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1988-03-23 第112回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十三日(水曜日)     午後零時五十八分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 佐藤 徳雄君 理事 鍛冶  清君    理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    工藤  巌君       古賀 正浩君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    杉浦 正健君       谷川 和穂君    渡海紀三朗君       松田 岩夫君    江田 五月君       嶋崎  譲君    中西 績介君       馬場  昇君    有島 重武君       石井 郁子君    山原健二郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         文部大臣官房審         議官      光田 明正君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     稲村 利幸君   井出 正一君     小坂徳三郎君   佐藤 敬夫君     後藤田正晴君  杉浦 正健君     三ツ林弥太郎君   渡海紀三朗君     村田敬次郎君 同日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     逢沢 一郎君   小坂徳三郎君     井出 正一君   後藤田正晴君     佐藤 敬夫君  三ツ林弥太郎君     杉浦 正健君   村田敬次郎君     渡海紀三朗君 同月八日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     小坂徳三郎君   井出 正一君     浜田 幸一君   佐藤 敬夫君     村山 達雄君 同月十日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     逢沢 一郎君   浜田 幸一君     井出 正一君   村山 達雄君     佐藤 敬夫君     ───────────── 三月三日  私学助成大幅増額等に関する請願河本敏夫紹介)(第五三〇号)  私学助成大幅増額、四十人学級早期実現に関する請願外一件(阿部未喜男君紹介)(第五三一号)  同外五件(武田一夫紹介)(第五三二号)  同(中山成彬紹介)(第五四四号)  同外二件(平石磨作太郎紹介)(第五四五号)  同(井上泉紹介)(第六一三号)  同(長谷川峻紹介)(第六一四号)  私学助成増額等に関する請願楢崎弥之助紹介)(第五三三号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五四六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五六三号)  同外四件(神崎武法紹介)(第五七二号)  同外十三件(北橋健治紹介)(第五七三号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五七四号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五七八号)  同外五件(神崎武法紹介)(第六一五号)  同(楢崎弥之助紹介)(第六一六号)  私学助成に関する請願外一件(田口健二紹介)(第五三四号)  同外一件(田口健二紹介)(第五四七号)  同外一件(田口健二紹介)(第五六四号)  同(田口健二紹介)(第六一七号)  私学助成大幅増額に関する請願山下徳夫紹介)(第五三五号)  私学助成大幅増額、四十人学級実現に関する請願外三件(沼川洋一紹介)(第五四二号)  同(福島譲二紹介)(第五四三号)  学生寮充実発展に関する請願石井郁子紹介)(第五六一号)  私学助成大幅増額等に関する請願野間友一紹介)(第五六二号)  同外一件(左近正男紹介)(第六一二号)  国・公・私立大学学費値上げ反対等に関する請願石井郁子紹介)(第五六五号)  国立大学寄宿料値上げ反対に関する請願石井郁子紹介)(第五六六号) 同月十一日  私学助成大幅増額等に関する請願井上一成紹介)(第七二四号)  同外一件(上田卓三紹介)(第七二五号)  同外四件(川崎寛治紹介)(第七二六号)  同外二件(上田卓三紹介)(第七五八号)  同外四件(川崎寛治紹介)(第七五九号)  同外七件(馬場昇紹介)(第七六〇号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第七六一号)  同(左近正男紹介)(第七六八号)  同(佐藤敬治紹介)(第七六九号)  同外一件(辻一彦紹介)(第七七〇号)  同(上原康助紹介)(第八〇二号)  同(井上普方紹介)(第八二三号)  同外五件(佐藤徳雄紹介)(第八二四号)  私学助成大幅増額奨学金制度改善等に関する請願串原義直紹介)(第七二七号)  同(清水勇紹介)(第七二八号)  同(村井仁紹介)(第七七一号)  同外三件(中村茂紹介)(第八〇四号)  同(小沢貞孝紹介)(第八二六号)  私学助成に関する請願森田一紹介)(第七二九号)  同(三野優美紹介)(第七七二号)  同(月原茂皓紹介)(第八二七号)  私学助成増額等に関する請願外四件(権藤恒夫紹介)(第七三〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第七三一号)  同(楢崎弥之助紹介)(第七六二号)  同(権藤恒夫紹介)(第七七三号)  同(楢崎弥之助紹介)(第七七四号)  同外四件(鍛冶清紹介)(第八〇七号)  同外四件(神崎武法紹介)(第八〇八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第八〇九号)  同(楢崎弥之助紹介)(第八二八号)  私学助成等に関する請願外一件(新盛辰雄紹介)(第七三二号)  同(村山喜一紹介)(第七三三号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第八一〇号)  私学助成に関する請願外一件(田口健二紹介)(第七三四号)  同(松田九郎紹介)(第七三五号)  同外一件(田口健二紹介)(第七六三号)  同(田口健二紹介)(第八一一号)  同外一件(田口健二紹介)(第八二九号)  私学助成大幅増額等に関する請願浦井洋紹介)(第八〇三号)  同(佐々木良作紹介)(第八二五号)  私学助成大幅増額、四十人学級実現に関する請願外四件(沼川洋一紹介)(第八〇五号)  私学助成大幅増額、四十人学級早期実現に関する請願山原健二郎紹介)(第八〇六号) 同月十六日  私学助成大幅増額等に関する請願辻一彦紹介)(第八六六号)  同(春田重昭紹介)(第八六七号)  同(森本晃司紹介)(第八六八号)  同外九件(嶋崎譲紹介)(第八七九号)  同(辻一彦紹介)(第八八〇号)  同(辻一彦紹介)(第九五九号)  同外九件(中村正男紹介)(第九六〇号)  同(東中光雄紹介)(第九六一号)  私学助成大幅増額等に関する請願新井彬之君紹介)(第八六九号)  私学助成大幅増額、四十人学級実現に関する請願外三件(沼川洋一紹介)(第八七〇号)  私学助成増額等に関する請願楢崎弥之助紹介)(第八七一号)  同(楢崎弥之助紹介)(第八八一号)  同(楢崎弥之助紹介)(第九六二号)  私学助成に関する請願外一件(田口健二紹介)(第八七二号)  同(田口健二紹介)(第八八二号)  同(田口健二紹介)(第九六三号)  国立大学寄宿料値上げ反対に関する請願江田五月紹介)(第八七三号)  同(山原健二郎紹介)(第九六六号)  私学助成大幅増額に関する請願保利耕輔君紹介)(第九六四号)  国・公・私立大学学費値上げ反対等に関する請願山原健二郎紹介)(第九六五号)  学生寮充実発展に関する請願工藤晃紹介)(第九六七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 中村茂

    中村委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  3. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今国会は、臨教審最終答申に基づきまして、臨教審関連の六法案を初めとして、内外の国民から注目された一種の教育国会と言われる性格のものだと思いますが、大臣いかがですか。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 嶋崎委員おっしゃるとおりでございまして、教育国家百年の大計と申しますし、また、この国会では特に六法案含めまして御審議をいただき教育改革本格実施に取り組みたい、私どもも一生懸命やらせていただきたい、このように考えております。
  5. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣、この間お読みになった所信表明をお持ちですね、これでいきますから。  まず最初所信表明の二行目、「教育は、国家社会発展基盤を培うものであり、次代日本を担う青少年を育成する上で一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題であります。」こうあります。これは教育全体の問題ですか、それとも一部ですか。
  6. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育全体の問題か、一部かということですが、これは教育全体と思います。特に教育の水準は高いところにあると思いますが、しかし社会全体が成熟度を増しますと、社会国際化多様化個性化に向かってまいります。その社会の変化にみずから対応できるようなたくましく心豊かな青少年を育成したい、それが根本でございまして、それをまずうたったつもりでございます。
  7. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それならば、「教育は」ではなくて「学校教育は」と言うべきではありませんか。
  8. 中島源太郎

    中島国務大臣 私どもは、学校教育教育のごく基幹的な重要部分というふうに考えておりまして、教育という文字の中には、人生八十年の時代を迎えまして生涯学習を含めた、生涯かけて学び加えるということも含めまして教育という感じで受けとめておる次第でございます。
  9. 嶋崎譲

    嶋崎委員 我が国現行憲法並びに教育基本法では、教育というものをどのように位置づけていますか。
  10. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育基本法は、まさに日本国憲法を受けたものでございまして、日本国憲法主権在民をうたい、平和国家をうたっておりますが、そのような理想的な国家をつくる原動力は教育であるというふうに教育を位置づけておるのが教育基本法であると認識をいたしております。
  11. 嶋崎譲

    嶋崎委員 憲法での、教育に関する基本的な規定は何条と何条ですか。
  12. 中島源太郎

    中島国務大臣 まず、憲法前文におきまして日本国主権在民たる議会制民主主義を唱えておりまして、その議会制民主主義国民の不断の努力によって培われ、育てられるものであるということが第十二条に描かれておるわけでございます。それからまた、その前文で、これを進めるにはすべての国民、民族が恐怖と欠乏を経ることなく、そして平和国家をつかさどる、そのためには我が国だけでなく諸外国を広く見るということが書かれておりますが、これもまた教育の一環である、このように考えております。  そのほか、今ちょっと手元にございませんので、あと何条かということは、教育機会均等あるいは教育者のことも教育基本法とあわせて各条に書かれてあったと思います。
  13. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、まず憲法を聞いたのです。前文もさることながら、まず憲法十一条。十二条とおっしゃったけれども十一条。これは基本的人権の享有を妨げられないし、憲法国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利だ、これが前提になった上で、教育に密接不可分なのは、憲法前文並びに教育基本法前文でいけば、「学問の自由」という二十三条が重要な教育権にかかわる規定であります。そして、二十五条の生存権前提にした上で、二十六条に教育に関する基本的な規定がある。この三つが基本だと思いますが、いかがですか。
  14. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  15. 嶋崎譲

    嶋崎委員 しからば、二十六条は何と前段にありましょうか。「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」「すべて国民」ですね。青少年だけじゃありませんね。そして「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」こう書いてあります。  したがって、憲法二十六条で明らかなように、教育権という教育を受ける権利は、すべて国民なんです。わかりますね。それを前提にしていますから、教育基本法教育の目的をお読みになっても前文をお読みになっても、まずすべての国民教育権、特に青少年以外の人については後で問題にいたします生涯学習権、そういうものを含め、そして学校教育ではこの青少年教育権、親がそれに対してどのようにこたえなければならぬか、教師はどうこたえなければならぬか、こういうふうな文脈になっているのは御存じだと思いますが、いかがですか。
  16. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりと思います。
  17. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうだとすると、大臣が一番最初に言われた「教育は、国家社会発展基盤を培うものであり、次代日本を担う青少年を育成する上で一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題」というと、青少年に限られているという意味で、これは学校教育を指すことになるのではありませんか。
  18. 中島源太郎

    中島国務大臣 最初の御質問の意味がわかりました。これは学校教育を指したわけではございませんで、あくまでも私どもは生涯学習学校教育というのはそのごく基礎的な一部であるということでありまして、ここで申しました教育というのは、その国民全体のすべてを指すものでございます。  ただ、青少年と申し上げたのは、二十一世紀、新しい時代に向かってということも含めましてそのように書きまして、この青少年ということが学校教育を指したものというふうに御理解はいただきませんようにお願いを申し上げておきます。
  19. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だとすると、正確じゃないのですよ。今度の臨教審答申のポイントは何か。文部省設置法の第二条を御存じですか。文部省設置法の第二条には、ちゃんと学校にかかわる教育、それ以外の教育学術等々全体の規定があることは大臣御存じでしょう。そうしますと、臨教審答申で問題になっているのは、憲法二十六条に言う「すべて国民は、法律の定めるところにより、」「ひとしく教育を受ける権利を有する。」という前提に立ったればこそ、この教育の新しい改革という大答申が出たんじゃありませんか。したがって、最初教育というものを学校教育というふうにのみ受け取れるような「国政上の重要課題」を、次代日本を背負う青少年を育成することは重要だと、こんなことは当たり前のことですよ。しかし「教育は」と言う以上は、その教育我が国現行教育法制の中でいかなる意味を持っているかということを前提にし、臨教審答申中身を踏まえた上でこの最初の文言が始まらなければ正確じゃない。これじゃ学校教育以外のものは何も言ってないじゃないですか。私はそう思いますが、いかがですか。
  20. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃる意味はよく理解できますので、その教育というものを先生おっしゃいますように広義の、国民すべてを含めました教育というふうにおとりいただきますように、私どももそのように考えてまいります。
  21. 嶋崎譲

    嶋崎委員 じゃ、整理しておきましょう。  第二次世界大戦前の我が国教育は、国家作用としての教育だったのです。新しい憲法教育基本法に立った教育は、現行教育法制国民教育権というものを基礎にして組み立てられているという意味で、そこには根本的な価値の転換があったのです。したがって、現行法制では、教育というのは学校教育だけではなくて、社会教育というものも極めて重要な教育の位置づけとしてなされているわけであります。それは教育基本法を見てもわかるでしょう、学校教育法を見てもわかるでしょう、同時に文部省設置法を見てもわかるでしょう、社会教育法という法律を見てもわかるでしょう、そのとおりなんです。だからこそ生涯学習権と言われる重大な問題が、我が党が十四、五年前から言ってきたことがここにいよいよ国政にのせようということになったのです。そういう意味で本来ならば、情緒的な文章として発言されたというのならいいけれども、そういうきちんとした前提の上に立つならば、「教育は」という一般的なことを、次代日本を担う青少年を育成する上に重要だというだけでは片手落ちだと言わなければなりません。教育基本法の七条に社会教育は決めてありますが、それは前段に、ひとしく国民教育権を言った上で、学校教育を言い、そして社会教育を言い、そして全体としての「不当な支配に服することなく」という十条で全体の構成が行われているのです。その意味で、今の大臣の答弁では、私の簡単に述べた主張を前提にされるならば、今日の教育改革憲法並びに教育基本法の精神に従って進めるということになるわけですね。
  22. 中島源太郎

    中島国務大臣 そのとおりでございます。特に教育改革をどのように進めるかという臨教審そのもの教育基本法にのっとっておりますし、その教育基本法はまさにおっしゃるように憲法にのっとっておるわけでございます。
  23. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だから、前提として、教育基本法の七条の社会教育文部省設置法の二条の七項並びに家庭教育まで含めて今までの現行教育法制のもとでは、学校教育社会教育いずれもが社会全体にわたる文化的作用として国民教育を受ける権利、これを実現する公的な性格を持つもの、これが現行教育法制基本であるということを前提にして少し中身に入ってまいります。したがって、本来、「教育は」といったら、「基盤を培うものであり」の後に、これ以外の国民教育権、生涯学習が後に出てくるのですから、それを簡潔に述べて、さらに「次代日本を担う」というふうに言わなければ、文部省学校教育しか考えてないんですかということになり、そしてこの後で、所信表明では一番先に生涯学習が出てくるのですから誤解を招きやすいし、正確に事を押さえておく必要がある、そういう意味で申し上げたのであります。  さて、次に行きます。次のパラグラフでは、政府臨教審の四次にわたる答申を受けて、この臨教審答申に示された広範多岐にわたる改革提言の着実な推進を行うということを申しておられます。そして昨年の十月に、臨教審最終答申に伴って閣議決定を行いまして、教育改革推進大綱をお決めになっておられますから、この大綱に基づいて今国会には幾つかの改革の具体的な措置として法案が提出されているということになるわけであります。  そこで一つお聞きしますが、この後に、「教育改革に関する施策を円滑かつ効果的に推進するため、総理府臨時教育改革推進会議を新たに設置すべく政府において所要の準備を進めているところであります。」これは内閣委員会にかかる法案ですね。それで、臨教審のいわば国家行政組織法に基づく審議会を継承した形で片一方にそういうものを設ける。さてそこで、新聞その他の報道によりますと、文部省中央教育審議会を発足するということを言っているようでありますが、その予定はありますか。
  24. 中島源太郎

