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1988-05-18 第112回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十八日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       大石 千八君    川崎 二郎君       熊谷  弘君    小坂善太郎君       近藤 元次君    杉補 正健君       田邉 國男君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       長谷川 峻君    保岡 興治君       柳沢 伯夫君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       安井 吉典君    柴田  弘君       玉城 栄一君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    滝沢 幸助君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         外務省経済局次         長       内田 勝久君         農林水産政務次         官       北口  博君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房総務審議官  鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産技術会         議事務局長   畑中 孝晴君         食糧庁長官   甕   滋君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         総務庁行政監察         局監察官    石和田 洋君         建設省河川局開         発課長     山内  彪君         会計検査院事務         総局第四局農林         水産検査第三課         長       山崎彌代一君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     河野  正君 同日  辞任         補欠選任   河野  正君     前島 秀行君 同月十八日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     柴田  弘君   佐々木良作君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   柴田  弘君     武田 一夫君   滝沢 幸助君     佐々木良作君     ───────────── 五月十三日  農畜産物輸入自由化反対食料自給率向上に関する請願五十嵐広三紹介)(第二五九一号)  同(五十嵐広三紹介)(第二六六六号)  同(五十嵐広三紹介)(第二七一二号)  同(安井吉典紹介)(第二七一三号)  農業生産コスト低減対策に関する請願五十嵐広三紹介)(第二五九二号)  同(五十嵐広三紹介)(第二六六七号)  同(五十嵐広三紹介)(第二七一四号)  同(安井吉典紹介)(第二七一五号) 同月十六日  農畜産物輸入自由化反対食料自給率向上に関する請願安井吉典紹介)(第二七五九号)  同(五十嵐広三紹介)(第二八五〇号)  同(安井吉典紹介)(第二八五一号)  農業生産コスト低減対策に関する請願安井吉典紹介)(第二七六〇号)  同(五十嵐広三紹介)(第二八五二号)  同(安井吉典紹介)(第二八五三号) 同月十七日  農畜産物輸入自由化反対食料自給率向上に関する請願安井吉典紹介)(第二九一六号)  同外四件(安井吉典紹介)(第二九七八号)  農業生産コスト低減対策に関する請願安井吉典紹介)(第二九一七号)  同外一件(安井吉典紹介)(第二九七九号) 同月十八日  農畜産物輸入自由化反対食料自給率向上に関する請願五十嵐広三紹介)(第三〇六七号)  同外一件(安井吉典紹介)(第三〇六八号)  同(五十嵐広三紹介)(第三一九七号)  同外二件(安井吉典紹介)(第三一九八号)  同(五十嵐広三紹介)(第三三四五号)  同外八件(安井吉典紹介〉(第三三四六号〉  農業生産コスト低減対策に関する請願五十嵐広三紹介)(第三〇六九号)  同(安井吉典紹介)(第三〇七〇号)  同(五十嵐広三紹介)(第三一九九号)  同外一件(安井吉典紹介)(第三二〇〇号)  同(五十嵐広三紹介)(第三三四七号)  同(安井吉典紹介)(第三三四八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月十七日  日ソサケ・マス漁業交渉に関する陳情書(第五四号)  国有林野事業改善に関する陳情書(第五五号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法年金の額の改定特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七五号)  農林水産業の振興に関する件      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法年金の額の改定特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前島秀行君。
  3. 前島秀行

    前島委員 農林年金審議でありますけれども、大臣が参議院との関係で途中で行かれるということですので、ちょっと一点ほど日米交渉の件について、質問というよりか今までの経過整理をさせていただきたい、こういうふうに思います。  特に整理をしてみたいというのは、過去のいろいろな討論の中で、大臣、いろいろマスコミを気にされていましたし、そんなこともありましたもので、過去の部分を、今までの経過整理する部分については遠慮もないだろうしということもありますので、私が理解をしている点を中心に、こんなふうな形で整理をしているけれども、認識としていいか、こういうふうな趣旨であります。  といいますのは、今度の一連の交渉の中で、まず私は第一段階というのがあったと思うのです。その第一段階は三月段階最初訪米された段階だったというふうに思うのですが、その第一段階、三月訪米の第一回のときの日本側の基本的な原則といいましょうか、基本的な態度というのは、いわゆる自由化は困難である、輸入枠の拡大という基本方針で臨むということだったのではないだろうか。この点について大臣は終始当委員会においても言ってこられた。第一段階で行かれたけれども、第一段階交渉段階では当然アメリカの方はこの原則については了承しなかった、これが第一段階における日本側の基本的な認識態度だ。  第二段階というのが、四月末から五月にかけての第二回目の訪米の時期。その第二段階において、日本側としてはまず牛肉に関して、輸入枠輸入制限枠撤廃、同時に課徴金新設等をしたい、細かな点は別として、これが牛肉に関する基本的な方針ではなかったか。オレンジの方は課徴金等々のあれはできないので、簡単に言うと、時間といいましょうか、それを稼いでいきたいというのが第二段階における日本側の基本的な態度ではなかったか。この輸入枠撤廃課徴金新設中心にして、かなりの交渉をしたけれども、結果として課徴金の問題で決裂してしまったというのが第二段階までの基本的な流れだったのではないか。  それからが第三段階だ。第三段階ということになりますと、当然パネルという、ガットという問題が出てきたから、これからの方法論、いろいろなことが考えられるけれども、大筋としてまず第一に、ガット舞台日本側の主張をする、立場説明する、そしてそのガット結論を得た形の中でその後の対応をしていくという、ガット中心とした、ガット舞台とした対応ということが考えられる。もう一つ考えられる方法としては、二国間交渉を引き続きやっていく、それで何とか結論を出していくという方法。いろいろな方法論はあると思うけれども、大きく言ってこの二つに第三段階のこれからにおける交渉方向というのがあるような気がするわけです。  そういう面で、最初にこのガット舞台としていくのか、それとも二国間という交渉を引き続きやっていくのか、その辺の方向性というのはどう考えられておるのかということをお聞きしたい、こういうふうに思います。
  4. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 まず、冒頭に申されました、マスコミの一部と私は従来とも丁寧に申し上げているのでございますが、たまたま困惑することがしばしばであるということを申し上げてまいりました。相も変わらず一部のマスコミにおいてそういう感じを受ける今日の事態というものを甚だ遺憾に存じております。これが我が国の利益あるいは日本農政の正しい認識にまとめようとすることに阻害になるかならぬかと言われれば、阻害になるという懸念を私は率直に申し上げておきたいと思います。  三月末に訪米しましたとき、それから四月末に参りましたときの経緯、それも踏まえながらガットの場あるいは二国間のことについて今お尋ねがございましたが、簡潔に順次御説明を申し上げたいと思います。  三月末に訪米をいたしましたときは、とにかく一月の日米首脳会議におきまして、一日も早くテーブルをつくって、そして双方で円満な話し合いを、こういうことで合意をされておった経緯があります。首脳同士の間でございますから極めて抽象的な合意でございます。それを受けてテーブルづくりに一生懸命に専念をいたしましたが、相手側は四月一日から牛肉かんきつ完全自由化、四月一日からしなければ、その約束をしなければという感じの受け答えでございまして、とてもではない、これではテーブルづくりも三月末にできないなと、半ば私もあきらめざるを得ないかなと思ったこともございました。しかし、ぎりぎりの段階で、話し合おうということになりましたので、三月末に訪米をいたしました。そして、友好国として円満な話し合いをしていこう、こういうことにいたしました。依然として従来の方針を譲らなかったのでありますけれども、とにかく話し合いは続けようということで三月末の場は終わったわけでございます。  引き続き、四月の下旬になりまして、我が方は仮説としてこのような考え方を持っておるが、そのことについてどう思うかというようなことで、今、議員おっしゃるように、いろいろ我が方の現実的な立場というものを相手理解をしてもらうようにお願いをするというか、話し合いをいたしました。向こうからも、とにかくアメリカ側の感ずるところを理解してくれという話、願いがございました。いずれにしても自由化は困難である、四月一日から完全自由化と言われても、それはだめなんだということで、従来の方針というものを明示しながらいろいろな手探りの状況話し合いをいたした経緯がございます。  そういう中で、アメリカ側は我が方の現実というものをなかなか理解しようとしません。ゴールデンウイークに入りましたけれども、粘り強くその点を主張いたしまして相手理解を求めたわけでありますけれども、全く困難、デッドロックに乗り上げるような状況でございまして、決裂というか物別れというか、話はそこでとぎれるというようなことでございました。  それにいたしましても、私としてはこれだけ多くの方々に関心を持たれておる牛肉かんきつ日米交渉というものの重さを考えまして、ゴールデンウイークの最中でございましたが、第二回目の話し合いの第八回会談で物別れに終わった直後、私はアメリカ国内に向けても、また日本に向けましてもワシントンから私の考え方を率直に申し上げたわけでございます。その内容はもう御存じのことでございますから詳しくは申し上げませんけれども、牛肉かんきつ存立を守るという立場に立って交渉に臨んだけれども極めて残念な結果に終わった、こういうふうに私は物別れ後の説明をいたしたわけでございます。  私の力足らず物別れに終わりました。結論を出すというつもりで参りましたけれども結論が出なかったという点については私の非力を省みておりますが、やはりここは守るべきは守るという考え方に徹する必要はあろうかと思いまして物別れに終わったという経緯を御了知をいただきたい、こう思います。  なお、その直後、五月四日にパネル設置ということになりました。これはガットの法理上当然のことでございますので、我が方からは反対はいたしませんでした。そしてパネルが設けられました。パネルが今後どのような陣容によってどのように取り運ばれるかはこれからのことでございますけれども、私は帰国後いろいろな場におきまして、とにかく一日も早い決着ということは前々から申し上げているところでございまして、どの時点までにどうするというスケジュールではなくて一日も早くということでわかってほしい。いや、総理の訪欧前には結論を出すべきだとか出すであろうとか、いろいろな書かれ方も言われ方もしてまいりましたけれども、私は一日も早くということだけで、あとはいろいろなチャネルを通じて友好国としての円満な話し合い決着に向けてさらに努力をするのは当然のこと、こういうことで今日に至っております。  したがいまして、最後のところでお触れになりました二国間あるいはパネルの場、ガットの場、どちらでどうしようとするのか、その方向づけでもというお話でございますが、あらゆるチャネルを通じてひとつ努力を積み重ねていかなければならぬ、こういうことでございます。相手反応国内外の評価、国内外の批判、国内外反応というものを暫時ここで冷静に見きわめながら今後の対応を考えていかなければならぬ、ただいま現在の気持ちを率直に申し上げておきます。
  5. 前島秀行

    前島委員 ガットの場、二国間、あらゆるチャンネルをということでありますけれども、今大臣が言われました経過を踏まえても、では引き続き二国間でという道を想定した場合、私が最初に言ったように第一段階、時間的な問題よりも中身的な問題ですね、終始困難だ、枠拡でいくんだというのが内容的な第一段階だったと私は思うのですね。それは終始大臣のこの委員会での質問に対する答弁であった、あるいはこの委員会における決議中身でもあったというふうに私は思うわけです。その第一段階を越えて第二段階のときに、大臣仮説とこう言ったけれども、第二段階というのはもう枠撤廃課徴金、こういうことでいったわけですね。二国間でいくということはこの延長線上でいかざるを得ない。もし二国間でいくということになると、大臣、もう一度第一段階までは戻れますか。私は戻れないと思うのですね。第二段階で、四月、五月の段階大臣があれだけ必死になって頑張ったけれども、第二段階の壁は破れなくて決裂をした、やむを得ず。ということになってきますと、二国間という選択をするなら、その土俵にしたならば、第一段階には戻れない、第二段階でもう一回やるかどうかというのが精いっぱいだと私は思うのですね。そうすると、大臣がこの委員会で言ってきた第一段階中身委員会決議をなおかつこれから守ろうとすると、二国間の交渉という選択はとれないではないか、こういうふうに私は思うのです、終始、大臣日本農業を守るんだ、畜産オレンジの農家を守っていくんだという立場を今後引き続き堅持していくならば。また、ここでの発言並びに委員会決議というのは国民に対する約束であり農民に対する大臣としての約束だと私は思うのですよ。そうすると、今まで私が整理をした経過からすると、二国間交渉ということはあり得ない。もし二国間交渉をするとするならば、第一段階、すなわち国会でこの委員会答弁をしてきたこと、国民約束してきたこと、農民約束してきたことと方針を変えなければ二国間交渉でまとめることができない、こういうふうに私は理解せざるを得ないと思うのですが、大臣、その辺のところどうですか。
  6. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃることを決して性急な御判断だと私は申し上げるわけではございませんけれども、まずこれから話し合うにいたしましても、パネルの場であろうと二国間であろうと、我が国現実理解させなければいかぬわけでございます。これが一番グローバルな一つ土俵でございます。その中にあって、外交交渉につきものであります仮説を設定しながら話し合いをするということは必要なわけでございますから、その話し合いは一挙にして崩れるか、あるいはその話し合いをもとにしてさらにどういうことになるか、まさにそれが話し合いでございまして、私は今までの経緯を顧みながら、今までとにかく激励していただき、またいろいろ皆さんからこの場を通じても教えていただき、そして私がある種、腹を決めながら二度にわたり交渉した、そのことの成果が上がるように全力を尽くさなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  7. 前島秀行

    前島委員 やはり二国間交渉になると、大臣気持ちというのはようわかりますけれども、私は第一段階、当委員会約束してきた、それは無理だ。要するに日本の実情、困難さということを訴える、そこからその原点を守って何とか解決していくというなら、やはり二国間交渉ではない。そのことを主張でき、日本立場を明確にし、なおかつそれを貫いていくというのは二国間交渉ではなくして、ガット舞台で言うべきことを言う、ガット舞台でなければ第一段階に戻れないと私は思います。  午後からまた一般質問等々でこの問題があると思いますので私はこれ以上言いませんけれども、いずれにせよ第一段階でということは終始大臣が当委員会で言ってきたことであるし、また農民に向かって約束してきたことでありますから、その基本原則は守って、その原則を堅持してひとつ交渉に解決に努力をしてほしい、この点だけお願いして、このことについては終わりたいと思います。
  8. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一言だけつけ加えさせていただきたいと思いますが、私自身は今までの経緯を十二分に承知をして運んでおるつもりでございます。そしてパネルの場、ガットの場というのは多国間にわたります。その場合の日本たたきというか、農業たたきというか、そういう場における一つのまた新たな問題点、私はそういうことも意識しながら、毎々申し上げておりますように孤立をしてはならぬ、日本全体が陥没するような、敵に回してはならぬと思いつつも、しかし守るべきは守らなければならぬのでありますから、牛肉かんきつ存立を守るということをしかと考えた上で運んでまいりたい、外交交渉を進めてまいりたい、こういうことでございますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  9. 前島秀行

    前島委員 ともあれその第一段階というか、この委員会約束してきたことを守って一層の御努力をお願いしたいと思います。  農林年金についての方に移ります。  まず最初に、今回の年金改定、〇・一というこれ以上少ない数字はないだろうという数字でありますけれども、今回の年金改定額の〇・一がはじき出されてきた基本的な考え方根拠、一体何に基づいているのか。それから、〇・一というパーセントでありますけれども、これは一体額にしたら平均でどれだけになるのか、まず説明をお願いしたいと思います。
  10. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今先生の方からお話がございましたように、今回の年金給付額改定率は〇・一%を採用することになっているわけでございますが、その根拠は直接的には年金法一条の二におきまして規定をされているわけでございます。御案内のように、法律に基づきます年金給付の額は、「国民生活水準賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定措置が講ぜられなければならない。」という大変重い基本的な規定一条の二に規定をされているわけでございます。その年金額改定に関する基本的な規定を踏まえまして、前回の制度改正の際に十九条の三という新たなる規定が設けられまして、自動的改定措置と言われているわけでございますが、この規定によりまして、総務庁の作成する全国消費者物価指数が前年に対比して五%を超えて上昇した場合には、翌年の四月分以降の当該年金である給付の額を政令の措置によって改定をするという自動的改定措置が盛り込まれたわけでございます。  今回は物価上昇が大変落ちついておるわけでございまして、〇・一%という上昇率のもとでこれを年金給付にいかに反映させるかということで、いわば政策的な措置といたしまして〇・一%の物価上昇率給付に反映させるということで、公的年金一般対応をそういう措置として行う、前年に行いました措置と同様の措置を今回もとらせていただくということで提案をさせていただいておるわけでございます。
  11. 前島秀行

    前島委員 そうすると、今回の改定はいわゆる十九条の三で言う五%の物価変動に伴う云々ではない、一条の二に基づく政策改定だ、こういうことですね。そうすると、政策改定は、今局長が言われましたように、「国民生活水準賃金その他」という、「賃金」という言葉が入っている。毎年、昨年もそうですけれども、恩給との関係の問題がよく議論になるわけです。ことしも一・二五という形。その恩給の方の改定根拠というのは恩給法の二条ノ二に規定してあって、「国民生活水準国家公務員給与物価其ノ他」云々「諸事情総合勘案シ」、こうなっているわけです。要するに、恩給の方の額の改定基礎二条ノ二、それから今回農林年金改定額の算出の基礎となっておる一条の二というのは、考え方は全く同じなんですね。国民生活賃金物価、それらを総合的に勘案して年金額を算出する、こうなっているわけです。法案とか制度そのものは違うと言われますけれども、それぞれの年金額を算出する基本的な出発点考え方は全く同じなんですね。それならなぜ、ほかの年金のことはいいですけれども、農林年金が何で〇・一になったのか。この一条の二の政策的判断に基づく改定ということになれば当然別な数字が出てきてしかるべきであるし、他の、一つの例として恩給が一・二五、物価プラスが出てきた、こういうことになるので、そういう面でなぜ〇・一になったのか、これを具体的に説明をしていただきたいと思います。
  12. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今回の年金改定〇・一%と恩給改定率でございます一・二五%の差の根拠についてのお尋ねでございます。  今先生の方から言及がございましたように、恩給額改定根拠恩給法の二条ノ二で規定をされているわけでございまして、農林年金一条の二と文言は全く同じ書き方にはなっていないわけでございます。恩給法の二条ノ二では「国民生活水準」に加えまして「国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情ニシキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ」と、農林年金一条の二とでは字句に若干の違いがございますけれども、確かに今先生の方から言われましたように、根拠規定恩給法農林年金法で実質的な違いがないにもかかわらずなぜ〇・一%と一・二五%という差が出てくるのかというお尋ねになるわけでございます。確かに条文上、そういった違いはないわけでございますが、恩給の額の改定に当たりましては、これは昨年もそういう趣旨改正が行われたわけでございますが、恩給の性格についていろいろな見方があるというふうに理解をいたしておりますが、一般的には恩給は国家補償的な性格を有するものであるという、他の年金に見られない特殊性があろうかと思います。そういった恩給独特の性格に着目をいたしまして国民生活水準国家公務員給与物価等経済的諸要素を総合的に勘案してその額が改定されることになっておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  これに対しまして、農林年金もその一環として位置づけられております公的年金制度は、先年の制度の改正によりまして、年金額改定については年金額物価上昇に伴ってその実質的価値が目減りをするということのないように、その価値を維持するという観点から物価スライドによる方式によることとされたわけでございまして、そこに若干制度的に恩給とは異なる取り扱いがなされるという実態になっておりますので、今回も昨年の方式をそのまま踏襲して行ったわけでございます。結局は恩給が持つ国家補償的な特殊な性格というものに着目した恩給改定であり、片や公的年金制度一般についての取り扱いの一環として農林年金については物価スライドを反映したということではないかというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  13. 前島秀行

    前島委員 制度が違うというならそれはそれでいいです。それから、文章が若干違う、全く同じじゃないというならそれはそれでいいのですが、それなら、双方「賃金」という言葉が入っていますね。農林年金一条にも「賃金」という言葉が入っている。今回の〇・一というのは、賃金が入れば〇・一にならぬわけですね、物価が〇・一でありますから。政策改定ということですから、一条の二の中の「賃金」というのは当然考慮の対象になっていいと思うわけですね。だけれども、今回はなっていない。何で賃金は考慮の対象にならなかったのでしょうか。
  14. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 賃金についても、確かに農林年金法一条の二では給付改定に当たっての考慮要素の一つに位置づけられているということは委員の御指摘のとおりであるわけでございまして、国民生活水準賃金その他の諸事情を統合的に勘案して改定措置を講ずるという一条の二というのが根拠になっていることは確かなわけでございますが、直接的には物価のスライドを、物価変動に対する目減りを修復するという趣旨にのっとって今回も〇・一%の物価変動給付に反映させるという趣旨でとられているわけでございます。  他方、しからば賃金要素はどうするのかというお尋ねだというふうに理解をするわけでございますが、これにつきましては、年金額の算定の基礎となっております標準給与の再評価を、おおむね五年ごとに行っております財政再計算時において、将来における給付と、それから、いわば現役の勤務者が負担をされるわけでございますが、そういった現役の組合員の負担との均衡に配慮しながら行うという手法をとってきておるわけでございます。農林年金につきましても、その財政再計算におきまして標準給与の再評価を行うことによりまして、賃金水準をそういうプロセスを通じて反映させるということをやっているわけでございます。  次回の標準給与の再評価の時期については、当然、今後、公的年金制度の横並びにも十分意を用いながら対処してまいる必要があると考えておりますが、いずれにしましても、賃金給付への反映のさせ方については、財政再計算を通じて行うということで対応する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  15. 前島秀行

    前島委員 ことしなぜ賃金が配慮にならなかったかということを私は聞いている。去年もそうだったのです。物価スライドでなくちゃいかぬという規定はないのでしょう。それから、六十年の十二月の制度改正のときの附帯決議にも、政策改定を行うときには賃金の反映ということを考慮するんだという附帯決議もなされているわけですね。だから、五年単位に云々じゃなくして、十九条の三の五%という自動改定ではないときにはその賃金という問題も考慮する、配慮する、こういうことなんでしょう。だから五年云々とは関係ないのですよ。それをことしは、去年もそうでありますけれども、ここのところずっと賃金スライドというものは全然考慮になってなかった。ほかの公的年金の横並びだ、こう言えばそれはそういうことですけれども、恩給というのはその同じ条文を根拠にして常に賃金というものを配慮されておる。年金の方は五%、十九条の三以外のときはそこを配慮するんだ、こういうふうに附帯決議もされている。だから今回、五年ごとの云々という財政再計算のときじゃないのです。その過程の中でも、政策スライドのときにはそれを考慮するということになっているわけですし、特に、とりわけその辺のところを配慮するようにという附帯決議がついているわけなんで、ことし〇・一になった根拠、すなわち賃金スライドを反映しなかったのは何かと聞いているのですよ。五年ごとにやりますというんじゃないのです。そのときが来なかったからやらなかったということじゃなくして、ことしならなかった根拠は何なのか、それを聞いているわけなんです。
  16. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  確かに委員が言われましたように、法律年金額改定についての根拠規定でございます農林年金法の第一条の二には、「国民生活水準賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、」という規定ぶりになっておりますので、賃金年金額改定に当たりまして考慮すべき要素の一つに計上されていることは、確かにそのとおりでございます。しかしながら、この一条の二の規定を受けまして、法律第十九条の三で、著しい諸事情変動の基準といたしまして、消費者物価指数が五%を超えて変動した場合に、年金額を自動的に改定をすることができるという自動改定規定が入れられた経緯等も踏まえて、物価スライドの方式による改定ということで、五%未満の物価上昇の場合においても特例的な措置として実施をするということで、昨年も今回と同様な物価上昇を反映させた改定を行ったわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、一条の二を根拠とし、統合的に勘案して改定をいたすわけでございますが、直接的には物価上昇を反映するという形での政策改定を行うということで、公的年金制度の全体の政策改定の一環として行うものであるという趣旨で、今回御提案を申し上げているわけでございます。一条の二を無視して、賃金要素というものを全く頭に置かずに改定を御提案申し上げているわけではございませんで、あくまで一条の二に基づくものではございますが、自動改定物価スライドの規定趣旨を踏まえた政策改定考え方、そういうものに基づきまして、昨年も物価スライド的な改定を行ったわけでございます。今回も同様な考え方で御提案を申し上げていることを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  17. 前島秀行

    前島委員 いずれにせよ、〇・一という数字は、平均でいきますと千幾らになるんですね。千六百円いくかいかないかというところだ。月に直すと百円単位なので、その実態、生活実感から見て、この〇・一で物価スライドしたから目減りを云々だなんということは、私は正直言って実態として通るものではないと思います。特に片っ方で恩給というのが物価スライドプラスその他の云々で常に多いわけでありますから、ここのところの点だけは十分配慮して、ちゃんと説明ができるようにしてほしいと思います。  そこで、じゃ賃金スライドはどこで反映するかということですが、先ほどの答弁ですと、財政の再検討のとき、そうすると五年に一遍ずつしか賃金を反映しない、こういうふうにも受け取れますけれども、そうですか。
  18. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、年金額の算定の基礎となる標準給与の再評価につきましては、おおむね五年ごとに行われる財政再計算時において給付と負担の均衡に配慮しつつ行うということで過去にやったわけでございますが、今後も農林年金の財政再計算は現在のところ五年目ということで、六十四年をベースに六十五年に行われることになろうかと思っておりますけれども、具体的な標準給与の再評価の時期については、ただいま申し上げました財政再計算時にこれを行うという基本的な考え方に加えまして、公的年金制度の一環でございますので、それとの横並びということにも十分配慮する必要があるということも承知いたしておるわけでございますので、そういった点にも十分配慮しながら適切に対処してまいる必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  19. 前島秀行

    前島委員 これは五年ということは決まっているわけじゃないですね。五年をめどにということですから、その前にもできるわけですけれども、そうすると財政再計算、標準賃金見直しのときには必ず賃金のスライドをするというふうに理解してよろしゅうございますか。もしその五年間、標準賃金改定がなければ、その五年間の賃金というのは全部スライドされるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 年金額の算定の改定に当たりましては標準給与の再評価ということがその基礎になるわけでございますが、標準給与の再評価に当たりましては、給付の前提になります負担をしていただいている現役の組合員の給与水準というものが負担の根拠になるわけでございますので、それをベースとした再評価ということになるわけでございまして、そのことを通じて今委員の方からお話のございました趣旨が達成されることになるものというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  21. 前島秀行

    前島委員 大臣、参議院の方に行かれる時間だと思いますので、大臣にここで、途中ですけれども……。  今、日本農業を取り巻く非常に厳しい状況大臣も非常に御努力なさっておる、そういう中でこういう農業に携わる人、農林漁業団体の職員というものが今後の日本のあり方にとって重要な比重を占めている、だから指導者育成といういろいろな方策が出てくると私は思うのですね。この厳しい状況の中でそういう指導者層というものをより育てていくためには、例えばこの年金制度一つ一つにしても私は政策をその都度ちゃんとやっていかなければ、構造改善とか規模拡大といういろいろな課題があると思うけれども、これは小さな問題かもしらぬが、ある意味では本当に大事な指導者育成という根幹をなすようなものだと思うのですね。そういうことを考えると、この年金というものは、これからの農業のあり方について将来を展望していくときに、国際化の中でこうやっていくためには私は無視できない大きな政策の一つだと思うのですね。私が今議論したように、また公的年金の一元化のことで聞きますけれども、将来もどうなるのかわからない。毎年の年金も、政策改定というなら賃金も反映するのが本来あるべき筋だと私は思う。けれども、それもしない。片や、確かに国家補償かもしらぬけれども、恩給の方は一・二五という改定がある。それが一年や二年じゃない、ほとんど毎年そういう差がある。  こういう実態の中で、牛肉交渉じゃありませんけれども、日本の国内の農家に向かって、農林漁業団体の職員に向かって、頑張れ、おまえしっかりせよと言わなくてはいかぬですね。そのときに、この年金一つを見てもこういう実態の中で、大臣、どう思いますか。この制度一つでもちゃんとやる、賃金スライドもするのだ、政策改定だというのならそれなりの反映——片方は一・二やっているのですから、ある意味では明らかに差をつけていると言わざるを得ない。大臣、今の農業を取り巻く状況の中で、この年金制度というのも重要な一つの政策としてあるべきだ、私はこういうふうに思いますので、その辺の大臣考え方を伺って、どうぞ参議院の方に。
  22. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農業団体職員と現実、業としておる農業者あるいは農村、そういうものとのかかわり合いは両々相まって実効を上げていかなければならぬという認識は、私もあなたと同じように持っております。そして、この共済年金につきましては、先ほど来局長から御説明申し上げておりますように、認識にそう違いはないように私やりとりを聞いておったのでございますけれども、その評価については違いがある。違いはあっても、一条の二、それを受けての自動的改定措置の十九条の三、これを正しく理解しながら事を運ばなければならぬということは承知をいたしております。
  23. 前島秀行

    前島委員 大臣、時間でしょうから、どうぞ。  局長賃金スライドをどこで反映するかということなのですね。私の方は、本来毎年賃金スライド、反映されてしかるべきだ、こういうふうに思いますけれども、一つ考えられるのはその再評価のときということになるわけですね。ただ、問題は、標準賃金改定するときに、あるいは再評価するときに過去の分まで、毎年しなかった分までその都度確実にするかということなのです。それが一つと、農林年金の方は、再評価、財政の再検討はいつするのか、そのとき賃金はどう反映されるのかということを明確にしてください。それで終わります。
  24. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 前段のお尋ねは、結局先ほど御答弁したことの繰り返しになろうかと思いますが、年金額の算定の基礎となる標準給与の再評価について、財政再計算時におきまして、その時点での標準給与といいますか現役の所得でございます給与水準を基準にいたしまして再評価をやることによりまして、給付の適正化といいますか年金額改定を行うということでございますので、委員お尋ね趣旨はそういうことを通じて実現されていくものと理解しておるわけでございます。  第二の、後半のお尋ね農林年金についての財政再計算の時期でございますが、これにつきましては、先ほどお話がございましたように、法文に直接の明示的な規定はないわけでございますが、他の公的な年金に準じましておおむね五年ごとに財政再計算を行うということでやることになっておるわけでございますが、そういたしますと、前回の財政再計算時から起算いたしまして六十四年がそのベースになる。それに基づきまして六十五年に再計算を行いまして実行していくというのが、次期の農林年金につきましての財政再計算の時期ということになろうかと理解をいたしておりますが、具体的な農林年金の標準給与の再評価の時期につきましては、次期の財政再計算の時点という事情、六十四年をベースに財政再計算をやるのだという要素に加えまして、他の公的年金制度の同様の措置との横並びにも十分配慮しながらやっていく必要があると考えておるわけでございまして、はっきりしない御答弁で大変恐縮でございますが、農林年金固有の財政再計算と公的年金制度との横並び、二つの要素を勘案しながら、農林年金年金額の算定の適正化が適切に行われるようにやってまいる必要があるというふうに認識をいたしておるわけでございます。
  25. 前島秀行

    前島委員 そうすると、二つのうちの一つの横並びということになりますと、来年、厚年、国家公務員等々は再計算云々で出発をする、それに横並び。そうすると、農林年金の方は少なくとも給付の方で横並びにするというふうに理解してよろしゅうございますか。
  26. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今おっしゃられましたように、国家公務員共済あるいは地方公務員共済等公的年金制度の一環をなしております他の共済制度の再計算の時期が農林年金よりもより早い時点で行われるという要素がございますので、その結果を農林年金年金額改定に当たりまして横並びということで配慮するということになりますと、今委員のおっしゃいましたような掛金の改定時期を待たずに、給付の面だけでより早く改定を行っていく必要があるのではないかという趣旨お話でございますが、年金額の横並びということを重視いたしますとそういうことになろうかと思います。そのことにつきましては、今後さらに私どもといたしましては先ほど来申し上げています要素を念頭に置きながら、農林年金の適切な運用を確保していく見地に立って検討をし、対応していきたいということで御了承を賜りたいと思うわけでございます。
  27. 前島秀行

