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1988-07-06 第112回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年七月六日(水曜日)     午後二時五分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       川崎 二郎君    小坂善太郎君       杉浦 正健君    田邉 國男君       玉沢徳一郎君    虎島 和夫君       保岡 興治君    柳沢 伯夫君       石橋 大吉君    沢藤礼次郎君       田中 恒利君    辻  一彦君       前島 秀行君    安井 吉典君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  委員外出席者         農林水産政務次         官       北口  博君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省経済         局統計情報部長 海野 研一君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁次長   近長 武治君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      坂野  興君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    桑原 茂樹君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 六月十三日  辞任         補欠選任   藤原 房雄君     森田 景一君 七月五日  辞任         補欠選任   森田 景一君     藤原 房雄君 同月六日  辞任         補欠選任   杉浦 正健君     虎島 和夫君   竹内  猛君     辻  一彦君 同日  辞任         補欠選任   虎島 和夫君     杉浦 正健君   辻  一彦君     竹内  猛君     ───────────── 五月二十五日  一、本邦漁業者漁業生産活動確保に関する法律案安井吉典君外十六名提出、第百八回国会衆法第一号)  二、農林水産業振興に関する件  三、農林水産物に関する件  四、農林水産業団体に関する件  五、農林水産金融に関する件  六、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(昭和六十三年産米穀政府買価格等)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和六十三年産米穀政府買い入れ価格米価審議会への諮問及び昭和六十二年産米生産費統計調査結果について政府から説明を聴取いたします。近長食糧庁次長
  3. 近長武治

    近長説明員 昭和六十三年産米穀政府買い入れ価格につきまして本日米価審議会諮問させていただきましたので、その諮問の概要について御説明申し上げます。  まず最初に、「諮問」と「諮問についての説明」につきまして朗読申し上げます。      諮  問   昭和六十三年産米穀政府買価格について、将来にわたり我が国稲作の健全な発展を図るとの観点に立ち、需給事情に即応しつつ生産費及び所得を考慮して決定することにつき、米価審議会の意見を求める。   昭和六十三年七月六日           農林水産大臣 佐藤  隆     …………………………………      諮問についての説明   米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式によりその時々の需給事情等に応じて行ってきたところであります。   このような中で、昨今の米をめぐる内外の諸情勢にかんがみ、生産性の高い稲作担い手となる農家生産組織集団を広範に育成し、我が国稲作体質強化を図っていくことが現下の最大の課題となっており、このための各種施策を鋭意推進しているところであります。   また、米の潜在需給ギャップ拡大に伴い、昭和六十三年度においては水田農業確立対策の推進と併せ米需給均衡化緊急対策を実施しているところであります。しかしながら、消費減少傾向の強まりと四年連続豊作等から過剰傾向が強まっており、三度の過剰処理を回避するための的確な対応が急務となっております。   なお、米の管理に係る財政運営も、国家財政が厳しい状況にある中で、一層困難な局面に直面しております。   他方稲作については単収水準上昇投下労働時間の減少、更に一般経済情勢面では労賃上昇率鈍化等をみております。   本年産米穀政府買価格につきましては、以上の事情総合勘案の上、生産費及び所得補償方式により算定することとしてはどうかといことであります。  次に、お手元にお配り申し上げております「昭和六十三年産米穀政府買価格試算」につきまして御説明申し上げます。  資料説明に入ります前に、算定基本的な考え方について簡単に申し上げておきたいと思います。  基本的な考え方といたしましては、本年産におきましては従来の算定方式に基づき、最近の米需給趨勢生産性向上状況経済実勢を的確に反映した算定を行うということとしております。  すなわち、算定方式といたしましては生産費及び所得補償方式によることとし、対象農家平均生産費について、物財雇用労働費など実際に支払う費用につきましては生産費調査結果を物価修正するとともに、家族労働費につきましては都市均衡労賃評価がえをして、実際の支払いを要しない自己資本利子自作地地代につきましても一定評価方法により算入いたしまして、これらを合算した評価がえ生産費平均単収で除したものに、収量変動平準化係数を掛けまして「求める価格」、つまり米農家庭先価格でございますが、この求める価格算定しております。  具体的な算定につきましては、今お配りいたしました資料に基づきまして後ほど御説明申し上げますが、主要な点についてあらかじめ申し上げさせていただきたいと思います。  まず、生産費対象農家でございますが、これにつきましては、需給均衡を図るために、現在、前年度に引き続いて水田農業確立対策を実施しておりますほか、消費、流通、生産の各般にわたりまして米需給均衡化緊急対策を実施しております。消費減少傾向の強まりと四年連続豊作というような事情から、過剰傾向が一層強まっております。このような現下の米の需給事情米価算定におきまして的確に反映させることとしております。すなわち、生産費対象農家といたしましては、農家生産費の低い順に並べて、その累積生産数量比率一定数量、今回の場合は七六%でございますが、この一定数量になるまでの農家をとっております。  その場合、この一定比率を求める際の分子につきましては、六十二年産では生産予定数量千十万トンに在庫減予定数量二十万トンを加えた数量をとりましたけれども、本年は六十三米穀年度末、つまり六十三年十月末でございますが、この時点におきます在庫が二百三十万トンを超えるというふうに見込まれる需給事情のもとでございますので、生産予定数量つまり九百八十二万トンをとっております。  また、分母当たります潜在生産量につきましては、六十三年度における潜在生産量、すなわち千三百七十万トンから、六十二年と同様に、他用途利用米生産予定数量四十七万トンのほか、転換畑相当分を含む永年性作物等定着分三十三万トンを控除しております。  次に、主な算定要素について御説明申し上げますと、まず、家族労働評価に用います都市均衡労賃とり方につきましては、基本的には六十二年産とり方と同様、常用労働者数五人以上千人未満の事業所規模製造業賃金について、都道府県別米販売数量ウエートにより加重平均した賃金という考え方に立って算定しております。  また、自己資本利子及び自作地地代につきましては、金利動向影響するわけでございますが、六十二年三月以降預金金利が安定的に推移しているという状況などを踏まえまして、実勢金利をとることとしております。すなわち、自己資本利子金利とり方といたしましては、現行の農協六カ月定期と一年定期平均をとっております。また、自作地地代評価につきましては、六十二年産と同様、固定資産税評価額を元本とする土地資本利子考え方に立ち算定しておりますが、その際の適用金利につきましては、最近の金利動向を踏まえて、十年利付国債直近一年平均応募者利回りを用いております。  次に、企画管理労働でございますが、この企画管理労働につきましては、現行方式のもとでの算定につきましては種々論議のあるところでございます。しかし、六十二年産において暫定的な取り扱いとして過去のデータに基づいて一部を算入したところでございます。本年におきましても担い手層には企画管理労働を付与するという観点から、六十二年産についての緊急調査結果に基づいて担い手層生産シェア相当分を算入しております。  以上のことに加えまして、単収につきましては、六十二年産と同様に、米価算定適用年直近三年平均の十アール当たり生産費と単収を基本としつつ、収量変動平準化のための一定係数つまり生産費単収と推計により求めました平年ベースの生産費単収との比率、この一定係数を用いることにより、収量変動影響を緩和するようにしております。  以上のような方式による試算結果は、一―五類、一―二等平均包装込みのいわゆる基本米価で、現行米価より四・六%低い一万六千七百四十三円となります。なお、最近の米の嗜好の変化に即応し、歩どまり加算は廃止することとしております。  それでは、以下、お手元にお配りしております資料によりまして具体的に御説明申し上げたいと思います。  まず算式でございますが、Pイコールと書いております右のところの分数の分子は、十アール当たり評価がえ生産費でございます。それから分母が十アール当たり収量でございまして、いずれも三年平均でございます。価格決定年の前三年におきます各年の米販売農家生産費の中で低いものから、その累積生産数量比率価格決定年米穀需給事情基礎として定める比率、先ほど御説明申し上げました七六%という比率でございますが、それになるまでのもの、つまり対象農家でございますが、その十アール当たり平均生産費によっております。この平均生産費につきまして、先ほど御説明申し上げましたように、家族労働費につきましては都市均衡労賃により評価がえをし、物財雇用労働費については物価修正をする等、価格決定年評価がえしているわけでございます。以上の結果三年平均で求められたものが、分子にございます十アール当たり評価がえ生産費でございます。  それから分母につきましては、価格決定年の前三年における各年の対象農家の十アール当たり平年収量でございまして、これを三年平均したものでございます。  分子分母で割った答えにさらにアルファを掛けております。アルファは、一ページの下にございますように収量変動平準化係数でございます。この収量変動平準化係数につきましては九ページに書いてございますが、六十キログラム当たりに引き直す際に生じます収量変動がございますが、それをなるべく平準化するということでございます。この算式収量平準化係数を求めました結果が一番下にございますが、アルファイコール一・〇二五でございます。こういう算式を用いることによりまして年々の収量変動が平準化される、こういうことになっているわけでございます。  そういう収量変動平準化係数を求めた結果に六十を掛けておりますが、これが六十キログラム当たり評価がえの生産費でございまして、これによって「求める価格」Pが得られるわけでございます。「求める価格」Pにつきましては二ページに具体的な算式がございます。今申し上げました計算によって求められる価格でございまして、Pイコール一万六千三百二十四円でございます。この価格運搬費を加えまして一万六千五百八円、これを「基準価格」と言っております。  この基準価格につきまして、一―三等の一―五類平均と三類との格差十九円、それから一―三等平均一等との格差百二十六円をそれぞれ加減いたしますと、ウルチ類一等裸価格、いわゆるへそ価格と言っておりますが、これをもとに各個別の価格が算出されるわけでございますが、いわゆる基本米価ということになりますと、この4に書いてあるところでございまして、今申し上げましたウルチ類一等裸価格一万六千六百十五円に一―二等の三類と一―五類平均との格差、それから一等と一―二等平均との格差包装代、それぞれを加減いたしまして一万六千七百四十三円、これが本年産米政府買い入れ価格ということになるわけでございます。前年の一万七千五百五十七円に比べまして八百十四円の減、割合で四・六%の減でございます。  以上をもちまして、政府買い入れ価格試算について御説明申し上げました。
  4. 菊池福治郎

  5. 海野研一

    海野説明員 それでは、お手元にございます「昭和六十二年産米生産費」について御説明申し上げます。  昭和六十二年産の水稲の生産費、これは昨年から玄米十俵以上販売農家について計算をいたしておりますが、これは左の欄で見ていただきますと、まず十アール当たりでございますが、物財費では〇・三%の上昇他方労働費が一・九%減少ということでございまして、第一次生産費で〇・四%の減、第二次生産費十七万七千三百二十円ということで〇・二%の減少になっております。これは、一つには省力化による労働費の減というものがございます。他方で、後で出てまいりますが、円高関係物財費が余り上がらなかったということも影響しております。  ただ、その右に参りまして、六十キログラム当たりになりますと二万二百三十二円、二・五%の上昇ということになっております。これは、十アール当たりでは生産費は下がったわけでございますが、何分にも単収が、昨年は生産費農家平均五百四十キロという水準であったものが五百二十六キロに落ちております関係で、六十キログラム当たりでは昨年よりかえって上昇という結果になっております。  それから、その下の方に収益性が書いてございます。  粗収益につきましては十六万五百六十九円で七・七%減少しております。これは、価格の低下、それから先ほど申しましたような収量減少、品質の問題がさらに加わるというようなことで粗収益減少しておりまして、これを所得に引き直しますとさらにパーセントとしては一六・四%の減少ということになっておるわけでございます。  それでは、二ページ以降で少し内容に触れさせていただきたいと思います。  まず費目の構成につきましては、順位は従来と変わりませんで、労働費が三六・二%とやはり一番高いわけでございます。次いで農機具費肥料費賃借料及び料金農業薬剤費という順番でございまして、この五費目費用合計の八六・七%を占めております。  それから、個別の費目にまいりまして、労働費でございます。労賃単価はやや上昇しておりますけれども投下労働時間が五十・四時間というふうに減少しております関係で、前年を一・九%下回っております。  次に農機具費でございますが、これは、農業機械利用効率化等要因農家機械の購入は減少しておりますけれども、米の作付面積減少しておりますので十アール当たりの負担が大きくなってきたということで、二・一%上昇いたしております。  それから肥料費につきましては、肥料のほとんどの原材料が輸入品でございます。円高影響を受けまして肥料価格が下落をして、その結果肥料費として前年よりも七・五%低くなっております。  賃借料及び料金はほぼ前年並みでございます。  それから農業薬剤費については、価格はやや低下いたしておりますけれども、中国、九州の一部でウンカが発生したというようなことがございまして殺虫剤の使用が増加をいたした関係で、前年をわずか上回っております。  それから、三ページ目に入りまして作付規模別生産費でございます。これは、十アール当たりで見ましても六十キログラム当たりで見ましても、作付規模が大きくなるにつれて逓減をいたしております。これは、作付規模の大きな階層ほど農機具効率的な利用ということで、機械についても効率がよくなりますし、労働時間も短縮するというようなことが要因でございます。その結果、ここにございますように、生産費の最も高い層を一〇〇として見ますと、各規模ごとに、七二、七〇、六七、六二というふうに逓減があらわれております。  その下、三番目、収益性につきましては先ほど申しましたけれども、ここに載っております八時間当たり所得ということになりますと、労働時間が減少している関係で十アール当たりよりは減少の程度の軽い一三・四%というような減少にとどまっております。  四ページ以降は統計表でございますので、適宜御参照いただければ幸いであると思います。
  6. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  7. 菊池福治郎

    菊池委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保利耕輔君
  8. 保利耕輔

    保利委員 本日、先ほど諮問米価決定をされ、米審諮問をお出しになられたばかりの大臣、大変お疲れのところ恐縮でございます。日本農業農政の根幹をなすところの米、その米価決定するに際しまして、大臣基本的な問題について御質問を申し上げたいと思います。  昨年は五・九五%の引き下げ、本年の諮問を拝見いたしますと、先ほど御説明がありましたように四・六%の引き下げということに相なりました。二年連続大幅引き下げということであります。あるいは算定方式等についてもいろいろな論議があったところでございますが、たった今米審諮問案をお出しになられて、大臣、非常に御苦心もあったろうと思います。この諮問米価について、あるいは諮問案について、大臣の御感想をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  9. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 保利委員質問にお答えするに際しまして、委員長初め委員各位には大変御心配をかけてまいっておること、私自身恐縮に思っております。また、何かと御指摘もいただきながら御理解も賜りたい、かように考えております。  現在の米をめぐる諸事情というものは、内外格差拡大等により米価食管制度のあり方について国民の関心が非常に高まっている中で、経営規模拡大生産組織集団育成を通じて、生産性の高い稲作、その担い手を広範に育成をし、我が国稲作体質強化を図ることが重要な課題となっておることは御存じのとおりでございます。また、米の需給事情につきましては、四年連続豊作消費減少傾向の強まり等によって、昨年以上に三たびの過剰処理が懸念される事態となっております。  このような状況のもとで本年産米価につきましては、米価算定方式に関する小委員会報告を踏まえ、生産性の高い稲作担い手層に焦点を置くとともに、需給調整機能を重視した新しい米価算定方式に基づいて算定を行うべく、関係方面との調整を鋭意進めてきたところであります。しかしながら、諸般の情勢から新算定方式については今後生産者を初め関係者理解を深めつつ、昭和六十四年産米穀政府買い入れ価格から適用することとし、本年は従来の生産費及び所得補償方式により算定する次第でございます。  本年の米価算定当たりましては、米需給趨勢、現に進みつつある生産性向上生産コスト低減状況、最近の経済実勢等を的確に反映させるという基本的な視点に立って諮問し、算定を行ったところであります。
  10. 保利耕輔

    保利委員 米価算定に対します新しい算定方式については米価審議会の小委員会で鋭意検討なされて、それが米価審議会から大臣報告がなされ、大臣としてはこれを極めて尊重しなければならないお立場にありながら、これについては一年間適用しないという、大変難しいお立場でありながらそういう御決定をしていただいたことは、激変緩和というような意味も含めまして、私どもとしては大変ありがたく思っておるわけであります。大臣、大変御苦労なさって、あるいは米価審議会先生方にも大臣からいろいろお話もされたことだと思いますが、本当に御苦労さまでございました。心から感謝を申し上げます。多くの農家からことしは適用しないでくれという悲痛な叫びがあっただけに、このことは恐らく将来の稲作にとってプラスになるであろうと私は信じております。  そこで二番目に、大臣は新潟県の御出身でございますし、まさに稲作の、本当に日本米作地帯出身である。私も大変尊敬を申し上げておるわけでございますが、日本稲作の将来、例えば十年とか二十年とか先、日本稲作がどういうふうな姿になっているのか。ただいまの稲作の状態を見ておりますと、昔と比べまして大変機械化が進んできたということは言えるのじゃないかと思います。ただ、果たして機械効率的に、合理的に現在使っているかと言えば、そうでない例も散見することができるわけであります。そういった意味で、効率的な、合理的な機械化農業、これも一つの方向だろうと思います。大臣日本稲作の将来像というものに対してどういうふうなお考えをお持ちか、御所見を賜りたいと存じます。
  11. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 新しい算定方式を一年とにかく見送るという結論を出すにつきましては、ただいまは御理解ある御発言をいただきました。私自身といたしましては、行政責任者として、だれが行政責任者になっても、行政と法に基づく審議会との関係、これを考えますと内心じくじたるものがございます。ただいまも率直に米価審議会委員各位におわびも申し上げたところでございます。  稲作の将来像ということになりますと、今の稲作をめぐる情勢というものは、米の潜在的需給の不均衡拡大する傾向にあることと、内外格差の縮小が強く求められていることなど、大変厳しい情勢にあることは私も十二分に承知をしております。こうした中で我が国稲作農業の将来を切り開いていくためには、さきの農政審報告にも示されているように米の需給均衡のための対策需給均衡化対策を強力に推進するとともに、水田というすぐれて我が国の風土になじんだ生産資源を生かすという観点から、稲作転作作物等を組み合わせた水田有効利用によって、水田農業の総合的な生産性向上を図ることが必要だと考えております。このため、土地基盤整備担い手確保規模拡大生産組織化中核的施設整備、技術の開発、普及等により二十一世紀に向けての生産性の高い水田農業を実現してまいる所存でございます。
  12. 保利耕輔

    保利委員 生産性の高い農業を実現していく、そのためには効率的な土地利用も必要でありましょうし、また先ほど申しましたように効率的な機械利用も必要でありましょう。そのためにはやはり規模拡大していかなければならぬということもありましょう。規模拡大阻害要因等いろいろあると思いますが、そういったものを取り除きながら将来の稲作の展望を開いていっていただきたい、大臣に御要望を申し上げたいと思います。  そこで、米という問題を考えますとすぐに私ども、食管法というものが頭に浮かんでくるわけでございます。昭和十七年という、極めて米の需給が逼迫しておる、戦争中でございますから米の生産も思うに任せず、私どもも食うや食わずで過ごした時代の産物の食管法でございます。現在でもカタカナで書かれておりますが、これが、食管法はそろそろ見直したらどうだとか、あるいは近年大潟村で起こっておりますいろいろな事件等、あるいは政府管理米におきます在庫の増大、こういったものをいろいろ考え、そして食管法についての論議というものが最近やかましくなってきております。私は、政府農政というものは、その国がいつどういう状態にあろうとも、そこの国の国民に対して安定的に必要にして十分な食糧を供給し続けるということがその農政基本でないかと思っておるわけでございます。そういう意味において、米の需給を安定させることに大変役立っておるこの食管法については、その存在は非常に重要なものだと思っておるのですが、大臣はいかがお考えか、食管法を今後どういうふうに維持をしていかれるおつもりか、御所見を賜りたいと思います。
  13. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 食管制度につきましては、今後とも国民の主食である米を政府が責任持って管理することによって、生産者に対してはその再生産確保し、また消費者に対しては安定的にその供給責任を果たすという制度の基本を維持しつつ、広く国民各界各層の理解と協力が得られるように、運営の改善を図っていくという考え方に立っております。  なおまた、食管法の精神、根幹を堅持しながら、とにかく米の自由化はしない、この制度は維持するということは明確に重ねて重ねて答弁を申し上げておるところでございます。
  14. 保利耕輔

    保利委員 大変力強い大臣の御決意を伺いまして安心したわけでございますが、食管法の根幹を守る。いろいろそのときそのときの状況によりまして応用動作等はあろうかと思いますけれども、根幹は国民のために、消費者のためにもぜひ守っていただきたい、私はそういうことを御要望申し上げたいと思います。  ちょっと視点を変えて質問をさせていただきますが、これは構造改善局からお答えをいただいても結構でございますが、今回の米価審議会算定方式の小委員会で出されました報告、これは米価審議会報告でございますが、そこの中にいろいろな記述がございます。大変詳しくいろいろなことが書いてございますが、生産性の高い農家に着目をした算定方式をとっていくべきであるということが書いてあるのと同時に、その裏側に当たる部分の問題も指摘がされておる。例えば、米の生産者に目標を示し、構造政策、生産対策を推進し、価格政策の運用方向を明らかにするために中期的な目標生産費について検討を行うことというようなことも書いてございますし、また、ここのところは御質問申し上げたい点でございますが、大規模化を推進していく中にあって、中山間部等生産性の向上が困難な地域の稲作の位置づけや所得確保問題、また水田をどのように維持するか等の課題について、価格政策とは別途に検討を行うことという御指摘が米価審議会の中の報告書に書いてあるわけであります。これは極めて難しい問題であろうかと思います。例えば山間部において水田をどのように維持するか、この一つのことについて検討を行うことと書いてあります。これはまさに農林水産省が検討を行わなければならないわけであります。結論はまだ出ていないかもしれませんけれども、どういうお気持ちでこういったものに対処していかれる御所存なのか、ぜひ伺わせていただきます。
  15. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 極めて重要な検討課題であるという認識を申し上げておきたいと思います。  今言われました地帯における構造政策を進める上に地域に応じた展開を図ることが重要であると思いますが、基本的にはその立地条件さまざまでございますから、それに即した生産基盤整備等を促進して農業体質強化を図っていくということが必要だと思っております。しかし、自然条件の制約等から、平地の農村のように規模拡大を図ることが困難な地域も非常に多いのが実態でございます。こういうような地域においては有機栽培米、高品質商品の生産などその特殊性を生かした農業経営を行うことが必要ではないか。さらには、農業生産基礎としながら自然環境を活用したリゾート開発等をあわせ行うことによって地域の活性化、振興を図ることも必要ではないか、こんな考え方を持つわけでございます。  また、中山間地帯の水田については、国土保全的な機能も果たしておるわけでございますので、今後の構造政策の推進に当たってはそのような観点をどう考慮していくか、冒頭申し上げましたように重要な検討課題だと私は心得ております。
  16. 保利耕輔

    保利委員 米審の方でも、そのことについては重要性を考えてこういう御指摘をなさっておられると思います。したがいまして、米価等のみを検討するだけではなくて、こうした細かい問題に対して農林水産省として十分御配慮をいただくように、それからまた水田が持ちます洪水調節機能等につきましてもいろいろなパターンに分けてシミュレーション的な検討を行うなど研究を重ねていただきたい。山間部における水田というものは維持されるべきものなのか、それともなくても構わないものなのか、それは一概には言えないと思いますけれども、いろいろなその山間地山間地の様相に即したあり方というものについてぜひ私は研究をし御検討をしていただきたい。重要なのか重要でないのか、重要でないということはないと思いますが、そこのところをはっきり検討していただきたい、こういうように思います。  次に、米の消費拡大の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  統計によりますと、昭和三十七年の米の国民一人当たり消費量は百十八・三キロと出ております。それが昭和六十一年の消費量は七十三・四キロと極めて大幅な減少になっております。生活様式の変化もありましょう。あるいは体力を使う仕事が少なくなってきたというような問題もあろうかと思います。私はこの農林水産委員会でいろいろ質問させていただいたときに、いわゆる日本型食生活というものがしばしば農林水産省からもお答えの中で出ておったわけであります。今、アメリカの牛肉、かんきつの貿易摩擦問題等を検討する中で、牛肉の需要が大幅に伸びていくという考え方があります。あるいはそういうデータがございます。そうした中で米の消費拡大を続けていく、果たしてこれ、できるものかどうか。やっていかなければ日本水田農業を守ることはできない。日本稲作を発展させようと思えばどうしても消費をしなければいけない、食べていただかなければならないということになるわけでありますが、この辺について大臣いかがお考えか、御所見を賜りたいと思います。
  17. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今おっしゃいますように、米の消費拡大ということについていろいろな工夫を凝らしてきた経緯がございます。いずれにしても、日本の国の風土、資源に適した食生活、まさに日本型食生活、これを広く維持、定着をさせていくということを基本としていく考え方に変わりはございません。米についての正しい知識の普及啓発、また地域の実態に即した米消費拡大対策、統計上いろいろな地域での、この地域は落ち込んでいる、この地域は落ち込みが多い、少ない、多少落ち込んでおる中でもそういう仕分けも統計上ございます。なおまた、米飯学校給食の計画的な推進、これもまだまだ努力をしなければならぬと思っておりますし、米の新加工食品の開発普及、こうしたことを積極的に推進をしていく、こういうことにいたしております。特に六十三年度におきましては、米需給均衡化緊急対策の中で米飯学校給食の拡大、他用途利用米の拡大生産者団体による消費純増対策等を推進しているところでございます。米の消費拡大対策は、息長く不断の努力を今まで続けてまいりましたけれども、さらにその努力を積み重ねていくことが重要であると考えております。今後とも関係者一体となって取り組んでまいりたい、こう考えておるところでございます。
  18. 保利耕輔

    保利委員 日本稲作を発展させるためにはどうしても需要を確保するあるいは拡大することが必要でございます。特に都会地においてたくさん食べていただかないと真の需要拡大にはならない。農村部でも食べていただかなければなりませんが、やはり人口というものは都会部に密集しているということを考えるならば、都会部における米の需要拡大宣伝というものが非常に大事ではないかと思います。こういった点について御努力をさらにお願いを申し上げたいと思います。  次に、大臣はことし前半大変御苦労をされた中に、いわゆる貿易摩擦問題の処理があったわけでございます。牛肉、かんきつの問題につきましては去る六月二十日にアメリカ側と妥結を見られた。大変御苦心をなさったということは国民がよく見ておりまして、テレビを見た人々は皆、佐藤大臣本当によくおやりになったということで、大変大臣評価は高うございます。  その際、ヤイター代表と米の問題についてお話しになられたと承っております。アメリカ側は米の自由化提訴はしない、あるいは二国間で話し合うということはしない、そういうつもりはないというような報道が流れておりますが、この点についてどういうお話であったのか、差し支えなければ御披露をいただきたいと思います。
  19. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私とアメリカのヤイター代表との間で外交交渉において議題になったことはございません。しかし、一部報道がありましたようこ、リン農務長官がこう言ったとか、あるいはその後米国との交渉が一段落した後においてヤイター代表の、事実であるとするならば甚だ遺憾な発言も実は報道をされました。  そういう中にあってヤイター代表が来日をいたしまして、そして初めて閣僚交渉がアメリカとの間で日本で行われる、その直前にヤイター代表並びに駐日マンスフィールド大使、お二人からそれぞれリン農務長官の発言の真意について釈明がございました。二国間で米の問題を論ずるつもりはない、こういう釈明があったことを率直に申し上げておきます。  なお加えて、ヤイター発言について、風圧をかければ日本の交渉は言うとおりに進むという極めて遺憾な発言が一部報道をされたのでございます。私は、その事実調査を外務大臣に閣議の席上で要請をいたしました。その結果は昨日の閣議において外務大臣から、アメリカ側の釈明、ヤイター代表自身の釈明、おわび、そういうものが報告をされました。私はこれ以上しつこく取り上げる気はございませんけれども、そういう真意はないということでございますので、ワシントンに駐在の松永大使とヤイター代表との話し合いの結果は、外務大臣にも私にもヤイター代表からも直接手紙を出す、こういうことでございますし、それに先立っての釈明がございましたので、私はその旨をそのとおり昨日も記者会見で報告を申し上げた次第でございます。  いずれにしても国家主権はいかなることがあっても守るということは、これは断じて譲れない原則でございます。そういう意味において、農産物問題、貿易問題、市場アクセスの改善というカテゴリーから離れて私は今申し上げたように考えておるところでございますが、この点についても委員長初め皆さんに大変御心配をおかけしたではないか、率直に私から経緯を申し上げておきたいと思います。
  20. 保利耕輔

    保利委員 米の問題について大変力強いお話をちょうだいいたしました。なお、米については国民的にやはりこれは自由化すべきではないという意見が非常に強うございます。これを踏まえて今後とも大臣日本の米を守っていただきますよう心からお願いを申し上げます。  最後に一つ。この米の問題についてはウルグアイ・ラウンドで協議をする場合があり得るやの報道がございます。そういう場合に備えて日本としてはやはり理論武装をしておく必要があるのではないか。どういう理念に基づいて日本は米の自由化をしないのか。あるいはアメリカの食肉輸入法あるいはウェーバー品目、そういった問題との絡みもありましょうし、ヨーロッパの課徴金との問題もありましょう。しかし、相手の問題を云々するということも大事でありますが、日本がなぜ米は自由化をしないのか、これを国際舞台の場で、ウルグアイ・ラウンドの場で主張をしていく、そのいわゆる理念あるいは哲学といったようなものをきちんと整えておくべきじゃないかと私は思っております。差し支えのない範囲で、大臣、このような問題についてどうお考えになっておられるか、お伺いをして質問を終わりたいと思います。
  21. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ウルグアイ・ラウンドの農業交渉において、我が国としても農産物輸入国としての立場からの我が国の見解を表明すべく、さきに、十二月末提案をしたところでございます。御案内のとおりでございます。今後の農業交渉において、我が国として我が国のように食糧自給率の低い国が基礎的食糧の国内生産の安定確保を図る必要性を十分反映したルールづくり、端的な表現をすれば、どちらかといえば輸出国の声が大きい、輸入国の声が小さいとしたならば、これはいかがなものかという意味から、私はそういう意味でのルールづくりというものが行われるよう最大限の努力をいたしたい、こう思っております。そして、ウルグアイ・ラウンドの場において米だけではなくて農産物についてもあらゆるものが、あらゆる制度がまないたの上に乗るもの、これは前からお互いが予測しておるところでございまして、何も米だけの話ではない。しかし、稲作は重要でございますし、米は日本人の主食でございますから、そういう意味において最も重要な基幹作目でございますから、やはり足腰の強い稲作、そういう生産体制、生産性の向上、構造政策、これをあわせて行いながら、我々は堂々と主張すべきは主張していく。そして、前々から申し上げておりますように、お互いが今のままではいけないなという自覚があるときでございますから、私は財界筋にも余計なことは言わぬでくれ、生産者自体が自覚症状がある、私自身も自覚症状がある、そして何とかひとつ大きな体を、ハンドルを切っていって強いものにしていこうということで全力を尽くしていかなければならぬ、こう思っております。  なお、一言だけ付言させていただきますが、さきのトロント・サミットにおいて農業が焦点の一つにはなりましたけれども、竹下総理からは厳しい国土条件や食糧自給率など我が国農業の実情を説明するとともに、行政価格引き下げなど我が国の政策的努力を紹介しつつ、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の進め方について輸入国の立場から主張をしていただきました。この結果、農業改革の推進に当たりましては、食糧の安定供給や農業の果たしている社会的役割、これに配慮して行われるべきであることが宣言に盛り込まれる結果になったこともあわせて紹介をしておきたいと思います。  以上でございます。
  22. 保利耕輔

    保利委員 日本農業発展のために佐藤大臣の御奮闘、御活躍をお祈りをしまして、質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  23. 菊池福治郎

    菊池委員長 串原義直君。
  24. 串原義直

    ○串原委員 私は、まず質問に入るに当たって、今回の米価審議会に対する諮問案はまことに遺憾である、このことを前提にして大臣に私は伺ってまいりたいと思います。  私がまず伺いたいと思いますことは、昨年度五・九%米価が下がった、ことしはいろいろな経過の中で四・六%下げる、二年合わせますとともかく一〇・五%であります。諸物価が高騰してまいります中で、この引き下げ率というものは大変なものであると私は実は考えているのであります。今、今回の四・六%引き下げ諮問案に対する大臣の感想を求められた際に、御答弁の中で、担い手に焦点を置いて検討したというお言葉がございました。私もそのところが一番問題になるところだと考えまして伺うのでございますが、これだけの二年間にわたる大幅値下げの米価、この実態を踏まえて重要な担い手諸君に、特に若い農業後継者、担い手諸君に大臣は今日時点でどういう言葉で御説明をいたしますか、伺います。
  25. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 率直に申し上げまして、私、就任以来緊張の連続であるというか、日本たたき、農業たたき、こういう環境を私自身身に感じながら、一体これからの農業をどうしていくかということについて深刻に考え続けてまいっております。この先もまだ深刻なその気持ちを持ち続けながら努力をしなければならぬ。その中にあって、私自身はどういう肩書にあろうとも、将来農業者が、主要作目の生産者が、特に稲作農業者が意欲を持って将来にどう備えることができるか、それが焦点なんでございます。  先ほどは言葉が足りなかったかもしれませんが、担い手対策に焦点を当てる、そして今私らも汗を流すが、どうかひとつ生産者農業者におかれましても若干の汗は流してほしい、そして先行き不安のない形で、すなわち展望ができる形の中でことしの米価ありき、こういうことでわかっていただけるように、私自身は、厳しいと受けとめられる諮問ではございましょうが、御理解を賜りたい。そして、きょう、あすの審議会の結果答申がどのように出されるか、またそれを受けて私自身が委員おっしゃるような、また私が考えておるような展望というもの、将来に向けての考え方の中で米価ということを説明をしなければならぬな、私はこう思っておるわけでございます。若干時間はおくれましたが、今諮問をしたところでございますので、まだまだ多くの意見をいただかなければならぬ、こう思っております。
  26. 串原義直

