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1988-04-15 第112回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十五日(金曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 戸沢 政方君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       赤城 宗徳君    稻葉  修君       上村千一郎君    片岡 武司君       木部 佳昭君    佐藤 一郎君       塩川正十郎君    塩崎  潤君       杉浦 正健君    武村 正義君       松野 幸泰君    宮里 松正君       稲葉 誠一君    山花 貞夫君       渡部 行雄君    山田 英介君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房審         議官      稲葉 威雄君         法務大臣官房司         法法制調査部長 清水  湛君         法務省民事局長 藤井 正雄君  委員外出席者         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     松永  光君   清水  勇君     水田  稔君 同日  辞任         補欠選任   松永  光君     上村千一郎君   水田  稔君     清水  勇君 同月十五日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     武村 正義君   加藤 紘一君     片岡 武司君   宮里 松正君     杉浦 正健君   伊藤  茂君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     加藤 紘一君   杉浦 正健君     宮里 松正君   武村 正義君     稻葉  修君   渡部 行雄君     伊藤  茂君     ───────────── 四月十四日  刑事施設法案廃案に関する請願柴田睦夫紹介)(第一三八四号)  同(中路雅弘紹介)(第一三八五号)  同外一件(江田五月紹介)(第一四五五号)  同外一件(加藤万吉紹介)(第一四五六号)  同外二件(中村巖紹介)(第一四五七号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一四八四号)  同(工藤晃紹介)(第一四八五号)  同(柴田睦夫紹介)(第一四八六号)  同(野間友一紹介)(第一四八七号)  刑事施設法案反対に関する請願瀬長亀次郎紹介)(第一三八六号)  同(野間友一紹介)(第一三八七号)  同(村上弘紹介)(第一三八八号)  同(安藤巖紹介)(第一四八八号)  同(児玉健次紹介)(第一四八九号)  同(柴田睦夫紹介)(第一四九〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一四九一号)  刑事施設法案早期成立に関する請願新井将敬紹介)(第一三八九号)  同(石川要三紹介)(第一三九〇号)  同(浜野剛紹介)(第一三九一号)  同(二田孝治紹介)(第一三九二号)  同(渡部恒三紹介)(第一三九三号)  同(天野公義紹介)(第一四五八号)  同(井上喜一紹介)(第一四五九号)  同(谷垣禎一紹介)(第一四六〇号)  同(中村正三郎紹介)(第一四六一号)  同(浜野剛紹介)(第一四六二号)  同(深谷隆司紹介)(第一四六三号)  同(若林正俊紹介)(第一四六四号)  同(阿部文男紹介)(第一四九二号)  同(岡島正之紹介)(第一四九三号)  同(北川正恭紹介)(第一四九四号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第一四九五号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四九六号)  同(福田赳夫紹介)(第一四九七号)  同(谷津義男紹介)(第一四九八号)  同(小澤潔紹介)(第一五一八号)  同(小坂善太郎紹介)(第一五一九号)  同(佐藤孝行紹介)(第一五二〇号)  同(田川誠一紹介)(第一五二一号)  同(深谷隆司紹介)(第一五二二号)  同(吹田愰君紹介)(第一五二三号)  同(宮崎茂一紹介)(第一五二四号)  同(村岡兼造君紹介)(第一五二五号)  同(森喜朗紹介)(第一五二六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月十三日  刑事施設法案廃案に関する陳情書(第一二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号)      ────◇─────
  2. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎潤君。
  3. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案につきまして、林田大臣を初め法務省方々に御質問をさせていただきたいと思います。  最近、御承知のように不動産価額の高騰、このような原因から、土地に対する国民の評価もますます高くなってきたと思うところでございます。そして、不動産登記法によるところの保護を大変期待している程度はかつてないぐらいの高まり方だと思うわけでございます。そして、御承知のように昨今はいわゆる地面師暗躍、横行して、偽造書類等土地をだまし取る、こんなような事例も非常に多くて、世間の方々、殊に財産を持っておられるところの人々大変心配されているような状況でございます。  このような国民権利保護登記法によって必要なときに、どうしてこのコンピューター導入だけの改正にとどめたのか、私はその点を伺いたいと思うのです。そして、もうかつてから言われておりますように、例えば登記原因証書とかあるいは保証書の問題とか、こういった問題を整備することによって国民権利を守っていこうじゃないか、明治三十二年の片仮名のあの法律は本当にリシャッフルしてやり直す必要がある、こんなことを言われておったのですけれども、どうしてコンピューター導入だけの改正にとどめているのか、根本的な国民権利保護の観点からの改正を近く行う気持ちがあるかどうか、この点についてまず林田法務大臣に伺いたいと思います。
  4. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 不動産に関する需要、そしてこの取引が非常に激増してまいりまして、登記所における事務が極めて繁忙をきわめてまいりました。と同時にまた、今先生指摘のように、土地をめぐるいろいろな犯罪というものもふえてまいったわけでございます。こういった事柄を抜本的に解決する方策として、かねてから研究を進めてまいりましたコンピューター化をいよいよ実行に移せる段階になりましたので、今回の法律案を提出させていただいたわけでございますが、日本司法書士会連合会の方からは、この改正の際にあわせて登記制度そのものにつきましていろいろな改正の御提案がございます。  その点につきましては私どもの方でいろいろと協議をさせていただいているわけでございますが、私どもの方から見ましてそういう改正を実施することが可能なものもございますし、また、大変難しいものもございますし、あるいは今後さらに検討を要する問題もございます。そういった点がいろいろございますので、とりあえず現在改正の俎上にのせることが可能なものにつきましては、コンピューター化に関する改正のほかにこれを加えたわけでございますけれども、なお検討を要するものにつきましては今後の課題として残したという現状でございます。
  5. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 今民事局長からお話がありましたところで、いろいろ改正意見がある、特に国民権利保護見地からの改正意見がある。残されたと言われましたけれども、これを大臣ひとつ早目にやっていただくことが非常に重要なことだと私は思うのですね。とにかく、地面師の横行だのというようなことは今ほどひどい時代はないと思うのです。そしてまた、時々司法書士人々がいろいろ犠牲を負い、苦労をされていることなんかを見ますと、どうしても早目に、登記原因証書とかあるいは保証書問題等、もう古くから言われておる問題、これはひとつ早目改正していただけませんか。そして私は、コンピューター改正だけで、今権利保護に役立つというようなお話もありましたが、それは迅速にいく点は確かにそうだろうと思います。しかし、正確とかいうようなことになると、私は、まだまだコンピューター化だけでは足りない、やはり権利保護の方がより大事ではないかと思いますが、近いうちに不動産登記法改正を期待していいかどうか、これは林田法務大臣から少し政治的な答弁をひとつ伺いたいと思います。
  6. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記が非常に重要になってきておりますることは、先生も御指摘のとおりでございます。  そこで、今回の法律改正は、昭和六十年に電子情報処理組織による登記事務処理円滑化のための措置等に関する法律という法律を通していただきまして、それに基づきまして政令で審議会を設置いたしまして、そしてもっぱら電子情報処理組織による登記事務をどういうふうに処理していったらいいかという問題について審議をいただいたわけであります。それで、その結果に基づきまして今回の法律改正を行うことになった次第でございまして、登記根本的な問題につきましてさらに改正の必要のあることはよく承知をしております。また、日司連の方からもいろいろそれにつきまして示唆の多い御意見を承っておるわけでありまして、とりあえずコンピューター化を進めてまいりまして、さらに法改正をもっと根本的な問題についてまで行っていくことに努めてまいりたい、かように存じておりまするので、よろしくお願いを申し上げます。
  7. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 私は今の大臣の御答弁で、国民権利保護のための制度改正、これはもう早急に行われる、こういうふうに期待していきたいと思うのでございます。例えば今度の改正法を見ましても、まだまだこれで本当に国民権利保護されるかどうか、心配な点がございます。大体そもそも明治三十二年の片仮名法律で、とにかく授権立法みたいなところが多くて、どのように表現されるかというところは依然として法務省令なんかに任されているような点が多いのですね。だから、戦後の新憲法時代法律とは少し体制も違っておると私は思うのです。  例えばコンピューターの記録として登記事項がそのまま移行するのだけれども、かつての歴史はどのように残るのか。これはもう登記権利者大変心配を持つと思います。取引をする者は、今までは登記簿に残されました歴史で果たしてこれが正常なる権利であるかどうかというようなことまで判断しておりましたが、今度は過去の登記歴史、これあたりをどのようにコンピューターで残されていくのか。コンピューターは現況だけの証明書しか出なくて、歴史はまた閉鎖登記簿をもう一つ要求しなければいかぬ。二重手間になるのではないかというような心配を持ったりするものですから、この点について民事局長の御意見を承っておきたいと思います。
  8. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 現在の簿冊登記簿からコンピューター登記簿移行する範囲につきましては法務省令で定めることになっておりますが、この種の登記簿移行につきましては、現在の法制におきましても、登記用紙を改める際には現に効力を有する事項を移記する、こういう建前になっております。それと同様な考え方を今回もとらせていただきたいと思っております。  ただ、過去の履歴のうち土地表題部における地目、地積などにつきましては過去の履歴移行するということが考え方としては考えられております。移行されない過去の履歴事項につきましては、これは簿冊のまま残りまして、閉鎖登記簿として保存をいたします。今回の改正におきましては、閉鎖した登記簿保存期間につきましても改正を加えて、この期間を長期化することにいたしておりまして、その点の手当ても考えているところでございます。
  9. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 私ども心配いたしますのは、コンピューター化でかえって手数がふえ、あるいは謄本手数料が余計にかかったりすることがないように、今のお話、ちょっと不明確でしたけれども、その点をどうなっているかというふうに聞いたわけでございます。コンピューター化したために金が余計かかるようになった、こんなことはありませんか。
  10. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 コンピューター登記簿には現に効力を有する事項のみを移記いたしますので、過去の履歴について知りたい方の場合には、コンピューター登記簿から出されました登記事項証明書のほかに閉鎖登記簿謄本をとっていただく必要がございます。その限りにおきましては御負担がふえるということになるわけでございます。  ただ、移行に当たりましてこのように現に効力を有する事項のみに原則的に限定をさせていただきますのは、移行作業が極めて膨大でございまして、登記簿のすべての事項移行いたしますと、それに要する経費も労力も、そしてまた期間も膨大なものとなりまして、迅速なコンピューター化への進行が阻害されることにもなりますし、また、移行経費の面で国民全体の御負担がふえるということにもなりますので、その辺のことを兼ね合わせて考えさせていただいたところでございます。
  11. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 今のお話では少し手数料等がふえそうな御答弁でしたが、私はやはり国民が一番関心を持つ登記簿謄本等は、負担コンピューター化でふえるというようなことはまずいと思うのですね。先般登録税も五〇%課税標準価額を上げるというようなことで、これが登記登録のマイナスの方向に働きはしないか。やはり登記は喜んでさして、そして国民権利保護していくというようなことを考えますと、先般も、地価対策として大都市等についての負担の増加はわかりますけれども登記登録税まで上がっていったことを考えれば、これは負担が大きくなりはしませんか。
  12. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 先生の御指摘もごもっともでございますが、現行制度のもとにおきましても、登記簿を改製する際には、現に効力を有する事項だけを移記するということになっているわけでございます。これは最大多数の最大幸福という考え方でございまして、最も問題になるのは現在の権利関係である。あと、それはもちろん先生指摘のように、全部を移記すればそれはそれなりに役に立つことではありますけれども、それがむだになるケースもかなりあるわけでございます。それはだれの負担に帰するかというと、結局は、このケースの場合でございますと、登記特別会計負担する、手数料を持っている人たち負担に帰する、結局国民負担に帰するということになるわけでございまして、大乗的見地からそういうふうにさせていただきたいというふうに思っております。それは現行制度にもマッチする。ただし、先ほど局長からも申し上げましたように、そういう非常に利用が多いというような事項につきましては、これはできるだけコンピューターにも移すということで考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  13. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 この点はまた別途にいろいろ御検討を煩わすことにして、そこで、せっかくコンピューター化されるわけで、この際、私は権利保護の核心である登記原因証書、このあたりをうまく整備して、コンピューターの中にうまく取り込むというようなことができなかったのかどうか。今の登記原因証書については、いろいろの考え方がある。人によってはこれよりも申請書副本でいいのだというようなことを言われることがありますけれども、最近の権利証偽造状態等を考えたら、やはり登記原因証書というのは非常に重要なものだと思うのですね。コンピューター化したらこれがどういうふうなことになるのか、私はこの点を伺いたいし、コンピューター化の際にこの登記原因証書あるいは申請書副本、こういった印鑑の証明等に絡むところの国民権利保護不動産登記法におけるところの制度を全面的に見直すべきだったと思うのですけれども、この点についてどう考えておられるのか、ひとつ伺いたいと思います。
  14. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記原因証書は、これを用いて登記済み証をつくるその素材となるという機能を果たしておるわけでございますが、今回の改正の過程で、コンピューターを用いて登記した場合に登記済み証をどういう形でつくるかということはいろいろな議論があり、また御意見もございましたが、当面は、従来の登記済み証作成のやり方、これを維持していくという考え方でございます。したがいまして、登記添付書面といたしましての登記原因証書添付を必要とするという仕組みも、従来の仕組みをさしあたっては維持をしていくということでございます。
  15. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 私は、維持するのはわかるのですけれども、せっかく法律を直す、しかもコンピューター化していく際に、登記原因証書までうまくコンピューターの中にインプットするようなことができないかどうか。そのためには登記原因証書という制度根本まで見直さなければならないかもしれませんけれども、そういったことが考えられないかどうか。私は、これは非常に大事な登記原因に関する権利保護のための制度だと思いますので、そういうことが考えられなかったかどうか。そして、今後はどういうふうに考えていかれるのか。今後の根本改正は、この登記原因証書をどう持っていくか。申請書副本だけで足りるというような話がありますが、それでも足りないという話もある。こんな問題をどういうふうに考えておられるか。最近権利証偽造が大変多いと聞くものですから、御意見を承りたい。
  16. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 登記原因証書位置づけにつきましては、先生案内のように、民法の基本的な構造が書面主義によるわけではなくて意思主義によっているということから、必ず書面を要求できるかどうかという問題があるわけでございます。それとともに、登記済み証作成手段として、いわば現行法では原因証書を要求しているわけでございますが、原因証書登記済み証というものが一体化しているということの方が望ましいということは、これもまた事実であろうと思います。  それとともに、コンピューターの中へ原因証書種類等をインプットするということは、先ほど申し上げたようなそういう原因証書位置づけというもの自体を考えないと、そしてまた、原因証書がないような登記種類についてどうするかというような問題、そしてその原因証書の記載をすることがどの程度国民のために役に立つのか、そしてその原因証書真実性と申しますか、それを担保する手段としては一体何があるのかというような点をもっと詰めて検討しませんと、今の段階で踏み切ることはなかなか難しいということでございまして、そういう点を含めまして、今後とも先生の御指摘も踏まえて検討はしてみたいと思いますが、そういう非常に難しい問題があるということでございます。
  17. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 最近のコンピューターの発達の状況から見れば、私はインプットということは相当考えられることだと思いますが、これは早く根本的な改正の中で、この権利証偽造最大原因となるこの面の研究をぜひともお願いしたいと思うのでございます。  その次、同じように問題は例の保証書でございます。御承知のように、登記済み証をなくした、火事で焼けた、その際に、その登記所登記している二人の方の保証書を持っていって、この登記済み証をもう一遍つくり直すというようなことでやっておることによるところの地面師暗躍、これはもう御承知のとおりでございますが、コンピューター化とこの保証書関係はどのように考えられておるか、ちょっと伺いたいと思います。
  18. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記済み証を失ったような人でも登記ができるようにするためには、保証書制度それ自体は、これは維持しなければならないかと思いますが、現在の保証書制度について見直しを要する点があることもまた事実であろうと思います。特に、その登記所において登記をしている二人の成年者保証人とすることを要するというのは、かつて登記した不動産を持っている人というのは極めて資力のある、信用のある人であるという前提のもとに成り立っていたと思いますが、これだけ不動産所有が一般化してくるという現在の時点で、そういう図式は今必ずしも成り立ち得ないのではないか。  と同時にまた、地域社会も崩壊してまいりまして、保証人を得ること自体がなかなか難しいという現状にもなってきております。そこで、保証人を得るのが極めて易しいというような方向に持っていくわけにもまいりませんけれども、これが大変難しいということであってもならないわけでございまして、そのあたりのところは今後なお、どういうふうに見直していったらいいのかということについていろいろ検討を要するものがあろうかと思います。現在の保証書制度の運用の実態などを調査する必要もございますし、これを利用している国民あるいは司法書士方々など、そういう専門家方々の御意見も広くお聞きをして検討してまいる必要があるのじゃないかと思っております。
  19. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 この保証書の問題は古くから、大変不完全な危ない制度だと言われておりますね。そして、考えてみたら相続相続で来たような方が持っておる土地について、登記済み証なんというのはあるはずかない。あってもどこかでなくなって、昔なくしたに違いないというようなことでございますから、この保証書みたいな形での再交付ということに頼っていく事例が多いのですが、ここに大変間違いが発生して、ここに私は新聞を持ってきましたが、地面師暗躍は大抵この保証書の中で暗躍するように私は思うのですね。これは登記原因証書以上にまた考えなければならないし、もう少し確実な人、そしてまた、登記所のその登記について法律的な知識あるいはいろいろその財産についての知識のあるような人、これの証明とかいうようなことを加えて、今は登記しておればだれでもいいというようなことでは、やはり国民権利保護としては極めて不十分なんじゃないでしょうかね。
  20. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 保証人となり得る者についてのお話かと伺ったわけでございますが、確かに登記制度をよく承知をしている人であることも必要であろうと思います。と同時に、その登記義務者の人違いでないことについて保証をするわけでございますから、保証するだけの責任のある、そして信用のある人であることもまた必要なのではないかというふうに思っております。
  21. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 私は、この問題はコンピューター化の中でも、本当は今度の改正の中でまず改正していただきたい点だと思ったのですけれども、将来に残されておりますから、これの不十分さはもう人口に膾炙しているのですね。そして、地面師暗躍するのはまさしくここにある。これはどうしても早目検討していただいて、間違いがないような仕組みにしていただきたい、こういうふうに思うのです。  その次は、登記代理の問題について御質問をしたいと思うのです。  登記本人がすればいいのでしょうが、本人不動産登記法みたいな難しい、やれ公示力とかやれ公信力とかいうような知識もなければ、どのような法的効果が生ずるかというようなことも知らない素人でございますから、代理人がやっていく、恐らく司法書士方々がやっていかれるのでしょうけれども、しかし、中にはまた地面師みたいな方々が介入して登記代理をしている事例が多いと思うのです。そのためにいろいろ土地をだまし取られるといったような社会問題が生じていること、御案内のとおりなんです。  そこで、私は、登記代理人になる人の身分、資格を限定して、登記制度についての知識経験があるような人に限定することは考えられないか。恐らくもうすべての方々はこの登記代理を使っておると思うのですね。司法書士ならまずまず間違いはないのでしょうけれども、必ずしもそうでないところから見て、最近の事例はそれが非常に多い。この点についての民事局長の御意見を承りたいと思う。
  22. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 資格を有しない一般の人でも登記について代理人となれるというのは、これは不動産登記法が発足しました当初から一貫してとられている方策でございます。ただ、最近いろいろ御指摘のような犯罪事象も起こってまいりまして、そういったことから登記真正確保のために資格を制限すべきであるという御議論が起こっていることも承知をしているわけでございますけれども、資格者でなければ代理人になれないというふうに一切一般の方を締め出してしまうということは、国民土地あるいは不動産に対する関心が非常に高まっている、また自由な活動を求めている、そういう国民方々の意思を制約をすることにもなりますし、また、当然それは経済的負担を伴うことでもございますので、そういった方面からの反発も予想されないわけではございません。  現在行われておりますいろいろな資格者の制度をずっと横断的に見てみました場合に、訴訟手続においてすら簡易裁判所においては弁護士でない者も代理ができるということになっているわけでございまして、それとの対比において考えましても、またほかのいろいろな業種との比較で見ましても、今ここで登記代理についての資格をはっきり限定してしまうということにはいささか問題があるのではなかろうかというふうに思っております。また同時に、登記代理につきましてはそういう方策をとるといたしますと、例えば弁護士でございますとかあるいは税理士でございますとか、ほかの業種との間の業務に関する紛争をより一層巻き起こすことにもなりかねないわけでございます。私ども仄聞しておるところによりますと、弁護士会と司法書士会との間でこの種の問題がございまして、話し合いが進められているというふうに聞いておりますが、そういった過程を通じて弾力的に、かつ建設的な解決が図られるのが最も望ましいのではないかというふうに思っている次第でございます。  ただ、これは現在の時点においてそういうふうに私ども考えているわけでございますが、社会がいろいろ変化してもまいりますし、将来非常に長期的に見た場合に、司法書士制度位置づけというものあるいは国民の意識というものがどういうふうに変わっていくかということは必ずしも予測しがたいものでございますので、将来そういった点につきまして検討する時期があるいは出てくるのではないかという気もいたしております。
  23. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 将来検討する時期が来るというお話がありましたので、私はそれに期待したいと思います。  ここに、ことしの二月二十五日「偽印鑑証明で詐欺被害 登記官に過失なし 司法書士二八〇〇万払え」こんな記事が出ておるのですね。登記官というのはたくさんの事件で、形式的審査権しかないということで、実質審査権がないから、だまし取られても、にせ印鑑証明で詐欺に遭っても登記官には責任なしということを考えれば、その前の実質的な審査をやっていくのは代理人であり、司法書士だと思うのですね。私は、一方、責任をいろいろやかましく負わすことも必要だと思うのですけれども、そういった意味で、形式的審査権しかない登記官を助けていくためには代理人が大事だ。私は、司法書士だけをやれという意味じゃありません。資格のないような地面師みたいなのが入っていくことを考えたら、そこの代理人の資格をある程度制限していくことも可能ではないか。  例えば、いろいろ業界との、他の士法との関係とか言われましたが、特許法の第十三条を見ますと「代理人の改任等」があって、「特許庁長官又は審判長は、手続をする者がその手続をするのに適当でないと認めるときは、代理人により手続をすべきことを命ずることができる。」本人がやってもだめなときには代理人で手続してこい。それから二項に「特許庁長官又は審判長は、手続をする者の代理人がその手続をするのに適当でないと認めるときは、その改任を命ずることができる。」代理人の改任まで命ずることができる。そして三項に「特許庁長官又は審判長は、前二項の場合において、弁理士を代理人とすべきことを命ずることができる。」というように、現行制度現行法の中に、このような代理人の制限的な、同時にまた改任までできるような規定を入れている。私は、こういったことを考えることの方が権利保護の観点から見て法の体系として親切だ、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  24. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 特許庁、弁理士の関係は、要するに非常に技術的なものでありますから、特許庁の審査上そういうものがずさんなと申しますか、適当でない事務処理をされると困るということだろうと思います。むしろ国民権利の保全ということについては国民がみずから守るというのが本来の筋でございまして、そういう意味では、先ほどの先生の挙げられた例のように、専門家代理人にしておけばそこのところが安心できるというように国民がみんな考えるようになって、そして国民がみんな変な、変なと言いますとおかしゅうございますが、適当でない代理人は選任しないということに一般的になれば、これは先生のおっしゃるようなこともできるかもしれない、する余地はあるだろうと思います。  しかし、現在の状況では、登記というものはそんなに複雑怪奇なものであって本来いいものかどうか。つまり、専門家でなければ登記できないというような仕組みにしておくことがいいのかどうかという国民的なコンセンサスはまだないと思います。つまり、むしろ先ほど先生がおっしゃったように、安価にやりたいという、国民としては負担をなるべく軽減したいという欲求もあるわけでございまして、そういう意味では、自分で、あるいは知っている人に頼んでやってもらいたいという欲求もあるわけでございます。それを一定の資格者に固定してしまうということについては、いまだ国民のコンセンサスは得られないのではないか。もしそういう国民のコンセンサスが得られるような状況になれば、私どもとしても前向きに検討してまいりたいというのが先ほど局長が申し上げた趣旨だということでございます。
