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1988-04-21 第112回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十一日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 村山 喜一君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 川崎 二郎君 理事 高橋 一郎君    理事 牧野 隆守君 理事 小野 信一君    理事 山田 英介君 理事 塚田 延充君       金子原二郎君    鴻池 祥肇君       渡海紀三朗君    中村正三郎君       穂積 良行君    谷津 義男君       奥野 一雄君    草川 昭三君       伏屋 修治君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局審査部長 植木 邦之君         経済企画庁調整         局審議官    長瀬 要石君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局審議官  宮本 邦男君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       泉  幸伸君         総務庁行政監察         局監察官    石和田 洋君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   植苗 竹司君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第二課長   吉田  博君         大蔵大臣官房参         事官      林  正和君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業室長 森田 好則君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         文部省体育局学         校保健課長   込山  進君         厚生省保健医療         局健康増進栄養         課長      有川  勲君         農林水産大臣官         房審議官    赤保谷明正君         農林水産省畜産         局畜政課長   東  久雄君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       窪田  武君         農林水産省畜産         局食肉鶏卵課長 太田 道士君         農林水産省畜産         局流通飼料課長 田家 邦明君         通商産業省産業         政策局商政課長 塩谷 隆英君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      北畠 多門君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       鴇田 勝彦君         建設省住宅局住         宅・都市整備公         団監理官    丸田 哲司君         建設省住宅局住         宅総務課長   三井 康壽君         自治省税務局府         県税課長    小坂紀一郎君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 村山喜一

    村山委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊吹文明君。
  3. 伊吹文明

    伊吹委員 きょうは、先般中尾国務大臣企画庁長官からお伺いをいたしました経済運営物価問題等についての基本的なお考えについて、若干のお尋ねをさせていただきたいと思います。  先般伺いました御意見は、現下の日本経済あるいは日本物価対策上まことに時宜を得た御発言であり、政策的には満点だと私は思っております。あと問題は、これを政治のスクリーンを通して民主主義の枠の中でどのように実行していくかという点にあると思うのですが、まず、大臣のおっしゃった第一の柱として、「内需中心とした景気持続的拡大」という点がございます。この点について、現在の日本が、大臣政治家としてごらんになって、世界先進国に比べて非常に住みよい、暮らしよい国だという御認識があるかどうか、その点についての評価を伺いたいと思います。
  4. 中尾栄一

    中尾国務大臣 内需拡大また内需促進に比して日本国民暮らしそのものが直結しているかどうか、こういうような御質問であろうと思いますが、我が国所得水準はこれまで非常に高い経済成長によって大きく上昇してまいったことは事実でございます。フロー面ではかなりの水準生活を享受できるようになったことも事実であろうと思います。しかし、ストックそのもの現状を見ますると、住宅あるいはまた生活関連社会資本整備状況などは、欧米と比べまするとある程度の乖離がある、見劣りがすると言った方がいいでしょうか、そのような感じも受けないわけではございません。そういう結果に対しまして、私は、国民充足感はそれほど高いものではないのではないかと思われます。  また、非経済的な面を見ますると、平均寿命犯罪等から見ました暮らし安定度、また安全性といいましょうか、この点においては欧米先進国以上の水準にはありますが、労働時間等のような長さでは多少問題点もないわけではない、このように考えておりますので、お答えになるかどうかわかりませんが、私の率直な感じを申し述べさせていただきました。
  5. 伊吹文明

    伊吹委員 大臣のおっしゃったことは私も全く同感でございます。確かに、自由社会自由主義経済のもとで頑張れば何とかなるんだという気持ち日本人が一生懸命頑張った結果、生産面あるいはその分配面においては日本は非常にいい国になったと私は思うのですが、しかしながら、確かにストックが不足しておる。現実生活の豊かさというのは、そのストックが解け出して私たち日常生活を潤してくるという面が非常に大きいと思うのです。そういう面からいうと、現在不足しているのは、大臣がおっしゃったように住宅、そして公共資本、それから迫りくる高齢化社会への備え、こういう物的なもの以外に、社会の秩序というか、人間の生きざまというか、お互い日本に住んでてよかったという安心感、こういうものがすべて一体となって我々の豊かさというものを形成していると思います。そういう面からいうと、大臣の御認識のとおり公共資本あるいは迫りくる高齢化社会への備えというものが非常に不足しておるのではないかという危惧を抱かざるを得ません。  一方、大臣がおっしゃった第二の柱である「自由貿易体制維持強化」という点でありますが、現在自由貿易体制の恩恵を受けまして、私どもは、経済企画庁見通しによると、貿易収支で八百十億ドル、経常収支で七百二十億ドルの黒字を予想しておるわけでありますが、今一ドル百三十円といたしまして、この金額は約十兆円になります。これは、当然のことでありますが、外為会計を通じて過剰流動性として国内に存在するわけでありまして、円が比較的安定して、しかも外国に貸したお金が返ってくるという安心感があれば、これは外国へ貸せます。しかし、現状はなかなかそうではない。貸した債権は返ってこないし、円は非常にフラクチュエートする。貸して少し利子がついたと思えば円高差損で企業は大変な損をするということですから、お金の行き場がない。  田中内閣池田内閣のころは高度成長と言われて民間活力が非常に高かったです。ですからこのお金民間で使えた。私たちはこのお金民間民間判断によって私たち生活が潤う方向に使ってもらいたいと思いますけれども現実にはこれはそうじやない。とすれば、これを民間で使い切れるような経済構造をつくっていかざるを得ないと思うのです。これは大臣がおっしゃった内需中心とした景気持続的拡大ということだと思いますが、新たな技術開発を行い、イノベーションの種を見つけ出して民間で使えるような経済構造にするには率直に言って私はかなり時間がかかると思いますが、そのあたり大臣のお見通しはいかがでしょうか。
  6. 中尾栄一

    中尾国務大臣 大変に御勉強家であられる伊吹委員の申すとおりでございまして、現実に私ども国際関係において相当に恵まれたある意味における立場にあるという御指摘もそのとおりであろうかと思うのでございます。ただ、本格的な高齢化社会の到来を控えまして、国民生活の質の向上を図るためには、何といいましても我が国経済を先ほど御指摘内需主導型の経済構造へ転換させまして、国内の豊富な貯蓄を住宅とかおくれていると言われている社会資本とかいうものに忠実に振り向けていくことが極めて大事であろう、こう思うのでございます。  このために、政府といたしましては、住宅生活関連社会資本分野への重点的な資源配分を行うということが肝要でございますが、当然のこと、これまた御指摘いただきましたように民間問題点にもなるわけでございますから、その点多少いろいろの問題は含まれると思います。しかし、民間活力の活用を図ること、あるいは促進させるということは、またエンカレッジさせることは私どもの使命でもなければならぬと思いますので、経済力を有効に活用いたしまして国民生活の質の向上全身努力をささげる、このようにお答えさせていただきたいと思います。
  7. 伊吹文明

    伊吹委員 大臣の大変力強い政治家としての御決意をいただいたわけでありますが、民間活力中心としてやっていく。しかし、現実には十兆円というお金民間過剰流動性として残っておる。一方、国としては、やりたいことは社会資本高齢化社会への対応、いろいろある。しかし、民間ではなかなか新しいイノべーションの種が出てこないので設備投資が進まない。十兆円を吸収するだけの設備投資が進まない。しかし、民間としてはお金をほっておくわけにいかない。土地を買う、株を買う、金を買う、骨とうを買う、甚だしくなると、買う物がなければ外国で盗んできた絵を買うということになります。ここで地価が上がり、財テクの弊害が言われます。土地が上がっても、なるほど土地転がしをした人は大いに潤うかもわからない。株でもうける人は個人としてはいいかもわからない。しかし、私たち日本人がその上で幸せに住む日本の国土は一平方メートルたりともふえたわけではない。  ここで私たち政治家がやらなければならないことは、これは明らかであろうと思うのです。民間で余っているお金国民として必要な分野へつないでやるということだと思うのです。つまり、民間過剰流動性がある。やるべきことは、大臣指摘のとおり住宅公共資本、迫りくる高齢化社会への備え、これは公共部門がやらなくては仕方がないことです。  民間お金公共部門へつなぐ方法は二つしかありません。一つは、借りるということ、国債を発行するということであります。一つは、税制改革を行ってその過剰流動性パブリックセクターへ持ってくるということであります。このようなマクロバランスを考えた場合に、しかも財政の百五十兆円という建設国債赤字国債の累積がある状態で、税制改革というものは日本国民の幸せのために避けて通れない大きな問題じゃないかと私は思うのですが、大臣のこのあたりの御所見伺いたいと思います。
  8. 中尾栄一

    中尾国務大臣 これまた何といいましょうか伊吹委員の御指摘のとおりでございまして、世界的に見ますると、確かに私どもも非常にウエルバランスな、ある意味において世界の国からうらやまれるような国力になったことは否定しがたいものでございますが、それが先ほど来申し上げておるような国民生活に直結しているか、あるいはまた公共資本に十分に反映されているかとかいうようなことになってくると、先ほどの先生指摘の十兆円の問題までも抱えて、一体これをどのように社会資本の方に転化させていくか、民間活力を活性化するか、これは全く問題だと思うのでございます。社会資本整備水準について見ますると、先生指摘のようにまだ十分とは申せません。早急に整備を推進していくことがまず肝要である。これが第一点でございます。  社会資本整備の財源として公債を用いることがどうだ、こういう御意見もございましたが、世代間の負担の公平という観点からは考える必要があると私は考えております。しかしながら、今後は、高齢化進展によりまして、将来の社会保障負担は増加するのではないかと予測をされます。したがいまして、国債費社会保障負担とを合わせまして、次の世代といいましょうか、次世代を背負う方々に負担が大きくなることが予想されますが、このために公債の発行がある一面将来の世代の過度の負担となることのないような配慮もこれまた考えなければなるまい、こう思うておるわけでございます。  なお、ある意味において中長期的な視点からの税制の問題についてもちょっと触れられましたけれども税制のあり方なども考えますると、高齢化社会進展などに対応いたしまして、国民公平感を持ってある意味において納得していただく納税を賦課させるというような安定的な税制を確立することがこれまた御指摘のとおり肝要ではないかなと思うわけでございます。しかしながら、現行税制というものについては、現在税収に占める所得税、特に給与所得に対する税負担のシェアの上昇率などにゆがみが見られますから、こうしたゆがみの中で納税者重税感不公平感が高まってきているわけでございますから、顧みまして、この高齢化進展などに対応しながら経済活力維持していくためにも、課税の公平、中立、さらに簡素の基本原則のもとで現行税制にある程度抜本的に見直しが必要なのかな。担当大臣といいますと大蔵大臣になりますけれども、私はそのように考えさせていただきたいと思っております。
  9. 伊吹文明

    伊吹委員 大臣の御所見の中の第二の柱として、「自由貿易体制維持強化」ということを強調しておられます。現在、牛肉、オレンジの自由化問題について交渉が進んでおりますけれども、米国においても多くの制限品目があることは事実であります。そして、自由化された各品目についても、例えばEC諸国のように国境で調整関税制度を設けておる国もあることは事実でございます。日本も、私たち国内の私たち制度の中で外国を差別するということは国際化社会においてはしてはならないことでありますけれども外国制度日本制度が全く同じでなければいけないという外国の要求も、私は主権がある国家というものが存在しておる限りはやや無理があるんじゃないか。しかも、牛肉自由化を進めてもそれに対する関税措置課徴金制度は認めないなどということは、内政干渉じゃないかと私は思うんですね。私は都市出身議員でありますから、農産品自由化ということについては必ずしもかたくなではありませんが、それ以上に私は日本人でありたい。日本人として、日本という主権を持った国に住んでいる日本人でありたい。  そういうことからいうと、いわゆるレシプロシティーという言葉がありまして、外国日本は同じ制度でなければならないという主張と、制度は違うがその中でお互いに差別なく取り扱わねばならないというイコールトリートメントという言葉があります。現在の私の印象では、アメリカはややこのレシプロシティーイコールトリートメントということを混同しておるのではないかと思わざるを得ないわけであります。  しかし、同時に、私たち日本人国際化時代世界の中で生きていくためには、私たち決断で、私たちの良識で、私たちが生きていくために私たち制度をできるだけ国際的に近づけていく、レシプロシティー原則に近づけていく。これはしかし私たち日本人判断で近づけていくということだと思うのですが、これは大変微妙な問題で、大臣国務大臣としてのお立場上、お答えにくい面もあると思いますが、現在のアメリカ交渉姿勢についてどのような印象をお持ちなのか、簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  10. 中尾栄一

    中尾国務大臣 都会の御出身でございます伊吹先生、その都会という、農産物品には余り関係のないところであっても、日本人の発想としてはこうあるべきだし、またありたい、こう申されていることは真実であろう、このように考えております。
  11. 伊吹文明

    伊吹委員 今の大臣お答えを踏まえて、私たち決断で私たち制度を少しずつ自由化していかねばならないという問題について、一つの例を挙げてお伺いをいたしたいと思います。  大変事務的なことでございますので、農水省の方から数字を簡単にお伺いいたしたいと思いますが、現在生糸一元化制度というものが日本にございます。それと関連して、海外市場では生糸は今キロ当たり幾らになっておるか、そして国内商品市場では幾らか。それから、商品市場に上場されてないけれども一般織物業者が手に入れる価格は大体幾らぐらいになっておるか。これは数字だけお答えをいただきたいと思います。
  12. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答え申し上げます。  数字だけ申し上げますと、我が国に出回っている、これは中国物が輸入されておるわけですけれども保税生糸が入っておりますが、それを国内で流通すると仮定をいたしまして、関税、諸掛かりを上乗せをしますと、その生糸キロ当たり約五千円でございます。それから、海外相場といいますか、リヨンの取引価格、これは円換算をいたしまして五千八百七十六円程度でございます。  それから、一方、国内商品市場での相場でございますが、ことしの三月、横浜の現物価格は一万一千四百九円、それから生糸の個別の銘柄によりましては、良質のものについてはさらにプレミアムがついて現物価格にそれが上乗せられているということでございます。
  13. 伊吹文明

    伊吹委員 今の御答弁でおわかりのように、海外生糸価格国内で流通しておる価格は非常な差がございます。一方、国内生糸価格を安定させるために蚕糸糖価事業団というものがあるわけですが、現在この事業団が想定をいたしております安定価格幾らでありますか。
  14. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 いわゆる蚕糖事業団生糸需給操作を通じまして価格の安定を図っておるわけでございますが、六十二生糸年度に適用されます安定基準価格、これはキログラム九千八百円、それから上位価格が一万六百円、六十三年度についても同様でございます。
  15. 伊吹文明

    伊吹委員 ということになりますと、一番高いのが市場で流通しておる日本市場での価格である。それから蚕糸砂糖類価格安定事業団で想定しておるのが今おっしゃった値段である。それで、海外ではもっと安く五千円である。こういうことです。  一方で、繭糸価格安定法というのがありまして、その「目的」には、糸価の安定に努めねばならないと書いてあります。同時に、同二条には、今おっしゃった安定上位価格維持するため、事業団は手持ちの生糸放出することができる、こうあります。これはかなり市場価格を今おっしゃった九千八百円に安定させるために御努力をなすっておると思うのですが、そのあたり放出量を、トータルで結構ですから、簡単に。
  16. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 いわゆる蚕糖事業団が抱えております在庫、それを価格安定のために放出しておりますが、昨年の十月以降ことしの四月までに十九回にわたって売り渡しをいたしております。トータルで申し上げますと、二万三千三百俵売り渡してございます。
  17. 伊吹文明

    伊吹委員 事業団がそれだけ努力をして、しかも審議会で決めた安定価格というものが維持できずに海外に安い生糸がごろごろしておるという現状は、私はやはり問題だろうと思うのです。さらに一層、これは事業団放出を含めて、特に私の伺うところでは投機的な動きがかなりあって、実際織元で糸を手に入れようとする人は大変な苦労をしておる。そして繊維が不況と言われる中でこういうことを放置しておくからこそ外圧というものをかけられるんだと私は思うのです。これは大臣の地元にも繭の養蚕農家はたくさんいらっしゃると思いますが、養蚕農家を守っていくためにも、あるいは我々都会織物業者を守っていくためにも、我々がまさに我々の判断でできるだけ国際価格との差を埋めていかねばならない。しかも我々が決めた九千八百円という値段現実市場で大幅に上回るということが放置されておるというのは、非常に問題だと思うのです。国務大臣としての大臣の御所見を伺って、その後赤保谷審議官から、具体的に今後どう対応していただけるのかということを簡単にお答えいただきたいと思います。
  18. 中尾栄一

    中尾国務大臣 国務大臣としてお答えさせていただくということが一番妥当かと思いますが、私も委員指摘のとおり養蚕県の一翼を担っております。私がちょうど国会に出ました二十二年前でありますかには六万軒を擁した養蚕農家が、今や七千軒というぐらいでございますから、本当にある意味においては両輪、まさに養蚕農家がだめになれば製糸もだめになる。製糸とは両輪のような関係にございます。そういう点においての先生の杞憂は全く御指摘のとおりだ、このように考えております。
  19. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答えいたします。  生糸価格が異常にといいますか高騰いたしておりますので、先ほど申し上げましたように、昨年十月から事業団在庫生糸放出をいたしておるわけでございます。  今後の問題につきましては、生糸価格動向に対応いたしまして事業団による一般売り渡しを適切かつ機動的に行うとともに、生糸需給状況価格動向、そういうものを考慮いたしまして一般売り渡し生糸取引所受け渡し供用品を導入するという措置を講ずる等いたしまして、さらに価格の安定に努めてまいりたいというふうに考えております。
  20. 伊吹文明

    伊吹委員 大変ありがとうございました。今大臣のまさに政治家国務大臣としての御見識に沿ってこの問題は解決をしていただきたい。  特に農水省お願いをしておきますが、実際商売をしておる連中にきちっと生糸が渡るような放出の仕方をお願いしたい。特にメーカーに渡るような形のお願いをすることと同時に、取引所が上場する生糸の条件が非常に厳しいわけですから、これを少し緩和していただくとか、あるいは取引が投機のための買いが入っているんじゃないかというようなところを監督官庁として厳しく検査をするなり監督をしていただきたいということを御要望しておきます。  最後に、先般、我々物価対策特別委員会総意として、いわゆるネズミ講無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案が衆議院の本会議を通過したわけでありますが、新聞等で拝見しておりますと、このネズミ講の会長なる人物が、自分のやっているのは違法行為ではないが脱法行為であるとか、こうなったからにはネズミ講維持することは難しいからやめるというような言動が見られるのは、国民感情からして私は非常に不本意なことだと思うのですね。せっかく我々の総意として、公序良俗を乱す、国民生活に不安をもたらすようなネズミ講を禁止したわけですから、所得の把握とか、あるいは刑法上疑義があるのかないのか、私は専門家じゃないからよくわかりませんが、そのあたりを、政府としても、そして我々議員立法を出した者一同としても、しっかりとフォローしなくちゃいけないと思うのです。  まず最初に、政府を代表して大臣に、関係省庁とそのあたりの協議をよくしていただいて、国民から黒いネズミが食い逃げだけしたと言われないように、この法律所管省であり国民生活の総元締めである国務大臣として御見解を伺うと同時に、最後委員長に、我々議員立法をした者としての気持ちもひとつ代表して、御開陳いただきたいと思います。
  21. 中尾栄一

    中尾国務大臣 冒頭に申し上げたいのは、村山委員長を初めといたしまして、各党の本当に緊密なる連携と協力によりまして、先般あのような、日を見るような形で本会議を通過しましたこと、主管大臣といたしまして、まずこの席をおかりいたしまして厚く御礼を申し上げたいと思う次第でございます。  その後私もビデオでその会長なる人物の話も見ておりますが、いささかその発言の中にも不穏当な部分も感じざるを得ません。なかんずく、これは国家のためにやっているんだと言うに至っては、いささか私どももある種の憤怒の気持ちもないわけではないわけでございます。  ネズミ講そのものを国債を使った形でやった、現行の法体系の中で違法となる活動に対する警察による摘発など行政としての対応の可能なものについては、私は国務大臣として積極的にこの問題に取り組むことをお約束させていただきます。  なお、ちなみに、三月十四日、山形県の警察本部においては、もう既に国債ネズミ講に関する告発、さらにまた告訴というものを受理をいたしたということも報告を申し上げておきたい。これは中間報告でございますが、申し上げておきたい。
  22. 村山喜一

    村山委員長 委員長としての所見を申し上げます。  法の抜け穴をねらった、社会正義に反する国債ネズミ講などを阻止するために法改正が全会一致で可決されましたことは、御同慶にたえません。道義的に許されない脱法行為を積極的に推進をし多くの者に損害を与えている者は、現行法令に照らして厳しく対処すべきであると考えますので、関係機関に対して注意を喚起いたしたいと思います。
  23. 伊吹文明

