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1988-03-02 第112回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 戸沢 政方君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 中村  巖君    理事 安倍 基雄君       赤城 宗徳君    稻葉  修君       上村千一郎君    木部 佳昭君       塩川正十郎君    宮里 松正君       稲葉 誠一君    清水  勇君       冬柴 鉄三君    山田 英介君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         法務政務次官  藤野 賢二君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 河上 和雄君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君  委員外出席者         警察庁刑事局刑         事企画課長   古川 定昭君         法務省入国管理         局登録課長   黒木 忠正君         外務省北米局北         米第一課長   山崎隆一郎君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       村上 伸夫君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         最高裁判所事務         総局家庭局長  早川 義郎君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所櫻井人事局長吉丸刑事局長早川家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保岡興治君。
  5. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 せんだって行われました林田法務大臣所信に対して質問したいと思います。  所信の中に、刑事施設法案について、その審議成立へ向けて非常に強い決意を述べておられたわけですが、この刑事施設法案は昨年の四月に国会提出されて以来今日まで、国会の外では日弁連などが、また国会の中では野党各党からいろいろ問題があるということで、当委員会に付託されてそのまま実質審議に入らないでいる状態にありますけれども、私が今まで聞いていたところによれば、現行監獄法早期しかも全面改正、これはもともと昭和四十年代に日弁連法務大臣に申し入れをしたことから動き出した。当時の国会においても当委員会などで野党委員からもそれに沿うような、早く監獄法改正すべきであるという意見が繰り返し繰り返し表明されていたものであります。そういうことをきっかけというのか、それらの意向を受けて昭和五十一年に法務大臣から法制審議会に諮問がなされて、しかも四、五年にわたって慎重にこれが審議されて、しかも全会一致答申が出てきた。それを具体化したものが今度提案されている刑事施設法案だと理解しているのですが、それがなぜ今もって国会審議に入れない状態にあるか、これは極めて不思議な現象だと言わざるを得ないと思うのです。  もちろん行刑基本法でありますからいろいろな立場や考え方があるのは当然で、したがってみんなが一〇〇%納得できる成案を得るというのは、これは元来なかなか難しいわけでして、そういうことを考えれば、この明治四十一年制定施行の、形式内容とももう時代おくれで前時代的ないかにも古臭い現行監獄法と、今回いろいろ慎重に、しかも十分いろいろ手はずを尽くして検討して得た成案である今回の提出法案と比較すれば、これはあらゆる面で格段に改善されていると思いますし、しかも法制審議会全会一致答申が出されてから数えてももう既に七年余りも経過している。しかも、在野人権保障の使命を担う日弁連方々とも二十六回にも及ぶ意見交換会をされたということが大臣所信にも述べられているとおりでありますが、それに基づいていろいろ調整もやっている。こういう現実を考えると、このままの状態で推移して法案をたなざらしにしていて果たしてよいものか、そういうことを強く思う者の一人であります。したがって、国民代表である我々国会としてもぜひこれは早急に審議に入って、しかもできるだけ早い機会に成立を図るべきだ、そう考えるものでございます。  法務大臣所信表明の中で、今国会において審議成立をと強い決意を述べておられたのでありますけれども、私の理解するところでは、まず第一に、監獄法明治四十一年に制定されて既に八十年を経過しておる。形式内容とも余りにも古過ぎる。これは先ほど申し上げたとおりであります。被収容者権利義務関係明確化刑務官職務執行権限根拠限界の明示、受刑者改善更生を促進するための効果的な矯正処遇制度整備など、現代の行政理念に照らすときにはもはやこれは近代行刑根拠法としては全く不完全である、そういうもので、さればこそ冒頭に申し上げたように日弁連や各野党からも監獄法早期全面改正という声が上がってきたものだ、そう思うわけです。  特に一九五五年、昭和三十年の国際連合の被拘禁者処遇最低基準規則という国際的な行刑原則というか理念があって、先進国のほとんどは近代的な刑事政策思想のもとに新しい行刑法令制定改正を既に終えている。一方、法治国家としての誇り高い我が日本だけが国際的にも著しく立ちおくれてしまっているということは極めて恥ずかしい話でもある。一方で、このような法の不備は職員の日々の職務執行を困難ならしめておる。行刑運営に対する被収容者の不信や不満は募るばかりであって、もはやそういった点でも猶予ができない段階に立ち至っていると思われますが、この点、大臣がおられませんので、練達な藤野政務次官にしかと御意見を承りたいと思います。
  6. 藤野政府委員(藤野賢二)

    藤野政府委員 ただいま保岡先生の御指摘のとおりでございまして、刑事施設法案成立施行が喫緊の課題と私どもも認識しているところでございます。委員各位におかれましてはこの点を十分御理解いただき、一日も早く審議成立が図れますことをお願いを申し上げる次第でございます。
  7. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 今政務次官も、非常に喫緊な課題だということで一生懸命努力されたのだろうと思いますが、法制審議会で四、五年慎重に審議して、しかも先ほど申し上げたように全会一致答申だ。その上に加えて、さらに在野法曹日弁連との意見交換会を二十六回もやっておる。これは、我々国民代表である国会としても非常に高くこれを評価したい。こういう努力というものはなかなか今までなされた例がないぐらいじゃないだろうか、こういう在野を含めた関係者努力というものは高く評価しなければならないものだと思いますが、その日弁連との意見交換会状況経緯及び修正点について、政務次官からちょっと御報告を願いたいと思います。
  8. 河上政府委員(河上和雄)

    河上政府委員 少しく具体的な話になりますので、私から答えさせていただきます。  先生指摘のように、日本弁護士連合会と二十六回ほど会合を重ねております。この内訳と申しますか内容を申し上げますと、昭和五十七年の第九十六国会最初法案提出いたしました。日本弁護士連合会から実は法制審議会に二人ほど委員が入っておられましたので、全会一致でございますから、私どもとしては日弁連の御意向を十分反映していると思っていたわけですが、反対がございましたので、その後五十八年の二月から五十九年の十一月まで二十二回にわたりましていろいろな点について詰めました。ところが、さき法案は五十八年の十一月に国会の解散によりまして廃案となりました。その後も私どもさらに四回ほど、昨年三月、四月にかけて日本弁護士連合会といろいろな点について検討を加えました。  意見交換会で論議しました主な問題点を申し上げますと、未決の、つまり被疑者あるいは被告人、それから受刑者、既決の人たち、こういった人たちを峻別して処遇するということ、あるいは着衣や携帯品について一般の方々と同じように弁護士さんについても検査するというようなこと、最初法案はそういうふうにしておりましたが、これを改めまして、弁護士さんについては除外する、それから、勾留されている人たち弁護士さんとの面会について、管理運営上本当に問題のある場合は別として制限を大いに緩和して、いつでもお会いいただけるのを原則にする、こういった点などでございました。  こういったいろいろな詰めたことを背景にいたしまして二十一項目ほど、さき法案修正を加えまして、昨年の四月、第百八国会提出させていただいたわけです。私どもとしましては、今回の法案法制審議会答申をほぼ忠実に反映している、こう信じているわけでございます。     〔委員長退席逢沢委員長代理着席
  9. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 いま河上局長から御説明のあった日弁連とのいろいろなすり合わせ、調整というものの中の重要な課題一つと思いますけれども刑事施設法案の規定する留置施設への代替収容制度の問題ですが、これには代用監獄恒久化を図るものではないかという懸念があるわけで、そういう意見日弁連からも述べられていると思います。  この点については、私が拝見するところによれば、法制審議会は、現行代用監獄制度について制度上及び運用上の改善を加えた上でこれを存続させることを答申しておって、刑事施設法はこの答申を受けて、一つに、留置施設収容対象を主として被勾留者に限定する、それから二つに、留置施設収容された者についても原則として刑事施設法の規定を適用する、三点として、法務大臣国家公安委員会に対して留置施設運営について必要な事項の通報を求めて、留置された者の処遇について意見を述べることができる旨を規定するなど、法律的及び制度的に整備を図って対処している、こういうふうに見られるのですが、どのようなことか、法務省の御意見を伺いたいと思います。
  10. 藤野政府委員(藤野賢二)

    藤野政府委員 保岡先生の御見解のとおりでございます。私どもといたしましても、この法案考え方が現実的な最善の考え方である、こういうふうに理解しているところであります。  しかし、法制審議会要請にありましたように、将来できる限り被勾留者収容の必要に応じることができるような刑事施設の増設及び収容能力の増強、こういうことについては、これを警察の拘置施設に代替収容するという例を漸次なくしていく、こういう方向法務当局といたしても努力をしてまいりたい、こういう所存でおります。
  11. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 それともう一点、これは実質的には相当国民基本的人権に影響してくると思われるのですが、また、相当日弁連とも話し合いをして可能な調整は徹底したと先ほど局長も言っておられたと思いますが、被勾留者弁護人との面会の問題であります。  私の理解する限りでは、今申し上げたような努力を通じて、提出された法案は、被勾留者処遇原則を規定する一方、その中で被勾留者防御権尊重に留意しなければならないことを明確にしている。そして被勾留者弁護人などとの面会については、刑事施設の人的、物的な管理能力には限界があるが、しかしその中で多数の収容者処遇していかざるを得ないことから生ずる制約だけはやむを得ないとしても、その制約必要最小限度にとどめて、被勾留者弁護人との面会を保障することにして、先ほどお話があったように原則として自由ということで防御権尊重趣旨を具体化していると思われますけれども法務省としてはどのようなことか、見解を述べていただきたいと思います。
  12. 藤野政府委員(藤野賢二)

