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1988-04-20 第112回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       大石 千八君    川崎 二郎君       熊谷  弘君    小坂善太郎君       近藤 元次君    杉浦 正健君       武部  勤君    中島  衛君       石橋 大吉君    沢藤礼次郎君       田中 恒利君    野坂 浩賢君       前島 秀行君    安井 吉典君       武田 一夫君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         水産庁長官   田中 宏尚君         水産庁次長   木村 邦雄君         通商産業大臣官         房審議官    安藤 勝良君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質管理課長 小澤 三宜君         建設省河川局河         川計画課長   岩井 國臣君         建設省河川局都         市河川室長   日野 峻栄君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会会長         理事)     宮原 九一君         参  考  人         (全国漁業共済         組合連合会副会         長理事)    小林 大助君         参  考  人         (東京水産大学         教授 経済学博         士)      中井  昭君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     野坂 浩賢君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     前島 秀行君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出第五五号)  農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案内閣提出第五六号)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  本日は、本案審査のため、参考人として全国漁業協同組合連合会会長理事宮原九一君、全国漁業共済組合連合会会長理事小林大助君、東京水産大学教授 経済学博士中井昭君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。宮原参考人小林参考人中井参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、宮原参考人にお願いいたします。
  3. 宮原九一

    宮原参考人 全漁連会長宮原でございます。  まず最初に、本日参考人としてお招きをいただき、漁業災害補償法改正について意見を申し述べる機会をいただきましたことに対し、深く御礼申し上げますとともに、平素から諸先生方には水産業振興のために特段の御理解と御尽力を賜っていることに対しまして、この機会に厚く御礼申し上げます。  今国会では既に漁協合併助成法漁港法水産加工施設資金法等改正法案を可決していただきまして、ありがとうございます。特に漁協合併につきましては、漁協系統挙げて合併促進への決意を新たにしまして、全漁連を初め関係漁連の中に既に専任の部署を設置して、諸準備を進めているところであります。  改正法案についての専門的な意見は、事業実施団体であります漁済連小林会長にお願いすることにしておりますが、漁業共済制度の母体であります漁協系統を代表する立場から、一言所信を申し述べさせていただきます。  先生方御高承のとおり、本漁業共済制度は、中小漁業者が漁海況の変化、不慮の事故等によってこうむる損失相互扶助精神で補てんし合うことを目的発足した制度でございます。その後、水産業の担う使命の重大さから国の制度として位置づけられ、漁業経営上の収支を補てんする唯一の制度として、今日まで大きな役割を果たしてきております。特に、今日の厳しい漁業環境のもとで、漁業関係者の本制度への期待はますます高まっているところであります。  しかし、経営悪化による加入の伸び悩みと近年の共済事故多発により、収支は著しく悪化し、現行制度では現在の漁業実態に即応し得ない面が多々生じております。先生方の御尽力をいただき、昭和三十九年の発足以来、数次にわたり制度改正が行われてまいりましたが、これは、本制度が真に漁業経営の支えとなって、経営安定対策として抜本的役割を果たす制度に成長することを皆が願ったからであります。  今回の改正につきましても、漁協系統の中では漁災制度確立推進中央本部を中心に鋭意検討協議を重ねてまいりました。さらに、水産庁に設置されました漁業共済制度検討協議会の場においても、十分に御協議をいただいております。  今回の検討の焦点であって、制度改善の大きな柱は、何といっても加入普遍的拡大を図ることであります。共済制度は、同様な危険にさらされている者が多数参加して初めて、事業の健全かつ円滑な運営が図られるものであります。このため、今回提案の漁協契約方式導入は、今後の加入促進の大きなてこになるものと期待しております。また、収支改善のための改正案につきましても、本制度の円滑なる運営に資するものと考えております。  漁業経営の安定にとって、漁業共済制度は必要不可欠のものである一方、漁協推進体制基盤強化なくしては、本制度の拡充も望めないという関係にあります。このため漁協系統挙げて、さらに取り組んでまいる所存でありますので、ぜひとも可決いただきますようお願い申し上げます。  次に、関連しまして、本漁済制度基盤である我が国漁業漁協が今日置かれている現状とこれの基本対策について、若干の私見を申し述べたいと存じます。  先生方御高承のとおり、二度のオイルショック以降、これまで漁業発展を支えてきた諸条件がことごとく失われ、我が国水産業状況は著しく変化しております。すなわち、海外漁場からの撤退、我が国二百海里内の資源悪化、魚価の低迷漁業漁協経営悪化漁村活力低下等々であります。  このような状況下にあって、我々の使命は、我が国水産業の再構築を図り、二十一世紀に向けての将来展望を切り開いていくことであり、この基本方向について、私は次のように考えております。  まず、漁協水産業漁村振興の中心的な担い手として位置づけることであります。そして、漁業を単に第一次産業すなわち生産という役割にとどまらせることなく、広く消費者ニーズに沿って、生産から流通消費に至る一貫体制をつくり消費者に密着した食品産業として確立すること。さらに、都市住民との交流を深め、自然、景観、文化、海面利用等漁村の特性を生かした幅広いサービスを提供することにより、漁村付加価値を集め、その活性化を図ることが必要だと考えております。この基本的な考え方に立って、我が国水産業が現在直面している諸問題に取り組み、難局を打開していきたいと考えております。  時間の関係がありますので、次の五点に絞って簡単に意見を申し述べさせていただきます。  まず一に、資源漁場問題であります。  二百海里体制へ移行して十年間が経過したわけですが、今や、我が国漁業生産量の八割は我が国二百海里内漁業に頼らざるを得ない状況となっております。しかし、我が国周辺漁場における資源悪化し、漁獲不振は長期化しております。  二百海里内の限られた資源漁場を有効的に、しかも永続的に利用していく体制を早急に確立することが最大課題となっております。このため、漁場整備開発栽培漁業の一層の推進、いわゆる畑づくり種づくりが今後さらに積極的に推進されることが必要であります。さらに、資源管理体制確立するために、資源状況把握とともに資源に対する我が国管轄権確保することも大切なことであります。このため、二百海里全面適用の一日も早い実現が求められているところであります。  また、資源量漁獲努力量との調和を図ることも不可欠なことであります。近年における漁船の大型化漁労設備高度化は、操業の省力化生産性向上をもたらした反面、限りある資源量に対して過剰投資となり、資源枯渇を招く結果となりました。これに漁価低迷が拍車をかけて、漁業経営が今日の危機的状況に至ったことを身にしみて痛感いたしております。このような現状を打破するために、漁協系統では計画営漁実施資源管理型漁業等確立に向け、必死の覚悟で取り組んでおります。  これらの自主共同管理を円滑に進めるため、行政においても種々御指導をいただいておりまするが、さらに自主努力と相まって真の二百海里時代に対応した漁業制度のあり方についても見直しが行われるよう願うものであります。  次に輸入水産物問題であります。  昭和六十二年の輸入水産物は、急激な円高海外漁場からの締め出し等原因により、量、額とも史上最高となりました。これの国内価格への影響は必至でありますが、悲しいかな我々にはこのような輸入増加に対して有効な歯どめ措置を持っておりません。国民食糧として重要な位置を占める水産物がかくも輸入に頼っている現状に対し、果たしてこれでよいものか非常に危惧を抱くものであります。  開放経済下にあって、輸入対策基本は、品質・価格面輸入水産物に対抗できる体質強化してゆくことでありますが、我が国水産業の場合にはまだまだ幾多の保護を仰がざるを得ない状況であります。このため、IQ枠の堅持等秩序ある輸入制度の一日も早い確立を強く望む次第であります。  第三に、消費流通への取り組みについてであります。  国民所得向上生活様式多様化は、我が国消費構造を大きく変化させました。水産物に対する消費者ニーズも、グルメ指向活魚需要簡便化、健康増進等多様化しております。畜産物輸入水産物との厳しい競合の中で、消費者ニーズに対応し得る加工流通体制整備が急がれております。しかし、漁協販売事業実態は総じて取扱規模が小さく、取扱高・収益には減退傾向が見られます。出荷体制においても旧態依然としたところがあり、価格形成面漁業者の主体制が発揮されにくい状況であります。  このため、漁協系統付加価値の高い加工流通分野への取り組みを拡大するとともに、消費価格対策を積極的に講じ、魚価安定と所得向上実現することによって漁村活性化及び組織強化等を図ってまいりたいと存じます。  第四に、漁協組織機能強化についてでありますが、漁協はその事業活動を通じて組合員営漁生活向上に寄与するとともに、地域振興担い手としての役割期待されています。しかし、漁業経営の不振に伴う財務基盤悪化やその小規模性等により、組合員地域の負託に十分こたえることができないのが現状であります。資源漁場消費流通海面の多目的利用状況等水産業漁村をめぐる環境が大きく変貌している中で、漁協系統がこれらの諸問題に的確に対応していくことが、水産業の将来展望を切り開くための大きな試金石であると言えます。  このため、現在財務体質改善を図るために不振漁協再建整備を進めるとともに、信用事業オンライン化を促進し、金融機能整備経営合理化を図っているところでありますが、全体的な組織体制整備機能強化及び経営の安全を図るため、事業統合とあわせ、漁協合併を積極的に推進してまいりたいと存じております。これが、先般漁協合併助成法改正をお願いしたゆえんであります。  最後に、遊漁・レジャー・海洋開発の問題であります。  近年、国民の余暇の増大等により遊漁を初めとした海洋性レクリエーションが増加し、海面利用等をめぐるトラブルが各地で深刻化しております。また、地域振興観点からリゾート整備計画各地で進められており、これらとの調整が大きな課題となりつつあります。我々漁業関係者は、これらを単に排除するのではなく、情勢変化を的確に受けとめ、漁村活性化のためにもレクリエーション海洋開発との調査・共存を図っていきたいと思っております。  このため、漁協系統としても遊漁者との協議レクリエーション事業への積極的な取り組みを進めることとしておりますが、政府国会におかれましても漁業振興との調和を第一とし、現行制度見直し及び海洋開発に対しては事前協議はもちろん、実効的な調整方策確立されることをお願いする次第であります。  幸いに我々は我が国周辺世界有数の好漁場を有し、また背後を魚食民族としての我が国民に強く支えられております。このため、我が国水産業の明るい展望を切り開いていくことは決して不可能ではないと強く確信をいたしておるわけでございます。我々は、希望を持って我が国水産業の再構築努力をしてまいりたいと存じておる次第でございます。  以上申し述べた次第でございますけれども最後に本日の本題の漁災法改正につきましては、既に原案作成段階政府とも十分議論を展開いたしておりますので、何とぞ完全に通過していただきますように心からお願い申し上げますとともに、政省令に譲る部分もたくさんございますので、今後一層諸先生方のお力添えをいただけますようにお願いを申し上げまして、簡単ではございますが陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  4. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  5. 小林大助

    小林参考人 おはようございます。私は全国漁業共済組合連合会の副会長をやっております小林大助と申します。  本日、この委員会政府より御提案されております漁災法の一部を改正する法律案を審議していただくということにつきまして意見を述べろ、こういうようなチャンスを与えていただきまして非常にありがたく感謝しております。なおまた、平素漁業共済事業に関しましては大変な御心配やら御指導をいただいておるということにつきましても、この機会にあわせてお礼を申し上げます。  私は、漁業共済事業実施団体である漁済連の副会長という立場から、漁業共済事業の当面している課題につきまして簡単に御説明申し上げ、その後改正法案についての所信を申し述べたい、こういうふうに思っておりますのでよろしくお願いします。  漁業災害補償制度は、既に御高承のとおり昭和三十九年に法律に基づく制度として発足をしたものでございます。以来きょうまで二十四年間経過しております。この間、昭和四十二年の法律改正政府保険事業が開始されたということによって名実とも災害補償制度となったわけであります。以来、時代の変遷に応じまして制度仕組みがより漁業実態に即応するように、あるいはまた普遍的加入が図られるようにというような目的から、四十九年、五十七年と二度にわたる法律改正をお願いしていただきました。同時に、累次にわたって政省令告示等改正を行っていただき、恒久制度としての充実強化が図られてまいったわけでございます。  申すまでもなく、この制度は、漁業経営にとって宿命的とも言える自然的な制約に対して、その損失を救済し、再生産確保目的として創設されたものであります。そして、中小漁業者相互救済精神を基調としており、これに政府保険事業また漁業者の負担する掛金に対する助成等の財政的な裏打ちを行うということで、農災制度に見合う制度として確立されてまいったものであります。したがいまして、私どもは、この制度担い手はまず系統組織であり、さらにその組合員たる漁業者であるという認識のもとに事業を進めてまいっております。漁業経営にとってはまことに厳しい近年の環境の中にありまして、漁災制度漁業経営の安定と漁業生産確保のために重要な役割を果たしてきているということを我々は確信しておる次第でございます。  しかし、一方、加入状況を見ますと、残念ながら依然として加入普遍化がまだ不十分であるという問題があり、これが私ども最大課題と考えているところでございます。  共済保険制度におきましては、言うまでもなく全国的な普遍的加入がなされ、危険分散が図られるということによって事業健全化確保されていくということが不可欠であり、全国漁業者がこぞって利用していくことが理想であります。私ども、その理想に向かって、日夜加入推進最大努力をいたしておるわけでございますが、任意加入という建前の中で、思うように普遍化が図られないということもまた事実であります。  このような状況を打開すべく、私どもは累次にわたって総加入運動というものを展開し、加入普遍化に努めている最中でありますが、加入が進まない原因を考えてみますと、漁獲共済にあっては漁獲金額把握ができないというものも相当にございます。これは共販体制整備等にまつしか方法がないわけであります。その他、制度がいろいろと導入されていく過程の中で、非常に難しい、わかりにくいというような問題等もございます。義務加入という制度導入されたのが四十九年でございますが、このことによってかなりの伸びを示しましたが、やはり全体がなかなかまとまらないというような実情もございまして、せっかくの全数加入というような問題が崩れていくというようなこともございます。あるいは補償水準について漁業者の感覚といいますか期待希望と十分にマッチしない等の問題もあるかと思います。加えて、近年は非常に漁業の状態が難しいというようなことで、掛金調達が苦しいというような問題もございます。  しかし、一方では、漁業者漁業共済事業への期待環境が悪くなればなるほど大きく、こぞって制度改正というようなことを願っておるわけでございます。これにつきましては、系統団体あるいは国を初め都道府県も漁災制度に対していろいろな援助をいたしておりますが、この制度をさらに漁業者が広く利用し、自然災害不漁に備えるというようなことを完全に果たしてこそ、法の目指す政策目的に十分にこたえるということであろうと考えております。  こういう観点から、私どもは今回の改正に当たっても、加入普遍化最大課題として要望してまいってきたところでございますが、改正法案ではおおむねこの方向に沿って取り入れられていると私は考えております。特に今回の改正の一番大きな柱は、漁業協同組合が直接共済契約に関与する漁協一括契約導入されるということであり、これは加入を広げていく一つの大きなてこになるというふうに大きく期待しておるわけでございます。  現在、我が国漁業の将来展望といいますか進むべき方向につきましては、既に真剣に各方面で論議されておりますが、限りある資源維持管理を今後どう図っていくかという問題、漁業者営漁対策をどう進めていくかというようなこと等が大きな課題と考えており、このためには漁協自身が直接海の生産面に関してより積極的な役割を果たしていくべき時期にあると考えられます。これは個々の漁業者が従来のように単に魚を競争してとればいいというようなことから、営漁計画というようなことで、基本的な転換を意味するものであろうと信じておるわけでございます。このため、漁協指導力統率力がますます必要になってきますが、この場合の災害不漁に対しての保全策としての漁災役割は、漁業者はもちろん漁協自身にとってもますます重要な位置を占めることになるわけでございます。  今回改正を予定されております漁協契約方式は、漁業者加入意向いかんが原則ではありますが、まさに漁協指導力期待して事業展開を図ろうとするものであり、漁済事業については漁協みずからが資源管理と相まって進めていくというような点で、明らかにこの漁済協同組合の中において位置づけられたものと理解しております。共済団体としては、この漁協契約方式導入というものをてこに、今後の本制度総合的発展のために大きな力を発揮すべく最善の努力をいたしたい、かように思っておりまして、今回の法改正の大きな柱という意味では高く評価し、また漁協が率先して取り組めるように、魅力ある仕組みとなるように希望しているわけでございます。  次に、特定養殖共済本格実施に関する改正であります。  今までノリ養殖業につきましては、制度発足時から物損方式という仕組みでやってまいっているわけですが、その後のノリ養殖実態変化に対応する仕組みが必要だということから、昭和四十九年以降は、漁協共販を基礎とする収穫金額方式を試験的に実施してまいっておるわけでございます。この試験実施は十四年を経過しており、前回五十七年法改正時においても、「すみやかに本格実施に移行するよう努めること。」という附帯決議が付せられている経緯がございます。今回の改正案におきましては、試験実施方式養殖実態及び漁業者共済需要にも適合していることからこの仕組み改正し、本格実施とするというものであり、私どもの要望が相当程度取り入れられた内容となっております。  仕組み改正として大きな点は、個別加入、個別てん補を基本とすることであり、また先ほど申し上げました漁協契約方式を採用していることであります。さらに、義務加入長期共済導入実施しようというものであります。私ども本格実施を強く要望してまいったものであり、この実現によって、ノリ養殖業加入普遍化というものが十分に図られるものと大きく期待しているわけでございます。ただ、試験実施長期にわたっており、また、従来からの物損方式である本則共済加入してきている漁業者も多いという実情もございますから、本格実施に伴って、この新制度への移行が円滑にいくための措置も必要と考えて、特段措置政府にお願いしているところであります。  さて、今回の法律改正案では五つの項目が盛り込まれているわけでございます。この中には先ほど申し上げましたような漁協契約導入というような漁業者及び共済団体立場から見て非常にありがたいというような事項がございますが、やや厳しくなるという改正事項もございます。このことは、近年の共済事故多発という事実の中で、この制度恒久制度として確立していくためには、共済事業収支長期的に均衡させていくことが必要であるという視点に立って改正がなされるものと受けとめておりますが、それはサケマス大型定置漁業に対する基準漁獲数量方式導入であり、再共済保険段階における責任分担見直しの問題であります。  サケマス定置漁業数量方式導入は、金額的に事故に該当していても、漁獲数量一定量以上確保されている場合には、一定方式共済金を逓減するというものでございます。サケ・マス定置は、ふ化放流事業をもとに我が国河川に回帰してくるシロザケを漁獲するという漁業であり、この点に着目しての数量方式導入と聞き及んでおります。  この漁業が、五十八年から四年間連続して大きな事故に該当したということで、今回の措置もまたやむを得ないものと受けとめてはおりますが、漁獲共済基本はPQ方式でありますので、今回の措置はあくまで特例として、サケ・マス定置に限定されるべきものと理解しております。  また、責任分担見直しの問題につきましては、通常の事故発生の場合にあっては、特に大きな問題はないものと受けとめておりますが、仮に集中的に大きな事故が発生しますと、負担が現在よりも増加するということになります。今回の改正によって、私どもといたしましても、従来に増して自主的な運営努力強化いたさねばと前向きにとらえておりますが、現在でも相当の赤字を抱えている組合もございますので、共済団体経営に支障の生じないよう、指導援助を政府にお願いいたしたいと考えているところでございます。  なお、これからの沿岸漁業に占める養殖業のウエートはますます高くなるものと思われ、新しい養殖種類もふえてきております。このため、共済の追加需要も数多く出てまいっておりますので、こういう新規事業実施につきましても今後素早く対応していただくように希望をいたしているところでございます。  以上、いろいろと申し述べましたが、漁業にとっても漁済事業にとっても非常に難しい時期にこういう制度改正が出てまいりました。したがいまして、改正案の中身は、我々から見ますと改善される面とやや厳しくなる面とがあるわけでございますが、これらはお互いに不離一体といいますか、切り離して考えられない問題でございます。私どもは、そういう観点から全体を総合的に見ましてこ改正法案を評価し、前向きにとらえていこうと現実的な判断をして賛成しておる次第でございます。  大変面倒な陳述を展開いたしましたが、我々共済団体立場も十分に御理解いただいて、この法律改正案の御審議を促進し、ぜひ早急に通過するようにお願いしたい、こういうふうに思うわけでございます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  次に、中井参考人にお願いいたします。
  7. 中井昭

    中井参考人 東京水産大学中井でございます。参考人としてごく簡単に御意見を申し上げたいと思います。  御承知のように、現在日本経済を取り巻く環境というのは非常に厳しくなっております。諸外国の日本に対する貿易自由化の要求は非常に厳しく、特に日本の食糧産業も、従来のような日本の国策でいいのかというような反省の時期に到達しております。つまり国際化にどう対応すべきかという重大な局面を迎えておりまして、当面牛肉あるいはオレンジというもので農業問題が大きくクローズアップされておりますけれども水産業、これは食糧産業の重要な部分でありますが、これも決して例外ではございません。  先ほど宮原会長が説明しておりましたが、最近の水産物輸入というのは非常に増加しておりまして、昭和六十二年の数字を見ますと、輸入量が二百万トンを超えておる。それから金額で一兆二千億円といったような状態、これは過去十年間に量で二倍以上、それから金額では円高の問題がありまして若干増加が少ないですが、それでも二倍近い増加であります。  一方、国内生産量の方は、この十年間に生産量でたった二割程度、生産額では一割以下といったような状態、こういったアンバランスな供給状態というものが現在の日本水産業実態でございますが、これはとりもなおさず日本の水産業がいよいよ国際化してきたということのあらわれでございます。  この輸入が激増してきた理由というのはいろいろあるわけでございますが、基本的な点だけを申し上げますと、日本の国内水産業というものが国内の需要に対して量的、質的に十分対応しておらないのではないか、このことを基本的な問題として意識しなければならないと思います。つまり、二百海里時代に入って既に十年たっておりますけれども、この二百海里時代という新しい海洋秩序の時代に即応して日本の二百海里の中の資源をいかに大事にし、有効に活用して、そして国民消費はどんどん変わっておりますから、この変化に十分対応して供給していくといったような、日本の水産業自体の構造改善というものが十分進まなかった、現在行われておりますけれども、十分でないというところに最大の理由があるのではないか。要するに、国際化に対応するという面で今の問題が最大課題ではないかと思うわけであります。つまり輸入とかあるいは消費とかそういうものはいわゆる市場原理というものがあるわけで、国際的な市場原理に十分対応して生産体制確立されるということ、これは農業問題と比べて非常に参考にしなければならない水産業課題だと思います。  そこで、それじゃ一体どうしたらいいのかということでございますが、具体的には資源管理漁業を国内で構築していかなければいけないということになろうかと思います。この内容につきましては、詳しくはまた御質問があればお答えいたしますが、要するに我々に与えられた国内の資源というのは、これは客観的に自然現象、自然法則として与えられておるものでありますから、それを的確に把握して的確に利用していくというやり方、これは従来のように漁業者がそれぞれ勝手にと言ったら語弊がありますが、それぞれ競争して個々に少しでも余計とろうというようなやり方でやっていく、これは別な言葉で言いますと資源収奪型漁業というような言葉がありますけれども、そういう形ではなくて、本当に資源を十分見きわめて、それに見合った漁業をやっていくということになるわけであります。  と同時に、漁業というのはあくまでも生産所得を確保するというところに目的があるわけでありますから、的確な需要というものを見計らって需要に見合った供給をしていく。生産とそれから販売、こういうものを資源消費という客観的な条件に見合った形で編成がえしていくというのが資源管理漁業ということになるわけであります。  そこで、それをやるためには、今までのような、漁民がそれぞれ個々にばらばらにやるというようなことではなくて、漁業協同組合が中心になって地域営漁計画をつくり、その計画に基づいて漁民、組合員がいろいろ漁業をやっていく、こういう体制づくりを早急にしていかなければいけないということになるわけであります。幸いに、昭和六十年度から、国の事業で沿岸域計画営漁推進事業というのが行われておりまして、五年間に一般地区五百二十、濃密地区八十、合計六百の漁業協同組合を対象にして事業が進められるということになっております。現在、六十二年度までのその実績を見てみますと、そう大きく差はありませんが、全体的にやや低調であります。私も濃密地区の協同組合をいろいろ回ってみますと、一番問題になりますのが、地域営漁計画をつくった場合に、その計画にのっとってみんな一生懸命やるわけですが、何しろ漁業というのは、御承知のように自然災害というのが予期しないときにやってくる、いわば不可抗力的な問題があるわけであります。そういったものにどう対応するかということがはっきりなければその計画の実行というのができないわけです。  そういう意味で、現在審議になっております漁業災害補償法、これが実は現在日本の漁業のそういった補償に対する唯一の制度でございます。諸外国を見ましても、実は漁獲に対する補償というのは行われておりません。そういう意味では、この補償制度があるということは、日本の水産業がいかに世界的に進歩しておるかということの一つのあらわれだというふうに私は思っておりますが、こういうものがあるわけであります。  したがって、地域営漁計画を本格的にやっていくためにはみんなが共済に入らなければいけない、これは当然であります。しかし現在のような、協同組合がいわばあっせんをする、あっせん程度である、そして、二号漁業、三号漁業においては、それぞれ入りたい者は入る、入りたくない者は入らなくてもいい、組合はただあっせんするだけだ、こういうような体制では、これは地域営漁計画にのっとった漁業共済とは言えないわけなんです。  そういう意味で、漁業協同組合が責任を持ってこの契約者になるという改正法案が今回出されておりますが、これは非常に時宜に適した改正ではないかというふうに私は考えております。ぜひこのようなことを前向きに御審議していただいて、漁業共済というもの、これは先ほど言いましたが、諸外国にはありませんけれども、しかし、内容的に見ますとまだまだ不十分な点がございますので、これを完璧なものにしていく、このことが日本の水産業それ自体の内容を高めることになる、こういうふうに考えております。  甚だ簡単でございますが、本法案の御審議の参考にしていただければ幸いと存じます。(拍手)
  8. 菊池福治郎

    菊池委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。    ─────────────
  9. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  10. 石破茂

    ○石破委員 参考人のお三方におかれましては、大変に御多用中のところをお出ましをいただきまして、農林水産委員会におきまして本当に貴重な御意見を賜りました。心から厚く御礼を申し上げます。  時間が限られておりますので、総論的にお尋ねをいたしたいと思います。  まず小林参考人にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、今回の法改正はとにかく加入を促進する。共済というものは、本来特定の災害について多くの者が危険を分担する、リスクを分散する、それによって初めて成り立つもののはずであります。しかるに、これだけいろいろな努力にもかかわらず加入率が非常に低いというのは、やはり何らかの問題があると思わざるを得ない。先ほどのお話にもありましたように、制度自体が非常にわかりにくいということもありましょうけれども、そのほかにも幾つも問題があろうかと思っております。本当によい制度であれば、漁民にとって本当に喜ばれる制度であればみんながこぞって入るはずでありますけれども、どうも現状はそうではないのではないか。具体的にどのような問題が今考えられておるか、そしてまた、今回の皆様方が御努力になりましてできました改正案は、これによって具体的にどれぐらいの加入者がふえると見込まれるか、その点について御教示を賜りたいと存じます。
  11. 小林大助

