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加戸政府委員 この「
教育方法等の多様化に対応する
学校施設の在り方について」は、
昭和六十年の八月にスタートいたしまして、各般の学識経験者、
学校建築関係の有識者等によりまして調査研究をお願いしたわけでございまして、約三年近くの間御
審議をいただいたわけでございます。
基本的な
考え方としましては、四つの視点からこの
学校施設がどうあればいいのかということを御検討いただいたわけでございます。
一つが、これからの
児童生徒の個性や創造性の育成等を重視した、言うなれば多様な
教育への対応ということで、これからの一種の新しい布石をしくというような
意味の観点からの御討議でございます。
それから二番目が、情報化社会と言われております現在におきまして、
学校教育の中でもコンピューターの利用というのがどんどんふえてまいるわけでございますので、コンピューター等を
学校に導入する場合の
学校条件、環境がどうあればいいのかという問題が第二点でございます。
第三番目が、これは心の問題でございまして、
児童生徒の心身の豊かな成長を促す環境づくりということで、どういうような
学校環境であれば子供たちの心身形成に資するのかという視点から、
学校を学習の場というよりむしろ生活の場としての視点からとらえてみようということでございます。
それから第四番目が、生涯学習社会になってまいりますと、これからは地域社会に開放された形で
学校を活用していく必要がある。そういう
意味で、生涯学習、社会活動の場として
学校が果たす役割を重視していきたい。こういった四つの視点におきまして御検討いただいたわけでございます。
御提言をいただきました
一つが、
教育方法の多様化に対応する
学校施設のあり方といたしまして、
教育方法の多様化としましてはいろいろな形がございますが、
一つの例としましては、オープンスペースあるいは多
目的スペースの導入を図りまして、学習
指導の個別化、個性化を目標とする学習システムにおきまして、一斉
指導を含めたさまざまな学習
指導を可能にするための
考え方でございます。
それから、この多様化の関連といたしましては、これから多くの教材教具が
学校で導入されるようになるわけでございますけれども、そういった
教育機器が適切に配置され、適切な収納場所があり、かつ、持ってきて使う場合に使い勝手のできるような
施設計画を
考えていく必要がある。それから、さまざまな特別活動が行われるわけでございますけれども、諸種の
学校教育の周辺の事柄としまして、今申し上げた特別活動等のための
施設設備面の質的、量的な
整備をどう図っていけばよろしいか。そういった活動の多様化に対する配慮あるいは多様な学習システムの準備、導入、
実施のために、
教職員がそういう創造的な自主的な活動を展開するためには
施設設備の充実をすることが大切である。こういった事柄を
教育方法の多様化に対応する環境のあり方として御提言をいただいているわけでございます。
さらに、情報化に対応する
施設のあり方といたしましても、コンピューターを導入する場合には利用
目的に合った
施設の配置が必要になるわけでございます。と同時に、コンピューターをどのように配置するか、つまり個別的に教室に置くのではなくて専用という形でコンピューター教室へまとめて置くか、あるいは教室ごとに一台ずつ子供のコンピューターを配置する、言うなれば
学校内におきますコンピューターネットワークづくりとかという観点からの
施設はどうあればいいのかというようなこと。それから、もちろんコンピューターを導入するわけでございますので、故障が起きないような、室内環境を快適にするあるいは制御するための空調設備等も必要になるわけでございます。そういった点をいろいろ御検討いただいたという御提言をいただいているわけでございます。
さらに、子供の心の問題としまして、豊かな
教育環境として
教育施設をどうすればいいのかということの第一点として、豊かな人間性をはぐくむ環境のあり方といたしましては、
学校生活で多様な活動が行われるわけでございますけれども、それが空間的に連続しているということも留意する必要があるわけでございまして、
学校内の活動が自由に展開できるような
施設のあり方。それから、
児童生徒相互間あるいは
児童生徒と教師の間のコミュニケーションを図るためには、言うなれば
一つのオープンスペースのような形で自由にコミュニケーションが図れるような場も必要であろう。これは若干付随的な話でございますけれども、これからの子供たちの体位向上に伴います
施設はどうあればいいのか。あるいは子供たちが過ごす空間でございますのでインテリアについても工夫が必要である。そういったような生活環境ということが第一点でございます。
二番目が、健やかな体をつくる環境のあり方といたしまして、子供たちは当然に
学校の中で跳びはね、動くわけでございますので、安全で安心して子供が行動できるような体育
施設設備という工夫が必要である。同時に、
学校教育として行われるもののみならず、子供たちが自由に動けるような屋外環境も
整備する必要があるのではないか。さらに、これは精神衛生の問題でございますけれども、子供たちの保健衛生やカウンセリング体制あるいは給食
指導室、そういったものに必要な
施設設備も配意していく必要があるというのが第二点でございます。
第三点としましては、いわゆる文化性を持つ
施設のあり方ということでございまして、
学校自体が
先ほど申し上げましたように規格品になっておりますけれども、自分の
学校はこんなような姿であるとか、あるいは
施設設備面において例えばその
学校の歴史、伝統を
表現するといった工夫も必要ではないか。
学校の中におきましても地域の風土や歴史に根差した文化的な雰囲気を工夫していく必要がある。こういった三つの観点から、豊かな
教育環境としての
学校施設のあり方についての御提言をいただいているわけでございます。
さらに、地域社会における
学校施設のあり方といたしましては、立地条件等を生かしまして、その
施設が地域住民による共同利用あるいは、例えば
一つの高度化の話でございますけれども、情報通信機能の導入によるネットワーク化を図りまして、地域社会における生涯学習活動の拠点となる、あるいは拠点と連携をするといった
施設計画も
考えていく必要があろう。さらには、
学校施設が地域住民や専門的な技能・技術を持つ人が
学校教育へ協力できるように
施設設備を工夫する必要がある。さらに、生涯学習の身近な拠点となるわけでございますから、
学校開放につきましては情報サービス機能も含めた
施設設備を将来
考えていくべきである。といったことが大きな事柄でございまして、今申し上げたような視点を踏まえまして、例えばこれから
学校建築をいたします場合の
基本設計の
段階での計画づくりとか、情報をどのようにして得るのか、あるいは面積、コストの関係につきましても多様化の観点からどう工夫すればよろしいのか、いろいろな注意すべき視点等についての御提言をいただいておるわけでございます。
今申し上げた事柄すべてを満たすのは大変困難なことであろうと思いますけれども、その理想のうちの何分の一かをそれぞれの
学校において工夫して生かしていけるような方向へ向かえば、
学校の
施設の将来像というのは現状よりははるかに進んだ、住民にもあるいは子供たちにも喜ばれ、豊かなものとして、
学校教育活動のみならず、生涯学習活動の場として大きく飛躍的に成長していくものだと期待を寄せているところでもございます。