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1988-05-18 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十八日(水曜日)     午後零時二分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       井上 喜一君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       戸塚 進也君    葉梨 信行君       鳩山由紀夫君    堀之内久男君       村井  仁君    上田 卓三君       野口 幸一君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       橋本 文彦君    日笠 勝之君       森田 景一君    安倍 基雄君       北橋 健治君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省銀行局保         険部長     宮本 英利君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         大蔵省国際金融         局次長     岩崎 文哉君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         青少年対策本部         参事官     吉原 丈司君         郵政省貯金局資         金運用課長   木村  強君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部業務課長   濱田 弘二君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         理事放送総局         長)      尾西 清重君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 五月十八日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     北橋 健治君 同日  辞任         補欠選任   北橋 健治君     安倍 基雄君     ───────────── 五月十六日  新型間接税導入反対に関する請願冬柴鉄三紹介)(第二七四一号)  新大型間接税導入反対に関する請願佐藤祐弘紹介)(第二七四二号)  同(上田利正紹介)(第二八二〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二八二一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二八二二号)  大型間接税導入反対に関する請願岩佐恵美紹介)(第二七四三号)  同(松本善明紹介)(第二七四四号)  同(安藤巖紹介)(第二八二三号)  同(田中美智子紹介)(第二八二四号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願松本善明紹介)(第二七四五号)  新型間接税導入反対に関する請願安井吉典紹介)(第二七四六号)  同(五十嵐広三紹介)(第二八二六号)  同(安井吉典紹介)(第二八二七号)  大型間接税導入反対等に関する請願正森成二君紹介)(第二八二五号) 同月十七日  新型間接税導入反対に関する請願安井吉典紹介)(第二九〇七号)  同外一件(安井吉典紹介)(第二九六一号)  新大型間接税反対に関する請願正森成二君紹介)(第二九五五号)  大型間接税導入反対に関する請願石井郁子紹介)(第二九五六号)  同(岩佐恵美紹介)(第二九五七号)  同(正森成二君紹介)(第二九五八号)  同(松本善明紹介)(第二九五九号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願岩佐恵美紹介)(第二九六〇号) 同月十八日  大型間接税導入反対に関する請願石井郁子紹介)(第三〇三七号)  同(浦井洋紹介)(第三〇三八号)  同(経塚幸夫紹介)(第三〇三九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三〇四〇号)  同(辻第一君紹介)(第三〇四一号)  同(寺前巖紹介)(第三〇四二号)  同(野間友一紹介)(第三〇四三号)  同(東中光雄紹介)(第三〇四四号)  同(不破哲三紹介)(第三〇四五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三〇四六号)  同(正森成二君紹介)(第三〇四七号)  同(村上弘紹介)(第三〇四八号)  同(矢島恒夫紹介)(第三〇四九号)  同(山原健二郎紹介)(第三〇五〇号)  同(安藤巖紹介)(第三一二六号)  同(石井郁子紹介)(第三一二七号)  同(市川雄一紹介)(第三一二八号)  同(岩佐恵美紹介)(第三一二九号)  同(浦井洋紹介)(第三一三〇号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三一三一号)  同(金子満広紹介)(第三一三二号)  同(経塚幸夫紹介)(第三一三三号)  同(工藤晃紹介)(第三一三四号)  同(草野威紹介)(第三一三五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三一三六号)  同(柴田睦夫紹介)(第三一三七号)  同(田中美智子紹介)(第三一三八号)  同(辻第一君紹介)(第三一三九号)  同(寺前巖紹介)(第三一四〇号)  同(中路雅弘紹介)(第三一四一号)  同(中島武敏紹介)(第三一四二号)  同(野間友一紹介)(第三一四三号)  同(東中光雄紹介)(第三一四四号)  同(不破哲三紹介)(第三一四五号)  同(藤田スミ紹介)(第三一四六号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三一四七号)  同(正森成二君紹介)(第三一四八号)  同(松本善明紹介)(第三一四九号)  同(村上弘紹介)(第三一五〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第三一五一号)  同(安藤巖紹介)(第三二九七号)  同(岩佐恵美紹介)(第三二九八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三二九九号)  同(経塚幸夫紹介)(第三三〇〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三三〇一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三三〇二号)  同(田中美智子紹介)(第三三〇三号)  同(寺前巖紹介)(第三三〇四号)  同(中路雅弘紹介)(第三三〇五号)  同(野間友一紹介)(第三三〇六号)  同(東中光雄紹介)(第三三〇七号)  同(藤田スミ紹介)(第三三〇八号)  同(松本善明紹介)(第三三〇九号)  同(村上弘紹介)(第三三一〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第三三一一号)  新型間接税導入反対に関する請願五十嵐広三紹介)(第三〇五一号)  同(安井吉典紹介)(第三〇五二号)  同(五十嵐広三紹介)(第三一五二号)  同外一件(安井吉典紹介)(第三一五三号)  同(五十嵐広三紹介)(第三三一六号)  同外五件(安井吉典紹介)(第三三一七号)  税制抜本的改革に関する請願井出正一紹介)(第三一二一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三一二二号)  同(宮下創平紹介)(第三一二三号)  同(若林正俊紹介)(第三一二四号)  電波によるたばこ広告廃止に関する請願斉藤節紹介)(第三一二五号)  新大型間接税反対に関する請願石井郁子紹介)(第三一五四号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願工藤晃紹介)(第三三一二号)  同(中路雅弘紹介)(第三三一三号)  同(正森成二君紹介)(第三三一四号)  同(松本善明紹介)(第三三一五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
  3. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 私は、自由民主党の一人としてと申し上げるよりも国民の一人といたしまして、今回の税制改革に関して、現在の税のひずみを是正するという意味においても、また将来の日本というものを思いはかるにつけ、やはり推進しなければならないと思っておるわけでございますが、私どもこの立場からも、総理が申されておりました六つの懸念あるいはそのほかにも幾つ懸念があろうかと思いますが、私たちが乗り越えていかなければならない幾つかのハードルがあるような気がしてなりません。そこで、せっかくお時間をお与えくださいました機会を活用させていただいて、私見を交えまして、いかにいたしましたら私どもが賢明にこのハードルを乗り越えてまいれるか、御質問させていただきたいと思います。  まず、私は過日静内町というところに参りました。静内町というところは御承知かと思いますが、かつて中曽根総理のときの売上税のときに、真っ先に商店の皆さん自民党を大量に脱党いたしまして、総理の舌が出ておった「この顔がうそをつくと思いますか」という、あのポスターで有名になったところでもございますが、その静内町に参りました。大変にうれしいことに、大量の自民党を脱党された方のほとんどがまた復党されておられたということでございますが、それと同時に、過日私が参りまして三時間ほど商工会の、特に青年部方々十五、六名と議論をさせていただいた中で、間接税という問題においても、これは将来の日本考えるときにやはり我々頑張らなきゃいけないなということでは皆さんが御理解をいただきまして、反対者が一人もおらなかったということでございます。  ただ、その中でもいろいろと意見はございまして、まず何よりも行政改革をもっとしっかりやらなきゃいかぬじゃないかとか、あるいは不公平税制の是正の問題、特にお医者さんの優遇税制の問題とか、あるいは宗教法人を初めとする公益法人に対する問題等々、いろいろと意見を先方も申しておったわけでございます。また、間接税を導入するというときには、これは例外なくすべてのものに課税をしてくださいという声が最も多くの方から聞かれた議論でございました。そのそれぞれが大変な時間を要する大議論になろうかと思いますが、きょうの私に与えられた時間は三十分でございますので、この議論はまた自民党税調の中で、あるいはこの機会を使って皆様方からいろいろと議論があろうかと思いますので、三十分の中で御質問させていただく問題に的を絞ってまいりたいと思います。  まず第一の、越えなければならないハードルは、やはり実施時期の問題ではなかろうかと思います。そして、この問題に関しますと、特に間接税の話になりますと選挙というものが必ず絡んでまいりまして、選挙の時期との絡みで実施時期をどうする、こうするというような議論が盛んなような気がしてなりません。また、野党の方はまず選挙国民の信を問わなければいかぬというようなことを申しますし、自民党は御承知のとおり選挙をにらんで、来年の四月とかあるいは秋に実施をしたいんだというような声が聞こえてまいります。そして、そのためにはいつまでに大綱をつくって、いつまでに法案を成立させなければいかぬ、どうもそういう議論が盛んなように思えます。  私が、私ども選挙区を歩かせていただいていろいろと国民皆さんに伺うことは、これは大変に国民にとって失敬千万な話じゃないんだろうか、特に、選挙税制改革とどっちが大切なんだ。どうも税制改革は、私たちは非常に大事なんだ大事なんだと言いながらも、選挙の方を重要視して保身を第一に考えているんじゃないか、そういうふうに国民には思えるようであります。私たちが今直面しております税制改革は、日本にとって大変に重要な税制改革であると位置づけるならば、これは当然私どもがそれこそ死を賭しても頑張らなければならぬというものでなければいかぬと思います。そのぐらいの心構えが必要かと思います。  私も、例えばこのように推進の論をするときには、まだ一年生でもありますし、選挙に大変に弱い人間でもあるわけでございますので、大変に身の危険も感じながら話さなければならぬわけでございますが、しかし、だからこそ選挙というものの時期に左右されずに、この税制改革はぜひ推進していただきたい。ですからある意味では、二年かけても三年かけてもという言葉も伺ったこともございますが、そのぐらいの議論も必要なこともあるかもしれません。あるいは自然に、国民理解がますます深まってきておる状況でございますので、ある適当な時期にそれこそいつか必ず将来はわかってくれるものだという理解が得られるならば、英断をもって実行していかなければならないかと思ってはおりますが、その辺の心構えにつきまして大蔵大臣、ぜひ御答弁いただければと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしましては、しばしば申し上げますように、シャウプ税制改革以来四十年近くたち、また十何年後に高齢化社会を控えております今の時点で、税制抜本改正をいたしたいということをかねて考えてまいりました。沿革的に申しますと、大平内閣の時代、もうぼつぼつ十年近くなりますが、そのころからいろいろの努力をいたしてまいりました。しかし、それなりに国民からも御批判がありまして、民間が減量経営をやっておるのに政府は一向にそういう努力をせずに増税を考えるのかといったような、これは国会の御決議にもあらわれたようなこともございました。また、昨年のように、十分内容国民に知っていただく機会を持たないままに、成案を書いたといったような御批判をいただいたこともございます。  いろいろの経験にかんがみまして、このたびは十分に国民の御意見を聞くという考え方から、過去の蓄積の上に立って政府税制調査会におきましてもそのような御審議を展開され、また党の税制調査会でも御承知のようにそういう審議をしておられるわけでございます。何とかこのたびは、国民の受容するところのものを案として国会で御審議いただきたいと考えておるのでありますが、選挙との関連につきまして、政府が別にそこをどうなければならないと考えているわけではございません。ただ、選挙のいわばテーマといたしましては、漠然と税制改正をどう考えるかといったようなことは、国民判断の対象にはなかなかなりにくいであろうと思われます。  具体的にかくかくの税制、かくかくの税制改革について国民はどう判断されるかといったようなことが、恐らく国民の的確な判断を求めるためにはより適しているのではないかと考えておりまして、そういう意味におきましては、いずれにいたしましても選挙は行われる、参議院の半数改選であれ衆議院の総選挙であれ、いずれにいたしましてもこれはある期間のうちには行われるわけでございますので、その時期におきまして私どもが、ならば成案を得てそしてそれについての国民の御批判を受けるということが、国民の御批判を受ける問題の提起としてはより適当なのではないか。しかし、選挙の前、後ということに政府が余りこだわって物を考えていることはございません。
  5. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 わかりました。どうもマスコミがいろいろと先走りをしておる面もあろうかと思いますが、できる限り選挙というものとは切り離した次元で、大いなる税制改革を御議論していただきたいと思います。  次のハードルは、よく間接税の中で言われております逆進性の問題でございます。  間接税というものは、もともと消費の額に比例するものであります。消費というものと、あるいは所得資産というもの、そのバランスを考えた中で今の税制改革を進めるべきだという議論でございますが、所得資産というものは、所有している者に喜びを感じるところもあろうかと思いますが、大いなる国民喜びはそれを使うところにあるだろうという意味では、消費に比例した間接税というもの、税制のあり方というものも、それはそれで当然理論としても成り立つものだと私は思っております。  しかし、そうは言いながら、逆進性部分、特に所得との関係をとってみると、どうしても間接税だけをとれば逆進性は否めないものだと思っております。その短所に対して、逆進性を補うものとしては財政的な支出、特に社会保障的な支出で補っていかなければならぬものだと思いますが、そのような対処の仕方は、人間一人一人のライフスパンにわたった中での一番厳しいときに、適当な補助あるいは控除というものを考えてさしあげるのが適当かと私は理解しております。  この「いっしよに考えませんか。これからの日本とこれからの税。」という、これは最新版でございますが、この中の七ページに、人間の平均的な二人の子持ちの家庭のライフスパンにおける支出と収入の部分が書いてございます。これをごらんになっていただくとおわかりのとおり、五十歳前後で、特にお子さん方が高校そして大学に進まれるころが一番人生の中で設計が難しい、非常に財政的に厳しいときだと私は思います。中間答申を読ませていただくと、一定の年齢扶養親族に対して扶養控除割り増し控除ということが書いてございましたが、この件に関しましてどのような具体的な割り増し控除を今考えておられるのか、お答えをいただければと思います。     〔委員長退席中川(昭)委員長代理着席
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 間接税が逆進的であるかどうかということ、それ自身所得税と違いまして累進構造を持っていないということは、もう極めて簡単に明らかなことでございますけれども、税全体がどのようにできておるか、またおっしゃいましたように、それからの歳入がどのように使われるかという全体の中で判断すべきことであろうと私は考えておりまして、我が国の現在の全体の租税構造あるいは歳出から考えますと、一般消費税といったようなものがある程度逆進的だと言われることは、私は必ずしも賛成ができない。また、最近英米等に起こっております風潮を見ますと、いわゆる所得税累進につきましても、余りに累進が急であることについて、社会活性化を失わせるのではないかというような議論すらございますから、垂直的公平、水平的公平ということは、古典的と申しますか、かなり昔から考えてきていたことと現代における先進国におけるそれとは、いろいろ違った意味を持っているのではないかというふうに考えております。  お尋ねの点でございますけれども、親として扶養親族のために一番出費の多い、生活の苦しい、そういう時点においてできるだけ租税負担を軽くしようというのは、私はまさに御指摘のとおりだと思っておりまして、このたびも所得税改正におきましては、一人の給料生活者が定年に達するまでの間できるならば一つの、場合によってはやむを得ませんが二つの、それ以上ではない累進一つライフステージをいわば終えていただきたい、こういうことを考えておりますのもそのような配慮でございます。  それとまたもう一つ、いわゆる教育費の問題につきまして、政府税調中間答申がございますが、この考え方は、教育費だけには限らないが、ある年齢扶養家族について、それ以外の扶養家族よりは余計いわば経費がかかる、その割り増し控除考えてはどうかということを中間答申で述べられております。これにつきましては、御承知のようにいろいろな議論がございます。教育費控除というのも一つ考え方でございますが、これは例えば大学に子供さんが行っている、そのための教育費控除を親が受けるというときに、実は同じ年齢層のもっと若い人たち義務教育だけを受けて社会でもう既に働いている、そして自分としての税を社会に払っておるというような例は幾らもございますから、その間の一つ公平感ということもあろうと思いますし、また非常に大きな教育減税でございましたら、それは相当の税収減になりますから、それでしたらむしろ所得税全体の減税にそれを組み込んだ方が公平なのではないかという議論もございます。  その間の接点として、教育に金がかかることもこれあり、ある年齢層控除割り増しにしたらどうかという考えだと思いますが、これにつきましては、税調におきましても中間答申ではそういうことを示唆しておられますが、私どもの党内でもいろいろ議論があり、政府といたしましても最終的にどういうふうに考えるかをまだ決定いたしておりません。しかし、これは長年政府税調の中でもお考えになっておられた問題でありますので、かなり御検討の結果の中間答申であろうというふうには私ども受け取っておるところでございます。
  7. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 ありがどうございました。  グラフをしみじみ拝見させていただくと、教育部分での支出が相当に達しているということで、苦しみを味わっておられるグラフだと思います。しかも、割り増し控除という話になりますと、例えば十万円程度割り増しですと、所得税が一〇%だとしてもせいぜい一万円で、お二人で二万円程度の実質的な減税という話になりまして、そのぐらいで果たしてこのグラフが是正されるかな、滑らかになるのかなという気がしております。できれば、教育費に関しては実額控除ぐらい大きなことをされたら、さらに日本教育の発展のためにもよろしかろうかと思う次第でございます。その懸念を申し上げさせていただいて、次は、なぜ中間答申において多段階課税方式のみになってしまったかということでございまして、私はいろいろと自分自身考えてみますと、まず最初にこの税制改革、特に間接税が焦点の税制改革において、間接税を導入するときに最初から完全を期しても難しいのではないだろうか、まずは及第点のようなものをつくっておいて、将来においてこれをより点数の高いものに導いていく必要があるのじゃないだろうか、理論的にすぐれているからといって簡単に導入できるものでもなかろうかというような気がしてなりません。  私自身が頭の中に描いておりました間接税体系は、実は小売売上税でございまして、セールスタックスと呼ばれるものでございます。その理由は幾つかございまして、まずは大きなものとしては転嫁が極めて容易ではなかろうか。多段階課税方式で一番気になるのは、やはり現実の世界において業者の中では強い者もおり弱い者がいる、弱者から強者へ物を売るときに、どうしても売る段階弱者が痛い目に遭うということが現実として起こっておるわけでございます。強者から弱者へ売る場合には、まず比較的スムーズに物事は進むのではないだろうか、転嫁がかなり容易になるのだと私は思います。  そうなりますと、やはりだれが強者でだれが弱者かという話になりますが、今の日本の世の中において流通の体系で一番弱いと考えられるのは消費者であろう、消費者に対して小売業者が物を売るときにはきちっと税金が転嫁できるのではないか、私はかように思います。それ以上にまた、事務負担量のトータルの量として考えてみたときに一番少ないのではないか。ということは、税務署員の数も増員するとしても、極めて少なくて済むはずだと思います。  ただ一方で、小売業者にのみこの負担が重なったり、納税義務が負わせられるということにおいて、そうでなくても小売方々は大変に心配をされておる状態でございまして、何でおれたちだけが間接税をかぶってしまうのかという話になろうかと思います。その辺のところは知恵を絞っていただいて、小売業者にとっても厳しいだろうけれども、それならば税を納めてくださるそのための事務量小売業者に偏るならば、その方々をしばらくの間は何かの形で面倒を見ようというような方策などが考えられるかと思いますが、まず御答弁いただきたいのは、いかにして多段階課税のみに税調中間答申でなってしまったか、お答えいただきたいと思います。
  8. 水野勝

    ○水野政府委員 まことにごもっともな御指摘でございます。アメリカ、カナダ等におきましてはこういったものが導入され、それが何百万、何千万人という日本人がアメリカ旅行の経験をいたしておりますし、そこらの感触も日本国内でも広がっているという面はあろうかと思われます。  しかし、今御指摘のございました新しい消費税をお願いするときに、この段階の方だけに御負担と申しますか事務手続を行っていただく。それから、焦点は転嫁でございますが、やはり転嫁というのは自然にできるものではございませんで、納税者の方に転嫁のために御尽力いただくわけでございますから、そういう意味も含めてのコストと申しますか、そういった点が一つの取引段階に集中する。しかも、日本小売業の特殊性からいたしますと、非常に多数の零細な小売業者方々がおられる、そうした方々だけにお願いをするということは、この税につきまして御理解を得、円滑に実施をしてまいるということからいたしますと、現実の問題といたしましては各取引段階、大きな方も小さな方もおられる、そういう取引段階それぞれの段階に御協力を願うという方が御理解を得られやすいのではないか。こういったところから、税制調査会におきましては小売売上税というものにつきましては、ここからまずお願いをするというところには至らなかったのではないかと私ども考えておるところでございます。
  9. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 私もアメリカに留学しておったときがございまして、最初の何日間かは、例えば本を買うときにそのラベルに書いてある金額だけを払おうとすると、いやこれじゃ足りないのだ、何セント余分によこせという話になってびっくりした経験がございます。しかし、一週間もすれば当然なれてしまうものであります。そういった意味でも、消費者にとっても一番わかりやすいのが小売段階での一段階でかける売上税ではないかと思います。売上税という名前がどうも余りごろがよくありませんで、これによってまた悪い印象を与えておるのかもしれませんが、その意味ではセールスタックスと呼ばせていただくとかなり親しみが増すのかなと思います。  また、それと同時に、もう一つセールスタックスの利点といたしまして、中間の段階、いわゆる卸売市場に対する問題はかなり薄くなるわけであります。特に、卸売市場などでは競りというものが頻繁に行われておりまして、競りに対する対策という問題はどのようにお考えになっておられるのか、ちょっと御意見を主税局長、お答えいただければと思います。
  10. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように競りという売買も行われる、その競りもございますし、また相対売買もある。そうしたあらゆる取引の中におきまして、相対の売買でも、この部分はもしこの価格で売れば、税額としてこれだけのものを納めていただくということは当然前提として取引をされる。それは競りの場合におきましても、こうした価格で競り落とせばあるいは競り売れば、この価格の税額は当然の前提として納付をされる、負担をされるということは商取引の中に一つの前提として入ってまいることでございますので、競りでございましても相対でございましても、そこに納税行為が前提とされているということにつきましては同じではないか。そういったものが前提とされて競りの価格が固まってくる、そこは同じように考えていってよろしいのではないかと考えておるところでございます。
  11. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 まだ小売売上税に対して、どうしてこれが最終的にだめになったのか完全に理解し得ないところが残っておりますが、残念ながら時間がございませんので、最後の問題といたしまして私が考えておりますのが歯どめの問題でございます。  歯どめは大変に大事な議論でございまして、特に中間答申などでも、国会の議決を必要とするということが最大の歯どめであるというふうに述べてございます。しかし、国会の議決を必要とするからこれが歯どめだと言っても、国民皆さんは簡単には納得をされないのではないだろうか。必要ならば、これは簡単に国会の議決で変えてしまうことができるだろう。だから、今我々がやっていることも、法律によって税制改革をしようとしているときでありますので、何かこの言葉がそらぞらしく聞こえてしまうわけであります。ですから中間答申の中でも、何らかの別の歯どめを工夫する必要があるというふうに述べておられますが、いかなる工夫をされておられるのか、もし頭の中でお考えでしたらお述べいただきたいと思います。
  12. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに税制調査会におきましても、そのあたりの議論が行われましたが、やはり御指摘のように租税法定主義でございます。税率は租税の中の中心的な課題ですから、そこはまさに国会の御議決、国会の御判断でございます。その点につきまして、何らかの歯どめが工夫できないかということも議論がなされました。答申にもございます。  ただ、では国会の決議、国会の御判断、これを歯どめをする方法が、現在の議会制度なりの国家の仕組みの中で一体考えられるのかどうか、そこになりますと、法律的にぎりぎり議論してまいりますと、それはなかなか問題であるということも議論がされたところでございますが、そうは申しましても、それは法制面も含め、何かそうした現実的な歯どめ策というものがあればひとつ工夫すべきではないか、まさに御指摘のような点から議論がされたところでございます。ただ、申し上げましたように、難しい問題ではあろうかと思います。
  13. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 時間がなくなってまいりましたので、最後の質問をさせていただきたいと思います。  歯どめのことでございますが、間接税の税率を五%にするとか一〇%を歯どめとするというようなやり方は、決してできないだろうと私は思います。まず、五%と定めて果たしていいのかという議論もあるし、一〇%なら、何だ−〇%までいくのかというような議論もあろうかと思います。ですから、パーセントで歯どめというものは決してできないであろう。  だとすれば、可能性があるとすれば直間比率が、これは当然日本あるいは世界の国々によって違うと思いますし、理想的というものが現在あるかどうかわかりません。しかしながら、今の目標が、例えば直間比率——直接税、間接税の比率を六対四にするのが目標であるというようなことを、お話もちらっと伺ったことがございますが、もしそうだとするならば、例えばそのような直間比率の中で大体こういったものをめどとするというようなことをある程度触れられていかれることが、国民に対して安心感を与えるという意味において、当然これも議決によって変えようと思えば変えられる話ではあろうかと思いますが、それ以上に国民皆さん方にとっては、ではどういう歯どめがあるのだということに対して、何らかの歯どめを現実的にお示しいただくことで相当安心されると思います。ですから、まだ時間が残っておると思いますので、ぜひ何らかの形の歯どめというものを具体的にお示しいただきたいと思います。もし御答弁いただけるならば、よろしくお願いいたします。     〔中川(昭)委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直間比率を先見的に考えるということは、やはり問題としては非常に難しい。今の我が国の現状のように偏ってまいりますと、これがおかしいということはもう申し上げることができると思いますが、それならどの辺かということは今度はなかなか申し上げにくくて、結局、今鳩山委員の言われましたことは、欧州などでもそうでございますが、このVATの税率を上げるという問題が起こりますときは必ず、ほとんど所得税を軽減するという問題と関連をして出てまいる。また、我が国におきましても、一度税制が整備された後でございますと、恐らくはそういう形でしかこの問題は取り上げられないだろうし、また国会も、そういうことでありませんとお聞き入れがないだろうというような物の考え方は、今後私ども行政をやってまいりますものの中でも議論をして、定着させていく必要があるのではないかと思っております。
  15. 鳩山由紀夫

    鳩山(由)委員 どうもありがとうございました。
  16. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員長代理 野口幸一君。
  17. 野口幸一

    ○野口委員 きょうは、二つ課題を設けましてお聞きをいたしたいと思っております。一つは、第一相互銀行にかかわる問題でございます。  去る三月二日の当委員会におきまして、実は、第一相互銀行にかかわる問題をお聞きいたしました。当時、たしか読売新聞だったかと存じますが、非常に詳しく最上恒産への不正融資についていろいろな記事が盛んに書かれておりまして、読売だけではありませんで他紙も随分取り上げておりますけれども、この問題を取り上げましてお尋ねをいたしたわけであります。そのときに、銀行局長の方から、個別の銀行の問題について固有名詞をもってお答えすることはできないというお話でございましたが、話はおおむねそういう形でありながらも、実態としては、その中身について御理解をいただいておったものと推察をいたしました。  その後、第一相互銀行にかかわる検査もおやりになっておるようでございますが、今日まで、私が指摘をいたしました部分について、そういったものが事実上発見できた、あるいはまた六十一年に検査をして、当時の中小金融課長の談話が新聞にありまして、改善するよう指導しておりまして是正はされているはずだということが新聞にも載っていた、ところが、実際は是正されていないで、逆にその不正融資がふえていたという事実があるじゃないかということを申し上げたわけでありますが、そういった関連について、お答えのできる範囲内で結構でございますから、この問題についてその後の経過をお聞かせいただきたい。
  18. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員からお話がございましたように、本年の三月二日の当委員会におきまして、委員から幾つかの点について御質問がございました。  その一つが、いろいろ問題があるようだが検査に入らないのかというお尋ねが一つ。それに対しまして、検査につきましてはいつ入るかというような問題については、従来から対外的に厳秘で来ておりますから御容赦いただきたいと御答弁申し上げたわけでございますが、その後、当金融機関に対しましては四月四日から検査に入っておりまして、現在検査中でございます。当銀行の店のうち、本店を含めまして七店舗に臨店して検査しているわけでございまして、現在も検査を続行中でございます。したがって、今後いつまで検査を続けるのかという点につきましては、現段階ではまだお答えできる状況にはなっていないわけでございます。  それから、この三月二日の委員会におきましての委員の御質問の具体的な問題点としての御指摘は、たしか、転がし融資というのが新聞に出ているけれどもこのことについてはどう考えているか、こういうことでございまして、この問題につきましては具体的な事案でございますので、答弁についてはやはり御容赦いただくよう申し上げたわけでございます。ただ、月初に融資を行いまして月末に返済する、したがって例えば月末で大口融資規制の問題をとらえた場合には、その分残高が少なくなるわけでございますから実態がその分だけゆがめられる、こういうことは当然あるわけでございます。ただ、一般論としてしか申し上げられませんけれども、通例検査に入ります場合には、そのようなことも十分検査官は念頭に置きまして同一に対する融資を見ておりますので、そういう意味では検査においても十分目配りされているということでございます。
  19. 野口幸一

    ○野口委員 私も指摘をいたしました、最後に言われました月初めに融資をして月末に解消するというやり方などをやって、融資額の理想的な減額を図っているというやり方についても御調査をなさっておるようでありまするから、ぜひとも明らかにして今後とも追及を続けていただきたい、こう思うわけであります。  そこで、最上恒産との癒着の関係でございますが、これは全く私見でございますからあるいは間違っておるかもわかりませんが、最近私、このために東洋経済が発行しております「会社四季報」、こういうものを読ませていただきまして、ちょっと第一相互銀行関係だけを拾ってずっと見てまいりました。特に株式の動きでありますが、実は五十八年一月から五十九年一月の新春号までずっと見てきたのであります。その前はわかりませんが、少なくとも五十九年一月現在において株主総数が三千三百三十六名、いろいろ大株主はたくさんありますが、そのうち平和相互銀行が二百五十二万株お持ちになっておるのであります。社長は青山保光さんという方でございます。ところが、その同じ年の五十九年三月の夏季号になりますと、株主総数が二千四百五名に減りまして、平和相互銀行の持ち株二百五十二万株が消えてしまいまして、なくなっておるわけであります。  通例として、相互銀行等の場合の大株主というのは、いわゆる大手の銀行、都銀と申しますかそういう銀行が持っておるわけでありまして、大体こういうものが離れる場合はそれらの残りの銀行のところに手分けをして持ってもらうというのが、銀行関係の方にお聞きをいたしますとそういう状況にあると言われておるのであります。ところが、その年の三月に消えました平和相互の二百五十二万株は、どうも違うところに株主が変わっている。それは第一相互が一たん買いまして、そして個人に株主を変えている。その個人というのは、今日問題になっておりますところの最上恒産株式会社代表取締役早坂太吉名義なる者にまず二十六万株を初めとし、この系列の方々個人にそれが分配されているという事実があるやに私は伺うのであります。  こういったことを考えてみますと、どうも小林社長が御就任になったとき以降にこれが消えている。その前の社長のときには厳然としてあった平和相互銀行の二百五十二万株が、次の社長になった途端に消えて個人に変わる、こういうような事実を見てみますと、どうも第一相互と最上恒産の癒着は、この時点以前からもあったのでしょうが、この時点に非常に強いものになってきたと思える、こう言わざるを得ないというような状況判断であります。  そこで、いろいろ司直の手も差し伸べられておるところでございますから、余り私自身がそのことについてとやかく申し上げる場にはございませんけれども、少なくとも今日、大蔵省の銀行局に対して誹謗中傷ともいうべき、あるいはまた恐喝まがいの手紙、あるいはまた電話等が最近頻々として、早く検査をやめろとかいろんなことを言ってきておるということをお聞きをいたしておりますが、銀行局長、そういうような事実はございますか。
  20. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 一般的に申しますと、行政当局あてに手紙で、あるいは投書、意見書等で、いろいろな御意見なり事実なりの通報、連絡等があるわけでございます。そして、検査等に入りますとそういうことがふえることもあるわけでございます。ただ、それでは具体的に今回の場合どうかということにつきましては、やはり申し上げるわけにいかないわけでございますが、通例の場合で申し上げますと、いろいろの御意見が届けられるということはまた事実であるわけでございます。
  21. 野口幸一

