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1988-05-13 第112回国会 衆議院 地方行政委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十三日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 松本 十郎君    理事 岡島 正之君 理事 片岡 清一君    理事 片岡 武司君 理事 渡海紀三朗君    理事 西田  司君 理事 山下八洲夫君    理事 草野  威君 理事 岡田 正勝君       石橋 一弥君    金子 一義君       北村 直人君    鈴木 恒夫君       高橋 一郎君    谷  洋一君       友納 武人君    中山 利生君       松田 岩夫君    渡辺 省一君       加藤 万吉君    佐藤 敬治君       中沢 健次君    細谷 治嘉君       安田 修三君    小谷 輝二君       柴田  弘君    経塚 幸夫君       寺前  巖君  出席国務大臣         自 治 大 臣 梶山 静六君  出席政府委員         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房総         務審議官    小林  実君         自治大臣官房審         議官      湯浅 利夫君         自治省行政局長 木村  仁君         自治省行政局公         務員部長    芦尾 長司君         消防庁長官   矢野浩一郎君         消防庁次長   片山虎之助君  委員外出席者         国土庁大都市圏         整備局計画課長 中野 和義君         外務大臣官房領         事移住部領事第         二課長     橋本 逸男君         厚生省健康政策         局指導課長   松村 明仁君         厚生省健康政策         局医事課長   阿部 正俊君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部保安課長   百瀬  信君         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君     ───────────── 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   金子 一義君     尾形 智矩君   高橋 一郎君     箕輪  登君   柴田  弘君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     金子 一義君   箕輪  登君     高橋 一郎君   近江巳記夫君     柴田  弘君     ───────────── 五月十三日  留置施設法案反対に関する請願中路雅弘紹介)(第二五六八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二五九六号)  農地の宅地並み課税強化反対に関する請願経塚幸夫紹介)(第二五六九号)  地方自治に関する請願沢藤礼次郎紹介)(第二五九五号)  留置施設法案の廃案に関する請願阿部昭吾紹介)(第二六八三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  消防法の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)(参議院送付)  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第八五号)      ────◇─────
  2. 松本十郎

    松本委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。
  3. 中沢健次

    中沢委員 私の持ち時間は約一時間でございまして、テーマとしては二つぐらいに絞りましていろいろお尋ねをしたいと思います。  最初青函トンネルの防災問題につきまして少しく具体的にお聞かせをいただきたいと思いますが、関係者御案内のように、ことしの三月十三日に大変待ち望んでおりました青函トンネル開通をいたしまして営業開始に至ったわけでございます。私も北海道出身者としては大変感激をし喜んでいるのでありますけれども、しかしそうばかり言っていられないいろいろな列車トラブルトンネル内におきまして発生をしております。したがって、青函トンネルの防災問題につきまして三点ほどに絞りまして、最初運輸省の方からお答えをいただいて、後ほど消防庁の方からもお答えをいただきたい、このように考えます。  前置きは余り申し上げません。いずれにしても既に運行がずっと続いておるのでありますが、私どもが承知しておりますのは、残念ながら四月十九日までの時点列車トラブルが二十七件起きている。内容的にはトンネル内で特急列車が最高三時間も立ち往生している、こういう内容も含めてそういうことが明らかにされております。そこで、運輸省にまずお尋ねをしたいわけでありますけれども、青函トンネルというのは五十三・九キロメートル、まあ五十四キロメートルの世界では最大の長いトンネルであるということは間違いがございません。トンネル内の災害はいろいろ想定をされるわけなのでありますが、一番危険なのは列車火災ではないか、私なりにそのように一応問題点を絞りまして、列車火災を前提にして以下幾つ運輸省お尋ねをしたいと思います。余り時間もございませんので、簡単に質問をしたいと思います。  一つは、火災検知についてどういうシステムをそれぞれ設けられているのか。それと同時に、最悪の場合列車火災、当然火災検知、同時に消火について十分な設備が必要だと思いますけれども、二つ目には消火システムが一体どのようになっているか。そして最悪の場合は乗客避難をさせるあるいは安全な場所誘導する、こういう必要性があると思うのでありますが、三点目には避難場所誘導の具体的な内容について、関連をいたしますのであわせて運輸省の方からお答えお願いしたいと思います。
  4. 百瀬信

    百瀬説明員 お答えいたします。  まず第一点の列車火災検知システムはどうなっているかというお尋ねでございますけれども、海峡線につきましては下り四カ所、上り四カ所の合計八カ所に列車火災検知設備を設けております。当該設備は、設置点を通過する列車車体両側表面温度を測定するために、車軸検知装置、両数検知器赤外線温度計等の機器により構成されておりまして、列車火災未然防止を図るために、車両発熱部位検知及び火災発生有無につきまして常時監視をしているものでございます。また、トンネル内には赤外線温度計を補完し、列車薫煙、くすぶったような煙の火災検知するために煙検知器を五カ所に設けております。これらの各検知器によりまして収集した情報は、データ収集装置に集約いたしまして、さらに判定処理装置に伝送され、そこで温度データ情報を解析し、車両異常発熱及び列車火災有無につきまして判断をする仕掛けとなっております。  火災検知した場合には、火災発生している車両部位等情報函館指令センターの方に伝送し、防災表示盤あるいは指令卓等に設けられております警報器が鳴動いたしますし、それから表示灯が点灯いたしますので、運転指令におきましては、列車の現在位置の確認あるいは列車無線を通じまして乗務員相互情報をとりまして、得られた情報をもとに関係者に適切な指示が行えるようにしております。  また、設置数の問題ですけれども、同線は中小国から木古内までは約八十八キロメートルございまして、この間に片側に七カ所の検知器設置されているわけでございます。そうしますと、その区間長は約十二・五キロメートルとなりまして、列車平均速度九十五キロから八十五キロメーターで走行いたしますと、大体八分ないし九分ぐらいで次の検知点に到着することができます。したがいまして、万一検知漏れが生じましても次の検知点で感知することが可能となるというふうに考えております。  また、開業時に多発いたしました火災検知装置誤動作の原因につきましては、これは訓練中に収集したデータ等に基づきまして、先ほど申し上げましたけれども、車両部位発熱、つまり火災になる前のそういう条件をできる限り早期にシビアに検出したいということから、警報判定値を非常にシビアに設定しておったというふうに聞いておりまして、ざっくばらんに申し上げますと、集積したデータ量が若干不足しておったというようなことから誤動作が多発したわけでございます。いずれにいたしましても、的確なる判定値早期に定める必要がありますので、今後はJR北海道に対しまして万全を期すよう指導してまいりたいと考えております。  それから、お尋ね消火システムについてどうなっておるかということでございますが、万一トンネル内について列車火災発生した場合には、車内での消火活動初期消火に限ることといたしまして、旅客は他の車両列車貫通路がございまして、お客を他の車両に移すことが可能ですから、貫通路を通しまして他の車両にいち早く避難させる、そして安全を確認した上で初期消火を行うことにしております。  また、函館指令センターにおきましては、火災検知設備それからITVカメラ及び列車無線による乗務員との相互連絡によりまして火災状況を把握しまして、社内あるいは社外の関係へ連絡すると同時に、消火救援等の要請を行うこととしております。そして、列車定点に停止した場合には、定点設置されております水噴霧設備による自動消火、また自衛消防団及び地域消防本部員によりまして消火栓あるいは給水栓を使用して消火を行うというふうにしているわけでございます。また、定点以外にとまるようなことがありますと、その場合には、消火器及び消火用のポンプを搭載しました台車を連結したトンネル巡回車等がございますが、これらを現場に急行させまして自衛消防団による消火を行うということにしておりますし、もちろん地元消防隊の御協力を得て消火に当たるというふうに考えているわけでございます。  それから、トンネル内において列車火災発生したときの運転取り扱いにつきましては、昭和四十七年十一月に北陸トンネルにおける列車火災事故というものがございましたが、これを契機にいたしまして当時国鉄に設けられました鉄道火災対策技術委員会というものの提言に基づきまして、火災発生車両貫通口、先ほど言いましたように旅客車両車両の間を通るその口ですけれども、貫通口、それから窓等を封鎖いたしまして、火煙が車外に流出しないような措置をしてからトンネル外に脱出することとしております。一方、その他の車両、つまり今の発火していない車両におきましては、火災発生車両からの旅客避難誘導及び安全性の確保のために、旅客当該車両から可能な限り離れた車両避難をさせまして、その車両火煙及び有害ガスが侵入しないように、先ほど申しました貫通口あるいは窓等を閉鎖いたしまして運転を継続し、定点に到着後旅客避難をさせるということにしておるわけでございます。したがいまして、旅客安全性につきましては十分に安全が確保できるというふうに考えておりますし、またこの報告書では、いろいろと実車試験が行われましたけれども、通常の火災であれば少なくとも十五分以上の時間、他の車両火災が移ることはないというふうにされております。  以上でございます。
  5. 中沢健次

    中沢委員 時間がございませんので、若干答弁漏れみたいなのがあろうかと思うのですが、いずれにしても今のお答えの中で、例えば四十七年の北陸トンネル列車火災事故、これを教訓にしている、こういう話でもございます。ただ私はJR北海道から運輸省を経由いたしましてこういう資料もいただきました。あるいは消防庁調査委託をいたしました消防科学総合センター、これの調査研究書もいただきましてそれなりに読んでみたわけであります。そして、実は現物を持ってきておりますが、朝日ジャーナルのことしの四月一日号に青函トンネルにつきましていろいろ記事が載っておりまして、「青函トンネルはほんとうに安全か?」というジャーナリストの立場で問題点なんかもいろいろ指摘されているわけでございます。したがって、きょう余り時間がございませんのでこれ以上運輸省とのやりとりは行いませんが、そこで最後消防庁にこの問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  いずれにしても災害が起こった際の消防体制、これも現実問題として極めて重要だと思うのです。トンネル開通以前に地元のJRあるいは関係消防組合中心になりまして防災訓練もされているという話も聞いておりますけれども、今後の問題として災害時の消防体制が一体どうたっているか、少しく具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  6. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 日本科学技術の粋を凝らしてつくられました長大トンネルでございますが、もし事故ということになれば、これは極めて重大な結果をもたらすおそれがございますので、この点につきましては消防としても極めて重大な関心を持っておるわけでございます。  具体的に申しますと、青函トンネル消防体制でございますが、青函トンネルを管轄する消防本部は、このトンネルのちょうど等距離の中間点で区切りまして、この以北の部分につきましては渡島西部広域事務組合消防本部、それからその南の部分につきましては青森地域広域消防事務組合消防本部ということになっております。北海道側渡島西部広域事務組合消防本部は福島町初め四つの町で構成されておりまして、渡島地域西部消防本部渡島東部消防事務組合消防本部等周辺の三消防本部との応援協定を結んでおるというわけでございます。一方、青森側でございますが、青森側青森地域広域消防事務組合消防本部青森市を初め六市町村で構成されておりまして、そのほかに近接しております浪岡町消防本部等周辺の二消防本部応援協定を締結しておる、こういう体制をとっておるわけでございます。  青函トンネルを管轄する両消防本部ではそれそれ防災計画を作成しておるわけでございますが、この防災計画の作成に当たりましては、先ほど委員指摘のように、昨年度消防庁におきまして長大トンネル防災対策研究会委員長上原陽一横浜国立大学工学部教授でいらっしゃいますが、この研究会におきまして長大トンネル防災対策に関する検討をいろいろなされまして、青函トンネル開通が三月十三日ということが予定されておりましたので、それに先立ってこの研究報告が出るようにということで、本年二月に御報告いただきました。これを直ちに通知、連絡いたしまして、これらの関係消防本部消防機関におきましては、これを踏まえた長大トンネル防災対策を樹立する、それを踏まえて防災計画をつくる、こういうことにしたわけでございます。具体的な消防活動の方法を定めると同時に、そういった周辺消防機関との応援体制整備も進めておりまして、万一事故発生した場合においても被害を最小限とするよう万全を期しておるところでございます。  なお、防災訓練につきましても、開業前に吉岡定点におきまして渡島西部広域消防本部JR北海道、それから鉄建公団が合同情報収集現地指揮本部設置乗客避難誘導人命救助消火活動通信連絡防災設備操作等内容とする総合防災訓練を実施しておるところでございます。なお、青森側におきましてはまだ実施されておりませんけれども、青森地域広域消防本部JR北海道が現在打ち合わせ中でございまして、近く訓練が行われるものと思います。  ただ、いずれにいたしましても、訓練はやはり実戦的な観点からしばしば行っておく必要があろうかと思いますので、今後ともそういった問題については十分関心を持って指導してまいりたいと考えております。
  7. 中沢健次

    中沢委員 それで、今青森側の方がまだ防災訓練がされていない、こういうお話でございました。これは消防庁としても関係のところに強力にいい意味での指導をしていただいて早急に実施をする、これについてぜひ努力をしていただきたいし、私なりに言いますと、北海道側青森側というそれぞれの責任分野があったにしても、この際、それをまとめ上げて地域的にも合同の相当本格的な防災訓練が必要ではないか、これは今後の問題として消防庁中心にぜひ積極的に検討をしていただきたいと思います。  さて、次の問題についてこれから質問をしたいと思いますが、消防職員団結権問題でございます。  自治省とのいろいろなやりとりになると思いますけれども、幾つかありますが、まず一番最初全国消防職員協議会内容について、最近北海道で起きました具体的な事実も含めて少しく質問をしてみたいと思います。  既に関係者御承知のように、昭和五十二年に合法的な組織として全国消防職員協議会結成をされた。その後、いろいろな経緯がございますけれども、今日的に全国で百四の組織加盟が五千六百人、こういう現況になっております。この間、全国的にはいろいろな経緯がございました。例えば地元消防当局のある意味での法的な解釈が間違っていた問題がございまして、単位消防脇をつくるについて、いろいろそれは違法にわたるのでやめた方がいいだとか、あるいは全国消防協議会に加入することについてもそれはひとつやめるべきだという、言葉としてはきついかもしれませんがかなり組織的な介入幾つかございました。最近は余りなかったのでありますが、実は私の出身北海道で、ことしの四月に大変残念なんでありますけれども、かつてのような経緯が新しく出てまいりまして、最終的に当該消防組合消防長とそれから自治労北海道本部という組織の間でそれぞれ紆余曲折があったのでありますけれども円満に合意に達して、そして現地単位消防協全国消防脇にも加盟をする、こういう状況になりました。  具体的に申し上げますと、北海道に岩内・寿都地方消防組合というのがございます。消防協をつくりましたのは寿都の支所の消防職員が十一名で結成をして、そして結果的には全国消防協加盟をしたのでありますが、その経緯の中で実は消防長が、この種の組織をつくること自体地公法の五十二条五項に違反をする、やめれ、あるいは全国消防協に加入することはまかりならぬ、大変なおどしを含めて介入がございまして、それに対しまして自治労関係の方からいろいろ対応がございまして、結果的に地元消防長が事実上のわび状を入れて、大変申しわけなかった、今後こういうことは一切行いません、これで一件落着をしたのでありますけれども、こういう事例は余り最近起きておりませんが、改めて自治省側の法的なというか、担当の自治省としての見解お尋ねをしておきたいと思うのです。  といいますのは、かつて昭和五十二年あるいは昭和五十四年に、参議院でありますけれども、同じようなケースで内閣法制局の法的な見解をただしたことがございます。その当時の答弁としては、消防協議会あるいは全国消防協議会というのはいずれにしても違法な団体ではない、合法団体である、そういう見解が既にその時点で出されておるのでありますが、今私が申し上げましたように、現場的にはまだまだそこまで消防組合理事者側の頭の中にきちっとそういう法解釈が入っていないのではないか、そういう感じがいたしますので、改めてひとつきょうの委員会確認意味自治省側のこの問題についての見解お答えお願いをしたいと思います。
  8. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 お尋ね消防職員協議会でございますが、消防職員につきましては、御指摘地方公務員法五十二条五項の規定によりまして「職員勤務条件維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体当局と交渉する団体結成し、又はこれに加入してはならない。」こういう法律規定があるわけでございますが、お尋ね消防職員協議会がこの法律規定に反しない合法的な活動を行っておる限り、自治省消防庁といたしましてはこれに関知するものではございません。ただ、消防職員協議会結成されるに至った背景からして、その活動法律に違反することのないように消防庁としては十分な関心を持って見てまいりたい、こういう姿勢でございます。
  9. 中沢健次

    中沢委員 いずれにしても現実問題としては、先ほど私が数字を申し上げましたように全国的にも組織をされている、しかも公務員法上の具体的な違法にわたる行為が全くされていない、これは事実でございまして、そのことをひとつ今後とも自治省側としても十分押さえていただいて、余り現地でこの種のトラブルが起きないように御配慮もぜひお願いしておきたいと思います。  さて、二つ目の問題でありますけれども、消防職員団結権問題については、後でも触れますが、ILO中心にしていろいろな経緯がございます。問題を世界的に見て、消防職員団結権がどの程度保障をされているか、これについてお尋ねをしてみたいと思うのです。  昭和五十八年のILO条約勧告適用専門家委員会一般報告の中で、世界的な消防職員団結権保障状況について報告をしております。私も資料は持っておりますけれども、あえて答弁お願いしたいと思いますが、その中で日本以外に消防職員団結権否認をしているのはどことどこか、明らかにしていただきたいと思います。
  10. 芦尾長司

    芦尾政府委員 消防職員団結権をめぐる諸外国状況でございますが、消防職員団結権の対象から除外しておる国が三カ国、ガボン日本スーダン、こういうことになっております。それから、公務員一般団結権を認めない国が十四カ国ございます。さらにフランスにおきましては、パリの消防隊は陸軍、マルセイユ消防隊が海軍のそれぞれ一部になっておりまして、団結権等はございません。  以上でございます。
  11. 中沢健次

    中沢委員 それで、改めてお答えがあったのでありますが、ILO加盟をしている国で日本ガボンスーダン消防職員団結椎否認している、団結権を承認していない、こういうお答えがございました。  そこで、大臣の方に少しくお尋ねをしたいと思うのでありますが、ガボンだとかスーダンだとかいう余り我々としても名前もあるいはどういう国なのかもわからないような、これはアフリカにある国なんでありますけれども、そういうところと、最近は竹下総理はずっと外国を回られる、そして六月はサミットがある、国際国家日本の建設ということでかなり胸を張っていろいろ今実績をつくられつつあるわけです。そういうことなどを考えますと、少なくともこの日本というのはもう先進工業国であることは間違いがない。GNPの問題にしても防衛力の問題にしても、これはだれも否定ができない事実だと思うのですね。しかも私の調べたあれで言うと、世界的に言うと警察に団結権を保障している国が、三年ほど前の数字でありますけれども二十四カ国もあるわけです。そういうことなどいろいろ考えますと、ひとつ自治大臣としてお答えをいただきたいのでありますが、やはり世界的に見て日本消防職員団結権否認ということは、全体のいろいろな状況を考えましてノーマルではないと私は思うのです。異常だと思うのですよ。それについて大臣としての認識見解、一番最後にまたいろいろ具体的な質疑を終わってから改めてお答えをいただきますけれども、この国際的なレベルの問題として、今私の質問に対してどういう認識見解を持っていらっしゃるか、お願いをしたいと思います。
  12. 梶山静六

    梶山国務大臣 今御指摘のように、消防職員では三カ国、公務員では十四カ国で団結権が禁止をされているわけでございますが、それぞれの国が消防職員団結椎を認めるか否かは、その国の災害時の特殊事情や、それに対処すべき消防機能内容整備しておくべき消防体制等について総合的な判断がなされた結果だというふうに思われます。常に大震火災に備えなければならない我が国において、我が国消防がその任務を十分果たしていくためには、高度の規律と統制を保持し、あらゆる状況に応じていつでも迅速果敢な部隊活動をとることができるよう常時即応の体制を確保しておくことが不可欠であり、そのような事情のもとで消防職員団結を禁止していることについては、国内的にも国際的にも理解を得られているものというふうに受けとめております。
  13. 中沢健次

    中沢委員 その辺の議論は私の持ち時間の最後のところでまたやってみたいと思いますが、関係者は十二分に御承知のように、この問題について言いますと、昭和四十年にILOの八十七号条約が批准をされた。しかし消防職員団結権は承認をされない。昭和四十七年に総評を中心にしてILO消防職員団結権承認の提訴を行ってもう既に十六年間、非常に長い時間が経過しているわけでございます。これは事実であります。  そこで三つ目にお尋ねをしたいのは、この間の経緯の中で、ILO中心にして、あるいは国内的にも関係者の発言なんかもあるのでありますけれども、確認意味も含めて幾つかにわたってお尋ねをしたいと思います。  まず一つは、昭和四十三年、つまり消防法施行後二十年、今からちょうど二十年前であります。当時の佐久間消防庁長官が、京都市の消防局の幹部を集められまして俗に言う研修会をされているその席上でこういう話をされております。時間がありませんからかなり割愛をしますが、「消防行政というものは、私はその本質はサービス行政だと思う。予防行政で多少取り締まりの権限はありますけれども、その基本はサービス行政だと思う。警察行政というのは、これは取り締まり行政であります。権力行政であります。その本質が違うこともありますし、やはり警察の範ちゅうの中にはいったんでは、この二〇年間にこれだけ消防行政が伸びるということはできなかったと思います。」こういう発言をされております。  それから、関連をいたしまして、ILOの条約勧告専門委員会委員をされておりました元最高裁長官の横田先生が昭和四十八年にこれまたいろいろと発言をされております。全文は相当長くなりますので、これは私なりにまとめて簡単に言いますと、その当時横田先生は、今申し上げましたようなILOの仕事もされておるわけでございまして、その中で、日本政府が消防職員団結権否認の問題についていろいろ話をするけれども、ILOの中では消防職員団結権を承認しなければいけないというのがもう大多数の声であって、そのことについて日本政府もやはり積極的に検討しなければいけないというふうにILOではなっている、こういう話もされている。これは昭和四十八年でございます。この事実について確かめておきたいと思います。
  14. 芦尾長司

    芦尾政府委員 まず最初に、佐久間長官の御発言でございますが、これは佐久間元長官が、自治体消防二十周年を機会にいたしまして、戦後の自治体消防の発足の経緯について講演されまして、それが「京都消防」という本に収録されておることはそのとおりでございます。  また、横田先生の論文も「ILO条約勧告適用専門家委員会に出席して」ということで「世界の労働」という中に収録されておることはそのとおりでございます。
  15. 中沢健次

    中沢委員 次に、ILOにおけるこの問題についての議論について、特に大事な問題について確かめておきたいと思います。  その一つは、先ほど申し上げましたように四十七年にILOに提訴をした。ILOはそれを受けまして、四十八年六月に専門委員会あるいは十一月に結社の自由委員会、結社の自由委員会は百三十九次報告ということになっておりますけれども、ここでは、消防職員と警察は同一視することはできない、したがって消防職員団結権を認めよということで、それ以降のILOのさまざまな勧告のスタート台と言っていいと思うのでありますが、四十八年に始まっておりまして、ほとんど毎年のように同じような勧告がILOから示されている、これが一つございます。  それと関連をいたしまして、実は昭和六十一年、二年前でありますけれども、ILO情報提供の指定日におくれて結局は日本政府の情報がリストアップをされなかったのでありますが、その内容について言いますと、これは後ほどまた具体的に指摘をいたしますが、日本政府が消防職員団結権否認している根拠について二つほど言っているわけです。  その一つは、既に昭和二十九年、昭和三十六年、つまり八十七号条約批准以前の問題でありますけれども、その時点日本政府の主張というのはILOの場において理解をされている、さらにもう一点は、国内的に公務員問題連絡会議において関係団体から直接意見を聞いている、こういうことが政府の情報として提供されているのでありますが、とりあえずこの二点について自治省側お答えをいただいておきたいと思います。
  16. 芦尾長司

    芦尾政府委員 ただいま御質問がございましたように、政府が昭和四十年にILO八十七号条約を批准する以前に、昭和二十九年結社の自由委員会十二次報告で、ILOから、消防職員団結禁止は日本公務員団結権を否定されているとの申し立ての根拠にはならないといったような報告がなされておりますし、それから結社の自由委員会五十四次報告、これは御指摘ありました三十六年でございますが、さきの二十九年の報告を踏まえて、六十号事件と同一であるので、これまた審議する必要がない、こういう二つ確認がなされておりまして、その確認に基づきまして、政府としては昭和四十年に八十七号条約の批准をいたしておるということはそのとおりでございます。  それから、その以降、昭和四十八年にILO見解を変えまして、消防団員に団結権が認められることを希望するという条約勧告適用専門家委員会からの意見がなされておることも事実でございまして、六十一年にはただいま先生がお触れになりました報告もなされておるということでございます。
  17. 中沢健次