    ○串原委員 若い担い手諸君、非常な落胆をしていると私は思う。  そこで、具体的な問題について伺いますが、生産者米価決定時になりますと常に大きな問題になってまいりましたのは、算定方式に対する論議でございました。まさしく今年もまた同様でございました。政府は当初作付面積一・五ヘクタール以上の稲作農家生産費をもって算定するというものであったようでございますが、この一・五ヘクタール以上の農家というのは統計によりますと全体の八・八%である、したがってあとの九一・二%の農家は切り捨てていくという考え方基本にあった、こんな実態に合わない農政は絶対に認められないという農民団体を初めとする農民あるいは関係団体、そして我々の強い反対によって本年は従来の算定方式によることになった、そして先ほど触れましたように米価は四・六%の大幅引き下げということで決着をし、諮問をされた。つまり、この経過を見ますと、まず初めに米価引き下げありきでありまして、そのための算定方式構想であったことが明白となったわけであります。ところが、一・五ヘクタール以上の農家を対象とする新方式は、今も御答弁ございましたけれども、ことしは実施しないが来年は実施するということで政府・与党は確認をした、大臣も腹をそういうふうにお決めになった、こう言うのでございますが、私に言わせますならばまことに御都合主義であると言わざるを得ません。これだけ反対の強いこの方式を凍結する、棚上げする。しばらくの間検討するというのならまだわかりまするけれども、ことしはともかく、来年から実施するということを既にことしの米価決定の際にある程度枠をはめる、決めるというこの考え方、私は佐藤大臣としてはまことに後ろ向きなことをお決めになったものだ、こう思うのでございます。大臣、これだけ反対があっても来年この方式を実施するのですか。
  27. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 十二品目以来あるいは牛かん以来、そしてこの米価決定の時期、こういう経緯の中で昨年の米価決定時に話し合われたことに基づいて米価審議会が小委員会をつくり検討をされた、そして意見を集約された。私自身そのことは守らなければならぬな。しかし、前段申し上げるように牛かん交渉も非常に厳しいものでございました。多くの方々からいろいろな意見や評価をいただいております。しかし、何が最善であったかということになりますれば国内対策という問題がございます、あわせてとにかく評価をしていただきたいものだということで今日鋭意努力を続けておるところでございます。そういう中にあって唐突に一・五という数字が出てきたというふうに解釈をされている向きもありますけれども、経緯を考えれば唐突ではない。十分な米審での、小委員会での御審議をいただき、集約された意見が、たまたま日本たたき、農業たたきとお互いが感ずるような時期に出てきた、いよいよわかりにくいことになりはせぬか。おっしゃる意味もわかる、それでは一年間先に、私自身もこういう考え方になったわけでございまして、その結果が米作農業者に与える影響、私は厳しいものがあると思います。思いますが、さっきも申し上げるように、何としてもウルグアイ・ラウンドで議論になるであろうそのことも、それだけではございませんけれども、国民全体に理解を仰ぐに足る米づくりというもの、採算性の追求あるいは構造政策の推進ということもあわせ考えながら生産体制をどうしていくか、幅広にそういうことを考えながらやった結果の評価を見ていただきたいものだ、私は、評価をされるに足る、必ずそういうことにいたさなければならぬ、こういう強い決意でこのたびの諮問をいたしたわけでございますので御理解を賜りたい、こう思っているところでございます。  なお加えて、諮問はしたものの、きょう今行われておる、あしたも行われる米価審議会における意見あるいはきょうこの場でいろいろ御意見をいただくそのこと、いろいろなことを、いろいろな意見を承りながら決着をさせなければならぬ、決めなければならぬ、こう考えておるわけでございます。意欲に燃えておる中核的な担い手というものが必ずわかってくださる方法は何としてもとらなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  28. 串原義直

    ○串原委員 大臣の意欲、決意を伺ったのですけれども、それでは、私、規模拡大の問題について大臣の見解をいま一つ伺っておきたいのです。  今、米作農家の中で最も苦悩しているのはむしろ一・五ヘクタール以上の、言うならば比較的規模の大きい農家であろう、私はこう考えています。さっき統計の数字を伺いました。農家の経営にとってはまことに好ましくないマイナスの統計数字が出ている。米価引き下げの実態ですから当然だろうと思うけれども、これは大変なことだなと、さっきの数字を聞いて受けとめました。  そこで、米価引き下げはそれらの農家の経営悪化を招いて、規模拡大どころか中核農家をして逆に稲作を縮小させるという傾向を招きはしないか。小さな規模稲作農家は自家用米確保水田だけは維持していかなければならぬぞという考え方で、将来ともに米と水田を自分のものとして大切にしていくことでございましょう。したがって、御答弁のように来年採用しようとする算定方式による米価引き下げがまた行われるとするならば、むしろあなたの願いとは逆に、規模拡大が進むとは思えないという危惧を私は強く抱いている。その辺の見解は、大臣、どうですか。
  29. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 とにかく、一遍理解をされたことのその是非が、これを訂正しようと思っても、一度のみ込まれたことを直そうとしてもなかなか容易ではないということを私は承知しておるだけに、このたびも一・五ヘクタールという問題が規模拡大につながっている、そのことについては従来ある農事組合法人とか生産法人とかそういう手続の中での一・五ヘクタールではなくて、田んぼ五枚ずつ持っているけれども、三人が集まって一・五ヘクタールだよ、十五枚だよ、こういう形の中で、私自身承知をしておる現場におきましても、規模拡大によって、そして機械化農業がゆがめられてきた一面を、農業機械の部分だけは一人の人が引き受けたよ、水回りはどうしても自分がしなければならぬ、共同防除は部落全部でやるよ、肥料は自分でやるよ、機械化はひとつ任せるよという形の中で、親類同士の話し合いが進む規模拡大もある程度進んできておることも承知をいたしております。しかし、そういう中にあって、そういう意味での生産組織集団化というものを農協自身がもっとわかりやすく推進することがどうできているか。これもひとつ団体筋にはお願いをしなければならぬことでもあるし、そういう意味で、そうかたくなに面倒なことを考えておるわけではない。なるべくみんなが乗りやすい形のものを考えておるというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。そういうことでございますので、ひとつ、あと何かまた御意見があれば承りたいと思います。
  30. 串原義直

    ○串原委員 米問題につきましては後ほど同僚議員からそれぞれ具体的に伺うことになりますので以上にさせていただきまして、実は貿易自由化交渉後初めての委員会でありますから、その点について一点だけ伺っておきたいと思うのであります。  牛肉、オレンジ交渉に当たって大臣の決意はいかがですかと私は再三この席で、この委員会で伺いました。自由化は困難であると御答弁になりました。困難ということは自由化はできないということですかと繰り返して伺ったら、できないということであります、こういう決意をお述べになりました。しかし、遺憾ながら、私はあえて遺憾ながらと申し上げますけれども、今回の牛肉、オレンジ自由化交渉の日米合意は我が国の一方的な譲歩によるものである、こういう理解に立たざるを得ない現実を、まことに遺憾至極とするところであります。佐藤大臣の御労苦、努力をした、汗を流した、このことについては私は大いに多といたしますけれども、その結論が我が国にとってはまことに好ましくない、我々の受け入れられるものではない、こう言わざるを得ません。三年後に自由化するとすれば、どのように国内対策を講じましても国際競争に勝ち得る日本農業をつくるなんて見通しはとても立たない、私はこう思う。その実態の中で、なぜこれほど急いで結論を出さなければならなかったか、合意に達しなければならなかったのか。もっともっと我が国の主張を徹底的に主張できなかったのか。言うならばサミット前決着にこだわっておりはしなかったのか。その経過を踏まえて所見を佐藤大臣から伺いたいのでございます。これが一つ。  いま一つ、これと関連をいたしまして、ここまで来たという事態になれば、佐藤大臣政府立場では御検討願っていると思いますけれども、いわゆる農産物十二品目及び牛肉、オレンジの自由化に伴う国内対策は、近く開かれるでございましょう臨時国会、この国会の中で御提案になっていくつもりでございますか、お答え願います。
  31. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私も牛かん交渉については、交渉が終わりましてからも若干の時間がたっておりますので、多少頭の整理はしているつもりでございます。お尋ねでございますので、経緯を簡潔にひとつ申し上げたいと思いますけれども、随分先を急いだな、そしてまるっきり譲りっ放しだったな、表現は別としてそういうような意味を込めての、しかしおまえはよう汗を流したということは、それぐらいはわかるけれども、それにしたって結果は何じゃ、こういうおしかりであろうかと思います。  昭和四十二年ごろでありますか、ケネディ・ラウンド、これは関税問題が主体でございました。そのときにも話題になっておる。随分長い歴史があります。私が直接タッチしてということになりますと、中川・ストラウス会談、私は党にあって総合農政調査会長代理ということで、随行議員団長を務めました。そして生々しく中川・ストラウス会談を経験いたしてまいりました。それから十年。相当長期にわたって問題が今日に至っているなという認識は、私は初めから持っておりました。  そして、外交交渉。テーブルをつくって、そのテーブルに両方が着いてまずは話し合おうということで、一月、両国首脳の間で、懸案の処理についてテーブルづくりをしよう。そのテーブルづくりはなかなかできなかった。なぜできなかったか。ことしの四月一日完全自由化実施、もうそれ以外にない、それを多少、一年でも二年でも延ばすなら、その代償は何か、代償という言葉はやめてくれ、いや、ガット上ではある言葉だ、それではガットの手続にいくかという状況の中で、私もばかじゃない、下手なそろばんであっても、そろばんははじきました。その途中において十二品目問題等につきましても、国内対策は何ぞや、それを早くやれ、おまえ何をやっているんだというおしかりも、串原委員からではございませんが、ほかの方から言われたことがございます。しかし、外交交渉が決着かっかないうちに国内対策を明示するわけにはまいりません。あらゆる場合を想定して勉強は実務者に続けさせてまいりました。外交交渉が終わらないうちに手のうちを見せれば、もうそれこそまるっきり譲る結果になります。そこまで考えているなら、もっと攻めろ、こういうことになるのは当たり前であります。  しかも外交交渉は話し合いでございます。友好国と言うとお気に召さない方もおられるかと思いますけれども、私は日米友好という基盤の上に立って円満な話し合い、勝った負けたではないという評価を受ける決着を一日も早くつけたいものだ、こういうことで努力をさせていただいたその結果があのような話し合いの歩み寄りの結果になった。外交交渉に妥協はあってはならぬとおっしゃれば、私はそれに答える用意はございません。私は外交交渉には妥協、妥協という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、歩み寄りは必要だと思っております。そして足らざるところを国内対策でどう補って、牛肉、かんきつ生産の存立を維持するかということを胸に秘めながら交渉をやったつもりでございます。しかし、一部報道では活字は完全譲歩、完全譲歩。そういう活字に対しては私にも随分いら立ちがございましたけれども、じっと我慢をしながら今日に至っております。国内対策を見て、そして三年後あるいは四年後にそれを見てもらいたいものだ。それには時間もかかるし金もかかる。そういう意味で、地域農政観点から自治大臣にまで署名をさせて申し合わせをつくった経緯もございます。  そういうことでやっておりますので、全部譲っちまって、おまえは何たることだというような意味合いのことは、そういうつもりは私には毛頭ございませんので、その点はひとつ御理解を賜りたい、こう思うわけでございます。  もう一つは国内対策を国会で、臨時国会が十一日に要請をされておる、しかしそれは結論は出ておりません。私にはいつ開かれるか、それは存じません。しかし、臨時国会が開かれるとするならば国内対策についておまえはかけるのか、立法府にかけるべき畜安法がどうなるのか、あるいは果振法がどうなるのか、かけるべき内容になるのかどうか、かけるとするならばどうなるのか、その他のことはどうなるのか、今全力を挙げている最中でございます。全力をこれに挙げております。  私は従来から申し上げておりますように、関係する方々がこれだけ大騒ぎになっているときに、私は一日も早く、しかし何となく竹下訪英あるいはトロント・サミットに向けてつじつまを合わせたのではないか、そういう芸当は私の心情からいって、私はできない性格であります。そういう考えはやらない、ただひたすら一日も早くとここで答弁を申し上げてきたそのもので私はやってきたつもりであるということを申し上げておきたいと思います。
  32. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたので終わることにいたしますが、かつて私こういう表現をしたことがあると思うのです。まさに日本農業存亡の危機、というのは大ぎ過ぎるかもしれぬけれども、そのくらいな時期だと私は考えているのです。ひとつ腹を据えて対処してください。要請して終わります。
  33. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一言だけ申し上げさせていただきますが、本当に腹を据えて、大変な改革の時期である、それには相当な財政措置も、時間もある程度かかるであろう、しかし何としても日本の食糧政策に禍根を残すようなことがあっては絶対ならない、昨年就任以来申し上げているとおりのことを私は忠実に、腹をくくってひとつ進めてまいりたいと思っております。
  34. 串原義直

    ○串原委員 終わります。
  35. 菊池福治郎

  36. 安井吉典

    安井委員 歴代大臣の中でも一番厳しい状況の中で随分頑張ってこられたことで、本当に御苦労さまです。ただ、今串原委員から質問がありましたような見方も実はあるわけです。  大臣はこの記事をお読みかどうかわかりませんけれども、新聞に、六月十八日の朝、岩手県江刺市の和牛飼育農家の安部一耕さんという五十七歳の人が、牛肉輸入自由化絶対反対、死をもって抗議する、短冊にこういう言葉を残して自殺されたということであります。六月十八日ですからちょっとさきでありますけれども、こういう事実が日本農業あるいは農家の中にあるということ、そういう中で今度の交渉が行われたという事実、その点はどうお考えですか。
  37. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私自身、災害対策であっても農政上の問題であっても、人命にかかわる問題には極めて敏感な人間であります。そういう意味で、その新聞記事は私も読みました。痛々しい、まことに申しわけない気持ちでいっぱいでございます。農政を預かる責任者として、いかなる理由があろうとも人命を犠牲にされるというそのことについては、あってはならないことだ、まことに申しわけない結果だと思っております。  それにこたえる意味においても、ただいま負債云々を申されましたが、果たしてその事案がどのようなことが真実根拠になっておるのかということはそこまで私も深く知っているわけではございませんけれども、少なくとも負債もあった、悩んでおられたとするならば、私は先ほど答弁申し上げたように立法措置が必要かどうかも含め、いろいろなことを今詰めておる最中でございますから、負債整理についても当然のことながら日本の畜産農家を育てる意味においても考えなければならぬことである、こう認識をいたしております。
  38. 安井吉典

    安井委員 今の串原委員とのやりとりをお聞きしながら、この委員会で、向こうへ行かれる前に大臣が言われた言葉をはっきり思い出すわけです。どういう心構えで交渉に当たるかと言ったら、譲るべきものは譲らなければならないかもしれないが、守るべきものは守ります、そういうふうにはっきりおっしゃったわけです。今までの交渉の中でどんどん譲っていかれたという経過は、新聞等でもずっと詳しく報道されております。それじゃ、あのときおっしゃった守るべきものというのは一体何だったのか、それはしっかりここでおっしゃったとおり守ることができたとお考えなのか、そのことをひとつ伺います。
  39. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、実務者という立場ではなくて農政推進の上に当たって私自身が政治的にどう判断をし、局面を切り開いていくか、その責任が一番大きな私の責任だと思っております。そういう中にあって、実務者からも補足が必要であれば補足をさせますけれども、私は、日本の食糧政策というものについては、やはり主要食糧というものは今日の下がってきた自給率、これをこれ以上割ってはならないということにまず全力を傾ける、そういうことで外交交渉の結果と国内対策をあわせて、そして存立を守るべき牛肉、かんきつ、このことについて責任を持たなければならない、そのことについてぎりぎりの選択があるわけです。我が方が譲ってばかりいたわけではございません。向こうも譲っている部分もあります。双方の共同作業がという言葉をよく向こうも使う、我が方も使う言葉でございますが、共同作業の結果があのような決着になったと私は心得ております。  実務者から補足が必要であれば、させます。
  40. 安井吉典

    安井委員 私は、政治的な意味でのここでの御発言に対するあなたのお心構えあるいはその現状の心境、こういうことで伺っているわけですから、事務当局は結構です。  いずれにいたしましても、主要食糧はこれ以上自給率を下げないということやら、国内対策も含めて牛肉、かんきつの存立を守るということ、そういう意味だというふうに今おっしゃったわけでありますが、しかし、あの段階で私ども聞いていた気持ちでは、守るべきものを守るというのは、ああ、これは自由化から最後まで守ってくれるのかな、そういう期待だったのですよ。農民の皆さんも新聞で大臣のあの決まり文句をお聞きになりながら、そう思っておったと思うのです。それが、まず最初から崩れてしまって、条件交渉、こうなっていったわけであります。その辺、国民の守るべきを守るというあの大上段に振りかぶったお答えとは今の段階、かなり後退したような印象を我々受けざるを得ないわけであります。  それからもう一つ、ヤイター発言というのが新聞に報ぜられていて、佐藤大臣随分お怒りになったということでありますが、これは私ども国民の立場からも非常に不愉快ですね、あのヤイターの言い方は。なるほど、それはそういうとり方もあるかもしらぬけれども日本の国の代表として交渉されているわけでありますから、それに対して礼儀を失した言い方をするということは、これは許せないと思います。しかし、何かさっきの譲るべきものは譲るというその言葉で、あれも譲ったこれも譲ったという、これもヤイターの言葉とは別にそういうふうな印象を否めないということでなかったかと思います。  そこで、あくまで守るべきものは守るというその言葉の中に国内対策ということが出てまいりました。今、串原委員へのお答えの中にも出てまいりました。間もなく臨時国会が開かれるわけで、いろいろ検討が今日まで進んできたのはわかるけれども、もう準備ができていなければいかぬわけですよ。ただ、我々考えられることは、牛肉、かんきつの自由化ということになると、我々は反対ですけれども、畜産物価格安定法や果樹振興法を改正して、これは我々は改悪としか思えないのですけれども、そういうような法案が一つ考えられるし、それからもう一つは、牛肉、かんきつをさらに大きく守り育てながら前進させるための法律、それからそれに対する予算、こういう三つを我々考えられるわけであります。具体的に、ではそれらの作業がどうなっているのか、特に予算は、今度の国会に補正予算を出せと言ったってこれはちょっと無理かもしれませんけれども、少なくも間もなく迫ってきている概算要求の中にははっきりやはり出すべきですよ。伝えられるところでは、大蔵省の方は、これは農林省の一般のシーリングの中で解決すべきであり、米価を今度下げるわけだから、金が余るからそれで国内対策をやればいいじゃないかというような書き方をやっていますね。ですから、私は国内対策としては、今言った自由化をするための、せっかくの自由化を阻止している法案を直していくというそういうのと、それから前向きの法案とそれから予算とこの三本立てだと思うのですよ。それに対する具体的なお答えをひとついただきたいと思います。
  41. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 繰り返して前段のことについてお答え申し上げますが、昭和四十年代前半から二十年にわたってケネディ・ラウンドの時代から始まってのその経緯の中で、とにかく四月一日自由化完全実施、こういう要請で強い向こうの姿勢の中に、それをあきらめさせるにも容易でなかったということを申し上げておきたいと思います。決して自慢して言うわけじゃございません。それをおれがとったんだから、おれだって守ってとか守ったんだなんていうそんな言い方はしませんけれども、明らかな経緯としてそれは申し上げておきたい。そして、やはり存立を守るということで私も責任を持つ立場にございますので、そういう意味で努力を重ねてきた、こういうことでございますので、その点は――ただそれは新聞報道の話も出ましたけれども、もっとはっきり私の言っていることを書いてくれればいいがなと言いますけれども、それは書く方の御自由でございますから私の思うようなあんばいにはいきません。残念でありますけれども、私はそういう感想を率直に申し上げておきたいと思います。  さて、臨時国会、そこで法律がどうなるか、予算はどうか、枠内か枠外かというようなお話でございますけれども、私も、それをこういう場で繰り返し言うのはどうかと思いますが、政府・与党の申し合わせによって財政当局にはある種の認知をさせておるわけでございますから、私は、私どもが考える主張は必ず通るもの、通らなければ、何のために外交交渉を苦労してやり、そして国内対策と合わせて一本だということで年初来言ってきたことが無になるわけでありますから、私には、そういう形にならなかった場合は、むなしいなんていうものじゃなくて、私の務めは務め上げることはできないと、強い決意で考えておるわけでございます。財政当局との交渉もまだそこには至っておりません。しかし、今一生懸命努めておるところでございますから、ひとつその点は、今ここでそれ以上の具体的なことはお許しをいただきたい、こう思います。
  42. 安井吉典

    安井委員 責任ある政治的な立場での御答弁だと承っておきます。  米価の問題につきましては、大臣に対する私の質問時間がもうあとわずかしかありませんので、後の事務当局との話し合いに譲りたいと思いますが、ただ一点、今度の引き下げ案というのは、いわゆる一・五ヘクタールという米審の今日までの作業とは別なもので出されてきているということで先ほど御説明を承ったわけであります。ただ、私は米審委員じゃないから何ですけれども米審委員立場からすれば、予備米審あるいは去年から問題を投げかけられて小委員会までこさえて我々やってきて、予備米審でも出したのだ、それが何だ、この諮問案は、こういう、米審委員としてはやり切れない気持ちを持っているのじゃないかと私は思うのです。これは、米審考え方が正しいという意味じゃありません。その経過についてそういうことが言えるのじゃないかと思うのですが、ここで伺いたいのは、ことし限りの内容であって、一・五ヘクタール云々というのは一年間凍結なんだ、来年度からはそれが生きてくるのだということが伝えられているわけであります。そうなんですか。
  43. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米審委員の方々の気持ちを察するにというお言葉がございました。私も、そうであればこそ、先ほど米審の開会に当たりましておわびを申し上げてきた、こういうことでございます。とにかく一年間いろいろな意味で、先ほど申し上げるように、考える時間、またいろいろなこと、構造政策等にもっともっと力を入れようということで、事前における二日間の米審においても、大方の皆さんから御指摘を受け、私もそれを拝聴し、また答弁もし、やりとりもあったわけでございまして、そういう考え方価格政策と構造政策、こういうことについて、ひとつ両面十分に説明がつくようにしなければならぬ、こう思っておるわけでございます。どうかそういうことで取り組んでおりますので、御理解をいただきたい、こう思います。
  44. 安井吉典

    安井委員 どうもよくわからないのですが、ことしはことしでいくのだ、またエスカレーターが上がるように自動的に来年は例の案が出てきてそれでいくのだ、そういうようなことで何かお互いに自民党等の話し合いがついて今度の決着になった、そういうふうに私どもは聞くわけでありますけれども、来年は来年の新しい風が吹くということなんですか。それとも、今のままで一応やって、来年はあの案がずっと出てくるということなんですか。その点はっきりしてください。
  45. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 来年からは新しい算定方式でやるということでございます。政府・与党で合意も得ました。その合意を、農業団体、全中からも合意をいただき、諮問をした、こういうわけでございます。
  46. 安井吉典

    安井委員 それは、自動的にエスカレーターがその次にあらわれてくるわけですね。ということになりますと、私どもは、非常に大きな問題があると思わざるを得ません。そして構造政策をやるから、私は、それがうまく進んでいないうちに一・五ヘクタールでやるのはおかしいじゃないかという論理かと思ったら、構造政策が十分にいってもいかなくても来年は新しい方式だ、こういうことでありますだけに、非常に問題が多いと思うわけであります。納得ができませんが、時間ですから、後事務当局とのお話し合いの中で質問させていただきます。
  47. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私が申し上げているのは、とにかく今そういう諮問をいたしました。そしてきょう、あす二日間にわたる米審の御論議あるいはまたきょうここでこうしていろいろ御意見をいただいておる。いろいろな御意見をいただいて私は決着をさせなければならない。最終決定をしなければならない。そしてやはり一年の間に今以上に関係者の方々に理解を得られるようなことをしなければ前進しないわけでございますから、それを申し上げておるわけでございます。何が何でもその構造政策が進まなくてもやっちゃう――私は進めたい、こう申し上げておるわけでございますから。
  48. 菊池福治郎

    菊池委員長 神田厚君。
  49. 神田厚

    ○神田委員 基本的な問題でございますので、多少重複するところがあるかと思いますが、お伺いをさせていただきます。  まず、四・五%の引き下げ諮問が出ましたが、昨年に引き続きまして大幅な引き下げであります。私ども、今全国の農家を歩いておりますと、大変な苦労をして減反政策に協力をしている。減反に協力をすれば何とか稲作農業は守ってくれるのではないかというのが農家の人たちの率直な、素朴な感情であります。しかし、このように毎年毎年米価引き下げられる。今答弁がありましたけれども、来年は新しい方式でやれば、ことしよりももっと米価が下がる、これは確実であります。そういうことになりますと、本当に政府はこの日本農業というのを守っていく気持ちがあるのかどうかという問題になってまいります。  したがって、私はやはりこの農政の展望といいますか農民の人たちが希望を持って農業ができるような、そういう長期ビジョンを明らかにしていくべきだ。このように単年度単年度、毎回米価は下げる、しかも減反は拡大をするということでは、まさに農政がないということと同じことであると断言せざるを得ない状況であります。したがって、この引き下げ米価諮問の問題と今後の農業に対する長期的な展望を踏まえたお考えをお示しをいただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  50. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今、決してお言葉を返すわけじゃございませんが、引き下げ引き下げ引き下げに次ぐ引き下げで、日本農業をこれで守る気は本当にあるのかどうかということでございますが、一口で答えさせていただけば、それは何としても守らなければならぬという気持ちで申し上げているわけで、引き下げがあってもあわせてまたコストの低減がどうなるのか。その意味では構造政策がどうなっていくのか。問題は、農家なり農業者の手取りというものが確保されるということにおいて理解を仰ぐという政策を果敢にやっていかなければならぬ、こういう考え方でございますので、ひとつそれを――私はこのたびの米価決定、これはもう早々にやらなければなりません。米審の答申が出れば米価決定はしなければなりません。私がまた判断をしなければなりません。そのときに、私は、各般の意見を頭に置きながら、それを、今おっしゃるようなことを明示しなければならぬ。先行き不安に思っておられる方が多いのでございますから、昔あった米よこせデモという時代の消費者とは今は違います。当時の安倍農林大臣米審の会場において米をぶつけたときの生産者とは違います。時代は変わっております。そういう中にあって採算性の追求、コストの低減等々考えながら、構造政策というものがやはり必要ではないかということで、価格政策と両々相まって理解をしてもらえるような形はぜひとらなければならない。  減反についても触れられましたが、私自身も減反減反で先般も緊急対策も実施した、これ以上どうすればいいんだろうという深刻な気持ちもこの際付言をいたしておきます。
  51. 神田厚

    ○神田委員 今、農家所得のことに触れられましたが、御案内のように農家所得がだんだんと減ってきているということは統計に明らかなところでありますから、真に農家所得のことを心配するということであれば、やはり米価等の大幅な引き下げというものはこれは考えなければならない。しかも、減反をしながら米価を下げていくというやり方は非常に矛盾した農政であるということをお考えをいただきたいと思うわけであります。  時間がありませんから、次に自由化問題で、オレンジ、牛肉の自由化問題。先ほど社会党の議員さんからも、岩手県で先行きを悲観して自殺をした人がいる。北海道でも何人かの人が自殺をしているというふうなことが言われております。今まで自由化された品目で、産地として残って頑張っているものは非常に少ない。したがって、今回、オレンジ、牛肉が自由化されて、本当に日本のオレンジといわゆる畜産が守れるのかどうか。大変甚だ心もとないことだと考えております。国内対策に万全を尽くすということでありますが、本当にこのオレンジと畜産を守ってくれるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  52. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど来お答えしておりますように、我が国農政に禍根を残してはならないという、従来からの私の答弁を申し上げておりますように、その存立がとても見込むことができないということであったのでは、これは私がうそをついたことになりますから、私はそのことについて責任を持たねばなりません。そういう意味で、国内対策に万全を期して、外交交渉で御不満な点を埋め合わせながら存立を守るという国内対策を忠実にひとつ実践をしていかなければならぬ、そのための作業を鋭意努力させておるところでございますので、さよう御承知おきをいただきたい、こう思います。
  53. 神田厚

    ○神田委員 次に、米の自由化の問題でありますが、とうとう米の自由化もいろいろな形で具体的に言及されてきた。牛肉、オレンジ交渉が終わったと思ったら今度は米の問題がちらちらしている、こういうことであります。私はやはり、米は国家なりという観点から米の自由化は絶対に阻止する、アメリカからどんな強い要求があってもこれは断固として貫いていくということについての大臣の決意をお聞かせをいただきたいと思います。
  54. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私自身は、米の自由化は、総理答弁と同じように自由化はしない、食管の根幹は堅持をする、そういうことによって日本人が食べるこの米というものの歴史的な経緯を考えれば、ある人に言わせれば米は宗教なりとまで言う人がおります。そういうことで、私は自由化は絶対やらない。ただし、二国間において、あたかも牛かんが終われば取り上げるような発言が出てくるものでありますから、それにはその都度遠慮会釈なく指摘をしておる、そして釈明を求めておる。ウルグアイ・ラウンドにおいては、米はウルグアイ・ラウンドでという一部報道の書き方もありますけれども、農産物あるいはあらゆる制度、これがまないたの上にのります。これは先刻御承知のとおりでございます。その中に米もあるでしょう。そういうときに備えても、私は守り得るだけの体質改善はやらなければならない。それには私どもだけの努力ではなくて、ひとつ農業団体においても今までとは頭を切りかえて一緒にこれを守っていこうではないか、こういうことでやっておるわけでございます。
  55. 神田厚

    ○神田委員 最後に、新算定方式の問題でありますが、先ほどの答弁ですと来年度からこれを採用する、さらに、農協中央会がこれについて合意をしているという答弁がございましたが、どういう形での話がいわゆる農業団体とついておるのかどうか。さらに、この方式を採用すれば、先ほども申し上げましたように間違いなくさらに大きな米価の値下げになる、こういう状況があるわけでありますが、生産費所得補償方式によって決定するという現行米価算定方式をどうしても来年は変更して新方式を採用するのかどうか。我々としては新方式の採用についてはこれは行わないように要望したいと思うのでありますが。
  56. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、消費あっての生産であるとかいろいろな原則的なことをいろいろ解説を従来ともしてまいりました。そういう中にあって、やはり生産者自身がどう考えてくれるか、だから政府・与党だけで合意をしただけではだめだ、当事者もひとつわかってもらわねばならぬ、それは全部が全部わかってくださるかどうかわかりません、しかし、少なくともその指導者にはわかってもらわなければ進めることはできないわけであります。そういう意味において、長い時間をかけて米審の小委員会で、それは賛成も反対もあったでしょう、いろいろな意見があった、結果的には集約された意見として私は答申を受けたわけであります。受けた時期は、まことに厳しい環境下で受けたわけであります、いよいよわかりにくいという御指摘を受けた。そういうことで、一年間、ことしはとにかくそれは取り上げません、来年から、こういうことで私も判断をいたしたわけでございまして、その政府・与党のやりとり、いわば確認事項というものについて団体側の責任者におかれても御同意を願いたいということを党側から言われたと私は承っておりますのでそれはよかったなと思っておりますし、党側がそういうことで同意を求めた、そして合意をした。この上においては、いよいよその線に沿ってさらに条件整備をどうしていくか、先ほど来神田委員が言われるような将来に向けての施策というものに万全を期さなければならない、こう考えておるわけでございます。
  57. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと納得できない点がございますが、時間でございますので、後の質疑にしたいと思います。ありがとうございました。
  58. 菊池福治郎