    ○野口委員 どうも答えにくそうですから余り——銀行局長を責めてもしようがないのでありまして、この第一相銀というのは、相互銀行法の第一条にもありますように庶民の銀行ということになっておるわけでありますから、いわば不正融資などはもってのほかであり、少なくとも一般庶民のためにあるべき相互銀行というものに早く立ち戻ってもらわなければなりません。したがって、今日あります疑惑だとか、世上言われておりまする諸問題の検査を多方面からお続けをいただき、かつ一日も早く解明をしていただき、早急にこの問題の解決を図っていただきたい。  今、お答えしにくかったようでありますけれども、私お聞きをいたしておりますと、大蔵省に対して、あるいは銀行局長個人あてにも、早く検査をやめろとかもうおまえの出世はそこでとまるぞとか、いろんなことを中傷した手紙が参っておるやに承っております。差出人は、何か三文字のローマ字で書かれているということまで私は聞いておるのであります。  しかし、いずれにしましても、それは事実かどうかわかりませんけれども、そういうことを私耳にいたしますと、大蔵省ともあろうところですからそんなことにびびることはないと思いますけれども、どうか最後までこの問題の決着は大蔵省の手の強い行政指導で臨んでいただきませんと、今後起こってくるような問題が仮にあったとするならば、前例を引き出して出てくる可能性もございますので、この第一相互の問題は単に一相互銀行の問題ではなくて、国民が期待している相互銀行の姿ということにひとつ十分な御配意をいただいて検査をやっていただかないと、私どもも御信頼申し上げている銀行局長でございますからそんな手を緩めるということはあり得ないと思いますけれども、そんなことにもおどかされずに敢然とやっていただきたいということをまず申し上げておきます。大臣からひとつ、そのことにつきましても決意をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま検査を続行中でございますが、必要がございます限りにおいて検査は、その目的を達しますまで最終的に進めなければならないと思っております。その結果として何も疑惑がなければ、まことに結構なことでございます。また、万一何かがございましたときには、厳正にそれに対して対処をいたさなければなりません。いずれにいたしましても、検査は徹底的に満足のいくまで行わなければならない、またそうさせる方針でございます。
  23. 野口幸一

    ○野口委員 つけ加えておきますが、これは大臣なんかもごらんでありますが、「会社四季報」の六十三年春季号、一番新しいのに第一相互銀行の最後のところに「最上恒産への過剰融資続く。」とまだちゃんと書いてございます。これは融資の情報でございますから、まだ続いているようでございますから、その辺のところもひとつよくごらんいただいて、単なる事件だけではなくて、この役員構成を初めいろいろな問題についても、これは口出しできない部分もあるということはよく知っておりますけれども、それはそれとして、やはり厳正なる行政指導をぜひともやっていただかなければならぬということを加えて強く申し上げまして、この項は終わらせていただきます。  そこで、第二番目の項目でございますが、郵貯の関係を少しお聞きをいたしたいと存じます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕  まず、郵政省に伺いますが、最近の郵便貯金の増加状況をお聞きをいたしたいのであります。私ども手元にいただきました資料によりますと、昭和五十五年に六兆一千六百五十七億という増加があったのでありますが、六十二年ではそれの十分の一以下、五千二百六十五億にとどまっているという、非常に衰退甚だしいという状況になっているということを伺うのでありますが、これは事実でございましょうか。また、その理由は一体どういうことでありましょうか、お尋ねをいたします。
  24. 木村強

    ○木村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、昭和六十二年度の郵便貯金の純増の実績五千二百六十五億円ということで、以前に比べまして先生御指摘の十分の一程度に落ちたということは事実でございます。この理由等でございますけれども、預貯金をめぐります環境が非常に厳しくなっておりまして、現在低金利状況が非常に定着をしておる、それから郵便貯金以外の預貯金の商品、自由金利の商品等も含めまして、結構多種多様な商品等が開発をされておりまして、そういった面との競争が激化しておるというような状況の中で、郵貯の増加状況は芳しくないという状況でございます。そのように考えております。
  25. 野口幸一

    ○野口委員 それと関連をいたしまして、この前我が党の堀先生からも御指摘がございましたが、昭和五十五年度前後におきます高利率において預入をいたしました定額貯金が、いわゆる集中満期という形で六十五年度前後に出てくるのではないか、こういうことでお尋ねがございまして、たしかそのときに、ちょっと数字が明らかでありませんが、三十兆くらいですね、集中満期を迎えることになっているということでございます。このことは、単に郵政省の郵便貯金だけの問題ではなくて、実は資金運用部の資金がそれだけ一気に減額をしていく可能性もあるというような課題がございます。  これは大蔵省にお聞きをするわけでありまするが、こういった集中的ないわば引き出しが考えられる時期に来て財政投融資に影響があるとするならば、大蔵省としても小口貯金金利の自由化をもう少し早くやっておかなければならないし、また郵便貯金の商品開発にある程度協力をしていかなければならぬ、そうでなければこの集中満期が救えないのじゃないか、こう思うのでありますけれども、大蔵省としてはそのような事態についてどのように今お考えになっていますか、お聞かせいただきたい。
  26. 足立和基

    ○足立政府委員 財政投融資の原資の観点からの郵便貯金の動向について、まず私からお答えを申し上げたいと思います。  先日も、当委員会で堀先生からそのような問題提起がございまして、私ども郵便貯金の今後の動向について軽々に申し上げる立場にはございませんが、たしか郵政大臣も、六十五年にかなりの額の満期が到来する、その満期到来いたしました郵便貯金が郵便貯金から逃げるということのないようなことで、できるだけの努力を払いたいというような御発言があったと思いまして、六十五年度に郵便貯金が一体どうなるのかということは軽々には申し上げにくいところでございますが、御指摘のような問題点というものは検討課題であるというぐあいに私どもも十分認識してございまして、今後の財投編成に当たりましては、いろいろな事態に対処できるよう工夫していきたいというぐあいに現在考えてございます。
  27. 野口幸一

    ○野口委員 この問題は非常に大きな問題でございますので、大臣を初め十二分にお考えのようでございますが、特に大口金利の自由化が進みます一方で、小口金利は依然として規制が行われているわけであります。国民の大多数を占める小口預金者というのは、郵便貯金を初め集中しているわけでありまするけれども、非常に不利益をこうむっているわけであります。したがって、そういった立場にあります郵便貯金の預金者といいますか、利用者に対しましても、何らかの手だてを講じていただかなくてはならぬだろうと思うのです。  特に最近の動向を見ますと、先ほども郵政省が答えましたように郵便貯金全体が増加していない、五十五年から比べればまさに十分の一に減ってきている。加えて、先ほども言いましたような六十五年度には集中満期があるというようなことを考えますと、この際郵便貯金は単に郵政省だけの問題ではなくて、国全体としても何らかの対策を考えていただかなければならない時期が来ている、特に一日も早く小口MMCの実施という問題を考えていただきたいと思うわけでありますが、この秋の小口預貯金金利の自由化を断念したと伝えられておるわけであります。これは事実かどうかわかりませんけれども、小口MMCは一体いつごろから実施をしようとされておるのか、あるいはまたどういうお考えなのか、ひとつお聞かせをいただきたいのであります。
  28. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いわゆる預貯金金利の自由化につきましては、既に世界各国とも主要国は自由化を完了しております。したがいまして、我が国としてもこの自由化に向かって積極的に取り組むべきであるという点につきましては、委員の御指摘のとおりでございます。したがって、この自由化の流れというのは、もとへ戻すことができないわけでございます。大蔵省といたしましても、したがって、これまでも自由化へ向けて段階的に進めてきたわけでございまして、特にMMCにつきましては、現在一千万円まで自由化をやってきております。  そこで問題は、お話にありましたように、今後それをどのようなタイミングで、どういう手順で小口化を図っていくかということでございます。その場合に、いろいろな検討すべき、あるいはそれについて慎重に対応すべき問題があるわけでございますが、その一つとしてやはり郵貯の問題、これにきちっと対応をしておきませんと、非常に問題が生じる可能性があるわけでございまして、したがって、これまでも臨調とか行革審答申等におきまして指摘されておりますように、こういう小口預金金利の自由化を進めるに当たっては民間と郵貯との間のバランスを、金利の上でも税制の上でも制度の上でも失することのないよう十分対応をとって進めていくべきである、こういうふうに言われているわけでございまして、現在郵政省との間にこの問題につきまして精力的に話し合いを進めております。したがって、その問題がある程度めどがつきましたら、さらに自由化を進めていく大きな問題がなくなるということになろうかと思います。  そのほか、小口自由化を進めていく場合に考えなければなりませんことの一つは、自由化を進めていきますと、諸外国にもそういうことが起こりましたように、一時的に中小金融機関の経営に大きな影響を与える可能性があるわけでございまして、その点につきましても見きわめながら進めていくということが必要であろうかと存ずるわけでございます。
  29. 野口幸一

    ○野口委員 いつごろからとは言えないといいますか、まだそこまで考えていないわけですか。いつごろからそういう問題に取りかかるのですか。
  30. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 これまでも自由化につきましては、ここ二年にわたりまして春、秋、春、秋と、こう進めてきております。この四月も自由化を行いまして、したがって、次はこの秋に何をやるかということでございますが、その場合に、先ほど申し上げませんでしたが、一つ十分見きわめる必要がありますのが、この四月一日からの利子課税の影響がどういうことか、どういう影響を与えるか。先ほど委員もおっしゃいましたように、郵貯の伸びが落ちてきているという点もあります。それから民間の個人の既成預金も、どうもいろいろの統計によりますと伸びが落ちているわけでございまして、この辺を見きわめながら進めていくということが必要かと思います。  ただ、従来春、秋とやっておりますので、秋にも自由化に向けて何らかのステップはとっていく必要があると考えておりまして、その中身につきましては六月ごろに、今申しました四月、五月の状況を見た上で決めてまいりたいと考えている次第でございます。
  31. 野口幸一

    ○野口委員 一日も早くといいますか、この問題については早く軌道に乗せていただきまして、小口預貯金者の保護のために頑張ってもらいたいと思うわけであります。  巷間伝えられるいわゆる郵便局の定額貯金の問題について、実はこの前も参考人に質疑をさせていただきましたときに、銀行協会の方から、現在の郵政省の定額貯金の問題についての御提起がございましたが、実はこの定額貯金が他の金融機関の商品等に対して非常に大きな影響を与えているという議論でございます。私は、たまたま郵政省の出身でありますから、これはもう御存じのとおりでございますが、それだから言うわけではございませんけれども、どうも全体の像というものを十分に御把握いただいていないのではないだろうか、こういうように思うのであります。  確かに定額貯金の利回りの問題につきまして、銀行等やあるいはまたビッグ、ワイドと言われるものに対する利回りの比較を見てみますと、郵貯の場合は半年複利であり、期日指定定期の場合は年複利。また、ビッグの場合は半年複利、いろいろございますけれども、前半、六カ月から三年前後までは確かに郵貯よりもむしろ他の商品の方が利回りがいいのでありまして、それが、長くなるにつれて、十年という今の郵貯の期間仮に置いていただきますと、その利幅がやや大きくなる。前半と後半とに分けてみまして、全体的にトータルをいたしてみますと、そんなに定額貯金そのものが市場を圧迫するほどのものになっていない、こういうことが言えるのじゃないかと思うのであります。  「各種金融商品の利回り比較」というものが出ております。これはダイヤモンド社の資料でありますけれども、一年後におけるところの利回りを考えた場合に、一番いい利回りになっているのは抵当証券の一年物、二番目が割引国債五年物というように、一番、二番があります。そして、十一番目に期日指定定期預金というのがありまして、ずっと下がりまして二十四番目に定額貯金というのがございます。その二つ下、二十六番目にワイドがありまして、その次がビッグというようになっております。  先ほどの話は、ちょっと逆になっておるようでありますから訂正させていただきますが、確かに一年後という段階では定額貯金が有利でございますけれども、二年後にはもう既にワイド、ビッグが定額貯金よりもはるか有位な利回りになっており、三年、五年、ずっとそれが続くわけであります。十年後になりますと、実はビッグとワイドの関係が四位、五位を占めまして、郵貯の定額貯金は実に二十三位に落ちるということになるわけでありまして、この商品の利回り比較を見ましても、決して郵貯の定額貯金自身が市場を圧迫しておるとは当然思い切れませんし、それからまた、いろんな自由化が進む中にありまして、この定額貯金の見直しなんていうようなものは考えるべきでもないし、また、いろいろな商品があってこれが自由化と言えるのでありますから、これがけしからぬというようなことを念頭に置いた自由化というものをお考えになるということ自身が、私は、いささかいかがなものかと思っている一人なのであります。  先ほど、私ちょっと思い違いをいたしまして、十年後になれば郵貯が高くなると言いましたが、それは逆であります。そういった商品の状況を眺めておりますと、特に先ほども申し上げましたように六十五年の集中満期を考えたり、あるいは今日の貯金の増加の状況を考えたりいたしますと、何らかの手当てをしなければ、今まさに郵貯は非常に危機に立ち至るということを言わざるを得ないのでありまして、どうか大蔵省の対応の中にありましても、郵政省と十分協議の上、一日も早く小口MMCなるものを初めとする商品の開拓について、御理解と御協力をちょうだいをいたしたいと思っておるわけでありますが、重ねて銀行局長の御答弁をちょうだいをいたしたいと思います。
  32. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 大蔵省といたしましても、今後とも引き続き郵政省と精力的に答えを出していくために努力したいと考えております。そこで、今委員がおっしゃいました定額貯金の商品性の問題についてでございますが、先ほど三十兆円ぐらい、八%の定額貯金の残高が六十五年度に来るというお話がございました。民間の場合ですと、預けましても一年定期あるいは二年定期ですとそこで過去の高い利回りはなくなりまして、そのとき低い利回りになっておりましたらそちらに預けかえていかざるを得ないわけでございますが、郵貯の場合ですと、一度高い利回りがつきますとそれが十年間保証される。しかも、そのときに過去の低い利回りのものは、半年たつと定額貯金は引き出せますから、高い利回りの方へ預けて十年間また利回りが確保できるという、そういう意味では民間にない非常に有利な商品であるわけでございます。  したがって、現在定期預金等の利回りが三%等々といたしますと、八%のものとの差額が五%以上あるわけでございまして、それが三十兆円あると、簡単に計算しますと一兆五千億民間と比べて高い利回りが支払われることになる。民間にとって非常に有利ではありますが、金融機関のサイドから見ますと、片方の運用レートは今の預金レートに比例しまして非常に低くなっておりますから、到底そういう商品は持ち得ないわけでございます。大幅な赤字になってしまうということでございます。したがって、今後自由にしていく場合にこの点につきまして、金融というものの大きな仕組みの中で郵貯も今後仕事をやっていらっしゃるということならば、民間とイコールフッティングといいますか、バランスをとりながら同様に自由にやっていただくというふうにならないかということで申し上げているわけでございまして、そういう中で今後とも郵政省とは、誠意をもって積極的に話し合いを進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  33. 野口幸一

    ○野口委員 数字的に言われれば、そういう点もあると思います。しかし、それはその一点だけを見ておられるのでありまして、その部分だけは例えば有利な定額貯金があるかもわかりません。しかし、現在ではそういうことはございませんけれども、仮に過去にありましたということになりましても、そういうおもしろみのあるといいますか、うまみのあるそういった商品も存在をするというところに郵便貯金のよさがあったわけであります。何か比較されるときは、民間の場合にそういったものだけを言われるわけであります。  一方、後から話をしようと思いますが、例えば資金運用の話、自主運用の問題なんかにいたしますと、今までは完全に大蔵省の資金運用部に一定の固定金利で預けさせられまして、にっちもさっちもいかなかった時代があるわけであります。したがって、何とかして郵便貯金を集めようということになりますと、少なくとも多額の預金者を集めていこうとすればするほど、いろいろな面において商品の有利な部分を出していきたいという考え方は当然起こるわけでありますけれども、それを一方では規制をされてしまっている、金利の部分あるいはまた定額貯金という商品の部分のみについて銀行あるいは他の金融機関との差があるじゃないかというようなことを言われるのはいささか、私は郵政省の肩を持つわけでありませんけれども、おかしいのではないかと思うわけであります。  自主運用の話になってまいりますので申し上げますけれども、昨年、いわゆる金融の自由化を控えまして、一部の資金を資金運用部から融資を受けて、総額十五兆円、初年度は二兆円、後毎年五千億円ずつふやしていくという五カ年計画におけるところの十五兆円案が出ておるわけであります。本来ならばこれは郵政大臣が財投に対して、自分のところで集めてきた郵便貯金の総額の中で、国の機関でありますからもちろん大蔵大臣と協議をして、それじゃ七〇%なら七〇%は資金運用部に預けましょう、あとの三〇%は自分のところで自主運用させてください、こういう筋合いのものでありますけれども、昨年の法律におきましては全部一たんは大蔵省の資金運用部に入れまして、そして新たに融資を受けるという形の中でわずか十五兆円ばかりの金額を自主運用させてもらっている。こういう部分だって郵政省側から言わせれば、非常に制約を受けた形の中で自主運用自身は行われているわけでございます。  また、郵便貯金の自主運用の融資の出し方でありますけれども、この一年間は毎月大体十二分の一ぐらいに分けて二兆円融資をされて、それによって運用を図ってきたようでありますが、本来ならば、財投におけるところの郵貯の割合はおよそ六〇%が固定的に支えているわけでありまするから、この資金十五兆を一遍に借りてもいいのでありますけれども、それは貸さない、毎年少しずつだ、これも理解をいたします。それじゃ、二兆円なら二兆円にしても二兆五千億にしましても、例えば自主運用の立場から考えますならば、非常に時期のいいときに何かいい商品がある、買いたい、今二兆五千億すべて大蔵省の資金運用部から借りられるか、融資を受けられるかといいますと、それができない。一定の金額に抑えられているという部分もあるわけであります。そうなりますと、勢い一番いい商品があるなと思っても買えないという部分も出てまいります。そういったことから考えますと、本来の自主運用は成り立っていないのではないかと思いますけれども、この自主運用の規模、あるいはまた今後どのようにこの自主運用をやらせていこうと考えておられるのか、ひとつ大臣に伺いたい。
  34. 足立和基

    ○足立政府委員 まず第一点でございますが、これまで長年にわたって郵政省の方から自主運用の要求がございました。また、財政投融資という観点から、公的資金を統合運用するという観点からはこのような自主運用は認めがたいという、お互い相入れない見解の相違があったわけでございますが、これを昨年私ども郵政省といろいろお話をいたしまして、今先生御指摘のように郵便貯金を一たん資金運用部に預託していただいて、その中の一定部分を郵便貯金特別会計金融自由化対策資金に貸し付けをしてそれを運用していただく、いわゆる自主運用と言っておりますが、このような形が結実した。それが法律に基づいてできるようになったということは先生御指摘のとおりでございまして、これは現在、公的資金である郵便貯金というものの存在を前提として考えられます最適な仕組みではないかと、私ども考えておるわけでございます。  郵政省サイドから見まして自主運用の要求が長年あった。そのよって来るゆえんというものは、資金運用部に預託をするという以上により高利な利回りを追求し、そしてこれから起こるであろう、あるいは起こりつつある金融自由化に備える、こういうことがねらいであったわけでございますが、今、昨年から実施しております制度に基づきましても完全にその目的は、一たん運用部に預けませんで先生のおっしゃる完全な自主運用と申しますか、そういう制度と全く同様の成果を上げられることになっておるわけでございます。  私ども、一たんは資金運用部に預託をしていただきますが、それによりまして財政投融資計画として毎年国会に御提出させていただいておりますその計画の中に、金融自由化対策資金というものが一体幾らだということもはっきり計上いたしまして、国会の御審議も得るという形になっておる現在の姿は、恐らく現行制度を前提にする限り最適なものだと考えておる次第でございます。  それから第二点の、二兆円なりあるいは二兆五千億円なりの毎年度の金融自由化対策資金の運用の問題でございますが、これにつきましても、郵政省と私どもとの間でいろいろ協議をいたしまして合意に達したわけでございますが、その合意の内容といたしましては、当初の運用予定額というものを前年度の月別の預託純増額のシェア、これが実績で出てまいりますので、それに基づきまして割り振りをいたしまして預託時に預託金の一部をお貸しをする、こういう形になっておるわけでございます。  このような制度、仕組みは、年度当初に毎月の運用予定額を決めておく方が郵政省といたしましても便利でございましょうし、また運用部といたしましてもその資金繰り上、年度当初に大体の年度の予定がわかるということで都合がいい、こういうようなことから両省で合意に達したものでございまして、先生の御指摘のような点がございますればまたさらに郵政省とも詰めてまいりたいと思っておりますが、現在、現行の制度に基づきましてさしたる支障は生じていないと私ども考えてございます。
  35. 野口幸一

    ○野口委員 確かに、まだ昨年の六月から始まったばかりでございますから、いろいろな資料を見せていただきましても、資金運用部に預託をしているよりは上回った運用益を持ってきているということは聞いておりますけれども、まだ始まったばかりでありまするから、買いたいときの商品が買えないとか、そういういろいろな場合にぶち当たっていないようでもありますから、余りそのことについて強く言うわけでありませんけれども、少なくとも目的が、資金運用部に預託する場合以上に高利回りに運用して、その運用益を郵便貯金の特別会計に帰属させるという目的に合うようにしていくとするならば余り制限をつけないで、いわゆる貯金の純増で帰属されていく、資金運用部に入っていく部分についてのみ貸し出しをしていく、運用をさせていくというようなかたくなな方針ではなくて、仮に話ができ上がりました毎年二兆円なり二兆五千億という数字を自由にある時期に出すなら出す、貸すなら貸すというように幅を持たせてもらうということも必要ではないだろうか。  さらには、資金運用の対象につきましても郵政大臣の裁断の中に任せていただいて、いわゆる制約された国債、地方債あるいは公庫、公団等債、金融債、金融機関への預金というようなものに制限をされたものではなくて、もう少し資金運用の対象も拡大させていくというような、いわば本当の自主運用に近い形をとらせませんと本来の目的は達成できないのではないだろうかと思うわけでありますが、その点につきましても、郵政省も言い分があるでしょうけれども、今ちょっと時間がなくなってきましたので余りお聞きをするわけではありませんけれども、郵政省の方から、今の金融自由化対策資金をより有利に運用するために郵政省はどのように考えているのかということについてお聞きをいたしたい。
  36. 木村強

    ○木村説明員 お答え申し上げます。  金融自由化対策資金ということで、昨年六月三十日から郵便貯金の資金の一部を直接に私どもが実質的な運用を図るというような制度の改善をさせていただいたわけでありますが、郵便局の利用者に対して、郵便貯金が金融自由化にうまく乗り切って、これからも郵便貯金事業として利用者の皆さんに満足のいくサービスを提供できるようにという趣旨でございまして、その趣旨を十分勘案してこの一年間やってまいりました。  私ども、始めたばかりでございますが、当初始めるに当たりましては、大蔵御当局ともよく相談をし、円満な中でスタートをしたわけでありますが、私ども本来の趣旨を移り変わる時代の中でより透徹していくということになりますれば、スタートしただけの状態がいつまでも続くということではなくて、情勢の変化に応じて、利用者のニーズに応じて、あるいは運用にまつわる環境の変化に応じて、種々の改善策を積極的に講じていこうというのが私ども考え方でございまして、その点につきましては、現在大蔵当局ともフランクな話し合いができる体制ができておりまして、申し上げましたような具体的な資金繰りの話等につきましては資金運用部の資金需要、それから対策資金の効率的な運用と両方の考え方、観点をもって調整をした上で、これを毎月ごとに借り入れていくという方式をとっております。  この一年間、さしたる支障はなかったわけでありますけれども、状況の変化に応じてもっと自由な、より高利、有利な運用ができるというような部分が出てこようかと思いますが、この辺につきましては、私ども大蔵御当局ともその都度、先生御指摘のような不自由な点があれば、責任を持って話し合いをしていくということとさせていただきます。  それから、こういった具体的なルーチンな資金繰りの話以上に、運用対象がお国のお金であるということで法律で制約をされております。しかし、私どもそういったお国の資金である、大切な郵便貯金の利用者からのお金であるということを頭に入れつつ、今後とも使用環境の変化に応じてそういったことを考えながら、より高利、有利な運用対象はどの辺にあるのか、ここまでは大丈夫だというようなことをよく御相談をして、昨年末大蔵当局とも運用制度の改善につきまして、運用対象の多様化に向けて御相談をしてまいっておるところでありますが、引き続き私どもの主張は大蔵当局にもお話しをして、その実現に向けて努力していきたいと考えております。
  37. 野口幸一

    ○野口委員 もう最後になりますが、重ねて申し上げますが、大蔵省が郵政省に対しまして資金の一部を貸し出して、そして自主運用させよう、こういうことになりまして一年近くたったわけでありますが、今郵政省の言っていますようにより効率的にいわば自主運用の妙味を発揮させるには、今後また大蔵当局と十分な協議を経て、本来の目的により近づけるあり方というものを模索してもらいたい。また一面では、非常に低金利の時代でもあり、いろいろな金融事情が複雑多岐に変化をする時代でありますから、その運用の衝に当たる方々も大変な頭も要るわけでありますけれども、同時にまた一定の枠のみに取りつかれておりますると、これまた固定した観念の中で固定した発想しかできない。そういうようなことがあってはならないわけでありまして、運用の妙というのはまずはそういったところから出発しなければならないということをつくづく痛感する昨今であります。  どうか今後とも、大蔵省対郵政省の間柄というのは切っても切れない間柄でありますから、郵便貯金の問題即資金運用部資金の課題という中にありまして、いかに郵便貯金というものを維持発展させていかなければならないかという観点に立つ大蔵御当局の御指導なり、あるいはまた御協議を切に希望いたしまして、最後に大臣からの御答弁をちょうだいいたしまして、私の質問を終わります。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 るるお述べになりましたように、非常に難しい問題でございますし、またしかし、国民経済から申しますと大切な問題でございます。昨年、幸いにして両者の間に一つの話し合いができました。これは両省のお互いにお互いの立場を考え一つのいい解決であったと存じておりますが、今また郵政省の説明員の話されることも、それはそれでごもっともなことでございますし、野口委員の言われますことはもとより、大局的に考えまして政府部内でよく調整をいたすべきことでございますから、私どもといたしましても、そういう心構えで今後とも処理してまいるつもりでございます。
  39. 野口幸一

    ○野口委員 終わります。
  40. 越智通雄

    越智委員長 次に、早川勝君。
  41. 早川勝

    ○早川委員 最初に、最近の税制改革の動きについて伺いたいと思います。と申しますのは、政府税制調査会が三月二十五日に素案を発表しまして、先月の二十八日には中間答申を出されて、今現在は自民党税制調査会が非常に精力的に審議されておりますけれども、この一カ月余、まあ二カ月近くなりますけれども動きを見ておりますと、そしてまた最近の新聞等の論調を見ましても、自民党税調がどうも初めに新大型間接税ありきと言うならば、政府税制調査会の答申の方は不公平税制について言及して、それが表面に出ていたんじゃないかというふうなとらえ方を私はしております。  最近のこういう税制論議について、大臣どのような考えを持っておられますか、ちょっと伺いたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先月の二十八日でございましたか、政府税調中間答申がございまして、それまでの審議を一応まとめられ、また今後考えられるべき事項というものについても述べておられました。それは一つは、この辺でもう一遍世論に聞いてみようというお気持ちもおありになったようでございますし、また私どもの党の方の税調が同じ問題を審議するということもありまして、その両方の調整を図る、そういうことも実際には大事なことであると思います。したがいまして、今私どもの党の税調の方が審議を続けておるのでございますが、政府税調中間答申というものを見ながら、党としてさらにそれをどのように取捨選択すべきかということを検討いたしております。  今、ちょっとお触れになりました不公平税制なんかのことにつきましても、中間答申一つの立場を述べ、私どもの党の税調はまたそれをさらにどうすべきかという議論を現にいたしつつございまして、いろいろな報道はございますけれども、まだ最終的にどうするということを決めておりませんで、私どもの党の税調もできるだけ早く直接税、間接税についても概略の方針を決めたいと、連日努力をしておるところでございます。
  43. 早川勝

    ○早川委員 それで、自民党税調が今審議されておりますけれども政府税制調査会が答申を出して全くの選択にゆだねた項目と、もっと具体的に是正すべきだと直言している部分がありますね。後者の問題について、自民党税制調査会が異なった結論を出した場合、法律を提出する政府としてどういう態度をとられるのか、伺いたいと思います。
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま大臣からも申し述べましたとおり、党の税制調査会は今まさに現在精力的に審議をなさっているところでございまして、いろいろ報道等もございますけれども、一わたり現在直接税の審議を終わって間接税に入っている。しかし、その直接税につきましても一わたり審議をされたということで、間接税の後でもう一回全体を見直すということですので、一つ一つ結論を出していっているわけではございません。ですから、これは最終的な段階でいろいろな点につきましての御議論をまとめていかれると思いますけれども、目下は、ではそれが政府税調の出しておるような中間答申とどういうことになるのか、そこらはまさに今後の審議のいかんでございますので、違った場合はどうとかというようなことは、まだ私どもも具体的に考えてはおりません。
  45. 早川勝

