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1988-04-22 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十二日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       江口 一雄君    衛藤征士郎君       遠藤 武彦君    片岡 武司君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       谷垣 禎一君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    堀之内久男君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       上田 卓三君    上田 利正君       田並 胤明君    野口 幸一君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    橋本 文彦君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    佐藤 祐弘君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         郵 政 大 臣 中山 正暉君  出席政府委員         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   日向  隆君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部長      井山 嗣夫君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君  委員外出席者         厚生省健康政策         局総務課長   田中 健次君         郵政省簡易保険         局次長     吉高 廣邦君         参  考  人         (日本国有鉄道         清算事業団理事         長)      杉浦 喬也君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     石破  茂君   葉梨 信行君     谷垣 禎一君   藤波 孝生君     片岡 武司君   沢田  広君     上田 利正君   野口 幸一君     田並 胤明君   橋本 文彦君     山田 英介君   正森 成二君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     笹川  尭君   片岡 武司君     藤波 孝生君   谷垣 禎一君     衛藤征士郎君   上田 利正君     沢田  広君   田並 胤明君     野口 幸一君   山田 英介君     橋本 文彦君   佐藤 祐弘君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     葉梨 信行君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第三号)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、二時間ばかり時間をいただきまして財源確保に関する法律、要するにこれは日本財政に対する対応でございますので、広義における財政対応の問題について、まず最初の二時間質問をさせていただきます。  最初は、大変お忙しい中を中山郵政大臣出席をいただきまして、どうもありがとうございました。今から八年前になりますか、昭和五十五年に、当時私はグリーンカードの問題をやっておりまして、そのグリーンカードによって税の把握をされるのではないか、そうすると郵便貯金は非課税なのでグリーンカードには直接関係がないからということもあり、同時に大変金利が高かったために、この昭和五十五年度というのは定額貯金大変急増をしたときに当たるわけであります。それから、定額貯金は御承知のように十年で満期になりますから、十年ということは昭和六十五年に、この大変金利の高かった定額貯金満期を迎えることになるのであります。この問題は単に郵便貯金特別会計だけの問題ではなくて、郵便貯金原資を仰いでおりますところの資金運用部、ひいては財政投融資計画にも大きな影響をもたらす財政上の問題でもございますので、きょうは最初にこの問題を取り上げさせていただきたいと思います。  そこで、郵政省事務当局に、まずこの背景となっておるところの三年以上の定額貯金金利の動きを、一番高くなったときの少し前から説明をしてください。
  4. 中村泰三

    中村(泰)政府委員 お答えをいたします。  先生指摘のとおり、五十五年四月から十一月までは八%ということでございましたが、その二年ほど前から申し上げますと、一番低いときが五十三年四月でございまして、このときの定額貯金最高利率は四・七五。五十四年に入りまして五月に五・五%、八月に六・二五というふうに上がってまいっております。五十五年三月になりまして七・二五%、そして四月から八%といったような状況でございます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 今お聞きになりましたように、その二年ぐらい前には四・七五%でございました金利が、全体の金利が引き上げられた結果でございますけれども郵便貯金は五十五年三月に七・二五%、四月に八%、こういうふうになりました。この七・二五%というのは、ちょうど池田総理所得倍増計画をお出しになったときに年率七・二%で、十年で所得倍増ということでありますから、私たちにはこの七・二というのは大変よく頭に入っている数字でありますが、この七・二五ないし八%で金利がついておりまして、御承知のように定額貯金は複利でございますから、大体十年たつと百万円預金をした人は二百万円で返ってくるというのが今の情勢だと思うのであります。これが約一年続いておりまして、六・五〇というところへ下がったのが五十六年四月でありますから、約一年一カ月倍になるような金利が続いていたのでございます。  そこで、このときには預け入れが大変ふえたのでありまして、このときの定額貯金預入金額は幾らか、事務当局で答えていただきたい。
  6. 中村泰三

    中村(泰)政府委員 五十五年度の定額貯金預入額は三十三兆八千億円でございます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 今お聞きのように三十三兆八千億円。ちょっと前後を申し上げると、五十四年は十五兆四千億、五十六年は十一兆二千億ということでありますから、いずれもそう大して大きくないのでありますけれども、ここだけが三倍近くに膨れ上がった。これは国民金利選好について非常に敏感だったということと、一つはさっき申し上げましたグリーンカード関係があったと思うのであります。  そこで、これが満期を迎えることになりますと、一体三十三兆八千億というものは、もちろん五十五年に貯金をしたのでありますが、必要に応じて皆さん出しておられるでしょうから、十年といえども一体どれだけ残っておるかはちょっとよくわからないのでありますが、恐らく郵政省もこの間からいろいろ話を聞いてみますと、そういう預金管理は必ずしもきちんとやっておられないようでありますので、今の三十三兆八千億が例えば六十五年度に幾ら残って満期を迎えるかということは、必ずしも正確ではないと思うのであります。しかし、これは重要な問題でありますので、それなり推計をしていただきたい、こう考えておりますので、これも事務当局から、六十五年に満期を迎えるであろう定額貯金金額は大体どの程度か、推計で結構ですからお答えをいただきたいと思います。
  8. 中村泰三

    中村(泰)政府委員 郵便貯金は大勢のお客様からお預かりしている大切なお金でありますので、その管理につきましては私ども万全を期してやっておりますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  先生指摘のとおり、五十五年には三十三兆を超える預入があったわけでありますが、この五十五年に預入された定額貯金が現在のところどのくらい元本として残っているかということにつきましては、私ども直接その年度別元本を把握する手段はとっておりませんで、毎年入ってくる定額貯金を各預入月別に原簿を管理しまして、その利率を六カ月ごとに計算をするということで正確を期しているわけでありますが、先生も先ほどおっしゃいましたように、定額貯金は預け入れるとすれば十年間預入ができるわけでありますけれども、その間に払い戻されるものも大分あるわけでありまして、預入期間が平均的にどのくらいになるかということにつきましては、過去の例から見ますと、定額貯金につきましては大体四年前後といった数字が出ております。しかし、これは預入時の適用利率がどのくらいであったかということにもよりますので確定的なことは申し上げられませんが、十年間預入されたままになっているものの割合は大体二割でございます。  しかし、五十五年は先ほど御指摘のありましたとおり、金利が八%という天井を打ったときでございまして、この残存の割合はそれを超えるものであろうというふうに私ども思っておりまして、預入時の四割近いものが残っておるのじゃないかというふうに推察をいたしております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 今お答えをいただきましたように、普通のときは大体二割ぐらいが最後に残る。しかし、これは例外的に大変高い金利でございましたので、ここにふえたというのは、一つはやはりそういう金利選好でふえたという問題が大きゅうございますから、今貯金局長お話のように四割程度くらいが残っているのではないか。私が管理が云々と言いましたのは、そういうのが一体幾らずつ残ってきているかというような、そういう管理が必ずしも十分にないというので、郵便貯金管理がおかしいということを言った意味ではございませんので、そこは理解をしていただきたいのです。  そういうことで、四割もしも残っておるといたしますと、三十三兆八千億の四割というのは十三兆六千億ですね、十三兆六千億が残っていることになる。そうすると、これが倍になっているわけですから、二十七兆二千億という巨額な資金昭和六十五年中に郵便貯金特会から国民が引き出すということが起こるわけであります。  実は私、この後で社会保障やいろいろの問題をやらせていただくのでありますが、この昭和六十五年という年は、いろいろなものが重なってくる一つの節目の年になるような気がいたします、一九九〇年でありますけれども。そこで、この二十七兆二千億円というものが流出をいたしますということについて、郵政省としてやはり何らかの対策をお講じになるのだろうと思うのですね。これは前後にちょっと例のないことでございますので、こういう事態を六十五年に控えて、まだ時間があるわけでありますから、郵政省としてこれに対する対策大臣からひとつお聞きをしたいと思います。
  10. 中山正暉

    中山国務大臣 まずもって、貯金事業に対しまして大変御心配をいただく先生に心から敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。  あと二年でございますが、集中的に満期を迎えます定額貯金の問題というのは私ども大変憂慮をいたしておりますが、とにかく継続勧奨を何とかいたしまして、特に貯金局中心にいたしまして、我が郵政省挙げて新商品開発をいたしましたりいろいろ対策を練ってまいりたい、かように考えております。  あと六十五年といいますと花の博覧会の年でございますから、そのときに花がしぼむようなことにならないようにひとつ、花の博覧会の後援という事業中心になるようでございますけれども、とにかく財投原資を支えます貯金が衰えることのないように我々懸命の努力をいたしたいと存じますので、何とぞまた御支援をお願いをいたしたいと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 やはり私は、郵政省といたしましても郵政特会が急激に減るようなことのないように、今お話しの国民のニーズに合ったところの商品開発をされて、これだけの巨額のものですからそれを埋め合わすのは大変でありますが、できるだけカバーができるようにされることを期待をいたしたいと思います。それでは郵政大臣、結構でございます。  そこで、今度は大蔵省お尋ねをするわけでありますけれども、六十五年に今申し上げたような巨額な流出郵政特会で起こる。そうすると、それは当然資金運用部処理をしなければならないわけでありますけれども、この点について事務当局の方では、こういう事態が起きることについてはどういう対応を考えておられますか。
  12. 足立和基

    足立政府委員 ただいま郵政大臣あるいは貯金局長からお話がございましたように、六十五年度に満期が到来いたします定額貯金というのはやはりかなりの額に上るようでございますが、それが果たしてどの程度郵便貯金の減少として生ずるかということは大変難しい問題でございまして、私どもも軽々にはなかなか申し上げられないと思っております。しかし、ただいまの郵政省お話を聞いておりますと、そういう問題を抱えておるということは事実のようでございますので、私ども現在財政投融資計画一つの大きな原資として郵便貯金がございますので、それが大きく動くというようなことがございました場合どのように対処するかということについては、今後財政投融資計画の策定に当たりまして、一層の効率化あるいは重点化というものを図りつつ現実の推移に対処して考え、検討していきたいと考えております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 今のは大変事務的な話でございまして、当然だと思うのでありますが、大臣、私は実は昭和五十六年の二月に、渡辺美智雄さんが大蔵大臣になられたときに、大蔵委員会で三つの問題の提起をいたしました。一つは当時国債特別会計、こう言っておりましたが、今は国債資金特別会計という方が適当なように思っております。この問題を取り上げたわけでありますが、あわせて財政投融資の見直しをやる必要はないのかという問題を取り上げました。昭和五十六年でございますから、もう既に七年間経過をしておるわけでございます。  そこで、国債特別会計の問題はちょっと後で論議をさせていただくといたしまして、私はこのときに、財政投融資計画というものを少し基本的に見直したらどうだろうかという問題提起をさせていただきました。それはどこに問題があるかといいますと、財政投融資計画というものが非常に役に立ったのは、日本経済の中でまだ資金が非常に不足をいたしておりまして、池田さんの長期にわたる低金利管理政策の結果、国民中小企業その他の方に資金が必ずしも十分に回らない、あるいはいろいろな点で国がそういうお手伝いをしなければいかぬ時期にありましたから、財政投融資というものがそれなりに大きな役割を果たしてきたことは私は評価をいたしておるわけでございます。  その後、また財政をゼロシーリングマイナスシーリングで抑えていきましたときには、今度は形をかえて予算の部分が財投という格好で行われるという、ですからそういう意味でまた財投それなりの新しい役割を果たしてきたと私は思うのでありますが、ここへ参りますと財政もようやく大体正常な形に、今特例債が出ておりますから完全には正常ではありませんがやや正常な方向に戻りつつありますし、また資金はもう大変市中に余っておりまして、政府関係金融機関がそれを手当てをしなければならぬという情勢はもうかなり弱くなっておる。そういうふうに考えてきますと、私は大体大臣と同じで競争原理市場経済論でありますから、何としても経済というのは効率化が必要だと思っておるのでありますが、財政投融資を見ておりますとどうも余り効率的な運用がされていない。ですから、五十六年に申しましたのは、もう少し効率的な運用をここの中に導入することができないのだろうかという問題を取り上げました。  そうして、たしかあのときには二兆円でございますかの金が実は四月にリザーブされておりまして、それが翌年までいくわけなんですね。こんな金をじっと抱いていてもむだではないかという話をしましたら、当時の渡辺喜一理財局長が、実はこれは地方自治体が四月、五月に、それまでは短期で泳いでいて、ここで長期に乗りかえて資金を持っていくものですから、どうしてもここはリザーブしておかなければいかぬ、要するに資金運用部にはラストリゾートはないんだ、そこでそういうものを持っていなければならぬ、こうおっしゃいますので、それはおかしいのではないでしょうか、四月、五月に要るとわかっているものをずっと一年間持ってきてためて置いておくという必要はなくて、それはそれで運用をして、そこのところで必要があれば民間資金を調達して処理をしてもいいだろうし、新たな国債特別会計というところで資金調達をしてもいいのではないでしょうかという話をしたのが五十六年二月でございます。  その後、今そのときとは情勢が変わっておりますけれども、六十五年には幾ら減るかはわかりません。さっきの私が言っておりますように二十七兆二千億に近いものが減るだろう。それが二十兆になるのか、あるいは場合によっては三十兆になるかもわかりませんが、そうすると今から六十四年の財政投融資計画、六十五年の財政投融資計画というのは、そういう減収があるということを見通して実は財政投融資計画を組んでいかなければ、六十四年はこれまでどおりにいって、そこでがたんと落ちるなんということでは、財政投融資計画のような大きな資金の問題をうまく運営することは難しいのではないだろうか。  そういたしますと、今細かいことをここでどうしろという問題提起をするのではありませんけれども財政投融資そのものを六十五年の一つのギャップを契機に新しい段階にレベルアップするというか効率化を図る、こういうことが今日から考えられていいのではないだろうか、こういうふうに考えるのでありますけれども大蔵大臣いかがでございましょうか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かねて堀委員が、国債資金について特別会計のようなものを考えてみてはどうかと言っておられることはよく存じ上げており、また傾聴すべきお話として私自身も関心を払ってまいりました。ただいまはまた、財投計画といったようなものが戦後四十年の間に果たしたそのときどきの役割について、またその変化についてお話があったわけでございますが、私ども正直を申して毎日毎日の仕事に追われておりますし、また前年度対比で今年度はという考え方をどうしてもするものでございますから、過去にさかのぼって制度の果たしてまいりました役割、またその今日的な意義というものを一遍将来を展望して考えるというような余裕と申しますか、そういう発想に欠けがちでございます。恐らく役所の中におきましては、専門家の諸君がいろいろ研究はしておると思うのでございますけれども、いろいろ忙しいものですから、行政の課題として取り上げるのには大きな問題であるだけに、なかなか取り上げにくいと言っているままに毎日を過ごしておるというようなことは、とかくありがちなことであると思います。  そこで、今六十五年という年をお取り上げになって、これはたまたま五十五年に非常に高い金利がありましたことから、定額貯金満期になるという時期でございますが、その時期をお取り上げになって資金がどうなるのか、たまたま六十五年というのはいろいろな意味一つの区切りになる時期ではないか、そうおっしゃいますと私どもも、六十五年度には特例公債は脱却できるかという努力目標を持っておりますし、国鉄共済とかいろいろな問題が確かにございまして、そういうことも考えながら考えてみてはどうかということは、私は大変示唆に富んだお話だと思います。先ほど申しましたようなことで、その日その日追われておる嫌いがございますから、いいときにいいお話をしていただいたと思います。将来の展望を考えながら、それならば果たしてどういうことがよろしいのかということについては、またいろいろな意見がございましょうしいたしますが、一遍その問題を考え直してみるということは大切なことであると思っております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 大臣の御答弁で結構なんでございますが、ですから、私がその問題を大蔵省皆さんともお話をする中でどうしても今の役所の機構が、御承知のように日本全体で見ましても、厚生省それから大蔵省、農林省、文部省というふうに縦割りでございます。そして、これは一昨年の十二月にこの委員会で申したことがあるのでありますが、私は昭和三十三年に、きょう後で質問させていただく竹下総理その他と同期で当選をいたしまして、当時社会党は百六十六名当選をいたしました。余りたくさん予想以上に当選したものですから、委員会の配分について強制的におまえはどこへ行け、おまえはどこへ行け、こうやられまして、私は文教委員会に参りました。そこで、文教委員会でいろいろ質問をいたしておりますと、文部省当局は、いや、先生の御提案は私ども全く賛成でございますが、なかなか財政当局の同意が得られませんので、残念ながら実は実現が大変難しいのでございます。何回か、こう答弁があるわけです。ははあ、財政当局というのは大変な力があるな。  私は、それだからというのではありませんけれども昭和三十五年一月から大蔵委員会公職選挙特別委員会を志望いたしまして、それ以来大蔵委員会におるわけでございますけれども、実は縦割りになっているものですから、大蔵省皆さんにとっては私はちょっとこの間からこういう話をして、気分を害さないように聞いていただきたいのですけれども、今、国というのは、国土はありますけれども、国というものをあらわしておるのは国民だ、私はこう思うのでございます。国民集合体というのが国だ、こう見ているわけであります。そうすると、私たちにとっての一番の基本は何かといえば国民基本である、こう考えるわけでございます。  後で、引き続き厚生省からいろいろお尋ねをするのでありますけれども、要するに厚生省人たちいろいろ話をし、また私どもの党の関係者社労委員皆さんお話をしておりましても、やはり話の節々に何というか、一つの枠があるような感じが私はしてならない。その枠というのは何かというと、さっきの長い間の厚生、大蔵の折衝の過程を通じて、大体このくらいの財政の枠の中でこういうことをやらなければいかぬのじゃないかというような、はっきり明示されたものはないのでありますが、暗黙の枠のようなものがあって、その枠の中で厚生省厚生省なりにいろいろとやっている。  そこで、私はきょう、後で厚生省皆さん答弁をいただくときに、きのうちょっとこういうことを言っているわけです。きょうは私がお尋ねをするので、だから要するに大蔵省の人は、あんなことを言ったらちょっと今の暗黙の枠組みを越えるじゃないかというような感じを持つ方がそちらにおられるかもしれないけれども、きょうはひとつ遠慮をしないでやってください、国民中心とした立場でかくあるべしという意見を出してもらって、我々財政を含めてそれを政治家としてどう判断するか、それは私一人が判断するのではなくて、こちらにおられる自民党の皆さんもこちらにおられる野党の皆さんも、みんなで国会で判断するということになってこなければ、本当の意味国民のための政治ということにならないのではないか、私はこういう感じがいたしております。  しかし、大蔵省皆さんは大変使命感を持っておられますから、その使命感を持って、悪い表現なんですけれども、きょう主計の方が大分おられるのですけれども、主計の方は金をつけるときは、自分の懐から金を出してつけるような気持ちでできるだけ少なくという、それは一定のあれがあるんでしょうが、という気持ちがベースにあるような気がします。今度は主税局になりますと、何とか一番取りやすいところからできるだけ無理なく取れればいいなということで、これは何も主税局の方が自分の懐へ入れるわけじゃないのですが、まさに気持ちはそういう気持ちで国民から税金をお取りになる。  しかし、私に言わせると、実はさっきの主体が国民であるということであるならば、この国民のために最も望ましい政策を実現するためには、これはやはり一定の必要な費用というものが要ります。その必要な費用というのを主計局は全体の財政を見ながらそこに渡す、その財政というのは国民がそういうことをやってもらうために実は国に払う、こういうことでありますから、それを取られる皆さん、使われる皆さんは、私に言わせればある意味でブローカーのようなものであって、こっちに主体があっては困る。常に国民の側に主体があって、国民にとって望ましい政策をするために税は必要になるのであって、その取ってきたお金で主計はそれを最も効率的にむだなく目的に合うようにこちらから持っていくということでありますから、私は、本来政府というのはそういう意味役割を果たすものではないのか、こういう認識に立っておるわけでありますが、大臣いかがでございましょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、もうおっしゃるとおりのことだと思います。  御観察のように、日本の公務員制度というのは非常にしっかりできておりまして、これが我が国の戦後の今日までの繁栄に非常に大きな貢献をいたしたことは疑いのないことだと思いますけれども、同時にそれはお互いの間の役割の分担と申しますか、そういうことが大変にはっきり、かっちりできておりますものですから、攻める方であるとか守る方であるとかお互いの権限の分界であるとかいろいろなことがございまして、そういう中で全体としては、大数観察ではうまくいっていると申しましても、やはりそういう役割が固定してまいりますと全体として硬直化しやすい。新しい事態に新しく対処するというときに、必ずしも上手にいかないということはまたございます。何事にもメリットとデメリットは私はあるのだろうと思いますが、そういう嫌いはございまして、絶えずおっしゃいましたような反省はしていかなければならない。  ただいまのようなお話も、実は長い間そういうことをごらんになっておられて、大所高所からいろいろ御発言をいただいております堀委員お話でございますものですから、みんな虚心にお話を承っておる、私もさようでございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そこで、厚生省入っていますね。実は最近いろいろな資料を読んでおります過程を通じて、今国会で国民健康保険法の改正案が審議されておるわけでありますが、この法律は二年で一応時限立法のようになっておりまして、そうすると二年というのはことしから二年でございますから、六十三年、六十四年をやると、六十五年には新しい問題にかわらなければならないという問題がどうも一つあるようでございます。もう一つは、最近健康保険組合が、老人保健法の改正が行われまして、按分率が六十五年は一〇〇になるということで、大変な負担になってこれは大変だというような問題が起きておりまして、そこで要するに医療というものが六十五年に対して一つの新しい壁といいますか、変革が求められておる状態が一つございます。  それから、私が六十年の二月の予算委員会で、ですからもうちょうど三年になりますか、実は国鉄共済年金の問題を取り上げまして、当時の仁杉総裁に、現在は四百五十億程度を国家公務員共済組合、電電、専売の共済組合で協力をしておりますが、六十五年からはもうこういう体系ではとても対応できないという運営委員会の答申を読み上げて、どうなるのでしょうかと仁杉総裁に伺いましたら、六十五年からの収支差額は三千億円になります、こういうお答えをいただいたわけであります。その共済年金の問題が六十五年に参るわけでありますから、厚生行政としては今の医療保障、所得保障の両面にわたって大変大きな変革のときが六十五年に来る、こう考えておるわけであります。  そこで、まずその背景になっておりますところの老人保健法と国民健康保険、そうして今の按分率との関係について、厚生省の方からひとつ答弁をしてもらいたいと思います。
  18. 下村健

    ○下村政府委員 お話にございましたように、国民健康保険につきましては六十三年、六十四年の暫定措置といったような形で、国民健康保険の対策をお願いしているわけでございます。したがって、その改正法の実施状況も見ながら、またさらにほかの新しい問題も踏まえまして、国民健康保険制度の長期的安定のための改革を六十五年に考えていくということになるだろう、このように思っております。  それから老人保健法につきましては、これは先年老人保健制度の改革をお願いいたしまして、按分率の引き上げということで御議論をお願いしたわけでございます。その際に、六十五年に一応一〇〇ということが決まっておりますが、単純に一〇〇に移行するということではなくて、按分率の問題以外の問題も含めて幅広い見直しをやるべきだ、こんなふうな国会御議論であったというふうに厚生省としては考えております。したがいまして、この二つの問題を中心にして六十五年度には医療保険制度の改革をお願いすることになるのではないか、このように考えておるところでございます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 それについて、実は健保の連合会でありますか、あるいは国保の中央会というようなところからいろいろな意見を出されておるようでありますが、それもちょっとあわせてひとつ御紹介をいただきたいと思います。
  20. 下村健

    ○下村政府委員 健康保険組合連合会は、ことしの二月に医療保険制度の今後のあり方についての提言を出しておりまして、その中で、今後のあり方について、従来どおり被用者保険と地域保険の二本立てでやってほしい、それから老人保健制度については医療保険制度から切り離し、間接税による新税制によってその財源を賄う制度への再編成をやってほしい。これは、現在の医療の状況からしますと、医療費のうちで特に老人医療費の伸びが非常に大きいということになっております。したがって、その老人医療費の負担について、現在も公費負担と保険料負担と両面でやっているわけでございますが、そういった形で新財源で賄う方がより公平で安定した負担ができる、こういう主張をいたしておるわけでございます。  それから、国民健康保険中央会も大体同じような考え方で、六十五歳以上の高齢者というところまで老人医療の年齢引き下げをやってほしい、その財源として、目的税を財源として高齢者福祉医療制度をつくってはどうか、このような主張をいたしております。  また、保険者団体ではございませんが、全国市長会は昨年十一月に、医療保険制度の一元化については現行制度の枠組みを維持しつつ給付と負担の公平を図るという観点から、老人保健制度については対象者の年齢を六十五歳まで引き下げてほしいというふうな主張をいたしております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 今のは一番の肝心なところでありますけれども、たしか健康保険組合連合会の方では、ある意味での老人保健に対する支払い方式の転換を求めていたと思っておるのであります。ちょっとそれについても、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  22. 下村健

