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1988-04-26 第112回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十六日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       石破  茂君    衛藤征士郎君       遠藤 武彦君    大石 千八君       川崎 二郎君    木村 義雄君       岸田 文武君    小坂善太郎君       杉浦 正健君    武部  勤君       谷垣 禎一君    玉沢徳一郎君       中島  衛君    長谷川 峻君       鳩山由紀夫君    柳沢 伯夫君       石橋 大吉君    沢藤礼次郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       前島 秀行君    安井 吉典君       武田 一夫君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣臨         時代理     林田悠紀夫君  出席政府委員         農林水産政務次         官       北口  博君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      菊川  治君         文部省体育局学         校給食課長   石川  晋君         海上保安庁警備         救難部救難課長 河端 春夏君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   石破  茂君     赤城 宗徳君   衛藤征士郎君     田村 良平君   遠藤 武彦君     葉梨 信行君   川崎 二郎君     綿貫 民輔君   近藤 元次君     稻葉  修君   杉浦 正健君     谷川 和穗君   保岡 興治君     橋本龍太郎君   山崎平八郎君     藤波 孝生君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     石破  茂君   稻葉  修君     近藤 元次君   田村 良平君     衛藤征士郎君   谷川 和穗君     杉浦 正健君   葉梨 信行君     遠藤 武彦君   橋本龍太郎君     保岡 興治君   藤波 孝生君     山崎平八郎君   綿貫 民輔君     川崎 二郎君 同月二十六日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     岸田 文武君   衛藤征士郎君     谷垣 禎一君   熊谷  弘君     鳩山由紀夫君   杉浦 正健君     木村 義雄君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     杉浦 正健君   岸田 文武君     阿部 文男君   谷垣 禎一君     衛藤征士郎君   鳩山由紀夫君     熊谷  弘君     ───────────── 四月二十五日  農産物輸入自由化に伴う諸対策確立に関する請願近藤元次紹介)(第一六九八号)  水田農業確立対策における新減反政策撤回等に関する請願山原健二郎紹介)(第一八一一号)  米の輸入反対等に関する請願児玉健次紹介)(第一八一二号)  同(辻第一君紹介)(第一八一三号)  同(寺前巖紹介)(第一八一四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出第五五号)  昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七五号)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 漁災法質疑に入る前に一、二問、牛肉オレンジの問題で質問しておきたいと思います。  きょう佐藤農林大臣が訪米するということのようですが、これまで佐藤大臣の訪米は恐らく政治家としての判断にゆだねられてきたのだと思うのですが、これまで事務当局アメリカにも何回か行っていらっしゃるし、過般はスミス通商部次席代表との間で相当連日のように詰めもなされたわけです。  新聞報道ではスミス交渉結果の記者会見などを通してアメリカ側主張は聞くが、日本側の方は我々余り的確に聞いていないわけだが、ひとつ事務当局として今度の折衝に当たって、この最終段階でどういうところが問題になっておるのか、この点について、時間が余りありませんから要点だけで結構ですが、御報告をしていただきたい。
  4. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今お話がございましたように、佐藤農水大臣が協定の期限切れの直前の三月末にワシントンに参りまして、四回にわたりヤイター代表交渉をされたわけでございますが、そのときの合意に基づきまして、引き続き日米協議を行ってきているところでございます。具体的には、先週日米間の事務レベル協議機会がございまして、スミス次席代表が東京に約一週間おりましたのでその機会をとらえまして、これらの会議の合間を縫いまして牛肉かんきつ問題についての事務レベル協議を断続的に行ったわけでございます。  これらの協議を通じまして、アメリカ側本件決着に向けての具体的な考え方が示されてきているわけでございますが、アメリカはその中で、牛肉かんきついずれの品目につきましても自由化の時期を明示することが不可欠であるという大前提に立っているわけでございます。それとあわせまして、自由化の後において日本側がとるであろう国境における代替的な措置について、特に現在牛肉については関税の二五%という制度があるわけでございますが、その関税以外のものは国境措置として新たに導入することは認めないという考え方を強く主張いたしているわけでございます。  それから自由化に至る期間、引き続き輸入割り当て制度が残るわけでございますが、それらの制度のもとで具体的なオレンジなり牛肉日本市場に向けての輸入枠をどのようなペース拡大をしていくのか、その輸入枠拡大ペースの問題。それから牛肉については、その大部分を畜産振興事業団の一元的な輸入のもとに輸入をし、国内への放出を行っているわけでございますが、その事業団牛肉輸入についての運用をいかに改善をしていくのかという問題。それからオレンジにつきましては、特にオレンジ果汁につきましては現在濃縮果汁の形での輸入が行われておりまして、国内に持ち込んだ上で国内産の温州ミカン果汁との一定比率での混合が義務づけられているわけでございますが、その混合義務を撤廃する問題、そういった問題がオレンジ果汁については特にアメリカ側からの主張として出てまいっております。  それからさらに、特にオレンジについてでございますが、輸入枠の撤廃とあわせまして、その裏腹になっております関税について、これは御案内のようにオレンジについては年間を通じて二〇%と四〇%の季節関税を適用しているわけでございますが、それらを引き下げる問題等々、実質的に市場アクセス改善に関しましていろんな要求を出してきております。  今申し上げたような内容アメリカの主な主張のポイントでございます。  それに対して日本側は、自由化が困難であるということを主張しつつ、仮に将来自由化をするという事態が生じたとしてもガット上、ガットのルールに照らして整合性のある措置国境措置として導入する権利ガット加盟国として当然持っているわけでございますので、それを縛られるようなことは日本としては受けるわけにいかないということは当然強く主張しているわけでございます。  それからさらに市場アクセス改善の問題についても、日本側牛肉あるいはかんきつについての需給事情を無視したような過大な要求をのむわけにいかないというような反論を行っておるわけでございますが、アメリカ側主張日本側主張との間に相当距離が残ったまま、現在までの協議では距離が縮まっていないというのが率直に申し上げてこれまでの接触の経過でございます。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 日本側主張の中で課徴金制度を、仮に自由化というものが考えられるまでにはその間にとる、こういう意味新聞報道でありまして、ほとんどこれに集中しておる。これは今御報告がないが、どうですか。
  6. 塩飽二郎