    中島国務大臣 今、所信の続きでお聞きになりましたので、まず私から基本的なことを申し上げておきます。  臨時教育改革推進会議にお触れになりましたが、これはまさに教育改革臨教審広範多岐にわたりまして有意義な御指摘を受けたわけでありますが、その中から八項目にまとめまして教育改革推進大綱閣議決定をしていただきましたので、これを遅滞なく進めるのが私どもにとりましての一番大きな課題であり、責務である、このように考えておりますので、これをスムーズに進めるための推進役としてこの推進会議総理府に置かしていただくということでありまして、その主体はあくまでも文部省がやるべきことと思いますが、この教育改革を進める上において各省調整が必要であろうということも踏まえまして総理府に置いていただくようにいたしておるわけでございまして、その間、五十八年から中教審は休んでおります。これを今再開をいたすということは、緊急にではございませんが、この教育改革を進めていくに当たりまして、いろいろな問題で幅広い分野の方々に諮問をし、そして御意見、答申を受けるという必要が出ました折に、この中教審再開し、そして責任ある諮問、御答申を受けるようにいたしてまいりたいというふうには思っております。その再開の時期は、今緊急にということは考えておりません。
  25. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今大臣がおっしゃったように、改めてこのポスト臨教審と言われる教育改革推進会議、これは法案は新たに別に議論するとして、前の臨教審とは違って、臨教審答申の枠の中で推進しているものを見守る、推進するという性格のもので、新たに教育改革課題を議論するというものではないと理解をいたしますが、それでよろしいですか。
  26. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  27. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、学校教育だけに限って見ると、高等教育については昨年の国会教育改革推進していく審議会として大学審議会というものができた。ところが、教育改革推進臨教審に基づいてやろうとすれば、まだまだ具体化しなければならない、大綱中身を後で一つ一つ問題にしますが、大綱中身を具体化しますと、それはどこかでもう一度きちんと議論を必要とする内容の代物であります。それだけに文部省の方からいえば、文部省設置法その他で言ってきた中教審再開が必要になるはずである、そう私は理解しますが、いかがですか。——大臣に聞いているんだよ、きょうは大臣所信表明に対してですから。
  28. 川村恒明

    川村政府委員 大臣のお答えの前に御説明をさせていただきます。  ただいま先生指摘のように、ただいま御提案申し上げております臨時教育改革推進会議は、その御提案申し上げております法案にもございますように、臨教審の行った答申を受けて講ぜられる施策実施状況について検討を加え、調査審議を行うということでお願いをしている、つまり大臣が申し上げましたように、臨教審の行った答申について、その実施状況について、その全体的な推進を図るために行う、こういうことでございます。  そこで、その臨教審の行った答申でございますけれども、これは大変数が多いわけでございまして、数え方によっては百三十とか百五十とかあるいは五百項目とか、こうあるわけでございますけれども、その内容には非常に具体の事項についてこういうふうにやるべしという提言をしておられるものもあるし、それから一般的、抽象的な御提言にとどまっているものもある、あるいは今後引き続き検討すべきというふうな幾つかの段階があって、そういう施策を実施していく場合に改めて審議会等で御審議をいただく必要もあるものも当然あるわけでございます。でございますから、その点、先生今御指摘ございましたように、例えば大学の問題でございますればさきの百九回国会お願いいたしました大学審議会の御審議ということもありましょうし、あるいはそれ以外に、それぞれに応じて中央教育審議会とか教育課程審議会とかいろいろな審議会で御審議をいただくことになるのだろうと思います。そうするとこの新しい推進会議と仕事が重複するのではないかというお尋ねかと思いますけれども、この会議は、最初大臣から申し上げましたように、そういうふうなどの審議会審議をするということも含めて全体的に教育改革推進する、全体的に効果的な円滑な推進を図れるようにするという役割を持つわけでございますから、それぞれの個別の事項に応じて必要が出てきた場合には、中央教育審議会で御審議お願いする必要が出てくる場合も当然あろうというふうに考えておるわけでございます。
  29. 嶋崎譲

    嶋崎委員 僕が聞いておるのは、中央教育審議会を新たに発足するのか否かと聞いておるのであって、ほかのことを答える必要はないのです。
  30. 川村恒明

    川村政府委員 中央教育審議会は昭和二十七年以来文部省設置法に基づいて設置せられておる審議会でございまして、審議会自体は設置せられておるわけでございますが、この三年間はたまたま委員を発令せず活動を休止しておった、こういうことでございます。先ほど申し上げましたように、今後文教施策を進めていく上で御審議お願いすることが必要というふうに判断されることが生じた場合には、当然また委員の発令をお願いし御審議お願いすることになろう、こういうことでございます。
  31. 嶋崎譲

    嶋崎委員 では、過去にさかのぼって聞くよ。一九八三年から八四年にかけて第十四期の中教審委員のメンバーを選定にかかったという事実はあるのですかないのですか。
  32. 川村恒明

    川村政府委員 中教審の活動でございますけれども、昭和五十六年十一月に、新しく審議会お願いいたしまして、時代の変化に対応する初等中等教育教育内容等に関する基本問題について御審議お願いした、こういうことがございます。そこで御諮問申し上げまして、それにつきまして五十八年六月に「教科書の在り方について」御答申をいただいた、さらに十一月に教育内容等の小委員会の報告をいただいた。と申しますのは、この十一月でもって委員の任期が切れたわけでございます。ところが、ただいまも申し上げましたように諮問自体は大変基本的な諮問を申し上げ、答申はその一部分でございましたから、さらに引き続いて次期の中教審お願いするかどうかということでいろいろ検討された経緯はあるというふうに承知しておりますけれども、その後発令はされていない、こういうことでございます。
  33. 嶋崎譲

    嶋崎委員 僕の質問は、——今あなたが言っていることはみんな僕は知っているんだ。十三期中教審で何を議論して、教科書の小委員会がいつできて、中間報告をいつやったか、そんなことはみんな僕は知っておるので、したがって、十三期の中教審から十四期の中教審に発足しようとするときに臨教審が発足するわけ。ですから十四期を発足しないでいたわけですよ。それで、いよいよ臨教審最終答申が出たのだから、今度の新しい推進会議は新たな教育改革審議する機関でないとすれば、かつての中教審の発足を改めてやらなければならぬはずだと僕は思うがどうかと聞いておるのに、やるともやらぬともいいかげんなことを言うておるが、やるのでしょう。
  34. 川村恒明

    川村政府委員 中央教育審議会は、先生御存じのように、活動の形態といたしましては、それぞれの時期に検討すべき課題があった場合にその課題にふさわしい委員を発令して御審議お願いする、こういうことでございます。ですから、昭和二十七年以来法律上設置されておりますが、委員の発令のなかった時期もその間に当然あるわけでございます。  そういう意味で、現在は先生指摘の十三期の委員が昭和五十八年十一月十六日に任期満了いたしましてそのままになっておるわけでございますから、教育、文教施策課題についてまた新たに検討すべき重要事項があるというふうに判断された場合には改めて十四期の委員の発令をお願いするということになろうかと思っております。
  35. 嶋崎譲

    嶋崎委員 臨教審を発足するとき中曽根総理は、我が国の第三の教育改革と言ったのです。明治の初め近代国家をつくるとき、第二次世界大戦後、そして今や第三段階の教育改革と言ったのです。その第三の教育改革に向けて臨教審答申がやってきたわけでしょう。確かに平和的な改革にはなるけれども、大変根本的な改革をやろうというのでしょう。そのときに、推進会議というのは新たな改革の議論をしないという枠がはまっておるのですから、そうすれば、答申に基づいて今後どうするかということになれば、現行教育法制・行政の建前から言えばこれを開かざるを得ない。同じものになるかどうかはわかりませんよ。これは中身は、我が党も国民教育審議会方式という代案を出して議論をしてきたのですから、皆さんがかつてのそれと同じものになるかどうかは別として、中教審の新たな発足を恐らく前提にされなければなるまい。これは時間をとるともったいないですから、これでやめます。  そこでお聞きします。では十三期の中教審は、今川村務審議官がお答えになったように、時代の変化に対応する初中教育教育内容基本的あり方についてという諮問に基づいて動き出したことはそのとおりであります。そこで、この十三期の中教審は何を議論して、どういう方針に基づいてやろうとしたかということを簡潔に説明してください。
  36. 川村恒明

    川村政府委員 この十三期の中教審の活動でございますけれども、これはただいま先生の方でおっしゃっていただきましたその諮問に尽きているわけでございまして、「時代の変化に対応する初等中等教育教育内容などの基本的なあり方について」、こういう諮問事項でございます。具体的には、そこで教育内容等の小委員会と教科書小委員会、二つの小委員会を設置いたしまして、その二つの事項について御検討をいただいた。その中で、教科書の方につきましては、先ほど申し上げましたように五十八年の六月に「教科書の在り方について」ということで一応御答申をおまとめいただきましたが、教育内容の方につきましては小委員会審議経過報告ということで一応のまとめはいただきましたけれども、これは審議会としての正式の答申ではない、小委員会の報告というところでその任期が満了になった、こういうことでございます。
  37. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本当は教育内容と教科書制度というのが一つあり、もう一つは中等教育の弾力化というのがあり、もう一つは幼児教育という項目があったのです。だけれどもこれ二つはつけたりなのであって、文部省がやりたかったのは教育内容と教科書なんですよ。そして、ここに教科書の小委員会を設けたのです。中間報告は八三年の秋だったと思うが、最終答申の目標、まとめの時期は当時いつでしたか。
  38. 川村恒明

    川村政府委員 教科書につきましては、先ほど申し上げましたように五十八年の六月に「教科書の在り方について」ということで御答申をいただいております。
  39. 嶋崎譲

    嶋崎委員 八五年、昭和六十年度を目標に最終答申を行うという計画で小委員会を発足したはずだと思うが、どうですか。
  40. 川村恒明

    川村政府委員 その当時の具体の状況につきましては承知しておりませんけれども先生指摘のように委員の任期は二年ということになっておりますから、二年単位ということで考えれば、五十六年に御諮問いたしましてそれが五十八年、あるいはその次の六十年ということであったかと承知しております。詳細のことは後ほど調べてみたいと思います。
  41. 嶋崎譲

    嶋崎委員 さてそれで、八三年度に歴史教科書をめぐって中国や韓国から書き直し問題で問題になったことは御記憶のとおりであります。したがいまして、この八三年を境にして前後、教科書の検定の強化だとか採択区域の広域化という中間の報告が出ていますけれども、教科書問題が少し社会問題になったことから、この時期にはちょっと停滞をしているうちに臨教審が動き出していくことになったと私は理解します。そこで、これと並行して、今国会で問題になっております教員の免許に関する提言が行われている。そして、教員免許法の改正案を国会に上程しようとした時期はいつですか。
  42. 加戸守行

    ○加戸政府委員 一昨年の臨教審答申におきまして、教員の資質向上の提言がございました。その中には教員養成基準の改善等提言もあったわけでございます。これを受けまして、一昨年の五月に教育職員養成審議会を開きまして、文部大臣の方から諮問申し上げて、一年七カ月の審議を経まして昨年十二月、教育職員養成審議会から答申をちょうだいいたしました。その答申を踏まえて、今通常国会教育職員免許法の改正案を提案させていただいているわけでございます。  なお、これ以前の昭和五十八年に教育職員養成審議会答申がございまして、それを受けて教育職員免許法の改正案を提案したことがございましたが、それは臨教審審議開始とともにもう一度臨教審審議をし直していただくという形で、その法案につきましては廃案のまま今日まで至ったということでございまして、新たな再度にわたります教育職員養成審議会答申を受けて今国会に提案をさせていただいたということでございます。
  43. 嶋崎譲

    嶋崎委員 つまり、臨教審が動き出したそれまでに、十三期の中教審が発足して、そして教育内容や教科書問題にかかり、それと並行して今の免許法問題にも手をつけ、さらには、学習指導要領で問題になった、七七年の学習指導要領の君が代・日の丸を含めて祝祭日には掲揚するのが望ましいが、これを何とかして明確化したいという動きもこの前に始まったのは御承知のとおりです。そして免許法案国会に上程されたけれども臨教審の関係でこれはとまったのです。それと並行して、教育問題の大問題である高校入試の改善会議、これが入試問題について動き始めた、御承知のとおりですね。それから共通一次についての改革も並行して動き始めた、御承知のとおりですね。それから大学設置基準の緩和化というのもこの時期に問題になってきました。つまり、臨教審答申の前に一連の高校入試、共通一次、大学設置基準の緩和、高等教育の今後の改革の方向、こういうものが、実際は高等教育の場合は八六年に最終答申を出す予定だったんだけれども、これは臨教審が動いたから一時ストップしたのです。こういう経過があったということは御確認できますね。
  44. 川村恒明

    川村政府委員 ただいま先生指摘の点は、つまり臨教審の発足の前後といいますか、その先立つ時期にいろいろな教育の諸問題についての検討が行われたのではないかということでございますが、そのとおりでございまして、結局臨教審がスタートするその背景になっている部分がそこであろう。つまり、そういうふうないろいろな今御指摘のような問題点といわれるものが指摘されるようになった、臨教審の設置というのはそれだけが目的ではありませんけれども、そういうふうな教育に対する社会の要請にいかに的確に対応するのかということがその臨教審の設置の一つの原動力になっているというふうに承知をしておるわけでございます。
  45. 嶋崎譲