    ○下村政府委員 大変失礼をいたしました。ただいまは負担面のことだけを申し上げてしまいましたけれども、医療費の支出という面から現行の出来高払い制度を老人医療については改めて、定額払い等の方式を検討すべきではないか、そういう方向に移行すべきではないか、こういうことを健保連は言っているわけでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 私はかつて、これは二十年ぐらい前になりますか、内田さんが厚生大臣のときに、実は健康保険の支払い方式を予算委員会問題提起をいたしました。私は実は、尼崎の医師会で役員をいたしておりまして、若いときからみんなにやれと言われて、理事をやり副会長をやり県の代議員をやり日本医師会代議員をやりということで、いろいろな役をしておりましたのでありますが、どうもその当時に私は、現在の出来高払いという健康保険の支払い方式というのは、医療の本質と経済的な問題がうまくマッチしてない、ミスマッチのシステムだということを私なりに診療しながら感じたものでありますから、そこで新しい提案をしたわけであります。  どういう提案をしたかといいますと、今の出来高払いというのは、保険医の場合には、大学出たての医師も大変経験を積んだ医師も、単価というのと点数で決まっておりますから報酬は皆同じでございます。そうすると、患者さんが来まして、余り的確に診断できない人がこうやって薬をやってみるけれども治らない、では、これをやってみるか、これもなかなかうまくいかない、だんだん時間がたつ、時間がたつほど収入がふえるという仕組みになっておる。ですから、能力がないとか少し収入を上げようとかということになると、患者さんが早く治らない方がそういう方にとってはプラスになる。医療というのは基本的に、疾病状態から医療を行うことによって健康状態に回復させるというのが本質でありますから、そういう医療の本質と支払いのシステムがマッチしていなければむだが起こるのは当然だというのが、まだ三十代の若いころの医師会員としての私の考えでございました。  私はその後、日本医師会から中央医療協議会の専門委員日本医師会の保険委員というような仕事をやっております中で、ちょうど岡山県に加賀先生という、当時岡山県医師会長までやった方が私と同じ考えで、堀さん、私もそう思うというお話で、これを私たちは総称して件数定額払いという一つのシステムを実は考えていたわけでございます。それはどういうことかといいますと、御承知のように医師の中には、内科、外科、産婦人科、耳鼻科、眼科というふうに科目が非常にたくさんございます。そこで治療内容によっておのおの一定のパターンがあるわけでありますから、今の健康保険のシステムというのは、毎月一人の患者について一枚の請求書を支払い基金に請求する、こうなっているわけであります。  そこで、この一枚のレセプトを例えば内科の病類のものについて全国統計の中で計算してみると、外来患者では一件当たり幾らが平均点だということが出せるわけでありますから、内科の患者については、全国同じでありますけれども幾ら幾ら、その一件当たり平均点で医師は請け負いましょう、外科の病類は何。というのは、病類を挙げておきませんと、標榜を内科としておりましても外科の患者さんが飛び込んできて、けがしたからやってくれと言われればやらなければならないということでございますし、外科へも風邪引きの患者は行きますから、内科とか外科という病類で区別をして、そうして全国平均の点数が一カ月に幾らという件数の定額が出ますので、この定額で請け負いましょうという一つの請負方式です。  そういたしますと、まず第一にどういうことが起こるかというと、できるだけ患者さんを早く治して費用を減らせばネットインカムがふえるわけでありますから、経済的に自分のプラスになる。だらだらやっていたらどんどんお金がかかっちゃって、平均点は丸々薬代になってしまったのでは、患者を診たけれどもネットインカムはほとんどないということになりかねないわけであります。そういうことになりますと、医師の能力がそこで発揮できるわけですから、能力がある人は最も的確な診断をして的確な治療をすれば早く治る、早く治れば、要するにコストが少ないからネットインカムがふえる。ここで初めて医師の希望と患者の希望とがぴたっとマッチするということで、本来健康保険はそういう形であるべきだ。  ただし、重い患者さんが来る場合がありますから、それは今言った定額請負の例えば二倍とか三倍とか、どこにするかは専門家が決めればいいのでありますが、そういうものを超えるものは従来どおり出来高払いで請求していいですよ、しかしその他は患者の氏名と保険の番号と病名とを出して、一覧カードで請求をしてもらう。お医者さんは、今この請求をするのに大変な負担がかかるのです。私のころは五日に基金へ出すとなりますと、四日の夜は家内と二人で大体徹夜をして保険の請求書を書いているというようなことでございまして、それを今度は基金でたくさんの人間が計数について調べ、いろいろな審査をしている。全国で基金だけでも大変な人間がいるのですが、今言ったような処理をすれば、お医者さんは、患者が来た、患者の住所、氏名あるいは病名、保険番号を一覧表にして、内科はこれ、外科はこれというふうにして、そしてそれを一枚の紙にしてぽんと基金に出せば、基金は機械的に計算してぽんと来る。  だから問題は、どこをチェックしなければいかぬかというと、来ていない患者を来たように請求されては困りますからね。これは詐欺ですからね。だから、そういうことの起きないようにだけはきちっとコントロールしなければいけませんが、患者さんが来て診察を一カ月に一回でも受けたら、それで一枚の請求書ということになるわけでありまして、そういう式の提案を内田厚生大臣のときいたしました。そうしたら、鳩山さんが当時主計局次長か何かだったと思うのですが、私に、いやあ堀先生、あれは大変いいですねと言われるので、いいですねじゃなくて、それをちゃんと医師会と話をして、それが実行できるようにしなければだめじゃないですかと言ったのですが、実は今日もまだそうなっていないわけであります。  私も医者でありますが、これは医療というものの本質とそういう経済的な問題がマッチしたときがやはり一番いいのであって、今の老人保健の問題というのは、そういう意味では私は、一番最初にそういうものを導入してもいいところじゃないだろうかなという私なりの感じがしております。健保連もそういう式の提案をしておられるようでございます。ですからこの医療問題というのは、確かに負担の面がありますが、要するに今の支払いのあり方という問題がよほど解決をされないと、国民医療というものにむだができてはせっかくの国民の負担が大きくなるだけでよろしくないと私は思うのでありまして、そういう問題を私は一種の医療哲学としてかねて若いころから持っておりますし、今もその考えに変わりはないのであります。  そこで、そういう話はそこまでにいたしておきまして、私は、今の老人保健の問題、全部国で持てという話はちょっと極端だと思います。既に現在五兆一千億からあるものを全部国で持つ話は、財政にかかわっております者としてはこれは余り常識的でございませんが、しかし、それでは国が二割で地方一割で、あと七割は皆そちらで持てという話も私は余り正常でないなという感じがするのです。なぜかといいますと、大体健康保険のようなものは、御承知のように、被用者保険でございますと半分は被保険者が保険料を出しておりますが、半分は雇用主の方が、保険者の方が出しておるわけであります。フィフティー・フィフティーになっているわけであります。老健法のようなものは、当然国及び地方で五〇%を持っていいのじゃないか。ある意味で国が五〇%持って、あと一〇%を地方が持って、残りの四〇%を保険の方で案分で持つというくらいであってもいいのじゃないかというふうに思っておるわけであります。  というのは、私は、これはちょっと税制に関係するのでありますけれども、いろいろなデータを見ておりますと、今この税制問題というのが、必ずしも政府の皆さんが考えておられるような評価を国民の側からしてないというふうに、実はこの資料で感じておるわけでありますけれども日本経済新聞が三月二十八日に世論調査をやりまして、「税制改革 直間見直し賛否半ば 新間接税支持三割 四割が「不公平是正が先」」というのが実は日本経済新聞。そして朝日新聞は、これは三月十六日、十七日の調査で、「「政府は説明不足」が八割」、こういうことになっているわけでありますね。  そこで、私がちょっとさっき申しました政治のあり方という問題からしますと、主体である国民が必要だと思うことをきちんとやって、その主体である国民がこういうことをやってほしいということについて費用が要るから、それはどういうふうな形で国民に負担してもらいましょうかという話になるのが、税というものの基本的なあり方ではないのか。国民理解と納得を得ると総理も大臣もおっしゃっている。国民理解と納得を得るということは、税金の仕組みを納得をしてもらうというのは簡単じゃないわけであります。しかし、国民皆さんが、これからこういうところにお金が要るのじゃないでしょうか、そのお金は、天から金が降ってくるわけではありませんから、どうやって皆で負担を考えましょうかという話から入らないと、私は国民理解と納得は得られないのじゃないか、こういう感じがいたしてならないわけであります。  そこで厚生省にお伺いをいたしますけれども、今私が言った、最初の段階では半々という格好で、国は五〇%、地方一〇%、そうしてその他の健保その他国保で四〇%という負担をするとなると、現状に比べてどのくらい財政が膨らむのか、ちょっと答えていただきたいと思います。
  24. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 先生お話をちょっと前にお聞きいたしまして、国の負担割合を五〇に引き上げたケースということで試算をさせていただいたわけでございますが、そういたしますと、国の負担を現行の二〇%から五〇%に引き上げる、そして地方負担は一〇のまま据え置く、こうなりますと、六十三年度の予算ベースといたしまして、国庫負担額は一兆一千億円増加するという見込みになります。
  25. 堀昌雄

    堀委員 大臣、今お聞きになりましたように、今医療保険で問題になっておりますのは何としても老健法でございます。そうしてこの老健法の問題というのは、これはもう確かに我々の寿命が非常に延びてまいりましたから高齢化になる、高齢化になれば疾病率は高くなる。同時に、高くなるだけではなくて、その疾病そのものがなかなか回復しにくいということで、医療費が大変かかることは間違いがございません。いろいろなところにそういうのの資料が出ておるわけでございまして、たしか資料を持ってきたのですけれども、ちょっと今どこに入っているかわからないのですが、老人の一人当たりというのは普通の一般の人の四倍ぐらいかかるのじゃないかという資料があったように思うのですが、ちょっと厚生省、答えてくれませんか。
  26. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 ちょっと手持ちの資料が昭和六十年度の実績になっておるのでございますけれども、老人と老人以外の方の一人当たりの医療費では、トータルいたしますと五・五倍老人がかかる、こういうことになっております。
  27. 堀昌雄

    堀委員 大臣、お聞きのように一般の患者と老人患者で五・五倍違うということは、これはもう保険システムでこの処理をするというのは限界があると思うのです。ただしかし、そうだからといって、健保連の言われるように、これは全部国で持てということも、これまた私はちょっと極端だと、こう考えておりますので、まず最初の段階で厚生省の方に言ったのは、私は五〇というので、国が五〇、地方一〇で、あと四〇という計算をすると、まあ一兆一千億というのがふえるわけでございます。この一兆一千億というのは、現状で少なくとも五兆一千億ぐらいかかっておるもののこの配分になるわけでございまして、外枠は同じなんですけれども、健保連だとかその他の負担の部分を国が肩がわりする、こういう意味でございます。  これを私は、やはり六十五年から今の医療保障をどうするかというのは、今厚生大臣お入りいただきましたので厚生大臣の方からお答えをいただくわけでありますけれども、ここからひとつ長期の展望に立った社会保障プログラム、要するに医療保障は、老健法で国が五〇%持つということで安定的に、非常に長期には別ですが、十年、二十年は私はそれで十分いけるじゃないかと思いますし、あと年金がございますので、ちょっとその年金に触れるわけでございますが、最近非常に問題がございますのは、いろいろなデータを見ておりますと、公的年金が信用ならないというデータが非常にあちこちに出ているわけであります。ひとつ厚生省の方から、今の厚生年金の信頼の問題についてお答えをいただきたいと思います。
  28. 水田努

    ○水田政府委員 長期化し、多様化します老後生活の中で、その生活資金を主として何に依存して設計していくかというのは、かなり個々人によって差もありますし、言うならば意識調査ということになろうかと思います。と同時に、客観的に老後生活の中でどういう資金に依存しているか、両面から見てみる必要があるのではないかと私ども思っておるわけでございます。  まず、私ども厚生省の持っておりますデータによりますと、最近の年金改革を行いますときに、二十一世紀の年金ということで有識者の意識調査をいたしたわけでございますが、これは五十七年に実施をいたしておりますが、その九割の方の御意見としては、公的年金を基礎とし、これに企業年金等の自助努力を組み合わせて老後に備えるべきだというのが、有識者の九割の方の御意見でございました。  また、その翌年の五十八年にやはり厚生省社会保障総合調査報告というもの、これを見ますと、これは五十八年に実施しておりますが、六十年代後半以降で、収入源で一番頼りにするものとして挙げております中で、七割の方が公的年金、こういうことになっております。  また、実態面から見ますと、厚生省が実施いたしております国民生活実態調査の結果によりますと、高齢者世帯の所得の中に占めますところの公的年金の割合は、昭和五十五年四〇・三%から五年後の五十九年五一・四%に、年金に対する依存度が現実の生活の中で高まっております。  一方、民間におきましては、読売新聞が昨年の七月に意識調査をいたしておりまして、「頼りにしている老後の生活資金」というものに対して、「国の年金」と答えた方が五九・五%で第二位で、第一位が、若干上でございますが、「預貯金」と答えた者が五九・八%である、大体このように把握をいたしております。
  29. 堀昌雄

    堀委員 実は、今お話がありましたけれども、これは八八年四月十日の週刊読売に読売新聞社調査研究本部主任研究員の大野さんという方が書かれたものを私読んで、大変的確に述べられておりますのでちょっと読み上げますと、   総理府が六十一年五月に行った「国民生活に関する世論調査」で、「今後してみたいと思う生活」を聞いたところ、最も多かったのは「老後に安心できる生活」で五二%を占めていた。   男女とも年齢層が上がるにつれて、この回答を選んだ者の比率が高くなっているのは当然としても、三十代後半層でさえ、男性の四〇%弱、女性では五〇%以上がこの答えを選択している。 ですから、非常に若い人たちでも老後の生活について非常に大きな関心を持っておられるということがまず第一点で、これでわかります。  その後に   厚生省が発表した昭和六十一年簡易生命表によると、平均寿命は男性の場合、初めて七十五歳代にのせて七十五・二三歳となり、女性もさらに伸びて八十・九三歳となっている。 ということで、かつて我々は、大体人生五十年というのが昭和二十二年の時点でございますから、実は大変な長生きができるようになったわけでございます。そこで実は、   老後生活に対する不安が、老後への関心をさらに高めている一面があることだ。各種の調査をみると、老後に対する不安は、六十一年四月から実施された公的年金制度の抜本改正を契機に、かなり顕著な変化を示している。   例えば経済企画庁が昨年九月に発表した「国民生活選好度調査」をみてみよう。「自分の老後の見通し」の項目では六九・三%もの人が、「暗い」「まあ暗い」と悲観的な見方をしている。前回(五十九年)の五二・八%からみれば、きわめて大幅な上昇であり、年金制度改正をはさんでの、この不安感の増大は注目される。 こういうふうなのがございます。  さらにもう一つ、これは日本生活協同組合連合会が組合員九千六百五人を対象に行った我が家の社会保障調べでこういうことがわかったということで、将来の公的年金の受給が老後生活の支えとして非常に頼れる、また頼れると考えている世帯はわずか七・六%どまり、頼れないが五七・二%と半数以上だ。個人年金については、役に立つ七・九%、少しは役に立つ七〇・三%と、公的年金とは対照的に信頼度は高い、こうなっているわけでございますね。厚生省としては、さっき申し上げたように公的年金を中心にやっているところですから、できるだけ信頼度の高い方の話が出るのですが、私の方はそういうあれで客観的に見ると、公的年金よりもやや私的年金に国民のニーズが移動してきているということが一つはっきりしているわけです。  これがこの次に恐らく変わってくると思うのですが、年金局長さん、次に六十五歳に支給年齢を引き上げる、この間も基礎年金のときに給付が下がったわけですけれども、六十五歳に引き上げるときというのは、年金としては大体いつごろになるのでしょうか。
  30. 水田努

    ○水田政府委員 まず、公的年金の給付水準は私ども引き下げたつもりはないわけでございまして、年金制度の加入期間が延びてきたことに対応して給付水準の合理化をしたつもりでございまして、いまだかつて公的年金は給付をカットしたことはないということだけは、お答えをする前に一応釈明させていただきたいと思います。  次に、六十五歳開始年齢の繰り下げの問題でございますが、公的年金、なかんずく民間サラリーマンの入っております厚生年金は、戦後の第一次ベビーブーム時代に生まれたいわゆる団塊の世代の方々が六十歳に到達します八十年代に、年金受給者が大変急増するわけでございまして、それにかてて加えまして国民の寿命が大変延びてまいっておりまして、七十年代から繰り越してくる老人の上に新規に発生する新規加入の老人が加わるということで、厚生年金にとっては昭和八十年代が、私はよく心臓破りの丘に差しかかる、こういうことを申し上げているわけでございまして、これをどう乗り切るかということがまず最大の課題になっているわけでございます。  この心臓破りの丘を乗り越えるのは、四つしか方法がないと思っているわけでございます。一つは、文字どおり給付水準を切り下げるというやり方があろうかと思います。第二番目には、現在から積立金をふやして、後代の負担の方に御迷惑をかけないように保険料率をかなり思い切って引き上げて準備をしておくというやり方と、三番目が、いわゆる就業構造が今後変わっていくわけでございますので、雇用状況の変化に応じた、いわゆるリタイア年齢が延びていくことに伴って開始年齢を繰り下げるという問題、四番目は、今申し上げました一から三までのコンビネーションを考える、この四つの方法があり得ようかと思います。  いずれにしましても、私ども、これは国民の皆様に率直に現状を申し上げて、選択をしていただく問題であろうかと思っておりますが、この問題をどう処理するかということにつきましては、現在年金審議会におきまして前広に御検討願っているところでございます。
  31. 堀昌雄

    堀委員 今の年金局長答弁によりましても、やがて保険給付率の切り下げか、保険料率を引き上げるか、開始年齢の引き下げ、いずれにしても公的年金に入っている人たちにとって望ましい選択ではないわけでございますね。これは、老齢化がふえるのですから必然的にやむを得ないことでございますから、それはそのいずれかの選択ということになるんでしょうが、そのときに一体国との関係がどうなるのかという問題が、私はこれから今の一般の国民の中に非常に大きな関心があるだろう、こう思うのでございます。  そうすると、要するに公的年金オンリーでやるというよりも、やはり今世界ではかなり広い範囲で実は私的年金にシフトしつつある。これは西欧先進諸国、皆いずれも今そういう傾向になってきておるわけでございます。時間を節約するために私の方で少し申し上げますと、これは、きょうはやはり税に関係をしますが、   欧米諸国は、税制による個人年金の育成には、いずれも力を入れている。   例えばカナダでは、個人終身年金を買う場合、五千五百カナダドルを限度に、年間所得の二〇%まで控除されている。   アメリカでは、IRA(個人退職勘定)と呼ばれる有名な制度がある。本人分として年間二千ドル、配偶者分で二百五十ドルまで所得から控除されるという優遇策だ。共働き夫婦には一人二千ドルずつ、計四千ドルが控除され、非課税となる。   イギリスも手厚い。終身年金を買う場合、年間所得の一七・五%まで控除される仕組みだ。 そしてこの控除限度ワクは、六年間通算することができる。保険料を納める期間が短い高齢者に対しては、高額のお金を集中して支払うことができるように、この限度ワクが年間所得の二六・五%まで拡大されるといった具合に、まさに至れり尽くせりである。   財形制度を生み出した西ドイツも、個人年金税制には十分な配慮をしている。生命保険料と同ワクで、単身者六千五百十マルク、既婚者一万三千二十マルクまで控除できる。既婚者の場合、その優遇ワクは、わが国のほぼ十倍に相当する。   これら諸国と比較して、わが国の場合を見てみよう。五十九年になって、個人年金保険料控除が創設されたものの、その控除ワクは、わずか五千円にすぎない。一般の生命保険料控除を加えたところで、年間五万五千円にとどまる。  こういうことで、今欧州、アメリカ、カナダを含めて非常に個人年金にフェーバーを与えて、自助努力によってひとつ老後を考えてくださいという方向が実は開かれておるわけであります。しかし、やはりこの年金、社会保障という問題には、シビルミニマム、ナショナルミニマムを確保するということは、私たちは、日本の憲法が保障しておることでありますので、これはやはりきちっとナショナルミニマムは確保していきたい。ナショナルミニマムを確保した以上は、さらに自助努力によってそういう道を開くというのが、大変日本は貯蓄率が高いわけでありますから、それがそういう方向に自分の人生の設計で行われることになることは大変望ましい、こう考えておるわけでございます。  大蔵省主税局にちょっとこのことについて調べていただくようにお願いしておきましたが、大体今私が時間の節約でさらっと読みましたのと違いがないかどうか、主税局長答弁していただけますか。
  32. 水野勝

    ○水野政府委員 諸外国におきますところの個人年金の扱い、ただいま委員指摘の外国の諸制度、おおむね私どももそのようなものとお聞きしているところでございます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 そこで、個人の年金をここまでにいたしまして、厚生大臣にお伺いをいたしたいのは、実は七十年に年金一元化というのが大体厚生省の御方針のように承っておるのでありますけれども、私はさっきからお話をしておるように、この六十五年というところに今の七十年の年金一元化というのは前倒しができないだろうか。そういたしますと、実はちょうど国鉄共済年金の問題も、今の年金一元化という大きなスケールの中で無理なく処理ができていくようになるのではないか。六十五年から国鉄共済年金三千億、これは当分ずっと二十年くらい続くわけでございますので、ここでやはり部分的な細かい操作では年間三千億というのは大変な金額でございますから、そこで、この問題を含めてひとつ閣僚会議、閣僚懇談会でございますけれども、持たれているようでございますが、私の希望は、今の一元化を七十年から六十五年に五年間前倒ししていただいて、ここでひとつ年金、医療保障、要するに社会保障関係を一遍全部をシステムとして構築をするということにしていただけば、今の社会保障、望ましいナショナルミニマムを保障した医療保障、所得保障についての日本の今後の中期的な展望の上に立って、一体財源は本当は幾ら要るのだろうかという問題がこれから絵がかけるのではないだろうか。  この前、厚生省大蔵省で試算をしていただきました。しかし、実際にはこの試算は、現在のシステムを延ばす形になっているわけでございます。人間の数、老齢化の数はちゃんとここにベースに入っているのでございますが、問題は行き詰まる老健法の問題あるいは国鉄共済年金の三千億の問題、こういう問題を含めて全体をシステム的に構築をするとすると、かなりまだ負担はあの線よりはふえてくるということが間違いないと思います。そういう予想される六十五年から七十年、七十五年に対しての今の社会保障の負担分、これには私は、老人福祉の措置費だけはこの中にひとつ当然入っていいのじゃないかと思いますから、そういう意味では、医療、年金、老人福祉のトータルとしての社会保障の構図を国民の前に提示しながら、皆さんの将来についてナショナルミニマムは医療においても年金においても確保いたします、そうしてそれを補完する分についてはこういう制度で税の措置を講じて、ひとつ皆さんの自助努力がより行いやすいような格好で将来像を明るいものにしたいと思います、そういう全体像についてどう考えますかという問題が先に出れば、私は、いろいろな問題が国民の中でコンセンサスが得られる道が非常に広がるのではないか、こういう感じがしておるわけであります。  厚生大臣、いかがでございましょうか、年金の七十年一元化を六十五年に前倒しをするという、これは私の個人的提案でございますが、それについての御感想をひとつ承りたいと思います。
  34. 水田努

    ○水田政府委員 七十年に公的年金の一元化を完了させるということは、政府の方針として既に決まっているところでございますが、御案内のとおり一階部分については、給付も負担も基礎年金の導入ということで私どもは完了したと見ております。二階部分につきましては、給付の面につきましては共済組合の方が厚生年金に整合性を将来に向かって合わしていただいたということで、基本的な解決を見ていると思っております。残されました課題は負担の不均衡をどのように是正していくか、この問題が今後残された七十年までの課題である、私どもこのように受けとめております。  私ども、七十年まで手をこまねいてこの問題に手をつけないというわけにはいかないということで、実は昨年の九月に公的年金の閣僚会議を開いていただきまして、七十年に公的年金の一元化を完了させるという政府の方針を関係閣僚相互間できっちりと確認をしていただいたのが第一点でございます。  それから第二点は、その中間地点に、六十四年に被用者各制度が年金の再計算期を迎えますので、その再計算期に七十年の一元化に向けて負担の不均衡の是正について、いわゆる私どもの言葉によりますと地ならしできるものは極力地ならしをしようという申し合わせをしていただきまして、公的年金閣僚懇の下部機構でございますところの関係各省の局長で構成されております調整連絡会議におきまして、既に作業を鋭意検討をいたしておるわけでございますので、ある意味におきましては、先生のずばり御指摘のとおりの前倒しということではないかもしれませんが、負担の不均衡を是正するという観点で被用者年金制度を持っている各制度が相集まって、寄り集まりまして、今知恵を絞っている最中である、このようにお受けとめ願いたいと思います。
  35. 堀昌雄

    堀委員 今の方向、私も大蔵委員会にいるわけですから、社会保障のことをそう常につまびらかにしているわけではありませんのですけれども、要するに私は、この前六十年の二月の予算委員会で、実は国民年金について非常に問題があるという指摘をしておるわけであります。  それはどういうことかといいますと、要するに今の基礎年金の部分というのは被用者年金は皆五万円きちんとできるのでありますが、二階建ちがある。ところが、国民年金だけは基礎年金だけなんです。実は、二階建ち部分がないわけです。そうして、どうしてないんですかと私は増岡厚生大臣に伺ったのです。そうしたら、実は定額で十分な費用がないので、こういうお話で、どうして定額ですかと言ったら所得が正確につかめないから、こういうお話でした。私は、そのときは今の問題は二の次で、全体の税制の話をしておりましたからそこまでにしたのですけれども、要するに憲法十四条は法のもとに平等をうたっておるのでありますから、被用者の皆さんにはそれなりのプラスがあるのに国民年金対象者だけは、国が基礎年金の三分の一を持ってあとの三分の二が、今の定額の自分たちの払ったのが基礎年金で二階建ちはない、これは私は憲法十四条に違反する、こう思っているわけでありまして、そのためにはやはりこの基礎年金だけは私はナショナルミニマムとして国で責任を持つべきだということを、実は六十年二月の予算委員会でも問題を提起しているわけでありますし、この方向は我が党としての社会保障、年金対策に対する基本的な認識でございます。  そこで私は、今の六十五年の改革の方向に向けて国が負担しなければできない問題がございますから、そういう国が基礎年金の部分については、国民年金については負担をいたしましょう、そのかわり皆さんもともかくも所得を正確に把握をして、その把握されたのでひとつ年金を払っていただきたい、報酬比例部分にして、それは二階建ちにいたしましょう、皆さんの掛けられたものは二階建ちにいたしましょう、そうすれば被用者とこちらとがバランスがとれる。被用者の方は、全体として雇い主の側の費用が入っているけれども国民年金は全体の三分の一というのは、いかようにも私は国民年金対象者の老後に対しての適切な処置を欠いている、こう考えるわけでございます。  ですから、要するに国民健康保険は御承知のように逓増制になっているのに、どうして年金はそうならなかったのか、いろいろな経過があるのでありましょうけれども、私はそういう新しいシステムを導入することによって所得が正確に把握されるようなことが仮に行われるようになれば、その時点であわせて基礎年金をひとつナショナルミニマムとして処理をする、そうやった形での今の社会保障費用というものは、六十五年以降にはどういう形になるかということをひとつ政府として御検討をいただきたい。それはまさに私は、現在の皆さんがいろいろ重要視しておられる税制改革について国民理解と納得が得られる最も正しい選択ではないだろうか、こう考えておるわけでございます。厚生大臣、そういう意味で、さっき年金局長答弁をいただきましたが、ちょっとあわせて医療保障の問題も、六十五年には大体改革を基本的になさるというふうにお考えかどうかをお答えいただきたいのでございます。
  36. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘のように医療制度につきましては、六十五年度までに老人保健それから国保の改革を予定をいたしておるところでございます。
  37. 堀昌雄

