立場に立つ決意さえ持てば実現できないことではありません。さしあたり軍事費を半減させることによって一兆九千億円の財源をつくることができます。さらに一京円、つまり一兆円の一万倍に達する大企業、大銀行の有価証券取引にかかる税金に対し、現行税率にわずか〇・一%上乗せするだけで数兆円の財源が得られるのであります。問題は、こうした大企業、大金持ち優遇の不公平税制に手をつけるかどうかであります。答弁を求めます。(拍手)  次に、緊急に打開が求められている若干の問題について、政府の見解を伺います。  まず第一に、国民健康保険の問題です。全国の市町村の国保財政は破局的状況にあり、保険料の値上げが相次いでいます。国保加入者の六割を超える年間所得百五十万円以下の世帯では、保険料負担所得の一割を上回る過酷なものとなっているのであります。月収十万円のお年寄り夫婦に、月一万円もの保険料が払えますか。今や命と健康を守るはずの国保制度は、逆に命を削る凶器となっているのであります。これは憲法に明記された国の社会保障責任の放棄ではありませんか。中曽根前内閣が大幅に削り込んだ国保への国庫負担率を、少なくとももとの四五%に直ちに戻すべきであります。また、生活保護費二百五十億円の削減、この三年間に十五万人も切り捨て、さらに新たに五万人も削減するような無慈悲な施策は直ちに取りやめるべきであります。答弁を求めます。  第二に、地価高騰問題であります。  この問題の責任の所在は、東京の国際金融都市化等をうたい、過大なオフィスビル需要見通しを発表することによって、大企業、大銀行の都心買い占めをあおってきた政府自身にあります。それは、総理みずからがニューズウイークのインタビューに答えて、この問題は私にも責任があると語っているとおりであります。ところが政府は、需要と供給のバランスなるものを振りかざし、政府自身があおり立ててつくり上げた需要に供給を合わせるために、低さ制限とか私権制限などを持ち出して、勤労市民、近郊農民を追い出そうとしているのであります。まことに言語道断であります。まず、政府は地価高騰の責任を認めるべきです。そして、直ちに大都市圏の地価凍結と引き下げ、大企業、大銀行の無法な買い占めと融資の規制を行い、固定資産税評価がえの中止、相続税軽減など土地税制改革などをこそ断行すべきであります。答弁を求めます。(拍手)  第三は、国鉄の分割・民営化の強行と整備新幹線をめぐる問題です。  JR各社における国労、全動労に対する差別、不当労働行為などは目に余るものがあります。営利優先で安全対策も大きく後退していますが、中でも今日の整備新幹線問題は、国鉄の分割・民営化がいかに国民要求に反するものであったかを集中的に示しています。  政府は、一日数億円の黒字を出していた旧国鉄に対し、新幹線建設を中心とする膨大な設備投資の借金と利子負担を押しつけ、そのために生まれた莫大な赤字の原因があたかも旧国鉄の経営形態にあるかのごとくすりかえて分割・民営化を強行したのであります。しかし、旧国鉄同様に民営JRにも莫大な整備新幹線建設財源の負担能力がないことは明白であります。整備新幹線建設費を何らかの形で国が負担するのであるなら、なぜ国鉄を民営化したのかが当然問われなければなりません。政府は、国鉄分割・民営化のときに押しつけた赤字原因、国鉄経営形態論と整備新幹線財源をだれが負担するかという問題で自己矛盾に陥っているではありませんか。しかも、整備新幹線を求める国民の当然の要求の前に無責任な約束を乱発し、国民関係自治体の不信と反発を買っているのであります。政府は、国民が納得できる責任ある建設計画財源対策を示すためにも、莫大な赤字は国鉄の経営形態に原因があったとして強行した分割・民営化の口実は誤りであったし欺瞞であったということを認めるべきであります。答弁を求めます。(拍手)  第四に、大企業の横暴を許さず、身勝手な行動を規制し、その社会的責任を果たさせる問題です。  今大企業は円高を口実に工場閉鎖を含む人減らし合理化、工場の海外移転などを進め、各地で国内経済を空洞化させています。例えば造船の町、因島の現状は企業城下町の苦境を典型的に示しています。日立造船が撤退した今、因島では失業者があふれ、求職者四人に対して一人の求人しかない状況であります。