    菊池委員長 水谷弘君。
  59. 水谷弘

    ○水谷委員 本日、米価審議会に対して、本年産米生産者価格を四・六%引き下げ諮問大臣はなさいました。先ほど来からの議論がございましたので、大臣基本的な考え方については伺いました。しかし、私はこの大幅な引き下げ諮問については容認することはできません。その立場から何点か御質問をさせていただきます。  ことしの初め、ガット十品目の自由化の問題、さらには六月二十日の牛肉、かんきつの自由化、これで全国のいわゆる農業者、農村は今大変なショックといいますか、激震にも近いような不安と、一体これで農業を続けていけるのかという大変な失望感、そういうものをお持ちになっていらっしゃる。先般、私も地元の農業者の皆さん方の決起集会に出席をいたしましたが、会場の雰囲気が従来になく全く元気がないわけであります。こんな大変な時期ですから、本来ならばもうその怒りをぶつけ、政府に対し本格的な対策を強く迫ってこられるのが当然であろうと思っているわけでありますけれども、本当に元気がない。私はその会場の雰囲気を見ておりまして、これは大変なことだな、これから農業を本当に担っていただかなければならない方々が元気がなくなったら一体日本のこれからの農業はどうなるのだろうか、皆さん方が撤退をされたら一体どうなるのだろう、そんな思いで実は会場に臨んでおったわけであります。  大臣の先ほどからの答弁を聞いておりまして、その論理、理論、組み立て、それはよくわかります。しかし、政治というのはそれだけではないはずであります。こういう我が国農業全体が大変な時期に今直面しているときに、追い打ちをかけるがごとく米価を大幅に引き下げる、そこには政治の配慮がなさ過ぎるのではないか。本来、佐藤農林水産大臣は心情的にもまた今日までの政治の取り組み、私は拝見をしておりましてそんなことをなさる方ではないはずだな、こう思っているわけです。そういう意味では、この諮問米価については大幅に改めて、そして農家が本当に元気が出るような米価決定をしていただきたい、こういうふうに私は思うわけであります。  さらにまた、もう一つ申し上げておきたいことは、米価審議会を開催する前に政府・与党との間で調整を済ました。そしてまた、これも一発方式のこのようなやり方、言われているような姿というのは米価審議会を形骸化することになるのではないか。開催の時間も大幅にずれ込んで米審先生方に本当に申しわけない限りだな、こう私は思うわけであります。  私が自分の考えを交えて今申し上げました。大臣、全国の農家の皆さんが御納得いくようなお話をしていただきたい、それを最初に申し上げる次第であります。
  60. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私、くどくは申し上げませんが、今日の農業をめぐる事情というものは非常に厳しい状況にあるということはお互いが承知をしておるところでございます。そういう中にあって、私どもが将来不安のない形で生産体制がどう仕組まれていくか、そこに構造政策がどうなっていくのか、それを見ておる消費者がまた率直にどう理解をしてくれるであろうか。昔の生産者と今の生産者は違います。昔の生産者は食べ物ほとんどを生産してこられました。今の生産者は一品目あるいは二品目等々で、あとは全部消費者である。それだけ生活も、食生活も変わつてまいりましたし、そういう変わりようの中でも、やはり米をどうするかということになりますと、私自身が必要以上に関心を持たなければなりません。それは私の責任であります。また国民の世論でございます。そういう意味において、引き上げということは要請にはございませんけれども、据え置きということで、できれば私もそうしてやりたいという気持ちはあります。しかし、なかなかそうはいかない。ここで国内的にもまた対外的にもこれから予想されるいろいろなことを考えると、本当に足腰を強くしていくためにはどうすればいいのかということを深刻に考えれば考えるほど、やはりコストというものはどう下げていったらいいのだろうかというようなことに始まっていろいろ考えさせられるわけでございます。  今さらに付言して、委員からは米審の形骸化というお話がございました。繰り返して申し上げますが、私も米審委員の皆さんに重ねてのおわびを先ほどごあいさつの中で申し上げてまいりました。生産者からも中立委員からもあるいは消費者代表からもいろいろな意見が小委員会の中で集約された結果は、新しい算定方式ということで答申をされたわけでございます。そのままのめば、また米審委員からは米審の意見をそんたくしてくれたと評価は受けるかもしれません。しかし、私の政治判断はそういうことではございません。それはできない、ことしはできないという結論に達しまして、それをもととして諮問をいたした、こういうことでございますので、見方、言い方いろいろあろうかと思いますが、私の心情を率直に吐露しておきたいと思います。
  61. 水谷弘

    ○水谷委員 将来の我が国農業全体のビジョン、それから、特に稲作についてのビジョン、そういうものがやはり農業者にとっては一番必要なのでありまして、先ほど来から自由化に対する国内対策の問題もございますけれども、こういう時期であればこそ、あるべき農業の全体像というものを政府生産者だけではなくて国民に、消費者にコンセンサスが得られるような形で御提示される、私はこれが今最も一番大事だと思うわけであります。米価価格の問題だけをここで私は議論できない、全体の問題をこの委員会で徹底して議論をしなければならないときに至っている、私はこういうふうに考えるわけであります。  米価引き下げることによって一体どういう効果が、何が生まれてくるんだろうか、この米価引き下げということが将来の稲作経営にとって一体どういうメリットが出てくるのか、それが需給バランスの調整になるのか、さらには、中核的担い手農家を育てることに本当になるのか。この引き下げということと稲作全体の将来像というものがどうもうまくフィットされていないし、私は納得ができない。まず価格引き下げありき。私は決して内外価格差を無視せよと言っているわけじゃありませんけれども内外価格差の議論が大きく起きてくる、そしてまた、米が高いというような一部の議論、そういう議論に対して、価格引き下げることだけが国民の合意を得る方向に果たして進かのか。特に、将来的に現状の米価を維持せよというようなことを生産者団体の皆さんもおっしゃっておりません。三割、二割コストダウンに努めていこうということで真剣に今お取り組みをされておられる、規模拡大への動きも大きくある。そういう今みんな真剣になって将来の日本稲作をお互いに守ろうという形でお取り組みをされているときに、二年連続価格が大幅に引き下げられる。  私は、基本的な農政の運営というものを農水省だけではできないかもしれませんけれども政府の意思として向こう二年、三年、五年という、そういう期間ぐらいは、これは消費者の皆さんにも御理解をいただく努力をしていただいて、そして、将来的には十年後にはコストを三割ないし四割まで落としますよ、そこまでの構造政策はこういうプロセスで組み立てていきますよ、そこに向かってみんなで努力しましょう、その間は消費者の皆さんも御理解してください。やはりこういうプロセス、展望というものが示された中で米価というものの位置づけが行われなければならないのではないか。二年も続けて一〇%を超す引き下げというのは、これから一生懸命規模拡大をしようとか、これから稲作を頑張ろうという依存度の高い専業農家、そういう方々が直撃を食らうようなこの政策であります。そういう意味で、素朴な皆さん方の御質問、疑問というのは、価格引き下げが、この価格政策が稲作を将来ともに守ることになるのか、逆ではないのか、こういうお考えがある。その方に対しては、大臣、どういうふうにお答えになりますか。
  62. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 また新たなメンバーで発足をいたしました農政審におきましての初会合も先般開かれ、そして、従来の企画部会における構造政策の勉強はどんどん進んでおります。あわせて、二十一世紀に向けてのビジョン、このことも新しい農政審のメンバーにおいて検討を早々にしてもらう方針が方針としてはあるわけでございます。  しかし、私は、ここでそういう審議会にただゆだねておるということだけの答えでは、これは農家の方々であろうとあるいは委員各位であろうとそれで満足されるはずはございません。私自身もそれで満足はできません。私自身の考え方が、この事態に及んで、ことしの米価決定する際に、そういう審議会の勉強をして結論を出していく、その道行きの中で、私がこのたび米価決定を最終判断をするときに、私が考えておること、意図しておること、これかつながるような私の見解は出さなければならぬなと私は考えております。
  63. 水谷弘

    ○水谷委員 この間申し入れに参りましたときも大臣はそういうお話をされておりました。この引き下げは私は容認できませんが、しかし、今の後段の大臣の答弁、今後のあるべき方向を明示するというその言葉、ひとつぜひそうしていただきたい、私もお願いを申し上げるところでございます。  それから、先ほどの委員の質疑の中にもございましたけれども生産性の向上、また規模拡大等々が非常に難しい中山間地帯、これについては、先ほど御指摘があったとおり、米価審議会の小委員会報告の中にも明確に、その取り組みは価格政策と別途その対応を検討すべきであるという御指摘があるとおり、私は本当にこれは重大な問題だなと思うわけであります。いわゆる水田の持つ洪水調節機能、それだけではなくて、自然環境、国土保全の機能、こういうものがいわゆる単品の農作物の価格だけで取り扱われるとするならば、これは大きな間違いであろう。また、都市近郊の農地についても、これはまたその周辺の都市をいろいろな形で守っているという大変な使命もあるわけです。そういう意味で、一つは中山間地帯の水田を中心とした農業の位置づけ、さらには財政的な出動のあり方等々も含めてしっかり御検討をいただきたい。  それからもう一つは、土地基盤整備等で大規模農道等または幹線用排水路ができ上がっていきます。これは、決していわゆる農業生産基盤としての位置づけだけではなくて、その周辺の大きな公共的役割を果たしているわけです。このことも事前米審のときの議論の中にもあったようでありますけれども、こういう基盤整備事業で行われていく事業の中に出てくる基幹的な道路とか、基幹的な水路、こういうものを一般的な受益者負担によって農家にそれを負担をさせていいものかどうか、もっともっとこれは公共事業として予算の手当てといいますかそういうものをしていかなければならない。また反面、今OECDから我が国農業の保護水準が高いと言われているわけでありますが、そういう農業予算の全体の中でやはりこういう公共的な部門の非常に強いものは農業予算とみなされないように、これは何か明確な位置づけをしていきませんと、その保護水準の数字のとり方の中にも問題が起きてくる等々考えるわけでありまして、私が今申し上げました二点、中山間地帯の対応と、それから土地基盤整備等における幹線道路、幹線水路の公共的な性格の強いものに対する対応についてお尋ねをいたしたいと思います。
  64. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 中山間地帯の問題は、先ほど御答弁をこの場で申し上げておりますように、その地域の特性、いろいろな点を今申されましたが、さらに委員おっしゃることに加えて、社会的な物の考え方でどうとらまえていくかということも、やはり特殊な地域ということで規模拡大がなかなか困難であるとか、あるいはまた国土保全上重要な役割を果たしておるとか、そういうことにかんがみて社会的な観点からの検討を進められるべきである。あとは委員のおっしゃるとおりでございます。  なおまた、基盤整備、このことについて基幹的な水路、道路、こういうものの負担を言われましたけれども、これがまたPSE、生産者保護指数、このことがトロントでも話題に出たようでございますけれども、あれは簡単に結論の出る話ではございません。それは、我が国には我が国事情がございますから、そういう事情を十二分に国際社会の中で説明もしなければなりません。ECにはECの考え方があるでしょう。アメリカ、カナダにはアメリカ、カナダの考え方があるでしょう。日本には日本考え方があるわけでございますから、そういう意味でとらえていく、こういうことでございまして、しかし、それにしても基幹的な水路、道路というものの負担は、ゼロという表現はおっしゃらなかったようでありますけれども、これはその業態によって今ある形を進めていきますけれども、なるべく受益者に負担がかからないような方法というものは、これも一つのその地域の社会的な観点からの対応、特に下水道事業が進むとか、そういうものが用排水事業との混然一体となったその負担、こういうことも考えると、今日の文明社会の中で進んではきたけれども、そういうものについては検討を当然のこととしてしていかなければならぬと私は思っております。しかし、もし、ゼロにせいという気持ちで言われたとするならば、これは、ゼロというのは勘弁してください。
  65. 水谷弘

    ○水谷委員 牛肉、かんきつの問題について、最後に一点御質問いたします。  先般、私ども調査団を送りまして熊本、鹿児島へ行ってまいりました。現地の生産者の皆さん方のまず一つは、自由化しないと言ったのに何で自由化したのだ、とんでもない、こういうおしかりを、私、大臣ではないのにかわって受けてまいりました。これは当たり前のことであります。幾ら野党であっても我々にも責任があるわけでありますから、そのおしかりはしっかり受けてまいりました。大臣も今回の交渉については、この交渉が最善の結果だとは思っていらっしゃらないと思います。  前のガットの十品目のときには、苦渋に満ちた選択であったという言葉をお使いになりました。今回の牛肉、かんきつについても、私どもは断じてこれは認められない、そういう思いでいっぱいでありますし、大臣だってこの交渉が最善の交渉であったとはお感じになっていらっしゃらないはずです。であるならば、まず一言、自由化をしないと言って臨んで交渉してきたが、こういう結果になって申しわけない、しかし、今後しっかりとした国内対策を講じて、その存立を確かなものにするから一諸に取り組んでほしいという、やはり政府は、関係者の皆様に対してはそういう誠意ある基本的な姿勢で、今後の対応については万遺漏なきようにあらゆる角度から検討を加えて行っていっていただきたい。  ただ、私が心配するのは、臨時国会が開催されるかされないかわかりませんが、そういうところで拙速に急いでいろいろなものをがたがたお出しになるようなことはどうかなという思いも実はあるのであります。もっともっと生産現地、また消費者のいろいろな御要望とか国民的なコンセンサスを得られる形の対策というものをしっかり立てて、将来また手直しをしなければならないようなことのないようにやっていただくためには、大変な議論が、また検討が、準備が必要かな、こうも思っております。  この我々が望まない牛肉、かんきつの非常に残念な結果に対して、私は大臣に先ほどからの質疑で大体伺っておりますけれども、本当にみんなが元気が出るような取り組みができるような国内対策を講じていただきたい、このことを申し上げたいわけであります。大臣、ひとつその御決心、御決意をお知らせいただきたい。それで私の質問は終わります。
  66. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 産地に行かれて、野党の立場でありながらおわびをしていただいた、本当に御迷惑をかけて申しわけないなと率直に申し上げておきたいと思います。  最善の交渉だとは私も思っておりません。交渉でございますから歩み寄りも必要でしょう。しかし、余りにも隔たりは大きかった。それなりに時間もかかった。しかし、その経緯を考えれば、譲りに譲って謙る専門であったというような意味の書き方をしておられる報道もございますけれども、私はそうではない。自由化はしないと言ったが、なぜしたのか。  あのぎりぎりの段階で、私にこういう直言をした人がいます。もういっそ自由化してしまったらどうだ、全部自由化します、そのかわり全部国内法で縛ります。しかし、私はそういう直言に対しましても、今日の国際社会の中で孤立をしていいのかどうかということも申し上げてきたところでございます。孤立をせず、しかもその存立を守るということを想定しながら私自身は外交交渉を重ねながら国内対策とあわせてその目的を果たさなければならぬ、こういうことを申し上げてきたわけでございます。  なおかつ、また今臨時国会があるかどうかわからぬけれども急いで国内対策を、拙速を慎めという意味のお言葉でございます。拙速という批判を受けるようなことがあってはならないと思います。しかし、関係者の方々に大変御心配をかけておりますので、一日も早く安心してもらえる措置というものはとらなければならぬ。私は別にかっかしているわけじゃございませんが、私の仲間で、熱いうちに打てという生々しい直言を私にした人がいます。それも必要かなと考えながらも、しかし拙速はあってはならない。十二分な検討を今詰めておるところでございます。
  67. 水谷弘

    ○水谷委員 以上で終わります。用意した質問を若干残しまして、恐縮でございました。
  68. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  69. 藤田スミ

    ○藤田委員 米価問題に入ります前に、私も牛肉、オレンジの自由化について大臣にお伺いをしておきたいと思います。  あれほど多くの国民が自由化に強く反対をしておりました。にもかかわらず、日本農業の存立を壊滅に導く牛肉、オレンジの輸入自由化を断行されたことに、私はここで厳しく抗議をするとともに、この日米合意の撤回を改めて求めるものであります。  私もまた全国各地の調査活動に参加をするため、先日も秋田と岩手に行ってまいりました。牛肉、オレンジの自由化を断行した自民党政府に対しての激しい怒りが広がっています。岩手県では、先ほどからお話がありましたが、牛肉、オレンジの自由化に体を張って抗議する、そういう遺書を残して抗議の自殺まで起こっています。さらに山口県のミカン農家もみずから命を絶ちました。私は岩手県の農家の方にお会いしました。和牛の繁殖経営を営み、千数百万円の借金を抱えていたけれども、それもおおむね返還し、いよいよこれからだなというときにと、奥さんは絶句されました。何と説明したらいいのでしょう。  農協の関係の方にもいろいろ話を聞いてまいりました。多くの農民はこう言ってらっしゃるのです。国内対策といっても生産者は助からない、サミットで補助金の削減を約束をして一体何が国内対策だ、そんなふうに言われました。金がないより希望のない方がもっとつらい、我々を人間と思っていないのではないか、怒りを通り越して気力もない、そういう訴えも受けました。そしてこの牛肉、オレンジの自由化の二国間の合意を撤回するべきだとの声も強まっています。  大臣、この農民の死をもっての抗議と農民の腹の底から絞り出すような訴えをどう受けとめていらっしゃるのか、御答弁を願います。
  70. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 とうとい人命を失う結果になっておるというその事態について、私は、余りにも生々しい残念な事柄でございますので、また私の今日の立場において深く感じ入っておることもございますので、繰り返した答弁はいたしません。厳しい環境の中で厳しい御指摘が今またございました。そのとおり私自身は厳しく受けとめております。
  71. 藤田スミ

    ○藤田委員 あなたはかねがね牛肉、かんきつの生産の存立は守る、こういうことを言われ、今回の牛肉、オレンジ自由化の決着内容は、しかしその存立を守るというどころか、日本に果たして生産が残るのかというような危うい重大な譲歩をされたわけです。  ミカンについていえば、オレンジの輸入枠は九〇年には減反の四割に当たる十九万二千トンになるわけで、これに四万トンものオレンジジュースの輸入がされましたら、ミカン農園はもちろん、適正在庫の七倍に当たる過剰在庫を抱えている国内の農協果汁工場が軒並みつぶされることは必至です。また牛肉についていえば、牛肉の輸入枠は毎年六万トンずつふやされ、全国で一位、二位を誇る北海道、鹿児島両道県の八六年の出荷量を上回る数量になるわけであります。自由化直前の一九九〇年の輸入枠はちょうど八七年の国内生産とほぼ匹敵する数になってまいります。  今回の交渉の性格についてヤイター氏がいみじくも言われました。日本は風圧をかければ幾らでも折れる、圧力をかければアメリカの言いなりになって、農業をつぶすんだ、そういうことを言っているじゃありませんか。農業をつぶして一体国が栄えたことがあったでしょうか。私は、まさに農業をつぶして栄えた国はないという歴史の証言にかけてもう一度この二国間協定、二国間の合意を撤回することが日本農業を守る最大の道だということを申し上げたいのです。
  72. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 厳しい御指摘でございますが、撤回を要求されても撤回をする状況にはないということを御理解賜りたいと思います。
  73. 藤田スミ

    ○藤田委員 命をかけて抗議をする、体を張ってというその言葉を私は見ましたときに、それは単なる死をかけてということではなしに、恐らく安部さんのまさにその小さな体を目いっぱい張って日本じゅうの人々に警告をしているんだというふうに受けとめましたが、それに対するあなたの御答弁がそうであったかというふうに聞いておきたいと思います。  次に、生産者米価の問題についてお伺いをいたしますが、政府は、一・五ヘクタール以上の農家を対象とする新算定方式の採用は一年先延ばしにするということになりましたものの、今回の諮問案では生産者米価を四・六%引き下げることにしています。この米価引き下げは、昨年の五・九五%引き下げに及ぶ米価大幅引き下げ連続引き下げであり、農家や地域経済に与える打撃は深刻であります。私は、この諮問案の撤回と、あわせて先ほどから来年度からやるんだと言われる米価の新算定方式の撤回を強く求めておきたいと思います。  既に稲作農家は七十七万ヘクタールもの減反、転作奨励金の削減、調整保管や基盤整備などによる負担増に加えて、先ほど来申し上げております自由化問題等、まさにあらゆる角度からの打撃で事態は極めて深刻であります。今回の引き下げはさらにこれに追い打ちをかけるものであり、到底許せるものではありません。  そこで、二点お伺いをいたします。  今回の引き下げによって生産者米価は六十キロ当たり一万六千七百四十三円となり、農水省の米生産費調査によりますと、四ヘクタール以下の稲作農家と、驚くべきことに五ヘクタール以上の農家生産費を償えないことになり、これは新算定方式のねらいを超えるものになっているではありませんか。このことは米穀の再生産を保証することを旨とする食管法を否定するものであります。今回の諮問米価水準は実に九八%以上の稲作農家を切り捨てるものでありますが、近い将来五ヘクタール水準米価という新算定方式を先取りするものであって、結局この方向は日本の米作そのものを切り捨てることになるのではありませんか。これが一問です。  結局、農水省が今進めようとしている政策は、既にもう多くの関係者の皆さんが指摘をされておるように、多くの農家稲作からの撤退を迫るものであり、ひいては米の輸入自由化に道を開くということになりはしませんか。二点お答えください。
  74. 近長武治

    近長説明員 ただいまの御質問に私からお答え申し上げます。  先ほど大臣からるるお話し申し上げましたように、現在の米をめぐる事情というのは、需給の面からもあるいは稲作構造の面からでもかなり大きな転換期に差しかかっているというのが実は農業に直接携わっている方の実感ではないかなというふうに思うわけでございます。今回の諮問米価につきましても、現在の米をめぐる事情、特に米需給趨勢、それから現在現実に進んでおります生産性の向上あるいは生産コスト低減のための各地のいろいろな努力、それから最近の経済実勢等、なるべく的確に反映するというふうにしたわけでございます。もちろん今回が委員御指摘のように五ヘクタールを念頭に置いた米価方式の先取りというようなことではなくて、これから将来へのどういうような展望を開いていくかということを十分に念頭に置きながら算定し、かつ諮問した米価であるというふうに私ども考えております。  それから、第二点の米の自由化への道を開くのではないかなということでございますが、むしろ現在稲作の問題、日本の米の問題については日本国民全体の中、生産者だけでなくて、消費者の方もあるいは各界各層の方もいろんな御意見があるわけでございます。そういう中で将来への稲作の展望を開いていく、そういう米価にするということが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、やはり米は日本で自給していくんだ、そういうようなことについてのコンセンサスを得ていく、そういうようなよすがではないかなというふうに考えている次第でございます。
  75. 藤田スミ

    ○藤田委員 これで終わりますが、大臣にお答えをいただきたいのです。  先取りでないとおっしゃいましたが、事実がそうなっているじゃありませんか。いろんな意見があるとおっしゃいますが、そういうことでこんなひどいことを農民に押しつけていくのですか。  私は大臣にもう一度ここのところだけは明確にお答えをいただきたいのです。多くの農家にこの方向が稲作からの撤退を迫っていくことになって、米の輸入自由化の道を開くことになりはしないか、こうみんなが心配をしているのです。大臣、もう一度御答弁をお願いして、終わります。
  76. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そういう御心配をかけないように全力を尽くしてまいります。
  77. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  78. 菊池福治郎

  79. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 お許しをいただきまして、質問をいたします。先ほど来の質問と若干ダブる点もあるわけでありますが、お許しをいただいて、数項目御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、生産者米価引き下げということについてでありますが、既に各委員から御指摘ありましたように、日本農家、農民は今度の二年続きの生産者米価引き下げということで大変ショックを受けているわけであります。この諮問案決定されたということに対して私は抗議を込めて反対をするものでありますし、本明日の米審の中でこれが変更を加えられまして、せめて据え置きという線に落ちつくことを念願しながら、しかし、事の流れというものが非常に確実な大きな流れとして生産者米価引き下げという方向に動いているという事実も残念ながら認めざるを得ません。  それで質問になるわけでありますが、この二年続きの生産者米価引き下げ、今回四・六%という諮問案ですが、なぜ生産者米価は今引き下げられるべきなのか、引き下げなければならないのかという背景、原因をひとつ明確にしていただきたいと思うわけであります。と申しますのは、新聞等で報道されておりますように、私らもそう思うのですけれども、今度の米価引き下げ要因、背景には、例えば内外価格格差をなくすためだという見方もあったり、国内における需給バランスの調整のためだという解説の新聞記事もあったり、あるいは農家の米づくりの規模拡大、いわゆる構造政策上のねらいもあるんだというかなり好意的な見方の論調もあり、あるいは一転しますと、農民に米生産をあきらめさせて食管崩しをしていく、米の自由化のレールを敷くんだという厳しい見方もあるわけであります。こういった幾つかのことがうわさされ、指摘されておる中で、ずばり今生産者米価引き下げなければならないのはどういう理由かということをわかりやすくひとつ答えていただきたいと思います。複数であるならばその順位もつけてお答え願いたいと思います。
  80. 近長武治

    近長説明員 ただいまなぜ今米価引き下げなければならないのか、こういう御質問でございます。  現在、米をめぐる事情、いろんな角度から私たち見ておりますが、一つは、やはりこれから日本稲作を担っていくのはどういうようなところが中心になっていくのか、内外価格差の拡大あるいは米価食管制度のあり方、いろんな面について、お米の問題について国民の関心が高まっているのは御案内のとおりでございます。そういう中で、やはり経営規模拡大をしていくあるいは生産組織生産集団を育てていく、こういうことを通じて生産性の高い稲作担い手をなるべく広く育成して、そういうことを通じて日本稲作体質を強めていく、これが第一点の重要な課題であるというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ需給問題でございます。米の需給事情につきましては、一つは、生産面におきましては四年連続豊作というような事情がございます。それから消費の面では、やはり国民の食生活が多様化してきた、大きく変化してきた、そういう中で消費減少傾向がますます強くなっております。このまま推移いたしますと、あってはならない三たびの過剰問題というのが懸念されるような事態になっております。  以上が米をめぐるいわば客観的な状況でございます。そういうような状況を踏まえながら、ことしの諮問米価決定するに当たりましては、現在の米需給趨勢、それから現に進みつつある生産性向上あるいは生産コスト低減状況、そういうような諸状況を的確に反映させる、当然のことながら、やはり食糧管理法に基づく生産費所得補償方式という中で、それぞれ算定要素を積み上げながら米価審議会に対する諮問値の算定を行った、そういう状況でございます。
  81. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 理由と申しますか、今お話をお聞きしたわけですが、若干問題と申しますか広げて御質問申し上げますと、農水省は事前米審に対して、いわゆる生産者米価についての算定方式、要素のとり方の違いによっては最高一二%の引き上げから最低一三%の引き下げまであり得るのだという六種類の試算値を提示した、こういうふうに聞いております。つまり、数字のとり方によっては生産者米価の引き上げということも、これはあり得るということを示していると思うわけですね。そういった選択の幅の広い中から今度あえて四・六%引き下げという諮問案決定したということについては、やはりどうも納得いかない。これはもう農民感情として今のお答え、これは後で反論しますけれども担い手を養成するんだということについても、本当に今お考えになっている方式担い手育成ができるかということについては私ども疑問を感じているのです。  そういった中で、繰り返すようですが、こういった選択肢の多い中から引き下げを選んだ、しかも毎年と申しますか、去年もそうですが、どかんと引き下げのびっくりするような数字をまず出して、そして政府と自民党さんとの間で話し合いが何日か何時間か持たれて、じわじわと数字が近寄ってきて、最後にはしゃんと手を打たれるという、いわゆる生産者米価決定劇というものを農民はかなりさめた目で見ているわけであります。これに対する一つの答えとしてももう少しきちんとしていく、こういうわけで、こういうことで生産者米価引き下げるんだということをびしりお答え願えませんか。
  82. 近長武治

    近長説明員 具体的な米価算定につきましては、先ほど申し上げましたように、現在、昭和三十五年以降でございますが、生産費所得補償方式計算しておりますが、具体的に米価算定するときにやはりそのときどきの需給事情といいますか、需給事情を中心にいたしまして広い意味での経済事情というようなものが米価算定の中で反映されているというのは、委員御指摘のとおり事実でございます。したがいまして、私たちはなるべく安定したような米価算定にしたいというような念願を持ちながら、いろいろな角度でそれぞれ要素について積み上げを行い、そして具体的な諮問値をはじき、そしてなおかつ最終的には米価審議会におきます具体的な御意見を聞いた上で適正に決定してきている、こういうようなのが米価算定についての基本的なやり方でございます。
  83. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今のお答えの中で、そのときの経済事情云々という表現も使われたわけでありますが、食管法第三条第二項にはその趣旨も確かにありますね。「生産費物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とあります。よく何ヘクタール以上という論議がありましたが、これは後で触れますけれども、今度の数字は何ヘクタール以上の農家あるいは何%の農家生産費を補償することになりますか。
  84. 近長武治

    近長説明員 今回の米価算定当たりまして今御質問の点は、生産費対象農家の範囲ということになるわけでございます。今回は生産費対象農家として、農家生産費の低い順に並べまして、その累積生産数量比率一定数量、今回の場合は七六%になりますが、その数量に至るまでの農家算定の対象にいたしまして米価をはじいております。
  85. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 引き続いて、米づくりの水田面積の問題について確認をしたいことが幾つかございます。  ことしの生産者米価は、一・五ヘクタール以上の農家を基準にとって、その生産費をもとにしてはじき出すんだということが、かなり広くと申しますか、事実化する形で国民に浸透し、農民もその数字を中心に大変な論議を重ねてきているところは御存じのとおりであります。そしてまた、三年後には五ヘクタール以上なんだということで、激変緩和ということでそれを段階的にそれに近づけていくんだ、その一・五ヘクタール以上の云々というのが今回は、きょうは消えた、消えたというより先送りにというふうに聞いたんですが、さっきの大臣答弁でももう一つはっきりしなかったのですけれども、これは白紙に戻ったのか、今までもう再三論じられてきたこういった内容が来年にそのまま持ち越されたのか、そのところをはっきりしてください。
  86. 近長武治

    近長説明員 新しい米価算定方式の点につきましては、昨年米価審議会、九月以来でございますが、小委員会を設けまして慎重に検討を進めてまいりまして、去る六月に小委員会報告米価審議会に行われて、米価審議会でも了承された形になっておるわけでございます。したがいまして、新しい米価算定方式に基づいて算定を行うように関係方面との調整を進めてきたところでございます。この間の事情については先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、諸般の情勢から新算定方式については、これから生産者を初め関係者理解を深めつつ、昭和六十四年産生産者米価から適用する、こういうような考え方で、本年は従来の方式算定をしてきている、こういうようになっているわけでございます。
  87. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 それでは、くどいようですが確認させていただきますけれども、本年度一・五ヘクタール以上、三年後五ヘクタール以上の農家云々という、その伝えられております新しい算定方式は、改めて仕切り直しと申しますか、来年度再スタートする、こういうことですか。
  88. 近長武治

    近長説明員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、来年度、六十四年産生産者米価から新算定方式を適用する、こういう考え方でございます。
  89. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 新算定方式というものと、既に日本国じゅうに論議の対象になっております一・五へクタール以上、三年後五ヘクタール以上、それとはイコールですか、イコールじゃないのですか。
  90. 近長武治

    近長説明員 去る六月に米価審議会の小委員会から報告されました報告書というのはかなり幅広く読まれておりますので、その内容に基づいてそれぞれその報告書をお読みになった方はこれが新しい算定方式であると考えておられると思いますし、それから私たちが六十四年産生産者米価について適用しようと考えておりますのは、当然のことながらこの米価審議会の小委員会報告書に基づく算定方式に従って計算をする、こういうふうになっておりますので、恐らく両者は同じものであろうかと考えられております。
  91. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大変慎重にお答えになっておられるのですが、結論は同じだ、そういうことですね。
  92. 近長武治

    近長説明員 今大変回りくどく申し上げましたが、恐らく両者は同じであるというふうに考えていいかと思います。慎重にというふうに申し上げましたのは、価格の問題でございますので、やはりそういう金額が絡みますと、これとこれが違うということではいけない。私たちは生産者米価の新算定方式については印刷物その他の形で十分に読まれておると理解しておりますので、両者はまず同じであろうというふうに考えられると思います。
  93. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 わかりました。つまりきょうの最終決定決定劇という表現は慎みますけれども、一年先送りするということで諮問案決定したというふうに理解をいたします。  としますと、また新しい問題が生ずるわけでありますが、一年後に同じ問題がここで論議をされるわけであります。一・五ヘクタール以上の農家、それがそういう新方式が妥当かどうか。いわゆる構造改革が進んでいないという現状を残したままでいわゆるヘクタール問題が先行し固定化していく、しかもそれは数年先まで枠をはめることである。こういうことになりますと、その年の経済事情あるいはまた生産費状況等でもって決定をするという生産者米価の食管法上の性格が、そういうやり方ですと四年後あるいはそれ以上まで枠づけしてしまう、こういうことになりませんか。
  94. 近長武治

    近長説明員 ただいまの御指摘の点は、新しい算定方式はどのくらいの期間適用されるのかという点についての御議論ではないかなと思います。この点につきましては小委員会ではかなり論議がございまして、一定算定方式をつくった場合にも、これが永遠に続くということではございませんで、一定の期間この算定方式が適用されてしかるべきだ、こういう考え方になっております。具体的にその報告書の中では、一定の期間というのは大体三年程度、こういうような形で書かれております。したがいまして、新しい算定方式が適用されたときに大体三年程度たてばもう一度その時点で算定方式そのものについて見直しが行われる、こういうふうに理解されると思います。
  95. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私は、一・五ヘクタール以上云々の方式が来年度再スタートするというお答えをいただいた中で、やはり今の段階からこの考え方方式には問題があるということを指摘しておかなければならないと思っております。その一つは、一・五ヘクタール以上の層の水田農家は全体の八・八%というふうに私どもは記憶しているわけですが、非常に少ないシェア、率であります。それは一・五ヘクタールと線を引いたときが全体の八・八%でありますから、一・五ヘクタール以上という、以上という言葉を含めまして実際に算定の対象になる農家平均面積は二・六ヘクタールになるんじゃないかというふうに私どもははじき出しておるのですが、この数字についてはいかがですか。
  96. 近長武治

    近長説明員 具体的に米価算定のときにどの程度の平均値になるかということを算定することになるわけでございますが、前年までのデータ等で我々内部的に試算をいたしますと、委員御発言のような面積に大体近いというふうに理解しております。
  97. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 それが今度五ヘクタール以上となりますと、今の数字を引用しますと〇・五%という数字になると思うのですね。そうしますと九九・五%の農家はその新方式による生産者米価水準以下の農家だということになるわけで、これはもういわゆる構造改革がどこまで進むかという今のままの状況からいえば米づくり農家の切り捨てじゃないか、こういう声が、米づくりの地帯、私どもの住んでおる東北あるいは岩手県あたりでは非常に大きな声でそういう心配がなされておるわけですが、これについてはどうですか。
  98. 近長武治