    伊吹委員 ありがとうございました。終わります。
  24. 村山喜一

    村山委員長 次に、奥野一雄君。
  25. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 質問に入ります前に、大臣きょうはいろんな御予定などが入っておられるようでございまして、大変お忙しいようでございますので、どうぞひとつ御自由にしていただきたいと思います。  それでは、まず最初に、私は、軽油引取税の脱税問題について若干お尋ねをしておきたいと思います。  私は六十一年の十月三十日の百七国会のこの物価問題に関する特別委員会で、粗悪ガソリンだとかあるいは石油税の脱税問題について若干の質疑をいたしてまいりました。そのときの答弁などを伺いますというと、今後こういうようなことは二度と起こらない、そういうふうに思っておりましたところが、今度はまたマスコミ等を大変にぎわしておりますように軽油引取税の脱税問題が起きてまいりまして、これは先日の予算委員会分科会でも取り上げられているところでございます。こうした行為というのは、今始まったという問題でなくて、やはり以前から行われておったのだろうと思います。もちろん今回のように組織的に相当多額な脱税というのは余り例がなかったかもしれませんけれども、主管庁としての自治省としてはどのような対応策というものを今日までとってこられたのか、また今後これに対してどういう対応をしようとするのか、その方針をひとつお尋ねをしたいと思います。
  26. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 軽油引取税、六千億を超える都道府県にとって非常に重要な道路財源でございます。その軽油引取税が、先生指摘のように、今までも時に触れて問題になってきた事例はございますが、それに対しては個別に対応を各県がしてまいりました。ところが、ここに参りまして、かなり広域的と申しますか、全国的にそういう不法な行為を行う事例が目立ってきたわけでございます。その根源を尋ねてみますと、現在の軽油引取税の税の仕組み、その制度を悪用すると申しますか、悪用して税逃れをしているというケースが多いように思われます。  具体的に申し上げますと、ケースとしては幾つかに集約できるわけでございますけれども、一番目立つケースは、特約業者、これは元売と契約をしている特約業者でございますけれども、軽油引取税は特約業者の手を離れたときに課税をするという仕組みになっております。したがって、特約業者の手元にある限りにおいては未課税軽油ということになるわけでございます。したがって、その特約業者が未課税軽油を扱うことができる地位にあるわけでございますが、その地位をいわば悪用いたしまして、特約業者から販売業者に卸すときに未課税のまま軽油を販売した上でかなりの税額を未納のまま倒産をするあるいはドロンを決め込む、こういうケースが一つございます。  それからもう一つ典型的なケースといたしましては、今度は卸から販売を受けた販売業者の方でございますけれども、その段階で軽油をほかの油とまぜることによって水増しをすると申しますか、量をふやして販売をするというようなケースがございます。  それに対しまして、これは三十年という歴史がある税目でございますが、そのときどきの取引の態様に応じて、各県で、場合によっては隣同士ブロック会議を開くとか、あるいは問題をつかまえて私どもが間に入って関係県で連絡をとるとかというようにして対応してまいったところでございます。ところが、遺憾ながら社会経済が非常に広域化をする、それに応じて広域的に販売をする、広域的に脱税行為も行われるということになったわけでございます。  そこで、そういう問題意識がございましたので、各県の軽油引取税の実務担当者に集まってもらいまして、一年ちょっとかけて研究会を持ちました。それで、先ほどその研究報告が出たところでございます。その中にある具体策を受けてできるものから取り組んでいくというのが私どもの姿勢でございますが、かいつまんで申し上げますと、元売業者、特約業者の指定要件あるいは指定の解除要件を明確にする、あるいは強化するというような提言。それから、混和を防止するための各県で足並みをそろえた臨店調査あるいはトラックをとめる路上調査を実施するというようなことを強化すべきではなかろうかというようなこと。それから一番肝心なのは、広域的に対応しなければいけないということが肝心な点でございますので、軽油の流通の情報、軽油がどういう経路で出回ってどういうところへ流れていっているかという情報を全国的に管理すると申しますか、そういうようなシステムをつくることはできないかというような提言。それから、そもそも各県で一斉に連絡を取り合わないと業者の動きがつかめない、即時の対応ができないということでございますので、そういった意味での広域的な調査体制を整備すべきであるというのが報告書の内容になっております。  そこで、私どもといたしましては、この報告書を踏まえまして、脱税を防止するあるいは前もって脱税がしにくいような制度の仕組みをつくるというようなことで前向きに取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
  27. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今のお答えについては後でまた一つ一つ内容についてお尋ねをしていきたいと思いますが、その前に、資源エネルギー庁の方におきましても、昨年暮れの石油審議会軽油流通問題小委員会の中間報告が出されて、それに基づいて対応策の検討を行っているというふうに承知をいたしております。さらに海外調査ども行っているようでございますので、その状況も含めてひとつお伺いをしておきたいと思います。
  28. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 お答えいたします。一  軽油流通市場につきましては、ただいま先生指摘がありましたように、各般の不合理な取引慣行の存在という点で問題がございまして、昨年十二月初めに、石審の中に軽油流通問題小委員会が置かれておりましたが、中間報告を得ているところでございます。その中におきましては各般の施策の提言がされておるわけですが、特に脱税軽油の存在による市況の悪化、市況の混乱という点につきましては幾つかの施策の提言がございます。  既に実施に移されておるものもございますが、具体的に申し上げますと、先生がただいま引用されました不法な軽油に対する灯油、A重油等の混入、これを防止するためには、これまでヨーロッパ諸国において数十年来実施されておりますところの、着色剤あるいは識別剤といったものを添加しておきまして実際に税務当局が不法混入をチェックする場合の一つのよすがにしようというアイデアがございまして、これにつきましては、昨三月から省内に検討委員会を設けまして、いろいろな問題点をチェックしております。具体的には、三月中に英、米、仏に海外ミッションを派遣いたしまして、それらの諸国でどういった実施体制がしかれておるか。特に消費者、需要家の立場からしますと、公害、安全性の問題等いろいろチェックしなければならぬポイントがございますので、これらについての情報を入手してきたところでございます。  この着色剤の添加対策以外にも、そもそも合理的な取引慣行が存在してないような市況状況にございますので、元売あるいは販売業界等がきちっとした取引慣行を維持するための取引準則というものを策定したい。あるいは、具体的に申し上げますと、今年度予算で軽油流通の実態をもう少し詳しく調査分析をしてみようという予算も計上してございますし、先ほどの識別剤の関係で申し上げますと、民間の公益法人を活用いたしまして、試買検査、試し買いをしてもらいまして不法混入等の実態についての前さばきもしてもらおうというようなアイデアを考えているところでございます。  識別剤、着色剤の添加問題につきましては、この七月ごろまでに省内の検討会の結果を得まして、もし可能であればこの秋からでも実施体制をしきたいと思っておりますけれども、これまでの我々の海外調査等を含めました検討結果では、県税チェック上かなり有益であるというような判断を得ておりますので、主管官庁でございます自治省と関係地方自治体とも御相談の上、ぜひとも実現の方向に持っていきたいと考えております。
  29. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今、自治省の方とエネ庁の方から今日までの状況等についてお伺いをいたしましたが、少し細部にわたってお尋ねをしておきたいと思っております。  最初に、どっちが原因なのかということは私もよくわからないのですね。脱税というようなこと、それが主になっていって軽油の市場メカニズムというものが狂っていっているのか、不安定な状況になっていっているのか。そっちの方が先で、それの後にこの脱税という問題がついてきているのか。これはどういうような判断をお持ちですか。
  30. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 軽油流通秩序の混乱につきましてはいろいろな要因が分析されておりまして、十二月に出されました石審の中間報告でも、供給サイドの販売姿勢の問題あるいは購買業界の購買秩序の問題、それから先ほど来お話しになっております税金、特に軽油引取税の脱税問題というのが指摘されておりまして、我が方の石油審議会の軽油流通問題小委員会の御指摘の内容の中では、こういった軽油引取税の脱税による廉価コスト製品が市況に出回ることが市況の混乱の一因になっているという指摘がされております。
  31. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私も、いろいろな点から判断してみて、やはり原因の一番大きなのはそっちの方にあるのではないのかな、こういう感じがしているわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、この問題は今の段階で始まったのではなくて、恐らく相当以前からあったことだろうと思うのです。そこで、これは自治省の方に、今日までどういうような脱税の防止対策をやってこられたのか。もしわかるのであれば、例えば金額にしてどの程度脱税というものがあったのか。そういう実態把握をしているのか。それから、軽油の混和防止対策というものもやられてきていると思うわけでありますけれども、それも従来どんなような防止対策というものをとってこられたのか、その点についてちょっと自治省の方からお答えいただきたいと思う。
  32. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 まず、脱税の額はどのくらいかということでございますが、恐縮でございますが、脱税そのものを類推する資料として税務上の更正決定――脱税を発見した場合にそれを更正し適正な税を申告納付させるという手続があるわけでございますが、私ども、税務統計上、実はこの更正決定関係の資料がございません。したがって、更正決定になった直接の対象の税額というのはつかめてないわけでございます。それから、それ以前に、申し上げるまでもなく脱税の性格上地下に潜っておりますので、全体としてどのくらいかということについては、残念ながら手元に数字を持ち合わせていないということでございます。  それから二番目に、今までどういう防止策をとってきたかということでございますが、実はこの軽油引取税ができましたのが昭和三十一年でございますが、その仕組み上なかなか難しい税金とされておりました。ともかく、卸売段階で特約業者の手を離れるときに課税するという仕組みをつくったわけでございますが、さっき申し上げましたように、手を離れた後で水増しをするとか、それから、トラックの運転手さんが自分で油をまぜて自分の車に積み込んで走るというような現象が生じてまいりました。それから、もちろん脱税そのものもふえてまいりました。そこで、制度的には、今申し上げましたように、販売業者の手を離れた後の車の保有に対する課税でございますとか、混和に対する課税の仕組みでございますとか、あるいは特約業者に対してあらかじめ担保を提供していただくというような制度的な手を打ってきたというのが今までの経緯でございます。
  33. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 脱税の額がどのくらいになっておるのかということについて、そう簡単にはわからないということでありますけれども、これは資源エネ庁さんの方で言ったことなのかどうかは別にいたしまして、元売からの年間出荷量と納税額の比較、こういうものを比べてみるというと、年間五、六百億円が脱税されていると推測できる、それで昨年の十二月の徴税制度を改善する必要があるとの提言につながっているんだ、こういう記事があるわけでありますけれども、これはエネ庁さんの方としてはどうですか。そういう推測ができますか。
  34. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 ただいま先生指摘数字は、一部新聞に引用された数字だと思いますが、その五、六百億円の数字について、私どもで申し上げた経緯はございません。  ただ一つ、その脱税の積算方法といたしまして、先生もおっしゃられましたように、実際トータルでの軽油の販売量というのは数字でわかっておりますし、税収額というのも自治省さんの方で押さえておられますので、この関係からの計算が成り立つわけですが、これは自治省さんにお答えいただいた方が適切かもしれませんが、免税用途というものが軽油についてはございますので、この免税用途に向けられたものの量がどのくらいあるのか、それによって計算してアプローチする方法は一つあろうかと思います。  私ども立場といたしましては、軽油が軽油として脱税されて市場に出回ってくるという点も一つ問題があろうかと思いますが、先ほど来申し上げております軽油に別の油種がまぜられて、灯油とかA重油がまぜられて、それについての脱税がなされる、これはさらに数字的なアプローチが困難なわけですが、こちらの市況に与える影響は極めて大きいんではないかと推察しております。
  35. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 先生指摘になりました脱税額を新聞で拝見したものですから、私どもどうしてこの額が出たのかいろいろ計算をしてみたところでございます。今通産省の方からお答えがございましたように、わかっているのは、通産省で把握しておられる販売数量、それから私どもの側では課税対象になった数量がございます。その差があるわけでございます。その差に軽油引取税の税率を掛けると、例えば六百億とか七百億とかそういう見当の数字が出てまいりますので、なるほどこれを使ったのかという感じがしたわけでございますが、今もお話ございましたように、実は軽油引取税は用途によって免税になっておるものがかなり多いわけでございまして、農業用とか漁業用とかあるいは灯台の油に使われるとか、それがかなりの額に上るわけで、今申し上げました差からそれを考慮して差っ引いて改めて計算をし直してみますと、その六百億というのが例えば三十億とか四十億とかいう差になっているということだけ申し上げておきます。
  36. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 次にちょっとお聞きしたいのは、特別徴収義務者、今度の自治省の方の報告の中でも、先ほどもちょっとお答えがありましたけれども、元売業者の指定だとか解除だとか、それから特約業者の特別徴収義務者としての指定だとか、そういうものが入っているわけでありますけれども、今全国的にこの特別徴収義務者というのはどのくらいの数があるのか、それが一つですね。それから、今まで特別徴収義務者になるためにはどういう要件が必要であったのか、指定要件ですね。それから、交付金が出ていると思うのでありますが、この交付金というのは総額でどのくらい出ておられますか。その点ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  37. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 まず特別徴収義務者の数でございますけれども、約二万八千でございます。  それから、二番目にお尋ねの特別徴収義務者の指定の仕方でございますけれども、現在、これは元売業者から継続的に石油製品の供給を受けて販売する者というのが法律上の定義でございまして、これについて県の条例で知事が指定をする、こういう仕組みになっております。ところが、各県の取り扱い、実際の条例の指定のやり方としては、包括指定と言っておりますが、元売業者から継続的に供給を受けて販売するという者は自動的にと申しますか特別徴収義務者に指定をされる、こういう書き方になっているところでございます。したがって、特約業者の適格要件というようなものを前もって審査するという余地がないものですから、お話のようないわばお行儀の悪い業者が出てくるんだというような意見が先ほど申し上げました研究会でも出されまして、この特約業者の指定要件をきちっと明確にして厳しくすべきだというようなことが報告書の主張になっておるわけでございます。  それから、軽油引取税特別徴収義務者に対して交付金が出ております。この交付金の趣旨というのは、実際の納税義務者にかわって特約業者が特別徴収義務者として徴収をしていただきますので、普通の手間よりもそれだけ手間暇をおかけしているという趣旨で交付金が交付されているわけでございますが、六十二年度の数字で申し上げますと約百十億でございます。
  38. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 この交付金の問題についてはきょうは余り詳しくはやりませんけれども、巷間伝えられているところでは、この指定業者とその交付金の関係に絡んで余り芳しくないようなうわさも流れている、こう私どもは聞いております。その辺のところは目的に沿ってやっていかなければならないわけですから、これは相当注意をしてやってもらわないと、交付金を受けるために指定業者の指定を受けて、それでいなくなってしまう、何かこういうようなことがあるようにも聞いております。今その点についてはお聞きいたしません。  次に、脱税防止だとか混和防止だとか、先ほどお伺いしましたように、一つの大きな原因というのは、脱税ということに絡んで市場が不安定な状況になっているとか、そういうようなことと思っておりますから、脱税防止とか混和防止ということについては相当力を入れていかなければならない、こう思っているわけでございます。  エネ庁の方の中間報告の内容を見ますと、「軽油市況の悪化の一因となっている軽油引取税の脱税を防止するべく、課税権の帰属の見直し、特別徴収義務者の指定制度の厳格化・交付金の一律化、税務調査体制の強化など、その徴税制度・運用について改善が必要。」一つはそういうふうに書いてあります。それから、自治省の方の報告の中では、混和軽油の「適正な運用を図る観点から、実地調査の一層の充実・強化によりその捕捉に努めることが適当である。」こう書いてあるわけであります。これは今までやってこなかったことではないと思うのですね。やってきているのだろうと思うのですよ。抜き取り調査の場合には、車から抜き取り検査する場合、あるいはまたスタンドなどの調査、こうあると思うのでありますけれども、実際に今日までどの程度行われてきておりますか。年間どのくらいの調査をやって、その中でどの程度混和軽油などが発見をされたか、そういう実績があったらひとつお示しをいただきたいと思うのです。
  39. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 実地調査の実績について全国的に調べた資料は持ち合わせておりませんが、二、三の県に問い合わせたわけでございます。代表的な県でございますと、各地域に県税の事務所がございます。そこに軽油を担当する係がございまして、そこで年に数回、これは定期的に特約業者あるいは販売店の立入調査、それから、これは警察の道路交通規制との関係で今連携をしてダンプトラックなどを停止させて抜き取り検査をやっている、こういうのが一般的な検査のやり方かと思います。  それで問題は、先生指摘のように、このような検査は創設以来やってきたわけでございますけれども、その当時は、何分、バス、トラックにしても、それから業者の販売の領域にしても、各県で把握し得る範囲が大半ではなかったかなという感じがしているわけでございます。ところが、だんだん広域化をしてくる。バスもトラックも全国を動き回るし、販売業者も全国的なネットワークを持って販売するということになってきまして、各県個別の対応を幾ら一生懸命やろうともそれではつかみ切れない部分が残るということで、先ほど申し上げましたように、各県が連携をしてブロックごとに連絡をし合うとか、そういう工夫をしているわけでございますけれども、全国的に組織的かどうかというとかなり弱い点があるということで、報告書にございますように、広域的な調査体制をぴしっと全国的な仕組みとしてつくるというようなことで広域的な動きに対応しなければいけないのじゃなかろうかというぐあいに考えているところでございます。
  40. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 この石油引取税が行われてから三十年ぐらい経過するんだというお話は先ほどございました。三十年間こういうことをやってきていて、実際の検査とかということについて余りやられていない、全国的な状況もまだわからない、これから広域的な対応をしなければならない。ちょっと手ぬるいのじゃないかという感じがするわけですね。エネ庁さんの方で西欧の関係調査をされてきておるわけでありますから、イギリスとか西ドイツあたりでどういうような調査をやっておられるか、少し明確に教えていただきたいと思います。
  41. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 先ほどお話ししましたように、三月にイギリス、フランス、ドイツにミッションを派遣したわけでございますが、その調査レポートそのものはまだ仕上がっておりません。したがいまして、正確に実態についてお話しするタイミングではございませんし、いずれ自治省さんの方にもそういった情報はぜひ御活用いただくために提供させていただきたいと考えております。  ただ、とりあえず得た印象でございますが、調査団からの口頭の報告によりますと、先ほど申し上げましたように、古い国では二、三十年前からこういった識別剤の添加がなされておりまして、これにつきましては、税務当局さんも、日ごろから軽油引取税の脱税問題には相当悩まれておられたらしくて、各種の対策を既に実施されておられた。そのあげく、やはり非常に即物的ではあるのですが、こういった形で不法混入をチェックする体制をつくっておくということが非常に有益であろうということで実行されているようでございます。実務上の観点から申し上げますと、実際路上における不法混入の軽油が使われておるかおらないか、警察当局とも連携されましてかなり頻度の高いチェックをされておられるというように聞いております。  いずれにいたしましても、地方税法あるいは軽油引取税の脱税問題というのは、自治省あるいは関係都道府県の御所管になる問題でございますので、我が方としては、各種の情報をできるだけ早く提供させていただいて、ぜひとも早急な対策の樹立をお願いしたいと考えております。
  42. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 まだエネ庁さんの方では公式に発表する段階でないということだろうと思うのでありますが、私の方から申し上げますと、イギリスの場合には、道路上チェック件数は八六年で八万件、西ドイツの場合には三十万件、このくらい路上でのチェックなどやっているわけです。私も方々車で走り回ったりすることがありますけれども、乗用車の場合にはもちろんやらないのでしょうけれども、トラックなど抜き取り検査をやられているという状況は見たことがないです。これは犯罪ということになるのかならないのかわかりませんけれども、そういうチェック体制をきちっとやっておかないとどうしても安易に陥ってしまうのではないでしょうか。  例えばスピード違反などの場合でも、あそこはいつでも測定をやっているぞということになるとドライバーはその地点ではスピードを落とす、これはいいか悪いかは別にして大体常識でございます。しかし、我が国の体制がそういう面できちっとしてないということがあるから、安易に軽油にいろいろなものを混ぜたりしてやろうか、そこは一つは脱税という問題につながっていく、こういうことにどうしてもなると思うのです。  自治省の研究会の報告を見せていただいても、どうも総体的に積極的な取り組みの姿勢がうかがえないという感じがするわけでございます。例えば、そういう混和などについて規制をしようとする一つの方法という着色剤とか識別剤を見ておりましても、通産省における調査研究の推移を見きわめて対処する、こういうような書き方になっているわけです。これはどっちが主管官庁になるのでしょうか。それから着色剤とか識別剤を入れなければならないという理由は一体何から出てくるのでしょうか。脱税防止ということから出てくるのか。ただ混和するというそのこと自体が法に反するのかどうかは私もよくわかりませんけれども、そうではないと思うのです。そのことによって脱税行為が起きるということが一つあるのではないかと思うのです。そうすると、着色剤を使ったり識別剤を使わなければならないという理由は一体何だろうか。それから、そういうことをやらなければならない主管官庁というのはどこになっているのですか。これはどちらからでも結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  43. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 脱税防止については、これは税務当局としては本質的な問題でございます。ですから、先ほど先生のお話がありました流通の混乱要因であるとかそういうこと以前に、税務当局として脱税の防止というのは最優先に取り扱わなければいけないということで、もちろん脱税の防止の責任は税務当局にありということははっきり申し上げたいと思います。  その前提で、報告書についてお触れになりましたので、実は研究会が研究を続けてまいりましたその過程で通産省からこういうようなアイデアがあるのだというお話をお聞きしたわけでございます。ところが、その段階では、通産省の方もその実態あるいは有効性について何とも言えない状況であった、これから調査するんだという段階であったと記憶しております。したがって、報告書の方がちょっと先行してしまった感じがございますのでそういうような書き方になったのではなかろうかというぐあいに憶測をするわけでございます。  先ほど通産省からお話がございましたように、ヨーロッパで行われている着色というのが脱税防止に非常に役立つということがあれば私の方でも積極的に取り組むべきだと考えております。ただ、税の仕組みとしてヨーロッパにおける軽油課税の仕組みと日本における仕組みの違いということもひょっとしてあるのかもしれず、そういうようなことも含めてもう使えるものならばどんどん使っていきたいということが税務当局の気持ちでございますし、私どももその方向で通産省からも教えていただきながら検討いたしたいと思うわけでございます。
  44. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今のお答えからいきますと、こういう着色剤を使ったり識別剤を使ったりするということについては、脱税防止という点からいって主管官庁は自治省だ、こう思っていいわけですか。
  45. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 今申し上げたことは、着色をするということが結果として脱税防止につながることになりますればその方法を税務当局としても大いに活用すべきだということを申し上げた次第でございまして、具体的に着色をだれがやるかあるいはだれが経費を出すかとかいうようなお話は、また通産省の方で検討されるべき事柄ではなかろうかと考えるわけでございます。
  46. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 エネ庁の方では、この着色剤、識別剤を使うということの最大の理由は何ですか。
  47. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 ただいま自治省の方からも御説明がございましたように、着色剤、識別剤の添加というのはあくまでも脱税防止対策でございまして、私ども石油販売業界を所管する立場からしますと、いろいろな原因がございますが、軽油流通市場がその一因としてこういった脱税行為によって乱されている面があるものですから、そういった点で関心を抱いているわけでございます。  脱税対策としては、制度的な問題、運用の問題いろいろあろうかと思います。この点については専門家関係行政庁の方で検討いただいているようでございます。ただ、私どもが乏しいながら把握した情報といたしましては、こういった識別剤、着色剤の添加による活用、徴税チェック体制の強化というものが実益を上げているようであるという判断がございましたものですから、こういった点を提案させていただいているということでございます。
  48. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうしますと、これは先ほど自治省の研究会の報告の文書についてちょっと申しましたように、この報告書を見ると、やるのは通産省なのだ、そのやるのを見てから自治省の方が考えるというふうに受け取れるわけです。これは本当は逆だと思うのです。自治省の方が脱税防止のためにこういうことをやらなければならないだろう、ついてはエネ庁さんの方でそれに対して積極的に協力してくれないか、こっちの方が本当だと思うのです。  それで、先ほどもエネ庁さんの方ではできれば今秋あたりからやりたいということをお答えになっているわけですが、それについて自治省はどうですか。
  49. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 先ほど着色剤の活用についてお答え申し上げましたのは、実はそうした着色剤についての検討をすべきだという提言がこれは通産省の方の石油審議会の小委員会の中間報告の中に記述があるわけでございます。これは私ども立場からで恐縮でございますが、そのくだりを読み上げさせていただきますと、「何らかの形で流通段階における不法な異物混入を防止する仕組みを確立し、脱税防止の有効策としても活用することが必要である。それは、不法な異物混入行為が中間留分製品価格に悪影響を与え、その流通市場に歪みを生じさせているからである。」こういうぐあいに記述をしてございまして、脱税防止の有効策ということがもちろん書いてあるわけでございますけれども、それ以外に、不法な異物混入を防止するためのものであるということがうたってあるという報告書の内容になっております。したがって、脱税防止というのがかなり強く念頭に置かれていることは確かでございますけれども、報告書を読む限りは、広く軽油の質を保持するというようなことも目的になっているように読み取らざるを得ないわけでございます。  しかしながら、私どもの方で、これは繰り返しになりますが、脱税防止に有効なものであれば、各県とも非常に苦労しております問題でございますから、それは努めて活用していきたい。活用するためには、どうやってやったらいいのかとかそういうような手だてについても研究する必要があるわけで、少なくとも現在行っている調査、例えば抜き取り調査をやって、持って帰ってガスクロというような分析装置にかけて、結果を出してというようなことで、手間暇かかるわけでございます。まだ通産省の方から伺ってはおりませんけれども、その着色剤の効果としてある程度即座に内容まで識別できるというようなことであれば、これは非常に効率的にその調査ができる、調査効率も上がるし、調査件数も拡大するということになるわけで、徴税側にとっても有効な手だてとなり得るかと思いますが、そういうようなことを念頭に置きながら通産省からその内容をお聞きして検討してまいりたい、このように考えているところでございます。
  50. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今のお答えでも私ちょっとまだぴんとこない。ぴんとこないというのは、確かに中間報告の中には今言われたようなことは含まれて書いてありますよ。書いてありますけれども、通産省さんの方でもお答えになったように、やはり最大の理由というのは脱税防止だ、これがやはり前面に大きく出てくる。そのほかにそれは混和による品質の低下とかなんとかということも当然あるでしょうけれども、この中を読ましてもらえば、やはりそこにある。課税の実際の所管官庁である自治省の方が、この脱税防止ということについてもし真剣に考えているんだったら、通産省よりも先行して何らかの方法を考えるべきではないのか、そして、エネ庁あたりに協力をしてもらうのであれば、そういうように要請をしていって共同で研究していくとか、こういう体制というのが当然私はとられるべきものだろう、こう思っているのですね。  もう一遍確認をしておきたいと思うのですが、エネ庁さんの方では、これは実験にいろいろ時間もかかると思います。それからいろいろな方法があってそう簡単にはいかないと思うのですが、先ほどのお答えでは、それがうまくいくようであれば今秋あたりから取り入れたい、こういうふうに私伺ったのですが、それは間違いないですか。  それと、もう一遍、もし通産省の方でそういうふうにして今秋あたりからやりたいということであれば、自治省としても当然それに一緒になって対応をしていくということでいいですか。
  51. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 先ほど来申し上げておりますように、経営流通秩序の混乱というのは非常に喫緊の対策を要する問題でございますので、できるだけ早い時期にそういった脱税防止対策、識別剤の添加等を含めまして実施に移されることを期待しております。  三月に二つばかり省内に検討委員会を設けまして議論を進めております。最終的な結果は七月に出る予定になっておりますが、この検討の中には、安全性の問題、排ガスの問題、いろいろ実証実験を必要とするものがございますので、これにつきましてはある程度の実験が進まないと結論がわからない。ただ、技術者の一定の推測からいたしますと、まず問題がないという結果が出るであろうという前提でございます。したがいまして、そういうことで我々の期待している結果が七月の答申として出た場合には、ぜひとも関係当局の御理解をいただきまして秋口以降ぐらいにも実施していただきたい、そういう期待をしておるわけでございます。
  52. 小坂紀一郎

