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1988-03-25 第112回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十五日(金曜日)     午前九時五十三分開議  出席委員    委員長 戸沢 政方君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君       上村千一郎君    木部 佳昭君       佐藤 一郎君    塩崎  潤君       松野 幸泰君    宮里 松正君       稲葉 誠一君    冬柴 鉄三君       山田 英介君    安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         法務政務次官  藤野 賢二君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房司         法法制調査部長 清水  湛君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君  委員外出席者         警察庁刑事局刑         事企画課長   古川 定昭君         警察庁刑事局捜         査第二課長   垣見  隆君         警察庁刑事局保         安部少年課長  遠藤 豊孝君         警察庁刑事局保         安部保安課長  平沢 勝栄君         警察庁刑事局保         安部薬物対策室         長       島田 尚武君         警察庁交通局交         通指導課長   田辺八州雄君         法務大臣官房審         議官      日野 正晴君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      森  正直君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     佐藤 敬治君     ───────────── 三月二十四日  刑事施設法案の廃案に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第一〇二六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇二七号)  同外一件(中路雅弘紹介)(第一〇二八号)  同(中村巖紹介)(第一〇二九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇三〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一一五五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一一五六号)  刑事施設法案反対に関する請願瀬長亀次郎紹介)(第一〇三一号)  同(寺前巖紹介)(第一〇三二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一一五七号)  刑事施設法案早期成立に関する請願与謝野馨紹介))(第一一一一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出第四八号)      ────◇─────
  2. 戸沢政方

    戸沢委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長吉丸刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸沢政方

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 戸沢政方

    戸沢委員長 内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。林田法務大臣。     ─────────────  刑事補償法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 刑事補償法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金額は、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき千円以上七千二百円以下とされ、また、死刑の執行を受けた場合には、二千万円以内(本人の死亡によって生じた財産上の損失額が証明された場合には、その損失額に二千万円を加算した額の範囲内)とされておりますが、最近における経済事情にかんがみ、これらの額を引き上げることが相当と認められますので、右の七千二百円を九千四百円に、二千万円を二千五百万円に引き上げ補償改善を図ろうとするものであります。  以上がこの法律案を提出する趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 戸沢政方

    戸沢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 戸沢政方

    戸沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る二十九日、参考人出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 戸沢政方

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 戸沢政方

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  10. 戸沢政方

    戸沢委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冬柴鉄三君。
  11. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今次の「補償金の額の算定基準となる日額上限を七千二百円から九千四百円に引き上げること。」とする根拠とされた計数などはどのようなものを用いられたのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  12. 岡村泰孝

    岡村政府委員 今回の日額上限額引き上げにつきましては、基本的にはこれまでの改正と同様に常用労働者一日の平均給与額消費者物価指数上昇率を勘案いたしたものであります。  もう少し具体的に申し上げますと、刑事補償法制定されました昭和二十五年におけるこれらの数字を一〇〇といたしまして、昭和六十三年におきます推定値計算いたしたところでございます。それによりますと、賃金の方が三九五四・七、消費者物価指数が七二七・六となっているわけであります。これを平均いたしますと二三四一・二となりますので、本法制定当時の日額上限額四百円に対しまして二十三・四倍をいたしたということでございます。その結果の数字といたしまして九千四百円という数字が出てまいりましたので、この金額引き上げようとするものであります。
  13. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その昭和六十三年の常用労働者一日平均現金給与額というものを一万五千九百七十七円と推定して求められた、その根拠というものはどういうものなのでしょうか。
  14. 岡村泰孝

    岡村政府委員 労働省の作成いたしております昭和六十一年十二月分の毎月勤労統計調査報告というものがあるわけでございます。これによりますと、昭和六十一年の月間平均賃金が、事業規模三十人以上の場合でありますけれども、三十二万七千四十一円になっているわけでございます。一方、先ほどの報告昭和六十一年の平均出勤日数を見ますと二十一・八日になっておりますので、先ほどの三十二万七千四十一円をこの二十一・八日で割りました額一万五千二円という数字が出てくるわけであります。これが昭和六十一年におきます一日当たり平均賃金ということになるわけでございます。これを基礎といたしまして六十三年の金額推定計算いたしたわけであります。  その推定計算を行うに当たりましては、昭和五十七年から六十一年の間の五年間の平均賃金上昇率が一・〇三二になっておりますので、六十二年分、六十三年分の二年分といたしまして一・〇三二を二回掛けまして、一万五千九百七十七円という推定値計算いたしたところであります。
  15. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは、昭和二十五年法施行時の常用労働者平均月間現金給与額、これは一体何円だったわけでございますか。そういう統計は、どういう統計があるのですか。
  16. 岡村泰孝

    岡村政府委員 昭和二十五年の労働統計調査年報によりますと、九千六百八十七円という金額が出てくるわけであります。これは、平均月間現金給与額であります。
  17. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この金額増額改正というのは、過去、たしか今回含めて八回行われているように思うのですが、その際用いられた指数と申しますか、計数根拠にこの昭和二十五年の労働者賃金というものを用いられているのは、今回含めて三回あったと思います。それで、昭和三十九年の第四十六国会ではこの二十五年の賃金というものをどのように示されたのか、お答え願いたいと思います。
  18. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのときの計算説明では、三百五十二円といたしております。これは昭和二十五年の産業別常用労働者の一日平均現金給与額でありまして、もう少し具体的に申しますと、鉱業製造業卸小売業運輸業平均値であります。
  19. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、昭和五十七年の九十六国会でも増額改正が行われたと思いますが、このときにもこの昭和二十五年の常用労働者賃金というものを基準値にされたと思いますが、そのときはどのように示されたわけですか。
  20. 岡村泰孝

    岡村政府委員 このときは三百二十三円でありまして、これは昭和二十五年の常用労働者一日平均現金給与額でありまして、平均月間現金給与額を三十で割った数字であります。
  21. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そして今次百十二国会で同じ二十五年のものをお使いになったわけですが、これでは四百四円というふうになっていますね。そうしますと、今の御説明でも微妙にもちろん説明は違っていましたけれども、同じ二十五年の基準値というものをある場合は三百五十二円とし、ある場合は三百二十三円とし、ある場合は四百四円としていらっしゃる、これは一体どういう理由からそういうことになるのでしょうか。
  22. 岡村泰孝

    岡村政府委員 今回の改正案におきまして、常用労働者一日平均現金給与額を四百四円といたしているわけでございます。これは、昭和二十五年でございますが、先ほど申しました昭和二十五年の常用労働者平均月間現金給与額の九千六百八十七円を二十四で割りました結果の数値であります。  なぜこういうふうに数値が変わってくるかと申しますと、昭和三十九年の改正の際には、先ほど申し上げましたように鉱業製造業卸小売業運輸業という業種を絞りまして、その業種労働者賃金刑事補償法制定されました当時のそれと比較するという方法をとっておるわけでございますが、なぜそういうような方法をとったかにつきまして当時の資料等正確なものがございませんので、その点つまびらかにいたし得ないところでございますけれども昭和三十九年当時は、これらの四業種が代表的な産業と見られていたと思われるのであります。したがいまして、この代表的な四業種に従事いたしております労働者賃金を比較すれば賃金上昇趨勢が明らかにできるというふうに考えたからであろうと思われるのであります。  その後、昭和五十七年の改正の際には、業種をこの四つに限定しないで、常用労働者賃金を比較するという方法に変わっているわけでございます。この点でありますが、これはいわゆるサービス業等の第三次産業に従事する労働者が増加いたしました反面、炭鉱の閉山などがありまして、いわゆる鉱業の衰退といったような産業構造の変化がその間に認められたところであります。そういうような事情から、鉱業従事者などの賃金を比較することでは賃金上昇趨勢が的確に把握できないのではないかというような観点に立って、四業種というふうに業種を限らなかったのであるというふうに考えられるのであります。  今回の改正案の策定に当たりましては、昭和五十七年の改正の際は、一日当たり平均給与額計算するに当たりまして一月当たり平均給与額を三十で割るという方法をとっていたところであります。ところが、最近におきます賃金上昇趨勢を的確にとらえますためには、賃金額自体の増加とあわせまして、労働時間の短縮の傾向もやはり考慮する必要があるというふうに考えた次第であります。昭和二十五年当時と現在の一月当たり平均給与額をそれぞれの平均出勤日数で割りまして比較することによりまして、補償の一層の改善が図られるというところでこういうふうな計算方法をとったわけであります。基準となるべき昭和二十五年当時の賃金額が変わりますと、補償額計算上は変わってくるということになるわけでございますけれども、先ほど来申し上げましたように、経済事情変動をできるだけ的確にとらえまして、これを補償額改善の方に反映させたいということでこういう計算をいたしたわけでございます。  そこで、ちなみに申し上げますと、今回の改正につきましても、平均出勤日数の減少ということを考えないで昭和五十七年の改正と同じ算定方式計算いたしますと、日額上限が八千六百四十円となるわけでありまして、今回の改正案よりは改善の幅が小さくなってくるような計算結果になるということになるわけでございます。以上のような点で、計算方法に若干の違いが出てきておるということになるわけであります。
  23. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このようなものを出す場合に、時的修正ということでより正確にするということは非常に合理的な配慮であると私は考えるわけですけれども、しかし反面、継続性という、八回改正するのであれば八回とも同じ基準でやられるということでないと、そこに数字が恣意的な結果になる、このように私は考えます。  ちなみに、八回改正があったと申しましたけれども、その残りのあと五回は二十五年の賃金というものを用いられなかったのではありませんか。その点どうですか。
  24. 岡村泰孝

    岡村政府委員 今回の改正が八回目でございまして、過去七回の改正が行われておるわけでございます。五十七年の七回目と今回の場合は、制度発足当初にさかのぼると申しますか、昭和二十五年当時を基準といたしまして計算をいたしておるわけでございます。それ以前の、六回以前の改正につきましては、その前の、六回の場合は五回の改正時点における金額、ここをとらえましてその後の賃金上昇あるいは物価指数変動、こういったものによって引き上げ金額を算出しているところであります。
  25. 冬柴鐵三

    冬柴委員 なぜ変えられるのですか。それから、今回は全国消費者物価指数というものをお用いになりましたけれども、それ以前は、ある場合は東京小売物価指数東京消費者物価指数、それから全国卸売物価指数、こんなものまで用いて計算されたこともあります。一体どういう基準でこういうものをお出しになるのか。ある場合は東京卸売物価指数というようなものをお用いになって、これは全国に適用されるわけですから北海道の人も九州の方もこの数値になるわけですけれども、なぜそういう区々になるのか、その点を御説明願いたいのと、こういう法案資料として一回分だけ出されるというのは私はアンフェアだと思いますよ。やはり過去どういうふうな数値を用いられてどういうふうにされたのか、そういうものの流れも、もし今後やられるのであればぜひつけてもらわないと、これ一つだけぽんと出されたのでは、昭和二十五年の一日平均現金給与額が四百四円、こう言われてもわからないです。少し注意深く前にさかのぼったら、ある場合は三百五十二円になりある場合は三百二十三円、非常におかしいというふうに気がつくわけですけれども、そこら辺はどういう配慮からこういうことがなされたのでしょうか。その点について説明を願います。
  26. 岡村泰孝

    岡村政府委員 過去七回にわたりまする改正、すなわち金額引き上げにつきましては、基本的には賃金上昇物価指数変動、この二つ要素を勘案いたしておるところでございまして、その意味におきましては基本的には一貫はいたしているところであります。しかしながら、御指摘ありましたように、例えば物価指数につきまして、一回目と二回目の改正のときには東京小売物価指数とか東京消費者物価指数も、全国物価指数とあわせて参考にいたしているところでございます。三回目以後は全国消費者物価指数をとらえているところであります。この点につきましては、やはりできるだけ物価変動等を的確にとらえまして、補償改善と申しますか、引き上げを図ろうとする努力のあらわれというふうに御理解をいただければありがたいわけでございます。  また、資料に過去の数値が出ていないという点でありますけれども、これはできるだけ簡潔明瞭な資料にしたいということで、今回のような資料を従来大体お渡しをいたしておったところでございます。この点につきましては、今後ともさらに一層どうすれば簡潔明瞭に漏れなく記載できるかというような点につきましては検討いたしてみたいと思っております。
  27. 冬柴鐵三

    冬柴委員 刑事局長、今いろいろな物価指数参考にとおっしゃいました。それから、そういうことにより、より正確に引き上げを図る、そのような気持ちでこういう指数を用いた、こうおっしゃいましたけれども結論は全く逆でございまして、その卸売物価とか消費者物価指数というのは賃金上昇率に比して非常に低いのです。今回のこの二つ指数を比べましても、賃金については一〇〇に対して三九五四という数値が出ていますけれども、三十九倍に上がっている。しかし消費者物価は七二七、すなわち七倍にしか上がってない。そうすると、三十九倍のものを七倍に薄めたことになるのじゃないですか。したがって、一日当たり補償額が低くなるのですよ。ですから、これについて余り議論を始めますとちょっと先へ進めませんので、この程度で切り上げますけれども、決してこういうような指数を導入することが補償額引き上げには裨益せず、かえって引き下げに使われていると、学者はそういうふうに批判していますよ。結論的にも、一日当たり賃金額改正ごと割合が下がってきているという客観的事実があります。これはまた後に指摘いたしますけれども、そういうところから、私は、こういう補償額を求めるのにそういう消費者物価とか、いわんや卸売物価指数などを用いることは許されないというふうに考えております。  次に進みますけれども、現行の刑事補償法というのは周知のとおり二十五年に施行された法律でございまして、その施行時には、抑留または拘禁による補償はその日数に応じて一日二百円以上四百円以下の割合、このようにされておりました。この法制定の際の衆議院法務委員会議事録を調べてみますと、政府委員答弁は、なぜ四百円以下にしたかということについて、「昭和二十四年五月における男子工業平均賃金は一日三百七十四円、坑内夫四百二十九円、交通業約三百五十円、業種別労務者平均賃金一日三百五十二円、職人一日四百四十八円というような金額を考慮いたしまして、結局」「一日二百円以上四百円以内というところが、大体適正なるところではなかろうかというような結論に達した次第であります。」このように述べていられるのですけれども、それは御確認いただけますか。
  28. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そういう答弁政府委員がいたしていることは、議事録上明らかであります。
  29. 冬柴鐵三

    冬柴委員 また、この四百円の中に精神的苦痛に対する慰謝料、これが含まれているかどうかという点につきましても、政府委員はこのようにお答えになっています。「お尋ねのように、確かにこれは経済上の損失というもののほかに、さらに慰藉料も含んでいなければならないものと考えるのであります。」「先ほど申し上げました平均賃金というようなもの、あるいは実際の賃金というようなものから、その本人生計費などは差引かるべきものと考えるのであります。かような点がマイナスになり、一方慰藉料相当のものがプラスになる、そのようなところを勘案いたしまして、」「妥当ではないかというような結論に達したわけであります。」このようにも答弁していられますが、これも確認されますか。
  30. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのとおりであります。
  31. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この二つ思想というのは、現在もなお維持されていますか。
  32. 岡村泰孝

    岡村政府委員 財産的な損害と慰謝料と申しますか、そういった両方が含まれておるということはそのとおりであります。  また、平均賃金基準として二百円以上四百円以内ということが定められたのかどうかということにつきましては、当時の政府委員が「現在の平均賃金を考慮して定めたのでありますけれども平均賃金からただちにこの金額になったわけではないのでありまして、」というような答弁もいたしておりまして、要するに平均賃金等参考にいたしまして、二百円から四百円という金額が定められたものだと理解いたしております。
  33. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、この昭和二十五年というものを一つ基準にとるならば、私はこれも不満足なんでございますけれども、一応それを基準にして時的修正をするということになれば、いわゆる二十五年の三百五十二円対四百円、それから今回の改正であれば一万五千九百七十七円対x、こういう単純な計算方式改正値を求めるべきではないか。そうしますと、計算上によればそのxは一万八千五十四円、こういうふうになるはずでございます。したがいまして、今回の改正案は、もし二十五年の思想計算をするならば千円以上一万八千円以下というふうな改正になるべきではないかというふうに思うわけですけれども、その点についてはいかがですか。
  34. 岡村泰孝

    岡村政府委員 補償金額上限の定め方につきましては、いろいろな考え方があろうかと思っております。しかしながら、私どもが考えておりますことは、刑事補償法制定されました当時の補償日額上限平均賃金から直ちに出てきたものではないわけでございまして、平均賃金もまた参考資料としては重要な要素でございましたけれども、その他物価とかあるいは証人の日当の額、こういったものも考慮いたしまして四百円と定められたというふうに理解されるのであります。  また、その後の七回にわたります改正の際には、いずれも先ほど申しましたように賃金上昇物価変動という両方要素を考え合わせまして引き上げが図られてきておるという現実の姿でもあるわけでございます。そういった流れを踏まえまして、今回もできるだけそういった賃金上昇なり物価変動に応じて引き上げを図りたいということでこういう数字が出てきたところであります。
  35. 冬柴鐵三