    近長説明員 稲作農家の中でどの程度の規模担い手農家といいますか中核的な農家というふうに考えられるのかというのは、やはりいろいろな角度から見ていかなければならないわけです。例えば労働時間の面ではどうであるかとかあるいは稲作所得とその方の全体の所得とのウエートの関係、さらには稲作に使われる機械効率性という点からどのくらいの規模がいいのかとかいろいろな角度からこの米価審議会の中の小委員会論議されまして、そういう点からいたしますとやはりどうしても五ヘクタールという数字が出てまいるわけでございます。しかし、現実に日本稲作の姿を率直に見てまいりますと、五ヘクタールに至らない層の中にもこれからの担い手たる、あるいは中核的な農家になる高い発展的な可能性を秘めている、そういう農家層というのはかなり広範にある。それを全国的なデータで検証してまいりますと、一・五ヘクタールぐらいのところで一つの線が引き得る、こういうふうになるわけでございます。  ちなみに一・五ヘクタールというところで六十一年産の数字で見てまいりますと、個別農家だけで見ますと農家戸数のシェアで約一二%、それから販売数量のシェアで四四%程度でございます。しかし、実は日本稲作といいますのは諸外国のような農場制農業ではございません。やはり一定の地域の中でお互いに作業の受委託をし合ったり、あるいは生産組織をつくっていったり、あるいは中核的な農家が中心になって一つの大きな作業の体系をつくっていく、こういうふうに思われるわけでございます。そこで生産性の高い生産組織あるいは集団についてどのくらいの販売量があるのか。このシェアはかなり推定が入るわけでございますが、私たちの計算では大体四分の一ぐらいに相当するだろう。そのほかにさらに一・五ヘクタール未満の農家の中でも一・五ヘクタール以上の農家生産性に匹敵するような生産性を上げているそういう農家もあるわけでございます。こういう方が販売数量のシェアでは大体全体の一割程度になるというふうに思うわけでございます。それぞれ一・五ヘクタール以上の農家と先ほどの生産組織等の間では重複がございますが、合算すると、かなりラフではございますが、大体販売数量のシェアで見れば全体の四分の三ぐらいになるのかな、大体こういうふうに見ているわけでございます。したがいまして、一・五ヘクタール以上の個別農家というデータでなければ現在米の生産費調査のデータがございませんから、算定の上では個別農家のデータを使いますが、そういうふうなデータに基づいて生産費及び所得補償方式によって一定計算をした場合には、それでカバーされる米の販売数量というのは大体四分の三程度に達するというふうに推定されるというふうに考えているわけでございます。
  99. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 試算の仕方とかそれから解釈あるいは見通しということになりますと、いろいろな角度からの見方が出てくると思うのですが、さっきお答えの中で生産者米価引き下げる理由の第一番目に挙げられたのが生産性の高い担い手農家確保する、体質強化するんだというふうな表現を使われたわけであります。  ところが、生産者米価を切り下げることによっておっしゃるような担い手農家がふえているか。据え置きになった、引き下げになったというここ二、三年の動向を見ますと、むしろ一・五ヘクタール以上二・五ヘクタール未満の層の農家も増加から減少に転じているという数字が出ているわけであります。そして、昭和六十一年から六十二年の一年間では三・〇ヘクタール未満の農家はすべて減少になっている、こういう数字を見ますと、米価引き下げ農家の戸数全体の減少にはなっているけれども、いわゆる大規模農家比率をふやすことには役に立っていない、私どもはそう解釈するわけであります。  やはりこれは、私ども農村地帯に住んでおりますと、全く農民の方々の実感でございまして、米づくりには将来性はない、感じられない、息子夫婦にはもう百姓をさせるという説得力を持てない、どうしたらいいんだという声を聞きます。若干冗長な例を引いて恐縮ですが、私、農業高校で教員をやっておった時期がございます。先ころ、休会中でございまして街頭宣伝をしながら町を、町と申しますか農村部を走っておりましたら、三キロばかり後ろからスピードを上げて追いついてくる車があったのです。それで私の車の前にとまりまして、先生じゃないですかと言っておりてきたのが三十歳代後半の農家の女性でございました。そうしたら、二十年ぶり、三十年ぶりで非常に懐かしかったわけですが、涙をこぼしながらうちは今長女が農業高校に――女ばかり三人の子供だ、農業高校に進ませることにも随分激論があった、それで、農業を続けていくことについても子供たちに説得力を持てない、何とかひとつ希望を持てるような農政にしてくれないかということを涙ながらに訴えるわけですよ。私はこれに対する答えは持っていなかったわけでありますが、どうにも今の生産者米価引き下げで象徴されるような農業つぶしというのでしょうか農業たたきというのでしょうか、それら国内外農業状況が非常に農民層に対して絶望感を与えている。それに拍車をかける役割をすることはあっても、大規模農家生産者米価引き下げによってふえるだろうなどという甘い見方は机上のプランではないか、むしろ現金収入を求めて兼業に走る農家がふえてくるのじゃないか、こういう気がするわけでありますが、この見方の相違というのはどういうふうに解釈なさいますか。
  100. 近長武治

    近長説明員 価格政策と構造政策の進め方というのは、委員御指摘のようになかなか難しい点があろうかと思うわけでございます。今の御指摘の中には幾つか重要な点があるわけでございますが、特に一番最後におっしゃいました、価格引き下げるということで、単純にそのことだけで大規模農家がふえるのかどうか、あるいはそれはむしろ兼業農家を温存することにつながるのではないかな、こういうような御指摘ではないかなというふうに思うわけでございます。  現実に大きな規模農家をつくっていく、あるいは大きな規模生産組織をつくっていくというのは、価格政策だけではなくて、広い意味での構造政策というようなことが大変重要ではないかなと思うわけでございます。したがいまして、先ほど大臣からも価格政策も構造政策も並行して進めていかなければならない、こういうふうに御答弁申し上げたとおりでございまして、私たちも、六十四年以降に新しい算定方式米価算定されるに際しましては、当然のことながらそういうことを念頭に置いた構造政策というのを進めていかなければならない、かように考えているわけでございます。
  101. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 他の質問事項も準備してありますのでこの問題は打ち切らせていただきますが、今まで申し上げましたように、生産者米価引き下げという去年のショックを受けた農民がことしも同じ体験をしながらますます農業に対する絶望感を深めていくということを恐れるわけであります。ですから、新方式の先送りということは、これを機会に、今まで申し上げたようなことも含めまして、農政のあり方というよりはむしろ日本農業の将来は一体どうあるべきかという、農民に先が見える、少なくとも、あしたは見えなくてもあさっては見えるくらいの指標をみんなでつくらなければならぬのじゃないか、そのリーダーシップを発揮するのが皆さんであろうと私は思うので、一・五ヘクタール以上の問題が先送りになったということを一つのきっかけにしながら、真剣に農民の立場に立って考えていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、さっきもちょっと出ましたが、米の自由化の可能性ということで大臣いろいろお話しになっておられましたが、私の手元にありますのは六月二十九日付の岩手県の地方紙でありますけれども、一面トップに「コメ自由化ガットで協議」「日米、二年前に了解」、こういう見出しで出たわけであります。日本の米の自由化については、日米の二国間協議ではないけれども、ガットの場で協議するということに関して日米両政府間に了解があった、こういうふうに記されてありまして、やはり米の自由化というのは舞台裏では動き出しているんだなということを感じさせるに十分なトップ記事であったわけであります。このことはひとつはっきりさせていただきたいのですが、米の自由化についてはどんな形でも考えていない、あるいは日米間においても何ら了解もしていないというふうに明言できますでしょうか。
  102. 北口博

    ○北口説明員 ただいま沢藤委員から米の自由化の将来の要求についてのお尋ねであったわけであります。沢藤委員も御承知のように、米というのはまさに日本国民の主食であり、また農業の基幹をなすという大事な要素でありますし、また水田稲作というのは特に国土や自然環境の保全にも不可欠な役割を果たしております。さらにまた我が国の伝統的文化の形成にも大きな役割な果たしておる、こういう主要な作物であります。このような重要性にかんがみまして、国会でも米の需給安定に関する決議の趣旨等もございますので、今後国内産で自給する方針を堅持してまいりたい、こういうふうに基本的に考えております。
  103. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 お答えを私なりにそんたくしますと、米の自由化は考えていない、それから日米間においてそれについてのいかなる形の協議、了解事項もないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  104. 近長武治

    近長説明員 この問題につきましては、先ほど大臣からもるる御答弁しているところでございまして、私たち事務当局も大臣の御答弁のとおりでございますし、ただいま政務次官から答弁申し上げましたのも大臣と同じでございますので、私たちも全く同じ考えでございます。
  105. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣がおられないので直接お聞きできないのですが、しかし、これは大臣と同じ次官がおられるわけでありますから、くどいようですけれども、私は、生産者米価の問題も目の前の問題ですが、国民といいますか農民が腹の底から心配しているのは、米までが自由化されるのじゃないか。牛肉、オレンジの段階で農民は、政府は牛肉、オレンジの自由化には反対していくぞ、頑張るぞ、そういう態度だという理解をしてきたわけです。御答弁の言葉のニュアンスの違いはありますけれども、農民はそういうふうに理解してきたわけです。ところが、現実には牛肉、オレンジは押し切られた。そこで、そのころ、中曽根首相が米の自由化はしないという意味の発言をしたという新聞報道があったときに、ほっとした農民と、いやこれだって牛肉、オレンジの二の舞になりかねないという疑念を持った農民もかなりいたわけです。  そこで、くどいようですがお聞きするわけですけれども、この新聞報道で岩手県民はぎょっとしたわけでありますが、日米二国間におきまして米の自由化に関するいかなる協議もなかったのかどうかということが一つと、それから、将来に向けてガットの場でも米の自由化は絶対させないという態度を貫き通すのかどうか、その二点をお聞きしたい。
  106. 北口博

    ○北口説明員 ただいまお尋ねの件でありますけれども、私は大臣から二国間の米の問題が話題になったというお話は聞いてないわけであります。  ウルグアイ・ラウンドの将来のことでありますけれども、このことに関しまして討議に参加することは拒否するという立場ではなかなか難しい点も国際上いろいろあろうと聞いておりますけれども、先ほど申し上げましたように、まさに米というのは純経済的ではない農業の重要な役割も持っておりますから、その辺は十分踏まえながら国益をきちっと守っていかなければならぬというのが政府立場また食糧政策の立場ではなかろうかなと思っております。
  107. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題は、これ以上の表現を期待するのは何か今のところ難しいようでありますが、ただ、御発言の内容なり次官のお言葉をお聞きしまして、やはり米というのは他の農産物とまた際立って違った性格のものであるから、政府としてはこの米の自由化については反対をしていくんだ、そのような努力といいますか態度を貫き通すということを今の答弁から御期待申し上げながら、今後なお論議を続けてまいりたいと思っております。  この問題に関しまして私が非常に心配になっている、つまり、やはり米もやられるのじゃないかという心配をする一つの材料がまだあるのです。というのは、最近の政府農政と申したらいいのでしょうか、あるいは自民党農政と申したらいいのでしょうか、その出てくる政策、政策が非常に経済界の発言、提言に酷似している。むしろそれを下敷きにして展開しているのじゃないかと思われるような事実を私は感じざるを得ないわけです。  その一つの材料として前もって係の方にお話ししておったのですが、昭和六十二年一月二十七日、経団連が発表しました「米問題に関する提言」というのがあるわけでありまして、全文を読むわけにはまいりませんが、この中で幾つかのことをかなり踏み込んだ提言をしております。農業団体が言うならまだ話がわかる。これは農業に関する提言ですね。農業団体の提言よりも大胆な提言を財界、経済人がやっているということを私はまず素朴に不思議に思うのですが、その経団連が「食管制度の改革」という表現を使いまして、まず現行制度の枠内で自主流通米の一層の拡大を図る、自流米は政府管理米から外す、段階的に部分管理へ移行する、そして五年間という期間の中で政府買い上げ米の比率を現在の約六割から三割程度まで減らしていって、最終的には回転備蓄に必要な一定量にだけとどめる、こういう提言をしております。「集荷、卸、小売の流通段階に競争原理を導入する。」ということも言っております。それから、今回の一・五ヘクタール騒ぎで、これはこのことだったのかと思うような表現をしているのですが、「政府米の生産者価格については、一定規模以上の稲作農家生産費をベースに段階的に引き下げるとともに、」云々と書いてあります。全く、今度打ち出した新方式そのままなわけです。偶然の一致でしょうか。私は余りにも酷似し過ぎているという感じを持たざるを得ません。そして、自流米については国による助成を縮減する。それから、転作奨励金は廃止する。そして、問題は最後でありますけれども、米の輸入問題については、「米の輸入自由化はありえないという前提で、国内の稲作を維持し続けることは次第に難しい状況になりつつある。」という状況を前提としながら、「具体的には、工業原料用の米については」「輸入を認めるべきである。」それから「飯米用の米については、食管制度の改革期間中は国家管理貿易の形態を維持せざるをえないとしても、部分管理に伴い市場介入に必要な米が不足する場合や米需要の多様化に対応する上で必要な場合、輸入を行なうという弾力的な対応が必要である。」というふうに書いてあるわけであります。最後の部分だけがまだ実現されていないのでございまして、他のすべての部分は経団連の青写真のままに今の農政が展開されているということは偶然の一致かどうか、とてもじゃないが私はこれは不思議でしょうがない。どうなんでしょう、率直に言って。財界の提言が今の農政影響を与えている、少なくとも影を落としているという理解を農民はしつつあります。この理解に対してはどうお答えになりますか。
  108. 近長武治

    近長説明員 今幅広く引用されましたが、一つ一つそれぞれについて申し上げるという意味ではなくて、現在、米について農業関係者だけではなくて、幅広い範囲で議論が出てきているということは委員御指摘のとおり事実でございます。しかし、米について、米は日本人の主食である、それから日本農業の中で大変重要な作物である、それから日本の気象条件、アジアモンスーン地帯の一角にあって相当急峻な地形でございます。その中で、我が国稲作がずっと発展してきたわけでございます。それから、稲作を中心にしながら地域社会が形成されてきている。そういう点からいたしますと、やはり米あるいは稲作というのは日本人あるいは日本の社会の奥底につながっている、こういう点でございます。したがって、米について幅広い人がいろいろな御意見を持つというのは、やはりそれはある意味では当然ではないかなというふうに思います。  ただ、私たちこの点についてよくよく注意しておかなければいけないのは、現在の私たちの食糧管理制度の運営について相当大きな問題点があるというような御指摘になるとすれば、それはやはり私たちみずからが気がついて一つ一つ、やはり今申し上げましたような日本におきます米の位置づけ、食生活における主食あるいは農業の基幹作物あるいは日本の自然条件の中で大変重要な役割を果たしている、こういうことを念頭に置きながら、やはり全体として制度が生き生きとして運営されるというようなことを念頭に置いて考えなければいけないので、決してある特別なところの提言にのみ基づいて私たちが政策運営をしていくというような考え方ではございませんので、若干私自身の私見も交えた点もございますが、そのように御理解いただければありがたいと思います。
  109. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 政党政治でございますから次官に一言お答え願いたいのですが、ずばり一行で結構でございます。  先ほど御指摘申し上げましたような、財界筋あるいは経団連のかなり具体的な米に関する提言があるわけですが、そういったものに影響されない、つまり、それとは独立した政策でもってそれが展開されているのだということをきちんと、農民も心配するな――私はやはりそう言っているのですよ、何か財界寄りじゃないかと。農業団体の言うことはさっぱり聞いてくれない。さっき挙げたことは全部そうでしょう。転作奨励金にしたって減反面積にしたって自主流通米の問題にしたって、農民や農民団体が反対していることを財界がだらり並べていてそのとおりに進んでいるということを見ますと、農民はやはりおかしいなと不安と不満を感ずるわけですよ。そうじゃないのだというのであれば、きちんとその点を日本の農民に対して明らかにしていただきたいと思います。
  110. 北口博

    ○北口説明員 農政というのは御承知のように、基本的ないろいろな意見も聞くということもしなきゃなりませんが、先ほどからいろいろ御指摘があっておりますように、食糧は日本の生命産業でありますから、その点はいわゆる不安のない食糧の確保という考え方に立って基本的には進めてまいらなければならぬと思っておりますし、たとえ財界がいろいろな意見がありましてもそういうのには、いい意見は取り入れていきますけれども、左右されてはならぬ、こんな考え方で今後取り組んでまいりたいと思います。
  111. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間が参りましたので、最後に一、二若干事務的な質問になりますけれども、お答えを願いたいと思います。  この生産者米価の問題を論ずる場合に、一方におきまして、それでは生産コストを下げるためにはどういう手が打たれなきゃならないかという問題もあるわけであります。その中に非常に大きく影響しておりますのは、先ほども報告がありましたように、生産費費目別の構成比を見ますと、農機具費が三一・五と人件費に次いでずば抜けて高いわけであります。ここに私は、農機具貧乏とか機械貧乏と言われている今の農業の弱みというのでしょうか、アキレス腱があるような気がするのです。そして農民が言いますのは、高い農機具を次々買わされる、そして修理をしようと思うともう部品がありませんと言って、数年たたずして部品がないという状況で、新しいタイプの農機具を買わされるということをよく農民から訴えられるわけでありますが、こういったことに対しては、農機具メーカーに対して部品は何年間くらいは確保しなさいという指導はできないでしょうかね。  それから、生産コストに関連しまして、これはいつか別な機会に触れたいと思いますけれども土地改良事業で、当初の計画、例えば何年間で何十億円という計画でスタートした国営パイロット事業の例が私の県にあるわけですけれども、それが当初の計画よりも十何年も工事期間が延びる、最終的に予算は四倍に膨れ上がる、そして農民は負担にあっぷあっぷしておるという事実があるわけであります。これも結局は生産コストに大変大きな重圧をかけておるわけです。こういった生産コストを抑制する、あるいはむだな生産コストを負担させないという政策も非常に重要だと思うのですが、二つの例を申し上げましたけれども、お答えを願いたいと思います。
  112. 吉國隆

    吉國説明員 農業機械効率利用に関連しまして部品のお尋ねがあったわけでございますが、私ども機械の部品の確保を円滑に行いまして、機械の十分な利用、また耐用年数を十分に生かした利用というものが必要であると考えているところでございまして、通産省の方とも連絡協調いたしまして、業界に対しまして要請あるいは指導を行ってまいっているところでございます。  現在、部品の確保、供給ということにつきましては各メーカーとも意を用いていると私ども見ておるわけでございますが、例えば一つには、機械生産中止されました以降におきましても、法定耐用年数はもちろんでございますが、その経過後におきましても数年間は部品を供給できるようにという体制をとってもらっているわけでございます。また、その都度都度の修理あるいは整備ということに関連いたしまして、各メーカーあるいは農協系統組織におきまして、メーカーにおきましてはブロック単位の部品センターを設置する、それから農協組織におきましては県単位に部品センターを設置する、またコンピューター等を活用しました迅速な部品の供給体制ということについても努力が払われているように私ども認識をいたしておりますが、今後とも、御指摘のように部品の供給の円滑化につきまして努力をしてまいりたいと思っております。
  113. 松山光治

    ○松山説明員 土地改良に伴います農家の負担問題についてのお尋ねでございますが、委員御指摘のように、いろいろな事情がございまして予定よりも工期が延びる、そのために事業費の増高を来しておる、そういう事例がありますことを遺憾に存じておるわけでございます。  土地改良は大変大切な仕事だと思っておりまして、できるだけ農家の負担を少ない形で円滑にこれを進めたいと思っております。そのために、できるだけ新規地区の採択につきましてはこれを計画的に行い、重点的な事業の実施を図ることで工期の短縮を図りたいとまず考えておりますし、かつまた、事業の実施に当たりましてもできるだけ経済的な工法の採用に努めるとか、もろもろの工夫を凝らしながら、農家の負担の軽減ということを頭に置いた事業の実施にこれからも努めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  114. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 最後の問題につきましては、またいつか機会を改めて触れたいと思います。  ちょっと厳しい表現を使った場面もありましたが、御容赦いただきたいと思います。御答弁ありがとうございました。終わります。
  115. 菊池福治郎

  116. 安井吉典

    安井委員 先ほどの大臣に対する質問に続いて、きょうは政務次官もおられますし、事務当局の皆さんに伺いたいと思います。  初めに、牛肉、かんきつの交渉等の成り行きを見ていた農民の声として、アメリカは日本に対してそういう強い要求をしているが、現実にはウエーバー条項の中にいるじゃないか、あるいは食肉輸入法も持っているじゃないか、そういうような中に自分はおりながら、日本にだけ一方的に強いるというのはおかしいじゃないか、そういう声があったことは間違いありません。ですから、日本政府としても、アメリカに対してそのことを主張し、日本に言うのなら自分の方も先にそういったようなぬるま湯の中から出ることを考えればいいじゃないか、食肉法を廃止するとか、あるいはウエーバーを離脱するとか、そういうようなことがあっていいじゃないか、何なら、日本に要求するのなら、日本もそのぬるま湯から出るのならあなたの方もワン、ツー、スリーで一緒にばっと出るとか、そういうのならまた話がわからないわけでもないんですけれども、そうではないという状況をそのままにして、どんどん譲歩に譲歩を重ねてきている、おかしいじゃないか、こういう声があります。その辺について日本政府としてはどういうふうな対応をアメリカとの交渉の中においてしてきたのか、あるいは今後ガットにおいてどういうふうな取り組みをしていくのか、それを伺います。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
  117. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 お答え申し上げます。  アメリカ自身が農産物について適用している、例えばウエーバーに基づく輸入制限措置あるいは牛肉その他の食肉につきまして国内法でございます食肉輸入法に基づいて現実に適用している輸出国との自主規制、そういった問題についての対応が十分でないのではないかという御趣旨の御質問であったというふうに理解をいたします。  この問題についてはかねてからガットの加盟国全体でも非常に大きな問題になっておりまして、アメリカの、具体的にはウエーバーの対象農産物の輸入制限のあり方につきまして、いわばパーマネントな形で作業部会を設けて、その実行状況を審査する、そして、でき得べくんばその抑制ないしは撤廃に持っていこう、そういう現実の働きがガットの加盟国の中でございます。日本はガットの有力な一員といたしまして、最初からこのウエーバー作業部会に参画をいたしまして、輸入国としての立場ではございますが、このウエーバーに基づく輸入制限措置が他の同様の、例えば我が国の行っております輸入制限等と比べて、実質的な効果においては輸入制限的な影響、度合いにおいて同等もしくは一層抑制的な効果を持つものである、したがって、リーガリティーの問題は別としても、実質公平の観点からその早急なる廃止を求めるという立場で対応してきているわけでございます。とりわけ今回の牛肉、かんきつについての日米間の一連の交渉におきましては、私どももこのウエーバーの問題あるいは食肉輸入法に基づく自主規制につきまして、機会をつかまえまして、アメリカの農産物貿易の問題についていわば実質的に公平な立場を求めるという観点から主張してきているわけでございます。  残念ながら、アメリカのこれに対する反応は非常に法律主義的な考え方が強うございまして、これはあくまでガットのそれぞれの条文に照らして合法な措置である、例えばウエーバーに基づく輸入制限十四品目ぐらいございますが、これはガットの二十五条に基づき加盟国の正規の承認を受けてとっておる措置であるという主張がございます。また、食肉輸入法に基づく自主規制につきましても、ガット上の法的地位についてはいわゆる灰色措置という位置づけがなされておりまして、これを現行法のもとで直ちに違法なものと決めつけるにはなお問題がある、そういうものでございます。  そういうことを前提にいたしまして、アメリカは自国の制度に対する一つの自己弁護をしてきているわけでございますが、私どもは、この問題はまさにウルグアイ・ラウンドの中で実質的な公平を確保する見地に立って的確に取り上げていくべき課題であるというふうに認識をいたしております。アメリカもこれらについてはニューラウンドの交渉のテーブルにのせる用意があるという立場をとっておりますので、そういった当事国のアメリカの考え方も踏まえながら、この問題について実質的な公平が確保され、農産物貿易の公正なルールが確立されるように今後さらに私どもとしても努力をしていきたいというふうに考えております。
  118. 安井吉典

    安井委員 その法律論を振りかざしているというのは私ども何度も聞いております。また、そのとおりだと思うのですよ。しかし現実に今、日本は自由化を約束したのでしょう。ガット提訴をやめさせたのでしょう。そして、向こうはそのままやっているというのが何で公平なのですか。だから廃止の主張をしている、それだけじゃ困るので、どこかの国がたしかガット提訴を考えているとかしたとかいう情報も聞いておりますけれども日本も現実にもっとしたらどうなのですか。というのは、この次の段階は必ず米の問題が出てくる。米の問題が出てきた場合に、現在のガット十一条で完全自由化、一粒も入れないということで最後まで頑張れるのですか。十一条という規定は解釈の仕方もいろいろあると私は思うのですがね。あのままではそういう重大な問題があると思うのですよ。したがって、今アメリカがガットに米の問題を出すぞなんというのを黙ってやらせておく必要はないと思うのですよ。そういう意味でもう少しがっちり腰を据えたアメリカとの闘いをやらなければいかぬ、そう思うのですが、どうですか。
  119. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 重ねての御質問でございます。先ほど最初の答弁の中でも申し上げたことでございますが、この問題についてはアメリカの非常に法律主義的な考え方の主張が一方ではございますけれども、私どもはニューラウンドの中ではそういった問題も含めて公平な農産物の貿易に関する永続的な秩序の形成を図っていくことが極めて大事であるという立場に立って、かつまた農産物の輸入国としての立場で対応するということで、昨年十二月に我が国の交渉に臨む提案を出したわけでございます。その提案の中でも、今委員の方から御指摘がありましたような問題点を踏まえて我が国独自の主張をしているわけでございますが、今後さらに我が国の提案を基軸にしながら今のような問題についても十分対応していきたいというふうに考えているわけでございます。
  120. 安井吉典

    安井委員 きょうはそこまで言うつもりはないのですけれども、この点も伺っておきたいと思いますが、ガット十一条の今の規定で日本の米の完全自由化、一粒も入れないということの主張を貫けますか、その辺。それは法律解釈でいいです。
  121. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 ガットの十一条で輸入制限が原則として禁止されている規定がございまして、農産物あるいは水産物につきましては一定の要件を満たす場合には例外的に輸入制限が許容されるという規定がございまして、我が国の例えば十二品目等につきましてはその条項を充足しているかどうかかパネルの場で争われたという経緯がございます。  今委員から御指摘がありましたように、我が国の米についてのガット上の合法性については、直接的にはもしこれが将来問題になることがあるとすれば十一条のただいま申し上げた規定との関係が一番問題になるのではないかというふうに承知をいたしておりますが、同時に我が国の米は、食管法のもとで国家貿易体制にあるわけでございますので、ガット上国家貿易というのは、ガットのもとで一つの合法的な貿易制度として認知をされておりますので、その国家貿易制度との関連もあわせて問題になる。それらが複雑に絡んで、我が国の米についての法的地位が問題になってくる可能性は当然あるわけでございます。  いずれにしましても、ガット上の合法性の問題については、特定の案件について、例えばパネルを設置することを通じまして具体的にその審査が行われ、そのプロセスを通じて個別の具体的な案件についての合法性という判断が出てくるわけでございまして、現時点でこの問題について私から断定的に申し上げるのは控えさせていただきたいと思いますが、単に十一条の問題だけではなく、国家貿易に関する規定あるいはそれらを含みます農産物貿易全体の秩序との関係一つの判断の要素になってくるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  122. 安井吉典

    安井委員 国家貿易品目の問題についても、この間うちのあの十二品目の中で日本政府ははっきり認めちゃったじゃないですか。反対しなかったわけですよ。国家貿易品目のクロをそのまま認めたわけです。最後まで反対すればまだよかったけれども、反対していないわけですから、反対しないということは賛成したことですからぬ。ですから、論理でいろいろな問題が出てくるのです。  しかし、きょうはいろいろな問題点がありますので、別に米を、ガット違反ということをここでつけようなんて気は私はさらさらないし、むしろ反対の立場だから、もう少しあなた方の方で論理構成をしっかりしてくださいよ。それだけに、アメリカの勝手なあり方に対して、その対抗上ももっとしっかりした態度を示すべきだと私は思います。そのことだけ一つ指摘しておきます。  あと、米の問題がたくさんあるものですから深入りはできませんけれども、畜産局はきょうはいないのですね。――来てない。では、牛かんの問題は、どうせもっと時間をとって議論しなければいけないと思いますのできょうはこの程度にして、米の問題に入ります。  一・五ヘクタールの新ルールといいますか、それへの移行は先ほど来議論があったわけでありますが、そちらへ行こうと行くまいと、米価は下げるのですね。論理はどうあろうと下げたというのが、これは農水省の最初の思惑どおり下がったのじゃないですか、論理構成は変わったけれども。どうもそんな気がしてならないわけであります。  六つの試算米審でお出しになっているようでありますけれども、ちょうどこれの一番最後のところにある、従来どおりの算式で六十二年方式でやった場合、五%ダウンの一万六千四百円という試算が出ていますが、きょうお出しになった諮問米価というのは大体これとよく似ていると思うのですが、その辺どうですか。
  123. 近長武治

    近長説明員 先般の事前米審資料をお出しいたしましたのは、事前米審の中で、やはり具体的な算定の中における要素のとり方でございますとか、新算定方式に移行したときの経過措置についての実感等をある程度得たいというのが、恐らくその資料を要求された先生方のお気持ちではないかなと思います。  したがって私たちの方の計算につきましても、本格的な算定に比べますとかなりラフな計算をしておりますので、たまたま先生の御指摘の数字の姿が似ているかとも思いますけれども、やはり今回の諮問値は今回の諮問値として、私たち一つ諮問値として計算したものでございますので、ある意味では数字の姿、それから何となく意味合いについても、前年についての修正方式という点でかなり類似した感じはあろうかと思いますが、繰り返して申し上げますと、やはり今回の諮問値は今回の諮問値として、一つの積み上げで計算したものだというふうに申し上げさせていただきたいと思います。
  124. 安井吉典

    安井委員 先ほどの御答弁の中で、来年から新方式になって、その新方式三年後見直しというのは、この間うちから言っておられたことであります。したがって、ことしからいうと四年後見直し、そういうことになるのですか。  それからもう一つは、目標価格ということを米審段階では予備米審で使っておられたようでありますが、その目標価格という考え方は今の場合も生きているのですかどうですか、その辺伺います。
  125. 近長武治

    近長説明員 米価審議会の小委員会の中では、この算定方式一定期間後、大体三年程度後に見直すというようなことでございますので、三年程度という中に、具体的にそれは三年だけなのか、あるいは四年だけなのかというのは、新算定方式は現時点でまだ適用になっておりませんのでかなり仮定の問題でございますので、ただいまの段階で断定的に申し上げるのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  それから第二点の、目標生産費の問題でございますが、これは小委員会報告書の中に、これからの構造政策、生産対策あるいは価格政策を進めていく際の中期的な一つのターゲットとしてというようなことで記述されておりまして、現在、その目標生産費についての作業は具体的にはまだ行われておりません。
  126. 安井吉典

    安井委員 昨年の農家手取りはかなりダウンしておるわけですね。それは、先ほどの生産費調査の中でも計算をすれば出てくるわけであります。北海道に二十六万ヘクタールの水田がありますけれども、これだけで昨年は三百五十七億円、前年よりも減収ということがはっきりしています。これはもちろん減産という部分もありますけれども価格がダウンしたということが非常に大きな影響一つになっているということも間違いありません。  それでは、今度の試算米価、これによって農家所得はどれくらい減ると試算されていますか。
  127. 近長武治

    近長説明員 具体的に、この算定によって農家所得がどういうふうに変わっていくのかというのは、例えば本年の生産量が一体どの程度になっていくのかとか、あるいは米価自身は、生産者米価というのは政府買い入れ価格でございますが、農家稲作についての価格というのはもう一つ、自主流通米の価格というような点がございまして、これによってどの程度の試算になるかというところについて、私たちの方ではそこまでの作業は現時点ではまだ行っておりません。
  128. 安井吉典

    安井委員 一応試算というのでお示しになった以上、米価審議会だってそういう質問が出るかもしれませんよ。それぐらいは、きのうから大分けさまでかかったらしいのですから、いろいろなあれがあると思います。しかし、そういう質問に答えができないような準備でこの米価問題に臨むということ自体が問題なんですよね。農家所得が減ろうと減るまいと大体どうなのかという、そこまで親切な気持ちで問題を考えていく、そういうことが必要なんですがね。  お答えは先ほどのとおりなんですか。まだできてないというそれだけですか。それじゃ近いうちに、もしできていなければ、いろいろなケースがあると思いますから、それでの試算を明確にお示しいただきたい。
  129. 近長武治

    近長説明員 いろいろ試算をいたしますと、幾つかの前提条件等置かなければいけないと思いますので、作業としてもかなり面倒ではないかなというふうに思いますが、どういうような計算ができるかどうか、一度研究さしていただきたいと思います。
  130. 安井吉典

