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1988-04-21 第112回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十一日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       新井 将敬君    有馬 元治君       石川 要三君    内海 英男君       河野 洋平君    佐藤 信二君       虎島 和夫君    村井  仁君       森下 元晴君    谷津 義男君       五十嵐広三君    緒方 克陽君       角屋堅次郎君    中沢 健次君       井上 和久君    鈴切 康雄君       川端 達夫君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房外政審議室長 國廣 道彦君         内閣総理大臣官         房管理室長   文田 久雄君         内閣総理大臣官         房参事官    平野 治生君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         厚生省援護局庶         務課長     新飯田 昇君         内閣委員会調査         室長      大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     佐藤 信二君   宮里 松正君     虎島 和夫君   武藤 嘉文君     新井 将敬君   大出  俊君     中沢 健次君   広瀬 秀吉君     緒方 克陽君 同日  辞任         補欠選任   新井 将敬君     武藤 嘉文君   佐藤 信二君     河本 敏夫君   虎島 和夫君     宮里 松正君   緒方 克陽君     広瀬 秀吉君   中沢 健次君     大出  俊君     ───────────── 四月二十日  被抑留者等に対する特別給付金支給に関する法律案角屋堅次郎君外四名提出衆法第二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特定弔慰金等支給実施に関する法律案内閣提出第二六号)  平和祈念事業特別基金等に関する法律案内閣提出第二七号)  被抑留者等に対する特別給付金支給に関する法律案角屋堅次郎君外四名提出衆法第二号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定弔慰金等支給実施に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。小渕内閣官房長官。     ─────────────  特定弔慰金等支給実施に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま議題となりました特定弔慰金等支給実施に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、昨秋成立を見た議員立法台湾住民である戦没者遺族等に対する弔慰金等に関する法律規定する弔慰金または見舞い金支給実施のための必要事項を定めるものであります。  台湾住民である戦没者遺族等に対する特定弔慰金等支給につきましては、人道的精神に基づき、昭和六十三年度から速やかに必要な財政措置を講ずること、支給実施事務対外的配慮から日本赤十字社をしてつかさどらせることとされております。また、先般、昭和六十三年度予算編成に当たり、特定弔慰金等戦没者等または著しく重度戦傷病者一人当たり二百万円とすること、これを交付国債により一回払いで支給することといたしましたが、これを実施するためには、国債発行権限の付与、日本赤十字社への裁定権限委任など新たに立法を必要とする事項がございます。そこで、このような支給実施のために必要な規定につきましてここに成案を得ましたので、今回、本法律案提出した次第であります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一は、特定弔慰金等支給を受ける権利裁定についてであります。  特定弔慰金等支給に当たっては、請求者申請を待って、裁定という行政行為によって権利存在を確定することとしております。また、この裁定権限は、内閣総理大臣に属しますが、これを日本赤十字社委任することとしております。  第二に、特定弔慰金等の額及び記名国債交付についてであります。  特定弔慰金等の額は、戦没者等または著しく重度戦傷病者等一人につき二百万円とし、記名国債をもって交付することとしております。この国債については、無利子とし、政府は、その償還請求を受けたときには、直ちに全額について償還しなければならないこととしております。また、政府は、対象者にこの国債交付するため、必要な限度で国債発行することができることとしております。  第三に、請求期限及び償還請求期限についてであります。  特定弔慰金等支給を受ける権利請求につきましては昭和六十八年三月三十一日までに、交付国債償還請求については昭和七十年三月三十一日までに、それぞれ行わなければならないこととしております。  第四に、日本赤十字社代理受領等についてであります。  この法律によって交付される国債については、日本赤十字社特定弔慰金等支給を受ける権利を有する者の委任を受けて、その交付を受け、これを保管し、その償還請求をし、償還金を受領することとしております。  また、政府は、このような委任を受けた日本赤十字社以外の者に対して国債交付し、またはその償還をすることができないこととしております。  以上のほか、特定弔慰金等支給対象者範囲特定弔慰金等支給を受ける権利承継及びその処分制限交付国債処分制限等について政令にゆだねる旨の規定及び日本赤十字社委任した業務の監督に関する規定等を置いております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  4. 竹中修一

    竹中委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 竹中修一

    竹中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  6. 田口健二

    田口委員 私は、ただいま議題になりました特定弔慰金等支給実施に関する法律案について幾つお尋ねをいたしたいと思います。  まず、この法律案趣旨は、今官房長官の御説明にもありましたように、昨年の百九国会において全会一致をもって成立をいたしました台湾住民である戦没者遺族等に対する弔慰金等に関する法律に基づいて提案をされておるというふうに理解をいたしておりますし、そういう意味では、前回の法律趣旨というものを改めて理解をしておく必要があるだろうというふうに思っております。  昨年、本委員会において委員長の方から趣旨説明がありました内容について若干引用させていただきたいと思います。  御承知のように、第二次世界大戦において多数の台湾人々日本軍人軍属として動員され、戦死されたり負傷されたりした方も少なくないのでありますが、日本人軍人軍属であった戦没者遺族及び戦傷病者に対しては、戦後、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の制定や軍人恩給の復活により、年金または一時金等支給されております。  しかるに、台湾人々は、戦後、日本国籍を失った結果、援護法または恩給法が適用されないこととなったのであります。  しかしながら、第二次世界大戦中、日本人軍人軍属として動員された台湾人々、特に戦没者遺族重度戦傷病者方々に対し、現状のままで推移することは、人道的観点からも許されることではないと存じます。  したがいまして、この際、これらの方々に対し、弔慰等の意を表する趣旨で、弔慰金または見舞い金支給するための法律を制定することが急務であると考え、ここに本起草案を作成した次第であります。  というふうに説明がされております。  なおまた、この法律成立をするに当たりまして、本委員会では附帯決議が付されております。  私は、この法案趣旨並びに附帯決議趣旨に従いまして、確認の意味でこれから幾つかの点についてお尋ねをいたしたいと思います。  第一に、台湾住民である旧軍人軍属であった方々の数はどのくらいいらっしゃるだろうか、そのうち、今回の支給対象になる戦没者及び戦傷病者の数についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  7. 國廣道彦

    國廣政府委員 ただいま御質問のありました台湾住民であった日本の旧軍人軍属の数でございますが、台湾籍日本軍人軍属の総数は約二十一万人と聞いております。  続きまして、今回の支給対象者の数でございますけれども、本件弔慰金等支給対象者となる台湾住民戦没者及び重度戦傷病者としまして、現在までに日台双方で確認されております数は約三万名でございます。  このほかにも、台湾側からは若干対象者がまだいるというふうなことも聞いておりますが、正確な数字の把握は、今後の台湾現地における調査を待たなければならない次第でございます。
  8. 田口健二

    田口委員 次に、法第二条第一項に「著しく重度障害の状態にあるもの」というふうに書いてあるわけですが、これはどの程度障害を示すものか。さらに同項で「それぞれ政令で定める者に対し、政令で定めるところにより、これを行う。」というふうにありますけれども、この政令とは一体どういう内容のものであるか、お知らせをいただきたいと思います。
  9. 國廣道彦