    ○早川委員 総理府が「社会意識に関する世論調査」を発表されました。大臣、お忙しいから目を通されたかどうかわかりませんけれども、ここで「社会的不公平・不平等感」という項目がございまして、税制がいわば第一位で、八〇%の人が税金問題については不公平感、不平等感を持っている、こういう結論が出ております。実はこれだけではなくて、私はこの調査の中で、それに関連してあと二項目ばかり関心を持ったことがございます。  一つは、「現在の日本のイメージ」についてどう思うかという項目がございまして、「日本は「福祉が充実している」国である」かどうかという項目がございます。それに対する結果は、福祉が充実している国だと思うと答えた者は四五・四%ですね。これに対して、そうは思わないと答えた人が四九・四%。これがトータルの内容なのですけれども、その中で、もう少し詳しく年齢別の数字が出ておりまして、それを自分でちょっと見てみたわけです。そうしましたら、三十から三十九歳、いわば三十代ですね。三十代の人は、今の福祉は充実しているかどうかという問いに対して、そのとおりであると答えた人は三九%なんですね、四割。そうは思わないと答えたのが五七・七%ですね。それから、四十から四十九歳の人たちはどう答えているのかを見ますと、福祉が充実していると答えた人が四三・八%ですから四四%、そうは思わないというのが五二・九%で五三%。つまり、充実しているかしていないかということを比べた数字では、三十代、四十代の層の方が充実していないと答えている率が非常に高いのですね。年齢層が上がって五十代、六十代、七十代以上になりますと、非常に充実しているという率が高いのですね。  そういうふうに考えますと、税制改正の中でも、素案のときは、前回の質問に主税局長が答えてくれましたように、中堅所得層という表現がありまして、今回は中低所得層というとらえ方に変えたのだと言われたのですが、その三十代、四十代というところは一番福祉がおくれている、どうもそれだけのしわ寄せを私たちは受けているのだと答えているのですね。そうすると、これからの税制の抜本改革をやるときに、今の間接税を入れる理由の一つに、所得の分布が均等になっているとか二十一世紀の問題とかという理由が挙げられておりますけれども、福祉の方は一番の働き手、中堅のところでおくれている、それだけ負担がある。一方、福祉問題、福祉の展望、グラウンドデザインというのはまだ出されていない。  こういう状況で考えますと、仮に新大型間接税を入れると、社会党の試算でいろいろ出しましたけれども、六百万以下とか四百万以下の人は増税だという結果が出るのですね。六百五十万円以下というと、六十一年度のサラリーマンの民間給与の実態調査で見ますと、ほぼ九〇%がそれ以下ですね。それから四百万円にいきますと六七%、約七〇%ぐらいですね。六十一年度の数字ですから、若干所得が伸びてきても、そんなに一〇%も変わることはないというようなことも考えますと、福祉が大変だ、それから増税だというようなことを考えますと、どうも新大型間接税を導入するというような情勢にはないのじゃないかと思うのですが、こういう考え方についてどう思われますか。
  46. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま御指摘のございました三十歳代、四十歳代、それから四十歳の半ばから五十歳の半ばぐらいの年齢階層と申しますのが、いろいろな生活実態調査等から見ますと一番支出もかさみ、逼迫する年齢階層のようでございます。従来からその階層につきまして、基本的に負担の軽減化が図られないかという点に焦点を当ててきているところでございますが、今御指摘のようなそういう中堅所得層だけでなくて、今回の中間答申は前回の抜本答申に比べまして、中低所得者の負担軽減にも大いに重点的に考えようという方向を出しておられるところでございまして、前回は一般的な人的控除につきましては据え置きという方向でございました。そういう点から見ますと、今回は、年齢階層からすればまさに三十から四十歳代、収入階層からしますと中低の所得階層への配慮を高めておられる方向で検討が進められてきていると思います。ただ、その控除とか等々の金額、具体的なものはまだ出ておりませんが、そういうことを詰めていく段階におきましては、御指摘のような御心配と申しますか階層への配慮につきましては、今後具体化される段階で十分措置、処理がなされるのではないかと私ども考えておるところでございます。
  47. 早川勝

    ○早川委員 先ほどの議論の中にも逆進性の問題がありましたけれども、その問題と同時に福祉の問題、こういうことを考えますと、一般に広く負担を求めるような大増税というのは不可能じゃないかなと思います。減税が何兆円という話がありまして、その具体的な中身が出たときに試算すれば恐らくまたすぐわかると思いますけれども、経済状況を見ても、そして国民生活実感から見ても、なかなかそういう環境にはないのじゃないかと私は思います。  それからもう一点、この世論調査の中に関心を引かれた項目が一つあります。それは、「国政に民意は反映されているか」という項目があるのですね。これに対して答えが出ているわけですけれども、反映されていると感じる者は三五・七%、反映されていないと感じる者が五二・九%なんですね。これはいつ調査されたかというと、昨年の十二月三日から十六日ですね。そして、反映されていないと答えた中で一番厳しい数字が出てくるのは男子の三十代、四十代。例えば三十代ですと、六〇%が反映されていないと答えていますね。それに関連して「民意はどうすれば国政に反映されるか」という問いがあります。一番多いのは「政治家が国民の声をよく聞く」ことだ、これが率にして二七・六%なんです。こういうことを私が自分なりに解釈してみますと、反映されていないということと、政治家はよく耳を傾けろ、それから不公平感税制にある、実施時期が昨年末だ、そうすると、やはり売上税が——大臣は先ほどいろいろな手続的な面で反省しなければいけなかったということを言われたのですけれども、そうじゃなくて、やはり売上税、すなわち大型間接税はだめだというのが昨年のあの四月段階国民の声だ、意見だと思うのですね。どうもそれがこういう結果に出た一因じゃないかと思うのですけれども、大臣はどう考えられますか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと今だけのことから、それが売上税のことであったかどうか何とも申し上げかねますけれども、さっきからその世論調査のお話を伺っておりまして、やはり三十代、四十代の人というのは理想が高いのだと私は思いますね。それは、つまりそれだけいい日本に育ってきたのだと思いますので、それより年上の人は昔の日本という、きょうまで苦労してきた道筋を、やはり多かれ少なかれ知っておりますから、これだけでも随分よくなったものだという思いが強いのじゃないでしょうか。しかし、若い人たちはもういいところから育ってきておりますから、もっとよくなってしかるべきだという気持ちがいろいろなところへ出ているのじゃないか、私は、今福祉のことも民意云々のこともみんな含めてそういうふうに承っておりましたが。
  49. 早川勝

    ○早川委員 それじゃなくて、やはり不公平感の一番高いのは何かというのが、八〇%の人は税金だと答えているのですね。そのファクターも入れて考えると、確かに今大臣が言われたような今までの生活環境なり、家庭の中での形成された意識というものはあるわけですけれども、そうじゃなくて、税金の問題にしろ政治の問題、まさに政治の問題として答えられているわけですから、そして福祉の問題しかりですね。そういうことを考えますと、やはり不満というのが強いのじゃないかなというふうに私などは考えます。  そこで、先ほど主税局長が答えられたわけですけれども政府中間答申が出て、それを受けて自民党税調議論をされていて、そしてその過程であって、結論はそういう意味では出てみなければわからないということになるわけですけれども、ただ、出てから考えるのじゃなくて、政府税制調査会というのはたしか総理大臣の諮問機関になっているわけですね。そういうことを考えますと、この中間答申に盛られたそれぞれの項目について、今積極的に政府の方が意思表示していい項目が多々あるのじゃないかと思うのです。中間答申の基本的な考え方のところを読んでみたわけですけれども税制改革の基本原則というのは、第一には負担の公平、これが第一に必要なこと、それから中立性、簡素、それからあまねく広く負担してもらうことが必要だというようなことが書かれております。そこの中によく見ますと、とにかく執行面を含めて公平でなくては、とてもじゃないけれども税制改革国民は受け入れないだろうというふうに記述されております。  そこで、まず最初に「負担の公平の確保」という項目で、個別の検討項目が書かれているわけですけれども、まず執行面をきちんとしなければいけないということが書かれているのですね。  そういうことを考えますと、この答申を受けて大蔵省として、申告水準の維持向上策ということで、税務執行、それから制度面の整備、それから納税者番号制度、この三つの項目を書かれているわけですけれども、執行サイドからしてこの答申をどのように受けとめられておるか、伺いたいと思います。     〔委員長退席中川(昭)委員長代理着席
  50. 日向隆

    ○日向政府委員 申告納税制度のもとにおきましては、納税者が漏れなく正しく申告するためには、私どもといたしましては、第一に納税道義の高揚、第二に正確な記帳の実施等納税環境の整備、第三に課税上有効な資料、情報の収集、蓄積に基づいて、質、量ともに充実した税務調査実施が大切である、こう考えております。これを基本としつつも、最近における社会経済情勢の変化に即応して国際課税の充実、本委員会でもたびたび御指摘がございましたが、及びコンピューター化に対応した課税の充実に努力することが、私どもとしては最重点の施策として考えているところであります。  御指摘の、中間答申における負担の公平の確保のための税務執行体制の充実につきましては、今私が申し上げましたような基本的な考え方のもとに、これを推進するための人的、物的な条件の整備並びに各種ノーハウの充実について、今後とも私どもとしては一段と努力してまいりたい、かように考えております。
  51. 早川勝

    ○早川委員 そういうときに新聞で脱税の記事が出ましたが、脱税というのは、フジタ工業の記事を拝見したのですけれども、その中にいわば使途不明金というような形で、税務当局の調査に対しても絶対に明かすことができないんだというような記事を読ませてもらいました。たしかフランスなどは、そういう場合に倍額を取ったんじゃないか、そういう仕組みになっているかと思うのですけれども、こういう記事を読みますと、一般の国民にとって、納税者にとってはどうもすっきりしないわけですね。もっときちんとやってほしいし、ましてや対象の幅広い、低い税率でというようなことが考えられている状況を見ますと、やはり明らかにさせなくてはいけないわけです。どうしてもという部分に対して、何らかの手だてが講じられないものかなというふうに感じるのですけれども、この点について伺いたいと思うのです。
  52. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま委員御指摘の個別の事柄につきましては、私から言うことは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に使途不明金の取り扱いにつきましては、委員御指摘のように、真実の所得者に課税するというのが大原則でございまして、かような見地から、私ども年々実施する税務調査に当たりましては、真実の所得者がどこであるかという使途不明の解明には全力を注いでいるところでございます。しかしながら、御承知のように、その解明率は大体二〇%前後にとどまっておるところでございまして、この点、私どもも反省して、さらに一層の解明の努力を上げなければいかぬ、こう思っております。しかしながら、その解明に至らなかった場合におきましては、その使途不明を行いました当該法人において、現行税法のもとで許される範囲の適正な課税を行っているということで御理解を賜りたいと思います。
  53. 早川勝

    ○早川委員 そこで、個別の検討項目について、いわば星取り表みたいな形でマスコミ等も取り上げているわけですけれども、六項目実は負担の公平の確保のためにということで答申が指摘しております。「有価証券譲渡益課税」それと「社会保険診療報酬課税の特例」「みなし法人課税制度」それから「土地取得に係る借入金利子の損金算入制限措置」五番目が「公益法人課税」さらに「赤字法人課税」が具体的に指摘されているわけですが、自民党税制調査会の今日までの審議状況を見ますと、社会保険診療報酬もみなし法人も、それから赤字法人課税の問題、まあ公益法人課税の問題は後ほど触れられるのかなというふうに思いますけれども、いわば六項目のうち半分くらいですね。あとは見送りだというような状況なわけです。  こういう状況を考えますと、どうも公平のために、それを第一にした税制に取り組もうという姿勢に疑義を持つわけですけれども政府としては、こういう今日の状況をどのように理解されているのか、伺いたいと思います。
  54. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま六項目、御指摘ございました。キャピタルゲインにつきましては、これはとにかく原則課税でいこう、これは政府税制調査会、党の税制調査会も基本方針は固めておられるところでございます。社会保険診療報酬につきましては、とにかくこれはまず事業税の問題から取り組むべきだというような政府税制調査会のあれがございます。党の方におきましてはこの五段階所得課税につきましても、これはやはり放置はできないということで現在検討が行われているところでございます。みなし法人課税につきましては、政府税制調査会の方も昨年の改正で報酬額に実質的制限が設けられた、これが去年の改正でございますから、当面はその実施状況を踏まえながら検討していくのが適当ではないか、これが政府税制調査会中間答申でございますので、党の方もおおむねその方向で考えられて、現在、去年の改正に加えて何か新しいものをここでお願いをしようということではない、これは政府税制調査会も党の方も同じ方向でございます。  土地の借入金につきましては、今党の方でも鋭意具体的な検討が行われているところでございます。公益法人、赤字法人の問題につきましては、政府税制調査会中間答申もいろいろ議論は進めておられるところですが、さあそれではどのような方向が考えられるかという具体的な提案と申しますか、指摘というところまではいっていない。今ここらは党の税制調査会審議の途中でございますが、なかなか決め手となるようなものをここで具体的に提言をするということになると相当なお検討しなければいけない、そういう空気で審議をしておられるようでございます。したがいまして、政府税制調査会の方向と著しく異なった方向で党での検討が行われているということは、必ずしも言えないのではないか。しかし、いずれにいたしましても現在審議中でございますので、その全体の結果を見て、また私ども政府税制調査会とも御相談をし御審議を願いたい。目下は、党の方の経過を注視しておるところでございます。
  55. 早川勝

    ○早川委員 その個別事項についてもかなりの部分が残されているという答弁なんですが、法人税制についても、例えば課税ベースの項がありまして、引当金、減価償却、租税特別措置、それから外国税額控除、こういう指摘がされているわけですね。既に自民党税制調査会においては、この賞与引当金というのは見送りだというような結論が出たと聞いているんですが、どうも中間答申のねらいとしているところとは違うと思うのですけれども、このままの結論が自民党の答申として決定した場合、政府としてどういう対応をされるのかなということをちょっと伺いたいと思います。
  56. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の引当金、特に賞与引当金につきましてはいろいろ議論がされておる、いろいろな意見が出てきておるところは事実でございます。この賞与引当金でも五兆円の規模のものでございまして、大変大きなものでございます。そこでこれを廃止するということにつきましては、一応前回の抜本答申では指摘され、また昨年もそうした中身で一度は御提案を申し上げたところでございますけれども、廃案にはなっているところでございます。今回、賞与引当金は廃止、あるいは制度の縮減、そういった面も含めまして、もう一回それでは検討しようというところで検討の途中の段階でございますので、これにつきましてもなおその審議を注視してまいるというところでございます。
  57. 早川勝

    ○早川委員 今の状況を見ますと、どうも不公平という国民が抱いている税に対する不公平感、そしてその税の中でも、というのは既に指摘されている、今はもうここに出ましたような項目なわけですね、どうもその事項が進んでいない。なかなかいかずに、きょうから間接税問題に入っていってしまうと、もう一度フィードバックして全体構造を見直すんだと言われましても、そうじゃなくて、初めに不公平税制をきちんと是正するステップを踏むべきだということが必要だと思うのです。現に税制改革の基本原則、先ほど四つ答申が指摘しているのも、負担の公平と中立性と簡素だ。そして、四番目に長々と、なかなか一言でまとめにくい原則が書いてあるわけです。所得の平準化だとか、こういう状況を考えると、二十一世紀に向かっては薄く広く負担してもらうことが必要だという項目が書いてあるんですね。  やはり国民にとってわかりやすい政治をするためには、きちんとこれに順序があると思うのです。第一原則は、負担の公平だということがきっちりわかるように、そしてそれに関連する事項を一つ一つきちんと結論を出して議論を進めていただきたい。また、そうすることが、最初の世論調査結果に出ました税の不公平感をなくすことであるし、国政への民意の反映につながるのではないかと思いますので、ぜひそういう方向で進んでいただきたいし、残念なことに自民党税調の結論が非常にぶれていった場合、これは大臣の決断で、やはり公平こそ第一だという方針で臨んでいただきたい。その決意のほどを、ちょっと披瀝していただきたいと思うのです。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まだ時間もあることでございますし、党の方の審議にも、私どもも実態上はいろいろ議論も申し上げることができるようなことになっておりますから、十分努力をいたしたいと思います。
  59. 早川勝

    ○早川委員 次に、やはり税制の問題なわけですが、これから税制の中に外国税額控除の問題が入っていたわけですけれども、いわば国際化の中での税制という問題もこれから大きな課題になると思います。  そこで、昨年の秋ですか、暮れに移転価格税制のいわば第一号に適用されたケースがございましたが、ごく簡単に説明いただきたいと思います。
  60. 日向隆

    ○日向政府委員 たしか昨年の十一月二十七日以降であったと記憶しておりますけれども、日産、トヨタに関しまして米国内国歳入庁が移転価格課税をいたしまして、それを受けまして納税者等から日米租税条約に基づく相互協議の申し立てがありまして、この条約の誠実な実施ということで、私どもアメリカの国税当局とこの条約に基づく交渉をいたしました。その結果、条約に基づいて対応的措置と申しますが、それをしたことについて新聞報道等がなされたことは私ども承知しておりまして、大筋においてこれをあえて否定するものではございません。
  61. 早川勝

    ○早川委員 ここで移転価格税制、自動車のケースだったわけですけれども、この制度で一番難しいというのは、簡単に言えば適正な価格ですね。独立間の取引価格という表現になっておりますけれども、日産、トヨタの場合にはどんな形で決められたのかということを、もしお話しいただけるのなら聞かせていただきたいと思います。つまり、四つの方式があるということは一般論としてわかるのですけれども、ちょっと伺いたいと思います。
  62. 日向隆

    ○日向政府委員 移転価格課税におきましては、適正価格といいますのは、いわゆる独立企業間価格というものをいかにして算定するかということでございまして、これにつきましては委員が御指摘になりましたように四つの方法があるわけでございまして、その第一は独立価格比準法、通称CUP法と言っております。その第二は再販売価格基準法、通常RP法と言っております。その第三は原価基準法、CP法でございますし、こういった三つの方法によりがたい場合には、その他これらに準ずる方法ということが規定されているわけでございます。  現実に、御指摘になりました日産、トヨタの事案につきましてどういった算定方法がとられたかということにつきましては、これは私、従前本院におきましても御答弁申し上げましたように、日米租税条約第二十六条及び税法上の守秘義務というものがございますので、この見地から具体的に言うことは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に申し上げますと、当該価格がまず第一に、どういった形でその製品について独立企業間価格を算定したら最も合理的であるかということを議論いたしまして、そこで例えばCUP法ならCUP法、RP法ならRP法ということが最も合理的な算定方法であるということが判断されますと、今度はそれにつきまして具体的に、その比較対照取引として取り上げるべき取引はどんなものであるかということを議論いたします。  そして、具体的に比較対照取引として取り上げた取引について、今度はその第三者間の取引と当該取引との間におけるいろいろな具体的な条件の差異、例えば取引条件等がいろいろと違いますし、時期等も違います。そういったものにつきまして、その問題の取引を真に比較可能にすることができるようにするためには、今私が挙げました具体的な条件の違いをどういうふうに調整したらいいかということを議論いたしまして、そこで合意に達しました調整をいたしまして、そこで最終的に最も合理的な算定方法である方法によりまして具体的に算定した価格はどういったものであるかということを決定するに至る、こういうプロセスを経るということでございます。
  63. 早川勝

    ○早川委員 車だったのですけれども、新聞等を見ますと電機だとかハイテクだとか、日本が同じように輸出をやっているわけですけれども、そういう問題に波及するおそれはないのかどうかということと、あの場合の経過はたしか最初、ダンピング法違反でということだったのですけれども、どうも今度はそれが逆に、簡単に言えば高い価格で入れたのじゃないかという形で、百八十度逆になって問題になったわけですね。そうすると、今日本でいろいろな多くの商品が出ていっているわけですけれども、日産、トヨタのような事例が、しかも十年間、十年前から営々として続いていて結論が出たわけですけれども、そういうさかのぼってというようなケースはもうないというふうに考えてよろしいものでしょうか。
  64. 日向隆

    ○日向政府委員 委員承知と思いますが、六十二年七月一日現在で、調査部所管法人で見ますと、外国に子会社、つまり移転価格課税を適用する場合の対象国外関連社といったような子会社として進出している本邦企業の子会社の数は八千四百ございますし、例えば今御指摘になりました米国で見ましても千六百六十二社ということになっておりますところから、こういった子会社がアメリカにおいて活動した場合、その価格設定、親子会社間におきます価格設定が独立企業間価格から照らして不適正であるという判断を受けました場合には、これはIRSとしては当然移転価格課税を適用してくる、こう予想されるわけでございまして、理論的にはこの点は十分今後ともあり得ることだと思うわけであります。  ただ、私どもが移転価格課税について正式に知り得ますのは、日米租税条約に基づいて納税者等から相互協議の申し立てがあった場合でありますが、現時点で、そういう意味での正式の相互協議の申し立てを私どもは今受けておりません。
  65. 早川勝

    ○早川委員 今現在じゃなくて起こり得る、一般論としては成り立つわけですね。  そこで、ごく簡単に言えば、所得移転が向こうに起きる場合には、向こうの法人税が安いからということになるのじゃないかと思うのですが、このトヨタ、日産の場合、どうしてああいうことが起きたのか、これをもう一度伺いたいと思います。ダンピングと言ったら割とわかりやすいのですけれどもね。
  66. 日向隆

    ○日向政府委員 今私が申し上げましたように、私どもがこの問題について正式に知り得ますのは、日米租税条約に基づきまして二重課税排除のための相互協議の申し立てがあってからでございますので、それ以前のこの諸事案につきまして、どういう事柄があったかにつきましては私ども正確に承知しておりませんので、ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  簡単にということでございますから一般論として申し上げますと、やはり先ほど申し上げましたように親子会社間におきます、日本における親会社、アメリカにおける子会社間におきます製品の価格設定におきまして、独立企業間価格と比準いたしまして要するに高い価格で輸出しているという判断がございますと、日本の親会社にその分だけ所得が留保されますので、アメリカといたしましては、アメリカに所在する子会社にその所得を移転するようにという要請を四百八十二条に基づいてしてくる、これが今回のケースであろうかと思っております。
  67. 早川勝

    ○早川委員 いや、そういう意味での易しさじゃなかったのですけれども、そこで日本でも六十一年の税制改正で、この税制が租特で認められたわけでして、そうしますと六十二年、六十三年度ですか、三月期にしますと二度適用されて実施されているわけですが、アメリカへ日本の企業が、今答弁ありましたように千六百六十二社、ほかの国から逆に日本に多国籍企業の一環としての子会社が進出しているわけですが、それらのものに対して、前回の事例と逆、価格の問題を含めてですが、逆の事例も起こり得るわけですね。これらについて、その実情とそれらの対応力ですか、どのようになっているか、伺いたいと思います。
  68. 日向隆

    ○日向政府委員 今御指摘になりましたように、六十一年四月から開始する事業年度につきまして、我が国におきましても移転価格課税を適用することができるということになったわけであります。したがいまして、その申告書は早いもので昨年の六月期ぐらいから申告されてくるわけでありまして、私どもといたしましては、まず昨年の六月期以降申告されてまいりました移転価格課税の申告書につきまして、実態調査を実際の実地調査の際にあわせて行いまして、その実態調査上問題があるものから、さらに移転価格課税の見地から実地調査に移行するものを抽出するという方法をとりあえずとっております。  その実情を正確に申し上げますと、資本金一億円以上の調査課所管法人で申し上げますと、既にこの実態調査は二百五十件ほど実施しておりまして、この結果、移転価格課税の観点から問題があると認められる事案として現在約三十件程度を把握しておりまして、これにつきましては、具体的に早急な移転価格課税を適正に行う見地から処置をとりたい、こう思っておるところでございます。
  69. 早川勝

    ○早川委員 実は「ファイナンス」、大蔵省の広報誌なんですけれども、それを見ておりまして、この解説を読んでいる中で、国税庁の職員の問題が具体的な数字として出ていたのですけれども、どうも少ないのじゃないかという率直な印象を持ったわけです。国際調査専門官が日本の場合二十四名、それから調査情報専門官が六名、それから東京、大阪、名古屋にそれぞれ部屋を設けたということが書かれているわけですが、それに対してアメリカの国際調査専門官は四百名という数字が載っていたわけです。日本の方は二十四名、余りにも開きがあり過ぎるということが一つと、日本はこれからどんどん海外進出していくわけでして、そういう意味で先ほどの企業の価格形成への介入という問題、そして守秘義務との問題であると思うのですが企業間の価格の算定の問題、もう一つは情報の把握の問題があると思うのです。この二つが価格税制の非常に難しい点だという指摘がされているわけですが、こういう点を考えますと、名称はともかくとして、こういう国際的な税制にかかわる専門官がちよっと少な過ぎるのじゃないかという感じを持つのですが、仕事の面でそういう支障はないのですか。
  70. 日向隆

    ○日向政府委員 既に御案内と思いますけれども、アメリカは移転価格課税につきましては長い歴史を持っておりまして、まず第一に国内の関連社間におきましてこの移転価格課税を適用いたしておりましたところ、多国籍企業がどんどん出てまいりましたので、たしかこれを一九六八年以降国外の関連社に対しましても適用するということを積極的に行ってきたところでございます。こういった長い歴史を有するアメリカといたしましては、確かに御指摘のように、私四百人から五百人というふうに伺っておりますけれども、いわゆるエコノミストを擁しておりまして、このエコノミストが御指摘にもございましたが独立企業間価格の算定という、すぐれてエコノミカルな事柄につきまして専門的な見地から、分析、検討を加えるというスタンスをとっているわけでございます。  御指摘のように、我が国におきましてもそういった見地から専門家を養成し、かつその専門家による調査、指導を行うということが望ましいわけでありますけれども、何分にもまだ経験が浅うございますので、私の記憶ではたしか直税分を含めまして国際調査専門官は二十六人だと思いますけれども、二十六人前後の国際調査専門官でございます。この点は私ども今後とも力を入れまして、その数の確保と同時にその内容、質の問題もあわせて充実していかなければいかぬと思っております。  と同時に、やはり御指摘にもございましたように、これにつきましては価格形成に関する正確な資料、情報がどうしても必要でございますし、相手は外国に所在する、我が国から申し上げますと親会社でございますから、やはり租税条約の情報交換の規定を活用いたしまして、この親会社におきます価格形成に関するデータを十分取り寄せて、そしてこれを検討するというスタンスで行かなければいかぬと思っております。しかしこの点につきましても、やはり租税条約の運用に当たりましては相互主義というものが強く要請されておりますので、私ども、アメリカを初めとして各国と相互主義の問題あるいはその資料、情報をいかなる見地からどの程度必要とするかという必要性の問題等、十分吟味するということを常々それぞれのチャンネルを通じてやっておりまして、今後ともそういった事柄を通じまして十分な調査、指導をしてまいりたい、こう考えております。
  71. 早川勝

    ○早川委員 これからの国際化の中で非常に重要な分野になるのじゃないかと思いますので、ぜひ力を入れていただきたいと思います。  それから週休二日制にかかわりまして、来年の二月から実施ということでずっと進んできているわけですが、金融機関が完全週休二日制になる場合に、前回の例で見てみますと、第二、第三土曜日の土曜休日の際ですが、政府金融機関が一年二カ月くらいずつ全部おくれて実施されているわけですね。どうしてそういうふうに、銀行が実施されたときに政府系の特に公庫がおくれたわけですけれども、その理由と、それから今回完全週休二日制移行に当たってそういう事態は避けられるのかどうか、完全に同じ実施ができるのかどうかということをまず伺いたいと思います。
  72. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 我々といたしましても、金融機関等の週休二日制実施に当たりましては、やはり郵便局を含めた全金融機関、その中には政府関係の金融機関も含めまして同時に実施できる環境が整うということが、最も望ましいことだというふうに考えているわけでございます。従来、特に気になっておりました郵政省につきましては、御存じのように三月十五日に郵政大臣が来年二月ということをおっしゃいましたし、それから全国銀行協会連合会等々のいわゆる民間金融機関の協会等におきましても、二月目途にやろう、こういうことでございます。したがって、そういうものに合わせて政府関係金融機関についても、できるだけ同時にやるように指導してまいりたいと考えている次第でございます。
  73. 早川勝

    ○早川委員 前回八四年十月と八七年十月の際には、やはり郵便局の問題がネックになっていたということなわけですか。そうではなくて、例えば政府系というよりも特殊金融機関、例えば日銀から開銀、輸銀等は銀行と一緒に実施されたわけですね。一方、商工中金も長期信用銀行も当然ですけれども、農林中金も銀行と同じにやられた。ところが、国民金融公庫から始まっていわば公庫関係は一年二カ月もおくれてしまったということで、来年の場合にはそういう事態がまず避けられるというふうに考えてよろしいのですか。
  74. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 やはり週休二日制を実施いたします場合には、金融機関サイドの問題のほか、こういう金融機関を利用する国民、特に中小企業あるいはさらに零細な企業等の利便、あるいは農協等の場合は農家の人たちの問題等々があるわけでございまして、そういうものも十分御納得を得た上でやる必要があるものですから、そういう点についてもできるだけ同時実施できる方向で努力したいと考えておるわけでございます。
  75. 早川勝