国や自治体の税制、財政などにわたる多大の援助を受けてきた大企業が、円高不況を口実に住民を足げにして恥じない態度は厳しく糾弾されなければなりません。大企業には大企業としての社会的責任があるはずであります。政府は、大企業が人減らしや工場撤退を一方的に強行することを許さず、関係自治体などとの事前協議を含む厳しい規制措置を実施すべきであります。官公需の特別発注や生活密着型公共事業などを起こし、失業の救済、雇用の拡大を図ること、大企業にではなく中小企業にこそ休業補償や無利子融資制度などを実施すべきであります。  全国の不況地域の困難は、逃げ場のない子供たちにしわ寄せされています。高校では授業料の滞納が急増し、中高校生の進学断念者がふえています。因島の教育関係者は、巨大な資本の身勝手のために子供たちの未来まで犠牲にしてはならないとは思うが、何をしたらよいのか方策が見出せないと嘆いています。最小限の緊急対策の一つとして、特別奨学金制度の創設など必要な財政的援助をすべきであります。  あわせて、各党が合意しているはずの交通遺児のための育英制度を災害遺児にまで直ちに拡大適用できるようにすることを強く求めます。  以上について誠意ある答弁を求めます。(拍手)  最後に、民主主義の根本にかかわる問題に関連して質問いたします。  我が党は、百十五人の痛ましい犠牲者を出した大韓航空機爆破事件は、一連の中心的事実から見て北朝鮮工作員による犯行であると判断しています。そもそもテロリズムは、多数の人民の団結の力による社会の変革と発展を目指す科学的社会主義とは全く相反するものであり、我が党はこのような蛮行を強く糾弾するものであります。  今回の大韓航空機爆破事件は、どういう理由によっても絶対に正当化できるものではありませんが、その根本的背景には朝鮮が南北二つに分断されているという事情があります。自民党政府は、一九六五年の日韓条約で、一方の韓国だけを唯一の合法政府だとし、朝鮮民主主義人民共和国とは国としての関係を持たないという対韓一辺倒政策をとってきたのであります。政府のこのような朝鮮政策では、朝鮮の平和的統一という問題の根本的解決は絶対に不可能であると思うが、政府の見解を求めます。  政府は、一昨日発表の制裁措置の中で、ソウル・オリンピックの安全対策のために万全の措置をとるとも述べています。我が党は、オリンピックを分断国家の一方の側で開催するのは好ましくないと主張してまいりました。今回のテロ事件は、オリンピックのソウル開催への反発をも一つの口実として引き起こされたものでありますが、我が党は、これまでIOC、国際オリンピック委員会などが続けてきた南北の分散開催への努力を今後とも続けるべきだと考えますが、総理の見解を求めます。  テロ根絶の問題について言えば、かつて中曽根康弘氏が、暴力学生集団の暴走が反射的に市民層を反対に回し、自民党の支持につながるなどと述べたように、政府自民党がテロや暴力を泳がせてきたことを改めて厳しく指摘しなければなりません。このような泳がせ政策こそテロをはびこらせる政治的背景となっていることは明らかであります。総理は、施政方針演説でテロ防止をうたっています。しかし、一九六〇年の安保条約改正反対する闘争のときも、警察当局と暴力集団が、裏では談合してやった事実も明らかにされております。かつて中曽根氏が述べたようなテロ、暴力の泳がせ政策を、総理は一体どう考えているのですか。これを引き続き継承していくのか、それともさっぱりとやめるのか、はっきりとお答えをいただきたい。  さらに、韓国の金大中氏が一九七三年八月、東京のホテル・グランドパレスから白昼公然と拉致された事件はいまだに真相が解明されておらず、両国政府政治決着なるものでうやむやにされたままであります。中央公論の昨年十一月号は、「金大中拉致はすべて私がやった」という「元KCIA部長李厚洛証言全訳」を載せています。金大中事件は、韓国の公権力が犯した犯行であるとの証言が直接の当事者によってされている以上、政府政治決着を撤回し、我が国の主権を侵害した国際的テロ事件として改めて徹底的に真相を究明すべきであると考えるが、明確な答弁を求めます。  警察による我が党の緒方国際部長宅、上田副委員長宅の電話盗聴については、総理国会再発防止を約束していたにもかかわらず、またもや町田市の党市会議員宅に電話盗聴器が仕掛けられていることが発見されました。