    安井委員 その研究の結果を委員会にも出していただく。委員長、お願いします。
  131. 保利耕輔

    保利委員長代理 理事会で協議をさせていただきます。
  132. 安井吉典

    安井委員 米の需給バランスがますます崩れて在庫がふえていく、そういう大変心配な状況があるわけであります。ただ、みんな食べなくなったというだけならいいのですけれども、加工のものもだんだんふえてきているというような状況も聞くわけです。粉とか、これは私又聞きですから正確でありませんけれども、ほかほか弁当、町で売っていますよね。あれを外国でつくったほかほか弁当が、そのまま国内に持ってこられて売られているという話も聞くわけであります。本当かうそか知りません。いずれにしても、そういうふうないろいろな形をもって入ってくるものに対して明確な態度を示していかなければ、これは大変だと思うのですが、その点どうですか。
  133. 近長武治

    近長説明員 ほかほか弁当というのは、恐らく具体的には、私たちの定義で言えば米飯類というのに該当するのではないかなと思います。米飯類につきましては、米の管理に直接影響するということでございますので、輸入は行われていないはずでございます。
  134. 安井吉典

    安井委員 真っ白なお米でなくても、色がついたりほかのものが入ったりすれば、今の法律でも可能なわけですから、そういうようなところまでしっかり目を光らせておいていただきたいということです。  それから、牛肉の輸入が自由化され、少なくも枠の拡大でこれからどんどん入ってくれば入ってくるだけ、米の消費量は落ちると思うのですよ。農林水産省の統計の中でも、肉類と油脂類の消費がふえていくカーブと米の消費が下がっていくカーブとは同じなんですね。カロリーでは、ついに昨年度同じ点でぶつかっちゃっているわけですね。これからますます輸入肉がふえていけば米のあれが減ってくるわけですよ。そういう意味でも私は、牛肉の輸入を自由化し、少なくも枠の拡大がもう始まるわけですから、非常に問題だということだけひとつ指摘しておきたいと思います。  そこで、先ほど沢藤委員からも御指摘がありましたように、米価は要素のとり方でいかようにも試算できるのですね。引き下げすることも引き上げすることもさじかげん一つでどうでもなるという、今日までの農水省の計算の仕組みを我々はずっと長い間見てきているわけです。そういうようなことからいうと、今度の試算米価試算とり方、これは昨年度のやり方を大体踏襲しているように思いますけれども、数々の問題点があるように思います。一々やる時間はありませんが、そしてまたさっき説明してもらったばかりですから、そんなに深く検討する余裕もないわけでありますけれども、副産物の価額も、昨年の水準よりもかなり変化率が高くなっているということもありますが、資本利子のあり方だとかあるいは地代等のあり方について、この計算はできるだけ安い数字であらわれてくるようにと、大変苦心をした計算方式を今度もまたやっているわけですね。  例えば地代にしても、正常な売買方式でやればまだまだ地代というのは上がってくるわけです。現実の実勢地代というのは高いですよ。それを固定資産税の評価額、これはもうすごく安いのですから、それを基礎にしたようなもので計算をしているというふうな矛盾や、利子の方も、先ほどもちょっと御説明がありましたけれども、もう少し計算のしようによってはこれを改めることができる、私はそう思うわけです。  一、二の例だけ申し上げましたけれども、その点についてどう答弁されますか。
  135. 近長武治

    近長説明員 土地資本の評価の点については、実勢の売買価格によってやったらどうだとか、いろいろな御意見が現実には要望として出てきているのは事実でございます。ただこの問題は、基本的に自作地地代についての、どういうふうにしてこれを所得付与的なふうに米価の中で考えていくかというようなところでございますが、実際には費用としては支出されていない、そういうような点でございます。したがいまして、これは米価算定の上で今固定資産税評価というふうに使っておりますが、この点は農家のサイドから見ますと、固定資産税は固定資産税の評価で納めていく、しかし米価算定上では他の違った高い売買価格を使うという点は、やはり適当ではないというふうにも考えられるわけでございます。そういう点からいたしますと、現在の自作地地代評価をこれ以上高めていくということは、全般的に国民の理解を得られないというふうに思うわけでございます。  利子についても、生産費所得補償方式の点ではいつの時点の利子をとっていくのか。物価賃金等はなるべく価格決定年の実績で評価がえしておりますので、やはり金利についても実勢をもって反映する、こういうような基本でやっております。先ほど試算のときにも御説明申し上げましたが、金利は昨年三月以降大変安定的に推移をしておりますので、大体そういうことを状況を勘案しながら、一年におきます平均出しておる、こういうような状況でございます。
  136. 安井吉典

    安井委員 もう少し内容にわたった議論をしたいのですけれども、きょうは別な問題を取り上げたいと思いますので……。いずれにいたしましても、この要素のとり方というのが米価を上げたり下げたり、どうでもなるのですね。そういう魔術――魔術師だ、これは農水省が魔術師だと言ってもいいくらいな存在なわけですからね。農民の要求が幾らでもかなえられるような、そういう方向での取り上げ方をお願いしておきたいと思います。  もう一つ企画管理労働です。これもことしの場合、十アール当たり〇・七時間ということで計算されているようでありますが、四十三年の農水省調査では二時間ぐらい、六十一年に農中が計算したものでは一・九時間ぐらい、六十二年の計算はたしか一・六時間というような数字があったように思うわけですね。〇・七時間というのは、計算された全部の時間ですか。去年は、たしかそれの半分ぐらいというふうなことを言われておりましたけれども、そうなのですか。
  137. 近長武治

    近長説明員 現在の算定方式の中で、企画管理労働を実際に算定の中に入れるかどうかということについてもかなり論議のあるところでございます。昨年は、そういう論議の中で企画管理労働についてかなり古いデータしかないということで、一定のやり方で企画管理労働を入れたということでございます。  本年、担い手層を中心にする価格算定についての論議の中では、やはり担い手層さらには中核的な担い手に着目をした算定方式をした場合には企画管理労働米価算定することが必要だ、こういう論議はございましたが、現在のやり方について企画管理労働をどういうふうにして入れるのかということについては、やはり冒頭申し上げましたように論議のあるところでございます。しかし、これから担い手層になるべく着目してというようなことでございますので、本年産米価では算定対象のちょうど担い手層に照応するような、そういう農家について企画管理労働米価の中に算入をした、こういうことでございますので、全農家についての企画管理労働算定したということではございません。したがいまして、先ほど委員御指摘のような数字になっているわけでございます。
  138. 安井吉典

    安井委員 去年からこれを算定基礎に入れたということだけは評価されると思いますけれども、その算定の具体的なやり方についてはもっと知恵を絞っていただきたいと思います。  そこで、私、きょうは特に通産省からもおいでをいただいているわけであります。というのは、米価基礎農機具は、さっき説明していただきました生産費調査の中でも三一・五%、肥料が七・二%、農薬が五・四%という大きな比率を占めていますね。そして米価そのものを下げる。こういう状況の中で、物財費というものを一体今後どう見ていくべきかという問題が出てくると思います。  そういうわけで、農水省は全体的な経営上の立場からこれらを見ていかれるわけでありましょうし、農薬は農水省の方の所管なのですね。あと、農機具肥料は通産省でありますけれども、それぞれの立場から現状と今後の見通し、主として価格問題ですが、それについてお話しいただきたいと思います。
  139. 吉國隆

    吉國説明員 農業資材費の問題につきましては、先生御指摘のように、稲作生産コストの低減という意味で非常に重要な課題であるというふうに考えているわけでございます。この資材費の低下という問題につきましては、生産供給面、流通面、それから利用面、各段階に応じてそれぞれ努力をしていく必要があるというふうに私ども考えておるわけでございます。  農業機械につきましては、利用面での効率改善、先ほども過剰投資のお話が出ておりましたけれども、広域的な農作業受委託を進めるとか農業機械銀行方式の活用をさらにいろいろな形で進めていく、そういった努力が必要であるというふうに思っております。  また、肥料につきましても、利用面で申しますと、土壌の条件に即しました合理的な施肥ということが必要であると考えております。また流通面でも、バルク肥料、ばら流通方式の導入の可能性というようなことにつきましても検討いたしておるわけでございます。  農薬につきましても、きめ細かな発生予察に応じた迅速な情報提供に基づきましてできるだけ合理的な施用を行っていく、こういった利用面におきまして努力を行っていく必要があると考えております。  また、生産資材の価格の問題でございますが、これは先生御承知のように、全農と製造業者との価格交渉で決められました価格が目安となって流通をいたしておるわけでございます。全農も最近の農業情勢の中で、価格交渉面で懸命の努力を行っていると私ども思っておりますが、この価格形成なり流通面におきまして適正な競争条件を確保しながら、また内外価格差等もよく論議の的になるわけでございますが、最近におきましては一部の肥料農業機械等につきましては、輸入物が供給をされるというようなものも出てまいっておるわけでございます。そういったことを通じまして、全体として生産資材費の節減に向けまして、私ども関係省庁とも協力しながら最大限の努力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  140. 桑原茂樹

    ○桑原説明員 農機につきまして、通産省の考え方を御答弁させていただきます。  農機につきましては、ただいま農林省からの答弁にもございましたように、全農と各農機メーカーが価格の交渉をするということになってございまして、私どもから見ますと、農業者サイドの意見も十分反映された価格になっていると思っております。現にここ数年間、農機の価格はずっと据え置きということになっているわけでございます。  農機メーカーの経営状況でございますけれども、大変悪うございまして、農機だけ取り出してみますと、各メーカーの平均で全体で赤字になっているという状況でございまして、なかなか難しい状況でございます。農業が諸般の情勢によりまして大変厳しい環境に置かれているということであるとすれば、農機もその仲間の一人として大変厳しい環境に置かれていると御理解いただきたいと思っております。  ただ、そういう中にありましても、農機の生産の合理化とかその他の努力を通じてなるべく安い、いい機械を供給するというのは農機メーカーの責務でもございますので、そういう方向の努力というものはこれからも十分続けていくべきものと思い、我々もそういうふうに指導しているつもりでございます。
  141. 坂野興

    ○坂野説明員 化学肥料につきましては、先ほど農水省の方からも御答弁がございましたように、肥料価格安定法によりまして、メーカーと全農との間で取り決め価格を結ぶことができることになっております。  それで、最近の肥料価格でございますが、最近の円高傾向あるいは原油価格の低下、またメーカーにおきますところの合理化努力、こういったような努力によりまして、例えば昭和五十五年以降七年間にわたりましておおむね毎年引き下げられてきておるのが実情でございます。物によりましては、半分近くまで下がっているというのが現状でございます。  それで、農業の置かれている厳しい状況というものを考えますと、肥料生産資材の重要な一つでございまして、できるだけ低価格で安定的に供給されるのが望ましいと私ども考えております。今後ともメーカー側におきましてそういった体制ができるように、私どもとしても最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  142. 安井吉典

    安井委員 農水省、農薬は。
  143. 吉國隆

    吉國説明員 失礼いたしました。  農薬の価格につきましては、六十二年、六十三年、肥料機械に比べますと下がり方は小さいわけでございますが、下がってまいっております。私ども関係のメーカーに対しましては、できる限りの合理化努力をやっていただいてコストダウンに努めていただきたいということをお願い申し上げておりますが、今後ともそういう方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  144. 安井吉典

    安井委員 十分な時間をとって御説明を願うわけにはいきませんでしたけれども、いろいろと努力をされているということだけはわかります。ただ、こうやって米価はどんどん下げていけということの中で、もう今精いっぱい努力をしているので、そういうふうに言われると、結局下がった米価の中で何で農業の経営をやっていくのかということに到着するわけです。ですから、本当に米価を下げろ、もっと合理化せよと言うのなら、農民だけに努力を強いるのではなしに、重化学工業の分野にもそういう要求を、農林水産大臣はいないからなんですけれども、次官がおられますから次官からもお答え願いたいと思うのですが、もっと農林省側として話をしてもらわなければいかぬのじゃないかと思うわけです。  先ほども沢藤委員からお話がございましたが、財界の方はいろいろ注文を出していて、食管はやめてもっと経営の合理化をしろとか米価を下げろとかそういうことを盛んに言われるわけでありますけれども米価の大きな価格要素は重化学工業の財界の製品なんです。もちろん、農業経営のあり方にも合理化しなければならない点はあろうとは思いますけれども、しかし、農業生産資材の政策や、それからまた流通の問題もあると思うのです。こういうような問題についてもっともっと検討することが必要だと思うのです。  きょうはごく簡単なお話だけを聞いたのですが、ことしの米価算定に関連して、農林水産省としてこれからこういうことをやる、こういうことをやったということをちょっと資料にまとめて、きょうは言いっ放しじゃ困りますから、私は最後まで結果を追求してまいりたいと思いますので、それらの資料を後で結構ですからひとつ委員会にお出しいただきたい、そのことを一つ要求しておきたいと思います。  それでは、あと構造政策の問題があります。この後、関連で田中委員から発言がありますので私はこれで終わりますけれども、構造政策で私は具体的な一つの提案があったのですが、これは別に譲ります。スケールメリットをもっと出す簡単な金のかからない方法もあるわけです。それは転作をやめることですよ。北海道なんか五〇%転作ですから、その転作をやめれば経営面積は倍になるわけです。十ヘクタールの人は二十ヘクタールになる。そういう今の転作のあり方も含めた構造対策というようなものが私は必要ではないかと思うのですが、きょうはそういう問題提起だけにしておきたいと思います。  いずれにいたしましても、農民に先行きの励みがあるような形で米価も決めていただきたいし、今後の農政も進めていただかなければなりません。この間の牛肉、かんきつの問題、さらにまた今度の米価の問題についての動きを見て、私のところへ言ってきた人がいますよ。私は一生懸命に息子に後を継げと、大学を出たり、あるいは高校を出たりして今勤めているんだけれども、今度の動きを見て、自分はもうこれで断念したと、息子に何とかやってもらおうという気持ちがここで吹っ切れたと、悲痛な告白だと思うのです。そういう中に今日本の農民が置かれているという事実をきちっととらえたそういう対応をぜひしていただきたい。これは、大臣のかわりに政務次官がおられますので、そのことをひとつお願いして、終わります。
  145. 保利耕輔

    保利委員長代理 田中恒利君。
  146. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は緊急バッターでございますが、同僚議員や他党の皆さんからも、ことしの生産者米価決定についていろいろ大変重要な御質問がございました。重なるところを避けたいと思いますので、改めて少し基本的に最近の米価政策の問題について一、二御質問をしておきたいと思います。  ことしは四・六%ですか引き下げ、昨年も引き下げ、二年連続米価引き下げということが起きております。そのことが農家経済に与える影響がどうであるか、これは統計調査部がやっておる調査の中からも逐一出ていると思います。その前の数年間は据え置きであります。物価が上がっておりますから当然これは引き下げであります。こういう米価引き下げ政策というものが、これまで農林省が主張してまいっております米の需給均衡ですね、いわゆる米価を下げることによって米の生産が減っていく、そしてとんとんになって食管の会計がどうにかやれる。もう今この引き下げの問題で、大蔵省にしても、農林省、食糧庁にしたって、本音を言わせたら、三回連続の一兆円の財政負担は避けたい、こういうことでしょう。そういう需給均衡というのが果たして米価引き下げることでやれるのかどうか、こういう問題、疑問が一つあるわけであります。それは、今日の米管理、食糧管理というものが、市場原則というものが通用し得る状況になっていない面があるじゃないか。例えば、減反が現実に一〇〇%以上毎年やられておるではないか、最近は自主管理といったような方法もとられておるではないか。こういう中で単なる経済原則の、価格を下げれば生産が落ちる、こういう論理は私は通用しないと思うのです。そういう点について一つ疑問があります。  それから、一・五へクタール以上の農家層というものを対象にする新算定方式なるものが出てきて、これが幻になるかと思ったら生きておるので、来年度からこれをそのままやるんだ、こういうことであります。これも大変な問題だと思います。第一、一・五ヘクタール以上ということになれば、農林水産省でも一二%ぐらいの農家数だと言っておりますね。今ちょっと見ておったら、米の販売量は四四%と言っておりますが、食管法第三条を見ると、生産者は、いわゆる米を生産する者はということになっておるのです。これは人間でありますよ。農政基本は人ですよ、農民ですよ。その農民が八五、六%除外をされていく、こういう方向がとられれば明らかに食管法第三条に反する。政府は、その米をつくった生産者の米を買うということですから、買う米の価格についてはかくかくしかじかで決めよとその次の項目にありますね。そのことを考えていくと、食管法違反になっていくじゃないか、そういう観点も出てまいります。食管法を実質的に崩していくということにつながらないか、こういう疑問がございます。  それに対して、今の御答弁を聞くと、協業とか協同とかそういうものが相当あると言っておるわけであります。そのことは私も否定はいたしません。いたしませんが、そういうものは日本農業の場合、恐らく五町とか十町とか、こういう農家は現実にできないと思いますよ。一部はできますよ、もうできておるから。もうできておることは私も知っている。しかし、大半は私は難しいと思う。私たちの県は、一町五反以上の米をつくっておる百姓というのはそれこそ何百戸しかないんですよ。山村へ行ったら、そういう農家は一軒もないのですよね。ですから、そういう農家に対しては、恐らく部落協同とか協業とかやらなければいけないでしょう。そういうものをさせなければいけない。ところが、その協業経営や協同経営は、世界一を誇る統計調査事務所の調査書にはない。だから推測で一町五反で切った。こんなあいまいなことでやられたんじゃ、私はこれまた問題だと思うし、そういう形で確保されていくということよりも、やはり協業とか協同とか、あるいは土地の合理的な協同経営体ができるような状況をどうつくるか、こういう施策、これが先に進んで、それが一定の効果が出てきて、そこで価格問題が出てくる、これが農政の筋道でしょうが。  私は前々から、米価問題で、価格政策と構造政策の関連をどうするか、これは基本だ。ヨーロッパの例を見る限りにおいては、やはり価格政策が先行しておる。ところが我が国の場合、これが基本法で失敗して、そして今はともかく米が余ったということで値段を下げる、こういう形で来ております。だから、そういうやり方は間違っておると私は思いますが、まずこの点について、大変基本的な問題でありますが、見解を承りたいと思います。
  147. 近長武治

    近長説明員 米価引き下げとそれから具体的な需給均衡の問題、あるいは価格の問題と構造政策、特に土地利用調整の問題、私たち、価格問題を考えていくときに、やはり価格政策だけが先行していくということではなくて、当然のことながら、生産対策なり構造政策ということが同時に並行して進んでいかなければならない、こういうふうなことは今委員御指摘のとおりだと思っております。  特に需給均衡化という点については、決して価格引き下げでは実現し得ないというふうに思っております。日本水田というのは、アメリカやヨーロッパのような農場制ではございませんで、やはり水管理を中心にしながら、それぞれ地域の中で、密接なつながりの中で行われておりますから、例えば転作の問題につきましても、単に価格だけではなくて、地域ぐるみでの土地利用調整というようなことが大変重要であるということは、もう私たち、具体的な行政経験から身にしみて十分理解しているつもりでございます。同様に、土地利用の問題につきましても、やはり地域ぐるみの中で、いろいろな形でそれぞれの地域の特徴を生かしながら進んできている、こういうようなことでございます。  ただ、現在価格の問題については、日本稲作構造というのは相当変化してきておりますが、価格については、いろいろな規模稲作農家について一律に算定の対象にしているということについて、やはり内外の批判なり御意見があるというようなところでございます。したがいまして、今回やはり担い手層に焦点を当てたそういうような価格というものを考えていってはどうだ、こういうことが昨年九月以来の米価審議会の中の小委員会一つ報告書でございます。今回そこまで、本年は適用になっていきませんけれども、やはり米価の問題については、構造政策と並行しながら価格政策の上でもそういう担い手、あるいは単なる個別経営の担い手ではなくて、いろいろな形での地域の営農組織なり営農集団ども含めた意味での、そういう日本農業をこれから担っていく、そういうところに焦点を当てたような、そういうような考え方での価格政策の運営が必要ではないかな、かように考えております。
  148. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いろいろやっていらっしゃることもわかるし、我々もこの委員会土地の合理化に関する協同的な圃場整備についてはいろいろな法律も新しくつくっておるし、充実したことはわかりますよ。しかし、実際問題としてその効果はまだ出てきていないでしょう。出てきていないというのはどこが問題があるかということになれば、農家所得が安定し、上向きになっていないというところなんですよね、現実には。これが上向きになっていけば、新しい政策というものは予想以上に広がっていくと私は思うのです。なかなかこれがいかないというところが今の問題で、我々の苦悩の点なんですよ。それをやるためにこそ今価格政策というものの役割が必要なんで、それを下げていく、下げていくということでしょう、実際。下げていけば片一方が何とかなるのだという考え方がありましたよ、昔は。ありましたが、そういう状況や状態ではないということで、私はどうも理解できない。そして、この一・五ヘクタール以上層の農家を対象にしていく新算定方式というものは、食管法上問題はございませんか。
  149. 近長武治

    近長説明員 先生御案内のように、食糧管理法生産者米価の規定の中に再生産確保という条項が入っているわけでございます。ただ、いかなる農家についての再生産確保にするかというところについては、やはり現在の日本農業、特に稲作農業が置かれている状況というのは、生産費所得補償方式かつくられた時点と今とはかなり稲作構造が違っているというふうに思います。ちなみに、これは全国的な数字でございますが、一・五ヘクタール以下のところでは生計費が農外所得ですべてカバーされるような現状であるという点も、考慮していかなければいけない一つの要素であるのかもしれないわけですが、いずれにいたしましても、現在の生産費所得補償方式について、国民の中から幅広い支持あるいは協力が得られるという点からすれば、やはりこれから日本稲作を担うのにふさわしいような人を念頭に置いた生産費及び所得補償方式ということを目指していかなければいけないと考えておりますし、食糧管理法の規定の上でも問題はないと考えております。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 その説明は大分前にやったんだ、我々も。初めは、つくったものは全部集めなければいけないと言っておったが、ある段階からは、国民が必要とする食糧という限界線を置いてきた。ところが、今度の場合は一・五ヘクタール、こういうことになると、これは農民のほとんどが除外されるということなんです。そして、買い入れ価格というのは、生産したものは「政府ニ売渡スベシ」とあるでしょう。そしてその政府の買い上げ価格は、以下生産費所得とこういう形でつながっておるわけですね。だから、一.五ヘクタール以下の大半の農家政府に売り渡さなければいけないわけでしょう、今の段階。どこに売ったっていいというわけじゃないでしょう。そうなると、売り渡し者の問題と買い入れ価格との関係をめぐって問題になると私は思うのです。  これだけの圧倒的多数の生産者が、しかも政府に米を売り渡す人が買い入れ価格の要素の中に入っていないということになると、単に国民の必要とする量だけを買えばよろしいという今までの解釈について、私たちも一定理解を示しながらも、なお、おかしいなと思って議論をした経過がありますが、今度のような形になると私は八割以上の――あなたの説明でも八六%ですが、これは九〇%以上の米をつくった農家生産費というものが認められない、こういうことになったら、私は食管法の、政府以外に売り渡してはならない、そして政府は買い上げた価格についてこういう方式で考えなければいけない、この二つの関係からいって矛盾していくと思うのです。だから、これは食管法上問題が出てくると思うのだが、そういう議論はありません。
  151. 近長武治

    近長説明員 先ほどお話し申し上げましたように、現在の食糧管理法におきましてすべての農家について生産費及び所得補償をすべきである、こういうふうには理解していないわけでございます。本年はまだ新算定方式になっておりませんが、本年適用しておりますいわゆる必要量比率の場合には大体七六%ぐらいの流通量をカバーしている、こういうような状況でございますが、そのような形で全体の生産農家の中のある一定のところについてどういうような価格政策をとっていくか、そういう政策判断の中でこういうような階層についての生産費及び所得を補償していく、こういうようなことの考え方でございますので、来年度以降担い手階層を対象にした算定方式をとった場合にも食糧管理法の規定の上での問題はない、かように考えております。
  152. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 あなたのところはないと言うし――ただ、私ども政治家としては、必要量、必要量とおっしゃるわけだけれども、必要量というのは日本の今三百何十万になるが、米の生産者のつくった米の総量を言っておるので、やはり政策の対象は人なのですよ。農業者なのですよ。食糧管理法というのは日本の、少なくとも基本法なのですよ、実体法としては。だから、その食糧管理法の中でこれまで我々が概念的に植えつけられてきた物の考え方としては、つくった米で問題にするのじゃなくてつくった人を対象として考えた場合には、圧倒的多数の人が外されていくということは、どう見たってちょっと私どもは政治的に納得いかないのです。  私は、どういう理由かちょっとお聞きしたいが、一年留保して来年からこの方式をとると言っておるが、この一年の間にそういう問題を含めて改めて基本的に検討し直していただきたいと思いますが、先ほど農林大臣の質疑の中で、ことしやらなかった理由は何だと言ったら、いろいろなことを言っておったけれどもよくわからない。いま一遍、そのことについて御答弁をいただきたい。
  153. 近長武治

    近長説明員 本年、新算定方式による価格算定を目指して関係方面との調整等も行ってきたわけでございますが、先ほど大臣から御答弁したような理由によりまして、六十四年度から適用したいというふうに考えているわけでございます。その間において、なるべく多くの方にこういう新算定方式について御理解がいただけるようにこれからさらに努力をしてまいりたい、かように大臣からも答弁申し上げたわけでございますし、私たちも、そういうような考え方でこれから進んでいきたいというふうに思っております。
  154. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは正直言ってよくわからないのです。これは今の農村の実態、特にオレンジ、牛肉で自由化をした、こういう中から農村に異常な空気が出ておることは与野党の各政党や我々議員、よく承知しておる。そういう中で追い打ちをかけていくというところは時宜を得ていない、こういうことだと思うのだ。それだけのことだと思うのだ。理解を得たいと言ったって、これは理解できぬですよ。理解できるような状況じゃない。もっとそういう意味では、私が今申し上げたようなことを中心に考えてもらわなければいけない問題の方が非常に多いと思います。  私は、きょうは果樹問題を中心に自由化の問題についてちょっと質問しておけという御命令もあるわけですが、これは、この問題の日米交渉で牛肉については緊急輸入制度というものが設定されておりますね。あれはどういう内容、どういう時期にどういう条件、どういう形でやっていくということになっておるのですか。ちょっと説明報告をしていただきたい。
  155. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 先般日米間で合意をしました牛肉問題について、御承知のとおり、一連の輸入枠撤廃後の国境措置についての合意も行われたわけでございます。  基本的には、通常時におきまして通常税率として現在二五%の定率関税を、枠撤廃をしました一九九一年度七〇%、九二年度六〇%、九三年度五〇%、九四年度以降についてはウルグアイ・ラウンドで交渉をしていくという通常の国境措置を合意したわけでございますが、これに加えまして、国内の生産に対する大きな影響を排除するために、輸入量が一定のレベルを超える場合には、二つの方法で緊急措置を講ずることができるという合意も同時にやったわけでございます。二つの方法といいますのは、輸出国と協議をして合意を得た上でその合意内容に従った数量制限をしていく方法、それが不可能な場合には、数量一定レベルを超えた場合にさらに高率の関税を賦課していく、緊急税率を適用していくということで、ただいま申し上げました通常の税率にさらに二五%を上乗せした緊急税率を適用する、こういうものでございます。
  156. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 畜産で余りあれする時間がないのだけれども、アメリカの食肉輸入法を見ると一一〇%、一割を超えたときにアメリカ政府の判断で発動していく、こういうことのようですね。我が国の場合はこれが一二〇%、二割を超えた場合ということでしょう。そして、今お話があったように関係国と協議をしていく。つまり、アメリカであればアメリカのオーケーを得なければやれない。その場合には高率関税で臨む、こういうことになっておりますね。日米間にちょっと差があるように思うのだが、それは議論の内容としてありましたか。どういう議論があったわけですか。
  157. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 先生御指摘のとおり、今回の日米合意で我が国が牛肉輸入についてとり得る緊急措置の発動要件としまして数量トリガーを決めております。この数量トリガーのレベルというのは、御指摘のとおり、前年度の輸入実績なりあるいは輸入可能量に対して一二〇%の輸入量の増加があった場合ということになっております。  一方、御指摘のございましたアメリカの食肉輸入法において決めておりますトリガーレベルの算式の中に一一〇%という数字があることは事実でございますが、私の申し上げました今回の日米合意における一二〇%は全く違う性質のものでございます。  御承知のとおり、アメリカの食肉輸入法のトリガーレベルの決め方というのは、過去の比較的安定した時期であります一九六八年から一九七七年の十カ年間、この時期における輸入量、これをベースにしまして、その後のアメリカ国内の牛肉資源量の推移等で一定変動係数を掛けまして、輸入見込み量と輸入許容量というものを算出しております。そこで算出された輸入許容量をさらに膨らませてトリガーレベルを決めようということで、ただいま申し上げました輸入許容量に一一〇%を掛けてトリガー水準を決めておるということでございまして、今回日米合意で決めました一二〇%を掛ける対象物と一一〇%を掛ける対象物は全く別のものであるということで、直接の比較はしがたいといぅふうに考えております。
  158. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 直接の比較ができない、今言われる相当長い期間の安定した平均値ということですけれども、それはそれで一定理解がとれますが、しかし、我が国関係国と協議をしなければいけない、アメリカは一方的にやれる、そういうところがやはり一つの事例としては、今度の交渉のマイナス点だと私は思っておるのです。それは、あなた方は一生懸命、夜寝ずにやったことはよくわかるけれども、しかし、対外的になったものを見てみるとやはり日本は引っ張られて、守るべきものは守ると言ったけれども、アメリカがやっておることですら認められていないじゃないか、全般的にこういうことになっておるわけですよ。だから、日本が一方的に決めてやれる措置にはならないというところの弱さもあると思う。  それから、これは畜産局長、答弁してもらえれば答弁してもらってもいいが、果樹の関係にはこの問題はございませんね。何も条項ないわけだが、これは何か理由がありますか。
  159. 吉國隆

    吉國説明員 かんきつの関係につきましては、今次交渉でそういった緊急措置的なものについては合意された事項はございません。
  160. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 合意された事項がないということは、前々から私はここで盛んに言っておるように、果振法というものがあって、国内法の果振法の第五条を使えるという前提の中でそういうことになっておると理解してよろしいですか。
  161. 吉國隆

    吉國説明員 果振法は国内法でございますので、国際条約、特にガットとの整合性のとれる範囲内で、日本側の意思によって発動しようと思えばできるという関係はそのまま残っているわけでございますが、この点について日米間で特別に話し合ったという経過はございません。
  162. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 牛肉の緊急措置についてのお尋ねでございますが、アメリカの食肉輸入法におきまして、輸入数量制限を行う措置はアメリカの一方的な措置として決められておること、事実でございますが、そのこと自体は実はガット違反である、そういうふうな発動の仕方をすることはガット違反であるということは、アメリカもよく自覚をしておるようであります。したがいまして、この一方的な措置としてアメリカが行う輸入数量制限というのは、過去におきまして一九七六年の一・四半期について一度発動されたということでございまして、実はこのような一方的措置による数量制限は、アメリカも実際には発動していないという実情でございます。  それから、我が国の緊急措置の中で、数量制限の実行に当たりましては、関係当事国との合意が必要である、そうしなければガット違反になるということで今回のような約束をしておりますが、仮にそのような合意がとれない場合におきましても、トリガー数量を超えるような輸入実態が出てきた場合には、高率関税の適用については、国内法による一方的な措置で実施可能であるというふうに理解をしております。
  163. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間がありませんが、ちょっとこれをお尋ねしておきます。  私は、特に畜産の問題も、牛の問題、子牛の問題など重要な問題があるわけですが、果樹の問題ですね、果樹の問題はやはりジュースの問題が大変大きな問題になると思っておるわけであります。  日本の畜産農家や果樹農家の存立を守る、これがこの間の日米交渉の基本であったと思うのですが、これは数字を見ると、例えばジュースの場合は、ことしの我が国の過剰のジュースが、ごく最近の資料です、農林省が把握しておるより私の方が新しいと思うが、四万四千三百トン、繰り越しが五万一千二百トンで、来年の実質過剰、これが四万四千三百トンある。今度入ってくるものが一万九千トン、来年入りますね。そうして製品輸入が約四千トン。これもほぼ間違いない。そしてそのほかに、これは協定外だが、大体一千トンか一千五百トンくらい入るということは常識になっておる。これを合わすと約二万四千トンくらい。今の過剰、これはこの数年来ない過剰ジュースになっておる。そこへ二万五、六千トン加わっていく、約六割くらいのものが。そうなりますと、もう日本の国内のジュースというのは決定的な影響を受けざるを得ないと思うのですね。  だから、あなた方の方は果汁工場の整理統廃合、こういうことをやるというのは、これは新聞だけども盛んに流されておる。それから温州ミカンの減反だな。転換であったが、転換をやめて今度は減反。ともかくやめよ、永年作ですからね、やめよと。  この二つが、今考えられておるあなたのところの果樹に対する事後対策の中心になるやに漏れ承っておるんだが、どう見たってこれはいずれも大変後ろ向きの内容ですよね。つまり、少なくとも現実の果樹産地の存立を脅かしてきたことを認めておる。存立を守ると言ったけれども、現実に果樹地帯はこれからミカンの木を切ってしまえ、根っから掘り起こしてしまえと。つくったジュースはだぶついてどうにもならぬということになる。こういうことになっておるわけですよ。  こういうことを前提にした上で、当面あなた方は今十万三千ヘクタールくらいあるものを、恐らく七、八万くらいに減らしていくでしょう。そして、そういう指導をやっていくでしょう。それに奨励金つけるとか補助金つけるとか、これやるかもしれぬ。しかし、それでは本当に日本の果樹というものが伸びていくかどうか、私は問題だと思う。もっと前向きに、こういう状況の中でこの国会に恐らく間に合わぬだろうが、本格的な果樹政策というものをつくらなければいけない。  それは、ジュース工場をつくるときにいろんな議論があって、生だけの日本人の食べ方というのをやめさして、ジュースで三百六十五日飲ませることでやったんだ。あれは間違っていないと私は思う。だから、ジュース工場の再編・統廃合を合理的にやらなければいけないということもわからぬことはないけれども、余り後ろ向きで考えられては困るので、生と加工との今の価格の差をどうしていくかというようなことについては、思い切った価格の安定制度といったもの――今安定基金制度でごちゃごちゃやっているけれども、あれはほとんど役に立っていない、私、何遍もここで言うけれども。そういうようなことを考えてもらう必要があると思うのですよ。  そういう前向きのことを果樹の日米交渉に伴う事後対策として考えられておるのかどうか。次の予定される来年の予算などを含んで、そういうものについて働きかけが行われておるのかどうか。そういうことを最後にお尋ねをして、質問を終わります。
  164. 吉國隆

