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1988-04-14 第112回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十四日(木曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    江藤 隆美君       河野 洋平君    中山 成彬君       村井  仁君    谷津 義男君       五十嵐広三君    上原 康助君       角屋堅次郎君    広瀬 秀吉君       鈴切 康雄君    川端 達夫君       浦井  洋君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     國枝 英郎君         防衛庁防衛局運         用課長     大森 敬治君         法務省刑事局刑         事課長     石川 達紘君         大蔵省主計局主         計官      永田 俊一君         厚生省援護局業         務第一課長   村瀬 松雄君         水産庁海洋漁業         部長      海野 研一君         運輸省運輸政策         局技術安全課長 山本  孝君         海上保安庁警備         救難部長    赤澤 壽男君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      児玉  毅君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   渡辺 晃一君         内閣委員会調査         室長      大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   井上 和久君     伏木 和雄君 同日  辞任         補欠選任   伏木 和雄君     井上 和久君 同月四日  辞任         補欠選任   井上 和久君     大久保直彦君   柴田 睦夫君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     井上 和久君   金子 満広君     柴田 睦夫君 同月十三日  辞任         補欠選任   井上 和久君     渡部 一郎君   浦井  洋君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     井上 和久君   中島 武敏君     浦井  洋君 同月十四日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     中山 成彬君   大出  俊君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   中山 成彬君     宮里 松正君   上原 康助君     大出  俊君     ───────────── 四月六日  日米共同訓練中止に関する請願村山富市紹介)(第一二三五号)  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖紹介)(第一二五二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月十三日  国家秘密法制定反対に関する陳情書外二件(第一号)  スパイ防止法制定促進に関する陳情書外四件(第二号)  靖国神社国営化反対に関する陳情書(第三号)  週休二日制の導入に関する陳情書外六件(第四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。宇野外務大臣。     ─────────────  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  この法律案は、在外公館に勤務する外務公務員子女教育手当について加算される限度を改めるものであります。現行制度のもとでは、在外職員年少子女一名につき月額一万八千円の定額支給を受けるほか、一定の範囲の教育費につき三万六千円を限度として加算が認められております。  今回の改正は、最近現地における授業料等が高騰し、右加算を受けてもなお多額の教育費負担を余儀なくされている在外職員がふえつつあることにかんがみ、右負担の軽減を図るため、その加算限度額を三万六千円から四万五千円に引き上げようとするものであります。以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  4. 宮下創平

    宮下委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 宮下創平

    宮下委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 本案審査のため、本日、参考人として日本赤十字社外事部長渡辺晃一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 宮下創平

    宮下委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  7. 宮下創平

    宮下委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐広三君。
  8. 五十嵐広三

    五十嵐委員 従前も本委員会等でも幾たびか議論がなされておるのでありますが、いわゆるサハリン残留韓国朝鮮人問題につきましてこの機会に御見解をお伺いをしたい、こういうぐあいに思います。  いわゆるサハリン残留韓国朝鮮人問題というのは、かいつまんで申し上げておきますと、戦前、我が国植民地としての朝鮮から約二百万人ぐらいの若い朝鮮人が強制的に連行されながら、そのうち約六万人が樺太炭鉱軍事施設等強制労働に従事したわけであります。敗戦直前、約二万人の朝鮮人が北海道などの炭鉱に移動されましたが、戦後、ソ連占領下サハリンには約三十万人の日本人とそれから約四万三千人と言われる朝鮮人が残ることになった。  このうち日本人は、一九四六年十二月に成立したソ連地区引揚に関する米ソ協定というのがあって、これによって二十九万二千五百九十人が引き揚げました。続いて、一九五六年十月十九日の日ソ共同宣言によって、日本人妻とその同伴者である韓国人あるいはその子供たちなど合計二千三百七人が引き揚げたわけであります。  こうして約四万三千人の朝鮮韓国人は、日本人が三十万人全部引き揚げたにかかわらず朝鮮韓国人だけが残るという結果になってしまった。彼らの大半は慶尚南道、慶尚北道、全羅南道、全羅北道などでありまして、今なお妻子や親との離別を強いられたままになっているわけであります。当時若い方々とはいえ、あれから四十数年でありますからもうすっかり老齢になってしまいまして、年々死亡者の通知なんかもふえてきているという状況になっているわけであります。  私もかつて旭川市長を務めたときに、サハリンのユジノ・サハリンスクとの姉妹都市提携なんかいたしたものですから何遍か昔からサハリンを訪れる機会がありまして、彼らの暮らしぶりだとかそういうものもよく承知をしているつもりなんでありますが、割合生活そのものは安定をしている、あるいは社会的な地位なんかも決して差別がなくて、それぞれの立場で御活躍になっておられるわけであります。しかし、何といったって、暮らし割合に安定しているとはいえ、離れた肉親と会いたい、一遍故郷を見たい、こういう望郷の念が大変切実になるということは言うまでもないことであろうと思うのであります。  最近のそういう実態を、この前北海道新聞社が二人ばかり記者を現地に派遣して、驚くほど明細にそれぞれの方々と直接会ってその実態を報道され、私も非常に感銘しながらその記事を読ませていただいたわけであります。その記事一つ一つは、いずれも今言うような残留する結果になった韓国朝鮮人の皆さんの非常に悲痛な心境を伝えてきているわけであります。  しかも、驚きましたのは、実は北海道新聞に約四十回くらいにわたって連載するようでありますが、今月の一日から始まっているのでありますが、それとほぼ同時並行して、その記事をそのまま韓国の東亜日報が、これは韓国における夕刊紙としては一番大きいところで、百九十万部くらいの発行があるようでありますが、これは道新との契約によってやっているわけなんでありましょうが、一面に大変大きくこれが連載をされている。今大臣のお手元に差し上げましたのはそれなんですが、こういうようなことが出ているわけであります。しかも、これが出ますと韓国内で大変な反響を呼んだ。新聞社であるとかあるいは中ソ離散家族会本部等にひっきりなしにそういう問い合わせが来ておりまして、大きな反響を呼び起こしているわけであります。  こういう状況なんかを見ましても、四十数年あれからたっているのでありますが、そして割合我が国ではこのことは国民は全体的にはそう知っているとは言いがたいのでありますが、しかし韓国のこれらの反響というものを見ると、その戦後の傷跡というものは今なお実は生々しく生きているという現実というものを我々は知るような思いがするわけなんであります。  どう考えてみても、三十万人の日本人はそっくり引き揚げたけれども、四万三千人、それも生木を裂くようにして朝鮮半島から当時連れていって、二年くらいの契約であったようなんでありますが、二年たつともう二年とか一年とかいうことで残されて、結局は今日まで帰れない実情というものは、これは信じられないくらいのことであって、こんなことがいつまでも放置されているという実態は私どもやはり許せないことであろうと思うのであります。  私ども有志国会議員で、超党派なんでありますが約百七十人くらい、去年の七月にサハリン残留韓国朝鮮人問題議員懇談会というものを結成いたしまして、原文兵衛参議院議員会長にいたしまして、私、事務局長を引き受けて、全力を挙げてこの問題に取り組み始めているのも、こういう日本の歴史的な責任というものを我々はやはりしっかり自覚して、少しでもお役に立ちたいという意味努力させていただいているわけであります。  そういう意味で、きょうはぜひひとつ政府見解を改めてよくお伺いをしたいというふうに思いますので、許された時間それぞれの立場からの誠意ある御見解をいただきたいというふうに思っているところであります。  歴代の外務大臣やあるいは関係大臣も、それぞれ誠意のあるこの問題に対する見解国会で御披瀝になっておられる。例えば、一九七六年一月の参議院決算委員会において稻葉法務大臣は、「日本国原状回復の形で復帰させることは、道義上の責任として残っている」、こういう発言をなされておりますし、あるいは一九七六年十月、当時小坂善太郎外務大臣参議院外務委員会で、サハリン残留朝鮮人は、終戦前には日本国籍を持っていたのであるし、戦後の日本人引き揚げの際には、本人の意思にかかわらず残留を余儀なくされ現在に至っている経緯があるので、人道上、道義上の視点から誠意を尽くして帰還問題に取り組みたい、こうも述べておられるのであります。特に注目すべきは、一九七八年三月の園田外務大臣でありますが、衆議院の本内閣委員会で、「人道的、さらに法律的以上の道義的責任政治責任があって、こういう方々の過去の経緯からしても、政府はあらゆる努力をして、こういう方々の御希望に沿うようにしなければならぬと考えております。」このようなそれぞれお答えをいただいているのであります。  そこで宇野外務大臣、もちろんこれら諸先輩の見解というものから後退するようなことはあろうとも思いませんが、どうか日本国外務大臣としてのこのサハリン残留韓国朝鮮人問題に対する基本的な認識というものを改めてお話しをいただきたい、こういうぐあいに思います。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今、五十嵐委員から在サハリン朝鮮人問題に関して御所見が述べられました。私は、昨年の夏に原文兵衛さんを会長とし五十嵐さんを事務局長といたしました議員懇談会我が国国会においても誕生した、しかもその後いろいろと活発な運動を展開していただいておる、このことに関しまして、まず敬意と謝意を表しておきたいと思う次第でございます。  今お述べになられましたとおりに、日本韓国の間におきましては、たとえそれが明治時代でございましても、不幸な関係が三十六年間続きました。これに対しましては戦後に私たちは新しい条約を定めまして、今日、日韓友好親善の実を上げているところでございます。ところが国と国はそうでございましても、戦争中の日本のいろいろな施策のために不幸な目に遭っていらっしゃる韓国人がたくさんおられるということに関しましては、やはり我々といたしましても道義的な責任を痛感せざるを得ません。  したがいまして、さような意味合いにおきまして、在サハリン朝鮮人方々望郷の念やむなくむなしく他郷に没したという方々もいらっしゃいますが、しかし、最近におきましては議員連盟の活発なそうした運動なりあるいはまたソ連韓国との関係なりいろいろと良好な関係が醸し出されておりますので、なお一層政府といたしましてはこの問題に強い関心を抱きまして積極的に取り組んでいかなければならない、不幸な方々にせめてもの安んずる心を持っていただくようにできる限りのことをしなければいけない、これが今日の私の考えであり、また当然日本政府考え方でなければならない、かように存じます。
  10. 五十嵐広三

    五十嵐委員 そこで、念を押すようなことでありますが、今も道義的な責任といいますかそういうようなお言葉もございましたけれども、この問題に対する日本政府としての基本的な態度、今も少しお触れになられましたように、何せ敗戦という状況でありますから、政府としてはもちろん四万三千の朝鮮人についても責任を持って引き揚げさせたい、こういうぐあいに思っていてもそういうことが行えない状況にあった。しかしそういう気持ちには変わりはないといいますか、そういう責任感というものは当然政府にはあったけれどもそうはいかなかった、あるいはその後の状況からいいましても、樺太に対する我が国の主権というのは当然失われたわけでありますし、あるいは韓国朝鮮はそれぞれ独立をしたわけでありますから、それらに対する政府側としての介入にも限界があるわけです。したがって、帰国をさせたいというそういう責任感気持ちは十分にあったけれども、そういうことがやれる状況にはなかった、私はそういうようなものでなかったかと思うのでありますが、この辺については大臣、どういうぐあいにお考えになっていますか。
  11. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今さら申すまでもなく、一九四五年の第二次世界大戦の終了に際しましての混乱というものは各地において見られたと思います。同時にまた、ソ連軍の進駐によるところの我が国旧領土の占領等々いろいろな問題がありました。そこへ加うるに、当時は第三国となられた韓国、したがいましてこれに対するいろいろな感情問題もあるいはあったかもしれません。そうしたことが在サハリンの不幸な事態を生み出したのではないだろうか、かように思います。  この点におきましては、我が国政府といたしまして、同胞であった朝鮮半島方々に対しまして、その当時は同胞でございますから懸命になってその引き揚げ努力はしたでございましょうけれども、何分にも講和条約終戦後六年目に初めて効果を発揮したものであり、その講和条約にはソ連も参加しておらないというふうな状況等々あれこれ考えますと、政府の志とそうした引き揚げに対する実態とが一致しなかったというのは、私はこれはもう覆うことのできない事実ではないか、かように思います。
  12. 五十嵐広三

    五十嵐委員 そこのところを大臣、つまり政府の志と異なってそれを行うことができなかった。その志というものが政府にはあった。もとよりこれはだれが考えたってそうだと僕は思うのですね。ああやって連れていってそういう状況になった、連れて帰るのは当然だと思う。日本人は三十万全部引き揚げた。四万三千人もの朝鮮人を連れて帰れなかった。しかし連れて帰りたかった、連れて帰る責任があると思った。志はそこにあったけれども現実にはそういうことにならなかった。戦後も今日までそういう気持ちを失っているわけではないが、志はそうだが、しかし現実にはそう至っておらないというふうに今のお答えはお受け取りしたいと私は思いますが、イエスかノーかだけでいいです。そういうぐあいに受け取って結構ですか。
  13. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そのようにお受け取り賜りたいと思います。
  14. 五十嵐広三

    五十嵐委員 そこで、大変長い間、三十年ほど、恵まれない状況にありながら、しかもサハリンに残っている同胞韓国留守家族のパイプ役になって一生懸命御努力をいただきました樺太帰還在日韓国人会会長朴魯学さんという方が、実は三月の十六日に亡くなられたわけなのであります。  今言うような大変不幸な状況の中で、朴さんがちょうど三十年前、日本人妻同伴者として日本引き揚げることができたものでありますから、自来今日まで、日本政府にも数十回に及んでいろいろな嘆願書等を届けたり、あるいは韓国サハリン家族の手紙の中継役を続けられてまいりまして、何千人のサハリン残留者方々の命綱のようなことで御努力になられ、あるいは名簿を作成したり、あるいは最近のように一時帰国日本に来てそうしてここで肉親と再会するというようなことについての諸手続を本当に奉仕的に続けてこられた、この朴さんがこの前亡くなられたわけなのであります。  十九日の葬儀には外務省からもあるいは日赤からもお出いただいたわけでありますが、二十六日には実は韓国の方で本国家族葬というのが行われまして、韓国政府は朴さんに国民勲章を与えて献身的な永年の功績をたたえたというようなことも新聞で伝えられているのであります。  私はちょうど亡くなられる前日に病院にお見舞いに参りまして、もうほとんど意識はなかったのでありますが、それでも手を握り合って、本当に後を頼むという気持ちが痛いほど伝わるような思いでございました。この朴魯学さんの今日までの立派な御活動に私は改めて心から敬意を表したい、冥福を祈りたいという思いなんでありますが、この際私は、この朴さんの逝去についての外務大臣としての御見解というか御所感をお伺いしたい、こういうぐあいに思います。
  15. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今おっしゃったような非常に功績のあるお方であるということは承っておりますし、御本人みずからもあの終戦時の混乱のときに日本へお帰りになって、それだけに残られた方に対する気持ちというものを生涯持ち続けてその運動をされたということも承っております。私たちの目に触れないところにそうした同胞愛でみずからの生涯をお閉じになった方々がおられるということを私も承りまして、非常に感動をいたしておるところでございます。もちろん外務省といたしましては単なる弔電をお打ち申し上げておる程度でございますが、この場をおかりいたしまして、私からも改めて深甚の感謝をささげ、なおかつ弔意を表したい、かように思います。
  16. 五十嵐広三

    五十嵐委員 一九七九年の六月六日に我が国でも批准した国際人権規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条四項に定められている自国へ戻る権利、これはサハリン残留帰還希望者に大変有力なよりどころを与えたものだと思います。国内法と同じ効力を持つとされる人権規約第十二条四項に「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」と明記されているわけであります。  政府は、この国際人権規約で言う自国へ戻る権利というものをサハリン残留朝鮮人、それらの経過については今述べたとおりでありますが、これと照らしてどのようにお考えになっておるか。
  17. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 国際人権B規約法律的な解釈ということで申しますと、十二条四項に申します、ただいま委員指摘の「自国」と申しますものは国籍国意味するものと解釈されておりますので、在サハリン韓国朝鮮人の多くの方が現在ソ連国籍ないし北朝鮮国籍ということにかんがみますと、これらの方々にとって我が国ないし韓国への帰還がこの条約によって直接認められるということは申せないのではないかと思われます。  他方、みずからの故郷に帰りたい、あるいは親族と再会したいという御希望は何人にとっても基本的な希望でございまして、そのような御希望の実現のために人道的な配慮を行うことが必要であるということを、先ほど大臣からも申し述べましたように必要であると私ども認識をいたしております。  このような見地に立ちまして、在サハリン韓国朝鮮人帰還問題につきまして、引き続き真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  18. 五十嵐広三

    五十嵐委員 今法律論でどうこうということをお互い言おうとは思いませんが、どうも今の局長お答えを聞いておりましても余り血の通っているようなお答えでないですね。それは経過はさっきもるる述べたから改めて繰り返しません。しかし、ここで言う自国に戻る権利というものは、人間であれば何人も奪われない、自国というのは彼らにとってどこなんだということは、そんなことは今法律論でどうとかこうとか言わなくてもだれもわかることなわけであって、そういうことを一つの理屈としてこのことに対する誠意ある対応というものを政府が怠るようなことがあっては大変だというふうに思います。ですから、どうかひとつそういう意味ではこの問題に正面から取り組んでほしい。さっき稻葉法務大臣原状回復責任があると思う、こういう言葉も実は国会の答弁として出ているわけです。どうですか、もうちょっと意欲的なお答えがいただきたいですな。
  19. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私申し上げたかったことは、委員指摘国際人権B規約法解釈ということで申しますと国籍国ということになりますので、私どもとしましては、むしろ実質に着目をいたしまして、故郷を見たいないしは親族と再会したいという御希望に沿うようにいろいろな努力を傾けている、これは国際人権B規約委員指摘の条文に従って云々ということを根拠にしてやっているものではございません、こういう意味でございます。
  20. 五十嵐広三

    五十嵐委員 自国ということの解釈にもいろいろ議論があるようですが、どうも今のお答えでも私は釈然としません。しかし、話を進めていきたいと思います。  ロシア革命前にソ連に住みついて少数民族として扱われているユダヤ人あるいはドイツ人へのソ連の出国ビザ発給が、最近非常に緩和されて大幅にふえているという実態があるわけであります。お聞きしますと、ユダヤ人の出国者は、オーストリアの統計によるものでありますが、一九八三年が千三百十五人、八四年が八百九十一人、八五年千百二十六人、八六年が九百一人、そして去年一九八七年の一月から十月末までで六千七百三十五人、最近約一万人という話を聞いているのですが、それは一けた違う急激な増加が見られているわけなんです。  言うまでもなく、これらの人々は一たんオーストリアに出て、それから主としてアメリカなどそれぞれのところに永久出国をしているわけであります。聞いてみますと、なかなかややこしいのです。これらの人々は、イスラエルの親族からの招待状にイスラエル政府が保証状を添えてソ連関係当局に申請して許可を得てソ連政府の出国査証が出される。この出国査証をソ連国内オランダ大使館に持参して、オランダ大使館はイスラエル政府のビザを代行して出す。今度はこのビザをオーストリア大使館に持参してオーストリアに入るビザを得て出国するという大変回りくどいやり方なようであります。  しかし、とにかくいろいろな難しい国際状況現実の中にありましても、お互いに知恵を絞ってこういうような方法というものをつくり上げて、長い慣行によってこれが続けられているわけです、別に協定なんというものができてやっているというようなことではなくて。こういうことを私は大きく参考にしてもらわなければならぬのではないかというふうに思うのです。  あるいは一方、サハリン残留韓国朝鮮人と非常に似たような立場で中国在住の韓国人問題がある。私どもの得ている情報によりますと、中国に残留した韓国人のうち、この十年間で韓国に一時帰国したケースは約三千人。また、韓国に永住帰国した人も百人ほどおる。韓国家族が中国の親族訪問をしたというのは、これも百人以上ある。中国もソ連も社会主義国であることはもとより、韓国と外交がないという点でも非常に似通った共通な点があるわけであります。  私は、こういうユダヤ人や中国における韓国人状況というものから見て、サハリン残留韓国朝鮮人の一時帰国肉親再会の現状というものは余りに立ちおくれているのではないか。それは局長、あなたが先ほどから説明するような消極的な態度というものが災いしているのではないか。冒頭大臣が言っているように、本当に責任があってしっかりやっていかなければだめだ、歴代の大臣もそう言っている、にもかかわらずこういう状況になっている。私は局長からもう少し意欲のあるお答えも聞きたいのです。  こういう状況の中で近年みんな一生懸命努力して、さっきの亡くなった朴さんなんかも苦労して幾らか前進はしたが、我が国で再会したサハリン残留韓国人等の実績なんかはここ数年どんなことになっていますか、もちろんお手元にあると思いますが、お知らせをいただきたいし、その余りにも低い現実というものとこういう他国における状況というものをどういうふうにお考えになっているか、お答えをいただきたいと思います。
  21. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 まず、冒頭お触れになりましたソ連在住ユダヤ人の出国問題は、委員が御引用になりましたとおりの手続でございまして、特に八四年ぐらいから非常に希望が大きくなってきているというのが実情でございます。この手続は、今委員のおっしゃったとおり非常に複雑な手続になっているようでございますが、特にソ連国内法上根拠があるということでもないというふうに承知いたしております。  ちなみに私どもも、今おしかりを受けましたけれどもソ連在住ユダヤ人の出国問題が、本件、在サハリン韓国朝鮮人の出国問題に非常に参考になる点が少なくないのではないかという見地から詳細調査を行っておりまして、先般主管の課長を米国にも派遣をいたしまして、本件の調査を米側当局者についていたしたという経緯もございます。  それから、中国におられる韓国人帰国の問題、これも一九七八年以降認められて、ただいま委員が御引用になりましたとおりの人数で推移をいたしております。  それから、韓国におられる中国の方の中国帰還というものも、今おっしゃいましたような規模で行われているというふうに承知いたしております。  在サハリン韓国朝鮮人の方が我が国におきまして肉親再会を行っている人数はどのくらいになっているかという御質問でございますが、亡くなられた朴会長それから先生方のいろいろの御尽力も得まして、当初本当の一けたで推移しておりましたけれども、一九八六年には二十名、昨年は五十一名の方が出国をされて、韓国から来られた親族の方と本邦において再会を果たされているという状況で、非常に立ちおくれという御指摘、おしかりを受けましたけれども、最近は少しずつ増加しつつあるということでございます。
  22. 五十嵐広三

    五十嵐委員 冗談じゃないです。四万三千人残って、しかし今日まで四十何年たっているから、サハリンの方で家族もできて、孫もできたり、暮らしも、年金なんかもらって安定しているから、それは戻る意思のない人もいます。戻るといいますか、少なくとも一時帰国してみたい、あるいは肉親とも会いたい、こういう希望者が、朴さんのところで一生懸命苦労して、韓国政府を通じて日本国政府がもらった名簿がかつてあるでしょう、七千人ある。最近どういう実態かと言ったって、どうせおたくの方は把握してないのだろうから聞いてもむだだと思うが、三千人ぐらいというようなお話も、これは生前朴さんなんかから我々お開きしているところだ。そういう中で、一生懸命我々も苦労して去年は画期的にふえた、ふえても五十一人ですよ、あなた。答弁でぬけぬけと最近ふえているというようなことの言える数字だと思いますか。言葉がきつ過ぎてごめんなさい、おわびしますが、本当にそういう気持ちだ。  大臣、今私が申し上げましたように、ソ連在住のユダヤ人の場合も、あるいは中国にいる韓国人の場合もいろいろ難しい状況なんです。しかし、そこは政治的な立場立場として、現実的に工夫を凝らしてとにかくどんな回りくどいやり方でも解決を求めて、たくさんの人がそうやって出国をしたり肉親と会ったりしているわけだ。まあこれは、いわば大人同士のあうんの呼吸みたいなものだ。別に一つの協定というものをつくって、それに基づいてどうこうということでない。関係国がお互いに、理屈からいうとおかしくても、やはり何といったって人権上、道義上それを時には黙って見ているということもあると思う。  サハリン残留韓国朝鮮人についてもそういう次元からの積極的な解決策を探っていくべきではないかというふうに思うが、大臣、いかがですか。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 るるお話を伺っておりまして、本当に私も共鳴することばかりでございます。したがいまして、この問題に関しましては、単に議員連盟が活動していただいておる、ありがとう、それだけじゃなくして、さらに政府みずからもやはりもう少し積極的に臨みたいと私は思います。  特に、どんどんと高齢化が進んでいるわけでございますし、どなたといえども先祖の跡すら訪ねておるというのが今日の世界の現状でございますから、ましてや、自分が現に生まれ、ただ日本の政策によってそうした目に遭わなければならなかったという方々の悲憤慷慨、そうした思いを私たちも自分の思いとして持たなければならぬ、かように私も考えますので、きょうこうした立派な御質疑をちょうだいいたしましたので、早速そうした心を心として、政府としての具体的な対策をひとつ講じてみたい、かように思います。     〔宮下委員長代理退席、近岡委員長代理着席〕
  24. 五十嵐広三

    五十嵐委員 ぜひそれを御期待申し上げたいと思います。  同時に、一つ検討してみてほしいと思う点で、一九八六年十一月六日にソ連政府から発表された「ソ連邦出入国規則の追加条項、」これは、ソ連邦市民、外国市民、無国籍者のいかんを問わず、家族の再会や面会、重病者への見舞い、近親者の基参などを理由とする出入国は市民の権利であることを認めて、申請官庁や申請書類を列挙して、原則として一カ月以内で審査されると規定がなされているという非常に画期的な内容のものであります。  これは言うまでもなく、ゴルバチョフ書記長になっていわゆるペレストロイカというようなことだとか、あるいは国際的な人権主義を最近重視しているという新しいソ連政府の方針のあらわれだというふうに思うのでありますが、この条項の第三十項に、「前記個人的理由によるソ連邦への入国及びソ連邦からの出国の問題は、ソ連邦と他の国との二国間の合意によっても規定することができる」、こういうのがあるのですよ。これは私は、日ソ間の外交交渉で新たな大きな前進を展望することのできるものではないかというふうに思うのです。サハリン問題にとって大変重大なものではないか、日本政府はこの立場からのソ連政府との交渉が可能ではないかというふうに思うのでありますが、これについて御見解を承りたいと思います。
  25. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 これは委員御高承のとおりで繰り返し申し上げる必要もないかと思いますが、我が国は、本件の一日も早い解決のために、毎年行われます日ソ事務レベル協議あるいは大臣レベルでの協議におきまして、ソ連側に対しまして本件についての好意的配慮の要請を申し入れ続けているわけでございますけれども、先生も御承知のとおり、ソ連側は、本件は日ソ間の問題ではない、ソ連と北朝鮮との間の問題であるという立場を一貫してとっているのが現状でございます。ときに、御承知のとおり、五十嵐先生も昨年訪ソをいただきましたし、その前には草川先生も行っていただきまして、少しずつ道が開けてきたというのが今までの状況でございますけれども、基本的にはソ連が北朝鮮との間の関係だという建前をとっているということは御高承のとおりでございます。  それから、ただいま御引用になりました八七年より施行された出入国管理令の改正、それからそれに関連しましてのソ連査証当局者のインタビューというもので本件の詳細が明らかになっております。  この「二国間の合意」という形式が、ただいま冒頭に私が申し上げましたようなソ連の基本的な立場から、この問題の解決を促進するために適用の可能性があるのかどうかということは、私どもといたしましてもただいまの御指摘も踏まえて検討いたしたいと思います。  いずれにせよ、一人でも多くの韓国朝鮮人の方が帰国ないし親族再会を行い得るということが重要だと思いますので、今後とも現実的にどういう方法が適切かということを考えながら取り組んでまいりたいというふうに存じております。
  26. 五十嵐広三