    小林参考人 石破先生の御質問にお答えいたします。  具体的な数字を予測するということは非常に難しいことでございますが、まず前段の、いろいろ難しい問題があるわけであります。  正直に申し上げまして私どもが一番苦労しておるのは、漁業者期待利益、制度に対する期待感というのと、それから制度経営確保する必要不可欠な部分を保障するという部分との感覚的なギャップがあって、必ずしも漁業者に魅力ある制度となっていないというのが一番大きいのではなかろうか。それに見合いましてもちろん多くの掛金助成等をいただいておりますが、小さい漁業者にとって掛金の負担がかなり厳しいという面もございます。それから、先ほど申し上げましたけれどもいわゆる共同販売体制、最近は非常に整備されてきておりますけれども、これができてない。これは、不可抗力的な理由で漁獲が把握できませんので、保険設計に乗らないという問題等がございます。  しかし、こういうことが逐次是正されてきておるということで、今度の法改正で私どもが一番期待しておるのは、先ほども他の参考人の先生からお話がございましたが、漁協契約方式導入というようなことで、今まで多くの組合員の中で、組合員個々の意思によってまとまろうかというような話し合いで進められておった、それを漁協が中心になって先頭に立ってくれるということで非常に大きい意味がある、思想的にはこれは大変な変革だと思っております。  こういうところから推算いたしまして、数字をここで申し上げるのは非常に難しいことでございますが、我々は現在中期加入計画というのを昨年度から立てておりまして、ことしが二年目に入るわけです。六十三年で三カ年一応終わるわけですが、その最終目標というのは、可能性の限界ということで、三千三百億という数字を掲げております。ことしはいろいろな事情で第二年度の目標達成をできなかったわけでございますが、こういう制度改正方向、それから法改正に伴う細かい政省令告示等改正によりまして、体制といたしましては新制度普及本部というプロジェクトを全会挙げてつくっておりまして、全力投球でやっていこう、少なくとも三千三百億の目標は確保しようというふうに思っております。
  12. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございました。  続きまして、宮原参考人にお尋ねをいたしたいと存じます。  今回の法改正で、漁協が主体となっているというふうに言われております。私の選挙区の漁連さんにおかれましても、大変な努力は今までもしておられるわけでありますが、今回それが正面に出てこられるということに相なりました。実際、各県の漁協の態様並びに役員、職員の意識、これをどのように高揚していかれるか、具体的な施策等についてお教えをいただければありがたいと存じます。
  13. 宮原九一

    宮原参考人 従来、漁災法が数次にわたって改正をされてきておりますけれども、その改正の主眼点はやはり加入の普遍、拡大ということにあったと思うわけでございますが、今回は漁協の契約という形で、加入拡大の最後のとりでではないのかというように私は理解をいたしておるわけでございまして、それだけに漁協に課せられた使命というものは極めて大きいというようなことでございます。  私は三重県の漁連も会長をしておりますけれども、仮に三重県漁連の立場で申し上げますと、漁連が中心になって、それに漁済組合、信用漁連あるいは漁船保険、基金協会という水産関係各団体で網羅する漁済推進の本部をつくっておりまして、その系統全体を挙げて漁済加入推進するという形をとっておるわけでございますが、おおむね各県とも今回のこの改正に当たりましては、従来の、個人の恣意によって加入の最終決定をしていくという形ではなしに、先ほど中井先生のお話にありました営漁計画というようなものもあり、それからまた、経営の安定化というための各種の金融事業漁協がやっておるわけでございますけれども、その後支えとしての漁済の効用というものも十分認識しながら総合施策の中の一環として漁協漁災制度に取り組んでいく、こんな形で推進をしてまいるつもりでおるわけでありまして、全漁連といたしましても、行政庁と一緒になって各県にそれらの強力な指導を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。  以上でございます。
  14. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございました。  それでは、もう一度小林参考人にお尋ねをさせていただきたいと存じます。  今回の法改正の中で焦点となるであろうと思っておりますが、基準漁獲数量導入についてであります。これは、先ほどのお話ではサケ・マスに限定をされるであろうというようなお話でございました。特にサケ・マスについては、非常に計画的にとれるようになった。技術の進歩によって回帰が非常にふえてきた。それで非常にとれるようになった結果として魚価の低迷ということになったというふうに聞いております。それで共済事故ということにつながる。  しかしながら、共済というのは本来不慮の事故をてん補するものであって、計画的に生産をし、それがある程度の予測された数量が戻ってきて、それでとれたことによって魚価が低迷をするということは確かに不慮の災害というものにはなじまないのではないか、そこにこの改正の意義もあろうかというふうには存じております。しかし、このことによって、特に北海道漁民の皆さん方の実際の理解がどれほど得られておるかということであります。制度が変わるわけでありますけれども実際の生産者の方に不安なり動揺なりというものがあるようではいかぬと思います。どれほどの理解が得られておるかということが第一点。  それから、北海道がサケ・マスが不漁になるということは、確かにいろいろな理由はあるわけでありましょうけれども、漁期の設定というものも原因の一つであろうというふうに思っております。本来戻ってくるべきときじゃないところに漁期を設定してしまった、そういうことも原因の一つとしてあろうかと思うのでありますけれども、その辺についての御意見はいかがなものかということであります。  それから、冒頭に申し上げましたけれども、これはサケ・マスに本当に限るのか、ほかにもそのようなものはあるいはあるのかもしれない。これをこの二つに限るかどうかという点。  それから、あとは責任分担の問題でありますけれども収支改善ということも大きな眼目であろうかと存じます。ところが収支改善に走る余り、本当の漁業者にしわ寄せがいくことがないかどうか、以上、お教えをいただきたいと思います。
  15. 小林大助

    小林参考人 お答えいたします。  サケ・マスの数量導入の問題でございますが、この問題につきましては、確かに新聞紙上等では歴史始まって以来というような、六十一年ですか、帰ってきたというようなことが言われまして、三千三百三十万尾帰ってきたというようなことが喧伝されたわけでございます。そういうこと、それから輸入等の問題もございましょうが、値段が半分以下に下がる。それから、テレビ等でごらんになったかもわかりませんが、ほとんどサケとは言えないようなサケをとって穴を掘って埋めておるというような状況もございます。  したがいまして、私は水産庁のそれぞれの方にも申し上げておるのですが、ただ数を量的にふやせばいいというものじゃないのじゃないか、むしろ、質的なサケをつくるべきであろう。そういう意味から、このシロザケ定置というものについてかなり管理できるということで、予測できるわけですね。したがってこういう方式、特に四年間に、大漁だ大漁だと言いながら膨大な金を払っておるわけです。これは全体の掛金率の押し上げにつながったりいろいろな問題が出てまいりますので、漁業者に納得していただけるというような範囲内で数量導入ということもやむを得ないのじゃないかということで、協議会でも北海道の代表の方も申しておられましたが、しばしば議論をし、それから我々も共済組合、共済団体、現地の皆さん方に実情をお話しして、著しく影響を与えるというようなことのないような配慮をしながら数量方式導入するということで納得を得たというのが現状でございます。  それから、先ほどの団体責任の問題でございます。これはむしろ共済団体経営基盤強化するというような問題でございまして、直接には漁業者には影響は与えない。共済団体の中で責任分担が再共済者それから国の保険者という一定のルールがございまして、大きな事故になった部分については、それは国の再保険につながる、あるいは元受けが引き受けたものに対して連合会が再共済するというようなルールになっておるわけでございますが、これがやはりある一部、五%程度でございますが、比例部分として乗せられるというような状態になったわけです。  このことにつきましてはえらい大きい変化というふうに見えるのでございますが、ただ、その場合も、大きい集中的な事故というようなことが出た場合に経営基盤が揺らぐというようなおそれもございますので、上限を設定するというような形になっております。それと、基本的な今のルール、持ち分それから責任分担というものは崩さないという中でやられておりますので、例えば大きい事故が集中的に発生した場合には、共済団体としても非常に困るわけでございます。何らかの措置を必要とするのじゃないか。しかし、小さい事故が数多いというような場合につきましては、保有する掛金部分というのがふえてまいりますので、赤がどんどんふえるのではないかという御懸念は、これは赤になるおそれもある、それから黒になってくる場合もあるというようなことで、私どもは、これはこの程度のことであればやむを得ぬ措置であろうというふうに理解しております。  それから、申し忘れましたが、サケ・マス数量方式が他に累を及ぼすのではないかという問題につきましては、漁災の一番の特徴というのはPQ方式でございます。これが崩れるということになりますと、漁災のそもそもの魅力というものは全く根底からなくなってくる。したがって人工でかなりふ化放流というような、事業として管理できるというものに限って、サケ・マスに限ってということを非常にやかましくお約束いただいておるわけでございます。他に累を及ぼすことの絶対にないようにいたしたいと思いますので、先生方もぜひ御協力をお願いしたいと思います。
  16. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございました。時間が来たようでございますので、終わらしていただきたいと思います。  中井参考人には、私、消費拡大についてお教えいただきたいと思っておりました。とにかく今グルメブームだそうでありまして、いいものであればどんなに法外な金を払っても食べるという人がたくさんいる世の中でございます。そのことについてお教えをいただきたいと思いましたけれども、ほかの委員の方からも御質問があろうかと思いますので、これで終わらせていただきたいと思います。
  17. 菊池福治郎

  18. 田中恒利

    田中(恒)委員 社会党の田中です。参考人の皆さん大変お忙しい中貴重な御意見をちょうだいいたしまして、漁災制度のこれからの審議に大変参考にさせていただきましたことをお礼を申し上げたいと思います。自民党の先生の続きの格好をとりまして中井先生の方からお尋ねをまずさせていただきます。  今資源管理漁業ということにつきまして貴重な御意見いただきましたし、私どももおっしゃるとおりだと思うわけでありますが、この資源管理漁業を進めるために今一つの問題になっておりますのは漁業権の問題、非常に大きな問題であります。中でも栽培漁業権というものにつきまして、これを認めるか認めないか。栽培漁業というものが非常に大きくなってまいっておるわけでありますが、これにつきまして、漁業権と絡んでこの際先生の御見解を承っておきたいと思います。
  19. 中井昭

    中井参考人 資源管理漁業でございますが、資源管理漁業といいますのは、私は三つの要素が一体になったものであろうというふうに考えております。  一つは、まず資源を保護する。資源を保護し、なおかつ資源を増殖するという体制、これがまず第一。  第二には、その資源をいかに有効に利用するか。この有効に利用するということは資源を乱獲しないということであり、同時に生産費にむだな経費を使わないように、なるべくコストを安くして生産をするということであります。これが第二。  そして第三は、消費者の要求に見合った魚をつくり出して供給する。つまり商品をつくるわけですから、需要に見合った商品をつくっていく。  こういう三つの要素がいわゆる三位一体になった漁業、これが資源管理漁業であると思います。そうなりますと、これは生産所得の関数であります生産量、それからコストそしてプライス、価格が必然的にプラスに作用しまして、生産所得の増加というものが必然的に出てくる、こういうことになるわけであります。  そこで、お尋ねの栽培漁業でありますけれども栽培漁業というのは、目的は一つでありますけれども実施主体が非常にばらばらであります。国が種苗を生産し、それを協同組合が購入して放流をする。なお、その放流したものを育成管理するのが漁協、そして実際にとるのは漁民、こういうことでそれぞれの主体が違う。しかも、それぞれが必ずしも十分に統一した目標のもとに一体化された形でない、こういうところに今の栽培漁業の問題点があるわけであります。ですから、例えばアワビの問題を取り上げましても、各都道府県の栽培漁業センターが膨大なアワビの放流をやっておりますけれども、アワビの国内生産量というのは一向にふえておりません。それを見ましても、放流まではうまくいくのですけれども、育成してとるという段階ではまだまだこれが不十分である。そういう意味で、栽培漁業というものはやはり目標が一つである。したがって、その目標に統一できるような一体となった経営組織というものが必要ではないかというふうに私は考えております。  そういう意味で、そういうものが一定漁業権を持ってやるということが一番安定した栽培漁業のあり方ではないか。そういう意味で、今お尋ねの栽培漁業漁業権というのは、これは十分今後検討していかなければならない課題であろうと思います。その場合に、栽培漁業権をだれが持つかということが実は一番大事なことでありまして、この点を十分議論していただいて、やはり的確な所有主体を確立するということが留意点ではないかというふうに考えております。
  20. 田中恒利

    田中(恒)委員 ありがとうございました。  今先生も最後に結ばれましたが、我が国漁業が極めて厳しい国際的あるいは国内的な課題に直面しておるわけであります。そこで一番考えなければいけないのは、主体をどこに置くかという問題。その際に、きょうの御三人の御意見をお聞きいたしましても、やはり漁協というものが強くなり漁村において大きな影響力を持つ、こういうことが一番重要である、こういうふうに御三方の御意見の共通点として私は認識させていただいたわけであります。  今問題になっております漁災制度の中で漁協加入というのが一つの大きな柱になっておるわけでありますが、この点につきまして全漁連宮原会長さんの方から今、総合的な施策の中で漁協漁済加入というものを担当し得る条件をつくっていく、こういう意味の御答弁をいただいたわけです。これは非常に難しいことですからさまざまな施策と結びつけなければいけないと私は思いますが、やはり中でも漁協の中の指導部というもの、私も多少協同組合関係した者として、やはりこれは漁協の組合長、これがしゃんとしないと、指導部の部長とか指導員とか、こういうことで事が済むような問題じゃないと思うのですね。ですから、職でいえば組合長でありますが、組合長を頂点とする指導事業というものについて本格的に系統漁協が力を注ぐ状況にこの問題一つを考えてもあるんだろうと私は思うのです。その辺につきまして、全漁連の方で漁協指導事業というものをどういうふうに考えて進めようとしていらっしゃるか、要約で結構でございますが、お知らせをいただきたいと思うわけであります。
  21. 宮原九一

    宮原参考人 先生の今おっしゃられたこと、非常に重要な問題でございますので、全漁連といたしましては、三年に一回全国漁協大会を開催いたしまして、特に将来の漁村のあり方を分析しながら、新しい三年間にどういう問題に取り組むのかという決議をし、その中間点においてその実行の状態を検証しながらまた新しい策を講ずるというようなことで指導体制強化整備というものを進めておるわけでございますけれども、最近水産庁の肝いりもいただきまして、各現地に青年漁業士あるいは指導漁業士というような制度をつくりまして、各浜にそういったすぐれた人材を配置しながら全体の指導教育に当たっていくということで体制を逐次固めてきておりますので、国の制度としてあります改良普及員の活用と相まちまして、要するに組合が一体となった形でそういうものと連携した指導体制を進める。  また、全漁連におきましては、系統指導基本問題ということで教育基本方針というものを今回策定いたしまして、三月末に委員会から会長あての答申をいただきましたが、それに基づいて全国各地にいわゆる指導職員の養成というものを拡充していきたい、このように考えておりまするし、私自身、多年全国漁業協同組合学校というのを主宰いたしておりまして、全国の市町村から漁協職員の中で学校に入学を希望する者あるいは高校卒業の者等を含めて毎年五十名前後の職員を、千葉の柏に学校をつくっておりまして、そういう者の教育をしながらそれを漁村に送り込む。今それが二千名ぐらい各地に配置されておるということでございまして、いろいろとそういった面で総合的に指導体制整備を図るということに努力をいたしておる次第でございます。
  22. 田中恒利

    田中(恒)委員 たくさんお尋ねしたいことがありますが、時間の関係小林参考人に一つだけお尋ねいたします。  それは、漁家が入りやすい、魅力を感じるということになりますと、掛金共済金関係というのが、実際問題としては人間である以上これは当然であります。そういう場合に、最近この共済制度というものが、一面では、例えば北海道とか裏日本など、日本漁業の厳しい側面を真っ正面から受けているところでは非常に大きな期待が出てきておる。しかしまた反面、掛金を掛けたけれども、三年も五年もほとんど恩恵がないというところも出てきて、この格差が非常に出てき始めておりますね。つまり、漁種間、地域間格差、ばらつきというものが極めて強くなってきておりますね。こういうものに対して少しずつこの制度改正運営改善が行われておるわけでありますが、こういうものを直すために、今すぐでなくても、将来の方向としてこういう方向が考えられるのではないだろうかというような御示唆でも結構でございますが、何かございましたら、この際お聞かせいただきたいと思います。
  23. 小林大助

    小林参考人 田中先生のおっしゃるとおりでございます。しかし、掛金率の設定というのは、過去の実績から統計的に数字を算出しまして、それに若干の取捨選択をするというような方式で三年ごとに見直しというルールになっております。しかし、確かにおっしゃるとおり一番大事なことは、これは今度の改正にも政省令以下の段階で上がっておる問題でございますが、掛金の割引、割り増しの強化という問題がございます。それと、将来的にぜひやっていただきたいというのは、掛金率の体系の細分化、日本は海面を見ますと非常に広うございまして、細分化していただきたいというようなことを願っております。
  24. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  25. 菊池福治郎

    菊池委員長 吉浦忠治君。
  26. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 参考人の方々、大変お忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。心からお礼を申し上げる次第でございます。  時間が限られておりますものですから限られた先生にしかお尋ねできないかもしれませんけれども、お願い申し上げたいと思います。  最初に、宮原参考人中井参考人にお尋ねいたしたいと思います。  六十年以降大変円高になりまして、外国の水産物等の輸入が急増しておるわけでございます。先ほど御説明がございましたとおりでございまして、輸入のシェア等を見てまいりますと実に四一%に達しておるということがわかっておりまして、六十一年以降この基調が変化しておりませんものですからそのシェアはもっと大きくなっていると思うわけでございますが、この結果、特に国内の生産低迷あるいは魚価安という状態を来しておりまして、漁災制度に多大な影響を与え、今後漁業の構造にも重大な影響を与えると思うわけであります。この円高輸入急増と魚価安ということについて今後どのように考えていったらよいか、この点お考えがございましたら、宮原参考人の方から先にお願いいたします。
  27. 宮原九一

    宮原参考人 大変難しい問題でございますが、円高関係漁業に好影響をもたらしておる面が一つございますのは、漁業用石油の低位安定ということでございます。その石油の価格安定以上に輸入水産物の急増による魚価安というものが漁業経営に大きなダメ!ジを与えていることの方が深刻でございまして、私どもとしては、単に漁災制度上における魚価安の問題だけでなしに、漁業経営の安定を確保するという意味からも、この輸入水産物対策については抜本的な改善を図らねばならぬと思っておりますけれども、最初の陳述にも申しましたように決め手を持っていないというのが現状でございます。  しかしながら、生産から流通消費に至る国内生産品の輸入水産物対抗手段というものを、より鮮度を追求するという形の中で魚価の安定を図るということと、低コストによる生産合理化ということの中で経営上のメリットを求めようというような作戦を立てておりますけれども共済の面でいいますと、PQ方式が厳然として主流の思想として出ておりますだけに、輸入水産物のはんらんが国内生産品の魚価に反映して非常に低価格であるということのために限度額率が下がってまいります。そういたしますと、基準漁獲金額が下がってくるので、共済加入しても補償される水準が極めて低くなるという悪循環を来しておるというようなことでございます。従来は魚価の修正係数がございまして、高度成長時代には逐次魚価を上げてもらっておりましたのが現在はマイナス要因として働いてきておるというような厳しい現実を今後どうしていくかということになりますと、我々としては、制度の中に、例えば低事故のてん補の場合でもある率において見てもらえるというような改善要綱が今回政省令の中に出てきておりますので、きめ細かい対策で現状の苦しみを多少でも和らげてもらえる方策というものを今回の漁災制度の中にもお願いをしておるような次第でございます。その政省令関係でも、ぜひとも先生方にそういう点についての御配慮もいただきたいと思っておる次第でございます。
  28. 中井昭

    中井参考人 輸入が激増してきました理由、これは円高の問題で最近特にふえてきたわけでありますが、そればかりではなくていろいろ、二百海里時代になって外国漁場から生産が締め出されて結局買い付けに依存せざるを得なくなったといったようなことであるとか、特に最近は発展途上国あるいは中進国と言われる国々の漁業生産が、輸出力が非常に強まってきたわけです。特に韓国、台湾が非常に輸出力が強まってきたといったような問題がございます。  こういった輸入激増に日本の水産業が価格問題で対応していくためにはやはり日本の水産業体質を変えるということですが、同時に当面の問題としては、日本の国内の消費者に見合った供給ということで、例えば活魚であるとか、高鮮度の魚をしかも安く供給できるような体制を早くつくる、外国から入ってくる物に対抗する一つの手段はやはり鮮度だと思うのですね。この問題が一つと、もう一つはやはり質の問題で、安全な食品としての魚を供給する、こういったようなことを基礎にして国内の消費者に十分対応していく、こういった活動をやることが輸入圧力に対する一つの対抗策ではないか。もちろん、アメリカ等からのIQ品目の撤廃であるとかあるいは輸入関税の撤廃の要求なんかがありますが、そういった問題についてそれぞれ逐次対抗していく、対応していくということは重要でありますけれども、同時にそういった内面的な対応ということが基本になるのではないかと考えております。
  29. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間の関係中井参考人にお尋ねを続いていたしておきますが、今回漁協合併助成法改正されまして、いわゆる団体としても強力に推進することができるようになったわけでありますけれども漁村の狭い社会ではまだまだ古い体質が残っておるのが現状ではないかと思うのです。そこで、これからの漁業はいかに経営を安定させ、産業として生き残れるかということを真剣に模索しなければならぬと思うのです。合併の実利は、私は、先ほどから先生おっしゃっておられますように営漁指導だろうと思うのです。その営漁指導に回れる人材を配置することではないか、端的に言えばこういうふうにも思うのです。そこで私は、漁災制度経営の安定に果たしている役割は大きなものがあるわけでありますから、この加入の促進を含めて営漁指導の徹底と指導者の養成をどのように図っていったらいいか、お考えがございましたならばお聞かせをいただきたい。
  30. 中井昭

    中井参考人 先ほども申しましたが、地域営漁計画を実践していくということになりますと必然的に共済制度が必要になってくる。したがって、全面加入というのが必然的に出てこなければいけないということでございますので、共済の側からもこの地域営漁計画推進営漁指導推進を積極的にやっていただきたいと私も常々言っておるわけであります。  そこで、組合運動、漁協運動というのは人材が一番重要な要素でございますので、これについては先ほどの漁業士の問題もありますが、漁業協同組合の中で特に青年部の人たち、それから婦人部の人たち、そういう人たちの民主的な運動といいますか、そういった人たちの運動を通じて出てきた指導者が育つような全体的な体制をつくるべきではないか。こう言ってはおかしいのですが、なるべく若い人がどんどん出てくるというような雰囲気をつくって指導者を育てていくべきではないかと考えております。
  31. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後小林参考人にお尋ねいたしておきますが、漁済運は昭和七十四年まで無利子棚上げ分の償還として毎年およそ七億円を返却しておるわけでありますけれども、現在の黒字から七億円を差し引いたものが本来の収支状況であると私は思うわけです。したがって、これは赤字なわけじゃないか。このようなときに、漁済運の責任分をふやすことが妥当かどうか疑問が残るわけでありますが、改正ごとの若干の手直しはいたし方ないといたしましても、根幹にかかわるものについてはちゃんとしておくべきではないかと思うのです。そこで、漁災制度における国の役割または責任はどうあるべきかという御提言がございましたら、申しにくいでしょうけれども一言おっしゃっていただきたい。
  32. 小林大助

    小林参考人 先生おっしゃるとおりで、七億というのは、それを償還すべき若干の掛金料率の上に乗せてありますから、計画どおり加入が推捗していけばまさに無利子の状態でそれを返還していけるという形でございますが、現在少し私どもの方が持ち出しになって毎年七億ずつ払っております。まだ七十億棚上げ分のうち、既に本年度末でお支払いしたものを除きましてさらに五十七億棚上げと二回やっておりますから、まだかなりの棚上げを持っております。これは加入普遍化に取り組むということで長期的に埋めていかざるを得ない。  それから、今度の団体責任の問題につきましては、国に特に御要請したいことは、先ほど説明いたしましたとおり上限設定とか、それから特別に集中的なものが出た場合に何らかの措置を講ずるということになっておりますが、これを国の責任において着実に履行していただく。そういたしますと、最近三カ年間の状況を見ておりますと、各三十九の共済組合も事業的に黒字県がふえてまいっておる。それから連合会の方も、先生御指摘のとおり七億分を差し引きましても若干の黒字が出るという年も出てまいりまして、逐次好転しつつあるというようなときに、集中的な大きい事故というものに対して国が何らかの手当てをされる、団体の責任の範疇を超えるようなものに何らかの措置を加えていただくならば、今度の普及推進を積極的にやることによってむしろ保有掛金を多く持っていくということで、気の長い話でございますが、着実に長期的には赤字を埋めていけるんじゃなかろうか、こういうふうに思っています。  したがいまして、先生御指摘の国の責任という分について何を望むかということでありますれば、やはり集中的な大きな事故、これに対しては国が団体の範疇を超えるものとして措置してほしいということでございます。
  33. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。
  34. 菊池福治郎

    菊池委員長 神田厚君。
  35. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆さん、大変貴重な御意見をありがとうございました。せっかくの機会でありますので漁災制度に限らず広く日本漁業のあり方についてまず御意見をいただきたいと思うのでありますが、最初に宮原会長さんにお伺いいたします。  全漁連では去る三月に「水産業基本問題に関する検討中間報告」を出されております。会長として我が国経済社会の中で水産業がどのような役割を果たしていくべきであるというふうに考えているのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。  同時に、水産業発展のためには系統漁業といたしましてどのような努力をしなければならないのか、さらには、行政に対してどういうことを期待しているのか、宮原会長さんの水産哲学といいますか基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 宮原九一

