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1988-05-12 第112回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 村山 喜一君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 川崎 二郎君 理事 高橋 一郎君    理事 小野 信一君 理事 山田 英介君    理事 塚田 延充君       金子原二郎君    鴻池 祥肇君       佐藤 一郎君    渡海紀三朗君       谷津 義男君    奥野 一雄君       竹内  猛君    草川 昭三君       伏屋 修治君    北橋 健治君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁調整         局審議官    長瀬 要石君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局審議官  宮本 邦男君         中小企業庁指導         部長      村田 憲寿君  委員外出席者         国土庁大都市圏         整備局計画課長 中野 和義君         大蔵省証券局業         務課長     内田 輝紀君         大蔵省銀行局調         査課長     小山 嘉昭君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   藤原 正弘君         厚生省薬務局経         済課長     中西 明典君         厚生省薬務局審         査第二課長   渡辺  徹君         厚生省保険局医         療課長     谷  修一君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 加藤 清氣君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       窪田  武君         農林水産省畜産         局食肉鶏卵課長 太田 道士君         農林水産省食品         流通局商業課長 大矢 好信君         通商産業省立地         公害局保安課長 工藤 尚武君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       圓藤 壽穂君         労働省労政局労         働法規課長   渡邊  信君         消防庁危険物規         制課長     次郎丸誠男君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 村山喜一

    村山委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、現在問題になっている農業問題の中で一つは国際的な問題がありますね、この問題に触れながら、国内での生乳価格の決定のあり方あるいは卵の価格の問題、それから農業生産費の中で、特に米の中で最もウエートを占めている肥料の取り扱い、こういうことで質問をします。  まず最初に、現在日本農業をめぐる諸情勢というものは大変激しく流動している。農地改革から農業基本法、そして今度の開放経済自由化というふうに、内外から農業が注目されている状況の中で、経済企画庁長官として既に農業問題については非常に豊富な経験と経歴をお持ちの中尾長官から、とりあえず見解を承りたい。
  4. 中尾栄一

    中尾国務大臣 ただいま御質問いただきまして、日本農業を全体的なグローバルな見地で考えてみろ、こういうことでございますが、私も長い間農林関係に携わってきた同友といたしまして、極めて厳しい深刻な立場、局面に立たされていることだけは間違いない。そういう中にあって顧みますると、私が二十二年前国会に出していただきましたときには、まだ国内だけの農業問題を知悉しているというだけで済んだ農業問題ではございましたが、今や国際的な見地、むしろ農林省農林外務省であるかのごとき印象を与えるほど国際化してきたということは、先生の御指摘のとおりでございまして、そういう意味において、問題も複雑多岐にわたって大きくなってきておることも事実でございます。そのように認識しております。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、その農業問題をめぐって当面の問題は牛肉オレンジ取り扱いの問題ですが、佐藤農水大臣が先般二回目の訪米をされまして、八回のヤイター通商代表との間での話し合いをされた中でどうしても合致できないものがある。確かに、譲るべきものは譲り守るべきものは守るという基本的な立場に立ってこられたことについて、私は一定の敬意を表するわけですけれども、その後帰ってこられて、今度は総理がカナダのサミットに六月に出る。そのころまでには、この牛肉オレンジの問題は始末しなければならないであろうという形で、むしろ今話があるように、農業問題が外交問題あるいは官邸の問題に移ってきているのではないか、そういう感じがします。  そういう中で、牛肉オレンジの問題だけではなくて、やがてこれは米に影響を与えるのではないかという心配さえある。そういうことになると、日本農業というのはまさに崩壊してしまうのではないかという懸念もありますから、これについて経済企画庁長官としての、閣僚としての見解をお聞きしたい。
  6. 中尾栄一

    中尾国務大臣 竹内先生も長い間私の農林関係の盟友でございますし、その御勉強ぶりは私もよく知っておるわけでございまして、ただいま御指摘のとおりの進捗状況の中に日米関係もあるし、また同時に日本農業も直面しておる、こう言っても差し支えはないと思うのでございます。  しかしながら、私の個人の見解としてまず申し上げますれば、牛肉問題、オレンジ問題は、何も急邊ここで佐藤農相時代に忽然として出てきた問題ではないわけでございまして、もう御案内のとおりでございますが、十数年前からこの問題が惹起しておることだけは間違いございません。私自身も時には特使として、何回となくアメリカにこの問題でも参りましたが、アメリカ側の当時の言い分としては、当時日米間のデフィシットといいますか、インバランスは百億ドル未満でございました。しかし、百億ドルを超えたら問題にしますよということは、絶えず私も言い続けられてきたことでございます。  その間におきまして、特に生体牛を扱っておる問題などにおいては私なども中心になりまして、アメリカ農林委員長以下十三名の農林委員、さらに防衛委員科学技術委員商工業委員、ウエーズ・アンド・ミーンズ・コミッティーの委員等等、五つのディビジョンに分けて日本に呼んだことがございますが、そのときに彼らが宮崎県、鹿児島県に行きまして生体牛実態を見て、一軒当たりで五頭か六頭しか飼っておらないという実態を見て、一頭が死んだら一体どうなるんだという質問を浴びせたことがございました。そして、日本農家で一頭死んだら家族が死んだようなもので、我々は路頭に迷うんだという話をしましたらば途端に、生体牛を扱っているアメリカミドルクラス家畜農家では十万頭ぐらいを平気で飼っているわけでございますから、ぎょっとしたような顔をして、その後それがコングレッショナル・レコードにまで載りまして、非常にある意味において日米間における理解が求められた時代がございました。  しかし、それ以降日本国会議員の顔ぶれも変わり、なおかつアメリカ議員もそれから八年たちますといろいろと変わってまいりますから、そういう意味で非常に議会が強くなったような感を否定できないようになってまいりました。そこで、今回の最後最後のターゲットまで持ち込まれたなという感じがいたすわけでございまして、私といたしましては、佐藤農林水産大臣が懸命に努力をしてきたその過程において、ちょうど私もワシントンにおりましたから、自民党側ではございましたが農林議員もついてまいりましたので、激励をしながら大いに頑張っていただいたと思っておる次第でございます。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう一点だけ長官に伺います。  最近、円高ドル安という形の中で貿易摩擦の解消、こういうことから産業構造研究会あるいは新前川レポート等によって内需優先というようなことも言われておりますが、そういう中で農業面から見た場合でも工業から見た場合でも、例えば最近のアジア新興工業国家等々の広い土地で比較的安い労働力、また安い土地ですね、そういうところに日本技術者が出ていって工場をつくり指導して、そこから逆輸入してくるという傾向が非常に強い。例えば時計にしても、四つに一つ輸入だと言われている。そういう問題が一つありますね。これは時計だけではなくて、あらゆるものがそういう形になっている。  農産物の場合においても、最近はカゴメジュースアメリカのカリフォルニアに工場をつくって、そこから逆輸入している。確かに原料が安い、広い土地がある、そこで技術工場ができれば生産ができますから、これは損か得かといえば大変合理的なやり方かもしれません。私の茨城県にはカゴメ工場があって、そこで今何をつくっているかというとウーロン茶ですね。その原料は中国ですね。工場だけがあそこにある。カゴメは、少なくとも茨城県と長野県に工場を持って、全農もタッチをしてやっているところですけれども、今やトマト農家との契約栽培はほとんど打ち切ったような形になっている。こういった状態というものがずっと継続していくと、国内空洞化してしまうんじゃないか。その空洞化を抑えるために、実はきのうもこの問題で農林水産委員会で同じようなことを質問したわけですが、これはやはり一省の問題じゃなくて日本の政治の基本に関する問題ですから、これも経済企画庁長官としての見解をお聞きしたい。
  8. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先生の御指摘いただきましたカゴメトマトジュースの問題等々、こういうことは私も非常にある意味においては矛盾を感じ、ある意味においては大変に憂慮しておったことでございますが、円高に伴う産業構造の変化と申しましょうか、これは長期的な産業構造成熟化を加速しているものでございまして、マクロ的に見ますると、我が国については製造業国際競争力を失い、衰退するということの意味での空洞化心配するという状況はないと、私ども認識をしておる次第でございます。  しかし、これが恐らく大ベテランでいらっしゃいます竹内先生に対するお答えのポイントにもなろうかと思いますが、円高に伴う製品輸入増加、あるいはまた輸出の停滞、あるいは海外生産増加等によりまして、個々の産業地域においての深刻な影響が生じているところが確かにございまして、そうした地域における雇用の確保がまことに必要ではないか、このように私ども認識もし、また考慮しておる次第でございます。  このためには、内需主導型の経済成長を図るということと同時に、産業構造の転換の円滑化に努めるということが極めて大事でございまして、技術革新情報化等の成果を生かしながら新規産業を創出し、そしてまた、さらに多様な就業機会の創出を図るように、地域産業政策充実強化に努めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 どういう時代であっても、働く労働者の皆さんが雇用が安定し所得が保障されるということでなければこれはまずいし、農家にしても農業に意欲と展望を持つようにしなければまずいということですから、そういうことについてひとつ努力をしていただきたいということ、これは要望です。  さてそこで、現在の問題についてこれから農林水産省質問いたしますが、これは脱脂粉乳緊急輸入に関する質問です。  最近の報道によりますと、乳酸菌飲料アイスクリーム等に非常に脱粉の需要がふえてきた。そして、国内におけるところの在庫では間に合わないから緊急輸人をしなければならない。近くこれの輸入を発動する。こういうことは五十九年以来四年目のことですね。一方において、国内生産調整をしている、我慢しろ、価格を抑え、生産調整をされている。私はこの間、北海道、岩手県に調査に行きましたが、酪農家の借金というものは大変なものですね。これに対しても、この間から大分いろいろ委員会で申し入れをしたりして農水省一定努力はしているけれども、そういうときに、国内においては能力があるにもかかわらずそれを精いっぱいやらせないで、外国からこれを輸入する、こういうことですね。しかもその輸入先が、オランダでありニュージーランドでありイギリスというところから入っておるのですね。これは今の自由化で脅えている、そして金利で苦しんでいる、しかも生産調整で悩んでいる、そういう酪農家にとってみたらたまらない感じなんですね。なぜ、国内におけるところの生産計画等に基づいてこれがやられないのかということについて、これは農水省担当からひとつ説明を求めたいと思います。
  10. 窪田武

    窪田説明員 先生指摘のとおり、脱脂粉乳につきましては、この五月に、最近における脱脂粉乳需給状況を踏まえまして、当面の需給安定を図るために畜産振興事業団在庫の放出と、畜産振興事業団による輸入をすることに決めたわけでございます。これは先生も御指摘のとおり、従来から乳製品等非常に過剰在庫を抱えておりまして、昨年の今ごろでは大変過剰を抱えておったわけでございますが、昨年におきます飲用牛乳、いわゆる飲む方の牛乳需要が大変好調に推移しまして、搾る乳はその飲む牛乳脱脂粉乳なりバター、いわゆる乳製品加工に向けるものと両方に分かれるわけでございますが、飲む方の牛乳が大変伸びますと、乳製品加工に向ける牛乳が減ってくるわけでございまして、その伸び方が、従来は毎年一、二%ふえたり減ったりということでございましたが、昨年の一年間を通じますと六%近い伸びでございまして、そういうこともございまして、ことしに入りまして脱脂粉乳在庫は大変逼迫したということでございます。  これにつきましては、もちろん生産者段階におきましてもこれに気がつきまして、私どももそれに気がつきまして、特別調整乳を搾っていただくとか、いわゆる生産の方も飲用需要に追いつくように、その生産について努力していただいたわけでございますが、何分にも牛というものは急に多く乳を出せといってもなかなか出ないものでございまして、その意味畜産振興事業団によります在庫調整需給調整機能というものがございまして、そういう制度のもとにおきまして急には追いつかないということでございまして、その辺を十分、例えばメーカー側に対しまして脱脂粉乳の使い方を節約せよとかいろいろ指導したわけでございますが、どうしても最近の需要、特に夏場を迎えましてアイスクリーム等あるいは飲み物につきましての乳製品需要が非常に大きくなるということを見まして、私どもぎりぎりの線で輸入に踏み切ったわけでございます。  もちろん、生産者団体方々計画生産ということで大変苦労されているという事態は十分承知しておるわけでございますが、やはり物が、絶対量が少ないということでございますので、やむなくこういう措置に踏み切った次第でございます。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 今そういう説明を聞いても、それは納得ができないんだよ。というのは、そんなことは初めからわかっているじゃないか。畜産振興事業団というものがあって、そこで需給調整機能を持ちながらやっている。一方においては、生産者に対しては生産調整を強いて、しかもことしの場合、加工原料乳の場合にはまたその価格を約三円、詳しくは二・九二円ぐらい下げている。こういうことをして、それでそれが農民に愛情のある行政だなんということは言えないです。絶対言えない。だから、これは反省してもらわなければ非常に困るんだ。しかも、一方で外国からどんどん物が入ってくるというのに、それもそのままにしてこういうことをするということになると、行政に対する不信が起こるんですよ。  しかも、畜産振興事業団というものは、牛肉取り扱いについてもこれまた汚職をやり、これは大変問題があるでしょう。最近は理事長がかわったけれども理事長がかわっただけじゃこれは済まない話だ。それじゃ一体、畜産振興事業団というものは必要かどうかということになれば、それはやはりなければならない、私はそういうふうに思いますけれども、一方においてはもうあれはやめた方がいい、ああいう汚職の巣窟みたいなものはやめた方がいい、何の機能もしないじゃないか、農林省の古手の役人の天下りの場所じゃないのか、こういう批判さえ、十人寄れば八人まであるんだ。理解は余りしない。だから、こういうことをどんどん上塗りをするようなことをやっておったら、行政に対する不信というものはますます募るばかりであります。四千トンも輸入する、一体これはどういうことから来たかという、それは責任問題じゃないのか。もう一度、課長の誠意ある答弁を求めたい。
  12. 窪田武

    窪田説明員 先ほど御説明いたしましたように、生乳につきましてはいわゆる計画生産需要に見合った生産を行うということで、生産者の方方が大変努力されているわけでございます。ただ、牛乳乳製品需要といいますのは、従来から飲用牛乳、飲む方の牛乳需要中心として、季節変動も大変ございますし、我が国におきましては、生乳飲用の方に二、加工の方に一というぐあいに配分されておりまして、飲用の方が例えば五%伸びますと、加工向けが倍の一〇%減に響いてくるということで、乳製品の方にそのしわ寄せが大変大きくかかってくるのが実態でございまして、そういう場合には、やはり今回のように飲用牛乳の方が大幅に予想を上回って推移する場合には、一時的に乳製品需要が足りなくなるという場合も十分想定されたわけでございます。  今回の場合には、そういう場合に緊急に対処するということによりまして、先生指摘のとおり、畜産振興事業団によります各種の需給調整機能というものがございまして、この需給調整機能につきましても緊急に、迅速かつ的確に行われるというのが大変重要なことでございまして、今回もそういう意味で、緊急かつ迅速ということで緊急的な輸入を行ったことでございます。こういう計画生産のもとにおきまして、農業者方々には大変な御心配をおかけしたわけでございますが、これは先ほど先生が若干お触れになりましたように、対外的な圧力によります自由化ということではございませんで、単純に国内需給問題として位置づけられる問題でございますので、そういう意味で、こういう急な大幅な需給の緩和なり、あるいはそれの逆の場合につきましても、今後とも十分注意して、迷惑をおかけしないようにしてまいりたいというふうに思います。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は理解はしません。理解はしなくて、これはまた次のいずれかの階段で追及しますから、ちゃんと責任ある答弁をしなければ。何のために畜生振興事業団をつくり、農家生産調整をさせながら、外国から国内でできるものを輸入しなければならないのか。そんなばかなことはないはずだ、それは理解をしない。  そこで、昨年来、私は生乳価格を決める、取引を決めることについての質疑を続けてきました。何回かこのことをやってきたけれども、依然としてこれはまだ改まっていない。加工原料乳は前年度対比約三円、正確には二円九十二銭の値下げをした、そういう保証価格になった。この四月以来、これが適用されている。生乳用途別では大部分を占める飲用向けの六十三年度における取引条件など、現在はどうなっているのか、このことについてお伺いします。
  14. 窪田武

    窪田説明員 先生指摘のとおり、加工向け生乳価格につきましてはこの三月に政府が決定したところでございまして、それ以外の乳製品、主として飲用向けでございますが、それのいわゆる生乳全体の価格を含みます取引条件につきましては、生産者団体乳業メーカーとの間におきます自由な取引交渉によって行われているところでございます。  六十三年度生乳取引進捗状況につきましては、一部、これは沖縄県でございますが、現時点で、価格についてはほぼ合意に達しました。数量についてまだ合意に達していないというところがございますが、その他の都道府県につきましては現在鋭意交渉中でございまして、いまだ合意に達していないという状況でございます。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 本来なら、新年度に入る以前に交渉の成立を見て、それを文書化して、取引の公正と安定を図ることが何よりも重要だと考えられるわけですね。けれども酪肉振興法不足払い制度では、生乳取引近代化を推進する上から文書化の問題も規定をしているのに、また新年度はもう二カ月も過ぎているのに、依然としてどの指定団体も決着もせずにいるところはどうしたことかということが問題になっている。これは行政指導の、ある意味においてはサボタージュじゃないのかという声さえ聞こえております。しかも、昨年の両国会であれほど質疑をしたのにもかかわらず、こういう状態にあるということは、先ほどの脱粉の四千トンの輸入も含めて、やはり農水省の当局の指導あり方が問題になるのじゃないか。決めたことは決めたようにやってもらわなければ困る。どうですか。
  16. 窪田武

    窪田説明員 御指摘のとおり、生乳取引文書化につきましては近代取引段階の要諦でございますので、契約文書化を一層推進する必要があると考えております。  そこで、昨年の十一月に乳業メーカー側、それから生産者団体でも指定生乳生産者団体、それから全国酪農乳業関係団体、さらには都道府県担当者を集めまして、どうしたらいいかということで意見を聴取しましたところ、その契約当事者でございます生産者団体側もまた乳業メーカー双方も、契約文書化に努めるという点では意見の一致を見たところでございまして、これらを踏まえまして昨年の十二月には、都道府県並びに関係団体に対して指導をしたところでございます。  ただ、これは文書化の問題でございまして、六十三年度におきましては、文書契約の内容でございます数量とか価格とかというものがまだ交渉合意に達していないというために、その文書化もなされていないという実情にあるところでございます。このため、本年度に入りましても、何よりもメーカーなり生産者団体双方に対しまして生乳取引交渉そのものの促進、さらにはその契約早期文書化につきまして指導をしてきたところでございますが、今後とも六十三年度生乳取引交渉早期妥結契約文書化が推進されるよう、指導をさらに強化してまいりたいというふうに思います。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 全国生乳団体と言うけれども、その生乳団体というものはどういう団体を言うのか。四月二十一日の本委員会草川委員質問によると、中酪であるとか全酪であるとか中央酪農会議という名前や全農は出てきているけれども全国生乳連というものを法律でちゃんと認めているのですね。農水省が認めているわけだ。それをまま子のような形で邪魔者にしている。こういうことでは、これはうまくいくはずはない。指定団体は、各県ごと自分たち取引全国生乳連に委託するという形で話をしているけれども、そういうこともしていない。  ところで、契約書整備状況はその後進んでいるのかいないのかという問題については、今ちょっと話があったけれども、あれ以来いろいろと検討したようだけれども、結局、酪振法と不足払い法に関連して農水省が示してきた「模範・生乳取引契約例」に基づくべきだなどということになってしまったのじゃないか。文書化しなければならないことは義務規定のことであって、決して一過性のものであってはならない。少なくとも近代的な契約というものは、口頭でやったり慣例でやったりするのではなくて、文書で価格取引の場所やあるいは数量を決めていくというのが近代的なものでしょう。農林水産省だって近代的な政府機関なのだから、それだけなぜこうやってサボらなければならないのか、それが問題なのだ。どうなんですか、そこは。
  18. 窪田武

    窪田説明員 先生指摘のとおり、今六十三年度でございますが、六十二年度生乳取引文書契約状況につきましては、六十一年度に比べまして、文書化の推進が一歩ずつ進められつつあるというふうに考えておりますが、御案内のように都道府県なり乳業メーカー等によりましては、本格的な取り組みは六十三年度からということにしているところもございまして、いまだ必ずしも十分なものとは言えないというふうに考えております。  六十三年度につきましては、先ほど申し上げましたように、そのほとんどが現在、契約の内容自体についての交渉を行っている段階でございます。したがいまして、文書契約が締結されてない状況にあるところでございますが、先ほど申し上げましたように、指定団体及び乳業メーカー双方契約当事者間におきまして、文書化を推進するという機運が高まっておるところでございますので、生乳取引交渉が決着すれば速やかに契約文書化が促進されるというふうに考えておりまして、私どもといたしましても、生乳取引契約文書化取引近代化の要諦であるということはそのとおりでありますので、それにかんがみまして、さらに指導を強化してまいりたいというふうに思っております。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう二カ月も過ぎているのだから、早くこれを文書化をして近代的な取引にしなければならない。  聞くところによると、メーカーというのは決まっているのですね。三大メーカーがあり、その他があるわけだ。雪印、明治、森永というようなのが大手であって、まあその他もありますけれども、そういうようなメーカーというものは大メーカーが決まっている。あとは、その他いろいろあるけれどもそういうことであって、話をするのは簡単な話なのだ、それは。ところが、生産者というのは各地にばらばらになっているから、これは容易ではない。  だから、大変難しいことはわかるけれども、近代的な取引というものをぜひやってもらいたいということを強く要望すると同時に、「用途無指定・その他向け」ということについての枠拡大と新年度保証価格、前年度より二円九十二銭下がったわけで、それを押しつけているということになっているけれども、したがって本年も、数カ月は暫定払いのままで支払われるのではないかと心配をしている。こういうことがないようにするためにはどういうふうにしたらいいのか。つまり、暫定払い、暫定払いでいく、こういうことのないようにできないかどうか、どうですか。
  20. 窪田武