    五十嵐委員 局長、我々も議員懇として去年も私も行き、それから原会長も行き、ことしも御承知のように来月になりましたら私は土井委員長と一緒にモスクワへ参ります。それからその翌月、六月には議員懇として会長も我々も超党派でサハリンやモスクワに行こうと一生懸命やっているのですよ。今あなたのお話を聞きましても、ソ連政府のそういう見解なんというのは以前の話であって、最近ソ連はそんなこと言っていないですよ。  もっと勉強してもらいたいというふうに僕は非常に思うし、これの「ソ連邦と他の国との二国間の合意によっても規定することができる」ということについても、このことによってサハリン問題を進めることができるのかどうか等について検討してみるというお話であったが、検討してみるといったって、あなた、これはおととしできたものなんだよ。我々は一生懸命こうやってやっているんだから、あなたの方もこういうものが出たら出たで、これはだれが見てもすぐに、この問題に関して日本政府ソ連と話し合うということになるんだな、そういう可能性が出てきたなということはお気づきになるべきものであって、今ごろ検討するとか調査するというのは僕はいただけないですよ。遅まきながら、ぜひひとつ積極的な御検討をしてもらいたいというふうに思う。  時間が余り残っていないものですから、いろいろお話ししたい点があるのだけれども、今までのお話でも問題ないようなことがなかなかどうもひっかかるような感じで、すっかり時間をとってしまって非常に残念に思うところであります。  きょう日赤の渡辺外事部長さんにおいでいただいておりますので御要望申し上げたいというふうに思うのでありますが、去年八月二十七日にモスクワでソ連赤十字社のベネディクトフ社長と私会談をすることができました。彼は、ソ連赤十字は韓国赤十字との関係はない、したがって日本赤十字から問題を提出してほしい、回答を受け取った日本赤十字がそれをどうするかは日本赤十字の判断に任せることだ、こうおっしゃった。これは簡単に言えば、日赤は韓赤とソ赤の中に立って問題解決をしなさい、こういうことを言っているようなものなんであります。  日赤自身も今までいろいろ御苦労いただいているようでありますし、国際赤十字社だとかあるいはソ連赤十字とも、書簡のやりとりや、あるいは国際的な会議なんかあるとお会いになっていろいろ御苦労いただいているようでありますから、この機会敬意を表したいと思うし、あるいは、この前山本日赤社長とお会いしたときも非常に前向きな御発言でありましたから、そのことも敬意を表したいというふうに思うところであります。日赤はこの問題についてぜひひとつ積極的なお取り組みをいただきたい、それがまた日赤本来の使命でもないかというふうに思うものでありますが、外事部長さんの御見解伺いたいと思います。
  27. 渡辺晃一

    渡辺参考人 お答え申し上げる前に、まず冒頭外務大臣もおっしゃったことでございますが、日赤といたしましても、原文兵衛会長、それから五十嵐事務局長さん、その他議員の先生方による議員懇談会、昨年来非常に活発な御活動を展開しておられまして、それに心から敬意と謝意とを表したいと思います。  ただいまの御質問でございますが、先生のおっしゃられましたように、日本赤十字社として、これまでジュネーブの赤十字国際委員会ですとかあるいはソ連の赤十字社、いろいろな形で連絡をし合いながらこの問題の解決に側面的に努力してまいりました。特にソ連赤十字との関係におきまして、私どもソ連の赤十字に書簡を出しまして、この問題はとにかく人道的な問題である、特に現在サハリンにおられる方々の高齢化という状況があるので、早急にこの人たちの問題、すなわち家族との再会の問題を解決する必要があるから、人道的立場ソ連赤十字も協力してほしいということでソ連赤十字に申し入れたわけでございます。  それに対してソ連赤十字としては、出入国の問題はこれはソ連政府の問題である、赤十字としてはそれ以外の人道的な問題について援助をする用意があるからいろいろやっていきたい、そういうふうな返事をもらっております。日本赤十字社といたしましても、これは非常に力強いことだと思います。  今後とも、韓国赤十字とも密接に連絡をとりながら、必要に応じて話し合いをするとかいろいろな形で問題の解決に積極的に努力していきたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 五十嵐広三

    五十嵐委員 去年ロガチョフ次官を迎えての日ソ事務次官レベルの協議が行われた。ここで日本政府が、本問題を両赤十字間で協議する、こういうことへの提案をなされたということで、ほぼその内容等は我々も伺っておるところでありますが、当時の協議のときには後刻返事をするということになっていたようでありますが、その後ソ連側から外務省お答えが来ているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  29. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま御指摘の事務レベル協議におきましては、私どもからは、委員指摘のとおりいろいろな要望をいたしました中で、手続簡素化についての実務レベル協議及び両国赤十字社間での話し合いを提案しまして、重ねて好意的な配慮方を要請いたしました。  それに対しましてソ連側が答えましたところは、ソ連におります外国人には出入国の自由がある、これは民族、人種等に関係なく適用される、それから、本件が時として反ソ宣伝に利用されていることがあった、それから第三点としまして、北朝鮮籍の在サハリン朝鮮人についてはこれは北朝鮮の問題である、それから最後に、ソ連籍及び無国籍者の日本への一時出国については特に障害を設けない、こういうお話でございまして、その後の先方からの対応というのはまだございません。
  30. 五十嵐広三

    五十嵐委員 それはやはりちゃんと課長さんなりなんなり十分な説明局長にしておかなければだめですよ。十二月に返事が来ているでしょう。――時間がないから後で返事をください。それは後でも構わないですよ。  それで、この前我々の議員懇の中でいろいろ協議をして、関係各省あるいは日赤さんも含めて実務者会議というものを設けることにさせていただいた。これは私は異例なことであるが、非常に内容のある緻密な協議ができて実は大変喜んでお礼を申し上げたいと思っております。  この実務者会議で、サハリン残留韓国朝鮮人の問題について、政府はこれらの事業を日本赤十字への事業委託とするということについて、日赤の実務者も含めて合意を見たところなんであります。しかし、これはもちろん政府から事業委託に伴う予算の裏づけがなければ日赤だってできるわけじゃないわけでありますから、そういうことは当然必要なことであろうと思うのでありますが、渡辺外事部長さん、こういう委託費の裏づけがあれば、これらの残留韓国人肉親再会であるとか一時帰国だとか、これらの諸事業について委託事業としてお受けになるお考えが日赤はあるかどうか。
  31. 渡辺晃一

    渡辺参考人 日本赤十字社といたしましては、本件は戦後処理の一環と考えておるものでございまして、政府におかれて必要な予算を計上していただいて、日赤に事業を委託する、そういう御依頼がありました場合は、日赤としてはその段階において前向きにこれを検討して積極的に対応していきたいと思っております。
  32. 五十嵐広三

    五十嵐委員 ぜひひとつそのようにお願いしたいと思うのでありますが、外務省は、この前の実務者会議のそういう申し合わせ、そして日赤も今積極的な御意見があったわけですが、そういう方向でお進めになる考え方でありますね。それをちょっと確認いたしておきたい。
  33. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいまの業務委託の件につきましては、人道問題について非常に豊富な経験を有しておられる日赤が本件について積極的な役割を果たしたいという意欲を有しておられることを、私どもとしましても歓迎をいたしたいと思います。  具体的にどのような形で日赤の貢献を一番効果的なものとでき得るかということにつきましては、ただいまの御指摘のアイデアを含めまして、いろいろな方途につきまして財政当局を初め関係者間で真剣かつ慎重に協議をしまして、議員懇も含め識者のお考えも十分聴取をした上で、本件解決のために一番適切な方法について一層の探求を行ってまいりたいと思います。  それから、先ほどの御質問に対する私の答弁が誤りであるという御指摘がございました。補足をさせていただきますが、事務レベル協議に関連をいたしまして、十二月の八日に在京の大使館から、事務レベル協議で話に出たソ連赤十字の問題については、在サハリン朝鮮人の消息調査をする準備があるけれどもどこと接触をしたらよいかという照会がございまして、それに対して我が方から、日本赤十字社と接触をしてもらいたいという御返事をして、その後は特段の接触はないという状況でございます。
  34. 五十嵐広三

    五十嵐委員 我々が議員懇として動いていることは逐一必要なところは外務省にも報告してありますから、御存じのようにソ連側の赤十字社も積極的である、今も渡辺さんがお話しになるように、あるいはこの間の山本社長の見解でも、非常に熱心であります。韓国赤十字社が渇望しているということは言うまでもないことです。国際赤十字社としても、再三日本赤十字社に対する書簡等では、この問題を積極的に進めたい、努力したいということが言われている。  ぜひ、全体として赤十字社がこの問題にしっかり取り組むとともに、今言う国内における実際の事業担当について外務省はなるべく早く方針を決めて、これは今年と言ったって無理な話ですから、六十四年度からやっていかなければいけないということになれば概算要求時期までにすべてを上げていかなければならないわけでありますから、余り慎重かつ適切になんというようなことを言っていると間に合わぬことになりますから、局長ひとつ一生懸命頑張ってほしいと思います。  それから、大蔵省、お忙しいところ恐縮でございますが、今言うような流れの中でこういう問題が進められているわけで、主計官としてのお考えをお聞きしたいのであります。この日赤への委託事業であるとかさまざまな事業拡大に伴う経費も出てくるわけで、ぜひひとつ大蔵省側の御協力もいただきたい。  これに関しましては、竹下総理が大蔵大臣時代、六十一年二月十二日、衆議院予算委員会でこう答弁しています。   基本的には今、安倍外務大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、閣議で一度この問題について、「御指摘の問題については、日本政府としても人道問題として真に同情を禁じ得ない。政府としてもこの問題に深い関心を有するものであり、これら樺太残留朝鮮人帰国実現につき、できる限りのことはしたいと考えている。」こういうように閣議を通して答弁を決めたことがございますので、具体的にはいずれ外務省との折衝になろうかと思いますが、十分心して対応すべき課題だと思っております。 こういうぐあいに実は御答弁いただいていることもあるのであります。  そしてまた、六十二年、六十三年と、額としてはわずかなものでありますが、それぞれ予算を数百万見ているということは、公費としてちゃんと支出したということの意義は非常に大きいものがあるというふうに私は評価をしたいのであります。しかし、この程度ではどうにもならぬことは言うまでもないわけでありまして、さりとて巨額のものが要るというものでもないのでありますから、ぜひひとつ従前の歴史的な経過というものに立って大蔵省の理解を求めたいと思うが、いかがですか。
  35. 永田俊一

    ○永田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘いただきましたように、六十二年度、六十三年度におきましては、この問題の重要性にもかんがみまして所要の財政措置をとらしていただいたところでございます。六十四年度以降につきましては、ただいまのお話も伺いまして、今後の外務省の御検討あるいは御要請を踏まえまして適切に対応していきたいと思っております。
  36. 五十嵐広三

    五十嵐委員 よろしくお願いします。  そこで、厚生省においでいただいているわけでありますが、実際に今まで苦労してやっているのはボランティアの人たちで、見ていても本当に涙の出るぐらい奉仕していただいているわけです。お金なんかもその中で理解のある人が浄財をそれぞれ出して、それで新潟への迎え、それから三十日なり何十日の滞在中の日常生活のお世話だとか、それから一方、韓国から同時に呼ぶわけでありますから、そのお世話だとか、大変な御苦労をいただいているのであります。しかし、これにも限界がある、もう本当に我々も見ていてそういうふうに感ずるのであります。  そこで、厚生省にお伺いするのだが、今のように日赤さんの御協力もいただいていこうと思うが、しかし厚生省としても考えてほしいと思うのは、厚生省の援護局は引揚援護対象者の範囲にさらに残留韓国朝鮮人を含めることを検討すべきでないか、こう思うのです。  昭和二十七年三月十八日の閣議決定によりますと、「海外邦人の引揚に関する件」で、その内容に、連合軍の指令に基づいて処理されてきたが、平和条約の発効に伴い失効するので、「政府は、これらの引揚者に関し、従前の例にならい、」実施するというようなことになっている。昭和二十七年のこの閣議決定で、自来今日までこれに倣ってきている。  冒頭、宇野外務大臣にお伺いしたように、これは政府としてもやろうとしてもできないことであった。しかし、やろうとする気持ちはあった。何といっても占領下であった。今あれから何十年たって、今日の日本がやろうとしてできないことではないわけですよ。一時再会に来たり、あるいは一時出国をしようとして来ておられるこういう方々の面倒を見ることについて、これは政府が、こういう閣議決定があるからというのではなくて、閣議で御論議いただいて、今日の段階では、歴史的な経過からいってこれはやらなければいかぬではないかということになれば、やれないことはないわけですね。今日いまだに、連合軍の指令に基づいて処理されてきたが、平和条約の発効に伴ってこれは失効したから、「政府は、これらの引揚者に関し、従前の例にならい、」で今日に至っているという手はないじゃないですか。外務大臣は閣議でこの問題について提起して、ぜひこの引揚援護対象者の範囲にサハリン残留韓国朝鮮人を含めてもらうように御努力いただきたい、このように思うが、いかがですか。
  37. 村瀬松雄

    ○村瀬説明員 厚生省が行っております引き揚げ援護の対象でございますが、終戦時に海外にありました旧軍人軍属及び一般邦人でございます。いわゆるサハリン残留朝鮮人方々はこれらに当たっておりませんので、従来引き揚げの対象といたしておりません。  しかしながら、人道上の見地から、厚生省といたしましては外務省の行います施策に可能な範囲でできる限り今後協力をいたしていきたい、かように考えているところでございます。
  38. 五十嵐広三

    五十嵐委員 それは昭和二十七年の閣議決定が生きているわけだから、その範囲でやるよりしようがないという、その範囲の中でもしかし一生懸命お手伝いしたい、厚生省はこう言っているわけです。ですから、やはりこの閣議決定はこのままではどうにもならないわけですから、そこで外務大臣にお伺いをいたしたわけです。  そのことのお答えをいただくのと、もう時間になりますからあわせてちょっとお答えをいただきたいという点を二点申し上げておきたいと思います。  一点は、当時は若い夫婦で、その夫の方がしゃにむに連れていかれたというような経過であったものだから、今やあれから四十何年ですから、当時の若い妻ももうおばあさんになっている。この間も何人かの方々が要望に来られまして、私ども本当にもらい泣きをいたしたのでありますが、生活もなかなか大変でおられるようであります。  今、韓国国内で、離散家族方々などが中心になられて、韓国内の経済界など民間から相当額、それから日本の方からも特に韓国関連の企業等の民間の協力をいただいて、こういう残留朝鮮人留守家族のおばあちゃん方の老人ホームを建設をしようというような動きがあるようなんですね。私はそういう話を聞いて、しかしこれは公費で出すなんといったって、なかなかそんなわけにいくものではないのでありますから、したがって、当面外務省としてもこれについての民間へのいろいろな働きかけなど、機会があれば応援してもらいたい、こういう気持ちがいたします。できれば総理等が訪韓したときに、何か寄附金等というやり方もあるのだそうでありますから、その方法は別として、できれば御援助していただきたい、こういうぐあいに思うので、この点の御見解をいただきたいということ。  もう一点は、我々議員懇として今一生懸命やっているのですが、なかなかそう簡単でない。来月、再来月、訪ソした折に我々もやりたいと思いますが、オリンピックの機会に、サハリン残留朝鮮韓国人の代表者の方々がその応援団に加わってソウルに行くことはできぬか。そこで墓参をしたり肉親と会ったりすることができればというふうに思って、ソ連側にも要請をしているところであるので、これについての大臣の御見解と、それから御協力を要請したいと思いますので、以上のお答えを聞いて質問を終えたいと思います。
  39. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろと在サハリン朝鮮人方々に対する深い御同情の念、また理解、政府といたしましても敬意を表する次第でございます。  私、事態は今非常によい方向に進んでおると先ほど申し上げました。韓国ソ連とは国交はございませんけれども韓国も社会主義の国に対しまして十年前から門戸を開きます、こういうふうに姿勢を改めておりますし、そしてオリンピックに対しましてはソ連は積極的に参加なさった、また北鮮に対しましても一日前まで門を開いておきます、このように盧泰愚大統領はおっしゃっておる、これは非常によい関係が醸し出されておると思います。  同時にまた、世界におきましても、先般レーガン・ゴルバチョフ巨頭の会談がございまして、INFのグローバル・ゼロというものが実現して、次回はいよいよモスクワにおいて第四回目の会談をしよう、この中にSTART等々の問題もございますが、やはり二国間紛争とか地域紛争とかの中に人権問題が入っているわけであります。  こうした問題は、人権として取り上げて、そしてどうのこうのという、かみしもを着た姿ではなくて、やはりそういうようなムードがあるという中において、日本政府としてもやりたかったがやれない状態のもとに今日まで放置されてきた。せめてというので、家族方々の東京における会見だけは、先生方の御努力もこれあり、ソ連の理解も深まり、韓国の熱意も高まり、そうしたことで我が国政府といたしましては実現することにわずかながらも成功してまいった。こういうふうなことが、冒頭に私お答えいたしましたよいアトモスフィアと申しましょうか雰囲気が醸し出されつつあるということでございますから、やはり政府ももう少しく、私といたしましては積極的に取り組んでしかるべき問題だ、かように思います。  したがいまして、今御指摘の閣議の問題も、あるいはまたオリンピックの問題も、いろいろとそうした中におきまして私は私なりに考えてみたい問題だ、かように申し上げたいと思います。  老人ホームの問題、初めて私伺いましたので、どういうふうな状態になっておるか、このことも検討させていただきたいと思います。過般、日韓外相会談におきまして、韓国の第六共和国の崔外務大臣は、やはりこのことにもお触れになりました。そして、日本政府が非常に熱意を持って当たっていてくれるということに関しまして敬意を表しますという一言がありましたが、もちろんこれに対しましてまだまだ満足でないということは私たち覚えておりますので、今後はさらに政府といたしましても努力をいたしたい、かように思います。  以上でございます。
  40. 五十嵐広三

    五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  41. 近岡理一郎

    ○近岡委員長代理 鈴切康雄君。
  42. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、御苦労さまです。  今回の法案につきましては、在外公館に勤務する外務公務員の子女の問題について外務省は六十二年の五月、実態調査を行って、民間レベルとの格差を解消する意味から今回の改正になったということでございますから、私ども別に問題はないだろう、しかし、円高に伴って、在外公館の職員の生活の中に若干ひずみが出てきているというふうに思っておりますので、十分その点については配慮していただきたいということを要望しておきます。  そこできょうは、さきに安保特別委員会外務大臣がいろいろと所信表明をされました外交全般、なかんずくきょう御質問申し上げたい項目は、一つは、アフガニスタンの歴史的合意の問題がきょう調印が行われるわけでございます。それから、国連軍縮特別総会あるいは日ソ外交交渉、あるいはINF条約を踏まえ、ICBMの五〇%削減と首脳会談の問題、そしてまた、今大きな政治課題になっておりますNLPの問題、そして南アのアパルトヘイトの問題、時間がございましたら事前協議と随時協議の問題、こういうふうな多岐にわたって御質問申し上げます。しかし、時間も、きょうは本会議がありますので、そういうことも踏まえまして、あるいは途中で中断してしまうかもわかりませんけれども、できる限りの時間を使いながら御質問を申し上げますので、よろしくお願いします。  まず初めに、アフガニスタンの間接和平交渉は、最終合意を迎えまして、本日十四日には調印の運びとなったわけであります。いよいよそれに基づきましてアフガンの駐留ソ連軍の撤退が本決まりとなるわけでございますが、外務省がキャッチしている情報と、また、これに対しての評価を、外務大臣としてはどう見ておられるか、そのことについてお伺いをいたします。
  43. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは、世界に幾つもまだ残念ながらにして紛争がございます。したがいまして、米ソ首脳会談におきましてもこの紛争の解決のための努力が払われております。我が国といたしましても、「世界に貢献する日本」、その中には平和という問題に関しましても日本はやはり積極的に貢献をしなくてはならぬ、こういうような姿勢で、今日まで実はアフガン問題に関しましては、一番関係国であるところのパキスタン政府といろいろとこうした処理問題に関しまして協議を続けてまいった次第でございます。  その結果、米ソ間におきましても話し合いが進み、さらにはまたパキスタンもそうした話し合いの中に入っていただいて、アフガンの現政府との間において、とにかく停戦をする、そしてソ連は撤兵する、そしてアフガンの難民は帰国する、こういうふうな大筋で合意、調印を十四日になされるということでございますから、したがいまして、これは高く評価をしなければならぬ、かように思っております。
  44. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 七九年のソ連のアフガン侵攻以来、駐留ソ連軍の存在というものは米ソ両超大国の最大の緊張の要因であったわけでありますが、こういうことできょう歴史的な調印ができるということは、私は、米ソの関係改善にはかなり良好に拍車がかかるであろう、そしてまた、いよいよ米ソ共存、新しいデタントの時代が到来するのではないかという期待を持っているわけでありますけれども外務大臣はどうお考えでしょうか。
  45. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今デタントという言葉が出ましたが、米ソ間におきましてデタントをしなければならないというので、あの当時、第二回目のSALT交渉と私たち呼んでおりましたが、このSALT交渉の最中にアフガン侵攻があったというふうなことで、自来米国ではもうデタントなんて信用できるかというふうな圧倒的な世論があったわけでございます。にもかかわらず、首脳同士はやはり粘り強くここまで事を運んでまいったということは、世界の緊張から考えましてもうれしいことだと思います。  そこで、これも一つの重大なことでございますが、こいねがわくば、先ほど申しましたとおり、近くモスクワで開かれます両国首脳会談におきまして第二回目のいろいろな話がなされるわけですが、そこでは御承知の戦略核に関しては五〇%の削減を何とかしたい。先ほど鈴切委員もお触れになりましたが、ICBMとかSLBMあるいはまた戦略爆撃機であるとか、こうした問題に関しましても五〇%削減、さきにはINFのグローバル・ゼロを実現したのだから、私たちもその成功を祈ります。  その成功を祈りまして、とりあえずのところは、これでもうすべてが緊張緩和だというのじゃなくして、さらに多くの問題を抱えておりますので、我々といたしましては、両国がひとつ話を実らしていただくように希望しながら、それを成功さすためには、西側陣営の日本でございますから、やはり西側陣営ががっちり支援をしてあげることが大切だ。日本といたしましても、アメリカを支援してあげることが大切だ。だから、アフガンだけで非常にすばらしい効果が今後生まれるであろうということを期待しながら、我々としては事態を眺めていきたい。  難民の問題、難民とは中にはゲリラもおられる、そうしたいろいろな問題がまだあるだろう。そして、後にはどのような政府が樹立されるか、こういう問題もまだ残っていくのじゃないか、かように考えておりますが、一応ムードといたしましては歓迎をするということでございます。
  46. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今の難民問題とか暫定政権の問題については後でちょっと御質問申し上げますけれども、今回の合意文書の調印式はジュネーブの国連欧州本部で行われるわけでありますが、合意文書の内容については大略どのようになっておりましょうか。
  47. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 本日署名が予定されております文書は、アフガニスタンとパキスタンの間の相互不干渉の協定、これはアフガニスタンとパキスタンの間で署名されます。それから、難民の自発的帰還に関する協定、これも同様でございます。それから、米国とソ連の不干渉の国際保証宣言、これは米ソが署名をいたします。それから、今申し上げました三つの文書と、外国軍隊の撤退、つまりソ連軍の撤退でございますが、それとの相互関連性に関する文書、いわゆるこの四文書であると承知しております。
  48. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、難民の自主的な帰還に関する合意に基づいて、約五百万人以上と言われておる難民が自主的に帰還することになるわけでありますけれども我が国としてはそれらの難民にいかなるいわゆる援助ができるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  49. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 これは、まず基本的にはアフガニスタンの情勢が、ソ連軍の撤兵に伴いまして難民が自発的に帰れる状態になるということが最も肝要であると考えております。  他方、この自発的な帰還を援助いたしますために、当然、国連の難民高等弁務官事務所、その他UNDPでありますとかユニセフでありますとか、そういった機関がこういった自発的帰還を援助するためにいろいろな構想をこれからつくり上げていくというふうに承知しておりまして、我が国といたしましては、それに積極的に参加し、必要な援助をしたいというふうに考えております。
  50. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことになるでしょう。難民の帰還については国連が主体になって、あるいはまた国連及び国連の専門機関がこれに対して窓口になるだろう。そこで、当然、我が国としても積極的に、難民五百万人という方々が今大変路頭に迷っている状態ですから、それが自主的に帰還ができるような形にするのが望ましい、私はそのように思っております。  それで、今回調印されますと、ソ連軍のアフガンからの撤退がいよいよ本決まりになるわけでありますが、いつまでどのような規模で行われるというふうに情報をキャッチされておりましょうか。きのうの新聞によりますと、三カ月で五万人、半分という報道が実はなされておるわけなんですが、その点についてはどうでしょうか。
  51. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 実は、合意文書は昨日の時点に至りますまで関係者の間で詰めが行われておりまして、したがいまして、署名の直後に発表されますまで正確なところは私どもとしても申し上げかねるわけでございますけれども、一応承知しておりますところは、五月十五日から九カ月にわたって撤兵が行われる、それで、しかも最初の三カ月の間に半分ぐらいの撤兵が行われるという趣旨であると承知しております。ただ、詳細につきましては、正式な発表を待ってからということにいたしたいと思います。
  52. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アフガンにいわゆる侵攻しているソ連駐留軍が大体十万人ですから、そう考えますと、半分と今おっしゃいましたから大体五万人、三カ月だということ、正式ではないけれどもそういうふうな情報をキャッチしているということです。  今回のこの地域紛争について、これは世界の各国がお互いに注意しなければならないのは、民族自決、そして他国の内政不干渉という大原則、これを外交の基本としなければいつも紛争が絶えないという状態になるわけでありますが、ソ連軍が撤退した後の暫定政権についてはどのような姿が望ましいのでしょうか。
  53. 恩田宗