    堀委員 厚生大臣、結構でございます。どうもありがとうございました。  要するに、今厚生大臣お答えのように、医療保障の方は六十五年決まっておるようでございます。年金の方はさっきのような経過でございますが、中身としてはそういう点ではかなり問題が、国庫負担がどうなるかというところだけが、これは厚生省だけではどうにもならぬことでございまして、どうしてもこちらの財政の側で判断しなければいかぬことだ、こう私は考えておりますので、今の新しい制度に所得が明確化されるような制度が導入されたとするならば、それに基づいて二階建ちの方に、皆さんは年金の負担を階段的に所得に応じて払ってください、それは報酬比例部分と同じような格好の処理にして、基礎年金部分の今三分の二に当たる部分を国で負担をするということにいたしますと、今の年金と医療との将来像、そうして今盛んに出ておりますところの公的年金に対する不安の問題等もかなり改善されるのではないか。ですから、片方で公的年金の国としての責務を果たしながら、片方では、私はちょっと申し上げて主税局長も大体各国そうなっているということでございますが、減税というのは何も所得減税だけやればいいという話ではないと私は思うのでございまして、今のそういう各国が私的年金に対して配慮しておることも、当然税の抜本改革の中の重要な一つのテーマとして取り上げられてしかるべきだと思うのでございますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変に時間をかけて、基礎のところからずっとお話をいただいておりますものですから、御説に大変説得力がありまして、謹んで注意深く承っておるわけでございます。  今のたまたま途中でのお尋ねのように思うのでございますが、個人年金の問題でございます。保険料、生命保険分とあと五千円でございますから五万五千円でございますが、当然今の状況を、堀委員の言っておられますような全体構想の中で、先まで考えて御答弁を申し上げるような環境になっていないと思うのでございますが、一応今役所として申し上げようとしておりますことは、個人年金というのは家計上余裕のある者ほど多額に行い得る、それはそうでございましょう。そういう意味では任意的なものであるし、それから中途解約をすれば元利金を受けてこれは一般的な貯蓄みたいなものになる、そういう事情がありますから、個人年金の保険料控除の控除額の引き上げについては負担の公平とかあるいは課税の公平でございましょうか、そういう観点からいえば、これは慎重であるべきであるというのが用意されたお答えになっておる。しかし、今ずっとお述べになられましたこと、これは一つの構想をずっと次々お述べになっておられるわけなのでございますから、そういう全体の問題の一環として個人年金について税制がどういう恩典を与えるべきかというのは、将来の展望がはっきり政府としても決まりますと、またその展望の上で考えるべき部分があるのではないかと思いながら、お話を伺っております。
  39. 堀昌雄

    堀委員 簡易保険局次長はいますね。さっきは貯金の問題をやりましたけれども、実はあなたのところがことしの二月に郵便年金か何かに関する調査をやっていますね。ちょっとその調査結果を報告してください。
  40. 吉高廣邦

    ○吉高説明員 お話にございました個人年金の市場調査ということで、昨年の九月に全国六千世帯を対象に調査を実施したところでございます。その目的は、老後生活に対する意識あるいは個人年金の加入状況あるいは加入意向等々について調査をしたわけでございますが、個人年金の世帯加入率は、その調査によりますと一三・五%、三年前の調査に比べまして四・六ポイントくらい伸びております。一方、個人年金に対する加入意向、「近いうちに加入したい」あるいは「余裕ができたら加入したい」といった意向は、それぞれ四・二%あるいは四八・四%、合わせて約五割を超えるそういう要望が出されておるところでございます。
  41. 堀昌雄

    堀委員 実は、この個人年金はいいと思うけれども、現状はまだ余裕がない人の方が多いのですね。そこまで手が届かないというのが現状ですけれども、私は今の日本の個人貯蓄の増加状況を見ておりますと、日本経済全体が少し大きくなりつつございますから、やがてはそういう個人年金を期待する者の人数は多いのですが、しかし払い得ないということなんですから、これは、今大臣おっしゃったように、今私はかなり長期の問題のシステム論をやっておりますので、そこでやはり今の公的年金だけで問題を処理するという発想は将来問題があるだろう、要するに、二階建てにしろ何にしろ、ナショナルミニマムのところだけは国が責任を持ちましょう、あと皆さん自助努力で、どうしてもそういう形の方向に移行せざるを得ない将来像があるという私の認識なものですから、そこのところを調整しながら全体像を考えているということなのでございます。  ですから、そういう意味で、きょうここで社会保障の問題をやらせていただいたのは、この一月に税の問題について入り口と出口を決めないでいただきたいという話をしておりますが、どうも少し政府税調もそれから自民党税調も、あわせて政府そのものも党もということかもしれませんが、少し急いでおられるのではないか。金丸さんとこの間話しておりましたときに、金丸さんが、堀君、大事なことは急がば回れと昔から言うからなと言われるので、私は、いや、金丸さん、あなたの意見と私は全く同感です、要するに国民理解と納得ができない限り、新しい税制をやることは事実上不可能だと私は思います。  それでは、国民理解と納得というのはどうやったらわかるか。私は、やはりこの大蔵委員会の中で与野党の皆さんがそういう問題について共通認識が持てるようになる、賛成、反対は党の方針がありますから別でありますけれども、ある一定の共通認識を持てるような順序と手立てとそのバックグラウンドが整備をされない限り、ともかく臨時国会を七月に召集してなんておっしゃったら、私は絶対反対です。そんなことでやるようだったら、私はそういう税制改革には先頭に立って反対します。そういう決意です。ですから、そういう意味で、この問題はどうかひとつ自民党の皆さんも、それから政府の皆さんも、慎重の上にも慎重に。そうして、今のように国民が主体だ、こう申し上げておりますのは、主体たる国民にとって何が一番将来にとって大切かという問題を浮き彫りに国民の前につくり出して、それは必然的にこういう経過を通ってこういう形になります、それについて皆さんその選択はどうなさいますかという形をやはり私は踏んでいただかなければ、そういう過程が私は国民理解と納得という問題じゃないだろうか、実はこういうふうな認識でございます。  ともかくも私は、六十五年にはいろいろな問題が起こってきますから、その六十五年に対処するためには今から準備をしていかなければならぬことは、財政投融資計画でもそうでありますが、全体の日本財政についての見通しをやはり今日考える、その日本財政の見通しというのは、歳入歳出全体を通じて将来にたえ得るようなシステムを構築する、こういうことになるべきだ、こう考えておりますので、それについての大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かなり長時間にわたりまして、基本的な考え方から御所信を拝聴いたしまして、私としては、率直に申しまして大変啓発を受けることが多うございました。  ただいま、いろいろお尋ねを交えながらお述べになられましたことから明らかになっておりますように、将来における政府の医療政策あるいは年金の問題、老人の問題、福祉一般について将来にいろいろ問題が多い、それとの関連で保険料負担なりあるいは国の負担というものをやはり考えていく、そういう観点でなければならないということを結局仰せられたのだと思います。それに対しまして政府側としては、例えば医療につきまして六十五年あるいは年金につきまして七十年といったような計画を持ちつつ、しかし年金の方は、先ほども政府委員が申し上げましたように、六十四年の再計算を機会にひとつなるべく詰めていこう、こういう考えも政府は持っておるということを申し上げたところでございますし、医療の方は、六十五年でございますか、厚生大臣がいろいろお考えということをおっしゃいました。が、いずれの場合でも、いわば将来に向かっての施策が今の段階ではきちっと最終的に決められていない、いろいろ計画、プログラムはあるわけでございますけれども、最終的に決められていないというのが現状でございます。それに対して政府は、いわゆる二十一世紀の問題としてこの税制改正の問題を、そればかりが目的ではございませんけれども、御提案をしようと今いろいろ準備をしておる。  それで、堀委員の言われますことは、その片方の問題をもう少し明確にして、それが国民にわかった上で、したがって将来の負担はと、こうでなければならないだろうということをおっしゃっておられます。それはまさにおっしゃることは、筋はそのとおりであると私は思っておりますけれども、ただ、いろいろな事情から一足飛びにそこまで、最終的にそこまで今プログラムをつくり得ないという段階であり、他方で、過去からのシャウプ税制というものを改めるべき時期がほかの事情からも来ておるについて、将来を展望して考えたいということを申し上げておる。政府としては、結局、二十一世紀に近づきますに従って日本の社会が老齢化をして、そしてそういう状況において社会の共通な灯をともしております意味は、もうとりもなおさず、堀委員の言われましたような幾つかの要素を頭に置いて申し上げておることは明らかなのでございますが、それを今から国民に広く薄く負担していただけるような制度を考えたい、こう申し上げておるわけでございます。  ですから、政府が考えておりますことは、堀委員がおっしゃっておられることと方向できっとそんなに変わっていない、ただ、もっと明確に問題の所在を言わなければ国民がなかなか理解できないではないか、こうおっしゃっていらっしゃるのだというふうに私は承りました。そういう努力は、これからも十分いたさなければならないと存じております。  いろいろ示唆の多いお話を伺いまして、大変啓発を受けました。
  43. 堀昌雄

    堀委員 そこで、残り時間があと二十分ぐらいでございますので、最後に、懸案の国債特別会計の問題をひとつ取り上げたいと思います。  厚生省その他関係の各省、ありがとうございました。郵政省も御苦労さまでした。  実は私、この問題を五十六年二月に提起をいたしまして、その後大蔵省では、実は大変精力的にこの構想の実現のために努力をしていただいたのでありますけれども、八四年十一月に、私ちょうどボストンに行っておりましたときに、当時の先任次長でございました平澤さんから電話がございまして、いろいろと努力をしてやってみたけれども、法制局は、どうしても財政法にさわらないと今のこの制度は難しいということなので、財政法を変えるのにはちょっと時間がかかるので、短期国債上——この中では、私は短期国債の問題を含めて提案をいたしておりますので、その短期国債の部分だけ法制化をしたいという御連絡がありましたので、それはもう結構です、ぜひそうしてくださいというので、実は現在短期国債ができておるわけでございます。  この短期国債は、私はこの委員会の中で、もうはっきりとアメリカのTBということを例示をいたしまして申しておるわけでございまして、   もう一つは、限度は設けておかなければなりませんけれども、ここでひとつ国債証券、短期国債です。これは公募によるところの短期国債の発行、言うなればアメリカのTBのようなものをこの国債特別会計で発行させる。いま特別会計は、食糧特別会計も外為特別会計資金の必要があるときは証券が発行できる、それは一年以内、こういうふうに法律に書いてある。だから国債特別会計も一年以内と限度を限って短期国債の発行ができる。一年以内ということは年度とは別なんですから。発行したところから一年ということですからね。ただし、一年は長過ぎるから、そこで六カ月程度の国債証券を発行させて、これは市中公募で、要するにアメリカのTBのようなかっこうにしてしまう。 そういうアメリカのTBのようなものを短期国債として発行するということでお願いをしたのでありますが、これが実は源泉徴収がついたものですからアメリカから大変問題が出ました。私八六年ですか、アメリカでベーカー長官の後でマルフォードに会いましたときに彼が、堀さん、どうしてこの短期国債に源泉徴収がついておるのですか、こういう話でございまして、アメリカも西ドイツも既に源泉徴収を外しておるわけでございます。  私は、五十六年の二月にこの短期国債のボールを投げ、五十六年の五月に銀行法改正の中の附帯決議でCPの法制化の整備を急いでやってください、要するに、日本に短期金融市場を早くつくらないとまずいという考えから、実は五十六年にボールを二つ投げたわけでございます。ですから、今の短期国債の方は八五年に法律ができておりますが、実は今日依然として源泉徴収がある。これはもう日本銀行にブックエントリーしてございますし、証券会社の方も、主税の皆さんに説明していることで、証券会社から先がわからぬと言われますから、それはそんなことはない、要するに個人に売ったような場合には、公募資格を取り消しますよということを理財局ではちゃんと証券会社に言ってありますから、今国債の公募に参加できないようなことではこの人は仕事にならないわけですが、そんなことは起きないと言っていられるのですが、実はそういうことになっております。  これは今国際金融経済研究所というのをつくるのも、それによって超党派で皆さんで御一緒にやってひとつ国会で物を決めようという話になって今やっておるわけでございますが、そういう経過を通じて、今の国債特別会計というのがまだできておりません。どこにネックがあるのか、ひとつ主計局の方で答えてください。
  44. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 ただいま御指摘のように、私ども実はずっと研究をしておりまして、相当な議論を重ねたわけでございます。その結果が昭和六十年度、一九八五年でございますか、例の短期国債の発行と年度越しの借換国債の発行ということになったわけでございます。私も当時、いわばその議論の一員として参画しておりました。  基本的な一番の問題は、財政法の四条が非募債主義、例外としては建設国債という、いわば非募債主義を貫いておりますものですから、その関係で、国債の発行、償還を一元的にある会計でやるということになりますと、恒常的に国債発行を前提にするということになるので、その財政法の基本的な非募債主義との関係をどう考えるかというのが基本問題としてまずあったわけでございます。  そのほか発行面で申しますと、この資金構想によりますと、国債の発行は今度は国債特会で一元的にやるということになりますと国債整理基金特会法の基本的仕組みを変えなければならぬという、特会法の大改正になるという問題が一つ。それから一般会計は、その場合には国債特会からの繰り入れないしは借り入れということになるわけでございますが、そういたしますと、これは一般会計がいわば国債を出すという前提で仕組まれているということでございますので、今申しました財政法第四条の問題は出てくるであろう。それから資金繰り資金もその場合には、構想いかんによりますけれども国債特会で発行するということになりますと、一般会計が発行ということを前提で考えておりますから、今度は七条の改正の問題になるだろうというのがいわば発行面の問題としてはあったわけでございます。  それから償還面について申し上げますと、今の減債制度というのが一般会計から特会へいろいろな財源を繰り入れる。これは、例の前年度期首の一・六%とか二分の一繰り入れとか必要に応じて予算繰り入れと、三本立てで構成されているわけでございますが、そういうことでその制度が基本的に一般会計の繰り入れを前提に考えているところが、片方で発行、償還を一元的にやるというそこの関係、減債制度との関係をどう仕組むかという問題がございます。これは国債整理基金特会法の二条とか二条ノ二とか二条ノ三の問題になりますけれども、そういう償還面の問題があった。  それからもう一つは、現行の財政法の規定では償還計画書というのを出すことになっておりまして、この償還計画書というのが、国債特会で自由に発行、償還をやるということになると、一体どういうぐあいにつくるのかなという技術的な問題が非常にネックとなってあったのでございます。それは財政法四条の二項というところに償還計画を出せと書いてありますので、その関係財政法の改正が要るのかなという議論があった。  そういういろいろ、いわば財政法の四条という財政制度の基幹になっているような法律にどうしてもさわらなければならぬという問題があったというのが基本であろうかと思います。
  45. 堀昌雄

    堀委員 私は、六十一年十二月十二日に大蔵大臣質問させていただいた中で、   そこで、これから本論に入るのでありますが、宮澤大臣が総務会長でいらしたころの御論議をちょっと振り返ってみたわけでございます。そうしますと、これがまた、最初に申し上げましたけれども宮澤さんと私の考えの一致しているところが実にたくさんございます。古いところで、六十一年三月二十四日の「当面の政策について」ということで、「予算成立後サミットまでの間に、左の諸点についてご検討願いたく提言致します。」こう書いていらしていろいろ書いてございますが、この中の二番目に、「今日のような低金利の時代には既発国債をもっと低利なものに借換えれば大きな国益になるはずであるが、このような発想が浮かばないのは、現在の財政制度が大福帖式で、金利の観念がないからである(関係法令はほとんど終戦直後のもの)。将来制度を改め国債の発行や管理を景気動向、金利、税収などを勘案して経済法則に則って弾力的に行なうこととすれば金利支払などかなりの節約が可能になる。」こういうふうに実はお述べになっていらっしゃる。 ということで、おっしゃっているのを既に引用しておるわけでございますが、さっき財投の問題でも触れましたけれども、やはり大臣指摘のように、今の国の会計は複式簿記になってないものですから、大福帳方式なものですから、そういうところで非常にリジッドな形がそのまま残っている。少なくとも近代的な会計原則に立てば、複式簿記などということは実は当然の会計原則だと思うのでありますから、やはり国がそういうことについても目を開きながらこの問題の処理をすべきではないのか。  実は、これはきょう総理と、あと一時間十八分ちょうだいしている中で国鉄清算事業団の問題をやらせていただきますが、この中でも、十三兆八千億というのは最終的には国の負担になるであろうということで、十九兆九千億でございましたか、これが実は七%の金利を払っておる、こういうことでございます。私は、少なくともこの十三兆八千億のうちで金利の高い部分を、約十兆余りになりましたか計算をしておりますが、午後に問題を提起させていただきますが、清算事業団で政府保証債が発行できますから、政府保証債を発行してその資金を調達して、それで繰り上げ償還をしてやりますと、大体現在清算事業団利子払いが九千億円ございますが、そのうち三千億円が今の五%の金利と七%から最高八%、九%近いものがある、そういうものを借りかえ償還をすれば、実は年間三千億清算事業団は助かるわけであります。そこが助かるかわりに、民間もありましょうし、資金運用部もせっかくの高利回りのものが減りますから、総体的にはその分は何か損したような形になるかもわかりませんが、しかし私は、清算事業団というものを何だか廃棄物処理場みたいなことにして、ともかく日の当たるところだけにはしっかり手当てをしておるという今の政府のやり方には大変不満がございます。  これの効率的運用の問題を竹下総理のときに提案させていただくのでありますけれども、どっちにしてもそういうことがもっと積極的に当たり前のことだというふうにならない限り、私は国民は大変大きな負担を背負わされている、こういう認識でございますので、どうしても今の財政法を改めて結構でございます。財政法は当委員会にかかるわけでありますから、当委員会の中で私どもは、そういう国民の負担を減らす方向について財政法を改めるのは当然のことだしいたしますので、ぜひひとつ大蔵大臣に御配慮をいただいて、大蔵大臣の指導のもとに大蔵省事務当局も一丸となって、財政法改正のために取り組んでいただくようにお願いをしたいと思うのでありますが、大臣いかがでございましょうか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点も従来から堀委員が御指摘になっておられることで、基本的なお考えには私は共感を覚える点が多いわけでございます。  一般に政府が仕事をいたしますときに、国民の税金あるいは料金等々、いわば金利のつかない金で仕事をするというのが基本の部分なものでございますから、その金利という観念が、全くこの点は民間の企業と違った立場に立っておるということが私は根本にあるのだろうと思います。しかし、実際にはこういう世の中になりまして、国が現実に借金をしておるということになっておるのでございますから、金利ということに無関心であってはならないのだと思いますが、なかなかそこのところの全体の仕組みが、まさに会計の制度からそうなっておらないというところに問題があろうと思います。御指摘のとおりだと思います。  そこで、今度財政法にいろいろな問題がある。従来からの御指摘の問題は、先ほど銀行局長も申し上げておりましたように、借換債のところで事前発行あるいは繰り延べ発行等々の弾力性を持たしていただきましたが、ここのところは、結局今の財政法というものが戦争中のこともあり御承知のような経緯で、建設国債はともかく、借金というのはしてはいかぬものだという基本に立っておると思うのでございます。  そういうことですべてのことが動いておりますから、多分借換債のときにはこれは法制局といろいろな話があったのだと思いますが、これは借金をふやすものではない、ふやすのじゃないのだということで、きっとああいう読み方ができるということになったのだと思いますが、堀委員の言われるように物を考えていきますと、借金はしてはならないという原則の法律から、いかにして借金を経済的にやるかということへ、ふっと考えをある程度シフトさせていくという部分がどうしても私は出てくるのだと思います。それにつきまして、当委員会におかれましては委員各位がそういうことについての御造詣が深うございますので、そのことの意味なり国民経済あるいは国民福祉に与える寄与なりをよく御存じでございますが、ふと問題を、今度借金をしてもいいようになったのだというふうに財政法を変えていくというふうな大変に短絡的な理解というのは、また世の中で一方でありそうでございますので、その辺のところがさてどういうものだろうか。大蔵省という役所は、そういう点は実は一番保守的に考える役所でございますから、そういったところで従来この問題が基本的になかなか解決していかないのだと思います。  しかし、他方で、幸いにして昭和六十五年度に特例公債を脱却できるといたしますと、いわばそういう歳入補てんの意味での公債ということは一遍そこで離れられるかもしれない。建設公債をどうするかということはまた別の議論があろうと思いますので、おっしゃいますような問題はやはり常に私ども考えていかなければならないし、また、特例公債を脱却しますような時期にもう一度考えてみるべき問題であろうかと思います。
  47. 堀昌雄

    堀委員 これも大臣、六十五年というのが特例公債をやめる一つの目途になっておるわけでありますし、今私は日本経済成長の様子を見ますと、六十三年度だけでなく六十四年度もまだかなり成長は可能だ、こう見ておりますから、そういうあれをやるためには今日から少し準備にかかっていただいて、来年の六十四年に、これらの法律改正が処理できますと、もう大臣もお触れになっておりますし私なんかもどうして——財テクといって、民間企業は最も効率よくいろいろやっている。国はそんなことをやる必要はありませんが、五十六年にも言っていますけれども、高い金利のときにはひとつ短期の国債を発行して泳いでいて、金利が下がってきたらそこで乗りかえる。自治体はそれをやっているのですから、自治体は今年間短期の資金で回しておいて、そうして四月から五月にかけて資金運用部から長期資金に乗りかえている。だから自治体がやっていて国は全然受け身でできないなどという話は全く、優秀な大蔵官僚の皆さんが勇気を持ってもらわなければいけないのじゃないか。残っているのは勇気だけだと私は思うのです。  どうかひとつ、そういう意味国民のためになる、負担を軽減するための問題提起をしておるわけでございますので、大臣の一層の御協力をお願いして、午前中の質問を終わらせていただきます。  どうも長時間ありがとうございました。
  48. 越智通雄

    越智委員長 次に、日笠勝之君。
  49. 日笠勝之

    ○日笠委員 堀先生が年金、医療そしてまた財政を、野球でいえば百四十キロから百五十キロのスピードボールを投げられましたので、私はソフトボールぐらいのつもりでひとつ質問をしたいと思うわけでございます。  私の場合は一部と二部と分かれておりまして、午前中十二時までとそれから本会議終わってからの二部と分断作戦に出られまして分かれておりますが、第一部の方は雑件と申しましょうか、一般質問の機会も余りございませんので、そういう観点から何点かお伺いをしたいと思います。  まず、睡眠預金という言葉がございます。春眠暁を覚えずではございませんが、睡眠預金というのは、定義というのがあるようでないようでございますが、いわゆる何年間も塩漬けになっているといいましょうか、一たん預け入れはしたけれども何年間かはずっと取引がない、出し入れがない、こういうものを睡眠預金と申し上げるそうでございます。この睡眠預金の取り扱いについてはどのようになっておりましょうか、まずお伺いをしたいと思います。
  50. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 お答えいたします。  金融機関の睡眠預金につきましては、現在全銀協の自主基準というのがございます。これは六十年十二月に出ております。「睡眠預金に係る預金者に対する通知および利益金処理等の取扱いについて」というふうになっております。中身の主なものは、一つが、先ほど委員が言っておられました睡眠預金の定義がございまして、あとそれを処理する場合の預金者に対する通知、それから利益金の処理に当たってどのような処理をするかという三つの内容になっておるわけでございます。
  51. 日笠勝之

    ○日笠委員 その全銀協の自主基準によりますと、「最終取引日以降遅くとも十年を経過した残高一万円以上の睡眠預金については、その経過した日から六か月以内に、各預金者の届出住所宛に郵送による通知を行う」、そして通知を行いまして連絡等がない場合は、いわゆる雑益ということで利益金の処理をする、このようになっておりますが、これでよろしいのでしょうか。
  52. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 そのとおりでございます。
  53. 日笠勝之

    ○日笠委員 委員長、ここでちょっと資料を配付することをお許しをいただきたいと思います。
  54. 越智通雄

    越智委員長 はい。
  55. 日笠勝之

    ○日笠委員 お手元に届きました資料でございますが、これは都銀十二行、二回にわたって調べてもらったものでございます。これによりますと、例えばこれは銀行名を固有名詞で出しましていろいろと御迷惑をかけてはいけませんので、武士の情けで一応AからLまでにいたしました。A銀行は預金者への通知はしない、こうなっております。おまけに利益金対象となる睡眠年数は三年だ。千円未満を三年で利益金に計上する。これはちょっとコメントが足りませんが、千円以上はいつまでも利益金に計上しないということだそうでございます。I銀行、一万円以上に通知はされます。しかし、千円未満のものは五年で利益金に計上、千円以上は十年という、自主基準どおりでございます。これは実際二度にわたって調べたものでございますが、こういうことを銀行局として、自主基準の後、実際にそのとおりやっているかどうかということを調査されたことはございますか。
  56. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この問題につきましては、これまでも二、三回委員会取り上げられた経緯がございますので、この中身につきましては、委員から御質問があるということで我が方でも調査をいたしております。
  57. 日笠勝之

    ○日笠委員 調査結果はいかがでございましたか。都銀で結構です、十二行。
  58. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員からいただきました資料のうち、具体的な名前は申し上げられないわけでございますが、各行調べましたところによりますと、A行のように三年、千円未満という処理をしているところはございません。したがって、このA行が先生の御質問に対してなぜこのように答えたか、その辺は我々も理解できないところでございます。
  59. 日笠勝之

    ○日笠委員 必要最小限度のことしかおっしゃらないので、要は、二回にわたって調べまして、相手がだれかという名前まで全部わかっております。こうなりますと、もしこのとおりの、こちらの調べた結果のとおりの事実であるとするならば、三年でたとえ千円未満であろうとも雑益として計上することは、経理上何ら問題ございませんですか。
  60. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御存じのように、このような金銭債権につきましては、商事の場合には五年の時効になっております。それから民法上は十年ということになっております。したがって、商事の五年から見ましても三年でこれを利益計上するということは、経理処理として問題があろうかと存じます。
  61. 日笠勝之