    窪田説明員 生乳取引につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、生産者団体乳業メーカーの間における自由な交渉によって行われるのが基本であるというように考えておりますが、その交渉自体につきましても、今御指摘のとおり、現在各指定団体乳業メーカーの間におきましては、生産者団体側は、先ほど来御議論しているとおり、生乳需給が好転しているのではないかというととで、生乳取引価格の据え置きというものを主張しているところでございます。乳業メカー側は、生乳生産費が下がっているということを反映いたしまして、応分の値下げ、具体的には一部においては御指摘の二円九十二銭という数字も上がっているやに聞いておりますが、値下げを主張しているところでございます。  私どもといたしましては、生産者サイドと乳業メーカーサイドとの間におきまして十分議論を尽くしまして、双方にとって納得が得られるまで十分話し合いを行うことが肝要であるというふうに考えております。今後とも両当事者間の交渉の推移を十分に注視するとともに、その早期決着に向けまして適切な指導を行ってまいりたいと思います。  御指摘の暫定払いのことでございますが、生乳というものは、四月に、新年度に入りますと、契約があろうとなかろうと、何しろ乳は出てきてそれを製品化しなければいけないという問題がございますので、従来の慣行から見ますと、話し合いがまとまらない間は前年の価格、ないしは場合によっては、昨年一部にございましたけれども、一方的に低い価格あるいは高い価格ということで行われるところでございます。本年の第一回目の暫定払いというのはたしか五月十五日になろうかと思いますが、お金はやはりもらわなくてはいけないものですから、決まっていない以上は、一定の話し合いのもとにおきまして、暫定払いというものが行われるということはやむを得ないことではないかというふうに考えております。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 生産者側については、去年の脂肪の場合でも三・二を三・五にする。これは売りやすい、消費者向けに喜ばれる形、それは結構なことだと思いますけれども、その脂肪の三・二を三・五にした場合においても、だれがもうかったかと言えば、損したのは生産者であってメーカーはちっとも損していない。特に雪印なんかの決算を見ると大変利益を上げている。配当もいいですね。ところが生産酪農家というものは、北海道から岩手、全国を見ても、やはり赤字あるいは借金、こういうことで苦労している。そこへ持ってきて今度は脱粉の輸入なんということになれば、これは踏んだりけったりたたいたりだ。こういう形になるのだから、本当に近代的な取引をし、生産者に愛情を持つならば、それから消費者に向かっても、何も高いものを消費者に売りつけろと言っているわけじゃない、いいものをちゃんとしたあれで気持ちよく取引していく、こういうことが必要だから、そこを取り上げて調整するのが農林水産省課長の、窪田課長の責任じゃないのか、畜産局の責任じゃないのかということを再度要請をしなければならない。  私どもが昨年来の国会においてしばしば指摘していることは、「用途無指定・その他向け」などが取引にあっていいのかということだった。畜産局では、そういう実績はやむを得ないというようなことで今日まで来ているのですが、この「用途無指定・その他向け」の存在は、因果関係から見て次のことが言えると思うのです。つまり、畜産局はどういう見解を持っているかというと、五つ、ばかりに分析ができるのですね。  まず、取引近代化の阻害。つまり不公正、生産者の弱体化、買いたたき。二番目が消費者への欺瞞。三番目が不足払い法空洞化をもたらしている。四番目、不毛な南北問題の激化。特に最近北海道方面ではすばらしい減反ですね。四八%も水田が減反されて、その減反を切り抜けるためには酪農に転化せざるを得ない。これは北海道の農家の意思じゃない、国の政治の方向がそういうふうにさせているわけです。そして加工原料乳ができて、その余った乳が今度は本土の方に出ざるを得ない。そうなると、市乳地帯である本土との間のいやが上にも争いにならざるを得ないという、好まない、好まれざる争いが生ずる。それから五番目が、独禁法の問題に触れてきます。市場拡大をねらっても、地域差というものが起こってくるであろう。つまり不公正な取引になる。こういう心配があるわけであって、私どもは「用途無指定・その他向け」というような、そういうあいまいなものを持つこと自体に疑問を持つわけですね。これはどうですか。
  22. 窪田武

    窪田説明員 生乳の受託販売にかかわります販売価格の約定の方法につきましては、不足払い法の趣旨からいいまして限度数量がございますので、加工原料乳向けとその他向け、主として飲用牛乳等に分けることが必要最小限のところでございますが、指定生産者団体乳業者、メーカー側との話し合いに基づきまして、「その他向け」をさらに細分化いたしまして、合理的である用途区分に分けるという場合も当然考えられまして、これにつきましては生乳取引実態に応じて適切に行われるよう指導しているところでございます。  御指摘のいわゆる「その他向け」というのは、現在「用途無指定」ということで設定されておる事実は承知しているところでございますが、生乳の場合には需給の動向によりまして、その生乳飲用向けになるのかあるいはバターになるのか脱粉になるのかクリームになるのかということにつきましては、契約段階ではあらかじめ判断できないというような事情があることを踏まえまして、契約当事者間の合意に基づきましてそういう「その他向け」というものをつくる、そのこと自体につきましては問題はないというふうに考えておる次第でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この点でも契約契約と言うけれども契約がされていない。契約がされていなければやりようがないじゃないですか。二カ月も過ぎているのにまだ契約もしていない、話し合いをしょうと思えば一方が逃げてしまう。生産者の方の団体が話し合いを申し込めば、一方は用があるとかどうとかこうとか逃げてしまって話ができない。そうすると契約が延びてしまう。そうすると暫定払いでしょう。そういう状況というのは余り好ましい情勢ではないのじゃないですか。一体、総体的に見て二〇%ないし三〇%、本州で言えば全量の三〇%以上も占めているこの他用途向けというものの実質的な用途はどういうふうになっているのかということについては、畜産局としてはこの乳をどういうような方向に向けているか、今もちょっと説明があったけれどももう少しはっきり説明をしてもらいたい。
  24. 窪田武

    窪田説明員 先ほど御説明いたしましたように生乳取引におきましては、まず加工原料向けというのは限度数量等がございますので、これは特に一つの用途としてございます。それから地域によりましては学校給食向け、さらにはいろいろなクリームとか発酵乳とかそういう向け、それから飲用向け、その他というのがいろいろな組み合わせで各地域において行われているということでございまして、その場合にその他、用途が無指定ということがどうしても必要だということにつきましては、先ほど御説明したとおり、そのつくった時点におきます消費動向に大きく左右されるものでございますので、契約時におきましてそういう数量をあらかじめ全部きちっと決めておくということは困難でございますので、取引契約書におきましても、年度内の一定の期間ごとの総取引数量については決めておりますが、用途別にこれは幾つ幾つというのは、もちろん交渉当事者間の両方の推算で大体このぐらいになるなということはわかっておりますけれども、具体的な数量は決められていないというのが実情でございます。  それで、それぞれの年度における取引数量につきましては、その用途別につきましては、年度終了後に初めてこれだけここにこう向けたんだということが明らかになるものでございまして、特に知事が認定を行います加工向け生乳数量につきましてはきちっと決まってくるわけでございますが、それ以外の用途別取引数量につきましてはあくまでも取引当事者間の自由な取引にゆだねられておりまして、私どもとしては、必ずしもその実態は把握していないところでございます。  なお、六十二年度のように、飲む方の飲用牛乳の消費が大幅に伸びたというような場合には、「その他向け」の生乳の大部分が飲用向け生乳として処理されたものと思われますが、具体的な割合については承知してございません。逆に、飲用牛乳が大変伸びが悪いというような場合には、そういう「その他向け」につきましては、そのほとんどが加工向けの乳として使われるというふうに聞いております。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういった状況のもとで、設立後三年目を迎えている全国生乳連が目下必死になって長い間の悲願であった取引の対等性の確立、生乳取引の安定、取引近代化等々を目標にして頑張っています。農林水産省は、自主的にやるべきだと言っていながらも、事実としては明らかに陰に陽に圧力をかけたり無視したり、いろいろな妨害、阻害をしているようなことを聞いておりますが、ある県ではある大物政治家を中心として、生乳連から脱退しろ、こういうような圧力をかけたところもある、既にそれはわかっていますけれども。そういうように畜産局は、こういった法律で認められている団体も自分の思うようにならなければ抑えつける、分断をするというようなことはおかしい。現在、生乳連は会員から一任を受けて、その代理人として交渉に入っておりますけれども、その団体交渉メーカーに求めていることは、取引条件は現行以下としないこと、交渉成立までは現行価格を下回る暫定払いを行わないこと、という二点を中心として交渉しているわけでありますけれども、これについても農水省見解はいかがですか。
  26. 窪田武

    窪田説明員 全国生乳連の傘下の指定団体会議の決定を受けまして、本年の四月いっぱいにかけまして、岡山県酪連以下八つの指定団体が六十三年度指定取引に関しまして乳業メーカーに対し、取引条件は現行どおりとする、交渉成立まで現行価格を下回る暫定払いは行わないことという点、さらに上記の交渉については全国生乳連に一任するということについて文書で申し入れていること、また、これを受けまして全国生乳連がその指定団体の代理人として、乳業メーカーに同様の申し入れを行っているということについては承知しております。  私どもといたしましては、今後の事態には、生乳取引の当事者間の問題でございますので、その事実は承知しておりますけれども、いずれにしても生乳取引交渉が早期に妥結することが一番大事だというふうに考えております。その意味で、現在それらの各県の指定団体においては、現に乳業メーカー側交渉といいますか、話し合いの機会を再三設けているというふうに聞いておりますので、それらも踏まえまして取引当事者双方に対して指導を行ってまいりたいと考えております。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ひとつ、認められており、指定団体を代表して委任を受けている団体でもあるから、余り阻害しないように、邪魔者にしないように、それはその団体は数が少ないかもしれない、二十一団体かもしれませんが、いろいろな圧力をかけて、おまえは抜けろとか抜けるなとか、そういうようなことは役所としてやらない方がいいでしょう。  今度は、卵の問題にちょっと入ります。  この鶏卵の問題についても、前々から国会でも大分議論になってきたことです。特に五十三年の農林水産委員会では、農家養鶏というものを一つ農業の中に位置づけをする、そして、やみ養鶏をやった者はそれぞれの基金から排除したり金融からものけるというようなことで注意をしたことがあります。ところが最近は、物価の王様と言われたところの鶏卵が著しく値が下がった。そして、いろいろな問題が起こっていますね。特に卵の場合には、飼料はほとんど輸入でありますけれども、国際的な紛争も少ないし静かな畜産業であったはずでありますけれども、四十九年の石油ショックで市場に変動があり、鶏卵の生産調整が行われて今日まで十数年間たってきておりますが、五月六日のニュースではキロ百十五円、農林規格の改正後の最安価という形になって生産者に不安を与えている。これは、さきのいわゆるやみ養鶏の代表と言われた、国会にも出席を求めていろいろ意見を求めたタケクマの百十一億の倒産、次いでダイドーファームは四百五十億、さらに最近赤玉戦略といった阪神鶏卵が三月十五日に倒産をしてこれは六百億、やがて千二百億を超えるであろうと言われる負債を持っておりますが、このような三つの大きなやみ養鶏が倒産をした中で二カ月たったけれども、依然として卵価は回復をしない。四月の基準価格、百五十円に決まったわけですけれども、それから三十五円も安いところで現在は低迷している。一体これはどういう原因になっており、現状をどうしょうとするのか、こういう点について現状と展望についてお聞きしたい。
  28. 太田道士

    ○太田説明員 卵の価格につきましてはただいま先生指摘のとおり、キロ百十五円ということで非常に安くなっております。御指摘のとおり、農林規格の今の規格が設定されて以来最低の値段であるということになっておることは事実でございます。  一つは、私ども理解といたしましては、こういう卵の暴落が起きているということは、まず五十九年の七月以降八回にわたりまして飼料の値下げということで、三割以上の値下がりが一つあるということでございます。  それから、六十年の年央から六十一年までは非常に卵価が堅調に推移してきたということで、増羽意欲が非常に高まりまして、全体的に供給過剰傾向になってきておるということが、非常に大きな原因であるというふうに考えております。特に今回の卵価の低迷につきましては、御案内のとおり、この四月の下旬から五月の初めにかけまして大連休があったわけでございまして、やはり卵を産むことは休むわけではございませんので、その間に在庫が相当たまってきたということもございまして、この連休明けに暴落が生じてきておるということでございます。  先ほど来、先生指摘ございましたとおり、昨年の七月それからことしの三月に養鶏関係の大型倒産が生じたことも事実でございまして、私どもは従来から計画的な生産を推進しなければならない、その実効を確保するために、卵価安定基金への加入というのは計画生産を遵守している人たちに入っていただいてやっておるわけでございますが、やみ増羽の関係者の方々というものはそういう卵価安定基金から排除してきたという経過があるわけでございまして、その結果、やはり経営に相当破綻を来したんではないか。経営の破綻問題につきましては、いろいろな要素があるというふうには聞いておりますけれども、そういう事実があるわけでございます。  ただ、現在私どもは、全国需給協議会それから生産者団体でございます日本養鶏協会を通じまして、計画生産の徹底ということを推進しておるわけでございます。去年の二月ごろからだんだんえづけ羽数も抑制ぎみになっておりますし、淘汰も進んでおるということでございますので、我々としてはこのところの値段が相当底入れではないかというような形で認識しておりまして、この四月から六月ぐらい、毎年季節変動でも下がるわけでございますので、六月以降からは、ある程度の回復ということが見込まれるのではないかというような感じで見ております。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間の関係から、あと必要なことをまとめて質問をします。  まず、今答弁があったけれども、三つの大手の養鶏が倒産をした。倒産はしたけれども、その後始末をだれがしたかということになると、これはえさ会社がしているわけですね。その中には全農も入っているんだ、全国農業協同組合も入っている。全農というのは本来、基本的には農民の代表の組織であるけれども、やはりえさについてはなかなかしつこく、えさの販売会社でもあるということで全農も入っている。宮城県の筆甫というのは、タケクマがやったものが倒産したときに全農の肩がわりの組合貿易がこれにタッチをする、あるいは阪神鶏卵の場合にも全農系がやはり債権確保をやる。それから三井系あるいは三菱、日商岩井、伊藤忠というような大きな商社が債権を確保する。そして、その羽数を押さえるわけだから、結局頭はつぶれたけれども鶏舎は残っているわけだ。したがって、去年あたり一億三千百万羽という割り当てをしたでしょう。一億三千百万羽で、農水省は三%の問題だと言っている。三%といえば約四百万羽でしょう。ところが、倒産したものを合わせれば約七百万羽ぐらいになる。その七百万羽というものが市場から消えれば、そして本当に計画生産ができれば安定するんだよ。ところが、それをやり切るかやり切らないかということが問題じゃないか。それをちゃんとやりなさいよ。だから、倒産したところの後始末を大商社にやらせないで、どういうぐあいに債権を処理するかということが一つの問題です。  それから、さらにやみ養鶏のもう一つの会社がある。ヒヨコのイセといって、これは大きいですね。アメリカに千四百万羽の養鶏場を持っている。これが今画策をしている。こういう画策についてしっかりこいつを抑えなければ、これまた卵価値下げの要因になるわけだ。一方で、まじめに誠実に生産調整をしている農家があるかと思えば、金をほしいままに使ってどんどん市場荒らしをしている。言葉は悪いけれども、いわば養鶏の暴力団。そういうものが存在する限りは、とても計画生産なんという霞が関の理想なんか通るわけじゃない。そこでお答えを……。
  30. 太田道士

    ○太田説明員 先生指摘のとおり倒産問題が出ておるわけでございますが、今回の需給失調問題につきましては、ひとりそういうやみ増羽だけではなくて、全体的に需給緩和であるというふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、やはり生産者団体を含めて全体でこの問題に取り組んでもらいたいというふうに我々は考えておりますし、指導もしておるわけでございます。  ただ、一つ言えますことは、確かに今倒産の見られた会社につきまして債権保全の関係から、単にえさ会社だけでなくて鶏卵問屋の方からの債権保全という問題もあることを我々十分承知しております。ただ、そのグループ倒産の中には、計画生産を守っておるところ、それから守ってないところ、内容がそれぞれ異なるわけでございます。そういうことも踏まえまして、私どもといたしましては、要するに現実に現場でどういう債権保全の会社が出てきておるのかということを的確につかまえまして、そういう親会社を含めてこういう計画生産問題についての理解と協力を得るということで努力していきたい。それを我々としては、やはり根気よく、しつこく指導を繰り返していきたい、こういうふうに考えておるということでございますので、またよろしくお願いしたいと思います。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間が来たからこれで終わるわけですけれども、食肉鶏卵課に注文します。  それは、タケクマ、ダイドーファーム、阪神鶏卵、これが倒産をしたその後始末に対する追跡の調査をして、資料を整理をしてもらいたい、これが第一点。第二点は、池田隆政氏を中心にした養鶏、鶏卵のビジョンづくりをする、十五人の委員が選ばれている、それが一体いつまでに何をするかということに対しての問題。それから、イセ養鶏が今画策をしていることについては、これは早く調査をして抑えなければ、また第二の混乱が起こるということです。これをやってもらいたい。  それから、きょうは肥料問題で質疑を求めたわけですけれども生産費三一%のうちのかなりの部分を占める肥料についての質疑をするわけだったのですが、時間の関係上できませんでした。これは大変恐縮であります。  これで終わります。
  32. 村山喜一

    村山委員長 次に、小野信一君。
  33. 小野信一

    ○小野委員 最初に、大臣の所見をお伺いいたします。  昭和六十三年度予算五十六兆六千九百九十七億円、前年対比四・八%増。大蔵省の言い方では、内需拡大と財政再建の一見矛盾するかのようなこの二つの目標をある程度果たせたということで、かなり自信をのぞかせております。この新年度の予算に対して、経企庁はどういう評価を与えておるのでしょうか。経企長官として、いい面だけではなくて、もう少し何とかならなかったのかなと思えるような点を加えて、御意見をお伺いいたします。
  34. 中尾栄一

    中尾国務大臣 小野委員に御満足いける答弁をさせていただけるかどうかと思っておりますが、その点、もし足らざる点はまた補わせていただきたいと思っております。  まず、評価ということでございますが、我が国の財政そのものを見てみますると、極めて厳しい状況というものにかんがみまして、六十三年度予算におきましても、あるいは六十五年度の特別公債依存体質脱却といういわゆる努力目標に向けまして、特に経常経費を中心に厳しく歳出の節減合理化を行っているところであることは、もう御案内のとおりでございます。  一方、内需拡大等の内外の経済情勢に引き続き適切に対処するために、NTTの株式売り払い収入の活用等を図ることによりまして、一般公共事業費につきましては、対前年度比あるいは当初予算比二〇%増という極めて高い水準を確保したところでございまして、内需拡大には十分に資するものではなかろうか、こう思っておる次第でございます。このように六十三年度予算は、財政再建を進めながらなおかつ内需拡大の要請に十分にこたえたものとなっておるというものでございまして、私どもは十分に評価をさせていただいているわけでございます。  先生の御指摘のとおり、しからば評価だけではなく難点もないのか、こういうことを言われますると、まだまだ国内の問題点の中には、先ほどの特別公債への依存体質というものに対する脱却もしていかなければならないという問題も含め、なおかつ高値安定ではないかというような問題点も含めまして、これはまだまだ今から道のりは遠い感もなきにしもあらずというところもございますので、その点は十分に踏まえながら考えていきたいと考えておる次第でございます。
  35. 小野信一

    ○小野委員 現在の景気について、経企庁は現状認識としてどういう見方をし、これからの年度の後半についてどういう変化が予測されるのか、どういう見通しを持っておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  36. 中尾栄一

    中尾国務大臣 御指摘の点は、六十三年度の経済の見通しというものについてはどういうふうに考えているかという具体的な問題になってまいっていると思いますが、六十三年度我が国経済につきましては、既に御案内のとおり、外需は、対外不均衡の是正の過程を反映いたしまして引き続きマイナスを維持していこう、また、マイナスの寄与をしていくものと見込まれておる次第でございます。  片方、内需は、景気回復のちょうど二年目を迎えるわけでございますから、個人消費が雇用者所得等の着実な伸び率などによってさらに堅調に推移するものと見込まれているという点が一点。それから、第二点ということになりましょうか、設備投資が非製造業において堅調に推移をいたしまして、製造業においても内需関連分野の投資が増加されるものと見込んでおる次第でございます。このようなことで、引き続きまして好調を持続することが大体予測されるのではないか、このように見込んでいるわけでございます。  以上あわせまして、六十三年度につきましては、全体としまして内需を中心とした実質三・八%程度の着実な成長を見込んでおるというのが、私どもの現在の見通しでございます。
  37. 小野信一

    ○小野委員 昨年の補正予算の六兆円、今回の先ほど大臣がおっしゃっておりましたNTT株売却益、公共投資の約二〇%の伸び、これらは現在の景気の見通しにどういう影響を及ぼしておる、経済成長率にどんな寄与をしておる、こう分析をいたしておりますか。
  38. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 昨年の緊急経済対策によります公共投資等六兆円の効果でございますけれども、これは昨年五月末に対策を決定いたしましたけれども、それは補正予算として政府で決まったのがたしか七月ごろでありますし、それから、都道府県等の議会でこれに対応する補正予算が決められたのが九月ごろだったと思いますけれども、そういうような段階を経まして、特に昨年度の後半からこの効果が非常に出てまいりまして、先生も御承知と思いますが、経済成長率、昨年の四―六月は外需もマイナスだったということもありますけれども、ゼロでございましたが、七―九月が年率八・四%、十―十二月が七・〇%。とにかく年の後半急拡大をしてまいりましたけれども、これに相当な影響をこの対策は持ったと思います。それ以外に、もちろん円高メリットが出てきたとか、景気自体の自律的な回復要因というものはあったわけですけれども、特に年度後半に効果が出てきたと思います。それは乗数効果等をもって、引き続き今もあらわれていると思います。  それで、先生がその次におっしゃいました、今年度予算で当初比二〇%一般公共事業費をふやした効果ということでございます。これは当初比二〇%増ですけれども、補正後では横ばいなわけでありまして、したがってその意味では伸び率という点では、政府の固定資本形成という部分はそう大きなプラス要因にはならない。基本的にはほぼ横ばいということでありますけれども、とにかく二割ふやしたという、規模は非常に大きくなっているわけで、その規模をもとに戻してしまって減らしてしまうということだと、非常に経済の足を引っ張るわけでありますけれども、規模を維持するということは、経済が拡大、回復を始めたということを支える非常に大きな役割を持っていると思います。  全体として、成長率にどれぐらいの寄与をしたかという御質問でありますが、六兆円そのものが昨年度の名目GNPの約一・七%に当たりますが、乗数効果等を入れますと、対策実施後一年間ぐらいの期間において二%ぐらいの効果があると我々試算しておりますけれども、それぞれの年に分けてどれぐらいずつ、こういうふうに精密にはちょっと分けるのは難しい状況でございます。
  39. 小野信一

    ○小野委員 そこで大臣、内需の拡大の面で、公共事業費が実質的に二〇%伸びた、その点では国際的にも高い評価を得ているだろう、そう思います。私も評価をしたいと思います。しかし、今局長がおっしゃっているように、六十二年度の補正後と比較をいたしますと余り変わりない、同じ水準でございます。とりたてて景気拡大的な予算であるということは言えないのじゃないだろうか、こういう気がしてなりません。政府見通しで、実質三カ三分の二、名目で四カ三分の二ですか、の成長を見込む昭和六十三年度日本経済を前提とすれば、一般会計で四・八%増、一般歳出で一・二%増の政府予算は甘く見ても景気中立ではないのか、むしろ抑制型の要素があるのではないか、若干抑制型ではないかという気がいたします。先ほど大臣は、景気拡大のための予算であると評価いたしましたけれども、私の意見とちょっと違ってくるのですが、その辺の判断はどうお考えになりますか。
  40. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 六十三年度予算の性格が、景気拡大型か中立型か抑制型かという御質問でございますが、これはOECDなどでも議論されている点でございますけれども、大体景気中立型という理解かと思います。マイナスではございません、若干のプラスでありますので、抑制型というところまではいかないと思います。  ただ、先生もおっしゃいますように、基本的には補正後横ばいということでありますから、それ以外に財投とか地方とかというものがあるものですから若干のプラスでありますけれども、大きなプラスではないので、景気を大きく引っ張り上げるという景気刺激型でもない、要するに中立型と考えていいと思います。
  41. 小野信一