    前島委員 その〇・一というわずかな数字の方だけ横並び横並び、こう言われますけれども、いい方の面も横並びにするならそのとおりにする、これはぜひ頼みます。現時点の段階でそれ以上という点は了承しますので、少なくとも横並びでいくということを言っているわけですから、他の年金の方と給付の面で横並び、これはぜひ次年度はお願いをしたい、こういうふうに思います。  それから、公的年金一元化の問題、どうしてもやはり質問しておかなくてはいかぬと思いますので……。  七十年を目途にして公的年金一元化を実現する、これの閣議決定、もうかなりの時期がたっているわけなんで、この一元化に向けて農林年金としてどう考えていくのか、基本的な一元化に向けての考え方を伺っておきたい、こういうふうに思います。
  28. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 公的年金制度の一元化についての基本的な考え方、これにつきましては、昭和五十九年二月二十四日の閣議決定によりまして、昭和七十年を目途として一元化を完了する、そういう長期的な目標を立てたわけでございまして、その一環として昭和六十年に各被用者年金制度についても基礎年金を導入する等の制度改正を行い、六十一年の四月以降実施しているところでございます。  六十一年度以降においては、六十年の改正を踏まえまして給付と負担の調整を図るということといたしまして、六十二年の九月に公的年金制度に関する関係閣僚懇談会、これには当然農林水産大臣が一員として参画をいたしておるわけでございますが、その場で昭和七十年に公的年金制度を一元化するというさきの閣議決定を、政府の方針を再確認いたすと同時に、一元化に向けての課題、手順を明らかにしながら、六十四年度において地ならしのできるものは地ならしをすることを申し合わせ、今後事務レベルにおきまして検討作業を行うことといたしているわけでございます。  この閣僚懇における申し合わせを踏まえて、関係各省の局長クラスで構成をいたしております公的年金制度調整連絡会議というのがございますが、昭和七十年を目途とした公的年金制度一元化に向けての検討を行う場としてそういう調整連絡会議局長クラスをメンバーとする調整の場として、検討の場として設けられているところでございますが、具体的にはさらにその調整連絡会議のもとに関係省庁の課長クラスをメンバーとする幹事会等を設けまして、ことしの一月以降も調整のための検討の場を引き続き設けて検討を行っているところでございます。  具体的な検討の内容につきましては、現時点でその内容を申し上げられる段階に至ってないわけでございますが、いずれにいたしましても、一元化に向けての基本方針がございますけれども、農林年金制度の設立の趣旨、これまで当年金が各種の農林漁業団体に従事しておられます役職員の方々の老後の生活の安定あるいは福祉の確保という観点から果たしてきた大変重い役割があるわけでございますので、今後の一元化の中で農林年金制度の持つそういった経緯、役割を踏まえまして、誤りのないようにきちっとした対応農林水産省といたしましてもやっていきたいというふうに考えているところでございます。
  29. 前島秀行

    前島委員 時間ももうありませんから、その一元化の問題については、いわゆる給付の面はだんだん整備をされてきたということですが、これから負担の面をどうしていくか、こういうことだろうと思います。  それから、この一元化に向かって、いわゆる一元化の中にはいろいろな幅があると思うのですけれども、農林水産省としては給付の面あるいは負担の面についての調整といいましょうか、一元化というのはやっていくけれども、もうすべてそれぞれの年金一つに統合してしまって一本化していくという文字どおりの一本化、すなわち農林年金制度そのものの制度はなくすということは考えていない、また果たしてきた役割等々から考えてその制度は守っていくんだ、この基本線で今後の一元化の問題について臨むというふうに確認してよろしゅうございますか。
  30. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 公的年金制度の一元化と一口に言われるわけでございますが、その一元化の具体的な姿につきましては、各種の公的年金制度を、今委員の方からお話がございましたように、文字どおり一つの一本の制度として融合し、給付の面でも負担の面でも一つの制度のもとに運営をしていくという意味での一元化というものから、それぞれの制度を残しながら給付面あるいは負担面での公的年金制度としての整合性を確保しつつ一元化へ取り組んでいくといったような幅の広い概念で理解をされているものがあるというふうに思うわけでございまして、七十年に向かっての公的年金制度の一元化が、そういう幅の広い一元化の考え方の中で、具体的にはどういう内容で一元化が進められるべきかということ自体が今後引き続き検討の課題になってくるものと理解をいたしているわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど御答弁申し上げましたように、農林年金制度の持つ非常に重要な役割がありますし、農林年金に加入をし、その給付に対する関係者の非常に大きな期待があるわけでございますので、そういった点を十分念頭に置きながら、農林年金制度の健全な発展を確保する見地に立って、公的年金制度の一元化の問題に農林水産省としては真剣に対応していかなくてはいけないと思っているわけでございます。
  31. 前島秀行

    前島委員 一元化という問題は非常に全体の課題だろうと思いますけれども、やはり農林年金の果たしてきた役割ということは当然歴史的に評価されているわけでありますから、基本的に農林年金制度の骨幹、果たしてきた役割は守っていくんだということで引き続きの御努力をお願いしたいと思います。  最後に、財政状況との兼ね合いですけれども、農林年金の財政状況、成熟度という観点でありますけれども、現下の状況の中で成熟度、いわゆる分母というのはふえていないという状況で必ずしも見通しはそんなによくない、こういうふうに一般的に思うわけでありますが、この見通し、積立金等々は今の状況の中でどう見通されるのかという点をちょっと御説明をお願いしたいと思います。
  32. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金制度の将来の見通しについてのお尋ねでございますが、確かに農林年金は成熟度の面でそれほど成熟度が高い——年金財政の面で他の公的年金制度と比較して財政状況が現時点で著しく困難な状況にあるというふうには必ずしも言えない部類ではないかと見ておるわけでございますが、急速な高齢化の進展に伴いまして、財政の将来についてはなかなか厳しいものがあると見ているわけでございます。  数字を若干申し上げますと、五十九年度末を基準として財政再計算を行ったわけでございますが、その際の理論的な保険料率、平準保険料率と言っておりますが、それは千分の二百五十三であったわけでございます。ところが、それまでの掛金率は千分の百九でございましたので、一挙に千分の二百五十三に引き上げることは大変な負担の過重を伴いますので、平準保険料率、理論上の保険料率を修正いたしまして、千分の百三十四という新しい掛金率を設定して六十一年四月から適用してきているわけでございます。これをベースに収入、支出の面で申し上げますと、六十一年度におきまして収入総額は三千十七億円であったわけでございますが、片や支出総額は二千百八億円でありまして、単年度では収入総額が支出の総額を上回っているわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、理論上の保険料率をかなり下回る低い修正した掛金率を適用しているということが第一にあるわけでございます。さらにまた、今後掛金を負担していただく組合員の方々、これは現在四十九万余の方々が組合員になっておられるわけでございますが、その組合員の数が増加をする、その期待を持つことはなかなか困難ではないかという要素が第二の要素としてございます。また一方、平均余命の伸長などによりまして年金受給者の増大あるいは受給期間の延長といったような給付が増額していく要素も片やございます。  したがって、現行の掛金率千分の百三十四を仮にそのまま据え置いて将来の年金財政を推計いたしますと、昭和七十二年には収入総額を支出総額が上回ることになるわけでございます。以後、積立金の取り崩しを行わないと支給できないという状況に入りまして、そういった状況のままその他のことで手がつかずに推移いたしますと、八十二年度には積立金もゼロになってしまうというような事態、これは全くの理論上の計算でございますけれども、そういう事態にもなりかねないような財政状況もあるわけでございまして、そういったことを念頭に置きながら、今後の負担と給付のあり方について他の公的年金制度との関連にも配慮しながら対応していく必要があると思っておるわけでございます。
  33. 前島秀行

    前島委員 時間も来ましたので終わりますけれども、ともあれ現下の厳しい状況の中でありますので、特に漁業団体に働く職員のこれからの比重というのは大きいわけでありますから、この年金制度につきましても、ひとつ一層の充実を図っていただくということをお願いをして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  34. 菊池福治郎

    菊池委員長 玉城栄一君。
  35. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も、農林共済年金法の一部改正について、関連して沖縄の農業、漁業関係の問題についてあわせてお伺いをしてまいりたいと思いますが、農林共済年金につきましても、今の局長さんのお話でも財政状況はこれから決して楽観を許さない、大変厳しいということを伺っておるわけでありますが、ところで沖縄の場合は、沖縄の農林共済年金というのは、長い間沖縄が本土と行政分離されていたためにこの沖縄の農林共済年金の発足の経過というものはちょっと特殊な状況にあるわけですね。それで、本土に沖縄が復帰する前の期間の算定について本土に比べて不利があるのではないかという指摘もあるわけですが、その沖縄の農林共済年金の発足の経緯並びに私が今申し上げた不利の部分を是正することはできるのかできないのか、その辺を最初にお伺いいたします。
  36. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  沖縄におきます農林年金制度は、琉球政府のもとで昭和四十五年一月に発足したものであります。本土の農林年金制度が先ほども御答弁申し上げたように昭和三十四年に発足をしておるわけでございますので、沖縄の場合、本土に比べると約十一年おくれて年金制度が発足しているわけでございます。それ以前の期間で引き続いて農林漁業団体に勤めていた時期につきましては、四五%のカットをして年金を支給することにされているわけでございます。  この四五%のカットにつきましては、沖縄の農林年金制度発足前の期間についても年金が支給されることになっているわけでございますが、この期間につきましては年金を支給するための負担でございます掛金の負担が行われていなかったわけでございますので、組合員の負担相当部分であります四五%が年金の支給に当たりましてカットされて支給をされているというのが沖縄におきます本土と違った取り扱いの面でございます。  今カットをなくして全額本土並みに支給することの可能性についてお尋ねがあったわけでございますが、これについてはただいま申し上げましたように、当該期間について掛金の支払いが他の都道府県の場合には行われて、それを前提に支給が行われているわけでございますので、他の都道府県の組合員との均衡等を考慮すれば、年金の仕組み上、対応として困難であると考えておるわけでございます。
  37. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の問題で四五%カットということですが、これがなぜ四五%なのか、その数字根拠がよくわからないのですが、いかがでしょうか。
  38. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 四五%のカットの根拠についてでございますけれども、これにつきましては、組合員の負担は、掛金の一割部分が国庫の負担でございまして、残りの九割について事業主と組合員が半分ずつ負担をするということになっておりますので、組合員の負担相当部分でございます四五%が支給の面でのカットになるというのが根拠になっておるわけでございます。
  39. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと関連してこの機会にお伺いしておきたいわけですけれども、これは災害問題なのですけれども、先月の下旬から今月の上旬にかけまして沖縄及び九州地方に集中豪雨がありました。農林漁業関係で相当の被害が出ております。その状況と、被害の甚大な市町村に対する激甚災害法の適用の見通し、さらに被害農林漁業者等の経営再建のため、自作農維持資金の融資枠の確保など適切な資金対策、さらにまた農地、農業用施設の被害の早期復旧等についてお伺いしたいと思います。
  40. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 九州、沖縄地方を中心としました集中豪雨による被害額は、関係県の報告によりますと総額で約二百九十五億円でございます。その内訳を見ますと、農作物等の被害が約百億円、農地、農業用施設関係が百二十億円、林地荒廃が約七十億円となっておりまして、熊本県が全体の八〇%を占めるというような状況でございます。  この被害に対します激甚災害法の適用につきましては、現在私どもが承知しております被害状況から見ますと、その可能性は難しいのではないかというふうに見ております。今後被害の甚大な市町村につきまして、局地激甚災の適用の関係等につきまして今後の査定結果を踏まえて検討していきたいというふうに考えております。  また、被害農家に対する資金対策でございますけれども、自作農維持資金等につきましては、その資金需要の調査結果を待って、その枠の確保について努めていきたいと思っております。なお、制度資金につきまして、既に貸し付けておるものにつきます償還条件の緩和につきましては、被害の状況に応じて適切な処置を行うよう指導しているところでございます。  また、農地、農業用施設関係の災害復旧につきましては、田植えの時期等もありまして早期復旧ということが必要でございますので、被害発生後直ちに担当官を現地に派遣しまして指導をやっております。また市町村での準備が整い次第、緊急査定を実施するなどしまして早期復旧に努めていきたいというふうに考えております。
  41. 玉城栄一

    ○玉城委員 今もちょっと最初の方でおっしゃっておられましたが、被害の甚大な市町村に対する局地激甚災害の適用ということについても検討していきたいということでありますので、ひとつよろしくお願いをしておきたいと思います。  もう一つは、圃場整備などの末端排水路が未整備のために、今回の集中豪雨により排水がはけず冠水した地区が沖縄の宮古島の場合多く見られたわけであります。これは写真も撮ってきてありますが、こういう地域には沈砂池を設置して末端排水路の整備を促進し、防災安全度の向上に努めると同時に、末端排水路は法定外公共物等であることが多いので、関係省庁と調整をして排水路の整備向上に十分努めていただきたい、このように思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  42. 松山光治

    ○松山政府委員 圃場整備事業の実施に当たりましては、事業の地区内の排水路の状態あるいは排水状況だけではございませんで、地区外の排水の状況ということも十分頭に置きました上で計画を立ててやってきておるつもりでございます。ただ、今回、現地では大変な被害を受けましてお気の毒に思っておるところでございますが、私ども聞くところによりますと、あるところでは三時間雨量が三百八十三ミリというふうな日本観測史上第一位のような豪雨だったというふうにも聞いておるわけでございますし、かつまた当地独特のサンゴ地帯のくぼ地でございますドリーネというものを通じての排水であったために起きた湛水被害だ、こういうふうに理解をしておるわけでございます。私どもといたしましては、防災問題は非常に重要だと考えてございますので、私どもの管轄にかかわりますようなものについては、必要に応じて地元の意向も十分踏まえながら排水路の整備には意を尽くしたい、このように考えておりますし、かつまた今お話のございました、私どもの所管外の部分につきましては、これは従来からもやっておるわけでありますが、管理者とよく相談するようにまずは県を指導していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  43. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の問題なんですけれども、末端排水路、それが未整備のために集中豪雨でたまった水がばっと流れ出すわけですからね。特に沖縄のこういう離島の場合、あふれていく水は海の方に流れていくわけですね。そうしますと、土を含んでいるのでいわゆる海洋汚染、海を汚染していくわけです。そうしますと、海にはモズクだとか沖縄独特のものを養殖していますが、そういうものが全部死滅するということで、排水路をつくる場合に沈砂池、砂や土を池で沈める、それを二段階、三段階という形でやりながら海に排水の窓口をつくっていくという方法を考えていただかないと、排水路をつくってすぐ海にこれを流すということになりますと大きな問題になるのですね。その点、いかがでしょうか。
  44. 松山光治

    ○松山政府委員 ただいまも申し上げましたように、当地区の排水の状態は、先生御案内のとおりサンゴ礁地帯のくぼ地にありますドリーネというのを通じての排水、そういうふうに承知しておるわけであります。そういう意味で海水汚染の問題もこれまた重要、地元の実情に応じまして、地元の意向もよく聞いた上で必要な措置をとっていく、こういう観点でこれからも考えていきたいと思っております。
  45. 玉城栄一

    ○玉城委員 次は、これは食糧庁の方にお願いしたいのですが、私もこの委員会で何回も取り上げましたけれども、食管法の全面適用ということで、流通段階、これは沖縄の場合は本土と違った形態できたわけですが、これが三月三十日で全面適用ということで、六月一日から本土並みの形態になっていく、こういうことなんですね。六月一日ですから来月です。私は何回も申し上げましたけれども、沖縄の場合、大卸が四社ありまして中間卸がまた三十五社、それからいわゆる小売店と今は言っているわけですが、販売所になるわけですが、これが八千。それがどういう形に移っていくのか、その場合に混乱は起きないのか、あるいは消費者サイドから見て現状より不利になる、後退しないというちゃんとした形でされるのか、その点をお伺いしたいのです。
  46. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話ございましたように、沖縄県の本土復帰以来、米の流通等の実態に配慮しまして特例措置がございましたけれども、今回の沖特法の改正によりまして食管法の適用も、県の流通実態を踏まえながら、円滑な移行が行われるように措置をしてきているところでございます。  具体的に申しますと、米の販売業者制度につきましては、これまでの四つの指定業者を卸売業者、それから三十五の卸販売業者を小売業者、約八千の小売販売業者をブランチと称する販売所という形でそれぞれ位置づけることにしておるわけでございます。これを実施に移しますために沖縄県におきましては、既に本年三月三十日から四月三十日までですが、販売業者の許可申請を受け付けております。六月一日に許可を行うべく、現在手続を取り進めているというところでございます。  県におきます食管制度の運用に当たりましては、これから十分地元とも連絡をとりながら、販売業者あるいは消費者に不測の混乱が生じないように一層配慮してまいるつもりでございます。
  47. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、これはこの前の委員会でもお伺いしたのですが、沖縄のいわゆる現状の形態は尊重するというようなことですから、大卸の四社、それから中間の三十五、それから小売業者の八千、これは大体そのまま許可されるというふうに理解しておいていいわけですか。
  48. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまも申し上げましたように、沖縄県の流通実態を尊重いたしまして、現在実際に販売活動が行われておりますそれぞれの実態を新しい制度に位置づけをするということで、いわば流通実態をそのまま新制度が追認すると申しますか、新制度の中に位置づけると申しますか、という形で円滑な移行をしていこうということでございます。
  49. 玉城栄一

    ○玉城委員 八千の沖縄のブランチ、いわゆる営業所の方々は、我々は自由に、大卸、指定業者から米はどんどんやってきた、こういう形がはめ込まれますと小売業者の販売所になってしまう、これは納得いかない、我々も小売業者にしてくれという強い要望が八千の中にはたくさん出ているのですけれども、これはどうされるのでしょうか。沖縄の場合の三十五の方々が小売業者というのは、数は少ないわけですね。その八千のうち、その力があればそういう小売業者にちゃんと引き上げるつもりなのかどうか。その辺はいかがでしょうか。
  50. 甕滋

    ○甕政府委員 六月一日の一斉更新と申しますか一斉切りかえの時期におきましては、ただいま申し上げましたように、現在の実態をそのまま認めることによりまして混乱を避けようというのが第一のねらいでございます。  その際、今お話しございましたように、八千ある現在の小売業者、六月一日からは販売所と申しますかブランチとして位置づけられる業者の方々が、自分自身が新しい制度における小売業者といいますか、になりたいというような御希望があるのは事実でございます。  これは、沖縄県におきましても、その辺の事情も十分踏まえて調整を進めていこうということにしておりまして、今後また、小売業者の制度から申しますと新規参入という形になりますが、そういう新しいブランチになられる方々が小売業者として新たに許可を求めてくるというような事態も十分想定いたしまして、それまでの米流通の実態、制度の定着状況等を見ながら今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  51. 玉城栄一

    ○玉城委員 今後検討されるということですが、既存の小売業者三十五、そこに今後八千の方々が入っていくということなんですが、既存の三十五社、現状でも大変経営が苦しい。これは前の委員会でも申し上げたのですが、その三十五からさらにふえていきますと、既存の三十五社もこれまたさらに大変な状況になるわけですね。ですから、長官がおっしゃられたように新規参入、いわゆる卸業の四社、そこに本土のように、いわゆる小売業の方々が共同して卸業の許可ももらえるようにしてもらえないかというような意見もあるのですが、いかがでしょうか。
  52. 甕滋

    ○甕政府委員 卸業者についても今御指摘の新規参入問題、これが地元ではございまして、それらも含めまして県におきましても今後の対応策について検討中、私どもとしても、県の意向も十分伺いながら方針を定めてまいりたいと思っております。
  53. 玉城栄一

    ○玉城委員 新しいシステムに変わっていくわけでありますから、消費者サイドもあるいは業界の方々も、混乱あるいは不利益にならないようにぜひひとつ措置していただきたい、このように要望を申し上げておきます。  食糧庁の方は結構でございます。  水産庁の方に伺いたいのですが、六十二年に国会に出されました水産庁の「漁業の動向に関する年次報告」というのがございます。その中に、「新しい動き」ということで、  ——沿岸・沖合域の総合的開発(マリノベーション構想)——   [遊漁等海洋性レクリエーションの動向]   近年、国民の余暇時間の増加に加え、所得水準の向上、健康志向の高まりから、国民のレクリエーション活動の機会が増大しており、漁、海水浴、ヨット、サーフィン等多岐にわたる海洋性レクリエーションの展開がみられる。 ということで、さらに、   今後も、レクリエーション活動の場として、開放的でダイナミックな自然と触れ合うことのできる海への志向は強まるものと考えられ、海洋性レクリエーションのため漁村を訪れる人は更に増えるものと考えられる。   海洋性レクリエーションを目的として海や漁村を訪れる都市住民との交流を通じて、漁業の実態や海洋環境の保全の重要性等について都市住民の理解を深めることは、極めて重要である。 ということで、いろいろ記述があるわけです。  私は出身は沖縄でありますので、こういう国民の余暇時代に備えて海洋性のレクリエーションの場を提供するという条件はたくさんあるわけですね。ですから、そういうことを踏まえまして水産庁とされましてどういう施設を考えていらっしゃるのか、それをお伺いしたいのです。
  54. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 海洋性レクリエーションの必要性なり漁業とのかかわりということにつきましては、ただいま先生からも詳しくお話があったわけでございますけれども、我々といたしましては、これから需要がますますふえてくると思われる海洋性レクリエーションに対しまして、いろいろな施設の整備というものも水産行政の一環として何とか取り上げていく必要があると思っているわけでございます。  現在もう既に、例えば沿岸漁業構造改善事業あるいは漁港整備事業の一環といたしまして行っております漁港利用調整事業、こういうものでハードの施設の助成というものを行っているわけでございます。具体的な施設といたしましては、一つは釣り場等の施設を整備するということを沿構等で行っておりますし、それからもう一つは、遊漁船と漁船との調整でありますとかそういうことがいろいろございますので、特に遊漁船等の利用が多い漁港におきまして、分離収容するための外郭施設でございますとかあるいは水域施設というものを漁港整備事業の一環といたしまして行っているわけでございます。今後とも漁業の健全な発展との調和を図りながら、都市住民のいろいろなニーズにこたえていくという必要がますますふえてくると思っておりますので、我々といたしましても適切な施設整備ということにつきましてはこれからもいろいろな形で応援の手を差し伸べてまいりたいと思っております。
  55. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も今月の連休には皆で各離島をずっと回ってきましたけれども、沖縄の慶良間諸島の中に座間味という島があるのですが、ここらはもう本土の若い方々がたくさん、さらにこれからもふえると思うのですね、民俗もたくさんありますし。ダイビングというのですか、こういうのが大変人気があってやっていらっしゃるわけです。実は、お聞きになっていらっしゃるかもしれませんが、この座間味村の島に犬の物語がありまして、「マリリンに逢いたい」というのが題名なんですが、私はこの間沖特でも申し上げたんですが、非常に感動的な、自然の海洋、サンゴとかふんだんに入れて、これは七、八月に封切られるということなんですが、こういう映画が全国的に封切りされて宣伝されますと、ここに相当の人が来ると思うのですね、漁村地域ですけれども。そうした場合に果たして受け皿として、今でも民宿はもう満杯の状態なんですが、民宿に限らず、皆さん方がおっしゃっているようなことが非常にこれから大事になってくるんじゃないかという感じがするわけですね。ですから、ぜひ沖縄も、自分で宣伝するのもなんですが、東洋のハワイと言われるぐらい、亜熱帯海洋性として、海洋利用というのは、非常にレクリエーションに適しているところもたくさんあるわけですから、長官も実際にごらんになって、いろいろな施設はこういうものをつくった方がいいということをぜひ考えていただきたい。これは要望ですから、よろしくお願いします。  それともう一つ、長官、沖縄の南大東、ここはマグロだとか非常に豊富な漁場なんですが、絶海の孤島といいますか、ここは漁港がないわけですね。これは沖縄開発庁としてもここを漁港整備をしようということでこれまで調査もしてきているし、沖縄県側としても六十三年度で調査費をつけて、この南大東の漁港は緊急避難港としてもどうしても必要なんです。沖縄の漁船だけに限らず、全国的にあのあたりに来ますからね。そういう意味でもこの漁港は第八次漁港整備計画の中でやってもらいたいというのが地域の、県も含めて強い要望なんですが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  56. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 南大東島の漁港の必要性につきましては地元から熱烈な要望がございまして、我々といたしましても十分認識しておるつもりでございます。ただいま先生からもお話ありましたように、県で今年度は二千万円の調査費をかけまして、あそこの地形でございますとかいろいろと技術的な問題点というものも多うございますために調査を行うということになっておりますので、その調査結果を踏まえまして、当方といたしましては六十四年度から何とか事業化ということで地元の要望にこたえてまいりたいと思っております。
  57. 玉城栄一

    ○玉城委員 今六十四年度から検討してまいりたいということでありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それで、いろいろ関連で恐縮でございますけれども、パインの自由化問題についてぜひこの機会に、もう会期も終わるわけですから、恐らく大臣も含めてお伺いする機会もこれが最後かとも思うのでお伺いさせていただきたいわけですが、局長さんいらっしゃるでしょう。どなたでも結構ですが、その八品目、さっきも御質問ありました牛肉オレンジ問題と同じ八品目の中に沖縄のパイナップルの自由化の問題も含まれていまして、この委員会でも何回も、これが自由化されたときには大変な打撃を受けるのでぜひ具体的な対策を考えてもらいたいということを強く今までも要望してきたわけですが、その具体的な対策はその後どうなっているのか。どなたがお答えいただけるんでしょうか。
  58. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お話しのパインの問題でございますが、この問題につきましてはいわゆるガットの関連の、ただいま先生も御指摘のような八品目の対策ということで一括取り上げられてきておる関係もございまして、私の方から今の状況等について御報告をさせていただきたいと思います。  繰り返すような形になりますけれども、十品目がガットにおきまして一つの判定が出たわけでございますが、これにつきましては、粉乳等の乳製品及びでん粉等を除くものにつきましては先生御案内のような形の方向を出しているわけでございます。これを除きますいわゆる八品目につきましては、ガットに適合する措置に移行せざるを得ない、そういう形になります。しかし、この場合におきましても、大臣以下何度も先生に申し上げてまいったように、我が国農業の将来に禍根を残すことのないようにやっていかなきゃいけないということを肝に銘じているわけでございます。その関係もございまして、関係各方面から、パインにつきましては沖縄の先生を初めとする農協の方々あるいは中央会の方々から御意見を聴取いたしまして、十分それぞれの地域の実情に応じた対策等々を手順を踏みつつやっていかなければならないということで、私ども最大の努力を傾倒しなければならないと考えております。こういうことで、パインにつきましては直接的には農蚕園芸局が担当局でございますけれども、省内に農産物自由化関連対策検討プロジェクトチームというものを設けまして、各局の代表選手を集めまして、これによりまして農林水産省、全力を挙げて具体的な措置を検討していくこととしているところでございます。  この点につきましては既に二月に設置をされているわけでございまして、先生からの御指摘のようにもう時間がたっているじゃないかという面もございますが、私どもの問題でまいりますと、一つは各局を出しました共通の部門というのがあろうと思います。具体的な生産対策、個別の対策のほかに、言うなれば加工対策というような共通の面もございます。それからもう一つこの検討の上で重要なことは、いつからガット措置を動かすかということに関連いたしまして、このガットの問題を提起した主としてアメリカとの間で具体的な自由化の時期等について協議を行わなければいけない。そういうことで大体いつぐらいからということの上でのめどをつけるということが必要でありますが、この点につきましては、アメリカにおきます相手というものが、牛肉かんきつ等々のこともございまして今日まで進められていないわけでございまして、そういう意味で、その相手方との関連等もございまして今日までおくれているということではございます。  パイナップル等のことに関連して申し上げれば、これに関連いたします需要拡大であるとかあるいは生産対策、あるいは農産物加工対策等、幅広く検討しなければならないという問題もございますので、私どもといたしましては、今申し上げましたように担当の農蚕園芸局等々とさらに横断的な意味で農林省全体を挙げて検討をいたしまして、そういう対外的な交渉とも関連をいたしますが、今後ともできるだけ早くやっていきたいという気持ちは変わらないわけでございますので、いましばらく御猶予賜りたいと考えておるわけでございます。
  59. 玉城栄一

    ○玉城委員 この八品目の自由化については、農水省とされては一九九〇年、二年以内に自由化をするという基本方針だというふうに伺っているわけです。同時にもう一つはパインについていいますとパインは八品目のうちの一番後に、再来年の春ですか、春に自由化の時期をするという基本方針だということを伺っておりますが、そのように受けとめておく必要があるわけでしょうか。
  60. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 最初の方の御質問の期間でございますが、一つ考え方といたしまして、ガットへの適合措置というものをできるだけ早くということは一方でございますが、ただいま先生おっしゃったような年数についてきちっと農林省決めたということではございません。ただ、これはあくまでも、例えばアメリカ等の関係国との折衝ということもございますが、具体的に折衝は行っておりませんので、これから折衝しながら農林省の態度を決めていくということでございます。  なお、特にその中におきますパイナップルの位置づけでございますが、これは私ども沖縄におきますパイナップルの地位等々を十分わきまえて全体のバランスの上で考えていかなければならないというふうに考えているところでございます。
  61. 玉城栄一

    ○玉城委員 何かアメリカのスミス次席代表が来日していて、そのスミス次席代表とこの八品目、沖縄のパインの問題も含めておたくの次官がお会いして話し合いを進めるというふうに伺っているのですが、いかがでしょうか。
  62. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のように、USTRの次席代表のスミス氏が現在日本に来ていることは事実でございますが、彼と私ども農林省の職員が会談するかどうかにつきましてはまだ現時点では決まっておりません。なお、この点につきましては、既に、現在審議官に昇格いたしましたが、眞木経済局長とスミス氏との間で二月に話がありまして、事務的に詰めるという話になっただけでございまして、今回においてそういう予定は今のところございません。
  63. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、私は沖縄のパインの問題についてお伺いさせていただいているわけですが、大臣御自身も、政府の決めたパインの自由化に伴う打撃、予想される状況ということで現地にもお行きになられて、いろいろ考えるということもおっしゃってこられました。我々の方も調査団も派遣しまして、もしこれが自由化されるということであれば、つぶさにその予想される打撃について、国境対策、国内対策を含めてきちっとしないとこれはとてもじゃないけれども成り立たないということは何回も申し入れもしましたし、委員会でも申し上げてきたわけですが、その対策が今まだ検討中ということなんです。何とか政府は考えていらっしゃるのでしょうけれども、これが成り立つように何か具体的なことを、関係農家はもとよりみんなが元気の出るようなことをちゃんとおっしゃっていただかないとこれはどうなるのかなということで、そのままの状態なんですが、いかがでしょうか。
  64. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 まず、八品目全体については今事務局から答弁があったと思います。沖縄のパインについては、委員も先刻来重大な関心を持って、この場においてもいろいろ私との間でも質疑を取り交わした経緯があるわけでございます。私は、まず政治家といたしまして、沖縄の戦中戦後の歴史的経緯をやはり念頭に置かねばならぬとしばしば申し上げてきたところでございます。  さてパインの問題につきましては、そういう経緯もベースにしながら丁寧な運びをしなければならぬ、しかしその運びは、いつ幾日からこのようにするあのようにするということはなるべく早く発表できるように事務当局に詰めさせておる、そして相当な時間をとって運ばなければならぬ、いずれにしても、その人たちが生きていけるようにちゃんとする必要があるのだ、こう申し上げておるわけでございまして、それじゃそのスケジュール、その中身はいつかと言われれば、そう長い時間をかけようとは思っておりません。しかし、おくれてきた理由は何だと言われれば、牛肉かんきつ交渉もあったりいろいろなことがあって、それだけのせいにするわけじゃございませんけれども、確かに実務的にも大変な時期になっておりまして、時間のかかっておる点はひとつお許しをいただきたい。しかし、なるべく早目にそう時間をとらずに結論を明示しなければならぬ、こう思っておりますので、現地の関係者にも委員からお伝えをいただきたいと思います。
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣御自身もまた農林省御当局も大変御苦労していらっしゃることは報道等で私たちもよく知っておりますし、これは対米交渉とかいろいろ相手のあることですから、これ以上突っ込んでお伺いしても無理だろうと思いますので、ひとつ今おっしゃられたようにできるだけ早期に結論を出していただいてぜひやっていただきたいと思います。  最後に、これも前の、去年の委員会なんですが、大臣は御出席しておられなかったのですが、沖縄も本土復帰して五月十五日で満十六年が来ましたけれども、一日農水省ということを農林省がやっていらっしゃるわけですから、新しい沖縄の亜熱帯農林水産業それから農林水産省関係のさまざまな制度が新しく沖縄にどういう形で定着しているのか、また、どういうところを改善すべきか、いろいろな問題があるわけで、ぜひ早い機会に生に現地の声を聞いていただいて、それを農水行政に反映していただきたいなという希望があるのですが、大臣いかがでしょうか。
  66. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一日農林省という形で実績のあることは承知をいたしております。しかし、開会の辞に始まって、質問する人が決まっておって、そして閉会の辞でさっと帰る、こういうことが果たしてどの程度の意味があろうか、一日農林省というものを評価をいたしながらも私自身の率直な考え方としてはそういう感じを持っておりまして、当委員会の与野党の理事さんにもちょっと私見を申し述べ意見をお聞きした経緯も、個別でございますがあるわけでございます。私はそういう物の考え方から、この間沖縄のパイン畑にも足を入れさせていただいたという経緯がございますが、あのときも現場における対話というものにいろいろ考えさせられることがあった、私はそう思っておるわけでございまして、いろいろな試行をひとつ考えてみまして、できるだけその地域その地域の農政のポイントをそういう形で私がさらに認識をすることができるような会合はぜひひとつ農政局ごとに持ちたいものだなということは就任以来実は頭の中にあることでございます。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 余り時間がありませんが、もちろんお米というのは大事な問題です。農政の基本の基本でしょうけれども、それと同時に、沖縄の亜熱帯地域としての花卉園芸、畜産関係も含めて新しい分野が相当あるわけです。もちろん御当局ではその分野を知っていらっしゃる、勉強していらっしゃるわけですが、私から見まして底が浅いという感じがするのです。この際、農林省のいろいろなシステム、組織機構も含めて、二十一世紀に向けてそういう新しい農業、水産業というものを本気になって、意見も聞いて新しい制度も確立していただきたいな、このように思います。ぜひ大臣の現職のうちに沖縄の今申し上げた点も実現するように御努力をよろしくお願いします。  以上です。
  68. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 神田厚君。
  69. 神田厚