    藤野政府委員 弁護人等との面会は、被勾留者防御権行使のための最も重要なものでありまして、日弁連との意見交換の場でもこの点について大変長時間話し合われたところでもございます。ただいま保岡先生が述べられました趣旨のもとに、その法的保障を図るべく法文を大幅に修正をして提出しているところでございます。この点につきましては、日弁連も相応の評価をしていただいているものと思っております。
  13. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 いずれにしても、大臣所信に述べられたこの刑事施設法早期審議成立についての決意については、我々国会議員としても精いっぱい、これはできるだけその趣旨に沿って、今私が意見として述べ、また法務省政務次官を初めいろいろ留意、配意してここまで成案を得るのに最大の努力をしてきたという評価をできると思いますので、一日も早い審議成立を私としても望むものでございます。  それから次に、大臣所信表明の中にも第一に挙げられた最近の犯罪情勢と治安の確保及び法秩序の維持について、来日外国人による犯罪が増加すること、犯罪国際化の傾向が一層顕著になってきていること、それに対して対処に遺憾なきを期していきたいということが述べられておりますし、また、我が国の諸外国との国際化進展といいますか、政治、経済、文化、あらゆる面においてますますこれが進んでいく、我が国に出入国する内外人の数が非常に大幅に増加してくるということで、特に最近は円高等を背景発展途上国からの男性による不法就労事実が急増している、こんなことが述べられているわけでございますが、そういう我が国国際化進展の中で司法制度が、外国人我が国犯罪を犯して、その手続上に乗っかってくる。被告人になる場合もあれば、関係して証人などに呼んでこれを聞かなければならないというようなことも出てくるということから、法廷における通訳制度の充実をもっと図るべきである。そしてまた、捜査段階においてもやはり実体的真実の発見も当然考えなければならないし、また、人権保障という点からも手続あるいは事実関係の聴取、こういったすべての面においてきちっとしなければいけない。  このことは、大臣所信表明にも出てくる四十周年を迎えた世界人権宣言あるいはそれを受けた人権規約、こういったものにも公平公正な裁判を保障することは明確にされて、もう今や国際化が進んでいくことを当然前提に共通する理念としての制度もあるわけだし、我が国は当然のことながら憲法で公平公正な裁判手続を保障しているわけですから、これが我が国の言葉を理解できない、あるいは話せない、あるいは身体障害者のように日ごろの会話を聞くことができない、あるいは話ができないという方のためにも、これを全く制度的にきちっと平等に保障するということは近代国家としては極めて重要な問題である。これはただ問題がないなどと言って済ませられないことになりつつあるのではないか。  そしてまた、仮に我が国裁判あるいは捜査運用において適切であるとしても、制度というものはやはり「らしさ」ということがきちっと保障されていて初めて意味があるということもありますから、法廷通訳制度あるいはまた捜査段階における通訳の正確さの担保などはもうきちっとしなければならぬという趣旨の質問をさき国会で当委員会でいたしたところでありますが、きょうはそのことについて少し、時間の残された限りで伺ってみたいと思うのです。  あのとき私が我が国におけるそういう司法手続上の通訳重要性に言及した理由というものは、さき委員会でも述べましたとおり、アメリカで既に一九七八年に法廷通訳法というものが制定されているわけなんです。そして、この法廷通訳制度ができてから、通訳正確性をチェックするためのあらゆる努力あるいは立派な通訳が養成できるためのあらゆる研究あるいは活動あるいは関心の高まり、通訳社会的地位の向上と、いろいろないいものがそこから連動して出てきている。しかしながら、最近になって、一昨々年あたりから再びこの法律の改正の話が出てきた。その中に、いろいろ審議の過程の中で、主としてその法廷通訳法というものがスペイン語に限定されてきていることの弊害、ほかの言語にもそれを拡大する必要があること、さらにいろいろな問題を審議しているわけなんです。  一つは、そこに日本語を加えるということが入っておりました。もう一つは、司法手続のみならず、これは民事刑事も含むということのようでございますが、大陪審の手続、いわゆる訴追、捜査をして起訴するかどうかを決める手続、こういう段階でも法廷通訳というのか資格ある通訳、こういったものの整備が必要だということが改正点に上がってきている。     〔逢沢委員長代理退席委員長着席〕 もう一つは、さき国会でも私は詳しく述べましたが、通訳が果たして正確であるかどうか、後で問題にするときの客観的資料として、当事者の要請があれば電気的録音というのですか、いわゆるテープ録音というのですか、それできちっととっておくことが当局に義務づけられる。こういう大体三つぐらいが大きな改正点でございます。  これは、実は昨年の暮れというか末の十一月十三日に上院にいよいよ成案が提案されまして、サイモン上院議員ハッチ上院議員など民主党、共和党両党、党派を超えて共同提案者になって提案されているということなんです。  私はこういう改正を、我が国としては円高でどんどん人が外国に出かけていく現象はさらに募っておると思いますし、日本がこれから国際化という方向で大きく動いていくことは、日本の最近言われる国際責任というのか、アメリカやヨーロッパの後からというのじゃなくて、もう既に大きく発想を転換して、肩を並べて、むしろ独自の、もっと強いリーダーシップを発揮しなければならないのじゃないか。こういう状況でございますから、私はますます邦人の、我が国国民外国において逆に犯罪者になったりあるいは犯罪被害者になったり、そういう場合にしっかり基本的人権を守っていくということも我が国として当然重大な関心を払っていかなければならぬ、そのことについては早く検討していかなければならない、こういうことだと思うのです。  そういった意味で、この間もアメリカ法廷通訳法改正というアメリカ議会での動き、これについては我が国政府も重大な関心を持って積極的にこれを進める方向意見表明などをやってもらいたい、こういうことを申し上げたわけですが、まずそれがその後どうなっているかから伺いたいと思います。外務省
  14. 山崎説明員(山崎隆一郎)

    山崎説明員 お答え申し上げます。  昨年九月、この委員会の場において先生の御指摘もございまして、政府としては、主として我が方のワシントンにございます大使館を通じましてアメリカ議会及びその他行政府関係当局働きかけをし、かつ、その審議ぶりをフォローしてまいりました。  先生まさにおっしゃいましたように、昨年秋、下院では司法委員会上院でも同じ司法委員会にそれぞれ本件が、改正案が付託されております。ただ、昨年の秋の時点で御存じの最高裁判事の指名問題というのがございまして、アメリカ議会全体が大きく荒れまして、しかも、最高裁判事の指名というのはまさに上院の小委員会が非常に大きな関心を有する問題でございましたので、数多くの法案が非常におくれましてずれ込んでおります。そして、本件改正法案も現在継続審議中というふうに承知しております。  より詳細に申し上げますと、上院の小委員会においては、今約五十本の法案審議中ということでございますので、本件改正法案の今後の見通し等につきましては、さらに我が方大使館に指示しまして、種々米側働きかけを行いたいと思います。先般では国務省と申し上げましたが、国務省のみならず、この法案の直接の担当当局でございます米国連邦裁判所事務局というところもございまして、そこに対しても我が方大使館からも関心を伝えてございます。  以上、御報告いたします。
  15. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 これはアメリカでの議会の記録を見ていくと、いろいろな関係者意見陳述あるいは意見書というものがファイルされてありまして、私が聞くところによると、これに関与している上院のメンバーも、日本政府がどの程度関心を持っているか正式に表明していただいて結構だ、意見書など出していただいて結構だ、それは大いに法案成立を促進することになるのだ、こういうことを聞いておるのでございますが、議会の方については、せんだってもいろいろなスタッフと連絡をとっているということでございましたけれども議会の方に対する努力はどうなっておりますか。
  16. 山崎説明員(山崎隆一郎)

    山崎説明員 お答えします。  通常の外交活動の一環といたしまして、議会に対しては強い関心表明をいたしておりますし、現に我が方の担当の者が上院下院それぞれの委員会スタッフと緊密に話し合っております。  ただ、正式なルートということになりますと、先般も御報告申し上げましたように、これは当該国政府、主として国務省というルートを通じまして、我が方の関心を正確に伝えてございます。
  17. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 議会の方は、その意見書提出みたいなのも歓迎するということですが、それはお役所の判断で国務省を通じてというのであればそれでもいいと思うのですが、議会にそれが確実に、推進するスタッフに伝わるような形でないと、せっかく向こうの議会の筋が我が国関心表明を期待しているのに、それが肝心の議会のところに伝わらないということでは困りますから、これはぜひ今後も努力を続けていただきたい。  そこで、私が申し上げたいのは、実はこの改正動きの中で、当初は日本語が資格のある通訳を必要とする八つ国語の中に入っておったのですね。ところが、今お話しの、昨年の秋に提出された法案からそれが落ちているということでございます。私は、これは重大なことだ。政府としては、その辺にどのような関心を払ってどのような努力をしたのか、また今後するつもりであるのか、その点を伺いたいと思います。
  18. 山崎説明員(山崎隆一郎)

    山崎説明員 先生指摘のような事実があるようでございます。我々としては、それを正式にチェックしてあれしておりますが、一つ報告によれば、それは犯罪率といいましょうか、どの外国語を使った方による犯罪が多いかという順番で、格付と言うと変ですけれども、されておりまして、例えばスペイン語が飛び抜けて多いわけでございますけれども、そういう意味では、日本語は約十位に位するということで、八カ国の中からは落とされたようでございます。そういう事実はあるようでございますが、引き続き、これがどういうふうにして改善されるか、何せ米側上院下院審議中のものでございますので、どの程度国務省からの我々の関心表明がその法案審議に反映されるか、これから一応努力してみたい、そう思っております。
  19. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 これは、なぜ当初の改正案日本語が入っていたのか。当然使用される国語の頻度とか、あるいは事件になって通訳を従前必要とした国語の順位ということからいえば、日本語は確かに八つの中には入ってこないという位置のようですけれども、当初日本語が入っていたことの経緯外務省は承知しておられますか。
  20. 山崎説明員(山崎隆一郎)