    ○早川委員 実はそれに関連するわけですけれども、信用保証協会というのが都道府県の管轄にあるわけですけれども、どうもそこはまだ第二、第三も休日になっていなくて、かなりのところが開かれておるというようなことが伝えられており、また現にあるようです。どうも金融機関、こういった場合に本当に同時にあらゆる分野、それが全体としての我が国の週休二日制というものを定着させ、実施を早めることになるわけですから、ぜひそこまで目を配っていただいて取り組んでいただきたいと思います。  もう一点、これは直接には行政レベルはかかわりがないのですが、金融機関の競争、自由化、国際化といろいろありますけれども、そこに働く人たちにとってはかなり厳しい状況が生まれてきているということを聞きます。それは同時に、もう一方で定年延長の問題もかかわっていまして、これは労使間の問題だと言ってしまえばそれで終わりなんですけれども、五十五歳を六十歳まで延長する、そのかわり給与の方は据え置きだとか、そういうことをよく耳にします。そうしますと、どうも過当競争というのも望ましくないよというような指導はたしかされていると思いますけれども、今日の状況、そういう現実を把握されているのかどうか。一部には、何か裁判が起きているというケースも伺っております。そういう状況で、せっかく週休二日制へいって、しかもいっとき五時が十五分延びたというような金融機関もあるわけですね。そういうことを考えますと、全体としての金融行政でぜひもっと気を配っていただきたい事項が多々ありますが、時間外労働の問題だとか、それから定年延長といわゆる賃金のあり方の問題について、局長としての考えをちょっと伺ってみたいと思います。
  76. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話のございました定年制の延長あるいは賃金等の労働条件の問題につきましては、基本的にはおっしゃるように労使双方の話し合いで決めるべき問題であるわけでございまして、したがって労働行政の一環に属するということでございます。大蔵省としては直接指導すべき立場にないわけでございますけれども、しかし、労使の問題につきましても、金融機関が公共的な機関として各種法令を遵守し、適切な対応を図ることが重要なことでございます。したがってそういう観点から、金融行政当局の立場といたしましても、この問題について対応してまいりたいと考えておるわけでございます。
  77. 早川勝

    ○早川委員 恐らく、これから金融機関の問題が非常に重要になり、いろいろな分野で厳しい事態が予測されるだけに、ぜひ気を配っていただきたいと思います。  それから、あと二点ばかり伺いたいと思いますが、一つは生命保険の保有する外貨に対して、たしか三月の時点ですと、円がどれだけ強くなるか、いわばドルがどれだけ目減りするかということで、いわゆる一五%ルールが大いに議論されて、何か生命保険業界が声明を出すというような異例な事態が起きたわけですけれども、一部にはこの一五%ルールというのはどうも古いんじゃないかなという意見もあるわけです。幸いに、三月のときにはそこまでドルは減価しなくて、評価をあえてせずにそのままで済んだという経過があったようですが、その一五%ルールというのは来年度以降どうされるのか、伺いたいと思います。
  78. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 このいわゆる一五%ルールと申しますのは、法人税法あるいは法人税法施行令等に基づきまして、すべての内国法人にひとしく認められているルールであるわけでございます。  生命保険会社では、税法上低価法が認められている外貨建て資産、すなわち上場されておりますような外国有価証券、こういうものにつきましては最初から低価法が認められておって、円の対外貨レートの上昇が一五%に満たない場合でも評価損等を計上しているわけでございますが、非上場の方の外国有価証券等につきましては、税法上一五%以上の円高にならないと評価損を計上することが認められていないということになっているわけでございまして、この期末の資産価格につきまして、取得時の為替レートを用いて計算をしているというのが現状でございます。この方式は、引き続き今年度についても維持されるというふうに考えておるわけでございます。
  79. 早川勝

    ○早川委員 一月六日に、特定金銭信託とファンドトラストにいわゆる低価法の弾力運用が認められたわけですけれども、そのねらいはどこにあったのか、それを伺いたいと思います。  それから第二点。その場合に、弾力的運用という意味は、事業法人には低価法と原価法の選択制を認めて、低価法を採用するのを一年間延ばしたということですね。生命保険については特金枠の、総資産の三%を五%に拡大した、それが内容になっているわけですが、このねらいは何であったのかということと、その効果は今日の時点でどう評価されているか、この二点を伺いたいのです。
  80. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず、事業法人一般の特定金銭信託、いわゆる特金でございますけれども、その評価方法について申し上げますが、特金の評価方法は、資産の一般の評価方法の原則に沿いまして、低価法ないしは取得原価法のいずれか選択できるというのが大原則でございます。ただ、この特金につきましては、一般の信託勘定の評価というものが取得原価法で行われたということもございまして、ずっと取得原価法によるという扱いになっております。  ただ、この特金の残高というのは、御承知のように飛躍的に増加してまいりまして、特金の評価方法について実務上の取り扱いをもうちょっとはっきりすべきではないかというような声が上がっておりまして、公認会計士協会を中心にいろいろと議論が進められまして、昨年の後半に公認会計士協会の方で、従来どおり特金の評価方法については低価法あるいは取得原価法のいずれかを選択するという方針が決まっておったわけでございます。ところが、このあたりがいろいろと市場では若干誤解を招きまして、そういう検討を行っているものですから、従来の取得原価法から低価法に移行するのではないかというようなうわさがございました。低価法に移行いたしますと、当時株価は非常に下落しておりましたので評価損が出る、その評価損を埋めるためにまた保有株式を売却するのではないかというようなことから、株価市場に悪影響を与えておったわけでございます。  したがいまして、私どもがこの一月六日にとりましたのは、既に公認会計士協会が関係業界といろいろ話し合いを詰めておりまして、従来どおり低価法でも取得原価法でもいい、そういう会計原則と申しますか、事務処理基準を取りまとめようということになっておりましたので、その点を明らかにいたしまして市場における無用の誤解を解いたということでございます。したがいまして、特にこの辺につきまして、特金の評価方法について弾力運用を認めたとかいうようなことではないわけでございます。  それから、保険の点につきましては保険部長の方からお答えいただきますが、この際株価に対します影響ということを、私の方の所管でございますので引き続きお答えさせていただきますが、御承知のように、この措置を発表いたしましてから株価は上昇基調に変わっております。ただ、株価と申しますのは、これは申し上げるまでもございませんけれども一つの措置でどうのこうのとかなるものではございませんで、たまたまその時期に円相場がこれまでの急速な円高基調からややドル高の方へ変わってきたとか、それから企業の収益状況が非常に好転しているというようないろいろな情報が流れたとか、そういうこともございますので、この措置がそのまま株価の回復に寄与したのかどうかということは、なかなか判定しかねる問題ではないかというふうに存じます。
  81. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 低価法にかかわる御質問につきまして、確認的に生命保険会社の関連で御答弁申し上げておきますと、生命保険会社の場合の特金信の評価方法につきましては、評価損というものをできるだけ財務諸表にあらわすというふうなことで、財務、経理の健全性の維持に少しでも資するというふうな観点から、昭和六十一年度決算から、つまり六十二年三月末から低価法を採用いたしておるところでございます。この方法は、六十二年度決算つまりこの六十三年三月末の決算におきましても継続してとるということにいたしておるわけでございます。  去る一月に生保の特金信等に関しましてとった措置は、低価法の関連ではなくて、生保の場合にはその運用枠の拡大と申しますか、特金信への運用枠の拡大というふうな措置であったわけでございまして、これが先生の第二の質問につながってくるわけでございますけれども、生命保険会社は、従来総資産の三%の枠を限度として特金信による運用が認められておったということは御指摘のとおりでございますが、これは五十九年の九月に初めて導入されて、そういう新たな措置がとられた場合一番最初にとります枠が大体三%でございますので、そういうことで三%ということのままずっときておったわけでございます。  他方、御承知のように特金信というものも、非常に運用として有効な金融商品であるというふうなことが近年定着してまいりましたようなことから、生保の運用資産の一層の効率化を図る観点から、その運用枠を通常の運用枠でございます五%であるとか一〇%に拡大してほしいという要望が生保業界からかねて寄せられておった。それについて、私ども昨年来検討しておったわけでございますが、たまたまその検討を終え業界ともいろいろな条件について話し合いが調ったというふうなことで、一月にそういうものを認めてあげたというふうな次第でございます。
  82. 早川勝

    ○早川委員 そういう説明を伺いましたが、いわゆる金融資産運用で株というところへいけば、逆に言えば三%から五%、うまくいけばそれでいいのですけれども、逆になればダメージが大きいわけですが、そういう危険性も反面広がったというふうに私などは考えております。いずれにしましても、こういうことを考えますと、円とドルそして今や株というのが一体になっていまして、それだけ広がりを持った経済状況になってきているわけです。  そこで、最後になりますけれども、通貨制度についてどういうふうに政府考えられているのかなということを伺いたいと思います。  いろいろな形でというよりも固定相場制から始まったのが変動相場制だとか、あるいはヨーロッパにおいては独自のシステムなりを工夫してやられております。それから、前回にも触れましたが、協調政策をとるときに商品バスケットを入れてベーカー提案も出てきている。協調介入の仕方それから制度そのものの問題を含めていろいろな案が出てきておりますし、我が国がそれだけ大きくなって、またそれだけ影響が非常に大きいわけです。日本の対外資産が二千億ドルとか二千五百億ドルとか言われておりまして、それこそレートが一円違えば二千億とか二千五百億ダウンするとか、逆もありますとお話しになるかもしれませんけれども、そういうことを考えますと、日本として通貨制度のあり方という問題について何か一つの見識を持って、あるいは提案を含めて言っていかなければいけない時期じゃないかなというふうに考えますが、この点についてどんな考えを持っておられるか、伺いたいと思います。
  83. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 ただいま早川委員から固定相場制に始まっての流れの御指摘があったわけですけれども、固定相場制は、ビジネスという観点から見ますと、実際に物の売り買いをするそのときに一体何日後のレートがどうなっているか、特に国際的な投資をするような場合あるいは国内において投資の決定をする場合におきましても、そういったレートの先行きがわからないということでは、なかなか見当がつかないではないかという御指摘は伺うわけでございます。その意味で為替の安定というのは、特に我が国のようにまだドルで商売をし、しかも輸出入あるいは国際的なそういったものに依存する国にとっては大変大事であるということは、まずこういった問題を考えるときの一番重要な軸の一つであるだろうと思うわけでございます。     〔中川(昭)委員長代理退席、大島委員長代理着席〕  ただし、また委員も御発言の中でありましたように、だんだん我が国だけでなくて世界的なお金の流れが資本の自由化とともに、例えばロンドン、ニューヨーク、東京の外為市場では、一日大体二千億ドルを超えるような取引が平均すれば行われているだろうと言われておるわけですが、そのうち物の決済にかかる部分というのは、恐らく一〇%になっていないのだろうと思います。そういうことを考えますと、こういったかつてお金の動きがほとんど物の関連で行われていたという時代と違って、各国の通貨当局の介入で固定相場を維持するというのはもう基本的になかなか難しいわけでございますし、また、そういった資金というのは物の競争力だけで決まってくるのじゃなくて、金利とかいろいろな要素で大きな金が動いていくわけですから、そういった意味で固定相場制度に戻るというわけにもなかなかまいりませんでしょう。そこでニクソン・ショックを契機として、その間スミソニアンのような試行錯誤を経ながら変動相場制にいったわけでございます。  変動相場制も御指摘のようにいろいろあるわけでございまして、例えば四、五年前のドル高の時期におきましては、アメリカの財務省におきましても、今ドルがオーバーシュートじゃないかという意見がありますと、オーバーシュートとは何だ、マーケットがレートを決めるので、それが高過ぎるとか低過ぎるとか評価をするのはそもそも間違っているという、できるだけマーケットに任せる形での変動相場制がよしとされた時期もまたあるわけでございます。これが一九八五年のプラザあたりからそろそろ、やはり何らかの格好でファンダメンタルズというものにできるだけレートが一致して動いてくるように、政策協調と介入と両々相まってすべきではないかという流れが出てまいりまして、これが今度はルーブルという形でさらに強化され、今日におきましてはあのルーブル以降も、人間のやっていることですから、そのときそのときでなかなか思うようにはまいりませんが、そういった経験を積み重ねながら、政策協調と介入というものでできるだけ安定した形で変動相場制を動かしていこうということが現在やっていることでございます。  現在やっていることがすべていいというわけではないわけでございますが、こういったベースを、経験を基本としながら、またさらにいろいろ積み重ねを行いまして、制度あるいはその運用の改善を図っていくということではないかというふうに思われるわけでございます。
  84. 早川勝

    ○早川委員 どういう形をこれから模索していくのかなというのが大きな課題なわけですけれども、いずれにしろ、貿易不均衡をレートでというのもほぼだんだん限界が出てきまして、これもなかなか難しい。そして、今局長言われましたように、日本はなぜ強いかというと、ファンダメンタルズ、基礎条件がいいからだ、経済の基盤がいいからだという、何かだんだんある面で本来の形になりつつ、またならなきゃいけないんじゃないかなというふうに私などは考えます。  為替安定が同時に金利の安定にもなるし、それが経済全体とそれこそ連動しているわけでして、そういう現状を考えますと、確かに政策協調と介入で今は少なくとも変動相場制の中でということなんですが、こうやるわけですけれども、割と時間が短く、一年ぐらいでかなりの幅で動いちゃうわけですね。そういうふうに考えますと、ある財界人が書かれているのを見ますと、修正固定相場制というようなことも言われていますけれども、一年とか二年とかじゃなくて、もう少し長い安定性の中で協調的に協力し合いながらそういう制度がつくれないものかな、具体的に提案があるわけじゃありませんけれども、そんな感じを持ちますし、そういう面でサミットが来月あるわけですから、そういうところを含めてもっと日本政府は積極的に提言をしていただきたいという、これは大臣への要望でもあります。  それから、本当に最後になりますけれども一点。これは経済問題じゃありませんけれども、木材というよりも山の、森林の問題に関心を持っているものですから、最後にこういう実情と、そしてその対策をお聞かせいただきたいと思います。  とにかく、山が荒れていることはそうなんですけれども、ことしから全国森林計画というのがつくられまして、山をきちんと整備していこうということなわけですが、今現在我が国の主要な造林というのですか、木の杉というのは一体どれぐらいの利回り、利益が上がるのかな、年間にならしてみますとせいぜい一、二%の利益しか上がらないのだということ、恐らく投資と、それが成木となって返ってきたときの金利計算を含めてやると、一、二%にしか過ぎない、これが今の実情なんですね。  ではその中で今政策的にどういうことが行われているかといいますと、一つは各県がやっております林業公社というのがありまして、これも財政的には非常に苦しい状況に陥っています。それから、政府関係機関であります森林開発公団がありますが、そこが水源林造成をやっているのですが、運営経費の三分の二は政府出資だ、こうなっているわけですね。がしかし、五十五年以来、約二分の一が借入金なんですね。森林開発公団が資金運用をしている場合に幾らかというと、三・五%ぐらいの金利なんですね。それからさらに言えば、国有林の金利が、通算しますと今現在六・五%、ことしの予算での金利は四・八%に下がった。ところが、いずれにしろ、三・五%にしろ、国有林六・五%にしろ、そしてさらに四・八%にしろ、今の山、そしてその木の製品化されていく場合を見ますと一、二%、非常に採算が合わないわけですね。そうすると、非常に高い金利で出そうとしても、これは恐らくとても借りることはないだろう。それだけ山は荒れていくというのが実情であります。  そういうふうに考えますと、政府のこの関係の融資問題に関連しての金利という問題を、もっと大胆な発想に立って引き下げていかないとどうにもならないじゃないか、民有林も含めて荒廃が進むのじゃないかなと思いますので、ぜひこれからの政策の中で大胆な融資政策なりを考えていただきたいということを述べさせてもらいまして、来年度予算以降、そういう森林、山の問題についてもぜひ、まあNTTの金を使ってリゾート開発を含めてやるといういろいろな構想が出ていますけれども、その本体である山の問題について、もう少し配慮を来年度以降の予算についてしていただきたいということを要望いたしますけれども、最後にちょっと大臣の答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、かつては国有林野は非常に内容がよかったものでございますから特別会計になった経緯があったと思いますけれども、その後、おっしゃいますようないろいろな経緯がありまして非常に苦しい状況になってまいりまして、したがって造林、林道なんかは一般会計が繰り入れをしておりますし、治山の方も一般会計が見ておる、それから退職手当の借入金の利子補給とか、いろいろ一般会計がお世話をしている、これはもうやむを得ないことであると思っております。  やはり、広い意味で山というものは大切なものでございますから、そういう状況というのはやむを得ない。しかし、国有林野の方もいろいろ合理化もされるし、いろいろやっていただかなければならぬこともございますが、それはお願いしなければなりませんが、私は、ある程度のことはどうもやむを得ないなという気持ちでおります。
  86. 早川勝

    ○早川委員 終わります。
  87. 大島理森

    ○大島委員長代理 次に、日笠勝之君。
  88. 日笠勝之

    ○日笠委員 今国会最後の一般質問になろうかと思いますので、今国会で私もこの委員会でいろいろと御提案申し上げたり御要請申し上げたりしてまいりまして、ひとつその決着をつけたいと思うわけでございます。  その前に、先ほど同僚議員から、いわゆる不公平税制の見直しということにつきましてるる御質問がございました。簡単に申し上げますと、まず大臣、政府税調中間答申、四月二十八日発表になっております。この一番初めの書き出しが、「税制の抜本的見直しは国民的課題である。」というところから始まっておるわけでございます。「抜本的」というのはどういう意味なのでしょうか。言葉の意味ですよ。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、実は税制調査会で使われた言葉でございますので、どのような意味で使われたと思うか、こういうふうに私はお答えを申し上げたいと思うのでございますが、これはやはりしょっちゅう申し上げますように、シャウプ以来四十年近い時間がたっている、それから将来に向かってはもう十年余りで高齢化社会になるというちょうどこの時点、過去を顧み、将来を展望して、やはり四十年近くやっていたものはこの辺で変える時期が来た、それも資産消費所得という間のバランスをとって新しいものをつくりたい、こういう意味で私は使われておるものと理解いたします。
  90. 日笠勝之

    ○日笠委員 済みません、私は国語学的な意味で申し上げたのですが、私の方から申し上げますと、これは辞書を引きますと、「抜本」とは「根本の原因を抜き取る」と、こうあるのですね。ですから、今回の税制改正は、いわゆる「根本の原因を抜き取る」見直しであり、改正である、こういうふうに理解をしなきゃいかぬわけですね。三省堂の辞書を引くとそうなっております。「根本の原因」とは何かといったら、いいのは抜き取っちゃいかぬわけですよ、悪いのを抜き取って改正をするわけですから。  では、その悪いところは何があるのかといいますと、これも中間答申にもるる書かれておりますね。ちょっと中身を取り上げて読みますと、例えばこういうふうにも記述しております。「現行税制のゆがみを放置する場合には、サラリーマンを中心とする納税者の重税感・不公平感は一層深刻化し、」「国民の信頼そのものが揺らいでしまう」とかございます。そして、この「負担の公平の確保」というところを見ますと、「個別事項の検討」というので、先ほども同僚議員がおっしゃいました六項目があるわけでございます。ちなみに申し上げますと、「有価証券譲渡益課税」「社会保険診療報酬課税の特例」「みなし法人課税制度」「土地取得に係る借入金利子の損金算入制限措置」五つ目が「公益法人課税」六つ目が「赤字法人課税」、こうあるわけです。この六つが不公平のシンボルとして政府税調でも取り上げられて、検討しなきゃいけないとなっておるわけであります。  それが、最近の自民党税調さんの審議をいろいろマスコミを通じて拝見いたしますと、有価証券譲渡益の課税、いわゆるキャピタルゲイン課税は原則課税、どうするかは別としても一応前向きであるようであります。それから、土地取引に係る借入金の利子の損金算入制限措置も前向きのようでございますが、あとの四つはどうも見送りという活字が新聞なんかで躍っておるわけでございます。  そこで、政府税調が公聴会をやりました。その中で多くの公述人の方々の御意見をまとめますと、一つにはいわゆる行政改革の徹底、二つ目には、先ほどから申し上げておりますような現存する不公平税制の是正である、これが多くの方々の声ではなかったかと思うわけでございます。  さらに、去る十五日、総理府の社会意識世論調査によりましても、八〇%の方が不公平・不平等感を税金に対して持っておる、こういうのもございます。また、三月の朝日新聞の世論調査でも、七九%の方が今の税制は不公平だと答えております。こういう中にありまして、この六つの不公平税制のシンボルとも申すべきもののうち四つまでが、どうも見送りないしは非常に消極的であるということ、これはどうも私、合点がいきません。安倍幹事長も、昨日、四役の懇談会で不公平税制見送り不満というような記事も出ておりました。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども政府といたしまして、もし今自民党税調さんが考えておられるような大綱と申しましょうか、要約と言いましょうか、こういうものが出た場合、それでよしとするのか、そうじゃなくて、やはり政府としては、政府税調が言っておる不公平税制のシンボルであるこの六つは、何とかしてやはり前向きに国民の期待にこたえるようにやってもらいたいというふうに考えておられるのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほど主税局長が申し上げましたような自民党税調審議の現状でございますので、まだ全体的な、総合的な結論を出しておりませんで、このような問題についても、確かに自由に議論をいたしておりますので、なかなか困難であるとかやはり現状でいいとか、いろいろ議論があるようでございますけれども、総合的にどうするかということはこれからの問題でございまして、私どもの党内でも、今お話もございましたけれども、まだまだ最終的に決まりますまでにいろいろな経緯があると思います。できるだけこういうものにつきましては、具体的な取り組み方をいたしてまいりたいと私としては思っております。
  92. 日笠勝之

    ○日笠委員 反対勢力を取り込んでいこうということで、いわゆるこういう税制改正は見送る、棚上げにするというようなことになったのでは、これは、先ほど言いました抜本改正にはならないわけでございますね。  そこで、きょう私は「人国記」という本を持ってきましたので、ひとつ警鐘を鳴らす意味で申し上げておきたいと思うのですね。もし、こういうふうなことで税制改正案が出てそれが法案になったら、一体主税局長大蔵大臣は後世どう言われるかということを、この「人国記」を通してちょっと申し上げておきたいと思うのです。  この「人国記」というのは、「昔から人間の性格には風土の影響がある」ということで、何か鎌倉時代の北条時頼が書いたという節もある、古く、昔からある本でございます。  まず、主税局長は遠州、森の石松の遠州でございますね、遠州の人の性格があらわれております。こういうふうな性格どおり、今度の税制改正をやられたら大変でございますから、自分の性格というものは「人国記」に書いておるとおりなのでこれではいかぬということで、ひとつ警鐘ということで御提言申し上げます。  「遠江の国の風俗、三河に異ならずして、人の気何事に付きても怯む気なし。」すごいですね。だれが何と言うたって、やるとなれば税制改正をやるんだ、間接税を導入するのだという「怯む気なし。」ということでございますね。「然るによって死すべき所と見るときんば、たとへ節に当らずしても死をする人多し。」ということで、とにかくもうしゃにむにやるんだ、こういう性格の方だそうでございます。そして、「智恵あって気尖なる故、」知恵があって非常に生気活発だから「善に近し。」だから、もともと局長は善人なんでしょう。しかし、その次は悪い。「何事に付きても明日と延ぶることの成らざる風俗なり。」二年か三年かけて税制改正をやろうということは、これは性格的にだめなんですね。「明日と延ぶること成らざる風俗なり。」こういうわけでございます。もう性格どおりぴったりじゃないかと思うのですね、局長。だから、ひとつじっくり二年、三年かけて、そしてやっていただければ、こう思うわけですね。  では、今度は大臣。備後の国ですね。御出身は備後ということになっておるわけでございます。選挙民と心を一にしておられるわけでございますから、備後の国はどうか。「備後の国の風俗は、人の気実儀にして、」非常にリべラリストということですね。「一度約をしたる事は変改をすること鮮し。」非常に律儀なわけでございます。「然れども愚癡なること多き故、不実なる事をも弁へずして請け合ひ、」ですから、副総理という立場、売上税が失敗したから何とかしなければいけない、そういう立場があるでしょう。受け合うのですね、やりましょうということを。その次がよくない。「終に悪名を取ること多かるべきなり。」こうあるのです。ですから、今の大臣と主税局長のコンビでいかれますと、どうもこういうふうになっちゃうのじゃないかと心配申し上げます。警鐘として、ひとつこの言葉を贈呈申し上げたいと思います。  続きまして、この前から大変お世話になっております記念貨幣のことでございます。  先日閣議で、瀬戸大橋と青函トンネルの開通を記念いたしまして記念貨幣が発行されることになったわけでございます。大臣を初め大蔵省の皆様方の御尽力に、心から敬意を表するわけでございます。が、そのときの記者会見では、今秋発行ということでございます。秋とは一体いつをいうのかということで、これまた三省堂の辞書を引きますと、立秋、立秋とは、秋に入る八月八日、九日ごろとあるわけです。ですから、この秋というと、八月八日、九日ももう秋でございますね。そういうようなことで、地元民を含めて全国三百万人のコインマニアは一日も早い発行を望んでおるわけでございますが、この秋というのはいつごろを想定されておるのか、いつごろをめどに発行しようとされておられるか、お答えいただきたいと思います。
  93. 足立和基

    ○足立政府委員 青函トンネルと瀬戸大橋の記念貨幣につきましては、今秋発行をめどということで先日閣議決定をしていただき、発表いたしたわけでございますが、本来、記念貨幣というものは、記念すべき事業が行われるときに合わせて発行されるものでございます。しかしながら、今回におきましては、新貨幣法の施行が四月一日からでございまして、その新貨幣法の施行に合わせまして政令を定める、閣議決定を行う、こういう手続が必要でございましたので、残念ながらこの秋発行というようなことになったわけでございます。  そのような事情でございますので、私どもできるだけ早くこの記念貨幣を発行いたしたいということで現在関係方面といろいろ具体的な話をしておりますし、また造幣局は具体的な準備を行っておるところでございます。現段階でいつ発行できるというような具体的なめどはまだ申し上げる段階にございませんし、暦の上の立秋ということでは無理があるのでないかと考えてございますが、遅くとも九月中には発行いたしたい、こぎつけたいと思っておりますし、最大限の努力をしてできるだけ早い発行にこぎつけたいと考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  94. 日笠勝之

    ○日笠委員 じゃ、遅くとも九月じゅうに発行というふうに御理解を申し上げます。  私、本年一月二十九日の当委員会で、日本の国は経済、社会、文化の国際化という大きな課題を背負っておるわけでございますが、コインも、国際化ということで、昭和の元号しか入っておりませんので西暦をどこかに入れる、そうすると外国の方々にプレゼントしてもよくわかるというようなことを申し上げましたけれども、西暦については今度の記念貨幣については配慮になっておりますか。
  95. 足立和基

    ○足立政府委員 今回発行いたします記念貨幣につきましては、先生からの御指摘もございまして、瀬戸大橋、青函トンネルそれぞれの記念貨幣の縁に「SETO BRIDGE ’88」あるいは「SEIKAN TUNNEL ’88」という文字を刻印することによりまして西暦年号を入れることにいたしてございます。
  96. 日笠勝之

    ○日笠委員 前向きな早速の御配慮を感謝申し上げるわけでございます。  では、次の問題にいきたいと思います。  先日、無限連鎖講の法律が改正になりまして、国債ネズミ講も終えんを迎えつつあるように聞いております。そこで、私の地元でこういう話が起こっております。国債ネズミ講の本部へ入会申込書を出すわけですね。そこに、一般コースという場合は六万円、それから庶民コースというのは二万円の収入印紙を張って申し込みをする、こういうふうになっておるわけでございますが、ここに来まして、多くの方々は、もうお金は返ってこない、せめて被害金額を最小限に食いとめたいというようなことで、間違って収入印紙を張って出したのだからせめてこれだけでも返してもらえないか、こういうことを地元の弁護士さんに話を持っていっておるということを聞いております。そのことについて、これは四月の新聞報道でございますが、国税庁さんは、印紙税の過った納付に当たるかどうか検討する、こういうふうにコメントされておられるようでございますが、その後、過誤納付、過って納めた印紙、これの還付についてはどのように検討されて、現状どのようになっておられましょうか、お聞きしたいと思います。
  97. 日向隆

    ○日向政府委員 御指摘がございましたように、国債ネズミ講で本部に対する入会申込書に貼付されている六万円の収入印紙がまず第一にいかなる性格のものであるかを判断する必要があるわけであります。すなわち、印紙税の納付以外の目的で文書に貼付をされた印紙であるとか、あるいは文書に貼付されていない印紙は印紙税としての収入印紙ではないわけでございますので、この場合にはそれ以外の有価証券取引税であるとか登録免許税等の問題ということになるわけでありますが、そのほかの問題といたしまして、仮に印紙税としての収入印紙であるといたしますと、これは御承知と思いますけれども、印紙税法にはその第十四条に還付に関する規定がございまして、この規定は、印紙税について過誤納金がある場合、すなわち印紙税を納付する目的で文書に貼付した印紙が過誤納であった場合に還付する趣旨の規定であります。  したがって、私どもとしましては、御指摘の国利民福の会の入会申込書が印紙税の課税文書に該当しないにもかかわらず確かに一般等といたしまして六万円の収入印紙が貼付されている事実につきまして、国利民福の会の会員から具体的に、今まだ還付の申請がございませんが、申請があった段階で、今申し上げたような趣旨からその収入印紙がいかなる性格のものであるかをまず判断いたしまして、そこでもし印紙税の世界、つまり印紙税としての収入印紙である場合には印紙税法第十四条に言う過誤納金であるかどうかを判断することになるわけでございますので、こういった観点から個別にその際事実関係を確認した上で、御指摘を踏まえて還付の申請について個々に判断していきたいと考えているのが現状でございます。
  98. 日笠勝之

    ○日笠委員 ひとつ国税庁さんにおかれましても、こういう大きな問題となった国債ネズミ講の事件でございますので、恩情ある対処方を御要請申し上げておきたいと思います。  続きまして、私は去年の八月十八日に当委員会におきまして、テレホンカードを電話料金精算に使用できないかということを御質問申し上げました。テレホンカードは最近すさまじい勢いで発行されておるようでございまして、新聞情報によりますと既に四億枚を突破したというぐらい。五百円としましても二千億円市場ということでございます。しかし、まだテレホンカードの使えるカード式電話は三割ほどしかありません。私どもの田舎に行きますと赤電話ばかりでございまして、ほとんど使えません。しかし四億枚、国民一人当たり四枚もある。田舎に行くと全然使えない。こういうことに相なって、退蔵といいましょうか、せっかくのものがポケットに入ったり机の中に入ってそのままになってしまう。何か俗に言う非常にもったいないということでございます。私がテレホンカードの電話料金精算ができないかということを申し上げましたところ、足立局長からは検討するというふうに御答弁いただいておりますが、その後、郵政省、NTT、どういう御検討をされてどのようになっておりますか、御答弁いただきたいと思います。
  99. 濱田弘二