    ○神田委員 農林共済年金法一部改正につきまして、数点にわたって御質問を申し上げたいと思っております。  まず初めに、公的年金制度につきましては、昭和五十九年二月二十四日の閣議決定と先般の「長寿社会対策大綱」において、昭和七十年をめどとしてその一元化を行うという政府の方針が示されております。その一環といたしまして、昭和六十年の一連の年金制度改革が行われたわけでありますが、今後本格的な高齢化社会の到来を控えまして、公的年金一元化について、農水省はどのような対応を考えておりますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  70. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 公的年金制度の一元化につきましては、昭和五十九年二月二十四日の閣議決定に基づきまして昭和七十年を目途として一元化を完了することとしておりまして、現在、関係各省の局長クラスで構成する公的年金制度調整連絡会議の場において一元化に向けての検討を行っておるところでございます。  一方、農林年金制度は農林漁業団体が農林水産業の発展と農林漁業者の地位向上という、政策的にも重要な役割を担っている点に着目いたしまして、資質のすぐれた役職員の確保に資するため、厚生年金から分離発足して、独自の公的年金制度として運営を行っているところであります。  公的年金制度一元化への対応につきましては、このような独自性を有する農林年金制度をどのように位置づけていくかが非常に重要な問題であると考えておりまして、関係者の意見も十分伺いつつ、農林年金制度設立の経緯等を踏まえて、今後の農林年金制度の対応について誤りのないように対処してまいらなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  71. 神田厚

    ○神田委員 ただいまの答弁にありましたように、農林年金はその発足の経過からいたしまして、それなりに大変重要な意味を持った年金としてできたわけでありますので、一元化に当たりましてもただいまの大臣の御答弁のように、ひとつしっかりとその点を踏まえてやっていただきたい、このように御要望を申し上げておきたいと思います。  続きまして、昭和五十七年度から六十年度まで、行革関連特例法に基づきまして、給付費の国庫補助の四分の一が縮減をされた、こういう問題がございました。元本で二百二十一億円の残高となっているはずであります。この元利金の返還の時期と方法を明らかにしていただきたい、このように思うのでありますが、これらの点につきましては、現在どのような形になっておりますか、お答えをいただきたいのであります。
  72. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  行革関連特例法で農林年金につきましても国庫補助が削減をされたわけでございまして、その削減の額は、今先生の方から言われましたように、元本では二百二十一億円、利息を五・五%で計算しますと五十一億円、七・〇%ですと六十七億円、いずれにしましても元利合計で三百億円近い額の縮減が行われたわけでございます。この縮減額につきましては、行革関連特例法の七条の二項におきまして、農林年金の「財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、」「適切な措置を講ずる」という規定が明確に置かれております。  返還については、この七条の二を根拠に実現をしていくべきものと理解をいたしておりますが、具体的な返還の時期及び方法についてお尋ねがございましたけれども、これについては政府としましては、昭和六十五年度に特例公債、いわゆる赤字国債依存体質からの脱却を目標として、目下財政再建を推進している最中ではございますけれども、この縮減された部門を含めて、国庫補助というものが農林年金の財政全体にとって大変重要な位置づけになっておることは申すまでもないわけでございますので、私どもは縮減された元利相当分について早急に補てんがされるように財政当局と折衝してまいる考えでおります。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 神田厚

    ○神田委員 六十五年度に赤字国債からの脱却という一つ方針がありますから、そうしますればその辺が一つのめどになるような状況かと思いますが、農林省として精力的にこの問題について取り組みをいただきたい、このように要望を申し上げておきたいと思うのであります。  続きまして、農林年金の成熟率は昭和四十年〇・九%から昭和六十年一八・八%、収支比率は昭和六十一年度で六九・九%と、当年金の財政はおおむね健全と言えます。しかし、今後金利の自由化など農林漁業組合を取り巻く環境はさらに厳しさを増すことが予想されますし、加えて農林漁業全体を取り巻く環境もまた非常に厳しいものが予想されます。したがって、将来組合員の掛金率の引き上げが予想されるわけでありますが、農林水産省といたしましては将来同年金制度の掛金率、年金額等がどのようになると予測をされてその対応をお考えになっておりますか、お聞かせをいただきたいのであります。
  74. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金の財政を規定をいたしております種々の要素について将来の見通しをいたしますと、大変厳しい状況が予想されるわけでございます。何といいましても農林年金は基本的には現役の組合員の方の掛金を基礎年金運営をやっておるわけでございますが、その農林漁業団体で働いておられる現役の組合員の方々の今後の増加状況を推定をいたしますと、今先生の方からお話がございましたように農林漁業を取り巻く環境が厳しいこともございまして、組合員数の増加を見込むことは困難であるという事情がございます。  また、他方、受給権に基づきまして農林年金の支給を受けられる方々は平均余命が延びておるわけでございますし、また組合員としての在任期間もそれに伴って延長しておるというようなことを考えますと、支給の方は今後さらに増加が見込まれるわけでございます。お話のございましたように、組合員と受給者との割合、いわゆる成熟度という言葉を使っておりますけれども、六十一年度末においては五・一人対一人ということで、他の公的年金制度に比べてそれほど厳しい成熟度とは言えない状況でございますけれども、今後急速にこの比率が、七十五年度には三・五人対一人というようなことで変わってくることが予想されるわけでございます。こういうことになってまいりますと、年金財政の面でも一層健全性を確保することによって長期的に安定的に年金の運営が確保できるよう一層努力をする必要が高まってまいります。  やはり基本的には、年金は、現役の負担により退職されました年金受給者の方々が年金の支払いを受けていくという両者の負担と給付という相互関係がございますので、その負担につきましても世代間の負担の公平を図るということが非常に大事な要素でございます。そういう見地から、年金財政の将来収支を見通しながら給付と負担の両面についての適正化を図っていくことが必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  75. 神田厚

    ○神田委員 大変難しい問題でもあるわけでありますが、それらについてひとつ適切な対応をしていただきたい、こういうふうに思っております。  今回の改定の対象となる年金受給者一人当たりの平均増加額、改定を行うことにより増加する費用、これはどういうふうなことになっておりますか。
  76. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今回の年金額改定は、〇・一%の物価上昇率を反映させて増額改定をするものでございますが、六十三年の四月分から実施される予定になるわけでございます。増額される年金額は、退職年金について見ますと、一人当たり平均約千六百円の増額となるわけでございます。
  77. 神田厚

    ○神田委員 最後に、恩給は一・二五%、こういう改定になっております。農林年金の方は、共済年金はただいま答弁があったように〇・一%でありますが、当年金に対しまして、給与要件の変化を今後どのように加味をしていくのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今回の年金額改定は、物価スライドということで、消費者物価上昇率を反映させることによりまして年金額の目減りを防ぐという趣旨で、消費者物価上昇率を基準として改定をお願い申し上げているわけでございます。片や年金給付額の改定については、賃金その他の国民生活水準の変化というものを織り込んで改定すべきであるという趣旨一条の二に規定されているわけでございます。  とりわけ、賃金給付に対する反映について、どういうふうに反映させていくのかという御質問でございます。これにつきましては、財政再計算時に、現役の組合員の方々の給与水準との均衡を図る見地から、年金額算定の基礎となっております過去の標準給与を、財政再計算時の直近の現役の組合員の方々の給与水準を基準といたしまして再評価をすることにしておりまして、こういった再計算のプロセスを通じて賃金水準が反映されていくことになるものと理解をいたしております。
  79. 神田厚

    ○神田委員 年金受給者の生活というのは、現状におきましてもなかなか厳しいものがありますから、そういう意味では、ただいま御答弁ございましたけれども、なお一層の改善についての努力をお願いいたしまして、質問を終わります。
  80. 菊池福治郎

  81. 山原健二郎

    ○山原委員 大分重複しますが、農林共済年金額改定特例法案につきまして幾つか質問をいたします。  六十年に行われました年金制度の、私ども改悪と言っておりますが、これによりまして年金額改定方法について改革をされまして、各制度とも共通して物価スライド制を採用することになったわけですが、具体的には消費者物価指数が五%以上変動した場合は政令によって自動的に行われるわけです。しかし、五%以下の変動の場合は自動改定措置はとられないで、特別な法的措置を講じなければ改定されない、今回の改定はこのケースになるわけでございます。  そこで、まず確認をしておきたいのですが、先ほども答弁がありましたけれども、この特別改定の場合の判断要素は、物価賃金等社会的、経済的諸要素を総合的に勘案するということだと思いますが、その点はそう確認してよろしいですか。
  82. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 年金額改定の際の判断要素についてのお尋ねでございますが、お話がございましたように物価指数が対前年で五%を超える大幅な上昇がございました場合には、年金法十九条の三に新たに設けられました自動改定措置が適用になり、法律改正をしないで政令措置によりまして年金額の自動改定が行われるという規定が十九条の三に設けられたわけでございますが、本来、年金額改定については、一条の二で「国民生活水準賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定措置が講ぜられなければならない。」という規定があるわけでございますから、これらの一条の二に規定をされております各種の要素を総合的に勘案をして改定措置を行うべきものだというふうに理解をいたしておるわけでございます。  今回の年金額改定は、昨年の消費者物価水準の上昇率〇・一%を基準にとり、年金額改定をそれにスライドさせるということで改定のお願いを申し上げておるわけでございます。直接的な改定は、物価スライドという考え方をとっておりますけれども、その改定を行う前提といたしまして、一条の二の生活水準賃金その他の諸事情を総合的に勘案して措置するという規定に基づいて、今回の政策的な改定措置もお願いをしているという性格のものであるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  83. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったように、今度は〇・一%、わずかなアップですが、六十二年度の消費者物価指数の変動率と同じ水準なんですね。先ほどおっしゃった賃金等を含めた社会的、経済的諸要素を総合的に勘案するという見地からすると、このアップ率というのはおかしいのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  84. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 六十三年度におきます年金額改定については、先ほど来申し上げておりますように、六十二年の消費者物価上昇率〇・一%を直接反映する形での改定をお願い申し上げておるわけでございますけれども、当然その改定をお願いするに当たりましては、例えば六十二年度に国家公務員給与が一・四%上がっているとか、その他の社会経済情勢を総合的に判断し、かつ農林年金もその一環をなしております公的年金全般の年金額改定の動きとの整合性を図るということを念頭に置きまして、今回、特例的に増額改定措置を講じようとするものでございまして、そういう趣旨での御提案であるということを御理解いただきたいと思います。
  85. 山原健二郎

    ○山原委員 答弁が全くわからぬわけではありませんけれども、総合的整合性という言葉を使われておりますが、本来、この法案にあります「昭和六十二年の年平均の物価指数の比率を基準として、」という規定自身が不十分であって、「賃金等の」という文言を入れるべきだと私は思うのです。この点が一つ。  それから、五年ごと財政再計算の際に賃金等の要素も勘案して見直すということも言われているわけですが、こうなりますと、この間の毎年の賃金変動要素というのが、これはいわゆる勘案されない、いわば捨象されるといいますか消えていくということになってしまうと思うのですが、その点はどんなに考えておられますか。
  86. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 今回の改定法の案文に賃金という規定が必ずしも反映されていないという御指摘もございましたけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、今回の改定年金法一条の二の年金額改定に当たりましての各種の考慮要素を考慮した上、具体的には消費者物価指数〇・一%の上昇率にスライドする形で引き上げをお願い申し上げておるわけでございます。そういう意味では、今回の改定に当たりましても、賃金を含む生活水準その他の社会経済事情の総合的な勘案のもとに具体的な〇・一%の引き上げの提案をお願い申し上げているということで御理解をいただきたいと思います。  それから、賃金そのものの反映がおおむね五年に一遍行われます財政再計算の際に行われるということについてはそのとおりでございまして、おおむね五年に一遍、農林年金につきましても、他の公的年金との整合性のもとに、財政再計算という形で掛金の基本になっております平準掛金率といいますか負担の水準、それとの見合いにおきます給付の水準を再計算する際に、給付の前提になっております標準給与を現役の組合員の方々の給与水準を基礎、基準にいたしまして改定の作業を行うわけでございます。そういう形を通じて賃金水準が給付水準に反映をされるということが実現していくものというふうに理解をしているわけでございます。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がありませんから、一つの問題でいろいろ言う時間もありませんが、先ほどもお話がありましたように恩給の場合はいわゆる公務員賃金変動も勘案しまして一・二五アップするという措置が既にとられているわけですね。その点から考えましても、「賃金等」という文言を改定基準の要素に入れるのは当然ではないかということを主張しておきたいと思います。  それからもう一つは、平均的な年金受給者の場合、〇・一%アップというのは年額でいうとどれぐらいになるかといいますと、これは〇・一%で年額で千六百円、月額にしますと百三十円強です。それから、一・二五%の改定率を当てはめてみますと一万八千七百五十円、月額にして千五百六十円という状態ですね。いずれにしても給付水準そのものが低い上に、増額というがまさにスズメの涙程度という意味で、本当に日本年金制度そのものが非常に貧弱な思いがするのです。  たまたまこの前、西ドイツとフランスの国境の小さな町に行ったのですけれども、たくさんお年寄りが集まっているので、これはどうしたのですかと言って聞きましたら、きょうは年金支給の日だと言うのですね。それから、公園にずっとベンチが置かれてオーケストラが出てきて演奏する。その周辺にお年寄りがずっと座って楽しんでおられる姿を見たのです。たまたま見た風景ではありますけれども、何となく年金生活というのが悠々自適の部類に入っているのですね。  そういう点から考えますと、今物価は落ちついているといいましても、土地の高騰、それに伴う固定資産税の大幅引き上げなどがございまして、消費面だけに限らず生活支出というものは増大せざるを得ない状態にあるわけですね。こういう年金者の生活実態から考えまして、私はそういう意味でこれは大いに考えるべきであって、大幅な引き上げがぜひ必要だと思うわけです。  それからもう一つの問題は、これは最後に大臣にも決意を伺いたいのですが、国庫補助四分の一カットの返還問題でございます。  これは御承知のように五十七年から六十年度の四年間にわたって給付費補助の四分の一が縮減されたわけですが、この総額は元本で二百二十一億円に上るというお話が先ほどありました。本来の形でこれが補助されておれば、適切な運用により資産増に役立っているわけでございます。また、それが返ることを前提として今運営が行われているわけでございますから、そこで確認をしておきたいのですが、この間の資金運用の利回りは何%程度かという問題でございます。これはいかがでしょうか。
  88. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 農林年金の積立金の運用利回りについての御質問でございますが、約七・七%の利回りになっているということでございます。
  89. 山原健二郎

    ○山原委員 この運用利回りで計算した場合の縮減分の利息は先ほどたしか七%で六十七億とおっしゃいましたね。利子をつけて返すというのが財政当局の約束でございます。  昨年のこの問題の審議で農水大任の加藤さんであったと思いますが、その得べかりし利子の収入も含め、その返還を財政当局と折衝していくと答えております。その得べかりし利子の収入とは、実際の運用利回りでの算定利息分と理解していいと思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  90. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  行革関連特例法に基づきまして農林年金に対して行われております国庫補助金の約四分の一の削減が行われまして、その額は元利合計三百億程度になる多額の縮減が行われておるわけでございますが、農林年金の財政の安定を図っていくためには、この縮減された補助金の復元が我々としては極めて大事な問題であると認識をいたしております。法律上も、行革関連特例法七条の二項で「特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、」適切な措置を講ずることという根拠規定が置かれております。私どもといたしましては、いずれこの規定を踏まえて、農林年金の財政の健全性を確保する見地から、縮減された補助金の復元のための折衝を財政当局に対して行っていく必要があると考えておりますけれども、具体的な縮減補助金についての利息相当部分についての算定につきましては、国の財政状況等を勘案しつつ、適切な措置を講ずるということになっておりますので、そういった条文の規定等も踏まえて対応していくべきものと考えておるわけでございます。
  91. 山原健二郎

    ○山原委員 経済局長の見解は今のお言葉でわかりましたが、その得べかりし利子の収入も含めその返還を財政当局と折衝していく、こういうお答えをされております。これは去年のことでございますが、佐藤大臣の場合も恐らく同じお答えだろうと思いますが、これを値切りをさせることなく早期に返還させるということが農水大臣の決意として存在することが非常に大事だと思うわけでございますが、最後にその点についての大臣の御見解を伺いまして、私の質問を終わります。
  92. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今局長から御答弁申し上げましたとおりでございます。表現を変えて一言で申し上げるとするならば、まさに財政再建途上でございます。財政再建のめどが立ちました上は、財政当局と実務的に詰めを行わせたいと考えております。
  93. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  94. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  95. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、本案に対し、月原茂皓君から修正案が提出されております。  修正案の提出者から趣旨説明を求めます。月原茂皓君。     ─────────────  昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法年金の額の改定特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  96. 月原茂皓

    ○月原委員 私は、自由民主党を代表して、昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法年金の額の改定特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付いたしましたとおりでございます。その案文の朗読は省略いたしまして、以下、修正の趣旨を申し上げます。  修正事項は、原案において「昭和六十三年四月一日」と定められております施行期日が既に経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  97. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  98. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論は入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法年金の額の改定特例に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、月原茂皓君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  99. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  100. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長は御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  102. 菊池福治郎

    菊池委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ────◇─────     午後一時三十二分開議
  103. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤武彦君。
  104. 遠藤武彦

    ○遠藤(武)委員 長らく農政と農業問題に取り組んできた者として、本席で質問の機会を与えられたことに対して心から感謝を申し上げる次第であります。  また、私は、この場合農産物の自由化、とりわけ当面する喫緊の課題である牛肉オレンジ問題等については質問はいたしません。と申しますのも、この問題に関する基本的な我が党の姿勢、方針というのは既に決まっておるわけでありまして、我が党が自信を持って送り出した大臣に全幅の御信頼を置いているわけで、ただ、僭越ではございますが、さらに一層の御奮励のほどを御激励申し上げる次第であります。  さて、私は、水田確立対策とその担い手の関連から若干御質問しておきたいと思うのです。  と申しますのは、どうも農業、農村、農政の現状からいって、一律平等というような考え方あるいはやり方は、むしろ末端の生産現場では不公平をもたらしているのではないかということな危惧しているからであります。  今度予算化され、現在取りまとめをされておると聞いておりますが、例えば農地取得資金が従来の個人千七百万までを五千万までに引き上げられたというわけですが、三倍になったからといって果たしてそれだけの希望が出てくるだろうかと危惧もいたしております。と申しますのは、例えば、端的に言えば、減反ということを取り上げてみましても、五反耕作する者も五町歩耕作する者も末端においては全部一律に一九%、二〇%と割り当てるわけであります。それは国の段階、県の段階あるいは市町村までは指針にのっとった割り当てがなされる。しかしながら、市町村から生産者に割り当てる場合は一律にならざるを得ない。これは集落の共同体の維持といったような側面もあるからやむを得ないにしても、五町歩も五反歩も一律に二割というふうなやり方では、本当の意味で担い手を育成するという観点で言うと好ましくないのではないだろうか。本当に稲作に依存し、稲作でやっていこうという専業的大規模、拡大をねらう担い手に対しては、それなりの幅を持った、弾力的な、機動的な運用が必要ではなかろうかと考えるのであります。まず、そうした末端の生産現場に即応した割り当てを行うような方策を考えていただきたい。市町村長ではできません。国でこうすべきだというある程度の基準、五町歩なら、三町歩ならという基準を示す必要があるのじゃないかということが第一点であります。  同じようなことが例えば農業災害補償制度の中でも行われております。水稲の場合などは、引き受け方式によってもそうですが、一律二割足切りというところからスタートして補償がなされていくわけです。五町歩と五反歩を比較してみますと、二割足切るという場合には、五町歩の場合は一町歩であります、五反歩の農家の二割足切りは一反歩であります。つまり、一反歩の総被害、一町歩の総被害、それが切られるわけでありますから、いわば農作の中で水稲に依存しているものほどかえって補償は薄いという感覚になってしまう。ですから、例えば五町歩以上ならば一割足切りであるとか、五反歩ならば二割でやむを得ないだろうとか、そういう面で災害補償制度の上でも弾力的な、しかも規模拡大に即した対応をする必要があるのではないか。  日本農業の最大の隘路は何といっても面的拡大がなかなかできにくいというところにあるわけですから、これの突破口を開く意味でもそうしたことが必要でありますし、規模拡大や担い手の育成の上でも大きなインパクトになると私は信じておりますので、法改正も伴うような問題でありますから、ここは大臣に所感の一端をお伺いしたい、こう思っておるところであります。
  105. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 御激励をいただきまして感謝申し上げます。  今、一律的なやり方がいかに地域農政それ自体の進展を阻害しておるかという意味で農災制度にまで及んでのお話でございました。また、特に減反政策という表現でもお話しになりまして、規模拡大というものを進めながらも、また担い手をどう育成していくのかということについて私どもは真剣でなければなりません。かつては、地域分担政策とも言われたときもございました。今、地域農政ということでそれぞれの地域の個性を生かした形で国の方針を県が受け、そして市町村に大変な御苦労を煩わして生産性をさらに高くし、産業として自立することのできる農業を確立していくために、すぐれた技術と経営能力を備えた担い手というものが中核的な役割としてそれぞれの地域にその使命を果たしていく、そういう形が実現するように我々は心していかなければならない、またそういう農家を育成していくのだ、こういうことでございます。  私どもは、そのためにいろいろな工夫が必要でございます。具体的には、農地の利用というものを担い手に集中させるための農用地の利用増進、これは口で言うほど簡単なものではございません。しかし、簡単にいかなくてもこれはどうしても進めなければならぬ問題であると心得ておりますし、また農村自体に魅力があるかないかということによって農業の今後というものが大きく左右をされる、こう思っております。そういうためには、やはり農村における農業の基盤整備、生活環境ということも、非常に多岐にわたりますけれども、広範囲な問題ではございますけれども、そのような条件整備というものは的確に進めていかなければ、魅力のある農村、農村の活性化というものにはつながらない、こう思っております。  先ほど産業として自立し得る農業ということもちょっと申し上げましたけれども、そのための新しい技術の開発、マーケティングの推進、そうしたことの充実を図ってまいったつもりではございますけれども、今後ともやはりそれを担ういわゆる担い手の育成に全力を挙げていかなければ、魅力のある農業、また活力ある農村もできないのではないか。そして、国の基本としての農業政策の推進が困難になるであろうという危惧をしょっちゅう頭の中で反復しながら努力を重ねてまいりたい、かように思っております。
  106. 遠藤武彦

    ○遠藤(武)委員 今は主として担い手のお話をしましたが、現実の担い手の多くの部分を占めるのは、実は今の農村社会では婦人であります。私の手元にある資料によりますと、二十未満の若い人たちの年間の労働時間というのは限りなくゼロに近いわけです。大体農業就業労働者の六割が婦人によって占められている。六割が婦人でありながら、高齢者などに通した営農体系だとか機械技術であるとか機械そのものについても婦人向きのようにつくられていないわけですね。みんな一人前の男が乗り回すようなトラクターでありコンバインである。そういう点で、現実に六割が婦人労働者であるにかかわらず、営農形態や農業の生産資材その他が一切婦人向きにできていないという現実もある、これは考えていかなければならない問題じゃなかろうか、こう思います。  さらに、よく言われる婦人の地位の向上だとか農村婦人の役割なんということを言う前に、経済的自立なくして何の婦人の地位の向上か、こう私は思っているのです。調べてみますと、古い統計ですが、農村婦人で農地を相続したというのは極端に少ない。これはそういうふうになっているわけで、農地が分割されたら困ったことになりますから、農村婦人がまず相続をすることはない。年をとってしまえば収入の道がなくなる。となると、離婚でもしてしまえばまるっきりバンザイだということになる、そういう可能性が農村婦人にはあるわけです。  年金の面で見ますと、これは統計上、農林省がよこした資料とはちょっと違うのですが、農業年金に加入している婦人の実態というのは四%ぐらいだろう。現在の農業年金は制度上いろいろ問題があることはよくわかりますよ。池省庁ともいろいろ突き合わせてやらなければならぬ。社会保障との関連もわかりますけれども、農業年金の中で婦人が疎外されているという現実はどうしようもない事実であります。  六割が婦人で支えられている農業構造を考えるならば、やはりいろいろ無理はあるだろうし、現行制度は大変かと思いますが、婦人にも農業年金といったものの加入の機会が手厚く与えられるような思い切った決断というかそういうものが必要な時期に来ているのじゃなかろうか、こう思うのですが、ひとつ大臣の前向きの御答弁をお願いいたします。
  107. 松山光治

    ○松山政府委員 御案内のように、今の農業年金の制度につきましては、一定の老後保障を国民年金によって行いました上で、それの付加給付といたしまして経営移譲による若返りの促進等々の農政上の目的を持って仕組まれておる、こういう形になっておるわけでございます。そういう意味で、加入対象者といたしましても、経営主である地権者なりそれの後継者が加入対象になる、そういうこともございまして、今先生の御指摘のございましたように、年金加入者の四%程度が御婦人である、こういうのが実態であるわけでございます。  地権者でない農家の御婦人につきまして、確かに御指摘のように農業労働力の重要な担い手になっているという事実もあるわけでありますし、それからそういう観点から何らかの年金的な措置がとれないのかという御要望があることも我々も十分承知をしておるわけでございますが、今申し上げましたような制度の目的との関係から見れば、いろいろと議論のあるところである。そういうことで、私どもといたしましても、これからの就業構造の見通しなり年金制度全体のあり方とも関連させながら勉強させてもらわなければいかぬ課題ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  108. 遠藤武彦

    ○遠藤(武)委員 ともあれ、今後の農政を進めていく上に当たって、冒頭に申し上げたような、一律平等なるがゆえの不公平というようなことが招来しないように、と同時に現実に農村を支えておる婦人たちが、二十年後の高齢化社会を迎えて、後へ続く農村婦人がいなくなるようなことがないような、年金の面でもいわば加入の促進などが図られるような措置を強く要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  109. 菊池福治郎

  110. 保利耕輔

    ○保利委員 このたびの日米農産物交渉において、大臣、大変忍耐力を発揮されて、計八回にわたるヤイター代表との交渉をされて先日お帰りになりました。お帰りになりましたときにいろいろお話を承って、本当に御苦心をされたなと思う次第でございまして、心から敬意を表したいと思います。  まず、この日米農産物貿易の問題について一つ質問をさせていただきます。  大臣がヤイター代表と最後にお別れになるときに、シー ユー アゲイン イン トーキョーというお話をされたやに報道は伝えておるわけでございますが、今後残された道としては、なお二国間交渉を継続するか、それともガットに行ってしまうか、この分かれ目にあると思います。ガットパネルそのものの設立は決定をされておるわけでございますが、二国間交渉ガットパネルを設立するまでにどういう形でお進めになるのか、そのお気持ちをまず大臣からお伺いをしたいと思います。
  111. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 五月四日に牛肉かんきつについてガットパネル設置が決定をされまして、現在パネルの構成等についての事務的な話し合いが行われておるところでございます。  一方、二国間の話し合いは御承知のとおり物別れの状態にありまして、今後早期の解決を図るためには米側がより柔軟な姿勢を示すことを期待したいと考えておりますが、私といたしましても、このことにつきましては、従来から申し上げておりますように、多くの関係する方々が心配をしておられますので、一日も早い決着が必要であるという考え方から、米国との間でいろいろなチャネルを通じてでき得る限りの働きかけを行ってまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  112. 保利耕輔

    ○保利委員 何とぞよろしく日本農業を守るという見地から、また譲れるものは譲るが譲れないものは譲れないんだと大臣はいつもおっしゃっておるが、その気持ちを持って今後の交渉をお続けいただきたいと存じます。  同時に、ガットパネルが設立された場合に論点となりますのは、日本牛肉及びかんきつ輸入数量の制限というものがガットの十一条に照らして違法である、あるいは果汁のブレンドの問題でありますが、これはガットの三条に違反をしておる。いわばこの十一条、三条の違反問題が争われる場がガットパネルの場であらう。私はそのように思っておるわけでございますが、もしガットで不幸にして争わなければならない場合、この十一条、三条の問題についてどういう論旨を持って、どういう趣旨を持って議論を展開されるおつもりであるか。これは事務当局からでも結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  113. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣から申し上げましたように、日本牛肉かんきつの輸入制度についてのガット上のパネルの設立についての具体的なパネリストをどうするとか手続事項にわたることにつきまして関係国と事務局の間で現在調整中でございますが、その調整を終えてパネルの審査が始まった場合に、当然提訴国でございますアメリカあるいは豪州がガットの条文に照らして日本牛肉かんきつ制度のガット上の合法性を問題にする主張を行ってくるであろうというふうに思います。これに対して我が国としては、当然これらの制度のガット上の合法非合法についての我が国としての解釈、立場を明確にする必要があります。御指摘のありましたように主としてガットの輸入制限にかかわる条文でございます十一条の条文の解釈を前提にいたしまして、日本牛肉輸入制限あるいはかんきつ並びにかんきつ果汁についての輸入制限制度は十一条規定に照らしてどう解釈されるべきかということについての私どもの主張をきちっと整理して主張していく必要がございますし、またかんきつ果汁の輸入に関連して国内産のかんきつ果汁との混合を必要としている。そういった事情が、ガットの例えば関連する条文でございます三条等に照らしてどのように解釈されるべきであるかということにつきましても必要に応じ主張していかなければいけない。  そういったガット上の主張が基本的な主張であるべきことはそのとおりでございますが、同時に、パネルの手続はガット加盟国同士の具体的な貿易の紛争、それに基づく提訴国の貿易上の損害があるという主張を実質的に解決するための多国間の場での一つの手続という性格がございますので、そういった性格に着目すれば、我々としては単にガット上の合法非合法という狭義の紛争をめぐる主張のみならず、我が国牛肉の生産、流通あるいは消費、貿易の実態なりかんきつあるいはかんきつ果汁についての同様の実態を主張することはもちろんでございますし、さらには我が国のこれらの産物についてとられている制度と同様の位置づけにございます他の国の輸入制度、わけてもアメリカのウェーバーに基づく輸入制限でございますとか食肉輸入法に基づく食肉の輸入調整行為、さらには他の主要国でとられております農産物についての貿易制度、そういったものとの比較考量に基づく実質的な輸入制度としての必要性なりあり方についても、当然我が国としては主張を行うことによりましてガット上の我が国立場の正当性というものをパネリストに理解がされるように努力をする必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  114. 保利耕輔

