○京谷
説明員 今回の牛肉についての日米及び日豪間の合意におきまして、輸入枠を撤廃した後、
つまり昭和六十六年度以降でありますが、その際の国境措置の一環としまして、ただいま先生から御指摘のございました緊急
調整措置が織り込まれております。
この中で、まずお尋ねの第一点でございますが、緊急
調整措置の発動要件といたしまして、
一定のトリガー
数量を決めることになっておりますが、これはお話のございましたように、前年度の輸入実績または輸入可能量のいずれか大きい方の一二〇%を輸入の量が超えるというふうな事態が、トリガーレベルとして決められておるわけでございます。このレベルの判断に
当たりましては、交渉内容であったわけでございますけれ
ども、最終的にこの一二〇%という合意を得たわけでございますが、私
どものこの主張の根拠は、六十年度と六十一年度それから六十二年度の
我が国の輸入牛肉の増加実績が一九%程度であった、それからまた、今回合意されました六十三年から六十五年にかけての経過期間における輸入
数量の増加が、一八%ないし二八%というレベルで増加していくことを約束をしたわけでございますが、そういったレベルから見まして、国内の
生産保護の
観点から緊急措置をとるべきレベルというのは、一二〇%ということで妥当であろうという判断をしたわけでございます。
それから二番目に、アメリカの食肉輸入法との
関係についてのお尋ねでございますが、アメリカが自国の食肉輸入法による
一定の制限措置をとるために、やはりトリガーレベルを決めておりますが、このトリガーレベルを決めるに当たっての一一〇%という数値は、前年度の輸入実績等に対する
比率ではございません。
我が国と違いまして、比較的輸入が安定をしておりました一九六八年から七七年度にかけての年
平均輸入量を、その当時をベースにして、
直近時のアメリカ国内における食肉の
生産状況、
消費状況というものから毎年の輸入許容量を一応決めまして、その
算定された輸入許容量の一一〇%というものをトリガーレベルとして設定をして、それを超えるような事態になったときに制限措置を講ずるということに相なっておるわけでございまして、アメリカの食肉輸入法で決めております一一〇%というものと今回我々が日米及び日豪合意の中で決めております一二〇%というのは、全く比較対照すべき筋合いのものではないというふうに私
どもは考えております。
それからまた、アメリカの食肉輸入法に基づく制限措置というものは、過去におきまして一九七六年の四分の一・四半期に一度だけ発動されております。アメリカ国内法による一方的な措置として、制限措置、
数量制限をとることにしておりますけれ
ども、これが一方的に発動された場合にガット違反に該当するものであるという自覚は、アメリカ自身も感じておると考えております。したがって、このような制度を持っておりますけれ
ども、一方的な措置として
数量制限をするという実際のアクションは行われていない、とられていないという実情にございます。
それから第三点目のお尋ねでございますが、今回の緊急措置とガット十九条のいわゆるセーフガード規定との
関係でございます。実は今回の日米及び日豪の合意で決められました緊急
調整措置は、ガット十九条に決めておりますセーフガードと全く違うものだという
理解でございます。したがいまして、今回の合意による緊急措置のほかに、ガット十九条によって許されているセーフガードを発動する権利は、依然として我々は保有をしておるという
考え方でございます。
御承知のとおり、ガット十九条のセーフガードは、特定の商品を決めておるわけではございませんけれ
ども、輸入量が急増した結果、国内産業に重大な
影響を与えるような事態が生じたということを要件にしまして、ガット上の義務あるいはガット上行った譲許を撤回するというふうな
一定の権利を締約国に与えておるわけでございますが、この条件に当たるものとして現実にガット十九条の規定を発動するというのは、大変難しい手続であるという
理解を私
どもは持っております。それを留保しつつ、さらにこのガット十九条規定よりもより容易に発動できる緊急措置として、今回の合意による緊急
調整措置を
確保したというふうに考えておるわけでございます。
ただ、この発動に
当たりましては、特に今回の合意で決めた緊急措置の内容というのは二つございます。相手国との合意を得て
一定の
数量制限を行うという方法と、それからその合意が得られない場合には、トリガー
数量を超える輸入が生じたということを前提にして高率関税をかけるという二つの方法をとっておりますが、
数量制限を行う場合には、相手国と合意をしていなければ直ちにガット違反になるという問題がございます。したがいまして、その部分については相手国との協議をしていくということをうたっております。仮にこの協議が整わない場合には、国内法上の
一定の手続に従って高率関税をかけるという一方的な措置がとれる仕組みになっております。関税部分については、そのような手当てをしておるわけでございます。
具体的に、ただいま申し上げましたこの緊急
調整措置、二つの種類がございますが、これの発動手順といたしまして、私
ども、この緊急
調整措置を実際に動かす時期というのが、枠が撤廃されます
昭和六十六年度以降のことでございますので、事務的にこれからまた発動の具体的な手順について手続上の方法をよく検討していきたいと思いますが、
数量制限という方法をとる場合につきましては相手国との協議をした上で、その協議結果に基づきまして、例えば貿易
管理令、貿管令の規定を使って
数量制限措置を実施していく。あるいはまた高率関税の適用につきましては、例えば関税定率法、これは通常関税率についてもいずれそのような法的な措置をとる必要があると思いますけれ
ども、関税定率法上の規定の
整備をした上で、その規定に従って緊急
調整措置として実行する高率関税の実施を図っていく、そういうふうな手続を
整備していく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。