    ○小野委員 したがって、昨年度の六兆円の補正予算の影響が現在の景気、要するに六十三年度の新年度予算の実施がまだなわけですから、続いているというよりは、その六兆円の補正予算に刺激された景気の上昇によって現在の景気が維持されておるのではないだろうか。だとすれば、この景気の息切れも覚悟しなければならない。そうすると、六十三年度予算の早期実施というものが当然予想されるわけで、早期実施を行わないと息切れがする可能性がありはしないだろうか。しかし、現在の景気が昨年度六兆円の補正予算によって刺激されて、その勢いはとどまるところを知らず、心配ない、こう判断していいのでしょうか。
  42. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 先生おっしゃいますように、公共事業の執行がおくれますと景気に対してはうまくないものでありますから、今年度予算の御審議が終わりました直後の、国会でやっていただきました直後の閣議におきまして、公共事業の執行についてこれを円滑に推進するという大蔵大臣の発言、あるいは当庁長官からも円滑にとにかくやるべきであるという発言をしていただきまして、執行のおくれのないように努力をしているところでございます。  経済全体といたしましては、先ほど大臣も答弁申しましたように、ことしは景気回復二年目ということを我々言っておりますけれども、その意味するところは、去年は景気対策とか円高メリットとか、そういういわば普通の民間経済から見れば外的な要因が一つのきっかけになって景気が回復し始めたのですけれども、ことしはその回復し始めたことによって、今度民間経済内部の循環によって自律的に景気が拡大する年である、その意味を景気回復二年目と言っておるわけであります。  具体的に申しますと、例えば去年住宅建設とか公共事業とかを大いにふやした、そこで雇用がふえ、所得がふえ、それで消費がふえ、消費財を供給するために設備投資がふえ、設備投資がふえるとまたそのために雇用がふえ、所得がふえ、それがまた消費がふえという、この民間設備投資と消費との間に好循環がことしは展開していく年と期待できるわけで、現実に我々も驚くほど、例えば乗用車が前年比二割もふえているとか、百貨店の売り上げもことしになってから去年よりは二、三ポイント高目の消費の伸びがあるとか、あるいは設備投資に関する企業の計画の調査をいたしましても、時期が最近になるごとに上方修正されてきているとかということに現実にあらわれておりますように、ことしは年度途中での息切れなく、経済が拡大していくのではないかというのが私どもの見方でございます。  もし、それを撹乱する要因があるとすればむしろ経済の内部ではなくて、外でまた急速な円高があるとかあるいはまた株の大暴落があるとか、そういうことがあると要注意だなという、いわば国際金融市場における不安定さというものが問題だと思いますけれども、この辺はアメリカ中心に国際的にも非常に認識が深まっておりまして、国際協調体制がかなり腰が入ってきておりますので、当面そういうおそれもないのではないかと考えております。
  43. 小野信一

    ○小野委員 この問題を別の角度からお伺いしますけれども、一九八〇年代に入って我が国の賃金を決定し、リードしたのは、国の方が、経企庁が使っている言葉ではありませんけれども生産性基準原理、日経連の労働問題委員会ですか、これが指導しておる賃金理論であり生産性基準原理と呼ばれておるものでありますけれども、この理論は、日本経済の物価の安定には大きく寄与したと私は考えております。しかし、その反面、国内市場拡大に失敗したと思います。失敗の要因をつくったのがこの賃金論だったと思います。同時に、国際競争力を一段と強める作用を果たしました。その結果、国際収支の大幅な黒字を拡大させてしまいました。この賃金論が我が国の経済に及ぼした影響、要するに八〇年代に入った我が国の賃金を決定した要素、考え方というものは、物価を安定させたけれども内需の拡大には失敗した、国際競争力は強めたけれども内需の拡大に失敗した、こういう要素、プラスとマイナスを持つのではないだろうか、そういう気がしてならないのですけれども、経企庁では日本の現在の賃金についてどのような見方をいたしておりますか。
  44. 中尾栄一

    中尾国務大臣 我が国国際競争力そのものは、労働コストのほか技術進歩あるいは為替相場等々、さまざまな要因によって複合的に規定されておるものではないかと考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、今御指摘いただきました賃金問題につきましては、経済発展の成果を賃金等に適切に配分するということは、勤労者生活の向上には大いに資するのみならず、ある意味におきましては内需拡大の面からも非常に望ましいことである、私どもはこのように認識をしておる次第でございます。しかしながら、具体的な賃金につきましては、労使が話し合いを通じまして当然自主的に決定することが基本でありまして、労使が経済の実態を十分認識して、国民経済的視野に立って合理的な賃金決定を行うように期待するものではございます。先生の御指摘いただきました点も、そういう点にかんがみましては一つのファクターであるなと、今聞きながら感じておった次第でございます。
  45. 小野信一

    ○小野委員 要するに八〇年代を決定した賃金論、まあ賃金論というふうに理論的に組み立てられたかどうかは別問題としまして、日本の賃金をリードした理論、大ざっぱな理論というものは、ミクロ、要するに企業ベースの判断によって決定されたと私は思います。しかし、現在の日本は、世界の一二%の生産力を誇る経済大国でございます。そういう面からの賃金論というもの、賃金を決定したとは私は思っておりません。したがって、企業が採算性と支払い能力をベースにして決定されてきたと考えていいのではないか。  しかし、経済大国日本の賃金論が果たしてそういう理論でいいのだろうか。企業ベース、ミクロのべースで物を考え決定していったならば、必ず今までと同じような結果になってジャパニーズ・バッシングになるのじゃないだろうか。こう考えた場合に、これからの賃金論は、世界経済大国日本としての要素が加わった賃金論でなければならないのじゃないだろうか、今までの要素にプラス国際経済日本の要素が加わって賃金が決定されるべきではないだろうか、私はそう思うのです。具体的にそれがどう適応するかということまでは、私の能力からはかり知れませんけれども、そんな感じがするのですが、いかがでしょう。
  46. 中尾栄一

    中尾国務大臣 非常に参考になる御意見をいただきましたので、私どもも早速いろいろ検討をさせていただきたいと考えております。
  47. 小野信一

    ○小野委員 内需拡大あるいは賃金論から派生いたしまして、今私ども、真の豊かさとは何なのかということを問われておるということが毎日の新聞、週刊誌、雑誌に書かれておりますけれども、経済を担当する、日本の経済のかじ取りである経企庁とすれば、日本の真の豊かさというもののためにはどういう条件を果たそうとお考えになりますか。
  48. 中尾栄一

    中尾国務大臣 豊かさという問題につきましては、大変いろいろの広い解釈の面もあろうかと思いますけれども、国民生活の豊かさの実現のためには、まず円高差益の還元や内外価格差の縮小、あるいはまた住宅や生活関連、社会資本の充実、労働時間の短縮等によりまして、国民生活の質の向上を図っていくことが必要ではないか、このように考えるわけでございます。これらを踏まえまして、国民それぞれが選択の自由あるいはまた創造の可能性を追求できる世の中を生み出すということが真の豊かな国民生活に通ずるものである、経済企画庁ではこういう経済的見地から考えておる次第でございます。
  49. 小野信一

    ○小野委員 私は、精神的な豊かさと精神的な幸せと物質的な幸せがあるのだろうと思います。精神的な豊かさの面は、これは個人の判断に任せるべきであって、国家なり社会がこれに関与することは大きな過ちを犯すだろうと思います。したがって、経企庁がやらなければならないのは、この精神的な豊かさを支える基盤となる物質的豊かさを保障することだろうと思います。  そこで、今大臣がおっしゃっているように、国民が働いた生産物の見返りはすべて国民に返す、こういうことが経企庁の最大の任務になりはしないだろうか。それを具体的に国民にわかりやすく申すならば、衣食住の経費、文化的経費、税金、保険料が収入に比べて安くなることじゃないだろうか。そのことが精神的な豊かさを保障する物質的な豊かさをつくる経企庁の任務じゃないだろうか。そういう気がしてなりませんけれども、いかがでしょう。
  50. 中尾栄一

    中尾国務大臣 御指摘のとおり、精神的な豊かさという点におきましては種々いろいろの価値観も伴うものであろう、こう思うのでございまして、何といいましょうか、物の本によりますれば、たとえ三畳、四畳半の家に住んでいても、空っ風の通るようなおうちであっても、暮れになってうちのおじいさん、おばあさんに、三万円ばかり残ったから、これでどうかひとつ温泉にでも行ってくださいよと言うような家族環境の中においての豊かさ、これも豊かさでございましょう。しかし、経企庁といたしましてはあくまでも、全く先ほどの先生の御指摘のとおり、裏づけられたそういう物価の問題とかあるいは裏づけられた経済的な豊かさの上に立っての追求というものが、私どもの本来の仕事、使命であると考えるのが当たり前であろう、こう考えておる次第でございまして、御指摘のとおりかと思います。
  51. 小野信一

    ○小野委員 そこで、GNP世界第二位、国民一人当たりの所得、これは為替レート、ドル換算の所得ではありますけれども世界第一位、対外資産世界最高、こういう経済大国日本ではありますが、必ずしも精神的に、物質的に日本の国民が豊かであるという実感を持っていないということは、これまた国民一致した考え方でございます。  その場合に、なぜそのようになるのだろうか、何が今の日本人に幸せか、豊かさを与えないのだろうか。私は、その第一の理由は物価高じゃないだろうか、二つ目は土地と住宅の異常な高さじゃないだろうか、三つ目は案外通勤通学のラッシュ、これが余りにも殺人的なものですから、自分が幾ら高い給料、所得をいただいても、一向に豊かさを感じないという面があるのじゃないだろうか。そうなってまいりますと、当然、物価高の解消と土地と家屋に対する値下げと殺人的なラッシュを解消するならば、かなり今とは違った豊かさが日本人の感覚の中に生まれてきはしないだろうか、そういう気がするのですけれども、いかがですか。
  52. 中尾栄一

    中尾国務大臣 全く先生の御指摘の言葉どおりでございまして、それは非常に感じ入るものでございます。  豊かさは、先ほど私も申し上げましたように、それぞれの人によっての価値観もございましょう。あるいはまた、どんなに給料が上がっていったとしても、それによってこれで満足だということはほとんどあり得ないというのは、通常の人間のありさまかもしれません。しかし、その中におきましても、物価高の問題もその要因の一つではないか、こう御指摘されると、そうではございませんと言うわけにはまいりませんで、物価水準の国際的比較を厳密に行うということは、ある意味においてはさまざまな理由から困難な面があろうかと思います。  概して言いますならば、我が国の生活関連等の物価水準は、急激な円高の進行もございまして、先生の御指摘のとおり国際的に見まして割高な傾向にあるということは、私ども率直に認識をしておる次第でございます。政府といたしましては、これまでも累次にわたる対策等の実施を通じまして、円高メリットの浸透にこれ努めてまいったところでございますけれども、いわゆる内外価格差の問題は、関係する分野の生産性の向上等を通じまして、その意味で多少時間のかかる問題であることも、事実として認めなければならぬことではないかと思うのでございます。  したがいまして、今後とも公共料金等につきましての差益の的確な反映を図るとともに、経済構造の調整を進めていく中でまず規制の緩和も行うべきではなかろうか。輸入の促進などを通じて、内外価格差の縮小に努めていくことも極めて緊要のことではなかろうか。このように考え、そういう問題点を一つ一つ先生指摘のアイテム等もとらえまして、ラッシュの問題、これも確かに人間、情念の世界からいうならば、自分の生活感におけるラッシュの問題というもの、これも生活圏の中において、毎日毎日このような目に遭っていくことが豊かさだなと感ずる者は一人もいないと私も感ずるわけでございまして、こういう点も一つの大きなファクターの問題としてとらえていきたい、こう考えております。
  53. 小野信一

    ○小野委員 外国との物価の比較は大変難しいということは十分承知しておりますけれども、幾らぐらい高いのだろう、大ざっぱでいいですから、そういう疑問を持つのは国民の当然な問いだろうと私は思うのですが、いかがでしょうか。先進国と比較して日本の物価というのはどの程度高いのか、そのことが日本人の生活の豊かさに、豊かでないという感じをどんな影響で数字をもって与えているのだろうか、お答えを願いたい。
  54. 中尾栄一

    中尾国務大臣 物価局長答弁させます。
  55. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 ただいま大臣からもお答えをいたしましたけれども、的確な比較というのはなかなか難しいものでございます。実は、一つの試みとして購買力平価という概念がございますけれども、平たく申しましたら日本で生活するいろいろな消費財、例えば食料品なんかにつきまして、それを外国でも同じように購入するとした場合にどれぐらい払っているか。非常にわかりやすい例としてよく申し上げているのは、ハンバーガーの話をちょっと申し上げたことがあるのですが、マクドナルドのハンバーガーは世界各国で売られているようでございますけれども、ニューヨークと東京でそれぞれ、例えば大型のハンバーガーが日本では三百七十円でニューヨークでは一ドル七十セントだ、大体中身も一緒でございます。そうすると、それをハンバーガーだけ比較してみますと、為替レートといいますか交換比率が二百二十円ぐらいになるわけでございます。実際の為替レートは御承知のように百二十円台でございますから、そうするとそういう為替レートに比べれば――例えば、そういったものを全部一つのバスケットにしまして比較をした場合にどうなるかというようなことを技術的にいろいろやりまして、購買力平価というものが成り立っているというふうに御理解をいただければいいのでございます。  そういった購買力平価で比較をしてまいりますと、これはOECDの試算でございます、いろいろ問題はございますけれども、一九八五年の時点で、消費財といいますか、消費に関連する分野で見ますと、大体二百十八円ぐらいの交換比率になるという試算がございます。実際の為替レートに比べますと、いささか割高だということは否めないわけでございますけれども、この購買力平価が的確に物価差を示していると言えるかどうか、これはまたいろいろ議論もございますものですから一概にこれだけで比較するわけにもいかぬだろう、中身も、もう少し我々としても検討しなければいけないなというふうに考えているわけでございます。  いろいろ申し上げたわけですが、例えば、問題はあるのですけれども、そういった購買力平価と為替レートの比率をとりまして、観念的に皆さん方は割高じゃないかというふうにお考えかもしれませんが、そういった場合に、六十年の場合ですと、実はアメリカ日本で為替レートと購買力平価は余り違いがございませんでした。ところが、六十年の例のプラザ合意以降急速に円高が進みまして、購買力平価の方は余り変わっていないのです。例えば、六十年が二百二十二円ぐらいでございましたが、六十二年は二百十三円ぐらい、これはそんなに急には変わらないのですが、為替レートが二百三十九円から百四十五円になったものですから、六十二年で比べますと一四七ということで、大ざっぱな計算ですけれども、為替レートで比較してみると五割近く割高感が出てきている、こういうことでございます。では、為替レートで比較していいのかということになると、実はなかなか難しい問題もございまして、この辺は私どもとしても、もう少しいろいろ購買力平価の問題につきまして検討し、さらに認識を深めていきたいと勉強している段階でございます。
  56. 小野信一

    ○小野委員 大臣、今局長答弁しておりましたけれども、私は五割ないし倍じゃないか、そういう感じがいたします。今、一九八七年にOECDで発表した数字だろうと思うのですが、八五年の春の調査結果の発表ですね。その後のドルの下落、円の上昇からいきますと、恐らく一・五倍ないし二倍強と判断するのが常識的じゃないか。比較する基礎にいろいろ不安定要素はありますけれども、大ざっぱに言ってそういう気がいたします。問題は、日本の物価がなぜ先進資本主義国と比較して一・五倍にも二倍にもなったのかということだろうと思います。局長、どうして日本の物価はこのように高くなったのですか。
  57. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 今、先生も申され、私も数字を申し上げたわけですが、前提として為替レートで比較をした結果として、そういう数字が出てくるわけでございます。御承知のとおり、為替レートというものはいろいろな要因で決まるわけでございますけれども一つは貿易される財によって主に決まる、しかも日本の場合には恐らくかなり競争力のある財が中心になって、基本的にはそれを引っ張っていっているのではないかという気がいたします。そのほかにもう一つ、最近は国際的に資金の移動が非常に大きいものですから、例えばアメリカ日本との間に金利差がございます。アメリカの国債の入札などに日本がどんどん出ていくということもあるわけですが、そういった資金の流れによっても決まってくるものですから、中でもいろいろ議論をいたしますけれども、為替レートで割るということですべていいのかという議論はあるわけです。  いずれにしましても、基本的に財だけに着目しても、要するに貿易される財だけでございます。ところが、私ども日本で生活をしているものにはサービスもございますし、貿易がされにくいものもございます。それから、貿易財ではあるかもしれないけれども、いろいろな産業政策、農業政策の観点から規制を受けているものもございます。そういったようなものは、ほかの観点をすべて捨象しましてもし外国から全部入ることができますと、それは為替レートによってある程度調整されると思うわけですけれども、事実上はなかなか難しい問題でございます。労働力外国から全部入れてくれば相当安い労働力が入ってくるわけですが、これはまた問題でございます。  そういったことから、日本が全体として成長していく過程の中でどうしても、貿易財と貿易されない、非貿易財と呼んでおりますが、そういったものとの間に価格差が出てこざるを得ない。しかし、余りギャップが出てまいりますと、これは先生指摘のように国民が非常に不満を持つわけでございます。そこで、構造調整ということで一口で申し上げておりますけれども、そういった国内の仕組み、制度を直していくことによって、できるだけ生産性を上げて、価格差をなくしていくということをやっていくことがどうしても必要になってくるのではないかと考えているわけでございます。
  58. 小野信一

    ○小野委員 大臣、私は日本の物価が先進国と比較して高い理由は、今局長が言っているいろいろな要素があると思いますけれども、政策的な失敗というよりも無策の責任ですね。当然やらなければならなかったことをやらないために起こった要因というものは、かなり大きなウエートとして、要素としてあるのではないだろうか、そういう気がしてならないのです。いっか、この問題だけで議論してみたいと思います。  そこで、現在のマネーサプライの伸び率一一・四%、物価の上昇二%、卸売物価の上昇〇・二%、非常にマネーサプライと消費者物価、卸売物価とのアンバランスだと私は思います。しかし、この三つの数字がバランスよくいっているのじゃありませんから、必ずどこかで爆発するのじゃないだろうか。マネーサプライの伸び率が余りにも高いと、これは必ず物価にはね返るのではないだろうかという心配なのですけれども、そういう心配がないとお考えになりますか。
  59. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 先生指摘のとおり、マネーサプライの伸び率が非常に高いということについては、私どもも注目しております。なぜ、マネーサプライが最近高くなっているかということについては、中でもいろいろと勉強しておりますけれども一つはよくM2プラスCDという概念で比較するわけですが、一九八四年ごろを境にしまして、このマネーサプライの残高の伸びが高まってきているという傾向が見られるわけでございます。  この要因を考えてまいりますと、一つは金融取引自由化される。株式市場での取引や公社債市場での取引、そういったものが非常に活発になってきているということで、実物取引、実物経済の取引より以上に、そういった金融的な取引による資金需要が非常にふえてきているということがはっきりうかがえるわけでございます。こういったものは、実物経済に一体どういうふうにはね返ってくるかということは注目すべきでございますが、伸び率が非常に高くなったらすぐインフレ要因になるということは必ずしも言えない面がある。つまり、構造的にふえてきている。  それからもう一つは、御承知のとおり、金融が緩和している状態の中で首都圏の地価が非常に上がったわけですが、その背景としては不動産に対する貸し出しなんかも非常にふえたということで、金利が低くなっている、金融が緩和しているということによる貸し出しの面がマネーサプライをふやしてきたということも、否定できないと思うのでございます。ところが、現実の物価というのは、御承知のとおり非常に安定しているわけでございます。  戦後と申しますとちょっと大げさになりますが、最近までの大きな物価上昇というのを振り返ってみますと、高度成長期というのは経済も非常に活気を呈します、景気がいい。それから、よく生産性格差インフレ、こういう言葉で言われた時期もございますが、製造業とその他の、例えば農業とか生産性がなかなか上がりにくい分野との間である程度所得を上げるバランスみたいなものもございまして、サービス価格なんかも上がっていったという時期もございますが、その後二度ほど大きな物価上昇期がございます。一つは第一次オイルショックのとき、もう一回は第二次オイルショックのときでございます。これは、石油価格が非常に上がった、それに加えまして、特に第一次の場合には初めての経験でもありましたけれども、これだけ物価が上がったら賃上げもしなければいかぬということで、その結果として非常に高い物価上昇が続いたということもございます。  ですから、要因を考えていきますと、物価が上がる要因というのは、一つはマネーサプライの問題、もう一つは賃金と物価。先ほど先生おっしゃいましたけれども、最近は賃金と生産性の関係を気にしながらいろいろ経済運営が行われているものですから、そういう点では物価面では非常に落ちついた動きを持っている。それから、御承知のとおり石油の値段は比較的落ちついておりますし、おまけに円高である。その結果として海外からの輸入が相当ふえてきて、ちょっと物が上がりそうになったら輸入で値段を冷やすというような効果もあるということで、供給サイドと申しますか片一方の面で見ますと、今の日本の情勢というのは物価に対しては非常にプラス要因といいますか、落ちつく力を持ってきているのじゃないかと考えるわけです。  総合的に判断いたしますと、確かにマネーサプライ面では特別な要因がいろいろございます。特別な構造的な変化もあると思うのですが、少なくとも金融が緩和していることは間違いない。一二%、一一%という問題は別にしまして、これはやはり物価面に対しては十分注意していく必要があるのじゃないか。しかし、供給サイドの面では、当面はそれほど心配する必要がない。もちろん、私どもは物価の問題について十分注意していく必要があると思いますけれども、そういうふうな形で判断をしているわけでございます。
  60. 小野信一

    ○小野委員 今局長、図らずも、日本の物価を押し上げた二つの要因として第一次オイルショック、第二次オイルショックを挙げました。しかし、オイルショックは日本だけが受けた問題じゃなくて、世界の先進国が全部受けたわけですから、当然日本の物価が先進国よりも高いという理由の説明にはならないだろう。そうすると、日本独自に持っておる何かの欠点が、日本の物価を上げる大きな要因になっているはずだと考えざるを得ないのです。いかがですか。
  61. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 やや繰り返しになるかもしれませんが、結局、物価が国際的に見て割高ではないかという判断は、一般の方は当然なのですが為替レートで判断をされるわけでございます。先ほどもちょっと数字を申し上げまして、先生もお持ちだと思いますが、OECDの比較でも、一九八五年つまり昭和六十年で、あのときはドル高といいますか円安といいますか、そういうときには購買力平価と為替レートに余り変わりはなかった。ですから、その時点では国際的な比較という意味では、特に日本が物価が割高だとOECDのデータでも出ていないわけでございます。ところが、この二年間に非常に高くなってしまったということは、為替レートが非常に円高になったということの結果として、計算してみると割高になってしまった、こういうことになるわけでございます。  そうすると、これは私がお答えするのはいささか口幅ったいのですが、一体なぜこんなに円高になったのかという議論を考えていかないと、この問題は解決できないということになるわけですが、その大議論は別にしまして、いずれにしましても先生おっしゃいますように、国民の生活を豊かにする、あるいは豊かさを感ずるようにするということでは、国民がいろいろ不満を持っているわけでございます。客観的に見れば、かなり豊かな面があると思いますけれども、不満を持っておるわけでございますから、それは私どもとしてきちんと取り組んでいかなければいかぬ、これが端的に言えば内外価格差を少しでも是正していくことになるのではないかと思います。  先生の御質問に直接お答えしにくいのでございますが、御理解をいただきたいと思います。
  62. 小野信一

    ○小野委員 そういう背景の中で、中曽根さんが総理になったころに貿易黒字がウナギ登りに上りまして、欧米諸国から内需拡大を要求する声が大変強まりました。中曽根内閣が八二年にスタートいたしまして、八七年まで続くわけですけれども、この間は緊縮財政一本やりでございました。したがって、国内景気は盛り上がらず、税収の伸びも小さかったし、財政資金による社会資本の充実もそれほど目立ったものでなかったことは、だれもが知っておるところであります。  こういう中で、中曽根内閣は民活路線を打ち出しました。私は、これは苦肉の策ではないだろうかと考えておるわけです。わずかな財政資金を利子補給に使って、民間の持っておる膨大な資金を活用しよう、こういう発想から生まれたものではなかったのだろうか、こういう気がしてなりません。もし、そういう背景であったとするならば、現在これだけの税収がある六十三年度予算の場合にこの転換は当然行われるべきものなのか、いや、そうじやない、やはり民間活力の活用が日本の将来に、経済にとって欠くことのできないものなのだ、国土の均衡ある発展のためにはどうしても必要なのだ、そうお考えになるものでしょうか。中曽根さんの民活路線の生まれた背景と、これからの民活路線に対する経企庁の物の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 中尾栄一