    吉國説明員 かんきつにつきまして、自由化を迎えるという国際環境の変化があるわけでございます。一方、国内におきましても、先生御案内のように、消費の形態の変化ということから、かんきつをめぐります需給あるいは消費者の嗜好にマッチしたものを供給、こういった面でいろいろと問題が生じている状況でございます。私どもは、単なる自由化への対応という視点だけではなく、こういった現実の状況の変化に応じまして、今後ともかんきつ産業がたくましく発展していけるような、そういう体質強化ということを図っていかなくてはならないというふうに思っているわけでございます。  減反というお話が出ましたが、現下需給からいたしますと、やはり需要に合わせた生産体制というものを確保していく必要があるというふうに私ども思っておりますし、また、ジュースの問題につきましていろいろ御心配のある点は、私どもも十分認識をいたしておるつもりでございます。  これから、消費者の嗜好に応じました高品質のものを供給していく体制、また、これを外国のものと競争をしながら販売力あるいは商品性というものを強化していくというようなことも考えながら、極力前向きの見地を取り入れつつ対策を講じてまいりたいというつもりで、現在検討を行っているところでございます。
  165. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間がありませんから、質問を終わりたいと思います。
  166. 菊池福治郎

    菊池委員長 吉浦忠治君。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最初に、米価問題でお尋ねをいたしたいと思いますが、通告いたしておきましたけれども、かなり様子が違っておりますが、米価審議会に既に四・六%の引き下げ諮問を行われているということで、きょうの夕刊紙等にかなり大きく報道されておりまして、私もちょっとわからなくなったので、基本線に戻しながら質問をいたしたい、こう思っております。  根本的な問題だけを先にお尋ねをいたしたいと思っておりますが、政府は、六十三年度の生産者米価についての基準でありますけれども、昨年は五・九五%の引き下げをいたしました。これに続いて、また四・六%の引き下げということは、これはもう大幅引き下げでありまして、こういうことが「政治配慮優先コメ決着」、こういう見出しで大きく出ている。こうなりますと来年はどうなるのか、こういうことで、私が申し上げたいのは、昨年度の米価決定と六十三年度、本年度の米価決定に当たって、この基本的なスタンスの違いというものがどういうふうにあるのかどうか。また、根本的な問題は、政治的な配慮ということになると、来年は参議院選を控えているわけですから、激変緩和措置をとられるような配慮をなさるのか。打ち出されておりますような、いわゆる新しい算定方式は先送りということですから、こういうものを含めてまずお答えをいただきたい、こう思うのです。
  168. 近長武治

    近長説明員 今回の諮問米価算定当たりまして、やはり現下の米をめぐる諸事情ということをバックグラウンドとして考えなければならないというふうに思うわけでございます。  御案内のように、米についても内外価格差が拡大しているということは、国民のかなりの多くの人がそういう点について注目しているということも事実でございます。それから米価あるいは食管制度のあり方についても、いろんな角度からの御議論があるわけでございます。そういう中で、やはり日本稲作について経営規模拡大あるいは生産組織生産集団育成、こういうことを通じて、生産性の高い将来の日本稲作を担うべき担い手層をなるべく幅広く育成していく、これが重要な課題の第一点であろうかと思います。  それからもう一つは、やはり米についての需給問題でございます。生産面では、年々米の生産力も上がってきておりますが、特にこの四年間、連続豊作でございました。また消費については、いろんな形で消費拡大についての努力はしてきておりますけれども、やはり消費減少傾向が強まっておりまして、昨年以上に、むしろ現在では三たびの過剰処理が懸念される、そういうような事態になっているというような状況でございます。  こういうような状況の中で本年産米価につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、米価算定について新しい算定方式で進めたいという考え方で、各方面との調整を鋭意進めてきたところでございますが、しかし、今般は諸般の情勢から、新算定方式については昭和六十四年からやっていく、そして本年は従来の生産費所得補償方式、従来の方式により算定する、こういうふうな考え方でございます。したがいまして、具体的な米価算定方式については、本年と昨年というのは方式としては大体似たような方式でやってきている、算定をした、こういうようなことでございます。ただ、先ほど申し上げましたような米をめぐる事情でございますので、当然のことながら米価算定当たりまして、米需給趨勢でありますとか、あるいは現に進みつつある稲作についての生産性向上、あるいは生産コスト低減状況、こういうようなことを的確に価格の上に反映する、こういう基本的視点に立って諮問値を算定した次第でございます。
  169. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その諸般の事情というのを私は聞きたいわけですけれども、先送りいたしました算定方式の導入というものは長期的に大幅引き下げを図っていくための根拠だろう、こういうふうに思うのです。一・五ヘクタールの算定基準方式を導入するその理由というものをもう少し明確にしていただきたい、こう私は思うのです。また、来年度に先送りした理由と、その裏づけの根拠というものを明確にしていただきたいと思うのですね。  と申しますのは、本年度四・六%の値下げ、こういうことにして後計算をなさったんじゃないか、私はこう思うのです。もしも来年度までその新方式を先送りなされば、そのあらゆる問題が先送りしなくていいように諸般の事情を解決なさるのかどうか、その点を少し私は詰めておかなければいかぬ、こう思っているのです。例えば昨年の米価引き下げで、現行米価でいわゆる第二次生産費をカバーする割合というのは、販売戸数ではわずか一八%、販売数量では三四%、規模では四ヘクタール以上の農家生産費をカバーしているにすぎない、こういう現状です。新算定基準を導入して今年も再び米価引き下げると、さらにこのカバー率が低下する。政府が今後農政の上で担い手に大いに期待しているところの一・五ヘクタール以上の層ですね、この大半もコストを償えなくなるばかりか、これまで以上に中核農家というものを育てていくその熱は冷めてくるのじゃないか、こう思うのです。その点どういうふうな考え方を持っていらっしゃるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  170. 近長武治

    近長説明員 ただいま委員御指摘になりました新方式について、簡単に考え方だけお答え申し上げまして、お答えにかえさせていただきたいと思います。  新しい米価算定方式の検討の背景になりましたのは、昨年の政府買い入れ価格についての米価審議会論議の中に出てきたわけでございます。やはり米をめぐる諸情勢の変化の中で算定方式について基本的な検討を急ぐ必要がある、こういうことでございます。そこで、米価審議会は、具体的には昨年の九月に小委員会を設けまして米価算定方式の検討を進めてきたわけでございます。そして、その検討の結果を本年の六月九日に小委員会から米価審議会報告した、こういうような考え方でございます。  この中でいろいろな論議がございましたが、やはり焦点になりましたのは、担い手育成という点と、それから需給均衡化という点が二点、大きく焦点になったわけです。  担い手の問題については、いかなる経営なりあるいは生産組織が今後育成すべき中核的な担い手として評価し得るか、こういうことでございまして、いろいろな角度から検討した結果、個別経営を例にとっていけば、生産性あるいは稲作労働時間の関係農家経済あるいは機械の経済的利用、こういういろいろな総合的な観点から見て、やはり五ヘクタール以上の層であろう。ただし、五ヘクタールに満たない層であっても、今後の中核的な担い手としての発展可能性を有する農家がある、その規模の下限は一・五ヘクタールである。さらに、個別経営でなくても、生産性の高い生産組織集団も、これから育成すべき、稲作については中核的担い手である。こういうような考え方で、今委員お話しの一・五ヘクタール以上層というのが、算定の対象になる農家というふうになったわけです。  ただその際に、当然のことながら単に担い手ということでなくて、現在の米についての過剰問題というのがやはり大きな解決すべき課題でございます。したがいまして、生産者米価算定するに際しても、需給ギャップの縮小に資する観点から米価水準についてチェックすべきである、そういうような検証をすべきである、こういうような報告書の内容になっております。  御質問について、あるいは若干お答え漏れがあろうかと思いますが、今回、六十四年から適用すべきというふうに考えております新算定方式についての大体のアウトラインを御説明申し上げた次第でございます。
  171. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その米価審議会というものが、私はこの席上でも何回か述べたことがありますけれども審議会そのものの位置づけというものが何か無用になってきているような形の、米価決定劇になりはしないかという心配をいたしているわけですね。矛盾をはらみながら私は質問を申し上げているわけですけれども、新算定方式導入をすれば生産者米価の大幅な引き下げ、これは引き下げのために行うような新算定方式だろうと思うのです。そうなりますと、現在構造政策を進展している現状において、この算定方式の導入はまた地代の負担力の低下を招くなど、構造政策の進展に悪い影響ばかりを与えるのではないか、こういう心配をいたしておりますけれども、この点どういうふうにお考えなのか。
  172. 近長武治

    近長説明員 価格政策と構造政策の兼ね合いというのは、農業政策を進めていくときに大変重要であるというふうに考えております。特に、日本稲作というのは、欧米の農場制の農業経営とは違っておりまして、水管理によって、それぞれかなり地域的な結びつきが強いわけでございます。したがいまして、構造政策、特に生産性向上のための規模拡大ということを進めていくためには、個別経営的な規模拡大のほかに、やはり営農組織でございますとか営農集団あるいは作業の受委託というような幅広いやり方で、なるべく地域ぐるみの調整ということを基軸にしながら進めていかなきゃいけない。そのときにやはり価格政策というのも、構造政策と軌を一にした形で進んでいくというのが本旨であろうかというふうに思うわけでございます。  現在の生産費所得補償方式による算定の場合には、生産性の高い稲作農家もそうでない農家も皆一律に算定の対象になっているわけでございます。やはりそういうようなことが、現在の米価についての国民各層の批判のもとの一つになっているということも否めない事実ではないかなというふうに思います。したがいまして、価格政策につきましては、当然のことながら構造政策と軌を一にしながら、先ほど御説明したような算定方式で進んではいかがかなというのが、米価審議会の御意見であったというふうに考えている次第でございます。
  173. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そうなりますと、特に中山間地等の地域活性化対策に悪い影響を及ぼすのじゃないかという心配をいたしているわけです。中山間地では平地と違いまして、その厳しい条件の中で稲作を一生懸命行っているわけです。これに対して新算定基準を導入いたしますと、傾斜地の多い山間部などではついていけなくなるのが出てくるのじゃないかという心配をするのです。こういう場合に、規模拡大も難しいし米以外につくれるものがない、あるいは就職先も少ない、あるいは農業をやめるわけにはいかないというところで、土地や村がある限り離れることもできない、こういう現状だろうと思うのです。  こうした中山間地等の稲作をどう位置づけて、どのような対策を講じられようとなさるのか、この点を伺っておきたい。
  174. 近長武治

    近長説明員 今回の新算定方式につきましての米価審議会の小委員会報告の中でも、今委員御指摘の点がやはり指摘されております。  関係のところを読み上げますと、「中山間部等生産性の向上が困難な地域の稲作の位置づけや所得確保問題、また水田をどのように維持するか等の課題について、」価格政策とは別途検討を行うこと、こういう指摘でございます。  日本におきます稲作というのは、北から南まで全国的に作付けられているわけでございます。その中で価格というのはやはり全国一律的に設定せざるを得ない、こういう性格を持っているわけでございますので、地域の状況というものを価格設定の中に織り込むということは困難でございます。したがいまして、そういう中山間地等のように生産性の向上が難しい地域におきます問題については、その地域におきます土地利用のあり方とも関連させながらいろいろな方策を講じていかなければならない。  例えて申し上げますと、地域の立地条件を生かした特産物をつくっていくとか、あるいは同じ米であっても、単にコストの上で安いという点だけではなくて、栽培の仕方について特別なものを持っている、そういうようなことの中で付加価値を見出していくとか、そういう多様な地域の特性の中で、それぞれ地域の創意工夫を生かしながら進めていく。したがいまして、こういうことを支援する施策についても幅広のものが必要ではないか、かように考えているわけでございます。
  175. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私、細かな点はまた後で同僚の藤原議員が質問いたしますので、お米の問題は通告を二、三まだしておりますけれども、一点だけ、最後に過剰対策についてだけ伺っておきたいと思うのです。  米の構造的な過剰基調というものを解消するために、いろいろ政府も考えていらっしゃるけれども、米飯給食なりあるいは粉体化等により需要を促進する、こういう点もありますが、あるいはアルコールなどに用途を向けるとか、優良水田確保や環境保全に配慮しつつ、大都市周辺の水田については集落地域整備法に基づいて秩序ある宅地化やあるいは農業公園など農業の第三次産業化を促進する方がいいのではないか、こういう考えも私は持っているわけですけれども、こういう点どういうふうにお考えなのかどうか。
  176. 松山光治

    ○松山説明員 委員御案内のように、大都市周辺地域におきます転用の取り扱いでございますけれども、市街化区域内の水田につきましては許可制からもう既に届け出制に切りかえておるわけでございまして、地域の必要に応じた優良な宅地なり公園化といったようなことは、非常に望ましい話ではないかというふうに考えておるわけでございます。  市街化調整区域につきましては、その性格上市街化を抑制する区域ということではございますけれども、現在の扱いといたしましては、五ヘクタール以上の規模を有します良好で計画的な開発行為につきましてはこの農地転用を認めておる、こういうことになるわけでございます。  こういう取り扱いをいたしておりますのは、委員からも御指摘のございましたように、今の農地転用の扱いの基本的な考え方が、優良な農用地の確保、それからスプロールを避けた計画的な土地利用という点に留意しながら、地域が必要としております非農業的な土地需要に的確に対応していく、こういう考え方に立つわけでございまして、私どもといたしましても、地域の真に必要としておる非農業的な土地利用が計画的に行われますものにつきましては、転用の円滑化という問題に今後とも取り組んでいく必要があるだろう、このように考えておるわけでございます。  ただ、水田が余っている、過剰になっているということだけで転用を進めていくというのは今の土地利用観点からすればいかがなものかな、そういう意味では地域がどのような土地利用を必要としているか、そういうことをベースにしてこの問題を考えていきたい、このように考える次第でございます。
  177. 近長武治

    近長説明員 米の需要拡大の点についてお答え申し上げたいと思います。  やはりお米は、日本の風土に適した食べ物でございます。したがって、日本型食生活というふうに申し上げますか、日本としての特徴を生かした食生活というものをこれからも広く維持、定着していくということが重要でございます。かつて米について何といいますか、いわれのない考え方というのがあったこともございますが、最近はおかげさまでそういう点もなくなってまいりました。それから米飯学校給食につきましても、文部省とタイアップいたしまして計画的に進めてきておりまして、まだ伸ばしていかなければいけないとは思いますが、かなり進んできております。  それから、先ほどのお話のように米についての新しい需要、例えばお米を御飯として食べるだけではなくて新しい加工食品として開発していったらどうだとか、そのほか米についての幅広い用途の開発ということは大変重要であろうかと思いますので、今までもいろいろとそれぞれ創意工夫を凝らしたものが展開されてきておりますが、これからもさらにこれまでの経験をもっと生かしながら、この問題に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  178. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 一応お米の問題は以上ぐらいにいたしまして、牛肉、オレンジの問題をお尋ねいたしたい、こう思います。  一番最後にまだお米の問題もひっかかりますので、聞いておいていただければと思うのですが、難航してまいりました日米牛肉、オレンジ交渉というものが、トロント・サミット開催前に決着を目指して、アメリカの一方的な要求に対して屈したというふうな結果になったわけでありますけれども、牛肉、オレンジについては三年後、特にオレンジジュースについては四年後から自由化する、その間は毎年大幅に輸入枠を拡大する、自由化後には牛肉の関税を一時的に引き上げて、また緊急輸入制限措置は当面自由化実施後に、こういうふうになっているわけです。  先ほども質問が出ておりましたけれども、この決着内容、後で質問いたしますが、八〇年代以降において生じた貿易収支の大幅不均衡という日米間における課題の解決を口実に、農産物の市場開放を一挙に図ろうとするものであろうと思うのです。我が国の畜産、果汁並びに地域経済に甚大な影響を及ぼすことは間違いないと思うわけでありまして、長期的な視点から慎重に対処すべき農業あるいは食糧という分野を犠牲にして、このような形で安易に決着したことは断じて私は容認できない、こう思うものであります。  そこで、我が党では、六月二十九日と三十日の二日間、熊本、鹿児島の両県を現地調査をいたし、私も調査に参加をいたしましたが、農家の生の声を聞いてまいりました。細かな点は時間がございませんので申し上げませんけれども佐藤大臣は当初こういうふうにおっしゃった。自由化は困難、譲れるものと譲れないものがある、こう明確におっしゃった。比較的強い姿勢であったというふうに思うのです。それがいつの間にか、我が国の畜産、かんきつ生産の存立を守るというふうな形で、だんだんと弱くなってまいりました。  私は大臣に、ここにいらっしゃらないけれども、難しい立場理解しないわけじゃないのです、激励もしたつもりでありますけれども、その結果が、まず述べましたように、決着後大臣は、牛肉、かんきつ生産の存立を守り得るぎりぎりの線であると判断したとおっしゃっている。この交渉で何を重要と考えて、何を守ろうとなさったのか、この点をお答えいただきたい。
  179. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 お答え申し上げます。  今回の牛肉、かんきつについての日米間交渉、あるいは牛肉につきましては日豪の間でも交渉があったわけでございますが、直接的には前回の四年前の協定の期限がことしの三月に切れるということで、昨年の秋ぐらいからその後のことをどうするかということで、アメリカとの接触あるいは豪州との接触をやってきたわけでございます。その間、農水大臣が二回渡米をされ、最終的には東京でヤイター代表との間で決着を図ったわけでございますが、何を日本としては守ろうという交渉の態度であったかという御質問でございます。  基本的なあるいは政治的な日本の交渉に臨む態度につきましては、先ほど各委員からの御質問大臣みずからお答えしたわけでございますが、そういう前提のもとで私からより具体的に申し上げますと、やはり今回の交渉の中心は何といいましても、日本が従来、牛肉及びオレンジ並びにオレンジジュースについて、輸入の基本的な制度として適用をしてまいりましたいわゆる輸入制限制度を、自由化すべきであるというのがアメリカの基本的な主張でございまして、その主張をアメリカが主張する場合の基本的な前提は、やはりこれがガットの関係の条文に照らして違法な措置であるというのがアメリカの基本的な主張でございます。  そのことにつきましては、私どもも、日本の輸入国としての立場から見た日本の輸入制度全体の中で、いろいろな考え方、主張は当然ございますが、法的に見ますと、今のようなアメリカの主張というものには、我が国としてこれはあくまでガット上の合法性を主張することは、いろいろな困難な面のあったことは事実でございます。現にアメリカは、五月の四日に本件をガットの正式のパネルの場に持ち出したわけでございまして、これを交渉で解決をしていく場合にも、同時にそういったガットのパネルによる判断も行く行くはあり得るという前提で、私どもは交渉に臨まざるを得なかった。  といたしますと、やはり十二品目等の先例に照らして、私どもは、大変残念でございますが、輸入制限をガット上守ることは非常に困難であるという大前提に立って交渉せざるを得なかった。したがって、自由化を避けて通ることはできないという前提のもとで、その中でいかにしてこれらの産品についての国内産業を守っていける条件をかち取るかということが、交渉の一番の主眼でございました。それは、具体的には自由化までの期間をできるだけ稼いでいきたいということが一つございますし、また、自由化後におきましても関税その他の国境措置について、ガット上合法の制度のもとではあるけれども、できるだけの保護水準というものをかち取っていきたいというのが我々の交渉の主眼でございます。  先ほど委員の方からも、具体的に期間等について言及がございましたけれども、大変苦しい交渉でございましたが、そういう考え方のもとに行った結果が、今回の交渉であったというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  180. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 地元の声を私は時間の関係で述べたくないのですけれども、この牛肉関係の業界の方々それからかんきつ類の関係の方々、これはもう政府を絶対信用しない。きょうは自民党の先生方ほとんどいらっしゃらないのですけれども、全くだまされた。表現を言うと、これで選挙でもやったら、私どもは弱小政党だからうらやましがって言うわけじゃないけれども、そういう結論がはっきりするぐらい今度はこの業界の方々は、だまされたからして仕返しはするよと、これぐらいの強い決意を持っていらっしゃる。私も震え上がるぐらい、そういう方々にほとんど会ってきましたけれども、この問題はどんなに政府説明しようとも、最初からの取り組みで譲れないものは譲れないといったことの、今私が申したように、この交渉で何が重要と考えて何を守ろうとなさったのかという点、これはもう知り尽くすほど知っているわけです。ですから、だまされたという表現で、だました恨みほど怖いものはないと私も感じて帰ってきました。細かいことは申し上げません。私どもの党の機関紙の方にも、細かく出しておきましたからごらんになっていただければ、こう思うのです。  そこで先に進みますが、現在のこの国際経済の中で、自由貿易という経済原理の重要性を否定するものでは私はないわけです。農業は経済的な側面のみで割り切れないものがある。先進諸国においても、一定の保護措置を講じているわけでありますし、アメリカ自身も食肉輸入法で、牛肉等に規制をちゃんと加えて実施しているわけです。我が国のみに輸入自由化を迫ることは極めて理不尽だ。しかも、日米間には友好関係があるわけで、世界一の友好国として私ども信頼をしてきている。今回の最大の焦点というのは国境措置にあったわけでありますから、竹下総理はトロント・サミット前の決着にはこだわらない、こういうふうに言明されてきた。ところが、きのうも私は大臣に申し上げておきましたけれども、官邸サイドが早期決着に強引に動かれたのじゃないか、こう思うのです。これに影響されて佐藤大臣も二回の訪米をされました。譲歩に譲歩を重ねて、可変課徴金等を断念されました。変動関税も放棄された。ガットより二国間解決が有利、こういうふうに踏まれたんだろうと思いますが、ずるずると官邸ペースにはまり込まれた。そこで、緊急調整措置ということで決着をしたわけでありますけれども、その内容については私は申し上げません。  そこで伺っておきたいのです。先ほど田中委員の方からも質問がありましたけれども、その発動基準というのを四点お尋ねをいたしますので、時間の関係で明快にお答えをいただきたい。  その発動基準を前年度対比の一二〇%とした理由は何なのか、これが第一点。第二点、米国の食肉輸入法は同じ緊急調整措置を盛り込んでおるわけでありますが、こちらは前年度対比の一一〇%、これはどのようになっておるのか。三点目、どうして米国の食肉輸入法が一一〇%で我が国の緊急調整措置が一二〇%なのか。先ほど説明がありましたが、このような差が出ることもおかしいじゃないか。国境措置ならば同じ土俵でやるべきじゃないか、こう思います。四点目、そもそもここで言う緊急調整措置はガット十九条とどういう関係なのか、ガット十九条そのものなのか。もしガット十九条と趣旨を同じくするものであるならば、何ゆえに主要輸出国と協議をしなければならないのか。本来、我が国の主権に基づいて、特別の産品の輸入に対する緊急措置がとられるのであります。どうして我が国の権利に協議という縛りをかける必要があるのか。  もう一点、緊急調整措置を発動する場合、どういう手段、手だてが行われるのか。果振法に輸入制限事項を設けておりますけれども、いずれにせよ、法律が要るのではないかというふうに考えるわけでありますけれども、この点どうなのか、明快にお答えをいただきたい。
  181. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 今回の牛肉についての日米及び日豪間の合意におきまして、輸入枠を撤廃した後、つまり昭和六十六年度以降でありますが、その際の国境措置の一環としまして、ただいま先生から御指摘のございました緊急調整措置が織り込まれております。  この中で、まずお尋ねの第一点でございますが、緊急調整措置の発動要件といたしまして、一定のトリガー数量を決めることになっておりますが、これはお話のございましたように、前年度の輸入実績または輸入可能量のいずれか大きい方の一二〇%を輸入の量が超えるというふうな事態が、トリガーレベルとして決められておるわけでございます。このレベルの判断に当たりましては、交渉内容であったわけでございますけれども、最終的にこの一二〇%という合意を得たわけでございますが、私どものこの主張の根拠は、六十年度と六十一年度それから六十二年度の我が国の輸入牛肉の増加実績が一九%程度であった、それからまた、今回合意されました六十三年から六十五年にかけての経過期間における輸入数量の増加が、一八%ないし二八%というレベルで増加していくことを約束をしたわけでございますが、そういったレベルから見まして、国内の生産保護の観点から緊急措置をとるべきレベルというのは、一二〇%ということで妥当であろうという判断をしたわけでございます。  それから二番目に、アメリカの食肉輸入法との関係についてのお尋ねでございますが、アメリカが自国の食肉輸入法による一定の制限措置をとるために、やはりトリガーレベルを決めておりますが、このトリガーレベルを決めるに当たっての一一〇%という数値は、前年度の輸入実績等に対する比率ではございません。我が国と違いまして、比較的輸入が安定をしておりました一九六八年から七七年度にかけての年平均輸入量を、その当時をベースにして、直近時のアメリカ国内における食肉の生産状況消費状況というものから毎年の輸入許容量を一応決めまして、その算定された輸入許容量の一一〇%というものをトリガーレベルとして設定をして、それを超えるような事態になったときに制限措置を講ずるということに相なっておるわけでございまして、アメリカの食肉輸入法で決めております一一〇%というものと今回我々が日米及び日豪合意の中で決めております一二〇%というのは、全く比較対照すべき筋合いのものではないというふうに私どもは考えております。  それからまた、アメリカの食肉輸入法に基づく制限措置というものは、過去におきまして一九七六年の四分の一・四半期に一度だけ発動されております。アメリカ国内法による一方的な措置として、制限措置、数量制限をとることにしておりますけれども、これが一方的に発動された場合にガット違反に該当するものであるという自覚は、アメリカ自身も感じておると考えております。したがって、このような制度を持っておりますけれども、一方的な措置として数量制限をするという実際のアクションは行われていない、とられていないという実情にございます。  それから第三点目のお尋ねでございますが、今回の緊急措置とガット十九条のいわゆるセーフガード規定との関係でございます。実は今回の日米及び日豪の合意で決められました緊急調整措置は、ガット十九条に決めておりますセーフガードと全く違うものだという理解でございます。したがいまして、今回の合意による緊急措置のほかに、ガット十九条によって許されているセーフガードを発動する権利は、依然として我々は保有をしておるという考え方でございます。  御承知のとおり、ガット十九条のセーフガードは、特定の商品を決めておるわけではございませんけれども、輸入量が急増した結果、国内産業に重大な影響を与えるような事態が生じたということを要件にしまして、ガット上の義務あるいはガット上行った譲許を撤回するというふうな一定の権利を締約国に与えておるわけでございますが、この条件に当たるものとして現実にガット十九条の規定を発動するというのは、大変難しい手続であるという理解を私どもは持っております。それを留保しつつ、さらにこのガット十九条規定よりもより容易に発動できる緊急措置として、今回の合意による緊急調整措置を確保したというふうに考えておるわけでございます。  ただ、この発動に当たりましては、特に今回の合意で決めた緊急措置の内容というのは二つございます。相手国との合意を得て一定数量制限を行うという方法と、それからその合意が得られない場合には、トリガー数量を超える輸入が生じたということを前提にして高率関税をかけるという二つの方法をとっておりますが、数量制限を行う場合には、相手国と合意をしていなければ直ちにガット違反になるという問題がございます。したがいまして、その部分については相手国との協議をしていくということをうたっております。仮にこの協議が整わない場合には、国内法上の一定の手続に従って高率関税をかけるという一方的な措置がとれる仕組みになっております。関税部分については、そのような手当てをしておるわけでございます。  具体的に、ただいま申し上げましたこの緊急調整措置、二つの種類がございますが、これの発動手順といたしまして、私ども、この緊急調整措置を実際に動かす時期というのが、枠が撤廃されます昭和六十六年度以降のことでございますので、事務的にこれからまた発動の具体的な手順について手続上の方法をよく検討していきたいと思いますが、数量制限という方法をとる場合につきましては相手国との協議をした上で、その協議結果に基づきまして、例えば貿易管理令、貿管令の規定を使って数量制限措置を実施していく。あるいはまた高率関税の適用につきましては、例えば関税定率法、これは通常関税率についてもいずれそのような法的な措置をとる必要があると思いますけれども、関税定率法上の規定の整備をした上で、その規定に従って緊急調整措置として実行する高率関税の実施を図っていく、そういうふうな手続を整備していく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  182. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私の持ち時間は終わりましたけれども藤原委員の時間に少し食い込んで、両方であれしていただければと思いますので、もう一問だけお尋ねをいたしたいと思います。  大事な点ですが、牛肉、オレンジの自由化を受け入れた我が国政府の責任というものは、私は大臣にもきのう申し上げたが非常に大きい、こう思うのです。そこで、影響をこうむる関係農家への救済措置をどうなさるのかという点を伺っておきたいのです。これは、国内対策を講じて我が国農業、いわゆる食糧政策の再構築を図る点があるだろう、こう思うのです。  まず、私ども党の調査団に対しても強い要望がございました。本当は、時間があればこれを細かく申し上げたいわけですけれども、緊急対策を求める要望がたくさん出ました。例えば不足払い制度について、子牛段階のみでなくて肥育段階についても暫定的措置をとってもらいたいとか、あるいは牛肉、かんきつ農業の国際競争力強化について、緊急かつ抜本的な措置を講じて経営の安定を図れるようにしていただきたい。あるいは、消費者にも良質で安全な牛肉あるいはかんきつが安く供給される、こういうことはいいことでありますから、こういう点についても安全で良質なものが持続的にできる。そういうあらゆるものを含めまして、簡潔で結構でございますので、政府として国内対策をどうこれから進められようとなさっておるのか、伺っておきたい。
  183. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 私から、牛肉の問題についてお答えを申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、先般のアメリカ、豪州との間の牛肉貿易に関する合意の結果が、国内の畜産農家にとりまして大変厳しい試練になるということを私ども十分認識しております。そういった観点から、国内の牛肉生産というものが厳しい競争条件のもとで存立を図り、体質強化を図っていく必要があるという基本的な考え方を私ども持っておるわけでございますが、このような考え方にのっとりまして所要の対策を具体化すべく、今鋭意検討しておるところでございます。  この基本的な考え方は、既に双方の合意ができました際に政府・与党間で一定の申し合わせをしておりまして、その申し合わせの線に沿いまして私ども検討しておりますけれども、例えば、現在行われております肉用子牛の価格安定制度の抜本的な強化方策をやや中長期的な観点で具体化を図る必要があるのではないか、さらにまた、当面懸念されます価格変動等に対処するための緊急対策を早急に準備する必要があるというふうな観点で現在作業をしておりまして、まとまり次第その具体化実施についてさらに努力をしてまいりたいという状況でございます。
  184. 吉國隆

    吉國説明員 かんきつの国内対策についてお答えを申し上げます。  かんきつにつきまして今回の協定の内容というものは、やはり今後のかんきつ農業にとりまして非常に厳しい問題を含んでいるわけでございます。私どもといたしましては、基本的には国内のかんきつ生産の競争力の確保また体質強化、これは国民の需要に即した方向で進めていくということが必要であるというふうに考えております。  そういった意味から、基本対策としましては、優良品種への転換でございますとかあるいは園地の整備を進めていくといったような対策も必要であろうというふうに考えております。また、かんきつ並びに果汁の需給価格の安定という面から累急対策が必要であろうというふうに考えておるところでございまして、園地の転換対策需給に応じました対策の推進が必要であろうというふうに思っておりますし、ジュースの加工工場の問題につきましても、その整理合理化の問題があるというふうに考えております。また、果汁原材料用のミカン等の価格安定対策につきましても、先ほども論議がございましたが、拡充強化が必要であろうというふうに考えておりますし、また新しい市場の開拓も含めました需要の拡大につきましても、措置を講じていくことが必要ではないか。  こういったことを骨格といたしまして、政府・与党の申し合わせも行われているところでございまして、今後検討を進めまして、早急に対策の内容を固めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  185. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になっておりますので、最後に要望だけいたしまして終わります。  予算の問題ですけれども、農水省として国内対策を進める上から、補正予算に計上を求める必要があるのではないかというふうに私ども考えますが、その場合の規模はどのくらいになさるのか。また、来年度以降の予算措置として、既に事務次官がシーリングの枠の外で、こういうふうに表明をされておりますけれども、大蔵の厚い壁を破って牛肉、かんきつ農家への対策に万全を期してもらいたいと考えておりますので、どうか農水省、頑張っていただきたい、こう思います。要望して終わりにいたします。ありがとうございました。
  186. 菊池福治郎