    冬柴委員 刑事局長は、その二十五年の制定時にその金額をいかほどにすべきかということの委員会審議議事録をお読みになったと思いますけれども、四百円ではいかにも安過ぎる、慰謝料も含めてですね。そういう議論がなされたのに対し、今日の、ということは二十五年ですね、終戦間もない二十五年の日本財政を基本的に立て直そうとしておるところの司法部考え方としては、また、国民の利益を保護するという意味において交付する場合、その点は、というのは金額の点ですけれども、将来に保留をしておいた次第でありますと。すなわち、その金額が低きに失するとは思うけれども、今、日本財政的に苦しいからその点については将来見直すとしても、今回は四百円でやっておこうじゃないかというような跡が残っていたと思うのですけれども、その点いかがですか。
  36. 岡村泰孝

    岡村政府委員 やはりこの刑事補償金国民の税金で負担されるわけでございまして、国家財政上の見地というものも考えて、その枠内と申しますか、そういう中でこの金額が決められていかなければいけないわけでございます。私どもといたしましても、その引き上げにはできるだけの努力はいたしておるところでございまして、先ほど来申し上げておりますような物価変動とか賃金上昇、こういったものに合わせましてできるだけ努力はいたしておるつもりでございます。
  37. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この法四条二項によりますと、この補償金の額を定めるには、「得るはずであつた利益の喪失」、すなわち得べかりし利益の喪失額のほか、精神上の苦痛その他の一切の事情を考慮する、このような規定がありますね。このような立法趣旨に照らして、ここに言う得べかりし利益の喪失額を、例えば本年度でいえば約一万六千円というものを大幅に下回る、外で自由に働いている人の賃金よりも、拘束されている人の、しかも客観的にはゆえなく拘束された人の補償額がそれよりも著しく低いということは、この四条二項の立法精神に照らして相矛盾するのではないか、このように私は考えるわけです。  それで、新憲法下における刑事補償というものは、もちろん憲法四十条で独立に、憲法十七条の国家賠償の規定があるにかかわらずこれをまた重ねて規定されたという趣旨から考えても、旧補償法のいわゆる同情慰謝の意を表する金一封という精神とは根本的に違うということは、もう何人も争えないと思うわけでございます。そのことを考えてみますと、一万六千円の常用労働者の約六割にも満たない金額補償額を最高額と今回定めようとしているわけですけれども、これは著しく低い、憲法制定時に遠く思いの及ばなかったところではないか、憲法違反じゃないか、このように私は考えるわけです。昭和二十五年のあの苦しい時代ですら、常用労働者賃金と四百円とを比較したときには一・一三倍になっていたと思うのですね。それが今、この豊かな日本の国の中で、外で働いている自由な人の六割にも満たないということはどういうことですか。私は、これは憲法違反ではないかということを考えているわけでございます。その点についてはどうでしょうか。
  38. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事補償法は、国家賠償の一つの形態であるわけでございます。元来、賠償義務が発生いたしますのは、行為者に故意あるいは過失があった場合に生ずるというのが近代法の基本的な考えであるわけでございます。しかしながら、刑事補償法は、故意または過失を要件といたしませんで、身体の拘束がなされた者について無罪の裁判が確定いたしましたときには一律に定額を補償しようとする制度であります。そういう制度であるということを考えますると、損失の全額を完全に補償するということはやはり本制度の趣旨ではないと思うわけでございます。故意過失を要しないで一定額のものをできるだけ迅速に補償しようというところに、本制度の趣旨があるわけでございます。  したがいまして、刑事補償法の定めます補償金の額がやはり相当な補償というふうに認められるならば、それは憲法四十条の趣旨に沿うものであるというふうに考えられるのであります。御指摘のように、常用労働者の一日平均給与額に比べれば低いわけでございますが、そのことから直ちに憲法四十条に違反するものではないというふうに考えているところでございます。  ただ、そうは申しましても、私どもも、この引き上げにつきましてはこれまで、過去七回にわたって引き上げを行い、また今回八回目の引き上げを行おうとしている点からもおわかりいただけますように、やはりできるだけ金額引き上げまして補償の充実を図るべく努力したいという気持ちは持っているところであります。
  39. 冬柴鐵三

    冬柴委員 名目額はなるほど上がっていますけれども、これは制定当時は、先ほど言いましたように常用労働者の一日平均賃金に比べまして一・一三倍ということで、常用労働者よりも多かったわけです、当たり前だと思うのですけれども。それが改正を重ねるたびに、〇・九二になり、〇・八〇になり、〇・五七になり、〇・五四になり、そして〇・五三になってくる、そういう研究もありまして、これはしかし、名目額が上がったって、いわゆる労働者賃金に比べて実価が下がれば、それが余りにも著しくなったときには憲法違反ということが起こるのではないか、私はこういうことを指摘しているわけでございます。  法務大臣に申し上げたいのですけれども、こういう事例がありましたね。昭和二十五年に、弘前大学の教授夫人殺しという事件がございましたね。これの犯人として起訴されて、一審無罪だったのですけれども、二審で取り消されて懲役十五年、上告棄却されて十五年が確定いたしまして、仮出獄するまでこの人は十年服役をされました。ところが、その後真犯人が御承知のように名のり出たのですね、私が殺したんだと。それで、その十年服役した人が再審を当然求めまして、無罪になったのですね。これが昭和五十二年です。二十七年間、人殺しにされていたわけですね。それで、この起訴前の勾留とそれから刑の執行を合わせますと四千三百七十四日拘束されたようです。全く人違いですね。  それからもう一つ、これも有名な事件ですけれども、大正四年に強盗殺人を犯したということで無期懲役刑に処せられた人がいたのです。この人が、これも仮出獄されたのでしょうけれども、七回再審をやりまして、七回目の再審でようやく認められて、無罪だ。これが五十二年です。実に六十一年間。この人も刑事補償を求めました。  このように、全くの人違いによって、楽しかるべき青春時代を含む二十七年間を冤罪に泣いて、しかも自由を拘束された、こういう人、実に六十一年間無辜に人生のすべてを奪われた人、こういう人がいるわけです。現実にいるわけです。この人たちに慰謝料を含む刑事補償額が、外で自由に働いている人の賃金の六割しかやらないというようなことが許されるのでしょうか。私は、許されない、こういうふうに思うわけです。  なるほどその補償金というのは国民が税金をもって負担するわけですけれども国民は、私も含めて、自分の安全とかあるいは公共の秩序維持のために厳しく刑事事犯というのは取り締まられなければならないと思っております。そのようなことから公権力の行使、起訴、そして刑の執行ということは行われるわけでございますけれども、そこに、何万件に一件かはこのような気の毒なことが起こることは不可避的でございます、人間がすることですから。そのような立場に立たされた人に対して、これは災難では済まされないと思うのですね。国民は、薄く広く保険金を負担するように、その人たちには十分に補償してやってほしい、その人たちというよりも自分がそういう立場に置かれるかもわからぬわけですから、その補償を六割に値切ってほしいということを言う国民はいないと思うのでございますけれども、大臣どうでしょうか。昭和二十五年ですら賃金以上のものを払っていたのに、海外旅行をし非常に豊かなこの時代に、そのような気の毒な人に平均賃金の六割しか払わない、こういうのが果たして国民のコンセンサスだと思われますか。その点についていかがですか。大臣の所信を伺いたいと思います。
  40. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 今先生がお挙げになりました方々につきましては、私も心から同情を申し上げる次第でございます。  そこで、具体的事件の刑事補償につきましては、それが相当であるか否かについて、先生がお述べになっておりまするようにいろいろの議論があることはよく承知をしております。しかし、この刑事補償制度は、無罪の確定裁判を受けた者に対しまして公平の観点から迅速に補償を行うため、国の機関の故意過失の存在を要件とせずに一定の金額内での補償をすることを定めたものであって、もとより、刑事補償により損害のすべてを補償しようとするものではないという、制度に内在する制約がございます点と、刑事補償により救済されなかった損害につきましては国家賠償請求訴訟により請求する道があるという点がございまするので、御理解をお願い申し上げたいと存じます。
  41. 冬柴鐵三

    冬柴委員 理解はできないと思います。これは、捜査官とか裁判官の故意過失なんというものは立証できませんよ。むしろ無罪が確定した以上は、国が過失がなかったといういわば立証ができなければ全部払うと、反対にすべきだと思うのです。六十一年も拘束をしておいたその老人が強大な国家に対して一人で、あのときの刑事さんが自分の言い分を聞いてくれなかったからこんなことになったのだというようなこと、その刑事さんはもう死んでいるでしょう、そんなことは立証できないのです。ですから、いわゆる損害賠償の主観的要件である故意過失を除いて、無罪だったということと、そして受けた損害を定型化してそれを迅速に払おうというのがこのあれですけれども、その定型化された金額を、普通の外で自由に働いている人の六割に抑えるというのは何事だ、こういうふうに言うわけです。そんなこと、国民は求めないと思いますよ。これは、総額でも年間大した金額じゃないです。こんなものが多かったら大変です、そんなに誤りが多かったら。  旧刑事補償法、これは昭和七年、憲法でそういうものを補償するという規定がなかった時代ですね。当時、これは国が特別に仁政をしいたものだ、こんなことを言っておられました。補償する理由は何もないのだけれども国民を同情慰謝するためにこういう制度をつくったのだ、こういう説明をしていられるわけです。そのとき常用労働者平均賃金二円五十銭、それに対し一日五円以内を補償する。常用労働者の倍の金額が決められていました。我が国の憲法というのは、基本的人権尊重が基本原理になっているわけですね。戦前の憲法と比べたら格段の差があると言われているこの憲法下において、なぜ倍であったものが今六割にも満たないのか、説明がつかないと思うのですね。私は、この法案を修正してでも理想的な面に近づけてもらいたい、このように強く要望いたします。その点について、一言で結構ですけれども、大臣。
  42. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 先生のおっしゃること、まことにごもっともでございます。今後の問題といたしまして十分努力をさしていただきたいと存じます。
  43. 冬柴鐵三

    冬柴委員 きょうの新聞でちょっとショックを受けましたので、外務省からも来ていただいたと思いますので、別の問題に移らしていただきたいと思います。  中国で修学旅行の高校生が、列車が衝突して、ここでは二人死亡と書いてありますけれども、中には、どうも十一人ぐらい死んでいるのじゃないかとか、あるいはまだ生徒の二十八名が所在がつかめずに、この衝突した列車の中に閉じ込められているのじゃないかというようなショッキングなニュースがけさ報道されました。  そこで、どんどん修学旅行生が海外へ行かれる。これは国際化時代、若いときに海外を見る、視野を広める、大変結構だし、大いにそういうふうなことがなお行わるべきであると信じますけれども、このような事故が起こりますと、その点について非常に慎重にやってほしい。人生の中でも新婚旅行に次いで楽しいといいますか、新婚旅行よりも楽しいかもわかりませんけれども、本当に楽しかるべき修学旅行がこのような悲惨なことになるということは、どうしてもあらゆる努力を払って防止しなければいけないと思います。  そこで伺いたいのですけれども、外務省、大体修学旅行というのはどれくらい海外へ行っているのですか。
  44. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 法務省の方から出入国記録等、それから文部省に照会した結果でお答えさしていただきたいと思いますが、六十一年度の数字で高等学校の海外修学旅行の数がございますので、お答えいたします。  二万八千九百四十名、学校の数にしまして百三十四校、そのうち中国向けが二十四校で六千九百八十七名ということになっております。これは主に文部省で調査していただいた数字でございます。
  45. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に交通その他も大変だろうと思うのですが、事故現場へ一刻も早く行きたいというのが親心だと思いますけれども、一体この事故の現況と対応状況はどうなっているのか、それから救済態勢は万全に行われているのか、あるいは関係者が渡航するについてのビザの発給等についての便宜と申しますか、そういうものについてはどのように考えていられるのか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  46. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 お答え申し上げます。  事故の概要でございますが、既に報道されておりますとおり、昨日の午後二時二十分ごろ、日本時間におきます三時二十分ごろでございますけれども、上海近郊、北西約二十キロと言われておりますが、嘉定県の封浜地区というところで杭州行きの列車と長沙発の列車が正面衝突したということで、高知学芸高校修学旅行の一行の皆様百九十三人が被害に遭われた、大変痛ましい事故が起きたわけでございます。  現在外務省といたしましては、現地の上海総領事館とそれから本省に事故対策本部を設けまして、情報の収集に努めていますのと、御家族初め関係者の皆様とも御連絡をとりながら万全の態勢を期すようにやっているところでございます。  これまでに判明しておりますところは、本日の午前六時現在では、生徒さんのうち亡くなられた方が一名、不明が二十七名、それから先生のうち亡くなられた方が一名ということだったのでございますが、その後上海の外事弁公室からの連絡によりますと、十一人の日本人の方が亡くなられたということでございまして、現在我が方の上海の館員が病院を先生方と回りながら確認に努めているところでございます。  なお、上海の総領事館に事故対策本部を設けたのとあわせまして、在中国の大使館にも直接指示をいたしまして確認を求めておりますと同時に、上海の事故対策本部を強化するために館員を現地に派遣して、今万全の備えをしているところでございます。  今の御指摘のとおり、御家族の皆様、一刻も早く現地に行かれたいということで、今チャーター便の用意ができつつあるようでございますけれども、私どもの方では、家族の皆様方の旅券の緊急発給を初めとする渡航についての全面的な便宜をお図りするように努力いたしております。また、現地にお入りになってからのいろいろな御活動にも支障のないように、万全の備えをしているつもりでございます。
  47. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 この件に関しましては、けさの閣議におきまして文部大臣から御報告があり、また、それに対しまして外務大臣、運輸大臣からも、できるだけの協力をする、こういうことでございました。  それで、今聞いておりまするところでは、まだ列車の中のドアが、閉じ込められる状況になっておりまして、したがって中の状況がよくわからないということだそうでございます。  そして、ただいま外務省から御報告ありましたように、生徒の家族がきょうの午後三時に高知空港発の特別機で訪中を希望しておるということだそうでございます。そこで、法務省の高松入管といたしましては、国内空港である同空港からの出発を認めますとともに、係官を空港に派遣をいたしまして出国審査を行うなどいたしております。
  48. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常にてきぱきとやっておられると評価いたしますけれども、なお十分にこのような対策は講じていただきたい、このように思います。  文部省も来ていただいているようでございます。外国へ相当な数が今行かれるということをお聞きしたわけですけれども、外国の実情とか、この事故が起こったところも、引き込み線が非常に複雑に敷かれているところで、違うところに入ってまた戻ったりすることが平素頻繁にあったようなことも新聞に書かれておりまして、そういうような実情とかいうものは外務省に照会をし、このようなことが起こらないような指導と申しますか、そういうことは平素からやっていらっしゃったのかどうか、その点について文部省からお答えをいただきたいと思います。
  49. 森正直

    ○森説明員 御説明申し上げます。  文部省といたしましては、先ほど先生おっしゃいましたように、海外への修学旅行と申しますのは、国際化が進展する中で、若い高校生が外国を旅行いたしまして外国の文物に直接親しく接する機会を得ることは大変意義があるという見地から、これを前向きに評価しているわけでございます。  従来、文部省が昭和四十三年に修学旅行についての通達を出しておりまして、当時の情勢としましては、まだ海外旅行というようなものが、飛行機の利用を含めまして余り頻繁に行われていなかった時代でございます。しかし、その後このような状況になりましたので、本年一月、海外への修学旅行を実施するに当たりまして、その実施のねらいとか教育的意義を明確にしてほしい、なかんずく生徒たちの健康管理とか安全の確保、それから交通機関の状況、条件等を十分慎重に検討してほしい、また、こういった海外への修学旅行については保護者の理解を十分得ることに留意していただきたいというようなことについて、改めて都道府県等を指導したわけでございます。  そこで、建前といたしましては、こういった高校生等の海外への修学旅行は当該学校が中心となりまして十分慎重に検討して、県の教育委員会等とも相談をし実施に踏み切るわけでございますけれども、私どもといたしましても、今回のこういった大変不幸な突発事故につきまして、実は本日初中局の関係官を高知に派遣いたしておりますが、それらを含め、今後十分調査分析の上、海外修学旅行の意義そのものは踏まえつつ、さらにそのあり方について研究いたしまして指導し、また、やれることは文部省としてもこれまで以上にやってまいりたい、そのように考えております。
  50. 冬柴鐵三