    山崎説明員 そこまで詳細には承知しておりません。
  21. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 その辺が、せっかく法廷通訳法改正がなされようとしている、しかもこれはある意味では、その法案にあるように私は非常に大事な問題だと思うのですよ。これは、さきに私がお話ししたように非常に高い理念を明確にこの法案はうたっているのですね。合衆国の  司法手続きにおいて、英語を話さない人々及び聴覚障害者に対し、資格ある通訳が提供されないことが時々ある。   こうした個人に対し、有能な通訳を提供しないことは、特定の状況下においては、合衆国憲法修正第五条及び第六条により確保された権利の否定と成り得る。というのは、こうした個人は    法の正当な手続きなしで、生命、自由あるいは資産を奪われるかもしれない。    理解の欠如のゆえに、敵対証人に対決することができないかもしれない。    弁護士と効果的な相談をする能力を奪われるかもしれない。    こうした手続きに導入された判決、法廷意見、文書的証拠の内容を理解できないかもしれない。 こういう権利を奪ってはならないということを高く表明しているわけですよ。こういったことに対して議会が真摯に努力している。  これは、これからいろいろな国で同じようなことが起こってくるその象徴的な制度ですね、外国が邦人の基本的人権をきちっと保護してくれる。しかも、アメリカで、先進国でそれがなされようとしている。それに対して、日本語が入った経緯もわからないというのでは、私はこれは重大だと思うのですよ、これから国際化がどんどん進む中で。  これは、実は日本人である神山という人が、ある事件で大陪審でその証人に呼ばれて、そこでいろいろ証言をしたわけですよ。ところが、それがもうめちゃめちゃな通訳で、その通訳をもとに、その大変な誤解のもとに偽証として、ある刑事事件の捜査の際の証人として出たその際の偽証としてみずから今度は起訴されるという羽目になって、有罪の判決を受けて服役までしているのじゃないでしょうかね。これがアメリカ議会で問題にされて、一九七八年の法廷通訳法改正として、アメリカ委員会で公聴会を開いたり、いろいろな通訳関係者を呼んだり、一般的に司法手続における通訳の問題としてオーソライズされて今日の法廷通訳法が提案されるに至ったわけでしょう。  そういう経緯もよく承知していないのでは、アメリカ議会国務省にこれはいかに働きかけると言っても、どの程度の働きかけをしているのか、私としては極めて疑問を持たざるを得ない。その神山事件、これについては、どうですか。内容等については、場合によっては法務当局と連絡をして、そこにどういう不正義があるのか、手続上、通訳というものは一たん間違うとどういう基本的人権の剥奪につながっていくのか。日常茶飯事に処理される事件の中で、いつこういうことが起こるかもわからないことに対して、重大な警鐘の意味を持ってアメリカ議会がこれに取り組んだわけですから、私は、神山事件の内容等について我が国政府がまさか承知してないとは思わないのだけれども、いかがですか。
  22. 山崎説明員(山崎隆一郎)

    山崎説明員 先ほどは申しわけございませんでした。神山事件が本件背景にある、それが推進力であるということは承知しておりましたが、具体的にその八つの言葉の中に日本語が入った例えば統計的な根拠とか、そういうのは承知してないということでございます。
  23. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 これはそういう意味を持ちますので、外務省としては司法事件の内容というのは分析や解析というのはなかなか難しいと思うのですが、法務省とよく連携をとって、それが邦人の権利保護上どういう意味を持つのか、その内容の正確な把握をした上で、そしてアメリカ政府議会にそういうことについて御努力いただいていることは高く評価する、我々としてもぜひお願いしたいということで、事の本質を理解した上で向こうにお願いをしないと、肝心の向こうの努力をしている方々よりかその辺の認識が甘いものを持ってお願いしてもしようがない。私は、そこをもう一度しっかり把握した上で米国政府にきちっとした要請をすることを再度お願いをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。大臣、恐縮ですが、よろしくお願いします。
  24. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    ○林田国務大臣 先生指摘の点は非常に重要な点であると認識をいたします。特に国際化はますます進んでまいりまするので、法務省といたしましては現在ワシントンDCに法務アタッシェを置いたり、またほかの主要な国にも置いておるわけですが、そういうアタッシェの制度を充実いたしまして、法務関係の面から十分そういう問題を把握し得るような体制を整えていかなければならぬと思います。これから大いに注意をいたしまして国際化に対処してまいりたいと存じまするので、よろしくお願いを申し上げます。
  25. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 大臣がそういう強い姿勢で見識を表明していただいたことを感謝します。  ただ、問題は、具体的に今アメリカ改正が問題になっている法廷通訳法の具体的な案件について我が国関心を持って努力をしていただきたいということで話を進めておりますので、その点についても外務大臣外務省とよく連携をとっていただいて、その事件の内容を把握した上で、やはりこういう問題は邦人の権利に重大な影響があるということだと思いますので、それはアメリカ議会がまさにそういう判断をしてこの改正に入ったわけですから、したがって我が国もその辺を理解した上、アメリカ政府にしかるべき働きかけをさらにしていただきたい、その点について大臣見解をお願いします。
  26. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    ○林田国務大臣 法務関係、特に法務省におきましてそうでございまするが、今までは主として国内を見ておったならばそれでよかったという傾向があったわけでありまするが、最近は急速に国外への認識を深めていくということが重要になってまいっておる、私はかように今感じておるところでございます。そこで、今の先生のお話につきましては、外務省、また米国との関係をさらに深めまして、十分連絡し、認識を深めていくように大いに努力をしたいと存じます。
  27. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 これは今度の法案共同提案者になっている、もう一人は大統領候補者にもなったサイモン議員が共同提案者になって、民主、共和両党での非常に主要な人物が共同提案に加わっているわけですが、このハッチ議員から我々の同僚議員である参議院の加藤武徳先生への手紙で、こういうことが書いてあるわけです。   法廷通訳法制定は連邦裁判所において、英語を話せない人々に対し、施される司法の質を実質的に向上させることになったが、法はその全ての目標を達成することができない一定の欠陥を含んでいたのです。これらの中で最も問題なのは、法が連邦大陪審での資格認定通訳の使用を保障する上での失敗です。日本国民である神山威氏の場合、資格認定されていない通訳により、英語に通訳されたところの大陪審での日本語による証言を根拠として、政府は偽証起訴、及び合衆国での有罪判決を勝ち取ったのです。しかし、神山氏が刑期を全うしたずっと後になって、その通訳は私の小委員会での証言で、実質的な通訳上の過ちを犯したことを認めたのです。   私の法案は、資格認定された大陪審通訳を、日本語を含む追加言語における、通訳の資格認定とともに保障するものです。 これは当初の案にはそうなっていた。  残念ながら、今日まで法のもとでは、スペイン語通訳しか、資格認定されていません。私の法案は前会期議会により、通過しませんでしたが、私はこの動きを進めてゆくつもりです。なぜならば、「法のもとの司法の平等」は我々の立憲政体の礎石であり、この法案は欠陥を是正し、合衆国連邦裁判所での合衆国の言語的少数派の権利を保障するからです。 これだけ強くこの事件に関心を払って、当時の委員長であるハッチ議員から我々の国会議員の同僚に手紙が来ている。しかも、   私は、あなたとあなたの同輩の方々がこの言語的少数派の権利へのコミットメントを分かち合うと信じています。我が両国間の増大し続ける文化、経済、政治における結び付きから考えて、私はこの時に、日本国会が 「日本国会が」ですよ。   同様の法案制定を考慮するのが適切であると提案したいと思います。 こういうような手紙を送ってきているわけです。  私はこれを受けてこの間の質問をして、さらに、この間の私の質問をハッチさんに加藤先生が送ったわけです。そうしたら、それに対してこう言ってきているのです。「お手紙と同封資料、ありがとうございました。合衆国上院において、サイモン上院議員と私により共同で提案された法廷通訳改正法案に類似した法案成立させることに対し、非常に多くの日本国会議員関心を持っているのを知り、私は心を動かされています。」「あなたの手紙と衆議院法務委員会議録からの抜すいは、この法案を通そうとする私達の努力に助けとなります。」日本国会議員の皆さんによろしくお伝えください。こういうことで返事が来ているわけです。ですから、私としても、まず政府がそういったことにきちっと対応してもらうということが大事だと思うのです。  それと同時に、我が国の法制度も相互主義といったら厳密な意味ではすぐには対応できないかもしれませんけれども法廷通訳制度あるいは捜査段階通訳正確性に対する制度的担保、こういったものをもっと真剣に考えなければいけない。第一、この間質問したときに、裁判所で例えば被告人外国語で発言する。そうするとそれは、通訳がそこについていて、調書には通訳した日本語が載るわけなんです。あるいは外国の証人が証言をしたその外国語は消えて、そのとき通訳した通訳の言葉が載るわけです。だから、外国語で黒と言ったものを白と訳したら調書には白と載るわけです。ところが白と訳した通訳の言葉は、そのまま白と載っているのだから調書の間違いにはならないわけです。一体どういう救済方法があるのかということすら、今の日本制度では明確になっていないわけです。  これは往々にして録音されていることが多いから後からチェックできるでしょうと言われるのですけれども、私が聞く限りでは、法廷における通訳というのは非常に専門用語が出てくるし、被告人もあっちへ行きこっちへ行き、あるいは証人もあっちへ行きこっちへ行き、場合によっては支離滅裂な証言をする。そういうものを自分で要約してまとめて、意を体して通訳するということは、これはなじまないわけなんです。そういうことで非常に通訳も苦労するし、またそういう言葉をそのまま即時に裁判所に、関係者に翻訳してみせるということ自体非常に難しいわけですけれども、しかしながら一方でまた同時に、通訳がいろいろな手続説明してあげるということも必要ですね。そういうことで、場合によってはその国の制度と比較して説明してあげなければよくわからぬということもある。  そうなると、通訳というのは、我が国の法制では鑑定制度が準用されているのです。しかしながら鑑定というのは、あらかじめ与えられた資料を十分検討して、その経験則による判断過程を理由書にきちっと書いて、そして文書で提出する。鑑定自身が証拠調べになるし、鑑定人というのは証拠方法だ。しかしながら、通訳というのは証拠方法でもないわけですから、証拠調べでもないわけですから、それに付随してついてくるという特殊な立場もありますし、またその場でぱっと聞いて、瞬時に資料を与えられて、そうして通常鑑定でなされる経験則の判断の理由などは抜かして、結果だけをそこで伝えるわけです。ところが言葉というのは機械的にただ置きかえるというわけじゃなくて、背景事情やいろいろなこと、センテンスの並びなどから、ハウスという言葉が国会になったり家になったり家庭になったりするわけでしょう。  こういったいろいろな判断をしているわけで、それに加えて私は何よりも重要だと思うのは、通訳というのは、法廷に出ていても当事者としては全く暗やみの中に置かれるわけですね。そういう暗やみの中に置かれている人に基本的人権を保障する制度意味をわからして、それに対する攻撃、防御の機会を正確に与える、そういう役割もあるとすれば、これは被告人の補佐人的な役割を担っているのじゃないですか。言葉の通じないものはだれも、裁判官といえども検事といえども弁護士といえども、それを保障することが法廷でできないわけです。それを本当に被告人の立場に立ってきちっとできるのは通訳だけだということになれば、これはもう通訳の地位というのは単なる証拠調べに関連して出てくるだけじゃない、あるいは当事者の尋問に関連してくるだけじゃない、極めて地位の特殊性があるんじゃないかと思う。  裁判そのものは、私は人間社会全部、コミュニケーションが前提で、コミュニケーションは言葉が大前提になるわけですが、裁判においてだってまさに特殊なコミュニケーションの中で厳格に実体的真実発見、基本的人権擁護という二つの要請をきちっと満たせるように構築していくものだ。そのコミュニケーションの基礎に言葉があるとすれば、言葉が、日本語が解せない、話せないという外国人や身障者の場合はその通訳をつける、手話人をつける。こういうものの正確性を担保するということは、これは基本的人権上非常に重要だ。身障者の問題はさることながら、それも同じレベルで大事ですが、国際化がどんどん進んでいく。外国からもどんどん日本に入ってくる。外国日本人がたくさん出ていく。そういう公平な公正な裁判を確保する上で、この通訳というものの持つ意味を改めて考えてみなければいけないのじゃないか。  録音テープを我が国制度では義務化されてもいないし、事実上やっているだけだ。問題がないから、今まで通訳とそれから録音とを比較してどんな過ちが起こり得るのか、実際に正しく行われているのか、これから新しく通訳を養成するときにはマニュアルを与えて専門用語やいろいろな制度や仕組みを説明していくのにもっといい工夫はないかとか、そんなことが全く今まで問題にされていないためになされておりませんというのがこの間の裁判所の答弁だったと思います。私は、そういった意味で後で通訳の会社に聞いたら、自分たちでいろいろマニュアルをつくって、「公判手続」「裁 ○○さん、通訳人の宣誓をお願いします。」「通 宣誓、良心に従って誠実に通訳することを誓います。」とか、いろいろな人定質問から始まってずっと大体モデルみたいなものをつくって、自分たちで一生懸命教えているわけです。これは、判決や起訴状とかいろいろなことになるとなかなか難しいわけなんですよ。そういうことで裁判所捜査当局もその後、この間私が指摘した点について、努力をきちっとしている。そして法廷通訳制度あるいは捜査における通訳正確性の確保、こういったものについて非常に重要であるということは認識したということでありますし、今後研究します、勉強しますというお答えだったのですが、具体的にどういうことをその後始められたか、これを簡潔に、時間ももうありませんので、裁判所法務省、警察、この三者にちょっとお答えをいただきたい。
  28. 吉丸最高裁判所長官代理者(吉丸眞)