    國廣政府委員 ただいま第一の御質問の点につきましては、「著しく重度障害」と申しますのは、人道的見地から戦没者と同様に配慮しなければならない程度重度障害考えております。具体的に言いますと、恩給法別表がございまして、その別表の中の特別項症から第四項症までの障害に該当する者を対象考えております。  第二の御質問の点につきましてお答え申しますが、政令内容としましては、端的に申しまして、第一に支給対象者となる戦没者遺族範囲でございます。それから第二に、著しく重度戦傷病者としてどの程度障害の者を対象とするかということでございます。第三番目に、対象遺族につきまして優先順位をどのようにするかということでございます。また第四に、受給権者受給資格を失う場合など、こういうことも定める必要があると思っております。  その他若干ございますが、主な点は以上でございます。
  10. 田口健二

    田口委員 同じく第二条の第二項に、「支給を受ける権利裁定」として、「内閣総理大臣が行う。」ということになっています。これは当然のことであろうと思うのでありますが、私は今回の法案趣旨から考えまして、裁定に当たっては、余りに法律的といいますか、しゃくし定規的に考えるのではなくて、十分法律趣旨を生かして裁定というものは実施されるべきだと思いますけれども、その辺についてのお考えはどうでしょうか。
  11. 小渕恵三

    小渕国務大臣 本件措置につきましては、御指摘のとおり人道的立場に立って我が国の誠意のしるしとして支給するものでありますので、日赤におきます受給権裁定に当たりましては、今委員指摘のような趣旨を十分踏まえまして、弾力的にこれが行うことのできるように今後指導してまいりたい、このように考えております。
  12. 田口健二

    田口委員 次に、第三条の請求期限でありますが、法案によれば「六十八年三月三十一日」ということになっています。ある程度期限を付すのは当然のことであろうと思うのでありますが、これまた法案趣旨からいいまして、今後どういうふうな作業手続になるのかよくわかりませんけれども、一日でもこれに間に合わなかった場合には却下ということになるのか。「六十八年三月三十一日」とした根拠をひとつお知らせいただきたいと思います。
  13. 國廣道彦

    國廣政府委員 お答え申し上げます。  国内援護関係各種特別交付金等はほとんど三年の消滅時効に係るものとしておりますが、本件は御高承のとおり海外の居住者に対する支給でありまして、台湾各地に居住する受給資格者日本政府の今回の措置を承知させるのにも時間が必要であろうと考えます。したがいまして、申請漏れが生じないよう考慮しまして、三年ではなくて約五年間の請求期限にしたものでございます。ここに今御指摘の点に対する私どもとしましての配慮を御賢察いただきたいと思います。  それでもなおかつ請求期限が過ぎた後のことにつきましては、法の建前としては特定弔慰金支給請求することはできないということでございますが、特に本件が相当有名にもなっております後にさらに五年ということにしておりますので、その最後の段階で問題が生じるようなことは万々ないと思います。ないようにさらに努力していきたいと思っております。
  14. 田口健二

    田口委員 続いて、第四条の記名国債償還請求が、同じように「七十年三月三十一日」という期限が付されておるわけでありますが、この辺の期限の設定の根拠についてもお尋ねをいたしたいと思います。
  15. 國廣道彦

    國廣政府委員 本件におきまして発行されます国債は、請求者の希望の時期にいつでも全額償還請求できるという、極めて請求者の便宜を図ったものでございます。この措置は臨時の措置として行われるものでありますので、支給事務が無期限に続くという仕組みにすることはできません。償還請求にも何らかの期限をつけることが必要でございます。  そこで、その期限の長さでございますが、償還請求期限を約七年間としましたのは、他の場合と比べて比較的といいますか、精いっぱい長い期間を設定したというふうに御理解いただきたいと思います。
  16. 田口健二

    田口委員 次に、第五条の代理受領関係でありますが、日本赤十字社に対して業務委任するという形になっておるわけです。日赤の方で関係者においでをいただこうと思ったのでありますが、なかなか御都合がつかないということでありますので、政府の方にお尋ねをいたします。  日赤委任をする業務の具体的な内容について若干お尋ねをしたいのでありますが、例えば、請求者認定方法であるとか、あるいはこの償還金というのは個人個人支給されるのか、あるいは一括をしてどこかの団体にこれを引き渡しをするのか。国債支給するわけでありますから、今出てまいりました償還の場合には、これは一体日本通貨でもって償還をするというのか、あるいは現地台湾通貨でもって支給をされるのか。また、日赤に対応する台湾側の窓口というのは一体どういうところがこれをやられるのか、そういう点についてわかっておりましたらひとつお知らせをいただきたいと思うのであります。
  17. 國廣道彦

    國廣政府委員 日赤は、裁定通知を受けた請求者委任に基づきまして、委任者の名義の国債を代理して政府から受け取ります。そして、これを保管します。その後に、委任者の指定した日に国債償還が行われるように代理して政府に対し国債償還請求を行います。それで、その償還金を受領します。これを委任者送金いたします。したがいまして、支給請求者個々人に対して、その本人に対して行われます。  台湾側のことについてでございますが、台湾に居住する委任者への送金につきましては、委任者個々の人の手に確実に現金が渡るようにすることになっておりまして、その仕事は、台湾社会奉仕業務とする機関、紅十字会でございますが、これを通じて行うことにしております。送金日本台湾元にかえて行う、こういう手配を考えております。
  18. 田口健二

    田口委員 次に、第六条の政令委任の問題でありますが、受給権者の死亡による権利承継など特定弔慰金等支給を受ける権利譲渡等処分制限について政令で定めるというふうに委任規定がございますが、これはどういうことでしょうか。
  19. 國廣道彦

    國廣政府委員 お答え申し上げます。  受給権者現金を手にする前に死亡する場合がひょっとしたらあるかもしれません。その場合にもそのお金は遺族のだれかに対して支給することを考えております。  そこで、まず受給権者請求しないで死んだ場合には、その相続人自己の名前で請求できるようにしたいと考えております。  それから第二に、受給権者支給請求を行った後に死亡した場合におきましても、その相続人が同様に自己の名で支給を受けられるようにしたいと考えております。  第三に、相続人が数人いる場合、その場合には、その一人のした請求全員のためにしたものとみなし、その一人に対してした裁定全員に対してしたものとみなすというふうに決めたいと考えております。  特定弔慰金等支給を受ける権利及び国債そのものについては、これは一身専属権でありますので、その処分を禁じなければいけないというふうに考えております。
  20. 田口健二

    田口委員 次に、第八条の関係でありますが、「この法律施行するための手続その他その施行について必要な細則は、総理府令で定める。」というふうに規定されておるわけでありますが、その総理府令内容というものについて、わかっておればお知らせいただきたい。
  21. 國廣道彦

    國廣政府委員 これは具体的なものに関してでございますが、例えて申しますと、支給請求書でございますね、それから裁定通知書及び日赤に対する国債請求権等委任書、そういう様式の指定、これをその主な内容として考えております。
  22. 田口健二

    田口委員 次に、附則において施行期日を「三月を超えない範囲」、こういうふうにされておるわけでありますが、この「三月を超えない範囲内」としているその理由についてと、さらにまた「国債発行の日は、昭和六十三年九月一日」というふうにしておるわけでありますが、この理由についてお伺いしたいと思います。
  23. 國廣道彦