    ○保利委員 ただいまの局長の御答弁、大変結構だと思いますが、どういう諭旨を展開するかということについては十分に省内で研究をされて、ガットの十一条に照らして合法であるということをかち取っていただくように、大変難しいことではありますが、努力をしていただきたいと思います。特に国家貿易品目と我々が考えている牛肉について、あるいは大変減反を厳しくやっているオレンジ等について、これを主張して、国際舞台において日本の主張が通ったというようになりますように御奮闘をお願いいたしたいと思います。  それから二番目は、米価のシーズンがだんだん近づいてくるわけでありますが、米価の算定方式について現在米価審議会の小委員会の中でいろいろ論議がされておることを私も承知いたしております。いろいろな御意見があると思いますが、米をできるだけ合理的な生産のもとに生産性を上げて安くつくる、これは我が国が今当面している大きな問題だと思います。同時に、先ほど遠藤委員からもお話があったと思うのですが、農地を集積して大規模生産をやっていくというその裏には、中小の零細な農家が稲作から離れていかなければならないじゃないかという問題が非常に大きな問題としてある。これは数の上では著しい数になるのではないかと思うわけであります。また同時に、山間部の水田を守ってもらっている農家の方方というのは非常に多い。そういう方々が稲作を続けていくことによって、水川耕作を続けていくことによって、よく言われることでありますが、洪水調節機能なんかを持つような水田をきちんと整備をしてくれているんだという公益的な面をこういった米価審議会の中なんかでも議論をしてもらいたいなと私は思っておるわけでございます。必ずしも経済性だけを追求した形でこの米価の問題を論ずるわけにはいかないのではないか、こういうふうに思っておりますので、後でちょっと御所見をいただきたいと思うのであります。  同時に、米の消費減退が非常に進んでおるということが大変大きな問題だと私は思います。そこで、このためにいろいろな消費の増進策をとっておられるし、団体もこれには取り組んでおられるわけであります。例えば日本酒では大体五十二、三万トン使っていただいておるが、そこへ他用途利用米というのはせんだってまで三万トンしか入らなかった。これを今度六万トンにふやしていただいたということでありますが、まだまだ少ないという問題もあるわけでございます。  そういったいろいろな問題でこの米の需要を拡大していかなければならないと思いますが、ちょっと時間がございませんので、簡単に食糧庁長官からで結構でございますので、先ほど申しました中山間部の農業といったものについてどう考えるのか、あるいは米の需要増進についてどう考えるのか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。
  115. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話がございましたように、米価審議会におきまして、一昨年、昨年の米価論議を踏まえまして算定方式を今後どうするかといった論議が行われております。そういった論議の中で当然米価を、今後の稲作の発展、米の生産の合理化また担い手の育成といった観点に立ちまして、さらには需給の均衡化に資するといった観点等を含めまして広範な論議が行われておるわけでございますが、ただいま御指摘ございましたように、米価政策を今後展開していく場合に、中山間の稲作をどうするか、またその際の就業問題をどうするかということにつきましても論議が及んでおります。どういう取りまとめになるか、現在米審の小委員会におきまして作業が進められておりますけれども、米価算定方式の方向を出すと同時に、その中で中山間の稲作のあり方、就業問題等についても別途しかるべき対策が必要である、こういう取りまとめになっていくのではないかと考えております。  また、米の消費拡大でございますが、お話ございましたように年々減少傾向にある中でこれを何とかしていかなければならないということで、これが日本の食生活全体の中で起こってきているということからいたしまして、日本型食生活の維持、定着といったことを基本に据えましていろいろな対策を講じているところでございます。特に今年度におきましては、米需給均衡化緊急対策の中でもろもろの取り組みをいたしております。特に地域の創意工夫を生かした需給ギャップ縮小の取り組みということで、生産者団体等による消費純増策といったものも関係者が大変な苦労をしながら取り進めておるところでございますが、今後とも米の問題を考えます際に、消費拡大といった一方の面も、これも極めて重要な課題であると認識いたしまして、今後さらに努力を進めてまいりたいと思っております。
  116. 保利耕輔

    ○保利委員 時間がまいりましたのでやめなければなりませんが、最後に、例えば日本酒なんかの場合も今我が党では税制調査会でいろいろやっておりますが、米の消費拡大に資するという観点から日本酒の税金等についても考えてもらわなければならないのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。御配慮をお願いしたいと思います。  せっかくでございますから最後に、当委員会として非常に大事な問題の一つが残されております。それは提出予定法案の中にありましたいわゆる構造立法というものがとうとう出せなかった。与党としても責任を感ずるところでございますけれども、このいわゆる構造立法の中で構造改善局としては何をねらったのか、そしてどういう理念でもってこの構造立法をやろうとしたのか、簡単に、一言で結構ですからお答えをいただきたいと思います。
  117. 松山光治

    ○松山政府委員 国民の皆さんに信頼していただくに足る日本農業構造をどういう形でつくり上げていくか、いろいろな面からの施策をこれまでも講じてきておるところでございますが、そういうことを踏まえながら、いかなる法制的な措置を今必要としておるか、こういう観点でいろいろと検討を行ったところでございますが、何分にも農業なり農村のあり方に関する基本にかかわる問題でもございますので、もう少し時間をかけて検討さしていただきたい、こういうことになっておる次第でございます。御理解をいただきたいと思います。
  118. 保利耕輔

    ○保利委員 この問題は全国の農民あるいは団体の皆さん注目しておるところでありますから、生産性の高い農業を確立していくために新しい構造立法には精力的に取り組んでいただきたい、このようにお願い申し上げたいと思います。この問題はいずれも米の生産といったものにも皆絡んでくる問題でございますので、よろしく御配慮をいただいて精力的に取り組んでいただきますように重ねてお願いを申し上げまして、ちょっと時間が超えましたけれども終わらしていただきます。
  119. 菊池福治郎

  120. 田中恒利

    田中(恒)委員 農産物貿易の問題について、重複するところも多少あるかもしれませんが重ねてお尋ねをしておきます。  佐藤農相、大変御苦労ですが、あなたは二度アメリカへ行かれて、残念ながら話がつかなかったということであります。その内容はつまびらかには承知いたしておりませんが、我が国の主張とアメリカの主張にそれぞれの問題について相当格差があり過ぎるということでどうにもならなかった、こういうことのようであります。ここでガットへの提訴がなされてガットの場でどういうふうに我が国の主張を、今度はアメリカにとどまらず多国間に理解を求めるか。特にパネルが設置されるわけでありますから、三名とも言われておりますパネリストを中心にいろいろ話し合いが深まっていくのだろうと思いますが、この局面はこれまでとは違った新しい局面だと私は思います。同時に、いま一方では、こちらへお帰りになって以降も、日米の二国間協議での決着、こういう報道が毎日のように続けられているわけでありまして、これもまた一つ交渉の行き先として考えられておることのように思います。  そういう事態の中で、今後の牛肉オレンジ自由化交渉に臨む政府の基本的な態度について、一、二度お聞きしておるのでありますが、この際、改めて大臣から直接お伺いしておきたいと思います。
  121. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私といたしましては、今後の対応につきましては我が国牛肉かんきつ生産の存立を守るという基本的な立場に立って、生産、流通、消費、各般にわたり私の責任を果たしてまいりたいと考えております。  なお、このことにつきましては、多くの方々に御心配をかけておりますので一日も早い決着が必要である、そういう観点から、米国との間でいろいろなチャネルを通じてできる限りの努力を、働きかけを行っておるところでございます。
  122. 田中恒利

    田中(恒)委員 重ねて念を押させていただきますが、我が国牛肉オレンジ存立を図る、あなたがアメリカへ行かれる前の政府・与党の基本方針のようなものの中に出ておるわけですね。その存立を守るということと一日も早くということは、二つがぺったんこでいけばいいですよ。しかし、大切なことは、言葉をそのままおかりすれば、やはり存立を図るというところが基本である、こういうふうに理解してよろしいですか。
  123. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 前々から私が申し上げておりますように、急速な国際化の中に日本全体が世界を敵に回すような、孤立するような結果になっては相ならぬという国際的な認識もさることながら、我が国の食糧政策を推進する上において、今話題となっております牛肉かんきつにつきましては、その生産の存立を守るということに徹して交渉を続けてまいりました。しかし、守るという立場からすると余りにもかけ離れておるので物別れに終わっておるということでございます。しかし、何としても先行きの見通しをつけながら友好国であるアメリカと円満に決着をしなければならないというのも願望でございまして、その線に向かって鋭意努力をしておる。どちらを先にとるのかと言えば、私は我が家が大事でありますということも従来から申し上げてきたとおりでございますので、その考え方に変わりはございません。
  124. 田中恒利

    田中(恒)委員 外務省にお尋ねをいたしますが、外務省も今の農林水産大臣の基本的な考え方と思いを一つにしていらっしゃると思いますが、確認をしておきたいと思います。
  125. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  外務省も当然のことながら政府の一員でございまして、外務省と農水省の間に、本問題の解決方針をこれから探っていくということにつきまして、意見の相違は全くございません。ただいま農水大臣答弁されましたとおり、国内の消費者、生産者の事情あるいは国際的な要請といったこと等々総合的に勘案いたしまして、できるだけ早く決着を図るべく、外務省としても努力をさせていただいている次第でございます。
  126. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、外務省に重ねてお尋ねいたします。  ガットという極めてたくさんの国の間で申し合わされておる協定事項に基づいてこれから交渉が始まるわけでありますので、農林省が担当官庁でありますが、やはり世界全体の外交の場としてのガット上での取り組みは、外務省が相当大きな役割を果たす、こういうふうに思います。そこで、ガットでこの問題が議論をされる方向で、今いろいろな準備がされておるようでありますが、その際に、日本の外務省としてはどういう準備をされていらっしゃるのか。というのは、私は、この前十二品目の問題で、ガットの総会で我が国一カ国が孤立をして、あと全部反対だったという報告がありまして、そんなことがあるのだろうかと思ったわけでありまして、この委員会でもそのことについての議論を、外務省がおいでになった際に強く申し上げておきました。  私は、世界で九十数カ国入っておる中で、少なくとも類型的には農産物の貿易の構造あるいは今日の実態の中で我が国と条件を同じゅうする国がたくさんあると思います。あなた方一番御承知のとおり、食糧の輸入国の立場で、ノルウェーにしても、あるいは今度問題になっておる課徴金などの問題は、明らかにECの問題であって、アメリカ日本課徴金を受け入れないというのは、ECとのウルグアイ・ラウンドにおける交渉を前にした食糧戦略であるということは一般的な共通認識になっておるわけであります。そういうことはもうあなた方は百も御承知であります。  そういう我が国の主張を理解し得る国かたくさんある。そういう国があるにもかかわらず、これらが全然そっぽを向いたということは、我々としては理解できない。しかも、我が国は今日海外援助費が世界でアメリカを抜いておる、こう言われておる。私は、金に物を言わせていいというわけじゃないけれども、日本のこういう農村のいわゆる起死回生の時代に立った場合に、日本国の外務省がそういう国々を説得し、理解させる努力をどれほどするのかということは、今度のガット牛肉オレンジの、私どもが外務省に非常に期待する一つの点であります。  これらのことがありましただけに、あえて外務省がガット交渉に臨むために、今どういうことをされようとしておるのか、お聞かせをしていただく範囲の中でお答えをいただきたいと思うのです。
  127. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 御質問は、現在ガットでの、本件牛肉かんきつ問題についてのパネル設置に当たって、外務省がどのような準備を進めているかということと理解をいたしました。  もとより本問題、外務省のみならず農水省とも一〇〇%協力いたしまして、このパネルに臨む日本政府の態度を決めていかなければいけないということが第一点でございます。  第二に、このガットの場におきます今後の手続と申しますか物事の進め方につきましては、先生御案内かと思いますけれども、実際にガットパネルが活動を開始いたしますまでには、パネリストの選定、パネルへの付託の事項の決定等々が行われることになっておりますけれども、このようなプロセスにおきましては、我が国考え方関係国及び事務局に対して明確に伝え、かつ日本牛肉かんきつが置かれている立場、すなわち日本農業において占めまする日本牛肉かんきつ産業の重要な地位等十分踏まえまして、日本立場理解を求めていかなければいけないと考えている次第でございます。  以上でございます。
  128. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもは素人でよくわからないけれども、それとなく仄聞するところによると、ガットというものの機能の中で事務局というものの役割は非常に大きい、こういうことも聞くわけですよね。外務省の方々は常時事務局と接触をしておるのですね。パネリストの選定は恐らくまだ数カ月かかるでしょうね。その間にはいろいろなこともあるし、やっていただかなければいけないこともありましょうけれども、やはりきめの細かいガットの機構なり、もちろんこの条文上の解釈などいろいろありますよ、それは農林省もやるでしょうし、おたくもやるでしょう、いろいろあるし、それを一本にしてやっていただかなければいけませんけれどもね。  今までの経験で、私どもはよくわからない、あなた方はよく知っておる。そういう中でガットこ対しては、日本の主張を貫くためにはこういう布石を打たなければいけないということはおおよそわかっていると思うのだね。これはここで言えといったってなかなか言えぬことだとは思うが、私はそういうものをきめ細かくやってもらいたいのだな。  例えばガットに対する日本の要員の問題とか、予算がつきましょうけれども、そういう問題などが細かく展開されておるのかどうか、まだ寡聞にしてよく聞いてないが、そんなところまで目を配ってやってもらいたいと私は思いますが、いかがですか。
  129. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 先生御指摘のとおり、我が方ジュネーブ代表部とガットの事務局との間では、常に密接なコンタクトがございます。そのコンタクトを通じまして、日本立場につきましては十分説明、かつ必要な根回しを行っておりますし、今後ともそのような根回しを続けていかなければいけないと思っております。  パネリストの選定あるいは付託事項の決定まで数カ月かかるか、あるいは一月、二月くらいの間で決まるか、この辺も今後とも事務局との間で密接な話し合いをしていく過程で決まってくるものと思っておりますが、いずれにいたしましても、先生の御意見を体しまして適切に対処していかなければいけないと考えている次第でございます。
  130. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣に重ねてまたお聞きします。  きょうの新聞に——私、新聞は余り近ごろあれだが、あなたは御宸襟をお悩ましのようでありますが、我々も同じなんだが、しかし非常に大きく日米の首脳が来月の三日、ロンドンで会談をしていく、その際に牛肉オレンジの問題が話がつくように二国間の協議の決着が急がれるのではないか、こういうものが出ておって、政府首脳の発言なども紹介されておりますね。あるいは六月十九日でしたか、サミットが行われるが、それまでに日米の二国間協議という説も、これは一般的にずっと流されている。  正直言って農家の皆さんは、いろいろ言っておるけれども頭越しにやられるんじゃないか、こういうものが消え去らないのですよ。自由化はそんなに簡単にはいかぬ、政府も頑張っておるよと私どもは言いますけれども、しかしこんなに毎日毎日やられると、何となくそういう方向に動いておるのだというようなことで、やはり不安を増大させておるのが実情だと思うのです。  こういう記事を、私もそのまま理解はいたしておりませんが、しかし事態が、大臣答弁を聞いても一日も早くやりたい、これは当然でしょう。しかしそれにはそれなりの条件があるはずなので、そういう条件のように動いておるのか。大臣はお帰りになって以来、残念ながら不調に終わった、そこで各階各層の、あるいは国民の世論を耳を澄まして聞いてみたい、こういうことでありましたね。そして、あえて言えば、次の問題は、アメリカ現実対応を弾力的にしてくるかどうかということだ、日本としては言うべきことは言ったし、切るべきものは切った、差は余りにもひどい。それは私らが考えたって現在の輸入量の三倍も四倍も一遍にぱっとやるなんていったって、それはなかなかやれるものじゃない。  だから、そういう意味ではアメリカが少しこちらに寄ってくるという状況がなければ、私はこういう問題は、たとえ総理大臣であろうとやれるものじゃないと思うのですが、そういう状況が出かかっておるのかどうか、そういうにおいがあるのかどうかという点が、こういう形で大きく出ておりますから、この際重ねてお尋ねをしておきたいと思うのです。
  131. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 従来、私が就任以来、また今日に至るも、一部マスコミにおける活字のことにつきましては、今ある種のいら立ちを込めての御感想を申されましたが、私と全く同じ見解である、私自身率直にお答えしておきます。そういう中にあって、昨日の夕刊にも、またけさの新聞にも、一部の報道ではありますが、中をよく読めば推測でございますが、見出しだけ見ればいかがなものかと思われるような報道がなされておることは遺憾でございます。総理がロンドンでレーガン大統領に会われる、その際、牛肉オレンジの問題が話されるがごとき推測の記事も載っておりますが、そのようなことは竹下総理は考えておられません。私もそのように御依頼も申し上げておりません。暫時反応を見きわめつつ、そして慎重な構えで、アメリカ日本現実をもう少し理解をしてもらって、そして一日も早い円満な決着をしたいものだということには変わりございません。
  132. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは大臣、政府・与党内でもっとしっかりこの問題の方針を決めてもらいたいと私は思うよ。これは政府高官と言っておるのだから、どなたか相当な人がこれを言っているのですよ。新聞社だって何も種がないのに書きはせぬですよ。渡辺美智雄さんなんか課徴金をやめて高率関税でもいいんじゃないかということも言った、これも実際言っておるでしょう。そういうものがすぽんすぽん出るわけですよ。だから、やはりマスコミは監視しておるからこういうふうに書くのですよ。これがまた我々も含めて特に関係の農村や関係の諸団体にとっては、一日一日一喜一憂、不安の度を強めておるということなんですよ。今大臣は、竹下さんとレーガンとの会談にはこれは全然話にならぬというふうに言明せられた。これは非常に明快ですから、あすぐらいこれをちょっと大きく書いてもらったらいいと思うけれども、書くかどうか知りませんよ、知りませんが、やってもらわなきゃいかぬと思うのだ、それぐらいのことは、大臣が言ったのだから。だけれども、政府・与党の中にそういう漏れがあるということも事実なんだ。あるいはその漏れがだんだん切り口を開いて、行くところへ持っていくというようなことになっておるのかもしれぬのだ。そういう不安を持つのですよ。そこのところは、あなたはこの問題については責任者だから、私はぴしっとしてもらいたいと思うのですね。
  133. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 たび重ねての御質問でございます。ここの場で、それぞれの人権もございますから、生々しく解説する気はございませんけれども、差し支えのある発言はその都度御注意を申し上げてきたところであり、今後も御注意を申し上げていかねばならぬと心得ております。
  134. 田中恒利

    田中(恒)委員 ついでにもう一つ、余りあれかもしれませんが、この新聞には「佐藤農水相の訪米について「米国側が訪日すべきだとの意見もあるが、私としてはこだわらない」」こういうふうに書いておるのだが、これもあなたがおっしゃられたのかどうか。それから、今度の場合は、私どもは、アメリカがおいでになるのが当然だと思うのですよ。日本農林大臣が二回もアメリカへ行っておるのだから、そして今度の話ですから、今度はヤイターさんがお見えいただいて、そこで佐藤農水大臣と話をしていくというのが国と国との礼儀というものだと思うのですよ。あなたが三度お出かけになると、何だか白旗を掲げて行くような気に日本国民は受け取りかねませんよ。私は、あえて佐藤大臣は今の姿勢できちんと座っておっていただきたいと思いますが、新聞はこういうふうに書いておるのだ。どうですか。
  135. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ちょっと私も、またけさほど来、国会審議に追われておりまして、新聞もよく目を通しておりませんが、私が三度目にアメリカへ行くとどこかの新聞が書いたんでございましょうか。私の方がここで聞くのはおかしな話でございますが、私はそんな予定はいたしておりません。
  136. 田中恒利

    田中(恒)委員 そんなに怒らぬでもいいけれども、新聞を後で読んでください。「農水相が今月中に三度目の訪米をすることもあり得るとの見方を示した。」こういうことになっております。括弧書きであなたの談話のようなものを書いておるのです。まあそれはいいです。  そこで、ガットにおけるパネルの協議事項、先ほどもちょっと与党の先生の御質問もあったようですが、これは一体どういうものになるのか、パネルのパネリストが決まって、その中でどういう条項について協議をしていくことになるのか、条文上の解釈の問題があると思いますので、塩飽局長さんの方で結構でございますが、お答えいただきたいと思います。
  137. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 先ほども保利先生の御質問にお答えする中で申し上げたことでございますが、パネルの設立自体は五月四日の理事会で既に決定を見ているわけですが、具体的にパネリストをどなたにお願いするか、それからパネルとして具体的にどういう作業の進め方をするのかといったような問題については、関係国でございます日本を含めてアメリカ、豪州等、それにガットの事務局との間で意見の調整を現在行っているわけでございまして、そういった手続関係の事柄が決まってから具体的にはパネルにおける審査がスタートするわけでございます。  その際に、具体的にどういうふうな対応をするかについては、アメリカなり豪州が日本の関連する輸入制度等につきましてガット上の合法性を問題にしているわけでございますので、当然我が国としても、ガットにおける過去の先例などもございますので、そういったものを分析して、そういう過去の先例も踏まえながら対応していく必要がある。具体的には、ガットの十一条規定してございます農産物の輸入制限についての例外の規定、それに基づく一定の条件のもとでの輸入制限がガット上認められておるわけでございますが、それについての我が国立場、あるいはかんきつ果汁についても、アメリカが主張をいたしておりますような国内産の果汁と混合することがガット上問題であるという主張に絡んでのガット三条等の規定の解釈を踏まえた我が国としての立場、そういったものが基本的な主張として当然我々としては主張をしていくべきものというふうに思っておるわけでございます。この点については、単にガット上の権利義務の観点のみならず、幅広い主張を行うことによって我が国牛肉あるいはかんきつの輸入制度なり関連する国内の制度あるいはその運用についてパネリストの理解が深まるように主張する必要がある。  パネルガットの加盟国の紛争を処理するための一つのプロセスでございまして、パネル判断基礎として、そういう第三者の意見を一つ基礎としながら、最終的には紛争当事国の紛争の実質的な解消に向かって進むという趣旨がございますので、そういう趣旨にのっとる意味合いでも、単なる権利義務の主張にとどまらず、例えば我が国は農産物の輸入については世界最大の純輸入国としての立場がございますので、そういった我が国が農産物の最大の純輸入国として世界の農産物の貿易に大きな安定要素として寄与しているというようなこと、さらには牛肉かんきつにつきましても、例えば牛肉についてはアメリカが世界に向かって輸出をしております牛肉の七、八割は我が国が買い付けをしておるわけでございます。現にアメリカが輸出している牛肉の七、八割は日本市場で消費をされておるわけでございます。それからかんきつにつきましても、アメリカが世界に向かって輸出をしているオレンジの四割以上は我が国が買い付けをしている。そういうことを通じて農産物の貿易の安定に実質的に非常な寄与をしているわけでございますので、そういう実態も大いに主張していかなければいけない。  さらにまた、農産物の輸入面あるいは輸出面で、各国がそれぞれの立場できまさまな輸入制度あるいは輸出制度を設けております。それらについての我が国の制度との比較考量のもとで、実質的な公平性の主張といったこともやっていかなければいけないというふうに考えております。  いずれにしましても、今後パネルがスタートするまでの期間に、今申し上げたようなことを頭に置きながらきちっとした対応ができるように我々としては準備を進めていくつもりでおります。
  138. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、塩飽さん、私もう少し聞きますが、パネルの裁定あるいはガット結論は数量制限についての黒白を明らかにするという程度にとどまるのか。議論の過程にはいろいろな議論があると思いますが、例えば日米交渉の中で行われた輸入の自由化の時期の問題であるとか量の問題であるとかあるいは国境調整の問題等々についても何かつくようなことがガット上は認められておるのかどうか、この点が一つ。  それからもう一つは、日米交渉では、余り課徴金課徴金と言いたくないが、課徴金のほかにも量や時期の問題で未決定の問題がたくさんあるのだから一括でないとという仮定で話し合われたのだそうですが、課徴金については十一条で関税、課徴金を除きというふうにガットの条文に明確に載っておりますね。ですから日本としてはこれは当然別物という形でガット話し合いに臨むだろうと思いますし、大方のガット加盟国も、条文に明記されておるのでありますから課徴金については対象にならない、こういう理解をしてよろしいと思うわけでありますが、それでいいのか。ただ、アメリカガットの解釈をめぐって自由化というものを相当幅の広い観点から取り上げていく。実際に、自由化がストレートに自由な状態が行われていくようなものを指しておるので、必ずしもそういうものだけにこだわらないという意見もちらほら聞くわけでありまして、この際我が方の交渉に臨む立場で、ガット規定の条文から見てその程度のことは明言されるのではなかろうかと思いますので、お尋ねをしておきます。
  139. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 第一の点、ガットパネルの中で我が国が主張を行っていく場合に、これまでに佐藤大臣が二回にわたりワシントンでヤイター代表との間で行いましたいわゆる二国間の交渉経過というものをガットパネルにおいて主張するのかどうかということが第一点のお尋ねでございます。  パネルでは牛肉及びかんきつ我が国の輸入制度がガットに照らして法的にどういうステータスにあるのかというのが中心的な争点になることは間違いないわけでございますので、我が国から見てこれらの輸入制度をガット上法的にどのように解釈をするのかという主張が基本になることは先ほど申し上げたとおりでございますが、二国間の交渉という枠内で我が国がとったポジションは、大臣も先ほど申し上げましたようにアメリカと二国間の話し合いによって本件について解決をしていくという前提に立ちまして、交渉アメリカから提起されているすべての要素を一つのいわばパッケージとして仮定の上に立って我が国の主張をそれぞれの時点で行ってきているわけで、そういう枠組みの中で展開された主張でございます。したがって、それをストレートにガットパネルの中における我が国の主張にそのまま引き写してくるということについてはいろいろ問題があるのであろうというふうに思いますが、いずれにしましても我が国としては、本件について我が国の国内の関係生産者の立場も十分考えながら紛争の永続的な解決を目指す、そういう観点から二国間での主張を行ってきているわけでございます。アメリカとの間で実質的にそういう主張を行った、そのアメリカが紛争をガットの場に提起をしているということでございますので、そういう点も十分念頭に置きながら、パネリストの実質的な我が国の主張への理解が深まるようにやっていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。  具体的な二国間の交渉の場での主張をパネルの場でどういう形で反映させるかということについては、問題が非常にデリケートでございますし、今後のパネルにおける我が国の主張全体の中で、どういうふうに具体的にやるべきかということについてはなお今後検討してまいりたいと思っております。  それから、御質問の後者の課徴金の問題については、お話がございましたように、私どももガット上輸入制限と明確に区別されております課徴金についてはガット上合法性が認められているもの、そういう法的な位置づけになっているものというふうに理解をいたしておりますが、我が国牛肉かんきつパネルにおける審査に際してはあくまで現在の我が国のこれら産品についての輸入制度が争点になるわけでございまして、将来一定の条件が成立した場合に我が国がとるかもしれない措置といういわば仮定の事実あるいは措置、そういうものを争点にすることはできないのじゃないか。そういう意味では、ガット上の紛争の対象はあくまで現在の輸入制度を問題にするということでございますので、今回の牛肉かんきつパネルの中では課徴金についての主張は、あるいはアメリカからそういった主張がなされるかもしれませんけれども、そもそもパネルの争点としてはそういうものはなり得ないものである、法的にも対象になるべきものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  140. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がもうなくなったと思いますが、最後に大臣に特に御要請をしておきたい。  それは、私は、大臣の二度にわたる訪米交渉経過の概要をお聞きをしても、あるいは毎日マスコミを通して伝えられるいろいろな情報を見ても、この日米の農産物貿易、あるいは最近の漁業交渉などを含めてアメリカ側日本に対する言い分は非常に強権的というか、口の悪い人は日本アメリカの一州にすぎぬのか、こういう感じすらするような状態で、実は余りいい感じを持っていません。しかし一方、振り返ってアメリカ立場になると、実際問題として五百億ドルを上回る貿易の赤字が日米間で起きておる、この厳然たる事実もまたある。  そういうことを考えると、アメリカ我が国との間で農産物貿易をめぐっては、こういう形で、あなたは今まで言われ、そしてやられてきておるような方向で一貫して進めてもらいたいと思うが、しかし日本の国内問題としては、確かにこの問題を中心にして農業と工業の問題、難しく言えば我が国の経済の中の農工の不均等発展、しかしそれには工業と農業の違いという本質的な側面があるし、我が国の零細な農耕地という前提がある。あるいは、これは世界どこへ行っても、農業は一般の工業とは違うのだという認識の農政路線がしかれておる。  ですから、それはそれとして、しかしこういう事態を招いたということについて、私どもから言わせれば、日本の財界がもっとこの問題に対して責任を持たなければいけないと思うのですね。そういう意味の論調やそういうものを我々の側から出さなければいけない。これは国内におけるまさに調整であると思う。竹下総理は調整の上手な政治家ですが、アメリカとは、あるいはガット上は我々の主張をやらなければいけませんが、同時に国内のこの問題の取り扱いについては明確に、この問題を惹起した日本の貿易黒字の問題を中心とした経済の不均等な状況の中での対応策、これについて主張すべきは農業サイドで主張していかなければいけぬと思うのですね。竹下内閣の一員として大臣がその旗も同時に振ってもらいたい、こう思います。  最後にその点について、これは百姓は率直に言っておるのだから、輸出した自動車の犠牲をわしらが負わにゃいけぬのかとみんな言っておるのですよ。あなたのところのお百姓さんだって、米価が今度また下がると言われておる、食管が崩れる、そのうち自由化だ、この形は農村ではびこっていきますよ。そういうものに対してこたえるすべを我々は持たにゃいけぬ、お互いに。大臣はそういう面で、そういう大きな赤字を生み出したものに対して農業サイドで主張すべきことは主張してもらわないといけぬと私は思うのですが、そういう点についての佐藤大臣の御所見を最後にお伺いをして終わります。
  141. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今おっしゃいました認識は、私と共通する部分が非常に多いわけでございます。いつの時点でだれとの間で話をしたかというそこまでは、外交交渉でございますので具体的には申し上げかねますが、我が国の貿易黒字、これに関連づけながら牛肉かんきつの問題が時として話題になることはしばしばございます。今までもございました。  そういうときに、我が竹下内閣において世界に貢献する日本ということで一生懸命にひとつ、国民の流した汗、その集積をどう貢献していくかということについては、アメリカの貿易赤字、アメリカの今困難に直面をしておる問題点等も含めて我が国はどのようにお手伝いできるか、世界に貢献をするというその中においてどうやるかということについては、私自身も竹下内閣の一員として、国務大臣として重大な関心を持っておるということは、日米交渉の中にも私が率直に発言をした経緯があるということを申し上げまして、御理解を賜りたいと思っております。
  142. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  143. 菊池福治郎