    ○濱田説明員 お答え申し上げます。  まずその前に、テレホンカードの販売の状況ですが、正確なところ、まだ六十一年度が年間ベースとして一番新しい数字でございますが、六十一年度で約一億五千万枚単年度で発行されておるように、相当多量に発行されておるのは御指摘のとおりでございます。  それから、カード式の公衆電話も、六十三年度中には約四十万台というところで、公衆電話の約半数がカードも使える公衆電話になるようなところでNTTの方でも今努力をしておるところでございます。  それで、先生御指摘のNTTの発行するテレホンカードを電話料金の支払いに充当できないかというところでございまして、昨年八月に御質問いただいたところでございますけれども、郵政省といたしましては、先生御案内のような紙幣類似証券取締法などの関係法制、こういう問題が整理されることを一方で期待しておるわけでございますけれども、それにあわせまして、発行当事者であるNTTにおきまして事務処理面の問題とか財務面に与える影響などの検討を促しする等いたしまして今日に来ておるわけでございます。まだ現段階で具体的な結論を得るまでには至っておりませんけれども、今後とも必要な検討を続けてまいりたい、そういうふうに思っておるところでございます。
  100. 日笠勝之

    ○日笠委員 足立局長局長の答弁は、テレホンカードを電話局に持っていった場合は紙幣類似証券取締法の問題は少なくなるとこうはっきり会議録に出ておりますね。ですから、紙幣類似証券取締法には抵触しないと考えればいいわけですね。ですからあとはNTTさんの内部的な処理の仕方にまつ、このように考えたらいいんでしょうか。どうでしょう。
  101. 足立和基

    ○足立政府委員 昨年八月十八日に本委員会におきまして先生から御質問ちょうだいいたしましたこと、よく記憶してございますが、テレホンカードを直接電話局に持ち込んで電話料金の支払いに充てる、こういうことでございまして、そういうことでございますれば紙幣類似証券取締法上の問題というものは基本的にないのではないかと考えてございます。したがいまして、あとは具体的なシステムとしてNTTを中心に現在御検討いただいておる。そのような具体的なシステムができましたところでまた最終的な判断をさせていただきたいと思っておりますが、現段階では基本的に問題点がないのではないかと考えております。
  102. 日笠勝之

    ○日笠委員 ですから、答弁いいですから、問題ないそうでございますから、あとNTTさんとよく打ち合わせをして、ひとつ検討を要請を申し上げておきたいと思います。  それからNTT関連で、せっかくの機会でございますので、一問お聞きしておきたいと思います。いわゆる一〇四番の有料化の問題でございます。  先日真藤社長の記者会見によりますと、五千億円の経常利益が出てもう日本一だ、こういうことでございますが、これだけの経常利益が出た。ですから電話料金の値下げと同時に、今度はその一〇四の番号案内サービスの有料化ということを記者会見で申されておるようでございます。  そこでお伺いをしたいわけでございますが、今日までずっと一〇四は無料ということになってきて、歴史があるわけでございます。これだけの経常利益もある。それからまた、昔は基本料金といっていましたが、今は専用回線の使用料というのが、俗に基本料金も非常に高うございますね。千五百五十円が一番高うございます。こういうようなことも考えますと、私は、これだけの経常利益が上がった、だから即一〇四が、年間三千五百億くらいかかるそうでございますけれども、即有料化にするというのはちょっと拙速過ぎるのではなかろうか、かように思うわけでございますが、郵政省としてはどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
  103. 濱田弘二

    ○濱田説明員 一〇四、電話番号案内の有料化の件でございますが、NTTの方には有料化を実施したいという意向があるようでございますけれども、私どもまだ具体的な話はNTTから聞いておりません。  先生ただいま御指摘なさいましたように、一〇四というのは電話操業以来無料で来ておるものでございまして、無料というのが相当に定着しておるわけでございます。これを有料化するといたしました場合には、やはり相当ないろいろな形の努力をしながら社会的なコンセンサスを得ていくというのが非常に重要だろうというように私どもも思っておるわけでございます。  まずその社会的なコンセンサスを得るというのが前提になるわけでございますが、そのためには、例えて申し上げますならば、一つには現在どういうような電話番号の案内の利用実態にあるのか、そういうのについて詳細な把握をされ分析をされて、そして世の中に提起をされる、そういうことが必要ではなかろうか。それからまた、確かに現在無料で一〇四のサービスをやっておられるわけでございまして、経費というのも相当な額になっておるわけですが、やはりNTT自身の、今までも相当おやりになっておられるわけですが、一層の合理化努力で経費の削減をやっていく、続けるということも非常に重要じゃないかなと思っているわけでございます。  それからまた、一〇四の有料化を検討するに際しましては、いろいろな社会的影響なども総合的に検討していく必要があるだろうというふうなことで、私ども現在考えているところでございます。
  104. 日笠勝之

    ○日笠委員 何か聞くところによりますと今年中にでも有料化にしようということが新聞報道に出ておりますが、やはりそれは拙速なんでしようか。
  105. 濱田弘二

    ○濱田説明員 私ども、先ほど申し上げましたけれども、NTTから具体的な話は伺っておらないわけでございますが、相当長年月この無料というのが社会的に定着しておる、やはりそういう経緯というものも相当重い意味を持っておるのじゃないかと思っておるわけでございます。
  106. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで、私は一つ御提案を申し上げておきたいと思うのですけれども、今までのNTTさんの発表によりますと、一部のいわゆる通信販売業者なんかが大量に問い合わせてくるんだ、そういうふうなことを言われておるわけでございますが、例えばアメリカなんかを見ますと、何か五回か十回ぐらいまでの問い合わせは無料、それ以上については一回幾ら、こういうふうに回数を区切ってそれ以上のオーバーした分は有料化する、こういうふうな制度になっておるようでございますが、これはまた一つの一理ある考えじゃないかとも思いますね。  それからもう一つは、だけれども、そうかといって五回なり十回以上をオーバーしたものは全部有料となりますと、特に目の不自由な方は一体どうするのか。実は私「テレホンガイド」という電話帳の案内を持ってきましたけれども、こういうふうになっていますね。「番号案内サービス」というところに、「電話番号をおたずねのときは、相手の姓名または会社名などをはっきりお告げください。「一〇四」で案内している電話番号の約八五%は、電話帳に掲載されているものです。まず、お手もとの電話帳でお調べください。」これは目の見えぬ人は調べようがないわけですね。そういうようなこともありますので、これはやはり今年中にやるとかやらないとかそういう問題じゃなくして、全国の身体障害者の方々からも聞かなければいけないでしょうし、また、先ほどおっしゃいましたように、実態が果たして国民が納得するようなものであるかどうかということも当然国民に周知徹底をしなければいけない問題でもありましょう。また、ヨーロッパとかアメリカの例に倣うことも一つの参考になるのではないかと思います。盲人の方々にも当然配慮をしなければいけないし、一部の番号案内サービスだけを大量に問い合わせて利益を得ているという方々と普通の家庭用と区別もしなければいけないだろう、かようにも思うのですが、それらのことを加味して今後NTTさんから正式に一〇四の有料化について申し入れというのでしょうか要請があったときには検討する、こういうように考えていいのでしょうか、お願いします。
  107. 濱田弘二

    ○濱田説明員 一〇四の有料化を検討、先ほど留意すべき点の主なものについてお話し申し上げたわけで、その中で社会的影響等も総合的に考慮というように申し上げたわけですが、交換機の能力で技術的な制約というのも具体的な検討をしていく場合には現実的に考えていかなければならぬわけでございますが、いずれにいたしましても、いろいろな多面的な角度からこの問題については取り組んでいく必要があると考えておるわけでございます。
  108. 日笠勝之

    ○日笠委員 次は、お酒の税金、酒税について若干お伺いをしたいと思います。  聞くところによりますと、自民党税調さんの方には既にウイスキーの税率を特級から二級までの税額の加重平均値が一リットル当たり千三百円から千四百円であることを初めて明かしたとか、こういう報道が出ておるわけでございます。現在大蔵省さんが考えておられますウイスキー、この税率をどうするかという一つの提案だと思います。決定ではないわけでございますが、御提案をしておるわけですが、どういう提案をされたのでしょうか。
  109. 水野勝

    ○水野政府委員 酒税の改正の方向につきましてはことしの一月に基本方針を税制改正要綱として閣議決定をいたしておるところでございまして、基本的にはこの方向の中でいろいろ検討しているところでございます。「従価税を廃止する。」これはウイスキーにもございます。それから、「ウイスキー類の級別制度を廃止し、現行の特級、一級及び二級の税率を一本化する。」というのが第二点目にございます。それからもう一つ、同じようなお酒でしょうちゅうがやはり蒸留酒としてございますが、「しようちゆうの税率を引き上げる等により、蒸留酒間の税率格差を縮小する。」こういう項目もございます。こうした蒸留酒に関連いたしますものとしては、主としてはこの三つの基本方針がございます。この三つの基本方針の中で関係者ともいろいろ御相談をしながら現在検討しているわけでございますが、具体的にこのような金額とかこのような水準とかといったものを持ち出して具体的に議論をしておるとかというところまでは達してございません。与党の方の税制調査会もきょうから間接税審議を始められたところでございますので、これからの審議という段階でございます。
  110. 日笠勝之

    ○日笠委員 五月十一日の新聞に「自民税調に大蔵省提示」というが、これはまだしていないわけですね。そうですか。わかりました。  でも、大臣、六月、サミットがございます。これは先日竹下総理大臣も、イギリスに行かれまして、サッチャーさんに、パーソナルコミットということで、個人的見解だけれども酒税については善処するというふうなお話もされてきておるわけです。ですから、六月のサミットまでには——今局長がおっしゃったのは定性的なお話です。定量的なお話ではない。幾らという金額の数字ではないわけです。六月といったらもう間際でございますし、そろそろ新しい日本における酒税の税率の定量的なものも持っていかなければいけないのではないかとも思うのですが、その辺をどういうふうに指示されておられ、またどういう報告を受けておられますか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しまして、しょうちゅうの税率まで英国の総理大臣に心配していただくのは随分のことだという気持ちはするのでございますが、そういうお話があったそうでございますから、どれだけのことができるかな、結局しょうちゅうとウイスキーとの格差みたいなものでございますので、どれだけのことができるか、今一生懸命事務当局も私どもも内部調整をやっておるところでございます。
  112. 日笠勝之

    ○日笠委員 局長、どうですか。六月でしょう。サミット。これまでに何とかお土産を持っていってもらわないと主税局長の立場がないのではないですか。主税局長のシュはお酒の局長になってしまいますよ。どうですか。
  113. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま申し上げましたように与党の税制調査会の方もきょうから間接税審議を始められたところでございますので、これはもう御指摘の点につきましても早急に審議を願い、今申されたようなスケジュールにも間に合うように私どもも対処をいたしたいと考えております。
  114. 日笠勝之

    ○日笠委員 時まだ熟してないのでそういう御答弁になるかと思います。  これは局長にお聞きしたいと思うのですが、今度酒税法改正を当然なさるわけです、税率改正されますと。そうすると、今酒税法改正するのなら、その税率改正だけではなくて酒税法の何カ所か改正してもらいたい、またいわゆる酒類業組合法もあわせて改正してもらいたい、こういう声が届いていると思うのですが、酒税法改正の際にそういうことも考慮に入れて一括して改正される方針なのか、とりあえず税率のところだけ手直ししてしかる後に改正をする、二段構えでいかれるのか、どういう御予定でございますか。
  115. 水野勝

    ○水野政府委員 酒税の改正は、当然のことながらその負担水準の改正が主要なテーマでございます。ただ、例えば仮にしょうちゅうの税率が相当な範囲で見直しが行われたという場合におきましては、そうしたしょうちゅう業界につきましてのもろもろの配慮もいたす必要があるわけでございますが、そういった場合には、それではいろいろな財政措置を講ずるとすれば清酒製造安定法といったようなものの改正も審議課題として出てこようかと思われます。  それからまた、手続的な技術的な問題といたしましては、従来からいろいろ関係方面から要望のございます酒類の表示の問題、あるいは手続的、技術的に未納税移出移入の手続の簡素化とか、こういった問題が従来からの懸案としてございます。こういったものも、今回の改正では必要に応じまして検討を行い、結論を出し、関連法案に盛り込むということが考えられるところでございます。
  116. 日笠勝之

    ○日笠委員 関連法案に盛り込むという理解をします。  それから、お酒のことに関連しましていろいろと御質問したいと思うのですが、実はポスターを持ってまいりました。「おっとSTOP!」というキャッチフレーズで、これは八八・六六キャンペーンというのでございますが、明治三十三年、西暦一九〇〇年に未成年者喫煙禁止法ができました。そして大正十一年、一九二二年に未成年者飲酒禁止法ができまして、それぞれ八十八年、六十六年にことしが当たるわけでございます。ですから八八・六六キャンペーンということでございます。  きょうは総務庁さんも来ていただいておると思うのですが、そこでお伺いをするのですが、どうも最近未成年の飲酒ということ、たばこはこの前同僚の森田先生がしっかりやられましたので、私はお酒をやりたいと思うのです、担当を分けまして。未成年の飲酒が非常に広がっているということで、先日金沢で第六十一回日本産業衛生学会がございまして、東邦大学医学部の大本美弥子助教授が首都圏の高校二年生五百四十九名によるアンケート調査をされた結果が発表になったわけでございます。これは御承知のとおり、最近肝臓障害、アルコール依存症患者が非常に低年齢化しておるということが医学的にわかっておるわけでございますが、では高校生の例えば二年生であればどうなるかという実態調査でございます。  それによりますと、飲酒経験、高校二年生でお酒を飲んだことがある生徒は、男子で八四%、女子で九一%。このうち、しばしば飲むというのは、男子が三〇%、女子が二二%。居酒屋とか自動販売機の利用者が多かったそうでございます。確かに誕生パーティーだとかお正月とかいろいろあるのでしょう。しかし、次が問題でございます。飲酒の頻度、回数、月に一、二回というのが男女合わせて三〇%、週に一回以上が一四%、ほぼ毎日というのが二%もあるわけでございます。これが実態調査で明らかになったわけでございます。先ほどから申し上げております、今全国で二百二十万人のアルコール依存症の方がいる、アルコール中毒患者がいるという厚生省の発表もあるわけでございます。  そこで、ことしは八八・六六の年でございます。実は委員長のお手元にある少年少女向けの漫画ですが、漫画のお酒のシーンのところだけ切り抜きしてきましたので、これをひとつ皆さんにお渡しいただくことをお許しいただきたいと思います。よろしいですか。
  117. 越智通雄

    越智委員長 結構でございます。
  118. 日笠勝之

    ○日笠委員 ちゃんと野党の皆さんにも与党の皆さんにも行きますから。マスコミさんにもちゃんと配ってください。  これはほんの一部でございまして、少年少女向けの雑誌の漫画でございます。もうお酒をぐいぐいと飲むところ、こういうようなものが日常茶飯事出ております。これだけじゃなくて暴力シーンもセックスシーンもあるのじゃないか、なぜ酒だけを取り上げるか。それはことしが八八・六六の年だから取り上げてみたわけでございます。  総務庁さん、八八・六六キャンペーンの後援に青少年対策本部がなっておるわけでございます。こういう漫画もありますし、青少年対策本部には警察庁さんも文部省さんも入っておられます。こういう問題は、出版、言論の自由がありますから、これは法律で規制するというわけにはいかないでしょう。いかないと思いますが、要請はできるのじゃないかと思います。ことしはこういう年だからひとつ何とかこういう場面、シーンは考えていただきたいという要請はできると私は思うのです。そういう意味で一度そういうことを検討していただきたいな、かように思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  119. 吉原丈司

    ○吉原説明員 今先生から御指摘ございましたように、未成年者の飲酒という問題につきましては、これは青少年の健全育成上極めてゆゆしき問題であると考えております。総務庁といたしましては関係省庁の非行対策の調整を行う立場にございますが、こういった飲酒等の問題につきましても、関係省庁の局長レベルで構成いたします非行防止対策推進連絡会議とか、課長クラスで構成いたします非行対策関係省庁連絡会議におきまして、情報交換とか協議とかやってきております。  それで、ただいま御指摘いただきました件でございますけれども、総務庁が後援して行っております青少年育成国民会議なるものがございまして、それの青少年と環境に関する懇談会を通しまして関係業界に対しましてもいろいろ自主規制等の措置を要望させていただいてきておるところでございますけれども、ただいま御指摘いただきましたように、今後ともこういった面につきましては強力に進めてまいりたいと思っております。
  120. 日笠勝之

    ○日笠委員 総務庁さんの方に話が飛んだから大蔵省は関係がないと思っていてはいけないわけでございます。  実は竹下大蔵大臣のころ私はこの問題を取り上げまして、お酒の広告に「未成年者の飲酒は法律で禁じられております。」そういう文句、言葉を入れていただきたい、このように申し上げました。すると当時の竹下大蔵大臣は、たばこの方は一社だから要請できる。たばこの場合は大きいですね。きょうは新聞広告を持ってまいりましたけれども、大臣、下の方に非常に大きい字でございます。これは別に拡大鏡がなくても見えるくらい大きゅうございます。ところがお酒の広告はその三倍です。それは五段広告、これは全面広告、十五段でございますが、見てください。あるのですけれども、どこにあるかわかりません。竹下大蔵大臣は、お酒の業界にも私から要請をいたしましょう、こういうことで実は要請をしてくださいましてから、一応小さい字で、それこそ天眼鏡で見なければわからない字ですが、一応飲酒は二十歳からとか、「未成年者の飲酒は法律で禁じられております。」とかいう文字が出だしました。  しかし、イカサマくさい。そこで今度はそれをアウフヘーベンする意味で、宮澤大蔵大臣の方から、業界に、せめてたばこ並みの大きさに活字をしたらどうか。竹下大蔵大臣は、ゼロから、小さい字だけれども載せるようにということで業界に要請してもらったわけです。先ほどリべラリストと私お褒め申し上げたわけでございますから、宮澤大蔵大臣は今度は業界に、出だしたことについては敬意を表して、しかしたばこと比べればまだまだ字が小さい。やはり酒造メーカーも、酒税法でお酒をつくる免許をいただき、競争相手もないということですから、守られているわけです。そしてまた、先ほどから申し上げます全国二百二十万のアルコール中毒患者、アルコール依存症の方もいらっしゃる。また、先ほどの大本先生のデータによると、高校二年生でも毎日飲むという方が二%もいる。こういう実態を見れば、やはり企業としても社会的倫理感に立っていかなければいけない。大蔵省さんは、とにかく税金が集まれば子供だろうがだれだろうが飲んでくださいというわけにはいかないわけでございます。  そこで、私は政府広報でしっかりとその辺をPRすることが一つ。それから、こんなに大きな広告で天眼鏡でも使わないと見えなかったでしょう。ところがたばこは見えたでしょう。せめて大人の側も、これだけの倫理感を持ってやっておるのだという一つの証左として、ぜひこれは大臣から業界へお願いをしていただきたい、かように思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは大切な御発言だと思いますので、少し政府部内で検討させていただきます。
  122. 日笠勝之

    ○日笠委員 天下の大蔵大臣が検討されるということは、役所言葉で検討とはやらないという意味じゃないのだ、このように私は理解申し上げておきたいと思います。  最後に、酒税法改正で、もし昨年六十二年度のお酒の税金に関する改正が提案されてその法案が通り、この四月一日から売上税が導入されて、当然酒税法も改正されておる税制の改革法案だったわけでございますので、もしことし四月一日からこれが施行されておったならばどうなるかということでございます。六十二年度の酒の税制改正と六十三年度の今の基本方針とを比べますと、こんなに天地、雲泥の差があるのです。一年の間になぜこんなに差が出てくるのか。いつも皆様方が法案を提案されるときには、最善最高の法案でございます、一言一句たりとも改正することはございませんというのが皆様方のいつもの御答弁でございます。  それではちょっとお聞きしますけれども、六十二年のときには清酒は上級酒と一般酒と分かれておりました。今度の改正では、どうも清酒は特級も一級も二級もなくして一本にする、こういう御提案をしたいと考えておられるようでございます。また、六十二年のときのウイスキーは、特級、一級はウイスキー、二級はスピリッツにする、こういうふうなお話であったのではなかろうかと思います。そうしてまたしょうちゅうに至っては、しょうちゅうの税率は先ほど上がるだろうとおっしゃいました。そのための財政措置も考えなければいけないとおっしゃいましたけれども、前回の案のときには何としょうちゅうは下がっておるのですよ。しょうちゅうの甲類、乙類ともに、乙類なんか半分になる予定だったのですよ。どんなものでしょうか。  昨年売上税が成立してもし四月一日から施行されておったならば、これはこういうふうになっておったわけです。ところが、あれが粉砕されまして、新しいお酒の税金の基本方針が発表になりましたけれども、全然違う。まさに朝令暮改というのでしょうか、提案の責任者として、一年間で、しょうちゅうなんか今度上げる、去年は下げるのだ、こういう物すごい乖離があるわけですが、一体全体お酒の税金に関する基本的な考えというものがあったのかないのか。ガットに言われたからそうしたのだ。ではもしこれが四月一日から発足しておったらどうなるのですか。また改正じゃありませんか。ですから、何事も拙速を避けて、広範に皆さんの御意見を聞いてこの改正法律案というものを出さないと、いいですか、もう一遍言いますよ。去年のしょうちゅうは下がる予定だったのですよ。今度上がるのでしょう。一体これはどうなんですか、大臣。朝令暮改という言葉は御存じでしょう。こんないいかげんな基本方針を考えて、そしてまたこれを提案して何が何でもやろう、これは断じて私はそのお考えを疑わざるを得ない。どうですか。
  123. 水野勝

    ○水野政府委員 今御指摘のしょうちゅうが半分などというのは、これは酒税だけの基準税率からいたしますとそういうことでございましたけれども、これは一方におきまして売上税をお願いするということをやっておりまして、それを織り込みましたところでの負担としては二%程度の引き下げということでほとんど横ばいでございました。  それはそれといたしましても、確かに基本的な方向が違うじゃないかという御指摘ございます。それはまさに、今もお話のございましたパネル報告を受けてのガットの勧告でございます。この点につきましては、私ども、前回、おととしの暮れの案でこれは大丈夫ではないかということで一応案をつくったわけでございますが、御承知のようなパネル報告であり、ガットの勧告でございます。私どもとしては、このパネルの報告、ガットの勧告につきましては申し上げたいことは多々ございますけれども、従来から日本が国際的な観点を重視するという観点から、ガットの勧告につきましてはこれを尊重するということはやはり貫く必要があるとすれば、まことに前回御提案したものとは異なるわけでございますが、またいろいろ申し上げたいことはございましても、ここは国際的観点からそれを尊重するのは大方針として守っていかざるを得ないのではないかということから、前回の案と若干離れるところはございますが、今中でいろいろ検討いたしておるところでございます。
  124. 日笠勝之

    ○日笠委員 ですから、最後に一言申し上げたいのは、やはり国際化ということを考えていかなければいけないわけでございますし、このガット云々という問題、イギリスから言われている問題はきのうきょうじゃないのです。竹下総理大臣が、私が大蔵大臣のころからの懸案事項だと言っていたでしょう。ガットが去年十一月に突然言い出したわけじゃないわけです。そういう広範な意見を聞いて、この一年でがらっと変わるような内容じゃなくして、これが一たんできれば十年、二十年もつくらいの、ひとつ意見を集約して英知を集めて考えなければいけない。ですから、先ほど言いました「人国記」をよく読んでください、こういうことで終わりたいと思います。
  125. 越智通雄

    越智委員長 次に、森田景一君。
  126. 森田景一

    ○森田(景)委員 いよいよ国会もあと一週間で閉会の予定になっているわけでございます。大蔵省関係の法案も衆議院の方は全部通過しておりまして、参議院の方はどうなっているかわかりませんけれども、参議院の方もほとんど終わりに近づいている、このように私は理解しております。この時点宮澤大蔵大臣として最大の関心事は何かということを最初にお伺いしておきたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最大の、こうおっしゃいましても、いろいろ悩み事はあるものでございますから、どれを一つとも申し上げかねますが、かねてお願いを申し上げております税制抜本改正というものを何とか近い機会成案を得て御審議をお願いしたいものだということは常に念頭に持っておるところでございます。
  128. 森田景一

    ○森田(景)委員 税制抜本改正というのはずっと前からの話でございますが、今我々国会議員としてまた政党人として一番関心を持たなければいけないのは、六十三年度減税について与野党の合意というものがあるわけですね、この与野党合意をきちんと決着させるというのが最大の関心でなければならないんじゃないかと私は思っている。それが終わってからどうなさるかというのはまた別の問題として。そういうことで私もいろいろと推移を見守っております。  きのうは、自民党安倍幹事長と社公民の書記長が会談をいたしまして、この減税の規模について二十日ごろ明示をする、そういう話し合いがあったと私は新聞を見て承知しております。少なくとも自民党安倍幹事長が、減税の金額を示す、こう約束をされたからには、その担当の大蔵省に、どのようにやったらいいか、こういう相談かあるいは何らか指示があってしかるべきだと思うのです。それが大蔵大臣に来ているか、担当の局長さんのところに来ているか、これはわかりませんけれども、少なくともそのくらいのことはあってしかるべきだと思うのですね。これはありましたか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 別にまだ承ってはおりませんが、政府・与党はおっしゃいますようにしょっちゅう連絡をとりつついたさなければなりませんので、あるいはお尋ねがそのうちにあるかもしれません。まだございません。
  130. 森田景一

    ○森田(景)委員 大変ゆっくりしていらっしゃるということは、安倍幹事長も、あと一週間しかないのですから、下手をするとうやむやのうちに会期を終えてそのまま逃げていこう、こういう腹ではないか、私はこう勘ぐりたくなるのですね。なぜかと言えば、もう三月三十日からずっと今日まで来て結論が出ていない。  それじゃ、安倍幹事長の方から大蔵省に話が来てないとしても、そういう話がもう与野党間であるわけですから、少なくとも大蔵省としては、仮に一兆五千二百五十億でしたか、この減税をやる場合にはどういうふうにしてやったらできるのかというぐらいの検討はなさってしかるべきだと思うのですね。これはなさっていますか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各党の国対委員長会談、あるいは政策担当者会談等が三月以来ずっと続けて行われておりまして、昨日も幹事長・書記長会談があった。公党の間のいろいろお話でございますから、さあどういう結果になりますか、私どもとしては気持ちの中ではいろいろな場合を想定していろいろ検討はいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、それはどういうふうなお話し合いによるかによりまして、その結果は、決まりましたことは誠実に実現しなければいけないということはかねがね考えております。
  132. 森田景一

    ○森田(景)委員 かねがねお考えになっていらっしゃるということですけれども、先ほど日笠委員の方からも定性的、定量的というお話がお酒の方でありました。今の大臣のお話は定性的ですね。定量的には全然考えていない、こういうことだと思うのですが、もう一遍ひとつお願いしたい。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月以来のお話も、もう会期がこのままですと幾らも残りませんので、最終的な結論をきっと与野党でお出しになるのであろう、それいかんによりますが、いろいろな場合があるかと思います。いろいろな場合に対応することは、おのおの仮定の問題としてはとつおいつは考えております。
  134. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、実は私もない知恵を絞りまして、どういうふうにしたらこの与野党の減税の合意が実現できるんだろうかということを考えてみたわけです。  もう一遍この三月三十日の与野党合意をおさらいしてみますと、一つは、野党三会派の要求する減税実施するというんですね。二番目が、野党の要求した減税財源は担当者間で引き続き協議する。三番目が、六十三年度の減税の規模については予算成立までに結論を得る。こうなっています。四番目が、六十三年度減税のための法案は今会期中に処理するように最大限努力をする。ここがちょっと私ひっかかっているところなんですね。最大限努力する。さっき言いました安倍幹事長も、二十日にまた幹事長・書記長会談があるやに聞いておりますが、そこで税額を提示するんだろうと思います。それを今度は会期中に法案として出すという、これが最終目標ですから、そうすると、もうあと幾日もありませんから、最大限の努力をしたけれども間に合わなかったということでここが逃げ道になる可能性があるわけですね。それで、この逃げない方法をきょうひとつ大蔵大臣と一緒に協議をしてみたい、こう思うわけなんですね。  今まで大蔵大臣は、要するに本年度の税収が好調であるから補正後においても二兆円とかあるいは二兆五千億円の増収があるだろう、こういうふうに予測されておりました。これを減税財源に使うべきだということがこの大蔵委員会で再々話があったわけです。そのときに、大蔵大臣の答えは、一つはこれは赤字国債の発行をしないための財源に充てるんだ、それからそれが余った分については今度国債償還基金の中に入れる、余ったものはどうするかという、こういう論議だったと思うのですね。それは今も変わりませんね。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かねて申し上げておりますことは、自然増収の規模がまだわからないわけでございますが、出ました場合には、まず三税は地方に交付をいたさなければなりません。例の三二%でございますね。その残りがございましたときには、これは今特例公債を発行を留保しておりますのが一兆一千億円余りございますので、それを、場合によりましては全部できるかもしれませんが、減額なり取りやめるということ。さらにその後に残ったらどうかということになりますと、これは、その半分は翌々年度までに国債整理基金に入れるということでございますか、そのような定められた処理をいたしますか、その後に残りますかどうかはもう少し見ていないとわかりませんのですけれども、剰余金になる、こういうことは申し上げてございます。
  136. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、赤字国債の発行をしないための財源に充てる。これは、赤字国債を発行するというのは我々も反対でございましたけれども、昨年もう既に成立して生きているわけですね。ここでこの減税のために新しく特別な立法措置をして赤字国債を発行するという状況じゃないわけです。ですから、それはそのまま行っても何ら混乱はないわけですね。昭和六十二年度の赤字国債を発行するというのはそのまま行っても何ら問題ではない。そういうことを政府は去年やってきたんですから。成立させてきたんですから。ですから、今問題になるのは、自民党社会、公明、民社、この四党の協議で減税をやりましょうと国民の前に約束したわけです。それがこの国会中にできなかったとしたら、これは大変な国民に対する背信行為だと思うんです。だから、この与野党の減税協議は少なくとも残されたこの一週間の中で成立をさせなければいけない、こういう性格だと思うのですね。それならば、赤字国債に充当するなんというそれはそのままにしておいて、とにかく自然増収の分を減税財源に充てる、こういう考え方をとっておくべきだ、私はそう思うのです。  それで、昭和六十二年度の税収はどのくらいになるかというのは五月の三十一日にならなければ確定しない、それがわかるのは六月ごろだ、こういうお話でございましたね。今の見込みでは去年の決算額と比べてどのぐらいふえるというふうな見込みを大臣はお持ちになっていらっしゃいますか。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それがわからないものでございますからどうもこのお話がなかなか進まないわけでございます。
  138. 森田景一