    國廣政府委員 法律の公布後施行までの間に法律内容につきまして台湾住民に周知せしめることが好ましいと考えまして、「三月を超えない範囲」という期間を置くことにしたわけでございます。これは、第一には周知徹底のためにある程度の時間を置く必要があるということでございますが、また、これは例外的な場合だと思いますけれども、何らかの理由で今たまたま住民でない、それで、いきなりこういう法が行われて、本来住民であったのに受給資格が得られないという気の毒なことが生じないように、若干日を置いておけばその間に住民としての手続といいますか、住居、住所を移転するというようなこともできようと思いまして、こういう配慮をしたものでございます。  国債発行の日の「六十三年九月一日」でございますが、これは国債につける日付の問題でございます。これは国債交付の開始が可能となる日でありますので、その発行の準備の期間を考慮しまして、法の施行一定期間を置くことが必要であります。特定弔慰金等支給につきましては、その申請を九月一日から受け付けるという予定にしておりますので、この日と合わせて発行日とすることとしたのでございます。
  24. 田口健二

    田口委員 それでは、今回の法案に対する昭和六十三年度における予算措置並びに来年度以降の所要経費等についてどのようにお考えになっておられるか、お尋ねをいたします。
  25. 國廣道彦

    國廣政府委員 ただいま御質問経費につきましては、六十三年度予算国債償還金等約三百億円と、支給事務委託費としまして約一億四千万円計上しております。  来年度以降の予算につきましては、予想処理件数処理難易度等が年の暮れになってよりはっきりしてくると思いますので、そういうことも勘案しつつ検討してまいりたいと思っております。
  26. 田口健二

    田口委員 それから、冒頭私も今回の法案並びに先回の成立した法律趣旨について申し上げましたが、本法案成立施行されて、最初にこの弔慰金というものが支給をされるのは一体いつごろになるのだろうか。この趣旨から考えまして、これはもう一刻も早く支給すべきであるというふうに私は思うわけでありますが、その辺の見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  27. 國廣道彦

    國廣政府委員 支給を待ち望んでいる方々の中には、既に高齢に達した戦没者父母等もおられますので、支給は一日も早く実施したいと考えております。その点、先生のお考えと全く同じでございます。特に高齢者方々など早期支給が望ましいと考えられる方々については、日赤における権利裁定等に当たりまして優先処理をしてもらうとか、そういうことも考えたいと思っております。  第一号がいつかということにつきましては、これから台湾側実施の話し合いをして、それからまた公募して、受け付けて、整理をしてということでございますので、そのいつかということは今自信を持って申し上げられませんが、第一回の現金支給というのは、できれば年内にはしたいというふうに思っております。
  28. 田口健二

    田口委員 それでは外務省の方に、引き続いて官房長官にもお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今回の法案内容というのは、言うならば戦後処理の問題の一つに入るだろうというふうに思うのであります。台湾の問題はこういう形で今回法案提案されておるわけでありますが、同じようなケースというのがやはり台湾以外にも当然あるわけです。  まず、韓国における同様ケースの場合の処理は今までどのようにされてきたか。韓国との間には日韓基本条約が結ばれ、国交も回復をしておるわけでありますが、韓国における処置の状況といいますか、これをまずお聞きをいたしたいと思います。
  29. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員から同様のという御言及がございましたけれども、今回の措置は、今までも御説明ございましたように、いわゆる請求権問題の処理ということで行われるのではなくて、あくまでも人道的精神から我が国国内法に基づく措置として行おうとするものだということでございます。  委員御高承のとおり、台湾との間の請求権問題につきましては、サンフランシスコ平和条約第四条に規定されます特別取極を締結して処理することが、日中国交正常化の結果できなくなったという事情があるわけでございます。  この前提を付しまして、委員お尋ね韓国との関係でございますけれども、韓国人日本兵の問題は、ただいま御言及のございました一九六五年の、昭和四十年でございますが、日韓請求権経済協力協定によりまして、日韓間の財産請求権問題の一環として両国政府間では解決済みということになっております。
  30. 田口健二

    田口委員 官房長官お尋ねをいたしたいと思うのであります。  今、韓国に関する件については外務省の方から御答弁がありましたが、御存じのように、朝鮮半島は今分断をされた形で二つの国家が存在をする。特に北側の朝鮮民主主義人民共和国については、残念ながら今我が国とは国交が実は開かれてないわけですが、このいわゆる北側におられる同ケースの場合、当然これは今後の課題といいますか問題として残っていくだろう、だから、将来どういうことになるかはっきりわかりませんが、将来については当然この問題についても何らかの措置がされなければならないだろうというふうに思いますが、その辺の御認識はいかがでしょうか。
  31. 小渕恵三

    小渕国務大臣 北朝鮮との間の請求権問題につきましては、今の段階で申し上げられることは、これは将来に残された問題であるという認識政府としては考えております。
  32. 田口健二

    田口委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  33. 竹中修一

  34. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 去年の一〇九国会成立しました台湾住民である戦没者遺族等に対する弔慰金等に関する法律で我が党の態度は既に明らかなように、本案についても賛成の立場であります。また、この給付金支給を受ける台湾住民の元日本兵は、戦前の絶対主義的天皇制のもとにおける植民地政策侵略戦争による被害者だと考えております。したがって、日本政府が補償を行うのは人道的立場から当然であります。我が党の基本的立場を初めに明らかにしておきます。  基本的な点について二、三質問いたします。  初めに、政府は一九七二年の日中共同声明また一九七八年の日中友好条約によって、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であり、台湾が中国の不可分の領土の一部であることを認めました。今後の日中関係においてもこの立場を守るとともに、今の声明及び条約にも明記されております平和五原則を堅持する日中の外交関係を進めることは当然であると思いますけれども、本案の審議に当たりまして、改めて官房長官にこの点の見解を伺っておきます。
  35. 小渕恵三

    小渕国務大臣 隣国中国との間におきまして長期安定的な関係を維持発展させていくことは我が国外交の一貫した主要な柱であり、政府といたしましても、今後とも日中共同声明、日中平和友好条約、日中関係四原則にのっとり、両国友好協力関係の発展を図っていく考え方でございます。
  36. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 平和五原則というのが書いてありますように外交関係の中心でなければならないことを強調しておきます。  次に、今回の二百万円の性格は弔慰金見舞い金ということになっております。台湾住民日本兵は、日本人並みの補償として一人五百万円を請求する裁判を起こしました。また、日本軍人軍属の恩給それから援護法による受給額などから見ましても、今回の二百万円の水準は不十分だと思います。これらと比べてみましても、二百万円の弔慰金という水準が低いということは否定できないのではないでしょうか。
  37. 國廣道彦