    ○日笠委員 そのとおりでございまして、いわゆる粉飾決算、利益金でないものを利益に計上したということに相なるわけでございます。これが都銀の十二行のうちの二行が千円未満で五年、千円未満で三年、こういうことでございます。おまけに、公表の必要なしという銀行もございます。返答なしという銀行もございます。こうなってきますと、何か後ろめたいことをしているんではないか、このようにげすの勘ぐりで思うわけでございます。  そこでお伺いいたしますが、この睡眠預金で雑益に計上されておる金額はここ数年間、各年度大体どのぐらいあると推計されておられますか。
  62. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 これにつきましてはすべて現在調べているわけでございませんが、委員からのお話もございましたので電話等で調べた計数がございます。ただし、全部にわたってではございませんが、おおよその感じで申しますと、年によって違いますが、数十億から百億の単位でございます。
  63. 日笠勝之

    ○日笠委員 数十億から百億と五十億円ぐらいの差があるので、さすがは銀行局で、単位が五十億ぐらいの誤差があっても別に意識は余りないようでございます。  これは郵貯はどうなっておりますか。きょうは郵政省来ていただいておりませんが、私の方から申しますと、郵貯の方は十年たちますと全員に通知をいたします。そして、十年たって全然取引ない、通知しても連絡ないということになれば、これは郵貯特会の方へ計上いたしますが、その年々の金額も、例えば昭和五十六年は二十七億五千万、昭和五十七年は二十五億九千万、飛んで六十一年は三十五億九千万と、はっきりとした金額をつかんでおります。特に最近、平和相互銀行の問題であるとか第一相互銀行の問題であるとか、また第一勧業銀行の問題であるとか、いわゆる金融機関に対する不信感というものは国民の中に大変強いものがあると思うのです。こういう睡眠預金というものを、遺失物といいましょうか、落としたようなものでございますね、こういうものを銀行局として全銀協の自主基準だけに任せておる、そしてそれを雑益で計上する、その金額もわからない、これはいかがかと思うわけでございます。  私は、ひとつここで大臣にお伺いいたしますが、せめて郵政省のように同じ金融機関と横並びということで、全銀協の自主基準でいきますと一万円以上しか通知をいたしません。郵政省は一円でも行くということでございます。経費の問題もございます。費用対効果の問題もありますから、一つはせめてこれを五千円くらいに落とす。それからもう一つは、年々どれぐらいあるかという雑益計上額をきちっと掌握する。三つ目は、自主基準があるにもかかわらず、私の調査によるとそのとおりになっていない銀行も、わずか十二行のうちにも二、三行あるわけでございますから、きちっとした処理の仕方を銀行局から通達を出す。この三つのことをお願いしたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、実はうかつでよく詳細は存じませんでしたので、詳細をまず銀行局長から聞いてみることにいたします。
  65. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 順序が御質問の順序と逆になりますが、一つが先ほど三年という点は、恐らく銀行側の回答が違っているのではないかと思います。それから五年というのが一行ございますが、これは全銀協の先ほどの自主基準におきましても、最終取引日以降遅くとも十年を経過したということでございまして、この銀行は商事の時効である五年をとってやっているわけでございまして、先ほどの自主基準から外れているというわけではございません。  それから次が郵貯との関係でございますが、郵貯の場合は十年たちますと、法律の規定に従いまして国庫に即座に帰属するわけでございますが、金融機関の場合は十年たちますと、金融機関に当然には帰属しないわけでございまして、一応経理上は通知した後に雑益に上げますが、金融機関といたしましては、その後預金者から請求があれば雑損といたしまして支払っているわけでございます。したがって、預金者の立場から見れば、いつまでも請求できる仕組みになっているわけであります。したがって、仮にこれを国庫に十年たったら納付するということになりますと、その後請求してきた預金者に支払う金がないという問題もあるわけでございます。かつまたこの問題は、民事上の契約の問題でございまして、公的な機関である金融機関が扱っているわけでございますけれども預金というのはあくまで民事契約に基づいて預金が預けられるわけでございます。したがって、民商法の規定に従って処理するというのが法律上の建前になっているのでございます。
  66. 日笠勝之

    ○日笠委員 それは、郵便貯金郵便貯金法でたしかそうなっています。だけれども、これも支払いの請求があれば、時効の弾力的援用ということでちゃんと支払っておられます。だから、その郵便貯金の方は、一方的に取り上げて後は返さないというのではありません。銀行と一緒です。ですから私が言いたいのは、私が調べてもらったわずか十二行のうちでも、こういうあやふやな広報室の返答が出てくるということは、ほかに何千、何万とある支店を含めてどういうふうな計上をしているかわからないという、公的な面もある銀行のことでございますから、自主基準ではなくてせめてひとつ銀行局から、数段上からの通達ということではっきりとこういうふうにしなさいというものを出すべきではないか。それから、通知する金額を一万円以上ではなくて五千円ぐらいまで落としたらどうか。郵便局は全部やっておるわけでありますから、こういうことを言っておるわけです。これについては局長はどうですか。この二つだけ。
  67. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 郵便局の場合、委員のおっしゃるのと我々の理解とちょっと食い違っておりますが、郵貯の場合には、十年たちますと当然権利が消滅いたしますので、したがって全員に通知をするという手続をとっていると我々は理解しているわけでございます。金融機関の場合は、その後引き続き請求があれば支払うという建前になっておりますので、とりあえず十年目には大きいものだけ通知するということで処理しているわけでございます。一件ごとの金額でいいますと、平均的には二千円、三千円ということでございますので、それまで十年間これを管理する費用というのは、その二千円、三千円に比べまして、金融機関としては非常に大きな費用がかかっております。しかも、通知に当たってもいろいろ費用がかかるということでございまして、したがってそういうコスト面の点もやはり考えませんと、結局そのかかりましたコストはほかの預金者から得た利益で賄うということも、考えようによってはバランスを欠く面もあるわけでございます。したがって、金融機関としては全銀協の通達に従って、今申し上げたようなことも考えながら処理をしているというのが現実の姿でございます。ただ、委員からいろいろ御指摘もございましたので、我々としては、引き続きこの問題については新たな観点から検討を加えてみたいと考えております。
  68. 日笠勝之

    ○日笠委員 郵貯を敵のようにおっしゃいますが、郵貯は十年たって通知をする、それで請求がなければさらに十年間は保管もする、その間利息もつけるということですから、もう少し郵貯とよく話し合って横並びにするようにお願いをしたいと思います。ですから私はもう少し、一万円以上の通知を五千円ぐらいに下げるということ、それからばらばらの処理をしているということが都銀のわずか十二行の調査でも、私の調査でございますけれどもありますので、銀行局としてこれを統一していかなければいけないということ、三つ目は、雑益として幾ら計上されておるかということをやはり銀行局として当然掌握すべき問題だと思います。以上三点を御要望申し上げて、時間がありませんので、睡眠預金の件はこれで終わりたいと思います。  それから、国税庁さんに来ていただいておりますが、紙おむつの購入代、それから賃借料については非常に前向きに取り組んでいただきまして、本年から医者の同意書があれば医療費控除に加えていただける、こういうことになりまして、私の地元の新聞の見出しはこうなっておりました。「温情ある国税庁」こういう見出しが躍っておりまして、マルサで怖いところばかりかと思っておりましたところ、意外や意外そうじゃない、非常に話がわかる、こういうふうな国税庁さんであるわけでございますが、私が前に言いましたところのB型肝炎のワクチンの接種でございます。  実は、昨日も武蔵野市にございます赤十字病院に行ってまいりました。その中に、いとすぎ学級という小学校と中学校の学級がございます。先生が四名いらっしゃいます。その先生方は、やはり感染症の子供もおりますので、ちゃんとワクチンを接種しておるそうでございます。事ほどさように、このB型肝炎というものは、一説によりますとウイルス保有者が三百万人ぐらいいらっしゃるというふうなデータも出ておりますし、その家族となればもう何百万、一千万という単位になるわけでございます。これに一たんかかりますとなかなか特効薬がございませんで、医療費も、先ほどの堀先生ではございませんけれども、相当かかる病気にもなるわけでございます。  そこで、どうでございましょうか、医療費控除も五万から十万に上がったことでもございますし、予防ということになるのかもしれませんけれども、学校の先生も、そういう感染症の子供がおれば危ないからワクチンの接種をしなければいけない。それも医者の指導ですね、やった方がよろしいよ、こういうことでやっておられるということをお聞きしましたが、この点、B型肝炎のワクチン接種代は医療費控除で認める、このようにはならないでしょうか。
  69. 日向隆

    ○日向政府委員 医療費控除の対象となります医療費の範囲につきましては、既に御承知と思いますが、所得税法施行令の第二百七条におきまして「医師又は歯科医師による診療又は治療」の対価、「治療又は療養に必要な医薬品の購入」の対価等々、こう規定されております。したがいまして、御指摘のB型肝炎のワクチンの接種に係る費用につきまして、それがすべて疾病等の予防のために使用される場合には、その費用を医療費控除の対象とすることは難しいことについては御理解を賜りたいと思うわけであります。  しかしながら、B型肝炎の患者が医師による治療を受けておりまして、その治療の必要性から現にその介護に当たる家族がいる場合、その家族に感染する蓋然性が非常に高いというふうに聞いておりますので、その家族にB型肝炎のワクチン接種をするようなケースにありましては、医師の診療または治療の一環としてその接種を受けるということも考えることができますので、このような場合には、御指摘を踏まえてB型肝炎のワクチンの接種の費用を医療費控除の対象とすることについて前向きに検討してまいりたい、かように考えております。
  70. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、前向きに検討していただくということで、次の質問に移りたいと思います。  これは私の熟読をする雑誌でございます「時の動き 政府の窓」、総理府編集でございます。これの一番最後の投書欄にこういうのがございます。「支払のたびに病院の領収証発行を望む」、長野県の主婦、三十八歳の方の投書でございます。時間がありませんが、要はどういうことかというと、とにかく病院で料金を支払ったら、たとえ少額でも支払いのたびに病院名の入った領収証をもらいたい、こういう投書でございます。これは、この方だけじゃございません。これは、総理府編集の権威ある「時の動き」というのに出ておるわけですよ。  これだけじゃありません。もう毎年確定申告の時期になってきますと、そぞろそぞろいろいろな新聞に、その医療費の確定申告するのに領収証をもらってないとか領収証を発行してもらいたいとか義務づけをしてもらいたいとか、こういう投書が何回も、毎年毎年出てきておるわけでございます。  そこで、厚生省さんにお伺いをしたいと思いますが、さわやか行政という竹下内閣の大きな柱でございますが、全国の医療機関に領収証の発行を義務づける、これを明確にしたらいかがかと思うのです。こういう投書欄なんかにみっともないことを出させない。これはもう民法の世界でございますから請求すればもらえるのですと、こう言うけれども、千円や二千円かかったものを領収証くださいと言いにくいのですよ、お医者さんに。取る医者というものは最近脱税しておる。脱税ワースト十五位の中に病院、整形外科、外科医など必ず出てくる。どうも脱税しているのじゃないか。そしてまた、医道審議会を見ますと、毎年毎年処罰をされているお医者さんもおる。そういうのがマスコミで絶えず目につくわけですから、お医者に対する信頼感がもう全然なくなってきた。全然というと言葉悪いですね、相当なくなってきた。そこへ持ってきて脱税までやっているのじゃないか、なぜ領収証をくれないのかと、実は私の弟も医者で開業医をやっておりますので本当は言いにくいのですけれども、あえて国家国民のために言っているわけでございます。ですから、ひとつこれは厚生省さんの方で、何らか必ず窓口で領収証を出せ、こういうことを義務づけるという何か方策をお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 越智通雄

    越智委員長 厚生省健康政策局田中総務課長。なお、時間の都合上、的確、簡潔に御答弁願います。
  72. 田中健次

    ○田中説明員 今先生からお話がありましたように、一般に領収証の発行につきましては、民法の規定で処理されておるわけでございまして、患者から求めがあれば、医療機関は領収証を発行するということになっております。  それで、まず国立病院や自治体病院でございますが、これにつきましては規則等設けて領収証を発行されております。それから公的医療機関あるいは民間の医療機関につきましても、患者の求めがあれば領収証を発行しておる、私どもはそういうふうに考えております。  それで保険医療機関についてでございますが、これは保健医療行政の立場から領収証の発行を強く行政指導をしておりまして、また、お話には出ませんでしたが、自由診療部分につきましても、私どもは保険診療に準じて取り扱われている、このように考えておりまして、保険医療機関の指導につきましては、適時、私どもは強力に指導しております。  それで、今先生お話がございました発行を義務づけるという点につきましては、やはり事務負担も大きくなりますし、ほかの分野とのバランスの問題もありますし、一律に義務づけるということはなかなか難しいと考えております。
  73. 日笠勝之

    ○日笠委員 五十六年五月に、厚生省保険局長名で都道府県知事に通達が出ておりますね。あれから七年が来ようとしておるにもかかわらず、毎年毎年こういう投書が出てくるということは、徹底されていないとしか言いようがないわけです。事務負担、事務負担といいますが、今簡単なレシート、ちょんちょんでぱっと出る、そういうものがあるのです。これは時間もありませんが、国税庁次長さん、どうですか、こういうものを発行していただいた方がいろいろと、確定申告のときに医療費控除の計算をする、そしてまた全部そういうレシートがあれば、せめて脱税ということもなくなる抑止力にもなるかもしれませんし、ひとつ国税庁の方から厚生省さんの方に義務づけるお願いをしたらどうでしょうか。いかがですか。
  74. 日向隆

    ○日向政府委員 所得税法施行令第二百六十二条第一項二号によりまして、確定申告において医療費控除を受ける場合には医療費の領収証を添付するかまたは提示しなければならない、こうされております。したがって、領収証が必要でございますが、これがどうしても入手できない場合には、その支払った医療費の額について、それにかわるべきものによってやむを得ず判断することになるわけでございますけれども、現在医療費控除の申告書が、御案内のように二百七十万前後税務署に出ておりますので、実際には領収証のない場合には手間がかかって、現実に苦慮している、こういう現状であります。したがいまして、この点の実情について詳しく厚生省に御説明させていただきたいと思います。
  75. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、午前中の部は終わります。
  76. 越智通雄

    越智委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ────◇─────     午後一時二十分開議
  77. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日笠勝之君。
  78. 日笠勝之

    ○日笠委員 大分時間が予定よりなくなるようでございますから、ちょっと飛ばしまして、大型間接税のことを一問だけお聞きしたいと思います。  今政府税調の方でも、精力的に審議が進んでおるようでございます。それで、大臣の認識で、日本の物価、物の値段、これは世界各国から見まして、特に先進国と比べまして、日本の物の値段は非常に高いところにあるのか、安いと思われるのか、どういう御認識ですか。感想でいいです。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 住宅関連及び食糧品が比較的高く、工業製品は安い、そんな認識をしております。
  80. 日笠勝之

    ○日笠委員 確かにおっしゃるとおり、経済統計年鑑を見ましても、ニューヨークの生計費を一〇〇としますと日本は一四二でございます。住宅費を除いても一二七ということでございます。時間がありませんから、パリがどうだ、ロンドンがどうだとかということは比較いたしませんけれども、しかしこの経済統計年鑑で見ますと、住居費を除きましても、これはもう先進国ではずば抜けて高いわけでございます。そこで、この大型間接税を導入しますと、過日の本会議大蔵大臣も、価格の転嫁をやるわけでございますから、一度は物価は上昇するのはやむを得ない、こういう御答弁をされておりますね。それはそれでいいのでしょうか。一度は価格転嫁のために物価は上昇するということです。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうふうにお答え申し上げております。
  82. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうしますと、例えば入国管理局の統計によりますと、外国人の入国者総数は六十二年中に二百十六万でございます。また、文部省の調べによりますと、留学生は二万二千名でございます。こういう方々は、非常に物の値段が高い日本、大型間接税が導入されますと間違いなくこれは上がりますね。特に、留学生の方なんかは円高で非常に生活も厳しい。経団連とかいろいろ経済団体も社宅を開放してあげましょうとか、そこまで言ってくださっておるわけでございます。こういう方々は、幾ら減税をすると言っても減税の効果はありませんね。一方的に円高のことと、それからまたこの物価が上がることでますます生活が苦しくなってくる。そして、日本というのは非常に住みにくいから、もう日本へ留学するのはやめようじゃないか、こういうことにも相なる可能性もあるわけでございます。  ひとつそういうことも考えまして、私は国際化ということが、今度の税制改正の基本理念の中にあると思うのです。簡素、選択、公平とか中立とか国際化とか、そういうことを考えますと、国際化ということを考えればいかがなものであろうか。外国人の方の入国も多い、特に留学生は厳しくなってくるだろう、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 住宅、食費関連が高い、工業製品は安いというふうに申し上げまして、まあそんなところだろうと思うのでございますが、東京は確かに比較的暮らしにくいところだと言われておりますことは、この間接税いかんにかかわらずさようでございますが、前回廃案になりました、御提案いたしましたときのあの売上税の物価水準に対する影響が、たしか初年度で〇・四、平年度一・六でございますが、計算したことがあったと思います。それは前回の廃案になりました分でございますけれども。ですから、だから何でもないと言ってはいけませんけれども、その程度のことが一遍限りあるということでございますと、私は今の問題にそんなにさしたる影響はない。東京は住みにくいという評判はやはり残るでございましょうけれども、この税のためというようなふうに私は考えておりません。
  84. 日笠勝之

    ○日笠委員 そういう国際的ということもあるわけでございましょうし、いつぞや私は新聞で、外国人のスチュワーデスが成田へ宿泊しますと、それまでは買い物に行ったり外のレストランで食事をしておった。しかし、こんなに物価が高くてはとても買い物にも行けない、食事も部屋の中でサンドイッチをとって、あたふたとまた次の飛行機に乗って香港あたりで買い物をして帰る、こういうことが言われているわけですね。ですから、物価が上昇する、便乗値上げもあるでありましょう、そういうようなことで、私は国際化という観点からも、この大型間接税を導入するということは、その辺も真剣に考えて検討しなければならない、こう思うわけでございます。  それで、もう時間がないので、いろいろやろうと思ったのですが、次の質問に移りたいと思います。  大蔵省が出しましたところの「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」というのがございます。出された当局ですから、よく御存じのことでございますが、これを読みますと、「昭和六十三年度予算と今後の財政改革」という項目の中にこのようにございます。「昭和六十三年度予算においては、財政改革を引き続き強力に推進するため、歳出面において特に経常経費を厳しく抑制する等経費の徹底した節減合理化を行う」。徹底した経費の節減合理化、抑制をするというふうにまず出てくるわけですね。では、本当に経費を厳しく抑制し、徹底した節減合理化を行っておるかどうかということを、きょうは一つだけ例を出してお伺いしたいと思います。  それは、一つは僻地手当というのがございますね。きょうは文部省を呼んでおりませんので、大蔵省さんの方でお答えいただきたいと思うのですが、この僻地手当というのは、御存じのように、過疎地域の学校から郵便局まで何キロであれば何点、停留所まで何キロであれば何点ということで、ずっと積算しまして、一級から五級までの等級をつけるわけでございます。それによって、そこに赴任しておりますいわゆる学校の先生方の僻地手当というものが加算をされるわけでございます。最高百分の二十五でございます。そういうことになってまいりますと、この僻地手当というものは、これは国庫から相当出しているわけでございますが、本当に、社会情勢が変わった中にあって、まさに一級から五級までいわゆる間違いなくカウントされ、適正に級数が認定されておるのか、こういうことでございますが、残念ながら、これは会計検査院で二年間にわたって指摘をされておるわけでございます。  この僻地手当でございますが、私が聞きますと、非常に金額は小さいのだ、こういうことでございます。金額が小さいから、ではどうなのかと大蔵省の方に聞きますと、そんな小さい金額を集めても、もっともっと制度改正の方に目が向いて、なかなか目がいかない、こうおっしゃるのです。その方は、私がちりも積もれば山となるじゃないですか、一円たりとも国税だからむだにしてはいけない、こう言いましたら、先生、ちりは積もってもちりで、山とはなりませんよと、こういう名言を吐かれましてね。確かにちりは積もってもちりで、山にはならないのでしょう。が、しかし、三十年近くへき地教育振興法施行ということで当時の社会的ないろいろな観点から決められた等級はずっと変わっていない、そのとおりに毎年毎年加算をしてきておる、こういうことが会計検査院で厳しく指摘されておるわけでございます。  これについては、今各都道府県に指示をされて、一生懸命教職員組合の方々と、手当が減るのですから、給料が減ってしまうわけですから、事前調整をやっておられるということはよく知っておりますが、このようないわゆる補助金、こういうようなものが何年間も同じままの制度でずっと続いてくる。何らそこで見直しをしようとしない。また見直しのことを指示もしない。こういうふうなことで、一説によりますと、金額的にはわずかな金額のことしか指摘はされておりませんが、推計すると十九億円ぐらいそれだけでむだが省ける、こういうふうに文部省は言っておりますけれども、こういうふうに、例えば一つの補助金にしても、本当にこれが僻地ということを考えれば、十年も二十年もほっておいて、今もって僻地なんだろうかということを厳しく主計局の方で査定をしなければ、出てくるものは全部オーケー、もうずっと二十年前、三十年前の基準のとおりだから間違いないんだろうというのじゃなくて、これを厳しく査定をしていかなければ、先ほど私が申し上げました、経常経費を厳しく抑制し、経費の徹底した節減合理化を行うということに反するのじゃないか。わずか十九億円だからそんなものはどうということありません、五十六兆の規模から見ればとおっしゃるかもしれませんけれども、そういうことで、今後の経常経費なんかを厳しく本当に見直すのならば、制度の仕組みから主計官が勉強して、そして本当にこれでいいのかどうか、今の社会のニーズに合っているのかどうかということで次の概算要求基準そして年末の予算の編成等やっていかなければならないのではなかろうかと思いますが、次長、どうですか。
  85. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 先生にどなたが御説明をしたのかわかりませんけれども、仮にもちりは積もってもちりであるというようなことを申し上げるべきではないと思います。私どもは実は一生懸命やっておるつもりでございまして、この僻地手当につきましても、六十一年に検査院からそういう指摘があったということを踏まえまして、見直しをしてくれということを実は申しております。文部省は、そういう私どもの要請も受けまして、六十三年度において、初めてでございますけれども、今年度の予算で僻地指定を見直しております。それから、今後は六年ごとに見直しを行うということにしておりまして、これで、節減額は一億五千万というようなわずかなものでありますが、緒についております。また、今先生からも御指摘がございましたように、いわゆる僻地基準、これは省令でございますが、これにつきましてもいろいろな見直しをやって、六十四年度には改定を行うという段取りで今進めていただいております。今後とも経常経費の削減には全力を挙げて取り組む所存でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  86. 日笠勝之

    ○日笠委員 ぜひひとつ抜本的な見直しをしていただいた上で、これだけ節減できるというものを見せていただかなければ、文字だけが踊っておる。おまけにこの僻地手当のことも会計検査院に指摘をされて、それこそ十年も二十年もずっとそのまま来ていたものを慌てて今やっているわけですね。会計検査院の使命は使命であるわけでございますが、指摘をされなくても、一つ一つの項目、補助金なら補助金について精査をしていく。お聞きしますと、何か出張費が少ないんで現場へなかなか行けないんで難しいんだというようなこともおっしゃっておりましたけれども、その辺はひとつ財政当局でございますからその辺の出張費ぐらいしっかり取っていただいて、本当に国民に、よく経費の節減合理化に励んでおる、会計検査院の指摘をまつまでもなくこうやって自主的にやっておりますというものを見せていただきたいと思うわけでございます。  それで、実は私もかつて商工委員会質問をしたことがございます。それは電力料金の不経済に支出されているということでございまして、いわゆる基本電力料金の契約の見直しをすればそれだけで相当の金額が不経済なものが改善されるということで、実はこれも昭和五十二年決算報告書に載っております。昭和五十三年、五十四年、五十五年、六十年と何と昭和五十二年から五回にわたって指摘をされておるわけでございます。一回指摘をされれば、こういうことは各省庁に関連をしておるんだ、たったこれだけの見直しをしただけでこれだけの不経済が改善されるというふうなことが、一回指摘すれば、一事が万事でございますから、すぐそれを省庁に流し、先ほどから言いましたように、査定のときに厳しく見直しをさせていく、やったのかということを聞いていく、こういうようなことが非常に大切なことだと思うのです。  ところで、これは決算委員会で五十九年に大蔵省の方から各省庁を取りまとめて十一月二日に提出をされておりますね。しかし、そのときに、これは藤波官房長官でございますけれども、「調査対象以外の官署につきましても調査対象機関に準じ、改善措置を要するものにつきましては、その措置内容を昭和五十九年度末までに所属の上位機関の長に報告させる等の処理を行う。」、こうあるわけです。この五十九年十一月二日に大蔵省がまとめたものを決算委員会に提出されまして、それからその次も、調査対象以外のものもやる、こうおっしゃっていますが、具体的にやられましたか。やられたらば、いつそれはどこで報告されましたか、お聞きしたいと思います。
  87. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 これにつきましては、内閣の方で取りまとめをされまして、私ども調査のお手伝いをしたわけでございますが、官房長官からそのような御答弁をなすっております。前回五十九年に行った調査は、五十キロワット以上というような施設についていわばサンプル的に調査しまして、それ以外の施設については各省で責任を持って、例えば実績見直しによる改善とか、コンデンサーの新設等実質的な改善措置をとるというぐあいに、各省の責任においてやってくださいということを指示したわけでございます。したがいまして、特段のフォローを私どもとしてはしておりませんけれども、当然にそのような改善措置が講じられていると考えております。それから、会計検査院のその後の検査によりましても、そういう非違事項というか、特段の事項はまだ指摘されていないと伺っております。
  88. 日笠勝之

    ○日笠委員 上位機関の長まで報告が行っているようでございますが、一度取りまとめていただければと思います。おとといも、内閣官房に来ていただきますと、どうせ取りまとめていただくのは大蔵省さんになると思いますと言っておりましたので、ひとつお願いを申し上げたいと思います。  時間も大分たちましたけれども、本題でございます財確法の審議を少しやりたいと思います。  大臣、おとといも武藤委員日本の国のいわゆる借金が幾らかということでいろいろと数字を挙げられてやられたようでございますが、この予算書等々を見まして、どこを見れば、今の日本の国の国債が幾ら、借入金等を含めた長期債務が幾ら、後年度へのツケ回しが幾ら、どこのどれを見たらぱっとわかるのですか。それがわからずして財政当局として何も物は言えないと思うのです。どこを見たらわかりますか。見たらすっとわかるものがありますか。
  89. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 予算書というのは、御承知のように、組織、所管、項、目ということで各個別の経費をそれぞれ御審議していただくということで実はでき上がっております。いろいろな予算添付書類は財政法二十八条に規定がございますけれども、それぞれ限定列挙ということになっております。したがいまして、今申した二百五十兆になんなんとする、これは地方も入り、いろいろな経費が入っておりますけれども、それについて一覧性のものがないわけでございますが、それぞれに各予算書の予算総則あるいは二十八条書類にそれぞれ応じて計上しておるわけでございます。それから、御審議の際そういうものが必要であるということであれば、私どもはその際にそういうものをおつくりして提出している、そういう手続になっておるわけでございます。
  90. 日笠勝之