    嶋崎委員 確認だけしてもらえばいいんですよ。今申し上げた項目臨教審発足以前に既に手をつけられ、方向づけられようとしてきた。今国会で問題になっておる独立大学大学は、私が十三年ほど前でしょうか附帯決議をつけて、この国会で動き出し、そしてその後五十七年に新たな大学院の方向が変化をもたらすに至ったんです。ですから、今度の国会で今から議論する問題は、臨教審を媒介にして、もう一度かつての中教審推進されてきたものに付加して、つまり臨教審で提起された諸問題を新たに付加して、そして改めて中教審で進めてきた過去の路線を新たな段階で発足せざるを得ないという状況になっていると私は認識しておるわけです。だから、中教審の発足はやらぬと言っておりますけれども、必ずやりますから、これは今のうちに予言しておきます。もうそこらじゅうで中教審発足と言っているんですから。  そこで問題は、今は中教審臨教審のあとを受ける教育改革推進会議かという二頭馬車になっておるわけだ。しかし、片一方は改革論議はせぬのですから、これは単なるムードですわ。臨教審答申というものを推進していくいわば応援団、新しい改革内容を議論しないんですからね。そうしますと、答申を受けて、今度は文部省の方は、答申全体について今後それをどのように具体的に推進するのかということに今から着手しなければならぬと思う。そういう意味で、これからの教育改革の論議をやる際には——きょうは細かな議論はまだしません、入り口ですから、大臣所信表明に対する質問ですから。ただ一点だけ大臣にお聞きしておきましょう。これから今国会を境にして行うところの教育改革論議は、過去の中教審の延長線上であってはならない。過去の中教審答申その他についてはいろいろな意見があり、狭く閉ざされた内部の議論だということは、今度の臨教審の議論の中でも大問題になった。今までの文部省がやってきた中教審のやり方では広い国民的な支持を得ることはできない、したがって新たな臨教審を設置しなければならぬということで、これを外につくったんです。したがって、今度これを具体化するということになれば、過去のそのような中教審のあり方を改めて、臨教審最終答申を受けての、もっと国民の側に立つ、広い、開かれた観点に立った教育改革の機関として、何らかのものが出発しなければならぬと思う。それが大学高等教育については昨年の国会で問題になった大学審議会であり、かつての幾つかの計画だとか許認可だとかというようなものを統合して大学審議会というものを片一方でつくったとすれば、小中、幼児教育を含め、また同時に今から問題にする生涯学習まで含めて、我々はこれをどう推進するか、過去の十三期までの中教審の単なる延長ではなくて、新たな観点で改革推進のための具体的な措置を講ぜざるを得ない状況にあると私は判断しております。大臣、その点どう思いますか。
  46. 川村恒明

    川村政府委員 大臣の御答弁の前に、一言御説明申し上げます。  中央教育審議会につきましてのお尋ねでございますが、中央教育審議会は、先ほど申し上げましたように文部省設置法という法律に基づいて設置せられておる審議会でございます。この中央教育審議会臨教審の発足に伴ってどうするかは、当委員会でもいろいろ御議論いただきましたけれども、ともかく法律上の組織としてはこれを存置をするということでございますから、この法律で定められた中央教育審議会の任務でありますとか性格というものは、国会での法律の御審議がない限り、これを行政府の側において軽々に変更することはできない、そういうことにおきましては、中教審基本的にその性格を従前とも同一にしなければこれは法治主義ということにはならないわけでございますから、運用に当たっての具体の問題はともかくとして、基本的な性格はやはり、文部省設置法に基づくその審議機関ということは今後とも継続するのではないかというふうに思っております。
  47. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そんな答弁を聞いておるんじゃないのです。中央教育審議会委員の構成の仕方、今度のできた大学審議会委員の構成の仕方、同時にその内部の大学院部会の審議委員の構成の仕方、随分変わってきておるのです。だから、今度同じ中央教育審議会文部省設置法に基づいているものが発足しても、その動き方や動かし方や運営については相当変わらなければおかしいんだという意味で、変わる必要があるのではないかという意味で、これは法律改正をしてないんですから言われることは当然のことですよ、しかし、そういう意味で決意のほどを私は大臣に聞いておるのです。
  48. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育改革教育行政というのはまさに人づくりという面では国家百年の大計、こう申し上げたとおりでございまして、その中では教育行政というのは一貫性の中でさらに社会の変化に応じて改革をいたしていく、そういう一員性と改革と両方あるわけでございますので、まさに先生が御指摘のように、臨教審に入る前段として既にそういう社会の要望が醸成されておった、その中から国民的な視野で臨教審はまさに三年間いろいろと御審議、御苦労をいただいたわけでございますので、そういう幅広い有効な御指摘を得まして、さらにこれから進めるとすれば、既存のいろいろな審議会があることは御存じのとおりでありますし、またその中で中教審そのものもやがて再開されるであろうと私も思います。その場合、委員の選任その他はこれから新たに再開に応じてやるわけでございますし、それから臨時教育改革推進会議そのものの委員も文部大臣の意見を申し上げまして総理大臣が任命されるわけでございますけれども、これはまさに国民の信を得られる方であり、各分野にわたる方であり、そして中教審にとりましては人格高潔、そして学術、文化、教育に堪能な方々を改めてさらに誤りなく選任をしていこう、このように考えております。
  49. 嶋崎譲

    嶋崎委員 まあ、いいでしょう。ここで私の言いたいのは、十三期までの中教審、そこで問題にされてきた諸課題が現代的に継承されているという意味では、おっしゃる継承性はあるのですよ。同時に、新しい改革課題臨教審で提案されて付加されたのですから、当然のことです、内容は聞かなくても私もそのとおりに思います。したがって、中教審の新たな発足に資するであろうと大臣おっしゃいましたから、川村さんは最後まで言わぬけれども大臣の方が正直にその希望を述べておられますから、その際には新たな教育改革という観点からその発足に当たって当委員会でもいろいろな審議を今後賜りたいということを申し添えて、次に移ります。  さて、この大臣所信表明の第一は、生涯学習の振興であります。閣議決定が行われましたこの大綱によれば、生涯学習体制の整備として、一番目には基盤整備を述べ、二番目にこういう重大な提案があります。「(2)生涯にわたる学習機会を総合的に整備する観点から、民間教育事業との連携の在り方を含め社会教育に関連する法令の見直しに速やかに着手し、成案を得る。」と書いてある。先ほどお答えになったとおり、これは大綱に基づいてやるのですね。ここで言っている「民間教育事業との連携の在り方を含め社会教育に関連する法令の見直しに速やかに着手し、成案を得る。」これはどういうことですか。
  50. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 事務的に社会教育関連法令の検討をしておりますので、その立場からお答えいたしますが、社会教育には社会教育団体というそもそも民間の活動もあるわけでございますが、そのほか公的な社会教育事業がある。ところが、最近それ以外に、学校でもない、各種学校でもない、そのほかの教育事業あるいはカルチャーセンターと言われるようなものが発展してきている。これが生涯学習の立場から非常に大きく発展してきている。それとの関連も検討しながら社会教育に関連する法令の見直しに着手する、こういう意味でございます。
  51. 嶋崎譲

    嶋崎委員 新聞その他の報道によりますと、仮称ではありますが、生涯学習振興法という言葉がちらっと出ていますが、今の社会教育法に対して、「生涯学習の振興」と大臣所信表明の中で柱を非常に明確にうたっていますが、この生涯学習振興法的なもの、こういう仮称のようなものの検討という意味ですか。
  52. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 社会教育の見直しは、そのほかのこともありますが、そのことも含まれているわけでございます。
  53. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこでちょっとお尋ねしますが、「昭和六十三年度文部省の機構改革について」によりますと、七月からだそうでありますが、生涯学習振興課、生涯学習局というものを設けるということになっておりますね。そして、この生涯学習局は今までの社会教育局の社会教育課、青少年教育課、婦人教育課、学習情報課などを中に包み込んで、専修学校教育振興室というものを含めたものとして発足する、こうなっていますね。しかも、この序列があるのかないのか知りませんが、今までは体育局の手前にあったものが、今度は一番トップに、初中局の上に位置づけているのは、高いか低いかは知りませんが、非常に重視をしてこの局に手をつけられるという方向を示していると思いますが、いかがですか。
  54. 中島源太郎

    中島国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりでございます。
  55. 嶋崎譲

    嶋崎委員 さて、生涯学習というのは、これは文部省だけの所管の内容でないことは御承知のとおりであります。新聞その他の報道でも既に幾つか論点が出ておりますが、生涯学習担当の行政部門がスタートするにしても、最も厄介なのが各省庁ばらばらになっている今日の関連事業をどうするかという問題になります。  さて、厚生省担当の就学前の子供、母親を対象とするもの、そういうものを含めても、大体私のざっと見たところ七、八項目あるような気がする。これは厚生省との関係の問題になってきます。次に、今度は青少年の国際交流、これは文部省だけじゃないです。農林省もあれば外務省もあれば、いっぱいあります。それから農業後継者育成、これも文部省だけじゃないが、生涯学習の重要なテーマです。勤労青少年の育成、指導者の育成、勤労青少年育成指導事業、これだって労働省その他にもまたがります。今度は、最近のように技術革新と日本の雇用情勢が変化してまいりますと、労働白書ですかが去年言っているように、確かに三百万ぐらいの人間が新たな職にかわらなきゃならない労働力の流動化が始まるのです。そうしますと、それに絡まる職業教育、ミスタッチのないような技術並びに学校の体制をどうするか、これは文部省だけじゃできません。労働省もかまなければいけません。そのほかにも、高齢者の場合、これも文部省だけじゃできません。厚生省もかまなければいけません。そのほかに、婦人というのは今御承知のように五人に一人はパートなんです、就業労働者の中で。婦人労働者の就業の伸びは、過去十年間に三〇%伸びている。男はわずか一〇%です。二十一世紀に向けてとうとうと婦人が職場に進出していくんです。そのパートの婦人は、御承知のように年金も関係してなければ、退職金も関係してなければ、健康保険も関係してない。こういうのを含めて、今働いている婦人就業というものに対する国からの支援というものをどうするかという大テーマがこれからの課題です。これも生涯学習にとって極めて重要です。婦人の健康づくり等々です。  ざっと挙げてみたって、各省全部まだ点検する時間がないままになっておりますけれども文部省の言う生涯学習局という狭い枠の中から天下を見ていたのでは、今問題になっている生涯学習のいわば学習権の要求というものに対してこたえるような代物じゃとてもありません。どうするのですか。
  56. 中島源太郎

    中島国務大臣 まさにおっしゃるとおりでございまして、先ほどもお答えをいたしましたように、教育改革を進めるに当たりまして、大綱の真っ先に書いてあります生涯学習、これを一つ進めるにいたしましても、各省庁にわたることでございますのでその調整も必要ということで、臨時教育改革推進会議総理府に置いていただくというのもまさにそこに意味があるわけでございます。文部省だけでは律し得ないとおっしゃられますけれども、その責任は文部省にございますので、各省庁と密接に連携をとりながら、そして、もちろん国で設置をいたしました施設もありましょうし、地方自治体が設置をいたしましたものもありましょうし、あるいは御指摘のように民間がお持ちの教育研究施設あるいは体育スポーツ施設もあるわけでございますので、これをネットワークするだけでも各省庁にわたります。この点は私どもが責任を持ちまして、各省庁と密接に連携をとりながら、あくまでも国民全体の生涯学習のため、そしてまた、その情報を提供する重要な任務があるということを心に置きまして、誠心誠意進めてまいる、このように考えております。
  57. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今からですから、しっかり決意してしっかりやってもらわなければいけません。この所信表明によりますと、「生涯学習の振興」の最後のところに、「家庭、学校、地域社会各分野の教育機能を活性化するとともに、国民学校教育社会教育、」ここにはちゃんと社会教育まで書いてある。だから、最初教育という抽象的なことを言っているのと、これは官僚が書いた文章だからでしょうが、つじつまが合わぬのです。そして「生涯のどの時期でも適時適切な学習をすることができる社会実現」と言っているのですが、これは、我が党で十何年前に教育の国際シンポジウムを私が主宰してやりましたときに、ヨーロッパ先進国のスウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス、ASEANの諸国、アメリカを含めて先進諸国の教育改革は今何をやっているのかという、そのときに、先進諸国ではいつでも、どこでも、だれでも、ただで、ただでというのは大変なように思うでしょう。向こうの通信教育は、スウェーデンなんかの場合は、日本で言いますと石川県の能登半島の奥におっても、通信教育のところにだれだれ先生と話をしたいと事前に言っておきますと、これは電話をかけてやるのですよ、電話をかけて向こうが出るでしょう、そこで十五分しゃべるのです、しゃべって、がちゃんと切ったらお金が返ってくるのです。生涯学習というものはそういうものなのです。いつでも、どこでも、だれでも、ただでと言いたいところだが、まあ財政上そうはいかぬでしょう。しかし、いつでも、どこでも、だれでもと言われる、そのような学習社会をつくるということならば、これは文部省が頑張ってもらわなければいけませんけれども、先ほど言ったように各省全体を横断してどう推進するかということを考えなければ、とても推進できる代物じゃありません。  そういう意味で、今後の決意だけをお聞きした上で、具体的に一つだけ聞きましょう。  政府のこの推進大綱によりますと、四番目に「職業生涯を通じ職業能力開発を総合的に推進するため、」いろいろな教育訓練施設のネットワークその他を検討すると書いて、その後に、私たちがかつて国際的な教育シンポジウムを十何年前にやって、そしてこの委員会で皆さんに提案してきた、これからは日本の働く人たちの労働時間短縮が問題になりますよ、そのときには有給教育休暇制度、これを早く制度化するように文部省提唱しなさいと口が酸っぱくなるほど言ってきた、それが今度の大綱には具体的に出ています。はっきり書いてある。これの普及について今検討中なのですか、やるのですか、答えてください。
  58. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 有給教育訓練休暇につきましては、労働省が企業に対して補助金等を出して行っているところでございますが、そういう制度を含めてさらに普及を図るという考え方で、臨教審でも言われましたし、ここにも書かれている、こういうことでございます。
  59. 嶋崎譲

    嶋崎委員 書かれているという評論家みたいな話じゃなくて、生涯学習社会をつくるというのでしょう。そのときに、当面学校教育は終わられたが、高校から大学に行かずに社会に出たが、いろいろ働いているうちにおれは大学に行って勉強したいなと思った、そういう人たちが単位を取れるようにこれから大学を開放するというのでしょう、これは学校教育の方だけれども。そのほか夜間も考えなければいかぬ、通信も考えなければいかぬ、そして放送大学もやってきたのでしょう。だとすれば、その一番のキーポイントは教育有給休暇ですよと僕らは放送大学のときやかましく言ってきたのです。理屈はわかっているけれども、今までまともに推進したことないじゃないですか。これは労働省の話じゃないです。放送大学というのはそういう意味を持っていたじゃありませんか。そうでしょう。だったら、教育有給休暇制度というものについて、これは教育改革大綱の中で重要な具体的項目として提言されているのですから、法令の見直しに速やかに着手すると書いてある、こっちは速やかにとは書いてないけれども、しかしこの提案については受けとめてもらわなければならぬし、推進役の指導的役割を文部省は果たしてもらわなければ困る。そうしなければ高等教育改革する意味がない。開かれた大学と言っているのですから、大臣の決意のほどを……。
  60. 中島源太郎

