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1988-03-23 第112回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十三日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 戸沢 政方君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       赤城 宗徳君    上村千一郎君       木部 佳昭君    丹羽 兵助君       宮里 松正君    稲葉 誠一君       佐藤 徳雄君    清水  勇君       冬柴 鉄三君    山田 英介君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   佐々 淳行君         内閣法制局長官 味村  治君         宮内庁次長   山本  悟君         法務政務次官  藤野 賢二君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房司         法法制調査部長 清水  湛君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 河上 和雄君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     中門  弘君         警察庁長官官房         留置管理官   小林 奉文君         警察庁刑事局刑         事企画課長   古川 定昭君         警察庁刑事局捜         査第一課長   廣瀬  権君         警察庁刑事局保         安部少年課長  遠藤 豊孝君         警察庁刑事局保         安部薬物対策室         長       島田 尚武君         警察庁警備局公         安第二課長   田口  朔君         警察庁警備局公         安第三課長   伊藤 一実君         警察庁警備局警         備課長     太田 利邦君         警察庁警備局外         事課長     國枝 英郎君         法務省入国管理         局入国審査課長 大久保 基君         法務省入国管理         局登録課長   黒木 忠正君         外務大臣官房領         事移住部領事第         一課長     飯田  稔君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       伊藤 庄亮君         外務省アジア局         北東アジア課長 田中  均君         大蔵省関税局輸         入課長     川  信雄君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      森  正直君         文化庁文化財保         護部長     内田 弘保君         厚生省援護局庶         務課長     新飯田 昇君         最高裁判所事務         総局人事局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局家庭局長  早川 義郎君         参  考  人         (財団法人古代         オリエント博物         館研究部長)  田辺 勝美君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     佐藤 徳雄君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 徳雄君     伊藤  茂君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 戸沢政方

    戸沢委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所櫻井人事局長早川家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸沢政方

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 戸沢政方

    戸沢委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村巖君。
  5. 中村巖

    中村(巖)委員 本日、大臣所信に対する質疑、こういうことでありますけれども、三月二日の日に私が質疑をする予定でありましたが、予算委員会関係上、本日まで遷延をしたわけでございます。  最初法曹の問題について、法曹養成というか、こういう問題についてお伺いをしたいと思います。  先般、三月八日に法曹基本問題懇談会答申というものが出されました。法曹基本問題懇談会というのは大臣私的諮問機関だと思いますけれども、その内容というのは、要するに法曹人口の問題とそれから司法試験制度改革の問題であるわけでございます。  その内容を私も拝見をいたしましたけれども、別に断定的なことは言ってはおられないわけですけれども、一定の方向性を示されているということでございまして、法曹人口の問題については、現在司法試験合格者というものが少な過ぎるのではないか、これをふやす方向考えたらどうか、どのくらいふやすかということについてはいろいろな考え方がある、こういうことでございますけれども、おおむね一年に七百人ぐらいにしたらどうかというようなことであるようでございます。それからさらに司法試験の問題につきましては、司法試験改革をしなければならない。これはどういう改革方向かと申しますと、受験回数制限というのがほぼ妥当な方向ではないか、こういうようなことだろうというふうに思っております。  こういう答申について、ざっくばらんに言えば、大体法務省考えていたような方向懇談会の方からお答えをいただいたみたいな格好になっていると思いますけれども、まず最初大臣の方から、この基本問題懇談会答申を受け取ってどういうふうにお考えになるかということをお伺いを申し上げます。
  6. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 昨年の四月から法曹基本問題懇談会を開催をしていただきまして、大体十回、十一回以上を超える会合を重ねていただきまして、三月八日に御意見をまとめていただいたのでございます。  それで、御指摘がありましたように、第一には、法曹というものは日本法秩序の維持、また民主主義の発展のために非常に重要なものである、しかしながら、現在国民の要望に十分こたえているかどうかということがあるのじゃないか。そこでまず、法曹に入られる方々試験の問題が最初に出てくるわけでありまして、その試験日本で一番難しい試験だ。そこで、現在五百人を主として採用をしておるわけでありまするけれども、もう少しこれをふやしたらいいのじゃないか、まあ七百名ぐらいというような案も言っていただいておるわけでございます。それから受験回数、現在は平均いたしまして六回に及んでおり、大学を出ましてから受験勉強を一生懸命やって、平均年齢は二十八歳になっておる。したがって、受験回数を三回ぐらいに制限したらいいのじゃないか。また、試験やり方につきましても改善を加えていくべきである、また大学推薦制度考えたらどうか、主としてそういうような御意見をまとめていただいたのでございます。  そこで、法務省といたしましては、これだけ熱を入れて懇談会をやっていただきまして、しかもその御意見もまことにごもっともな、早急に改善をするべき問題である、かように認識をいたしておりまして、これから法務省が中心になりまして、裁判所そして日弁連、また大学先生、そういうような方々との会合を重ねてまいりまして、ある程度の案を得まして法曹三者の会議にこれをかけまして、さらに成案を得ましたならば法制審議会にかけましてできるだけ早く案をまとめ、さらにこれを法案にしてまいりたい、そしてできるだけ早い、少なくとも二年以内には国会に提案をいたしまして先生方の御審議をいただきたい、かように存じておるところでございます。
  7. 中村巖

    中村(巖)委員 この問題につきましては、私も法曹三者の給源をふやした方がいい、こういうふうに思っておりまして、また司法試験改革につきましても先般この委員会で質問をして、やはり改革を図るべきである、こういう考え方を持っているわけでありますけれども、今大臣から、これから二年先には何か立法をしたい、こういうことでございました。しかし立法するためには、昨日も論議がありましたようですが、やはり法曹三者の協議会へかけなければならぬだろうし、かつまた法制審議会にもかけなければならないのだろうというふうに思いますけれども、今後法務省としては、この法曹三者の協議にかけること、さらには法制審議会にかけることをいつごろやるおつもりなのか。その場合に同時的にやるのか、どっちか一方を先行させてやるのか、その辺のことはどういうふうに考えておられるのでしょうか。
  8. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま大臣が申し上げましたように、三月八日に答申をちょうだいしたものですから、これを踏まえまして法務省自身改革案といいますか、それを作成するのがまず先決でございます。これを作成するについてはもちろん最高裁判所あるいは日弁連の御意見を十分伺いまして、また学界あたり意見も十分伺わなければならないというふうに考えております。その上で法務省案というのを作成しまして、感じといたしまして、ことしの秋ごろからでも三者協議会にまずかけるのが先だろうというふうに考えておりますが、その辺の手はずについてはまだ十分内部で詰めておりませんが、私の考え方はそういう考え方でございまして、また三者協議会意見がある程度煮詰まった段階で法制審議会答申を求めるというのが形だろう、こういうふうに考えております。
  9. 中村巖

    中村(巖)委員 法曹給源たる司法試験合格者をふやすということについては別の問題があると思いますけれども受験回数制限という方向が今度多分打ち出されてくるのだろうと思いますけれども受験回数制限といっても三回がいいのか五回がいいのか、あるいはまた三回ということにするにしても、どこから三回を数えるのかですね。年齢幾つ以上から三回とか、あるいはまた大学を卒業してから三回とか、いろいろ数え万があるわけで、その辺については、今のところ法務省としては具体案というものはお持ち合わせではないわけですね。
  10. 根來泰周

    根來政府委員 この間ちょうだいしました答申におきましても三回という意見が有力でございますけれども、そうでなくて五回でもいいんじゃないか、あるいは大学におる間は勘定しない方がいいんじゃないかとか、あるいは三回といいましても、仮に十年ぐらいたてば、時効じゃありませんけれども一たん中断しましてまた数え直してもいいんじゃないかというような話がございます。また、これは一次試験合格者との関係考えないといかぬ問題ですから、これはまだ私どもの方でこれという腹案があるわけではございません。
  11. 中村巖

    中村(巖)委員 あと、合格者をふやすということになりますと、これは研修の問題が出てまいりまして、今日まで、私ももう何十年か前に研修所を出たわけでありますけれども一つは、司法試験合格者の数を決めているのは、やはり研修所収容能力というものが大きいので、それを無視をして合格者をふやすということにはなってこない。やはりこのぐらい合格させれば研修所収容能力でいけるのだという数でもって今日まで絞ってきたのが実態じゃないかというふうに思っております。  そこで、司法研修所が今のままの修習というものを堅持をするということになればその収容能力が問題になってくるわけで、最高裁の方にお尋ねをするわけでありますけれども、今後司法研修所がどのくらいまで拡張ができるのか、どういうスケジュールならばどのくらいの数に対応できるのか、その辺のことについて、急な話でございますから、かねて考えているということはないのかもしれませんけれども、今時点でお考えがございましたらお伺いを申し上げたいと思います。
  12. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 現在の司法研修所建物でございますけれども、これはこの建物が建ったときの司法試験合格者数に大体見合うような形で建っているわけでございます。ほぼ五百名程度の人間の収容前提にしてできているわけでございますが、厳密に申しますと、まず、この建物の中に各クラス講義をするための教室が十教室ございます。一教室当たり収容人員でございますが、これが最大限五十五名程度でございます。そこで、この各教室収容人員限度をトータルいたしますと、これで一応五百五十程度という数が出てくるわけでございます。もし、さらにこれ以上の数の修習生収容するということになりますと、この教室自体をある程度手直ししていくということがまず必要になるのだろうと思います。例えばほかの部屋をつぶして教室をつくるとか、あるいはその教室の中のいすの配置をもっと詰めていくとか、そういったような問題になってくるのだろうと思います。  それからもう一つの問題といたしましては、司法研修所に大講堂がございます。これは司法修習生全部が入ってやるようなカリキュラムのためのものでございます。これがもう一つ制約となるわけでありますが、大講堂収容人員が大体六百名程度でございます。そこで、例えば教室等を手直しをしていって収容人員をふやしても、今度は大講堂収容人員というものが一つ制約になってくるということがございます。そこで、六百名以上の司法修習生収容していくということになりますと、今度は大講堂の改造と申しますか、そういったようなことが必要になってくるのだろうと思います。もちろん、これは現在の研修やり方前提にしたものでございまして、例えば授業やり方等を大幅に考え直していくというようなことになりますと、これはまた別な形が考え得るのでしょうが、現在の授業講義やり方前提にいたしますと、現在の建物で六百名ぐらいが一つ限度になり、さらにそれ以上の人員ということになると、建物の改築あるいは増築、そういったような形で対処していくということになろうかと思います。どういう道をとるかということになりますと、これは今後のこの意見書実現過程の中で選択していくということになろうかと考えております。
  13. 中村巖

    中村(巖)委員 研修所受け入れ態勢の問題というのは別に建物だけのことではなくて、教官をそろえることが可能かどうか、現地修習の場合の受け入れ庁での修習がこれ以上可能かどうか、こういうふうな問題も含んでおると思いますけれども、その辺はいかがでしょう。
  14. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 まず、教官の問題でございますけれども教官は現在一クラスについて裁判教官が二名、検察教官が一名、弁護教官が二名、全部で五名、これが十クラスございますので五十名でございます。もし合格人員がふえることによってクラスもふやしていかなければならないということになりますと、その分だけ教官をふやしていくということになるわけであります。例えば二クラスふやすということになりますと、裁判教官は四名投入するということになりますし、検察教官弁護教官も含めて十名の教官増ということを考えていくということになります。これも物的な施設の拡充の問題と同様に、授業方法等を現在の授業やり方をそのままで踏襲するのか、それとももっと別のやり方考えていくのかということにもよろうかと思います。それに応じて教官の増員が必要になるのかならないのかという問題が出てくると思いますが、ここらも今後どういうふうな形で意見書実現されていくかという中で検討していきたいと思っているわけでございます。  それから、もう一つ実務修習の問題でございますが、これはさらに難しい問題がございまして、現在実務修習全国三十七カ所で行われております。ここに、多いところは東京のように百名を超える修習生を配置しておりますし、少ないところは四名程度修習生を配置しております。これが裁判所検察庁弁護士会を回っていくわけでございますけれども、現在の三十七カ庁というのはかなりぎりぎりのところまで配属すべきところを広げていった結果であるというように聞いております。  これを人員をふやしていくということになりますと、全国五十カ所の裁判所があるわけでございますが、その残ったところでそれを受け入れ得るかどうか、これは裁判所の問題だけではなくて、それに対応する検察庁弁護士会がそれぞれ受け入れ得るかどうかという問題がございますし、もう一つは、これもまた今までと全く同じような実務修習をやっていくのかどうかということにも関連すると思います。もっと別の形の新たなアイデアでもって配属先修習していくというような方法考えれば、修習地をふやさずともまた別のやり方考え得るのではなかろうかと思います。これもまた、今まで申しておりますように、今後の実現過程の中で御意見伺いながら検討していきたいというふうに思っております。
  15. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、ちょっと観点を変えますけれども裁判官が大変少ないのじゃないか、こういうことでございます。そのために一つ司法試験改革というようなことも考えておられるわけでありますけれども、もう一つ裁判官をふやすためには弁護士から裁判官採用をしたらいいではないか、こういうことがあるわけでありまして、最高裁判所の方も最近弁護士からある程度の量の裁判官採用したいということを表明をなすったようでございまして、今まで余り採用されてなかった、殊に近年は、終戦後はともかくとして近年は採用されていない、私の知っている限りでもって弁護士から近年裁判官になった人は一人か二人である、こういうことでございます。大量にというか、ある程度大量に弁護士から採用するというのは、法曹一元という観点からも大事なことでありますけれども裁判官をふやすということでも大事なことではあろうというふうに思います。  しかし問題は、実際弁護士から裁判官になろうという人がいるかいないか、ここが問題でございまして、そういう人は現時点で相当あるという予測なのかどうかということが一点と、それからどうやってそれを探すのかという問題があると思います。今まで裁判所がおやりになっていたのは何か一本釣りみたいな話で、この人は裁判官にいいんじゃないかということで、特にお話をして了解が得られたら来ていただく、こういう方式で、公募をするというようなことはおやりになっていないというふうに思いますけれども公募をするというようなことも一つやり方だと思いますけれども、今後どうやってそれを実現をさせるのかという点が二点目でございます。  この二点についてお伺いをいたします。
  16. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判所弁護士から裁判官採用したいという意向を明らかにしたという趣旨は、御承知のとおり弁護士の経験を有する方に裁判所で活躍していただきたいということからであるわけであります。よく言われておりますように、昭和五十年代に入りましてからは非常に少なくなりました。ほんの数名という程度任官になっているわけでございます。その候補者がいるかどうかの予測の問題でございますが、これは正直申しまして、具体的にこれだけ来るだろうというような予測ができるわけのものではございません。ただ、昭和五十年代になって少なくなり、ずっと途絶えたような形になっております。これは決して裁判官任官する希望を有する人が途絶えてしまったということではなくて、弁護士の中でもこういう状況になってきて任官しないのが当然であるというような気持ちが一般になってきている、また、裁判所の側でも任官者が少なくなってきているということもあるために、弁護士さんから任官者がないというのが何とはなく当たり前のような気持ちになってきている、そういうことが一つあるのではないかと思うわけでございます。  そこで、今回改めて見直しをしてみよう、考え直しをしてみようというふうにしたわけでございます。裁判所弁護士からの任官者を得たいということをはっきりさせ、そして例えば採用条件等についても、これは現在検討中でございましてこれからの問題でありますが、そういった点を明らかにしていけば、弁護士の中でもそれに応じて考え直しをすると申しますか、そういったようなことがあるのではないか、要するにやってみなければわからないのではないかというような気持ちでございます。具体的な予測としてあるわけのものではありませんが、とにかくそうやって私どもが積極的にその態度を表明することによって、多くの方がそういう気持ちになっていただくということを期待しているものでございます。  それから、そのためにどういう方法をとるのかということにつきましては、これは裁判官採用の問題でございますので、普通言われるような公募というような形になるかどうかというのは、これはなかなか難しいところがあるかと思いますが、現在どういう方法をとるかについて検討中でございまして、いずれその辺も案が固まりましたら何らかの形で明らかにしていきたいと思うわけでございます。
  17. 中村巖

    中村(巖)委員 それではこの問題についてはこれで終わりにいたしまして、次に、生命倫理というか、近ごろ論議がやかましくなっております脳死の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、六十年の二月十二日ですか、筑波大学岩崎洋治教授ほか二名に対しまして、殺人あるいは死体損壊ということで水戸地方検察庁告発が出ていると思います。それは五十九年九月二十六日、筑波大病院におきまして四十三歳の女性の方の臓器を取った、こういうことでございまして、脳死の状態にあるということから臓器を取ったのだけれども、それが殺人ないしは死体損壊に当たるのではないか、こういう告発だというふうに思います。これについて今検察庁の取り扱いの状況はどういうふうになっているのか、お伺いしたいと思います。
  18. 岡村泰孝

    岡村政府委員 御指摘事件でありますが、昭和六十年二月十五日に東京地検殺人死体損壊等につきまして告発を受理いたしました。本件につきましては、犯罪地被疑者の現在地とも茨城県下でありますために、昭和六十年六月二十七日、水戸地検事件を移送いたしまして、現在水戸地検におきまして捜査中であります。  なお、六十年十二月九日に直接水戸地検に対しまして、筑波大学の医師三名を被告発人といたしまして、臓器の提供を受けた者が死亡したということにつきまして、傷害致死罪によりまして追加告発がなされているところであります。この事件につきましても、現在水戸地検において捜査中であります。
  19. 中村巖

    中村(巖)委員 とにかく、告発を受けてからもう三年有余経過をいたしているわけでございます。にもかかわらず今日まで処分が出ないというのは、医学上の問題を含んでいるからということであろうと思いますけれども、余りに時間が経過し過ぎるのではないか、その点はいかがでしょうか。
  20. 岡村泰孝

    岡村政府委員 本件につきましては、脳死を死と認めるかどうかというところに問題があるのでございまして、このような重要な問題につきまして検察が軽々しく結論を出すのもいかがかと思われるのでありまして、検察といたしましては医学界の動向その他いろいろな情勢などの推移を見守るとともに、脳死問題につきましてはいろいろ検討を加えているためにいまだ結論を出すに至っていないという状況にあるわけであります。
  21. 中村巖

    中村(巖)委員 脳死それ自体の問題についてはいろいろ医学界でも論議があるようで、六十三年、本年の一月十二日、日本医師会の生命倫理懇談会というところから日本医師会に対して答申が出ておって、「脳死および臓器移植についての最終報告」、こういうものが出ているわけでございます。  脳死だけじゃありませんけれども生命倫理全体に関する問題というのは、最近科学の進歩に伴いましていろいろと起こってきているわけでございます。例えば、最近の新聞紙上にいろいろ言われておりますのは凍結受精卵の問題、こんな問題もあるわけでありますけれども、この脳死なり凍結受精卵の問題、人工授精の問題等を含めまして、生命倫理の問題については、法務省としては何か対応を考えて研究をしているというようなことはございましょうか。
  22. 岡村泰孝

    岡村政府委員 脳死の問題を含めます生命倫理の問題につきましては、事柄の性質上法務省だけの問題ではないわけであります。もちろん法務省といたしましてもいろいろ検討はいたしておりまするけれども、各省庁とも連絡をとりながら検討を進めている段階であります。
  23. 中村巖

    中村(巖)委員 日本医師会の生命倫理懇談会答申、最終報告が出て、日本医師会の理事会でもこれは承認するのだ、こういうことがありまして、それ以来各大学医学部において臓器移植を進めよう、こういうような機運というものが非常に高まってきた、こういうことでございます。脳死というものを是認をしているというか、そういうことが医学界にあるわけでございまして、殊に生命倫理懇談会の報告なんかでも、六十年十二月の厚生省のいわゆる脳死研究班の竹内基準というようなものを脳死の基準にして判定基準にするということでいいのではないかということを言われておって、そういうことで今後臓器移植が進められるというようなことがありますならば、今日まで死の法律的な定義、それはいわゆる三徴候説によっているわけでありますから、三徴候説とこの脳死を死とするということの間にはやはり矛盾というか懸隔があるわけで、そうなりますと、やはり脳死ということにして臓器移植を進めることが、筑波大事件のようにこれは殺人ではないかという問題が起こってくるわけでございまして、そうすると、いわゆる筑波大事件だけに限らずに今後ともその種の告発というようなものが起こってくる可能性というものは大であるということになると思います。  これに対して法務省としても何らか対応しないと、こういう事件をたくさん抱えてしまう、こういうことになってしまうのだと思いますけれども、その点について法律的な対応というものを今考えておられるのかどうか、お伺いをいたします。
  24. 岡村泰孝

    岡村政府委員 脳死を認める国は世界の中でも少なくはないように思っております。しかし、脳死を死と認めております世界の国におきましても、これを法律をもって死と規定する国もありますし、また、法律上の規定を設けていない国もあるところでございます。そういう意味におきまして、画一的に法律をもって死の時期がいつというような規定を置くのが相当かどうかという点には、やはり問題もあろうかと思うのであります。そういうような世界各国の動向等も見守りながら、法務省としても検討を進めているところであります。
  25. 中村巖

    中村(巖)委員 今のことを別の言い方からすると、じゃ結局脳死、脳が死んだ、しかし、自発呼吸というものがなくなるという状況の中で、今の医療の中ではレスピレーターというもの、生命維持装置というものをくっつけて呼吸をさせている。その限りにおいては、いわゆる三徴候説による死には至っていない。その段階でそういうレスピレーターというか生命維持装置を取り外すということになった場合に、これは安楽死の問題等々と関係するわけでありますけれども、今の段階ではそういうものを外してしまったということは殺人罪に該当する、こういうことになるのでございましょうか。
  26. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいま御指摘の問題は、基本的には末期的医療のあり方を含みますところの医学の問題であろうかと思うのであります。法律、道徳、宗教等各方面にかかわりまする深刻な問題の一つでありまして、生命の尊重を基本といたしまして、患者や家族の意見あるいは精神的、経済的な負担等も考えながらそのあり方がやはり決定されなければいけない問題であろうかと思っております。  この問題につきましては、国民各般の意見関係各方面の議論の動向を見守りながら、やはり慎重に検討をいたさなければならないものであるというふうに思っております。
  27. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで最終的には末期医療の問題、さらには、その問題と直接関係ありませんけれども、やはり脳死ということを媒介にして臓器移植という問題につながっているわけです。  臓器移植については今角膜と腎臓についての立法があるわけでありますけれども、先ほど言うところのレスピレーターを外すという問題あるいは臓器移植という問題、こういう問題について今後法務省としては立法の必要性というものを感じておられるのかどうか。あるいはまた、今研究している段階だとおっしゃいましたけれども、具体的にはどういう形で研究しているのか。省内で研究しているのか、あるいはまた省内で今は研究しているとしても、その種の研究会等々を設けて研究をするおつもりがおありになるのかどうか、その辺のことを伺います。
  28. 岡村泰孝

    岡村政府委員 要するに脳死の問題につきましては、医学の問題であるというところに基本があるわけでございます。それとともに、国民感情や生命観などとも深くかかわってくる問題であるわけでございます。したがいまして、法務省だけの問題ではないところでございます。もちろん法務省としても、この問題には各般の分野に影響するところが多いという面におきましてかかわり合いはあるわけでございます。したがいまして、法務省だけでも検討はいたしておりまするけれども関係各省庁が集まりましていろいろな検討会も催しておるところであります。
  29. 中村巖

    中村(巖)委員 いま一点念を押しておきますけれども、早急に立法をするという意思は必ずしもないわけですね。
  30. 岡村泰孝

    岡村政府委員 早急と言われますといつごろということになるのか、お答えをいたしかねるところでありまするけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように世界各国の中でも立法をしている国と、立法をしていないが脳死を認めている国とがあるわけでございます。そういうような点も含めまして検討をしておるという段階であります。
  31. 中村巖

    中村(巖)委員 今の問題について最後に大臣お尋ねをするわけですけれども、先般の予算委員会におきましてもこの脳死の問題について、あるいはまた凍結受精卵の問題について質問があって、大臣も御答弁になられたかと思いますけれども医学に関連をするところの生命倫理の問題については、やはりこれは医学の問題だからといって放置をしておくというか、法律的対応というものを全く考えないでいい問題ではないということで、法というものが生命と深く関連をしているわけでございまして、あるいはまた倫理と深く関係をしているわけでございます。それと同時に、先ほど来申し上げておりますように、この問題がはっきりしないと、殺人罪の告発とかあるいは傷害罪の問題等々も出てくるわけであります。したがって、法務省としてもやはり深刻な問題と受けとめて対応をしなければならぬではなかろうか、こういうふうに思います。そこで、大臣のこれに対するお考えを伺っておきたいと思います。
  32. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 生命科学や医学の急速な進歩によりまして、脳死の問題とかあるいは体外受精卵の問題とか、そういう新しい問題が出てきております。そして医学の方におきましては、脳死をもって死とする、そういうような考え方が支配的になってきておるようでございます。しかしこれにつきましては、先ほど来刑事局長からお答え申し上げておりまするように、やはり人間の倫理観と申しまするか、またできるだけ人間を長く生きてもらいたいという一般的な気持ちがあり、また、その人としてもできるだけ長く生きたいという気持ちもあるわけでございます。また一方におきましては、患者が非常に苦しんでおる、この苦痛を何とか和らげて安楽死をさせた方が患者自身としても、また周囲の人としてもいいんじゃないか、そういうようなことも出てまいります。  これは主として医学の問題でございまするけれども、今おっしゃいましたように脳死をもって死とするか、あるいは心臓の停止をもって死とするかということによりまして、今水戸地検において提起されておりまするような殺人罪の問題が発生するとか、あるいはまた民事上は相続の問題も出てくるわけでございます。したがいまして、これは医学ばかりではなくて法律上の問題にもなってくるわけでございまして、法務省といたしましても、ただいま答弁しましたようにいろいろ研究をしておるところでございまして、これは対岸の火災どころではなくて、やはり法律上の問題としても研究をどんどん積み重ねまして、世界の情勢も見ながら考えていくべき問題であると存じております。研究をさらに促進をしてまいりたいと存じます。
  33. 中村巖

    中村(巖)委員 それではまた問題を変えまして、三番目の問題に入りますけれども、それは外登法の問題でございます。  先般外国人登録法の改正がございまして、九月の二十何日でしたか、公布になっております。施行時期につきましては政令をもって定めるということで、本年の六月一日施行になる、こういうことでございます。政令、さらには省令もでき上がっているようでございます。  そこで、六月一日、今度はラミネートカードでやるわけでありますけれども、その具体的な準備というものはもう既にできているのか、そういう体制はきちっとできているのかということについてまず伺います。
  34. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 法の施行に当たりましては、今おっしゃいましたように政省令の準備ということと具体的な準備が必要でございますが、政令につきましては、御承知のように、二月二日に二つの政令を公布いたしまして、一つが六月一日に施行するということでございます。もう一つが指紋に関する政令の公布でございます。当初七月一日ということで施行期日を考えておりましたのですけれども、施行は一日でも早い方が外国人の負担軽減の一助になるということと、それから諸般の必要な準備、諸準備がどうもできそうである、一月前ぐらいにできそうであるという見通しが立ちましたので、六月一日ということで、予定を一カ月繰り上げて六月一日というふうにいたしたわけでございます。  お尋ねの、ラミネートカードその他で準備ができているかというような御質問でございますけれども、六十二年度中に証明書の調製に必要な各種機器等の整備をいたしたいということで六十二年度の第二次補正予算の中で所要の経費を計上いたしまして、その予算案がさきに国会で可決成立いたしましたので、現在ラミネートカードを調製するための機器の購入手続等、最終準備段階に入ってございます。  その他、今度の施行に当たりまして市区町村の職員がいろいろ担当し、地方入国管理局の方で調製事務を行うということになりますので、そのあたりの研修その他についても、具体的に研修を予定いたしまして周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  35. 中村巖