    吉丸最高裁判所長官代理者 まず、本日も御指摘いただいたところでございますが、通訳の付された事件について、訴訟の過程で当事者あるいは裁判所通訳が正確に行われているかどうかをチェックするため、証人尋問等の録音をとってテープを保存すべきではないかという御指摘の点でございます。前回も申しましたとおり、現在でも実務上通訳を付して証人尋問等を行う場合にはこれを録音しておく取り扱いが多いと承知いたしておりますが、御指摘のとおりこのような録音を残すことは訴訟の過程で通訳正確性をチェックする最も有力な方法であると考えられますので、現行の規則でも録音の点については四十条、四十七条という規定もございますので、この運用の問題といたしまして実務上さらに配慮すべきものと考えております。この点につきましては、今後裁判官の会同等でも取り上げて検討いたしたいというふうに考えております。  次に、通訳が正確に行われているかどうかについての実証的な研究を行う必要があるという御指摘でございました。この種の研究につきましては、御承知のとおり具体的な事件にかかわるだけに研究の方法等について難しい問題がございますが、私どもといたしましては、とりあえず東京地裁の御協力を得まして、通訳がついて確定した事件の記録と録音テープを書き出しまして調査を行っているところでございます。今後も同様の調査を続けてまいりたいと考えております。  次に、通訳人に対する研修との関係で、本日も御指摘がございましたマニュアルのようなものをつくるという問題がございました。これにつきましても現在作業をいたしております。私どもといたしましては、このようなマニュアルをつくる以上、実際に即し、しかも実務に役立つものをつくりたいと考えておりまして、先ほど申しました通訳正確性の実証的な研究の過程で実務上どのような点が問題になるかというようなことも検討いたしまして、その結果をこのマニュアルにも反映させたいというふうに考えております。  今までの作業は以上のとおりでございます。
  29. 岡村政府委員(岡村泰孝)

    ○岡村政府委員 法務省刑事局におきましても、刑事事件の通訳人に関しまするいろいろな問題につきまして、諸外国におきます制度あるいはその運用などを勘案いたしまして、どういう制度あるいはどういう運用にすればいいのかということを考えていく必要があるというふうに思っておるところでございます。現に検討も行っているところでございます。  具体的に申し上げますと、実情調査のために捜査段階、公判段階におきます通訳人の選定方法とその運用上の問題点ということにつきまして、外国人関係の事件を多く取り扱っております東京地検に調査検討を依頼いたしておるところでございます。また、諸外国におきます法廷通訳制度あるいはその運用の実情といった事柄につきましても、現在調査中でございます。
  30. 古川説明員(古川定昭)

    ○古川説明員 警察におきましては、まず第一に通訳体制の充実強化についてでございますが、英語については当然のことながら、特に国際捜査研修所の語学研修等を強化いたしまして、通訳需要の多いタガログ語、これはフィリピンの現地語でございますが、これにつきまして年間、大変少ないのですが、十人程度今後教養を実施していきたいということで、近々実施に移すことになっております。  それから二つ目は、通訳を介した取り調べにおける適正手続の推進の問題でございますが、やはり国際捜査研修所の捜査実務課程等におきまして、外国人被疑者に対する通訳を介した取り調べに特有な配意事項がいろいろあるわけですが、こういうものにつきまして、一つのテキストのようなものを用いて指導、教養を徹底しているというようなことでございます。  それから三つ目は、私ども内部の必要性ではありますけれども、国際捜査体制の強化という観点から、捜査体制を強化し、真実の解明に努めるという観点で全国的に指導しているわけでございますが、特に警視庁におきまして本年一月に国際捜査課を発足させて、体制の強化に努めておるというようなことでございます。
  31. 保岡委員(保岡興治)

    保岡委員 まだ質問を多少残したのですが、時間でございますので、これで質問をとりあえず次に譲って終わりたいと思いますけれども、この間の二月十九日の新聞で見たのですけれども、またテレビでも放映していましたが、韓国人の留学生が何か家に忍び込んで女性に乱暴したということであったが、鑑定の結果無罪である、心神喪失で無罪であるということが判決にあったと聞いておるのです。弁護人の主張では、日本語がほとんど理解できない被告人から通訳をつけずに聴取された自白調書に基づく鑑定で、そのために判断を捜査段階で誤ったのではないか、こういう指摘もあったわけで、これは捜査当局としてはそれなりに一生懸命捜査もされて、間違いない起訴と公判の維持ということで、お立場からすればそういうことかもしれません、時間がないからもう突っ込みませんけれども。  しかしながら、やはりこういう片言しか、日常語しか話せない、韓国で一年日本語を勉強してこちらに来て、日本語を勉強するためにやってきての事件なわけです。聞いてみると、日常会話はできるということで、日本語で尋問して日本語で調書をとった、通訳をつけなかったということは事実のようです。しかし、私がこれだけ英語を勉強してきて、今アメリカ捜査官に英語で尋問されて私に英語で答えろと言われても、私ですらなかなか大変だというものを、一学生に通訳をつけないでやるということが果たしていいのか、やはり外から見るとそういう疑問も出てくるわけです。だから、やはり犯罪を犯した外国人あるいは犯罪を犯した被告人法廷でのいろいろな感じ方、思い、そういったものは、自分が逆にその場に置かれた場合を考えるともっと切実にわかるのじゃないか、私自身もそう思ってこの質問をしているわけです。  これは法廷通訳だけの問題じゃなくて、日本通訳制度一般の問題である。お役所としても二千人ぐらい毎年外国語の研修をお役人にしているという人事院のこの間のお話でしたし、また、文部省としてもいろいろ一般外国語教育あるいはその他の社会科の教育、いろんな課程で、国際化の中でいろいろ教育のあり方を再検討しておられるというお話でしたけれども、私は専門の通訳学みたいなのがあると思うのです。そうしてまたそういったことを研究することも必要だと思うし、またそういう研究部門とあわせて専門的に通訳を養成する専門大学、こういったものが日本としては必要で、企業から委託を受ける、大学卒業者を二年ぐらいそういうところで研修してさらに社会に出す、あるいは役所から委託を受けて民間の専門家が一般的な通訳の基礎的な素養というものはそこでしっかり養成する、こういったことは二十一世紀の大学のあり方として専門大学というものを検討すべき時期に来ているというこの間の文部省のお答えでした。そういったことも含めてきょうは聞きたかったのですが、しょせん時間がありませんのでそこまで行きませんでしたが、この間指摘した点をその後具体的にどうやっているか、次の機会に聞きたいと思うのです。これは具体的に動いていかなければならぬ問題です。関係通訳や役所の関係の人や企業やいろんな人に意見をどんどん聞いて、そして進めていく課題だと思うので、そういうことを進めていただきたいわけです。そのことについてはきょうお答えを求める時間すらありませんでしたが、その点をお願いしておいて、次に譲って、質問を終わりたいと思います。きょうはありがとうございました。
  32. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 稲葉誠一君。
  33. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 法務大臣が就任以来在日外国人に対しまする非常に温かい配慮あるいは入管行政に対して適切な指導をされておりますことをお聞きいたしまして、私は敬意を表する次第でございます。  きのうの法務大臣所信表明をお聞きいたしまして、その中で今の外国人登録法の関連につきましてこういうふうに述べておられるわけですね。「なお、さき国会成立いたしました外国人登録法の一部改正につきましては、国会での御審議経緯等を踏まえつつ、実施へ向けて鋭意その準備を行っているところであります。」こういうふうに述べておられますので、まず「実施へ向けて鋭意その準備」というのは具体的にどういうことを言っておられるのか。例えば政令の問題、省令の問題、施行期日の問題、いろんな問題があると思うのですが、そこら辺について御説明をお願いしたいと思います。
  34. 熊谷政府委員(熊谷直博)

