○岩佐
委員 そこで、この
委員会で私も何回か取り上げてまいったんですが、
加工食品の栄養成分表示についてお伺いをしたいと思うのです。
厚生省は、一九七七年以来、法制化に関する
調査研究を行いました。一九八四年以降、
加工食品栄養成分表示
制度調査検討費として予算措置を行って、栄養情報サービスシステム検討会を設置をして法制化の具体的内容を検討していたわけであります。ところが、一九八五年七月の市場アクセス改善のためのアクションプログラム、これで、国の法令等に基づく新たな基準・認証
制度の創設は原則として行わないとしたため、法制化を断念をする、そして、業界の自主表示にゆだねる、そういう
状況になってしまったわけであります。
そもそも、栄養成分表示の
制度化というのは、塩分や糖分のとり過ぎによる成人病、高血圧や脳卒中などの原因を減らすために必要という国民の強い要求があってこれに踏み切ることになったものであります。そこで、ガットの東京ラウンドのスタンダード協定、これをよくよく見てみますと、こういう規格を決める場合に、国際規格が存在する場合にはそれをもとにして強制規格または任意規格をつくりなさい、こういうようなことが書かれているわけでありますけれ
ども、「ただし、特に、国家の安全保障上の必要、詐欺的な行為の防止、人の健康又は安全の保護、動物又は植物の生命、健康又は生育の保護、環境の保全、気候その他の地理的な
基本的要因、
基本的な
技術上の問題等の理由に」よってそうした国際規格がその国にとって難しいというふうに判断された場合にはその限りではないというようなことが、この東京ラウンドのスタンダード協定では明記をされているわけですね。第二条の二のところでこういうことが書かれているわけであります。
工業技術院の委託
調査で国際認証相互容認
制度の電気機器の
委員長を務めた唐津一さんという方ですが、この方が、「
空洞化する
アメリカ産業への直言」という著書の中で、ちょっと長いのですが読んでみたいと思うのです。途中ですが、
ところが、
調査が進むにつれて、ことはそんなに簡単なものではないということがわかってきた。やはり各国の風土、ユーザーの慣習、安全に対する考え方など、それぞれに独自のものがあり、大げさにいうなら、文化の差の問題にまで発展するほど違いがある。
日本の公営水道の水栓にはすべて青銅を使うことが指定されていて、どの都市の水道局でもそれしか使用を認めていない。ところが欧州では黄銅が普通である。そのほうが
価格も安い。これが数年前問題になりかけたので、
工業技術院がテストを行なった。すると
日本の水では黄銅だと腐蝕することがわかった。
日本の水は軟水だが、これに対して欧州の水は硬水であるためらしい。そのため
日本では値段の高い青銅が指定されていたのである。船のスクリューはすべて青銅を使うが、これも黄銅では腐蝕に耐えられないからである。
こういうようなことで、いわゆる水の違いからくる物質の選択の違いというのがわかってきたわけでありますけれ
ども、こういうことがあるわけです。ですから、東京ラウンドのスタンダード協定でも、その国の自主性が尊重されるべきである、こういうふうに明記をされているのだろうというふうに思います。
この栄養成分表示について言えば、いろいろ調べていきますと、
我が国の基準・認証
制度を非関税障壁だと言っていた
アメリカの方がむしろ表示
制度が進んでいるという
実態があるのですね。例えば、これは私がちょっと調べたのですが、食塩、ナトリウムについては、
アメリカでは
加工食品の四割にもう既に表示がされているわけですね。
日本よりはるかに高いわけです。それから乾燥野菜、ベビーフード、べーキングミックス、こういうものについてはナトリウムの表示は一〇〇%なわけです。ですから、
調査をきちっとしていない、こういう点もあるんじゃないかというふうにちょっと思えるわけです。例えばオランダでは、こういう栄養成分表示については全体の三〇%が行われているというようなことであります。
こういうふうに調べていくと、大体何で栄養成分表示がこういうふうに外圧でもって、
アメリカの圧力で