    ○小坂説明員 着色剤の内容について通産省からよく御説明を受けまして、私ども徴税側としても検討し、それが脱税防止に有効であるということであれば、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  53. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 あと時間がなくなってきましたので大蔵省さんの方にもちょっとお尋ねをしたいし、それから自治省さんの方にも一つありますが、なぜこういう問題が起きてくるんだろう、なぜ脱税という問題が起きてくるんだろう。考えてみますと、一つは税金が高過ぎるんではないかという感じもするんですね。税金が高過ぎる。しかも、石油税の場合には、課税されるものだとかあるいは課税されないものだとかがある。したがって、その課税されているものに課税されてないものをまぜますと、それで課税されているものだと言って売ればその部分だけもうかるということになるわけでありまして、そういう点もこれは一つはあるんではないだろうかというようなふうに考えられるわけでございます。  そこで、大蔵省の方に、私もう一、二質疑をやったことがありますけれども、大蔵省さんというのはかたいですね。税金問題だったら絶対だめだ、こういうようなことが答えとしてはね返ってくるのですけれども、税を取る側だけの論理でなくて税金を納める側のことも考えてもらいたいな、こう思っているのです。  今申し上げましたように、こういう問題がやはり起きてくるというのは、一つは税金が高いということから出てくるんではないだろうか、こういうふうに思われてなりません。例えば石油のスタンドの関係業界の方からもいろいろな話が来ておりますけれども、今ガソリンスタンドは約五万九千店あるわけでありますけれども、エネ庁さんの方の発表によりますと、これは、六十年の四月の発表によりますというと、五万九千店のうち四八・三%、約二万八千店が赤字経営になっている、こういう報告が出ております。ガソリンなんかの場合ですと、四五・六%税金がかかっているわけでございます。何でガソリンに四五・六%も税金をかけなければならないんだろう。大型冷蔵庫でありますと九・八%、ルームクーラーなら一〇%、小型のテレビだったら八%ぐらいの税率でございますが、ガソリンは四五・六%も税金がかかっている。  ぜいたく品というようなものにある程度の課税をするということは国民的な合意は得られると思うのです。しかし、例えばぜいたく品なんかの場合でも、一〇%ぐらいの税金がかかっておっても、それは一回払えばそれでもう大体いい。一生後買わなければ一回納めるだけでいいわけですね。ガソリンの場合には、今もう自動車というのは国民生活の必需品。毎日乗って走っている。毎日ガソリンを入れなければならない。そのガソリンに四五・六%の税金がかかる。初めから道路財源だとかなんとかということでそっちの方の額が決まって税率が決められていっているのではないかなという感じがするのですね。  今度の例えば税制の抜本改革をやるというときにこれはどうするつもりなんですか、残すというつもりなのか。私は、今政府税調なり何かでやっている新しい税制については賛成はしておりません。賛成はしておりませんけれども、税体系というものを考えてみた場合に、例えば新しい間接税が導入されてくる。どんな形のものかわかりませんが。そういうようなときに、特別財源的なこういう税というものが残るということになった場合に、税体系上ちょっとバランスが合わないのではないかというような感じがするわけです。そういう面から、先ほど申し上げましたように、今ガソリンスタンドなんかの販売業者というのはもう四苦八苦してやっている。半分ぐらいが赤字経営ということになれば、結局、その赤字を何で解消していくかということになれば、課税のない油をまぜてそこから利益を上げよう、こういうような考え方というのが出てくると思うのですね。これはやはり、かえってそういう悪いことをさせるようなところに追い込んでいくのではないだろうか、こういう感じがいたします。  それから、これは業界紙にちょっと載っておりますけれども、例えば、ガソリンスタンドで「A重油があります」という看板を掲げてあるわけですね。これは、A重油を売ること自体悪いということではない。しかし、それをほかの油にまぜて車に乗るということになると、これは買った人、車を持っている人が自主申告しなければならないということになるわけですね。何か領収書なんかには、「灯油、重油、自動車に使用の場合、必ず自主申告して納税してください。」だれがこんなものを自主申告する人があるのですか。私はないと思うのですよ。だから、そういうようなことをやらしておくということ自体どうなのか、こう思っているわけでありますが、まず大蔵省さんの方からひとつお伺いしたい。もう時間がありませんので、ひとつ簡潔にお願いしたいと思います。
  54. 林正和

    ○林説明員 先生指摘のように、揮発油税は、物品税の課税対象となっておりますものと比べますと、確かに高い税負担になっております。ただ、先生御案内のとおり、揮発油税は道路整備の特定財源ということでございまして、受益者負担的な視点から課税されておりまして、その税負担も、その使途であります道路整備というところから定められておるものでございます。この点から、私ども、適正に課税されているものというように考えております。  それから、税制改革の一環として特定財源をどうするのかという御指摘でございますが、先般、御案内のとおり、税制調査会から「税制改革についての素案」というものが出されました。そこにおきまして、こうした既存の間接税につきましては、「それぞれの税目の特性、仕組み等にも留意して、その存廃を含め見直しを行う。」というような御指摘がございます。こうした御指摘も踏まえ、現在さらに具体的に税制調査会で新しい間接税の導入との関連も踏まえまして検討がなされているところでございまして、私どもその税制調査会の検討も踏まえて検討してまいりたいと思っております。
  55. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 もう時間がなくなってまいりましたので、ちょっとまだ二、三点聞きたいことがあったのでありますけれども、質問しておりますとほかの方に御迷惑をかけますのでやめますけれども、先ほどからも申し上げておりますように、自治省さんの方でやはり積極的にやってもらわないと。サラリーマンの場合には脱税しようなんて思ったってする手段がないのですから。あったら教えてもらいたいと思うのですが、ないですよ。そうしておいて、この軽油引取税の場合に、脱税ができるような仕組みと言うと語弊がありますけれども、そういうものを放置をしておくというのはやはりうまくない。やはり取り締まるなら取り締まるとか、先ほど言った路上チェックだとか、きちんとやるんだぞ、またやっているよというような姿を見せないと、悪い方に走っていくのが出てくると思うのですよ。だから、そういう体制というのはきちっととってもらわないと、これは将来また大きな問題になっていく可能性もありますので、そういう面は十分留意をしてこれから対処していっていただきたいと思います。  まだ若干質問したいことが残っておりますけれども、時間が参りましたので終わります。
  56. 村山喜一

    村山委員長 次に、小野信一君。
  57. 小野昭雄

    ○小野委員 最初に、大臣所見をお伺いいたします。  このごろ、ここ数年になりますけれども内需拡大という言葉を聞かない日はございません。そこで、大臣がもし大臣の後援会の人に、内需拡大とはどういうことなのですかと聞かれた場合には、どうお答えになるでしょうか。物特の小野信一の質問ではなく、後援会の人に聞かれた場合にどうお答えするか、お聞かせ願いたいと思います。
  58. 中尾栄一

    中尾国務大臣 お答えをさせていただきます。  むしろ、私の立場からしましても、小野先生のような専門的な御判断の内容を聞いて答えたいなと思うくらいでございますけれども、単刀直入に、内需とは一体何なんだ、毎日聞いているけれどもどういうことだ、こういうように今聞かれた場合は、私も私なりに考えまして、現在、経済社会で解決を求められている問題が三つあるのではないか。  たまさかそれが経済審議会の中においても討議をされておるわけでございますが、まず、大幅な対外不均衡の是正と、世界へどのように日本が貢献でき得るかという点が一点ではなかろうか。  第二点は、しからば経済力生活環境、実感といいましょうか、それが乖離をしているんじゃないかという考え方に対しての是正をやっていかなければいかぬ。あるいはまた、それはとりもなおさず国民暮らしの豊かさに直結するものでなければいけない。そういう国民生活の実現を図りたい。  第三点は、多少見解が違うかもしれませんが、東京一極中心主義という言葉が最近よく言われますけれども、東京圏への過剰な依存というものに対して、そこから脱却をして地域経済社会の均衡ある発展でなければなるまい。  こういう課題をずっと踏まえまして、内需主導型の経済構造への転換、また同時に、定着をさせることによりまして目的を同時に達成しなければならないという方向で、かつ達成し得るものであると考えていかなければなりませんので、こういう観点から今後とも内需というものを拡大させる必要があるんだ、このように見解としてはお答えさせていただきたいな、こう思っている次第でございます。
  59. 小野昭雄

    ○小野委員 我が国の対外摩擦が強まりまして、その解決策として内需の拡大の要請がなされ、今や内需拡大がその万能薬かのように宣伝されているように私は思われてなりません。  政府も積極財政に転じまして、NTT株の売却益、あるいは、今回の昭和六十三年度の予算によりますと、公共投資も約二〇%弱拡大をいたしました。しかし、公共事業の増大即内需拡大、やはりこうはならないのだろう、イコールだということにはならないのだろうという気が私はいたします。そういう観点で感ずるのは、内需拡大という言葉がひとり歩きをいたしまして、その内需拡大という内容について国民の合意がなされているのだろうか、必ずしもだれもが内需拡大とはこういうものだよといって一〇〇%賛成しているというような合意はなされていないんじゃないだろうか、そういう気がしてなりません。  そこで、今の日本の置かれておる経済状態、社会状態からすると、今行わなければならない内需拡大というのはどういう条件を満たさなければならないのだろうか、そういうことをお聞きしたいと思います。
  60. 中尾栄一

    中尾国務大臣 読んで字のごとくではございませんが、専門家先生に申し上げるのもどうかと思いますが、言うなれば、日本の国は独自性を発揮して自分で主体的につくっていく、そのものを国内で消費していく、そういう主導的な形を漠として内需拡大と申している人もいるわけでございますが、私は、これだけではなく、貿易摩擦等も踏まえてこれは考えていかなければなるまい。要するに、世界我が国経済の調和ある発展が非常に大事だ、そのためには、拡大均衡のもとで我が国の対外不均衡の是正を図ることがまず要点ではなかろうか、このように思うわけでございます。したがって、ある意味においては輸出というものも極めて大事であって、これをストップさせるのではなく、持続はさせながらも、適度な、輸出の伸びを上回るような輸入の拡大を踏まえて、そして問題の解決点につなげていくということも一つの考え方の基本にならなければなるまいな、このように考えております。
  61. 小野昭雄

    ○小野委員 今大臣がおっしゃっておりましたように、内需拡大とは、国内の需要を何らかの形で喚起して対外貿易摩擦の解消を図ろう、私は抽象的にはそういうことはわかったような気がいたします。しかし、内需拡大による国際均衡の回復といいましても、今までの日本の輸出依存体制を前提として、輸入を拡大することによってこの均衡に近づけるという方法と、むしろ貿易依存体制を低めて、国内生産を国内消費にできるだけ結びつけるということによって輸入を均衡させよう、こういう二つの路線があると思うのです。ただ一〇〇%対〇%、こういう考え方ではなくて、これからの貿易摩擦の均衡の回復の場合には、どちらの形を優先的といいますかウエートを高くして日本経済を運営しようとするのかが大きな一つのポイントになるんじゃないだろうか、そういう気がするものですから、大臣所見をお伺いしておきます。
  62. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先ほどの御質問ともちょっと私自身答えの中で多少オーバーラップすることがあるかもしれませんけれども、その点はお許しを願いまして、まず、輸入拡大といいましても、そのこと自体、我が国に安価な商品が数多く輸入される、また供給されるという意味を持つものかと思います。そういう意味においては、国内市場における競争が当然発生するわけでございまして、その競争を促進し、価格の引き下げにつなげていくという効果も考えられる、こう考えておるわけでございます。こうした価格構造の変化というものをある程度通じまして、我が国経済は、需要面においても供給面におきましても、また内需という言葉が出るわけでございますが、内需主導型の経済構造への転換、定着が図られるべきものと考えておるというのが私どもの考え方の一貫性でございます。
  63. 小野昭雄

    ○小野委員 大臣、もう一度端的にお尋ねしますけれども日本は輸出が非常に大きくて輸入が小さい、そのために貿易が不均衡である、これを是正しなければならないというのが私どもの考え方であり、外国からの要請でもあります。その是正をする場合に、輸出を減少させてできるだけ輸入をふやす方法と、輸出はそのままにしておいて輸入を拡大することによって均衡させる方法と、二つあると思うのです。その場合に、日本経済の体制から言って、どちらにウエートのかかった経済運営にした方が有利だとお考えになりますか。
  64. 中尾栄一

    中尾国務大臣 従来のちょうど五十年代でございましょうか、考えますると、輸出依存型でございまして、あくまでも原材料を輸入して再加工し、なおかつそれを買ってもらうというのが日本の行き方、また生きざまでございました。六十年代に入りまして製品輸入を中心にして輸入も入れてくるという格好が増加しましたけれども、どちらかというと輸出依存型の日本であったことだけは間違いがございません。そういう中において、日本の国は相当に輸出をし、買ってもらうわけでございますから、その分だけ日本の国の増収になるということもございまして、それがまた民間活力にもつながるし、また政府としても非常に豊かさを感ずるような形になる。これが国民一人一人の暮らしに直結するしないは別にいたしまして、そういう構造図であったろうと思うのでございます。  したがいまして、できるならばそういう形が我々には非常にありがたいことではありますけれども、そうしますと外国日本との間におけるデフィシットと申しますかハンディが非常に大きくなってしまいまして、ちなみにアメリカ日本との関係におきましても、九百四十七億ドルというような大きなインバランスを生むというような形になって、これが大変不満的な要素になる。もう少し内需を拡大してくれというのは、何もアメリカだけでなく、ヨーロッパあるいは世界各国が、日本との対応については、日本の方がどうも輸出過剰であって輸入はしてくれてない。我々自体も、買う物があれば買いたいのでございますけれども、買う物がないじゃないかと今日まで言い続けてきたわけでございますが、そのことにおける不満が相当に募ってきたということからしまして、製品輸入を中心にしてもう少し我々自体も輸入に加速度をつけなければなるまい。そして、先ほどの先生のお言葉ではございませんが、輸入と輸出がウエルバランスでいくような形をとっていくことが今からの日本の行き方かな、そういう意味において、日本は輸出入のバランスを保ちながらの経済力の増加という形を考えていくことが理想ではなかろうかなというように考えているというのが実情でございます。
  65. 小野昭雄

    ○小野委員 聞いておって、こう感ずるのです。できるだけ輸出は伸ばさないように、輸入を拡大することによって対外貿易の摩擦を解消していくことが日本のこれからの経済政策だ、そういう感じで私は今お聞きいたしました。今まで日本経済を支えてまいりましたのは、言うまでもなく輸出産業でございました。したがって、輸出産業の日本経済界のリーダーの皆さんは、今大臣がおっしゃるように、できるだけ輸出はふやさないにしても、現状維持によって、輸入を拡大することによってバランスをとりたい、こういう意見を言うだろうと思います。アメリカの方もまた、アメリカは輸出したいわけですから、できるだけ日本の輸入の拡大を望むだろう、そこで、日本経済界とアメリカ経済界は、その意味でそこが一致するだろうと私は思うのです。  問題は、輸出を現状にとどめながら輸入の拡大を図るということになった場合に、我が国経済にどんな影響をもたらすだろうか、悪い影響が発生する場合にどういうことが予想されるだろうか、そのことが心配になってまいりますので、それに対する経企庁の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  66. 中尾栄一

    中尾国務大臣 ある意味において、輸出は現在の程度にとどめても、輸入拡大によってウエルバランスによりフリクションをなくしていく、あるいはまた世界とのバランスを保っていく、この考え方が基本だ、先生からもそのような形の御指摘を今承ったわけでございますが、しからばその輸入によってどういう悪影響が出てくるかということになりますると、安価な商品が相当入ってくるという点もこれは加味しなければなりません。したがって、国内市場の競争は確かにある意味においては促進をされ、それがいい意味において価格の引き下げには大きく役立つこともあろうけれども、同時にデメリットの面もないとは言えないと思います。例えば、それによる失業者、失業率も出てくるかもしれません。そういう点で、価格構造の変化を通じまして、我が国経済が需要面においても供給面においてもやはり内需主導型の形というものはとっていくことにしくはないけれども、それによって波及的影響を与えていくものにはなるべく私どもの中においてこれを調整さしていくということが極めて重要な課題になってくる。輸入を促進することによって出てくるデメリット、これをどのような形で抑えていくかということが私ども国内においては最上、最高の至上的仕事でなければなるまい、このようには考えておる次第でございます。
  67. 小野昭雄

    ○小野委員 輸出を現状維持に抑えて日本経済を考えていきたい、これはそうは思いますけれども、今の我が国の輸出総額からいきまして、現状維持に抑えていった場合にはかなりの貿易摩擦がますます予想されるのではないだろうか、私はそういう感じがいたします。そういう意味で、輸入を拡大することによって我が国のバランスをとろうとした場合に、やはりまず一番影響を受けるのは農産物じゃないだろうか、農業市場ではないだろうか。次に影響を受けるのは生活関連中小企業、小さい企業ではないだろうか。そして、今大臣がおっしゃった失業の問題が影響を受けるのではないだろうか。私はこの三つが非常に大きな問題じゃないだろうかという気がするのですけれども、やはりこの構図は間違いでしょうか。それとも、いや、日本経済はそれを克服していくよ、心配ない、こういう見通しになるのでしょうか。
  68. 中尾栄一

    中尾国務大臣 先先御案内のとおり、現在新経済政策五カ年計画が大体中途に来ているというよりも、もう終わり、大団円のところに差しかかっておる、そして、それがまた大体五月の下旬ごろまでには実り多き経済報告を受けることができるのじゃないか、こう私も期待をしておりますが、その中においても討議をされているのは、全く委員指摘のとおりの問題がございまして、それだけに輸出を、現時点でこれだけのインバランスを持っているものを一遍に払拭できるかと問われると、確かに問題はないとは言えません。  そういう中にありまして、なかんずく失業の発生という問題も真剣にとらえなければなりませんが、円高に伴いまして輸入の増加あるいはまた輸出の停滞が生じ、また海外生産の動きも活発、活性化していくということから、産業構造の転換はどうしても加速化されつつありまして、雇用の確保が重要であることも、これはもう先ほど御指摘をいただいたとおりでございます。失業の問題、雇用の問題等につきましての対処に当たっては、内需主導型の経済成長を図るとともに、ある意味においては新たな技術革新、情報化の成果を生かすということもこれまた大事な問題点ではないか。それからまた、第三次産業や先端技術産業などの新しい分野というものの開拓を図りまして、多様な雇用機会の創出というものを図ることがどうしても必要になってくるのではなかろうか、こう考えます。その雇用の安定にまず最大限の配慮をしていくことがそういう構造の変化に当たっては極めて大事な要素かな、このように考える次第でございます。
  69. 小野昭雄

    ○小野委員 端的にお尋ねしますけれども、今我が国の米価が非常に高い、外国の安いものを輸入して、要するに市場メカニズムの活用によって我が国の農業を構造改善したらいいだろう、こういう意見が多く聞かれる場合がございます。私は、今の日本の米の構造を見た場合に、米作の構造を見た場合に、外国から安い米を輸入しますと、生き延びるのは零細兼業農家だけであって、日本の最も期待する先進的な米づくり農家の方が壊滅的な打撃を受けるのじゃないだろうか、そういう感じがしてならないのですが、米作地帯あるいは農業の我が国の構造に市場メカニズムの導入というものはそういう影響を特に与えるのだという考え方は間違いでしょうか。
  70. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私は、多少二十二年間を振り返って、自分の政治生活の中で一番やってまいりましたのが、私の所属する政党の中では農業問題をやらしていただきました。そういう観点で考えますと、先生の御指摘のとおりでございまして、具体的なことになりますが、例えば、アメリカのカリフォルニア米あるいはタイ国のタイ米というようなものから比べましても相当な偏差値があるわけでございまして、これが全面輸入というようなことになりますると、それはもう壊滅的な専業農家のダメージは言うまでもございません。生き残るのは全くごくわずかな零細な兼業農家である、こういうことにつながってしまうと思います。  ですから、そういう点におきまして、同じフリクションを解決するにしましても、譲るべきものと原点、また同時に日本の自給率、また生存権、そういうもののために譲ってはならないもの、これはきちっと峻別をしなければいくまい。そういう中にあって、国家方針というものが打ち出されて、そして、これも与党も野党も問わず国会としてそれは現実に受けとめて、守るべきものは守ってやるという中にたたずんで、私どもが防波堤をつくってやりませんと、この脆弱なる経済構造をさらに脆弱たらしめて、成り立っていくかと問われるならば、これはとても成り立つものではございませんから、そういう意味における峻別というものは、まさしく委員指摘のとおりに私どもは真剣に考えなければならない問題であると受けとめております。
  71. 小野昭雄

    ○小野委員 新前川レポート、その前の前川レポート、経済審議会が発表したレポート、宮崎レポートといいますか、あるいは政府の発表している資料を見ますと、内需拡大によって特に第三次産業を中心に雇用が創出、拡大されまして、失業の心配はない、こういう楽観論が非常に強いのですけれども、今の日本経済実態、雇用の実態を見た場合に、この楽観論が通る、あるいは理解する地域もあるかもしれませんけれども、東北、北海道、九州、山陰の非常な不況に覆われている人々には、この政府見通しが果たして本当なんだろうか、いや、自分たち生活実感とは全然違うよという感じを持っておるのですけれども、私はその意味大臣所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  72. 中尾栄一

    中尾国務大臣 これはまさにどちらかというと、前川レポート、あるいはまた新経済計画は、全体的にわたってその点においてはまだ私も全部聴取しているわけじゃございませんから、どのような形で描かれているかはここで差し控えたいと思いますけれども、やはり御指摘のとおりそういう構造がつくられていきますると、向こう三年、五年はどうかというような御質問を受けた場合に、確かに今言うた失業者等々の問題などにおきましても、地域的においては第三次産業やその他の事業によって大変に助かる面もございますけれども、ある地域においては全く第三次産業そのものが育ち得ない、また、推進でき得ないという点もないわけではございませんから、そういう点においての救済はどうするかということがまた非常に大きな問題になるのではなかろうかと私は考える次第でございます。したがいまして、そういうものにおける情報をこちらで十分に知悉しながら、それを全般的にわたって万遺漏なきような作業を行うことができるかということが次の経済政策の中にうたわれなければなるまいというのが私の考え方でございまして、そのようにまた取り組んでいこう、このように考えておる次第でございます。
  73. 小野昭雄

    ○小野委員 午前中の質問を終わります。
  74. 村山喜一

    村山委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時三十五分開議
  75. 村山喜一

    村山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小野信一君。
  76. 小野昭雄

    ○小野委員 午前中の質問に引き続き、大臣所見をお伺いします。  私は今ちょっと心配しておるのは、国際化が進み、国際化、国際化という言葉が非常に今言われておりますけれども日本人世界じゅうを往来する世になったからといって、日本人の大部分が永久にこの国土から離れて生活するということではありませんし、日本経済の一構成員として活動していかなければならない、それが大部分の人々の位置でございます。日本人の大部分の人は国民経済の均衡のとれた構成の維持を要求するのは私は当然なことだと思います。現在の貿易の不均衡、一時的な効率性を追求するというのですか、この是正のために日本の産業構造のバランスを崩すということは、私は悔いを千載に残すのではないだろうか、こういう心配をしておるわけです。  同時に、輸出産業が主として日本経済の支配をする、主導権をとるということになりますと、日本の産業構造が過度に単純化するのではないだろうか、そういう危惧を私は持ちます。したがって、輸入の拡大という事柄が日本の産業構造の単純化、単一化をもたらさないような方法を考えなければいけないんじゃないだろうか、そういう気がしてなりません。当然産業構造の単純化というものは日本の国益に反するものだ、私はそう考えておりますけれども経済企画庁はどうお考えになるでしょうか。それは現在の貿易構造の是正、そのインバランスの是正、そういうものと絡み合わせながらどうお考えになるのかをお聞かせ願いたいと思います。
  77. 中尾栄一