    ○日笠委員 審議のときに請求があれば出すというわけですが、しかしそういうものはどこかに一覧表がないと非常に不便じゃないでしょうか。審議する側としても、一々請求しなければいけない。そういうことで、例えば一つ財政法第二十八条による昭和六十三年度予算参考書類というのがございますね。これの八ページがございますが、この中に「国債及び借入金の状況に関する昭和六十一年度末における現在高の実績並びに昭和六十二年度末及び昭和六十三年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書」というのが出ております。これを見ますと、いわゆる国債と借入金の残高は、昭和六十三年度末見込み額は二百十九兆円でございます。これは、いろいろ聞きますと、一般会計と特別会計両方のトータルなんですね。たったこれ一つにしても非常にわかりにくい。  この前も参考人質疑で立教大学の和田先生が来られましたけれども、最近の財政はわからない、こう言いましたね。大学の教授にわからないものが我々にわかるわけがないわけでございまして、大蔵省皆さん、わかりにくくして私立大学の教授にでも行けるのではないか、財政学の教授で、こういうふうにお思いかもしれませんが、これなんかでももう少し丁寧に、一般会計分の内国債はこれだけ、特別会計分の内国債はこれだけ、こういうふうにちょっと区分すればいいのじゃないでしょうか、これだけ余白がいっぱいあるのですから。わかりやすいでしょう、それは。見る方は、なるほど日本の国の国債の一般会計分はこれだけだな、特別会計分はこれだけだな、借入金も一般会計分はこれだけだ、トータルしたらこうなんだということがよくわかるわけですね。それぐらいの行政サービスがあってもいいのじゃないでしょうか、さわやか行政とおっしゃっているわけですから。  大臣、どうですか、これは。大臣にお聞きしますね、きょうは時間がないのだから。時間があればしっかり政府委員の方からお聞きしますが。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よくわかりませんので、政府委員から申し上げます。
  92. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 これは、財政法のいわゆる二十八条書類の解釈に関することになろうかと思います。二十八条の五号では、「国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書」と書いてございまして、一般会計、特別会計の区分をしておりません。この趣旨は、国が全体として将来の納税者等に負担となる借金をどれくらい負っているかということを明らかにせよという趣旨でございます。いわば国庫の内部においてどの会計に属しているかということまでこの法律の規定は要求していないというのが私どもの解釈でございまして、御承知のように予算書というのは短期日の間に非常な精力をかけてつくるものでございますから、法の要求するところはきちんとお出ししておるわけでございますが、あとはそれぞれの御要求に応じて参考書類として別途提出させていただくというのが適当ではないかと私は考えておるわけです。
  93. 日笠勝之

    ○日笠委員 だけれども、区分して出したらいけないという法律じゃないわけですね。だからそれくらいのサービスがあってもいいのじゃないでしょうかね。  大臣、どうですか、見てわからないでしょう、これは。特別会計と一般会計の全部これは合計ですよ。区分したっていいじゃないか。余白がいっぱいある。もったいないじゃありませんか。それぐらいのサービスがあってもいいと思いますね。大臣から御答弁を求めます。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よくわからぬ難しいことでございますが、そうしますと、今度特別会計をみんな書け、こういうことになるのでしょうね。分けて、みたところで、今度は特別会計一つ一つ書けというような——まあこれは確かに財政法二十八条五号というのに書いてございますから、それを満たす条件をここへお書きしたのではないかと思います。
  95. 日笠勝之

    ○日笠委員 ちょっと御認識が違うようでございますけれどもね。だから、一だれが見てもわからぬような書類があるのですよ。それは当局は御存じでしょう。いわゆるこれから財政法を勉強しようかなという人がこれを見たってさっぱりわからない。せめて区分をしなさいということでございます。区分したらよくわかります、これは。一般会計分はこれだけの内国債があるのだ、特別会計分はこれだけあるのだとよくわかるわけです。余白もしっかりありますから、これは一応検討してください。よろしいでしょうか。
  96. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 今大臣からもお答え申しましたように、財政法二十八条五号の趣旨にかなっていると私どもは考えているわけでございまして、これについてはこの資料でお許しをいただきたいと考えております。
  97. 日笠勝之

    ○日笠委員 さわやか行政と言っているのですから、書いたって別に法律違反じゃないわけですし、書いた方がよくわかるわけですからね。それぐらい、どうせ積算をしてくるわけですから、どうせ合計すればぱっと出てくるもとになっているものでございますから、これはひとつぜひお願いを申し上げたいと思います。  それから、ちょっと委員長、この資料を配付することをお許しいただきたいと思います。  実は私も財政法は全くの素人でございまして、いろいろな本を読んだりいろいろな方々にお聞きして、その結果考えますことは、だれも質問されましたけれども、一体全体日本のいわば借金と称するものは幾らあるのだろう。大蔵大臣も過日参議院の予算委員会で我が党の和田先生質問に、百五十九兆の国債がある、財政再建ということで六十五年には脱却をしていくということで、お座敷は——名言でございましたね、お座敷はまあまあきれいになったけれども、押し入れにはわからないとおっしゃいましたけれども、その押し入れに入っている分が非常にわかりにくい。その点は、立教大学の和田教授も、非常に不明確である、わかりやすくしてもらいたいとおっしゃったのだと思うのです。  そこで私が一つきょうは御提案申し上げたいのは、予算書の「参考」というところがありますが、一番最後のコード番号のところがございますね、そこのところで結構でございますから、予算書に、例えば一般会計のこの一ページ目、「国債等債務状況調」ということで、これは決算書には必ず出てきます、これは決算書と同じパターンで書きましたけれども、こういうものをつけていただくということは非常にわかりやすいのではないか。国債に抱かれた財政、いわゆる借金財政運営が近い将来すぐにでも解決するとは想像できないわけでございますね。そういうふうな財政状態から勘案いたしまして、国の債務の実態を予算審議の際に十分考慮してやるべきだ、こう思うのですね。そういう意味では、決算書にもある書類を、見込みでいいわけでございますから、こういう書類をそれぞれ一般会計分、特別会計分、政府関係機関、そして財政法で言うところの政府が出資している事業団、公団、こういうものがどこか一覧にございますと非常にわかりやすい、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 御指摘の資料でございますけれども、実はこの資料の中身でございますけれども、それぞれに予算書では予算総則あるいは二十八条書類というところでそれぞれの額を明らかにしております。これを一覧性のものとして出しますことの難点は、いわば予算書上の重複が出るのではないかという点が第一点。それから、これはそれぞれに係る債務負担額そのものを書いているものもございますし、債務保証の限度額を書いているものもございますし、性格を異にするものでございます。したがいまして、一覧性のある表にするのがいかがかというのが第二点ということで、お出しをしていないわけでございます。  それから決算書について出しておりますのは、それぞれ保証額、負担額、それが年度が終わりまして実際にどれだけの債務負担をしたかということが明らかになった段階で出すということで、予算の段階とはおのずから性格を異にする、それは実は財政法にもはっきり規定がございまして、財政法三十七条には国の債務に関する計算書を作成しろということが書いてございます。したがいまして、財政法上も予算と決算では対応を異にしているわけでございまして、決算書について債務の内容を明らかにしておりますのは、そういう意味で実際に年度を経過いたしますとどれほどの債務を負担したかということが明らかになるという趣旨で、したがって財政法もそういう規定を置いているというぐあいに私どもは考えているわけでございます。
  99. 日笠勝之

    ○日笠委員 その財政法二十八条の精神をそんたくすれば、予算書に国の債務残高表をつけるのはこれは必要なことであると私は思いますね。  それから、今次長いろいろ言われましたけれども、予算を審議する場合、過去の債務保証限度の実績を参考にしながら、当該年度の見積もりがどうだったか、こういうことも判断するのは極めて重要だと思いますね。それから、例えばもし保証限度額の予算段階と実績と余り違うような場合は、これはやはり保証限度額そのものがどうだったのか、こういうことも推しはかる材料にもなるわけでございます。そういうようなことを考えますと、私は、こういうふうな資料はぜひつけて、もう少し財政というものがわかりやすく明朗でなければいけない、かように思うわけですね。この点はどうでしょうか。
  100. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 財政法の規定は、いわば予算がなるべく早期に国会に提出されるというような要請、それからなるべく内容の重複を避けて簡明にするというような要請から一応でき上がっているわけでございます。したがいまして、予算の公式の添付書類と決算のいわば添付書類とは財政法上も書き分けているということは先ほど御説明したとおりでございまして、私どもといたしましては、いわば予算の公式の添付書類という形ではなくて、何らかの参考資料としてお出しすることは今後とも努力を続けてまいりたいというぐあいに考えておるわけでございます。
  101. 日笠勝之

    ○日笠委員 いわゆる歳出削減に伴う後年度への負担の繰り延べも、これは資料請求して初めて出てきておる分ですね。御存じのとおり、例えば今度の政管健保の国庫補助の繰り入れ特例などの分、六百五十億円控除してという分ですね、こういうものの一覧表も言わないと出てこない。どこを見ても予算書を見ても全然出てこない。これは合計すると十一兆幾らあるのでしょう。これは債権と債務の関係がまだはっきりしていないから、こうおっしゃるのでしょうけれども、請求したら出てくる。しかし請求しなければ出てこない。予算書だけ見て一生懸命勉強してみたって何らそういうものは見えてこない。これではいかぬということなんです。財政民主主義でありますから、せめて審議する我々のところにははっきりとしたものを初めから提示してもらいたい。そして、決算と予算で、先ほど言っておりますように、政府の所要額もそんなに使うかどうかわからぬわけですが、それが使い切れないということであればこの保証限度額をこのように設定したのは間違いではなかったのか、反対に使い切ってなおかつオーバーすれば見積もりが少なかったのではないか、そういうようにチェックできるわけですね。  そういう意味では、私何回も言いますけれども、こういうものがそれぞれ、「参考」のところのコード番号がありますでしょう、あのコード番号なんかまさに要らないわけですから、そこのところへ一枚ずつ特別会計分、一般会計分とあれば非常に見やすい。そして、先ほどから言いましたところの八ページのところも一般会計分と特別会計分に区分けをするとか、そしてその下に、先ほど言いました後年度への負担の繰り延べはこうなんだ、こういう一覧表を出してはいかぬというわけではないでしょう。出してもいいわけです。そういう意味で、かたくなな行政側の論理ではなくて審議する私たちの側に立ってそういうものを出していただく、そして日本の本当の財政再建をお互いに考えていく、こういうことが重要なのではないかと私は思うのですが、大臣、今のお話を聞いていましてどうですか。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は難しいことはよくわかりませんけれども、一般に予算と言われているものは、国会の議決の対象になるものでありますので、そういう意味では私ども法律案といったものと同じ性格のものと考えております。したがいまして、そこに重複があるといったようなことは本来許されないことであるし、わかりやすいために厳密さを欠くということも許されないものである。したがいまして、その要件というものをかなり厳格に考えておりまして、そういう意味では法律案というものがわかりにくいといって世間からときどき言われます、というような意味であの予算書というものがある程度わかりにくいものになっておりますことはお許しをいただかなければならない要素があると私は思っておりまして、だから不親切でいいと申し上げておるのではございませんけれども、そういう議決の対象となるものとして私ども考えておるものでございますから、言ってみれば、全然これと別個に、いわば予算書の全部の解説と申しますか、そういうものでもできますとただいまの御審議の御便宜には役立つと思うのですが、これが時間的になかなか事実問題として間に合わないという要素がまたございます。したがいまして、御要求の資料等々はできるだけ誠実に詳しく提出を申し上げるということをいたしておるわけでございます。
  103. 日笠勝之

    ○日笠委員 我が党の失追委員が国債の償還表を添付するということで、これは一枚入っているわけですね、特別会計のところへ。だからできないことじゃないと思うのですね。  それから、念のためにお見せしますと、政府関係予算の一番最後に「参考」というのがありまして、これはコード番号だけですね。こんなものは別に国会の議決に基づかなくたっていいわけですから、ちゃんと「参考」というのがあるわけですから、このところだけでいいわけですね。これに入れるかどうかということは検討いただくといたしまして、要はもう少しわかりやすい資料、例えば、私内閣委員会におったころは、恩給法というのは非常に難しいですね。それも恩給の早わかりというちゃんとしたパンフレットが審議する前に出てくるわけですよ。そういうものが全然ないじゃないですか、ここは。それをちょっと聞くと、こういうものも残っておりました、こういうものも残っておりました、全部ツケ回しで、これはまだ債権と債務の関係がはっきりしておりませんので借金とも言えません、こういうことばかり言われて、財政当局の最高の責任者である大臣ですら、日本の借金と称するものは幾らあるか、潜在的債務を含めて幾らかと言われたって、それはですねと恐らくわからないと思いますよ。これじゃ審議しろと言ったって資料を集めるだけで日がたってしまう。濃密な審議ができない。  そういうことで、私はぜひこれは委員長にもお願いを申し上げたいのですが、恩給の早わかりみたいな、恩給法の早わかりというようなパンフレットが出ますから、必ず毎年恩給法を改正していますから、財政の早わかりというような何か一覧表をつくっていただいて、審議する前に全部渡していただいて、それを見れば全部そういうものが丁寧に入っている。一々ここで、日本の国債幾らですか、理財局長は、幾らです、では先ほど申し上げました政管健保の国庫補助の繰り入れ特例は累計で幾らか、幾らでございます、トータル幾ら、こんなことをやっていたら濃密な審議にならないわけでございます。ぱっと見ればわかる、そういうようなものをぜひ用意していただいて、この財確法は毎年上がるのじゃないかと思われますから、そういう意味でぜひ前向きにそういう資料をつくっていただいてこういうものは出していただく、こういうことで大臣、お考えはいただけますでしょうか。検討していただけますか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なるべく御審議に役立ちますようにいろいろ工夫をいたしてまいります。
  105. 日笠勝之

    ○日笠委員 以上です。     ─────────────
  106. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本国有鉄道清算事業団理事長杉浦喬也君出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  108. 越智通雄

    越智委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  109. 堀昌雄

    堀委員 久しぶりで竹下総理大臣と質疑を交わさせていただける機会を得まして、大変ありがたいと思っております。  きょうは、午前中二時間、宮澤大蔵大臣との間で、郵便貯金昭和五十五年の預入が三十三兆八千億ありまして、それがちょうど十年たちますと六十五年になります。そのときに一体幾ら残っているかというのは、これは推測の範囲でありますけれども貯金局長の方で、ふだんは大体十年の満期を迎えるのは二割程度であるけれども、このときは七・五%、続いて八%という高い金利でありましたので、四割くらい残っているだろう。そういたしますと、三十三兆八千億の四割というと十三兆八千億くらいで、それがちょうど倍になりますから、二十七兆六千億ぐらいという大変な満期を迎える資金が六十五年には実は郵貯特会から払い出される。それは必然的に資金運用部に影響を与える。ふだんには大体そういう七兆九千億ぐらい郵貯から今資金が入っておりますのが、今度は逆流をするわけでありますから、これは資金運用部にとっても大きな問題でありますが、ひとつ財政投融資計画をより効率的に考え直す必要があるのではないかという問題を論議いたしました。  二番目は、今政府税調あるいは自民党税調で間接税の問題についていろいろと御検討が進んでおるようでありますけれども、私は、国民の側からすると、ただ直間比率の見直しだから税金をもらいますよと言われても、これはどうも納得ができない部分が多いのではないか。世論調査を紹介しますと、これは各紙の調査でありますが、政府の説明不十分というのが八割、これは朝日新聞の調査でございますし、さらに日本経済新聞におきましても、賛成三割、不公平税制是正優先四割というようなことで、必ずしも今の三月の段階において国民がそれは大変結構だというような雰囲気にはなっていないというふうに私は感じております。  それには、やはり日本のこれからの社会保障、特に昭和六十五年に向かって、医療保障、老人保健、国民健康保険等の抜本的な改革、あわせて国鉄共済が六十五年から三千億の収支差額が出るという問題、これは昭和六十年二月の予算委員会で当時の仁杉総裁にお尋ねをして三千億という答えをいただいたのでありますが、今日も三千億という問題は、それも約二十年以上続くという大変な国鉄共済問題もありますので、七十年年金の一元化という問題を少し前倒しをして、六十五年に今の国鉄共済を含めた全的な対応を必要とするのではないだろうかというような問題を含めて、今後の年金、医療、老人福祉について、この前は既に試算が出されましたけれども、あの試算はもちろん現在の制度をベースにしておりますけれども、やはり私は、国民年金についても、あるいは医療の老人保健法についても、国の負担を一層ふやすことにならなければ望ましい社会保障の像は描けないのではないか、そういう望ましい社会保障の像を描いた上で税の論議をすることなくしては国民理解と納得は得られないのではないかという問題を実は約二時間大蔵大臣との間で質疑を進めさせていただきました。  大蔵大臣にも大変前向きのいい御答弁をいただいて、私はこの二時間は大変有意義な二時間であったと思っておるのでありますけれども、これから総理との間で一時間十八分やらせていただきますテーマの一番重要なのは、国鉄清算事業団の問題でございます。  この国鉄清算事業団の問題は、やはり今の年金の問題を中心としていろいろと調べておりまして一つ気がつきましたのは、どうも今の国鉄清算事業団というのは累積債務国と同じような形になっているのではないか。後で御答弁いただきますが、要するに、たしか九千億ぐらいの利払いに対して、実は十分な土地の売却その他が簡単でございませんので、予算を見ますと、六十三年度は三千億の土地の売り払い収入が予定されておるようでありますけれども、果たしてそれがそのように簡単にまいるかどうかも問題がございます。  そもそも私はずっとこの法律からいろいろな問題を関係者皆さんに来ていただいて話を聞いておりまして一番問題に感じておりますのは、国鉄清算事業団というこの名前に非常にこだわっているわけであります。というのは、清算が終わりましたらこれはなくなってしまうということでございますね。そうすると、中で働いている人は、やはり自分たちが仕事をして将来に対しても何か非常に展望が開けるような仕事というのと、先すぼりでともかく最大限努力をしてどんどんやったら結果的には職場が早くなくなる、こういう問題とでは、私は、働いておる皆さんの士気に大きく関係をするのじゃないか、こういう気持ちもいたしまして、そういう角度からいろいろと分析をして、結局私なりの構想に到達をいたしましたのは、要するに、この国鉄の持っております主要な土地を現物出資をして新しい民間会社をつくるということを考えたらどうかというところから実は問題を進めたいと思うのでございます。  それともう一つ、実は午前中に大蔵大臣との間で、私が五十六年二月の大蔵委員会国債特別会計というものの論議をいたしましたときに、要すするに伝言が大福帳になっておりますからどうしても金利概念というものがこの国の会計では大変不足をしておる、何とか機動的に国債の発行ができないか、金利の高いときには短期の公債を発行して泳いでいて、そして金利が安くなったときに実は長期債に乗りかえるというようなことをしたらどうかという問題を提起しておるのであります。やはりこの国鉄清算事業団につきましても、実は国鉄清算事業団が政府保証債を発行できる道が開かれておりますので、そこで、この長期の部分についてひとつそういうものを発行して処理したらどうだろうか、こういうふうな問題を考えて、実はきょうはそれをひとつ総理、大蔵大臣に御提案をしながら、日本の国の資産でございますこの国鉄の土地を有効に生かして、そして収益性のある形でこれを債券化することによって、最後に残る十三兆八千億と言われておるものを最少にする選択の道はないかどうかということを実は考えたわけでございます。  そこで杉浦参考人にお伺いをしたいのでありますけれども、実は皆さんの方からちょうだいをしておる債務というものは、長期債務が十九兆九千三十八億というふうに私ども承知をいたしておりますが、大体そういうことでよろしいのでしょうか。
  110. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 お答えいたします。  将来にわたって全額を計算いたしますと二十五兆六千億ということでございますが、これを年度で締めくくりました最初のスタートのときの六十二年度首で調べますと十八兆余、こういうことでございますし、また今年度、六十三年度首で締めました長期債務の残高は二十兆四千億という数字でございます。
  111. 堀昌雄

    堀委員 この債務の問題が大変重要でありますけれども、もう一つこの国鉄清算事業団で重要な問題は、実は国鉄関係職員の問題でございまして、昭和六十三年二月一日現在というので再就職先未定者という者が五千二百人というふうになっていますが、これは現在は大体どういうことでございましょうか。
  112. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 今先生おっしゃいました数字が一カ月ぐらい前の数字でございまして、現在時点では再就職未定者が四千七百七十三名ということになっております。
  113. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この四千七百七十三名というのは、法律によりますと今後三年間で再就職が決まらなければ、あとはどういうことになるのでしょうか。
  114. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 昨年の移行時点から三年間、各種の雇用対策に関する助成制度を含めまして対策法律が期限が三年間で切れます。三年以内に全職員の再就職をやるということで今一生懸命やっておるところでございまして、三年たちますといわゆる対策の根拠法が期限が切れるという問題が出てまいります。一人も残さず三年以内に解決したいというふうに私は考えておりまして、あと二年間頑張りたいと思っております。
  115. 堀昌雄

    堀委員 この皆さんは恐らく北は北海道から南は九州まで居住が広がっているんじゃないか、こう思うのでありますけれども、この皆さんあと残された二年間で全部が再就職をされれば私大変結構だと思いますし、そうありたいと願っておるのですが、それがもしそうできなかったときは、あとはどうなるのですか。もう年金年齢になっている方は年金ということになるでしょうが、年金との間に差がある年齢の方は、もし仮にそうなった場合にどうなるのでしょうか。
  116. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 法律上の身分といたしましては、そのことについて特段の規定はございません。したがいまして、できるだけ早く、期限は三年以内ということで再就職を一生懸命やるという以外に私の道はないわけでございます。
  117. 堀昌雄

    堀委員 そこで総理、実はそういう厳しい条件、五千二百人が四千七百七十三名になったという、大変いいことですが、しかしあと四千七百人という者が二年間に再就職ができるかということについては、私は余り楽観をいたしていないわけでございます。そうしますと、この人たちの雇用の場を積極的に清算事業団がつくれるような方向で問題を考えるということは、単に土地の処分の問題だけではなくて、国鉄清算事業団にとって大変重要な部分になる、私はこういうふうに考えておりますが、その点、総理、いかがでございましょうか。
  118. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず今までの従来の経過からお話がありましたが、確かに清算事業団という言葉から来る議論は、まだ立案以前に議論したことがございます。何かいかにも先行きの活力が見えないじゃないかとか、あるいは余剰人員という言葉にもそういう議論をいたしました。といって余った方々というのもいかがかというような議論までしたことがございますが、おっしゃる意味は十分理解できます。  今の事業団そのもので、私も法律の中身を詳しく、あるいは法律改正の要ることもあるかもしれませんが、いわば再就職の場所を既存の法人に対していろいろな角度からお願いするのでなく、みずからが法人設立の、法律がどうなっているかちょっと知りませんけれども、そういうことを行いつつその四千数百の方々の明るい行く先を模索していく、こんな趣旨じゃなかろうかと思うのでありますが、貴重な御意見として十分検討させていただきたいものだというふうに考えます。
  119. 堀昌雄

    堀委員 事業団の法律は、杉浦参考人、土地その他についてはそれの処理の仕方によって法人を使ってその土地の処理を進めるということも可能なように私は理解をしておりますが、いかがでございましょうか。
  120. 杉浦喬也

    ○杉浦参考人 お答えいたします。  法律の規定がございまして、出資し得る会社がどういう対象のものかということで、中身は法律に書いてございますが、出資会社ができることになっております。
  121. 堀昌雄

    堀委員 今お答えのように、現物出資をして法人をつくることが可能なようでございます。この法人は、ちょうどNTTのあの一時期のような清算事業団一人株主の法人ができる、こういうことになろうか、こう考えております。  そこで、この法人で一種の借入金の財テクを少し行ってみたらどうだろうかということでございます。実はこの国鉄の債務につきまして資料をいただきました。長期債務利率別残存期間内訳表というのをちょうだいしたわけでありますけれども、国鉄の債務の中では一番高い金利が九%でございます。この九%は六十五億円しかございませんで、五年以下という残存期間でございます。その次が八・九から八%、これが合計一兆八千九百三十七億円ございます。これは残存は分布が非常にばらばらでございまして、一番多いところは十六年から二十年というところに九千八百十九億というものがございます。もう一つ、もう少し高いところが七・九から七%でございまして、これが合計で七兆三千百九十一億ございます。全体の平均利回りが大体七%程度だと聞いておりますので、この七%以上で合計九兆二千百二十八億で全体の四六・二八%になるのでありますが、これをひとつ一種の繰り上げ償還のような形の処理をいたしますと、今の国鉄債務の償還の年間九千億円でございますか、その中で約三千億ぐらいは金利の負担が減る。ちょうど国鉄が予定をしております土地売却収入の予算が三千億でございますから、まず清算事業団が政府保証債を発行いたしまして新たな資金を調達をしてその資金によって現在の高い金利の部分を繰り上げ償還をするということにすれば、民間会社が土地を売らないで土地を保有してこれを有効活用しようというのが私の考えでございますから、その際に土地を売ったと同じような三千億ずつ債務償還に充てられる資金がこれらの長期債務の借りかえによって効率的に生まれてくる。  もちろんこのことによって資金運用部その他にも影響が及びます。しかし問題は、その他のところは正常な業務が営まれておるところでございまして、金融機関にしても資金運用部にしても高いときのものが繰り上げ償還になったから確かに総体的な収益に影響するかもしれませんが、国鉄清算事業団の場合は、さっき申し上げたような累積債務国と同じで、利子払いのためにまた借り入れをして利子を払っているというこの形が続いていくのでは、この国鉄清算事業団は少なくとも国民に大きな負担をかけることになることは間違いがありません。ですから、財確法の中で国債を減らしていくということも大変大事でありますけれども、問題は、財政全体の将来展望の中に立って、そのような国民に負担がふえるやり方を、選択肢があるのならばそういう選択肢を使って、新しい試みではありますけれども、今の清算事業団債によって手に入れた費用で現在の高利率のものを償還をするということがまずこの問題の入り口で非常に重要な問題だ、私はこう考えておりますが、竹下総理は長く大蔵大臣をおやりになっていてこういう財政、会計にはお詳しいわけでございますので、これはやはり政治の決断の問題だと私は思っているのであります。  事務当局皆さんにすると、ここはこうなってこうなってこうなっているからそれはなかなか大変だとか、いろいろあるかもしれません。しかし、本来政治というのは、清算事業団の新しく雇用の場を待っておられる人たちに対しても重要であるし、国民全体が国の負担としてそれを背負い込むということも非常に大きな問題でありますので、いろいろ手続上は問題があるかもしれませんが、私は可能な処理ができるという判断をいたしておりますので、この点についての政府側の見解を、これはひとつ大蔵大臣でも結構でございますし、総理からでも結構でございますが、承りたい、こう思うのでございます。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう少しお持ちになっておられます構想を伺ってから申し上げた方が本当はいいのかもしれませんが、今の段階でちょっと気がついたことだけ申し上げますと、例えば、事業団が持っております債務の繰り上げ償還ということになりますと政保債がございます。これは恐らく現在額面以上で流通をしておりますから、その際どういう償還をするか、償還の方法いかんによりましては、事業団が今後債務を負うことが非常に難しい状況になるのではないかと思います。恐らく、当然額面以上で買い上げませんと投資家には不利になるのではないかという問題があろうかと思います。  それから政府資金につきましては、実はこれは内輪のことでございますけれども、大変高い金利のときに、例えば定額貯金等々の裏腹になっておりますから、高いもので事業団に借りてもらっておる。そういたしますと、それが返ってきますと、これはけさもお話のありました高いコストの運用先に資金運用部が払えないという問題になりまして、結局それを資金運用部の他の資金でカバーしなくてはならぬ。御承知の問題でございますけれども、そういうことをさしずめちょっと気がつきました。
  123. 堀昌雄

