○正森
委員 今、外務省から答弁がありましたけれども、アメリカは非常に虫がいいのですね。国際機関の場合に、いろいろ出資したり金を出すのは財政上の問題があるから嫌だ、しかしそれには発言権を持って、今度の
法案でも外務
委員会にも出ましたけれども、自分のシェアが減るのですね。そうすると、今まで協定
改定のための拒否権といいますか、八〇%だったのを八五%にして、自分のシェアが二〇%あっても事実上拒否権を求めることができるようにする。しかも、減った分の相当部分は
日本に負わせるという虫のいいことをやるのですね。だから、その国際機関に金を出すのが嫌なら口も出さなきゃいいのだけれども口だけは出す。そして、より自分の言うことを聞かせやすい二国間協議を、あるいは二国間援助を優先させるというのがアメリカのやり方で、大蔵
大臣、御答弁いただかないでお聞きいただくだけで結構なんですけれども、やはりこういうやり方は、すこぶる大国エゴといいますか、好ましくないやり方であるというように言わなきゃならないですね。
その次に、IMFにはコンディショナリティー、融資附帯条件というのがありますね。これは国金
局長の答弁かもしれませんけれども、これは非常に深刻な問題で、金は貸してやるがこういう融資条件をのまなきゃだめだということで、後進国に一定の条件を突きつけるわけです。例えば、これはニューズウイークの一九八七年七月二日に載っております論文ですけれども、ザンビアなどではこの条件を遂行しようとしたために実質賃金が六割も低下して、とうとうカウンダ大統領はIMFが後押しする
経済改革計画を放棄した。IMFはどういうことをやったかといいますと、食料補助金に大なたを振るって官僚機構を縮小して首を切れということをやりまして、そのためにこの論文によりますと、「ザンビアでは、カウンダ大統領が食料品への補助金の大幅削減を打ち出すや暴動で十五人が死亡。ストが相次ぎ政治生命の危険を察した大統領は、改革案を含む予算をほぼ全面的に放棄した。」というように書かれているわけであります。
それだけでなしに、いろいろなところでこれが言われておりますね。後でお聞きしますが、
宮澤大蔵大臣もブラジルの蔵相と昨年お会いになりましたね。そのときにIMFと話し合いをして話をつけることが先決だというようなことをおっしゃったのですが、そのIMFのコンディショナリティー、具体的には
経済調整プログラムということになるわけですが、国金
局長もよく御存じでしょう。例えば、普通は公共支出の削減、増税、公共部門の借り入れ
制限などによる財政均衡化対策のほかに、物価や金利統制の撤廃をせよとか、賃金の引き下げをせよとか、為替相場の弾力化とか輸入規制の漸次撤廃、こういうことをやって
国内総生産に対する財政赤字
比率、インフレ率、貿易収支に関する短期的な目標値の達成を求めるというのが通常のやり方であります。
例えば、ブラジル
政府に対して融資附帯条件として与えられた
経済調整プログラムは、私の持っております本によりますと、一九八二年の貿易収支の赤字が百六十三億ドルだったのを翌年の八三年にはこれを一挙に六十億ドルにまで削減しろ、あるいは経常収支の赤字をGDPの二%に改善せよ、インフレ率を八二年は九八%であったのを七〇%に低下させろ、財政赤字が八二年にはGDPの六・五%であったのを三・五%に削減せよ、これは半減ですね。あるいは輸出促進のために為替レートの調整率を毎月のインフレ率プラス一%に加速せよ、こういう条件をつけているわけであります。仮に、アメリカも今四千億ドルからの累積債務を持っておりますが、これに似たような条件を突きつけられたらアメリカ
経済がもつでありましょうか。アメリカでさえやっていけないようなことを、借金で借金で困っている途上国に押しつけるということをやっているのですね。
ところが、こういうIMFのやり方に対して、ここにございますが、
宮澤大蔵大臣は、ブラジルのフナロというのですか、ちょっと読みにくい名前ですが、フナロ蔵相が去年の三月の九日、十日ごろお見えになったときに、ここに記事がありますが、
宮澤大蔵大臣は「ブラジルの債務問題はブラジルだけでなく、我々の問題でもある」、これはなかなかいい御発言ですけれども、その後が悪いですな。「ブラジルが非公式でもIMFと協議した上でないと
日本を含めた債権国が動くことは難しいとの考えを示した。」これは後で中曽根総理も大体そういうことのようですね。それに対して、ブラジルのフナロ蔵相はどう言ったかといえば、「
国際通貨基金と
経済調整政策で」、スタンドバイ・プログラムという
言葉を使われたそうですね、「協議しないというのはブラジル
政府部内の完全なコンセンサスだ。」こういうように言った上で、「IMF調整策は債権国に利点となっても債務国のためにはならない。」ということを言っているのです。ほかにもまだいろいろありますが、長いから引用いたしませんが、そういうように言っているのですね。
そのほかはここに資料があって、時間があれですから読みませんけれども、例えばペルーもこういう点では随分つらい国ですね。ペルーのアラン・ガルシア大統額というのが第八回の非同盟諸国首脳
会議で演説しておりますが、その演説の中では、なかなか名文句だと思いますが、こう言っているのです。
したがって、第三世界全体にとってと同様、ペルーにとっても、岐路は明白である——債務か民主主義か、債務か主権か、債務か生命か。
こうして、他の諸国と力を合わせることがわれわれの
課題となるのである。世界の利子率を実質的に下げ、債務の条件の公式を改めさせ、われわれの原料の価格を回復させ、通貨体制を民主化するために、われわれの力を
統一することである。団結、そしてただ
統一のみが、われわれの非同盟の具体的なあかしとならなければならない。
こう言っております。これは決して、毎々言うようですが共産党が言っているのじゃないのですね。ペルーの大統領が言っている
言葉なんです。
こういう点について、私どもはこの
法案には遺憾ながら賛成することができませんけれども、それはこういう前提の上でのアメリカの肩がわりの増資というのは、決して第三世界のためにも発展途上国のためにもならないというように考えるからでございます。時間が、本
会議の前でやめなければなりませんので、ほかにいろいろ聞きたいことがありますがやめさせていただきますが、
宮澤大蔵大臣なりあるいは国金
局長が何かおっしゃられることがあればお伺いして、終わらせていただきます。