    中尾国務大臣 もう先生の言われている意味は私どもも全く同感の思いでございます。ちなみに、通関べースで考えますると、世界における日本のデフィシットといいますかインバランスは全体で九百四十一億ドルくらい、対米関係だけでも五百七億ドル、こう伺っております。これは膨大な数字でございまして、そういうものを解消していくことに全力を挙げることは世界の一員としての義務として当たり前とはいうものの、現実にそういう形で製品輸入を初めといたしまして輸入を徹底せしめていくことが日本のシンプル化につながるんじゃないのか、こういう疑念を持つのは当然だろうと思うのでございます。  私どもも、そういう点におきましては、単一的な形でなく総合、複合的に、なおかつ日本経済というものはインバランスを克服しながらも不均衡な問題点を是正していくということに全力を尽くしていくべきであろうと思っております。  私は、たまさか経済担当のかじ取り役といたしましても、大蔵や通産、さらに運輸、建設、農林というような準経済省に対しましても、この点は深く考慮に入れて、一つ一つのアイテム、例えば先ほど委員指摘の農業問題等もその一つでございますが、そういうような問題におきましても、自給率を高めることは当然のこととはいえ、自給率のあるものまでも全部日本の国は撤廃せしめていくんだというような形は余りとるべき問題ではないというような発想に立つものでございまして、その点においては先生と同意見でございます。
  78. 小野昭雄

    ○小野委員 しつこいようですけれども再度お伺いしますが、現在の貿易黒字の解消のための政策を進めていった場合に、日本の産業構造の単純化には結びつかないものでしょうか。それをどう考えたらいいでしょうか。
  79. 中尾栄一

    中尾国務大臣 全くこれは予測の段階で、私の私見でまことに申しわけなく思っておりますが、御案内のとおり、世界経済国家としての大国アメリカが従来のパターンでございましたが、今これも二割国家、日本が一割、さらにその二分の一がドイツ、ECを含めていきますれば三極コーディネーションというのが一番大事だなというようなことから考えますと、日本はもう既に日本一カ国の日本ではなく、世界の中における経済の大役を担ったという、特にこの六十年以降というものはその感を深くしつつあるものであります。  そういう中にあって、輸入を余りにも拡大することが単一化していくということではございますけれども、反面また輸入を入れることによって非常に競争力を倍増させていく、その競争力を倍増させていくこと自体がある意味における日本のさらなる努力ということにも結びつくと同時に、定着した安定性のある、偏った経済ではない形としても成長でき得るのではないかなという、多少希望的観測と言われれば仕方のないことではございますが、そのような考え方でやっていきたいと思いますし、またそのような方向にできる限り経済企画庁は指導していきたい、こう思っておる次第でございます。
  80. 小野昭雄

    ○小野委員 私は、日本経済を国際的に孤立させたり、自給自足体制を強めろ、こういう主張をしているわけではございません。その点は十分御理解していただけると思います。国際貿易の拡大を図り、世界の国々が協力して連携を強めることが資源のない日本がこれからも繁栄を続けるための最大の要素であることを私は十分承知いたしておるつもりでございます。同時に、国際社会への日本の参加は、自国の、日本経済の自律性を前提として主体的に促進されるべきものではないだろうか。外国から言われたから直ちに、日本の産業構造が単純化しようとどうでもいいのだということで進めるのであっては独立国家としての存在理由がないのではないだろうか、そういうことを私は懸念するわけでございます。内需拡大というものはこの意味で私は真剣に議論しなければならないのではないだろうか、そういう意味でございます。  したがって、一口に言えば余り単純化した議論になりますけれども、輸入拡大のための内需拡大なのか、国民経済の均衡的発展のための内需拡大なのかという議論がもう少し煮詰まってもいいんじゃないだろうか、当然私もそう考えますし大臣も考えると思うのですけれども国民経済の均衡的発展のために内需拡大を行うのだ、そういう立場が堅持されなければならないのだ、こう思うわけでございます。その意味内需拡大というもののための方法、手段あるいは政策路線が大切だ、そう考えます。大臣、もう一度この問題について御意見伺いたいと思います。
  81. 中尾栄一

    中尾国務大臣 結論から先に申し上げますと、委員指摘のとおり、あくまでも日本の国というベース、この上に立って内需拡大をやっていく。内需拡大をやっていくことはもちろん世界のためにもなり得ることでございましょうけれども我が国の、日本の基本的なプリンシプルとして、原点としてこれは考えていくべきものである。そして、日本はしょせん軍事国家ではございませんから、まずその余裕は、余剰、プラスは、あくまでもODAなどを通じましてあるいはDACなどを通じまして世界に対して貢献していくという、その寄与が私どもは大事だろうと思います。したがいまして、私も絶えず持っておる考え方を披瀝させていただきますならば、世界の中において日本の国はアメリカともソ連ともあるいは中国ともそれぞれ門戸を開きながら、そしてなおかつ仲よく結びながら、かといって原点は日本の利益、国家利益を中心にして国を忘れてはならぬという考え方において、私、帰一するものでございます。
  82. 小野昭雄

    ○小野委員 私はその意味で最初に内需拡大とは何だと聞いたのです。私の感じでは、私の考え方では、内需拡大とは国民生活向上させることだ、そういう考え方を大臣から聞きたかったわけでございます。貿易摩擦の解消であるとか、もちろんそれは日本国家がこれからも生きていくためには必要なことでありますけれども、その根底は国民生活向上なのだ、そういう視点をお聞きしたかったわけでございます。  そこで、現在の内需の拡大というのは、貿易摩擦の激化、急激な円高を解消する一つの手段として国民的な合意を形成したのだ、私はこう判断をいたしております。そうなりますと、あたかも貿易がよくないようなニュアンスを感じ取れる場合もあります。余りにも大きな輸出の増大は悪のように感じられる場合もあります。しかし、資源のない日本がこれからも繁栄を続けるためには輸出でなければこれまた生きていけないという側面を持っておるわけでございますので、改めて、今の非常に大きな貿易黒字を持つ日本ではそれを是正しなければならないという大きな政策課題を持ちながらも、日本経済における貿易というものはどういう位置を占めなければならないんだろうか。しかもその貿易というのは今までのように直ちに世界の人々からたたかれるような姿であってはならない、やはり我々自身貿易のあり方、貿易のあるべき姿を設定しなきゃならないんじゃないだろうか。そういう意味でそれらに対する大臣所見をお伺いしたいと思います。
  83. 中尾栄一

    中尾国務大臣 世界的な、グローバルな視野に立っての日本の今の位置づけというものは、非常に大きな存在になったということはもう先生の御指摘のとおりでございまして、日本の国は今日までの五十年代ややもすればそう言われておりましたが、輸出過剰的な、輸出中心主義的な国家体系で、原材料を仕入れ、再加工する、そして買ってもらう、この貿易国家という基本線が今日の日本のファンダメンタルズになっておった、こういうことを考えますと、当然この問題の遂行は悪であるというような認識は全く持ってはならないものである。日本の当たり前の行き方であった。今日の四十年間の日本の隆盛があったというならば、そこに基本線があったということは率直に認めなければならぬ。  ただし、現時点における世界をこれまたグローバルな視野に立って見ますると、世界各国が帰一して申し上げていることは、日本にもうちょっと物を買ってくれまいかという意見が極めて強い。以前は、御案内のとおり、寄与度におきましても輸出がほとんどを占めておった成長率ではございました。しかし、今回の場合は、輸出も当然のことながらやっていきながらも、それに倍する商品の輸入や、また日本で買ってさしあげるべきものがあるならば買っていくという、すなわち自由主義国家としての当たり前の姿を日本は実現、具現化していかなければなるまい。こういうことで、昨今外需が多少マイナスの寄与度になり、そして内需がこのように拡大をされていくという点に至ったことかと思います。  私もバランスのとれた、よく俗にウエルバランスということをいいますが、バランスのとれた形における貿易国家でありたいものである、こう思いますし、同時に、そこにおいて、先ほど御指摘の、日本の本質を忘れたような国家につくりかえては、構造変化をしてはいけないよということもそういう点にあろうかと思いますので、輸出をこのままむしろマイナーに考えて輸入ばかりを考えていく国家に転化しろ、こういうことは私の入れざる意見である、こう考えてよろしいと思います。
  84. 小野昭雄

    ○小野委員 去年だったと思いますけれども日本の貿易のあり方について、対外経済法という形になりますか対外貿易法という形になりますか、日本の貿易のあるべき姿を世界の人々に、日本はこうやりますよという法律をつくってもいいのではないだろうか、こういう提案をしたことがございます。ところが経企庁の局長は、自分自身で自分の手足を縛るようなことは慎んでいきたい、こういうことでございました。その中間になりますか、亡くなりました稲山経団連会長は、自主規制が日本の対外貿易法に匹敵するものだ、それ以外に日本の生きる道はないのだとずっと主張し続けてまいりました。  今の日本の貿易体制、貿易のあり方を見ますと、対外貿易法なり対外経済法がつくれないとするならば、自主規制のみが私どもの輸出を減少させる内的要因になるのでしょうか。その辺もう少し議論していきたいと思うのですけれども、経企庁の貿易のあり方に対する考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  85. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まことに答えが単一化して申しわけないのでございますが、私が経企庁を預かりまして約半年近くなろうとしております。そういう中にあって、昨今の世界動向の中における外需はマイナスに転化した、そして製品輸入が増加した、これに対する評価をあらゆるところでされるわけでございますが、エコノミスト全般といろいろ話をしましても、非常にいい傾向ですなという言葉ははね返ってくるのでございます。しかし、ではそれが基本的な日本の貿易姿勢か、言うなればビヘービアはそれでいいのかという観点からだけ御質問があるとするならば、いや、それは何年後というものにおいては変化が伴うものかもしれませんが、現在つくっております新経済政策、すなわち経済審議会で討議をいただいておる対象の中にも先生指摘問題点が多数入っておりまして、恐らく五月下旬ごろに出たときには委員に御満足いただける内容もあるのではないかな、私はそのように考えております。  そういう意味では、先ほどから申しておりますような調和のとれた日本の貿易外交、それは必ずしも輸出削減で輸入ばかりをふやせばいいというものではない。また、つい昨今までのように輸入ばかりが圧倒的に多くて日本から買うものがもう一つもないとうそぶくだけで対外的に処していくという時代は既に終わったのではないかなという感じはしないでもございません。
  86. 小野昭雄

    ○小野委員 もう一回またその問題を聞きますけれども、対外貿易法あるいは対外経済法というものを日本政府が、日本国がつくって、日本外国に対する経済体制、貿易のあり方はこういう姿勢のもとに進めますよという日本の意思を世界に明らかにする必要があるのじゃないだろうか。もしそうやらないと、そうじゃなくてもいろいろな誤解があったり非常に不愉快なことが続くものですから、日本の貿易に対する考え方を世界に明らかにする必要がありはしないだろうか、そういう感じがするのですが、いかがですか。
  87. 中尾栄一

    中尾国務大臣 そういう意味において、私も今回、予算委員会が始まる直前の本会議、総理は所信表明をいたしまして、私は経済問題を話させていただきましたが、その後半の中においても、日本はあくまでもオープンなソサエティーでなければならない、しかしさはさりながら、そういう意味において調和のとれた、世界の国々が、日本は大変に全般的な、グローバルな視野でいろいろの意味における産業経済構造をつくっておられるなというように持っていきたいということは、私も自分の所信表明の中でなかんずく私自身が入れた言葉ではございました。  しかし、何せ経済というのは国家の差配のもとに全体の企業が動いているかというと、そうではございませんで、民間企業は民間独自の立場で動いている。そういうものを、時に私どもが、これは困ったな、困る現象だなと思うことも間々ございます。そういう点におきましては、これは私どもがある意味における国家社会主義的な立場であるならば、相当にきつく各会社にアドバイスもし、またその方を要請することもできるのでございますが、しかし、示唆はできても実行権限がないということにおいて多少戸惑う面はございます。しかし、先生の御指摘は全く私も同感であるということだけは申し添えておきたいと思います。
  88. 小野昭雄

    ○小野委員 我が国経済の実体を実体以上に世界の人々によく見せておるものに為替レートの問題があるのではないだろうか。為替レートとは何だというと、ファンダメンタルズの反映だという。ファンダメンタルズは何だというといろいろな条項を挙げてまいりますけれども、その条項を反映しているのかというと必ずしもそうではないという。その辺の説明が私自身もわかりませんし、国民も大変わかりにくくているんじゃないだろうか、そういう気がしてなりません。  去年の四月八日、ワシントンでG5とG7が開催されて共同声明がなされました。為替相場について、現行水準周辺が各国のファンダメンタルズをおおむね反映している、こう認識が一致したと声明発表になりました。言いかえますと、円相場は、パリのG7合意後、一ドルについてそのときに既に十円も値上がりしておりまして、一ドル百四十五円前後に切り上がっておりました。にもかかわらず、ファンダメンタルズは、パリのときもワシントンのときも、ファンダメンタルズを反映しております、こう評価いたしております。ところが、現在は百二十円の後半、これまたその当時から比較いたしますと二十数円も円が上昇いたしております。  為替レートというのは何なんだろうかということが私どもの疑問であります。為替レートの相場とファンダメンタルズとはどういう関係にあって、それが今どういう要素が加わることによってわかりにくくなっているのか。企画庁は、現在の為替レートの相場とファンダメンタルズの関係をどのように認識しておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  89. 中尾栄一

    中尾国務大臣 ファンダメンタルズの問題になってまいりましたけれども、為替の問題というのは、これは確かに御指摘のとおり相場でございまして、考えてみますると、中曽根内閣の初期、すなわち、一九八○年代の指針と展望、これを出したときには二百四十円でございました。わずか四年半の間に百二十四、五円というようなところまで来たということは、一体どこにファンダメンタルズがあるのかという御指摘は、物価委員会であるがゆえになおかつそれは持って当たり前のような感じがいたします。  ただ、ファンダメンタルズそのものは非常に重要なファクターでありまして、経済成長率あるいは物価、国際収支等、その国の経済活動や国際競争力を規定するような基礎的条件のことでございますから、しかし、どのような条件をどのように評価するかについては種々の見方があるような感じもいたします。ファンダメンタルズから見て為替レートの適正水準を一義的に論ずることは、ある意味においては多少困難であると申せるかと思いますが、いずれにしましても、国内経済あるいはまた世界経済の成長にとって、為替のレートの安定というものは欠くべからざる重要なことであるということだけは認識をしなければならぬと思いますし、ファンダメンタルズそのものは、ある意味において長期的な視野でとらえていくべきものかなというようにも考える次第でございます。
  90. 小野昭雄

    ○小野委員 私、不思議に思うのは、昨年、我が国の新聞、特に経済記事が、初めは円高と書いておりましたけれども、ドル安という表現に変わっていきました。円高という書き方からドル安という書き方に変わった場合に、やはりそこに転換点というものがあったんじゃないだろうか。そうすると、現在の為替レート一ドル、日本の円の力よりも安いところに転換点があったために、経済の記者たちはドル安という表現に変わったのではないだろうか。経企庁は、今日本の百二十円の後半の為替レートが、本当に実感として正しいのか正しくないのか。日本経済の基礎条件を反映したものだ、数字は厳密にはわからなくても実感としてこれは適当なのか、やはりちょっと高いなという感じがするのか。経済記者たちが円高と書かないでドル安という書き方になったのは、私は、円高が少し進み過ぎたという意味を表現しているのではないだろうか、そう感ずるものですから、経企庁の方はこの問題にどういうお考えを持つのか、お聞かせ願いたいと思います。
  91. 中尾栄一

    中尾国務大臣 全く私ども言葉の使い分けではございませんけれども、確かに一時期、円高・ドル安という言葉ばかりを使っておりました。最近はどの雑誌を見ましても、エコノミストの雑誌を見ましても、円高というよりはドル安なんだという表現に切りかわった面が確かにございます。これはある時点、どういう動向で切りかわったかは、私も定かではございませんけれども、いずれにいたしましてもマスコミ等がそういうことを言いますのは、円高が上昇していく、その速度が余りにも速いということは、ドルそのものが、ああいう双子の赤字などを抱えておるアメリカにおいても、安くなったんだという表現の方がわかりやすいというような面でとらえておるのかなとも私も思うわけでございまして、双子の赤字すなわち財政赤字、貿易赤字、これ二つを合わせましても三千五、六百億ドルになるんでしょうから、そういう点でそんな言葉が用いられておるのかな。  また、円高というのは、円とドルとの関係のみでございますが、ドル安というのは、全般的に、あと一点つけ加えさせていただければ、対円ばかりの発想ではなく、むしろ対マルクとか対ポンドとかというようなことでそのドル安という言葉を使った方が、世界をグローバルなファンダメンタルズでとらえていく場合には、基礎的要素としての言葉として最適だと思われて、こんな言葉が使われたんではないかなというようにも解釈するわけでございます。
  92. 小野昭雄

    ○小野委員 今、日本国民一人当たりの所得世界一だ、アメリカを抜きましたと非常に宣伝をされておりますけれども、それは賃上げなり自分の給料がふえて世界一になったのではなくて、為替レートの変更によってもたらされたものであることは間違いございません。そこで、その為替レートと所得との関係、為替レートによるドル換算ですか、そういうものによってもたらされたものですから、それを公平に見る見方として、このごろ購買力貨幣の見方が大変多くなってまいりました。この購買力貨幣と為替レートとの乖離、要するに現在の為替レートをドル換算して比較をいたしましても、比較すること自体が大変難しいということになったものですから、一日の食糧を買って生活するためにはどれだけの金が必要なんだろうか、そういう意味の購買力貨幣が大変取り上げられるようになりました。  私は、購買力貨幣と為替レートとの乖離、それがなかなか一致しないということは経済政策の失敗といいますか、失敗という言葉が強いならば、やはりそこに不合理があったためにこの乖離が生まれたのではないだろうか、そういう気がするのですけれども、いかがでしょう。
  93. 中尾栄一

    中尾国務大臣 何と言いましょうか、確かに言われてみればその観点も、一つの全体の流れから見るととらえ方は十分あり得ると思います。確かに日本の国は、今や国民所得の一人一人の水準からいきましても、円高のメリット、そういう点だけを考えるならばスイスを抜くのではないか、抜いたのではないかとさえも言われておるわけでございますから、そうなりますと文字どおり日本の国は、円高のこの問題を全体的に複合させますと非常な力になった。  実は、余談で申しわけありませんが、ある国と申し上げた方がいいと思いますが、この間ある国の外務大臣経済大臣がおいでになりまして、自分の国は年間百五十ドルの所得です。百五十ドルというと、私もふっと頭に千五百ドルと勘違いしたのですが、年間百五十ドルということは二万円程度だということになりますから、それじゃ大変なことだな。私ども年間二万ドルというところから見ると、余りと言えば雲泥の差であるということも感ずるわけでございまして、この点私は、御指摘の購買力貨幣、購買力平価といいましょうか、この問題などをとらえましても、日本の国の価値観が、じゃどこまで暮らしと直結しているかということを問われるならば、まだそのこと自体が実感として、実態として国民生活に裏づけられておるとは申せない。これは多少タイムラグもございましょうけれども、この点をどのように実感としてとらえさせていくかということが今からの経済の大きな課題であり、問題であり、宿題である、こう私は思っておる次第でございます。
  94. 小野昭雄

    ○小野委員 終わります。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  95. 小野昭雄

    ○小野委員長代理 次に、草川昭三君。
  96. 草川昭三

    ○草川委員 草川であります。  長官が参議院の方に行かれますので、新経済計画については一問まず頭でさせていただいて、あとは後ほど戻られてから質問をする、こういう形にしたいと思います。  まず最初に、経済企画庁に新経済計画のことについてお伺いをしたいわけでございますけれども、新経済五カ年計画というものを審議している各部会報告がそれぞれ出ておりまして、また、六月にまとまるのではないかと思います。この部会報告を見ますと、経済成長率を三カ四分の三%という言い方をなされております。こういう発表の仕方はたしか初めてだと思うわけでございます。何かお話によりますと、OECD方式を採用するとか、あるいはこれをどう理解するか、幅を持って理解をするというふうに言うのか、ちょっとわかりませんけれども、これはどういう根拠か。そして、これを割って言うならば三・七五というふうに理解をすべきなのか、プラスマイナスの幅として理解をするのか、お答えを願いたいと思います。
  97. 宮本邦男

    ○宮本(邦)政府委員 お答え申し上げます。  新しい経済計画につきましては、現在経済審議会において取りまとめが行われているところでございますけれども、本体の計画自身を審議いたします前に、経済審議会のもとに部会を四つと、それから小委員会を一つ設けまして、それで、いわばそれの素材になります各分野の議論を進めてまいったわけでございます。  その中に企画・公共部会という部会がございます。この部会は、今回の計画の全体の性格づけとか、それから先生今御質問いただきました経済のいわゆるフレームと申しますけれども成長率、それから財政金融政策等々議論している部会でございますけれども、そこで、今御指摘いただきましたように、成長率といたしましては、計画期間中の平均を三カ四分の三%という数字にしたらいかがかという御意見をいただいたわけでございます。  これは先生指摘いただきましたように、OECD等々ではつとに用いられているものでございますが、例えば三・二とか三・三とか小数にいたしますと、これは十分の一単位、十分の一刻みになるわけでございます。しかし、先行き五カ年間ということになりますと非常に不確実性も増しますし、そこまで、例えば三・一なのか三・二なのかというところは非常に幅を持って見なければいかぬということで、十分の一刻みよりも粗い刻みである四分の一刻み、英語で申しますとクォーターということになりますけれども、四分の一刻みということで四分の三%というのがついてございまして、〇・七五と割っていただきますと、これは有効数字が小数点以下二けたまでさらに詳しくなるということでございまして、〇・七五ということではなくて、四分の一刻みの大体四分の三前後ということで三カ四分の三%と言った上で、さらに、この企画・公共部会の報告書では程度というのが後についてございまして、三カ四分の三%程度という非常に粗い、幅のある数字だと御理解いただければ幸いだと思います。
  98. 草川昭三

    ○草川委員 現行計画に比べてなぜ引き下げたのかというのは、後ほど大臣がお見えになってから答弁を願いたいと思います。  もう一つ、後ほどの質問に関連するのでお伺いをしますが、地域・産業部会の中で「国際化時代にふさわしい農政の推進」という項がございます。そして、その他のところで規制緩和ということも言ってきておるわけでございます。この規制緩和のあり方については、農作物、建設などの一層の市場開放という言葉で出ておるわけでございますけれども、それはどの程度のことが議論になっていたのか、お伺いをしたいと思います。
  99. 宮本邦男

    ○宮本(邦)政府委員 今回の新計画の一番大きな課題と申しますか柱は、我が国経済構造内需主導型の経済構造へ変えていく、それを定着させるということになっておりますけれども、この内需主導経済構造への転換定着のためには構造調整を推進しなければいけないわけでございます。この構造調整といいます場合には、経済社会制度、仕組み、従来の発想を大胆に変革するということが求められておりまして、規制緩和はそういった制度改革の一環として、かつその中心をなすものとして特に強力に推進するという認識になってございます。  実はこの規制緩和は、今先生指摘いただきました地域・産業部会での地域の活性化ですとか産業構造調整の円滑化、さらには国際経済関係での市場開放、それともう一つ国民生活部会におきましても、例えば内外価格差を縮小するというような観点から検討いたしておりまして、いろいろな観点からやっているわけでございます。  今申しました三つの観点を簡単に御説明いたしますと、まず国民生活の観点からは、やはり国民の多様化した需要に対応した供給構造の変革を推進しなければいけない。そして、これまで達成いたしました経済成長の成果を国民生活に生かすということが必要でございますので、これは流通ですとか物流にかかわる規制緩和や各種の価格規制の見直しをやらなくちゃいけない、こういう提言をいただいております。  それから、地域産業関係では、やはり構造調整の円滑化を進めるためには、市場原理を基本としなければいけないということですので、これも、業際と申しますけれども、例えば流通とか金融とか情報とか、それぞれ個別の業種の間にまたがるいろいろな新しい活動が出てきておりますので、それを活発化するためには業際的な分野における規制緩和、さらには生産性の低い分野等における規制緩和を図る必要がある。  それから、国際的な観点からは、先生の御指摘ございました市場アクセスの一層の改善を図るために、輸入制限ですとか基準・認証ですとかそういったところを見直すということで、各般にわたって規制緩和をやることにより、特に対外面では、内外に当面性があり、実質的に見ても公正かつ自由な事業機会を確保するという観点から、規制緩和が提案されているわけでございます。
  100. 草川昭三