    ○熊谷政府委員 外国人登録法の一部を改正する法律、この法律の施行期日を昭和六十三年六月一日と定める政令及び外国人登録法の指紋に関する政令の一部を改正する政令、この二本の政令が去る二月二日に公布されたわけでございますが、外国人登録法施行規則の一部を改正する法務省令及び指紋押捺規則の一部を改正する法務省令も近日中に制定をし、公布する予定でございます。  なお、調製作業その他登録作業については各市町村等にもやっていただくことになっておるわけでございますので、市区町村の窓口での具体的事務取り扱いについても定めまして、新年度早々にも都道府県それから市区町村職員を対象にいたしまして事務研修会を開催する予定でございます。
  35. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 ここに「国会での御審議経緯等を踏まえつつ、」とありますが、これは具体的にどういうことを言っておるわけですか。ただ再度の指紋は行わなくていいということだけなら、これは法案内容ですから、そんなことを言っているわけではないので、ここに言っていることはどういうことを言っているわけですか。
  36. 熊谷政府委員(熊谷直博)

    ○熊谷政府委員 国会での御審議の際に、前大臣、それから事務当局からお答え申し上げましたような幾つかの御答弁がございます。それと附帯決議におきまして述べられておりますような諸点でございます。
  37. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 それはそれに違いないのだけれども、だから具体的にどういうことなのかと聞いているわけですよ、主な点を。それは全部やると一時間全部とってしまいますから、主な点だけで結構です。それがどういうふうに政令なり省令の中に生かされているのかということです。
  38. 黒木説明員(黒木忠正)

    ○黒木説明員 法案審議の過程におきまして問題になりましたのは、一つは指紋押捺拒否者の取り扱いでございますけれども、その中で、今度の改正の中で私ども今省令を検討しているわけでございますが、省令の中で確認期間、通常五年と定められている人があるわけでございますが、今度の改正によりまして、在留の資格が不明確であるとか指紋押捺していないというような理由によりまして、指紋を押してない人につきましては確認の期間を短縮する、その短縮の期間は省令に委任するという法改正であったわけでございますが、国会での御審議などを踏まえまして、その省令の中におきましては、在留の資格が確認されていない者については確認期間を一年にするとか、それから一時庇護のための上陸の許可を受けている人は二年とするとか、それから在留期間が一年末満のために指紋を押していない人については確認の期間を一年とするとか、疾病その他の理由によりまして本人が出頭できずに指紋を押してない人、これにつきましてはその健康状態等を勘案しまして一年ないし四年というふうに定めるとか、それから指紋押捺拒否者につきましては期間を二年とするというふうな御議論を踏まえての内容を検討しておるということでございます。
  39. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 黒木さんは本当の専門家ですから一番詳しいのだと思いますが、あなたも、それから入管局長も御存じだと思うのですが、今、ある判決が中旬に名古屋で出ます。その判決に影響があるようなことは私もしゃべりたくないものですから、司法権独立ですからここでどうしゃべったってそれが影響することはないと思いますけれども、その点を配慮しながら聞くのですが、この中で、入管局に対して裁判所から照会がありましたね。これは御案内のとおりです。その前に、なぜこういう照会をするかということの理由づけとしてこういうことがその中で出てきているわけでしょう。「新規登録の後のいわゆる切りかえ交付などの指紋押捺について、その制度を設けた必要性及び合理性に焦点を当て、これと昭和六十二年四月二十二日最高裁大法廷判決との整合性を考慮しつつ主張立証を進められたい」というのがそこで出てきて、それに基づいて照会が法務省へ来ているわけです。そこで法務省が回答している、こういうわけです。これは黒木さん、自分であなたが原稿を書かれたのかどうか知らぬけれども、あなたが一番詳しいわけだが、ここに出ておる「昭和六十二年四月二十二日最高裁大法廷判決との整合性を考慮しつつ」、こういう意味はどういう意味なんですか、これは。——どっちでもいいけれども
  40. 黒木説明員(黒木忠正)

    ○黒木説明員 裁判所の方の御趣旨がどうであるのか、ちょっと私そんたくして申し上げるわけですけれども、結局昨年四月の最高裁判決というものが、その人権と申しますか、個人的権利を制限するについて合理的必要性があるかないかというところが争点になったわけでございますが、外国人登録法に定める指紋押捺も外国人のそういう基本的人権制約するものである点においては同じであるということでございまして、そういった趣旨からの裁判所の照会であったというふうに理解しております。
  41. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 これは私もそこまでは細かく通告してなかったわけなものですから、あるいはあなたの方で、局長の方で十分準備ができておらないのかもわかりませんが、問題は今言った大法廷の判決との整合性で、それに基づいて三点に分けて法務省当局に対して照会していますね。これは御案内のとおりでしょう。それに対してあなたの方としてはお答えをしているわけですが、問題は、私の聞きたいことは第三の点に関連することです。  ということは、「改正法施行前に行われた再度目の指紋押捺拒否については、従前と同様に一律に処罰することとしているが、その必要性、合理性はどこにあるのか。」こういう第三の照会事項ですね。これに対するあなた方のお答えは私のところにありますけれども、これはあれですね、普通の場合でいけば刑の廃止になったわけですから免訴になるわけですね。ところが、経過規定を設けて従前の例によるという形にしたわけでしょう。そこに今の名古屋の高等裁判所が重点を当てておられるようですね。くどいようですが、私も裁判に影響を与えるようなことは言いたくありませんから、言葉を多少濁して聞いておるわけです。  そこで、そのあなたの回答を見ると、故意に現行法に違反しその状態を踏襲している者については改正後の違反を不問に付することは云々ということになっていますね。そうすると、ここに書いてある「故意に現行法に違反し」というのはちょっと私よくわからないのですよ。指紋押捺拒否でしょう。不携帯や何かだったら過失もあれなんでしょうけれども、指紋押捺拒否の場合でもここに特に「故意に」というふうに書いたのは、どういう意味があるわけですか。
  42. 黒木説明員(黒木忠正)

    ○黒木説明員 この場合はすべてまさしく故意であるということを言っただけでございまして、意図的にしたということを言っているわけでございます。
  43. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 言うわけでございますとございませんと、ちょっと最後がはっきりしなかった、語尾が。
  44. 黒木説明員(黒木忠正)

    ○黒木説明員 という趣旨で回答したということでございます。
  45. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、ここでの問題は、こういう経過規定が大法廷判決との関連で、人権の制約に関連をしてそれだけの必要性、合理性があるかということが今まさに問われているわけですね。そしてそれが今月中にあるわけですからね。  そこで、質問を私はちょっと変えるのですけれども、この法案が、登録法の一部改正ができましたね。一回押捺した人がその後にしなかったと言って、そしてこの法律ができた。それで、できてからは、六月一日からはもう犯罪にならないわけですな。そうすると、現在のところはそれに関連をしては捜査し、処罰を求めていることはないというふうに私は聞いておるのですが、そういうふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
  46. 岡村政府委員(岡村泰孝)

    ○岡村政府委員 本件改正に関しましては、先ほど来御指摘のありましたように経過規定が設けられておりますので、従前の行為につきましてはなお処罰することが可能であるわけでございます。現実の問題といたしまして、改正法が公布されましたのが昨年の九月二十六日でございます。それ以後指紋押捺拒否事件を受理した例は、今のところはございません。処理の方でございますが、公布日以後処理した例は、起訴猶予にいたしましたのが一件ございます。また、略式請求したのが一件ございます。  以上であります。
  47. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 それは九月二十六日以前に違反事実があったかどうかということの問題だ、こう思うのですが、そこまでわかっておられますか。
  48. 岡村政府委員(岡村泰孝)

    ○岡村政府委員 処分いたしました二件につきましては、いずれも公布日であります昭和六十二年九月二十六日以前に検察として受理をいたしておった事件でございます。
  49. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、昭和六十二年九月二十六日以降につきましては、刑事上の処分というのは大体そういう方向に行っているわけですね。それはそうですよね。法律ができて、公布して、施行期日をいつにするかということがまだ決まらなかったにしても、公布されて法律ができているわけですから、刑事事件としてはあれしてないわけですよ。ところが、再入国の許可の場合には依然としてそういうのがある。それは前のものでもですよ。公布前のものあるいは公布後についてもですが、許可しないのですよね。これは私はちょっと理屈が、それとの比較においてもおかしいのではないかと思うのです。  そこで、一つちょっとさかのぼってお聞きします。聞き忘れたのですけれども、これはことしの六月一日ではなくて、最初は七月一日じゃなかったのじゃないですか。それがどうして六月一日になったのでしょうか。
  50. 黒木説明員(黒木忠正)

    ○黒木説明員 法律が公布されましたころ、私どもといたしましては七月一日を大体前提に考えておったわけでございますが、今度の改正改正でございます。改正であれば一日でも早い方がよろしかろうということで、鋭意内部的に努力いたしまして、一カ月繰り上げて六月一日になったといういきさつがございます。
  51. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、去年の九月二十六日の公布ですから、もっと早くやろうと思えばできたのじゃないですか。あなたの方から言わせれば、こういう点がこうだこうだ、いろいろ理屈を並べて、理屈を並べてと言っては悪いけれども、いろいろな理論を述べて、いやこれはもうやむを得なかったんだというようなことを言うのだと思うのですけれどもね。だから、そこで今法務省刑事局長が言ったように、刑事事件としてはこれはやってないのですよ。そこで、再入国の許可のときだけに、これはいわゆる報復的な処分というのですが、報復的な処分で不許可にしているのですよ。そうすると、公布以後に、一回指紋押捺していてその後拒否したという人について再入国を許可した例はあるのですか。
  52. 熊谷政府委員(熊谷直博)