    中村(巖)委員 それに関連して一点お尋ねをしたいのですけれども、今度はカード化をされまして、市区町村の役場の窓口ではすぐに登録証がもらえない、登録カードがもらえない、こういうことになるわけです。そこで申請をして、それから入管へ行って、そこでカードが作成をされて、また戻ってきて交付をされるということになるわけですけれども、その申請をしてからカードがもらえるまでの間というのは、これはどういうことになるわけですか。全然登録証なりカードなりというものがない状態ということになるわけですか。
  36. 黒木忠正

    ○黒木説明員 二つの場合があろうかと思います。  新規登録といいますか、初めて登録する場合ないしは紛失等をしまして再交付を申請する場合、この場合はもともと登録証明書がございません。したがいまして、その人に対しましては交付予定期間指定書という紙を渡しまして、いついつ渡すからそれを取りに来るようにということで、その間登録証明書がございませんけれども、事実上、交付予定期間指定書を渡すことによって申請中であるということは証明できる形になります。  それからもう一つは切りかえ交付、いわゆる更新の手続をやる場合でございますが、この場合は前の登録証明書を持っておりますので、一週間か十日後に登録証明書が交付されるまでは古い証明書をまだ本人が携帯しているという状態でございます。
  37. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、これは六月一日から施行になるわけですけれども、今、六月一日がまだ来ておりませんが、現時点でいわゆる指紋の押捺拒否者というものがどのくらいの数がございますでしょうか。その拒否者の中でもう既に一回押して外登証をもらっている人、一回とは限りませんが、二回、三回、四回、五回もう押しておってもらっておる人、それから全然押したことがなくて押捺を拒否している人、そういう内訳はどういうふうになりましょうか。
  38. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 二月二十四日現在の数字でお答え申し上げますと、指紋押捺拒否者総数七百五十九名でございます。そのうち、過去に一度以上押捺したことがある者であって現在拒否をしている者というのは六百九十八名でございます。拒否者総数のうち、過去に一度も押していない人の数は六十一名ということになっております。
  39. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、六月一日から施行になることについて端的にお伺いしますけれども、六月一日以降、従来押しておった者がなお押さない、こういうようなことになった場合にどういう処置をとるかということでございまして、今まで押捺拒否者に対しては再入国の許可を与えないんだということでやっておられたわけでございますけれども、この再入国許可というものが、六月一日以降、やはりもう一回押しておれば与えられるということになるのかどうか、その辺をまずはっきりとお答えをいただきたいと思います。
  40. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 六月一日の施行までまだ日がございますので、目下鋭意それに向けて検討中であるということでございます。その六月一日の時点でどういう状況になっているかという諸般の状況を見きわめて考えなければいけないと考えております。再入国許可とか在留規制を現在行っているのは御承知のとおりでございますけれども、新法になりますと、新法上は表面的には法違反者でないという、附則、経過措置その他でいろいろございますけれども、そういうような状態にとりあえずはなるのだろうというふうに考えております。どういう措置をその時点でとるかということにつきましては、六月一日までには検討結果を出して、それで処置をしたいというふうに考えております。
  41. 中村巖

    中村(巖)委員 余りそこがはっきりしないということは非常に困るので、私どもからすれば、やはり六月一日新法施行になれば、既に一回押している人、全然押していない人はまた話が若干違うかと思いますけれども、もう既に一回押している人は、これはどうしても再入国許可をしないというような取り扱いをするということは不当なことではないかというふうに思うわけでございます。  刑事処分の方にいたしましても、指紋押捺拒否に対して刑事罰を科するということについては、経過措置によって従前の例によることになってはおりますけれども、実際問題として新しい法が施行されて、そして一回押しているということになったら、それを押捺拒否だ、押捺拒否だといって刑事罰を科するというのは、これもまたおかしいことになるのだろうというふうに思います。  その二つの点について、後者の点について言えば取り扱い上の問題かもしれませんけれども、前者の面についてはやはりその法の趣旨を尊重して再入国は認めるんだ、こういうふうにしていただきたいと思うのですが、大臣いかがですか。
  42. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 現在のところまだ現行法が施行中でありまして、六月一日から新しい法律によってやっていく、こういうことになるわけでございます。そこで、今これをどうするかということはなかなか申し上げかねるところでございまして、検討をしておるという段階でございます。先生のおっしゃること、ごもっともでございまするので、よく検討させていただきます。
  43. 中村巖

    中村(巖)委員 六月一日まで幾らも日がないのですから、今言えないというのはそれはおかしいと思う。もう法務省の中でも大体こういう方針でいこうということは決まっているのじゃないかと私は思いますけれども、私が申し上げたような趣旨で対応をしていただきたいということを強くお願いを申し上げます。  しかしそれにしても、法が施行になる今日でもずっと再入国拒否というものは起こっておりまして、私が知っている事例でも物すごくあるわけで、具体的に韓国籍の方々でいろいろある。あるいはまた、そのほかのヨーロッパ国籍の方でもいろいろあるということでございます。先般の委員会で他の委員から京都の大学生の金康子さんの例を言われましたけれども、それだけではなくて、知っている限りでも二、三十件もう既にそういうことになっているのじゃないかということでございます。やはり法施行が近づいてくれば、こういう人たちに対しても再入国申請を拒否をするということはよくないのだと思いますけれども、まず指紋押捺拒否をしていれば必ず再入国は拒否をされる、こういう取り扱いをいたしているのでございましょうか。
  44. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 例えば御両親の一人が亡くなったとか、そういう人道上に特別な事情があるような場合には柔軟な考慮をしております。  先ほどの御質問のあれでございますけれども、法改正になりました暁には、違反を厳しく問う必要もだんだんになくなってくるのではなかろうかというふうに考えております。
  45. 中村巖

    中村(巖)委員 今のことに関係して、ケース・バイ・ケースのようなことをおっしゃいますけれども、実際に私どもも何か横浜にいるフランス人の方が指紋押捺拒否をしていながら再入国が認められた、こういう例があるように聞きましたけれども、拒否していながら再入国を認められている方もあるわけですか。
  46. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 かつてはあったということでございますが、ここ三年ほどございません。
  47. 中村巖

    中村(巖)委員 もう法施行が近いわけですから、そのことも認めていただかないとおかしなことになる。しかもなお韓国の場合は近々オリンピックがある、こういうことでございまして、日本に在住する韓国人の方もオリンピック関係のことで、あるいはオリンピックを見たいということもありましょうし、そういうことで再入国の申請をするということが多く起こるわけでありますから、六月一日と言わず、その前においても再入国を認めていただきたい、そういう処置をもうそろそろ考えていただかなければならない段階ではなかろうかということを御指摘を申し上げておきたいと思います。  それと同時にもう一点ですけれども、やはり先般の委員会で他の同僚委員からの御質問で、検察庁としては今指紋押捺拒否の刑事事件を受理をしていないというお話でございましたけれども、最近警察の方ではまた指紋押捺拒否だということで任意出頭というようなことをかけているということがあるわけでございまして、私の知っている限りにおいて千葉県の船橋の警察は二人の方に任意出頭をかけて、押捺拒否をしているから事情を聞きたいということでございます。その人たちは二人とも、既にもう何回も指紋押捺をしているわけです。ただ、今回拒否をしているということで呼び出されている実情にあるわけで、こういうことについてはやはり私どももよろしくないと思うのですけれども、入管局長、いかがお考えでしょうか。
  48. 岡村泰孝

    岡村政府委員 先ほど御指摘のありましたように、今回の改正におきましては経過規定が設けられておりまして、従前の行為につきましてはなお罰則の適用があるということになっているところでございます。一方、今回の改正によりまして、二度目以降の指紋押捺義務が課せられないことにもなっておるわけでございます。これらの双方の事情を踏まえ、また個別の状況等も踏まえまして、適正な処理がなされるものと思っております。
  49. 中村巖

    中村(巖)委員 警察の方にも、最近になってそういった動きをするということは慎んでもらいたいというふうに私どもも思っているわけです。  時間がなくなりましたので、これで終わります。
  50. 戸沢政方

    戸沢委員長 安倍基雄君。
  51. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は私、三月二日の予算委員会の一般質問で浩宮のお妃問題を取り上げようとしておったのでございますけれども、たまたま審議中断ということでございまして、既にそのときに質問通告をしておりました。その後、私の同僚議員が内閣委員会でちょっとこの問題を取り上げたようでございますが、この問題は基本的には内閣委員会という考えもございますけれども、やはり我が国の非常に重大問題である、憲法一条で天皇を国の象徴として規定しているというところから、法の番人としての法務委員会でこの問題をよく取り上げてみる必要があると私は思って問題を提起した次第でございます。  この問題は週刊誌などで非常に大きく取り上げられておりまして、いささか過熱ぎみな状況でございますが、しかし国民の代表として、これは知る権利を持っておる。個人のプライバシーとかいろいろ言いますけれども、いわば将来の皇后になられる方がどういう方かということはまことに大事な問題でございまして、過去の記録を見ますと、かつての皇太子殿下の御結婚のときも二、三人の委員が質問をしております。社会党の受田さん、それから吉田さん。これは御結婚が決まる前の状況でございますけれども、その際に、いわば両性の合意という意味と国の象徴との関係はどうか、どちらかというと御本人の意思を尊重すべきではないかというような議論がございました。婚約が決まった後、平井という議員がいささか反対の立場から、決まっちゃったけれども私は同意できないというような種類の発言がございました。どういうことかと申しますと、テニスコートでお好きになられた方と結婚されるのでは、これは我々の子弟とほとんど変わらないではないかというような御質問でございました。それに対して、いやいろいろなことを勘案した上の決定でございますという答弁でございましたけれども、こういったことで、これは国会としてはやはり看過できない問題である。私は単に週刊誌の記者がいろいろ根掘り葉掘り聞くという意味ではなくて、もう少し次元の違う意味で御質問したい。その意味で、私は知られる限りのことをきちっとお答え願いたいと思います。  第一に、この間浩宮様が御誕生日に、結婚は七、八合目だとおっしゃいました。これを見てみますと、三十歳までに結婚したい、もう二十八だから要するに八合目だ、頂上が見えてきたけれども、まだそれまで到達するのは大変だというような御発言だったと思いますけれども、しかし反面、今上陛下の御健康のこともあり、もう時期が近くに来ているのではないかというような考えもあり得ます。私は個人的に宮内庁の方に聞いたときに、大分煮詰まっておるというような発言もありました。そういう意味で、一体現在はどういう段階に来ているのか。大体いつごろ、どういう形でそれが具体化し得るのかという二点について、はっきりとした御答弁をお願いしたいと思います。
  52. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 ただいまの御質問、浩宮様が二十八歳の御誕生日に際しまして、三十までに結婚したいと常々言っていらっしゃったわけでありますが、それを踏まえまして、二十八だから七、八合目と、こういう御発言になりましたこと、新聞等でも報道されました。ただいま先生の御指摘になったとおりのことがあったと存じます。自分の希望としてはこういった年齢でということを、これまでにしたいというようなことを頭に置かれた上での、そういう質問に対してのお答えであったというように私どもは拝聴をいたしたわけでありまして、具体の問題としての、どうということをお触れになったものではないというように心得ているわけであります。  現在、御年齢的に最も御結婚なさってしかるべき年じゃないかということは、そのこと自体は全く否定も何もいたしませんけれども、具体の問題としてどういう段階であるというようなことを申し上げる段階ではまだない。これは先般の予算委員会におきましても御質問が一部の方からあったわけでありますが、その際にも、最近週刊誌で、例えば皇室会議にかかる問題でありますが、これは御承知のとおり、皇室会議が三月中に開かれるのじゃないかというようなことを麗々しく書いている週刊誌もあった。それをちょうど見たところであったものですから、さようなことはないということを申し上げた次第でありまして、こういった問題につきまして現在がどういう段階だということを申し上げることはいささか言いにくいことでございまして、そういう意味で、いつどういう格好での公表になるのかというような点につきましての御答弁は、容赦をさせていただきたいと存じます。
  53. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、現在において数名の候補に絞られているという段階ではあるのですか、ないのですか。
  54. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 いろいろなことが報じられておりますけれども、何人に絞ってどうこうする、その人たちに当たっているというようなものではございません。また、これから新しい方が出てこないという保証も一つもございません。そういうようなことでございますので、どういうような状況であるということにつきましては一切申し上げかねるということで御了承賜りたいと存じます。
  55. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、宮内庁はどの程度この問題にタッチされておられるのか。どちらかというと浩宮様あるいは皇太子殿下御夫妻の方にいわば重点が置かれて、御本人のお気に召す方があらわれるのを待っておるのか、あるいは宮内庁が一定の基準を持ってそれなりのいわば選考をして御推薦申し上げているのか。宮内庁はタッチすべきものであるかどうか、その点についてどうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  56. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御承知のとおり、宮内庁というところは皇族に関しますことを所掌しているわけでございまして、皇族男子の御結婚の選考過程におきましていろいろお世話を申し上げることは当然であると存じております。したがいまして、ただいまおっしゃられましたうちで、どこかから自然に出てきた、それがどうというようなことがあり得るかもしれませんし、同時に、宮内庁といたしましても、これは東宮職というのもあるわけでありまして、おそばの側近もいるわけでありますから、いろいろ考え方をとりながらお世話なり御相談なりに応じているというようなことでございます。
  57. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 宮内庁の法律にもいろいろ書いてございますが、この点、宮内庁が一つの基準を持っているのかどうか。というのは、いろいろな要素があると思います。まず浩宮様の御意向、皇太子殿下御夫妻の御意向、あるいはそれ以外に家系とか教育とか御本人の資質とか、いろいろな要素がございますけれども、これは宮内庁としてどういうところにウエートを置いて考えていらっしゃるのか、そこをお聞かせ願いたいと思います。
  58. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御結婚の相手でございますから、当然当事者の方々のお気持ちというものが前提になるわけでありますが、同時に、ただいま御指摘ございましたように、将来の皇后になられる方ということでございますから、その御本人の御資質はもちろんのこと、そのお育ちになった御家庭といったようなことにつきましても十分な、何といいますか、判断をしなければならないことは当然のことでございまして、そういった諸般のもの万般を総合的に判断をして選考が行われるというように存ずるわけでございます。  御案内のとおり、最終的にはこの判断というものは皇室会議の議にかかっているわけでございまして、そういう点は十分に踏まえた上で皇室会議が御判定になる。もちろん宮内庁として御相談に応じ、お世話申し上げるということを申します限りにおいては、ただいま申しましたような諸般のもの、御本人のこと、御家庭のこと、あるいはその他のいろいろな諸般のものを十分に勘案しなければならないこと、これは十分に承知をいたしているところでございます。
  59. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、現在はまだ本年中にそういったことが決定があるかどうかというような状況の段階ではないと考えてよろしゅうございますか。
  60. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 先般来申し上げておりますように、どういう段階だということを申し上げることを差し控えさせていただきたいということでございまして、週刊誌に報ぜられたように三月に皇室会議などということを申せば、そういう事実はとても考えられませんのでさようなことはないと申し上げたわけでございますが、本年中とか来年中とかということになってまいりますと、いつそういう情勢になるかということについては、ただいま私どもとして判断を申し上げる段階ではなかろうと存じます。
  61. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今皇室会議の話が出ました。この構成員がだれだれかということは私も十分承知しております。最高裁判所のメンバーも入っておれば、宮内庁長官も入っている。あと国会代表、行政府代表、皇族というようなことでございます。  ここでちょっと、これは非常に聞きづらい質問でございますけれども、万が一、浩宮様、皇太子殿下の御意向と皇室会議の意思がいわば食い違った場合にはどちらが優先するのか、法制局の御意見を承りたいと思います。
  62. 味村治

    ○味村政府委員 皇室典範第十条は「皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。」と書いてございますので、皇室会議においてその婚姻に賛成という結論が出ませんと御婚姻はできないということになっているわけでございます。
  63. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いささか皇室に対して恐れ多い、私は昭和一けたでございますから、小学校のころは教育勅語、御真影とともに、いわばそのもとに育った世代でございますから、余りこういったことをお聞きするのはいささか気が引けるのでございますけれども、しかし、今度の御結婚問題というのは非常に重大な問題であると私は考えているわけでございます。どうも最近、週刊誌が取り上げ方が悪いのかもしれませんけれども、どのように御本人のお気に召す方があらわれるかということばかりに焦点が絞られているようでございまして、どういった方が本当に将来の皇后としての資質を持っていらっしゃるのか、客観的条件を持っていらっしゃるのかということについてのいわば配慮が少し足りないんじゃないか。その面で宮内庁がどの程度積極的にこういう方がおられる、こういう方がおられるということで、要するにアンテナを高くして御推薦をしている状況なのか、あるいは東宮の方からの御意向が伝わってくるのを待って、それによって御相談に応じるのか、この辺のスタンスがどうもはっきりしないのでございますけれども、この点宮内庁はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  64. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 皇太子殿下の御成婚の際にもいろいろと議論のありましたこと、先ほど先生、国会のことをお引きになりましたとおりでありまして、やはりあのときもいろいろ週刊誌等におきまして先生おっしゃいましたようなテニス場の云々というようなことも言われたわけでありますが、それに対しまして当時の宇佐美宮内庁長官は答弁をいたしまして、実質はさようなことではないということをはっきり国会で申し上げたというぐあいに私も存じている次第でございます。その辺のスタンスというものは現在におきましても全く同様であるというように私どもとしては感じておるわけでございまして、そうかといって御結婚の問題でありますから当事者の方々のお気持ちというものを尊重しなければならないことも同時にあるわけでありますけれども、単純にそういうことではない。それは諸般のものを考えた上でということを申し上げておりますのは、やはりそういう意味も含まれているというように御理解賜りたいと存じます。
  65. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私がお聞きしているのは、難しい問題でわかっておりますけれども、宮内庁が積極的に候補者を探し出して御推薦をするというようなことまでされておられるのかどうか、その点でございます。
  66. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 具体の問題に非常にかかわってまいりますので、いささか御答弁しにくいわけでございますが、皇太子殿下の御成婚の際にもいろいろなことを言われたけれども実際はどうであったかということをお考えいただければ、やはりそういうようなことも当然踏まえながらいろいろとお世話申し上げているというように存じております。
  67. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 過去の例を私も調べました。今上陛下の場合にはもう大分以前から、お子さんのころから大体決められておって、途中でいろいろ山県有朋の介入とかいうような話も世上うわさされましたけれども、私は今の皇后陛下は本当に皇后陛下の御資格を十分持たれた方だと思いますけれども、当時において非常に国家の大事であったわけでございます。皇太子殿下の際にはいろいろ小泉信三が動いたとか、あるいは田島、宇佐美長官の前任者がいろいろ動いたという話も世上伝えられておりますけれども、いろいろの経緯を経て現在の皇太子殿下御夫妻が誕生したというわけでございます。そのときに、老齢の者にとってはどっちかというとショックだったという人もいるようでございます。しかし、私は皇太子殿下の御結婚は国民がもろ手を挙げて歓迎したという御結婚かと思っております。その点、私は結果的に非常によかったなという気がいたしますが、浩宮の際に、皇室が戦前と比べて非常に変わってきております。これは御承知のように、戦前は統治権を総攬するという天皇家でございまして、菊のカーテンでございますから中は全然わからないというような状況でこざいます。実質的に、しかし、今の皇后陛下もまことに御立派でございます。ところが戦後は、さっきお話が出ましたように天皇陛下が国の象徴ということになった。これはイギリスの王室と比べてどうかと考えますが、この点宮内庁次長はどう御理解していらっしゃいますか。
  68. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 戦前の帝国憲法におきます場合の天皇は総攬者であり、元首であるということであったわけでありますが、現在の日本国憲法における天皇というものは国民の総意に基づく日本国の象徴、日本民族統合の象徴である、これはそのとおり存じているわけでございます。そういう点を基本にいたしまして、だからどうということが御結婚の関係にすぐ結びついてくるということではないと存じます。昔で、旧憲法でいけば、皇族の結婚というのは勅許のみの問題である、勅許によるということであったわけでありますが、それが現在、御案内のとおりの皇室会議の議によると先ほど法制局長官の答弁にあったとおりでありまして、そういうような変化があってきているということは、そういうようなお立場の違いというところからも出てきているのじゃないかというように存じております。
  69. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いろいろ君主制を見たときに、日本の戦後のいわば天皇家と皇室というものは、よく考えますると権限的にはイギリスの王室よりも弱い権限を持っていますね。というのは、イギリスの王室の場合には、例えば総理大臣の指名などについて、慣例としてもちろん議会のいわば指名された者を選ぶことになっております。権限的には国王の権限を徐々に議会が制約してきたという形でございましたが、戦前の日本の天皇に近いいわば権限をいまだ持っておられる。それからもう一つは、もちろん最大の資産の所有者であると同時に、イギリスの場合には周りに貴族というものがあるわけですね。この貴族社会のよしあしという問題はあるかと思いますけれども、ダイアナ妃につきましても伯爵のいわば末裔であるというような、一つの貴族階級がずっとこれを囲んでおる。それはいいか悪いかという問題はあるとしても、例えばこういう妃殿下のいわば御選択という面におきましても幅が広い要素、幅が広いと言っては変ですけれども一つの階層があるわけですね。現在日本の場合にはいわばそういう皇族、華族というのはほとんどなくなった。それは民主制のいい点ではありますけれども、反面、こういうときにどういう人を選んでもいいのかというような話になってくる。  私は野党でございますから、どっちかといえばそういう階級社会に反対的な要素もございますけれども、しかしこういう皇室というもの、御承知のようにウォルター・バジョットというのが、英法を御勉強になった方は御存じですけれども、「英国の国家構造」という本を書いた有名な人がおりますね。その人が言っているのは、王室は畏敬せられねばならない、敬われねばならないということを言っているわけですね。それはそれなりに一つの卓見じゃないか。そうなりますと、この御結婚が全くマイホーム的なというか、御本人のお気に召す、あるいは皇太子殿下のお気に召すということだけで処理されては大変なことになるよ。しかも皇室というものがそういう英国の王室に比べても、なお以前よりも、いわば先々どうなることやら。  私は個人的な話をしては申しわけないのですけれども、私の父が終戦のときにポツダム宣言を受諾するかしないかというときに阿南、松阪両大臣とともに、天皇制を保障したものであるかについて再照会を主張したわけです。戦後おやじが巣鴨に入りまして、その後、終戦に反対した人間の息子という非難を私は随分受けたわけです。私はそのときに、何でああいうときに再照会をすべきだったかと非常に疑問に思って、随分批判的だったわけです、私自身も学生時代は自治会でいささかピンク色というか、左がかった動きもいたしましたから。けれども、おやじが巣鴨から出てきて、つまり戦後の日本を復興するためには皇室というものが必要なんだ、皇室という存在がないと日本の戦後の復興はできない、私はそう思ったからあえて非難を顧みずそういうことを言ったのだ、そういったことでございました。  私自身も、海外に行きましてほかの国の連中が、これは余談になりますけれども、あるモロッコの人間が、エンペラー睦仁を知っているかというような話を私に、私、フルブラィトに留学していたときに聞きました。睦仁というお名前を存じ上げているのは我々の世代以上と思いますけれども、そういう世界の後進国と言われているところの人間がエンペラー睦仁を知っているかということを言うように、日本の皇室というものが非常に意味を持っているということを再発見したわけでございますけれども、ただ、これがこれからどういうぐあいに行くのか、本当に今までの形で行けるのかどうかという重大問題が、私はこの御結婚問題にかかわっているという気がするのです。  いろいろ言いたいことはございますけれども、私は選挙民に対してよく言うのですけれども日本の皇室というものが何で意味があるのか。例えば政治家で首相になるというのは、相当権謀術数を弄してどうにかのし上がっていく。その間には随分汚れたこともやる。力はあり政策はわかっても、道徳的な意味で非常に汚れてくる。そこを、生まれながらにしていわば国の象徴という立場にある皇室というものがやはり精神的なよりどころとして社会の安定のために非常に大切なのだ、ここに皇室の意味がある、私はそういう発言をして選挙民に話しているわけです。  建国記念日なんかも高千穂の歌を歌いに出席するわけでございますけれども、それだけにこれからの皇室がやはり一面において権威を持ち続けていかなければならない。その面から、単にマイホーム的な、御本人がよければよろしい、御本人が決められればよろしい、あるいは私どもの家庭であれば、自分の子供が気に入ればいいだろう、子供の幸福のためにはこういう人を、選んだ人間がいい、それをオーケーするというようなことでございますけれども、皇太子御夫妻がそういったことじゃないと思いますけれども、私が一番心配していますのは、今上天皇がもう御高齢でございます。今上天皇が御存命中は皇室に対する畏敬の念というものが本当に全国民の中に広がっておる。皇太子殿下が即位され、あるいは浩宮が即位されるころになって果たして皇室の権威というか、そういういわば立場、地位というものが憲法の一条だけで保障されるのかどうか。これはやはり国民挙げてこの方なら本当に、妃殿下の選択というのは御本人の問題でございますけれども、こういった天皇、皇后であればというような、本当に国民挙げて歓迎する形でないと、日教組あたりがいろいろ教育している若い世代がどんどん大きくなったときに皇室はどうなるのか。  特にイギリスのように周りにそういう藩屏というのがない皇室であります。その面で、私は今度の、これからの選択は本当に慎重を期さねばならないと思っておりますが、その点でこういった広い観点から、将来皇后になられる方の選択はどうすべきであるかということを中心に、むしろ宮内庁が積極的に御推薦申し上げる姿勢が必要なんじゃないか。かつては小泉信三さん、私、小泉信三さんを必ずしもいいとは思っておりませんけれども、代々、昭和、大正のころは元老的な存在が、恐らくそれなりのアドバイスをされてこられたと思います。今上陛下の場合には、御承知のように杉浦重剛さんがずっと帝王教育を、帝王学を、毎日精進潔斎しながら教えられて、それがやはり今世紀最大のエンペラーとも称すべき今上天皇の精神的な土壌になっておられると思いますけれども、これが本当に今上陛下がお亡くなりになり、そして皇太子殿下が即位され、浩宮様が即位されるころにどういう形であるのかということを考えますと、浩宮の御結婚問題というのは試金石というか、非常に意味の大きな問題だと思います。  そんな意味で、週刊誌がとらえているような、御本人のお気に召す、あるいは皇太子殿下のお気に召すということだけではいかない。もっともっと広い範囲から本当に厳しい選択の上で御推薦申し上げて、そして御本人のお気に召すというものを探すという姿勢が必要かと思います。この点、宮内庁の担当者としての次長、長官にもお話ししたいと思いますけれども、そのお考えと、国務大臣としての法務大臣、皇室会議というものは御承知のように衆参両院の議長、副議長、総理大臣、宮内庁長官、特に最高裁の代表が入っておる、立法、司法、行政の中心人物がおる、そういう機関でございますから、この点につきまして宮内庁のお答えとともに国務大臣としての法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  70. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 ただいまの先生の御意見、非常にありがたく拝聴をさせていただいたわけでございまして、御心配の点、私どもといたしましても常に頭を去らない点でございます。  そういう意味から申し上げまして、先般来具体のものについては申し上げかねているわけでございますが、諸般のいろいろな条件というものを考えさせていただいた上でいろいろ御相談に応ずるというようなことを申し上げたその趣旨は、やはりいろいろなお考えのあること、それからいろいろな条件、将来といったようなものを考えなければならないこと、そういうことも踏まえました上での意味で申し上げさせていただいたというように思っているわけでございます。  これからのこと、本当に重大な問題でございますので、ただいまのお話も承りながら慎重に対処しなければならないということをつくづく感じた次第でございます。
  71. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 宮内庁の問題でございまするので、私から申し上げさせていただきますのは差し控えるべきであると存じますけれども、浩宮殿下は皇長孫でありまして、将来天皇にならるべきお方であります。やはり日本国の象徴であり、そうして国民統合の象徴である、これが天皇でございまするので、そういう意味からいきまして、国民みんながお喜び申し上げ、敬慕申し上げるような御婚儀が望ましいもの、先生と全く同意見でございます。
  72. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 くれぐれも皇室の権威というものを損なわないような、本当に国の統合、憲法一条が泣かないような御選択を、むしろ周りからいろいろ御助言していっていただきたい。浩宮さんも記者会見などでもいろいろ、最終的な決定は自分でしたいと今でも考えていらっしゃいます、それは結構でございますけれども、最終的な決定に至るまでの段階によほど選択を慎重にされないと、結局は皇室が全く、庶民的なのはいいけれども庶民の一人になってしまっても困るのでございまして、結婚問題というのはいわばそういうところの非常に微妙なニュアンスを持っております。  私はアメリカにおりましたが、やはりそのときでもアメリカあたりだとブルーブックというのがあって、これは何代にもわたって近親者がリーゼントであったという一応の家系的なものも問題としておる。それはいいかどうかわかりません。しかし、やはりそういう面も各社会にはある。家系もあれば御本人の資質もあり、いろいろな点でいわば日本の代表というべき女性であることが本当に必要なんじゃないか。その点を考えますと、私は、この御結婚問題というのは昔よりも本当に難しい、政治問題とは言わぬけれども、本当にある意味からいうと大きな政治問題ではないかと考えております。その意味で、私は宮内庁の方々、そして法務大臣の御意見をお承りしまして、よほどこれからの十年、二十年を考えた選択であってほしいと思います。  以上をもって浩宮の御結婚問題は終えます。  もう一つの問題でございますが、実は私は去年の七月にたまたま浜松の暴力団問題で質問したことがございます。そのときに私が指摘したことは二点ございました。  第一点は、こうやって住民が思い切って暴力団追い出しのために立ち上がった、その立ち上がった住民を見殺しにしては将来大変なことになる、全国に波及する、いかなることがあっても見殺しにしてはいけないよ、最後の最後まで住民の庇護というか、それをせねばならないよということをお話ししたわけです。第二点といたしまして、単に暴力団を警察力で抑え込むだけでは同じことよ、モグラたたきのように片一方でぽんとたたけば別のところで出てくるというようなことになりかねないということでございまして、もっともっと、例えば資金源を断つとかあるいは暴力団をやめる者についていわばその更生に力を尽くすとか、警察、法務だけではなくて各省統合した横の連絡を保った総合対策をせねばならないよというようなこと、二点を強調したわけでございます。  その際に警察の方からは、絶対後へ引かないよ、これはもう必ず要するに最後までやるよという御答弁をいただきましたし、また当時の遠藤法務大臣は、それを保証すると同時に、第二の問題について、これはいい考えだ、適当な機会にひとつ閣議で取り上げてそういうものをつくりましょうというお話をされたわけでございます。たしか大臣がかわられてから後も私はもう一度この問題を取り上げまして、どうなっていますかという質問をしたつもりでございますが、私は浜松自体が地盤でございまして、もっとも私は余り反対の小屋あたりに行ってテレビに出るというようなことは好まなかったものですから、直接そこに行って激励みたいなことはしませんでしたけれども、ただ、やはりこうやって法務委員会で最後までやってくれよと言ったことがある程度プラスになったのではないかと自負しておりますけれども、御承知のようにあの問題は一応和解となった。一説によりますならば、最後の最後まで争うとどこもかもそういう判決が出て山口組として困るから上の方で妥協を命じたという説もあるのでございますけれども、一応は和解でもって住民側の勝利という形になってきたわけでございます。ただ、その後事務所をまた別の場所に移転するのではないかというような話さえも出てきた。私が当初危惧した、一遍たたいても別の場所にまた移すという話になってくると、何のための反対かわからないということでございますけれども、その辺警察庁はどう理解されておるか、今後どういう方針で臨むかということをまず最初にお聞きしたいと思います。
  73. 中門弘