    國廣政府委員 台湾側の裁判、原告の補償請求につきましてはもちろん私どもも存じておりますが、本件弔慰金及び見舞い金と申しますのは、御存じのとおり、人道的な立場から我が国の誠意のしるしとして関係遺族支給するものでございます。今回決められました金額につきましてもそのような性格の給付として考えておりまして、種々の点を検討した結果、二百万円が適当なものであるという結論に達した次第でございます。
  38. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、日本人として日本軍に入ったということでありますし、やはり日本人並みの補償をする、これが原点であると考えます。この原点から考えてみると、やはり低いのではないかということであります。  次に、この弔慰金が本人に全額確実に渡るのだろうかという危惧が起きている問題であります。  この問題は前々から指摘されてきた問題ですが、最近の報道を見ましても、現地には債権団などと呼ばれる団体が幾つもあって、遺族たちから補償要求運動の登録料や委託料を徴収したり、補償金の一、二割を報酬として納めるという契約をさせていると言っております。この点について、日本国外という限界はありますけれども、政府は必ず本人に全額渡るようにするためにどのような対策を講じておられるか、お伺いいたします。
  39. 國廣道彦

    國廣政府委員 弔慰金等につきましては、現金請求者本人の希望するときに確実に本人の手に渡るように、日赤から台湾社会奉仕業務とする機関に送金いたしまして、ここを通じて支給することにしております。同機関は、個人に必ず渡るようにという我が方の趣旨は十分理解した上で協力してくださるという態勢でございます。  いかにして支払い受領を確認するかというようなことにつきましては、これから同機関と十分話して決めることでございまして、御指摘の点は遺漏なきようにする方針でございます。
  40. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次は、国際間の公平という問題について伺います。  政府は、台湾住民日本兵の問題を処理していく過程で、この国際間の公平の問題を問題解決の障害の一つとして挙げてまいりました。今回の処理の過程でこの問題をどのように処理したのか、伺いたいと思います。
  41. 國廣道彦

    國廣政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の立法は、そもそも対外請求権の処理ではなくて、あくまでも人道的精神から我が国国内措置として弔慰金等を支払うべく財政措置を講ずるものでございます。  なお、第二次大戦に起因する我が国関係国、地域等の請求処理につきましては、北朝鮮及び台湾を除きまして、サンフランシスコ条約、日韓請求権経済協力協定等によって決着済みでございます。
  42. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、今回の処理で国際間の公平というような問題も処理された、クリアしたという立場法案が出ているというふうに理解をさせていただきます。  いわゆる外国籍を持つ元日本兵の問題というのは、台湾住民以外にも、中国本土、朝鮮、サハリン、南洋諸島などにもあります。今回台湾住民日本兵措置をとったという前例は、国際間の公平という点から見ますと、未処理の外国籍を持つ日本兵の問題にも門戸を開いたということになると思うのですが、そうですね。
  43. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 今の委員の御言及は、北朝鮮のことを指すものであるともし御質問理解いたしますと、この件につきましては、先ほど官房長官の御答弁がございましたように、北朝鮮との間の請求権の処理の問題は将来に残されている問題だという認識でおりまして、本件と同列には論じられない問題ではないかと存じます。
  44. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 国際間の公平ということを今までたびたび言われてまいりましたし、ここで一つの問題が国内法として解決していくということになれば、それはほかの同様な人たちにも及ぶのが当然だろうという質問であるわけです。それから、北朝鮮だけに限定して聞いたわけではございません。  そこで、まとめて言えば、台湾住民日本兵と同様な人々から請求があった場合には、日本政府としてはこれに応じて検討するということが基本的な政府立場でなければならないと思いますが、そうですか。
  45. 國廣道彦

    國廣政府委員 お答え申し上げます。  本件は既に二十年以上の長い経緯がございまして、種々検討してきたものでございますが、日中国交正常化後に谷間に陥ったこの問題をいかに処理するかという、非常に微妙な問題を非常に複雑な環境のもとで処理してきたものでございます。  同様な方々がまだいる場合にどうするかということについての御質問につきましては、本件処理はそういう問題の処理とは切り離して考えたものであるということを御理解いただきたいと思います。それぞれの問題につきましては、それぞれの経緯及びそれを取り巻く環境を考え処理しなければいけない問題だと思っております。
  46. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたが、国際間の公平ということをたびたび言っておられました。だから、この問題が前例になるわけですから、それは当然国際的に同様な問題を解決するためにこれからも政府は検討すべきであるということを主張して、終わります。
  47. 竹中修一

    竹中委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  48. 竹中修一

    竹中委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  特定弔慰金等支給実施に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  49. 竹中修一

    竹中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 竹中修一

    竹中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  51. 竹中修一

    竹中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  52. 竹中修一

    竹中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。内閣提出平和祈念事業特別基金等に関する法律案及び角屋堅次郎君外四名提出、被抑留者等に対する特別給付金支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。順次趣旨説明を求めます。小渕官房長官。     ─────────────  平和祈念事業特別基金等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  53. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま議題となりました平和祈念事業特別基金等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  恩給欠格者問題、戦後強制抑留者問題、在外財産問題などのいわゆる戦後処理問題につきましては、近年、国に対し補償措置等を求める声が強まり、種々の論議が行われてまいりました。このため、昭和五十七年六月に学識経験者による戦後処理問題懇談会を設置し、同懇談会において、これらの戦後処理問題についてどのように考えるべきかについて、二年半にわたり慎重かつ公平な検討が行われました。  その結果、昭和五十九年十二月に内閣官房長官に対し、いわゆる戦後処理問題については、もはやこれ以上国において措置すべきものはないが、関係者の心情には深く心をいたし、今次大戦における国民のとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念する意味において、政府において相当額を出捐し、事業を行うための特別の基金を創設する旨の提言が行われたところであります。  政府としては、同懇談会報告の趣旨に沿って所要の措置を講ずることを基本方針とし、その具体的内容等について種々検討調査を行ってきた結果、平和祈念事業特別基金を設立し、関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うとともに、戦後強制抑留者の問題については、これらの方々が、戦後、酷寒の地で強制労働に従事させられ、大変御苦労をされたという特殊な事情を考慮して、本邦に帰還された方々に対し、個別に慰労の措置を講ずることとしたところであります。  以上の経緯を踏まえて、ここにこの法律案提出することとした次第であります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  まず、第一に、この法律趣旨は、旧軍人軍属であって年金たる恩給等を受ける権利を有しない者、戦後強制抑留者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等関係者の戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う平和祈念事業特別基金を設立するとともに、戦後強制抑留者に対し、慰労品の贈呈等を行うことについて必要な事項規定するものであります。  第二に、平和祈念事業特別基金についてであります。その目的は、今次の大戦におけるとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うことであります。  基金の資本金は、十億円とし、政府がその全額を出資することとしております。なお、昭和六十三年度から五年度を目途として、政府の出資額が二百億円となるまで、基金に追加して出資するものとしております。  また、基金に、その運営に関する重要事項審議する機関として、基金の業務に関し学識経験を有する者十人以内で組織する運営委員会を置くこととしております。  基金の業務は、関係者の労苦に関する資料の収集及び展示、調査研究、出版物その他の記録の作成その他基金の目的を達成するために必要な業務としております。  このほか、財務会計に関する事項等所要の規定を設けております。  第三に、戦後強制抑留者またはその遺族に対する慰労品の贈呈及び慰労金の支給についてであります。  まず、慰労品の贈呈でありますが、戦後強制抑留者またはその遺族総理府令で定める品を贈ることによりこれらの者を慰労するものとし、基金にその慰労の事務を行わせるものとしております。  次に慰労金の支給でありますが、戦後強制抑留者またはその遺族で、日本の国籍を有するものには、慰労金を支給することとしております。ただし、年金恩給等の受給者等には、支給しないこととしております。  慰労金の支給を受けるべき遺族範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とし、その順位はそれぞれこの順序によることとしております。  慰労金の額は、十万円とし、二年以内に償還すべき記名国債をもって交付することとしております。  また、慰労金の支給は、これを受けようとする者の請求に基づいて行うこととしておりますが、この請求期間は、昭和六十八年三月三十一日とし、この期間請求のない場合には、慰労金は支給しないこととしております。  なお、慰労金の支給に関する事務のうち、請求の受理及び審査に関する事務を基金に行わせるものとしております。  このほか、慰労金の支給等に関し所要の規定を設けております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  54. 竹中修一