    宮原参考人 全漁連の中間報告を御検討いただいておりますことにつきまして心からお礼を申し上げたいと思いますが、水産庁におきましても基本問題の検討会で中間報告が出されておるわけでございます。私どもとしても役所のその中間報告を横にらみしながら全漁連としての考え方をただいままとめつつある次第でありますけれども、御案内のように水産業役割というものを今回行政とも一緒になってひとつ鮮明にしておりますのは、要するに食料水産物の安定供給あるいは雇用機会の創出さらにまた漁場環境の保全、そして漁村、海の文化の継承、海洋リゾートとしての場所の提供といったような問題を水産業の広い意味での役割として想定をいたしておるわけでございます。  私どもとしては、二十一世紀に向けて漁業が日本全体の産業の中でどういう役割を占めながら今後発展していくべきかということに視点を置きながら問題の解明を急いでおる次第でありますけれども、今や漁業をめぐる諸般の情勢からして、日本の二百海里内の漁場というものの整備開発を図りながら豊かな海づくりを推進する、そしてその豊かな海づくりの中で国民に対して安全でしかも健康な食品を安定的に供給する体制をつくるということを主眼に置きながら、それをするためには今や漁業協同組合活性化といいますか、基盤整備というものが基本であって、その漁業協同組合基盤整備というのは、先ほどの漁協合併の問題もありますけれども、そういうものを通じて漁村活性化を図ってまいろう。その中で、単に漁業生産という分野、いわゆる第一次産業の面にとどまることなしに消費加工流通という面にも、それからまた、リゾートの場の提供としての広い意味での第一次産業の部分にも、漁業を核としながら、漁業を中心としながら展開する方向というものをこの機会に創設をして、付加価値の高い総合的な漁業というものを漁村の中に根づかせていきたい、こういうことを我々としては考えながら、先ほども申しましたけれども三年に一回、全国漁協大会というものを開催して研修をし、さらに新しい方策を講ずるというようなことで努力をしておる次第でございます。  そういうためにも行政に対してはさらに力強いバックアップを必要とする。輸入水産物の例を一つとらえてみましても、今や私どもとしては打つ手がないという状態にまでストリップになっておりますけれども、わずかに残っておりますIQ物資等につきましてはその枠づけを明確にしながら、しかも中小漁業経営の安定を図るという意味でこれ以上の開放というものについては厳重にチャックをひとつ締めていただきながらやってもらうとともに、非自由化品目についても政府が中へ入ってもらって、例えばカツオ・マグロのようなものであれば台湾、韓国と自主協議を図るとか、あるいはワカメ等においても中国、韓国等とも自主調整を図って秩序ある輸入体制を講ずるというようなことにもう少し行政も力を入れてほしいと思うわけでございます。  さらにまた豊かな海をつくりながら資源管理漁業を展開すると申しましても、先ほどの問題にもありますように社会環境が大きく変わっておる中での漁業、それから漁業内部が極めて複雑に入り込んでいる中での遊漁、密漁等々を含めた資源管理漁業への展開の中でのルールづくりといったようなものにつきましては、単に漁業者自主努力ということだけでなしに、制度上の見直しについてもこの機会にもう少し広い視野で問題の検討に入ってもらわなければいかぬ。例えばつくり育てる漁業を見ますと、先に種をまいたものがとる権利があるのか、とったものがその代償を支払いするのかといったような問題も含めると、今漁業の問題は単なるハードの問題だけではなしにソフト面で極めて重大な時期に差しかかってきておるということの中で、私どもとしては行政にそういったものの基本問題についての慎重な検討を今後もお願いしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  系統としてどう考えるかということについては、私は一にも二にも漁協合併事業統合推進による漁協基盤整備ということをこの機会に中心命題としてとらえながら、それを核として水産業振興に当たってまいりたい、このような決意でおる次第でございます。  以上で終わります。
  37. 神田厚

    ○神田委員 ただいま水産物輸入問題にかなり具体的なお答えをいただきましたが、中井先生にお尋ねいたします。  このままさらに円高が続けば、水産物輸入が多くなってくる。同時に日本の漁業が受ける影響も大変深刻なものになってくるというふうに考えております。それで、ある意味では一定の秩序化というものが輸入に関しまして必要ではないかというふうに考えておりますが、全漁連宮原会長さんの方からはただいまお答えいただいた形になっておりますけれども中井先生といたしましては、この点、具体的な輸入規制措置等々についての考え方がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  38. 中井昭

    中井参考人 私は、この輸入規制の問題は、食糧産業というものを国策として守っていくという観点では確かにある程度必要だと思います。また諸外国もかなりそういうことをやっておりますので当然必要だと思いますけれども、しかしそれだけでは抗し切れない国際環境というものがあるのではないか。したがって、そういう国際環境の厳しさの中でも対応できるような国内の生産というものを確立する努力ということを同時並行にやっていかなければいけない。したがって、今いわゆるIQの問題もありますし、それから輸入関税の問題もありますし、その他いろいろ水産物については輸入問題についての制度がありますが、それについて、やはり現状を維持するという体制はとりつつも、それが抗し切れなくなった場合にはこういうふうに対応するという対応手段を今から考えておかなければいけないのじゃないか、こういうふうに思っております。
  39. 神田厚

    ○神田委員 続いて宮原会長さんに御質問を申し上げますが、円高のもとで漁業のコストを下げていかなければならない。そうしますと、当然漁業合理化、効率化ということを進めていくということになります。  そこで、この問題を進めていきますと、どうしても減船問題に当たるわけでありますが、この減船問題につきまして非常にいろいろと問題が出てまいっております。財源の措置の問題その他いろいろその都度問題になってきているわけでありますけれども、この点につきましてどういうふうなお考えをお持ちでありましょうか、お聞かせをいただけますか。
  40. 宮原九一

    宮原参考人 今や漁業は大変な行き詰まりの状態の中で、各種業種別に減船問題がずっと断続的に続いておるわけでございます。国際規制上の観点からする減船につきましては国が何分の助成をする、あるいは残ったものについては共補償という形でやりくりをするというような形のルールが今や定着をしてきておりますけれども、国際規制だということで政府に減船上の助成を要求していける限界というものがだんだん来てしまっておるのではないかという心配をしております。政府においてもなかなかに財布のひもがかたくなってきているという現実の中で、減船を必要とする場合の財源というものをどこに求めるかということについては極めて難しい問題でございまして、最近我々としてはいろいろ議論として出ております。  まだこれは、申し上げると、そういうことにできるのかということでなかなか物議を醸すようなことですけれども、例えば栽培漁業の展開をする場合に、相当の資金を用意して、それを保留財源としながら資源をふやし、それをある一つの規制の中でとっていくというようなファンドをつくる必要があるのではないかという議論が出てきておりますが、その問題を拡大解釈していきますと、国全体の資源管理漁業を達成するために、余れるものは減らしていくという思想が当然出てくる、そういうものをその栽培漁業の大きなファンドの中で賄える方策はないのか、あるのかというところまで行き着いてくるのではないかという気がいたしまして、これは検討に値するということで、今ひそかに考えているような次第でございます。  以上でございます。
  41. 神田厚

    ○神田委員 最後小林会長さんにお尋ねをいたします。  サケ・マス定置につきまして、今回基準漁獲数量という考え方を導入して共済金の支払いを減らそうという政府の考え方があるわけでありますが、サケ・マス定置の共済金支払いがこのように増大している原因は一体どういうところにあるというふうに分析されておりますか、お伺いしたいのです。
  42. 小林大助

    小林参考人 お答えいたします。  五十八年から六十一年まで大変な金額を払っております。その原因は、やはり六十一年は大変な魚価安でございます。これは、ちなみにちょっと数字を御披露申し上げますと、私の記憶では非常に大変な回遊があった年でございますが、約半値になった、大体四〇%から五〇%価格がダウンしたというような状況で、尾数は非常にとりながら漁業者が大変な欠損をしておるというのが六十一年でございます。それから、その次の年は、これは北海道は非常に広うございまして、御承知のとおり海岸線は東北六県に新潟県を合わせただけの海岸線を持っております。地域的な格差が非常にございまして、襟裳岬を中心とする周辺に漁が非常になかった、それからオホーツクの一部になかったというような地域間格差が非常にあった。とったところは非常にとったというような状況で、相当規模が大きゅうございますので、そういう不漁があったということによって支払い共済金が増大したというようなこと。  したがって理由を申し上げれば、一に魚価安、二にやはり地域不漁による事故、それからやはり回遊経路が変わった、そういう不遇な条件が四年間継続して続いたということが原因でございます。
  43. 神田厚

    ○神田委員 わかりました。ありがとうございました。
  44. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  45. 藤田スミ

    ○藤田委員 参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。いろいろと勉強をさせていただきました。  私が最後でございますのでいささか重複を避けようと思いますが、先ほどから輸入水産物との対抗上、輸入水産物では得られない品質、鮮度、特性等で対抗するとともに、できるだけ低コストで生産をし供給していくことが大事なんだというお話を聞かせていただきました。このことは、さきに発表されました漁業白書の中でも強調されているところでございます。  ところが、今御承知のように新型間接税の問題が取り上げられております。私は、せんだって四月八日付の水産経済新聞を読ませていただきまして、全漁連の御発言についても一応読ませていただきましたが、飲食料品関係の非課税、漁具、漁網などの生産資材は非課税にするべきだ、そして消費者にそういうものを転嫁するということは非常に困難であり、困難だからといって生産者がそれをかぶるということになると経営状態が非常に悪化してしまうのだといったような御発言をされていたかというふうに記憶をしておりますが、この点について宮原会長の御意見を改めてお伺いをしておきたいと思います。あわせて中井先生にもこの点についてお伺いをしておきたいわけです。
  46. 宮原九一

    宮原参考人 水産物の取引形態につきましては先生方も御案内のようにほとんど競り、入札という形で処理をされておりますので、苦労してコストをかけてとってきた水産物について、漁業者自身がみずから価格決定権を持っていないという宿命にあるわけでございます。したがいまして生鮮食料品を非課税にしていただくということは、前回の売上税の問題のときにもいち早くそういった政策を打ち出していただきましたので安心をしたわけですけれども、残念ながら生産をするのに要する漁網その他の生産資材はすべて課税されるということになりますと、それらを漁業者が末端に転稼するということが不可能でありますだけに、我々としてはその件についても非課税にしてほしいという要求をしたいわけですが、それをやりますともうあらゆるものが非課税品目になってしまうということもありますので、そこはひとつ知恵を出していただいて、ヨーロッパがやっておりますようなゼロ税率制度といったものの適用をこの機会に考えていただきたいといったこと、あるいは概算還付方式といったようなものを導入する形の中で生鮮食品の生産に要したコストについても非課税といった形で処理願いたいという陳述をいたしたような次第でございますので、再度申し上げます。
  47. 中井昭

    中井参考人 私は、大型間接税そのものについて実は反対の意見を持っておるわけです。これはやはり最終的には消費者全体に転稼されるという性格のものでありますし、したがって、日本の水産業が今後国際的な競争力を強めていくという面では非常にマイナスになる問題であるというふうに考えております。そういう意味で、できることならば、というよりは、この間接税はない方がいいというふうに考えております。
  48. 藤田スミ

    ○藤田委員 ありがとうございます。  それでは、漁済連小林参考人にお伺いをいたします。  漁災法全体で肝心なところが政省令にゆだねられている。言葉は悪いかもしれませんが、生かすも殺すも政省令次第と言いたくなるような感じがいたします。私どもは、政省令依存をもっと法律に格上げをして制度強化する必要があるのじゃないかというふうに考えておりますが、この点ではどういう御意見をお持ちでしょうか。また、今回の改正でも多く政省令にゆだねられておりますが、特に配慮を加えるべきだとお考えの点について御意見をお聞かせください。  それから、先ほど御意見を聞かせていただいた中で、ノリの物損方式収穫金額方式に移行するについて円滑に進めるための措置を求めていらっしゃる。それからもう一つは、養殖漁業共済の問題についてもお触れになりました。大変恐縮ですけれども、再度この二点についてももう少し詳しく御意見を聞かせていただきたいところでございます。
  49. 小林大助

    小林参考人 先生おっしゃいました政省令にゆだねる部分が多過ぎる、もっと法律に明記せよというようなこと、これは非常にごもっともな点があると思います。同時にまた私どもの経験で、最初漁災をやったときに、非常に細かいことまで法律で規定されて身動きならないわけです。まさに長短、どういうふうにとるべきかという問題は知恵を要するところではないかと思います。そういうふうな点で、やはり基本になる部分はぴしっと法律に決めていただきたいという希望を持っております。  それから、政省令にゆだねられる部分が実際に多い、そのとおりでございます。これによって実際の作業が進められていくというようなことがございますが、現在問題になっております政省令事項につきましては、第二号漁業というのがございます。二号漁業の対象範囲を拡大して、第一種共同漁業漁業のうち漁船により行う漁業を二号漁業に入れる、これなんか大変な、例えば例を一つ挙げて申し上げますと、千葉県なら千葉県のアワビをとっておる漁業者が、アワビのない時期に無動力の刺し網でエビをとる。しかし、その部分は今までは共済の対象にならなかったわけですね。そういうものも今度は二号漁業の中へ入れてやろう。あるいはナマコをとっておる人を入れる。そういう道が開けたということで、政省令の中でできるだけ多くの品目を網羅して地域的な特色を生かしてほしいということを申し入れております。  それから魚類養殖施設の追加の問題等につきましては、養殖タイ、ハマチの小割生けすの施設を対象にしてほしいという問題。それから先ほど宮原会長がちょっとお触れになりましたけれども、被害に応じた段階別のてん補方式導入というような問題。それから第三号漁業で、例えばこれも例を引いて申し上げますと、ある時期イカをやってある時期カニをとるというような漁業、これはそれぞれに区分して契約をしておりましたが、それを一括してやれる、我々は抱括契約と呼んでおりますけれども、そういう道も開かれる。そういうことになった以上は、これは少なくともリスクが減るのだから掛金率は安い掛金率を適用するようにしてくれというようなことを申し入れております。それから、先ほど来も出ておりましたが、掛金率の割引、割り増しの強化、こういう問題についても申し入れをしております。  こういうことで、政省令にかかわる部分というのは非常にたくさんございます。これは団体も常に水産庁当局と論議を重ねながらやってまいっておるし、漁業者期待にこたえる制度に一歩でも近づけたいという努力を惜しまないつもりでございます。  それから、先ほどの養殖共済の追加の問題につきまして、しょせん漁業というのはローカル産業の集積でございます。例えば宮城県地方ではギンザケの養殖が非常にやられておる、ギンザケを追加せい、あるいは高知県地方ではカンパチ、シマアジの養殖が盛んだ、あるいはある地方へ行くとヒラメの養殖が盛んだ、有明なんかも非常に普及しております。そういうようなものを試験実施をやって何年後、あるいは一般的な普及、普遍化状況がなかなか広がらないからということでなおざりにされておりますと、一方では法益を享受できないという面もございますし、我々共済団体といたしましても問口は広いほどいいのでございまして、そういう意味で具体的にそういうお話をしたわけでございます。
  50. 藤田スミ

    ○藤田委員 ありがとうございます。  最後になりますが、輸入が急増していて、それによって例えばべニザケなども、好まれるべニザケですからどうしても消費者はそこの値を基準にして買っていくということになりますと、結局他のサケはこのべニザケに頭を押さえられるような形で価格がどんどん落ちていくというようなことで、今回も、これもちょっと荒っぽい表現ですが、それを一々保険で見ていたら切りがないということで量の制限を加えて支払いを抑えるというような措置になったかというふうに思いますが、こうした不安定さ、それから他の品物と違って輸入から受ける影響の複雑さというものは一層今の漁業経営に深刻な影響を与えているのじゃないかと私は考えます。  時間がもうありませんので、輸入規制の問題をお伺いしたかったのですが先ほどからさんざん聞かせていただきましたので、最後中井先生から価格の安定策という問題について、行政はどうするべきなのかということをもう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  51. 中井昭

    中井参考人 大変難しい質問でございまして一言にお答えするわけにはいかないのでございますが、要するに価格を安定させるという場合に、その価格というのは何かということをまず考えていかなければいけない。その価格というのは生産者にとってみますと、いわゆる生産価格である。つまり必要経費と適正利潤を加えたものの価格をいかに実現するかということでありますし、一方消費者の側の価格ということは、家計における適当な配分価格である、いわゆる許容価格である。この両者が見合った形で安定させていくということが本当に価格対策になるわけです。  そういう意味では、その中で行政が行わなければならないことは、一つは流通合理化ということが当面挙げられるのじゃないか。もちろん生産それから消費者の場合も、これは昔と違って最近は家庭の中で調理をしておらないということで、本来魚なんというものはもともと素材を買ってきて、そして各家庭で調理をして食べておった。したがって、最近は消費者ニーズ多様化ということがよく言われますけれども消費者ニーズは大昔からも多様化しておったわけで、それが家庭の中で吸収されておったわけです。それが全部外に出てきたから多様化と言っているだけの話です。  そういう意味では、そういったものにどう対応していくかということで、生産地においてもそういう新しいいろいろな調理、調味の製品をつくっていくというような形で、生産者と消費者がなるべく話し合える場をどんどん行政が積極的につくっていく、こういうことが究極的には価格安定につながるのじゃないか、そういうことで、流通合理化というのは、生産者と消費者が本当に腹を打ち割って話し合える場をいかにつくっていくか、こういうことが大切ではないかというふうに考えております。
  52. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が参りましたので、ありがとうございました。
  53. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  54. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎二郎君。
  55. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 漁業災害補償法の一部を改正する法律案について、若干の質疑をさせていただきたいと思います。  まず第一に、大臣に、水産業全般についての総論をお聞かせいただきたいというように思います。  我が国水産業を取り巻く状況は、二百海里時代が定着する一方、水産物需要は安定しているものの、水産物輸入が非常にふえてきている。六十二年度は約一一%ふえたようでございます。そういった意味では大変厳しい状況に置かれているというように思います。現在、国民の食糧、カロリーの五%を水産物で供給をいたしているわけでございますけれども水産物のうち、数量ベースでは一五%、金額ベースですと三〇%以上のものが輸入という状態になってきております。また、畜産物の増加、欧米との比較を考えますと、水産物の需要が急激にふえてくるということは望めないように思います。また、私の地方でいいますと、お父ちゃんは漁をしに出ていく、おかみさんは地元の水産加工業に勤める、そしてそこで輸入水産物加工しておるというのが実態でございます。  今大臣は農産物交渉で大変御苦労をいただいているわけでございますけれども、その中でまず第一に、米国を初め諸外国の理解を求めたい、また同時に、国内農業と食糧安定供給に対し国民消費者の理解を得ていかなければいかぬ、これが大臣が力説されておるところでございます。  そこで、国内水産業の果たす役割、これをどう位置づけられるか。十九万漁家の生活の安定とともにどのような点を国民に理解していただきたいというふうに大臣はお考えになられているか。また、その上で強力な水産業施策を推進すべきと考えておりますけれども、大臣はどのようにこれから考えられていくか、その方針もあわせてお聞かせをいただきたいというように思います。
  56. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 今わかりやすい表現で漁村における父ちゃん母ちゃん論議を言われたわけでありますが、そういう物の見方は、私もその実態を承知しておるつもりでございます。  いずれにしても産業としての漁業を維持発展させていくということ、専業漁家を地域漁業の中核として育成していくためには、漁業経営を安定させ、その体質をやはり強くしていかなければならぬということは非常に重要なことだと私考えておるわけでございます。このため漁業生産基盤整備を初めとする各般の施策を推進しているところでありまして、今後ともこれらの施策を強力に推進することによって我が国漁業経営体質強化、これをひとつ図ってまいりたいという基本的な姿勢で臨んでおるわけでございます。
  57. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 それでは漁業災害補償制度、このことについてちょっとお伺いをいたしたいというように思います。  漁業災害補償制度は、漁業者経営の安定のために極めて重要なものと考えております。一方、漁業共済事業の安定的な運営を図るためには、加入者の拡大により危険分散を図ることが必要である、これは当然なことであります。しかしながら、今実態を見ますと、漁獲共済が二二%、養殖共済が二六%、非常に加入率は低いように思います。なぜこうした実態になっておるのか、まず原因をお聞きしたいと思います。  また今回の改正では、漁協契約導入により、漁協系統組織との連携のもとに強力な導入推進を図ることが期待されておりますが、政府としてはどのような効果を見込まれているか。具体的に言えば、加入率はどのくらいをこれから目標として推進したいとしているのか、また政府としては本当にこうやっていけばやれるんだという自信をお持ちなのか、その辺をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  58. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 健全な漁業共済制度運営のために加入率を向上するということが不可欠なことは、ただいま先生から御指摘あったとおりでございますけれども、残念ながら、ただいま数字をお示しになりましてお話ございましたように、総体として見ますと加入が低調なわけでございます。  こういう漁業共済加入が低調な理由といたしましてはいろいろあろうかと思いますけれども、一つは、何といいましても漁業共済におきましては、漁獲実績でございますとかあるいは海況あるいは資源状態、こういうものによって共済事故の発生の危険の程度というものが非常に違っておりますし、それから養殖共済につきましても、漁場条件でございますとかあるいは養殖技術、こういうもので危険の程度というものに大きな差があるわけでございます。こういう中で、危険の程度が低い漁業者、こういう方々の加入の意欲というものが残念ながら乏しいということが一つあろうかと思っております。  それからもう一つは、漁業者に対しまして本制度のPRに従来からもいろいろと努めてきているわけでございますけれども、残念ながら共済制度に対する認識というものが必ずしも十分ではないという点が二つ目かと思っております。  それから三つ目にはやはりこういう共済制度でございますから、損害認定でございますとかいろいろと事務的な手続関係というものがあるわけでございまして、その前提として漁協によります共販体制、こういうものが整っていることが不可欠なわけでございますけれども共販体制がまだ十分に整備されていないという地区も全国的に見ますとかなり見受けられるわけでございます。こういうような条件が積み重なりまして、残念ながら加入率というものがいまだ我々が思っているような向上を果たしていないという結果に相なっておろうかと思います。  こういう状況の中で、今回法律改正をお願いいたしまして、漁協契約導入ということをお願いしているわけでございますけれども、こういう漁協契約という形で漁協自体が共済事業の契約主体ということで制度位置づけられるということによりまして、今まで以上に漁協としての加入促進運動ということが恐らく行われるでございましょうし、それから、一括加入ということを通じまして事務手続というものも相当簡便化されるということで、本制度導入によりまして相当程度の加入率の向上ということを我々も期待し、何とか実現したいと思っておるわけでございます。  ただ、ただいま先生からお話ありました、どの程度という話になりますと、これから系統を挙げて、漁協系統、それから共済組合系統、こういう団体が一体となって、行政とも力を相携えながらどれだけ運動を展開していくかということに大きくかかってきておりますので、具体的な数字としては申し上げられませんけれども、相当程度の効果が出ると思っておりますし、何とか相当程度の効果を上げるべく我々としても全力を投入したいと思っておる次第でございます。
  59. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 今お答えをいただいたんですけれども、やはりこうした制度改正して進められる以上は、内部的でも結構ですから、例えば加入率三〇%いきたいとか四〇%いきたいとか、ある程度年限を切って目標を持たれて進まれるようにお願いをしておきたいというように思います。  共済事業は安定的に運営される必要がある、これは当然であります。そういう意味では、一部のもののために全体が損なわれるということは絶対にあってはならないことであります。そういった意味では、漁業共済組合、全国漁業共済組合連合会政府という各段階についても一つ一つ言えることであろうというように思います。午前中にも参考人より意見が開陳されたところですけれども、今回の責任分担関係見直し、これはどのような基本的な考え方に基づくものか、御説明をいただきたいというように思います。
  60. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 本来、共済なり保険事業におきます責任分担関係といいますものは、組合、連合会、政府の各段階ごとにそれぞれ適正な支払い責任と、それからこれに見合った掛金保有というものが維持されるように設計されているわけでございます。  今回の責任分担見直しにつきましては、最近におきます共済事故の発生状況というものをいろいろと検討いたしまして行ったものでございますけれども、その結果といたしましては、共済組合の責任につきましては従来とは変わらない、しかし連合会の責任につきましては新たに五%の比例部分がふえるということになってくるわけでございます。その連合会の責任の増分につきましては、これとあわせまして手持ち掛金というものもふやすということで、連合会の収支というものが直ちに影響を受けるということは排除したということで、十分その辺に配慮を加えながら今回の改正を行った次第でございます。  いずれにいたしましても、最近の漁業実態のいろいろな移り変わりなりあるいは共済事故の発生状態、こういうものを踏まえまして、それぞれの段階が適正に保有し合って、全体として共済事業の健全な運営を図るという見地から、ここ数年の係数等、いろいろと研究会におきましても検討をお願いし、今回のような改正の結論に至った次第でございます。
  61. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 今回の改正のポイントとして、安定のために加入を促進していく、そしてもう一つは漁業実態に即した制度のために今回の改正を行う、こういう説明でございますけれども、基準漁獲量の導入については、漁業者にとってはある意味では厳しい制度であると言えると思います。制度導入の趣旨と、今後サケマス大型定置漁業以外にもその導入を考えられているのかどうか、この点についてお聞かせをいただきたいというように思います。
  62. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業共済におきましては、先生御承知のとおりPQ方式といいますか、収穫金額というものを基準として共済が仕組まれておるわけでございますけれども、こういう前提といたしまして、漁業共済事業というものはあくまでも共済目的が明確に把握される、それと同時に共済事故というものが相当程度画一的に把握できるということが共済設定上前提となっております。それから、特に漁業の場合でございますと単価が違ういろいろな魚というものが混獲されるということで、単に数量だけじゃなくて、数量に価格を掛けた段階で漁家の所得なり漁家の経営というものが成り立っているわけでございますので、そういう事情が一つございます。それから、実際の商取引におきましても数量というよりは金額というものが一般的でございまして、こういうP掛けるQで物事を考えますることの方が長期的に安定していくということが経験的に認められたところでございます。  こういうことから、一般原則としては収穫保険方式、いわゆるPQ方式というものを採用しているわけでございますけれどもサケ・マスの大型定置というものを見てみますと、サケ・マスにつきましては御承知のとおり、ふ化放流事業というものを行っているという特殊な事情のもとで、近年サケ・マスの回帰量というものはかなり高水準で推移してきておりまして、こういうものを反映して漁獲量が極めて良好である。  したがいまして、こういうことを前提といたしますと、最近の価格の下落というものもそういうふ化、放流、回帰という一連のことを通じまして相当程度予測されているような事態でございまして、ほかの一般の、不慮の災害が再々加わっております一般の漁業とはその辺でかなり違っている。しかも、その災害の発生の状況が、ただいま先生からもお話がありましたように一定地域でございますとか一定の方々にかなり集中しているということからいいまして、こういう収穫保険方式基本を守りながら共済事業としての健全性を確保していくということから、今回こういう方式改正させていただきたいということでお願いしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、サケ・マス定置の場合にはこういうある程度予想される収穫量ということが一つございますが、それと同時に、特定地域についての大きな共済事故の連年の発生という特殊なもとでこういうものを設定しようという考え方でございますので、今回の措置サケ・マス定置以外に政令で拡大するということは現段階では考えていないところでございます。
  63. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 それでは次に、今回特定養殖共済としてノリが本格実施になるわけであります。ノリの実態に合わせるという意味でありますけれども、その辺について最後に御説明をいただきたいと思います。
  64. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ノリの養殖共済昭和三十九年から行っているわけでございますけれども、今までは物損保険方式ということで行ってきたわけでございます。しかし、その後ノリの養殖を取り巻きますいろいろな技術水準なりやり方というものが大きく変わってきているわけでございます。例えば冷凍網の開発普及ということで、かえ網の使用というものが可能になってまいりましたので、一たん被害を受けましても、かえ網を使用するということで生産が相当見込めるというような技術も出てまいりました。それから、浮き流し式の養殖ということで沖合での養殖というものも進んできたわけでございます。  こういうことで、いろいろと前提条件が変わってまいりましたので、養殖期間中の一定期ごとにノリの収穫がさくごとに全くない場合を共済事故としてまいりました今までの物損方式だけでは必ずしも共済需要にこたえられないということでいろいろな要望があったわけでございます。  それでこういう要望を踏まえまして、御承知のとおり収穫保険方式特定養殖共済というものを試験実施してきたわけでございますけれども、この試験実施の歴史も十年以上たちましていろいろな積み重ねが行われてまいりましたので、今回これを本格実施する。本格実施する際にはそれぞれ団体等から要望の出ていました点なり、あるいは今までの試験実施の結果というものを踏まえまして、従来なかった個別契約方式でございますとか、あるいは今回一般論としてお願いしております漁協契約方式、それからさらには長期共済、こういうふうなものをノリ共済につきましても新たに導入するということで、実際のノリ養殖漁業に適した共済というものを今回構築できたというふうに思っている次第でございます。
  65. 川崎二郎