  187. 藤原房雄

    藤原(房)委員 ただいま同僚委員からいろいろお話がございましたが、過日合意を見ました日米交渉、六月二十日に佐藤農水大臣とヤイター米通商代表との間で合意をいたしました牛肉問題につきまして、最初にお尋ねをしておきたいと思います。  これは、先ほどからいろいろお話がございましたように、農家にとりましては非常に大きな問題であるとともに、日本の畜産がこれからどういう方向に進むか、この影響力というものははかり知れないと思います。三年後という三年の間、またその後の二年少々の間、どれだけの対策を講ずるかということでありますが、御存じのとおり生き物を相手にするわけでございますから相当早くに対策を立てて、そしてそれに対する適切な予算措置、また立てた方針に対して相当バックアップをする施策がございませんと、三年、四年はすぐ過ぎてしまって、日本の畜産農家に大きな影響を与えるのではないか、このように危惧をされておるわけであります。  これにつきましては、現在もそれぞれの立場でいろいろ言われておりますが、もう半月はたったわけでありますし、農水省もいろいろ御検討なさっていることだと思いますが、一面からいうと、今度の措置によって牛肉枝肉の販売価格がやがては三、四割下がるだろうというようなお話もございますし、一方畜産農家を中心にして、畜産全体に壊滅的な打撃を与えるのではないかという予測もなされております。  いずれにしましても、完全自由化というのは、畜産農家に大変な打撃を与えるといろいろな立場で予測がされておりますが、特に農水省の農業総合研究所の需給研究室長さんが、二〇〇一年を目指しましてどうなるかという予測をしております。国産乳雄牛の価格は半値以下に落ち込んで、和牛の雌牛飼養頭数は二〇〇一年には現行の十分の一の十万頭に激減するだろうとか、また牛肉の自給率は一八%まで低下するのじゃないかというようないろいろなことを発表なさっているようでありますが、これは非常にショッキングな報告であります。  このように、今まで酪農に中心を置いてまいりました農水省の政策が、乳肉一体ということでこの政策を複合的に見るべきだ、こういうことで一生懸命その方向でやってきて、何とか見通しがつくかどうかという途上でこのたびこういう大きな打撃を受けるようなことが決定をされた。今回の決定については、けしからぬという話は先ほど来いろいろございますから、前の同僚委員のお話は私も全くそのとおりだと思いますが、今後に与える影響の大きさということについて、本当に背筋の寒くなるような感じがします。私も、農家の方々いろいろ見てまいりましたけれども、ただ茫然としているというのが現状でございます。  こういうことにつきましてまず最初にお聞きしておきたいのは、いろいろな試算がございますが、先ほど申し上げましたのは農水省の中でのことですから権威のある試算だと思うのでありますけれども農業総合研究所の需給研究室長の大賀さんというのですか、この方の発表なさっていることについてどのように評価をなさっていらっしゃるのかということと、もう一つは、国内対策というのが非常に重要になってくると思うのでありますが、国内の生産体制または整備、こういうことについて行政上どのような方針でこれから取り組もうとなさっているのか、まだどこまで進んでいるのか私どもわかりません。まず、現時点の現況というものについてお聞きをしておきたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  188. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 今回のアメリカ、オーストラリアと合意をいたしました牛肉の貿易に関する合意内容が今後実行されていくということになりますと、国内の関係生産者にとって大変厳しい試練になるということは私どもも十分に認識をしておるところでございます。ただ、今後約三年間の経過期間を置き、かつまた輸入枠の撤廃をした後におきましても、先ほど来申し上げております各般の国境措置を講じて、新しい時代への対応をできるだけ円滑に進めるということを考えますと、今回の合意内容の実行に伴います各般の影響というもの、さほど悲観的に考える必要がないのではないかというふうな気持ちを私どもとしては持っておるわけでございます。  御指摘ございました農林省の研究所の研究者が個人的な立場で学会で将来見通しについて述べたことは、私どもも情報として承知をしております。また、今回の合意内容が確定をする前の状態で、大変大胆な仮説的前提を置きながらの将来見通しを述べておるわけでございまして、私ども合意内容が明らかになってからの他の研究者の見通し等を拝見しますと、さほど言われるような壊滅的状況というものが将来出てくるというふうに考える必要もないのではないかと考えておるわけでございます。いろいろ急激な事態の変化でありますだけに、大変試練が厳しいということは確かでありますけれども、これまで我が国の畜産農家が蓄積をしてきております技術とか、いろいろな努力というものが今日積み重なっておりますし、また、その努力を援助するために必要な国内対策というものも我々最大限これから具体化をし、一定の競争条件のもとで我が国の牛肉生産がそれなりに輸入産品に対抗しながら存立をしていく条件というものを、私ども何とかつくっていきたいと考えておるわけでございます。  先ほども若干触れましたけれども、牛肉生産の比較的コストを高める部分になっております子牛の生産部門について、やはり中長期的に一定のてこ入れをしていく必要があるのではないか。さらにまた、この経過期間から枠撤廃にかけての輸入量の増加に伴う価格変動に対処するために、肥育経営あるいは繁殖経営を通じた体質強化策、あるいはその他の緊急対策というものを準備していけば、それなりに輸入牛肉と対抗した国内生産というものが、消費者の理解を得ながら定着していく展望が開けてくると私どもは考えておるわけでございます。  そのために、御指摘のとおり必要な予算措置、あるいはまた必要がありますれば法律改正というふうな問題もあろうかと存じますが、現在、私どもまだ内部でその検討を進めておる段階でございます。今回の合意が明らかにされておりますけれども、客観的な情勢の推移というものはこれから徐々に生じてくるわけでございまして、その推移も見ながら私どもとしては、現在検討しております予算措置あるいは法律改正問題というものもできるだけ早急に具体化を図るべく、関係者との間での議論を具体化しまして、タイミングを失せずにこれらの対応ができますようにさらに努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  189. 藤原房雄

    藤原(房)委員 牛肉の輸入問題は、何もことし降ってわいたように起きた問題ではなくて、三年前にこの問題について交渉の場に臨み苦い経験を経て、ことし三年目でまたこの問題についての決着を迫られた。この三年の間、必ず厳しい条件が突きつけられて苦況に立たされるということは、あの三年前の交渉時点でも予測しておったはずでありますし、また、当時もいろいろ議論になってそれに対する措置も講じなければならぬ、こういうことで当委員会におきましても三年前随分議論がありました。大臣はかわったかもしれませんけれども、当時やはりアメリカの主張というものが三年後には相当厳しい形で来るだろう。  今お話を聞きますと、まあ今回のことは大したことないみたいな言い方ですけれども、この三年の間のことを考えてみましても、十分な施策が講じられずに農家の人たちに大変な不安を与えておるということを見ますと、これから三年には、これはもう待ったなしで三年、そしてその後の国境措置の後の二年、三年、時間はあるかもしれませんけれども、今度は待ったなしでやってまいるわけであります。しかも先ほど来申し上げておりますように、生き物を相手にするということだけに価格変動やいろいろな状況の中でこれは非常に厳しい対応を迫られる。こういうことではひとつ真剣に受けとめていただいて、現状の中での最大の対策を御検討いただきたい。  先ほどもお話がございましたが、これからこの対策として現状をどう認識し、そしてまたこれからの対処をどうするかということについては、畜産局中心となってといいますか、農水省が総力を挙げて対応策をお考えになるのだと思いますけれども、今後の取り組みのスケジュールといいますか、予算を初めとしまして法的な改正等もあわせて、いろいろなこれから対処しなければならないことについてはあらあら御検討いただいていると思うのですけれども、現在打ち合わせをしていらっしゃる段階だけでもひとつお聞きをしておきたいと思います。  それから、子牛価格のことが今いろいろお話がありましたが、確かにこれは国内的には大事な問題でありますが、それとともに品種改良ということが一つのまた新しい要素として重要性を帯びてまいります。こういうことから、国内的にも新しい品種改良ということで、子牛を初めとしましてどんどん輸入するようなこういう体制も考えられておるようであります。特に、北海道なんかでも強く要望されておりますが、動物検疫所一つ見ましても、今月の二十日に国際空港として新しい装いのもとにスタートするわけでありますが、まだその体制も全然見えていない、こんなこと等を考えますと、今後はそう心配することはありませんというようなことではなくて、いろいろなことを総合的に検討するということからいきますと、影響力の大きさ、そしてまたそれに対する対処、これは相当な御努力をいただかなければならないのではないか。もう来月早々概算要求、そういうこともございますが、その枠の外でということのようでありますが、とにかく一日も早くに施策の方向、方針、こういうものをきちっと見定めるということが重要なことだろうと私は思うのです。  それらのことについて、今後のスケジュールといいますか、どういう考え方のもとにこれからこれを進めていくのか、そこら辺のことについてひとつお伺いをしておきたい。
  190. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 御指摘のとおり牛肉の貿易問題につきましては、一九八四年、四年前でございますが、アメリカあるいはオーストラリアと大変厳しい交渉をいたしまして、最近の四年間を過ごしてきたわけでございます。この間、私どもの予想を超えるテンポで牛肉の国内需要は拡大をしてきておるわけでございまして、そういった情勢も反映をいたしまして、肉用牛生産経営は一定のレベルでの所得確保等が図られてきたわけでございます。この間私どもも、牛肉に対する国際的な批判あるいは国内の消費者の御批判にこたえるべく、できるだけコストを下げて低価格の牛肉生産が行えるようにいろいろな対策を講じてきておりまして、その成果も徐々に定着をしておるわけでございます。  そういった状況のもとで、今回の合意によりまして将来に向けて大変厳しい対応をさらに迫られることになるということを私ども十分承知をしております。決して、将来について私ども楽観をしておるわけではございません。将来に向けまして、先生御指摘のような品種改良、あるいはまた、バイオテクノロジーを使いました受精卵移植とか双子生産というふうな新しい課題にも挑戦しつつあるわけでございます。また、お話のございました素牛等の輸入問題に関連をした動物検疫施設の整備問題も課題としてございます。ただこの問題につきましては、牛肉の輸入枠撤廃ということで、国内の生産者にも将来に向けての大変不安がございます。外国から安易に素牛を輸入する、そのために動物検疫施設を大幅に拡充するということが、果たして将来に向けての国内畜産の振興安定のためにいいのかどうか、その辺は十分に議論をした上で対応する必要があろうかと考えております。  やや長期的な課題としまして、そういった問題も検討していく必要があると思いますが、さしあたり今回の合意結果を実行していく過程で国内に生ずるであろういろいろな摩擦的な問題について、私ども一定のスケジュールを持って作業を進めておるところでございます。具体的内容についてはまだお話しできる状況にございません。いろいろ議論をすべき関係者もございますし、また、財政当局との議論もまだ十分に済んでおらない状況でございます。いずれにしましても、予算面あるいは法律制度の上で何が必要であり何が妥当であるかというふうな論議を十分に詰めた上で、タイミングを失せず所要のアクションをとっていくように私ども準備を進めておりますことを、御理解賜りたいと思うわけでございます。
  191. 藤原房雄

    藤原(房)委員 もう時間がありませんから米の方をちょっとお伺いしておきます。  このたびの米価諮問案をつくるに当たりましていろいろいきさつがあったことはよく存じておりますが、先ほど同僚委員からもいろいろお話がありましたのであれですが、担い手育成なんというのは今までやってなかったみたいに、担い手育成、一・五ヘクタール、これは一体、唐突とは言いませんけれども、重要な意味を持つことはよくわかるのですが、今までそこに余り力を入れなかった、これから一生懸命力を入れてやるんですということなのか、新しい発想のもとに何かなさるのか、その辺どうなんでしょう。
  192. 近長武治

    近長説明員 担い手の問題というのは、構造政策の面でもあるいは価格政策の面でも当然考えていかなければならないわけでございますが、従来価格政策の中、特に米価の面では、担い手ということをかなりはっきり意識しながら算定方式の上で出てきているというのは余りなかったと思います。今回は、先ほど御説明申し上げましたように、昨年の九月に米価審議会の中に米価算定方式の検討のための小委員会を設けてこういう方法について報告書が出てきた、私たちその報告書を踏まえてこれに即した米価算定に取り組んでいきたい、こういうふうに考えてきていたということでございます。
  193. 藤原房雄

    藤原(房)委員 中核農家担い手というのは、今までもいろいろな施策の上ではやっていたわけですね。米価算定する上にこれを導入することになった、米価でそういう階層に構造変化を起こさせようということになるわけですか。
  194. 近長武治

    近長説明員 お答え申し上げます。  担い手の問題というのは、価格政策のみで育成ができるというふうには当然のことながら考えておりませんし、やはり構造政策あるいは広い意味での地域政策等も含めた中で、当然のことながら価格政策もその一つの方策の中に入って、いろいろな施策を総合的に進めながらこの担い手育成が行われる、かように考えております。
  195. 藤原房雄

    藤原(房)委員 当然それは、総合的な施策があってなんでしょうけれども、あなた方は昨年の小委員会での報告がある、こういうことをすぐおっしゃるけれども、今までも総合的な施策の中のそれぞれの育成のための施策があったわけですよね。なぜ、今改めて米価の中にこういうものを導入して、算定方式の中にこれを入れなければならないか。それは小委員会でこのように報告がございましたというお話ではちょっと納得がいかぬ。言わんとするところはわかるのですけれどもね。  農業のこれからのあり方、確かに基本農政、三十七年ですか、それから過剰時代を迎えましての大きな波をかぶった時代、そしてまた、今このような内外から大きな転換を迫られる。これは、米を論議するときは米の分野での話、畜産のときには畜産部門、そうじゃなくて、農家としましては、有畜農業とか総合農政とかいろいろなことで、これは複合的にみんな共通している問題ですから、乳価が下がったり畑作物が下がったり、それから米価が下がるということは、一稲作農家だけの問題ではなくて、一軒の農家があって、そこで牛が何頭か飼われ、畑もあり――畑もありじゃない、転作で畑をしなければならないのだから、そして稲作農家という、こういう中で、我々論ずるときにはそれぞれの役所で部門ごとにやっていますけれども、一農家としては全部そういう中で、時間もありませんからあれですが、一番言いたいのは、専業として一生懸命やっている人に結局負担がかかるという、この現実は非常に考えなければならぬことだ。  農業というのは加工業のように、急に方向転換、生産性、合理性、こういうことの追求できない産業なんだなということを思い知らされる一面もあるのですけれども、そういう点では、先ほど畜産の方にも申し上げたのですが、三年といってもすぐあっという間に来てしまって、前の三年のときにいろいろなことを議論したことが今どれだけ生きているかということになりますと、世の中の急激な変化の中で確かによくなった点もあるかもしれませんが、まだまだ足りない点はたくさんあるだろうし、特に生き物を飼う畜産では対応力が非常に限られてしまう。そういうことで専業の方が、中核農家育成というのですから、これらの方々が本当に意欲を持ってやっていけるような施策というものの確立がなければ、米価決定にも担い手云々ということで、どんどん価格面でも何か構造的な変化を起こさせるような施策をする、こんなことで日本農業が変わると思ったら大きな間違いですね。  中小といいますか、小さい農家は兼業でそれなりにやっている方がいらっしゃるからなかなか土地を手放さない。これは過去のいろいろないきさつもありますけれども、中規模農家の方々が一番比較的安定をしておる。専業の方ほど、北海道の各地を回りますと、そういう感じがしてならない。これは、ひとつそこに焦点を当てるという意味じゃなくて、専業でなさっている方々が安心して農業のできるような施策の確立がなければならぬだろう。  それからもう一つは負債農家農家の負債額というのは非常に大きいということで、今まで稲作農家というのは非常に安定しておるということだったのですが、北海道では四八%の減反ですから、畑作の機械を買わなければならぬ、またほかの施設をするということで、どうしてもこれは負債額が大きくなる。こういうことで、稲作農家も畑作に劣らず負債額がだんだん増大しておるというのが現状でして、こういうことに対しての対策がございませんと、五町、十町、十五町持っている北海道の本当に専業でできる農家の方々が、自立どころか担い手どころか、そこまで行かないうちに倒れてしまう。これは、いろいろな施策が必要なんだろうと思いますが、金融面につきましても、それから現在あります制度そのものに対しても、これを全面的に見直していただかなければならぬ。  農業の基金は、農業基盤整備資金とか農地等取得資金とかは大体二十五年、三年据え置きとか十年据え置きとか大体そんなもので二十五年。今、住宅は二世帯で四十年とか四十五年とかいわれる。まあ四十年はあるのですが、こういう時代に三年か四年の据え置きで二十五年で農業をきちっと確立せよという、これはこんなに変化の激しい時代の中ではなかなか困難ではないのでしょうか。これは、農業団体からいろいろな要望が来ておることは皆さんもよく御存じだと思いますけれども、現在あります制度とか条件とか、こういうものをひとつきちっと改めて検討していただきまして、これは専業の方々、中核農家育成するというのですから、米価だけでそれはできることじゃない、当然のことです。総合的にこういう問題についての施策をぜひ御検討いただきたい、こう思うのですがどうでしょうか、お伺いしたいと思います。
  196. 近長武治

    近長説明員 御指摘のように、価格政策だけで担い手育成が進むということではございませんし、やはりそれぞれの地域、北海道のような地域あるいは東北のような地域あるいは中・四国のような地域、いろいろそれぞれの地域の特質に応じながら、個別経営としての規模拡大あるいは地域全体の営農組織なり営農集団という形での規模拡大、いろいろな進み方があろうかと思います。その中で今回、価格政策の方でも担い手育成という施策に仲間入りしたわけでございますので、こういうようなことが一つのきっかけになりながら担い手育成に向けていろいろな政策がまた新しく展開していく、あるいはそういうことをきっかけにしながら担い手が各地でそれぞれの特徴を生かしながら育っていくというふうに進むことを、私たちは今回の新しい算定方式もそういうことを進めていくための一つの契機となるというふうに考えているわけでございます。
  197. 藤原房雄

    藤原(房)委員 政務次官、なるように考えておりますと言うけれども、考えているのじゃなくて、これはしっかり実行してもらわなければなりませんから、ひとつ要望として一言言っておきます。
  198. 菊池福治郎

    菊池委員長 神田厚君。
  199. 神田厚

    ○神田委員 午前中の大臣質疑に続きまして、事務当局に対しまして若干の質問を行います。  まず米価の問題でありますが、きょうの夕刊もほぼ一面トップで米価の問題が報じられております。新聞報道は、既に米価決定をした、つまり政府と自民党の政治折衝によってマイナス四・六%の引き下げだということを報道しております。これを読む全国の農民は一体どういうふうに感じるだろうか。去年の五・九%に引き続き、ことしも四・六%の米価引き下げ政府と自民党がやった、こういうふうに感じるのではないかと思っております。  私は、午前中の大臣に対しましても御質問を申し上げましたが、今、日本の農民が農業に対しまして非常に希望を失っている、絶望している、したがって畜産農民からは、先行き不安から自殺者が出ているというふうな状況でもあります。何といっても日本農業を守って、そして生産農民が誇りを持って生産ができるような政策をつくっていかなければならない大変大事な時期だというふうに思っております。そういう観点から、特に午前中の大臣答弁では、いわゆる構造政策等を進めるために米価引き下げがやむを得ない状況一つなんだというような説明もございましたが、私はやはり、農家経済の現状が年々厳しくなっているという状況から考えますれば、米価引き下げは大変問題があるというふうに考えておるところであります。  農家経済を見ますと、昭和六十二年度の農業所得は九十六万三千百円と百万円を割りまして、六十一年度五・一%減に引き続き昨年も七・一%の減少となっております。さらに、良質米奨励金の引き下げとあわせまして農産物行政価格も、生糸を除きすべて引き下げられております。  農業収益で見ますと、稲作は昨年一二・七%の減となっております。また農業所得は、関東や二、三の地域を除いてすべての地域で減少している。まさに農家経済は縮小の中にある、日本農業は危機に瀕していると言っても過言ではないと思います。  昨年の米価引き下げ五・九五%が、前述したように農業所得が百万円を割った一つ要因である、こういうふうに私どもは考えておりますが、その点はどのようにお考えでありますか。また政府は、今後米価引き下げという価格政策をもって農地の流動化を推進していく、こういうふうなことを考えているようでもありますが、昨年の米価引き下げにより、それでは現実にどの程度の農地の流動化、規模拡大につながったのか、その辺のところはどういうふうに把握をしておりますか、お答えをいただきたいと思います。
  200. 海野研一

    海野説明員 それでは農業所得減少についてお答え申し上げます。  農業所得減少、いろいろなことが作用しておりますので、どれが原因だということはなかなか申し上げがたいものでございますけれども、先ほど御説明いたしましたように、農業所得減少は、一方で農業経営費が減少したにもかかわらず農業収益減少したということで、このそれぞれの減少の仕方において農業収益減少の方が大きいということによってもたらされたものでございます。  この農業収益減少につきましては、作物別に申しますと、野菜でございますとかその他畜産物、肥育牛を中心としたものでございますと増加をしたものもございます。稲作、鶏卵、工芸作物というようなものが減少をいたしております。稲作については、ただいま委員のおっしゃいましたように前年度に比べて一二・七%減少しております。  この要因といたしましては、作付面積減少でございますとか単収の減少というようなこともございまして、収穫量で八・八%減少しておりますけれども価格の低下、さらには品質の低下によって一等米の割合が減少したというようなものが総合されて出てきておると言うことができると思います。
  201. 松山光治

    ○松山説明員 昨年の農地の流動化についてのお尋ねでございますが、残念ながらデータがまだ集計されておりません。六十一年度までの農地の流動化の状況から、最近の状況を御報告させていただきたいと思いますけれども、売買、賃貸借を合わせました年々の流動化面積、五十八年以降大体年間八万五千ヘクタール程度で推移をしておるわけでございます。最近の特徴といたしましては、売買よりもむしろ賃貸借、利用権の設定という形のものが多いということ、それから受け手の方が割合規模の大きい層でふえておる。その結果、なお努力を必要とする状況にはございますけれども、全体としての農家の戸数が減る中で規模の大きい層のところで増加の傾向が認められる、こういう最近の特徴ではなかろうか、このように考えておるところでございます。
  202. 神田厚

    ○神田委員 まだ余り資料がないということでありますが、大体の傾向を把握をしてお答えをいただきたいと思います。  昭和六十二年度の米の生産費は、販売農家平均で見ますと、十アール当たりの粗収益は七・七%の減少所得は一六・四%の減となっています。このように所得減少した主要な原因は一体何だというふうに考えられておりますか。また、今年度の米価決定農業所得にどのような影響を与えると考えておりますか、お答えをいただきたい。
  203. 海野研一

    海野説明員 それでは、生産費調査におきます農業所得減少要因についてお答え申し上げます。  生産費調査での農業所得減少要因、これは一つ農家経済調査にもございましたように、やはり粗収益と経費と両方の関係から参っておりますけれども生産費調査の場合には、これは面積の減は十アール当たりでございますので入ってまいりませんので、粗収益七・七%の減少というもの、これはまさに単収、品質、価格、この三つが粗収益減少させたということでございます。  他方で、物財費の方はわずかなから〇・三%増加した、これも所得減少要因になっていると思います。
  204. 近長武治

    近長説明員 ことしの米価農家所得にどういうような影響を与えるかというお尋ねでございますが、作柄がまだはっきりしておりません。  それからもう一つは、米価というのは政府米価のほかに自主流通米の値段というのがあるわけです。現在、出回り量の中での自主流通米のウエートはかなり高くなっております。その建て値が一体どういうふうになっていくのかというような点がございまして、まだこの影響試算がございませんし、したがいまして今の段階では、私たち何とも申し上げられないというようなことでございます。
  205. 神田厚

    ○神田委員 私は、かなり農家経済に影響があるというふうに考えております。したがって、そういう点から政府諮問米価に対しましては反対の立場をとるわけであります。  次に、佐藤農林水産大臣は、いわゆる新しい方式での米価算定は来年だと、それを政府・自民党が文書で確認をし合ったということであります。これは、来年そういうふうなことで行うという方針をお持ちでありますけれども、ことしの米価決定後のいろいろな政治的な状況や、農林水産委員会を中心とする国会での論議などを踏まえて、果たして来年実施できるかどうかは極めて疑問であるというように考えております。仮に、来年こういう問題で新しい算定方式を導入するという場合には、やはり一・五ヘクタール以上の農家というふうに、それがなぜ一・五ヘクタールなのかという問題が一つございますし、それで一・五ヘクタール以上の農家は八・八%、売り渡し農家数は一一・七%、売り渡し数量は四四%であります。  しかも、六十二年産米価において第二次生産費までカバーしている農家は四ヘクタール以上の農家である、こういうことになりますと、現行米価でさえ四ヘクタール以上層の農家しかカバーしていないのに、これ以上引き下げたら九九%以上の農家が今回の米価に対応されないという形になります。  したがって、九%とも一三%とも言われる引き下げ幅にこの新算定方式ではなるわけでありますから、そういうところに非常に大きな問題があるし、これは自民党と政府との折衝の中でも大変多くの問題が出たために先送りになったような状況があるようでありますので、その点を再考願いたいと思うのでありますが、これらの点についていかがでありますか。
  206. 近長武治

    近長説明員 新算定方式によってどのぐらいの農家なりあるいは数量がカバーされるかという点については、個別経営ということだけでまいりますと、一・五ヘクタール以上という場合には、出回り数量でいくと四四%程度でございます。ただ、このほかに、一・五ヘクタールよりも小さい規模でありながら、一・五ヘクタール以上の農家に匹敵するあるいはそれ以上の生産性を上げている農家があるわけでございます。恐らくこういう農家の方は何らかの形で、例えば作業の受委託でございますとかあるいは生産組織、営農組織等を通じて規模拡大に取り組んでおられるというようなことではないか、こういう農家による販売数量が大体一割ぐらいございます。そのほか、これらの農家と一部重複はすると思いますが、営農組織なり営農集団に参加している農家による出回り数量が大体四分の一程度ということでございますので、一部重複はございますがざっと四分の三ぐらいのカバー率である、これはカバー率だけでの問題でございますが、そういうふうにも推計できるわけでございます。  それからもう一つ、今回の担い手層基礎にする米価ということについての、これは米価審議会の小委員会等の論議の中でございますが、現行生産費及び所得補償方式についてもいろいろな方面からいろいろな批判等が出ているわけでございます。ほとんど所得農業以外のところに依存しているようなそういう稲作経営についてもなぜ国が所得を補償しなければならないのか、こういう論議もあるわけでございます。具体的には、全国的な数値で申し上げますと、一・五ヘクタール未満の階層というのは生計費が農外所得でカバーできる、これはある意味ではデータ的な整理でございますが、そういうような現状もあるわけでございます。  そういう中で、これからの米価算定対象を、例えば稲作について意欲を持って高い技術と資本装備を持っているとか、あるいは他産業の従事者と就業時間だとか所得等の面においても匹敵する、こういうような生産性の高い個別経営農家あるいは生産組織あるいは集団を対象とするのであれば、これからも生産費所得補償方式つまり生産費のほかにも所得を補償するという考え方に基づく米価算定することについて国民からの幅広い支持というのが得られるのではないか、こういうような問題意識も米価審議会の中の小委員会ではあったわけでございます。したがいまして、そういうような中でいかなる規模担い手層になるのか、あるいはどういう営農組織が担い手層であるのかというような論議をしながら、今回担い手層基礎にする生産費所得補償方式というのが新算定方式として米価審議会から提言された、かような経過でございます。  したがいまして、やはりこれから食糧管理法に基づきます生産費所得補償方式について国民の各界各層からの幅広い御理解をいただくということを考えますと、この新しい算定方式ということが適切な方途ではないかと考えているわけでございます。
  207. 神田厚

    ○神田委員 米審の話が出ましたが、我々いつも米審に対しましていろいろな、米審はもっと本質的に自由な意見が言えるようなものにしなければいけない、これでは既にもう米価は決まってしまったという印象の中で、米審がまさに隠れみのだと言われる実態をさらけ出してしまったという感じでありまして、まことに残念でありますが、今後とも米審の改革については意見を申し上げていきたいと思っております。  時間がありませんので次に移りますが、米の消費の問題でありますけれども、前年に比べまして二・五%程度減少しております。したがいまして、本年も減少傾向が続くということでありますれば一千万トン掛ける二・五%、約二十五万トン程度の消費減、需要減が考えられております。本年度十月末在庫見通し、二百三十万トンを上回るのではないかという心配もありますが、こういう場合におきまして需給調整をどうする考えでおるのか、まずお伺いしたいと思います。
  208. 近長武治

    近長説明員 本年三月に、食管法に基づきます米管理についての基本計画を策定したわけでございますが、この基本計画におきましては、六十三米穀年度の政府管理米の需給見通しについて、集荷量が大体六百九十五万トンから七百五万トン程度、それから需要量を六百八十五万トンから七百五万トン程度というふうに見込みまして、ことしの十月末には二百三十万トン程度の持ち越しになるというふうに見込んでいるわけでございます。  ただいま、本年の六月までの需給動向を見ますと、集荷量は、基本計画で見込んだ下限の大体六百九十五万トン程度というふうに見込まれております。需要量は、政府米及び自主流通米等を合わせましたいわゆる政府管理米の総量としては、ほぼ計画どおり販売されております。ただし、それぞれ政府米、自主流通米等については、販売についての進展の度合いが少しずれがあるわけでございます。いずれにいたしましても、そういうような状況からいたしますと、この十月末の持ち越し在庫二百三十万トン程度というのは相当大きな在庫量になります。その場合に、政府米の持ち越し在庫が、その上限と考えております百五十万トンをかなり上回るというようなことも懸念しておるわけでございます。  ただいまお尋ねの、これからの需給調整のあり方、つまり今後の需給均衡化対策のあり方という点については、一つは、本年産米の作柄状況というのも大変重要なファクターでございます。そういう状況を見ながら、生産者団体等も含めて十分協議しながら方策を見出していく、検討していく、こういうふうに考えております。
  209. 神田厚

    ○神田委員 米の消費拡大の問題にも関連するわけでありますが、これだけ減反政策その他をやっておりながら、しかし一方では、米の消費拡大について力が入ってなさ過ぎるという問題があるわけですね。農家の人にしてみれば、生産調整で一生懸命減反に協力をしている、何とか稲作農業を守ってもらえるのではないかと思って一生懸命やってきた、ところが昨年もことしも米価引き下げるというような状況だということになります。これでさらにこの過剰米処理のような方向が出てきたならば、まさに全く農政かないと言われるような状態になるわけでありますから、米の消費拡大について政府がもっと本腰を入れて取り組んでいかなければならない、こういうふうに私は考えますが、その点についてどういう方針をお持ちでありますか。
  210. 近長武治

    近長説明員 米の消費というのは、基本は御飯の形でそれぞれ各家庭で食べていただくことも、米の消費拡大の上では重要であろうかと思います。おかげさまで、日本型食生活というような考え方もかなり広く定着してまいりまして、かつてのように米についての誤った知識というのも大体薄らいできていると思うわけでございます。したがいまして、このような形を中心に据えながら、米の消費拡大についていろいろな展開を図っていかなければいけない。  その一つは、米飯学校給食でございます。最近では米飯学校給食につきましても、普及率九八%というふうになっております。週平均実施回数二・二回。前の年は二・〇回でございましたからかなり上がってきておりますが、これ以上にさらに高めていかなければいけない。ただ残念ながら米の消費というのは、国民の食生活の変化ということとかなり関連があるわけでございます。お米のほかにいろいろな食べ物がございますと、それぞれのところから幅広くカロリーを摂取していく、こういうようなこともございますので、米の消費が今後著しくふえていくあるいは下げどまるということについては、なかなか難しい課題ではないかと思います。  それからもう一点。本年度におきましては、米需給均衡化緊急対策の中で地域の創意工夫を生かした需給ギャップ縮小の取り組みが各地で展開されております。農業団体等による消費純増策という中でいろいろ新しい工夫も生まれてきておりますので、こういうような経験を積み重ねながら、これからも米の消費拡大については一層推進してまいりたい、こういう考えでございます。
  211. 神田厚

    ○神田委員 いつも同じような答弁ですね。私ども、口を酸っぱくして消費拡大をやってくれと言っているのですが、最終的に後手後手に回って、どうにもならないような状況になってきているというのが実態であります。学校給食の問題にしろ、ほとんど進歩がない。こういう大変な時期には、もっと思い切ったことをやらなければどうにもならないわけでありますから、その点はしっかりやってもらいたいと思っております。  そこで提案でありますが、ODAの援助米として日本の米を何とか外国に出す努力をさらにすべきだと考えております。現在、我が国は一九八六年、昭和六十一年に改正されました食糧援助規約に基づき、年間小麦三十万トン相当の拠出を義務づけられておるわけであります。これまで米または小麦による援助をLLDCを中心とした途上国に対して行ってきております。これに日本でつくった米を乗せる、三十万トンの小麦という形でありますから。もう少しこういうものを積極的にやらなければ、どうにも余ってにっちもさっちもいかなくなってしまう。また過剰米処理だというふうな話になってしまいます。ですから、こういうところは相手国の問題もありますし、いろいろな問題もありますけれども日本としての努力は日本の米を食べてもらう、援助米として使ってもらうという努力を、三十万トンもできるのですから、それをぜひやってもらいたいと私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  212. 近長武治

