○村井
委員 同僚議員から大所高所からの
日本外交の大
方針につきましていろいろ御質疑がございましたが、私はいささか趣を異にいたしまして、本日議題となっております在勤法そのものに即しました質問を
中心にお伺いをさせていただきたいと思います。
国際化の進展につれまして、外国に旅行いたします
日本人の数も飛躍的に増加してまいっておりまして、また、世界各地に滞在する在留法人の数も非常に大幅に増加しておる、一方、これら在留邦人や旅行者がその安全を脅かされる、こういう事例が非常に急速に増大しておるわけでございます。これは、外国にいる邦人の数が増大したというだけのことではございませんで、同時に
日本の国際的な地位が向上して、
日本人、
日本企業も豊かになり、国際的に見ても目立つ存在になってきた、これが大きく
関係していると思うわけでございます。
私、ここで目立つという言葉を使いましたが、これは
日本がよく言われますアロガントだとか、あるいは現地に貢献してないだとか、あるいは
日本の利益だけ
考えているとか、そんな問題だけではございません。そういう、よく言われる在外
日本企業や
日本人に対する批判を私ここで繰り返そうというわけではございません。例えば、農業
技術であれ通信
技術であれ、現地に役に立つ援助をしようということで働いている人たちが、御自分ではここでよいことをしているのだと思っていても、それが現地の人々の生活のシステムというものを何らかの意味で変化させる、そしてそれによって現地のある階層の人たちの恨みを買うということもなきにしもあらず。それから、単に金を持っているからというだけのことで襲われるというようなことも当然にあるわけでございます。
先進諸国が長いこと対発展途上国援助やいろいろなことを
努力してまいったわけでございますけれ
ども、世界の治安情勢というのは必ずしも好転していない、否、どちらかというと悪化しているというふうに私は感じているわけでございます。強盗だとか海賊行為だとか、いろいろ規模が大きくなっているような話もこのごろ聞くわけでございまして、例えば、西アフリカで強盗なんといいましても、昔は二人、三人で武装してあらわれた、これがこのごろは二十人、三十人で徒党を組んであらわれる、それは大変な規模になっておる。あるいは海賊、これは昔も出たわけでございますが、このごろは高速艇で商売をやる、こういうようなこともあるようでございまして、
日本人もあるいは
日本企業もこういう危険にさらされる、こういう場合が多くなっているようでございます。
一昨年発生しました三井物産の若王子とおっしゃいましたか、マニラ支店長の誘拐事件、これが解決しましてもう一年余りになるわけでございます。また、ちょっと内容は違うわけでございますけれ
ども、安全なはずだと
考えて選びました旅行手段が裏目に出まして、最近の上海の近郊における列車事故でございますけれ
ども、ああいう痛ましい犠牲を生じた。これはいずれも
日本の常識というものがおよそ世界では通用しない、海外におけるいわゆる安全問題というものにつきまして国民の関心が非常に高まった、こういうことが言えるのじゃないかと思うわけでございます。
そもそも
日本人は外国に対しましてある種のあこがれのような感情を持っておりまして、さらにとりわけて、戦後長きにわたりまして、外国ではこのようにいろいろ行き届いておる、生活もよい、それに引きかえ
日本ではということで、外国出羽守、
日本のこととなりますと憮然としてみせる、これは豊前守でございますが、外国出羽守と
日本豊前守、我々よく冗談にこう言うわけでございますけれ
ども、これは
一つのパターンでございまして、しょっちゅうやってきた。
その結果、やれ物価が高い、最近でしたら、土地がどうだ、住みにくい。住みにくいというのは、
日本はずっと住みにくいということになっておるわけでございまして、それでこうやって出羽守、豊前守で
日本のいろいろな批判をする、これは
一つの常識になっている。これは強い批判をすることが流行になってきた、こう言えるのじゃないかと思うわけでございますが、幸いに、国民のたゆまぬ
努力と、私はこの点も非常に強調したいところでございますが、政策の長きにわたる安定、それに幸運もございましたでしょう。こういうものが相まって、今や
日本は世界で最も豊かで安全で、平和で自由な国になった、私はこう思うわけでございます。
そのことに気がついていないのは当の
日本人だけでございまして、外国へ出かけまして
日本と同様の態度で行動する傾向が間々あるわけでございます。特に、水と空気と安全というのはただだと思い込んでいるとはこのごろよく言われることで、こういうことを指摘されることは大変幸いなことでございます。しかし、女性が夜一人で町を歩けるなどということは、
日本を除いて世界にまれだというこのこと、それから、地下鉄とかああいう大都市の公共交通機関が犯罪の温床である都市などというのは、世界で枚挙にいとまがないわけでございまして、旅行をしていてどこの写真を撮ろうがとがめられない、こんな国もまれでございます。
外務大臣が発行される旅券には、「
日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、
関係の諸官に要請する。」こういう文言がございます。
外務省の最も大切な仕事の
一つが在留邦人あるいは旅行者の保護を図ることであろうと私は思うわけでございますが、海外安全問題に関する
現状についての
大臣の御認識、これを冒頭
承知したいと存じます。