    ○中門説明員 一力一家の組事務所の撤去運動につきましては、御承知のとおり本年の二月十九日に住民側と一力一家との間で和解が成立いたしまして、浜松市内の海老塚地区にございました組の事務所が撤去されたわけでございます。警察といたしましては、この事務所が今後どのようになるかを含めまして、一力一家の動向につきまして今後とも積極的に情報収集に努めますとともに、組自体に対しましてはこれを壊滅させるということを目標に、引き続き強力な取り締まりを実施したいと考えているところでございます。
  74. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 といいますのは、別のところに事務所を持っていくというようなことについては、またそれを追及していくというお考えでいらっしゃいますね。
  75. 中門弘

    ○中門説明員 現時点では、この撤去された組事務所が別の場所でまた新しい事務所として設置されるという状況は把握しておりませんけれども、もし今後そういう状況が出ました場合には、周辺の住民の意向等をも勘案しながら適切な対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  76. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の問題は結局、モグラたたきじゃないけれども、ここで閉めたらまた別のところでつくるという話になりますと、何のためのいわば争いだったのかなという、さっき私が最初の質問のときに、最初に立ち上がった者を支えなければ全国的に悪い影響が起こるよ、だからこの問題は最後の最後まで頑張ってほしいと言った、それと似たようなことが、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、ここでもって一応終わった、別のところに行けばそれでよかったのかという話になりますと、何のための争いだったのか、逆に、では騒がれたらいなくなり騒がれなかったらという話になって、また逆の効果も出てくると私は思うのですね。その面で、この問題は今おっしゃったように、私は、最後の最後までというお話でございましたけれども、その点についてもう一度、その辺の効果を考えた上の御答弁を願いたいと思います。
  77. 中門弘

    ○中門説明員 警察の暴力団に対します基本的立場は、取り締まりを通じましてこれを壊減あるいは解散に追い込むということが基本でございますので、そういう活動を続けていきますれば、組がなくなれば事務所もなくなるわけでございますので、今後とも精力的に壊滅に向けて強力な取り締まりを実施したいというふうに考えております。
  78. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 法務大臣、これは警察の問題かもしれませんけれども、やはり法務省の問題でございますので、その御決意のほどを承りたいと思います。
  79. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 この問題は、住民の暴力追放の熱烈なる努力によりまして、またそれを警察が大いに支援をして協力した、こういうことでうまくいったのでございますが、しかし今後はさらに監視を継続いたしまして、暴力を追放するということがいかに社会のために重要な問題であるか、みんなが認識を深めて継続して努力をしていかなければならないと存じます。  法務当局におきましても刑事事犯がありましたならば直ちにこれを取り上げるようにいたしまして、また、法務省には人権擁護局があるのでございまするが、これも暴力追放に努力をしております。法務局をも通じまして、これからも努めてまいりたいと存じます。
  80. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 二番目の問題でございますけれども、よく言われるのですが、例えば暴力団員が刑務所に入る、そうすると組の者が家族あたりを非常に手厚く面倒を見る。ですから、暴力団の者が出所してくれば復帰せざるを得ないような状況ですね。こう考えますと、幾ら牢屋に入れても、出せばまたもとへ戻るというような話にもなるわけです。また、そういった暴力団員がほかのところへ就職しようと思ってもそう簡単にできませんし、これは理想論かもしれませんけれども、やはり片一方において暴力団を追い詰めてたたきつぶすという反面、どうやって更生させていくかということに重点が置かれないと、幾らたたきつぶしても切りがない。また、いろいろな資金源が暴力団にある。表面的な暴力の前にそういう根っこを断つ、そして牢屋に入れたらそれなりにまた更生を図る、そういう政策が必要なんです、実際のところ。  遠藤法務大臣が近い時期に閣議でもってそういうことを発言して考えますという話をされたのですが、その後そういうことを一体されたのかどうか。前任者かもしれませんけれども、たしか私は法務大臣がかわられた後も一度、十二月ぐらいに、あの話はどうなっていましたかな、閣議でみんなで考えて暴力団についての一つの対応策を考えるという話は一体どうなりましたかと質問したことがあるのですね。まだそのころは大臣は新任早々だったのでどの程度かと思いますけれども、ちょっとこの辺、これからどうやったらいいのか。現在法務省においてそういう暴力団の更生にどういう手を打っておられるのかということとともに、これからやはり警察、法務だけでは手が足りないでしょう、もっと横の連係プレーというか、そういう組織をつくるべきじゃないかという私の去年の七月に提案していることについて、どういうぐあいに話が進んできているのか。もし進んでいないのだったら、これからそういうことを考えていこうとされるのかどうか、その二点をお聞きしたいと思います。
  81. 河上和雄

    ○河上政府委員 まず私から、現在行われております関係について御説明申し上げます。  まず事実関係を申し上げますと、暴力団の受刑者というのが、これは昭和六十二年末ですが、全受刑者の三〇・四%を占めております。数にして全受刑者が四万五千九百五十八、つまり四万六千人のうち約一万四千人が暴力団の関係者になっております。  現在、矯正処遇では、暴力団関係者を健全な社会人として更生させるためには、やはり社会の規範に従った規則正しい生活をさせる、それと同時に勤労意欲をかき立てて労働の習慣を体得させる、また先生指摘のように何といっても暴力団組織から離脱させること、これが必要であるということで、矯正教育の中でこのような観点からの指導、これは個別的なカウンセリングあるいは集団的なカウンセリング等いろいろな指導、あるいは個々的な働きかけを強力に推進しております。また、これは私どもから若干離れますが、施設から社会に復帰した後も保護観察等を通じてこのような観点からの働きかけをやっておる次第でございます。  ただ、この問題の基本は、結局暴力団員であることが何のメリットも伴わない、こういうことを各人に痛感させることが必要であろうと思われます。その意味で、暴力団関係者の犯罪に対する徹底した取り締まりを警察にお願いすると同時に、検察庁の方でまた徹底した処罰ということをやっていただく、こういった関係機関との十分な連携を現在も図ってきているところでございます。と同時に、やはり先生指摘のように国民各層の間で幅広く暴力を憎む心、あるいは暴力団に対する否定的な感情、そういったものが醸成されるということが必要だろうと思っておりまして、機会あるごとにその種の、いわば末端の我々の組織ですが、そういう話し合いを持っているところでございます。
  82. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 なかなかそう簡単には転向しないということもあり得るので、あるいは理想論に過ぎるかもしれませんけれども、あめとむちというのがあるわけで、むちの面と、反面、例えばつかまった暴力団で転向しそうなところは、家族などの面倒も見てやると言っていいかどうか、あれかもしれませんけれども、そういうようないわば厚生省的な考え方とか、あるいは麻薬、いろいろな資金源を断つところの面ではいろいろな面の、職の面では労働省関係でございましょうし、金融あたりで金をあれしているのだったらそういう面からの対策が必要だ。つくってみてどのくらい動くかわからないだろうと思いますけれども、総合対策的なことがないと、ただ厳しくぶっ込んでということだけではモグラたたきになるのじゃないか。やはり基本は資金源を断つというか、その辺に重点を置いていかなくてはいかぬじゃないか。そうすると、これは暴力があったらつかまえてぶっ込むというだけではいかない。やはりその辺がこれから暴力団対策を進める上の大事な点じゃないかと思います。  その点で法務大臣に、遠藤大臣が閣議で相談しますと言われておりましたけれども、もうちょっと法務省、警察庁が一緒になって、ほかの省とも連携をとって、いかにしたらそういう彼らの資金源をたたけるのか、そしてまたいかにしたらそういう更生の方法がとれるのか、暴力団を離脱した者についての、就職あっせんは難しいかもしれませんけれども、そういうような広い立場の暴力団対策ということをしていかないと、要するにどこかで一つ壊滅してもまた新しいのが生まれる、どこかで事務所を閉鎖してもまた別のところに行くということのイタチごっこなわけでございますね。この点、これを機会に、これだけ住民が一つの勝利を得たということを機会に、この案件を最後まで処理していくと同時に、もう少し基本的な対策を立てていくべきじゃないか。今話を聞きますと受刑者の三分の一は暴力団というようなことでございますが、こういったのを直していくためにはよほど長期的な対策が必要なのじゃないかと思います。法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  83. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 暴力団対策としましてはやはり警察庁が中心になるべきであろうと存じまするが、警察庁を中心にいたしまして、もちろん法務省、また自治省、労働省、そして青少年対策としては文部省というような、各省に施策がまたがりまするので、十分連絡をとり合いまして対策を推進をしてまいりたいと存じます。
  84. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 若干時間もございますけれども、あらかじめ予告した質問がこのくらいでございますので、まだ聞こうと思えば幾らでもございますけれども、急にお聞きしても申しわけないから、この辺でやめておきます。
  85. 戸沢政方

    戸沢委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  86. 戸沢政方

    戸沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として財団法人古代オリエント博物館研究部長田辺勝美君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 戸沢政方

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  88. 戸沢政方

    戸沢委員長 質疑を続行いたします。安藤巖君。
  89. 安藤巖

    ○安藤委員 法務大臣は、就任のあいさつと所信表明で、これは当然のことでありますけれども法秩序の維持と国民の権利の保全についてお触れになりました。その関連でこれからお尋ねをしたいと思います。  ことしの二月二日午前一時過ぎころに、道路交通法六十四条、これは無免許運転、この違反容疑で現行犯逮捕され、翌日の二月三日午後三時ごろまで長野の南警察署に留置された三十五歳の女性Aさんに対する取り調べの問題についてお尋ねしたいと思います。  この問題につきましては、地元の新聞を初め多くのマスコミが大きく報道しておりますし、長野県弁護士会あるいは日本弁護士連合会人権擁護委員会調査に乗り出しているというふうに聞いております。  そこで、この女性は留置場へ連れていかれてから裸になるように命ぜられ、上半身、下半身とも裸にさせられ、たまたま着用していた生理用品まで取るように命ぜられてやむなく排出したということでありますが、そういう事実があるかどうか、まず警察庁にお尋ねします。
  90. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げます。  本年二月二日に長野南署におきまして道路交通法違反で逮捕され、同署留置場に留置された女性被留置者につきましては、その留置の初めに留置場内の身体検査室で服を脱いでもらい、女子職員が身体検査を行いましたが、その際には備えつけの浴衣を着せるなどして被留置者の羞恥心に配慮した措置をとったと聞いております。
  91. 安藤巖

    ○安藤委員 生理用品のことはどうですか。
  92. 小林奉文

    ○小林説明員 本件被留置者につきましては、危険物が持ち込まれている相当の蓋然性があるというふうな判断に基づきまして、生理用品を取っていただきまして身体検査したという事実がございます。
  93. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、これは法務省の刑事局長お尋ねしたいと思うのですが、身柄を拘束されている被疑者に対しまして、これは現行犯逮捕でも令状による逮捕でもどちらでもいいのですが、指紋、足型、身長、体重、写真撮影以外に身体検査を行うというような場合には、どういうような手続が必要なんですか。
  94. 岡村泰孝

    岡村政府委員 捜査として行います場合には、身体検査令状が必要であります。
  95. 安藤巖

    ○安藤委員 被疑者を裸にして身体検査をするという場合は、どうですか。
  96. 岡村泰孝

    岡村政府委員 捜査として行います場合には、身体検査令状が必要であります。
  97. 安藤巖

    ○安藤委員 この女性に対しましては、今おっしゃったような身体検査令状なしで、浴衣を着せたとはいいながら一応裸にして、そして生理用品まで排出をさせるというようなことをやっているわけなんですが、この点についてはどう考えますか。
  98. 岡村泰孝

    岡村政府委員 留置する際に、危険物等を所持していないかどうかという面の、いわば留置する際の身体検査と申しますか、それは別個の問題でございます。捜査として行います場合には、先ほど来申し上げましたように、身体検査令状が必要だということであります。
  99. 安藤巖

    ○安藤委員 警察庁の方にお尋ねをしますが、先ほど私がお尋ねをし、そしてお答えをいただいたようなこと、これはそのA女は任意に命ぜられるままに、命ぜられるというとちょっと任意というのかどうかわからぬですが、言われるままに任意に裸になった、そして生理用品を排出した、こういうようなことでございましたか。
  100. 小林奉文

    ○小林説明員 被留置者の身体検査につきましては、危険物等が持ち込まれることを防止するために行われるものでございます。そういった観点から、被留置者につきまして危険物等を隠匿している相当程度の蓋然性がある場合には、肌着を脱いでもらったりして検査することもございます。ただ、その場合には、羞恥心というものがございますので、浴衣等を着せて万全の対策を講じておるという状況でございます。
  101. 安藤巖

    ○安藤委員 危険物云々の問題、それから羞恥心云々のことで浴衣を着せたということを強調されておられるわけですが、私がお尋ねしているのは、任意でそのA女が裸になり生理用品を排出したのかどうか、このことをお尋ねしているわけです。
  102. 小林奉文

    ○小林説明員 身体検査に当たりまして必要がございますので、下着を脱いでくれないか、あるいはそういったことをしてくれないかということでお願いいたしましてやってもらったという状況でございます。
  103. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、任意なのかどうかということを聞いているのですよ。どっちですか。
  104. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げたいと思いますが、任意ということについて必ずしもよくわからないわけでございますが、こういった場合には少なくとも自発的にそういったことをやっていただくのがより身体検査の目的を達するのにベターだろうということで、お願いして脱いでいただいたということでございます。
  105. 安藤巖

    ○安藤委員 任意ということがよくわからないというふうにおっしゃったのですが、任意ということは、強制されてやむなく、命令だからどうしてもそうしてもらわなくてはいかぬという強制的な言動、そういうことがあってやむなくやったとなれば、これは任意じゃないわけなんですよ。そうではなくて、今あなたがおっしゃったように、こういうふうに検査する必要があるということを話したところ、わかりましたと言って、いわゆる任意で裸になったかどうか、そこのところを聞いているのです。
  106. 小林奉文

    ○小林説明員 あくまで本人に、脱いでいただきたいということでやっていただいたということでございます。
  107. 安藤巖

    ○安藤委員 A女性は決してこれは任意ではないということを、これは命令だからとか、あるいは決まりだからとか、あるいは規則だからとか、こういうようなことを言われてやむなく裸になったということを主張しているわけなんです。任意で率先して自発的に、話をしたら、わかりましたということでやりましたということなのかというふうに今お尋ねしたけれども、そういうことであったというふうにはあなたはまだおっしゃっていないのですよ。だから、そうすると、やはり強制的なものがあったということになるわけですか。
  108. 小林奉文

    ○小林説明員 具体的な事案におきまして、身体検査を行う必要があるので脱いでいただきたい、こういうふうに申し上げたところ、脱いだということでございまして、それが強制にわたるような状況になっていたかどうかということでございますが、その点については実力を行使してやったという意味での強制にはなっていない、こういうふうに理解しております。
  109. 安藤巖

    ○安藤委員 私はもちろん逮捕されて留置場へ入れられた覚えはありませんが、普通常識的に考えれば、この人は道交法違反、無免許運転ということではありますけれども、現行犯で逮捕されて留置場へ連れていかれたということで、そういう環境に置かれた人が警察官あるいは警察職員にあれこれ言われると、もうこれは言うことを聞かなければどういうことになるか知らぬと非常に不安な気持ちになるということは一般的に言えると思うのですね。そういうようなことはわかりますね。
  110. 小林奉文

    ○小林説明員 被留置者が御指摘のような心情になるということは、我々として十分理解しております。そういった心情というものを理解して慎重に身体検査を行う必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  111. 安藤巖

    ○安藤委員 今あなたは再三にわたって身体検査というふうにおっしゃったのですが、これはどういうような法令の根拠に基づくわけですか。
  112. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げます。被留置者に対する身体検査についてでございますが、被留置者の自殺等を防止するため、留置場の施設管理権に基づいて行っているものでございます。
  113. 安藤巖

    ○安藤委員 留置場の施設管理権をおっしゃるのですが、具体的な法令の根拠をお示しください。
  114. 小林奉文

    ○小林説明員 具体的な法的な根拠ということについては、必ずしも現在明確な規定がございません。被留置者の中にもいろいろな種類がございます。それぞれにつきましてそれぞれの法令の規定に基づいて行っているということでございますが、被逮捕者につきましては現在明確な規定がございません。これにつきましては、留置場の施設管理権に基づいて行っているということでございます。
  115. 安藤巖

    ○安藤委員 明確な法令の根拠がなくて、たとえ留置場の中とはいいながら、あるいは身柄を拘束されている人とはいいながら、身体検査をするのに身体検査令状もなしで行うという点については何にも問題はないとお考えなんですか。
  116. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げます。  留置場におきましては、多数の被留置者を集団として留置し、有限の人的、物的能力のもとにおいて被留置者の公正適切な処遇を確保するとともに、規律を適正に維持する責務を有してございます。こういった観点から、必要最小限度の合理的範囲内の制限というものが被留置者について認められるのではないかと思っております。  このような制限内容につきましては、法律の明文の規定があることが望ましいと考えておりますが、しかしながら我々といたしましては、被留置者の生活の適正を図るための措置を明文の規定がないからといってとれないというふうに考えるのは問題があるのではないか、こういうふうに考えております。我々といたしましては、留置場の管理者としては被留置者の生命、身体の維持を図る責任を負っておりまして、そのような観点から、危険物を所持しているかどうかを確認するために必要最小限の範囲内の身体検査を行うことは認められているのではないか、こういうふうに考えております。
  117. 安藤巖

    ○安藤委員 認められているのではないかというふうにおっしゃるのですが、申し上げるまでもなく、憲法第三十一条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」いわゆる法定手続の保障という規定があるのですね。そして、先ほど法務省刑事局長にもお尋ねしたのですが、御答弁になられた中身は刑事訴訟法百三十一条の関係だろうと思うのです。だから、そういうような規定が厳然として存在している。そういうようなのが存在しているにもかかわらず、何ら明文の規定もなくて、留置場の中はこういう憲法や刑事訴訟法が適用にならないところだというふうにおっしゃっているとしか思えないのです。どうですか。     〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
  118. 小林奉文

    ○小林説明員 留置場における管理につきまして、憲法等の法秩序に従って行うべきだと考えております。そういった観点から、我々といたしましては、こういった被留置者の処遇につきまして法律で明確に規定することが望ましい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  119. 安藤巖

    ○安藤委員 望ましいというふうにおっしゃっておられるそういう法律あるいは法令できちっと規定されていないのが現状なんですね、今おっしゃったところによると。明文のそういう法令はない、規定はないけれども、留置場の管理のためにはできるのだ、こういうふうにおっしゃっておるわけです。望ましいと思っているけれども、ない以上はないままでやるのだ、こういう言い方になるわけなんですが、そうなると、今私が読み上げましたように、憲法にきちっと書いてある、刑事訴訟法にも書いてある、身体検査をするにはこうだということが。それを明文の規定もなしに留置場の中ではできるのだ、こういうふうに力まれる、主張される、これはとんでもないことじゃないのですか。その点についてはちっとも痛痒は感じておられないのですか。やはりこれは憲法が通じないというふうに言わなくちゃならないのじゃないですか。どうですか。
  120. 小林奉文

    ○小林説明員 留置場に留置される被勾留者につきましては、監獄法の適用がございまして、身体検査等ができるようになっております。そういった観点から、被逮捕者につきましても同様の法的保障を与えることが必要だと思っております。そういった観点から、現在留置施設法案を国会に提出させていただいているところでございます。その点を十分理解をいただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
  121. 安藤巖

    ○安藤委員 私が聞いてもいない留置施設法案のことを持ち出すのはまことにけしからぬですよ。その点について言えば、その留置施設法案なるものも、今あなたが言っておられるような身体検査令状もなくて人を裸にして検査をするというようなことが行われる、こういうおそれが多分にあるというふうに私ども思っているのですよ。しかし、留置施設法のことは全然問題の外なんですから、変なことを言わないでくださいよ。問題をすりかえてもらっては困るのですよ。  そうすると、何ら明文の規定はないけれども、留置場の中ではその管理、安全性とかそういうようなことのために被逮捕者を裸にして身体検査をすることができるのだ、そしていつもこれはやっているのだ、こういうことになりますか。
  122. 小林奉文

    ○小林説明員 まず第一点でございますが、私どもといたしましては、全体の法秩序からしまして、この点については必要最小限の範囲内におきまして身体検査ができることは何ら法秩序に違反するものではない、こういうふうに考えております。  それから第二点目の方でございますが、身体検査につきましては、危険物が持ち込まれることを防止するために行われるものでございます。そういった観点から原則として肌着を脱がさない限度で行っているところでありますが、被留置者が危険物等を隠匿している相当程度の蓋然性がある場合には、肌着を脱いでもらう等の措置をとることもあり得るということでございます。そういった観点から、被留置者の羞恥心、人権に配慮しつつやむを得ず必要な措置を講じているという段階でございます。結局、我々といたしましては、被留置者の自殺、事故防止を図るために必要最小限度の範囲内においてこの身体検査を行っているということを御理解いただきたいと思います。
  123. 安藤巖

    ○安藤委員 被留置者が凶器を持っているのではないかという点についての蓋然性があるかどうかという問題は、その捜査に当たっている、あるいは留置管理者のまことに主観的な判断以外の何物でもないと思うのです。どうもおまえは持っているような気がすると言わなくても、思っただけで蓋然性があるということで全部裸にすることができる。これは先ほど来私が言っているように、明らかに憲法に違反したことを警察当局がやっているとしか言えない。  そこで、法務省の刑事局長お尋ねしたいのですが、今お聞きいただいておったようなことで、これは明らかに身体検査ですよ。捜査のためではないと一応おっしゃるけれども、身体検査なんです。それを捜査のためではないから別だというふうに言い切れるのか、憲法の建前から。明らかに身体検査であるにもかかわらず、刑事訴訟法百三十一条の建前からして、身体検査令状もなしに留置場の中で被疑者を裸にすることができるということをおっしゃってみえておるのですが、この点については、憲法あるいは刑事訴訟法の立場からどういうふうにお考えになりますか。
  124. 岡村泰孝