    中尾国務大臣 中曽根総理が誕生いたしまして、そのころには御案内のとおり、一九八〇年代の「展望と指針」という、今から五年前にちょうどそれがつくられた。そのころの円高の差益は、たしかドルが二百四十円というような状況でございました。それから急速に円高傾向が強まった、こう言えるわけでございますが、いわゆる内需中心の景気の着実な拡大及び地域経済の活性化を図っていくために、民間活力の活用そのものは重要な課題であるということを私ども認識しておる次第でございます。このために政府は、累次にわたる経済対策で民活が最大限発揮されるように、規制緩和あるいはまた環境整備に努めていくということに力を注いだわけでございまして、民活法あるいは総合保養地域整備法等の制定あるいはまたNTTの株式の売却収入の活用などによりまして、各種民活施策の推進に努めてきているところでございます。私どもは、今後ともにそういう関係省庁との連携を密にいたしまして、民間活力が最大限に発揮されるように努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  64. 小野信一

    ○小野委員 先日、土地特で関西経済連の宇野会長が参考人として呼ばれて出席していただいたときに、こういう答弁をしておりました。民活という事業が成り立つのは東京だけだろう、大阪、名古屋、京都は事業によって成り立つ事業と成り立たない事業がございます、あとの地域は民活といっても資本を出すだけの余力は地方にはございません、したがって東京は民活でいいけれども、他の地域ははっきりと公的に地域の開発を行うべきだ、こういう方針をしっかり打ち出してほしい、こういう発言をしておりました。私は、まことに明快な物の考え方だということを感じました。同時に、土光さんがあるとき、列島改造論そのものが悪いわけではない、しかし、あのような画期的な開発政策を経済原則を無視してやったら地価が高騰するのは当たり前だ、こう言っておりました。  私は、今回の中曽根さんの民活もこの経済原則を無視したために、東京周辺の地価を大暴騰させたのではないだろうか、そういう気がしてならないのです。ですから、民活、民活と言いますけれども、そのようなマイナス面をしっかりと押さえながら活用するのでなければ、経済原則を無視した民活は必ずツケを後に残すということと、東京以外は民活で開発することは資金的、人材的、技術的に無理だ、こういう判断をして、別な方向を地域開発のために開発すべきじゃないだろうか、提起すべきじゃないだろうかという気がしてならないのですが、いかがですか。
  65. 中尾栄一

    中尾国務大臣 基本的に、民活というのは民間活力でございますから、政府の用達で考えるよりは、むしろ民間の結集力とエネルギーによって開発していけ、こういうことが基本でございましょうから、そういう点では、先ほどの関経連の宇野会長さんのお言葉も私も聞いたことがございますが、まことにうがった見方ではないかなという感じはいたします。しかし、何と申しましても、今の問題点をせんじ詰めて言いますならば、地価の問題が基本的に問題になっているんだなということのネックを考えなければならぬかと思います。そういう点で近年の首都圏の地価の上昇は、国際化あるいはまた情報化の進展によりまして事務所需要の増大とか、住宅地における買いかえというような需要の増大、あるいはまた投機的な取引など、あるいはまた金融の緩和状況にも支えられるなどなど、あらゆる面における要因が複合的に積み重なって影響してきたものではないかなと思いますがゆえに、民活そのものが地価の高騰を直接に引き起こしたものと考えるべきではないのではないのかなという感じ方もしているわけでございます。
  66. 小野信一

    ○小野委員 この問題は、別の角度から見てみたいと思います。  一九八六年、西ドイツの貿易黒字は五百億ドルを上回りました。八七年は七百億ドルを超えました。しかし、西ドイツ・バッシング、西ドイツたたきは起こりませんでした。日本は急激に伸びたせいもありますけれども、非常に日本バッシングが盛んでございます。なぜ、これだけの貿易黒字を同じように出しながら、西ドイツ・バッシングが起こらなかったのでございましょうか。もし、その理由がはっきりしているならば、西ドイツのような産業構造日本がつくるために努力することは、今の産業構造からいって無理だとお考えになりますか。時間がありませんので……。
  67. 中尾栄一

    中尾国務大臣 それでは簡潔に述べさせていただきたいと思いますが、一つ日本の黒字が大きいことではないかな。約八百六十億ドルのうち、対アメリカだけで五百四十億ドルという膨大な点字でございます。その点が、日本と西ドイツとの違いの大きなファクターの一つである。これに対して西独は、大体五百六十億ドルの中におきまして対米関係では百三十億ドルということでございましょう。日本にとりましては対米ウエートが非常に高いということ、西独にとりましてはECの方のウエートが高いということにおけるバッシングの問題などが大きなファクターになって、日本バッシングという言葉が生まれたのではないか、私はそのように単刀直入に考えます。
  68. 小野信一

    ○小野委員 終わります。
  69. 村山喜一

    村山委員長 この際、暫時休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時四十八分開講
  70. 村山喜一

    村山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  71. 草川昭三

    草川委員 草川であります。  大臣にまずお伺いをいたしますが、今回、大臣が訪米をされまして、スプリンケルCEA委員長に対し、保護色的な色彩の強い包括通商貿易法案ですね、いろいろと我が国の実情等を述べられ、大変心配をされておみえになるのではないか、こう思いますし、アメリカの特に政府の方から議会に対する働きかけ、このようなこともいろいろと要請されたやに聞いております。この法案の将来に及ぼす影響というのは、我が国にとっても、また経済にとっても非常に重要だと思うのでありますけれども、大臣の見解をお伺いしたい、こう思います。
  72. 中尾栄一

    中尾国務大臣 大変貴重な御意見を交えていただきました御質問を賜りまして、まず感謝を申し上げたいと思います。  今回の訪米は日米経済会議でございましたが、要点はまさに今の、スプリンケル委員長を初めといたしましてグリーンスパン氏並びに連邦銀行の総裁等々、特に金融関係の方々をも含めて話を申し上げたのでございますが、四月二十七日に米議会の上院におきまして、下院に引き続いて包括的通商法案が採択されたわけでございます。レーガン大統領は、一部問題条項があるので拒否権を行使すると述べているわけでございますけれども、同法案がこのままもし成立したとするならば、経済分野における日米間及び多国間の協力関係に重大なる悪影響を与えまして、ひいては世界経済の発展そのものに、日米合わせても三割経済と言われているような、そういう状況の中で大変な阻害をすることを懸念をしておるわけでございます。  政府といたしましては、引き続き米側、とりわけ行政府に対しましては、我が方の懸念そのものを、先生の今お言葉賜りましたように、一生懸命訴えていく考えでございまして、今回の訪米に際しましても、スプリンケル委員長に対しまして率直に、かかる法案が成立することがないように米側の努力を強く要請するということで、申し上げてまいったところでございます。  以上でございます。
  73. 草川昭三

    草川委員 もう一つ、今牛肉オレンジ等の日米間の農作物問題が非常に重要なことになっておるわけですが、中尾大臣は、かねて日本の農林水産の件についても大変な強い影響力を持っておみえになる方でございますが、ひとつ個々の問題を離れて、この牛肉オレンジ日米間の問題そして日本経済に及ぼす影響、特にまたアメリカ側日本の消費者問題だというような切り込み方もしているわけでありますから、大変複雑な御心境だとは思いますけれども見解をお願いをしたい、こう思います。
  74. 中尾栄一

    中尾国務大臣 大変にこの問題、まことに先生の御指摘のとおり複雑でございまして、ただちょっと私が気になりますのは、新聞等に報ぜられておるような、急遽この問題が突発的に起こってきたというような印象を与えがちな記事は、これはいささか間違いでございまして、相当長期間にわたって続いておるということも忘れてはならぬと思うわけでございます。私がかれこれ考えてみましても、十数年間以上の長きにわたって――かつてアメリカの上院議員にハワイ御出身のダニエル・イノウエという上院議員がおりましたが、このダニエル・イノウエ上院議員が、デフィシットにしても百億ドル未満のときにはまだ大変に好意的だけれども、百億ドル以上のデフィシットといいますか、インバランスになってくると日米間は問題になりますよ、なかんずく農産物は、どちらかというと我々は買わされている立場であって、バイヤーは日本の方だけれども、これが自由化されたからといって私どもに大きなメリットが残るというものではないかもしれない、しかし、シンボリックな問題としてこれは問題化されますよと言うたことが、そのとおりどんどんエスカレートしたような感じがなきにしもあらずでございます。  我が国は、世界最大の農産物のまさに純輸入国でございまして、一方国内における農業の役割そのものは、食糧の安定供給、活力ある地域社会の維持あるいは国土、自然環境の保全などを含めて、極めて重要な課題である、先生の御指摘のとおりと解釈しております。  農産物の輸入自由化への対応に当たりましては、我が国農業の実情あるいはまた国際的な経済関係、多様な消費者二ーズへの対応といった観点なども、御指摘のとおりこれも踏まえなければなりませんので踏まえつつ、適切に処理をしてまいりたい、このように考えております。
  75. 草川昭三

    草川委員 これは大臣に、直接的な所管官庁ではないのですが、ちょっと今から申し上げることは、実はあすの決算委員会で私が問題提起をする話を、国民生活を守る影響が非常に強いという結論が出ますのでここで一言申し上げるのですが、アメリカ側の方からオレンジ、すなわちグレープフルーツ等も同じでありますけれども、買ってくれというわけですから、日本が購入をするわけです。船で運んで日本の港に着くわけです。すると、たまたま私が今から問題提起をするのはグレープフルーツでありますけれども、薫蒸をしなければいかぬわけですね、虫を殺すために。その薫蒸をする倉庫というのは限定をされているわけです。これはどちらかというと港湾の荷役業者ではなくて、薫蒸屋と称するのが上屋というのですか、倉庫を持っておる。  船で日本に着くと、その日本の港というのは非常に詰まっておりますから、船待ちというのですか、順番を待つわけです。これは港湾運送法ではきちっと法律的な対処がございまして、横入り禁止になっておるわけです。順番どおりに荷物を揚げろということになっておるわけですが、たまたま薫蒸という倉庫の中に入れる作業の中で、順番ではなくて横入りが入るわけであります。その横入りが行われたために、せっかくアメリカからグレープフルーツを東京の港に持ってきながら、現在、二週間も船がとまっているわけです。これはただいま現在の話であります。  そこで、私どもが運輸省に、しかじかかくかくという問題提起をいたしますと、運輸省の方は、港湾運送法に基づく範囲内ならば我が方の、順番をきちっと守りなさいとか下請云々とかいろいろな法律があるので、その規制にかかるんだが、薫蒸ということになると離れるんだ、こういう話なんです。  そこで、輸入業者にしてみると、せっかく今このトラブルの中で新しい条件を見出してアメリカからもどんどん買おうと思うんだが、かかるやり方が繰り返されると、非関税障壁というのでしょうか、そうではなくて、いわゆる公平、公正、そして透明ということのどこから見てもおかしい話があるので、これでは長くなればなるほど結果として腐るじゃないか、あるいは品質が劣化するじゃないか、特にこれから夏になりますから。ということになると、これは国民生活上、安く入るものが高くならざるを得ない。これは、関税だとか例の課徴金の問題を除いての話でありますけれども、こういうことが横行することは甚だよくない。  だから、これは流通の問題としても問題提起をしたいと思うのですが、大臣の見解をお伺いをしておきたい、こう思います。
  76. 中尾栄一

    中尾国務大臣 たまさかグレープフルーツの自由化が十数年前行われまして、当時、私、くしくも農林政務次官をやっておったわけでございますが、今の問題は、私も実情をよく知りませんままに先生から御指摘を受けまして、ああそういうことがあったのかということで、これは大変に考えさせられる問題だと思っております。事実関係につきまして、早速調べることとしてみたいと思っております。  いずれにしましても、輸入検査の手続の運用の公平性ということは極めて大事なことである。特に非関税障壁、ノンタリフバリアの問題というのは、これは日米間のみならず各国で問題にしておりまして、日本の国に物を送るのはいいけれども、花を送ったとしても、ウエアハウスといいますか、保税庫に入れられて、しかもなおかつ検査官は来るわ、検疫官は来るわ、最後には税務署まで来るのではないかなと思うほど大勢来て調べたあげくが、一週間後には花は枯れておる。何の意味もないこの規制を、もう少し何とかならぬかということもよく言われるわけでございまして、私もそういう意味において規制緩和といいましょうか、そういうものの順列組み合わせにおけるきちっとしたウエルバランスは極めて大事かと思っておりますので、これは先生の御指摘のように全力を投球して考えていきたいものだ、このように考えておる意思だけを申し上げておきたいと思います。
  77. 草川昭三

    草川委員 ぜひお願いをしたいという要望を申し上げておきます。  中尾長官にはあと一問。例のODAというのですか、対外経済協力の援助の問題。これは経済企画庁も一つの役割を持っておみえになるわけでありますけれども、これをふやそうという方向が出ております。これは大変結構なことですが、これは私、過日の外務省に対する決算委員会のときにも申し上げたのですけれども、ヨーロッパの国々と日本を比較いたしますと、非政府援助というのですか、NGO、これに対する援助額が日本の場合は非常に小さいんですね、ウエートが。それで、経済援助というのは、従来日本は主として大型プラントを向こうに持っていく。しかし、これは必ずしも民生安定あるいは社会的にプラスになるということばかりではなくて、現地の政権を援助するということが一義的であったり、あるいはまた、汚い言葉でありますけれども、アンダー・ザ・テーブルというような問題があったり、また事実具体的な問題が返ってきておる場合もあるわけでありますけれども、本当の人間的な交流ということを考えるならば、非政府間のさまざまな諸団体が行っている援助に対して政府のお金を使うということの方が実質的な効果があるのではないかというような考え方を持っておるわけでありますが、政府からの支援をこのNGOに対してふやす考え方を持っておみえになるのか、長官見解を賜りたい、こう思います。
  78. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先生指摘のとおり、確かに、調べてみますると、意外に日本の国は、先ほどのNGO、諸外国に対しての協力度というものが低いのだなということを私も教わったような次第でございまして、これで見ましても日本が一・一%。よその国から見ますると、もうほとんどみんな五%、六%、三%。六%というところから眺めますと、一・一%というのは余りにも低いなということを私も率直に学んだわけでございます。委員指摘のとおり、我が国のNGOの援助は、文化的に、しかも歴史的に背景の違いから、諸外国に比べてまことに低いということだけは認めざるを得ません。  そこで、NGOは草の根レベルに直接働きかけましてきめの細かい対応ができるという意味での利点を持っておりますから、政府といたしましても、これまでNGOに対しましてさまざまな側面的な支援措置をとってきたところではございますが、今後とも我が国の援助が国民的参加の形で官民挙げて総合的に推進されることができるように、重要なことでございますだけに最優先の中で考えていきたいものだ、このように考えております。
  79. 草川昭三

    草川委員 大臣も五月十五日からOECDの閣僚会議に出られるわけで、OECDの中でも経済協力の話が出ると思うのでありますが、ぜひよろしくお願いしたい、こう思います。  二番目に、これは農林水産省関係になりますが、かねてから私も取り上げておりますが、生乳牛乳価格問題について取り上げていきたいというふうに思います。  それで、これは過日のこの物価問題特別委員会でも問題提起をしたわけですが、六十三年度生乳飲用需要というのは予想外に伸びておるというように聞いておりますが、六十三年度生乳取引条件あるいは契約はどういうような状況になっておるのか、現状についての説明農水省からお願いしたいと思います。
  80. 窪田武

    窪田説明員 生乳取引状況につきましては、四月二十一日の当委員会で御説明してから、ゴールデンウイークを挟みまして、私どもといたしましても生産者サイド、乳業メーカーサイドの双方生乳取引の早期決着につきまして指導を重ねたところでございますが、現段階におきまして生乳取引進捗状況について都道府県から報告を求めたところでございます。  その報告によりますと、沖縄県におきましては、現時点では文書契約の締結には至っておりませんが、価格についてはほぼ合意に達しているというふうに聞いております。その他の都道府県につきましては、現在鋭意交渉中でありまして、いまだ合意が成立していないという状況でございます。  この理由は、指定団体側は、今先生指摘のとおり飲用需要伸びによりまして需給状況が今後とも堅調に進むという前提に立ちまして、六十三年度飲用乳価を引き下げる状況にはない、むしろ据え置けというふうに主張しておりますし、一方、メーカー側生乳生産費自体が下がっているのだから応分の引き下げを主張するということで、両者の間の主張にまだ若干の隔たりがあるというふうに聞いておりまして、このため交渉が妥結するに至っていないというふうに考えられます。  また、数量の問題につきましては、そういう飲用牛乳の好調を反映いたしまして、指定団体側、生産者側でございますが、メーカー側とも一定量の増量についてはほぼ合意に達しているということでございますが、その量そのものにつきましては、それぞれの主張がございまして、具体的に何%ということまでは合意に達していないというふうに聞いております。  いずれにいたしましても、私どもは、生産者側、メーカー側双方とも早期に合意をするという趣旨そのものについては大分理解が得られているというふうに聞いておりますので、今後ともさらに指定団体側、メーカー側双方に対して十分指導してまいりたいというふうに思います。
  81. 草川昭三

    草川委員 酪農乳業界にとっては何といっても当面の最大の関心というのは生乳取引の条件が文書化されることだと思うのでありますけれども、沖縄で締結をされたという条件でございますが、それは据え置きになっておるわけですか。どの程度、どういう水準で話し合いが行われたのか、お伺いします。
  82. 窪田武

    窪田説明員 私どもの聞いているところ、沖縄県につきましては、御案内のように沖縄県というのは飲用牛乳に見合うだけの生産量が全くできない、自給率が非常に低い県でございまして、そういうこともございまして、価格につきましては据え置きということで大体合意に達している。ただ、数量の方はまだ具体的には達していないというのが文書化契約に至っていない理由であるというふうに聞いております。
  83. 草川昭三

    草川委員 これは午前中に竹内先生の方からも問題が出たと思うのですけれども、今お話がありましたように、沖縄は供給の方が少ないわけですから比較的うまくいった。その他の地域については残念ながらまだ決まっていない。しかし、五月のもう中旬になっているわけですから、本来の酪農振興法の精神からいうならば、事前に、量、内容、価格、そういうものが決まって文書化された取引になっていなければいけないわけでありますが、それができていない。だから私どもがこの国会でもその問題を取り上げており、農水省指導しておるという答弁になっておるのですが、残念ながらそれは実現をしておりません。  そこで、これは前回の繰り返しになるかもわかりませんけれども、今沖縄の例を引いたのは、たまたま沖縄は生産者側とそれを受けて処理をするところのメーカー側とのバランスが非常に均衡しているから話し合いがつきました。ところが、他がついていないということは、少なくともメーカー側の方が生産者側よりまだ力が強い、出荷する生産者側の方が弱い、だから契約に至っていないのではないか、こういうことを私は言いたいわけですね。  そこで、当然のことながら、各県段階指定団体酪農の県段階の指定された組合は、県の段階で幾らメーカー交渉していてもなかなからちが明きませんから、自分たちの上部団体であるところの全国生乳連という組織に、ひとつ一緒にやってくれよ、うちでなかなか交渉がうまくいかないからあなたに少なくとも話し合いをしてもらいたい、それははっきりした条件としては現行水準より下がりちゃだめなんだよ、とにかくこれでひとつ交渉をしょうじゃないかという権限の委任というものをやっておるのではないかと聞いておりますが、その点はどのように把握をされておみえになるか、お伺いします。
  84. 窪田武

    窪田説明員 六十三年度生乳取引に関しまして、本年の四月の段階で、岡山県酪連ほか八団体乳業メーカーに対しまして、取引条件は現行どおりとすること、交渉成立まで現行価格を下回る暫定払いは行わないこと、さらに上記の交渉について全国生乳連に一任していることという旨の三点について文書で申し入れを行っておるということは承知しております。また、これを受けまして、全国生乳連がそれぞれの指定団体の代理人として乳業メーカーに同種の申し入れを行ったことについては承知をしております。
  85. 草川昭三

    草川委員 これは新しい一つの動きだと思うのですが、農水省としてはこのような事実をどのように評価しますか、課長見解を承りたいと思います。
  86. 窪田武

    窪田説明員 農林省といたしましては、このこと自体については生乳取引は当事者間の問題であると考えておりますが、先般の当委員会でも申し上げましたように、生産者団体が、例えば中酪とか酪政連とかいうところがそれぞれ各指定団体全国段階でもいろいろ相談をしてやっている、その一環として全国生乳連もそういうことをおやりになるという点につきましては、私どもとしてはそういうことが生産者団体側立場一つあり方であろうと思っております。  いずれにいたしましても、全体の生乳取引交渉が早期に妥結することが大事なものですから、私どもとしては、それぞれ各指定団体あるいはメーカー側に対して、いわゆる当事者双方でございますが、指導を行っているところでございまして、今後ともその努力を続けてまいりたいと考えております。
  87. 草川昭三

    草川委員 生産者としては一つあり方であろう、こういう答弁でございますが、問題は、それに対して大手メーカーはどのような反応を示しておるのですか、お伺いします。
  88. 窪田武

    窪田説明員 聞くところによりますと、大手メーカーサイドにつきましては、現在それぞれの各指定団体メーカーとの間で生乳取引交渉が鋭意続けられている状況であるということで、直接現段階全国生乳連と話し合うことの合意には達していないと聞いております。
  89. 草川昭三

    草川委員 大手乳業メーカーは、委任を受けた全国生乳連が話し合いに応じてもらいたい、団体交渉に応じてもらいたいということを言っておるわけですが、交渉をしていない、こういうことですね。特に、全国生乳連というのは従来は大手の森永だとか雪印、明治等を相手にしておったわけですが、今回は全農ですね。全農はみずからもプラントを持っておりますし、あるいは全酪連もみずからプラントを持っておりますから、協同乳業だとかグリコ、オハヨーとかいうローカルメーカー等にも申し入れをしておるようでございますが、私ども客観的に見ておりましても、多少従来と違う申し入れをしておるように思うのです。その裏づけは、価格交渉に対して必死の願いが込められておると私は思うのです。  酪農家方々というのは今大変苦しい状況にありますし、日米農産物交渉を見ておりましても、一層生産性向上の努力もしなければいけない。あるいは過大な金利負担を早く償却しなければいけない。また、品質の高い生乳というものを生産しなければいけない。大変苦労しておるわけでありますから、私は農水省にぜひ聞いていただきたいのは、従来は各県段階メーカーとの交渉を見守っているだけで農林行政はできたわけですが、今度はそうではなくて、全国的な規模でまず一定の条件をつくる、そして各地域によってプラスがあればマイナスがある、アローアンスというのでしょうか上下の幅があってもいいと思うのですが、基本的な条件、こういうことだけはしっかりと中央で面倒を見てあげなければいけないのではないかというような気がするわけであります。  そこで、今度はちょっと具体的な中身に入りますけれども、過去の取引実態の中で、無指定「その他向け」というものがあったと思うのです。これは午前中にも出たのじゃないでしょうか。これは私どもが聞いている範囲内ではかなり大きなウエートになっているのではないか。いわゆる「その他向け」というのは価格が決まらないわけですね。本来は生乳はこれこれしかじかという価格に決まったとしても「その他向け」ということで引き取る、それをプールしてみると実際上は安い価格になる、こういうことになるわけですが、何%ぐらいの位置づけになっておるか、お伺いしたいと思います。
  90. 窪田武