  25. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 私は、国民のコンセンサスとは不動産登記法によってもう少し権利を守ってもらいたい、そして登記原因証書の例あるいは保証書の例を言いましたが、非常に法律的には複雑で、税法を扱う税理士さんとどっらが複雑で、権利関係をどう考えたらいいのか、これはやはり専門的な知識が要るものだと思うのですね。これは税法なら自分で申告できるような仕組みを考えているといったって、なかなか皆さん方で自分の申告でできる人はおられないのじゃないですか。私は長らく税法の勉強をやらしていただいておりましたけれども、やはり特に大きな所得になり、あるいは企業のような複雑な投資関係になると、税理士みたいな人の手を経なければ到底自分の権利は守られない、こういうことだと思うのですね。そこで、素人ができるというのが理想だと言われたのだが、私はそれは大変認識が違うと思うのです。  先般、皆さん方の御努力で公嘱法人をつくっていただいて、司法書士法を直していただいて公嘱法人ができ、公共嘱託登記の受託促進の見地からあの法律改正が行われた。しかし、その改正の結果を見ても、さっぱり受託促進が進んでおらぬ。実際を見ると、やはり依然として地方団体の方々や公団公社の方々登記所へ行ったり来たり、専門家でないだけに非能率にやっておる。こんなことは私は司法書士に、せっかく皆さん方が公嘱法人しかない、公嘱法人を使ってやっていく、こういうふうなことを考えるべきだと思ったのですがね。今の地方団体の方々あるいは公団公社の方々不動産登記法に対する知識経験から見て、やはり専門家の手を経なければならぬ。それはもう皆さん方が公嘱法人でそうしようじゃないかと言われてきたのだ。そういう観点から見てどうですか。
  26. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 公嘱法人がどの程度活用されているか、私ども必ずしもつまびらかにしておりませんけれども、そういう団体が利用できるという仕組みまではつくりましたものの、地方公共団体に対してぜひこれを使ってやりなさいというところまで申し上げることはできないわけでございまして、公嘱法人の方で積極的にみずからの地位をPRし、仕事の範囲を広げていかれるように御努力を願っていただきたいと思うわけでございます。  登記所のサイドからいたしますと、司法書士という専門家登記を扱っていただけることが、これは行政を円滑に進める上では最も望ましい事態でございます。何といっても非常に詳しい専門家でございますから、手続を進める上では大変結構なことでございます。したがってまた、登記制度を利用している方々のもう恐らく九割以上は司法書士に依頼をして登記を行っているというのが現実であろうと思います。でございますから、司法書士方々現状のもとにおいてさらにみずからの職域を広げるように御努力を願ったらよろしいんじゃないかと思っておりますけれども、これを法律でもって強制をするということは、現在の情勢のもとではちょっと国民的合意は得られない、そういうものではないのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  27. 塩崎委員(塩崎潤)

    塩崎委員 最後にお願いだけしておきます。私は、法律で強制するとまではまだ言っていない。しかし、せっかく公嘱法人の法律をつくってからその結果を見ると、だんだん受託した数が減ってきておる。六十年の十三万五千が六十一年十二万、そして公嘱法人が受けたのが半分以下というようなことを考えれば、ここでこれしかないというふうに言われたことを私は思い出すのですが、やはり法務省が、こういう公嘱法人ができた、したがって登記の能率化そして権利の確実性のためにうんとこれを使ってくれ、利用してくれというようなキャンペーンはひとつやっていただきたい、そして地方団体や公団公社も公嘱法人を利用するところの予算の計上ぐらいなことは皆さん方の方でひとついろいろと御指導を賜って、せっかくつくった公嘱法人がまたやり直さなければならぬということでは、大変当初の改正意図と違いますから、私はこの点だけひとつお願いして、私の時間がなくなりましたので、質問を終わらせていただきたいと思います。
  28. 戸沢委員長(戸沢政方)

  29. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 まず最初に大臣にお伺いいたしますが、法律というのは国民のためにあるのか、それとも裁判官や弁護士や法律学者その他いわゆる法律専門家等のためにあるのか、その辺について大臣のお答えをお願いします。
  30. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 もう先生よく御承知のように、法律はいかにしてできたかと申しますると、一般の国民がいわゆる市民としての権利義務を主張するようになりまして、王権に対する反抗から法律ができてきたわけでございまして、やはり法律というものは国民権利義務を明確にし、また権利を守るためにあるものである、こういうことであろうと存じます。
  31. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 国民のためにあるとはっきり答えてもらいたいのですがね。どうもいろいろお飾りがついて、国民から見たらどっちのためにあるのかまだちょっとわからないのですが、はっきり言ってください。
  32. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 国民のためにあるものであるということでございます。
  33. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、日本は民主主義国家になって、つまり民主憲法が施行されて既に約四十一年も経過しているわけでありますが、法文を見ますと、いまだにその大半が文語体で片仮名文字と専門用語で成文されたままになっているわけであります。今、この条文を義務教育を修了した人ではとても読めない。それどころか、大学を卒業されても法科を専攻した人でないとなかなかわからない。こういうような状態で、果たして国民のためにあると言えるだろうか。私は、一定の専門家のためにあるような気がしてなりません。このような難解な法典体制というものをひとつ民主主義国家に合うように、国民みんなが読めばわかるような条文に直すお考えはないかどうか、ここをひとつお伺いします。
  34. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 仰せのように、民法とか刑法を初めといたしまして、主要な法律がなお片仮名が非常に多いわけでございます。法制審議会におきまして、いろいろその改正につきまして議論を重ねておるわけでありまして、例えば民法におきまする親族法のようなものは平仮名に直ってきておるわけでありまして、今後さらに近代的な法制に直していくために努力をしていかなければならないと存じます。  実は前から法務委員会におきまして継続審議になっておりまする刑事施設法という法案があるわけでございまするが、これは監獄法と申しまして明治四十一年の片仮名法律でございまして、ぜひ平仮名に直していきたい、かようにも存じておるわけでございまして、御支援のほどをよろしくお願い申し上げたいと存じます。
  35. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 私の今言わんとすることは、そういう一つの法律だけでなしに、法律全般について言っているわけですから、誤解のないようにお願いしたいと思います。  そこで、憲法第十四条で「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とうたってあるように、法律がすべての国民に平等にかかわりを持つ以上、せめても義務教育を受けた者には理解できるように、当用漢字と平仮名による口語体の条文に直すべきだと思いますが、大臣、これはいかがでしょうか。そうでないと、法律自身が国民に知的差別を持ち込んでおることになっていると思うわけでございます。大臣の御所見をお伺いいたします。
  36. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 日本の国民も次第に教育が進んでまいっておりまするので、必ずしも口語体という、でございますとか、でありますとか、そういうことにまでする必要はどうかわかりませんけれども法制審議会におきまして十分審議をしていただきまして、そういう方向へ進めてまいりたいと存じます。
  37. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これはそういう方向にすることがいいか悪いかわからないと言われましたけれども、あなたは今、国民のために法律があるんだと言われた。だとすれば、国民がわかるようにするという責任があるでしょう、法務大臣は。そうするには、今現実に使っている我々の口語体というもので書き直す必要があるでしょう。文語体は今小学校で教えておりませんよ。そして非常に難しい。例えば「滌除」というような言葉は今ありませんよ。そういうのが条文にどんどんと出てくる。こういうもので国民のための法律だなどと言えないと私は思うのです。これは、ある法律専門家が六法全書を独占する一つの役割を果たしているんじゃなかろうか。そういうものでなしに、本当に法律全体を口語文にする、その作業に取り組む御決意があるかどうか、これをまず確認したいと思うのです。  もしそういう御決意があるとすれば、大体いつころからそういう問題に取り組むのか。これは一つの審議機関なり委員会なりを通してはっきりとしたそういう方向づけをする必要があると思うのですが、その点いかがでしょうか。
  38. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 文語体の法文を口語体に改めるということの必要性は私ども十分感じているところでございます。ただ、このような基本法令につきましては法制審議会で以前から審議をされているところでございますが、必要な改正につきまして次々に付議されて、それに応じて一部改正が次々に積み重ねられてきておる現状でございまして、全体的な見直しというところに容易に手が回りかねているというところでございます。決してその必要性を私どもが軽視しているわけではないということを御理解いただきたいと思います。
  39. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 私は、今民事局長がお答えになったのは、それは本当に詭弁だろうと思うのですよ。それじゃ、なぜ今度の改正法改正した部分についてこれを口語体でやらないのですか。それは法律の一つの体裁上困るというだけの話でしょう。私たちは、法律は体裁で見るのじゃないですよ。中身で判断するのですよ。だとすれば、みんながわかるように一条文だけでもその気があれば変えていったらいいじゃないですか。全然そういうことをしないで、今なお文語体で片仮名改正しているということは一体どういうことなんですか。
  40. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 法律の一部改正におきましては、文語体の法律の場合にはその改正部分も従前の文体に合わせて改正法案がつくられるというのが内閣の従前からのやり方でございまして、それに私どもも準拠したというふうに申し上げるほかはないわけでございます。
  41. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 だから私は、従前どおりというようなことで、すべて従前どおり従前どおりでいったらどこで改革という問題と取り組むことができるのかということ、ここを心配しているのですよ。  そこで次に移りますが、現代は情報化社会と言われておりますし、高速交通時代とも言われ、また、科学技術の進歩発展というのはまさに想像に絶するものがあるわけでございます。今や地球的規模で世界全体が変わりつつあることは、私もあなたも同じように肌で感じておると思います。特に日本が先進国たらんとするには何が一番重要かと申しますと、今から二十年あるいは三十年後に少なくとも世界じゅうの国々からうらやましがられるようなすばらしい平和国家で、繁栄と安心の社会を築かなければならないという責任感を感じることだと思うわけでございます。恐らく将来は次世代コンピューター、こういうものが開発され、機械の方が人間より正確な判断力を持つ時代がやってくるかもしれません。現にバイオテクノロジーの進歩は、人間の倫理観、社会の道徳観すら変えつつあるわけであります。このような激動期と申しましょうか、激しい変化の時代にあっては、あたふたと変化を追い続けていくような法律改正ではなくて、二十年、三十年先を見越して二十一世紀をリードするような法体系を今から準備することが必要ではないかと思うのであります。  法律はその見方によっていろいろな定義の仕方があるようでございますが、ある辞典を見てみますと、法律はすなわら社会制度だと言っておるものもありますし、また、法律は強制力を伴った社会的規範で、社会秩序の維持を目的とするが、宗教や道徳とは異なると言っておるものもあります。そこで、私は、法律は社会秩序を組み上げている設計図のようなものであると思うわけでございます。申すまでもなく、設計図は全体としてのまとまりと調和と合理性が要求されなければなりません。同様に、法律は、憲法を基盤として法律全体がまとまりを持たなければならないし、また、各法律間に調和がとれていなければなりません。時代を映し出すというか、時代的背景を持った合理性がなければならないと思います。  そればかりではありません。日本が独立国家といえども国際社会の一員である限り、また国際的調和が要請されることは当然であります。そこに条約と国内法との関連の問題や国際組織のあり方など、そのほか文化、経済、歴史の違いや人種、宗教、習慣、社会体制等の違いをどう調和させながら進んでいくかという大問題があるのであります。しかも生きている社会、動き変化する社会を相手に取り組まなければならないわけであります。したがって、これらの問題と取り組み、法律全体を見直し、改革を図るための何らかの機関を設置して二十一世紀に備えるべきだと思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  42. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 御指摘のとおりであると存じます。
  43. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 それなら、そのお言葉を私は信じまして、これから法律全体の見直しに取り組むというふうに受け取って期待しておきます。  そこで、次にいよいよ本題に入るわけですが、今度提出されました不動産登記法及び商業発記法の一部を改正する法律案は、先ほど私が申し上げましたような観点からは全く考慮されていない。ただ現行登記法コンピューターシステムに組み込むだけに必要最小限度の改正でしかないようでありますが、今後実際にコンピューター事務の進展に伴って新しいソフトウエア等の開発等もあり得るだろうし、また、新しい事態に突き当たることもあるだろうと思います。そういう場合には、その都度改正をしていくようなやり方で取り組まれるのか、それともある一定の時期を置いて抜本的、根本的に手直しをするというやり方で改正を進めょうとされておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  44. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 法律改正いたします場合に、非常に遠大な長期的見通しを持って全面的、抜本的な改正を図るというのも一つのやり方でございますが、また、当面必要な部分について改正の手を入れまして、その運用の実績を見た上でさらに検討を加えるというやり方もあろうかと存じます。今回の登記コンピューター化に伴います改正に当たっては民事行政審議会、これは法務大臣の諮問機関でございますが、そこの答申をいただいた上で今回の法律案作成したわけでございますけれども、その答申におきまして、当面コンピューター化に必要な部分の改正に関する要綱が提示されまして、それに基づいて改正を行っていただこうとしているわけでございます。  何分にも登記コンピューター化というのは大変な事業でございまして、これの運用に入ってみますとどのような問題が出てまいりますか、予測のしがたいところがございます。そのような点を見ました上で、五年なり十年なりのうちに、果たしてどのような手直しが必要であるのかということを改めて考えさせていただきたいと思っております。
  45. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 五年なり十年経過してから考えるのではなくて、もう始めたらその日から、どれが一番合理性があるか、どうすれば一番国民のためになるかを考えていただいて、そして直さなければならないところは直す。先ほど大臣から言われたように、全般的改革に取り組むという一つのお考えがあるわけですから、そこでその全般的改革というものも一方でどうすればよいか、いわゆる登記に関する部門を担当する専門官の方々は、抜本的にはどういうのが一番いいのかという作業を進めながら、その改革の時期としては、それは五年後になるかわかりませんけれども、なるべく早く全体と歩調を合わせながら考えるのが筋だと思いますが、どうでしょうか。
  46. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 先生指摘のように、私どもとしても長期的視野に立って制度全般を見直すことの必要性は十分感じております。ただその場合に、優先順位としてどれから手をつけるべきかという問題もございますし、それから、局長が申し上げましたように応急どうしても手をつけなければならないという部分もあるわけでございまして、そういうものを勘案して今後作業をしてまいりたいと思います。  そして、不動産登記法について申し上げれば、先生の御指摘のように古い法律でございまして、商業登記法昭和三十八年に全面改正をしたのに取り残されていることにもなっております。長い目で見ますと、その間に平仄が合わないという点もございますので、いずれはこれは見直しをしてまいらなければならないし、そのための作業というものは長期的に今後とも検討してまいりたいと思っております。
  47. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 次に、これは私から言うまでもなく御存じでしょうが、登記の目的は、物権の公示により第三者に不測の損害を与えることなく迅速確実なる取引を確保し、かつ第三者に対抗できる安定した秩序の維持を図ることだろうと思います。したがって、登記の真正確保は欠くことのできない必要条件だと思うわけでございます。そこで、当事者の意思表示の明確になっている原因証書本人の署名、実印による押印等を義務づけた真正なる登記原因証書を申請するときは必ず添付させる義務づけをすべきではないだろうかと思いますが、これについてはどういうお考えでございましょうか。
  48. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記原因証書は当該物権変動の原因となっております法律行為などの成立を証する書面でございますから、契約が原因で物権変動が起こった場合にはその契約書などがこれに当たるということになろうかと思います。ところが、現在の民法では物権変動は必ず書面をつくらなければならないという主義をとっておりませんで、意思主義と言われておる建前をとっておるわけでございますから、必ず書面をつくれということを要求するわけにはまいりません。また、物権変動の種類によりましては初めからそういう原因証書となるべきものが存在しないような場合もあるわけでございます。したがって、常に原因証書添付せよというふうな仕組みにすることはできかねるのではないかと思っております。もし先生お話しになりました証書というものが登記をする意思をあらわす証書であるという御趣旨であるといたしますと、現行法のもとでは当事者の共同申請主義という建前のもとで申請書においてその登記の意思があらわされているわけでございますので、重ねて原因証書を要求する根拠は何であろうかという疑問にぶち当たらざるを得ないところでございまして、現在のところ私どもはそのように考えております。
  49. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 この登記原因証書というのは、法律行為を立証する唯一の文書だと私は思うのですよ。確かに日本の民法では意思主義で口頭で約束したことはそれが立証されれば有効である、あるいは裁判所に行っても訴えれば口頭でもいいと条文には書かれているのですよ。しかし、裁判所に行って私はこの人を訴えたいのですがよろしくお願いします、こういうふうに言って裁判所は受け付けてくれますか。受け付けてくれないのですよ。そういうただ形式的な意思主義では何にもならないのです。それが一番過ちを犯す原因になっていく。  今何が一番偽造登記が多いか、不正登記が多いかというと、それは申請書副本でなされるところに問題が一番大きいと思うのですよ。それは皆さん数字を持っているでしょう。今までの不正登記あるいは偽造等の書類について、どういう申請の仕方が一番そういう事件が多かったか、これは数字でおつかみになっておりませんか。
  50. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 事故のありました登記における申請のあり方がどうであったか、添付書類がどうであったかということにつきましては、私ども数字は把握いたしておりません。ちょっとそれは実際問題として不可能ではなかろうかと思います。
  51. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 それでは、私はこの事実を登記簿謄本によってお見せします。これは皆さんわかっていると思いますが、大臣、そこにあるようにこういう偽造登記済み証というのが出ておるわけですね。そういうことがなぜなされるのか。この実態はいろいろな形であるはずです。それは一例にすぎません。今度コンピューターに移されると、いつも問題になるいわゆるハッカーというようなものにそのコンピューターの中身が不正利用されたり、いろいろな問題が出てくる可能性すらあると思うのですが、そういう偽造防止についてもこの原因証書登記官は形式審査をするけれども司法書士はある種の信頼というものがお客さんとの間にでき上がらなければならないし、また、登記所との間にもそういうものがつくり出されなければならないわけですよ。そういう際に、一形式文書にすぎなくとも、そこに人間の意思、魂というものが入っているものと、全然そういうものを考慮しない申請書副本でやるのとは全然性格が違ってくると私は思うのです。そういう点で、意思主義によるから文書の義務づけはできない、原因証書添付の義務づけはできない、こうおっしゃるけれども、そういうことは、何も法律条文にはっきりしなくても、その原因の真正なることを登記官がはっきりと感じ取るためにも必要じゃないか。そういうのは行政指導の中でもできないはずはないわけで、そういうことはいかがでしょうか。
  52. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 仮に書面作成されたといたしましても、その原本が紛失するということはあり得るわけであります。そういう場合に何を理由にしてそういう新しい原因証書作成させなければならないのかということは、これは極めて難しい論理構成をしなければいけないのではないか。もしそれが真実を担保しようということであるならば、それは申請書偽造と申しますか、そういうものを虚偽の理由、原因で申請しようとする以上は、その申請書にはちゃんと申請人の意思を表示する印鑑、実印なり、あるいは委任状あるいは委任状に押した印鑑の証明書というものがついているわけでございます。それと同じことをさらに原因証書としてつくるということにほかならないわけでございまして、そのことによってどのくらいの意味があるのかというのは問題がある。もちろん、その場合に本人の意思をきちんと確かめてそして処理をするということが担保されるような仕組みになっておれば、それはそれでよろしいわけでありますが、そういう仕組みを果たして制度上つくれるかどうかということは、先生指摘のような登記の形式審査主義、これは登記の迅速な処理を目標にしてつくっている原理原則でございますから、そういうものとの絡みもあってこれはなかなか難しい問題ではないかと考えております。
  53. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 いや、私は決して難しくないと思うのですよ。なくしたらつくればいいじゃないですか。原因証書というのは登記所を通して登記官の登記済みの判こを押さないうちは私文書ですから、私文書ならいつでもできるのですよ。公文書じゃないのですよ。だから私文書なら、なければまた当事者が話し合ってなくしたからもう一度つくってくれ、そうやって持ってくれば何も難しい話ではないじゃないですか。
  54. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 当事者の一方が死亡している場合もあるわけでございまして、そして、何がゆえにそういうことをわざわざやるかということがそもそも問題になるわけであります。ですから、それは登記意思の真正を担保するためというのであれば、登記申請書のことで足りるわけでありまして、原因証書という形をとらなければならないということの理屈がわからないと申し上げておるわけです。
  55. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 一方が死亡した場合は、相続人との間にやれるわけですよ。そんな、片一方が死んだのに一方的な登記申請はできやしないでしょう。その後継者を選定して、生きている者との間に双方代理人となって申請しなければできないじゃないですか。
  56. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 原因証書というのはその死者との契約でございまして、相続人との間の契約ではないわけでございます。そういう意味では、契約書というのは死者との間の契約書でなければ本来原因証書としてはおかしいわけであります。そういうことも、これは問題点の一例にすぎませんが、いろいろ難しい問題がございまして、先生のおっしゃるような形で登記の真正を担保する、何かの形で登記の真正性を担保したいということは私どもも思いを同じくしておるわけでございますけれども、どういう方法をとればいいのかということについていろいろ考えておる。原因証書という形での処理というのは、現行の法制度のもとでも、あるいは国民生活に与えるいろいろな影響からいっても、なかなかとりにくいのではないかという判断を現在のところしているということでございます。
  57. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 確かに、今契約をした、きのう契約をした、そして相手が交通事故で死んだ、こういうことはあり得ることですよ。しかし、それはそんなにあるケースでもない。でも、そういう場合でも、申請をするときにはその原因証書添付して、申請人が正当の申請人であるという証拠を添付して申請するわけですから、いずれにしても原因証書添付することはできるわけです。その事故のときに一緒に白働車に乗って燃えてしまってなくなった、そうするとその原因を今度はだれが立証できるのかということにもなるわけですよね。  だから、私が言っているのは、先ほど言ったように何もそれを条文上きちっと義務づけをしなくとも、少なくとも指導上において原因証書添付を指導していく、指導の強化を図る、こういうふうにしていけばこの偽造登記なり不正登記というものも非常に少なくなってくるのではなかろうか、こういうことであるわけです。