    中沢委員 そこで関連をしてお尋ねをいたしますが、昨年の六月十五日にILOにおきまして条約勧告適用委員会が開催をされております。この委員会は非常に特徴的な問題が幾つかあったと思うのです。それは、一つは相当長時間はわたりまして日本消防職員団結権問題が関係委員の間で議論がされた。そして最終的な議長集約がありましたけれども、この議長集約も、今までと違って相当日本政府に対する一歩突っ込んだ検討の要請がされている、こういう内容でございます。  そこで具体的にお尋ねをしたいと思うのでありますが、今のお答えがありました日本政府が消防職員団結権否認をしている根拠について、私なりに非常に疑問というか問題意識を持っておりますので、その二つについてお尋ねをしたいと思うのです。  一つは、今ありましたように八十七号条約の批准以前の問題として、昭和二十九年と三十六年の問題を政府側は唯一の根拠として使っているのでありますけれども、これはもうILOの国際舞台の中では、その後しばしば指摘をされておりますように、少なくとも四十年の八十七号条約の批准後、四十九年には例の七百三十七号事件ということで、改めてこの問題についてILOが決定を下しているわけですね。その決定内容というのは、日本消防士は非常に特殊的な性格を持っているけれども、警察もしくは軍隊の構成員ではない、つまり消防職員にも団結権は承認をされるべきだ、こういう指摘をされている。したがって、日本政府の根拠について言うと、国際的に見ても客観的に見てもそれはもう完全に問題外になるのではないか、これが一つ。  それからもう一つは、国内的に公務員問題の連絡会議を開いて云々ということでありますけれども、これは直接の所管は総務庁でありますが、総務庁からいろいろ資料もいただきました。一体いつの時期にどういう関係者事情を聞いたかということを一覧表としてもらったのでありますが、六十一年の政府報告の中で関係団体から意見を聞いたということを言っておりますけれども、詳細に調べてみますと、例えば労働団体から意見を聞いておりますのは、さかのぼって昭和五十四年と五十五年、二回しかないわけですね。六十一年の政府報告をするにしてはちょっと古いのじゃないか。本当に消防職員団結権問題について政府側が誠意を持って真剣に検討するのであれば、少なくとも六十年か六十一年に改めてそういう関係団体の意見を聞くべきではないか、やはりこれは国際的に見ても日本の政府のこの問題についての誠意のなさということを逆に露呈をしているのではないか、私はそのように考えますけれども、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  18. 芦尾長司

    芦尾政府委員 昨年の六月のILO総会の条約勧告適用委員会の議長集約では、委員会としては、国内においてこの問題について引き続き討議が行われて、政府が関係労働者にこの条約のもとで与えられる権利を十分に保障するために適切な措置がとられたと近く報告ができるよう希望を表明し得るのみである、こういったような見解が表明がなされておることは承知をいたしております。  そこで、七三年の御意見、ILOの意見に触れられたわけでありますけれども、私どもといたしましては、ILOが七三年に見解を変えられたということにつきましては、従来からもILOに対しまして、同一の個別事案に対してILO見解を変えられるということはいかがかということで、私どもの方としての意見も申し上げておるところでもございます。  それからまた、公務員問題連絡会議におきまして、これはILOもその点は十分承知していただいておると思うわけでございますが、この問題が国内問題であるということを踏まえまして、私どもといたしましてもこの公務員問題連絡会議において現在検討を進めておるところでございます。
  19. 中沢健次

    中沢委員 実は、昨年の六月十五日の会議録の全文についても資料としていただいておりまして、ずっと読んでみました。そして改めてこの委員会の議長集約も読んでみたのでありますが、いずれにしても、この案件について言いますと、十六年間の歳月を費やして、ILOからは毎年のように消防職員団結権を承認すべきであると、表現はいろいろありますが、そういう歴史的な経緯があるということはもう紛れもない事実だと思うのですよ。  しかも、昨年の委員会の議長集約の中身でいいますと、非常に一歩突っ込んだといいますか、長い間日本政府がILOの勧告を全く受け入れないでのらりくらりと国内的に長期的な視野で云々なんということでずっと来ておりますから、相当フラストレーションもたまっていたのではないかと思うのでありますが、議長集約のところでも「本委員会は国内レベルでこれら問題に関する話し合いが継続されること、そして政府が条約によって与えられている権利を関係労働者にとって全面的に保障するために適切な措置をとったことを、すみやかに報告しうるよう、希望を表明するものである。」こういう、日本語としてもよくわかる集約をされているわけなんです。  そこで、これに関連をいたしまして、最後質問になると思うのでありますが、幾つかまだ関連がございますのでお尋ねをしたいと思いますが、今申し上げたような内容からいうと、今後の日本政府のとるべき態度について、私の方で幾つか関連をしてお尋ねをしたいと思います。  今ほどいろいろお答えがございました。八十七号の条約批准以前の問題と批准以後の問題についてもお話があったのでありますけれども、まず第一にお尋ねをしたいのは、もともとこの条約批准後の関係でいいますと、国際的な一つの常識としては条約の趣旨に従うべきだ、個々の政府について言いますと、条約の解釈権は正確に言えば持っているけれども、相当程度制限をされるのではないか、このようにも言われております。特に結社の自由というILOレベルの問題、あるいは国内的に言えば憲法二十八条の問題等々考えますと、非常にやはり基本的人権の根幹にかかわる問題ではないか。ですから、日本政府だけが特殊事情を強調するということ、日本だけがある意味消防職員団結権否認が許される、こういう国際環境にはもうないのではないか、私はそのように考えるのでありますが、この点について改めてお答えをいただきたいと思います。
  20. 芦尾長司

    芦尾政府委員 条約の解釈権の問題でございますが、政府は、消防職員団結禁止の取り扱いがILO八十七号条約適用上の問題はないという、先ほども申し上げましたが、結社の自由委員会の二度にわたる見解を基礎といたしましてこの条約を批准したものでありまして、そういう意味では政府は恣意的にこの条約を解釈しておるわけではなくて、批准時において日本政府の解釈ILO解釈を基礎としておるということで条約解釈上の問題はないと考えております。なお、条約の解釈権につきましては、これは外務省の所管事項ということになるわけでございますが、一般論としては、条約締約国は条約の適用、運用に当たりましてその解釈権を有しておるというふうに考えておるところでございます。  それからまた、我が国が世界の中で特別の事情を主張しておるということでございますが、この点につきましては、我が国消防特殊事情というものを十分に踏まえて、我が国消防が警察の中に入るというふうに解釈をしておるわけでございまして、我が国が特殊の地位を世界に対して主張しておるということにはならないと考えております。
  21. 中沢健次

    中沢委員 今お答えがあったのでありますけれども、法解釈の問題で言えば外務省の言うようなお答えなわけなんですが、そのことの当否は別にいたしまして、ILOの場で十六年間もいろいろな経緯が積み重なっている、こういう事実。ILOからは毎年毎年団結権を承認すべきだという勧告が出ている、こういう事実。つまり外務省的な条約なりあるいはこの種の勧告の法解釈だけではなしに、政治的な、もっと言えば国際的な立場に立っての日本政府としての政治的な解釈があってしかるべきではないか。  それともう一つは、言うならば古証文みたいに八十七号条約批准以前の問題、そこにばかり依拠するということについて言いますと、それをずっとこれから続けていけばいくほど国際的な批判が出てくるのではないかと私は思うのです。私としては答弁は十分納得ができない、このことだけを申し上げて、関連をいたしますのでその次の質問をしたいと思うのであります。  二つ目の問題は、先ほど来指摘をしましたように、ILOの専門委員会というのは国際的にもあるいは我が国におきましても大変権威のある法律の専門家で構成をされている。そういう権威のある法律の専門家によってつくられている専門委員会が同じような勧告を繰り返し繰り返し出している、そういう事実。そしてそれと同じように、勧告適用委員会やあるいは結社の自由委員会も全く歩調を同じくして日本政府にもう十数年再三再四にわたって繰り返し繰り返しそういう勧告を続けている。もうそろそろこの問題について日本政府として、いい意味での政治決断を含めて、消防職員問題について国際的なそういう一つのレベルにまで押し上げる、そういう時期に来ているのではないかと私は思うのです。そういう一つの政治的なタイムリミットといいましょうか、そういうことの判断も含めて自治省としてはどのように考えていらっしゃいますか。
  22. 芦尾長司

    芦尾政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、ILO昭和四十八年に見解を変えまして、日本消防職員団結権問題について、消防職員団結権を与えることを希望するという見解を表明されたわけでございますが、同時にILOは、この問題は国内において引き続き検討されることを希望してきておるというふうに存じております。政府といたしましては、ILOに提出してきた見解の中で繰り返し述べてきておるわけでございますけれども、団結権問題については条約適用上の問題はないと考えておりますけれども、ILOの審議の状況その他従来の経緯にかんがみまして、これを国内問題として長期的視野に立って検討してきておるところでございます。この問題は公務部門の労使関係の基本にもかかわることでございますし、また関係者間で見解の相違があるわけでございますので、私どもといたしましては早急に結論を出すことは困難であると考えております。政府として今後とも国内問題として長期的視野に立って検討していかなければならないのではないかと考えております。
  23. 中沢健次

    中沢委員 国内問題として長期的な視野で検討する、これはかねてから政府側の態度は変わっていないわけですね。私が指摘しておりますのは、そうではなしに、もうそろそろ、長期的視野なんという言葉の問題だけではないのでありますけれども、この問題については、このままずっと続いていきますと国際的に日本が孤立をするということに当然つながっていくと思うのです。この消防職員問題に限らず、今日本はいろいろな問題を含めて国際的に集中攻撃を受ける。その内容を一々申し上げませんけれども、それと同じようにこの問題についても国際的に日本が世界の孤児になってしまうのではないか、私はそういう危惧を強く抱くわけです。ですから、そろそろ決断の時期であって、国内的にも必要な関係団体との意見のまとめをやっていく時期に来ている、そういう指摘をしておるわけです。  そして私が関係者から聞いた情報によりますと、来年初めてILOとして世界の消防合同会議を開催する、こういう話を聞いております。これは国際的な公務員の労働組合の組織のPSIが後押しをいたしまして、ILOに恐らく働きかけをしたと思うのでありますが、明年国際的な消防合同会議を開く。そうなりますと、ILOの場とまた違った意味で、もちろん国際的に消防職員の仲間意識なんか当然ありますから、日本消防職員団結権否認の問題についてこの合同会議でも相当火の手が上がってくるのではないか、これは常識的に考えて明らかだと私は思います。ですから、くどいようでありますけれども、確かに国内的には、関係団体の話を聞くと、ぜひ承認をすべきだという団体、あるいはいろいろな特殊事情があるので承認をしない方がいいという団体が現実的に存在することは私はよく承知している。しかし、そこのところは日本政府の国際協調だとか今日までの歴史的な経緯を考えて、自治省として決意をすれば、そして総務庁に働きかけまして、例の公務員連絡会議の中でも新しい議論が展開できると思うのです。ここまで来たら、やはり自治省の腹一つだ。  もっと言いますと、最後大臣お答えをいただきたいと思うのでありますが、大臣としてもこの問題については正直言って余りこういう経緯については御承知なかったと思います。私はたまたま出身が自治体の出身でございまして、かつて私も北海道消防協をつくった、そういう直接タッチをした経緯がございますのでいろいろ強調しているのでありますけれども、この際大臣としても、従来の経緯、今日の置かれている状況、そして来年のILOを舞台にした今申し上げましたような会合等が予定をされている、一番先に指摘をいたしました竹下総理の国際日本という問題等々も含めて、この問題については政治的な要素も含めて相当重要だ、こういう認識をぜひしていただいて、大臣としても関係当局をぜひひとつしりをたたいて、早急に国内的な合意を得られるように全力を挙げて努力をしていただきたいと思うのでありますが、その点はいかがでしょう。
  24. 梶山静六

    梶山国務大臣 中沢委員指摘のように、私もこの問題に対しては詳しく承知をいたしておりません。過去において新聞紙上で何遍か、ILOに提訴をされたあるいは派遣をされたとかそういう問題を承知をしているわけでございますけれども、この消防職員団結権の問題、賛否なかなか決し得ない長い経緯のある難しい問題であるというふうに私は承知をいたしております。  公務員問題連絡会議検討が進められるところでありますが、この問題は公務部門の労使関係の基本にかかわるところから、今後とも長期的な視野に立って慎重に検討していただきたいと思いますし、世界に冠たる日本公務員の中で一つやはり特殊性、そういうものがあるから長い間この問題のいわばそれぞれの意見の集約を見ないことであろうと私は思うので、長くかかったから早くということもあるかもしれませんけれども、それだけに難しい問題を含んでいるという感じもいたしますので、これからの勉強を進めてまいりたいと考えております。
  25. 中沢健次

    中沢委員 時間が参りましたので終わりますが、いずれにしても大臣の御答弁関係政府委員の御答弁につきましてはかなり不満でございます。また改めてこの問題を取り上げて質問の機会があろうかと思いますけれども、きょうはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  26. 松本十郎

    松本委員長 細谷治嘉君。
  27. 細谷治嘉

    ○細谷委員 消防法規定する危険物の問題について改正が行われるに当たりまして、その問題を中心にして、あわせて消防力の基準というのがどうなっているのか、それからもう一つ、最近東京消防庁にかなり重要な救急業務についての答申が出されましたが、これにどう消防庁として対応していこうとしているのか、この三点に絞ってお伺いしてまいりたいと思うのです。     〔委員長退席、片岡(武)委員長代理着席〕  まず消防庁長官、昨年まではかなり細かい財政問題を推進してまいった方であります。消防庁に行きまして、危険物の問題が今度法律改正に出てきているのですが、過去にこの消防庁の危険物についての姿勢なり掘り下げなり対応なりというのが必ずしも一貫してなかったのじゃないか、こう思うのですが、印象はいかがですか。
  28. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 昭和二十三年に消防法が定められまして、その後危険物に関する規制の規定も逐次整備され、一番大きな改正はたしか昭和三十四年であったと思いますが、その時期その時期に応じて必要な改正を行うべきものであるということは、これはもう申すまでもないところでございます。  ただ、率直に申しまして、世の中の進歩が大変早うございまして、科学技術あるいは国民生活や産業経済活動に必要な物質、新しい物質の開発がどんどん進んでまいります。そういうものに対して消防庁として随時適切に、しかも迅速に常に対応できてきたかと申しますと、率直に申しましてその点については若干十分ではなかったのではないか。現在の規定をしてございます、掲名をしてございます危険物等につきましても、本当に科学的な観点から危険物あるいは非危険物というものの区別がきっちり行われているのかどうかということなどについては問題なきにしもあらず、そういう感じがいたしておるわけでございますが、そういった点を踏まえて、かつまた昭和五十八年の臨調答申も踏まえて、今回の危険物規制に関する消防法規定の見直しの御審議をお願いしておるところでございます。
  29. 細谷治嘉

    ○細谷委員 表面上は極めて整った御答弁をいただいたのですけれども、確かに昭和二十五年にかなり大規模な改正が行われました。それから三十四年、四十六年等に過去に消防法の大改正が行われて、新しい消防施設とかあるいはデパートの火災に対応する措置とかいろいろなことが行われてきたわけですけれども、それにしても私は端的にちょっと指摘を申したいことがある。非常に理想は高かったけれども、だんだんその理想が退化していったのじゃないかという気持ちがいたします。  それは何かというと、証拠を挙げてみたいと思います。これは四十一年の消防法です。これは最近の八七年、昨年の消防法。この消防法を読みますと、法があり政令があり省令、規則があるわけですが、その規則の末端のところ、一番あなたの方が責任を持たなければいかぬところで危険物についてどういう規定があるかといいますと、これは大切な点でありますからちょっと紹介しておきたいと思うのですが、危険物を管理する技術者、技術者の資格は今度のにもありますが、五十五条「甲種危険物取扱主任者試験の試験科目は、次のとおりとする。 一 基礎物理学及び基礎化学」甲種の人はこれをやらなければいかぬというのです。基礎物理学、基礎化学、これに堪能でなければ甲種の技術者になれない。そしてその次に、イといたしまして「危険物の取扱作業に関する保安に必要な高度の基礎物理学」、その次のロは何かというと、「危険物の取扱作業に関する保安に必要な高度の基礎化学」、立派ですよ、これは。そしてその次に「すべての種類の危険物の性質に関する高度の概論」。これは大学教授ぐらいで、恐らく何人もおらぬと思うのですよ。  さすがにこれでは余りに理想が高過ぎるということで、新しい規則は「すべての」というのは残っているのですが、「高度の」という部分をとって、必要な水準の物理学、必要な水準の化学、こう書いてあります。これはレベルが落ちたのですか、あるいは最初に書いた規則は誤っておるから直した、このいずれですか。どうです。
  30. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 実は私もそういう規則の細部の点につきましてただいま御指摘をいただくまで承知をいたしておりませんで、とっさの御質問でございますので私どもの立場から十分なお答えができるかどうかわかりませんが、確かに危険物の取り扱いにつきまして御指摘のような基礎物理学あるいは化学や物理学に関する高度の知識、こういったものを当初要件としておったものを、最近では御指摘のような形に変えてきたわけでございますが、しかし、要するにこれは危険物の取り扱いを行うに必要な知識というものがどの程度のものであるかということの問題に結局はかかわってこようかと思うのでございます。  昨今におきましては危険物、まあガソリンスタンド等の数も非常にふえてまいっておりまして、これに従事する人々の数もふえてきておるわけでございますが、そういった場合に、直接これを扱う人なりそれを監督する人に必要な知識というものをどの程度求めるかという問題であろうかと思います。甲種の場合には、これは全体の危険物につきまして資格を持つわけでございますから、かなり高度の知識なり技術なりを必要とすると思うわけでございますが、それにいたしましてもその水準というのをどの程度と考えるかという問題で、その取り扱いの甲種試験におきましてもそれに必要な条件を満たすものを内容としておると思いますので、決して危険物行政の後退を意味するものではないと考えております。
  31. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は後退があってはならぬということで非常に善意に解釈いたしまして、この四十一年の六法を読みましたけれども、たしか四十六年ぐらいまでは「高度の基礎物理学」「高度の基礎化学」と書いてある。四十七年ぐらいから、よく知りませんけれどもそのくらいになってから、業務をやるのに必要な水準の基礎的な物理学、基礎的な化学ということになった。基礎物理学と基礎的な物理学というのは、基礎的というのと基礎というのはちょっと印象が違うのですよ。その辺に技術者もおりますけれども、恐らくそう受け取ると思うのですよ。そういう意味において非常に高い旗を掲げながら、これが施行されてから二十年ぐらいしてやっと直したというのはいささか定見がなかったんじゃないか、文章だけは高く掲げておけというあれがあったのではないか、こう思うのですよ。そこで私は、法律を受けて政令、政令を受けての省令、これは非常に消防庁自体、自治省自体が責任を持つ問題ですから、国会の目にとまらぬところだから適当に書いておけや、立派な言葉で書いておけやというような、そういう軽い気持ちでやられては困るということを、ひとつ大臣、少し念頭に置いていただいて今後指導していただきたい、こう思うのです。  そういう意味におきまして、私は、今度のこの規則が、大臣の趣旨説明によりますと、臨時行政調査会等のあれも受けましてやったんだ、そしてその背景というのは、基礎というのは、去年の十月、消防庁危険物委員会が答申いたしました「危険物、準危険物及び特殊可燃物の見直しに関する報告書」、これが根底にあると思うのですが、そうでしょう、どうですか。     〔片岡(武)委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のとおりでございまして、臨調答申がございました後に、この全般的見直しということになりますと、これは極めて大きな作業で影響するところも大でございます。そのために五十八年に学識経験者を中心とした危険物委員会を設けてその検討を行ってきて、その報告を踏まえて改正を行うということにいたした次第でございます。
  33. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この危険物、特に別表を中心としてこの委員会でも何遍となく取り上げられてまいりました。もっと現実に即応するような別表に改めたらどうかということが指摘されておりました。今回危険物の別表について、ようやく本格的な、かなり抜本的な改正をしようとする意気については私は敬意を表します。そうしなければならぬと思うのですよ。ところが残念なことには、大学の先生等を中心といたしました消防庁に対するこの報告書というのは昨年の十月ですよ。そして二月にはもう法案が出ているわけです。どうも準備が十分じゃなくて拙速であったんではないか、こう思いますが、そんなことはありません、この委員会検討中に並行して消防研究所で十分やったんだから心配ありません、こう言い切る自信がございますか。
  34. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように報告のございましたのが昨年十月、その後関係方面との調整をいろいろ行いまして、法案の形にいたしまして今回御審議をお願いをしたわけでございます。  この危険物の委員会におきましては五十数回にわたる会合を重ねまして、しかもその過程におきましてはいろいろな実験をも行い、そういった結果を踏まえて報告をいただいたものでございます。そういう意味で、この危険物委員会検討結果に基づくところの危険物の定義なりあるいはその判定基準の科学化というようなものにつきましては十分権威のあるものだと考えておりますし、それを踏まえて行いました法律改正案の準備につきましては、私どもとしては今日の時代に適合し、臨調答申の趣旨にも沿ったものと考えているところでございます。
  35. 細谷治嘉

    ○細谷委員 十分権威がなくて国会に法律案を出すなんというのはもってのほかですから、そんなことはないと思う。私は少し早まり過ぎているのではないか、拙速過ぎるんじゃないか。その証拠が今度の改正案ですよ。  現行法の別表には一類から六類まであります。一類のこの品物はこれが限度であると指定数量があるのですよ。今度は指定数量がないですよ。進歩したはずの別表が指定数量のない品物だけを挙げている。品物だけを挙げているというのは、その品物については後で個々に少し私の意見を申し上げますけれども、数量がない危険物というのはあるのですか。一キロでも一トンでも同じだ。書いてないのですよ。それは政令で決めますからお任せくださいと、そこまで言い切るには消防庁、いささか拙速じゃないか、もっと準備があってしかるべきではないか。後を全部政令に任せてくれ、これでいいのですか。この辺は大臣大臣余り質問したくないと思うのですが、これは基本的な姿勢ですからお答えいただきたいと思うのです。
  36. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように、指定数量につきましては政令に委任という法律案になっておるわけでございますが、今回の改正におきまして全般的な見直しを行ったわけでございますけれども、一つは、大きな改正としては、危険物の定義というものをその性状に応じて明らかにしていく、そしてその危険物に含まれる可能性の高いものにつきましては、主に総称的な名称でございますが、これの掲名をそれぞれしていき、その他政令で定めるものというような規定の仕方をしておるわけでございますが、危険物に該当するか否かということはもう一つの大きな特徴でございますところの、一定の試験方法を導入をするという点にあるわけでございます。したがいまして、その試験を行った結果、危険物であるかないかということが判定できるようにするというわけでございます。この試験の方法につきましては、これも極めて技術的でございますので政令で定めるということにいたしておるわけでございますが、そうなりますと、結局政令の段階において危険物であるかないかということがはっきりしてまいるものが少なからずあるわけでございます。したがいまして、それに対応する規制の対象となる指定数量もあわせて政令で決めなければならない、決める必要がある、こういうことから、今回の改正案におきましては、従来法律で定めておりましたものを政令にゆだねるということにいたしておるわけでございまして、この点御了解を賜りたいと存じます。
  37. 細谷治嘉