    中島国務大臣 それ一つを提言しておるわけではございませんが、おっしゃるとおり、有給教育訓練休暇制度は、一度お勤めになった方がさらに自己啓発のためにそういう時間をおとりになるのに協力しよう、こういうことだと思います。こういう制度の一環と申せるかどうかはわかりませんが、一度勤められた方が再び学ぶ機会を得るということが既に一般企業の中でもだんだんふえてきつつありますので、この点をしっかりと踏まえてまいりたい、このように思います。
  61. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣、わかっていないな。教育有給休暇制度で、高校卒で大学に行かないで行けるバイパスコースができると、入学試験が緩和するのです。何も高校の十八歳から共通一次をやって大学の試験を受けて、さもなくば私立に行って、そして二十二歳まで大学に行かなければならぬことはなくなる。先進国でやっているように、働いている人たちが必要なときに応じて単位を取り、その資格を持つことによって社会に役立つようになれば、何もみんな大学に行かなければいかぬということはなくなる。受験競争の一つの緩和になるのです。これをかつて我々はバイパスコースと言ってきたのです、日本教育改革における大学入試問題を解決する一つの手だてはバイパスコースをつくることですよと。そのバイパスコースは、働いている人たちがいつでも、どこでも、必要なときに教育を受けられる条件として、一年のうち、これが仮に週に四時間として一カ月十六時間だとすれば、大学で言えば一学期というのは三カ月ですから、そのくらい必要なときには有給休暇を保障できる、現職現給で保障できる仕組みをつくるということは、教育改革に非常に重要な意味を持つ。だから我々は、教育有給休暇というものを、単に今働いている人の企業がやれるようになってきているという意味だけじゃなくて、教育の退廃を解決していくための一つの方法として、バイパスコースというものを提案してきたのです。そういう意味ですから、大臣、今の回答ははっきりせぬけれども、有給教育訓練休暇制度をそういう観点で積極的に進めるという決意はありますか。
  62. 中島源太郎

    中島国務大臣 御意思はよくわかりました。しっかり受けとめてまいりたいと思いますが、技術的なことで、より具体的には政府委員からお答えさせます。
  63. 嶋崎譲

    嶋崎委員 イタリア、西ドイツその他、先進国にいろいろな例がありますから、これを我が国に持ってきて検討することは、ちょっと努力すればできることだと私は思います。問題は、日本社会が企業社会という社会を持っていますから、先進諸国と違った構造になっているだけに、その条件の適用にはいろいろ日本的な特性があることだけは当然ですけれども、この方向に向かって検討されるという文部大臣の回答ですから、それで結構です。  さて次へ行きましょう。第二に、「初等中等教育の改善・充実」というのが所信表明の柱です。この一行目に、「これからの初等中等教育においては、二十一世紀に向かって、国際社会に生きる日本人を育成するという観点に立ち、豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成や社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図り、」こう言っています。そして「基礎・基本を重視し、個性を生かす教育」「国際社会に生きる日本人」、これが臨教審の中でずっと初めから一貫して出てきた。臨教審最終答申の中に日本人という言葉が幾つあると思いますか、あっちにもこっちにも出てますよ。さて、教育基本法に言う教育の目的は民族としての日本人の育成にあるのですか。
  64. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教育基本法自体の文言といたしましては、国際社会の平和、日本国家の形成者として有用な人材の育成というふうなことで、前文の中に書かれておるというふうに記憶しております。
  65. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文部省局長クラスならもう少し教育法学的にちゃんと正確な概念で説明された方がいいのではないですか。教育基本法前文には「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」人間教育なんです。そして第一条の「教育の目的」は、人格の完成を目指すのが教育の目的なんです。「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」この一番大事なところは人格の完成を目指すのです。これは第二次世界大戦前の教育勅語を中心とした教育の法理と教育基本法の法理が根本的に違ったことを意味すると思うが、大臣いかがですか。
  66. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりと思います。強いて言えば、私は、これは自己の与えられた生命のとうとさを知り、そしてすべての方々の生命のとうとさを尊重する、これが根本にあるのではないか、このように考えております。
  67. 嶋崎譲

    嶋崎委員 我が国の戦前の教育基本国家教育なんです。国家秩序、国力増進、そのための作用として教育権という教育が動いておったのです。戦後の憲法教育基本法はすべて国民に対して教育権を基礎にして人間教育というふうに転換したのです。ジャパニーズと言う必要はないのです。世界市民であっていいのです、市民であっていいのです。  したがって、この転換の意味をもしそういう転換の意味理解するとするならば、今度臨教審答申に言っているところのこの日本人が最初に出てきたのは中曽根総理の演説なのです。中曽根総理は、臨教審第一回の総会のあいさつで、「教育改革は、我が国固有の伝統的文化を維持発展させるとともに、日本人としての自覚に立って国際社会に貢献する国民の育成」、日本人という自覚を持った国民の育成なんです。「育成を期し、普遍的人間社会の生活規範を身に付けながら、高い理想と強健な体力、豊かな個性と創造力を育くむことを目標として行われる」、こういうふうに言っておられるのです。ここで人格の完成、人間教育が伝統と文化の維持の上に立った日本人としての自覚ときたのです。さあ、私は日本人ですけれども日本人という自覚を持たなければ今日の社会の有力な形成者になれぬとは思いません。その場合の日本人の中身が問題なんです。  さて、臨教審最終答申の中での教育改革基本的なあり方として二十一世紀に向けての教育の目標というものをまとめてみると、一番目は「ひろい心、すこやかな体、ゆたかな創造力」二番目は「自由・自律と公共の精神」、これもいろいろ議論のあるところです。これは教育法学だけでなく憲法上議論になるところです。公共の福祉と基本的人権という問題です。これをどういうふうに理解されるか知りませんが、書いてある。三番目に「世界の中の日本人が、とくに重要であると考えられる。」教育基本法で言う人格の完成を目指す人間教育という戦前の日本教育からの価値転換に対して、ここで言うこれが第三の改革の目玉のような性格を持つように見えるが、大臣の所見をまず承りたい。
  68. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育論を論ずるほど高潔ではないかもしれませんが、今お答えいたしましたように私自身の根本的な考え方としては、おのれの生命のとうとさを知る、同時に生きとし生けるものの生命のとうとさを尊重する、つまりおのれを尊重し他を尊重するという精神から始まるのだと思いますし、また、一人の人間が社会人として立ちますときに、おのれの置かれました風土あるいは歴史、また自分が生まれるまでの長い年月そこに生きとし生きてきた人々の魂の哀歓というものを知っておのれを律する、そういうことであろうと思いますので、それがまず基本にあってこそ、国際社会の一員として、それぞれの国のそれぞれの歴史と風土と人々の哀歓のもとに今宿っておる八十年の限られた人生のとうとさを知る、そこに平和的な信頼感、共存も出てまいりますし、その延長線に人格の形成、完成があるのではないか、このように考えております。
  69. 嶋崎譲

    嶋崎委員 非常に新しい重大なことがこの「世界の中の日本人」ということに関連して最終答申では述べられているのです。その説明として、一番目はさっき言った「ひろい心、すこやかな体」ですね。二番目は「自由・自律と公共の精神」、三番目に「世界の中の日本人」というのを説明した上で、これには特定化しています。「そのためには、第一に、広い国際的視野の中で」云々と言って、第二番目に「日本人として、国を愛する心をもっとともに、狭い自国の利害のみで物事を判断するのではなく、広い国際的、人類的視野の中で人格形成を目指すという基本に立つ必要がある。」、この限りでは抽象的でいいでしょう。「これに関連して、国旗・国歌のもつ意味理解し尊重する心情と態度を養うことが重要であり、学校教育上適正な取扱いがなされるべきである。」となったわけです。ここで言っている「世界の中の日本人」というのを具体化していただくための学校教育上の重要な施策として、「国旗・国歌のもつ意味理解し尊重する心情と態度を養うことが重要であり、」「適正な取扱いがなされるべきである。」こうなっていますね。  これに関連して、内容がいい、悪いは別として、一九七七年の学習指導要領、それからこれは大臣大臣じゃなかったからおわかりでないでしょうが、教科書小委その他が動き出した、教科書問題が動き出した八三年、そこで「望ましい」を確定したい、もっときちんとしたものにしたいという中間答申がある。それで臨教審になっちゃったわけです。今度は臨教審のお墨つきをもらったわけです。臨教審のお墨つきをもらって出てきた。さてそこで、学習指導要領のこの新たな観点からの改訂をなさいますかなさいませんか。
  70. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御案内のとおり臨教審ではそのような答申をいただき、そして教育課程審議会答申が昨年十二月に出たわけでございます。課程審の答申の中でも、国旗・国歌の扱いにつきまして、国旗・国歌の持つ意義を理解させる、そしてそれを尊重させる、そして特に今先生指摘の特別活動の学校行事における例えば入学式、卒業式に国旗を掲揚し国歌を斉唱する、この問題について「望ましい」というところが今の指導要領の表現でございますが、この点についてもっと明確にするというふうな答申内容になっておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、教育課程の基準としての指導要領をほぼ年末までに作業をいたす予定であります。ですから、これから約一年足らずでございますが、指導要領の文言として内容を盛り込む際に、国旗・国歌の扱いをどういうふうに確定していくかということをこれから作業をしてまいる、答申の趣旨を尊重して作業をする、こういうふうに考えております。
  71. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これがまた、次の道徳教育その他に結びついてくると思うのです。これは大臣と私は意見が違うのです。私は国旗・国歌というものを学校に強制すべきものだとは思いません。私は、日の丸の前では黙って立ちますけれども、君が代は歌いません。私にとっては君が代は第二次世界大戦の自分の反省があるからです。日の丸の場合は、あれは日章旗として中国人その他に対して与えた印象を相手の立場から見ると、国としての象徴としての国旗の意味はわかっても、それだけを余り強調するのは、第二次世界大戦後の我々の時代の反省の上に立つと、このごろの若い人は知らぬけれども、意見の違いがあるのです。大臣の家庭と私の家庭は、その意味で子供に対する教育は違っていると思うのです。僕は息子たちに日の丸・君が代についてこうせい、ああせいと言ったことはありません。学校で習い、自分で育っていく中で自由に対処すればいいと思ってきました。幸いに一人は大学先生になり、一人は技術者として社会に役立っています。社会の献身者の一人になっているだろうと僕は思う。日本人という教育をした覚えもない。しかし日本語をしゃべれる。日本人、正確に言えば民族とは共通の言語、共通の文化、共通の経済を持った人間の共同体をいうだけであって、それがアメリカンになりジャパニーズになるのです。しかし人種的にはいろいろな人が入るのです。ですから、日本人が日の丸・君が代という観点のみで問題にしていくと、次に後で問題になる教育国際化というものに対応できるかどうか、これが問題になってくるのです。この点、今度の答申には重大なことが書いてありますよ。本気でなさるんでしょうな。時間がありませんから端的に申し上げておきますが、外国人を日本に受け入れる場合の方法を考えなければいかぬのです。そのときに、人格を目指す教育をやっている場所で、日本人であるということが常に強調されることが開かれた学校になるのかな、相手の立場に立った教育というものを考えるような場になるのかなという問題は残ると思うのです。川村審議官は横に首を振っておるけれども、外国から帰ってきている外国で勉強した子女は、日本学校へ来ると溶け込めないのです。ましてや在日朝鮮人の扱いについて、別の学校をつくっておけばいいというものじゃないですよ。日本学校へ来たってちっともおかしくないでしょう。大学へ行くようになったら奨学金を出すことを考えたっておかしくないでしょう。そういう制度は今の段階で簡単にできません。これは考えなければいかぬことですよ。そういうことなどを含めて考えてみると、親の世代において意見の違う問題を、子供たちに、これが日本人であるということ、教育基本に据えなければならぬものだというふうに、いわば外から権力的にと言うと表現は悪いけれども、強制できるだろうか。クリスチャンの人はどう考えるだろうか。その他も含めていろいろ議論しなければならぬ問題があると私は思っています。  したがって、今ここで聞きたいのは、中身の議論については今はしません。学習指導要領の改訂はなさるとおっしゃったのですね。その時期が大体この暮れまでにやるということですから、今後また委員会でこの問題について議論をしなければならぬと思います。これはここでも一つの新しい方向が出たということを申し上げておきます。  さて、時間がもうありませんから、次に行きましょう。初中教育のところで、これは現在教員養成問題、研修問題その他、重要な法案が続々出ておりますからそれぞれのところで、法案審議の中でさらに内容を取り扱うことにいたしますが、一つだけお聞きします。教員養成の単位の科目に憲法を必修にするという考えはありませんか。
  72. 加戸守行

    ○加戸政府委員 かつて憲法が必須であった時代がございますが、御承知のように一般教育科目の弾力的取り扱いということで、これは全般的に一般教育の基準がやわらかになりましたときに、この教員養成の関係もそれと連動いたしまして、一般教育科目の内容の制約は受けなくなったわけでございます。しかしながら、そのときに文部省といたしましては、教員養成につきましては憲法をなるべく開設し修得させるようという指導通知を行っているわけでございまして、現在、教員養成学部関係につきましては多くの学校においてそれぞれ憲法の科目を開設しているところでございますけれども、まだ開設していないところあるいは指定養成機関等もございますので、今後ともそういった方面に力を入れて指導してまいりたいと考えております。
  73. 嶋崎譲

    嶋崎委員 指導する性質のものじゃないのじゃないですか。最初大臣に申し上げましたように、我が国現行教育法制は、憲法教育基本法を軸にしてすべての法の体系ができ上がっておるのです。学校の教師になる人が憲法二十六条の意味が当然のことによくわかっていなければ困るのですよ。はっきり言うと、生涯学習ということも本当にこれはわからぬですよ。同時に、今の憲法に基づいて並行してできている教育基本法社会教育並びに学校教育を含めての教育権というものの理解をきちんと持たない教師が現場に育っていいのですか。そういう意味では指導して取れるようにする話じゃなくて、憲法という科目は必修にしておくべきだと私は思う。それが日本国民として、現行憲法の中で教育を受ける人間、教育する人間、教育者の使命だと私は思う。公務員は憲法を守れと書いてあるわけですから。どうして指導だけで単位が取れるような仕組みに変えたのですか。たしか昭和四十八年じゃなかったですか。僕が国会に出てくる前後か何かだったという記憶があります。必修をなぜやめたのですか。だから、今の段階で新たな教育改革をやろうとするならば、大臣最初に言うように憲法教育基本法の精神に従って今後第三の改革を進めるということならば、教壇に立つ教師には憲法をきちんと必修として位置づける、そういうふうにむしろ科目の変更、復活をすべきである、こう私は思う。いかがですか。
  74. 加戸守行