    ○恩田政府委員 アフガニスタンの安定のためには、国民の広い支持のある政府ができなければいけません。その前にまず暫定政権をつくって、その暫定政権のもとで選挙なり正しい方法で恒久的なしっかりした政府をつくる、こういう手続になるわけでございますが、暫定政権は、この協定が締結される際に、どのような形でつくろうかということが関係者の間で合意されるということが期待されたわけでございますが、ただいまのところ、どうもそういうことになっていないようでございます。したがいまして、ソ連軍の撤退とともに、この協定が署名された後も、暫定政権、具体的には選挙の実施でございますが、それが行い得るような政権ができるように関係者の間で交渉をさらに続けなければなりません。これは国連の事務次長のコルドベスが今後とも関係者の間を調停することになっております。  私どもとしては、難民を代表する人たち、それから現在アフガンに残っているさまざまな勢力の人たち、その人たちの勢力が適当な形で配分されて、将来、アフガニスタンの民意が十分反映されるような選挙が行われるように、そういうことができるような暫定政権ができるようにというふうに期待しております。
  54. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 和平交渉が成立した場合、和平の実行を効果あらしめるために、国連における合意監視処置に対して監視団の派遣を我が国にも要請があった場合、我が国としてはどのように対処されるつもりでしょうか。
  55. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今度のソ連軍の撤兵並びに難民の帰国、これは大変大切なことだと思いますし、国連といたしましても並み並みならぬ努力を必要とする、単純に戦闘行動停止というので監視団が行くのじゃない、そういうような意味を広く考えました場合には、やはり我が国の貢献する部門がたくさんあるんじゃないだろうか。先ほどからいろいろ申されましたが、鈴切さんの御指摘どおりの部門におきましても、当然、我が国が進んで貢献をしなければならない問題があるんじゃなかろうか、かように思います。  したがいまして、監視団ということになりますと、今までは軍隊を出すのかとか出さぬのかとか、そういうような話になりますが、多分今度はそうした広いスケールのお話になりますので、文民等々の参加も必要とされるのではないだろうか、かように考えます。したがいまして、そうした場合には我が国といたしましては文民を派遣する、こういうふうに考えております。
  56. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国連監視団の規模というものは大体どれくらいになるんでしょうか。そして、我が国が国連からぜひ監視団をという場合には、どんなふうなことが予測されるのか。もう一つは、その身分、向こうへ行く監視団の身分については、外務省としてはどのように考えておられるか。我が国はやはりいろいろと難しい問題があるだけに、その点についてはどうお考えでしょうか。
  57. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 国連の支援グループの規模でございますが、これも正式には本日署名されます文書にかなり詳細に出ていると思うわけでございますけれども、基本的にはソ連軍の撤退を監視するということが重要な任務でございますので、したがいまして軍事監視団というのが一つ中心にあろうかと思います。ただ、その人数につきましては、当初は割合に少数の人数でスタートして、それから必要に応じふやしていく、その場合には五十人ぐらいではないかというふうに言われておりますけれども、その点はちょっと正式な発表を待ちたいと思っております。  他方、我が国は、派遣いたします場合には当然のことながら文民でございます。この点につきましては国連側と非公式な意見交換を行っておりますけれども、今回のアフガニスタン合意につきましては、ソ連軍の撤退のほかに内政不干渉の問題、難民の問題等々があるわけでございます。したがいまして、そういう政務調整的な分野、つまり文民の部門がある、これは恐らく軍事部門に比べて大変小規模だろうとは思いますけれども、そういったものがあるという想定のもとに、要請があった場合には我が国として文民を派遣したい、こういうふうに考えているわけでございます。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、間接和平交渉の最終合意を支持するように訴えた今回の立て役者であるコルドベス国連事務次長の呼びかけに対して、アフガニスタンの反政府ゲリラ側はパキスタンに協定に調印しないよう働きかけをしたり、アフガニスタン領での民間機をミサイル攻撃をして撃墜したり、テロ活動が大変活発化しているというふうに言われております。今回の合意事項に、アフガン内戦の停止規定、あるいはソ連撤兵後の政権も不透明ということを考えたときに、なかなか困難な問題があろうかと私は思うのですけれども外務大臣はその点はどうお考えでしょうか。
  59. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 和平、停戦の合意というものは私たちは大いに歓迎しますが、その後を本当にスムーズに持っていきたいというのが日本立場でございます。何分にもパキスタンに難民がいる、またゲリラ部隊もいるわけですが、聞くところによれば七グループぐらいはいるという話ですし、さらにはイランにもいるし国内にもいるしというようなことで、こうした間の葛藤というものがないことを私たちは祈っていかなければなりません。  それと、暫定政権の構成というものも今後重大な問題でありまして、国連の事務次長がそのために本当に身命をささげて頑張っておるという姿には私たち敬意を表しておりますが、そうした意味合いにおきまして、困難を乗り越えてあらゆる問題がうまくはかどるように日本も応援をしなくてはいけないと思います。しかし、非常に難しい問題もまだ内包されておるのではなかろうかな。めでたい合意のときに余り私が難しい難しいと言うことはどうかと思われますが、そうした問題もあることはあるということは私たち認識しておる。しかし、そうしたことを乗り越えて国連が頑張り、我々も頑張り、また当事国も頑張られるであろうという見通しでございます。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三回の国連軍縮特別総会が五月三十一日から六月二十五日において実効的な軍備管理、軍縮の促進を訴えていくとありますけれども、今の国連を中心とした機能を充実させ、国連に世界的な統合のシンボルとしての権限と権威を持たせる必要があるのではないだろうか。今日まで国連の常任理事国の拒否権が大国支配に利用されてきたことは周知の事実でありますけれども、国連の果たすべき役割を外務大臣はどのように認識をされておられるかということであります。今回アフガンの問題について国連の果たした役割は本当に高く評価したいと私は思っておりますし、そういう国連中心の外交とか国連の権威あるいは権限というものをこれから高めていく必要があるのではないかと思いますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在、世界に百五十八カ国でございますか国連参加国がある、そのほかに未加盟の国々もあるというふうな事態から考えますと、地球上におきましてそうした国々がそれぞれ独立をし、その独立を守っておる、そしてそのためには平和が必要である、かように考えてまいりますと、国連の果たす任務というものはまことに大きなものがある。したがいまして、我が国といたしましては国連加盟以来、国連重視という政策をとってまいった次第でございます。したがいまして、あらゆる面において国連に協力をして、常に国連が権威あるものでなくてはならぬという今の御指摘はそのとおりだと私も思います。  最近ややもすると国連に対する負担金がちょっと滞りがちであるという話もちらちら耳にしたり、例えばイラン・イラク戦争におきましても、せっかく国連の安保理において決議をしましたものをなかなか率直にイラン側が受け入れておらない、そして今日あのような状態になっておるということ等々を考えましても、ではだれが仲裁に入るのだ、国連憲章に示されておる幾つかの平和等々の問題に関しましてだれが何をするのだということになりますと、やはり国連が一番中心でなくてはならぬということでございます。国連があるなればこそ事務次長が頑張って米ソ大国も今回のアフガンの和平を見るに至った、こういうふうに考えてまいりますと、おっしゃるとおりでございますから、我が国といたしましてはあらゆる面で国連の模範国になろうねということで、今日、国連体制に非常に協力をいたしておるというのが日本立場でございます。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私、今の外務大臣の御答弁はそのとおりだと思います。国連における日本立場というものがこれからますます重要になる、そういう認識のもとに、ぜひ国連外交を権威あるものにしていただきたいなと思っております。  先ほどもお話ししましたように、五月末、第三回の国連軍縮特別総会で真に実効的な軍備管理、軍縮促進を訴えていくということでございます。ちょうどトロントのサミットがあるわけでありますけれども、竹下総理大臣もぜひこの総会に出席して軍縮についての演説をしたいという御意向だと承っておりますが、竹下総理大臣の日程はどういうことなんでしょうか。それと外務大臣の日程についてはどうされるのでしょうか。まことに今回は米ソの首脳会談が開かれるという中にあって重要な位置づけだと私は思っているわけでありますが、その点についての日程をお聞かせいただきたい。
  63. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理みずから軍縮会議に出ていただきたい、そしてそこで我が国の軍縮に関する基本線、理念、理想、そうしたものを述べていただきたい、かように思っております。時しも、今お話しのとおり米ソ首脳会談が開かれておるときではなかろうかと思いますが、それはそれとして我が国立場は鮮明にいたしたい、かように思っております。  外務大臣といたしましても本来お供するのが当然でございましょうが、ちょうどその時期に所用がございますから総理だけの御参加になるのではないか。私といたしましては、秋に国連総会がございますからそうした機会我が国の外交方針を申し述べたい、かように存じておる次第でございます。  日程に関しましては政府委員から申させます。
  64. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 国連軍縮特別総会は五月三十一日から六月二十五日まで開かれますけれども、一般演説は六月一日から始まることになっております。そこで、まだ日程は確定いたしておりませんけれども、できるだけ早い時期に総理に軍縮に関する一般演説をしていただくということで準備を進めているところでございます。
  65. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、まだ日程についてははっきり詰めていないということでしょうか。     〔近岡委員長代理退席、戸塚委員長代理着席〕
  66. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 現在各国からの演説の要請等を事務局等で整理しておりまして、演説日程がいつになるのか、そういったことはまだ確定いたしておりません。したがいまして、私どもといたしましては軍縮特別総会が開かれましてできるだけ早い時期に総理に御演説いただくということで準備を進めておりますけれども、最終的にはまだ確定をいたしておりません。
  67. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このところのいわゆるINFのグローバルな全廃等核軍縮が軌道に乗ったのは、やはり何といっても東西の対話による信頼感の増幅によるだろう。ソ連との間の対話をどのように今後進めていかれるのか。今度は向こうが来るのだ、だから待っているというのではなくして、こちら側から積極的に対話の機会をつかんでいかなければならないわけでありますけれども、具体的にソ連との接触の日程はことしどういうふうになっていましょうか。
  68. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御承知のとおりに、首脳会談は一日も早くあった方がいい、こう思っておりますが、米ソの首脳会談の方が今大変重要視されております。したがいまして、先般私と会見をいたしました、ソ連の外務次官が二人参っておりますが、このいずれもが竹下・ゴルバチョフ会談というのはその後になるということをお伝えしなければならないというふうに申しております。  その次に、我が国においては鳩山総理、田中総理、鈴木総理、中曽根総理と四人も首脳が、中曽根総理の場合にはチェルネンコ書記長のお悔やみに参られたわけでございますが、訪ソしておる。したがいまして、本当に口先だけではなくして日本と親善を結ぶというのならば、今度はあなたの首脳が我が国に来てもらう番である、これだけははっきり申し上げましょうとその都度申し上げておるというのが現状でございます。  また、外務大臣会議は、今度はソ連日本へ来てもらう番。外相会談というのは、世界の通例といたしまして、交互に訪問し合ってそして定期外相会談を開く、かようになっております。したがいまして、今度はシェワルナゼ外相が日本へ来てくれる番ですよ、こういうふうに累次申し上げておりますが、これも十二分にシェワルナゼさんの頭の中にはインプットされております。今度は東京に行かなければならないと十分に承知しております、ただ、その前に米ソ首脳会談という大きな会談がございますから、これをし遂げて、そういうチャンスを速やかに選びたいと思います、こういうことでございます。今、政府間の会談ということになりますと大体そういうことである。  それ以外に、先ほどもちらっと話が出ておったわけでございますが、事務レベルの協議はことしもなされておる。さらに民間の日ソ、ソ日というような協議もことしはなされておるというのが現状でございます。
  69. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、その外相間の定期会議はことしのいつごろになるのか、そしてまた、そのときの具体的な政治テーマ、日ソ間においてはいろいろあるわけですが、大体その政治テーマになると予測される問題はどんなものをお考えでしょうか。
  70. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今のところ東京における外相会談は秋以降になろう、こういうふうに考えております。  政治テーマは、言わずもがな、二国間の速やかに平和条約を結びたいというのが私たちの願望であり、またソ連もそうだろうと思います。しからばやはりそれ以前に、北方四島の問題は常に主張いたしておりますが、この四島一括返還ということは大切な議題であるということは申し上げなければなりません。そのほかにも、社会主義と我々西側陣営との差はございますけれども、大切な隣国でございます。したがいまして、経済、産業、さらにはまた文化、スポーツ等々のあらゆる部面におきましていろいろな話題が出ることだろうと思います。そうしたことも事務レベルにおきましていろいろと協議もし、また民間におきましても先ほど申し上げましたような会議が重ねられておりまするから、そうした中から、私たちといたしましては本当に両国の親善を図り、まあいろいろ問題もございましたが、その改善を図るという意味合いにおきましても具体的な問題を取り上げたい。そのときになって、今非常にラフな申し上げ方をしましたが、大体そういうようなカテゴリーの中でいろいろな問題を取り上げたい、かように思っております。
  71. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 北方領土問題というのはやはり日ソの間においては避けて通れない問題でありますけれどもソ連はいわゆる政経分離ということを盛んに言っているわけであります。これについて外務大臣は、ソ連が言っている問題について、まず北方領土というものを基本的にどうするのかということから入らなければというふうにお思いなのか。ソビエトはいわゆる西側の先端技術というものに対しては盛んに食指を動かしておりますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  72. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 北方四島の問題は、私も本会議の外交方針の一つの柱といたしまして申し上げたようなことであり、これは粘り強く常に我々は固有の領土としての存在を主張することが大切だ、かように思うのでございます。例えば、今回のINFのグローバル・ゼロの問題に関しましても、米国の首脳は私たちに次のように言っておりました。やはり何でも交渉というものは粘り強いことが必要であって、こうした問題も、実はブレジネフ、さらにはアンドロポフ、チェルネンコと三代を経て、やっとゴルバチョフ書記長時代に米ソがその問題に関しては合意するに至ったのだ。恐らくゴルバチョフ書記長も、軍部がいるという観点からすれば非常な指導力を発揮されたろうし、アメリカにおいてもやはり相当な指導力をお互いに発揮して、そして粘り強く交渉した結果この成果を得た、こういうふうに言っておりました。したがいまして、あくまでも北方領土一括返還という問題は、我が国といたしましても粘り強くやらなければならない問題である、かように承知しております。  しかし、それはそれとして、やはり先ほど申し上げました経済なりあるいはまた文化なりスポーツ等々の問題におきましては両国の交流は続けられております。だからといって、政経どうなるのだという問題でございますが、やはり我々といたしましては政経不分離であるというふうな方針のもとに臨みたいというのが日本立場でございます。
  73. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうは水産庁の方に急に来ていただきましたが、ことしの初め日ソサケ・マス交渉が始められておったのですが、このところ中断されております。本年度のサケ・マス交渉はいつごろから始まる見通しなのか、見通しはどういう状況なのか、それで何がネックになってるのか、そういうサケ・マス交渉の全体像について御説明願いたいと思います。
  74. 海野研一

    ○海野説明員 お答え申し上げます。  日ソのサケ・マス交渉につきましては、今御指摘のとおり、三月半ばに中断して現在に至っているわけでございます。特に両者の間の主張に大きな隔たりがございましたのは、ソ連側は一九九二年までにサケ・マスの沖取りを全面的に禁止すべきだということを主張いたしましたし、日本側としては沖取りというものは日ソの協定で認められた行為である、これは継続すべきだということで平行線をたどっているわけでございます。そのほかに、本年のサケ・マス漁業の操業につきましても、漁獲のクォータの問題、操業水域の問題、取り締まりの強化の問題というもので、それぞれに双方の主張にかなりな隔たりがございます。  そういう意味で、一たん中断して双方ともに内部で検討して再開ということにいたしたわけでございまして、次回は四月二十五日からモスクワで再開されるということになっておりますが、これは交渉で相手があることでございますので、見通しがどうかということになりますと、事前に予測することはなかなか難しいわけでございます。  ただ、それにいたしましても、この北洋のサケ・マス漁業というものは多数の漁業者が関係している重大な漁業でございます。関係漁業者とも十分相談しながら、双方にとって受け入れ可能な結論が得られるように最大限の努力をいたしたいと考えております。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 漁獲割り当て量をソ連の方は大分減らせというふうに主張してきておりますけれども、前年度の実績程度はいくのか、それともそれを上回った実績がとれるのか、その点はどうなのですか。これから交渉ということになるのでしょうけれども、これはサケ・マス漁業に従事している漁民の死活問題ですから、ぜひ御努力をお願いしたいわけでありますが、その点はどうなのでしょうか。
  76. 海野研一

    ○海野説明員 前回の交渉の最後に、ソ連側が昨年及び一昨年の実績程度ということを申しました。ソ連側に言わせれば実績だけとれればいいではないかというお話でございますが、これは、ソ連とのサケ・マス交渉は毎年細かく水域を分けまして、かつその中で魚種別に分けておりますものですから、そういう意味では、去年の実績程度の漁獲割り当て量ということでございますと、実際の漁獲は魚種別のクォータが天井につかえるということで去年の実績まではいけないということになりますので、実質的に去年、おととし程度以上はとれるような妥結を目指して私どもとしては何としても頑張りたいと思いますけれども、ただ何分にも事前にどうなるかということは予測しがたいものでございますので、御了承いただきたいと思います。
  77. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題に直接関係はないのですが、先ほどの政経不分離、語尾が少しはっきりしなかったという問題がございますから改めて申し上げておきます。  無原則な政経分離はとらない、こういうふうに私ども立場を申し上げておきます。
  78. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 水産庁、御苦労さまです。頑張ってください。  それから、これから行われるモスクワでの米ソ首脳会談、これはこれからの我が国とソビエトとの外交にも大きく影響するだろうと思います。ソ連経済の行き詰まりを改善するためにゴルバチョフ書記長はペレストロイカに手をつけて精力的にやっているわけです。ソ連としても西側との話し合いを進めようという機運に大変目覚めてきているということは、このところのソ連の態度によってもよくわかるわけでありますが、このチャンス、ソ連も近隣ですから、対話を進めていくという意味においては、日本ソ連との話し合いを進めるには大変によいチャンスではないかと思うのですが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  79. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間の第一回のレーガン・ゴルバチョフ会談でINFのグローバル・ゼロ、こうしたときには米国からも特別に日本にいろいろな説明に来てくれました。事前に随時いろいろと相談があるわけですが、その結果を責任ある人が大統領特使として私に説明に来てくれました。それと相前後してソ連からも、今回の合意はこういう内容であるということを説明に参っております。そうしたことから考えましても、そうした雰囲気というものは十二分に醸成されておる。  だから、一方的に私たちは何も否定するわけじゃなく、そういう雰囲気が醸成されることを歓迎しながら機敏に対応していくことが必要である、かように思っております。
  80. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 イラン・イラクの紛争はかなり長い間にわたっておりますけれども、最近の戦闘において化学兵器が使用されて、その結果ハラブジャで多数の民間人が死傷したということが報じられております。化学兵器の使用というのは、国連憲章、国際人道法に対する重大な違反であります。当然これについては厳に禁止されるべきであると思っておりますが、政府はこの問題についてはどのようにお思いでしょうか。  そして、先ほどお話がありましたように、イラン・イラク紛争については国連が第一義的に主導的な立場をとらなくてはならないと思いますけれども日本はイラン・イラクから中立的な立場にあって、そういう意味からいうならば紛争当事国が日本に対してはそれぞれに等距離にある、そういうことから、日本としても両国に対して外交チャンネルを通じて、紛争ということがいかに国を疲弊させ多くの民衆を困らせるかということは戦争当事国が一番よく知っているわけですから、外務大臣日本としてもそれについて具体的にイラン・イラクに呼びかけるようにお願いしたいわけですが、その点どうなのでしょうか。
  81. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 特に旧臘十二月は日本が国連安保理の議長国でもございました。そしてまた、既にこの問題には国連事務総長が奔走されておりまして、五九八というナンバーのついたものが両国の紛争解決の決議として決定いたしております。内容は即時停戦、撤兵であります。  これをイランがなかなかのみません。だから、私は、十二月にイランの外務大臣のベラヤチさんに直接お越し願いたいということを要請いたしました。同時に、イラクに対しましても、公正に扱わなければなりませんから、栗山外審等々をお送りしたわけです。  そのときのベラヤチさんに対しましても、まず国連決議、先ほど鈴切委員も申されましたように、国連という機関があるのだから、これを尊重してもらわなくては話にならないよ、日本だって今イラン・イラクに対しては本当に西側陣営としては珍しいほどの友好国である、お互いに話し得る立場にあるのだから、話しにくい国が多いときに話しやすい国に話してほしいものだ、どういう内容なのだと、実はいろいろお話をいたしております。しかし、こちらからも、速やかに国連決議を尊重してそれに従ってほしい、でなければ日本としても守り切れないことがあるかもしれぬ、ここまで実は申し上げたような経緯もございました。  そのうち、イラクからは外務次官のザハウイさんという方がやってまいりまして、この人とも十分に話し合いました。その直後にああいうふうなミサイル攻撃が始まった。私たちも力がないのかなと思いますけれども、これにはこれの別の要因もあったようでございます。  しかし、私は少なくとも戦争の無意味なることをお話ししました。何かイランにおいてはどんどん若者たちが戦争に行くことをこいねがって、それを鼓吹している向きがあるかもしれぬが、日本においても戦争中、私自身が学徒出陣で行って、幸いに五体健全で帰ったが、もっと優秀な、もっと立派な人がいっぱい日本にはいたはずで、それらの人材が失われたということを考えると、若い者だから戦争で戦死していいというはずはない、やはり人材は大切にしなくてはいかぬ、こういうことまで実は私ははっきり申し上げたりしながら、盛んに停戦と撤兵ということを両国にお願いしたような次第でございます。  したがいまして、今おっしゃるそうしたお気持ちを我々も国会のお気持ちといたしまして、さらに政府といたしましても努力をしなければならぬ、かように考えております。
  82. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さきのワシントンにおける米ソの首脳会談でINF全廃条約がグローバルな形で取り上げられ、核軍縮の一歩を踏み出したことについては私は大変に評価をいたしておりますが、本年五月二十九日から五日間、モスクワで米ソ首脳会談が開催されることが決定して、戦略核五〇%削減ができるかどうかが焦点になってきているわけであります。  この問題で、日本としては米ソ核超大国に何を望み、いかなる役割を果たそうとしているのか。西側の一員として当然アメリカからもこういうことについての情報が寄せられていると思うけれども、それを踏まえてどうお考えになるのか。きょうのアフガンのいわゆる合意調印という問題は、米ソ首脳会談に好影響を与えるだろう。だから私は、その中にあっての五〇%削減というものについては期待をしている一人ですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ホットニュースと申し上げては僣越でございますが、きのう外務省の村田次官が帰国しました。村田次官にも手分けして、外交は大切にしようということで十日ばかり欧州を回っていただきました。  その帰国報告の第一番目に、かねて欧州は日本と遠い国である、そういうような思いであった、また安全保障に関しては、もう日米だけの問題で欧州は関係ないのだというふうな意識が強かったのだが、今回のINFのグローバル・ゼロという成果を見たとき、いかに西側陣営の結束が大切かということが初めてわかりました。なおかつ、さきのウイリアムズバーグ・サミットにおいて前総理が極めてそのことに触れられて、そしてアジアにおいてもグローバル・ゼロが必要なのだ、SS20の撤廃を強く叫ばれた。そうしたことが今日の成果を得たということになれば、西側陣営は今までの遠い日本ではなくて、西側というものが掲げておる一つの自由主義、そうしたものを守るためにも、さらにがっちりとお互いが手を結ばなくてはいけないねというふうな意識が非常に燃え上がっておりましたという報告を聞きました。  だから私は、そうした西側陣営の結束というものが第一回目のレーガン・ゴルバチョフ会談を成功せしめたと思います。そうした結束のもとに、両巨頭がお会いになって両国が幾つも抱えられておる問題を速やかに解決をして合意に至っていただくということは世界人類のためにも必要である、その意味で、我々といたしましては、ひとつ西側結束の先頭に立ってやっていかなくちゃいけないね、こういうふうに思っております。  ただ、一般的に専門家等々が申されますと、今度の戦略核の五〇%削減というのは非常に難しい問題に米ソは挑戦しておられる。ここに一つのミサイルがある、これは廃止なのかあるいは存続なのかと言っても、移動した場合にどうなるのだ、こういうふうに専門家はいろいろと論評を加えておられますが、しかし我々といたしましては、そのような難しいところを乗り越えて両国があらゆる問題で合意をしていただきたい、かように思っておりますので、私たちにも西側陣営の中における一つの大きな役目がある、かように思っております。
  84. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 基本的にはいわゆる戦略核五〇%削減の合意があるわけですけれども、今お話がありましたように、一番難しい問題はやはり検証の問題だろうというふうに思います。INFにおいては、よくあれだけ踏み切ったなと驚くほど実に大胆に検証問題を進められて、その困難を乗り越えられたという実績があるわけでありますが、戦略核削減はいわゆる検証問題が技術的に非常に難しいと言うのですけれども、どの点がネックになるのでしょうか。
  85. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 まさに検証の問題というのは残された非常に難しい問題だというふうに承知しておりまして、連日ジュネーブで米ソの間で交渉が行われております。  私ども直接この交渉の当事者でございませんので必ずしも有権的な御説明ができかねるわけでございますけれども、一応私どもが承知しておりますのは、米ソの先般の外相会談等の経緯にかんがみてみましても、まず基本的には、今回の戦略核兵器の削減につきましての検証は、INFの場合と違いまして五〇%削減ということでございます。したがいまして、全廃する場合にはあるかないかということですけれども、五〇%ということは、つまり五一%であるのか、いややはり五〇%以内であるかといった、技術的に非常に難しい問題がまずございます。それ以外にも、先ほど大臣の方からも御答弁がございましたけれども、移動性のICBMの問題であるとか空中発射の巡航ミサイルであるとか、その他検証技術の面で、お互いが信頼、つまり確実に削減が行われているという確証を持つためにどこまでやったらいいかという点が大変に難しいのだというふうに承知しております。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 NLPについてちょっとお伺いします。  安全保障面におきます日米協力関係が着実に進展しているということは、両国の間における信頼性の維持向上の観点でまことに重要であります。  日米間で解決しなければならない問題の中の空母艦載機の夜間訓練場の確保について、第一義的にそれを進めているのは防衛庁でありますけれども、外交ルートの交渉についてはやはり外務省がその窓口になるわけであります。  外務大臣によく認識していただかなければならない問題は、二月に行われた三宅島の選挙の結果、反対が十一、賛成が二、中間派が一と、十四の議席が決定をいたしました。御承知のとおり、既に防衛施設庁が三宅島を候補地と決めたのが昭和五十八年ごろですから、自来五回の村長選挙あるいは村議会選挙を通じて三宅島に設置することの是非を島民に問うということになったわけでありますけれども、島民の約八〇%から七三%は実は反対であります。国と島民との話し合いを選挙公約とした中間派は、三名のうち一名しか当選できないという状態が今回の選挙で判明したわけであります。となりますと、議会制民主主義の原則からいって、事実上三宅島のNLP基地建設は不可能であると言っても過言ではありません。とすると、いつまでも三宅島に固執して、できないものを米側にできるかのように言っていることは日米関係の信頼関係に大きな支障を来すだろうと私は思っております。  外務大臣としては、やはり外交の頂点にある以上、日米の関係というものは重視しなくちゃいけない、そういう意味からいって、信頼関係という外交の鉄則から見ても、三宅島ということでなくあらゆる可能性を模索して、NLPの基地というものの提供をできるだけ早くするように努力をしなければならないと思いますけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  87. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おっしゃるとおりに日米関係は外交の基軸でございますし、特に日米安保体制は、本当にかくのごとく日本の安全を保障していただきまして、我が国が大いに発達をするその根源となったということはだれしも否定することはできないと思います。だから私たちも、米国との間におきましては安全保障条約は効果的に運用して、そしてまた円滑に運用できるように常に考えなければならぬ、これが主たる考え方でございます。  今の夜間飛行機の着陸場の問題に関しましては、第一義的にはもちろん防衛庁の施策でございまして、私たちといたしましてもこれは当然日米間の問題として重要視して、私も党の最高幹部をやっておるときに、ほかにないのかいと言ったこともございますが、いろいろ選択した結果、もうここしかないというのが実のところは防衛施設庁の考え方でございます。しかも、おっしゃるとおりに、空母の艦載機が真っ暗な中で飛んだりおりたりすることは非常な修練を必要とするものでございますので、今それを厚木でやっておるわけでございますけれども、何分にも、騒音もございましょうけれども、やはり明るいということが一つのネックで、街の灯を消してしまえというわけにはまいりませんから非常に明るい。真っ暗な中で練習しなくちゃならぬ。しかも騒音とかそういう問題に関しては三宅島の方々には御説明申し上げて、鈴切先生も地元でございましょうが、私も一回行ったことがございます。  したがいまして、ここなら大丈夫だといっていろいろ検討した結果でございますので、我々といたしましては、ああいうふうな選挙がございまして民意というものも尊重しなくちゃいけないとは思いますが、やはりもう少しく政府のことを率直に耳に聞いていただくようなチャンスを島ではひとつやってもらえないだろうか。一方的に反対反対、やはりどういたしましても、そうなりますと一つの流れというものにお乗りになる向きもあるんじゃなかろうかと思いますから、過般来総理大臣も、これも予算委員会でいっぱい質問が出て防衛庁長官も答えておりますが、政府といたしましては、極力島民の方々にお願いを申し上げまして、住民の方々にお願いを申し上げまして、そしてこうした一つの使命を持ったものが、施設が三宅島にできることを許容していただきたい、こういう努力は今後も続けなくちゃならない、実はこう思っておる次第でございます。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣はまだ実際の状況をよくお知りにならないので、当然防衛庁というのも政府の一部ですから、一省庁ですから、それはそれなりにお考えになって今三宅島を鋭意やっているからというお考えでしょうけれども、ぜひ参考にしていただきたい問題が実は三つあるわけです。  三宅島がなぜそれじゃだめなんだということですけれども、まず第一に、三宅島の島民が七三%以上反対をしているというこの現実は直視をしていただかなければいけないだろうということが一つ。それからもう一つは、三宅島は国立公園で、一千二百万の都民の憩いの場所であると同時に自然環境が非常に恵まれておりまして、世界的な動植物が存在しております。だから自然保護団体の会長をしている英国のエジンバラ公も、三宅島の自然破壊につながるような基地建設については当時総理であった中曽根さんに申し入れをしているという問題もございます。もう一つは、三宅島は周期的に噴火を繰り返していつどこから噴火するか予測ができない特殊な火山であるために、非常に危険性が伴うということであります。言うならば、普通なら噴火口から噴出するわけです。ところが三宅島は、三宅島の今までの火山の状況を見ておりますと、ハチの巣のような火口があるわけです。私はこれが一番問題だろうと思います。  この点、防衛庁というのはタッチ・アンド・ゴーのいわゆる訓練場だけをということで、当然厚木の方それから三宅島の方──先ほどおっしゃったとおり厚木の方はだめだと、だから三宅島というそういう訓練場のことしか実は頭にないわけです。だけれども、世界的な軍事常識として、それに附帯する施設が必要になってくることはもう当然考えられる。それに必要な施設、例えて言うならば、もちろん後方支援とか貯蔵施設とかそういうものの設置をしなければならぬのです。僕はいろいろとアメリカの方からもそれなりに情報も聞いておりますけれども、そういうことなんです。  となると、いつと予測されない、大体十七年から二十年と言っていますよ、周期的ですから。三宅島の今までの噴火というのは十七年から二十年の間に噴火している。どこから噴火するかわからないのですよ。もしもそういうふうなときに、それらの施設を設置した場合、それこそ第二次災害が起こることはもう目に見えて明らかです。防衛庁の方は、いやいや訓練場だけつくればそれでいいのです、一切アメリカのそういう人たちはそこのところに派遣しません、フェンスもつくりません、調子のいいことをおっしゃっているけれども、そういうわけにはいきません。  例えば三宅島のところで訓練をしているときに事故でもあったら、すぐに消防が必要でしょう。いろいろの問題で、やはり後方支援という問題と、もう一つは貯蔵施設の問題というのがあるわけです。本当にそういう問題について懸念に思っているのは日本でなくてアメリカの方なんです。だから、もしもそういうことになってまいりますと、あのパキスタンの弾薬庫、あれは規模は大きかったのかどうか知りませんけれども、あのような大爆発を起こしたならばそれこそ日米関係の信頼というものは大きく損なわれますよ。そればかりじゃありません。アメリカがそういうところにもしそういうふうな施設を置いてそうなった場合においては、これは世界各国における西側の信頼関係にも影響してくる問題になるのです。だから私はそれを心配しているわけです。言うならば、三宅島、三宅島とオウム返しに言うのでなくして、少なくとも、国会においてこういう論議があったんだ、こういう論議があったんだけれども君の方はどうなんだということは、外交のチャンネルでいろいろ話し合いができるはずなんです。  私ども公明党は、自衛隊と安保、これははっきり言って是認しております。だからこそ、いつまでもこういう関係で、言うならば厚木の基地においての公害を巻き起こす問題、あるいは嫌がる三宅島に対する強行の手段に訴えようという動き、これについては私は絶対反対です。だから、できるならば、今や非常に大きく海洋科学も進展している時点にあって、第三の道というものもやはり考えなければならない状況になっているのじゃないだろうかということを私は外務大臣に申し上げるわけですが、外務大臣、ただ単に一辺倒に防衛庁がやっているからどうぞお願いしますというんじゃ、これはもうナンセンスですよ。やはり外務大臣はもっと高い見地に立って、私が今言っていることは外交チャンネルにおいてもいろいろと話し合われるべき問題だろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  89. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 政府立場は先ほど申し上げたとおりでございますので重ねて申し上げません。そうやっていろいろとお話がありました、そうしたことに対しましては私も承っておきます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 承っておくだけじゃだめなのよ。これについてはアメリカにもそういうふうな懸念があるのかどうか、それでも三宅島はいいよと言うのかどうか、そういう点を外交チャンネルで聞くのがあなたのお仕事じゃないのか。それはもう一回答弁していただかなければだめですね。
  91. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ヘイズ太平洋司令官も参りましたし国防長官ともお会いしましたが、実はそういう話は私たちの間では出ないのです。やはりアメリカもきちっといたしておりますから、あくまでも日米安保条約という条約解釈等々の話、また、今回御審議をお願いしなくてはならない労務の問題等々のお話は出ますけれども、そういうお話は出ておりません。しかし、火山についての一つの不安のお話をなさいましたから、こういう話が国会であったよということは、私はそうしたチャンスがあらば、どうなんですかとお尋ねすることは決してやぶさかではございません。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、ヘイズ司令官が来られたりなんかして、それはなぜかというと、日本の方で日米安保条約に基づいて基地を提供するのはこれは日本の方の義務なんですね。義務でしょう。それで、日本としては三宅島にします、こういうふうに言っている以上、いや三宅島はだめよと言うことは内政干渉ですもの、それは言えるはずはないんです。ですから、外交の問題としてはもう少し高度な立場に立ってぜひ進めていただきたいと思います。  運輸省にお聞きしますけれども、船舶技術研究所で多目的洋上浮体構造物の実用化に向けての研究が日本海沖で進められておりますが、多目的洋上浮体構造物というのはいかなる実用化を目指しての研究でありましょうか。
  93. 山本孝