    窪田説明員 生乳委託販売に係ります販売価格の約定の方法につきましては、不足払い法の趣旨からいいまして、加工原料乳については別建てで、それ以外の、主として飲用でございますが、これに分けることが最小限必要でございます。ただ、指定生産者団体乳業者の話し合いに基づいて「その他向け」をさらに細分化することが合理的であるという場合も当然考えられますので、生乳取引実態に応じて適切に行えるよう指導しているところでございます。  先生指摘のいわゆる用途無指定というか「その他向け」というものが現在設定されている事実は承知しておりまして、これは、まさに生乳は、そのときの牛乳乳製品需要動向によって、飲用向けになるのかあるいは乳製品向けになるのかという判断があらかじめ契約段階ではできないという事情に基づいて、当事者門の合意に基づき行っているということでございます。そのこと自体についてはそういうものがあり得ると考えておりますが、その内容につきましては、実態的に最近の用途無指定の「その他向け」の割合というと、現段階では二、三割程度ではないかと聞いておるところでございます。
  91. 草川昭三

    草川委員 加工向け以外の生乳取引の大体三〇%は用途無指定の「その他向け」という割合になっておるわけです。問題は、三割というのは価格がわからぬわけですからいかにも大きいわけですよ。我々にとってもわかりません。消費者としてもわからぬわけですね。農水省に対しても三割の価格は幾らかという報告は行ってないと思うのです。統計に出てないと思うのです。  それで、問題は、加工向け以外の生乳取引の三割を占める、今二割から三割だとおっしゃいましたが、我々は三割と承知しておるわけですけれどもメーカーはその三割の無指定向けのものをどこに使うているか。それこそ我々の飲用向けにその三割のほとんど大半が行くのではないか。それは一部は加工に行くかもわかりませんが、三割という値段のつかない生乳メーカーの方に入って我々がそれを飲むということになると、この価格の決め方というのはよほど前倒しにしっかりとしてもらわなければいけないと思う。特に、消費者に対してもこれこれしかじかの価格原料を買っておりますという発表をしておりますけれども、三割近いものは「その他向け」で値段がわからぬということになると、消費者に対して原価を隠すことにもなるわけですね。  私はここらあたりが大手乳業メーカーが史上空前の利益を上げている最大の根本ではないかと思うのです。だから、大手が幾らもうけようとそれは我々はいいのですけれども、かかる手段によって高い収益を上げるということになると、消費者としても一言言わなければならない、こういうことになりますし、監督官庁であるところの農水省も、かかる実質の購入価格が不透明な形になる価格交渉を許すべきではないと思うのですが、その点はどうでしょう。
  92. 窪田武

    窪田説明員 先ほど申し上げましたように、生乳取引におきまして用途別数量用途別価格というものを決めているわけでございますが、これらの用途別数量自体につきましては、これはあらかじめ決めておくのではなくて、取引契約書におきましては、年度内の一定の期間ごとの総取引数量というものを決めまして、用途別取引数量自体は出来高払いといいますか実績によって決まるというふうに聞いております。その場合に、もちろん加工原料向け数量なんかは知事が認定を行う、数量がそれによって決まるわけでございまして、それ以外の数量についてもそれぞれ当事者間の話し合いによって、こういうことであったというふうに聞いているところでございます。  それから、それがどういうふうに使われたかといいますと、確かに、先生指摘のとおり、六十二年、去年のように飲用牛乳の消費が大変大幅に伸びたというような場合には、「その他向け」の生乳の大部分が飲用等に向けられた、飲用として消費されたというふうに思われるわけでございますが、逆に飲用牛乳需要が非常に少ない場合には、安い方の乳製品向けの方に行く割合もふえていることになるというふうに考えておりますので、それぞれの占める先別、具体的な割合につきましては、私どもとしては把握していないところでございます。
  93. 草川昭三

    草川委員 だから私は、この質問を機会に、フォローアップというのですか、「その他向け」がどこへ行くのかということはぜひきちっと把握をしてもらいたい、こういうことを強く要望したいわけです。  なぜこれを長々と言ったのかというと、「その他向け」というもののウエートがだんだんふえてきている。だから私は、酪農家は、これはいけない、こういうような交渉をしている限りは真の酪農経営の安定化につながらないということで、ひとつ中央できちっとしたスタンダードな交渉のあるべき姿を決めてもらいたいという形から、今回、全国生乳連農業協同組合法に基づくこの生乳連に権限というのですか交渉権も委任をしようということになったと思うのです。  ここで労働省にちょっと来ていただいておりますのでお伺いをしますが、労働組合が経営者側に対して賃上げ交渉をする、自分たちが力が弱い、そこで上部団体にひとついろいろと話をしてもらいたい、これが連合体になるのかどうかいろいろな条件があると思うのでございますけれども、連合体からの今度はその経営者に対して団体交渉の申し出があると思うのであります。当然そういう場合があるわけですが、その団体交渉の申し入れに使用者側は応じないと不当労働行為になるのではないかと思うのですが、その点は労働組合の場合はどうか、労働省にお伺いしたい、こう思います。
  94. 渡邊信

    ○渡邊(信)説明員 労働組合の行います団体交渉については労働組合法に規定がありまして、同法によりますと、労働組合またはその連合団体から団体交渉の申し出がありますと使用者は正当な理由がなくてこれを拒否してはいけないというふうに規定をされております。
  95. 草川昭三

    草川委員 非常に労働組合の場合は明確ですね。交渉を拒否しちゃいけないというふうにきちっとしているわけですから、そこでもし交渉上のトラブルがあるならば、労働委員会等においてあっせんなり調停なりあるいはまたその他の問題について勧告をすることがあるわけでありますね。労働組合の方はこのようにきちっとしておりますね。  そこで、今度は中小企業の場合はどうか。これも通産省に来ていただいておりますので、中小企業庁の方にお伺いをしたいと思うのでありますけれども、中小企業等協同組合法にどのように今私が申し上げたようなことが触れられているのか、あるいはまたどういう内容になっておるのか、お伺いしたいと思います。
  96. 村田憲寿

    ○村田政府委員 ただいま先生指摘のように、中小企業等協同組合法におきましても、事業協同組合の事業の一つといたしまして、組合員の経済的地位の改善のために組合が団体協約を締結できるという旨が規定されておるわけでございます。  そこで、その具体的な仕組みでございますけれども、通例、組合の側から相手の事業者に対しまして、代金の支払い方法でございますとかあるいは取引価格でございますとか、そういった取引条件につきましてその改善を図るために団体協約の締結をしたいという旨の申し出がなされるわけでございまして、その後も相手方と交渉するということになってまいるわけでございます。この場合、交渉の相手方とかいろいろな資格要件等も政令で決められておりますけれども、いずれにしましても、そういう申し出があった場合には、組合員と取引門係のある事業者は組合員等からのそういう申し出に対しまして誠意をもって交渉に応じなければいけないということも、これもまた法で規定されているわけでございます。  そこで交渉がまとまりますと協約を結ぶということになるわけでございますけれども、この場合も、いろいろ協同組合法に基づく団体協約であることが文章で書かれなければいかぬとか、そういう規定がございますけれども、そういうのは省略させていただきます。  もしそれで交渉がまとまらないで不調の場合にどうなるかということも実はこの組合法には規定されておりまして、その場合は当事者の双方あるいは一方が行政庁にあっせんまたは調停を申請することができるということになっておるわけでございます。この申請を受けた行政庁は、この申請の内容を検討いたしまして、必要と思われるときは関係審議会の意見を聞いて速やかにあっせんまたは調停を行うというようなことで完結しておるわけでございます。  ただ、このあっせん、調停でございますけれども、現在のところ事業者の方同士の話し合いでうまくいっているわけでございまして、したがいまして、行政庁にあっせん、調停を持ち込まれたケースはございません。そんなことで、いろいろ事業者の方と中小企業の方が話し合われて契約を締結されているというのが実態でございます。
  97. 草川昭三

    草川委員 今通産省の方から答弁があったように、中小企業等協同組合法の中では、組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結、これがきちっと九条の二というところで明確になっておりますね。そして、事業協同組合と取引関係がある事業者は、団体協約を締結するため交渉したい旨を申し出たときには、誠意をもって交渉に応ずるものとするというのが、これも第九条の二の八項に明確に書かれております。これは昭和三十二年の十一月に改正になったときに新たに追加されているわけでありまして、誠意をもって応じなければいけないよということがわざわざ入れられた。同時に、行政府のあっせん、調停制度というものが創設をされているわけです。だからそれだけ中小企業をきちっと法律によって守っているわけですが、農業協同組合員にはこういうものがないのでしょうか。それをちょっと、農業協同組合課長お見えになっていませんが、あわせて窪田課長の方からお伺いをしたいと思うのでございます。
  98. 窪田武

    窪田説明員 農協法に基づきます団体協約は、組合員の経済的地位の改善のために行うという観点から見ますと、ただいま御説明ございました労組方なり中小企業等協同組合法の協約とほぼ同様の趣旨で設けられておるというふうに聞いております。ただ、その内容につきましては、一般に農業協同組合につきましては信用事業なり経済事業なり共済事業とか各種の事業を総合的に組合員のために行っているということでございますので、農協法に基づく団体協約等につきましては、協約の相手となり得る範囲も広く、協約の内容も多岐にわたっているというふうに考えております。このような農協の特性から、農協法上の団体協約は、労働組合法なり中小企業等協同組合法のそれとは異なりまして、協約締結について相手方との交渉は農協の自主的な活動にゆだねられているというふうに聞いております。
  99. 草川昭三

    草川委員 それは課長、ちょっとおかしいんで、法のもとには平等でありますから、労働法も中小企業団体等法ももとは憲法から来ておるわけですね。我々は、農民であろうと中小企業経営者であろうと労働者であろうと、自分たちの条件を守るためにはまとまって自分たちの意思を表明する。交渉することができる。そしてその交渉を相手側は受けなければいけない。これは労働組合の場合は非常に強いわけですけれども、中小企業の場合は、誠意をもってそれを受ける、こういう言葉になっておる。農協も私は同じだと思う。  特に、私は、この生乳の場合は酪農振興法というのがあるわけですから、この酪農振興法の中には、紛争の問題あるいは生乳取引契約に関する問題というのが非常に明確に十九条の三にうたわれていると思うのです。酪農民が、自分たちが組合をつくって、そして団体協約の締結の申し入れをしたい、こういう場合は、「生乳等の取引の公正を確保するため特に必要があると認めるときは、その乳業を行う者に対し、その生乳取引契約又は団体協約の締結又は変更の交渉に応ずべき旨の勧告をすることができる。」というように、中小企業法と同じように、誠意をもってこたえるという趣旨のことがここの中には書いてあるわけですね。だから私は、先ほど課長は、農協の場合は幅が広いから中小企業と少し違いますよ、あるいは労働組合とは違いますよということを言っておるのですが、そうではないということを申し上げたいわけですよ。  特に、この酪農振興法の第二十四条には、「農林水産大臣は、生乳取引契約に係る紛争でこれにつき都道府県知事に対し調停の申請があったものについて」云々ということがございまして、「中央生乳取引調停審議会の意見を聞き、その紛争の調停を農林水産大臣において処理すべき旨の決定をすることができる。」というようにあるのですね。これは労働組合法で言うところの労働委員会的なものかもわかりませんね。こういうものというのはもう既にあると思うのでございますけれども、これは、委員とか、それからどういう役員になっているかわかりませんが、この審議会の委員というのはいつごろから任命されておるのですか、どういう方が審議会の委員になっておるのか、簡単にお答え願いたいと思います。
  100. 窪田武

    窪田説明員 先生指摘のとおり、先ほど申し上げたのは農協の一般的な問題でございまして、生乳取引そのものにつきましては、協約締結にかかるまでの交渉につきまして、一定の場合に行政庁の介入というのが必要であると思われることにつきましては、酪振法上そういう規定があることは先生指摘のとおりでございます。  その中央の審議会でございますが、これは問題が起こる都度任命するということで、現在は委員は任命されておりません。
  101. 草川昭三

    草川委員 では、これで全国生乳連が各都道府県段階でそのあっせんの申請をするということになりますと、これは複数の県でそれが出てくるわけですから、中央に上がってくることになると思うのです。それで上がってきたら中央生乳取引調停審議会というものが再開というのですか開催をされることになり、委員が任命されると思うのですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  102. 窪田武

    窪田説明員 先ほども申し上げましたように、生乳取引につきましては、現在の不足払い制度のもとにおきましては、乳業メーカーと各都道府県段階にございます指定団体との間におきます交渉で行われることが基本であるというふうに私ども考えておりまして、その交渉自体が大変難航した場合には、当然各都道府県段階にあっせんなりそういう調停の申請があることはあり得ると思っております。私ども、現段階では、そういう状況になるほど、例えば価格問題が大変格差があるという点、あるいは数量について大変大きな懸隔があるというふうには判断していないところでございます。
  103. 草川昭三

    草川委員 非常に農水省は楽観をしておみえになるわけですが、楽観をするというのは、私が先ほど来長々と申し上げていることを理解をしてみえぬ、こう思うのですね。  私は何も全国生乳連だけの意見を聞いておるのではなくて、俗に言う中酪というのですか、そういうところの方々が、例えば、これは中央酪農会議乳価・取引等対策委員会委員長が異例の談話を出して、飲用向け乳価の改善のために従来と違ってしっかり全国的に情報交換して頑張れ、こういうような趣旨のことを言っておみえになるわけですし、前回の委員会でも私は主張したわけですが、酪農家方々立場というのは非常に厳しいわけですから、今回は相当深刻ですぞ、「その他向け」のことについても非常に強い関心を持って交渉に臨んでおるよ、だから当然行き着くところはそういうことですよということを言っておるわけです。  私は、なぜ大手乳業メーカーが地方ならば話し合いをすると――それは指定団体ですから当たり前といえば当たり前なんですが、指定団体の方が集まる上部組織、労働組合で言えば総評か同盟かそういうところでしょう。そういう方々が、日経連と話なんてしょっちゅうしているわけですよ。経団連とも話をしている。時には総理大臣とだって話をしている。中小企業の場合でも同じことなんです。酪農家の場合は、一番自分たち牛乳を買い取ってもらう大手乳業メーカー方々と話し合いをしたいと言っても、全然その話し合いが行われていない。こういう状況は、まさしく農林水産省としては指導の中に一つ入ると思うのですね、おい、君たち、もっと話し合いをしたらどうだという。この前説明されたように、農水省としても早く交渉が終わるように話をしている、進めている、こう言ってみえるのだから、そのうちの指導の中の一つに入ると思うのですが、なぜ大手の乳業メーカー全国生乳連方々と話し合いをするのを嫌うのか、その嫌う理由を一回ここで明らかにしていただきたい、こう思います。
  104. 窪田武

    窪田説明員 先ほどから申し上げておりますように、県段階においては、現在、六十三年度生乳取引の条件について断続的に話し合いが行われておりますし、また全国段階におきましても、それぞれ中央酪農会議なりそういう中央の団体メーカーとの間でいろいろ話し合いが行われているというふうに聞いております。  ただ、全国生乳連乳業メーカー、特に大手乳業メーカーとの間での話し合いは最近行われていないというふうに私は聞いております。乳業メーカー全国生乳連との間に過去においていろいろな経緯があったというふうに聞いておりますが、なぜ乳業メーカーが会おうとしないのかということについては、詳しいことは存じ上げておりません。
  105. 草川昭三

    草川委員 そこで、この間を幾ら時間を使っておってもあれですから、ひとつ課長に私は要望があるのです。  せっかく私どもも何回かこの問題を取り上げているわけですから、当事者間ですから、しかも、やろうと思えば、何回か申し上げておりますが、他の中小企業だとか労働組合では一般的に行われていることですから、少なくとも全国の半数の各県段階の加盟をしている全国生乳連メーカーとの話し合いのあっせんを強く農水省が行うべきだと私は思うのですが、私のこの要望について課長はどのようにおこたえになられるか、お伺いしたいと思います。
  106. 窪田武

    窪田説明員 生産者団体側全国段階の既存の団体といたしまして、専門農協系統では全酪連というのがございますし、総合農協系統では全農というのがございます。それから、それらをより幅広く全国の全指定団体を網羅した形で社団法人中央酪農会議というものがございまして、先ほど先生もお話しになったように、いろいろな作戦等を各指定団体に指示して、また中央段階でもいろいろやっておるという状況でございまして、やはりそれらの団体全国生乳連との間でそれぞれの機能等について十分話し合いを行うことが必要であると私ども考えております。そういうことでそれらの関係の中央団体におきます話し合いを十分やっていくように注意喚起してまいりたいというふうに思います。
  107. 草川昭三

    草川委員 ちょっとそこがまた違うのですが、今回の申し出を見ても、全農にも申し出ている、全酪連にも申し出ているというのは、全農も、納める方であるけれども自分も加工して売るわけですね。自分自身も二つの顔があるわけですよ。全酪連も、自分も納入をするのだけれども、自分が全体のを受けて加工をして売るわけですから、二つの顔がある。だから、本当に納めるだけの、生産者だけの顔の組織というのは全国生乳連なんですよ。まさしく全国生乳の協同組合なんだ。  ここは基本的なことを言っていますよ。基本的なことを言うのは当たり前なんです、基本的なことを言うための組織だから。ところが、君たちは基本的なことを言うから嫌だとメーカーが断っておる。それをほっておいて私は本当の農林水産行政というのはないと思うのです。彼らは基本的なことを言うのだからちょっと話し合いをしろよ。細かいことについて農水省はどっちかの味方をしろとか、そんなことを言っておるのじゃないですよ。少なくともそれがうまくいく方法ではないか。それがこれからの開放経済体制に対する日本農業あり方なんですよ。今何が行われておるかというのは、国際的な風圧があるわけですから、既存の酪農家はみんな心配しておるわけです。その心配しておる立場に立って、生乳の調整をやろうじゃないか、あるいは価格交渉をしようじゃないかという、本来の生産者の顔のこの組合を立てなくて真の酪農家の組織というのはないと私は思うのです。その点はどうでしょう。  それで、私のこの要望について、とりあえず課長は一回全国生乳連の連中と会うべきだと思うのですが、申し込みをしたら会いますか。それだけ聞いて、この話を終わりたいと思うのです。
  108. 窪田武

    窪田説明員 私自身が全国生乳連から会見を申し込まれたら、喜んでお会いしたいと思います。
  109. 草川昭三

    草川委員 では、この問題で大変時間がかかりましたので、今の課長答弁を大切なものとして受けとめて、次に移ります。  そこで、今度は生糸価格のことになりますが、過日、新岡等を見ますと、織物の産地に新潟県の五泉というところがありますが、そこの織物工業協同組合が要請書を通産省なりあるいは農水省の方に持ってきたと聞いております。これは、生糸の現在の取引状況というのは非常に問題があるというので、生糸取引の正常化に対する要請のようでございますが、その背景は何か、お伺いしたいと思います。
  110. 加藤清氣

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  去る四月二十七日に五泉の織物工業協同組合の方から陳情がございました。その背景は、昨年の秋以来生糸価格が上昇してきておりまして、昨年の十二月には一たん鎮静いたしましたけれども、またことしの一月ごろから次第に上がってきておりまして、彼らといたしましては安定的な流通、糸の確保ということを求めて陳情をいたした、また私どももその心情を受けとめた、このような事情にございます。
  111. 草川昭三

    草川委員 それで今度は細かい内容に入りますが、この前、私は、本来法律的に生糸というのは検査をしたものが流通をする、ところが検査されていないから市場に出荷する量が少ない、だから価格が高騰するのではないかという趣旨のことを申し上げました。農林水産省は繭糸課長の方から製糸三団体に生糸の検査の受検の励行という通達を出された、こういうふうに聞いておりますし、新聞にもそのような報道が出ております。ところが、これはつい最近の、十一日、十二日の業界紙でございますけれども、この繭糸課長の通達に対して、「市場ではこれに対し「製糸は四―六月の約定を組んでおり、一社でも二社でも〝はい、そうですか〟と受検するところはあるはずがない。出来もしないことをなぜ今ごろ言うのか」と冷ややかに受け止めている。」という報道がされています。これは業界の法律に対する挑戦ではないか。  私は、先物市場というのは正常に運営をされていないところに問題があるということで、常々問題提起をしてまいりました。特に、悪徳商法を取り締まるべきではないか、そして市場管理を適切に行うべきではないだろうかということを言ってきたわけでございますが、今度は繭糸課ではなくて商業課になると思いますけれども、果たして市場管理が適切であったのかどうか。昭和五十二年以後約十年になりますけれども、その十年の間に農水省所管の商品先物取引所における営業停止処分は何件あったのか、具体的に答弁をしていただきたい、こういうように思います。
  112. 大矢好信

    ○大矢説明員 農林水産省関係の取引所が商品取引に対して行った売買取引の停止処分の件数についてのお尋ねでございますけれども取引所からの報告によりますと、昭和五十二年以降で申しますと五十八件でございます。
  113. 草川昭三

    草川委員 今のは取引所が処分をした内容ですね。今度は、農水省が直接行った常業停止は何件ぐらいあるのかお伺いします。
  114. 大矢好信

    ○大矢説明員 農林水産省が商品取引に対しまして立入検査を行いました結果、商品市場におきます売買取引の受託の停止処分を行った件数は十五件でございます。
  115. 草川昭三

    草川委員 十五件ですから全部で七十三件になるわけですか、これが昭和五十二年以降あるわけですが、中には、「取引の信義則に違反する行為があったため。」「場勘定が納入できなかったため。」あるいは「取引所及び取引所の会員の信用を傷つける行為があったため。」いろいろとあるわけでありますが、ひどいものになりますと、「のみ行為」あるいは「無断売買」という処分内容がありますね。ところが、そういう非常に厳しい処分のようでございますが、業務停止期間というのを見ると、三日間とか、長いもので五日間ですね。一日なんというのもあるわけです。この一日とか三日程度では私はこの業界の姿勢を正すわけにはいかぬと思うのですが、どんなものでしょうね。  これは農水省だけを言うわけにいきませんから、通産省所管の商品取引所関係を見てみますと、簡単なことですから私が言いますが、これも十年間で二十件あります。大体同じような内容で通産省関係の取引に対する処分というのがあります。  今申し上げたように、これはもっと厳しく処分をすべきであると思うのですが、農水省、どのように思われますか、お伺いします。
  116. 大矢好信

    ○大矢説明員 先ほど申し上げましたように、これまで五十二年以降で七十三件にわたる売買取引の停止処分を行ってきたわけでございますけれども、商品取引につきましては、他方では紛議、苦情もこの十年の間に大幅に減少しているわけでございます。また、処分を受けていない商品取引員も多数あるわけでございますけれども、その一方で、今先生から御指摘がございましたように、商品取引の中でこれまで農林水産省あるいは取引所から複数回にわたりまして処分をされた者がいることも事実でございます。私どもは法令等に基づきまして厳正な処分をしてきたつもりでございますけれども、今申し上げたような事実があることも御指摘のとおりでございます。  最近、商品先物取引につきましては、社会的、経済的な要因によりますところの価格の変動というものが増大をしておりまして、そうした中でリスクヘッジ等の機能が見直されているわけでございます。今後そのような要請にこたえていくためにも、これから御指摘のような事態は早急に改めまして、そうして商品取引員の社会的信用の向上を図る必要があるというふうに考えております。私どもとしましては、商品市場の健全な発展に向けましてさらに厳しく対処していきたいというふうに考えております。
  117. 草川昭三

    草川委員 厳しく対処していきたい、今こういう答弁でございますが、一方、大蔵省証券局の方にお伺いします。  証券会社における今のような過去十年の営業停止の処分は何件ありましたか、お伺いします。あるいはまた、内容についてお答え願いたいと思います。
  118. 内田輝紀