    ○加戸政府委員 憲法は一般教育科目の中で修得いたしますので、先生がおっしゃいました御意見まことにそのとおりでございますし、いわゆる教員養成学部に関しましてそのような措置をとる、あるいは修得すべき単位の中に、一般教育科目の中に憲法を必ず含めるような形ということは可能ではございますが、現在開放制の制度をとっておりますので、一つの例でございますが、例えば理工系の学部へ行かれて一般教養をとるときに、将来私は教員になるんだという場合、既にその段階で憲法を必ず修得するというようなシステムになるのかどうか。そういったような開放制の原則をとっている現在の問題等いろいろございます。そういった点で、今の方向としましては、先生おっしゃいますように私ども憲法を当然修得すべきものだという考え方でございますが、それを全部義務化をする、例えばこれは文部省令で不可能ではございませんけれども、そういった場合に、今開放制の原則でいかなる学校でも教職単位を取って教員になれるシステムの中で、一般教育の段階で既に憲法を修得しろということを義務づけることにつきましては、関係方面ともあるいは養成機関とも十分相談をさせていただきたいと考えておりますが、基本的なお考えにつきましては私どもも同様に理解いたしております。
  75. 嶋崎譲

    嶋崎委員 じゃ検討してください。この問題は非常に大事な問題だと私は思うからです。というのは、今までの延長線上とは違う新しい教育改革を問題にしているのですから。そして、臨教審最初大問題になったのは、第三の教育改革というのは教育基本法の検討だという議論もあったのです。ところが、時の文部大臣もそれから皆さん方も、そうではない、教育基本法の枠の中でやるんだ、その精神でやるんだと確認してきたのですから、それだけに今の日本現行教育法制の中で占める憲法教育基本法というものは大事であると思うがゆえに、必修の方向に向かってこれは検討してください。今後とも追っかけていきますから、今の回答をより前進的なものと受けとめます。  さて、もう時間が余りないが、次のところでこう言っている。大学審議会です。大学審議会は既に発足していますが、この大学審議会を創設されて、前の文部大臣大学審議会に対しての諮問に当たって提案をなさっておられるのは御承知だと思いますが、現文部大臣も、前文大臣諮問されたこの答申中身を受けて大学院問題その他について検討する、そういうふうに理解してよろしいですね。
  76. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりでございます。大学審議会に対しましては一高度化個性化、活性化を含めましてその審議お願いしておるところでございます。
  77. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その際に、委員構成に関連して私はちょっと申し上げたい。今ここに名前が挙がっている人、いいとか悪いとかそんなことは言いません。さて、今大学審議会はまずもって八つくらいの当面の項目はあるけれども、さしあたって大学院問題についてより深い討論と基本的な問題について審議いただきたいということを言っているのですが、ここでは何か三つのことを言っておりまして、「教育研究の高度化」とか「高等教育個性化多様化」とか「組織運営の活性化」とか、この言葉が私にはちっともわからぬのです。皆さん、これでよう概念が統一できるものだなと感心するのですけれども、まあそれはやめましょう。こういう概念でこの三つの改革提言をなさろうとしている委員の方々を見たときに、私が感ずるのは、大学院問題というのは確かに今までの大学設置審議会、そういうところでは議論してきたでしょうし、そのほかにも、学者の集団である学術会議審議されておるのを文部大臣御存じですか。
  78. 中島源太郎

    中島国務大臣 そのとおりだと思います。
  79. 嶋崎譲

    嶋崎委員 学術会議というのは御承知のように学者の議会だと言われ、勧告権を持っています。そして、その学術会議大学院問題で二つの問題について政府に勧告と要望を最近出しています。これは昭和六十一年「我が国における学術研究の推進について—大学院の充実等を中心として—」、百一回総会でこういう内閣総理大臣あての勧告を提起しております。それには二つの内容がある。中身充実せいということと、予算が問題ですぞということ。その中には予算の表がついています。世界各国との比較がある。最近の我が国の研究費の政府負担の推移というのを見てごらんなさい。日本だけが一番下で、こんなに低くなっているじゃないですか。大部分はどこに行っているか。民間ばかりなんですよ。全体の教育費は膨らんでいるけれども、これは民間なんです。国は下がっておるのですよ。それのデータは細かに数字が挙がっています。  そこで、大学院を充実させるときに非常に大事なことは、後でまた独立大学院のときに改めて議論しますけれども、学術会議答申を出している、勧告を出している、これらの問題については、臨教審がやはり受けとめて、文部省としても対応していなければならぬはずだと思う。これが一つ。  もう一つは、日本の今日の産学協同を含めて、日本の先端科学その他を検討しておる大事なものがある。それは科学技術会議です。この科学技術会議が最近行った答申、そういうのを文部大臣御存じですか、昭和六十年以降どんなものが出ているか。時間がないから簡潔に言ってください、僕はもうみんな資料を持っているのですから。
  80. 光田明正

    ○光田説明員 お答えいたします。  科学技術会議は文部大臣が議員でございまして、最近は諮問十一号「新たな情勢変化に対応し、長期的展望に立った科学技術振興の総合的基本方策について」というのを昭和五十八年三月十四日に諮問をちょうだいいたしております。昭和五十九年十一月に総理大臣に対してそれを行っております。
  81. 嶋崎譲

    嶋崎委員 諮問の第十二号「科学技術政策大綱について」という非常に重大な提言があっているのです。説明は要りません、時間がないですから。  僕の申し上げたいのはこういうことです。科学技術会議と学術会議は相互に連携する仕組みになっておるのです。大臣御存じかどうか知りませんが、科学技術会議の中には日本学術会議連絡部会というのがあるのです。そして、学者の代表機関である学術会議と科学技術庁所管の科学技術会議は、大学における研究教育の特に先端教育などについてやったものにつきまして相互に科学技術交流するのです。そして、科学技術会議は科学技術会議で現実的な諸課題、産業社会にもこたえるためにテーマを決めて意見を述べるのです。わかりますね。  一方、文部省には大学審議会ができた。これは基本的な事項を審議するのです。ここで大学院を審議するのです。しかも、この審議はどこから始まったかといえば臨教審答申に基づいているのです。臨教審の総責任者は内閣総理大臣です。そこに学術会議は勧告できるのです。科学技術会議が内閣総理大臣にちゃんと答申したり意見を述べることができる。そうしたら臨教審はそれを受けて、今後教育改革をやるときには、今学術会議はどんな要請をしているか、科学技術会議はどんな課題を提起しているかを受けて、大学審議会がこれを検討することにやぶさかでないようでなければならないはずだと僕は思う。  そういう観点から、大学審議会のこの人選は何ですか。国立大学協会というのはどんなふうに関連しているか非常に疑問だ。国立大学先生は二、三いますよ。三対三ぐらいだ、国立と私立は。それから財界の人は半分、五人ぐらいいますね。——もう時間がありませんから言いっ放しにしておきましょう。最終答申に出てくるところで、国立大学はどんな基礎研究をするかという答申基本が出ています。私立大学はそれに対してどんな役割をするかというのは臨教審答申に出ている。ところがこれは国立大学中心です、依然として発想は。その国立大学大学院問題や日本大学院制度を議論するときに、学者の議会である学術会議が勧告したり、科学技術会議が意見を述べているのを受けて、この内部で検討するための体制というものを考えるときには、その人選に当たっては、大学審議会並びに大学院の検討委員会審議に当たっては、密接にそういうところと関連を持つような委員を少なくとも一人や二人は入れておかなければならぬと僕は思う。そういう配慮が全然ない。この意味でも、臨教審答申の高等教育改革問題というのは、偉い人が集まっていろんな御議論をなさったかもしらぬが、国民の税金を使って今日まで積み上げてきた我が国の科学技術会議の成果や学術会議の成果や、そういうものを踏まえて今後どのような方向づけをするかという議論のまじめさに欠けておる、私はこう思う。  そういう意味で、この委員の人選という問題を考える際には、好きな人を集めておるわけじゃないでしょうけれども我が国の科学技術先端を含めて全体の動きがどうなっているかがもっと反映できるような、そういう委員構成を検討すべきであるというのが一つ。この中に教育法や教育関係の学者は一人もおらぬ。なぜですか。六法全書を解説している、我が国のみんなが勉強する法学全集の中の「教育六法」は兼子仁先生が書いているのですよ。何も兼子先生と僕は言っていないですが、こういう流れの学者は一人もいない。どういうわけですか。日本大学基本審議するのに、現行教育法制の中できちんと憲法教育基本法大学のあり方というものを踏まえながらみんなの意見を聞こうという学者が入っていてもいいじゃないですか。ともかく中教審には教育学者を今まで外してきた。そして、臨教審を初めとして一切日本教育学界の成果というものを受けとめようとしないで来た。教育学という学問は戦後の学問ですから蓄積がおくれたことは間違いない。しかし今はもう相当な蓄積ができています。そういう意味で、人選問題についても私は疑義があるのです。開かれた大学とか開かれた審議会とか言うけれども、そういう観点について、今後国立学校設置法その他の段階でもっと詰めた議論をさせていただきたいと思います。  最後に残ったのは大学入試、この大学入試は、もう新聞で御存じのとおり、すべての大新聞の論説はちょっと待てと言っている。大学入試について大変御努力なさって、私学に参加してもらうとかいうような努力をなさっているのはわかるけれども、共通テスト以外の何物でもありません。学習度をテストするのでしょう。そして共通一次みたいなものをやるのでしょう。そして今度は、それと大学の選考をコミットしてリンクさせるのでしょう。適性検査じゃなくて、能力じゃなくて、到達度でしょう。何も基本は変わってないじゃないですか。そして去年、ことしはどうですか。受験生はたまったものじゃない。教育改革の動向は生徒不在です。これは国大協にも責任がある。しかし、文部省は今度は相当なくちばしを入れてやっているようだから、文部省にも責任はありますよ。そういう意味で、国立学校設置法の際にもう一遍議論しますが、時間が来ましたのでこれでやめますが、最後に一言。だけ問題を提起しておきましょう。  私はこんなことを申し上げたかったのです。一番最初に、第十三期の中教審、そこで議論された幾つかの課題、先ほど申し上げました。今度の国会にそれがみんな法律となって出てきたのです。臨教審の路線というものの中にはかつての中教審にはなかったものが確かに付加されている、生涯学習がそうだ。しかし、要するに臨教審というのは中教審と比べて大変な金額、予算を使っている。私、ここに資料があるけれども、物すごい金を使っていますよ。そして、その臨教審がやった結果は、かつて文部省が追求してきたもの、中教審でのつまみ食いをして、そして今国会にそのまま出してきただけじゃないですか。そういう意味では、臨教審というものを受けたこの教育改革というのは大変問題があるというふうに私たちは考えざるを得ない。  これから法案を個別にやって今後審議していきますが、時間をちょっと経過いたしましたが、前は一時間半なんということじゃなかったのですけれども、このごろえらい委員会審議の時間が短うなりまして、ちょっと時間をオーバーいたしましたけれども、問題提起ということで、今後とも論争を深めてまいりたいと思います。  以上で終わります。
  82. 中島源太郎

    中島国務大臣 最後にいろいろな御指摘がございましたが、大学審議会初め審議会委員構成は適正なものというふうに考えております。ただ、視野は広く持っていただいて審議をしていただき、広く答申をいただくように期待をいたしております。
  83. 嶋崎譲

    嶋崎委員 終わります。
  84. 中村茂

    中村委員長 杉浦正健君。
  85. 杉浦正健

    杉浦委員 杉浦正健でございます。中島文部大臣には、臨教審答申を受けまして教育改革推進しなければならない、国民各界各層からも大変求められている重大な責任を遂行しなければならない時期に文部大臣に御就任なされたわけで、大変御苦労様でございます。しかしながら、中島先生はお人柄も極めて清潔、文部大臣たるに最もふさわしいお方の一人、先輩であろうと思われ、また承るところによれば、若い時代には芸術活動にも携われたという芸術、文化に大変理解の深いお方と承っております。さらにまた、船田次官は育英事業の出で、若い時代から我が党文教族の一人として活躍された方が配されておるわけでございますので、この重責を担われて重大な課題を解決するのに、全力を挙げて御尽力いただけるものと期待しておるところでございます。私ども微力ではございますが、全力を挙げて御協力申し上げる所存でございますので、よろしくお願いいたします。  時間もございませんが、同僚の斉藤議員に全般的な御所信については後ほどしていただくことになっておりますので、私は極めて限られたと申しますか、限られたという言い方はおかしゅうございますが、私ども教育が当面しております国際化への対応の問題につきまして、数点御所信をお伺いしたいと存ずる次第でございます。  国際化がどんどん進んでおるということは今さら申し上げるまでもございません。旅行者が極めて多数海外へ出かけ、向こうからもやってまいる、円高で企業もどんどん海外へ進出する、合弁事業をする、単独で進出する、海外の企業もどんどん日本へ入ってまいる、そういう意味で国境の垣根がだんだん低くなり消滅しつつあると言ってもよろしいかと思うわけでございます。そういう国際化時代、二十一世紀へ向けまして国際化への対応ということを御所信でも初中教育あるいは高等教育のところでお触れになっておられる、まず真っ先にお触れになっておられるということはまことに至当なことだと思うわけでございます。いろいろこの分野において問題があるわけですが、一つお伺いしたいことは、義務教育その他の学校教育課程における語学教育の問題についてでございます。  外国語の教育は、国際化時代を迎えて、外国語はたくさんあるわけでございますし、我が国における語学教育をなお一層推進していただかなければなりませんが、とりあえずこの際は、最も重要な外国語でございます英語教育についてお伺い申し上げたいと思うわけでございます。  我が国学校における英語教育は、どちらかといいますと読み書きを中心といたしております。経済界を中心とする各界からは、大学を卒業した者でも国際分野で活躍する人間としては使いものにならない者が多いという御指摘をいろいろな場面で受けておるわけでございまして、この英語教育の改善はいろいろ検討されるべきではなかろうかと思うわけでございます。その面で私は大変注目しておりますのは、これは中曽根内閣の大変な成果でございますけれども、語学指導等を行う外国青年の招致事業が昭和六十一年度から始められております。多くの国々から日本に語学指導にたくさんの青年が来日しておるということを聞いておるわけですが、この実施状況日本におけるその受け入れ態勢、各方面でどのような評価を受けているか、概略まず御説明願えればありがたいと思います。
  86. 中島源太郎

    中島国務大臣 まず、杉浦委員から御激励をいただきまして、まさに教育改革を中心にいたしまして私ども一生懸命やるつもりでございますので、一層の御鞭撻を冒頭にお願いを申し上げておきます。  杉浦委員が特に国際化にお触れになりました。まさにそのとおりでございまして、国際化多様化個性化の中に私ども教育というものを考えていかなければならないわけでございます。ただ、その国際化の中には文化の交流あるいは学術の交流を含めていろいろなものがございますが、私どもとしては、自国の文化を理解し、そしてそれぞれの国の文化を理解する、こういうことから始めなければいかぬと思います。  その中の一つで語学の問題をお取り上げでございますが、この点については、まさに中高を通じまして、オーラルコミュニケーションと申しますか、今までの読み書きだけではなく、日常会話を中心に、そしてヒアリング、スピーチも討論を中心に学習をしていただくということを進めてまいるつもりでございます。また、それに対しまして外国青年の招致を、現在八百十三名程度と思いますが、これを近く千三百名程度にふやしてまいりたいと思っておりますし、今までアメリカ、イギリス、豪州、ニュージーランド中心でございましたが、さらにアイルランド、カナダを含めまして招致の範囲も広めてまいりたいと思っておりますが、具体的には政府委員からお答えさせていただきます。
  87. 西崎清久