    岡村政府委員 捜査として身体検査を行います場合には、先ほど来申し上げましたように刑訴法に基づきまして身体検査令状が必要であるわけでございます。しかしながら、例えば監獄法には「新ニ入監スル者アルトキハ其身体及ヒ衣類ノ検査ヲ為ス可シ」という規定があるわけでございます。これは要するに監獄に収容いたしました場合に、その収容目的を達成するために必要な身体の検査ということになるわけでございます。留置場の場合につきましても、留置目的を達成するに必要な限度での身体検査は許される範囲内のものであろうかと思っております。
  125. 安藤巖

    ○安藤委員 留置管理の関係捜査とは別だというふうにおっしゃるのですが、身体検査をされる人はどちらであっても裸にされて身体検査されるのですよ。明らかに身体検査ですから、捜査と管理とは別だという言い方はおかしいのじゃないですか。やられる当人は一緒なんですよ。この点について、捜査と管理は別だからそれはできるんだというふうに言い切っていいのですか。
  126. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この点は、先ほど申し上げましたように、例えば監獄法の場合に、新たに入監する者について身体検査の必要があるわけでございます。これは明文をもって規定されているところでございます。また、これは捜査のために行うものではないことも明らかであるわけでこざいます。  身体検査を受ける者が、捜査のためか、あるいは留置目的なり収容目的達成のためなのかわからないのではないかという御指摘で乙ざいますが、その辺は監獄法の関係で申し上げますと、刑務所あるいは拘置所に収容されます場合にはそれは捜査でないということは、御本人にはわかるだろうというふうに思っております。
  127. 安藤巖

    ○安藤委員 監獄法、拘置所の話をおっしゃったのですが、私は今留置場の話をしているのですよ。当人にとっては、これは捜査のためか、あるいはそうでないかということはわかるだろうとおっしゃるのですが、ここがそもそもの間違いなのじゃないですか。やられる方は、何でもかんでもとにかく調べられるんだ。裸にされて調べられたんだ。だから、わかるんじゃないか、これは別なんだという言い方は通らぬ。そして、私がお尋ねしているのは、すぐれて具体的に留置場においての話なんですよ。それを明文の規定もなしに、国民を裸にして調べるなんというのはもってのほかだと思うのです。  そこで、警察庁の方にお尋ねしたいのですが、犯罪捜査規範の百七条、これは時間の関係で私の方から言いますけれども、「女子の任意の身体検査の禁止」、「女子の任意の身体検査は行つてはならない。」任意でも行ってはならぬと書いてあるのです。だから、任意だと言っても、果たしてそれはその場の空気からして任意性があるかどうかは極めて疑わしい。やはり強制が伴うものであるということにかんがみて、この犯罪捜査規範でもやってはならぬと。しかし、「ただし裸にしないときはこの限りでない。」こういうふうになっておるのです。  そこで、これは警察庁の刑事局が編さんした犯罪捜査規範の逐条解説、百七条、「身体検査は身体について行う検証であつて、相手方の承諾を得て任意に行うときは、身体についての実況見分ということになる。任意の身体検査を行うときは特にその取扱は慎重でなければならないが、女子については裸にしない場合は格別、任意の身体検査を本条は明文で禁止した。したがつて、女子について通常露出している部分(顔や手足等)以外の身体検査を行うときは、必ず身体検査令状の発付を受けて行わなければならない。」こうあるでしょう。これと本件のA女さんに対する裸にした関係は一体どうなりますか。
  128. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘の犯罪捜査規範は、犯罪の捜査のため必要がある場合に行われる規定でございます。留置場におきまして行われるものはあくまでそういった観点ではございませんで、被留置者の自殺、自傷等を防止するため留置場の管理運営上の観点から行われるものでございまして、全く別個の立場の検査でございます。
  129. 安藤巖

    ○安藤委員 このA女は自殺等のおそれがあるように思えた事実があるのですか、あるいは凶器を隠し持っているという蓋然性があるような客観的な事情があったのですか。
  130. 小林奉文

    ○小林説明員 先生指摘の被留置者につきましては、その挙動等から判断いたしまして危険物等が持ち込まれるおそれがある、こういうふうに判断したと聞いております。
  131. 安藤巖

    ○安藤委員 これは最初から申し上げておりますから大臣も刑事局長もわかっていただいていると思うのですが、無免許運転で現行犯逮捕されたのです。そしてすぐ警察へ連れていかれて留置場へ入れられた、こういうコースです。そういうような人の場合に凶器を持っているかとか、あるいは股間に凶器を入れておるのではないかとか、自殺するおそれがあるのだろうかとか、そういうことを疑うに足るような蓋然性があるかどうかということなんです。例えば前からいろいろな凶悪犯罪で指名手配されておってとうとう捕まっちゃったという場合はあるのかもしれぬとは思いますが、車を運転していていきなり捕まって、免許証を持っていなかった、無免許だというので留置場へ連れていかれたという場合に、そういう蓋然性があると言えるのかというのです。  これはまさに警察の勝手な推論、ごり押しによる人権侵害以外の何物でもないというふうに私は思うのです。裸にしちゃったのです。笑い事じゃないですよ。だから、そういうことについてしっかり考え直していただく必要があると思うのですが、大臣どうですか。こういうようなことを警察がやっておるという点について、法の秩序の維持が図られているというふうにお考えになりますか。
  132. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 お尋ねの件につきましては、訴えも提起されておるように聞いておりまして、意見を述べることは差し控えなければならないと存じますが、捜査、留置、すべて法にのっとってやらなければならぬことは当然であると存じます。
  133. 安藤巖

    ○安藤委員 ところが、今いろいろお尋ねしておりますように、そして私が指摘しておりますように、法にのっとって行われているとは到底思えない。憲法は留置場の中には適用されない、こういう考えで警察は被疑者あるいは被留置者を処遇しているとしか考えられないわけですよ。何ら明文規定がないのに裸にして、そして今私が具体的に申し上げましたように、運転しておって現行犯逮捕で捕まえられて、警察へ連れていかれて留置場に入れられた。そして裸にされた。どうして凶器を隠すようなことがあるのか、全く考えられないと思うのです。  そこで、もう一つ警察庁にお尋ねしておきたいのですが、これは警視庁の話でございますけれども昭和三十八年十月二十日に、それまで「警視庁被疑者留置規程の制定について」という通達が出ておったのですが、それを廃止して新たに「被疑者留置規則の運用について」と題する通達を出した。これは同年の十一月一日より施行されておるわけですが、それには女子の身体検査についてはどういうふうに扱うということになっておりますか。
  134. 小林奉文

    ○小林説明員 ただいま御指摘の資料については、手元にございませんので、わかりかねる状況でございます。
  135. 安藤巖

    ○安藤委員 これは、現在もこれに基づいて行われているというふうに聞いておるのですが、全然それを手元にないというふうにおっしゃったのですが、知ってはいるのですか、知らないのですか。  これによりますと、先ほども言いましたように通達を出して、「被疑者の身体捜検」という言葉を使っておるのですが、特に女子の身体捜検に関して「肌着は脱がせないようにすること。」こういうふうに書いてあるのですが、そうしますと、本件の場合はこの通達にも違反したことをやっておる。これは警視庁で、長野県警はわしは知らぬということにはまいらぬと思うのですが、これにも違反していることになるのじゃないですか。
  136. 小林奉文

    ○小林説明員 御説明申し上げます。  被留置者の身体検査を行うに当たっては、原則として肌着を脱がさない限度において行うこととしておるところでございますが、危険物等を隠匿している相当程度の蓋然性があるときには下着を脱いでもらって検査をする場合もございます。こういった考え方全国を指導しておるところでございます。
  137. 安藤巖

    ○安藤委員 危険物の問題については先ほど言いましたとおりですから繰り返しませんが、警察官あるいは警察の職員が、どうも危険物を持っているのじゃないかと勝手に思えば裸にすることができる、こういうことになるのじゃないですか。
  138. 小林奉文

    ○小林説明員 身体検査につきましては、人権にかかわる問題でございますので、被留置者の人権を十分配慮して行わなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  139. 安藤巖

    ○安藤委員 それは当然なことなんです。当然なことなんですが、先ほど来私が言い、お答えいただいているようなことからすると、どうも隠しているにおいが臭いなと勝手に思えば裸にすることができる、蓋然性があればという話です。だれが見てもこれはそういう蓋然性がある、疑わしいなということも何もない。本件の場合は、先ほど来何度も申し上げているような状況のもとで逮捕されて留置場へ連れていかれた。凶器を持っているとか自殺するおそれがあるとか、とてもじゃないが考えられないのがかえって蓋然性だと思うのですよ。それを、こういうようなことをやったという点についてはまことにけしからぬことであるというふうに思います。大臣も法令に従ってということをおっしゃるのですが、法令に従っていないのですよ。先ほど来私が言いましたように、警視庁のこの通達も裸にしてはならぬ、こういうふうに言ってあるのです。そうしますと、やはり法令に違反したことをやっておると言わざるを得ぬと思うのですが、重ねて大臣お尋ねしますが、どうですか。
  140. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 重ねてのお尋ねでございまするけれども、現在訴えが提起をされましていろいろと情報を収集中であるように伺っております。そこで、先見に基づいて申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  141. 安藤巖

    ○安藤委員 裸にした問題については先ほど来私が強調しているとおりでございますので、いやしくも人権を侵害する、羞恥心を起こさせるというようなことはないようにすべきであるということを強く要求をしておきます。  そこで、この女性もその関連があるのですが、いわゆる採尿、尿を採取されたわけなんですが、長野県の警察本部はことしの一月八日の県下署長会議で、本部長があらゆる犯罪の逮捕者の原則全員採尿の方針を県下各署長に指示をした。続いて同月十九日の県下防犯課長会議でさらにこの指示を徹底したというふうに聞いておりますが、そういう事実がありますか。
  142. 島田尚武

    ○島田説明員 お答えいたします。  覚せい剤事犯等の薬物犯罪につきましては、現在相当な広がりを見せておるところであります。御存じのように、覚せい剤事犯等の薬物犯罪は極めて潜在性の高い犯罪であり、暴力団以外の一般人の間にも乱用が広がりつつある現在、逮捕者であると否とを問わず乱用の疑いのある場合には、これを見逃すことなく捜査の徹底に努めることが必要であります。この場合においても、適正な捜査手続の確保に十分配慮すべきは当然であると考えておるところであります。  長野県警もこのような前提に立って、覚せい剤乱用の広がりを防止すべく全力を挙げて対策を講じておる。しかしながら、今先生御質問のように一律に疑いのない者まで尿の提出を求める、そういうふうな指示はしておらないというふうに理解しております。
  143. 安藤巖

    ○安藤委員 しかし、私が今言いましたようにあらゆる犯罪の逮捕者、だから窃盗でも道交法違反でも詐欺でも何でも、あらゆる犯罪の逮捕者の原則全員採取ということを指示した。すると、今おっしゃった話と大分違うのですね。だから、こういうような指示をしたという事実はあるのかないのか。これは先ほど言いましたように、地元の新聞にも大きくこの事実は出ているのです。どうですか。
  144. 島田尚武

    ○島田説明員 覚せい剤乱用というのが極めて潜在性の高い犯罪であるということについては私ども共通の認識を持っておるところでございますが、今お尋ねのように何らの疑いのない者まで、逮捕者であろうとなかろうとを問わずそういう人々まで含めて尿の提出を求めるというふうな指示はしておらないというふうに私ども理解しております。
  145. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう御理解は勝手ですが、そうしますと、あらゆる犯罪の逮捕者の原則全員採取というのは間違っておる、こういうことになりますか。
  146. 島田尚武

    ○島田説明員 何らの犯罪の容疑のない者に対してまで容疑をかけるということは間違っておると理解しております。
  147. 安藤巖

    ○安藤委員 ところが、実際問題としてこの指示に基づいて採取されているのですよ。この指示があったのが一月八日、徹底したのが一月十九日、それによっていよいよ動こうということになったのが二月一日から二十日までの間というふうになっているのです。この二月一日から二十日までの二十日間に、覚せい剤取締法違反を除く逮捕者のうち採尿されていた人が相当数いるのですが、その実態は知っておりますか。
  148. 島田尚武

    ○島田説明員 現在全国では二万数千の人たちが覚せい剤の乱用のために逮捕され、また起訴等をされておるわけでありまして、その過程において何らかの疑いのある人々からは、ただいま現在も進んでおるかもしれませんが、疑いのある方からは毎日尿の提出をいただいて、乱用による被害の拡大を防止すべく全国警察は一生懸命やっておるというふうに理解しております。
  149. 安藤巖

    ○安藤委員 私の質問したことに対して全然答えていないですな。覚せい剤を使用している人が表面にあらわれなくて云々という話は、あなたのおっしゃるとおりだと思うのです。私がお尋ねしているのは、長野県警察でことしの二月一日から二十日までの間に、覚せい剤取締法違反を除く逮捕者の中でどれだけの人が採尿されているかということを聞いているのですよ。知っていますか。知っていなかったら私の方から言いますよ。     〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 島田尚武

    ○島田説明員 具体的な数字については持ち合わせておりませんけれども、いずれにせよケース・バイ・ケースで、身柄拘束の被疑者であろうとなかろうと、覚せい剤使用について何らかの疑いがあり、しかも本人の任意の尿の提出がある場合にはその検査を行っているというふうに理解しております。
  151. 安藤巖

    ○安藤委員 任意かどうかという話を私が今しているのじゃないのですよ。  どうも数字を把握しておられないようだから私の方から言いますが、ことしの二月一日から二十日までの間に、覚せい剤取締法違反を除く逮捕者六十三人中三十一人から採尿している。採尿率四九・二%という状況です。そこで、新聞に大きく報道されるようになってこれが問題視されるようになってから、これは二月十九日に採尿問題が表面化して、人権侵害だということで二月十九日の朝刊に相当大きく載ったわけです。その翌日の二月二十日から二十九日まで、これは覚せい剤取締法違反を除く逮捕者三十四人中三人、採尿率八・八%。新聞でぱっと批判されたものだからがたっと落ちているわけです。そして、念のために言いますと、一月一日から一月三十一日まで逮捕者七十一人中十八人、二五・四%の採尿率。先ほど言いました全員原則採尿という指示をしてからの二月一日から二十日までが四九・二%という採尿率。覚せい剤取締法違反を除く逮捕者ですよ。となると、道交法違反あるいは窃盗その他の容疑で逮捕された人から覚せい剤取締法違反容疑に基づく捜査をやった、いわゆる別件逮捕みたいなものですよ。令状主義にも反するのじゃないですか。この点はどういうふうに考えますか。
  152. 島田尚武

    ○島田説明員 たびたび申しておりますように、覚せい剤犯罪というのは非常に潜在性の高い犯罪であります。身柄拘束中の被疑者であろうとなかろうと、何らかの使用の疑いがある場合には、しかるべき方法で尿の提出等をいただいて捜査を行うということで進めているものと理解しております。
  153. 安藤巖

    ○安藤委員 何でもない答弁を潜在性、潜在性とおっしゃるのですが、私が聞いているのは、覚せい剤取締法違反容疑以外の逮捕者の中からこれだけ高率に採尿しているということは、これは明らかに別件捜査で、令状主義に反する。道路交通法違反で逮捕してきたのも、みんな覚せい剤取締法違反で捜査するということになるのじゃないですか。こういうようなことが許されるのですか。  法務省人権擁護局長、来ていただいていますね。この問題について法務省は長野地方法務局に人権問題として調査を指示されたと聞いておりますが、これはどこまで調査が進んでおろか、そしてどういうような措置をとるおつもりなのか、お尋ねします。
  154. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 本事案につきましては、最初新聞情報で認知し、また、本月十日に御指摘のように長野地方法務局に本人から人権侵害の申し立てがなされております。現在、長野地方法務局において情報収集中でございます。  なお、先ほど来出ておりますように、民事訴訟が本人から提起されておりますので、人権擁護機関としましてはその推移も見ながら、人権擁護機関としてこれに関与すべき問題点というものを今後検討していきたい、そういうふうに考えております。
  155. 安藤巖

    ○安藤委員 法務省刑事局長お尋ねしたいのですが、今聞いておられたとおりなんです。だから、これで身体検査令状か鑑定処理許可状か何かを取らなければ採尿ということはできないのじゃないかなと思うのですが、それはどうですか。
  156. 岡村泰孝

    岡村政府委員 尿の提出を受ける方法といたしましては、任意捜査方法によります場合、すなわち任意に尿の提出を受ける場合と、令状に基づく強制捜査による場合とがあります。強制捜査によります場合は、捜索、差し押さえ許可状によるというのが現在の判例であります。
  157. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろな訴えは、道交法違反で捕まってどうして私は採尿されなければならぬのだ、そんなことはする必要はないと逮捕されて採尿された人たちが主張したけれども、それは決まりだから出してもらわなければいかぬのだというようなことで強制的に採尿されたというものがほとんど全部です。それは先ほど言いましたように、覚せい剤取締法違反容疑以外の人たちが高率に採尿されているわけです。それが全くそういう捜査令状なんかもなしにやられているということは、ゆゆしき人権問題だと思うのですよ。こういうようなことは改めなければならないと思います。法務大臣、その点についてはどうですか。
  158. 岡村泰孝

    岡村政府委員 例えば逮捕中の場合のように身柄が拘束されております場合にも、任意捜査方法として任意に尿の提出を受けることは可能であるわけでございます。ただ、任意提出を受けます場合にはあくまで任意のものでなければならないわけでありまして、本人が承諾しない場合には令状に基づくのが刑訴法の精神であるわけでございます。いずれにいたしましても、手続的に適正なものでなければならないと思っております。
  159. 安藤巖

    ○安藤委員 時間の関係でほかの問題に移りますが、憲法の規定もこれあり、基本的人権を侵害するような、留置場の中ではそれは通らないんだみたいな考え方は断じて許せないということをはっきりと申し上げておきます。  そこで、少年に対する捜査の問題について次にお尋ねをいたします。  これは宮崎県の県立のA高校の二年生の少年に対して、昨年の六月十六日に地元の警察官が婦女暴行事件容疑ということで学校へ出かけていって、昼の休みに校長室で事情を聞いた。いろいろ取り調べをしておったところが、午後の授業を告げるチャイムが鳴ったので、初め一緒にいた先生方授業をやるために出かけていってしまった。そうしたらその後でその警察官が裸になれということを強要して、結局、パンツ一枚にされたというようなことがあるのです。もちろんこの被疑事件は後に真犯人と目される人物が逮捕されておるわけでありますが、こういうような捜査やり方は全く違法、不当ではないかと思うのですが、この点、刑事局長、どうお考えですか。
  160. 岡村泰孝

    岡村政府委員 具体的事件捜査の中身でありまして、事実関係を承知いたしておりませんと何とも申し上げかねるところであります。
  161. 安藤巖

    ○安藤委員 捜査令状も何もなしでとにかく人を裸にするということなんですね。これは身柄を拘束されておりません。身柄を拘束されているときでも、先ほどおっしゃった刑訴法二百十八条の関係からすれば、身体検査令状が要るのです。にもかかわらず、そんなものなしでいきなり裸にしたということはとんでもないことだと思うのですが、何もおかしくないのですか。  それからもう一つ。その点についてこういうようなことが学校で行われたことについて、文部省としてはどうお考えですか。
  162. 岡村泰孝

    岡村政府委員 一般的に申し上げますと、裸にするというのは妥当ではないであろうかと思います。ただ、特別の、真にやむを得ない事情があるのかどうかというようなことであろうかと思います。
  163. 森正直

    ○森説明員 文部省でございます。  一般論といたしまして、学校という教育の場におきましての警察の捜査活動等につきましては、心身の発達途上にある児童生徒への影響を配慮するとともに、正常な学校教育活動の展開そのものにも支障が生じないよう、十分配慮して実施される必要があると考えております。こういったところから、私どもかねて教育委員会、学校を指導いたしておりますとともに、警察等に対しましても理解を求めてまいっているところでございます。
  164. 安藤巖

    ○安藤委員 今おっしゃったような趣旨で警察等に理解を求めておられるとすれば、こういうようなことはあってはならぬことじゃないかと思うのですが、どうですか。
  165. 森正直

    ○森説明員 私ども、宮崎県教育委員会の方からの報告でおおよそのことは伝え聞いているわけでございますけれども、校長が警察側の要請を受け、事態の重要性、緊急性等から判断して、教育的配慮ということは当然の前提としながらその捜査を受け入れたというような、その限りにおいてはやむを得ない措置であったと承知しております。
  166. 安藤巖

    ○安藤委員 やむを得ない措置、そういう場合もあるかもしれません。しかし、先生がいなくなったら途端に裸になれと言って、嫌がるのを無理やり裸にさせてしまった。そして、訴えによれば、パンツをまくり上げて太ももを見るというようなことまでやらされたというのです。だから、こういうようなことが教育の現場である学校で行われておるということについては、これはゆゆしい問題だと私は思うのですが、それでも別に大したことはないとお者えなんですか。
  167. 遠藤豊孝

    ○遠藤説明員 少年課長でございますが、お許しを得まして御説明したいと思います。  委員から御質問のございました事件は、昨年の六月に宮崎県で起こりました女子高校生に対する強姦未遂事件ですが、傷害を受けておりますので、強姦致傷事件として立件しておるものでございます。本件につきましては、十五歳の少年を被疑者として検挙し、送致しております。  御質問に言及されました少年につきましては、この被疑者に到達する前の段階で数名の少年が参考人として浮かびまして、その一名として事情聴取したものでございまして、学校へ伺いまして昼休み時間中に当該少年から教師の先生方立ち会いの上で事情を聴取したことはございますが、御質問にありましたように、裸になれと命じてパンツ一枚にしたという事実はございません。
  168. 安藤巖

    ○安藤委員 少年を対象にしていろいろ捜査をするときは、これは時間がありませんからもう言いませんが、いろいろな捜査上からも、それから少年法の趣旨からも特に慎重でなければならぬと言われておることは申し上げるまでもないと思うのですが、強制的に裸にさせたわけではないと。そうしたら、自分から進んで、私は裸になりますから見てくださいと、そんなことを言うか、普通常識的に考えて。そして、このお母さんは、うちの子供は露出狂じゃないんだと怒って訴えをしておられるということなんですよ。だから、そういうような言い方はいけませんよ。警官が数人来て、校長室で、先生がおる間はそんなことは言わなかった。先生がいなくなったら裸、自分から進んで少年が裸になったのじゃない。それは、おい、おまえ、裸になれというようなことで裸にさせられたということはどう考えても出てくる話だと思うのですよ。それを、そんなことはないという言い分は通らぬと思うのです。  まだほかにも幾つかあるのです。横浜市の問題とか岡山市内の問題とか福岡県の問題とか、時間がありませんから、横浜市の問題についてお尋ねします。  これは、新聞にも勇気ある少年というふうに報道された事件であります。ことしの一月十四日午後九時五十分ごろ、これは詳しいことは言いませんが、横浜市の綱島駅前のバス停留所で、バスの誘導員をしておった六十二歳のおじいさんに対して四十数歳の方がいろいろ暴行を加えておるのを見て、少年が見るに見かねて仲裁に入ったところ、殴りかけられて、逆にそれを防ぐためにその四十数歳の人を殴ってしまってけがをさせたということなんです。これは逮捕されて勾留期間いっぱいまで勾留されて、同月二十六日釈放された、こういう経過なんです。  これは、勾留は勾留裁判官が勾留状を発行して、そして勾留されたということになるわけですが、勾留請求の理由は証拠隠滅あるいは逃亡のおそれ、これを防ぐために勾留請求するということになるわけなんです。今回の場合、勾留請求する必要が果たしてあったのかどうかということが問題。そして、もう最後まで言ってしまいますが、この少年は受験生であって、共通一次試験もこのために受けられなくてパアになってしまったということがあるわけです。そこで、逮捕され勾留されたというようなことでいろいろ世論も沸いたわけなんですが、そのバス会社も減刑嘆願をするというようなこともあったりしたのですが、せっかく勇気ある行為をしたにもかかわらずそういう目に遭ったということで、私が心配するのは、これはある新聞のいわゆる読者が出す声欄のところに、「横浜のケース以来、「見て見ぬふりをせざるを得ない」という声が目立ちました。」というのがこの新聞の声欄の締めくくりとしてあるのです。だから、これはもう少年の場合だけには限りませんが、私は今この少年の場合だけに限って申し上げておるのですが、やはりもっと配慮をしてしかるべきではなかったか。どうして逮捕してすぐ勾留請求をしてというような、しかも満期いっぱいまで勾留しておかなければならなかったのか。これは非常に問題だと思うのですが、その点についてどういうふうにお考えになっておられるわけですか。
  169. 古川定昭

    ○古川説明員 ただいまの事件につきまして申し上げますが、御指摘事件につきましては、少年に大変同情すべき点があったことは十分承知しておりますが、被害者が頭部陥没骨折、左眼球破裂等の重傷を負い、失明のおそれがある、被害が重大であったという事情があり、また目撃者等関係者の供述に食い違いがあったということ、それから被害者からも当時事情が聞けないというような事情がありましたことから、当時逮捕をし勾留請求をお願いしたというような事情でありまして、やむを得なかったのではないかというふうに考えておる次第でございます。  捜査は適法かつ妥当でなければならないというふうに考えておりまして、日ごろからこういう観点で指導しておりますが、そういう意味の指導は今後とも適切に行っていく必要があるというように考えておる次第でございます。
  170. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  171. 戸沢政方