    竹中委員長 次に、角屋堅次郎君。     ─────────────  被抑留者等に対する特別給付金支給に関する  法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  55. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 ただいま議題となりました被抑留者等に対する特別給付金支給に関する法律案につきまして、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。本法案は第百九回国会提案いたしましたが、審議未了、廃案となりました。今回政府平和祈念事業特別基金等に関する法律案提案されました機会に、一部手直しをして再提案したものであります。  戦後、ソ連軍によりまして、軍人軍属のほか民間人も含め約五十七万五千人もの方々がシベリアを初めソ連領各地及び外蒙地域の収容所に連行収容され、酷寒の地におきまして、炭鉱労働、森林伐採等の強制労働に従事させられたばかりでなく、伝染病その他の病気あるいは作業中の負傷によりまして、被抑留者の約一割にも及ぶ方々が亡くなっておられます。  これらのいわゆるソ連被抑留者及びその御家族に対しましては、戦後、未復員者給与の支払い、留守家族援護等の措置が制度としてとられましたが、これらの措置は必ずしも十分であったとは言いがたく、また行き渡ったものともなっておりません。また、南方地域におきましては、抑留国またはそれにかわって日本政府により被抑留者に対し労働報酬が支払われておりますが、ソ連被抑留者に対しては、ソ連政府はもとより日本政府からも労働報酬は一切支払われた事実はないのであります。  以上の事実にかんがみまして、ソ連被抑留者またはその遺族に対し、国としてその労苦に報いるため、特別な給付金支給すべきであると考え、ここに被抑留者等に対する特別給付金支給に関する法律案提出した次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、特別給付金支給を受けることができる者は、被抑留者、帰国前に死亡した被抑留者の遺族及び帰国後昭和六十三年八月一日前に死亡した被抑留者の遺族でありますが、ここで被抑留者と申しますのは、昭和二十年八月十五日以後ソビエト社会主義共和国連邦等に抑留された軍人軍属等をいうものといたしております。  また、特別給付金支給を受ける遺族範囲は、これら死亡した被抑留者の死亡の当時における配偶者、子及び父母としており、これらの者の順位はそれぞれこの順序によることといたしております。  第二に、特別給付金支給は、これを受けようとする者の請求に基づいて行うこととしておりますが、この請求は、昭和六十七年三月三十一日までにしていただき、この期間請求のない場合には特別給付金支給しないことといたしております。  第三に、特別給付金の額についてでございますが、被抑留者に支給するものにつきましては、その者の帰国の時期の区分に応じ、昭和二十年八月十五日から昭和二十一年十二月三十一日までの者には五十万円、昭和二十二年中の者には六十五万円、昭和二十三年中の者には八十万円、昭和二十四年一月一日以降の者には百万円といたしております。  また、遺族支給する特別給付金につきましては、被抑留者に対する特別給付金の額の七割相当の額といたしております。  第四に、特別給付金は、その支給請求があった日から三年以内に支払うものとしておりますが、請求者が被抑留者であり、かつ、高齢である場合には、できる限り速やかに支払わなければならないことといたしております。  以上のほか、特別給付金支給を受ける権利の認定及び同給付金に対する非課税措置等所要の事項規定いたしております。  以上が本法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  56. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて両案についての趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  57. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐藤信二君。
  58. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 ただいま平和祈念事業特別基金等に関する法律案の御説明がございましたが、これに関してお尋ねをしたいと思います。  まず最初に官房長官お尋ねしたいわけでございますが、さきの大戦における国民各層の被害、犠牲ははかり知れないものがあります。私たちはこうした戦争の悲惨さというものを体験して恒久平和を誓い合い、荒廃した祖国日本の復興と再建に尽くしてまいりました。その努力が実を結んで、今日では世界に冠たる経済発展を遂げ、現在私たちは平和、自由、繁栄を享受しておると思います。言うなれば、新生日本の出発点は終戦にございます。今日の繁栄は先輩方のとうとい犠牲、流した涙で、血で築かれたものと言っても過言ではありません。  しかしながら、戦後四十有余年経た今日、これらのさきの大戦に巻き込まれた方々の犠牲、労苦に対し、私たちは、政治は十二分に報いてきただろうかと問うとき、返す言葉があるでしょうか。私は官房長官に、これらのことをどのように御認識されておるかお聞きしたいと思います。
  59. 小渕恵三