    ○西崎政府委員 語学指導のための外国青年の招致事業については、大臣から概略申し上げたとおりでございます。  実際の評価でございますが、高等学校、中学校に配置され、それぞれの学校日本人の英語教師とペアで英語教育を実地にネーティブスピーカーとして行う、こういう姿でございます。それから、一つの学校だけでなくて、自分の主たる学校以外に地域的に近くの学校にはやはりネーティブスピーカーとして教育を行う、そしてまた夜等には社会教育的な活動もしているというふうな実情にありまして、大変評価が高く、各設置者、学校もぜひこれをふやしてほしいという要望が強いという現状でございます。
  88. 杉浦正健

    杉浦委員 文部御当局からお伺いしたところによりますと、当面この招致人員を三千名程度にふやしたいという御計画と承りましたが、それはよろしゅうございますか。
  89. 西崎清久

    ○西崎政府委員 六十三年度は当面予算上千三百人でございます。私どもの目標といたしましては、先生指摘のように三千名を目途というふうに考えておりまして、その考え方は、三千名にいたしますと中学校六校に一人、高等学校四校に一人というふうな人数になるわけでございます。三千名にする年次的な計画につきましては、自治省、外務省、文部省三省共同事業でやっておりますので、今後詰めてまいりたいと考えております。
  90. 杉浦正健

    杉浦委員 私といたしましては、中学校、高等学校では最低各校一名ぐらい置いていただきたい。中学校は一万一千校、高等学校は五千数百校、合わせて一万六千校ぐらいになりますか。予算は大体一人平均年額四百万円ぐらいと承りましたから、六百億円ちょっと。これは地方交付税で手当てしておられるわけですね。将来の日本にとって極めて重要な事業と思われますので、その程度の目標を立てて努力していただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  91. 西崎清久

    ○西崎政府委員 長期的な望ましい姿としては先生指摘のとおりだと思います。ただ、私どもとして留意いたさねばならないのは、ネーティブスピーカーとして招致する外国青年の質の問題でございまして、昨年八百人の招致をする際にも、その質の問題には外務省も私どもも大変気配りをしたところでございます。やはり着実に質のいいネーティブスピーカーの招致ということもございますし、片や、先生お触れになりました財政的な問題、交付税措置ではございますけれども、いろいろ検討すべき課題がございますので、先生の御趣旨はわかりますが、そのめどの時期につきましてはしばらくお預りをいたしたいというふうに考えております。
  92. 杉浦正健

    杉浦委員 もちろん着実にお進め願いたいと思います。成果を確かめながら進めていただきたいと思いますが、外国青年の国籍、これは例えばアジア地域で英語を公用語とする国はたくさんあるわけであります。フィリピン、マレーシア、シンガポールあるいはインド、パキスタンとあるわけでありまして、仮に年額四百万円払うといたしますと、これは大使館を通じて募集するようですが、大変優秀な青年の応募が得られる。この間も私はフィリピンに行ってまいりまして大使館の方に確認してまいったから間違いないわけでありますが、例えばフィリピンですと大変立派な青年を送れるということでございますので、ひとつ日本に招致する外国青年の対象国にアジア地域の国々を中心として、アメリカとかイギリスだけではないそういうところも加えていただきたい。そうすれば人数を確保する上にもよろしいのではなかろうか。また加えて、日本が戦禍を及ぼした国々の青年たちが日本へ来て日本の青年たちに英語を教える。優秀な人たちが来ると思います、そういう人たちが日本の若者たちと交流を深める、これに大変意義があると思われますので、ぜひともそういう方向で御推進願いたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  93. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ネーティブスピーカーの招致につきましては、昨年その事業発足の際に三省でいろいろ協議いたしまして、例えばオーストラリアとか、やはり言葉の性格上若干心配な面もございましたけれども、そこに踏み切ってみましたならばいい質の先生が来てくださるというふうな結果になったわけでございまして、ことしはカナダを加える、それからアイルランドも加える。アイルランドもまた若干地域的な語学的な特性があるようでございますが、二十名程度であればいい質の先生が得られるであろう、こういうふうな形で拡大をしてきておるわけでございます。先生御提案の東南アジアという視点も確かに一つございますが、この辺につきましては、三省のいろいろな協議機関がございますので、外務省なり専門的な立場も含めた検討をさせていただく課題ではないかと思っております。
  94. 杉浦正健

    杉浦委員 重ねて申しますが、日本人の中にとかくございます、白人を何となく高く見、アジア人を低く見るという傾向というか風潮が払拭し切れないと思われますので、それを是正する意味でもぜひ優秀なアジアの青年を日本に招致して教壇に立たせていただきたい。それは必ず向こうの国々の日本に対する理解を促進すると確信いたしておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  もう時間がございませんが、予算委員会等で、例えば留学生の十万人計画とかあるいは日本人教員の外国への派遣研修とか、いろいろ国際化に向かっての御議論がなされたようでございます。もう時間がございませんのでこのあたりでやめますが、国際化時代を迎えて、この所信に述べられており、また今まで文部省が計画されておる事業をぜひとも前向きに推進していただきたい。例えば留学生会館など、この間同僚議員が見に行ったようですが、あれで留学生をお世話できる施設かというくらいミゼラブルな施設のようであります。いろいろ改善すべき点が多々あるようでございますので、時間がなくて恐縮ですが、御推進を願えるようお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  95. 中村茂

    中村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十八分休憩      ────◇─────     午後五時六分開議
  96. 中村茂

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶清君。
  97. 鍛冶清

    鍛冶委員 大臣には、きょうは衆議院、参議院またにかけて大変御苦労さまでございますが、しばらくの間、御質問にお答えをいただきたいと思います。  最初大臣にお尋ねをいたしますが、教育の今後の改善、改革についてどういう心構えで取り組みをされようとしておるのか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  98. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育国家百年の大計と言われますが、その中で教育改革本格実施の年、こう言われております。  その趣旨は、申し上げるまでもなく、日本教育の水準は高いところにあると思いますけれども社会成熟度を増しますと、社会自体が国際化多様化個性化に進んでまいります。その社会の変化にみずから対応できるような個性的で心豊かな青少年を育成する、同時にまた、学校教育は生涯教育のごく基礎的な重要な部分でございますので、生涯を通じまして人間形成の上に教育学習を重ねていく、そういう意味充実を中心に考えていかなければならない、幅広いことでございますから心して取り組んでまいりたい、このように思っておりますので、御指導のほどをお願い申し上げておきます。
  99. 鍛冶清

    鍛冶委員 ことさらにこういったことを大臣にお尋ねいたしましたのは、これからの日本教育の改善、改革ということに取り組む姿勢は中途半端であってはならない、これは当然のことでありますが、ある意味では、日本も国力がついて、先進諸国に追いつき追い越せ、これが功を奏して追いついてきたが、ある部面では、今度は追いつかれる方の立場になってきておるというふうな認識が他の先進諸国の中で出てきておる。そういう中で、特にいろいろな方のお話を聞き、また本等を読んでみますと、その日本がここまで来た根源はやはり教育にある、こういう視点が今ずっと広がってきておりまして、特にアメリカやイギリスなど先進諸国においては大統領等がみずから先頭に立って教育改革に取り組む、具体的に言えば日本ごときにおくれてはならないというふうなことが随所に見えるわけでございまして、そういう意味で、特に最初に当然のことのような御質問でございますが申し上げたわけです。  大臣には御承知とは思いますが、その一部、私がなるほどと思ったことをここで御紹介してみますと、ベンジャミン・デュークという方が著わした「ジャパニーズ・スクール」という本がございます。その本を読んでおりましたら、その中にこういうふうに書いてあるのですね。  「われわれアメリカ人としても、国内市場のみならず国際市場でも、日本人にひけを取らずに競争しようと思うなら、労働者に準備教育を施しているわが国の学校の役割と目的について、もういちど考え直す必要がある。工業生産力にかけて他国の追随を許さなかった時代であれば、学校に対してある程度まで無関心でいることもできた。だが、そういう時代はもはや往って、二度とふたたび還ることはないだろう。形勢は逆転してしまったのである。」こういうふうに言い切っているわけです。そして、「われわれアメリカ人は、もはや単なる追われる立場ではなく、追う立場にもある。そういう状況の変化に沿って、考え方を改めなければならない。そして学校の教室こそ、まず改革に着手すべき対象なのである。」こういうふうに言っている。  そしてさらには、現在大統領選についての予備選挙、いろいろ行われているわけですが、共和党のブッシュ副大統領は教育ということを一番真っ先に掲げて戦っておる、こういう現状がある。  さらにイギリスにおきましては、サッチャー首相が保守党の大会において演説をした内容の中でこういうふうに言っております。「今議会の最重要課題教育の質的向上である。それは国、親・子供にとって大きな関心事である。イギリスが明日の世界で、日本、ドイツ、アメリカに対しより優位に競争していくためには、よい教育を受け、よく訓練され、創造力に満ちた青年が必要である。教育の今日の立ちおくれは、明日の国力の衰退につながる。イギリスの子供たちはその必要とする教育、受けるに値する教育を受けていない。」こういうようなことを言って、教育改革に対するすさまじい熱意と取り組みというものがうかがわれる、そういう演説の文章がございました。  そういう中にあって、我が国が国際比較の中で小中学校関係、特に義務教育関係は非常にすぐれておるという評価があって、見習えというふうな言葉があり、そういったことにともすれば我々は浮かされると言うと極端になるかもわかりませんが、優越感を感ずる中で、我々のやっていることはこれくらいでいいのだというようなことで終わるようなことになるかもわからない。しかし国際比較の中で厳密に指摘されておるのは、小中学校はいいかもしらぬけれども、御承知のように高等教育大学については、端的な言葉で言えば日本大学教育というのは非常になっていないというみたいな厳しい指摘もあるわけでございまして、そういったことを考え合わせていきますと、我が国は、これからはむしろ教育に対する取り組みというものをこれまで以上に真剣に、日本の将来、世界の平和のためにも、世界に貢献するためにもいろいろな人材を育てていかなければならない。ここで紹介したように経済的な面だけで云々というのではなくて、本当に人間というものを見据えた中で、世界の中で生きていけるそういう人材も育てなければならない、こういうふうに思うわけでございまして、大変長い前置きになりましたが、そういったことを大臣とっくに御承知とは思いますが改めてここで御認識をいただいて、文部省の関係の皆さん方も我々もそういう覚悟で教育の改善、改革に取り組んでいきたい、こういうふうに思うわけでございまして、御要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、今申し上げましたように、特に今我が国高等教育のあり方というものが当然問題にされなければならぬ、また文部当局もそういう考えでおられると思いますけれども高等教育に対する取り組み、具体的にどういう形で取り組んで改革を進めていこうというふうにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  100. 中島源太郎

    中島国務大臣 端的な、意義ある御指摘をいただいたと思います。  おっしゃるように、小中学校におきましては明治以来今まで追いつき追い越せで全体の水準は上がってまいりました。しかし高等教育につきまして、これからさらに活性化、高度化、個性化というものについて進めていかなければならぬ点でございますので、昨年九月に大学審議会を発足していただきまして、そこに諮問も申し上げ、現在審議をしていただいておるところでございまして、これを中心に、高等教育大学あるいは大学院の内容充実と活性化に取り組んでまいりたいと思っております。  具体的なことにつきましては政府委員からお答えさせます。
  101. 阿部未喜男

    阿部政府委員 ただいま先生からの御指摘にもございましたように、具体の外国からの批判といたしましては、昨年の一月に日米教育協力研究の中でアメリカ側の報告が出ました。特にライシャワー博士あたりからは厳しい御批判をいただいておるわけでございます。  もちろん各国にも、高等教育のあり方につきましては、それぞれの国の事情、社会的な背景等々いろいろあるわけでございますので一概には言い切れないと思いますけれども、こういった批判というものにはやはり謙虚に耳を傾けて、我々としても改善すべきは改善していかなければならないだろう、こういうふうに考えておる次第でございまして、今大臣からお答えしましたとおり、昨年発足しました大学審議会で現在それを進めておるわけでございます。  具体的には、例えば大学教育をもっと充実し飛躍的に発展させ、内容的にも水準を高めていくのにどうすればいいかという問題、それからこれもライシャワーさん等から学部の学生が遊んでいるじゃないかというような指摘等もいただいておりますけれども、学部教育というものを生き生きとしたものにしていくためには、例えば現在の単位制のような問題が何か改善の余地があるのではないかというような点等も含めまして、いろいろな意味での多様化あるいは個性化を図っていく必要があるだろう。そのためには、大学設置基準などにつきましてももう少し考え直しをすべきではなかろうか。その他、大学の運営等につきましても、さらに生き生きとした活動ができるようにするためにその仕組みを反省すべき点も多々あるのではないか等々、非常に多岐にわたりますけれども、こういった問題につきまして現在具体に大学審議会での御審議を煩わしている最中でございまして、その適切な御意見をいただきまして文部省としてはそれを実施に移していきたい、そういう決意でおる次第でございます。
  102. 鍛冶清

    鍛冶委員 きょうは所信に対する質問でございますので、大枠の御質問でとどめて、個々の具体的な問題については今後の法案審議等の中でまたお尋ねをしていきたいと思います。  そこで次に進みまして、「生涯学習の振興」という項目についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、これは急なことで大臣に大変御無礼とは思いましたが、我が党で生涯教育学習部会というのが教育改革推進本部という中にございまして、昨年七月三十日に「生涯学習社会の建設」、サブタイトルとして「一人ひとりに真の生きがいを」、こういう中間報告的なものをまとめましたので、これを大臣にぜひお読みいただいて、その感想なり御意見なりをお伺いしたいということで差し上げておきました。ここでひとつ、大臣にお読みいただいたその御感想なり御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  103. 中島源太郎

    中島国務大臣 公明党さんの「生涯学習社会の建設」という一文をざっと拝見をいたしました。細かく理解できたかどうかは別でございますが、御提言は大変結構なことと存じました。特に人生八十年時代社会に対応するために、学歴社会の弊害の打破を含めて何項目かにわたりまして具体的な御提言をいただいております。まさにこれは私どもも進めたいと思っております骨子でございまして、生涯かけまして、いつも前向きに学び加え、学び補い、そしてゆとりと生きがいのある社会をつくるということは大変大事なことだと存じます。ただ、それだけにまた、文部省がよほどしっかりやりませんと、各省庁にわたることでもあり、幅広いものでございますから、この取り組みにつきましては、十分先生提言の意も体しまして頑張っていきたいと思います。
  104. 鍛冶清

