○
藤井(正)
政府委員 「
不動産登記法」と題しまして、「現行規定」「
改正法律案」、さらに第三段目に「大綱」と書いて
問題点が書かれてある、このペーパーに基づきまして簡単に申し上げてまいります。
「
登記情報を永久保存する方法を検討するものとする。」という点でございますが、これは、今後
電磁的記録に変わってまいりますと永久保存ができるのではないかというお
考えかと存じます。いろいろ技術が開発されておりまして、これが光ディスクのようなものにおさめられるというふうなことになりますと、物理的にはスペースを余りとらなくて済むことになりますので、可能にならないとは言えないと思います。将来の
方向として検討させていただきたいと思います。
ただ、建物につきましてまで永久保存という必要があるかどうか。これは保存をするからにはそれなりの経費もかかるわけでございますし、その必要度に応じて
考えていいことではなかろうかと思っております。
次に、「法令により代理人となり得る者の他、
司法書士でなければ
登記代理人となれないものとする。」という点でございますが、私
どもとしましては、このように
登記代理人となれる者を
司法書士に限定をするということを定めるのは相当でないというふうに
考えております。代理は私的自治の範囲を拡大するものでございまして、これは市民的自由の一つに属するわけでございます。ですから、それを制限するというからには、それ相当の強い合理的な理由がなければならないわけでございますが、
司法書士でない
登記代理人が
登記をすることによって非常な弊害が生じているというところまでは、現在そのようには言えないのではなかろうか。
司法書士でない者が業として
登記代理を行うということは法律上禁止されていることでございまして、それを超えて一切
司法書士以外の者には代理人資格がないというふうに定めるのは、合理的な説明が困難であり、国民の理解を得られるゆえんではないと思っております。
「
登記代理権の存在は書面をもって証することを要するものとする。」というのは、現行法上、その旨の明文の規定がございます。
「
登記代理人は委任を受けた
登記事件につき、真正なることの確認を行い、その申請代理をなすものとする。」これは、委任を受けた当事者との委任契約に基づきまして、
登記代理人として当然の義務であろうと思います。
登記申請の取り下げ等をなすには特別の授権を要するものとする。これは、申請をした後に取り下げをするにはやはり権限がなければできないものであろう、特別の授権がなければ、勝手な取り下げはできないであろうと
考えます。
「
登記代理人は、
登記権利者、
登記義務者の双方から委任されて代理人となることができるものとする。」これは現在このように解釈をされておりまして、確定的な
考え方であろうと存じます。
「数人の
登記代理人があるときは、各
登記代理人が申請人を代理するものとする。」これは委任契約の
趣旨によることでございまして、特別のことがなければ各代理人が代理をすることができるものと
考えます。
「双方代理の場合には、相手方の同意を得なければ委任は消滅しない。」これは、
司法書士は
登記権利者及び
登記義務者双方から委任を受けて代理をするのが一般的であろうと存じます。そのような双方代理をいたしますのは、例えば売買契約に基づいて売り主、買い主双方から委任を受けて
登記代理をするというふうな形をとる場合が多いと存じますが、そういう場合ですと売買契約と
登記委任とは密接な関係を持って結びついているわけでございますので、そのような不可分の関係にあるということからいたしますと、委任はいつでも解除できるという民法の規定は直ちにそのまま適用するわけにはいかないのではなかろうか。売買契約そのものは存続しているにかかわらず、委任だけを解除して書類を取り戻すということは認められないのではなかろうかと存じます。しかし、真実売買契約が解除されて、
登記をする理由がなくなっているというふうな場合に、そういう場合まで相手方の同意がなければ委任は消滅しないというふうに解釈することはいかがであろうか。ちょっとそこまで言うのは行き過ぎではなかろうか。そういたしますと、全面的に「委任は消滅しない。」というふうに言い切ってしまうことには非常に問題があろうというふうに
考えます。連件事件の場合につきましても同様なことが
考えられます。
三番目の、当事者の死亡等によっては委任は消滅しないということでございますが、これは、民事訴訟法における訴訟代理人の規定がこのようになっていることに倣ったものかと存じます。これは、民事訴訟法の場合には訴訟というものが非常に長い期間を要する、代理というものが継続的な状態として長く続くという背景があることを前提にしているわけでございますが、
登記代理のようにごく短い期間でもって委任
事務が終了するという場合にまで同じような規定を設ける必要があるか、あるいはそのような規定を設ける合理性があるかということにつきましては、なお検討を要するものがあるのではなかろうかと
考えます。
次に、
登記記載
事項の見直しでございます。差し押さえ等の
登記において裁判所の事件番号を記載するということが書かれておりますが、これは、そこまでの必要があるかどうかにつきまして、御要望の向きがあるとしますともう少しそのあたりのことをよくお聞きした上で
考えてみたいと思います。
「
登記原因証書を必要添付書面とするものとする。」という点でございますが、これはかねて他の先生からたびたび御
質問を受けたところでございますが、私
どもといたしましては、絶対に必ず添付せよ、どんな場合にも添付せよということは要求できないのではないか。現行法におきましても、
登記原因証書は
登記における添付書面となっておるわけでございますが、これが存在しないときには申請書の副本でもってかえることができる、そういう建前になっているわけでございまして、実際に原因証書が存在しない場合にまで
登記に当たってそれをつくって添付書面とするということを要求するということは、実体法の規定と十分整合しないのではなかろうかと
考えております。
その次も原因証書について触れられておるところですが、三番目には、三十五条一項二号に次のただし書きを加えるという御提言がございますが、これは、現在の
登記法の四十条の規定と大体同旨ではなかろうかと
考えます。