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  証券会社に対する営業停止処分あるいは免許取り消しといった行政上の処分は、過去十年間におきましては二件でございます。  その内容について簡単に申し上げますと、まず一件は、証券会社の財務状況が著しく悪化いたしまして、それ以上業務を続けることは投資家保護上問題があるという判断をいたしまして、一定期間営業停止をしました後、免許の取り消しを行ったものでございます。もう一件は、証券会社の職員が顧客の株式の注文が株価操縦を目的とした仮装売買であるということを知りながらその注文の受託を行ったということによりまして、証取法及びこれに基づく大蔵省令違反ということで、一定期間の営業停止を行った内容のものでございます。
  119. 草川昭三

    草川委員 今証券局の話を聞きますと、やはり証券局もさまざまなセールスというのですかディーラーの問題があるわけでありますけれども、免許の取り消しという形で非常に厳しい態度が出ているわけです。農水省の場合は、今の答弁にもありますように、複数の処分を受けたような例があり、一罰百戒ということではなくて、繰り返し繰り返し処分が行われている。また、処分が行われても、業界全体で反省をするということが非常に少ない。こういうことで、消費者保護という面からもとかく問題が出てきておるわけです。私、厳重な処分を今後行っていただきたいと思うのです。  今度は大蔵省の銀行局にお伺いします。  今大蔵委員会で金融先物取引法というものが提出をされて議論になっていますね。証券先物取引というのが一昨年でございますか生まれまして、もう兆の時代から京の時代、非常にボリュームがふえた。まさしくこの東京は世界の金融市場になってきておる。こういう現実。大きな市場に育ってきておるわけです。  今度新たに金融先物というのがまた上場されることになるのですが、私は、本来ならば、この先物取引というのは、日本古来の米相場ができた当時からある農林水産省なりあるいは通産省所管の先物業者がそれは引き受けてそれに参加をするのが本当だと思うのですけれども、今申し上げたように次から次へと処分が行われてもなおかつ反省の色がないというような業界では、投資家保護というものあるいは消費者保護というのはできないのではないかと思うのでございますが、これは大蔵省に一間で結構でございますけれども、金融先物取引に対してかかる問題のあるような商品先物業者というものを参加させるのかどうか、あるいは、参加する条件というのは相当な資金力と金融業の実績がなければならぬと思うのですが、その点についての大蔵省の銀行局の見解を求めたい、こう思います。
  120. 小山嘉昭

    ○小山説明員 現在大蔵省が国会に提出しております法案では、金融先物業者の許可を受けるためには、申請者が財産的基礎、人的構成、社会的信用等につきまして一定の許可基準に適合することが必要ということにされております。これらに適合すると認められる場合には、次に二つ目のハードルでございますけれども、欠格要件に該当していないのかどうか。法案にいろいろ列記されております。例えば過去五年以内に許可の取り消しを受けた者でないこと等々が並べられております。こういう許可条件に該当いたしまして初めて許可の対象になるわけでございます。  次に、そういうことで農林の商品あるいは通産の商品等を扱っております先物業者、その先物業者であるがゆえにそれでは金融先物業が行えぬのかどうか、こういう問題になるのでございますけれども、これは、農業産品あるいは通産産品であるからといって金融先物業を行えない、こういうことにはなっておらないわけでございます。しかし、先ほど申し上げました財産的基準等の許可条件に該当しているかどうかということにかかるわけでございます。  三番目に、先生指摘の商品先物業者の中にいろいろ問題のある業者も含まれているわけでございますが、こういう業者が金融先物業をやりたいということで申請をしてまいった場合どうであろうかということでございますけれども、これはもちろん実質的な審査にかかるわけでございますが、きょうここではっきりと申し上げられますことは、ほとんどの場合、問題になっている業者の社会的信用というのは大変低うございまして、また財産的基礎、人的構成も到底これは許可基準を満たしていないというふうに想像されておりまして、こういう業者が金融先物業に今後法律の制定を見ました後入ってくるということはなかろうかと思います。これは投資家保護の趣旨からでございます。
  121. 草川昭三

    草川委員 今大蔵省から非常にはっきりとした答弁が出ましたが、私は、ぜひ農水省の商業課の方も、今のような評価ということを正しく受けとめて、ひとつ業界の指導をきちっとしていただきたいということを申し上げて、この件は終わりたい、こう思います。  残された時間、あとわずかでございますが、厚生省の方に薬の薬価申請、あるいはその申請のあり方について質問をします。  後発品の承認期間の短縮をもっとすべきではないかという声があります。現在申請から一年六カ月、後発品の取り扱いというのは、我々もゾロという言葉を使ったりなんかしておりますけれどもアメリカでは、最近非常に特許期間の回復が新薬の優遇措置として行われる、こういう背景もありまして、後発品の承認期間が非常に短くなった。申請から承認まで百八十日だ、こういう背景でございますし、日本の場合は二年に一回というような状況で非常にハンディがつくわけでありますが、その点はどのように考えられているか、お伺いします。
  122. 渡辺徹

    ○渡辺(徹)説明員 後発医薬品の承認審査期間でございますけれども先生お話がございましたように、私ども今約一年六カ月程度で審査を終えて承認するようにということで努力しているところでございます。  実は、この承認審査期間につきましては、六十年十月一日に、やはり関係方面からこの承認審査期間の短縮をしてほしいという要望等がございまして、私ども標準的事務処理期間と称しまして審査期間を明示するということで、薬務局長通達をもちまして事務処理期間を公表いたしました。当初、この後発医薬品につきまして二年ということでこの期間を設定したわけでございますけれども、その後、審査へのコンピューターの導入等審査事務の効率化に努めるということによりまして、一年六カ月まで改善いたしたということでございます。  私どもといたしましてもできるだけ早くこの承認審査を行いたいと考えているのでございますけれども、申請の品目数も一般薬等も含めましてかなりの数がございまして、これを大幅に急に短縮するということはなかなか難しい。私どもは審査事務の八理化あるいは機械のさらなる活用ということで今後とも努めてまいりたいと思っておりますけれども、これを大幅に短縮するということはなかなか難しいというのが現状でございます。
  123. 草川昭三

    草川委員 実は長いのを見ますと三年六カ月もかかるという例もあるわけです。これでは、今のような事情はあるわけですけれども、もう少しスピードアップができないのか、こういう感じが率直にいたします。特に、後発品でありますから、同一内容、同一薬効、こういうことが前提でございますから、私はあえてそのようなことを言うわけであります。  さらに二番目の問題として、現在、収載の申請に際して一つの会社について二十品目前後に申請が制限されている。これは、もし申請をするという力があるならば申請品目全部を収載すればいいのではないか。後発品必ずしも中小企業ばかりではありません。大手も後発をする場合があるわけですから、自由に競争させて、そして脱落したものを取り消していくという方法がよいのではないか。あるいは、せっかく開発をするわけですからそれなりに開発費用というのをかけて申請をする。そうすると、二十一、二十二、二十三という順番だとそれが切られてしまうということではそれが全くむだなので、何らかの交通整理があってしかるべきではないか、私はこう思うのですが、その点はどうでしょう。
  124. 中西明典

    ○中西説明員 お答え申し上げます。  医薬品につきましては、御承知のとおり、生命関連商品であるという特質から、これが安定的に供給されるということが一つ、それから適切な情報収集伝達活動が行われるという、この二点が特に重視されるべきものであるというふうに考えております。したがいまして、製造メーカーが、薬価基準に収載された後におきまして現在は三カ月以内に供給義務を課しておるわけでございますが、そうした期間内に医薬品の品質確保を図りながら安定的に供給していくことができる条件が確保される必要がある、かように考えております。そうした見地から、収載申請数が多数である、あるいは既に収載されておる品目数が極めて多いというような会社につきましては、一社およそ二十品目までを目安に薬価基準収載を申請するよう指導しておるところでございます。  それで、研究開発費のむだを招くじゃないかという御指摘でございますが、後発品を製造するメーカーは、こうした後発品の安定供給という見地から、また研究資源を有効に活用していくという観点からも、メーカーの製造能力や情報活動能力を勘案した医薬品の開発計画を立てていく必要があるというふうに考えますので、この旨改めて業界を指導してまいりたい、かように考えております。
  125. 草川昭三

    草川委員 ぜひ交通整理というのですか指導を明らかにしていただきたい、こう思うのです。  時間が来ましたので最後ですが、同種同効品の薬価が二十番目を過ぎますと〇・九掛けになる、こういうことですね。これはどちらかというと早いもの勝ちですね。早く申請すれば一〇〇で薬価を評価。それで二十を超すのはもううっとうしいという意味もあると思うのですよ。それは薬務局か保険局になるのか知りませんけれども、余りるくらなくていいよ、だから二十一番目からはおまえは〇・九だというのは、僕は非常に乱暴なやり方ではないかと思うのです。これも何か駆け足で早くやった方が得だよ。早くやると、さっきの二番目の話じゃありませんけれども、開発費用の問題にもなる。だから、トータルで製薬業界を見てみるとオーバーフローしているとは思うのですけれども、その整理の方法はある程度考えてやることが必要ではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。その答弁をもらって質問を終わりたい、こう思います。
  126. 谷修一

    ○谷説明員 先生から今お話ございましたように、後発医薬品の収載に当たりましては、同一有効成分、同一規格の後発品のその品目数が非常に多いということが医療の現場等からあるいはまた関係者からも指摘されていることでございますが、そういうようなことから、収載品目数が二十品目を超えるという場合には、既に収載されております品目の最も安い薬価の〇・九掛けということで薬価の算定をしておるわけでございます。ただ、この場合も、すべて一律に適用するということじゃなしに、大量使用というようなことが助長されるおそれがあります最大規格品ということに限ってこの対応をしているところでございまして、そういうことで、私どもといたしましては、そういったような関係者の御意見もございますので、現在のところこういう方法でやっているということでございます。
  127. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  128. 村山喜一

    村山委員長 次に、北橋健治君。
  129. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。長官並びに政府委員各位におかれましては長い間の質疑でお疲れだと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  たまにしか質問の番が回ってまいりませんので、幾つかの項目、ちょっと走りながらで恐縮でございますけれども、お伺いをしてまいります。時間も限られておりますので、どうか答弁の方もよろしくお願い申し上げたいと思います。  最近、私アメリカの方に行って帰ってきたところでございますが、ニューヨークとワシントン、日本でいえば東京と大阪ぐらい離れているわけでありますが、経済の都といわゆる政治の本拠地とが離れていても十分合衆国では機能しているわけであります。西ドイツに行きましてもそうであります。そういった意味で、首都を移転してはどうかという問題が、急速に、これは特に国会議員の間で問題意識が高まってきておるわけでありまして、私もそれには非常に関心を持っておる一人でございます。  ただ、一口に都を移転すると申しましても、幾つかの重要な課題を乗り越えていかねばなりませんので、これはかなり中長期的な課題であろうかと思いますが、経済企画庁長官として首都を移転していくというこういった構想について率直にどのような御所見をお持ちか、聞かせていただきたいと思います。
  130. 中尾栄一

    中尾国務大臣 北橋先生にお答えさせていただきたいと思います。  遷都、分都、展都と今いろいろと論議を呼んでいるわけでございますけれども、東京からの諸機能の分散につきましては、第四次全国総合開発計画におきまして示されておりますように、東京圏への過度の集中を是正して、そして多極分散型の国土づくりを進める上から重要な課題である、私どもはこのように認識をしておる次第でございまして、ただいま先生の御指摘になりましたように、ニューヨーク、ワシントン、すなわちワシントンは政治の町であり、経済の町であるニューヨーク、そういうような形のバランスというものが非常に大事だなということを痛感するものでございます。  このために、現在新たな経済計画を審議しております経済審議会におきまして、国土全体の均衡ある発展を実現する観点から遷都問題も含めて御検討いただいておるという段階の中にございます。間もなくその点においてもいろいろとまとまりができるかと思いますが、先生にもそのときには御披露させていただければと思います。
  131. 北橋健治

    ○北橋委員 政府内部の取り組みにつきましては国土庁も深くかかわっていらっしゃるわけですが、国土庁の方にこの問題についての基本的な見解と方針とをお伺いしたいと思います。
  132. 中野和義

    ○中野説明員 お答えいたします。  首都機能の一括移転問題につきましては、ただいま経企庁長官から基本的な従来の経緯についてもお答えがあったとおりでございます。この問題につきましては、国土庁といたしまして第三次の全国総合開発計画におきまして機能分散問題を受けまして鋭意検討してまいうたわけでございますが、基本的に現在の国土構造が東京を中心に交通ネットワーク一つとりましてもつくられているということでございまして、この古都の移転問題はそういう意味で国民生活にも非常に大きな影響を与えるというものでございます。  ただ、東京の一極集中問題を取り上げますときに、この首都移転問題は基本的に重要なテーマというふうに理解しているところでございますが、諸外国の例などいろいろと先進国の事例等も調査してまいりているわけでございますが、やはり政治、行政、経済機能等の相互のかかわり方といったものにつきまして、より具体的な調査等も含めまして、我が国におきましてこのような移転がそういった面でどの程度影響を与えるかという点につきまして多面的な分析をいたした上で、なおかつ国民的な議論を経て検討すべきテーマというふうに考えているところでございます。
  133. 北橋健治

    ○北橋委員 中尾先生は先見の明がある先生でいらっしゃるのでちょっと教えていただきたいのですが、大体何年ぐらいにこの話は具体化してくるのでしょうか。
  134. 中尾栄一

    中尾国務大臣 遷都、分都、展都、いろいろございます。先ほど申し上げたとおりでございますが、経済審議会が予測しております考え方というものもまだ定まっておるわけではございません。しかし、いずれにいたしましても、東京一極中心主義というものがございまして、その中に、言うなれば商業都市であるにぎやかな町並みもあれば、学園都市もある、あるいは、まことに申し上げにくいのですが、私どものいるこの国会もあれば、官庁も当然ある。さらには農地も点在しておる。これはいかがなものかと思います。  そういう意味においては、どうしても可及的速やかに、とはいいながらも、まずもってこれに一番大事なことは交通問題で、どのようにこれの実現を図っていくかということが極めて大事なことではなかろうかと思います。そういう点では、リニアモーターカーの問題等、四全総の問題を先ほど申し上げましたが、その問題も含めて、交通の充実といいましょうか、交通網の整備というものもこれまたこの問題に密接不可分なる関係であるというふうに私どもは承知しておりますので、その点も踏まえましてできる限り早く考えていくべきだという点において私の答弁にさせていただければ、こう考えております。
  135. 北橋健治

    ○北橋委員 できるだけ早くこの首都移転の問題を具体化していきたいという長官の御決意を承りましたので、ぜひこれの具体化に向けてリーダーシップを発揮していただきたいと思います。  そこで、首都移転にかわる形で、当面まず役所の持っているいろいろな機関を地方に移転するという話が最近どんどん具体化をしてきております。私どもも、行政改革を進める行革与党という立場から、これに非常に深い関心を持って見ておったわけであります。  ことしの初め、政府でこの問題に関する第一弾の十七省庁二十機関十一部隊の地方移転の計画が閣議で決められたわけでありまして、第一歩として率直に評価をしたいのでありますが、しかし、当初は、もっと思い切った案が出てくるのではないかということを期待をしておりました。そもそもこういったことを始めましたのも、やはり今の日本の経済社会というのは東京に非常にいろいろなものが過度に依存をしておりまして、そういったものを何とか脱却していかなくちゃいけないということを政府みずから決断をされての方針でございまして、その意味からすると余りにも小さ過ぎるのではないか、もっとあるのではないかという気がしてなりません。与党の中にもそういった意見があるやに聞いておるわけであります。これは国土庁が基本的な窓口になっておると聞いておりますが、この程度では民社党としては非常に不満である、もっと思い切った地方移転を断行すべきであると思うわけであります。  一省庁一機関を原則として移転するという話ですが、この一省庁一機関という話は、佐藤総理のときにも行革で一省庁一局削減という話がありました。局を削減するというのは大変な問題でありまして、それでも一局を断行したわけでありますけれども、機関となりますと、一つの機関ぐらいで本当にいいのだろうか。あの佐藤総理のときの行革の精神、一省庁で必ず一局を削減しておけと言い残してアメリカに旅立たれたわけでありますけれども、あのときの内閣の決意からすると、このたびの一機関の地方移転ぐらいでは極めて乏しいと率直に思うわけでありますが、今後この第一弾に続いて第二弾、第三弾をいつごろに計画をまとめていかれるのか、基本的な方針をお伺いします。
  136. 中野和義

    ○中野説明員 お答えいたします。  一月二十二日にこの移転問題につきましての政府としての方針をまとめたわけでございまして、その時点におきまして、先生が御指摘ございましたとおり、各省庁において当面移転の検討が可能なものとして幾つかの機関の提示がございました。現在は、これらの機関を中心にさらにその充実を図るべく関係省庁と協議をできるよう政府部内での段取りを進めているところでございまして、この一月二十二日の移転方針を決めましたときに関係省庁から成る連絡会議というものを発足いたしたわけでございまして、各省庁とはおおむね夏ごろまでにこの移転機関についての詰めを行うということで大方のスケジュールについての御了解をいただいているところでございます。
  137. 北橋健治

    ○北橋委員 夏ごろまでに大体リストアップを終えて秋には第二弾が出てくると理解をするわけでありますが、この第一弾の閣議決定をしたときに、新岡報道でございますが、真意を確かめるわけにまいりませんが、通産大臣も、反対する大臣がおれば更迭してでも地方移転を実現しなくてはならないと非常に力説したという話も出ておりまして、通産大臣はこの問題に非常に熱心なわけであります。  そこで、長官にこの問題についても一言御所見を承りたいのですが、経済企画庁と外務省はこの機関を移転する対象は該当なしというふうにお答えをされておられます。私も、経企庁の外郭団体で国民生活センター、私の宿舎のすぐ近くにございますが、それも一つ念頭に浮かんだわけであります。ただ、私の知人がそこに勤務しておりまして、遠いところから二時間もかけて通ってきている。今便利なところにあると思っても、勤務されている方は大変御苦労されておられますし、また職業の内容も、悪徳商法のそういった問題であるとか、国民生活に密着する問題を取り上げておられまして、経済企画庁が該当なしと回答しているから経企庁はいかがなものかと言う気はありません。ありませんが、経済企画庁としても、経済対策閣僚会議の座長として、日本の経済政策をイニシアチブをとって決定されている重要な役職を持っておられますので、こういった問題について今後どのように取り組むお考えか、その決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  138. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先生の御指摘は大変に厳しゅうございますけれども、的を射た御意見だと私も考えておる次第でございます。  私も、そういう意味では経企庁の責任者といたしましても、でき得るものがあるならばとにもかくにも精査して一刻も早く出したらいいということで、まだ完全に該当なしという形でデフィニションを下したわけではございません。  しかし、さはさりながら、各省庁それぞれどうしても移転することによって大きなハンディが出たり、あるいはある意味においては国民生活にも大きな影響を受けたり、あるいはまた機能が全くストップしたりというようなことがあってはなりませんので、そういう点においては、私も決意としては持っておりますけれども、もう少し詰めさせていただかなければ答弁ができかねる問題かな、このように考えております。
  139. 北橋健治

    ○北橋委員 国土庁にこの問題で最後にもう一度お尋ねをしておきますが、基本的な方針は先ほどの御答弁理解できたわけですが、私どもが期待するような思い切った地方移転がことしの夏以降具体化されてくるかどうかについてはまだ何とも言えません。その意味で、国土庁としてもいろいろと難しい問題がある他の省庁と話し合いをしていくわけでありまして、御苦労をされると思いますが、第一弾よりももっと大きなものが出てくると理解してよろしいのでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  140. 中野和義

    ○中野説明員 お答えいたします。  現在この進め方につきまして関係省庁でいろいろと段取りを考えているところでございますが、各省庁には、一月二十二日にいろいろと御検討いただいたものに加えまして、その充実を図るべく今後検討をお願いするということで御了解を得ているところでございます。
  141. 北橋健治

    ○北橋委員 ぜひ、本来こういった地方移転の計画を策定するに当たりました政策意図が見事生きてきますように、思い切った大胆な案が夏以降提案されることを期待をしております。  また、先ほど私もちょっと言葉足らずでございますが、経企庁の外郭団体をぜひともひとつこれに加えよと言っているわけではありません。私はそういう意味で申し上げたわけではございませんので、その点どうぞ御理解をいただきたいと思います。  さてその次、税制改革についてお伺いをしたいと思います。  経済企画庁にはすばらしいコンピューターのソフトがございますし、またコンピューターを駆使していろいろなシミュレーションをされる立派な経済テクノクラートがたくさんいらっしゃいます。世界屈指のシミュレーション部隊がいらっしゃると聞いております。  そこで、昨年のことでございますが、売上税のときを振り返ってみまして残念だったことは、国会で全く審議されなかった。これは与党と野党いろいろな見方があるわけでありますが、国民の立場から見ますと、国会質疑が全くない。ですから、国会質疑を通じて、公式的な場において売上税というものが一体どういうものなのか国民には全くわからないまま廃案になってしまったわけであります。そういった意味で、野党の議員がこういうふうに言うのもなんですが、私は国民の立場から見ると極めて残念な結果に終わってしまったと思います。この次の国会で恐らく税制改正に関する法案が出てくるだろうと思いますけれども、今度また同じようなことになってしまうことはいかがなものかと自分は考えます。  そういった意味で、国民にわかるように、税制改正が自分たちの家庭にとって、また自分たちの国家にとってどういうものになっていくのかがわかるような具体的な数字が示されることがやはり望ましいと思うわけであります。もちろん前回売上税のときも大蔵省はその試算をしました。しかし、その試算を見ますと、二十代で就職した直後の方と年満した直後の方にとっては税負担が重くなる、しかしほとんどの階層の方には減税の恩典があるという、そういう結論であります。それが出た直後に、今度は民間の経済学者でつくっている政策構想フォーラムが反論するデータを出してきました。これによりますと、年収五百万円までの一般のサラリーマン家庭はすべて増税になる、政府のシミュレーションはうそだ、そういうたぐいのことであります。この政策構想フォーラムの学者たちのイデオロギーというのは、別に反政府、反体制を志向しているわけじゃありません。そういった意味で国民の多くの階層の人たちは戸惑いを感じたのは事実であります。  また、私ども民社党、別にコンピューターを持っているわけではありません。しかし、かといっていわゆる勘ピューターで鉛筆をなめたわけではありませんが、それでもやはり年収七百万円までは増税になったわけであります。一体あのときの増税と減税の抱き合わせがどういった効果を生んでいたのかわからないままに終わってしまいました。  それで、次期国会で税制改正が本格的に審議されていくに当たりまして、やはり政府としても、税制改正の効果が一般勤労者家庭、特にその家計に与える影響がどのようになってくるのかをぜひともシミュレーションを出していただければ、それが国民にとって非常に大きな理解の参考資料になるのではないかと思うわけであります。もちろん、税制改正が家計に与える影響となりますと、税金に関するいろんなデータを大蔵省主税局が持っておると思いますので、障害もあろうかと思いますが、大蔵省は何としてでもこの法案を通したい、その一心であります。そういった意味で、経済企画庁の経済テクノクラートがいわゆる中立的な立場でこういった家計のシミュレーションをしてみることは非常に大きな意味があると思うわけですが、経済企画庁として次期臨時国会に予想されております間接税と減税の抱き合わせの法案を出すときに、そういった参考資料をシミュレーションとしてお出しになる考えがあるかどうか、お伺いします。
  142. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まず、先生に大変御理解ある、しかもなおかつ高く評価を受けました。経企庁としては御礼を申し上げたいと思う次第でございます。  ただ、私個人からいきますると、昨年の売上税の問題は、私は中曽根総理にも直接じかに強く談判も申し上げましたが、唐突な出し方はやめなさいということを再三にわたって御忠告は申し上げたつもりでございます。しかし、さはさりながら、いずれにしても税制の改革の必要性というものはだんだんにわかってきつつあるわけでございまして、そういう点におきましては、経済企画庁といたしまして、今後予想されます税制改革が勤労者世帯などの国民生活一般に及ぼす影響などが小さくないことにまず考えをいたしまして、そして財政当局との連携のもとに、その及ぼす影響についても今後とも十分に注視してまいらなければならない、これが先生のおっしゃられる中立的立場からの税制改革への特に公正公平なる意見かな、このように考えておる次第でございます。
  143. 北橋健治