    鍛冶委員 生かせるところがあればひとつお取り上げをいただいて、ぜひ推進をしていただきたい。我々も、まださらにこの検討を重ねまして、これからいろいろ「生涯学習社会の建設」についての意見交換や議論等もしてまいりたい、こういうふうに思っております。  その中で、我々は、提言の中で最後に、生涯教育促進法、これは仮称で言っているのでございますけれども基本法的なものとしてこういう法律というものがやはり必要なのではないか。生涯学習社会の建設ということについては、生涯教育ということで随分前から言われてきておりますけれども、遅々として余り実績が上がってなかったように思うのです。それはやはり法の裏づけがなかったということが一つにはあるのではないかな、こういう考え方も持っておるわけでございますけれども、そういう意味合いを含めて、特に今大臣からのお答えの中にもありましたように、生涯学習社会といいますと、これは文部省だけではなくて各省にまたがる問題というものが数多くやはり出てくるわけでございます。そういう意味では、各省庁網羅した形での問題も、基本的に法の整備をして、そして生涯教育促進法、仮称なるものをやはり制定していくという方向が必要ではないか、私どもはこういうふうにも思っているわけです。そして、お読みいただいた中の最後のところにも書いてありますように、各省庁間で行われているものを総合化いたしまして、だれでも、いつでも、どこでも、どこからでも学べるシステムに改編をして、より充実できる方向に推進をしていかなければならない、そして、教育基本法を生涯学習の理念から読み直すとともに、こういう基本法というものをぜひつくるべきである、こういうふうに考えているわけでございます。  この点についてひとつぜひ促進をすべきであろうというふうに思うのですが、お考えをお示しいただきたいと思います。
  105. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 生涯学習の総合的な振興のためには、御指摘のようにいろいろな省庁にまたがる関連事業もございますし、連携協力を図る必要があります。検討しなければならないわけでございます。  なお、先生御案内かとは思いますが、臨時教育審議会答申におきましても、社会教育に関運する法令も含めて総合的に見直す、そのための検討をしろ、こういう御指摘もいただいているわけでございます。そのために、目下事務的に関連の法令の検討もいたしておるわけでございます。ただ、教育基本法では社会教育を「勤労の場所その他社会において行われる教育」という非常に広いとらえ方も一方でしておりますので、そういうものとの関連も含め、並びにその生涯学習基盤としての社会教育の位置づけということを十分検討しながら、いろいろな角度から社会教育法令の見直しというものを目下検討しているという状況でございます。
  106. 鍛冶清

    鍛冶委員 再度お尋ねします。  関連の法案の整備というのは当然やらなければいかぬだろうと思いますけれども、それだけで十分賄い切れるのかといえば、私どもはちょっとそれは基本的なものをつくった方がかえって促進できるのではないかという意味で今お尋ねをしているわけですが、そこらあたりについての御意見はいかがでしょう。
  107. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 生涯学習振興の先生のお気持ちは私どもも全く同様でございますが、法令上そういう形で、教育基本法のほかに生涯学習基本法のような基本的なものがつくれるのかどうか、事務的に相当検討しなければならない点もあったりしまして、その点今事務的に慎重に検討している、こういう状況でございます。  ただ、いろいろな分野にわたってできるだけ幅広く生涯学習の条件整備がなされる、そのために文部省が各省と十分連携をとりながら事業を進めていかなければならない、この点については全く御指摘のとおりでございます。
  108. 鍛冶清

    鍛冶委員 これについてはひとつ御検討をぜひいただきたいと思いますし、私どもも、研究をしていろいろとまたいい形で進め得るものがあればぜひこれは進めていきたい、こう思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  それでは次に移りまして、大学入試の問題でお尋ねをいたしたいと思います。昭和六十五年度からいよいよ新テストを導入して実施する、こういう方向が決まって今走っているわけでございます。これは私が申し上げるまでもなく、特にその中で、共通一次試験というものが昭和五十四年から実施をされて今日まで来ているわけですけれども、この大学入試共通一次をめぐって、特にこの二、三年は入試の方式というものが、新聞報道でも言われておりますが、くるくると猫の目のように変わる、こういう表現で報道をされております。私はこういった形がいいのかどうかということを大変心配しているわけですが、こういった大学入試のあり方について文部省は一体いいと思ってやっているのだろうか、またはよくないと思っているのだろうか。これは直接的には共通一次等については文部省が関与するところではないというようなことにもなるのかもわかりませんが、そこらあたりが監督官庁として私は非常に疑問に思うわけです。  そこでこの際、昭和五十四年に共通一次試験を導入して以来の最近猫の目のように変わったと言われておる大学入試のあり方について、総括を含めてひとつ、いいのか悪いのか率直な御意見を含めてお答えをいただきたいと思っております。
  109. 阿部未喜男

    阿部政府委員 御質問にもございましたように、昭和五十四年度の入試から国公立大学で共通一次試験を実施いたしたわけでございます。このねらいとするところは、当時学力検査一辺倒というようなことで、しかも一発勝負の試験が行われている、これがやはり入試制度上問題がある、しかも出てくる問題は難問奇問だらけではないかというようなことが高等学校教育を混乱させている原因にもなっているというような御指摘等にこたえまして、国公立大学で共通一次試験という制度を考えたわけでございます。  この共通一次の制度は、これによりましてまず良質な問題を確保して、平均的な高等学校における教育のある程度の力というものをそれで試す、さらに各大学はそれぞれの大学の個性あるいは学部学科の特質等に基づいた独自の試験を行う、それを総合的に判断するということによって、従来言われておったような問題点を解決していこうということをねらいにしたものでございました。  これにつきましては、一つは、共通一次試験の出題そのものにつきましては、難問奇問がなくなって、高等学校教育に即したよい問題が出るようになったという評価が一般的にあると思います。これは非常によかった点だと思っております。それから、各大学におきます二次試験につきましても、これは私ども十分とは言えないと思っておりますけれども、いろいろな形での多様化が進んでまいりまして、面接を課する、小論文を課する、あるいは二次試験の学科目も平均して二教科程度というところまで減ってくるというような、いろいろないい点が出てまいったわけでございますが、反面、コンピューター関係の技術が進展したこと等もあろうかと思いますけれども、共通一次の成績によりまするいわゆる大学の序列化が顕在化したというような御批判もございます。また、国公立大学だけの改革で、私学についてまで改革になっていないではないかという御批判等もあるわけでございます。  こういったような問題等も踏まえながら、昭和六十二年度以降幾つかの改革が行われてきたわけでございますが、昭和六十二年度国公立大学について行われました改革は、一つは、共通一次の科目を従来五教科七科目と画一的に課しておりましたものを五教科五科目以下ということで科目数を減らすと同時に、各大学がある程度自由に科目を選べるという仕組みをつくったということでございます。この点につきましては好評でございまして、これがまずいという御批判は全然出てないというふうに理解をしております。あわせて、そのときに複数受験制度というものを行ったわけでございます。これは、国公立大学の入試の一元化に伴いまして受験のチャンスが一回に減ってしまったということに対しての非常に大きな不満に対する回答として複数受験制度というものを始めたわけでございますけれども、これにつきましては初めて久しぶりにこういう仕組みをしかも新しい形で行ったということでもございます。いろいろ二段階選抜での足切りが非常に多かったとかあるいは大学の入学者決定の段階のいろいろな乱れが出てきたということ等についての御批判が強く出されてきたわけでございます。この複数受験問題につきましては、昭和六十三年度、六十四年度とさらに改善をしていくべく、国立大学協会では鋭意努力を重ね、議論を重ねておるわけでございますが、この点がいわゆる猫の目ではないかという御不安を与えている原因であろうかと思うわけでございますけれども、複数受験制度というものを本当に本来の趣旨に則したものに持っていくためには、それぞれ各大学の合意を得ながら一定の方向を目指してある程度の時間をかけて進めていくということがやむを得ないことでもあろうかという感じがいたしておるわけでございます。私ども現在の六十三年度のやり方、あるいは六十四年度につきまして国大協が考えている方針でいいというふうには思っておりません。よりわかりやすい、例えば各全部の大学が入学定員を二回に分けて二度試験をするというような方式にまで持っていくべきではなかろうかということでの指導等も行っておりますけれども、そういった方向へ向けての一つの胎動が国大協等の中で行われている、その一つの経過的な状況であるということで御理解をいただければと思うわけでございます。  なお、昭和六十五年度入試からは、これは受験の方式とは申しましても学校の試験期日の問題ではなくて内容の問題として、いわゆる新テストの導入問題というのがあるわけでございますけれども、これにつきましても、これは国公私立大学と高等学校の関係者とで集まって御相談をいただきながら最後に意見が一致した線ということで、六十五年度に向けてやっていこうという方向も固まってまいったわけでございますので、そういった関係者の御努力を踏まえながら、しかもできるだけ早く受験生にこの制度を事前にアナウンスをするというようなことの努力を重ねながら、着実にこの点も進めさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。  長くなって恐縮ですが、全体を御説明させていただきました。
  110. 鍛冶清

    鍛冶委員 いろいろな視点を持って大学入試というものの改善、改革というのは考えられると思うのですけれども、一つの大切な考えられる視点というものは、受験生という立場があるだろうと思います。まあやる方の側にすればいろいろ理由はつけられるのでしょうけれども、結果的に見れば、受験生にとって猫の目のように変わったということについては極めて不安感、不信感というものを持ってきておるというように私は思いますし、そこらあたりの立場ということを考えるならば、どういう改革をするにしろ、時間をかけながら、やりながら、少なくとも三年以上は間を見て、そして見きわめをつけてきちっとやるというのが正しいあり方ではないかな、私はこういうようにも思うのですが、こういった点についてはいかがでしょう。
  111. 阿部未喜男

    阿部政府委員 ただいまの点は全く御指摘のとおりでございまして、私どももそのように思っております。そういったような意味で、昭和六十一年に既に今度の新しい六十五年の仕組みについては公表し、それに向けて進めてきておるという状況にあるわけでございますし、特に高等学校側からは、新しいテストにつきましては高等学校在学の二年生の夏ごろまでにはわかるようにしてほしいという御要望もいただいておりますので、十分御相談をいたしまして、それに間に合うような方向で現在努力をしておるという状況でございます。  また、複数受験のやり方等につきましても、これも国立大学協会に、昨年の入試の際にいろいろ問題があったということもございまして、六十三年度入試のことももとよりだけれども、六十四年度入試についても早く方角を出すようにという指導等も行ってまいりました。若干おくれましたけれども、ことしの春には六十四年度入試についてのある程度の方角が出つつあるという状況にもあるわけでございまして、御指摘の点につきましては今後とも十分に心してまいりたい、かように考えております。
  112. 鍛冶清

    鍛冶委員 六十五年度から私大参加を含めた新テストが実施される方向ですけれども、今の段階で、巷間いろいろと、この点についてはメリット、デメリットが言われているわけであります。文部省としても、今までの議論を踏まえたお答えの中で、こういった制度、方式を導入するに当たってどういうメリットがあり、デメリットがあるかというようなことも十分チェックをされて、そしてその対応も考えられて踏み切ろうとされておるとは思いますが、現状の中で新テストはどういうふうなメリットが考えられ、またデメリットとしてはどういう点があるのか、どういうふうにお考えになっているのかお聞きいたしたいと思います。
  113. 阿部未喜男

    阿部政府委員 今回の臨教審答申に基づく入試改革の考え方は、一番基本にございますのは、大学の入試というものは、受験生の個性、能力、適性といったものを多面的に判断をして幅広い学生の人間形成に意を用いながら行われるべきである、そういう形で各大学の入試が個性化多様化をしていくべきであるという考え方を基本に持っておるわけでございます。そういった考え方を実現するために、現在のままの制度でございますとどうしても多数の受験生をさばくために一発の学力検査だけで入試が行われるというような傾向になってきてしまう、これをできるだけ丁寧な入試が行われるようにするために、すぐれた出題である現在の共通一次の成果を踏まえて新しいテストを構想いたしまして、そのテストを各大学が自由に利活用する、そしてその自由な利活用の結果、いろいろな形での余力が出てまいりますから、そういう余力を使って各大学で独自の入試を十分工夫してやってほしいといった形で、要すれば各大学の自由な利活用に役立つように、そしてまたそれによって多様な個性的な入試が実現するようにというのが、今度の入試のメリットと申しますかねらいとする点でございます。  それで、デメリットというのは大変申しにくいわけでございますけれども、これによっていろいろ各方面で不安をお持ちなのは、国公立大学で序列化というような問題が起こった、これが私学についても出てくるのではないかというあたりのところに一番不安な点があるのではないかと思うわけでございます。私どもとしましては、従来の国公立の共通一次についていろいろ言われていることの一つが、五教科七科目を全部一律に課していた、それによって序列化がなされやすいような状況にあったということ、それからもう一つは、各大学における二次試験の多様化という点が十分には進行していなかった、それによって共通一次の成績だけで物を判断する、世間から見られるというような体制ができてしまったということあたりであろうと思うわけでございまして、今回の改革につきましては、例えば私学が入ってまいりました場合にも、自由な利活用ということをまず前提に掲げておりますので、ある私学においては英語だけを使う、あるところは国語だけを使うというようなやり方が可能になってくるわけでございますし、また各大学がその余力で、二次試験で今までやられておらなかった論文試験等をやっていただくというようなこと等で工夫を凝らしていただければ、これが直ちに序列化につながるということにはならないであろう、こういうようなことを予想し期待をしているわけでございます。
  114. 鍛冶清

    鍛冶委員 デメリットの中に言われておるのは確かに序列化ということが一番大きな問題であろうと思いますが、それがあると同時に、私ども心配しているのは私学としての特色をなくすのではないかということを痛切に感ずるわけです。どうしても国公立の方に右へ倣えの形になってしまうのではないか。さらには二次の試験といいますか、大学側における試験というもののあり方を極めて信頼し高い期待感を持って、うまくいくであろうというふうに言われておるわけですが、私もそのように期待したいとは思いますけれども、どうも従来の大学側の対応を見ておると、共通一次を施行しました場合も、むしろあれは二次とのセットで考えられておった、大学側の対応の方がむしろ非常に重視されなければならぬことだったと思うのです。あれが実施されるときには私もいまだに覚えておりますけれども文部省は変なところに口を差し挟んだりはせずに、変なところというと恐縮ですが、巷間そういうことをよく言われるわけですが、ところが、私はそういうところにこそ、大学の自治とかなんとかいうけれども、むしろ大学自体のためにも、また受けるお子さんたちのためにも、日本の将来のためにも、二次の方に少し口を差し挟んで、少し強硬に自由にやらせて、特色ある学校がつくれるように大学入試を考えるようにしたらどうだということを申し上げたことがあるのです。しかし、随分とこれは遠慮をされて、確かに大学には大学の自治、学問の自由ということがありまして、これは大切なことですからやむを得なかったかもわかりませんが、私どもとしてはそういう点で大変な心配をいたしておったわけです。ところが、今度共通一次ができると、もう何かそれにおんぶにだっこしちゃって、時々大学に行っていろいろ話しているのをお聞きしますと、心ある方は、ああいうことによって試験問題もつくらなくていいし、今さらまたもとに戻って試験問題なんかをつくるというのは大変なことだというようなことで、むしろ大学先生方が、立派な先生もたくさんいらっしゃるのだけれども、そういうことで少し楽をしちゃう。今局長も言われたように、残った余力というか時間を苦労して大学として本当に特色ある入試を行っていくという、大学自体を特色あるものにするという努力が極めて少なかったような気が私はするわけです。そういった点については、文部省としても今後十分に取り組みをしていただきたいし、我々も立法府の立場からこれはどんどんいろいろな指摘もしていかなければならないな、こういうふうには思っております。  ただ、私大が参加すると特色がなくなるということも一つありますし、さらに言われているのは、今の受験料自体がこれによって大幅に減るということから、要するに私立大学の経営の難しさ、危機ということにもつながりかねないというような現実的な議論もあって、果たしてこれがうまくいくのかどうなのかということが言われておるわけですけれども、そういう点についてはいかがでしょう。
  115. 阿部未喜男