    ○熊谷政府委員 これはございません。
  53. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 だからおかしいのですよ、大臣。いいですか、刑事事件としてはないのですよ。ないのだけれども、行政処分として依然としてやっているのですよ。こういうのを報復的行政処分というのですよ。報復的と言うと、いや違うのだと言うかもわからぬけれども、我々はそういうふうに言うのです。大臣もそういう点、行政官としてよく御存じだと思うのですが。  そこで考えられてまいりますのは、今言った経過規定といいますか、そこの必要性、合理性、このことが今問われていまして、今月中にその結論がある程度出るのですよ。そういうことも踏まえながら、それはまだ内容がわかりませんからあれですけれども、そうなってまいりますと、この法律公布後は六月一日前であっても事案の内容によっては再入国の許可というものも当然与えてもいいではないか。これがケース・バイ・ケースによって当然考えられてくる、それが法の運用ではないか、こういうふうに私は思うのですよ。それを一律に機械的に形式的にやるというのは筋が通らない、こう思うのです。  私、具体的事案について聞いているわけじゃないですよ。その前に一般論として、ケース・バイ・ケース、具体的な事案に応じて、そして今言った最高裁大法廷との整合性や何かを考慮しながら十分温かい配慮といいますか、そういうものをしていくべきではないか、こういうのが私の考え方ですが、それに対する大臣の、前向きといいますか、そういう御答弁をぜひお願いをしたい、こう思うわけです。
  54. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    ○林田国務大臣 稲葉先生は物すごい法律の専門家ですので、専門家でない私としましてはなかなか答弁がしにくいのでございますが、ただいまもお話がありましたように、昨年の九月二十六日に公布をされましてことしの六月一日に施行する、こういう予定になっておるわけでございます。そこで、現在のところはまだ現行の登録法がそのまま妥当しておるわけでございまするので、入管当局といたしましては今の法律に基づいてやらざるを得ない、そういうような見地からやっておるわけでございますが、個々の事例につきましては十分その辺のことも検討しながら対応をしておる。しかし、まだ六月まで大分日がありまするので、現行法が生きておる限りは現行法に基づかざるを得ない、こういうような次第でございます。
  55. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 それは法律家の答弁なんですよ。あなたに法律家の答弁を求めておるのではなくて、法務大臣としての運用を含めた答弁というものを私は求めている。これはケース・バイ・ケースで非常にあれなんですね。それは法律は六月一日施行だとなっておりますけれども、その前でも特段のというか、その必要性があれば当然再入国の許可を認めるのは法務大臣の裁量行為です。裁量行為ではあるけれども、いわゆる完全な自由裁量でもないのでしょうけれどもね。僕は行政法のことはよくわかりませんけれども。  例えばこういう例があるわけです。名前は申し上げませんけれども、奈良県の在日韓国人の女子大生がおられるのです。その人が六十一年一月に指紋押捺を拒否したというのですが、去年の九月にアメリカのニューヨーク州にある大学に入学をしているのです。四年間のうち半分は分校で、自分の生まれ育った以外の国の分校で学ぶことを義務づけられているということで、ニューヨーク州の本校行きを希望して本校からは受け入れの許可を得ているのですね。そこで再入国許可の申請を大阪入管に二度にわたってしたのだけれども、結局許可しないわけです。これは具体的な一つの例なんですけれども、学生さんであって、そしてアメリカの大学に入る。二年間、二年間。二年間は向こうの大学に行かなければいけない。だから、それは三月なら三月に行かないと非常に困るわけです。そういうようなわけで緊急に必要性があって再入国の許可を求めている、こういうことですよ。だから、それは六月一日まで待てと言うにしても待てないだけの、それを超える合理的な理由があり、必要性があれば、当然大臣が再入国の許可を認めてもいいと私は思うのですよ。  そういう点について、それは下の者に聞いちゃだめですよ、大臣。下の者と言っては悪いけれども、下の者に聞いちゃだめ。下の者に聞けば法律的な答えをするに決まっているのだから。現地の入管当局は困っているのですよ、こういうのがどんどん出てきますから。だから上の方でそういうようなものはケース・バイ・ケースというか、ある程度のものは認めて緩やかに運用してやりなさいよ、それが法の趣旨ではないかということを大臣の方からちゃんと指示すれば問題は解決するのですよ。それが本当の心のこもったいわゆる入管行政というか、あれではないか、私はこう思うのですね。そういう点で、恐らくこれは判決が出ちゃうと法務省としてはその点がえらいあれになる可能性がありますよ。面目がつぶれちゃうような格好になるのじゃないかと私は思うので、そこら辺のところを含めて、その原稿はだれが書いたのか知らないけれども、部下の書いた原稿はだめですよ。だめだ、それは。それは法律論で形式的なことばかり書いてあるに違いないのだから、僕は見たわけじゃないけれども。そういうのじゃないあなたの、大臣としてのひとつ配慮も含めたお答えをお願いをいたしたい、こう思うのですが。
  56. 林田国務大臣(林田悠紀夫)

    ○林田国務大臣 このケースにつきましては、私今初めて聞いたわけでありまするが、入管当局といたしましては、外国人の在留管理上重要な法律でありまする外国人登録法に違反している者に対して事前にこのような入国の保証を与えることは適当でない、こういう理由から一月二十五日にこれを不許可にしたわけであります。現在の法律が施行されておる限りは、その法を運用する者といたしましてはそれが正当なことと思うわけでありまするが、こういう問題につきましては、さらに個々のケースを十分精査いたしまして考えていかなければならない、そういう気持ちでございます。
  57. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 今おっしゃった後の方の個々のケースということで、これは十分御配慮をお願いをいたしたい、こういうふうに、これは希望をいたしておきます。  これは役人の書いた原稿はだめですよ。これを読んでいるうちはだめだなと私は思いますよ。大臣になったらば、役人の書いた原稿を読まないでひとつお願いしますわ。余り個々の法律的な細かいことはお聞きしませんから。それは政府委員に聞くわけですからね。ちょっと済みません、どうも失礼なことを申し上げまして。今の問題は今後も引き続きあれしまして、また三月中旬以降にお聞きするということにさせていただきたいというふうに思います。  そこで、別の問題に移らせていただきますが、特別養子の制度が大変な各界の要望があってできたわけですが、これは私などもこの委員会で一生懸命論議したわけです。本当はもっといろいろな角度から論議する必要があったのじゃないかと今思いますけれども、そこで、これは私、その後いろいろな方とお会いをしまして、私のところによく手紙や何か来るのですが、お会いをして聞きますと、どうもこれは制度趣旨が、もちろん技術的なあれをよくわかってないという点もあるかとも思うのですけれども、どうも厳し過ぎてあれだ、もう少し何とかならないものかというあれが相当出てきているわけですね。  そこで、お聞きいたしますのは、現在どういうような申請が出ておるのかということ、それから、具体的にそれにどう対処しているかということですね。それから、これは家庭裁判所と児童相談所との連絡的な事務の調整をやっていますね。これは二月の下旬になってやっているところが多いのですか、そこら辺のところはどうなんですか。そこら辺のところもお聞かせ願いたい、こう思うのですが。何を中心にやっておられるのか。
  58. 早川最高裁判所長官代理者(早川義郎)

    早川最高裁判所長官代理者 最初に、受理の方の概況を御説明申し上げますが、私ども、速報という形で毎月受理状況、既済状況を各家庭裁判所から報告を求めておりますが、現在判明しておりますのは一月一カ月間の状況でございます。総数におきまして四百八十件の申し立てがございました。  その内訳を見ますと、児童相談所のあっせんを経て来ているものが百十一件、それから民法法人あるいは社会福祉法人のあっせんを経ているものが合わせて十二件。結局、これら児童相談所等のあっせんを受けているものが百二十三件ですので、全体の約四分の一、それから児童相談所等の関与がないものが三百五十七件で全体の約四分の三、こういうふうな数字になっております。それから、角度を変えまして申立人と養子となる者との関係で見てみますと、一番多いのが普通養子を特別養子に切りかえてほしい、そういうものでございまして、それが二百三十四件です。四百八十件のうちの二百三十四件ですから、半数に近い数字になっております。また、申立人の配偶者の連れ子的なもの、いわゆる連れ子養子と言っていますが、これについて申し立てが七十三件出ております。両者を合わせますと三百七件、そういう数字になります。その他、里子を養子にしたいというものが八十一件、親戚の子供を養子にしたいというものが四十一件、その他が五十一件、こんなふうな割り振りになっております。  以上が現在係属している事件の内訳的なものでございます。予想されました渉外事件等は今のところほとんど出ていない。それから、既済状況はまず一カ月なものですから、現在のところ、取り下げが一件出ておる、そういう状況でございます。  それから、対処の仕方が厳しい、そういうふうな話でございましたが、実際の運用面ではまだまだ既済が出ておりませんので、これから特に連れ子養子であるとか普通養子の切りかえについてどの程度要保護要件を厳重に審査して認容あるいは棄却の審判をするか、その辺は私どもとしても非常に関心を持って見守っておるという次第でございます。そういう意味で、運用面では厳しいかどうか、これはまだ直ちに申せないかと思いますが、そもそも先生にこんなことを申し上げるのは甚だ失礼かと思いますが、特別養子制度制度自体が非常に厳しい要件を定めておりますし、慎重な審理を求めておる。例えば、要保護要件にしましても、実親との親子関係が断絶されるということですので、それにふさわしいような要件ということで、親に監護をさせるのが相当でないかあるいは著しく困難、そういったふうな要保護要件がある。それについては私どもとしましても慎重な審理をせざるを得ませんし、手続的に見ましても六カ月の試験養育を原則としておる、そういうふうなことで、勢い慎重ならざるを得ない、そういう面があることは御理解いただきたいと存じます。  それで、現在児童相談所とどんなことをやっておるかといいますと、児童相談所のあっせんを経ているものにつきましては、調査嘱託をしますとそれまでの里親等としての養育状況等についての児童票その他の取り寄せをいたしますし、そうでないものにつきましては、要保護児童であるという一応の心証を得た段階で私どもの方から児童相談所の方に調査嘱託をする。それに基づいて、児童相談所の方で養子と養親との適合性であるとかあるいは養親としての適格性、そういったものを調査して私どもの方に報告をいただく、こういうことになっております。また、試験養育期間中におきましては調査官が直接に養育上の助言指導をするということではなく、むしろそういった児童福祉上の措置に近いものにつきましては、児童相談所の方にお願いをして、その報告を受けて、私どもは司法機関としての立場からこの養子縁組を成立させたら適当かどうかというのを判断する、こういうことになるわけでございます。  現在、これからあるいは二月から三月にかけて各家裁単位で児童相談所と連絡協議会を開催しておりますが、何分にも初めての制度でございますのでいろいろ疑問点も多い、それからもっと早くやればいいじゃないかというお考えもあろうかと思いますが、少しケースが出てみないと抽象的な議論になってしまう、そういうふうなこともございまして二月ないし三月に行われている最中ということでございます。そこでの連携事項としては、児相としてもどういった事項を家庭裁判所報告したらいいのかとか試験養育中についてはどういうことをしたらいいのかとか、その他いろいろな疑問点をお互いにぶつけ合って、何分新しい制度ですのでよりよき対策を講じよう、こういうことでございます。
  59. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 これは、これに関連する方にとっては非常に切実な問題なわけですね。それで、同時に、法案ができたらすぐ実現できるのじゃないかというふうに思っていた方もおられるのじゃないかと思うのです。そういう方から見ると、六カ月のあれだとかいろいろな条件が厳しいというふうに映るのかもしれませんが、この辺のところは私もよく聞いてみたいと思っておるのですが、ただ、今お話の中にちょっと件数が出ましたが、これは皆さん方の方で予期していたよりも多い数字だということなんですか。あるいは今までのあれがずっと出てきますから最初多く出てくるのかもわかりませんけれども、基本的に厳しくするのが本来の筋なのか、できるだけこれを認める方向に行きたいというのが趣旨なのかといえば、法の趣旨からいえばできるだけ認める方向に行くというのが法の趣旨ではないのでしょうか。これはどういうふうになるのでしょうか。
  60. 早川最高裁判所長官代理者(早川義郎)