    ○森田(景)委員 大蔵大臣ほどの頭脳明晰な方でもわからない、こういうわけでございまして、さっきの日笠委員の褒め方はちょっと褒め過ぎだったんじゃないか、私はこのように申し上げておきたいと思います。  私がちょっと計算をしてみました。ことしの四月の税収、昭和六十二年度の——非常にややこしいのですが、昭和六十三年の昭和六十二年度の四月分、五月分、こういう表現になるのです。これを計算しますと、要するに去年の四月に一カ月間で四兆二千二百九十四億一千七百万円入っておりますね。それから五月には五兆六千二百八十七億四千三百万円。これが五月三十一日に四兆八千億円入ったというこの間大臣お話しになったこの金額でございますね。合わせますと九兆八千五百八十一億六千万円、これが二カ月間で入ったのですね。それが要するに増収がない、去年と同じ比率でいけば一〇〇%だ、こういう計算でいきますと、ことしの三月末、だから六十二年度分の三月末、この累計額が三十五兆二千六百九十二億四千四百万円、こうなっております。したがいまして、この三月末の累計と先ほどの去年の四月、五月の要するにふえないと見た金額を足しますと四十五兆一千二百七十四億四百万円、こういうふうになると思うのです。これから補正予算額を引きますと二兆四百億円、こういう計算になると思うのですね。これはどうでしょうか、単純に計算して。
  139. 水野勝

    ○水野政府委員 粗筋は委員御指摘のとおりでございますが、ただ、ちょっとことし、去年と技術的な点で違いますのは、たばこ会社のたばこ消費税でございます。去年までは最後の月に半年ずつ納めてよいことになっておりました。ことしから毎月納付になっておりますから、そういたしますと五カ月分がもう既に入っておる。それが去年は四月に一遍に半年分が入った。そうした部分が約四千億ございますので、そこのところは調整をする必要があろうかと思います。したがいまして、今御指摘の差額約二兆でございますが、そこから約四千億を引いてカウントしていただければと思うわけでございますが、粗筋のお話は委員の御指摘のとおりでございます。
  140. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは、去年の四月、五月の税収とことしとを比べて、伸びない、同じという仮定計算ですね。要するに、昭和六十一年の決算額に比べて六十二年の決算額が六%伸びたと仮定しますと、約二兆四千億になるのでしょうか。六十一年がたしか四十一兆何がしだったと思いますから、六%で約二兆四千億、六・五%で二兆六千億、このくらいになる計算なのですね。これは間違いありませんか。
  141. 水野勝

    ○水野政府委員 そこの計算も、四月、五月、今申し上げた四千億のところがちょっとそれより少なくなります。
  142. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、とにかく一週間のうちにこの法律を成立させなければならないという非常に急いでいる状況にあるわけですから、これはこれから幹事長・書記長会談で詰めてくるだろうと思いますし、あるいは政策の担当者会議でも検討されるかもしれませんけれども、少なくとも我々大蔵委員会として、税の問題を論議しているわけでございますから、こういうことでこういうふうにしておけば約束は守られるというものをつくっておく、できたら一番いいな、こう私は思うのですね。  ですから、大蔵大臣も、副総理であり大蔵大臣という政府の立場もありますけれども、一方、やはり衆議院議員、しかも自民党所属の衆議院議員という政治家の立場にもあるわけですね。それから、大蔵省の大勢の幹部の皆さんがそろっていらっしゃいますけれども、大臣としての立場に立ってこれからの国家の財政運営をお考えになる、これももちろん大事なことに違いありませんけれども、一方から行けば、政治家として国民にどうこたえていくか、どう判断するか、こういうことも大事なことだと思うのですよ。そういう点で、大変おこがましい話なんですけれども、森田私案というものをつくってみたのです。これをもとにしていろいろとまた大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。  少しコピーしてきましたので、大臣等に差し上げてよろしいでしょうか。
  143. 越智通雄

    越智委員長 結構でございます。
  144. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは、何も私が目新しくつくったのではなくて、もう既に過去に政府の方で何回かおやりになった手法なのですね。タイトルを「昭和六十三年分所得税減税実施のための財政処理の特別措置に関する法律案」、こういうふうにつけてみたのです。何だかややこしいのですけれどもね。  (趣旨)  第一条 この法律は、昭和六十三年分の所得税減税実施に必要な財源の確保を図るため、決算剰余金の処理について特別の措置を定めるものとする。  (財政法の特例)  第二条 財政法(昭和二十二年法律第三十四号)  第六条〔決算上の剰余金の公債償還財源等への充当〕第一項の規定は、昭和六十二年度の一般  会計歳入歳出の決算上の剰余金については、適用しない。    附則  この法律は、公布の日から施行する。とにかく一週間のうちに協議がまとまれば、これが成立すれば、金額は出ていませんけれども、与野党のこの約束が守られるという法律になると私は理解しているわけです。  ただ、その場合に、先ほど大蔵大臣が言われましたように、自然増収分は特例公債の発行を抑えるために充てるとか、あとはこれで処理できますから、そういうのを抑えておきさえすればこれはできるわけです。私は、自分でつくって自分で褒めるというわけじゃないのですけれども、これはもう先例があることなものですから、こういう形であったら、なるほど我々の先輩は優秀な方が大勢いらっしゃったのだなと、こう思いながらつくってみたのです。恐らく宮澤大蔵大臣も例をおつくりになったときには担当していらっしゃったのじゃないかな、こんなふうにも思うのです。例えば、昭和五十六年法律第十六号、昭和五十五年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律、こういうのができていますね。それから、昭和五十九年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律、こういうのもできているのです。ですから先例があることですから、これは決断をすればちゃんとできることだと私は思うのです。  いきなりの話で大臣も即答は難しいかもしれませんけれども、こういうことに対して、これが成立すれば与野党の減税は実現できると私は思うのですけれども大蔵大臣はどう思われますか。
  145. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは政府委員からお答えをさせていただきます。
  146. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 若干法律的な話なので私から事務的にお答えしますが、その規定が設けられますと確かに決算上の剰余金二分の一繰り入れるべしという法律についての特例にはなりますけれども、その具体的な措置の中身が一条ではまだ明らかになっていないという問題点のほかに、果たしてそれだけで足りるかどうかという問題がございます。  それから、先ほど大臣から御答弁を申し上げた一兆二千二百億円の赤字公債の減額は、財源確保法を手元に持っておりませんけれども、これは歳出の財源に充てるためということになっておりますので、仮に出納整理期間内に税の増収が出たということが明らかになった、それが確定的になった場合にはその発行を取りやめるということは実は歳出の財源に充てることになりませんものですから、法律上の手当てとして、もし一兆二千二百億円の減額をしないということになれば、財確法の歳出の財源に充てるために特例公債を発行するという規定自体も直して、いわば一兆二千二百億円の赤字公債が残っている分もこれはそのまま発行するという規定をもう一条設ける必要があろうかというぐあいに考えられます。
  147. 森田景一

    ○森田(景)委員 わかりました。そういうのをつくればできるということなんですね。  大臣、だからやる気になればできるわけです。これで私は安心できると思うのですが、いかがでしよう。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のは、政府委員が法律上の道具立てを申し上げたわけでございますけれども、というのは、森田委員が道具立てをお示しになられましたので、今お答えしようとしましたことは、もう御明察のように、特例公債そのものは自然増収がそれだけございますれば発行を取りやめるということが、これは私が申し上げていることなんでございますが、私はそう思っているわけでございます。それを、いや、どうしても出すのだということになればやはり一つ法律が要るかもしれないなという道具立てを申し上げましたので、私どもとしましては、今森田委員がお示しになられましたこの御案というものは、あるいは特例公債は宮澤の申し上げているとおりやめて、しかしその後に剰余金が出たときにその剰余金を二年先に国債償還に充てることはない、この法律をつくっておけばその剰余金が全部財源になるではないか、こういうふうな道としてお示しになったかなと伺っておりまして、それは確かに過去においてもそういうことをいたしました例がございます。これも道具立ての問題で、そうするかしないかということは別な話でございますけれども、いわゆる自然増収が減税財源になるではないか、ならぬではないかという御議論に際しましては、こういう一つの法律上の可能性の問題が出てくるということはよく理解のできるところでございます。
  149. 森田景一

    ○森田(景)委員 いきなり出した問題でございますから、ここで大臣とやりとりしても、また大臣というお立場もあることでございますから、できましたら大蔵委員長の御裁断で、大蔵委員会でこういう意見があって、こうすれば与野党の減税合意が実現できる可能性があるから、自民党としてもそれを幹事長・書記長会談にそういう方向で出したらどうだとか、あるいはこの大蔵委員会理事方々にお諮りしていただいて、こういう方向で大蔵委員会としてまとめてみようではないか、こういうことのお諮りをいただければ大変ありがたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  150. 越智通雄

    越智委員長 大蔵委員会として森田議員の提案をどう処理するか、非常に難しい問題があると思います。一応次の理事会において理事の方にはお伺いいたしておきます。
  151. 森田景一

    ○森田(景)委員 何分よろしくお取り計らいをいただきたいと思います。  この間総理府で税制等に関する世論調査をやりました。これは政府の方でやったのですから大臣もよく御存じだと思います。五月十五日付で総理府の方で発表しております。この回答を見ますと、現在の税制度に不公平、不平等感を持っている人は八〇%に達している。それから都内に住む人の七二・六%が土地の所有をめぐって不公平、不平等感を持っている、このように答えているということでございます。総理府の世論調査が必ずしもみんな正確かどうかということは私もわかりませんけれども、責任持って調査したことだと思います。こういう税に対する不公平感を持っているということもあるわけでございます。したがって、まずとにかく不公平感というのはいろいろ論議がありまして、人の考え方というのは環境とか思想とかいろいろあって一つの物事に対しても見方は分かれるのが普通ですけれども、八〇%の方々が不満を持っていらっしゃる不公平税制を打開していこう、解消していこうというのは、政治家として大きな務めである、任務である、このように私は考えているわけでございます。大蔵大臣はこの調査結果をごらんになったかどうかわかりませんけれども、大臣としてどのような印象をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年以来この税の問題というのは非常に国民的な関心になっておりましたし、またその後も、税制調査会の公聴会があるとか、あるいは報道機関、国会はもとよりでございますが御議論があって、今国民がいやが応でもこの税の問題については関心を持たざるを得ないということ、それが背景になりましてこの設問に対しましては一番税の話が出たのではないかと思います。  税というものはだれしも進んで払いたいというものではございませんので、払わなければならぬ、それはみんなが公平に負担しているのだからということがございませんと大変に成り立ち得ないもので、それだけにこの公平というのは税の生命であるというふうに考えております。
  153. 森田景一

    ○森田(景)委員 五月二日に国税庁は六十二年分の確定申告で一千万を超す所得税を納めた高額納税者を公示したわけでございます。私も新聞で拝見しましたが、全国上位百人の番付を見ました。土地高騰という影響の中で、土地を処分なさった方々がほとんど大部分を占めていらっしゃる、そういう状況でございまして、私もいろいろと考えさせられたわけでございますけれども、そういう中で、高額納税者を発表するというのは、今までの大蔵省の考え方としては、税金をたくさん納めて国に対して貢献をしている、そういう人を顕彰する意味だ、こういう意味一つはあって発表なさるようになったと聞いているわけでございますが、この辺はどうなんでしょうか。
  154. 水野勝

    ○水野政府委員 この制度は、従来、終戦直後でございましたけれども、第三者通報制度というものがございまして、ほかの人の納税状況を税務当局に通報する、それによりまして調査を促すという制度がございました。その前提といたしまして、納税者は申告書を閲覧できるという制度がございましたが、それはシャウプ勧告によりましていかにも問題が多過ぎるということから、申告納税制度の適正な運用というものを担保するものとして公示制度というものができたというふうに言われておるところでございます。  ただ、所得税の場合におきましては、これは所得額を公示いたしましても、その税額というものは累進税制でございますからよくわからない。そういう意味からいたしますと、むしろ税額を公示する方が趣旨に即するのではないかという議論がございまして、昭和五十九年から現在の制度になってございます。その際に、そうした申告納税制度の公正な運営に資するということとともに、またそれとも関連あるわけでございますが、税額を公示し、それによりまして高額な納税者につきましてのある意味では顕彰という意味も税額の表示の場合には期待できるのではないかという議論もその当時ございました。そうしたもろもろの要請、意味合いを持って現在公示がなされているというふうに考えてございます。
  155. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、いずれにしても、この高額納税者として発表された方々、税金の捕捉というのは、一番捕捉しやすいのが土地の売買、これは不動産登記されておりますので不動産売買、それから相続税だ、こういうふうに言われておるわけでございます。これはもう逃げようがありません。だから、言ってみれば、こういう方々は、土地とか相続税とか、そういうことで正直に申告なさった方々が出てきているのだろう、こういうふうにも考えられるわけなんです。問題は隠れた長者といいますか、そういうものを見逃してはならない、こういうこともあると思うのです。  どういうことかといいますと、税務署の職員の方が大変苦労なさっていろいろ税務調査をなさるわけです。これは申告ですから、申告をして内容に不審な点があればもう一遍調査をして、それで修正申告するとか、こういう方法をとってきておられるわけです。その高額所得者として発表されるのを嫌がる人もいるのだそうですね。そういう人はどうするかというと、申告するときに金額を少なく申告しておくのだそうです。それで、ことしは五月二日ですけれども、税務署が発表した後で残りの分の修正申告をするのだそうです。そうすると、修正申告を出した分は税務署は公表しない、こうなっているのだそうですね。ところが、法人税等については、修正申告も四千万以上の申告をした場合にはこれは税務署で公表する、こういうことになっているそうでございまして、だから、そういう個人の所得申告についても、修正申告したものは後から発表して公平を欠かないようにしなければいけない、私はそう思うのですけれども、この辺、大臣、どう思いますか。
  156. 水野勝

    ○水野政府委員 確かに、御指摘のように、法人税につきましては四千万という所得、これは修正申告によって超えた場合でもそれが公示の対象になります。ただ、法人税と申しますのは、会社は十二カ月決算期がございまして、随時、毎月来るわけでございます。それからまた、修正申告も当然のことながら毎月あるわけでございますが、所得税と申しますのは、三月十五日に一回申告をしていただく、そういう一括申告と申しますか、一括申告制度になってございまして、そのときに、ことしでございますと七百七十万件の申告がございます。そうしたものを整理いたしまして、現在の制度としては三月三十一日で締め切る。その時点までに修正申告等がございますとその分の修正申告は入ります。  そうすると、委員御指摘のように、その期限を過ぎた後で修正申告をお出しになるとその対象にはならないわけでございますが、そういう点は、法人税のようにその後修正があった分につきましてもばらばら公示をするという制度も考えられますが、何分にも七百万件、八百万件という申告書でございまして、それがまた一括して三月十五日が期限とされているということから、事務的な面を主としての理由ではございますけれども、三月三十一日で確定申告及び修正申告を含めまして締め切らせていただいている。常時そのように、毎度その期限を過ぎた後にという方は、それはわかりますので、そこは国税当局としても留意しておられるかと思いますので、御指摘のような弊害が大きく広がるということはないのではないか、やはり何百万件という申告を一括して受け取って処理していくという現在の執行状況からすると、現行制度が効率的ではないかと思って現在のように制度化されているところでございます。
  157. 森田景一

    ○森田(景)委員 大変件数が多くて骨の折れる仕事だと思いますけれども、やはり公平を維持する、そういう点ではいろいろとまた検討していい方法を考えていただきたいと御要望しておきたいと思います。  もう一つ、不公平のことにつきまして、取る方といいますか、徴税の方は、法律で決められておりますから、大体、多い少ないとかいろいろありますけれども、やむを得ないと思っている方も大勢いらっしゃると思いますけれども、不公平感で非常に大きな要因になっているのが新聞等に発表されております脱税の摘発ですね。これは感情として、非常に皆さん不公平だ、単刀直入にそう思う事件です。  私も昨年の暮れあたりからの新聞発表を拾い上げてみました。委員長、また大変恐縮ですが、若干それをコピーして持ってきましたので差し上げていただけませんか。急いでつくったものですから、新聞等に原典がありますので新聞名は省略しますけれども、三十一項目挙げてみました。去年の十月二十二日からです。タイトルだけです。申し上げてみます。もう時間がないのであとの質問ができませんから。これで終わりますから。新聞のタイトルです。  一 農家のごまかし所得最悪、調査対象の七七%、五百九十一億円  二 免税店の前店長逮捕、七千八百万円を脱税  三 企業の”罪テク”利益隠し=脱税のカラクリ 罪テクのザイというのは、財産の財ではなくて罪悪の罪ですね。  四 法人税六十五億円を滞納  五 外資系貿易会社の日本支店二十三億円所得隠し  六 株の財テク裏街道、所得隠しの二億円 この財テクは財産の財ですね。  七 ゲーム機とばく一億三千六百万円脱税  八 大企業所得二十二兆超す、申告漏れも最高四千四百億  九 外人タレントの報酬など源泉徴収漏れ六十四億円  十 使途不明金四百二十九億円に、ヤミ献金二十億円だけ判明  十一 もぐりの株売買で利益数億円を脱税  十二 二億二千万円所得隠し、十三年前にも脱税摘発  十三 七百七十九社が三百六十八億円、土地取引での所得隠し、申告漏れ 以下、三十一までずっとあります。時間がありませんからやめますけれども。  新聞各紙にもうしょっちゅうこういうふうに出てくるのですね。これは、一般のサラリーマンが見て、我々はもう源泉徴収で取られてしまう、率直に言って、取られてしまうという表現ですね。ところが、こういう人たちはこうやって脱税しているじゃないか、不公平だ、こういう認識を持つことも、これも確かなわけです。税務当局の方も一生懸命努力していらっしゃいますけれども、脱税のできないようなそういう方法を、今までも考えていらっしゃるかもしれませんけれども、さらに検討していただいて、不公平感を除去していただきたいな、率直に私はこのように思うわけでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもう御指摘のとおりでございまして、国税庁も、実は国税庁の人員と申しますのは、終戦後国税庁ができましたとき五万人ぐらいで、変わっていないのでございますから、非常によくやっておる、機械化もございますし、いろいろございましょうが、本当によくやっていてくれまして、実査などもできるだけ多くやってもらうようにしております。それが一番こういう事件を防ぐのによろしいのでございますが、あと資料の交換であるとか通報であるとか、随分機械化もやってもらっておりまして、一生懸命やってくれていると思います。どうしてもやむを得ないときは少しずつ人数をふやさせていただければいいと思っておりますが、それも思うに任せません。まあ一生懸命続いてやってもらわなければならないと思っております。いろいろ御注意をいただきましてありがとうございました。
  159. 森田景一

    ○森田(景)委員 まだちょっと時間があるみたいですから、最後に。答弁は要りませんが。  個人の申告所得はこうやって発表になるわけです。ところが、法人の納税額というのは発表になっていないのですね。私もいろいろ調べているのですけれども、例えばこれは名前を出して恐縮ですが、週刊ダイヤモンド、五月二十一日の特大号というのを見ますと、これは税務署から聞いたのかこの会社で調べたのか、所得額がずっと七万六千社全部出ているのですよ。ところが、所得がそのまま納税額になっていないのです。この法人の納税額というのをぜひ税務署の方で発表していただくようにしていただきますといろいろと不公平感の解消には役に立つだろう、こう思いますので、ぜひ、これは答弁要りませんから、検討しておいていただきたい。この次、来年度あたりはそういう方向で実現させていただければ大変ありがたいと思います。  以上で終わります。
  160. 越智通雄

    越智委員長 次に、北橋健治君。
  161. 北橋健治

    北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。初めての大蔵委員会の質問でございますが、政府委員並びに大臣におかれましては大変お疲れだと思いますけれども、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  宮澤大臣に質問するのは初めてでございますが、今遷都論ということが非常に報道され、そして関心を集めております。先般、私物価対策特別委員会で中尾経済企画庁長官にこの遷都論に対する所見をお伺いしましたところ、非常に意欲的にお答えになりまして、リニアモーターカーを初めとしての交通網の体系の整備が前提となるけれども、できるだけ早い機会に実行に移せれば望ましいと前向きの御答弁をいただいたところでございますが、宮澤大臣はどのようにお考えでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましては、政府部内で公式に議論をいたしたことがございませんし、いわんや決定というものがございませんので、宮澤個人がどう思うかということで申し上げさせていただきます。  先般の四全総、第四次全国総合開発計画に至りますまで何回かの総合開発計画で首都のあり方についてはいろいろな提言がなされてまいりました。しかし、それを見ておりますと、結局可能であることは、どれだけ首都に権限が集中するのを防ぐかということ、過去の推移を見ておりますと現実的にはどうもそういうところに落ち着いているような感じが私はいたしておりまして、それもなかなかそのときそのときの全国総合開発計画が言いながら実際は実現していない、権限分散すらも実現しておりませんから、まずそれをどれだけやれるかというのが今の現実の大事な政治的課題だというふうに、私はそういう考え方をいたしております。
  163. 北橋健治

    北橋委員 御所見を承りましてありがとうございました。重要な問題でございますので、また鋭意御検討いただきたいと思います。  さて、今与野党の減税交渉が詰められておりますけれども、確かに合意した事項がいまだに実現されないことはまことに残念であります。その減税交渉を今後最終的に詰めるに当たりまして、一つの大切なデータとしましては、自然増収がどの程度に上るかということであります。予算が成立するまでは暦年の六十二年の自然増収についてもまだ集計ができないというような御答弁をいただいたこともございましたけれども、現時点において六十二暦年あるいは六十二年度におきまして自然増収がどの程度に上ると見ておられるか、もしわかりましたら事務当局からお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席中川(昭)委員長代理着席
  164. 水野勝

    ○水野政府委員 これはたびたびの御質問もございますところですが、従来から御答弁申し上げているところといたしましては、現在までは六十二年度としては三月分までが判明しておる。判明しておるところでございますと、予算額の八一・九%まで到達してございます。したがいまして、まだ二割を残しておるということでございます。この二割を残しておる段階におきましては、前年対比八・九%の伸びでございます。これは、減税を勘案いたしまして組んでおります補正後予算額二・九%の伸びに対しますと、税収としては三月末までの時点では好調でございますということを申し上げております。したがいまして、六十二年度といたしましては何がしかの自然増収は生ずるものと思われます。しかしながら、なお二割を残しております段階では、それを具体的に申し上げるということは現時点では困難でございますということで御答弁申し上げ、御了解をいただいてきているところでございます。
  165. 北橋健治

    北橋委員 大臣にお伺いいたしますが、大臣は与党の最有力のリーダーのお一人でございまして、与野党の減税交渉なかなか思うように結論が出てまいりませんが、今の局長の御答弁にありましたように、かなりの程度の自然増収が見込まれるわけでございまして、財源の規模についてもまだ二割ほど十分に確定していないところがあるようでございますが、ひとつぜひ与党の方に強く働きかけていただきまして、合意した事項の実現、速やかに国民が強く要望していることしの減税につきまして結論が得られますようにリーダーシップを発揮していただきたいのでございますが、いかがでしょうか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはどの党においてもさようでございますけれども、おのおの責任者がおられまして、その方々が国対委員長あるいは政策担当者あるいは幹事長・書記長ということで話をずっと三月からしておられますので、そのことは私ども当然のことながら非常な深い関心を持って見守っておりますし、また与党と政府の間では内部的にいろいろな連絡をいたしております。それで、三月以来のお話が、いよいよ会期末になりましたので、殊に第四項というものの結論を出さなければならないということで、与党の幹事長が昨日幹事長・書記長会談におきまして誠実にあのお約束は何とか守りたいと思うということを申し上げたということを聞いております。それがどのような形になりますかは、明日でございますか明後日でございますかということだと承知をいたしておりますが、あの長い間の経緯は自民党としても何とか誠実に見守ってまいりたいと考えておるものと私も信じております。
  167. 北橋健治

    北橋委員 ぜひ与党の方もその方向で御努力をお願いしたいと思います。  さて、本日は税制につきまして政府の見解をただしてまいるわけでございますが、先般日本社会党の方から予想される新型間接税の導入が家計にどのような影響を与えるかという極めて注目すべき試算を発表されたところでございます。大蔵省の方もこの内容については鋭意御検討されたと思いますが、まだ発表されてからの日が浅いものですから十二分な検討には至っていないかもしれませんが、この内容を見ますと、仮に五%程度の税をかけるとするならば、三兆円減税を行っても年収六百五十万円未満は増税になるという試算になっております。六百五十万未満になりますとサラリーマンの約九割でございますから、これは国民の期待を大きく裏切ることになってしまいます。また、三%の新消費税をかける場合でも、四百万、四百五十万までの方々は増税になるという試算であります。  私はEC型付加価値税を含めまして直間比率の見直しをすることについては一定の理解を持つ一人でございますが、その場合、国民理解と協力を得るためには、抜本的な税制改正が一般家庭にとって確かに減税になるという、それが極めて重要なポイントだと思っております。振り返ってみますと、売上税のときも国会で全く審議なしで廃案になってしまったわけでありまして、終わってから有権者の方にお伺いしてみますと、ぜひ議論をしてその問題点をただしてほしかったとよく言われましたが、あのとき国民の間に強い反発が起こったというのも、民間の研究者の試算によりますと大方のサラリーマンはやはり増税になるという試算がかなり広範に報道されました。そのことが売上税に対する一つの大きな反発の要因になったと思っております。その意味日本社会党の出されました試算というのはこの時点において大きな社会的影響力を持つ注目すべき試算でありますけれども政府としてはこの試算に対しましてどのような評価を持っていらっしゃるのでしょうか、お伺いします。
  168. 水野勝

    ○水野政府委員 社会党として試算をお出しになったということは私ども新聞等を通じまして承知いたしておるところでございますが、党としてお出しになったものを私ども正式にこれを十分お承りし、また私どもが案のできたところでいろいろ正式にまた御説明を申し上げるということになろうかと思うわけでございまして、党としてお出しになったものについて、不明確と申しますか中途の段階で私どもとして軽々にこれにつきまして云々申し上げるということは、やはり現時点では御遠慮申し上げた方がいいのではないかと思うわけでございます。
  169. 北橋健治

    北橋委員 政府当局のその姿勢はわかりましたが、そうしますと、私どもが伺っておりますのは、七月に臨時国会を召集していよいよ税制改正の本格的論議が始まると聞いておるわけでありますが、当然大蔵省としても、新消費税、そして見返りの減税抱き合わせで一般家計にどのような影響が及ぶかについては詳細なシミュレーションをおやりになると理解してよろしいのでしょうか。
  170. 水野勝

    ○水野政府委員 今回税制改革をいろいろ検討させていただいておりますのは、所得の稼得の段階所得消費段階、それからまた稼得した所得からつくられました資産のストックに対する課税、こうしたものを組み合わせて適切な税体系を構築するということが眼目であろうかと思うわけでございます。そうした場合におきましては、その稼得所得に対する税負担と申しますのは、その時点その時点での負担のあり方というものもございますけれども、例えば勤労者でございますればその方のライフステージを通じましての税負担のあり方ということもあるわけでございますので、収入階層別に一定の静的な状態で階層別の負担を検討することもさることながら、私どもといたしましては、例えばライフサイクルを通じた税負担のあり方、そうした観点からの分析もあって、考え方の整理もあってしかるべきであると考えておるところでございます。しかしながら、こうした改正を行いますときには、そうした階層別の負担の変動と申しますか、増減、こうしたものにつきましてもいろいろ御指摘のあるところでございますので、全体の姿がまとまった段階におきましてはそうした面からの御説明も当然のことながら必要ではないかと考えておるところでございます。
  171. 北橋健治

    北橋委員 大臣にお伺いいたします。  事務当局の姿勢はわかるのでありますけれども、直間比率の見直しとも言われます抜本的な税制改正をおやりになるのでございましたら、やはり国民理解と協力が不可欠であります。その場合、売上税廃案を通じましていろいろな教訓をお持ちになっていらっしゃると思いますが、やはり有権者の率直な気持ちとしては、自分にとってプラスだろうかマイナスだろうかというのは極めて大きなポイントであります。売上税のときは、私どもの試算では、年収七百万円までは増税になるという結果が出ましたし、政策構想フォーラムもやはり増税だったわけであります。大蔵省だけが、就職した直後の若い方と退職した直後の老人の方だけが増税になるけれども、あとは減税になるという試算を出されたわけですけれども、結局その点で国民理解を十二分に得られなかったと思います。  そこでお伺いいたしますけれども、大臣は、この税制改正を今後進めるに当たりまして、階層別の、いわゆる国民一人から見た場合に自分にとっては増税になるのかマイナスになるのか減税になるのかというのがわかるようなそういった試算をおやりになるかどうか、そして、そういった階層別の増減税の試算が極めて大きなポイントになっている重要な事項であると私は考えるわけでありますが、大臣もそのようにお考えになっているかどうか、お伺いいたします。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、それは国民が非常に関心を持たれることでありますから、いわば重要な事項であると考えます。  第二に、しかし事の性質上これは一種の仮定を設けなければ計数的にはシミュレーションも何もなかなか行えない種類のことであるということもぜひ理解をしておいていただかなければならないことだと思います。前回の場合、これについていろいろ御議論がありましたこともおっしゃいますとおりであります。政策フォーラムのお話もございましたし、政府が法人税の減税分を個人にどういうふうに帰属させるかということについて一定の前提のもとにいたしました試算が、理屈に合っている、合っていないという、この国会でも御議論のあったことも事実でございましたから、これは前回の税負担の御議論のかなり大事な部分であったことも事実でございます。  それらのことは全部おっしゃるとおりだと私思っておりますが、ただ、これはいかにも幾つかの前提を置き、また現に利用できるだけの資料を利用して組み立てるしか仕方がないものでございますから、そういう意味ではいろいろな甲論乙駁というものは本来あり得る資料であるかと思います。しかし、それにしましても大事なものでございますので、私どもとしても何とか真実に近いものを資料としてその段階になりましたらひとつつくり上げてみたい。そういう前提がございますのでそういう意味で制約は免れませんけれども、そういうことはやはり一度考えてみる必要があるのではないかと思っております。
  173. 北橋健治