    菊池委員長 竹内猛君。
  144. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、沿岸漁業整備開発事業の実施に当っての諸問題に関連をして水産庁を中心に伺いますが、大臣は時間の都合で聞いていただいて、また大臣と話をする時期は別にありますから、まだそこまでいかない事務段階整理をしなければならぬことが多々あると思いますから、時間の許す限り聞いておいていただきたい。時には答えていただくこともあるかもしれませんが、そこまでいかなくてもいいのじゃないかと思う。  まず、ことしの四月四日に、沿岸漁業の——長いから沿整法と言ますけれども、沿整法についての抗張力問題について質問書を出しました。これに対して、三週間かかりまして、二十六日に答弁書をもらったわけでありますけれども、これを見ると、三週間もかけた努力にもかかわらず答弁書には値しない内容であり、報告書としか考えられない。重要なところはほとんどまともに答えていない。この程度の回答が出るのに三週間もかかった根本的な理由は何ですか。
  145. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先般先生からちょうだいいたしました質問につきましての御回答が三週間とおくれましたことは、当方といたしましても事務的に若干時間のかかり過ぎという感じはいたしておりますけれども、御質問ございましたことがかなり専門的な御知見に基づきましての御質問でございましたので、細部の文章の表現はともかくといたしまして、いろいろと精査の上御答弁を申し上げましたので残念ながら三週間もかかってしまったわけでございます。
  146. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題に関連をして、私自身が若干この問題に取り組んだ経過がございます。それは、四十九年にこの法律ができて、五十三年ごろに、あるメーカーからの相談があった。水産庁の皆さんもいろいろと指導してくださいましたが、どうしても理解できない点が幾つかありました。それは、認定を受けておるメーカーが現地で営業しようとするとコストが高い、どうしてもそれが採択をされない、そしてそこにいろいろなトラブルが起こる、こういう問題があちこちで起こった。ところが一方、今度はもう一つのところはどんどん採用されていく。抗張力の計算を一方には要請し、一方には要請をしない、こうなると、これはもう基本的に対立せざるを得ないのですね。なぜそういうことをやってきたのか、この点についてどうですか。
  147. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 魚礁につきまして、従来認定ということがあった経緯もございますけれども、どういう工法なり種類を採択するかということは、それを設置しますことに伴います効果でございますとか、あるいは国の助成を受けておる関係からいいましてもできるだけコスト問題というようなものも念頭に置きまして、それぞれの事業主体がそれぞれの関係製作者との話し合いの上で採択してきていると思っておりますし、そういう経緯になっておるわけでございまして、当方としてどれを使い、使っちゃいかぬということは個々具体的には言ってきておりませんで、それぞれの実情に応じて本事業が効率的に運用されるということで個別的にそうさせていただいているわけでございます。
  148. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういうように事業主体が地方へ行って個別に採択をするといっても、国の補助金が、多い場合には七割公的補助金が出る、一般でも五割以上だ。これくらい率のいい仕事はないのですね。そういうものが統一指導基準もなしに個別的に地方でもってやられるなんということはないはずなんだ。そういう点で、いろいろなことからしばらく手を抜いておりましたが、六十二年の暮れに、あることからまたどうしてもこれは国会で取り上げなければいけないということに気がついた。  それは各地を回ってみて魚礁問題について、壊れるものもあるし、いろいろなことがある。そして、それについていろいろ言えば水産庁から圧力がかかって、そういうことを言うならおまえのところはやらないということで抑えつけてしまうということもあるし、学者の間からも、どうも抗張力の問題については必ずしも正しい取り組み方をしていないのではないか、コンクリート工学もあるし土木工学もあるということで、違った意見も出ている。こういうような問題があってしばらく抜いていたけれども、今度は本気になって取り上げていかなければならない。それから、県庁等々においてもいろいろと意見が出ています。私のところにも幾つかの情報が入っている。それを見ると、なるほど現地と霞が関と違うのだな。  社会党ではことしの大会で、単に水産庁のこういう問題だけではなしに、構造改善局についてもあるいはその他についても現地調査を行って、霞が関の行政というものと一般のあぜ道の声、こういうものを常に対比させながら、地方で汗を流して働く人々の声を霞が関に近づけょう、官民一体となって農業も水産業も林業もやろうじゃないか、こういう考え方に立っているわけでありますから、決してここで問題を取り上げたからといって一方的に攻撃したりするわけではありません。そういう点でしっかり答えていただきたいことが幾つかあります。  これは補助金でありますから、統一基準であるとかそういう方針、確かに沿整法では三つの仕事が中心になっている。三つの仕事が中心になっていて、その中で魚礁事業というのは一つの事業なのだ。そういう場合に、統一基準があるだろうということで、きのう夕方、初めて水産庁の基準指導書というものをもらってみましたけれども、この中には水産庁長官が指導するということになっているが、水産庁長官の大事なものはまだ私は手に入れてない。きのういただいた二つの書類だけでは判断がつきません。だから、まだまだこれも出してもらわなければだめだと思うけれども、地域でやるにしても、中央から統一基準、統一方針というものがあって、それに基づいて各県が事業を起こし、相談して書類を出してきてそれを審査して補助金が出るはずなのだ。そういうことはしないのですか。
  149. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 我々といたしましては、どの事業もそうでございますけれども、その事業の効果が十全に発揮され、しかも経費的にも安定しているということをこいねがっていろいろと審査しているわけでございますが、ただいま先生からお話がありましたように、こういう技術的にも非常に問題のあります事業につきましては、当然その技術指針といいますか設計指針的なものが何か全国ベースで一つあるということも、それぞれの事業主体が事業を行うに当たっての選択基準として非常に必要なことも確かかと思っております。  そういう立場に立ちまして我々といたしましては、五十一年度から第一次のいわゆる沿整計画というものがスタートいたしまして魚礁設置事業が本格的に実施されることになったわけでございますけれども、五十三年に日本水産資源保護協会、ここで沿岸漁場整備開発事業構造物設計指針というものを、こういう公的な団体で多くの学者の方々にお集まりいただきまして知見を集合してつくらせていただいたわけでございます。  その後、技術なりその蓄積というものもいろいろと変わってまいりましたので、昭和六十年三月に新しい技術知見を加えまして従来の設計基準を改定いたしまして、これは社団法人であります全国沿岸漁業振興開発協会、ここで再編集していただいたわけでございます。  ここでできました指針は、現在魚礁にかかわります多くの研究者の方々それから水産庁の研究事業、こういうものの権威ある方々に御参集いただきまして、それぞれ専門的な知見を積み重ねてつくっていただいておりますので、こういう関係する技術者、学者を集合してつくった指針を基礎にいたしまして、我々といたしましてはそれぞれの事業者なりの選択、それから我々の審査をさせていただいている次第でございます。
  150. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その場合でも統一基準、統一した方針というものはどこでつくるのか、何がそういうものになっているのか、それはどうなのですか。
  151. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま申し上げましたように、最初昭和五十三年に日本水産資源保護協会、これは社団法人でございますけれども、これが指針をつくり、それから昭和六十年三月には最近のいろいろな情勢の変化というものを踏まえまして、社団法人全国沿岸漁業振興開発協会というものがつくっているわけでございます。それぞれの公的な協会でございますこういう社団法人がつくるに際しましては、もちろん当方も技術的にいろいろな形で参加し、現在魚礁に関する知見を持っておりますいろいろな学者、研究者を総動員してつくっている次第でございます。
  152. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私、どうしてもわからないところがあるのですが、五十三年のものが改定されて五十九年に今度新しく指針が出ましたね。それで、そのときに、私が手を抜いてから本委員会で別の党の方から質問があったときに、当時の松浦長官は五十九年までに新しい指針を出すということをここで答弁した。水の流れやいろいろなものを計算してやる。それから、業者が東京地裁に水産庁の何人かを告発したことがある。その場合にも検察の方からは、五十九年にそういう統一指針が出るからということで、五十九年というのはほぼ合っているということですね、国会の答弁とも合っているから。  そこで五十九年のこれが出たわけですね。これに沿っているということになると、私への答弁書の中にもこのことが書いてある。ところが、水産庁の皆さんは私のところに来て、これは公文書じゃない、これは私文書だ、こうおっしゃる。確かに私文書ですね。全国沿岸漁業振興開発協会のつくったものだから私文書だが、公文書というのは何だということになると、これは法律法律に伴う政省令でしょう。これが公文書でしょう。その公文書の中の指導要綱というものを二つもらったけれども、これでもはっきりしたものはなかなかつかめない。また、この中には水産庁長官が別に定めるものがあるという。その別に定めるというものを持ってきてもらわなければきめ細かい議論をしにくい。これは後で持ってきてもらいたいということ、これは意見だ。  私はきょうここで何もかも納得をしてしまうわけじゃないからまだこれから幾つかの問題を提起しますが、そこで問題は、一期、二期、三期まで入っている。私どもは沿整法の延長に反対をしたわけじゃない、賛成している。だから、反対立場からぶち壊すために言っているわけじゃない。そういう意味においては今日まで相当な額のお金を出してきた。そういう金を使う方のことについては答弁書にはちゃんと出ていますよ。答弁書にはお金を使ったとある。こういうふうに出ている。昭和五十一年度から五十七年度までを計画期間とする第一次の沿整の計画において事業量を七百五十億とし、昭和五十六年度までの実績は六百六十七億であった、また昭和五十七年度から六十二年度までを計画期間とする第二次の沿整の計画においては事業量を千四百億とし、昭和六十二年度までの実績は千九十一億であった、こういうようにお金の方の額は出ているが、一体、その金を使ってどこで魚をどれくらいとろうとするのか。  少なくとも土地改良でも何でもそうだけれども、何カ年計画というのをつくるときには必ずそこには目標があるはずだ。魚を集める、そしてそれをとる、それを販売すれば現在よりはそこが活性化する、よくなる、だから魚礁というものをあるいは漁場というものをあるいは魚族というものをそこに呼び寄せるための補助を国が出して仕事をするんだ。目標というものは、魚を集めてきて、漁民の経済が豊かになるということがねらいでなければならない。魚礁というのはその手段でしょう。そういうときに、一体魚をどこでどれだけとるか。日本には二千二百十九の漁業協同組合があるはずですが、そういう漁業協同組合もみんなそれぞれ魚をねらっている。そういうときだけに、その基本的な目標、それからその魚礁をどこへどういうふうに埋めるということもありますけれども、そういう沈設の結果どれくらいの魚がとれて、どれくらいの収益が上がったかということがなければ、それは国民の税金を海の中に投げ込むとしか言えない。そんなことじゃどうにもならない。その点はいかがですか。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  153. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 大切な国民の税金を使っての事業でございますので、当然その事業効果というものを念頭に置き、事業設計を行っているわけでございますけれども、ただ、御理解いただきたいと思いますのは、こういう魚礁設置事業という事業の特殊性から申し上げまして、どの魚礁を設置したらそれにつれまして何トンのどういう魚がとれる、そういう計数的な事業計画というものは残念ながらなかなか立てがたいわけでございます。  しかしながら、我々といたしましては、できるだけ効果的な事業遂行という点から、この事業が本格化いたしましてからいろいろな調査を県に委託する等で行っているわけでございます。この調査は、例えば六十一年度では二十三道府県に委託いたしまして、二十三地区において設置しました魚礁の効果について追跡調査をしていただいているわけでございますけれども、五十三年度から六十一年度の調査結果を見てみますと、もちろん魚でございますから、毎年毎年の漁海況によりましてとれる数量については変動はあるわけでございますが、一日一そう当たりの漁獲量で見ましても、こういう人工魚礁等を投下いたしました造成漁場と天然礁でやっております従来の一般的な漁場とではほとんど差がないどころか、人工魚礁設置の万が一日一そう当たりの漁獲量が多くなっている年が圧倒的に多いわけでございます。  それから、人工魚礁を設置したということで魚のとれるトン数がふえるということに加えまして、そういうみずからの努力で魚礁を設置して魚を育てるということで、いわゆる管理型漁業といいますか、資源を管理しようという意欲につきましてもその地域社会で相当高まってきているというような社会経済的な効果もかなりありますし、それから例えば人工魚礁を設置したおかげで漁場が近くなってコスト低下につながった、あるいはそれとも関連いたしまして新鮮な魚が多くなったとか、そういう経済的な効果もそれぞれの先ほど申し上げました委託調査によって十分解明されているわけでございますけれども、今後とも貴重な国の財政を使っての話でございますので、できるだけ効果の高い魚礁の設置ということを心がけてまいりたいと思っております。
  154. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今長官からそういう答弁があったから、それじゃ今までの調査したものを資料として全部の委員に配ってもらいたい。どこでどういう調査をしたか、それを配付してもらいたい。我々は今までのことについては全然わかっていない。  そういう中で十三年余もたっていますね。そこで、よかったか悪かったかということも含めて会計検査院の方にお尋ねをするわけですが、会計検査院に対しての関係があったかなかったかと聞いたら、会計検査院は、沿整法に対する三つの事業のうちの一つの増殖についての調査はした、しかし魚礁はしていない、こういう答弁ですね。それからもう一つの方もしていない。  そこで、増殖の問題についての指摘としてあるいは指導として、水産庁に対して漁場の指導の問題、管理の問題あるいは設置する経過におけるところの地元との協議の態勢の問題、こういう点についていろいろと要請をしております。こういう点では会計検査院も少ない手の中ではよくやったと思うけれども、しかしこれだけ三期にも入って相当な税金を投じているのですから、これは面倒でも何カ所か魚礁の調査をしてもらいたい。そうでないと、私たちはこれはなかなか納得がいかない。いかがですか。
  155. 山崎彌代一

    ○山崎会計検査院説明員 沿岸漁場整備開発事業につきましては、検査院といたしましても従来から関心を持って検査してきたところでございまして、ただいま先生御指摘のとおり、昭和六十年度の決算検査報告におきまして、増養殖場の造成事業につきまして適正な事業実施を図るよう改善措置を要求したところでございます。今後の検査に当たりましても、ただいまの御議論を念頭に置いて検査をしてまいりたいと考えております。
  156. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度は総務庁ですが、総務庁は農協の監査についてはばかに勢いよく突っ込んだけれども、農協ばかりでなしにこういう海の中にも手を突っ込んでもらって、面倒なことかもしれませんけれども、海の中でせっかく金をかけて埋めた魚礁がこういうふうになっている。(写真を示す)これを引き揚げて、またそれを回収して海の中に入れたというのです。その金はどこから出したかわかりませんが、とにかく大変金をかけてやっているはずなんですね。こういうふうになっている。  ところが、この前の委員会でも、宮城県でもほかでももうぼろぼろになってしまって引き揚げることができないようなところがあるということも言われていますね。いや、そんなのはない、聞いてないと答弁書はそうなっているけれども、そういうことを言うとそれじゃおまえのところはそんな面倒くさいことを言うならやらないよ、こう言われてしまうと、補助金というものはありがたいものですからなかなか弱いでしょう。そういうことですから、そういうことのないようにするためには、今長官が言ったように末端で採用ができるならそういうしっかりしたものを採用していかなければならないし、生産者の声を大事にしなければいけないということになるわけですが、総務庁としてのこういう問題に対しての取り組む気持ちはどうですか。
  157. 石和田洋

    石和田説明員 行政監察のテーマとしてどういったものを取り上げるかということにつきましては、おおむね三年の間に体系的に行政上の重要課題を盛り込むというようなことで計画的に取り上げているわけでございますが、そのときどきの社会経済情勢の変化を踏まえまして毎年この計画の見直しをやっているところでございます。  今後この計画の見直しを進めていく際には、先生の御意見も踏まえまして、監察として取り上げることが適当であるかどうか検討させていただきたいと思います。
  158. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、会計検査院にも要請したように総務庁にもぜひこういう問題について深い関心を持ってもらって、できればやはりしっかりしたあれをしていただかなければ、地域の皆さんからはなかなか納得ができない面があります。  そこで、この「指針」というものはどういう権威を持っているものですか。答弁書にはちゃんと書いてありますね。
  159. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 それぞれの事業主体が事業を設計する際、それから当方が、その事業が補助金を支出するにたえ得るものであるかどうかということを審査する際の一つの指針といたしまして、関係者に集まっていただき英知を結集して設計していただいているわけでございまして、この設計指針に従って我々はこの事業の適正な運営に心がけている次第でございます。
  160. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 水産庁の水産工学研究所、あれはこういう問題について最高の指導機関ですか。
  161. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 いわゆる水工研は、水産土木等に関します技術上の試験、研究、調査を行う機関として設置されているわけでございまして、こういう人工魚礁等にかかわる国の試験研究機関としてはいわば唯一の権威のある機関ということで、ここでいろいろな知見を積み重ねております。それを我々も、事業の実施上大いに参考にさせていただいているわけでございます。
  162. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろなことがわかりました。そこで業者との関係ですが、私の茨城県の場合には、業者、メーカーが十五はあるけれども、その十五の業者を見ると、三分の二以上は県の大手業者ですね、最大の建設業者ですよ。その業者の選定の基準というのは一体どうなんですか。どういうことで業者を選ぶのか。制度か何かそういったものがあるのか、それとも談合でもしていくのか、どうなんですかね。
  163. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 この事業は御承知のとおり国直営ではございませんので、業者の選定等につきましては、それぞれの事業主体がそれぞれの地域でのいろいろな技術状況なり経営体としての状況なりそういうことを総合判断して、それぞれの事業主体において選定しているはずでございます。
  164. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それぞれ、それぞれと言うけれども、それなら全国のメーカー、業者の名簿があるはずだから、これもいずれ出してもらいたい、それを要求します。  その次は、人工魚礁について漁民がこういう魚礁が欲しいんだ、こういう選択について何か権利を与えられていますか。
  165. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 それぞれの地域で漁業情勢というものがいろいろ異なっておりますので、事業主体は事業を行うに当たりまして、造成されます魚礁の漁場、これの利用者でございます今先生からお話がありました漁業者、こういう方々からもいろいろな意見というのはもちろん聞いているわけでございますけれども、こういう非常に技術的な点を要する事業でございますので、利用者でございます漁業者の御意向なりそれから当該海域の自然環境等、こういうものに関して知見を持っております地元の水産試験場とか学識経験者、こういう方の意見も踏まえてそれぞれを総合的にいろいろな形で検討の上、各地域に最も適した魚礁というものを設置しているはずでございますし、当方といたしましてもそういうことを願っておる次第でございます。
  166. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私のところには各地方からの魚礁の採択基準に基づいて事業を指定するところの報告が来ていますけれども、その中では地方で勝手にできないような形になっている。並み型があり大型があり、いろいろありますね。その地方にだけ任せておいたのでは行政としてはやりにくいでしょう、金が決まっているのだから。  そこで、問題は抗張力の問題なんですね。時間が余りなくなっちゃったからこの議論ができないのは残念ですが、これは残しておいていずれまたやりますけれども、採択基準というのがあります。例えば四百空立米以上というのは、抗張力計算がしてない魚礁の空間だからこのように空間を何々以上としているので、これは全国に対する農水省の指示ですが、この抗張力計算もしない空間が、必ず破損をすると言っているのが一つの有力な意見なんだ。現地でそういう事実があるからそれがやはり問題になるわけですね。  この四百空立米というのは、ここでは一カ所の魚礁群、魚礁の持つ空間のトータルを言うけれども、魚礁が集団で壊れていくのは、指針を守らずに、ともかくこのように金を使えばいいという入札基準になっているからです。しかも、コンクリート一立方メートル当たりの、すなわち一立米ともいいますけれども、その施工単価、生コン、鉄筋代金、クレーン等の重機代、人夫代、船代、トラック運搬費、現場管理費等々を指針のとおりに抗張力を施した魚礁の施工単価と比べると、間違いなく壊れる証明がつく上に、違反魚礁の価額は二・三八倍以上になることが大体立証されているということであります。  抗張力計算を完成させると、バランス、強度、潮の流通、蝟集効果等をいや応なしに仕上げる結果になるので、壊れるのが前提の空間の設計はつくろうにもできない。したがって、質問主意書で表明された最も大事な魚礁の経済性も完全に達成できるはずです。ただし、壊れる空間が四百空立米で六百四十万と破損を前提の採択基準に合わないので採択されない。しかも、このような手段で農水省が必死になって努力をしている、死守しているということが大変な問題ではないか、こういう点について私はここで指摘をしておきたいと思うのですが、これはいかがですか。
  167. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先ほど来先生からいろいろ御指摘がございましたが、我々といたしましては、何といいましても貴重な国民の税金を使って、しかも魚資源の将来をこいねがって行っている事業でございまして、何とかその効率的、効果的な事業の推進ということに従来からも努めてきているわけでございますけれども、先ほど来お話ししておりますように、一定の設計指針というものを関係者に相集まっていただきましていろいろな知見を集大成して設計しているわけでございます。そしてこの設計指針に従いまして何とか安全で効率的な事業ということを従来もやってきておりますので、万々間違いはないとは思っておりますけれども、今後とも、こういう国の予算の執行でございますから、厳正でしかも効果が少しでも上がるようなことに心がけてまいりたいと思っております。
  168. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がないからこれで終わりますが、私がことで幾つか要請した資料についてはぜひそれを整えてもらいたいということ。それから、今までの短い時間のやりとりはまだこれで了解したわけじゃないから、これからも私たちは現地の調査をしながら、また臨時国会の中でひとつゆっくりいろいろお話をする、こういうふうにしたいと思います。  以上をもって終わります。
  169. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 沢藤礼次郎君。
  170. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 本日は時間がかなり短いものですから、できるだけ焦点を絞りまして、当面しております米の需給均衡化緊急対策の問題と、継続的に審議してまいりました農家の負債対策の問題、そして時間があれば構造改善事業、圃場整備の問題、私は以上三点について取り上げたいと思います。  まず最初に、本日取り上げる予定の三つのテーマを含めまして、現在の日本農業というのは大変な時期に差しかかっている。先般来繰り返し論議になっておりますガットの問題あるいは食管制度の問題、やがて来る米価審議会、米価の問題、他用途米に対する対処の問題、自主流通米の問題、どれを取り上げても日本農業に大変な問題の多い時期が来ているなということを感じさせられる時期でございます。  こういった中で、正直に申し上げまして、私も農村地帯に住んでいる人間でございますから、農民の現在の心理状況あるいは農業に対する意欲というものを常日ごろ話し合い、あるいは肌で感じてまいってきておるわけですけれども、率直に申し上げまして現在の農民は、農政なり今言ったようないろいろな問題に対する対応に疲れているといいますか、あるいはもっとデスペレートな状況が出てまいりまして、農業というものの将来性はもうほとんどないのじゃないか、したがって後継者対策に対する熱意にも陰りが出てきておる。そして生産意欲は低下し、いろいろな面での経済的負担は逆に増加している。こういうふうな状況に来ておりまして、このまま推移いたしますと、日本農業は大変な状態にのめり込んでいくのじゃないかという危機感すら覚えるわけでありますけれども、まず最初大臣の基本的な現在の日本農業の現況把握ということにつきましてお聞かせ願いたいと思いますし、なお将来の日本農業の展望と申しますか、あるいは農水省としての一つの目標と申しますか、そういったものがあればお聞かせ願いたいと思います。
  171. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘の現在の農業認識の問題につきまして、私の方から簡単に御報告を申し上げたいと思います。  既に所信表明の段階におきましても大臣からお話を申し上げた点でございますが、現在、我が国農業は、経営規模拡大の停滞あるいはこれから先生お話しの農産物需給の不均衡などの諸問題に直面しております。また、内外の価格差の是正あるいは農業保護のあり方につきまして一部では農業たたきともいうべき状況もございます。いわば内外からいろいろな意味での強い関心が寄せられているわけでございます。  こうした状況に対しまして、二十一世紀へ向けての農政の進むべき方向ということで農政審議会から報告をいただいているところでございます。農林水産省といたしましてはこの報告を踏まえまして、国民食糧の国内供給力の確保を図りながら国民の納得し得る価格での安定供給に努めることを基本といたしまして、与えられた国土条件等の制約のもとで最大限の生産性の向上を図るという観点から農政を展開してまいらなければならないというふうに考えているところでございます。  具体的な事例では、既に本年の年次報告におきまして、各地域におきます農家あるいは市町村の創意工夫といったものの事例を御紹介させていただいておりますが、中核的担い手が明るい希望を持って農業に取り組めるように構造政策の推進による生産性の高い農業の実現であるとか、農村社会の多様な構成員の方々の間におきます適切な役割分担等を通じました所得機会の確保、山村あるいは平地農村それぞれの地域におきます農村社会の活性化を図ること、さらにまた、最新の技術的な革新に基づきましていわゆるバイオテクノロジー等の先端技術の開発実用化等を推進することが必要だというふうに考えておるところでございまして、各般の施策を強力に展開していかなければならないと考えております。
  172. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この論議はかなり時間をとってもいろいろな角度からできると思うので、本来であれば大臣——大臣お戻りになる時間は何時でしたか。
  173. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  174. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 速記を開始してください。  沢藤君。
  175. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣でなくても結構です。できれば大臣という気持ちもありますが、私は、農水省としてあるいは日本の農政としてそういった将来展望を、こうもしたい、こういう点もあるということをいろいろな場で、あるいはいろいろな表現でなさることをできるだけ積極的にと申しますか、受けとめたいと思うのです。ところが、田んぼに立っている人間の実感からすれば本当にやりきれないと申しますか、農業の先が見えないという空気は広まる一方だというのが実態だと思うのです。  そこで希望的質問ということになるのですけれども、日本農業は捨てたものではない、こういう方面に活路を見出すのだ、今はこうこうこういうマイナスの要素が多くなって非常に苦しい時期だけれども、日本農業はこういう方向に向かって、こういう方策に向かってやるんだという農民に対する勇気づけというものを行政の側に望みたい。あるいは行政と農業団体、特に農協ですね、全中あたりがもっと火花を散らして論議しながら、ここは農協に対する要望を申し上げる場ではないと思いますけれども、農協活動の重点を今こそ農業政策なり農業展望というものに置かなければならない時期だと思っております。  これは監督官庁であられる農水省が機会を見て農業団体ともっともっと火花を散らして話し合う。現実に最前線の単位農協が何に力を入れているかといえば、金融であったり購買であったり、これは必要なことなんですけれども、もっともっと必要なことは営農指導でありあるいは農業政策を農民と一緒になって練り上げて、それを行政に迫っていくとか、自分たちの方策を天下の農民に示すとか、今の時代であればこそ、農水省も農業団体も農民の力をつけるようなそういう方策なり意気込みというものを示さなければならないと思う。そのことをぜひ、非常に抽象的な言い方になって恐縮ですけれども、日本農民を力づけるような方策、そしてまた農民団体との連係プレーのもとに檄を飛ばすというぐらいの気概を持っていただきたいということを要望しておきたいと思うわけであります。  それに関連いたしまして質問を続けますが、転作の問題があります。  本年度の目標面積は七十七万二千七百四十六ヘクタール、全水田面積の約二七%ということになるでしょうか。去年はたしか二五%という言い方を私どもはしてきました。そして二五というのはちょうど四分の一であります。田んぼの田の字というのは、田が四つ集まって田という字になっているのだけれども、そのうちの一つがなくなって二五%が吹っ飛んでしまったら、残っている漢字はどう読めるか。品物の品としか読めない。何か農政の理念というよりは、数字とか経済とかそろばん勘定とか、品物扱いしているのじゃないかというふうなことを私は申し上げてきたのですけれども、その二五さえも突破して七十七万へクタール余の転作目標面積になってしまったわけです。  これは本当にいい意味で汎用田のように田畑輪換可能な状況が整っておりまして、その分本当の意味の生産的な転作が転作面積一〇〇%行われるという状況であれば、いろいろな問題はあるにしてもよろしいのですけれども、必ずしもそうじゃない。地域によって違うかもしれませんが、荒れている水田が目立ってきている。それから、水田の中の牧草とか水田の中の畑作というのはやはり無理がある。雑草の種が飛んでくるとか、それからいわゆる用排水系統からいうと、どうしても水田の真ん中の畑作は水分過剰になるとか、かなり無理がある。そういったところからいいまして、耕地の荒廃あるいは生産基盤の脆弱化が進んでいるのじゃないかという危惧を持っているわけです。農家に対する、特に水田単作地帯に対する打撃は大きいと思うので、でき得れば水田をつぶさないで済む方策というのはないものか。  そこでお聞きしますが、現在の転作あるいは減反政策というのは、米の需給関係さえ帳じりが合えば減反政策は引っ込めますか、それをお聞きしたい。
  176. 吉國隆

    吉國政府委員 水田農業確立対策、昨年度から進めているわけでございますが、この対策の基本的な考え方としましては、米の需給均衡、そのための計画的生産ということも引き続き重要な課題であることは論をまたないわけでございますが、あわせまして、先生お話しになりましたように、水田というのは我が国の非常に重要な農業生産力の基幹であるという認識をいたしておりますので、これの有効な活用、これを通じまして生産性の高い水田農業の形を、輪作農法というようなことも取り入れながら進めていきたい、こういった考え方に立っているわけでございます。また、先ほどお触れになりました農業団体の主体的な取り組みというものも求めながら、そういった課題に取り組んでいくというような考え方で組み立てて運営してまいっておるつもりでございます。  地域ごとの水田の条件等によりまして、作物の選択なり営農の仕方になかなか苦労があるという実態は先生もお触れになりましたような実情があるというふうに私ども認識をいたしておるわけでございますが、できるだけ水田の生産力をそのまま生かして使うという形態も取り入れていくという観点から、御承知のようにこれは前期の対策からでございますが、他用途利用米の生産といったようなものも取り入れてまいっておりますし、またえさ米につきましても道を開いている。えさ米につきましては、御承知のように収益性格差の問題が非常に大きいという問題がございますけれども、一応そういったものに実験的に取り組みたいというような声もございまして、そういった道も開いて多少なりとも実績は出てきているというようなことになっているわけでございます。  私どもとしては、将来の農業ということを考えます場合に、国民の需要に即した生産をやっていくことを基本としながら、その上にいかに生産性の高い営農を築いていくかということが何といってもやはり将来展望という意味で中心課題であるというふうに思っておりますので、この対策を単なる米の需給の帳じり合わせということでなくて、そういった物の考え方で今後とも農業者、農業団体の御理解も求めながら進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  177. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私のさっきの質問の一番最後の部分にずばりお答え願えなかったのは残念ですが、私の申し上げたかったことは、水田というのはつくるのにかなりたくさんの労力と年月が必要です。いつかも申し上げましたように、ただ四角に区画すればいいという問題じゃないわけです。荒れさせるのは簡単なんです。ただ、一たん荒れさせますと、もとに戻すということはこれまた大変なことなんです。  そういう意味で、これもいつか申し上げた記憶があるのですが、日本列島の置かれている風土性、気象条件は、夏の高温多湿というのが特徴なわけですね。これに見合う農業あるいは農業基盤というのは、特徴あるのはやはり水田だ、こういった観点からして、しかも水稲というのは、単位面積で太陽のエネルギーを捕捉、固定するのに非常にすぐれた力を持っている。そういうことからいって、水田をつぶさない、あるいは水田を減らさない、そういうやり方を全知全能を絞って考えればできないことはないじゃないか。ただ米が余る、したがって水田を減らすということは、非常に安易な政策だと私は基本的にそう思うのです。これは前からそう思っているのです。  今さら過去にさかのぼって水田再編成対策、一期、二期、三期、もとに戻せと言ってもこれは無理なわけですけれども、ただ少なくともあれが始まった時期の言い方、おっしゃり方、あるいは受け取り方の中には、この減反政策は一時避難的な措置なんだ、こういう言い方をして農民を説得したのです。したがって、この時期を越えればやはり水田は水田として、しかも結果的には通年施行をしながら田畑輪換可能な汎用田もつくることができるし、減反政策の時代のあらしが過ぎてしまった後にはむしろ財産として農民の前に残るものが多いんだという論議もしたのです。  つまり、緊急避難的な措置であるということと、この期間を通してむしろ農民の財産あるいは耕地の持っている力を高めていくのだ、災いを転じて福にするのだというビジョンがあってスタートした、私は県議会議員当時の論議を思い出しながら、それがスタートだったと思うのですよ。その意気込みなりビジョンがいつの間にか消えてしまって、二次だ三次だといってどんどん延長戦を重ねてきた。その間に農業立て直し、農業基盤をよくするのだという意気込みにかわって、食管はどうやらしりすぼみになるのじゃないか、自主流通米がふえていってこれも政府米から外されるのではないか、米価はどんどん下がっていくのじゃないか、これはもう現実のものになりましたね。幾つかのおそれがあった、疑問があったうちの一つ二つはもう現実化しているわけですよ、米価の問題一つ取り上げてみても。  ですから、繰り返すようですが、とにかく水田農業に対する農民の不信感というのは今やぬぐいがたいところまで来つつある、こういう現状認識を私は農政の担当者としては厳しいまでに腹に刻んでいただきたい。その上に立って今後の対策をできるだけ当初の、夢のある転作と言えば語弊がありますが、夢のある転作に戻してもらう、夢のある減反政策に戻してもらうということを強く要望したいわけで、そういった意味で、今お答えの中にありました農業団体の主体的な取り組みによって云々ということで今取り組んでいるんだというお話がありました。  その農業団体の主体的な取り組みと言われているものの一つの中に、米需給均衡化緊急対策、そして今取り組んでいる消費純増計画というものがあるわけですね。これの現時点における進行状況と申しますか、あるいは全国的な取り組み状況を一口に言えばどういうことになるか、その状況、それから今の段階で指摘されている問題点等が出てきていれば、その点についてもお示し願いたいと思うのです。
  178. 甕滋

    ○甕政府委員 最近におきます米需給の動向あるいは今後の見通しといったところから、三たびの過剰処理が懸念される事態になってきたという状況がございました。そこで、これまでの水田農業確立対策の二年目を推進いたしますほか、三十万トンに及ぶ需給ギャップをこの際緊急対策の形で六十二年度あわせて進めていこう、こういうことにして現在進行をさせていただいております。  その米需給緊急対策につきましては、生産者団体とも十分相談をいたしまして、極力生産者あるいは生産者団体サイドの活力を引き出しながら積極的に取り組むという中でこれを推進していこうということにしております。現在、この三十万トンの需給ギャップの縮小につきましては、米飯学校給食の一万トン、販売業者の在庫積み上げ三万トン、さらに他用途米の需要拡大あるいは在庫造成十二万トン等を除きまして、十四万トンになりますものは地域の創意工夫を生かした需給ギャップ縮小ということで取り組もうということで進めております。  その中で、ただいま御指摘ございました生産者団体等による米消費の純増の実効を上げられるような取り組みというものを進めてきております。その状況は、関係者の方々が大変御苦労をされましてまとめてまいった計画について見ますと、全国で約三万トンにつきましてこれを実施する計画となっております。  主な内容といたしましては、学校給食への米の一層の供給とか純米酒とかいろいろな取り組みをしておりまして、そのほか需要開発米といった分野につきましても相応の取り組みをしております。残された分野につきましては、転作の上積みで取り組みもやむなしということで、これは各県、各農協の考え方によって取り組み方にいろいろ差はございますけれども、いろいろ現場ベースでも考えに考えて対応するということでこれまで進めてきておりますので、数量的に多い、少ないという評価はいろいろあろうかと思いますけれども、私どもとしましては、こういった状況の中で純増という観点で困難な点に取り組んでいただいた点については、これはともどもに評価して今後ともさらに進めてまいりたい、こういうつもりでおるところでございます。
  179. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間がどんどん過ぎますので、私の方から実情を若干指摘しまして、特に消費純増計画について問題点を御指摘申し上げて、それについての所感を一言いただきたいのです。  例えば純増計画はタイプが九つある中で、学校給食、私はこれは期待してよろしいと思うのです。ただ、これが問題としては手続が非常に煩瑣であるとか、あるいは父母負担の増にならないかとか、あるいは文部省サイドで学校給食の増加を計画している分があったとすれば、その分を超えなければこの場合はカウントしないわけでしょう、そういった問題もあるということが一つ。ただ、学校給食といわゆる備蓄の二つは私の感じとしては実効のある、あるいは定着しそうなタイプですが、他は問題があると思うのですよ。  例えば純米酒、これは米一キロにつき酒一升でしょう。そうしますと一俵こなすのに農家は六十本清酒を飲まなければならないということになる。これではアル中製造政策じゃないかという悪口も聞こえてくるのですね。これは幾ら酒が好きな農家だって大変ですよ。これでもってこなすということは私はかなり問題があるのではないかと思うのです。米の加工品についても、みそこうじ、結局生産者が米を買い戻して自分でこうじみそをつくるわけでしょう。この手間が要る。お握り、これは何かの催しのときにお握りを無料で提供するという格好でやるわけでしょう。だれだってそうしょっちゅうお握りを必要とする催し物があるとは考えられない。  ことほどさようにこの九タイプのうちの学校給食と備蓄以外は永続しない、私はそういう気がします。早晩見直しの時期が来るのではないかという気さえするのです。ですから、消費純増計画を含めたこの米対策というものは食糧庁を含めて農水省としてはもっと真剣に考える必要があるし、あるいは先ほど申し上げた水田全面活用という非常に高次元の政策判断というものを必要とするのではないかという感想を持っています。一言この純増計画について、今私が申し上げたことを含めて、その見通しについて伺いたい。
  180. 甕滋

