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冬柴委員 名目額はなるほど上がっていますけれ
ども、これは
制定当時は、先ほど言いましたように
常用労働者の一日
平均賃金に比べまして一・一三倍ということで、
常用労働者よりも多かったわけです、
当たり前だと思うのですけれ
ども。それが
改正を重ねるたびに、〇・九二になり、〇・八〇になり、〇・五七になり、〇・五四になり、そして〇・五三になってくる、そういう研究もありまして、これはしかし、名目額が上がったって、いわゆる
労働者の
賃金に比べて実価が下がれば、それが余りにも著しくなったときには憲法違反ということが起こるのではないか、私はこういうことを指摘しているわけでございます。
法務大臣に申し上げたいのですけれ
ども、こういう事例がありましたね。
昭和二十五年に、弘前大学の教授夫人殺しという事件がございましたね。これの犯人として起訴されて、一審無罪だったのですけれ
ども、二審で取り消されて懲役十五年、上告棄却されて十五年が確定いたしまして、仮出獄するまでこの人は十年服役をされました。ところが、その後真犯人が御承知のように名のり出たのですね、私が殺したんだと。それで、その十年服役した人が再審を当然求めまして、無罪になったのですね。これが
昭和五十二年です。二十七年間、人殺しにされていたわけですね。それで、この起訴前の勾留とそれから刑の
執行を合わせますと四千三百七十四日
拘束されたようです。全く人違いですね。
それからもう
一つ、これも有名な事件ですけれ
ども、大正四年に強盗殺人を犯したということで無期懲役刑に処せられた人がいたのです。この人が、これも仮出獄されたのでしょうけれ
ども、七回再審をやりまして、七回目の再審でようやく認められて、無罪だ。これが五十二年です。実に六十一年間。この人も刑事
補償を求めました。
このように、全くの人違いによって、楽しかるべき青春時代を含む二十七年間を冤罪に泣いて、しかも自由を
拘束された、こういう人、実に六十一年間無辜に人生のすべてを奪われた人、こういう人がいるわけです。現実にいるわけです。この人たちに
慰謝料を含む刑事
補償額が、外で自由に働いている人の
賃金の六割しかやらないというようなことが許されるのでしょうか。私は、許されない、こういうふうに思うわけです。
なるほどその
補償金というのは
国民が税金をもって負担するわけですけれ
ども、
国民は、私も含めて、自分の安全とかあるいは公共の秩序維持のために厳しく刑事事犯というのは取り締まられなければならないと思っております。そのようなことから公権力の行使、起訴、そして刑の
執行ということは行われるわけでございますけれ
ども、そこに、何万件に一件かはこのような気の毒なことが起こることは不可避的でございます、人間がすることですから。そのような立場に立たされた人に対して、これは災難では済まされないと思うのですね。
国民は、薄く広く保険金を負担するように、その人たちには十分に
補償してやってほしい、その人たちというよりも自分がそういう立場に置かれるかもわからぬわけですから、その
補償を六割に値切ってほしいということを言う
国民はいないと思うのでございますけれ
ども、大臣どうでしょうか。
昭和二十五年ですら
賃金以上のものを払っていたのに、海外旅行をし非常に豊かなこの時代に、そのような気の毒な人に
平均賃金の六割しか払わない、こういうのが果たして
国民のコンセンサスだと思われますか。その点についていかがですか。大臣の所信を伺いたいと思います。