しかもNTTは、現場の保全に同意していたにもかかわらず、盗聴器を町田暑に任意提出しています。私は、政府が本気で実効ある再発防止措置をとっているのかどうか、疑わざるを得ません。政府、とりわけ検察当局は、再発防止策及び一連の盗聴事件の厳正な捜査、処罰を行うよう、改めて強く要求します。  さらに、前公明党参議院議員田代富士男氏にかかわる収賄疑惑事件についても、この事件を徹底的に究明することを政府に求めるとともに、我が党が一貫して主張してきたように、政治資金規正法を直ちに改正して、企業、団体、労働組合などすべての団体献金を禁止し、献金は個人に限るなど実効ある再発防止策を講ずるよう、改めて要求するものであります。(拍手)  総理が述べた衆議院の定数是正は、今国会の緊急課題であります。格差を少なくとも一対二未満に抑え、二人区を解消する抜本是正を行うよう、強く主張するものであります。  自民党は、逆に国家機密法の国会再提出をねらっています。国民の目、耳、口をふさぎ、戦時体制の復活をねらうこのような策動は即刻中止すべきであります。あわせて、日米科学技術協定に安保条項を持ち込もうとするアメリカ要求は拒否すべきであります。  以上、各項について、責任ある答弁を求めます。  私は、世界日本があらゆる面で歴史的転機に立っている今日、日本は今こそ諸悪の根源となっている日米軍事同盟を断ち切り、西側の一員としてではなく世界の一員として、核兵器全廃と軍縮を堂々と主張し、真に世界に貢献する道を胸を張って進むべきであるということを重ねて強調し、日本共産党はその先頭に立つという決意を表明して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
  13. 竹下登

    ○内閣総理大臣(竹下登君) 質問が、整理いたしてみますとちょうど四十問でございます。基本考え方を異にする点がございますが、一つ一つお答えをいたします。  まず、太平洋戦争の性格についてでございます。  太平洋戦争に限らず、およそ戦争というものはあってはならないものであります。特に、それが国民に対して大きな被害を与えて、周辺諸国等へ大きな迷惑をかけていればいるほど、そんな戦争は繰り返してはならないということであります。したがって、御案内のように、さき臨時国会で、回避されるべきものだと答えたのは、こういう気持ちを率直に述べたことであります。侵略戦争であったかどうかの問題は、後世の史家これを評価すべき問題である、このように考えております。  それから、次の問題でございますが、厳しい国際的批判を受けたことは事実であります。したがって、我が国といたしましては、そういう事実を踏まえて、二度と起こさないよう世界の平和と安定のために貢献していくという基本的な考え方であります。  核兵器廃絶問題につきましては、私どもは核の究極的な廃絶という目標に向かって、現実の厳しい国際情勢の中で、現実的に一歩一歩近づいていくべきだという考え方であります。  それから、次の問題が首脳会談の問題でございます。  日米首脳会談においてINFのグローバル全廃を実現することになるこのINF条約の署名に関して、これは私も再三申し上げておりますように、レーガン大統領に対して改めて敬意を表明をいたしました。そうして、今後とも私どもはこれにとどまることなく、現実的な問題として、戦略核の問題でありますとか地域紛争の問題でありますとか、そういうものに展開していくことを望んでおります。  それから、自民党の活動方針と非核都市宣言という御質問がございましたが、私どもは非核三原則を堅持して今日来ておるわけであります。そこで、究極的な廃絶のためには実効的な具体的な措置が着実にとられなければならない、実効性を伴わない単なる宣言というものは、言ってみれば現実的ではない、こういうことではないか、このように考えております。  それから、横須賀核空母母港の強化の中止の問題でございます。  政府としては、ミッドウェーを含む米第七艦隊の我が国周辺におけるプレゼンスの維持強化は、我が国自身、そして極東の平和と安全に資するものと認識をいたしております。  