    戸沢委員長 坂上富男君。
  172. 坂上富男

    ○坂上委員 田辺先生には大変御苦労さまでございましたが、先生に御質問するのを、ちょっとこの空気になれられるためにほかのことを質問してからさせていただきますので、大変恐縮でございます。  早速でございますが、時間がありませんので私が取りまとめて御質問申し上げまするから、ひとつお答えをいただきたいと思うのであります。  これは、中国残留孤児に関する問題でございます。私は、中国残留孤児のテレビを見ますと大変胸が痛むわけであります。胸の痛むのは、私一人の問題でなくして、全国民の皆さん方がそうだろうと実は思っておるわけであります。  そこで、先般、新潟県長岡市から、自分の兄弟でないかと言って上京されてその孤児に会われて、結果的に兄弟であることが判明をいたしました御婦人がおります、お年寄りですが。名前を申し上げますと、太刀川和さんという方でございます。  そのときの状況を聞いて驚いたのでありますが、最後に血液鑑定をして、この血液鑑定が合えば兄弟であるという認定ができるところまでいったそうであります。御指示によって大学へ血液検査に行ったのでしょう。それで、してもらいました。そういたしましたら、血液鑑定料を六万円取られたそうです。これは、この人が自分の自腹を切って払ったそうであります。この人は決して裕福な人ではありません。私は、残留孤児の肉親の調査については、それと思われる人たちが指定の場所に行って当該孤児と会っておられるので、旅費、宿泊費それから血液鑑定料、こういうものは厚生省なり政府が負担をしてくれているものだとばかり思ったわけでありまするけれども、これは全部自己負担だそうでございまして、こんなようなことを私が今まで知らないでいたことはざんきにたえないわけでございます。私たちはこの人たちに本当にざんげの気持ちを持っているわけでございます。そして、日本に来てもらってせめて肉親との確認をしたいという調査が行われているわけであります。これは、来る人が金を出して、そして鑑定料は自分で払って、確認だけはしてあげますよというようなことではいかぬと私は思っておるわけでありますが、厚生省、これに対する実情とずばりとした方向を決めていただきまして、こういうものは全部厚生省の方あるいは政府の方で負担するようにしていただいたらいいんじゃないかと思っておるわけであります。そこで、とうとうその人は見送りに来る金がなくて、長岡市の職員がかわりに見送りに来たそうでございます。  どうもそういうような状況のようでございますが、一体予算がどれぐらいあって、根拠の法律でもあるのか、あるいはなければ要綱はどうなっているのか、それから今後こういう問題について何らかの援助ができないのか、お答えをいただきたい、こう思います。
  173. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  身元確認のための孤児と名のり出のあった肉親関係者との対面調査の結果、血液鑑定を行うこととなりました訪日孤児及び再訪日孤児につきましては、名のり出のあった肉親関係者が生活困窮等のために血液鑑定料を負担すること等が困難であると認められる場合には、国費で血液鑑定料を負担しております。この措置は昭和六十一年度から予算措置で対処しております。  また、これまで、訪日孤児に肉親関係者の名のり出がありまして、肉親関係者が病気等の理由で対面調査のために調査会場に来訪することが困難な場合には、肉親関係者の居住地に孤児を訪問させて対面しております。先日実施いたしました六十二年度第二次の訪日調査に当たりましても、このために長崎を訪問した孤児がございました。  血液鑑定は肉親関係を確認する上で極めて重要なものであると考えております。したがいまして、経済状態から費用の負担が難しいとの申し出があれば、血液鑑定料をなるべく国費で負担することにしたいと考えております。
  174. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、私はこれは人権問題だと思っておるわけであります。ここは厚生省の委員会でもありませんものですから、課長さんからある程度積極的な御答弁をいただいたわけでありますが、旅費も宿泊費も、あるいは場合によっては見送り、これは大事な人情でございます。こんなのは大した金額ではございませんので、予算は大体十九億と聞いていますが、そうですかな、さっき予算も聞いたのですが、後で答えていただきますが、そんなような状況でございますもので、ひとつ大臣の方からも、人権の立場からやはりこういう親族確認のための調査費ぐらいは国庫が全額負担していいのじゃないか、御協力をいただきたい、こう思っておるわけですが、いかがですか。
  175. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 旧満州国あるいは中国におきまする孤児は非常に苦労をして現在に至っておるわけでありまして、日本といたしましてはできるだけのことをしなければならないと存じます。  そこで、生活が豊かな人にまでやる必要はないと思いまするけれども、生活が苦しいという本人あるいはまた親からの話がありましたならば、それは国の方で面倒を見るべきものであると存じますので、今厚生省からのお話ではそういうようなことでございまするが、その両親とかあるいは兄弟とか、そういうものにつきましてもこれから考えていくべきものと存じます。
  176. 坂上富男

    ○坂上委員 予算と法律的な根拠が何かあったら ……。
  177. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 御検討いただいております六十三年度予算につきまして厚生省の孤児対策関係予算で申し上げますと、全体で約十九億円でございます。この中で、訪日調査ということで孤児の身元確認の調査をする経費が、孤児の数で百名分で計五千万計上してございます。この五千万の予算の中で、先ほど申し上げましたような措置を講じていくことができるというふうに考えております。
  178. 坂上富男

    ○坂上委員 これはそれで終わります。お帰りになって結構です。  今度は、ガンダーラ菩薩の仏像についてちょっと御質問を申し上げさせていただきたいと思います。  文化庁はお見えですね。まず文化庁にお聞きをしたいのでございますけれども日本の国というのは今文化国家なのかどうか、それで文化庁というのは一体どういう業務をなさるのか、ちょっとお答えいただきたいのですが……。
  179. 内田弘保

    ○内田説明員 私ども文化行政を担当いたしておりまして、日本の文化を守り発展させるということが仕事でございます。具体的に言いますと、文化庁の仕事は、大きく分けまして、現代の文化の振興と発展、それから古い文化遺産の保存、修復、こういうような事業を主な仕事としておりまして、日夜努力しているところでございます。
  180. 坂上富男

    ○坂上委員 日本は文化国家かどうかということも実は質問しているわけでございますが、文化国家というのは何だろうと思って辞書を引いてみたら、国家の理想を文化発展に置き、国家的活動を文化的理想の実現に寄与させようとする国家、こういうふうに書かれておるわけでございます。文化庁の仕事は何かといいますと、文化の振興、それから文化の普及並びに文化財の保護、保存、活用を図るとともに、宗教に関する事務を行うことを任務とする文部省の外局である、こういうふうに解説されているようでございますが、これは字引に書いてあるから間違いないことだろうと思います。  そこで、文化庁の仕事というのは文化の振興、普及でございまして、にせの文化あるいはにせものであるか本物であるかということの学術的な究明を国民的立場の中からなさるのも文化庁の仕事なんだろうと思っておるわけでございます。ましてや文化国家の日本を理想としておるわけでございます。そんなような意味において、文化に対する文化庁の理想、目的、今言ったこと等いかがでございましょうか。
  181. 内田弘保

    ○内田説明員 非常に大きいお話でございますので、私も抽象的にしかお答えできませんけれども、やはり日本という伝統を持った国、この国をさらに発展させることが非常に必要だと思います。同時にあわせて、諸外国との国際的な協調の中で人類としての文化を創造していくということも大きい目的の一つだと思います。  御指摘のように現代文化を普及させ、それを広く国民の中に理解させていくこと、あわせまして古い日本の伝統的な文化を大切に保存し、かつ、これについての理解も諸外国にも広げていくというようなことが我々の理想だと思います。また、それぞれの文化財についての深い理解を進めるために基礎的な研究や調査、そういうものも私どもの仕事の一つになっております。お答えできたかどうかわかりませんけれども、私ども文化の振興のために努力しているつもりでございます。
  182. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、そういう文化国家でどうも文化が裁判で裁かれるような事態が起きてきておるようでございます。ガンダーラ菩薩についての国家賠償の裁判が大阪地裁に起きたそうでございますが、簡単に概略お答えいただけましょうか。
  183. 内田弘保

    ○内田説明員 では、簡単に事件の概略と現状について御説明を申し上げたいと思います。  私ども国立博物館の一つに奈良の国立博物館がございます。この博物館において昨年の四月から五月にかけてでございますが、特別展「菩薩」を開催いたしました。この際に出品されました作品の一つでありますガンダーラ仏、石像弥勒菩薩像について、古代オリエント博物館の研究部長であります田辺勝美さんから贋作であるという指摘を受けたわけでございます。もともとこの展覧会は、「日本の文化の源流を探る」ということで既に五十九年にブッダ釈尊展というものをやりまして、これに続きまして仏教美術のすぐれた作品を展示しようという趣旨のものでございます。この際に、ガンダーラ仏を奈良国立博物館がぜひ展示したいということで、当時アメリカの美術商が持っておりましたこの仏像を借用したいという予定で準備を進めておったわけでございます。ところが、その後このガンダーラ仏につきまして大阪の医療法人であります亀広記念医学会が購入を希望しているという話がございましたので、奈良博物館の職員が好意的に、かつ個人的な立場でこれを美術商に伝えまして、これを購入することになったということでございます。その後、この医学会から代金の一部が支払われまして、この仏像が奈良国立博物館に到着したわけですが、こん包は医療法人の代表である亀広氏が立ち会いのもとで開こんしたわけでございます。そして、これの特別展への出品は、この医学会から借用するという形で行われたわけでございます。これが展示までの簡単な経緯でございます。  一番初めに申しましたように、これが贋作であるという問題提起がありましたので、このガンダーラ仏の真偽につきまして、奈良国立博物館では特別展の終了後、すなわち七月三日にこの博物館において専門家八名を交えたガンダーラ仏研究協議会を開催した次第でございます。この研究協議会におきまして、結論としまして、田辺氏を除くほかの学者は、これをにせものと断定する根拠に乏しい……
  184. 坂上富男

    ○坂上委員 そういうことを聞いているのじゃないんだ。裁判の模様を聞いているんだ、どんな裁判が出たのかということを。
  185. 内田弘保

    ○内田説明員 そうでございますか。  この結果、亀広記念医学会の方は、去る三月十四日大阪地裁に対して、ガンダーラ仏は贋作であり、購入については奈良国立博物館のあっせんによるものだといたしまして、法務大臣を相手に国家賠償の請求の訴えを提起いたした次第でございます。
  186. 坂上富男

    ○坂上委員 ちょっと要約いたしますと、裁判所は大阪地方裁判所、訴えの提起は昭和六十三年三月十四日、原告は医療法人亀広記念医学会、被告は国、直接の当事者は文化庁、そしてそれの折衝に当たったものが奈良国立博物館、こういうようなことであるようでございます。それで、請求金額五千百三十万余りということのようでございます。これは私も調べた結果でございますから大体間違いないと思いますが、これを前提にお聞きをいたします。  まず御指摘のありました、これは贋物であると大変学問的な主張をなさっております田辺勝美先生に来ていただいておるわけでございますが、特に委員長の特別のお計らいで参考人として民間人を御招聴くださいまして、大変感謝いたしております。  さてそこで、田辺先生にまずお聞きをしたいのですが、田辺先生の簡単な略歴、そして現在の職務、これをちょっとお聞かせをいただきたいのでございます。
  187. 田辺勝美

    ○田辺参考人 出身大学東京大学教養学部で、教養学科におりまして、フランス分科を卒業しました。その後、同大学大学院修士課程において美術史課程を修了し、大学院の博士課程を中退しまして、東京大学総合研究資料館の助手を五年ほど勤めました。その後、現在の古代オリエント博物館に移りまして、現在研究部長を務めております。
  188. 坂上富男

    ○坂上委員 お幾つでございますか。
  189. 田辺勝美

    ○田辺参考人 四十六歳であります。
  190. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございます。  さて、先生は学者の立場で、学者の良心からこれが贋物であるという御指摘をなされ、先般私も文芸春秋四月号を拝見をさせていただいたわけでございますが、あるいはこの中に書いてない部分もあるかもしれません。あるいはまた、お話しいただくなら遠慮なくお話しいただきまして、日本の文化、芸術の質が本当に問われている問題だと私は実は理解をしておるものでございますから、まず先生のお立場からこれが贋物であるという指摘の理由をお聞かせをいただきたい、こう思います。
  191. 田辺勝美

    ○田辺参考人 私がなぜ贋作かと断定いたしました理由につきまして、その理由を箇条書きにしてまいりましたので、これをお配りして……。
  192. 坂上富男

    ○坂上委員 印刷してありますか。
  193. 田辺勝美

    ○田辺参考人 はい。ワープロで打ってあります。
  194. 坂上富男

    ○坂上委員 いただいていいですか、委員長
  195. 戸沢政方

    戸沢委員長 はい。では配付してください。
  196. 坂上富男

    ○坂上委員 では、ここに詳細が書いてあるようでございますから、ポイントのところだけ要領よく御説明をいただければありがたいですが。
  197. 田辺勝美

    ○田辺参考人 普通、美術史学の発表においては図版なりあるいはスライドで物を見せながら説明するのが慣例になっておりますので、ポスターをお見せしながら説明させていただきたいと思います。
  198. 坂上富男

    ○坂上委員 よろしゅうございますか、委員長。せっかくお持ちくださったのでございますから。
  199. 戸沢政方

    戸沢委員長 結構です。
  200. 坂上富男

    ○坂上委員 文化庁、もしあれだったらこっちでごらんになりながら。文化庁にもまた御答弁もいただきますから。
  201. 田辺勝美

    ○田辺参考人 私の根拠は、美術史学的な鑑定及び一部自然科学的な調査結果を含めております。  まず、美術史学的鑑定結果から申し上げます。  美術史学的鑑定というものにつきましては、まず作品自体の表面観察があります。それから、これは菩薩像でありますのでその図像が正しいか間違っているか、そういったことを調査してあります。それを図像学的考察と申しますが、その次に、この作品にはいろいろなモチーフがあります。怪獣とか首飾りとかいろいろありますが、その形式が正しいかどうか。この三点からの考察が私の言う美術史学的鑑定であります。  まず一番目の「作品の表面観察」から申し上げますと、この菩薩像には地面の中に千数百年以上埋まっていたということを示す石灰分の結晶が全くついておりません。これによって、この菩薩像は土の中に埋まっていたことがないということが推定できます。  二番目といたしましては、この作品の表面には泥がついております。ただ、この泥は、はけなどで塗りたくったものであって、発掘したガンダーラの菩薩像につくような土の状態を示しておりません。  三番目といたしまして、この菩薩像には全身に金箔が貼付されておりますが、この金箔は薄過ぎて、当時、今から千七百年くらい前の金箔ではありません。  四番目として、金箔を石につけております接着剤がありますが、それはチョコレート色をしておりますが、これが近年のものであります。  五番目といたしまして、金箔の上にところどころ、だいだい色の別の塗料が塗ってありますが、これは余りにも生々し過ぎて近年のものであると推定されます。  それから、彫刻の至るところに割れ目がありますが、これは贋作者が故意に割って発掘品らしく見せかけた作意であります。  それから彫刻の裏の方ですが、このポスターではわかりませんが、裏のところ、こういった写真、小さくて申しわけないのですが、裏にのみの跡があります。この下の肩のところにあるのみの跡は細過ぎまして、ガンダーラの彫刻に見られるのみと違います。  八番目といたしまして、これを光背といいますが、頭のところの円盤です。これは本体、胴体以下台座までの部分とは別の石でつくりまして、肩の部分でエポキシ系の黒い接着剤で接合してあります。  九番目といたしまして、菩薩の頭、それから左右の頭髪部分、これは別の石でつくりまして、首のところで同じく黒い接着剤を用いて接合してあります。  それから十番目といたしまして、この菩薩像には首飾りが三本ありますが、一番上の首飾りの一番大きな首飾りの部分を別の石でつくりまして、エポキシ系接着剤で接合してあります。  それから、三番目の首飾りの部分の一番上のところが首飾りが削られております。というのは、これは間違えて削ってしまいまして、このような状態で表現している首飾りはこの部分から落ちてしまいます。これは明らかにミスでありまして、このような明らかなミスを犯したガンダーラ彫刻は一点も知られておりません。  それから、この作品を側面から、横から見ますと、彫刻全体が非常に薄い。これはガンダーラの本物の彫刻はもっと胸の幅が厚いのですが、非常に薄くつくられております。  それから、頭と足の大きさに比べ左手が異常に大きい。これはプロポーションの間違いです。  さらに十四番目として、下半身が長過ぎます。ガンダーラの菩薩像というのはむしろずんぐりむっくりした形でありますが、これはすらりとして伸びておりますが、これは下半身が長過ぎる。これは誤りです。  さらに、この作品は、台座の部分が非常に下手くそにつくってありまして、これをお見せしますとわかるのですが、斜めになってゆがんでおります。本来は、これは直方体で水平な面に必ずしっかり立たないといけないのですが、これは支えを入れてないと立ちません。だから、この彫刻はかつて仏教寺院にひとりで立っていたものではありません。  そういうことで、これは贋作ということになります。
  202. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。  今先生は一の「作品の表面観察」の十五項目によって御指摘をなさったわけでございますが、そのほか二番の「図像学的考察」というのでしょうか、それからその他が、先生からいただきました「学術的論拠」というメモ書きによって先生の贋作であるという学問的な御指摘だというふうにお聞きをしてよろしゅうございましょうか。――ありがとうございました。  さて文化庁、大変あれでございますが、今先生がおっしゃったわけでございますが、その前に、パキスタン政府が、これはどうも本物でないと、公文書かどうかわかりませんが、公式文書が出されているということを聞いているわけでございますが、いかがでございますか。
  203. 内田弘保

    ○内田説明員 私ども正式に原本を見たわけではありませんが、写しをいただきました。それによりますと、パキスタン考古学博物館局長の名前で田辺先生あての手紙であったことは事実でございます。
  204. 坂上富男

    ○坂上委員 先生、パキスタンの政府からの公式文書はごらんになりましたか。(田辺参考人「ここに持っております」と呼ぶ)そうですか。ちょっと読み上げていただきましょうか。
  205. 田辺勝美

    ○田辺参考人 実は、これは私あてのものではなくて、亀広記念医学会の理事長あてになっておりますが、このドリシュケーラというところで盗掘人によって発掘された弥勒菩薩像は、写真を詳細に検討しますと本物であるとは見えないことが判明した、そういうような簡単な文書であります。(坂上委員「どなたが発信人ですか」と呼ぶ)パキスタンの考古局及び博物館の総裁のアフマッド・ナビ・ハーン博士であります。
  206. 坂上富男

    ○坂上委員 さて文化庁、今度文化庁から少し反論をいただきましょうか。あるいはお認めになるわけでもないんだろうと思うのでありますが、現在にせものだと言って指摘をし、文化庁の文化、芸術に対する見識を指摘されておるわけでございますが、御見解はいかがでございますか。
  207. 内田弘保

    ○内田説明員 先ほど発言中ちょっと申し上げましたように、私どもといたしましては、昨年の七月三日に奈良国立博物館においてガンダーラ仏研究協議会を開催いたしまして、たしか今田辺先生指摘があった点も、これすべてではないと思いますけれども、幾つかの問題につきまして専門家の間で御審議をいただいたという経緯がございます。この結果、先ほど申しましたように、にせものと断定する根拠に乏しいという結論をいただいておりますので、この結論を私どもとしては尊重している次第でございます。
  208. 坂上富男

    ○坂上委員 これは、どうも真っ向から意見が対立をしておるようでございます。  そこで、私は国会の立場において御要望申し上げたいのでありますが、まず、この仏像はアメリカから輸入手続がとられているわけでございますが、大蔵省の方では、これはいつどのような税関手続がなされたのか、そしてこれについて税金がかかっているのかどうか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  209. 川信雄

    ○川説明員 お答えいたします。  個別の輸入取引、輸入申告の内容につきましては、税務執行上種々問題がございますので、詳細にわたることは避けさせていただきます。一般論といたしまして、骨とう品として輸入申告されますと、現在の関税定率法は無税という取り扱いになっております。輸入申告書が出てまいりますと、税関では所要の審査を行って輸入を許可する、そういう手続をとることになると思われます。
  210. 坂上富男

    ○坂上委員 工芸品と骨とう品とは別でございますか。
  211. 川信雄

    ○川説明員 関税定率法では、骨とう品と申しますものは、美術品であるか否かを問わず、製作後百年を超えるものを骨とう品として定義しております。
  212. 坂上富男

    ○坂上委員 さて田辺先生、この品物は先生から見ると百年を超えているのでしょうか、どうでしょう。
  213. 田辺勝美

    ○田辺参考人 百年は超えておりません。
  214. 坂上富男

    ○坂上委員 大蔵省、これをごらんになったでしょうか。これを見ていただきたいのですが、きのうお渡しをいたしたのですが、ごらんになっておりますね。「石造弥勒菩薩立像 一躯 金箔押陳列台付属 高さ六十二インチ 出土地北部パキスタン・ミンゴーラ地区 時代古代インド・クシャーナ王朝期 紀元二世紀 上記作品は、西暦紀元二世紀に、古代インドのガンダーラ文化圏において製作されたものであり、したがって製作後百年以上を経過した古美術品であることを確認する。以上 昭和六十二年三月十二日 奈良国立博物館長 濱田隆 大阪税関伊丹支署長殿」そしてサインがあり判があるわけでありますが、これは文化庁、前の濱田館長さんが税関に提出になったものでございましょうか、いかがでしょう。
  215. 内田弘保

    ○内田説明員 先生指摘のとおりだと聞いております。
  216. 坂上富男

    ○坂上委員 大蔵省の方はこれを受け取っておりますか。そして、これをもとにして税金はどうしたのですか。
  217. 川信雄

    ○川説明員 先ほども申し上げましたように、個別な話に立ち入るのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に骨とう品は、先ほど申し上げましたように製作後百年を超えるものというふうに定義されておりまして、骨とう品に該当するか否かにつきましては、基本的には輸入される貨物の性状によって判断することになっておりますけれども、その判断が困難な場合には、博物館、美術館等の鑑定書を参考として骨とう品に該当するかどうかを判断するという取り扱いになっておるところでございます。
  218. 坂上富男

    ○坂上委員 これはまさに奈良国立博物館が輸入をし、みずからその証明をしたものだと思うわけでございます。そうだといたしまして、今論争になっておりますとおりこれが百年以内につくられたものだとしたならば、税金はどうなるのですか。それから、これからどうなさいますか。そしてまた、このような疑いが今出ているのですが、税関としてはどうされますか。
  219. 川信雄

    ○川説明員 輸入されたものが骨とう品でありますと、先ほど申し上げましたように関税は免税ということになっております。骨とう品でないとなった場合にどうなるかということでございますけれども、もしこれが彫像等に該当するというふうに分類されますと、やはり非課税という取り扱いになっております。彫像にも該当せず天然石でできた製品であるというふうに分類されますと、これもやはり関税は免税という取り扱いになっております。
  220. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、税金をかける場合はどうですかと聞いているわけです。
  221. 川信雄

    ○川説明員 ですから、彫像として分類されたり、彫像として分類されなくても天然石でできた製品であるというふうに判断されますと、いずれの場合でも免税でございます。
  222. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、この輸入元は奈良博物館になっておるわけでありますが、これは購入者ということが必要なのでございましょうか。この輸入元というのは一体どういう取り扱いになるのですか。
  223. 川信雄

    ○川説明員 関税法上、輸入申告をする者は、貨物を輸入しようとする者が輸入申告を行うということになっておりまして、通常はインボイス上の荷受け人が輸入申告を行うというのが通例でございます。したがいまして、輸入申告を行う者は必ずしも最終的な所有者である、購入者であるということにはならないことになっております。
  224. 坂上富男

    ○坂上委員 さて文化庁、先ほどもお話があったのでありますが、六十二年七月三日に研究協議会がなされて議事録がつくられたそうでございますけれども、これは存在するのでございましょうか。それから、仏像をレントゲン撮影したのが七枚あると巷間言われておるわけでございますが、何か一枚しか公開されていないように聞いているのです。これも現存しておるのでございましょうか。いかがでございますか。
  225. 内田弘保

    ○内田説明員 同日の会議につきましては、一つは速記録として全文保存してございます。ただ、これは出席者の方全員の合意がなければ出さないという約束になっていたようでございます。もう一つは要約といいますか、そういうものは出されております。会議の要約でございます。この二種類のものがあることは確かでございます。  それから写真につきましては、御指摘のようにたしか七枚だと思いますが、会議に出したのは一枚である。ただ、これは隠すとかそういうことではなく、会議の資料としてこの一枚はぜひ見ていただきたいということで提出したということでございます。
  226. 坂上富男

    ○坂上委員 七枚が現存するのかしないのか、聞いているのです。
  227. 内田弘保

    ○内田説明員 私、そこのところつまびらかにいたしませんが、恐らく現存するのではないかと思っております。
  228. 坂上富男

    ○坂上委員 文化庁、間違いなく公開しないことを条件だ、こういうことですか。そんなことはちっとも聞いておりません。非公開を条件だということは全く聞いておりません。公開することを条件に協議がなされたというふうに私は聞いているわけです。それから、これだけ社会問題になっているわけであります。そうだといたしますならば、これから学術調査があるいはまたなされるかどうかわかりませんが、やはりこの協議録あるいはレントゲンというものは公開をしてさらに専門家の御検討をいただくということも必要なのじゃなかろうかと私は思っているのです。  と申し上げますのは、文化庁、裁判になったでしょう。裁判になりますと、裁判所が提出命令を発せられた場合は提出しなければならないのです。したがって、学術研究をするという文化庁が裁判所に令状を突きつけられて出さなければならないというようなことは、まさに文化が裁判に裁かれるような情けない状態だと私は実は思っているわけです。だから、私は文化庁にこの二つを公開の席上で公開することをお答えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  229. 内田弘保

    ○内田説明員 まず経緯から申しますと、この要旨によりますと、この会議の際に、この会議記録の取り扱いにつきましては公表を原則とするが、発表の際は内容について全員出席者の了解をとる、第三者の不利になることは公表しないこともあり得るということで了承を得たという経緯がございます。これについて全記録を今出すかどうか、私ども今の時点でちょっと申し上げられません。奈良国立博物館とも相談いたしまして、いずれ裁判の席では求められれば出すということになろうかと思いますが、その発表については今ちょっと申し上げられません。  レントゲン写真についても、今それが奈良博にあるという私の推定で申し上げましたが、果たしてあるのかどうか、そしてこれが差し支えないことでしたら出すように奈良博に指導をしたいと思います。
  230. 坂上富男

    ○坂上委員 文化庁のある程度前向きな御答弁をいただいて、大変心強いです。ひとつもっと前向きに対応していただきたいと思っております。と申し上げますのは、にせものであるかどうか、日本の学者の英知を集めて学術調査をきちっとしていただきたい。何か発表するとかしないとか、それじゃ文化に対して信頼を失います。また、文化庁たる権威を失います。日本の文化、芸術を、まさに文化国家を目指しておる日本ですから、もう少しきちっとしていただきたい、こう思っておるわけです。  そこで私は要望しておきますが、この際、学術調査をするに当たりまして、岩石学者、金箔製造者、修復家、古美術商、古美術考古学者、コレクター、こういうようなあらゆる部門の専門家を集めていただきまして十分な御討論と研究をしていただいて、これがにせものであるかどうか、ひとつはっきりと国民の前にお教えをいただきたい、こう実は思っているわけであります。去年四月から五月にかけて、古美術の立派な菩薩であると博物館は国民に展示したわけでございます。本当にそれが間違いなかったのかどうかということは、まさに文化庁が明確にすべきことだろうと私は思っておるわけであります。きょうあえて告発をいたされました田辺先生に来ていただきましたのは、本当に文化庁が文化庁らしい、文化の振興、文化の普及を図る文化庁としてもう当然になすべき原点だろう、こう実は私は思っておるわけでございます。いかがでございますか。
  231. 内田弘保

    ○内田説明員 文化庁といたしましても奈良国立博物館といたしましても、このガンダーラ仏についての科学的究明については昨年の七月当時におきましては非常に真剣でございまして、これについて冷静な学問的、客観的な討議あるいは研究がなされることを切に希望していたわけでございますが、私どもとしては大変その後の状況が残念でございまして、これについて一方的な発表とか一方的な報道が流れているということで、事実についての認識が田辺先生あるいは亀広さんとの間と我々との間で相当違うということが大きな問題点になっているわけでございます。いずれにしましても、私どもとしては、この問題が既に裁判にかかるという段階でございますので、これについては非常に慎重に対処していきたいというふうに思っております。
  232. 坂上富男

