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吉丸最高裁判所長官代理者 御
指摘のとおり、刑事裁判を適正かつ円滑に運営するためには弁護人の弁護活動に負うところが多いわけでございまして、その
意味で国選弁護人が選任される場合、その活動は大変重要なものと
考えております。したがって、国選弁護人の報酬の増額につきましては、国選弁護人の活動にふさわしい額を
確保するようその増額に努力しているところでございまして、御承知のとおり近年財政事情が非常に厳しい
状況にございますが、そのような中で財政当局の御理解も得まして、昭和五十八年を除いては毎年一般の
公務員の給与改定率よりも手厚い引き上げを実現してまいってきたところでございます。適正な国選弁護報酬の
確保につきましては、今後ともさらに努力をいたしてまいりたいと思います。
外国との比較ということでございますが、御承知のとおり国によって訴訟手続あるいは弁護人
制度等が大変異なってまいりますので、その比較はなかなか難しいところがございます。また、報酬支給の実情等につきましては私
どもも把握しかねるところも少なくないわけでございます。
そこで、法制が比較的はっきりしておりますのは西ドイツでございますので、これについて申しますと、西ドイツでは私選弁護人につきましても、その報酬が各種の裁判所ごとに何マルクから何マルクまでというふうに
法律で定められております。そして、国選弁護人の報酬は私選弁護人の報酬の最低額の四倍とする、ただし最高額の二分の一を超えることはできないというふうに定められております。この規定によりますと、例えば地裁の大法廷、これは三人の職業裁判官と二人の参審員から構成されて、比較的重要な刑事事件を処理する裁判所でございますが、この地裁大法廷の事件について選任される国選弁護人の報酬は四百マルク、邦貨に換算いたしますと約三万円となります。ただし公判が一日で終わらなかった場合には、二回以降の公判一回ごとに三百十マルク、これは二万三千円ほどでございます、この三百十マルクずつを加算するというようなことになっております。
我が国では、地裁の開廷三開廷の場合の国選弁護人報酬の基準額は五万七千円でございますが、西独の地裁大法廷で開廷三回の場合の報酬をさきの基準によって計算いたしますと約七万六千円ということになります。単純に金額だけを比較いたしますと西独の方がかなり高いように見えますが、しかし、よく知られておりますように西独では公判審理が非常に集中して行われ、例えば我が国では数開廷を要するような相当複雑な事件な
ども一日のうちに証拠調べ、弁論というようなことを集中して行いまして、一開廷で終わってしまうという例が多いという実情もございます。そのような法廷の実情等も
考えますと、単純に開廷数による計算上の報酬額の比較だけで報酬の多少を判断する、どちらが高いかどうかということを判断することも難しいのではないかというふうに思われます。
次に、米国について申しますと、米国では連邦と各州によって大変
制度が異なっております。州によっては
日本のような国選弁護人
制度ではなくて、パブリックディフェンダーと申しますか……(
安倍(基)
委員「時間が短いですから簡単でいいです」と呼ぶ)そのようなことで米国についても州等によって
制度が大変異なっておりまして、しかも米国では報酬を法廷活動あるいは法廷外活動一時間ごとに幾らというような額で計算することになっております。このように計算の単位あるいは報酬決定の
考え方が違いますので、これまた比較が難しいわけでございますが、我が国に比べまして必ずしも高いとも申せない
状況にあるように思われます。
いずれにせよ、今後とも国選弁護報酬の充実についてはさらに努力してまいりたいと
考えております。