    ○甕政府委員 今回の純増対策につきましては、純増とうたってあるとおり、これまでの消費拡大についての努力の上に、さらに別途上積みをしようという趣旨が基本でございます。  そこで、学校給食にいたしましても、これまでの計画の分量に対しまして純増させる、こういうようなことで現地の御苦労もあったわけでございます。また、御指摘のございました純米酒、それから米の加工品あるいはお握り、こういったようなことにつきましても、それ自体がなかなか数量の純増につながらない、こういう悩みがあるのは事実でございます。これが果たして純増になるかどうかということも、またやかましく申しますといろいろございます。  そこで、ただ農家のそういった消費拡大意欲を評価いたしまして伸ばしていこう、こういうことからいたしますと、例えば半分はカウントできるじゃないかとか、いろいろな話し合いの中で実態に合った方針もとってきておるわけでございまして、今回のことは何分本年度の緊急対策ということで、できる限りこれをやっていこうということで進めておるところでございますので、永続というお話もございましたけれども、今後の消費拡大運動を進める場合に、当事者のいろいろな難しさというのも痛感しておりますし、それだったらまたこうしたらいいじゃないかというような知恵も出てきておるということかと思いますので、今後の消費拡大のために今回のこともいろいろまた参考にいたしまして進めていかなければならないなという感想を持っております。
  181. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題は打ち切りたいと思うのですが、要望といいますか、お願いしておきますけれども、この問題については、私はその年度年度の工夫ということも否定はいたしません。ただ、基本的には冒頭申し上げました日本の食糧政策をどうするか、水田をどう考えていくかという基本にかかわる問題だと思うので、例えば財界のいろいろな提言もある、あるいは食管会計に対する財政上のいろいろな論議もある。内圧、外圧があるということはわかりますけれども、その内圧、外圧に負けないで頑張るのが農水省であるし食糧庁であるということを、農民の苦しみなり叫びというものをよく実感なさいまして本当に力強い政策を展開していただきたい。いじめられっ子で登校拒否に陥るのじゃなくて、こっちから打って出るくらいの気概でやっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  時間がありませんので、二つ質問して終わりたいと思います。箇条書き的で結構ですからお答え願いたいと思います。  農家負債対策として、何度か申し上げてまいったわけですけれども、特に融資関係についていろいろ検討なさっているということを仄聞と申しますか非公式にお聞きしているのですが、大蔵との詰めを踏まえましてどういう対策を準備なさっており、それがいつごろ最前線の農業現場に届くか、その時期的な見通しを含めてお知らせ願いたいというのが一つです。  最後の一つは、これもいつか時間をとって論議したいのですが、圃場整備事業をめぐって、いい面、悪い面あるいは賛成面、反対面いろいろ飛び交っているようであります。ここで私がお聞きしたいのは、圃場整備というのは一体何のためにやるのだろうか。答えが出てくるのは省力化だ、あるいは機械化だ、大規模化だ、こういう声が出てくるわけですが、それは一つの途中の目標であって、最終的には農家に対してプラスの効果、もっとずばり言えば収入が多くなる、プラスになった、こういうことが出てこないと、経費倒れで、圃場は大変立派になったが借金は残ったということでは本来的な目標をちょっと見失っているのではないかという気がしないでもない。そういう意味で、圃場整備における目的と現段階における効果をどう把握しているか。  そして、最後の最後になりますが、この圃場整備の仕事を、設計なり線引きというのはプロパーである行政なり市町村の役場の技術吏員がやるにしても、圃場整備事業そのものは土木業者にもうけさせるだけが能ではないだろう。もうけさせるという言い方も、そういう言葉を現実農民は使っているのですよ。農民が、改良区なりあるいは農民団体なり農民組合が自分自身の仕事としてやるという道は開けないものか。出稼ぎしないでも済むわけです。しかも田んぼの状況、土の状況をよく知っているのは農民だし、今の農民は機械の操作とかいったものはできるのです。機械をリースにしながら農民の力で圃場整備をするという道だってあっていいのじゃないか。このことをお聞かせいただいて質問を終わりにします。大臣、残念でした。後でゆっくりまた機会を見て御意見をお聞きします。
  182. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 それでは、第一点の農家の負債対策について私の方からお答え申し上げます。農家の負債といいましても、全国平均というとらえ方は適切でない、やはり地域なり経営の性格によりまして実情に応じたとらえ方をして対策を打っていく必要があると考えておるわけでございます。  そこで、そういう前提に立ちまして六十三年度の新たに講ずる負債対策といたしまして、一つは自作農維持資金、これは農家の再建整備を図っていくという資金として性格づけているわけでございますが、この資金について貸付限度額の引き上げを行う。それからさらに、公団の行います土地改良事業の負担金の問題についても、金利負担の面で自創資金並みの低利の実行ができるように利子軽減助成措置も行う。それから、特に畜産経営の負債がかさんでいる点は否めないわけでございますので、本年度から酪農、肉用牛両大家畜経営については五カ年で体質強化のための低利の資金の融通の道を開いていく。さらにまた養豚経営につきましても、その合理化を一層進める上での低利資金の道を開きたいということでそれぞれ制度的な措置を講じたわけでございますが、具体的な今後のこれらの実施につきましては、現在畜産局、構造改善局等、省内の関係局におきまして鋭意実施要綱等の制定に向け努力中でございます。当然大蔵省等の関係部局との調整も図っていく必要がございますが、できるだけ早くせっかくのこの資金が必要な農家に活用できるような体制に持っていきたい、早い時期に実現するべく今努力をしているところでございます。
  183. 松山光治

    ○松山政府委員 圏場整備事業をめぐる問題についてのお尋ねでございますが、御案内のように圃場整備事業は、農地の区画、形質の変更を中心といたしまして、圃場の土壌なり用排水条件等を統合的に整備する事業でございます。したがいまして、ねらいといたしましては農地の汎用耕地化を進める、あるいは集団化を進めるといったようなことを通じて幾つかの効果を期待しておるわけでありますけれども、そのうちの幾つかを挙げてみますと、当然のことながら圃場整備が進みますと機械も入りやすくなるという意味では作業効率も改善されるわけでございますし、したがって生産性の向上も期待できる。あるいは、汎用耕地化を通じましていわば作物選択の自由度が高まると申しましょうか、そういう意味では経営展開にとっての自由性というものが大変大きくなってくるという効果もあるわけでございます。さらに、いろいろと現場の事情を聞いてみますと、圃場整備が進んでいないためになかなか流動化が進まないという話もございますので、流動化を進めていく上での基礎的な条件を整備するというねらいないしは効果も持っておる。  もちろん先生御指摘のように、そういうことを通じまして農家が立派な農業経営をやっていくための基礎条件を整備するわけでございますので、私たちも事業の採択に当たりましては、費用と効果の関係がどういうことになるのか、農家の負担という点からいってどうかといったようなことを厳重に審査して採択をしておる、こういうことでございます。もちろん、昨今農家負担の問題がいろいろと議論になるという状況にもございますので、私どもとしては事業の実施に当たりましてはできるだけ安上がりな形になるように、あるいは整備と費用の関係につきまして関係者にも十分御納得いただくような、そういう話し合いをベースにしながらこれを進めていきたいと考えておる次第でございます。  なお、直営でやれないかというお話でございますが、制度といたしましては請負事業に任せても結構でございますし、それから農家の皆さんが直営でやるという道は開かれております。ただ、現実問題といたしましては、圃場整備事業の整備水準も大分高いものになってきておりますし、また公共事業という性格からいたしますと一定の水準の工事の質ということを確保していただく必要もある。こんなことで、実際問題としてはなかなか農家の方々が集団でみずからおやりになる条件ができてこないということなのではないか。したがいまして、私どもとしては請負にゆだねる場合でもできるだけ農家の意向も踏まえながら工事を進めるように引ぎ続き指導してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  184. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 終わりますが、一言、せっかく負債対策を練られておるわけでありますから急いでいただきたいということと、それから本当に負債に困っておる農家がプラスになるように御指導をお願いしたい、以上を申し上げまして質問を終わります。
  185. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 吉浦忠治君。
  186. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 水産外交の政府の姿勢について伺っておきたいと思うのですが、農林水産大臣は大変お忙しい中を農畜産物の十二品目の問題、また牛肉オレンジ等の問題で、アメリカとの間で大変御苦労をいただいておりまして、本当に心から御激励と感謝を申し上げる次第でございます。  この間に、大臣も御承知のとおりに牛肉オレンジだけでなくて水産についてもアメリカは無理難題というべき態度を示しているわけであります。このために、関係者は非常な不安を抱いておりまして、しかも混乱状態にあると言っても言い過ぎではなかろう、この思うのです。本日はそういう点に絞りましてなるべく簡潔に伺っておきたいと思いますが、大臣にはお疲れのところだからなるべく御足労を願わなくてもいいように質問したいと思っておりますけれども、一、二ちょっと御意見を聞かせていただければと思うところもありますものですから、聞いておいていただければと思う。  まず、サケ・マス漁業について伺っておきたいと思うのですが、これは御承知のとおりに、サケ・マス沖取り漁業というのは日ソ漁業協定とそれから日米加漁業協定のもとに行われているわけであります。そこで、日米加漁業協定によって、これは大臣には釈迦に説法でありますけれども、また長官にもそうでありますけれども、おわかりになっていることを私がわからないから申し上げているようなものでございますが、基本的には東経百七十五度以西でアメリカの二百海里内を含んで操業することになっているわけであります。私は、これは義務でもあり権利でもあるというふうに理解しておったわけです。  ところが、その結果我が国は極東系のサケ・マスだけをとるということで、毎年日ソ交渉を行って枠を決めているわけでしょう。本年度の枠も二万八百二十六トンというふうに、昨年と比べますと一五%も減少しているわけです。このことについてはまた後ほど伺いたいと思いますけれども、東経百七十五度以西の米国二百海里水域、ここには米国の国内法が適用になるわけであります。米国政府は国内法に基づきまして従来日本の母船式サケ・マス漁業に対して海産哺乳動物の混獲許可を出していたのであります。  ところが、昨年の漁期に当たってアメリカ政府は、イシイルカの許可は出しましたけれども、当然混獲されるオットセイ、この混獲許可を出さなかった。今度、アメリカの環境保護団体がその許可は無効であるとの裁判を起こしまして、その後いろいろの経緯を経まして、最近のニュースによりますとその訴えが最終的に確定した、こう報じられておりました。こうなりますと日米加漁業協定は、米国の二百海里内で日本のサケ・マス漁業はできなくなる、実際には混獲のために操業できない、こういうことになるわけです。  このような結果となりますと、アメリカ政府の混獲許可の出し方がおかしかったわけでありまして、当然これはアメリカの責任じゃないか、こう思うのです。アメリカの二百海里内がだめということであるならば、日本政府も、東経百七十五度よりも東側の漁場を開放すべきである、こういうふうに、国際上約束が守れない責任はアメリカがとるべきであると私は思うのです。この点についてどのように考えておられるのか、政府としてこの方針で早急にアメリカとの交渉をする考えがあるのかどうか、この点をまず最初に長官に伺っておきたいと思います。
  187. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回のアメリカの訴訟の結果なり結果に至りました経緯につきましては、ただいま先生からお話があったわけでございますけれども、この訴訟の結果につきましては日本側といたしましてもまことに遺憾でございまして、いろいろな形でアメリカに対しても抗議を申し入れているわけでございます。  今具体的にお話のありました点につきましては米国の二百海里水域での操業が不可能になった場合には、今御提言ございました東経百七十五度の東の部分、この南公海の部分とそれから北公海の全域については少なくとも最小限拡大すべきであるということにつきましては、既に米側に対して当方から要請を出している次第でございます。しかし、現段階では米側から具体的な返答はまだ来ておりませんが、現地での接触なり当方からの申し入れた人の感触といたしましてはかなり否定的な態度ということでございますけれども、これからも何とか実現すべく交渉を進めてまいりたいと思っております。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は不満がおさまらないから申し上げているように聞こえるかもしれませんけれども、これは憤ったって、何か知らないけれどもアメリカ友好国という最も日本を信頼しまた日本アメリカを信頼している仲のアメリカが、私はソ連云々というわけじゃないけれども、ソ連よりも悪い。まあソ連よりもという言葉がちょっと不適切だけれども、対比するものがないから、ソ連の態度よりもより以上にこの問題について私は憤りを感ずるのです。  ところで長官、その混獲の網にどのくらいオットセイとかがひっかかってくるのですか。水産庁、調査してありますか。
  189. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 関係業務者からの報告によりますと、捕獲しましたのが五、六頭で、そのうち死んでしまいましたのが一頭という実績に相なっております。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そうなりますと、言うなれば一頭のためにそのサケ・マスの漁獲枠が三分の二減るのですか。こういうことが話として通るだろうかと私は思うのですよ。そういう漁業協定ですか。そんな軽はずみな協定しか結べなかったのかどうか。また、向こうも一方的にそういうことで国内法でもって日本に当たってこなければならぬ問題なのかと私は思う。これは減船することになったら大変なことになります。母船も三隻のうちの何隻かは減さなきゃならぬでしょう。それに従来の百二十九隻から何隻また減さなきゃならないかもわからない。こういうだれが聞いてもわかるような非常識がまかり通るようなことであってはならないと思うのです。長官、どうですか。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  191. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 本件につきましては、アメリカ政府自体が今回の訴訟結果につきましてかなりショックを受けているわけでございます。日本と同じように二百海里内で操業しておりますアメリカの漁民自体も、やはり同じように混獲許可証の問題に遭遇しておりまして、そういう点におきましては、アメリカが意識的に日本に対してどうこうということじゃなくて、アメリカの現在あります法律そのもの、もちろん国内法でございますけれども、そのものに問題があるということで、現在、アラスカ漁民を中心にいたしまして環境団体といろいろな交渉を重ねているようでございます。ただ、アメリカ議会における国内法の改正ということになりましても相当手間暇がかかるということで、残念ながら今漁期自体につきましては、アメリカ二百海里内でのサケ・マスの母船式操業というものが、先生もただいまお話ありましたように、非常に危機的といいますか全く行えない状態になっているということは残念ながら事実でございます。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 それであるならば、長官、アメリカで敗訴しているならば、上訴してまで日本立場を考えてもらわなければならぬ国内的な対応があってしかるべきだ、こう思うのですよ。これについてどうですか。
  193. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 訴訟の結果を踏まえてこれからどう対応するかということにつきましては、大臣からも在京公使を招致いたしましていろいろと申し入れておりますし、それからきょう急遽水産庁の次長も現地に派遣しておるわけでございますけれども、そういう中でいろいろな対応を積み重ねてまいりますが、上告という問題が一つ法律手段としては一番身近な話としてあるわけでございます。  ただ、高裁段階で三対八で敗訴しているという判決の質的な中身というものもございますし、それから上告をした際の時間的な問題ということもございますので、上告をしたからといってことしの状況が好転するということではございませんけれども、一定の法的な手段なり裁判手段ということでは現在の国内法を前提とする限り難しいといたしますれば、国内法を直していただくなり、そういう何らかの方法というものをアメリカの責任において講じてほしいということで強力に申し入れておる次第でございます。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 万一このままの状態で漁期を迎えますと、母船式のサケ・マス漁業の割り当て量は、約六千トンのうちの三分の二に当たる四千トンがとれなくなるわけですから、そうなりますと母船は出せないということになりまして、これは母船式サケ・マス漁業というものが壊滅的打撃を受けることは必至だろうと思うのです。こうなりますと、ここに至って日米加漁業協定そのものは全く日本にとっては存在意義がないわけですから、直ちにこれは破棄して、そして百七十五度以東の水域に出て魚をとってもいいのではないか、こう思うのです。これに対する政府の考え方はどうですか。
  195. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 確かに母船式漁業にとりましては米国の二百海里水域が最重要漁場でございまして、日米加の漁業条約で認められておりますこの水域での操業というものが否定されるということになりますれば、到底我が国としては容認できないだけじゃなくて、今先生からお話がありました日米加漁業条約そのものの存在意義なり、それに入っていることの意義ということについてかなり危惧の念を持たざるを得ないという感じがしておりますし、それと同時に、そういうことでこの条約から脱退すべきであるという声も関係業界の間にもかなり強くなっているということも我々も十分承知しているわけでございますけれども、ただいまお話しいたしましたように、アメリカ政府に対しまして判決後のいろいろな対応というものを強力に申し入れ、今いろいろな折衝を重ねておるところでございますので、そういう折衝の推移というものを見きわめながら同条約の存否、これについて今後検討を深めてまいりたいと思っております。
  196. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣も聞いておいていただきたいのですけれども、破棄した場合にはもう無条約状態になるわけですから、堂々と百七十五度以東の方にも入ってサケ・マスをとってきてもいいんじゃないか。  だけれども、条約によると一年間猶予期間を置かなければいかぬということになる、そういうことを伺っておりますけれども、破棄することによってそういう上告もやめてしまって、言葉の度が過ぎるかもしれないけれども、向こうが条約もできないようにしてしまうならば、こちらも条約を要らないということで破棄して、その一年間の猶予を見なければならぬというものも破棄してしまって、堂々ととりにいったらいかがですか。それぐらい私は関係者の方々は憤っていらっしゃると思う。これについてどういうふうにお考えですか。
  197. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、この条約から脱退する際には一年間の通告期間を設けるという条約になっておりまして、我々といたしましてはそういう条約に現に加盟しているわけでございますので、国際社会の一員として条約から脱退する際にもその条約の手続を踏まざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、今後のアメリカ政府の対応ぶりというものを十分見きわめながら、これからどうするかということにつきましては真剣に検討を重ねてまいりたいと思っております。
  198. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ですから、私が毎回申し上げておりますように、こういう屈辱的な結果になっておるわけであります。これまでの対米水産外交というものに毅然たる態度を示さないがゆえにこういうことになっている、こうとらざるを得ないのです。だから、この責任というものはまことに大きいと私は思うのですよ。ですから、我々は野党一致して水産対抗法案というものを提出しております。ここにおられる菊池委員長を初めとする自民党の先生方も、水産関係先生方皆さんが努力をされて、そして同じような考え方法律案を起草されて水産部会まで通されたというふうに伺っているのです。しかし、政府の反対が強くて出せない、成立に至らない、こういうことなんです。本当に私は残念だと思う。私は先日の委員会でもこの問題を提起いたしました。その前のときも御答弁をいただきました。今このような事態になって水産対抗法案というものを出さなければ、もうどうにもならない。向こうの言うがままになってしまうことがあっていいのかどうか。  そうなりますと、ここで大臣にもお尋ねをしたいのだけれども、出せばこういう点がぐあいが悪い、こういう問題があるので出せない、こうおっしゃるならば、また政府において独自の法案につくりかえてでも出さなきゃならないときが来ているというふうに思うのですけれども、何がまずいのか、何がここで問題を起こすのか、そういう点についてまず長官から伺いたいと思う。
  199. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 いわゆる対抗法案につきましては過去にいろいろな経緯があるわけでございますけれども、その対抗法案の具体的中身として考えられますことは二つございまして、一つは、外国が不当な規制を行った際に、外国からの水産物の輸入を制限するなり禁止するなりということが一つの手段でございますし、それからもう一つは、外国からのそういう輸入水産物について関税率を高率にするということで対抗するということが方法かと思っております。  アメリカの場合のように、アメリカの二百海里内で日本が魚をとっているという場合ですと漁獲制限というものもあり得るわけでございますけれども、日本の場合にはそういう関係にございませんので、アメリカのパックウッド・マグナソン法のような漁獲制限というようなことはとれなくて、輸入上の障壁を設けるということが対抗法案の中身に今までもなってきたわけでございますが、これらにつきましては残念ながらいずれもガットの条文上いろいろな問題が余りに多過ぎるわけでございます。  その一つは、いわゆる対抗法案で特定国からの水産物の輸入制限なり禁止を規定するということになりますれば、ガットの条約上の最恵国待遇でございますとか、それから数量制限の一般的禁止規定あるいは数量制限の無差別適用に関する規定、こういうものに抵触いたしますし、それから仮に関税率の障壁を上げるということで対抗しようといたしますと、同じく最恵国待遇の規定でございますとか、あるいは関税譲許の固定化あるいは譲許表の訂正というようなそれぞれの規定に抵触するという法律問題なり条約上の問題があることに加えまして、こういう対抗法案という形で動くことの国際社会なりいろいろな関連、こういうものにつきましても相当慎重な検討というものが必要かと思っております。
  200. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣も聞いていらっしゃるので、苦しい立場でありましょうから私はあえて大臣答弁はいただきませんけれども、やはり国務大臣でありまして、外務大臣等の御意向と顔色をうかがって云々よりも、何らかの形のものをこの際国際的に通用するような形のものとして検討していただかなければならぬときが来ている、そういう点をひとつ踏まえて取り組んでいただきたい、私はこう思うのです。  さきの日ソ交渉の際に、今申し上げましたアメリカの二百海里云々の問題が出てまいりました折に、アメリカでの裁判の結果次第によっては操業条件の再交渉があり得ることになっておるというふうに私伺っておるのです。早速再交渉しなければならぬのじゃないか、こう思うのです。アメリカとの関係で、こういうふうな裁判の結果になっているわけですから、ソ連との間にその再交渉の道が開けるような条約になっております、中身がそうなっておりますから。それに対して政府はどのような対応をなさるおつもりなのか、またアメリカ水域で失うところの四千トン、これをソ連との間で確保できるのかどうか、その見通しも含めてお答えいただければ、こう思うのです。
  201. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、先般の日ソ漁業合同委員会で、アメリカのその訴訟なりの結果米国二百海里内での操業が難しくなった際には再協議するということでこの前別れているわけでございます。早速ソビエト側に対しまして再協議の日程の打ち合わせに現在入っているところでございますけれども、再協議の具体的対処方針といたしましては、一つは米国二百海里水域から他の水域へのクォータの振りかえ、それから二つ目は隣接する水域の漁期の調整、それから三つ目は三十七億というふうに決められております漁業協力金、これがクォータが減ったことに伴いまして減額する問題と、この三つにつきまして日程が調整つき次第ソビエトと交渉したいと思っております。  ただいま先生から具体的にありました二百海里内で失われるであろう四千トンについての振りかえでありますけれども、これは単純に数量すべてをほかの海域に振りかえるというわけには、漁期の関係なり、それからそれぞれの海域での操業隻数なり日数というものにつきましてもいろいろな取り決めというものが行われているわけでございますので、できるだけ多くを振りかえたいというふうに我々としては思っておりますけれども、恐らくやるといたしましても千トンの壁を破れるかどうかというようなところがぎりぎりのところじゃないかというふうに考えております。しかし、これも先様があることでございますので、何とかこれからの交渉でできるだけ多くの操業ができますような最善の努力を行ってまいりたいと思っております。
  202. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 また今年の日ソ交渉で、ソ連の二百海里内におけるサケ・マスの合弁事業の道が開かれたというふうに聞いているわけですが、具体的にどの程度まで話が進んでおるのかどうか、またアメリカ水域で操業できないとするならば、その漁業者がソ連の二百海里内で生きる努力をすべきである、私はそう考えますけれども、この点どういうふうに思っていらっしゃるのか、お答えをいただきたい。
  203. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 本件につきましては、昨年の二月の第三回の日ソ漁業合同委員会以来いろいろな経緯があるわけでございますけれども、本年の第四回の合同委員会におきましてはソ連側から、日ソ合弁によりますサケ・マスふ化場の建設と、それからこの建設との関連のもとでのソ連二百海里内における日本漁船のサケ・マス操業の可能性というものにつきまして示唆してきたわけでございます。  現段階ではその具体的内容につきましては必ずしも十分ではございませんけれども、ソ連側は本年におきましてサケ・マスの再生産を行います日ソ合弁企業、これに対しまして二千トンの範囲内でこの合弁企業に割り当てをして、それを実質日本の漁船がとるということを言ってきておりまして、そういうことを基本といたしまして具体的に合弁をいたします企業間での、いわゆる民間のパートナー間での協議というものをするということになっております。そして、そういう大まかな方向づけに沿いまして五月下旬以降民間ベースでの両者の話し合いというものがこれから進められてくるわけでございますけれども、当方といたしましてもこれは一つの可能性なり一つ方向でございますので、何とかこの実現に向けて援助すべき点があれば援助なり助言なりをこれからしてまいりたいと思っております。  ただ今回のアメリカの二百海里内との関係で申し上げますと、二百海里内で今回操業できなくなりますのは母船式でございます。従来、去年以来ソビエトと接触いたしまして合弁ふ化場をつくり、そのもとでソビエトの二百海里内でのサケ・マスの操業をしたいと言ってきておりましたのは基地式独航船がずっと当たってきておりますので、今回示されておりますこの二千トンをソビエトの二百海里内でとらせるという話につきましても、これを直ちに現在一番問題になっております母船式の独航船に対する救済策なり対応策という形で進めるという性格にはないということも御理解いただきたいと思っております。
  204. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ソ連は一九九二年から沖取りを禁止するとの意図を表明しているわけです。政府としてこの点をどのように考えておられるのか。  ソ連のやり方を見ておりますと長年かかっても目的は必ず達成する。我が国としてはこれに対しては用意周到に対応していかなければならないというふうに考えるわけです。例えば例が適当かどうかわかりませんけれども、イシコフさんという前の漁業相あたりは二十年間にわたって交渉してきた相手ですね。日本の場合は国柄が違いますので、交渉相手が毎年毎年かわってその年その年に方針を出してそれに対応している、向こうは長期的に、長期展望に立ってきちっとしたものを出してそれに向かって進んでくる、対応できるわけがないと私は思うのです。そういう点の、それは国柄が違うところで話し合いをしなければならぬつらさはありますけれども、そういう点用意をやはりきちっとしていかなければならない、こう思うのです。こういう点について政府の方針を伺っておきたいと思うのです。
  205. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまもお話がありましたように、一九九二年に沖取りを全面禁止するという非常に強い立場を先般の日ソ漁業合同委員会でもソビエト代表が提言しているわけでございます。これに対しましては我が方といたしましては、我が国のサケ・マス沖取り漁業というものはそもそも日ソ漁業協力協定上認められている正当な漁獲方法でございまして、ソビエトの言いますような沖取り全面禁止というものは現在の協定上は認められないものでございますので、これに対しましては強く当方といたしましては反対いたしまして、現在のところ平行線という形になっておるわけでございます。  長期的対応という話があるわけでございますけれども、我々といたしましてもやはり長期的視点に立っていろいろと検討していく必要性はもちろんあるわけでございますけれども、少なくとも現在の協定で沖取りというものが正当に認められているという中でございますので、何とかそういう協定を遵守させるということにつきまして当面は全力を注いでいく。  ソビエト側といたしましては、沖取りを禁止する理由としてサケ・マスの資源水準というものがかなり低くなってきているということと、それから日本側の操業規則の違反というものが非常に多いということからいって沖取りを禁止したいということを言ってきておるわけでございますので、当方といたしましては、そういう要求なり態度になってきております原因を一つ一つ是正するなり緩和させていくということが必要でございますので、先ほどもお話に出ておりました合弁ふ化事業への参加というものも含めましてソ連系サケ・マスの再生産に積極的に協力していくなり、あるいは少なくとも違反操業というものがないような操業秩序の確立に努めるというようなことで、ソビエトの現在言っております全面沖取り禁止というものに対しまして、一つずつ糸をほぐしてまいりたいと考えている次第でございます。
  206. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そうなりますと、一九九二年に仲取りが禁止されるということになると、ソ連の二百海里内での合弁事業との関係がどうなるのか。合弁事業が一九九二年で終わりになるのかどうか、この点がちょっと心配ですけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  207. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ソ連側の合弁なりあるいは二百海里内操業というものの具体的な中身は、先ほども申し上げましたように残念ながらつまびらかになっていないわけでございますけれども、ソ連側としては、沖取りを禁止する一方で、科学的、合理的な基礎の上に立つソ連二百海里内沿岸部での漁獲というものに移行させたいということを認識しているはずでございまして、仮にソ連内で合弁事業が行われ、それとの関連で二百海里内操業が認められるということになりますれば、恐らく長期的な継続の可能性というものを十分念頭に置いての提言と我々も理解しておりますし、そうでなければ民間企業が合弁に参加するという将来性もございませんので、そういう形に仮に移行するといたしますれば、何とか長期的に安定するような形になるよう当方としても心を用いてまいりたいと思っております。
  208. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、捕鯨問題で伺っておきたいのですが、昨日も憲政記念館で約三百五十名以上の方々にお集まり願って、国会並びに国会関係者の方々がいわゆる捕鯨の伝統と食文化を守る会というものを開催されたわけであります。捕鯨の存続に向けての新たな決意を示して、また募金活動にも協力するという形で行われたわけであります。  今月の三十日からのIWC総会に、我が国は、商業捕鯨再開のための調査捕鯨の継続と、それから沿岸小型捕鯨の生存捕鯨への移行といった問題を掲げて臨むわけでありますけれども、現在このような異常なIWCの運営では結論最初からわかっているようなものだろう、こう思うのですね。そこで島コミッショナーを初め皆様の御苦労は察するに余りあるものがあるわけです。私は調査捕鯨について、これは条約上のいわゆる権利でありますから、総会の結果いかんにかかわらず商業捕鯨再開まで継続して、そして研究を拡充強化こそすれ、それは減退してはならぬ、こう思っているわけです。この点、まず長官に伺って、あと大臣に所見を伺いたい、こう思います。
  209. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 御承知のとおり、IWCが一九九〇年までに鯨資源の包括的評価を行うということが予定されておりまして、我が国といたしましては科学調査の実施は不可欠であるという立場からことしも行いましたし、それから来年も科学的な調査というものの実施を断固として予定しているわけでございます。しかし、今年の調査計画につきましては、せっかく先般予備調査というものを一年行っておりますので、この調査の結果の集計、分析というものが行われまして、そういう上に立って科学的にも理論的にも迫力のある形で具体的計画を樹立してIWCに提出したいということで、具体的計画は今回の三十日からの総会には提出する予定にはなっておりませんけれども、何とか調査捕鯨を継続したいという気持ちにおいては全く変わりがございません。
  210. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、小型捕鯨について伺っておきますけれども、地域の生活や習慣に密接につながっているという点ではアメリカとかソ連で行われているものと何ら変わりはない、私はこう思っておるわけです。そこで、小型捕鯨が我が国の文化や伝統の形成に果たしてきた役割というもの、現在の関係者の生活を考えるときに、絶対に捕鯨はやめられない問題だというふうに私はとらえております。科学的にも危機に瀕しているホッキョククジラの捕獲が続いている中で日本の沿岸捕鯨はやめろということは全くおかしなわけでありまして、他に認められるものがあって日本のものだけが認められないということ、これは沿岸小型捕鯨の存続に向けての政府の毅然たる態度がないからこういう問題になりはしないか、私はこう思っておるわけです。この点、小型捕鯨についての見解を最後に伺っておきたいと思うのです。
  211. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在いわゆる、原住民、生存捕鯨という形で米国、ソ連等で認められております捕鯨、この性格は、今も先生からお話がありましたように歴史的、文化的背景がある、あるいは地域の限られた需要にこたえているという点でございまして、そういう点でいいますと、我が国の沿岸小型捕鯨というものもまさしくこの範疇とそう違いはないということをかねて我々も強く主張しているところでございますし、それから今回のIWCのいろいろな検討の場、こういうところでも現在認められておりますいわゆる原住民、生存捕鯨と比べまして何ら遜色のないものであるということを強く主張し、何とか我が国の沿岸小型捕鯨の継続ということに努めてまいりたいと思っております。
  212. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に大臣に、先ほど私が質問申し上げましたアメリカとの問題、それから今の捕鯨の問題、あわせまして決意のほどを伺いたいと思います。
  213. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 委員おっしゃいますように、日米漁業交渉におきましても日ソ漁業交渉におきましても、二百海里時代の定着と相まちましていよいよ厳しい状況が続いておるという認識でございます。特にアメリカとの間におきましては、母船式サケ・マスにつきましては、先ほど長官からもそのことについて概略触れましたが、先週の金曜日でございますか、駐日米国大使館責任者に私の部屋においでをいただきまして厳重に抗議を申し込んだところでございます。連邦高等裁判所のとった措置は甚だ遺憾である、これにかわる、これに対抗するアメリカ本国政府の法的措置等も含め、強い要請をいたしたところでございます。しかし、見通しはどうかと言われるとなかなか厳しい。  それならばということで日ソ関係、ソ連との関係も先ほど長官から申し上げたとおりでございまして、できるだけおっしゃるような意味の効果を上げますように最善を尽くしてまいりたい。もうこのごろ、何か無理やり離問をかぶせられることが多うございまして全く残念に思っております。我が方の戦略、我が方の交渉、我が方の対応、こういうものがいろいろまた世の批判に問われることになっているかと思いますけれども、それはそれとしてひとつ全力を尽くしたい、こう思っておるところでございます。  なおまた捕鯨につきましても、昨日私も超党派のあの会合に出席をさせていただきました。短時間ではございましたが、関心を持つ多くの国会議員の皆さんあるいは文化人の皆さん、学者の皆さん等々御列席でございました。あのメンバーを見るにつけても、歴史的、文化的に我が方は小型捕鯨も含めてどのように進めていくか、当然の道行きは明らかでございます。  そういう意味において、IWCに対する対応、あるいは小型捕鯨に対するこれからの対応等、特にその点については、米ソがやっておることに何ら変わりのない我が方の対応をなぜ批判されるのであろうか、そのことを念頭に置きながら全力を尽くしてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  214. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 では長官、結構でございます。ありがとうございました。  続きまして、余り時間がございませんけれども、鶏卵の問題について二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。  今月、五月に入りまして史上最低のキロ百十五円、農家の手取り価格に直しますとキロ八十円、大体三十円差ですからこうなるわけです。優秀な農家で大体キロ百七十円程度かかるわけです。そうなりますと、今の価格はコストの半分にもならない。安ければ安いほどいいわけですけれども、生産農家にとっては半値、こういうことになる。史上最低の卵価の発生、大体例年この時期になりますと卵価は下がっていることは私もよく承知をいたしております。しかし、下がり方が余りにもひど過ぎる。これは何らかの要因があるというふうに言わなければならぬと思うのであります。  前々から指摘をしてまいりました阪神鶏卵グループのやみ増羽戦略、それに対して農水省の指導がどういうふうに行われたのか。放任主義だとは申しませんけれども、これに近かったのではないか。この委員会でも私は指摘をしてまいりましたが、これは今までの計画生産そのものが形骸化されてきた証拠ではないか、こう私はとらえておりますけれども、局長、まずこのことについて答弁をいただきたい。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
  215. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、五月の連休後でございますが、鶏卵価格が大変低下をしております。御承知のとおり卵価は、相当長期にわたりまして上下のうねりをいたします周期変動、それからまた、年間の中で見ますと季節的な変動がございまして、それが連休によります在庫増加というふうな要因と重なりまして、御指摘のような低卵価状態というものが出ておるというふうに考えておるわけでございます。  基本的に、御承知のとおり需要量がかなりの水準に達しておりますことから、結局、周期変動による大幅な下落を防ぐためには供給面での計画的な調整が必要であるということで、お話にございましたような行政も介入をした形で、いわゆる計画的な生産をするための努力をこの数年来続けておるわけでございますが、残念ながら、お話にもございましたようにいわゆる無断増羽、そういう計画生産に協力をしない無断増羽というケースが間々起こるわけでございます。  この計画生産というのは、生産者自体の自主的な活動を基本にいたしまして、鶏卵の生産のために行政面で関与する面というものは、一つは、鶏卵価格についての補てん事業を行っておりますが、協力しない者はこの補てん事業から排除をする。それから二つ目には、鶏卵の生産に非常に大きなウエートを占めておりますいわゆる配合飼料価格の価格安定事業を行っておるわけでございますが、この価格安定事業から得られる利益もそういった非協力者からは剥奪をする。さらにまた、私どもが行っております各種の融資事業あるいは補助事業からそういった非協力者は排除していくというふうな方策でこの計画生産への協力を呼びかけておりますけれども、御承知のとおり周期的な変動の中で大変価格が上がる時期がございます。  さらにまた、五十九年以降急速な円高の進行によりまして配合飼料価格が大変低位安定の状況にございまして、生産意欲をやや刺激するような要素がこの数年来大変色濃く出ておりまして、残念ながら計画生産に対する協力の効果が十分に出ないというふうなおしかりをたびたびいただいておるわけでございます。  実は、お話のございました阪神鶏卵グループの問題もそういった無断増羽問題と重なって出てきておりまして、私どもとしては六十一年の秋以降たび重ねて、私どもの関係者はもちろんでありますが、関係の府県の担当者の力もかりましていろいろな形で阪神鶏卵グループの方々に計画生産への協力を呼びかけてきたわけでございます。私どもの努力が至りませんで無断増羽の実態というものが的確に改善されていないわけでございますけれども、この鶏卵生産の実態に即してこれまで続けている努力をさらに継続していきたいと思っております。  なお、現在のこの価格低迷の状況でございますが、御承知のとおり先ほど申し上げました鶏卵価格の補てん事業をやっておりますけれども、この六十三年度に行うべき補てん事業の基準価格を決める際に、私ども最近の飼養羽数の状況等を踏まえて価格予測を行っております。現在の低迷の状況、大変深刻な事態ではございますけれども、私どもとしては大体予想をしております価格変動の幅の中で起こっている事態でございまして、当面の状態につきましては、少なくとも鶏卵価格安定事業に参画している方々につきましては、この事業からの補てん金の支払いによって対処できるものというふうに考えている次第でございます。
  216. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 もうちょっと簡潔に、聞かれたことだけ答えてくだされば結構です。大体私も理解しているつもりでおりますので、局長が謝られるとどうも困るので、謝る以上積極的に行政指導をやるということをひとつ約束してもらいたいと思うのです。  次に、この阪神グループの三月の倒産に関しては、一千億以上も膨大な負債を出して社会的問題になっているわけです。このグループの鶏卵業者が中心になって、いわゆる金融会社などをつくって一千万羽の戦略を展開してきた、これは農水省もよく承知のとおりです。ところがこれに対して、愛知とか島根などでやみ農場を建設する生産者団体、これは地域の方々も反対をし、阻止しようとして頑張ってきた、それでもなおかつこういう結果になってしまった。これは私は何といっても、飼料会社あるいはえさを供給しているそういう背後にある者、いわゆる計画生産を守らなければならぬ、通達も守らなければならぬ者がなぜ協力しないのか、また協力させられないのか。やみ増羽をやめるためには、飼料会社なりひな会社などにどのような指導をしてこられたのか、これが第一点。そういう守らない者に対して、あるいは飼料会社に対しては無税の、トウモロコシ等の輸入の保税工場等があるわけでしょう。そういう者に対して承認を取り消すくらいの態度に出なければこれはとめることはできない、こう思うのです。簡潔でいいですから、お答えいただきたい。     〔保利委員長代理退席、笹山委員長代理着席〕
  217. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 今回のような阪神グループのいわゆる構想を成り立たたせてきておる要素というのは、御指摘のとおりこれに対する飼料の供給あるいはまたひなの供給があって初めて成り立つことであります。実はそのほかにも、今回の場合には金融機関が相当の関与をしていたのではないかという判断を私ども持っておりますが、それはそれとしまして、御指摘のございましたえさの供給面におきまして、そういった無断増羽に対するてこ入れにならないように、私ども、配合飼料の供給団体を通じまして個々の業者に対する指導をしております。先ほど申しました配合飼料価格安定基金から無断増羽者を排除するということも実はその一環として行っておるわけでございます。  また、ひなの供給業者につきましても、率直に申し上げまして、ひなの供給先自体が無断増羽に結びつくかどうか、ひな業者の段階ではなかなか判断しがたいという問題がございまして困難は伴うわけでございますけれども、そういう無断増羽のてこ入れにならないようにということを指導しておるつもりでございます。阪神鶏卵のケースについてそういった面での私どもの指導力に十分機能を発揮し得なかった面があることは率直に認めざるを得ないと思いますけれども、引き続きまた私ども関係団体を通じて個別の業者に対する指導を強めてまいりたいというふうに考えております。
  218. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 二点だけにしますが、これまた簡潔に答えていただきたいのです。  要するに、阪神グループの後始末をどうするのか、これが第一点ですね。阪神グループの後始末をどうするか。私に言わせるならば、これは計画倒産と同じじゃないか、後、飼料会社がちゃんと持っていて。どことは私はきょうは言いません。資料を持ってきましたけれども、私の調べた資料も出したいのですけれども時間がないからそれは言いませんが、計画倒産と同じ。このままこれを行政指導できちっと処理しなかったらやみ増羽はまたやった者勝ち、こうなってしまう。だから、この後始末をどうするか、これが一つ。  もう一点は、やみ増羽はもう繰り返し繰り返し起こってくる。これはあなたが課長時代にこの計画生産を始めた、その生みの親ですから、私は何回も申し上げておるように、あなたがやらなければやる人はいない。それは牛肉の方でも頭が痛いときですから大変その事情はわかるけれども、こういう点でやみ増羽に対する根本的な調査をやらなければいけない。そういう点が手ぬるい。あなたが謝る必要はないのです。やらなければいけない。そこで、全農なり飼料工業会の代表なりあるいは阪神鶏卵グループの代表なり、やみ増羽をやった者は農水省に呼びつける、またこの委員会にも出てもらって徹底的にそういうものをただしていくところから始めないと、いつまでたっても繰り返し繰り返し同じことをやっている。国会の権威にかけても、国会決議は五十三年のとき、あなたのときでしょう、私ども与野党一致でつくったのです。時間がないから何も細かいことはいいませんけれども、その二点について決意のほどを伺いたい。
  219. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 今回の倒産後の事態処理の問題につきましては、具体的な債椎債務関係がどのようになっているのか私ども直接には承知をしておりません。ただ、御指摘のように、この倒産のもとになりました養鶏経営そのものが従来の計画生産の体制に対して非協力的な部分があることも事実でございます。そういったものが経営主がかわって維持をされるということのないように、やはり計画生産による登録羽数に従った養鶏経営という形で再生できるものは再生するというふうに事が進んでいくようによく心してまいりたいと考えております。  それから、一般論といたしまして、計画生産がより効果的に進むために特段の努力ということでおしかりをちょうだいしておるわけでございますが、私どもよくそれを踏まえて、これからさらに努力を重ねていきたいと考える次第でございます。
  220. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。
  221. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 柴田弘君。
  222. 柴田弘