    ○坂上委員 仏像についてはこの程度で終わりますが、文化庁、とにかくにせものであるとか本物であるとかなどを裁判所に――関与したかどうかは別ですよ、別の問題として、文化、芸術について裁判でその真否を問わなければならないのは、文化庁、情けないのじゃなかろうか、こう私は言っているのです。だから、文化庁独自のあれでもって、田辺先生のおっしゃることはこういう間違いです、堂々と議事録を出す、堂々とレントゲンを出す、堂々と他の学者を出してやってくださいよ。ただ陰険に隠れて、こそこそとしてそうやって物を隠すから疑問が出てくるわけである。文化庁という名前に恥ずるのじゃないですか。もう一度御答弁いただきましょう。
  233. 内田弘保

    ○内田説明員 もう一度繰り返すことになると思いますが、私どもとしましては、この問題が科学的、学術的、客観的に討論されることを切に望んでいた次第でございます。しかしながら、田辺先生の御本なんかを読みますと、これをスキャンダルとして取り上げるということがいい方法であるというふうにお考えでございます。そのようなお考えに対して、私どもは承服できない点があるということでございます。科学的な研究、冷静な発表については学会等において今後も大いに進めていただきたいと思います。
  234. 坂上富男

    ○坂上委員 田辺先生、何か御所見ありましたら。
  235. 田辺勝美

    ○田辺参考人 今の文化庁の答弁は全く事実無根でありまして、全然学術的、客観的な会議ではなかったのです。それから、レントゲン写真も確かに隠しております。それから、私の調査に対してもいろいろなところから妨害している。そういう事実がありますから、スキャンダル云々という以前の問題であります。これは当然社会的な問題になるべきものでありまして、それは奈良国立博物館及び文化庁の対応のまずさ、すべて大本営発表と同じようなことでもって、国民を愚弄しているものであります。
  236. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、これが今言ったような問題でございますが、法務大臣として何か御所感ございましたらお聞かせをいただきたい、こう思います。
  237. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 仏像が裁判所の問題になるというところまで来ておるわけでありまするが、これはお釈迦様も余りお喜びにならないことじゃないだろうかと存じます。裁判所へ来ておるわけでありまするから、十分これを審査をしなければならぬわけでございまして、それより以前に文化庁並びに今の先生の主張がおのおのあるわけでございまして、いろいろな正しい理由によっておのおの主張しておられるのだろうと思いますけれども、その主張を十分裁判所においてお聞きをいたしまして判断をしてまいりたいと存じます。
  238. 坂上富男

    ○坂上委員 きて、今度は大韓航空機問題についてお聞きをいたしたいと思いますが、関係官庁お見えでございましょうか。警察庁それから外務省が、金何さんでございましたかな、金さんにお会いになったということでございますが、そのときの模様をひとつお答えをいただきたいと思います。
  239. 田中均

    ○田中説明員 お答えを申し上げます。  一月二十二日でございますが、私ども外交政策を検討するに当たっての外交上の情報収集ということで、金賢姫から約一時間にわたりまして事情の調査を行ったということでございます。
  240. 坂上富男

    ○坂上委員 警察庁。
  241. 國枝英郎

    ○國枝説明員 警察庁におきましては係官を韓国に派遣いたしましたが、二月四日及び二月二十日の二回にわたりまして、金賢姫に対します韓国係官の事情聴取に立ち会いました。その結果、金賢姫に対しまして日本人化教育を行った女性、李恩恵でありますが……(坂上委員「そういうことを聞いているのじゃないです。どういう調べ方があったのか、こう聞いているのです」と呼ぶ)その意味におきまして、日本人李恩恵に関する事項を中心に情報を入手したわけでございます。
  242. 坂上富男

    ○坂上委員 私の聞いているのは、どういう場所で、どういう人が立ち会って、そして大体時間どれだけにわたって、具体的な調査といいますか、捜査の模様をお聞きしたい、こうなんです。だけれどもそれはしゃべれないというなら、しゃべれる限度にきちっと答えてください。しかもこれは、いわば罪を犯した人として金賢姫が捕まっているのだろうと思うのでございますが、一体皆様方がどうして会うことができたのか、そんなようなことを韓国の実情とあわせてちょっとお聞かせをいただきたい、こういうわけでございます。今おっしゃったような答弁は、もう新聞でわかっておるわけです。もっと詳しい取り調べ状況についてお聞きをいたしたい、こういうことでございます。
  243. 田中均

    ○田中説明員 先ほどお答え申し上げましたように、私どもが行いましたのは取り調べということではございませんで、あくまで外交上の情報収集という形でございまして、事の性格上具体的な場所についてはお答えを申し上げるわけにはまいりません。  具体的な事情調査の概要でございますが、私北東アジア課長と大使館の館員一名が、韓国側の捜査官の立ち会いのもとで直接事情聴取をしたということでございます。
  244. 國枝英郎

    ○國枝説明員 警察庁の係官は、ソウル市内の某所におきまして金賢姫と面会いたしました。面会の際に、先ほど申し上げましたとおり韓国係官の立ち会いのもと、立ち会いと申しますか、先方の事情聴取に当方が立ち会ったという状況でございます。なお、第一回目二月四日の事情聴取は約三時間、二月二十日の事情聴取は約四時間でございました。
  245. 坂上富男

    ○坂上委員 これは警察庁でも法務省の刑事局長でも結構でございますが、日本では、犯罪を犯したということで逮捕勾留になっている人を外国人にこうやって必要上会わせるということは捜査上あり得ることなんでしょうか、どうなんでしょうか。日本の場合をお聞きしたいのです。
  246. 岡村泰孝

    岡村政府委員 外国から捜査共助を受けました場合に、日本側の捜査官が取り調べを行います場に立ち会わせるということは慣例としてやっております。
  247. 坂上富男

    ○坂上委員 警察庁どうですか。共助協力があったのでございますか。どういう根拠で皆さん方が入れていただいてお調べができたのですか。
  248. 國枝英郎

    ○國枝説明員 お答えいたします。  警察庁といたしましては、当時、金賢姫に対します日本人化教育を行った女性が日本人であることあるいは拉致されたということも伝えられておりましたこと等、非常に国民的な関心も高いことでございましたので、この李恩恵に関します身元に関する事項を中心に情報交換を韓国当局と行い、その一環として金賢姫とも面会した。金賢姫に対します韓国側の係官の事情聴取に立ち会ったわけでございます。
  249. 坂上富男

    ○坂上委員 共助事件になっているのですか、どうですか。
  250. 國枝英郎

    ○國枝説明員 厳格な意味での捜査という立場で金賢姫と面会したわけではございません。先ほど申し上げましたように、情報交換の一環でございます。
  251. 坂上富男

    ○坂上委員 刑事局長さんにお聞きしたいのですが、この金賢姫は、韓国の刑事訴訟法といいますか、逮捕、勾留、起訴というようなことになるわけですが、実際韓国の場合はどういう順序になるのでございましょうか。それで、金賢姫は一体今裁判にかけられたのかかけられないのか、現在どんなような状況にあるのか、わかる範囲においてどこからかお答えいただきたいと思いますし、また刑事局長の方からは、ひとつ韓国の刑事手続をお聞かせいただきたい、こう思います。
  252. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  金賢姫の現状でございますけれども、これはあくまで韓国の国内法制に従って手続が踏まれることでございますので、現在のところ実態がどうなっておるのかということについて、私ども日本政府としてお答えを申し上げる立場にはないということでございます。
  253. 岡村泰孝

    岡村政府委員 韓国の捜査手続といたしましては、刑事訴訟法がありまして、内容的には我が国の刑事訴訟法とほぼ似通ったものであるというふうに承知いたしております。
  254. 坂上富男

    ○坂上委員 そうだといたしますと、日本の刑事訴訟法によりますればもうそれなりに起訴という段階に入っているのではないかと思われるのでございますが、どうもそういう情報も伝わってこないのでありますが、どなたかおわかりになりませんか、御答弁いただけましょうか。
  255. 田中均

    ○田中説明員 御答弁の繰り返しになって恐縮でございますけれども、私ども、韓国の国内手続に従ってどういう措置がとられているのかというのをまだ承知する立場にはございません。
  256. 坂上富男

    ○坂上委員 警察庁、おわかりになりませんか。
  257. 國枝英郎

    ○國枝説明員 韓国の国内法制に基づいた取り扱いがなされておると理解いたしております。
  258. 坂上富男

    ○坂上委員 具体的にどうなっているか聞いているわけでありまして、そんな子供だましみたいな答弁だったらやめてください。  今度はまた警察庁にお聞きをしますが、李恩恵の捜査がなされておるようでございますが、現在捜査状況はどんなでございますか。
  259. 國枝英郎

    ○國枝説明員 お答えいたします。  金賢姫の日本人化教育にかかわりました李恩恵でございますけれども、彼女が日本人であること、また日本から拉致された疑いが持たれることから、警察といたしましても非常に重大な認識をいたしておるわけでありまして、その意味で、この女性を割り出すため、身元に関する情報でございますとかあるいは似顔絵をもとに家出人手配データなどを利用しまして、幅広く類似の行方不明者を全国的に調べておるところでございます。加えまして、国民の皆様からの情報提供をお願いしておるところであるわけでございますが、現在のところ、恩恵に結びつく有力な情報は出てきておりません。今後とも国民の皆様からの積極的な提報をお願いしつつ、息長く調査を進めてまいりたい、かように考えております。
  260. 坂上富男

    ○坂上委員 もうあれから随分御捜査なさっているわけでございますが、全く情報が得られないというような状況のようでございます。どうでしょうか、もう一度金賢姫から果たしてその自供が正しいのかどうか御確認なさろうという意思はないですか。
  261. 國枝英郎

    ○國枝説明員 申し上げます。  金賢姫の事情聴取の際の供述につきましては、全般的に信憑性がある、信頼できるというふうに考えておるところでございます。
  262. 坂上富男

    ○坂上委員 そう信じてやっているんだったら仕方がありませんけれども、果たしていかがかなと私素人でも思います。捜査という観点から見て、自白の信憑力というのは常に問われるわけでございます。しかも私は、韓国におけるところの情報を得られた上で警察庁として確信を持っておられるというようなお話のようでございますが、これだけ膨大な捜査力をもって調べてもそれらしきものがちっとも出てこないというところから見ると、やはりどうも自供の中にも記憶違いその他もあるのではなかろうかという危惧の念を実は抱いておるわけでございます。そういう点から、捜査も再検討が必要な時期に来たのではなかろうかと私は考えておるわけであります。  それからいま一つ。この名前は何と言うのでしょうか、日本の漢字にしますと金勝一と書いてあったのですが、服毒自殺をした、こうなっております。この遺体が韓国に引き取られたというふうに私は情報として聞いているのでありますが、事実だったのでございましょうか。そして、この処置はどんなふうになったか、情報としておわかりでございましょうか。
  263. 國枝英郎

    ○國枝説明員 先生の前半の御質問でございますが、質問の御趣旨は、李恩恵の特定が非常に難しいようではあるがということかと拝察いたします。  金賢姫と李恩恵は約一年六カ月の間生活をともにしたわけでございますが、工作員の訓練所においては相互の身の上話をすることは禁じられておったということでございまして、その意味において、金賢姫が直接知見した恩恵の身体特徴ですとか食物の嗜好に比べまして、恩恵の身元に関する情報が少ないのは一面において当然のことであろうと考えております。このように身元に関する情報が少ないことに加えまして、何分昔のことでもあり、また、問題の女性が家族等とは断絶した生活を送っていたこともうかがえ、さらにはまた家族が口どめされますなど、警察に通報できないような事情もあるということも考えられるわけでございまして、身元割り出しが困難な状況にあることは否めません。ただ、先ほど申し上げましたように、国民の協力を得つつ息長く調査を進めてまいりたいと考えております。  第二の御質問でございますが、金勝一の遺体は韓国に送還されたというふうに聞いております。
  264. 坂上富男

    ○坂上委員 ひとつ捜査当局に申し上げておきたいと思いますが、日本捜査でございまするから、どうぞ間違いのないように要請をしておきたいと思います。  それから、今度は商法改正について御質問をさせていただきたいと思います。  現在、商法改正の作業はどんな程度に進んでいるのでございましょうか。また、これからの見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  265. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 五十六年に改正されました際に残された問題がございまして、その点につきまして六十一年五月に改正試案を民事局の方から公表いたしました。各方面から意見書の提出がございましたので、その各界意見を踏まえまして、昨年以来改正要綱を作成するための審議法制審議会の商法部会において継続して行われております。  今後の見通しでございますが、非常に問題が各般にわたっておりますが、今後作業が順調に進めば今年末か、あるいは来年早々かにも改正要綱が法制審議会から答申されるというふうに見込まれます。それを踏まえまして民事局の方で立法作業に入る、こういうことになろうかと思います。
  266. 坂上富男

    ○坂上委員 立法作業に入りましてから、国会に提案されるのはいつごろになるという見通しですか。大体で結構です。
  267. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 ただいま申し上げましたような日程でございますので、極めて順調に進めば六十四年春の国会にということも考えられないわけではございません。あるいはもう少し手間がかかる、膨大なものでございますからそういう事態も予想されるわけでございまして、そうなりますとさらに一年後ということにもなろうかと思います。
  268. 坂上富男

    ○坂上委員 さてそこで、法制審でどんなようなことが審議なされているのか、わかる範囲で結構でございます。そしてまた、個別的に御指摘を申し上げまするからお答えをいただきたい、こう思っておるわけでございます。  まず、最低資本金制度について大体どのような議論が行われ、どういうような方向づけになっているのか、お聞かせをいただきたい。
  269. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 株式会社及び有限会社はいわゆる物的会社でございまして、有限責任の会社でございます。そこで、その利益を享受するためには、会社財産のみが会社債権者の債権の引き当てになるわけでございますから、会社に相当の財産が保有されるようなことでなければならない。その基準となる額が資本金でございますので、株式会社につきましてこれまで最低資本金の定めがございませんでしたが、これについて適当な額の最低資本金を定める。それから、有限会社につきましては現行法では十万円という最低資本金が定められておりますが、これは現在では極めて不適当な額でございますので、これにつきましても適当な額の最低資本金を定めるという方向検討がなされております。この具体的な金額につきましてはいろいろと御意見がございますが、さしあたり株式会社につきましては二千万円、有限会社につきましては五百万円といったような数字が検討されておるところでございます。
  270. 坂上富男

    ○坂上委員 私の意見、要望はまた別途申し上げたいと思います。  その次に、計算諸表の公開についてはどのような議論が行われておりますか。
  271. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 現行の商法では、株式会社はすべて計算書類を新聞または官報で公告すべきものとされておりますが、この規制は現行法の中で最も形骸化している規定ではないかと思われます。しかし、また翻って考えますと、計算書類を官報で公告するとか日経新聞に載せるとかというような制度は、大きな会社はともかくといたしまして、小規模な会社にとりましては必ずしも適当とは言えない面もございます。  そこで、現行の制度で定めております決算の公告は、特に規模の大きい会社を除きましてはこれを省略することができるものといたしまして、しかし、これにかわる公開の制度を設けなければなりませんので、その合理的な制度といたしまして商業登記所において計算書類の公開をしてもらう、こういうふうなことで検討がなされておるわけでございます。
  272. 坂上富男

    ○坂上委員 さてその次は、会計監査人による監査ということについてはどのような議論がなされておりますか。
  273. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 商法特例法によりまして、現在、大会社、つまり資本金五億以上あるいは負債の額二百億以上という会社につきましては会計監査人による監査が行われるべきものとなっております。この会計監査人による監査を受ける会社の範囲というものは、商法特例法が現在の規定はそのようになっているわけでありますが、これをもう少し拡大することが適当ではないかというふうに考えられているわけでございまして、これをどのように拡大するかということについて現在検討がなされております。現在の規定でございますと、ただいま申し上げましたように資本基準と負債基準と両方ございますが、少なくともこのうちの負債基準についての見直しは必要ではなかろうかというふうに言われておるところでございます。
  274. 坂上富男

    ○坂上委員 続けて恐縮でございますが、今度は会計調査人による調査という問題についてどのような御検討がなされているか、お答えいただきたいと思います。
  275. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 このような物的有限責任の会社におきましては、その有限責任の利益を享受する前提といたしまして、会社の計算が適正に行われているということを確保することが欠くことのできない前提となるわけでございます。ところが、現在は会計監査人による監査は大会社に限られているわけでございますが、これを先ほど申し上げましたように若干拡大するといたしましても、それには限度がございます。これを中小の会社にまで広げるというわけにはとてもまいらないだろうと思います。それは一つには、中小会社の現在の実情というものもございますし、また、会計監査人たるべき公認会計士の数という問題もあろうかと思います。  そこで、こういう点にかんがみまして、会計監査人の監査を受けない会社でございましても、一定規模以上の会社に対しましては会計の専門家のチェックを受けさせようというのが、この会計調査人による調査という制度の構想でございます。この一定の資格を持つ会計専門家という範囲をどのようにするかというのは、これまた一つ問題のあるところでございまして、公認会計士に限らずもう少し幅広い範囲が考えられているところでございます。
  276. 坂上富男

    ○坂上委員 この問題はちょっと続けて質問させてもらいますが、局長さん、会計調査人による調査は大体どの程度の規模の会社をもって充てる、それから公認会計士以外に調査人というものはどんな方々予測なさっているのか、その辺議論があったらお聞かせをいただきたいのです。
  277. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 会計調査人による調査を受ける会社の範囲は、現在考えられているところを申し上げますと、株式会社につきましては資本金三千万円以上または負債総額三億円以上、有限会社につきましては資本金一億円以上、負債総額十億円以上というような規模の会社が考えられております。  それから会計調査人の基本的な資格でございますけれども、公認会計士のほかに、会計士補とかあるいは税理士とかといった範囲の者を含めて考えるのはどうであろうかというふうに言われているところでございます。
  278. 坂上富男

    ○坂上委員 会計調査人による調査は、公認会計士の監査と同じように間違いがあったら処罰規定を盛るわけでございますか。例えば粉飾決算をしたような場合。
  279. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 会計調査人につきましても、故意または過失による過誤がございました場合には、一定の責任を負うべきものというふうに検討されております。
  280. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは今度は、取締役の責任についてはどのような御検討がなされておりますか。
  281. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 取締役の責任につきましては、今まで申し上げました改正点と関連をするわけでございます。会社が有限責任の利益を享受するために、今まで申し上げましたように会社の計算書類が商業登記所において開示をされるとか、あるいは少なくとも会計調査人による調査を受けるとかという仕組みでもって会社の計算の適正が担保されるわけでございますが、そのような前提を満たさない会社、つまり商業登記所においての計算書類の開示もしない、あるいは会計調査人による調査も受けないというような会社の取締役につきましては、有限責任の利益を制約いたしまして、債権者が会社から債権の弁済を受けられなかったことにより損害を受けた場合には、会社の取締役は債権者に対してその損害の賠償をする責めに任ずるというような形で、取締役が直接責任を負うということが考えられておるわけでございます。
  282. 坂上富男

    ○坂上委員 私は、問題になるであろうという大きな部分について今お聞きをいたしたわけでございます。  さてそこで、今言った改正点について相当強い反対の意見も出ているのだろうと思うのでございますが、最低資本金制度、計算諸表の公開、会計監査人による監査、会計調査人による調査、取締役の責任、この五点についてどのような反対意見がなされているのか、重立った反対意見についてお聞きをしたいと思います。
  283. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 先生が御指摘になりました点は、各方面で非常に議論がなされているところ、つまりある方面から非常に反対の強いところばかりを取り上げられたわけでございますが、第一の最低資本金につきましては、やはり中小企業の団体などの方から、こういう制限を課せられるのは非常に困るという御意見がかなり強うございます。今までは最低資本金の定めがございませんでしたから、この基準に届かない会社が相当あるわけでございまして、そういう会社についてどういう措置をとるか、経過規定でどういうふうなことを盛り込むかということと関連してまいろうかと思います。  それから、二番目の商業登記所における計算書類の公開につきましては、これもやはり負担になるというようなことで一部で反対がございます。  それから、会計監査人による監査の範囲を拡張する、または会計調査人による調査の制度を設けるということにつきまして、これまた会社の運営上非常に負担になるというような声も強うございます。  それともう一つ、会計調査人による調査につきましては、これを担当する調査人の資格の問題と関連いたしまして、公認会計士協会と税理士会との間での意見の食い違いがございます。  最後に、取締役の責任の強化についてでございますが、これもやはり一部では事実上の無過失責任を認めるものであるというような理由で反対がなされている向きもございます。しかしこれは、先ほどちょっと申し上げましたように、ほかの措置、登記所における公開とかあるいは会計調査人による調査とかが行われない会社についての取締役の責任を定めたものでございますから、いわば代替措置というべきものでございますので、これについては割合受け入れる意向が強いように見受けられます。
  284. 坂上富男

    ○坂上委員 きょうは私は商法改正問題について初めての発言でありまするので、私の意見は述べないで、各界から私も意見をいろいろ聴取しておるところでございまして、局長さんの方からの御答弁はまあまあほんの概略的な御答弁というふうにお聞きをしておるわけでございます。  私がなるほどなと思って聞いている中で、こういうことがあるわけであります。例えば計算諸表の公開についてでございます。これは、法務局にこれを届け出るというようなことが考えられておるそうでございますが、どうも企業秘密が漏れるおそれがあるんじゃなかろうか、あるいは得意先から単価の引き下げの要請に利用されるのでなかろうか、あるいは世間の風評により信用が不安となり経営の立ち直りの機会を失うのじゃなかろうか、あるいは親会社による子会社の経営支配が強化されるんじゃなかろうか、それから中小企業は新たな手続のために事務的、経済的負担を強制されるのではなかろうか、こういうようなことが私らのところに実は大変寄せられてきておるわけであります。  私も実際の商売に関与してみますると、確かにそういう問題があるわけであります。特に建設の問題は元請と下請があって、大変元請が強くて下請は本当に労賃をやっといただくという程度で、大変な圧迫といいましょうか、しわ寄せが下請に来ておる。ましてや、今言ったようなものを公開するということになりますと大変な影響が来るんじゃなかろうか、こういうものは実務の部門からもうちょっとひとつ調査をしていただいて、見ていただいて十分な御検討をいただかなければならないのではなかろうか、こう思うわけでございます。  それから、例えば会計調査人による調査でございますが、これは例えば税理士さんがこの調査をやる資格を与えられるということは、それ自体は悪いことではありません。しかしまた一面、大変責任を問われるわけでございます。でありまするから、果たしてどちらがいいか。ただ仕事がふえるだけではなかなか済まされないような問題も含んでいるのではなかろうかとも私は思っておるわけでありまして、これに対する私の結論はまだ出ておりません。  それからまた取締役の責任についてでありますが、公開しない会社、監査人の監査を受けない会社、この取締役だけ無過失的な責任を問うということは果たしていかがなんだろうか。確かに、片っ端から会社をつくってはつぶし、つくってはつぶし、転々として逃れている会社がないわけではありません。しかし、それは現行法の中である程度の救済をされているのも判例上確立をしてきておるところでございます。  そんなようなことから見てみますると、私はもっと法制審において、今言われたような声は相当大きい、こう私は聞いておるわけであります。でありますから、法務省に要請をいたしておきまするけれども、特にこの五点の問題はさらに広くひとつ意見を聴取していただきまして、御検討くださいまして、本当に日本の経済の発展や各中小企業がよりよい経営のできるような商法にしていただきたいな、こんなふうに思っておるわけでございまするが、どうぞその要望をひとつ受け入れていただきますよう要請をしておきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  285. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 商法、会社法、特に有限責任の会社につきましては、商法の関心事のうちの最も大きなものは会社債権者の保護をどう図るかということにあると言えようかと思います。  今先生が挙げられました事柄のうち、例えば登記所における計算書類の公開でございますけれども、株式会社は本来会社の計算関係を公に公示し公告をしておくべきものでございまして、秘密のベールの中に包んでおいて、倒産をしたら、いや迷惑をかけた済まぬではどうも済まないのではないかというふうに考えられるわけでございます。従来の制度を中小会社にふさわしいものに改めて、新聞あるいは官報による公告にかえるものとして登記所における公開というようなことを考案しているわけでございます。法制審議会の商法部会におきましては、中小企業の代表でございますとかあるいはその業界の代表の方も入っていただいて、いろいろ御意見を伺った上でその最大公約数的なところを集約して審議を取りまとめられるように取ら計らっているものと承知をしているところでございますが、ただいまの御意見をよく拝聴をさせていただいたところでございます。
  286. 坂上富男