  58. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記の申請に添付する書類というのは法律で決まっているわけでございまして、その書類の範囲内で登記官が審査をする、これが形式的審査権でございます。したがって、行政指導でもってその添付すべき書面の範囲について左右をするということは、この登記の形式的審査というものに必ずしもなじまないのではないかと考えます。
  59. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 大変おかしなことを聞きますね。本来、原因証書添付書類の一要件なんですよ。これははっきりしているのです。それを、添付するのは形式審査になじまないとはどういうわけでしょうか。
  60. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 確かに必要的添付書面になっておりまして、ただその場合に、申請書副本で代替ができるというふうになっているわけでございます。そして私どもとしては、先生指摘のように、本来、原因証書があるにもかかわらず申請書副本の形でやるというようなことは、これはまさしく乱用であって、許すべきことではないと考えております。したがいまして、そういうものがある限りにおいては、これを出してほしいと言うことは当然であろうと思いますけれども、それがなくなった、あるいは存在しないというようなことを言われた場合には、あえてそれでもつくれというようなことは言いにくいということでございます。
  61. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 素直に私の話を聞いてもらいたいのですよ。原則添付なんですよ。原則はこの原因証書添付することになっているのです。だから、今、原因証書がなくなった場合は申請書副本でやるんだとなっているのでしょう。  それでは、原因証書はありませんという、本当になくしたのかなくさないのか、これはだれが判断するのですか。
  62. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 これは、判断と申しましても本人が言うことを信用するほかないわけでございまして、そういう意味では、私どもとしては、九〇%以上は司法書士先生方が関与しておられるわけでございますから、少なくともそういうケースについてはその申請書副本でやるのではなくて、原因証書がある限りにおいてはそういうものが提出されるように当事者を説得していただいているものだと信じております。
  63. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これ以上議論しても、どうも片一方も言葉に出した以上何かメンツがあるようです。しかし、これはよく考えていただきたい。面倒くさいと、あってもないことにしてしまうのですよ、一般的に先を急ぐ不動産とかそういう方々取引というのは。そういう社会慣行を皆さんは余り知らないのだ、役所の中にばかりいるから。やはり現実をもっと見て、現実対応の姿勢をもっと柔軟にとってもらいたい、このことをお願いしておきます。  そこで、それでは司法書士というのはどんなことから始めるのか、どんなことをやっているのか。特にここで私は不動産登記関係についてだけ申し上げますから、そのことをまず前置きしておきます。  司法書士は、事件の受託をすると、まず第一に登記簿の閲覧によって物件を正確に調査、把握しなければならないわけです。そして、表題部から甲区の所有関係、乙区の抵当権やその他の諸権利の設定があるかどうかなど、一切にわたって調査をして仕事に取りかかっていくわけです。ここで重要なことは、第一に登記権利者と義務者を確認することでございます。第二番目には、原因証書が当事者によってつくられているものであるかどうか、これを確認する必要があります。そして第三には、申請書添付する権利証あるいは保証書に間違いはないかどうか、委任状は本人のものかどうか、また、印鑑証明書の真偽の問題についても細かな注意をしなければなりません。その他、戸籍の謄抄本から住民票に至るまでいろいろと添付書類については専門的な調査を続けるわけでございます。こういう綿密な調査をしなければ、すぐに登記申請というものができないというくらいはおわかりだろうと思いますが、どうでしょうか。
  64. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 そのように承知いたしております。
  65. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、この登記申請代理人の資格及び権限等について、私は社会的にも法的にも非常に重要だと思うわけでございます。ですから、先ほど塩崎委員からもお話がありましたように、この登記申請代理人についての資格及び権限等について法定すべきであると思うわけでございますが、その点はいかがでしょうか。
  66. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 現行法でも、司法書士登記、供託の手続について代理権を有するということは規定をされておるわけでございます。問題は司法書士以外の者、資格を有しない者は代理人となり得るのか、なり得ないのかという問題であろうかと思いますが、この点につきましては、現在の国民の意識等から、あるいはまたほかのいろいろな士制度との比較からいたしまして、そのような代理権の専属的帰属ということを認めるのは、これは適当ではない、現在の情勢ではそういう制度はとり得ないのではなかろうかというふうに考えております。
  67. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これは、私たちは厳密に、少しも緩みなく決めろと言っておるわけではないのです。つまり、本人が申請するならばこれは当たり前だから構いませんけれども本人登記代理人を通して申請する際には、司法書士という専門職がある限りそこを通させるというのは、一つは常識でもあろうと私は思うわけですよ。しかも、例えば民事訴訟法で訴訟代理人の資格について、第七十九条「法令ニ依リテ裁判上ノ行為ヲ為スコトヲ得ル代理人ノ外弁護士ニ非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但シ簡易裁判所ニ於テハ許可ヲ得テ弁護士ニ非サル者ヲ訴訟代理人ト為スコトヲ得」こういうふうに明定されているわけですね。先ほど簡易裁判所のことを出しましたが、それだって裁判所の許可を得るのですね。そうでなければ勝手には出せないのですよ。  ところが、この登記代理人というのは許可を得て出すわけじゃないのですね。司法書士はちゃんと資格を得ているけれども、そのほかの代理人は、登記所の許可を得ておまえは代理してもいいというようなことではないわけですよ。ここに法的な取り扱いの不平等性があるのじゃないでしょうか。今の社会になじまないという、その考え方が私はわからないのです。そうした方が逆になじんで、そして事務手続も早くなり、いろいろな面で正確な登記事務が進行するというふうに判断できるわけですが、いかがでしょう。
  68. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記は、本人自身がみずからすることができるのが昔からの建前でございます。本人ができる事柄につきましては、代理人を立てて、その代理人でもってすることもできる。その代理人本人と同程度のものであればよろしいので、必ずしも資格を有する者でなくてもそれはそれなりに合理性を有するというのがこれまでの建前であろうかと思います。もっとも、これを業としてそのような代理業を行うということは、これは罰則をもって禁止されている。これはどの業種においても同じでございますが、業として行うのではない限りはそれができるというのが建前であろうかと思います。  訴訟手続につきましては、ただいま先生のお挙げになりました条文があるわけでございますが、これと、戦前においては裁判所における非訟事件の一種とされておりました登記手続と必ずしも同じに考えることはできないのじゃないか、そこは合理的な違いがあっておかしくはないのではなかろうか、登記というのはそれだけ国民の身近な、親しい手続であるというふうに言ってよろしいのではなかろうかと思っております。
  69. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 どうも大変難しく考え過ぎているように私は思うのですがね。それじゃ何もわざわざ国家試験をして司法書士などという制度を設ける必要はないじゃないですか。だれでもできる、そしてどんなことでも申請できるとなれば、登記の正確さとか、あるいは大体なぜ司法書士代理人を業としてさせているのか。業としなければだれがやってもいい、金を取らなければ何をやってもいい、こういうことでしょう。それじゃ、金を取らないで何十件も何百件も処理して、後から本当にありがとうございましたと言って莫大な礼金をもらう、これは業じゃないですよね。人間社会でお世話になった者に、あるいはお菓子を持っていく人もあるだろうし、いや、いろいろ自動車に乗ったり大変だったでしょうから車代だとして出す人もいるでしょうし、そういうふうになったら業と業でないとはどこで区別するのですか。
  70. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 ただいまお挙げになられましたような例ですと、登記代理に関する仕事を、同種の事柄を反復継続して行っているわけでございまして、これはやはり業として見ざるを得ないのではなかろうかというふうに考えます。そのように業として司法書士業務を行うということになりますと、これは不特定多数の国民に対する利害関係が非常に深うございますから、このような資格を有する者につきましては、一定の試験制度をもって資格を付与して、その資格を有する者が業として行い得るというふうに定めるのが国の制度のあり方として妥当なところでございますが、特定の信頼関係のある人について、ある特定の事件についてだけ代理をするということまで禁止する、その合理性はちょっと得られないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  71. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 あなたは実態を知らないのですよ。実際商売していると、そんな非常に良心的な代理人なんていう司法書士の資格も持たない人はそういないです。有名な人が代理人をやっているのですよ。これはどこでも大体そうだろうと思うのです。言葉が悪くなるから言いませんが、この二百とか三百とかいろいろ言われておる、そういう人たちが免許を持たないで代理権を行使しているという実態をあなたは知らないからそういうことが言えるのです。だから、その辺をよくこれから精査して、そして登記申請の実態というものを把握していただきたい。  そこで、今度の改正法案の提案理由の説明の中で、「第五に、不動産登記については、現行不動産登記法上の諸制度の改善、合理化を図るため、担保権に関する登記の抹消手続の要件を緩和するほか、」云々とありますが、「諸制度の改善」とはどの部分を指しているのか、そこを御説明願いたいと思います。改善、合理化、こういう問題について具体的に御説明ください。
  72. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 この改善の最も代表的な事柄が、今御指摘になりました休眠登記の抹消の要件の緩和ということでございます。そのほか、現在二十年というふうになっております登記用紙保存期間の延長をするというふうなこともこれに含まれようかと思いますし、実際上使われなくなっております不動産登記法二十一条一項の後段あるいは二十一条の二の規定などを整理をするというようなことも、制度の合理化の一つであるというふうに考えております。
  73. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 今おっしゃられたように、この不動産登記法の第百四十二条の第三項を指してお答えになられたと思います、休眠登記についてのお話は。しかし、これはまことに不思議な簡易抹消だと私は思っておるわけです。つまりこの根本は、登記簿の乙区に設定された諸権利が何十年も不行使のまま放置され、取引その他、権利の移動に大変な不便を来し、障害となっているわけであります。このいわゆる休眠登記を速やかに処理して、登記と実体の合致を図り、登記そのものの目的、趣旨に沿わしめることが大事だと思うわけであります。  そこでお尋ねしますが、休眠登記というのは抵当権だけでないことは申すまでもありません。後でちょっとこれを見ていただきたいのですが、これは買い戻し特約付の登記簿謄本です。「特約明治参壱年壱〇月弐五日限り買戻特約あり」となっているのですよ。明治三十一年ですからね。それが今いろいろな所有者の変遷を経て、そして農地法によってさらに現在の人が取得して、そこでこれを分筆して売ろうとしたら、とてもこんな特約付の物件を買うわけにはいかないとなった。これは何とかならないでしょうかと言って私のところに来たのです。  これをいろいろ精査してみますと、相手は既に死んでおるわけですよ、明治の人ですから。そうして今度は、その死んでおる人について役場に行ってその除籍の謄本をとって調べましたら、その除籍簿に何にも書いてないのです。その後どうなったか、この戸籍のつながりがここでぷっつりと切れているのですよ。これをこの次どういうふうにやっていったらいいのか、専門家の方、ひとつ見てください。
  74. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 十年たちますと、買い戻し特約は民法上は効力がなくなりますから、一つはその権利がなくなっているということが考えられます。もう一つは、買い戻し特約を実行しているということがあり得ないわけではないだろうと思いますが、いずれにしましても私どもが……(渡部(行)委員「これについて答えてください」と呼ぶ)直接この登記を職権で抹消するということはできませんので、百四十二条の一項によりまして裁判所の除権判決をもらって消していただくということになるのではないかと思います。
  75. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 全く概念的な答弁に終始していますが、私は具体的にこれを出しているのですから。これは十年で無効になっている、あるいは特約が既に実行済みである、この二つしか考えられない。しかし、ここにちゃんとこれは特約は実行されていないのは、その甲区を見ただけでわかるでしょう。それじゃどうしてあなたならばこれを抹消するのですか。除権判決をいただくには、その除権判決をする前に公示送達なりしなくちゃならぬでしょう。公示送達だって、相手がどこにいるか特定できないでどうして公示送達申請ができますか。公示送達だって調査不十分だと裁判所から突っ返されるのですよ。どうします。これを教えてください、削除すること。
  76. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 具体的なこの事案については後ほど三課の方で調査させて答えさせたいと思いますが、一般論として申し上げますと、公示催告は行方不明の場合にやるわけでございまして、公告で処理する。その場合に確かに調査不十分だと、裁判所としてはもう少し調べていらっしゃいということになると思いますが、先生指摘のように戸籍謄本に何も出てこない、そしてもちろん戸籍の付票にも何も手がかりがないということになりますと、裁判所としてもそれは行方不明だということで当然処理してくれるだろうというふうに思います。
  77. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 簡単にそう言うけれども、実際問題、裁判所に行ったらそんな簡単に受け付けてくれないですよ。もっと何とか調査できないか。それじゃ役場に行ってこの証明書をくれと言ったって、役場はくれない。昔は出したのです。今はくれない。そして、そればかりでありません。今、役場で戸籍謄本の閲覧は許さないのです。古い戸籍法では、十条でちゃんと閲覧ができたのです。それが今は閲覧ができなくなっているのです。だんだんと我々の調査範囲というものが狭められて、どうしてやっていけるでしょうか。その辺についてひとつ御見解をお願いします。
  78. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 不動産登記法の百四十二条では、従来からこのような形でもって登記義務者行方不明の場合の抹消の手当てが既になされていたわけでございまして、それを使ってやっていただければ大体できるのが普通でございますけれども、特に抵当権の古いものについてこれを抹消する簡易な手続が欲しいという御要望が非常に強いものでございますから、より簡易な手続を設けることとしたわけでございます。これにはまらないものについては従来の型のやり方でもって、百四十二条一項の公示催告手続でもってやっていただくほかはないわけでございますし、これ自体は、今の御指摘の案件を拝見した限りではそう難しいことではないのではないかというふうに私どもは考えております。
  79. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そう難しくないなら今度持ってきてやっていただきたいと思うのですが、実際こういうのは大変難しいのです。ないからないでは済まされないですよ。そうすると、いろいろな手づるをたどってその部落に行って聞いたり、そして今度別なところから、お嫁さんの来たところからみんな調査していって、そして何とか確認をしていくのです。そして初めてこれが事件になっていくのです。そんな単純なものじゃないのです。そこはひとつ御認識をしていただきたい。  そこで、ここで抵当権のことについて申し上げますと、この休眠抵当権の債務の弁済期というのはどうして確認しますか。
  80. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 古い登記でございますと登記に記載をされておりますが、最近のものは記載事項から外しておりますので、登記そのものには記載されておりません。そのような場合には、債権証書等の書類でもって証明をしていただくということになります。
  81. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 債権者も既に死んで、これは休眠だから非常に長い年月そうなっているわけで、債権者も死んでそして書類も散逸し滅失してしまった、こういう場合にはどうして弁済期を確認できますか。
  82. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 大変ぶっきらぼうな御返事になりまして申しわけございませんけれども、資料がなければちょっと認定しようがないというふうに今申し上げざるを得ないわけでございますが、通常は何らかの方法で認定が可能ではないか、登記官が認定するに足るだけのものが存在するのが普通じゃなかろうかと思うのですが、いかがなものでございましょうか。
  83. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これは全く実務を知らないからそういうふうになるのです。実際これはできないですよ。昔の登記は弁済期がちゃんと載っているから何とかわかりますけれども、今の登記ではとてもこれは何十年たったかなんてわからない。しかも、この改正法の中で二十年という期限をつけたのは、これはどういう思想によってですか。
  84. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 これは結局権利の上に眠っているということから見て、抹消される抵当権者の利益を、意思を無視して登記を消しても差し支えないであろうというような時間として考えたわけでございまして、一般の債権でございますと十年で時効になるわけでございます。その二倍程度を確保しておけばそういう期間として世人の納得を得られるのではないか、こういうようなかなりある意味では目の子の計算ということになろうかと思います。
  85. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 目の子の計算では全く法律的な議論の対象にはならないわけです。二十年というのは、何かこれは時効を考えておるのか、それともそのほかの何らかの法律、そういうものを考えて出されたのかと私は思ったわけです。債権は十年で時効になるということをおっしゃられました。その十年の時効を確認するには、どうしても弁済期というものを登記事項の中に入れなければ確認ができないのです。だから、私は登記事項の中に弁済期をきちっと書かせること、これを要件にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  86. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 三十九年に、これは先生案内のようにそれまで書いていたものをなくしたわけでございます。その際には、やはり登記事件の急増ということを踏まえてできるだけ登記所負担を軽減するという趣旨もあっただろうと思いますし、その弁済期の持っている意味といいますか、そういうふうに権利がなくなってもなおかつ抹消登記をしないというような事態を考えて制度をつくるわけではございませんで、抵当権がなくなれば、当然権利を守ろうとすればその抹消登記をするだろうということが常態でございますから、そういう意味で最大、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、多くの利便と申しますか、そういうコストの低減ということを踏まえてある一部分の不便は忍ぶということにしたわけであります。その制度のそういうあり方が現在の時点になってどういうものであったかということについては、今後なお検討してまいりたいというふうに思っております。
  87. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、債務の履行、不履行というのは何で確認されるのか。
  88. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記が残っております限りは、まだ履行がされていないから登記が残っていると一応考えなければならないかと思います。債務の履行がございますと、民法の規定に従いまして受取証書を交付するということが債権者の義務でもございますし、これは社会的にも一般に行われていることでございますから、そういうものがございますれば債務の履行は証明できるということに相なります。
  89. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これを見てください。今まで残っておった抵当権ですが、これは幸い昔の農工銀行に借りたお金ですから、今その農工銀行の後継銀行である第一勧業銀行が債権消滅証書というものを発行してこの抹消に手をかしておられるのです。これを見てください。本来ならば、今まで眠っておった抵当権だと弁済されていないはずでしょう。それが弁済されているのですよ。だから、弁済されないから残っているなどという判断は全く事実と逆なんです。
  90. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 確かに先生おっしゃるように、具体的なケースにおいてはそういうケースもあり得るとは思いますけれども、一般論として考えてまいりますと、その債務の弁済をしたということは債務者の方で、つまり抵当を設定した者の方で立証しなければならないというのが原則でございまして、その原則論からいって逆の推定を働かすということはちょっと難しいのではないかというふうに思っております。
  91. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そういう形式論だけでやられると困るのです、こういう仕事は。それでは私言いますけれども、今度は常識で考えてください。この登記簿謄本は抵当権設定の受け付けが大正十二年十月三十日なんです。その債権額は金四百円です。そして弁済期は大正十四年三月二十五日、利息は一割二分、こういうふうになって共同担保目録がいっぱいついているのです。当時の四百円というと大変なお金ですよ。そういう金を貸した人が弁済されないまま放値しておきますか、どうですか。  弁済したからこそこの抵当権設定者はもうこれでいいものだと思い込んで抹消登記をしなかったから、ここに休眠抵当権として残っているのですよ。そういう実態をもっと知ってください。ただ文書だけで、これは返さないから残っているなどと考えられたのではとんでもない話です。これは後から見てもらいたいと思います。しかも、これは利息も一割二分ですから、私は当時の高利質しじゃないかと思うのです。そういう人ほどこういう事件が多いのです。そして中には、抹消してない、相手ももう弁済受取書をなくしただろうということで、二回も三回も取る者もいるのです。本当に債権について誠実ならば、なぜ抵当権の実行をしないのですか。抵当権の実行をしないでこういう長い年月放置してあるというのは、明らかにこれは弁済されているものと解釈すべきでしょう。その辺はどうでしょうか。
  92. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 改めて先生に申し上げるまでもございませんが、登記の申請は当番者双方共同で申請をするか、あるいは判決によって単独申請をするかというのが建前でございまして、百四十二条で決めておりますのは、これについて特殊な場合の特殊な簡易な手続を定めておるものでございます。したがって、非常に古い抵当権につきまして、これはあるいは債権が消滅をしたが放置されているという場合もあろうかと思いますが、そうでない場合もあるであろう。それを登記所の方で、登記官がただ年月が経過したということのみの一事でもってこれは弁済があったものとして抵当権者の意思にお構いなく抵当権設定者のみの単独申請で抹消するという制度をつくるのは、制度のあり方としてはいささか突出し過ぎているものではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  93. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、仮に債務不履行であったとしましても、二十年以上経過していることが明白である場合、その支払い義務が法律上あるでしょうか。もしあるとすれば、眠れる権利保護する条文はどこにあるでしょうか。この辺についてお答え願いたいと思います。
  94. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 債権の消滅時効は一般には十年でございますが、これについては中断ということもございますし、したがって二十年経過したからといって当然に消滅しているというふうにこれまた決めつけるわけにもまいらないのではないかと思っております。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
  95. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 時効中断がしたということになれば、これは差し押さえとか何らかの法律上の措置がとれるわけでしょう。その法律上の中断というのは何をもって判断していくわけですか。
  96. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 私が申し上げましたのは、中断があったとかなかったとかということを申し上げているわけではございませんで、単に期間が経過したという一事でもって簡易な手続を直ちに適用するということはちょっと行き過ぎではなかろうかということでございます。
  97. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 果たして二十年も経過したものを直ちにやるということは行き過ぎになるのか。だから、そこで時効というのが法律化されているのではないでしょうか。なぜ時効制度があるのかということです。それは結局ここにもあるように「時効は、一定の事実状態が永続する場合に、それが真実の権利関係と一致するか否かを問わず、そのまま権利関係として認めようとする制度であり、権利者としての事実状態を根拠として真実の権利者とみなす場合(取得時効)と、権利不行使の事実状態を根拠として権利の消滅を認める場合(消滅時効)」これを時効と言っているのではないでしょうか。
  98. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 おっしゃるとおりでございます。ただ、登記法というのは言うまでもなく手続法でございまして、その実体をどういうふうにして登記に反映するかという手続を書いているわけです。その場合には、登記権利者だけではなくて登記義務者保護ということも図らなければならないわけでございまして、そういう実態として時効で消滅しているということが明らかであるならぼ、それは相手方との共同申請あるいは判決というものによって証明されるわけでありますが、それならばそれで、それを素直に表明していいわけでございますけれども、手続としては相手方の意思あるいは相手方の防御の機会というものをきちんと保障しておかなければならないという要請があるわけでございます。