    ○草川委員 この新経済計画に関する質問は、また大臣が戻られて後にいたします。  そこで二番目の問題は、過日本委員会でも可決をいたしましたネズミ講の問題、無限連鎖講の防止に関する一部改正の件、あるいは商工委員会にかかっております訪問販売法、俗に言う悪徳商法の問題を取り上げてみたいと思うのです。  そこで、まず経済企画庁国民生活センターに寄せられました相談の事例の内容をお伺いしたいわけでございますが、今私が申し上げましたように俗に言うところの悪徳商法に関する被害状況いかん。その内容をできる限り詳細にお答え願いたい、こう思います。
  101. 吉田博

    ○吉田説明員 御説明いたします。  国民生活センターで受け付けました相談件数でございますが、六十年度が七千百件でございます。それから六十一年度が七千九百十八件、こういうふうになっております。  その内容について少し御説明をいたしますと、商品とサービスというふうに分けてみますと、商品に係りますものが全体の四八・七%、それから役務に係りますものが四八%、こうなっております。その他二百六十件で、分類不明というようなものもございますが、商品とサービスではそういうふうになっております。  男女別で御説明をいたしますと、男性が三千五百七十六件で四五・二%、女性が四千二百二十三件で五三・三%、不明が一・五%、こういうふうになっております。  年齢別で御説明をいたしますと、三十代が一番多くて二一・七%、その次が二十代で一八・九%、最近ふえております七十歳以上といいますのが四・六%になっております。  職業別に見ますと、給与生活者が三五・二%、自営・自由業が九・七%、主婦が三三・四%、学生が三・六%、無職が一一・二%、このようになっております。
  102. 草川昭三

    ○草川委員 そこでもう一回、過日問題になりました国利民福の会、これの被害状況というのは一体どの程度になっておるのか。これもネズミ講的に言うならばきのうときょうで違うわけでありますから、どの時点でどのような被害があったのか、あるいは今後どういう形で一番末端というのですか、最近加入をされた方々の最後の被害者層というのはどの程度あるのか。これは、私もいろいろと警察庁等にもお伺いをしたわけでございますが、ひとつこの際経済企画庁の方にお伺いするのが一番適当ではないかと思うので、お伺いをしたいと思います。
  103. 吉田博

    ○吉田説明員 国利民福の会の被害の状況を御説明いたします。  我々の方で、全国都道府県及び政令市につきまして被害の状況、国民生活センター及び消費生活センターに寄せられました苦情の件数を調べておりますが、それによりますと、昨年七月から寄せられておりまして、この二月までの集計では、ネズミ講全体についての件数では百五十四件でございまして、そのうち国利民福の会によるものは百件程度となっております。
  104. 草川昭三

    ○草川委員 それで、その被害を受けられた方々が幾ら国債を買って上の方に、親ネズミの方に送ったのか、ここら辺の金額的な平均値が新聞、テレビ等でも報道されておりますが、経企庁としてどう判断をなされておるか、お伺いします。
  105. 吉田博

    ○吉田説明員 新ネズミ講の仕組みでございますが、国債三十万円分を買いまして、会が指定する先輩会員二人に十五万円ずつ郵送をするということでございます。それに引き続きまして新たに二人の会員を勧誘する、そういうことで子会員、孫会員とふえてまいります。孫会員、三代目の子供及び五代目の子供からその加入者に国債が送られてくることになっておりまして、その合計額は三百万円になるという仕組みでございます。
  106. 草川昭三

    ○草川委員 いずれにいたしましても、全体の図柄がまだ出ておりませんけれども、この法律が通ったことによりもうこの国債ネズミ講というのはつぶれるわけでありますが、何回か申し上げておりますが、その被害者の救済ということも我々は考えていかなければなりません。ぜひ今後の問題として、真剣な対応を立てられたいと思うわけであります。また、きょうの報道によりますと、昨日大蔵委員会でも国税庁も強い関心を持っておるということも出ておるわけでありますから、各省庁関連して対応を立てていただきたいことを要望したいと思います。  それで、この無限連鎖講の改正で、いわゆるネズミ講はもう今後被害がふえないというよりは一切なくなるのか、きちっとした法律がこれでできたのか、こういう基本的なことでございますが、これも経済企画庁の方にお伺いをしたいと思います。(「大丈夫だ、我々の議員立法だから」と呼ぶ者あり)
  107. 植苗竹司

    ○植苗説明員 私がお答えするのはどうかと思いますが、我々の考えていることを申し上げます。  今般の改正によりまして、現在問題となっております国債を用いたネズミ講に関しまして、加入を勧誘した者に対しましては刑事罰が科せられるということになってございまして、このような講に新たに加入する者はいなくなると存じます。したがいまして、現在起こっているような被害の蔓延はとめられると思います。さらに、国債以外のいろいろな商品券その他につきましてもこの改正案の中に全部含まれておりますので、今後の被害の発生につきましては未然に完全に防止されると考えております。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 今、こちらから議員立法だからというお話があったのですが、実際そのとおりでございまして、私がなぜ今この問題を取り上げたのかといいますと、実はベルギーダイヤモンドの反省という問題があるわけでありまして、ベルギーダイヤモンドについては、警察庁は非常に熱心な取り組みをしたわけですが、最終的には起訴に至りませんでした。私どもも、当時検察の方々とも何回かお話を申し上げましたが、これも当時の天下一家の会という問題があって、議員立法で非常に慌てて法律をつくったという要因があって、ベルギーダイヤモンドについては、残念ながら起訴する段階に至っていなかったという苦い経験があるわけであります。  そこで、ネズミ講にしてもベルギーダイヤモンドのようなマルチにしても、マルチのシステムというのは、今後もいろいろと形を変えて出てくるのではないかという心配があるわけです。そこで、マルチ全体をどのように取り締まることができるのか、あるいはまた、マルチまがいのようないろいろな被害がたくさんあるわけでございますので、この点ひとつ通産省からお答え願いたいわけです。  その前に、警察庁にも来ていただいておりますので、ごく最近のいわゆる悪徳商法全体の俯瞰図というのですか、どのようなものが起き、また、警察庁生活経済課としてどういう対応を立てておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  109. 泉幸伸

    ○泉説明員 警察では、消費者被害の防止という観点から、特に高齢者、主婦などの商取引にふなれな人たちを対象とした悪質商法に係る事犯に対し、被害の未然防止や拡大防止を最重点とした取り締まりを積極的に実施しているところでございます。その結果、先物取引、原野商法などの資産形成をめぐる事犯、あるいは訪問販売事案、健康食品をめぐる事案など、多数を検挙しておるところでございます。  ごくかいつまんで、最近の例を一、二申し上げさせていただきますと、その一つは、栃木県警が検挙いたしました、家庭の主婦を対象に先物取引であることを隠して、銀行預金より有利な利殖であると強調して取引に巻き込み、約一千五百人から総額約三十八億円をだまし取っていた業者七人を詐欺罪で逮捕した海外先物取引商法の事犯、あるいは那須高原の原野商法で以前被害に遭った人を対象に、新たに土地売買を仮装いたしまして約百人から総額十一億円余りをだまし取っていた不動産業者九名を逮捕した、新原野商法といいますか二次原野商法という呼び方をしておりますが、そういう事案等がございます。  警察といたしましては、消費者保護、弱者保護の観点から、今後ともこうした悪質商法の取り締まりを徹底していく所存でございます。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 東京都の高齢化社会における消費者問題に関する調査研究報告書というのがあるわけですが、これは昭和六十一年の九月であります。それから、国民生活センターの高齢者相談の実態というのが六十二年の二月に発表されております。これらの被害状況等を見ていますと、在宅高齢者をターゲットにした訪問取引というものでかなりの犠牲が出ておるということが今の警察庁の報告にもあるわけでありますし、私が今申し上げた点にも報告されております。  ネズミ講は、国利民福の会のようなものができましたので相当早く手を打つことができた、しかしベルギーダイヤモンドのようなシステムの悪徳商法、ベルギーダイヤモンドは別としまして、そういうシステムは依然として後を絶たないということになるわけで、それを取り締まるには、やはり訪問販売法の改正が非常に重要な役割を果たすことになると思うのです。それで、これも商工委員会で一昨日ですか可決をし、参議院の方へ送られておるわけでありますが、この訪問販売法の改正によって私が心配しておるような事案というものはきちっと処理できるのかどうか、そのあたり問題点を含めて通産省の方から答弁を願いたいと思います。
  111. 塩谷隆英

    ○塩谷説明員 昭和五十一年に制定されました訪問販売法でございますが、その第三章におきまして連鎖販売取引というものを規定いたしておりまして、いわゆるマルチ商法を規制しているわけであります。連鎖販売取引と申しますのは、物品の販売の事業であって、商品の再販売をする者を特定の利益、すなわち人を組織に加盟させることによって得られる加盟料、いわゆるリクルート料と我々は言っておりますが、そういう利益が得られることをもって組織に誘って、その者と多額の負担を条件とする取引をするものを言っております。  この法律の制定によりまして、昭和四十年代後半に社会問題化いたしました悪質なマルチ商法というものは鎮静化したのでありますが、近年、多くの点でマルチ商法と共通の特徴を有している反面で、物品の再販売を行う者との取引ではなくて、委託販売や紹介販売をする者との取引といった点でマルチ商法とは異なった、いわゆる先生指摘のマルチまがい商法というものが出現してまいりまして、これによる消費者トラブルが生じたわけであります。御指摘いただきましたベルギーダイヤモンド社の商法はこの紹介販売という形態をとっておりまして、現行の訪問販売法では有効に対処するには無理があったというふうに考えております。  そこで、今般、このようないわば脱法的な商法をも規制し得るように、訪問販売法の連鎖販売取引の定義規定の拡大を行いまして、「物品の販売の事業」という点を「有償で行う役務の提供」の事業にまで拡大をするとともに、取引の相手方として物品の再販売をする者のほかに受託販売をする者、すなわち委託を受けて販売をする者、さらには紹介販売をする者というものを追加することといたしました。  今回の訪問販売法の改正案、このほかにも訪問販売及び通信販売の規制の強化等に関して改正が盛り込まれているのでありますが、先生おっしゃったように、昨日、衆議院の商工委員会で可決されておりまして、近く成立の運びになるものと期待いたしておるところであります。  通産省といたしましては、この改正が実現しました暁には、ベルギーダイヤモンドのような商法は明確に規制の対象になるわけでありまして、本法の厳正な運用によりましてこうした悪質の商法の再発防止が図れるものというふうに考えております。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 「そのあつせんを含む。」という第十一条の改正がなされたわけですから、ベルギーダイヤモンドのような被害がこれでなくなると私ども大いに期待をしておるわけでございますので、この法の精神というものがぜひ生かされるように、今後の努力お願いしたいところであります。  そこで、今度は流通問題に入りまして、生乳、牛乳の価格問題についてお伺いをしたいと思います。  昭和六十三年度の加工原料乳保証価格が三年連続して三・五%引き下げをされました。これで政府の保証価格が決まったわけでありますから、飲用向けの生乳価格は一体どういうことになるのかということに非常に重大な関心が払われているわけです。そこで、四月に入ってもう後半でございますが、四月以降にどのような乳価あるいはどういうような乳質といった細部の問題等、本来ならば法律に基づく価格というものが決められていなければいけないわけでございますが、生乳取引の条件はただいまのところどういう状況になっているのか、お伺いをしたいと思います。
  113. 窪田武

    ○窪田説明員 生乳の取引につきましては、先ほど先生の御質問にございましたように、加工原料乳については政府の方が価格として決めておりますが、生乳取引自体は、価格問題も含めまして、それぞれ生産者団体であります指定団体と乳業メーカーとの間における自由な取引によりまして、交渉によって行われているということが基本でございまして、従来からそのように行っているところでございます。  六十三年度の生乳取引条件につきましては、既に双方、生産者団体でございます指定団体と乳業メーカーとの間で交渉が開始されております。その開始の状況につきましては、御指摘のように合意が成立したというところはまだ聞いておりませんが、私どもといたしましては、今後とも当事者間の交渉が促進しますように、現在助言指導を行っている段階でございます。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 その助言指導ということでもう一回お伺いいたしますが、窪田課長は、三月二十四日の畜産振興審議会酪農部会のときに記者会見をなすったようでありますけれども、報道によりますと、「保証価格が飲用むけ乳価に連動するのに「危惧」の念を示」された。そして「「乳業メーカーは生産者や販売店に大人げないことをしないよう」求める発言」をされた。これは生産者団体からは、非常に高く評価をされておみえになるわけであります。その「大人げない」というのは、メーカーが非常に強力な力を持っておる、メーカーは保証価格の決定によってそれに連動させよう、こういうようなことが当然予想されるので、それを牽制したのではないかと言われておるわけでございますが、生産者の立場を理解したものと受けとめていいのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  115. 窪田武

    ○窪田説明員 先ほども申し上げましたように、具体的な生乳取引の条件につきましては、指定団体とメーカーとの間の自由な交渉によって行われるということでございますが、地域によって多少の差はあるわけでございます。指定団体いわゆる生産者側は、生乳需給が好転しているということもございまして、生乳の取引価格の据え置きを主張しております。また、乳業メーカー側は、現実の生乳の生産費自体が下がっているということを反映いたしまして、応分の値下げを主張しているという前哨戦を行っている段階でございまして、私どもが決めましたのは、先ほど申し上げましたように加工原料乳の価格でございまして、これはある程度生乳生産費が下がっているということを考慮いたしまして、私どもとしては加工原料乳の保証価格を引き下げたわけでございますが、これは飲用牛乳とはまた別の問題でございます。飲用牛乳の方は飲用牛乳として、生産者団体と乳業メーカーとの間で、下がっているということを必ずしも前提としないで忌憚のない議論を尽くして、双方にとって納得が得られるまで十分話し合いをしていくことが必要であるという趣旨で申し述べたものでございます。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 十分議論をしなさいということで指導をされた、それで交渉は指定団体とメーカー、これはよくわかるわけでありますが、私がなぜこの問題を取り上げておるかといいますと、昨年も一昨年も、過去の実例からいいますと、本来、各生産者の酪農家の方々が生産をした生乳というものがメーカーに売られる、売る場合には当然、こういう条件でこういう価格でこういう乳質で売りますよということを事前にお互いに約束をして、ことし一年間の生乳を納入する、これは当然なことだと思うのです。そしてまた、酪振法にもそのようなことが明記をされているわけです。  しかし、残念ながら指定団体と生乳メーカーとの間には、事前にいわゆる協議内容というものが決まっていない。とにかく納入するだけは納入をする、そして価格は常に後から決まっていく。しかも、その価格交渉の中には、いわゆるその他向けという項があって、その他としてメーカーは受け取り、その他の内容、価格というものは明示をされていない。結局、出荷全体の生乳を割り算で割ってみると、非常に価格が安いものを受け取らざるを得ない、安い価格を受け取らざるを得ないという大変強い不満が何回かあったわけであります。  そこで、今課長の方からも答弁がありましたように、生産者団体の方は非常に強気で今回交渉に臨みたいということを言っておるわけでありますけれども、なぜ三月中にこの交渉が決まって、四月一日から、新年度かくかくしかじかということで納入ができなかったのか、過去の実績で私ども何回かそういうことを言っておるわけでありますが、指導官庁としてどう判断をなされるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  117. 窪田武

    ○窪田説明員 お答えいたします。  先生おっしゃるように、生乳の取引というのは毎日毎日の話でございまして、年度がかわったからといって急に、あるいは取引条件が決まらないからといってとめるわけにもいきませんので、現実としては引き続きやっておるわけでございますが、おっしゃるように、やはり物を納入する前に値段なり取引条件がきちんと決まっていないというのは、それぞれの商慣習で従来どおりということでやっているというところもございますが、私どもとしては甚だ好ましくないというふうに思っておりまして、早い時期にやるようにということで指導しておるわけでございます。特にことしの場合につきましては、価格の問題も先ほど申し上げたような基本的な対立が事前にございましたし、現在も今やっておるところでございます。  また、もう一つは引き取りの数量でございますが、数量につきましても先ほども申し上げましたように、需給の状況が好転いたしておりますので、双方とも数量をふやすという観点では一致しているわけですが、どのくらいふやすかということについても具体的にはまだ決まっていないというのが現実でございまして、数量、価格、双方について双方で現在交渉している最中でございますので、できるだけ早くそれらが決まっていくように、私どもも指導助言してまいりたいというふうに思っております。
  118. 草川昭三

    ○草川委員 もう一歩突っ込んで質問をしたいと思うのですけれども、問題は、各指定団体が価格交渉をするのですが、相手は各県それぞれ違いますけれども、全国で平均をしてみると、大手乳業各社というのはわずかですよね、大手乳業メーカーというのは三社か四社、こういうところに集中をするわけでありますから、そういう方々とどちらにしても話し合いをするということになります。そうすると、各県で一生懸命交渉をしても、交渉相手の方は大手で、数社ということになるわけでありますから、勢い価格というものは中央交渉的なものがなければいかぬわけですよ。ところが、中央で統一した価格交渉というのは今やられていないと思うのですが、それはどうしてやられていないのか、あるいは農水省としてはそういう交渉をする場をつくらせる考え方があるのか、どうお考えになっておみえになるのか、お伺いをします。
  119. 窪田武

    ○窪田説明員 私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、価格も含めまして生乳の取引自体は、生産者団体と乳業メーカーとの間の自由な取引によって行われるということが基本であるというふうに思っております。その場合に、確かに乳業メーカー、特に大手でございますが、につきましては全国段階に参謀本部みたいなものがある、一方、生産者団体は、御案内のように都道府県段階におきます指定生産者団体というところで、生乳につきましては一元的な取引を行っておるということでございまして、県段階においては、その県の生乳は全部指定生産者団体が握っているという状況でございますので、そういうように片っ方は全国段階、片っ方は県における生乳を一元的に取り仕切っているという意味で、自由で対等な交渉が可能なのではなかろうか。  さらに、中央段階におきましては、それぞれ全農なり全酪連なり中央酪農会議という全国団体によっていろいろ相談もしておるようでございまして、全国段階でお互い交渉をするということにつきましては、それぞれ各地域におけるいろいろ実情がございますので、それぞれの実情に応じて価格なり取引条件が決められるべきものであるというふうに考えております。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 草川昭三

    ○草川委員 交渉は、各県の指定団体、いわゆる酪農家の方々の集まりとメーカーとはそれは当然やられるわけですけれども、それがうまく交渉しておったとするならば、三月中に交渉が成立をして、四月一日から新しい条件で酪農家の方々はメーカーに生乳を納入することができるのではないだろうか。だからこれができない理由というのは、明らかにメーカー側の力が強くて、生産者団体であるところの指定団体の方が相対的に力が弱いのではないか、私はこう言いたいわけです。この力が均衡で対等であるならば、少なくともことし一年間の納入条件については三月中にすべての条件がクリアをして、四月からは新しい契約をして、新しい条件で納入することができるのではないだろうか。どちらが強い、弱いという言い方よりも、ただいまの現状を客観的に見るならば、明らかにメーカー側の方が力が強いのではないか、私はこう思うのですが、その点はどうお考えになられますか。
  121. 窪田武

    ○窪田説明員 生乳の取引交渉が現在までまだまとまっていないということにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、必ずしも乳業メーカー側が強いからあるいはどちらかが弱い――もし本当に強ければ押しつけて早く決めることもあろうかと思いますし、対等であれば対等であることで早く決まるかといいますと、やはり相当長引いて交渉することもあるので、必ずしもどちらが強い、どちらが弱いということが、交渉が現在までまとまっていないという理由ではないというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  122. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ強い、弱いの議論はよしましょう。しかし残念ながら、酪振法できちっと明記をされている事前に条件を決めようじゃないか、こういうことが決まっていないということは事実なんですね。そのことはいいと思っておみえになりますのか、やむを得ないと思っておみえになるのか、どちらですか。
  123. 窪田武

    ○窪田説明員 先生指摘のとおり、法律の建前からいいますと、事前にそういうものを内容を決めまして、かつそれを文書にして提起するというのが建前でございまして、これにつきましては私どもも、そのようにすべく努力をしておるわけでございますが、肝心の契約の内容そのものが今申し上げましたような事情でおくれておるという事情でございます。ただ、それを文書にしまして契約するということにつきましては、既に乳業メーカー側も生産者団体側もその機運が高まっておりますので、内容さえ決まれば、契約の文書化につきましては早急に作業が進められるというふうに思っております。
  124. 草川昭三

    ○草川委員 では、どれぐらいの時期になればきちっとした契約ができるか、その見通しについてお伺いをします。
  125. 窪田武

    ○窪田説明員 先ほども申し上げましたように、生乳の文書化の問題の前提といたします生乳取引条件そのものの問題についてまだ見通しが立っていない段階でございますので、できるだけ早くということで、私ども実際の当事者でございませんので、その中身、内容がいつまでに決まるかということについては、何とも判断できないところでございます。
  126. 草川昭三

    ○草川委員 私、今度はこういう質問をしたいと思うのですが、中央酪農会議というのがございますが、そこの内部に乳価・取引等対策委員会というのがあります。中央酪農会議というのは、農林省の先輩の方々も随分いろいろと関連をしておみえになりますから十分承知をしてみえる団体だと思うのですが、この文章を見ますと、非常に強い調子でいろいろなことを言っておみえになります。  一つ紹介をしますと、これはことしの二月九日の「昭和六十三年度生乳取引に当っての基本的考え方」という文書になっておるわけですが、「昨年度は、多くの指定団体において生乳取引交渉の早期妥結を急ぐあまり、販売乳量に重点を置き、大幅な値下げとなったことを反省し、今年度は需給改善の実態を踏まえ、安易に妥協することなく、ねばり強く対応」したい。そして二番目にも、メーカーの利益は生産者にも還元すべきではなかろうかという趣旨の問題提起。それから四番目には、「乳業者側の整合性を欠く要求や、乳業者だけの利益を目的とした、一方的な不当要求に対しては、乳業者の駆け引きに惑わされることなく、毅然とした態度で拒否」をしたい。それからまた、各地区で「情報交換を密にして生乳取引交渉を円滑に行うものとする。」というような趣旨のことが書いてあります。  こういう非常に強い言葉で「基本的考え方(メモ)」というのが出ておるわけでございますが、これは先ほどから課長が、各地区で自主的に交渉しておるのですよ、どちらが強いとか弱いとかいうことではない、そして交渉もそれぞれの条件でうまくいくのではないだろうかという、非常に楽観的な御答弁をなすっておみえになりますけれども、私は事態は非常に深刻ではないだろうかと思うのです。  課長の三月二十四日の酪農部会での記者会見の大人げないことをしないようにという発言は、乳業メーカーに対して牽制球を投げた、その課長のスタンスというのは、明らかに今申し上げたような中酪からの問題提起あるいは生産者の立場というのをそれなりに理解をしたからこそ、このような発言になったと私は思うのです。でありますから、それならばなぜもっとメーカー側と生産者団体との話し合いというのを、中央でいろいろなことを話すような機会をなぜつくらないのか、こういう不満があるわけであります。  ちなみに、中小企業協同組合法には、大手メーカーに対して下請等の会社が団体交渉の申し入れをした場合には、応諾義務というのが明確に書かれております。労働組合は言うまでもないことですけれども、使用者側に対して交渉したい、そして団体交渉の申し入れをした場合に使用者側が断れば、不当労働行為という処分を受けることになるわけです。あるいは労働委員会は、話し合いをしなさい、交渉しなさいということが言えるわけであります。今の生産者団体とメーカー側との関係は、明らかにそういう状況に来ておるのではないだろうか。  だから、実際上の乳価交渉ということになりますと、「その他向け」ということで非常に安く買いたたかれてしまって手取りが少なくなるというような問題があったり、あるいは先ほども触れておりますように、今なおきちっとした文書契約というのがなされていない。こういうことがずるずるとここ数年来続いておるわけですから、私は、酪農家の方々の立場というのは非常に苦しいという状況に陥っているのではないかと思うのです。だから、酪農家の若い青年なんかと、後継ぎの方とお話をしますと、本当に将来が不安だということを何回か言われるわけであります。少なくとも物を売る場合には、きちっとした契約書があって物を売るわけです。そして、その保証があったからこそ支払いがあるわけであります。  農家の方々は指定団体というものを信用して牛乳を納入する。指定団体は一生懸命になってメーカーと交渉する。しかし、メーカー側の方の力が強いために、残念ながら最後になって拒否をされると困るから、泣く泣く「その他向け」という条項を認めて安い生乳というものを納入せざるを得ない。だから私は、そういう問題を解決するには、中小企業等協同組合法で認められたような応諾義務というのをきちっとメーカー側にも与えてやるような配慮をすることが、指導官庁である農水省の大人げないことをするなという言葉につながっていくと思うのです。だから、言葉の問題ではなくて、そういう交渉に対する応諾義務をきちっとしてあげるようなことがなぜできないのだろうか、これを私どもは繰り返し申し上げておるところであります。  そこで、全国生乳連という組織がございますけれども、これが一番なじむ組織ではないだろうか。細かい価格交渉は各県段階で結構だけれども、メーカーとの話し合いの基本的な条件等については、全国生乳連という農業協同組合をせっかく農水省も認めたわけですから、それに与えてあげたらどうだろうということを私は申し上げたいわけであります。しかし、これは生乳の販売事業を行っていないからだめだというような非常に冷たい態度を農水省は持っておみえになるようでございますが、そういう時期ではない。全国の中央酪農会議の方でも、ことしの生乳取引については厳しいぞ、こういう非常に強い指示を出しておるわけですから、せっかく全国生乳連というような農業協同組合を農水省は認めたんだから、そこでメーカーとの話し合いの場を提供するという気持ちはないのかどうか。  労働組合的に言うならば、総評、同盟というものがある、新しく連合というのが生まれたわけですが、この連合だって政府幾らでも話し合いをしておるじゃないですか。あるいは、日経連という経営者団体と一般的な話し合いをしております。賃金を幾らにするのかという話を連合という組織は日経連としておるわけではありませんよ。政府と話し合いをしておるわけではありませんけれども、大きくことしの賃上げについては基本的に我々の考え方はこうだから政府よろしく、あるいは日経連どうだ、あるいは日経連の方からは、そうは言うけれども国際経済に対応するにはしかじかかくかくというような話が出る。そういう話が末端に流れてきて、それぞれの各県の段階における指定団体とメーカーで、我が県はこうやりましょう、隣の県はこうやりましょう、こういう交渉になっていくと思うのですが、根本のところが、いわゆる基本的なスタンスの理解がメーカー側と酪農団体との間にないものですから非常に条件が悪くなる、買いたたかれるという状況が生まれるのではないかと思うのですが、その点はどうお考えになられますか。
  127. 窪田武