    ○坂上委員 終わります。ありがとうございました。
  287. 戸沢政方

  288. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、中国残留日本人孤児並びに帰国者に関係いたしますところの就籍問題について、幾つかの点をお尋ねをいたします。  まず最初に、厚生省の新飯田庶務課長さんいらっしゃっていますか。先般新聞にも大きく取り上げられましたが、あと二年間で残留孤児の調査を打ち切るがごときの報道がなされておりまして、それに関係して訪中されたのだと思いますが、どういうお話し合いを中国側となされてこられたのか、お答えをいただきたいと思います。
  289. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  今回の協議におきましては、孤児問題の全般につきまして友好的な雰囲気の中で幅広く意見交換を行いました。その際、お尋ねの今後の訪日調査に関してでございますが、昭和六十三年度につきましては百名規模の集団訪日調査を実施したい旨、また昭和六十四年度につきましては、昭和六十三年度に百名の訪日調査を行ってもなおまとまった数の未訪日孤児がいることを前提としまして、引き続き集団訪日調査を行いたいという協力を要請いたしました。これに対しまして、中国側から引き続き協力する旨の回答をいただいたところでございます。
  290. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 現在厚生省が把握をされております中国残留孤児の数が一体どのくらいになっておるのかわかりませんが、さらにその後に訪日調査を希望する者がある一定程度出た場合には、引き続いて従来と同じ方式で訪日調査を実施する考えがありますか、どうですか。いかがです。
  291. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたとおり、まとまった数の未訪日孤児がいる限りは、私どもは、最後の一人まで調査をするという方針のもとに、まとまった形での訪日調査を実施したいというふうに考えております。
  292. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 次に、基本的な問題についてお尋ねをいたします。  つまり、残留孤児または残留婦人、主として婦人なんでありますが、彼らはすべて出生時より日本国籍を有して、任意にこれを放棄した事実はないと私は思っているわけであります。したがいまして、現在においても日本国籍を有し、日本国憲法上の国民であると理解をするわけでありますが、御見解を承ります。これは法務省ですか。
  293. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 自己の志望によりまして中国の国籍を取得していない限りは、日本の国籍を保留しているというふうに言うことができます。
  294. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 その問題につきましては、後ほど具体的な問題を提起してお答えをいただきたいと考えております。  次に、戦時死亡宣告がありますが、戦時死亡宣告をした根拠は何でしょうか。
  295. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  戦時死亡宣告につきましては、未帰還者に関する特別措置法第二条に定めがございます。同条により、未帰還者に係る民法上の失踪宣告の請求は、厚生大臣も行うことができることとなっておりまして、この請求に基づく失踪宣告が戦時死亡宣告でございます。
  296. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 残留孤児が死亡宣告をされたという事例はありますか、ありませんか。
  297. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  中国残留日本人孤児で身元が確認された千百七十五名のうち戦時死亡宣告により戸籍が抹消されていた者は、昭和六十三年三月十二日現在で二百五十名でございます。  なお、二百五十名のうち百二十九名が既に戸籍を回復しているものと承知をしております。
  298. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 関連をいたしまして、判明、未判明にかかわらず、残留孤児であるというその手続、認定というのはどのようにして行われますか。
  299. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  中国残留孤児としての確認については、二通りございます。  まず、孤児本人から直接厚生省等に肉親調査の依頼があり、厚生省での調査によって中国残留孤児とした者を中国政府に通報いたしまして、中国政府の調査、確認を経て名簿を交換する場合が一つでございます。もう一つは、中国政府の調査におきまして中国残留孤児とされた者を日本側に通報してもらいまして、厚生省の身元確認を経て名簿を交換する場合がございます。  なお、いずれの場合にしましても、最終的には日中双方で名簿を確認しまして中国残留孤児として確認しているところでございます。
  300. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 具体的にお尋ねいたします。  中国側、日本側、今お答えがあったとおりだと思いますけれども、双方が日本人残留孤児であると認定した場合に、本人並びに家族が日本に永住または一時帰国の申し出、申請を行って、中国政府がこれを許可した後に在中国日本大使館がビザを発給するという手続になると思いますが、いかがですか。これは所管は外務省になりますか。だけれども、帰国問題については厚生省だって携わっているわけでしょう。知っている範囲で答えてください。
  301. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 先生今おっしゃいましたように私どもの所管ではございませんけれども先生がおっしゃったとおりではないかと承知しております。
  302. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 日本側がこれらの人々を受け入れる場合、永住あるいは一時帰国を問わず日本人残留孤児とその家族、こういうことで受け入れていますね、そのとおり間違いありませんか。
  303. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  日中両国政府において日本人孤児と確認された者につきましては、国籍の状況にかかわらず、引き揚げ援護の一環としまして帰国旅費の支給等の援護を行っているところでございます。
  304. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、就籍の手続問題についてお尋ねをいたします。  残留孤児が帰国をした場合の就籍手続はどういうふうになりますか。これは法務省ですか。
  305. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 残留孤児につきましては、身元が判明している場合とか判明していない場合、あるいは日本に戸籍があって抹消されている場合とか全然戸籍が存在しない場合など、いろいろございます。ただいま就籍というお話がございましたので、これは日本に戸籍がない場合のことを意味されているものと考えます。  その場合には、その孤児は家庭裁判所の許可を得まして市町村に就籍の届け出をする、こういうことに相なるわけでございます。
  306. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 就籍問題につきましては、多くの意見あるいは問題提起がなされていることを私はよく承知しているつもりであります。  ところで、その多くの場合は残留孤児の皆さんが戦争終結時点で極めて幼少である、そして、当時の状況についての記憶というのは全くないという年齢の方もいらっしゃるはずであります。それだけに、日本国籍を立証する手段が見出せない。あるいは、中国における養父母等関係者の多数も、御承知のとおり既に老齢に入っておりますし、または死亡しておるという状況もあるわけであります。立証資料の個人的立場における入手というのは極めて困難であるという訴えがかなりあるわけでありますが、その点についてどう判断をされますか。正確な立証は不可能に近い、このように私は考えるわけでありますけれども、御見解を承ります。
  307. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 先生も御承知のように、家庭裁判所におきまして就籍を許可するためには申立人が日本国籍を有することを認定しなければならないわけでございますが、中国残留孤児出生当時の国籍法によりますと、その要件といたしまして申立人の出生時、その法律上の父が日本人であるか、あるいは父が知れないときは母が日本人であることを認定しなければならない、こういうことになっておるわけでございます。その要件事実の認定のために、家庭裁判所といたしましてもできる限りの証拠資料の収集に努めておるわけでございます。  これまで就籍許可をいたしました審判例等を見ますと、どういう証拠をもとに認定しておるかと申しますと、中国の公的機関が発給している孤児証明書あるいは孤児名簿や厚生省保管の孤児関係資料、例えば孤児名簿であるとか孤児調査票などでありますが、こういったもののほか、申立人の養父母であるとかその他参考人の供述書、書簡、または申立人や参考人に対する家庭裁判所調査官の面接調査の結果をまとめた調査報告書、さらには家事審判官による審問の結果、こういったものを総合して認定している例が多く見られるように思われるわけでございます。しかし、何分にいたしましても、中国残留孤児のうち特に身元の判明しない者につきましては、日本人であることを直接推知させるような手がかりとなる事実はなかなか見当たりませんものですから、多くの間接事実を積み重ねて総合的に日本人であるかどうかと認定をするわけでございます。  私どもとしてはどういう事情を重視して認定しているかと申しますと、例えば申立人が養父母に引き取られたいきさつであるとか、あるいは引き取られた当時の申立人または実父母の言葉であるとか服装であるとか身体的特徴、そういった父母が日本人であることを推知させるような事情であるとか、さらには養父母に引き取られた後に近隣や学校、職場等において日本人として扱われてきた事情、申立人が日本人であることと結びつくような諸事情を情況証拠として認定している、これが実情でございます。
  308. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 問題は、今の答えの中身だと私は思います。つまり、冒頭私がお尋ねいたしましたのは、中国政府が残留日本人孤児であるという認定をして出国をさせる、そして先ほどのお答えのとおり、名簿の交換や照合もあるだろうと思います。そして日本の政府が、明らかに日本人である、孤児であるという認定をして入国を認めるわけでしょう。ところが孤児証明の問題については、後ほど時間があれば触れますけれども、例えば黒竜江省で養父母にもらわれていった、あるいは拾われた、そういう事例がたくさんありますね。ところが、ある一定の年齢になれば雲南省に行ってしまった、そういう場合については、あなたが今お答えになったような資料は全然集められない。こういったことがかなりあるのですよ。だから、中国政府が日本人孤児であるという認定をして出国を許可し、そして日本人孤児であるという認定に基づいて入国を許可するということであれば、明らかに日本人じゃありませんか。それで認定できないのですか。
  309. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 就籍許可審判も、これは実は家庭裁判所で行う裁判の一つにほかならないわけでございますが、裁判である以上、裁判官が就籍の要件に該当する事実というものを認定して判断せざるを得ないということになるわけでございます。そういうことで、行政レベルで日本人として扱ったからということでそれで直ちに裁判所の方において日本人であると認定するわけにはいかない、この点は御理解いただきたいと思うのです。  ただ、一般論を申しますと、日中両国政府が日本人として扱っているということは、孤児が日本人であることを推測させる有力な手がかりになるし、あるいは有力な証拠になると申してもいいと思いますが、そういう扱いでこの裁判は行われている、かように考えております。
  310. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、先ほどお答えの中に、例えば孤児証明等があればというお話がございましたけれども、これはちょっと厚生省にお尋ねいたします。孤児証明書というのは現在中国側が発行していますか、していませんか。
  311. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  厚生省が訪日調査の対象としている中国残留日本人孤児は、先ほど申し上げましたように、日中両国政府間において厳密な調査を行い日本人孤児であることを確認しているものでございます。したがいまして、訪日調査に参加したこと自体が、中国がその者を日本人孤児であるということを示したと考えることができるかと思います。厚生省としましては、このことを参考としまして就籍が促進されるよう最高裁に協力を要請するとともに、個別の審判案件に必要な資料を提供しているところでございます。  中国政府に孤児証明にかわる文書の提供を求めることにつきましては、中国政府は、訪日調査に参加していることが日本人孤児であることを示しているという考え方に立っておりますので、改めて証明文書に類するものを求めることは難しいというふうに考えております。
  312. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 三権分立ですから、それぞれの役割があると思います。ただ私は、今までのお答えを聞いていて行政の一体化がなされておらないというふうに認識せざるを得ないのであります。  重ねてお尋ねいたしますが、例えば孤児証明書があれば就籍の手続に非常に便利であるし認定しやすい、こういうことをお答えになりましたが、確認してよろしゅうございますか。
  313. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 孤児名簿に載っている、あるいは孤児証明書が発給されている、そういうことで直ちに裁判所日本人と認定するわけではございませんが、有力な証拠であることは間違いございません。
  314. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 有力な証拠であれば、本人にとりましては非常に力強いものだろうというふうに理解をするわけでありますが、これは厚生省になりますか、就籍を意識した場合に孤児証明書を中国側が発行すれば非常に手続がスムーズであるということが理解されました。そうだとすれば、つまり出国の条件として孤児証明書を発行してもらいたいという要請を中国政府に今日まで行ったことがありますか、ありませんか。
  315. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたとおり、中国政府に孤児証明にかわる文書の提供を求めることは難しいというふうに考えております。私ども厚生省としましては、訪日調査の結果身元が判明しなかった孤児が日本に永住帰国し、定着、自立していく上で戸籍はぜひ必要なものと考えております。帰国に当たって、通常就籍する上で必要な資料、例えば戸口登記簿の写しあるいは日本人の子であることを明らかにする書類を持ち帰るように、訪日調査の際及び帰国案内を送付いたします場合に孤児に周知を図っております。また、永住帰国までに入手できなかった資料につきましては、後日入手可能なよう連絡できる人を依頼して帰国するよう指導しているところでございます。先ほど申し上げましたように、家庭裁判所における就籍手続に当たり裁判所の求めがあった場合には、訪日調査の際に私どもが聞き取りました資料の提供など積極的な協力を行っているところでございます。
  316. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは次の問題に入ります。  孤児及び残留者、主に残留婦人になるかと思いますが、就籍に必要な費用は一体どのぐらいかかるのでしょうか。
  317. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 就籍許可申し立てに際しての申し立て手数料は六百円でございます。それとあと書類の送達等に要する郵便切手の予納が必要になりますが、それも大体千円程度でございます。
  318. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 法務省、厚生省どちらでも結構でありますが、現在まで帰ってきた人数はわかるわけですね。そうすると、今日まで総額大体幾らくらいになるのですか。手続を行った人、行わない人があるでしょうから、行った人を対象とした場合に、大体総額幾らくらいになるでしょうか。今でなくても結構ですから、後でもしそういう数字があったらお知らせください。  それで、関連してお尋ねいたしますけれども、どうも私は不思議でならないのでありますが、いわば日本の国策によって中国に渡った方、特に開拓団関係に入植された方が大半だと思っているわけであります。そして、戦争の犠牲によって大変な苦労を強いられてようやく祖国日本に帰ってきたという方がたくさんいらっしゃいますね。そういう方が就籍する場合は当然国の責任で行うべきだ。かつて私は、外務委員会で当時の安倍晋太郎外務大臣にその種の問題について質問したことがございます。そのときの外務大臣は、明らかに日本の侵略戦争が行いましたその責任であるということをお認めになってお答えをいただきました。そうだとすれば、予算全体から見ればわずかな金だと思います、そうしたら当然国の責任でこの点を負担すべきだと私は考えているわけでありますが、まずは予算要求した事実があるのですかないのですか、答えてください。
  319. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、就籍は身元未判明孤児の定着、自立におきまして極めて大切な問題であるというふうに考えておりまして、法務省最高裁判所事務総局の全面的な協力のもとに、現行の戸籍制度の中で孤児に経済的な負担をかけずに早期に戸籍を取得することができる現実的な方法を講じているところでございます。  また、費用の面につきましては、従来から身元未判明孤児の就籍事案の多くを扱ってきました中国残留孤児の国籍取得を支援する会がございまして、この会が就籍を希望する身元未判明孤児につきまして無償で弁護士を付して就籍を支援してきております。こうした活動を通じまして、私ども厚生省といたしましては、こうした活動の支援ということを側面から行っているところでございます。
  320. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 端的に答えてください。予算要求をしたことがあるのかないのか、聞いているのですよ。あるとかないとか答えなさい。
  321. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、この問題は私どもの所管外になろうかと思いますけれども、先ほど申し上げたようなことで、国籍取得を支援する会の活動助成ということで積極的な協力をしております。予算措置は私ども特にございません。
  322. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 この際ですから、私は要望しておきます。繰り返しません。先ほど申し上げましたとおり、日本政府の戦争責任の一環としてこれらの点については国が責任を持って費用を負担すべきだ、こういうふうに私は考えますので、これから十分御検討いただきたいと思います。  さて、時間もありません。法務省お尋ねいたしますが、現在までの就籍申し立ての件数、許可、不許可の件数がおわかりでしたら明らかにしていただきたいと思います。
  323. 早川義郎

    早川最高裁判所長官代理者 昭和五十七年から昭和六十二年までの件数を申し上げますが、合計で申し立て件数は四百四十八件でございます。  ついでに処理結果まで申し上げたいと思いますが、同じ期間の既済件数は三百十八件、未済が百三十件、こういう状況になっております。この未済のほとんどが昭和六十二年度に受理したものでございます。
  324. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間が来ましたからこれで終わらなければなりませんが、質問通告に入っていない部分で恐縮でありますけれども、もしおわかりでしたらお答えいただきたいと思います。  実は私の選挙区福島県郡山でありますが、加藤清さんという中国から帰国をされた方がいらっしゃいます。この方は昭和十七年、七歳のときに日本の国策によって家族七人で中国黒竜江省の開拓地に入植いたしまして、そしてそこで終戦であります。両親は死亡いたしました。兄弟はばらばらになって中国人にもらわれて、学校にも入れず労働者として苦しい毎日を過ごしたと本人は訴えています。波は福島県郡山出身であることを覚えていたことから、中国政府のパスポートを取得いたしまして三十三年ぶりに帰国をいたしました。郡山市の戸籍は抹消されていなかったのであります。頑張ったかいがあったと本人は非常に喜びました。昭和五十五年七月に帰国してから五年間は、日本国籍であるので外国人登録の必要はないと市役所から言われたという事実があります。  ところがあるとき、法務省の方だと思いますが、この方の取り調べを受けまして、次のように話されました。つまり、あなたは中国で御苦労なされましたね、中国で生活するには中国籍を取得しなければ生活は容易でなかったでしょう、それで中国籍を取得されたのでしょう、こう言ったのだそうであります。本人は余り日本語をその当時解せない状況であったそうでありますが、はいと答えました。はいと答えたことによって日本国籍が剥奪されてしまったという事実だそうであります。御存じかどうかわかりませんけれども、まさに誘導尋問であるし、そして血も涙もない一つやり方ではなかったかと私は思うのでありますが、この事実についての見解をお尋ねいたします。
  325. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 今お話のございましたような件につきましては、私どもの方は特に把握はいたしておりません。先ほども申し上げましたように、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合には日本の国籍を失うというのが国籍法の定めでございますので、その要件に当たるのかどうかという事実の認定の問題に帰着しようかと思います。
  326. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 歴代の法務大臣に対して要請を何回か文書で行った事実があります。しかし、一向に前進いたしません。きょうはこれで終わりますからこれ以上お聞きすることはできませんが、委員会があるなしにかかわらず、さらにこの問題の解決にお骨折りをいただきたいと思いますので、御了解ください。  時間が参りましたので、終わります。
  327. 戸沢政方

    戸沢委員長 山田英介君。     〔委員長退席、今枝委員長代理着席〕
  328. 山田英介

    ○山田委員 私はまず、テロ、ゲリラ防止対策についてお伺いをいたします。  最初に、さる二十一日、日比谷のビル前と二番町の二カ所で、ほぼ同時に爆発事件が起きました。幸いけが人などはなかったわけでございますが、伝えられるところによりますと、爆発物はかなり高性能で強力であり、また仕掛けられた場所からいたしまして無差別テロの様相さえ呈している、このように言われております。  そこでまず、この犯人像と犯行の目的などにつき御当局はどう判断をなされておられますか、お伺いをいたします。
  329. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  ただいま委員お尋ね事件につきましては、一昨日、三月二十一日でございますけれども、午後七時十七分どろ、都内千代田区内に所在いたしますビルの前に駐車しておりました原付バイクに爆発物が仕掛けられまして、このビルの一階にございます航空会社のウインドーガラスあるいは付近駐車場の車両が破損いたしました。さらに、これから約十八分後、午後七時三十六分ごろ、同じ千代田区内の二番町に所在いたします有料駐車場と東側隣家の境界ブロック塀付近に爆発物が仕掛けられまして、隣家の玄関ドア等が破損するという被害が生じた事件でございます。  これら事件を認知いたしました警視庁の方におきましては、所要の初動措置を講ずるとともに、捜査本部を設置いたしまして、地取り捜査あるいは遺留品捜査等鋭意捜査を推進中でございます。  三月二十七日に極左暴力集団を中心といたしまして成田で闘争を計画しておりまして、これのちょうど一週間前であるということ等から、こうした闘争に向けまして極左暴力集団がこれら爆弾事件を敢行したものではないかと推測しております。
  330. 山田英介

    ○山田委員 爆弾ゲリラの無差別テロ化ということになれば、事態は極めて深刻でございます。捜査当局の犯人検挙に国民は非常に強い期待を抱いているわけでございまして、今後どういう御決意で対処なさるのか、一言お伺いをいたします。
  331. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  こうした凶悪な極左暴力集団の行動に対しましては、私ども警察といたしましては、捜査活動の強化でありますとかあるいは管内実態把握の徹底などを通じまして極左対策を鋭意推進中でございますけれども、今後とも極左暴力集団によりますこの種テロ、ゲリラの根絶、とりわけこういった爆弾事件の根絶に向けまして最大の努力を傾注いたしまして、治安維持の万全を期してまいりたいと考えております。
  332. 山田英介

    ○山田委員 次に、一連の朝日新聞社襲撃事件、それから先日発覚いたしました中曽根前首相への脅迫事件、ともに赤報隊というグループ名を名のっておりますが、この赤報隊の一連の捜査につきまして状況を簡潔にお願いできればと存じます。
  333. 廣瀬権

    ○廣瀬説明員 お答え申し上げます。  一連の朝日新聞襲撃事件につきましては、それぞれ関係都県警察に警察本部長を長といたします特別捜査本部を設置いたしております。また、警察庁指定事件といたしまして、全国警察を挙げて捜査を推進中のものでございます。  現在推進しております主な捜査事項を申し上げますと、発生現場を中心とした地取り、聞き込み捜査、犯行に使用した散弾銃及び実包の捜査、犯行声明文作成に使用したワープロの捜査、静岡事件における遺留品の捜査、それと赤報隊の捜査等をいたしておるわけでございます。早期に犯人を検挙すべく、全力を挙げて捜査をいたしておるところでございます。  また、高崎市所在の中曽根前総理の事務所に赤報隊一同名により脅迫状が郵送されました事件につきましても、一連の朝日新聞襲撃事件と関連がある事件と見て現在鋭意捜査中でございます。
  334. 山田英介

    ○山田委員 この赤報隊の犯人像、それから検挙の見通しがあるのかどうか、これをひとつ御答弁いただければと思います。
  335. 廣瀬権

    ○廣瀬説明員 お答え申し上げます。  現在、関係都道府県におきまして鋭意捜査をいたしておりますが、残念ながら今のところ有力な線は出ておらない状況でございます。しかしながら、今まで先ほど申しましたいろいろな遺留品がございますし、また使われた散弾銃、実包等もございますので、これらの証拠品、現場に遺留された物からの捜査、それから各種の情報捜査に鋭意努めまして、一日も早く検挙する所存でございます。
  336. 山田英介

    ○山田委員 関連をいたしまして、福岡市の中国総領事館に対する銃撃事件がございました。三月二十一日に、これはホタル・2という非公然地下組織と言われておりますが、このホタル・2が、次回は外国政府の要人に目標を定めるという犯行の予告声明をある通信社に寄せた、こういうことでございます。前総理に対する脅迫状といい、あるいはまたこのホタル・2と名のるグループによる、次には外国政府の要人をねらうというような大変重大な動きといいますか、そういう様相が出てきているわけでございます。内外の要人に対する警護につきましては新たな対策が必要なのではないか、あるいは新たな対応が必要なのではないかと私には思われますが、この点につきましてできれば具体的に御答弁をいただければと存じます。
  337. 田口朔

    ○田口説明員 要人警護の対応策についてお答え申し上げます。  警護は、現在、内閣総理大臣、国賓その他その身辺に危害が及ぶことが国の公安に係るおそれがある人物に対しまして、その地位、身分、そのときどきの治安情勢、それから身辺に対する危険の程度、その他諸般の情勢を総合的に判断いたしまして、現実に即して行っているわけでございます。  このたび中曽根前首相に対する脅迫文の送付、ただいま御指摘の中国領事館に対する事件というものがございましたが、私どもは、現在、これを一つの大きな情勢がある、このようにとらえまして、一つには銃撃あるいは爆発物というものにも耐えられるような警護の体制それから警護の手段、方法、技術、装備、資機材、こういうものをそろえて、その厳しい情勢に対応した的確な警護を実施して、身辺の安全を期してまいる所存でございます。ただ、具体的にと申されましたが、それぞれの手段方法それから体制等につきましては、身辺の絶対安全を期するという意味で問題もございますので、差し控えさせていただきますけれども、いずれにしろ、国内外要人の警護につきましては、情勢の推移に十分に注意しながら、情勢に対応した的確な警戒、警護を行って身辺の安全を期する決意でございます。
  338. 山田英介

    ○山田委員 ことしはソウルのオリンピックがございます。それで、日本経由でソウルに各国の選手団あるいは各国の政府等要人あるいは一般の旅客の皆さん、大変大勢の皆さんが東京、大阪、福岡等を経由してソウルと日本の間を往来するということが予測されるわけでございますが、まず出入国の管理を厳格化する、法務省におかれてはそういう対処方針を打ち出されておりますけれども、このポイントにつきまして御説明をいただきたいと存じます。
  339. 大久保基

    ○大久保説明員 お答えいたします。  ソウル五輪の開催に関連いたしました出入国管理上の対応といたしましては、第一に、成田空港等の主要空港に入国審査官を応援派遣いたしまして、テロ等の犯人として手配されている者を初めといたしまして、テロ関係者等の発見を迅速かつ確実に行うための体制をとることとしております。第二に、現在、成田、大阪、羽田各空港で行っております要注意人物等の電算機によるチェックシステムを福岡空港にも導入することを検討しております。さらに第三に、関係省庁等からテロ関係者等の情報の入手のための連絡に遺憾なきを期するとともに、全国の空海港の出張所等において不審者の発見に努めることにしております。  なお、この関連で申させていただきますと、本年の一月に官房長官の談話で発表されました対北朝鮮措置、すなわち北朝鮮人の入国、在留審査の厳格化、北朝鮮船舶等の乗員の特例上陸の規制強化、こういうものについてもソウル五輪の時期まで引き続き継続していくことになっていることを申し添えます。
  340. 山田英介

    ○山田委員 今御答弁にもありましたけれども、非常に往来が激しくなるのは成田、大阪、福岡あるいは関釜フェリー、このチェック体制は大変重要であると私は思います。それからICPO、これは国際刑事警察機構というのでしょうか、こちらでいわば不審者というものはリストアップされておると思いますが、その他の一般の犯罪者等も含めて、どう対処するかということは極めて重要だと私は思います。今福岡空港にもコンピューターを導入して出入国、特に入国に際しての不審者あるいは入国することが好ましくない人物等をチェックなさるということでございますが、コンピューターを導入、依存するということも必要なことでありますけれども、最終的にはやはりマンパワーで対処する、最終的な決め手というのはマンパワーであろう、そういうふうに考えていきますと、福岡空港に電算機を導入するだけでよろしいのかな。比較するという意味では決してございませんが、例えば警察庁におかれては、本年早々、四十人体制の国際捜査班というものを設置された。あるいはまた十億ほどの予算を投じて高性能のファクシミリを海空港関連施設あるいは捜査機関等千カ所を超えるそういうところに設置をして、そういう不審者等の発見あるいはテロ、ゲリラ等の未然防止ということに対して具体的に対応をされようとしている。これは一部されておる。ということになりますと、やはり問題は万全を期すということでございますが、出入国管理官あるいはまた、これは大蔵の関係になりますが、税関のそれなりの熟練をしたスタッフというものをソウル五輪以前に具体的に対応しておきませんと、間に合わないということにもなりかねません。そういう点から、特に出入国管理官と申し上げてよろしいのでしょうか、そこの部分の、ソウル五輪までの間、何カ月かということになろうかと思いますが、その辺の強化ということについては、法務省は具体的にどういうお考えをお持ちなんでしょうか。
  341. 大久保基

    ○大久保説明員 お答えいたします。  今先生が御指摘なさいました点は、非常に重要なポイントだと思います。私ども入国管理局といたしまして、入国審査官が空港、海港等での外国人の出入国の管理に当たっているわけでございますが、この数をできるだけふやしていく必要があるということについては、常々関係当局に御相談申し上げているところでございます。ただ、ただいまの厳しい行財政改革観点から、なかなか私ども考えているようにはまいりませんが、その中でも、特段、来年度におきましてはかなりの数の入国審査官を認めていただけるという方向で御検討いただいているということでございます。  ただ、先生も今おっしゃいましたとおり、成田で入国審査官として仕事をしている者が実際に役に立つのは、まさに十年の年月が必要でございます。したがいまして、ことしの九月のソウル・オリンピックまでというわけにはまいりませんけれども、いずれ将来、成田に第二PTBすなわち第二旅客ターミナルビルができますし、大阪にも新空港ができるようでございますので、それには数多くの入国審査官が必要となると思われます。したがいまして、今委員が御指摘の点を踏まえて、今後、私どもとしてもできるだけ入国審査官の充実に努力してまいりたいと思います。
  342. 山田英介

    ○山田委員 事は、盧泰愚大統領と竹下総理との、ソウル五輪に向けて日韓で協力をしてテロの防止を図っていこう、こういう極めて高度な次元における、また国と国との約束というものでもあるわけでございます。したがいまして、御答弁に特に不満はございませんけれども、やはり法務省に限られた予算しかないから人員の増強ができないということは決して言えないわけでございますから、きょうは予算委員会等の関係で法務大臣はまだ席を外しておられますけれども、どうかひとつ法務大臣にもよく申し上げていただいて、法務省としても総理大臣並びに関係閣僚、大蔵省も含めましてしっかりとした、これはソウル五輪テロ防止にかかわる措置でございますので、特段の御努力、御奮闘をお願いしなければなりません。  それから、ソウル五輪の以前に日本国内に各国の選手の練習施設が設けられるやに伺っております。スポーツでございますから、その調整とかということを考えますと、恐らく四月、五月にでも選手村が日本の国内に開設をされるということも予測できるわけでございますが、差しさわりのない範囲で結構でございますけれども、現時点において何カ国ほどの選手村といいますか、そういう練習施設が我が国国内に設置なされる見通しか。  そしてあわせまして、かつてイスラエルの選手村が襲撃された事件がございましたけれども、そういうことがソウル五輪に関連して日本国内で再び起こるというようなことは絶対にあってはならないことでございますので、その警備、警護の体制につきましてもお話しをいただければと存じます。     〔今枝委員長代理退席、委員長着席〕
  343. 太田利邦