    ○山本説明員 お答えいたします。  現在私どもの船舶技術研究所で研究をしておりますのは、各方面におきまして既に久しく洋上浮体構造物の利用構想として、例えば浮かぶ海洋都市だとか多目的沖合中継基地、あるいは浮かぶ海上空港等さまざまな提案がされておりまして、こうした提案といいますか、これに関連した研究ということで研究を行っております。  簡単に私どもが行っております研究の概要と経緯をあらかじめ御紹介させていただきたいのでございますが、私どもの船舶技術研究所では、こうした構想の実現に最も有力な形式の一つ考えられております半没水式の箱のような支持浮体を水面下にたくさん並べて、波の影響による構造物の動きが極力小さくできるような形式の浮体を考えております。これについて、初めは水槽実験などによります模型実験を行ってきたわけでございますが、後に、まず科学技術庁の科学技術振興調整費の研究の一環といたしまして、現在利用しておりますポセイドンを建造いたしまして若干の実証研究を行ったわけでございます。昭和六十一年度からは引き続きこの海洋構造物、すなわち、長さが三十四メートル、幅が二十四メートル、高さが二十六メートルのものでございますが、これにポセイドンという名称をつけております、このものを海洋科学技術センター及び地元関係者の御協力を得まして山形県鶴岡市の三キロの沖合に設置いたしまして、現在研究を実施しております。  この研究の目的でございますが、現在私どもの船舶技術研究所が行っております研究は、こうしたもろもろの構想に利用されるであろう構造物の一般に共通いたしました基礎的な課題に関する研究でございます。具体的に申し上げますと、外洋におきます海上の風波による海洋構造物の動揺、あるいは海洋構造物を高い波の中で安定的に係留する方式などについて研究を行っているものであります。したがいまして、特定の用途について実用化を目指すというようなものは私どもの研究の視点には現在のところ入ってございません。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 多目的ということでございますから、それは洋上浮体構造物ですね、そうすると、海上都市とか海洋資源探査あるいは海上空港あるいはレジャー施設等々あるわけでありますが、海上空港というようなことになりますと、これは一般論としてお伺いいたしますけれども、その海上空港の中には、先ほども話が出ましたNLPの飛行場というものも空港ですから当然含まれる、こう見ていいですね。何も私は特定の名前を云々というふうに言っているわけではありませんから。
  95. 山本孝

    ○山本説明員 先生の御指摘のとおり、私どもの方で行っております研究は、もちろん共通的な技術でございますので、浮かぶ海上空港にも当然に役に立つ部分があるわけでございます。  しかしながら、つけ加えさせていただきますと、こうした特定の用途ということになりますと。私どものやっておりますこういった共通的な技術のほかにも、それぞれの用途に応じた固有の技術課題というのが当然出てまいります。したがいまして、こういうものは、私どもというよりか、造船所など実際建造を担当することになるようなところとかあるいはユーザーの方々といった皆さんがそういった特別の課題についての研究をされるのが通常と考えております。  こういった観点からいきまして、私どもが現在行っておりますポセイドンの研究にはこういった特定の用途に固有の課題というのが入っておりませんので、私ども考え方の整理といたしましては、その具体的な、例えばNLPの飛行場、浮体式のもの、こういったものは含むとは考えておらないというのが実情でございます。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時事画報社の四月一日付のフォトには、特集として「進む海洋科学技術」を写真報道しておりますけれども、今おっしゃったポセイドンも入っているわけです。日本海の冬場の厳しい気象条件の中で係留して、係留力や構造など各種のデータを収集していると報じられておりますけれども、最近、そのデータの分析が当初予想されておったコンピューターシミュレーションのデータとほとんど大差がない、好結果があったというように聞きますけれども、その点はどうでしょう。
  97. 山本孝

    ○山本説明員 先生のただいまの御指摘のとおり、私ども今まで計測いたしました結果によりましては、確かにコンピューターでシミューレーションをやった結果とか水槽を使いまして模型実験をやった計算結果と大変によくマッチするような結果が続々と得られつつございます。  そういう研究の進展状況でございますが、何分まだ研究を始めまして実質上一年ちょっとでございますので、想定いたしました気象条件というものが、まだ現実には非常に厳しい条件がすべてあらわれているという状況ではございませんので、引き続きまたその実験を続けまして、ある程度長期的な中においてそういった計算、理論と実際が合うのかを確認してまいりたいと考えておる状況でございます。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今、大変に厳しい気象状況、海象状況においてそういうシミュレーションによるコンピューターのはじいた数値と現実が大体大差がないという結果が出た、その結果はいつ公表しますか。
  99. 山本孝

    ○山本説明員 この研究は昭和六十一年から六十五年度までの五年間という研究期間でやってございます。結果が出ますと逐次明らかにできる部分は公表してまいりますが、最終的に取りまとめとして公表ができるのは昭和六十五年度以降ということになります。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 逐一公表するというのですけれども、それでは、今の状況の中にあっての分析は近々いつ公表できるのですか。
  101. 山本孝

    ○山本説明員 中間的な段階では特に報告書という形で公表できるような形のものはつくりませんが、一応年度が終わりますたびに簡単な記者発表程度の資料はつくりまして公表いたしております。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今のような状態で、一番懸案になっている問題もかなりまた方向性も違うような形が出てくるだろう、私は一つはそのように期待をしているわけです。  きょうは一時から本会議だということでございますから、アパルトヘイトの問題について来ていただきました通産省の方に対しましてはまことに申しわけありません。時間的にもう大体本会議が迫っている時間でございますので、アパルトヘイトに入りますと若干また時間がかかりますから、この程度にさせていただきたい、そのように思うわけでございます。大変どうもありがとうございました。
  103. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ────◇─────     午後二時四分開議
  104. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  105. 上原康助

    上原委員 最初に、在外公館の法案の件でちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回の法案は、在外公館に勤務する子女の教育費加算額の限度を改定をする法案のようです。私たちもそういった必要性については理解をいたしておりますので賛成でありますが、一、二点お尋ねをしておきたいことは、理解はしているつもりですが、この子女教育手当の推移を見てみますと、いわゆる定額については四十八年に一万二千円、それが五十二年に一万八千円に改定をされて以降、今度の改定においても定額じゃなくして加算限度額の改定というふうになっております。これは駐在する国の制度なり国情によって違いますのでそうなっていると思うのですが、この関係について少し御見解を聞いておきたいと思いますし、定額改定の必要性はずっとないのかどうか、御見解をただしておきたいと思います。
  106. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま委員指摘のように、確かに定額を改定するということも一つ考えかと思います。  御指摘のとおり、昭和五十二年から現行の一万八千円ということで据え置かれているわけでございます。ただ、その後の状況などを一人一人に当たりましてその実態の調査をいたしましたところ、全体としてなお不足であるとはいえ、特に大きな変更を要するところに各地域間のアンバランスであるということがございますので、定額はそのまま据え置きまして加算限度額を引き上げる、その中で各地の事情に応じましての事実上の加算をしていく、こういうやり方が適当であるということに落ちついたわけでございます。
  107. 上原康助

    上原委員 それと、今回かなり大幅な改定と見て差し支えないと思うのですが、今度改定をすることによって、当面そういった在外公館勤務の職員の皆さんの子女の教育費という面では、十分とは必ずしも言えないかもしれませんが、当面相当とお考えなのかどうか、その点もあわせてお聞かせください。
  108. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 今回の改定を御承認いただきますれば、現在、昭和六十二年度におきまして自己負担を必要としておる子女の比率、これが八・一%でございますが、それが六・六%に下がる。これは昭和六十年の状況に下がるということでございますし、実額で申しますと、平均自己負担額が昭和六十二年度におきましては二万四千六百円でございますが、これが二万二百円ということになるわけでございます。いずれにしましても、なお不足の面もございますが、今回の措置を御承認いただきますれば大きく前進というふうに考えております。
  109. 上原康助

    上原委員 次に、ほかにも子女の教育問題等々もこの委員会でかねてから議論されてきましたが、そういうことは相当改善をされてきているようでありますので、まあ余り過分な改定とか改善は必要でないと思うのですが、それ相応の改善策というのにはぜひ今後も御配慮すべきじゃないのかという意見だけ申し上げておきたいと思います。  そこでもう一つは、これも絶えず議論されてきていることですが、在外公館、いわゆる大使館とか事務所、公邸等の独自のものを確保したいということが非常に強いわけですね。  昨年でしたか、東欧、ルーマニア、ポーランドを視察したときも、特にポーランドはもっと外交的に重視していい国じゃないのかという感を私は深くいたしました。ソ連、東欧圏との接点として、いろいろな重要な位置づけ、意義づけをされているのじゃないか。だが、実際現地に行っていろいろ聞いてみますと、大使館にしても公邸にしてもなかなか手狭であるし、非常に支障を来しておるという話も率直に聞きましたので、今、円高・ドル安、ドル圏じゃないのではっきりは知りませんが、それなりに独自の大使館や公邸を確保する、充実していくという面では日本は非常にいい時期にあるのではないかということで、どう改善をされていかれようとするのか。ルーマニアもそうでした。ルーマニアの国情は大変厳しいというかいろいろあるようですが、いずれにしても我が国のそういった在外公館の皆さんがいらっしゃるわけですから、そういうことに対しての御見解をぜひお聞かせいただきたいと存じます。
  110. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 上原委員が昨年東欧を御訪問の際に、我が在外公館の現状を親しく御視察いただいたことに対して感謝を申し上げます。  まさに御指摘のように、東欧のみならずでございますが、ルーマニア、ポーランドの大使公邸及び事務所が非常に老朽化しておる、また狭隘であることは我々もよく存じておりますし、いろいろな方面から指摘も受けるところでございます。この二公館について申しますれば、社会主義国であるということもございまして、この修理あるいは拡張等、特にポーランド大使公邸につきましては拡張ということもいろいろ考えておりますけれども、もちろん取得については非常に困難でございますし、なかなか実現しないという面がございますけれども委員の御指摘もございますし、今後ともさらにこの方面で努力してまいりたいと思っております。  さらに、一般的な問題といたしまして、これはもちろん財政当局等の御理解を得ながら、我が在外公館の整備について、我々といたしましては外務省予算の中で一つの重点事項としてこれを推進していきたいと存じておる次第でございます。
  111. 上原康助

    上原委員 今の件について大臣の御決意も一言聞かせてください。
  112. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在、外務省が五千名体制で本当に懸命の努力をし、このことに関しましては、外交重視の今日、国会におきましても与野党の先生方から大変理解と御支援を仰いでおることに対して感謝いたしております。  具体例としてその中の一つの大使館の問題、今官房長が答えたとおりでございまして、なお一層、こうした問題に関しましても、私といたしましては皆さん方のお声を基として財政当局と十二分に折衝していきたい、かように考えております。
  113. 上原康助

    上原委員 ぜひ前進するように、現地努力している皆さんの期待に沿っていただきたいと思います。  次に、せっかくの機会ですので、外務大臣に日ソ関係について少しばかりお尋ねさせていただきたいと思います。  けさほども他の同僚委員の方からお尋ねがあったような感がしますが、御承知のように、昨年十二月、米ソ首脳会談でINFの全廃が合意され、ことしは五月末にモスクワの米ソ首脳会談で戦略核の五〇%削減というのがほぼ実現を見るであろう。これは、この二、三年ないし四、五年の米ソ間では考えられなかったほどの友好といいますか、緊張緩和の方向に向いていると思うのですね。  反面、じゃ日ソ関係はどうかということになりますと、大変残念なことに、日本政府ソ連というものを仮想敵国視している、あるいは一方においてアメリカと軍事同盟国という面で非常な軍事力、共同行動をしている、こういう背景も相当阻害要因になっていると思うのですが、そういうこともあって日ソ関係の改善は米ソ間以上に立ちおくれているのじゃないか、こう受けとめざるを得ない面もあるわけですね。  そこで、きょうは御承知のようにアフガンからソ連軍が撤退をするという、米ソあるいはパキスタンを含めてのそれぞれの取り決めというか協定が締結される歴史的な日でもあります。日ソ間の改善という面からすると、そういった国際情勢にこれまで余りにも消極的ではなかったかという気持ちを持ちます。中曽根前首相も対ソ外交には非常に意欲を見せて力を入れてきておったわけですが、残念ながら諸般の情勢でゴルバチョフ書記長の来日も実現はいたしませんでした。  そこで、竹下内閣として対ソ外交をどのように進めていかれようとしているのか、まず外務大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  114. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我が国の外交の基本は、あくまでも西側にいる、そして太平洋・アジア諸国の一員である、これは紛れもないことでございます。しかし、ソビエトも、たとえ社会主義といって我が国とは体制の異なる国家とはいえ貴重な隣人である、だから当然隣人は常に大切にしなければならない、これが私たち考え方でございます。  したがいまして、双方ともに速やかに平和条約を結んでなお一層恒久的な友好親善を図るべきである、これが私たち気持ちでございますが、いかんせん、御承知のとおり四島という北方領土の問題がございます。我々といたしましては、これはあくまでも固有の領土である、したがってこれをまず解決しましょう、その後において速やかに我々は平和条約を結びましょう、これが基本的な姿勢でございます。  それもソ連との交渉あるいは会議におきましては我が国といたしまして主張しなければならない一つの重要な点ではございましょうが、他に経済、文化さらにはスポーツの面におきましても相当交流が続けられておる。現に、昨年私が就任いたしまして以来も、ソロビヨフ大使との間におきまして文化協定を結びまして、近くその文化協定を実行に移すためにかなり大きな規模のデレゲーションがソ連を訪問いたすことになっております。そうしたことを通じましてお互いに理解を深めていくということが大切なことではなかろうか。経済に関しましても、十二分に御承知のとおりに、日ソ、ソ日の会議等もついこの間開かれたような次第でございますし、産業界、経済界においてもそうした意味合いの実績は着々と重ねつつあるというのが現在の我が国ソ連関係でございます。  今、上原委員から仮想敵国という言葉が出ましたが、我が国には仮想敵国はありません。
  115. 上原康助

    上原委員 後のことはお立場上そう言わざるを得ないかもしれませんが、これは常識論からしてそうは見ていないですね。  きょうはそのことはさておいて、今お答えがありましたように、前内閣から、もちろんそれ以前もそうでしょうが、新しく外務大臣に御就任なされた宇野外務大臣初め相当日ソ関係の友好というか親善に力を入れてこられている、何とかしなければいかぬという御努力はしておられると私は思うのです。だが、ずっと言っている基調というか基本は同じなんですね。日ソ平和友好条約の締結、その前提として四島一括返還だ。我が党は必ずしも四島ということに限定はいたしておりませんが。それは私も北方四島が固有の領土であり、早期返還をすべきである、また不当に占拠をしていることについては不満を表明するわけですが、しかし今のような対ソ外交姿勢ということではどうも進展しないのじゃないかと私は思うのですね。北方領土返還とか四島問題を棚上げせよとか、それはさておいてほかのことからやれという主張はいたしませんが、もう少しいろいろ考え方は、知恵はあるのじゃないのかという気がしてならないわけです。  といいますのは、今のように、北方四島を解決するのが先だ、それが進まないから友好条約もできないということになりますと、これは百年たっても二百年たっても解決しないかもしれませんよ、正直申し上げて。では具体的に北方四島を返還させるような国際情勢なり日ソ関係なりあるいはアジア情勢というものを創出していく努力日本政府としてどうやってきたかというと、余りそこには成果らしいものはないのですね。そのことはどうお考えなんですか。  今のように膠着した状態から脱皮をして、本当に日ソ間の信頼関係を確立して、北方領土の問題なりおっしゃるように平和友好条約を締結していく具体策はどういうふうにお持ちなんですか、これが一つも明らかにされていないのじゃないですか。
  116. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 世界史をひもときましても、困難だなあという問題を二国間において解決したという例はしばしばございます。  今日、もし結果的に眺めるとするのならば、先ほど上原委員もちょっと触れられましたが、INFのグローバル・ゼロというようなことは本当によくできたなと。いろいろと評価をされておりますが、これ一つとりましてもやはり米ソ間の努力が実ったということでございますね。先ほど私もちょっと触れましたが、かつてブレジネフ書記長、さらにはアンドロポフ書記長、チェルネンコ書記長、そしてやっとゴルバチョフ書記長の間にこれが実った。そのことはレーガンさんが、最初からもう四代かかったよ、やはり粘り強いということが必要だね、こういうふうな調子でおっしゃっておる。世界の歴史において、いろいろな問題を解決するためにはとにかくそうした努力が必要でございます。したがいまして、私たちもそういう努力をすべきである、こういうふうに考えております。  また、この間も日ソ間のあるセミナーがありました。そのセミナーの出席者のいろいろな声を聞いたのですが、もうソ連の若い方はもともとあれはソ連の領土だと思い込んでいて、一九四五年にソ連が不法占拠したというような歴史は全く知らない。そういうふうなことでございますから、我が国は、我が国の主張を撤回し、また、これをどこかへしまい込んでしまってほかの問題からやりましょうというわけにはいかぬ、これはひとつ御理解賜りたいと思いますし、この間も、御承知のとおり北方四島一括返還の民間団体の主催する祈念式がございました、祈念式というよりも決起大会のようなものが。このときには、自民党はもちろんでございますが、もう社会党も公明党も民社党も共産党も、各代表が全員出席されておるという重大な問題でございますから、これを軽々に具体策ありやとおっしゃいましても、今のところは我々といたしまして誠心誠意この問題に関しましては外交的な努力を続ける以外にない、かように思っております。  さような意味で、私は今週の土曜日から北方四島を視察しよう、これも一つの大きな日本の主張ではないか、かように思っております。
  117. 上原康助

    上原委員 それもわからぬわけじゃない。しかし、そういうことは歴代の外務大臣もやってこられたのですね、総務庁長官にしても。それを持続することは必要ですよ、継続は力なりと言うのですから。しかし、それを幾らやっても全然前進がないということは、むだ骨とは言わぬけれども、それじゃ北方領土は返りませんよ。私はもう少し積極的な外交方針があっていいのじゃないのかということを申し上げているわけです。我々は何もそれを棚上げしなさいとかあきらめなさい、そんなことは言ったこともないし、また言うつもりもございません。  例えば沖縄返還だって、日本が御承知のようにアメリカの数々の要求を受け入れてきたのですよ。これは固有の領土だ、返しなさい。アメリカとはソ連との関係のようなものはなかったから話し合いもついたとおっしゃるかもしらぬが、米側要求はすべて日本側が入れて、ある意味では沖縄を買い上げたんですよ、財政的な意味からすると。そういう歴史を私たちは否定できないと思うのですね。  ですからその意味では、北方領土の解決を図るにも、冒頭私が申し上げましたように、今大臣は仮想敵視していないということなんだが、しかし実際に日米間の軍事同盟関係あるいは軍事演習の実態等、三海峡封鎖論とか、一方においてはソ連をどんどん刺激する軍事展開をしておきながら、オホーツク海に横たわっている四島は我が方の固有の領土だからこっちに持ってこい、返せ、けしからぬと言ったって、そこには信頼関係、話し合いをするテーブルがないんじゃないですか。そういう国際情勢というものをもっと日米間でも創出をし、米ソ間においてもアジアにおいてもつくるというのが、私は本当の国益にかなった外交の姿勢だと思うのですね。  それが見当たらないから私たちはこういうお尋ねをしているわけです。またこういう主張をするわけで、ここはもう少し考えていただいて、最近の国際情勢の展開を見ますと、それはなかなか一朝一夕にはいかない、ソ連は信用できぬとおっしゃるかもしらぬが、ソ連は信用できぬという一応前提がある間で話そうとしたって無理だと思うのですね。まずそういった大きなわだかまりというか壁というものを取り払う努力一つ一つやって、日ソ間の信頼関係の確立をどうしていくかということが大事じゃないのか。その過程でしか領土問題も平和条約の問題も進展しないのじゃないのか。  したがって、シェワルナゼ外相が今度は夏から秋に来られるようだが、何も向こうから来るだけではなくして、こっちからも機会があればどんどん行く、首脳会談をやる、こういう雰囲気をつくってみたらどうかと思うのですが、いかがですか。
  118. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 外交にはそれぞれ難しい形式というものもございます。私は決してそれのみを尊重しようとはいたしておりませんが、ずっと我々の先輩が傾けてまいりました努力というものも参考にしなくてはいけません。したがいまして、こちらから三人も首脳が行っていらっしゃる、にもかかわらず一度も来ないというのはどうであろうか。そして、言葉の上におきましては、ソビエトといたしましても日本との関係改善を図りたい、こう言っております。現に、現在の大使のソロビヨフさんは非常に努力していると私は思うのです。  この間も、 エピソードでありますが、モスクワ芸術座の「ワーニャ伯父さん」を上演しておりましたから、私は、ひとつ参考のために見ておこう、やはりいろいろなことを見聞しておいて、外相会談のときには、難しい話もあろうけれども、コーヒーブレイクのときなんかはそういう話をすることがお互いの親善を深めるためだと思って行きましたところが、そのことを仄聞した大使が早速走ってきて、そして、私の席の隣に一緒にいていろいろと解説をしてくれたということ自体を見ましても、向こうも一生懸命になって改善をしようという努力がありありと見える。  そうしたときでございますから、やはり日本も立派な国家であり、ソビエトも立派な国家である、こういうふうな形になりますると、私といたしましては、まずシェワルナゼさんが、今度は東京で会談を開く番だから、知っていますから行きますから、こういうことを私も尊重をしているわけで、したがいまして、こちらから行けというのは――今はこれという問題はありません。文化的、さらにはまた経済的な問題はありますが、おっしゃる気持ちは私は決して無視するものではありません。  ひとつ、外交のかた苦しいことを言わずに型破りでやったらどうだということも、時と場合には私は必要だと思うのです。中曽根総理が、チェルネンコさんのお悔やみに行ったときをつかまえて、ほとんどの首脳はお悔やみを言ってさっさと帰ったのですが、ゴルバチョフさんの手を握り締めて三分間離さなかった、その間に、あしたどうしても会いましょう。こういうものも一つの立派な外交であろう、こういうふうに思っておりますから、今の上原さんのそうしたお考え方を決して私は全面的に否定するものではありませんが、過去、先輩が努力をしてきましたそうした足跡というものも日ソ間には大きな足跡として残っております、やはりその努力を無にしないようにして、現外務大臣もその線に沿って新しい展開をできるならば望みたい、こういうことであります。
  119. 上原康助

    上原委員 それは、これまで先人たちがやってこられた足跡を十分参考にしながら手がたく外交は進めていくというのは私もわかりますよ。だが、戦後四十三年たって、それから、一九五六年でしたか日ソ共同宣言が発表されて以降これだけ年月がたっているにもかかわらず、余りにも日ソ間というのは冷たい関係に置かれてきたのじゃないのか。国際情勢が変化しつつある今日こそ、対ソ外交というものの基軸は持ちながらも、もう少し多極的な考えを取り入れていいのじゃないのかということなんですよね。オペラを見るのも聞くのも結構でしょう。ハーモニカを吹いたりするのも結構ですよ。ピアノもお弾きください。サーカスを見るのもいいでしょう。しかし、領土問題だけをこう角突き合わせておって――それは大事なことであるが、もっとそこに到達をしていくための環境整備を日本の外交姿勢としてとるべきじゃないのか、今、国際的にもその新たな時期に来つつあるのじゃないか。その御認識はお持ちですか。御理解できますか。
  120. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 言わんとするところはよくわかるのですが、決して領土問題だけに拘泥をしてほかの問題を軽視しているのではないのです。ほかの問題も非常に改善されております。経済関係におきましても、それじゃ何か摩擦があるかというと、むしろ摩擦は余りないと言った方がいいかもしれません。しかしながら、東西の対決はだんだん薄らいでおるということは私たちも非常にありがたい話だと思いますが、対決はないが対立はあるということを考えた場合に、日本の行動にもおのずから一つ限度があることも忘れてはいけません。我が国が、戦後四十三年間、国民の御努力で本当に立派な国になりましたが、その間にはアメリカを中心とした自由主義国家群の多くの支援があったということも私たちは無視するわけにはまいりません。  したがいまして、そうした中において日ソ親善も改善すべきは改善すべきである、こういう線で動いておるわけですから、上原さんの言ったことはわからぬことはないけれども、しかし今私の考えている方がやはり正しいなと思っている次第です。
  121. 上原康助