    柴田(弘)委員 佐藤農水大臣質問をさせていただく機会をいただきまして非常に光栄に思います。昭和五十五年の衆参ダブル選挙の直後に災害対策特別委員会でお互いに理事をやっておりました。当時は、三百人以上が亡くなられた長崎のあの水害の問題あるいはまた島根県、山陰地方の水害の問題、そしてたしかその明くる年には三宅島の大爆発がありまして自衛隊のヘリコプターに乗って一緒に行ったと思います。あのときはたしか大臣の提案で議員立法もできました。非常に懐かしく思いまして、農水大臣になられましたことをまずもちまして心からお祝い申し上げ、質問に入りたいと思います。     〔笹山委員長代理退席、保利委員長代理着席〕  きょう私が取り上げる問題は地元の問題で非常に恐縮に存ずるわけでありますが、名古屋市を北から南に流れる堀川の問題でございます。実は先ほど建設委員会において質問をしてまいりまして、建設大臣等から非常に前向きな発言もちょうだいをいたしましたし、農水省の課長さんからもきっぱりとした答弁をいただきまして、一歩前進した、このように私は考えているわけであります。大臣、所管以外のことで非常に申しわけございませんが、後から関係が出てきますのでいろいろ質問いたします。パンフレットも既に差し上げてありますのでお聞きいたします。  この堀川再生の問題で、私は昭和六十一年三月六日の予算委員会で時の建設大臣江藤隆美氏に質問をいたしました。木曽川導水事業を初めといたしまして非常に前向きに、柴田さん、川は魚が泳ぐようにならなきゃだめですよ、こういう積極的な答弁をいただきました。それで、国会が明けましてわざわざ名古屋に来ていただきまして堀川も視察いただいたのですが、見ていただくとわかりますが、上流の北区地点ではもう雑草がぼうぼうと生えまして土が埋まっております。川の流れもほとんどない。下流の納屋橋地区あるいは白鳥地区に参りますと水はありますがヘドロがいっぱい堆積している。もう臭くて臭くてしようがない川なんですよ。それで、農水省のある方が、私がきょう質問をするということでわざわざ東京から視察にみえたのです。熱心だと思います。非常に感心だなと思って僕は敬意を表しているわけであります、名前を言うと差しさわりがありますので申しませんが。  大臣に御質問したいのは、所管外のことでまことに申しわけありませんが、堀川の再生には三つあるわけでございます。  一つは、いわゆる民活を導入いたしました納屋橋付近の市街地再開発事業でございます。これは建設省も補助していこう、こういう考え方でおるわけでございます。地域の活性化という観点。  第二点は、ヘドロを除去し、護岸をしっかりする、いわゆる堀川の総合的な整備事業があります。これも昭和六十一年に都市小河川事業として建設省の方で採択をいただきまして、名古屋市も六十四年、来年が市制百周年記念になるわけです。だから、国、県、市が三分の一ずつ事業費を出して積極的に取り組んでいこう、今こういう体制になっているわけであります。  三点目が、問題の流況調整河川木曽川導水事業ということでありまして、幾ら川をきれいにしてヘドロを除去しても、やはり水の流れがなければだめだということで、この木曽川導水事業が昭和四十七年に国の事業として採択をされました。そして、五十八年から六十九年まで十二年間かかってやろう、こういうことになっておったわけでありますが、今になっても肝心の木曽川導水事業は行われていないわけなんです。行われていない原因は、後からまたいろいろとやってまいります。いずれにいたしましても、今言いました三点がいわゆる堀川再生の一番重要な事業だと思います。  まず大臣、川はきれいにしなければならないと思います。江藤大臣もかつて、魚が泳ぐようにならなければならないだろう、こういうふうにもおっしゃっておりました。今、越智建設大臣質問してきたばかりですが、積極的にこの三つの事業に対応してまいります、こういうふうな御答弁もいただきました。この三点の堀川再生について、農水大臣、所管外で申しわけございません、三回申しわけないと申しましたが、いかがな御所見でございましょうか、御認識のほどをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  223. 松山光治

    ○松山政府委員 所管外事業のことでもございますので、とりあえず私の方から考え方を申し上げたいと思います。  今先生御指摘ございました木曽川導水事業でございますが、御案内のように土地改良事業といたしまして建設いたしました犬山頭首工、木津用水路等を利用いたしまして、先生御指摘のような流況調整河川を建設していく。それで堀川等へ導水いたしましてその浄化を図るという目的のほかに、洪水の排除でございますとか、新規の上工水の取水をするといったような目的を持った事業だというふうに承知しておるわけでございますが、事業目的からいたしまして、有意義な事業であるというふうに私ども考えておりますし、そういう基本的な立場に立ちましてこれまでも対応してきたし、今後とも対応していきたい、このように考えておるわけでございます。  ただ、私どもの今の関心といいますか、懸念だけをちょっと申し上げておきますと、犬山頭首工あるいは用水路は、農業用水の取水のための施設として土地改良事業で建設したものでございますので、当然のことながら、私どもとしてはその財産をどのように扱っていくか、あるいは費用負担を含めましてどのように管理を考えていくか、それから、そういうことで新しく取水をする等によって農業用水に影響が生じないかどうか、特に木曽川につきましては最近比較的渇水問題が起こりやすいというふうにも聞いておりますので、そういうこと等々幾つかの懸念もございますから、そういった点についてこれから調整をしてもらわなければいかぬ。そういう意味で地元の東海農政局なり、それから中部地建の間で現在鋭意調整中のものである、このように申し上げておきたいと思います。
  224. 柴田弘

    柴田(弘)委員 いろいろな問題があるのですね、私もだんだん調査していけばいくほど。先ほど言いましたように四十七年にこの木曽川導水事業は国の事業として採択をされている。問題は、河川法七十条の二によるいろいわゆる直轄事業でありますから、事業主体である建設省は関係機関と協議しなければならない、とありますね。今、局長さんですか、御答弁をいただきましたが、そのとおりだと思います。やはりこの改良区が農業用水を取水している。それで木曽川導水事業をやった場合に一体どういう影響が出るかというのは、彼らが一番心配だと思いますね。  それで、今建設委員会答弁があったのですが、建設省から出していただいたデータ、これは二つありますね。いわゆる木曽川の基準地点である成戸地点の流量、例えば豊水水量がどうだとか平水水量がどうだとか、低水流量がどうだとか渇水流量がどうだとか、最小流量がどうだとか平均流量がどうだとか。そして、木曽川導水事業、毎秒五・三トンを取水するわけでありますが、昭和二十三年から四十三年までの十九年間の導水日数、この二つだけでしょう、いただいた資料は。  もっと要るんだ。こういう日数が、例えば昭和二十三年は二百六十四日、二十四年は三百二十一日、ずっと下って昭和四十年は二百七十七日、四十一年は三百三十九日、こう導水日数が資料として建設省から農水省の方へ出されるには、やはりそれの基礎データであるところのきちっとした木曽川の流況データ、つまり自然流況なのか、ダム計画で修正した流況なのか。  あるいは二つ目には、上記の流況との関連において、既存及び計画中の水利用、つまり水利権をどのように見込んでいるかのデータ、取水量です。  三点目は、木曽川導水事業としてどの時期にどれだけの取水をしようとしているかのデータ。維持用水及び都市用水の木曽川からの取水量、流況、取水量のデータは日々のもので二十年間必要である。こうしたデータを出してくださいとあなたの方は昭和六十年五月から何回となく建設省に言っておった、間違いありませんね。ところがそれが出てない。簡単に一言御答弁ください。
  225. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもこの事業、有意義な事業だというふうに考えておるわけでございます。  先生から御指摘のございましたように、やはり農業用水にどういう影響を及ぼすかということを責任を持って判断しなければいかぬ、こういう立場からいたしまして、現地では今先生の御指摘のございましたようなデータをぜひとも欲しい、その上に立って、できるだけ速やかに調整するようなことを考えたい、こういうふうな報告を受けているところでございます。
  226. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで、今建設委員会では、はっきりと農水省の課長さんが、今の三つのデータが出れば改良区との話し合いはできますということを言っていらっしゃいました。それからもう一つは、この日数を出すにはこの三つのデータが必要なんです、こういうようにはっきりとおっしゃったわけですね。これは間違いございませんね。  そこで建設省に聞きたいのは、これを公表しなさいと言っているわけじゃない、なぜこの農水省が要求している基礎的なデータが出せないのか、この辺をひとつ聞かしていただきたい。
  227. 山内彪

    ○山内説明員 お答えいたします。  今先生からいろいろデータのお話もございました。もともとこういった水問題に関しましては、河川管理者の立場と利水者の立場でいろいろデータに対する考え方等も違うので、どういったデータが要るとか要らないとか、若干立場によって異なるかと思います。ただいま先生がおっしゃいましたデータのような中でも、これは一般のデータの総称でございますので、現地でどのような細かいデータでの話があったかちょっとわかりませんが、例えば木曽川の自然流況でございましたなら、流量年表というのを、二年おくれでございますが私ども毎年公表しておりますので、それからも読めます。取水量そのものにつきましても、これは農水省さんからいただいたデータで計算しているわけでございますので、我々としてはそれで御判断できるのではないかということでただいままで参ったわけでございます。  ただ、今申しましたように、それぞれの立場で、こういった問題についてはこういうものが要るというような農水省さんからの話も当然あるわけでございます。また、今御指摘の問題以外にも、例えば途中の水利権者から現在の取水パターンを変えてくれないかという要望も別途あるわけでございます。それによってまた計算データ等も全部変わるわけでございます。そういったようなこともありまして、我々としては、この協議でいろいろ検討を重ねる段階でその説明に必要な資料については出していくということで調整を図っていきたいと思っております。
  228. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そうおっしゃいますが、何もここで建設省をどうこう申すわけではないのですが、局長さん、今私が言った三点は基礎データでしょう、どうしても必要でしょう、どうですか。
  229. 松山光治

    ○松山政府委員 本事業について関係者の御理解をいただく必要があるわけでございまして、現地からはそのためのどうしても必要なデータだという報告を受けております。
  230. 柴田弘

    柴田(弘)委員 必要だと言っているのです。これは基礎データなんです。私という素人が考えたって当たり前のことなんだ。だから今建設委員会で、農水大臣とよくお話をして調整をしてまいります、前向きに、そしてこの事業ができないのではなくて、後退的になるのではなくて、きょうを契機に前進をしてまいるようにやります、こういうふうに建設大臣から答弁がありました。  そこで、農水大臣お尋ねをいたします。建設大臣からこの問題についてのお話があると思います。省庁は別でありますが、同じ国の大臣だ、これは越智伊平さんの言葉でありますので、よく調整、話し合いを進めていただきたいし、でき得ればその調整を来年、先ほど申しましたように昭和六十四年は名古屋市にとって市制百周年記念になるわけであります。おめでたいわけであります。それで、名古屋市のいわゆる堀川総合整備事業も六十四年度からスタートをする。また、先ほど申しました市街地再開発車業も、これは民間レベルで再開発組合をつくってそして活性化の事業を始めよう。六十四年というのは名古屋市にとっては非常に記念すべき年なんです。だから心からお願いしておきたいのですが、建設大臣が調整を農水大臣とする、これは六十四年度を目途にできないかもしれないが努力だけはしてまいります、こういう答弁をいただきました。どうかひとつそういうことを踏まえて、農水大臣と建設大臣の調整、この点についての御決意、何とか六十四年度を目途に事業が実施できるようにお願いしたいわけでありますが、御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  231. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 きょうのお昼にこれをいただきました。ところが、もうあちこちの答弁でもってまだ目を通しておりません。参議院の土地対策特別委員会にもこれを持って歩いておったのです。そうしましたら自治大臣から、自治大臣も何か委員から質問を受けたことがあって大変な認識を持っているような言葉がございました。大してやりとりをやったわけではございませんけれども、そんな感じでございました。  今、建設大臣が先刻答弁をされたということを基本にされて私の意見を申し述べるということでございます。できるかできないかわからぬが努力してみるということでありますが、努力する限りにおいてはできることを前提として努力をするのが最善の努力であると私は認識をいたしております。しかし、建設大臣がそうお答えになるのは、できるかできないかわからぬがというのはそれなりの難しさがあると思います。それは極めて技術的、専門的なデータのようにも思います。  そういう意味では我が方にも技術者はおるわけでございますし建設省にも技術者がおるわけでございます。双方の現場において、農政局と建設局において話し合いをしておるというようにも聞いておりますので、ぜひその話し合いを早く詰めて、所期の目的は六十四年度という願望を込めてのお話でございましたが、それに間に合うかどうか努力をすべく、この場において今関係者がこうして私が答弁しているのを聞いているわけでございますから、そういう意味で私は農林水産省の事務方に対しまして、局長以下技術的に早急に今まで以上にさらにピッチを上げて検討、努力をせよ、こういうことを申したいと思っております。  以上でございます。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  232. 柴田弘

    柴田(弘)委員 最後に一言だけ言っておきます。  今大臣からちょっとお言葉がありましたが、中部地建、東海農政局の諸君たちとは私もお会いしました。そして一緒に堀川も視察をいたしました。何とか話をまとめたい、そして二百十五万名古屋市民のために一日も早く清流を取り戻したい、堀川再生をしたい、こういった気持ちを持って現場で懸命な努力をしていらっしゃるわけであります。その御苦労も大臣としてどうかひとつ御認識をいただきまして、先ほどおっしゃいましたように何とか六十四年度から事業が実施できるように最大限の努力を、くどいようですがお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございます。
  233. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先刻、川はきれいにすべきもの、こういうところから始められたわけでございまして、そのことについて私、答えませんでしたので補足をいたしておきたいと思います。  まさに川はきれいにしなければならない問題である、また農業用水も必要であろうということを率直に申し上げておきたいと思います。
  234. 柴田弘

    柴田(弘)委員 どうもありがとうございました。
  235. 菊池福治郎

  236. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員長御苦労さまです。大臣初め政府の皆さん御苦労さまです。  農業は大変難しい局面を迎えておりまして、こうしたときに大臣がこの衝に当たられますこと、大変御苦労さまに存じます。先般はアメリカに渡られましていろいろとお骨折りをいただき、その結果は新聞等で一々承知はしておりますが、逆に言えば我々の知識はその範囲を出ないということになります。そういう意味では、大臣はたびたびいろいろな方から問われていることとは存じますが、例の牛肉オレンジ等を中心とした二国間の折衝の大まかな経過と今後の見通しというようなものを承りたいと存じます。
  237. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 しばしば御答弁を申し上げているところでございますが、牛肉かんきつ問題については、ヤイター代表との間で八回にわたり会談をいたしました。精力的に協議を重ねましたけれども、残念ながら合意に至りませんでした。 私としては再度の訪米によって二国間で双方とも納得のいく一つの解決の道を見出すべくぎりぎりの努力をしたつもりでございますけれども、合意に至らなかったわけでございます。まさに譲れるものと譲れないものがある、それが浮き彫りにされた感じでございまして、相変わらず米側の歩み寄りが見られなかったことについては甚だ遺憾に存じております。  今後の対応につきましては、牛肉かんきつ存立を守るという立場に立ちまして、生産、流通、消費、各般にわたって私もその責任を果たしていかなければならない。しかし、ガットパネル設置方向に道行きも既に始まっております。そういう中にありましても、日米双方の問題であった経緯にかんがみ、あらゆるチャネルを通じましてひとつ努力をしてまいりたい、一日も早い決着を私としては願っておるわけでございます。  以上でございます。
  238. 滝沢幸助

    滝沢委員 御苦労さまです。  例の牛肉につきましての課徴金の議論もいろいろと今されているようでありますが、これがガットパネルに至るまでの展望等もありましょうからさらに一言おっしゃっていただければありがたいわけです。  大臣、大変御苦労なことでありますが、私はこの十四日に自分の田植えをいたしまして、私も毎年田植えだけは、そしてできれば秋の取り入れのときも自分で田んぼに少しの時間でも入るようにということでずっとしているわけです。そしてあぜで村の青年たちと、青年たちといったって、たちというほど数がいない。ほとんど若い者は農村に——私は例の熊襲の子孫と言われました東北、そして会津のさらに山の中の会津若松から一時間半入る場所ですから、そういうところには青年はいません。どこのうちももうひとり暮らし老人、そして田畑は荒廃しております。  そういう中で村の人たちの話を聞きましたら、残念ながらこういうふうに見ているわけです。どうせアメリカの、またヨーロッパのおっしゃるとおりになるんでしょう、それに抵抗したよというところを見せる一つの、そこまでのお芝居でしょう、過程でしょう、こういう言い方ですな。しかし私は、そうじゃないぞ、頑張っているんだ、およそ戦後のよその国との交渉の中で席をけって帰ってきたのは佐藤大臣だけだ、あとはみんな最敬礼して帰ってきたんだというようなことを言って弁護しておきましたけれども、やはり農家の人たちはあきらめているというかさめているというか、米価のことでもそのとおり、減反の割り当てについてもそのとおりですが、もうこれはだめなんだ、それに至るまでの一つのゼスチャーとしての政府の努力なんだというふうにしか見てないのですよ。そういう点、大変立場上お気の毒ですが、重ねてひとつこれらのことについての、ガットに持ち込まれるまでの際どいところで二国間の話し合いで決まるものでしょうか、それともやはりガットの黒白の判決となりますか、どういうものでしょうね。
  239. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私も委員と大体同じようなところに育ってきたわけでございまして、福島で、会津の方で言えば阿賀川、我が方に参りますと阿賀野川、私もその水域に育ってまいりました。雪国でもございます。そういう中にあって、農業者として一生懸命やっておられる方々に信頼を得ていないのかなと思うと寂しい感じもいたします。しかし、芝居じみているという、決して言葉じりで言うわけではございませんけれども、また委員からは釈明もしていただいたということでございますので本当に感謝を申し上げなければなりません。どんなことがあっても、政治の信頼を仰ぐについては、国内対策であろうと外交交渉であろうとやはり信頼の上に立っての話し合いでなければなりませんし、信頼の上に立っての政策遂行でなければならぬと思っております。そういう意味で、前段のお触れになったことについてのお答えにしておきたいと思います。  パネルなのか二国間なのか、一体どうなっていくのだろう。ガットの場であろうか二国間であろうか、こういう話でございますが、実はぎりぎりの選択をしながら話し合いをこうして続けてきたわけでございます。我が国の現状というものをアメリカ側ももう少し知ってもらわなければ困る、余りにも認識の違いが大き過ぎる、それではおまえの判断が甘かったのではないかと批判をされるならばそれも甘んじて私は受けなければなりませんが、しかし今日の段階におきまして、いろいろな国の農業政策、よその国のことは別としましても我が国農業政策、食糧政策を遂行するには基本的な考え方がございまして、主要食糧は我が国で生産体制を整えていく、そして足らざるところを安定的な輸入体制をもって、あわせて国民に安全にして安定した供給体制をつくり上げていく、これは生産者のためにも消費者のためにも必要である、こういう基本的な考え方に立って努力を続けているところでございます。  いつの日か必ずわかってもらえる時期が来るのではないだろうか、私はその一日も早からんことを願っておる、こういうことで、先ほど申し上げましたように、あらゆるチャネルを通じまして、パネル設置への方向づけで今その道行きが始まっております。パネルの構成員をどうしようかという今段階になっておりますが、日本の今日の貿易黒字、そういうものから見て、日本は何を言っているのだ、おまえのところはたくさん黒字を持っているじゃないかということで農業たたきがあるとするならばこれまた残念なことでありまして、きょう午前中にもお答えしたかと思うのでございますが、日本たたき農業たたきということでは済まされない、私どもはこれをまじめに考えまして今後とも努力していかなければならない、こう思っておるわけでございますので、格別のまた御理解をお願い申し上げたいと思います。
  240. 滝沢幸助

    滝沢委員 御苦労さまなことであります。  そこで、私は、三つほど個々の問題、今の御答弁を承りながら教訓として感ずるわけでありますが、一つは、今もおっしゃいました農業たたき、これは国際的にもまた国内問題としてもあるでありましょう。しかし、私は昨年夏にアメリカに渡りまして、政党としては初めてアメリカのリン農務長官を初めその省の方々と折衝しまして、出発前に農林大臣ともまた外務大臣とも打ち合わせをしまして、いわば野党ではございますが政府をお手伝いするという見地に立ってのことでありました。  そこで感じてきましたのは、日本アメリカとが、これに対する取り組みに国民認識において違うということであります。これはいろいろとありましょうが、私、カリフォルニアにも行ってまいりましたけれども、カリフォルニア米を初め今問題になっております牛肉かんきつ類等を仮に自由化したところでアメリカ農業が——今日本が輸入しているのは六十億ドルでしたか、いわばアメリカにとって日本は今一番のお客さんですよ。しかし、それが自由化したからといってそうそう伸びるとは私は思わない。そのことはアメリカもわかっているのではないでしょうか。例えば、牛肉自由化したって豪州の肉を日本の消費者は選ぶ、カリフォルニア米を仮に入れてもそう簡単に多少の価格の相違によって飛びつくものでもない、それはわかっておると思うのですよ。しかし、日本から工業製品等がすさまじい勢いで売られるといいますか、これに対する対抗措置としての立場において、日本の農作物にいろいろ注文をつけてくると見ておるのですよ。私はそう見てきたのです。そういう意味においては、アメリカはいわば国民的には、挙国一致という言葉はいささかどうかは知りませんけれども、そういう体制で日本の農作物の自由化を求めている。  ところが、日本は工業製品をおびただしい勢いで売っていく、その反動として農政が攻撃の目標になっているというとらえ方をしないで、補助金が一番農家に多いじゃないか、我々消費者の立場からいうと農家にどうしてああいう金を使わせるのか、そして高い農作物をどうして買わなくてはならないのかという議論になってしまっているのですね。逆に農家の論理からいうならば、これもせんだって村でそういう話もありましたが、では工業製品を半分にしたらいいじゃないか、そうしたら我々の健作物に対しての攻撃が緩むであろう、こういうわけですよ。  そこで私は、政府が消費者対生産農家、工業界対農業サイドという対立のシステムではなくて、これを一緒のものとして理解する、我々の工業製品をどんどん売る、そのはね返りとして農家が攻撃されているんだから、工業界におけるプラスの幾分かをとにかく農家にひとつ手助けしようじゃないかという国民理解を誘発するような指導といいますか啓発といいますか、それを政府が各省庁共同してもっともっとなさる必要がある、こう私は思うのでありますよ。それが一つであります。  もう一つは、大臣が折衝に当たっての基本の方針のように承って心強く思いますが、全食糧の自給率というものをもっときちんと国が定められたらどうなのか。例えば米は一〇〇%でしょう。これがいろいろと議論されて、仮に輸入になるならば何%までいいことなのか、大豆等は九五%輸入ですね。こんなことでいいはずはありません。その他数々ありましょう。肉もそのとおりですが、やはり食糧については、幾ら高くともここまでは自給するという国是とも申すべき一つの線を引かれたらいかがなものか、こういうふうに実は思うのですが、いかがですか。
  241. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 まず、前段の御質問でございますが、私の認識はあなたと全く同じなんでして、生産者、消費者、あるいは農産物、工業製品、そういうことを国全体としてどう考えるかというスタンスに立つべきだろうと思っているのです。特に、今日の生産者は昔の生産者と違うのです。今日の生産者は単品の生産者であって、ほかはほとんどが消費者であるという現実。漬物に至っても売店から買う、極端な話でございますがそういう状態でございますから、常に生産、消費、両面に立った物の考え方が必要だ。特に貿易黒字、五百億ドル余、六百億ドルに近づいていくこの貿易黒字につきましていろいろ言われるのです。  だから、私はきょうのこの委員会におきましてもお答えを先刻いたしたところでございますけれども、この生産、流通、消費ということを考えながらも、私は農林水産大臣として牛肉かんきつ交渉に当たりながらも、先様からそういう話も出てきたことが何回かございます、交渉の過程で。これを全部つまびらかにするわけにはまいりませんけれども、そういうときに私自身は国務大臣として、世界に貢献する竹下内閣といたしまして重大な関心を持っておる、こういうことも率直に言った経緯がございます。そういう物の考え方努力をしていかなければならぬと思っております。  さらに、今おっしゃいますように、自給率の問題につきましては、今日の自給率が決して高いものだと私も思っておりません。しかし、今の自給率を割ってはならないということで最大の努力を払っていかなければいかぬ、特に主要食糧についてはそうでございます。したがいまして、牛肉等につきましても、これは畜産関係、酪農関係につきましても、酪肉基本方針を二月に策定いたしたところでございますが、審議会の答申を得て、その指針をもとに努力を始めておるところでございますけれども、そういう考え方で私どもは努力をしていかなければならない、竹下総理もその種の気持ちを如実にあらわした答弁現実にいたしておるわけでございますし、私は当然のことだと思っておるわけでございます。
  242. 滝沢幸助