    ○細谷委員 御了解いただきたいと言うけれども、了解できないとは申しませんけれども、あなた方の意図が理解できません。余りにも拙速ですよ。最近よく定量的とか定性的とか言われますね。税制問題については定性的な段階を越えて定量的な問題だ、そういうふうに言われているのですよ。これはまさしく今度は定量的なものから定性的なものに移ったという方向でしょう。どうしてそうなったか。拙速だからですよ、十分な試験研究をやらぬで。  確かに危険物の委員会では、一番事故の多い、あなたの方の出した白書を見ますと、六十一年の火災発生百四十五件のうち四類というのが八十七件、六〇%あるのですね。それほど四類があるのですね。これは四類で六ランクに分けろ。どういうふうにランクになっているかわからぬですよ。今までのものはきちんと物質ごとに、これは数量はこのくらいだ、数量はここまでである、これ以上の場合とこれ以下の場合には取り扱いが違いますよとぴしゃっぴしゃっと書いてある。ないですよ、これは。そして第四類の石油類については六ランクに分ける。六ランクに分けるけれどもどれが一番危険なのか、どれがいいのか。これは割合もありますよ。まざり合っている割合によって同じものでも危険性が変わるわけです。あるいは金属ナトリウム、危ない危ないというけれども、金属ナトリウムが一キロと五十キロとあった場合に大分違ってきますね、その辺の定量的なものは一つもなくて、過去にあったものを外しちゃって、あとは政令に任せてください、省令に任せてくださいというのは、私はこんな言葉は使いたくはありませんけれども、国会の軽視じゃないかという意見が出てもあなた方抗弁する余地はないと思うのですよ。今まで法律でぴしゃっとあったものを数量を外しちゃう、あとは消防庁に任せてください、研究者に任せてください、こういうことです。大臣、これではちょっと拙速だという意味をおわかりいただいたと私は思うのです。いかがでしょうか。
  38. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 法律で決めておりましたものを政令にゆだねることにしたという点につきまして、これは本来ならば十分試験研究をやった上でそれぞれ法律に書くべきではないのか、こういう御指摘かと思うのでございますが、先ほど来申し上げましたように、危険物の種類、極めて多種多様でございますし、また新しいものも次々に出てまいります。そういうものに迅速に対応してまいるためには、そういう新しい物品について直ちにテストができ、そしてその危険である、規制の対象となる数量がどの程度だということをその段階においてその都度判定をしていく必要があるわけでございます。  指定数量につきましては、従来からの法律の定めております指定数量の内容があるわけでございますが、これらの点につきましては従来のものも踏まえ、またその後の保安技術等の進歩といったようなものの観点も踏まえて、これはもちろん防災の観点から安全の確保に必要な指定数量というものを定めてまいりたい、このように考えておりますし、この点につきましては、今申し上げましたような趣旨から政令にゆだねることといたした次第でございますので、重ねてその趣旨を申し上げ、御理解をちょうだいいたしたいと思うわけでございます。
  39. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは、少し頭を下げておけばあとはこの法律が通ればこっちのものだ、こういうことじゃ困るのですよ。国民の命のかかった問題、国民の財産のかかった問題なんですから、きちんとしていただかないといかぬ。そうして、これはひとつ政令の方にお任せください、省令にお任せくださいというなら、それなりの整備がされておらなければいけません。おっしゃるように試験方法がいろいろあっては困るのですから、スタンダードなもの、標準的な試験方法、これはここに書いてありますから結構です。それによって三つのランクにするんだとか六つのランクにするんだということは、これは学者の当たり前。それを忠実に実行して確信ある別表をつくっていただきたい、こう思います。  この危険物の学者たちの答申の中に「危険物の品名及び指定数量」、こうありまして、それに細目がありまして、第一類は三ランクでありますよ。第二類は五ランクですか、六ランクですか、四類は六ランクですよ、こういうふうにぴしゃっと書いてあるので、そのランクの指定数量というのはこんなものだろうという数字が表にありますけれども、これは法律でも何でもないですよ。これは学者の答申ですよ。何も拘束力がない。あなたの方は責任ないですよ。学者がそういう答申をしておりました、しかしそれは今後の研究課題として、法律はこういうふうになって通ったのですからそれはもう最終的には国会の責任ですよ、こういうことじゃ困るわけですよ。大臣、一言。だから、これは私は言ってみると、昨年十月に出たのですから、消防研究所というのがあるのですから十分検討し、試験をし、そうして追跡して、その結果に基づいて数量を表の中に入れて、六ランクなら六ランクでいいですよ、表の中に入れて法律を提出すべきだ、こう思うのですが、そうなっておりませんから、何とかこれについて具体的に確信がある措置を大臣、基本的に聞かせていただきたいのです。
  40. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変重要な御指摘をちょうだいをいたしておりますが、法律事項であろうと別表で政令、省令の事項であろうと、とにもかくにも危険物をどうやって安全に保管をし使用をするか、その取り決めでございますから、事は重要でございますので、結果として間違いのないような定めをしなければならないという気がいたします。  それから研究者の答申でございますが、もちろん科学的知見に基づくわけでございますから、我我素人がとやかく言うべき問題ではございませんが、そういうものを重要な参考意見として、現実に常識的に処理のできる方法をこれから早急に確定をいたしまして付表をつくってまいりたいと考えております。
  41. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは委員長に要望しておきますが、数量のない、定性的で素人には全くわからないようなものでは困りますから、試験結果でトレースしてみた結果、こうだという結果が出、そしてそれを公表する段階では、委員会の権限ではありませんけれども、報告して、そして十分な協力体制をとっていただきたい、これだけを要望しておきます。本当は私の気持ちは消防法は次の通常国会ぐらいでいいじゃないか、こう思っておりますけれども、今ここでは言いません。  そこで、ひとつ別表の内容について、今度の別表には備考が幾つついていますか。
  42. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 改正案による別表の備考は全部で二十一でございます。
  43. 細谷治嘉

    ○細谷委員 備考二十一。表がありますと脚注、下の方は読まぬで済む場合があるのですが、この備考二十一というのは読まぬではこの別表がわからないです。備考なんというものでないですよ。その備考なんというものでないような内容のものが、現行法では備考は九つですよ、倍増どころじゃない二十一、これは大変な問題です。私は、この別表というのは非常に検討不十分だと思う。  一例を申し上げましょう。この備考、いろいろありますが、「鉄粉とは、鉄の粉をいい、粒度等を勘案して自治省令で定める物を除く。」こう書いてあります。細かい鉄粉は爆発の心配があるのですよ。「鉄粉」と書いたら小麦粉となぜ書かなかったか。小麦粉も爆発するのですよ。過去に日本製粉が鶴見で大爆発をやった。「鉄粉」とここまで書いているのなら、小麦粉でも爆発するのですから。そういう不十分な備考がここに出てきている。  それからもう一つ言っておきますと、この備考の中に「特殊引火物」と書いてある。「十一 特殊引火物とは、ジエチルェーテル、二硫化炭素その他一気圧において、発火点が一〇〇度以下のもの又は引火点が零下二〇度以下で沸点が四〇度以下のものをいう。」「十二 第一石油類とは、アセトン、ガソリンその他一気圧において引火点が二一度未満のものをいう。」こう書いてある。アセトンは石油じゃないですよ、常識的に。化学やった人なら、アセトンは石油類じゃないですよ。かりそめにこれは入れているのでしょう。それでその危なさを、私は数字を調べてきましたからちょっと申し上げますと、この表にもありますアセトンというのは、引火点がマイナス二十一度です。発火点が四百六十五度、沸点が五十六・三度、こうなっております。それからジェチルエーテル、引火点がマイナス四十五度、発火点が百六十度、沸点が三十四・五度、そう変わらぬですよ。そして十一のところにジェチルェーテルは特殊引火物だ。そしてアセトンは、化学的には構造式からいって第一石油類に入れるのは無理なのにここに入れておる。  この辺の分類は別表を総称的な表にしたいから。それが国際連合がやっておる総称的だ。私は、ここまでくるのなら総称じゃなくて個別名できちんとやるべきだと思うのです。今までも総称があり過ぎたのです。個別名でやるべきだと思うのです。私もちょっと若いときに化学工場で、それで飯を食ったことがあるので、これはいやに気になるのです。素人に近い書き方じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  44. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 細谷委員の専門的知識を駆使しての御質問でございますので、私どもの貧弱な化学に関する知識で十分御納得のいくお答えができないかとは存じますが、備考の点につきましては確かに現行の備考に比べますと数がふえてきておるわけでございます。もちろん備考も法律の一部を構成するものでございますからそれなりの重要な項目でございますが、御指摘の中でも引用されましたように、国際基準等との整合性も図っていって、そして一類から六類までのそれぞれの性状を皆明らかにしてそのいずれかに含めていく、こういうことでございます。  そういう意味で、純粋な化学式等から申しますと同じものに属さないではないかというような御指摘もあろうかと思いますが、例えば石油、第一石油類という言葉を使って、そういった点については純粋な意味の化学式から言う石油だけでないものも含まれておるという点は、全体の体系をつくります上からはある程度やむを得ないものと考えておるところでございますが、その内容につきましては十分検討した上で別表にしておるわけでございまして、また一定の試験を行った上でこれを判定をしていくということにいたしておるわけでございます。先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、そういう点については安全の確保の見地から厳正に行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  45. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この表は、指摘したら、これだけを一時間ぐらいやっても足らないと思う。大切な点ですから、私もう二、三指摘しておく。  第四類三の「アルコール類」。アルコールはメチルアルコール、エチルアルコール、そればかりじゃないのです。この備考の十三を読みますと、「アルコール類とは、一分子を構成する炭素の原子の数が一個から三個までの飽和一価アルコールをいい、組成等を勘案して自治省令で定める」。アルコールには水が入っていますから、水の割合により引火点が変わります。ですから、十三の備考を読まない限りはアルコール類というのはわからぬ。アルコールには一価のアルコールのものと二価のアルコールのものと三価のアルコールのものとあります。三価のアルコールになればグリセリン、これはダイナマイトの原料になるのです。ですから、アルコール類といったら当然化学的には一価も二価も三価も入るよ、そういうことを予想して、政令に任され省令に任されたからおれの方で加えるぞなんてやったら大変なことです。どうなんですか、備考以外には何もないのですか。何もないというならばアルコール類などという総称は使わぬで、十三の書き方を「アルコール類」じゃなくて、一分子を構成する炭素の原子が一ないし三個までの一個のアルコールだと書けば大したことないでしょう。いかがですか。
  46. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 一類から六類までに分けてそれぞれ酸化性の固体であるとかあるいは可燃性の固体とか引火性の液体とかいろいろ性状を示しておるわけでございます。その性状によって、あくまでも消防法上の危険物に対しての安全の確保の見地から分類をしていって、それに必要な位置、構造、基準等の規制を設けるわけでございます。したがいまして、純粋に工学上の化学式によるものの分類と若干入り組んでおるというような点はあろうかと思います。その中でも、御指摘のように自治省令で定める濃度でございますが、そういうものは一定以下のものは除いていくということにしておるわけでございまして、いわばこれは消防法の危険物に関する規制上の一つの分類であるという点については御理解をいただきたいと思うのでございます。
  47. 細谷治嘉

    ○細谷委員 指摘しますと切りがありませんから、要望も含めて申し上げておきます。私は、消防庁の方から来ましたから、第五類のアゾ化合物、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、ヒドラジンの誘導体、具体的な例がありますかと言ったら、例を言いました。その例は近代的なもので私にはちょっとわからない。わからぬけれども、あるだろうと思うけれども、新しくこれは入っているのです。今までの別表になくて新しく入った。新しく入ったけれども、具体性がないわけです。これでは困ります。  それから次に第一類に「その他のもので政令で定めるもの」、九まで具体的な名前を挙げて「その他のもので政令で定めるもの」「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」、これは政令です、消防庁に任せてください、自治大臣に任せてください。これはまた無鉄砲な何でもかんでも任せよ、私の胸三寸だ、こういう形になっております。これは困るのです。いかがですか。
  48. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 先ほども法律改正の趣旨の際に御説明を申し上げましたが、今回の改正におきましては、それぞれの類ごとの危険物の定義をはっきりさせるということ、そしてこの定義に基づいて危険物であるか否かの判定の試験方法を導入する、これによりまして危険物の判定を統一的に合理的に行おうとするものでございます。そのために、危険物に該当する可能性のある物品を広くとらえるために、試験により明らかに危険物となるであろうと考えられる物品を含むグループを総称的名称によりできるだけ指定することにしたわけでございますが、しかし世の中日進月歩でございますし、新しい製品も次々に開発されつつあるようでございます。私もその辺の専門的なことはよくわかりませんけれども、石油関係につきましても現在輸入製品との関係で国内においても次々に新しい種類の物質を開発しておるというようなことをよく聞くわけでございますが、そういうような新たに出現することが予想される危険性の物品に速やかに対応することができるように、その他政令で定めるもの、こういうぐあいに規定をしておるところでございます。もちろんこの場合の政令におきましては、法の別表に掲げられております品名と同等以上の危険性を有する物品について定めるということを予定しておるわけでございます。
  49. 細谷治嘉

    ○細谷委員 長官、あなたの言葉に一つ気にかかることがある。私はよくわかりませんけれども、そういう言葉があるのです。提案者の責任者であるあなたが、中身のことはよくわかりませんけれどもという説明が一言でも入ると、これは我々はちょっとどうにもならぬ。これに書かれた分については断固として責任がある、何人といえども私は責任を持って提案しているのだ、こう言ってもらわなければいかぬのです。
  50. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 新しく出現をする物質についてそれを念頭に置いて規定したわけでございます。その新しい物質がどのようなものが出現するかというようなことにつきましては私もそこまでは十分わからないという意味で申し上げたわけでございまして、法律規定そのものの内容についての発言ではないと考えておりますが、もしそのように御理解をされましたのでございますれば、その点については取り消させていただきます。
  51. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、今のこの別表のどの範囲なのかわからぬという状態でありますけれども、これに書いてないような、予想することのできないような品物があるのですかということを私は次に聞きたかったわけです。それは何かといいますと、私の手元に日本ソーダ工業会から、これは指定してもらっては困ります。動きはあったのでしょう、消防庁の方で。それは何かといいますと、品名を申し上げます。高度さらし粉、プールや何かの消毒の高度さらし粉、これはちょっと爆発物か何か、第一類か何かで指定されても困ります。こういう陳情が来ています。  もう一つ、同じようにプールとか特に下水道、浄化槽等の消毒に欠くことのできない有効塩素、消毒力の強いトリクロロイソシアヌール酸、これが第一類に指定されそうといううわさがあるけれども、どうだろうかと書いてあります。これはどうなんですか。新しいものはわかりません、こういうことなんですか。そんなことではいよいよいけませんね。ソフトの部分についても検討した、そしてこれだけは自信を持って出したんだ、こういうことになってなければいかぬわけです。どうですか。
  52. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 高度さらし粉につきましては、御指摘のように今回の法案をまとめます場合にもいろいろお話がございました。高度さらし粉とかイソシアヌール酸の中には、その危険性におきまして法別表に列挙されております品名と同等であるものがあると考えられます。例えばその高度さらし粉の原料になっておりますのが次亜塩素酸カルシウムでございますが、これは百五十度C以上になりますと酸素を放出して爆発する、そういう性質を持っておるわけでございます。また国連におきましても危険性物品として指定されているものでございますために、これは政令で指定することを検討いたしておるわけでございます。ただ問題は、これらの物品がすべて危険物に該当するということではなくて、あくまでも今回導入する試験により危険物とされる性状を示すというものであれば、これは危険物として指定をされることになるわけでございます。  これらの物質につきましては、例えばタブレットなどの形式で流通をしておる例が多いようでございますけれども、今回導入する試験方法については、そういう現実に流通しておる形状に応じた危険性というものを適正に試験をしてまいりたい、そのことを通じてこれをその危険度を判定して政令で指定するかどうかということを決めていくわけでございますが、さらし粉につきましてはそういう観点からいきますと政令で指定される可能性が大きいと考えております。
  53. 細谷治嘉

    ○細谷委員 さらし粉については可能性が大きい。トリクロロイソシアヌール酸はどうですか。私は業界からこういう陳情書をいただいたから具体的に言っているのではないですよ。これは下水とかプールとかそういうものの消毒、非常に重要な問題ですから、そして一番有効なものとしてはイソシアヌール酸だ、こう言われているわけですよ。しかし、それは危険物の第一類に入れなければいかぬというならそれは入れなければいかぬ。しかし、それは試験をやってない。試験をやってないけれども、ちょっとおれの権限なんだぞという幅がこの法律が通ると出てくるわけですよ、政令がないわけですから。それでは困るわけです。そういう意味で私は指摘して言っているわけです。  私の常識からいきますと、さらし粉、高度さらし粉、それから次亜塩素酸、塩素酸とありますが、塩素酸というのが、赤軍か何か知りませんけれども、おもちゃの、おもちゃといっては失礼ですが、よく使われるのでかなり神経質に扱われているのではないか。トリクロロイソシアヌール酸とか高度さらし粉を爆薬の原料に使うなんということはあり得ないと思うので、その辺は現実的に対応していただきたい、またそうしてもらわなければいかぬということを私は言っているわけであります。これは試験した結果だ。それはそうでしょう、何で試験もせぬうちにそんなことを言うのかということになるから。もう業界などはやっているわけですから、その辺は慎重に扱っていただきたい。そういう意味において白紙委任状のこの法律についてはどうしても頭をひねらざるを得ない、こう思います。  これはあなたの方で調べていただいたのですが、トリクロロイソシアヌール酸というのは、普通のカメの甲と言われるカメの甲じゃなくて、炭素のかわりに窒素が核に入っておって、ちょっとベンゼンよりも不安定だろうと想像できますけれども、消毒、殺菌、しかも融点は、溶ける温度は二百二十五度、二百三十度、タブレットになっておるのですね。一年間に生産量は六十二年度に二万五千トン、高度さらし粉の方はどうかといいますと四万二千トン使っている。非常に大切な消毒剤になっているようであります。この点でいろいろありますけれども、ちょっと時間がありませんので次に移らしていただきます。  消防法では消防力の基準というのを定めてあります。そうして、法律で改めて消防力の充実のための基準を示し国庫補助対象とする別の規定というものがあります。私は資料をいただきました。消防力の基準に対する充足状況というのを消防庁で調べました。消防ポンプ自動車というのが全国昭和五十三年四月一日で八五・八%、五十九年の四月一日は八八・一%。十年ばかりしている間に二、三%充実されておりますね。はしご自動車、これは非常に重要でありますが、五十三年には五五・五%、五十九年になりますと六〇・五%、わずかでありますけれども、ふえております。化学消防ポンプ自動車五二・七が五五・四。それから救急自動車が九七・一、そして九九・六というのが五十九年。ですから、いずれも消防施設の方はわずかながら、年一%の速度なんてないんですよ、それも九五%が九六%になったというのならなんですけれども、低いのは五〇%か六〇%で何年たっても上がらぬ、こういうことです。  消防職員はどうなるかといいますと、全国を申し上げますと、七七・八%が五十三年度、五十九年度は七六・八%ですよ。一%減っているんですよ、全国消防職員は。ですから、法律でやらなければいかぬものも手が回らぬから減らしたとか、あるいはやれないとか、こういうことになってしまっては困るわけです。とりわけ、先ほど中沢委員から質問もありましたように、労働基準法の改正の方向が、こういうものからいって四十八時間労働というのを国際的にも減らしていけ、それで四十時間を目標にやっていくということになっていきますと、それをどうしてやるのか、これも大切な問題ですよ。これは職員の数にかかってきます。  それからもう一つは、日本の真ん中の東京消防庁はどうなっているかといいますと、これは私資料をいただいて驚いたのです。化学消防ポンプ自動車は五十三年が七六・八%、五十九年が七〇%、七%も落ちているんですよ。東京は化学工場がないから当たり前だ、こうはおっしゃらぬと思うのです。救急自動車、後でまた救急の問題にちょっと触れますけれども、五十三年が七四・六、五十九年が七二・三、落ちているんですね、これも。白書を見ても、救急問題というのは消防の非常に重要なもの、そして私はこれを読むごとに、地味だけれども、これがどれほど国民生活に大きなプラスになっているか、支えになっているかということは私ももう痛いほどわかるわけですよ。ところが救急自動車は逆に二・三%も減っていっておる。東京都の消防職員が八二・八%五十三年度にあったものが、五十九年になりますと七〇・七ですよ。一三%へっこんでいるんですよ。これでは、消防力の基準はかくかくでございますよ、政府の補助対象はかくかくでございますよと法律には書いてありますけれども、やってないじゃないですか。東京消防庁は直接消防庁がやることではないにしても、これでは指導が行き届いておるとは言えないと思うのですよ。いろいろあるかもしれません。財政状況もあるかもしれません。しかし、これじゃ困るわけであります。やはり基準というのを設けた以上は、その基準が高いほどいいや、どうせ文字じゃないかというつもりで書いておるなら別ですよ。しかし、これはもう昭和二十年代からずっとやっている基準です。一向改善されてないです。どういたしますか、お答えいただきたい。
  54. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 消防力基準につきましては、消防の施設、装備の水準の向上を目指す重要な目標として、今後ともこの目標に向かって充実を図っていくよう努力をしてまいりたいという基本姿勢を持っておることはもちろんのことでございます。  内容的に、全国の施設面につきましては、これは財政事情その他の事情もあろうかと思います。財政事情等もあろうかと思いますが、全体としては向上しつつある。東京消防庁におきましては一部御指摘のような事例が見られるわけでございますが、東京消防庁消防の水準がそのことだけで低下をしたとは直ちには考えられないと思います。いずれにいたしましても、財政問題等いろいろ厳しい状況ではございますけれども、今後ともその充実を図ってまいりたいと思います。もちろん消防力基準そのものは、過去に何回か見直しも行っておるわけでございます。その時代の趨勢に応じまして、必要のある場合には見直しをしていくべき性質のものとは思っておりますけれども、この消防力基準そのものの水準に対する現在の達成率が必ずしもまだ十分でないということは御指摘のとおりでございまして、その点につきましては、私どももこれからさらに強力に指導してまいりたいと思います。  また、消防職員につきましては、実は御指摘のとおり率は下がってきております。施設の充実に比べて職員の充実の度合いが低い、これは行政改革に伴う定員の問題等いろいろ周辺の背景となる状況があるわけでございますが、そういった点につきましても、もちろんこれは充足をさらに目指していかなければならない性質のものでございます。ただ、一方におきましては、消防戦術面の機動的な運用、例えば消防自動車のペア運用というような形によりまして、できるだけ合理的な方法で消防活動がスムーズにできるように対応してまいる必要があると考えておりますし、またそのように指導してまいりたいと考えております。
  55. 細谷治嘉

    ○細谷委員 かつて、随分古い話でありますけれども、この地方行政委員会は東京消防庁を視察したことがあります。四十年代だと思いますけれども、そのころの機器の充足というのは私の記憶では大体七〇%くらい、ところが職員の充実というのが五二、三%くらいだった。極めて不十分だった。ところが、今日依然として、八〇もあったものが七〇に落ちてしまった。これでは魂を入れておらぬ。仏だけはつくっている。仏も政令で操ることができる、そういう仏様をつくるということではいけないわけですから、操り人形でないような法律、政令、規則、そして、それを着実に実行するために最善を尽くすことが大切だと思うのです。基準はあるけれどもなきに等しい感じなので、大臣、そうならば、これだけは国民に対して守りますよという決意を込めた新しい基準を設定した方がましではないか。そしてこれをクリアしたらその次、これでいいと思うのですが、その辺御感想をお聞かせいただきたい。
  56. 梶山静六

    梶山国務大臣 長い基準があるわけでございますから、一つの物差しでございますから、充足率が十分に伸びないといってその物差しを変えることは、これもまたいかがなものかと思いますので、その充足率を高めるために今後とも努力を払ってまいりたいと考えております。
  57. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ぜひひとつ、絵にかいたもちでは困りますから、よろしくお願いしたいと思います。  あと、時間がありませんから、最後に救急業務の問題についてお伺いをいたします。  消防庁長官、今年の四月十一日に東京消防庁救急業務懇話会の都築会長から東京消防庁総監に出されました救急業務に関する答申というのがございます。五月七日の読売新聞の解説欄「救急隊員にも医療行為を」という見出しで新聞に出ておりました。この都築さんの答申をお読みになりましたか。
  58. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 読んでおります。  内容につきましては、この答申は、最近における在宅医療等の進展で、自宅で例えば輸液とか投薬、あるいはカテーテルなどをつけることによって医療処置を継続しておる救急患者、これに的確に対応するために適切な応急処置のあり方、これに伴い必要となる教育訓練内容を提言したもの、このように受けとめております。
  59. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この答申の中にも指摘がありますように、日本とアメリカを比べてみますと、救急業務で行ったのが途中で息絶えちゃう、どうにもならない重症になってしまうという例が日本では非常に多い。アメリカではずっと日本よりよくなっているということが例として出されております。その場合に、医療行為との境界線の問題がありますから、それをどうやって調整していくのかという問題が日本の場合には確かに一つの大きな問題ですけれども、よく救急車が鳴らしながら走っていくのを見て私は御苦労さまだなと思います。中には、飲み過ぎて使っているというのはないにしても、必ずしも救急車に無理をかけなければならぬというほどではなかったという例も聞くのですよ。それでは困るのであって、救急車が本当に住民の救急の役に立つように、そしてその救急の目的が達成されるようにあらゆる努力を払わなければいかぬのではないか、こう思います。  これは大臣、救急業務についての職員の数の問題も関連してきますが、だんだんこれを省略したりなんかしている、あるいは今の勤務状態というのをうまくやりくりしようとする動きもなくはないですよ。うまくというのは、私は具体的には申し上げませんけれども、あるのですよ。それでは困るのであって、その辺の救急体制というものを本当に国民のニーズにこたえられるように対応していただきたい、こう思いますので、長官の決意なり大臣のこれについての決意、これを読んでの抱負というものをここに明らかにしていただきたい、こう思います。
  60. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 昭和三十八年に救急業務を消防法の中に取り入れまして義務化してまいりました。その間、国民のニーズに対応いたしまして救急の搬送人員も年間既に二百数十万人に達するというような、消防行政の中でも非常に重要な分野を占めるようになってきておるわけでございます。それに対応いたしまして、救急隊あるいは救急車等の施設、機材の充実も図ってきたわけでございますが、今後の大きな問題としては、救急隊というのは元来は、スタートのときには、搬送する、病院に運んでいくということを目的にしておったわけでございますが、究極の目的はやはり少しでも人命を助けるということにあるわけでございます。そういう観点から医療行為との関係の問題等いろいろ難しい点はございますけれども、できるだけこの救急という制度がその目的にかなうように今後さらに十分な検討を進めてまいりたいと考えております。
  61. 細谷治嘉