イージス艦、OTH、三宅島、逗子、こういう問題でございます。  イージス艦は、経空脅威の質的変化に対応する上で必要であるし、OTHレーダーにつきましては、情報収集能力を強化していく、そうして艦載機着陸訓練場の建設、米軍家族住宅の建設は、日米安保体制の堅持を防衛の基本方針とする我が国としては必要である、このように考えます。  それから、米軍経費負担の問題でございますが、まず申し上げることは、私ども、集団的自衛権の行使ではあり得ないということを申し上げておきます。  それから、次が世界への貢献の問題についてでございますが、基本的価値観を共有する西側先進諸国との緊密な協調のたまものではないか、今日の繁栄というものは。そこで、その主要な担い手である我が国としましては、今後とも西側の一員として世界全体の平和と繁栄に積極的に貢献をしていかなければならぬ、こういうことであります。  それから、米国に軍事費削減要求せよということでございました。  米国の防衛努力はグローバルな平和と安全の維持に役立っておる、このように理解しておりますから、削減要求する考え方はございません。  世界経済への貢献の問題につきましては、やはり恵まれた国際環境のもとに国民の不断の努力というものが今日あったというふうに私は考えております。したがって、これからは我が国として、その活力を世界全体の発展のために寄与しなければならぬと思っております。  防衛費の削減問題でございます。  これはたびたび申し上げますが、各政策との調和をとったぎりぎりの調和点、このように理解していただければ結構でございます。  国民経済の問題でございます。  民生の安定、福祉の向上を目的として、いわゆる開発途上国の援助はやっていくわけでございますから、あくまでも戦略的なものであるなどという考えは間違いであります。御指摘になりましたアフリカの食糧危機に対しましても、我が政府対応をしてきております。  次が貿易赤字の問題でございます。  この問題については、絶えずいわゆるアメリカの競争力、努力を要請する、こういう立場をとっております。  それから、日本市場閉鎖性でございますが、自由貿易体制のもとに今日まで我が国はその面において、それがあったからこそ我が国が今日の繁栄をもたらしたという点は確かにございます。したがって、今後世界のために市場開放の問題等についてもアクションプログラム等とか具体的な姿でこれに対応していく考えであります。  内需拡大の問題については、一般論として経済成長の成果が賃金等に適正にはね返る、これは理屈としてあり得ますが、賃金問題はすべて労使の交渉の問題でございます。  次が、前川レポートを撤回せよ、こういうことでございます。  経済構造調整推進要綱、これを一昨年の五月に決定いたしまして、これは世界的にも評価されております。着実にそれらの施策を実行していくべきものである。これを撤回する考えはございません。  十二品目問題につきましては、これはガットの精神を守り、国内農業への影響、国際的な経済関係に十分配慮して、きちんとして対応するわけでございます。  それから、新型間接税、これを撤回しろということでございますが、この法案が出ておるわけでもございませんので、国会から撤回するわけにもまいりませんけれども、これはいつも申し上げますように、国民各界各層の御意見を十分に聞いて、納得の得られる結論を得るべく努力しよう、こういうことであります。  それから、選挙についての御発言がございました。  四年間という与えられた任期というものは、それこそ大事な大事なものであるということを申し上げておきます。     〔副議長退席、議長着席〕  税制改革協議会でございますが、自民党総裁として言え、こういうことでございましたけれども、やはり行政府国会に対するこの場所は質疑応答の立場になりますので、この協議会はやはり政党間の話し合いで決められたものでありますので、その仲間外れに――失礼、仲間外れにという言葉は取り消します。その協議に参加されなかったということにつきましては、今行政府立場から申し述べる立場にはないと言わざるを得ません。  それから、不公平税制是正、これは当然のことでございます。  それから、国保の国庫負担率の引き上げの問題につきましては、御指摘のような考えはありません。  