    小渕国務大臣 戦後既に四十三年を経ようとしておりますが、過ぐる大戦におきまして我が国民の受けた傷跡は必ずしもすべていえ尽くしたものでないという現状であろうかと思います。この戦争におきまして犠牲となられた方々の無念や、また遺族の心情を思いますと、今委員指摘のように、改めて今日のこの平和国家日本の姿を思い、そうした戦争において犠牲となられた方々のことを思い起こさなければならないかというふうに考えております。私どももこうした犠牲者のとうとい無言の教えを秘めながら、それぞれ日本人がより一層平和国家を目指していかなければならないというふうに考えております。  佐藤委員もそういう意味で、この法律案につきましては総理府の副長官とされて政府立場でも戦後のいろいろな処理問題にかかわりを持ってこられましたし、私ども政府立場にありまして、長い間いろいろな方々がいろいろな御要請をもって、戦時におけるいろいろな犠牲に対して国としてどうおこたえすべきかという要請のありましたことも承知をいたしておりますが、今般、そうしたことをいろいろ勘案いたしましてこれを総合的に判断をし、そして懇談会の議を経まして、平和祈念事業の特別基金という形で戦後処理問題につきまして結論を得たい、こう考え法律提案した次第でございますので、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  60. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 ただいま大変懇切丁寧な御答弁ありがとうございます。今の官房長官のお気持ちが、これすなわち竹下総理のお気持ちだろうと拝察いたします。そうした背景のもとに、平和というものがいかに大事かということでこの法案提出されたものと高く評価いたします。  官房長官、後は事務的なことですから結構でございます。  そこで、政府委員にお聞きいたしますが、さきの大戦で犠牲になられた方々に対して国の処遇、処置はどうなっておりますか。特に命をなくされた方を中心としてお聞きしたいと思います。
  61. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  さきの大戦で亡くなられた方が恩給公務員である場合には、その遺族に対しまして恩給法の扶助料等が支給され、また恩給法が適用されない軍人軍属、準軍属の方にありましては、その遺族に対しまして援護法遺族年金また遺族給与金等支給されてございます。さらにそのほか、予算措置により措置されているものがございます。
  62. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 今私の質問がちょっと悪かったかもしれませんが、ただいまの御答弁というのは、軍人軍属、準軍属、いわゆる戦闘員で亡くなられた方々対象としてお答えになったと思いますし、また処遇も、物質的な面を言われたと思います。私は、非戦闘員で亡くなられた方々、また、物質面というより精神的な面、すなわち慰霊ということについて政府の所見をただしたいと思うのです。  そこで、まず最初にお聞きしたいのは、社団法人日本戦災遺族会という組織があることを御存じでしょうか。御存じならば、この会の設立の経緯と目的についてお聞かせ願いたいと思います。
  63. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  一般戦災死没者の遺族は、昭和五十年四月、全国戦災犠牲者遺族会連絡協議会を結成いたしまして、戦災各都市における慰霊行事に対する国費の支出及び弔慰金支給国会を初め関係方面に強く要望してまいりました。その後、昭和五十二年六月に同協議会を改組いたしまして、社団法人日本戦災遺族会を設立、今日に至っております。  その目的といたしますところは、戦災死没者及び遺族に関する調査研究を行い、あわせて慰霊行事を助成し、慰霊碑等の維持管理を行う、さように相なっております。
  64. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 今おっしゃるとおりに、私の持っております日本戦災遺族会の定款では、調査研究と慰霊行事ということを主目的にしているのです。個々補償ということを言っていないのです。私はなぜ個々補償を言わないのだろうかということを疑問に思うのですが、その点を実はただしたいのです。  その前にお聞きしたいのは、これは今申したように、内地において空襲によって被害を受けた、こういうことが前提になるわけですが、空襲を受けた地域で罹災都市という表現と戦災都市という表現があるのですが、これは一体どういうふうに違うのでしょうか。同時に、罹災都市の中で戦災都市の指定を受けた都市と受けていない都市があるのですが、この理由は一体何でしょうか。また最後に、罹災都市の数はどれぐらいになっておりますか。
  65. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  先生ただいまお示しの罹災都市は、空襲により被害を受けた都市ということになってございます。そのうち特に被害の甚大であった都市が戦災都市として指定され、戦災復興都市計画事業が行われたというふうに聞いております。  また、戦災都市の指定は特別都市計画法によりまして主務大臣が行うこととされ、罹災都市二百十五のうち特に被害の甚大でありました都市について、昭和二十一年十月九日内閣告示第三十号をもちまして百十五の都市を指定したというふうに聞いております。
  66. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 今お話しになったのは、罹災都市というか、いわゆる空襲を受けて被害を受けた都市が全国で二百十五あるんだ、その中で被害が甚大だったものが戦災都市という指定を受けたんだ、それが百十五というお答えがありましたね。  そこでお聞きいたしますが、空襲、いわゆる焼夷弾とか爆弾、機銃掃射または艦砲射撃等による死者数は一体どれぐらいに上がっているか、こういう質問をしたいのです。  実は私が調べたところによると、昭和二十四年の経済安定本部の「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」というのがありますが、これには広島、長崎を含めて二十九万九千四百八十五名、また、昭和三十一年竣立の太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔というのがございますが、それには五十万九千七百三十四名と刻まれているのです。またさらに、昭和三十四年、建設省計画局編で「戦災復興誌第一巻」というのがございますが、これには三十三万六千七百三十八名。この三つの数字はいずれも政府機関が出したものなんです。ただ、出したところがそれぞれ違うということで数字が違っていると思うのです。  特に私が指摘したいのは、戦後の混乱期からいって最初の二十四年の経済安定本部の報告では二十九万九千余、それから七年たった三十一年に慰霊塔が建つ、そのときに五十万九千に膨れたということは、調査をしたのでしょう、わかる気がするのですが、その三年後の三十四年の建設省の「戦災復興誌」というのでは三十三万六千七百三十八名、二十四年の時点に下がっているわけなんですね。私はここの理由がよくわからないのです。確かに亡くなった方の確認というのは大変難しいことはよくわかります。  ついでに申し上げますが、戦災というか空爆死の方が一体どういうふうに戸籍上扱われているかというと、御案内のごとく戸籍法は法務省の民事局第二課が所掌していますが、これを実は市町村長が機関委任されているのです。ですから、戸籍の原本は市町村の役場にあって、そしてその副本、コピーが地方法務局に保管されている、こういうふうになっているわけなんです。そういうことで、片一方の役場の帳簿がなくなっても法務局が残っているということになるとチェックができるのですが、空襲によって両方とも焼かれたというところがあるのです。一つの例で言うと、東京の今の江東区、昔の本所だとか深川では両方燃えているのです。そうなると、家族が届けなければ戸籍が抹消できないわけですが、家族までみんな死んでいる場合にはどうしようもない。これは非常に難しいということは承知でお聞きするのですが、やはり私ども人間としてこの世に生をうけて、生まれた時点はわかるが死んだことがわからない、人間としてこんな悲惨な悲しいことがあるだろうか、こういう思いがしてお聞きするのです。  そこで私は、三つの数字でどれが一番正しい、近いというふうなお答えがあっていいのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  67. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘の三つの資料のどの数字が正しいのか、また統一した数字を出すべきではないかというお尋ねでございますが、昭和二十四年、経済安定本部が刊行いたしました「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」によりますと、お示しのとおり、二十九万九千四百八十五名でございまして、これは今次の戦争によりまして日本国内において生じた空襲、艦砲射撃その他による銃後一般国民の亡くなられた方を昭和二十三年五月に経済安定本部が各都道府県に調査を依頼して調べたものというふうにお聞きしております。  また、昭和三十一年、姫路市に建立されました太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔の側柱には五十万九千七百三十四名の数が刻まれておりますが、この死没者数は、太平洋戦全国戦災都市空爆犠牲者慰霊協会が、その慰霊塔の建立に際しまして全国百十三の都市から提出を受けたものであると聞いております。  さらに、昭和三十四年、財団法人都市計画協会発行の建設省編「戦災復興誌第一巻」によりますと三十三万六千七百三十八名となっておりまして、これは終戦後、内務省の国土局計画課におきまして照会調査したものをもとにいたしまして、その後、戦災復興院の資料等に基づきまして建設省が調査し、掲載したものである、さようにお聞きいたしております。  ただいま先生冒頭にお示しのとおり、今次の大戦の際の死者の数を確認をするというのは非常に難しいことでございまして、これらの調査はそれぞれ調査主体や時点等が異なっておりまして、どれが正当かとは申しがたいところでございます。いずれにいたしましても、あの惨禍において死者の確認は極めて困難であったこと、また、戦後四十有余年を経た現在、正確な数字を出すということは甚だ困難であろうと存ずる次第であります。
  68. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 三つの数字の中で一番多い五十一万に近い数字が正確に近いんだと思います。しかし、これも今お聞きしたら百十三の戦災都市の合計と言われました。先ほど私が確認したように、罹災都市が全国で二百十五あって、そしてその中で被害が大きかった、甚大だった戦災都市、これが百十五なんです。今の数字は百十三。そうなると、少なくとも被害の大きかった都市が二つ抜けているということになると思うのです。どこが抜けているか、どうだとは申しませんけれども、少なくとも最低五十万九千七百三十四名、これ以上だったというふうに推測をいたします。  私は、やはり今言われるように、また私が申したように、死亡者の確認というのは大変な難しい仕事だと思うのです。根気が要る調査だと思います。しかし、毎年行われている広島、長崎、この原爆被害者の追悼式典がございますが、あの式典では毎年新たに調査の結果判明した死没者の氏名がおさめられている。こうした実情を踏まえるとき、さらに今後も政府といたしましてあらゆる機関を動員して粘り強く調査をやっていただきたい、かように思います。  しかし、今お聞きした数字、三十三万にしろ五十万九千という数にしても、これは空襲等による犠牲者ということで一括してございます。この中には軍人軍属、準軍属、さらには国家総動員法に基づく徴用または協力者、例えば学徒動員の方とか徴用工、警防団員または警察官等も含まれているだろうと思うのです。同時に、一般家庭の婦女子も含まれているだろうと思うのです。しかも、戦時下という異常事態においては、これら内地にいらっしゃった婦女子といえども、当時の一億火の玉、銃後の守りは皆さん方がするんだ、こうした政府の方針に協力して、そして一たび被爆を受けたときは消火ということに全力を尽くしました。そしてその結果、文字どおり火の玉となって亡くなったのは弱い老人だとか婦人、子供たちじゃなかったでしょうか。先刻言われた約五十一万の数字の大多数は、これらいわゆる非戦闘員であっただろうと私は思うのです。  しかしながら、内地において今申したように同じ空襲ということで、爆弾なり焼夷弾なりまた機銃なり同じ原因によって亡くなった方でも、今申したいわゆる戦闘員という方と非戦闘員という方ではその後の処遇面では大きな隔たりがあるだろうと思うのです。私が先ほど申したように、なかなか実数がつかめない、だから公平にこの人たちを補償する、また救済することができないとおっしゃること、よくわかります。いわゆる物質面の個々補償というもの、これをやはり言うことは難しいと思いますが、しかし精神的な面というか、すなわち慰霊ということでは、戦地で亡くなった方でも内地で亡くなった方でも、戦闘員も非戦闘員も同じに扱っていいんじゃないだろうか、私はこう思うのです。不公平があってはいけない、平等に公平にという考え方を持っておりますが、政府のお考え方はいかがでございますか。
  69. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、全くそのとおりだと存じます。
  70. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 そこで、まず具体的にお聞きすることがあるのですが、この空襲によって亡くなった方、これは実は祈念というかお祈りする、お祭りする、慰めるというのでいろいろな慰霊の施設が全国にあるし、また行事もあるのですが、このときにこれらの犠牲者に対する呼び方というのがまちまちなんですね。一番大きかったと言ったら語弊がありますが、東京なんかの場合にはこれを一体何と言っているかといったら、都市戦災殉難者という言葉を使っているのです。しかもこれを実は関東大震災と一緒に慰霊しているのです。亡くなって仏様になったのですから、いつの時点でも同じかもしれません。こうした殉難者はほかにも、実は室蘭でも殉難者、宇都宮でも延岡でも殉難者という言葉を使っている。そしてまた姫路、これは政府がその後関与されて総理府の関係者に行ってもらったりしておりますが、ここではやはり慰霊施設の名前が「太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔」となっていて、行事名は「太平洋戦争空爆犠牲者追悼平和祈念式」となっています。そのほか、例は挙げませんが、戦災死没者と呼んでいるところもあり、戦災犠牲者もあると思うのです。  特に私がお聞きしたいのは、殉難者という言葉を使っておりますが、これは私なりに岩波書店の広辞苑を引いてみましたら、「殉難」という言葉は「国家・社会・宗教などの危難のために身を犠牲にすること。」こうあるんですね。殉難と意味は違うが、受難という言葉もあります。私は強いて言えば、こうした空爆によって亡くなった方は受難という見方もできるのじゃないだろうか、難儀を受けたのですから。片一方は難に殉じたのですが、こちらは難を受けたんだ、こんな気がするのです。  そこで、政府として、これらの犠牲者に対して、統一した呼び方と言ったらおかしいのでございますが、何かこの呼び方をまとめられるお考え方があるか、また、今後私たちは何とお呼びすればいいか、この点お答え願いたいと思います。
  71. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  お示しの殉難者なのかどうかということにつきまして、殉難という言葉は、ただいま先生お示しのとおり、辞書にありますように、国難等のため身を犠牲にする、さような意味でとらえますならば、まさしく一般戦災死没者も殉難者であろうと存ずる次第であります。また、難に遭って亡くなられたというとらえ方で申しますならば、これまたまさしく受難者であると考える次第であります。いずれにいたしましても、一般戦災死没者ということではないかと考えます。
  72. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 そうすると、今おっしゃるように、政府としてはこの方々を一般戦災死没者というふうに統一するということだと思います。ありがとうございました。  そこで、この犠牲者に対する慰霊ということで各地でまちまちにやっておりますが、この空爆死の犠牲者の家族の中には、靖国神社にお祭りしてもらいたい、こんな方もいらっしゃるのです。確かに、靖国神社という神社は戦死した軍人ばかり祭っているわけではございません。一般にはそう思われていますが、二百四十六万柱の中には五万七千余柱の女性の御祭神もお祭りしてある。対馬丸で沖縄から鹿児島への疎開中、潜水艦に撃沈された小学校女子児童の方も含まれている。樺太の真岡で最後の通信をした女子電話交換手の方も含まれている。ですから、私は国の犠牲になったこうした方々が祭られてもいいと思います。ただ、このことは今の法律からいうと政教分離という原則がございます。ですから、このことを政府お尋ねし、またお願いすることは遠慮をいたします。  そこでお願いしたいのは、政府として、こうした戦争犠牲者というものを、八月十五日に日本武道館でもって追悼式を行っております。全国戦没者追悼式でございますが、この中において今言われた一般戦災死没者をどのように扱われているか、この点をお聞きしたいと思うのです。厚生省、お見えになっていますね。
  73. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答え申し上げます。  全国戦没者追悼式におきましては、内地において亡くなった一般戦災死没者につきましても対象としております。
  74. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 私、実は議員になってから、毎年八月十五日にはお参りというか参加して行っているからわかっているのであります。その中で、実はお願いして少しずつ改善はされておりますが、御存じのように献花をいたしますね。  その前にまず言いたいことは、全国からいろいろな方が集まっている。いわゆる遺族会代表というか、戦死者の方は遺族席というのがちゃんとあります。それで、戦災遺族者、先ほど申したように日本戦災遺族会の関係者方々というのは一階には席がないのです。二階の方に来賓席としている。来賓じゃないと思うのです、遺族なんですから。だから、どうしてそこでもって一緒に扱っていないのだろうか。  また、今申したように献花という場合に、来賓者として内閣総理大臣、衆参の議長さん、最高裁判所、厚生大臣、そして各政党の代表者、そしてまた各界代表ということで日本商工会議所会頭だとか日本学術会議会長、ずっとあるのですね、労働組合代表、そして日本遺族会会長という方が献花されて、そして各都道府県の代表に移るのです。六人ずつ前に出て献花される。あの中に一般戦災死没者の遺族も入っているというふうにお聞きしているのですが、そのことは本当でしょうか、今私が言ったことは間違っているでしょうか、その点を確認したいと思います。
  75. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答え申し上げます。  今おっしゃったように、一般戦災死没者の代表の方も献花に参加していただいております。
  76. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 そこで、含まれているとおっしゃるのですが、参列してみて、どうもそこがはっきりしないのです。私が今申したように、空爆死の方が含まれているという、その中には戦闘員と非戦闘員が混在しているわけです。遺族の気持ちから見れば、式典の趣旨が平和を祈念するのですからみんなもちろん平和を祈っていることは間違いありませんが、特に非戦闘員を亡くされた方々の平和を思う気持ちはひとしおのものがあると思うのです。  そこで私は、従来の式典実施要綱というもの、この中で一般戦災死没者を特筆して、そしてはっきりとしていただきたい、こう思うのです。政府として再検討されるお考え方があるだろうか。また、あれば一体どのようなお考え方を持っているか、お聞かせ願いたいと思います。
  77. 新飯田昇

