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安倍(基)
委員 私も法務におりますので、この辺は日本の没収という
意味の形が昔的な考えで、利得というものを召し上げるというのも新しい考え方じゃないかと思います。これは別に法務
委員会で論議すべき問題かと思いますので、この辺でとどめておきたいと思います。
このほかいろいろ聞くことはあるのですが、実は今度
一般質問にほかの者が立ちますので、なかなか
一般質問で聞くチャンスがないので、ひとつ念を押す
意味で
大臣にお聞きしたい問題がございます。
というのは、この間実は私はここでODAの問題を取り上げたことがございます。ODAの問題で、ドルベースでいくと、日本のODAは二、三年前から五〇%あるいは二、三〇%の伸び率でどんどんと上ってきている。結局、援助を受ける側は、円が倍になったわけですから、ドル換算でいけば倍くらいにもらえるわけですね。同じものをつくるにしたって
一つのものが
二つくらいつくれる話になってきている。でありますから、これからはODAを単に円ベースでどんどん伸ばすとかいうのはちょっと
むしろ不消化になってしまうし、やり過ぎじゃないか、もう少しドルベースを考えながら伸ばすべきだという話をしたことがあると思います。
大臣も、なるほどそれは確かに援助は大事かもしれませんけれ
ども、円ベースとドルベースと両方勘案して考えていくべきじゃないかなという御
答弁を得たのです。御記憶かと思いますけれ
ども。
私、実はきょう外務
委員会でもその話を出したのですけれ
ども、ちょっといろいろ新聞記事などを見ますと、竹下総理
大臣がサミットに行ったときに、ほかの国と同じくらいのGNP比で、ほかの国の平均が〇・三五とかいっていますけれ
ども、それでまた新たな約束をしてくるというような報道もございます。私はODAというものを決して低くしろとは思っていないけれ
ども、少なくとも円がこれだけ上がってきたら、前回も話しましたけれ
ども、公明党の大久保書記長が防衛費のときに円高メリットを勘案してないじゃないかということを予算
委員会で強調された。それ以上に、結局ODAがドルベースではもう全く大きくなってきているということを考えまして、これからサミットに行かれてまた景気のいいことを約束してもらい過ぎても困る。
今度の税制国会で我々はタックスペイヤーの目で見てすべてのものを考えなければいかぬ。たまたま私は地元である人に会ったら、我々は脱税をするとすぐ捕まっちゃう、ところが大きなむだ遣いをしたことがあっても
一つも罪にならない、これはどういうことですか、こう言うわけですね。何がむだ遣いかむだ遣いじゃないかというのは難しいわけですけれ
ども、それは我々国会がタックスペイヤーの目で支出をチェックするのが使命であるということを話したのでございます。ODA予算というのは決してむだとは言いませんが、ただいろいろ例えば
市場開放問題につきましても、ODAをやっているから勘弁してくれと言ったところで勘弁はしてくれない。サッチャーはそれなりに酒税を言うし、ヤイターもいろいろなことを言う。ODAなかなかよくやっていますねという褒め
言葉はありますけれ
ども。
そういうことで、たまたま私のこの
議論が、二、三日前竹村健一の本を読んだら大体似たようなことが出てきていまして、こういうこともだんだんと考えてきているのだと思いますが、援助というものは一遍上げますとなかなかそれを下げられないわけですね。でございますから、途中から下げちゃうとまた何だということになる。しかも、日本が黒字を持っているといっても、財政は大赤字なんですね。調べてみますと、例えば西独並みといっても、日本の一人当たりの
国債は約五千ドル、西独は二千ドル、二倍以上の債務を我々は持っておる。しかもODAの実質額において我我は世界一になってしまっておる。しかもイギリスとかフランスなんというのは、それぞれの旧植民地、そういうところに随分出している。アメリカなどは戦略的にイスラエルとかエジプトあたりに相当部分出しておって、戦略部分を除くとGNP比は〇・二が〇・一くらいになるのですね。そういうところを勘案しますと、日本がかっこいいことばかり言うて、竹下さんがサミットあたりに行って大いにやりますと言ってこられてしまうと、一体何だと、税制でもって国民に、減税を先にするにしても、最終的にはこの秋に新しい税でもって将来を考えるという立場にある、そういうときを前にして――中曽根さんの外交で一番問題となったのは、どんどんと手形を切ってきてしまうのですね。ツケが残ってしまう。まさか竹下さんはそういうことをしないだろうと私は思いますけれ