    滝沢委員 よくわかりました。ただ、御答弁がやや抽象的でありますが、どうかひとつ勇気を持って——今は大豆は九五%輸入している。しかし、これは仮に十年間で七〇%まで復元するとか、あるいは米についてはどう、肉についてはどうという一つ原則数字的にはっきり定められてこそ全国民がこれを支持もし理解もするであろう、こう私は思いますので、ひとつ記憶にとどめてちょうだいしたいと思います。  もう一つは、実はかつて予算委員会の分科会等でもお伺いしたことでありますが、せんだっても農家の人たちが私に言うことには、いつになったらこの減反は終わるのと言うわけですよ。つまり荒らしている土地はいつになったら米がつくれるのですかと言うわけです。そこで私は、いやそれはならぬぞ、減反は永遠の道と思った方がいいぞというふうに実は申したことであります。  そこで大臣、これは思い切って発想をかえて、もう減反とか生産調整という言葉をやめにして、これは臨時的措置だということではなしに、とにかく一〇〇%日本人が食べる米をつくってもなおかつ余るというんですから、これは国土計画とも申せるんでしょうけれども、全国の農地の再編成といいますか、米をつくる田んぼはこれとこれだ、この範囲だ、そしてこれは畑にかえるんだ、そしてこの畑は宅地にないしは山林にというようなぐあいに、もう減反や生産調整という言葉で、臨時の措置として農家にあらぬ希望を持たせることではなくて、固定の概念として、農地を再編成されてはいかがなものかと思うのですが、いかがですか。
  243. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 戦後の農地改革、農地解放から始まりまして随分な変わりざまでございます。そういう中にあって、計画的な生産体制を念頭に置くことは当然でございますが、いわゆる農地を、地域農政とは言いながら固定をして、お言葉には強制という言葉はございませんでしたけれども、それをぴしっと枠組みしてやるということは、今日の体制の中ではいかがなものかなという感じもいたします。  しかしお気持ちは、やはり計画的な生産体制、地域農政、そういうものをもっときめ細かくやれ、こういう意味のお気持ちがそこの中に大部分を占めている、こう理解するならば、私はそういう考え方に沿ってやることは当然であるな、なお減反政策は決していい政策だとは私も思っておりません。そして、これ以上減反を強いていってどうなるのかという心配も私自身はいたしております。そういう中にあって、消費拡大という面もまだ努力次第によってはできるわけであります。私はできると思っております。特に、都会よりも農村部における、米生産地帯における減退率の方が高いということについては極めて遺憾に存じ、私は農業団体の責任者にもそのことについての当然の協力、協力というよりも自主的にひとつ考えてくれ、こういうことも申し上げておるところでございます。
  244. 滝沢幸助

    滝沢委員 実は大臣、二百八十万ヘクタールという土地、田んぼを二七%から三〇%減反しているというわけでありますから、二百万ヘクタールあればたくさんだということにも逆に言えばなるわけであります。見渡しますると、この肥沃な田んぼの途中にぽつんぽつんと無理してササゲをつくったりトマトをつくったりしているよりは、これらのことを寄せてしまって、それこそ米をつくる場所はずっと米がつくれるように、いわゆる再編成があった方がよろしい。そして減反という言葉はやめてしまって、日本の生産計画といいましょうか、そういう意味では、後で減反は解除になりますよというようなあらぬ期待を持たせて、しかし来年もか、来年もか、いつまで続くぬかるみぞというようなことはなくした方がいいと思うものですから申し上げたわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。  さてそこで、もう一つ、これは私はよくわかりませんけれども、大変権威あるという方から承ったのだけれども、米の生産力を落とすということはちょっと言い方は悪いのですが、つまり余り過剰米が出ない方法の中に、米価に思い切って格差をつけろ、こういうわけでした。つまり、今一万七千二百円ぐらいのいわゆる政府売り渡し米の五類というものから、一番高い新潟のコシヒカリ等になりますと二万五千円前後ということでしょうか、その差は本当は余りないですよ。  しかし、他の製品を見れば、洋服にしても大臣の洋服は何十万円で私の洋服は何万円か知りませんけれども、これは甚だしい格差と言わなければなりません。すべての物品がそうなのですよね。ですから、十倍というものは決して珍しくない、米価にも思い切った格差をつけなさい、そうすればそれぞれが、生産量は落ちても高い、いい米をつくる、そうすれば今の日本国民、いろいろとおっしゃるけれども、おいしいものは買うということなので、決して安ければ米の行列をつくるというようなものではないものだからそれがいいよ、こう言うのだけれども、何か農林省の方に承れば、そんなのはばかな話だというようなお話がありましたが、どうでしょうね。
  245. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 原則的にやはり消費のないところに生産はないという原則があろうかと思います。消費者ニーズ、これにもそういう意味ではこたえなければなりません。そういう基本的な考え方を持っておるわけでございます。  残余は、食糧庁長官から答えさせます。
  246. 甕滋

    ○甕政府委員 大臣から申し上げましたように、消費者のニーズに合った米をつくる、これは質量ともに基本かと思っております。そのための良質米への生産誘導ということは生産サイドといたしましても当然心がけていかなければならないわけでございまして、現在、米の産地、品種、銘柄別に、その米が流通いたします中でおのずから自主流通米等の価格の中に格差が生じておるという状況がございます。先生若干お触れになりましたが、自主流通の中で昨年米価全体下がったわけでありますけれども、引き下げ幅が自主流通としては一%程度にとどまった銘柄もあり、しかしながら四%程度の引き下げになった銘柄もあり、市場評価に応じた銘柄格差というのが拡大をしている、こういう実態はございます。  ただ、米は国民の主食でございまして、食生活基礎であるといった点からいたしまして、その価格水準についてはおのずから限度があるとも考えられるところでございまして、お話のございましたような大変な格差というものが、ほかの商品と同様に十倍とか二十倍とかいう実態にはなっておらないわけでございます。お話がございましたように、そういう良質米への誘導を図っていく中で数量的には生産調整を必要とする事態が解消されていくのではないか、こういう御意見もあったというふうにちょっとお聞きいたしましたけれども、良質米生産も、技術も安定し、また基盤整備も進むといった中で、収量といたしまして、これは当然品種によってさまざまに変わってまいりますけれども、それによって生産調整が必要でなくなるということも現実にはございませんということを私どもの職員からあるいはお話し申し上げた経過があろうかと思います。
  247. 滝沢幸助

    滝沢委員 最後に、私は六十二年五月二十七日に質問主意書を政府に提出いたしました。それは水産用ワクチンという言葉でありますが、養殖のお魚が、抗性物質を初め大変値段も高く、かつ使い方によっては人体に大変な影響を及ぼす薬が投与されている。これについて、ワクチンがもしも開発されて、しかもこれが生産者の利用に供されるならば、一つには生産者が高い薬代を払わずにも済む、一つには消費者の健康にも大変よろしいということで、どうしてよその国に許可されている水産用ワクチンというものが日本では許可されないのかということを、質問主意書の後も委員会等でたびたび取り上げてまいったところでありますが、大変前向きに検討され、作業を進めてちょうだいしているということでありますけれども、これについてその後の作業経過、そして今後の見通し等を承りたい。  結論は、水産用ワクチンというものをとにかくもはや許可をして、これをいわば生産者に使わせることによって、消費者の健康増進と生産者のいわば経営の安定に資するべきだということでありますが、いかがでございましょうか。
  248. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 水産用ワクチンにつきましては、一つはアユのワクチンについて製造販売承認申請と、それからニジマスのワクチンにつきまして輸入承認申請がございまして中央薬事審議会で審議をしてきたわけでございますけれども、中央薬事審議会の審議も大方終えまして、最初に四月二十六日に水産用医薬品調査会と動物用生物学的製剤調査会、これの合同調査会で審議されまして、五月十日に動物用医薬品等特別部会、ここでも審議、承認方につきまして決定を見ているわけでございます。近々、具体的には六月二日を予定しておりますけれども、常任部会にこの結果を報告するということを予定しております。  これからの水産用ワクチンの使用に当たりましては、水産庁といたしましても関係部局と協力しまして、せっかく承認許可が出ますワクチンの使用の適正化を図りますとともに、その普及についてもいろいろな努力をしてまいりたいと思っております。
  249. 滝沢幸助

    滝沢委員 大変前向きな御答弁をちょうだいしてありがたいことに思います。どうぞひとつこれを公の用に供されるように、そして生産者並びに消費者の期待にこたえていただきたいと思います。  大臣、いろいろとお尋ねしましたが、大変困難なときにこの衝に当たられる御苦労に敬意を表します。どうかひとつ今後とも頑張っていただきたいと思います。御苦労さまです。  委員長、大変ありがとうございました。御苦労さまです。
  250. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  251. 藤田スミ

    ○藤田委員 今国会終わりの質問になるかと思います。きょうは朝から一日大臣初め委員の皆さんもお疲れでしょうが、私の質問が最後ですのでよろしくお願いをいたします。短い質問時間ですから、できるだけ御答弁を簡単にお願いしたいと思います。  まず最初に、昨年大変問題になりました、イネミズゾウムシの防除に使われていた水稲育苗箱専用防除剤アドバンテージという防除剤があるわけです。これが使われました後苗枯れ被害が広範囲に出てまいりまして、各地の農民から農水省に対して補償要求が出され、その交渉には私も立ち会ったわけでございますが、結局日産化学もその責任を認めまして、総額二億円に及ぶ実費補てんを行ったわけでございます。その点間違いございませんか。
  252. 吉國隆

    吉國政府委員 イネミズゾウムシの駆除に用いられますカルボスルファン、先生がただいまお話しになりましたのは商品名でございますが、私ども登録上の種類名で申し上げさせていただきたいと思いますけれども、カルボスルファンという薬に関しまして、昨年の五月中旬から六月上旬にかけてこの粒剤を使用した地域の一部におきまして移植した苗に生育障害が見られたという状況でございまして、その障害が発生したことによって植えかえ、補植を行ったものは十六県で約二千ヘクタールに及んでいたというふうに把握をいたしております。使用面積全体からいたしますと必ずしも広範に集団的に出たという状況ではございませんけれども、そういった状況のもとで関係のメーカーから苗代、労賃、薬剤費等について相当額の補てんを行ったというふうに承知をいたしております。
  253. 藤田スミ

    ○藤田委員 それでその後カルボスルファン、つまり商品名で言うとアドバンテージですが、それの再現試験というようなことを行ったのでしょうか。実は、昨年の十二月にこの苗枯れの被害を出したアドバンテージの全面広告がこういう形で新聞に出されたわけです。(新聞を示す)被害を受けた農民はもとより、その周辺の農民もびっくりしました。この農薬が改良されてもう被害を出さないということならいいのです。しかしあれから半年もたたない間に、何の改良もされていないのにこういう広告が出されて、ことしも被害が出ないとは限らない、こういうことであります。  そこで、私は農水省に聞いておきたいのですが、再現試験をして被害が出なかったと言われております。しかしやはり苗を植える今の時期に再現試験をすべきではないでしょうか。もう一つは、そういう結論がはっきりするまで、宣伝を慎むだけではなく販売を中止するというような誠意を見せるべきではないでしょうか。三つ目には、既に販売されたもので昨年のようにもう既に稲に使われている、そこに被害が出た場合は、当然のことですが昨年同様の実費補てんということをするべきではないか、こう考えますが、どういうふうに指導されますでしょうか。
  254. 吉國隆

    吉國政府委員 まず、再現試験の問題でございますが、昨年そのような経験があったことを受けまして、数県の農業試験場でいろいろな条件設定を行いまして再現試験を行ったわけでございます。その結果といたしましては、通常の使用方法では生育異常は認められなかったということでございまして、特定の深水といったような虐待条件をつくり出してやった場合に一部そういった障害があらわれたというふうに把握をいたしております。  この薬は防除上極めて有効性が高いということで使用がかなり急速に伸びてきたという経過が実はございまして、使用上の注意等の点で若干不十分な点もあるいはあったのかという感じがいたすわけでございますが、こういった状況を受けまして、私ども防除に対する指導の面におきまして、使用方法というものを適切に守って防除を進めていただくように植物防疫関係会議等を通じまして徹底をいたしておるところでございますし、また関連のメーカーに対しましても、使用方法について十分配慮しながら使用してもらうようなことを徹底させながら販売活動を行っていただくことをお願いしているという状況でございます。  そういった状況でございますし、ことしの状況としても、まだ田植えが余り進んでいない段階でございますが、田植えがかなり進んだ地域におきましても今のところ生育障害発生は見られておらないという状況でございます。また、ことしになって各県の試験場等で試験をやっておられた結果で今までわかっておるものにつきましても、そういった問題は出ていないというふうに把握をいたしているわけでございます。私どもとしましては、そういった意味で関係者に対しまして、使用上の注意事項をちゃんと守って適切な使い方をしていただくということについて指導してまいりたいと考えているところでございます。
  255. 藤田スミ

    ○藤田委員 答弁一つ漏れておりますよ。昨年と同様の被害が出た場合には実費補てんということで指導なさるかということが一つです。  それから、使用上の注意をするように指導しているということですが、この新聞広告には何にも出てませんよ。名前しか出てないのです。だから、この日産化学がどういうふうに生産者の痛みを感じているのか。実費補てんをされるよりも、やはりこれが安心だと思って使った農薬の被害が出ない方がずっといいんだ、実費補てんよりも自分たちがつくった作物が青々と育成することを生産者はもっと願っているんだということを言われておりますが、私もそのとおりだと思うのです。そういう点で、私は使用上の注意の問題について一言申し上げておきたいし、これは農水省の農薬に対する姿勢の問題が問われると思うのです。答弁の漏れたところ、ひとつおっしゃってください。
  256. 吉國隆

    吉國政府委員 私ども、御承知のように、農薬の登録に当たりましては薬効その他安全性の問題、また使用方法上の注意事項といったようなことを精査して登録をやっているわけでございます。昨年、先ほども申しましたようないろいろな要素が重なっておったかと思いますが、そういった事態が出たという状況下で、今先生おっしゃいましたような農家の心情も酌んでメーカーの方としては自主的に一定の措置をとられたというふうに思っているわけでございます。私ども、今までの知見といたしましては、きちんとした使用方法をとっていただければそういった心配はまずないのではなかろうかと思っているわけでございまして、そういう意味で使用上の注意を守っていただくように私どもも一生懸命努力をすることが先決であろうと思っているところでございます。
  257. 藤田スミ

    ○藤田委員 大臣、聞いていただいてわかると思うのですが、一つも答えていないのです。去年このアドバンテージを使って被害を出した、その被害に対する実費補てんというのは私はよく知っていますよ。農水省が御努力されて指導されたのです。それをどうして仮に同じ被害が出れば、再現試験といってもそれはあくまでも箱の中での再現試験ですからね。一年休んで実際に自然条件の中で再現試験をしたならともかく、そういうこともしないでやって、それでもしことし被害が——私は被害が出ることをちっとも願っていませんよ。しかし、被害が出ればやはり同じように企業に対して指導するかという答弁が全然ないのですよ。私は仮の話をしているのです。そして、去年もなさったようにことしも日産化学に対してそういう指導をしてくださるかということを言っているのです。何で答弁してくださらないのですか。一言で結構です、指導はわかりましたから。
  258. 吉國隆

    吉國政府委員 企業活動として一定の制度上の制約のもとで最善を尽くすということについては私どもも含めて努力をしていかなくてはならぬと思っておりますが、全くその危険がないわけではないというだけで使用を中止するという状況のものであるかどうかということもございましょうし、また企業活動にかかわる問題でございますので、政府から今の時点でとやかく、こういうことがあったらこうするというようなことを言える段階ではないということにつきまして御理解をちょうだいしたいと思います。
  259. 藤田スミ

    ○藤田委員 そんな理解はできないのです。去年努力をされたように、ことしもそういうことになれば農水省として責任を持って対応する、せめてそれぐらいのことは言えますね。
  260. 吉國隆

    吉國政府委員 私どもは状況に応じまして、その時点その時点で適切な対応をやるという立場であると思いますので、そういう面で最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  261. 藤田スミ

    ○藤田委員 もうこれ以上聞きません。その適切に最善の努力をするという言葉の中に私は農水省の責任を十分受けとめて、私の言葉に答えていただいたというふうに理解をいたします。  次の問題に移ってまいりますが、私はせんだって、大阪の農協の関係者の方々と現在の農業を取り巻く問題について懇談をいたしましたが、大阪でもミカン農家が非常に深刻な問題を抱えて悩んでおります。端的に言えば価格の低下であります。大阪は、昭和六十年の段階でミカンの栽培面積は千百七十九ヘクタール、生産量が四万二千三百トンありますが、価格につきましては六十一年産のミカンの生果がキロ六十円から七十円、六十二年が二十円から三十円と、三分の一から二分の一に落ちていきました。ジュース用は六十一年産は三十円ですが、六十二年産は三円、去年の十分の一というありさまで、この暴落で農家の転廃業が多数出たと言われています。何もこれは大阪だけではなく全国のミカン産地が甚大な打撃を受けたということであります。  まずお伺いいたしますが、このようなひどい状況の全体像とその原因について明らかにしてください。
  262. 吉國隆

    吉國政府委員 昨年のミカン価格は、先生御指摘のようにかなり低い水準になったわけでございます。御承知のように温州ミカンにつきましては、全体の需要動向からいたしましてミカン園の転換事業あるいは年々の作柄予想に応じました摘果、こういったことを進めて計画的な供給に努めてまいっているわけでございます。昨年も開花の状況からいたしまして相当量の生産が見込まれる、これによって需給が著しく均衡を失するのではないかということで、果樹農業振興特別措置法に基づきまして生産出荷安定指針を公表したところでございます。これに基づきまして摘果を全国の生産者の協力のもとに進めたわけでございまして、これによる生産量の削減努力が行われたわけでございますが、気象条件も加わりまして目標を上回る生産になったという状況でございます。そういったことから価格が前年に比べて相当程度下回る状況になったわけでございます。  こういう状況の中で、私どもとしては生産者団体とも協力をいたしまして、出荷時期の調整あるいは消費拡大努力ということを進めます傍ら、果汁原料に仕向けられたミカンにつきまして加工原料用果実価格安定対策事業による価格補てんを行いましたし、またさらに果汁の過剰在庫について調整保管事業を実施することを決めた次第でございます。こういったことで、ミカン農家は価格の値下がりによる影響を相当に受けたわけでございますが、こういう努力を通じてミカン農家の経営の安定に努力をしているところでございます。
  263. 藤田スミ

    ○藤田委員 今のお話を聞いてもなかなか被害の全容が十分浮かんできません。史上最高の摘果あるいは調整保管等々に取り組まれたことはよく承知しておりますけれども、史上最高と言われるような摘果をしてもなおかつこういうふうな価格の暴落になったのは、単なる気象条件からだけでしょうか。私はそうじゃないと思うのです。それはオレンジオレンジ果汁の輸入量を見てみても、輸入量のふえ方は十年前に比べて生果で七倍、果汁で六・五倍になっています。これは数字でいいますと現在十二万六千トン、果汁の方も生果に直しますと八万五千トンですから、実に二十一万数千トン、こういうことになるわけであります。そこへ輸入果実全体量が六十二年は百四十一万トンと、このところ年々一割強のふえ方でふえ続けて、外国産のシェアはもう既に二割強というような状態になっています。これが価格に影響を与えていないというふうにお考えでしょうか。
  264. 吉國隆

    吉國政府委員 昨年摘果をやったにもかかわらず供給が思うように絞り込めなかったということを、先ほど気象条件というふうに申し上げたわけでございますが、摘果をした後、非常に雨が多かったということで果実の生育が非常に促進をされたという面があったというふうに私どもは認識をいたしておりまして、こういうことで、せっかくの摘果の努力をやっていただいたにもかかわらず供給が過剰になった。また、地域にもよろうかと思いますが、品質面での問題も生じたということであろうというふうに考えております。  輸入オレンジの影響ということではないかというお尋ねでございますが、輸入オレンジの影響がミカンとの関係でどの程度どうなるかということは非常に難しいと思っておりますが、主要な出回り時期が違っているというようなことも御承知のようにあるわけでございまして、私ども、輸入の増加によって価格が低落したというよりも、国内の供給バランス等による低落であったというふうに認識をいたしているところでございます。
  265. 藤田スミ

    ○藤田委員 そんなこと農家の人が聞いたらびっくりしますよ。これは全然影響を与えていないというふうに御認識でしょうか。一般に青果物の価格は、一割入荷がふえれば値段は半分に下がる。私は大阪ですからこういうことは商売人からしょっちゅう聞かされてよう知っているのですが、そういうふうに言われているぐらい、現実に国内のミカンの生産者価格の暴落はまさに輸入の果実の増加というものが影響していないという方が、これは冗談じゃないよと言いたいくらいなんです。全く影響を与えていないというふうにお考えですか。
  266. 吉國隆

    吉國政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、オレンジの輸入とミカンの需要との関係がどういう関係になっているかということを正確に把握することは非常に困難であるということを申し上げたわけでございます。御承知のように、果汁全体の消費が多様化をしていくという傾向が進んでいるように私ども見受けているわけでございまして、ミカンも残念ながら、大量消費の時代から、そういった多様なものを消費するという中での消費という形になってきているということが過去の消費減退の傾向の中にあらわれているのではないかというふうに思っているところでございまして、いろいろ多様な果物が、輸入されているものもありますし、国産もございますが、そういったもの全体の相関関係、消費者の胃袋との間で相関関係が生まれているというふうにむしろ見るべきではないかというふうに思うわけでございます。  そういった意味で、オレンジの輸入量とミカンの消費というものを直結して考えるというわけにはなかなかいかないというふうに思っております。
  267. 藤田スミ

    ○藤田委員 正確に把握するのは困難だけれども、しかし全く影響を否定するものではない、そういうふうに理解していいですね。正確に把握することは困難だけれども、しかし全く否定するものではない、そんなことは常識なんですよ。日本園芸農協連合会の専務理事の遠藤さんも、ことしの三月の新聞に「とりわけ六十二年産のミカン、今出回り最盛期の中晩柑の暴落は、本当に目を覆うほどひどい。豊作や品質の低下といった気象条件ではとても説明し尽くされない構造的な要因が横たわっている。」ということを述べておられますけれども、こういうミカンの価格暴落がやはり大きな影響を受けていることは、これはもうだれも否定できないことなんです。  そこで私はお伺いいたしますが、果樹農業振興特別措置法第五条、これは端的に聞きますが、ことしのようにジュース用がわずか三円といった値段、もうこれは値段とは言えないような値段になっているときに、それでも発動しないというような状態ならば、これは五条を死文化させようと考えているんじゃないかというふうな意見があります。死文化させようと考えているかいないか、それだけで結構です。長くおっしゃらないでください。
  268. 吉國隆

    吉國政府委員 死文化させようということは考えておりません。
  269. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はここに、浜口農蚕園芸局長の推薦の言葉が載っております果樹農業研究会が編集しました「果樹農業振興特別措置法の解説」という本を持っております。これをずっと読ませていただきました。ここには、この五条は「政府に対し一定の措置を講ずべきことを義務付けたものとなっている。」こういうふうに書かれております。政府に対して履行義務が課せられているわけであります。また、輸入果実が国内の果実に影響を与えていることは、政府が出しました「果実等生産出荷安定対策事業の推進について」という文書を見ましても、「国内産の果実及び果実製品の需要の低迷、果実の輸入増大等の影響による需給事情に対処し、」という言葉を使いまして「果実等の需給の調整を行なうものとする。」と述べていたり、あるいはまた、同様の言葉を使いまして「果実等の需要の拡大を図るものとする。」というふうに書かれているわけです。また、その果振法の改正のきっかけになりました果樹対策研究会、これは農蚕園芸局長の私的諮問機関で御存じだと思いますが、その研究会の検討結果では、「オレンジ等の果汁の輸入増は、うんしゅうみかんの過剰の調整弁として機能しているみかん果汁の販売条件を悪化させるもの」と明確に述べているわけです。  ことしは、オレンジ果汁は調整保管も含めて、先ほどもお話にありましたように相当の過剰在庫を抱えており、大変な状況になっていることは御承知のとおりです。このようなときにこそこの果振法の五条を発動すべきだという産地の声を受けて、農水省としてもこの発動に真剣に取り組むべきではないかというふうに考えますが、どうでしょうか。
  270. 吉國隆

    吉國政府委員 この規定趣旨は、外国産の果実等の輸入によりまして国内産の特定果実、これは温州ミカンでございますが、これの価格に著しい低落等の問題が生じている場合で、国内の需給調整努力等によっては事態を克服することが難しい、そういう場合に相当な措置を講ぜよ、こういう趣旨であるというふうに理解をいたしているわけでございます。また、一方におきまして、この規定の発動ということにつきましては、ガット等の国際条約との整合性のとれたものでなければならないということが国としてあるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この規定の運営ということにおきましては、国内の需給調整努力によって解決するということがあくまでまず求められているということでございますので、そういった意味から国内での需給調整努力をいろいろと行って事態の克服に努めているということでございまして、先ほどもお答えをいたしましたように、この規定を無視してかかるというようなことを考えているわけではございません。
  271. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、何のために果樹振興法第五条があるのか、ミカンがこれだけ暴落し、あれほど摘果してもなお値にもならない値になってミカン山で捨てられているミカンのことを思うときに、政府のそういうあいまいな対応というものは本当に許されないものだと言わざるを得ません。なぜこんな生産者を救う法律があるのにそれを生かそうとしないのですか。別にこれは無視するものじゃないという御答弁ですが、それならばぜひとも、この果樹振興法の五条を今こそ発動させて、そして生産者の要求にこたえるべきだということを申し上げておきたいわけです。  この問題に関連をして、日本園芸農協連合会の専務理事の遠藤さんは、「兼業化、担い手の高齢化は、果樹部門も例外ではない。しかし現に中核農家が全国三十八万ヘクタールの園地の五三%を管理している現実を、私は強調したいのである。必死で農業に生きようとするプロの彼らの意欲を挫折させては日本の果樹農業はおしまいである。オレンジオレンジ果汁のIQ制度は、果樹農業を守るために、どうしても譲ることのできない最後に残された砦である。」こういうふうに言われています。果樹振興法のきっかけになった果樹対策研究会、ここでもそのことを強調しておられますね。そして、当時の農蚕園芸局長は、この検討結果の本の中で、「輸入については、現行の輸入調整措置の維持に最大限の努力を払うことが必要であるということである。」と強調して重ねて書いておられます。そういうふうに見ていきますと、政府としては、この果振法第五条の義務づけがある中でオレンジ自由化はできないということになっていくのじゃないでしょうか。  時間が参りましたから一気にしゃべって御答弁をいただきますが、大臣、この果振法ができたときにどういう状態にあったかというと、政府がアメリカの要求を受け入れてオレンジオレンジ果汁の輸入増加が進められたあの五十九年当時に、温州ミカンの過剰の調整弁として機能しているミカン果汁の販売条件を悪化させるということで、特にオレンジ果汁の輸入増に対して関係者の皆さんは不安を抱いた。そこで、これはほかならぬ自民党の果樹農業振興議員連盟が政府に要求された、何とかせいと。そこで農水省の方は、農蚕園芸局長の諮問機関である果樹対策研究会を発足させて、その研究会で半年間にわたって検討をされた。その中で、「輸入調整措置の維持に最大限の努力を払うことが必要である」、意見の中には一元輸入制度などの新たな国境措置を設けるべきだという意見があったけれども、いやそういうことをしたらかえって輸入割り当て制度を維持する上で障害になるかもしれないんだということで、これは両論併記という形になりましたけれども、この研究会の検討結果を踏まえて法改正が行われるようになった。  ところが、その法改正で政府が出してきた案には、輸入措置については何ら規定がなかった。そこで農業団体は、重ねて外国産果実・果汁の輸入問題についての不安を表明し、参考人質疑でも大いに意見を出して懸念を表明して、参議院の各委員からこの問題についても意見がどんどん出されて、最後に自民党から共産党まで全会派がまとまって、外国産の輸入に関する措置ということでこの五条がつくられることになったのです。大臣はもう経緯は私よりもずっとずっとよく御存じで、おまえ、しょうもないことを言うなというふうに思われるかもしれませんが、繰り返して言うとそういうことになるわけです。  したがって第五条の持つ意味は、一つは、輸入果実で価格の低迷の影響を受けたときに必要な輸入規制をするということです。もう一つは、これは自由化を認めない、自由化の歯どめとしてつくられた、まさに生産者それから議会も一体になって合意の上でつくられた五条だと考えるわけです。そう考えていきますと、政府としてはこの法律に誠実に対処する法律的、政治的、道義的義務がある。それでもなおオレンジオレンジ果汁の自由化を受け入れることができるのか。一体、日米交渉及びガット交渉に当たってこの五条をどう位置づけていくのか、大臣にお伺いをしたいわけです。
  272. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 果振法第五条にあらわれておりますかんきつ農業の重要性、これに対する与野党議員の認識、これを十分頭に置いて交渉をいたしておるつもりであります。
  273. 藤田スミ

    ○藤田委員 午前中の質議の中で大臣は、仮説日本考え方を示し、現実立場相手側理解をしてもらうように努力をしてきた、そしてこれからもそういうことで努力をしたい、こういうふうにおっしゃいましたけれども、現実立場ということになれば、まさに五条こそ現実立場を最も雄弁に物語る日本法律ということでこの問題をしっかりととらえていくならば、逆に言えば、仮説で示された考え方というのは現実的ではないではないかというふうに私は考えますが、いかがですか。
  274. 吉國隆

    吉國政府委員 先ほども申し上げましたが、この果振法五条も国際条約との整合性ということが求められることは当然であると考えております。そういった性格でもございますし、この規定が存在しているから今度の交渉の進め方がどうこう支配されるという論理的な関係にはないと思っておりますが、先ほど大臣からお答えがありましたように、こういった規定の中に結実しております関係の方々の御意見というものは踏まえながら、最善の努力交渉においてしているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  275. 藤田スミ

    ○藤田委員 もうこれで私の質問、最後にもう一問だけして終わりますが、実はこの間青森に参りましたら、青森県では、腐乱病というのが非常に今広がってきていて問題になっておりました。最後に、腐乱病に対する政府の対策をお伺いし、それから、私が先ほど申し上げました問題についてもう一度大臣の御意見をお伺いして、終わりにいたします。
  276. 吉國隆

    吉國政府委員 リンゴの腐乱病が青森県等を中心としまして近年また若干ふえてきているという状況がございますので、この防除対策につきましては、先生も御承知であろうかと思いますが、技術的には確立をいたしておりますので、この発生状況を調査いたしまして、その発生予測に基づきまして関係者に情報を提供しながら的確な防除を行っていくということが必要であるというふうに考えておりますので、こういった面で今後とも努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  277. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今局長から適切に答えたなと思っておりますので、別段これに加えることはございません。
  278. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が参りましたので、これで終わります。  ただ、腐乱病のような病気が広がるということの背景に、私はやはり今の農政、とりわけ輸入の自由化の問題についてもここで真剣に考えなければならない、現実的にそのことを見ていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  ありがとうございました。
  279. 菊池福治郎

    菊池委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会