    ○窪田説明員 先生指摘のとおり、生産者団体の中央団体の幾つかにおきまして、本年の生乳取引の条件について、例えば談話として公表したり、あるいは大手三社に口頭で要請に行ったり、あるいは各指定団体にこういう心構えでやったらどうかということで、いろいろ作戦を練っておるというのは事実でございます。  それで中央段階には、先ほど申し上げましたように、全農なり全酪連なり中央酪農会議なり、そういう全国団体がございまして、そういう団体が相互にいろいろ生産者団体といたしまして作戦を練り合って、場合によっては大手ともお話し合いをするということになっております。  ただ、御案内のように、中央段階で全部物事を決めるというわけにはまいらない情勢でございますので、その点は実際の問題といたしましては、それぞれこういう問題がある、こういう問題があるということで、その都度話し合いが行われているというふうに聞いております。
  128. 草川昭三

    ○草川委員 酪農団体の各指定団体の二十幾つの団体で全国生乳連というのがあるわけですが、これは農水省が認められた団体ですから御存じだと思うのです。この組織の方々と農水省は何回くらい過去に話し合いをされたのか、お伺いをしたいと思います。
  129. 窪田武

    ○窪田説明員 全国生乳連の方々とは、去年の夏から秋にかけまして数回以上いろいろ話をいたしましたけれども、それ以降直接こういう問題がある、こういう問題があるということについて、私どもの方に話があったことはございません。
  130. 草川昭三

    ○草川委員 私は、この問題にかかわり合いをしてから、酪農家の方々の現場の声も随分聞いております。ぜひ農水省の方も、全国生乳連の方から話がないからおれは会わぬのだということではなくて、いろいろと積極的な話し合いの場を設けていただいて、そして私が今申し上げておりますように、少なくとも全国で二十を超す酪農団体の方々が一生懸命、日本の将来の酪農のあるべき姿はどうかという熱心な取り組みをし、真剣に乳価交渉にも取り組もうとしておみえになるわけでありますから、私は、ぜひ話し合いをしていただくことをお勧めしたいと思うのです。そういう申し出があったら、お受けになりますか。
  131. 窪田武

    ○窪田説明員 ただいまの御提案でございますけれども、御案内のように全国生乳連というのは、団体は四十七都道府県にあるわけでございますが、そのうちの二十一ということでございまして、もっと全国的な団体としては中央酪農会議が全部の指定団体を網羅しているところでございますので、その辺の調整を行う必要があろうかと思っております。
  132. 草川昭三

    ○草川委員 過去に会っておみえになるわけですから、どういう調整が必要なのか。話し合いをするにも調整が要るのか。別に、農水省と対決をしてけんかをするという団体ではないわけでありまして、真剣に酪農問題の将来を心配をしながらやっておみえになる組織でありますから、とりあえず私は、農水省とお話し合いをする機会を勧めたいと思うわけであります。  そして、酪振法二十条には、「紛争のあっせん又は調停」という条項がございます。これをめぐることが頭にあるからこそ、農水省は今のような答弁をしておみえになると思うのですけれども法律できちっと「紛争のあっせん又は調停」という項があるならば、少なくとも指定団体がそれを各県知事に申し入れをした場合には受けざるを得ませんね。二十の団体がそういうことをした場合に、当然各県は農水省に相談をなされると思うのです。二十だから、半分だからそういう「紛争のあっせん又は調停」はだめだとおっしゃるのか、あるいはそういう声が巻き上がったとするならば、積極的に農水省は話を聞くという立場に立つのか、どういう立場に立つのか、お伺いをしたいと思うのです。
  133. 窪田武

    ○窪田説明員 そういう問題が各県段階で提起される場合、それぞれ各県の意見も聞きながら、それぞれの各県の段階における対応を相談して対応したいと思います。全国段階というのは、その後の問題であろうかと思っております。
  134. 草川昭三

    ○草川委員 時間が大分たちまして、これで押し問答する形になりますのでこれはまた次の機会に譲りますが、指導官庁であるところの農水省が前向きの対応を立てられることが、これからの日本の酪農経営のあり方に忠実にこたえられることになるのではないかと私は思います。ぜひ、従来の行きがかりを捨てて、乳価交渉にいろいろな意味でのアドバイス、あるいは問題点の解決のために御支援を賜りたいということを強く要望して、この生乳問題を終わりたいと思います。  そこで次は、生糸価格問題についてお伺いをしたいと思います。  今我が国の農業政策というものについて、基本的にいろいろな外圧等も来ておることは十分承知をしておるわけでありますし、一番最初に経済企画庁の方からも規制緩和ということの問題を提起したわけでございますが、政府が管理をいたしておりますところの生糸は、最近国際価格というものを一切無視して非常に高値で張りついているわけです。生糸価格問題については、蚕糸価格安定制度という制度があるわけですけれども、この制度は、安定価格帯の中に生糸価格をおさめる、そして高ければ放出をする、安ければ買い入れをする、こういう制度になっておるわけですが、現在の生糸価格というのは安定上位価格を超えた状態が非常に長く続いている。一体この理由は何か。制度上に欠陥があるからこういうことになっておるのではないかと思うのですが、あるいはまた、事業団放出が足りないから価格が上位に張りついておるのか、お伺いしたいと思います。
  135. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答え申し上げます。  先生今申されましたように、最近の生糸価格は、昨年の十月以降、一時価格帯の中におさまったことがございますけれども価格帯を超えて推移しておるわけです。これは先生も御案内のとおり、六十一生糸年度に極端な流通消費の減少がありまして、それを回復する動きがあることを背景にいたしまして、国内における昨年の繭の減産だとか製糸の生産縮小、あるいは海外産地における生糸等の価格の上昇を要因とした強気の見方が優勢となっておりまして、昨年十月以降、先ほど申し上げましたように、一時鎮静をいたしましたが、安定上位価格を超えて推移をしているわけでございます。  しかし、国内における生糸の流通消費が順調であること、依然として強気の見方が継続している状態にあること、そういうことからその後再び、昨年十一月、十二月以降から、また最近特に上昇しておりますが、価格が上昇しておる、こういう状況でございますので、引き続き制度の趣旨にのっとりまして事業団が持っております在庫生糸放出いたしまして、価格の安定に努めてきているところでございます。昨年の十月以降、十九回にわたって売り渡しをしてきておるわけでございまして、私どもとしてはそれなりの努力をしているつもりでございますが、価格につきましては、先ほど先生指摘ございましたように、上位価格を超えて推移しているという実態でございます。
  136. 草川昭三

    ○草川委員 今、現状の説明があったわけですが、どうして下がらないのかということについて、制度上の欠陥があるのじゃないか。あるいはまた、作為的な問題があるからこそ、蚕糸事業団が二十次の在庫の糸を放出しておるのですけれども、逆に買い人気をあおって高くなっておる、こういうことが日経新聞の報道にもあるわけでありますけれども、考えられませんね。  そこで、これは私ども調査でございますけれども生糸というのは、蚕糸業法によって国の定める検査機関で検査を受けなければ売買できない、こういうことになっているわけでありますけれども、最近の検査数量を見ますと、生産量の六〇%程度より検査がされておりません。検査がされていないというのは、検査をしたものでないと市場に持ち込むことができない、だから売り買いをする市場に持ち込む量が少ないものですから価格が上がるのではないだろうか、そして、放出も少しより放出しませんから上位に張りついてしまうのじゃないか、こういう素朴な疑問が出てくるわけでございますが、どうお考えになられますか。
  137. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 先生今お話ございましたように、生糸につきましては、一定の国の行う検査、その他検査を受けたものでなければ売買取引をしてはならないという規定がございまして、生産数量と受検数量を比較いたしますと、検査を受けてないまま流通している、いわば法律どおりにやっていないというのが確かにございます。一部検査を受けなくてもいいものもございますけれども、そういうものがありまして、私どもとしましては、国会でお決めいただいた法律ですから守るべきことは守れということで指導をいたしておりますし、さらに引き続いて受検をするような指導をしてまいりたいと思っております。  今、売り渡し数量が少ないというお話がございましたが、私ども需給事情も勘案しながら十九回にもわたって売ってきておりまして、私どもなりの努力をしているつもりでございます。なお、今後とも価格の状況あるいは需給状況、そういうものを見ながら引き続き制度の趣旨に沿ったような運営をしてまいりたいと考えております。
  138. 草川昭三

    ○草川委員 今農水省自身も、国の定める法律がせっかくありながら、検査を受けてなくて流通をするということは問題だということをお認めになっておられますが、それはぜひ厳格な対応をしていただきたいと思うのです。  ちなみに、生糸の生産数量と検査数量の比較を申し上げますが、この数字農水省のデータで、私の方の事務所に来たものでございますので間違いはないと思いますが、昨年、六十二年の一月に生糸の総生産量に対する検査数量のパーセントは九八%です。これが三月に来ますと九九%まで上がってきます。ところが、四月からは七一%とがたんと下がりまして、月を追いまして、五月が六〇%、六月が六二%、六〇%、五九、五九、五七、六一、六二――昨年の十二月が六二%というような形で落ち込んでおるわけです。この落ち込んでおるのが、約四割近く無検査のものが流れているわけでありますから、これはどう考えてもおかしい。それで国の方は、きちっと検査の職員というのはお見えになるわけですが、もしも四割も検査をしなくても済むなら、もう思い切って合理化のために検査をやめたらいいと思うのですよね。  この検査というのは、大体外国に輸出をするときに、日本生糸はかくかくしかじか立派なものばかりですよという検査であったのですから、もう検査が必要ないというのなら、臨調の提案にこたえることになると思うのですが、やめればいいわけですよね。しかし私は、どうもそういうことではなくて、今申し上げましたように検査をしないものというのは、流通の現物市場に品物を持ち込めないわけですから品薄になって、そこでは高い価格になるのではないかという素朴な疑問があるわけです。この点について、そういう疑問は適当かどうか、全くそういうこととは関係なく、また別のところで価格操作のようなことがあって値段が高く張りついているのか、せっかく蚕糸業法第十六条に明確に検査の規定があるわけでございますから、もう一度お答えを願いたいと思う次第であります。
  139. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答えを申し上げます。  最近の糸価の動向等にかんがみまして、今先生おっしゃられましたような受検生糸――受検生糸であれば取引所にも出回るということでして、つい二週間ほど前だったと思いますが、関係団体に対しまして受検をするようにという指導もいたしております。  それをあと一つ、最近、糸価対策と申しますか、取引所に出回る生糸、供用物品をふやすという意味で、事業団が抱えております在庫生糸一般売り渡し放出をしておるわけでございますが、その中に一定数量の再検査を受けた生糸をまぜて売るというような措置も講じまして、価格の安定に努力をしておるところでございます。
  140. 草川昭三

    ○草川委員 生糸の検査の受検の励行ということを今言っておみえになりますが、実は昭和五十三年五月二十三日に園芸局長の通達で、「生糸検査制度の改善合理化及び生糸検査受検の励行について」というのが出ているわけですね。「近年一部の生糸が無検査で流通し、これが生糸及び絹製品の品質の低下につながっていることは、生糸検査制度本来の目的に反し、更には、我が国蚕糸業の発展に悪影響を及ぼすものである。 したがって、」云々という通達が出ておるわけですが、その通達が無視されている。そしてまた、今ようやく受検の励行について通達をしたという農水省の対応は、手ぬるいところがあるから市場が一部の方々に利用されている、私はこういう疑問があるわけです。  そこでこの際、公取にお伺いしますけれども、今私が長々と申し上げましたように、生糸については蚕糸業法で検査をした糸でないと出荷ができないということになっているわけです。最近の状況については六〇から七〇%くらいより出荷されていない、こういうことを申し上げたわけで、市場が品薄だ。この品薄になった原因は、生糸メーカーが話し合いによって出荷制限をしているのではないかという疑いを私は持っておるのですが、もしこういうような事態があるとするならば、公取はどういうように事情を把握されるのか、あるいは対応はどうされるのか、お伺いしたいと思います。
  141. 植木邦之

    ○植木(邦)政府委員 先生の今の御質問の点でございますが、我々は今こういう商品の関係一般につきまして、どういうような価格の動きあるいは生産の状況になっているかというのをずっとフォローしておるわけでございまして、生糸が品薄で高値状態が続いているということは承知しておるわけでございます。  今先生がお触れになりました、生産数量の六〇から七〇%くらいしか検査に出てないというようなこととの関連で、どういうように把握するかということでございますが、その辺具体的な事実関係につきましてはまだ十分把握しておりませんので、独占禁止法上どういう問題になるかということは、この場では答弁を差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  ただ、一般論として申し上げますと、生糸メーカーさんがこういうようなことで出荷を制限しているということになりますと、我々の所管しております独占禁止法上の出荷制限のカルテルということになって、問題が起こってこようかと考えているわけでございまして、我々も事態の把握に努めていく所存でございます。
  142. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ、フォローをお願いしたいと思う次第であります。  そこで、この問題について最後に行管の方にお伺いいたしますが、この蚕糸関係の事業については臨調の最終答申においても、産地の実情を踏まえ制度の抜本的な検討をしろ、毎年の行政価格の見直しについても指摘されておるわけであります。そういう実情を踏まえまして、こういうシステムは果たして今日的に適合しておるのかどうか。一番最初に御質問をしましたように、開放経済体制になって内外価格差問題が出てきておる、あるいは規制緩和という問題も大きな話題になってくる段階で、このような蚕糸関係事業団価格安定性の問題等を含めまして行政監察の対象になるのではないだろうか、こう思うのですが、どのようなお考えか、お伺いをしたいと思います。
  143. 石和田洋

    石和田説明員 先生指摘のとおり、臨調の最終答申におきましても問題の指摘があったわけでございまして、これに対応して農水省の方でも所要の手直しを行ったということがございます。私どもといたしましては、おおむね三年程度の行政上の重要課題につきまして監察の計画を立てて、監察を実施しておるところでございますが、そのときどきの経済社会情勢に合わせてこれを見直すということをやっておるわけでございます。そういう観点から、先生からのいろいろな問題指摘がございますので、この計画の見直しをする際に、これを行政監察の対象とすることについて検討させていただきたいと考えております。
  144. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ、見直しの際に対象としてお考え願いたいということを強く要望して、もう時間がございませんが長官戻られましたので、最後に一問。  新経済計画の問題に戻りますけれども大臣は過日、大槻さんですか日経連の会長ともお会いになられまして、見通しの三カ四分の三という問題で既に決められているというのですか、現行ではもっと高い、四%なら四%ぐらいの見通しが非常に控え目になっておる。そしてまた、物価上昇率の問題等についていろいろと話をされたやに聞いております。特にこの物価上昇率については、もっと低くすべきではないだろうかという要望を受けられたというように聞いておりますが、大臣の御見解を賜って終わりたい、こう思います。
  145. 中尾栄一

    中尾国務大臣 草川先生、ただいま日経連の会合の模様について申し上げましたけれども、大槻文平さんは昨今名誉会長みたいにおなりになられまして、鈴木会長がお出になられました。それで、これは私ども経済団体、日商、同友会あるいは経団連と続いてやった一環として日経連との会合をやったということでございましたが、そのときに特別に経済成長率についてはこういう方向で行くという付言はなかったと私は思います。それよりも新経済計画を現在進行中でございますが、その中における経済審議会の方で先般討議がなされまして、そのときに取り仕切っておられたのは平岩さんかと思いましたが、そのときもるる意見がございまして、いまだに経済成長率について具体的にこのポイントで行くんだというような示唆も指定もなかったということは、私も断言できると思います。  といいますのは、先ほど先生も御指摘のとおり、もうちょっと上昇率について格上げした形で考えた方がいいんじゃないかという意見もある程度相次いでございましたし、そういうようなこともございましてまだ結論が全く出ておりません。したがいまして、大体五月の中旬以降にはこれは具体化していかなければなりませんので、恐らく次の機会の経済審議会のときに数値の問題で入っていくのではないか、私はそのように考えております。
  146. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。  なお、実は質問通告をしておりました鶏の問題があるわけですが、時間が来ましたので、本日の質問はまた別の機会に譲りたいと思います。流通飼料課長に来ていただいておりますが、非常に申しわけありません。  以上で終わります。どうもありがとうございました。
  147. 村山喜一

    村山委員長 次に、塚田延充君。
  148. 塚田延充

    ○塚田委員 当委員会におきましては、さきの委員会におきまして無限連鎖講の防止法改正案を可決することによりまして、社会的に問題になっておりますいわゆる悪徳商法、これを取り締まろう、防止しようという当委員会らしい仕事をしたわけでございます。  ところで、現在商工委員会の方でございますけれども、同じような悪徳商法としてそれを取り締まるために、訪問販売法の改正案が審議されているところでございます。私は当委員会の特殊性にかんがみまして、この問題について消費者保護という立場から二、三質問させていただきたいと考えます。  訪問販売によってかなりの数の消費者が大変な打撃、損害を受けて、これが社会的問題となっているわけでございますが、これを通産省の立場から、すなわち販売業者を規制しようというのが今回の商工委員会の動きだと思いますが、一方消費者側にも問題があるはずでございます。それはやはり必要な情報であるとか、または賢い消費者になるための教育といった面を常日ごろからやっていかなければいけない。教育という面からいったらば、小さな幼児教育の段階から教え込むくらいのことをしなければいけないのじゃなかろうかと思います。そういうことによって被害を未然に防止することができてくるはずでございます。  そこで、文部省の方にお伺いしたいのですけれども、私は学校教育の場においてもこれらの消費者問題を、賢い消費者になるための基礎知識というようなことで、きちんとカリキュラムを組んで教えるべきだと思います。現に、義務教育における家庭科などで取り上げられているやに聞いているのですけれども、そういう消費者としての教育、これがどのようになっているのか、そして今度のこの訪問販売法に絡んで、これらの目先的な被害防止のための直接的な教育も学校教育においてやっておられるのかどうか、やってないとすればそれをどのような形で織り込んでいくべきか、御回答いただきたいと思います。
  149. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 文部省といたしましては、初等中等教育の段階におきましても児童生徒の発達段階に応じまして、消費者としての必要な基礎的な態度や知識を身につけることは非常に重要な課題であると認識をいたしておりまして、具体的には小中学校を通じまして、先生今家庭科というお話でございましたが、社会科と家庭科、二つの教科を中心にこの指導に努めているところでございます。  児童の発達段階に応ずる必要がございますので、例えば小学校の段階でございますと買い物という例をとりまして、子供たちに基礎的な態度なり知識を身につけさせる、中学校になりますともう少し客観的な欠陥商品の問題でありますとか安全性の問題でありますとかというような形で、これは例示でございますけれども、発達段階に応じまして取り組んでいるところでございます。  ただいま御指摘がありましたもう少しいろいろな取引が出てきている、そういうものに即応するようなものについてはどうかというお尋ねでございますけれども、率直に申し上げまして小中学校の段階では、今のような基礎的、基本的なことをやっておるということでございますので、今日の取引の多様化に必ずしも的確な対応ができているかということになりますと、課題が多いというふうに思っております。  昨年末の教育課程審議会の答申におきましても、そういう趣旨を踏まえた消費者教育の充実ということが言われておるわけでありまして、私どもは、これからの学習指導の改訂等通しまして力を合わせていきたいと思っております。ただ、基本的な教科の点ではそうでございますけれども、それを補う形で県によりましては副読本というようなものをつくって、こういうようなものであわせて補うという形での教育はやられておるというのが現状でございます。したがいまして、さまざまな形で取り組んではいるわけでございますけれども、なおこれから改善に努力をしていかなければならない。これが、現在の取引の多様化という点に着目した場合の学校教育の現状ではなかろうかと考えております。
  150. 塚田延充

    ○塚田委員 これからというよりも、もう既にカード時代になった、クレジット時代に突入しているわけでございます。そして小学生の段階でも、やれテレホンカードだ、オレンジカードだということでもってカードが日常化してくる、そしてクレジットの度合いがこれからますます強まってくるということになりますと、クレジットによる過大な借金を背負い込むという事故が既に相次いでいるわけでございます。そういうことからこういうクレジットカードについての教育、これははっきりとカリキュラムの中で取り組んでやっていただきたいと思います。  さて、この訪問販売法そのものでございますけれども、確かに業界団体の規制を通じて取り締まろう、もしくは悪徳を防止しようという法改正が進むわけでございますけれども、問題は、業界団体へのきちんとした加入業者みたいなもの、これは登録制になっているのかどうか知りませんけれども、これについてはかなりうまく趣旨が徹底するものと思いますが、あらゆる取引において問題になるのはやはりアウトサイダーの存在でございます。アウトサイダーが全部その網の目をくぐり抜ける、もしくはきちんとした業界の自助努力を無にしてしまう、こういう形で、それが結局は消費者に対して被害を広めているというケースが多いと思います。  そこでお伺いいたしますけれども、せっかく訪問販売法ができるけれども、アウトサイダー業者の存在をどう考えるのか、これに対してどのような対抗措置をとっていくのか、この点についてお伺いいたします。
  151. 北畠多門