    ○北橋委員 ちょっと具体的にそういうシミュレーションをされるかどうかについて明快なお答えをいただけなかったように思いますが、もう一つ補足してお伺いします。  家計の調査について今お伺いしたわけなんですが、実は経済企画庁はこれまで幾つかの機会にいわゆる減税その他の経済政策の手段が日本経済にどういう影響を与えるかについては何回も試算をされてこられております。まずは公共投資が一番効果があって、二番目が投資減税、三番目が所得税減税、こういった政策順位までついたような明快なデータをお出しになってこられたわけでありまして、そういったものを含めてやはり経済企画庁としてシミュレーションをした結果をお出しになることが国民の間で合理的な理性的な間接税議論を進めるに当たって極めて重要なかぎを握っている、そう思うわけであります。  そういった意味で、大蔵省は当然またされるでありましょう。しかし、大蔵省のあのときの前提については、非常に大きな波紋といいますか、反対意見政府内外にあったと聞いておりまして、経済企画庁がそのシミュレーションを思い切ってやられるのが一番いいと思うわけですが、どうでしょうか。
  144. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まず税制改革について現在しかるべき機関が御検討いただいておるという段階でございまして、いよいよこれが俎上にのってくるという段階が出てくるわけでございましょうけれども、先ほどの先生のお言葉を十分に体しまして、シミュレーションというものを中立的公平的立場で考えていけ、こういう御意見を十分にそんたくいたしまして、国民生活への影響などについても関係省庁と十分協議しながらまいりたいと考えておる次第でございます。
  145. 北橋健治

    ○北橋委員 長官の御答弁でございますが、私が申し上げましたように、経済企画庁は経済対策閣僚会議の座長という重要な役職を担った官庁でございまして、しかもそこにある人材、過去のソフト等の技術力、抜群のものがあるわけでありまして、大蔵省は何が何でもこの法案を通したいの一心でございまして、与党と野党がまた激突をして売上税のようなことにならないようにするためにも、ぜひ経済企画庁として立派な参考資料を出していただきたい、そのことを強く要望しておきたいと思います。  さて、次に参りますが、「ふるさと創生」を竹下総理は言われております。私もこの間の予算委員会の反対討論では、まことに失礼ながら、今のような円高不況の地域を放置しておくとふるさと創生どころかふるさと喪失になりかねないということを申し上げました。しかし、総理の言われる理念というのはまことに理解できるわけでありますが、ただ、そのふるさと創生の理念を総理が掲げておられまして、それに基づいて政府もいろいろ作業をされておると思うのですが、実際それを肉づけするような具体的な指標があるんだろうかという気がいたします。例えば地方経済、あるブロックごと、あるいは県の経済、その地域経済の伸び率だとか、そのふるさと創生を具体化するような何かの目標というものを考えていくお考えはないでしょうか、お伺いします。
  146. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まずそのふるさと創生に対しまして具体的な指標とすべき指針をというようなお話か、こう考えておりますけれども、私どもの新経済計画の中におきましては、五月下旬の最終答申を目指しまして現在経済審議会で大変に熱心に検討いただいておる次第でございます。六十八回くらいな会合に相なろうかと思う次第でございます。  その基礎となる同審議会の企画・公共部会におきましては、我が国が当面解決を求められておりまする問題といたしまして、まず大幅な対外不均衡の是正と世界への貢献、また第二点ということになりましょうか、経済力と生活実感の乖離の是正と豊かさを実感できる国民生活の実現、第三点という形になりましょうか、東京圏への過剰な依存からの脱却と地域経済社会の均衡ある発展という、その三つを掲げておりまして、その同時解決の方法として内需主導型経済構造への転換、定着の実現を指摘しているわけでございます。このような問題意識はまことに豊かなる文化経済国家をつくり上げようとするふるさと創生というものの理念とも共通するものと考えておる次第でございまして、そのように御解釈願いたい、こう思います。
  147. 北橋健治

    ○北橋委員 理念、基本的な物の考え方については今の長官の御答弁でわかるわけですが、私が先ほど申し上げましたのは、それを具体化するような具体的な数字といいますか目標をこの際明示していくべきではないかということを申し上げておるわけです。  と申しますのは、例えば六十三年度の予算案の審議の過程においても、非常に注目すべきことがありました。それは労働大臣がわざわざ建設大臣のところに出向いていって、そして申し入れを行ったわけであります。ことしの三月十七日、衆議院の予算が成立した直後でございますが、労働省は当時緊急雇用安定地域の指定という作業をしておりまして、全国百三十ほどの鉄鋼あるいは造船その他の大変不況な地域を指定することによって、雇用を守るため、それに役立つような助成措置を継続するかどうかの作業をしておりまして、円高不況に見舞われているその地域実態に非常に関心を持って作業をしておったときであります。その労働大臣は、公共事業を配分する主管である建設大臣にわざわざ会って、ぜひともこういった不況地域に対して重点配分をしてくれ、具体的なそういった作業について申し入れを行っておるわけであります。  私どもは、数年来、経済企画庁もっと権限を強くしてほしいということで、設置法の一部改正を考えたりして、もっと強力な経済企画庁の指導を期待をしてまいりましただけに、今のふるさと創生の具体的な目標につきましても、いささか抽象的な嫌いがあるのではないかと思っておるところであります。  釈迦に説法でございますけれども、私も鉄鋼の城下町に住んでおります。また鉄の室蘭、釜石を初めとしまして、高炉がこれからなくなっていく地域におきましては、地域経済は大変な不況のあらしであります。もちろん鉄鋼や造船、いわゆる構造不況、円高不況に陥ったところでも、大手の企業は収益を回復しております。しかし、その分は、私の見方なのかもしれませんが、関連の膨大な中小零細企業が大変な四苦八苦の状況になっておりまして、到底黒字に変わるような状況じゃございません。むしろ日本の経済というのはまさに二重構造がどんどん深刻になっていく状況にありまして、重化学工業の町に住んでおりますだけに、その深刻な雰囲気というものは重々承知しているわけであります。  そこで私が経済官庁にお願いをしたいことは、鉄鋼だけではありません、造船とか異常なほどの円高で大変なピンチに襲われているこの地域に対して――大手の企業は収益を回復しているのは事実であります。そしてまた、東京で官庁の皆様方がおつき合いがあるのは大手の企業の本社の方々であります。しかしながら、日本経済を支えているのは大手の企業というよりはむしろそのもとのいわゆる関連協力企業の皆さん方でありまして、そこが大変なわけであります。ですから、ことしも公共事業については、去年のような前倒しをやらずに自然体でいこうとか大蔵省は決めてしまいまして、まことに残念でありますけれども、そういった鉄を初めとする企業城下町の厳しい実態にどうか御賢察を賜りまして、そういったところに重点配分をせよとか、あるいは場合によっては前倒しの計画をもう一遍やり直しするとか、そういったときにぜひリーダーシップをとっていただきたい。それがいわゆるふるさと創生の具体化だと思うわけです。ふるさと創生の理念は立派でありますが、それを具体化するために経済企画庁はイニシアチブをとってもらいたい。それは不況地域へのまずは重点配分、場合によっては公共投資の前倒しの一層の強化ということになってくるわけです。  経済企画庁に、これは十分質問通告してなかったのではございますけれどもお伺いしますが、今のところ自然体で公共事業を出しております。そしてまた、政府の方でも不況地域に対してはそれなりの配慮をしていただいていることについては一定の評価をいたしますが、まだまだ十分ではないように思えるわけであります。経済企画庁としてこの問題についてどのように取り組むお考えか、お伺いします。
  148. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先ほどお言葉にもございましたように、私も政府・与党首脳会議の一員でもございますし、同時にまた経済閣僚会議の座長もさしていただいております。そういう観点からいたしますると、先生の御指摘なさった特に不況地域に対する重点施策、こういうものにもつと力点を置け、また指導性を発揮しろ、この点については十分身にしみて感じておる次第でございます。  経済企画庁といたしましては、従来から公共事業の配分に当たりまして各地域経済の実情に十分配慮することが必要と認識はしております。昭和六十二年五月の緊急経済対策等におきましてもこの考え方を盛り込んだゆえにこういう形が生まれたということも、先生も既に御承知のとおりでございます。  本年度の公共事業に関しましては、労働省から建設省に対しましてただいま御指摘のような要請が行われたということも聞いておりました。私からも、予算成立後の四月八日の閣議におきましては、公共事業等の施行に当たりましては、経済構造調整の進展する過程で影響を受けている地域等各地域における経済情勢に十分配慮するよう関係大臣に対して要請を行ったところでございますし、今からも、またあす閣議もございますから、早速ながら私の口からも申し添えておきたい、こう考えております。
  149. 北橋健治

    ○北橋委員 よろしくお願い申し上げたいと思います。  鉄鋼だけじゃありません。円高不況で構造的に不況に陥っている地域はまことに深刻でありまして、どうか長官の御高配によりまして少しでも政府のそういった投資がそういった地域に重点的に配分されますよう、重ねて要望しておきたいと思います。  そしてまた、我々非公式に懇談しましても、最近景気がよくなってきたというのを政府のいろんな官庁の経済テクノクラートがよくおっしゃるわけです。しかし、大手はそうかもしれませんが、その反面、中小零細企業が大変な、場合によっては地獄のような合理化の苦しみにあえいでいる。特に高炉が全く消えてしまうようなところでは大変な不安が渦巻いているということもぜひ念頭に置いていただければ幸いであります。  残された時間あとわずかでございますが、運輸省に質問させていただきたいと思います。  海外の航空運賃の問題であります。  日本というのは賃金は今世界一だそうでありまして、その割には生活は二流、三流国のような感じがしないでもありません。もっと物価を思い切って下げるという政策、特に円高差益を思い切って還元をするという努力をしていけばもっと生活は豊かになってくるはずだと信じております。  その一つとして、いわゆる市民的な感覚でどうしても理解できない現象があります。それは、外国に行くときの航空運賃であります。この問題については、私どもの塚本委員長もことしの初め衆議院本会議質問させていただきましたし、また同僚委員も何度かこの問題を取り上げてきておるわけでありまして、運輸省の方もこの問題については世論というものを踏まえて大変御努力をされてきていることに対しては理解を持っておるものであります。  ただ、まず現状認識としまして、料金というのは割引のところもありますからどれをもって正しい数字というかわかりませんが、一つの数字としまして私ども聞いているのは、例えば東京からニューヨークに行くという場合に、片道ですが二十七万九千円もかかる。しかし、香港発で東京を経由してニューヨークに行く場合、これは現在その切符を使ってはいけないことになっているんだそうですが、その半額の十三万二千円で行けるわけであります。また、最近話題の観光客が多い香港ですけれども、東京から香港に行くのには十万三千円。ところが、香港から買えばその半額以下の三万九千円で帰ってこれるわけであります。  ところが、これはIATAと申しまして、国際的な協定で運賃というものは拘束を受けているようでありますので、いわゆる日本国民の感覚でもってすぐにどうなるものとは思いません。思いませんけれども、IATAにおける日本の発言力もまた相当あると考えておりまして、こういった円高に伴い発生している日本発の運賃と外国発の運賃との格差というのは、一定の目標を定めて何としてでも是正をしていく努力が今後ますます重要になってくると思います。  そこで、時間も限られておりますので重ねてお伺いしますが、運輸省はこれまでたびたびこの運賃の格差について是正の努力をされてきておられますが、当面この努力目標をさらに前倒ししていく考えはないかどうか。それから、IATAの会合においてこの運賃問題を日本政府としても本腰を入れて格差を是正していくことを主張されていく決意があるのかどうか、お伺いします。
  150. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 先生指摘のとおり、国際航空運賃につきまして、円高影響を受けまして方向別格差が非常にひどくなっておるという実態は事実でございます。私ども非常に心を痛めておりまして、利用者の公平感という観点から非常に問題であるということで、日本航空を初めとする企業を指導いたしまして従来から縮小に努めてきたところでございますが、この三月の末にも、東南アジア線とか中国線、韓国線、台湾線、オセアニア線、太平洋線、欧州線とほとんどの路線にわたりまして日本発の運賃を値下げするあるいは相手国発の運賃を値上げするという是正措置を速やかに講ずるということで、中国線でありますとかオーストラリア線、ニュージーランド線、香港線等につきましてはもう既に一部実施に移してきたところでございます。  この問題は非常に難しゅうございまして、先生御承知のとおりIATAという場で航空企業がまず相談をいたしまして、発着の両国政府の認可を、ダブルアプルーバルと称しておりますけれども、認可を得ることで発効するという制度に国際的になっております。例えば、端的に申しますと、幾ら日本発の運賃の値下げをしたいということでございましても、相手国の企業あるいは相手国の政府、この辺が同意をしていただけないということになりますとなかなか実行に移せないという問題もございます。  今回の措置で十分だと思っておりません。今後ともなお一層この方向別格差是正のために私どもも全力を挙げていきたい、そのように航空企業を指導してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  151. 北橋健治

    ○北橋委員 私も航空問題については素人でございまして、いろいろと教えていただきたいこともあるのですが、例えば香港から東京を経由してニューヨークに行くという場合、東京からニューヨークに行くよりも半額で行けるわけです。当然利用者としてはそれに乗りたいと思うのが自然だと思いますが、今はIATAに基づく規則によって日本ではこれはできないことになっているようであります。しかし、日本政府の方が仮にこういったものも認めてはどうか。香港発で東京を経由してニューヨークに行く場合、東京からでもそれは乗れるというように発言して、それが実現すれば日本人は半額でアメリカと往復できるようになるわけですが、これを発言して、困ると言ってくるのはどこなんでしょうか、教えてください。
  152. 圓藤壽穂

    圓藤説明員 これは非常に制度の本質に絡む問題だと思いますけれども一つの物の考え方でございますが、今、国際航空運賃につきましては、発地国通貨建て主義、つまり、日本からアメリカに行く運賃でございますと日本の円で表示する、アメリカからの場合はドルで表示するという発地国通貨建て主義というのがとられておる。そういたしませんと、例えばアメリカの米ドルなら米ドルで表示するということになりますと、変動相場制でありますので毎日運賃が変わる。きょうは三十万円だったけれどもあしたは二十八万円になる、その次の日は三十二万円になる、こういうことが日々起こるわけであります。さらに、これは航空券を購入する時点と実際乗られる時点、例えば一カ月前に購入されるとすると、そのときの為替レートでいくのか、乗られたときの為替レートでいくとすればまた精算しなければいかぬ、こういう問題が生ずる。そこで、一つの知恵として、発地国のコスト、各国の物価水準というのはそれぞれ違います、各国の物価水準を反映した格好で、発地国の通貨建てで運賃を設定するという発地国通貨建て主義というのが、それにかわる制度はないんだということに今のところなっておるわけでございます。  そういたしますと、例えば日本発の運賃が三十万円なら三十万円ということに仮に決まっておるといたしますと、香港発が確かに安い運賃であると、実際に香港から乗るのじゃなくても日本からの運賃は十三万円でいいのじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、そういたしますと発地国通貨建て主義ということ自体が無意味になってしまうわけでございます。そういうふうに各国で取り決めたこと自体がナンセンスなことになってしまうわけでございます。そういうことでございますので、IATA協定上も、運賃は航空券に記載された出発地点の国から現実に国際線旅客が開始される場合のみ適用されるということを決められておりまして、先生指摘のいわゆる輸入航空券の使用ということは禁止されているわけでございます。ですから、だれが困るということではございませんで、制度を維持するためにやむを得ない措置である、このように私ども考えておるわけでございます。  しかしながら、そういう問題が起こること自体が、まあ言ってみますと今方向別格差というものがあることからそういうことが起こるわけでございますので、我々といたしましてはできるだけそういう方向別格差が縮小するように今後も最大限の努力を払っていきたい、かように思っておる次第でございます。
  153. 北橋健治

    ○北橋委員 時間がもうほとんどないわけでありますが、このIATAという国際的な取り決めに基づく制約がかなり航空運賃行政には反映されているということで、これはなかなか一般市民的な感覚でもって物を考えられない難しい問題であることは承知しています。ただし、例えばアメリカ政府一つ出方を推察しましても、アメリカの航空会社はたくさんあるわけでありまして、それで日本に飛ぶ場合に、日本のお客さんもアメリカの飛行機に乗れるようになるわけでありますから、アメリカ政府としては別に悪いと思うはずがないと私は思います。ただ、この問題については、時間が来ましたので、次回この問題に集中して航空運賃問題で取り上げたいと思いますけれども最後経済企画庁長官にお尋ねをして終わりたいと思います。  運輸省は大変努力をされておられることは私ども一定の評価をしておりますけれども、運賃の格差というものはまだまだ相当にあるわけでありまして、そもそもは円高に伴い発生した問題であります。これについては長官もぜひイニシアチブをとってこの問題の改善に向けて努力をしていただきたいと思いますが、その御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  154. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私も、先生先ほど御指摘いただきましたIATAの問題を多少勉強もさせていただきました。IATAは、中には加盟しておるところもあるけれども加盟してないところもあるわけでございまして、そこにいろいろ問題があるわけでございますが、いずれにしても、私も摩訶不思議な制度だなと思う場合が間々あるわけでございます。そういう意味で、私どもも国際航空運賃の方向別格差という問題につきましては従来から順次その縮小には努めてきておるわけでございますが、なお改善の余地が残っているということは十分に承知をしております。したがいまして、今後とも利用者の公平感を確保するために、航空企業の収支等を勘案しながら、これまた運輸省と緊密な連絡を十分とり合いながら、可能な限り方向別格差が縮小されるように、先生の御指摘の意に沿うようにこれまた努力をしていきたい、また、していくつもりである、こうお答えしたいと思います。
  155. 北橋健治

    ○北橋委員 終わります。ありがとうございました。
  156. 村山喜一

    村山委員長 次に、岩佐恵美君。
  157. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、食品添加物の規制問題について伺いたいと思いますけれども、この規制は国民の食生活の安全確保のためにされるべきものであるというふうに私たちは理解をしています。そして、国によりて、食習慣とか気候、風土、国民の体質、安全に対する考え方、これが異なることによって対応が変わってくるのは当然だと思います。輸入食品に対してもその国の食品添加物規制を適用するということは、その国の経済主権はもとより、国民主権からいっても、これもまた当然のことであります。ところが、今アメリカなどから、我が国の食品添加物規制を非関税障壁だとして圧力をかけてきているわけであります。  そこでお伺いをしたいんですが、一体その食品添加物規制は、輸入規制をするために行っているものなんでしょうか、それとも国民の健康を守る観点からなされているものなのか、その点の御見解を伺いたいと思います。
  158. 海野恒男