    ○川崎(二)委員 いずれにせよ久しぶりの法改正でありますので、何とか改正後は本当に実が上げられるように御努力を心からお祈りして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  66. 菊池福治郎

  67. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 まず第一に大臣にお伺いしたいのですが、今度の漁災法改正というのはただ単なる金額の問題、収支の問題にとどまらずに、日本漁業現状をどうとらえるか、そして今後日本の漁業をどのような方向にガイドしていくかという非常に大きな問題と結びついている重要な課題だ、それが秘められている改正案だという思いが深くいたします。  そこで、まず最初にお伺いしたいのは、日本漁業の現在置かれている立場環境、それをどのように把握なさっておられるかということについて基本的な認識についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 我が国漁業現状、これについては非常に厳しいものがあるということは趣旨説明の際も触れたところでございます。二百海里体制の定着に伴う国際規制の一層の強化消費支出の停滞に伴う魚価の伸び悩み、水産物輸入増大等まことに厳しいものとなっております。このような状況を踏まえまして水産庁では、長期的視点に立って水産施策の基本方向確立するため漁業問題研究会を開催いたしまして、我が国周辺水域における漁業振興策について昨年十一月中間報告を受けたところでございます。今後はその報告を踏まえて我が国二百海里水域の高度利用や、あるいは消費者ニーズに適応した水産物供給体制整備等について施策の具体化を図るとともに、海外漁場確保、これは特に厳しくなっておりますけれども、この確保も念頭に置きながら漁業の再編整備推進することによって漁業振興努力を続けてまいりたい、かように思っておるところでございます。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  69. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 先ほどの質問者にもお答えになったわけでありますけれども、特に水産物輸入が急増しておるという点が問題の一つであろうかと思うのです。私の住んでおります岩手県の水産関係の数字を見ますと、これは昭和六十一年度ですが、漁業、養殖とも含めた純生産量が前年度に比べて六・二%伸びているのです。三十八万八千五百トンという伸びを示しているのですが、総生産量が伸びているにかかわらず生産額がマイナス一一・七%、つまりこれは魚価の低迷ということになると思うのです。こういう傾向が非常に強く出てきている。生産量が六%以上ふえて生産額が一一・七%減る。全国的にも同じ傾向だろうと思うのですね。それから遠洋・沖合の場合はもっとはっきりした数字が出ておりまして、漁獲が、マグロ・カツオですけれども八千三十トン、前年度に比べて一七%ふえているのに生産額は五二%ダウンをしている。こんなに開きがあるのですね。  こういった状況を詳しく見た場合に、ある新聞の表現をかりれば、こういった外国の沿岸からの締め出しというのは帰らざる川ではないかというふうな表現をしているわけです。それがそのとおりでありますと、今後の日本の漁業の行き先と申しますかあるいは重点の置き方ということにつきましては、資源管理型の漁業栽培漁業の開発、定着、実用化、こういったところが大きな柱にならざるを得ないだろうと思うわけです。そういった意味で沿岸漁業、養殖漁業の重要性というものがますます増大してくるであろう、私はそう思うのですが、大臣、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  70. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 おっしゃるようにつくり育てる漁業、こういう観点からこういうことを中心にして精力的に取り組んでいかなければならぬな、かように考えております。残余は水産庁長官から答えさせます。
  71. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ありましたように、二百海里体制というものが昭和五十年早々からスタートし、現在ますます固定化し深まってきているわけでございます。そういう中で日本の漁業をこれからどう持っていくかということを考えてみますと、一つは、何といいましても日本の近海、日本自身の持っている二百海里というものをどれだけ有効に活用し、再構築していくかということかと思っております。そういう観点からいいまして、ただいま大臣からお話ありましたように、栽培漁業でございますとか養殖でございますとか、それからさらに海自体をきれいにするなりあるいは魚のすみやすい海にしていくという沿岸漁業なり沖合対策というものが、何といいましても政策の基本になろうかと思っております。  それからもう一つは、やはりこれだけの二百海里体制、しかも国際化の中でございますので、いろいろな漁業交渉というものを粘り強く行いまして、今までの我々の漁場確保、それからさらにはこれだけ広い海でございますからまだ未利用の資源というものも散見されますので、こういう未利用資源の発見なり開発ということも進めてまいる必要がございますし、それからさらには新しいいろいろな消費者ニーズというものに対応しながら、いかに魚にいろいろな付加価値というものを高めながら消費者にこたえていくかという流通加工全般にわたる対策ということもこれから大きな柱になってこようかと思っております。
  72. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題はこの部分についてはこれで終わりたいと思うのですが、今お答えになりましたように、日本の近海あるいは養殖漁業というものを大切にしなければならない。悲観材料だけではないのでありまして、幸い日本人の食生活というのは、動物性たんぱくの摂取量における水産物に対する依存度というのは五〇%近いとも言われているわけです。それから日本列島そのものが極めて恵まれた漁業の条件があるということですね。この二つは動かすことのできない我々にも有利な条件なわけですから、悲観材料だけじゃないということで、今お話あったような方向をむしろ元気を出して進んでいくというくらいの心構えで水産行政に当たっていただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  私は一つだけ加えますと、私の住んでいる岩手というのは、とることは得意だけれども加工する、有利な流通に乗せるということについては余り得意ではないという欠点があるような気がするのです。特に農業も同じでありますけれども、一次産業だ、基幹産業だという域に甘んじてないで、その一次産業としてとった産品に現地で加工を加える、つまり一・五次産業というものが今後の水産業地帯あるいは農村地帯の大きな生命になるのではないかという気がいたしますので、内陸部における内水面漁業とあわせて、今後いわゆる一・五次産業への誘導、奨励ということについて力を入れていただきたいと思うのですが、一言お願いいたしておきます。
  73. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 もう全く先生のおっしゃるとおりでございまして、我々といたしましても自信を持って、日本自身これだけ広大な二百海里を持っていることに加えまして、幸いにして国民の方々の食生活を見ておりましても、家計調査等で、一世帯当たりなり一人当たりの魚の消費量がここのところむしろふえてきているという状況にもございますので、そういう中で将来を見越していろいろな施策というものをこれから展開したいと思っております。  その中で、特に一・五次産業といいますか、付加価値を高めた売り方、ここのところ消費者ニーズというものもいろいろ高級化、多様化してまいりまして、活魚でございますとか、宅急便によりますチャンネルの短縮化でございますとか、それからさらに新しい加工でございますとか、そういう形態もいろいろ出てきておりますので、先般お認めいただきました水産加工施設資金法というものも十分に活用いたしまして、これからの水産の生きる道の構築のために何とか努力してまいりたいと思っております。
  74. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 次の問題に移らせていただきます。  以上御答弁いただきましたように、我が国漁業をめぐる状況というのは外的に非常に難しい、厳しい状況になってきておる。それだけに、沿岸あるいは養殖漁業の重要さというものが浮かび上がってきているという共通認識に立ちまして、そういった流れ、そういった状況であるからこそ、この共済制度というものの重要性がますます高くなってきているというふうに認識すべきだろうと考えるわけであります。  そこで、次の質問は、厳しい漁業環境、変動する漁業、そういったさなかにありまして、共済制度漁業災害補償制度のあり方というものについての今後の構え方あるいは重点の置き方ということについて、一言御決意のほどを承りたいわけです。  今さら触れますまでもなく、幸い漁業災害補償法のもとになっております沿岸漁業振興法におきましては、第三条第一項第八号におきまして「災害による損失の合理的な補てん等によって、再生産の阻害の防止及び経営の安定を図ること。」とありまして、それから受け継がれました漁業災害補償法は、全部読みませんが、「中小漁業者相互救済精神を基調として、その漁獲金額の減少又は養殖水産動植物、養殖施設若しくは漁具に係る損害に関して必要な給付を行なう」というふうに明記してあるわけであります。したがって、この漁業災害補償法には、あえて言えば二つの面がある。それは災害対策という面と、広い意味の経営対策という面とが含まれているというふうに当然理解されるであろうし、かつて私のおらなかったころの委員会における御答弁にも、そういった点が明確にあったというふうに聞いております。  そのことも含めまして、くどいようですが、漁業環境が今日のような状況に差しかかっている段階において、この漁業共済制度漁業災害補償制度の今後の力点の置き方、意思というふうなものを一言お聞かせ願いたいと思います。
  75. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 漁業災害補償制度の持つ意義、あるいは経営対策等における位置づけはどうかというようなお尋ねでございますけれども、おっしゃいますように漁業災害補償制度は、経営基盤の脆弱な中小漁業者災害等によって受けることのある損失、これを相互救済精神を基調とした共済事業によって、相互に合理的に補てんをすることによって、漁業の再生産確保漁業経営の安定に資することを目的といたしておるわけでございます。  漁業経営の安定ということとあわせて、この制度は国の災害対策の一環として、まさに今委員おっしゃるようにそういう位置づけで、金融対策等の諸施策と相まって発展を図っていく大きな意義を持っておる。その意義は従来と変わりない、またこの法改正を節目にこの意義をかみしめながら努力をしなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  76. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 次に、今度の改正の背景になっております一つの要素、ファクターといたしまして、経営収支の問題があるように見受けられるわけであります。共済事業の赤字と申しますか、この原因は大ざっぱに言ってどういうところにあるだろうか、累積赤字の実態はどうだろうかという点についてお聞かせ願いたいと思います。
  77. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業共済事業におきましては、養殖共済については昭和五十七年度以降収支がかなり改善されてきたわけでございますけれども漁獲共済につきましては、五十九年度以降もいろいろな変遷があったわけでございます。五十九年度契約にかかりますものにつきましては、異常低水温によりましてコンブ、アワビが不漁になったということでございますし、六十年度契約につきましてはサンマの魚体が小型化したことによりまして漁獲金額が減少した。さらに六十一年度契約につきましては、魚価の低迷等によりましてサケ・マスの大型定置の漁獲金額が減少したということで、共済事故が残念ながらここ二年間連続して多発して損失が拡大したという形に相なっておるわけでございます。  一方、養殖共済につきましては、昨年七月末に播磨灘を中心といたします異常赤潮というものが発生いたしまして、共済事故が突発したという形に相なっておるわけでございます。こういう結果、六十一年末までの事業全体としての累積損失というものは、単共、連合会、国の特別会計、全部ひっくるめまして三百九十一億円という多額の累積損失ということに残念ながら立ち至っているという次第でございます。
  78. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 個々に共済の種別ごとにいろいろ検討なさっておると思うのですが、そちらからいただいた資料をちょっと眺めてみたのです。  契約年度六十年度という数字ですが、例えば収支経営状態ということにかかわります掛金と支払い共済金との関係掛金一〇〇に対して支払い金は一〇〇以上ということになれば、これは収支も赤のようになるわけであります。これを見ますと、漁獲共済の場合の損害率、つまり純共済掛金を分母にして、支払い共済金を分子にしてパーセントを出した数字、損害率を見ますと、漁獲共済が非常に高くて一二〇・八%、六十年度の合計なんですけれども。ところが、一方の養殖共済の方の損害率は六五・八というふうにかなり特徴が出ているように思うのです。  こういった数字を見ますと収支相償わず、あるいは経営が苦しいという場合の中身を見ますと、どこの部分が損害率が高くてどこの部分が損害率が非常に低いというでこぼこがあると思うのですね、何年間か継続して見た場合に。こういった点についての特徴、あるいは今後そういったでこぼこがはっきり定着して、激しいでこぼこだという実態があった場合に、さらにこれを手直しするつもりはあるかないかということを一言お聞かせ願いたいと思います。
  79. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 我が国漁業自体がそうでございますし、それから共済の対象になっている漁業の種類というものも非常に多種多様にわたっておりまして、そのときどきの気象なり海況の変動というものでいろいろな影響が、年によって非常に違った形であらわれてくるわけでございます。  そういう中で、今先生からも御指摘がありましたように、比較的安定的に漁獲量というものが推移した結果損害率が低いというものも見受けられますし、それから毎年大きく変動する漁業というものもその中にはございまして、共済上のリスクというものも、こういう漁業実態なり種類というものによりまして大きな差が生じていることは事実でございます。しかし、共済事業というものは、本来長期的に収支均衡を図るということが共済としての設計上不可欠の前提でございます。そういうことからいいますと、一般論といたしましては、そういう変動に対しまして共済掛金の改定等を通じまして、損害率というものも長期的にはそれほど差がない形に持っていくという努力を過去も続けてきているわけでございますけれども、残念ながらそれぞれの漁種なりあるいは天候なりいろいろな要件の振れというものにまだ完全に追いついていないというのが現状かと思っております。
  80. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今の問題については一つ要望を申し上げて、次の問題に移らせていただきたいと思います。  損害率のでこぼこがあるという実態が、損害率の低い種類に参加している漁業者から言わせれば何となく掛け捨てだという感じが強い、これは難しいところですけれども災害が起こらなければそれにこしたことはないのですけれども掛金を掛けているからには何かもらわなければ何となく損したみたいな心情というのはどなたにもあるのではないかという気がするので、そういった意味で損害率のでこぼこがかなり著しい。しかも、それがかなりの年数にわたって定着したような状況だという場合には、ひとついろいろな形での掛金なりあるいは給付率なりといったものについての御検討をお願いしたいというふうに要望をいたしておきたいと思います。  次に、今回の法改正の問題に入ってまいりたいと思います。  全体的に法改正の趣旨説明あるいは内容等を見て率直に感じたのは、柱である加入普遍的拡大、そして漁協の力に期待するというふうな心情的なにおいが伝わってきます。それから、共済金もできるところは削って、言葉を裏返せばなるべく共済金を少なくしよう、そういったことが全体的に見えるわけです。  ただ、例えば長期共済の途中における契約変更、こういったものは漁業者漁協等に当たってみても歓迎するという意向が強いわけです。そういったいい点もあるわけですけれども、どうも加入の拡大ということの重点の置き方、それから共済金における逓減方式ということ等を考えると、これは共済制度運営について財政当局あたりからいろいろな指摘なりクレームなりがついたのではないか。水産庁としては、漁業者にとってプラスの面の提案をもっとたくさんしたいのだけれども収支面というふうなことを、経済的な背景、理由によってかなり政策的にブレーキをかけられたりしたのではないかという感想を持つのですが、この私の感想に対する大臣の感想をお聞きしたいと思います。
  81. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の共済制度改正につきましては、常日ごろ加入普遍的拡大を図りながら健全な制度運営を図っていくということで、この共済制度運営しておる我々としては常にそういう気持ちで制度の再検討なり点検というものを過去もやってきたわけでございます。  先ほど来先生からもお話がありましたように、いろいろと前提となる漁業情勢が大きく変わってきている中で、昨年学識経験者なり、特に共済事業を直接行っております関係団体の代表者の方々にもお集まりいただいて漁業共済制度検討協議会というものを開催し、ここで幅広い御議論をいただきまして、先ほど申し上げましたような加入普遍的拡大を図りながら健全な制度運営確保していくという前提で、どこをどう手直ししようかということが積み重ねられ、それが報告という形で出まして、それにのっとった形で我々としては制度改正を行ったわけでございます。どこが主導であるとかということではなくて、漁民にとって大切な漁災制度というものをどうやって漁民に親しみやすい、しかも魅力があって長続きするかという基本的な視点に立って今回の改正をお願いしたつもりでございます。
  82. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今のような問答のやりとりは、多分にそれぞれの考えなり思惑なり立場というものがあるから、裸のままでのやりとりはなかなかできないと思うのです。そういうお答えであるとするならば、今後のこれからの改正あるいはその運用等につきましては、水産庁としては漁業者立場によかれ、プラスになるというふうな基本的な考え方でもって共済制度運営あるいは今後に向けての改正に取り組んでいただきたい。財政的なことでもし大蔵当局とぶつかり合うようなことがあれば私ども挙げて応援申し上げますので、漁業者立場あるいは漁協立場ということにスタンスを置いて頂張っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、法改正の理由の背景になっております加入が思わしくない、加入率の問題があるわけです。  漁業共済加入率、これはいただいた資料だから間違いないと思いますけれども二二・六%、養殖共済が二六・五%、漁具共済がぐっと低くて六・六%。そしてさらに低下する傾向があるし、地域別のばらつきも目立つ。こういうふうな分析があるわけですけれども、未加入者の多い、つまり加入の進まない主な原因はどういうところにあるのだろうかということを、箇条書き的で結構ですからお示し願いたいと思います。
  83. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 加入が低いことの理由でございますけれども、一つは危険の程度が比較的低い漁業者、こういう方々にとりましては共済に対する加入意欲というものが余り強くないということがあろうかと思っております。  それから二つ目には、いろいろ努力はしてきておりますけれども漁業者の間で共済制度についての認識が必ずしも十分浸透していないという点は率直に言って認めざるを得ないかと思っております。  それから三つ目に、こういう共済保険という手法をとっておりますので、損害認定というものを適正に行わなければならないわけでございますけれども、そういうものを的確に行うような体制、その前提として漁協共販体制整備しているとか、いろいろな前提要件があるわけでございます。そういう前提要件が整っていないところが残念ながら地域によってはあるというのが三つ目かと思っております。
  84. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 いろいろ原因を分析されまして、結局それに対応する形で漸次手直しをしていく、あるいは法改正をしていく、こういうことになるのだろうと思います。今後も、いわゆる漁家、漁業者実態をより多く見ていただいて、机の上で考えることと実際に現地に行ってみた声とでは違う場合が多いものですから、どうぞひとつ担当係官をどしどし現地に派遣されまして、生の声、実態を吸収していただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  そして、私は加入促進というのは何よりも内容で勝負だと思うのですよ。漁協を利用して、一括投網をかけてと言うと表現は悪いのですけれども、そういうやり方もあるでしょうけれども、最終的には共済制度の中身が漁民の間にどのように共感を拡大していくか、制度の中身が勝負どころだと私は思うので、今回のこともさることながら、こういう声がある、ここをこうやれば少しでも加入者がふえるということがありましたならば、今後もひとつ骨身を惜しまず制度改正なり運営改善なりをしていただきたいということをお願いしておきます。  それから、次の質問に移ってまいりますが、私は今度の改正の中でこれは大変大きな論議を呼ぶ目玉だと思うのは、基準漁獲数量導入だと思うのです。これは、こういうことになりそうですよという話をしますと、漁業関係者の間にはさざ波と申しますかかなり大きな波が立つわけです。それはよくよく読んでみればかなり限定した種別、範囲のことであって、しかもそれなりの背景なりいきさつがあるということはある程度理解できるのですけれども、何といっても今までは漁獲金額が主体になってきた補償金の支払いが、今度は漁獲数量という一つの別のファクターでもって線引きをされる、それを超えるとたとえ経済的にマイナスであっても逓減される、あるいは支払われないという、基本的なシステムを根っこからかなり大きく変えようとしているというのが今度の基準漁獲数量導入だろうと思うのです。  例えて言えば、今までですと、その年の漁獲金額共済限度額を下回った場合、漁獲数量関係なく、どんなにたくさんとっても共済金は支払われた。つまり、経営実態からすれば赤字ではない、数がとれた、量がとれたということである程度経営としては赤字を免れた、しかし契約している共済限度額からは下回っているという場合は共済金は支払われてきた。これは共済制度ですから当然だと言えばそれまでです。今度の場合、漁獲金額共済限度額に達しない場合でも、基準漁獲数量を上回った場合には支払いを逓減することができるというふうになるように思えるのですが、そこはどうですか。
  85. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今度、基準漁獲数量制度導入することになったわけでございますけれども、ただいま先生からお話がありましたように、従来、漁業共済につきましてはPQ方式といいますか漁獲金額を基準として支払ってきたわけでございます。そしてこれは、農業等の場合にはむしろ数量ということが保険の概念の前面に出ている場合が多いわけでございますけれども漁業実態からいいまして、漁業経営なり漁獲方法の中で、混獲ということで一つの種類の魚の数量だけでは漁家の経営でございますとかこういうものは考えがたいということ、あるいは商取引におきましても数量より金額が一般的に採用され、それから経験的にも金額に着目した方がより実態的であるということからいいまして、収穫保険方式というものがとられてき、それから我々といたしましては漁業経営というものの実態からいいまして収穫保険方式漁業にとってふさわしい方式であると基本的に考えていることは従来と変わりないわけでございます。  ただ、こういう基本的な立場に立ちながら、収穫保険方式を今後とも守っていくために、今、大型定置につきましてはこのまま放置しておいてはせっかくのそういう基本が守り切れないという問題が残念ながらいろいろと出てきておりますし、それからサケ・マス大型定置の漁業経営実態からいいまして、ふ化放流によって相当の回帰率は確保され、回帰量も安定的に相当高くなってきておりまして、そういう数量の増が金額の足を引っ張っているというような結果にもなっておるわけでございます。しかも特定地域について共済事故が連年継続しているということで、全体の収穫保険方式を維持していくための最低限度の手直しをここでしておくことがむしろ共済の根幹を今後とも守るための一つの道じゃないかということで、今回、こういう漁獲数量の基準数量というものを導入することに踏み切ったわけでございます。  これはあくまでもサケ・マス大型定置に見られますような漁業実態、それからここのところの共済事故の起き方ということに着目しての特例的な措置でございますので、基本としての収穫保険方式、いわゆるPQ方式というものは一つも変えてないつもりでございますし、例えば品質の低下等によります価格の下落、こういうものは従来と同じように共済の支払いの対象になってくることは当然でございますので、そういう意味では、従来の収穫保険方式基本というものは今回の改正によりましても根幹は維持されていると認識している次第でございます。
  86. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今の御答弁の中で私が大変力強く思ったのは、他の種類にこれを及ぼさないためにも今回この措置に踏み切らざるを得なかったんだとおっしゃった。つまり、資料では「特定の漁業」という表現を使っているわけですね。まさかどこそこの何々漁業とは具体的に書けなかったでしょうから「特定の漁業」と書いた。これは今、サケ・マスの定置だとお答えになったわけです。つまり漁獲額を補償するということから数量方式導入した、このやり方については、特例的という言葉もおっしゃったわけですが、このサケ・マス定置に限ってのことであって、他の分野、他のものについては拡大をしないと理解してよろしいですか。
  87. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在の一般の漁業情勢を見てみますと、サケ・マス定置網漁業のように、ふ化放流事業等によりまして安定的に漁獲量が確保され、しかもその漁業に係ります共済事故多発して共済事業収支事業運営上大きな問題となっているという漁種はほかに見当たりませんので、当面は少なくともサケ・マス大型定置ということで本件の対象を考えていくつもりでございます。
  88. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私の心配は、さっき冒頭に例を引きましたけれども、岩手の数字でありますが、漁獲量が一七%ふえながら生産額では逆に五二%下がったという、極端なといいますか、大変な例が現実にあるわけです。ですから、今度の基準漁獲数量導入ということを文字どおりそのまま機械的に当てはめれば、サケ・マスに限らないよ、定置だけに限りませんよという言い分も将来の提案の中に、この委員会に出てこないという保証はないような気がするのですが、本日のこの委員会で、それはない、全く今回のこのサケ・マス定置に関しての提案なのだ、将来に向けてもそうなのだ、そういうふうに理解をしたいのですが、いかがですか。
  89. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回サケ・マス定置につきましてこういう措置をとりましたのは、再三申し上げて恐縮でございますけれども、放流等で漁獲量がふえ、しかも安定している、そういう特殊性ということと、それから共済収支の問題、この二つから接近しておるわけでございまして、ほかの魚種につきましてはこういう実態にございませんので、そういう実態にない限り、指定限度数量を設けるというようなことはないわけでございます。
  90. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今後もありますので、十分いろいろ御意見をお聞きしたり、あるいはまたこの委員会で論議を続けてまいりたいと思います。  次に、簡単にお聞きしますけれども漁協契約方式導入する、このことについての評価は、抵抗はないと思いますが、いわゆる期待度といいますと、なかなか大変ではないかという気もするのです。  漁協の人たちと話してみますと、漁協の仕事というのは共済制度だけではありませんよ、港湾を整備維持する、あるいはアクセスの道路をつくる、あるいはいろいろな購買事業もやる、いろいろなことがあって、そのうちの一部が共済事業だ、したがって一括加入ということでどんと加入することを期待するのであれば、やはりその担当者を一人か〇・五人か置かなければならない、これに対する人件費あるいは人員配置というものに対する手だては考えられないだろうかという声がございました。それから、数多く入れば収支相償うということのイコールではない場合もあるのではないか、加入人員がふえた、即収支改善にそのままつながるという見方もあるいは危険ではないかという指摘もございました。この二点について長官の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  91. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回漁協契約方式というものをお願いしておるわけでございますけれども、今先生からお話がありましたように、制度をつくったからこれで加入が飛躍的にふえるという生易しいことでないことは我々といたしましても十分認識しているつもりでございます。  しかし、この共済制度は、あくまでも中小漁業者が相互に自主的な扶助関係というものの上でみずからの経営を守っていくという協同組合運動の一環ともある意味では位置づけられる仕事でございまして、中小漁業者経営の安定のために漁協自体も一肌も二肌も脱いで、何とかこの新しい制度の活用に努力していただきたいと思っておりますし、我々といたしましても、いろいろな指導でございますとかあるいは事務簡素化についての御相談でございますとか、そういうものにつきましては十分に対応してまいろうと考えておるわけでございます。  それから、加入拡大と収支の問題でございますけれども、これは、ただいま先生からお話ありましたように、たまたまその年のいろいろな漁況なり価格の変動ということによりまして、母数が多いことがかえってマイナスを大きくするということになる年もあるいはあろうかと思いますけれども長期的、全体的な立場に立ちますと、やはり分母、母数が大きいということが収支改善に役立つことは確かでございまして、そういう長期的な視点に立ちまして、何とかいろいろな手だてを講じながら加入の拡大を系統とともども図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  92. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題についても一つだけ御要望申し上げて次の質問に移らさせていただきます。  私は、何しろ内陸生まれの内陸育ちでございますから海のことに非常に疎かったわけなので、今度のこの法案審議に先立ちまして、何カ所か漁協をお邪魔して歩きました。そこで共通してこの問題について訴えられたことは、要するに必要な制度であるということはわかっておる、問題は掛金共済金との関係、さっき言いましたね、心情的な問題もある。それから制度に対する理解ということになると、私も勉強してみたのですが、これは大変な中身でございまして、途中でさじを投げた部分もあるのですけれども、なかなかわかりにくい、だから、直截に、ここの地域実態はこうだ、こういう損害なりなんとかいうのは過去にこういうふうに起こっているんだ、これに対する一つの手だてとしてこういうふうにやるんだというふうな、現地の漁協とタイアップした形でのPRと申しますか浸透というものをぜひお願いしたいし、漁業者の皆さんには、ただ漁協をすぽんと加入させれば後は漁協が何とかやってくれるだろうということではなしに、きめ細かい対策をお願いしたいと思っております。  次に、養殖ワカメの漁獲共済について二、三お尋ねいたしたいと思います。  ワカメが天然ワカメ主体であった時代から養殖ワカメに非常に速いスピードで変換してきたということは御承知のとおりであります。私が住んでいる岩手は三陸ワカメで日本有数のワカメの産地であります。余談になりますが、先日、裏日本のあるところに行ってワカメを買いました。そうしたら、私が岩手県人だと言ったら、売る人が、大きな声では言えないけれどもこのワカメの六割は三陸ワカメだと教えてくれました。日本の漁業において大きな位置を占めているという実態もあるものですからつい力が入るわけであります。  いずれにしても、冒頭、大臣、長官からお答え願いましたように、沿岸あるいは養殖漁業というものが今後の日本漁業の大きな柱であるということからして、ワカメの養殖に対する奨励策あるいは保護策というものもあわせて強化していただきたいということのお願いでございます。  今、天然ワカメと養殖ワカメの比率あるいは日本全体におけるワカメの生産状況、そして他国との競合関係についてどういうふうに把握したらいいか、大ざっぱで結構ですからお聞かせ願いたいと思います。
  93. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ワカメの生産量の全体でございますけれども全国で十四万四千トンほどとっておりますが、このうちの九四%に近い十三万五千トンが養殖で、天然物は六%の八千八百トンというふうに、先生御指摘のとおり大きく変わってきているわけでございます。しかもこの中で岩手県のシェアが全生産量の三五・二%、養殖においては三六・九%ということで、順位といたしましては、それぞれ圧倒的第一位という形に相なっておるわけでございます。
  94. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 養殖ワカメにつきましては——ワカメに限らず天然物を対象とする共済制度ということを考えた場合には、天然にふえるもの相手の漁業でございますから、採取すべき地域はこうですよ、とってもいい時期はこうですよ、つまり集団で相談し、決めていって、貝なり海藻類を捕取捕獲しているわけですね。ですから、天然物と違って養殖ということになりますと、これはもちろん人工、手が加わります。そして実態とすれば、ワカメ養殖のさくというのですか台数を抱えているのは恐らく岩手の場合、一戸平均三ないし四台じゃないかと思うのです。その要する経費は恐らく一台につき十数万から二十万くらい、そのほかに種糸というものを仕入れる、あるいは繁殖し採取するまでのいろいろな手数もかかるし、経費も投入する。つまり個人個人でもって養殖ワカメについては投資をし、育て、収穫し、そして集団の方に出してやるという仕組みになっておるわけですから、同じ湾内でも、全部一緒に同じ程度の損害あるいは共済事故に遭うということは珍しいくらいなもので、むしろ三百人でもって団体をつくった場合には、毎年十人か二十人の共済に該当する事故が発生しているというのが事実なわけです。ところが団体加入ということになりますと、団体全体としての共済限度額に達しないと共済金なしですから、その中に包まれている個々人は、個々人として損害をこうむっても何も来ないということになる。  ですから、この際、ノリの例もややそれに近いのじゃないかと思うのですけれども、個々人の経営にかかわっている養殖ワカメの共済については、今までどおりの集団加入も結構です、これはそのまま存続していただきたい。同時に個別加入という制度も、これは今地域共済ということで岩手で単独でやっているわけですけれども、これを三カ年間実施した経過を見ますと、損害率が八〇から九〇%で安定している。したがって、安定、不安定という面から言えば、共済制度の本則に組み入れられたとしても他の方に迷惑をかけるようなことはまずない。ただし、やはり個別の損害が来たときにはどうしても欲しいのだ、そういった漁獲金額に対する補てんが欲しい、こういうのが実態なわけです。掛金を見ますと、結局今のところは二重に掛けているわけですよ。県平均しますと、一人当たり団体加入共済掛金二万四千五百円台、そして岩手における単独でやっている地域共済、ワカメ共済ですね、これの共済掛金と合わせますと、それが二倍以上の六万九千円になる。こういうことで、ワカメを大事にし、ワカメで生計を立てている漁民たちは、二重の掛金を文句を言わずといいましょうか、とにかく掛けているわけです。それでもって頑張っている県もあるわけです。  ですから、地域的に日本全国への広がりという点では足りない点があるかもしれませんけれども、この問題については、掛金も掛けるし、二重取りしない、二本立てになっても二重取りはしない。させないと思いますけれども、何とかひとつ個別に加入して、個別の共済金支払いを受けられるような制度を本則化してほしい、こういうふうな声が非常に強いわけです。共済制度精神を冒頭に立ち返って復唱しようとは思いませんけれども、漁民の立場に立ってこの問題についての温かい行政サイドのお考えをお示し願いたいと思います。
  95. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 国の制度として行っております漁業共済、こういうものにつきましては、全国的な規模で収支均衡のもとに危険を分散しながら経営の安定を図っていくということがその基本なわけでございます。ただいま先生からお話がありましたワカメ共済につきましては、従来は集団加入ということでやってきたわけでございますけれども、それぞれの地域、具体的に岩手県からの強い要望もございまして、地域共済という道を開き、地域共済という形で岩手県で行っていただいているわけでございます。全国的にいいますと、集団加入が現在のところ普遍的に、ある意味では岩手県以外では定着しているという状況にございまして、個別加入をしたい、個別加入方式をとってくれということについて、関係団体等でまだ意識の統一なり意見の一致を見ていないという状況にもあるようでございますので、ただいま先生からいろいろその実情についてもお話がございましたが、共済団体の意向なり漁業実態、こういうものも十分踏まえながら、これからの問題として検討してまいりたいと思っております。
  96. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 ぜひそのように一歩一歩進めていただきたいと思います。  ただ、この問題をお願いしたりお話ししたりしますと、この種類はこの地域に偏っていて全国的なものじゃないからというお答えなりお言葉が返ってくる場合が多いわけです。しかし、それは考えようだと思うのですよ。例えば、ノリは全国的に全部平均的に行き渡っているかと言えば、そうじゃないでしょう。ハマチだってそうですよ。やはりその地域にはその地域の海況に合った漁業があり、魚の種類、貝の種類、海藻の種類があるわけですから、それを全体として漁業と言っているわけでしょう。ですから、漁業に対する共済ということになった場合には、片方が恩恵をこうむって、片方が恩恵をこうむらない場合もあるでしょう。これは漁業の種類に限らず、共済加入している一人一人についても同じことが言えるわけですよ。災害に遭った人が補償を受ける、遭っていない人は一生補償を受けない、共済金を受け取らない。それを承知の上で共済組合というのは成り立っているのです。その基本に立ち返れば、ワカメは岩手と宮城とどこかとどこかだ、全国的じゃないから考えなくてもいいという論は私は成り立たないと思うのです。それはおかしいと思うのです。それはひとつ払拭なさってください。  ただ後段でおっしゃったように、当事者である漁業者あるいは漁業団体からそれについての詰めといいますか、要請とか相談というものがない、そういう段階であれば、それは今後機会を見て私もお話し申し上げたいと思うし、恐らく漁業者の方からもお願いに行くだろうと思います。そのときには、今長官おっしゃったように、共済制度の持っている二つの側面と申しましたが、その一つの側面を思い出していただきながら、ぜひ本則加入方向を目指して具体的な作業に入っていただきたい。このことについて一言御回答をお願いしたいと思います。
  97. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 何といいましても、地域共済から本則といいますか国の制度にするには、やはり全体として危険をプールするという必要性なり緊要性というものが一つ前提になってまいりますので、先ほどもお話ししましたように、全国的なワカメ関係者の動きなり、いろいろな漁業実態というものを見てまいりたいと思っております。
  98. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私の持ち時間、間もなく終わるわけですが、どうもワカメ漁業共済にこだわるようですけれども、岩手の場合は、パンフレットを出しまして非常に熱心に呼びかけている。加入率も九〇%を超えているのですね。そして、損害率も八〇から九〇ということでほとんど安定している。今まで一〇〇を超えたことはないでしょう。私は安定しているのが共済に参加することは共済側にとってもいいことだと思うのです。不安定でしようがないというのが入ってくるよりは安心して入れていただいていいのじゃないかと思うのです。そこはひとつ肩の力をすっと抜いていただきまして、ぜひ御検討をお願いしたいということを、だめ押しのようでございますけれども申し上げておきたいと思います。  最後になりますが、漁業問題の中で比較的忘れられがちな面がある内水面の漁業についてであります。  私どもいわゆる内陸に住んでおります者にとって、例えば北上川本流をさかのぼってくるサケ、このサケが一匹二匹盛岡にさかのぼってきた、橋の上から見える、これだけでニュースになるのです。そして、子供たちも非常に喜ぶ。じゃ放流しようじゃないかということで数年前から放流が始まっている。原則として北上川本流の漁業権は制約を受けていまして、支流でもってふ化放流をやっている。ふ化放流をやった者だけに次の年の採捕を許可するというふうなことで、資源を大切にしながらしかも採捕をし、採捕するために資源を培養しているのか、培養するために、卵をとるために採捕しているのかわからないぐらい慎重にやっている。それからヤマメにしてもアユにしても、アユなんか種アユをわざわざ琵琶湖から買ってきたりしているんですね。そうしてまでも県民、あるいは他県からも車や新幹線で来ます、そして釣りを楽しむ、レクリエーションになっている。それから、もちろん北上川沿岸地域の人たちの動物たんぱくの原料にもなっている。子供たちのレクリエーションにもなっている。大変多様な役割を果たしているのが内水面漁業なわけでございます。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕  そういった意味で、各県それぞれに養殖の計画を持ったりやっているわけですけれども、ぜひこの問題については、機会がありましたならば各地域のその担当の局にお話し願いまして、二県、複数の県にまたがる川の問題が実はあるんです。というのは、岩手県でふ化放流して下っていって三年後、四年後帰ってくるサケを、仮に河口であるいは下流地域で採捕され尽くしますと、これは上ってこないのです。魚道一本押さえられたらそれで終わりなんです。宮城県の人はもちろんそういう悪いことはしていません。が、上流下流の関係でふ化放流事業も共同でやったらどうか。採捕する場合にも共同で話し合って計画を立てたらどうかという機運があるわけです。そういった意味で、内水面漁業に対する一つの振興ですね、必要だったら予算も少し流してやる、内水面漁業の試験場も各地にありますから。そして今申し上げたような二つの県以上にまたがる川の問題等についても、仲よくやりなさいよ、こういう方法でやったらどうですかというふうな指導等もあわせてお願いしたい。内水面漁業漁業の大事な部門に位置づけていただきたいということを申し上げまして質問を終わりますが、このことについて一言御所見を賜りたいと思います。
  99. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 内水面漁業は魚資源確保の上からも、あるいはただいま先生からいろいろ例示がありました地域振興のためからも、我々として漁業政策の一つの柱という位置づけはしているわけでございます。それで、その際に複数県にまたがるいろいろな調整問題、御指摘のとおりあるわけでございますけれども、これにつきましては全国の課長会議でございますとか、それぞれのブロックでそういう調整する場というものも常日ごろつくってきておりますので、そういうものを通じまして今後適切に対応してまいりたいと思っております。
  100. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 終わります。
  101. 菊池福治郎