  99. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 何か皆さんは書類が残っていたり証拠が歴然とある場合のことばかりを考えて答えておられるようですが、そういうものばかりじゃないですよ。債権者あるいは当事者双方が死亡したり、書類が散逸して何らの手がかりもなくなったときに、不動産の所有者がどうして相手を特定できるかということですよ。いわゆる抵当権設定者もしくはその後継者がこういう状態の中でどうして義務者を特定できるか。できないからそのまま放置して休眠登記になってきているわけです。その経過をよく知らなくてはだめですよ。どうしてこれを特定しますか、その特定の方法をお聞かせください。
  100. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 私ども具体的な事案を逐一想定することができませんので、一般論としてお答えするほかはないわけですが、登記面上は抵当権者ができているわけでございますから、その者が相手方になる。しかし、先生おっしゃるように、長年月たちますと死亡とか、あるいは法人でございますと解散とか合併とか、そういうようなことでいろいろ書類が散逸するということはあり得べきことだろうというふうには思いますが、それを一般論としてどうすればいいというふうに申し上げるのは非常に難しいわけでございます。
  101. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、その後に供託をすれば一方的に抹消できると書いてあるわけですが、それじゃその供託はだれにすればいいのか、そういう場合ですよ。相手がとてもわからない、幾ら探してもわからない、あるいは相続人をずっとたどっていくと、中には行方不明があり、あるいは外国に行って、ブラジルのようなところは大使館を通したってわからないのがいっぱいあるのですから、そういう場合にどこに供託をしたらいいのか。もちろん供託は法務局にやるわけですけれども、相手をどうして特定するのかということです。
  102. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 抵当権者自身の死亡が確認されていれば、その抵当権者の相続人ということで記載して出せば法務局は受け付けると思います。そして、その生死さえ明らかでないということになれば、抵当権者自身を表示して供託していただくほかはない。そして、それは法務局としては受け付けるはずでございます。
  103. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そうすると、ここを確認しておきますが、もし相手がどうしてもなかなか特定できない場合は、登記簿上の抵当権者を、死んでいようが行方不明になっていようが構わずにその人を相手に供託すればよい、こういうことですか。
  104. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 そのとおりでございます。
  105. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 それでは、そのわからない債権者がどうして供託金の還付請求をするのでしょうか。これはだれが還付請求をやるのですか。
  106. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 この制度は、行方不明にはなっているけれども、しかし実体上は存在するかもしれないということを念頭に置いた制度でございますから、その存在する被供託者がその本人であるということを立証すれば供託金の還付を受けることができるということになるわけでございます。
  107. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 あなた、ちょっと頭を整理して聞いてください。実在しているものに何もこんな苦労をしている必要はないですよ。実在していないから問題なんですよ。しかも明治時代の抵当権を抹消するのに、生きているなんてどこで言われますか。相手が特定できないで困っているからこういうことを言っているのじゃないですか。これはつまり、いないのですよ、どんなことしたって。先ほど言ったように、既に弁済済みのものもあるし、そういうことで、ただ残っておる、それだけのことなんです。だから、供託金の還付請求は出てこないのです。そうすると、これは国庫のものになっていく。そうすると、手をくわえておって金がどんどんと国に入ってくるようになるのです。あなた方はそこをねらったのでしょう。
  108. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 所在不明でございますので、これは受領が不能であるから供託をすべき要件に当たるわけでございます。確かに所在がわからないわけですから、その人があらわれて供託金の還付請求をするという事態が起こることは余り考えられないかもしれません。しかしながら、登記を一方だけの申請で消すという手続をとれるのは、その債権が一応消滅をしたというだけの資料があることが必要でございまして、だから供託ということによって債権の消滅を一応証明させるという建前をとったわけでございます。登記はあくまでも実体関係を反映するものでなくてはなりませんので、債権の消滅ということがどこかでとらえられなければならないというのが私ども考え方でございまして、わずか四百円プラス利息といったようなものが国庫に入るか入らないかというようなことは、これは全く物の数ではない、そういうことをねらったものでは決してございません。
  109. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これは今だから四百円なんというのはすぐポケットから出せる状態だけれども、しかし今何億という抵当権を設定しておる人たちがもし十年後、二十年後になって残った場合は大変でしょう。だから、そういうことも考えなければならないと思うのです。それで、結局弁済した人にとっては今度は二重弁済だ、これは昔の高利賃し以上ですよ。そういうことを国の権力でなされていくとなると、これは問題じゃないでしょうか。しかも、権利というものをそういう形で金で処理するような考え方は、私はどうも賛成できない。  そこで、このような問題を掘り出していけば、これはきょうは何時間かかっても、あるいは何日議論しても限りないと思います。ですから、要するに登記というのは、先ほど局長も言われましたように、実体との合致が必要なわけでございます。国民権利財産を守り、取引その他権利移動の障害を除いて、社会秩序及び法的安定の維持に努めなければならないことは言うまでもないと思います。また一方、眠れる権利保護しないという過怠罰的理由をもって、国の機関たる登記官の判断で抹消できるようにすべきではないかというのが私の考え方です。とにかく民事、刑事、その他の登記事案を除く案件は裁判官に任せるといたしましても、事登記に関しては登記官の判断で処理できるようにすべきではないか。言ってみれば、裁判官と登記官というのはその趣旨では同じレベルの権限を持っていいのではないかということでございます。  そこでどういうふうにすればいいかという問題ですが、これには除斥期間等の明定とかあるいは登記簿上時効の要件が満たされるとか、そういうものが登記官によって明確に判断され、しかも一般国民もそれを見ればなるほどこれは時効によって抹消されたんだなということがわかるようにする。 しかも、登記というのはそういう点では単純にできるのですよ、要件さえ登記事項に書き込んでさえおけば。そういうことをする、これが一番いいと私は思うのです。それでも何か危ないというならば、二年とか三年とか期間を置いて、予告登記でこの期間内に抹消しなければこれは権利の消滅になりますよ、そういう方法だって考えればあるのですよ。しかし、そんなことをしなくても時効という制度があるのだから、それは時効は援用しなければならないわけで、今までは裁判所にその援用をしてきたのを申請という形で援用すればこれは援用と認められる、こういうふうにしていけば登記官の判断でどうにでもなるのじゃないですか。そういうのが本当の簡易手続なんですよ。ところが、今ここに載った簡易手続なんて、こんなことやっていたらかえってこれは複雑になるだけですよ。その辺はどうでしょうか。大臣、ひとつ御所見をお願いしたいと思います。
  110. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 重ねてで恐縮ですけれども登記官は提出された書類に基づいて形式的審査を行って判断をするのが登記法全体を通じる権利登記における登記官の職務でございまして、実質的審査権というか、裁判的審査権は持っていないわけでございます。このような例外的措置を利用するためにある程度の要件を限定することはやむを得ないのではなかろうか、登記官にその判断を強いるというのは現行登記法の建前からは相入れないのじゃなかろうかと思っております。
  111. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 私は、このままでやれとは一言も言ってないのですよ。そういうふうに法律上の権衡というか、つり合いというか、そういうものの中から今の法律改正を図って、それに関連する事項登記官が判断できるように合わせていったらどうかということなんです。そういう前向きの姿勢がないと、いつまでたったって登記官の身分なんかはよくなりませんよ。どうですか。
  112. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 先ほど局長も申し上げましたように、この点について実質的審査椎を与えるということになりますと、これは登記法上の建前全般を見直さなければならないということになるわけであります。そういうことが登記の迅速処理という基本的な形式審査主義の要請との絡みでどうなるかということがあるわけでございますが、今後なお検討はしたいというふうに思っております。
  113. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記法は手続法でありまするので、そういう考え方のもとにこの改正案を出したものでございますけれども、もっと実態的に考えるべき面が非常に多いと思います。実体法の面においてはっきりとそういう時効の場合はもう消えてしまうんだということにすればこういう問題は解決するわけでございまして、これからさらに検討をいたしたいと存じます。
  114. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 大臣の大変明快な、しかも前向きな御答弁ありがとうございました。ぜひひとつそういう立場で御検討をお願いします。  さてそこで、この登記は実体と登記の表示が合わなければならない、これが原則だといいますけれども、しかし本当にそうなっているでしょうか。私はなっていないと思うのです。例えば、一つの町内会で寄附を集めて集会所をつくった。その集会所をどこどこ町内会として登記はできないのですよ。登記する場合にはだれだれほか何名の共有物としてしか登記できないのです。そうすると、実体と登記とはまるっきり違うのですよ。しかも、町内会というのはしょっちゅう人が出入りする。転勤したりあるいは別なところに移住したり、いろいろあって町内会の人たちは非常に働くのです。流動しているのです。そしてまた、町内会の人口だってふえることもあるし減ることもあるのですよ。そういうのをそのまま登記の公示によって合致させていく、一致させていく、そういうふうにして、町内会の建物をある共有者が借金をして競売に付された場合にこの共有権すら脅かされる、こういうようなことにならないようにすべきではないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  115. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 町内会のようなものはいわゆる権利能力なき社団と言われるものでございまして、この権利能力なき社団における所有関係をどう見るかという問題でございますけれども、これは御承知のように最高裁判所の判例などもございまして、団体を構成する全体の、総員の総有的状態にあるというふうに説かれております。したがって、だれだれほか何名という形で登記されているといたしますと、それはむしろ実体に合致したものであるというふうに言えるのではないかと思います。あるいは、その代表者である特定の個人の名前で登記されているということになりますと、それはその団体から信託を受けた、そういう地位に基づいて登記をしているということで、これまた必ずしも実体に合致しないというふうに決めつけるわけにもいかないのではなかろうかというふうに思っております。  問題はそういう団体それ自体の名前で登記ができないというところにあるわけでございますが、団体それ自体権利主体でないというところからいたしますと、やむを得ないことではないかと思っております。
  116. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これは大変な問題なんですよ。その登記を申請する瞬間というか、その場合は確かにだれだれほか何名の共有権であると認めても構わない。ところが、その後の移動で、これは出たり入ったりがひどいですよ。それじゃおまえは共有権者でないから使用はさせないよ、こういうふうになったら、町内会のせっかくの融和もなくなるし、それはまるっきり社会生活が成り立たなくなるのです。  なぜ登記をするかというのは、これはおれのものだと世間に公示するためでしょう。第三者が、いやそうじゃない、おれのものだと言っても、そうじゃない、登記簿を見てこい、こう言って対抗できるからでしょう。だとすれば、そういう実体そのものに対抗要件を与えて、そういう移動をした場合は移動をしたなりに、町内会自体がなくならないのだから、土地もなくならないのだから、そのまま認めていったらどうでしょうか。言ってみれば、昔の入会権のようなもの、それに似ていると思うのですよ。そういう形で流動する権利を固定的に認めていく。その形があり、実体がある限り、そのまま認めていく、そういうことが私は本当の意味の登記じゃないか。ところが、今のようなことをされたら、実際にはもう大変なことが起きるのですよ。その辺はどうですか。
  117. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 法人格を持たない団体の場合には、その団体自体が実在するかどうかということを登記所において認識する手段も実はないわけでございます。また、そういう団体でもって登記をするということを認めた場合には、財産隠しであるとか税金逃れであるとか、そういった形に悪く利用されるということも十分考えられるわけでございます。したがって、町内会なら町内会といったものがそれ自体の名前で登記ができるようにするためには、やはりどうしても法人になる道を開くことが必要なのではないか。これはかねてから議論になっております中間法人に関する問題でございますが、これは検討がされたこともございますけれども、団体の監督の問題とかあるいは団体を構成する個人の責任の問題とか、いろいろ難しい問題がありまして、実現を見ないままに至っている現状でございます。
  118. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 そこで、財産隠し、所得隠しというようなことが起こらないために一定の枠づけをしてもいいと思うのですよ。例えば、町内会の施設については市役所なり町役場なり、そこを管轄する公的なところの証明書添付すればそのまま登記できるとか、あるいは政党の事務所、こういうものについても、国会議員何人以上を有する政党は政党と認めて、その支部とか総支部の事務所はそのまま登記できる、そういう一つの名称で登記できる。そうすると、第三者がそこに悪く利用することも入り込むこともできないのですよ。むしろ財産保護する意味でそういうことが考えられていいのではないか、私はこういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  119. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 冒頭に申し上げましたことですけれども権利能力なき社団それ自体財産所有関係においては権利主体にならないというのが最高裁判所の判例でございますので、その考え方をとります限りは、法人格のない団体として権利主体の表示でもって登記をするということはできないと申し上げざるを得ないのじゃなかろうかと思います。  例えば政党の話が出ましたが、政党と申しましても、国会議員大勢の方々を出しておられるような政党もございますれば、群小の政党もたくさんございますわけで、そういったものをどのように仕分けし、また、どういうふうにして団体と証明して登記手続にのせるかということは、なかなか難しい問題ではなかろうかと思っております。
  120. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これは検討してくださいよ。つまり、どういうやり方で実体と一致させるかということに私重点を置いているわけですから、実体のない登記というものは国民からしても非常に迷惑なんですよ。  ですから、この辺はいろいろ考えていただいて、ただ最高裁の判例があるからできないでは済まされないと思うのです。判例は書きかえられるのだから、判例というのは時々また新しい判例に置きかえられて、法律というのは成長しているのですよ。だから、あなた方も判例を書きかえるくらいの意欲を持って取り組んでもらいたいのです。どうでしょうか、検討していただけますか。
  121. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 そのような団体が法人になれる道を開くのが登記手続との関係では最もいい方法ではないかと思っておりますが、検討はさせていただきます。
  122. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 時間があと余りありませんので、次に移ります。  今の簿冊中心の登記から今度磁気ファイル、つまりコンピューターシステムに移行されるわけですが、この移行について、その段階的な日程、中身、つまり移行計画と申しましょうか、そういうのを明らかにしていただきたいと思います。
  123. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 コンピューター化を進める上では、従来の登記簿コンピューター登記簿の方に移行する作業が最大の問題でございます。六十二年度の予算からこの移行の作業を開始いたして、現在ようやくそれが緒についたところでございます。全国千百七十カ所にございます登記所全部の登記簿移行するには、相当期間を要することでございまして、現在のところ、今世紀中にはそれを何とかやり遂げたいというふうにかねてから申し上げているところでございます。
  124. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 大体段階的にどうなんです、どこからどこまではどのくらいという……。
  125. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 コンピューター化の効果というものは、やはり大登記所においてより顕著にあらわれるところでございますから、できる限り大きな規模の登記所から着手をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、これは特別会計の中で資金手当てとの関係がございまして、各法務局にバックアップセンターをつくるといったようなそういう施設費の問題、その他機器の整備の問題などございまして、当初はそちらの方の費用もかさみますから、移行のペースはかなり緩いものとなっております。計画といたしましては、後半に大きく移行の実績を上げるということになっております。
  126. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 これはこの程度にいたしまして、移記をする場合に、現在生きているものだけを移記してあとは閉鎖登記簿として長く保存していくんだ、こういうお話があるようですが、不動産であっても人間と同じように一定の歴史をそれぞれに持っているのですよ。その歴史がわからなくなって、さらに閉鎖登記簿を引き出すというようなことになると、コンピューター化をしたそのよさが打ち消されてしまうと思うのです。例えば、今の職員でさえ非常に少ないのに、そこに一方ではコンピューターに移記する作業をやる、他方で司法書士が来ては、これではわからぬから閉鎖登記簿を出してくれ、こういうふうにしていったら今度は仕事が大変過重になると思うのですよ。だから、そんなだったら、コンピューターですから全部移記したらどうでしょうか。  例えば現実に今あなた方に見せたこの登記簿にしても、見てみたら明治時代あるいは大正時代の抵当権が載っておった。ところが、所有権者は最近新しくかわったわけだ。そうするとこの抵当権はどういう経過を経てここに残っているだろうか、こうなるとどうしても閉鎖登記簿を見なくちゃならないわけですよ。それを一々繰り返していたら、こっちで現行生きているものはコンピューター、そして死んだものは墓から掘り出すようにして閉鎖登記簿を持ってくる、こんな二重の手間をかけておったらかえって事務が煩雑になって、決してコンピューター化の所期の目的を達することができなくなる、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょう。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 コンピューターの方へ移行する作業は、登記データが極めて膨大なものでありますために大変な費用と労力を要することになっております。現在登記簿に記載されております事項をすべてあるいはその大部分を移行すれば、それはそれなりに意味のあることではあろうかと思いますけれども、そのためには大変な費用がかかるし、とてもこれから先十五年程度期間でもってはやれない、かなり移行に要する期間も長期化をするということにならざるを得ないわけで、そこらあたりとの兼ね合いでもって現在事項を移記するということにいたしまして、あとはもし必要のある方は閉鎖登記簿をごらんいただくというやり方をとらせていただきたいと思っております。これは現在の登記法における登記用紙の移記の仕組みとも整合性を持っているわけでございますので、そのように御理解をいただければ幸いでございます。
  128. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 いよいよ時間が参りますので要点をかいつまんで申し上げますが、所有権移転を通して非常に脱税がなされているわけです。それはどういうことかというと、中間省略登記という手続があるからなんです。中間省略登記をする際には、恐らく原因証書添付しないで申請書副本でどんどんとやっていく、こういうふうになるとその中間にある人は、幾らか金を与えても省略してもらって実は素通りして、金だけいただいて最初の売り主から最後の買い主に登記されていく、こういうことになるわけですから、そういうことをさせないためには中間省略登記という手続をやめまして、そして先ほど言ったように原因証書添付を義務づけしていく、こういうふうにすることが大事だと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  129. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記法の建前は、中間省略登記などというものは認められないという建前でございます。ですから、登記所に出てくる書類の上ではこれはもうすべて直接の登記でございまして、中間省略登記ではないわけでございます。したがって、登記の申請をされる側においてそういうふうな簡略登記はしないというふうに徹底をしていただければ解決できることではないかというふうに思っております。
  130. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 今の答弁のとおり、登記に出てくるときには中間省略なんてわからないのです。ところが、それは実際には裁判所で争われて中間省略登記が有効であるという判例まで出ているのですよ。そういうことを考えると、何らかここで対策をしなくちゃならない。中間省略がどうしてもできないようにするには、原因証書を本物を添付させればいいじゃないですか。そうすれば中間省略登記なんというのはできるはずがないわけですから、何らかどこかでそういう悪者に対する歯どめと防御というものを考えていかないことには、この重大な財産を守る登記というのはなかなか立派にならないと私は思うのです。この機会に十分検討していただきたい。  時間が来ましたので、最後に大臣にお伺いいたしますが、今までの論議の中で、大変きょうはありがたい全面検討お話も聞きましたし、それからまた、大臣の決意によって今後どういう改善なり見直しなりを図っていかれるか、その御決意のほどをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  131. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 大変示唆に富んだ御質問をいただきましてありがとうございました。この質問をもとにいたしまして、さらにこれから検討を深めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
  132. 渡部(行)委員(渡部行雄)

    渡部(行)委員 どうもありがとうございました。
  133. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ────◇─────     午後二時二十三分開議
  134. 今枝委員長代理(今枝敬雄)

    ○今枝委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。山田英介君。
  135. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 我が国の公示制度歴史は百年を超えております。特に今回の不動産登記法改正につきましては、いわゆる薄冊中心のブックシステムの登記制度からブックレスシステム、すなわちコンピューターシステムへとこれが移行されていくという、またさせていこうという、その意味では我が国の公示制度の大きな変革期に入ってきた、このように認識をするわけでございます。そういうことをベースにして考えてみますと、大事なことは、やはりいかにシステムそのものがブックからコンピューターへと移行したとしても、現在我が国の公示制度が抱えているさまざまな問題点、これの解決への方向づけ、あるいはまた公示制度を取り巻く諸条件の整備というものを、この大きな変革への第一歩といいますか、第一次となります不登法改正のこの機会にやはり明確に方向づけをする、あるいは整備をしていくめどをつけていくという作業が極めて大事な問題である、かような認識をいたしております。  そこで、何点か以下お伺いをするわけでございますが、最初に確認をいたしておきたいと思います。特にこの不動産公示制度と極めて密接な関係で存在をいたしております司法書士制度、そしてその業務に関してでございますが、特に司法書士不動産登記申請書作成をいたしまして代理する、その前提として実際に登記の前提となる契約の実体、あるいはその契約でも物権契約の実体をやはりしっかりと把握していかなければならないのだろうというふうに認識をいたしておりますが、この登記申請書作成し、そして代理して申請をする以前に、司法書士に求められる業務上の責任というのは一体具体的にどういうものなのかを明らかにしていただきたいと思います。
  136. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 司法書士はまずその業務の第一号として、登記及び供託の手続について代理をすることというふうに定められております。この手続について代理をするに当たりましては、当事者間になされている物権変動の原因となっている契約を把握し、そして何よりもその両当事者がその物権について登記をする申請意思を持っているということが書面上確認できるような状態にあること、それをはっきりさせることが必要であろうと思っております。
  137. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 今局長答弁なされたこと以外にも、列挙すればいろいろあると私は思います。要するに、局長のおっしゃることは、登記官に与えられている権限は提出された書類、申請書とか添付書類あるいは登記済み証あるいは登記簿こういうものを書面上審査をして、それが一定の様式にかなっており整合性を保っておるということであれば登記を実行する。そういういわば書面形式審査権というものと対比をいたしまして、司法書士の場合にはただ頼まれたから、嘱託を受けたから書類をつくり、申請書をつくり、提出すればいいというものではないのだ。要するにその実体関係にまで立ち入って、その申請をしようとする者が本当にその当事者であるのかとか、あるいはまた本当に登記申請する意思があるのか、その前提としての実体面におけるその物権契約なりそういうものが本当に本人、当事者の意思に基づくものなのかというような、そういう実体にまで立ち入って実質的に審査をしなければならぬのだよ、こういうことでございますね。要するに、実質審査というものを司法書士はその職責上あるいは司法書士制度の目的からいって、これはしっかりやりなさい、こういうことでございますね。