    堀委員 おっしゃるように、オーバーパーで回っているに決まっておりますから、その分はそれを額面で繰り上げ償還は困難でございましょうが、一回そこでやっておけば、これは長期に、さっきも申し上げましたように十六年から二十年というところが大変たくさんございまして、八・九から八のところが九千八百十九億円、七・九から七というところが一兆三千六百十七億円、合計いたしまして二兆三千五百億ぐらいざっとここにございます。ですから、長期のものがもし多少オーバーパーで償還をいたしましても清算事業団にとっては大変金利の負担が楽になる、こういうことになろうかと私は考えておりまして、それが一つ。  後の構想についてやはり申し上げた方がよかろうと思います。実は子会社の設立の目的でございますけれども、処分の中核的受け皿として、かつ株式売却を通じて債務返済を行うということが一つでございますし、事業団所有地の散逸を避けるとともに、事業団の中核を担う職員に雇用の機会を与えるということが一つ基本的な考え方でございます。そうして、この子会社の担う役割と条件でございますけれども、設立後、可及的速やかに上場ができる方向を目指す。現行のルールでは七、八年はかかると思いますけれども、そういう形で株式の上場をする。また、このための前提として、高収益、高成長会社の実現を目指さなければならない。三番目に、今のものの前提として、現物出資による会社を設立する。最後に、設立後、現物出資以外の用地について、事業団から譲渡または貸与を受け、不動産開発を行うということで、少なくともこれは完全な民間の会社として、経営者の皆さんも民間から来ていただいて御協力をいただきたい、こういう考えでございます。  実は国鉄清算事業団の土地処分の委員会委員長を平岩経団連副会長がなさっておりまして、御相談に参りました。一体この国鉄の土地を処分をして七兆七千億という金を得ようということのようですが、ちょうど累積債務国の債務をセキュリタイゼーションによって処理をするというのは今日の一つの方法として考えられておるところでありますので、まずこの土地をそういうふうな民間の子会社に出資をいたしまして、そうしてそこでその会社自身が株を発行する、あるいは先に株に転換できる転換社債を発行する等いろいろな手段を通じて資金を調達しながらそれを今の債務の償還に充てていく、いろいろな方法を通じて実はこの新しい民間の子会社はかなり有効な仕事ができるだろう、私はこう考えておるわけでございます。  設立のための基本的考え方でございますけれども、将来の株式処分を考えると、子会社はできるだけ規模を大きくし、既存の上場大手不動産会社の規模と遜色のないものにするということでございます。これはどの程度かと申しますと、現在、大手の不動産会社、三菱地所、三井不動産、住友不動産、東京建物、東急不動産というのが大体大きいところでありますが、この三菱地所の事業用土地の時価評価額は八兆四千億円でございます。これは六十二年三月時点であります。そうして、業績は税引き利益で二百四十七億二千万円、株式の時価総額は二兆七千三百十八億円、株価収益率はこれでいきますと大体一一〇倍程度に今なっているということでありますが、この一番大きい三菱地所と遜色のないような出資を受けた民間会社にするという考え方を御提案したいわけであります。このぐらいになりますと、実はこの会社、負債はないわけであります。そうして、その土地の有効利用を自治体とも協議をし、合理的な判断で処理ができるということになりますから、さっき申し上げました土地の乱売あるいは利用の乱立といいますか整合性のない利用というようなことで土地を切り売りいたしました場合には問題が起きてまいりますけれども、今の場合にはこれは極めて合理的な処理になるのではないか。  私先日関西電力の芦原名誉会長にお会いをいたしましたときにちょっとこの話をいたしまして、大阪でも梅田に大きな操車場跡がある、あれもそういうふうに民間会社が保有をすれば計画的な開発ができるのじゃないかと思いますと申し上げたら、芦原さんは、いや堀さんそれは大変いいことだな、あれがまた切り売りでもされて乱開発になったら我々はとても困るなと心配していたのだけれども、それは堀さん大変いい考えではないかというふうに芦原さんも私のこの提案に答えていただいておるところでございます。  この設立子会社の問題をもうちょっと申し上げておきますと、大量の現物出資を全国的に一時的に行うことは不可能であり、一社に限定することは難しい。一つだけつくるというのは無理だというふうに考えておりまして、子会社は、事業団のすべての用地を取得し開発することは必ずしも望ましくなく、むしろ民間業者に用地開発の機会を与えることが必要である。中心になる部分は新しい会社がやるといたしましても、その他につきましては民間デベロッパーと協議をしながら対応するということがいいのではないか、こういうふうに考えておりますし、現物出資につきましては、(現物出資は通常、税法上の関係から、設立時に限られ、追加現物出資はできない。現物出資の対象物件については、事業団全体の土地処分、利用計画に照らして整合的に選択される必要がある。大量の土地を一括現物出資しにくい。こういうようないろいろな問題もございますので、ここらは十分配慮をしながら適切な対応を講じたらいかがだろうか、こんなふうに思っているわけであります。  そこで、設立子会社の事業の展開から見たところでありますけれども、まず開発不動産の種類は、ホテル、商業ビル、オフィスビル等でございまして、事業の収益性、成長性、安定性等を考慮すれば、総合的な開発事業が適当である。二番目に不動産マーケットでございますけれども、現在の日本の不動産マーケットからすれば、東京、大阪中心の子会社設立が考えられ、その他名古屋、福岡等についても検討が必要であろう、こういうふうに考えております。そうして、地価高騰地域、子会社方式の必要性の高い特定地域というものがあろうかと思いますが、土地処分形態の中で、子会社方式の必要性から見ると、汐留、梅田駅周辺、大宮等の地域の事業開発を目的としたさらに子会社の設立が考えられる。こういうふうに見ておるわけでございます。そういう意味で、考え方としては、東京なり大阪なりあるいは福岡等を含めて規模の大きい民間会社を設立するということにしてまいったらどうだろうかというのがその具体的な提案の中身でございます。  ここで一つ、この例示といたしまして、汐留地区の現物出資を想定した子会社の収支試算というものを実は取りまとめておるわけでございます。この汐留地区土地利用の想定といたしまして、国土庁大都市圏整備局作成の汐留地区整備イメージというのがございますが、これを用い、各ブロック面積を概略計測し、各ブロックの容積率を一〇〇〇%と想定する。ここは非常に重要でございまして、容積率を一〇〇〇%くらいにいたしませんとせっかくの非常に有効な土地利用がうまく行われませんので、まずこれの容積率を一〇〇〇%とするというふうに想定をいたしまして、そういたしますとオフィスビルその他のネットの用地が十二万二千平米ということになりまして、有効率が六二%になります。道路用地が四万六千平米になりまして、公園、オープンスペース等二万八千平米、合計十九万六千平米というのが汐留の土地利用の今の想定のプランでございます。そして、ブロック開発についても細かい計算が出ておりますが、時間の上で省略をいたします。  こういうことで、収入・費用原単位等いろいろ計算をいたしておりますけれども、結論として、資金計画でございますが、資本金が一千億円、現物出資、そうして建物を建てました敷金は賃料の二十五カ月、借入金金利は平均五・八%、現在、公的金利五・五%で四〇%、市中金利六%で六〇%ということで、運用利回りは平均五・五%くらいになるのではないか、こういうふうに見ておるわけでございます。  以上、株式の上場可能の時期、株式売却のテンポ、株式売却による事業団の取得金額等、いろいろ計算をいたしておりますが、これは資料でまたごらんをいただくことにいたしまして、概要今のような考え方でひとつこの主要な土地を企業化をして、そうして、そこで入ります収入だけでなくて、ここに建ちましたいろいろなものの中に、例えばメンテナンスのための会社も必要になりますでしょうし、いろんなものができてまいりますし、かなりの大規模でありますから、これに、今残っておられる四千七百七十三人でございますか、そういう方たちをひとつ雇用の場をつくって働いていただくということになれば、これはまず第一の雇用対策の問題は解決をいたしますし、土地を売っておりませんから、十年、二十年、三十年と長期のタームで考えていきますならば、やはり土地は日本経済の拡大とともにその土地の有効利用は拡大をするわけでございますから、そういう意味で、時間を限らないでかなり長期に考えれば日本の大都市における土地問題に対する一つの非常に有効な解決の手段にもなるし、あわせて、今の土地がそのまま残ってまいりますから、そこでいろんな有効な活用の中でこれらの会社の発行します転換社債やあるいは株式は非常に大きなプラスを清算事業団にもたらす、こう考えておるわけであります。  以上、一番大きな問題は借りかえをする問題、それから二つ目は、今申し上げたような民間企業を設立することによって土地の有効活用を図り雇用対策にも資する、こういうのが基本的な柱でございます。  さっき大蔵大臣お話しになりましたように、確かに今の資金運用部にも穴があきますし、いろいろ及ぼすところは広いと思います。しかし、金融機関といえども、実は今国債が特例債をだんだん収縮をしていきますから、そういうことになりますと、これからは政府保証債を含めたそういう債券というものはかなり需要がある問題でございますので、相対の借り入れということの必要はなくて、債券化によって資金を調達するということは、今、私、御案内のように、総理にも御協力をいただいて国際金融経済研究所というので金融の国際化のために努力をいたしておりますが、そういう世界的な金融マーケットの中心になってまいります東京なり大阪なりというところでこういう事業を行うことは、そういう問題との関連でも極めて重要であるし、適切な対応になるのではないか、私はこう考えておるんでございますが、以上の考え方についてひとつ大蔵大臣または総理大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変大きな構想で、恐らく、私は考えますのに、いろいろ資産の処分の審議会なんかでも今後の一つの構想として検討していただくべきことではないかと思うのでございますが、基本的なことは総理がお答えになられると思いますので、先ほど私が申し上げました政保債の問題あるいは政府資金の問題のほかに、実は、ただいまのお話を承っておりますと、十三兆七千億円、八千億円でございますか、これが土地を処分された後に政府が引き継ぐべき債務というふうに一応想定をされておるわけでございますね。その気持ちの中にもう少しうまく土地を売ってもらえるかもしれないというような気持ちもなきにしもあらずでございまして、十三兆七、八千億円というのは一応仮定の数字になっておること、御承知のとおりでございます。そこで、今の堀構想を実現いたすとしますと、そこを一遍踏み切らなければならないだろう。これはどうしてもそれだけのものは政府へ残る。したがって事業団は身が軽くなって繰り上げ償還をして出資をする、こういうことでございますから、その十三兆七千か八千億の踏み切りが一つ入り用だなということをもう一つ気がつきましたので申し上げまして、しかし、これはいずれにしても金融の側面でございますから、基本的な構想につきましてのお答えは総理からしていただく方が適当かと存じます。
  125. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今お話を聞いておりまして、確かに今大蔵大臣からもお答えありましたように、国鉄清算事業団の抱える長期債務の償還のためには当面土地の売却が最も有効な手段だ、こう一応決まった。そうして、私もいつも矛盾を感ずるわけでございますが、あのような地価の高騰が行われ、そして今、国公有地及びそれに準ずる事業団の抱えておるものは、公用等は別といたしまして、これは当面凍結する、売ってはいけない、こういう指導をしておるわけです。だから、基本方針と今の当面施策とに本当は答弁のときにも整合性が時々なくなる、こういう感じを持っております。そうなると、それをいわゆる現物出資等にして子会社というものに出資するという、細かい要件はございますでしょうけれども、その道は事業団に開かれておるとすれば、それが現物出資となり、そしてそれが株式となり、あるいは転社の発行も仮に行われるといたしますならば、それは土地価格そのものの高騰とは無縁の存在になって、結果として最終的にもくろんでおるいわゆる長期債務の償還に充てられる、こういう筋道は、私も聞いているうちに、そのとおりだな、こういう感じがいたしました。  したがって、今土地処分の方法については運輸省、事業団で検討しておりますが、さて検討委員会でそこまで踏み切られる課題かどうかはちょっと私もにわかにはわかりませんが、今のような素直な物の考え方で猛勉強をさせてみなければいかぬ課題だな、こういう感じは私も素直にいたしたわけであります。そのことが事業団子会社への再就職問題、それは中にはそういうことの不得手な人もいらっしゃるかもしれませんし、全部が全部ただ算術的にというわけにもまいりませんでしょうが、それにつながることは事実であろうというふうに思います。  と同時に、いま一つ、いわゆる借りかえ、繰り上げ償還等による措置の問題につきましては、確かに大蔵大臣言われたように、繰り上げ償還と申しましても、今既にいわゆる政府保証債の方は転々しておるという問題が一つありますし、それから郵便貯金と年金の有利運用計画にそごを来す。だから、民間銀行ならそれをリスクで時にはやらなければならぬ場合もありますが、その辺の調整というのは、ちょっとにわかにこれはこうではどうでしょうかというだけの答えを用意するだけの心の準備は私もございませんでしたが、大筋今申しましたような考え方の中で猛勉させてみなければならぬ課題だというふうに感じた次第であります。
  126. 堀昌雄

    堀委員 もちろん今私がここで申し上げすぐお答えをいただこうとは思っていないのでありますけれども、要するにいろいろなところで今のやや硬直化しておる行政対応をできるだけフレキシブルにして、効率的に資金が動くようなシステムの中で国民の負担を減らすのはどうしたらいいのかというのが、ここずっとの財政状態の中で最も重要な課題だと私自身は考えておるものであります。そのためには、まずこれから将来五十年百年たちましても東京の地価がどんどん下がるというようなことにはなかなかなりにくい、日本経済が大きくなるにつれてやはり幾ばくかは土地の値段も上がっていくでありましょうし、そういうときに、売り払ってしまうよりも、国民の資産であるものを、形式は清算事業団の子会社のようになっておりますけれども、これは国の会社と考えていいわけでありまして、そういう意味で土地の有効利用であると同時に地価を上げないで対応ができるということは大変合理的である。大体こういうときにすぐ処分という言葉が出るのでありますけれども、処分をしたら後はないのでありますが、処分をしないでそれを有効に使うことによって実は処分をした以上の収益、それが上がるようにするのが私ども経済を担当しておる者の発想の原点ではないのかと考えておりますので、きょうはこういう構想をひとつ総理、大蔵大臣、杉浦事業理事長に聞いていただきまして、総理も今お答えになりましたように、ひとつ皆さんで御勉強していただいて、いい成果が生まれることを期待いたしたいと思うのでございます。  次に、一つ問題がございますのは、さっき実は大蔵委員会の後半で申し上げたことなんでありますけれども竹下総理は、ことしの施政方針演説の中でも、今度の税制改革は国民理解と納得を得て行いたい、こうおっしゃっておりますし、そのことは宮澤大蔵大臣も実は同じようにお話しになっているわけでございます。私は一月二十九日の当委員会で、この問題については国民理解と納得を得るためには入り口と出口を決めないでいただきたい、こういうふうに大蔵大臣に申し上げまして、大蔵大臣も御理解をいただいたと思うのでありますけれども、これは総理はお聞きになっておりませんので、この入り口と出口を決めないで国民理解と納得が先だ、こういう問題についての大蔵大臣のお考えをもう一遍ここでちょっと承りたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま堀委員の言われましたことは、午前中にお尋ねがございまして私がそれについてお答え申し上げましたことの概要という意味でございますか。
  128. 堀昌雄

    堀委員 それで結構です。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 午前中に堀委員からいろいろお尋ねがございましたことの中で、今後我が国の高齢化社会を考えてみると、医療の問題にいたしましても年金の問題にいたしましても非常に問題が多い、政府としてはおのおのの問題について昭和六十五年あるいは昭和七十年というようなことを目標にして、一元化であるとか統合であるとか、いろいろなことを検討していることはわかっているが、実はそれらのことはもう少しテンポを速める必要があるのではないか。また、昭和六十五年というのは、我が国の今一種の未解決の問題、例えば国鉄の共済であるとか医療の問題であるとか、その他いろいろなことで一つの大きな問題に逢着する時期にかかっていると思う。そういう中で、政府はそういう問題の将来像を明らかにせずに一般間接税というようなものを提案する用意をしておるのではないか。それについては、やはりもう少し将来像をはっきりさせた上で、そこまでは堀委員おっしゃいませんでしたけれども、そのような将来の福祉、あるいはもっと具体的には医療であるとか年金であるとか老人であるとか、そういう問題を処理する上においての国民的なニーズというものとの関連で問題を提起すべきなのではないか。したがって、その点でそういう問題をはっきりさせて政府は税制改正を提案するのならすべきである、こう言われたと思います。  それに対して、私は、政府の立場といたしまして、従来から、高齢化社会が到来いたします、それについて若い人に大きな負担を背負ってもらわなければならないことが明らかでございますから、今からそのような社会の費用は広く薄く負担をしてもらう制度を考えておく必要がある。シャウプ税制以来四十年間たちますと、変えなければならないということも明らかでございますが、同時にその時点は十何年先の将来が展望できる時点でございますから、この際そういう問題を含めて御提案をいたしたい。政府として、堀委員の言われますほどのくっきりした将来像を今御提案できるわけではございませんが、六十五年なり七十年なりにはそれは具体的なプログラムとしてはっきりさせたいと思っております。したがいまして、この時点においてそれを考えました上で税制改正というものを御提案できないかとただいま政府税調等々で検討をお願いしているところでございます。要するに、堀委員の言われましたことは政府としても十分理解のできるところでございますが、あと何年かいたしませんと、堀委員の言われますほどに具体的な将来像が描けない。描けませんが、そういう問題に対処しようとする意識においては私どもも変わっておらないことだと思います、ほぼそういうふうにお答えを申し上げたと思います。
  130. 堀昌雄

    堀委員 そこで総理に申し上げたいのでありますが、国民理解と納得ということは大変難しい問題があると思っております。今一般的に言われておるのは、不公正税制をまず是正をしたらどうかという問題が至るところでよく出ておるわけでありますので、私はこの間から与党の皆さんあるいは山中税制会長とも御相談をして、ひとつ不公正税制の問題を徹底して取り上げるための税の小委員会を当委員会に設けていただいて、そこから税制論議に入ったらどうだろうか。  いろいろな問題がございます。一番トップに医師の税制というのが出ておりまして、私も医師でございますからこの医師の税制については大いに関係があるわけでございます。しかし、それなら医師の税制だけが問題かというと、必ずしもそうではないのでありまして、例えば証券会社の外務員などというものの所得のあり方については実は標準率その他の処理をしておるのではどうも適正な処理ができないとか、実は作家の皆さんの中にも大変まともに申告をなさる方もあれば大抵の日常の費用は全部経費になさる方もある。いろいろなところにそういうまた氷山の下にある不公正税制のような問題もございます。  この前、京都市が寺院から税金を取るという話がございまして、これは京都市会では全会一致で実は決まったことでありますけれども、お寺の皆さんが抵抗してこれが終わりになったのであります。これらの寺院に参詣に行く。言葉は参詣でありましても、これに行かれる方の非常に多くの部分というのは、宗教心でお参りに行っているわけではなくて、日本の極めて貴重な文化財を見学したいということで行っておられるにもかかわらず、実は宗教活動だということでああいう決着になったようであります。こういう問題も、私はやはりそういう税の小委員会基本的な宗教活動とは何ぞやという問題の中からきちっとしたけじめをつける税制の処理が必要だと考えております。  数多くの不公正税制があることはもう私どもよく承知をいたしておりますので、まずそういう不公正税制の論議を進めてまいりたいということで与党の皆さんにも御相談しておりますし、野党の皆さんも、これはひとつ政府対我々ではなくて要するに議員同士でディスカッションをやりましょう。そして、この委員会には関係者は課長以下の皆さんに御出席いただいて、我々もすべてのことがつまびらかにできておるわけではございませんので、専門家に意見を聞きながら、与野党、あるいは野党同士もあるかもしれませんが、そこでいろいろと論議を尽くして不公正税制を正すための手だてを積極的にやってまいったらどうか。これは、当然小委員会でありますから閉会中審査も可能でありますので、この会期が五月二十五日に終わっても継続して処理ができる、こう考えておるわけでございます。  ですから、そういう方向を含めて考えるのでありますが、私が午前中に申し上げたのは、いろいろな改正問題というのは六十五年から社会保障としては費用の負担が増加する見通しでございます。特に私はきょう午前中に、老人保健法について現在の国の負担割合というのは少な過ぎるのではないか、国が二割、地方が一割、あと七割を健康保険と国民健康保険で負担をするというのはやや適切を欠く。しかし、健保連の皆さんが言われるようにこれは全部税金でやれなどということも、私どもは了解ができません。そこで、とりあえず国が五〇%、地方一〇%、その他の皆さん方が四〇%という形でならば、この医療保険の問題というのは相当な期間にわたって維持ができるのではないか。そういたしますと、六十五年からは老人保健に対して現状よりも三〇%の負担割合がふえる問題がございます。  さらには、年金問題についても、昭和六十年二月の予算委員会で提案申し上げたように、国民年金というのが実は定額の支払いで、それが全体の基礎年金の三分の二で、国庫負担が三分の一でございますけれども、私は年金についてもナショナルミニマムはやはり国の責任でやるべきだ。国民年金であろうと被用者年金であろうと、基礎年金は皆さんあって、その上に自助努力として保険料を積み立てられたものが二階建ちになるようなシステムにするのが憲法十四条に定めるところではないのか。  こう考えますと、それにも費用が要ります。そうして、そういう費用は六十五年から生じてくるのでありますから、まず今の税制改革の中で不公正税制を正す問題とあわせて、所得減税が先行して十分ではないのか。そうして、六十五年ということは、六十四年の通常国会でその次の問題の処理ができればいいのではないか。ただし、過去の例でありましても、要するに減税そのものの先行はいいけれども法律は同時に処理をしてくれというような御意見もありますが、そういうことはまたこれらの税の小委員会で与野党の皆さんで十分論議を尽くした上で考えればいいことではないのかな、こう考えております。  自民党の河本先生は十兆円の減税をやれとかいろいろおっしゃっておりますが、ちょっとそれは日本経済の今の状況では大変困難なことではないか。やはり、私どもが要求をいたしておりますような一定の理解できる範囲の所得減税、それはこの前私が予算委員会で申し上げた五〇%、五段階のような考え方、あわせて、けさはちょっと年金問題に触れて個人年金についての税の問題、これはアメリカ、イギリス、カナダ、西ドイツその他でいずれも最近税制上の配慮がされておりますので、これらの国では入り口で配慮しますが出口では税金を取っております。まあ取っていない国もありますが、入り口で税金をできるだけ低く下げて、個人年金の加入者がふえて、そうして出口ではもう所得が一定の段階で年金の状態になっているのでありますから、私はやはりその方が国民のためではないかなという考えも持っております。そういうことで、減税先行でひとつこの問題の処理をされれば、六十四年経済というのはさらに加速がして、今の六十五年の赤字特例公債の問題についてもいい影響をもたらすと考えておりますので、この点については総理はどのようにお考えになっておるか、ひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  131. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、基本的に当委員会の小委員会を活用して不公平税制の議論からかかっていったらどうだ、この提案でございますが、今ちょっと思い出してみまして、五十二年、五十三年、五十六年、その三つとも戻し税でございましたが、最初は前年度、過年度を対象として戻すというので大変な煩雑な事務で、五十六年は今年度のもので年末調整で戻してやった。しかし、戻し税というのはやはりいかがなものかということからして、次の年度に少なくとも論理構成が続いておる減税というようなものが、事業主婦控除の先取りみたいな形でございましたか、行われたというふうに記憶しております。したがって、小委員会でどのような運営をなさるかというのは、これは国会あるいは当該委員会そのものでお決めになることでございますから、私はただ過去の経験を今申し述べたにとどまらせていただきます。  そこで、今度はいわば税制改革のあるべき手法としての減税先行ということ、本当は減税先行というのも定かな定義は実はないのではないかなと思うのでございます。が、言ってみれば一つの議論としてこの姿かたちというものは示して、その施行日によって先行の問題と後行の問題ができてくる。それもかつて例もあったことでありますけれども、それらも含めて小委員会で議論してみたらどうだという議論は、それは当該委員会へお預けするといたしましても、今の減税先行の問題というのが直ちにもって六十五年脱却のための一つのプラスの面になるのか、あるいはとりあえずの財源から見た場合にそれを若干延期するような状態になるのかということは、まだ議論してみなければわからないところであろうかと思うのであります。  が、基本的に、おっしゃいました、たしか国鉄共済が六十四年まではお互いの御協力をいただいてめどが立っておるがその先がどうにもならぬ、それから医療問題がやはり六十五年給付と負担をどうするかという議論が残っている、それから年金に至っては七十年に一元化します、絶えずもう少し早めたらどうだという御議論もいただいておりますが、いわゆるこれだけのものが必要になってくるということを示した上での議論というものもあり得ると私も思いますし、予算委員会等においてもそういう中長期展望をいま少しは具体的なものを出したらどうだという意見もいただいておりますが、逐次そうしたものを問答しながら今出してきておるという状態でございますので、きちっとしたものを今出せるということはなかなか困難だと思いますけれども、これはやはり議論を積み重ねていかなければならぬ問題だろうというふうに考えております。  そこで、今のこの減税問題ということになりますと、最終的には今税制問題の各党協議するということが決まっておる段階においては、私から極めて具体的なお答えはできませんが、おっしゃった意味は私なりに理解をさせていただいたということにとどめさせていただいておきます。
  132. 堀昌雄