    ○細谷委員 やっていただかなければいけませんが、ちょっと関連して申し上げておきますが、例えば消防職員の人数を決める法律上の条項があります。その条項のファクターが変わっておりますね。人口十万で割って一・〇を掛けるとか一・一を掛けるとか、そのファクターが変わっているのですよ。どういう根拠でやったかは我々にはわかりません。こういう問題もきちんとしてもらった方がいいですね。法律で出てくるそのファクターは別表に書いてあるのですから。しかし、その別表はときどき変わっているわけです。苦しくなったら別表を変える、こういうことはあってはならぬと思いますが、これはひとつそういうことにならぬようにしていただきたい。
  62. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘の点は消防力基準の改正にかかわる問題であろうかと思います。御指摘のように昭和五十年にこの基準の別表について補正係数を変えておるわけでございますが、これは予防要員、警防の方ではなくて予防査察行政に従事する要員の数の算定方法を変えたわけでございますけれども、このときに、従来では予防要員といわゆる一般庶務要員を含めて一定の算式にしておったわけでございます。端的に申しますと、人口十万人に対して十四人、十万分の十三としておったものでございますがそれに補正係数を掛けておる。改正をしましたそのときの新しい基準では、今度は庶務は除きまして予防要員だけの人数を決めたわけでございます。それについて十万人につき十四としたわけでございますが、その際に補正係数の一部を手直ししたわけでございます。ただ、これは補正係数を手直ししたために一部人数が下がるような向きが出てきたわけでございますが、それは決して消防力の後退ではなくて、従来は庶務要員まで全部含めた人数にしておりましたものを予防要員にしたわけでございますから、予防行政としてはむしろ充実になった、このように考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、消防力基準に伴うところの要員の人数につきましては、やはり時代時代の変化に対応した考え方も必要と思いますので、全体として消防力の向上になるように常に基準の見直しに当たってはそういう姿勢でやってまいりたいと考えております。
  63. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、今一連の救急業務とか消防力の基準の達成ということについて申し上げたわけですが、ひとつ大臣のお考えを最後にお聞きしたい。
  64. 梶山静六

    梶山国務大臣 国民の生命、財産を守り、快適な生活を保障することは何よりも大切なことでございます。ですから、この消防力の充実、広範な意味での消防力の充実あるいは救急体制整備、そして救命救急センターその他に連結をする有機的なことをこれからもっともっと重要視をしながらやっていかなければならないという感を深めておりますし、そのために努力をしてまいりたいと考えております。
  65. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  66. 松本十郎

    松本委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十分休憩      ────◇─────     午後一時十四分開議
  67. 松本十郎

    松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小谷輝二君。
  68. 小谷輝二

    ○小谷委員 消防法の一部改正につきまして、断片的ではございますが質問をいたします。  第二次臨時行政調査会の最終答申で「消防法令で指定されている危険物、準危険物及び特殊可燃物については、指定品目の見直しを行う」、こういうふうな答申が出たわけでありますけれども、これを受けて今回改正されたものと思っております。ところが、この答申は五十八年三月十四日にあったものと思うわけでございますが、その後五年間今日まで経過しておるわけです。これはどういう理由でこの答申を受けてから五年間も放置してあったのか、それとも特別な事情があったのか、その点はいかがですか。
  69. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように第二次臨調で、これは最終答申でございますが、五十八年三月十四日に危険物等の見直しの指摘があったわけでございます。  消防庁といたしましては、この臨時行政調査会の答申に立って早速昭和五十八年九月に学識経験者で構成されます危険物委員会設置したわけでございます。すなわち、答申がありまして半年後に委員会設置いたしました。何分にも危険物の範囲の見直しということになりますと、これは国際的な基準との整合性もとっていかなければならないというような問題がございますし、また、さまざまな新しい物品、その後の科学技術等の進歩を踏まえた綿密な検討がされなければならないということで、この危険物委員会におきまして危険物等の生産、流通実態の調査、あるいは国連において検討されている危険物等の試験方法についての調査、あるいは試験方法の適否を判断するためのさまざまな試験の実施、あるいは生産、流通に関する関係者の意見調査など、大変広範な事項について慎重に検討を重ねてきたものでございまして、これまでに小委員会を含めまして四十九回開催をいたしました。昭和六十二年度、最終年度におきましては十三回開催しておるところでございます。そしてその結果、危険物等の指定品目に関して六十二年十月に「危険物、準危険物及び特殊可燃物の見直しに関する報告書」として検討結果を取りまとめたところでございます。  その過程におきましては、さまざまな実験なども含めて大変幅広い角度から検討が行われたために、やはり相当の時日を要したわけでございます。その検討結果に基づきまして、今回、危険物の判定基準の合理化等を図るために危険物の定義を明確にすると同時に、試験による危険物の判定の方法を導入するなど所要の改正を行おうとしたものでございます。
  70. 小谷輝二

    ○小谷委員 いずれにしましても、科学技術の進歩著しい今日、答申を得てから慎重審議、検討されたと思いますけれども、余りにも長過ぎる。したがって、このような現在の状況の中では、直ちに新しい科学技術に基づくところの危険物等々の指定なりまた見直しなり、これはその都度直ちに行うべき性格のものである、このように思うわけですが、その点、今後十分迅速な対策をとるべきである、このように思っております。  さらに、第二次臨時行政調査会の最終答申で、資格制度の見直し、また検査・検定制度の簡素化等の提言がなされておりますが、その後どのように改善がなされたのか、この点はいかがですか。
  71. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 五十八年三月の第二臨調の最終答申におきましては、御指摘のように特に資格制度の見直し、検査・検定制度の見直しにつきましては、危険物取扱者試験及び消防設備士試験事務の民間委譲、それから危険物取扱者講習及び消防設備士講習事務の民間委譲、消防法、高圧ガス取締法、労働安全衛生法及び石油コンビナート等災害防止法、このいわゆる保安四法に係る共管競合検査の排除、危険物等の指定品目の見直し等について指摘がなされたところでございます。  この指摘、答申を受けまして、資格制度に関しましては、昭和五十八年の消防法の一部改正によりまして危険物取扱者試験それから消防設備士試験事務については指定試験機関制度を導入をいたしましたほか、検査・検定制度に関しましても当庁単独で措置できるものにつきましては鋭意改善措置を講じてきたところでございまして、今回のこの危険物等の指定品目の見直しに係る法改正により、当庁単独として行うものはすべてこれで措置をされたということになるわけでございます。  また、当庁単独だけではなくて関係省庁にまたがる事項につきましては、昭和五十八年九月に、関係省庁間で具体的な検討を行います保安四法関係許認可事務合理化連絡協議会、これが設置されまして、この改善方策が昭和六十年度中に取りまとめられました。消防庁といたしましては、設置・変更許可申請あるいは届け出の重複申請の調整、それから完成検査の重複の調整など、実施事項のうち昭和六十一年度中に措置すべきであるとされた事柄につきましてはすべて措置をしたところでございます。  なお、実施事項のうち臨調答申でも指摘されております指定検査機関の相互乗り入れの問題につきましては、これは当庁の所管をしております危険物保安技術協会の技術力を向上させるということにより、そのための条件整備を図ることといたしておるところでございます。
  72. 小谷輝二

    ○小谷委員 現行法で危険物として規制されておりますアルミニウム箔とか生石灰、濃硫酸等が今回の改正によりまして危険物から除外されております。アルミ箔なんかの場合は、これを危険物に指定した理由は、それはそれなりの根拠があって危険物に指定されたはずなんです。ところが今度は危険物から非危険物としたのはどういう理由なのか。当初危険物と指定した根拠はそれなりになくなったのかどうなのか。また一方、見方によれば安全性とか災害防止という面からこれは後退したことにならないのか、こういう危惧があるわけですが、この点はいかがですか。
  73. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように、現行の法律ではこれは第二類の金属粉Aというところで、アルミニウムの粉、箔それからリボン等を掲げておるわけでございます。今回消防法の改正を行うに当たりましていろいろ検討を重ねました結果、現在実際に流通しておりますところのアルミニウムの箔は、今度の改正法案の別表に掲げております可燃性固体の性格を有しておりませんで、消防法上の危険性がないことが明らかにされたので指定を行わなかったものでございます。  現在の消防法におきましては、アルミニウムの箔を、先ほど申し上げましたように第二類の危険物の金属粉Aというものに該当するとされておるわけでございますが、この指定を行いました当時、法律に掲げました当時の考え方では、アルミニウム箔全体が危険物であると考えられておったようでございますけれども、実際には運用の上では、その危険性も勘案をいたしまして、昭和二十七年ごろからは厚さが千分の六ミリメートル以下の非常に薄いアルミ箔だけが危険性があるということで、危険物の対象に規定しております。実際上流通しておるアルミニウムの箔は危険物とされていない、つまりそんなに薄いアルミ箔というのは現実に流通していないということでございます。そういう意味で、アルミ箔につきましては危険物の対象に今回はしていないわけでございます。したがいまして、実態的に見まして、アルミニウムの箔を外したということは安全性災害防止の面から見て後退したということではないわけでございます。  それからもう一つ御指摘の濃硫酸あるいは生石灰でございますが、濃硫酸につきましては現在第六類、生石灰につきましては第三類でそれぞれ別表に掲げておるわけでございますが、この二つも今回の改正により危険物から除外されることになるわけでございます。今回の改正で各類の危険物の定義を明確にいたしました結果、火災予防上の観点からは危険物として規制するだけの危険性を有しない。例えば生石灰にいたしましても、熱は出しますけれども炎を出すというものではないというようなことから、これはそういう判断に立って外したわけでございます。  ただ、濃硫酸とかあるいは生石灰等は、そういう危険物ではないとしても、消防活動時において人体に有害な腐食性物品であるという性質を有しておりまして、消防活動の際には十分な配慮をする必要のある物品でございますので、消防機関においてこれらの物質の貯蔵、取り扱いの実態を引き続き的確に把握しておく必要があるということから、今回の危険物の指定品目の見直しに伴い、これらの物質につきましてはいわゆる消防活動阻害物質として指定をし届け出を義務づける、このようにいたしておるところでございます。
  74. 小谷輝二

    ○小谷委員 濃硫酸、生石灰は非危険物ということにして、貯蔵に対しては消防活動阻害物質として届け出の義務をつけるということでありますが、これはどうなんですか、罰則規定は盛り込まれておりますか。
  75. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 ただいま申し上げましたように、この消防活動阻害物質の貯蔵、取り扱いの実態を消防機関が把握する必要があるわけでございますが、その把握をできるだけ確実なものにして、その物質が持っておりますところの火災時の特異な、しかも重大な危険について有効な対策を立てることができるようにするために、消防活動阻害物質の貯蔵、取り扱いの届け出を怠った者に対する罰則としては十万円以下の罰金または拘留、この罰則を今回新たに設けることといたしております。
  76. 小谷輝二

    ○小谷委員 さらに今回の改正で、市町村長が危険物の製造所等の設置許可を取り消すことができるように新たに規定を明文化するということのようでございますけれども、設置許可を取り消す必要のある製造所に対して、明文の規定がなかったので処理できなかった、要するに設置許可を取り消すことができなかったという事例が今まで何件かあるのですか。これはどうですか。
  77. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の改正におきまして、危険物施設がその違反の状態に陥った場合には、使用停止命令等の措置が講じられたとしても、そのまま長期間放置された場合には安全管理上それから火災予防上の観点から極めて危険な状態になるということの判断の上に立って、許可の取り消しの規定を設けるということにしたわけでございますが、御指摘のように従来この点については明文の規定がございませんでした。明文の規定がないけれども、行政法上の一般理論では取り消しができるのではないか、こういう説はございました。ただ、やはり明文の規定がないということになりますと、これは関係者の既得権益の剥奪につながる許可の取り消しということでございますから、やはり権限を適切に行使することはなかなか難しい状況にあると考えられます。  お尋ねの、現実に明文の規定がなかったために消防機関がやろうとしても有効な措置が講じられなかった例があるかということでございますが、特に具体的な事例は把握しておりませんけれども、今回の改正に関しましていわゆる現場の消防機関の意見を随分聞きました。そのときに、この許可の取り消しの規定を設けてほしい、こういう要望がかねてから出ておったわけでございますが、そういうことから判断いたしますと、恐らくそれないしそれに近いような事例がやはり実際の場にはあったのではなかろうか、こう考えております。今回法令上の明確化を図ることによりまして、関係者の既得権益に十分配慮をしながら取り消し権限を適切に行使することが可能になるわけでございますので、違反処理の公平、適正化を進めることができるものと考えております。
  78. 小谷輝二

    ○小谷委員 乙種危険物取扱者試験、この受験資格について実務経験等受験資格の要件が緩和されております。今までは六カ月以上の実務経験を有する者ということであったが、これは削除、実務経験がなくてもいいということで、これはどういう理由でこういうふうにしたのか。  それともう一つは、この取扱者の実務経験が不足なため、経験がないために安全確保上問題がないのかどうか、心配な点が起こるわけです。この点はいかがですか。
  79. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の改正によりまして、乙種危険物取扱者試験の受験資格から実務経験の要件を削除するということといたしましたねらいは、できるだけ広く一般の国民に危険物に関する知識、技能の普及を図ろうという考え方があったわけでございます。現在乙種について六月以上という実務経験要素を加えておりますけれども、現実に乙種の場合に、危険物の取り扱いをやる場合には、その試験の内容に十分それに必要なだけの内容を備えるならば必ずしも実務経験を要しない。したがって、むしろ実務経験を削除した方が危険物取扱者試験の乙種の受験が容易になりまして、危険物に関する知識、技能を有する人の数が増加をすることになる。現在年間約四十万人くらいの受験希望者があって、最近はライセンス時代と申しますか、若い人でも受ける人が非常にふえてきているわけでございます。そういう観点から、危険物に関する自主保安管理の実が上がる、危険物の安全確保に資する期待が持てる、このように考えているところでございます。  なお、受験資格から実務経験の要件を削除することによりまして、甲種あるいは乙種の危険物取扱者として危険物の取り扱いなり立ち会いの業務に従事することが可能になるわけでございますが、これらの者に課される危険物取扱者試験の問題内容につきましては、先ほど申し上げましたように、その実務に即したものにするということ等充実を図ることにしておりますほか、危険物取扱者の中から選任される危険物保安監督者の選任要件については、これは危険物取り扱いの実務経験を加えるという措置をとることによりまして、危険物の安全確保に問題が生じることのないよう配慮しておるところでございます。
  80. 小谷輝二

    ○小谷委員 火災発生時の有毒ガス対策についてちょっとお尋ねしますけれども、最近火災事故というのに対していろいろ報道があるわけですけれども、その中で特に目を引くのが要するに火災の際に発生する一酸化炭素中毒、これによるところの死亡事故と言われる、俗に言う煙の死、煙死と言われるものが非常に多いわけであります。特にこの点について、一般的には火災の場合に死者は焼死という報道がされておりますけれども、要するに煙死、一酸化炭素中毒による死亡、この実態は消防庁は掌握されておりますか。
  81. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 消防白書の死因別の死者の発生状況を見ますと、昭和六十一年中におきましては、一酸化炭素中毒、窒息等による死者の数は、これは放火自殺者を除きますと五百十五人でございます。全体の死者の数が千二百五十七人でございますので、全体のうちの四一%がそういった一酸化炭素中毒等によって亡くなっておる、こういう状況にございます。
  82. 小谷輝二

    ○小谷委員 これは大惨事として記憶に新しい伊豆熱川温泉のホテル大東館の旧館の火災があったわけであります。きょうその公判が午後行われるやに聞いておりますけれども、これは御承知のように木造三階建てという低い建物の中で、二十代の若い人たちを含めて二十四人もの大量な死亡者を出した常誠的には考えられないような事故であったわけでございますけれども、この火災が起こった状況、またこの犠牲者の方々の血液鑑定を見たら、大半の人が一酸化炭素を吸い込んで、火災発生したときには既に仮死状態かもしくは死亡していたのではないか、このように見られているわけであります。  また、大阪市の生野区におきましても、わずか十坪余りの小さい二階建ての住宅火災で就寝中の家族八人が死亡した。これも部屋の中は後ほど見ても何一つ焼けていなかった、亡くなった犠牲者はやけどもしていない、こういうふうなことで、地元では新建材等から出た一酸化炭素による、有毒ガスによる中毒死、このように報じておるわけでございますけれども、このような煙死と言われる火災事故、この死亡率が、今お聞きしまして、消防白書にありますように四十数%にも上っておる。このような状況に対して消防庁としてはどんな対策、措置を今日までとってこられたのか、この点御説明いただきたい。
  83. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように、火災に際して煙によって死亡するという問題は、消防の対策上も極めて重要な問題であると思います。したがって、建築物の防火対策におきましては、煙等の燃焼生成物について十分配慮して対策を講じていく必要があると思います。  旅館、ホテル等におきましては、火災の初期段階で発生する煙をとらえて早期に対応できるよう、一定の箇所に、例えば廊下とか通路とか地階とかあるいは窓のない階、こういうところに煙感知器を設けて自動火災報知設備設置を義務づけておるところでございます。また、一般住宅におきましても、ただいま大阪市における一般住宅の例を御引用でございますが、住宅の火災というのは一番多いわけでございます。一般住宅においても早期火災を発見することが必要でございますので、現在簡易型の、家庭でも使えるような煙式の火災警報器の開発を行って、一般住宅における対策を進めていきたいと考えておるところでございます。  昭和六十一年に火災における燃焼生成物の毒性に関する調査研究会を設けまして、その研究の結果をいただいておりますが、この研究結果によりますと、薫焼状態と呼んでおりますが、いぶされた状態において有毒な燃焼生成物が相当程度発生をする、そのはるか以前の段階に煙感知器で感知可能な程度の煙が発生するということが報告されておるわけでございます。そういう意味で、やはりできるだけ煙の感知を早くするということが消防対策の上からは一番必要ではなかろうかと考えております。さらに、防炎性能、炎を出すことを防ぐ性能を持つところのカーテンとかじゅうたんの使用というようなものも煙の発生総量を抑えるという意味から有効であると考えておりますので、そういったものの普及を図ってまいる努力をしておるところでございます。
  84. 小谷輝二

    ○小谷委員 消防士の皆さん方は、火災発生すれば、報知があれば直ちに現場に行って火を消す、あわせて人命救助、こういう任務に当たられるわけでございます。消防士の皆さん方は身を挺して努力をして現場に駆けつけて、飛び込んで、まず人命救助にかかろうとするわけですが、既に煙の出た時点で有毒ガスによるところの煙死という状況が起こっておるということになれば、これは日ごろの訓練も本当の意味では生きてきません。そういうことになるわけであります。そこで消防庁は、今いろいろ説明がありましたけれども、本気になってこの煙死問題にもっと取り組まなければならないのではないか。というのは、まずこの有毒ガスを発生するような品物、これの規制からかからなきゃならぬじゃないか。またそれでもし発生した場合に、直ちにそれがそこに住んでいる人なり近所なり関係者なりに報知できるような装置、これも必要であろうということなんですけれども、そういう緊急な対策に今直ちに消防庁が本気になって取り組んでいかなければ、このような惨事を絶つことはできないのではないか、このように思うわけです。そういうような点については、ただ単なる報知機だけではなしに資材、有毒ガスを発生するような例えば新建材または化合物等の表示とか認識とかPRとか、そういうものにまで消防庁は取り組むべきではないか、こう思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  85. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように、火災時における煙による死者が多いということに対する対策は、ぜひ有効適切な方途を考える必要があると思います。先ほどお答え申し上げましたのは、研究会の調査結果において、やはり煙の感知が何といっても一番重要だ。煙を感知できれば有毒ガスが多く発生する以前に必要な避難なりあるいは初期消火ができるというぐあいに考えられるわけでございますので、消防機関としてはどうしてもそちらの方に力を入れていくというのが本来の姿ではなかろうかと思います。  ただ御指摘のように、いろいろ実際に建築あるいは中の家具とか設備などに使われておりますものによってシアン系統の有毒ガスが発生する場合もありましょうし、あるいは広く有機物につきましては必ず一酸化炭素が出てくるわけでございますので、そういう意味からできるだけそういう煙、有毒ガスを発生する材料についての対策を打つ必要があるということも、これも十分理解できるわけでございます。ただ、実際の建材なり、あるいはかなり大型の備品というようなものにつきましては、そういった観点だけから直ちに規制をするということについてはまだいろいろ問題もあろうかと思います。現在、消防庁で力を入れておりますのは、そういった煙感知対策以外にやはり防炎物品、特にじゅうたん、カーテン、寝具あるいは寝巻き、こういったものについては、できるだけ燃えにくい防炎物品を使うという方面からの対策を講じておるところでございます。今後、煙対策につきましては私どももさらに総合的な観点からよく研究し、有効適切な対策を進めることについて努力してまいりたいと思います。
  86. 小谷輝二

    ○小谷委員 消防庁消防関係の研究所等では、いろいろなものの新建材等の有毒ガスの発生状況等を検査されておるようでございますけれども、一般消費者にはこれは全く十分わかっていないという状況であります。消防庁は、少なくとも有毒ガスの最も発生しやすい建材等につきましては、これは人の多数出入りするところとか、また旅館、ホテルとか病院とか等々、こういうふうなところには使用しない、してはならないという法的な規制をもうちょっと厳しくやるべきではないか、こう思うわけです。ただ建築基準法上、また消防法上、一部規制があるようでございますけれども、これは全く十分なものとは考えられません。この点、現在消防庁としてどの程度までの規制をしておられるのか、これで十分と思っておられるのか、その点はいかがですか。
  87. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 煙による死者発生の問題は大変大事なことでございますが、もちろんこのことについて消防庁としてもさらにより真剣に取り組むべき問題だと考えております。ただ、この燃焼生成ガスの毒性というものがどういう毒性を持つのかということについては、これは試験方法とか評価方法が、まだ国際的、世界的にも実は定まっていないという点がございまして、現在、国際的な機関であるISOの場でいろいろ審議、検討されている段階でございます。規制という問題は、そういう観点から国際的な整合性といいますか、コンセンサスというようなものをもちろん得る必要があるわけでございますので、そういう国際的機関における検討の結果をも踏まえていかなければならないということでございます。  また、消防庁自身としては、消防研究所におきまして従来からほかの研究機関と協力しながら研究をしておるところでありまして、先ほど申し上げましたように、これに対してどのようなものを使えばどういう有毒ガスが出るのかというようなことを、より的確に確認をされる方策を講じていかなければならないと思います。そういう意味では、現在消防庁がやっておりますのは、先ほどからお答え申し上げておりますように、どうしてもやはり煙感知器、特にこの煙感知器について、より性能の高いものを普及させていく、いわゆる誤作動と呼んでおります非火災報、これができるだけ少ないような有効な煙感知器を開発していく、やはり当面はどうしてもそちらに重点が置かれてくるわけでございます。この点については、不特定多数の出入りするところについては必要な規制はもう十分講じておるわけでございますが、さらに一般住宅等についても簡易なものの開発を今後進めて普及を図っていきたい、こう考えておるところでございます。
  88. 小谷輝二

    ○小谷委員 火災報知機、これも確かに一つの有効な策かもわかりませんが、特に身体障害者の施設とか老人ホームとか病院とか、またホテル、映画館等々についてはもう規制されているようでありますけれども、そのほかマンション、また雑居ビル等々、一般家庭は言うに及ばず、ここらには建築基準法上もこういう有毒ガスを発生するような資材を使用することに対する制限、規制は何らないょうであります。ここらは大きな問題が起こるのではなかろうかという心配もあります。それに対する品物、特に病院なんかの施設でも寝具、備品は規制されていませんね。ところが、寝たばことかそういうことで火災というのが起こる原因が多い。ところが、これに何も規制がありませんから、ここらに問題がまた起こってくるおそれがあるのじゃないか、こういう点も今後検討すべきではないか、このように思います。この点はいかがですか。
  89. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 特にそういった病院とかあるいは老人福祉施設等における備品の問題についても、確かは御指摘のような点があろうかと思います。備品は比較的簡単に移動できますので、違法状態、適法状態を判断するのがなかなか難しいという点はあろうかと思いますが、いわゆる防炎製品、煙をできるだけ出さないもの、燃えにくいもの、これの普及をおっしゃるように図っていかなければならないと考えております。
  90. 小谷輝二

    ○小谷委員 最近の消防、また救急医療について、ちょっと大臣お尋ねしてみたいと思います。  本年は、自治体消防が発足して四十周年という佳節を迎えたわけでございますが、住民の生命、また財産を守り、安全な地域づくりを進めるためにも、今後一層消防力の整備充実が期待されておるわけであります。梶山自治大臣昭和二十年ごろの当時、地域消防団員の一員として若き日に消防活動に直接携わってこられたというふうに伺っております。そこで、自治体消防発足四十周年という佳節を迎えて、現在その最高責任者である自治大臣として、消防防災体制の充実についてお考えをお伺いしておきたいと思います。
  91. 梶山静六