    冬柴委員 文部省におかれては、外務省等とも十分連携をおとりいただいて、外国事情というものを十分学校にも知らせるというような配慮をぜひ今後ともよろしくお願いしたい、このように思います。  次に、これもきょうの新聞に、外国人の在留資格を見直すということで、大臣がきのうですか、記者会見で発表されたようでございますし、また、入管局長も自民党の法務部会等で報告をされたようでございますので、その中で、結局単純労働者の受け入れを見送るというその点に絞ってで結構ですけれども、若干御説明をいただきたいというふうに思います。
  51. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 単純労働力の受け入れをめぐる問題につきましては、今のところ、これを受け入れてもいいではないかという議論と受け入れるべきではないという議論が、伯仲というよりは受け入れるべきではないとする意見の方が多いように私ども見受けられておりますけれども、まだ議論が分かれているところでございます。  きのう法務大臣から記者会見で明らかにいたしました今度の入管法の改正は、出入国管理をめぐる現在の状況に対処しまして、これまで必ずしも透明ではなかった部分とか、それから在留資格の規定ぶりからは余り明確ではなかったというような面があったことを是正いたしまして、必要と認められる限度の対応をとりあえず行うということで、現在問題になっている外国人労働の導入を含む諸問題の検討の結果をとりあえず法改正に盛っていこうということでございます。  お尋ねの単純労働者の受け入れにつきましては、単純労働力を受け入れた場合にいろいろな社会的、経済的影響その他、今後の日本の社会のあり方等にまで影響があるというようなこともございますので、なお多角的な角度から慎重に検討を行うことが必要だということでございまして、今後関係省庁との連絡協議を重ねつつ、有識者等のお考え、それから国会関係者のお考え等もお聞きしながら、できればこの改正に盛り込む可能性も含めまして考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  52. 冬柴鐵三

    冬柴委員 きのうの新聞ですか、バングラデシュの人が東京の品川で絞殺された、どうもその人は、バングラデシュから日本に来ている人のいわば仕事の手配師というか、そういうような人だったということが書かれています。  単純労働者の受け入れの問題で、バングラデシュとかパキスタンの人が随分たくさん新聞にも登場しています。これは、入管法を改正してもだめじゃないか。これは、いわば外務省の所管になると思うのですけれども、ビザが要らない、自由に入ってこられる、それで、入ってから何かやっておられるということで取り締まりをしたら不法在留だった、こういう後追いになると思うのですね。そこら辺は、この単純労働の問題とどういうふうに考えられますか。その点について、東南アジア地域でビザを発給免除している国、その問題はどう考えていらっしゃるのか、まず法務省からお尋ねしたいと思います。
  53. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 最近、東南アジア諸国及び南西アジア諸国からそういう不法就労を目的とし、かつ観光目的であると申告をして入国する人がふえたわけです。その中に御指摘の、日本との間で査免協定を結んでおりますところのパキスタン、バングラデシュの人たちがかなり入ってきている、数がふえてきているというのは事実でございます。  この理由を、今委員御指摘のようなブローカーの介在というところで我々も一つの理由としてはとらえておりますが、パキスタン、バングラデシュの人たちは従来中近東の産油国等に同じように出稼ぎに出かけていたわけでございますけれども、最近の同地域における経済情勢の変化によりまして、職がそちらの方になくなったという事情がございます。それから、円高によって日本で働くことが非常にメリットがあるという状況になりました結果、そういう国々から入ってくるようになったということが一つの理由ではなかろうかと思います。  そのほかに今おっしゃいました手配師、ブローカーの組織化というのが事実であるということが私どもも摘発を通じてだんだんにわかってきておりまして、こういう悪質なブローカー、時には暴力団と絡んでいるというような、現地におけるブローカーと日本人による日本における受け入れ側のブローカーというものの存在を十分私どもも認識しておりまして、捜査当局と手を組みまして、協力しながら強力にその辺の摘発等を行っているところでございます。
  54. 冬柴鐵三

    冬柴委員 査免協定の見直しなんということは、外務省どうなんでしょうか。外務省帰られたかな。
  55. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 パキスタンにつきましてこのように非常に情勢が悪くなっているということもございまして、まだ省と省の間で正式な協議ということではございませんけれども、例えばパキスタンとの間で査免協定を一時停止するとか撤回するとかという話は、事務レベルでは話をしたことがございます。しかし、既に締結されました国際約束でございますので、これを撤回することは必ずしも容易ではないというふうに考えておりますが、その方向での話し合い、努力、それからこれは相手国のあることでございますので、パキスタンの政府との話し合い等も今後やはり考えていくべきではなかろうかという議論は、両省の間ではございます。
  56. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では次の問題ですが、私はこの法務委員会に入らせていただいてからこの委員会でも過去何回か、それからまた予算委員会の総括におきましても、法律扶助法、法律扶助に関する基本法の制定をすべきではないか、このような提言をいたしてまいりましたし、遠藤前法務大臣におかれましては前向きに検討をしようという御答弁をいただいておるように私理解をしているのでございますけれども林田法務大臣におかれましてはどのような認識をお持ちなのか。  この法律扶助法につきましては、先進国はすべてそのような基本法を持っております。我が国におきましてはこのような法律を持っておりませんし、実情は甚だ不十分だ、私はそのように思っておるわけでございます。そのような意味で、私はこの法務委員会に籍を置かしていただいている限り継続してこの点は取り上げていきたいと思っているわけですけれども、法務大臣におかれましてはこの法律扶助法というものについてどのようなお考えをお持ちか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  57. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 法律扶助法の問題につきまして先生が熱心に考えていただいておりまして、感謝を申し上げております。  省内におきまして今まで検討を重ねてきたのでありまするが、実は法律扶助協会がございまして、その協会に補助金を毎年出しまして、その協会で大体遺憾なく今のところ扶助が行われておるという状況でございます。これが長く定着をしてまいっておりまするので、やはりその方法でやっていった方がいいのじゃないだろうかということでございまして、なお十分検討を重ねてまいりたいと存じます。
  58. 冬柴鐵三

    冬柴委員 人権擁護局長も来ていらっしゃるようですので、その後何か進展したことがあるかなかったのか、その点についてお尋ねいたします。
  59. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 私どもの方でもいろいろ検討はしておるところでございますが、なかなか難しい問題が壁になっておりまして、ここで進展しておるというようなお答えを申し上げる段階には至っておりませんので、御了承願いたいと思います。
  60. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その際も御指摘申し上げたのですけれども、法務大臣、昭和五十九年、サッチャーさんは三億イギリス・ポンド、邦貨に直して約一千億円を法律扶助基金に拠出をされている。イギリスは人口は半分ですね。我が国は、確かに法務省御努力していらっしゃることもよくわかりますけれども、法制度は違いますが、今年度の法律扶助協会に対する補助金と申しますか、それはたしか八千四百万ぐらいであろうと認識しておりますけれども、懸隔非常に甚だしいものがある。私は、現状が決して十分なものではないということをまた追って申し上げることとしまして、法務大臣、この点につきましてぜひ問題意識をお持ちいただいて、今後も継続して前向きに検討していただきたい。その際、外国ではどうなっているかということも十分調査をしていただきたいものだ、このように思いますので、よろしくお願いをいたします。  次に、これも提言でございますけれども、最高裁判所の中には非常に立派な図書室がございまして、内外の法律文献というものが整備されております。私もその中へ入らせていただいて、すばらしい図書館だな、こういうところへ自由に調査に入れたら、あるいは今コンピューターも発達していますので、端末機を用いてそういうものが外からでも検索ができればということをかねて思っておったのです。調査してみますと、あれは国立国会図書館の何か分室のようになっているようでございますけれども、申しわけないのですけれども、一般の人が最高裁判所の中へ本を見せてくれということで入るのはどうも入りにくいし、それはちょっとどうかと思うのです。  そういう意味も含めまして、ここで国立の法曹図書館というようなものをひとつつくっていただいて、法律というのは特に文献の検索、調査、判例とか、そういうものが非常に重要でございます。また、国際化時代ですから、外国ではこの点についての法制度はどうなっているだろうかということを文献を通じて調査するという作業が非常に多いわけで、そういう意味からぜひ国立の法曹図書館といいますか、そういうものをつくっていただいたらどうかなというふうに思うわけです。その点いかがでございましょうか。
  61. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 私も、先生のおっしゃいますような図書館につきましては大きな関心を持っております。現在法務省におきましては、御承知のように法務図書館が国立国会図書館の支部図書館としてございまして、国会図書館及び各支部図書館との間の相互の連携のもとに、法曹界に対しまして各種のサービスの提供をいたしております。  実は今、国会図書館におきましては第二国会図書館をつくろうという動きがありまして、その図書館を京都、大阪、奈良の中間の京阪奈丘陵の文化学術研究都市でありまするが、そこに立地しようという動きがあるわけであります。国会図書館におきましては、既にイギリスの有名な図書館、先生も御承知と思いまするが、これは世界的に非常に有名であります。そういう図書館がコンピューターを利用いたしまして各地域の図書館と結んで、各地域の図書館はその中央の図書館から検索ができる、こういうシステムが整っておりまして、これは世界的なコンピューターによりまする検索が行い得るわけでございます。だから、そういうものを第二図書館としてつくりまして、その中におきましても法曹関係も入り得るというようなことになったらいいのではないだろうかと考えておりまして、国会図書館の方にもお願いを申し上げたいと存じておるような次第でございます。今後とも御援助のほどをお願い申し上げます。
  62. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最高裁からも山口総務局長が御出席のようですので、この私の考え方、最高裁の中には確かに立派な法律専門書や蔵書が整えられておりますけれども、やはりちょっと入りにくいといいますか、入れないのではないかと思います。その点どうでしょうか、今のような発想は。
  63. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のように、最高裁判所を初めといたしまして、各裁判所におきまして事件処理上必要な判例その他の文献類を備えているわけでございます。これらの判例、学説、文献等の御利用につきましては、部外者の方々にも開放はいたしております。最高裁の図書館におきましても、二五%ほどの方々は部外者でございます。ただ、御指摘のようになかなか入りづらい面もないわけではないだろうと思います。  それはそれといたしまして、ただいま冬柴委員御指摘の国立法曹図書館というお話、これはまことに雄大な構想に基づくお話でございまして、これはそれぞれしかるべき方々で御検討いただきたいというふうに考えております。  それはそれといたしまして、私どもも判例、学説、文献等の検索につきましてコンピューター化をする必要があるであろうと考えております。学者の方々の立場からする検索の方法もございましょうけれども裁判所といたしましては裁判所にとって使いやすいような検索方法が必要でございまして、やはりキーワード等でいろいろ工夫、検討をする必要があろうかと思います。そういうふうな検索システムの開発自体今後の大きな課題と考えておりますので、各方面の御意見を伺いながら今後の方向を定めていきたいというように考えております。
  64. 冬柴鐵三

    冬柴委員 きょうは法務大臣及び最高裁の方からも法曹図書館といいますか、そういうものについて前向きの御答弁をいただき、非常に心強く思ったのですけれども、それはぜひ進めていただきたいし、三権分立ではありますけれども、国家予算の中に占める裁判所の予算は〇・三何ぼ、〇・四にいっていないと思うのです。今言ったようなコンピューターの導入とかソフトの開発には相当長年月と費用も要すると思いますけれども、その点も法務大臣、十分にお考えいただきまして、そういうものが一日も早くでき上がるように、そして国民の利用に、便益に供されるようにぜひお願いしたいと思いますが、最後に一言だけお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 もちろん大きな金額を必要といたしまするが、十分努めてまいりたいと存じます。  それから、この際ちょっと付言をさせていただきたいのですが、先ほど午後三時に高知空港から中国へ飛行機が出るというように申しましたが、午後五時に出発するそうでありまして、百二十名ほどの者が出かけるというように聞いておりまするので、申し上げておきます。
  66. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  67. 戸沢政方

    戸沢委員長 安藤巖君。
  68. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほどもいろいろ議論がなされておりましたが、刑事補償法補償の本質というのは一体どういうところにあるのかということをちょっと確認しておきたいのです。     〔委員長退席、今枝委員長代理着席〕  国家賠償法に基づく損害賠償、これはもちろん憲法第十七条に基づくものですが、公務員の故意過失の存在が要件になる。それから損害の証明を必要とするという仕組みになっております。ところが刑事補償法の方は憲法四十条に基づくものでありまして、公務員の故意過失は要件としない、そして賠償の内容が法定されているというふうに違いがあるわけですが、どちらも違法な公権力の行使に基づく国の損害賠償の一種だと私は理解しております。この理解はそのとおり間違いないと思いますが、いかがですか。
  69. 岡村泰孝

    岡村政府委員 国が、一定の要件があります場合に補償をするという点においては同じでございます。ただ要件が、先ほど御指摘ありましたように、公務員の故意過失を要件とするかどうかという違いはあるわけでございます。
  70. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、今回の刑事補償法改正案の提案理由の御説明を先ほどお聞きしたのです。全部は申し上げませんが、「最近における経済事情にかんがみ、」というのが一つのポイントになっているというふうに伺いました。そこで金額引き上げるということでありますが、このはじき出された改正案金額というのは、これは刑事補償法の四条の二項にいろいろあります。これは補償法を適用する場合の条文でありますが、「得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷」等々、「その他一切の事情を考慮しなければならない。」という規定になっております。この改正案も、今申し上げたのは適用の場合の話ですが、やはりそういう精神上の苦痛、普通慰謝料ということになるのですが、これも賠償するんだ、こういうような考えに基づいてなされているものだというふうに伺ってよろしいですか。
  71. 岡村泰孝

    岡村政府委員 財産上の損害及び慰謝料、その両者について補償するというのがその趣旨であります。
  72. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、法務省からいただいた刑事補償法の一部を改正する法律案関係資料、この中に参考資料というのがありまして、第一表、これは賃金物価指数、それから賃金物価指数平均というのがあるわけでございます。昭和二十五年当時の、現在の刑事補償法が成立をしたときの常用労働者、これは一日平均現金給与額が四百四円、ここから出発しているんだということは、これまでのいろいろな本法案審議の際にも法務省当局から御答弁があったことでございますから、そしてこういう資料をお出しになっておられるところから拝見しますと、やはりこれがもとになって、そして物価指数を勘案して、この参考資料の一番下の平均指数というのを出して、これを乗じて出したのが今回の改正案の九千四百円、こういうふうに理解をしていいのですか。
  73. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この資料にありますとおり、昭和二十五年におきます常用労働者の一日平均現金給与額基準といたしまして、その後の賃金上昇及び物価指数変動、これを考慮いたして計算いたしたところであります。
  74. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、先ほどお尋ねをいたしましたが、精神的な損害、精神上の苦痛、こういう慰謝料も含まれておるんだというふうにおっしゃったのですが、今のお話からすると、この慰謝料的なものは一体どうなっているのかという気がするのですが、これはどうですか。
  75. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事補償法制定されました当時は、上限が四百円であったわけでございます。この四百円という金額の中に財産的損害と慰謝料が含まれるんだということであったわけでございます。そこで、この四百円を基準といたしまして、先ほど申し上げました賃金上昇物価指数変動、これを考慮いたしまして計算いたしましたのが今回の金額でございます。したがいまして、そういう意味で当初の四百円、すなわち慰謝料と財産的損害を含みます四百円というものが基礎にあるわけでございます。そういう意味におきまして、今回の上限額の中にもその思想がそのまま引き継がれておるということになるわけであります。
  76. 安藤巖

    ○安藤委員 それはなかなか苦しい答弁じゃないですか。  二十五年当時の四百円の中に慰謝料が入っている、私はそんな御答弁をなさるとはちっとも思わなかったですね。今言っております、この法務省からいただいた参考資料、この賃金のところを見ますと、昭和二十五年当時、一日平均現金給与額四百四円、そして、その当時の一日の上限の四百円、これは慰謝料が入っておるんだ、どこからそんなのが出てくるのですか。これはそのものずばりじゃないですか。それでも細かいことを言えば少ないですよ。だから、そのお考えでこの法案を出された、この九千四百円を計算なされた、これはどう考えてもおかしいと思うのですが、どうですか。
  77. 岡村泰孝