それから、生活保護費の削減問題でございます。減少化傾向を勘案して、真に生活に困窮する方々に必要な保護をしてまいろうという考えでございます。  それから、地価高騰の抑制、これはもう、いわば需給面、金融面、種々の要因が複合しておりますが、たびたび申し上げておりますように、監視区域の積極的な指定でございますとか、あるいは金融指導でございますとか、国会においても委員会から決議をちょうだいしております。それらを総合的に、その環境の整備にこたえて対応していこうと考えております。  それから、固定資産税の評価がえの中止問題でございますが、評価の均衡と負担の公平が図られるものでありまして、昭和六十三年度において評価額の見直しを行わないこととすることは、評価の不均衡と負担の不公平を生じることとなって適当ではないと考えているところであります。  相続税の問題は、やはり抜本的な改革の資産に関する大きな分野を占める税制でございますから、当然抜本改正において議論されるであろうと期待しております。  それから、国鉄の分割・民営化、これは私は、中曽根内閣で御協力をいただいて仕上げた大きな成果であったというふうに評価をしておるところでございます。  整備新幹線の問題は、これは八月までに検討を行って結論を出そうということに相なっております。  それから、産業構造の転換等によりますところの雇用問題、これらは大変重要な問題であると思っております。  それから、特別奨学金制度の問題につきましても、主たる家計支持者が失業した場合には、随時申請を受理するよう配慮してあります。  災害児童、遺児に対する育英制度の問題も、喧騒の中でございましたけれども私なりに聞く耳を立てておりましたが、特別な配慮を今日実施しておるということであります。  それから、朝鮮半島政策についてでございますが、テロ行為によるものであるとの確信、これは考え方が同じであったというふうに思っております。第一義的に朝鮮半島問題は、当事者同士の直接対話というものが好ましいとかねてから申しております。  ソウル・オリンピック、これはIOCの仲介によりましてこれまで四回にわたり南北スポーツ会談が行われましたが、北朝鮮はIOCの最終提案をまだ受諾せず、我が国といたしましては、政治的体制や理念的差異を超して、世界のすべての国家の参加のもとに成功裏に開催されることを心から期待をしておるところであります。  そうして、テロ・ゲリラ事件の防圧でございます。これにつきましては、今日までも防圧、検挙に努めているところでありまして、今指摘があった極左暴力集団を泳がせるなどということは断じてこれはありません。  盗聴事件の問題につきましては、関係捜査当局において捜査中であります。  そうして、政治資金規正法の改正は、たびたび申し上げておりますように、事柄の性格上各党間の協議がよろしいというふうに考えております。  衆議院の定数是正、これも各党間で十分論議いただくべき問題だ、このように考えております。  国家機密法の問題でございますが、現在種々検討を行っているものと私も承知しております。この種の立法については、国民基本的人権やいわゆる知る権利などにかかわる問題もございますので、国民の十分な理解が得られることが望ましい、このように思っております。  日米の科学技術協力協定の問題は、今交渉中でございますので、交渉中の中身をここでお話しすることは差し控えさせていただきたい、このように思います。  以上で終わります。(拍手
  14. 原健三郎

    議長原健三郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  15. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御報告いたすことがあります。  議員浜西鉄雄君は、昨年十一月二十一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において昨年十二月十三日贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 議員従五位勲三等浜西鉄雄君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます     ─────────────  故議員浜西鉄雄君に対する追悼演説