    塩飽政府委員 自由化後の国境措置の具体的な内容につきましては、日本側としては当然具体的な措置内容を詰めているわけでございませんので、課徴金であるとかあるいは関税の引き上げとかいろんなタイプ国境保護措置やり方があるわけでございますが、どういったタイプ措置日本側として考えるということは日本として立場上当然言えないわけでございます。先ほど御答弁申し上げましたように、日本としては加盟国として関税を引き上げないというガット上の、いわゆるバインドと言っておりますけれども関税バインドをやっていない品目、具体的には現在問題になっております牛肉かんきつでは、牛肉関税バインドをいたしておりませんので、ガット加盟国としては国境措置を現在の関税率を超えて変更する権利がある。その権利を縛られるわけにはいかないのだという主張をやっているわけでございまして、仮に日本自由化を行った場合にも具体的にどういう措置をとるかという措置については現時点では政府として決めているわけでもございませんので、アメリカに向かっての主張は今申し上げたような内容で言っているということでございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 そんなことを今までも何遍も言われてきて、今この山場に来てマスコミがそういう報道をすると、関知しない、全然決めたことでない、こう言っておるけれども現実には大臣が行って特に課徴金など幾つかのあなた方が話し合われた内容についてアメリカ側が譲歩すれば政治決断をやる、そういうことで動いておるんでしょうが、今の客観情勢というのは。で、大切な問題になっていくと何だかぼやかして玉虫色で決着をしていくというようなことになるのかどうか知らぬが、これはもう日本の農民や国民は知っておりますよ、今のこの状況を見て。  私のところへきのう妙なわけのわからぬアメリカワシントン紙情報が入ってきたけれども、これは日本アメリカ政治家の、役人の合作だ、非常に強硬であると。第一、課徴金問題など、ガット上許されているものをアメリカECに対しても何にも、あなたは一番知っておるでしょう、認めてないでしょう。ECとけんかするというのは、日本アメリカの今度の日米交渉の国際的な背景でしょうが。だからアメリカはうんと言うわけはないんだ、これは。それなら何で二国間で協議するんだ。何で二国間で協議するんだ。むしろガットで……(「そんなに興奮する話じゃない、冷静に」と呼ぶ者あり)冷静にじゃないよ、冷静でやっているんだ。土壇場になってだな、あなた方今までやってきたことと言うことと違う、こういう形で内容が進んできたんでしょうが。  私どもはきょう重ねて最終的に野党の集会を開いて自由化に反対する、こういう態度を政府が貫くように大臣や総理に要請をいたしますが、いろいろなことがあって相当詰めた議論がなされておるんだ。私どもはある程度は聞いておりますよ。国会で平面的な報告を受ける以上のものを聞いておりますよ。聞いておるし、アメリカなどでももう既にそういう情報が流れ始めてきておるんですよね。だからもっと裸になって議論をさせてもらわぬと、格好だけの議論を幾らしたって、こういう重大な問題に対して我々だって責任を持っているわけですから、(「格好つけて言っているのがいるんじゃないか」と呼ぶ者あり)格好つけておるのはそっちの方じゃないのか。そういうことについて極めて不満である、この点を明らかにしておきたいと思います。  漁災の問題に入りますが、政府は前回、昭和五十七年の改正、私も当時この改正の審議に加わった一人でありますが、我が党の委員の、漁業災害共済補償制度性格位置づけをめぐる議論がなされております。そこで本制度については、自然災害ばかりではなくて資源の豊凶、価格の変動、突発的な魚病といった広義の経営対策一環位置づけながら、本制度だけでは不十分であるので各般水産施策を適切に講じていくことが基本である、共済制度と言われているけれども実質的には公的救済制度という範疇に属する性格もある、こういう国会答弁がなされております。その後漁業をめぐる内外情勢に大きな変化はありますが、政府の本制度に対する基本的な性格位置づけについてはこの政府見解と今なお変わらないか、変わっておるか、この点をまず最初に御質問しておきます。
  8. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 災害補償制度基本にかかわる点でございますけれども災害補償制度は、経営基盤の脆弱な中小漁業者災害等によって受けることのございます損失を相互救助の精神を基調とした共済事業というもので相互に合理的に補てんするということで、漁業生産の確保と漁業経営の安定ということを目的としていることは当然でございます。したがいまして、この制度は国の災害対策一環としてではございますけれども漁業経営にとりましてただいまお話ありましたように極めて重要な意義を持っておる。しかしながら、それと同時に、こういう共済制度でございますから一定限界もございますけれども、こういう限界がある中で経営にとって重大な意義を持っておる共済制度とあわせまして、いろんな漁業生産基盤の整備でございますとか各般漁業政策をあわせて遂行することによりまして漁業経営体質改善の強化、こういうものに大きく寄与しておるという立場でございますので、ただいま先生からお話ありました共済位置づけにつきましては基本的には全く何ら変わっていないと思うところでございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 基本的には余り——余りというか大差のない見解に立たれているようでございますが、今回の改正の中で特定漁業、つまりサケマス大型定置における基準漁獲量設定、こういうものがありますね。これが先日のこの委員会質疑でも一つの大きな課題であったわけでありますが、この基準漁獲量設定というものは現在のPQ方式の実質的な後退、変更に大いに資するし、そのことによって制度の根幹に触れる問題がある、こういうように私どもは把握をいたしておりますが、なぜサケマス大型定置にこのような一定制限量というものを設定したのか、その点をまずお尋ねしておきます。
  10. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在、漁獲共済におきましては、先生からお話ありましたようにPQ方式農業でいえばとられてない方式がとられておるわけでございますけれども、このPQ方式漁業の場合に採用されていることの理由幾つかあろうかと思います。その一つは、単価が大きく異なっておりますいろんな魚が混獲されてくる、そういう中では漁獲数量、これを共済目的とするのではなかなか漁業経営実態に合わないということが一つと、それからもう一つは、通常の商取引におきましても数量じゃなくて漁獲金額ということが一般的に把握されておりますし、こういうこととも関連してPとQとの積、こういうものが長期的には安定してとらえやすいということも経験的に把握されておるわけでございます。こういう中で漁業ではPQ方式がとられているわけでございます。一方、サケマス大型定置漁業、これにつきましてはここのところふ化放流事業というものを行っておりますという特殊な事情がございまして、こういうふ化放流事業の向上なり安定ということから近年サケマス回帰率というものもかなりの水準で推移しておりまして、その結果、漁獲量相当安定なりあるいは良好な形で推移してきているわけでございます。こういう中でございますので、一般の不慮の事故とかなんかということと若干性格的に違っておりまして、あらかじめ相当程度予想される漁獲量の増加というものに伴いまして残念ながら魚価が低落して、連年のように特定地域に集中して同一漁業種類に多額の共済金を支払うという結果があらわれてきておるわけでございます。  こういう中で共済制度全体を守っていくということと、それからサケマス大型定置漁業自体につきましても、現在のような事態を放置しておきますと掛金の大幅な上昇、掛金が大幅に上がったことに伴いまして加入の脱落という悪循環を招きかねないという状況も見え始めているわけでございます。したがいまして、こういう形を何とか解消したいということでいろんな検討を深めてきたわけでございますけれどもサケマスの場合には特に混獲の問題というものが余りない、そういう中で一定の場合に限りまして漁獲数量に着目して共済金の支払いの特例措置を設けるということも技術的に可能であるということもございまして、今回そういう特殊事情に基づきましてこういう新しい基準漁獲数量概念というものを本制度に導入させていただいたわけでございますけれども、これは決してPQの本来持っております意義なり仕組みというものを否定するものではございませんで、我々といたしましては、先人が築いてまいりましたPQという漁業実態に非常に適した共済仕組みを何とか今後とも守っていくためにこういう特例的な措置を講じたという点につきましては、ひとつ御理解いただきたいと思っておる次第でございます。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 先週のこの委員会質疑の中で私が一つ気になりましたのは、サケマス価格暴落をしておるのは、長官は、外国からの輸入が直接的には関連してないがごとき答弁をなされ、後で、相関関係というか、間接的な影響は、つながりはあるという補足の答弁をされました。サケマスについては、特に最近のサケマス収支保険財政などが悪化をしておりますね。これは外国のべニザケの大量の輸入というものが一つの大きな柱になっておる。いま一つは、北海道は、国がやっておりますふ化放流方式内容が、試行錯誤をしながら大切な仕事でありますからやっていただいておるわけでありますが、そのやり方でまだきちんとしたものができなくて、失敗と言ったら余りあれかもしれませんが、思ったような形のものができなかったというところに今の問題はある、こういうふうに私は認識をしております。  細かいことは申し上げませんが、ともかく三十万トンから三十五万トン程度の需要に対して四十万トンから四十四、五万トンに達するサケが入っておる。その中心はアラスカのブリストル湾のべニザケだ、こう業界では一般的に言っておりますね。ブリストル湾のアカザケというものが日本アキザケの前に、つまり八、九月ごろ集中的に入ってきておりますが、そこに十一万トンから十二万トン近く入ってくる。期首の手持ちが六万トンから七万トンぐらいある。ところが市場は、御承知のようにべニザケについては非常にいい値をつける。そこへその後、日ソ交渉に基づく二万五千トンのギンザケが入ってくる。その後に日本のシロザケが十五、六万トン来るわけでしょう。こういうサケの流通の仕組みの中で、業界のいろいろな仕分けやいろいろなものはありましょうが、基本的には大変な量のべニザケの圧力というものが魚価安という状態をこの二、三年続けてきたというのが一番の理由だと私は思いますが、ふ化放流やり方を前期を中心にしてやって、いわゆるギンザケに近いものをつくりたいということで技術をしてそういう方向に動いたけれども、実際には小さな型のもので、北海道の北の沿岸地帯が水温の関係で思ったようなものができなくて、そこでこれらが合わせて暴落をして今日のサケマス状況がもたらされておる、こういうふうに理解をしておるわけであります。私のこの理解に誤りがあるかどうか、この点も御見解をいただきたいと思います。  そういう意味では、まさにこういうものはこの共済制度の中で政府が大胆に踏み込んで救済をしなければいけない責任政府にもあると思います。それを基準量設定して、それから上のものについては逓減をしていく、こういうやり方をすると、これはサケマスだけに及ぶのじゃなくて、例えば今、つくる漁業沿岸漁業ふ化放流というものは全国的にさまざまな魚種に動いておるわけですね。こういうものに連動していくあるいは適用されていくという心配があるから、先般来も各委員が強く言っておるように、この問題は大型サケ定置に限っていく、こういう原則をこの際明確に打ち立てていただきたいと思うわけであります。この点についてどうお考えか。  それから、さっき申し上げました混獲でまざっておるわけでありますから、これは検討されておるようでありますが、八〇%以上のサケについてこれを適用というかやっていくということ、そしてもし、今度の改正一つの柱になっておるこの収支というものが改善をされていく、これは専門家に言わせたらだんだんよくなっていく、こういうことをおっしゃる人もおるわけですね。だから、収支改善をされたらもとへ戻すということができるとお考えかどうか。この三つの点をお示しいただきたいと思うのです。
  12. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 最初価格の点でございますけれども、ただいま先生から輸入状況や何かにつきましていろいろ御指摘ございましたが、事実関係といたしましてはおおむねそういうことでございまして、先般の答弁では若干時間も足りませんで少し直裁的な言い方にあるいは終始したかと思っておりますけれども。  輸入サケ国内アキザケとの価格相関でございますが、これは過去のいろいろな数値の経緯というものも我々はトレースして見ているわけでございますけれども、やはり基本的には輸入品主体が、六割から七割が高品質ものでありますべニザケ主体を占めていることもただいま先生からお話のあったとおりでございまして、これにつきましてはアキザケとの価格帯というものが相当違っておるわけでございまして、現実にべニザケの方は千四百円から千五百円くらい、それからアキザケの方は七百円から八百円ぐらいということで相当価格帯の差というものもございますし、それから用途につきましてもかなり違っておるわけでございます。したがいまして、先般も申し上げましたのは、ストレートな因果関係というものはないことは確かでございますけれども、同じサケでございますので、総体としていろいろな影響をし合うということも否定できない事実かとは思っております。  ただ、過去の数字を見てみますと、例えば昭和五十七年は初めて輸入サケが十万トンになった年でございますけれども、この年は沿岸ものの量が減ったということがございまして、輸入ものが初めて十万トンという大台に乗って大騒ぎしながら沿岸もののサケ価格は逆に上昇したということになっておりますし、それから翌年の五十八年はまた逆に輸入が十万トンを切りまして九万トン台に減ったわけでございますけれども、この年は沿岸がかなり豊漁でございまして、その結果、沿岸ものの価格が落ちたということに相なっております。それでここのところ、六十一年などは両方の数量が減って、にもかかわらず価格が同じく大幅に減をしているということで、残念ながら数値としての相関関係ということは確たるものがないわけでございますけれども、今、先生からもお話ありましたように、全体として関係が全くないかと言われるとそれは否定はし切れない面があろうかというふうに認識している次第でございます。しかしいずれにいたしましても、全体としての用途が違うあるいは価格帯が違うといいましても同じサケサケでございますので、トータルとしての需給なり消費というものがどうあるかということにつきましては我々としても注意深く監視し、関心を持っていく必要があろうかと思っております。  それから二番目に、ただいまのこととも関連いたしまして、今回の特例措置をほかのものに拡大しないかどうかということでございますけれども、今回の措置は、先ほどもお話しいたしましたように、ふ化放流という特殊な事情のもとでの生産の増大ということに加えまして、特定地域での共済収支の悪化の恒常化という非常に特殊な事例に着目いたしましてこういう特例をお願いしているわけでございまして、現在のところ、こういう特例に対応する魚種なり漁法というものが決して見当たる状況にはございませんので、これに限定して運用してまいりたいというふうに考えております。  それから、その際の具体的運用方法でございますけれども関係地方からいろいろと要望が我々のところにも参っているわけでございます。具体的には、アキサケ、その定置に限定してくれ、あるいはサケ以外の混獲数量は除外してくれというような形でいろいろな要望が来ているわけでございますけれども、そういう要望は十分念頭に入れまして、これから具体的運用を決めます政省令事項の決定に当たりましては、漁業生産に悪影響を及ぼすことがございませんよう、それからまたその基準漁獲数量制度の導入趣旨に反することがございませんよう、漁業実態を踏まえまして関係者とも十分協議の上、適切かつ弾力的に定めるなり、運用を行ってまいりたいと思っております。  それから、今後のこの特例制度位置づけといいますか、共済収支状況に応じてどう持っていくかということでございますけれども、おかげさまで、去年まで非常にサケマス収支が悪うございましたけれども、今年度といいますか、六十二年度、まだ集計は終わっておりませんけれども、若干黒になるという明るい話も出てきておるわけでございます。しかし、単年なりあるいは数年間そういう状況になりましても、構造的に現在サケマス大型定置が持っている問題点なり悩み、こういうものが解消したとも思えないわけでございます。したがいまして、むしろ若干ゆとりがたまたまことしある時期、こういう時期にこそ、こういう全体的、構造的な対策というものを逆にお願いすることの方が時宜に適しているんじゃないかということで、ことしのこういう状況の中でこの特例をお願いしているわけでございますけれども、将来どの程度こういう状況というものが続いていくかということは、残念ながら現時点では定かじゃございませんし、それから共済というものは、先生十分御承知のとおり、長期に立っての収支というものを見ていく仕組みでございますので、将来収支改善した場合にはどうなるかという点につきましては、将来の問題としてそういう状況がどれだけ永続し、それから構造がどれだけ直っていくかという、全体も含めまして、その時点で検討させていただきたいと思っております。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 御答弁いただきましたが、サケマスのようなやり方をしておるのは、今のところ大型のこれだけだから、ほかのところはないからという意味で適用はないだろう、こう言うのですが、しかし今度の法改正でノリの養殖の特例を正式に発足させますね。これも、やはり限度漁獲量というものを設定しておりますね。  私は、こういう形で、これは基本的な収支関係だと思うのですが、加入が低くてどうだということが問題になっておるわけですから、やはり次から次とこういう方式が出てくるということを、実は漁業界全体が心配しておると思うのですよ。ですから、この議論余りしませんが、やはりこれはサケマスに限っていくという立場に立って、将来収支改善されていけば、これはサケマスの会計になっておるわけですから、そこでやれるという状況になれば、何もそういう頭打ちのようなものをしなくたってやれるならやるべきで、それは長期だから何年間かの収支状況を見なければいけぬという意味はわかりますけれども、そういう運用はひとつ心してやってもらいたいこういうふうに考えますね、私としては。  御意見があったら後でお答えいただきたいと思いますが、今お話がありました輸入水産物の影響が、サケという同じ魚についても、若干私と長官との間にはまだ、わからぬこともない面もありますけれども、隔たりがある。私は、もっと大きな密接な関連があると見ておりますが、しかし、現実日本の水産業は、異常な輸入水産物によって魚価安状況が続いておる、これに円高が拍車をかけておる、こういうことだと思うのですね。ですから、輸入水産物に対してどういう対応をしていくかということは、政策選択としては非常に大きな問題になっておると思う。サケの問題一つ取り上げても、お互いこの委員会中心に行政と政治の立場議論しておっても、どういう影響が連動しているかということについてはちょっと違うのですが、私は一遍客観的に、いろんな水産物が輸入されておるので、それをまず実態を的確に水産庁は把握していただいて、そして国内の水産物との関係について、価格的にこういうことになっておりますということを一遍お示しをいただきたいと思うのです。この輸入の問題は、これはだれが見ても大変な問題になっておるわけでありますから、ぜひこれをやっていただきたいと思います。  そして積極的に考えれば、やはり秩序ある輸入ができるような国内協議体制をつくる。具体的には、輸入にはIQもありましょうし、自由な取引もありましょうが、何らかの話し合いの場をつくって、お互いに国内の物価やいろんな経済状況等もにらみ合わせながら協議をし合って秩序あるものをつくっていく、こういうようなことも水産庁は、当面やろうとすればやれぬことじゃないんじゃないかと思いますが、輸入というものについてどのようなお考えに立っていただいておるのか、輸入水産物に対応する対応策、この点をお聞かせいただきたいのです。
  14. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 水産物の輸入がここのところふえてまいりまして、去年はついに二百万トン台、金額にいたしましても一兆二千億円台という史上最高の数量に相なっておるわけでございます。そしてこれをどう評価するかということにつきましてはいろいろな見方があろうかと思いますけれども一つ、農産物でございますとかそういうものと若干違うという感じがいたしておりますのは、代替関係といいますか、日本ではとり得ない魚というものがこの中に相当数量入っておるということ、それから、ここのところいろいろな経緯で日本の二百海里自体が資源問題でいろいろな問題に逆に当面してきておるという中で、国民生活の方からいいますと魚に対する需要はふえてきているということで、そういう資源と需要とのギャップを海外に仰がざるを得ないという実態にある点は、ほかのものと相当状況が違っている点ではないかという感じがしておりますし、それからサケマスにつきましては、これもそのこと自体問題があるわけでございますけれども、従来我が国が北洋でとっていたものが、これは十万トン近くとっていたわけでございますけれども、現在は二万トンまでに去年の段階で減ってきている。そして、その分が輸入という形で代替されてきているということで、輸入プラス北洋という、我が沿岸以外の数量で見てみますと、十万トンから十二、三万トンということでここのところ推移してきているという事情一つあろうかと思っております。  しかし、二百万トン台に輸入が達し、それからここのところ、日本の中小沿岸漁家とも非常に関係の深いあるいは競合の立場に立つ魚種というものの輸入相当ふえ始めてきておる。しかも輸入というものが、集中豪雨とまではいかなくても、無秩序に入ってきているという点につきましては、競合魚種もさることながら水産物全体としても問題があるわけでございます。したがいまして、何とか現在与えられておりますIQ制度、少なくとも中小沿岸漁家と直接関係の深い魚種につきましては、大方幸いにいたしましてIQ制度が継続されているわけでございますけれども、これをどう的確に、しかも円滑に運用していくかということがまず一つでございましょうし、それからIQになってないものにつきましても、例えばマグロ等につきましては、政府間あるいは民間間で、いろいろな関係国との接触なりあるいはそれを基礎としての事前承認制というものもとられているわけでございますけれども、そういう全然手だてのないものにつきましても、商活動の一環ではございますが、何とか長期的に我が国水産業が立ち行くように持っていくということにつきまして関係商社なり業界につきましても御理解をいただき、秩序ある輸入に努力してもらうように、我々としてもいろいろな場なりチャンネルを通じて関係者には要請を続けてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が余りありませんから、以下主な要点について疑問に思っておりますことを二、三指摘しておきたいと思います。  一つは、この漁協の一括契約加入促進というのが今度の改正案のこれまた一つの大きな柱でありますが、これについても、先般の質疑を聞いておると、漁協の系統機関の積極的な推進運動というか取り組みでふやしていくのだ、政府や地方自治体もこれをバックアップしていくのだ、こういう答弁で、一体どれだけこれに基づいて漁協の拡大を見込むのかということは、数字ではなかなか示されぬという御答弁なのですね。これも実は余りぴんとこぬので、せっかくこういう法律改正をして、しかも今度の改正相当重要な——加入の問題は共済制度の一番古くしてまた一番新しい問題として、いつも改正ごとに議論されてきたわけですね。ですから、このおおよその目標を持って三年先、五年先、十年先、大体この程度まではいく、こういうものがないと、法律改正をして系統の漁協の取り組みに任すのだ、こういうことではなかなか進まぬと私、思いますよ。そういう意味ではやはり行政としても、法律改正をし、法律に基づいて進むわけでありますから、こういうような程度にまでは持っていきたい、こういうものがなければ、これは法律改正をしただけということになる心配があるのです。この点についてどういうふうにお考えか。  それから、少なくともそういう意味では、やはり年次計画のようなものをつくって全体が力を合わせて進んでいく、こういうことがどうしても必要になってくると思いますので、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  16. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業共済制度の一番の問題はやはり加入率が低いということでございまして、今回の改正の大方も、その加入率を引き上げるために漁協契約方式でございますとか、少しでも入りやすい形の漁業共済ということを目指しましてお願いしているわけでございます。ただ、その加入目標率というものをどういうふうに設定するかということにつきましては、公的共済といえどもやはり漁業系統なり漁民系統組織というものがみずからの系統運動の一環としてこういう共済というものに取り組んでいただいているわけでございまして、国が上から目標率幾つと示すということは、仕事の性格上いかがかとも思いますし、それから、結果としてこれだけの改正を行いますとどのぐらい引き上げ効果が出るかということにつきましても、よって立つところは系統みずからがどう認識し、どう取り組むかということに大きくかかっておりますので、具体的数値として残念ながらお示しすることはできないわけでございます。ただ、共済団体自体がここのところ「ぎょさい第二次中期実行計画」というものを立てまして、何とかその共済の加入率をも向上させたいということで現在運動を展開しているわけでございます。この中では、六十一年度実績が共済金額ベースで三千億円の加入というものがあるわけでございますけれども、これを六十四年度には三千四百億まで共済金額ベースで加入というものを引き上げたいという目標を立てて系統が取り組んでいると聞いているところでございます。水産庁といたしましても、系統みずからがそういう取り組みをしている中でございますので、何とかそういう目標が達成されますように地方公共団体等とも相携えまして、その適切な指導に努めてまいりたいというふうに考えております。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は水産庁が勝手に決めて、それで上から指示しただけ、こう言っておるのじゃないのです。今、中期計画でそういう目標を持っていらっしゃるなら、その目標の設定の過程の中でいろいろな角度から内部では検討もなされたのでありましょうが、やはり水産庁も監督官庁としてそういうものが可能になるように法律改正、できればこれに取り組まなければいけぬわけでありますから、やはり力を合わせて、漁協の一括加入というのは確かに私はいいと思うのですね、ですからそういうものを進めていくようにしなければいけぬと思います。同時にやはり、漁協の加入にメリットがあるようなこともあわせて考えてやらないと、これは言っても事はなかなかスムーズに進むというようなものではないと思うのですね。  一つは、この間参考人の御意見をお伺いいたしまして、私も質問をいたしましたが、漁協の体制をきちんと強化をしていくという指導が必要である。特に、指導部というかこの種の共済事業の必要性に関連をして、地域の営業計画などといったようなものも設定をせられて、それぞれ先駆的な地域では取り組みが始まっておるわけでありますから、こういうものと絡んで、地域の漁民の共済といったようなものをこういう形で取り組んでいこうじゃないかといったようなことを引き出してくる漁協の担当部署、担当者、こういうものがないとこういう事業は進みませんよ。私も農協の共済事業というものの一番最初ごろをやった一人ですけれども、やはり漁民の最先端に担当者が配置をされるということが一番大切だと私の経験からは考えておるわけです。そういう意味でその辺の、担当者が設置をされることのできるような諸施策を、これは政策的にいろいろ外との関係等もあるわけでありますけれども、水産庁として一遍知恵を出してみたらどうかということを御提案しておきたいと思います。  それから、やはり掛金などの問題について漁協の一括加入というものがいいんだぞ、こういうものを示してほしいと思うのですね。そういう意味では、現行の一号漁業の漁協契約については国の掛金補助は六五%になっておりますね。これは漁協が加入する場合ですね。だから今度、二号、三号で漁協が加入するということになれば、これは六〇%でありますが、これを六十五%、五%ぐらい国の掛金補助をふやしていくというようなことは考えられて当然じゃなかろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  18. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 確かに、そういう方式をとることが加入率を引き上げるなりあるいは今回お願いしております漁協契約方式を普遍化していくという上で有効なことは事実でございますけれども、ただ、共済掛金に対する国庫補助率につきましては漁業者の負担能力等を勘案して定めるということが基本でございます。同じ漁業種類を営む漁業者につきましてはその経営規模なり経営形態等に大きな差があるわけではございませんで、個別契約方式で加入するかあるいは今回お願いしております漁協契約方式で加入するかということは加入の仕方なり共済需要の問題でございまして、加入の仕方が個別か漁協契約かの違いによって補助率を変えるということにつきましてはいろいろと波及する問題もございますし、場合によっては漁業者間の不公平も出てこようかと思っておりまして、非常に困難ではないかと考えておる次第でございます。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 非常に困難であるとすれば、次善の策として、漁協契約については組合員の三分の二以上の同意があれば全員加入しなければならないということになっております。その場合、全数加入でないと国の補助率は改正案によれば半分になるのです。これはちょっと余りにひど過ぎると思うのです。それを段階的に全数加入の補助率に近づけていくという方法はとれませんか。何かそういう形で漁協の加入というものはメリットがあるよというものを示してやらないと、私はその共済加入というものはそんなに甘いものじゃないと思うのです。これは今までの長い歩みが実数で示していると思うのです。ですから、今まで六〇%であったものを三〇%に落としていく、そんな大幅な落とし方ではなくて、やはりその度数に応じて段階的に補助率を設定していくといったようなことは、これは大蔵省とよく相談していただいて、理屈に合うならやはりやった方がいいのじゃないでしょうかね。
  20. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生からの御提言でございますけれども、やはり義務加入で全数加入、そのときに特別に補助率を上げているということは、全部が入ってくれたことによる危険の分散でございますとか、そういう共済として究極としてねらっている姿がそこに実現できるので、国としても多額の補助率という体系がとれらているわけでございます。そういう中で、全戸までとはいかないけれども、二分の一なら二分の一以上の段階的なところでも何らかの優遇措置というものも一つ考え方としてあろうかと思いますけれども、逆に義務加入で全戸加入ということに対しましては、むしろそういう逓減的あるいは逓増的な国庫補助率を導入することによりまして真摯な努力というものは放てきされる危険もあるということもありまして、なかなかそういう仕組みをこの制度の中に導入するということは問題が多かろうかと思っております。しかし、いろいろな方々からそういう御要望が出ていることも事実でございますので、全戸に入っていただいて共済としての究極の姿を実現したいという義務加入の理念とそういうものが調和をとり得るところがあるのかどうかということにつきましてはいろいろな機会に我々自身も頭の中で勉強はしてみたいとは思っておりますけれども制度仕組みとしては残念ながらなかなか実現するには難しい問題が多過ぎるのじゃないかと認識している次第でございます。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 二つだけ大きな問題でお聞きをしておきます。  一つは養殖共済でございますが、これはつくる漁業ということで全国各地でさまざまな形で取り組んでおるわけであります。この養殖漁業をめぐって、アジとかクルマエビあるいはフグという新しい種類の共済を対象にしてほしいという声がこの数年来出ております。またそれだけ地域的な広がりも示しております。だから、これも当然将来逐次広がっていくのだろうと思うのですが、これは魚種ごとの共済になっておるということですね。こういうふうになっていくと、今養殖をやっておる種類は八十近くあるというのですが、これが一つ一つ共済の種目として位置づけられるというのはなかなか大変だと思うのですが、これは例えば魚類ごとの共済制度といったようなものに再編成できないのかどうか、こういう問題もあります。あるいは共済制度はそれこそ全戸加入でなければいけぬということになっております。しかし、実際の漁村の実態は、そんなに一人漏れなく入るというのは難しいのですが、例えば一人、二人つむじ曲がりというか、漁協が話すのなら、あの人が言うのならといってなかなかまとまらぬ人がおるのですね。そういう者まで入らなかったということで条件が悪くなる。こういうことについては、これも加入の問題でありますが、もう少し特例的に考えてあげる必要があると思うのです。  そういう点を考えていくと、養殖の共済というものについては一遍根本的に考えてみる必要があるのではないか。私どもの県はハマチが非常に盛んなところでありますが、ハマチの養殖は掛金ほどは戻っておりませんが確かに多少共済金をいただいておりますが、そのほかの真珠とか母貝あるいはタイとか、一年物とか二年物とか三年物とかいろいろありますが、ほとんどこの五年ほど掛金は掛けてびた一文も共済金がないという状況になっております。今度若干いろいろなことを考えられておるようでありますけれども、こういうものも含めて一遍養殖共済基本的に考えてみる必要があるのじゃないか。私どもの先駆的な地帯では、例えば台風などを中心とした天災、または社会的な災害、そして魚病というものがあるが、漁場をきれいにすれば魚の病気をなくすことができる、だから魚病は選択制でよいのではないのか、いま一度養殖共済というものは考え直してみたらどうだ、こういう提案を持っておる人もおります。いろいろな意見があるのだろうと思いますが、養殖共済についてもう少し包括的に対象にして、しかもこれまでに示されたいろいろな問題が解決できるような方途はないかどうか、これをひとつお尋ねします。  それから最後に、日ソ漁業交渉が先般来始まっておりますが、この日ソ漁業交渉の見通しというか、五月に入るともう漁期に、出漁の段階に入るのだと思いますが、それまでに何としても話をつけなければいけぬのだと思いますが、どういうふうになっておるか、要点で結構ですから御報告いただいて、終わりたいと思います。
  22. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 養殖につきましては、確かに現在行われておる養殖の種類が八十種類にも及んでおりまして、その中の七種類だけが養殖共済の対象ということで仕組みがつくられているわけでございます。そのほかに、ここのところヒラメとかいろいろな魚種の養殖というものが各地で相当伸びてきておる。そういう中でこれから養殖共済をどういうふうに持っていくかということにつきましては、その養殖漁業そのものの移り変わりと関連して基本的な問題をたくさん含んでいるということは事実かと思っております。  ただ、現在の状況でございますと、現在七種類について養殖共済を行っているわけでございますけれども、これ以外のここのところ各地でそれぞれ特徴を持ちながら伸びてきている魚種につきましては、まだ全国規模なりあるいは地域にいたしましても、危険分散の可能性でございますとかあるいは引き受けなり損害の査定の実行の可能性でございますとか、そういう保険の前提条件を満たす点について残念ながらまだ多くの解決すべき問題があるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。そういう共済に取り上げていただきたいという要望がいろいろな地域からも出てきておりますので、そういうものの漁業実態あるいは経営とのかかわりあるいは共済設計上の問題点、こういうものにつきましては我々事務段階といたしまして常日ごろいろいろなトレースは行ってまいりたいと思っておりますけれども、現段階でそういう保険数理なりあるいは実行にたえ得る養殖で現在共済対象になってないものというものは残念ながら見当たらないという段階ではございますけれども、これから引き続きさらにそういう漁業実態の的確な把握、それから共済とのかかわりというものにつきましては我々も我々なりに勉強を続けてまいりたいと思っております。  それから日ソ交渉でございますけれども、二月二十九日から第四回の日ソ漁業合同委員会というものが開催されまして、残念ながら三月十四日に一たん中断いたしまして、昨二十五日からモスクワで再開されているわけでございます。きのう第一回の会談が行われたはずでございますけれども、現在のところまだ協議スケジュールでございますとかそういう手続的なことにつきましてだけ情報がこちらに入ってきておりまして、会議の具体的中味なり進展というものにつきましては我々も承知してないわけでございますけれども、ただこの前中断しました会議、それからその後のいろいろな接触を通じまして、一つは何といいましても今年度大きな問題として一九九二年までに沖取りを全面禁止するということを相当強い原則論としてソビエトが掲げてきているわけでございます。そして、これに対しまして我々といたしましてはこれだけ歴史と伝統のある北洋漁業、こういうものの灯を消してはならぬということで、何とか日本側の沖取り継続というものを認めさせるようこれからも努力してまいりたいともちろん思っているわけでございますけれども、ソ連の原則的立場はかなり強いという状況でございます。  それはさておきまして、今年度の具体的な接触でございますけれども、これは漁獲クォータなりあるいは操業水域それからさらには取り締まりの強化ということにつきまして、それぞれ先般の会議でも具体的な話し合いがなされましたけれども、これまた相当隔たりが両者間にあるわけでございます。こういう中で二十五日から折衝を再開しているわけでございますけれども、何とか日本側といたしましては、現地にも関係漁業者が同行しておりますので、そういう現地の関係漁業者なりそれから国内のそれぞれの業界団体とも十分相談しながら我が国として受け入れ可能な結論というものが得られますよう、残された日にちもそうございませんので全力を挙げて取り組みたいと思っておるところでございます。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  24. 菊池福治郎

    菊池委員長 安井吉典君。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 佐藤農林水産大臣は、アメリカとの農産物交渉できょうの夕方立たれるそうです。そういうことで今お見えになってないので、いろいろ伺いたいことがあるわけでありますが、残念ながらそれはできませんが、政府として農林水産大臣にいかなる任務を与えて訪米をさせるのか、そのことについて、きょうは政務次官がかわってお見えでございますから伺いたいと思います。
  26. 北口博