  102. 野坂浩賢

    野坂委員 漁災法の一部改正問題について御質問を簡潔に申し上げたいと思います。  今度の漁災法の一部改正はいわゆるPQ方式を採用された。私たちは評価をしておるわけであります。したがって、私はこの際農水大臣に確認をしておきたいと思うのでありますが、今農水大臣は、牛肉やオレンジの自由化、市場開放をめぐって頭はいっぱいであろうと思うのです。今度の水産関係におけるPQ方式、農業関係ではそのことが採用されていない、ミカンだけが災害時における試験的PQ方式を採用しておる、こういう状態であります。今後自由化ということになれば価格が下落するということが、農畜産物では明確に示されておるわけであります。したがって、これらの問題をひっ提げて、水産関係におけるPQ方式と同じように農畜産物においてもPQ方式を採用される事態が今、来ようとしておると思うのでありますが、これについて十分検討して善処されるべきだと考えておりますが、大臣の御見解を承っておきたいと思います。局長等は呼んでおりませんので、大臣が明確にその辺を御答弁をいただきたい、こう思うのであります。
  103. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 漁業災害補償の問題の関連におきまして牛肉、かんきつの自由化問題ということについて触れられたわけでございますが、一つの前提でここでお答えすることはお許しをいただきたいと思っております。しかし、おっしゃられんとする意味はよくわかります。
  104. 野坂浩賢

    野坂委員 理解をされておるわけでありますから、これに対しては対処するということがなければつじつまが合わない。したがって、慎重に検討して対処していただきたいということをお願いしておきたいと思いますが、御慎重に御検討いただけますか。
  105. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 一連の、といっても一部の報道によって、今懸案の牛肉、かんきつ問題、お察しのとおり、おまえの頭はそれでいっぱいだろうと言われている中で自由化を前提としてのお答えは極めていたしにくいのでございまして、お許しをいただきたい。重ねて申し上げますが、おっしゃられんとする意味はわかります。
  106. 野坂浩賢

    野坂委員 若干の誤解があるのじゃなかろうかと思うのですが、漁業災害補償法、農業災害補償法、それぞれあるわけであります。したがって、牛肉、かんきつに限らないで農畜産物一般論、例えば米の問題にいたしましても畜産、肉の問題にいたしましてもあるいは乳の問題にしても、これからたくさん価格を引き下げるという動きがある。漁業はPQ方式をとる、農業はPQ方式をとらないということになればこれは片手落ちになるのではなかろうかということを心配するわけでありますから、理解をしていただいたので、慎重に御検討されることを強く要望して、次に移ります。  今度の法改正漁業発展経営の安定のために行うものであるということが提案理由の説明で明らかになっております。この共済の内容を見てまいりますと、昭和五十八年から六十一年までは保険料は四十一億九千五百万円支払われておる。そして支払い共済金というものは七十五億一千七百万円、差し引き三十三億二千二百万円の赤字が出ておるというのが現況である。しかも一方、このようにして支えておるというふうに外部からは見えるけれども、内容的に見ますと加入率は二二・六%という現状である。五十九年度の二四%をピークにして低迷をし、停滞をしておるということは明確に言えるわけであります。その両者の原因というものは一体何なのか。普及率の不徹底、こういうものを中心にして一体何があるのかということを明確にお答えをいただきたい。
  107. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生御指摘のとおり漁業共済収支状況が赤字ということは事実でございまして、これにつきましては、制度発足以来いろいろな災害というものが重なってきたわけでございますけれども、ここ三、四年でとってみましても、五十九年には異常低水温による昆布なりアワビの不漁、それから六十年にはサンマの魚体の小型化による漁獲金額の減少、それから六十一年にはサケ・マス大型定置の漁獲金額の減少、六十二年には養殖の異常赤潮の発生というような、その年々のいろいろな大きな共済事故ということが残念ながら共済収支のマイナスにつながっていたと思っております。  それから、第二番目の加入状況の少ないという点でございますけれども、いろいろ制度見直したり、我々も我々なりに努力はしてきたわけでございますけれども、残念ながらいまだに先生御指摘のとおりのような数字になっているわけでございます。これは一つは危険率の低い方々が共済に入ろうという意欲をなかなか持たないということがあろうかと思いますし、それから残念ながらいろいろPRはしてきても共済についての認識が末端、隅々までまだ浸透していないという問題、それに加えまして、やはり共済でございますので、損害査定でございますとかこういういろいろな事務手続が必要になってくるわけでございますけれども、そういうものの受け皿になる漁協体制整備されていないというような問題が相重なりまして、残念ながら現在のような加入率になっていようかと認識しております。
  108. 野坂浩賢

    野坂委員 認識と反省だけではなしに、前向きにこれからどのようにして加入率を高めていかなければならぬか。三十三億円という赤字補てんを一般会計から昭和六十二年度には六十七億円繰り入れをしておる、そういう状況であることを徹底をするということになれば、災害のときの対応策のためには共済加入をしなければならぬという空気を醸成していかなければならぬだろうと思います。  そこで、今度の一部改正によって、二四%というのが最高であるけれども、いつごろまでにはどの程度になるのか、そしてその採算ペースは何年後になるであろうという将来の展望と見通しがあればお聞かせをいただきたい。
  109. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 共済といいますその自主的な保険制度、しかも長期収支の均衡を図って運営している制度でございますので、今先生から具体的な見通しなり数値というお尋ねがあったわけでございますけれども、今回の制度改正によりまして、系統を挙げて加入に取り組む、それから我々もいろいろな手だてをするということで加入率がかなり上がるということだけは言えますし、我々も何とかそれを実現したいと思っているわけでございますけれども、では具体的に何%の加入率になるかということは残念ながらお示しできないわけでございます。それから収支につきましても、その年のいろいろな状況なりあるいは掛金率なりいろいろなことの相乗効果としての収支でございますので、何年でこれがどうなるということは申せませんけれども、今回の改正によりまして各段階ごとの保有割合の見直しでございますとか相当いろいろな手だてを講じておりますので、それぞれ均衡ある共済収支実現できると思います。それから従来の赤字につきましてはいろいろな手だてをしてきているわけでございますけれども、そういうものの返還等につきましても従来と同じような計画で何とか実現してまいりたいというふうに考えております。
  110. 野坂浩賢

    野坂委員 考えるとかそのように努力をしますとかそういうお話は我々は何十回と聞いてまいりました。しかし、法律改正するに当たってはその展望がなければならぬ。その収支の均衡というものを一つの目途にして考えなければならぬ。そういう面で十分御検討をいただき、普及率の徹底に邁進されることを要望しておきたいと思うのであります。  そこで私は、最後に大臣にお尋ねをしたいと思います。  それぞれの委員会附帯決議がつけられております。附帯決議の後、関係の大臣、農水の大臣は、どの大臣でも、御趣旨を体しまして慎重に検討し、善処したいと思いますということが書いてある。その附帯決議の重みを実行するという意味で、農水大臣はどのように受けとめていらっしゃるでしょうか、承りたい。
  111. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 何回か私も附帯決議について今委員おっしゃるような発言をした経緯にございます。そうした決議というものは極めて重いものである、軽んじてはならぬということでございます。ただ、日々これ相努めていかなければならない問題が非常に多うございます。そういう意味で抽象的ではありますが、慎重に検討しつつもおっしゃる趣旨が生かされるように最善を尽くしてまいる、こういう発言を重ねておるわけでございます。決して軽んじているわけではございません。
  112. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。  漁業発展と漁家の経営安定ということを考えてみると、共済組合ではコストの削減、コストの低減を図っていかなければならない、こういう問題が第一点としてある。そして漁業者の負担軽減というものもあわせて考えなければならぬ。この二点が柱だと私は思っております。そのとおりですね。立って物を言わぬでもいいですけれども、そうですね。そういうことを踏まえて、佐藤農水大臣も農林水産委員であったころ、昭和四十九年四月三日には、漁業災害補償制度、漁船損害補償制度及び任意共済制度を統合して一元化をすることがそれぞれのコスト低減にもつながるであろう、いわゆる漁家の負担軽減にもなるだろう、こういう附帯決議がなされておりますし、なかなか進まないので五十三年四月十九日にも同じような附帯決議がなされておるという現実があるわけであります。思えば十五年たっておるわけであります。日常は非常に多忙であろうと思います。しかし、本当の意味の漁業発展あるいは漁家の経営の安定というものを図るならばそれらについては慎重に検討し、対処、善処されなければならぬ、これが政治家としての使命であろうというふうに考えるわけでありますが、農水大臣の見解やいかん。
  113. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 委員も随分前から農林水産委員会に属しておられる。私も参議院時代から、また委員会運営を主宰する立場にもあったこともございます。そういう中にあって、法改正制度改正等々の場合に、この種の問題は一元化の方向、これは常に言われておることでございます。どんなに難しい問題であってもしかるべき方向というものを欠いてはならない。その節目節目に一元化を常に主張しながら、そして実現の機をねらうということ、不断の努力を続けている、こういうことではないかと思っておりまして、いまだそれが実効が上がらないという意味での御発言だろうと思いますけれども、不断の努力を続けなければならない、こう思っておるところでございます。
  114. 野坂浩賢

    野坂委員 今回ノリの養殖問題が本格実施をすることになったわけでありますが、シジミは一体どうなっておるのですか。対象ですか。
  115. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁災制度そのものは中小漁業者の営む漁業を対象としておりますので、シジミをとる漁業等の内水面において行われます漁業法律上は対象となっております。しかし、漁業共済事業として具体的に実施するためにはその対象母数の全国的な広がりでございますとか、あるいは危険分散の可否でございますとか、さらには料率設定、損害認定の方法、事業執行体制というようないろいろなテクニカルな問題がございますので、現段階におきましては共済事業として具体的に実施はされていないところでございます。
  116. 野坂浩賢

    野坂委員 私のふるさとには宍道湖というのがございまして、そこでヤマトシジミが収獲をされております。構造改善局長でも結構ですし水産庁長官でも結構でありますが、年間どの程度の収入があるというふうに把握されておりますか。
  117. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 シジミの生産状況ですけれども全国で、昭和六十一年で生産額七十八億九千八百万円、このうち宍道湖関係が推定で三十一億九千七百万円というのが私のところの資料に相なっております。
  118. 野坂浩賢

    野坂委員 シジミは年間約三十二億円の収獲がある。今宍道湖・中海を淡水化をして、そのヤマトシジミというものは死滅の状況に入ろうとしておる。今日このような段階を迎えておるわけでありますから、事は重大として、私はこの際宍道湖・中海限定淡水化問題について農水省の考え方を聞きたいと思うのであります。  御案内のように昭和三十二年、松江市に調査事務所が設置をされましてからもはや三十一年を経過したのであります。そしていよいよ三十八年度から百六十五億円の十年間の総事業費の予算を計画しまして着工した。当時は米不足時代を迎えており、何としても干拓をし淡水化をして食糧の安定供給を図らなければならぬというのが国民、県民の念願であったわけでありますが、二十五年、三十年を経過してまいりますと、米不足時代から米余り時代に変わってきたというのが現況であります。  予算委員会でも議論になりましたが、内閣総理大臣竹下登さんはよく承知をされておりまして、事態は変わってきたという認識を示されておるわけであります。農水大臣も分科会でその点は同意見であるというふうにお考えになった。当時の事業目的というものは大きく変わってきたということの御認識は農水大臣はございますか。
  119. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 委員がもうお認めになっておられるように、時代の変遷は率直に認めておるところでございます。
  120. 野坂浩賢

    野坂委員 五十九年の八月に淡水化試行という問題を提起されました。そしてそれは本格淡水化の準備段階として位置づけられました。六十二年の九月になりますと、限定的淡水化試行は本格的淡水化の参考資料の集約とするという格好に変わってきたわけであります。鳥取県議会やあるいは島根県議会ではこのことが論議をされまして、今度の限定的淡水化試行は弾力性を持つものであるという認識が新聞等にも出ておるわけであります。私の予算委員会の分科会でも、その点については弾力的運用をするというお話がありましたが、そのとおりであるかということをもう一度確認をしておきたい。
  121. 松山光治

    ○松山政府委員 限定的淡水化試行の問題でございますが、試行の実施を通じまして淡水化後の水質予測の精度向上を図ることが目的でございます。いわば調査、研究、検証の段階とでも考えられるかなというふうに思います。したがいまして、試行が終了いたしました段階ですぐ自動的に本格淡水化に移行するといったようなものではございませんで、私どもの考え方といたしましては、試行の結果を踏まえましてその後の取り扱いについて両県と十分相談していきたい。この点は再々申し上げてきたところでございます。
  122. 野坂浩賢

    野坂委員 局長はなかなか答弁が上手といいますか、私から見るとずるいといいますか、新聞では自民党の県議会の代表がこう言っております。後戻りできぬようなことでは困るので十分にその辺は考えてもらっているというふうに新聞にあります。いわゆる弾力的運用ということでありますが、そのとおりだというふうに考えていいですね。あなた、私にも答えたのだ。
  123. 松山光治

    ○松山政府委員 試行の結果を踏まえまして、その後の扱いを相談していくということでございますから、万々そんなことはないと思いますけれども、異常な事態が発生しているといったような場合には、水門を全部開くというような場合もあり得るということでございます。そういう意味では弾力的な運用ということになるわけでございます。
  124. 野坂浩賢

    野坂委員 環境庁にお尋ねをいたします。  淡水化試行の問題、限定的淡水化試行、どの調査を見ても米子湾は汚濁が一段と進むというふうに明らかにされておりますが、その点は御存じでありますかということが一点。  二点目は、この限定的淡水化試行に当たって農水省から協議の申し入れがあったのか、あるいは事前打ち合わせがあったのか。それに対してどのような意見と考え方を示したのか伺いたい。
  125. 小澤三宜

    ○小澤説明員 お答えいたします。  第一点、米子湾の汚濁の関係でございますけれども、私ども農水省あるいは県で出されましたレポートは見せていただいておりますけれども、その中で、淡水化の場合にはCODが多少高くなるといったこととか、それから局部的に悪化の傾向が強くなる、そうした記述がありますし、限定淡水化の場合にはそうした記載は少ない。アオコの発生の懸念があるというような記載が鳥取県の方のレポートにございますが、そういうことについては読ませていただいた限りで承知しているわけでございます。  それから、農林水産省の方から協議があったかというお尋ねでございますが、私どもこの問題について正式な協議は受けていないところでございます。
  126. 野坂浩賢

    野坂委員 協議は受けていない、汚濁は一層進む、これが環境庁の態度であるというのが今日的な状況であります。  そこで、米子湾の浄化のためにヘドロ対策というのをやっておるわけであります。建設省の方おいでだと思いますが、百万トンのヘドロ堆積があるというこの現状をどのように対処し、当面四十万トンの除去ということを考えておられるように承っておりますが、その点に対しての御見解を承りたい。
  127. 日野峻栄

    ○日野説明員 お答えいたします。  中海の浄化事業といたしまして現在堆積した汚泥のしゅんせつのために河川浄化事業というのをやってございます。先生御指摘のように、一期の施行分といたしまして約四十万立方メートルをしゅんせつしようという計画で今鋭意進めているところでございますが、昭和六十二年度までに大体十万立米ぐらい進んできております。当面この一期施行分を鋭意計画的に促進するわけでございますが、その後につきましては捨て場確保の見通しなどを勘案しながら進めていきたいと考えております。
  128. 野坂浩賢

    野坂委員 五年も前にいわゆる四十万トンの計画を立てて遅々として進まない。この中海の浄化のために、建設省だけではなしに農水省も、将来の農業発展地域経済の進展のために積極的に取り組むべきである、そういうふうに私は思うのでありますが、農水省も積極的にこれらの事業に対して取り組む意思があるかどうか、伺いたい。
  129. 松山光治

    ○松山政府委員 農水省といたしましても、米子湾等でヘドロ除去策が講じられる、その水質浄化が図られるということは大変望ましいことであると考えておるわけでございます。特に、淡水化いたしましてその水を農業用に使ってくるということに相なりますれば、その水質がどうかということは大変な関心事でもございますし、今の心配される水質汚濁の問題も、一定の程度まで農業以外の要因によりましてあの地域の水質汚染が進んでおるということでもあるわけでございますので、そうなってまいりますれば、例えば私ども、限定的試行が仮に実施されることになりましたときの段階で必要な調査といったようなものは実施することも考えられるのではなかろうか、このように考えるところでございます。
  130. 野坂浩賢