  138. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 そのように理解いたしております。
  139. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 申し上げました登記官の形式審査、それから司法書士の今局長がお認めになられました実質審査、この双方がよりよく機能し、相補い合い、そして初めて真正な登記というものが確保されるのである、また、そういう登記官の形式審査と司法書士の実質審査というものが補完し合って今日の我が国の公示制度というものが運営されてきた、また支えられてきたということは言えますか。
  140. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記が適正に、そしてまた迅速に行われるように司法書士がその役割を果たしてまいってきているというふうに思っております。
  141. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 司法書士は実質審査という、こういう一つの職務上の責務、責任というものを果たすために、繰り返すようでありますが、当事者の真意を酌み取る、あるいはまた当事者の意思を申請書などに誤りなく正確に反映をさせる、そして司法書士法一条「目的」あるいは一条の二それから二条、これらの規定から見ましても、当事者の双方の利益のために公正な立場で業務を遂行する、こういう義務が課せられている、こう解釈してよろしゅうございますか。一条、一条の二、二条との関連でお伺いをしております。
  142. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 司法書士は、多くの場合登記権利者及び登記義務者双方から委任を受けて事務を行っているのが実態であるように承知いたしております。その委任の内容たるものは、その当事者間に行われました物権変動に基づきまして登記を適正にするということが委任の内容でございますので、その内容を誠実に実行するというのが司法書士の努めであると思っております。
  143. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 これは「登記研究」という雑誌がございまして、その「登記簿」という欄に記載されているところでございますが、これは一応A、Bという形で対話形式でわかりやすくなさっていますけれども法務省のしかるべきこの登記に責任を持つ方がわかりやすく、しかも非常に理路整然と司法書士制度とその業務というものを解説されておる、このように私は理解しておりますが、その中に、「実務の上で「他人の嘱託を受けて」という他人の意思及び確認には、司法書士法第一条にいう、業務の適正を図り、国民権利の保全に寄与するために万全の措置をとらなければならないんですね。」こういう問いかけに対して、「そういうことだね。司法書士の業務は、やり直しのきかないものであり、他の職務とは異なる高度な社会的責任を負っていることがわかるだろう。」そこで、「不動産の商品化・流動化がますます進み、不動産取引も頻度を加え、その登記手続を担う司法書士の職責も一段と重要なものとなってきているんですね。」「そうだね。」こうなっているわけでございますね。これはそのとおりでございますか。
  144. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 その雑誌はまだ拝見いたしておりませんけれども、お読みになりました内容は、格別異存があるわけではございません。
  145. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 格別異存があるわけではないということは、そういうことだとお認めになられている。司法書士の場合は嘱託人からその真意を把握をし、究極の嘱託人の趣旨あるいは目的に合致するようにその登記申請についての実体関係、実体面について法律的な判断を加えて、登記申請について完備した書類を作成するための意思の確認、当事者の申請の意思あるいは物権変動の意思、物権契約の意思、そういうものを確認をする、あるいはもっと基本的に本当の登記義務者であるのか、本当の登記権利者であるのか、本人そのものなのかというところもやはり実体に立ち入ってこれを確認をする、あるいは実質審査をする、そういう義務が課せられていると私は思いますが、重ねてこの点について御答弁をお願いしたいと思います。
  146. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 契約が真実になされているものであるか、また登記申請を求めている者がその本人であり、その人が真実の意思を持っているかということを確認しなければならないのはそのとおりでございます。ただ、その確認をする手段が何であるかということは、その具体的なケースによっていろいろであろうとは考えます。
  147. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 昭和四十六年四月二十日最高裁第三小法廷判決、土地所有権移転登記抹消登記請求事件でございますが、この判決の趣旨に基づいてこのような判断がなされているわけでございますが、それについてお伺いをしたいと思います。要するに、   司法書士が嘱託人のいうがままに書類を作成し、登記所に提出することは、今日の経済取引の複雑化、多様化からも許されないものと考えられる。   すなわち、司法書士が公共的な性格をもつものであるから、司法書士がその職務の遂行に関し責任があることは、社会的に当然要求されているところであって、その社会的責任の重要性は一段と強く要請されつつあり、司法書士は、特に嘱託人から調査依頼がなくても当該事件の真偽を確認する注意義務はあるとされている こうございますけれども、要するに、司法書士が嘱託人の言うがままに書類を作成する、登記所に提出するということは、今日の不動産取引の複雑化、多様化ということから見てこれは許されない、こう考えてよろしいですね。
  148. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 そのように考えてよろしいと思います。
  149. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 もう一つ、昭和四十七年十二月二十一日東京高裁第四民事部判決、損害賠償請求事件、これはこういうことでございます。   司法書士登記義務者代理人と称する者の依頼により本人のため登記関係書類を作成する場合において、依頼者の言動により代理権の存否に疑のあるような場合は、単に必要書類について形式的な審査をするに止まらず、本人について登記原因証書作成についての真意の有無及び登記申請についての代理権授与の事実を確かめ登記手続に過誤なからしめるよう万全の注意を払う義務があるものというべきであり、代理権の存在を確めないでした申請にもとづき行われた不実の登記を信頼した第三者に対する不法行為責任は免れない これが昭和四十七年十二月二十一日の東京高裁における判決でございます。  したがいまして、私がここで特に指摘しておきたいことは、このように司法書士登記申請について手続の代理をする、そういう場合には大変厳格な注意義務を持ってこれを遂行しないときには、この登記を信頼した第三者に対する不法行為責任は免れないよというまで要するに職責というものは厳しいものが求められている、この点をこの判決では特に強調しておきたいと私は思います。  それからいま一つは、いわゆる我が国の不動産登記制度、公示制度というものの持つ大きな弱点の一つというのは、欠陥と言ってもよろしいと思いますけれども登記の迅速性の要請が一方にあり、他方においてその登記が正確になされていなければならないという要請があります。この迅速性と正確性のバランスをいかにとっていくかというところに極めて重要なポイントがあるわけでございまして、登記官の形式審査権の範囲における審査だけでは物権の変動に見合った公示というものがなかなか確保されにくい。要するに書面でだけしか審査できないわけですから、したがって実はそこに不実の登記とかあるいはまた不正な登記というものがつけ入るすきができてきてしまうということは言えると思うわけでございます。そして、実質的な審査権を持つ立場にある司法書士の努力あるいはまたその存在というものが我が国の登記システムというものをしっかりと安定させる、そのために登記官ともども、あるいは関係者の皆さんとともどもにその大きな役割を果たしておる、このように言うことができるわけでございます。したがいまして、この形式審査主義の欠陥というものをカバーをして不実の登記を排除するということが司法書士の使命である、こういうふうに結論を導き出すことができると私は思います。  もし司法書士登記官と同様に形式的審査権の権限内で業務を果たしていれば、遂行していればいいのだということになれば、我が国の公示制度というものは、これはその根幹にかかわる、その発展もあるいはまた前進もあり得ない、望めないというふうに私は考えざるを得ないわけでございますが、これはどうでしょうか。林田大臣から一言いただいておきましょうか。要するに、登記官と同じように司法書士が形式審査というようなことで、ただ頼まれたのだから頼まれたままに書類をつくり申請すればいいのだというところに安住していれば、とどまっていれば、我が国の登記制度というものの健全な発展というものはあり得ないというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  150. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記が真正な登記でありまするためには、登記官の方は形式上の審査を行えば足りるわけでありまするから、その前段階として代理人でありまする司法書士において十分審査をしていただいて、そして書類を登記官に提出していただくということが最も望ましいことであり、また、これからの登記制度におきましてもそうあらなければならぬことである、かように存じております。
  151. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 それでは民事局長にお伺いしますけれども、国が司法書士法に基づきまして司法書士にその登記申請の書類の作成義務を独占的に行わせている、他の者にその業務の取り扱いを禁止している理由は那辺にあるのか、これをちょっと整理してお答えをいただきたい。要するに、国が司決書士法を定めてその法に基づいて登記申請書類の作成義務を独占的に司法書士に行わせている、そして資格のない者にその業務の取り扱いをしてはならないと禁止している理由についてお伺いをしたいと思います。
  152. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 司法書士法は、資格のない者が業として司法書士の業務を行うことを禁止いたしておりますが、これは司法書士のとり行います登記その他の代理に関する業務が国民一般の財産にかかわる非常に重要な利害関係を持つものでありますために、一定の資格を有する者にそれをとり行わせることが国民多数の幸福につながるという観点からこれをそのように制限をしているものであるというふうに考えております。     〔今枝委員長代理退席、井出委員長代理着席〕
  153. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 もう一つだけ確認しておきますけれども司法書士申請書作成登記所に提出をするその前提として、最近は非常に登記済み証偽造も多い、あるいはコピー技術の発達等を悪用して印鑑証明書偽造、変造も多いというような、一つには病理現象、登記制度における病理現象というものが増加する傾向にあると憂える一人でありますけれども司法書士が提出をする前提として、印鑑証明書とか権利証を厳格にチェックをする、現実にそういう機能を果たしているわけでございますけれども、実際に防止、あるいは見破るといいますか、そういう不実の登記をさせないようあらかじめそれを防ぐ、そういうことについて果たしている役割というものは私は大変多いものであると思っております。  それで、例えば不鮮明な印影だとか印鑑が違っているのじゃないかというような疑いがあるときには、日常の登記事務を通じましてこれを直ちに拒否するとか、あるいはまた必要があれば関係市町村に印影、印鑑証明書について照会をするとか、あるいはまた取引が正しい当事者の合意のもとに行われているかどうかを確認したり、特に大事なことは、所有権を失う登記義務者の意思の確認というのが特に重要であるという認識のもとに、特にそこをまた入念に行う。あるいは印鑑証明書は本来は登記義務者、所有権を失う登記義務者が持ってくるのを常態とするわけですけれども、買い主が単独でやってきて印鑑証明を持ってきた、あるいは本人が病気で来られないというようなときに買い主だけが印鑑証明なんかを預かったという形で持ってくる、こういうときには、特に登記義務者が本当に所有権を失うのですよ、その登記申請をあなたはやろうとしているのですねという、この意思の確認というものを日常的な業務の中でやっているということを私は知っておるわけでございます。  今、十点ばかりにわたりまして御確認をいただいたわけでございますが、私が申し上げたいことは、今の御答弁にもありましたように、例えば実体関係にまで入って調査をする義務がある。あるいはまた嘱託人の言いなりになって書類を作成した場合、仮にそれが不実な登記であったとすれば、その登記を信頼してその権利を取得をした第三者に対して不法行為責任は免れないというふうに判決でも言われている。あるいはまた登記官とは対置される形の実質審査権をしっかりと行使をして、そして真実の登記というものを担保するよう、確保するようその業務を行わなければならない。むしろそういう義務を負い、あるいは課せられている、そういう司法書士であります。  先ほど民事局長が御答弁になりましたように、結局は、国民権利義務に重大な関係を有する書類を、一定の資格を有し相当の法律的素養のある者に国民が嘱託して作成してもらうということが、局長おっしゃるように国民の利益、公共の福祉に合致する、こう考えたから、国が司法書士法を定めて、そしてこの登記申請書類の作成権限を独占的に司法書士に与えたのだ、そしてその資格のない者にその業務の取り扱いを禁止したのだ、こういうことであるわけでございます。局長がお認めになったとおりでございます。したがいまして、私はこの登記代理権というものを考える場合に、この点をしっかりとベースに踏まえて議論をしなければ、あるいは方向づけをしていかなければ、これは大きな誤りを犯すことになりはしないかというふうに思うわけでございます。仮にそのような十分な注意義務を払わずに結果的に不実の登記というものをしてしまった場合には、第三者に対して不法行為責任を免れないぞというような、そういうような厳しい一つの使命あるいは役割、責任というものを与えられている司法書士代理してなす登記の申請と登記の手続と、司法書士以外のそういう資格のない者がなす登記申請とその代理手続と、この不動産登記法上何ら区別がなされていない、これは常識的に考えていかがなものかと私は思うわけでありますけれども局長、いかがでございますか。
  154. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 司法書士法では、業として登記事務代理することは司法書士の専権といたしておりますが、一般の人が個別に代理をすること自体は別に禁止をいたしておりません。そういう意味では、司法書士が独占的に登記代理を行うという形にはなっていないわけでございます。 これは登記事務そのものが、登記代理が、今まで先生がいろいろ御指摘になられましたように、いろいろ当事者の利害に深くかかわりを持つことはもちろんでございますけれども登記の依頼人が特定の人を信頼して特定の人にその登記代理をゆだねるということ自体までは禁止する必要がないというふうに考えているからでございます。これは何もひとり司法書士法に限りませんで、ほかのいろいろな士業種についてもおおむね共通して言えることでございまして、代理をするからには必ず司法書士でなければならないという制度を設けるかどうかは、単に今まで先生がお挙げになられましたような観点からだけで決するというわけにはまいらないのではないかというふうに思う次第でございます。
  155. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 午前中の質疑応答を私も拝聴しておりましたので、要するに、民事訴訟法で簡易裁判所については許可を得て弁護士にあらざる者でも訴訟代理人になれるということを局長はおっしゃりたいわけでございます。ただ、司法書士登記代理権というものを仮に法制化したとしても、実質的にどうなんですか。余り変わらないのじゃないですか。要するに本人登記申請できるという道は開かれているわけですから、それまで否定せよということでは全くないわけでしょう。  それから、訴訟の場合も、これは原則本人訴訟ですね。最高裁まで本人でできるのだ。訴訟をやっていいわけです。ただ、地裁以上は訴訟代理人を置く場合には弁護士強制主義だよ、簡裁の場合は許可を得てだよ、こういうことになっているわけです。しかし、実際には、民事訴訟法にそういう非弁護士でも簡においては訴訟代理人になれるという規定があるけれども、規定はそうなっていますけれども、実際の運用という面で考えたら、これはどういうことになっているのですか。実際には、運用面まで立ち入って分析してみれば、結局弁護士を訴訟代理人にするかあるいは本人訴訟でいくかの二つしかないのじゃないですか、実際問題としては。局長、これはどうですか。
  156. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 裁判所の実務の扱いについてまで私が申し上げるのは、いささか行き過ぎかと思います。登記代理人につきましての実情を拝見しておりますところでは、恐らくもう九割以上の事件において司法書士代理人として関与されているのが実態でございましょう。そういう意味では、格別法律の規定を設けることはなくても、事実上司法書士登記代理を独占なさっているに近い状態にあるというふうに考えられます。また、登記所における行政運営の立場から申しましても、登記専門家でございます司法書士代理をなさることの方が行政効率を上げる上からでも極めて意味のあることでございます。  ただ、問題は、司法書士以外の第三者は代理をなし得ないというふうに限定的な決め方をすることが果たしていかがなものであろうか。これは、一般国民の経済活動の自由を制約することにもなりますし、これを依頼するとなると必ず司法書士でなければならないということになりますと、昨今のようにいろいろ契約コストその他についての節減をいかなる企業においてもいかなる個人でも図っておる今日でございますから、そういった面からの反発もないわけではないと思います。また、隣接いたします領域において、弁護士でございますとかあるいは税理士でございますとか、こういった方々との間で業際問題にまで発展をするわけでございますので、そのような法律ではっきりとした決め方をするというのは必ずしも適当でないというふうに考えざるを得ないわけでございます。
  157. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 何点か今の御答弁に対して指摘をしておきたいのです。  裁判所に関することを答弁する立場にないということでございますけれども、それでは申し上げますけれども、民事訴訟法の先ほどの規定についていえば、確かに非弁護士でも簡裁では許可を受ければ訴訟代理人になれるとなっています。しかし、現実には運用の問題ですから、そこまで見てかからないと真実はわからない。結果的にそれは弁護士が訴訟代理人として独占的に存在をする。それ以外では、結局は本人訴訟しかないのだ。実態はそうだということを私はまず指摘しておきます。  今僕の手元にあるのは、六十一年の司法統計年報、全簡易裁判所についての弁護士の選任状況別などという資料なんですけれども、この資料を見ても、要するに簡易裁判所における事件の総数が幾つあったか、そのうちに弁護士をつけたものが幾つあったか、それから当事者本人によるものが幾つあったか。したがいまして、いわゆるこの司法統計年報の中でも、弁護士以外に訴訟代理人となったそういう事件の数というものはもともととっていないのです。実態的には訴訟代理人は弁護士、そしてそのほかに訴訟の手続等がなされるものは本人訴訟である、実態はそういうことでございます。したがいまして、民訴法の同じ士法の横並びで見ると合理性がないとかあるいは納得が得られないということを余り強調されても、それはまさに余り説得力を持たないということはちょっと指摘をさせていただきます。  それから、その後にまたお話がありまして、登記申請の代理権を有する者は司法書士だけだと限定することは国民の自由な活動を妨げることになるのじゃないか、あるいはまたお金をかけなければ登記申請ができないのじゃないかとおっしゃいましたが、それもよく伺っておりますとそういうことではないでしょう、局長国民の活動の自由を何で妨げることになるのですか。それは本人登記申請手続の道を閉ざそうというわけじゃないのですから。それじゃ司法書士に頼まなければならぬ、金がかかるじゃないかというけれども、御自分でその場合にはなさればいいわけです。あるいは親戚の者がいて、例えば登記官を定年退職されて余暇を楽しんでおられる、自由な時間がある、じゃそのおじさんのところへ行ってちょっとやってもらおう、やってあげよう、ただでいいよ、これはあり得ると思いますよ。思いますが、それでしたら何もおじさんにやらせなければ国民の自由な活動が妨げられるという理屈にはまたならないでしょう。それは、おじさんから本人が聞けばいいじゃないですか。いろいろと登記のやり方、こういうふうにやれば申請書はできるよ、それで本人申請でやりなさい。これだって国民の自由な活動の妨げにはならない。  私がなぜこの問題を今こうしてこういう角度から取り上げているかという本当の考え方というのは、我が国の百年の歴史を持つ不動産公示制度、それが登記官の形式審査主義、あるいはまた後に触れたいと思いますが、原因証書は必要的な義務づけられた添付書類、提出書類ではないというふうな、そういう中で弱点、もろさ、あるいはどうしても補っていかなければならない欠陥というものがあります。ブックレスシステムへ移行しようという百年の時代を画す登記システムの、公示システムの大変革の時代に来た。しかし、いかにコンピューターシステムに移行させたとしても、真実の権利変動に見合う公示というものがなされなければ、あるいはまた権利変動がないのに公示だけがなされるというような、制度の根幹から出てくるような問題をどうしたら一つ一つその芽をつぶしていくことができるか、克服していくことができるか、もって我が国の公示制度を一層発展なさしめなければならない、そのためにはどうしたらいいかという角度から、司法書士登記代理権付与という問題も前向きに積極的に検討すべき一つの課題であるのですよということを私は申し上げているわけでございます。その点いかがですか。前向きに検討をなさるべきじゃないのですか。
  158. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 訴訟制度には訴訟制度としての長い歴史と伝統がございまして、その中での代理権というものも決められてまいったと思います。また、登記登記として、もともとは裁判所における非訟手続として現在のような代理の形態がずっと続いてきたわけでございまして、私が申し上げたいのは、確かに不動産の所有が単に一部の資産家だけの事柄でなくて非常に国民的広がりを持ってきた、そしてまたこれが非常な資産価値を持ってきたということ、さらにそれをめぐりましていろいろな犯罪その他の問題も起こっているということはそのとおりでございますけれども、だから司法書士に独占的代理権を与えなければならないというような国民的合意が形成されるまでにはまだ至っていないのではなかろうか、そこまで法律が突出するのはいかがなものであろうかということを申し上げたかったわけでございます。  ただ、こういったような問題状況は、将来極めて長い長期的視野で見た場合に、いろいろ社会経済生活も変わってまいりますし、司法書士という制度もさらに発展することでもございましょうし、国民の意識もどのように変わってまいりますか、私どもちょっと予測しがたいものがございます。でありますから、そういった推移を慎重に見守りながら、制度全体の見直しとも関連づけて検討するような時期が来ないとも限らないと思っております。そういう意味合いにおきまして、この問題につきましてはかねてから日本司法書士会連合会の方からそのようなお話もございまして、私どもは今の時代ではこれはちょっと難しいことではないかというふうに申し上げておりますが、今後も協議は続けてまいりたいと思っております。
  159. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 私は、今すぐやるべきだというふうに申し上げているわけではありません。不動産公示制度の持つ弱点、欠陥というものを少しでも是正をしていくことが、我が国の経済取引社会を支え、あるいは一層着実に発展をさせていくむしろベーシックなシステムである、登記制度である、極めて重要であるということを申し上げているわけでありまして、これを支え発展させていくために一歩でも二歩でも前進できる、そういう認識を持つことができるならばこれをむしろ積極的に今後の検討課題としてお取り上げいただきたい、あるいは位置づけていただきたいというふうに申し上げているわけでございます。今の時代ではなんでございますが、そういう時代が来ないとは限らないとは思いますがと、二重にも三重にもたがをはめられたようなそういうあれじゃなくて、私が今質問している本当の気持ちは、そういう大事な制度をより発展させるために今の弱点をどう克服するか、その方途について前向きに建設的にいろいろな可能性を積極的に検討するべきじゃないでしょうか、こう申し上げているわけで、局長、もう一回すっきりした答弁を。
  160. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 先生指摘のように、登記における信頼の確保ということは非常に大切なことでございまして、それをどういうふうにして図るかというのは、いろいろな角度からいろいろな方策を私ども検討してまいらなければならないと思います。その一環として、先生御提案の登記代理制度というのも一つの考え方ではございますが、現在のところそれがそういう大目的のために最もふさわしい制度、あるいは国民にとって最も理解のいく制度であるかどうかということについてはまだ確信を持つ段階ではありませんので、そのほかのいろいろな制度との比較において検討してまいるということについてはやぶさかではないというふうに思います。