    上原委員 私も大臣のおっしゃることはわからぬわけでもないが、それではどうもと思うので、さらにまた推移を見守ることにいたしましょう。  次に移りますが、これもしばしば本委員会でも、直接法案と関係はないかもしれませんが、せっかくの機会ですからお尋ねしておきたいと思います。  昨年の七月二十三日に起きた例の第一一徳丸事件ですが、これは私はますます問題の本質をうやむやにするわけにはいかぬという感を深くしているわけです。きょう法務省は来ておられると思うのでお伺いしますが、本件の容疑者の氏名、役職、そして過失往来妨害罪の根拠となった事実関係を明らかにしていないわけですが、ぜひそれを明確にしてください。
  122. 石川達紘

    ○石川説明員 お尋ねの事件につきましては、現在、那覇地方検察庁において捜査中でございますけれども、同地検においては所要の捜査を行いまして、証拠に基づきまして適正に対処するものと思っております。  なお、公表の点でございますけれども、何分現在捜査中の事件でございますので、公表することは差し控えたいと思っております。
  123. 上原康助

    上原委員 差し控える理由は何ですか。
  124. 石川達紘

    ○石川説明員 検察当局が捜査中の事件につきましては、被疑者の氏名を公表するか否かにつきまして、関係者名はもとよりでございますけれども、事案の性格とか公益上の必要性、さらには捜査に対する支障の有無等諸般の事情を考慮いたしまして公表していない、そういうふうに承知いたしております。
  125. 上原康助

    上原委員 あなた、それは冗談じゃないですよ。書類送検されているわけでしょう。その点は後で聞きます。  それでは海上保安庁と防衛庁にも同様にお尋ねいたしますが、役職、そして過失往来妨害罪の根拠となった事実関係についてぜひ明らかにしてもらいたい。
  126. 赤澤壽男

    赤澤説明員 第一一徳丸事件につきましては、本年の三月十四日、那覇地方検察庁に書類送致したところでございます。  詳細につきましては、ただいま那覇検察庁におきまして事件の処理を行っておられる段階でございまして、その処理にかかわります事柄でございますので、発言は差し控えさせていただきたいと思います。
  127. 上原康助

    上原委員 皆さん、これは僕は非常に重大な問題だと思うのですね。一般の人が法律に違反した場合は、こそ泥ぐらいでも――こそ泥というのは表現が適当かどうか知りませんが、住所、氏名、年齢も報道するのですよ、未成年以外は。罪の程度によっては顔写真まで添えるのです。限りなくクロであるということで、過失往来妨害罪ということで事件送致をされながら、その氏名も人数も明らかにしないというのは一体何ですか。国会を何と思っている。この際ぜひその理由を明確にしてください。防衛庁が発表したら困ると言っているのか、海上保安庁も。冗談じゃないよ、あなた、それは。ぜひ明らかにしてください。これでは納得できません。
  128. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  129. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 速記を起こして。  防衛庁長谷川教育訓練局長
  130. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  この事案につきましては、今お話がございましたとおり、第十一管区海上保安本部において捜査の上、過失往来妨害罪の容疑で那覇地方検察庁に送致されたということを承知しております。被疑者として送致された者の氏名及びその理由の公表をどのようにするかにつきましては、捜査当局において御判断いただくべき事項であると考えております。したがいまして、御指摘の点については防衛庁としてコメントすべき立場にないということを御理解いただきたいと思います。
  131. 上原康助

    上原委員 防衛庁は、それはいいと思いませんよ、それはけしからぬ態度。被疑者だからそれは隠したい気持ちはわかる、気持ち的にはね。これは納得できませんね、そういう言い方はね。  それでは、明らかにできる範囲はどこまでですか。送検された人員、自衛隊員の人数は何名か。当時訓練に参加していたのは南混団の第八三航空隊のF4戦闘機四機であったはずなんだ。たしかその内訳は、標的曳航機一機、監視機一機、射撃機二機、この四機ですね。今言ったことは間違いないかどうか、確認いたします。
  132. 石川達紘

    ○石川説明員 どこまで公表できるかということでございますが、第十一管区海上保安本部からの送致事実の要旨は、六十二年七月二十三日、沖縄南方におきましてジェット戦闘機によるミサイル射撃訓練中の被疑者が、過失により付近海域で操業中の漁船第一一徳丸の往来の危険を生ぜしめた、そういうものでございます。それ以上のことは公表いたしかねるわけでございます。
  133. 上原康助

    上原委員 今私が言ったのは、訓練に参加した南混団第八三航空隊のF4戦闘機は四機であった、その四機はこういうものであったか、それは確認できるかということなんだ。防衛庁答えなさいよ。
  134. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 この問題の時刻に訓練をしていた航空機がF4四機であったということはこれは明らかであります。しかし、その余のことにつきましては今刑事課長の方から御答弁があったとおりであります。
  135. 上原康助

    上原委員 刑事課長は氏名を明らかにできないことを言っているのだ。その四機の内訳はどういう任務だったのですか。
  136. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  標的を曳航しておりました航空機、それから標的を後から追いかける、追従しておった航空機、それからミサイルを射撃する航空機が二機、こういうことであります。
  137. 上原康助

    上原委員 それで私が言っていることが確認できた。  そうしますと、この四機のうち過失往来妨害罪に当たるのはどの飛行機ですか、保安庁。
  138. 赤澤壽男

    赤澤説明員 南西航空混成団所属の自衛隊員について送致したところでございまして、先ほど申し上げたところでございますが、現在は那覇地方検察庁に既に送致済みでございます。したがいまして、詳細につきましては検察庁における処理と直接かかわるところがございますので、発言を控えさせていただきたいと思います。
  139. 上原康助

    上原委員 何でそんなに隠そう隠そうとするの。私は何も詳細なことを聞こうとしているのじゃないのですよ、あなた。どう考えても、どう理解しようとしても納得いかないのじゃないですか。  過失往来妨害罪で自衛隊機を事件送致をしたわけでしょう。あなた方はどの飛行機が過失往来妨害をやったかも知らぬで事件送致できますか。特定できるの。そんないいかげんなことをやっているんですか。なぜそのくらいのことも公にできないの。冗談じゃないですよ。どれが過失往来妨害罪であったのか、はっきり言いなさい。ぜひ明らかにしてください。これはそんなごまかし答弁では納得できません。
  140. 赤澤壽男

    赤澤説明員 私どもとしましては、既に送致済みの事件になっておりますので、その点で検察庁における処理がただいま進行中と先ほども説明があったところでございますが、したがいまして、発言につきましては詳細な内容は差し控えさせていただきたいと思います。
  141. 上原康助

    上原委員 じゃどういう理由で事件送致したの。
  142. 赤澤壽男

    赤澤説明員 当時当該訓練海域で空対空ミサイルの射撃訓練を実施しておりました航空自衛隊南西航空混成団所属の自衛隊員につきまして、刑法百二十九条第一項の過失往来妨害罪の容疑で送致をいたしております。
  143. 上原康助

    上原委員 あなた、そんないいかげんな。刑法百二十九条のそれを犯したのはだれなんだ。犯した人がいるから書類送検したわけでしょう。特定はされているのでしょう、皆さんの立場で。まずそれからいきましょうや。
  144. 赤澤壽男

    赤澤説明員 繰り返すようでございますが、既に私どもの手を離れまして検察庁の方に所管が移っております。その点で、事件の処理にかかわることでございますので発言を控えたいと思います。
  145. 上原康助

    上原委員 これは絶対納得できないですね。あなた、特定もしないで事件送致できますか。だれが刑法百二十九条第一項を犯したの。それを言えばどういうあれがあるのですか。明らかにしてくださいよ。必ず明らかにしてください。だれが、いつ、どこで百二十九条一項を犯したのか。犯したから事件送致をしたのでしょう。常識じゃないですか。本当にけしからぬね。冗談でないよ、これは。
  146. 赤澤壽男

    赤澤説明員 南西航空混成団の所属の自衛隊員につきまして、刑法百二十九条第一項の容疑があるということで特定をいたしまして送致をいたしております。  氏名等につきましては、既に私どもの管轄を離れておりますので、その点については発言を控えさせていただきたいと思います。
  147. 上原康助

    上原委員 これは絶対納得できぬ。氏名等については、あなたの手を離れておるといったって、あなた方から送致したから向こうへ行っているのでしょう。特定もしないで事件送致できますか。何も詳細なことを聞いていないのだよ、あなた。標的曳航機が一機、追跡機というか監視機が一機、射撃機が二機おった、計四機だ、そのうちのどれかと聞いているのです。そのくらいは言えないですか。防衛庁、法務省でもどこでもいい、どれですか。名前を言うのがそんなにあれなら、後で聞きましょう。その四機のうちのどれなのか。それを特定できたから事件送致したのでしょう、海上保安庁は。  そんないつまでも国会の論議をいいかげんにされたら困る。委員長、これは言わせてください、答弁させていただきたい。冗談じゃない。
  148. 石川達紘

    ○石川説明員 特定されたから送致されたものと思っています。まさに特定はされていると思います。しかし、それはあくまでも疑いがあるということで特定されているということでございます。
  149. 上原康助

    上原委員 もちろんそれは疑いがあるから送致されるんだ。これからでしょう、起訴するかどうかは。だから、どれを特定されているかと聞いているのです。では、四機全部ですか。
  150. 石川達紘

    ○石川説明員 それはまさに事件の内容にわたることでございますので、申し上げかねるところでございます。
  151. 上原康助

    上原委員 どうして申し上げかねるのか。特定されているから海上保安庁から法務省に書類送検されているのでしょう。四機のうち四機なのか、そのうちの二機なのか、一機なのか。それさえも明らかにできないとは何事ですか。どういう支障があるのか、こういうことを公にしたら。ほかの事件ならそういうことはない。事航空自衛隊については何でそういう秘密扱いにしなければいけないのか。  私が予算委員会から言っているシビリアンコントロールというのは一体何なのか。皆さんはまさにシビリアンではないのか。シビリアンがパイロットとか南混の隊長とかそういう者に口を封じられているのか。それで海上保安庁やあるいは教育訓練局、司法当局の権威が保たれますか。明らかにしてください。納得できない。
  152. 石川達紘

    ○石川説明員 事件は捜査中でございますので、なかなか詳しいことは申し上げかねるわけでございます。最終的に処分の段階では恐らくわかることではないかと思います。ただし、先ほど申し上げましたとおり、ジェット戦闘機によるミサイル射撃訓練中の被疑者がということを申し上げております。御了解いただきたいと思います。
  153. 上原康助

    上原委員 詳しいことと言っているけれども、詳しいことは聞いていませんよ。皆さんは事件の核心の問題になるとはぐらかして、時間がたつのを待つような、そういう態度は絶対いけない。  射撃訓練中と言うが、射撃機が二機いますね、その二機なのか、そのうちの一機なのか、どっちなのか。
  154. 石川達紘

    ○石川説明員 それはまさに捜査の具体的な内容にわたることでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  155. 上原康助

    上原委員 あなた、そんな鬼刑事みたいな顔して、捜査の内容にわたるものでありますから答弁は控えさせてくださいとか言って、それは納得できない。  どれが特定されて事件送致されているのか。なぜ氏名やパイロットの階級というかそういうものを明らかにしたらいけないのか。これは被疑者と言って、もう事件送致されているんですよ。最初に言いましたが、普通の事件ならば当然氏名も公表される、顔写真まで入れて報道されるような事件なんですよ、これは。それを防衛庁もひた隠し。海上保安庁に至っては、何だこの海上保安庁の態度は。最初は少しは腰もあるかと思ったら、へっぴり腰で、防衛庁にまんまと丸め込まれて、こんなことで納得できますか、これだけの事件を起こしておいて。  改めて答弁してください、防衛庁も保安庁も法務省も。なぜそれを隠すんだ。
  156. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 先ほどから御説明いたしておりますように、現在の事案につきましては検察庁において取り扱い中であり、被疑者の氏名の公表につきましては捜査当局の御判断なさる事項であると考えるわけであります。
  157. 赤澤壽男

    赤澤説明員 三月十四日に那覇地方検察庁へ送致をいたしておりまして、既に現在検察庁において本件の処理を行われていると聞いております。その進行中の段階でございますので、私どもから詳細についての内容につきましては発言を控えさせていただきたいと思います。
  158. 石川達紘

    ○石川説明員 先ほど来申し上げましたとおり、捜査中の事件でございますので公表できないということでございますが、特に、関係者の名誉はもとよりでありますが、事案の性格とか公益上の必要性、それから捜査に対する支障の有無、そういった観点から、諸般の事情を考慮して発表を控えておる、そういうことでございます。
  159. 上原康助

    上原委員 僕は、その諸般の事情というのがよくわからない。公共性というのはどういう意味なのか。絶対納得できないですね。  もしそういう氏名を明らかにした場合は、何か防衛機密に触れるというようなことで相当の圧力があった、防衛庁筋から、あるいは官邸筋かどうか知らぬけれども。それについても答えてください。  それと、これは単に私だけが問題にしているわけではないのですよ。沖縄県の県警記者クラブ、加盟は十五団体あるのですが、この皆さんから六十三年三月十九日、第十一管区海上保安本部本部長あてに、「第一一徳丸被弾事件被疑者送致の発表について」という文書が行っているはずだ。これを拒否した理由は何ですか、海上保安庁。
  160. 赤澤壽男

    赤澤説明員 十一管区本部長の発表につきましては、詳細については承知しておりませんが、既に検察庁に移された事案でございまして、その点で発表を差し控えたものと聞いております。
  161. 上原康助

    上原委員 あなたは何でも詳細詳細と言うが、僕は詳細なことを聞いていないんだ。聞きたいことを聞いているのですよ。このくらいのこともちゃんと調べておけぬでどうするんだ、一体。これは聞くということも通告してあるし、この間から議論しているのに。  最初にお尋ねしたことはだれが答弁するのですか。なぜこれが防衛機密なのかどうか、氏名公表することがなぜ防衛機密なのか。
  162. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えします。  氏名の公表の問題が防衛機密だと私は申し上げたつもりはないのでありまして、捜査上の問題であるというふうに申し上げているわけでございます。
  163. 上原康助

    上原委員 捜査上どういう問題があるの、氏名を発表したら。
  164. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 捜査の内容にかかわる事項であるということでございます。
  165. 上原康助

    上原委員 氏名発表したら捜査の内容にかかわる。普通ならどんどん発表しているじゃありませんか、皆さん。  こういうことで、これだけの事件を犯しておって、しかも九カ月近くなっている。事件送致をしたと思ったら、この間私が指摘をしたように、もう三者一体となってもみ消しというかそういう態度に出ているということは、極めてこれは重要な問題である。これではシビリアンコントロールは、あなた方自体シビリアンの役目を果たしていないと断ぜざるを得ませんね、こんな態度では。  そこで次、もう一点確認をしておきたいわけですが、当時自衛隊機が訓練していた位置は、その訓練空域の名称は何というの。
  166. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  沖縄南部訓練区域Wl72であります。
  167. 上原康助

    上原委員 南部訓練空域は自衛隊の訓練空域ですか。
  168. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えします。  米軍の訓練区域ですけれども、自衛隊もこれを空対空の射場として告示しております。したがって、自衛隊も使っております。
  169. 上原康助

    上原委員 これは地位協定二条4項(a)に該当するの、該当しないの。
  170. 有馬龍夫

    有馬政府委員 二4(a)の共同使用は施設、区域についてでございますので、これは適用されておりません。
  171. 上原康助

    上原委員 適用されていると言うかと思った。適用されていませんね。これは米軍専用の訓練空域なのであります。つまり自衛隊は認められていない訓練空域で平気に訓練を行ってああいう事件を犯している。自衛隊が米軍と訓練空域を共同できるのは、日本では三沢の対地訓練空域と沖縄の出砂ですよ。それ以外ではできないはずなんだ。違いますか。
  172. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  今の二4(a)の適用という問題ではありませんけれども、公海上の訓練空域を私どもの射場として告示し、使用しているというのは、運輸省とも調整の上あるいは外務省ともお話をした上でずっと昔からやっていることでありまして、このほかにもございます。
  173. 上原康助

    上原委員 何、あなた、昔からって、昔から沖縄に自衛隊はいない、復帰して十五年にしかならぬよ。何でそんないいかげんな答弁をするか。昔からって、いつから使っているの。冗談じゃない。――もういいです、それは。  そこで、法務省、またお答えしないかもしれませんが、今後どういう推移でこの事件の処理をしようとしているのか、見通し。なぜなら、六十年五月に那覇空港で全日空機と自衛隊機が接触しましたね。これは自衛隊機の機長と副操縦士が三月二十六日に起訴された。約三年かかっている。これもそんなに長いことかけるの。そういう間にうやむやにして、忘れかけたころ起訴したとかなんとか言ったって、こういう問題は迅速に処理すべきで、既に九カ月の時間が経過している。こういうことについては、皆さん、県民感情ももう少し理解をし、漁民の立場考え、こういうことを繰り返し繰り返し国会でやらなければいけないということも考えるならば、もう少し誠意を示してもいいのではないかと思いますが、この件についてもまた答えないというのか、見解を聞いておきましょう。
  174. 石川達紘

    ○石川説明員 本件につきましては本年三月十四日にまだ送致を受けたばかりでございます。御承知のとおり何分検察庁は多数の事件を扱っておりまして、しかもこういった非常にデリケートかつ技術的な問題もあろうかと思いますので、かなりの日時を要するかと思いますけれども、そういった県民感情も十分勘案の上、検察庁としては適正に対処するものと思っております。
  175. 上原康助

    上原委員 私は、皆さんが納得いく答弁をするまでこの追及はやめませんよ。  ほかの件も聞きたかったがこれに時間をとりましたので、あと一問だけ。  これも、防衛庁というのは近ごろ本当にどうなのか気になってしようがないのですが、日本と西独で海底探査実験を沖縄近海でやろうとしたら、防衛庁がこの計画の規模の縮小あるいは中止を申し入れている。こういう事実関係があるのかどうか。外務省はこれについてどういうふうに対応しているのか。
  176. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 本件につきましては、たしか先月でございましたが、西独側から要請がございまして、目下関係する各省庁と協議、検討中でございます。なるべく早く結論を出すように努力中でございます。
  177. 上原康助

    上原委員 防衛庁の態度はどうですか。横やり入れてるの。
  178. 大森敬治

    ○大森説明員 お答えいたします。  ただいま外務省の方から御答弁があったとおりでございまして、現在外務省を中心に調整過程の段階でございますけれども、防衛庁の方で理解しておりますところ、西独の調査船の活動が、一定の海域をかなりとりまして、中におきまして爆破作業を含むものでございます。  このような作業につきましては、自衛隊の実施しております海洋観測等に支障が生ずるおそれがあるということで、一部作業の制限をお願いしているところでございますが、ただいまも御説明がありましたとおり、まだ調整の段階でございますので、防衛庁といたしましては調査の具体的な内容をさらにお示しいただきまして、その上で検討といいますか調整をしてまいりたいと考えております。
  179. 上原康助

    上原委員 外務大臣、西独の海底探査実験ということについて、あるいはまだ御報告を受けていないかもしれませんが、耳の早い大臣だから恐らく聞いていらっしゃると思うのだ。海底探査実験というのは、日本が地震大国という面で、琉球列島、フィリピン海峡からの海底探査実験なんですね。非常に重要な科学検査だ。きょう科学技術庁、運輸省、来ていませんが、そういうことに対してまで、しかも西独の船は香港まで来ているのです、やろうということに対しては納得できませんね、これは。ぜひ政治の問題として、双方の海底探査の実験が十分できるようにやるべきだと思うのですが、いかがいたしますか。
  180. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ここへ着いて初めて聞きまして、だから政府で今調整中だと言いますから、もう一度私は私なりに政府の調整中の結果を得てから判断いたしたい、かように思っております。
  181. 上原康助

    上原委員 これは事務局ではいつからやろうとしているのか、やろうという計画だったのか。既に船は向かっているわけですよ。
  182. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 新聞記事に基づくお答えで恐縮でございますけれども新聞記事によれば、計画は十九日からスタートする予定ということになっております。  もう一点、国際法上の一般論を御説明させていただきたいと思います。  我が国の大陸棚におきまして外国が科学調査を行うときは、我が国の同意が必要でございます。まだ発効はしておりませんが、海洋法条約の中に規定がございまして、純粋な科学調査につきましては、沿岸国は通常の場合は同意を与えなければいけないということになっております。しかし、ただし書きがございまして、爆発を伴うような場合には同意を与える必要はないということになっております。この条約、まだ発効しておりませんし、この考え方が一般的な国際法として確立しているとは申せませんけれども一つの有力な考え方を示すものであると考えられます。
  183. 上原康助

    上原委員 いずれにしましても、もちろんそれは爆破の規模がどういうものか、私はそういうことまでわかりませんが、とにかくこういった科学調査を公海においてしようとする、しかも地震予知に寄与するための非常に重要な科学調査である、こういうことに対してまで軍事が優先をして、科学者のそういった十分な探査や実験もできないということは、あるべき姿じゃないですね。  特許の問題にしても、特許庁からみんな防衛庁に集約している、さっき言ったように、全部秘密に持っていこうとする、これはまさに防衛庁の越権ですよ。そういうことについては、ぜひそういうことにならないように、政府全体として御配慮いただきたいと思います。  きょうは、あとバイオの問題とか曲技飛行についても聞きたかったのですが、第一一徳丸の問題はああいうことでは納得しかねる。しかし、これは沖縄側にとっても我々としても極めて重視しなければいけない内容のものでありましたので、その事件等に時間をとりましたので、あしたまた外務委員会でもお尋ねしますから、そのときに残った問題はお尋ねします。     〔戸塚委員長代理退席、近岡委員長代理着席〕
  184. 近岡理一郎

    ○近岡委員長代理 和田一仁君。
  185. 和田一仁

    ○和田委員 在外公館に勤めておられる在外職員年少子女の教育手当についての法案の審査でございまして、海外で子女をお連れになって、そして勤務をされる、また、子女の教育もこれは大事なことで、しっかりやらなければならない、しかしながら、海外というハンディの中で、日本の国内におけるような教育がなかなか思うようにいかない、できるだけいい教育をさせたい、これはもう当然のことでございます。そういう意味で、海外の教育費がやはり日本と同じように教育費の高騰ということで、子女を抱える皆さんが大変に御苦労なさっているということは想像にかたくございません。  そこで、今回のこういう法案の趣旨からいって一つお尋ねしたいのは、これは押しなべての法案でございますけれども、海外といいながらもやはりこういう教育費等についても相当格差があると思うのです。それが全体からいってどれくらい高低格差があるのか。それと、それでなお不十分なところも随分あると思うのですが、そういう不十分なために、まだまだ個人負担というかそういう負担をしていかなければならないのではないかと思います。これで十分だというわけではないと思うのですが、もしそうであるならば、どれくらいの個人負担率になっているかも含めてお知らせをいただきたいと思います。
  186. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御指摘のようにいろいろな格差がございます。これは時によってまた違うわけでございますけれども、場所によりましては、現行の中で全く充足されるものと、それから充足が可能なもの、不可能なものとございますし、中には現地における費用としては実費がほとんどかからない、もちろんそれ以外に補習校等ございますけれども、というところから、例えばフランスのごとくでございますけれども、実費が七万円くらいのところと、いろいろ格差があるわけでございます。
  187. 和田一仁

    ○和田委員 十分でないのはわかるわけですが、平均で結構ですけれども、大体個人負担は、今、改正前はどれくらいで、改正するとどれくらいの助けになるのか、その辺は数字でおわかりじゃないでしょうか。
  188. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 現在、昭和六十二年度におきましては、平均の自己負担額が二万四千六百円、これは、自己負担額と申しますのは、官費におきまして支給するものと実費との差額でございますけれども、それが改正後におきましては二万二百円というふうに想定しております。
  189. 和田一仁

    ○和田委員 具体的な数字がわかったのですが、教育費全体というとどれぐらいなんでしょうね。この二万二百円というのは、かかっている教育費のパーセントからいうとどれぐらいのものなのでしょうか。
  190. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの二万二百円と申しますのが自己負担の平均でございまして、平均で申しますと、それに加えまして最高支給額、これが六万三千円ということでございますので、それを足した額でございまして、最高ということでございますれば八万三千円というのが一つの目安でございます。
  191. 和田一仁

    ○和田委員 わかりました。  大臣にお尋ねをしたいと思います。  きょう、もうあと六時間もないようですが、アフガニスタンの間接和平交渉がだんだんと進んでまいりまして、きょうの九時にはジュネーブで調印、こういうニュースが入っております。考えますと、七九年の十二月にあのアフガンへのソ連介入があってから八年をけみしているわけですが、成るか成らないか、大変注視の中で、ようやくきょうそういう大変な調印にこぎつけてきたということでございます。  このことは、INFの全廃ということに加えまして、世界のいろいろな問題に対して大変大きな一つの影響もあろうと思うわけでございますが、そういう影響は別にいたしまして、このアフガンのこうした和平が持つ意味合い、それからこの和平調印後の見通し等について、大臣の御見解をまずお聞かせいただきたいと思います。
  192. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 アフガンの紛争解決の最初の日が本日訪れてまいりましたことは、やはり慶賀にたえない、かように評価したいと思います。もちろん関係国、米ソを初めパキスタン及びアフガン現政権、そしてゲリラ、難民、こういうような幾つもの関係においての合意、停戦でございますから、それだけに関係者の苦労も多かったであろうと想像にかたくないと思う次第でございます。  しかし、停戦が成りまして、ソビエト軍が十万撤兵をいたしますその間においても、やはり難民問題、さらには暫定政権の問題等々、幾つもの重要なハードルがあるのじゃないだろうか、私はかように思います。  したがいまして、日本といたしましたならば、やはりできるだけのことはお手伝い申し上げて、国連の、特に事務次長がやったわけでございますが、したがいまして、そのことに対しましても大きな評価を与えつつ、日本の持ち分には最大の努力をいたしたい、かように考えております。  どのような政権が樹立されるかということは、今後非常に大切なことであろうと思いますが、我が国といたしましては、はっきり申し上げまして、現在の政権がソ連のサポートによって、しかもアフガンの介入によってできた政権でありますから、したがいまして、多くの人たちが難民となり、またゲリラとなったというふうな経緯考えますと、少なくとも今後の政権は、アフガンの国民の総意とまではいかぬまでも、多数の方々の支援する政権ができて、そして紛争を完全なる終結に導いていただきたい、かように存ずる次第であります。
  193. 和田一仁

    ○和田委員 今何点か御指摘になられました。難民の問題、それから後の政権の安定度、どういう政権ができるか、これによって国内の様子も大変違ってくるだろうと思いますし、また、そうした後の日本の経済的な援助等も含めて、我が国がなすべきこともたくさんあるのではないか、こんなふうに思うわけでございます。  具体的に、まず第一に、この調印に至るまで、本当に撤兵ができるのだろうかどうだろうかという疑念もあったのですが、ここまで来ればこれはもう間違いないと思っておりますが、言われるように、五月十五日から年内とか来年二月十五日までの九カ月間の中に撤兵というスケジュールはそのままいくというふうにごらんになっていますでしょうか。いかがですか。
  194. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 これはもちろん五月十五日から九カ月かけまして、しかも、その最初の三カ月に五〇%のソ連軍が撤兵するという約束になっていると承知しておりまして、この実行を監視、保証するために、国連の方としてもこの実施を支援するための組織をつくるというふうに承知しております。したがいまして、このスケジュールに従いましてソ連軍が撤兵するということを切に希望しているわけであります。
  195. 和田一仁