    梶山国務大臣 自治体消防として戦後再発足して以来四十年間に、消防組織、施設、人員等の整備が着実に進んでおりますけれども、一方では、社会経済の進展により災害の態様も複雑多様化、大規模化する傾向が強まっておることは御案内のとおりであります。したがって、安全な地域づくりを進める上で、消防防災体制の充実は極めて重要な課題であると認識をしております。  このため、まず常備消防について、消防自動車を初めとする消防施設の整備とその装備の科学化、高度化の推進、職員の資質の向上等を進めるとともに、消防団については、地域消防体制の中核として機能し得るよう、その一層の活性化を図っていく所存であります。また、大規模災害発生した場合に、消防力の広域的な運用をより迅速的確に行うことができるよう、広域応援体制整備を一層推進していく必要があると考えております。さらに、消防機関のみならず、住民、事業所も一体となり、適切な役割分担のもとに安全な地域社会づくりを進めていくことも重要であることと考えております。  今後とも国民の生命、身体及び財産を守る消防を所管する大臣として、各般にわたる消防防災体制整備について最大限の努力を傾注してまいる所存でございます。
  92. 小谷輝二

    ○小谷委員 自治大臣は三月一日の本委員会におきましても、所信表明演説の中で、広域応援体制整備推進について述べられておりますが、ヘリコプターの活用について広域体制整備すべきではないか。これは欧米諸国にも、既に西ドイツ、スイス等におきましては重症患者の搬送等、専用のヘリコプター等でかなりの実績と成果を上げておる、こういう点も見られるわけでございます。我が国におきましても、この点について調査研究会を設けて準備を進められておると聞いておりますが、このヘリコプターの開発はもとより、ヘリコプターを利用した救急医療システム、これの構想、考え方、これは消防庁独自で全国的なこういう体制網をつくっていくような考え方があるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  93. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 ヘリコプターによります救急患者の搬送につきましては、現在、離島などを有する都道府県等においては自衛隊のヘリコプターなどをも利用するシステムを持っているところもございますし、また消防ヘリコプターの活用につきましても、現在大都市の消防本部が約二十機持っておりますけれども、この広域的な運用を積極的に図ることにより、重篤な救急患者の搬送を行っておるところでございます。  ただ残念ながら、消防専用ということになりますと、今申し上げましたように大都市を中心としてまだ約二十機でございます。この消防におけるヘリコプターの活用につきましては、救急の問題あるいは消火活動等含めましてさまざまな目的があるわけでございますが、ぜひとも広域応援体制整備のためにヘリコプターネットワークの拡充整備を図ってまいりたいという観点から、本年春に消防審議会に広域応援体制のためのヘリコプター網の整備のあり方について諮問をいたしまして、現在審議をお願いしておるところでございます。今後答申を待ってヘリコプター利用システムの確立に努めていきたいと考えておりますが、今後の消防行政の中でも最も重要な課題の一つであると考えております。
  94. 小谷輝二

    ○小谷委員 瀬戸大橋が今回開通いたしまして、本州と四国を車なら十分間で結ぶという、まさに夢のかけ橋、関西経済圏と中国、四国地域の交流で一緒に活発になり、地域の活性化、広域経済圏の形成の大きな基盤となる、こういう状況で立派な橋ができたわけですが、この防災体制、 これもゆるがせにはなりません。また、午前中に中沢委員の方から質問のありました長大トンネル内の火災、すなわち青函トンネル等の防災体制、これももっともっと検討を加えて災害時に直ちに対応できるような措置が必要であろう、このように思います。  さらに、最後になりましたが、最近の消防防災事業、これは、特に近年の化学物質の高度な開発とかビルの高層化、地下街の発展、道路交通網等のスピード化等々、時代に対応した対策が必要であろう、このように思います。いずれにしましても、国民の生命、財産を守る重要な使命があると思います。この点につきまして所管大臣の所信をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  95. 梶山静六

    梶山国務大臣 御指摘のように、近年の技術革新の進展に伴い、災害発生の潜在的危険性が増大するとともに、その態様も複雑多様化する傾向にあり、国民の生命、身体、財産を守る消防の重要性はますます高まってきていると認識をしております。  そこで、消防に課せられた責務を今後とも十分に果たしていくため、複雑多様化する災害に適切に対応するよう、科学技術の進歩や技術革新の成果を積極的に取り入れていくとともに、大規模化、広域化する災害に対し、広域的な応援体制の確立を図るよう、消防体制整備充実に今後とも一層の努力をしてまいる所存でございます。
  96. 小谷輝二

    ○小谷委員 終わります。
  97. 松本十郎

    松本委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十九分休憩      ────◇─────     午後二時十六分開議
  98. 松本十郎

    松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田弘君。
  99. 柴田弘

    柴田(弘)委員 ただいまの質問で同僚の小谷議員から法案の中身等々につきましては微に入り細に入り御質問がありましたので、私は変わった観点から、一つは救急救命医療体制整備の問題、そしてまた広域圏の防火防災体制の問題、この問題につきまして自治大臣消防庁長官を初め関係各省にお尋ねをしていきたい、このように思います。  そこで、救急救命医療体制整備の問題でありますが、大臣も御案内のように、先日中国で、高知学芸高校の修学旅行の際に大惨事に遭遇して、多くの将来性ある若いとうとい命が犠牲になったわけであります。私自身も心から哀悼の意を表したいわけであります。とともに、中国側の献身的な協力により何人かの命が救われたということに対して、心から感謝の意を表するものであります。  そこで、この事故を通して私が痛感をいたしますのは、いよいよ国際化時代を迎えまして外国に出かける人が多くなってきておるわけであります。また、日本の場合は団体で出かけるケースが多いわけであります。海外には医療の十分でないところも多いわけであります。そうしたところでいわゆる大惨事が起きたときには、間髪を入れずに医療団を派遣する体制というものが整備をされていなければならない、このように思っているわけであります。  まず外務省にお尋ねしたいと思うのですが、この中国の上海の事故を通して外務省としての問題意識の中で、間髪を入れずにこうしたいわゆる医療班を派遣する緊急体制整備ということについてはどういった認識をお持ちになり、どのように対応される方針であるのかお伺いをしておきたい、このように思います。
  100. 橋本逸男

    ○橋本説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、海外旅行者が増加するに伴いまして邦人が外国において事故、事件に遭遇するという数が年々増加しておるわけでございます。こうした事件、事故の圧倒的多数のケースにございましては、在外公館がお手伝いするなどいたしまして、負傷者、病人等の治療を現地の適当な医療施設はおいて行いますとか、あるいはそれが不適当なときには医療の水準の高い第三国に移送しましたり、それから我が国に連れて帰ったりということがあるわけでございますけれども、今後とも、先般の上海列車事故のような大規模な事故発生する場合におきましては、我が国からの医師派遣が望ましいということがあり得るかと思われます。ただ、そういう場合におきましては、私どもとして考えなければいけないと思いますのは、事故地の国の医療政策の問題もございまして、それに対する配慮でございますとか種々解決すべき問題があろうかと思います。また経費負担の問題の関係でも、それぞれの旅行者が十分な医療を受けられるような保険に加入していただくといったことが強く望まれるということもございます。  ただ、いずれにしましても外務省といたしましては、前回の上海の列車事故の際に緊急医療の先生方を派遣したといった経験をも生かしまして、十分な邦人保護を行うべく緊急医療の専門家でございますとか旅行業界、それから航空会社、はたまた保険業界等々関係の方面と種々意見交換を行っているところでございます。今後とも、各方面の御協力を得まして先生御指摘のような体制整備ができるように、なお一層努力してまいりたいと思います。
  101. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今外務省から御答弁いただきましたように、長官、派遣の医療体制の十分な整備というものはまだまだこれからの段階だと思います。  それはまた後で申しますが、いわゆる自国民保護という立場からのこうした国際的な事故があった場合の問題、これは今後真剣に考えていかなければならぬと私は思います。自国民さえもまだ保護できないのに、まして海外におけるそういった大災害、大事故に対して我が国から医療団を派遣するという問題は、国際間のいろいろな問題等もございまして非常に大変だと思いまして、何も外務省だけでできるわけでもないわけであります。また消防庁だけでもできる問題でもないわけでございます。あるいはまた自治省だけでできる問題でもないのですが、こういった上海のあの事故を教訓にいたしまして、何らかの体制整備というものをこれから具体的に検討していくアクションというものを起こす必要があるのではないか、私はこんなふうに考えておりますが、長官としてのお考えはいかがでしょうか。
  102. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 中国における列車事故による大きな災害、これは海外の問題ではございますけれども、日本の国民がそのような被害に遭ったということに対しまして、私どもとしても大変切実な問題として受けとめておるところでございます。  消防の立場からの国際間の協力とかあるいは海外への派遣という問題は、御承知のように既に昨年成立いたしました法律によりまして国際緊急援助隊、そのうちの一つでございます国際消防救助隊の派遣がございますが、これは被災国の要請に応じて被災国のために出動するものでございます。  御指摘の問題は、国民が海外に旅行する機会が非常に多くなったことに伴う海外における自国民の保護という観点からの御質問でございますので、これに関する体制をどういうぐあいに考えていったらいいか。先ほど外務省からもお答えがございましたように、相手国の立場ということも十分配慮しなければならぬことはもとよりのことでございますし、仮にそれに応ずる体制をどう整えるかについては、消防自身はもちろん救命救急という立場からの問題がございます。また医療の問題もございます。いろいろ関係省庁にまたがる問題であろうかと思います。そういった問題につきましては、こういう大きな事故を一つの契機といたしまして、私どもどうあるべきかという問題については関係省庁ともさらによく協議をして勉強してまいりたい、こう考えております。
  103. 柴田弘

    柴田(弘)委員 これを教訓にして関係省庁とも協議して勉強したいということで、勉強ということは一体どういうことだと問いたいわけでありますが、それはともかくといたしまして、今消防庁長官お答えになりましたように、大臣、これは消防庁だとか外務省だとか厚生省だとか運輸省だとか自治省、それからいろいろと警察関係もあるかもしれませんが、とにかく関係各省にわたる問題ではないか、私はこう思います。こういったものを一つの契機として、教訓として、閣僚の中で、閣僚会議等々において、そういった医療班派遣の体制整備という問題はどうあるべきかという問題もこれから真剣に前向きに検討し実施していかなければならぬのではないか、こんなような気持ちを私は持っておるのでございますけれども、御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
  104. 梶山静六

    梶山国務大臣 中国における列車事故、大変痛ましい事故でございますけれども、これを教訓に、関係各省庁と連携をとりながら、そういうものの体制整備にこれから努めてまいらなければならないという決意を固めております。
  105. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そういうことでよろしく関係各省庁とも御協議いただきまして、これが何とかうまく実施できますようにひとつ前向きに対応していただきたいとお願いを申し上げておきます。  それから、今小谷議員からヘリコプターの問題につきましてるる御質問がありました。大都市では二十機しかないんだ、離島等は自衛隊で賄っているんだということなんです。今消防審議会ですか、そこに諮問をされまして検討されているということでありますが、ドイツなんかはとにかくヘリコプターにお医者さんが一緒に乗って、そしてこれは何もヘリコプターだけではありませんが、いわゆる救急車の場合でもドクターカーというのですが、そして事故なり災害があった現場に駆けつけて救急の手当てをしてやっている。それで一つのデータもあるようなんですが、そういった点、それは一機買うのに大変な値段だと思いますが、やはり審議会の答申を待ってというふうにおっしゃっておるわけでありますが、人命尊重という立場からこの問題を急がなければならない、その整備の問題、私はそんなふうに考えております。この点をまず長官にお答えをいただきまして、予算の問題にも絡んでまいりますので大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  106. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 我が国消防、特に救急救助の面におけるヘリコプターの利用につきましては、御指摘もございましたけれども、他の先進国に比べますとその利用の程度がまだ低いということは御指摘のとおりでございます。  現在約二十都道府県におきまして実際にヘリコプターによる救急搬送の実績を持っておりますが、例えば昭和六十年の数字を見ますと、ヘリコプターを救急業務に利用した件数としては全体で六百七十四件、六百八十五人の搬送をしておるわけでございます。その中で消防のヘリコプターを使いましたのが百三十三件、百二十七人の搬送、こういうことでございます。これは現在大都市しか持っておりません。特にその中でも東京消防庁が圧倒的に有力なヘリコプター群を持っておるわけでございますけれども、これをこれから全国的に普及に努めていくということについては、直ちにということはなかなか難しいかと思いますけれども、しかしこれからのさまざまな状況を考えますと、消防におけるヘリコプターの利用は広域応援体制の形成のためにどうしても必要だ、こう考えまして消防審議会にその基本的なあり方について審議をお願いし、それを踏まえて消防の広域応援体制の重要な一環としてのヘリコプター網の整備を図っていこう、こう考えておるところでございます。  もちろんヘリコプターの購入には相当の経費を必要といたしますし、ランニングコストも大体年間一機について一億円というようなかなりの経費でございます。しかしながら他の先進国の状況を考えますと、単に経費がかかり過ぎるからということだけでその利用をためらっておる時代ではないと考えておりますので、総合的な角度からのヘリの利用、救急業務あるいは消火活動、そういうものも含めましたヘリの利用について、これから審議会の御審議を経た上で意欲的に進めてまいりたい、こう考えております。
  107. 柴田弘

    柴田(弘)委員 その審議会の結論はいつ出るのですか。そして意欲的にやるのは六十四年度からやるのですか。どうなんですか。
  108. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 ことしの二月に審議会に諮問したところでございます。できるだけ早い機会に、一年ぐらいはかかるかと思いますけれども、審議をして御答申をいただきたいと思います。この審議の答申を踏まえまして、私ども消防庁としても、もとより消防のヘリコプターのネットワークを充実させるという意図のもとに審議をお願いしておるわけでございますので、それを踏まえて、厳しい財政状況のもとではございますけれども、さまざまな方法を工夫をして大いに整備を促進してまいりたい決意でございます。
  109. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大臣に御答弁をいただく前に、厳しい財政事情だけれども答申をいただいてやる、こういうことですね。そうですね。  それで参考のために申し上げますと、とにかく一分一秒でも早く治療するということで、命にかかわる救命救急患者、こういう者を救急車でなくヘリコプターで搬送し治療しようという研究が、御承知のように社団法人日本交通科学協議会の手で進められておるわけです。昨年の十月、岡山県を中心にした地域で実際にヘリコプターによる救急医療を試みまして、救急車の五倍以上というスピードで早期治療に成果をおさめているわけであります。こういった研究報告書がまとまり、日本でも導入が可能であることが実証されたということです。救急車の五倍以上のスピードで病院へ運ばれる、そしてしかも広域圏をカバーできる、早期治療に効果が大だ、こういうことなんです。これもひとつ参考にしていただきたいし、せっかくの前向きの審議会の答申をいただいたならば、やはり大臣、ひとつそれの大幅な予算獲得のために、その必要性は痛感していらっしゃると思いますので頑張っていただきたい、こう思いますが、御所見はいかがでしょうか。
  110. 梶山静六

    梶山国務大臣 人の命は何よりも大切でございます。ですから審議会の答申を待つまでもなく、ここ一両年、懸命な予算措置をしながらヘリコプターの増強を行っているさなかでございます。なお、消防直属のヘリコプターが多いにこしたことはございませんけれども、そういう状況から見ますと、多目的のヘリコプターも相当多数あるわけでございますから、そういうものをどういうふうに有機的に組み合わせてそういう体制に動員できるかどうか、こういうものもあわせ考えながらその体制整備にこれからも取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  111. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで長官、審議会の答申が出、今後関係各省とも協議されると思います。あるいはまた地方自治体等とも協議されると思いますが、このヘリコプターの救急医療体制問題点というのは二点ほどあるのです。  一つは、現在救急医療体制が県または市町村単位である、こういうことですね。でありますから、県境を越えた広域圏の救急医療というものが不十分である。この辺を地方自治体等々ともよく話し合って対応していただきたい。  それからもう一つは、ヘリコプターの離発着については、現在の航空法では消防とか警察所有の公的機関のヘリコプター以外は運輸省の航空局の許可が必要なのです。だからこういった場合には、航空法による事前許可をとらなくても、救急医療用のヘリコプターであるならばどこでも離発着ができるような体制というものが必要じゃないか、だから運輸省等々の関係機関との協議というものも今後必要になってくるのじゃないか、私はこんなふうに思っていますが、いかがでしょうか。
  112. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 ヘリコプターの機能というのは、御指摘のように広域性というところにあろうかと思います。その広域性はもとより一つの県だけではなくて、二つ以上の県にまたがって機能を発揮し、またその機能を発揮することが必要となるような大規模な災害の場合がもちろん考えられるわけでございます。そういう意味で、非常に大きな災害が起きました場合に、現在県を単位にいろいろ地域防災計画をつくっておりますけれども、それぞれの地域防災対策におきましてそういう救急活動というものを組み立てておるわけでございますが、その組み立てたものをさらにまた隣接の県などと十分協議をして、大規模な災害の場合に相互に有機的に協力し合うことができるような体制に持っていかなければならないということは、私どもも既にその点を感じておるところでございます。  大規模な災害の場合には、ただいま御指摘のようなヘリの発着の問題、これは航空行政上の問題でございますけれども、その問題の解決ももちろん必要でございますし、あるいは被災地外から多数の医師や看護婦なども派遣しなければなりません。一定の班編成もしなければならないし、また重篤な者、そこまでいかない者、それぞれ振り分けまして病院に収容する、そういうような体制整備も必要でございます。そういう意味で、この広域的な救急体制整備については関係省ともいろいろ協議をしなければならないと思いますが、そういう目的意識のもとに今後整備に鋭意努めてまいりたいと考えております。
  113. 柴田弘

    柴田(弘)委員 基本的な問題を、これは大臣でも結構ですし消防庁長官でも結構ですが、救急医療問題についてお尋ねをしていきたいわけでありますが、これは国の義務と責任でしっかりと政府が認識して方針を打ち出してやっていく必要があると私は思います。  ヘリコプターの問題にしろドクターカーの問題にしましても、欧米各国に比べて一番日本がおくれているという交通評論家の指摘もあるわけであります。それでいわく、これはやはり一つの基本理念の問題なんだ、その理念がしっかりしておって実施があるのだ、こういうことも言っております。御案内かと思いますが、西ドイツでは一九七四年に国の法律に基づいて各州ごとに救命救急業務の目標が決められ、そしてその成果は、初期治療を十二分と決めておるのですが、それを十分以内に行った場合に、死亡率が八〇%から五〇%に低下をしたというデータもあるようでございます。西ドイツだけでなく、アメリカを初めとする欧米各国もやはりそれに類するということであります。住民から各州の緊急情報センターへの事故発生の通報が入ってから原則として十二分間以内に救命治療を開始できるような体制づくりの目標が明示された。医師と救急隊員が同乗した救急車、このドクターカーまたはヘリコプターが直ちに急行する。日本の場合はドクターカーというのはまだないのです。その中のいわゆる医療施設というものもない。救急隊員が駆けつける。やはり一分一秒を争う場合に大変なことかもわかりませんが、救急医療の医師というものがそこについておるということが必要だと思います。  これは大変な問題であると思いますが、憲法二十五条で保障されましたいわゆる国民の生命と安全、健康を守っていくという精神からいえば、世界の経済大国になった日本がこういった救急救命医療の問題で先進国並みの対応をしてきて当然である、このように考えているわけであります。でありますから人命尊重、どれだけたくさんの人命を救えるかということ、そういった体制づくりを、これは消防庁でも結構です。自治省でも結構です。先ほど申しました海外への医療団の派遣体制整備とあわせて、この根本的な、まず日本の国内で自国民を守っていく、こういう体制というものをきちっと私はつくっていかなければいけないのじゃないか、あるいはまた法制化をしていかなければいけないのじゃないか、こんな気持ちでおるわけでありますが、いかがでしょうか。
  114. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 我が国における救急体制整備、まだまだ諸外国に比べて不十分な点、御指摘のとおりかと思います。我が国における救急の歴史そのものが、昭和三十八年に初めて義務化され、そして昭和五十七年からいわゆる救急隊員に一定の資格、つまり百三十五時間以上の救急に関する講習を受けた者でなければ救急車に乗れないということにしたわけでございますけれども、救急の車両なり、あるいは救急隊の編成その他のそういった問題につきましては、これは随分そういう意味では発展をしてきたと思いますが、問題は質の問題だろうと思います。特に、搬送中に大事に至るというようなことがあり得るわけでございますが、現在の救急隊員のできますことは第一次的な救命のための処置、いわゆる人工呼吸であるとか止血であるとかそういった程度しかまだできない。これは医療法との関係もございます。  したがいまして、医師の同乗というようなことが今後の一つの大きな課題になるわけでございますけれども、まだ現在全国では、これは地元の医療機関等の協力が得られたところで、三カ所程度しかいわゆるドクターカーというものの例がございません。(柴田(弘)委員「それはどこですか」と呼ぶ)一つは西宮市、それからもう一つは茨城県の筑南、もう一つは長野県の松本市、この三つが、これはいずれも地元の医科大学とか医療機関が大変協力的にやっていただけるということで、そういう体制ができておるようでございますが、まことにまだりょうりょうたるものでございます。そういう意味では、できるだけ救命率というものを上げるために質の向上をやはりこれから考えていかなければならない。そのためには医療機関との十分な協議あるいは救急隊員自身の、今百三十五時間の講習で資格を得るということにしておりますが、より一層の資質の向上も一方で図っていきながら全体としての救急の水準を高める、質を高めていくという努力をしなければならないのではないか。救急の行政のこれからの問題点はそこにある、このように認識をし、そのための努力をしてまいりたい、こういうつもりでございます。
  115. 柴田弘

    柴田(弘)委員 法制化の問題まではなかなか長官の立場で申せませんので、続けて大臣の率直な御見解でいいのですが、いろいろ聞いておりますと、救急体制について世界的な動向としては、先ほど来申しておりますように、先進国で医者が現場に行って医療活動を行うというのが常識化してきているそうですね。我が国の場合、救急医療の専門医が極めて不足をしている、こうなんですね。そして、その養成が急務でないか、こうおっしゃっている評論家もいるのです。  調べてみますと、現在国公立大学で救急医療の講座を持っているのは阪大と四国の香川大学だけです。その他私立では二、三あるそうであります。でありますから、お医者さん全般のかさ上げということも必要であり、質の向上というものも必要であるのですが、一つの考え方としては、専門的な救急医の養成を図るべきではないかという御提言もあるわけであります。あるいはまた、大災害に備えての救急体制整備が最も重要であるのに、数少ないそういう救急医の中で、どこにどのような専門医がいるか十分把握されていないというのが実情であるそうです。私もこれを聞いてびっくりしているわけです。でありますから、非常時に備えた救急医療体制整備を図る一環として、専門医の掌握、名簿化を図るべきではないか。あるいはまた、先ほど来申しておりますように、災害時の救急については、もう昭和三十年代からこの問題が出てきたわけでありますが、今まではいわゆる事故をやった人、患者を送るといいますか、搬送体制についての議論がなされてきただけなんです。先ほど来申しておりますように、医者がついてその救急車の中で、ドクターカーといいますか、生命を維持していく装置、これは専門用語だそうでございますけれども、生命維持装置がない。日本の救急医療というのは先進国に比べてそれだけおくれていますよ。何らか抜本的な手を打たなければならない、いよいよ国が乗り出して法制化をしなければならない、これは自治大臣だけで云々できる問題ではありませんが、こういう御意見がありますが、率直なひとつ御見解がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  116. 梶山静六

    梶山国務大臣 すばらしい御提案で、そういう社会が実現をすればすばらしいものだなという感じがいたします。ただ、委員御案内のとおり、医療行為自身のいわば所管は厚生省でございますし、それから搬送体制消防体制で行っているわけでございますけれども、これにドクターカーと言われるほどドクターを確保する原資をどうやって調達をし、消防行政の中でそこまでやれるのかどうか。もろもろの問題がございますから、搬送という分野に今消防が限定をしてやっているわけでございますけれども、それ以前にむしろ救急救命センターがどれだけ各地域整備をされるか、それがどう登録されて有機的に、たらい回しなどということがないような体制でまずやれるかどうか、これが第一のことではないかと思います。そして、その救急救命センターとこの搬送の業務がドッキングしてどういう形態ができるのか、大変な出費を伴う事業でございますけれども、これからも大切な分野でございますから、研究をしてまいりたいと考えております。
  117. 柴田弘