    野坂委員 松山局長、私は調査をしてくれと頼んでおるのではないのです。汚泥は百万トン堆積しておりますということは明確にされておるわけです。建設省は四十万トンの計画は立てた。これからどうするかということだけれども、中海の浄化、水質の清浄化のためには、農水省としても建設省と協力し合って、予算をつけて進むべきではないかという現実問題を言っておるわけです。それについてはやりますかと言っておる。どうですか。
  131. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほども申しましたように、中海・宍道湖の水質浄化の問題には私ども大変関心を持っておるわけでございますけれども、農水省として何らかの事業を行っていく、対策を講じていくということになりますればそれなりの事業目的がなければならない、こういうことに相なるわけでございます。申しました趣旨は、淡水化いたしまして農業用水として使うということになりますれば、水質の問題というのは当然関心があるところでございますし、限定的試行の段階でどういうふうなことがあり得るのか、考えられるのかといったようなことについての調査から始めるのがまずは現実的な方向ではないのだろうか、このように申し上げたつもりでございます。
  132. 野坂浩賢

    野坂委員 私はあなたの答弁に対しては不満でありますから、時間があれば後でみっちりやりたい。限定的淡水化をする前に水質の浄化をするのは、県民の願い、国民の願いである。それにどう対応するかということが農水省としての見解でなければならぬと思います。この問題はまず保留をしておきたいと思うのであります。  建設省に伺う。  いわゆる十二項目に対する質問書を農水省側に出された。あるいはそれは河川法に基づく協議ではないかもしれない、事務打ち合わせという段階かもしれない。その十二項目の質問に対して、十二月二十五日には農水省からいわゆる回答があったと聞いておるわけでありますが、それで満足されたのか、了承されたのか、不満であるのか、さらに意見を提出されたのか、その辺を明確にしてもらいたい。
  133. 岩井國臣

    ○岩井説明員 中海・宍道湖の限定的淡水化計画につきましては、農林水産省の出先機関から建設省の出先機関が説明を受けまして、その内容につきまして目下意見交換をしておるところでございます。先生御指摘の十二項目の質問書につきましては、十二月七日に出しまして、その後農水省の方から回答が出ておりますけれども、さらに明らかにすべき問題もあるということで、引き続き意見交換をやっておるところでございます。
  134. 野坂浩賢

    野坂委員 よくわかりました。  最近、中海・宍道湖をめぐる情勢は非常に厳しい状況になってまいりましたし、ただ単に地域の問題とは言えない全国的な問題になってきた、国民課題となってきたということが言い得るだろうと思います。島根県側でいいますと、島根県議会は中間報告という格好で、「揖屋・安来地区の部分竣功と土地利用についてであります。」というのが表題でありますが、「揖屋・安来地区は、昭和六十三年度に竣功するよう配慮されたいのであります。」こういう中間報告が県議会に報告されております。鳥取県の県会自民党は昨日午後四時記者会見をいたしまして、淡水化延期の申し入れがなされておる。承知しておられますね。この新聞によりますと、「淡水化」は「事実上の凍結」、こういうことが述べられているわけであります。  今まで農水省は干拓と限定的淡水化をセットこしてきた。まず干拓地農地に用水を入れるということになれば、この限定的淡水化は宍道湖が一〇〇〇ppm、中海は五〇〇〇ないし七〇〇〇ppmというのが目標値である。ということになれば、この塩分濃度の高い水は農業用水には不適当であるということになるわけであります。したがって、干拓地はでき上がった、しかし限定的淡水化をやったにしてもその水は農業用水に使えない、こういう格好になってくるわけであります。そういたしますと、今地域の皆さんは、できるだけこの土地利用をしたい、配分をしてもらいたいというのが鳥取県議会の態度、島根県議会の態度、そして地域住民の大きな要望である。そしてまた、これだけ完工できておるのに限定的淡水化をやらない限り土地の配分はやらない、このことは、地域経済に影響を与え、そしてその経済効果もないだろうと私は思うのであります。思い切って、地域の自治体の意向、住民の動向、それらの声を受けて、農水省としては部分竣功を認めて土地配分をやるべきだと考えるわけでありますが、その点はいかがですか。
  135. 松山光治

    ○松山政府委員 既に三つの工区の干陸がほとんど完成いたしておりますし、もう一つの工区も大部分干陸しているというような状態にあり、かつその干拓地についての御要望が大変強いという事情も一つあるわけであります。  そこで、今の先生の御質問の趣旨は、その各工区をそれぞれ竣功させていったらいいではないか、こういう御提案、御質問でございますが、ここで考慮を要します点は、この事業がまずは干拓地を造成するというのが一つございますが、同時にその造成されました干拓地に長期・安定的に農業用水を供給する、そのための淡水化施設が一体になっておるといいますか、そういう事業として行われておるわけでありますから、原則論といたしましては、干拓地の造成と、造成されました干拓地の農業用水を確保いたします淡水化との施設が完了いたしまして、現実に水利用による効果が発現できるようになっているということが本来である、いわばこの原則があるわけであります。  ところが、今先生からもお話がございましたように、現実の問題といたしましては、地元に強い部分竣功の要望があるわけでありますし、事業実施者としての私どもといたしましても、せっかく投資した土地でございますから、効果の早期発現という原則論から、できるだけ早く部分竣功したいというふうに考えるわけであります。  しかし、ここで問題になりますのは、淡水化された水を干拓地に用水として供給いたすためにはまだかなり期間がかかるわけでありますし、いずれにしても当面間に合わないという現状があるわけであります。そういたしますと、先ほど申し上げましたようないわば原則と現実との調和、かけ橋をどのようにしてつくっていくかというところが私どもにとっての工夫のしどころでございまして、これまで申し上げてまいりましたのは、限定的試行を行いまして将来の用水手当てのめどをつけながら部分竣功を考えていくというのが、考えられる道なのではないかということを申し上げてきたわけでございます。  しかし、今の先生のお話もございましたし、本件の取り扱いにつきましては各方面からいろいろな御意見をいただいておるわけでございまして、私どもといたしましても、そういう意味での原則と現実との調和を保ち得る手法がほかにもあるのかどうかということは内々いろいろと検討はいたしておりますが、現段階においてこれならいけるという妙案がないのが現実にございます。引き続き検討をしたいと思っております。
  136. 野坂浩賢

    野坂委員 あなたが頭がいいのか私が頭が悪いのかよくわからぬが、わかりにくい。現実と理想とを踏まえて現実的に対応するのが行政のあり方であろうと思うのです。  建設省はこう言っておるのです。「部分竣功と限定的淡水化試行計画とは実質上関係ないのではないか。」第一章に書いてある。あなたはどうやって答えたか。「農林水産省も干拓地の早期効果発現の観点から、これを弾力的に考えて工区完了したいと考えている。」こう答弁しておるでしょう。言うなれば、この限定的淡水化と干拓地というのは事実上関係ないじゃないか。すぐに配分して経済効果を上げた方が農業の進展には大きな効果があるのではないか、私はこれが常識論であろうと思うのです。限定的淡水化になかなか賛成しないから、根っこをつかまえて、これもやらせぬぞということになれば将来に禍根を残すであろう。世論の波に乗って、国民期待するならば部分竣功と限定的淡水化というものは切り離して土地配分を行うべきであるというのが、現実に即した行政のあり方だと考えるわけでありますが、その点はいかがですか。この点については大臣も慎重に検討しながら御回答を賜りたいと思うわけであります。どちらが先でも結構です。
  137. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、原則として淡水化事業が完成して淡水化された水が利用される可能性が出てくる、そのことと干拓とを結びつけるというのが原則の考え方ということになるわけでありますが、そのことにこだわっていたのでは、片方の現実の要請ないしは必要でございます部分竣功がなかなか前に進まない、これはおわかりいただけると思います。  そこで、今弾力的な扱い方というお話があったわけでありますが、まさにその弾力的な扱い方の形といたしまして、私どもとしては限定的試行に入りまして、将来の用水手当てのめどをつけながら部分竣功していくという形が一番望ましいのじゃないかと考えておるということでございます。ただ、それ以外に原則と現実との調和を図り得る考え方があり得るのかどうか。これはいろいろな方々からの御意見もいただいておるわけでございますし、私どもとしてもなお検討はいたしたいと思っておりますけれども、現段階においては妙案を見つけるに至っておらないという状態を率直に申し上げたいということでございます。
  138. 野坂浩賢

    野坂委員 大臣に伺います。  今の構造改善局長の御答弁は現実に即して前向きに検討いたしますという御答弁であります。農水大臣も、いわゆる農水省の総大将でありますから、国民の世論なり地域の動向、知事や市長が考えておることは、恐らく牛肉、オレンジの問題に頭があるとしても、この国民的な問題については十分御留意であろうと思うのであります。したがって、部分竣功につきましては早急に水面下で地方自治体とも連携をとりながら前向きに対処してもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。大臣の御所見。
  139. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 先ほど来構造改善局長の答弁を聞いておりまして、委員が評価されるように、うまい答弁をしておるなという感じと同じではございませんが、相当考えながら言っているな、しかしまた聞かれるあなたも相当なものだ、私は率直にそう思って聞いておりました。この相当と相当の間に立って私がどう答えようかということについて率直にある種の戸惑いも感じます。  しかし、本問題は、おっしゃるように社会的問題、もっと大きく言えば政治的問題、まさにそうなっている。国会でこうして取り上げられておる。あなたからも再三にわたって御所見を、怒られたり激励されたり、あっちの場合もこっちの場合もありますけれども、いろいろ言われてきた。就任早々今日まで、私はその経緯をよく承知いたしております。そして、部分竣功と限定的な淡水化試行、これとワンパッケージ、原則と現実をどう調和させるかということについて事務当局は相当悩んでおるわけであります。現況なかなかいい知恵がない。これは率直な局長の答弁を私もそのとおりに思います。しかし、三月末まで地元の意見をそんたくしつつある種の結論、あるいは私の決断と言ってもいいかもしれない、あなたからは再三決断すべきだと言われてきた経緯からいってその言葉を引用しても結構でございますが、それを三月末、待ちましたけれどもお答えがないということで——これは時間をかけていったらいかぬと思います。そこで、わずか二カ月、五月末までには回答をせられたい、こういうことを私が渡米中に、実は三月三十日両県の責任者が来られて、間に合いませんということでございましたので、農林水産省といたしましては五月末まで待とう、これは私は余り長く待つわけにはいかぬ、こう言ったのであります。それが実務者からは五月末まで待ちましょう、こういうことで、鋭意それぞれの地元におかれて検討もされているかと思いますので、それらを含めまして私も判断をしなければならぬと、慎重な態度をとっておるところでございます。
  140. 野坂浩賢

    野坂委員 農水大臣の演説、わかりましたが、そういうことを含めて、きのう県会自民党は、こういう地方紙の一面トップで「事実上の凍結」論というものを島根県も鳥取県も出しておる。まだ知事からはない。そういう状況は鋭敏な佐藤農水大臣が知らないはずはない。したがって、それらの状況を受けて地域の進展と発展のために、農業の利益を守っていくために農水大臣としては部分完工というものは切り離してやらなければならぬという、前向き検討ということを言っておるわけでありますから、前向きに検討していただけますか。時間がありませんから余り長くしゃべらないで、それだけお答えいただきたい。
  141. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 いや、そう簡単にもまたこれは言えないのでございます。これは先ほどから申し上げるように二つのことがワンパッケージになっておる経緯もございます。そこでいい知恵はないかといっても今見当たらぬ。また地元の集約された意見も拝聴した上で決断しなければならない、結論を出さなければならない。新聞情報等も私は承知をいたしております。おりますが、新聞情報だけで判断をするわけにもまいりません。また、地元の自由民主党がというお話もございましたけれども、それだけで判断するわけにもまたまいりません。今あなたが、従来の御意見にさらにまた重ねてこの場で御発言になったこと、いろいろなことを含めて私は考えなければならぬ、こう申し上げているわけでございます。
  142. 野坂浩賢

    野坂委員 五月三十一日までに回答をもらいたいというお話でありますが、島根県の中間報告で県会は「市町長の苦悩は察して余りあるものがあります。」こういうふうに書いてある。県民の世論は反対ということが大勢である。したがって与党自民党としても凍結をせざるを得ないというところに踏み切った。そして負担の問題もある。この事業は国費が七二%で地元が二八%である。百六十五億が現在では八百八十億、今や九百九十億にならんとしておる。容易なことではないということがまた一面考えられるわけであります。したがってこの地元負担の軽減策というものを、長くなったというこの経緯から考え、事業が予定よりも金額を要したという意味を含めて、地元負担軽減のために十分の配慮と御検討をいただきたいと思いますが、農水大臣の御見解、あるいは構造改善局長でも結構でありますから御検討いただきたいと思うのであります。
  143. 松山光治

    ○松山政府委員 この事業は、今お話がございましたように当初百六十五億から始まっておりますが、今の見込みでは、全部完成するということで九百九十億ということになっておるのですけれども、いろいろな要素があるわけであります。その要素の中のかなりの部分を占めておるのが物価でありますし、それから当初は別の事業で行おうとしておりました附帯的な事業も一貫施行ということでこの事業の中に取り込んだ、そういう意味では実質的な増高にならぬ面もあるわけでございます。  ただ、それにいたしましても工事の変更その他もありましたし、かなり当初の予定を上回っておることは事実でございます。私どもも、地元負担の軽減問題については多大の関心を持っておるつもりでございます。ただ、問題はその手法の問題でございまして、御案内のように、干拓事業につきましては、その公益性等にかんがみまして国庫の負担率が、今七二%という話があったわけでありますけれども、ほかの土地改良事業に比べますと相当高いところに設定されて、もともと地元負担の軽減が図られておる。事業費の増高ということはそのまま実は国費の、国の負担分の増高をも意味しておるわけでございまして、そういうことを考えますれば、国庫の負担率を上げるというふうな方向での解決というのは相当難しいのじゃなかろうかというのがまず一つあります。  ただ、できるだけ地元負担の軽減ということは考えたいと思っておりまして、例えば先ほど話の出ました、既に工事をおおむね終了しております工区についての部分竣功をできるだけ早くやるというのも一つになるわけでありますし、あるいはこれまで発生しております県の負担してもらうべき部分、その部分についての繰り上げ償還をしていただくとか、あるいは制度的な面の問題がございましてなかなか難しい面もあるわけですけれども、考えてみたいなと思っておりますのは、今の特別型という仕組みをこれからやる分については一般型に切りかえるとか、そんなことをいろいろと考えまして実質的な地元負担の軽減の可能性ということについては真剣に検討したい、このように考えておる次第でございます。
  144. 野坂浩賢

    野坂委員 時間がいよいよやってまいりまして、まだまだ十分だとはいえませんが、「政界ジャーナル」というのに、佐藤さんの写真も出ておりますが、特別企画で「いま、政治責任が問われる三つのむだ遣い」、こういうことで詳しく出ております。税金のむだ遣い。「無意味な宍道湖「淡水・干拓」化でシジミが消える!?」というようなことをテーマにして税金のむだ遣い論が長く書いてあります。たくさんあります。「サンデー毎日」にも、こっちを向いてごらんください、ここに写真入りで中海の状況が書いてある。国民的な世論になって、税金のむだ遣い論さえ横行し始めておるという今日の段階であります。  そこで、市町長が苦悩しておるのは、投げたボールをなかなかあなたにお返しができないのは、この間も申し上げましたように挙げて町民、市民が反対をしておる。松江では景観条例の制定、米子市では淡水化の賛否は市民投票によって決定せよ、これが既に運動として展開されておる。これが今日の状況であり、反対の世論がほうはいとして巻き起こっているというのが現状であります。しかし県から見れば、市町村から見れば、これからの予算をあなた方に頼まなければならぬ。そのためにはなかなか反対ということが言い出せないではなかろうかというのが、苦悩しておるという表現で明らかである。したがって、決断をするのは佐藤さん、あなたです。  言うなれば、今度の牛肉、オレンジの問題でも総理は、佐藤農相が決断をすれば我々はバックアップしてその意に沿いたい。あなたはそれだけの信頼がある。税金のむだ遣いとか、あるいはすべての新聞、週刊誌に写真入りでうたい上げられておるこの中海・宍道湖の限定的淡水化問題については、地元の意向が、回答がまだ出ないにしても、水面下でそれらの動きを十分キャッチしながら佐藤農水大臣の決断によって一つの方向を打ち出したという姿を私は期待してやまない。それに対するあなたの考え方と、今構造改善局長が述べられました地方負担の軽減は検討したい、そして部分完工は一日も早く、ワンセットということよりも、地域振興と経済の発展、農業の進展のためには進めざるを得ないという前向き検討をぜひ進めていただくように心から期待してやみません。  最後に農水大臣の私に対する決意をお述べいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  145. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 重ねての御意見でございます。地域農政ということで、地域の経済あるいは地域住民の生活に直接関連のある地域農政を推進することは、日本全体、各地に関することでございます。しかし、そういう中にあっても、特に今大変な話題、問題になっておるこのことにつきましては、私自身、先ほど申し上げましたように、地元の、地方の責任ある立場にある行政の場において集約された意見を両県知事さんがどのようなことで持ってきてくださるか、それを待っておるということでございまして、それをいただいた上で私自身が決断をしなければならない。そういう中に負担の問題ももちろんございます。いろいろな問題をあわせ含めて私が措置をしなければならない、決断をしなければならぬ、かように心得ておるわけでございます。  従来、私は、予算委員会、分科会等におきましても申し上げたかと思いますが、一般論として率直に言うならば、むだにむだを重ねる結果になったではないかという評価を受けてはならないと心に期しておるところでございます。
  146. 野坂浩賢

    野坂委員 むだにしてはならない、むだがあってはならない、そして世論で今税金のむだ遣いの三傑の一つに数えられておる淡水化、干拓の問題について、地方の知事の意見等も正式ではなしに水面下で聞きながら、今言われたように国民の世論、そしてすべての状況を勘案しながら、このような状況というものを十分に認識して対処、対応をしていただくように強く要望を申し上げまして、時間が参りましたので私の質問をこれで終わります。ありがとうございました。
  147. 菊池福治郎