    ○北畠説明員 通産省の方からお答えをいたしたいと思います。  今、先生指摘の訪問販売の問題について、これに対してどんな対応をすべきかということは非常に長い間の課題でございまして、私どもの方といたしましても、訪問販売等問題研究会、約一年半の勉強をしたわけでございますし、昨年の十二月からは産業構造審議会で、先ほど先生が御指摘されました消費者教育の問題も含めまして種々御議論をいただいて、最終的な答申をいただいたわけでございます。  それで、その場合の基本的な考え方でございますけれども、まず第一は、消費者の教育も非常に重要なことであるし、それから業界の自主規制自身も強めていかなければいけない。それから三点目として、それらを進めるにしましてもどうしても限界があるわけでございますので、現在訪問販売法という法律がございますけれども、これを改正強化していく必要があるのじゃないか。こういうことで、大きく言って三つの柱でもってこの対応策をとろう、こういうことにしたわけでございます。  それで問題の、御指摘の業界の健全化のためにということでございますが、この考え方につきましては、私ども非常に大きな期待を持っているわけでございますが、ある意味で良貨が悪貨を駆逐していくような体制をつくっていくべきではないか、こういうふうに考えております。現在、私ども一つの基本的な考え方といたしましては、昭和五十五年の四月に設立されました社団法人の日本訪問販売協会、こちらの団体の方が現在のところは非常に広範囲にわたって活躍をしている公益法人でございますので、ここを中心として、この協会が行っておりますところの訪問販売員教育登録制度の充実あるいは倫理綱領制度の拡充、それから訪問販売一一〇番というようなことでの電話相談、苦情相談等を受け付けておりますので、こういうような活動を充実していく、こういうふうにしてまいりたいと思っておるわけでございます。  ただ、先生指摘のように、アウトサイダーの問題というのがどうしても出てくるわけでございますので、今回の法律改正におきましても、消費者に対して威迫をして困惑をさせることとか、契約に関しての重要事項について不実を告げるというようなことについて禁止事項を設ける。さらに、それ以外の遵守事項というようなことも設けまして、必要な指示、改善それから業務停止命令等の規定を整備したわけでございます。  さらに、従来の規定にはございませんでしたけれども、立入検査、報告聴取、こういうような規定も整備をいたしましたので、私どもの方といたしましては、アウトサイダーの問題で訪問販売法の基本的な事項を遵守していかない、こういうような場合におきましてはこれらの規定を活用して厳正に対処をしていく。こういうことと同時に、私どもの方、行政側といたしましても限界があるわけでございますので、業界の自主的な活動が促進されるよう、ただいま申し上げましたような訪問販売協会等の団体活動も通じて充実もさせていきたい、こんなふうに考えております。
  152. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは経済企画庁にお尋ねいたします。  消費者をめぐるトラブルにつきまして、現在では国民生活センターであるとか各都道府県の消費者センター等が、相談であるとかまたそのような実態調査に当たっているわけでございますが、このような公的機関の機能をもっと強化充実する必要があるのじゃないか。例えば、そういうような相談とか調査だけではなくて、消費者と業者との間の紛争解決、紛争処理そのものも取り扱うくらいに機能を強化したらいかがか。そしてまた、例えば各県に一カ所ぐらいしかそれはございませんけれども、消費者の方が駆け込み寺のように相談に行き、場合によっては処理もしてもらえるというくらいにもう少し強化してはいかがかと思いますが、御見解を求めます。
  153. 中尾栄一

    中尾国務大臣 塚田先生お答えいたします。  先ほど来御討議の中にもございましたように、消費者の情報ニーズといいましょうか、そういうことをもっと徹底的にやるべきであるという御指摘はまさにそのとおりでございまして、まさに複雑化、多様化、広域化する現在の消費者被害等に対処いたしまして、国民生活センターと地方消費生活センターの機能をまず強化する必要があるのではないか。  現在、五十九年度から消費者の情報オンライン・ネットワーク・システムを導入しておりますが、大体これが五十六カ所と私は判断しております。相談窓口では、このシステムによりまして同種の事例や判例などを十分に検討いたしまして、相談、処理などに役立てていかなければなるまい、また先生の御指摘のようにさらにそれを強化しなければいくまい、こう考えております。  一方、相談業務の第一線におりまする相談員の資質の向上も図るために、国民生活センターの研修事業といたしまして消費生活相談員の養成講座といいましょうか、また消費生活相談員専門講座なども実施しているわけでございます。  今後とも、消費者の被害の未然防止というものを何としても真っ先に考えていかなければなりませんので、その救済に資するために、消費生活の情報オンライン・ネットワーク・システムを一層充実させることがまず肝要である、消費者の立場に立ちましてきめ細かな相談処理に努めてまいるという所存をお約束させていただきます。
  154. 塚田延充

    ○塚田委員 それではテーマを変えまして、牛肉問題について、農水省に対して御質問を行いたいと思います。  現在、牛肉、オレンジ輸入問題が日米交渉の最たる渦中にあるということで、政治的に非常に難しい問題でございますが、その件は別におきまして、消費者、国民立場で一体牛肉値段はどうなっているのであろうか、世界的に見ても高いと言われているけれどもなぜなんだろうか、このような素朴な疑問を持っている向きが多いと思います。  そういうことで、私としては今の農水省の政策がどうの、もしくは自由化がどうのという観点ではなくて、それらの牛肉の流通をも通じまして実態がどうなっておるのか、少しでも浮き彫りにわかりやすく把握できたらなということを当委員会の立場において御質問させていただきますが、一問一答みたいな形になりますので、その辺よろしくお願いいたします。  まず第一問、牛肉は、国際的に見て日本価格外国より高いと言われているわけでございますが、消費者価格は他の国と比較した場合どういう価格差になっているのか、具体例を簡単に言ってください。
  155. 太田道士

    ○太田説明員 ただいま先生の方から、各国との牛肉の消費者価格の比較ということの御質問でございます。牛肉につきましては、牛の品種であるとか肉の品質、それから販売形態、ブロックで売っておりますとかスライスで売っておりますとかいろいろ違っておりますので、一概に比較はできないわけでございますけれども、これを一定の前提のもとに大まかに比較を行いますと、日本牛肉価格は、直接的に比較いたしますとECの約一・四倍から一・九倍でございます。アメリカの約二・五倍というようなジェトロの調査が一応出ております。もちろん、これは為替レートの影響で非常に変動するわけでございますので、単位時間当たり労賃の数値で比較してみますと、ECの約○・九から一・九、それからアメリカの約二・三、若干このところ為替が円高になっておりますので格差は小さくなるというような状況にあるというように私ども認識しております。
  156. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、生体牛及び通常の牛肉、それからくず肉、さらには牛肉調製品に対する関税制度はどうなっておりますか。
  157. 太田道士

    ○太田説明員 牛肉と牛のくず肉それから牛肉調製品につきましては、現在輸入制度としては数量割り当て制度になっておりまして、関税は二五%でございます。それから、生体牛は貿易制度の上では自由化品目になっておりまして、関税については、子牛、体重三百キログラム以下でございますけれどもそれが四万五千円、成牛、三百キロを超えるものでございますが、これは一頭当たり七万五千円ということになっておりますほか、関税割り当てで肥育用の子牛については無税の適用がございます。そういうことで一応なっておるということでございます。(塚田委員牛肉調製品も」と呼ぶ)牛肉調製品は、ただいま最初の方に申し上げましたけれども、現行では割り当て制度になっておりまして、関税制度としては二五%でございます。
  158. 塚田延充

    ○塚田委員 輸入牛肉を畜産事業団はどこから買っているのですか。そして、その買い入れ価格はどうなっておりますか。
  159. 太田道士

    ○太田説明員 現在輸入牛肉の買い入れは、事業団が商社を指定しております。三十六商社を指定しておりまして、競争入札で実は買い入れを行っているわけでございます。買い入れ価格は、国際相場それから為替レート等の影響を勘案いたしまして予定価格を設定して、それで競争入札をしていただくわけでございますが、現在のところ、概観すると大体七百四十円というところだと思っております。
  160. 塚田延充

    ○塚田委員 畜産事業団は、その買い入れた輸入牛肉をどこへ幾らで売っておりますか。
  161. 太田道士

    ○太田説明員 事業団が買い入れました輸入牛肉に対しましては、売り渡しといたしましてはまず食肉卸売市場、全国約三十カ所でございますが、そこで競り売りで売るという販売形態がございます。それから、食肉の小売、加工、外食等の業者の全国的な組織団体、現在二十九団体でございますけれども、そこの指名競争入札で売る形態がございます。それから三番目といたしましては、輸入指定店制度というようなことを現在全国で三千六百店置いてあるわけでございますが、あるいは肉の日協力店が約一万一千四百店ございますが、そういうところに定価で売り渡すということで、大体三ルートで売り渡しているわけでございます。  現在の売り渡し価格につきましては、国内安定価格制度をとっておりますので、その安定価格制度との関連で売り渡しの予定価格を決定しておるところでございまして、六十二年度について大体総体的にどのくらいの価格で売っているかということになりますと、一キログラム当たりで約千円程度で売っておるということでございます。
  162. 塚田延充

    ○塚田委員 小売の方でございますけれども、その三千六百の指定小売店では消費者に幾らで売っておられますか。
  163. 太田道士

    ○太田説明員 指定店には、指定店で売り渡す価格につきましては一応指標価格を設けまして、大体部位別で設けて売り渡しておるということでございます。したがいまして、部位別に価格がちょっと異なるわけでございますが、バラ等の安いものですと大体八十五円くらいですか、それからサーロインですと百八十五円、それから肩ですと百三十円、そういうような形で部位別の価格を小売指標価格として売り渡しておるということでございます。
  164. 塚田延充

    ○塚田委員 それらのものを指定小売店は消費者に幾らで売っておりますか。
  165. 太田道士

    ○太田説明員 今のがそうです。
  166. 塚田延充

    ○塚田委員 今のですか、そんなに安いですか。それでは一般小売の状況についてお伺いしますけれども、今輸入牛肉一般的には一番値段のこなれているバラ肉あたりで九十円とか、肩肉でさえも百三十円ということですが、これが国産の和牛とかまたは乳牛の雄をあれしたようなものですと一般的には幾らですか。
  167. 太田道士

    ○太田説明員 今細かい数字は、和牛、乳雄別の小売価格はちょっと持ってきておりませんけれども、総務庁がやっております小売物価統計調査によりますと、肩で百グラム三百五十円から三百六十円程度というのが大体国産牛の価格でございます。これに対しまして輸入品の小売価格というのは、総体的な調査、この同じ統計では大体百二十三円、五円、その辺の価格が出ておるということでございます。
  168. 塚田延充

    ○塚田委員 今の御答弁でわかりますように、輸入品はかなり値段がこなれているわけでございます。そして、農水省立場からいえば三千六百店も扱っておるということでございますが、全国で三千六百なんというのは、はっきり言ってその値のこなれた輸入品を買おうと思っても、地方の消費者なんかほとんどお目にかかったこともないというような状況で、大都会のほんの一部の方々がその輸入品の恩恵にあずかっているというような状態が明らかになったと思います。  それでは、畜産事業団の件についてお伺いします。  畜産事業団、買い入れ価格売り渡し価格に差益が生じているわけでございますけれども、六十二年度で幾ら差益が生じたのか。そしてその分は、単年度で収支をやっているわけではないのでしょうけれども、六十二年度の事業団の使途としてどういう使い方をされておるのか。一般には、生産者へのいろいろな意味での奨励とか対策費だと思いますけれども、私がポイントとしてお伺いしたいのは、その事業団の差益使途のうち、消費者には結局何%、幾ら使われたことになるのか、お聞きしたいと思います。
  169. 東久雄

    ○東説明員 お答えさせていただきます。  六十二年度の事業団牛肉の売買差益は約四百六十億円、これは円高差益の還元をやりました関係上、六十一年度より減っております。それから、その六十一年度から事業をいろいろやって繰越金がございまして、それが約二百二十億ございます。全体として六百八十億ございます。  六十二年度にどのようなことで使っているかということでございますが、先生指摘のとおり、肉用牛の生産の合理化を進めて国産牛肉価格を下げるという方向をとる、それから畜産経営の技術指導等、それから流通の合理化というようなことで、指定助成事業として一応法律によって限定を受けておる使途に使っております。  なお、この中で直接的に消費者に結びつくような施策といたしましては、六十二年度、協力店に国産牛肉の安売りに約百億の金を使う等、流通消費対策として約三割を使っております。  なお、先ほどちょっと触れましたとおり外国産の輸入牛肉価格、畜産振興事業団売り渡し予定価格は、六十一年五月以降六十三年二月までの間に四回引き下げをやりまして、三〇%の引き下げになっております。こういうこともありまして、六十二年度の差益金額は減っております。  以上でございます。
  170. 塚田延充

    ○塚田委員 一部は消費者のために、その値段の引き下げに使われていることがわかりましたけれども、私が申し上げましたように、指定小売店三千六百では国民のうちのほんの一部にしか行き渡らないという意味において、逆にそういう差益の使い方としては、指定小売店をけた違いにふやすというぐらいの方策のために研究し、また使っていただきたいなと思いますけれども、その辺いかがでしょう。
  171. 太田道士

    ○太田説明員 実は、輸入牛肉の流通というのは、事業団から消費者に輸入指定店からだけしか売らないということではございません。当然輸入牛肉を扱う各小売屋さん、そういうところにも流通されておるわけでございます。ただ、指定店制度というのは、ここ十年ぐらいとった措置でございますけれども、輸入牛肉の取り扱いになれていない小売屋さんにつきまして、そういう指定店制度をとることによってその扱いになれていただくというような趣旨、それから当然そういう輸入牛肉の評価というものを消費者の方にしていただくというような趣旨で、輸入指定店ということをあえて明らかにしてやってきたものでございます。  それで、円高差益還元対策の一環といたしまして、約六百店ぐらい私ども輸入指定店をふやしてきておりまして、私どもとして、指定店の数としてはそろそろこんなところではないか、せいぜい前からやっているお店から今度新たにやっていくお店とか、だんだんそういうものに入れかえていくというようなことで対応していこうかなというようなことで現在考えているところでございます。
  172. 塚田延充

    ○塚田委員 今の指定小売店につきましては私と見解が違ったようでございますが、いずれにせよ、一般消費者の立場からすれば、思ったように輸入牛肉を買えないというのが実態でございます。その辺、業者が扱ってくれないからどうの、小売店の意欲がないからどうのこうのはあるかもしらぬけれども一般国民立場に立って、けた違いにというか、もう肉屋はどこへ行ってもそういう輸入品がなくてはいかぬ、私はそのように持っていってほしいな、御検討いただきたいと思います。  次に、その件も含めてでございますけれども、流通機構の問題というのがあらゆる商品流通で問題になって、せっかく生産者といいましょうか、または輸入業者といいましょうか、大もとが安いあれでいっても、最終消費者の手に渡るときにはかなり高くなってしまう、このような問題点指摘されるわけでございますが、特に牛肉においては流通機構の改善というものがいろいろな識者の方から指摘されているわけでございます。それについて農水省としてはどう受けとめ、どのような改善を図られようとしておるのか、具体的に御説明をお願いします。
  173. 太田道士

    ○太田説明員 牛肉の流通機構の改善につきましては、私ども一つの考え方といたしまして、ともしますと産地から生体で生きたままで消費地に運ばれる、そうなりますと極めて輸送コストがかかりやすいし、事故も起こりやすいというふうに考えております。肉のことですから、当然屠殺、解体処理というのがついて回ることでございまして、この過程を除いて消費者の方の手元に届けるわけにはいかないわけでございます。したがって、その屠殺、解体処理と流通という問題をどういう形で結び合わせていくかということを考えますと、私どもとしては、やはりできるだけまとまった産地で処理をしていただきまして、そういう処理をしたものが要するに消費地の方に運ばれる、私どもの言い方としては部分肉流通ということを申し上げておるわけでございますが、そういうものを推進していく必要があるだろうということで、具体的に産地におきまして食肉センターの整備を進めておるということがまず第一点でございます。  産地の方で食肉センターを設置いたしますと、当然その受け入れ母体というものが消費地に必要になるわけでございますので、そういう意味で部分肉センターを消費地にセットいたしまして、そこに行けばそこから消費地の流通に寄与できるということが、非常に大事なことではないかというふうに考えております。  もちろん、これも取引がなされるわけでございますので、食肉の卸売市場の計画的整備ということも必要ですし、それから、いろいろ品質が違う食品でございますので格付をきちっとやりまして、要するに客観的な価格形成がされるということも私どもは非常に大事なことだというふうに考えておりますし、それから、やはり末端流通で適正に表示がされまして売られていくということが大事なことだというふうに考えております。  そういう意味で、そういう表示問題等も現在指導を強化しておりますが、何分にも消費者の方々に十分食肉の正しい知識を持っていただくことがまず第一だというように考えておりまして、そういう面の対策も進めておるという状況でございます。
  174. 塚田延充

    ○塚田委員 輸入食品すべてについて言われるわけでございますけれども、いわゆる添加薬品、薬物、これらによる被害と申しましょうか、事故ということが考えられます。そこでこの輸入牛肉について、安全性のためにどのような対策を講じておられるのか、お聞きしたいと思います。
  175. 太田道士

    ○太田説明員 先生指摘のとおり、豪州産の輸入牛肉につきまして残留農薬問題が持ち上がったのは昨年でございます。この問題につきまして私どもといたしましては、その情報が入った段階で即事業団在庫について全部検査させまして、疑わしきものは在庫として保留するという形で売り渡しの保留凍結を行ってきたところでございます、残念ながらその段階では、日本では残留農薬の基準というものがございませんでしたので、すぐ厚生省とも協議いたしまして、WHO、FAOでできております基準があるわけでございますので、その採用を厚生省の方で暫定的に決めていただきまして、厚生省で定められました検査方法に基づきましてそれぞれ検査して、安全であるということを確認した上で国内流通に乗せていくということで、現在進めておるということでございます。
  176. 塚田延充

    ○塚田委員 一週間ほど前でございますか、NHKの特別番組でこの輸入牛肉問題を扱っておりました。その中でも特にポイントとなってNHKが分析を行っておった、もしくは視聴者に訴えるような形をとっておりましたのは畜産事業団のことでございます。これは、今の日米交渉どもあったり帰趨によったりしますけれども、いずれにせよ、輸入牛肉について畜産事業団が果たしてきた役割は大きなものもあるし、また特異なものもあったと思います。国民の目から見て、納得ができないというような面も多々指摘されておりますが、農水省立場から農水大臣になったつもりで、私的見解でも結構ですからこの事業団、どのようにお考えになっておるのか、今後どのような役割を果たすべきか、もし直すべき点があればどんなことなのか、お答えいただけたら幸いでございます。
  177. 太田道士

    ○太田説明員 先生、残念ながら私、大臣のつもりになることは全然できませんので、それはあしからずひとつよろしくお願いしたいと思います。  牛肉価格安定対策の上で畜安法というのがございまして、この価格安定を通じて生産者、消費者の両方のためにこれをやっておるということでございます。これが畜産振興事業団の役割でございまして、国内の輸入牛肉についていいますと、国内の需給の調整の上で的確に、適時適切にこれを売り渡していくということではないかというふうに私ども感じております。ただ、もちろん一元的な輸入をしておるわけでございますので、確かに批判もあることを我々は十分承知しておるわけでございます。そういう意味では、事業団の輸入牛肉の売買方式の改善ということにつきましては、過日作成されました酪肉基本方針というところでも実はその旨がうたわれたわけでございますが、この売買方式の改善につきまして現在日米、日豪交渉、いろいろ交渉事もあるわけでございますので、私どもといたしましては、その辺の経過も踏まえた上でその改善の方法について検討を努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  178. 塚田延充

    ○塚田委員 この牛肉問題について、農水省とほんの上っぺらのみQアンドAという形でやらしてもらったわけでございますが、ある程度の状況が浮かび上がってきたと思うのですが、このやりとりをお聞きになりまして、経済企画庁長官としてどのような感想をお持ちになったのかお聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  179. 中尾栄一

    中尾国務大臣 塚田先生お答えいたします。  私も、個人的ではございますけれども、国会二十二年の間、この農業問題は多少専門的にも取り組んでまいったことがございます。先生の先ほど来御疑念に思われたことは当然のこと、私どもも同じ思いであらゆる討議の対象にもしてまいったわけでございます。昨今、急遽日米間における牛肉の問題がシンボリックに極端に取りざたされているように騒がれておりますが、これは決してそうではないので、もう過去十八年くらいの中において積み上がってきたことでございまして、それだけに先ほど先生の御指摘になりましたようなことは、農林省も十分に頭の中に入れながら苦慮しておるというのが段階であろうと思います。  畜産振興事業団の問題等につきましては先ほど担当官が話したとおりでございまして、これはやはり和牛、また今輸入しておるといいましても、輸入牛だといいましても、アメリカ自体が実は牛肉に対しては輸入国でございまして、オーストラリアあたりから年間六、七十万トンはたしか入れていると思います。したがいまして、そういう意味におけるバランスの調整というものの機能も今まで事業団は相当果たしてきたのではないか、こういうメリットはあったかと思います。  輸入牛肉価格につきましては、一昨年来累次にわたる手を打ちまして、引き下げに努力をしてきておりました。この結果、小売価格も、六十一年四月以降約二四%の低下が見られたものと私たちは承知しております。  国産牛肉価格につきましても、安定価格を三年連続して引き下げてきているところでございますが、先生指摘のとおり、依然として相当程度の内外価格差が生じていることも否めない事実でございまして、これは今後とも消費者の納得が得られる牛肉価格とするように、諸般の事情を十分に考慮しながら生産性向上、場合によっては流通合理化、また輸入の活用などを推進しまして、輸入価格の引き下げに努力をしてまいりたい、このように強く考えております。
  180. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  181. 村山喜一

    村山委員長 次に、岩佐恵美君。
  182. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最初に、公団家賃問題について伺いたいと思います。  現在、公団家賃の一八%、平均で四千七百円の値上げ申請が行われ、ことしの秋十月から値上げをされようとしているわけでございます。今回の値上げの計算の基礎というのは地価を基礎とするということになっておりますので、今回の値上げは六十年を基礎とするわけでありますけれども、地価高騰の折、これは本当に大変な状態だということで、東京の公団の居住者の方々は戦々恐々という状態でございます。  今三多摩地域で二十団地、今回値上げ対象になる団地につきまして空き家割り増し家賃の算定を参考にいたしまして、三K、三DKの値上げ額の最高を計算してみました。そういたしますと、一万円以上の値上げになるであろうという団地が四団地、八千円台が三団地、そして七千円台が七団地と、大体三多摩地域の七割の団地が七千円以上の値上げということで、大変大きな値上げになります。今度の値上げはいわゆる補正といいまして、立地条件、環境がいいという条件も加味されるということでありますので、この試算は加味をしておりません。そういう点では、もっともっと上がるのではないかというふうに悪い予想がされるわけであります。  最初に建設省に伺いたいと思いますけれども、今回の値上げ、全国平均で四千七百円と言われておりますけれども、東京の値上げはこれでは済まない、そういう状況なのではないかということを伺いたいと思います。
  183. 丸田哲司