    堀委員 実は、五十二年、五十三年の戻し減税というのは、私が社会党の政審会長をいたしておりまして、今議員としてここにおります早川勝君が私のスタッフで、要するに減税というものの中では、一般的な減税をいたしますと、限界税率の高い者がたくさん持っていきまして限界税率の低い人は幾らも受け取れない、言うなれば所得の高い人がたくさん減税財源を持っていって一番所得の低いところにいかないということで、実は定額減税というものを考えたわけであります。これは単に定額減税だけではなくて、マイナスタックスということで、税金を払っていない皆さんにもひとつ逆に持っていこうというアメリカで一回実施したことのあるマイナスタックスを入れてやりたいと思ったのですが、残念ながら日本ではソーシャル・セキュリティー・ナンバーのようなシステムが確立をいたしておりませんので、マイナスタックスはできませんでしたけれども、定額減税で戻し減税というのを実は二年間やりました。  当時主税局長の大倉さんが私の事務所へ来られて、先生、これは木に竹を接いだような税制ですねとおっしゃったので、私は、木に竹を接いでいるからいいのじゃないですか、法律があるときは減税が働くけれども法律がなくなったらもとの税体系に戻るという意味では、要するに過去の大幅減税をやったものが後年度に大きな負担をもたらしたという経験から見ても、そういう発想で戻し減税をやったことでありますが、私が今考えておりますのは、少なくとも年末調整に間に合う時期までにひとつ減税の方の処理をぜひやれば、六十三年の減税が可能でございます。現実には年末調整その他の方は来年三月の確定申告ということで減税の処理は及ぶわけでありますから、時期はそういう意味で限られておりまして、大体私が承知しておるのでは十月末までに法案が成立すれば可能だと考えておりますが、技術的な問題ですから、主税局長、おしまいの年末調整可能な減税法案の法案成立時期というのはどこなのか、ちょっと答えてください。
  133. 水野勝

    ○水野政府委員 年末調整は十二月の最後の給与を支給するときまでにするわけでございますが、膨大な源泉徴収義務者、またその背後にございます何千万人のサラリーマンの方のための処理でございますから、かなりな日数、事務量を要する、そうした所要の書類の印刷を手配することから始めますから、それは相当な前倒しの事務日数が必要であるということを聞いてございます。  ただ、具体的にはこれは国税庁が執行することでございますので、正確なことは、今申し上げて間違えてもあれでございますので、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  134. 堀昌雄

    堀委員 今時間がありませんから、今さら国税庁を呼んでということにはなりませんが、大体十月末で処理ができる、私は過去の経験からそういう認識を持っておりますので、まずそういうことでひとつ減税先行、ただし、今私が言っておりますことは、そうだからあとはどうでもいいのではないわけでありまして、今申し上げてきたような六十五年における新しい財政負担を含めて何らかの税収が必要だということは、当委員会に所属しております者としては当然考えざるを得ないことであります。  ただしかし、その前に、当委員会で不公正税制の是正をきちっとして、国民皆さんがなるほど不公正税制是正で取るものは取ってこうなったなという認識の上に立ってでなければ、次の段階に進むのにはかなり問題が残ろうか、私はこう考えておりますので、そういう問題を含めて、私どもは当委員会としての本来の任務をこれから進めてまいりたい。  この前、委員長にも御相談いたしましたし、税の小委員長中村さんにも御相談いたしました。今山中税制調査会長は大変お忙しいということですから、それでは毎週月曜日、みんなでひとつ頑張って、月曜日に税の小委員会をやるのなら山中さんどうですかと伺ったら、月曜日は税制調査会もやってないから月曜日ならいいだろうというようなお話でございましたので、山中さんも参加をしていただく中でそういう税の小委員会で不公正是正をきちっとやっていきたい。  私どもの党の土井委員長も先般福岡で不公正税制について公開討論会というようなことを言っておられましたけれども、公開討論会ではなくて、専門家が寄って議員同士で論議を詰めていくというのは私は大変重要だと思いますし、そこにまた参考人にたくさん来ていただいて、この間京都に出張しておりますときに、ある議員の方から、堀さん、参考人の意見聴取というのは東京だけでなくて地方にも小委員会が行ってやったらどうですかという御提案もありましたから、大変結構です、税制調査会も地方に出て参考人の意見を聞いておられますから、それはそのようにして国民の広い意見を聞いて、私が前国会で申し上げたように、アメリカの税制改正をモデルとしながら、数多くの参考人の意見を聴取し、あわせて議員の中でディスカッションをする過程を通じて、不公正税制をかく正すべしという結論がまず先になれば、税制改革の問題というのは極めて厳しい条件がある、私はこう考えておりますが、そういう手だてで進めてまいりたいと考えておりますので、ひとつ与党の皆さん委員長を含めて御協力をお願いしたいと思います。  最後に、あとちょっと時間がありますので、これは当委員会のマターではないのでありますけれども、実はこの前、三月二十五日でございましたか、広島高裁が、広島一区についての先般の選挙における定数訴訟が出されておりましたことに対して、二・九九の範囲は違憲ではない、こういう判決がおりております。しかし、この前のあの定数の問題のときには、抜本改革を含めて定数問題を考える、こういうことになっているのでありまして、またこれまでのようなやり方で定数是正をやるなどということは決して望ましい方向ではない、私はこう考えております。  私は、五十五年に公職選挙委員会で鈴木総理に、我々がやっております社会科学の問題というのは実験ができません、私は医者でありますから、自然科学では実験で当否を確認できるのでありますが、社会科学はできませんが、我々と同じようなタイプの民族が既にそういう制度を行っていてそれがうまくいっている制度というのはある意味で実験済みの制度だから、そういう意味でひとつ西ドイツの比例代表小選挙区を導入したらどうでしょうか、まず導入したときに法律で施行は十年先と決めましょう、十年先と決めれば、現在の皆さんが半分か三分の一になって、新しい人はそういう制度を考えて出てこられますから、十年先施行でいいのではないでしょうかと言いましたら、鈴木総理は、堀さん、それは十年は長過ぎますよ、五年でいいんじゃないですかとおっしゃったけれども、何もしていただけませんでした。それならそんなことをおっしゃらなかった方がよかったと思うのであります。  竹下総理は選挙法については自民党内で一番お詳しい方でございまして、ひとつ竹下総理のときに政党本位の選挙制度を実現して、違憲判決などの起きないように。もう法律が通っていましたら、施行が十年先でも、最高裁は違憲判決をすることはありません。既に国会は法律を決めておる、ただ施行が延びておるだけだということで、違憲判決のもたらされるおそれはありません。  そういう意味で、ひとつ日本の将来に対して非常に重要な問題でございまして、今の金帰火来なんということでやっておりましたんでは皆さんに勉強する時間がございません。余り勉強していると今度は落選するという問題が起きますので。やはり我々は、大野伴睦さんではありませんが、猿は木から落ちても猿でありますけれども、我々は落ちたらただの人間で何ら発言力がなくなるわけでありますので、どうしても選挙は重要でありますが、それには西ドイツの比例代表小選挙区制というのは適切な方法である。同時に政党法をつくって、西ドイツでは実は所属議員の数に応じて国が政党に政治活動の費用を与えているわけであります。この間から自由民主党では政治資金規正法の改正をお考えになったようでありますが、この国会には出ないようでありますけれども、財界の側はひとつパーティーを自粛してくれという声が大変高いのでありますが、新聞を見ておりますと十億円ぐらいのパーティーがここのところ連続して開かれておるというような情勢であります。その十億円パーティーが必要なのは、今は個人本位の選挙制度であるからこういうことが必要なのでありまして、政党本位の選挙になれば、これはもう大変様子が変わってきて、政治資金規正法の改正などは必要がなくなるだろう、こう考えておりますので、ぜひひとつ総理に御検討いただきたい。今幸い梶山自治大臣という大変熱心な自治大臣もいらっしゃいますので、この間から梶山さんにも声をかけておりますし、後藤田選挙制度調査会長にもお話を申し上げて、これは単に私がというのではなくて、日本の国の将来を決する極めて重要な選択なので、ひとつ皆さん御協力をしていただきたい、こうお願いをしておるところでございますが、ひとつ総理の御答弁をお伺いしたいと思うのであります。
  135. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる西ドイツの下院議員選挙におきます小選挙区、むしろ比例代表小選挙区でございますよね。これは私も堀さんも日本選挙学会の会員でございまして、ともに長い間選挙学会での研さんは積んできた。だからこれは論理的に成り立ち得る議論である。しかし、お互いが承知しておるのは、選挙制度というのには絶対というものがない。これも随分議論してきた話でございます。それを今度は、絶対はないけれども、論理的に構築された比例代表小選挙区というものを仮に是といたしますと、それがいかにして現実化するかというところに現実問題が入ってまいります。そうなると、それにお互いが気分的にも習熟するために少なくとも十年後とかいうことにしておけば、当面の二・九九倍まではよくてそれ以上はだめだ、こういうことになりますと、ははあ、この次の国勢調査まではほっとけばいいなという安易感になると、今度はお互いが一緒になって国会決議をしましたあの決議には合わないということになる。そういう矛盾は党の総裁としてというよりも選挙学会の会員として常日ごろ感じておった問題でございますが、それこそ何か議長さんから議院運営委員長の方へ御指示があったというようなことも聞いておりますし、今自治大臣のお名前も出ましたが、恐らく自治省でお互い睡眠しております選挙制度調査会の問題等も念頭にあるのかなというような感じを私も持っておりますが、いずれにしても国会の問題として議論が行われるであろうと期待をしております。  ただ、昔と違いますのは、私は総理大臣になったものですから、言ってみれば行政府の長という立場の限界から非常に慎んで答弁しますので、すとんと落ちるような答弁にならなかったことはおわびを申し上げます。
  136. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  137. 越智通雄

    越智委員長 次に、宮地正介君。
  138. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは財確法の最後の総理質問ということでございますので、最初に六十三年度の減税問題につきましてお伺いをしてまいりたいと思います。  竹下総理は去る十八日に首相官邸におきまして内閣記者会と懇談を行いまして、六十三年度の減税問題につきまして、いわゆる戻し税方式はよくない、税理論からすれば恒久的図柄の中に位置づけるべきである、こうお述べになったということが言われておりますが、事実でございましょうか。
  139. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 内閣のスポークスマンは内閣官房長官でございますので、総理大臣になりまして私も気がつきましたのは、記者会見というのがございません。そこで、官邸の記者クラブの方でいろいろ御議論なすって、いわゆるメモあり懇談というものでお互いの意思の疎通を図ったらという新手が生まれまして、それは過去にもあった先例はないわけじゃございませんけれども、それの第一回を先日行ったわけでございます。非常に論理的にメモあり懇談とは何ぞやというようなことになりますとこれは議論の外でございますけれども、その際、今おっしゃったような、私の体験上の問題として、昨年までああして毎年毎年の減税問題等に顔を突っ込んでおったものですから、体験上の問題として、恒久の図柄というものの中に位置づけられるのが好ましい、それから戻し税は、先ほどもちょっとやりましたが、五十二年、五十三年、五十六年ですか、いろいろな反省というものから、大筋、専門家の議論をすると、まあこれはなあとこういうことになる性格だというようなお話をしたことは事実でございます。
  140. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、このお話の延長線上にいわゆる新型間接税の導入を柱としたこれから予想される税制の抜本改革、この一環としての関係において、総理は、六十三年度減税というものはそうした抜本改革と一体の中で検討すべきと考えておられるのか、あるいは切り離してお考えになっておられるのか、どちらなんでしょう。
  141. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私も国会の子でございますから、与野党間国対委員長会談の合意というようなものがあります限りにおいて、各党間の話し合いを静かに見守るという立場に立たざるを得ないというふうに思うわけでございます。  ただ、私の体験上、あのとき申し上げましたのは、そういう戻し税のある種の反省からして、たしか景気浮揚に役立つ相当規模の減税ということから始まって、最終的に自然増収、剰余金等が確定した後、翌年度改正になりますところの専業主婦控除の前倒しというような、恒久性の一環として位置づけられる改正をみんなで工夫して考えたことがある、したがって、減税問題を考えるときには、やはりことしだけの問題ではなく恒久的な一環として考えた経験が間違ったとは思っていないというふうな表現で、私注意して物を言いますから、そういうふうに受けとられたのだろうというふうに思っております。
  142. 宮地正介

    ○宮地委員 三月三十日の与野党国対委員長会談の合意は、これは尊重していくということですね。
  143. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは天下の公党の申し合わせでございますから、その結論を静かに見守るという立場にありつつも、結論に対しては当然最大限尊重しなければいかぬことだと思っております。
  144. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、この合意内容は、御存じのように、六十三年度減税、このための法律案というものは今国会会期中に処理をするように最大限努力する、こうなっていますね。政府の、行政府の長として現段階でどの程度努力されておるのでしょうか。
  145. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、その限りにおいては、今行政府が受け身の立場にあるわけでございます。すなわち、各党間協議の図柄に基づいて作業を命ぜられてやるわけでございますから、したがって、作業に入っておりますという状態にはないわけでございます。各党からこういう資料を持ってこいとか、いろいろな要請のあることに対して忠実にその職務を果たすというのが現段階ではなかろうかなというふうに思います。
  146. 宮地正介

    ○宮地委員 特に六十二年度の自然増収の問題については、総理はいつも、この六月にならないとその見通しがはっきりしないという御発言がちょいちょいお伺いをされております。しかし、まあ竹下総理大蔵大臣を長くおやりになり、財政についてはベテランの経験ある総理大臣である。言うなればプロである。我々も大蔵委員会委員を長くさせていただいております。過去の税収の実績とか、経済環境の状況、こういうものを見てまいりますと、正確に、一〇〇%精密にはわかりませんけれども、この時期になれば大体大方の自然増収の方向というものは、これはアバウトですが、わかります。既に、六十二年度の当初に比べると、恐らく自然増収は六兆円を超えるのではないか。第二次補正以後におきましても、かたく見積もっても二兆三千六百億ぐらい、特に法人税が非常に好調で一兆二千二百億円、源泉所得税でも六千億円、申告所得税で二千六百億円など、かたく見ても二兆三千六百億、大体二兆三千億ぐらい。これには有取税の税収の分は入っていませんから、そういう有取税関係も、最近の株式の状況を見ていますと、恐らく相当見込めるのではないか。ざっと見て第二次補正以後二兆五千億円ぐらいは、アバウトですけれども、自然増収というものは見込める予想というものが我々から見ても十分に考えられる財源ではないか。総理のおっしゃるように正確にきちっとするには、それは六月にならなくてはわからないと思います。  そこで、やはり政治家としての総理大臣、また我々も、大蔵委員会委員として、政治家の一人としても、そうした一つの、アバウトでありますけれども、ある程度の自然増収というものの見込みが見えてきた。そうなると、この自然増収を今後どのように活用していくべきか。筋論からすれば、第一義的にはやはり赤字国債の減額にこれを回す。もう一つは、今やはり国民の、特にサラリーマンを中心とした多くの方々からの六十三年度減税に対する強い要望、期待というものもあるわけでございます。特に、今回の春闘などに見られますように、勤労者国民の大多数はやはり減税というものに大変期待と要望が強いわけです。そうしますと、六十二年度の特例公債の発行限度額の中でこの六月三十日までに特例国債の発行の残されている部分というものが約一兆一千億をちょっと超えているぐらいである、ここのところを減額ということで少し手当てしたとしても、減税と両立できるのではないか、この自然増収をすべて赤字国債の減額に回すことはいかがなものかな、やはり減税財源としてもこの自然増収というものは活用すべきではないか、私はこういう感じがしておるわけですが、総理、率直にその点についての御意見、総理としての御決意、この辺の所見をお伺いしておきたいと思います。
  147. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 もし訂正願うといたしましたならば、後から大蔵大臣なり事務当局から訂正してもらうこともあるかもしれません。が、今審議いただいている財確法というものを振り返ってみますと、赤字公債を発行してそれを毎年毎年財確法で御審議いただくというのは、赤字公債というものは財政法上の建前から発行すべきものではない、だから一年、一年で頼みますから発行させてくださいと、言うならばそういう姿勢で、当分の間とか向こう何年間ということをやめて、毎年毎年出してこれはお願いしてきたわけです。したがって、そのことはやはり大事なことだと僕は思います。  そこに今度は財政家としての良心というものが存在してくる。そうなると、財政家の良心としては、それほどまでにしてお願いする赤字公債であるから、幸いにして出納整理期間内発行という制度が認められておるわけでございますから、自然増収というようなものが仮に見込まれるようになったら、まず発行を予定しておったものを発行しないで済ませていくという財政家の良心が働いてくるわけです。それを今までもいろいろお願いをしてきたわけでございます。  もう一つは、おっしゃったように、法律の建前から利払いあるいは償還財源に充てるための半分を下らざるものを国債整理基金特会へ入れる、こういうことで、今までその都度いろいろなことをお願いしてきたわけですから、したがって、出納整理期間内発行というものを見ても、多少は発行しておいて結果としての剰余金を少し余計出すかという踏み込み方は、財政家の良心、そして毎年毎年お願いする財確法の建前からいうとなかなかとれぬことだなという感じを、本当は私は、財政再建、その第一年のときの大蔵大臣さんであったわけでございますから、そういう感じは今でも持ち続けておる。分析してみますと、やはりそういう考えが私にはあるな、こういう印象は持っております。  減税問題の重要性というようなことは意見を一にいたしましても、そういう財政家としての良心の場合、今までの経過、今日の財確法の審議からしても、やはり出納整理期間内発行というようなものが、予測されるものが出さなくて済むという状態になったら、まずそれを発行しないで済ます、後世代のツケ回しをそれだけでも少なくするというのが財確法の建前からいえばそんなことかな。失礼に当たるような言葉もあったかもしれませんが、昔の名前で出ています、こういうことで、昔から論議しておりましたので、ついそんなお話をしたわけでございます。
  148. 宮地正介

    ○宮地委員 今の答弁大蔵大臣答弁ですね。昔の大蔵大臣竹下大蔵大臣であれば私も結構だ。やはり国の最高責任者、総理大臣になったわけですから、その辺は財政のことは十分わかっておりますけれども国民が今那辺に大きな期待をしているかという、減税という問題にも勇断すべきではないか。これ以上言っても恐らく回答は出てこないと思いますが、意のあるところを酌んでおいていただきたいと思います。  大蔵大臣に伺いますが、先ほど申し上げましたように当初予算から比べると六兆円という大変な自然増収がもし考えられてくるとしたら、これは税収見積もりに対して少し大蔵省は甘過ぎるのではないか。今度六十三年度は税収見積もり大丈夫なのかな。同じようなケースをこれから心配するのですが、ある程度税収見積もりは誤差があることは結構ですが、過去においては逆に穴があいたなんという経験もあって慎重に慎重過ぎる上なのか。もし六兆円という自然増収が当初予算から比べて出るとしたら、これは今後一考を要するのではないか、こう思うのですが、大臣、この点についてどうでしょう。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、御指摘のとおり、税収見積もりは弓と同じことでございまして、的の上へ外れましても下へ外れましても同じように問題だと思います。上に外れたから下に外れたからよかったというわけにはまいらないと思うのでございます。  ただ、ここに来まして、宮地委員も御承知のように、弾性値でいいますと二・一であるとか一・八であるとか非常に異常な数値が出ておりますものですから、殊に昭和六十一年度の場合最終の三カ月ぐらいに突然税収がだっとふえておりまして、昨年の五月最終日には法人税だけで四兆八千億円、一日でございますが、これは金利関係で一日というのはそうなるのでしょうが、四兆八千億円一日で入りまして、これは法人税全体の三七%か何かでございますので、そういうちょっと予想しないようなことが起こってまいりました。  昨年度は経済情勢は余りよくなかったので法人は悪いと私は思っておりましたけれども、いえば財テクとか土地の値上がりとか有価証券の売り買いが多かったとか、そういう一過性の要因があったということをいろいろ考えておりまして、六十三年度はそういうことも考えながらやや用心深く見積もりをいたしておるわけなんでございますが、ちょっとおっしゃいますようにどれが税収の平均的なペースであるのかということを少し見失いかけておることは事実でございます。少し時間をかけて検討いたさなければならないのでございますけれども、ただ、六十三年度につきましてはそういう異常なことがいつまでも続くわけではないというふうに考えまして見積もりはいたしておるつもりでございます。
  150. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひもう少し国民がわかりやすく信頼のできる税収見積もりというものを十二分に精査して今後対応していただきたい。これは強く要請しておきたいと思います。  総理、税制の抜本改革の法案、これはいつごろ提出するお考えなんでしょう。
  151. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、当初、国会が始まりますと、提出予定法案というものを議院運営委員会へ政府として官房長官が出かけてお示しする。その中の区分としては、検討中のものに税制改正法案が位置づけられておる。と申しますのは、これはくどい話でございますけれども、要するに、政府は税制調査会に諮問をした。そうすると、税制調査会には従来から、大体余りまくら言葉をつけないで、あるべき税制のあり方、こういうような諮問をしますから、お願いしたものに対して期限を付したり、急いでください、遅くしてくださいと言うべき筋合いじゃない。したがって、いつ出てもそれに対応できるという姿勢を持っていなければいかぬということから、検討中のもの、こうして位置づけをしていただくわけでございます。したがって、今日も正確に言えば検討中のものという位置づけがなされておる。  そして、答申等をいただくということになりますと、それに基づいて、その答申の濃密の度合いによっては違いますが、立法作業に入って提案する準備を整えなければいかぬ。非常に一般論でございますけれども、今は大体何月何日ごろとかいうことを、税調へお願いしておる立場にある私から申し上げることはちょっと難しいな、それがリーダーシップがないと言われればそれもまた甘んじて受けるべき、私なりにはそう言われた方がまたいいなとも時には思うこともございます。
  152. 宮地正介

    ○宮地委員 山中党税調の会長さんは、来月二十日ごろまでに取りまとめも可能なような御発言。総理も、先ほどの内閣記者会の懇談会でも、やる気になれば今国会中でも提案できないこともない。あとは総理の決断の問題だ。次の臨時国会をにらんでの問題もあろうかと思いますし、あるいは今政府税調が全国的に公聴会などをやっておる。いろいろな国民の声が集約されてきておる。総理大臣としてどの辺にいわゆるタイミングを合わせるか、こうした決断の段階に入っているのじゃないか。今みずからリーダーシップがないということで早くもお逃げになりましたが、この点について総理の率直なお考えをもう一度伺っておきたいと思います。
  153. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今宮地さんが予測された二十日とかあるいは政府税調がこの月末にはというような進みぐあい、私も全く知らないわけじゃもとよりございません。そういうのをもちろん横目でにらんでおることは事実でございますが、確かに召集権は政府にございます。会期の決定は国会そのものでお決めいただくことだ。そうなると、その辺は、国会関係皆さん方にといいますか、各党間のそれぞれの立場はあっても、ニュアンスというようなものも参考にしなければ、現実の政治としては、ただ法律どおりに、提案権はございます、はい、それをどう始末するかは国会でございます、召集権は私です、会期を決められるのは国会ですという硬直した形だけでも物が決まらぬわいな、こう思っておるところでございます。
  154. 宮地正介

    ○宮地委員 総理の特徴、まことに意味不明でございます。  端的に伺いますが、朝日新聞や日経の世論調査でも、大型間接税六〇%反対、こういうことで大型間接税についてはいまだ国民の大多数の方の反対の立場が世論調査でも出ているわけですが、過去二回政府は一般消費税、売上税で失敗し、三度目の正直を今ねらっているわけですが、総理、こうした各新聞社の世論調査の実態というものをごらんになって今率直にどういう御感想をお持ちでしょうか。
  155. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 よく言われます新税とは悪税である、これは一般的によく言われるわけでございますが、しかし、私は傾向的に見てみますと、大体国会で税制の議論が一番多くなったのがちょうど十一年くらいになると思うのでございます。したがって、確かに今二回失敗したじゃないかという御指摘もございましたが、そのことがまた国民の次元で税制論議を引き出す大きな環境づくりにはなったというふうに思っておりますので、これから一生懸命議論をしていただいたものを成案を得ましたならばなおのこと、国会の論議を通じ、また国民にも理解の度合いというものが進んでいく性格のものではないかなというふうに考えております。
  156. 宮地正介