    ○北口政府委員 安井先生には日ごろ牛かん問題、大変御心配をおかげいたしております。  今お話しのように農林大臣、午後再訪米いたしまして牛かん問題で交渉に入ることになっておりますので、政務次官からお答えをさせていただきます。  御承知のように我が国といたしましては、かねて本件につきまして基本的には日米二国間の協議によって決着を図る、こういう方針で今日まで最大限の努力をさせていただいてきたわけであります。御承知のように佐藤農林大臣はみずからヤイター通商代表と直接交渉するために先般訪米をいたしました。その後、担当三局長も訪米をいたしまして交渉を重ねたわけでありますが、相変わらず前進が見られませんで、先般はまたアメリカからスミス次席代表が来日をいたしました。御承知のとおり精力的に今日まで本件について協議を重ねてまいり、あくまでも現実的な解決に向けての粘り強い交渉をやってまいりましたけれども、御承知の結果で前進が見られなかったわけであります。そういうことから、特にその中で日米双方の主張には依然大きな隔たりがございましたし、また余りこれを延ばしておりますと御案内のように五月四日のガット理事会もございますので、アメリカは再度パネル設置を要求する、こういう事態になってまいっておるわけであります。  こういうことから、さらに先生方に大変御迷惑をおかけいたしますけれども、この際佐藤大臣がみずから再訪米いたしましてヤイター通商代表と直接話し合いを行う必要がある、こういうふうに判断いたしまして出発をさせていただくことになったわけであります。しかし、今お尋ねのように、政府基本的な立場といたしましてはあくまでも我が国の牛肉かんきつ生産立場を守るというこの基本的な立場をしっかりと踏まえながら話し合いにより速やかに本件の解決をするためにさらにまた最善の努力をやりたい、こういうことが現在の政府考えであると御了解をいただきたいと思うわけであります。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 その御本人がおられないわけですからもう多くを申してもしようがないように思いますけれども、どうも報道によりますと、五年後あるいは三年後の自由化というのを目標に置きながらそれへの条件づくりを進めていくのが任務だというふうな報道になっておりますことは今日までの我々のここで主張してきたことと全く違うわけで、それでは困るということを申し上げておきたいと思います。最小限度この委員会が全会一致で決めた決議があります、その決議を離れることがないようにつまり自由化というものを避けることが交渉目的なんだということをひとつ明確にして対応していただきたい、そういうことを一つ申し上げてきょうの本題に移りたいと思います。  今度の漁災法改正は、加入が十分に行われていないというふうな状況も踏まえあるいはまた赤字がどんどん出ているというふうなことも考慮におきながら改善を加えていくというのが趣旨のようであります。そのことはよくわかるのですけれども、ただ、去年も改正、おととしも改正、それで三年また続くわけですね。そういうようなことで、この種の制度というのはやはり信頼性が大切なのでありますけれども漁業者の、引き締めで利益を損なうのではないかというような心配をする向きもあります。今度のこの改正によっていかなる改善といいますか、具体的に加入者がこれだけふえるとか、経営改善についてもこういう具体的な事実があらわれてくるとか、そういうようなお見通しについてまず伺います。
  28. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 中小漁業者災害等によって受けます損失を相互に合理的に補てんして、漁業の再生産確保なりあるいは漁業経営の安定を図るということで漁業災害補償制度というものが運営されているわけでございますけれども漁業災害補償制度の前提になります魚価状況なりあるいは漁業実態というものが、いろいろな事情が積み重なりましていろいろと変わってきているわけでございます。  そういう中で、共済制度という長期を要する制度でございますので、できるだけ安定的な制度であり、長期間同一制度が継続するということが望ましいことは、共済を運営する側にとりましても、関係漁民にとりましても当然のことかと思っておりまして、我々といたしましては、できるだけ長くもち得る制度というものを念頭に置きまして従来も改正をしてきたつもりでございますけれども、残念ながら、実態の動きというものがその制度で意図したものを超えてしまったという点も正直言いましてあるわけでございます。  そういう中で、今回、何とか一番問題となっております加入の拡大を図って収支全体を改善したいということで、いろいろな具体的事項を積み重ねましてお願いしているわけでございますけれども、この結果、これから加入であるとか収支がどういうふうになっていくかという具体的見通しでございますけれども、これは残念ながら、長期を要することである、しかもその加入につきましては、共済制度という一つの運動によって支えられみんなが入ってくるという自主的仕組みでございますので、行政側が、この程度入るであろうとかあるいはこの程度入るべきであるという数字をお示しする立場にはないわけでございますけれども、その系統みずからの運動の一つといたしまして、昭和六十一年度に三千億共済金額ベースで加入しておりますものを、六十四年度に三千四百億まで共済金額ベースで加入を引き上げたいということを目標として運動を展開するという状況にございますので、我々といたしましては、都道府県とも相連携しながら、そういう共済組合みずからが立てた目標の達成ということに、いろいろな努力なり援助というものをこれから行ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そういうことで加入が広がり、それから、今回のいろいろな制度改正ということをお認めいただきますれば、ここのところいろいろ問題を持っております収支というものも確実に上向くことは事実でございますけれども、これも、その年その年の危険の発生度合いというものとも大きくかかわり合ってまいりますので、残念ながら昭和何年度に収支としてこうなるという具体的姿はお示しできないわけでございますけれども、いろいろな今回の改正相当程度収支というものにも貢献してくるということだけは事実かと思っております。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 以下、今度の改正によって北海道漁業にかなり影響が出てくるというふうなことでございますので、そこに出てくるいろいろな声を率直に申し上げて、農林水産省としてのお考えを求めたいと思います。  まず、一番関心が深いのはサケ定置についての問題であります。これまで共済金の支払いがずっと連続して多額に払われて、共済組合や連合会や国の特別会計に赤字をふやしてきたというふうな事情があるようであります。だから、ある程度の改正は仕方ないというふうに考えられているようでありますけれども、現在のこの仕組みというのが一応定着しているわけでありますから、これを改めるとしても、漁業者の経営に支障を来さないようにしなければならないわけです。激変緩和とかいろいろな言い方がありますけれども数量による削減も最小限度にとどめるようにすべきではないか。政省令の段階でいろいろ配慮をするという先ほどの御答弁もありましたけれども、その辺はどうお考えですか。
  30. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今度、こういう基準漁獲数量という北海道大型定置にとりまして非常に関心の深い制度を導入することになったわけでございますけれども、この具体的いろいろな中身につきましては、ただいま先生からお話がありましたように、その政省令という段階でいろいろ具体化させていただき、それに従って運営をさせていただくという手順に相なるわけでございますけれども、我々といたしましては、少なくとも漁業生産に悪影響を及ぼすことがないよう、漁業実態を踏まえて適切かつ弾力的にこういうものは対応してまいりたいということで、北海道からもいろいろ御要望を聞いておりますので、中には難しいものも一部あるようでございますけれども、できるだけその実態に即し、それから、現場の方々の御要請を受けてこれから政省令の立案に当たってまいりたいと思っております。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 もっと具体的に申し上げますと、サケ定置漁業に対する共済金の支払いを、今度は一定漁獲量に応じて支払いを減らしていくというふうな改正がございます。  そこで、この改正法の主たる漁獲物という言葉があるわけでありますが、これはアキサケだけに限定してほしい、ハルサケその他の大型定置は対象にしない考え方なんであるというふうなことをぜひお願いしたいとか、また、総漁獲量の八〇%以上のものに限定をしてほしいとか、こういう要望があるようでありますが、これについてはどうでしょうか。
  32. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の基準漁獲数量の導入対象になりますものにつきましては、ただいま先生からお話がありましたように、主としてアキサケをとることを目的とする大型定置漁業というものを対象とすることに我々自身も考えておりますので、その点につきましては、北海道の方々と隔たりはないというふうに理解しております。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、基本的なお考えは今伺いましたけれども、現場で共済加入に苦労している漁済運営に当たっている人たちの意見を十分聞いて、尊重するということが必要なので、先ほど御答弁もございましたけれども、そのことをぜひお願いしたいと思っています。  そこで、この数量による共済金の削減というのは、ほかの漁業にもこれを波及させるということは適当ではないと思うのですが、その点についてはどうお考えですか。
  34. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回、サケマス大型定置にこういう制度を入れるということは、ふ化放流事業というもので安定的に漁獲量が確保されている、しかも、その漁業に係ります共済事故の収支というものが事業運営上大きな問題になってきているということからいいまして、こういう制度をお願いしているわけでございます。現在のところ、このような実態にあるほかの魚種なり漁法というものは見当たりませんので、今回の基準漁獲数量制度を適用いたします漁業サケマス大型定置漁業に限定するというふうに当面は御理解いただいて結構でございます。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 基準漁獲数量とか漁獲数量といういろいろな言い方があるわけでありますが、その概念についても、ぜひ実態に即したものにしてほしいという要望があります。サケ以外の混獲されるものは、余り金にもならないわけですから、そういうものは除外し、基準からは除いてほしいということのようであります。また、放流尾数とか回帰率を勘案できる措置を講ずべきではないかという要望もあります。これらの点についてはどうですか。
  36. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 基準漁獲数量を決めます際には、特定の漁業種類に着目いたしまして、当該漁業におきます過去の漁獲数量というものを基準として定められるということに基本的にはなっているわけでございますけれども、今回のサケマス大型定置漁業の漁獲物は、サケ以外も含めた全漁獲数量というものを我々としては対象としたいと考えているわけでございます。  そういう中で、混獲物を取り除いて算定すべきじゃないかという御意見も我々も聞いているわけでございますけれどもサケマス大型定置漁業の場合には、漁獲量のほとんど大部分がサケマスであるということ、それから、共済組合が基準漁獲数量を算定いたします際にはこういう混獲状況を念頭に置き、あるいは考慮して定めるということになっておりますので、実際上は問題は生じないというふうに考えております。それからさらに、基準漁獲数量の算定に当たりましては、共済組合は、混獲状況のほかにふ化放流状況等こういうものもあわせ考慮いたしまして、漁業実態に即してこれを定めるということに相なっておりますので、それぞれの現場の共済組合段階の運用で、そういう御危惧の点は解消していくというふうに考えております。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 北海道で、一定数値と漁獲倍率に応じて定める段階的割合というようなものを具体的につくって、これでやってはいただけないでしょうかというような提起があるわけでありますけれども、水産庁としてはこれはどういうふうにお考えですか。
  38. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 具体的な数値につきましては、現在財政当局と鋭意折衝中でございますけれども、地元の方々の御要望、御意見というものは我々も十分聞いておりますので、そういうものにも配慮いたしまして決定をさせていただきたいと思っております。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 昆布養殖の側面から、掛金が高いというような問題も現行法であるわけだけれども、個々加入ができないという問題がある。個別契約がノリの養殖の場合はできるわけなので、そういうのと同じ扱いを昆布にもしてもらえないかというような要望も聞くわけでございますが、これについてはどうですか。
  40. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 御承知のとおり、現在昆布養殖業につきましては、一般的に天然昆布をとる漁業と密接不可分な関係にあるということから、漁獲共済のいわゆる第一号漁業ということで共済対象としているわけでございます。こういうことになっております結果、漁業協同組合が一括して代表して共済契約を締結いたしますいわゆる集団加入方式というものがとられておるわけでございますけれども、全体的には、昆布採藻というようなものは、本来集落総有的な入会漁業という形で成立し立地しているということが強うございますし、それから、個々の漁業者の豊凶と申しますものも、漁場全体の豊凶によって逆に規定されてくるという問題もございますので、こういう集団加入方式をとっている次第でございますし、またそういうことをとることを通じまして、運営上のコスト削減というものにも役立っていようかと思っております。  北海道から、こういう集団加入じゃなくて個別補てん方式というような要望が参っておることは、私も承知をしておりますけれども、現在の全国的な状況から申し上げますと、集団加入方式というものがそれぞれの地域で定着いたしておりまして、これを個別にするということにつきましてはいろいろな問題がございまして、現時点では難しかろうかとは思っておりますが、今後、共済団体のいろいろな御意向でございますとかあるいは昆布に絡みます漁業実態というものも十分調査しながら、これからの問題として頭の中に入れさせていただきたいと思っております。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 もう一点、団体間の負担区分の見直しの問題について伺っておきます。  連合会の負担部分から五%ぐらいを共済組合の負担としていくとかいうようなことでありますが、現在の八五対一五という負担割合の基本は変更しないで、共済金の支払いの状況によって考えていくということのようであります。この点については、水産庁でも、共済組合側のいろいろな話なども聞きながらなお御検討されているというふうに聞くわけでございますが、余り共済組合側の負担をふやさない、むしろ軽減する方向で何とか進める方法はないのか、こういう期待があります。この点も伺います。
  42. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 共済組合の保有のあり方につきましては、ただいま先生からお話がありましたように、八五対一五という基本は変えないで、今回のような比例部分の一部導入ということをお願いしているわけでございます。したがいまして、大数的には、今回の仕組みを入れたからといって共済組合にとって収支変動があるというものではございませんけれども、その年によりましてあるいは組合の状況によりまして、個々には今先生御心配のありましたような事態も出てくるわけでございます。  したがいまして、そういうものへの対応といたしまして今回導入いたします比例部分につきましても、一定の深さまでの比例部分にとどめまして、それを超すものにつきましては連合会なり国が直接負担するという仕組みにしておりますので、共済組合の収支に大きく影響するということはなかろうかと思っております。この際の比例部分の上限数値というものを具体的にどこで設定するかということが関係者に非常に関心深いわけでございますけれども、これにつきましても、今後共済団体の意向も十分踏まえまして、事業運営に支障が生じないよう十分配慮して決定してまいりたいというふうに考えております。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 あとは午後にします。
  44. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、暫時休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後三時七分開議
  45. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安井吉典君。
  46. 安井吉典

    ○安井委員 午後は、この際、日本の水産をめぐる国際的な二、三の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、この間ことしの作業を終わって帰ってまいりました調査捕鯨の問題を若干伺います。  南氷洋ミンククジラ予備調査船団は、三月の二十六日に調査を終えまして、四月の十八日、帰国をいたしました。非常に複雑でかつ厳しい国際情勢の中での調査であったわけでありますが、政府としてその調査の結果をどういうふうに評価をしているのか。そしてIWCは五月の六日から科学会議、五月の三十日からは本会議というふうに会議設定されております。英国提案の郵便採決等の問題もございますし、調査捕鯨に対する厳しい強い反対といいますか抵抗があることも当然予想されるわけでありますが、これらへの対応をどのようにするのか。事前の根回しをきちっとやるとかそういうような対策も必要ではないかと私は思うのでありますが、それらの点についてのお考えを伺います。
  47. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ありましたように、調査捕鯨の船団が十八日に帰ってきたわけでございますけれども、調査捕獲頭数二百七十三頭につきまして、現在調査結果の取りまとめを鋭意科学者間において取り急いでおるところでございます。結果の取りまとめにつきましてはこれから数カ月かかるということでございまして、調査そのものの最終的な評価というものはまだ現時点ではできないわけでございますけれども、いろいろと調査に参加してきた科学者からの聞き取りによりますと、やはりあれだけの海域で当初設定された予定どおりの航法で通ってきておりますので、いろいろと科学的に貴重な資料の集積ができた、そして、これをこれからさらにそれぞれの鯨の年齢構成でございますとか調査結果の精密な分析というものをできるだけ早く終えて対外交渉の役にも立てるようにしたいということでございますので、我々としても一日も早い調査結果の取りまとめ、公表ということを待ち望んでいるわけでございます。  いずれにいたしましても、ただいま先生からお話がありましたように近々IWCの総会が開かれるわけでございますが、それに向けまして当方といたしましても、会議の場でいきなりいろいろ話し合いましてもなかなか意思が疎通しないという問題もございますので、いろいろな関係で水産庁の職員なりOBなりあるいは関係の方々は外国に行く機会が多うございますので、そういう方々を総動員いたしまして、個別にそれぞれの国の鯨関係者と事前に会うということをここのところずっと積み重ねてきておる次第でございます。水産庁からも国際問題を担当しております審議官等を海外に派遣いたしまして、それぞれとの事前の根回しというものに相努めている次第でございます。  いずれにいたしましても、そういう中で開かれます総会におきましては、IWCが商業捕鯨を全面禁止をしているわけでございますけれども、この全面禁止決定の見直しのために一九九〇年までに鯨資源の包括的評価を行うということになっておりますので、今回も鯨の調査の必要性というものにつきまして強く訴えまして、加盟国の賛同を得られますよう最大の努力をしたいと思っておるところでございます。
  48. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、小型捕鯨の問題があります。  いわゆる生存捕鯨という範疇で、技術小委員会の検討にその定義の問題等もゆだねられているというふうな状況であります。太地において各国の学者の会議等もあったりしているわけでありますが、いずれにいたしましても、この小型捕鯨は、運命まさに間近に迫っているというふうなことで、関係の地域社会や捕鯨に関係のある多くの人たちが非常に大きな関心を持っています。したがって、この問題についても、当面取り急ぎ何とか存続ができるような対策を進める必要があると思います。どうですか。
  49. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在、IWCの枠組みのもとでいわゆる原住民生存捕鯨という形で、米国でございますとかソ連でエスキモー等を中心といたしまして一定の捕鯨が認められているわけでございますが、当方といたしましても、沿岸で行っております小型の捕鯨、これはそれと性格が全く同じであるということでかねて主張してきているわけでございますけれども、エスキモー等特殊な経緯なり現況のものに認めているにすぎないということで、なかなか納得を得られていないところでございます。  しかし、性格といたしましては、その歴史的、文化的背景なりあるいは地域の限られた需要にこたえるという点におきましては、現在アメリカ、ソ連に認められておる原住民生存捕鯨と内容としては全く同じであるという認識に立っておるわけでございますし、それから、ここのところ我が国の沿岸小型捕鯨に対します世界の文化人類学者等の関心というものも、今回日本で開きました会議を契機といたしましてかなり高まってきているという動きもございますので、こういう中立的な世界のいろいろな学者の研究成果というものを幅広く活用しながら、我が国の要求というものが既存の原住民生存捕鯨に比しまして何ら見劣りするものではないということについて国際的な理解を獲得できますよう、いろいろなチャンネルなりいろいろな場を通じて今後とも努力してまいりたいと思っております。
  50. 安井吉典

    ○安井委員 私は、調査捕鯨の今度の成果をどういうふうにして生かすかということといわゆる生存捕鯨と二つの問題を今提起したわけでありますが、IWCそのものの存在理由というようなことにももっと真剣に取り組む必要があるのではないか、私はそう思います。とにかく、本来の考え方と全く違ったIWCに今日なり果てているということであろうと思います。したがいまして、これから脱退するとか、あるいはそれぐらいの決意を持って徹底的な体質改善を進めるとか、そういう抜本的な取り組みというものが必要になってきているのではないかと思うわけであります。  きょうは短い時間で余り深入りをすることはできませんけれども、そういう問題についての検討はどうでしょうか、水産庁長官に伺います。
  51. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 IWCが御指摘のとおり非常に偏った動きといいますか運動といいますか、そういうものが強くにじみ出てきているということにつきましては、我々といたしましても非常に残念でございますし、それから過去も再三そういうことについて警鐘を鳴らしてきているわけでございます。しかし、一九九〇年までに資源についての包括的見直しをするという一つのこれからの動きがございますし、それから、これだけ国際化してきている中でこの条約から外れることがプラスかマイナスかという判断もございましょうし、それから、ここのところソビエトがアメリカとの関係で、今までアメリカ、ソビエトが鯨をとっているということでペリー修正法なりマグナソン法で署名していたわけでございますけれども、この署名を取りやめるということの中で、ソビエトの鯨に対する動きというものもどちらに出てくるかわかりませんが、恐らく一つの動きがあろうかという感じもしておるわけでございます。  その中で、何とか今回の予備調査というものの成果を早く取りまとめまして、科学的確信なり科学的資料に基づいての総会内でのいろいろな説得というものに当面は全力を挙げることが、これからどういう展開になるかということもございますけれども、当面はそういうことに全力を挙げることが我が水産庁としての職責であるというふうに認識している次第でございます。
  52. 安井吉典

    ○安井委員 当面の対応はもうそれよりほかにないと思うのでありますが、やはり基本的な、対決というか、IWCそのものを解体し直すというぐらいの強い決意で問題に臨んでいかなければ問題の解決にならないのではないかという基本的な問題点だけをきょうは指摘しておきたいと思います。  現在、日本の国際的な漁業環境というのは非常に厳しいものになってきています。ベーリング海公海水域の操業を凍結するというアメリカの上院の決議があるかと思えば、同じくアメリカの連邦高等裁判所は、アメリカ二百海里内サケマス漁の禁止の判決を出しました。そうかと思えば、日ソサケマス漁業交渉は非常に難航に難航を続けて今日あります。そういったような状況で、こんな形が進めば、日本の最大の水揚げ港である釧路市、その釧路市だけでも、関連産業を含め四千人の雇用の問題、七百億円の損害というような影響が生ずるというふうに伝えられています。したがって、これらへの抜本的な対策というのが非常に急がれるわけであります。  今のベーリング公海の問題やら、あるいはアメリカ二百海里内のサケマス漁の禁止の問題、これらについて、政府としてもっと有効な対応の方法はないのかという思いがするわけでありますが、どうでしょうか。日ソ漁業交渉の方は、これは後回しにして、アメリカ関係の問題についてのお考えを伺います。
  53. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 アメリカとの関係は、ここのところいろんな点でデッドロックに乗り上げているわけでございます。その一つが、今もお話ありました、アメリカ二百海里内でのサケマスについての差しとめ命令というものが出ているわけでございますし、それからもう一つは、そのアメリカ二百海里内で今まで日本漁船がとってきたものに対する割り当てがゼロという問題があるわけでございます。それからさらに、ベーリング公海につきまして、これはアメリカだけじゃなくて、アメリカとソビエトとの同じような雰囲気の中での、公海上の漁業に対するいろいろな規制問題というのが出てきておるわけでございます。  その中で、当面の問題になっております米国二百海里内におきます母船式サケマス漁業についてでございますけれども、これにつきましては、アメリカの高裁が地裁の暫定差しとめ命令を支持するという判決を下しましたわけでございますけれども、これに対しまして、我が国政府といたしましても、アメリカ政府に対しまして、訴訟対応を含めまして、我が国母船式サケマス漁業の操業の確保ということにつきましていろんな形で強く働きかけてきたわけでございます。その結果、四月一日に、アメリカ政府自身も連邦高裁に対する再審請求と同時に、暫定差しとめ命令の執行停止請求というものを行ったところでございます。したがいまして、当面はこの訴訟につきまして、これはアメリカ政府と同時に日本関係漁業団体も当事者の一人になっておりますので、アメリカともどもこの訴訟対策に万全を期するということが当面の仕事でございますけれども、残念ながら、裁判所が相手ということで、スケジュールでございますとか結末がどうなるかということについて的確に見通せないわけでございますけれども、水産庁なり政府全体といたしまして、今後とも我が国母船式サケマス漁船の操業の確保というものが十全に図られますよう、最善の努力をこれからも積み重ねてまいりたいと思っております。  それから、ベーリング公海の問題でございますけれどもアメリカの上院で決議がされましたり、あるいはここのところアメリカ、ソビエトの漁業関係者がベーリング公海問題につきましていろいろな会議を持ち始めたという動きもあるわけでございますけれども、我々といたしましては、何といいましても公海での漁業ということで、幾ら二百海里体制というものが強まってまいりましても、公海における漁業という長い歴史と哲学の問題があるわけでございますので、そういう米ソの接近、協議というものはございますけれども、当方として毅然たる態度で交渉なりあるいは折衝にこれからも臨んでまいりたいと思っております。
  54. 安井吉典

    ○安井委員 どうもアメリカは友好国であるのだそうでありますけれども漁業ではこんな衝突ばかりで、それから今の牛肉オレンジも大変な事態の中にあります。そのアメリカと農林水産省は全力を挙げて戦っているという今の状況のような気がしてならぬのでありますけれども、やはり通すべき筋は通していかなければならぬわけで、向こうが強いから後退また後退、こういうことでは困るわけですね。ひとつ、しっかりした対応をお願いしておきたいと思います。  さらに、日ソ漁業交渉の方もすっかり行き詰まってきているわけでありますが、操業条件や規制の強化がどうなるのか、そういうような課題がありますが、今当事者が一番気にしているのは、五月一日の操業開始に間に合うかどうか、そのことなんですね。一番大きな関心事であります。四月中に何とか決着をして早期に妥結するように努力をしてほしい、しかも、同時に、実績は実績で守ってほしい、こういうことでありますから、水産庁の方もなかなか大変ではあろうと思いますけれども、その点、ひとつ最善の努力をこの際やってもらわなければならぬのではないかと思います。  それから、違反体質というのが、これは今のアメリカの場合もあるいはソ連との関係についてもいつもつきまとってくるわけで、これはもう弁解のしようがないわけであります。したがいまして、もっと真剣な検討と対策を、違反をいかにして防ぐかということに置くべきではないかとも思うわけであります。  そのことも含めて、日ソ交渉の行方についてのお見通しと決意を伺います。
  55. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 日ソ交渉は四月二十五日、昨日から再開しておるわけでございますけれども、一九九二年までに沖取りの全面禁止という基本論はともかくといたしまして、当面のことしの問題につきましては、漁獲クォータ、それから操業水域、それから取り締まりの強化というようなことにつきまして、先般中断いたしました会議では相当の隔たりがあったわけでございます。しかし、ただいま先生からもお話ありましたように漁期も近づいてきているわけでございますし、きのうからせっかく交渉が始まったところでございますので、何とか今月中に決着がつけられないものかということで、現地においてはきょうから精力的に相手と交渉に当たっているわけでございますけれども、こういう交渉ごとでございますので、どの時点でどういう形で決着がつくかということは、ただいま再開交渉が始まったばかりということもございまして、残念ながら的確なお答えはできないわけでございます。  しかし、日ソ交渉におきましても、それから先ほどお話に出ましたベーリング公海問題あるいはアメリカの二百海里内のいろいろな問題、こういうものすべてが、ある意味では違反操業でございますとかこういうものが引き金になっていろいろな問題が出てきているという点があることは我々としても非常に残念でございまして、基本的には漁業者みずからの自覚ということが前提になるわけでございますけれども、水産庁といたしましても問題の水域への調査船の派遣でございますとか取り締まり船の派遣でございますとか、こういうことを通じまして、できるだけといいますか少なくとも交渉相手の先様から足をすくわれないような国内での体制づくりというものには何とか取り組んでまいりたいと思っているわけでございますし、そういう問題は別にいたしましても、一日も早く我が国が受け入れ可能な条件で日ソ交渉を取りまとめるべく、現地に行っております交渉団に対しましても督励をいたしたいと思っている次第でございます。
  56. 安井吉典