    ○丸田説明員 お尋ねの東京あるいは三多摩の平均値上げ額はどのくらいか、こういうことでございます。公団は去る三月三十一日に建設大臣に承認を申請してきておりますが、これはいわゆる試算、概算数字でございまして、今回この方式が何らかの形で建設大臣から承認されますと、実際個々の一戸ごとの家賃を計算いたしまして通知をするわけでございますが、公団の場合には実は、これは全く他意はないのでございますが、支社が首都圏に東京支社、関東支社と二社あります。そのほかに中部、関西、九州とございますが、東京都はこの東京支社が管轄いたしておりまして、東京都それから千葉県それから仙台市及びその周辺、それから北海道、札幌とか函館でございますが、このエリアを管轄いたしておりまして、公団の業務上特段東京都でどのくらい、あるいは三多摩でどのくらいというようなシステムは必要といたしておりませんので、伺うところによりますと、電算機のソフトもそのようになっておるそうでございます。  それで、お尋ねの件でございますが、先生も今おっしゃっておりましたように全国平均で、現在約三十四万戸ほどでございますが、概算、試算でございますが平均で月額二万五千六百円、これを四千七百円上げまして三万三百円になる、こういうことであります。今申しました東京都を含む東京支社、ここでは全国平均より幾らか高うございますが現在平均で二万七千九百円、これが五千六百円上がりまして三万三千五百円、約二〇%の上昇になるというふうに聞いております。
  184. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今お話がありましたように、大体値上げを申請している段階で自分の団地の値上げがどのくらいになるかというのは、居住者はわからないわけですね。一人一人の居住者にとっては、平均値で物を考えるわけじゃないのです。自分のうちの家賃がどのくらい上がるのか、それが非常に心配なわけですね。それを、今説明があったようにお上のやることに口出しをするな式の、一方的にそういう言い方で平均値でしか言わない。東京支社といったって北海道も入れば仙台も入る、そういう平均になるわけでありますから、私は大体そういうやり方自体が、たな子と大家さんの信頼関係を壊すんじゃないかと思うわけであります。今平均四千七百円といっても、最高限度額が一万五百円ですから、一番上がる人はそこまで上がるわけですね。東京の皆さんは、今お話ししたように地価が上がっていますから、自分のところはどうなるのかしら、補正がかけられたら最高なんじゃないかということで、本当に夜も眠れない思いだという訴えがあります。  ここに、私のところに、神代団地のある方なのですが、こういう訴えが来ております。  公団家賃値上げ案のことですが、私ども三十回の落選のあとようやく入居した住宅です。永住の地と決めておりましたのに、今度の値上げ案では一万五百円とのこと。夫ともども年金生活に入り、姑は四年越しの入院です。このような値上げでは、この先いつまで住み続けられるのか不安です。納得できるルールができるまで値上げを認めないよう国会で審議してくださるようお願いします。 この方は六十歳の婦人なんですが、御主人が六十三歳、おしゅうとめさんの入院費もありますので、家賃と合わせると年金収入の半分は消えてしまう、そういう実態であります。ですから、年金暮らしの方にとっても家賃値上げは非常に深刻なわけです。  しかも、公団住宅居住者の高齢化が非常に進んでいて、三多摩地域では、世帯主五十歳以上が六年前には二六・二%だったのが、昨年は四一・六%と倍近くなっています。特に三十年代住宅、つまり古い住宅では五二・三%と半数を超えているわけであります。しかも、地価上昇が激しい東京、三多摩では家を持つ望みが断たれておりますので、今の公団に永住したいという方が四〇・九%、条件次第で公団に永住したいという方が五五・七%、合わせると九六・六%の方が公団での永住を望んでいるわけであります。ところが、この家賃の大幅値上げは、このような居住者の生活を脅かすばかりでなく、住み続けたくてもできなくなるという状況もつくり出そうとしています。  公営住宅におられて収入が高くなると、公団に移りなさいという制度があるわけですが、これが逆に公団にお住まいで収入が年金暮らしや何かで非常に少なくなる、苦しくなる、では公営住宅に移りたいなと思っても、今その制度がないわけなんです。この点について、ぜひこうした希望を満たすべきだと思いますけれども、建設省、いかがでしょうか。
  185. 三井康壽

    ○三井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になられました公営住宅の入居者が所得がふえまして入居基準を超えられている場合、割り増し賃料をいただくとか、あるいは特に高額の所得者の場合には明け渡し請求を事業主体はできる、こういうふうになっているわけでございますけれども、公営住宅の場合は特に低所得者の方々のための住宅でございますので、入居基準の上限を決めているわけでございます。したがって、その上限を超えられた場合には、公営住宅に入りたい方はたくさんおいででございますのでなるべく違う住宅の方にお移りいただきたい、こういったことで公営住宅の場合はそういう制度がございます。ところが公団住宅の場合は、中堅勤労者向けということで現在までやらしていただいておるわけでございまして、公営住宅のようなある一定の所得を超えれば出ていただくとか、あるいは割り増し賃料をいただくとかという制度はございません。したがいまして、お入りになってから相当たって収入が低くなったから直ちに公営住宅と同じような制度というのは、とりにくいと考えているところでございます。
  186. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうしますと、公営住宅にも入れない、そして家賃の値上げの中で高齢者あるいは障害者、母子家庭の皆さんというのは本当に大変なわけですね。公団は、こういう方々には特別の措置をしておりますというふうに言われるのです。ところが、この特別の措置というのが、家賃が四万七千八百円以下の方々は適用されない、つまり、どんなに苦しくても四万七千八百円までは払ってもらいますよというような特別措置になっているわけです。  この方も神代の方でございますけれども、奥さんが五十三歳で御主人が五十五歳でクモ膜下で倒れられて今自宅療養中、障害年金を受けていて月々六万五千円、家賃が現在二万四千六百円という方であります。ですから、現在は何とか貯金を取り崩して本当にやりくりしているんだけれども、もし今度の家賃が上がったら、まあ八千円以上上がるだろうというような地域でありますけれども、もう収入の半分以上が家賃で消えてしまう、こういう方の場合には本当に深刻だと思います。ですから、特別措置があるから大丈夫だというふうにはなってないわけですね。中身はこういうふうにお粗末なわけです。  経済企画庁長官、大臣はこの公団家賃の問題について建設大臣と協議をされるということになっているわけです。国民生活は非常に大変であります。そして東京の居住者は地価の高騰、これはもう自分たちの責任でも何でもないわけですね。まあ言ってみれば政府の責任、それを居住者に今家賃の値上げという形で負担しなさい、これでは本当に大変だと思います。国民生活を踏まえられて、この値上げ問題については厳しく対応していただきたい、公団の一方的な値上げ押しつけは断固としてはねのけていただきたい、こういうふうに要望するわけでございますけれども大臣の御意見伺いたいと思います。
  187. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まず冒頭に、昨年末に行われました土地国会で、特に岩佐先生にも大変に御指導を賜りました。おかげさまでといいましても、決して全面的に満足すべき数値ではございませんけれども、都心の中におきましても、大変に幅のある下げが見られたということも事実でございますから、本当に感謝申し上げたいと思う次第でございます。  公団のこの家賃の値上げに対しまして、建設大臣から私の方にも当然相談があることと思いますし、また、それに対する報告が何らかの形でなされてくると私も思います。そういう中にありまして、まず公団家賃の改定につきましては、現在両院、衆議院、参議院通じまして建設委員会でも、審議が行われている最中かと承知しておる次第でございまして、今後これらの審議の内容を参考にしながら、建設省と連絡を密に図りまして検討することにしておる次第でございます。その際は、今回のこの家賃改定の理由でございます賃貸住宅相互間の家賃の均衡並びに入居者の負担等を、御指摘のように十分に勘案しながら厳正に対処していこうと考えておりますので、その点まだその時間帯には至っておりませんが、その際には私もそのような形で進めたい、先生の御趣旨も十分にそんたくしたいと考えておる次第でございます。
  188. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、たばこの問題について伺いたいと思います。  厚生省は、昨年の十月に喫煙と健康問題に関する報告書を出していますが、喫煙と健康についての基本的考え方を簡単にお聞かせをいただきたいと思います。
  189. 有川勲

    ○有川説明員 喫煙は健康にさまざまな悪影響を及ぼすものでございます。昨年十月に公衆衛生審議会から報告がございましたいわゆるたばこ白書におきましても、例えば喫煙が肺がん、口腔がん、喉頭がんなど、こういったものの重要な危険因子になっておりますし、また、心疾患の発生を高めることが明らかにされておるところでございます。
  190. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 たばこは喫煙者本人だけではなくて周りの人にも影響を与える、そういう点で今大きな社会問題となっています。特に、未成年者に対する悪影響については十分に配慮する必要があるわけで、我が国では未成年者喫煙禁止法で未成年者の喫煙が禁止されているわけです。ところが、成人の喫煙人口が減少する中で未成年者の喫煙がふえているのです。その原因の大きなものにたばこの宣伝の大きさと喫煙と健康に関する情報の不足、こういうことが挙げられると指摘をされています。未成年者への健康教育は非常に大切だと思います。文部省の教育面での対応について伺いたいと思います。
  191. 込山進

    ○込山説明員 お答えいたします。  児童生徒の喫煙は、健康に悪影響を及ぼすばかりではございませんで、非行など他の問題につながることもありますので、学校におきましては、教科の保健体育を初め特別活動の学級指導、ホームルーム、学校行事などにおいて、たばこの健康に及ぼす影響についての指導の徹底を図っているところでございます。また、昨年の臨時教育審議会の答申におきましても、児童生徒の喫煙の問題については健康教育の観点から、学校教育全体として積極的に取り組むよう指摘を受けたところでございます。  文部省としては、これらの観点から禁煙教育の充実を図るために、昭和六十年度から三年計画で小学校、中学校、高等学校における禁煙指導の手引の作成を行っております。小学校用及び中学校用につきましては既に作成配付させていただいたところでございまして、高等学校用につきましては近日中に作成配付する予定になっております。  さらに、研修会あるいは講習会を通じましてこれらの指導資料の徹底並びにその活用を図って、さらに禁煙教育の充実を指導してまいりたいと考えております。
  192. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今お話があった小学校、中学校に配られている喫煙防止に関する保健指導の手引書ですけれども、これが現場の先生のお話ですと届いていない学校もある。あるいは、届いていても書棚にほこりをかぶっている。あるいは、先生方がこれを利用してどういうふうに教育をしていいのか、自分で自主的にいろいろやろうかと思うのだけれども、たばこを吸っておられる先生方もいらっしゃるでしょうし、なかなかどうもうまくいかないということがあるわけです。  ですから、この教育を円滑に進める、有効に進めるために文部省として、先生方がいろいろ悩みを相談する、こういう悩みがあるんだけれどもどうしたらいいのかしらと相談したりあるいはいろいろ問い合わせに応ずる、そんな窓口を設置してもらえると本当にいいんだけどという要望もあるわけです。さらに具体的に文部省の対応を伺いたいと思います。
  193. 込山進

    ○込山説明員 お答えいたします。  私たちの承知しておる限りにおきましては、学校における保健教育あるいは保健指導におきまして、児童生徒の健康増進のためのいろいろな教育が行われておると承知しておりますが、なお今回の禁煙教育の問題につきましては、文部省が主催しております中央における保健教育の講習会がございます。これは、中堅の先生方あるいは県の指導主事を集めての講習会でございますが、そういった際にはこれらの項目を設けまして、その指導資料の趣旨徹底並びに教育方法の講習会ということを設定し、さらにそれを伝達講習会で各県に帰っていただくというような仕組みも考えているところでございます。そういった施策を通じまして、この趣旨徹底を図ってまいりたいと考えております。
  194. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 どうも従来型の答弁なわけですけれども、ぜひ積極的に現場の先生方の意見を聞きながら、柔軟に対応していただきたいと要望を申し上げておきたいと思います。  昨年十一月、東京で開催された第六回喫煙と健康世界会議では、政府がテレビによるたばこの広告を禁止するよう促すという勧告がなされているわけです。  諸外国では、たばこのCMについてどういう措置をとっているのか、法律でやっているのかどうか、また、その対象がどういうふうになっているのか、そのことについて簡単に大蔵省、説明してください。
  195. 森田好則

    ○森田説明員 お答えいたします。  諸外国のことでございますので、法体系、慣行等違いますので精緻さを欠きますが、申し述べさせていただきます。  まずアメリカにつきましては、一九七一年から法律に基づきテレビ、ラジオの広告が禁止されております。シガレットでございます。その後リトルシガー等々につきましても、同じような措置がとられております。  イギリスにつきましては、法律それから業界と政府との合意に基づき、一九六五年テレビ広告が禁止されまして、その後ラジオ広告が禁止されております。これはいずれもシガレット等でございます。  それから、順次サミット国について言いますが、西独につきましては、一九七五年に法律に基づきまして、たばこ製品のテレビ、ラジオの広告が禁止されております。  フランスでございますが、一九七七年たばこ製品につきまして、法律に基づきテレビ、ラジオ広告及び公共の場での広告が禁止されております。  イタリアでございますが、一九六二年にたばこ製品につきまして、法律に基づき広告が禁止されております。  カナダでございますが、これは一九七二年に業界が自主的にテレビ、ラジオ広告を禁止しております。シガレットでございます。  ベルギーにつきましては、一九八三年、法令に基づきテレビ、ラジオの広告禁止。これもシガレットでございます。  以上でございます。
  196. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 我が国の場合、たばこ事業法四十条「広告に関する勧告等」で、広告が過度にわたることがないよう努めることをたばこ広告を行う者に求めて、大蔵大臣は広告の指針や勧告を出せることになっています。しかし、実際には、日本たばこ産業と外国のメーカーでつくっている日本たばこ協会の自主規制に任されているわけです。  たばこCMの放送量、これはビデオリサーチの調べでありますが、六十年五月に約一時間二十分、六十一年五月には八時間三十六分、六十二年五月には十一時間七分、三年間で十倍以上に、異常にふえてきているわけです。六十二年五月のスポットCMでは、ビールに次いで二位、月二千本以上にも及んでいるわけであります。つまり、自主規制があっても、量の規制には全くなっていない、こういう実態をこのCMの増加は示していると思います。  CMの増加というのは、輸入たばこの増加、つまり関税ゼロになった六十年から六十二年の三年間で輸入たばこは四倍になっていますけれども、このことと大きな関連があります。日本では法律による広告規制がないので、外国たばこはCMにどんどん進出をしてきている。日本のたばこも外国にそのままやられていたのでは大変だということで、負けじとCMをふやすというようなことで、この異常なCM洪水の状態になっておると思います。この最大の犠牲者が未成年者なのです。  ここに、子供のためのテレビCM連絡会の方々が行いました子供たちを対象にした「いつテレビを見ていますか」、そういう調査結果があります。千名に配付をして七百八十五名が回答している。これは昨年の秋、行われたものであります。  自主規制の時間枠というのは、月曜日から金曜日まで、八時五十四分までは放映してはいけない。それから土、日、祝祭日については、六時から八時五十四分までは禁止しますよというようなことが決まっているわけですが、それ以外に、じゃ一体子供たちがどのくらいテレビを見ているかということについての調査であります。  小学校一年から三年の男の子の場合、一週間合計で二百八十一分。例えば水曜日の場合三十八分、土曜日は四十三分、日曜日は大体九十分、この規制時間以外にテレビを見ている。それから女の子の場合、水曜日は十五分、土曜日が四十六分、日曜日が七十六分、合計二百十三分。  それから、小学校四年から六年の男の子の場合、水曜日が五十二分、土曜日が七十五分、日曜日が七十八分、合計で三百七十六分。それから女の子の場合、水曜日は五十分、土曜日が七十七分、日曜日が百二分、合計で四百五分。  中学一年から三年の男の子の場合、水曜日が八十一分、土曜日が百三十六分、日曜日が百五十六分、合計で六百九十三分。それから女の子の場合、水曜日が八十一分、土曜日が九十九分、日曜日が百三十七分、合計で五百九十一分になっています。本当に実態と合わない、子供たちがテレビを見ている、そういう状態がこの調査で浮き彫りになっていると思います。  では、子供たちがそのたばこのCMについてどう思っているか。例えば名前を申し上げますと、スピークラークというのがありますけれども、これについては「あの髪の白いおじさんが最後に言う「スピークラーク」って言うのが渋い」、これは小学校の高学年の女の子の感想。それから、「英語の勉強になる」というのもあります。中学生の女の子です。それからマイルドセブン「涼しそうだから」、ラッキーストライク「バイクがかっこいい」、キャビンマイルド「音楽とレーシングカーがマッチしているから」、PMスーパーライト「音楽がよかった」、こういうふうに子供たちは非常に敏感に反応しているわけであります。こういう実態を見せられて、好ましいと思う方はいらっしゃらないと思うのです。やはり、これは問題だなというふうに思われると思います。  大蔵省の先ほどのたばこ事業法の第四十条第一項では、未成年者の喫煙防止のために広告規制がうたわれているわけですから、実態に合わせたちゃんとした自主規制を行うべきであります。この点について、大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  197. 森田好則

    ○森田説明員 先生指摘のように、我が国では業界で自主規制を行っております。中身につきましては、先生少しお触れになりましたけれども、その中でも一つ補足させていただきますと、広告物には未成年者の喫煙禁止に関する注意表示を挿入するといった措置も講じております。  大蔵省としても、製造たばこの広告につきましては非常に関心を持っております。従来から業界で行われている自主規制の徹底、またその実効が図られるように指導しているところでございます。  ただ、もう先生御案内のとおりだと思いますけれども、今月十四日にたばこ事業等審議会に対しまして「喫煙と健康の問題に関連するたばこ事業のあり方」ということで、幅広い観点から御審議いただけるように諮問したところでございます。したがいまして審議会におきましては、どういう具体的な審議項目になるかはこれからの問題でございますが、たばこの広告の問題につきましても、やはりその中で議論が及ぶのではなかろうか、そのように我々は思っております。したがいまして、その審議の状況を当面見守っていきたい、かように考えている次第でございます。
  198. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 たばこ事業法の四十条二項では、大蔵大臣が、一項の趣旨に照らして必要があると認める場合には、あらかじめ政令で定める審議会意見を聞いて、製造たばこにかかわる広告を行う者に対して当該広告を行う者の指針を示すことができる、こういうふうになっているわけであります。こういう規定があって今まで大蔵省は作業をしてこなかった、これはもう大変怠慢だというふうに思います。  今お話しのように、これから審議会に諮問をした、その中で作業が行われるということでありますけれども、具体的に作業はどういう運びになっていくのか、お示しをいただきたいと思います。
  199. 森田好則

    ○森田説明員 先生御質問の件は審議会の運営の件だと存じますが、先般諮問しまして、審議会におきまして今後の審議の進め方につきまして御意見を伺ったところ、この問題は疫学とか精神医学、心理学、文化社会学等々、かなり専門的な議論が必要ということになりまして、やはりこれらの分野に造詣の深い方々に専門委員となっていただいて部会をつくる、一部の委員の方も入ってもらいますが、そういう中で議論をしていった方がいいのではなかろうかということになってございます。  以上でございます。
  200. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 もう一度確認しますけれども、その審議会の中で指針づくりについてこれを進める、広告のCM対象の指針をつくるということについても作業をする、これはそういうことでいいわけですね。
  201. 森田好則

    ○森田説明員 お答えいたします。  今後の具体的な審議項目につきましては部会の中で議論していただきますが、今回諮問しました趣旨は喫煙と健康に関する幅広い観点からの検討ということでございますので、その全体像をつかんだ上で広告のあり方その他につきましても当然議論が及ぶものと考えております。
  202. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 当然議論が及ぶ、つまり指針づくりについても検討するということになるという理解ですが、その点でちょっと伺いたいのですが、審議会委員の構成であります。  私がいただいている審議会委員、十五名になるわけでありますけれども、この審議会委員十五名のうちの九名がたばこ産業と大蔵省に関係のある方であります。  会長の吉國さんは元大蔵事務次官。香月さんは喫煙科学研究財団理事長。吉瀬さんはやはりこの財団の理事、元大蔵事務次官であります。長岡さんが日本たばこ産業株式会社の社長。黒木さんが全国たばこ耕作組合中央会会長。伊勢川さんが塩元売協同組合副理事長。関野さんが全国たばこ販売協同組合連合会副会長。牧内さんが元全専売たばこ産業労組の委員長。小西さんがやはり喫煙科学財団の理事ということであります。  この喫煙科学財団のことですが、この財団の性格はたばこ産業と非常に関係が深い。お金は、たばこ産業株式会社を初めとする四十数社の寄附によるということで、この理事長の香月さんという方は、厚生省のたばこ白書の感想について、私だったらあれは間違いと言うね、と雑誌で発言をされている方であります。ちなみに言うとそういうことなんです。こういう方々が今審議会で議論をするということになると、どういう結論が出るのかということは、もう大変疑問だという多くの皆さんの指摘があります。  ですからそういう点では、私は、この審議会委員の中に消費者団体あるいは婦人団体の代表、白書づくりに参加をされた専門家の方々、こういう方々を当然参加をさせるべきだというふうに思います。この点について大蔵省、その検討の対象としてそういう方々を考えることができるかどうか、伺いたいと思います。
  203. 森田好則

    ○森田説明員 先ほども申しましたように、今後具体的な人選につきましては詰めていくことになると思いますが、疫学とか精神医学あるいは心理学、文化社会学等、非常に専門的な分野にわたると思います。したがいまして、そういう造詣の深い方々に専門員になっていただきたい、かように考えている次第でございます。
  204. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 厚生省に伺いたいのですが、WHOの勧告もあります。厚生省として白書の線に沿って、今後具体的にどのように進められるのか、伺いたいと思います。
  205. 有川勲

    ○有川説明員 喫煙は、国民の嗜好、習慣にかかわっている問題でございます。そういったことで、一律に禁煙を強制するといったことはできないと考えております。  しかし、先ほど申し述べましたように、喫煙が健康にさまざまな悪影響を及ぼすものであり、喫煙に対する健康教育あるいは分煙対策などの充実を一層進めてまいりたいと考えております。  また、WHOの総会決議によりまして設けられました本年四月七日の世界禁煙デーでは、厚生大臣のメッセージを国民に送りますなど、喫煙問題についての啓発普及に一層努めているところでございます。  さらに、喫煙対策には、広告規制など厚生省では対応できない問題もございまして、今後とも関係省庁関係機関と連絡をとりながら、喫煙対策を進めてまいりたいと考えております。
  206. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、今いろいろ議論をいたしましたけれども、たばこのCM問題というのは非常に深刻だというふうに思います。  今、たばこの問題については大蔵省からも話を聞きましたし、それから国民の健康という点では厚生省、子供の教育は文部省、各省庁にまたがっていて、一省庁だけで対応できるということではありません。やはり総合的に調整して事を進めていかなければいけないというふうに思います。  それから、今外国たばこが日本に非常にはんらんしている。かつて公害企業が日本ではいろいろ規制されているんだけれども、その分外国へ出ていったという例があります。ちょうど今、それを日本が受けているという感すらするわけでございます。先ほど御説明いただいたように、ヨーロッパ、アメリカ等では法律によってCM規制はされているわけです。その点、ぜひ大臣にも閣僚の一員として、また経企庁長官、調整機関として、この問題については積極的に取り組んでいただきますようにお願いをしたいと思います。この点について、大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  207. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私は、小さいときからたばこを吸わなかったものですから、たばこについての論議は、私にはちょっと資格がないのかもしれません。  先ほどずっと思い出してみますると、私が旧制の中学でございますから、中学四年、五年生くらいになりますると、男の子の場合、びろうな話でございますけれども、トイレなどに行きますと、よくトイレの中で禁止されているたばこを中学生の未成年者が吸っておって、私などに中尾、中へ入って吸えとか、何とかかんとか誘惑を受けたものでございましたが、私もそういう点、一徹なところもありましたし、当時頑固でひねくれたところもございましたものですから、彼らが吸うんじゃ私は吸わない、こういう気持ちで、私は二十になっても二十一になってもたばこを手にしたことはないのでございます。  結局、二十になったらば体の要求としてたばこを必要とするというわけではないので、これは人間、何ということはない興味から入っていくんじゃないかと思いますので、今諸外国の例を逐一先生に挙げていただきましたが、ほほうと私も感心して聞いておりました。  そういう意味におきましては、未成年者が、禁止されておることでもございますし、ましてや先ほどのいろいろの先生の御指摘を聞きますると、昨今は確かに考えてみるまでもなくCMで方々でやっております。スピークラークと言うておる白い頭の男の人がかっこいい、悪いは別にいたしまして、いずれにせよ、こういうことが余り蔓延いたしますると、もう既にアメリカでは現実にたばこを徹底的にやめているわけであります。徹底的にやめていく方向にありながら、日本の方には売りつけていく、これは私は余り感心することではございません。同時に、他の国においてもそうでございましょう。それに負けじと日本のかつての専売公社等々が一生懸命でやっていたのでは、話になりません。  したがいまして、ある程度の年齢になった人たちの嗜好としてやることは、これはもう仕方のないことといたしまして、青少年の体に害のあるという点においては厳しく律していくというのは、我々政治家の使命でもあり、また行政の指導方針でなければなるまい、このように私も不退転に考えておりますから、機会を得まして私自身もいろいろの機会、例えば青少年教育のような問題点の閣議もございましょう。そういうような場合には、私の口からも必ず申し添えて、そのような方向で、私のようになれとは言いませんけれども、少なくとも二十後の嗜好は別として、未成年者の健康に悪い影響を与えるようなものは、コマーシャルであれ何であれ、なるべく控え目に考えていくというのがごく当たり前の国家観であろうと思いますし、また社会観であろうと思いますので、その方向に私も努力を傾注することをお約束したいと思います。
  208. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります
  209. 村山喜一

    村山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会