    菊池委員長 吉浦忠治君。
  148. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この際、漁業経営のあり方について最初に伺っておきたいと思います。  我が国資源量から見ましてピークの一千二百万トンの水準は今後はそれほど変わらないのじゃないかと思うわけでありますが、これからは地先の漁獲物を大切に管理をして特色ある高付加価値のものをつくり出していく方向にあるのではないかと思うわけであります。幸か不幸か、水産についてはIQがIQの役目を果たしておりませんで、比較的自由に我が国に入ってくる状態でありますから、それが魚価に反映されることとなっているわけであります。  この魚価問題は、これからの漁業経営のあり方を考える上で非常に重要な課題であると思うわけであります。魚価の動向それ自体が漁業構造の見直しを伴うからでありまして、低魚価に耐え得る競争力のある漁業経営構築するためにはどうすればよいのか、あるいは労賃の低い国と対等に競争するには生産性の高い経営体をつくるしかないのじゃないか、こう思うわけです。  漁業の場合、農業と異なりまして、資源との関係から漁業者全体が生産する量をふやして量でカバーするというわけにはいかないわけです。そこで、生産する人の数を減らして一人当たりの生産性をふやして単位コスト当たりの生産性を上げるという道しかないのではないかと思うわけであります。もちろん栽培漁業等の促進によってその資源をふやすということも考えられるわけでありますけれども、これによってふえる量というのは知れたものだ、こう思うのです。  しかし、このように考えてまいりますと、生産性の低い経営体はこのまま淘汰されるのじゃないかという心配をいたしております。純経済的理論だけで強い者が勝ち、弱い者、いわゆる額に汗して働く方々が死んでいってしまうというふうな行き方、これでよいものかどうか、私はここに非常に疑問を感じておるわけであります。魚価の動向は漁業構造の見直しを伴うことは間違いないところでありますが、その場合どうやって転換させていくのか、そのためにどう国の資金をつぎ込んでいくのか、これが今後の検討課題だろう、こう思うわけです。  そこで、長官、漁業政策のあり方について水産庁としてどういう見解を持っておられるのか、この点をまず冒頭に伺っておきたい。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  149. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま、漁業の現在置かれている基本問題なり我々自身が抱いている悩み、そういうものにつきまして先生から適切な御指摘があったわけでございます。  ただいま御指摘ありましたように、ここのところ千二百万トン台ということで国内資源は横ばいで推移しているわけでございますけれども、一方で海外との関係が、二百海里体制がこのところますます定着化し深化してきている、そういう中で輸入問題というのもあるわけでございます。我々といたしましては、こういう開かれた国際関係といいますか、二百海里体制の中でこれからの漁業というものを考えていかざるを得ない。しかも国内で魚に対するいろいろな需要というものがあり、それから一方で経過的にせよ資源問題というものがあるわけでございますので、相当程度といいますかある程度の輸入というものは、やはり消費者との関係におきましても当然入ってくるという前提でこれまた考えざるを得ないと思っておるわけでございます。  そういう国際環境の中で我が国自身がこれだけ広大な二百海里というものを持っているわけでございまして、何といいましてもこの二百海里をどうやってこれから再構築していくか。これは資源問題も含め、経営問題も含めましてせっかくある二百海里という我が国の財産をこれからどうやってふやしていくかということがまず基本かと思っております。そしてそのためには栽培漁業でございますとか養殖でございますとかいろいろ具体的な手法で対応してきているわけでございますけれども、今先生からもお話がありましたように残念ながら限られた水域であり限られた資源であるということからいいまして、経営体そのものをどういうふうに構造政策として見直していくかという問題にも率直に言いまして当面しておろうかと思っております。  そういう観点につきまして中長期的な立場に立って構造そのものを再編していくということも、厳しいことではございますけれども漁業政策の一つとして取り進めざるを得ないと思っておるわけでございまして、そのためには、従来からいろいろな金融制度というものも用意しているわけでございますし、例えば減船につきましてもいろいろな融資制度というもので対応してきたわけでございますけれども、そういう従来のいろいろな施策というものを総合して、二百海里時代の定着それから国際化された中での、しかも海洋王国日本の立場というものの前提で考えていかなければならないと思っております。  それからさらに、単にとるだけじゃなくて、とった後のいろいろな付加価値、これについては流通加工あるいは消費全般にわたって、先般も当委員会でも御審議いただき通過させていただきました加工施設資金法でございますとか、いろいろな行政手段を活用いたしまして新しい消費者ニーズに適応した流通加工体制というものもつくってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  150. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁業災害補償法の一部を改正する法律案について通告をたくさんしておきましたものですから、時間の範囲内でできる限り取り上げてまいりたいと思っておりますので、簡潔にお答えをいただければと思うわけでございます。  今回の改正の意図がどこにあるのかというのが第一点でありまして、政府の特別会計の赤字対策という面が多分に含まれているのではないかと私は思っているのです。長い目で見てまいりますと、それが補償水準の引き下げとなり、全体を縮減する方向になるのではないかという心配をいたしておるわけでありますけれども、この点を明らかにしておいていただきたいのです。
  151. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在、漁業共済収支状況も非常に問題がございますし、それから加入率というものも低い状況にあるわけでございます。内外を取り巻きます漁業のいろいろな厳しい条件、こういう中で共済事故多発というものに対応できるような危険分散というものが、残念ながら現在必ずしも十分に講じられていないという状況にあるわけでございます。そして、こういう中で漁業共済事業現状というものを踏まえまして、現在の漁業実態に即した制度になりますことを念頭に置きまして、少なくとも共済事業加入普遍的拡大を図って漁業災害補償制度の健全な運営を図るという基本的な立場に立ちまして、いろいろな見直しを去年来研究会でやっていただき、その研究会の成果として今回の改正案をお願いしている次第でございます。
  152. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁災制度の赤字の原因は一体どこにあるというふうに水産庁は思っておられるのか。全共済金額の過半を占めております漁獲共済は収穫保険方式でありまして、漁獲金額減少の原因災害であるというふうにとるわけでありますけれども、それに魚価の低迷、また外国による漁業規制に伴う影響など漁業収入にかかわるあらゆる事象でありますけれども、特に昭和五十二年度以降の漁業共済事業収支が大幅な赤字というふうになっております。これは二百海里規制下と魚価の乱高下、いわゆる最近の円高に伴う魚価の低迷、こういうものなどが密接に関係しているのではないかと思うわけであります。この点をどういうふうに考えておられるか。
  153. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 魚価そのものは、各魚種ごとの需給状況でございますとかあるいは魚体の大きさ、それから品質、さらには競合品との関係というものが総合的、複合的に絡みまして決まってまいりますので、一律に何が魚価の低迷に寄与したということは言えないわけでございます。それから、現在の共済の赤字そのものは、魚価の低迷といいましても、経済的な変動というよりは災害でございますとか、いろいろそういう天然的な事変、こういうことに基づきます所得の低減というものが大きく寄与しているのではないかと理解しているわけでございます。  ここ数年を見てみましても、五十九年には異常低水温によります昆布なりアワビの低落というものがございましたし、それから六十年度にはサンマの魚体の小型化ということで漁獲金額が大幅に減少した。それから六十一年度にはサケ・マスの大型定置の漁獲金額低迷というものがありました。それから六十二年には、これは漁獲共済でなくて養殖でございますけれども、赤潮の異常発生というようなことで、魚価そのものという経済的な事変よりは天然なりあるいは自然現象という不慮の事件ということに起因した漁獲金額の減少、したがって共済金額の支払いという事態になったというふうに理解しておるわけでございます。
  154. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 共済事故を起こしている魚価安の原因をどのように見ておられるのか。ここにある資料によると、   六十年以降の円高により外国水産物輸入しやすい環境となり、価格的に安い水産物はこの一、二年で量の拡大を伴いつつ国内水産物の供給構造を大きく変化させている。   六十年の国内消費向け生鮮—冷凍品についてみると輸入もののシェアは実に四一%に達しており、六十一年以降も円高基調であり、国内生産低迷輸入増勢の状況は変わっていないため、輸入水産物のシェアはさらに大きくなっているものと思われる。   このように大きなロットと多くの品目を伴った割安な輸入水産物の急増は国内水産物の相場を押し下げる方向に作用している。 こういうふうに指摘をされております。  こうした輸入急増に対して秩序化しなければ共済事故はなくならないし、また赤字は累積する一方ではないか、こう思うわけでありますが、この点どういう見解を持っておられるかお尋ねをしたいと思います。
  155. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 魚価の形成につきましては、先ほど申し上げましたようにそれぞれの魚種ごとのいろいろな需給事情でございますとか品質、いろいろなものが相乗的に影響してくるわけでございますが、その中で輸入という問題も一つの要素であることは事実かと思っております。しかし、より基本的には魚価というものは豊漁とか不漁とか、こういうことに大きく左右されているわけでございまして、一般的に輸入の増大というものがストレートに魚価の低迷の多くをカバーしているという状況ではないと思っております。  それから、ここのところの魚の輸入の増大というのも、国内と競合関係にないあるいは国内の資源上国内では不足しているというものが大方入ってきているわけでございますので、直接的にはそう大きく魚価の足を引っ張るということにはなっていないかと思いますけれども、今お話がありましたように物によっては直接響くものもあることは事実かと思っております。  そういう中で、我々といたしましては秩序ある輸入と、必要なものは入れざるを得ないし入ってきて当然でございますけれども、やはり秩序を持って輸入することが緊要でございますので、特に沿岸の中小漁業者と相競争し合うサバとかイワシあるいはイカというものについてはIQ制度というものを敷いております。それから、ここのところいろいろ問題の出てきましたマグロとかについては、政府間、民間間でいろいろな協議を行いまして、事前確認制というような規制も行っているわけでございます。  ただ、そういう規制と同時に、何といいましてもこれから競争関係が高まるとも思いますので、内外格差の是正といいますか国内の漁業のコストの引き下げというものを全体として図らなければなりませんし、それから新しい需要に応じた付加価値を高めるいろいろな知恵というものも積み重ねていかなければならないのではないかというふうに認識している次第でございます。
  156. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁業共済は、昭和六十一年度までの事業収支は三百九十一億円の累積赤字、こうなっている。これは漁業者の側から見ると、困難な漁業経営に対してこれまでに三百九十一億円の助成金が支払われたというふうにとってもいいのではないかと思うのですね。農産物と比較して有効な価格支持制度がないものですから、漁災制度がその代替をして機能しているという側面を持っていると見てもいいんじゃないか。それが、二百海里体制の定着、水産物需要の伸び悩み等、我が国水産業を取り巻く情勢というものは厳しい環境下にあるわけでありますから、漁業者経営の安定に大いに資しなければならぬというふうに思うわけです。こうした側面は今後とも大切にしなければならぬのじゃないか、こう思うわけです。  そこで、こうした厳しい共済収支状況をどこまで漁民が負担すべきなのか。言いかえれば、国はどの程度まで責任を持つべきなのか、今整理をすべきではないか、こう思うわけであります。単に政府は特別会計の赤字減らし対策を図っておられます。それは共済掛金の引き上げにはね返ってくる、漁災制度がまた縮減する方向に傾斜していくのではないかという心配をいたしております。それでは漁業者にも国にも利することにはならないわけでありまして、したがって漁災制度における国の役割、その責任を明確にしなければならぬ、こう思うのです。それなしには責任分担の配分は決定できないのではないか。この点どういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  157. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業というものは本来自然の影響を受けやすい産業でございまして、しかも我が国の場合には沿岸の中小漁業という脆弱な経営体というものによって多くの経営が維持されている、そういう特殊な中にございますので、本来ですと、相互扶助ということを基本といたしまして共済制度というものをみずから自主的なものとして取り組むべきところでありますが、政府といたしましてもそういう我が国の置かれている漁業の特殊性ということから掛金の補助というものを行い、それからさらに、残念ながら収支じりというものがマイナスになりましたものにつきまして無利子棚上げ措置でございますとか、あるいは二度、三度にわたります一般会計から特別会計への繰り入れというようなことで応援してきているわけでございます。これをどこまでが漁民が持ち、どこまで国が持つかというその仕分けにつきましては、共済という長期収支が相償うという設計の中で国の助成というものをどこまで持つかという画一的な基準というものは、正直言いましてなかなか難しいわけでございますけれども、ほかの農業共済でございますとか幸いにいたしまして同種の共済という先例なり種類もいろいろあるわけでございますので、そういうものとの均衡をとりながら、しかも漁業経営というものの特性に着目していろんな財政措置というものも過去もしてきておりますし、これからも基本的な立場に立ちまして漁業経営の安定というものに共済事業というものは的確に機能するように努めてまいりたいと思っております。
  158. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁災制度の普及促進について伺っておきたいと思いますけれども制度の健全なる運営のためには普遍的な加入が不可欠であることはもう論をまたないところでありますが、それなしには特定の者に生じた不慮の損害を負担するという制度は維持できないのでありますから、五十七年改正でも、加入拡大を図るために義務加入対象範囲の拡大、長期共済導入等が講じられたところであります。しかし、所期の目的を達成したとは言えない状況にあるというふうに私は受け取っておりますが、今回の制度改正によってどの程度の加入拡大が図られるというふうに政府は見通しておられるのかどうか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  159. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 従来加入が進まなかった一つの大きなあれとして、やはり漁民に共済制度というものの趣旨が十分徹底してなかった、あるいは本来主体的に取り組むべき漁協にそういう熱意なり体制というものが十分でなかったという問題があったわけでございます。  今回、漁協契約方式という形で漁脇目体を契約の主体として位置づけまして、漁協の主体的な取り組みというものを期待することにいたしましたし、それから掛金率の割り増し、割引等につきましても今回いろいろな見直しを行っておりますので、今回の制度改正を契機といたしまして、系統団体それぞれとそれから行政側が一体になって共済推進に努めるということで加入率というものも相当上がるものと思っておりますし、それから、ぜひ上げなければならないと思っておるわけでございますけれども、これはこれからの制度の展開なりあるいは系統の取り組みということが大きくそういう結果的な数値に影響してまいりますので、数値として具体的には答弁できないのは残念でございますけれども、系統ともども今回せっかくお願いしております制度改正の趣旨が何とか十分に発揮できますように全力を挙げてまいりたいと思っております。
  160. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私なりに加入拡大しない原因関係者から聞いてまいりますと、まず第一に制度に魅力がない、二番目に掛金に見合う補償がない、三番目にはPR不足、こういったところが目についた程度でありますが、補償水準は現在、過去五年のうち中庸三年の平均漁獲金額に金額修正係数を掛けたものに限度額率を掛けて決定されております。これも一つの方法であろうというふうに思いますけれども、これでは補償水準の低さへの不満は解消されない、こう思うのです。再生産確保するという趣旨からしますと、漁業者が負担をしたコストから見た補償水準というものを検討してみてはどうかというふうに思うわけでありますけれども、この点どういうふうにお考えなのか。
  161. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ございましたように、補償水準につきましてはいわゆる五中三方式と申しますか、過去五年の中で最高、最低を捨てて三年の平均というものを基準といたしまして、これに一定の率を掛けているわけでございます。したがいまして、こういう一定方式で、しかも共済という全体を対象にする一つの仕組みでございますので、個々の経営者から見ますと、確かに共済でもらうものが経費相当分に見合っていないという実感をお持ちの方も残念ながらいることは事実でございますけれども、やはり総体として見ました場合には、そういう経費相当分に適合するという仕組みなり保険設計というもので行っているわけでございます。過去もいろいろと議論がございまして、こういうものにつきましても、修正率でございますとかそういうものの見直しをしてきたこともございますし、それから、それぞれの組合の実際の運用というものにまつべき点も多いわけでございますけれども、いずれにしても、できるだけ魅力があり、加入しやすい制度ということが制度運営のための基本になることは確かでございますので、そういう基本的な姿勢に立ちましてこれからもいろいろな点について検討し、必要に応じあるいは事態の変化に応じましての弾力的な制度の対応というものは考えてまいりたいと思っております。
  162. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 義務加入が成立をするには、三分の二以上が賛成をして、かつ全員が加入しなければならない。そうすれば高率の国の掛金補助が受けられる、こうなっているわけですね。したがって加入が促進されない現実があるわけですけれども、私などもそうかもしれませんが、どこの社会でも保険嫌いというのはいまして、嫌いだからというのは理屈じゃないだろうと思うのですが、高率をどうしても受けるためには立てかえ払いということも考えられると思うのです。これは制度の趣旨からして容認することができないだろう、こう思うのですが、とするならば多少の緩和措置を設けて加入拡大を図るという方法、こういうことが制度の趣旨に沿うのではないかというふうに思うわけですけれども、この点どういうふうに考えておられるか。
  163. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 義務加入制度自体は昭和四十九年の法律改正漁獲共済導入されまして、その後加入促進につきましては相当程度の効果なり役割というものを果たしてきたわけでございますけれども、ただいまお話ありましたように、特定の者の反対というようなことでその義務加入が完全に効果を上げないという問題もあるわけでございます。特に特定の者という中で漁業依存度が低くて共済に入る必要性の少ない漁業者というものもいるわけでございます。こういう者につきましては、昭和五十七年の法律改正におきまして義務加入の対象者の資格要件というものを改正して、その改善を図ったという経緯にはあるわけでございますけれども、現在、依然として、今先生から御指摘ありましたような問題が地域によってはあることは事実かと思っております。しかし、だからといって、その義務加入の対象者たる資格要件というものを余りに制限してしまうということになりますと、みんなでやっていくべき共済というものが特定の少数者に偏ってしまうという運営上の問題なりあるいは保険設計上の問題というものも逆に出てくるわけでございまして、やはり何といいましても、それぞれの地域での地道な相互の話し合いによって共済の全体的な効果なり意義というものを関係者に認識していただき、実質的に加入を図っていただくということがとり得る最善の道かというふうに考えておる次第でございます。
  164. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 「水産業基本問題に関する検討中間報告」、全漁連の方からこういうのが出ておりますけれども、この中に、「ぎょさい制度の普及と強化」というので「漁業災害補償制度漁業経営安定対策の柱として位置付け、加入普遍化を進めるため、系統運動を強化するとともに必要な制度強化を図る。」こう出ております。強力に推進することになって、こううたっておるわけですけれども漁協が本腰を入れて加入拡大を図るべきであるというふうに思うわけであります。さきの水協法改正で任意共済漁協事業として明確に位置づけられ、漁協事業報告書に掲載されることにもなっているのでありますから、見方によれば漁協の成績ともなるわけですね。ところが、漁済はそういう位置づけになっておりませんから、悪く言えばやってもやらなくても漁協の成績とは見られない、こういうことになるわけです。これでは加入拡大は図られないではないか、こう思うわけでありまして、何らか漁協事業としての位置づけをする必要があるのではないかと思うのですけれども、どういう見解を持っていらっしゃるか。
  165. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 漁業共済制度は、中小漁業者の相互救助の精神というものを基調といたしまして、漁民の協同組織体でございます漁協というものが、みずからの組織員でございます組合員である中小漁業者というもののために漁業共済組合を組織して行っている事業でございます。したがいまして、漁業共済組合自体、その組合員になれる者が漁協なりその構成員というふうに限定されておりまして、本来、漁協そのものの運動の一環としてこういうものが生まれ、こういうものがはぐくまれている次第でございます。  したがいまして、漁業共済事業というものは、漁協系統事業と密接不可分どころかそのものと言える事業でございまして、今さら水協法にその事業能力でございますとか何かということで書くまでもなく、当然漁業協同組合の本来の責務の一環として取り組むべき事業であり、また、取り組むことを我々としても期待している次第でございます。
  166. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 さらに、加入拡大を図る意味からこういうことも考えられるということで申し上げるのですが、金融措置とのリンケージは考えられないか、こう思うのですね。強制しちゃいけませんが、民間では例えば住宅ローンを組んだ場合に、火災保険に加入してください、こういうふうな例もあるわけですね。ですから、漁協の融資を受けた者に、強制ではないんですが、理解を求めて加入してもらうということはそれほど無理なことではないのじゃないか。これも漁協取り組みの問題でありますが、大いに考えていくべきじゃないかというふうに私は思うのですけれども、どういうふうにお考えなのか。
  167. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 我々といたしましても、加入の拡大を図るために金融措置との連携を強化していくということの必要性は十分認識しているつもりでございまして、従来からも都道府県に対しまして関係金融機関とも十分な連絡調整を図りながら加入促進運動を行うようにという指導なり指示というものを行ってきたわけでございます。  今後におきましても、六十三年度から新たに予算措置を講じまして漁業共済事業強化特別対策事業というものを行うことにしておるわけでございますけれども、ここにおきましても、さらに都道府県、関係団体との連携を図りつつ金融措置を初めとしていろいろな水産関係施策との連携を強化しながら漁済への加入促進を図りたいということで、この事業運営に当たりたいと思っておるわけでございます。
  168. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農林水産委員会調査室からいただいた資料によりますと、加入率が各都道府県によって非常なばらつきがあるわけですね。漁獲共済といえば〇%から八七・九%まで、養殖共済では現に養殖事業を行っていないところもありますので、参考にはならないかもしれませんけれども、〇%から一〇〇%まで、こうなっているのです。各都道府県の取り組みもありましょうけれども水産庁としてこ実態をどういうふうに考えていらっしゃるか。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、県ごとの契約割合でございますとか加入率につきましては相当なばらつきがあることは事実でございます。  その中身を見てみますと、やはり各県の漁業実態の相違というものが基本的には大きく影響されているわけでございまして、例えば漁獲共済の対象となる漁業のウエートが高い県もございますれば、逆に養殖共済の対象となる漁業のウエートが高い県もあるというようなことで、それぞれの漁業実態が反映されているということが基本ではございますけれども、それに加えましてそれぞれの県なり団体での加入推進努力というものにつきましても問題なしといたしませんので、水産庁といたしましても、関係方面といろいろな連携をとりながら、今後ともそういう加入なりの普遍化というものには努力してまいりたいと考えております。
  170. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私の千葉県では、漁業態様が最近とみに変化をしてきております。東京に隣接しているというところから、遊漁または民宿を兼業経営するという漁業者も増加をしてきているわけです。一方、漁業に従事する方々の高齢化が特に目立ってきておりまして、各漁協とも後継者問題で頭を悩ましているわけです。したがって、漁業に対する依存度が低下している状況で、漁村社会の変化が急速に進んでいるのが実情だろう、こう思うのです。こうした急速な変化の中にあって、漁業共済の取りまとめは困難を来しているとも聞いているわけです。そして、こうした急速な変化に対応する中で、漁災制度はどうあるべきかとお考えなのかどうか、この点をお答えいただきたい。
  171. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 確かに地域によりましては漁業なり漁村状況というものが大きく移り変わってきておりまして、漁業依存度の低いものも地域社会には相当ふえてきておるわけでございます。  一方の議論といたしましては、漁業依存度の低いものを除外して加入促進を図るなりあるいは義務加入を考えるという考え方もあるわけでございますけれども、こういう相互救助という漁業共済制度基本というものから考えまして、やたらにそういう対象者の資格というものを限定していくということはちょっと問題がございますし、余りに限定し過ぎますと組合の運営でございますとか共済運営、こういうものにつきましてもいろいろな問題というものも出てまいりますので、結局はそういう方々も抱えながら地域全体としてどういう話し合いを進めていくかということに残念ながらかかっているのではないかというふうに考えている次第でございます。
  172. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の改正案では、加入を促進する意味から第二号漁業及び第三号漁業漁獲共済については漁協契約方式導入されることになったわけです。その趣旨は、加入促進はもとより、掛金率を引き下げるとともに共済金の支払いを削減するために組合員相互の共補償的行為を期待しているのじゃないかと思うのです。これは実態と即応しているのかどうか若干の疑問が残るところでありますけれども、この点はどのように考えておられるのか。  また、漁協系統期待は非常に大いきものがありますが、漁協契約導入がどの程度加入促進に効果があるというふうに考えておられるのか、お答えをいただきたい。
  173. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の改正の大きな柱といたしまして漁協契約方式というものをお願いしておるわけでございますけれども、これはただいま先生からも御指摘ありましたように、加入の促進なり、あるいはこういう方式をとることによりまして掛金というものをある程度低減できるというようなことがあるわけでございます。それと同時に、ここのところ地域によりましては計画的な営漁というものが進展してきているわけでございますけれども、こういうところにつきましては、漁協漁業者に対する指導関与というものが相当強くなってまいりまして、個々の共済でございますとか個々の事故ということ以上に、漁村集落全体で漁獲金額が落ち込んだときにこそ補償が必要であるというような認識も出てまいりまして、そういう全体をとらえる共済需要というものも一つ出てきているわけでございます。それで、こういうような新しいニーズにも対応できる補てんの仕組みということでこの漁協契約方式を考えておるわけでございますし、それと同時に、先生からもありましたように、安い掛金加入できるという方式漁協契約方式でございます。  したがいまして、この方式導入によりまして相当程度加入というものがふえるというふうに我々も見込んでおりますし、系統機関のこれに対する熱意というものも、ただいま先生からもありましたように相当ございますので、ともどもこういう新しい制度を活用いたしまして、何とか加入の拡大ということに邁進したいと思っております。
  174. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁協契約というものは、漁協によほどの指導者がいなければ、組合員のマイナス分を他のプラスの人が埋めてあげるということは現実問題として考えられないのじゃないか。しかし、こうしてもらわなければならぬじゃないかと思うのですが、この制度導入するならそういう面に配慮がなければならないと思うわけですけれども、この点はどういうふうにお考えですか。
  175. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の漁協契約方式導入するに当たりまして、今先生からお話がありましたように、やはり漁協指導者なり人的組織、こういうものがどれだけ強固であるかということが先行するわけでございまして、その制度ができましてもこれを担いで一生懸命に活動するリーダーというものがいなければなかなか実を結ばないわけでございます。そういう点につきましては、漁協経営そのものをどうやって強化していくかということで初めて人的陣容というものも強化されるわけでございますが、基本的には経営基盤強化のための規模の拡大ということで先般漁協合併助成法というものの延長でもお願いし通させていただいたわけでございますけれども、ああいうことで基盤そのものをひとつ強くするのと、それからいろいろな経済活動につきまして従来以上にビビッドに取り組んでいただくということで、漁協経営そのものをよくする中でリーダーや何かを確保していくということが基本でございますけれども、そういうリーダーの育成等につきましては、水産庁といたしましても、いろいろな講習でございますとかそういう手だてを講じまして側面からいろいろな応援を従来から行ってきておりますし、今後ともそういう姿勢で対処してまいりたいと思っております。
  176. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、基準漁獲数量導入について伺っておきたいのですが、これは特定の漁業につき、漁獲数量が過去の漁獲数量を基準として定める基準漁獲数量を上回った場合に、その上回った程度に応じて共済金の支払いを逓減しようとするものであるというふうに聞いておりますが、特定の漁業とはサケ・マスを指すと聞いています。このサケ・マス以外に適用する漁業はあるのかどうか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  177. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回こういう仕組み導入いたしましたのは、サケマス大型定置漁業というものが、御承知のとおりふ化放流事業等によりまして安定的に漁獲量が確保され、しかもその漁業にかかります共済事業収支というものが事業運営上の問題として非常に大きくのしかかってきているという特性にかんがみまして今回制度化を考えているわけでございます。そういう考え方から申し上げますと、サケマス大型定置漁業以外の漁業につきましてはそういう実情にございませんので、こういう現状を踏まえますれば、サケマス大型定置漁業というものに限定して、これが対象となるというふうに御理解いただきたいと思います。
  178. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 サケ・マスの実態から、他とのバランス上やむを得ない厳しい選択ではないかというふうに思うわけでありますけれども、なぜにPQ方式を基礎とする漁獲共済漁獲数量による支払い制限を設けることとしたのか、他に方法がなかったのか、まず明らかにしていただきたいと思います。  一定数量以上とった場合に共済金の支払いが逓減されることとなるわけでありますけれども、これによって共済の根幹である再生産確保を保障するということにそごを来すのではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点どういうふうにお考えなのか。
  179. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 こういうサケ・マスにつきまして基準漁獲数量というものを導入しました経緯なりその理由につきましては、一つは、サケ・マスの大型定置漁業というものがふ化放流事業等によりまして安定的に漁獲量が確保されているということで、ほかの非常にフラクチュエーションのある漁業とはかなり違った形になってきているということが一つ。  それからもう一つは、そういう漁業実態の中で、ここのところ数量がふえ、価格が落ちるということがございまして、共済事故というものが多発し、しかも特定の地域に集中してきているということで、何とか収穫保険方式という漁業共済の根幹というものを守りながら、サケ・マスの共済というものを永続させたいという中でいろいろな方式について検討したわけでございますけれども、ただいま申し上げましたようなそういうふ化放流により回帰率が高まり、収穫高というものが相当高水準になってきている、こういう特性というものも考慮いたしまして一定の数量という概念を今回新しく導入させていただいたわけでございます。そしてこういう一定の数量概念というものを入れた結果、ただいま先生からお話しありましたように、そういう数量をオーバーいたしました際には共済金の逓減ということが行われるわけでございますけれども、基準漁獲数量という、少なくとも従来のいろいろな経験値をもってしてこれだけはとれるであろうという数量を超しているわけでございまして、少なくともその限りにおきましては、漁業経営者といたしましては自分の望んでいた数量を確保し、後は販売努力でございますとかいろいろなことを兼ね合わせますと、これで経営の持続というものも期待しあるいは図れるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  180. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 基準漁獲数量導入することになったそのサケ・マスの魚価の低迷というのは、単に漁獲数量の増加によるものだけではなくて、円高による輸入の急増が全体として国内魚価の低迷をもたらしておるわけでありまして、それがサケ・マスに顕著になってあらわれてきており、また回帰するサケ・マスの魚体の小型化等による商品価値の低下等もあるのじゃないか、こういうふうに考えるわけですね。そうであるならば、ある程度輸入に歯どめをかけるなどの秩序化した方法が行われなければ共済の赤字はとまらないのじゃないかというふうに私は思いますけれども、どういうふうにお考えなのか。
  181. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ここのところサケ・マスの輸入というものはただいま先生からもお話のありましたように相当な量になっておるわけでありますけれども、これは我が国消費者の旺盛な需要というものと北洋における我が国自身の漁獲量の減少ということによって増加してきたものでございますが、幸い最近三年間の輸入量というものは約十一万トンの水準ということでここのところは横ばいで推移しているわけでございます。このサケ・マスの輸入につきましては現在、御承知のとおり自由化品目なわけでございますけれども、入ってきているものの大宗は高級品でございますべニザケが主体でございまして、必ずしも国産品とは競合しないということからいいまして、ここのところのサケ・マス共済事故多発というものが輸入とのリンクあるいは関係ということではないというふうに理解しております。  それからさらに、ただいま魚体の小型化ということもございましたけれども、これもその年なり地域によってはそういう状況が見られますので、放流方法に一工夫加えるというようなことで、できるだけ安定した漁獲で安定した魚体なりあるいは高価値のサケ・マスがとれるような放流の根っこからのいろいろな改善というものも加えまして、サケ・マス経営全体の経営の維持改善というものを図りたいというふうに考えている次第でございます。
  182. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 地域共済昭和五十七年から導入されているわけでありまして、これは国の掛金補助なしに運営されておるわけです。安定的に運営されているものもあるというふうに聞いておりますが、将来は養殖共済への移行も考えられるところまで来ているのじゃないか、こう思うのですが、こうした定着した地域共済について当面何らかの補助を考えていくべきではないかというふうに私は思いますけれども、こういう点、長官どういうふうにお考えになっているか。
  183. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 地域共済というのはその名のとおりそれぞれの地域で要望が強うございまして、それで全国的な保険数理でございますとかこういうものに必ずしも乗りがたいというものにつきまして制度上道を開きまして、現在におきましても岩手県で一つ行われておるわけでございます。こういうものにつきましては、それぞれの地域実情なりあるいは性格というものを基盤といたしまして漁業共済組合の自主的な運営ということがその制度基本でございまして、そういう自主的な運営にゆだねるという観点から申しましても、国が全国観点から一律的な考え方のもとで助成したり規制したりするということが現状ではむしろ適していないというふうに考えておりますが、現在行われている地域共済そのものもその地域にとっては非常に有効に機能していると見ておりますので、いろいろその運営の仕方なりあるいは普及のあり方なりこういうものにつきましては、我々といたしましても適切な指導なり対応というものは当然行ってまいりたいと思っております。
  184. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回、ノリ特定養殖共済本格実施されることになったわけでありますが、前々から私はこの点を主張しておる者の一人でございましたけれども、これに伴って今までの物損方式のノリ養殖共済は廃止する方針であるというふうに聞いておりますが、廃止が予定されるノリ共済は、資料を見てまいりますと現在西日本で多く契約が締結されておるようでありまして、特に佐賀県、福岡県では著しくそういう状態にあるようですが、それだけ物損方式共済が定着、なじまれているというふうにとっていいのじゃないか、こう思うのです。実情に即した措置を設ける必要があるのではないかと思うわけでありますが、こうした措置を望む声が強く出ているとも聞いておりますし、この点どういうふうに当局は伺っているのか、お答えをいただきたい。
  185. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 現在の物損保険方式、これが大宗を占めて行われてきたわけでございますけれども、ここのところの養殖の現況というものから見ましてやはり今回お願いしております収穫保険方式というものが従来の物損保険方式より養殖業の実態に適合しているというふうに我々は認識しているわけでございます。したがいまして、本格実施の段になりますと相当そちらの方に移行するというのが各地の動きじゃないかとは思っておりますけれども、しかし一方で現在の物損保険方式、これも施行されましてから二十有余年という歴史を持っておりますので、これを直ちに廃止するということにつきましてはいろいろと問題も出てまいりますので、移行が円滑に行われますまでの間は従来の物損方式というものも存続させるということで、当面は経過的にそのまま従来のものも置いてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  186. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に責任分担のあり方について伺っておきたいのですが、今回の改正案では、漁済連と国の関係については漁済連の現在の責任部分を超える場合にも新たに一定の被害の部分について五%の責任を保有するというふうになっているわけです。漁済運は昭和七十四年まで無利子棚上げ分の償還として毎年おおよそ七億円返還していかなければならないわけで、現在の黒字から七億円を差し引いたものが本来の収支である、こう言えると思うのです。このように見てまいりますと漁済連収支はいわゆる黒字に転じたとは言えないのじゃないか、このようなときに漁済連の責任部分をふやすことが適当であるのかどうか、これは疑問であろうと思うのですが、この点どういうふうにお考えなのか。
  187. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話しありましたように、今回の責任分担改正におきましては連合会は従来の負担部分に加えまして新たに五%の比例部分というものが付加されることになったわけでございますけれども、これに見合いまして掛金保有というものも増加することに相なりますので、そういう点からいいますと今回の責任分担見直しそのものによって連合会の収支というものが悪化するということはございませんで、いわば、連合会の収支にとりましては今回の改正というものは中立的であるというふうに考えておりますので、今お話しありました償還というものも、円滑に従来の計画に従って行われていくというふうに理解しているわけでございます。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁済連共済組合との関係では、お互いの共済設計であるところの八五対一五の関係は維持し、一定程度の被害の深い事故についてはその五%を組合責任として、浅い事故については組合の責任部分を少なくしようとしているのでありますが、こうした改正が各共済組合の財政にどう響くのか不明であります。各組合により比較的浅い事故の多い組合と、深い事故が起きる組合とあるわけでありまして、今回の改正が大きなひずみを生むことも懸念されるところでありますが、この点、どういうふうに検討されておるのか伺っておきたいと思うのであります。
  189. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今お話しありましたように、災害の深さ、浅さによりまして組合に対する影響というものが異なってくることは事実でございますが、全体的に申し上げますと、これも今先生からもお話しありましたように、八五対一五という区分そのものは変えませんので、そういう限りにおきましてはトータルといたしましては中立的に動くというふうに考えておりますが、それぞれの組合にとりましては、その年々の状況によりまして影響が区々になってくることも一方で事実かと思っております。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 付加共済掛金率は事務費相当分として共済組合が独自に定めるところになっておりますが、ここに資料としてその一覧表をいただいているわけです。それによりますと一三%から二四%というばらつきが目立つわけであります。掛金の方は、農水大臣が定める基準共済掛金を下らない範囲となっています。そのばらつきが目立たないのでありますが、この点、水産庁はどういうふうに考えておられるのかお答えをいただきたい。
  191. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話しありましたように、付加共済掛金率につきましては県によりましてかなりのばらつきというものがあるわけでございますけれども、この掛金率は、共済組合の共済規程というものでそれぞれの地域事業実情なり実態というものに応じて定めるということになっているわけでございます。したがいまして、この掛金率につきましては、基本的にはそれぞれの地域漁業実態なりウエート、こういうものによって違ってまいりますし、それからさらには、加入率が異なることによりまして契約量に多寡がございます。これに見合う事務処理に要する費用というものもそれぞれ県によって違ってくるわけでございます。したがいまして、そういういろいろな実態を反映して県の格差というものが生じているわけでございまして、この格差自体が問題というよりは、絶対値が的確に実態を反映したものになっているかということが問題かと思いますが、従来からもそういう立場でございましたし、今後とも、実態に即した付加掛金率というものがそれぞれで適正に定められますように十分指導してまいりたいと思っております。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 細々と漁災制度のことを伺ってまいりまして、以上で大体漁災制度の方を一通り終わらせていただきます。  次に、視点を変えまして、予備調査捕鯨に出ておりました第三日新丸が本日無事に帰港いたしたわけてありますが、この関係を若干伺っておきたい、こう思うわけです。  聞くところによりますと、二百七十三頭のサンプルを捕獲したというふうに伝えられておりますが、これについて水産庁はどのような評価をされておられるのか。まず、この点を伺っておきたいと思うのです。
  193. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 けさ調査捕獲の船が日本に帰ってきたわけでございますけれども、ただいまお話しありましたように二百七十三頭というものを捕獲して帰ったわけでございます。  この二百七十三頭につきましては、今回の調査は三百頭を限度として出かけていったわけでございますけれども、これは頭数を何頭とるということが目的ではございませんで、それぞれの地域で、それぞれの計画に従った運航の中で、そこの海域で捕獲されたものをそのまま持って帰ってきたということでございますので、何頭とるということ自体が最初からの関心事ではなかったわけでございます。したがいまして、当初設計いたしました海域を予定どおり航行いたしまして捕獲した結果、これだけの頭数になったということでございます。  これだけの頭数から得られます調査結果、こういうものにつきましては、これから科学者がそれぞれいろいろな調査をいたしまして、そしてそういう標本の分析結果というものを踏まえまして科学者間で調査結果というものの総括がされることになろうかと思っておりますので、我々といたしましても、できるだけ早いそういう科学者の調査結果というものを待ち望んでいる次第でございます。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は今回の二百七十三頭は、科学的調査に徹した結果であろう、こういうふうに評価をしているわけです。我が国の伝統捕鯨を守る上からも立派な調査結果であったのではないか、こう思うわけです。  そこで、調査捕鯨を次にいかに連動させられるのか、この点どういうふうなお考えをお持ちなのか、伺っておきたい。
  195. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の調査船がきょう帰りまして、いろいろな標本の整理でございますとか調査結果の集計でございますとか整理を行っておりますので、その結果を見なければ今回の調査が直接どう連動するかということは定かにはできませんけれども、少なくとも我々の基本立場といたしましては、IWCの条約上も調査捕鯨というものは認められているわけでございまして、そういう本格調査実施するための一つの予備的な調査を今年度といいますかことし行ったわけでございますが、その結果を十分見まして、近々IWCの総会もございますので、そういう場での議論に耐え得る調査結果というものを期待し、待っている次第でございます。
  196. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 アメリカが四月八日にPM修正法を発動させて、過去に百万トンを超える漁獲のあった米国地先沖でのクォータを一〇〇%発給しない措置に出たわけですね。こうなりますと、昨年末の日米漁業協定の改定というのは一体何だったのか、私は憤慨にたえない。我々はクォータの見返りとして米国漁業振興のために協力するといういわば義務が明文化されたわけでありますが、クォータはないし協力は求められるというような全くばかげたことで、こういうことがあっていいのかどうかというふうに思うわけであります。こういう点、長官どういうふうにお考えになりますか。
  197. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 気持ちといたしましてはただいま先生からお話しありましたのと全く同じ気持ちでございまして、我々といたしましても、今回のパックウッド・マグナソン法によります一〇〇%削減ということにつきましては極めて遺憾に考えている次第でございます。  したがいまして、あの措置後即刻、私自身在京の公使を呼びまして厳重に抗議を申し入れ、速やかにその対日割り当てが行われるよう要求をいたしておりますし、それから現地におきましても、在米大使から同様の要求というものをアメリカ政府側に対して行っているわけでございますけれども、今後ともその撤回を引き続き強く求めてまいりたいと思っております。
  198. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 五月三十日にIWCの会合が予定されているわけでありますけれども、これに対して我が国はどのような方針で臨まれるのか、最後に力強いお答えをいただきたい、こう思うのです。
  199. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 近々IWCの総会が行われるわけでございますけれども、IWCが商業捕鯨全面禁止決定の見直しのため一九九〇年までに行う鯨資源の包括的評価、このためにも鯨類の調査というものは必要でございますので、その必要性を総会の場におきましても強く訴えてまいりたいと思っております。
  200. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。
  201. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  202. 藤田スミ