    柴田(弘)委員 研究していくとおっしゃいましたが、先ほども申しましたように、日本人の考え方の理念の問題だと思うのですねとある交通評論家は言っています。基本理念がそこにないのだ、だからなかなかできないのだ、こういうことを言っておるわけなんです。だから勉強し研究されることも結構でありますが、こういった議論もあったということを、柴田がそういうことを言ったということをひとつ大臣も長官も頭の中に入れていただきまして、今後ともひとつ対応をしていただきたい。お願いを申し上げておきます。よろしくお願いをいたします。  それから、消防団の問題でこれは長官にお尋ねしたいんですが、年々減ってきていますね。現在百一万人ですか、この間、消防庁の方から資料をいただいて。やはり彼らは自分で仕事を持ちながら、いざというときに地域住民の生命、財産を守る、こういった本当に立派な方々だと私は思います。一つは、これについての待遇改善の問題。それから何かお聞きしますと三十五年前に比べて今約半数になっておる。三十五年前は二百万人くらいいたんですか。地域の過疎化という問題がある、あるいはまたもう一つ言えることは、定数に満たない上になかなかなり手がない、こういう問題もあるわけです。だから、だんだんと消防団それ自体の老化現象が起こってくる。だから私は、待遇改善と活性化対策というのをしっかりとやっていかなければいかぬと思う。  仄聞するところによりますと、昭和六十三年度から消防団活性化総合整備事業を創設する、そして消防団の拠点施設、無線機器、研修用資機材等について助成をする、こういうことであります。これも結構でありますが、本当にそういったとうとい心で頑張っていらっしゃる団員の方の処遇改善の問題、これは今あなたの方からいただいた資料で、団長で地方交付税の措置で、昭和六十一年度が五万六千円、六十二年度が五万七千円、六十三年度が五万八千円、団員報酬が六十一年度が一万六千五百円、六十二年度が一万七千五百円、六十三年度が一万八千五百円、実支給額は多少上になるわけでありますが、千円ずつ上がってきておる。出動手当は六十一年度と六十二年度を比べると四千五百円と四千六百円で、これは百円しか上がっていない。やはり、そういった本当に志ある方たちに私はしっかりと待遇改善をして、しかも生きがいを感じてやっていただくような体制づくりを進めていかなきゃならぬと思う。簡単でいいですから、ちょっと時間がありませんので一言だけひとつ。
  118. 梶山静六

    梶山国務大臣 消防団は、常備消防と並んで地域社会における消防防災の中核として重要な役割を果たしてきており、最近の複雑多様化、大規模化する災害及び消防団を取り巻く社会経済情勢の変化に適切に対応していくためにも、消防団活性化を一層推進していく必要が緊急の課題でございます。  このため、昭和六十一年度以降実施してきた消防団活性化モデル事業の成果を踏まえ、昭和六十三年度からは各市町村において消防団活性化計画を策定し、活性化を総合的に推進することとし、消防補助金において消防団活性化総合整備事業を創設し、消防団拠点施設、無線機器、研修用資機材等について助成することとしたところでございます。さらに、青年層、婦人層を中心とした住民の消防団への加入促進や団員の処遇改善等の対策に努め、引き続き消防団活性化を進めてまいりたいと存じます。  委員指摘のように、団員数が減っておりますけれども、これはやはり今までの地域社会、農村、自営社会から職域社会に移行して、地域定着の消防団員がなかなか確保が難しくなったという現実がございますから、これからはむしろ職域消防中心とした再編成をしていかなきゃならないと思いますが、いずれにしても消防団の方々の消防精神と申しますか、こういうものが地域や職域における大きな日本の防災体制の支えになっているわけでございますから、この振興のため、活性化のために努力を重ねてまいりたいと考えております。
  119. 柴田弘

    柴田(弘)委員 もうあと十分を切りましたので、毎度のことで恐縮でございますが、委員長の御了解をいただきまして、名古屋の問題をちょっと一言最後に御質問したいと思います。  二月に名古屋市が新基本計画の素案を策定をいたしました。二十一世紀に向けて「住みたくなるまち」の実現を目指す都市づくりの長期総合計画、新基本計画でございます。市内の笹島あるいは名古屋港を核にテレポートを整備するほか、市東北部の丘陵地帯に職住接近型の研究開発拠点ヒューマンサイエンスタウンを建設することとしております。計画期間は昭和六十三年度から七十五年度までの十三年間で、総事業費は六兆四十億を投ずるわけであります。スローガンといたしまして「いきいきと暮らせるまち」「世界に開かれた活力ある都市」「感性豊かな都市」の建設を目指している。六十三年度から七十五年度の市内総生産の伸びを年平均四・四%と予測し、人口は、七十五年の市内の常住人口を二百四十万人、昭和六十年は二百十二万人でございますが、そのように想定をしております。  目玉施策といたしましては、テレポートを整備し、研究開発拠点を建設するほか、来年名古屋で開く世界デザイン博を契機といたしまして、ロンドンやニューヨークのデザインセンターに似た国際的な施設を置き、デザイン関連産業を振興する。中部新国際空港や中央新幹線をにらんだアクセスや関連施設の整備推進を盛り込んでおるわけであります。文化、教育面では、市内を流れる都市河川堀川を水に親しめる空間として再整備するほか、市内各地に噴水やせせらぎを備えたコミュニティーオアシスを建設し、西暦二〇〇〇年には市民一人当たりの公園面積、現在は四・九平方メートルでありますが、これを倍の十平方メートルに広げる。市民向けの多機能文化施設として、市内各所に新たに文化小劇場を配置していく予定である。福祉面では、高齢者を対象にした総合的な事業を展開するため、高齢者対策事業基金を創設する。市東部に高齢者にも配慮したモデルタウン「千種台ふれあいタウン」を建設をする。子供からお年寄りまでだれもが利用できる健康づくりの拠点「健康・スポーツの里」や休暇、余暇活動の場「愛岐いこいの森」をつくると言っているわけであります。  この素案をもとにいたしまして市内十六区の各区ごとの地域計画を策定し、五月十九日から六月にかけ各十六区でそれぞれ住民の意向を聞いて、八月には正式に計画を策定するということであります。  国土庁に、この素案についての御見解、そしてその対応、そして自治大臣には御所見と自治省の対応についてお伺いをしたいと思います。  まず、国土庁からお願いします。
  120. 中野和義

    ○中野説明員 お答えいたします。  名古屋圏につきましては、昨年六月にいわゆる四全総が策定されまして、この圏域全体につきまして世界的な産業技術中枢圏域としまして高次の都市機能を担う拠点を整備するということが盛られたわけでございます。このためには、この地域におきまして研究開発機能あるいは情報機能あるいは国際交流機能等の整備等が重要と考えているところでございます。御指摘いただきました、ことし二月に素案として発表されました名古屋市の新基本計画は、基本的にはこの四全総で盛られました基本的な方向に沿った施策がいろいろと検討されるものと理解しているところでございます。  特にこの中で、研究開発機能の強化のためのサイエンスパークの建設、あるいは情報機能拡充のためのテレポートの整備とか国際交流機能強化のためのいわゆる中部におきます新しい国際空港の整備や中央新幹線の建設促進などは、中部圏の開発整備を推進するためにも重要なプロジェクトと考えておりまして、これらにつきまして関係者の間でより一層の具体的な検討が進められることを期待しているところでございます。  国土庁といたしましても、こういう地域におきます創意工夫に基づいていろいろな具体的な開発整備構想が検討されることは重要なテーマと考えておりますので、この内容につきまして十分検討いたし、関係者とも連絡調整の上、この推進についてできる限りの支援を行っていきたいと考えております。
  121. 梶山静六

    梶山国務大臣 まず、毎回の名古屋創生のための意欲的な発言に敬意を表する次第であります。  四全総に盛り込まれました多極分散型国土形成を図るために地域特性を生かした個性豊かな地域づくりを進める必要があり、まず地域の総合的な行政主体である地方公共団体の積極的な取り組みが求められておるところでございます。名古屋市新基本計画素案は、名古屋市の二十一世紀に向けた新しい都市づくりの方向を示すものであり、そのような取り組みの一つでもあるというふうに考えております。今後、具体的な事業実施計画等が策定をされ、名古屋市から具体的な要望があった段階で、自治省としても検討を加え、地方債等の措置をいたしながら支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  122. 柴田弘

    柴田(弘)委員 その答弁で現在のところは私も了といたします。また改めてきちっとした基本計画が出ましたら、それぞれ大臣あるいは国土庁にお聞きをしたい、このように思っております。  ちょうど時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
  123. 松本十郎

    松本委員長 岡田正勝君。
  124. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 矢野長官、三、四カ月前であったと思うのですが、私が実際にこういう火事がありましたよという実例をここで披露したことがあります。それはどういう火事であったかといいますと、ある市での火災現場に私が立っておりまして実際に体験をしたことでありますが、四戸のアパートがぼんぼん火を噴いておるのに消防車がなかなか来ない。消防署との距離は道路延長にいたしまして約二百五十メートルくらい、直線距離にしたら百五十メートルくらいというような近距離でありましたけれども、その途中に建物が一つ挟まっておりますから、消防署からは直接は見えません。見えませんが、その火事を見た付近の住民がそれぞれ一一九番をいたしました。一一九番をいたしましたところが、二人も三人もかけたのですけれども、いずれも話し中であります。話し中だから、かけたその人たちの受け取った印象は、これだけの火事だからもうだれかが一一九番をしてくれているのだ、消防署へかけてくれているのだと、みんな善意にそう解釈して電話を切ったというような人が二、三人もおるわけです。だけれども、待てど暮らせど消防自動車は来ない。そのうちにほとんど手をつけられないようになってしまった。  これは、私が両方へ体を分けて見るわけにいきませんから、その片方、消防署の前に立っておってその現場を見た人の言い分でありますが、その人が言うのには、火事になったということは後から知ったのだけれども、そのころの時間は一番先に消防署から出たのは救急車であった。その救急車は火事ではない全然違う方へ行ったのですね。それでしばらくしておったら、その次にサイレンを鳴らして消防自動車がばあっと飛んで出た。それでどこへ行くのかなと思ったら、もう火の手が見えていますから、ははあ、あそこへ行ったのだなということがわかった。そのころにはもう全巻終わり、こういう状態であった。これは一体どうなっているのだろうか。  それで、これは町の名誉がありますから名前も出しませんけれども、後から聞いたところによりますると、こういう現象があったそうですね。その消防署の一一九番というのは一回線しかない。それで救急業務も消防も皆同じ線に入ってくるわけですね。そうすると、受け取る方は一本でございますから、何かの運命のいたずらでしょう、その救急の方がちょこっと早く電話が入ったのでしょうね。急病になって一一九番をして救急車来てくれというようなときは、大抵の者は慌てていますよね。そうすると、あなたはどなたですか、何町の何番地ですか、どういう症状ですかということまで聞くそうですね。それから救急車を出すか出さぬかという判断を決めて、それでは今から行きますからこういうふうにしておいてくださいと言って救急車が出動する、こういう段取りだそうです。その間に随分電話のやりとりがあるわけですね。そうすると一一九番はふさがっているのですね。火事の現場から、火事です火事ですと言うて一一九番しておる者は、みんな話し中だからだれかがもう通知したわい、皆善意にこう思い込んで、結局通知はなかった、こういうことになるのですね。火の手が見えて初めて消防車が飛んで出た、こういう運命のいたずらがあったのですよ。  これは困るじゃありませんかと言ってそのことを私が質問しましたら、そのときの御回答は、一一九番というのは、実はNTTさんの御好意によりまして無料で全国消防署につけていただいておるのであります、したがいまして余り無理も言えませんのでというような調子のお話がありました。     〔委員長退席、片岡(武)委員長代理着席〕  きのうの新聞を見てみると、何とこのごろはNTTの株はいいのですね。日本でも一番高い株券でありますが、もうけもいい。政府もそれで随分助かった。それが今度はひょっとしたら減税財源にも回るかもしれぬというくらいのまことに景気のいい話です。とにかく、五年間にわたって売り出しますNTTの株が一年間で大体四兆円から五兆円近くの売り上げを示すのでありますから、これはもう実に景気のいい話であります。そのNTTが民間会社になった努力を大いにやられまして、何と六十二年度の利益は五千億円を超えた。今まで第一位を保っておりました野村証券を遂に超えたのであります。今やNTTはいわゆる日本一の利益を挙げた会社になったわけですね。このごろはもう景気がようございまして、どうやって金を使おうかというような会社ですよ。遠慮することないじゃないですか。救急業務と火事とがどうしても同じ一一九番でなければいかぬのなら、例えば二回線入れてもらうとか、あるいは番号を別にするとか、公共的ないわゆる福祉に対してのNTTの営業努力を何か要請してもこれは罰が当たらないのじゃないかな、こう思うのでありますが、三カ月か四カ月前に質問をしたのですけれども、その後どういう努力をなさいましたか。
  125. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 たまたま岡田委員質問のときに、私その御質問の場にどうも居合わせていなかったのではなかろうかと思います。私は記憶がございません。忘れることはないと思いますけれども、私の記憶はないのでございますが、御質問の点は、これはどこの町かということはあえて名を明かさぬ、こうおっしゃられましたので、私どもの方で積極的に調査をするかどうか、これは判断をまたいたしたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、ただいまの問題は、受信をする方の回線が結局ふさがっておったために、たまたま不幸なことにほかの救急の電話が入っておったために通じなかったという問題だろうと思います。  一一九番を発信する場合におきまして、NTTの御好意によって無料になっておるということはよく承知しておるわけでございますが、受ける方が単一の回線であるということになれば、やはりまさかの場合は間に合わないと思います。もちろん大きな都市等になれば回線をたくさん持っておるわけでございますから、どれだけ入ってまいりましても普通全部ふさがるということはないわけでございますが、たまたまその町の場合、回線の数が一つか二つか極めて少なかったのだろうと思います。消防の緊急情報システムというものは、特に火災の場合はどれだけ早く発見するか、覚知するかということが一番大事でございますので、その点につきましては、私どもも、今後そういう通報がおくれるということのないような情報通信システム整備には大いに努力をしてまいりたいと思います。一般論でございますけれども、お答え申し上げます。
  126. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 長官がそのときに聞いておられなかったと言うので、聞いておらぬものを今から言うてもしようがありませんからその点は私はこれ以上申し上げませんけれども、しかし今お答えになりました、いわゆる回線の数が少ないためにこういう事件が現実に起きているのです。ただ、その町の名前を言うと、そこの消防長から市長さんからみんな責任問題になりますので、それで国会でこれが取り上げられたというようなことになったのでは大変不名誉な話になりますので、私がその名誉を重んじてわざわざ言ってないだけでありまして、私がその問題をこの間質問いたしましたら、そのときに、一一九番という電話は皆各自治体がそれぞれ設置したのだと私は思い込んでおったのですが、しかしそれがそうではなくて、NTTのご好意でただでつけてもらっているのですというのは答弁を聞いて初めて知ったのです。だからここで質問したことは事実なんであります。それから早くも三、四カ月たっておるわけなんで、今のお答えによりますと、長官は直接聞いていらっしゃらぬというのだから何も手を打っていらっしゃらぬ、こういうことになるわけでありまして、二度と再び日本の国内においてそういうような事件が起きないように、速やかに回線を余分にとっていただくように、これはそう大した費用のかかることでもありませんから、ぜひひとつ全国手を回していただきたい。全国の三千三百の自治団体にさらに一本ずつ余分につけたところで三千三百回線ですから大したことないですよ。うまくいったらあなたの冬のボーナスぐらいでいけるかもわからぬ。そうはいかぬかもわからぬが、そのぐらいにそう大した金はかかりません。ひとつぜひ努力をしていただきたいと思います。  さて、きょうは消防法の問題の中で、私は危険物の問題について特に質問をしたいと思うのであります。この問題が出ましてから、いろいろと各方面からいろいろなお話を伺うのでありますが、そのお話を伺っていく中で、おや、そんなことがあるのかなというような問題が二つほどありました。  まず第一の問題は何かと言いますと、これも会社とかそういうものは言いません。これは大臣関係ないことになりますが、全国で今化学肥料なんというものをこしらえて売り出しておるのは年間三百万トンに及んでおるそうです。その中の一つとしまして、ここに今私が持っているのは硫酸系の肥料です。この硫酸系の肥料というものは、名前がここで危険物に指定されておるものが混合されているのです。だけれどもこの品物そのものは、今ここでふたを開いて火をつけてみたって燃えるものではありませんし、爆発するものでもありませんし、水につかっても爆発もしません、燃えもしません。全部肥料として役に立っているわけです。こういう製品が年間三百万トンも出回っておるのでありますが、私ら素人がこの法案と別表を読んでみますと、これは下手をするとこういう肥料までが危険物ですよというような取り扱いになりそうな気がするのです、素人判断で。それで私は、今度の消防法の改正におきまして、日本の化学肥料というものは三十年間も製造し販売をされ続けてきて、いまだ一件も事故も何も起こしたこともないというものまで、危険物の品名にあるからというので乱暴にぼんと全部危険物に指定をされていきますと、今度は危険物に指定をされると保管場所が問題になってきます。運送の手段が問題になってきます。それからいろいろな規制がはまってまいりますので、これを使いますお百姓さんたちにいたしましても、あんたの使っているものは危険物なんだ、こう言ったらもう使うのもちゅうちょするし、倉庫も新たに建て直さなければならぬというような問題が起きてまいりますので、よもやそんなことはないと私は信じながら、次のような要望を申し上げたいと思うのでありますが、これに対してどのようにお答えいただきますか。簡単なことであります。     〔片岡(武)委員長代理退席、委員長着席〕  この危険物にこれを指定するよという指定については、別に定める、いわゆる政令で定める試験によって、その結果によって危険物か危険物でないかということを指定していきますよ、こういうことになりますね。その試験の方法も政令で決まるわけですね。したがいまして私が思いますのは、日本の経済活動にいささかでも傷を入れたりあるいは遅滞を生じたりするようなことがないようは、製品及び流通の形態、その形状に応じた試験の方法を確立していただきたい、こういう希望が非常に強いのです。これに対して当局としてはどのように対処なさいますか。
  127. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の危険物の範囲の見直しとあわせまして、試験による危険物の判定の方法を導入したわけでございます。  そこで、ただいま御指摘の肥料の問題ですが、大体今度の改正法でいきますと、第一類硝酸塩類あたりに属するものが多いと思われるのでございますが、硝酸塩類そのものは危険物になる可能性があるわけでございます。ただ、実際今お示しのような製品ということになりますと、その製品の本来持っております危険性を低くするという目的で成形品にしたものとか、不活性の物質をその中に混合して危険性を低減したもの、いろいろな形のものがあると思います。そういう物品については、先ほども高度さらし粉の御質問もございましたけれども、ああいった場合でもそういった成形にしたものがあるわけでございます。そういう製品そのもの及びその流通形状による危険性の違いを的確に評価できる試験方法、つまり製品の形で試験をしてみる、それによって危険であるかないかということを判定する、そういう方法を政令で定めるということを検討いたしておりますので、まさにただいま御要請でございましたような線に沿ってこれは政令で試験方法を定めるということを検討しております。
  128. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。製品並びにそういう流通の形態、そういうものをもろもろ勘案して試験の方法を確定し判定をしていきたいということでありますから、それで十分であります。いわゆる取り扱い基準あるいは技術基準、そういうようなものも十分勘案をしていただきまして対処していただきたいと思います。  そこで、これは余談になりますが、非常に枝葉末節になるかもわかりませんが、これはいきなりの質問ですからできてもできぬでもいいのですよ。実は火薬というものがありますね。これで一番基礎的な知識としては、硝石の粉、それから硫黄の粉、木炭の粉、この三つを、こんなことを余りしゃべりますとあちこちでつくり出してはいけませんが、ある程度の分量でそれぞれをかきまぜて合わせますと火薬というものができますね。それは知っていますか。
  129. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 いわゆる黒色火薬のことであろうと思います。
  130. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さすがは長官ですね。黒色火薬ときましたね。立派なものです。それはもう百点満点です。そういうふうにこの三つのものを合わせると恐ろしい火薬になります。だがしかし、硝石の粉そのもの、木炭の粉そのもの、硫黄の粉そのもの、これだけは何ぼやってみたところでせいぜい火がつくぐらい、燃えるぐらいなことですね。そういうようなこともあるわけですから、今政令の中で十分考えて、製品の形態並びに流通の形状、そういうものを十分勘案して適正な試験方法によって判定をしたいということですから、もうこれ以上言うことはないと思いますが、とにかく今度のこの法改正によって業界に与えていく影響というものは相当大きいし、それから一体うちはどうなるのだろうかなという不安を持っている業界も随分ありますので、その点はひとつ慎重に対処なされるよう、くどいようでありますが重ねて要望申し上げておきます。  それから次に第二番目の問題でありますが、潤滑油の問題です。今回の消防法の改正における危険物の分類を見ますると、第四類、これは引火性の液体でありますが、そのうち品名分類は引火点によって区別をされております。これらのうち特殊引火物は引火点マイナス二十度以下とされ、第一石油類はプラス二十一度C未満、これがガソリン、第二石油類は二十一度C以上七十度C未満、これが灯油や軽油、第三石油類は七十度C以上二百度C未満、これが重油とか潤滑油、第四石油類は二百度C以上、潤滑油類等、こうなっておるのでありますが、特に第三石油類は、引火点が七十度C以上二百度C未満とされて、極めて広い範囲内の引火点の範囲にわたっております。引火点の低い重油類と引火点の高い潤滑油類とを同一の枠組みとしている、その理由は一体何でございましょうか。
  131. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 現行法の上で第四類の危険物は、常時引火する危険性を有しておりますもの、これを第一石油類、それから通常の取り扱い状態において引火する危険性を有しておるものを第二石油類、それから温度を加える、加温した状態において引火する危険性を有しておるものを第三石油類、それから高温に加熱した状態において危険性を有しておるものを第四石油類というぐあいに分類をしておるわけでございます。今回の改正案におきましては、この区分は変更をしていないところでございます。  重油と潤滑油という、これは目的も違うことはよく承知いたしておりますが、消防法の危険物規制の観点からは、やはり使用目的は違っておりましても危険性を判断するわけでございますから、引火点による区分という方法でやっておるわけでございまして、この区分を従来から長い間やっておりますけれども、それなりに合理的なもの、こう考えておりまして、今回もそれを変更するという考え方はなかったわけでございます。
  132. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはまた余分でありますけれども、そこで私非常に不思議に思いますのは、引火点の上限値を設けておらぬのですな。それで非常に不思議に思うのでありますが、この第四類の引火性液体は引火点の高いものとして規定をされているだけでありまして、引火点の上限値が決まっていない。このために、例えばてんぷら油などが引火点が二百度C程度であり、特殊な状態でしか二百度を超えるということはないのにもかかわらず、引火性の液体として規制をされております。このことについて、この引火点の上限値を設けるべきではないのか。今回お決めになろうとしておるものは引火点の上限値がないわけでありますし、それからまた温度が非常に高過ぎる。そこで、国連勧告では引火点の上限値を約六十度とされております。EC各国におきましては百度程度となされております。にもかかわらず、我が日本におきましては第四類では二百度C以上のもの、こうなっておりますな。どこまでいくやらわからぬのです。上限値はないのです。  それで、日本のこの規定の仕方というものは余りにも範囲が広げ過ぎておるのではないかなというふうに考えられますので、上限値を設けるべきではないか、設けるとするならば国連の勧告程度あるいはEC諸国がとっておる程度、そんなものでいいのではないかというふうに思っておりますが、いかがでございますか。
  133. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 確かに、第四石油類については二百度C以上となっておるわけでございますから上限値が設けられていないわけでございます。しかし、引火点が上限より低ければ引火の危険性は高く、引火点が上限より高い物品は普通はこれは引火をしない。上限より高いわけでございますから、普通は引火しないわけであります。したがいまして、危険物の運搬をするような場合、そういう場合に危険物の温度が周囲の温度以上上昇することがないと考えられるような場合には引火点の上限を設ける、国連勧告のように。引火点に上限を設けるということは、これはあり得ると思います。それなりに国連の勧告の基準は意味があるのだろうと思います。  ただ、消防法におきましては、その運搬だけではなくて貯蔵、取り扱いについても規制をしておるわけでございます。ということは、つまり引火点が高い物品であっても、加熱をされるとかあるいは非常に高温の状態、あるいは高圧の状態で使用されておる場合には引火点の低い物品と同じように危険性があるという観点から規制を行っておるものでありまして、したがって、引火点の上限を設けて、この上限以上のものは一律に除外する、そういう措置、方法は適当ではないと考えてこのような形にしておるわけでございます。
  134. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はその説明には納得をしないのですけれども、時間がないものですから、もう泣き泣き先に進まなければいかぬのです。これはやむを得ず前へ進ませていただきます。  重油は軽油などとまぜ合わせて火をつけやすくするために使われるものであるのに対し、潤滑油というのは燃えにくくするために使われるものであるというふうに、全く性格が異なっておるのですね。これはいかがでございますか。
  135. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御指摘のように、重油はこれは燃料ですね。ディーゼルエンジン等の燃料で用いられるわけでありますから、燃やすためのものだということは御指摘のとおりでございます。一方潤滑油は、機械の摩擦による摩擦熱を発生させないようにする、それを抑えるためのもの、あるいは摩滅、摩耗することをできるだけ軽減するというために用いられるものでありますから、これは用途が異なるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、いずれの物品も原油から精製される引火の危険性を持つ液体でございますから、その性状に着眼すれば、これはやはり類似しているものと言うことができると思うのでございまして、消防法の規制、危険物規制の観点からは、そういう点に着眼をした分類、基準ということにいたしておるわけでございます。
  136. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 取り扱いの方法において、重油は燃料としての取り扱いを受けますね。それでボイラーなど火を扱えばそばに置くことがある。それをまた保管するタンクというのも、重油のタンクというのは非常に大きいです。これに対しまして潤滑油というのはもう既に精製をされたものでありまして、不純物も少なく、危険性も乏しい。使用されるその種類というのは潤滑油は多いのでありますが、その使用量はごく少量ずつであります。火のそばで取り扱われるものではありませんね。このように、重油と潤滑油とでは取り扱いも全く変わっておるというふうに思うのでありますが、なぜ一緒にしなければなりませんか。
  137. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 その使用目的が違うということは私どももよく認識をいたしておるわけでございます。ただ、重ねて申すようでございますが、危険物としては、危険物として消防法上規制の対象とするか否かということは、その危険物の持っております危険性に着眼して行うべきものでございまして、その点から見ますと、重油も潤滑油も、第四類の危険物の危険性の判定基準である引火点によって判断すれば、同じような危険性を有するものと考えております。  なお、この取り扱う方法なり御指摘のような貯蔵されるタンクの形態などによるところの危険度の大小は、危険物として規制される場合の要件でございます位置、構造それから設備、この三つの技術上の基準のレベルの問題でございます。そういう位置、構造、設備の基準の中で考えていく問題でございまして、現在の技術基準におきましても、そういう危険性の程度に着目した緩和措置、例えば保安距離といったようなものはそれなりに緩和をするというような措置は講じておるところでございます。もちろん貯蔵されるその形態、量、そういうものによって技術基準というのはやはり変わってくる、緩和されるということはあり得るわけでございます。
  138. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 重油というのは、くどいようでありますが燃えやすくするものであって、潤滑油というのは、これはもう絶縁それから今おっしゃいました円滑などの用途に供するものでありまして、用途が全く違う。しかも、七十度Cから二百度C以下という第三石油類の事故発生というのはほとんどが重油にかかわるものでありますね。潤滑油の場合の事故というのは、潤滑油の中にわざわざ真っ赤に焼けただれた鉄棒をがぼっと突っ込んだときに初めて発生したということだけでありまして、それ以外に製造とか取り扱いの段階での事故というのは全くないのです。このように重油と潤滑油類とでは物性も取り扱いの方法も用途も大きな差があるのでありまして、政令を定めるに当たりましては、危険性の度合いに応じたきめ細かい基準を設け、実態に合わせていくべきではないのかというふうに思いますが、いかがですか。ここの答弁が一番大事なんですよ。
  139. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 いろいろ御答弁申し上げてまいりましたところでございますが、用途には違いがございます。しかし、物性においてはいずれも原油からつくられる、そして引火危険性を持っているという点について同じでございます。潤滑油もいろいろございます。これは引火点の違うものが随分あるわけでございますけれども、かなり引火点の低いものも潤滑油の中にございます。したがって、消防法上はやはり引火点で判断をするということになるわけでございまして、現在さまざまな種類の潤滑油の中では、第四石油類に分類されるつまり引火点が高いもの、それから物によっては第三石油類の方に分類されるもの、これもあるということです。ですから、第三と第四に両方にまたがっておる、つまり重油と一緒のものもある。そういう意味で、あくまでも引火点で区分をしておるわけでございまして、潤滑油と重油の目的なり性質の違いというようなことを、使用上の性質の違いというようなことを問題にしているわけではないわけでございます。  確かに、重油の事故と潤滑油の事故とを比較いたしますと、重油の事故の方が多いということは御指摘のとおりでございます。ただ、扱われる量も圧倒的にこれは違うわけでございまして、そういうような点から事故の状態も違ってきているのだろうと思います。  なお、具体的には政令におきまして、先ほど申し上げましたように、位置、構造、設備の基準の問題だと私どもは認識をしておりますので、そういう位置、構造、設備の規制基準を定めるに当たりましては、御指摘のような取り扱い条件などによる危険性の違いというようなことをも勘案をして検討をしてまいりたい、このように考えております。
  140. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは質問を予定してなかったので、警察の方がおらぬからちょっと無理かもわかりませんが、先ほど、物性は同じでございまして、もともと原油から精製されるものでありましてという御説明がございましたね。そこで、ひょっと思ったのですが、同じ物性、いわゆる鉄ですな、鋼からできたものの中でも、つめ切りになるものもあるし、そうかと思えば日本刀がありますよね。それからメスもある、出刃包丁もある、菜っぱ切り包丁もある、いろいろありますな。これは銃砲刀剣類で区別をして、凶器と目されるような品物というのはこういうものというので大体警察当局は分類をしていますよね。例えば刃渡り何ぼ以上とか、そういうようなことがありますね。こういうものとやはり同じじゃないかな。物性そのものは原油で一緒なんですから、油から出たのですからと言えば、我々が着ておる服もそうじゃないですか。これは池が化けているのですよ。我我のカッターシャツも油からできているのですよ。そうすると皆同じ物性ですな。しかし、でき上がった製品、その使い方、それぞれ違うはずですわな。いわゆる製品やそのものの使い方、用途によっては、はっきりとしたそれは危険物ではないですよ、それは除外しますよというようなことが明確になるように政令でやってもらわないとまずいのじゃないかな。  政令を決めるのは皆さんの手のうちにあるのです。私は決して矢野さんは、言いたいだけ言いなさい、もう時間が来たら採決ですから言いたいだけしゃべりなさい、あとはこっちが勝手にやるんじゃ、あんたらはそこまでだ、勝負あり、こういうふうにあなたが思っているとは思いませんよ。そんな人だとは私は思わない。そんな根性の悪い男だとは思っておりませんが、政令をつくられる立場にあるあなたとしたら、やはりそういう業界から出てきておるいろいろな心配というものがないようにしてやらなければ、もう国会の審議は済んだんだから代議士どもはほっておけばいいんじゃ、もうあと三十分もしたらおしまいですからね、何ぼなりと言いなさいというようなそんな人ではない。だから、政令にも心のこもった、実態に応じたものをぴしっとつくってもらえるであろうというふうに思っておりますが、いかがですかね。
  141. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の見直しは危険物の分類をいろいろやって、それに科学的テスト法を導入する、それによって判定するという方法をとったものですから、一方ではこの試験方法が明確になることによって、関係業界においては、こういうものをつくれば危険物になるとか、こういうものを添加すれば危険物にならないということがある程度オープンになりますから、そういう意味での産業経済活動に対するメリットの面もこれはあろうかと思います。ただ、今までいろいろやってこられた向きでは、これから、非常にはっきりしておるものはともかくとして、ボーダーラインにあるもの、そういったようなものについてはいろいろ御心配などもあろうと思います。私どもは、その辺はやはり関係業界ともいろいろ御意見を聞きまして必要な調整に努めてまいりました。  先ほど来御質問の潤滑油の問題、潤滑油は従来から危険物の中に分類はされておるわけでございますが、その扱い方の問題だ、こういうぐあいに私は認識をいたしております。確かに物性は同じでございますが、目的がやはり違うことによって取り扱い方が違ってくる、その辺は十分考慮して、検討して、科学的な立場から十分御質問の点等も念願に置いた政令の制定を行ってまいりたい、このように考える次第でございます。
  142. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まことにありがとうございました。今のお答えは満足であります。非常に心の通った回答でありまして、満足です。あともうしばらくでありますから、おつき合いください。  ここでちょっと欲なことを言いますよ。少なくとも引火点が七十度C以上百三十度C未満の重油類と百三十度C以上二百度C未満の潤滑油額とは明確にこの際区別をされたらどんなものですかと思うのでありますが、いかがですか。これは欲が張っていますか。
  143. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 同じ類に属するものの中でも引火点の幅がかなりある、幅があるのだからその幅の間で全部一律の扱い方ではいささか問題ではないのか、こういう観点からの御質問と思いますが、最初に申し上げましたようにこの引火点による区分は今までも使ってまいりましたので、そういう点では、これは今までそういう仕事をやってこられました業界の方に特に大きな変更が実はあるわけではないと思っております。ただ、取り扱い条件、形態による危険性というものに着目をいたしまして、その程度に応じた位置、構造及び設備の技術上の基準とする方向で、今御指摘のような問題も含めましてよく検討をしてまいりたいと存じます。
  144. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。せっかくひとつ注意をしていただいて、しかも慎重に業界の実態もよくごらんになって政令をつくっていただきたいと思います。  さて、厚生省からお越しいただいておりますか。時間が少ないようでありますから予定をいたしました質問を減らしてまいりますが、ヘリコプターの問題が最前から出ておりました。非常に重要な問題でありまして私は非常に関心を持っておるのですが、消防専用のヘリコプターは全国で二十機程度である、先ほどはこういうお答えがありました。それで、救急用関係にも利用していただくためには余りにも全国にヘリコプターの数が少な過ぎる。それで山間僻地におる、言うならば独立した消防署をよう持たない、いわゆる共同で組合でやらなければならぬところはもう範囲が非常に広い。だから、そういうところでもし急病人等が出ました場合には、それを救ってあげるということが大変な時間を食ってしまうわけですね。車だなんだということをやっていますと大変な時間を食ってしまうので、そういうときにヘリコプターがあったらなと思う。割と島嶼部の関係についてはその点行き届いておるように思います。だが陸地に中におきますいわゆる僻地、そういうところにおいては案外離島関係のように素早くヘリコプターで対処するということが行われておりませんね。これが非常に残念だと私は思うのであります。その点、厚生省のお考えと自治省のお考えをお聞かせいただぎたいと思います。医師の同乗を含めてやってください。
  145. 松村明仁