制度化をやめなければならなくなったのかということがよくわからなくなってくる。厚生省に伺っても、そこのところがどうもよくわからない。外務省といろいろ話をしているんだけれ
ども、どうもらちが明かないといいますか、もう
一つはっきりしないんだというようなわけです。
経企庁は調整機関でございます。そういう点で、ぜひこの栄養成分表示について積極的に調整をしていただきたい、このことをお願いしたいと思います。
同時に、ここにサンプルをお持ちいたしましたけれ
ども、この法制化を断念することによって業界の自主規制に任せることになったのですが、厚生省が行います表示と
農水省が行います表示、これがばらばらなのです。そこで、このばらばら表示では消費者が困るわけです。これは調整してくださいということで前大臣に申し上げましたところ、そういう線で調整を図っていきたい、こういう
答弁をいただいているわけでございますけれ
ども、大臣がかわられましたので、きょうはまたサンプルを
委員長の御了承を得ましてお持ちいたしました。
例えば、これは同じマーガリンであります。こちらが
農水省のものであります。こちらが厚生省のなのです。例えば、エネルギー、脂質たんぱく質、食塩、これは同じなのですけれ
ども、炭水化物と糖質、この名称が違うわけです。ちょっと見ていただきたいと思います。幾つかの商品をお持ちしましたけれ
ども、そういうふうに糖質と炭水化物が違うということで、消費者は、これについては、なぜ同じものなのにこういうふうに表示が違うのか、まさにこれは厚生省と
農水省の縄張り争いじゃないかということで、消費者にとっては非常に迷惑な話だというのが
一つあるわけであります。
もう
一つは、業界にとって、例えば飲料水の業界等は非常に糖分が多いのですね。大体栄養成分表示をやる必要があるのではないかという発端が、食塩もそうですけれ
ども、缶ジュースや何かの糖分がすごく多いということから端を発しているのですが、そういう業界は余りやりたくないという気持ちが強いというふうに伺っています。そうなりますと、結局厚生省と
農水省が縄張り争いをしている間に、私の方は
農水省につく、私の方は厚生省だということで、あるいは私は両方で縄張り争いをしているのだったら傍観だ、調整がついてからやろうかということで、結局その作業がおくれてしまっているというような
状況が発生をしているわけであります。
例えば一九八六年十一月から八八年一月の間に厚生省の自主表示というのは六百八十九品目しか進んでいない。業界が余り積極的にやろうとしない。そういう
状況になっていて、それまでにずっと作業を行ってきた品目数よりもこの間の品目数の方が少ない、そういう
状況になっているわけですね。今
加工食品というのは二万から三万流通しておりますし、一般家庭の大体六割がこういう
加工食品だというふうに言われています。
やはり、私は先ほど申し上げましたように、
アメリカの方が進んでいる、ヨーロッパの方が進んでいる、そういう
実態もあるのに、そこのところをちゃんと
調査もしないで、何か基準・認証
制度、アクションプログラムが決まったら、もう一律栄養表示もだめというふうになったり、それから自主表示になると厚生省と
農水省が縄張り争いをして消費者のための
行政が進まないというようなことは、私は非常に腑に落ちないわけですね。
きょう「国民生活」の最新号が配られました。それで大臣の消費者保護
基本法二十年の月間に当たっての巻頭言を読ませていただいて、まさに言っておられるとおりだと思うのですね。「消費者が自主的・合理的な判断を基に社会の変化に主体的・積極的に適応できる能力を身に付けることが、何よりも重要なのです。」これは教育のことを言っておるのだと思いますが、表示も消費者教育の一環だというふうに私は思っています。そのことを進めるために、「
政府、事業者等は、消費者に対して積極的な支援を行っていくことが必要です。」というふうに言われておられるわけで、まさにこの
基本姿勢というのは大事なのじゃないかというふうに思いますけれ
ども、大臣もかわられましたので、改めてこの栄養成分表示につきまして大臣の御所見をお伺いしたいと思います。