    ○安井委員 ひとつ重大な段階でございますので、全力を挙げていただきたいと思います。  違反操業という点でもう一つ、日朝漁業についてもそういう問題をぜひ配慮願いたいわけであります。  今、アメリカともソ連とも行き詰まっている中で、ただ朝鮮民主主義人民共和国とだけは、私たちもそれに携わってきたわけでありますが、一応円滑な出漁がサケマス流し網あるいは今度のイカについて行われているわけであります。しかし、もういつも言われるのでありますけれども、やはり違反操業というようなものが向こうの心証を悪くし、問題をこじらせる原因になるわけでありますので、日ソについても、日米についても、日朝についても、違反操業ということが根本を覆すような悪い問題に立ち至るという可能性がある問題であるだけに、取り締まりを担当する水産庁としてもぜひ配慮をお願いしたいということを今のソ連の問題につけ加えて申し上げておきたいと思います。  最後に、日ソ関係で、今のような面倒な問題がたくさんある中で、ただ一つちょっと明るさがあるのは合弁事業という問題であります。シベリアのイルクーツクで木材の製品工場が四月一日から合弁法第一号として始まっているということに続いて、今サハリンでも、これは漁業の問題で、サケマスふ化場の建設事業を両国でやろうという話がまとまりつつあるわけであります。サハリンにある七つの河川に八つのふ化場をということであり、北海道の横路知事もサハリンに行く等で非常に協力的であります。道庁の中にも委員会ができて促進の体制が進んでいます。そのほか、ニシン加工場とか何かの問題等もあって、これからの新しい方向づけがこれらの動きの中からできはしないか、そういう期待を我々も持つわけであります。したがって、これに対して、政府としてもいろいろと関心を持ち、指導していただくということが必要ではないかと思うわけであります。経営の採算性の問題あるいは経済体制が向こうとこちらと違うものですから、大体話がついているように見えてもなかなかうまくいかないというような問題もあるわけであります。したがって水産庁には、これらの合弁事業といいましても水産関係の問題でありますけれども、そういう問題への対応についてどのようなお考えを持っておられるか、それを最後に伺います。
  57. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ここのところ日ソ間での合弁の話というのがいろいろな魚種、いろいろな形態につきまして話が出てきているわけでございます。これはやはり、早期的に見ますとこれからの一つの方向であることは事実でございますし、そしてこういう合弁が従来から権益として行ってきております中小漁業者に悪影響を及ぼすことのないよういろいろな配慮はもちろん必要でございますけれども、ソビエトとの漁業関係を発展させる、あるいは国交関係を発展させるという見地から申しましても、何とか育つものは育ててまいりたいということで個別案件ごとにいろいろな相談にもこたえておりますし、それから昨日も横路知事も私のところへ参りましていろいろ北海道としての関心案件というものにつきましても御要請がございましたので、我々といたしましても関係業界の動きというものを注意深く見守りながら差し伸べ得る援助なり助言があれば積極的にこれに取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  58. 安井吉典

    ○安井委員 時間ですから、終わります。
  59. 菊池福治郎

    菊池委員長 武田一夫君。
  60. 武田一夫

    ○武田委員 漁業災害補償法改正につきまして御質問いたします。  まず最初に、日本漁業の将来展望について、きょうは大臣おいでになりませんから、次官の方にいろいろお聞きしたいのであります。  最近特に、海外漁場からの締め出し、二百海里問題に関係しましてそういう問題が非常に話題になっております。そういう意味で、この問題は非常に大きな問題ではないか。それからいろいろな制約がまたそこにある。さっきの鯨とも関係のある問題で、宮城県、東北などはこれによって大変な心配をしているわけでございますが、そういう要因もある。また漁業生産資材価格の高水準での推移とか魚価の低迷とか言われる、あるいはまた水産物の需要の伸び悩みであるとか、いろいろと考えてみれば厳しい環境ばかりが農業漁業すべてにあるわけでありますが、漁業の問題におけるそういう厳しさを乗り越えて、日本は水産国でもございますから、将来展望をしかと示さなければならないわけでございます。  そういう意味で、最初にこの問題についての御見解をひとつお尋ねしたい、こういうふうに思います。
  61. 北口博

    ○北口政府委員 ただいまお尋ねいただきましたことは大変重要な問題でございまして、本来なら佐藤大臣みずから御答弁すべきでございますが、御案内のようにきょうから渡米をいたしまして、かわりまして政務次官からお答えをさせていただきます。  水産庁といたしましても今日まであらゆる努力をしてまいっておることは御承知のとおりでございます。ちなみに我が国漁業の現状を申し上げますと、二百海里体制の定着に伴います国際規制の一層の強化、加えまして消費支出の停滞に伴います魚価の伸び悩み、さらにはまた水産物の輸入の増大など、御指摘のようにまことに厳しい環境となっておるわけであります。このような状況を踏まえまして、水産庁では長期的視点に立って水産施策基本的方向を確立いたしますため、これまでも漁業問題研究会を開催いたしまして、我が国周辺水域における漁業の振興策につき昨年十一月その中間報告を受けたところでございます。  今後は、同報告を踏まえまして、我が国二百海里水域の高度利用や消費者ニーズに適応した水産物の供給体制の整備等につきまして施策の具体化を図ってまいりますとともに、海外漁場の確保を図りつつ漁業の再編整備を推進することとしておりまして、これからも漁業の振興に一層努めてまいりたいと思います。何とぞお力添えをよろしくお願い申し上げます。
  62. 武田一夫

    ○武田委員 問題はいろいろ多岐にわたっているのですが、そういう厳しい中で、特にあちこち歩きまして漁業関係者から出された問題。この間、私、高知県に行ってまいりまして、そのとき皆さん方が一番心配していたのは、日本は世界でも有数の水産物の輸入国でございまして、大体三〇%の輸入額が日本にあり、アメリカと合わせると五〇%、このままの状況で今後いけるものかどうかという心配。それから、日本がそういう輸入国であるだけに、輸入を無制限に受け入れるということはいかがなものか、これは間違いなく資源の枯渇と荒廃に結びつくのではないかという心配をしておりまして、日本が自主的に輸入規制をする方向での取り組みが必要ではないか。ECなどでもその心配があり、そうした方向を検討するというかそういう動きがあるということで、日本がその先導的役割をするべきではないかという声が漁業関係者から出てきました。こういう問題について水産庁も国も真剣に対応しなくてはいけないのではないか。  それからもう一つは、漁場の確保対策、これは官民一体となってやらなければならない重要な課題である。これも私は理解できるわけでありますが、この二点に絞りまして、ひとつ御見解長官からお聞きしたいと思います。
  63. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ここのところ輸入がついには二百万トン台ということで相当ふえてきたわけでございます。それに関連いたしまして、ただいま先生からお話がありましたようにこういう大量の輸入がいつまでも続き得るのかどうかということが地域によっては問題もないわけじゃございません。そういう点で言いますと、単に日本漁業をする場合だけじゃなくて、全世界的な関係での資源管理というもののあり方につきましていろいろと考えるべき時期に来ていることは事実かと思っております。そういう中で、それぞれの地域ごとにいろいろな資源管理の条約あるいは取り決めというものが相当できてきておりますので、当方といたしましてもそういうものに積極的に入ってまいりまして、国際的に世界全体で魚資源というものを将来どう持っていくかということについて、やはり水産についての一番の大口消費国であり大口輸入国である日本として参加すべき一つの責務があろうかと思っている次第でございます。  同じようなことは国内漁業そのものについても言えるわけでございまして、やはり最後は日本自身が持っている日本の二百海里、これを漁場としてどう再構築していくかということが我が国漁民のためにもあるいは世界全体の魚資源のためにも一番ベストな道でございますので、従来から二百海里内での漁業振興についていろいろな施策を講じてきているわけでございます。特に今年度からは沿岸漁場整備開発事業でございますとか新沿構でございますとかこういうものの新しい節目になっておりますし、こういう事業によりまして魚礁でございますとか増養殖場その他の漁業生産の基盤の施設整備というものを従来以上に進めてまいりたいと思っております。それから、いわゆる栽培漁業でございますとかふ化放流事業というものを進めまして、つくり育てる漁業ということを強力に推進してまいりたいと思っております。さらにこういう事業を個々ばらばらにするのじゃなくて、沿岸及び沖合全体を通じまして総合的な整備、開発をするということがいろいろな関係で重要になってきておりますので、マリノベーション構想というようなものも掲げまして、こういうマリノベーション構想に基づく基本計画の策定に現在取り組んでいるところでございますので、こういうものをすべて有機的に結びつけまして何とか日本国自体が持っている二百海里というものを豊かな実りある漁場に再構築を図ってまいりたいと考えております。
  64. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、そういう状況の中でいろいろ苦労しながら漁災制度もずっと続いてきたわけでございますけれども、この制度の上に立って、まず最初政府基本的な考えを聞かしてほしいと思います。と同時に、漁業経営の健全化のためにこの制度にどのような役割を期待しているか、その点につきましての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  65. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業災害補償制度基本でございますけれども、これは中小漁業者災害等によって受けることのある損失を相互に合理的に補てんすることによりまして漁業生産の阻害の防止と漁業経営の安定ということが基本になっているわけでございます。したがいまして、この制度は国の災害対策一環として実施いたしますとともに金融対策等のいろいろな施策と相まって漁業経営の安定と発展を図っていく上で大きな効果なり力というものを従来から果たしてきていると考えているわけでございます。  しかしながら残念なことに、こういう共済なり保険ということでございますので、一定の確率で事故が長期間にわたって発生するというような場合にはこういう手法が極めて有効に機能するわけでございますけれども漁業そのものが構造的に変化してきたとかいうものについては十分に対応できない点もあるわけでございます。そして、そういう限界があるということでございますので、そういう漁業環境の構造的な変化に対しましては別途の施策、漁業経営の健全化を図るためのいろいろな構造対策でございますとか金融、税制、こういうものを総合的に行いまして、トータルとしての効果というものが漁業経営なり漁業の将来にとって不可欠かと思っている次第でございます。
  66. 武田一夫

    ○武田委員 漁業共済の加入が低調である、また余り魅力がない、そういう声は正直に言って聞かれます。昭和五十七年度の制度改正においても加入の拡大一つの大きな柱だった。しかしながら、それが必ずしも十分に目的を達成されていない。いろいろな地域別のばらつきがあったり、漁業種類別のばらつきが目立っていたり、いずれにしても非常に苦労しているわけでございます。それで、今回の改正がこうした問題を克服して果たして漁業者にとって魅力あるものとして受け取られるかどうかということなのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  67. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま先生からも御指摘がありましたように、制度が発足いたしましてからこれだけ長いことになるわけでございますし、しかも再三法律改正をしてきているわけでございますけれども漁業共済の加入というものは残念ながら低調な水準で推移してきているわけでございます。この理由といたしましてはいろいろあろうかと思いますけれども一つは危険の程度が低い漁業者、こういう方々の加入意欲がない。それからさらに、漁業者間で本共済に対します的確な認識がまだ十分行き渡っていない。それからもう一つには、災害認定でございますとかいろいろな事務手続を行い得るような体制が漁協を初め関係団体においてできていないという点が基本にあろうかと思っております。そういう中で、過去も加入拡大のための法改正をお願いし、それから今回もお願いしておるわけでございますけれども、今回お願いしておるものの何といいましても柱になりますのは漁協契約方式というものでございますが、これは従来とも漁協がいろいろな形で共済加入について運動を展開していただいておりましたけれども、その仕組みとして制度の中に位置づけられてなかったという点があったわけでございます。今回漁協契約方式というものを導入することによりまして、従来以上に系統組織が挙げて加入運動を展開していただける、そしてそれに対して我々といたしましてもいろいろな手だてを講じてまいりたいということでございますので、今回の改正をお認めいただきますれば、具体的数値として何%程度の加入率になるということは的確には見通せないのは残念でございますけれども相当程度の加入向上につながるというふうに考えておりますし、ぜひ加入拡大につなげたいとも考えている次第でございます。
  68. 武田一夫

    ○武田委員 その期待どおりいけばいいのですが、地元に行っていろいろ聞きますと、やはり掛金率の問題、割引あるいは割り増し制度の強化、それから掛金率の細分化という問題、それからまた制度上十年ぐらいの長期補償水準を固定化する制度等々というような問題についてもう少しやはりきめ細かに対応しなければ、魅力が出てこないとはっきり物を言います。  今三点申し上げましたが、そういう問題について、やはり魅力ある共済という観点からいうとその点が一番はっきりした点を指摘してもらわないと困るんじゃないか、入る方はこの点が一番どこへ行っても出てくる問題なものですから、その点についてひとつ御答弁を聞かしていただきたいと思います。
  69. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 こういう共済制度につきましては、それぞれ関係者からいろいろな要望なり御意見というものがいろいろな点につきまして出ておるわけでございますが、昨年一年かけましてそういう関係団体それから関係者にお集まりいただきまして研究会を開催させていただいたわけでございます。そういう研究会の中で当面改正すべき点というものにつきまして意見の一致を見まして、それに基づいて今回改正をお願いしているわけでございますけれども、今回の改正点以外にただいま先生からもお話がありましたように、長期間補償水準を特定するとかいろいろな個別の要望があったことも我々としても十分承知しているわけでございますけれども、いまだそれらにつきましては制度改正に至るまで物事が熟してないといいますか、それぞれの関係者の要望も細分化されており、まだ全国的な固まりにはなっていないものが多うございますし、それから、中には長期均衡なりあるいは危険分散という共済制度仕組みからいいまして残念ながら保険数理になかなか乗りがたいというような問題もございまして、当面は現在お願いしております改正点に絞りましてお願いしておるわけでございますけれども、こういう生き物の制度、しかも漁業という日々刻々変わる実態を対象としての制度でございますので、これからもいろいろな問題点につきましては我々なりに常に点検し、将来に備える努力は積み重ねてまいりたいと思っております。
  70. 武田一夫

    ○武田委員 次に、ノリ特定養殖共済の件で、補償水準をもっと引き上げるべきでないかという声が私の地元なんかで聞かれます。うちの方はノリの養殖の方々、結構いるわけでありますのでそういう声があるわけでありますが、この点についてはいかがなものでしょうか。
  71. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ノリ特定養殖共済の補償水準につきましては、過去一定年間の生産金額を基準といたしまして、一定の限度額率というものを乗じて算定しているわけでございます。この限度額率でございますけれども、これは生産金額のうち共済で補償すべき部分というものを算出するための割合として使っているわけでございまして、この割合としては生産金額に占めます経費の割合というものを一つのめどとして考え、それからさらにその共済につきまして一般的につきものでございます自家保険の割合というようなものも考慮して総合的に定められているわけでございます。したがいまして、こういう限度額率というものを通常の経費が上がったからとかいうことだけで直線的にこれを改変するということはなかなか難しいわけでございまして、従来からそういう要望はそれぞれの地域から我々も聞いているわけでございますけれども、こういう限度額率につきましては、先ほど申し上げましたような趣旨でそもそも設定されておりますので、せっかくの御要望ではございますけれども、なかなか現時点で引き上げるということにはできかねる点が多いということもひとつ御理解いただきたいと思います。
  72. 武田一夫

    ○武田委員 この点、研究していただきたいです。実は、ある漁協で去年まで入っていた方々が二十二世帯がまるっきりことしは入らない。もうはっきりしているわけです。ですから、こういう方々が抜けていくということは、それなりにそこで生活してきてこの制度の中でいろいろと勉強しながら対応してきた答えとしての加入を外れるということでございますので、この問題についてはひとつ、現時点の難しさは私も理解できるのですが、その難しさを何らかの形で克服しながらこういう方々を加入させないことには共済の充実ということもおぼつかないわけでございますから、その点御検討いただければ、こういうぐあいに思います。  それから、カキの問題でありますが、カキの掛金率はいかだまたははえ縄式とくい打ち式の二本立てになっているけれども、一本化すべきではないか、そういう声と要望がございますが、この点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  73. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 カキの掛金率につきましては、先生からお話がありましたように二本立てというふうになっておるわけでございますけれども、これはカキの養殖の場合、過去の実績から見ましてくい打ち式といかだまたははえ縄式、この二つでは危険の程度というものが明らかに違っているということから掛金率におきましても養殖方法別に区別いたしまして設定しているわけでございます。現時点でそういうやり方の違いに基づく危険率の違いということがそう狭まっていない状況というふうに我々は考えておりますので、現時点でこれを一本化するということはむしろ制度の設計上問題が多過ぎるのではないかというふうに考えております。
  74. 武田一夫

    ○武田委員 それからもう一つギンザケの問題でございますが、このギンザケの地域共済が近く実施されるというふうに聞いておりまして、宮城県などでも十の漁協がこの問題で真剣に取り組んでいるわけでございますが、これを国の制度に持っていけないか、ぜひ持っていってほしいという要望が非常に強いわけでございます。政府としてもこの問題については、マアジとかシマアジ、クルマエビ、ヒラメ等々の養殖についてもいろいろ検討しているようでございますし、こういう一つの大きな今の漁民の要望も取りつけることによってまたこの制度の充実というものも図られるということを考えるときに、私は、この要望等を十分聞いていただけるような対応をひとつお願いしたいな、こう思うのですが、長官、いかがですか。
  75. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ギンザケの養殖につきましては、ここのところ相当伸びてまいりましたが、依然として宮城県が、生産量で申し上げまして全体の九二・二%というウエートになっているところでございます。  そういう実態を反映いたしまして、県段階で、いわゆる地域共済という形でギンザケ共済に取り組みたいという動きにあるわけでございますけれども、現段階におきましては、今お話ししましたような、生産量ウエートが圧倒的に一県に集中しているということで、なかなか全国的な共済需要というものが乏しいわけでございます。しかし、これからギンザケの養殖というものが相当広がってくる可能性というものもあるわけでございますので、全国的な広がりを見せまして、しかも、その危険分散を図ることが相当程度可能になる、そういう事態も来ようかと思っているわけでございます。そういう場合には、全国的な養殖共済事業の対象とすることも一つの可能性として十分ございますので、そういう点も含めまして、今後検討させていただきたいと思っております。
  76. 武田一夫

    ○武田委員 これはやはり、最初に手がけた方々への対応の仕方によってほかの地域のそういう動きが加速的に出てくるんじゃないか。ですから、宮城県が九十何%でほとんどだ、ほかがないということであれば、なおさらその地域で、こういうふうにやれば安心して取り組めるよという一つのものをつくっておけば、後に続く方々も安心してそれに応じてこれるというものではないかな。こういうことを考えるときに、やはりそういう一つの方向に目を向けながら前向きに、この漁災制度というものの性格からいっても、そういう地域の方々の安心して取り組んでいる姿を通して全国的な広がりを喚起するということの必要性を私は強調したい、こう思いますので、この点は早急にひとつ御検討の上、地域のこういう方々への対応としてしかとしたてこ入れをお願いしたい、こう思うのですが、どうですか。
  77. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 全国的な共済ということになりますと、全国的に一定の危険率をはじき、共済掛金なりあるいは収支バランスというものを設計した上で共済を仕組まなければならないわけでございますけれども、現在のように、いろいろと先駆的なお苦しみなり努力というものをやっていただいていることは十分承知しておりますけれども、一県に特定的に集中しているものを全国的な共済ということに直ちにするということにつきましては、残念ながら技術的にも仕組みの上でもいろいろと問題が多いわけでございますけれども、こういう養殖の今後の発展というものも十分見きわめながら検討させていただきたいと思っております。
  78. 武田一夫

    ○武田委員 共済組合の赤字が多いわけでありますが、この主なる原因はどこにあるのか、これは改善の方策があるものか、このままいってしまうのかということなんですが、これはどういうふうに分析をしていますか。
  79. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 共済の赤字の主な原因でございますけれども、過去いろいろな動きがあったわけでございますが、ここ数年間のところを振り返ってみますと、五十九年度の異常低水温の影響によります昆布、アワビの不漁、それから六十年度のサンマ、六十一年度のサケマス定置漁業漁獲金額の減少、さらに六十二年度は、異常な赤潮の発生によります養殖ハマチの大量死亡というようなものが、近年赤字が累積したということの原因かと考えております。  そしてこれは、こういう共済事故が多発したということではございますけれども、その背景に、共済加入率の低迷でございますとかいうような共済制度そのものの運営面での問題というものもあるわけでございまして、今回、そういうものに対応いたしまして、いろいろな加入しやすくなる仕組みということをお願いいたしておりますので、こういうものを通じまして、今後の収支というものをできるだけ安定させたいというふうに考えているところでございます。
  80. 武田一夫