    ○和田委員 そのとおりぜひ成果を上げていかなければいけないと思うのですが、この撤兵に際して国連が監視団を派遣していくということに対しまして、我が国もこの監視団の中に参加するという方針と聞いておりますが、それはそのとおりかどうか。どういう人が行かれるのか、その点も含めてお聞きをしたい。大体この監視団の構成とか規模とか、こんなものも含めてお知らせをいただきたいのです。
  196. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 最終的な合意文書は本日署名後に発表されることになっております。したがいまして、必ずしも現在詳細につきまして承知しているわけではございませんけれども、いろいろな情報を総合いたしまして私どもが承知しておりますところは、この組織は大きく分けましておよそ二つ、場合によって、数え方によっては三つになりますけれども、実際にこの撤兵その他合意の実施を監視する部門、これは主として軍事部門ということになると思います。それからさらに、当事国政府との交渉とかその調整に当たるいわば政務的な部門、それに数え方によりましてはと申しましたのは、この監視部門に附属した格好になるかもしれませんが、いわば会計その他補助的な部門、この三つにおよそ分かれるのだろうというふうに考えております。当然、この組織の役割というのは、合意文書、合意の実施を監視する、履行を保証するということでございます。  この人数等につきましては、当然この監視部門というのが主になると考えておりまして、必要に応じてこれが五十名ぐらいになるというふうに了解しておりますけれども、当初はあるいはもう少し少ない人数で発足するのではないかと言われております。それから、先ほど申しました政務の部門といいますか、文民の部門、これは当然政務的な調整に当たるわけでございますから、人数は極めて少ないのではないかと思っております。  当然、我が国といたしましては、現在国連と非公式の意見交換を行っておりますけれども、正式に国連から要請がありました場合に、この文民部門といいますか、政務の部門に文民を派遣したい、こう考えております。
  197. 和田一仁

    ○和田委員 全体の規模や役割分担等についてはわかりましたけれども我が国からはどれぐらいどこから参加するのでしょうか。
  198. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 現在考えておりますのは、外務省の職員を一名、この政務部門に派遣するということを考えております。
  199. 和田一仁

    ○和田委員 政務部門に一名ということですが、今構成を聞いてみると、やはり軍事的な部門での仕事が大変多いというふうに私は理解したわけなんです。政務の方はごくわずかだということですが、五十名単位のこういう構成団の中で、列国は恐らくこういう意味であれば軍事部門の専門家を派遣団の中に加えているのではないか、こう思うわけですね。  そういう意味で、外務省の職員が一人でいいのかどうか、あるいは軍事部門のウエートが多いというならば、これは外務省の職員で結構なんですが自衛隊ですね、そういう軍事面の専門家をミリタリーアタッシェと同じような格好でここへ派遣することは考えていないのかどうか、それは法的にはできないとおっしゃるのか考えていないというのか、その辺はどうでしょうか。
  200. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 重要な問題でございますから私からお答えいたしますが、よく海外派兵という問題と関連する問題でございますが、海外派兵というのは、戦闘をする目的を持って武装した集団が他国の領地、領空、領海へ出ていくというふうに定義づけられております。  さような問題では、今度は平和だからいいじゃないかというような話が出てくるかもしれませんが、やはり現在国際監視団という使命が実は自衛隊には与えられておらないという現状でございます。したがいまして、私たちは、いろいろなことを考えましても、この際は文民が行くべきである、だから自衛隊の派兵はいろいろ法令上問題あり、このように解釈をしておる次第であります。
  201. 和田一仁

    ○和田委員 自衛隊の任務の中にはないので出せない、これはよくわかります。しかし、大使館には現に制服が駐在しておりますね。これはミリタリーアタッシェとして当然なことでありまして、向こうへ行けば向こうでのいろいろな会合にはきちっと制服を着て出る、これはまさに自衛隊の制服のままおるわけで、外務省の職員という、身分上は外務省に行っておりますけれども、中身はまさに、これは自衛隊の制服です。そういうことができるのですから、外交上、こういう監視団が列国から入ってくる、そういう中に専門のそういうミリタリーアタッシェと同じような方法で出せないのか、これを私はお聞きしたわけです。派兵の問題とか派遣の問題とは関係なくお聞きしたわけです。
  202. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 御指摘の点はそのとおりでございますけれども、各大使館にミリタリーアタッシェとして派遣されております自衛隊の方は、外務事務官に発令になった上で働いていただいておるわけでございます。  それで、監視団の任務といたしまして、制服組の任務といたしましては、もちろん平和維持が目的でございますけれども、その平和を維持するために武装した集団ということになるわけでございますので、大使館にミリタリーアタッシェとして自衛隊の隊員の方が赴任しておられるのとはやはり形態の上でも大分異なることになるのではないかと考えられます。
  203. 和田一仁

    ○和田委員 私の認識が間違っていたのかもしれませんが、監視団というのは武装集団ですか。
  204. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) どうも失礼いたしました。平和維持軍というのは、平和の維持を目的といたしまして武装した集団でございます。監視団というのは武装しておりません。間違えたことを申し上げまして失礼いたしました。
  205. 和田一仁

    ○和田委員 ですから、私は、そういう全く武器を携帯しないで撤兵の監視をするという軍事部門もあるから、専門家が行くというような構成になっていると聞いたから、それなら大使館にいるときと同じような格好でそういう列国と同じように専門家も加えて出したらいかがですかということをお聞きしているので、私はこれは武装だったらとんでもないことを聞いたかなと思ったのですが、そうでないという御訂正があったので、もう一回その点をお聞きしたいと思います。
  206. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 在外公館にいわゆる防衛駐在官として行っておられる方は、先ほど条約局長の方から答弁がございましたように、外務省の方に身分を移してそれでその在外に駐在しておられるわけでございます。  今回のアフガニスタンの監視団の場合に、先生の御質問は、外務省員に制服の方が身分を移してそれで派遣されればよいのではないか、こういう御質問かと思いますけれども、このような形の派遣が現行法のもとで可能であるかどうかということについては慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
  207. 和田一仁

    ○和田委員 私は、そんなに慎重に検討せぬでもやればできるのではないかと理解しているものですから、こういう機会にやったらどうかなという思いで御質問したわけです。  それはそれといたしまして、ではこれに関連いたしましてもう一つお聞きをしたいわけですけれども、去年でしたか、外務省が国際緊急援助隊というのをおつくりになりました。国際的に大変な災害があった、地震があった、火山の爆発があった、津波があった、そういうときに、国際国家である日本がやはり国際社会の中で、おいよくやってくれると言われるような対応をするためにこの国際緊急援助隊というのが人道上の立場からできた、私はそう思っております。  これはこれで非常に結構なことなのですが、このときに外務省関係十六省庁に声をかけてこの援助隊をおつくりになる法案を出されました。この委員会でもやりました。私はそのときにも聞いたのですけれども、これは、今のレンジャーとかそういう人命救助を専門に訓練している人を集めあるいはお医者さんを集めていくのは大変結構なのですよ。これをバックアップしていく体制の中に、何とかもっと組織的に常に訓練されている自衛隊の皆さんの力をかりる気がなかったのかどうか、あの十六省庁に相談をかけてこの法案をつくるときに、何で防衛庁には声がかからなかったのか、それが海外派遣あるいは派兵につながっていってしまうことを心配してそれをやめたのかどうか。  列国がいろいろなところでそういう人道上の救助をやるというときに、どこの国も軍隊が行っていますよ。まず軍隊が出ていって、そしてあとう限り協力して、そこになお専門家を乗せていったり何かして人命救助の実を上げている。それを、我が国がないのなら別ですよ。あるのですよ。何も鉄砲一つ撃ちに行くわけでも何でもない。国際的に、人道上、平和のために、何も武力を使うのでも何でもない。そういう大変大事な活動をするのに新しい部隊をつくられたのは結構です。これだけで十分機能するかもしれないが、なおさらに、災害というのは通信もなければ宿舎もない大変なところ、そういうところへ行ってキャンプを張り、通信網を置いてそしてやっていく。輸送能力、組織力というのは一番自衛隊が強い。これをなぜ活用しようとしないのか。  任務が入っていないからだ。さっき大臣がたまたま、派兵はいけないけれども、派遣についても自衛隊法上任務が与えられない、できない、こうおっしゃった。まさにシビリアンコントロールからいえば、やはりきちっとしたそういう法的整備があった上でやったらいいと思います。「しらせ」が南極へ行って、ああいう国際社会の中で一緒になって観測をやっている。海上自衛隊が堂々と行ってやっておるわけです。これはなぜかといえば、きちっと法的に裏づけをして行ったわけですね。同じように、国際緊急援助隊も、そういう意味合いでより高い効果を上げるという意味ならば、平和のために自衛隊法のそこに任務を付与してやっていただけたらどうかと思うのです。  これは恐らく防衛庁から言いませんよ。それは余計なことだからという意味もあるし、誤解をされてはいけないという意味もあって言わないと思います。これは国際社会の中でいろいろな交渉事をやっている外務省が呼びかけてやるべきだ、私はそう思っているのです。  これについて、この前全然呼びかけも何もなかったというだけでなく、これからこういう方向でひとつ相談を始めたいという気があるかどうか、外務大臣、お考えをお聞かせいただきたい。
  208. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど私、海外派兵という一つの問題に絞りましてその定義を申し上げましたから、その定義以外に自衛隊が行く分におきましては、これは海外派兵ではない、これは余りにも明らかでございます。  ただ、現在、日米安保体制下において、その安保体制そのものに関しましても議会内におきましてはいろいろと議論が出ておるところでございましょう。したがいまして、自衛隊にもそういう新しい任務を与えることは、一つの時代の流れとともに、世界各国からも平和に貢献するのならばいいじゃないかという世論も当然あるだろうと思いますが、現在といたしましては、それ以前の問題として、まだまだ安保体制の円滑な運営を図りたいという問題がたくさんございます。  したがいまして、国会の御審議を煩わす際にいろいろと問題がございましょうが、まずその先に、与野党の間におきましていろいろな機関を通じてそうしたことに対する御同意を得るというふうなことも今後必要ではないだろうか、かように考えております。だから、政府だけで考えて、これをひとつ審議せよというのではなくして、やはり大切な問題であり、平和に貢献するのならば、そういう問題もいかがであろうか、これについていかがでしょうかというふうなことを我々といたしましても考えることは必要なことがあるかもしれません。  昨年の場合になぜできなかったかという問題でございますが、私もその当時は政府の方じゃなくて与党の方におった次第でございまして、いろいろと議論もあった次第でございますが、現在としては、今申しましたような配慮もこれあり、さらには、必要がないからしばらくの間はそれ以外の方々において救援部隊を組織しようというふうな経緯があったということを承知しております。
  209. 和田一仁

    ○和田委員 日米安保の問題の合意とかいうことと別に、現にある自衛隊という、これは現に存在しておるわけですね。ですから、そういうものをこういう平和目的、人道上の目的のために何とか活用したい。  これは国内では認めているのですよ、大臣。これはこの間の、おととしでしたか、御巣鷹山のあの大変な墜落事故、五百名を超えるような事故がありました。あのときに、あの救援の中で大活躍をしたのは、制服を着た自衛隊の人たちが活動をしたわけですね。国内で認められているわけですよ。だれもあのことについて、日米安保がどうのこうのでけしからぬなんて言っている人は一人もいないはずですよ。国民も感謝をしていました。  同じことなんですよ。同じ目的なんです。ただ場所が違うというだけなんです。場所が違うところに行って同じことができるかできないかは、自衛隊の任務を一つつけてやればいい、「しらせ」と同じように。これに対して反対する人はいないと私は思う。だったら、そういうことを早速やってみようという前向きのお考えが知りたいのです。前の外務大臣は検討したいとおっしゃったのです。大臣どうですか。それぐらいのことは国際的に、国際国家日本としてやったらおかしくなるなんてものじゃないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  210. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私もこれは検討課題の一つであるということは今も申し上げたとおりでございますが、こうしたことにおいて、大切なことで日本においては相当もめたというようなことは、これまた考えておかなくちゃならないことでございますから、検討課題として私たち考えたいと思いますが、それ以前にひとつ与野党の同じようなコンセンサスを得ていくことも必要だ、そういう意味を申し述べた次第でございます。十二分に検討に値する問題だと思います。
  211. 和田一仁

    ○和田委員 また私は、そういう意味でコンセンサスを得るためにも、機会あるごとにこのことを申し上げていきたいと思っております。  外務省も国外との交渉事の中で大変なわけですが、その中にやはり邦人の保護をするという大変な任務がございます。にもかかわらず、第十八富士山丸というような事件が起きまして、いまだに解決されていない。これは大変ややこしいことになってきているのじゃないかと思いますけれども、現状これは、この間大韓航空機のああいう事件があって制裁措置がとられたり、あるいはそれに対するまた報復的というか反作用としてこの第十八富士山丸の解決もまた交渉の糸口がなくなるような、非常に難しい問題ではございますが、しかし、これは何としても――私は、これは経緯を見ていて不当な抑留ではないかと思うのですが、そう解釈してよろしいですね。
  212. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二人の船員の方は本当に不当な抑留下にいる、したがいまして、あくまで無罪である、こういうふうに私たちは常に主張して、そして、残念にして国交はございませんが、あらゆるルートを通じて我が国の主張を北朝鮮に伝わるようにいたしておるところでございます。
  213. 和田一仁

    ○和田委員 大臣の口から不当な抑留であるということでしたが、こういう事例は今ほかにございますか。
  214. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どもが承知している限りにおきましては、第十八富士山丸事件の両名のような事例は存在しておりません。
  215. 和田一仁

    ○和田委員 この間新聞に、この不当に抑留されているお二人、船長さんと機関長さん、これが向こうではスパイ容疑ということで裁判にかけられて、判決が出て、そしてそれに服しているということで、これは今月の初めころの新聞でしたけれども、「抑留中の第十八富士山丸の船長と機関長の二人がことし二月、平壌市内の建設現場で働いているところを、北朝鮮側が日本人男性旅行者に目撃させていたことが分かった。」という新聞記事があるわけなんですね。これは外務省として確認はしておるのですか。
  216. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どももただいま委員指摘の報道は承知しておりますが、現実に北朝鮮に行かれた邦人がそういう二人を見かけられたというお話は全然承知しておりません。
  217. 和田一仁

    ○和田委員 そうしますと、これも確認の方法がないのかどうか。そういうことで、船長さんの方が高血圧がひどくて手術をしたとか、何かぐあいのよくない報道だけはあったわけなんですが、そうなると、これは元気でいたという証明になるのか、あるいは不当な抑留をされながら病魔で苦しんでおられるのかもよくわからない、こういう事態なんで、これは家族の方はもちろんですけれども関係者みんな心を痛めていると思うのですね。ですから、これを何とか早く解放してもらえるように御努力を願わなければならないのですが、その具体的な方途というのは、全く暗中模索、何にもないのですか。  というのは、この報道の中に、日本誠意を示せ、こういうような北朝鮮側の報道も伝わっているので、誠意を示せば何とかなるというのならば、それはそれなりの誠意を示したらいいと思う。誠意というのは一体何かがよくわからないようですけれども誠意というものを、何なんだと言って問い合わせていく方法もないのですか。その誠意がわかればそれに対応するのかどうかも含めて、お考えを聞かせていただきたい。
  218. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどもちょっとお触れになられましたが、日本は、大韓航空機の制裁ではなくして、措置をしたということとこれが絡んだような報道がしばしばなされておりますが、これは絡めるべき問題ではない、こういうふうに私たちははっきりいたしておるわけであります。  もちろん、先ほどもちょっと私からも申し上げましたが、日赤も動いてくれていますし、さらには何カ国か第三国も動いていただいておる。動いていただいておるというのは、国交がないものですから、私たち気持ちを伝えてあげようということで、我々といたしましては日本は無罪だと思うから早期釈放を要求する、もしその間にいろいろとまた時間がかかるようであるのならば、せめて安否に関する手紙の往復ぐらいあってしかるべきじゃないだろうか。私もかつてシベリアに抑留されましたが、抑留者といえどもやはり親に対しまして元気だよという一片のはがきがどれだけ留守家族を安心せしめたかということ等々も例として申し上げて、そうしたことは伝わっていると私は思います。  そうしたことに対して、第三国を使ってけしからぬというような話もまた伝わってまいりますが、しからばどうすればいいかということでございますけれども、我々といたしましてはいろいろな手でやっていただいております。もちろん、ここにもいらっしゃいますが、社会党の議員団の方々も昨年お行きになったときには、土井委員長を初めこのことに関しましては北朝鮮にはっきりと日本の要請をお伝え願ったというふうに承っておりますので、今、時折出てまいります情報で、誠意を示せとかなんとかありますけれども、どうもそこら辺はかりがたい問題がある。  したがいまして、今後もあらゆるルートを通じて――紅粉船長と栗浦機関長の家族の方にも会いました。けさも奥田福岡県知事が、機関長の出身地でございますから、そのことを直接陳情にお越しになられまして、私は今ここでしゃべっているのと同じことを申し上げた次第でございますが、今のところはそうしたことが精いっぱいであると申し上げざるを得ないような状況でございます。しかし、政府は今後もあらゆる努力を払っていきたいと考えております。
  219. 和田一仁

    ○和田委員 大臣もその誠意の中身がはかり知れない、ようつかめないということですが、これは具体的にどういうことなのかをサウンドしていくという方法もないのでしょうか。その誠意の内容が、向こうがそう言うならば、これは伝わってくるだけのことで本当に言ったのかどうかもわからないのかもしれませんが、そういうことを示し得るならば、こんがらかってしまったものも糸口がたぐっていけるのじゃないかという気もするので、その辺はいかがでしょうか。全くわからないのですか。
  220. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 一部ただいまの大臣の御答弁の繰り返しになりますが、私どもとしましては、第十八富士山丸船長及び機関長の無実を確信しておりまして、かかる観点から、本来お二人については無条件に釈放、帰国が実現されるべきものだと確信をいたしております。政府としましては、このような立場に立ちつつも、本件解決のために、できる限り柔軟な姿勢で、ただいま大臣が御説明をいたしましたラインを通じまして、あらゆる方途を尽くしまして努力をしてきたところでございます。しかしながら、今までのところは実現をしていないのは非常に遺憾だと考えております。  現時点で北朝鮮側とのやりとりにつきまして詳細を明らかにしますことは、交渉に悪影響を及ぼしかねないということもございますので差し控えさせていただきたいと存じますが、閔洪九、例の北鮮から参りました兵士でございますが、閔洪九の北朝鮮への送還という問題が考えられているとしますれば、この本人につきましては、本人が北朝鮮への帰国を拒否しているということから、国際法上からもまた人道上の観点からもこれを実施するということはあり得ないことだというのが我が方の立場でございます。
  221. 和田一仁

    ○和田委員 私は、誠意の中に、今藤田さんが触れられた閔洪九さんのことは念頭にございません。これは別であると私は認識しております。ですから、そうでない別の意味での誠意ということでお尋ねしたので、誤解いただかないようにお願いしたい。  今、閔洪九さんのことが出たのでちょっとお聞きしますが、本人がいわゆる亡命、日本では亡命というのはないのですが、難民認定ですね、これを求めているにもかかわらず、なかなか難民認定できない。これは閔洪九さんだけでなくて、国際的に見ていて日本の亡命者の受け入れ態勢、難民の受け入れ態勢というのは何か非常に枠があったり厳しいという感じがしてならぬのです。その辺、外務省として、法務省との関係もあろうと思うのですけれども、もう少し国際的に政治亡命、難民、こういうものの受け入れの姿勢を広げていただけないか。これは閔洪九さん自身が一生懸命難民の認定申請をしていてもできないということも含めて、今ちょっと閔洪九さんの名前が出たのでお聞きしますが、きょうは法務省は全然お呼びしていないのですが、大臣どうでしょう、こういう難民問題、これからも相当こういう問題に絡んで大事な問題になっていくと思うのですが、いかがなものですか。
  222. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その点、私も心を痛めている一人でございまして、やはり日本は他の国々に比してそうした面におけるところの手当て等がおくれている面が確かにあるのではないか、かように思います。したがいまして、改善を必要とするところは改善しなければならぬ、これが私の考え方であります。
  223. 和田一仁

    ○和田委員 ことしの二月に竹下総理が訪韓をされまして、盧泰愚新大統領とお会いになりました。そのとき盧泰愚大統領からソウル・オリンピックの話が出まして、これを何としても成功させたいと。当然でございます。これについていろいろあるので、何とか日本韓国との間で協議体というものをつくって、そしてこの開催が成功裏に終わるように、安全に終わるようにしていきたいというお申し入れがあって、これを受けて竹下総理の方から、ソウル・オリンピックに関連した安全対策につき両国の実務担当者によるオリンピック関連安全対策日韓連絡協議会を四月下旬に東京ででもやりましょうという合意がなされた、こういうふうに聞いておるわけですが、この協議会の進行状態はどうなのか。下旬というともう間もないですけれども、基本的にこれに対する日本の協力、私どもも何としてもオリンピックは成功裏に終了させなければならないと思っているので、その点についての基本的なお考えからお伺いしたいと思います。     〔近岡委員長代理退席、月原委員長代理着席〕
  224. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日本側はアジア局長が窓口でございまして、この人がチーフになるわけでございますから、詳細は後で当人からいろいろと御説明申し上げたいと思いますが、この間の外相会談におきまして合意しまして発足を見るに至った次第でございますが、やはり和田委員と同じようにソウル・オリンピックは何としても成功させなければならない、かように思っております。  そのためには、まず懸念されるのは安全である。したがいまして、特に日本は、選手団あるいは監督団、さらには観光団等、相当数のお方が日本を経由されるであろう、こういうふうなことを考えました場合に、我が国にそういうような分子はいなかったといたしましても、国際的なテロがまじってそうしたことを起こした場合の責任等々を考えましたならば、これは本当に徹底した対策を講じてこそやはり安心してオリンピックを迎えられる、かように思います。このことは政府といたしましても一番強く、オリンピック成功のための要因である、こういうふうに考えておりまするから、ぜひともその体制を固めて、そしてオリンピックの成功を日本も心から祈りたい、かように思っております。  他は政府委員から申し上げます。
  225. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいまの大臣の答弁をちょっと補足いたしますが、ただいま委員指摘の二月の総理御訪韓を受けまして、三月二十一日の日韓外相定期協議におきまして第一回会合を四月下旬に開催するということで合意を見まして、その後鋭意準備を進めてまいっております。  具体的には、四月の最後の週に、一日半ないしは二日くらいかと思いますが、東京におきまして開催するということで、国際テロに関します情報交換、両国における安全対策体制、オリンピックの安全対策に関する日韓協力等の問題について実務レベルでの協議を両国とも関係省が集まって行うということで、鋭意準備を進めております。
  226. 和田一仁

    ○和田委員 大臣も触れられましたけれども日本の人がオリンピックにたくさん行くのはもとより、ソウル・オリンピックには世界じゅうから人が集まってくる。ソウルだけの人もいるでしょうけれども、もちろん大臣のおっしゃるように日本を経由して行く人もいる。また、帰りに日本へ来る人もいるでしょう。日韓間にかつてないぐらいのたくさんの人の交流がこの期間はあると思うので、そういう意味で、日本の中でのそういうテロをやるような連中がおるわけですね。こういう連中に対する厳しい監視、予防策を講ずるだけでなくて、例えばフェリーで行ったり来たりする、飛行機で行ったり来たりする、そのほか客船をチャーターして行くというようなときに、これはやはり海上での安全も考えて、オリンピックは見たいわ、危なかったら嫌だというようなことのないように、万全の安全対策をとっていただきたい。その辺はどうなっておりますでしょうか。
  227. 児玉毅

    ○児玉説明員 海上保安庁は、ソウル・オリンピックに対するテロ防止等の関連安全対策を総合的かつ効率的に推進するために、四月一日をもちましてソウル・オリンピック関連安全対策室を設置いたしました。  その主たる実施項目でございますが、第一に、不審船に対する警戒の強化でございます。我が国周辺海域には日本漁船に偽装した工作小型船が夜陰に乗じまして出没することがあるわけでございます。海上保安庁では、従来からその可能性の高い海域に巡視船艇、航空機を配備して警戒に当たってきたわけでございますが、ソウル・オリンピックの開催に向けましてこれから段階的にその警戒を強化していくというのが第一点でございます。  それから第二は、我が国韓国との間を就航する定期カーフェリー及び臨時旅客船等に対する航路警戒でございます。我が国韓国との間には、下関―釜山間、さらには大阪―釜山間に定期カーフェリーが就航いたしております。また、オリンピックの開催に伴いまして、我が国から韓国向けの臨時旅客船等が相当数就航するという見込みでございます。私ども海上保安庁といたしましては、オリンピック開催が近づきました時点から、これら定期カーフェリー、臨時旅客船等の航路筋に、ヘリコプター搭載型巡視船を初めとします巡視船艇、航空機を集中的に配備して警戒するというようなことを考えております。
  228. 和田一仁

    ○和田委員 大変広範囲に警備をされるわけなので御苦労だと思いますけれども、万全を期して安全確保をしていただきたいと思います。  ただ、海上保安庁は港から向こうの港、いわゆる海上の警備担当だと思いますが、やはり水際できちっとしておくことも必要だと思うのですね。ですから、空港あるいは船に乗る場所、こういうところの警備体制チェックも、これはシージャックだとかハイジャックだとかいうことも含めて厳重にやっていかなければいかぬ。さらに、オリンピック開催前には、日本の国内で各国の選手がキャンプを張ってオリンピックに向かってのトレーニングをなさるということも聞いているわけですね。何か二十六ぐらいの国の選手が来てそういうトレーニングもなさる。これも含めて、国内警備というのも大変大事だと思うのですが、そちらの方はいかがでございましょうか。
  229. 國枝英郎

    ○國枝説明員 お答えいたします。  警察といたしましては、ソウル・オリンピックの安全確保のために種々の対策を講じておるところでございますが、例えば我が国に潜入いたします北朝鮮工作員、これの発見、検挙、日本赤軍その他の国際テロリストの動向把握、今先生御指摘の外国選手団、現在のところ約三十数カ国の名前が挙がっておりますけれども、こういう外国選手団やあるいは海空港の警戒、警備というところに力を尽くしておるところであります。また、我が国を経由いたしましたテロ行為を防止いたしますために、韓国を初めとしまして外国の治安機関とも協力しながら、国際テロリストの把握あるいは潜入の防止に力を尽くしたいと考えております。
  230. 和田一仁

    ○和田委員 沖縄国体のときの警備も大変だったと聞いておりますけれども、それにも負けず劣らず大変な警備だと思います。ぜひひとつ万全を期して、安心してオリンピックに参加し、また見物に行けるという体制をつくっていただきたいものだと思います。  ただ同時に、韓国はアメリカともそういう意味で安全対策の連絡をしながら万全を期しているようですが、韓米、韓日というだけで、三国共同でという考えはないのでしょうか。
  231. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 国際テロが民主社会に対する挑戦であるという立場から、従来から米国、韓国を初めといたします関係国とあらゆる機会をとらえて国際テロ防止のための情報交換等は行っておりますけれども、特に日米韓三国間で今回特別の枠組みを設けてオリンピックに向けてのテロ防止共同対処という話は具体的にはございません。
  232. 和田一仁

    ○和田委員 もう一つこれに関連して長谷川局長がいらっしゃるのでお尋ねしたいのですが、その期間にややオーバーラップして、日米共同演習、大演習があると聞いておるのです。これはたまたま一致したのか、それともやはりこの安全対策の一環になり得るとお考えになっているのか、何かのデモンストレーションなのか、その辺はどうなんでしょうか。
  233. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  海上自衛隊は毎年秋ごろに海上自衛隊演習を実施しておりまして、昭和五十六年度以降、その一部では日米の共同訓練を行っております。今年の秋も海上自衛隊演習を予定しておりまして、その一部において米海軍等との共同訓練を盛り込みたいと考えておりますけれども、実施の日時は未定であります。また、その規模とか使用海域等も決まっておりません。それから、共同訓練に参加する米艦艇の種類や規模も決まっておりません。
  234. 和田一仁