    ○松村説明員 厚生省といたしましては直接ヘリコプターを所管するということはちょっと無理かと思いますが、お医者さんあるいはまた看護婦さんがヘリコプターに同乗していただける場合には、これに対して万一事故がありました場合には保険金といいましょうか、生命保険の方をこれにかけていただいて、こういったことを行うことによって医師の確保を図っておる、こういう状態でございます。
  146. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 ヘリコプターを利用した救急システム、御質問の中にもございましたが、例えば北海道とか長崎とかといったような離島をたくさん持っております県におきましては比較的そのシステムが従来から整備され活用されております。あるいは東京都、これは主として大島その他のいわゆる伊豆七島でございますが、そこはそういうシステムが活発に活用されておると思いますが、確かに御指摘のようにいわゆる山間僻地と申しますか、離島ではなくてもそういった救急医療機関まで極めて遠いというようなところでのヘリコプターの利用ということは大事な問題だと考えております。現在消防専用のヘリというのが非常に少ない状況でございますので、このヘリはやはりとにかくもっとふやしていきたいということが私どもは第一の念願でございますが、しかしそのほか自衛隊あるいは警察等のヘリもいろいろあるわけでございますので、そういうものを含めたヘリコプターによる救急医療システムというものが、そういった離島を含む府県だけでなく、もっと山間僻地、内陸部ですね、そういったところにも利用できるよういろいろまた今後指導に努めてまいりたいと考えております。  医師の同乗につきましても大事なことでございます。これも医師の確保等もありますからなかなか大変なことだとは思いますが、その辺の問題点、これはやはり医師会とかあるいは所管省庁、こういったところとまたよく協議してまいりたいと考えております。
  147. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が参りましたので、最後に一問だけ質問させていただきますが、厚生省と自治省の両方からお答えをいただきたいと思います。  先ほど来各委員からいろいろ御質問のあったことでありますけれども、現在の救急隊員が行える行為というのは、御承知のようにいわゆる人工呼吸、あるいは心臓マッサージ、止血、包帯あるいは副子による固定というような程度しかできないわけでありますが、御承知のように現在は自宅療養の患者でさえ点滴をしておる、あるいは胃のチューブを入れておるというような患者がいらっしゃるわけで、それが容体が急変したというので救急車に乗って運ばれていくときに、例えば点滴の管が外れたというようなことがあり、あるいは胃のチューブが外れたというようなことがあっても、簡単にできることであってもそれはやってはいかぬ、それは仕方がないということで全然手がつけられぬ。これは私は大変矛盾を感じます。東京都におきましては二十四時間体制でお医者さんを常駐させて、適宜救急車にこうしなさいああしなさいという指示を与えながら救急車が走る。それで収容される病院にも二十四時間勤務のお医者さんから、こういう患者が行くからこういう用意をしておきなさいということを通知するというので、大変行き届いた、うらやましい体制をとっていただいておるのでありますが、全国の市町村に行ったらこれはちょっと無理であります。したがいましてアメリカでやっておるような特別救急医療士、いわゆるパラメディックを設置されていらっしゃいますが、救急隊員に特別の技術の研修をさせまして、その人たちに今の日本の救急隊員以上の医療行為に近いものをやらせておるわけです。そのためにアメリカにおきましては一つの町で、例えば仮死状態に陥っている、完全に死んだような格好になっている患者を運んだ例なんかでも、特別医療士をつけなかったときに比べて、つけてからは何ぼ違ったかといったら、大体四倍生存率がはね上がったというんですね。仮死状態で病院に運ばれた患者さんというのは一週間以内に大体九五%の人が死ぬと言いますね。生き残るのが五%ぐらいしかおらぬ。ところがそういうパラメディックのシステムをとりましたアメリカにおいては、その五%しか生存率のないものが一躍二五%にはね上がったと報道されております。このことを聞きますと、人間の命は地球より重いということを考えてみても、こういう制度というものはやはり我が日本でも取り入れるべきではないのかと思うのでありますが、両省からの御回答をいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  148. 阿部正俊

    阿部説明員 簡単にお答えいたします。  日本の場合で在宅医療の拡充はこれからの一つの課題はなっておりまして、先生御指摘のように、従来の救急搬送患者に加えまして、本来病院に入っておっていいような患者さんが在宅でというケースがかなりふえてくるだろうということは御指摘のとおりだと思いますので、そういった場合の救急業務が今までどおりの体制でいいかというのは、やはりこれからの検討課題であらうと思います。ただそのときに、いきなり一定の新しいいわば医療関係資格のようなものを救急業務だけにつきまして制度化するのはいかがなものであろうか。これから先まず一つは、医師につきましても、医師数も将来を展望して少し削減しようかというような時期でございますので、まだ今の時点では過剰だというふうにはなかなか言えないのでございますけれども、これから五年十年というような長い展望で考えますと、相当やはりほかの分野に、病院、診療所だけでなくて拡大できるのではないかと思われますし、あと一つ医療関係職種として看護婦というのが、ある意味では非常に幅広い診療の補助行為者として位置づけられておりますので、どうも当面は私どもとしてはまずその辺の既存の医療関係職種の活用をもう少し拡充していく方向で考えるのが基本的なあり方ではなかろうかと思います。  ただ、後で自治省お答えだと思いますけれども、自治省中心にしてそういった新しい救急業務のあり方といいましょうか、御検討中でございますので、その中に参加いたしましてできるだけ在宅医療の行われる現状に合った救急業務をきめ細かくやっていくようなことを、私どもとしても参加して意見を申し上げていきたい、こんなふうに考えております。  以上でございます。
  149. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 在宅医療の問題、それからそれ以外の一般的な救急隊員の応急的な第一次的な救命措置しか現在できないものをさらに充実すべきではないかということは、もちろん大きな検討課題だと思います。  現在我々としては、昭和五十七年に、救急隊員については百三十五時間の講習を経た者をもって資格とする、それがなければ救急車に乗ってはならない、こういう制度をつくったわけでございますが、まだ日が浅うございます。しかし、さらにその中の特別な人たちはよりその講習のレベルを上げまして、もっと高度な知識なり技術が学べるようなこと、これからまずとにかく手をつけていきたいということを考えております。  新しい医療制度といいますか、救急にかかわる医療の制度は、我が国全般の医療制度と密接なかかわりがあるわけでございますから、その辺は関係省庁とも十分協議しながら、そういう研究の過程において、日本の救急医療の質の向上のために努めてまいりたいと思っております。
  150. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。
  151. 松本十郎

    松本委員長 寺前巖君。
  152. 寺前巖

    ○寺前委員 消防法の改正の問題をめぐって二、三点と、関連して消防活動についての四、五点をお聞きしたいというふうに思います。  今度の改正で、私率直に言ってわからないことがあるのです。今まで危険物というのを法律的にきちっと決めておったものを何で政令にしなければならないのだろう、あるいはまた、その指定数量についても政令で決めなければならぬのだろうか。時代とともに確かに危険物の管理技術はどんどん向上するかもしれませんが、危険物そのものは危険物であるのだから、これは何ら変わらないだろう。量がどう変化するのか。やはり危険だという点では変わらないだろう。そういうものをちゃんと法律的に今まで決めておったものを、何で政令に任せなければならぬのであろうか、いろいろとやり方はあるにしても。率直に言うて、法律できちんと決めたものを変えることはなかろう、この点について、何でそんなことをするのかということをまずお答えいただきたいと思います。
  153. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 現行法の規定でございますと、引火性または発火性の物質で別表に掲げたもののみを危険物と称しておったわけでございます。したがいまして、一たん別表に掲げますと、その別表に掲げられた物品、物質についていろいろ形状その他の違いがあっても、一律的にそれは危険物になるということもございましたし、また、新しく出現する物質に対して迅速に対応できない、それがまた、その物品が法律に掲げられるか掲げられないかによって危険物であるかないか決まってしまう、こういうような形になっておったわけでございますが、今回の改正におきましては、これを一類から六類までの性状によってまず分類をして、そして性状ごとに物品の名前を掲げ、なお化学的テスト法によってそれを判断する、法律に掲げられたもの以外のものについてはテストの結果政令でこれを定める、こういうようなことにしたわけでございます。こういうように危険物のいわば判定の合理化を図ろうとするわけでございますけれども、試験方法については極めて専門技術的な内容でございます。また、国連における危険物品にかかわる基準改正とか新たな危険物品の出現など、いろいろ技術革新に迅速かつ的確に対応できることにする必要があることにより、政令において行うということにしておるわけでございます。  指定数量につきましては、試験方法が政令で定められ、その結果、危険物に該当するものが出てくるわけでございますので、それとあわせて政令段階にゆだねておるわけでございますが、もちろんこれはそれぞれの物品の有する危険性に応じて定めるわけでございます。法律に掲げられたものと同等以上の危険を有するものが政令その他のものについても定められるわけでございます。  こういったことから、現在法律で決められておりますものの試験方法を含めて指定数量もあわせて政令で決めることとしたわけでございます。いわば危険物の判断、判定のむしろ合理化という観点からこのようにいたしたいと考えたものでございます。
  154. 寺前巖

    ○寺前委員 新しい危険物がいろいろ生まれてくるであろう、一々法律の別表でやっておったらどうのこうのという問題があって、それでは政令にしましょうか、こういう話もあろうかと思うのです。それでは、従来決められているところのものについては危険物は危険物に間違いないのだから、変える必要がないものをまさか変えてしまうということにはならぬでしょうね。例えば指定数量なりについて変える。  私がちょっと気になったのは、消防庁の危険物委員会というところからお出しになっている報告書を見て気になりました。この報告書で指定数量がかなり緩和をする方向が出てくるのですね。例えばガソリン等の第一石油類は百リットルを二百リットルに、原油、灯油、軽油等の第二石油額は五百リットルを千リットルに、潤滑油等の第四石油類は三千リットルを六千リットルというふうにずっといろいろあります。特に石油類については、危険物施設の中で石油製品を中心とする第四類の危険物施設が九七・四%を占めていることから、製造所、取扱所、石油コンビナートで製造、貯蔵、取り扱いの技術基準がこういうふうに二倍に緩和されていくということになってくると、ずっと影響を受けてくるのではないか。私は、ここにやはり一つの注目を払わざるを得ない。二倍に緩和されることになるのではないか。  もしもこの危険物委員会報告書に基づいて、これが政令の中で緩和措置として行われていくということになると、現行制度よりも二倍の緩和になってしまう。そうすると、消防法の指定数量の緩和は、石油コンビナート等災害防止法第九条の甲種普通化学消防車の設置台数と、この変化に伴う防災要員が減らされるという問題と関連するのではないか。指定数量の二倍の緩和ということをやると、甲種普通化学消防車の設置台数は現行二百六十台あるが、これが二百九台でいいということになってしまうのではないか。五十一台減らすということになるのではないか。こうした規制緩和を行って製造所、貯蔵所、取扱所及び石油コンビナートとこれらの周辺住民に対するところの安全が果たして確保されることになるのか、私はこういうことに通じていくというところで不安を感ずる。  危険物施設の事故件数は、火災、漏えいなどを含めて毎年四百件弱起こっていますよ、ずっと数表をおたくの方からもらいましたら。決してどんどん減っているという状況にありません。今後もどんどんふえるという可能性の方が多いでしょう。規制緩和をしてもいい条件はどこにもないはずなのに、もしもこういう報告書に基づいて政令でしていくということになったら、この消防法の改正というのは一体何だったのだろうか。消防活動を強化するという安全のための施策ではなかったということになるではないか。私はそこが疑問に思う点であるので、そこで指定数量について規制緩和をせず現行どおりの水準を維持するのだということが明確にされるのかどうか、そこをお聞きしたいと思うのです。
  155. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御質問の点が数点あると思いますが、試験の結果政令でその他のものとして定められるものもございます。あるいは現在法律に名前が掲げられてあるものにつきましても、これはその試験方法の導入の結果、その一部は危険物になるが一部は危険物にならないというようなものもやはり出てこようかと思います。現在の規定の仕方は、そういうことに関係なく一たん法律に名前が掲げられればすべて同じ危険物だ、実際には同じ物質であっても、形状の違いによって危険であったり危険度がなかったりするものがあるわけでございますが、それらをすべて試験方法によって判定をしていこうというものでございます。  ただ、例えば純粋なナトリウムみたいなもの、こういったものは禁水性物質でございますけれども、そういった他にもう疑問の余地がないというようなものは別表の備考でそういう性状を有するものとみなす、こういう規定を置いているものはもちろんあるわけでございます。そういう観点から、今回試験方法の導入によって科学的に判定をしていこう、こういう趣旨であることを御理解賜りたいと存じます。  それから、指定数量の問題でございますが、これも政令で定めるということになるわけでございますが、もちろん従来の経緯というもの、これも尊重しなければなりませんし、また危険物の委員会におきましては、いろいろ実験等も含めた技術的な検討の結果そういう報告を出しておるわけでございます。昭和四十六年以来この指定品目と指定数量が改正されていないわけでございますが、その間の科学技術と産業経済の発展が危険物の生産とか流通実態に大きく変貌をもたらしまして、また危険物施設の保安に関する技術水準もやはり向上したということでございます。  今回の改正に当たりましては、指定数量の値については、現行のものを基本とし各類ごとに危険性を勘案して見直すということを予定をいたしております。その結果、危険性が高いと判断されたものにつきましては指定数量を逆に引き下げる、つまり逆に言うと強化になるわけでございますが、指定数量を引き下げるものがある反面、指定数量を引き上げることになるものもあり得ると思いますが、あくまでそれはその危険物の危険性を踏まえたものでありまして、指定数量の緩和によって安全上の問題が生ずることはないと考えております。  また、石油コンビナート等の特定事業所における自衛防災組織において備えるべきいろいろな各種の防災資機材がございます。この基準も今回の消防法の改正によって影響を受けるということになるわけでございますが、具体的内容は政令でございまして、危険物施設における自衛消防組織のあり方との関連に留意をしながら防災に万全を期すという観点から十分検討してまいりたいと考えております。
  156. 寺前巖