    ○武田委員 全共済組合のうちの六組合については事業収支が黒字であることはデータで示されているわけでありますが、その組合の黒字の中身というのはどういうものか、ちょっと聞かせてもらえればと思います。
  81. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 お話がありましたように、六県の共済組合が黒字になっているわけでございます。  その中身につきまして北から順次申し上げますと、まず岩手県でございますけれども、岩手県につきましては、ワカメ、アワビの採貝・採藻業、それから定置漁業というものが共済主体になっているわけでございますけれども、特にアワビ、定置漁業、これらの共済事故というものが近年ほとんど発生していなかったということが黒字の原因になっていようかと思っております。それから東京都では、テングサ漁業中心でございましたけれども、これも共済事故がほとんどなかった。それから三番目の静岡でございますけれども、近年サクラエビ漁業の契約が増加してきておりますし、それから、カツオ・マグロの共済加入によりまして掛金収入というものが相当増加してきている、こういう中で、サクラエビでございますとかカツオ・マグロ、これにつきましての共済事故というものが比較的少なかったということが言えようかと思います。それから岡山県につきましては、カキ養殖業、ノリ養殖業のウエートというものが高うございますけれども、ここのところ幸いにして、台風でございますとか病害等によります被害というものが少額で済んだということでございます。それから五番目に広島県でございますけれども、ここはカキの養殖が圧倒的ウエートを持っているわけでございますけれども、近年大きな共済事故が発生しなかったということでございます。それから、最後の六番目が鹿児島でございますけれども、ここはハマチの養殖業が大きなウエートを占めておりますけれども、ここのところおかげさまで台風でございますとか病害等による被害というものがほとんど発生しなくて共済金の支払いにつながらなかったというようなことで、幸いにいたしましてこの六県につきましては黒字という形に相なっているわけでございます。
  82. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、今回のこの責任分担の改正は、組合の責任部分については、被害の浅い部分についての負担を軽減し、被害の深い部分についての責任を重くするようでございますが、これはどのように各県の共済組合の収支影響するかという問題についてひとつ御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  83. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の改正によります責任の分担方法というものは従来と変わるわけでございますけれども、その責任の負担割合は変えないという基本立場に立っておりますので、平均的あるいは長期的には共済組合の収支影響が生ずることはないものというふうに考えております。  しかしながら、深い事故が多発すると、今後の共済事故の起こり方いかんによりましては、今回比例部分を設けたということでございますので、一時的に収支が悪化する組合も出るということが想像されるわけでございますけれども、こういうことをできるだけ緩和するということも含めまして、比例部分につきましては一定の深さまででとどめまして、その一定の深さを超える部分につきましては連合会なり国が負担する仕組みといいますか、安全弁を挿入しておりますので、共済組合の収支が今回の改正で大きく影響されるということはないものと考えておりますし、ぜひそういう事態は避けたいというふうに思っている次第でございます。
  84. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃ、私の質問は以上で終わります。
  85. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤原房雄君。
  86. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 同僚委員からもお話ございましたように、アメリカとの間での牛肉かんきつの問題につきまして、きょう大臣が出発するというようなことでございまして、私どもも、これには一歩も引かないということで、自由化絶対反対、日本農業を守るために敢然と戦ってもらいたい、頑張ってもらいたい、こういう決議をした次第でございます。  こういう米国との牛肉かんきつという一つの大きな問題を抱えているその陰にありまして、毎年のことでありますからやや意識が薄れがちということはないのでしょうが、重大な日ソサケマス漁業交渉、この問題は牛肉オレンジにまさるとも劣らない大事な問題であり、この交渉についてもまたしっかりやっていただきませんと、ここ数年どんどん漁獲数量が削減されるという状況の中におきまして、きのうからモスクワで交渉が始まっておるわけであります。その間のことについて、サケマス漁業中心にしまして各般にわたる諸問題についてお尋ねをしておきたい、こう思うのであります。  ソ連は、一九九二年以降のサケマスの沖取りは認めないと主張しているわけでありますが、これは、ソ連の最高幹部会で決定したことであってこの方針には変更はない、こういうふうに言っておるわけであります。政府としては、このソ連の方針をどのように受けとめていらっしゃるのか。そういう最高幹部会で決定したことでありますが、いろいろな交渉については私も存じておりますけれども、農林水産省としましてはこの問題についてはどのように対処しようとするのか、交渉の余地があるのか、こういうことについて非常に危惧を抱くのでありますが、どうお考えかということ。  それから、ソ連の姿勢が非常にかたいものといたしますと、日本の母船式サケマス漁業とかそれから中型サケマス漁業などは、この先非常に困難になってしまうのではないか。そうしますと、北海道を初めとしまして関係地域におきましては甚大な影響を受けることになるわけでありますが、そんなことは絶対あってはならないということで、万全の構えといいますか、農林水産省としましても、交渉の成り行きによりましては長官も当然モスクワに飛んでいただかなければなりませんし、また大臣にもというぐらいの強い姿勢で臨んでいただかなければならぬと思うのであります。それらのことについては水産庁としてはどのようにお考えなんでしょうか、交渉の経過と心構えについて……。
  87. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 きのうから再開したわけでございますけれども、再開する前の第四回日ソ漁業合同委員会におきましては、ただいま先生からお話がありましたように、一九九二年までに沖取りを全面禁止するということを、非常に強い口調でステートメントがございまして、それに対して我が方は、沖取り継続の正当性というものを主張いたしまして、この点につきましては全くの平行線という形で中断前の会議は終えておるわけでございます。  その後、いろいろな情報なりいろいろな接触を通じましても、九二年までの沖取り全面禁止ということにつきましてのソビエトの態度というものは非常にかたいものがあるわけでございますけれども、我々といたしましては、今後とも粘り強く我が国の立場というものを相手方に説明し理解を求めるということに取り組んでまいりたいと思っておりますし、それから、さしあたっての今年度の問題につきましては、きのうから具体的な話し合いのテーブルに着いたところでございますので、何とか一日も早く、我が国のサケマス漁船の操業というものが我が国の受け入れ可能な条件で確保できますよう、最大限の努力をこれから積み重ねてまいりたいと思っております。
  88. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 交渉中でありますから中身のことについては公の場で話ができることは少ないのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、とにかく非常に重大な問題であるという意識の上に立って、強い態度でこの問題については臨んでいただきたいということを付言しておきたいと思うのであります。  今のお話にもございましたように、非常に厳しい状況であるようでございます。長い目で見ますと、日本サケマス漁業というのは、残念ながら現在の状況が続くとは考えられないといいますか、非常に難しい環境にあることは事実のようです、ここ数年の動きを見ましても。そういう状況の中で何とか生き延びる道を考えていかなければならないだろうと思うのでありますが、今も交渉の中でもございますように、日ソ間で民間ベースで進められておりますソ連でのふ化場の建設事業、これに対して協力を進めるということが、これまた日ソ間における漁業交渉の中での大事な問題でもあろうかと思います。ふ化場の建設事業というものもいろいろ話に出ておりますが、これに対して十分のバックアップをすることが大事であろうと思うのであります。民間ベースではありますけれども、どの程度どういうお話があるか、現状についてちょっとお聞きをしておきたい。  また、ソ連でのふ化場の建設に日本が協力する意義といいますか、それは技術援助とかいろいろなことをお互いに二国間ですることは大事なことでありますが、ふ化場が建設できて、ふ化放流事業が成功するということになりますと、当然それに対して日本でもその一部、漁獲という面からいいますと、とらせてもらうといいますか、そういうことも考えるべきじゃないかと思うのであります。今までソ連との交渉の中では、一方では日本側にふ化場建設の協力を求めて、他方では沖取りを禁止する、こういうことでありますから、今後におきましては、このふ化場の建設によりましてふ化放流事業が成功したそのときには、ソ連側は将来日本の船にソ連の沿岸サケをとらせる、こういう考え方もあるのかどうか。まるきり向こうの方に技術援助、ふ化場を建設するというだけのことであって、今のこの交渉や、いろいろ苦労しております現実の打開に何ら関係のない別次元でのふ化場の建設ということではないだろうと思うのでありますけれども、その辺は交渉の中でのお話、また、水産庁としてどのように受けとめていらっしゃるのか、お聞きしておきたいと思います。
  89. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ありました日ソ合弁によりますサケマスふ化場の設立、この問題につきましては、昨年二月の日ソ漁業合同委員会、ここでソ連側から初めて提案が行われまして、双方の政府専門家による会議でございますとか、あるいは現地調査というものを経まして、現在その実現に向けて民間ベースで検討が進められているわけでございます。もともと我が国の漁船が日ソ両国間の合意というものに基づきましてソ連系のサケマスの漁獲を行っているわけでございまして、ソ連系サケマスの資源の保存なり増大というものに積極的に協力していくということは、ソ連にとりましても我が国にとりましても重要なことというふうに考えておるわけでございます。  しかし、残念ながらこの構想自体まだ十分煮詰まっておりませんし、それから、ただいま先生から御懸念ありましたこの協力事業なりあるいは合弁事業と今後の魚のとり方あるいはとらせ方との関係、例えばソ連の二百海里水域の沿岸部で日本にとらせるのかどうかとか、そういうことの相互の事業のリンクにつきましては、今のところ全く議論に出てきておりませんので何ともコメントはできないわけでございますけれども、いずれにしても今後の日ソ間の漁業関係というものが友好裏に進むため、あるいは関係漁業者の利益が十分守られるという前提に立ちまして今後の交渉を見詰めたいと思っておりますし、それから、でき得れば当方といたしましても適切な支援というものを行いまして、バックアップを行ってまいりたいというふうに考えております。
  90. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 これは非常に大事なことであります。ふ化場の建設、技術協力、二国間では実に大事なことでありますが、その後に来るものが何か、援助だけのことであって、何もこちらの方で得るものがない、全部失うものばかりだ、こんなことでは何のための交渉であったのかということになるだろうと思うのであります。今後の交渉の推移の中で、その辺のことについても見きわめながらぜひひとつ進めていただきたいと思います。  次に、ことしの日ソ交渉が中断した原因というのは、ソ連側の姿勢が、一九九二年に向けての第一年として割り当て量の大幅削減を要求してきたということに一つはあるわけであります。さらにもう一つは、アメリカの水域での海産痛乳動物の混獲許可をめぐっての裁判の動き、これを見るためでもあった、こう思うわけであります。この裁判の方はどのように推移をしているのかという現状をちょっとお聞きしたいということと、この裁判の決着次第によっては、日米加の漁業条約は日本側から見てまことに意味のないものになってしまうのではないか。もし日本サケマス漁船が米国の二百海里内で事実上操業できないということになるならば、この日米漁業条約、これは意味のない条約であるならば、これはもう脱退してもしようがない、別の道を考えなければならないというような感じもしてならないのでありますが、これはどのようにお考えでしょうか。  いずれにせよ、サケマス関係漁業者は昨年並みの漁獲割り当て量の確保と漁場の変更を強く望んでいるわけでありますが、交渉の見通し、また、要請を達成するための最善の努力をひとつしていただきたい。五月一日が出航ということでその準備を進めております漁業者にとりましては、そしてまた、減船に次ぐ減船で何千人の方々が失業をし、再び船に乗っていけるかどうかという北海道等の漁民の方々の心情を思うとき、また、地域経済に及ぼす影響考えますとき、この交渉に当たりましてはぜひひとつ強力に明るい見通しをつけていただきたい、こう思うわけでありますが、いかがでしょう。
  91. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回のといいますか、今年度の日ソサケマス交渉一つの難しい点は、ただいま先生からもお話ありましたアメリカの裁判の行く方がどうなるか、どう見通すかということが大きくかかわりあっているということは事実かと思っております。この裁判につきましては、四月一日に、さきに連邦地裁が行いました母船式サケマス漁船の米国二百海里内水城におきます操業の暫定差しとめ命令を高裁が支持する判決を下したわけでございますけれども、この判決に対します再審請求と、それからこの判決の執行停止の請求というものを並行してアメリカ政府が行っているわけであります。これは四月一日にこういう訴訟行動をとっていただいておりますので、その後いろいろなやりとりはあろうかと思いますけれども、残念ながら裁判にかかわる問題ということでその動向というものを見通すことは極めて困難な問題であるわけでございますが、水産庁といたしましても、今後とも我が国の母船式サケマス漁船の操業というものが十全に確保できますよう努力を傾注してまいりたいと思っております。  それから、そういう事態になった際の日米漁業条約との関係でございますけれども、今せっかくアメリカ政府自体が自分のこととして訴訟活動をやってくれているという最中でございますので、そういう中で今後の日米漁業条約の扱いというものを私がコメントするなり批判を加えるということは必ずしも適切ではございませんので、立ち入った答弁は差し控えさしていただきたいと思っております。  それから、そういういろいろな問題を抱えながら今年度の日ソ交渉の見通しでございますけれども、これもきのう再開いたしまして、今交渉期間中のスケジュールというものは大方決まりましたけれども、実質的な討議は実は二十六日、本日から入っておりますので、現時点でどういうふうにこれが展開していくかということについてまだ現地からの情報なりも入っておりませんし、私自身まだその判断をする時期に来てないというふうに考えている次第でございます。
  92. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 先ほど日米加の漁業条約が意味のないものになるということを私は申し上げたので、長官立場からするとそれに対して云々というようなコメントはできないかもしれませんが、そういうことからいいますと今の漁業全体、減船に次ぐ減船、規制に次ぐ規制ということの中でだんだん枠組みが大きな変化を来しているという認識だけはしっかり持っていかなければならぬと思うわけであります。  さて、北海道でのふ化放流事業、これは相当の水準に達しまして、回帰尾数も五百万尾にも達するようになった。日本の沖取りをしておりますサケの中には日本が放流しているものも相当入っておると思うのですが、どのようにお考えでしょうか。また、放流尾数をふやして日本の沖取り漁業が存続できるようにすることは可能であると考えるわけでありますけれども、これは技術的にはどんなことなんでしよう。北海道の国営ふ化場を今年から三カ年計画で六カ所整理する、三十七カ所から三十一カ所にするというようなことも聞いておりますが、これはどういう理由でそういうような方針をお立てになったのでしょうか。このことにつきましては、また地元の意向というものを十分お聞きになってお決めになったことなのでしょうか。これらについてひとつお伺いをしておきたいと思います。  私は、このサケマスふ化放流事業につきまして、国が果たすべき役割というものがまだまだ多く残っているのではないかと思うのであります。例えば、シロザケからさらに価格の高いサクラマスとかべニザケ、このように研究を進めて放流事業というものも考えていかなければならない、これは長い間叫ばれていることであります。魚価の低迷ということの中で漁民も熱望しているわけでありますが、さらに魚体の小型化の原因ということも最近言われております。豊漁貧乏とか言われますけれども、魚体がだんだん小型化しているということも言われております。これの原因の究明、こういうようなことも進めなければならぬ。ただ放流するというだけではございませんで、時代の変化とともにこういうことを一つの研究テーマとして取り組まなければならぬ、こういうことは民間ではなかなかできないことでありまして、国の役割あるいは民間の役割というものはやはりあるだろうと思います。  そういうことからいいまして、国営のふ化場を整理するということは、何か財政当局からいろいろ言われているのかもしれませんが、今は完璧にこういうものができて民間に移行するときが来たというようなことじゃなくて、また新たな局面がそこにあるのだということだろうと私は思うのです。そういうことからいいまして、いかがなものかという感じがしてならないのでありますが、国の役割と民間の役割分担といいますか、こういうことに対してのお考えとか、ふ化放流事業にまつわる諸問題についてのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  93. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ふ化放流事業全体について御質問があったわけでございます。  まず、ふ化放流をふやして沖取りという御提言があったわけでございますけれども、現在我が国が北太平洋で行っておりますサケマスの沖取り、これの対象魚種となっておりますものは主としてソ連系のサケマスでございますので、やはりそこの資源量をふやすということになりますれば、これは先ほどお話がございましたように、ソ連自身の河川でのふ化放流というものをふやすということがなければそこの資源量の増にはなかなか結びつかないというふうに考えている次第でございます。  それから、ふ化事業の位置づけなり国の役割ということでございますけれども、今先生からもお話がありましたように、ふ化放流事業はおかげで数量的には相当な水準に達しておりまして、これからは量より質といいますか、もっと中身の濃いふ化放流事業というものが望まれてきているわけでございます。特にシロザケのふ化放流につきましては、道なり民間の技術水準というものは相当高まってきておりまして、国は、今後は回帰率の向上でございますとかあるいは品質改善、それからさらには新資源の造成というような技術開発、これに力点を置いていくということが重要になってきているわけでございます。  こういう環境の中で、国の北海道さけ・ますふ化場のふ化放流事業は基幹河川を重点に実施する、それから、国の機関はできるだけ調査研究なり技術開発を推進する、それと同時に民間の技術指導機関に脱皮していくというようなことで、ふ化場をそういう方向に従って強化する。それと同時に六カ所の整理をさせていただいたわけでございますけれども、こういう組織改正によりましても最近のふ化放流事業の質的な転換ということに十分対応できると思っておりますし、それから、民間なり道なりにつきましても、従来以上に当方といたしましても指導を強めまして御協力方をお願いしたいと思っておる次第でございます。  それからさらに、これからの問題として、先生からもお話がありましたようにサクラマスでございますとかあるいはべニザケ、こういうものの新資源造成事業ということが必要になってきておりますし、それから、ここのところ小型化ということがそれぞれの漁業関係者なり流通関係者から問題が提起されているわけでございますので、こういうものの原因究明ということにつきましても、研究機関挙げてその解明に努力してまいりたいと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、民間ベースにおけるふ化放流の比重が高まっている中で、これからは国は回帰率の向上でございますとかあるいは銀毛資源の造成でございますとか、それからただいまありましたサクラマス、ベニマスの新資源の造成でございますとか、それからさらには小型化の解明でございますとか、こういうことに中心を移していくということが将来のサケマス放流事業のためにもベターじゃないかという立場に立ちましていろいろなお願いなり改善を施すことにいたしておりますし、それにつきましては十分地元の方々の御納得も獲得すべく、去年来地元の方との会話、対話というものも積み重ねてきている次第でございます。
  94. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 いずれにしましても、今お話がございましたように質的転換といいますか、そういうときを迎えておりますから、漁業者もそれなりの努力をしており、また地方自治体それぞれ皆力を合わせてしなきゃならないことでありますけれども、やはり国の機関というのはそれなりの歴史もあり、そしてまた今日まで果たしてきたそれなりの役割もあるわけでありますから、今後のあり方等については十分に地元の方々とお話し合いをし、そして納得させて一つずつその意向というものを理解させることが大事なことだろうと思うのであります。ぜひそういうことでお進めいただきたいと思いますし、また今後の研究開発ということについてはぜひ意を注いで成果の上がるように進めていただきたいと思います。  さて、時間もございませんので漁業災害補償法の問題について何点かお話ししたいと思いますが、今度の改正は非常に重要な意味を含んでいる点が何点がございまして、同僚委員からも何点かの問題についてはございましたから、私は、このサケマスにつながります諸問題、また特に大きな問題についてお伺いをしておきます。  今回の改正サケマス大型定置漁業共済金の支払いにつきましては基準漁獲数量、こういう考え方を入れまして、共済金の支払いの削減、こういう改正条項が入っておるわけであります。基本的にはこんなことでいいのかなという不満といいますか、そういう感じが非常にしてならないのでありますが、ふ化放流事業を継続させ、共済事業を維持するということでぎりぎりやむを得ないことなのか、そんな気持ちもしておるわけであります。しかし、法案を見ますと、政省令で運用を任されているところがございまして、これが何点かございますので、これは一体どういうふうにお考えになってお決めになるのか、時間もありませんので二、三点に絞ってお伺いしたいと思います。  まず一つは、共済金支払いの特例を設ける特定漁業サケマス大型定置についてであります。  サケマス大型定置といってもいろいろあるわけてありまして、共済収支の赤字の原因となっているのは秋サケ定置漁業だという。統計やいろいろなことから、今回はたくさんとれても量によっては共済金を削減しますよ、こうなっている。その話の出どころは秋サケ定置漁業での漁獲量ということが問題だと思うのです。今回の措置の対象はこの秋サケ定置に限って、春の定置とかほかの大型定置、これには広げる理由はないと思うのですけれども、これはどのようにお考えなのでしょうか。  それから、サケ定置という名称であってもいろいろな魚が混獲されるわけでありまして、赤字の原因はサケにあるという。これは放流してサケがどんどんふえているんだということでありますからサケの捕獲率の高い定置漁業に限るべきである、今まで皆さん方のおっしゃる論理からいってそういうことになるのではないかと思うのであります。ですから、八〇%以上の捕獲であるというふうな秋サケ定置漁業に限る、こういう関係業界からの強い要望があるのは当然のことだと思うのです。これはどうお考えなのでしょうか。
  95. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話しありましたように、基準漁獲数量制度の具体的な適用、これにつきましては政省令で決めるということになっているわけでございます。具体的に秋サケに限定すべきであるという点でございますけれども、これは我々といたしましても、主として秋サケをとることを目的とする大型定置漁業を対象とする所存でございますので、今後政省令の立案段階におきましてはそういう方向で対応してまいりたいと考えております。
  96. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 基準漁獲数量のことでありますが、基準漁獲数量の決め方、これは定置漁業の中にはさっき申し上げましたようにいろいろな魚が入るわけでありますけれども、今回はサケが豊漁貧乏、たくさんとれても価格が案外低迷している。たくさんとれたときには共済金が支払われないということになるわけでありますが、ほかの魚は関係ないといいますかサケマス以外の魚には関係ない、混獲された魚は別として、共済金の削減はサケ共済金に限るべきである、このようなことが言われているわけであります。要望として強く出されていますが、この基準漁獲数量は、法律の中では「政令で定めるところにより当該被共済者が営む当該漁業の過去一定年間の操業に係る漁獲数量を基準として組合が定める」、こういうふうになっているのですけれども、具体的にはこのサケマス大型定置の場合にはこの基準漁獲数量というのをどのように定めるのか。簡単というわけにいかないかもしれませんが、時間もありませんので要点だけ御説明いただきたいと思います。
  97. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまの基準漁獲数量は、基本的には契約者の過去一定年間の漁獲数量というものを基準といたしまして共済組合がそれぞれ定めるということになっております。サケマス大型の場合を具体的に申し上げますと、過去五年間の漁獲数量のうち最高と最低を除去いたしまして中庸三カ年の平均漁獲数量を基準といたしまして、しかもそれぞれの地域の実情に一番精通しております共済組合自体がいろいろな勘案要素というものを勘案いたしまして、それぞれの地域の漁業実態に適合したものを定めていくというふうに考えているわけでございます。
  98. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 組合が地域の事情をいろいろ勘案して決めるということですが、組合が決めるにしましても、その基準とかいろいろな条件等については農林省の方からも何か一応お示しになられるんだろうと思います。その辺のことについてはどうなんですか、勘案事項についての基準とかいろいろな物差しといいますか。
  99. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 過去五年の漁獲数量のうちの中庸三年間ということが基本になっているわけでございますけれども、その際に、それぞれの地域の漁業実態を踏まえるということから申しまして、ただいま先生からいろいろ御指摘ありました例えば混獲状況でございますとかふ化放流状況ふ化放流状況からいいまして回帰がどうなるということもそれぞれの地域では推測可能でございますので、そういうことも当然勘案要素として入ってこようかと思っております。
  100. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 次は共済金の支払いでありますけれども漁獲数量が基準漁獲数量に「農林水産省令で定める数値を乗じて得た数量に達しない場合に支払う」、こうなっていますね。この「農林水産省令で定める数値」の定め方によりましては共済金が支払われない人もたくさん出るなんということにもなりかねない。これをどういうふうに決めるのか。いろいろ御検討なさっていらっしゃるのだろうと思いますが、関係者の方々といろいろお話をいたしますと、また私はそういうことからしましては二倍といいますか、この程度なら関係者の理解が得られるのではないか、こんな感じがするわけであります。これは発足当初でありますからこの数値の決め方、余り厳しいといいますか現実に即さないようなことではならぬだろうと思います。  次に、この基準漁獲数量を超えて量があって共済金が支払われる場合に、その削減のために農林水産省が定める割合についてでありますけれども、削減の開始は基準漁獲数量の一・二倍程度から始まる。ちょっと基準漁獲数量を超えたからすぐばさっとではなくて、一・二倍程度から始まる。その後の逓減の幅はできるだけ緩やかにしてほしい。これは初めてこの制度ができるわけでありますから、やはりいろいろな危惧をしておるわけでありますし、当然のことだと思います。この漁獲量の五年間の中庸三年というのは数字的にはある程度出てくるかもしれませんが、それからどのぐらい伸びたら、量がふえたらこの共済金が削減されるような数値になるのか。ここらあたりのところは非常に神経を使うところでありますし、大幅にがくがくっと削減されるようなことでは今後の漁家にとりましての経済というのは大変ですから、やはり逓減の幅、こういうものを緩やかにしてもらいたいという要望は当然のことだろうと思います。  いずれにしましても、基準漁獲数量方式の導入というのは、関係漁民にとりましては非常に神経すり減らして、どうなるのかということについての関心を持っておるわけであります。これは関係漁民の方々の十分な意見といいますか、この法律は十月施行ですね、関係者の方々との十分なお話し合いの中からやはりこういうものは決めていただきませんと、加入拡大、促進というのが一つの大きな柱になっているのですけれども、どうもこれはサケマス関係の方々からすると、とても入れるようなものではないなんという不満がうっせきするようなことになっては何のための改正だったのかということになるので、十分その辺のことは御検討いただくということと、また地元の方々の十分な御意見を受けながらその数値というものを決めていくというか、こういう配慮が必要だろうと思うのですが、いかがでしょう。
  101. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま基準漁獲数量に絡みまして、今後農林水産省令で定めてまいります数値について具体的数値をお示しになられていろいろと御指摘あったわけでございますけれども、我々といたしましても、ただいま具体的に御提示ありました数字につきましては十分頭の中に入っておりますし、それから何といいましても関係漁民の意向というものを十分聞きながら、本制度のいろいろな政省令あるいは告示関係をこれから考えてまいりたいと思っておりますので、何とか今回の法律改正の趣旨というものを十分体し、それからただいま御議論ありましたような漁業実態というものに十分即したものとなりますよう、今後ともそれぞれの方の意見を的確に反映できるような作業を進めてまいりたいと思っております。
  102. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 最後になりますが、今回の改正点は何点かにわたるわけでありますが、それぞれやむを得ないといいますか、こういうときでありますから検討しなければならぬ、そういうことも我々もよくわかるわけであります。世の中がどんどん急激に変化をしておりますから、その変化に対応するように、行政当局もできるだけその実態に即した形で物事を考えていただきませんと、少しタイムラグといいますか時間的な差がございますと、当事者といいますか漁民の方々にはとてもじゃない、この共済制度というのは我々にはとても関係のないといいますか入れるものではない、こんな意識を持たれるようなことになってはならぬ。それでなくても現在は非常に加入率が悪いわけでありますから、これをよくするということですから、みんなが入ってそれなりの恩恵に浴するというか喜んで入れるような条件づくりというものが大事なことだろうと思います。  先ほど同僚の武田委員からもお話ございましたギンザケのことについても、一部の地域のことなのかもしれません。しかし、これはまたどんどん広がっていくことでありましょうし、また北海道の噴火湾のホタテにしましても貝毒とか、こんなことで今からいろいろ問題になっておるわけでありますが、やはり非常に不安定な一要素といいますか不安定な一面があります。いいときはいいのかもしれませんが、そういうことでだんだん普及しますと、それに伴っての問題もある、そういう状況を十分に勘案しまして、これらの問題についてはひとつ適切な対処をしていただきたいと思うわけであります。  それから先ほどお話ございましたが、改正点の一つの大きな柱の中に責任分担の仕組み改正がございますけれども、今度は比例部分を設けるということであります。こういう考え方は行政当局としては当然のことなのかもしれませんが、当事者にしますと異常事故とか異常な状況のときには一体どうなるのか。それぞれの漁業組合も共済連も、運営ということについて非常に厳しい目で見ておるわけでありますから、そういう点では異常事故、こういう問題については当然国がそれなりの負担をし、そして見てもらえるだろうという気持ちでおるわけでありますが、最近どんどん地方自治体または地方にこういう負担割合というものが押しつけられるような傾向にあるものですから、非常に危惧を抱いておるというのが実態であります。そういう問題についても、この責任分担の仕組み改正等につきましても、十分な御説明がなければ非常に危惧を抱いている現状であるということを申し上げねばならぬと思います。  いずれにしましても、この共済加入拡充、促進という上からいたしまして、今回のこの改正は加入拡大とそれから促進のためということよりも、漁災法共済制度の健全確立というような感じがしてならないのであります。それが屋台骨が揺らいではなりませんからがっちりしなければならぬのですけれども、ぜひひとつこの揺れ動く社会変動の中でそれに対応するようないろいろな状況を加味しながら、今後注意深くこの運用についてはお考えいただきたい。最後に要望ですが、一言お話を申し上げまして、御答弁いただいて終わりたいと思います。
  103. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま共済制度全体につきまして、運用に当たってなりあるいは制度を直すに当たって留意すべき事項につきましてお話あったわけでございますけれども、我々といたしましても基本的には全く同じ立場に立っておりまして、少なくとも屋台骨の揺るがないように、しかも多くの方々に喜んで加入してもらえるということは、共済を運営する者として常に心がけなければならないことと思っておりますので、今後ともそういう気持ちで本制度の円滑な運営方について全力を傾注してまいりたいと思っております。
  104. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 では終わります。
  105. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  106. 藤田スミ