    岡村政府委員 お手元の資料の四百四円という数字でございますが、これは昭和二十五年におきます常用労働者一月の平均現金給与額を二十四という数字で割ったものであるわけでございます。したがいまして四百四円という数字が出てきておるわけでございます。なぜ二十四で割ったかと申しますと、これはその後の労働時間の短縮等も考慮いたす必要があるということで、いわゆる労働日数と申しますか、一月の間の平均労働日数を二十四という数字を見て割ったのがこの四百四円という数字になるわけでございます。したがいまして、刑事補償法制定されました当時の上限額であります四百円がストレートにここに言う昭和二十五年の四百四円に結びついてくるわけではないわけであります。
  78. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもよくわからないですが、二十五年当時四百四円だ、今おっしゃったような二十四で割ってというお話はそのままお聞きいたしますが、それで結局二十四で割って一日の平均給与額が四百四円でしょう。そしてその当時の額が四百円、これは慰謝料はどこかへ行ってしまっているなと思うのが一番素直な見方だと思うのですが、そういうお考えだとすると、これは相当問題じゃないかなという気がするのです。この四百円の二十五年当時の金額上限の額、これにもう慰謝料が入っておるんだ、こういうような御趣旨ですね。  ところで、これまでの本法律改正案が出されましたときにいろいろ議論をなされておるのですが、その中では、おっしゃったようなことにも少しは近いのかな思ってお聞きしておったのですが、まず一日平均賃金がある、そして生計費、この分は差し引くんだ、それから慰謝料、いわゆる精神的な苦痛を損害賠償する、そのものをつけ加えるんだというような話があるのですが、そういうような方法で今回も九千四百円というのをはじき出されたわけですか。
  79. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事補償法制定されました当時の四百円といいます金額の中には財産的損害と慰謝料を含む、こういう趣旨であったわけであります。ただ、そのうちどの部分が、幾らが財産的損害で幾らが慰謝料かということについては分けがたい点があるわけであります。刑事補償法制定当時の政府委員説明によりますと、当時の業種別労務者の平均賃金が一日三百五十二円であったということを言っておるわけでございます。この平均賃金を考慮して定めたものではあるけれども平均賃金から直ちにこの四百円という金額が出たわけではないということ、また本人生計費などは本来差し引かれるべきものであって、そういうマイナス面があるけれども、一方、慰謝料相当のものがプラスになる、こういうような面もあわせて平均賃金の三百五十二円というものも考慮して上限を四百円というふうに定めたものであるという説明をいたしているところでございます。この四百円が一応の基準となりまして、その後の賃金上昇とか物価変動を考慮して逐次上限額引き上げが図られているところでございます。  そういう意味におきまして、今回改正引き上げようといたします九千四百円という金額の中にも、財産的な損害と慰謝料、この両者が含まれているわけであります。ただこの場合も、やはり幾らが財産的損害で幾らが慰謝料かということは分けがたいということであります。
  80. 安藤巖

    ○安藤委員 これまでの刑事補償法改正案に対する議論の中で、今おっしゃったように、物質的な損害、それと精神的な損害、これを一緒に入れてあるのだ、先ほど言いましたように、生計費を差し引いて、そして精神的な損害、いわゆる慰謝料、これをプラスして、細かい計算をしたわけではないけれども、それでプラス・マイナス相殺をされて大体平均賃金額に近いところに落ちついてきておるのだ、生計費慰謝料が大体相殺されているのだというような説明がなされてきておったのですが、今回もそういうようなお考えに基づいてはじき出されたということではないのですか。
  81. 岡村泰孝

    岡村政府委員 生計費慰謝料が相殺されるというほど厳密なものではないのだろうと思います。平均賃金というものを一応の参考といたしました場合、生計費は差し引かれるべき要素ではなかろうか、マイナス要素であるのだ、しかしまた慰謝料はプラス要素であるのだ、その辺のところを考慮して金額を決める、こういう考えであると思っております。
  82. 安藤巖

    ○安藤委員 それは、ほとんど同じ金額として法律で言ういわゆる相殺というのは難しいだろうと思うのですが、大体そういう答弁をなさっておられると議事録を読んで思っておるのです。もともと精神的な苦痛というのは、身柄を抑留拘禁されてひどい目に遭っている。これはもうとんでもない話だ。それはもう先ほどいろいろ議論がありました。尽くせば幾らでも出てくる話であります。  今度のこれを見ますと九千四百円ということですが、この参考資料を見ますと、一日平均現金給与額一万五千九百七十七円、物価指数平均して九千三百六十四円となる、それで九千四百円だ、こう出てくるのですよ。ところが、平均現金給与額から生計費を引いた。九千四百円というのは生計費を引きっ放しで、細かい計算はともかくとして、考え方として、あるいははじき出す過程として、これは慰謝料プラスになっているのだろうかなと思うのですね。だから、厳密な意味での相殺ということではないのですが、これまで法務省の方から答弁をなさってきておられるところを見ますと、きちっとした、厳格ではないけれども、大体丸いところで、生計費を引いて、そして慰謝料プラスということになって大体相殺をされるという、そういう考え方で来ておるのだ。ということになりますと、もちろんこの金額、これで結構だと言うわけじゃないのですが、やはりこの一万五千九百七十七円のところへ戻ってこないとおかしいのじゃないのかなというふうに思うのですが、その辺はどういうふうにお考えなんですか。
  83. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この補償金上限額をどのようなところで設定するかということにつきましては、いろいろのお考え方があろうかと思うものであります。御指摘の点は、一日当たり平均給与額上限に持っていくべきではないかということであろうかと思いますけれども、これまでの経緯から見まして、先ほど来申し上げておりますように、制定当初に四百円といたしましたときにも、こういった賃金の問題のほかに物価の問題その他を考慮いたしてこの金額を四百円といたしたところであります。その後七回にわたります引き上げが行われているところでありますけれども、この際もやはり賃金上昇物価変動、この両者を見ながら引き上げを図っておるという現状にあるわけでございまして、そのこと自体が直ちに不合理なものではない、また不相当なものでもないというふうに考えているところであります。
  84. 安藤巖

    ○安藤委員 これは何度も言うようですが、いただいた参考資料のこれによって、一日の平均給与額昭和二十五年当時四百四円、その当時の上限が四百円。そして、昭和六十三年のこれは推定ということですが、一日平均現金給与額一万五千九百七十七円、こうなったら、普通の並びからすれば一万五千九百七十七円、きれいさっぱり一万六千円、こうこなければどうしてもおかしい。それから、先ほどの生計費を引いて云々、それから慰謝料プラスということから考えても、大体この一万五千円なり一万六千円ぐらいのところへ落ちつかなかったらどうしても落ちつきが悪いんじゃないかな、慰謝料なんというのはどこかへ吹っ飛んでしまっているんじゃないのかなというふうに私は思えるのです。それで、そういうことからしますと、基本的にはそう間違っていない、そう不相当なものではないというふうにおっしゃるのですが、慰謝料を全然含まない。  それから、先ほどもちょっとお話がありましたが、昭和七年の旧刑事補償法のときは五円でしょう。その当時は二円何十銭ぐらいですからね、平均給与額の倍以上。しかも、そのときの国会での審議のときには、川崎さんという政府委員の方がおっしゃるのですが、「賠償ノ意味デナクシテ、慰藉ノ意味デアルノデアリマスカラ、随テ此金額ノ安イノハ当然デアル訳ニナリマス」と。平均賃金の二倍以上であっても安いんだということを認めてみえるのです。そういうような考え方からすると、最初にお尋ねしましたように今度は賠償なんですから、慰謝じゃないのです。となると、これはべらぼうに安いというふうにしか私は申し上げようがないと思うのです。  そこで、これはちょっと前になるのですが、今度検事総長をおやめになられるのですか、あるいはなられたのですか、伊藤榮樹さんが刑事局長当時に、前にこの法案改正案審議のときにもお尋ねしたことがあるのですが、やはりそういう異常だという事態になってきたら抜本的にこれは考え直さなくちゃいかぬなと思っておるんだということも答弁しておみえになるのですね。だから、先ほど来申し上げておりますように、これは全く異常、べらぼうに安いとしか言いようがない。平均給与の倍である五円というときでも、これは慰謝であるから安いのは当たり前だ、こう言っておられた。一日平均給与額よりも相当少ない。そしてこれは賠償だとなったら、これはおかしいですよ。だから、刑事補償法の賠償額、補償額というものはこの際根本的に考え直していただかなければならぬときに来ているんじゃないかというふうに思うのですが、大臣、その辺のところ、一遍抜本的に考え直していただくという方向で、いい答弁をひとつお願いしたいと思います。
  85. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まず、私から御説明をもう少しさせていただきたいと思います。  先ほど来からお話のありましたように、刑事補償法は国家賠償の一つの形態であるわけでございます。元来、賠償義務が生じますのは、行為者に故意または過失があった場合に生ずるというのが近代法の基本的な考えであります。しかしながら、刑事補償法は故意過失を要件としないで、身体の拘束をなされた者が無罪の裁判が確定いたしましたときには、一律に定型的な補償をしようとすることがその基本であるわけでございます。言いかえますならば、損失の全額を完全に補償するということ、それはこの刑事補償制度の予定していないところであります。したがいまして、刑事補償法によりまして補償を受けましても、さらに国家賠償法によって賠償を請求することは可能であるわけでございます。戦前の刑事補償の当時は、一日五円以下ということでございましたけれども、この当時はたしか国家賠償法というものもなかったと思っておるわけでございます。  そういうようないろいろなことを考え合わせますならば、今度引き上げようといたします九千四百円という金額も決して不当に低いものではございませんで、憲法の要請しておりますところの補償を満たし得るものである、相当な補償であるというふうに考えているところでございます。  ただ、そうは申しましても、この補償金引き上げということにつきましては、私どももかねがね努力をいたしているところでございまして、過去七回にわたって引き上げを実現いたしているところでございますし、今回は八回目でございます。今後とも、諸般の事情を考慮しながら引き上げへの努力はなお続けるつもりでございます。
  86. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 今回の改正案は、経済上の変動その他もろもろの事情を勘案いたしまして、法務省といたしましては最善の案を提案しておるような次第でございます。しかし、仰せのように十分とは申せない点もありまするので、今後法務省もまた、最高裁を助けながら、ともにさらに検討をし、努力をしてまいりたいと存じます。
  87. 安藤巖

    ○安藤委員 せいぜい御努力をお願いしなければ、しかも抜本的に一遍考え方を変えていただかねばならない状況にあるということを再度指摘させていただきまして、時間の関係がありますからほかの問題に移りたいと思います。  この刑事補償法と連動することになっております被疑者補償規程の関係についてお尋ねをしたいと思うのです。  被疑者補償規程の第四条、ここに被疑者補償規程に基づく補償の立件をする場合が三つ挙げてあります。この各号の立件数はどういうふうになっておるのか、これはずっと昔からというわけにもいかぬですが、お調べいただくようにお願いしてあったのですが、昭和五十八年から六十二年の五年間のものを、ひとつどういうふうになっているのか、お知らせいただきたいと思います。
  88. 岡村泰孝

    岡村政府委員 昭和五十八年の立件人員が二十七名であります。五十九年が三十三名、六十年が二十六名、六十一年が二十五名、六十二年が二十一名であります。  この内訳は、嫌疑なしとかあるいは罪とならずといったようなことでありますが、本人の申し出がありました数字をその内数として申し上げますと、五十九年が三名、六十年が六名、六十一年が三名、六十二年が二名でございます。
  89. 安藤巖

    ○安藤委員 一号と二号の関係はどうですか。     〔今枝委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 岡村泰孝

    岡村政府委員 その前に、一点訂正いたします。  私先ほど申し上げましたのは、いわゆる心神喪失によります者を除いた数字でございました。心神喪失の者も含めてもう一度まず数字を申し上げたいと思いますが、五十八年が三百七十四件、五十九年が三百三十件、六十年が三百五十一件、六十一年が三百五十五件であります。  それから、一号該当の分でありますが、五十八年が二十六件、五十九年が二十九件、六十年が十九件、六十一年が二十二件、六十二年が十七件でございます。したがいまして、残りの二号該当で申しますと、五十八年が一件、五十九年一件、六十年一件、六十一年がゼロ、六十二年が二件という数字になります。
  91. 安藤巖

    ○安藤委員 今の二号の方の数は相当少ない数になっておるのですが、これはいわゆる嫌疑不十分という場合の立件数、こういうことになると思うのですが、その場合に——それだけでいいです。
  92. 岡村泰孝

    岡村政府委員 例えば告訴が取り消されたような場合は、告訴の取り消しということで処理いたすわけでございます。しかし、その中にも、例えば強姦事件で明らかに嫌疑がないという場合もあるわけでございます。ただ、この場合も親告罪で告訴が取り消されますと、告訴の取り消しという処理をいたします。そういうものがこの中に入ってくるわけであります。
  93. 安藤巖

    ○安藤委員 そして、これは検察統計年報にあるのですが、五十七年からずっといただいておるのですが、六十一年度だけ取り上げてお尋ねしたいと思うのです。  昭和六十一年度既済及び未済の人員、いわゆる不起訴理由別に書いてあるものですね。これは、業務上過失傷害、いわゆる道交法関係の違反の事件は除くというふうになっておるのです。これによりますと、嫌疑不十分の方は相当な数になっておるのですが、抑留拘禁の関係の被疑者補償規程の関係では、先ほどもおっしゃったように非常に少ないですから一応除くとして、嫌疑なし、罪とならずが、嫌疑なしの方が二千九十、それから罪とならずが七百四十六、合計して二千八百三十六、こういう計算になるわけですね。これは間違いありませんね。
  94. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのとおりであります。
  95. 安藤巖

    ○安藤委員 このうち身柄を抑留拘禁された人たちの数はどうなりますか。
  96. 岡村泰孝

    岡村政府委員 嫌疑なしと罪とならずで処理いたしましたものは、大部分がいわゆる在宅でございまして、身柄が拘束されておりません。六十一年で申しますと、身柄が拘束されまして、嫌疑なしと罪とならずの理由で不起訴になりました者は二十三名でございます。
  97. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、先ほど御答弁をいただきましたが、被疑者補償事件で立件をしたのは、先ほどの心神喪失なんかを入れると、昭和六十一年の場合で言いますと三百五十五というふうにおっしゃったですね。それから、先ほどの補償規程の四条の一号関係では二十二というふうにおっしゃったのですね。これは一名の食い違い、大したことないと言えば大したことないのかもしれませんが、この一名の食い違いというのはどうなんですか。
  98. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これは、例えば年末に不起訴処分にいたしまして、翌年早々に立件する場合もあろうかと思います。そういうものの数の違いというのが出てくる場合が考えられます。具体的にはちょっと承知いたしておりません。
  99. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、昭和六十一年の心神喪失等を含めた立件数が三百五十五、これはわかるのですが、先ほど二十三と二十二と食い違いがありますが、二十二といたしまして、少ない方の数をとりまして、実際に補償された人というのは昭和六十一年度で何人ですか。
  100. 岡村泰孝

    岡村政府委員 昭和六十一年の補償人員は四名でございます。
  101. 安藤巖

    ○安藤委員 その差が相当あるのですが、これはどういう理由に基づくものですか。
  102. 岡村泰孝

    岡村政府委員 立件をいたしましたけれども補償規程に従いまして補償の必要がないと認めたものがあるわけであります。
  103. 安藤巖

    ○安藤委員 補償の必要がないというのはどういうような理由ですか。
  104. 岡村泰孝

    岡村政府委員 交通事故、すなわち業務上過失傷害とか致死事件につきましては、よく身がわりの犯人が出頭してまいる事例があるわけでございます。みずから身がわりになりまして、自分が犯人であると言って出頭してきたような者につきましては、補償の必要がないわけでございます。こういったものとか、あるいは補償を辞退したものなどがあるわけでございます。
  105. 安藤巖

    ○安藤委員 二十二としても、四というのは本当に少なくなっておるなという気がするものですから。先ほどおっしゃったような理由で少なくなっておるというふうに理解しますけれども、これは刑事補償法に連動するものとしてきちっと立件をしていただいて、補償をしていただかなければならぬにもかかわらず、余りにも少ないなという印象がまだ残っておるのです。  ところで、この被疑者補償規程に基づく補償をするものについても、当然のことながらこれは予算を組んで支払うわけですね。この予算額というのは、そう古い話からは申し上げませんが、先ほど来五十八年からお尋ねしましたから、五十八年から六十二年まではどういうふうになっておりますか。
  106. 岡村泰孝