    太田説明員 お答えいたします。  ソウル・オリンピックの開催に伴い、我が国において事前に各国選手団が合宿練習を行う予定であるということは聞いておりまして、正確な数字を押さえているわけではございませんが、現在のところ三十カ国程度ではないかというふうに聞いております。それに対する警備につきましては、ソウル・オリンピック対策の警備に関する重要なポイントと考えておりまして、今後情勢を勘案しつつ、その時点で最も必要かつ適正な警戒、警備を行ってまいる所存でございます。
  344. 山田英介

    ○山田委員 次に、昨年の十一月二十一日でございますが、日本赤軍の最高幹部の丸岡修が逮捕されました。そしてその後この丸岡修の奪還を示唆する声明文といいますか、そのような日本赤軍の意思が表示されて今日に至っております。幾つかの外国の例では大使館の占拠とか要人の誘拐、あるいはその国に駐在する商社員、若王子さんの事件もありましたけれども、そういう誘拐などというものは日常茶飯事的に発生をしておるというふうにも言えるかと思います。  そこで、まず丸岡修奪還のための例えば大使館占拠、政府要人の誘拐、あるいはまた在外日本人商社員等の誘拐などが発生をした場合に、当局としてはどのような対処をなさるのか、伺いたいと思います。
  345. 飯田稔

    ○飯田説明員 お答えいたします。  我が国は、理由のいかんを問わずいかなる形の国際テロに対しましても断固反対いたして、国際社会全体の問題として国際テロ防止のための国際協力を積極的に推進していくという方針でございます。将来不幸にして御指摘のようなテロ事件が発生した場合には、我が国といたしましては、人質の安全救出のため最大限の努力を払うことはもとよりでございますが、法秩序の維持のために、犯人の不法な要求に対しましては断固たる態度をもって臨むという決意に基づきまして、解決のための努力を払っていきたい考えでございます。具体的事件の処理に当たりましては、このような基本的立場に基づきまして、個々の事件状況に応じてあらゆる可能な方策を講じまして人質の救出、犯人逮捕のために努力をしてまいりたいと考えております。
  346. 山田英介

    ○山田委員 仮に日本赤軍の丸岡修奪還のためのハイジャックとか、先ほど申し上げました大使館占拠、あるいは大使、公使その他政府要人あるいはまた在外の商社員等の誘拐、こういうようなものが万が一発生した場合には、今断固たる措置をとる、こういう御答弁でございますが、超法規的措置、かつてダッカ事件において見られましたような超法規的措置をとるのかとらないのか、この辺の御見解をお伺いをいたします。
  347. 飯田稔

    ○飯田説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問に対しましては、ただいま私が申し上げた答弁に尽きるかと思います。申すまでもございませんが、昭和五十二年九月のダッカ事件の場合は政府の最高首脳において超法規的措置がとられたということを付言いたします。
  348. 山田英介

    ○山田委員 後ほど法務大臣もお見えになるかと思いますので、この点については改めて伺いたいと思います。  それで、ハイジャックなどの国家的な危機といいますか、そういう重大事件が発生をいたしましたときに、この危機に対する管理はどこでだれがなさるのか。それは各関係省庁における担当部局がそれぞれ研究をなされているところかと存じますけれども、かつて危機管理担当大臣というのが置かれた記憶がございます。今どういうことになっているのか。そして内閣安全保障室というものが存在しておるかと存じますが、こちらの機能はこれらの危機管理につきましてはどのようなことになっておるのでしょうか。
  349. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、一昨年七月一日に、国防会議を廃止いたしまして、安全保障会議設置法というのが成立をいたしました。その際、四十年ぶりに内閣の調整機能強化のための制度改革が行われまして、内閣安全保障室が国の安全にかかわる重大緊急事態に対処する新たな機構として生まれたわけでございます。ハイジャック、テロ、いろいろ程度の問題がございまして、例えば単独犯による金銭目的の犯行等の場合は、従来の縦割りの責任分担におきまして警察、あるいは海外居留民保護ということで外務省とか、それぞれの緊急事態対処要領及びその経験をもって処理するわけでございますが、事が大変重大になってきた場合には、内閣安全保障室がこの事件を調整役として担当する、その場合には調整役は内閣官房長官と相なります。そしてさらに、その問題が真に国の安全にかかわるような重大緊急事態である、政治的な重大な要求を出してきた、高度の政治的判断を要する、こういうことになりました場合には、この内閣安全保障室が事務局をいたしております安全保障会議を開催いたしまして、総理の諮問を受けてその安全保障会議においてこの対策を審議する、こういうシステムに相なっております。
  350. 山田英介

    ○山田委員 超法規的措置をとるかとらないかというような検討も、この内閣安全保障室、官房長官を中心にいたしました、責任者といたしましたこちらで検討がなされるということになるのでしょうか。
  351. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生指摘の超実定法的な措置というものについては、二つあろうかと思います。犯人の要求する身の代金を支払うのか支払わないのか、あるいは収監されておる服役中の刑事犯を釈放するのかしないのか、こういうことに相なろうかと思いますが、この問題は御承知のように法務省の所管でございますので、後ほど法務省の方から御答弁いただくのが妥当であろうかと存じますが、内閣安全保障室は、そういう段階になりますと恐らく高度の政治的な判断を要する問題に相なりまするので、内閣官房長官を長とするハイジャック対策本部をまず開いて、さらに事が重大であるということになれば安全保障会議の招集を発議して、そして総理の諮問を受けて関係大臣の御審議をいただく、こういうことに相なろうかと思います。その際、先ほど外務省飯田領事一課長から御説明がございましたように、ハイジャック等人質を盾とするような非人道的なテロ行為に対する基本的な閣議決定なり方針がございまして、人質の安全を十分に考慮しつつも、不当な要求には断固これを排除していく、こういう基本姿勢を貫きつつ諸般の情勢を勘案してその御審議をいただく、この事務方を私ども相務めることに相なろうかと存じます。
  352. 山田英介

    ○山田委員 それでは次に、パスポートの関連で一、二お伺いしたいと思います。  読売新聞の昨年の十二月だったと思いますが、シリーズ物で「黒いパスポート」という連載記事がございました。これを読みますと、いかに世界じゅうに偽造、変造あるいは盗難のパスポートが多いかということがよく理解できるわけでございますが、丸岡修の場合には伊良波秀男という男、この伊良波秀男という協力者を得ていともたやすくパスポートを取得をしている。それから、具体的な事例があったのかどうか私自身は定かではありませんけれども、パスポート取得のための手続の過程で、例えばいわゆる他人に成り済ましてみずからがパスポートを不正に取得をしようと決意をすれば、手続、システムの盲点をついて取得ができるというようなことも大変危惧をされるわけでございます。  それで、きょうは時間の関係もございますので、私は間違っていたら逆に御指摘いただきたいと思うのですけれども、まず顔写真二枚、縦横五センチ、それから身分を証明する健康保険証の写し、これは写真が張ってありません。それから戸籍抄本、住民票、それにいわゆるパスポート取得申請書類一式、これらが申請をされて、それで担当官によって審査される。その場合には、写真だけはその犯行を企てようとする者の写真であり、他はすべて第三者ということで、それを何らかの方法で取得をして申請をする。そうなりますと、審査の過程においてチェックができないのではないか。そのまま審査が終わりましたからということでパスポートを交付できますよという趣旨の郵便物が、実は第三者、全然そのことについて何も知らない第三者の自宅に郵送される。大体いつごろに郵送されてくるかなということを念頭に置いて、物陰から例えば郵便ポストのところをじっと注視をしている。それで郵便配達人が持ってきます。御苦労さまと言って本人に成り済まして受け取る。それを持ってパスポートを交付していただく場所に行くとすれば、これは協力者がいなくてもパスポートを不法に取得する余地があるのではないかというふうに思えてなりません。このことを踏まえて何らかの改善策というものが必要なのではないだろうか、かように存じますが、いかがでしょうか。
  353. 伊藤庄亮

    伊藤(庄)説明員 お答え申し上げます。  旅券の申請、それに交付に至る手続につきましては、おおよそただいま先生が御指摘いただいたとおりでございます。私ども、旅券の不正取得の防止の重要性というものは十分認識して種々の努力をしているわけでございますが、ただいま日本の制度、つまり日本におきましては、公的機関が発行する写真が貼付された身分証明書制度というものは存在していないということが第一点。第二点に、現在の我が国の制度から申しますと、何らかの形で第三者が協力すれば比較的簡単に他人名義の戸籍謄本ないし戸籍抄本もしくは住民票といったものは入手し得る状況にある。この二つの点から、私どもも常々不正取得の防止に努力しているわけでございますが、現在のところ旅券発給手続上一〇〇%確実という形でもって身元を確認するという手だてが実際上存在していないというのが現実でございます。  ただ、我々も、先ほどから先生指摘のとおりの不正取得防止、旅券の不正使用の防止というために今後ともより一層確実な身元の確認の方法というものを確立すべく、現在努力中でございます。
  354. 山田英介

    ○山田委員 もう一つ議論したいテーマがございますので、最後に、テロ、ゲリラ関連では一問だけお伺いしたいと思います。  日本への出入国の場合は、出国に対しての安全、セーフティーチェックは非常に厳格であると私は思います。入国についてはさほどではない。これはきっと、出国をして航空機などハイジャックあるいは爆弾テロみたいなものがあってはならないというようなことで厳しくする。逆に入国の場合にはさほど厳格でなくても、日本は島国ですから簡単には犯人は逃げられない、逃亡できない。それは、検挙するあるいは捜し出すことについては比較的容易であるというような考え方があるいはあるのかもしれないと思います。逆に、東南アジアの例えばマニラ空港であるとかあるいはバンコクであるとか、そういう東南アジアの国々の出入国管理というのは、入国については非常に厳格であるけれども、出国についてはかなり甘いチェックであるというふうに言われております。これもやはり東南アジアの地理的な事情にもよるのでしょう。あるいは国内の治安問題。日本ほど治安がよくございませんというような事情の中で、テロリストなどあるいは入国が好ましくない人物などを簡単に入国させてしまって治安を撹乱されるというようなことを極めて重大視されている。そういう発想の違いがあるいはあるのかもしれませんけれども、例えば航空テロを防止するということになりますと、そういうお国の事情というものがそのまま放置と言ったら言葉が適切ではないかもしれません、そのままの状態で済まされてしまうということは、効果という面において非常に大きな問題があるのではないだろうか。そこで、国際的なテロ防止等についての協調体制というものが非常に大事になってくると思われるわけでございます。  時間の関係でここの議論は次の機会にと思っておりますけれども、ぜひその辺も、国際航空安全協力体制といいますか、そういうものをスタートさせておられるやにも聞いておりますけれども、ソウル五輪が目前に追っておりますので鋭意御努力いただいて遺漏なきを期す必要がある、このように私は御指摘をさせていただきます。  それからあわせまして、細かいこととはいえ、事はもし発生をすればそれは重大な人命にかかわる、あるいはいろいろな国際的な難しい問題につながるという意味で、これは決して細かい問題とは言えません。幾ら各国が出入国を厳しくチェックをしたといたしましても、経由ではないトランジットの場合、大韓航空機が爆破された経緯の報道等に接しておりますと、飛行機の中に爆発物を置いてきた、それで当人たちは途中でおりてしまうというようなことが指摘されているわけでございますが、それらも考え合わせてみますと、トランジットの場合に荷物が本当に間違いなく乗りかえの航空機に積みかえられているのかどうかというような点も、具体的なところでございますが、各航空会社等の協力も得ながらソウル五輪へ向けて対応策が必要なのではないか、かように存じておりますので、これもできましたら御検討をいただきたい、かように思います。  以上でテロ、ゲリラ関係の質問を終わらせていただきますので、関係の省庁の皆様は大変どうもありがとうございました。  次に、司法試験改革構想が今大きな関心を持たれているわけでございますが、順次この問題について質問をさせていただきます。  いろいろ資料が出ておりますので、細かい点、それらの資料等ではっきりと読み取れる点等は割愛をいたしまして、要するに改革構想のねらい、そして目的というのは、社会の高度化あるいは国際化の進展に伴い必然的に激増する、また、しつつある法律事務需要に的確に対応をしなければならないが、現状では必ずしも十分ではない。したがって、司法試験の制度を改革合格者数をふやしてこれに対応しよう、こういうことだと私は理解をいたしますが、要するにそういうことなんでございましょうか。その後も質問項目がございますので、ひとつ御答弁は短目にお願いします。
  355. 根來泰周

    根來政府委員 おっしゃるとおりでございます。ただそのほかに、現実の問題といたしまして司法試験受験者、合格者の年齢が非常に高くなっておる、優秀な人材を迎えにくいというところがねらいでございます。
  356. 山田英介

    ○山田委員 法律事務需要に対処する、弁護士、検事、判事、法曹三者と言われておりますけれども、この法曹三者が激増する法律事務に対処する、なかんずく弁護士、こういうことなんでありましょうか。
  357. 根來泰周

    根來政府委員 司法試験問題は、直接のねらいはそこにあります。
  358. 山田英介

    ○山田委員 それでは、司法書士とか税理士あるいは社会保険労務士あるいは弁理士あるいは不動産鑑定士などが取り扱う事務は、法律事務と位置づけてよろしいのですか。今の御答弁ですと、それはどういう位置づけになるのでありましょうか。
  359. 根來泰周

    根來政府委員 法律事務というのは非常に定義が難しいと思いますけれども、そういう職種の方が活躍されておる根拠法規といいますか、その根拠法規は根拠法規といたしまして、弁護士法の三条に言う法律事務について当面問題にしておるわけでございます。
  360. 山田英介

    ○山田委員 中村委員が既にこの問題については質問されているわけでございますが、弁護士法三条にある法律事務というものの激増に対処するためであるということは、私はよくわかります。例えば弁護士が一定の数ふえていくということは、私は反対とかそれはよくないとか言うつもりは毛頭ございません。それはむしろ改革が遅過ぎたのではないかというくらいに私は思っております。  ただ私が申し上げたいことは、激増する法律事務需要には弁護士法三条の法律事務だけではなく、実は法律関連事務といいますか、例えば税理士でありましたら税に関する法律を駆使して国民の法律あるいは国民の税に関する需要にしっかりとこたえている。それも広い意味で考えれば法律事務というふうに言うことができるのだろうと私は考えます。法律関連事務ということでも別に私は今はこだわりはありません。しかし、弁護士法三条にあるところの法律事務というものの激増に的確に対処するためということはわかりますが、その改革を進めるということであるならば、司法書士とか税理士とかあるいは弁理士とか社会保険労務士とか、こういう分野における法律の専門家、こういう皆さんの全体を踏まえた将来像もあわせて御検討いただき、その中で弁護士はどのくらいいなければならないのかというような総体的な、全体的な議論を検討していくべきではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  ですから、激増する法律事務需要に対応するのは法曹たる弁護士であり、あるいはまた司法書士であり税理士であり社会保険労務士であり、そういう人たちも法律に基づいて資格を持ち、国民の法律事務需要に現実にこたえている、私はそういうふうに思うのですが、その点の御見解はいかがでございましょうか。
  361. 根來泰周

    根來政府委員 お説のとおりだと思います。
  362. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと諸外国の例を参考にしてみたいのですが、例えば有斐閣の「ジュリスト」に収録をされておりますけれども、「法曹基本問題懇談会について 懇談会の趣旨と基本的構想(昭和六十二年三月二十五日 対外説明資料)」となっておりますけれども、この中に「諸外国にくらべて法律家の数が少なく、国民にとって縁遠い存在になっていること」、こうございまして、これを今回の司法試験改革構想が必要であるという一つの根拠、理由として挙げられております。  実は、本当に諸外国に比べて日本の法律家の数が少ないのかというふうに考えてみますと、例えばこちらの「対外説明資料」によりますと、米国の約三百三十人に一人に対して、日本は約六千七百人に一人。これは法曹人口ということでございますが、検事、判事を除いた弁護士という数の比較でも大体こういうような比率になるのだろうと理解をいたしておりますけれども、アメリカの場合にはローヤー、これは弁護士と訳されております。法律家と訳されてもいいのではないかと私は思っておりますが、大体六十万人ぐらいローヤー、弁護士と言われる人たちがいます。ですから、これは三百三十人に一人ですから、これに約六十万人を掛ければ約二億のアメリカの人口ということになるので、実はこの約六十万人の米国における弁護士、ローヤーは、日本弁護士法三条に言う法律事務のほかに、現在日本にある司法書士、税理士、弁理士、行政書士というような資格者が取り扱っている事務とほとんど同じような事務を、現実にアメリカの場合は六十万人ほどの弁護士がこれを取り扱っておる、こういうことになります。  ですから、我が国の弁護士数が大体一万三千人強ということでございますけれども、アメリカの事情と比べた場合に、日本には日本の独自の一つの法律家制度といいますか法律専門家、その分野分野の専門家の存在といいますか、そういうものがあるわけでございまして、例えば司法書士は全国で一万五千人を超える資格者がおる。税理士にしてもあるいは社会保険労務士にしても弁理士にしても、一定の資格者がおる。実は単純に、アメリカの三百三十人に一人の法曹人口日本は六千七百人に一人の法曹人口で、アメリカに比べて極めて少ないということは言えないわけです。したがいまして、司法書士とか税理士とか不動産鑑定士とか社会保険労務士とか弁理士とか、あるいはまた行政書士なども入るかもしれません。そういう有資格者が、いわばその分野における法律の専門家がそれぞれの国民の法律事務の需要を分担して対応しておるというのが日本の法律専門家の姿である、このことをまず押さえておかなければならないと私は思います。  それから、イギリスの例でいきますと、こちらの「対外説明資料」によりますと、六百十人に一人もいるよ、日本は六千七百人に法曹人口は一人だよということになっておりますけれども、御案内のとおりでございますが、イギリスは二元的な弁護士制度を採用しておる国でありまして、バリスター、ソリシター、ともに弁護士というふうに呼ばれております。バリスターは日本弁護士と同じように、あるいは弁護士法第三条にありますように法廷活動が中心、そしてまたソリシターの方は書類の作成権限というものが与えられている。これは日本の資格で言えば司法書士の取扱事務あるいはその職務に非常に内容が似ている、酷似していると言われております。これを合わせまして実はイギリスの場合には六万八千人ほどの弁護士がいますよということでありまして、そういう内容で見れば、日本弁護士の一万三千人強プラス司法書士、税理士その他全部加えていった場合には、決してイギリスと比べて実質的に法律事務需要に対応する法律的なその分野分野における専門家が少ないということは言えないわけでございます。これもひとつ、司法試験制度改革ということを進めていかれるに当たりましては十二分に念頭に置いていただかなければなりません。  フランスの場合は、アボカというのが弁護士、これはイギリスのバリスターと同じで法廷活動が中心、日本で言えば弁護士法三条の法律事務が中心で、一万六千人ほどでございます。これが実はこちらの法務省サイドの「説明資料」によりますと、日本は六千七百人に一人だけれども、フランスは二千五百人に一人だ、こういうことになるわけでございます。しかし、アボカ、弁護士のほかに、公証人と訳されますが、ノテールという資格を持った法律専門家がおります。このノテールは何をするかというと、日本における司法書士、社会保険労務士、税理士あるいは宅地建物取引主任者というような法律事務、あるいはその分野における専門的な法律事務を取り扱っておる。これが七千二百人おります。さらにコンセィユ・ジュリディック、法務助言士というものがフランスにはもう一つございます。四千三百人。これは法律相談のみ受ける。法律相談ということもいわば国民の法律事務需要の一つであることは私は論をまたないと思います。  米国、英国、仏国、この三つの国の例を今私は引きましたけれども、いわゆる社会が高度化する、あるいはまた国際化が進展する中で法律事務需要が激増し、これからも激増するであろう。この法律事務に的確に、そして十分に対応し、こたえていくためには、私が今ずっと申し上げてまいりましたように、日本全体の法律家というものの将来あるべき姿というものがまず検討されて、そしていわば法律家の一つの分野である弁護士法三条の事務を取り扱う法曹弁護士の数がどのくらいなければならないか。そしてまた、司法書士とか税理士とか社会保険労務士とかあるいはまた不動産鑑定士とか、こういう国民の法律事務需要に現実に今までもこたえてき、そして国民の中に定着をし、一定の大きな信頼をかち得つつあるこういう皆さん、そういう資格を持ったその分野における法律の専門家を将来我が国の望ましいあるべき法律専門家の未来像の中にどう組み込んでいくかということが実は今極めて大事なことである、私はこのように思います。  したがいまして、ただ単に、大変失礼な言い方になりましたらお許しをいただきたいのですが、激増する法律事務需要にこたえるために司法試験合格者数をふやせばいいんだという発想だけでは対応できないのではないか。そして、もし仮に弁護士先生方の数をどんどんふやして――法曹懇の意見書を先日拝見しました。そして、その意見書の中に活字となった部分以外の議論の中にはいろいろな議論があったやに伺っております。将来、合格者数を今の年間五百人程度から千人ぐらいにすべきだ、あるいは二千人ぐらいにすべきだ、そうしてまた大体七百人ぐらいかなというような形に実は意見書の中身はなっているわけでございますけれども、私は、そういう我が国の法律専門家のあるべき未来像、全体像の中にいわゆる法曹三者、これの登竜門であります司法試験を位置づけ、そして司法試験合格者数をふやしていく、こういう観点からぜひ法務省としては御検討をなさるべきだと存じますが、これは大臣、お見えになりましたので、ひとつ御所見を伺いたいと存じます。
  363. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 しばらく出かけておりまして、まことに失礼を申し上げました。  法曹界に優秀な人材を吸収するということは仰せのように最も必要なことでありまして、特に試験ばかりにとらわれて長い間、あるいは予備校にまで行ってやってきておられるという方も必要でありますけれども、それよりもむしろ極めて弾力性に富んで広い視野を持っておられる方に法曹界に入っていただきまして、法秩序の維持、また人権の尊重のために御努力をいただく、これが最も必要なことであろう、私も全く同意見でございます。そういうために、現在の試験制度が余りに困難になっておりますので、もっと幅広い人が早く法曹界に入ってくれるように試験制度を改善していきたい、こういう次第でございまして、どうぞ今後とも御指導のほどをお願い申し上げます。
  364. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと大臣予算委員会とかいろいろお忙しくて私も今か今かと持っていたのですが、質問時間終了直前にお見えになりまして、それでも私ちょっと申し上げておりましたので、御答弁いただけるかなと思ったのですが……。  実は大臣、例えば法曹の中の弁護士が担当する職務は弁護士法の第三条に明確に出ているわけでございます。第三条にあるそういう法律事務を弁護士以外の例えば司法書士とか税理士とか弁理士とかという資格者がこの仕事をすることは、当然できないわけでございます。しかし、例えば相続とか遺産とか供託とか不動産取引とか登記とか非訟事件とか督促、いろいろな分野における法律事務あるいは法律関連事務、関連事務といえば三条に関連した事務というふうにとれるのかとも思いますけれども、そういう三条以外の法律事務、法律的に専門家でなければなし得ない、そういう膨大な国民の需要がある。それを担当している司法書士とか税理士とか弁理士とか社会保険労務士とかというのが現実に存在をし、この法秩序社会の中で一定の国民の福祉の向上とか権利擁護のために頑張って根を張っております。  したがって、私が今林田法務大臣にお伺いを申し上げたかったことは、激増するすべての法律事務需要に弁護士さんだけで対応できないのです。どんなにふやしたって、また、そんなにふやせるわけはないのですからできないわけです。ですから、そういう法律事務需要に対応するために司法試験の制度を改革して、先ほど大臣が御答弁なさいましたように、優秀な人材をもっとふやしていこうという方向は私は賛成なんです。ただ、それは法律事務需要に弁護士だけが対応するのだということじゃなくて、ただ単に弁護士の数をふやせばいいということだけじゃなくて、司法書士とか税理士とか現実に国民の間にあって信頼され、国民の法的需要にこたえているそういう人たちの職能の未来像を描きながら法曹人口をふやすという作業が全体の中で位置づけられていくべきものであると私は思いますが、法務大臣、恐縮ですが、一言、さようであるかないか、お答えいただきたいと思います。
  365. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 日本が産業の面におきましても非常に高度化してまいりまして、また、社会も極めて複雑多様化をしてまいっております。そういう中におきまして、今回、司法試験において合格者の人数を少しふやしていったらどうかという御意見が出ておるわけでございますが、とてもそれだけでは足らないわけでございます。司法書士さんの試験も大変難しいというように伺っておりますけれども、今司法書士の皆さん方のお仕事は極めて重要になっておりまして、私もよく承知をしておるところでございます。したがって、この多様化しております社会の需要に対応いたしまして、何とかこの国民的要望を充足してまいりますためには、弁護士さんも司法書士さんもおのおの御努力をいただかなければならないと存じておるところでございまして、司法書士の方々にもその職責を果たしていただきまして、国民的要望をかなえていただきたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  366. 山田英介

    ○山田委員 それでは、大変持ち時間を過ぎまして恐縮をいたしておりますが、林田大臣がお見えになりましたら一問だけお伺いをしたいと申し上げた点がございますので、その御答弁を伺いまして終わりたいと思います。  去る五十二年のダッカ事件、いわゆる超法規的な措置によりまして、テロリストグループの要求というものをのんだ形で、そのテロリストグループの既に拘束されている何名かが釈放されたというダッカ事件。これは超法規的措置がとられたというふうに理解をしているわけでございますが、丸岡修が昨年十一月に東京で逮捕されまして、日本赤軍からこの丸岡を奪還するということを示唆する声明文といいますか、そういう文書が今明らかにされて今日に至っております。  ソウル五輪を控えまして、仮に大使館の占拠、政府要人の誘拐あるいは在外日本人商社員等の誘拐あるいはハイジャックなどが発生をした場合に、これが丸岡修を釈放せよ、仮にそのように要求をされた場合に、法務大臣、どういう姿勢で対処なさるのか。そして、超法規的措置はとられるのかとられないのか。この一点を御答弁いただきまして、質問を終わりたいと思います。
  367. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 非常に難しい御質問でございます。直接それにお答えすることができるかどうかわかりませんが、まず、非人道的なテロを未然に防止をするということが第一だと存じます。そのためには国際的な司法協力が必要でありまして、いかなる国の国際空港におきましても、まず飛行機の発するときはそういうテロが起こらないように各空港において十分努力をする国際協力をやっていかなければならぬということで、そういうことを進めておるわけでございます。  また、しかしそういう国際協力をやり、テロ防止をやりましても不幸にしてそういう事件が起こったという場合は、これに対しまして断固たる態度で臨まなければならぬわけでございまして、それはやはりそれが起こったときにいかに対処をするかということでございまして、まず私たちのやらなければならぬことはそれを未然に防止することである、かように存じております。
  368. 山田英介

    ○山田委員 終わります。ありがとうございました。
  369. 戸沢政方

    戸沢委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十三分散会