    ○藤田委員 きょうは文部省においでをいただいておりますので、まず文部省からお伺いをしたいと思います。  先日は大変失礼をいたしました。時間の関係で、せっかく来ていただきながら質問できずに終わりました。きょうは最初に質問をいたします。  先日当法案の参考人質疑が行われまして、参考人の中井先生も、魚の消費拡大の問題についてかなり触れていらっしゃいました。その中で言われたことは、昔から家庭内で魚は多様に調理し処理して食べられてきた、消費者のニーズの多様化というけれども、もともと家庭で多様に調理されてきたんだ、今それが家庭の外に任されている、こういうことを言われたわけです。私も同感であります。魚の消費を拡大するために魚の調理もできないようでは魚離れになっていくのは当然のことでありましょうし、そういう点では家庭科の教育の中で魚の取り扱い、食べ方について重視をしていくべきだというふうに考えますが、まず文部省のお考えをお聞かせください。
  107. 菊川治

    ○菊川説明員 お答えいたします。  小中学校の家庭科におきましては、食物に関する学習におきまして、児童生徒の発達段階に応じて魚の料理に関する指導を行っているところでございます。  小学校におきましては、魚の調理実習は行っておりませんけれども、食品に含まれている栄養素とその働きに関する学習の中で魚の重要性を理解させるという学習を行っておりますし、また中学校の家庭科におきましては、日常食の調理として魚料理に関する実習を行っておりまして、例えば魚の油焼き、ムニエルでございますとか煮物、あるいは直火焼きにつきましての学習を行っておるところでございます。なおその中で、例えば切り身や一尾など題材を適宜取り扱う指導も行っておるところでございます。また高等学校の家庭一般におきましては、中学校における学習をさらに発展させ、魚の下ごしらえや開きなどを含め、魚の調理のさまざまな手法の理解や確実な技術の習得ということを重視した指導を行っておるところでございます。  この家庭科におきまして食物に関する内容につきましては、今後とも、健康な生活の基盤をつくるものとして従来より重視していく必要があるというふうに思っておりますし、また海に囲まれた我が国におきまして、古来より魚が食生活に大きな役割を果たしているわけでございますので、今後とも小中高等学校を通じて魚の料理に関して適切な指導ができるよう努力してまいりたいと思っております。
  108. 藤田スミ

    ○藤田委員 同時に、若い人たちに食生活を通して魚に大いに親しんでもらうために学校給食が果たす役割というものも非常に大きいと思うのです。今の子供たちは骨つきの魚が食べられなくなってきている、こういうふうに言われています。こういうことに対してある学校では、骨つき魚チャレンジコンクールなんというようなのを学校給食の中で行っているそうです。やはり学校給食は教育の一環でありますし、このような積極的な取り組みを進めていただいて、そうして魚離れを防いでいく役割というものを学校給食の中で果たしていっていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
  109. 石川晋

    ○石川説明員 お答えいたします。  学校給食は先生御指摘のとおり、教育の一環として、ねらいとして好ましい食習慣を給食を通じて培う、こういうこともございますが、こういう観点から幅広い食品をいただくということで標準食品構成表というものを示しているわけでございます。この中に魚につきましても所要量というものを示しているところでございます。この魚については、昭和五十一年に学校給食においては御飯の給食ということを導入しその普及を図っているわけでございますが、それとともに漸次魚の消費量というものもふえてまいりまして、近年ではこの標準食品構成表に示す、学年に応じまして十五ないし二十二グラムというような量が示してあるわけでございますが、ほぼこれに等しいところまで来たという状況でございます。  ところで、特に先生お話しの骨つきの魚ということになりますと、我が国の食文化ないしは食糧事情ということを考えますと、イワシでありますとか、こういった近海多獲性魚というものをいただくということが大変重要なことであるというふうに私ども考えておりまして、各種の研修会でありますとかそういう場を通じまして、こういった近海多獲性魚、骨つきの魚をいただくようにということの指導に努めているところでございます。  なお、先生お話にもありましたが、給食を行っている実際の学校におきましても、おはしの使い方のコンクールでありますとか、いろいろな工夫をしながら現在その指導を努めているというところでございます。今後ともこういう観点から指導の充実を図っていきたいと考えているところでございます。
  110. 藤田スミ

    ○藤田委員 日本型食生活というのは日本の伝統的な文化であります。私たちの生活の中に、政やさまざまな儀式の中にもそれは残っています。この日本型食生活をやはり教育の中でも学校給食の中でも継承する役割を果たしていただき、魚の消費拡大に今後とも大いに努めていただきたいということを私はもう一度重ねて申し上げておきたいと思います。わざわざおいでくださいまして大変ありがとうございます。質問は終わっておりますので、どうぞお引き取りください。  それではノリの収穫共済についてお伺いをしていきます。  私はせんだって兵庫県のノリ養殖について調査をいたしました。ノリの共済は、試験実施の収穫共済とそれから従来型の養殖共済と半々くらいある中で徐々に収穫共済が伸びているという点では、今回の本格実施というのは実態に見合っているんじゃないかというふうに考えておりますが、兵庫県はノリ養殖の生産額で佐賀に次いで全国第二位である。このノリ養殖区域では漁船の操業が規制されるために、魚資源を守り育てるいわば役割を果たしております。そして漁業者の収入源に寄与することはもちろん、冬の仕事を確保し、その分また魚の乱獲を防ぎ、漁船漁業の事故を減らすことにもなっている、そういう補完的な機能を果たしているんだということを現場では大いに強調をされました。したがって、このノリ収穫共済が今後うまく広がっていくことが非常に大事だというふうに考えます。しかし、そのためには掛金率を引き下げるなど加入しやすい条件をつくっていくという努力が大事だと思いますが、この点ではいかがお考えでしょうか。
  111. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ノリ養殖事業の果たしております機能につきましては、ただいま先生からもお話ありましたとおりであろうかと思っております。そういう中で今回ノリ特定養殖共済を本格実施というものに格上げするわけでございますけれども、これにつきましては我々といたしましてもできるだけ関係者の要望というものを取り入れてまいりたいということで、関係者とも十分協議を踏まえましていろんな中身の改善というものを行ったつもりでございます。  例示としてございました掛金につきましても、その補助率を引き上げるということにつきましては、既存のノリの養殖共済あるいは試験実施中の特定養殖共済、こういうものとの均衡に留意しなければなりませんのでなかなか難しい点があろうかと思いますけれども、加入促進につながりますように今回の改正で個別加入、個別補てん方式なり、それから漁協契約方式という、契約方式なり補てん方式についての新しい仕組みというものを導入いたしましたし、それから基準生産数量の適用方法、これにつきましても一定改善を行っております。それからさらに長期共済の導入によります掛金率の割引でございますとかあるいは無事故の場合の返戻、こういうものも今回本格実施に伴いまして適用になるというような改善を加えておりますので、こういういろんな改善が積み重なりまして、その共済事業に応じた加入しやすい制度に今回の改正相当接近ができたんじゃないかというふうに認識している次第でございます。
  112. 藤田スミ

    ○藤田委員 しかし、まだ契約割合、付保割合が低くて全体で二〇%前後でしょう、この試験実施のための契約割合は。調査してきた兵庫県は付保率は八・六%程度で、これを五割、六割と本格的な契約にしていくためには、事業開始のときと同じくらいの相当の努力が必要じゃないかということを私は感じたわけなんです。  そこで、本格実施を軌道に乗せるためにも、一つ掛金率を引き下げるということと、掛金の国庫補助率を現行の五五%から収入補てんにふさわしく漁獲共済並みに六〇%に引き上げるということがどうしても必要じゃないかというふうに考えるわけです。今回のいろいろな改正に当たって努力をしようということで取り組みを示されていることはそれはそうなんですが、しかしその肝心のところをもっとしっかりと国の方も取り組んでいただかないと、本当にこれを試験実施でやっているこの方式に引っ張っていくということは非常に難しいのじゃないかと考えるわけなんです。
  113. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 確かに契約加入率を上げるための一番ストレートな手段が、掛金率の引き下げでございますとか国の補助率の引き上げという点にあろうかとは思いますけれども、そういう直截な形というよりは、やはりこういう共済というみんなで守り合う制度ということでございますので、こういう漁協契約方式でございますとかいろいろ新しい知恵を出しまして、そういう新しい仕組みの中でそれぞれが当事者意識を持って自主的に共済を守り育てていくということが一番共済制度の長期安定につながっていくというふうに理解しております。特にその掛金率につきましては、これは入る側からすれば低ければ低いにこしたことはないわけでございますけれども掛金率の低さというものが将来の収支なりあるいは危険発生ということで、全体とあれしてみますとマイナスの効果というものも引き起こすという問題もございますので、掛金率につきましては、やはり危険発生の程度というものに応じて一定の保険数理で確立すべきものでございますので、加入促進のために一つの道だからといって掛金率引き下げという道を選ぶことにつきましては余りに問題が多過ぎるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  114. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は掛金率を単純に下げることによって起こる問題というのを全く理解していないわけではありません。しかし、にもかかわらず掛金率の引き下げあるいは掛金への国庫補助割合を六〇%にしてほしいという強い要望があるということを重ねて申し上げておきたいと思います。  また、加入促進全般についてですが、農業共済掛金補助は六十一年度平均で五二・九%、漁済の方は四四・五%で約一〇%国庫補助が少なくなっております。これは契約割合が低いもの、逆に限度いっぱい契約するものに対して補助対象から外していくというようなやり方だとか、また義務加入以外は直ちに掛金補助を半額にするという極端なやり方によってこういうふうになっているのじゃないかと考えますが、結局、手当ての薄い制度だというふうに言われても仕方のないことだと思うのです。こうした制限をやめて補助がもっと行き渡るように、漁業者がメリットを感じられるように改めるべきではないでしょうか。
  115. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生から今お話がありましたように、漁業共済共済掛金に対する平均国庫補助率、これは六十一年度で四四・五%となっておりまして、農業共済の五二・九%に比べますと、総体としては若干低い水準にあることは事実かと思っております。しかしながら、これは漁業共済の非常に特徴的な点がある意味ではここにあらわれているわけでございまして、漁業共済の場合には農業と違いまして非常に規模格差もあるということで、負担能力のない方々についてできるだけ国庫補助を厚くしたいという考え方をとっているわけでございます。  例えば、小規模な階層のみといいますか、漁獲共済、すなわち採貝・採藻及び十トン未満の漁船漁業、こういうものの平均をとってみますと、国の助成率は五八%というふうに相なっているわけでございますし、それから、カキでございますとかノリでございますとかホタテというものの養殖共済、こういうものも四九・一ということで五〇に近い国の参加率ということになっておるわけでございます。したがいまして、総体としては確かに低いわけでございますけれども、特に手厚く対応すべきものについてはそれなりの手厚さというものを心がけているつもりでございまして、そういう点から申し上げますと農業共済と単純に比較は難しいわけでございますが、今後ともそういう漁業者の方々の負担ができるだけ少ないにこしたことはございませんので、所要の予算の確保につきましては努力を続けてまいりたいと思っております。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  116. 藤田スミ

    ○藤田委員 水産庁は、六十一年も六十二年も、漁済連などの団体が進める漁済総加入運動に都道府県もバックアップするように呼びかける通達を出していらっしゃいますね。そのことは大変結構なことだと私は思いますが、しかし、この漁済総加入運動では、都道府県や市町村が掛金補助を行うように働きかけをやっているのです。総加入運動というものの一つの柱に、都道府県や市町村が掛金補助を行うようにというのが一つの重要な柱になっています。裏返せば、国の補助が少ないので自治体に援助を求めているということじゃないですか。そういうことから見ても、漁済制度の安定のために国の補助の拡大こそが今求められているんだというふうに言えると思うのです。もう一度御答弁を求めておきたいと思います。
  117. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 我々といたしましては、総体的な国の参画の仕方というものは全国ベースとしては現在でまあ適切かというふうに思っておるわけでございますけれども、それぞれの地域におきまして加入率につきましてもいろいろアンバランスも見えるわけでございますし、それから、それぞれの県においての漁業共済に対する緊要度なり必要性というものも大きく違っております。そういう点からいいますと、それぞれ地域の産業振興あるいは住民対策といたしまして、こういうものについても地方公共団体なりいろいろな関係団体にできる限り参画していただくということは、漁業共済制度を一歩、二歩前進させるためにも非常に有効な一つの手段でございますのでそういうお願いをしているわけでございまして、各県なり漁業団体におきましてもそれぞれの立場に応じまして何分の御協力をちょうだいしているわけでございますが、今後ともそういう方向で国全体を挙げまして共済の発展のために努めてまいりたいと思っております。
  118. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  119. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 神田厚君。
  120. 神田厚

    ○神田委員 漁業災害補償法改正案につきまして御質問を申し上げます。  最初に、水産業一般の問題について二、三御質問を申し上げたいと思っております。  二百海里時代に入って十年が過ぎたわけであります。この先の漁業が大体どういう方向に進んでいくかという見通し、これが見えてきたというような段階だと思っております。  そこで考えますに、一つは、日本の二百海里内の漁業振興にどういうふうに力を入れていくか。二つには、水産物は確実に輸入が多くなっております。これについてどういうふうに対応をしていくのか。三つには、海の利用についてほかの分野との調整が大きな課題になっている、こういうことについて、今いろんな問題が出てきているわけであります。このときに、水産庁では昨年十一月、「漁業問題研究会中間報告書」、これを出しております。また、全漁連では、「水産業の基本問題に関する検討中間報告書」、これを出しているわけでありますが、日本漁業のあり方、漁業制度のあり方がそれらの中で検討されているわけであります。  しかしながらそういう中で、水産業の環境がますます厳しく変わってきているという状況の中で、このまま放置をしますと、漁業者とほかの産業の人たちの所得格差が非常に開いてしまう、こういう心配があるわけであります。抜本的な対応策が必要だというふうに考えておりますが、これらについてどういうふうにお考えでありますか。
  121. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在、水産業の置かれている問題点というのは、ただいま先生から三つに分けて御説明ございましたけれども、私といたしましても全くそのとおりという感を深めているわけでございます。  そういう難しい中で、これから水産全体をどういうふうに展開していくかということでございますけれども、その第一には、何と言いましても我が国自身の二百海里、これをどうやってこれから高度に利用開発していくかということが基礎になろうかと思います。そのためには、漁港を初めといたしまして、いろんな施設整備というものを推進しなければなりませんし、それから栽培漁業でございますとか、あるいは資源の合理的な利用管理体制の整備ということで、いわゆるつくり育てる漁業というものを推進していく必要が何といいましても一つあろうかと思っております。  それから次に、輸入がふえてきている、あるいは海外漁場がますます狭まってきているという環境の中にございますので、漁業交渉というものを粘り強く展開いたしまして、海外漁場の確保と、それからさらに新漁場なり新資源、こういうものの開発を図る、それと同時に、非常に難しいことではございますけれども、中長期的な視点に立ちまして漁業の再編整備そのものにも取り組んでいかなければならないという事態にそろそろ立ち至っておるというふうに認識しております。  それからさらに、つくってとるということだけじゃなくて、そこから先の流通、加工、消費、こういうものに至ります総合的な供給体制というものを全体として整備いたしまして、消費者ニーズに的確に対応いたしました水産物の供給体制を流通、消費段階においても確立していくということが大きな仕事と思っております。  それに加えまして、ここのところいろんなレクリエーション需要というものも多くなってきておりますので、単に魚をとり、魚を流通する場としてだけじゃなくて、国民全体の海浜なりあるいは海洋という形での活用と同時に、それと漁業権なりとの調整というものも新しい局面での新しい責務というふうに考えておる次第でございます。  こういう四つのことを中心といたしまして、まだ十分にはそれぞれについての対策というものも確立してない点がございますけれども、先ほど先生からもお話ありました、去年の基本問題にかかわる研究会、こういうものの方向づけというものも十分念頭に置きましてこれからの施策の展開に努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  122. 神田厚