    ○藤田委員 今回漁災制度改正が行われるようになったその引き金は、保険収支の赤字、そのことはそのまま漁業経営者の赤字、今日の漁業が抱えている情勢の反映だと考えますが、午前中にも参考人の皆さんから、水産物輸入が急増していて、この点で非常に価格の低迷というかかわりが大きく深刻になっているということがるる訴えられておりました。ことしの漁業白書を見ましても、国民の望む良質な食糧の供給は今後とも国内生産が主体となって果たしていかなければならないものだが、輸入が安易に増大させられようとしていると懸念を表明しているわけであります。  そこで私は、まず最初に大臣から、我が国漁業位置づけ、自給率の問題も含めてどう考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいわけです。
  203. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 水産物の自給率について、それも含めてということで御質問でございますが、漁業白書等でも触れておりますように、水産物国民の食生活に欠かすことのできない重要な食料でありまして、従来その供給は国内生産によって大部分を賄ってきたところであります。最近、水産物輸入量が増加する一方、国内生産はほぼ横ばいのため、その割合が低下する傾向にございます。しかしながら、国民の望む良質な水産物の安定的な供給は今後とも国内生産が主体となっていかなければならないものであり、そのための生産流通加工、各段階において輸入水産物に対抗できる体制整備に努める必要がある、かように考えておるところでございます。
  204. 藤田スミ

    ○藤田委員 おっしゃるように、水産物国民の食生活に欠かすことのできない重要な食料である、そういうことは白書にも明記されておりますし、大臣も今明確におっしゃいました。そして同時に、海外依存で過不足なく輸入できるようなものではもともとないんだということもまた白書は述べております。  昨年十一月の漁業問題研究会報告でも、「我が国は、世界最大漁業国であり、国民生活に占める水産物の地位も極めて大きいことから、無秩序な水産物輸入が国内漁業に悪影響を与え、ひいては、水産物の安定供給に支障を生ずることのないよう、国境調整措置が講じられている。」同じく水産加工業についても、製品輸入、海外立地などが「将来の我が国水産加工業の存立を脅かす可能性も否定できない。」として、このことが「漁業生産物の最大の販路としての水産加工業の発展を図る上で、必ずしも好ましくない」、こんなことまで言っているわけであります。  私はこの意見に全く賛成なんですが、ここまで重要視されながらしかし輸入がどんどんふえていく、ここには言われている二百海里問題などだけにはとどまらないものがあるではないか。それは極めて基本的な問題ですが、市場開放、産業構造調整路線が大きな矛盾をつくり出していやしないか。工業製品の輸出の見返りに弱い産業部門では輸入をふやすことが至上命令になっております「構造調整の指針」。私がこんな言い方をしますのは、こういうふうにはっきり言っています。「対外不均衡是正のためには、輸出を抑制する途と、適度な輸出の伸びを上回る輸入の拡大を図る途とがある。世界と我が国経済の調和ある発展のためには後者の実現が必要となる。」これはつまり輸入の拡大を図らなければならないということを言っているわけです。そうなれば、輸入拡大が自己目的である構造調整路線と重要な国民の食料だと言われている今日のこの漁業問題とは大きな矛盾があるのではないか。  大事なことは、無原則的な輸入をきっぱり抑え、我が国二百海里での漁業最大限に発展させ、漁業漁村、そして新鮮な食料供給をきちんと守る立場に立ち切ることではないかと考えるわけです。この点をお答えいただきたいわけです。  午前中の参考人の皆さんも、これだけはどうしても対抗してもらいたいとおっしゃったのが、IQの撤廃、関税撤廃。こういうものに対しては絶対に対抗していかなければならないし、それは当然のことであり、かつ重要なことだとおっしゃっております。これにもお答えをいただきたいのであります。
  205. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 水産物輸入がふえていることは事実でございますけれども、この背景にはいろいろな事情がございます。一つは、国内で魚に対する需要というものが残念ながら我が国資源を上回って現にあるということでございまして、適切な消費者に対する供給を心がける以上、ある程度の輸入というものは当然必要になってくるわけでございます。しかし、これが無秩序に入ってきたり、あるいは我が国自身の中小沿岸漁業経営者と衝突するというようなことがありましては大変なわけでございます。そういう観点から、幸いにいたしまして水産物につきましては、こういう沿岸域の中小漁業者の主たる漁獲物でございますサバとかイワシあるいはイカ、こういうものにつきましてはIQ制度というものが現にとられているわけでございますし、さらに、マグロあるいはワカメというような、ここのところいろいろ問題の出てきているものにつきましては政府間なり民間ベースで輸入数量というものを関係国と協議いたしまして、そしてその数量を担保するための手段として事前確認制度というものをとっているわけでございます。こういう制度はいろいろと外国から攻撃されている点はあるわけでございますけれども、現下の我が国漁業実態からいいまして今後とも堅持してまいりたいと考えている次第でございます。
  206. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 大体いま水産庁長官からお答えしたとおりでございますが、さっきちょっとお触れになった点で構造調整の問題、それをちょっと私らから申し上げれば、とらまえ方がちょっと違うように思われます。弱い者にしわ寄せさせるためにやっていることではない。一般論として、構造調整輸入の拡大というものを言っていることとこの水産物の問題はストレートに結びつくものではないのではないか、私はそう思っておりますので、ひとつそのように解釈をしていただければありがたい、こう思っております。
  207. 藤田スミ

    ○藤田委員 この問題で大臣と議論をする時間がありませんけれども、しかし、その輸入の拡大で非常に苦しんでいるのは、産業界では中小企業の繊維業者だとか自転車業界だとか。それこそ一般的にいっても、実際にはその中小企業ほど、そして農業の分野では今日大臣御自身が非常に御苦労されているところですけれども、牛肉、オレンジから、輸入問題全部こういうところから出ているわけですので、単に一般的にわっと言われているということではないということだけ申し上げておきたいと思います。  この輸入水産物と対抗する上で、参考人の皆さんも、これまた白書でも、輸入水産物では得られない品質そして鮮度あるいは特性等で対抗するとともに、できるだけ低コストで生産し、供給していく方向が大事なんだということを強調しているわけなのです。ところが、これもまた、けさ参考人の方に御意見を承りましたけれども、今日言われている新型間接税の問題であります。これは、水産経済新聞で自民党の税制調査会が全漁連の方に質問されております記事がございましたので、私は、きょうせっかくの機会だと全漁連の方に質問をさせていただきました。「飲食料品などが非課税取引に指定されたとしても、水産物の価格決定はセリまたは入札によるのが一般的なので、主体的には価格形成が難しく、消費者に価格転嫁は困難。また、生産資材などに含まれている税は、生産者が負担しなければならなくなり、経営状況がさらに悪化することが予測される。」こういうことで新型間接税は困るんだということを言っておられました。東京水産大学中井教授は、新型間接税そのものに私は反対だ、最終的に消費者全体に転嫁される、日本の水産業の競争力を強める点でマイナスになるものがあるんだ、間接税はない方がよいと考えるというふうにおっしゃいました。これまた私も同感でございますが、大臣、いかがでしょうか。できるだけ低コストで輸入農産物に対抗していかなければいけないのだと白書でも強調されている、この低コストで生産するものを阻むのが、今度の言われている新型間接税。漁網あるいは漁具その他にももちろんかかってまいりますし、そういう点で大臣の御意見をお伺いをしておきたいわけです。
  208. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 前段の質問に、私、水産庁長官の答弁に若干つけ加えた意見を申し上げたわけでございます。それにさらに付言しておくならば、水産物の無秩序な輸入というものが、我が国の中小零細な沿岸、沖合漁業者に悪影響を与えないようにしなければならぬのは当然のことでございます。経営環境に厳しさを増しておるマグロ及びワカメ、この問題については、さっき長官もちょっと触れておりましたが、政府間あるいは民間レベルで輸入数量の協議を行って輸入事前確認制の対象としているわけでございますし、今後とも現行制度の適切な運用を図っていくということは当然のことでございます。  一方、輸入増大の背景というものを考えますと、内外格差等競争力の問題が確かにあるわけでございまして、その点は今重ねておっしゃるような意見と大体一致するわけでございますので、今後は国内水産物について、消費者ニーズ変化を踏まえながらコストダウンあるいは食生活上非常に多様なニーズがございますので個性的な商品づくり等を強力に推進し、輸入品に対抗し得る生産流通体制確立するということが重要であると私も考えておるわけでございます。  なお、間接税のことについてちょっと触れられたのでございますけれども、ただいま政府税調におきましてせっかく議論をいたしておりますので、私の立場からはお答えするのは差し控えさせていただきたい、こう思っております。税の議論がいろいろな観点から言われておること、御議論のあるところは承知をいたしておりますだけに、ひとつ政府税調の議論にまちたいと私は思っておりますので、差し控えさせていただきたい。
  209. 藤田スミ

    ○藤田委員 低コストを強調しているときに、一方でその低コストを阻むものを持ち出そうとする、この矛盾に対して、農林水産大臣として、そういう特に食料の問題ですから新型間接税はこのようなものにかけるわけにはいかないという御答弁をいただきたかったなというふうに私は思っています。まして、日本百貨店協会など十一団体で組織しております大型間接税反対中央連絡会議の反対の誓約書に大臣御自身も公約として名を連ねていらっしゃるわけですから、私は、そういう点で期待を寄せてお尋ねをさせていただいたわけなんです。  サケ・マスの問題に移らせていただきますが、サケ・マスの問題でまず三点お伺いします。  サケ・マスの共済支払いが七十億円に達し、共済の過大な赤字をつくったと言われておりますが、改めてサケ・マスの赤字の原因をどう認識していらっしゃるか、お伺いをしたいわけです。二点目は、その赤字解消のために今回の改正で基準漁獲数量導入するということなんですけれども、しかし、これは漁獲共済のPQ方式の原則を崩すことになりはしないか、本旨に反するものではないか。これが第二点目です。第三点は、先ほどからもお約束をいただいているようですが、ゆめゆめ他の魚種にこういうふうな形を拡大していくということはないか。基準漁獲数量導入を他の魚種に広げていくというようなことはないとお約束をしていただけるか。この三点をまずお答えいただきたい。
  210. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 サケ・マスの赤字の原因でございますけれども昭和四十五年から五十七年度までのいわゆる累積損害率、これは八〇・五%でございまして、一部の年を除きますと、毎年収支は黒字基調ということにあったわけでございます。しかし、残念ながら昭和五十八年度以降はその大宗を占めております北海道のサケマス定置漁業というものの共済収支悪化いたしましたために、昭和四十五年から六十一年という全体で見てみますと、損害率も一二二%を超えるというところに相なっているわけでございます。このような赤字となりましたのは、一部地域での不漁というものもあったことは事実でございますけれども、全体的に見てみますと、基本的には漁獲量というものが相当程度確保されたにもかかわらず魚価が低迷したということで漁獲金額が著しく減少したということで、特定地域について共済金の支払いというものが多額になったということがその原因になっているわけでございます。  それから、今回そういう基準漁獲数量方式というものを導入することがPQという現在の漁業共済基本に反することじゃないかということでございますけれども、今回の基準漁獲数量導入というものは、特定の漁業においては漁獲量の増大により価格が低落したことに伴いまして共済事故が連年のように多発した、それで共済事故の大宗を占めるような事故がその結果生じておりまして、これによって共済事業の健全な運営ということが阻害される危険が出てきましたので、特定漁業に対する必要最小限度の特例的な是正措置ということで今回お願いしておるわけでございます。しかし、あくまでもPQ方式基本はもちろん守るということでございまして、例えばこういう基準漁獲量方式導入いたしましても、不漁の場合には従来どおり共済金が支払われますし、それから品質の低下というようなものに基づきます価格の低下というような事故につきましては従来どおり補てんされるということでございますので、PQ方式基本というものは今回においても継続されているわけでございますし、また継続する必要があろうかと思っておるわけでございます。  それから、対象をサケマス定置漁業以外に拡大しないという話でございますけれども、ただいまお話ししましたような理由でサケ・マスについてこういう制度を特別に導入するということでございますので、サケマス定置漁業の以外の漁業につきましては現在そういう漁業実態なり共済状況にございませんので、これについて適用するということは現在考えていないわけでございます。
  211. 藤田スミ

    ○藤田委員 今おっしゃいましたようにサケ・マスの価格低迷による共済の赤字がこの基準漁獲数量導入することになったのだ、こういうことなのですが、漁災制度仕組みに従って金額修正係数が下げられ、そしてまた当然基準共済金額も下がって、つまり制度自体にバランス回復機能があるのになぜ仕組みそのものを急いで変えなければならないのか。もう少し長い目で見るべきだという意見も多々あるわけですが、この点はどうなんでしょうか。  もう一点ですが、今回の改正サケ・マス価格の低迷に泣いている漁業者に一層の追い打ちをかけることになりはしませんか。そういう点で私は、こうした状況を解決する対応策をどう考えていらっしゃるのかということもお伺いしておきたいわけです。
  212. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 こういう基準漁獲数量制度というものを導入いたしました理由につきましては、ただいまもお話しいたしましたけれどもサケ・マスの漁業共済につきましても漁業経営者のために何とか永続させたいということで、いろいろな方式について内部的には検討してまいったわけでございます。例えば補償水準そのものを引き下げるとかあるいは掛金率そのものを上げるとか、いろいろな接近の仕方があるわけでございますけれども、いずれも不漁の場合であっても一律に適用を受けますために、共済金が減額しましたりあるいは掛金負担そのものが非常に増高するというような問題があるわけでございます。  そういう対応の仕方に対しまして、今回の基準漁獲数量制度導入ということになりますれば、基準漁獲数量を超過した場合にだけ一定の作動装置が動いてくるということでございまして、それ以下の場合には従来と同じように共済金が支払われますし、それから品質の低下等、こういうものの価格に対しても対応できるということで、やはり現時点においてはこういう措置が最善であり、しかも現にサケ・マスの共済につきましては多額の赤字が一定地域の結果出ているという現実を踏まえますれば、現時点でぜひこういう改正を行っておくということが長期的に見て漁業経営者、関係者のためにも相なるのではないかという認識でこういう改正をお願いしている次第でございます。
  213. 藤田スミ

    ○藤田委員 私が二つ目に聞きたかったのは、いずれにしても共済価格対策を背負い込ませるというようなことでは限度があるのだということが今度のこの問題で大きな問題提起として投げかけられたというふうに思うのですね。そういう点で、価格安定策を含めてこれからこのサケ・マス漁業界の抱えている問題を解決するために政府はどういう対策をとっていかれるのかということを聞きたかったわけです。
  214. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 サケ・マスの輸入がふえているわけでございますけれども、ここ三年間は十一万トン台ということで横ばいで推移しているわけでございます。この十一万トンというものをどういうふうに評価するかという問題はそれぞれによりましていろいろな見方があろうかと思いますけれども輸入サケ・マスというものは、御承知のとおり高級品でございますベニザケが主体でございまして、必ずしも国産品とは正面から競合はしていないということでございまして、この輸入の十一万トンが即国内産のサケ・マスの価格の足を引っ張っているという関係ではございませんで、むしろ国内での豊漁といいますか、漁獲高のふえというものが大きく影響してきておりますし、それから一部には魚体が小さくなってきたとかあるいは収獲時期の偏り等という問題があるわけでございますので、我々といたしましては、放流段階につきましても、いろいろなばらつきを前提といたしましていろいろな放流の仕方あるいは採卵の仕方を工夫するということで、より高価値のサケが回遊するような放流技術というものを定着させていきたいというふうに考えておりますし、それからこれだけ回遊量というものがふえてまいりますと、サケ全体の需要拡大あるいは新規用途の開発等というようなものも必要になってまいっておりますので、業界ともどもいろいろな知恵出しというものは今後とも続けてまいりたいと思っております。
  215. 藤田スミ

    ○藤田委員 ふ化放流に工夫を加えて質を改善したり体型を整えたりあるいは漁獲の時期を工夫をしてできるだけ値がつくように持っていくというやり方は大いにやらなければいけないことだし、百年にわたるふ化放流の歴史を振り返ってみましても、北海道さけ・ますふ化場の設立以来、国は三十四年から六十一年までの間に二百七十二億四千八百万円の予算をかけ、北海道は三十三年から六十一年の間に六十四億六千七百万円、総投資額三百三十七億一千五百万円に上るお金を出しているわけです。ちょうどことしはその百年目に当たる年で、ここまで育ててきた漁業を一層成り立たせていくようにするのが国の責任ではないかというふうに私は思うのです。  しかし、輸入関係ないというのはちょっといただけないのです。こんなこと、水産庁長官ともあろうお方が現地に行って言われたら本当にしかられますよ。ベニザケという魚の輸入というのは、ここに物すごく深刻なところがあるのです。ベニザケというのは確かに消費者が好みますから、ここで値がつくと、その下の同じサケでもシロザケというようなのは値が落ちる。輸入であろうとなかろうとそういう運命にあるわけです。輸入サケ円高で安くなる、そうするとシロザケはいや応なく価格が落とされていくわけです。そういう関係の中で、単に量が入るということだけじゃなしに魚の位というのでしょうか、そういうものによって値が決まっていって、その一番上の頭が値が下がってくるとその下の種類のサケもいや応なく価格の低迷に陥ってしまうという関係は少なくとも長官理解をしておいていただかないと、本当にこれはいただけないことだというふうに私は思うのです。そういう点からも、私は、やはり無原則な輸入を抑えるべきじゃないかというふうに考えますが、最後に大臣の御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  216. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 私も今長官とあなたとのやりとりを聞いておりましたが、我が信頼する水産庁長官の答えたとおりでございます。
  217. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 輸入サケが国内のサケに全く影響を与えないと言った覚えは私もございませんが、直接的に足を引っ張るということではございません。やはり全体の供給量がふえる、あるいは最優等生が下がるということになるとそれに応ずるという因果関係はあるわけでございますけれども、少なくともそれのみが魚価形成の直接的な主因ではないという点は御理解いただきたいと思います。
  218. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。      ────◇─────
  219. 菊池福治郎

    菊池委員長 次に、内閣提出農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  まず、趣旨の説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣。     ─────────────  農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  220. 佐藤隆

    ○佐藤国務大臣 農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農村地域工業導入促進制度は、昭和四十六年に発足して以来、農村地域への工業の導入を積極的かつ計画的に促進するとともに、農業従事者がその希望及び能力に従ってその導入される工業に就業するための措置を講ずること等により、農業と工業との均衡ある発展及び雇用構造の高度化に寄与してまいりました。  しかしながら、我が国農業をめぐる状況が厳しさを加える中で、農業構造の面では、経営規模の拡大は一定の進展が見られるものの依然として立ちおくれており、また生産性向上もなお不十分な実情にあります。今後、我が国農業の健全な発展を図っていくためには、農業構造の改善を可能な限り促進することが急務となっております。  これらの課題に対処するためには、農業生産基盤整備等農業構造の改善を促進するための各般の施策の推進とあわせ、農村地域における就業機会の増大を図ることが不可欠であります。このため、産業構造の変化も踏まえながら、農村地域において農業従事者の他産業分野への就業機会確保をより強力に促進することとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次にこの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農村地域への導入対象業種として、現行の工業のほか、道路貨物運送業、倉庫業、こん包業及び卸売業を加えることとしております。これに伴い、法律の題名を農村地域工業等導入促進法に改めるとともに、主務大臣が定める基本方針、都道府県が定める基本計画等において、工業等の導入に関し定めるべき事項を充実することとしております。また、新たに導入対象となる業種については、その導入を円滑に促進するため、税制上の優遇措置を適用するとともに、農林中央金庫からの資金の貸し付けの対象とすることとしております。  なお、これらに関連して、運輸大臣を新たに主務大臣とすることとしております。  第二に、都道府県が実施計画を定めることができる場合を拡大し、工業等の導入の進んでいない複数の市町村の区域において広域的見地からその導入を促進するための計画を定めることができることとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  221. 菊池福治郎

    菊池委員長 次に、補足説明を聴取いたします。松山構造改善局長
  222. 松山光治

    ○松山政府委員 農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下、その内容について若干補足させていただきます。  第一に、農村地域への導入対象業種の拡大であります。現行法律は、工業を農村地域に積極的かつ計画的に導入し、農業従事者がその導入される工業に就業することを促進しておりますが、これまで以上に農村地域における安定的な就業機会確保を図るため、産業構造の変化等を踏まえ、工業に加え、新たに道路貨物運送業、倉庫業、こん包業及び卸売業を導入の対象とすることとしております。  このため、主務大臣が定める基本方針、都道府県が定める基本計画等においては、工業及び新たに導入対象となる業種について、その農村地域への導入の目標、農業従事者の就業の目標等を定めることとするほか、新たに共同トラックターミナル等の共同流通業務施設の整備に関する事項についても定めることとしております。  また、新たに導入対象となる業種については、現在、工業に適用されている税制上の優遇措置を適用することとしております。  その一は、農用地等の所有者が、これを実施計画で定める工場用地等の用に供するため譲渡した場合に、当該譲渡に係る譲渡所得について所得税を軽減できることとするものであります。  その二は、実施計画に従い導入された企業に対し、事業用資産の買いかえの場合の課税の特例、減価償却の特例を適用することであります。  その三は、地方公共団体が事業税、不動産取得税または固定資産税の課税免除または不均一課税を行った場合に、地方交付税による補てん措置を適用することであります。  また、金融上の措置として、農林中央金庫が、工業のほか、今回導入対象となる業種の用に供する施設に対し、新たに資金の貸し付けができることとしております。  第二に、都道府県が実施計画を定めることができる場合の拡大であります。現在、都道府県は、自然条件その他の立地条件から見て周辺の農村地域への工業の導入の拠点となると認められる地区について実施計画を定めることができることとなっております。これに加え、工業等の導入が進んでいない複数の市町村の区域において広域的見地から工業等の導入を促進するため、当該広域の市町村における農業従事者が導入された工業等に相当数就業することが見込まれることその他の要件に該当する場合には、新たに都道府県が実施計画を定めることができることとしております。  以上のほか、所要の規定の整備を行うとともに、関係法律について所要の改正を行っております。  以上をもちまして、農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  223. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  224. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  次回は、来る二十六日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散会