  161. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 司法書士登記代理人法制化の問題と裏腹なんですけれども登記代理ということの概念が不明確であります、不登法上に何ら代理権に関する規定がないわけですから。したがって、実体法たる民法の代理権のところで処理せざるを得ないわけでございます。  これをどういうふうに思われますか。こういうことがありますよ。  甲が売り主、乙が買い主。甲乙間で不動産について所有権の移転がなされました。そして、契約に基づいて司法書士Aのところに登記手続の代理を委任してまいりました。それが本日、四月十五日だとします。そして、A司法書士がそれを当然実体審査をきちっとやった上で受けました。そしてその午後から夕方書類を調製をして、明日朝一番で出そう、こう決意をしていた。ところが十五日の深夜、この登記義務者の甲が何らかの事由によりまして亡くなってしまいました。こういう事例があり得ます。しかし司法書士はそれを知らされていなかったとすれば、当然先ほど事務所に来た人がその夜死んだなんということは夢想だにできないことですから、予定どおり朝登記所に所有権移転登記申請書を提出をしました。  そうなった場合に、これは御案内のとおり民法百十一条の代理権の消滅事由、本人の死亡によって代理権はもう消滅しているわけですね。そこで、そのなされた登記については後にその相続人から訴えが起こされまして、代理権が消滅してなされた所有権移転登記というのは要するに無効である。私の父親は、被相続人は不利な取引条件のもとで乙との間に契約を結んだのだ。しかも登記申請の段階では本人はもう死んでいる、代理権はなくなっている、したがってこれは無効だという争いを起こした。しかし判決はその登記申請が実体にかなっていたということで、これは有効であるという判決が出されております。  ところが、これはどういうことかといいますと、要するに登記代理についての概念が不明確だから、不登法上に代理権限に関する規定が何ら置かれていないものですから、こういう取引の混乱あるいはまた乙の、いわゆる権利者の権利が害されそうになる、あるいは害されるという事態を引き起こしてくるわけでございます。判決でそう出たからといって、同種の類似の事件が今後起きないとは限りません。起きたその都度、これは訴訟になるでしょう。その都度またこれは裁判関係の大きな負担にもなるし、そしてそうじゃなくても、司法試験の合格者数を基準を緩めて、もうちょっと大きくして検事、判事、弁護士の皆さんをふやそうというようなその一つの有力な根拠が、裁判事務あるいはこういう訴訟の滞留といいますか、なかなか迅速に処理できないというようなところにも置かれている。こういうことを考えてみますと、この事例はまさに登記代理人制度法制化と裏腹の関係で、登記代理権が極めて概念が不明確なところからよって起こる一つの例でございます。  もう一つあります。これは、現実に数年前に九州で起きた事件でございます。登記事件の場合にはよく住所とかあるいは姓名が婚姻等で変わったということで、名義変更というのが前提である場合が多いです。いわゆる現在の所有者の実態に合わせるという意味で、住所変更とか名称の変更とか。この名義変更登記、それから引き続いて抵当権等の抹消登記、その次に、きれいになったところで所有権の移転登記、それから所有権の移転を受けるために新たに銀行から借り入れを起こすことを原因として担保権の設定。したがって、名変、抹消、移転、設定、こういう連件事件というふうに言っておりますけれども、これを受ける場合があるのです。これがよくあるのです。  それで、名義変更をする人が甲、したがってA銀行から金を借りていた、抵当権をつけていた。そのA銀行と甲の間で担保権の抹消登記。それからこの甲と今度は権利者、買い主の乙、甲と乙との所有権移転。そして乙はB銀行からかあるいはあわせてC公庫からお金を借りて、この所有権移転登記を受ける物件の代金の支払いに充てた。したがって、設定登記を銀行や公庫のためにしなければならないという義務が発生する。この一連の連件事件の中で、こういう事例が現実に起こりました。  それは、この連件事件に関係する当事者は、甲、乙、A、B、C、この五者がそれぞれ司法書士にそれぞれの登記の委任をいたしました。それで、司法書士はその実体関係をよく把握をして、登記所に連件事件として提出をした。その後、A銀行に対しては抹消しなければならない甲が二百万円A銀行に支払って、そうして担保権を抹消してもらいたいと言った。ところが、実際に乙から入ったお金が百五十万で、五十万足りなかった。しかし、すぐお持ちしますからということで、実はA銀行の担当者は委任状を交付してしまった。ところが、すぐ五十万持っていきますと言ったのだけれども、その甲が来なかった。したがって、A銀行では待って、ある一定のタイミングで判断をして、これは我がA銀行の利益が害されるということで、甲を呼んで二人でもって登記所へ行った。そうして、我々はA司法書士にはもう委任の終了を告げてきた。したがって我々は当事者だ。A司法書士から提出された委任状に実印を押してあるけれども、A銀行は実印を持ってきた。その場合には実印は要らないかな、担保権の抹消だから要らないかもしれません。いずれにしても、A司法書士には委任の終了を告げてきた。したがって、我々はこの抹消登記については本人が二人で出頭したのだから取り下げてもらいたいと言った。登記所の判断では、それは取り下げたのです。  そうなりますと、この取引というのは物すごく混乱します。特に、所有権移転を受けるべき買い主の乙は、担保権が抹消されたものを所有権移転を受けるというふうに当然理解していたものが、結果的に登記が済んでみて登記簿を確認してみたら、あるいは権利証の裏に担保権設定という印が押捺されていた。こういうことになると、特に乙の権利が害される。乙に金を出したB銀行、C公庫の権利も脅かされる。これはどこから来るかといえば、同じように不登法上登記代理権に関する規定が全く整備されてないものですから、結局民法百十一条の第二項、要するに法定代理人あるいはまた会社の代表取締役の代表権、いわゆるこういう代理権とは違って委任による代理権ですから、この場合でいえば甲とA銀行が司法書士に対して、委任による代理権だからもう委任による代理権はこれで終了しました、このように一方的に通告すれば、通告される方の司法書士は、いやそれは困る、委任はまだ終了していないことにしてくれとは言えない。これは要するに、そういうことから来る取引の混乱の典型的な事例です。それからもう一つは、これは権利者の権利が害されるという典型的な事例でございます。  私の承知しているのは九州の数年前の事件でございますけれども、全国的にはこういう事件が皆無だとは言い切れません。それはもっとあるかもしれません。民事局長さん、それから審議官、これも要するに登記代理権をいつまでも不明確なままに、ということはすなわち不動産登記法上にいつまでも登記代理権の明定をためらっていたり、それを避けようとしていたりすれば、これは年月がたてばたつほど、時代が進展すればするほど高度、複雑そして多岐にわたる不動産登記の実態になっていくわけですから、激増するわけですから、手おくれになりかねませんよ。あるいはまた、そういう経済取引社会の秩序というものを根底から脅かすことになるんじゃないでしょうか。  したがって、こういう観点からも、不動産登記法をブックレスシステムへ百年ぶりに大変革の時期を迎えて、移行させるためのいわば第一次の不登法の改正法案が今出されたのですから、この機会に登記代理権の明確化と、それからそれと密接に関係する、あるいは表裏の関係にある登記代理人法制化ということも、余り等閑視するとは言いませんけれども、要するに我が国の不動産公示システムを主管をする、所管をする法務省、そして民事局という立場において、もうちょっと問題意識を厳しく持たれるべきではないのでしょうか。私は、このことを強く申し上げたいと思うわけでございます。したがいまして、局長から、そして審議官から先ほど御答弁をいただきましたけれども、私はこういう観点から我が国の公示制度というものを一層発展をさせ、充実させ、そして国民の皆さんから登記というものは、あるいは登記制度というものは本当に、それは確かに公信力は与えてないけれども、ただ単なる第三者対抗要件しか付与されていないけれども登記をすれば安心なんだという国民の強い信頼感というものをこの我が国の公示制度がかち得ていかなければならないという観点から、私は林田大臣に、この登記代理権、司法書士、そしてまたこの登記代理概念の明確化というものを法務省の一つの重要な検討課題と位置づけられて前向きに御検討いただければ大変ありがたい、よいことではないだろうか、こう存じてお伺いするわけでございますが、ぜひ大臣から前向きな御答弁をいただければと存じます。
  162. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 ただいまの先生が挙げられました事柄は、登記代理権を資格者に限定するかどうかという問題とはまた別の問題であろうかと思います。つまり、この場合における委任あるいは代理の終了事由がどうであるのか、あるいは委任の解除の自由があるのかどうか、こういう問題につながることではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、個別の法律に特別の規定がなければ民法の規定が適用されるということになりますから、当事者が死亡すれば死亡により代理権は消滅する。しかし、結果なされた登記効力をどう判定するかというのはまた別の問題であるということで、先ほどのような判決の結論に至るものではなかろうかというふうに考えます。また、委任の解除が自由であるのかどうか、民法の委任の規定がそっくりそのまま適用されるのかということになりますと、お話しのような売り主と買い主との利害が結びつき合って相互に関連をしているようなときにはこの解除の自由が制限されるという解釈が一般にとられておるようなことでございまして、そのような委任に関する民法の解釈がこの場合に適用されていくのではなかろうかというふうに思っております。
  163. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 局長、僕はそういうことを伺っているのではないですよ。僕の言っていることを全然御理解いただいていないようなんですけれども、繰り返して言うことは避けますが、そういうことを私は御答弁いただきたいと思っているのではないのです。そうではなくて、もっと大方針にかかわる問題なんです。あなたのおっしゃっているのは枝葉末節のことなんです。もっと大きく、不動産登記システム、制度の意義というものをもうちょっと大きくとらえた上での御答弁をぜひお願いしたいと私は思います。結構です、局長さん。大臣ひとつ。
  164. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記というものが第三者に対する対抗要件、こういうことで位置づけられてきまして、今まで伝統的にそういうことになってきておるわけであります。しかしながら、時代が進んでまいりまして不動産の価値の重要性というものが非常に大きくなってきておりまして、登記によりまして不動産そのものを知りたい、あるいはまた商業登記は特にそうでありまするが、会社の実態を知りたいとかそういうことになり、登記というものが非常に重要になってきておると存じます。そういうときに当たりまして登記の持つ根本的な性格をどういうふうに考えていくかということが重要な問題であると存じまして、これからさらに検討を深めてまいりたいと存じます。
  165. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 ですから、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。要するに、登記の真正確保ということは不動産公示制度の極めて根幹にかかわる大きな理想であり、理念であり、目的である。それを確保するためには、現在各制度が抱えているいろいろな弱点とか欠陥とかいうものをカバーしていく手段というものを考えなければいけない。それはきっと幾つかあるのだろう。その中の一つが登記代理の概念の明確化であり、その一つがまた登記代理人の方法である。それだけとは言わない。幾つかあるだろう。しかし、現時点でそれもその中の検討課題の一つであることはそのとおりだろう、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。一言、済みません。
  166. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 私の言わんとするところを先生が皆おっしゃっていただきました。まことにそのとおりだろうと思います。さらに検討してまいりたいと存じます。
  167. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 さっき民事局長さんの御答弁の中で、弁護士会とあるいは業際問題にまで紛争が激しくなってしまうかもしれない、それがいわゆる司法書士登記代理権を与えることのできない一つの理由として局長はおっしゃいました。  では、今例えば司法書士団体、日本司法書士会連合会と日弁連、弁護士の集団の執行部の皆さん、あるいは執行部だけとは限りませんが、いろいろなお話し合いがなされておる。お互いに法律事務あるいは法律関連事務、膨大な需要があるわけですから、それをひとり例えば弁護士の皆さんだけでとてもとてもすべてをカバーすることはできない。そこに登記事務を中心として司法書士の一つの法律事務あるいは法律関連事務の担当分野というものがある。その交流といいますか、いろいろな話し合い、研究、勉強会の中で、仮に登記の分野については、これは司法書士が専門的な知識を有し、歴史も持っておる、この分野については例えば不動産登記法上に登記司法書士ならざれば代理人となることを得ず、あるいは加えて、ただし他の法律に別段の定めがある場合は除くというようなことで、仮にそこである程度理解ができたと仮定して、仮定の問題、そういう話し合いというものはものすごく大事でございますから積み上げていく、そこに信頼関係が出てくる、お互いがお互いをよく理解していくこともできてくるというその延長線上、その結果として局長のおっしゃる業際問題というものが激化するのじゃなくて、それが本当にお互いの理解の中で不登法の中に登記代理権という形であるいは代理人という形で司法書士が原則的に、基本的に規定されていくことは、まあそういうことだろうということになった場合には、これはどうなんですか。局長さんのところではそのときにはどういうふうにするのですか。
  168. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 業際問題は一つの理由として申し上げたわけでございますが、それでも弁護士団体と司法書士団体との間で話が仮についてそこが解決したとなりますと、それは一歩前進でございます。それ以外の団体あるいは国民の世論の動向を考える上での、一つの重要な材料にはなろうかと思います。
  169. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 局長がおっしゃる国民のコンセンサスができていない。それができてくれば、裏にして読めば国民のコンセンサスができてくれば、司法書士登記代理人法制化あるいは登記代理権の概念の明確化ということはできるわけですね。やろうというつもりである、裏返して読めばそういうことですから、国民のコンセンサスがないから現時点では無理ですとおっしゃるのですから、国民のコンセンサスができてくれば、不登法上に司法書士登記代理人、あるいは登記代理権の概念の明確化ということはできるというふうに受け取らざるを得ないわけですが、その点ちょっと確認をさせていただきます。
  170. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 そういう独占性を与えるということになると、それは何らかの公益上の必要性が要るということになろうかと思います。そして、それは多分登記信用を確保するということになるのだろうと思いますが、一方では、国民の間では、非常に登記権利者登記義務者が知り合っている、そしてよくわかっていて、それが非常に私的な関係で信頼する第三者に登記代理をさせるということを禁止する。先生は先ほど、そういうときには教えてもらえばいいじゃないかということをおっしゃいましたけれども本人申請の形をとらなければならないのだ、そういう私的な場合において、当事者の信用は当事者間で考えてみれば全く害されるはずはない。確かに司法書士登記代理人に選任すれば、それだけ当事者の権利は守られるというふうに私ども考えておりますし、そのことは望ましいことだというふうに思っておりますけれども、当事者がそういうシチュエーションにない場合にあえてそういうことをさせるということのコンセンサス、国民の理解が得られるかどうかということは、今後慎重に検討してまいらなければならないのではないかというふうに思っております。
  171. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 今あなたがおっしゃったコンセンサスも含めて、コンセンサスが得られればやるということでしょうかと聞いているのですよ。そうとらざるを得ないでしょう。
  172. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 そのような意味での国民的合意が得られたならば、おっしゃるようになるであろうと思います。
  173. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 今審議官が私のさっきの発言を引いて、それではそれは知識のある人に教えてもらえばいいじゃないか、頼まれた人の申請行為を締め出すということはよくない。それはそれなりの理屈はあると思います。ただ、皆さん弁護士法と横断的に論じられるのですから、僕も横断的に論じれば、例えばそれは登記所長の許可を得てやることができる、これは閉ざしていることにはなりません。それだってできるじゃないですか。
  174. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 もう一つの問題は、訴訟行為と登記申請行為と同視できるかどうかということでございまして、訴訟行為の場合には一つは連続的なかなり長期にわたる行為であるということと、それから裁判所が迷惑するということがあるわけでございます。裁判所が迷惑するということは、訴訟遅延を通じてほかの関係人が迷惑する、こういう論理構成で専門家に頼みなさいということをやっているのだろうと思いますが、それと同じことが登記申請の場合に完全に言い切れるかどうか。かなり一回的な行為であるということもございますし、専門性の程度というものあるいは登記所の迷惑の程度というものもいろいろ考え方があり得るだろう。そういう点が、先ほど先生がお引きになった登記代理権の終了事由と申しますか、そういうものの明確化について必ずしも訴訟法と同じようなやり方ができるかどうかということの判断にも結びつくわけでございまして、そういう問題があるということだけ申し上げておきたいと思います。
  175. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 こう言えばこう言う、ああ言えばこう言うであれなんですけれども、結局、簡易裁判所において非弁護士でも訴訟代理人になれる。しかし、実際の運用では、極めて限られた例外を除いては本人申請あるいは結局弁護士を訴訟代理人に頼まなければならぬ。それは裁判所の運用なわけでしょう。要するに許可するかしないかですから、許可を得てだから、しなければ簡裁でも訴訟代理人になれないのです。実態は、要するに本人訴訟かあるいは弁護士に訴訟代理人になってもらうかしかない。実態はそうなっているということを僕は申し上げました。  それでは、今度は訴訟の代理の場合と登記申請手続の代理の場合とは、いわゆる稽留するというのでしょうか、要するに事案がそこにとどまる期限が長いとか短いということを基準にして分けられましたけれども、長ければどうなのか。登記申請は確かに一般的に考えて訴訟事件と比べれば短く完了するでしょう。しかし、訴訟期間が長いからといってそれはできるだけ弁護士に、こっちは短いからといってそれは別に構わないじゃないか、一般の国民で頼まれた者がやるということを許しておいても構わないじゃないか、そうはならないでしょう。そういう理屈だけでは私はよく理解できないわけでございまして、そうではなくて、不動産登記というのは確かに申請手続そのものは一定の様式に従ってやれば済むことですよ。しかし、その実体関係というものに目を転じてみたら、これは実に莫大ないわゆる経済的な価値、価額というものが移動するわけです。それほど国民の基本的な財産権というものを動かすわけです。 ただ単にAからBに初めて何千万円でこの土地を売ったという登記だけじゃないわけでしょう。そういう登記申請書作成とかいうことは、なるほど審議官おっしゃるように一定の知識があればできることでしょう。しかし、それでもって非司法書士でもどうしてもやらせる道をあけておかなければならぬとするには、余りにもそれは我が国不動産取引の世界における実態に目をつぶった、そして実体関係を間違いないものに調査をして登記簿に反映させるという観点からしたら、それは非常に目をつぶられた、そういう立場における御答弁に思えてなりません。したがって、登記代理権というものの概念の明確化、これは取引の混乱を防止する、権利者の権利を守るという要請からして必要である。  それから、冒頭私が十問ぐらいのやりとりの中で確認をさせていただいたように、国が司法書士法を制定してそしてその登記申請手続を司法書士代理をさせるということ、さっき独占的にと申し上げましたが、業としては独占的に司法書士に取り扱わせることにしたのは、まさに国が、この不動産取引については相当の法律的な素養を持ち、あるいはまた能力を持つそういう有資格者に扱わせることがかえって国民の利益となり、あるいは権利保全のためによろしいことなのだという発想のもとで司法書士法というものを置かれたということからしても、この制度の発展あるいは制度の改善、補強というような立場からこの問題を考えたときには、それは実際に法律を変えるなどということはいろいろ難しいことはあるのでしょう。これは大変な作業であり、そしてまた一つ一つに大変難しいことであるということは、私もまだ三期しか当選したことはありませんけれども、それはここに身を置いて活動していてよくわかります。  ただ、私が心から申し上げたいことは、大変だ、あるいはいやそれはということで、できないできないできない、これが問題だ問題だ問題だだけを幾ら指摘をしても、実際にこの我が国の不動産公示制度は一歩も前へ出ないということになります。したがって、できないできない、難しい難しい、こうだからああだからだめなんだという、そういうことではなく、それは私の言っていることも随分乱暴なこともあるのかもしれません。私は、でも自分で勉強してみてこういうことなんだなと思うから申し上げているわけですが、皆さんが聞いていて、それは乱暴だよ、無理だよというのがあるのかもしれませんよ、それは。けれども、それだけを指摘するにとどまっていたら、我が国の不動産公示制度というものが前進するのですか。それだったら、もしそうおっしゃるのであれば、私は民事局長さんにも、それから稲葉議官にも、我が民事局は不動産公示制度をより一層前進させるためにこういうプランを持っておりますということを私の前で国民の前に提示してもらわなきゃならない。それすら出ていないじゃないですか、具体的に。そして私が申し上げていることを一つ一つ、これは難しい、これはこうだ、こっちの角度から見ればこうだ、それでは私はいかがなものかな。  残り時間あと三分ですけれども、もしあるのだったらおっしゃってください。なければ結構です。今言えないというのだったら結構です。ただしかし、私は少なくとも我が国の公示制度を本当に中身のある、権利変動の真実を反映した登記というものを実現するために、ひいては国民の信頼というものを一層登記制度にかち得ていく、そういう目標のもとに少なくとも今登記代理人制度というものを考えなきゃならぬのじゃないですか、あるいは代理権限の概念を明確化しなければならないんじゃないですかと私は具体的に申し上げている。  きょうは時間がありませんから、私また次の定例日の審議のときにあと質問をさせていただけると部会長から伺っておりますので、またそのときに伺いたいと思いますけれども、ひとつ公示制度を充実させ、前進させるために法務省がこれとこれとこれをやりたいというものがあったら、ぜひ示していただきたい。なければ私どもの言うこともやはりそれなりの立場で、それなりの姿勢でお受けとめいただかなければ困るのじゃないか、私はそのように思うわけでございます。私は、実はそういうことで質問を二日に分けてさせていただく機会をいただいておりますから、きょうはこの登記代理権とそれから代理権限の明確化というテーマが一本、それからそれに関連をしますけれども、我が国の登記制度の本当に根幹として要求されている登記の真正確保のためにはどうしたらいいかという、この部分についてもう一本やろうと思いましたけれども、前者の一本だけで大体時間でございますので、次の審議のときにぜひ残余の質問はさせていただきたいと思っております。  私の質問を終わるに当たりまして、大臣に今までの民事局長さんあるいは稲葉議官さんとのいろいろなやりとりをお聞きいただいていて、大臣からひとつ我が国登記制度発展のための御決意と、それからまたその最も内側にいてこの制度登記官とともに支えている、一方の当事者となっている司法書士の将来について、法務大臣ひとつさらにこの司法書士職能団体をぜひ見守っていただきたいし、いろいろとまた御指導もいただかなければならぬでしょう。そしてまた、いろいろと将来この不動産登記制度というものを前進させるためにともどもにやっていかなければならない部分も当然あるわけでございますので、そういうような観点も含めて御決意並びに御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。大臣、一言どうぞお願いします。     〔井出委員長代理退席、今枝委員長代理着席〕
  176. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記制度不動産の価値の表示、またいろいろな契約の上におきましても極めて重要なものであるということを、さらに認識を深めたのでございます。先生方の今朝来のいろいろな議論によりまして、司法書士制度につきましても、これまた登記を行うに当たりまして登記が真正な登記として行われまするために極めて重要な制度であるということも認識をした次第でございまして、司法書士法におきましては、ほかの法律で規定してある場合は別といたしまして、司法書士でなければ登記代理を業務として行うことはできない、かように書いてあるわけでありまして、司法書士は極めて重要な仕事を行っていただいておるということであろうと存じます。さらにこれから登記につきまして研究を深めてまいりまして、その際におきまする登記代理制度につきましても検討を深めてまいりたいと存じます。
  177. 山田委員(山田英介)

    ○山田委員 終わります。どうもありがとうございました。
  178. 今枝委員長代理(今枝敬雄)

    ○今枝委員長代理 安倍基雄君。
  179. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 今回のコンピューター化、これはなかなかの大きな進歩であると思います。もちろんそれとの関連で、同僚議員からいろいろ提示しておられた司法書士の役割の問題とか登記の真正の担保の問題とか、いろいろございますが、最初にお伺いしたいのは、今回のコンピューター化は諸外国の例等どうなっているのかな、日本はそういったところに比べてどういう特色を持っておるのかな、例えば分散処理方式とか集中処理方式とかいろいろございますけれども、諸外国ではどの程度こういったことが行われ、その中におけるいわば日本の今回の改正位置づけと申しますか、どういうことでございましょうか。
  180. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 外国の制度、特に西ヨーロッパが主体でございますが、北欧諸国におきましてコンピューター化というものはかなり進展しております。スウェーデン、ノルウェー、あるいは西欧ではオーストリアがコンピューター化が一応終わっているという状況のようでございます。それからデンマークは表示登記と申しますか、初めの土地建物の登記だけがコンピューター化が終わっておりまして、権利登記、そういう所有権等がだれにあるかという点についてはまだやっていない。フランスも同じようなことでございますが、まだ表示の登記についても三分の一程度である。権利登記については、フランスの登記というのは証書をつづっておくというだけのものでございまして、日本の制度とはかなり違うわけですが、マイクロフィッシュを使っているということのようでございます。それから、ドイツは費用がかかってなかなか進展していないということのようでございますが、一つの州だけで記入のためだけにコンピューターを使っている、こういう状況でございます。そして、各国とも大体中央に一つコンピューター登記所を置いてそこで賄うという仕組みをやっておりまして、日本が今後考えておりますような分散処理方式というのはやっておらないようでございます。  日本の特徴は、不動産取引がかなり頻繁に起こっておりまして、そして謄抄本の交付申請あるいは閲覧、そういうものの事件が非常に多いということが日本の登記の特徴でございまして、この点が諸外国とはやや趣を異にする。そういう意味で、それに対応するような登記制度コンピューター化を図っていかなければならないということになろうかとも考えております。
  181. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 これらの諸外国においていろんな新しい問題点というのが生じているのかどうか、コンピューター化に伴って。と申しますのは、これから我々導入する、そうなるとそれなりに思いもかけない問題が起こってくるかもしれない。 そういった前例として、諸外国に何か、特にコンピューター化に伴って大きな問題が発生しているのでございましょうかね。
  182. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 私どもの知る限りでは、それほどこのコンピューター化によって特に問題が生じたというようなことはないようでございます。
  183. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 大臣、これはあるいは担当官の方が詳しいかもしれませんけれども、今回のコンピューター化のメリット、デメリットということをどう把握していらっしゃるか。それを大まかにというか、詳しくがいいでしょうけれども、担当官の方でも、あるいは大まかな意味では大臣が答えられても結構でございますけれども
  184. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 この登記事務コンピューター化が実現しました場合に、国民に対してあらわれるメリットは、主として登記事項の公開の面にあらわれるというふうに考えております。つまり、乙号事務でございます。これは、登記事項証明した書面コンピューターがつくりますために極めて短時間で、かつ鮮明な読みやすい文字のものが作成されるということになりますし、またデータ交換と申しておりますが、遠隔地の不動産あるいは会社の謄本を最寄りの登記所でとれる、そういうふうなシステムも開発されておりますので、大変その面では便利になるということが言えようかと思います。こういうメリットに付随いたしまして、このことが登記自体の処理、つまり甲号事務の上にもあらわれてまいります。登記簿への記入の事務、これが今までのやり方と比べますとやはり格段に処理スピードが変わりますので、全体として若干の向上が見られるのじゃないか、あるいは登記事項の遺脱とか誤記といったものが減ってまいりましょうし、そういったことによって生じた時間というものを、これまで不十分であったいろいろな審査事務に振り向けることができるというふうに考えております。