    ○寺前委員 現行を基準にするとおっしゃっておりますけれども、果たしてこれがどういうことになるのか、今の自衛消防との関係では一体どういうことになるのか、これはすべて政令でございますのでお任せしますということになって、結論的にはよう私にはわからぬことになるのですがね。要するに現行の水準は絶対に下回らないということをやってもらわなかったら、あの石油コンビナートの事件が発生して、そして法律で何でわざわざ石油コンビナート等災害防止法をつくったかわからぬということになるかと思いますので、私はこの点を改めて重ねて強調するものです。  それから同時ほ、危険物の判定のための試験は製造する企業がやることに今度の法改正でなってきていますね。私は、企業任せになってしまうとこれは必ず失敗を犯すと思うのです。これは何も直接この分野だけには限らないのですよ。去年の十二月に私こういう事件に直面したので、つくづくそのときに思ったのです。これは全然違う次元の話ですが、血液製剤の輸入業者がわずかなものを輸入するという場合には血液製剤の自主検定をやりなさいということがある。大部分は国立予防衛生研究所や衛生試験所で検査をするのだけれども、特殊な幾つかの少量のものはそれはもう会社に任せますわ、こうやったのだ。そうしたらそこから事故が起こってきた。B型肝炎がそこからずっと広がってきて、そして厚生省として薬事法違反だといってばっと摘発しなければならぬ。業務停止をする。後から大騒ぎしたって始まらない。こういうような検定のあり方において、製造する企業に任しておいて果たしていいのだろうか。  この点では消防庁の危険物委員会のこの報告書を見たって、その「むすび」にこう書いてあるのです。「全国統一的に危険物であるか否かを判定するため、危険物の判定試験を行う専門の試験機関を設置することが適当である。」この法律をつくるときにやはり心配だったのだろうと私は思うのだ。ところが法律の方では、企業でやらす、こうなっておる。私は、これは必ず大変な問題が後に尾を引くであろうと指摘せざるを得ないと思うのですが、その点についてどういうふうにお考えになっていますか。
  157. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回の改正によって導入される試験方法は、その試験に用います器具、試験の環境、それから測定方法など、厳密に規定された条件のもとで試験を行えば同一の結果が得られることになるはずであり、そういうことを予定をしております。  消防機関としては、原則としておっしゃるように事業者が行った試験の実施条件、その試験に適合した実施の条件で行ったかどうかということをチェックした上で、その結果をもとに危険物の判定を行う、こういうことになるわけでございます。したがいまして、第一次的には市町村の消防機関がその判定を下していくということになるわけでございます。その場合に、事業者が提出をした試験結果がやはり疑わしい、公正さに疑問があるというような場合には、消防機関において立入検査等によりまして当該物品を収去して自分でみずから試験を行うということも可能でございますので、試験結果の客観的な公正は担保されると考えております。  危険物の中で一番多いのは御承知のように第四類、石油関係でございますが、消防庁としては、市町村の消防機関それから都道府県に対して、危険物施設の大部分を占めるこういった第四類の危険物についての試験器具である引火点測定器等の整備、判定方法についての教育などの体制整備指導していくということにしておると思います。したがって、一番多い第四類は、これは市町村で十分みずから試験の結果を判定するだけの体制を整えることができると思います。  それ以上難しい問題になってまいりますと、例えば都道府県なりあるいは大都市の消防研究機関等において試験をやって判断をするというような場合も出てこようと思いますが、いずれにいたしましても、制度全体がこの試験方法、特に試験方法を通じて統一的に運営されて、それが危険物であるか否かの判定結果、これをやはり集積をしていって、それでそれを消防機関にどんどん資料を提供していく、またその結果については業界の方も知り得るということにしていかなければならないと思っております。  委員会において公的な試験機関の必要性は述べられておるところでございます。そういった方法ももちろん考えられるわけでございますが、ただそういう試験機関を新たにつくるということになった場合に、そういったものについての長期的な運営が可能であるのかどうかといったような問題もございますし、あるいは人員その他の確保といったような問題もございます。私ども現在考えておりますのは、自治省自身で持っております消防研究所あるいは東京とか大阪あたりの検定レベルの高い消防研究所、そういったところの協力も求めながら、判定のなかなか難しい、試験方法の難しいようなものについてはそういったところで判断をしていってデータを提供する、こういうぐあいにしてまいる必要があるのではなかろうかと考えております。そういう意味で、現在のところ試験機関そのものを設置するという考え方は持ってないわけでございますが、そういった仕組みで対応をしていきたいと考えておるところでございます。
  158. 寺前巖

    ○寺前委員 私は政令にゆだねる過程の問題とそれから今の企業みずからがやるという問題をめぐって、一番率直に感じた問題を指摘したわけですが、この指摘をするに当たって私には根拠があるのです。それは、経団連月報の一九八二年三月号に、日本石油精製株式会社の取締役だった山口さんという方が、昭和五十年の石油コンビナート等災害防止法が制定されたときに保安設備の増強等によって総額一兆円以上の投資を行い、また同時に消防専任委員を増員し、総勢数千人が新たに配置されたとして、危険物行政について次のことを要望しているのです。コンビナート地域の保安体制強化の実態に即して大幅に規制緩和を行い、企業の自主管理にゆだねられたいというのが一つ出ておるのです。それから許認可、届け出、検査を大幅に削減する。以上により国、地方自治体、企業内の保安関係要員を可能な限り縮小するなど保安関係経費の削減に努める。こうやって緩和をし削減せい、費用がかかって仕方がないということをえらく強調しているのです。これに従属して規制の緩和をやり、時代が変わったって危険物は危険物なんだから、その管理の仕方の変化はあろうけれども、こういう経済性を基本に置いて安全の問題というのが左右されるとぐあいが悪い。  だから、現行の基準で、大切なきちっとつくられている基準はやはりあくまでも守っていくという立場であるし、危険物をきちっと決めるのはやはり当局の方がやる、こういう姿勢でなかったら困る。危険物行政のあり方の問題として、私はこの問題の最後大臣の御意見を聞きたいと思います。     〔委員長退席、岡島委員長代理着席〕
  159. 梶山静六

    梶山国務大臣 安全は何よりも大切なことでございますから、安全の基準が厳格であることはもちろん原則として大切なことでございます。ただ、安全というために規制が過度に強化をされて産業活動、一般の経済活動あるいは市民生活に不便を来してもならないわけでございますから、安全の係数は見ますけれども、これを過大に設定をするということは社会の進歩のためにもマイナスの面もございますから、その両面相まつ体制をこれから整えていかなければならないというふうに考えております。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 決して事故が減っているわけじゃないのだから過大なことはないのだ。こういう問題というのは何ぼ力を注いだって、こうしたことはいいことなのであって悪いことじゃない。だから経済活動のために緩和されて、そのために事故を起こしておったのでは何をしておるかわからぬということだけは気をつけていただきたいということをあえて提起したいと思う。  そこで、大臣にこの際に私は消防予算と出火件数なり救急出動との関係についてお聞きをしたいと思うのです。中曽根内閣、竹下内閣、こうなってきたのですが、五十七年度の出火件数を見ると六万ちょっとあるのです。それがずっと今日までおたくの方で出しておられる資料を見ると、六十一年度六万三千二百七十二、六十二年度は一体どうなったかはまだ数字を聞かせてもらっておらぬからわからぬけれども、減っているという話は聞かぬのです、全体として。そうすると、出火件数はずっとふえている。救急の出動件数はどうなっているかというと五十七年度二百十二万五千何ぼある。それが六十一年度になると二百三十四万五千九百七ある。それぞれ見ますと、出火件数は一〇四・五%、救急出動件数は一一〇・四%とふえているのです。それが客観的な事実なんです。  ところが予算の方を見ると、五十七年度が二百七億二千六百八十一万円、それが六十一年度になると百六十一億と減っていくのでしょう。六十二年度も減り、六十三年度百五十三億九千万とずっと減っていくのです。これは五十七年度と六十三年度を比較すると七四・三%、これだけ減っていくのです。起こっている事態はふえているのに予算が減っている。これで果たしていいのだろうか。大臣の御意見を聞きたいと思います。
  161. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御質問の中の火災の件数についてお答え申し上げたいと存じますが、火災発生件数、すべての火災でございますが、昭和五十七年が六万五百六十八でございます。五十八年が五万九千七百四十で若干減っております。五十九年が六万三千七百八十九でございますからふえております。六十年が五万九千八百六十五でまた減っております。六十一年が六万三千二百七十二でまたふえておる。ふえたり減ったりしておりますが、先ほど六十二年度は一体どうなっておるのかまだ聞いておらぬが、こういうお尋ねがございました。これはまだ概数を取りまとめ中でございますが、概数で約五万八千件を若干超える五万八千八百件ぐらいになるのではなかろうか、このように推計をいたしております。  なお、予算につきましては、今御指摘のように五十七年度以降概算要求のマイナスシーリングの影響によって減少を続けておるわけでございますが、一方では、防災まちづくり事業等、起債あるいは交付税の活用により地方自治体の消防活動整備充実を支援をし、財源の措置を講じておるところでございます。
  162. 梶山静六

    梶山国務大臣 今長官から御説明をしましたように、消防庁本庁自身の予算は大体補助金でございますから、いわばマイナスシーリングの中で委員指摘のように減少を見ておるわけでございますけれども、現実に消防の主体を占めるそれぞれの自治体消防は、総額においても住民一人当たりについても増加をしていることは御承知のとおりでございます。     〔岡島委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 寺前巖

    ○寺前委員 こうやって出火件数なり救急出動件数などから見たときに、消防予算が減っているというのは本当に対処する姿勢になっているのだろうかということが私つくづく気になるのです。  この間、私の地元の宇治というところで、先月の二十五日でしたが、一日に連続五件の火災が起こって、私も行ってみました。寝たきり老人一人が焼け死んでしまう、二軒が全焼する、二軒が焼失するという事態が一晩の間にずっと起こっていました。えらいことだなと思って見ておったのですが、ちょうど夕方の三時十八分から八時ごろまでの間に五件あるのです。消防自動車がそれぞれ五件に対して五台、三台、五台、三台、五台というふうに出動しているのですが、その中の一つの消防署の中署というところへ行きましたら、ここは三台の自動車があるのですが、二台が出動するのです。そうすると、常時何人人がおるかといったら十一名ないし十二名おるのです。そうすると、二台出てしまったら三台目の車はあるけれども人がおらぬ、だから緊急にだあっと呼び集めるという事態なんですね。こんな事態だったら大変だなということ、車があっても出動できぬ、これは一体どうなっておるのだろうかということをつくづく感じたわけです。  それで宇治市の状況を調べてみると、ポンプ自動車の充足率は六四・七%だ、はしご自動車、化学自動車はそれぞれ一〇〇%で、職員の充足率は八〇・五%だ、こういう話です。消防庁資料を見たら、ポンプ自動車の充足率というのは全国的には八八・一%だ、消防職員の方は七六・八%だ。そうすると、宇治市の場合にはポンプ自動車の充足率が低くて職員の充足率が全国平均より高くて、しかも車が余ったままだったら、全国はもっと車が余ったままで人がおらぬために動けぬという勘定になるじゃないか。こんなことでいいのか。これはちょっと職員の配置の問題というのは緊急に考えなければ、せっかく車を強化したからといってもあかんのと違うか。  消防職員の充足率表をずっと振り返って見たら、五十六年の四月は七七・九%、五十九年四月になると七六・八%というふうにやはりこの分野も減っていく。予算は減っていくわ充足率は減っていくわ、これはちょっと本当に何とか考えにゃいかぬのと違うだろうか。まして六十二年十二月に消防庁消防課長から都道府県の消防主管部長に「消防職員の四週六休制の実施について」という通知文書も出されたけれども、一体これをやらそうと思ったならば、今まででさえもこういうことなんだから実施できぬじゃないか。消防職員の充足問題について真剣に考え直してもらう必要があるんじゃないかと私は思うのですが、いかがなものですか。
  164. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 消防力の基準に対する施設の面それから職員の面からの充足の問題でございますが、厳しい財政状況の中で、施設面は全般的に見れば次第に充足率を高めてきておると見ております。ただ、施設の充実に比べますと職員の方の充実の度合いがやはり低いということで、いわゆる行政改革のもとでの定員の増というものが極めて困難な状況にあるということから、どうしても施設の方に対して職員の方が低くなってきておるわけでございます。もちろん消防は施設とマンパワーの両方で活動するものでございますから、両々相まって充実されなければならぬことは言うまでもないところでございます。そのために、一方では消防施設設備の省力化とか軽量化とか動力化とかそういうものを図っていく、あるいは消防戦術上、ペアシステムの活用などで人員が少なくても同じ活動ができるようなシステムを工夫していく、そういったようなことによってできるだけ工夫をしながら対応しなければならぬと思います。  四週六休あるいは時間短縮等の問題もございまして、消防という特別な勤務体制のもとでは極めて難しい問題がございます。実施のための定員、予算の増は行わないとか、あるいは行政サービスの急激な変化を来さないように事務処理体制整備を実施するということになっておるわけでございますけれども、こういった点を踏まえてかなり工夫をしていかなければならぬだろう。また、そのためにどうしても難しい、ここのところはやはりどうしてもできないというような部分が出てくるかどうか、そういうものはそういった四週六休の試行を通じてもまた十分検討確認をしていきたい、こう考えておるところでございますが、いずれにいたしましても、消防力の充実について常に前向きで取り組んでいくという姿勢を消防庁としては堅持いたしておるところでございます。
  165. 寺前巖

    ○寺前委員 また後で大臣にまとめて御見解を聞かせてほしいと思うのですが、人の命とか人の財産にかかわる問題で真剣に大きな役割を果たしてもらっている消防の機能の充足のために、車を持つというのは非常に重要な仕事で、車の充足率を高めるように気張ってもらっているけれども、その車を支えるのはやはり人なんだから、人がなかったら動きようがないんだから、現実に職員の充足率の全国平均より高いところでさえも車を置いたまま動けない事態が生まれているということを考えたときに、職員問題というのはもっと考えなければいかぬ。しかも四週六休制なんというようなことを一般社会全体がやられていくときに、消防職員は結局通達どまりになっておるということになってもぐあいが悪いですよ。この点は格段の執行をしかと考えていただきたいということを申し上げたいと僕は思います。  さらに、さっきから救急業務の問題が出ていました。新聞を見ていますと、エイズ患者の場合に静岡県内の公立病院で治療拒否が起こったとか、福島県立医大で解剖拒否が起こったとか、いろいろずっと報道が出ています。厚生省の調査によると、血友病専門医がいないので転院させたとか、いろいろなことを書いていますよ。いろいろなことを書いているけれども、救急業務というのは危険な要素を持っての活動ですから、それにふさわしいような環境をちゃんと準備しなければいかぬと思うのです。  この間も京都市の消防局と患者団体との懇談を私も間に立ってやりました。その患者団体というのは血友病の患者団体です。その患者団体がヘモフィリアカードというのを持っておって、そして救急が来たときにはそれをぱっと示す。示したらどこの病院へ運んでくれということがわかるように、こうやってあるわけです。消防局の方の救急の課長さんも、患者団体から話を聞かしてもらって、なるほど患者の皆さんがそういうカードをお持ちだったら適切なところへ運ぶことができるんだな、救急だといったって私たちだけでは病院に行ってみなければわからぬというようなことに結果的にはなっておったかしれません、なるほどどこへ行ったら皆さんの要望にこたえられるんだなということがわかりましたと言っていましたけれども、私は本当に救急の対策については専門別にどういうふうに対応しなければならぬのかということをよく研究する必要があるということを、時間もありませんからまず指摘だけしておきたいと思うのです。  そこで、せっかくの機会だから私のお願いしたいのは、感染防止対策用の資器材の整備についてはちゃんと交付税の算入の中に計算をしていろいろおやりになっているのです。しかしこれがばらばらに消防署の中に、あっちに置いてあったりこっちに置いてあったりでは非常に機能的ではないのですね。消毒室で一挙に消毒するということによってその効果が発揮できると思うのです。ところが専用の消毒室というのは交付税の算入の計算の中に入っていないというのだ。やはり総合化したものを設けるということが非常に有効な役割をするんだし、それは大して金のかかることではないんだから、救急活動、救助活動に出る人たちに対してそのくらいのことはちゃんと財政的な面倒も見る。シャワー設置などについては交付税の算定基準の中に入っているのですよ。だから、そういう部分があるんだけれども、総合的な消毒室という問題について財政上の面倒を見るということを考える必要があるということが一つ。  それからもう一つは、B型肝炎ワクチンの接種費用が交付税の措置の中にあるけれども、措置されるのは人口十万人標準で救急隊員が十五人分、救助隊員が十二人分ということになっている。ところが実際は県も含めて全救助隊員が対象にならないとぐあいが悪いわけです。例えば私が先ほど言いました宇治の消防本部では百三十四人中百八人が救急業務に携わっている。ところが実際に措置されるのは二十九人で、あとは知りませんということになっている。だから、やっていることが現実にそぐわないのです。だから、こういう問題についても、現実から見て全救助・救急隊員はワクチンを接種するんだという立場に立って面倒を見る。私は、こういうことは大胆におやりにならなかったならば、こそくにやっていまっせという数字を何ぼ出されたって現実的ではない。だから、こういう問題については率直に受け入れてもらうように措置をしていただきたいということをちょっと提起したいと思うのですが、いかがですか。
  166. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 救急業務の実施に当たり、エイズあるいはB型肝炎等に対する感染防止対策、これは大変大事なことでございますので、いわゆるワクチンの注射それから感染防止に必要な救急用の資器材、消毒用資器材の整備、こういうものについては交付税を通じて算入を既にしておるところでございます。これを消毒室というようなものにまとめて使うべきでないかという御指摘は、そういったやり方をするというところももちろんございましょう。ただ、建物の一部でございますから、その中にそういう部屋の部分をどうやって確保して保有をするのかということについては、必ずしもそれを交付税の中で全国画一的にやる必要はないのではないかな、こう考えます。要するに消毒用資器材が一カ所に集結されればいいわけでありますから、既存の場所を改良することも可能でありましょうし、また新たな署をつくる、改築をするというような場合にはもちろん消毒室を含めてつくっていくということは大変結構なことだと思います。また、そういったような場合に、恐らく起債等の財源措置も行われるでありましょうから、そういった起債等の財源措置に際しては、そういう消毒室というようなものも含めたものを対象にしていくというように私どもの方からも財政当局にまた要請をしてまいりたいと思います。  それから、いわゆるB型肝炎のワクチンの注射でございますが、御指摘のように人口十万人について救急隊員十五人、救助隊員十二人、合わせて二十七人という計算をいたしております。実態を聞いてみますと、いわゆる兼務というような場合もあるようでございますから、救急、そこに勤務しておる消防の第一線に出動する者については、B型肝炎のワクチン注射をすべて実施をしておるというような例もあるようでございます。実はことし交付税の上でまだ算入したばかりでございまして、これは大体三年間くらい有効だというような考え方を持っておりますけれども、個人差もありましょう、今後の状況を少し見てみる必要があると思います。また、そのワクチンの注射が現在の方法で実態に合わないかどうか、これはよく実情を調べてまいりまして、実態に合わないということならば、それに対してまた是正の方法を私どもの方も検討し、財政当局ともよく協議をしてまいりたいと考えております。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 お約束の時間が来ましたので、最後自治大臣に、先ほどから職員の問題をもっと重視してもらいたいという問題提起をしておきましたが、お答えをいただいて終わりたいと思います。
  168. 梶山静六

    梶山国務大臣 国民の生命、財産を守るという消防の職務、大変崇高なものでございます。日夜を分かたずお働き願っておるこの方たちの処遇やあるいは行政需要、行政サービスの向上を図っていかなければなりませんし、その中で特に受け身の行政でございますから、なかなか節減合理化というものを人員においてはなせないということも委員指摘のとおりでございます。これからもその充足のために努めてまいりたいと思いますが、いずれにしても、行政サービスや行政需要を向上させるということには財源が必要だということも御理解をいただき、今後ともの御支援のほどをお願い申し上げる次第であります。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  170. 松本十郎

    松本委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  171. 松本十郎

    松本委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。経塚幸夫君。
  172. 経塚幸夫

    経塚委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の消防法の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、危険物行政の根幹である危険物の判定基準及び危険物の製造、貯蔵、取り扱いを制限する基本となる指定数量がいずれも政令にゆだねられることであります。  危険物行政はどの物質を危険物とし、製造、貯蔵、取り扱いを制限する量はどのくらいにするかということから始まるのであり、現行ではどの物質を危険物とし、製造、貯蔵、取り扱いを制限する指定数量のいずれも法律で定めているのであります。ところが改正案では、危険物行政の出発点がすべて政令にゆだねられており、危険物行政が時の政府の意向だけで左右されることになりかねないのであります。  反対の第二の理由は、規制緩和のための法改正だからであります。  特に石油類については、政令が危険物委員会報告どおりになるとすれば、ガソリン等の第一石油類、原油、灯油、軽油等の第二石油類、潤滑油等の第四石油額等の指定数量はほぼ二倍に緩和されることになります。危険物施設の中で石油製品を中心とする第四類、引火性液体の危険物施設が九七・四%を占めていることから製造所、取扱所、石油コンビナートで製造、貯蔵、取り扱いの技術基準が大きく緩和されることは明らかであります。  この指定数量の緩和によって、自衛消防組織設置、スプリンクラー設備、屋外・屋内消火設備設置規定、自動火災報知設備設置規定等の適用を受けなくなるところが出てくるのであります。また、石油コンビナート等災害防止法の第九条で設置を義務づけている甲種普通化学消防車の設置台数は現行より二割削減してもよいことになるのであります。  危険物施設の事故件数は火災など毎年四百件弱起こっており、しかも今後新たな危険物もふえることが予想される中で、規制緩和をしてもいい条件はどこにもないのであります。  第三の理由は、大企業の保安関係経費の削減を意図した法改正であることです。  このことは、日本石油精製株式会社の山口隆章氏が経団連月報一九八二年三月号で、昭和五十年の石油コンビナート等災害防止法が制定され、保安設備の増強等によって総額一兆円以上の投資を行い、また同時に消防専任委員を増員し総勢数千人が新たに配置されたとし、国、地方自治体、企業の保安関係経費の削減を強く求め、臨調に並み並みならぬ期待を寄せていたことからも明らかであります。  最後に、改正案では危険物の判定のための試験は危険物を製造する企業によって行われ、このデータによって危険物の判定が行われることになっていますが、これでは、危険物の判定が事実上企業任せになってしまいかねない危惧を感じざるを得ません。  危険物の判定が科学的かつ公正に行われるためにも、消防庁の危険物検討委員会報告書どおり、危険物の判定試験を行う専門の試験機関を設置する必要を指摘し、反対討論を終わります。
  173. 松本十郎

    松本委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  174. 松本十郎

    松本委員長 これより採決に入ります。  消防法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  175. 松本十郎

    松本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  176. 松本十郎

    松本委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、西田司君外四名より、五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。小谷輝二君。
  177. 小谷輝二

    ○小谷委員 私は、この際、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五党を代表し、消防法の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により、趣旨の説明にかえさせていただきます。     消防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、危険物の安全対策と消防力の充実を図るため、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 本法に基づく政・省令の制定に当たっては、危険物の安全対策に十分配慮し、法の運用に万全を期すること。また、危険物の判定試験の公正性を確保するための適切な対策を講ずること。  二 危険物質に係る災害発生等に的確に対応できるよう消防力の基準の達成及びその拡充を推進するとともに、特に危険物の保安管理に当たっては、事故処理体制についてのマニュアルの確立、保安要員の確保、施設基準・運搬基準の整備等を図り、住民の安全確保に遺憾のないよう努めること。  三 消防職員の処遇の改善を図るため、その定員の確保、勤務時間の短縮など勤務体制の改善、執務環境の整備、公務災害の防止等を推進すること。また、消防職員団結権問題については、引き続き誠意をもって検討を進めるとと。   右決議する。 以上であります。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。
  178. 松本十郎

    松本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  179. 松本十郎

    松本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、梶山自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。梶山自治大臣
  180. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重して善処してまいりたいと存じます。     ─────────────
  181. 松本十郎

    松本委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 松本十郎

    松本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  183. 松本十郎

    松本委員長 第百八回国会、内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。梶山自治大臣。     ─────────────  地方自治法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  184. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  この法律案は、地方制度調査会の答申にのっとり、機関委任事務制度について職務執行命令訴訟制度を見直すとともに、機関委任事務に係る議会及び監査委員の関与を拡充し、監査委員制度について監査委員の職務権限の拡大等その整備を図り、議会制度について議会運営委員会設置等につき所要の措置を講ずる等により、地方公共団体組織及び運営の合理化を図ろうとするものであります。  以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、機関委任事務制度の改善に関する事項であります。  まず、機関委任事務について地方議会の検閲・検査権及び監査請求権を認めるものといたしております。  次に、職務執行命令訴訟制度についてはこれを見直し、地方公共団体の長の罷免の制度を廃止するとともに、主務大臣は、知事の処理する国の機関委任事務の管理、執行について法令もしくは主務大臣の処分に対する違反または懈怠があり、他の方法でその是正を図ることが困難で、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、知事に対する勧告、命令及び知事の不履行の事実を確認する内閣告示を経て、知事にかわって当該事項を行うことができるものとし、知事は、主務大臣の命令について内閣総理大臣に不服の申し出ができ、さらに、内閣総理大臣から不服の申し出に理由がない旨の通告があったときは、主務大臣の命令の取り消しを求める訴えを起こし、その際執行停止の申し立てをすることができることとしております。なお、市町村長の処理する国の機関委任事務の管理、執行に関してもこれに準ずることとしております。  また、機関委任事務について、監査委員が必要と認めるときは、これを監査できることといたしております。  第二は、地方公共団体の議会についての改正であります。  議会の委員会は、調査または審査のため、参考人の出頭を求め、その意見を聞くことができるものとし、また、議会は、条例で議会運営委員会を置くことができるものといたしております。  第三は、監査委員制度の整備に関する改正であります。  まず、議員以外の者から選任される監査委員については、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関しすぐれた識見を有する者でなければならないこととし、その数が二人以上であるときは、少なくとも一人以上は、選任前五年間において当該普通地方公共団体職員でなかった者でなければならないものとするとともに、都道府県及び政令で定める市にあっては、一人以上は常勤としなければならないこととしております。  次に、監査委員の身分取り扱いについての規定整備することといたしております。  また、監査委員は、必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務の執行及び公の施設の管理を受託している団体の出納その他の事務の執行についても監査できるものとしております。  最後に、選挙管理委員の身分取り扱いについての規定整備及び地方公共団体の処理事務を掲げた別表の規定の改正等所要の規定整備を行うことといたしております。  以上が、地方自治法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  185. 松本十郎

    松本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会