ども。
大蔵大臣、この間ODAの
議論をしたときに、これはなるほど円だけで考えるのはおかしい、円とドルとを勘案して次の六十四年度予算ですか、それも考えましょうという
答弁をはっきりいただいているのでございますけれ
ども、それは反面、国際的に大見えを切って私
どもこれからこのくらい伸ばしますということを一遍言ってしまうと、これはなかなか後に引き戻せない。でありますから、今度のサミットに行かれるときによほど注意して行かれないとまずいのではないかなと私は考えております。
この点、竹下さんがロンドンで演説したという話もありますけれ
ども、それははっきりとした数字として言っているわけじゃないし、新聞紙上伝えられるところによりますと、諸
外国の平均〇・三五を〇・四くらいのめどでもってすごい形で伸ばしていこうという動きがございます。これは我我が非常に注意しなければいけない問題ではないか。これから
市場開放に関連して、
一つはこの前お話しいたしましたいろいろな国内
措置も要るかもしれない。また、今度はアメリカからは軍事費の肩がわりで安全保障の面からいろいろな要素の要求があるかもしれない。そうなると、単に優等生というか、大体これだけやっていますよということだけでなくて、たまたま竹村健一が私の言っていることとほとんど同じことを言っているのですが、援助というものは、それなりにいろいろウエポンとしても使えるくらいの、しかも相手に本当に喜ばれるものでなければいけない。ただ量をふやして未消化になるような、今だったらこれだけ上がっているわけですから、そう消化も十分でないところにどんどんとやって、しかも質というのが、グラントコンテント、贈与部分の引き上げを
中心として考えるよりは、もっと向こうに本当に喜ばれるものでなくてはいけない。
そういった面で、今まではODAというとだれも反対しなかったですね。特に我々野党も、軍事費に回すよりはまだいいや、こういう気持ちが強くて、もろ手を挙げてというか、もっとふやせふやせというような動きだったのですけれ
ども、今や事業予算で一兆五千億で、
一般会計は七千億ですけれ
ども、出資
国債も含めると一兆円近くのものが税金で賄われる状況に立ち至っているわけでございまして、私
どもが国会で決議を必要とすべきじゃないかということを言ったのもその背景があるわけでございます。竹下さんがサミットでうっかり大ぶろしきを広げてくると次の税制国会に響きますよ、こういうことを私はちょっと外務
委員会で言ってきたばかりなんですけれ
ども、この点についてどうお考えになるか。
もちろん私は国際的責務を果たさなくてもいいとは言っていない。ある
意味からいえば、国の安全保障の
意味で諸
外国の好意を得るということはあり得ますけれ
ども、それは、私は繰り返すようですけれ
ども、ほかの国というのは、フランスにしてもイギリスにしても旧植民地のところへ大部分出しているのですよ。アメリカの場合にはそういうストラテジックなところに出しているのです。でございますから、要するにほかの国と平均的なところで〇・三五、いや〇・四だなんていって日本の伸びたGNPでどんどん伸ばしていきますと、日本の場合には、貿易黒字はありますけれ
ども、国家財政はべらぼうな赤字なんですね。ドイツ並みにしようと思っても、一人当たりの債務というのは日本の場合にはドイツの倍以上あるわけですね。財政再建を言い、新税を討議しようというときに、
余り大きな手形を切ってきてもらっては困ると思います。
この点、外務
大臣にも言っておきましたけれ
ども、
大蔵大臣もどうお考えか。非常に重要な問題です。この国会が終わりますと、竹下総理がサミットへ行ってくるんでございましょう。そのときにどういう話をしてくるかということが非常にこれから先に響きますので、この点どういう御認識を持っていらっしゃるか、どういう態度をとられるかということをお聞きしたいと思います。