  185. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 今メリットばかり述べられたわけですけれども、デメリットもどこかに出てくるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  186. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 別にデメリットを隠したわけではございませんが、コンピューター化をする上での最大のデメリットと申しますと、何といっても費用がかかるということでございます。そのために、先年登記特別会計を創設していただきまして、自主財源でやり得る体制を今後おいおいとってまいりたいというふうに思っております。
  187. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 費用の話は長い目で見たらそんな大したことはないのですけれども、例えばプライバシーとか名寄せとかというふうな問題で、いながらにして方々のところをとっていけば、本来であればオープンにならないものもオープンにできる。それはもちろん歩き回ってとってくれば別でしょうけれども、そういうふうに簡便化するという話もある。場合によっては、これはちょっとやるかやらないかは別ですけれども、税なんかで、むしろ税の当局からいえば方々財産が一遍にわかった方がいいのですけれども、税あたりがひとつ使わせろといったときには使わせる話になるのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  188. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 まず、名寄せというお話がございましたが、名寄せができるようなプログラムは持っておりません。また、今後も持つ予定はないのでございまして、そういったようなことに使われるということはございません。  プライバシーの保護、これはもう極めて重要なことでございまして、民事行政審議会の答申の中でもそのことが特に強調されておりまして、そのような侵害を起こすことがないように当然注意してまいらなければならないことでございます。  税の関係につきましては、現行法のもとでも登記をいたしました際には地方税法の規定によりまして市町村に通知をするということになっております。これは、今後コンピューター化いたしましてもコンピューターで打ち出したもので通知をするということは当然維持されるわけでございますが、それ以外の場面で例えば国税当局にその情報が流れるというようなことはございません。
  189. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 これは難しい問題で、登記というのはまたみんなに見せなければいかぬという要素があるわけですよ。反面、今までは各地に分散して持っていればわからなかった。これは、個人が要求してあの人の財産はどのくらいあるのですかと聞いたときにぱっぱっぱっと打ち出されたのじゃ困るというプライバシーの問題があります。ただ、今までだってえっちらおっちら探していけば見つからないではなかったというわけですね。逆に国税の立場から見れば、みんなにオープンになっているのだから名寄せしてどこが悪い、こういう話になるわけですね。今、名寄せのプログラムがないとおっしゃったけれども、それをつくろうと思えば簡単につくれるわけですね。その辺、つくってはいけないという規定があるのか、あるいはつくらないというようなことを法文上でも書くのか、その点はどうなんでしょう。
  190. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 このシステムは登記業務を行うためにつくっておるシステムでございまして、それ以外のプログラムは必要でないわけでございますから、そのようなものをつくる考えは全くないわけでございます。
  191. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私の言っているのは、ないというのが今の方針であっても、それは要するに法文上ないとかあるいは何とか、そういう場合の規定がなければつくろうと思えばいつでもコンピューターの場合にはつくれるわけですから、それはこれからのスタンスとしてどう考えるのか。今はそうしませんよと言っておりますけれども、それは法律のいわばこれは非常に難しい話で、私、すぐ意地の悪いことを考え出すのが好きな方ですから、ちょっと意地の悪い言い方になるのですけれども、一方において公示でもってやるという登記の原則。ところが、今までは各地各地ではわかっていたけれども一括してはわからなかった。これからやろうと思えば、プログラムをつくればぱっとわかっちゃう。そこで、これからどういうスタンスでいくのか。  これは答申あたりでもある程度、余りこれにばかり時間をとり過ぎちゃうとあれですけれども、個人が要求したときには勝手に見せないというようなことになっておるようでございますけれども、それならそれできちっと今そういうことを明文化するなり通達で書くなり表で書くなりせにゃいかぬ。その辺のいわばスタンスをきちっと決めておいていただかないと、今ございません、そうなっていませんと言いますけれどもコンピューターというのは、使おうと思えば一つソフトをつくればできるわけですよ。その辺はまだ検討していないなら、これからの検討課題でございますね。それについてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  192. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 これは一般的にプライバシー保護の問題であり、コンピューターに対する規制の問題でございまして、ひとり登記情報システムのみにかかわることではございません。したがって、それにつきましては政府全体の問題として考えられているというふうに承知いたしております。
  193. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 それなら、今の公示せねばならないという機能と、公示されるものが一遍に集められていいのか悪いのかという問題でございますから、通常のプライバシー保護と比べますと、これはもともと公示をするという性格のものですから、ちょっとデリケートな話があると思いますね。通常のプライバシー保護じゃないのですよ、これはみんな見せなくちゃいけないものですから。この点まだ御検討されていないのであれば、一つのスタンスで検討していただきたいと思いますが、大臣いかがでございますか。
  194. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 先生は税の専門家でありまするから、その辺はお詳しいわけでありまするが、税の公平を図るということが今非常にやかましく言われておりまするので、こういうことで公平が図られればかえっていいのじゃないかと思います。しかし、名前をいろいろにして分散することもできるわけでありまするし、この方法によって必ずしも税の助けになるというわけでもないと存じます。要するに、登記を迅速に、そして簡明によくわかるようにする、また、遠隔の地にあっても登記がどうなっておるかということがわかり得るというようなことによりまして、メリットばかり非常に多いのじゃないかという気持ちでございます。
  195. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 預金とかなんとか言ったら、架空名義を使ったり、いろいろな名前を変えることもできるわけですよ。ところが、権利保存するためのものですから架空名義はもちろん使えない。子供たちの名前で分散しても、所有権そのものは対抗要件ですから、この辺が非常に難しいところでございまして、繰り返すようですけれども、公示を目的とするものであるから、本当はプライバシーというものではない。もっともそれはだれもかもに全部オープンにするわけではない、関心のある者に見せるわけですけれどもね。税は一つの例ですけれども、もし公以外のものが例えばあの人の財産をさっと調べたい、一遍にばっとわかってしまうというような話になって、恐らく個人のものについてはそういう要求があってもやらせるなということになっていると私は理解しておりますが、そうですか、ちょっと局長
  196. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 御説のとおり、先ほど局長が申し上げましたとおり、そういうプログラムがないわけでございますから、そういう要求があっても応じられないということになるわけでございます。
  197. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 いや、プログラムがあるないなんということは、本来これはつくればすぐできるわけです。それは余り理屈にならないのですよ。そういうことをしないことにしているのかどうかですね。
  198. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 しないことにしております。その公のものにつきましても、今後国民のコンセンサスが出まして、そういう法律等でそうしてもいいよということをはっきりされれば応ずることにはやぶさかでありませんが、今のところはこっそりとそんなことをするつもりはないわけでございます。
  199. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 コンセンサスというのはさっきも出てきたような話であれでございますけれども、これはやはりこれからの、さっき私はデメリットがないのかということを言ったのは、デメリットはただ経費だけの問題ではない、もっと基本的な問題がある。公開を本旨とする登記制度と、反面において、今までは余り問題とならなかった、例えば個人の財産が一遍に把握できるとかいうような問題が出てくる。こういったものを、ではどの程度みんなに知らせていいんだ、それがまた公の機関の場合だったらそういうものを使っていいのかどうかという幾つかの問題に分類されるわけでございますけれども、これについて答申がある程度触れておりますけれども、例えば税の問題とかそんな話まで触れていない。ひとつこれからの検討課題として考えていただきたいと思います。  これが電算化に伴うメリット、デメリットの話でございますが、次に、さっきちょっと出てきた、登記される以上それが真正でなければならない。真正さをどう担保するかという問題があるわけですね。それにつきまして、あるいは同僚議員が既に聞いたかと思いますけれども、いろいろ要望の中には登記原因証書添付義務というような話もございますが、この点についてはどう考えていらっしゃいますか。
  200. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 現行法のもとにおきましても、登記申請の添付書類として登記原因証書は原則的には要求されているところでございます。しかし、これが存在しない場合などには申請書副本でもって代替できるというのが現行法の建前でございまして、実際に登記原因証書が存在しない場合がある以上、そういう例外的措置は今後も維持しなければならないのではないかと思っております。
  201. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 これは考えてもあれなんですが、ただ、比較的最近のように不動産の価値も上がり、いろいろな権利義務の問題が非常に強くなってきたときに、それは民法の原則との絡みもありましょうけれども、そういう原因証書はやはりきちっとつくらせるべきだというスタンスも十分あり得るわけでございます。それをつくらせた上でやはり添付すべきであろうという議論も十分成り立つのでございますけれども、この辺はそういった方向に今後持っていくべきとお考えになるか、今の原則はつくられない場合もあるからこのままでいこうとお思いになるのか、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  202. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 いろいろ御議論に出ております登記原因証書というのが、物権変動を生じせしめた原因となる法律行為についての書面であるという従来の枠を超えまして、むしろ登記を申請するに当たって登記の意思を明らかにするための書面として必要なのだ、こういう御議論がどうもなされているように私ども感じているわけでございます。そうなりますと、登記申請の意思があるのかどうかということは、現在の建前のもとでは、これは登記申請書とそれに押された本人の印の印鑑証明、あるいはこれが代理人によってなされた場合には、委任状とその委任状に押された印の印鑑証明というものでもってその登記申請の意思があることを確認するという建前になっているわけでございまして、それと御議論になっている登記原因証書というものとはどういう関係に立つのかということをもう少し突き詰めてみないといけないのじゃないか、どうも同じものをおっしゃっているのじゃなかろうかというふうな感じがいたしております。
  203. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私の言っているのは、その登記をする意思があるかないかというよりは、登記のいわば事実が本物であるのかどうか。要するに原因行為がきちっとあって登記されるわけですけれども、私が言ったのは何も登記の意思の問題ではございませんで、登記事実が本物であるのかということを証する原因証書そのことを言っているわけです。
  204. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 例えば所有権移転登記をする原因となりました行為と申しますと、売買などが挙げられるわけでございますが、売買をした際の契約書が存在すれば、契約書なり売り渡し書などというものが登記原因証書になるわけでございます。しかし、今の民法の建前では、必ず書面をつくらなければ契約は成立しないという建前もとっておりませんし、書面をつくらないと物権変動は起こらないという建前もとっておりません。そういう意味合いからいたしますと、常に原因証書はあるとは限らないわけでございます。そしてまた、契約によらない原因による物権変動の場合には、書面のないことが多いわけでございます。そうしますと、そういう場合にはつけろと言ってもつけられないわけでございますから、登記原因証書を要求することができないことになるのであります。
  205. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私もさっき民法の問題がありますよという話をしたので、その点のことはもちろん理解しているのですけれども、ただ逆に登記で対抗要件をはっきりと表示してもらいたいというような場合にはそれなりの、今の売買は契約書がなくたって云々という話もありますけれども、あるいはいわば相続とかそういった文書になじまないものという話もありますけれども、それはそれなりの新しいというか、相続の実体を示すようないわば文書も作成できないことはないのでございまして、そして登記事実の真正を担保するものについて少なくとも対抗要件としての登記を要求する以上、それなりの文書的な基礎を民法とは別に、民法原則はそういった文書がなくたってやっても構わない。ただ、対抗要件としての登記を要求する以上はそれなりの文書なりのものを作成させる。これは何も民法原則の応用というか、文書がなくたって契約は成立する。ただしそういう登記を要求する、表示行為を要求するためには、それなりのものをつくるというのも一つの考えではあるまいか。  これは登記法上の問題になるのか民法上の問題になるのか。私はむしろ民法上よりも登記法上の問題になると思いますけれども、その点についてそういった考え方があり得るのではないか。民法原則を変えなくても、登記における公的な表示を要求する以上、それについての原因証書をつくらせる。例えば相続の場合に合意なんかなくても相続を証する書面ということも十分あり得るわけでございますから、これは私の思いつきでございますけれども、今の司法書士会が要求している一つの理論的な側面はそういう面もあるのではないかなと思いますが、いかがでございますか。
  206. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 確かに登記の事実をはっきりさせる、あるいはそれが真実であることを担保させることは非常に大切なことでございますが、それを登記を機縁としてわざわざ書面をつくらせるということになりますと、現行制度の上でも申請書で当事者双方が両方とも一緒になって登記を申請しなければならないことになっているわけでございまして、その申請書の中にはそういう原因も含めて所有権を移転するという意思は明らかになっているわけです。その場合に、それとは別にわざわざ売買契約書という形でそれをつくらせたところで、それがたまたま登記を機縁としてつくるだけのものでございましたら、その登記申請の趣旨に合わせて適当なものをつくればいいだけのことになるわけでございまして、余り登記の真正のために役に立つということにはならないのではないかという感じもするわけでございます。どういうふうにしてその登記原因証書というものの真実性を担保するかということをあわせて考えてまいりませんとうまく動かないということがございまして、そのところについてまだうまい知恵が出てこないというのが現状でございます。
  207. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 文書作成というのは、登記のときだけ初めて仮契約的なものを書かねばならないかどうなのかという議論もあるかと思いますけれども、これは真正であるかどうかを担保するために、例えば、では売買契約者が二人来て、ここでもってうんと言った、それは何も契約書をつくらないという形でも、本当にそれが真正が担保されればそれなりの一つの証書で確認の証書をつくってもいいわけですから、何も第一条、第二条、第三条というようなことまでしなくてもいいのかもしれません。しかし、いずれにせよ、真正を担保する意味では何らかのそういう行為が、少なくとも公的な表示機関であるところの登記を要請する過程において、その真正をより強く担保する意味において、何らかの証書作成ということがあってもしかるべきではないかなと私は思うわけです。  それについて、特にいろいろな権利関係が錯綜してきて公示が大事になってきているときは、民法上は一応そういったものがなくてもできるにしても、登記法上はそういったことを考えてもしかるべきかなと思います。これはいささか議論が重複しますけれども、今後の検討課題であるかと思いますが、いかがでございますか。
  208. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記をするならばそのする際に原因証書をつくれ、こういうことになりますと、登記申請書に判を押すと同時に、あるいは委任状に判を押すと同時におっしゃるところの原因証書にも判を押せ、こういうことになるわけでございまして、登記申請書なり委任状なりが真正で正しいものでございますれば登記原因証書も正しいものになるわけですけれども申請書自体がどうも本人の意思に基づかずにつくられたというような場合ですと、登記原因証書も同じく本人の意思に基づかずにつくられたという場合が多いのではなかろうか。結局同じことに帰するのではないかというふうな感じがするわけでございます。
  209. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私は何も例えば契約書の判を登記のときに押せと言っているのじゃ毛頭ないのであって、それはもちろん合意が成立したときにちゃんとそういった契約書なりなんなりできるということでございまして、何も登記のときに一緒にやれというのじゃなくて、登記を要求する以上はそのときに何らかの契約は、合意が成立するにしてもきちっとしたものを一応つくっておくべきなんじゃないかな、それをもとにしてやるべきじゃないかなという考えでございます。これはいささか細かい話になりますから、私の持ち時間も一応あれですから、この辺でやめておきましょう。これは今後の検討課題ということに考えますけれども、これは大臣いかがでございますか。
  210. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    林田国務大臣 登記原因証書というのは、その登記についていわゆる歴史を残しておくということになるだろうと思うのです。しかし、それがそんなに意味がないということもあるかもしれませんが、将来のためにはこれは歴史として残っていくものと考えられまするし、十分検討に値する問題である、かように存じます。
  211. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私の言っていますのは、歴史もさることながら、登記事項が真正であるかどうかを担保するための文書でございますから。  では次に、これからいろいろ司法書士の機能というものをどういうぐあいに考えていくのかな。さっきも同僚議員からいろいろ話がございました。これは大きな検討課題だと思いますけれども、日本の場合には非常に弁護士も数は少ない。それから司法書士も余り多くない。一万五千人ぐらいだと聞いていますが、アメリカあたりは弁護士がべらぼうに山ほどいるので、例えばよく日米関係で弁護士の自由化なんという話があって、私は向こうの何十万もいるのとこっちのちょっぴりのと全く対等に考えるのはおかしいよというような議論をいたしましたけれども、これは例えばイギリスなんかはバリスターとソリシターというようなものがいる。日本の場合に、いろいろ司法書士に私も知り合いはいますけれども、ちょっとした法律相談は随分司法書士のところで裁いているものもあるのですよ。しかし、これを全く弁護士と同じ資格を与えるということは毛頭いかない、弁護士試験という大変難しい試験があるわけですから。若干弁護士と今の司法書士の中でもう少しソリシターに近いようなものをつくっていくのも一つの方法でございますし、あるいは弁護士の立場からいえば弁護士の数をもっとふやすべきだという議論になるかと思いますけれども、この辺は非常にデリケートな問題でございますが、これは今後、今司法試験の改正案が出てきていますね。この問題については最後にちょっと、一体いいのかどうかという問題があるのですけれども、それはむしろ一般質問に入れた方がいい話かもしれませんけれども、それとの関連で将来の司法書士の地位というか、それをどう考えていくのかなということについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  212. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 司法書士登記、供託の手続の代理あるいは裁判所等に対して提出する書類の作成といったような業務を任としているわけでございまして、その業務を処理するためには一定レベルの法律知識を必要とする。そういうことでもって国家試験も課せられて、一定の資格が承認されているわけでございまして、その業務を遂行する上でもって市民に最も身近な存在として、相談相手となって親しまれる存在となっているわけでございまして、こういった司法書士の仕事がこういった面でさらに充実されていくことは望ましいことであろうと思っております。ただ、これは関連の業種といろいろ影響があることでございますので、慎重に考えさせていただく必要のある面もあるわけでございます。
  213. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 今時間もございませんから、私どもはどうも当選人数が少ないものだから質問時間がいつも短くて非常に残念ですけれども、最後にちょっと時間がございますので。  司法試験の話ですけれども、今度いろいろ改正されて、例えば三回、若いうちに受けたものは数に教えないという話もあるようでありますが、回数制限をしたり、人数も若干ふやしましたけれども、アメリカあたりのあれから比べると人間は全然少ないのですよね。アメリカのやり方というのはまた随分ちょっと、学校を出さえすれば弁護士にするくらいの、弁護士が非常にやさしい。あれは逆に質がえらい低下しちゃって、何でもかんでも事件にするような事件屋的な弁護士がふえてきているという要素もあるかと思いますけれども、これからのあれとしては、今まで日本人権利は余り主張しなかったわけですけれども、これは非常に最近はそういう権利の主張に訴えるということになってきている。これは裁判官の数の問題もあるのですけれども、もう少し弁護士にしても判検事にしても数はふやした方がいいのじゃないかなという気がすると同時に、その三回、日本人というのは柳の枝に飛びつくカエルで、何回も何回もやる人間がそれなりのまたあれがあるので、何もそんな無理に、おまえ三回受からなかったらだめよということもあるまいなという気もするのですけれども、その辺、今度の司法試験の改正案あるいは弁護士の数なんかについて、さっきのいわば司法書士の数の問題もございましたけれども、どうお考えになるか、最後にこの質問をしてお答えを承りたいと思います。いかがでございますか。
  214. 根來政府委員(根來泰周)

    根來政府委員 十分御理解いただいておるところでございますけれども、今の司法試験の現状というのは非常に憂慮すべき現状にあるわけでございます。繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、六回受けて合格の年齢が平均で二十八歳というのはいかにも遅過ぎるということもございますし、二十五歳以下の者も全体の二〇%ぐらいを占めているということでございまして、もう少し若い者が通るような試験にしたいというのが私どもの希望でありますし、また大方の御希望であろうと思うわけでございます。  そういうことで、この間法曹基本問題懇談会で御意見をいただきまして、やはり回数制限とそれから今先生が御指摘になりました法曹の人口をふやすというところから、これは幾らとは言っておりませんけれども、七百人ぐらいふやしたらどうかというような御意見が非常に強かったようでございます。そういうようなことも踏まえまして、私ども事務案といいますか、そういうものをつくりまして、弁護士会なり裁判所なりあるいは学界、大学の御意見を聞こうという段階に至っておるわけでございます。  その中に、ただいま申されましたような回数制限というふうな、若干外科的な方法も方策として提案しているわけでございます。これは結局、何回も受けるという者と、大学を卒業してまだ間もない者が受けるというのは非常に条件が違うわけでございまして、その条件をそろえまして、同じスタートで受験していただいて、そしてその能力を見ていくのがいいんじゃないかということで、三回ぐらいはどうだろうかというようなことで現在提案をしているわけでございますけれども、それに加えまして、現在受験中の者が不利益を受けないように十分配慮していくということが前提でございますけれども、そういうことを現在考えており、また一方では法曹人口もふやしていこうということで、七百人ぐらいはどうだろうかなというようなことで、今各界に提案して御意見を聞いているところでございます。十分御理解をいただきたいと思っております。
  215. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 何百人がいいかどうかというのは、将来どうなるのかという一つの見通しのもとにやらなければいかぬことだし、しかも、弁護士ばかりふえても裁判所の裁判官が余りふえなかったら、なかなか裁判もすらすらいかない。その相関関係があると思いますけれども、それは長期的な見通しでもう少し人数を考えなければいかぬと思いますが、三回受からなかったらおしまいよというのではなくて、もっと若い人間も受かるような試験を出せばいいのだし、人数も要するにもう少しふやしていけばいいので、能力が本当にないのか試験のやり方が悪いのか、はっきりしないわけで、それは三回で無理に切ることはないんじゃないかな。しかも長寿社会の今日ですから、年とってからなった、それなりの人生経験もあるかもしれません。若い者が受からないというのはそれなりの試験の出し方が悪いのであって、何も浪人が大勢いるから、そしてそればかりがとは思わないので、これはちょっと私は残念ながらもう時間がなくなりましたので、私の場合は委員が少ないからこの次もまた立てるかと思いますので、この辺でやめておきます。     〔今枝委員長代理退席、委員長着席〕
  216. 戸沢委員長(戸沢政方)