    ○和田委員 新聞というのはもうまさに決まったように書いてあるのでお聞きしたわけなんで、私の手元にある新聞では、九月二十八日から十月十二日までの二週間、これが実動訓練で、ソウルのオリンピックの方は十七日から十月二日までですね。ややオーバーラップしておる、こう思うわけです。これも、参加兵員三万人、海上自衛隊、航空自衛隊の航空機約二百機、米海軍との大演習、こういうふうに書いてあるものですからお聞きをしたわけでございますが、これは別にそうでないということであれば、また別の機会にこの問題は御質問いたします。  時間がなくなりまして大変なになんですが、最後の方になりましたので、大臣にお聞きしたいと思うのです。  南アフリカのアパルトヘイトですが、何としてもこういった人種隔離政策というものは改めてもらわなければならないという立場からいろいろな経済的な制約を加えているわけですが、にもかかわらず南アフリカとの貿易額が日本がトップになってしまった、こういう状態でございます。こういったことに対して大臣は大変気を使って、財界にも要請をされたというふうにも伺っておりますが、これを何とか実効あらしめるような方法、いわゆるアパルトヘイトそのものをやめさせるための方法というのは、こういう経済的な制裁や何か、これもじわじわと効いてくるとは思うのですよ、効いてくると思うのですが、これしかないのかどうか、それが一つでございます。  同時に、そういう意味を含めてか、今度はアンゴラとの漁業協定が締結されるということも聞いております。こういうことが相互作用を起こしながら効いていくのか、あるいは、これはこれ、それはそれと別にお考えになっているのか。とにかく南アフリカに対して、大臣も御心配でいろいろやっておられるようですが、なかなか格好の上で、経済制裁をしたにもかかわらず経済成長がまた盛り上がってきているというような状態なんで、どうしたらこういうものが地球上からなくなるのか、方法等について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。このアンゴラも含めてひとつお答えいただきたいと思います。
  235. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 アパルトヘイトの南アに対しましては、我が国は西側陣営の中におきましても外交的なつながりがないという唯一の国である。ただ、領事事務はとらしておりますけれども、一応大使館等々の交換はいたしておりません。そうした姿勢を保ちながら、人道上の問題としてこれはあくまでも取り扱わなくちゃならない、かように思っております。  にもかかわりませず、貿易上の数字の上で、去年、不覚にもと申しましょうか、アメリカの方がぐっと下がって日本が一番になった。これは円高であるとかドル安だとか、いろいろな影響もあったでございましょうが、それにしてもやはりジャパン・バッシングがはやっておる世の中でございますから、さながらアメリカに取ってかわって一番になろうという努力日本はしたのじゃないか、こういうふうな火事場泥棒的な非難を受けておるということはまことに恥ずべきことだ、私はこういうふうな観点で経団連の幹部、また同友会の幹部、実はけさほどは自発的に貿易会からも一度お話を承りたいというので、八時から出向きまして幹部の方々にそういうお話もいたしたのでございますが、いずれも経済団体は、恥ずかしい話でございます、したがいまして大いに自粛をいたしましょう、こういうふうな感じになっております。現に、大きな企業でございますが十社ばかり、それぞれの報道は各紙まちまちでございますが、しかし外務省といたしましても、おおむねそういう方向に向いて我が国の企業も動き出した、かように存じております。  だから、それ以外の手でアパルトヘイトを何とか抑え込む方法はないのかというような話もあるわけでございますが、それは経済制裁が一番いいのじゃないかというふうなことになりかねない面もありますけれども、経済制裁ということになりますと、世界各国がそろって経済制裁するのならば効き目がございましょうが、経済制裁の結果、被害者の黒人に職場を失わしめたとかあるいは黒人の必要なものが得られなかったとか、いろいろな問題がありますので、これに関しましては、ちょっと今のところ先進国の間におきましても足並みがそろっておらないというのが事実でございます。したがいまして、各自それぞれアパルトヘイトはけしからぬということで現在進んでおるというのが今の立場でございますので、この点もぜひとも御理解賜りたいと思います。  私は、これだけ世論を盛り上げることができました、したがいまして、こういう世論のもとにおいて、なおかつ一九八八年を締め切った場合に各企業において何かへんてこな数字が出た場合には本当に社会的制裁を受けるよ、そこまでやはりモラルの問題として、人道上の問題として考えてくださいということをしきりに申し述べておるわけでございます。この点は、与野党を通じまして、国会の同じような世論喚起にも当たっていただいておりますので、私たちといたしましても、なお一層この問題を徹底いたしたいと思います。  なお、アンゴラの問題に関しましては、これは政府委員からお話しした方がいいと思います。
  236. 恩田宗

    ○恩田政府委員 私どもは、近くアンゴラ政府ともいろいろな問題について話し合う機会を持ちたいと思っております。その中の一つに漁業の問題がございますが、これはアンゴラの沖における日本の漁業の問題でございまして、特に南ア政府に対する圧力ないし意思表示ということではございません。
  237. 和田一仁

    ○和田委員 大臣のお話の中に、企業がやっといろいろ考えていただいて撤収をやったりしているということですが、政府機関に準ずるんでしょう。ジェトロの話もちょっと聞いたんですが、ジェトロのあそこの事務所を撤収というようなことは話し合いが進んでいるんでしょうか。
  238. 恩田宗

    ○恩田政府委員 ジェトロの問題につきましては、所轄の通産省の方の考え方は、ジェトロの活動というのは情報収集等、特に南アに対する貿易を拡大するという目的だけでない活動もしておる、したがって、とりあえずは閉鎖は考えてはいないという考え方でございます。  私どもも、ジェトロの存在自体が、日本の南アに対する、アパルトヘイトに対する厳しい政策というものを大きく誤解されるようなことになる場合には、再度通産省側とお話ししたいと思っておりますが、当面通産省のお考えはそういうことでございますので、この問題についてはおいおいお話し合いをしたい、こういう状況でございます。
  239. 和田一仁

    ○和田委員 もう一問だけで終わらしていただきます。  先般、青森近海航行中の米軍の原子力潜水艦プランジャーの中で急患、乗組員の急病人が出ました。胆石の発作か何かで大変苦しんだらしいですけれども、その病人を海上自衛隊がピックアップして、そして三沢の病院へ運んだことがございました。これは人道上当たり前のことで何ら心配することもないと思うのですが、このことにつきまして外務省がコメントを出した。「緊急事態に伴う人道上の措置。わが国の非核三原則の上からも何ら問題はない」というコメントが出たわけですね。この「非核三原則の上からも何ら問題はない」という、この点を御説明いただきたいのです。
  240. 有馬龍夫

    有馬政府委員 そのような報道があったことは存じておりますけれども外務省はそのようなコメントはいたしておりません。  ただ、一般論として今回の救助とそれから非核三原則との関係いかんということでございますれば、今回の救助活動に際して米側からは核持ち込みの事前協議はございませんでしたから、当該潜水艦には核兵器が搭載されていなかったことは明らかである、こういうことでございます。
  241. 和田一仁