    岡村政府委員 五十八年以来予算額に変わりはありません。予算額は八十七万三千円になっております。
  107. 安藤巖

    ○安藤委員 変わりがないというのは、私がいただいた資料を見ますと、もちろんその中で、その範囲内で賄われておるのですね。やはり何かひっかかるのですがね。そうふえないだろうというような見込みがあってふやさないという方針なんでしょうか。何か抑えているのじゃないのかなという気もする。先ほどもちょっと、立件したのと比べて実際に補償した数が大分少ない、それから、今お尋ねしておりますように予算額が昭和五十八年以来全然ふえていないということになると、先ほど来諸物価上昇あるいは経済情勢の変化に応じてというようなことでいろいろ考えておられるのですが、予算額が全然変わっていないというのだと、どうもその範囲内でこれはいけるし、その範囲内で賄っていこうというお考えがあるのじゃないのかなという気がせぬでもないのですが、その辺はどうなんですか。
  108. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そういうことはないわけでございまして、過去、例えば昭和五十三年で申しますと百十一万六千円余の支払い、補償をいたしているところでございます。これは、当時の予算額を上回った金額になるわけであります。結局、そのときどきの情勢によりまして補償金額が多い場合と少ない場合があるわけでございますが、ここ数年のところは予算の範囲内で処理されております。もちろんこれが予算の範囲を超えるようなことがあれば、それは今後予算の増額ということにも努めなければいけないと思っております。
  109. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が参りましたから終わりますが、先ほどおっしゃった昭和五十三年の百十何万というのは、これはたしか何か大きな冤罪事件で無罪になった人がおったのです。だから特別ふえたのでありますが、ほかは予算額以内におさまっておる。だから私がここで強調し、お願いをしておきたいのは、予算額もこうやってずっと上げないでそのままで来ている。そして、立件をしたけれども実際に補償を受けている人はずっと少ない。辞退された人もいるんだとおっしゃるけれども、どうもその辺が、本当に補償をするという趣旨を貫徹し続けていただいておるのかどうか。おまえ、そう大した金額じゃないからあきらめたらどうだみたいな話もあってはならぬことでありますので、ゆめゆめそういうようなことがないように万全の補償をしていただくようにやっていただきたいということを最後に大臣にお願い申し上げて、そして質問を終わります。
  110. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 ゆめゆめそういうことがないように、万全の努力をさしていただきます。
  111. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  112. 戸沢政方

    戸沢委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ────◇─────     午後二時三十分開議
  113. 戸沢政方

    戸沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂上富男君。
  114. 坂上富男

    ○坂上委員 刑事補償法改正について御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、無罪等になりまして、捜査、裁判が不法行為であったとして国家賠償の訴えが提起されることがよくあるわけでございます。最近十年間におけるところぐらいの大体の件数でいいのですが、件数とその裁判の判決結果についてある程度わかりましたら、認容そしてまた棄却、いろいろ分類していただいて結構ですから、お聞かせをいただきたいと思います。
  115. 日野正晴

    ○日野説明員 最近十年間におきます無罪事件の国家賠償請求事件のうち、検察官の捜査、公訴提起、裁判の違法等を請求原因とするものの件数は全部で五十三件ございます。  その裁判結果でございますが、この十年間で請求の認容されたものが二件、それから和解が一件、それから請求棄却が二十四件、それから請求の取り下げが三件、現在裁判係属中のものが二十三件、こういうことになっております。
  116. 坂上富男

    ○坂上委員 まず、認容された事件、重立った名前を言っていただいて、請求金額が幾らで、大体幾らぐらい認容になったか、その理由は大体どんなところにあったか、それから、和解というのは珍しいのですが、どんなような和解内容になっておるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  117. 日野正晴

    ○日野説明員 請求の認容されたものは二件でございますが、その一つは、ちょっと長くなりますが、要点だけ申し上げますと、請求原因は、原告は殺人、死体毀棄の事実で公訴提起されまして、無罪の判決を受けましたが、検察官は、警察官が別件逮捕等の違法な手段により収集した証拠の評価を誤って原告を勾留した上、有罪判決を得る合理的な根拠が存在しないのに公訴を提起して千百二十六日間その身体を拘束したものであって、もう一方の原告は、これは先ほどの原告の妻でございますが、夫の方が長期間身体を拘束されたことにより精神的被害を受けたものである、これが請求原因でございます。  訴額が二千八百三十五万七千二百六十五円でございまして、五十八年十二月十六日に判決が言い渡されまして、その結果は六百七十万七千二百七十四円、こういうことになっております。  それから、もう一つの方についてでございますが、これは請求の原因は、原告は窃盗の容疑で公訴提起され、無罪の判決を受けましたが、その捜査過程において警察官が、事実を否認していた原告に対し脅迫、誘導等により自白を強要するなどのずさんな捜査を行い、また検察官は、警察捜査の不備等を看過し、証拠の評価を誤り、有罪判決を得られる見込みがないのにその裁量の範囲を逸脱して違法に起訴したものである、これが請求原因でございます。  一審、二審ございますが、訴額七百九十万、附帯控訴額三百九十八万三千円につきまして、最終的に三百九十一万六千百二十九円及びこれに対する五十五年六月十四日からこの支払い済みまで年五分の割合による遅延金ということについて、第二審判決がおりております。  それからもう一件、和解の件でございますが、統計資料の上では和解一件ということになっておりますが、その内容の点についてはただいま詳細を承知しておりませんので、調べた上でまた御答弁申し上げたいと思います。
  118. 坂上富男

    ○坂上委員 死刑判決がありまして、幾度か再審の請求をいたしましてようよう再審の請求が認められまして、無罪となって釈放されて帰られた有名な事件がいろいろあるわけでございます。そこで、三大事件と言われておりますところの松山事件、免田事件、それから財田川事件、これについても国賠が起きたのだろうと思うのでございますが、どういう結果だったのでございましょうか。
  119. 日野正晴

    ○日野説明員 お答え申し上げます。  まず松山事件でございますが、これは昭和六十年七月六日に訴えが提起されました。請求金額は全部で一億円ということになっておりまして、現在私どもの方では、これはまだ第一審に係属中というふうに承知しております。  それから、もう二つの免田と財田川の事件につきましては、国賠は提起されておりません。
  120. 坂上富男

    ○坂上委員 それから今度は、被疑者補償規程というものがありますが、この適用によるところの過去十年間の件数と一件当たり大体どの程度の補償金額が出ているのかお聞かせいただき、かつ、これが運用の問題点等について御意見をいただきたい、こう思います。
  121. 日野正晴

    ○日野説明員 ここ十年間でございますので、昭和五十三年から六十二年までの被疑者補償規程による補償人員の合計は、全部で九十一人ということになっております。ちなみに、拘束日数の合計は全部で八百十三日でございまして、補償金額の合計は二百八十八万八千百円となっております。  この被疑者補償規程は、刑事補償法日額上限額改正に対応いたしまして、日額上限額をその都度改定しておりますので、現行の上限額であります七千二百円となった後の昭和五十八年以降の五年間について見ますと、一日当たり平均補償金額は六千十五円ということになっております。なお、昭和五十九年、それから六十二年における一日当たり平均補償金額は七千二百円ということになっておりまして、補償したすべての事件が最高額でもって補償されております。  被疑者補償規程の運用に関して何か問題はないかという御質問でございますが、私どもといたしましては、その運用に関しては現在のところ特に問題となる点はないものと考えております。
  122. 坂上富男

    ○坂上委員 これは前回の法務委員会から時々御指摘があるのでございますが、これを立法化したらいかがかというような要請が出ておるのでありますが、遺憾ながら規程のままになっておるようでございます。  これは大臣にお聞きをすることになるのでありましょうか、被疑者補償規程というものは適用していただくということがなかなか容易でないのではないか。そうだといたしますと、今まで過去十年間のお話も今言われたような程度の状況でございます。どうしてもやはり警察、検察庁から調べられまして、そして逮捕、勾留をされまして、その結果裁判にはならなかったけれども、無実であるという適用を受けるのが結構あるのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。それに対して本当に被疑者補償規程が適用になっているかといいますると、余り適用がなされていないのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございますが、まずさしあたり規程の運用をなさっておる検察当局、今私が申し上げましたような点はいかがでございましょうか。  そして大臣、やはりこれは一種の人権保護という重要な問題でもあるわけでありまするから、この際、被疑者補償規程というものも立法化するような御努力と、問題点について相当の検討をした上で、幅広くこれが適用になるような方策をひとつ講じていただけないものだろうか、こんなふうに意見を持っておるのでありまするけれども、御答弁をいただきたいと思います。
  123. 日野正晴

    ○日野説明員 被疑者補償規程を立法化するといたしました場合にいろいろ問題が考えられるわけでございますが、その立法化については大きく分けまして二つばかり問題が存するのではないかというふうに考えております。  その一つは、仮に現行の被疑者補償規程を立法化するとした場合に、例えば検察官が起訴猶予といった処分をした場合には、補償請求権というものは認めるべきでないというのが恐らく当然出てくる結論ではなかろうかと思いますが、仮に起訴猶予というようなことで不起訴になった場合でございましても、結局、本人からは、いや自分は起訴猶予にはなっているけれども実際は無実なんだということで、裁判所にそれを訴えて出るということを容認せざるを得なくなるのではないだろうか。そういうことになりますと、結局、これは起訴猶予も含めましてすべての不起訴処分について被疑者補償規程にかわります法律上の審査を行う。そういう場合には恐らく裁判所がすることになるのではないかと考えられますが、裁判所がすべての犯罪について嫌疑の有無を判断するということになる点がまず第一の問題ではないだろうかというふうに考えております。  それから第二番目の問題といたしましては、検察官が事件の処理といたしまして罪とならずでありますとか、あるいは嫌疑なしといったような不起訴理由を前提として、これに基づいて補償請求権を認めるといったような法制をとらざるを得ないと思いますが、結局、このことは罪とならずとか嫌疑なしというふうな処分をしても、それは暫定的に検察官が行っている処分にすぎないわけですが、それがいかにも裁判上の確定判決と同様の確定力を持つというようなことになるのではないだろうか。これもやはり現在の刑事司法のあり方、法制的には疑義があるのではないだろうかと考えられるわけでございます。  このような観点からいたしますと、現在まで被疑者補償規程にかわる立法化が行われなかったということもうなずけるわけでございますし、また、今後もその立法化は適当ではないのではないだろうかというふうに考えられます。
  124. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣はいなくなったんだ。結構です、後で来られてからお聞きいたします。  今法務省が言われましたことは、法務省側にとって大変都合がいいといいますか、規程だけにしておけば都合がいいのでありますが、やはり被疑者の立場に立たれまして、逮捕、勾留された人から見れば、これはもう何としてもそういう観点から適用をしていただきたいということがあるのだろうと思います。ですから、これは法務省のお都合であって、本当にこれの当事者、被疑者、そういう人たちから見ますとどうもそれは反対の立場に立つのでありまして、ひとつさらに御検討を尽くしていただきたいなと私は思っておるわけでございます。  そこで、今ありましたところの国賠がなかなか認められない、被疑者補償規程の適用も受けない、そういうような状況の中で、今この無実になった人たちについては刑事補償法と刑事訴訟法における費用補償というものがあるわけでございます。そこで、どうしてもやはり費用補償あるいは刑事補償法に力が入らなければ、今言った二つの法や規程はなかなか被疑者あるいは無実の人に有効に活動していないというようなことから考えまして、私はどうしても刑事補償法の相当な充実を図っていただかなければならないと思っておるわけであります。  そこで、まず刑事補償法に入る前に、刑事訴訟法における費用補償の問題についてお聞きをしたいのであります。費用補償について、再審において無罪になった者については今までどのような取り扱いになっておるか、お聞きをしたいのでありますが。
  125. 日野正晴

    ○日野説明員 坂上先生御案内のとおり、刑事訴訟法百八十八条の二以降には費用の補償に関する規定がございます。この規定は、無罪の判決が確定したときには、国はその事件の被告人であった者に対しましてその裁判に要した費用を補償する旨を定めたものである。その後に出てまいります百八十八条の六の第一項、これはこの百八十八条の二の第一項の規定により補償される費用の範囲は、被告人もしくは被告人であった者またはそれらの弁護人であった者が公判準備及び公判期日に出頭するのに要した旅費、日当等並びに弁護人であった者に対する報酬に限るものとしているところでございます。  先生御指摘の再審請求手続において要した費用がこの刑事訴訟法百八十八条の二の規定による補償の対象としているかどうか、こういう御質問であろうかと思いますが、御案内のとおり最高裁判所の判例も、また立案当局者のこれまでの見解も、あるいはまた多くの学説もこれを消極に解しております。そして、補償の対象とはならないというふうにしております。それが現在の実際の取り扱いになっております。
  126. 坂上富男

    ○坂上委員 どうも今御指摘のような状況のようでございまして、この再審における費用というものは、どうも検察庁あるいは裁判所においても実際に再審にかかる場合の実態というものについて御理解が不足なのじゃなかろうかというのが各雑誌の座談会等に言われておるところでございまして、でき得るならばもう少し幅広い解釈の上に立って、特に再審、無罪というものはもう大変な苦労と御努力で出てきた結果でございますから、ひとつそれに対しても何らかの費用補償というものがなされるようにしていただかなければならない問題なのじゃなかろうかと私は思っておりまするので、今後ひとつ御検討の課題にしておいていただきたいと思っておるわけであります。  さて、いよいよ刑事補償法ずばりでございまするけれども、この刑事補償法第四条第二項を読みますとこう書いてあるわけでございます。「拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮」してこれを決定するというふうになっておるわけでございます。もう少し具体的に、裁判所ではどのようなことを御検討になりながら決定がなされているのか、この解釈上の説明をいただきたいと思うのであります。
  127. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 刑事補償法四条二項には、ただいま御指摘のような規定があるわけでございます。この規定は、裁判所が個々の事件につき、この四条第一項に定める範囲内において具体的な補償金額を定めるに当たって考慮すべき事項を列挙したものと考えられております。裁判所といたしましては、この法律に書かれておりますようないろいろな事項を総合考慮して補償金の額を定めるという運用をいたしておるところでございます。
  128. 坂上富男

    ○坂上委員 雑誌によりますと、この刑事補償法の第四条につきまして、有名な那須さん、弘前大学教授夫人の殺人事件でございましたか、それから加藤さんですか、という方に対しまして最高の刑事補償基準日額を決定いたしたわけでございます。それで、最高の決定だそうでございまするので、この条文があらゆる点に合格といいましょうか、解釈といいましょうか、出てきたわけでございます。そこで、この解釈が最高金額を認めるのですから、この第四条第二項の解釈すべてを有効に解釈なさったわけでございます。そうだとしますと、その中に警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無についても容認されてこの補償がなったのではなかろうかと私は思っておるわけであります。  しかしながら、そういうような状態であるにかかわらず、再審の無罪の二人にとりましては、再審の部分についてこれに対する刑事補償はあったのでありますけれども、費用補償というものがほとんどなかったというふうに聞いておるわけでございます。そんなような意味から考えても、今運用なされておりますところの刑事補償法補償決定といわゆる費用補償とが、あるいはまた国家賠償がどうも有機的な解釈が行われておらないで、一方ではこの事実を認めながら一方では国家賠償が棄却になるというような状態になっているのじゃなかろうか、こう思うわけであります。もちろん裁判所でありますから裁判の結果にはよるわけでございまして、あるいは相反するところの判決が出てもこれは裁判独立の上からいってやむを得ないことだろうと思うのでありますけれども、どうもそんなようなことが御指摘をされているように思っているのでございますが、そもそもこの刑事補償の理念というものは大体どんなところを考慮の上で立法され、金額査定がなされているのか、ちょっと御見解をいただきたいと思います。
  129. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 先ほどの私の説明がいささか説明不足だったのではないかと思いますが、この刑事補償法四条二項の規定は、裁判所が個々の事件につきまして四条一項に決められます金額の範囲内において具体的に幾らの金額を支給すべきかということを判断するに当たって考慮すべき事項をいろいろ書いてあるわけでございます。最高額を出した場合にはそこに書かれている条件がすべていわばプラスの方向に判断された結果であろうというような御意見に伺いましたが、実務では必ずしもそうではございませんで、ここに書いてあるようなものを総合判断いたしますので、例えば必ずしも故意過失が認められないという場合にも最高額が支払われるという例はあるというふうに私どもは考えております。  参考までに、実際上どの程度の金額が払われているかということにつきまして申しますと、昭和五十七年から六十一年までの現行の補償日額の規定の適用を受けた百七十一例について見ますと、上限の七千二百円を含め六千円を超える金額を支払った例が六十九例、四〇%でございます。それから六千円以下三千五百円を超える金額を支払った例が七十八例、四六%でございます。三千五百円以下の金額を支払った例が二十四例、一四%、このような実情になっております。
  130. 坂上富男