    早川最高裁判所長官代理者 最初に、この四百八十件という数字が私どもの予想を超えたものかどうか、その点でございますが、先ほども説明しましたように、普通養子からの特別養子への切りかえ等が出てまいりました。これなどは、制度の発足を待っていた人たち、あるいは従前特別養子制度がなかったために普通養子で養子縁組をしたものが特別養子制度ができたために切りかえを求めてきている、こういうものですので、一時的なものが多かろうと存じますし、その他のものにつきましても制度の発足を待っていた、そういうことでございますので、この数字がずっと続くというふうには私ども受けとめておりません。  私どもが一体どんなふうな予想をしておったのかということになりますと、普通養子縁組許可事件の認容件数は年間約二千六百件程度でございます。そのうち六歳未満のものは千百件程度、これが過去の数字でございます。そういった数字あるいはさらにそのうちの要保護児童に該当する可能性のあるものについて見ますと、里親との養子縁組が昭和六十一年度の数字で申しまして二百八十件、あるいは養子が施設入所歴を有するものが約二百件、こういう数字もありましたので、年間数百件程度かなという感じを持っておったわけでございます。ただ、未成年養子でありましても、連れ子養子であるとか孫養子、これにつきましては家庭裁判所の許可は要らないということになっておりましたので、それが未成年養子のうちの相当数でございましたので、こういった連れ子養子や何かについてはどの程度出るか、実は私どもも十分な予測をしかねていたところでございます。  法の建前がどうかという点につきましては、やはり親子関係を断絶するという重大な効果と、また一たん養子縁組をしますと離縁が認められない、そういうことになりますと、やはり要保護要件の認定というものは相当慎重にならざるを得ないのではないかと私どもでは考えております。  以上でございます。
  61. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 特別養子制度がせっかくできたのですから、非常に期待している人が多いわけですから、これに背かないようにぜひ運用をお願いをいたしたい、こういうふうに考えております。  それから、もう一つ民事関係で私はどうも疑問に思いますのは、家庭裁判所と通常裁判所との関係やその他あるのですが、離婚訴訟におきます裁判所の和解の問題、これがよくわからないのですよ。これはたまたま「判例タイムズ」にある論文が載ったものですから私読んでみたのですが、これは私も考えているとおりだと思うのです。ただ、率直な話、裁判所の和解とかあるいは家庭裁判所の調停のときに、調停離婚ということになりますと戸籍謄本にこれは載りますから、そうするとやはり戸籍謄本では協議離婚というふうにしてもらいたいという希望が多い場合もありますし、いろいろな問題がありまして、純粋な法律論だけではいかないか、こう思うのですが、例えば普通裁判所で離婚訴訟が起きますね、そうしたときに、そこで結局和解ということになる場合がある。そうなってくると、裁判所で和解をするときの和解の書き方が、ここで離婚するというのではなくて、どういう書き方になりますか、速やかに離婚届をするとか離婚の意思表示をするとか、いろいろ書き方があると思うのですが、そうすると不受理届が出るわけですね。出た場合には裁判所の和解の効力がなくなってしまう、こういうことになるわけですか。  一応それをお尋ねしますが、そうなってくるとよくわからないのは、当事者からの話があって、それじゃ困る、せっかく裁判所で和解ができて離婚になったのに、不受理届が出てそれがパアになってしまっては困るからというので、それじゃ実は私が家庭裁判所裁判官も兼ねておりますから、家裁の方に回しましょう、それで調停にしましょう、それで調停員を呼ぶといっても、二人なかなかすぐ見つからないから、じゃ単独調停でやりましょうというようなことで、そこで兼ねているところはそういう形でやる。そうすると調停で離婚になる。そうなってくると、戸籍役場へやるのは当事者がやるのではなくて職権で送付するわけでしょう。そこで効力が発生するわけですね。そうすると裁判所の和解だけが効力が、和解調書をつくってもだめだ、調停ならばいいけれども、和解ならば、それは不受理届が出てきて効力がなくなってしまうことも考えられるというのはどうもよくわからない。  最初段階のころは、法務省民事局でも和解離婚というのを認めておったのじゃないのですか。和解即調停だということを言っているのもあるのですよね。そういう言い方をしているところもありますね。例えば、これは古いものです。昭和三十二年の六月二十八日の決議、それを受けて十月三十日に法務省民事局変更指示というのが出ていますね。そうすると、その理由では、「本間公訴中、和解が成立したのであるから、和解離婚すなわち調停離婚である」という書き方をしているわけですよ。これが後で変わってきたのでしょうけれども……。違いますか、これは。ああ理由か、それは局長意見じゃないですね、理由ですね。だからそういう理由はとにかく法務局の方から上がってきているわけですね、結論は別として。そうすると、最初のころはそうでなくて、何かあれだったものが、昭和三十五年の十二月二十八日付で変わったというのはどういう経過なんですか。
  62. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    ○藤井(正)政府委員 ただいまお話のございましたように、法務省の先例によりますと、昭和二十五年当時は、裁判所の和解で離婚が成立したときには調停離婚という扱いでもって受理をしていたようでございますが、これが何ゆえにこのような扱いがされていたのかということはちょっとつまびらかにすることができません。裁判所におきましてそういう和解を成立させたということを尊重して、機能的に類似している調停離婚に準じる扱いをしたものかと考えられます。しかしながら、人事訴訟というものが特別訴訟手続として特殊な地位を占めておりまして、そこで扱う対象、これは身分関係という任意の処分を許さない事項であるということから、裁判所の和解による離婚は認められないという当時の通説的な考え方に基づいて法務省の先例を変更したものというふうに考えられます。
  63. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 だから、そうすると和解の効力は判決の効力と同じだというのでしょう。地裁で判決した場合に、判決が確定してからも不受理届を出せるのですか。出せないでしょう。それならば、和解の効力は判決の効力と同じだというなら、判決の効力が確定したら不受理届を出せないなら、和解の場合だって不受理届を出せないことになるのじゃないですか。そこはどう違うのですか。
  64. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    ○藤井(正)政府委員 離婚は身分上の関係を形成するものでございますので、そういうのは実体上、手続上の要件というものがきちんと決められておりますが、改めて先生に申し上げるまでもなく、民法及び家事審判法におきまして、協議離婚、それから判決による離婚、調停離婚、審判離婚、この四種類が決められておるわけでございます。  和解につきましては、人事訴訟手続法でもって、人事訴訟においては民事訴訟法におけるある種の規定の適用を排除しておりまして、大体弁論主義に基礎を置くと思われるようなものあるいは当事者処分権主義に基礎を置くと思われるようなものにつきましてある程度の規定を排除いたしておりまして、請求の認諾に関する規定は適用されない。といいますことは、婚姻関係を解消させる、破壊する方向での権利の処分というものを認めないという建前であろうかと思われます。和解につきましても、やはり離婚をするという形での和解は、これと同様な考え方でもって、離婚訴訟においては和解ができないのだという考え方がとられているというふうに考えられます。したがいまして、こういう和解ができましても判決と同じ効力を持つというふうには言えないのではなかろうかと考えております。
  65. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 それは私はわかっているのです。けれども、田舎の、田舎と言ったら悪いけれども、兼務しているところではみんなそういうふうにやっているのじゃないですか。私が兼務していますから家裁でやりましょうと言って調停でやって、調停はどうなんです、単独調停もできるのでしょう。それでやっているのじゃないですか。東京の場合、地方裁判所と家庭裁判所と兼務していないのでしょう。兼務しているのですか。兼務していないですね。そこはできないのでしょう。どちらがあれなんですかね、ちょっとよくわかりませんが。  だから、それならば本来地方裁判所で離婚の裁判を認めること自身がどうなんですかね。それは家庭裁判所で、審判でなくて本裁判も認めるようなことにはできないのですか。それはどこかぐあいが悪いのですか、そういうやり方は。
  66. 藤井(正)政府委員(藤井正雄)

    ○藤井(正)政府委員 これは、一つには地方裁判所と家庭裁判所との職務の分け方、職分管轄にも関係してこようかと思います。訴訟前の調停あるいは審判は、当事者に対する後見的機能あるいは科学的機能を備えた家庭裁判所において取り扱わせるのが相当であり、訴訟という段階になればこれは地方裁判所が相当であるというふうな分け方をされているのじゃなかろうかと考えます。訴訟事件につきましても、これはいかなる段階においても調停に付することが認められておりますので、その手続を利用して家庭裁判所の調停に付することによって、家庭裁判所の独特の機能を活用した調停でもって、婚姻関係を維持するかあるいは解消に持ち込むか、そこの妥当な判断、調停における妥当な判断が得られるものという考え方に基づいてそういう仕組みができ上がっているのではなかろうかというふうに考えます。
  67. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 民事局長のおっしゃるとおりなんですよ。なかろうかじゃなくてそのとおりなんですよね、それは。  ただ問題は、例えば今刑事事件で、家庭裁判所で公開の法廷でやるというのは、児童福祉法違反と売防法と、それから一部の労働基準法違反とか職業安定法違反なんかはやりますね。それは控訴した場合はどうなんですか。控訴した場合は一緒でしょう。だからこの分け方はいろいろ問題はあるにしても、この分け方がどういう理論でどういう根拠でこういうふうに地方裁判所と家庭裁判所とが分けられてきたのか、ちょっとよくわかりませんけれども、これはいずれ定員法の問題の中でゆっくりやりたいと思います。  だから裁判上の和解のとき、離婚のときは、当事者としてはそこでもう終わったというふうに大体思うのじゃないですか。それが当たり前な常識じゃないですか。それが不受理届が出てだめだというならば、そういうふうな和解を初めからやらない方がいいのじゃないですか。当事者に、ここで決まってもだめなんですよ、だめじゃないけれどもだめになることもあるのですよと最初からちゃんと説明しておいた方がいいのじゃないか。それでは家裁へ回してくれということになるでしょう、初めから。地方の場合はいいのですよ。東京の場合なんかは問題なんですよ、ちゃんと分かれているから、兼務していないから。兼務しているところと兼務していないところでやり方が違ってくるんじゃないですか、安定性が変わってくるじゃないですか。それはおかしいのじゃないですか。どこかに問題があるのですよ、これは。私にもよくわかりませんけれども。  それで、この書かれた人は、「戸籍事務の取り扱いも裁判離婚としてその届け出を受理すべく、現行法務省民事局長の回答は改めらるべきが相当であると思料する。」これは個人的な意見ですけれども、こう言っておられる。この方がはっきりしているのじゃないですか。
  68. 早川最高裁判所長官代理者(早川義郎)