    北橋委員 今まで大蔵省を初めとして政府首脳のおっしゃることを聞いておりますと、抜本的な税制改正の趣旨はわかるのですが、先ほど来私が申し上げておりますのは、やはり自分の家庭にとってプラスになるかマイナスになるかというところが極めて大きなポイントであって、税制改正をもし成功させるという方針でいかれるならば、その点に十分配慮した税体系の整備が必要になってくると思います。どのような試算を見ましても、売上税のときもそうでございましたし、このたびの日本社会党の試算を見てもわかりますように、一定の低所得者の方々に大変負担が及ぶというのが一番大きな問題点にされておりますので、その辺の逆進性部分を回避するために、歳出面での配慮を行う、その他のことも必要になってくると思います。  いずれにしましても、税体系のいわゆる理論的な議論とはまた別に、一般勤労家庭が納得できる、これならば受け入れてもいいというようなものをお出しにならないと、その視点でこれから物事を進めていかれませんと、また難しいことになるかと思います。大臣も御案内のとおり、鉄鋼労連あるいはJCという労働団体の中には直間比率の見直しを積極的に評価する勤労者もたくさんいらっしゃるわけであります。しかし、日本社会党の試算にもありますように、このようなものが出ますと、やはり大変大きな問題を含んでいると反対せざるを得ません。その点での御高配を今後ぜひともお願い申し上げたい。再度もし御答弁いただけましたらいただきたいと思います。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 IMF・JCの御関連の方にはそういうふうに考えていただく方が随分おられますし、それはまた今物品税を背負っておっていただく品物がかなり少数の偏った品物でございますこともありまして、そういうことについての御批判からも出ておるという点があるだろうと私は思います。自動車でありますとか電力でありますとかでございますが。しかし、その御議論をやっていらっしゃる場合に、やはり今のところの問題は大きな御議論になるということは私は当然だと思いますから、それは私どもとしても決して軽んじていい論点だと思っておりません。できるだけ正確なものを時期が来ましたらお目にかけて、ネットの減税になるということをわかっていただきたいと考えておりますが、さっきも申しましたように、これは一つの仮定を設けて計算をするという制約はやはりいずれの場合にも避けられないので、それにしましても最善を尽くしたものを何とかつくってみたいと考えております。
  175. 北橋健治

    北橋委員 ぜひとも、一般勤労家庭にとって直間比率の見直しを初めとする税制改正が明らかに減税になる、そういった法案が出てくることを強く期待するものであります。  さて、生命保険の所得控除の問題についてお伺いをしたいのでありますが、先般の政府税調、四月二十八日に中間答申が出まして、この中で生命保険料の所得控除については見直しを行うことが適当であるという方針が出されております。今急速な勢いで本格的な高齢化社会が進んでおりますし、この制度を廃止を含めて思い切って縮減していく方向については全く納得がいかないわけであります。国民の期待を大きく裏切る内容だと思います。  政府税調でどのような議論が行われたかは私ども詳細には知らされておりませんが、伝え聞くところによりますと、この制度というのは貯蓄優遇税制である、他の制度とのバランスからも見直すべきであるという意見が強く出されたようであります。しかし、これは大臣もよく御案内のとおり、そもそも生命保険という制度は、国民の不慮の災害あるいは病気、それに備える生活資金を保障する、老後生活の保障を目的としておりまして、本来国の社会保障で対処すべきところをカバーする重要な制度でありまして、国民の九割は加入するということで深く国民に定着をしているものであります。したがいまして、資産形成を目的にした貯蓄とは本質的に異なると考えます。  そのほかにも、なぜこれを見直せといったのか、いろいろな理由がありますけれども、やはりこの制度は大事である、今後ともぜひ守らねばならないと私どもは信ずるものでありますが、残念なことに中間答申では見直しの方向が出てしまったわけであります。これをぜひ今後も存続の方向で、少なくとも今現在五万円の控除の限度額を縮減するような方向には持っていっていただきたくないと思うわけでありますが、政府の方針をお伺いします。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御意見の趣は、私どももよく考えまして、まだ最終的な案を決定する段階ではございませんので、検討させていただきます。
  177. 北橋健治

    北橋委員 引き続き検討されるということでございますので、私もそれ以上あえて立ち入るわけにはまいらないわけでありますが、大臣、ぜひよく承知をしておいていただきたいことがございます。  といいますのは、今、一方で大型減税実施するというふうに自由民主党税調の方でもいろいろと作業をされていると聞いておりますけれども、もし生保の控除制度が手をつけられますと大変な増税になってしまいます。今でも生保あるいは損保の控除によりまして国民は二千三百億円の減税の恩典にあずかっているわけでありまして、廃止するならば丸々ですし、仮に控除額を半分にすれば一千億円強の増税になってしまいます。そういった意味で、やはり増税をこういった控除の廃止もしくは縮減によってやるということは国民には到底理解しがたいことでございますので、ぜひともこの制度をこのまま存続をしていただきたいと強く要望しておきたいと思います。  検討するという御方針以外のことは特に答弁はいただけないものでありましょうか。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その部分は増税になるとおっしゃって、その限りでは間違いではございませんけれども、何も増税財源を得たいからそういうことをするというふうに考えておるわけでございませんので、そのことには直接には私は関係ないこととお考えになっていいと思いますが、いずれにしてもこれは大事な問題でございますから、よく検討いたします。
  179. 北橋健治

    北橋委員 ぜひともこの制度を大切に存続させるという方向で結論が出ることを強く期待しております。  この生命保険の制度につきまして、死亡保険金について関連でお伺いをしておきたいと思います。  私もこれは最近勉強して知ったことでございますけれども、死亡したときに保険金を受け取る、相続税がかかるわけでありますが、そもそもこの制度がいつごろ始まったのかということであります。これはもともとは非課税でございました。それが昭和十一年、当時の廣田弘毅内閣のときに、御案内のとおりこれは戦争が始まっているときでありますけれども、増税がどうしても必要であるということで、この死亡保険金に対して税金をかけるという方針が打ち出されたわけであります。つまり、明治三十八年に初めて相続税法が制定されてから昭和十二年までは、この三十三年間は死亡保険金に対しては一貫して非課税扱いを受けてきたわけであります。そして、廣田弘毅内閣のときにここに初めて税金をかけようとしたわけであります。廣田内閣は倒閣になりまして、続く林内閣、近衞内閣となりまして、このときに法案が成立をいたしまして、以来、死亡保険金に対して相続税をかけるということが続いてきたわけであります。  しかし、その当時も、相続税というものはすべてにかけるものではありませんで、一定の控除制度はありました。当時は五千円までの保険金については課税をしなかったわけでありますが、今の貨幣価値に直しますと大体二千五百万円ぐらいだったろう。つまり、軍費調達で相当金が要る、三十三年間税金をかけなかったけれども、どうしても必要だ、しかし、かなりの程度まではこれについては税金をかけないようにしようという政策意図があったと私は推察をいたします。戦後も昭和二十五年に一度だけ保険金に税金をかけるという制度を廃止したことがありますが、翌年また復活しまして今日に至っているわけであります。今日、控除の限度額は二百五十万円であります。  そもそもこの制度の発足に伴う歴史を振り返りますときに、戦費調達といいますかいわゆる軍国主義的なにおいがするわけでありますが、その当時の歴史を振り返ってみて、主税局長で結構でございますが、この死亡保険金に税金をかけるということは現在定着しておるわけで、廃止に一気には持っていけないかもしれませんが、しかし、今政府が抜本的な税制改革をやろうとしている、思い切った改正をされようとしているときに、やはり歴史的経緯にかんがみて、思い切って廃止をするぐらいの検討をされてはいかがでしょうか。どうでしょうか。
  180. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、昭和十三年までは死亡保険金は非課税であったわけでございます。これは、その財産の性格からいたしますと、被相続人から給付されると申しますか渡されるものではございませんので、相続財産に入れるというのは当時としてはいかがかということであったかと思いますけれども、そうした状況を続けますと、生前に財産を保険金の形に変えて次の世代に渡せばすべてこれが課税対象外になるということになりますと、これは相続税のあり方としてはやはりおかしいのではないかということから、戦費調達云々ということは別といたしましても、相続税制度としてはやはりおかしいということから課税が始まった。しかし、その以前までは非課税でございましたので、御指摘のように、五千円といういわば限度額を設けて課税が発足したということであろうかと思うわけでございます。  したがいまして、本来はやはりこれは相続財産に算入されてしかるべきものではないか。こうしたものを特別の非課税財産としておきますときには、保険金の形で財産を移転できる階層、保険料を多額に払って保険金の形で財産を次の世代に渡せる階層、そうした方々に有利になる。現に、相続財産に占めますところの保険金の割合と申しますのは、このところかなり上がってきております。また、そうした金額もかなり大きくなってきております。そうしたところからいたしますと、これを非課税財産とするということはいかがか。  ただ、この限度額が決められて以来かなり年限がたっております。この限度額のあり方につきましては、現在検討されておるところでございますが、全く非課税にするということになりますと、問題は多い。この限度額のあり方の中でひとつ検討をしていってはいかがかというのが現在の方向でございます。
  181. 北橋健治

    北橋委員 大臣も何度かサミットには行っていられると思いますが、サミットに出席をする先進国においては、この死亡保険金に対して課税をしているところはないと聞いております。アメリカも全額非課税でございますし、西ドイツも全額非課税、フランス、イギリス、イタリーも全く同じでありまして、そういった意味からしますと、今主税局長のお答えでは、これを非課税にすることは適切ではないということでございますが、仮に全額非課税が無理だとしても、海外の事例、そしてまた、死亡保険金に対して相続税がかかるというその制度ができた歴史的経緯からしましても、やはりそれにかわる次善の策としまして思い切って今の二百五十万円の控除限度額を引き上げるということが大事だと思いますが、大臣、この方向に向かって前向きに取り組んでいただきたいのですが、いかがでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはいろいろ経緯もございますし、仕組みもございますし、ちょっと簡単にお受け合いいたしかねる問題だろうと思います。
  183. 北橋健治

    北橋委員 そのように簡単にお答えになられますとちょっと次の質問ができにくくなりますが、しかし、政府が今抜本的な税制改正を行われようとしているときに、その一つ一つの重要な税の項目に対しまして、特に国民が注目をしている税の項目に対しましては、間接税以外にもたくさんあるわけでございまして、ぜひこの死亡保険金にかかる相続税についても思い切った改善を心から期待をするものであります。ぜひとも御検討、善処をよろしくお願い申し上げます。  さて、続きまして税制の抜本改革に関連しましてこれから順次質問していくわけでございますが、確かに直間比率の見直しも思い切った抜本税制改正の一項目でありますが、しかし、日本税制、税法にはそれ以外にも大変大事な問題点がたくさん残されていると思うわけであります。それを以下政府の見解をただしてまいりたいと思います。  大蔵省のOBの方、この方は東京国税局長から関税局長を務められました矢澤さんという方がいらっしゃいますが、その方の著書の中でこういう一節が出てまいります。「日本の税務行政は、……一言でいうと、納税者は正直であるという「性善説」に立った税務行政を行っています」、つまり申告をする場合でもあるいは税を納める場合でも悪質な脱税行為、違法行為はしない、まさにそういう性善説の上に立っていると税の実情に大変お詳しい方が述べられているわけでありますが、私もその感が強くするわけでございます。  例えば、所得税の確定申告書を大蔵省は今納税者に送達されておられますけれども、これは別に根拠法規、法律があるわけじゃありません。国税局長の通達で確定申告書を送っていると聞いておりますが、本来国税局長には国家行政組織法に基づく通達の制定権限はないと私は理解します。そうしますと、権限にはない通達制定行為を国税局長は今行っておられるわけでありますが、この点について政府はどのように考えておられるのでしょうか。
  184. 日向隆

    ○日向政府委員 委員御指摘になりましたように、確定申告書を確定申告期に私どもが申告を要すると思われる者に対して送っておりますことは、これは私ども国税庁が昭和二十四年に発足以来長年にわたって実施してきたものでございます。それは、今御指摘にございましたように法律上明文の根拠があるわけではございませんけれども、納税者の方々が確定申告をする際に確定申告書の用紙等を入手するために個別にわざわざ税務署に出向いていく必要がないよう納税者サービスの観点、もう一つは、これは今おっしゃいました性善説の立場からいいますとやや思い過ごしかもしれませんけれども、私どもといたしましては、事前に送付した方が例えば無申告や期限後申告の防止が少しでも図られるのではないか、こういったこと、この二つのことを考慮いたしまして確定申告書を納税者の方々に送付しているわけでございまして、これは国税局長が行っておりますけれども、この事実をして行政法律主義ないしは租税法律主義に直ちに反するというものではないというふうに考えております。
  185. 北橋健治

    北橋委員 当然政府の方が無権限の行為を行っているとはお答えにならないとは理解できますが、しかし、この点と密接に結びついている納税者の掌握という問題とセットで考えますと、やはり今の制度は大変大きな問題があると思うわけであります。西ドイツを見ましても、税務当局は納税義務者というものをちゃんと掌握をしております。そのための制度というものは自治体においても完備をされているわけでありますが、日本の場合、国税通則法あるいは所得税法にはその納税者の掌握に関しては根拠の条文が全然ないわけであります。その一例だと思うのですけれども、最近東京国税局で発表した所得税の無申告者の数が東京管内だけで何と二万八千人もいたという数字には驚かされるわけであります。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで税務当局にお伺いいたしますが、所得税の無申告者の方々が全国で一体何人くらいいらっしゃるのか、それをお伺いをしたいと思います。
  186. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御指摘になりました東京国税局の発表になるものは、これは東京国税局の独自の施策でございまして、確定申告期の直前におきまして、確定申告をすべき人が漏れなく正しい申告をするようにかような発表をしたというふうに聞いております。  今御指摘になりましたように、六十一年分の確定申告期限、これは昨年の場合には三月十五日がたまたま日曜日でございましたため三月十六日でございますが、これまでに申告書の提出義務がありながら申告書を提出しなかった者、いわゆる無申告者は、六十二年四月から十二月までの間に調査、指導によりこれを是正いたしまして、期限後申告者として申告処理した件数二万八千七百二十四件ということであります。  これと同じ計数は、各国税局で同様な施策をやっておりません。これは東京国税局の独自の施策でございますので、やっておりませんので、これと同様な種類の全国の数字は私ども持ち合わせておりませんけれども、ただ、私ども別途、全国ベースで、六十一年分について六十二年三月十七日から六十三年二月末までに自発的に申告をしたものを含めたいわゆる期限後申告をした人の数、これは全国で総数は約二十万件でございます。
  187. 北橋健治

    北橋委員 正確な調査は全国的にはされていない。推定の数字が出たわけでありますが、しかしかなり大変な数であります。東京管内だけの調査によりましても二万八千。全国にいきますと二十万という数字も出ましたけれども、かなりの方が所得税の無申告者である。これはまさに税の本来あるべき姿から見れば思い切った対応が今後必要になる事態だと私は考えます。やはり政府としても納税者の範囲を正しくとらえる努力が今後必要になるのではないか。そしてまた、今法律に基づかず局長の通達に基づいて送付している申告書の制度があるわけでありますけれども、この点を考え合わせまして、やはり何らかの法的な措置が必要になってくるのじゃないでしょうか。  大変な数の方々が無申告者である。本来申告すべきなのにそうでない。そういう無法律の状態になっていると考えるわけであります。したがいまして、大蔵大臣にお伺いしますが、こういったものについてこのまま放置しておいてよいのでしょうか。何らかの改善策を考えられるお考えはありませんでしょうか。事務当局でも結構でございます。よろしくお願いします。
  188. 水野勝

    ○水野政府委員 我が国の所得税制がそういった点につきまして特に不備であるというふうには考えていないところでございます。所得税法の百二十条で、納税すべき税額がある方については確定申告書の提出をする義務があるということで、納税者の範囲、確定申告をすべき人の範囲は明確にされておるところでございます。ただ、税額はなくてもかなりな収入の金額がある方、こうした方については、特に、納税義務のあるなしにかかわらず、収入金額が三千万円以上の方については総収入金額報告書といったものを提出願う制度といたしておりまして、こうした制度によりまして、納税者の確定、それから申告書の提出義務、そのあたりにつきましては制度としては整っておるというふうに考えておるところでございます。  ただ、制度として整ってございましても、先ほど申し上げたように、約二十万人の方が無申告になっておる。これは七百七十万件の申告者に対しますれば〇・三%ぐらいでございます。これは決して少ないとは申し上げませんけれども、制度的には一応整い、ほどほどの申告の状況になっていると言えるのではないかと思うわけでございます。また、その関連する制度といたしましては、事業所得、不動産所得、山林所得、こうした所得を生ずべき事業を開始された方につきましては開業届けを提出するよう義務づけておるところでございまして、こうした制度によりましても納税者の把握はされておるところでございます。
  189. 北橋健治

    北橋委員 しかし、東京管内で二万八千人、全体の比率からすれば確かにパーセントは小さくなるかもしれませんが、東京だけで二万八千ですから、推定すると日本ではかなりな数になるわけなのです。そもそもこういったことが起こるというのは、西ドイツのように、納税者の範囲を正しくとらえる、そういった制度が完備されておればこのような事態はないわけでありまして、こういったものを放置しておいてよいはずがありません。そういった意味で、膨大な数の無申告者が出てきている現状に対して、法的措置を含めて何らかの対応を考えるべきではないか。重ねてお伺いしますが、その必要性は全くないのでしょうか。このまま放置しておいてよいとお考えでしょうか。西ドイツ人ならば——西ドイツの方の制度を輸入せいというわけではありませんけれども税制の抜本改革を唱えておきながら、こういったものにつきましては、別に大した数字ではない、全体のシェアからすればわずかなものである、その認識ではやはり困ると思うのですが、いかがでしょう。
  190. 水野勝

    ○水野政府委員 大変失礼いたしました。先ほど、七百七十万件の納税申告者に対しまして二十万件、これは〇・三ポイントと申し上げたかと思いますが、三%弱でございます。  それから今御指摘のドイツの制度でございますが、確かにドイツの租税通則法、日本で言えば国税通則法といったものの中に、納税者の身分登録、事業登録といった規定がある。こうしたものに比べますと、我が国は身分登録的なものを租税法体系に持っているということはないわけでございます。ただ、日本は住民登録の制度は市町村が行っている。そうした市町村が行っておられる住民登録をもとにいたしまして市町村住民税から始まりまして納税者の把握はされておるところでございますし、また、事業を開始される方につきましては、先ほど申し上げたように開業届けの義務づけがなされておるところでございます。  こうした制度で担保はされておりますけれども、なお御指摘のような無申告者がおる。こうした者を放置してよいということは私ども考えてはいないところでございまして、先ほど申し上げた総収入金額申告書制度につきましても、これは五十九年度の制度改正で導入し、その限度額を去年の改正で拡大したということで、常々そうした点につきましての改善すべき点があれば十分検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  191. 北橋健治

    北橋委員 日本の税務行政、税法そのものが性善説に立っているとは先ほどの大蔵省のOBの方の発言でありますけれども、納税者の掌握を図る根拠となる法律が日本にはないということ自体、その性善説の典型的なあらわれだと思っております。しかし、人間は神様ではないわけでありまして、しかも最近不公平の是正を求める国民の要求は日増しに強まっているわけでありまして、全体の三%とはいえ大変ゆゆしき問題であります。やはり、西ドイツあるいはアメリカの制度と同じようなものでなくとも、この問題に対する本格的な検討が必要であると思いますので、今後鋭意検討を続けていただきたいと思います。  続きまして、所得税法百二十条の問題についてお伺いをいたします。  これも先進国には例が見られない条文でありまして、納税者は賢明である、正直である、脱税をしたり違法行為はしないという前提に立った条文としか読めません。いわゆる所得基準の申告体制と呼んでおりますけれども日本以外に先進国でこんな国があったら教えていただきたいのであります。今、労働団体の中にも、申告書を提出するに当たっては、納税者の主観的判断の混入を許さず、やはり収入の実額によって申告の提出を客観的に決めていくべきだ、いわゆる総収入申告制に転換をしていくべきだという要望が強まっております。この点に対して政府の見解をただしたいと思います。
  192. 水野勝

    ○水野政府委員 やはり所得税の納税申告は、税額を納める必要のある方に申告をしていただくというのが申告納税制度のもとにおきましては自然な姿ではないかと思うわけでございます。そのほかの方々につきまして、申告税額のあるなしにかかわらず、一定の収入がありますれば全部何らかの申告書を出していただきたいとお願いをするのが果たして適当かどうか。やはり毎年の申告でございますから、おおむね前年の申告がございますれば納税者であろうと推定される、そうした方々につきまして、先ほども御指摘ございましたけれども、申告書を送付申し上げて申告をお願いをするという現在の制度が現実的ではないかと思うわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、高額な収入がありながら納税額がないということから申告をされていない方につきましても、一定の金額以上の収入の方については総収入金額報告書といったものをお出し願うということを昭和五十九年から始めておるわけでございます。アメリカは、日本と同じように申告納税制度ではございますが、ぴたりと納税額がある方だけに申告書の提出をお願いをするという制度ではございませんで、一定の幅を持って申告書提出義務を制度化しているようでございます。そういった点につきましては、御指摘のように日本は全く税額のあるなしで申告書提出義務をかけておる、もろもろの税制を全部理解して税額が出るか出ないか、それでもって申告書の提出を義務づけているということについては、それが果たして適当かという御議論があることは承知いたしてございますが、現在、総収入金額報告書制度といったものでもって補完をする、それからまた現実には、七百七十万件の納税申告書でございますが、納税者の方々は申告税額、納付税額がない方でもかなりの方が現実には税務署に足を運び申告書を提出されているわけでございますので、現時点におきましてはまずまずの制度ではないかと考えております。しかし、いろいろな点につきまして改善すべき点があれば、今後引き続き勉強をいたしてまいりたいと思っております。
  193. 北橋健治

    北橋委員 五十九年以来の制度の発足に伴って、まずまずの制度だという評価でございますけれども、サラリーマンの間では、いわゆるクロヨン、トーゴーサンという言葉に象徴されますように、やはり大変な不公平があるという不満が渦巻いております。直ちに総収入申告制に転換せよとは主張はいたしませんが、しかし、何らかの形で所得が一〇〇%把握されている人とそうでない人との間のいわゆる不公平という問題に対して政府が正面から真剣に取り組む何らかの制度的改革をしない限り、これから税制改正を抜本的に行おうと思っても国民理解を得にくいのではないかと思います。  大臣にお伺いしますけれども、総収入の申告制は一つの案でありまして、そのほかにもいろんな考え方があるかと思いますが、いわゆるクロョン、トーゴーサンという言葉に見られますように、こういった不公平な税制について今後どのように措置されていく考えか、お伺いいたします。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税制そのものは不公平にできておるとは思わないのでございますけれども、その実調率が低いとかあるいは捕捉が困難であるとかいうことがございまして、結果としてどうもそうなるものでございますから、制度の上である程度アクセントを給与所得者の方につけましたり、あるいはまた税務行政の方でいろいろ帳簿の記載であるとか整備であるとか指導したり実査をしたり、そういうことで地道に補っていきませんと、なかなか不公平感というものの解消は難しいのではないか。両面からやってまいりたいと思っております。
  195. 北橋健治

    北橋委員 答弁の内容には不満でありますけれども、ぜひその努力を続けていただきたいと思います。  時間も限られてまいりましたが、最後に、今の税務行政というものが膨大な数の通達によって遂行されていることに対して、これは極めて問題であるという立場から質問させていただきます。  日本政府がこういう通達によって税法を補っていく、法律の解釈の範囲を超えましてもろもろの税務行政全般を通達で処理をしていくというその方法は、もともとは戦前ドイツから学んだというふうに聞いております。しかし、その肝心のドイツの方も、戦後は、やはり租税法律主義の立場からして問題があるということで、憲法によってこの権限を消滅させまして、今は原則として国会の意思の反映される租税法律主義を貫いていると聞いております。しかし、日本は依然として税務行政を通達によって展開をしていくというところが多分に見られるわけでありまして、通達の数は減るどころかどんどんふえているような状況でございます。これは日本国憲法でも定められている租税法律主義の立場から見ても極めて問題があると思うのですが、大臣、これは抜本的な税制改革を唱える立場から見ても大きな問題だと思うのですけれども、税務行政の領域でこの租税法律主義を貫いていく決意がおありなんでしょうか、お伺いします。
  196. 日向隆

    ○日向政府委員 国税庁の通達は、御承知と思いますが、法令の範囲内におきまして、その具体的な適用に当たっての解釈基準を全国的に統一する必要性もございまして、上級行政官庁である国税庁長官が下級行政機関である職員に対して示すものでございます。したがいまして、国民あるいは納税者に対しまして課税要件及び徴税手続を定めたものではございませんで、そういう意味合いからいたしまして、租税法律主義に違反しているものとは考えておりません。  なお、通達につきましては、あくまでも法令の範囲内で適正にこれを定め、運用していくということは、御指摘のとおりでございます。
  197. 北橋健治

    北橋委員 数年前、民社党の強い主張で中小企業の事業承継税制について一定の改善が見られたことを私ども政府を高く評価したわけでありますが、そのときも通達で処理されたわけであります。それに限らず、重要な部分について通達で展開をされておりまして、やはりこれは租税法律主義の立場から見て根本的に日本の税務行政は問題があると我々は考えます。  今の国税庁のお立場では法令の範囲内で適切にやっておるという御答弁でございますけれども、見方を変えまして、今国際化がどんどん進んでおります。そして外国企業の国内での営業活動がこれからどんどん活発化してくると思いますが、いわゆる租税法律主義ではなくて——外国では皆それが徹底しているわけであります。アメリカでもドイツでもフランスでもイギリスでも、租税法律主義、税務行政というのは基本的に国会によって決められ、国会の意思が正確に反映された法律主義が貫かれているわけでありますが、先進国じゅうで日本だけが特別な制度で、通達によってかなりの部分を補完しているというわけであります。したがいまして、外国企業がこれから日本国内で営業をどんどん進めていきますと、何かトラブルが起こったような場合でもこれは大変大きな問題になってくるのではないかと思いますが、そういった国際化という観点から見ても、今の税務行政というのは根本的な改善を要するのではないかと思います。  大臣、どうでございますか、租税法律主義を貫くという見地から見て、今の通達行政が余りにも拡大し過ぎているというこの問題をどのようにお考えになるでしょうか。
  198. 水野勝

    ○水野政府委員 租税法律主義におきましては、国民の、納税者の権利義務を拘束するものはもちろん法律で定められるべきでございますが、その運用の目安を内部部局でもって統一するために出しております通達、これは形式的に申せば納税者を拘束するものではございませんので、行政の円滑な、また統一的な執行という面からすれば、通達を全くなしで済ますということはできないことでございますし、またむしろ適当ではないというふうに考えておるわけでございます。  ただ、今御指摘のございました点の承継税制の点、恐らく評価通達のことをおっしゃっておられるかと思います。そうした極めて納税者に関係の深い部分につきましても通達で律せられている部分はございますけれども、それが法律に反するものでない限り、それは許されるものであろうかと思いますけれども、御趣旨の点は十分踏まえて、法律、政令、省令、通達、そこらあたりのあるべき分野につきましては常に心がけてまいりたいと思うわけでございます。
  199. 北橋健治

    北橋委員 時間が参りましたので終わりますが、最後に、税制の抜本改革は必要であります。それは進めるべきですが、直間比率の見直しだけではなくて、日本の戦前からのそういった制度そのものに根本的にメスを入れるべき問題がたくさんあると思いますので、省におきましてもぜひとも鋭意御検討を続けていただきたいと思います。  ありがとうございました。     ─────────────
  200. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本放送協会専務理事乙也君及び日本放送協会理事放送総局長尾西清重君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  202. 越智通雄

    越智委員長 質疑を続行いたします。正森成二君。
  203. 正森成二

    ○正森委員 ただいま同僚議員から税制改革のお話がございましたが、大型間接税の問題は、我々はそういうものの国会提出には絶対反対ですが、どうやら我々の好むと好まざるにかかわらず、この夏から秋にかけて政局の一つの焦点になるようであります。  NHKにお伺いしたいのですが、こういうときに、五月八日付の朝日新聞、五月九日付の毎日新聞、五月十日は読売、東京新聞その他、すべてに報道されましたが、それは、昨年十二月は大型間接税について四六%は賛成であるということをNHKのテレビ、ラジオのニュースで繰り返し放送しながら、ことしの三月に調べた中では、「政府自民党は、抜本的な税制改革のためには、課税対象が広い新型の間接税の導入が必要だとして検討しています。あなたは、この新型間接税の導入に賛成ですか。それとも、反対ですか。」というNHKの行った調査に、賛成はわずか一八・二%、反対が四八・二%という場合には、これは全く放送をしないということがございました。それで、このことはNHKのあり方を規定いたしました放送法四十四条の各項に照らしても非常に問題があるというようにその後世間でもマスコミでも言われているところであります。  ところが、五月十一日だったと思いますが、NHKの川原会長が定例記者会見をしましたが、「一方の結果を放送し他方の結果を放送しなかったことは、ニュース判断の問題であり、ともにその判断は正しかった」ということを言われ、そして十二日に本院の逓信委員会でこの問題が集中的に取り上げられたときには、尾西放送総局長は、「三月の調査の取りまとめ時期と政府税調素案の公表が重なり、放送すると素案に対するリアクションと誤解され、かえって意図を疑われかねなかった」ということで、判断には誤りがなかったという姿勢を維持した上、「あたかもNHKの報道姿勢が偏っているかの印象を与え、まことに遺憾」と、逆に新聞報道を批判する。「新聞報道に誤りはないが、記事の扱い方、見出しのっけ方で、あたかもNHKの報道姿勢が偏っているかの印象を与えるのはまことに遺憾」、こう言っているのですね。これは極めて妥当でない見解じゃないですか。事実に誤りがないが見出しのっけ方や報道の仕方で非常に偏っているという言い方がもし可能なら、そもそも事実を報道したりしなかったNHKはどうなのですか。人のことを報道の仕方がどうのこうの言う前に、みずからの姿勢を反省して正すべきではないのですか。現在でも、あのときの判断は誤りがなかった、報道の方に問題があった、報道というのはNHK以外の新聞ですよ、そういうように思っているのですか。
  204. 尾西清重