    ○神田委員 先日、参考人の方々にもいろいろお聞きをしたわけでありますが、漁業構造の再編整備を行うという場合には、残念ながら減船問題が出てくるわけであります。その減船問題が出た場合の問題は、一番論議をされますのは財源をどうするかという問題であります。参考人の意見の中には、全くの私見であるということを前提にしながらも、栽培漁業とその利用度の話が出ておりましたが、水産物の輸入課徴金を財源とするという考え方はできるのかどうか。これらについていろいろ難しい問題はたくさんあるかと思うのでありますが、水産庁の方で検討がされるのかどうか、この問題についてお聞きをしたいと思います。
  123. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま先生からもお話ありましたように、これから漁業構造そのものを変革していくためには減船という悲しい事態も一部には招来しようかと思っておるわけでございますが、そういう減船する者についての財源対策ということが非常に難しい問題として、こういう財務環境の中でございますので、あるわけでございます。  従来から北洋関連でございますとか、そういう国際規制関連の減船でございますとかあるいは自主減船につきましても、それなりの一般会計からの支出というものもやってきたわけでございます。過去におきましてもそれと並行して、ただいま先生からお話ありましたような輸入水産物品、これに一定課徴金を財源として徴収できないかということについて事務当局内で真摯に検討したことがあるわけでございますけれども、残念ながら、今後の減船の規模なりそれに必要な財源の規模、全体として規模をどう見積もるかという設計が、これだけ動きの激しい中にありましてはなかなかできないということに加えまして、負担を求める根拠といいますか、負担していただく方々とそれを使う減船側との因果関係というものにつきましても、こういう課徴金という形で制度化するには、理屈におきましても現実におきましても、なかなかうまく説明なり根拠がつかないということで、こういう課徴金に頼るという方法についての事務検討というものは打ち切っているわけでございます。今後、いろいろと減船問題が出てくることが予想されるわけでございますけれども、我々といたしましては、厳しい財政状況にはございますけれども、何とか財政当局の御理解も得まして、円滑な漁業再編が実現できますよういろいろな取り組みを行ってまいりたいと思っている次第でございます。
  124. 神田厚

    ○神田委員 それから、漁業白書の中でも、新鮮なものを供給するということで、ほかの輸入水産物との競争に打ちかっていくんだというようなことが書かれてあるわけであります。しかし、沿岸の限られたところでは活魚などがそういった形にはなりますけれども、近海で、例えば日本海、東海、黄海、これらの魚はとられてもすぐ一晩で、韓国あたりへ行って韓国から築地に揚がってくるという形になりますと、新鮮さだけでこの競争に打ちかつということはなかなか難しいことになるんではないかと考えております。ですから、それが輸入水産物の増加に対する一つの有効な対応策にはならないというふうに思っておりまして、輸入の秩序化に積極的に取り組むべきだと思いますけれども、これらの点についてどういうふうな御検討をなさっておりますか、お聞かせをいただきたいのであります。
  125. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 水産物の輸入が昨年は二百八万トンということで史上最高を記録したわけでございますし、それからここのところ、ひところと違いまして国内漁業と相競合するような魚種、こういうものもかなり入ってくるという状況にあるわけでございます。しかし、幸いなことに水産の場合には、特に沿岸・沖合漁業者の中小零細な漁家、こういう方々の主な漁獲物でございますサバ、イワシ、イカ、こういうものにつきましてはIQ制度がしかれておりますし、それからここのところいろいろと問題が出てきておりますマグロ等につきましては、政府間でございますとか民間間で数量協議を行いまして、事前確認制というものの対象とするというような仕組みというものが現にございますので、こういうものの適切な運用というものをこれからも何とか図ってまいりたいと思っているわけでございます。  しかし、何といいましても基本には輸入されるものと国内でとれるものとの価格差というような競争の問題があるわけでございますけれども、これらにつきましては何とかいろいろな知恵を出しまして、コストダウンなり、あるいは消費者ニーズにこたえました個性的な商品づくりとかそういうことを総合いたしまして、輸入水産物に対抗し得るような生産流通体制というものを確立していくことが重要かと考えている次第でございます。
  126. 神田厚

    ○神田委員 大変厳しい状況でありますが、前向きで積極的な水産に対する施策をお願いしたいと思っております。  続いて、捕鯨問題につきましてお伺いをいたします。  去る四月二十日、南氷洋の調査捕鯨が終わりまして第三日新丸が帰ってまいりました。調査の結果はどうであったのか、お伺いをしたいと思います。
  127. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 調査捕鯨船が先般帰国いたしまして、現在捕獲いたしました二百七十三頭の鯨につきましていろいろな調査データの集積、分析、これに努めておるところでございます。きょうの昼も関係者に会いまして、その後の状況というものをヒアリングしたわけでございますけれども、現時点ではまだ外部に発表できるようなまとまった調査結果にはなっておりませんが、今までの大観的な感じから申し上げまして非常に貴重な資料が相当収集されているようでございますので、我々といたしましても一日も早くその調査結果が集計され、分析され、公表されることをこいねがっている段階でございます。
  128. 神田厚

    ○神田委員 五月に入りますといよいよ国際捕鯨委員会が始まるわけでありますが、日本の調査捕鯨に対する米国などの反発は依然として大変強いものがあります。また、小型捕鯨が存続できるのかどうか、大変厳しい状況だというふうに考えております。捕鯨問題につきましては、日本は国際条約に基づいて、その条約のもとにこの調査捕鯨をやっているわけでありますので、政府としても毅然とした姿勢で貫き通してもらいたいというふうに考えております。  また、国際的な理解を得るための方策、いろいろなやり方がありますけれども、多数派工作といいますか、米国がほかの国に援助をしたり何かしながら自分たちの主張に共鳴させているというようなことがありますけれども、こういうものについても、何か水産庁として政府部内での働きかけの中でできることがあるのかどうか、どういうことを考えておられるのか、その点をお聞かせいただきたいのであります。
  129. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 五月にIWCの年次会合が持たれるわけでございますけれども、ただいま先生からお話ございましたように、やはり総会だけじゃなくて、事前にどうやって関係国に我が国の立場なり調査捕鯨の必要性というものを理解してもらうための根回しをするかということが非常に重要な手段となってきているわけでございます。  我々といたしましては、一九九〇年までに鯨資源の包括的評価を行うということになっておりますので、包括的評価を行うためには何といいましてもその調査が必要であるということをありとあらゆる機会をとらえまして叫んできているわけでございます。特に根回しの段階といたしまして、ただいまお話ありましたように海外漁業協力、これとリンクしての説得なり対話ということが非常に効果的であるということは過去の動きからも我々自身知っておりますので、そういう手段をいろいろな場面で使わしていただいているわけでございます。それから特に我が国の場合には、例えば海外漁業協力財団というような形でいろいろな海外援助というものも行っているわけでございますけれども、これにつきましても、先般も海外協力財団の理事長に外国を回っていただきまして、協力している各国に対して捕鯨の必要性というものを説いて回っている次第でございますが、今後ともそういう努力を積み重ねまして、来るべき五月の年次会合に向かおうかと思っている次第でございます。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 神田厚

    ○神田委員 「捕鯨問題に関する全日本海員組合の基本主張」というのが出されております。これは調査捕鯨が帰ってきた段階で海員組合の主張を改めてまとめたものであります。その結論として、「真の捕鯨問題の解決は、冷静な科学的討議による公正な決定と、国際協調と相互理解による賢明な解決を目指すところでありますが、加盟国が意図的に国際捕鯨取締条約の憲章や精神に違反し、科学的資源調査を否定する反捕鯨の政策をとる場合は、その国から水産物の輸入禁止、経済援助の禁止措置などが出来る対抗法の早期制定を、政府はじめ全政党に強く働きかけたい」、こういうふうに声明をしておりますが、この点につきまして、長官としてどういうふうにお考えでありますか。
  131. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 私のところにも海員組合の方がお見えになりまして同じような要望を行っているわけでございますけれども、我々といたしましては、いろいろと国際捕鯨条約内での問題というものがあることは十分承知はいたしておりますが、やはり調査捕鯨なり捕鯨の正当性というものを粘り強く説得していくということが長い目で見ると一番現実的であり、妥当な方途じゃないかというふうに考えているわけでございます。  もちろん気持ちといたしましては、何らかの報復でございますとかいろいろなほかの制度の活用ということも気持ちが動かないわけではございませんけれども、やはりこういう国際環境の中で、しかも日本国内の資源事情なり消費者のニーズというものとの関係で行われている水産物の輸入というものにつきまして、一定の手段に使うということにつきましては余りに問題が多過ぎるのではないかというふうに理解している段階でございます。
  132. 神田厚

    ○神田委員 なかなかデリケートな問題でありますけれども、現にアメリカ日本に対しましてPM法の発動をしているというような状況もありますから、これはそういうことも考えて、政府部内での積極的な対応を期待したい、こういうふうに思っております。  そこで、最後に捕鯨関係でお尋ねをしますが、昨年暮れ、日米漁業条約というのが締結をされました。これは、日本に対しては漁獲の継続を約束し、またアメリカに対しては日本もそれなりの協力をするという義務条項があるわけであります。しかし、日本が調査捕鯨を決行したということでPM法を発動してアメリカ二百海里内の漁獲をゼロにした、こういう現実的な制裁措置がとられているわけであります。こういうことが行われるということは、昨年暮れの日米漁業条約というものが一体どういう意味があったのか、こんなことを疑問に感ぜざるを得ないわけであります。したがって、こういう状況の中で、現時点で水産庁としてはこの日米漁業条約についての考え方をどのようにお持ちになっているか、お聞かせをいただきたいのであります。
  133. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 昨年の国会におきまして、米国二百海里水域におきます我が国漁船による直接漁獲と、それに加えまして洋上買い付けの事業を実施する枠組みを継続するということで二カ年間の延長を日米漁業協定につきまして図ったところでございますが、今回、残念なことに捕鯨問題に関連してアメリカの二百海里内での操業がゼロという形に相なったわけでございます。一方の洋上買い付けは続いてはおりますけれども、せっかく条約では枠組みができております二百海里内操業というものができなくなったことにつきましては水産庁としても極めて遺憾でございまして、その旨米政府に対して強く抗議を申し入れている次第でございます。その後もいろいろなチャンネルなりいろいろな場におきましてアメリカ政府関係者に対して抗議すると同時に、一日も早く日米漁業協約のもとでの対日割り当てというものが行われますよう要請しているわけでございますけれども、この要求を引き続き粘り強く行ってまいりたいと考えている次第でございます。
  134. 神田厚

    ○神田委員 二年間の期限延長の条約でありますから、粘り強くと言っていましても、そういうことをやっているとすぐ二年来てしまうという状況でありますから、私はやはりこの時点で、昨年条約を結んだその精神に返ってアメリカに対してPM法発動の撤回と、自分の方の洋上買い付けだけさせて量をふやして、日本には魚をとらせないという理不尽なことはないわけでありますから、条約の精神にのっとって水産庁はもっと積極的に外務省ともどもこの問題について対応してもらいたいと思いますが、いかがでありますか。
  135. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 単に水産庁の話としてではなく、こういう条約の枠組みというものがある中でございますので、外務省とも相連携いたしまして対応を深めてまいりたいと思っております。
  136. 神田厚

    ○神田委員 次に、日ソ漁業問題についてお尋ねをします。  きょうの新聞等では多少また動きが出てきたようでありますが、大体妥結ができるような状況になるのかどうか。つまり、出漁に間に合うような形で話し合いが進むのかどうかという問題につきましてはどういうふうに御判断をしておられますか。
  137. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 サケマス交渉につきましては、二十五日に再開してきようから実質的な討議にモスクワ段階で入っているわけでございます。二月から行われて三月に中断いたしました前回の会議におきましては、非常に双方の意見の間に分かれている点が幾つかあったわけでございます。  その一つは、ソビエト側が一九九二年までに沖取りを全面禁止するという非常にきつい原則論をぶち上げてきたという点でございます。それからもう一つは、今年度の具体的な操業条件、例えば漁獲クォータでございますとか操業水域の問題、さらには取り締まりの強化というものにつきましても、三月段階の協議の中では相当の隔たりがあったわけでございます。それで、実質きょうから始まりました協議におきましてこの隔たりがどれだけ急速に埋まっていくかということは、きょう始まったばかりでございますので現時点で何とも申し上げられませんけれども先生からもお話がありましたように出漁期も迫っておりますので一日も早く受け入れ可能な条件で妥結できますように、現地においても頑張ってくれると思いますけれども、我々といたしましてもいろいろな指示なり応援というものをしながらこの交渉の早期妥結に向けて全力を傾中してまいりたいと思っております。
  138. 神田厚

    ○神田委員 ソビエトは一九九二年までに沖取りをやめよう、こういう提案をしております。この沖取りの問題は母船式というような考え方もありまして、結局大勢としては沖取り禁止の実現の可能性が非常に強いという感じを残念ながら持たざるを得ないような状況になってきておりますが、水産庁としてはその辺のところはどういうふうに考えておりますか。
  139. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ソビエト側が言っております沖取り禁止、これはことし急に出てきた話ではございませんで、過去再三そういう方向でのいろいろな動きがあったわけでございます。そういう中で、今年度はかなり確固たる態度でこういうものが示されてき、相当強い調子であることは事実でございまして、これを覆すためにどういう方途が講ぜられるかということにつきましては現時点で我々も悩みが非常に大きいわけでございます。しかし、我々にとりましては長い間いろいろな経緯なり歴史の積み重ねのある漁業形態でございますので、何とか我が方の立場というものをソビエト側にも理解していただきたいということで、これからもそういう努力を続けてまいりたいと思っております。
  140. 神田厚

    ○神田委員 それから、このサケマス問題では、現在アメリカと争っております哺乳海産動物の裁判の問題がございます。これがアメリカ二百海里内でとれないということになりますと、結局新しい漁場を求めていかなければならないという問題がありましてますます大変な問題になってくるわけでありますが、この裁判の経緯と今後の見通し等々についてお話を伺いたいと思います。
  141. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の裁判の経緯でございますけれども、まず二月十六日にアメリカの連邦高裁が、先生から今お話がありましたような案件につきまして連邦地裁の行っておりました我が国母船式サケマスの操業の暫定差しとめ命令を支持するという判決を出したのがきっかけになっておるわけでございます。こういう判決が確定いたしますと本年の操業ができなくなってくるという緊急事態に立ち至りましたので、日本政府といたしましても、適正なアメリカの許可証というものをもらっていたわけでもございますし、アメリカ政府に対して訴訟を含めて何とか我が国の母船式サケマス漁船の操業確保ということが継続できるよう強く働きかけてきた次第でございます。そういう中で、四月一日に至りまして米国政府が連邦高裁に対して再審請求、それから暫定差しとめ命令の執行停止の請求ということを行ってくれたわけでございますが、これにつきましては、アメリカ政府とともに母船式サケマス漁業者団体も訴訟当事者になりまして、現在法務対策を行っているところでございます。  この見通しでございますけれども、こういう裁判という問題でございますので、残念ながらその動向というものを現時点で見通すということは困難でございますけれども、これからもアメリカともども訴訟対策に万遺漏なきを期しまして、今後とも我が国の母船式サケマス漁業の継続ということに何とか努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  142. 神田厚

    ○神田委員 これはいつごろ裁判の判断が示されるというふうにお考えでありますか。
  143. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 裁判のことでございますので、なかなかいつということは我々もそうでございますし、アメリカの当局者も見通しが立たないわけでございます。過去のこういう事案についての扱いからいいますと、早くて一カ月で決着のついているような同じような法律関係の争い事というのはあるようでございますけれども、物によりましては相当長期を要したというようなものもありますので、何とか一日も早い訴訟の進行ということにつきましてアメリカの法務当局者に対しましてもいろいろな働きかけを我々といたしましては行っているところでございますけれども、残念ながらどの時点になれば判断が出るかということにつきましては、全く我々として見通しを述べる素材を持ち合わせていないという段階でございます。
  144. 神田厚

    ○神田委員 サケマスですから出漁の時期もありますし、そういう意味では一刻も早い解決のための努力をさらにしていただきたい、こういうように思っております。  そこで、この日ソ漁業問題の最後でありますが、日米加、日本アメリカ、カナダの漁業条約というのがございますね。これによりますれば、当然日本アメリカの二百海里の中で操業ができる、こういうふうな約束になっているはずだと思いますが、しかしアメリカはPM法で二百海里内操業を認めないと非常に矛盾した決定をしておりますね。この点について水産庁の方としてはどういう見解を持っているのか、さらに外務省等を通じてこれらについての対米交渉をしているのかどうか、その辺をお聞かせをいただきます。
  145. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話がありましたような日米漁業条約、こういう枠組みの中で今まで操業をやってきたわけでございますけれども、今回せっかく条約がありながら操業が実現できないということで危ぶまれておるわけでございまして、その点につきまして、我々といたしましても非常に遺憾な思いをしているわけでございます。水産庁といたしましても、米国政府に対しましてその訴訟上最大限の措置をとることを要請してまいった次第でございますけれども、先ほど御報告申し上げましたように、米国政府自体も控訴審での再審あるいは執行停止の請求というものを行っているところでございますし、それから当方といたしましてはこういう訴訟の進展状況ということとも絡みますけれども、米国の二百海里の水域内での操業が仮に不可能となった場合には代替漁場というものを設定すべきであるということを日本側といたしましても関係国に対しまして要請しておるところでございます。  こういう努力は水産庁だけじゃなくてもちろん外交のチャンネルでございます外務省とも相携えながらこういう動きをしているわけでございますけれども、今後ともそういう努力を継続いたしまして、何とか母船式サケマス漁業の操業確保ということのためのできるだけの努力というものを続けてまいりたいと思っております。
  146. 神田厚

    ○神田委員 昨年暮れの日米漁業条約の問題でも、条約を結びながら約束を履行しない、条約で認めておるものを否定してPM法を発動している。また日米加というその条約の基本のものでも、当然アメリカの二百海里内での漁業が保障されているにもかかわらずこれが同じように二百海里内での操業を禁止されている。法律仕組み、よく勉強してなくて恐縮でありますが、私は、やはりアメリカ国内法というよりも外国と結んだ条約の方が常識的に言えば優先するんだろうと思うのであります。そういう意味では、この二つの日本アメリカとの関係で結ばれた漁業条約が全然機能してないということは極めて重大な問題だと思っております。ただいま答弁がありましたが、水産庁はひとつ外務省に強力に働きかけてアメリカ政府に対してきちんとした正式な抗議をし、正式に外交交渉の場に持ち込むべきであると考えておりますが、いかがでありますか。
  147. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 アメリカ関係につきましても、こういう事態が生じまして直ちに私自身在京の大使館を招致いたしましていろいろと抗議を申し入れておりますし、それから現地の大使からも関係先に抗議なり是正方要請というものを、過去も行ってきたわけでございますけれども、今後とも強力な漁業交渉なり漁業外交の展開というものにつきまして、外務省とも十分連絡をとりながら対処してまいりたいと思っております。
  148. 神田厚

    ○神田委員 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案の方の質問をいたします。  いろいろ質問が長時間にわたって行われましたのでなるべく重複しないように質問をしたいと思っておりますが、まず今回の改正目的であります。  今回の法律改正目的は、提案理由によりますと、一つ中小漁業者共済需要の多様化に対応すること、二つに漁業実態に即した制度とすること、三つに制度の健全かつ円滑な運営を確保すること、こういうふうにこの三点が強調されております。また、法案を見ますと、国の特別会計を初め共済事業の赤字解消のための改正点が目立つのであります。しかし心配しますのは、収支改善余り急ぎ過ぎますと、優良な漁業者が制度から離れて事故率の高い人だけが残るという意味の、いわゆる制度の健全化に反する結果になるおそれが多分にあるというふうに考えております。  今回の制度改正には、政令以下も含めますと漁業者に歓迎される改正もあるわけでありますから、この点を一番問題になっております加入拡大に大いに利用することが必要だというふうに考えております。また、この制度は運用に任されるという部分が非常に多いわけでありますので、漁業者のニーズに合った運用を心がけるべきであろうと考えますが、基本的な考え方をまずお聞かせいただきたいと思います。
  149. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の制度改正の趣旨につきましては、先生から今総括してお話しあったとおりでございますけれども、こういう制度改正に至りますまでには、昨年学識経験者なりあるいは関係団体の代表者の方々を委員といたしまして漁業共済制度検討協議会というものを開催して幅広いいろいろな御意見をちょうだいして、その報告を踏まえまして今回の制度改正というものをお願いしているわけでございます。具体的には何といいましても加入率を向上する、そういうことを通じまして共済の健全な運営を実現していくということから申しまして漁協契約方式を導入いたしますとか、それからさらには掛金率の割り増し、割引というような掛金率体系の見直しでございますとか、それから長期共済改善というようないろいろな見直しを行いまして、漁業者にとって加入しやすい魅力のある制度にしようということで今回お願いしているわけでございます。  しかし、加入率を上げますためには、何といいましても系統自体の自主的な運動というものが大きく作用してまいりますので、系統ともども都道府県も加えまして、加入の向上のための運動ということを国自体も積極的に取り組むということで、若干ではございますけれども国でも予算措置を講ずる等によりまして、そういう自主的運動に対して側面からのバックアップというものを行ってまいりたいと思っているわけでございます。
  150. 神田厚