    ○坂上委員 問題点の指摘だけで一応この部分を終わりまして、そもそも日本の刑事裁判というのは有罪率が九九・八六%という、世界的にも有罪率が高いと言われておるわけでございます。しかしながらまた一面、無罪になるあるいは問題になるという事件が相当、人権上の立場から、捜査のあり方からも私たちは大変危惧しなければならない問題が出ておるわけでございます。日弁連の機関誌「自由と正義」昭和六十二年七月号の八十四ページから九十四ページまでに出ておりますところの、誤判の影響を与えるところの捜査書類の偽造等の事件、これについてお聞きをしながら、こういう不正防止を一体どうしたらいいかという問題についてこの際御検討をいただくことが最も有意義じゃなかろうか、こう思って、この部分に少し時間をかけながら御質問をさせていただきたいと思います。私はこの問題は、今後問題になるであろうところの拘禁二法にかかわる意味においても重要な問題だというふうに思っておるわけであります。  そこで、一応アンケートの資料については、きのう遅かったのでございますが、警察当局にあらかじめお渡しをいたしまして、そしてそれを各現地の警察等に当たっていただきましてきょう御質問をさせていただく、こういうことなんでございます。警察当局ではきのう夜遅くから準備なさいまして大変でございましたでしょうが、重要な問題の指摘だと私は理解をいたしておりますので、ひとつできるだけ詳細な御答弁をいただければありがたいと思っておるわけであります。  まず一つは、昭和四十六年十二月二十四日京都府峰山警察署に起きた事件で、京都弁護士会が報告した事件でございます。窃盗で、少年事件でございます。被疑者の供述調書、被害届でこういう不正行為がなされたとあるわけでございます。被害事実も犯罪事実もないのに、六名の少年を被疑者として窃盗自白の供述調書六通及び被害届三通を偽造したというものであります。そして不正事実の確認は、京都家裁の四十八年九月十二日決定で調書の指造を認定、審判不開始決定が四十八年五月十九日になされ、京都弁護士会も警察に対して警告を発しておるようでございます。そして事件の結末は、四十八年九月十二日京都家裁で審判不開始決定、非行なしという判断のようでございますが、これは事実でございましょうか。また、事実であるとすれば、警察はこのような偽造調書をつくられた関係者に対してどのような御処断をなされておったのか、お聞きをしたいと思います。
  131. 遠藤豊孝

    ○遠藤説明員 ただいま御指摘の事件について御説明申し上げます。  この事件は、昭和四十六年七月に京都府内でコーラの飲み逃げという事件がございまして、こういう事実を把握しておりました警察官が六名の少年を目撃者の証言から名前を割り出しまして、この少年に一切事情聴取あるいは取り調べ等当たることなく六名の少年の供述調書を偽造したものでございます。先ほど御指摘がございましたように、被害届等も偽造しております。  この事件につきましては、虚偽公文書作成、同行使、同じく私文書偽造、同行使という罪名で捜査を遂げまして送致をしてございます。本件につきましては昭和五十年十一月二十一日に確定しておりますが、この件にかかわりました防犯係長は懲役一年、執行猶予三年、この防犯係長の指示を受けて盲目的に少年の署名等を偽造いたしました係員、これは起訴猶予になっております。  なお、京都府警といたしましては、この二名に対しまして、防犯係長につきましては懲戒免職、防犯係員につきましては諭旨免職の措置をとりました。なお、その上司たる警察署の次長につきましては減給処分、本部の少年課長につきましては本部長訓戒の処分をとっております。
  132. 坂上富男

    ○坂上委員 大変恐るべきことでございまして、私たちが勝手に偽造の自白調書をとられ、被害届がこれまた勝手に偽造されまして処罰を受けるなどというようなことになりましたら、これは大変でございます。私は、恐ろしい行為が権力によって行われていることを大変恐れるのであります。  次に、二番目でございますが、昭和四十六年八月十一日、四十八年十二月六日から四十九年一月十七日の間に埼玉県蕨警察署と浦和区検察庁で起きた問題で、これを報告いたしましたのは第二東京弁護士会の弁護士先生でございます。事件名は道交法違反、信号無視でございます。文書は実況見分調書が偽造、変造されたようでございまして、不正内容は、立ち会っていない被疑者を立会人として記載、公判中に立会人の記載を「相勤務者」に書きかえたという事件でございます。この不正事実の確認は、五十年十一月二十五日東京裁判決で右虚偽記載並びに後日の変更を認定したのであります。そして事件の結末は、五十年十一月二十五日東京高等裁判所で判決、公訴事実の証明がないとして無罪になったわけであります。多分これは第一審は有罪になったのだろうと思うのでございますが、これまた恐ろしいことでございます。この事実の確認とその結果についてお話しをいただきたいと思います。
  133. 田辺八州雄

    ○田辺説明員 お答えいたします。  本件事案は、昭和四十六年八月十一日、埼玉県下で信号無視の違反を検挙いたしたわけでありますが、その際、被疑者が違反事実を否認いたしました。そのため、取扱警察官、その事案を取り扱った警察官が、実務経験が一年未満ということで非常に浅くて実況見分にふなれであったため、参考書を見ながら実況見分調書を作成したわけであります。このとき、立会人欄の記載例を見ますと被疑者の氏名を書くというふうに書いてあったということで、立会をしていない被疑者の氏名を記載したということでございまして、至って初歩的なミスということでございます。  今後このような間違いが生じないように指導、教養を徹底してまいりたいというふうに思っております。
  134. 坂上富男

    ○坂上委員 三番目は、五十一年十月二十八日岐阜県北警察署で起きた事件で、名古屋弁護士会の弁護士先生からの報告でございます。罪名は公正証書原本不実記載、恐喝、そしてその文書は任意提出書でございます。不正行為の内容は、捜索、差し押さえにおける任意提出書の欄外に「書類(ダンボール箱入り)一箱」と後日書き込んだのであります。不正事実の確認は、判決は当該部分が後日書き加えられたのではないかとの疑いを払拭できず、成立の真正を認めなかったのであります。そこで事件の結果は、五十九年三月二十六日岐阜地裁で判決があり、岐阜県に対する国賠訴訟で原告が勝訴いたしまして、その後控訴された、こう書いてあるわけでございますが、これはいかがでございますか。
  135. 古川定昭

    ○古川説明員 御指摘になりました事案は、昭和五十一年十月二十八日に岐阜県の警察署で、ある罪名である家を捜索した際に、同人の奥さんの了解を得て車庫内にありました自家用車を任意で捜索をした。その際、証拠品を発見したことによりまして任意提出を受けて領置したという事案でございますが、任意提出を受けて領置したその手続の過程でその任意性といいますか、その手続が争われて、第一審で相手方の請求が認容されておるという事案で、現在控訴中の事案でございます。
  136. 坂上富男

    ○坂上委員 これは判決理由はわからぬでしょうか。判決理由をきちっと言っていただければ、この不正行為の内容が明確になるわけでございますが、私が今読み上げたとおりというふうに理解していいでしょうか。
  137. 古川定昭

    ○古川説明員 ちょっと判決理由につきましては把握しておりませんが、争点として私どもが理解しておりますのは三つございまして、一つは、捜索令状をとって捜索したわけですが、それ以外のところの捜索をしたという事実でございますけれども、その令状に記載してないスクラップブックを押収した。それからもう一つは、敷地内にある車庫の中の車両でございましたが、その車両を令状なしに捜索した。それから三点目は、捜索に際し報道機関が写真撮影をするチャンスを与えたというような、その三点が争点でございました。
  138. 坂上富男

    ○坂上委員 それはそれで結構です。  さて次は、四番目でございますが、五十二年二月ごろの出来事で、大阪府の貝塚警察署で起きた事件で、大阪の弁護士さんの方からの報告でございます。事案としては覚せい剤取締法違反なんでありますが、捜査復命書が問題になったのであります。不正行為の内容は、被疑者の腕に注射痕が認められた旨虚偽の事項を記載をしているのであります。その不正事実の確認は、証人尋問において作成警察官が虚偽記載の事実を認めたのであります。そこで、五十三年七月十三日大阪高裁で復命書虚偽記載理由で無罪判決、こうなったわけでございますが、これはこのとおりでございましょうか。また、この警察官についてはどのような処置がなされたのでございましょう。     〔委員長退席、今枝委員長代理着席〕
  139. 島田尚武

    ○島田説明員 お尋ねの事案は、昭和五十二年二月ごろの覚せい剤取締法違反、これは自己使用でありますが、事件に関し、一審で有罪判決の出た後、控訴審で、本件捜査過程で作成した捜査復命書の内容について、被疑者の腕に注射痕が認められた旨の虚偽の事項が記載されているとの理由で無罪判決が確定した事案であります。  事案の概要は、共犯者の供述から、昭和五十二年二月七日、被告人の出頭を求め事情聴取するに際し、同人の腕に注射痕が認められたため、任意に尿の提出を得て帰宅させ、後日鑑定を得まして陽性の結果が出た。そのために、三月二日、同人を覚せい剤取締法違反事件で通常逮捕したというものであります。  なお、警察といたしましては、捜査復命書の作成に際しましては、常に事実をありのままに記載するよう徹底しているところでありまして、御指摘の大阪府警の事案の捜査につきましては、実際に捜査に当たった捜査官は認知した事実をありのままに記載したものと私どもは確信しております。しかしながら、作成日等についてやや不正確な面があって、作成警察官が法廷で的確な証言をなし得ず、控訴審で捜査復命書の内容が虚偽と認定され、無罪となったものと理解しております。  警察といたしましては、本件捜査につきましては、捜査復命書に虚偽の記載ということはなかったと判断いたしておりますが、当時から特に覚せい剤事犯捜査につきましては、公判段階で供述を変更し否認に転ずるケースが散見されたこと及びこの判決が出たことなどを踏まえまして、全国の覚せい剤事犯捜査員に対し、捜査復命書の作成に当たって、作成年月日の正確な記載は言うまでもなく、事件の真実性についていささかも疑念を抱かれることのない適正な捜査資料の作成に努めるよう指導しているところでございます。
  140. 坂上富男

    ○坂上委員 少し時間がかかりますが、やはり少し詳細に聞かしていただきたいと思います。  次は、五十三年三月ごろでございますが、浦和地検の越谷支部で起きた事件で、第二東京弁護士会の先生からの報告でございますが、罪名は横領等、それでその文書は証拠物たるメモであります。事件関係者が作成したものでございますが、不正行為の内容は、着服を裏づける日付の部分を変造したのであります。不正事実の確認は、浦和地裁越谷支部の判決で変造の事実が認定をされました。そして、五十六年七月十七日浦和地裁越谷支部で無罪判決が確定いたしました。そして、国に対しまして国家賠償がこの当時におきましては係属中だと言われているわけでございますが、この事案についてはどのような御確認でありますか。
  141. 日野正晴

    ○日野説明員 お尋ねの件につきましては、主任検察官が、みずからの作成しました調書の内容に誤りがありましたので、手控えのメモがわりにするということで書き込みなどをしたもののようでございます。これはもちろん公判にも提出されておりません。証拠物でありますその領収証の偽変造の事実はないというふうに承知しております。
  142. 坂上富男

    ○坂上委員 これは無罪になったと書いてあるが、いかがですか。しかも浦和地裁の越谷支部では、判決で変造があったと言っているのですから、これはメモが証拠になっているのじゃなかろうかと思いますが、いかがですか。
  143. 日野正晴

    ○日野説明員 お尋ねの件につきましては、確かに無罪になっておりますが、その検察官が偽変造したというものではございません。
  144. 坂上富男

    ○坂上委員 そうですか。じゃ、それはそれで、質疑を続けます。  五十三年十月二十九日、岩手県江刺警察署、それから盛岡地検の水沢支部、両所に関係するもので、岩手の弁護士先生で、業務上過失致死、道交法違反でございます。文書は、実況見分調書が出されたようでございます。不正行為の内容は、現場で被害者を見てあおむけに倒れていたと記載したが、後日検察官から第一発見者の供述と矛盾すると言われ、うつ伏せと訂正したようでございます。不正事実の確認は、実況見分調書の作成者である警察官が訂正の事実を証言したのであります。そこで、五十五年の十二月十二日盛岡地裁一関支部で判決がありまして、業務上過失傷害として有罪になったわけでございます。証言でその事実を確認したようでございますが、いかがでございますか。
  145. 田辺八州雄

    ○田辺説明員 御質問の事案は、岩手県下で昭和五十三年十月二十九日に発生をいたしました交通死亡事故現場での実況見分でありますが、この見分を行った警察官が実況見分作成時に、記憶違いに基づきまして現場の被害者の倒れていたその姿勢につきまして、半ばあおむけというふうに記載をしたわけであります。本人の言う理由といたしましては、そのとき見た被害者の顔が非常に青白かったという印象が頭にこびりついていたものですから、顔がよく見えたという記憶違いを起こしたということでございます。実際は、第一発見者の供述どおりうつ伏せというのが正しかったわけでございまして、そのうつ伏せという状態に訂正したというものでございます。  こうした誤りのないよう今後指導、教養を徹底していきたいと思います。
  146. 坂上富男

    ○坂上委員 その次、五十四年十月六日長野県岡谷警察署で起きた事件で、長野の先生からの報告でございます。公職選挙法違反の法定外文書配布でございます。参考人の供述調書がやられたようでございます。不正行為の内容は、警察官が懇意にしている参考人の自宅を訪ね、あらかじめ作成していった供述調書に署名、押印させたようでございます。不正事実の確認は、調書は不同意とされ、参考人の証人尋問において左の事実を認めた、こうなりました。事件の結末は、作成警察官の証人申請はなく、検察官より警察によく注意しておいたとの釈明があったわけでございますが、この事実はいかがでございましょうか。
  147. 古川定昭

    ○古川説明員 ただいま御指摘になりましたこの事案は、事案自体は承知しておりますが、ただいまの供述調書に署名、押印という件につきましては、調査いたしましたが、日時がかなりたっているせいかどうかわかりませんが、どうもそのような事実は把握できませんでしたので、御報告申し上げる次第でございます。
  148. 坂上富男

    ○坂上委員 それはそれでしようがないです。  八番目は、五十五年五月二十日の出来事で、兵庫県の生田警察署、神戸の弁護士先生からの報告でございます。道交法違反で、歩行者妨害でございます。実況見分調書が文書の標目でございます。不正行為の内容は、道路幅員、違反車両と被害者との位置関係につき虚偽記載がなされたものでございます。そして、裁判所が検証の結果、右の事実、虚偽記載を確認したわけでございます。五十七年四月二十七日、実況見分調書及び作成にかかわった警察の証言は信用できないとして無罪判決があった事案でございますが、これはいかがですか。
  149. 田辺八州雄

    ○田辺説明員 本件は、昭和五十五年五月二十日、兵庫県下で普通貨物自動車を運転し左折する際に、横断歩行者があるのにこれを妨害したという事案で検挙したわけでありますが、そのときの実況見分調書の距離関係につきまして実測をせずにいわゆる目測で記載をした、そういう部分があったものでありまして、このようなことがないよう今後教養してまいりたいと思いますが、この事案につきましては、一応担当の巡査につきまして減給という内部の処分をしておるところでございます。
  150. 坂上富男

    ○坂上委員 九番目でございます。  五十五年六月二日の出来事で、埼玉県草加警察署でございますが、東京第二弁護士会の先生からの連絡で、業務上過失傷害で被疑者の供述調書が問題になったのでありますが、不正行為の内容は、調書作成後「要するに左をよく注意しなかったためです」と虚偽記入をしたわけでございます。不正事実の確認は、他の記載部分との内容の矛盾、筆跡の色や太さが相違することを理由に事後の書き込みを認定したようでございまして、越谷簡裁の認定でございます。その結果が、五十六年七月一日越谷簡易裁判所で無罪判決になったようでございますが、いかがでございましょうか。
  151. 田辺八州雄

    ○田辺説明員 本件につきましては、昭和五十五年六月二日、埼玉県下において普通乗用車を運転し、丁字路の交差点を左折するに際し、左方から来た自転車と衝突した事案であります。その運転者、車両の方の運転者に対して、事故の回避措置をとらない自転車利用者の出現を予測して運転者に事故回避の注意義務を認めるのは刑法上妥当ではないという理由から無罪となったと理解をしております。  ただし、この供述調書の作成に当たって不適正であった点につきましては真摯に受けとめ、これを教養してまいりたいと思っております。
  152. 坂上富男

    ○坂上委員 あと二つでございますが、十番目。  五十五年十月から五十七年九月にかけてでございますが、兵庫県尼崎中央署、兵庫県尼崎北署の事件でございまして、神戸弁護士会の先生からの連絡で、罪名はわいせつ図書販売、風俗営業法違反でございます。この文書、驚くのですが、参考人供述調書が、中央署の分で四十五通、北署の分で六通あるわけであります。不正行為の内容は、捜査協力者を運用し、おとり捜査の上、虚偽事項を含んだ調書を以下の手法で作成した。 一、あらかじめ供述者に偽名の署名、押印をさせた調書に警察官が内容を記載した。二、同僚の警察官が偽名で署名、指印した。三、内容虚偽の調書に参考人が偽名で署名、指印をした。こうなっております。不正事実の確認は、五十八年四月二十八日虚偽公文書作成罪で起訴されまして、有罪判決で事実が確認されたようでございます。これについては、六十一年五月二十七日神戸弁護士会から県警本部に警告がなされておるわけでありまして、合計五十一通もこの事件に関連して作成された大変大がかりな、組織的な文書偽造行為じゃなかろうかと思っておるわけでございますが、これはいかがなんでございますか。
  153. 平沢勝栄