    ○尾西参考人 お答え申し上げます。  今先生の言われたことについて申し上げますが、私は新聞報道の仕方を批判する意図はございませんでした。それよりは、NHKの報道姿勢というものについて、これが偏向しているという印象を持たれた方が大勢おられたと思いますので、それについて、私どもにはそういう報道姿勢に偏向はないということを申し上げたかったわけでございます。
  205. 正森成二

    ○正森委員 NHKの報道姿勢に偏向はないということは、賛成意見四六%というのは繰り返し放送し、それから反対が四八%というのを放送しなかった、それは偏向はない、正しい、これからもそういうようにやるつもりだ、こう言うのですか。これから夏から秋にかけて大型間接税の問題が世間の焦点になろうというときに、公共放送であるNHKが、そういう姿勢で十二月、三月と放送を行い、それを反省してないということになれば、また繰り返すということですからね。そう聞いていいのですか。黙視することのできない答弁ですね。
  206. 尾西清重

    ○尾西参考人 お答え申し上げます。  衆議院の逓信委員会でも申し上げたのでありますけれども、昨年十二月の世論調査は、これはまだ間接税の素案もあるいは骨格も明らかになっていない状況の中で、私どもとしては税意識といったものについて世論調査をしたわけでございます。ことしの三月行った調査につきましては、私どもの当初の考え方では、当然のことながら三月初旬までには新型間接税の素案なり骨格なりというものが発表されるであろうということで、この設問の仕方からもおわかりいただけるかと思いますが、そういう新型間接税が発表された段階で、これについてのリアクションといいますか、世論の動向を確かめたいというのが私どもの意思だったわけでございます。  ところが、既に御承知のように、この素案あるいは骨格の公表がおくれにおくれて三月二十二日という日取りになったわけでございます。私どもの行いました三月十二、十三両日の調査は、どうしてもその結果をまとめるのに十日ばかりかかりまして、偶然でございますけれども、三月二十三日にこの結果が報道局にもたらされるということだったわけでございます。その日の朝の新聞はこぞって一面トップにこの新型間接税の骨格を詳しく伝えるという報道をしておりまして、そのまま放送した場合に政府税調の素案あるいは骨格に対する賛否を問うたものというふうに理解される懸念が強かったわけでございます。そういった経緯と理由がございまして間接税に関する調査はニュースとして扱わないことにしたわけでございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 今言っていることは理屈にも何にもなっておらぬですね。十二月のときはまだ大型間接税というものが内容も姿も何もわからなかった。そうしたら、そのときの調査結果こそ余り報道する値打ちがないものじゃないですか。値打ちがないとは言いませんよ。姿も形もわからないものについて賛成だとか反対だとか言ってみても仕方がないじゃないですか。だんだんと姿がはっきりしてこそ賛成なり反対なりの意見が明らかになってくるのじゃないですか。衆議院の逓信委員会でも言われたように、誤解を招くとかなんとか言っても、これは三月二十五日の素案の発表よりも二週間前に調べたものだということを言えば国民に十分に理解されることなので、あなた方、今までしばしば世論調査を行ったときでも、これは何月の何日に行ったものでありますとか、選挙の世論調査でも、これは何日前に行ったものだから変動があり得るとか、そう言って新聞だってテレビだってやっているじゃないですか。  ここに毎日新聞の五月十日の社説があります。「NHKはだれのものなのか」という社説で、   しかし、NHKの説明をそのまま受け入れた上でもこの措置には疑問がある。第一は、視聴者の判断力を不当に低く見ていることである。調査時点についてきちんと説明すれば、素案への賛否と誤解する視聴者がそれほど多いとは考えられない。事実、新聞では同じ時期に同じ条件の調査を行い、報道しているのである。納得できる理由とはいえないだろう。 こう言っているのです。これはいつの調査です、素案に対する賛否ではありませんと言えば、これは十分に理解できることなのに、初めからなかったように扱うなどというのはそもそもおかしいではないですか。  しかも、あなた方は法律でそのことをある意味では義務づけられているのですよ。それは知っているでしょう。放送法四十四条の二項では、「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」こうなっているじゃないですか。公表というのは、あなた方は「放送研究と調査」というのに載せればそれでいいと思っているかもしれないけれども、こんなものに載せるのとNHKのテレビに乗せるのでは、公に知られる程度がそれこそ月とスッポンくらい違うということはあなた方も知っているでしょう。  三項にはどう書いてありますか。「左の各号の定めるところによらなければならない。」こうなって、二号では、「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」こういうぐあいになっており、国内番組の基準を定めたということであなた方はこういうものを出していますが、その中でも同じことを再度言っているじゃないですか。  しかも、言いますと、この放送法では、第三章で「一般放送事業者」というのがあります。これはTBSだとかいろいろないわゆる広告をとって放送してもいいところですね。こういうところも、第五十一条で第四十四条第三項から第五項までは準用されております。つまり、今私が言った「政治的に公平であること。」とか「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」などは、一般のテレビメディアも準用されて守らなければならなぃのです。ところが、条文を見ると一項と二項は除外されているのですよ、一般のTBSとかなんとかいうのは。あなた方だけが、「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」とか、「豊かで、かつ、よい放送番組を放送することによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。」一般のテレビは、「文化水準の向上に寄与するように、」というようなことは除外されているのです。NHKだけが、国民から直接、広告料じゃなしにNHKの受信料を取っているから、その見返りにこういう一項と二項というのを義務づけられているのじゃないですか。  その義務づけられていることを、一方的な判断で、一方は政府に都合のよい賛成というのは何回も何回もやる。しかも、そのときには大型間接税が姿をあらわしていないと言うなら、賛否を聞く基礎がそもそもないじゃないか。みずからそのことを今認めたじゃないか。それは放送し、ある程度姿をあらわしてきたら、今度は政府税調の素案の直前あるいは重なるからいけないという。素案に対する賛否じゃないと言えばそれでいいじゃないですか。あるいは放送日を若干ずらせばそれでいいじゃないですか。  そうすると、あなた方は、そんな態度をとるのなら、六月に仮に税率が明らかになり、非課税品目が明らかになり、ますます明らかになっても、これは政府案に誤解を与えるからということで世論調査はしないつもりですか。四十四条の二項だからするけれども、これはやはり放送しないつもりですか。それとも、賛成が多数のときには誤解が生ずるおそれがないからやるけれども、また反対多数になったら誤解を生ずるおそれがある、政府案に対するリアクションと思われたらいかぬということで放送しないのですか。こんなことでどうして「政治的に公平」だと言えますか。対立する意見について「できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ということになりますか。全く放送法に違反しているじゃないですか。
  208. 林乙也

    ○林参考人 ただいまも放送総局長の方から御答弁申し上げたとおりでございますが、NHKといたしましては、今回のニュース報道につきまして全く政治的な偏向というような意図を持っていないこと、その事情は、専ら調査の時期と政府税調の素案の発表の時期のずれの中でニュース編集の判断のもとで行ったものであることを重ねて申し上げたいわけでございます。  ただいま先生の方から四十四条につきましての御指摘がございました。四十四条におきましては、ただいまもお話がございましたように、「豊かで、かつ、よい放送番組を放送することによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。」という項を受けまして、「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」というふうに定められておるところでございます。ここに定められております世論調査というものにつきましては、ただいまの第一項、第二項との関連の中で放送番組についての公衆の要望を知るための調査というように考えられておるところでございまして、今回行いました「くらしと政治」調査は、税制改正など当面の政治的な課題につきまして、国民の意向を調査し、ニュース等番組編集上必要な素材、資料を得るためのものというように考えておりまして、放送番組についての公衆の要望を知るための調査ではないというように考えておるところでございます。  しかし、私どもといたしましては、四十四条に定める世論調査であれ、その他の調査であれ、NHKの行います世論調査につきましては、これを公表することを基本として取り扱っておるところでございます。ただ、その公表につきましては、放送法におきましてもその具体的な方法を定めておるものではございませんで、それにつきましてはNHKの判断にゆだねておるというように考えられておると考えております。  その具体的な取り扱いといたしましては、世論調査の結果につきまして、放送に取り上げ、また印刷物によりましても公表いたしております。放送におきます取り上げ方につきましては、やはり映像、音声のメディアという性格、あるいは放送として取り上げる場合の話題性というものにつきましても配慮するということから、やはり調査結果の取り上げ方につきましてはその一部の項目を逐次取り上げていくということにならざるを得ませんが、一方におきまして印刷物におきます公表につきましては、放送研究及び調査というようなことで、これを全面的に原資料といいますか、その質問事項及びその結果というものを全面的に編集いたしまして公表いたしておるところでございます。そのように、やはりNHKの行います公表の姿につきましては、放送及び印刷物というそれぞれのメディアに適応したような形でそれを運用していくということにならざるを得ないわけでございまして、その運用につきましては、ただいま放送総局長から申しましたように、ニュースにおきまして取り上げた場合の考え方といたしましては、全く偏向した考え方に基づくものではないということを繰り返し申し上げたいわけでございます。
  209. 正森成二

    ○正森委員 私が聞いているのは、偏向しているかどうかだけ聞いているのじゃないですよ。今後もこういうことをずっと続けるのかということを聞いているのだけれども、それについては一切答えていないじゃないですか。  それから、どういうぐあいに報道するか等の判断はNHKが自主的に判断すると、何かNHKがオールマイティーで何をやってもいいみたいに言っているけれども、そうじゃないでしょうが。三項で、「政治的に公平であること。」「事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」こういう前提の上でこそNHKが自主的にできるということじゃないですか。自主的にできるということは、何でもできるということじゃないのですよ。あなたの話を聞いていたら、NHKは何か自分が何でもできるので、よそからとやかく言われるべきでないと言わんばかりだけれども、そうならないように決まっているんじゃないですか。何かこう、マスメディアだったら印刷物では全部ができるけれども、放送する場合には逐次やるとかなんとか言っていたけれども、逐次にも何も全く触れていないじゃないですか、反対が四八%だというのは。朝日やら毎日やら読売が報道してくれたから日本国民は知ることができたんじゃないですか。  その上に、あなた方は、この同じ質問の中で、第十問の今の大型間接税の質問の後で、「新型間接税を導入しようとするならば、国会を解散して国民に信を問うべきだという意見があります。これについて、あなたはそう思いますか。それとも、そうは思いませんか。」「そう思う」が四二・四%、「そうは思わない」が三三・一%、ここにも書いてありますけれども。それについては三月二十五日の午前七時のラジオ第一とFMニュースで放送しているじゃないですか。どうして一方は放送し、一方は放送しないのですか。しかも、放送するのについて、なぜわざわざ朝早くて人様が余り聞かない、自動車の運転手さんは別でしょうけれども、ラジオとFMニュースだけやって、皆のよく聞く、国会議員なんかもよく聞く八時のテレビのニュースとかそういうのではやらないのですか。だから、あなたが今言っていることと、例えば解散して信を問えなどというのの扱いなんというのは、全く矛盾しているじゃないですか。あなたが言うようなのだったら、どうしてこれも放送しなかったのですか。これを放送するのなら、その前提になる新大型間接税はなぜ没にしたのですか。今後のことも聞いているんですよ。我々は過去のことだけを聞いているのじゃないですよ。過去はもう直せないのです。
  210. 尾西清重

    ○尾西参考人 先生の御質問の、これからの調査についてどうかというお話でございますが、これは「くらしと政治」という調査で平均年二回やっております。これは常にある一定の時期を選んでやっているわけではございませんで、そのときどきの関心あるテーマというものが国民のある意味で関心を呼んだというようなときにタイミングを見てやるわけでございますが、この調査を行います場合には、当然のことながら税金の問題も含めて調査をすることになろうかと思います。その場合に、先ほど申し上げたような理由で状況が一変するということがなければ、どういう数字が出ようと私どもとしては発表するつもりでございます。  それから、次にお尋ねの件でございますけれども、この二十五日の朝という日は、御承知かと思いますけれども、二十四日の晩から上海の事故が伝えられて、我々はほとんど一睡もしないでこの報道に当たるというような状況もございました。そこで、これも先刻御案内だと思いますけれども、テレビのニュースというものはやはり映像というものが重要な要素でございます。しかも、事件が外国で起きたということから、この映像を集めてニュースの編集をするということが二十四日の晩から二十五日の朝にかけて大変大きな仕事になったわけでございます。一方、ラジオの方は、映像とかあるいはそういうやり方ではございませんから、少なくともニュース原稿を読んでそれをお伝えするという、テレビとは違う編集ということになるわけでございます。したがいまして、ラジオでは予定どおり放送したわけでございますが、テレビではこの上海の列車事故にほとんど費やすというような結果になったわけでございまして、私どもはその日の朝の編集判断としてはそうせざるを得なかったということでございます。
  211. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ言われましたが、先ほどの答弁で、年に二回ということだけれども、これは必ずしもそうと限らないので、適切な時期に調査して、今度調査したときは結果のいかんにかかわらず公表したい。公表したいというのは、NHKのニュースで放送するということでしょうね。またこれに載せて、それで公表したという意味じゃないでしょうね。NHKのニュースでやるということでしょうな。
  212. 尾西清重

    ○尾西参考人 どういう形で放送するかについては私どもの自主的判断にお任せいただきたいのですけれども、私どもとしてはその問題を大変大きく考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  213. 正森成二

    ○正森委員 自分たち判断でやるけれども理解いただきたいということですけれども、わざわざ、今度調査したときには、速記録を調べてみなければわかりませんが、公表したいということを言った文脈からすれば、NHKのニュースで放送するというようにとれると思いますので、偏向はしていなかったということで逓信委員会の答弁を維持しながら今後は態度を改めるというようにとれましたので、まあまあ罪一等を許して、罪一等を許してと言うたらいけませんけれども、あなた方にも多少は反省の意向があるということで、私たちとしては今後を見守っていきたいというように思います。  いいですか、これは朝日新聞の五月十三日付ですけれども、四六%賛成だというのでも、即時導入賛成は五・四%しかないのですよ、あなたの資料を見ても。それに対して、「導入はやむをえないが、国民大多数の合意がえられるよう、時間をかけて検討すべきだ」、これは「時間をかけて検討」するというところに重点があるのです。その次の質問は、「高齢化社会考えると、福祉を目的とする税金なら導入してもよい」、これは大型間接税が福祉目的税だと誤解させる聞き方なんですよ。だから、これは必ずしも科学的ではないということで、三月の質問ではずばりと、政府はこういうぐあいに考えているが、あなたは賛成ですか、反対ですかというように前提なしで聞いたら、賛成がわずか一八%で反対が四八%になったのでしょう。だから、あなた方が科学的に調査すると言うのであれば、去年の十二月のような誘導質問ではなしに、正確に世論の動向がわかるようにしていただきたいと思います。  私は自分のことだから余り言いたくもないけれども、あなた方がこういうように我々の目から見て非常に問題があるというのは、二月六日の私の予算委員会の質問で浜田幸一予算委員長が発言をされたときに、六時に放送を打ち切られたことについてはいろいろ議論のあるところだから聞かない、だけれども、七時のニュースでも放送されなかったでしょう。ほかのマスコミが六時半ごろに放送されているのに。それに対して逓信委員会で質問がございました。三月二十四日に質問したら、抗議が千六百件このことを中心に来たということを尾西さんが御自身でお認めになった上で、  NHKの報道姿勢というものについて疑問を抱かれたという結果になったわけでございます。このことにつきましては、放送の責任者として私は、大変申しわけない、編集上の判断ミスということだけでは済まないことがあろうかと思っております。同じようなことを二度と繰り返すことがないように、視聴者の期待に的確にこたえる報道に力を尽くすよう今後は努力してまいりたいと思っております。 こう答えていますね。つまり、その「編集上の判断ミスということだけでは済まない」ということになれば、これは余りにも政治的な遠慮とか意図とかし過ぎたということを間接的に認めているのです。川原会長に至っては、  まず第一に、今放送総局長もお答え申し上げましたけれども、午後七時のニュースで国会の予算委員会のいわば混乱といいますか、いろいろな異常な雰囲気を報道しなかったことは、やはりこれは私どもの失態だと思います。午後七時のニュースはああいう事態というものは当然視聴者に対して報道すべきものであったと思います。 こう言っています。  いいですか、NHKの会長が「失態」だとかあるいは「放送の責任者として」「編集上の判断ミスということだけでは済まない」と言うのは、よくよくのことでしょうが。大体予算委員会委員長がああいう発言をして予算委員会審議中に予算委員長をやめるなどということは、我が国の国会が始まってから百年間一度もなかったことです。そして、事実上国会が一週間とまって、委員長辞任したのでしょうが。結果的にはそういう事態になった事件を、NHKはそこで場所を与えられて中継をするという一番の便宜がありながら、六時で打ち切ったことについては私はきょうはとやかく言わないが、七時のニュースでも放送しない。だからこういうように逓信委員会でも陳謝したのじゃないですか。それだのに、また今度、大型間接税の問題については、我々の姿勢からいえば問題のある報道をしておる。今後は調査したらできるだけ公表、放送したいという意味のことを言われたから、そういう御意向ならそれでいいけれども、改めてお考えをお聞きして、この点についての私の質問を終わります。
  214. 尾西清重

    ○尾西参考人 私どもが七時のニュースでこの浜田委員長の発言、その後に引き続くニュースの報道をしなかったということにつきましては、逓信委員会で申し上げたとおりでありますけれども、これは私の考えで申し上げますと、視聴者の皆様に対して、その一時間前に起きたことを知りたいというふうに関心を持ってスイッチを入れておられるのにこれが出てこなかったということは、やはりニュース報道として的確ではなかったということをそういう言葉で申し上げたわけでございます。そして、現場の方では、関係者の発言あるいは取材をした上で八時四十五分からまとめて放送したいという考えを持っていたわけでございます。そしてそのとおりしたわけでございますけれども、それはやはり国民の関心にこたえるすべではなかったということからそう申し上げたわけでございます。
  215. 正森成二

    ○正森委員 この問題については、必ずしも大蔵大臣の所管ではございませんので、大蔵大臣には伺わないことにいたします。パスいたしましょう。お答えになって、そこでまた論戦が始まっても、お互いにとって所管外のことですから、大型間接税の中身についてもしそういう事態になりましたら、ゆっくりと聞かせていただきます。  参考人の方、お帰りいただいて結構です。御苦労さまでした。  次に、国税の問題について伺いたいと思います。  まず第一に、「税務運営方針」というものがございます。これは五十一年の四月一日に出ているものですが、それを見ますと、  納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。 というように記載されております。あるいは各論では、長くなるから読みませんが、事前通知の励行や現況調査は最小限度にとどめるとか、反面調査は客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行うこととか、いろいろ書かれております。  国税庁に伺いたいのですが、これは印刷されて広く人々に読まれるように書かれている建前であって、実際には違うということで運営されているのですか。それとも、これは建前であると同時に実際もこういうことでやってきたしこれからもやるつもりである、こういうことですか。どちらですか。
  216. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま委員御指摘になりましたように、この税務運営方針は、昭和五十一年四月に策定されて以来今日まで、私ども税務職員の指針としてこれを守ってきたつもりでございますし、今後ともこれを守っていかなければいかぬ指針である、かように考えております。
  217. 正森成二

    ○正森委員 建前だけでなしに、これを守らなければならないと思っておられるようであります。ところが、実際にこれに反することがいろいろ行われておりまして、特に税務当局の、あなた方はどう思っておられるかわかりませんが、非常に当を得ない調査なり態度によりまして、去年の後半から自殺者が激増をしております。  随分たくさんありますので全部は申し上げませんけれども、例えば滋賀県の近江八幡の税務署管内、八日市というところのAさんという人は、昨年の十一月八日に自殺をしております。ところが、たまたまその翌日に調査に来た税務署員に、関係者が、体調がすぐれないため調査が重荷になっているところに百九十万円の税金を突きつけられた、それがAさんを死に追いやる引き金になったと言って自殺したということを言ったら、冷然として、本当に死んだのか調べに行く、こう言って税務署員がとことこ調べに行ったということが報ぜられております。  あるいは滋賀県の草津市の例で、畳製造の下請をしておられる方ですけれども、この方もいろいろ調べられまして、国税の本税が百三十四万九千円、住民税、国保税などを入れるとそれの倍以上ということで、首つり自殺をするということになっております。これもつい最近の例であります。  それから山口県の下関市では、これは相当大きな額の脱税だということで三十名の調査が入ったということでありますが、若干平衡感覚が異常になりまして、精神病院に行きまして、自殺のおそれがあるという診断書をもらったにもかかわらず厳しい調査が行われましたために、昨年の十二月二十一日自宅で灯油を頭からかぶって屋敷内で焼身自殺をするということが起こっております。これはMさんという人であります。この方は遺書も出てきたのです。この人の弟さんは、犯罪捜査以上の人権じゅうりんで、精神的拷問だ、十二月になってからは目が離せないで危ないと思っていた、こう言っているのです。それが首つり自殺をしております。  あるいは千葉県の山武町というところでは、農民が昨年十二月に税務調査で修正申告に応じたのに、収支内訳書がないから保留扱いにする、十二月までに出せというようなことを繰り返し言われまして、これは我が党の近藤議員が、収支内訳書の提出というのは自主申告、申告した効力には関係がないということを税務当局から確言を得ているにもかかわらず、こういうやり方をやりましたために山の中に入って首つり自殺をするということをやっております。これも昨年の十二月であります。  そのほか岐阜でも自殺が起こっておりますが、特に私がここで国税庁にお伺いしたいと思うのは広島県の三次の事件であります。これはYさんという方で、名前も全部わかっておりますが御本人のために申し上げません。昨年、税務署が調査に参りまして、三千三百三十万円の五年間の増差があるということで、三百四十一万円余りの修正申告に奥さんに押印をさせておるということがございます。この奥さんは、調査に来たときに、まだ布団が敷いてあるから待ってください、プライバシーがあるのですと言っているのに、とことこと上がり込んで、この引き出しをあげろ、預金通帳を出せというように命令した上五時間調査を行いまして、勝負するか、調べればもっと所得が出る、七年さかのぼるところだが五年でこらえてやるということを言いまして、任意調査なのに、私は帳簿をつけていなかった、売り上げをごまかしていたという調書までとって帰っております。この人はそれから御主人と一緒に泣き暮らしていたそうですけれども、やっと元気になったやさきに地方税やら国保税などがやってきて、総計八百万になるということがわかった翌日、御先祖のお墓に参ってこれまた灯油をかぶって焼身自殺をするということになっているのです。  しかもこれは、御本人が繰り返し関係者に訴え、また事実もそうだそうですけれども、その三千三百三十万円を出したのは、預金通帳六百万円見つけた。ところが、この預金通帳というのは、この奥さんが五年前に役所を退職したその退職金なんです。それが五百万円。残りの百万円は、役所に長い間勤めていたので積み立て貯金をやっていたそのお金なんです。あるいはそれ以外に、石材店をやっているお店を直したということで四百万円かかった。これも収入で認定されたのですが、これは信用金庫から四百万円借りたということは調べればすぐわかることなのに調べていないのです。こういうようにして猛烈な増差を出したわけです。大蔵大臣、五年間で三千三百万円出しまして、それは所得がそれだけあったのですけれども、五十七年度の期首の所得を調べていないのです。だから、この人が生まれてからためているお金を全部五年間に稼いだということで割り振りをして、そして私は所得をごまかしていたという判こを押して修正申告を出させたから、結局焼身自殺をするということになっているわけであります。  私はこの件については現地へも調査に行きましたけれども、国税庁、こういう非常に厳しいあるいは当を得ない調査によって死亡者まで出ている、しかもその内容の多くは、全部とは言いませんが、調査方法についても極めて問題があるようなやり方は、今建前だけでなしに実際にやろうと思っているというこの税務運営方針の指針に比べて非常に乖離しているんじゃないですか。そのことを伺っておきたいと思います。
  218. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま御指摘がありました個別の事柄につきましては、その具体的な事実関係を承知しておりませんので、ここで申し上げることを差し控えさせていただきたいことについて御理解を賜りたいと思います。  委員が御指摘になりましたように、税務運営方針につきましては、税務調査について、税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との考量において、社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものとされております。私どもが指針とすべきこの税務運営方針につきましては、今日まで機会あるごとに部内の職員に対しましてその周知を図ってきておりまして、相当に周知されてきているとは思っておりますけれども、なおこの周知徹底につきましては、税務大学校においてこれを全員に配付してその周知を図る等の措置をとることとしたことを含めまして、御指摘の点を踏まえてなお一層努力してまいりたいと思います。  なお、税務調査に関連することでございますけれども、一般的に申し上げますと、白色申告等の場合、税務調査に当たって納税者の帳簿等が不十分と判断される場合には、原始記録やその他収集した資料、情報に基づき損益計算法により所得を算出する例が多うございまして、この結果納税者の申告額が過少であると認められる場合には、その結果を納税者に説明し、理解が得られれば修正申告書を提出していただくことになりますし、また、理解が得られない場合には、これに対しまして税務署長が更正を行いまして、この更正について不服があるということでございますれば、異議の申し立て、審査請求等の不服申し立ての措置をとっていただくということになっているところであります。これは既に委員もよく御存じと思いますけれども。  なお、このほかに、納税者が不服申し立てをしないで修正申告をした場合、後で誤りを是正してもらうための措置としては、当初申告にかかわる法定申告期限から一年以内ならば減額更正の請求手続によりその是正を求めるということができる制度になっております。したがって、その法定申告期限から一年を超えてしまった場合には、制度上は現在のところ納税者から救済を求める方法はないわけでございますけれども、極めてレアケースではございますが、例えば納税者側からの嘆願書とか上申書等の提出に基づきまして、税務署長が適正な課税を実現する見地から見て必要と認める場合には、その権限に基づいて減額更正を行うこともあるということを申し添えておきたいと思います。
  219. 正森成二

    ○正森委員 私は五つないし六つの例を挙げましたが、それは税務署の我々から見れば当を得ない調査というもので命を絶つ人まで出ておるということを申したのですが、特にその典型的な例として広島県の三次の例については、私から事前に詳しく事情をお話しして、調査をされることも求めておいたはずであります。ですから事実を全く把握しないということはないと思います。  そこで、この席で個別の事案について内容にまで詳しく触れるわけにはいかないという御趣旨であるならばあえて伺いたいと思うのですけれども、この三次の例については私も調査に参りましたが、ただに御先祖のお墓の前で焼身自殺をされたというだけでなしに、その内容自体についても、五十七年度の期首を調べないで六十一年度の期末だけから所得を割り振っておるというような、およそ税務当局としてはやってはならないようなやり方をやっております。しかも、これについて、修正申告は一たん出したものの、その更正を求めることについて、この方の親類に、遠いおじさんだそうですが、税務署出身の方がおられて、その方を通じて、死んだ人が浮かばれないからもう争うなというようなことを言って、実際上いろいろ手続をさせないようにするということまで現地では言われているのですね。  そこで、今次長の方から、更正の行える一年以内であれば申し出があれば事実を再調査することができる、それから、レアケースではありますけれども、そういう期間を超えても、本人から嘆願書あるいは申請書が出れば、もし法に反するようなことがあれば職権を発動して調べる場合もあり得るという示唆がございましたが、仮にこれらの件についてそういうようなアクションがとられた場合には、厳正に調査して妥当な課税を行うという態度をとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  220. 日向隆

    ○日向政府委員 私はただいま一般論として申し上げたわけでございまして、個別の事柄について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  221. 正森成二

    ○正森委員 私は個別のことについて確定的な意見を言えと言っているんじゃないのですよ。しかし、そういうような問題について一般論について言っているということは、個別の問題についても適用があり得るからこそ一般論を言ったんじゃないのですか。それだけ答えてください。
  222. 日向隆

    ○日向政府委員 今私が申し上げました一般論が具体的な個別の事柄について適用があるかどうかは、現地で事実関係をよく私どもの目で確認しないと何とも言えないことだと思います。
  223. 正森成二

    ○正森委員 随分不十分な答弁ですけれども、時間が来ましたのでこれで終わらせていただきます。こういうようなことが行われるために、今申し上げました命を絶った人は民主商工会とか全国商工団体連合会の会員でも何でもない方なんですが、どこにも入っておられない方がこういうぐあいに死んでいって、その結果その遺族やら関係者が余りひどいといって民主商工会に入るというケースがあるのですね。  そうしますと、昭和六十二年九月二十一日に新任上席調査官の研修というのが東京国税局であったようですが、ここで所得税課長が講話をしているのですけれども、特定事案についてはたたく以外に是正する手だてがない、相変わらず反税闘争を繰り返し、当初から低額申告している、従前と姿勢を変えて対決姿勢をとると、ある団体については対決姿勢をとるとかあるいはたたく以外に手だてはないというようなことを言うて偏見を持っているのですね。これはとんでもないことじゃないですか。あなた方は、こういう態度で、税務運営方針はあるけれども、特定の団体については差別してもいいんだ、法のもとの平等なんか考えないでもいいんだというように考えているのですか。
  224. 日向隆

    ○日向政府委員 御指摘の具体的な事柄につきまして正確に事実関係を承知しておりませんので、これについて申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  しかし、税務行政は、本来適正な課税の実現を図ることを目的として公平に執行されるものでございまして、特定の団体に対し先入観念を持って行うべきでないことは言うまでもございませんし、したがって、私どもといたしましてはどの団体に対しても中立の立場で税務行政を実施しているところでございます。
  225. 正森成二

    ○正森委員 申しわけございません、国金局来ていただきましたけれども、時間が参りましたので、これ以上質問をすると御迷惑をかけますので。  いつもだったら最後に大蔵大臣にも御所見を承るのですが、御答弁がいただけないまま終わるのは残念ですけれども、お約束の時間が参りましたので終わらせていただきます。
  226. 越智通雄

    越智委員長 次回は、来る二十四日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会