    近長説明員 ODAの中で日本のお米を援助米として使うことはできないかということで、私たちも気持ちの上で、そういう方面で日本のお米がどんどん使われると非常にありがたいというような気持ちを持つわけでございますが、国内で生産されたお米をODA予算を活用して援助用として使うという点については、お米については国際価格と国内価格との間に相当大きな開きがございます。日本以外の国のお米を援助に使う場合に比べて、財政負担のかかり方が非常に違います。逆に言えば援助効率が低くなる、こういうような問題が一つあるわけでございます。  それからもう一つは、FAOの余剰処理原則では、余剰農産物を輸出する場合には通常の国際貿易に有害な影響を与えないようにすること、こういうふうになっているわけでございます。またKR、食糧援助におきましても、その規約の中で、途上国の農産物使用を優先するという原則が定められている。こういうことも考慮しなければいけないわけでございます。  それから、日本は国際的に比べてお米の値段がやはり高いわけでございますので、輸出という実績はございません。しかし、日本の国内産米を援助に使うという場合には、伝統的な米輸出国から、補助金つき輸出ではないかという批判を受けるということもございまして、なかなか難しい、非常に困難な問題であると考えているわけでございます。
  213. 神田厚

    ○神田委員 過剰米処理で何兆円という金をかけることを考えれば、いわゆる国際価格で差があるのはわかっておりますけれども、そういうところにお金をかけて、せめて過剰米処理、あの二回もやって国民から大不評だったああいうことはもうやるべきではないし、そのやるべきでないという、避けるためには一体何をしたらいいかということを考えなければならないと思うのですね。答弁を聞いていますと、これでは何にも進まないです。このまま、にっちもさっちもいかなくなってしまう。そういう農政が果たしてこれからみんなに納得されるのかどうかという問題が、私は非常に心配であります。  最後に政務次官に、この今大変な状況にあります日本農業を守るために、消費拡大を含めて、ODAの問題も含めて、どういうお考えか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  214. 北口博

    ○北口説明員 ただいま貴重な御意見をちょうだいしたわけでありますが、いろいろな制約はありましても、これから消費拡大また過剰米の対応については、真剣に検討してまいりたいと思います。
  215. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  216. 菊池福治郎

  217. 山原健二郎

    ○山原委員 けさから各委員の皆さん方の質問を聞いておりまして、本当にいよいよ日本農業、食糧が重大な岐路に立っておる、そういう意味できょうのこの委員会は非常に重要な意味を持っておるというふうに私は思って聞いておりました。この点について、政務次官の方に政府の見解として伺いたいのです。  まず一番に、農産物十品目の自由化の問題、さらに牛肉、オレンジの今回の自由化の約束、そしてその上に米価大幅引き下げという問題が重なってきょうを迎えているわけでございますが、この事態をどういうふうに把握しておられるかということを、簡単で結構ですから一言伺っておきたいのです。
  218. 北口博

    ○北口説明員 今御指摘のように大変厳しい環境にあるわけでございますが、今後農林水産省といたしましては、さきの農政審の報告を踏まえながら、食糧の国内供給力の確保を図ることはもちろんでありますが、国民の納得し得る価格での安定供給に努めますとともに、与えられた国土条件等の制約のもとで最大限の生産性向上を図る立場から、農政を展開してまいりたいと思っております。
  219. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、どこか日本農政が狂っているということの結果ではないかと思っているわけです。それで、この数年来を見ますと、農業に対する攻撃は物すごかったわけです。これはもう本当にある人物が言っておりますが、農業をけなさないと時代おくれになるという言葉まで出てきたわけですね。そして、評論家あるいは学者あるいは財界総動員、大合唱ですね。その中身を見ると、都合のよいデータを並べている、あるいは事実誤認を平然と使っている、あるいは知らぬふりをして誇大宣伝をやる、それから無知と言えるような俗論を展開する。これに対して、政府機関として何ら適切な、責任のある反論が行われていない。これを許してきたとさえ言えるような情勢が続いてきたと思うのです。これは本当に反省しなければならぬと思いますね。  それからさらに、これは今までも私申し上げてきたことですが、いわゆる日米諮問委員会報告、引き続いて前川レポート、さらには産業構造調整論ですね、そしてこれを受けて農政審。こういう一連の動きを見ますと、本当にこれは単なる外圧ではなくて、日本の政治の中枢あるいは財界の中枢の中に、日本農業をつぶしてもいいんだという考え方があるのではないかということすら考えざるを得ないと思うのです。  したがって、この米の問題というのは、御承知のように単なる食糧の問題ではなくて、我が国の歴史の問題でもありますね。水田に水が張られたときの日本の姿というのは、本当に青々としてみずみずしいのですね。これが消えていくかどうかという問題なんです。それを考えますと、本当にこれは農水省としましても、今までのようなスタイルでは私はだめだと思います。そういう意味で、けさからお聞きしながら、もう委員の皆さん本当に必死になって発言をしておられるこの重要性を、ここでお互いに認識をして出発をしなかったら大変なことになると思います。  私の持っておる時間は二十分しかありませんから、きょうはそれ以上のことを申し上げません。きょうは本当に夜遅くなっているのですけれども、各党必死の思いで発言をしているわけでして、みんな時間が足らないから存分なことは言えません。きょうは、もう委員長も十分おわかりのことと思いますけれども、ぜひこの重要な局面を打開するために本当に奮闘する必要を痛感しましたので、感想として申し上げておきたいと思います。  それから、今度の米価引き下げでございますが、これは牛肉、オレンジの自由化を決めた直後、政府としても国民の批判をかわすためもあって、国内対策強化していくとかいろいろなことを言っておられる。国内対策の第一号がこれでしょう。私は、国内対策を云々しているけれども、今度の米価引き下げ、これが最初の国内対策ではないかというふうに思われるのですよ。いや、牛肉、オレンジの問題とは別だとおっしゃるかもしれないけれども、実際には米もつくり酪農もしている農民がいるわけですから。そうすると、これは国内対策の第一号が米価引き下げということになるのじゃないかというふうに考えますと、これまた重大な中身を持っているのですが、この点はいかがですか。
  220. 近長武治

    近長説明員 日本農家の専業的といいますか、ある特定の作物を栽培している農家もおりますが、かなりの農家の方というのは複合的な経営をやっております。特に稲作との複合は、先生おっしゃるようにかなり多いと思います。  これは、施設園芸につきまして言えば、例えば土の入れかえというような点で言いますと、施設園芸と稲作というのもある意味では密接な関連があるということでございますので、当然稲作の問題というのは、他の農業経営の問題と密接な関連があるというふうに私たちも十分考えております。
  221. 山原健二郎

    ○山原委員 牛肉、オレンジの自由化のその国内対策として米価引き下げる、これではもうたまったものではないわけでございまして、全くこれは許しがたい行為だと指摘をしておきたいと思います。  それで、現在の算定方式でも生産費を償える農家の割合は、今まで論議されましたように極めてわずかですね。ことしは見送りとなったということでございますけれども、先ほどから出ておりますように一・五ヘクタールに満たない稲作農家、これは全体の九一%の稲作農家ですが、これを算定対象から除外するという方式が検討されてきたわけです。一・五ヘクタール以上の平均規模は二・六ヘクタールですから、この規模以下は九五ないし九六%に当たりまして、この圧倒的多数の稲作農家生産費を償えないことになる。これが今度の方式基本的な性格であるというふうに考えますと、大変重大です。  そこで、私は自分の県、高知県ですが、高知県、また中国、四国の現状を農水省の調査に基づいて見てみますと、昭和六十二年の農業調査によりますと全国平均よりさらに厳しく、小規模なのですね。二ヘクタール以上は高知県では一・二%しかありません。それから、中国、四国全体で見ますと〇・六%にしか達しないのです。したがって、二・六ヘクタール以上となりますと、高知県では一%に足りません。中・四国では〇・数%というふうになりまして、九九・数%は除外となる。しかもこの方式を導入したら、いずれ一・五ヘクタールを五ヘクタールに引き上げていこうという考えも政府内にあるわけでございますから、こうなると中・四国では〇・〇%、限りなく一〇〇%に近い農家算定対象からさえ除外されることになります。したがってこの新方式なるものは、全国的に言えることではありますけれども、特に作付規模の小さい高知県あるいは中国、四国では米をつくるに及ばずと言うに等しい結果になるのでございまして、こんな方式は当然導入すべきでないと考えるのですが、お伺いしたいのです。
  222. 近長武治

    近長説明員 今回の新算定方式というのは、小さい規模農家を切り捨てるというような考え方ではなくて、むしろそういう小さい規模農家でも生産組織集団的な取り組みあるいは作業受委託、そういうようなさまざまな方法で生産性を上げる方向に経営を改善していっていただきたい、こういうような考え方があろうかと思います。  ちょうど先生のお話の高知県の事例でございますが、ある施設園芸農家、実は先ほど触れましたように、施設園芸の場合には稲作とかなり結びつく傾向があるわけでございます。これは非常にいい事例の一つではありますので、すべてがこうなるということではないと思いますが、施設園芸農家の方がその稲作部門をむしろ拡大して、施設園芸というのをやめまして他の施設園芸農家の方の稲作部門の作業を請け負っていく、これで現実に十数ヘクタールの経営規模を持った稲作経営が育っているわけでございます。したがって、平均反別が相当小さいというような地域であってもかなり生産性の高い稲作経営が実現し得る、こういう余地があろうかと思いますので、むしろ私たちとしては新算定方式を契機としながら、各地でそういうような動きがもっと活発に出ていくということを期待したいというふうに考えております。
  223. 山原健二郎

    ○山原委員 その問題についてはまた反論もありますけれども、時間の関係で次へ移ります。  次は、食管法との関係の問題でございます。  食管法は申し上げるまでもなく、生産者米価を決める際、生産費を償うことを最も重要な要件として、算定要件の第一番に規定をしております。圧倒的多数の稲作農家米販売農家生産費を無視するやり方は、この食管法の規定にも反するものだというふうに思います。そういう意味でも導入すべきではないと思いますが、この点はいかがですか。
  224. 近長武治

    近長説明員 食糧管理法に基づきます生産費所得補償方式、これはお話のように、「再生産確保スルコトヲ旨トシテ」、こういうふうに規定されているわけでございますが、生産者米価についていかなる農家をこの対象として生産費及び所得を補償するというふうに考えていくか、これは価格政策のあり方としては大変重要な問題であろうかと思います。  今回、やはり米価審議会の小委員会の中で慎重に検討した上、現在の稲作生産構造あるいは稲作をめぐる諸事情の中で、これからの中核的な担い手たるべき、そういう担い手層基礎にした生産費所得補償方式、そういう米価算定方式が提言されたわけでございます。私たち、現実の価格政策のあり方としてもこの方法は妥当であるというふうに考えられますし、食糧管理法の規定の上におきましても何ら問題はないというふうに考えておりますので、やはりこれからはこういうような方式を中心にしながら、生産者米価政策を運営していくべきものというふうに考えております。
  225. 山原健二郎

    ○山原委員 申し上げるまでもなく食管法第三条は、「生産費物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こうなっているわけですが、物価その他の経済事情を見ましても、昭和五十二年と六十二年を比較してみますと、消費物価は三四・四%の伸びです。賃金指数は製造業で六〇・三%の伸び、これに対して生産者米価は一・九%の伸び、極端に抑えられ、実質大幅引き下げ生産費だけでなく物価その他の経済事情を勘案すれば、二年連続米価引き下げなどはとんでもないことであって、また大幅引き下げにつながる新しい方式の導入の方針そのものを私どもは撤回すべきだと思います。もちろん、撤回とはきょうおっしゃらぬと思いますけれども、撤回すべきだ、食管法の立場からいえば当然そういう結論が出てくると思っていますが、この点はいかがですか。
  226. 近長武治

    近長説明員 ただいまお話しの物価その他の経済事情の中で、米の需給事情というのも大変重要な経済事情一つでございます。御案内のように、現在、我が国におきましては、米の生産力と需要の現実の量との間にはかなり大きなギャップがあるわけでございます。したがいまして、そういうような状況からいたしますと、これまで行われていました価格はおおむね妥当であるというふうに考えておりますし、今回の四・六%引き下げというこの算定は、いろいろな算定要素の積み上げによって諮問値として算定したものでございますけれども、この算定の内容は妥当なものだというふうに考えております。
  227. 山原健二郎

    ○山原委員 昨年の五・九五%の引き下げによりまして、例えば秋田県、これは農協中央会の試算ですが、減反分を除いても百五十億円の減収というふうに試算をしております。青森県の農協中央会も、これは学者に依頼してまとめた調査結果によりますと、昭和六十二年の米価引き下げ、減反強化、農産物輸入自由化等と、建設業やサービス業など他産業に及ぼす影響を合わせますと、五百十一億円以上になると試算をしております。これは、農畜産分野の減少額の二・〇九倍でありまして、地域社会そのものの空洞化を進行させつつあると報告をされております。  そこで伺います。農水省の調査で昨年度の農家農業所得が前年度に比べてどうなっているかということですが、これはいかがですか。さらに、稲作収入はどういう状態になっているのでしょうか。
  228. 海野研一

    海野説明員 お答え申し上げます。  六十二年度の農家経済調査によります農業所得は九十六万円ということで、前年度を七・一%下回ったわけでございます。これは一方で農業経営費が、生産資材価格の下落等の要因で前年度に比べて三・九%減少しておりますけれども他方農業収益が五・〇%減少したということによるものでございます。  この農業収益減少につきましては、一方に野菜とか肥育牛とか価格上昇から増加しているものもございますけれども稲作、鶏卵、工芸作物というようなものが落ち込んでいるということでございます。そのうち稲作だけをとりますと一二・七%の減少ということでございまして、これは先ほど申し上げましたように、作付面積減少、単収の減少ということで収穫量が八・八%落ちているということがございます。それ以外の部分は、価格の低下と品質の低下によるものでございます。
  229. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろ複雑な要素はあると思いますけれども米価引き下げ、減反等による影響があることは事実でございまして、農家所得は農外所得の伸びに支えられて二・二%の伸びとなっていますが、農業所得は今おっしゃったように七・一%減、特に稲作収入は、先ほどもお答えがありましたが一二・七%減。つまり、どういうことかといいますと、農業所得に多くを頼っている専業農家、いわゆる担い手層が大きな直撃を受けている。こういう点から見ましても、米価引き下げはやるべきではありませんし、政府みずからが言ってきた担い手層に焦点を当てるということとも矛盾をするわけでございまして、ことしだけでなく、今後もこういう新しい方式は導入すべきでないということを強く強調して、私の質問を終わります。
  230. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  231. 藤田スミ

    ○藤田委員 午前中の米価引き下げの今回の諮問案について、引き続いて質問をいたします。  農民の苦難と言うべきこの米価引き下げの問題、しかし苦難は米価引き下げだけではありませんで、減反の強化、強制によってもうつくるものがないのだ、これはうめきにも似た声が全国各地に広がっています。  さらに、農民の苦難になっているのが、土地改良事業の負担金問題であります。とりわけ国営の農地基盤整備事業は、農民負担の大幅増によって農家の経営と生活を圧迫し、離農の原因の一つになるほどの深刻な状況になっています。農民負担がこのような大幅増になった原因として、政府の総需要抑制政策による工期のおくれ、国が進めた設計変更、また特別会計方式の導入による人件費の新たな負担及び金利負担増などがあると指摘されています。  そこでまず最初に、農水省としてこの原因と責任を自覚すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  232. 松山光治

    ○松山説明員 国営の事業におきます事業費が当初計画に比べましてかなり増高している地区があるわけでございまして、私どもといたしましてもいろいろと事情はあるわけでございますけれども、その状況について厳しくこれを受けとめておるわけでございます。増高の誘因につきましては、地区によって事情が異なっておるというふうに考えておりますけれども、一般的に申しますれば、今先生御指摘の工期の遅延といったような問題が一つあるわけでございますが、そのほか、その間におきます物価上昇等の要因がございますし、かつまた、地元の要請によります整備水準の向上といったような要素もございます。あるいは計画段階との比較で申しますれば、現地の地形なり地質等の状況に応じて、さらに工法の見直しを行うといったようなことも必要な場合が間々あるわけでございます。私どもといたしましては、事業の実施に当たりましては、できるだけ事業費や工期については変更が生じないように、かつまた、できるだけ事業費の低減を図っていく、こういう基本的な立場で臨んでおるつもりでございますけれども、今申し上げましたようなことで事業費が増高するという場合もあり得ることにつきまして御理解をいただきたい、このように考えておる次第でございます。
  233. 藤田スミ

    ○藤田委員 それが、国営の土地改良事業に問題が噴出しているから、私はここで問題にしているわけです。だから、御理解を賜りたいとおっしゃいましても、なかなかそうですかと言うわけにいかぬわけです。  もう一度お伺いしますが、国営の土地改良事業に問題が非常に多いということについて、どういうふうに原因と責任を感じていらっしゃいますか。
  234. 松山光治

    ○松山説明員 やはり国営の場合には、その規模の大きさなり難しさその他もございまして、かなり工期もかかる、こういったような要素もあろうかと思います。それと、先ほど先生の方から御指摘のございました特別会計の関係があるわけでございますが、できるだけ工期を短縮したいという考え方で財投資金を活用して事業費を確保していく、そういう手法をとったわけでございますけれども、そのための金利負担の問題が工期の問題とも関連いたしまして負担の増につながっておるという事実については、これは否めないところであろう、このように考えております。
  235. 藤田スミ

    ○藤田委員 おっしゃるように、非常に国営は事業が大きい、そして特別会計の関係上その金利負担も非常に重い、こういうことに大きな原因があるわけです。  土地改良事業の内容を見ますと、一級河川の防災事業が組み入れられ、その費用の一部が農民に負担させられたり、立派な農道をつくってその費用を農民が負担していたり、そういうことがあるわけです。本来、一級河川の防災事業や公共性の高いものについては、これは国が責任を持つべきものではないでしょうか。
  236. 松山光治

    ○松山説明員 事柄の公共性の程度に応じまして、御案内のように補助率の高低が決まっておるわけでございます。  それで、今の河川改修の話、ちょっと私具体的な問題としてどういうことなのか、勉強させてもらいたいとは思いますけれども、例えば農道なんかの場合にいたしましても、その重要度といいますか公共性の程度に応じまして、例えば県、市町村の負担も入ってくるといったようなことで、必ず同じような程度に個々の受益者がそれを負担しておる、こういうことでは必ずしもないはずである、このように考えておる次第でございます。
  237. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、その点でやはりこの際政令で決めている負担区分というものを今検討するべきじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  具体的な問題でというふうにおっしゃいましたので、私はこうした問題が非常に集中的にあらわれていると思います秋田県能代地区の国営総合農地開発事業について、ぜひ真剣に御検討をいただきたいということでお伺いをしていきたいのですが、この事業は、何と一九六八年、今から二十年前に取りかかって、政府の総需要抑制政策の結果、いまだに完成せず、工費も当初の八十八億五千万円から何と五倍の四百四十五億五千万円、こんなところにまで広がってしまったわけです。事業がおくれ、事業費がふえてきたのは、もちろん総需要抑制政策だけではありません。その中には、米の生産抑制で、当初ここは全面開田の計画を立てておりましたが、水田を四六・三、畑を五三・七というふうに割合を変えて全面水田の計画の変更をしました。そういう中で、例えばじゅんさい畑というような造成で、非常に負担が一層重くなるというようなこともありました。また、一号導水トンネル工事にも六年かかって、これだけで当初事業の六一%を費やしているというようなこともあります。あるいはまた、河川構造令の改革で――改革というのですか、変更というのですか、そういうもので防災関係の負担が農民の肩にかかってきたというようなこともあるわけです。  こうした結果、当初は十アール当たり米一俵分だと言われておりましたが、その約束は今八倍に膨れて三万三千円、未造成農地に対しても十アール当たり二万一千円の負担増になっているわけです。今後計画変更を予定しているそうですが、いずれにしてもこれで農業をやっていけるわけがない。当初、農民は米一俵と言われていたから、こういうことで今非常に苦悩しているのです。先ほどから私がるる指摘してきたような点を政府が誠実に実行してくだされば、これは米一俵分の負担で現在済むはずなんです。ところが、政府としてこういうことを検討されないとすれば、これは大変なことになるわけですから、ぜひこの点を御検討をいただきたいと思います。  それから、地区除外の要求が現地から出されております。これも、もう事業が大幅におくれて事業費が増大したこと、作物の価格保障もなく、転作奨励金の対象にもならない畑を半分以上も耕作することに対する不安と怒りが高まっていく中で、地区除外の要求というのがいよいよ膨れてきているわけですが、こうした問題も国が責任を持って前向きに検討していただきたいわけでありますが、いかがでしょうか。
  238. 松山光治

    ○松山説明員 能代地区につきましては、御指摘がございましたように四十三年度に着工した地区でございまして、農地造成、かんがい排水、それに区画整理といったような工事を、組み合わせた工事を行っておりまして、六十四年度に完成する、こういう見込みの状態になっておるわけでございます。  事業費につきましては、今計画変更の取りまとめ中でございまして、先生のおっしゃられました四百四十億余よりも低い数字になるのではなかろうかというふうに見込んでおるところでございますけれども、その間におけるもろもろの事情の変化の中で事業費が増高しておることは事実でございます。  私どもの把握しております原因の主なものを申し上げておきますと、オイルショック等によります労務費なり資材費等の上昇一つございますし、それから地元からの要請を踏まえました排水路のライニングの問題、あるいは道路舗装といったような整備水準の向上の問題もございます。それにこの間、米の生産調整問題が起こった等々のこともございまして工事期間が長期化したといったようなこともあるわけでございまして、その辺の事情についてはまた御理解いただかなければいかぬだろうと思っておるわけでございます。  能代地区の農家負担の問題につきましては、既に高率の国庫補助も行っておるという状況一つあるわけでございますが、私どもといたしましては、今後県とも十分相談したいと思っておりますし、また国といたしましても、昭和六十二年度に創設いたしております計画償還制度なり、あるいは本年度に創設いたしました土地改良事業償還円滑化特別対策事業の適用といったような可能性についても検討をいたしまして、できるだけ受益農家の負担の軽減問題を考えていきたい、このようなことを考えておる次第でございます。  地区除外の申請の扱いの問題でございますけれども、御案内のように土地改良事業、一定の地域を対象といたしまして多数の関係農家の参加によって実施するものでございます。したがいまして、事業の実施に当たりましては関係農家の同意を得る等、一定の手続を経て行う、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、事業の開始後、個々の農家のいろいろな御事情はあるわけでございますけれども、その都合で脱退が自由にできるということにはなっておらないわけでございます。能代地区の場合には、事業実施地区の一部でかつて事業によりませんで自己改善された方がございまして、そういうことも背景にしながら地区除外の申請がなされたという経緯もございます。ただ地元では、やはりそういったことを認めてまいりますと、それ以外の受益地の負担の問題も絡みまして、地区除外を認めないという議決を土地改良区として行ったという経緯があるというふうに承知しておるわけでございます。  いろいろと厳しい状況の中、関係農家の方には御苦労をかけるわけでございますけれども、その辺の事情もひとつ御理解をいただきまして、事業の円滑な推進に御協力いただきたいものだ、このように考えておる次第でございます。
  239. 藤田スミ

    ○藤田委員 大変時間が少ないのが残念です。  高率の国庫補助を既にしているというふうにおっしゃいますけれども、また、原因としては地元からの要請で排水路の整備だとかそういうこともあったとおっしゃいますが、大きなところで国の責任というものもあるわけですし、それからまた、当然今日時点で見て、例えば道路の整備舗装にしても、それはやはり考え直さなければいけない、河川の改修にしてもこの際国の補助というものを考えなければいけない、あるいは県、市町村の負担の問題についても積極的に農民負担を軽減するということで、国の方からいろいろお互いの知恵を出し合うという積極的な立場をとっていただきたい。地区除外の問題が出てきて、そしてこの問題を解決していくためにも、今国がしかるべき責任を果たしていくことによって前へ進むんだというふうに私は考えるわけです。そういうことでお取り組みをいただくということをお約束していただいたと思いますが、もう一度お約束をしていただいて次の問題に移ります。簡単で結構です。
  240. 松山光治

    ○松山説明員 今、例えば舗装をすればこれぐらいのお金がかかります、砂利式ならこの程度ですと地元に相談して、費用整備水準を選択していただくといったようなやり方を実はやっておるわけでございますが、この地区は既に舗装をしておるといったようなこともあるわけでございます。残されました工事につきましては、できるだけ工事費が安く済むような、そういう考え方のもとにいろいろと相談をしたいと思っておりますし、かつまた、地元負担の軽減の問題につきましても県ともよく相談したい、また私どもといたしましても、今ある制度の活用問題といったようなことを十分検討していきたい、このように考えておる次第でございます。
  241. 藤田スミ

    ○藤田委員 次の問題に移ります。  六月二十四日の新聞に、農政審小委員会中間報告が報道されました。「コメの生産・流通の改革案として①政府全量管理から部分管理に移行、コメの需給価格を安定させるために政府一定数量管理するが、大半は自由流通にゆだねる②政府直接統制から間接統制方式に切り替え、コメ取引所を創設して通常の取引は全面的に自由にするが、価格が乱高下する場合は政府価格操作する――の二方式をあげている。」ことが明らかになりました。これは実に驚くべきことです。  私は三月二十二日の日に、こうした問題で食管改悪の問題を取り上げました。そのときに経団連の主張というものも示しましたが、まさにそれらと一致するものであります。しかもそのとき、甕食糧庁長官はこう言われました。「いわゆる部分管理方式というのが、具体的な内容は必ずしも一義的でございませんけれども政府管理する数量を流通の一部分にとどめてそれ以外の米は自由流通だというような方式だと理解いたしました場合には、これで果たして米の需給価格の安定が的確に達せられるものかどうか問題点が多いように思います。」こういうふうに答えられたのですよ。このとき、既にもう一方でこういう検討をしていたわけです。私は、余りこういう言い方はしたくありませんが、全く二枚舌としか言えないじゃありませんか。どうなんでしょうか。
  242. 近長武治

    近長説明員 決して二枚舌ということではないと思います。ただいまの新聞の記事は、恐らく農政審議会の中の企画部会の中に第一小委員会というのがございまして、そこで現在、米管理の問題を中心にしながら価格政策の一環としていろいろ論議が行われている、そういうことについての記事ではないかなというふうに思います。  若干大事な問題でございますので、少し詳しく御説明させていただきたいというふうに思います。  農政審議会の企画部会の第一小委員会では、一昨年の農政審議会報告を受けまして、昨年の二月以降、米管理制度の変遷、それから米流通の現状、諸外国における穀物政策等を踏まえながら、米及び稲作の持つ重要性と影響の広がりを念頭に置きつつ、米の生産、流通、消費をめぐる諸課題について検討を行ってきております。その検討についてはまだ結論が出ておりませんが、農政審議会委員の異動がございまして、六月の十七日に農政審議会、それから企画部会がそれぞれ開催されたわけでございます。その際に、その論議につきまして検討経過報告ということで取りまとめが行われまして、企画部会にこの小委員会から報告がなされたわけでございます。  この小委員会におきましては今後、恐らく本年中が目途だというふうに伺っておりますが、米管理基本的な枠組みだとか需給動向だとか、あるいは食糧管理制度の運営の改善の取り組み、現在、食糧庁では、この三月に定めました米流通改善大綱に基づきまして手順を踏みながら流通改善をやっておりますが、そういうことも含めた食糧管理制度運営の改善の取り組みということを踏まえてさらに論議を深めて、そしてその検討結果が取りまとめられていく、こういうふうになろうと思います。したがいまして、この検討経過報告の内容というのは、あくまでもこれまでのその第一小委員会におきます検討の経緯を整理した途中段階のものでございます。したがって、農政審議会一つの方向づけをしたということではございませんし、当然のことながら農林水産省の施策として固められたものではないということでございますので、そういう点について、これは大変重要な問題でございますので、誤解のないようにぜひお願いしたいと思います。  なお、今お話しのように、農政審議会の中で部分管理だとかあるいは間接統制への移行というような方向づけを持っているのではないかという御疑念ではないかなというふうに思います。ただいま申し上げましたように、農政審議会の検討は、現在の段階でまだ一定の方向を示しているものではございませんが、特にこの検討経過報告というのは、これまでの提出資料についての内容の整理でございますとか、各委員のいろんな御発言についてのそれなりの整理ということでございますが、特に部分管理、間接統制というお話がございましたので若干触れさせていただきますと、この部分管理あるいは間接統制という言葉の中でも、それぞれこういう言葉を使われる方がまた違う概念を持っておられるようでございます。したがって、この農政審議会委員の中で、やはり部分管理という言葉はどういうような内容を持っているんだろうか、あるいは間接統制ということについてはどういうメリットあるいはデメリットがあるんだろうか、こういう論議がございまして、この検討経過取りまとめ報告の中ではそういうことについて、一定の方向づけではなくて、非常に客観的にそれまでの検討の内容を整理してある、こういうようなことでございますので、大変長くなって恐縮でございますが、重要なことであろうかと思いましたので、少し時間をかけまして御説明さしていただきました。
  243. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が参りましたので、これでもう私は終わらなければなりませんが、しかし、いろいろ弁解をされながら、決してそれを全部否定されたことではないという点で、私はおっしゃるように事の重要性というものを考えています。そして、今回の米価引き下げとこうした問題は明らかにリンクしているものじゃないか。大多数の米作農家を切り捨て、輸入に耐えられる農家だけを残し、他方で流通の自由化を行って米の輸入を受け入れられるような流通体制にしていく、行き着く先は結局米の輸入自由化、こういうことになってはならない、してはならないという政務次官の御決意を最後に聞いて、終わります。
  244. 北口博

    ○北口説明員 御指摘のように、米の問題は極めて重要な問題でございますから、我々は食管の堅持ということを建前にしながら、今後とも一生懸命前向きに取り組んでまいります。
  245. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  246. 菊池福治郎

    菊池委員長 串原義直君。
  247. 串原義直

    ○串原委員 本日、当農林水産委員会は長時間にわたり、昭和六十三年産生産者米価引き下げは、昨昭和六十二年度五・九%引き下げに続くものであり賛成できない、さらに、稲作農家一・五ヘクタール以上を対象にする新しい生産者米価算定方式は、稲作の実態に沿わないものであり採用すべきではないという立場から、熱心に日本農業の将来展望、食糧自給率向上などについて慎重な質疑が行われてまいりました。  日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合、日本共産党・革新共同は、昭和六十三年産生産者米価決定に関する決議案をまとめ、政府に具体的な施策の実施方を要求したいと考えました。しかし、残念ながら、自由民主党の賛成を得られませんでした。時、牛肉、オレンジに関する日米間の自由化交渉の決着を見、日本農業の危機であるという声が農業団体、農業経営者、さらに消費者の立場からも大きく上がっているときにあり、昨年に続く米価引き下げは異常な事態と我々は受けとめており、この機会における委員会決議に自由民主党の賛意を得られなかったことはまことに遺憾であります。  そこで、日本国民の命を守る日本農業の発展、農家経済の向上を心より期待しつつ、四党共同提案の決議文を朗読し、記録にとどめ、我々の意思を明らかにいたしたいと存じます。     昭和六十三年産生産者米価決定に関する件(案)   政府は、本日、米価審議会に対し、昭和六十三年産生産者米価について、四・六%の引下げ諮問を行った。   昨年に引き続く生産者米価の大幅な引下げは、農業所得減少と減反政策の強化に苦しんでいる稲作農家の経営を一層窮地に追い込むとともに、八品目及び牛肉・オレンジの自由化決定等に伴う不安と相俟って、農業・農村の活力低下をもたらすことは必至であり、極めて遺憾である。   また、作付面積一・五ヘクタール以上の生産費のみを対象とする新算定方式の実施が本年は見送られたとはいえ、諮問された米価は米の販売シェアの大宗を担っている農家層のコストをつぐなうものでなく、規模拡大を志向するいわゆる中核的農家の経営に大きな打撃を与えるものである。   よって政府は、昭和六十三年産米価の決定に当たっては、算定要素を抜本的に改善し、再生産所得確保する価格の実現を図り、引下げは行わないこと。   あわせて、稲作農業の将来展望を切り開くため、農業生産基盤の整備農家負担の軽減、生産規模拡大と後継者対策をはじめとする担い手育成対策強化、農村地域の活性化対策の拡充、生産資材価格の引下げ、国の責任による米の需給均衡対策の確立と米の消費拡大対策強化等について万全の措置を講ずること。   また、食糧管理制度の根幹を堅持するとともに、米の市場開放要請に対しては、完全自給を確認した国会決議を踏まえ、断固として拒否すること。   右決議する。 以上です。  この四党提案の決議に対し、最後に政府の御所見を承りたく存じます。(拍手)
  248. 北口博

    ○北口説明員 ただいまの御意見につきましては、本日の委員会におきましても種々御論議をいただいたところでありまして、昭和六十三年産米価は、現在米価審議会で審議中でございますので、その答申を待って適切に決定してまいりたいと存じます。  なお、その他の点につきましては、本日の委員会におきまして種々御答弁を申し上げたところでございます。何とぞ、よろしくお願いを申し上げます。      ────◇─────
  249. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、お諮りいたします。  先般、香川県及び岡山県の農林水産業の実情を調査するため委員を派遣いたしました。  派遣委員からの報告書は、本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は本号末尾に掲載〕     ─────────────
  251. 菊池福治郎

    菊池委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後九時四十九分散会