  217. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 今度の不動産登記手続のコンピューター化の問題につきまして、午前中から、それから先ほども、一体どういうメリットがあるのだろう、それからデメリットもあるんじゃないかというお話がありました。そして、それに対して法務大臣あるいは民事局長の方から御答弁がありましたので、繰り返すことはいたしませんが、普通こういうコンピューター化というときには、人手でやっておったのを機械にやってもらうとか、だから人数の節約になるとか、人数の関係で言いますと、大臣承知のように、登記所関係の人手が少ないので人数をふやしてほしいという請願が何回も出されてそれが採択をされているという状態にあるのですが、それが人数をぐっと減らすことができるんだというようなメリットがあるのかな。それから、普通はこういう機械化によって経費が非常に安くできるんだというのがメリットというふうに考えられるのですが、先ほどお伺いしておると、デメリットの方は費用がかかるのだというふうに答弁をされておるわけですよ。そして、メリットの方はその証明書がきれいになる、それから遠隔地から証明書がとれる、それから甲号事件では手続が簡便で迅速だ。どうもこれは、人数の関係からしましても、職場の人たち意見を聞きましたが、ほとんど変わりないという話です。これだけのメリットで、後から順次お尋ねするわけですが、相当莫大な費用がかかる。これは一体何でコンピューター化をするのかな、ようわからぬようになってきたのです。普通は費用が少なくて済む、人手が少なくて済む。ところが、どうも逆じゃないかなという気がするのですが、その点どうですか。
  218. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 コンピューター化を進めることによって人員についてどういう効果が出てくるかということは、コンピューター化が完成した後のことと、それからそれに至るまでの経過的な段階とで若干事情が違ってこようかと思います。  コンピューター化の初期におきましては、現行事務処理と並行してコンピューター化のための移行作業を進めなければならないわけでございます。また、登記事件は年々増加を続けているわけでございますので、そういう意味合いにおきましては、今後もやはり人員の必要は出てくるわけでございます。コンピューター化が相当程度進んだ、あるいは完成した後におきまして定員事情にどのような影響を与えるかということは、これは、相当程度登記事務の上でコンピューター化による省力効果というのが出てくることは予想できるわけでございますけれども、その効果を厳密に推計するということは現時点では困難であろうかと思います。  同時に、現在の登記事務の処理は事件の増に応じた人員の増ができておりませんために、もろもろの審査事務がかなりお留守になってきている面がございますので、そういった省力効果が出てきました場合には、今後は登記の審査事務を充実させていくという方向に相当力を注がなければならぬのじゃないか、また、それが可能になってくるのじゃなかろうかというふうに期待をしておるわけでございます。
  219. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 いろいろ話を聞いておりますと、今度は謄抄本のかわりに登記事項証明書ですか、それを出されるということですが、これまでも謄抄本を交付するときに手数料が要りますね。その手数料よりも登記事項証明書の交付を受けるには手数料が高くなる、増額をするということは考えておられるのじゃないですか。だから、そういう点も国民にとってデメリットの方じゃないのかなというふうに思うのですが、どういうような計画でおられるのでしょうか。
  220. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記事項証明書は、コンピューター化した後において現在の謄抄本にかわるものとして考えているわけでございます。したがって、これの手数料というものは現在の謄本に準じて考えるべきものではなかろうかというふうに思っております。ただ、一つつけ加えておく必要がございますのは、コンピューター化経費というものは、特別会計のもとにおきまして手数料による財源を中心として組み立てられております。今後の移行計画の中で、その財源確保の意味合いも含めまして、手数料の増額を図らなければならない事態というものが出てくるのではなかろうかというふうに考えております。それは財源計画の中に組み入れて考えているところでございます。
  221. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 ですから、そういう関係もこれは国民にとってはデメリットじゃないのかなというふうに思うのです。具体的には後々お尋ねをしたいと思うのです。それから、これも後でお尋ねをしたいと思うのですが、今度は閲覧というようなことがなくなって、登記事項要約書ですか、それを出されるという話も聞いているのですね。そうすると、閲覧できなくなるという不便というものも、これはデメリットの方じゃないのかなというふうに思うのです。  こういうふうにいろいろな問題をはらんでおるというふうに思いますが、まず、細かいことで恐縮ですけれども、今度の改正法案百五十一条ノ二、これは新設のところですが、これと百五十一条ノ五なんかを見ますと、登記簿という言葉が出てくるのですね。百五十一条ノ二は「登記簿ハ磁気ディスクヲ以テ之ヲ調製ス」。そして百五十一条ノ五にくると、「第百五十一条ノ二第一項ノ登記簿ニ記録シタル事項」というふうになってくるわけです。そうなると、登記簿という言葉はあるのだけれども、今度こういうコンピューター化することによって何を登記簿ということになるのか、登記簿というのはもうなくなるのだろうか。百五十一条ノ二の関係でいくと磁気ディスクを登記簿というのだろうか、あるいは百五十一条ノ五の一項の終わりの方にある「新登記簿登記記録」を登記簿ということになるのだろうか、ちょっとようわからぬのですが、その辺のところを説明してください。
  222. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 不動産登記法は、十四条において「登記簿土地登記簿及ヒ建物登記簿ノ二種トス」、これが一番初めに出てくる条文でございます。要するに、土地に関する権利関係を公示する登記簿と建物に関する権利関係を公示する登記簿と二通りある。そういう意味では、登記簿というのはそういう登記事項と申しますか、あるいは不動産に関する権利状態を公示している、そういう登記事項をまとめた情報の集合体であるという意味で使っているというふうに考えておるわけでございまして、その媒体として紙のものと今度のように磁気ディスクを使うものとがあるというふうな区分けをしております。
  223. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そうすると、今紙と磁気ディスクを使うものがあるというふうにおっしゃるのですが、今度は、全部がコンピューター化されるまでは紙と磁気ディスクが登記簿ということになるわけですか。
  224. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 そういうことになろうかと思います。
  225. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そこで、今登記法の十四条をおっしゃったのですが、十五条には「登記簿ハ一筆ノ土地又ハ一箇ノ建物ニ付キ一用紙ヲ備フ」、こうある。だから、先ほど紙とおっしゃったと思うのですが、十五条のところで磁気ディスク、これを入れないと法律の条文の体系として整合性がつかないのじゃないかという気がするのです。百五十一条ノ二でいきなり「登記簿ハ磁気ディスク」というふうに出てくるのですが、そうすると十五条のところでひとつこの手当てをしておかないとおかしいのじゃないのかと思うのですが、どうですか。
  226. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 その点は百五十一条ノ八で、登記用紙あるいは用紙とあるのは登記記録と、一用紙とあるのは一登記記録と読みかえるというふうにしてありまして、要するに一枚の紙ごとにつくるのが普通の登記簿でございますけれどもコンピューター登記簿の場合には登記記録という情報の塊を不動産ごとにつくりまして、その情報の塊を登記記録と呼ぶことにして、登記用紙と対比しているわけでございます。
  227. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 整合性の関係があるものですから、細かい話で恐縮ですが、そうしますと登記簿というのは磁気ディスクじゃなくて、コンピューター化されたときは磁気ディスクで調製をされた登記記録、これが登記簿ということになるのですか、磁気ディスクではなくて。
  228. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 二つの概念がございまして、一つは観念的な情報の塊という意味では、おっしゃるようにディスクの場合には情報の塊は登記用紙ごとではなくて、登記記録ごとに集まったものだということになるわけでございます。ただ媒体と申しますか、材料と申しますか、そういうものは紙と磁気ディスクになる、こういうことになるわけでございます。
  229. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 大体わかったような気がするということですが、そこで百五十一条ノ二によりますと、もちろんこの法案が法律として成立したあげくのことでありまずけれども、法務大臣コンピューター化する登記所を指定する、こういうふうにあるのですね。指定したということは、二項では「告示シテ之ヲ為ス」というのですが、やはりこれは国民にわかるようにしていただかないと、どこの登記所に行ったら今度は閲覧ができないとかなんとかということになってくるわけですから、一般国民に対してはどういうふうにして告示される御予定ですか。
  230. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 告示は官報でいたします。
  231. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 官報というのは見る国民は余りないんじゃないかと思うのですが、これは何かいい方法を考えるべきじゃないかと思うのですよ。午前中も、この法律国民のためにあるという大臣の御答弁もあったし、もちろんこの不動産登記法もそうだし、そして相当画期的な改正案でありますし、国民にとってはちょっと勝手が違うと思うのですね。行ったところがそこはもうコンピューター化されているところだ、指定されているところですよ、あなた今ごろ何言っているんだと言ったってそれは始まらぬわけですから、官報だけじゃなくてもっとほかの告示の方法も考えていただきたいと思いますが、どうですか。
  232. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記所にはその旨を掲示して周知を図るということになります。なお、それ以外の周知方法といたしますと新聞などがあるわけでございますけれども、それをどうするかはちょっと考えさせていただきたいと思います。
  233. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 新聞ばかりではなくて、今のマスコミはテレビというものもあるのです。せっかくコンピューター化をお考えになる法務省当局が新聞と官報だけでは、いかにも寂しいと思うのです。やはりテレビ、こういうものを考えて、周知徹底をされるように考えていただく必要があると思います。  そこで、指定をされるわけなんですが、千百七十の登記所があるのですが、幾つぐらい初年度指定をなさる御予定で今考えておられるのか。具体的にどことどことどこというふうに考えておられるのでしたら、それもお聞かせいただきたい。
  234. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 現在、東京法務局板橋出張所においてパイロットシステムと称しまして、簿冊コンピューターの並行処理を行っております。この法律が成立いたしましたならば、今年度はまず第一号として板橋出張所を指定していただきまして、ここでコンピューターによる登記を行ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  235. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 これ一つというのは、徐々にやっていかれるという御計画ですからさもありなんと思うのですが、そうしますと、来年度にはまた幾つかというふうに考えられると思うのですが、ふやしぐあいというのは大体どのぐらいに考えておられるのですか。
  236. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 特別会計を設けていただきまして、それでコンピューター化を実施するということになっております。経費関係がございまして、出だしはかなりスローペースで進むほかはないわけでございますが、順次移行の対象庁数をふやしてまいりまして、計画の後半の方に傾斜をいたしますが、大体十五年見当で移行を完了して全面的なコンピューター化に移りたい、こういうふうに思っております。
  237. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 今板橋の話が出ましたけれども、これはいつから着手されるのですか。今は簿冊方式といわゆるブックレス方式と両方並行処理をしておられるという、実験をしておられるわけですね。これは並行処理の実験ですね。今度は並行処理ではなくなっていくわけなんでしょう。実験ではなくて、いわゆる登記事務をいきなりおやりになるということなのかということも含めてお聞きします。
  238. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 コンピューターで扱う場合には、まず現行の紙の登記簿からディスクへ移さなければならないという作業が要るわけでございまして、これにかなりの日数を要するということから、さしあたり登記事務を現実にこれで処理する登記所国民との関係でそういうことが問題になる登記所というのは板橋が初めになるということでございます。板橋につきましては現在並行処理をやっておりますけれども、それは必ずしも全不動産についてやっているわけではございませんので、一部分でございます。それをなるべく早くやりたいということでございます。できれば七月ごろということを目標にしておりますけれども、私どもとしてはできるだけ早くというふうに申し上げたいわけでございます。
  239. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そうしますと、移行作業に時間がかかる、その時間を見て、実際に国民が例えば登記事項証明書を下さいと言ってきたときは、全部の不動産ではないけれども、たまたまその不動産がそれに合致しておった場合は、その登記事項証明書をばんばんと出してやる、そういうような実際の仕事を七月からおやりになるのか、そうではなくて七月からさらに実験ということをおやりになるのか、どちらですか。
  240. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 その実験という趣旨がよくわかりませんが、この法律では、指定をすれば証明書を出すということになっておるわけでございまして、これは、実験というようなものではなくて、国民との関係ではまさしくそれが登記なわけでございまして、そういう意味でそういう取り扱い、ブックレスの登記事務処理を早急に始めるということになるわけであります。  ただ、それについて今後いろいろの試行錯誤というようなものはあると思いますので、そういう意味での実験的要素が全くないというわけではないわけでありますけれども、それは国民との関係では、やはり本当の登記というふうに言わざるを得ないわけであります。
  241. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そうしますと、実験という面もあるけれども、そういうシステムに繰り入れることになった不動産については、もうこの百五十一条ノ二に従ってやるということなんですね。実験を繰り返して、なるほどこれで間違いないなというようなことはおやりにならないのですか。
  242. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 板橋出張所でもって、これは現場ではございませんで実験室でございますけれども、実験を重ねてまいりまして、完了をしたわけでございます。これを今回は現場の登記所へ持ち出して、法律に基づいた登記事務処理をやるということでございますので、実験的要素は、現場における実験としての要素はございますけれども、これはまさに法律に基づいた登記事務処理であるということになるわけでございます。
  243. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 私が気になるのは、移行するでしょう。移行するために入力するわけです。入力をしてそれがそのまま所期の目的を達するようにきちっと間違いなく出てくるのかどうかということを確認する作業というのは、やはりある一定の期間必要じゃないのかなという気がするのです。だから、それは今できるだけ早くとおっしゃったと思うのですが、七月ごろまでの間にそういうことをおやりになるのか。今お話を伺っておるところによると、移行作業に手間暇がかかるので、実際に始めることができるのは七月ごろからだ、だから七月ごろまでは移行作業にかかっておるのだ、そして移行した結果、間違いなく正確なものがきちっと出てくるかどうかということを確認する作業をなさらないで、もう七月からすぐ国民に対して百五十一条ノ二に従って作業をして登記事項証明書なり要約書なり、あるいは甲号の受け付けならそれも受け付けて、コンピューターで操作するような実際の仕事をおやりになるというのはいいのかなという気がするのです。一遍実験して間違いないという確認をやってみる必要があるのではないかと思うのですが、どうですか。
  244. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 移行の作業というのは常にそういう作業を伴うわけでございまして、謄本証明書を出してみる、あるいは甲号申請をちゃんと受け付けて作動するかどうかということをテストした上で、これで移行は終わったということでございまして、何でもかんでもデータを入れてしまえばそれで移行だということではございません。そういう意味では、万全の準備をしてから、これからいよいよ実行に移すということになるわけでございます。
  245. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 移行するときには作業が必要なんですが、これは移行センターというものは別におつくりになるのか。それから、人手なんかはどういうふうに考えておられるのですか。
  246. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 ブックの登記簿からコンピューター登記簿移行する作業は各法務局、地方法務局単位でつくりますそれぞれのバックアップセンターに、その法務局管内の移行作業を担当させることにいたしております。そのバックアップセンターでは、この移行作業を行うに当たりましては、移行段階に応じましていろいろな作業があるわけでございますけれども、その作業の主要な部分は外部委託をして民間活力を活用することにするわけでございますが、移行内容の最終確認はやはり法務局の職員がバックアップセンターで行うことになるわけでございまして、そのためにバックアップセンターの要員が必要であるということになります。
  247. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 今全体のお話をなさったのですが、板橋の場合で言うと、何か話に聞きますと、この板橋の出張所がバックアップセンターになる。しかし、これは仮のバックアップセンターだという話も聞いておるのですが、それは仮かどうかもできたら話していただきたいと思うのです。今現在、板橋に並行処理しているコンピューターがありますね、あれをそのまま使うのか、全然違うものを持ってきてやらなければいかぬのかどうかということ。そうなると、あの建物の容量の関係とか、人もまた外部委託というお話もおっしゃったのですが、そういう人たちも来ることになるわけだし、その移行作業というのは別個にまたやらなければいかぬわけだし、これはうまくいくのかという心配があるのですが、その点はいいですか。
  248. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 バックアップセンターはいずれ本格的なものをつくる必要がございますが、当面は板橋を仮バックアップセンターにして対処してまいりたいと思っております。そのための機器は、バックアップセンター用のものは新たに導入するということになります。あそこの板橋の建物は比較的新しく建てられて、並行処理を前提にしてつくったものでございまして、仮バックアップセンターをそこにさらに併置するという程度の余裕は持っておるので、さしあたってその機能は果たしていけるのではないかと思っております。
  249. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 十九日にはお邪魔をして、その関係も含めてよく拝見してこなければいかぬと思うのですが、今並行処理しているコンピューターの機器以外に、今度の本格的なコンピューター化の機械は恐らく全然別のものじゃないかという気がするのです、よくわかりませんけれども。そうすると、新たなスペースをとらなければそれは入らないと思うし、だからその辺のところはいいのかということなんですが、今別の機械かどうかということもまだ全然返事をいただいてないのですが、どうなんですか。
  250. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 バックアップ用と登記所用と、二つ要るわけでございます。そうして、今までのところには当然登記所用のものが使われ、あともう一つスペースを設けてそこに仮バックアップセンター用のものをつくる、こういうことになるわけであります。
  251. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 一遍よくその辺のところを頭に置いて見せていただいた上で、またこの点もお尋ねをしたいというふうに思うのですが、板橋の場合でいきますと、全部この法案に従った本格的なコンピューター化、全部国民に対応できる、要請に対応できるというふうになるのはいつごろになりますか。
  252. 稲葉政府委員(稲葉威雄)

    稲葉政府委員 今年度後半までには完全な形に持っていきたいというふうに思っております。
  253. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そこで、登記所、出張所になるかと思うのですが、コンピューターの本体は置かないで端末機だけ置くことにしておる、そういう登記所もあるのですか。
  254. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 原則としては各登記所ごとにそれぞれコンピューターを置きまして、独立完結的に処理をすることにいたすわけでございますけれども登記の取り扱い事務量が非常に少ないところでは、そのことがかえって経費の面では効果とのにらみ合わせで申しますとマイナスになるというところがございますので、そういう小規模の登記所においては、コンピューター本体は置かないで端末機器を設置いたしまして、隣接の登記所コンピューターと通信回線でつないで処理をするということを考えております。
  255. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 大体それは幾つぐらい考えておられるのかということと、端末とそれに関連する機器だということになるのですが、それはどういうようなものを、今の煩雑でないところの登記所の話ですよ、どういうような機器を置かれることになるわけですか。
  256. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 登記甲号の事件数で一定の線を引くわけでございまして、件数であるところで線を引きまして、大体四百庁ぐらいは端末処理をするというふうな形に持っていくのが最も効率的ではなかろうかというふうに今試算をしているところでございます。そういうところに置きます端末は、もちろん登記の受け付けから始まりまして校合に至るまでの全部の工程の処理ができる、そういう機能を備えた端末を設置するわけでございます。
  257. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 そこで、構想としては三段階で、中央の情報センター、それからバックアップセンター、それから登記所、こういう格好になるわけですが、そういう話を聞いておるのですが、大体人数の配置は情報センターに何人、バックアップセンターに何人、登記所に何人と、どういうふうに人数の配置を考えておられるのですか。
  258. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 バックアップセンターにつきましては、当面一局つまり一バックアップセンター当たり三人程度移行対象庁がふえますともう少しふやさなければなりませんが、大体その程度の要員を考えております。  また、登記情報センターにつきましては、これも移行の進展に応じまして要員の必要数が変わってまいりますが、最盛期、つまり全国の五十のバックアップセンター全部が稼働するようになったときには三十五名程度が必要なのではないかというふうに見ているところでございます。
  259. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 これは、新たにそれだけの人が要るということになるような気がするのですがね。バックアップセンターは新たに設けるわけですし、それから情報センターも新たに設けられるわけですから。各登記所では、別に特別そういう人数をふやすというようなことは必要ないのですか。あるいは考えておられないのですか。
  260. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 各登記所では、コンピューターを操作するオペレーターというものは必要がない、そういう仕組みになっております。
  261. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 今は情報センターの場合最盛期、それからバックアップセンターの場合もそれぞれのバックアップセンターの完了したときというふうに理解しますが、そういう配置が最終的になるということのようですが、移行作業をするのに、先ほど外部委託というようなこともおっしゃったのですが、外部委託の人をもちろん含めて、延べで何人ぐらい完了までかかるだろう。あるいは徐々にふやしていくとすれば、そういう計算もしておられるのだろうとは思うのですが、初年度は何人ぐらいだけれども、次年度は五つか六つにしようとか、バックアップセンターを十にしようとかいう御計画はもちろんおありだろうと思うのですけれども、それは予算の関係もこれあり、そうとばかりいかぬということもあるかもしれませんが、やはりそういう移行作業に延べ何人、人が必要なんだろうかというふうに考えておられるのですか。
  262. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 これはなかなか難しいことでございまして、延べ何人ぐらい……(安藤委員「大ざっぱに」と呼ぶ)大ざっぱと申しましても、ちょっと何人ぐらいということまでは算定いたしかねます。
  263. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 いや、それは大体のことぐらいは考えておられるのじゃないかと思うのですかね。それじゃなかったら、十五年間ぐらいで全部完了するのだということを言っておられる、すると、何人ぐらいで、これは次の機会にもお尋ねしたいと思うのですが、だからそのためには予算の裏づけが一体どれだけなんだということでしょう。すると、国庫支出が幾らだとすれば、何だか知りませんよ、特会の関係もあるし、そこからどれだけひねり出せるかとか、あるいは手数料をどのくらい上げなければ賄い切れないかとか、そういうような計画がおありになるだろうと思うのですがね。これは次回にお尋ねしますけれども、だから人数の関係は延べどれぐらいかかるだろう、その人件費はどれぐらいかかるだろう、外部委託するとすればどれだけかかるだろうとか、何かそういうような構想は持っておみえになるのだろうと思うのですが、今はお持ちでないのですか。
  264. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    藤井(正)政府委員 ちょっと現在わかりかねます。
  265. 安藤委員(安藤巖)

    安藤委員 それは、しっかりとそこら辺までも計画を立てて取りかかっていただかなければならぬ事業だと思うのです。だから、時間が参りましたから次の機会に質問をいたしますけれども、一遍それを考えておってくださいよ。そのようなことも考えておられないとすれば、そうしっかりした計画を立てておられないのじゃないか、場当たり的で、来年やってまた来年またと、これでいこうなんというようなことを考えておられるのじゃないかなと思って、少し危惧せざるを得ぬわけですけれども、また考えておってください。  時間が来ましたから、これで終わります。     ─────────────
  266. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会