    ○神田委員 それでは次に、基準漁獲数量の導入問題について御質問申し上げます。  今回の改正案で最大の問題点は、特定漁業への基準漁獲数量の導入、この点であります。この改正は、漁業共済基本でありますPQ方式に一部穴をあげるもので、その穴は、政府が進めている栽培漁業の進展とともにさらに大きくなっていく可能性があります。確かに、北海道サケ大型定置漁業に五十八年以来多額の共済金が支払われ、共済収支は大幅な赤字になったこと、あるいは特定の地域に常に共済金が支払われることは正常な共済制度の姿ではないということは、私どもも十分理解できるわけであります。しかし、その是正が必要であるとは考えますけれども制度基本にかかわる点を変えるということで今回はこれに対応したわけでありますが、ほかに方法がなかったのかなと考えるものであります。  そこで、まずお伺いいたしますが、サケマス大型定置共済収支赤字の原因について、各委員の質問に対しまして、魚価の低下が一つの要因であるという長官答弁がありました。それから、魚価低迷の原因はシロザケの漁獲数増加が大きなものであるという説明があったわけであります。これに対して各委員とも、輸入が大きな原因ではないか、こういうふうな形で説明を求めたのでありますが、私も同様にそのように考えております。長官の説明では、輸入されているのはべニザケであって、シロザケの価格形成には直接的影響はないと言われておりますが、この点については非常に疑問を持っております。べニザケ輸入は何トンあるのか、十年間の公式統計をこの委員会に提出していただけるようなことがあれば、この辺のところももう少しはっきりするのではないかというふうに思っておりますが、その点をどのように考えておりますか。
  151. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 べニザケ輸入数量でございますけれども昭和五十三年に約五万トンというサケマス輸入があったわけでございます。それから次第に増加してまいりまして、五十七年に十万トン台になりまして、ここ数年間は十万トンないし十一万トンということで、サケマス全体の輸入数量というものは比較的安定的に推移しているわけでございます。  この中でべニザケが具体的に幾ら入っているかということでございますけれども、これは残念ながら公式統計というものはないわけでございますが、業界からの聞き取りを集計いたしました結果で見ますと、サケマス全体の輸入量のうち六〇ないし七〇%程度と言われております。ここのところ十万トンないし十一万トンがサケマスの総量でございますので、これを母数として考えますと、ベニザケ輸入量は、ここ数年間は六万トンないし七万トン程度というふうに数字としては把握しているわけでございます。
  152. 神田厚

    ○神田委員 商社の方の聞き取り調査で、昭和六十二年度の推計によりますと、サケマス輸入状況の中で、ベニザケが六万八千三百トンで全体の約六一・五%、それからシロザケが一万三百トンで九・三%、マスが一万五千八百トンで一四・二%、ギンザケが九千九百トンで八・九%、マスノスケが四千三百トンで三・九%、大西洋のサケが二千四百トンで二・二%、合計十一万一千百トン程度入っている、こういうふうなことであります。  これで考えていきますと、やはりべニザケが大量に入ってべニザケ価格が安くなっているということにおいて、シロザケが同じように値を引っ張られて安くなっている、こんなふうに考えられると思うのでありますが、この点についてはどういうふうに考えておりますか。
  153. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ししましたように、ベニザケが全体の六割から七割入ってきておりますので、六万トン、七万トンという大きな数量になっているわけでございます。  ただ、その価格形成というものをいろいろな形で分析してみますと、定置でとれておりますアキザケ価格、これよりもべニザケの場合には大体五割から十割高い価格帯で今まで動いてきている。具体的に申し上げますと、ベニザケの場合にはキロ当たり千四百円から千五百円というのがここのところのあれでございますけれどもアキザケの場合には七百円から八百円ということで、その価格帯が大きく異なっているということが一つあろうかと思いますし、それから、用途につきましてもべニザケアキザケでは若干違っているというようなことで、相当流通なり価格形成におきまして——もちろん同じサケでございますから、トータルとしてふえますとそれに伴う価格変動というものは当然あるわけでございますけれども、直接的に輸入のべニザケというものがアキザケ価格形成を全部買って出ているという形ではないんじゃないかということを言っているわけでございます。  例えば数字で申し上げましても、先ほどお話しいたしました、五十七年にサケ輸入というものが初めて十万トン台、前年は七万トン程度でございましたが十万トン台に大幅にふえた年でございますけれども、この年には国内産が前年よりかなり減ったわけでございます。国内産が数量として減り輸入が大幅にふえていながら、アキザケ価格はこの年は上昇しているわけでございます。それから、その翌年の五十八年を見てみますと、輸入数量が前年より若干減りましたけれども、逆に沿岸物がかなりふえたという形になっているわけでございます。  これは、輸入数量は減ったけれども沿岸物がふえたということの結果、沿岸物の価格というものが大幅に減じたというような過去の数字もございますので、一律的に輸入サケ数量というものが国内産のサケ価格を決定するすべてではないということは御理解いただけるかと思いますけれども、いずれにしても、サケ全体の数量なり価格動向の一環の中でシロザケなりアキザケというものも位置づけられていることは当然でございますので、そういう点から申し上げますと、我々といたしましても、全体の動きというものにつきましては慎重な態度で、大きな関心を持ちながら見守ってまいっていることは確かでございます。
  154. 神田厚

    ○神田委員 なお一層、それらの価格形成について水産庁としてきちんとした原因を把握をしていただきたいということを要望しておきます。  それで、これは関係者に聞きますと、サケマス共済赤字の一部は人災ではないか、こういうように言われております。これはどういうことかといいますと、昭和五十年代の中ごろからシロザケの放流尾数が高水準に定着をしている。政府はギン系の前期群の放流に力を入れ始めた。サケが例年より早い季節に回帰しますと、当然海流が異なっておりますので魚が従来の道と違う道を通ることになる、これが共済事故発生の原因の一つではないか、放流方法を変えたことによる一時的なものであるというふうなことをおっしゃる方がおるわけでありますが、この点についてはどういうふうにお考えでありますか。
  155. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話がありましたように、共済金の支払い原因の一つといたしまして、回帰パターンの変化というようなことが確かに地域的な不漁の原因としてあることは事実でございますし、そういう回帰パターンの変化によりまして共済事故が生まれてきたという地域が過去にあったことも事実でございます。しかし、大きな問題になっておりますサケマス大型定置漁業の赤字の主なる原因は、何といいましてもトータルとしての豊漁による価格の下落ということが大きなものでございまして、こういう回帰パターンの変化という地域的な問題は抱えながらも、やはり全体の回帰の数量がふえたということが魚価安につながったというふうに認識している次第でございます。
  156. 神田厚

    ○神田委員 いろいろまた御質問をしたいのでありますが、時間が参りましたので、終わります。
  157. 菊池福治郎

  158. 山原健二郎

    ○山原委員 質問の最初に、海上保安庁お見えいただいておりますか。  高知県のマグロはえ縄漁船太起丸がグアム島近海で海難事故に遭いまして、船長と漁労長の二人が救助されましたけれども、いまだに六名が行方不明ということで、現在事故が発生しまして十一日経過しております。家族を初め地元漁業関係者の間で非常な不安が募っているところですが、現在の捜索救難状況及び今後の方針、態勢について簡単に御説明をいただきたいのです。  ここは条約上アメリカの分担区域ということも新聞に出ておりますが、日本政府としましても総力を挙げてこの救助に当たってもらいたいという要請が強いわけです。この点について海上保安庁の御見解を伺いたいと思います。
  159. 河端春夏

    ○河端説明員 お答えいたします。  昭和六十三年四月二十日、マグロはえ縄漁船太起丸が、四月十五日の夕刻、グアム島西方の海域での定時連絡を最後に消息を絶ったということにつきまして船主から届け出がありまして、海上保安庁では直ちにヘリコプター二機搭載型巡視船「みずほ」を現場に派遣するとともに、米軍及び米コーストガードに捜索救助の要請を行いましたところ、四月二十二日、北緯十二度四十六分、東経百三十六度十八分、これはグアム島の西方四百八十海里の地点でございますが、そこで救命いかだに乗って漂流中の二名が発見されまして、当庁から派遣いたしました巡視船「みずほ」がそれを救助いたしました。現在、残りの六名及び太起丸の船体を巡視船「みずほ」及び米軍機により捜索しているところでございます。さらに、六名が行方不明になっていることにかんがみまして、もう一隻のヘリコプター搭載型巡視船を現場に派遣している次第でございます。  本海域は、アメリカとの捜索の責任分担水域の米国側でありますので、うちの巡視船も派遣をいたしましたが、アメリカコーストガードに対しまして救助要請をしている次第でございます。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 御苦労なさっておることはよく知っております。捜索救難に全力を挙げておられるわけでありますが、もう一つは、事故原因の究明も重要だと思います。  救出されました船長の話では、ぶつかってきた船は千トン程度の大きな船で、しかも真っ昼間です。船長は、その船名を見ておられるわけですが、これは日本語ではなかったということです。事故原因の究明については、補償の問題も絡んでまいりますので、どういう手だてが講ぜられるのでしょうか。
  161. 河端春夏

    ○河端説明員 海上保安庁としましては、二名の方が救助されておりまして、その方から衝突のときの状況を聞いております。それにあわせまして国内関係の方に手配するとともに、本海域はアメリカコーストガードが担当している海域でございますので、アメリカコーストガードの方に情報の収集、照会をしている次第でございます。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 もし大きな船が衝突すれば、船はどういう形態になっておるかわかりませんけれども、例えば塗料の問題とかあるいは船が到着する港とかいうことを考えますと、これは大変わかりにくい面が出てくる可能性もあるわけですね。しかも、ここは航行の非常に激しいところで、僚船も行っておりますし、こういう事故が起こらないという保証もありません。  私は実は、海難の問題について今までしばしば取り上げてきたわけですが、例えば日昇丸の場合は、潜水艦が浮かび上がって十五名が海に投げ出され、二名が死亡するという事件です。それから、和歌山沖におきますところの海難の場合も、衝突事故で船が転覆して亡くなるというようなことで、後の補償問題あるいは原因の究明というものはなかなか難しいのですね、最初のうちはわからないということで。漁船の安全操業と航行がこういう形で脅かされる事例が幾つかあるわけですから、この点についてはきょうは時間がありませんからこれ以上質問申し上げることはできませんが、水産庁としましても漁船の安全操業ということについては万全の対策をとるべきだと思いますけれども、この事件につきましてお考えがございましたら水産庁長官にぜひ伺っておきたいのです。
  163. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回非常に不幸な事件が起きたわけでございます。水産庁といたしましても今後同種の事故が発生しないよう、これは漁船の側でも常日ごろ安全確保のためにいろいろな努力をしているわけでございますが、事故の未然防止のために従来から見張り等を立てるように指導してきておりますけれども、こういう指導をさらに強めてまいりたいと思っております。
  164. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、海上保安庁だけの原因究明ということになりますと、海上保安庁の任務をはみ出す面があるとは思います。あるいは水産庁として、外務省あたりとも連絡しましてこの原因をぜひ究明していただかなければ、もしこの六名の方に不測の事態が起こりましたときには家族としてもやりきれない思いがするわけだと思いますので、この点ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、実はきょう、もうお話も出たと思いますが、五つの野党の議員が百三十名、二百名とも言われておりますが集まりまして、農産物自由化の問題について、特に牛肉オレンジの問題について、絶対に自由化を容認してはならぬという決議を上げました。そして、訪米する佐藤農水大臣、また竹下総理に対しても、先ほどお目にかかって各党の書記長を初めとして要請したわけでございます。これは今重大な時期を迎えまして、あえてここで質問はいたしませんけれども、これも国民の大きな声である、この背景をバックにしまして毅然たる態度をとってほしいということを、きょうは大臣がおいでになりませんから政務次官に聞いていただきたいと思いまして、御要請申し上げたいと思います。  それから、漁災法について二、三質問して終わりたいと思います。  まず最初に、養殖共済の中でノリ養殖についていわゆるPQ方式を本格実施することとしておるわけですが、他の養殖漁業についても導入するというお考えはないかという問題です。例えばハマチですね、一昨年来魚価の低落、低迷を来しております。物損方式では救済の対象にならないという点がありますが、これらの点についてはどうお考えでしょうか。
  165. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 養殖共済で、ノリ養殖につきましてはPQ方式ということで今回本格実施するわけでございますけれども、ノリ以外の養殖業につきましては、いろいろと御議論なり問題はあろうかと思いますけれども、我々といたしましては、現行の仕組みで養殖実態に対応し得ているのじゃないかというふうに考えておりますし、それから、ノリ養殖業に比べましてその他の養殖業の場合には、漁協におきます共販体制というものが残念ながら十分には確立されておりませんで、こういうPQ方式を導入することにつきましていろいろ共済実施上の問題もあるということでございますので、当面は特定養殖共済を実施するということは考えていないということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  166. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の法改正に伴う政令等の改正で、新たに本共済制度の対象種目として追加しようとしているものは、ナマコこぎ網、貝けた網、イセエビ刺し網、ウニかごあるいは魚類養殖用の小割り生けすなどがあるとお聞きしておるわけです。養殖業の多様化に伴って、例えばカンパチあるいはギンザケ、ヒラメ、その他マアジ、シマアジ、クルマエビ等の養殖漁業についても共済の対象に入れてもらいたいとの要望が出ていると聞くわけですが、これに対する対応はいかがでしょうか。
  167. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回制度改正をお願いいたしますまでにいろいろな要望がいろいろな形で出てきたわけでございますけれども、我々といたしまして、それぞれを精査いたしましたところ、ただいま先生から御指摘ありました漁種につきましては、現時点では、一つは引き受け及び損害査定時に数量確認ができること等の執行体制が確立してないという問題がございますし、それから、生産数量も地域的なものが多うございまして、全体的な広がりから見まして危険分散というものが十分に図られないという点がございます。それに加えまして、データの入手でございますとか保険設計というものが、ただいま御提示のあった漁種につきましてはまだ十分整備されておりませんで、技術的にも保険設計になじみがたいという問題がありまして、残念ながら今回その対象とすることを断念したわけでございますけれども、養殖業の中にはここのところ急速に広がりつつあるものもございますので、こういうものにつきましては、今後の漁業実態のあり方というものを念頭に置きながら、そのときそのときにおきまして検討を深めてまいりたいと思っております。
  168. 山原健二郎

    ○山原委員 これと関連しまして、地域共済は本法律に根拠を持つ共済制度ではありますが、国庫助成の恩恵を受けず、いわば関係者の自助努力で運営されるものを国が認可するというものです。これでは漁業者の負担も大きくなりますので、国の助成も受けられる漁業共済の対応ができないかということでございますが、この点、再び伺っておきたいのです。
  169. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 地域共済という形でそれぞれの地域で特に要望の強いものにつきまして行っているものがあるわけでございますけれども、こういうものにつきましてはそれぞれの地域特性に立脚して自主的に行われているという仕組みでございまして、やはり漁業共済組合の自主的な運営にゆだねるということが当面適切かと思っております。こういう自主的にそれぞれの地域でやっているものについて、逆に国が全国的観点から一律的な考え方のもとで補助を行ったりあるいは全国共済にするということにつきましては、運用上もそれから考え方としても問題がありそうでございますが、いずれにいたしましても、地域共済といってもそれぞれの地域の漁業者にとっては重要な、必要な仕組みでございますので、我々といたしましてもそういうものが安定的に発展できますように、相談に応ずるなりいろいろな協力というものは続けてまいりたいと思っております。
  170. 山原健二郎

    ○山原委員 一定の全国的広がりがなければ難しいという御趣旨だろうと思いますけれども、もともと日本漁業は南北に非常に長いいわゆるローカル的な性格が強いものでございます。そういうものが多いわけでして、地域、地域に即した対応が求められているのではないかということを指摘しておきたいと思います。  次に、地域共済として既に実施されている岩手三陸のワカメ共済については、ぜひ本則の漁業共済制度のもとに移行してもらいたいという要望があると伺っております。ワカメについての共済制度は集団契約方式のものがあるが、この三陸のワカメ共済の場合は個別的な被害についても共済で対応しようとするもので、全国的な広がりを持つものであり、ぜひ要望の方向で対応してもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  171. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 そういう要望が強く地元から出ていることは私も十分承知しておりますけれども、全国的には集団加入方式というものが定着しておりまして、個別補てん方式をとってほしいという動きのところは現時点では岩手県だけという形になっておりますので、これを現時点で直ちに国の共済事業ということで実施することにはいろいろな困難があろうかと思っておりますけれども、今後とも共済団体の御意向なりあるいは漁業実態というものも十分調査いたしまして、その取り扱いにつきましては今後の問題として念頭に置かせていただきたいと思っております。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に見解を伺いたいのですが、特に農業のような価格支持制度がない漁業の場合は、この漁業災害補償制度がその一定の肩がわり役を果たしているというのも事実であると思います。このことは、本制度が単なる災害の際の被害補償制度にとどまらず、漁獲金額の減少等にも対応する制度を盛り込んでいることにも示されていると思います。したがって、経済的採算制だけでこの制度の運用を行ってはならぬと思うのでございますが、この点についての御見解を伺いまして私の質問を終わりたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  173. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業共済制度は、共済制度という一定の限定はございますけれども、大きく経営そのものにかかわっているということは当然でございますし、それから、魚価の変動というものをPQ方式ということを通じまして吸収するという形に相なっておるわけでございます。したがいまして、こういうものにつきましては、国といたしましても自主的な共済にとどまらず、国自身がやはり一定の体系で助成を行うということで、掛金一定部分なりあるいは事務費について従来から助成を差し上げているわけでございますけれども、今後ともそういう立場に立ちまして漁業共済制度というものが円滑に運営されるよう、いろいろな手だてを講じてまいりたいと思っております。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  175. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  176. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出漁業災害補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  177. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  178. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、本案に対し、笹山登生君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。沢藤礼次郎君。
  179. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表して、漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   近年における国際的な二百海里体制の定着、水産物需要の伸び悩み、周辺水域における漁獲不振等我が国水産業をめぐる厳しい環境の中で、漁業災害補償制度漁業生産の確保と漁業経営の安定に重要な役割を果たしており、漁業者が本制度に期待するところは大きいものがある。   よって政府は、漁業の永続的な安定と発展に資するため、生産構造の整備・強化のための諸施策を充実するとともに、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。      記  一 漁業災害補償制度の健全な運営のために普遍的な共済加入が不可欠であることにかんがみ、適切な補償水準及び掛金率を設定する等漁業実態に即し、かつ、漁業者の共済需要を踏まえ魅力ある制度確立に努めるとともに、漁業共済組合及び漁業協同組合の共済事業推進体制の充実並びに政府・地方公共団体が行う融資措置等の経営対策と本制度との有機的な運営に努めること。  二 漁村社会の変化等にかんがみ、本制度漁業依存度の高い経営の安定に十分効果を発揮し得るよう対象漁業者の範囲について検討するとともに、漁獲共済において義務加入の不成立が加入率低迷の一因となっていることに対処し、その成立促進のための措置を講ずること。  三 基準漁獲数量設定による共済金支払方法の特例を設けるに当たっては、共済金の減額により漁業の再生産が阻害されることのないよう十分配慮すること。また、特例措置の対象となる漁業の種類は、漁業実態等を踏まえ、さけ・ます大型定置漁業に限ること。    併せて、さけ・ます大型定置漁業に係る共済事故多発の原因をさらに明らかにすること。  四 輸入水産物が急増している状況にかんがみ、水産物の国内需給を踏まえた秩序ある輸入に努めること。  五 養殖技術の発展に伴い多様な魚種の養殖業が定着している現状にかんがみ、共済需要に応じ共済対象の拡大を図ること。また、地域共済事業に対する公的援助及び同共済事業として定着した事業の共済事業への移行の在り方につき検討すること。  六 国、連合会、共済組合の段階別責任分担割合については、本制度性格を踏まえつつ、それぞれが抱える累積赤字の状況並びに共済事故の発生状況に即し適宜・適切に見直しを行うこと。  七 特定養殖共済の本格実施に伴うのりの養殖共済の廃止については、本則共済への加入の現状を踏まえ、十分な経過措置を設けて円滑に移行すること。  八 漁業経営の合理化の必要性並びに漁業関係共済・保険事業の運営の現状等にかんがみ、総合的な漁業関係共済・保険制度確立に向けてその統合・一元化を検討すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  180. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  笹山登生君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  181. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣臨時代理から発言を求められておりますので、これを許します。林田農林水産大臣臨時代理
  182. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、十分検討の上、善処してまいりたいと存じます。     ─────────────
  183. 菊池福治郎

    菊池委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  185. 菊池福治郎

    菊池委員長 次に、内閣提出昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  まず、趣旨の説明を聴取いたします。林田農林水産大臣臨時代理。     ─────────────  昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  186. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 昭和六十二年度における農林漁業団体職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農林漁業団体職員共済組合制度は、公的年金制度一つとして、農業協同組合等の農林漁業団体の役職員を対象に年金の給付事業を行うものであり、もって、これら団体の事業の円滑な運営に資するとともに、農林水産行政の推進上重要な役割を果たしているところであります。  従来から、農林漁業団体職員共済組合法の年金の額につきましては、その実質的価値を維持するため、社会的経済的諸情勢の変動に対応して、必要に応じ、適宜、改定措置を講じてまいりました。  この法律案は、昭和六十三年度における農林漁業団体職員共済組合法の年金の額について、昨年度と同様、厚生年金、国民年金、国家公務員等共済その他の公的年金制度における措置に準じ、昭和六十二年の消費者物価の対前年上昇率を基準として、引き上げを行おうとするものであり、これに必要な所要の規定を設けております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  187. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、明二十七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会