    ○新飯田説明員 お答え申し上げます。  御趣旨を十分に踏まえまして、総理府との協議のほか、関係者とも相談しながら、献花を行う遺族代表者の増員などを検討してまいりたいと思います。
  78. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 その点、ひとつよろしくお願いいたします。  そこで本論に入りますが、平和祈念事業特別基金等に関する法律案、この提出趣旨は先ほど官房長官から御説明がありました。そして今、私自身がいろいろお聞きした中において、多分お聞きになっている皆様方も、自分たち、私たちは、戦争犠牲の中において大事なものというか、どうも無関心だったなというお気持ちの方もいられるだろうと私は思うのです。私が申し上げたいのは、この出された法案、この中において私が申したようなことがどのように反映しているだろうか。また事実、今私がお聞きして皆様方がお感じになったように、一般戦災死没者の処遇、慰霊が不十分だったとお思いだろうと思うのです。ですから私は、今度の法案でどこに一体こうした人たちの慰藉、慰霊というものが触れてあるだろうかと実は一生懸命読ませてもらったのです。  この法案の第三条「目的」というところに、「平和祈念事業特別基金は、今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉(しゃ)の念を示す事業を行うことを目的とする。」とあります。この文言を読み、そしてまた二十七条というところに「業務」の規定がございます。その中に、「基金は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。」「一 関係者の労苦に関する資料を収集し、保管し、及び展示すること。」「二 関係者の労苦に関する調査研究を行うこと。」「三 関係者の労苦に関し、出版物その他の記録を作成し、及び頒布し、並びに講演会」云々とあるわけです。だからこの第三条と二十七条からいうと、当然一般戦災死没者の方も、この平和祈念事業特別基金というものを創立させて運営委員会ができて十人の委員さん、そのときに入るのだろう、私は実はこういうふうに思うのです。いかがですか。
  79. 平野治生