    阿部政府委員 御指摘の点は私も全く同感でございます。  これはかねてから私どもそういうふうに申しておったわけでございますけれども、先般国公私立の大学の関係者に対しまして改めてこの新しい入試改革についての説明会等も行ったわけでございますが、その際にも、特に私が強調いたしましたのは、まず新テストありきではない、まずねらいとするところは大学の入試を個性化をし、多角化をしていくということがねらいなのであって、そのための手段として一つの新テストというものを提言されているのだということをよく理解してほしい、各大学の入試の特色を奪おうというのではなくて、各大学の入試の特色を出してほしい、それが最終的なねらいなので、そこをぜひお願いをしたいという趣旨のことを大いに強調をしたつもりでございます。  そういった方向で逐次このテストの趣旨を御理解いただきまして、特に私学等でも利用いただける、そうした有益な利用の仕方をしていただけることを期待をいたしますと同時に、各大学が独自で行う試験のあり方につきましても、先生からただいま御指摘をいただきましたが、私どもも機会あるごとに指導し、助言等をしてまいりたい、かように考えます。
  116. 鍛冶清

    鍛冶委員 私大参加ということは一つの重点になっているのですが、これはどの程度まで参加を考えていらっしゃるのか。全私学参加というのか、それとも何%ぐらいいけばいいというのか、そこらあたりどういうふうなお考えなのか、現時点では大体どれくらいの参加が見込まれておるのか、その点ちょっとお聞かせをいただきたい。
  117. 阿部未喜男

    阿部政府委員 このテストは、先ほど来申し上げておるような趣旨で考え出され、提言されているものでもございますので、私どもとしてはできるだけ多くの私学がこの趣旨を理解をしていただいて参加していただくということをねらいとして、御説明等を申し上げてきておるわけでございます。  現在、この夏までに各大学でこれを利用するかしないかということの方針を発表してほしい、こういうことで連絡をいたしておりますので、各大学とも現在の段階で参加をする、しないということを公式に表明されたところはないわけでございますが、昨年の暮れに、全国の四年制の私学につきまして、大体どんな検討が行われていますかということを口頭で問い合わせをいたしましたところ、数十校の大学は、こういったものについて、いつの時点から、初年度から入れるかどうかということは別にしても、前向きの姿勢で検討している、あるいは検討するつもりであるというようなお答えをいただいておりますので、私どもとしては、あるいは時間がかかることになるかもしれませんけれども、逐次御理解をいただいて多数の私学が入っていただけるように努力をしたい、こう考えておる次第でございます。
  118. 鍛冶清

    鍛冶委員 六十八年ごろから大学に入る学生の数が減ってくるようになると思います。そこらあたりで、序列化ということをさっきから言われておりますが、参加すればこれはもう全く序列化されるだろうと思うのです。間違いなくされるであろう。それが全私学、私大あたりが全部参加しなければいかぬというような雰囲気にもしなったといたしますと、私学の経営という面から見ても、六十八年以降私学ではもう閉鎖しなければならぬというところもひょっとしたら出てくるのかな、そういう中にこのテストによる序列化が重なってきますと、これが即そこらあたりの評価とつながってきて大変な問題にもなりかねないというふうな気もいたしておるわけでございます。  したがって、私どもとしては、私大の参加というものはある程度自主性を尊重して参加ということをお決めになる方がいいのではないか。それを何か、まさかそういうことはないと思いますが、やらなければ何かペナルティーをどこかでやっちゃうぞというようなことをもしやったりすると、これはまたなおさら大変なことにはなるのだろう。だからあくまでも、これからの日本をしょって立つ学生を私学で相当大半やっていただいておるわけですから、特に特色のある、日本の将来にとって、世界にとってもプラスになるような人材を育成できるような大学、ユニークな大学をつくって、またそういういろいろな競争にも勝ち残っていけるような形ができてくればいいのではないかな、私はこういうふうに思っております。そういう方向でぜひお進みをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  119. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘はごもっともでございまして、局長が申しましたように、この新テストは、新テスト先にありきではなくて、先にあるのはあくまでも個性重視の教育でございますので、少なくとも個性が十分に生かせるように、そして、先ほど先生指摘のように、大学の二次試験には、それぞれまた私学には建学の精神もございますし、その中で各学部学部で特に受験生の創造性、個性、人間性を引き出せるような方法をとってもらいたい、そのためには一教科あるいは二教科に絞って十分に個性を引き出してもらいたい、こう思っておりますし、過去の例で見ますと小論文あるいは面接の採用が非常にふえております。例えば十年前の五十三年と六十二年とを比べますと、小論文の採用学部は四十七学部から百六十九学部にふえておりますし、面接も五十六学部から百八十八学部にふえておる。こういうものはまた私学の方でもそういうものをどんどん取り入れていただきまして、個性ある学生、そして個性ある学校、建学の精神を十分に伸ばしてもらうような、そこを理解していただくように努めてまいるつもりでございます。
  120. 鍛冶清

    鍛冶委員 では次に進みまして、英語教育についてちょっとお尋ねをいたしたいのです。  これは先ほど同僚委員の方からも御質問が若干ございましたが、違った角度からお尋ねをしたいと思います。  最近、国際化時代の到来とともに、御承知のようにこの問題が極めてクローズアップされてきておると思います。特にこの中で、現在の学校教育の中における英語教育のあり方については、さまざまな論議が交わされていると思います。文部省もこの改正に向けて努力をなさって、大分改善されてきたのかなというふうな兆しもあるようには思いますけれども、まだ依然としていろいろな厳しい批判があるわけですけれども、この英語教育のあり方について文部省としては今後どういうふうに対応していくお考えなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  121. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の英語教育につきましては、多々御意見があるところでございます。  そこで、私どもとしては二つの面で措置を講じたいと思っておりますが、一つは、昨年十二月の教育課程審議会答申で英語教育改善についての教育内容学習指導要領の改善の方向が示されております。  その中身につきまして二、三申し上げますと、まず中学校におきまして、一週三時間というのが現行でございますが、今後中学校においても授業時数の弾力化を図りまして、特別活動との関係がございますが、三時間から四時間というふうなことで、アッパーでいえば四時間の授業時間数がとれるようにしてはどうか、これが第一点でございます。それから第二点は、やはり聞くこと話すこと、コミュニケーション能力の欠如ということの御批判が多いわけでございますので、中学校教育、高等学校教育でコミュニケーション能力の育成のための教科内容のあり方、これに少し力を入れ、中学につきましては、英語の取っつきでございますから、そこのところの配慮と、特に高等学校ではオーラルコミュニケーションという二単位の科目を三つつくりまして、上位の段階ではスピーチぐらいまでいけるように、Aレベルでは日常会話とか、そういうふうな中身の改善をしていきたい、これが大きく申し上げまして第一点でございます。  それから第二点は、やはりネーティブスピーカーによる英語教育充実ということで、先生御案内のとおり、昨年から八百人、そしてことしは、六十三年度でございますが千三百人予算上でございますけれども招致をして、ネーティブスピーカーによる英語教育充実、これはコミュニケーションの育成ということに資するわけでございますが、大きく第二の点としてそういう方向を考えておるわけでございます。  以上でございます。
  122. 鍛冶清

    鍛冶委員 私も英語の教科書をちょっと見ておりませんので、どうこうと私の見た感じから申し上げるわけにいかないのですけれども、いろいろお話を伺っていますと、教科書なんかの内容も今のままじゃいかぬのじゃないかという意見が強いようですね。特に、やはり国際化の観点から、難しい内容をやめて、例えば日本の文化と各国との文化の違いを取り上げるとか、また外国人とのつき合い方はどうしたらいいんだというふうなこともその教科書の中で取り上げるとか、さらには日本の文化を外国に紹介するような内容のものを教科書の中に取り上げるとか、そういったような、いわば社会科であるいは教えなければならない内容のものかもわかりませんが、むしろこれを英語の教科書の中へ直接取り入れてしまって、そしてそういう具体的な、すぐ生かしていけるようなものをやはり教科の中に取り入れていった方がいいのではないかな、こういうふうにも思うわけですが、こういった点についてのお考えはいかがでしょうか。
  123. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘のとおり教科書は大変大事でございますが、先生や私ども時代の英語の教科書と現在の教科書を比べますと、現在の方が大分対話文が入った形ということになってきております。これは、NHKその他いろいろな放送コミュニケーションによる英語会話の教室がございますが、ああいうのもスキットを中心というふうになっておりますので、先生指摘のような教材の並べ方と申しますか、内容についても十分これから私ども考えてまいらなければならない。その点はコミュニケーションだけでなくて、やはり国際理解、御指摘のような知識の理解、外国の文化その他の理解ということにも資するわけでございますので、御指摘の点は十分私どもも今後考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  124. 鍛冶清

    鍛冶委員 もう一つちょっと。私のような、局長さんや大臣のあたりとほぼ似通った年代の世代に育った者は老婆心的に思うのですが、現在の英語教師でお年を召された方とか、あるいはどのあたりまでかわかりませんが、やはり読み書きとか文法とかを中心にしたような、そういう養成課程を経て現在教鞭をとっておられる方が多いんじゃないか。こういう先生方をどういうふうに変えていくのか、これは非常に難しいのじゃないか。あるいはそういう先生方でも、読み書きはできるけれどもしゃべれない、会話はできないという方がおられるかもわからない。そういうところも一つの何か英語教育のマイナスのポイントになっているのじゃないかなという気がするのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  125. 西崎清久

    ○西崎政府委員 英語教育におきましては、その担当教員が大事でございまして、現在、御案内のとおり中高の英語教員は全部で五万人でございます。この五万人の英語教員が英語教育をやっておるわけでございますが、やはりネーティブスピーカーを呼んでブラッシュアップをしてもらうということも大事でございますけれども、私どもは、若干ずつではございますが、国内研修と海外研修というのを日本人教員について行っておりまして、来年と申しますか六十三年度は百四十五人、これをアメリカとイギリスに二カ月でございますが派遣する。これは従来からの人員を二十人ふやしたわけでございますが、さらに六十三年度は新規としまして、英語教員だけでございますが、六カ月の海外研修、これをイギリスに派遣したい。それぞれ大学における英語教育の研修を受けると同時に、ホームステイをしてもらって、そして日常に溶け込んで英語のブラッシュアップをしてもらう、こんな計画をしておりまして、これらの教員が帰りましてから、それぞれの地域で、まだ外国へ行っていない人とか初任者の英語教員の研修をする、こういう輪を広げていく。それからもう一つ、筑波研修としまして四週間の研修を筑波の教育会館の研修所でかなりの人数をやっておるわけでございます。これらも含めまして、日本人英語教員の研修にも今後努力してまいりたい、こんなふうな考えでおります。
  126. 鍛冶清

    鍛冶委員 大臣が六時には参議院の方にまた回られなければいけないというふうにちょっと伺いましたので、これを最後の質問にいたしたいのですが、私が英語教育をここで取り上げました一つの理由は、最初にちょっと御紹介しました「ジャパニーズ・スクール」・という本を読んでおりましたら、その序文のところで、ライシャワー博士、元の駐日大使ですね、ハーバード大学教授を今やっていらっしゃいますが、ライシャワーさんが序文に書かれている中で英語教育について極めて厳しいことを言っていらっしゃるのですね。ちょっと読み上げさせてもらいますと、こういうふうに言われているのです。  日本学校では、英語の勉強に並々ならぬ時間を費しているのに、その結果はお粗末きわまりない。普通なら、苦労をして英語を読むことで、外の世界に関する知識を身につけることができ、その上で必要となれば、読解力から一歩すすめ必要な経済上の交渉ごとを英語でこなすに足る、初歩的なスピーチ能力が育つはずである。   ところが日本教育制度は、世界の知的生活に積極的に参加できる日本人を、ほとんど生み出してはいない。実情に通じている者ならまず異口同音に、過去四十年間、日本の外国語教育は少しも改善を見なかった分野だと認めることだろう。これは、日本の最大の教育的欠陥を象徴するものといってもよく、きわめて深刻な経済的政治的危険をはらんでいる。 こういう表現なんですね。オーバーといえばオーバーかもわかりませんが、ライシャワー博士は極めて日本のことを御存じの知日家でもいらっしゃいますし、その先生があえてこういうことを序文に書かれているということは、やはり当たらずといえども遠からずのところがまだまだあるのではないか。そういう意味で、国際化ということを目指すためには、やはりなお一層の取り組みというものを新しい発想の中ですべきではないか、こういうふうなことを痛切に感じたので御質問を申し上げたわけでございます。  この今のライシャワー博士の言葉をお読み上げしたわけですが、大臣これを聞かれて、ひとつ英語教育についての御決意なり御感想なりをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  127. 中島源太郎

    中島国務大臣 ライシャワーさんのお言葉、身につまされる御指摘でございます。  また、先ほどからのお話も承っておりました。特に英語教育が会話中心、それからこれからはオーラルコミュニケーションということで討論中心にやっていくということでございますが、その中に一つの御指摘社会教育的なものもそれに取り入れたらどうか、これは大変結構なことでありまして、まさに国際的な視野あるいは国際的な交流、これを深める上にやはり社会事象を取り上げるのは大変結構なことだと思います。  また、今局長から言われたように、海外研修の二カ月、六カ月というのをふやしてまいっておりますが、また先ほどおっしゃった外国からの青年招致、これもわりに日本教育者が外国の方と直接話す機会が少ないということなものでございますから、そういう青年の招致がまた直接そういう方々と話す機会がふえまして、日本にいながらやはり日常使える英語の習得に教員の方々が一層努めていただける機会にもなろう。そういうことを含めましてよい御指摘として拝聴いたしました。ありがとうございました。
  128. 鍛冶清

    鍛冶委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  129. 中村茂

    中村委員長 次回は、来る二十五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会