    ○和田委員 時間が過ぎてしまいましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  242. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 広瀬秀吉君。
  243. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 在外公館法についてまず御質問いたしまして、その後、今日、日本外交の盲点というか空白の状態になっている朝鮮民主主義人民共和国との外交関係はどうあるべきかという問題について、外務大臣に御質問いたしたいと思います。  最初に、在外公館法について数字をお聞きしたいのですが、皆さんの資料によりますと、在外公館の所在箇所は百七十一という数字があるわけでありますが、今日世界には、日本と外交関係を結んでいる、国交を持っている国の数が幾つで、そのうち在外公館のあるところは幾つであるという数字を示していただきたい。
  244. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 現在我が国が外交関係を結んでおります国の数につきましては、今確かめておりますが、在外公館の数につきましては、先生御指摘のとおり百七十一でございます。これは実館でございまして、大使館、総領事館、領事館を含んでおります。
  245. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 外務省から「わが国外交実施体制の強化について」という大変よくできたパンフレットをいただいております。この中に日本外務省の定員の諸外国との比較表があるわけでありますが、日本外務省は四千六十である。ことしの予算では八十六名か増員をされたということも伺っているわけであります。アメリカと比較するのもどうかと思うけれども、一万六千三百二人という数字が出ております。同じような立場にあるといいますか、敗戦国であり、しかも戦後の経済成長は西では西ドイツと言われるドイツ連邦共和国が六千三百六十二。人口比でいくと日本の大体半分ですね、それと比較いたしましても六千三百対四千六十。今度八十ふえても四千百台にやっとこ乗ったという程度でしょう。  この少ない人数の中で、在外公館に勤務する人は幾らですか。これは大臣でなくてもいいです。
  246. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 昭和六十二年度の数でまいりますと、ただいま委員指摘のとおり全体で四千六十名でございます。そのうち在外公館の定員は二千三百九十七名、本省定員が千六百六十三名でございます。
  247. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 今日的な国際社会における日本の地位というのは、国際経済の中で間もなくアメリカを追い越すかもしれぬというような国民総生産、あるいは国民一人当たりの所得というような点でもかなり上がってきている。それだけ経済的な力が圧倒的に強くなってきているというようなことで、それに見合う国際的な責任を応分に果たしていかなければなるまい。世界各国の国民にそういう経済大国としての奉仕、貴重な人類の幸福を目指して援助のできるような体制について、国際的な役割、そういうものが要請されているだろうと思います。そういう立場でいうと、そのためにはいかにも貧弱な外務省の予算であり、またそれに従事している外交官、本省もあるし、在外公館もあるけれども、いかにも貧弱に過ぎるのではないかという気持ちを持たざるを得ないわけであります。  一般の国内の公務員の定員は減らしながらの中で、宇野外務大臣努力もあったのだろうと思うけれども外務省に幾らかでもふやしていただいたのは結構なことであるけれども、そういう新しい国際環境の中で日本が国際的に求められている役割を果たしていくために、在外公館に勤務する人あるいは本省でそれをコントロールする人たちはどのくらい必要とするか。あなたが理想のイメージとして描くものはどのくらいの数を想定されておるのか。私の所見をこの際申し上げれば、せめて早急に西ドイツ並みぐらいにはしたいものだな。アメリカの一万六千というようなことはいろいろ議論のあるところだろうと思いますし、一気にというようなこともできないだろうと思いますが、大臣から、日本外交の新しい局面におけるあなたの理想的な陣容、それを担う陣容はどれくらい欲しいかということを、率直に、歯にきぬ着せずに言うていただきたいと思うのです。
  248. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今日の日本の地位、また世界における在外公館の配置、そして世界に対する貢献、そうしたことから考えました場合には、はっきり申し上げまして多々ますます弁ずでございますけれども、現下、日本といたしましても財政再建さらには行政改革を緩めてはいけないという大方針のもとに歴代内閣が臨んでおります。したがいまして、私もそういう方針の中において、一応少数精鋭ではあるが、せめて五千人は当分の間必要とするというふうな体制でなくてはならないと思っております。それにいたしましてもまだ千人以上の差があるわけでございまして、広瀬委員からは六千人ぐらいは持てというありがたいお言葉でございますが、一応とりあえず、あらゆる条件を克服して五千名体制というものをもって少数精鋭であっても頑張れというのが現在の私の立場だ、こういうふうに申し上げたいと思います。
  249. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大分控え目に五千名体制で、とにかくそこまではいきたいということのようですけれども、これはまさに多々ますます弁ずであろうと思います、不必要なものは要りませんけれども。  かつてアメリカが、私も反米の立場をとるものではないんですけれども、余りにもアメリカの海外諸国に対するスタンスといいますか、そういうものがやはり自己のある特定の政治目的を持ち過ぎて、オーバーコミットをしてきたんじゃないか、そういう批判を私なりに持つのです。  これからの日本が果たすべき役割というのは、そういう立場でなく、特定の政治目的というようなものではなしに、自己の勢力圏を広げるんだというようなことではなしに、やはり何といっても非常に貧しい発展途上国、かつては後進地域とか後進開発地域とか言われましたけれども、最近ではそれを言い直して開発途上国と言っておりますけれども、そういうようなところで、本当に飢えに苦しみ、貧しい生活に苦しんでいる、しかも政治体制もしっかりしてない、ましてや教育、文化、芸術、そういうような面でも生活の見合いにおいてやはり非常に貧しいものがある、そういうようなところに居住をしている。同じ地球上の民族として、それぞれ民族性はあるにしても、そういう人たちが本当に人間らしく生きられるような、そういう方向に向かって平和的に、民主的に、そして生活を大事にする、生活を向上させていく、こういうような立場で、やはり本当にそれぞれの相手の国の国民のニーズにこたえる、本当にニーズにこたえる、そういう立場でやはりこれからの日本の外交というものは発展させていかなければならない。  そこがこれからの日本の、アメリカとは一味も二味も違った新しい行き方ではないかと思うのでありますが、その点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  250. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今、広瀬委員がるるお述べになりましたことが一番大切だと私も痛感いたしております。  特に、途上国はその出生率を考えましても先進国の倍であるということも言われますし、また最近の趨勢を資料によって調べますと、年間三千万ずつふえていかれるであろう、こういうふうになってまいりますと、日本はやはりその外交の足場は太平洋並びにアジアであるということを申すと同時に、今日このままの日本のよい環境を育てながら、やはり先進国の一員としてそれだけの使命を将来にわたって果たさなくちゃならない。かように考えてまいりますと、当然私たちは、いろいろな目的を持った予算も必要でございますが、足腰も大切だということを申し上げなければなりません。  なおかつ、ガット一つ考えてみましても、やはり外交の分野はどんどんどんどんと広がっておるわけでございます。物の移動だけを眺めておった場合のガットと、物が移動する場合のサービス、これをどうするんだというふうに今や対象は広がりましたし、さらに物を生み出すについての私的所有権はどうなるんだというふうにまた対象は広がります。さらに、私はいつも言うのでございますが、平和が続けば続くほど破壊はない、破壊がなければ物が生まれる、物が生まれれば値段が下がる、値段が下がるという観点から立ちましても、やはり優秀なものを第一次産業におきましてもあるいは鉱工業の製品におきましても生み出していくということが大切だというふうに考えてまいりますると、今やガットはどんどんどんどんと農業問題に拡大され、あるいはまた熱帯産物に拡大されるというふうに、これは自然の流れでございますから、こうしたことと我が国と世界との福利というものをあわせ考えた場合に、当然私はそれだけの配備をする必要がある、こういうふうに考えております。  したがいまして、今本当によい御意見を吐いていただきましたので、そういうふうな力強い御意見等々を背景といたしまして、今後さらに、これはもう何も外務省だけの利益を考えてやっておるのじゃない、あくまでも世界の利益を考え、また我々日本国民の福祉を考えた上でのことであるということにおきまして、なお一層今後そうした面における努力、これは私の責任だと思ってやってまいりますので、よろしくお願いいたします。
  251. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 宇野大臣の極めて高邁な抱負を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  そこで、そういうお気持ちを持っておられる中で、たった一つ、ちゃんとした国家をつくっておりながら、日本がこれを全く承認もしない、全く空白の状態に置かれている、しかも、かつて三十六年に及ぶ植民地支配というか、朝鮮総督府の支配の中であらゆる苦しい思いをさせてきた北半分の存在、これは朝鮮民主主義人民共和国としてもう既に百二カ国の承認も得ておるわけでありますが、これに対して韓国との関係は、一九六五年に日韓基本条約をもって、戦後の処理というか、そして新しい国交正常化を達成したわけであります。たった一つ残っている北の問題に対して、今のあなたの高邁なお話からいって、私はもうそのとおりだと本当に賛意を表したわけですが、それから取り残された朝鮮立場に対して、基本的にどういうお考えを持ち、そしてまたこれからどうなさろうとしておるか。  いろいろ今まで戦後の条件の中で、六〇年代、七〇年代、八〇年代と、それぞれ少しずつ政府の態度も、非常に北朝鮮に対して理解のある、あるいは将来に明るい展望が開けるような答弁などもあったり、それを今度は逆戻りさせるような答弁があったりという揺れ動きがずっと六〇年代、七〇年代、特に七〇年代の前半などはこれは非常に明るい展望が開けるような状況にあったわけなんですけれども、八〇年代になって今またこれが逆戻りしているような感じもしないではない。  そのいろいろな一つ一つの問題は後から触れることにしても、とにもかくにもそういう中で、今日、KAL機事件、爆破事件というようなことで、日本政府韓国、アメリカとともに北をテロ国家であるというようなことで断定をして、これには非常に多くの疑問があるわけでありますけれども、それにもかかわらずそういう制裁措置に踏み切ったというような状況の中で、今朝鮮問題を議論すること自体がなかなか厳しい状況にある。しかし、私はこういう厳しい状況の中であるからこそ、やはり新しい日本の正しい外交路線をこの関係においてどう展開していくかということは非常に今大事な時期であろうと思いまして、あと約一時間にわたっていろいろ質問したいと思うのです。  まず、外務大臣の基本的なスタンス、基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  252. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御承知のとおり、一九四五年、我が方も第二次世界大戦敗戦国としてそうした年を迎えたわけでございますが、同様に、ドイツあるいはイタリー、いわゆる当時の枢軸国は敗戦国に回りました。その結果、我が方の旧植民地もこれが解放された次第でございます。  そうしたことは一つの意義があったかもしれませんが、残念なことに地球上のあちこちに分裂国家が誕生したということは、もう広瀬委員も御承知のところでございましょう。東西両ドイツしかり、あるいはまた中国と台湾はどうなるんだとか、さらにはまたベトナムも南北に分かれている。その中の一つの一番大きな例として、朝鮮半島が三十八度線をもって、これは民族の意思ではなく戦勝国の主たる国々の意思によって両断された、同じ民族であるにもかかわらず二つの国になった、こういうような経緯がございました。  そのとき、もちろん私たち敗戦国であり、同時にすべての領有権を失っていき、また放棄するわけでございます。そうした中において、肝心かなめの分裂国家であった南北間におきましては、いわゆる朝鮮動乱というものが起こりまして、同じ民族が血で血を洗うような苦い体験をせられた、これが言うならば今日まだどこかに一つの緊張として残っておるということは否定することはできないだろうと思うのであります。  同時にまた、非常に難しい話ではございましたが、分裂国家を同時に承認することはなかなか難しいという話もございました。もちろん南北ベトナムはああいう経緯によりまして今日は一つになった。あるいはまた東独、西独は、遠い離れた国でございますから私たちも両国を承認し得て、これは問題にならなかったわけでございますが、私たちの領有をいたしておりました台湾はどうするのか、中国と日本関係はどうかというときに、やはり分裂国家――一つの国家であると中国は今日言っていらっしゃいますから、さような意味合いにおきまして、私たちは現在は台湾との国交をやめて、そして中国政府と新しい国交を結んで、さらに一つの中国というもとに今日国交が続けられておる。非常に発展しております。  こういう経緯一つずつ考えますと、では、朝鮮半島においても二つの国を承認できるかという立場に立ちますと、今申した経緯の中においても一番難しいのが朝鮮半島ではなかろうか、かように思います。したがいまして、私たちは先に同じ自由主義陣営であるということにおきまして韓国との国交正常化を図って、北鮮が残ってしまったという関係にございますが、今日、北鮮を私たちが承認せんとするか、そのときに今までの友好国である韓国はどのようにお考えなさるであろうということを考えていかなければなりません。よくクロス承認ということが言われまして、日本とアメリカが北鮮を承認せよ、その反対給付のような形において中国とソ連韓国を承認せよ、このクロスを同時にやれ、こういうようなこともそういうふうな非常に難しい関係を言いあらわしている一つの手段ではなかろうか、かように考えております。  しかし、今日韓国は非常に発展されました。盧泰愚大統領が第六共和国の大統領になられた。我が国と違いまして、第一、第二、第三、第四、第五、第六と、もう本当に陣痛の苦しみを味わいながら新しい国家体制を整えられて、そして盧泰愚大統領は、この間、私直接お目にかかりましたが、オリンピック等々を通じて北朝鮮に対しましては前日までドアを開いておく所存でございます、このように申しておられますし、また、いろいろと社会主義また共産主義の国々に対しましても扉を開いておられるという新しい事態は起こりつつございますが、今私が申し上げましたような、日本だけが北鮮をやることに対しては韓国はどうか、もちろん反対である。  こういうふうな関係も多々ございますから、今日私たちは、民族がいつの日にかは一つの国になられることをひたすらこいねがうと同時に、やはりこれは朝鮮半島においては南北の問題である、南北がどういうふうにされるかという民族としての問題である、こういうふうに言わざるを得ないのが今の日本立場でございます。  したがいまして、国交はございませんけれども議員連盟方々も向こうへ行っていらっしゃるわけでありまして、文化、スポーツあるいはまた多少経済等々に関しましても、我が国といたしましては今日までいろいろ友好を結ぶべく努力をしておったこともまた事実でございます。そうしたことを、私といたしましては、今日ただいまの時点におきましては申し上げましたのが大体今の政府考え方である、かように御理解賜りたいと思います。
  253. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大分御親切な長い答弁をいただいたわけですけれども、今、日韓基本条約、これは一九六五年に結ばれたものでありますけれども、その日韓基本条約において、朝鮮半島における唯一の合法政権は大韓民国であるということは条文にも書いてあるはずですね。これは当時いわゆる有効に支配、管轄する地域がどこであるかという点でいろいろないきさつがあり、当時の椎名外務大臣あたりも大分苦労されたようでありますが、その辺のところはきちっと歴代の条約局長なんか国会でしばしば答弁している、特に高島さんの答弁を私もずっとトレースしてみたのですけれども、その辺のところは、これは大韓民国の支配、管轄している区域というのは三十八度線、今では休戦ラインと言っておりますが、その休戦ラインの南に限定をされているということは、よもやそれを覆すような気持ちは全くないだろう。歴代の内閣でもそういう方向をとってきている。この点はいかがでございますか。
  254. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員が言及なさいましたとおり、日韓基本関係条約国会審議以降、累次にわたりまして政府から答弁いたしておりますように、条約第三条に言及しておりますように、大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(Ⅲ)において明らかにされているとおりの朝鮮における唯一の合法的な政府であることを確認しているわけでございまして、我が国と北朝鮮との関係については何ら触れていないというのが累次私どもが御答弁しているところでございます。
  255. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 その点きちんと確認をしていただいたわけでありますけれども、したがって、休戦ラインの北には朝鮮民主主義人民共和国が厳然として存在している、この事実ははっきり認められますね。
  256. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 その点も累次私ども国会その他の場で申し上げておりますし、韓国自身が、国際社会の構成員として二つの国家が半島に存在していることは厳然たる現実であるということを公式にも言明しているとおりでございます。
  257. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 その点も確認をいたしまして、さて大臣、そういう状態にあって、北との関係においては――朝鮮民族は一つの民族である、文字も話す言葉も同じハングル語である、肌の色もみんな同じである、その同一の民族が、そしてかつては日本の文化の源流と言われるような立場日本の文化にも大いに寄与した国である、そしてまた一衣帯水の一番近い国である。  韓国との間はとにもかくにも一九六五年以降は非常に親密な関係になり、しかも日本からの大変な経済的な援助、これはODAにしてもOOFにしてもあるいはPFにしてもそういうものが大量に与えられている。そして、経済的にも大いに発展している。これは隣国が発展することですから私もそれは結構なことだと思うんですね。  ところが、そういう同じ民族が国際政治のはざまで休戦ラインを隔てて南北に分断をされている、分断国家の悲劇というものは、これはやはり大変なものであろうと思うわけであります。そしてまた、かつて朝鮮半島全体に対して日本植民地的な支配体制を三十六年も続けた。その中においては日本国民だという同化政策なども進行させて、したがって徴兵の義務、軍務に服するというような義務まで彼らに押しつけた。さらにまた、それ以外の軍属だとかあるいは強制的に進行して国内の軍需産業に働かせる、あるいは銅山にあるいは石炭山に、戦時中はそういうような非常に厳しい労働、本当に厳しい条件の中で、生死を分かつような苦難な思いをさせながら使った、そういうような人たち。  南半分に対してはまあまあその後の条約で、国交回復がちゃんとできた後、非常に親密に発展をしている。ところが、北半分に対しては全く白紙である。特に、先ほども申し上げましたけれども、戦後処理すら終わっていないという、これは日本外交にとってまさに全くの欠落部分であり、これはやはり国際的に日本が恥ずべき事態であろうと私は思うわけです。これを何とか解決をするということは日本外交の一つの大きな残された課題、しかも急がなければならない課題であろうと思うわけです。  先ほど第十八富士山丸の問題も出ました。そういうような問題、あるいはソウル・オリンピックも開催をされる、北だけが取り残されるような形になりつつあるというようなことで、日本政府の扱い方、日本政府の北に対する対処の仕方というものが、余りにも休戦ラインを挟んで北に対してオール・オア・ナッシングのつき合いをしてきたということについて、外務大臣は心の痛みを覚えませんか。あなたも文化人であり、しかも音楽を愛し、そういう芸術に心引かれる優しい、豊かな気持ちを持っておられる大臣だと私は見ているのですけれども、その大臣としてそういう問題に対してどういうように考えられますか、御所見を聞かせてください。
  258. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 確かに三十六年間の韓半島の領有ということに対しましては、我が国はどういたしましてもまず反省をしなくてはいかぬ。私も日韓条約を結ぶときに、まだ二年生議員だったと思いますが、しばしば密書を帯びましてそのために働いた一人でございます。そのときに私の反省は、異民族が異民族を統治するということはいけないことであるとはっきり申し上げました。したがいましてそういう意味で、その当時ずっといろいろと経緯がございましたが、我が国は、まず韓国政府我が国との国交正常化を図ったという経緯は申し述べたとおりでございます。  だから、一つの民族が二つに分断された、みずからの意思ではなくして戦争の結果二つに分断された、このことは非常にお気の毒なことである、かように思っております。したがいまして、私たちも極力二つの国が一つになり、一つの民族が一つの国に住まわれる方がいいと思いますが、率直に申し上げまして、余りこの面でしゃしゃり出ますと、私ももう二十何年間韓国方々とおつき合いいたしておりますが、それは私たちの問題ですというのがまず第一番目に出てくるわけです。そして、日本の手をかりなくても、これは民族の問題としていつの日にかは私たちは立派に一つの国家になってみせますよ、こういうふうなことをおっしゃる人の方が極めて多い、こういうことを私たちも実感いたしております。したがいまして、先ほど申し上げましたとおりにこの問題は南北の各自の問題である、南北自体の問題である、こういうふうに申し上げておるのは、昨今では我々政府の一致した、変わらざる意見なのでございます。  日本の統治下で一番いけなかった面は、創氏改姓なんというようなことで、これは随分とあの文化高き、誇り高き民族に対する侮辱であったのではないだろうか、かように思います。したがいまして、北朝鮮も同様ではないか、こういうふうにおっしゃる広瀬委員のお気持ちは、広い立場に立った場合にはそういうことも言い得るかもしれませんが、何分にも現在は未承認国である、国交のない国である、こういうことを考えました場合に、ODAの問題等々に関しましても、これはそう簡単な問題ではないと申さざるを得ない、それが現在の政府立場であります。
  259. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 るるお話があったわけですけれども、国交がない、まさにそのとおりなんです。なぜ国交が回復できないのか、関係正常化ができないのか、このことが問題なんでありまして、かつては、日韓基本条約ができたときに一方を承認をした。そうすると他方については、分裂国家の場合、片方と国交回復をした場合にもう一つの政権なり国家なりに対してこれを承認するというようなことはできない、これは国際的にはハルシュタイン原則とか言っているようでありますが、もう既に北朝鮮を百二カ国が承認している、韓国は百二十三カ国が承認をしている、そのうちの六十七カ国は今日両方を承認しているのですね。  したがって、朝鮮との関係において、分裂国家の一方を承認した場合にもう一つを承認すべきではない、それが国連中心主義の日本の外交の基本であるというようなことも当時言っておったわけですが、その後の状況の変化によってそういうようなものは見事に破綻をしておるのではないか、こういうように思うわけです。国連中心主義ということはあっても結構ですけれども、いろいろ経過を調べてみますと、もう既に国連でも韓国支持決議が通ってみたり、あるいは朝鮮支持決議が通ってみたりということで、国連の中では南北朝鮮は同じような立場にあると私は見ておるわけであります。  それで、北の場合でもIPUにはちゃんと加盟が承認をされておりますし、UNCTADの加盟国としても承認をされている。それからWHO、こういうようなところにもちゃんと加盟が認められておる。そういうことなんですから、分裂国家であるから、一方を承認したならばそれに対してもう片方をまた同時に承認することはできないという――国交が開かれていないのだ、国交が樹立されていない、関係正常化がなされていないということは、日本政府自身がその気になればもうできることではないか。そういうハルシュタイン原則だとかというようなこともその後の国際情勢の動きによって克服されてしまっているというようなことで、あと残るのは対韓配慮というか、これだけである。  それで我々が考えるのは、同じ文字、同じ文化、同じ民族が生きている南北が分断されているということですから、やがてこれの統一を目指すんだ、そしてまた日本政府もそれが望ましいということを国会でも総理大臣も答弁をしておるし、そしてその統一の方向に水を差すようなことをしない、さっき、余り日本がしゃしゃり出てはという大臣の答弁もあったわけですけれども、もうそういうようなものではなくて、基本をしっかり踏まえて、これは統一の方向に向けていくんだ、それに対して、その条件を整備するのに役立つように日本は行動するんだ、そういう基本的な立場というものをもう一遍そこに息吹を吹き込んで、そして新しい展開を図るべき時期が来ているのではないか、こういうように思うのです。いかがでございますか。     〔月原委員長代理退席、宮下委員長代理着席
  260. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も広瀬委員もともどもに安保騒動の後の国会で初めて議席を得たわけでございますが、自来三十年近く、その間に世界は大きく変動をいたしております。しかしながら、あの当時私たちがお互いに議論をいたしましたとおりに、分裂国家は同時に承認できないね、一方を承認すれば一方が国交を放棄するよというふうなことも事実あったわけでございます。  我が国の領有しておりました韓半島においてはそのことは特に警戒をしなければいかぬというのが私たちのずっと相変わらずの考え方であり、しかも、二つの民族が戦って、仲よくしようという機運は生まれておりますが、ついこの間残念な事件が出てきたりしまして、私たちはたとえそう考えておりまして一つになってくださいよと祈っておりましても、どこからかその亀裂が、韓半島の中において、朝鮮半島の中において生じておるということでございますから、広瀬委員の、旧日本といたしまして韓国のことを非常におもんぱかるそういう気持ちは、私たちもありがたい気持ちであり、お互いにそうした気持ちというものは失ってはいけないと思いますが、政治上の問題としてそれが果たしてできるかできないか、私は、ただいま余り日本が介入することは決して韓国も望んでおらない、かように思います。  そうなると、私たちがそういう心をたとえ持ち合わせてそういうふうなことはいかがですかと言いましても、かえって友好親善に傷をつけてしまう、そういう結果を招くのではなかろうか。したがいまして、これはあくまでも朝鮮半島における南北みずからの問題である、どうぞひとつ祈っていますからお互いがっちりやってくださいと言う以外にないのではないか、私はかように考えます。
  261. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大臣、そこを一歩踏み出さなければならない。できる、できないではなくて、やろうという気にならなければいけないだろうと思うのです。  それというのは、やはり韓国の御意向を無視するわけにいかぬ、ハルシュタインの原則からいえばそういう面もあるでしょう。そして、高島さんだったかだれか国会でも答弁しています。韓国の御了解を得た上で国交正常化あるいは関係正常化ということはやはりやらなければならぬでしょうと言っている、そういうことも経過としてはあるのです。しかし、そういう選択で、日本の外交の姿勢でいいのでしょうかということを聞きたいために、私は、あなたも十分承知のはずの戦前の歴史などにも触れながら言ったわけであります。  最終的には南北が統一国家として栄えていくように、そしてあそこに住む六千万を超える人々が、現在では南が四千二百万、北が二千百万とかあるいは二千二、三百万とも言われておりますが、合わせれば六千五百万に近い数になるのだろうと思います。そういう人たちが住んでおって、しかも、南に対して御機嫌をうかがわなければ何もできない、韓国の意思で日本の外交政策が決まる、日本外交として選択の幅というものが余りにもなさ過ぎるのではないか。韓国だけによって、韓国の意思だけによって日本外交は縛られてしまって北との接触というものができない、関係正常化ができないという、そういう外交の選択というのは、今日の国際社会の日本の置かれた立場からいってもとるべき態度ではないだろう。  日本はこれだけ大国にもなってきたのですし、そしてまた韓国に対して、条約に基づく無償の贈与三億ドル、有償政府関係援助二億ドル、民間ベースによる借款三億ドルという、あの当時で八億ドル、そのほかODAもあるいはOOFもPFもずっと続いて、経済的な援助額は、外務省からいただいたDAC資料を拝見すると、請求権絡みの三億ドルの無償援助なんというものはこれに入っていないと思うのですが、単純に足し算をしてみますと、それだけでも六五年から八六年までで一兆六千三百億を超えている。そのほかに、当時の三百六十円で計算すれば一千八十億円の、これは賠償金であるのかどうかということは当時もなかなかすっきりしないようでしたけれども、請求権の問題などもこれに加わるし、あるいはこの網に入らない日本韓国に対する直接投資なども考えると、大変な金額を日本から公的にあるいは私的に、また贈与という形で無償のもの、それから有償のもの、そういうもので経済協力、経済援助というものはたくさんのものが行っているだろうと思うのです。  私は何も、韓国にはそんなことをやる必要はないということを言おうと思っているのではないのです。北との関係において、あなた方は北に一体何をやりましたか、ナッシングだ、全くゼロなんですよ。そして、一方においては南半分に対してこれだけのことをやっているというのは、いかにも北に対して相済まぬことではないのか。そこで、本当に日本外交を担当する最高の責任者として、その辺のところをどう解決していくかということがあなたの任務ではないのかということを、これは激励を含めて私は本音を聞かせていただきたい。なかなか言いにくい状況に今日あるということも私も承知をしながら、しかし、こういうようなときであるからこそやはりこういう議論ももう一遍生き返らせ、息吹を与えて発展させていかなければならぬ、そういう立場日本も対朝鮮政策としてあるのではないか、こんなふうに思うのです。その辺を踏まえて、ひとつ前向きに私はこうしたい、そういう方向をぜひ出していただきたいと思うのです。  対韓配慮というのは、これだけ配慮をしてあげているのですから、韓国に相談をしない限りけしからぬというようなことで脅迫されるようなことはまずないだろうと思うのです。また、そうあってはならないと私は思うのです。そういうような立場で、なるほど分断国家であり、そしてまた、この前外務大臣でしたか、朝鮮半島で違うのは、ほかの分裂国家と違って、これはベトナムは別ですけれども、東西両ドイツと同じような形ではない、お互い民族同士で戦争をし合ったという不幸な経験がある、それだけに非常に難しいということを言われておりますけれども、これは日本が北に対して何もしない、全く空白である、戦後処理も四十三年たって今日進んでいない、こんな不自然な姿、こんなことがあるだろうか、こんなことが許されていいだろうか、そういう立場で、外務大臣の一歩前向きの考え方をぜひ聞かしていただきたいと思うのです。
  262. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう分裂国家のことは先ほど申したとおりでございますが、その分裂国家でありながら、また東西接点の最前線にいながら、実は東ドイツと西ドイツというものは朝鮮半島以上に努力をしている国家ではないか。例えばオリンピックにおきましても一つのチームを編成して出ていったこともありました。だから私は韓国におけるソウル・オリンピックが、そうした意味合いにおいて二つの国家が一つの民族として大いに自分たちの誇り高きスポーツにおける熱意を高揚されるだろうと期待もいたしておりましたが、残念にいたしまして、前日まで門を開いておくと韓国は申しておりますけれども、過般の大韓航空機事件はなぜ起こったかというふうなことを考えますと、私たちの祈りや私たちの願いとは別に、朝鮮半島の事情はまた別の動きをしておることは残念だ、こう申しておるわけであります。   その次は、広瀬委員が、さながら日本外交は韓国の鼻息をうかがってやっておるなんて、そんなばかなことは思っていただいてはいけません。野党からそういう声を出されることは最も我が国自体を侮辱することでありまして、韓国韓国の自主的外交、我々は我々の自主的外交、そして友好親善をお互いに結んでおる、こういうことでございますから、何も鼻息をうかがって一々ああしよう、こうしようという問題ではございません。  つまり、先ほど例えばの話で申し上げましたクロス承認という問題も、いろいろな方が考えられたわけでありまして、日本だけがもし北鮮を承認せんか、そして依然としてソビエト並びに中国は韓国を承認されない、かりそめにそういう事態が起こった場合に日本責任を持てますか、やはり今日そうした言うに言われない経緯を経ていろいろな国々がこの朝鮮半島には一つ関係を生じておる、だから、このバランスというものも私たち考えなければいけませんねということを申し上げておるわけで、まず韓国の承認を得てから北鮮を承認しましょう、どうですか、そういうわけではないのでありまして、私の説明がまずかったかもしれませんが、決してそういうものではない。  したがいまして、韓国みずから社会主義の国に対しましても何とかお互いに手を携えたいというので、この間からお話が出ておりますように、ソ連に対しましても中国に対しましても、同じアジアでございます、どうぞひとつ我々ともという気持ちを十分に持っておられる。この間において日本がしゃしゃり出るということはこの際決して好ましいことではございませんから、これは中国は中国としてのお考えがあろう、韓国韓国としてのお考えがあろう、もちろん重大な関心を持って見守っております、こういう関係でございますから、決して日本外交が韓国の言いなりになっておるということはございませんので、この点はひとつ先ほどのお言葉は残念でございますがお返し申し上げなければならない。それがこの冷厳な政治の世界における私たち一つ考え方でありまして、もちろん北東アジアの平和を願い、そして安定を願う心は我々は広瀬さんと同じ気持ちであります。  ただ、為政者といたしまして、今日政権をお預かりしている立場から申し上げますと、それだけの責任も痛感しなくちゃなりませんので、今申し上げましたのが私たち考え方であるとひとつ御理解のほどをお願いいたします。
  263. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 今くしくも大臣の口からバランス論が出ました。バランスも、フィフティー・フィフティーのバランスもあるし、十対ゼロというバランスもあるかもしれません、これはバランスと言える範疇ではないと思いますが。朝鮮との場合に、やはり朝鮮民主主義人民共和国に対してはバランス論を持ち出すということ自体に全く私は抵抗を感ずる。十対ゼロなのですから、バランスなどと言える問題ではないだろうと思うのです。  そういう点では、クロス承認だとか国連同時加盟だとかというようなことも最近ではちらほら出ておりますが、まず日本政府日本の外交の本当に正しい路線を踏まえて、戦後処理を四十三年たってもまだできていないんだ、そしてその人たちに戦争時代、戦前を通じて与えた被害についてすら何もしていない、こういうことが許されていいのかどうか、これがやはり問題だと私は思うのです。ですから、結果としてクロス承認のような形、そういう現象が起きるかもわからぬ。しかしながら、まず日本政府としてやるべきこと、まず日本の外交としてやるべきことは、北との関係について戦後処理をまずやる。  そういうような形で北に対する経済的な援助等も、これはまさに貿易量なんかを比較しましても、輸出の面でも輸入の面でも何十倍と開いているのです。輸出の面では、朝鮮から日本に輸出されるものと韓国から日本に輸出されるものを額で比較しますと、一番新しい資料で今日では韓国の方が六十倍に達しているのです。また輸入の場合だと、一番新しい数字では朝鮮の場合少し余計になっている、入超になっておりまして、また、韓国から日本に輸入するものが少なく、いつでも日本の出超である、五十億ドル台の日本の出超だということが今でも問題になっている。これも三十数倍になっていると思うのです。そういうような状態になっている。  日本韓国と、一衣帯水の隣の国との友好を進める、これは結構なことで、私は何も反韓国立場で言っているわけではない。韓国韓国として、一衣帯水の隣の国ですから、日本の戦前のああいう支配体制から脱して、そして今日まで軍事政権であったけれども、今度は新しい憲法もでき、盧泰愚大統領も民選で出てきた、これは大変結構なことだと私は思っている。そういうような方向に向かっていくことは結構なんだけれども、北に対して余りにも何もしなさ過ぎるのではないか、バランスなんて言えるものじゃないだろうということを若干数字を挙げて言ったわけです。  これはもうそういう点でも統一ということが我々の願いである。そして日本の歴代政府も、統一の方向に向かって環境整備ができるようにできるだけ協力してあげたいということをきちんと言っているはずですよ。そういう立場を貫徹するならば、日本は何としても朝鮮との関係正常化、国交正常化というようなことをまずなし遂げる、これが先行しなければいけないだろう。まずクロス承認ありきでは絶対にいけないと私は思うのです。あるいは国連同時加盟というようなことは、二国の分断を固定化するということで両国ともこれは反対しているのです。これはもう賢明な大臣は十分御承知のことです。  そういうような中で、今ここで本当に問題の解決を図るためには、何としても日本政府が一歩踏み出して日朝国交回復あるいは関係正常化、どっちでも結構ですけれども、お互いに政府同士で話し合える体制をつくっていかなければならぬだろうと思うのです。  私もそういう状態の中で日朝議連の事務局長として十何年もやっているわけですけれども、七二年の貿易合意書以来六回も朝鮮に行きました。そういうことで、今日も、中断しておったものを昨年十二月十六日に協定をいたしまして、最近ではスケソウダラの問題あるいはまたはえ縄、流し網漁業、これはサケ・マスでありますが、そういうものもこちらから申請したのはみな向こうは順調に出してくれております。  こういう制裁措置の出し合いの中でちゃんと出しておりますし、一昨日ですか、イカ釣り漁船に対する許可もちゃんと参っております。これは書類不備、船の無線の呼び出し符号を書いてなかったとか、あるいは長期にわたりながら一部、これは福井県だけの問題ですけれども、福井県の漁船二十七隻については期間を長く申請しながら漁獲量を非常に少なく書類に書いてあるというようなことで、それじゃ漁期をもっと少なく許可してもいいじゃないかというような検討などもあるというので、それだけ留保されたのですけれども、これも是正されればすぐにおりるだろう、こういうようなことで、朝鮮民主主義人民共和国でも非常に態度の変化といいますか、そういうものもあらわれてきている。  やはり日本と国交回復をしたい。いつかザンビアの特使が朝鮮を訪れまして、その帰りにあなたのところへ寄ってあなたに伝えたという新聞記事が出たのですけれども日本関係正常化を朝鮮民主主義人民共和国が望んでいる、そういう言づてを持ってきたということが新聞にずっと大きく出たのですけれども、そういう問題も含めて、そういう考えに踏み出すように、オリンピックを成功させるというその前になかなか言いにくいかもしれないけれども、やはりこの際前向きの姿勢というものがぜひとも必要である、そのように私は思うのですが、いかがでございますか。
  264. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 少しも言いにくい話じゃないのです。私は言いにくい話じゃないということできちっと先ほどから申し上げております。だから、言葉と腹が違うのじゃないかというのではなくて、私はやはり外務大臣として、心の中も言葉もきちっと統一して御返事を申し上げておりますので、その段はひとつ御理解賜りたいと思います。  まず、何と申し上げましても、オリンピックを成功させるということが私たちであり、同時にまた、韓国自体は門戸を開いている、こういうふうに言っておるわけでございますから、それに対しまして北朝鮮がどういうような反応を示すだろうか、この間のような大韓航空機事件が二度と起こってはいけない、こういうことで、私たちは隣国でございましても毅然たる態度をとっておる次第でございますが、あくまでも朝鮮半島の問題はひとつ南北で語り合っていただきたい。これは言いにくいことでも何でもないです。私の心の底から、我が親友なればこそ、はっきり申し上げた方がいいと思って今申し上げております。  ただし、広瀬委員が懸命になっていろいろとやっていらっしゃることに対しましては、それはそれなりに一生懸命やっておられるというその御努力に対しましては、私たちは常に敬意というものを失っておらないということも私は申し添えておきます。
  265. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大臣、私は敬意を表していただいて恐縮なのですけれども、そういうことではなしに、やはり先ほど和田さんからも第十八富士山丸がなぜ解決できないかということで、大臣からも答弁があったのですが、日本国民で紅粉船長と栗浦機関長に直接会って、四、五十分でしたけれどもいろいろ話をしてきたのは、私が団長で行った三人の国会議員と、随員が一人ついたのですけれども、それ以外にはないわけですよ。そういう経験も私はあるわけです。  したがって、これなども本当に人道的な立場で解決したいという気持ちでいっぱいであることは変わりはないと思うのです。しかし、そういう問題が政府間で直接話し合いができない、残念ながら今の状況で。このことがやはり、まさに国際的な人権問題でもあるし、あの二人にとっても、これは本当に生きるか死ぬかの大変な問題である。そういう問題で、これはその人たちが私どもに語った事実関係というものは、向こうで調査をされ調べられたものをそのまま言ったかもしれません。そんなことは、事実関係については触れませんけれども、いずれにいたしましても、ああいう問題一つ政府間で話し合うことができない、そういうような不幸な、それはKAL機事件による制裁が両方で行われるというような事態も入って中断をしたようなことになっていますけれども、そういう問題が起きたときに政府間同士でなぜ話し合えないのか。  日本国民だってそのことをやはり非常に残念に思っていると思うのですよ。だから、そういう立場で、何か韓国の横やりが入るので、日本政府弱腰じゃないか、ちょっと言葉が過ぎたかもしれないけれども。しかしそういう趣旨の答弁なんかもあるわけですよ、日朝が関係正常化をやろうとするときには韓国政府の御了解をいただかなければならぬだろうということを、これは国会条約局長の先輩が言っているのですね。だから、そういうことが心配だったから、今でもそんなふうに思っているのかということをあえて私はただしたわけですよ。それでは余りにも日本の外交が泣くではないか。せっかく大物外務大臣の時代に、その辺のところをきちんと整理をして、まずとにかく日朝の国交回復ということを日本政府が真っ先にやるべきである。そのことですべて問題は解決していく方向に向かうだろう。そしてそういう過程があって初めてその上に統一の話し合いというのも本当に実を結んでくるのだろうと思うのです。  それからもう一つ気になることは、どうも前内閣あたりから少し、どんどん北を追い詰めて孤立化させていく、そういうような政策の方が北はほぐれてくるのではないか、北鮮バッシングをどんどんやって、国際的な孤立化を徹底的に促進することによって、統一への方向が、北の柔軟姿勢がその中から生まれるのではないかという間違った認識を持っているのではないかと思うのですが、その辺のところはいかがですか。
  266. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日本といたしまして決して北朝鮮を孤立化せしめるような方向への政策というものは用いたことがございません。もう既にして経済関係におきましても、まあ議員連盟方々の御努力もあったのでございましょう、ある程度順調に進んでおりました。しかしながら、北朝鮮が多くの借金を抱えてしまわれて、我が国の方は多くの債権を抱えて、ではそのまま拡大するのか継続するのかということになりますと、非常に難しい問題もあるわけでございます。  今日、世界の国々においては、世銀に対して借金があるとか二国間で借金があるとかというような累積債務を抱えておられる国がたくさんございますが、これらの国は国として、やはりいろいろな形において、ほうっておいたらいいんだというような意思表示も毛頭なさらないし、むしろ積極的に、払いたいのだがどうしたらいいか教えてくれという立場も多々あるわけでございますが、北朝鮮におきましては、残念でございますがそのようなことに関しましてもまだ何ら応答がない。  私は、第十八富士山丸をこうした問題のときに絡ませてお話しするのはいかがかと思っております。しかし、富士山丸に関しましては、紅粉船長並びに栗浦機関長はあくまで無罪だ、そして広瀬委員がもう唯一のお二方の安否を確認された方でございまして、この点も先ほども若干触れさせていただいて、そしてその後もぜひともひとつ接触を願いたいなと思ったのでございますが、私、申し上げましたとおり、北朝鮮にして本当に人道に心を配るのならば、それは向こうの法律によって何年間だとおっしゃることと我々の主張が違うことがあるかもしれませんが、それにいたしましても、やはり留守家族に一片のはがきくらいは出させるというのが人道じゃなかろうか、私はかように思います。  したがいまして、そうしたことの何もかもが、言うならば政治的に扱われ過ぎておる。私たちは決して政治でそうしたことを用いようとしませんが、今、一片の便りもないということは、本当に政治的に、余りにもひどいじゃないかと申し上げてもいいのじゃなかろうか、かように思います。  そうしたことを何人かの第三国の人たちが気づきまして、それでは余りにも、人道をたっとばなければならない時代においてひどいじゃないかということを、親友として苦言を呈されたのじゃなかろうか、私はこういうふうに思います。私たちが頼んでああしてくれこうしてくれと言うのじゃなくて、我々もいろいろお話をして、もしチャンスがあればお願いしますよということを言いますが、当然そのことは、第三国自体もこれはひどいじゃないかとおっしゃったのじゃないだろうかと思います。  そうしたことを通じまして、ある程度はやはり北朝鮮も、オリンピックもあるわけですし、大韓航空の反省もございましょう、そうしたことからいろいろと考えていていただくと思いますが、何もかも、あの問題もこの問題も一つにこんがらかってしまっておるというところに問題があるのじゃなかろうかと私は思います。しかし、決して我々は北朝鮮を敵視するものでもなく、また孤立化さそうというような戦略を持っているものでもなく、そのような政策を用いたこともありません。  したがいまして、今回の問題はまた別の問題になりますけれども、そうした意味合いにおきまして、ぜひとも北朝鮮にも、今両国間にあるいろいろな問題は積極的に解決する方向を見出していただきたいものであるな、これは私の願望にすぎないかもしれませんが、何らかの方法でこうした言葉は伝わっておると思いますので、私はあえて申し上げておるような次第でございます。
  267. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 るるお話がありましたけれども、やはり外交というのは常に相手国があるわけであります。その相手国の朝鮮民主主義人民共和国に私ども参りますと、日本政府がいまだに敵視政策を改めないということを、もうこれは必ず言われるわけですよ。そうでもないと我々思いつつも、現実に、例えば韓国との間には、これは韓国との数字は余り引きたくないけれども、毎年約三十万人、二十九万九千何百という人が韓国から日本に入られる、ほぼ同数の人たちが向こうへ行かれる、こういう交流が行われているのです。一方、朝鮮民主主義人民共和国から日本に入られた方々は、これは昭和五十三年から六十二年度までの数字を法務省に出していただいたのですが、驚くなかれ、三千九十七人ですよ。十年間で三千九十七人。その十年間に日本から朝鮮に渡った人は一万一千九百人ぐらいいる。大体こっちから二人行ったら向こうから一人がやっとこ来れるというような状況になっているのですね。それで、毎年三十万からの人が行ったり来たりする韓国と、これはバランス論を持ち出すこと自体がおかしい、さっきも申し上げましたけれども、そういうような実績なのですよ。  そしてまた、例のKAL機事件が起きたときに、私は外務大臣室に行って、あなたに、これだけですね、あとの制裁措置というのはありませんねということを申し上げたときに、経済的な問題については我々制裁措置を考えていませんとおっしゃられて、さすが通産大臣をやられただけの外務大臣であるなと感心したわけです。  しかし、現に、これは法務省、外務省両方にわたることですけれども、それ以来、例えばことしの一月七日に動物交換ということで、京都の動物園に、日本では非常に珍しいカササギだとかチョウセンオオカミのたぐいを、こちらの要望もあってその動物園へ持っていこうとしたらそれも認められなかったというようなことがあった。それから食料加工技術代表団、これも純然たる経済人ですね、これが展示会の見学や商談に来たい、これもやはり一月七日に申請を北京大使館に出した。それから建材実務代表団、ガラス工場を見学したい、商談もしたいということで、これは八七年の十二月二十日でありました。それから百貨店合弁代表団、十二月二十五日。重機械代表団、これは建設資材の商談に来たい。それから大同貿易実務代表団、洋食器、水産物の商談に来たい。これも一月。朝鮮機械代表団、工具や計測器の商談に来たい。それから大聖第六商社代表団、これが遊園地の設備関係の商談で来たい。こういう今読み上げたもののほかに、これは社会党との関係だけれども、社会主義労働青年同盟代表団、日本青年協議会との会談をしたい、こういうことで九組朝鮮から北京に参りまして、そこでビザを申請したけれどもついにおりなかったというので、あそこから引き返した。チョウセンオオカミも持って、カササギも持って国へ帰っていったという。  こういうようなものをやはり認めていない、入国を認めない、ビザを発給しないというようなことなんかが、これは経済的な制裁、そういうものにわたらざるようにしっかりやりますとおっしゃった言葉から見てどうもぐあい悪いと思うのです。  それから、日朝貿易会の役員にも、これは谷洋一君が会長をやっているわけですけれども、その専務等にもいろいろ聞いてみました。特に、しょっちゅう行ったり来たりするわけですから数次旅券を――これは商売人ですから、やはりその都度大変な申請書を、ほかの国と違って書類を出すのも多い、そして、しかも審査が厳重であるというようなことで、これはなかなか苦労をする。商売の忙しい合間にそういう手続をとるなんというのは大変だという訴えもあります。したがって、そういうような人たちなんかには数次旅券も適用、マルチ旅券も適用される、これぐらいのことはやってやったらどうかなというようなこと。  それと、もう一つ。これはもう時間が二、三分しかありませんが、五月十二日に、もう御案内のように国際ピンポン大会、選手権大会ですか、これが新潟で行われる。これに対してぐらい、スポーツ、文化、芸術、教育、そういうような面で、これはどんどん交流を盛んにしようということをずっとやってきたはずでありますから、これは政治抜きのスポーツの問題として、たとえ制裁期間であろうともこれぐらいは認める。それから、先ほど言ったような、あなたが約束された経済交流についてそう支障になるようなことはしませんと言ったこと、これぐらいきちんとやはりやっていただきたい、こういうように思うのですが、いかがでございますか。
  268. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 今御指摘の九つか十ぐらいにわたります申請が出されておりますことは事実でございますが、許可を決定したとか不許可を決定したということではございませんで、まだ検討中ということでございます。北朝鮮に対する措置に基づきまして入国審査をつかさどります法務省が今検討中でございます。先生の御指摘もございますし、その措置に基づいて今厳格にやっているわけでございますけれども、この決定につきましては、なるべく早くできるように督促をしたいと思っているところでございます。  最後に御質問にありました卓球の大会に参加される方々の申請でございますけれども、御承知かと思いますけれども、まだ正式な申請というのが出てきておりませんので、その申請が私どものところに出されましてから、その申請を調べまして決定をさせていただきたいというふうに考えております。
  269. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 まだ来てないということですが、新聞の報ずるところによりますと、その実行委員会といいますか卓球連盟というか、そういうようなところには申し入れがあったと報道しているわけなのです。そういうものが正式にあったら、これは前向きに処理をされると見てよろしゅうございますね。
  270. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 北朝鮮に対する措置のもとで現在申請を審査しておる段階でございますので、卓球のことにつきましてもそのもとでやらざるを得ない状況でございますが、あの措置に特に触れられていない先生御指摘のスポーツとか文化とかその他人道上の入国目的のものにつきましては、あの措置以前の一般的な考え方に基づきまして考えることになるだろうというふうに思います。  ただ、あの措置にございますように、公務員はお互いに認めないということがございますので、申請書類を十分に検討させていただきまして、公務員が例えば役員の中に入っておりますような場合には、その措置に基づいてあるいは不許可とせざるを得ないかもしねいません。しかし、今先生がおっしゃいましたように、申請がまだ参っておりませんので、参りました後で検討させていただきたいというふうに思います。
  271. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 もう時間が来たようですからこれでやめたいと思いますが、大臣、やはりこの問題はまだまだ論じ尽くせない、また論理の組み立てのすれ違いもあるわけで、いずれまた機会を改めて日朝問題を論じたいと思いますが、これは、四十三年たって本当にまだ戦後処理も済んでいない国がある、そしてまた、北朝鮮は除くと数次旅券の中にちゃんと書いておけるというようなこういう扱いというものが、半世紀にわたってそういう事態が続くということは、まさに日本外交の空白の部分であり、むしろ日本外交として恥ずべき部分であるなという感じを私は持たざるを得ないわけでありまして、きょうはもうこれ以上答弁は必要といたしませんけれども、その辺のところをよくよく腹にしっかり置いてぜひ対処をされることを強く要請をいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  272. 宮下創平

    宮下委員長代理 次回は、来る十九日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会