  16. 原健三郎

    議長原健三郎君) この際、弔意を表するため、田中龍夫君から発言を求められております。これを許します。田中龍夫君。     〔田中龍夫君登壇〕
  17. 田中龍夫

    田中龍夫君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員浜西鉄雄君は、昨年十一月二十一日、入院先の慈恵会医科大学附属病院において逝去されました。  私は、君が病気のため入院されたと伺い、心から御回復の一日も速やかならんことを祈っておりました。しかるに、御家族の手厚い御看護のかいもなく、ついに御本復を見るに至らず、思いがけない悲報に接しましたことは、まことに痛恨きわまりないものがあります。  私は、ここに諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存ずる次第であります。(拍手)  浜西君は、大正十五年三月、山口県下関市大字宇部東町で農業を営む父貞市さん、母チサさんの十人兄弟の三男としてお生まれになりました。しかし、君は不幸にも十歳にして御尊父を亡くされ、兵役中の長兄にかわって、御母堂とともに霜の降る早朝に野菜を積んだ荷車を引いて市場まで十五キロの道を往復したり、あるいは氷の張る夜半に起きて魚をとり売り歩くなど、一家の柱となって働かれたと聞いております。  昭和十五年三月、王司尋常高等小学校を卒業されましたが、向学心旺盛な君は、働きながら学ぶ道を選ばれたのであります。昭和十八年四月、多々良航空製作所長府工場に入られた君は、労働の傍ら勉学に努め、昭和二十年三月、同製作所附属青年学校を優秀な成績で卒業されました。君は、同校卒業後、直ちに神戸製鋼所長府工場に動員され、日夜厳しい労働に従事されたのであります。後年、この体験こそが働く者の立場を貫き通した君の人間形成の基盤となったのでありましょう。  昭和二十三年同社を退職して、同年六月長府郵便局に奉職されましたが、戦後社会の混迷を目の当たりにし、働く者の苦しみを身をもって体験されてきた君は、労働者の生活を守るためには何をなすべきかを模索されていたのであります。  戦後間もなく全逓信労働組合が結成されるや、君は、組合活動に身を投じる決意をなし、全逓労働組合の地区支部結成のために奔走され、組合員の信望を得て長南特定支部長に推挙されたのであります。支部長に就任してからの君は、組合員の生活向上と組合組織の強化に寝食を忘れて尽力されました。しかしながら、労働組合の諸問題は政治の場でなければ解決できないことを痛感された君は、昭和三十三年十月日本社会党に入党し、下関地区労連副委員長、全逓中国地方本部副執行委員長として活躍の後、昭和四十八年十二月郵政省を退職し、組合専従として労働運動に専心されました。  その後、山口県労働組合評議会議長、県公労協副議長の要職につかれ、県下の労働運動に多大の貢献をされたのであります。また、昭和五十年六月には、国際郵便電信電話労連世界大会代議員として、ヨーロッパ各国を研修歴訪され、世界の労働運動を見聞し、今日の労使関係の確立に寄与されたことは、高く評価されるところであります。  戦後三十数年にわたる労働運動を通じ大きく成長された君は、その経験をもとに、真に大衆の豊かな生活を確保するために、みずから国政に参画する決意を固めるに至ったのであります。  昭和五十八年十二月、第三十七回衆議院議員総選挙に、全逓の先輩であります枝村先生の後継者として指名されるや、日本社会党公認候補として勇躍立候補し、選挙民の力強い支持を集めて、見事、初陣の栄冠を獲得されたのであります。(拍手)  本院に議席を得られてからの君は、豊富な経験と知識に基づき、常に働く者の立場に立ち、商工、建設、物価問題、災害対策等の各委員会の委員あるいは理事として、一貫した信念を持って真摯かつ熱心に審議に当たられ、その精励ぶりは、与野党の別なく同僚委員がひとしく敬服していたところであります。