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中井参考人 東京水産大学の
中井でございます。
参考人としてごく簡単に御
意見を申し上げたいと思います。
御承知のように、現在日本経済を取り巻く
環境というのは非常に厳しくなっております。諸外国の日本に対する貿易自由化の要求は非常に厳しく、特に日本の食糧
産業も、従来のような日本の国策でいいのかというような反省の時期に到達しております。つまり国際化にどう対応すべきかという重大な局面を迎えておりまして、当面牛肉あるいはオレンジというもので農業問題が大きくクローズアップされておりますけれ
ども、
水産業、これは食糧
産業の重要な部分でありますが、これも決して例外ではございません。
先ほど
宮原会長が説明しておりましたが、最近の
水産物の
輸入というのは非常に増加しておりまして、
昭和六十二年の数字を見ますと、
輸入量が二百万トンを超えておる。それから金額で一兆二千億円といったような状態、これは過去十年間に量で二倍以上、それから金額では
円高の問題がありまして若干増加が少ないですが、それでも二倍近い増加であります。
一方、国内
生産量の方は、この十年間に
生産量でたった二割程度、
生産額では一割以下といったような状態、こういったアンバランスな供給状態というものが現在の日本
水産業の
実態でございますが、これはとりもなおさず日本の
水産業がいよいよ国際化してきたということのあらわれでございます。
この
輸入が激増してきた理由というのはいろいろあるわけでございますが、
基本的な点だけを申し上げますと、日本の国内
水産業というものが国内の需要に対して量的、質的に十分対応しておらないのではないか、このことを
基本的な問題として意識しなければならないと思います。つまり、二百海里
時代に入って既に十年たっておりますけれ
ども、この二百海里
時代という新しい海洋秩序の
時代に即応して日本の二百海里の中の
資源をいかに大事にし、有効に活用して、そして
国民の
消費はどんどん変わっておりますから、この
変化に十分対応して供給していくといったような、日本の
水産業自体の構造
改善というものが十分進まなかった、現在行われておりますけれ
ども、十分でないというところに
最大の理由があるのではないか。要するに、国際化に対応するという面で今の問題が
最大の
課題ではないかと思うわけであります。つまり
輸入とかあるいは
消費とかそういうものはいわゆる市場原理というものがあるわけで、国際的な市場原理に十分対応して
生産体制が
確立されるということ、これは農業問題と比べて非常に
参考にしなければならない
水産業の
課題だと思います。
そこで、それじゃ一体どうしたらいいのかということでございますが、具体的には
資源管理型
漁業を国内で
構築していかなければいけないということになろうかと思います。この内容につきましては、詳しくはまた御質問があればお答えいたしますが、要するに我々に与えられた国内の
資源というのは、これは客観的に自然現象、自然法則として与えられておるものでありますから、それを的確に
把握して的確に利用していくというやり方、これは従来のように
漁業者がそれぞれ勝手にと言ったら語弊がありますが、それぞれ競争して個々に少しでも余計とろうというようなやり方でやっていく、これは別な言葉で言いますと
資源収奪型
漁業というような言葉がありますけれ
ども、そういう形ではなくて、本当に
資源を十分見きわめて、それに見合った
漁業をやっていくということになるわけであります。
と同時に、
漁業というのはあくまでも
生産所得を
確保するというところに
目的があるわけでありますから、的確な需要というものを見計らって需要に見合った供給をしていく。
生産とそれから販売、こういうものを
資源と
消費という客観的な条件に見合った形で編成がえしていくというのが
資源管理型
漁業ということになるわけであります。
そこで、それをやるためには、今までのような、漁民がそれぞれ個々にばらばらにやるというようなことではなくて、
漁業協同組合が中心になって
地域営漁計画をつくり、その計画に基づいて漁民、
組合員がいろいろ
漁業をやっていく、こういう
体制づくりを早急にしていかなければいけないということになるわけであります。幸いに、
昭和六十年度から、国の
事業で沿岸域
計画営漁推進事業というのが行われておりまして、五年間に一般地区五百二十、濃密地区八十、合計六百の
漁業協同組合を対象にして
事業が進められるということになっております。現在、六十二年度までのその実績を見てみますと、そう大きく差はありませんが、全体的にやや低調であります。私も濃密地区の
協同組合をいろいろ回ってみますと、一番問題になりますのが、
地域営漁計画をつくった場合に、その計画にのっとってみんな一生懸命やるわけですが、何しろ
漁業というのは、御承知のように
自然災害というのが予期しないときにやってくる、いわば不可抗力的な問題があるわけであります。そういったものにどう対応するかということがはっきりなければその計画の実行というのができないわけです。
そういう意味で、現在審議になっております
漁業災害補償法、これが実は現在日本の
漁業のそういった補償に対する唯一の
制度でございます。諸外国を見ましても、実は漁獲に対する補償というのは行われておりません。そういう意味では、この補償
制度があるということは、日本の
水産業がいかに世界的に進歩しておるかということの一つのあらわれだというふうに私は思っておりますが、こういうものがあるわけであります。
したがって、
地域営漁計画を本格的にやっていくためにはみんなが
共済に入らなければいけない、これは当然であります。しかし現在のような、
協同組合がいわばあっせんをする、あっせん程度である、そして、二号
漁業、三号
漁業においては、それぞれ入りたい者は入る、入りたくない者は入らなくてもいい、組合はただあっせんするだけだ、こういうような
体制では、これは
地域営漁計画にのっとった
漁業共済とは言えないわけなんです。
そういう意味で、
漁業協同組合が責任を持っ
てこの契約者になるという
改正法案が今回出されておりますが、これは非常に時宜に適した
改正ではないかというふうに私は考えております。ぜひこのようなことを前向きに御審議していただいて、
漁業共済というもの、これは先ほど言いましたが、諸外国にはありませんけれ
ども、しかし、内容的に見ますとまだまだ不十分な点がございますので、これを完璧なものにしていく、このことが日本の
水産業それ自体の内容を高めることになる、こういうふうに考えております。
甚だ簡単でございますが、本法案の御審議の
参考にしていただければ幸いと存じます。(拍手)