    ○海野政府委員 人間の生命の安全とかあるいは健康の維持ということは、あらゆる政策目標に優先されるべき問題であろうかと思います。したがいまして、この食品添加物に関します規制というものも、そういう国民生活の安全性あるいは国民の生命の安全という観点から規制されるべきものであることは言うまでもないことであろうかと思います。
  159. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこで、非関税障壁というものがどういうものなのかということも伺いたいと思います。
  160. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えいたします。  非関税障壁につきましてはさまざまな定義があるわけでありますが、その一つといたしまして、関税以外の輸入制限措置を総称するもの、このような理解があるわけであります。  典型的に申しますと御高承のような輸入数量の制限があるわけでありますが、これ以外につきましても、基準・認証制度などのように、輸入に直接、間接の抑制的な効果を持つ措置が含まれるということであるわけであります。しかしながら、非関税障壁という考え方、カテゴリーの外縁と申しますか、範囲がどこまで及ぶかということにつきましては、一義的に示すことは困難でございますし、また、国際的にも明確な定義がなされているというふうには承知をいたしておりません。
  161. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこで、この委員会で私も何回か取り上げてまいったんですが、加工食品の栄養成分表示についてお伺いをしたいと思うのです。  厚生省は、一九七七年以来、法制化に関する調査研究を行いました。一九八四年以降、加工食品栄養成分表示制度調査検討費として予算措置を行って、栄養情報サービスシステム検討会を設置をして法制化の具体的内容を検討していたわけであります。ところが、一九八五年七月の市場アクセス改善のためのアクションプログラム、これで、国の法令等に基づく新たな基準・認証制度の創設は原則として行わないとしたため、法制化を断念をする、そして、業界の自主表示にゆだねる、そういう状況になってしまったわけであります。  そもそも、栄養成分表示の制度化というのは、塩分や糖分のとり過ぎによる成人病、高血圧や脳卒中などの原因を減らすために必要という国民の強い要求があってこれに踏み切ることになったものであります。そこで、ガットの東京ラウンドのスタンダード協定、これをよくよく見てみますと、こういう規格を決める場合に、国際規格が存在する場合にはそれをもとにして強制規格または任意規格をつくりなさい、こういうようなことが書かれているわけでありますけれども、「ただし、特に、国家の安全保障上の必要、詐欺的な行為の防止、人の健康又は安全の保護、動物又は植物の生命、健康又は生育の保護、環境の保全、気候その他の地理的な基本的要因、基本的な技術上の問題等の理由に」よってそうした国際規格がその国にとって難しいというふうに判断された場合にはその限りではないというようなことが、この東京ラウンドのスタンダード協定では明記をされているわけですね。第二条の二のところでこういうことが書かれているわけであります。  工業技術院の委託調査で国際認証相互容認制度の電気機器の委員長を務めた唐津一さんという方ですが、この方が、「空洞化するアメリカ産業への直言」という著書の中で、ちょっと長いのですが読んでみたいと思うのです。途中ですが、   ところが、調査が進むにつれて、ことはそんなに簡単なものではないということがわかってきた。やはり各国の風土、ユーザーの慣習、安全に対する考え方など、それぞれに独自のものがあり、大げさにいうなら、文化の差の問題にまで発展するほど違いがある。   日本の公営水道の水栓にはすべて青銅を使うことが指定されていて、どの都市の水道局でもそれしか使用を認めていない。ところが欧州では黄銅が普通である。そのほうが価格も安い。これが数年前問題になりかけたので、工業技術院がテストを行なった。すると日本の水では黄銅だと腐蝕することがわかった。日本の水は軟水だが、これに対して欧州の水は硬水であるためらしい。そのため日本では値段の高い青銅が指定されていたのである。船のスクリューはすべて青銅を使うが、これも黄銅では腐蝕に耐えられないからである。 こういうようなことで、いわゆる水の違いからくる物質の選択の違いというのがわかってきたわけでありますけれども、こういうことがあるわけです。ですから、東京ラウンドのスタンダード協定でも、その国の自主性が尊重されるべきである、こういうふうに明記をされているのだろうというふうに思います。  この栄養成分表示について言えば、いろいろ調べていきますと、我が国の基準・認証制度を非関税障壁だと言っていたアメリカの方がむしろ表示制度が進んでいるという実態があるのですね。例えば、これは私がちょっと調べたのですが、食塩、ナトリウムについては、アメリカでは加工食品の四割にもう既に表示がされているわけですね。日本よりはるかに高いわけです。それから乾燥野菜、ベビーフード、べーキングミックス、こういうものについてはナトリウムの表示は一〇〇%なわけです。ですから、調査をきちっとしていない、こういう点もあるんじゃないかというふうにちょっと思えるわけです。例えばオランダでは、こういう栄養成分表示については全体の三〇%が行われているというようなことであります。  こういうふうに調べていくと、大体何で栄養成分表示がこういうふうに外圧でもって、アメリカの圧力で制度化をやめなければならなくなったのかということがよくわからなくなってくる。厚生省に伺っても、そこのところがどうもよくわからない。外務省といろいろ話をしているんだけれども、どうもらちが明かないといいますか、もう一つはっきりしないんだというようなわけです。  経企庁は調整機関でございます。そういう点で、ぜひこの栄養成分表示について積極的に調整をしていただきたい、このことをお願いしたいと思います。  同時に、ここにサンプルをお持ちいたしましたけれども、この法制化を断念することによって業界の自主規制に任せることになったのですが、厚生省が行います表示と農水省が行います表示、これがばらばらなのです。そこで、このばらばら表示では消費者が困るわけです。これは調整してくださいということで前大臣に申し上げましたところ、そういう線で調整を図っていきたい、こういう答弁をいただいているわけでございますけれども、大臣がかわられましたので、きょうはまたサンプルを委員長の御了承を得ましてお持ちいたしました。  例えば、これは同じマーガリンであります。こちらが農水省のものであります。こちらが厚生省のなのです。例えば、エネルギー、脂質たんぱく質、食塩、これは同じなのですけれども、炭水化物と糖質、この名称が違うわけです。ちょっと見ていただきたいと思います。幾つかの商品をお持ちしましたけれども、そういうふうに糖質と炭水化物が違うということで、消費者は、これについては、なぜ同じものなのにこういうふうに表示が違うのか、まさにこれは厚生省と農水省の縄張り争いじゃないかということで、消費者にとっては非常に迷惑な話だというのが一つあるわけであります。  もう一つは、業界にとって、例えば飲料水の業界等は非常に糖分が多いのですね。大体栄養成分表示をやる必要があるのではないかという発端が、食塩もそうですけれども、缶ジュースや何かの糖分がすごく多いということから端を発しているのですが、そういう業界は余りやりたくないという気持ちが強いというふうに伺っています。そうなりますと、結局厚生省と農水省が縄張り争いをしている間に、私の方は農水省につく、私の方は厚生省だということで、あるいは私は両方で縄張り争いをしているのだったら傍観だ、調整がついてからやろうかということで、結局その作業がおくれてしまっているというような状況が発生をしているわけであります。  例えば一九八六年十一月から八八年一月の間に厚生省の自主表示というのは六百八十九品目しか進んでいない。業界が余り積極的にやろうとしない。そういう状況になっていて、それまでにずっと作業を行ってきた品目数よりもこの間の品目数の方が少ない、そういう状況になっているわけですね。今加工食品というのは二万から三万流通しておりますし、一般家庭の大体六割がこういう加工食品だというふうに言われています。  やはり、私は先ほど申し上げましたように、アメリカの方が進んでいる、ヨーロッパの方が進んでいる、そういう実態もあるのに、そこのところをちゃんと調査もしないで、何か基準・認証制度、アクションプログラムが決まったら、もう一律栄養表示もだめというふうになったり、それから自主表示になると厚生省と農水省が縄張り争いをして消費者のための行政が進まないというようなことは、私は非常に腑に落ちないわけですね。  きょう「国民生活」の最新号が配られました。それで大臣の消費者保護基本法二十年の月間に当たっての巻頭言を読ませていただいて、まさに言っておられるとおりだと思うのですね。「消費者が自主的・合理的な判断を基に社会の変化に主体的・積極的に適応できる能力を身に付けることが、何よりも重要なのです。」これは教育のことを言っておるのだと思いますが、表示も消費者教育の一環だというふうに私は思っています。そのことを進めるために、「政府、事業者等は、消費者に対して積極的な支援を行っていくことが必要です。」というふうに言われておられるわけで、まさにこの基本姿勢というのは大事なのじゃないかというふうに思いますけれども、大臣もかわられましたので、改めてこの栄養成分表示につきまして大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  162. 中尾栄一

    中尾国務大臣 何といいますか、十分にお話を承りまして、私の知らないことを大変に教えていただいた気持ちでございます。  私の経済企画庁といたしましては、従来から消費者等に無用な混乱が起こることのないようということにおいて調整に向けて努力をしてきたところでございますが、今後とも消費者保護の立場から特に関係省庁連絡をとりながら考えていきたいと思います。  特に今の問題点につきましては、あす閣議もございますから、早速、農水大臣、厚生大臣には私の口からストレートに申し上げておきたい、こう考えております。
  163. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 実力派大臣のそういう御答弁をいただいて大変よかったと思うのです。とにかく厚生省と農水省の縄張り争いということになると、総理大臣、内閣のところで調整する以外にないというふうに思うのですけれども、なかなかそういう機会がなくて、経企庁長官がそのことを本当に消費者の立場からやっていただけたらそれは進んでいくのじゃないかというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次に、食品添加物の問題について伺います。  個別名の全面表示、これについては一九八一年六月四日、この委員会で皆さんの御協力もいただいて、当時大石厚生政務次官に当委員会に御出席をいただきまして、そして全面表示を実施いたします、そういう約束をいただきましてからもう七年もたっているわけです。あのとき、明くる日の新聞には一面トップで出るというような大ニュースになったわけでありますけれども、それからもう七年も経過をするということで、本当に長い年月がかかっています。それでも最近では、六十二年度にも実施に踏み切りたい、そういうふうなことを伺っていたわけでありますけれども、またまたアメリカからクレームがつきましたということで実施が先延ばしになるというような報道がされております。この点について、厚生省としてどのような作業を進めてこられたのか、経過をまず説明していただきたいと思います。
  164. 内山壽紀

    ○内山説明員 御説明いたします。  食品添加物の表示につきましては、最終報告という形で、昨年の九月二十四日に、食品添加物表示検討会、これは専門家の検討会でございますけれども、より報告が取りまとめられました。これに基づきまして、厚生省におきましては、同年十月に在京大使館に対しまして説明会を開催し、さらに十一月にはガット・スタンダードコードに基づく通報を諸外国に対して行いました。この通報に対しまして米国及び韓国から意見が出されてまいりました。  米国からの意見の主な内容としましては、食品添加物の表示を充実するという基本方針については我々としては大変納得できる。ただし、合成添加物とそれ以外の添加物、いわゆる天然添加物について、差別して表示することについては納得できないところである。したがって、天然添加物につきましても、今回実施しようとしておりました三百四十七品目と同様な方法で最終的に同時に表示の実施を行うべきであるという御意見でございました。また、ガット・スタンダードコードとは別に、EC、それからオーストラリアからも、天然添加物について米国と同様の意見が提出されてきております。  こうした状況から、厚生省といたしましては米国などと天然添加物の表示について協議を進めておりまして、我が国においても、欧米諸国における表示状況にかんがみまして、天然添加物と合成添加物の表示について差異を設けないという考え方を示しまして、四月末にほぼ決着を見たところでございます。したがいまして、今後、食品添加物表示の実施のための食品衛生調査会等の審議を経まして最終的な告示を進めたいというふうに考えておるわけでございます。
  165. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今回のアメリカの言う非関税障壁、この理由は、天然添加物の表示義務がないから今度はだめなんだよということのようでございまして、その点、今まではあるからだめだということだったのだけれども、今度はないからだめだ、本当にアメリカの要求というのはいろいろと変わるし、大変なものだと思います。  合成添加物についてはことし夏には告示をするという話も伺っているわけでありますけれども、この点どういうことになっているのか。いつ告示をされるのか。それから、告示をされる際にちゃんと合成添加物の実施に向けて担保をするための何らかの措置をとられるのかどうか、その辺について具体的にお伺いしたいと思います。
  166. 内山壽紀

    ○内山説明員 米国との協議が既に終了いたしましたから、今後は、天然添加物の表示を含めまして、食品添加物表示検討会や食品衛生調査会の意見を聞いた上で食品添加物の表示を進めていきたいと考えているわけでございます。  まず、その段取りといたしましては、三百四十七品目の食品添加物については表示規則の改正を速やかに行いたいと考えているわけでございます。これは、今先生が言われたように、でき得れば夏ごろまでには実施したいということでございます。また、天然添加物につきましては、本年度に製造使用実態調査を行いまして、我が国で使用されている天然添加物の実態を把握して、具体的な表示方法等について検討に入りたいということでございます。  なお、三百四十七品目の表示規則改正につきましては、これは食品包装資材の改版、それから加工食品の市場流通の期間、あるいはさらに今回新たに天然添加物表示の実施ということへの準備等にある程度の時日を要しますから、適切な経過措置期間を設けた上で実施していきたいと考えているところでございます。
  167. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうしますと、合成添加物については、告示をして、そしてある一定の猶予期間といいますか、いわゆる包装等の準備だとか、そういう合理的な猶予期間を見ながら、即時に行うということだと理解をしていいわけですね。
  168. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生がおっしゃられたとおりでございまして、私どもとしてはこの経過措置期間というのは少なくとも二年間程度は要るのではないかという考えで進めていきたいと考えているところでございます。
  169. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 合成添加物について二年間必要だということですか、それとも天然添加物の作業をいろいろするために、その作業の終了の期間を見て二年ということにしているのでしょうか。そこのところはちょっとよくはっきりしないのですが、合成添加物についてはもう準備ができているわけですね。告示をすれば、それはもうできるところからどんどんやっていくということになるというふうに理解をするわけですけれども、天然添加物については当然規格だとかいろいろ表示の方法だとかいうものについての調査や何かの準備期間が要るでしょうから二年というのはわかるのですが、合成添加物については夏に告示をした後できるものについてはやっていくということになるのじゃないですか。  それから、天然添加物につきましても、現在でも表示をしているものがあるわけですね。ですから、これからでも、何も二年たたなくても、それまでに準備ができたものについては漸次表示をさせていくということもできると思うわけですけれども、その辺のことはどうなんでしょう。
  170. 内山壽紀

    ○内山説明員 今の点につきましては、いわゆる経過措置期間の間は従来の表示であっても違法品として扱わないということでございますから、新たな表示を書かれますれば当然適法なものという扱いにするつもりでございます。  それから、後段の質問点について、ちょっと申しわけございませんけれども……。
  171. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 現在でも天然添加物を表示しているものがあるでしょう。ですから、何も二年待たなくてもやれるものについてはどんどんやっていってもらうというような業界の指導が必要なわけですね。合成添加物についても同じだと思うのです。何も二年先のものを表示したといって合法でありますということじゃなくて、早目にやった方がいいわけですから、早目にやらせるという担保は当然されるのでしょうねということを先ほどから伺っているわけでございます。
  172. 内山壽紀

    ○内山説明員 大変申しわけございません。  私どもとしましては、天然添加物についても、先ほど申し上げました調査をなるべく早い機会に実施して、具体的なものを特定しまして、そのリストを公表いたしまして、それに基づいて記載していただくということでございまして、この表示をなるべく早く書いていただくということについての基本的な方向は、先生の御指摘のとおりだと考えております。
  173. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いずれにしても、この食品添加物問題については、国民が非常に望んでいたことでありますし、積極的に取り組んでいただきたい、このことをさらに強調しておきたいと思います。  課長、もう一つ。いわゆる告示を出すときに行政指導を何か通達みたいなものできちっとやられるわけですね。早目に、早目というか、二年後じゃなくて、現在の合成添加物についてもやれるところからやっていくわけでしょう。そういう通達みたいなものは出すわけですね。
  174. 内山壽紀

    ○内山説明員 告示改正の折には私ども当然通達、通知というものは考えております。そのときに、私どもとしましては、天然添加物についても最終的には同時に実施されるということで、天然添加物の表示の基本的方策というようなものにつきましても盛り込んだ形での通知を出したいと考えているところでございます。
  175. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、エアゾールの製品について伺いたいと思います。  兵庫県立生活科学研究所では、エアゾール製品の燃焼区分表示について、市販のエアゾール製品五十二銘柄について試買テストを行っております。その結果、爆発性については、表示と同一であったものが二十五銘柄、表示よりも一ないし三ランク安全側、つまり表示が微燃で試験では不燃というようなものでありますけれども、そういうものが二十七銘柄となっております。引火性については、表示と同一であったものが三十八銘柄、表示よりも一ランク安全側であったものが九銘柄、さっきの逆ですけれども危険側、表示が不燃で試験では微燃というものが五銘柄となっています。  エアゾール製品は高圧ガス取締法の適用除外をされているわけでありますけれども、高圧ガス取締法施行令第三条三項六号の規定に基づいて安全上燃焼区分の表示が義務づけられているわけです。こういうテスト結果、表示違反という疑いのあるものが十一銘柄と指摘をされているわけで、こうした適正表示について徹底をしていくべきだと思いますけれども、通産省、いかがでしょうか。
  176. 工藤尚武

    ○工藤説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、エアゾール製品の安全性を確保するために、高圧ガス取締法におきまして、燃焼性の区分によりまして使用方法を表示することを義務づけておるわけでございます。これによって消費者が使用する際の安全性の確保を図っているわけでございます。したがいまして、表示事項が適切になされるということは先生指摘のとおり非常に重要なことだと認識しております。  私どもといたしましては、これを確保するための一つ制度といたしまして、毎年一定数の製品を試買して通産検査所においてその遵守状況を確認するということをしております。そして、もし不適切な表示が行われている場合、最近はそういう例は私ども調査では比較的少なくはなっておりますけれどもそういう場合もやはり出ておりますので、そういう場合には関係の事業者を呼びまして指導を行いまして、改善の措置を具体的にとらせるということをやっております。しかしながら、まだまだ十分ということではないと思いますので、御指摘のように、今後とも表示事項の遵守が確保されるように一層努力していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  177. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ヘアスプレーや殺虫剤などエアゾール製品というのは六十二年度で約四億四千万本が製造されている。だから相当な数になるわけですね。一人で四本以上ということですから、四人家族だと二十本ばかりあるということになるんでしょうか。こういう大変な普及率であります。  四月の十八日に、中野区の路上のごみ収集所で、東京都中野清掃事務所の作業員が燃えないごみを収集中に、黒いビニールのごみ袋を清掃車に積み込んだところ、中のスプレー缶が破裂をして燃え出した、そういう事故が発生をしています。幸いけが人はなく大事には至らなかったのですけれども、このような事故、スプレー缶や簡易ボンベでの事故というのは、最近どういうふうになっているんでしょうか、消防庁に伺いたいと思います。
  178. 次郎丸誠男

    ○次郎丸説明員 私ども全国的な統計をとっておりませんので数字はわかりませんが、東京消防庁の管内での東京消防庁からの報告によりますと、昭和六十二年中エアゾール製品に起因をしまして火災あるいは救急事故として発生した事故の件数は十八件となっております。このうち、火災は十三件、負傷者が発生したものは三件ほどありますが、それから救急事故が五件でございます。なお、死者または負傷者の発生した状況につきましては、死者一名、負傷者八名、合計九名事故が発生しているということでございます。  この中で特に死者が発生をしました事故について見ますと、たき火の中に紛れ込んでいたスプレーが爆発をしまして、近くにいました主婦の方が衣服に着火し全身やけどを負って死亡したというような報告を受けております。  その他、事故の発生原因としましては、今先生がおっしゃいましたような清掃車内でスプレー缶が爆発したものが七件、次いでたき火等のごみ焼却中に爆発したものが四件、それからガスコンロ等の付近に置いてあったスプレー缶が輻射熱によって爆発したというものが三件というような報告を受けております。
  179. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 国民生活センターでもこのスプレー缶についての苦情とか相談を受けていると思いますけれども、その内容について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  180. 海野恒男

    ○海野政府委員 生活センターの方に苦情あるいは相談で参っておりますのは、件数としては比較的少なくて、六十年九件、それから六十一年六件、それから六十二年七件の計二十二件となっております。具体的には、やはり突然、ごみ処理で、火のそば、火にくべたところが爆発したとか、あるいは栓がとれたというときに噴き出したというふうなことがありまして、これは消費者の責任かあるいは製造業者の安全性の確保の欠如なのかというような相談とか、そういったのが多いようでございます。
  181. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 要するに、この国民生活センターへの件数が少ないというのは、直接業者の方へ物は行ってしまうというようなこともあるから少ないんだろうと思いますけれども、それにしてもかなりそういう意味でいえばやはり件数があるのじゃないかというふうに思いますし、また内容も、いざ、あわやというような、そういうような内容だと思うのですね。これも、使用者の方としては、いろいろな事故が起こった場合に、自分が使用方法が悪かったから、だからそういうことが起こったんじゃないかということで、泣き寝入りをしてしまうとか我慢をしてしまうというような、そういうこともあるわけですから、軽々には考えられないんじゃないかというふうに思います。  先ほど消防庁あるいは今国民生活センターのお話を伺っている中で、やはり使用者がはっきりとこれについてはどういうふうに対処しなければいけないのか、どういう使用方法で対応しなければいけないのか、あるいは処理をどうしなければいけないのかということについてきちんと表示をするということがまず大事であると思うのですね。使用後の廃棄方法について、先ほどの兵庫県の生活科学研究所のテストでも、五十二銘柄中二十一銘柄、つまり全体の四〇%しか表示をしていなかったということでございます。そういう点で、こうした表示についてきちんと適正にしていく、業界を指導していくべきだというふうに思いますが、通産省、いががでしょうか。
  182. 工藤尚武

    ○工藤説明員 エアゾールの事故につきましては、使用方法についての消費者の認識の向上に伴いまして全体としては事故率は減少してきているというふうに認識しておりますけれども、御指摘になりましたように廃棄された後の事故という問題が今一番大きな開店として残っているんではないかというふうに承知しております。  現在、通産省といたしまして、この高圧ガス取締法に基づく燃焼性区分等の基準が、これは昭和四十一年に現在のものができ上がっておりますけれども、その後二十年以上たちまして、その間いろいろな環境変化が起こっておりまして、これが必ずしも最善の最も合理的なものかどうか言えない状況になってきておりますので、安全性の確保を大前提として、その高圧ガスの保安の確保に関する専門機関であります高圧ガス保安協会に今基準の全般的な検討を依頼しているところでございます。  今先生指摘の廃棄方法の問題につきましても、その大きな課題といたしまして、特に現在表示の内容に廃棄方法が詳しいことが入っておりませんので、それを含めるということも含めましてできるだけの改善をしていきたいというふうに考えておるところでございます。また、これが報告が出ましたら、それに基づいて業界を指導していきたいと考えておるところでございます。
  183. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その作業はいつごろをめどに考えていますか。
  184. 工藤尚武

    ○工藤説明員 一応現在年内ぐらいということで考えておりますけれども、その基準、非常に技術的なものでございまして、いろいろ安全の試験をしなければいけないとかいうことがございますので、今専門の学者の先生なんかにもいろいろ意見を聞いておりまして、どんな試験があるかということによって期間が違ってまいりますので、必ずしも今はっきりいつまでということを申し上げることができない状況でございます。
  185. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 厚生省は、こういうエアゾール缶の爆発等に伴う事故、やはり把握をしておられると思いますけれども、廃棄に当たりまして一律に穴をあける、そういう指導も自治体によってはやっているようなんですね。これでは危険だということで穴をあけないでくださいというようなそういう指導もあるようで、まちまちなわけです。厚生省としてこうしたエアゾール缶についてどういう廃棄の方法をしたらいいのかという検討を行っているというように聞いていますけれども、どういう機関で検討し、どういうスケジュールで行おうとしているのか、簡単に答えてください。
  186. 藤原正弘

    ○藤原説明員 この使い古しましたスプレー缶をごみの中に捨てますと、パッカー車に積み込むときに爆発しましたり、それからごみの処理場で爆発したりということが起こるわけでございまして、事実、そういう事故も起こっております。これは先生の御指摘のとおりでございますが、こういうふうな事故を防ぐために、現在各市町村では回覧ビラとか市政便りというのを出しまして、その中で住民に対する協力要請をいろいろいたしております。それは、スプレー缶のガスを全部出し切るように。出し切るようにというのは、すべてガスを出してしまうということも場合によってはありますし、また、くぎで穴をあけるというようなことをやっておるところもございますが、それは各市町村によって指導が違っております。  私ども厚生省といたしましては、現在、全国都市清掃会議という団体を所管しておりますが、この全国都市清掃会議全国の市町村の実態調査をやらせておるというところでございます。これは、スプレー缶を含めまして、廃棄物処理の上で問題の生ずる可能性のあるものは幾つかございますが、どういうところでどういう問題が起こっておるかということを調べております。その調査結果をもとにしまして、事故防止をするためにはどういうことをやったらいいかということを考えて検討してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  187. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間が来ましたので、このエアゾールの問題缶については、ちょっとここにサンプルを持ってきましたけれども、これはレインガード、それからこれはエアーサロンパス、これは缶であります。それからこれはトリートメント、これも缶なんですね。こういうようなガスが入っているわけです。これは、出し切っても、くぎなんかで穴をあければ火花が散って危ないわけですね。プシューと出てくるわけですね。中が殺虫剤の場合、目に入ったりとか、本当に怖いわけですね。そういう処理の仕方というのは非常に難しいことがあります。消費者にとっては出し切って出しても、清掃車の中で燃えるということだってあり得るわけですね。いろいろなガスがまざり合えばまた清掃車の中でいろいろな問題も起こるということで、これは重大問題だというふうに思います。  今フロンガスが問題になっていて、私、環境委員会でもやったのですが、何もこういうトリートメントなんかはこんなものを使わなくても、ポンプ式でこういうふうにやれば全然何の問題もないのですね。昔はこんなものだったのですか。そういうポンプ式のをやればいいわけですから、製造段階できちんと考えていくということが大事だと思います。  この間、環境委員会の連合審査では、田村通産大臣は、それはよくわかる、やはりヨーロッパなんかはそういうことをもうやっているんだからということで、そういう面も含めて、このエアゾール缶については、いろいろ表示の検討が今行われていますけれども、考えていくという回答があったわけです。  消費者の立場からも、国民生活の立場からも、この点については、まず総量を減らしていく、そういう点を考えていただきたいのと、それから、じゃ廃棄については厚生省だ、あるいは事業者の指導ということだと通産省だ、これまた縦割りなんですね。そして、お互いに何をどういうふうに作業をしているのかを知らないわけですね、よく双方を聞いてみると。これもまたおかしな話なんで、双方何か検討委員会を設けてやっているんだけれども、連絡がないとこれもまた困りますので、それをコネクトしていくのはやはり経企庁ではないかというように思うので、この点、ぜひ総合的に経済企画庁に検討をお願いしたいということを申し上げたいと思います。
  188. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私も先ほど来ずっと勉強させていただきまして驚くことの方が多いわけでございまして、消防庁やまた国民生活局の方からの報告を聞きましても、もう既に何十回かにわたって事件が起こり、何人かにわたって死亡者まで出ておるというようなことも承りますると、これはただごとではないなという感じがいたします。早速関係官庁と連絡をとり合います。そしてしかるべき措置をするように、そしてまた同時に、私も今拝見いたしましたのを、ほとんど女房ばかり使っておって、私自身も、まあ女房の机の上で見るぐらいのもので、本当によく知らないので、自信を持って言えませんけれども、早速関係官庁と連絡をとり合って、その中における潤滑油に私もならせていただきたい、このように考えております。
  189. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  190. 村山喜一

    村山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会