    ○平野政府委員 ただいま御審議をいただいております平和祈念事業特別基金等に関する法律案、この法律案に基づいて設立をお願いいたしております特別基金、ただいま先生のおっしゃったとおりでございます。この基金ができる経緯につきましては、先ほど官房長官からもお話がございましたとおりに、五十九年十二月に出された戦後処理懇の報告に沿っていろいろなことを検討調査した結果つくることになったわけでございますが、その過程においてやはりそういうことを随分議論されたというふうに私どもも承知をいたしております。  いわゆる戦後処理問題というのは、これも既に先生御承知のとおりでございますけれども、いわゆる恩給欠格者の問題あるいは戦後強制抑留者と申しますか、いわゆるシベリア抑留者の問題、さらには引揚者と申しますか在外財産の問題、こういう問題を中心とした基金をつくろうということでございますが、ただいま先生もおっしゃいましたとおりに、この基金の目的あるいはその業務、例えば労苦に関する資料の収集とかあるいは記録の出版、そういう観点、あるいは目的にも出ております今次大戦における戦争犠牲による云々、こういうような規定から見れば、先生の御指摘のいわゆる一般戦災死没者、こういうことにつきましても私どもは十分考えていかなければいけない問題ではないか、このように考えておるところでございます。
  80. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 私が言いたいのは、今言われたように戦後処理問題懇談会報告に基づいてこの法案ができた。冒頭述べたように、戦争犠牲者といったら物すごく範囲があるのです。私は、どれをやってどれをやらなくていいと言っているのじゃないのです。その中において、もちろんシベリアでもって御苦労された方々、そして団体としては、慰藉の気持ちというものを何らかの格好であらわしてくれ、こういう要求をされているのです。それで、今度の法律には形でもってあらわそうとしている。また、恩給欠格者の方々、これも戦争犠牲者としてどうも理解しにくいような不平等を生じていると思うのです。ですから、この人たちに対しても当然我々は報いなければいけない。しかし、その報い方というものは、今の団体の要求は形というか物質面を言っているのです。  ところが、私が申し上げたいのは、一億総犠牲者という中において、どうも戦後四十有余年何か忘れられている。確かに戦争のあの空襲の悲惨さというのを知っているのは、若い人でも四十三年前に小学生くらいでなければわかりません。私がなぜこれだけ言うかというと、私自身、昭和二十年五月二十五日、東京の今の新宿区で空襲に遭った。まさに九死に一生を得た、こんな気持ちなんです。そのときちょっと運が悪ければ直撃弾、一分間逃げおくれていたら黒焦げになって死体もわからなかっただろう、こう実は思うのです。それでこの問題を申し上げているのです。  そういうことで、戦災遺族の方たちに聞いてみると、今さら実態もつかめないし、みんな数もわからないのですから補償というようなことは言えないのだ。先ほど申した日本戦災遺族会、この会の目的でも慰霊ということを中心に言っているのだ。ですから、慰藉の方法でも物質的な面でもって慰藉してくれというのもあるし精神的なものもあるのだ。  そうして、しかもこうした一般戦災死没者というものを私たちは永遠に忘れてはいけないのだ。それで、今申し上げた目的、事業の中にあるじゃないか、資料を収集する。資料収集の中には、先ほど申したように長崎とか広島のように死没者の氏名が判明するかもわからない、そしてまた悲惨な記録というものを残してもらいたい、このことが大事だと思って申し上げて、今またそのような御答弁をいただいたのです。  そこで、最後にお聞きして私の質問を終わりますが、そういうことになると第一条の「この法律は、」云々という中で、今申されたようにシベリアの抑留者、恩欠の方、引揚者等「(以下「関係者」という。)」とありますが、この関係者の中に一般戦災死没者が入っている、こういうことが言えますね、それだけお聞きして終わりたいと思います。
  81. 平野治生

    ○平野政府委員 先生からるるお話がございましたとおりに、確かにこの基金は今次大戦における戦争犠牲ということに対する慰藉の念を示す事業を行うということでございます。そういう意味におきまして、この「等」の中に一般戦災死没者も広い意味では含まれるものというふうに考えられると思っております。
  82. 佐藤信二

    佐藤(信)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  83. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 次回は、来る二十六日火曜日午前十時十分理事会、午前十時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十七分散会