    ○平沢説明員 お尋ねの事案は、昭和五十五年十月から昭和五十七年九月、兵庫県警におきまして、捜査協力者の参考人供述調書の作成に関しまして虚偽公文書の作成、同行使が行われたという事案でございます。  具体的に申し上げますと、風俗関係事犯の捜査、すなわち風俗営業法違反事件あるいはわいせつ図画販売事件、こういった事件の捜査に関しまして、今御指摘がございましたとおり、捜査協力者の参考人供述調書の作成に当たりまして、住所、職業、氏名、年齢等につきまして虚偽の事実を記載して送致したというものでございます。  この事件につきましては、関係した警察官計六名いずれも起訴されておりまして、いずれも有罪になっております。内部的には、実刑判決を受けました一名につきまして懲戒免職、猶予刑を受けました五名につきまして諭旨免職処分を行っております。  いずれにしましても、この種の事案がないよう指導、教養を徹底しているところでございます。
  154. 坂上富男

    ○坂上委員 最後の事件でございますが、十一番目。  五十五年十二月兵庫県柏原警察署で起きた事件で、大阪の弁護士先生の連絡で、業務上過失致死、被疑者の供述調書が改ざんされたようでございます。被疑者の自白調書の一部、実況見分調書を引用した箇所で、その作成日付を後で改ざんしたのであります。そして、不正事実の確認は、関係警察官が法廷での証言で認めたようでございます。しかし、その結果は無罪にはならなかったのでありますが、事実だけは間違いないようでございますが、いかがでございましょうか。
  155. 田辺八州雄

    ○田辺説明員 お尋ねの事案は、昭和五十五年十二月二十九日兵庫県下で扱った交通死亡事故の被疑者の供述調書の作成に当たりまして、取り調べをした警察官が、供述調書を作成した数日後に、その調書の内容で被疑者に示した部分でありますところの実況見分調書作成年月日と作成者の官職、氏名を訂正したわけであります。この際、被疑者の同意を得ずに加除訂正をしたというものでございます。  今後このようなことがないよう指導、教養を徹底してまいりたいと思います。
  156. 坂上富男

    ○坂上委員 以上が日本弁護士連合会が関係弁護士先生から報告を受け、調査した事案でございます。これは、弁護士先生たちがそれなりの機関でこの違法事実を確認なさったからこう言えるわけでございます。失礼でありますが、多分これは氷山の一角じゃなかろうか。公表されないけれども、相当こういうことが行われているのじゃなかろうか。そうだといたしますと大変ゆゆしき問題でございまして、私たちはおちおちまくらを高くしたまま寝るわけにいかないというような恐怖感に駆られるわけでございまして、この調書あるいは偽造文書がもとになりまして誤判が出たりいたすわけでございます。そして、その結果が今刑事補償法等で議論しておりまするような補償という結果になるわけであります。何はともあれ、こういうふうに無実の人が捜査官から書類を偽造されて、無実のまま処罰を受けるなどというような事態があったら、これはまさに世はやみでございまして、どうぞひとつ、捜査当局におかれましてはゆめゆめこのようなことのないように強く要望しておかなければならないと思っておるわけであります。  そこで、私はこのような不正防止の対策あるいは提言について申し上げたいのであります。特に大きな問題になりますのが、いわば拘禁二法の問題でも議論がなされると思うのでありますが、関係者の皆様方は捜査の上でこういうようなことはできないのかということを提言なさっております。これについてひとつ捜査当局から、検察でも警察でもどちらでも結構でございますが、御意見を賜りたいと思います。  まず一つは、捜査過程の客観化ということでございます。  (一) 身柄拘束後、被疑者に対する取調べを行った場合、取調べ年月日、時間(開始、中断、終了の時刻)、取調べ場所、取調官の官職氏名などの記載を義務づけ、これらを記載した「取調べ報告書」を供述調書の取調べ請求を行う場合に必ず提出させること。  (二) 取調べのたびごとに必ず調書を作成すること。これに「第何回」供述調書という通し番号を付けること。  (三) 要約した物語形式ではなく、一問一答式も含め発問及び供述を具体的に記述すること。  (四) 取調べにあたる捜査員は名札を着用すること。  (五) 供述調書の契印及び訂正印も供述者と録取者双方のものを押捺すること。  (六)供述者や実況見分の立会者には調書のコピーを交付すること。 これだけでもなかなか大変なことでございますが、こういうふうにしていただければ、それでもまだ今のような問題は防げるのだろうと私は思います。  その次に、今度は「違法収集証拠の排除」ということでございます。  (一) 法令に違反した手続きにより得られた証拠は証拠能力がないものとすること。 これは私は当たり前だと思うのですが、  供述者の署名や押印のないもの、作成日付など重要部分に虚偽があったり、また作成後の無断訂正がなされたような場合は、全体として証拠能力を欠くものとすること。  (二) 調書の任意性を判断するにあたっては、厳格な証明をなさしめること。  (三) 公訴提起後、裁判所は弁護人の申立により全手持証拠の開示を命ずるようにすること。  (四) 違法な捜査に基づく公訴提起は、公訴を棄却すべきこと(事例6、10では、検察官は訴因を変更して公訴を維持し、裁判所もこれを認めている)。  それから今度は四番に、「不正を犯した捜査官の責任追及」でございます。  (一) 不正が犯罪を構成するときは迅速に訴追され、処罰されるべきである。  (二) 不正に関する民事上の責任も、国家賠償などを通じて厳格に追及されなければならない。故意になされた不正については、公務員の個人責任をも免れない旨明定すること。  (三) 懲戒処分等が厳格に行われなければならない。配転などでウヤムヤにされることを防止するためには、独立の権限ある懲戒機関(検察官については検察官適格審査会がある)を設置し、かつ被疑者等に申立権を認めること。 こういうような提言がなされております。  これはなかなか捜査当局が確約はできないことでもありますし、また、裁判所とかかわる問題も相当あるようでございますが、ひとつ御意見、御所感などを捜査当局、警察、検察から御答弁いただきましょうか。まとめてでいいです。
  157. 古川定昭

    ○古川説明員 それでは警察の立場から、ただいま先生が御指摘になりました前段の部分につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず最初に、身柄拘束後、被疑者に対する取り調べを行った場合に、その年月日、時間、場所、取り調べ官の官職、氏名等の記載を義務づけ、これらを記載した取り調べ報告書を供述調書の取り調べ請求を行う場合に必ず提出させることとすべきではないかということでございますが、これにつきましては、現在、捜査側からの必要の判断ではございますが、必要に応じまして捜査報告書という形式でこれを明らかにして作成しておることでございまして、ただし、すべての場合にこれを作成しているということはございませんが、作成している場合がかなりあるということでございます。  二点目は、取り調べのたびごとに調書を作成すべきではないかということでございますが、被疑者を取り調べたときは原則としてその都度被疑者供述調書を作成するということで内部的な規定では指導をしておるところでございますが、被疑者が例えば前日録取した調書の内容とほとんど変わらない供述をまたその日も行っておるというような場合、あるいは取り調べ内容が多岐にわたるためすべてを一日で聴取できないというような場合などは、取り調べの都度供述調書を作成しないで、それを整理してといいますか、何回かを一回にまとめて調書を作成するということが実務上行われておりますが、これはなかなかやむを得ないところではないかということで、そのように承知しておるところでございます。  それから、調書の通し番号の関係でございますが、これは現在私どもが用いております供述調書の様式の問題でございますが、第何回と記載する欄は現在ないわけでございますので、それを特に記載していないという現状でございます。このことにつきまして、特にこのことが被疑者の防御権を不当に侵害しているというようなことは今のところないのではないかというふうに私ども考えておりますが、この点につきまして今後の課題として検討してまいることは一つのテーマかなというふうには考えております。  それから、供述調書の作成の仕方といいますか、一問一答式を含め発問及び供述を具体的に記述すべきではないかということでございますが、供述調書作成に当たりましては、調書に録取する前に供述をよく聞きまして前後の関係を検討してそこの中から矛盾点を発見し、これをよく聞きただして内容を調書化していくということになっておりますので、その取り調べ官の判断にもよりますけれども、問答形式を使用する場合ももちろんあるというふうに承知しておるところでございます。  それから名札着用のことでございますが、取り調べの初期の段階におきまして取り調べ官が被疑者に自己の氏名を告げているというのが実務の現状でございますが、それがすべてそうしているかと言われますと必ずしもそうでないわけであります。例えば捜査妨害が予想されるとか報復等の意図が相手方に見られるとか、いろいろな状況がございまして、本人または家族等に危害が加えられることが予想されるというようなことから、一律に取り調べ官に名札を着用させることは現状では適当ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。  それから供述調書の契印と訂正印の関係でございますが、供述調書は公務員が作成する録取書でもある点にかんがみれば、録取者の印により契印、訂正印を押せば足りるというふうに現在理解しておりまして、それを供述者も契印を押させる、あるいは押してもらうということは、現状ではまだそこまでは至っていないし、まだかなり問題があるのではないかと考えておるところでございます。  それから、供述者や実況見分の立会者にその調書のコピーを交付するというような問題も御指摘になりましたが、供述調書や実況見分調書は公判廷に提出することを予定して作成されているものでございますので、その作成目的と異なる態様で、そのコピーといいますか、謄本を供述者や立会人に交付するということは適当ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。  以上、警察に係る分について御説明申し上げました。
  158. 日野正晴

    ○日野説明員 先生御指摘の点は多岐にわたりますが、捜査書類の偽造、変造などしてはならないことは改めて言うまでもないことでございます。検察においても捜査における行き過ぎ、誤りなどが行われないように十分に意を用いているものと存じます。当局といたしましても、各種会同や会議の機会を通じまして、検察官において収集されている証拠を慎重に吟味し、適正な捜査処理がなされるよう留意すべき旨指示しているところでございます。また、警察とは日ごろから緊密な連絡を保ちまして、適正な捜査がなされるよう協議等を行っているものと承知しております。
  159. 坂上富男

    ○坂上委員 ひとつ御努力を期待するわけでございます。まさに無実の者がつくり上げられることを最も恐れているわけでございます。  さて、大臣のかわりにお見えになりました法務政務次官、お聞きのとおり、捜査の現場においては今言ったような事実があるわけでございます。しかも、いわばそれを暴くといいますか、事実を認めさせる、こういう違法を認めさせるというものはなかなか容易でありません。しかし、これは幸いにして、それがでたらめであった、不正であったということが判明したのでございます。私は、さっきも推測いたしましたとおり、あるいは氷山の一角なのではなかろうかとも心配をしておるわけでございます。そうだといたすならば、いま少し捜査のやり方の中で考えなければならないところがあるのではなかろうかということで、今申し上げましたのも日弁連の機関誌に載っておる提言でございますが、次官とされまして、捜査と法務省の立場でかかわりがあるわけでございますが、ひとつどのような御所感をお持ちなのか。私は、あるいは今でもこういうようなことが現場においてあるとするならば慄然たる思いがしておるわけでございますが、御所感を賜りたいと思います。
  160. 藤野賢二

    ○藤野政府委員 ただいま先生からの御質問等、私もここでずっと承っていたわけでございますが、一部にはやはりミスというものも生ずる、いかなることも絶対、完全ということはないと思いますので、それは事実であると思うわけでございます。しかし、法務当局また警察といたしましても、常に最善を尽くし、また、生じたミスについては二度と起こらないよう努力しておりますので、今後ともそのようにしてまいりたいと思います。
  161. 坂上富男

    ○坂上委員 次官はミスとおっしゃいましたが、これは組織的な故意によるところの権力の犯罪行為である、こう指摘をしておるわけでございまして、あるいは今おっしゃいましたのは、一部私が挙げたのはミスがあるのもあるかもしれません。しかし、やはり全体的に見てみますと、捜査官がそのことのために有罪の判決を受ける、裁判を受けるということにおいて責任を問われていることでございます。とんでもないことでございまして、そういうふうな意味において、これらを防止するにはいかがにしたらいいかと言って御提案をし、御意見を賜ったところでございまして、どうぞそのような観点からひとつ指揮監督等をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  さて今度は、最近再審無罪が出てまいりました。多分去年でありましたが、検察官は再審無罪に関連いたしまして検討会をなされたようでございますが、これに対する検討結果の一部が新聞で報ぜられ、私も見ておるわけでございます。大変技術的なことを検討なさっておるようでございますが、こういうふうな調書であればこれは有罪で維持できたのではなかろうかというようなお話が新聞報道で出ているわけでございます。私は、根本的にこうやって再審無罪というのは容易にかち取ることができないことでございますが、検察の中からどのような反省がなされて今後の対応をしようとされて検討会がなされたのか、話ができる範囲で結構でございますから、できるだけお聞かせをいただきたいと思います。
  162. 日野正晴

    ○日野説明員 検察当局におきましては、免田事件など、先ほど先生が御指摘になりました事件につきまして、死刑の言い渡しが確定した事件について再審で無罪が言い渡されたということで、とりあえず免田、財田川、それから松山の三事件につきまして、捜査、公判などの問題点について逐次検討を加え、検討結果を将来の捜査、公判活動に生かすべく、そのような委員会を設けるに至ったものと承知しております。  委員会では、これらの三つの事件に関しまして、捜査の当初から再審、それから無罪判決に至るまでの全過程につきまして、将来における検察権の適正行使の観点から、逮捕に至る経緯、捜査体制、取り調べの方法、物証の収集、保管、鑑定方法、公判、再審請求段階における検察官の立証活動のあり方等、さまざまの問題点を検討いたしまして一応の検討を終えたことから、その結果を記録にとどめたものであるというふうに承知いたしております。
  163. 坂上富男

    ○坂上委員 どうぞ再審になってようよう無罪が出たという観点にひとつ着目していただきまして、無辜の人たちが長い間獄舎につながれまして、そして死と対決しながら努力をし、ようよう認められたわけでございまするので、誤判の再度ないように、そして間違った捜査が今言ったようなことから出発をしているところに大変な問題があると私は思っておるわけでございまするので、ひとつ人権擁護の意味から、適正な捜査権の行使、適正な検察権の行使が行われることを特に望んでおきたいと思います。  嫌な質問が続いて私も大変意に沿わないのでありまするけれども、やはり法務委員会でただしておかなければならないと思いまして、あえて御質問を申し上げるわけでございます。  文芸春秋の本年新年特別号の記載で、「特捜検事はなぜ辞めたか」ということで「東京地検を告発する」という大変なレポートが出ておるわけであります。作者はジャーナリストの真神博さんという方のようであります。  そこでまず、私も検察の動向を見ておりまして、伊藤検事総長が総長になられるときでございましたでしょうか、巨悪は逃さない、悪いことをしたやつは逃さない、こういうような大変な決意で、国民はそれに期待をいたしました。不幸にいたしまして病魔に侵されまして、静養なさいました。そして病院から出てこられました。そのとき記者会見をなさったわけであります。その記者会見の言葉の中で、こういう言葉が私は気になっているのです。巨悪は逃さなかった、しかし、巨悪の金はつかまえることができなかったけれども、銀をつかまえたというお話があるわけであります。私は実は言っているのでありますが、金というのはやはり政治家の中でも偉い方、銀というのはどっちかというとどうも野党のことを言っているのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。  そして今度は、きのう、おとといでございましたか、本当に御同情申し上げるのでございますが、実は私の病気はがんなんだ、そこで引退をさせてもらったんだ、こういうお話でありまして、本当に惜しみても余りある退陣なんでございます。私は、本当に最初の就任のときの、いわゆる巨悪は逃さないというところを期待をしたのでありまするけれども、結果的には大変無念な退陣をなさったのではなかろうか、こう思っておるわけであります。  しかも、この文芸春秋には大変な東京地検に対する告発がなされているわけでございます。この雑誌はお読みになっただろうと思いますし、あるいはいろいろと事実と相違する部分もあるのだろうとは思いまするけれども、検察の首脳におかれましてこのレポートをお読みになりました率直な御所感からまず承りたい、こう思っておるわけでございます。
  164. 岡村泰孝

    岡村政府委員 私もこの文芸春秋の記事は読んでおりますが、私の読みましたところでは、本件の記事は検察関係者等から直接取材をして書かれたものではないと思うのであります。いろいろな憶測なり主観的判断を交えた部分も少なくないというふうに感じた次第であります。  検察といたしまして、また東京地検特捜部といたしましては、常に厳正公平な立場で、冷静に証拠を見ながら捜査をいたしているところであります。
  165. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、いろいろと指摘されている部分について、少しずつ事実を指摘しながらまた御意見を賜りたいと思います。  まず、福岡県苅田町の税金横領事件でございます。  これは、私もこの法務委員会で最初質問をさせてもらったわけでございます。その後、各委員会あるいは本会議等でもこの問題が取り上げられました。結局、この本によりますと福岡地検に移送された、もうこれは起訴するなという意味だというようなことが実は書かれておるわけでございます。この間福岡地検で、職員採用に関連した、あるいは公文書を焼却したというような事件につきましては起訴にならなかった、不起訴処分になったというふうに新聞で報じているわけでございます。これは一体どういう処分がなされたのか、そして、問題の税金の横領事件は今どの程度お調べになっておるのか。あるいは雑誌が言っておるように、前段でもう不起訴にしたので本命の方もいずれ時期を見て不起訴の運命をたどるという状態になっているのか、その辺の捜査状況について、御答弁いただけるだけいただきたいと思います。
  166. 岡村泰孝