    早川最高裁判所長官代理者 正面からのお答えになるかどうかわかりませんが、三十二年の法務省民事局長の回答以来、直接離婚の効果を生ずるという意味での裁判上の和解は認められない、そういうふうな扱いになっておりまして、以来、裁判所の方も戸籍事務の取り扱いとの抵触を避けるために、裁判上の和解と申しましても原告と被告とが和解する、そういう形ではなしに、何と申しますか、協議離婚をすることの合意をする、そして離婚届をその場で作成いたしまして、被告は原告に対して離婚届を委託する、そういう形で協議離婚の届け出が受理されるような和解をしておるわけでございます。それで、実務におきましては、原告はすぐ戸籍管掌者の方に届け出を出しますので、それより先回りをして被告の方が翻意をして不受理願を出すというケースはそう多くはない。また、もしそういうことが頻繁に起こるようでしたら、やはりもっと、裁判上の和解で当事者の合意が十分確認されてなかったということにもなるのではないかという感じもいたすわけです。  何分にもこういうふうな婚姻関係の当事者の同意というものは割合に不安定なものでございまして、その場では承諾したけれどもよく考えてやはり嫌だというふうなことになる、そういう場合も間々ありますので、やはり十分な合意の形成の上でこういう裁判上の和解ができれば、和解ができたけれども不受理願によって結局効力を発揮しないということは少ないのではないかと考えております。
  69. 稲葉(誠)委員(稲葉誠一)

    ○稲葉(誠)委員 確かに当事者は不安定な情緒ですからね。それならば調停のときも同じことじゃないですか。調停のときも不安定なまま合意しちゃって、それはちゃんともう動かせない、和解の場合だけ動かせるというのはおかしな話じゃないのですか。そう思いますよ、これは。私はどうもよくわからないですな。だから兼務しているところと兼務していないところと違うのですよ、おかしいのじゃないですか。  そこで、時間がなくなってしまったものですから、あと刑事訴訟法の問題とかいろいろ聞きたかったのですが、私が刑事訴訟法で聞きたいと思うことはこういうことなんです。きょうここでというより、時間がなくなりましたのであれですが、こういうことなんですね。  一つは、刑事訴訟法の改正が一体どのようにして行われたのか。ということは、どういう手続で何日くらいかかってだれが責任者になって行われたのかということがよくわからないのですね。ほかの法律なんか、いわば一夜漬けみたいで作成されたのもあるのです。作成というのは、国会を通ったという意味じゃなくて立案がですよ。いろいろ先輩から聞きますと、あのときは徹夜してやったんだとかなんとか言っていろいろな話を聞くのですが、わからない。それから、そのときに一体どういう議論があったのか。これは調べればわかるのかもわかりませんが、国会の中でじゃないですよ、どういう議論があったのか。  例えば私が調べた範囲では、第一条の「目的」が、今公共のあれの方が上になっているでしょう。人権が後になっているでしょう。あれは人権の方がたしか先に出ていたのですよ。それが二、三回目か最後のころになって変わったのですよ。公共の方が上になってきたのですね。そうすると、刑事訴訟法は一体公共の目的か何かを貫徹するということはどういう必要があるのかな、そこまで一体刑事訴訟法は考える必要があるのかないのかなという議論もあるのですね。なぜそんなことを私が言うかというと、ある裁判官が言っておられるのですね。名前は申し上げませんけれども、新刑訴の何といいますか実践者の方ですが、そう言っておられるのです。そういうのが異論があります。  それから、問題となってくるのはそこばかりじゃなくて、中で例えば証拠開示の問題などについて、各種の帳簿、伝票、手紙など証拠物の点、これはどういうふうに今実際に運用されているのかというような問題。特に規則の百七十八の十一で、最高裁の規則制定諮問委員会で云々という話があるのですが、一部に言われているのですが、これも事実なのかどうかよくわかりません。  それから、三百二十一条一項二号後段の書面の問題。これは確かに当事者主義であって、だから私も弁護人も甘えがあってはいかぬと思うのです。本当は、当事者が対等ならば弁護人も甘えちゃいけないのですよ。実際に裁判の世界の中では、弁護人が甘えている場合も相当あります。私もそれは認めますが、いろいろな点があります。  それから、あとは逮捕、勾留されている被疑者の取り調べの問題ですね。法百九十八条一項ただし書きですか。私の疑問は、例えば代用監獄でもどこでもいいのですが、入っている。これは取り調べだから出てこいと言えば、いや自分は憲法上黙秘権があるんだ、憲法上黙秘権があるのか供述拒否権があるのか、単なる反射的にそういう地位を持っているだけで反射的利益なのかよくわかりませんが、だから自分は供述を拒否するんだと言って頑張っているときに、おまえだめだ、出てこいと言って看守の人たちが、巡査たちが無理に引っ張っていって取り調べ官の前へ連れていくことがどういう法律上の根拠でできるのか。受忍義務だという説もあるのですけれども、ちょっとよくわからないですね。それで、そこへ行って、いや私は黙秘権を行使しますと言ったら帰っていいのかどうかですね。私は黙秘権を行使します、帰るといったってうちへ帰るわけじゃないから房へ帰るのでしょうけれども、帰っていいのかどうか、ここら辺のところどうもよくわからないのです。いずれにしても、そういうようないろいろな問題がたくさんあります。  殊に調書のとり方の問題ですね。これは問題だと思うのですよ。確かに、私はもう前から言っているのですけれども、未必の故意のとり方なんということはあなた、捜査官の法律的頭脳と被疑者なり何なりの素人の頭脳との闘いですからね。そうでしょう。刺しどころによってはその被害者が死ぬのではなかろうかと思いましたなんて、そんなこと調べられた人が答弁するわけないでしょうが。それは検事の作文、検事ばかりじゃないけれども一つの作文なわけですね。作文という意味は、問いと答えが出ていれば作文じゃないですけれども、問いがないのですから、答えだけずらっと並んでいるのですから作文だ、こういうふうになってくるんじゃないか。そこら辺のところに問題があるんじゃないかとか、いろいろな問題があると思うのですね。  これは今松尾先生が「刑事訴訟法の再検討」という中でいろいろ言われているわけですよ。そういう点をこの前一遍聞きましたけれども、十分聞かなければいけない。そういう全体の中に捜査のあり方ということが出てくるわけですからね。そこら辺のところは今後の大きな課題だと思います。いずれ日を改めましてお聞きしたいと思うのです。  それから、大変申しわけなかったのですが、運輸省から来ていただいたのは、自賠責の認定その他の問題の中で特に、きょうでなくていいのですが、自賠責と政府保障の引き逃げだとか無保険のものがありますね。それとの違いが余りに大き過ぎるのですね。例えばそれは、まず片方は期間が長期化しますね。非常に長いですね。片方は一カ月ぐらい、片方は一年以上。そうすると、過失相殺の適用が非常に違いますね。自賠責はほとんど適用しない、片方はうんと適用する。それから好意同乗者に対する減額とその他も非常に違うとか、それから自由診療の場合の健保の点数への換算ですか、片方は自由診療を認めるけれども片方は認めないとか、いろいろな問題がありますね。それが政府保障の場合、却下した場合に、それが一体行政処分なのかどうかというのですね。これはなかなかよくわからないですよ。今ここでというわけじゃないですよ、時間がありませんから。  それと、不服申し立ての困難さですね。行政処分でないのか、あるいは行政処分と考えるのか。これは昭和四十八年十月二日の大阪地裁の判例があります。「判例時報」七百四十七号五十五ページがありますから、調べておいていただきたいです。  それから、自賠責の金額がもっと、例えば今は月額男が十三万六千八百円、女が十二万一千百円、こういうふうになっていますね。これが一体どこから出てきたのか。それはその後六十一年六月、それから六十二年六月にも賃金センサスが出ているわけですからね。そうなってくると、それとの絡みでこれは当然変わってこなければいけないのじゃないか。そうすると、六十一年八月からこの数字は適用になっているのだとしても、それは新しい数字によって変わってこなければいけないのじゃないか。これは余り長く据え置かれ過ぎているのではないか、こういうふうな疑問があるわけですね。  より根本的に言うと、そういうふうな査定の仕方の中で一体どれが一番正しいのか、よくわからないのですよ。これは平均給与でいくのか、あるいは全労働者の平均でいくのか。ライプニッツでいくのかとかホフマンでいくのかとか、いろいろ方法があるわけでしょう。それが一体どれが一番正しいのか、これは最高裁でも統一してないわけでしょう。統一してないのは、私はいいと思うのですよ。下から具体的に上がってくるのならば、そういう意見があるならばまたあれかもわかりませんけれども、あるやり方をやってきたものを、最高裁の中で、それよりもこの方が大きく取れるからといって大きく取れるという判決をするわけにいきませんわね。求めてないものに判決するわけにいきませんから。いろいろあると思うのですけれども、ここら辺のところがごたごたなんですよ。だから、ここら辺のところは十分研究しておいていただいて、別のときにゆっくりといいますか、質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。  きょうはすみませんでした。時間が十分うまく配分ができなくて、申しわけなかったと思っておりますが、きょうはこれで終わらせていただきます。
  70. 戸沢委員長(戸沢政方)

    戸沢委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかつた〕