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小渕国務大臣 ただいま
議題となりました
平和祈念事業特別基金等に関する
法律案につきまして、その
提案理由及び
内容の
概要を御
説明申し上げます。
恩給欠格者問題、戦後強制抑留者問題、在外財産問題などのいわゆる戦後
処理問題につきましては、近年、国に対し補償
措置等を求める声が強まり、種々の論議が行われてまいりました。このため、
昭和五十七年六月に学識経験者による戦後
処理問題懇談会を設置し、同懇談会において、これらの戦後
処理問題についてどのように
考えるべきかについて、二年半にわたり慎重かつ公平な検討が行われました。
その結果、
昭和五十九年十二月に
内閣官房長官に対し、いわゆる戦後
処理問題については、もはやこれ以上国において
措置すべきものはないが、
関係者の心情には深く心をいたし、今次大戦における国民のとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念する
意味において、
政府において相当額を出捐し、事業を行うための特別の基金を創設する旨の提言が行われたところであります。
政府としては、同懇談会報告の
趣旨に沿って所要の
措置を講ずることを基本方針とし、その具体的
内容等について種々検討
調査を行ってきた結果、平和祈念事業特別基金を設立し、
関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うとともに、戦後強制抑留者の問題については、これらの
方々が、戦後、酷寒の地で強制労働に従事させられ、大変御苦労をされたという特殊な事情を考慮して、本邦に帰還された
方々に対し、個別に慰労の
措置を講ずることとしたところであります。
以上の経緯を踏まえて、ここにこの
法律案を
提出することとした次第であります。
次に、この
法律案の
概要について御
説明申し上げます。
まず、第一に、この
法律の
趣旨は、旧
軍人軍属であって年金たる恩給等を受ける
権利を有しない者、戦後強制抑留者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等
関係者の戦争犠牲による労苦について国民の
理解を深めること等により
関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う平和祈念事業特別基金を設立するとともに、戦後強制抑留者に対し、慰労品の贈呈等を行うことについて必要な
事項を
規定するものであります。
第二に、平和祈念事業特別基金についてであります。その目的は、今次の大戦におけるとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、
関係者の労苦について国民の
理解を深めること等により
関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うことであります。
基金の資本金は、十億円とし、
政府がその全額を出資することとしております。なお、
昭和六十三年度から五年度を目途として、
政府の出資額が二百億円となるまで、基金に追加して出資するものとしております。
また、基金に、その運営に関する重要
事項を
審議する機関として、基金の
業務に関し学識経験を有する者十人以内で組織する運営
委員会を置くこととしております。
基金の
業務は、
関係者の労苦に関する資料の収集及び展示、
調査研究、出版物その他の記録の作成その他基金の目的を達成するために必要な
業務としております。
このほか、財務会計に関する
事項等所要の
規定を設けております。
第三に、戦後強制抑留者またはその
遺族に対する慰労品の贈呈及び慰労金の
支給についてであります。
まず、慰労品の贈呈でありますが、戦後強制抑留者またはその
遺族に
総理府令で定める品を贈ることによりこれらの者を慰労するものとし、基金にその慰労の
事務を行わせるものとしております。
次に慰労金の
支給でありますが、戦後強制抑留者またはその
遺族で、
日本の国籍を有するものには、慰労金を
支給することとしております。ただし、年金恩給等の
受給者等には、
支給しないこととしております。
慰労金の
支給を受けるべき
遺族の
範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とし、その順位はそれぞれこの順序によることとしております。
慰労金の額は、十万円とし、二年以内に
償還すべき
記名国債をもって
交付することとしております。
また、慰労金の
支給は、これを受けようとする者の
請求に基づいて行うこととしておりますが、この
請求期間は、
昭和六十八年三月三十一日とし、この
期間に
請求のない場合には、慰労金は
支給しないこととしております。
なお、慰労金の
支給に関する
事務のうち、
請求の受理及び審査に関する
事務を基金に行わせるものとしております。
このほか、慰労金の
支給等に関し所要の
規定を設けております。
以上がこの
法律案の
提案理由及びその
内容の
概要であります。
何とぞ、慎重御
審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。