    岡村政府委員 本件苅田町の事件につきましては、当初東京地検に告訴、告発がなされたところであります。東京地検におきまして一応の内偵捜査をいたしました結果、本件の関係者多数が福岡県下に居住していること等を考慮いたしまして、本件事案の解明のための捜査を行うためには福岡地検で行うのが相当であると判断したため、福岡地検に事件を移送したところであります。もし移送する時点におきまして本件が既に起訴しないという判断に達していたとするならば、何も福岡地検に移送するまでのこともないわけでありまして、福岡地検に移送しましたのは、とりもなおさず、犯罪地であり関係者が多数おります福岡地検で本件解明のための捜査を行うのが相当であるという判断をしたからにほかならないのであります。  ところで、本件につきましては、その後福岡地検に幾つかの告訴、告発事件がなされたのであります。そのうち地方公務員法違反事件、すなわち苅田町職員の任用に当たりまして、受験成績その他能力の実証に基づかなかったという事実につきましては、本年四月に時効が完成する予定であったわけであります。そこで福岡地検におきましては、その地方公務員法違反事件とこれに関連いたしまするところの公文書毀棄の事件につきまして捜査処理を急ぎまして、その結果、三月十七日、地方公務員法違反につきましては起訴猶予、公文書毀棄の事件につきましては嫌疑不十分ということで不起訴処分にいたしたところでございます。  当初の、税金をめぐります横領の事件につきましては、まだ時効も切迫はいたしておりませんので、引き続き福岡地検におきまして関係人の取り調べ等を含めまして必要な捜査を継続しているところであります。
  167. 坂上富男

    ○坂上委員 一応わかりました。ただ、このレポートが言っておりますが、この事件について検察の上層部は大変消極的な姿勢である、こう言っておるわけであります。正しいかどうかわかりませんが、指摘だけ申し上げなければならぬと思います。   前田宏東京高検検事長は、「あれはやり方を失敗している。面白い事件だというんですぐ現地に行ったりするから、こんな大騒ぎになって動きがとれなくなってしまう。選挙が終わればすぐにできる事件だったのだが、バッジを当然狙っているけれど証拠がない。下が喋ったというだけでは駄目だ。それに町長時代の使い込みじゃ、あまり意味がない」と夜回りに来た記者たちに話して、上層部の消極的姿勢を際立たせた。   この日は検察首脳会議が開かれた。議題は苅田町と盗聴事件のふたつ。 これは共産党の幹部の電話盗聴のことだと思いますが、   苅田町について出席者の一人は、会議の雰囲気を踏まえながら、「本件は(金が)尾形の衆院選挙に流用されたかどうかの一点にかかっている。これ以外にあるわけがない。それが出て来なければ、もう駄目だな」と巧みに論点をずらしながら背景説明をした。   一線の検事たちの間では、急に消極的姿勢になった上層部の動きについて、さまざまにとりざたされるようになっていた。尾形は安倍派で、尾形の金は安倍派の有力代議士に流れている。その有力代議士の筋から、検察幹部に話が来ており、それで急に消極的になったのではないかというのである。 こう言っておるわけでございまして、大変大胆な指摘をしておるわけでございます。ぜひひとつ、これを否定する意味におきまして、正義が本当に貫かれるような捜査をいただきたいと思っておるわけでございます。  さてその次に、今度は平和相互銀行の事件についてお聞きをいたしたいと思います。  実は、これは私一人の立場で質問するのでなくして、私の先代に当たりまするところの小林進前代議士がおられます。小林進代議士は大変正義感が強うございまして、私が大変私淑をしておった先輩でございますが、伊藤検事総長にもお会いをしておられるようでございます。平和相互のことについても、強い捜査の要請をしておられたようであります。必ずやりますから見ておってくださいというお話だったということなんであります。それがいつの間にかしっぽ切れになってしまった、坂上君、あんたが、専門家なんだから徹底的にこのことを追及してくれないかということの引き継ぎを受けておるわけでございまして、きょうようよう一年半にしてこの質問をさせていただくわけでございます。  期せずしてこのレポートの中にこういうふうなことがあるのでありまするが、いかがでございましょうかとお聞きをいたします。どういうことかといいますると、   週刊誌などに、平和相銀が株を買い戻す手段として購入した時代絵巻をめぐって、竹下幹事長(当時)の名前が出るようになると、最高検首脳から「これ以上のことはやめろ」と特捜部に圧力がかかるようになった。大蔵省と検察庁の間には、「住友銀行と平和相銀が合併する六十一年十月一日までに捜査を終了する」という秘かな合意があったとも伝えられている。 こう言っておるわけであります。そこで大変失礼でありますが、   こういう事実がありながら、十月一日の合併に一カ月半以上も逆上って捜査終結宣言を出してしまう。そこでようやく検察内部にも、「伊藤検察というのはおかしいのじゃないか」という声がささやかれるようになったのである。 とまで言っておるわけでございます。  私もいろいろ調べてみました。一応すべて捜査が完結をいたしまして、起訴された部分で今公判で裁かれているようでございますが、一体この実態はいかがでございますか。
  168. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まず苅田町の事件に関しまして御指摘のあった点でありますけれども、かなり生々しい具体的なことが記載されておりますけれども、これは当該御本人に直接取材したものではないのでありまして、私どもはそのような事実はないものと承知いたしているところであります。  次に、平和相互銀行の関係でございますが、これにつきましては東京地検の特捜部におきまして鋭意捜査を行いまして六名を逮捕いたしまして、強制捜査を行いまして証拠上認められる事実につきまして公判請求をいたし、現在一部のものは公判審理中であるわけでございます。  本件につきまして捜査終結宣言ということが先ほども御指摘があったわけでございますが、東京地検は決して捜査の終結を宣言したわけでもないのであります。平和相互銀行の不正融資に関連する事件につきまして第二回目の起訴を行ったところから、それまでの捜査の結果を踏まえまして公判請求するに足る証拠があり、かつ公判請求する必要のあるものについては起訴したんだという意味で、いわば捜査が一段落したという趣旨のことを発表したものであります。  この平和相互の事件に関しましても、また苅田町の事件に関しましても、政界その他からの圧力その他によって検察が左右されたというような事実は全くないところであります。ただ、東京地検の特捜部は検察の中でも捜査能力のすぐれた集団でございます。日夜、夜を徹しまして、また日曜日をつぶしまして、社会の不正を暴きますために鋭意捜査を継続いたすわけでございますけれども、しかしやはり検察として乗り越えなければならないのは証拠の壁であります。この証拠の壁を乗り越えられない場合は、特捜部がいかに捜査をいたしましても起訴できない場合はあり得るわけであります。それを何か政治家の不当な影響力によって事件がつぶれたというようなことを書かれますことは、検察、特に特捜部にとりましてはまことに心外なことであると思っております。     〔今枝委員長代理退席、井出委員長代理着席〕
  169. 坂上富男

    ○坂上委員 大変説得力のある説明でございますが、事実そのようなことをひとつお願いしたいものだと思っております。  さてそこで、竹下元幹事長、現首相のお話が出てまいりましたので、この首相にまつわるところの、元秘書と言われる人が不正入学のあっせんをいたしまして相当の金額を詐取した事件が報じられているところでございますが、一体この事件はどうなったのでございましょうか。何か話に聞くと、逃亡して行方不明なんでございますが、どんな事件内容で、今どの程度捜査が進んで、どんなところを捜査当局はにらんでおられるのか、承りたいと思います。
  170. 垣見隆

    ○垣見説明員 お答えいたします。  御指摘の事案につきましては、警察としても週刊誌等の報道により承知しておるところでございまして、関係者の動向等も踏まえ、事案に応じて適切に対処してまいりたいと考えております。
  171. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、この元秘書と言われる人、不正入学のあっせん料を詐取した人、この人の所在の確認をなさっているのですかと聞いているわけです。これについて立件をしているのですか、こう聞いているわけです。もう一度お答えいただきたい。
  172. 垣見隆

    ○垣見説明員 現在、関係者の動向等も含めて事案の推移を見守っているところでございます。
  173. 坂上富男

    ○坂上委員 推移を見守るというのはどういう意味かわかりませんが、積極的に皆さんの方で捜査なさっているのですか。もし日本にいるのだったら、竹下首相からでもお聞きになるようなこともないのですか。これはまさに最高の権力者の秘書をなさっておった方でございますから、どうなんですか、遠慮しないでひとつきちっと答えてください。事件がどうなっているかという話なんだから、興味深く見守っている程度では困るのでございまして、皆さん方が動いていただかなければこの真相の究明というのはできないわけでございます。一体身柄がどこにいるかわかるのですか、捜査は。わかっているのだけれども、どうもそれ以上のことは言えないというのですか、どうなんです。
  174. 垣見隆

    ○垣見説明員 お答えいたします。  御指摘の事案につきましては、関係者間で話し合いが行われ、被害も回復されたものと聞いておりますが、最終的には関係者等の意向等も確認した上でその措置を決めたいと考えております。
  175. 坂上富男

    ○坂上委員 平和相互のびょうぶの事件といい、この不正入学の事件といい、私たちが総理と仰いでいる周辺からこういうことが起きてきているわけであります。私としても、政界の立場に立っても大変遺憾なことだと思っているわけでございまするから、いわば違法行為、刑罰違反行為があるようでありましたら、的確かつ公正な捜査をお願いしたいと思っておるわけでございます。  さて、今度はここに書いてありまするところの谷川宏元国税局長の事件についてお聞きをいたしたいと思います。このレポートではこう書いてあります。   谷川宏元国税局長の事件でも、検察は何ら手を打つことができなかった。事件は元日本税理士会連合会幹部らが、会社社長の脱税の指南役をつとめたというもの。そしてその片棒を、こともあろうに元国税局長の谷川宏が担いでいたのである。   なにしろ谷川はこの件で、その後返したとはいえ、千六百万円ものカネを受け取っている。ところが、いかに弁護士として谷川と東大で同級生の元検事総長辻辰三郎がついたとしても、谷川を起訴留保処分に付してしまったのは考えられないことである。   この事件では上から「谷川には手をつけるな」と圧力がかかり、断念せざるを得なかったといわれるのだ。圧力がかかったのには二つの理由があるという。 こういうふうに言っておるわけでございますが、この不起訴理由についてはどのように検察は処置なさったのでございましょうか。
  176. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この記事にあります事件につきましては、東京地検が東京国税局から告発を受けまして昭和六十二年七月十五日に四名を相続税法違反の事実で東京地裁に公判請求いたしまして、現在同地裁におきまして公判中でございます。この件に関連いたしまして、記事にあります谷川元国税局長が起訴されたという事実はないわけでございます。
  177. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、いま一つ事件を挙げてお聞きをいたしたいと思います。三菱CB事件と言われることで、CBというのは国内転換社債のことである、こう言われておるわけであります。   三菱重工は山一証券にCBの扱いを依頼したが、その際に条件を出した。CBをあらかじめ総会屋などに割り当てることであった。これは「親引け」といわれる犯罪行為だが、総会屋対策にしばしば使われる手段でもある。一説によるとこのとき密かに渡された数は、約七十件、総額十五億にのぼるといわれた。 こう言っておるわけでございますが、この事案の捜査はどの程度なされ、どういう結論になったのでございますか。
  178. 岡村泰孝

    岡村政府委員 検察がいかなる事件について捜査をしているか、あるいは捜査をしていないかというようなことについては具体的には申し上げかねるところであります。しかし、少なくとも今日に至るまでこの事件が起訴されたということはないのであります。
  179. 坂上富男

    ○坂上委員 以上、問題点を相当指摘をいたしました。そして結論といたしまして、このレポートはこう言っております。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕 大変厳しい言葉ですが、東京地検特捜部は事件にできぬ体質になったのではなかろうかということまで指摘をしているのであります。もちろん、とんでもないというお話の結論が出ることはわかっておりますが、本当に国民東京地検の特捜部に期待をいたしておるわけであります。そしてまたいろいろのお話が流れるけれども、どうも書いてあるように何となく事件がうやむやに終わるような気がしてならないのは私一人ではないと思っておるわけであります。新しい陣容で検察が出発をされておるわけでございますので、ぜひともひとつ国民の期待にもこたえるよう頑張っていただくよう、お願いをいたしたいと思うのであります。  そこで私は、この結論の中で、司法試験の問題と重要にかかわると思っておるわけであります。ほぼこの雑誌の中に書いてあるのでございますが、   政治家のからむ大きな贈収賄事件などはとてもやれないほどに組織が硬直して、現場がやる気を失っていることは、その退職者の多いことをみてもわかる。六十年も六十一年も、一年間に五十人の検事が六十三歳の定年を待たずに退官している。いま全国に千百七十三人の検事がいる。それに比して検事のなり手は少ない。   そうした傾向があるうえに、ここ十年間ほど二十〜三十人だった中途退官がここ二年で急増しているのだ。それも三十代から四十歳代前半の働き盛りの検事たちの退官が目立って多くなってきている。 こんなようなことから、結局、社会正義を実現しようとする強い使命感と事件を解決していくおもしろさ、これが検事を駆り立てるのだけれども、もうこういうことができなくなっているところにこういうような問題があるのだということを指摘をしておるわけであります。  しかも、最後にこう言っている。ロッキード事件の光と影でいえば、こういう形で影の部分が検察の中に拡大しているのではなかろうか。ロッキード事件に手をつけてしまって、もう後は検察が大変やりづらいというようなことになって、そのロッキードの影が今でも尾を引いているのではないかという結論を出されておるわけでございます。これはこれなりの見方だろうと思うのでございますが、今言われたような指摘の部分について、まず刑事局長、どのような御所見がおありなのか。もう最後でございますから、ちょっと時間が余りましたが、私は質問を終わらせていただきます。  法務大臣、嫌なことをきょうは随分申し上げたわけでございますが、これは一つは正義が貫かれるように、そしてまた無辜の罪人を出さないように、そしてそういう場合については本当に手厚い補償がなされるようにということを願った上での私の要請なんでございまするが、率直な御所見をひとつ賜って、少し時間が早いのでありますが、やめさせていただきたい、こう思います。
  180. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まず、検事の退職者の点でありますけれども、例年約五十名前後の者が退職はいたしております。しかし、六十三歳という検事の定年を待たないで六十歳ぐらいにやめる人が少なくとも過半数以上は占めているのであります。過半数よりもさらに多いと思います。三十九歳以下で、すなわち二十代、三十歳代で中途退職いたします者は十名少々であるわけでございまして、六十歳ぐらいになりまして、後進に道を譲るために六十三歳の定年を待たないでやめるという方々が多いわけであります。  また、東京地検といいますか、検察全体につきまして、文芸春秋の記事はいろいろなことを言っておりますけれども、検察は健在でありますし、国民の信頼も得ているところであると思っております。こういう記事がありまして、やはり一番悲しむのが第一線の検事ではないかと思うのであります。とにかく、検察といたしましては、今後とも国民の期待に沿うべく頑張ってやっていくものと承知いたしております。
  181. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、いかがでございますか、きょうはもう全部これで終わりますが。
  182. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 私、就任しましてからまだ五カ月でございまするけれども、検察を見ておりまして、検察当局は厳正公平、不偏不党と申しまするか、極めて厳格にやっておると存じております。検察を信頼してやっております。  最近よく、裁判官は余りやめないけれども、検察官はやめるじゃないか、かように言われまするけれども、これはやはり私ら学生時代のことを考えまして、友人のことを考えてみますると、検察へ入る人は裁判官になる人よりも少し活発な人がなる、一番活発でない学究的な人が教授になりまして、その次が裁判官、そしてその次が検察官というようなことでございまして、そういうことからも検察官は途中でやめるという気もあるいは裁判官よりも多いんじゃないだろうか、その人の性格にもよるのじゃないだろうかという気持ちを持って眺めておるような次第でございます。  何にいたしましても、私としましては検察を信頼してやっていただいておるということでございまして、どうぞ今後ともよろしくお願いを申し上げたいと存じます。
  183. 坂上富男

    ○坂上委員 大変ありがとうございました。誠実な御答弁だと理解をいたしますが、さらにより以上の御期待にこたえていただきまして、私たちは本当に検察を信頼できないなどというようなことになりますれば世の中が真っ暗でございます。どうぞひとつ正義実現のために一層の御奮闘を期待をいたしまして、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。
  184. 戸沢政方

    戸沢委員長 次回は、来る二十九日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会