特に、商工、物価問題等の委員会においては、消費者や中小企業者の立場に立って活躍され、いわゆる現物まがい商法の問題では、被害者救済対策あるいは再発防止の立法化等について、政府対応策を取り上げ丹念な質疑を積み重ね、大きな役割を果たされたのであります。  また、第百一回国会では、この議場において、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案、いわゆる財確法に対する反対討論の際、この壇上から君は、日本社会党を代表し、国の財政改革について将来の展望を踏まえた政策論を展開し、厳しく政府に迫ったことは、今なお私どもの脳裏に新たな記憶として残っておるのであります。(拍手)  一方、党においては、政策審議会の総合エネルギー政策委員会事務局次長として活躍し、また、青少年局長という重要なポストを引き受けられ、次代を担う青少年層のために努力をされるとともに、党の近代化に尽くされたのであります。  かくして、浜西君は、本院議員に当選すること二回、在職四年でありましたが、その間に、国政に精励し、よくその重責を果たされた功績は、まことに大なるものがあります。(拍手)  君はまた、郷土山口県のために骨身を惜しまず尽くされました。特に、過疎問題、農林漁業経営の改善に労苦をいとわず取り組まれておられたことは忘れることができません。  君は、日ごろ頑健な体を誇りとし政治活動を続けてこられましたが、昨年十一月、連日の激務で突然病床に伏されたのであります。聞くところによりますれば、君は病床にありながらも、筆談で職務を遂行されたとのことでありますが、君は死に直面しながらも、政治に対し情熱を燃やし続けられた姿を思うときに、私は、同じ政治に携わる者として、その厳しさを改めて痛感せずにはおられなかったのであります。  君は、日本社会党の大先輩たる鈴木茂三郎先生政治家のかがみとされ、「道近しといえども行かざれば至らず」との言葉を信条として、常にみずからを律してひたむきに物事に取り組み、一たん引き受けたことは文字どおりやり遂げるという意志の強い人でありました。  一方、君は多忙の中にありながらも、一家団らんのひとときには、みずから得意のギターを奏でたり、暇を見つけては水墨画をたしなみ、あるいは陶芸に親しむなど、多彩な趣味の持ち主でもありました。また、地元の青年団活動では、楽団を組織し、運動会や敬老会などの行事には玄人はだしの演奏でその名をはせ、てっちゃんの愛称で親しまれたことは、今なお語りぐさとなっております。  浜西さん、君の気さくで思いやりのある誠実な人柄が、郷土の多くの人々の共感を呼び、党派を超えて愛され、慕われたのもけだし当然のことでありましょう。まさに、浜西君こそは真の大衆政治家であったと申すべきであります。(拍手)  よわい六十一歳、君は幾多の試練を経て、いよいよ政治家として今後の大成を期待されながら、志半ばにして忽然と去っていかれたことは、まことに痛恨やる方ないものを覚えるのであります。私は、去る十二月十三日、郷里で行われました告別式に参列いたしましたが、君をしのぶ数多くの参列者が後を絶たず、改めて君のお人柄に心を打たれたのであります。  思えば、昭和二十六年四月御結婚以来、長年にわたり厳しい労働運動、政治活動をいつも内にあって支えてこられた奥様を初め御遺族の方々の御胸中を察するときに、まことに痛恨哀惜の念ひとしお深いものがあるのであります。  今や我が国は、内外にわたり大きな転換期を迎え、多難かつ多様な世界情勢の中にありますときに、君のようなすぐれた識見と実行力ある有為の政治家浜西鉄雄君を失いましたことは、ひとり日本社会党のみならず、本院にとりましても、また国家にとりましても、まことに大きな損失と申さなければなりません。(拍手)  浜西君、御郷里の下関から眺められる玄界灘のあの雄大な大自然に抱かれて、どうか心安らかにお眠り下さい。君の御遺志は、君を敬愛する多くの人々の心に深く刻まれ、力強く受け継がれていくことでありましょう。  ここに、謹んで浜西鉄雄君の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)      ────◇─────
  18. 原健三郎

    議長原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会