    ○宮地委員 いろいろと竹下流のやり方で根回しが始まっているようでございますが、やはり国民の声というものを無視して強引に突っ走ることはできないと思います。やはり民主主義のルールからしても、主権在民主義であるという今日の憲法からしても、ぜひこの大型間接税導入問題については国民の声を率直に受けとめ、そしてこの問題は政治的パワーによって抑え込むというようなことは断じてやってはならない、私はこのように思うわけでございますが、もう一度総理のこの点についての御所見を伺っておきたいと思います。
  157. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 具体的なこの姿につきましては、今後検討が尽くされていくべきものであるというふうに思っておりますが、原則論としておっしゃいました、そもそもいかなる立派な政策も国民理解と協力を得ずしてその実効を上げることはできないわけでありますから、ましてや議会制民主主義というものがあって、議会制民主主義というものは政権の交代ということもあり得るわけで、私の立場に宮地さんがなられることもあり得る、お互いが野党になることもあればということを考えながらこの国会という土俵の上でいろいろ議論を尽くしていくべきものであるという考え方は、基本的に私ども幼少のころから教わってきております。
  158. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、総理が久方ぶりに大蔵委員会へ参りましたので、当面する重要課題何点かについてちょっと御質問させていただきたいと思います。  御存じのように、けさ六時過ぎ、アメリカにおきましていわゆる包括貿易法案が下院で可決をされました。賛成三百十二、反対百七、いわゆる三分の二を超えた賛成者で可決をされました。まさにこれは大統領の拒否権の発動を拒否する三分の二を超えたそうした状況でございました。今回のこの包括貿易法案の中は、スーパー三百一条とか関税法三百三十七条あるいは東芝制裁条項など、大変厳しい保護主義の強い傾向にあるわけでございます。場合によっては、アメリカの時間でございますが、明日の上院あるいは来週の二十五日の上院でも可決は間違いない。問題は三分の二以上の可決になるかどうか、ここがこれから大きなポイントになってくるわけであります。この問題はわが国にとっても今後非常に大事な問題であろう。  まず最初に、本日のこうした下院における可決、これをどのように受けとめておられるか、総理の所見を率直に伺っておきたいと思います。
  159. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この法律の内容、他の問題もございますが、今宮地さん指摘された点等考えてみますと、これは、自由主義経済、自由主義貿易を基調とする我が国にとって保護貿易主義の具体的ないろいろのものが盛られておるということは好ましいことでないというふうに考えております。他国の国会のことでございますから、それを余り論評することも一定の節度を守らなければならぬと思いますけれども、私は先日G7に参加された宮澤大蔵大臣からいろいろ情報等を聞いておって、きょうあたりの新聞を見てみますと、民主、共和両党の中に、いわゆる企業がやめる場合に事前通告期間を設けなければいかぬという問題とそれから直接投資に対するディスクロージャーの問題、その辺がむしろ議論の中心になって、今御指摘なすったような問題は、議論のちょっと外とでも申しますか、横の方に置かれた議論ではなかったかな、これは感想でございます。他国の国会のことをとかく論評するわけのものじゃございませんが、そんな感想を受けておりますので、今後いろんな変化が生じてくるではないかなというような印象を素直に持ったというのが私自身もきょうのニュースを聞いてからの感じでございます。
  160. 宮地正介

    ○宮地委員 特に大統領の拒否権の発動あるいは可決された後の法案の修正あるいは運用、こういうものに日本政府としてレーガン政権に対して何らかの根回しといいますか要請といいますか、そういう働きかけをするお考えはお持ちですか。
  161. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一つは、行政府に対する我々の意見を申し述べるということは、これは絶えずやっておることでございます。それからもう一つは、国会に対しても、我が国の大使館等がそれぞれの接触もあるでございましょうけれども、お互いの議員外交、この間も宮地さんがやってお帰りになった議員外交というようなもので、国会内への働きかけ、こういうことは引き続きやっていくべきものであるというふうに考えております。
  162. 宮地正介

    ○宮地委員 保護主義のアメリカのこうしたものが台頭してきますと、当然貿易摩擦という問題で、そのあおりを今度はEC諸国とかあるいはアジアの諸国が対日本との貿易問題で大変警戒をしてくる。そういう意味では、EC諸国やアジアの諸国と連携をとりながらレーガン政権に対してこうした大統領拒否権の発動等について日本政府としても積極的に働きかけをしていく必要性というものが相関関係の中からもおのずと出てくる。その最初のきっかけは、やはり総理が軍縮総会でニューヨークに行かれたとき、レーガン大統領にお会いできるのか、あるいはそのチャンス、あるいはトロント・サミットなのか、時期的に早いとなれば軍縮総会のときなのか。レーガン大統領にお会いしたときにこの問題について要請するお考えございますか。
  163. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 このアメリカの国会でなされた議決に対して行政府としては拒否権を発動してもらいたい、そういうお話は、その時を得るまでもなく我々としてはしょっちゅうそういう意見は申し述べておるところでございます。ただ、今具体的な日時を例示なさいましたが、国連軍縮総会の際はちょうど米ソ首脳会談と一緒になるんじゃないかな、そんな感じがしておりますので、いわゆる首脳会談は行う機会はあるいはないのじゃなかろうか。トロント・サミットにおいては当然お会いするわけでございますが、時期的な問題もございますけれども、双方行政府は保護貿易主義の台頭を抑えようという合意は絶えずしておるわけでございますから、その線に立っての要請とでも申しますか、そうしたことは当然のこととしてやるべきものであるというふうに考えております。
  164. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ、場合によってはレーガン大統領とホットラインで電話でも、このタイミングを逸することなく、保護主義の台頭に対してやはり何らかの歯どめとして、具体的には大統領拒否権の発動あるいはその後の法案の運用等について、そうした積極的な総理としての外交を展開すべきではないか、国益の上から見ても、あるいは世界の貿易の拡大、こういう点から見ても、やはり取り組むべきではないか、私はこう思いますので、強くこの点については御要望をしておきたいと思います。  さて、またこうした問題が今当面する牛肉、オレンジの自由化問題にもやはり非常に関係をしてくると思うわけでございます。二国間のいわゆる話し合いで決着をということで政府は今取り組んでいるわけでございますが、昨日あたり、アメリカのスミスUSTRの次席代表と農林水産省の眞木局長ですか、この辺の話し合いの中で、いわゆる課徴金問題、これが今非常に大きな問題でございますが、アメリカ政府は当然課徴金導入反対、そういう中で、価格調整金の問題について段階的に解消していこう、こうした問題について、このスミス次席代表だと思いますが、アメリカ側からこの価格調整金については今後存続の方向に理解を示した、こういうようなことが言われているわけでございます。  きょうは農林水産省の担当を呼んでおりませんので、総理にはこの辺の問題もよくお調べの上御出席いただきたいということでレクもしておいたわけですが、この点について、総理、どういうようなお考えをお持ちでしょうか。
  165. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそも論ではございませんが、日米首脳会談をやりましたときの合意というものは、要するに拡大均衡の中で物事の解決をしようや、そうなれば日米双方がいわゆる共同作業でそういう摩擦は解決していこうじゃないか、そこで、それのためには速やかにテーブルに着くことであるというところまでが私とレーガン大統領との間。ところが、なかなかテーブルができなかった。それは自由化前提云々という問題からでございますが、佐藤農林水産大臣が参りましてからテーブルはできた。そこで、今そのテーブルの上での作業が高級事務レベル協議で日本で行われておる、こういう段階になるわけでございます。  だから、この今の課徴金の問題からあるいは政府支出等を伴う調整金の問題から、についての御議論でございますが、私の立場から申し上げますならば、今交渉が継続中である、したがって、経過は非公開、結果は公開という外交交渉の中で私なりの感想を述べるということは、差し控えさせていただきたいというふうに考えます。
  166. 宮地正介

    ○宮地委員 政府あるいは自民党内におきましても、この価格調整金が存続できるのであればあえて輸入課徴金の制度にこだわらなくてもいいのかな、こういうような御発言もやはり出てきているようです。そうすれば、またアメリカの方でこの価格調整金存続を認める理解があるなら、自由化問題の決着も、これも非常に明るくなってきた。これは期限が限られておるわけで、今月中にも再度佐藤農水相がアメリカに行くようなそういう準備も進めておられるようでございますが、やはりこの自由化問題に対しては、つまるところは、総理の決断というものが非常に迫られてくると思うわけです。この点について、総理のそろそろそうした決断をされる時期が整っているのではないのかな、いつまでも事務レベルに任せておいていいのか、もうそろそろ限界が来ているのではないか。恐らく私は、スミスさんがこの価格調整金存続を理解を示したということであれば、これはやはり大きな一歩前進になってくる。あとは国内の生産農家とのいろいろな調整問題があるわけでございますが、総理、この点についてどういう御決断をお考えになっているか、ちょっと御所見を伺っておきたいと思います。
  167. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 交渉事でございますので、みずから決断する時期というのはみずからが決めなければいかぬという気持ちは私も持っております。  ただ、今御例示なさいました価格調整金の問題につきましては、今まで一般論として議論しておりましたところのいわゆる課徴金というものは、ガットでもう一遍議論をすべきだというのが、これはアメリカとECの間でよくある問題でございます。したがって、いわゆるガットの場における議論になると、価格調整金の問題と課徴金問題はちょっと違った場所での議論になるわけでございます。したがって、これにかわるべきこれだというふうな性格には必ずしも受け取れないのかなというふうに私は感じておりますが、恐らく眞木・スミス会談は続いておることでございましょうし、きょうでございますか、あしたまででございますか、ちょっとその辺の感想に立ち至ることは御容赦をいただきたいということであります。
  168. 宮地正介

    ○宮地委員 農水省から塩飽経済局長が見えております。この辺の、ちょっときのうきょうの状況を説明してください。
  169. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来、総理の方から、現在行われておりますスミス通商代表部の次席代表と外務省あるいは農林省の事務当局との二国間の協議の内容について基本的なお立場のお話がございましたが、本件につきましては、三月に前回の四年間の協定が切れてから、テーブルに着くべく努力をいたしておりまして、三月の末に佐藤農水大臣がワシントンにおきまして四回にわたりヤイター代表と協議を重ねた結果、引き続き二国間による協議をやろうという合意ができまして、その合意の枠内で現在たまたま東京におきまして日米高級事務レベル協議が行われておりますので、その合間を活用しながら事務レベルの協議を行っているところでございます。  ただいま委員の方から価格調整金あるいは輸入課徴金等についてのお尋ねがございましたけれども、本件につきましては、確かにアメリカの方から、牛肉の自由化後の日本がとります国境調整措置のあり方につきまして、大きな期待といいますか、あるいは懸念といいますか、そういうものを表明しつつ、そういったものに言及がなされていることは事実でございますが、私どもは牛肉、オレンジは自由化が非常に困難であるという立場を踏まえつつ現在協議をやっておりますので、具体的な話し合いの中身についてはこれ以上申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。
  170. 宮地正介

    ○宮地委員 この点について、先日、我が公明党におきまして、矢野団長を中心に訪米をいたしまして、ヤイター代表ともお会いする機会がございました。政府に対しての大変厳しい御意見もあったようでございます。昨日委員長から総理にその点お話しされたかどうか私確認しておりませんが、四年前にやはりヤイターさんがこの問題について日本政府に対して、今後の自由化問題に対して早期に具体的に対策を講じるように、こういうことで話し合いをし、政府もそれを了解した。ところが、この四年間日本政府は何ら自由化問題についての対策を講じられてこなかった。まさにこれはもうガットに対してのパネルをやる以外にない、大変なお怒りのお話があったということを私は訪米団から聞いております。  今回この問題が非常にシビアになっておるというのも、やはりそうした外交上の信義という問題が非常に底流にあるのではないか。やはり政府が約束したことに対しては誠実に信義を守る、そうした根本的なところに根差しているのではないか。大変私は危惧している一人でございます。この点について、総理、竹下外交というものは、世界に貢献する日本、こういうことでデビューされた竹下内閣でありますから、外交上の信義というものは最優先で当然守っていかなくてはならない。日本は何か口先だけでその場をしのげば後はというようなことであっては、私は国益を損ずると思うわけです。今回の牛肉、オレンジ問題の底流にそうしたものもあるやに伺っているわけでございますが、総理としてその点どの程度御認識なのか、お伺いをしておきたいと思います。
  171. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 交渉事でございますから、双方がそれぞれの立場の上に立って議論するわけでありますが、いやしくも交渉事、これは正式な交換公文でございますとか、例えばサイドレターとかいろいろなことがございますけれども、そういう中に、確たる約束と申しますか、今日の時点が信義に大変にもとっておるということがそうした公のものに存在しておるとは私も思っておりません。したがって、今お感じになった問題も私には理解できる問題でございますが、そもそも外交交渉とはそれこそお互いの信義の上に立って進めるべきものであって、信義を裏切るというような指摘を受けてはならないと常日ごろから考えております。
  172. 宮地正介

    ○宮地委員 総理は特にこの四月の二十九日からはヨーロッパ四カ国訪問にお出かけになるわけでございます。その後、先ほど申し上げましたように、国連の軍縮、そして、トロント・サミットと非常に重要な外交日程がこれからあるわけでございまして、そういう中でやはり世界に貢献する日本一つの大きなテーマとして竹下内閣は内政、外交に汗をかいているわけでございます。竹下総理というのは人間性の立場から見ても非常に信義の厚い総理と私は信頼している一人でございますので、ぜひこれは外交においても、信義ということは外交の最も大事なポイントではないかと私は思いますので、今後外交の日程をこなす中で、たとえささいな約束でも約束をした以上は全力で信義を尽くして、日本の信頼、信用というものを高める御努力をぜひお願いしたいと思います。  そこで、特にヨーロッパ諸国に対する歴訪のねらいと目的、この辺をまずお伺いしておきたいと思います。
  173. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、過去、サミットの出席が五回ございまして、今度のイタリーの新首相は存じておりませんが、他のサミットメンバーについては存じ上げてはおります。しかし、首脳としてお会いするのは初めてでございますので、それぞれ二国間の、あるいは対EC等のお互いの忌憚のない意見を交換をする中で個人的信頼関係をまずは確立しなければいかぬというふうに思っておるところでございます。  その個人的信頼関係の確立ということには、当然、話題としては政治、経済、そうしたいろいろな問題が出ましょうし、そして、私自身が今大変な御鞭撻をいただきました、世界に貢献する日本という立場からするところの考え方等も意見交換の中で申し上げてみたいというふうに考えておるところでございます。  ただ、一つだけ、四カ国と申しましても一つはバチカンでございまして、これはやはり平和の象徴という形で一番先御訪問申し上げたいと思っておりますが、フランス、ECにつきましては、フランスの選挙中でもございますので、したがって、国連総会後もう一度訪問をして一通りの訪問を終えたいというふうに考えております。
  174. 宮地正介

    ○宮地委員 時間も参りましたので、最後に、その際、特に英国のサッチャー首相との会談で、いわゆるウイスキーなどの酒税法改正問題が当然議題となると思うのです。今六十三年度税制改革改正案の方針の中にも出ておりますが、この点についてはある程度数字を検討して準備されてサッチャーさんにお会いする考えがあるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私の責任の事項でございますので、既に政府としてはことしのお正月の税制改正大綱で方針をはっきり決めたわけでございます。なお、その後時間もたちましたし、総理も訪欧、訪英されることになりますので、やや具体的なその後の進展につきまして、あらかじめ事務当局を先方に接触させましてさらに詳細に説明をいたしておきまして、総理の訪英に備えるつもりでございます。
  176. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、終わります。     〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕
  177. 中川昭一

    ○中川(昭)委員長代理 玉置一弥君。
  178. 玉置一弥

    ○玉置委員 竹下総理には久々の大蔵委員会でございまして、何となく我々も昔からの続きをやっているような感じもするわけでございます。  まず一番最初に、やはり大蔵委員会でございますから、財政運営についてお聞きをしていきたい、かように思います。  当初、六十年赤字国債脱却ということでやられておりました。それが六十五年に延びたということで、たしか延ばされたのも竹下総理だと思いますが、ことしから来年等の財政収入等の感じを見ておりますと、どうやら六十五年に脱却できそうだ、こういうめどがついたようでございまして、その辺、延ばされた御当人として、大体のめどがついたということでどういうふうにお感じになっているか。  それから、先ほども出ておりましたけれども、六十一年、二年の税収等の急激な伸び、この辺を含めて今の感じをまずお伺いいたしたいと思います。
  179. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 玉置さんから、最初は五十九年脱却目標であったわけですが、六十五年脱却目標、それは絵にかいたもちではないかというような御叱正を賜ったことを想起いたしますと、本日可能性を前提の上に置いて御質問いただけるというのは大変な幸せである、まずこういうふうに思うわけでございます。これは、要するにNTT売却収入の活用等によりまして財政運営上の工夫が図られ、そして引き続き経常経費の削減というような努力をこれからも続けていくならば、その実現の可能性はこの当時から比べると大変大きなものになっておるというふうな問題意識は持っております。もとより御指摘なさいました民間の御努力等によりましての結果として生じた自然増収というものにも支えられておることも事実でございます。
  180. 玉置一弥

    ○玉置委員 非常に順調に回復をしてきた日本経済でございまして、昨年の特に予算の審議のころ、六十二年の二月、三月、その当時は円高不況の影響が非常に大きくて、当分日本経済は立ち直らないのではないか、むしろそういう感じがありました。ただ、貿易摩擦だけは日増しに強くなってきている、何とか内需拡大をやらなければいけない、こういうことでいろいろ努力をされてまいったわけでございますが、いつの間にか知らない間にというむしろそういう感じで経済が回復をしてまいりまして、それになおさら四月に総合経済対策というものができまして、新たに公共投資の追加等がありました。  我々大蔵委員という立場から考えていきますと、一方では赤字国債減額でゼロになるというめどがつきました。ところが、公共債といいますか建設国債、四条債ですね、この辺がまだまだ相当続いていくのではないか、こういうふうな感じがするわけです。今までの赤字国債を含めたいわゆる国債の発行残高というのは、先ほどから話が出ておりますように百六十兆円、それに政府の長期債務というものが二十九兆円くらいあります。合計で百八十九兆円現在あるわけでございますが、大蔵省から出ております仮定計算例でいきますと、昭和七十六年にこの国債発行残高が二百兆円を超える、こういう計算になっております。  我々が大変心配をいたしますのは、例えば今までの公共事業、これがずっとほぼ横ばいのペースでやってまいりましたけれども、昨年から急激に上積みをされる、こういうことになりました。実は、一般公共事業で見てまいりますと、五十六年から五十七、五十八年がほぼ六兆三千億円台ということで横ばいのペースになっておりまして、六十年、六十一年、六十二年と漸減になってきている。それでも六兆円台確保ということでございますが、今度は急遽七兆二千億円を超える、こういうふうなことになりまして、そうなってまいりますと、我々のこの間からの論議の中で、社会資本といえども六十年償還でそこまでライフサイクルのあるようなものは少ないのではないか。むしろ技術革新やあるいは生活環境の変化等によって社会資本といえども六十年のサイクルを待たずしてやはり変えていかざるを得ないだろう。そういうふうに考えていきますと、余りにも安易に赤字国債、建設国債を発行するというのは後世に逆に負担を残すことになるのではないか、こういう話を時々しているわけでございますが、そういう面からいきますと、建設国債を減額していかなければいけないだろう。  それからもう一つは、内需拡大という意味で、減税も含めて六兆円に上る六十二年度の大幅な追加があったわけでございますが、その当時と今と比べまして、景気の上昇の加速度あるいは税収等で見て非常に景気の回復感といいますか、こういうものが違うわけでございまして、財政運営という面あるいは経済運営という面から見ても、公共事業を逆に今度は絞り込んでいかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕  そういうふうに見た場合に、今後建設国債というのは減額の方向で行かれるのかどうかというのが一つ。それから、公共事業がどういう方向でやれるか。それからもう一つは、六十二年を見てみますと、先ほど申し上げましたように、当初は日本の国内の景気が非常に低迷しておりまして、その対策ということで八〇・一%という前代にない公共事業の前倒し発注をやりました。我々、その年、では下期どうするのかという心配をしたのでありますが、それは追加補正ということでありました。これがどういう形でやられていくのか、またどういうふうに修正されていくのか、その辺もお伺いをしたいと思います。
  181. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、いつの間にかあるいは知らないうちによくなった、そういうことじゃなく、これは玉置さんがおれが鞭撻したからなったというふうに思っていただいた方がいいと思います。  そこで、建設国債といえども利払いを伴いますから、その発行は可能な限り圧縮していかなければならぬ、これは当然のことでございます。したがって、本当は将来の公債依存度等の具体的な目標、仮に赤字国債依存体質がなくなりましても、そういうものがあっていいじゃないかというような御意見もあろうかと思いますけれども、今はまずは六十五年度赤字公債体質からの脱却という大目標に向かって進んでいるところでございますので、今そこまで長期的な展望を申し上げる段階にはない。  それからもう一つ、おっしゃいました六十年というのは、道路が百年でございますとか、耐用年数を決めてやったわけでございますけれども、そのおっしゃる意味もわかってくるわけでございますが、と同時に、もう一つ指摘ありました公共事業の執行方針につきまして、おっしゃったように大変な前倒しをやった。それで今勢いが加速しておりますから、いわば平常な状態であってもこの上昇気流は維持していける、こういうことになろうかと思うのであります。したがって、いわゆる今抑制するという状態にはなくて、非常に前倒しにもなれておりますが、平常時にもなれてきておりますので、物価の動向、去年一時資材が上がりましたが、ああいうことを絶えず細心の注意を払いながら適切な執行をしていくことによってこの状態を続けていきたい、漠然とそんな考えを申し上げたわけでございます。これは公共事業執行に関する会議というものの責任者は大蔵大臣でございますので、大蔵大臣からお答えいただいた方が適切かと思います。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今総理のお答えになられたとおりでございまして、せんだっても閣議ではいわば自然体でいったらいかがかということを申し上げております。
  183. 玉置一弥

    ○玉置委員 自然体という話、我々も聞いているのですけれども、自然体ほどわかりにくいものはないわけでございまして、だから自然体というものはどういうものかなというのでございますが、自然体というのは大体どういう範囲を自然体というのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大体、過去の実績を見ますと、七割をちょっと上がるか下がるか、その辺のところが自然体でいたしました年の平均のようでございます。
  185. 玉置一弥

    ○玉置委員 ということは、八〇・一までいきましたものを一応六十年ごろのペースに戻す、六五とか七〇とかいろいろありますけれども、大体七〇前後と見ていいわけですね。わかりました。  昨年のちょうど夏場に建設資材が非常に高騰いたしまして、特に木材が二倍を超える。あるいはコンクリートパネルというのですか、コンパネという板がありますけれども、これも商社が買い占めをする。私もその当時、どこの委員会でやったか忘れましたけれども大蔵委員会かな、非常に高騰している、だからむしろ通産省なり農林省で指示を出すように、こういうことを申し上げたのです。諸外国の様子を見ておりますと、例えば昨年のブラックマンデーまでは非常にインフレ傾向にあったわけです。逆に言えばブラックマンデーがインフレをある程度抑え込んだというようなお話がございますが、日本の場合には昨年の株価に既に金融筋の指数が上がってきておりまして、今いろいろな資材関係等の状況を見ておりますとやはり値上がりの傾向にある、こういうふうに思うわけでございます。  そういう意味では、公共投資のこれからのいろいろな方向が資材関係なりあるいは物価そのものに大きく左右してくる、こういうふうにも思うわけで、より適切な発注といいますか、量の規制、抑制ということをやっていかなければいけないと思います。例えば、私大変心配しますのは、昨年あれだけ上がっているときに何らそういう手を打たないで公共投資大幅追加ということを発表されて実行してきたということがございますので、その辺の昨年の例を踏まえて、もう一度、政府当局として公共投資に対してもっと配慮していただけるかどうか、特に物価面についての配慮がしていただけるかどうかという話も伺いたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年確かに御指摘のようなことがちょっとございまして、経済企画庁を中心に各省庁よく協議をしてその辺のことを対策を立てておりました。また、通産大臣から、例えば鉄鋼メーカーとかに対してはまず在庫の放出、それから形鋼なども上がったものでございますから多少生産をふやすといったようなことを御指導になりまして、これは我が国の経済がこれだけ稼働率が低うございましたので余り問題にならずに対処できましたのと、従来なかったことでございますがNICSからの輸入がございまして、これがかなり相場を冷やしたということもございまして、まあまあただいまその点は、やや上がりましたが、落ちついてまいったと思います。  それから、御指摘のように型工であるとか鉄筋工であるとかいう人たちは、これは何といっても長い間御用がなかったものですからやむを得ないことでございますが、減ってきておられるようでありまして、そういうところの賃金が上がっておる。しかし、工法もそういう人々がなければないで多少の工夫があるそうでございまして、総体的に見まして今枝能工の賃金上昇はどうもなかなか避けられないようでございますけれども、資材関係はNICSの関係もあって落ちついてまいったということではないか。ただし、その点は御指摘のような問題を常に気をつけておらなければなりません。建設省初め発注官庁では十分御注意をしていただいておりますし、また自然体云々と申しましたのも、そういう観点からもそこらがいいところではないかと思っておるわけでございます。
  187. 玉置一弥

    ○玉置委員 一時期、今でもそうですけれども、大工さんの日当が一日二万円とか、あるいはことしじゅうにはとてもじゃないけれども建てられないというぐらいの仕事量がある、そういうお話も聞いております。逆に見れば来年以降どうなるのだという大変な心配がある。というのは、土地が非常に高騰していまして、ある程度手当てが終わったところだけはやっているけれども、新しいところについてはなかなか採算がとれないということで手はつけられない、こういう話も聞いておりまして、今年度中は比較的良好に推移をするけれども、来年以降の落ち込みは特に住宅に関連してかなり激しいだろう、こういう見通しがあるようでございます。そういう面から考えますと、今景気がいい業種と来年も引き続きいいのと悪いのと、大分変わってくると思うのです。そういう目で見ていきますと、絶えずそのときの流れに沿った対策をぜひお考えをいただきたい、かように思います。  今確かに公共事業そのものがピークだと思いますが、これからこういつまでも高いレベルが続くとは思えない。一方で海外からの参入のお話がございます。この間小沢官房副長官が参られまして話をされてまいりました。そのときはNTTの部分で何とかしようじゃないか、こういう話があったと聞いております。それともう一つは、関西新空港、あの辺に対して非常に海外の方が乗り気である、こういうようなお話を聞いておりまして、我々がこれから考えていかなければいけないのは、ふえている間はいいわけでございますが、例えば公共事業を縮小していくようなときに海外の参入が果たして得られるかどうかというような問題点があります。それから、発注方式につきましても、向こうの場合にはいわゆるコンサルタント的な業種が多いわけでございますが、日本の場合は請負契約、完全につくり上げるまでやるというような業種になっておるわけでありまして、そういう面で日本の建設業とあちらの建設業では若干分野が違うような気がするわけでございますが、そういうものを踏まえてどういうような形で参入を認めていかれるのか、その辺についてもし大体の方針があればお聞かせいただきたいと思います。
  188. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 直接の責任者ではございませんので不正確な点が多少あるかもしれません。が、日米首脳会談の際に、お互いが共同作業で問題解決しようやというときに出た問題が科学技術協定と公共事業参入問題と牛肉、オレンジ。その二つが片づいたわけでございますが、向こうからの言葉をかりますならば、公共事業問題がなぜ一年半もおくれておったか。そうしますと、今いみじくも御指摘がありましたように、コンサルタント的なものを指名するのと、それから工事施工者そのものを指名する、そういう指名の相違がありはしないか。確かにあるのでございます。  最初は公共事業という概念から、我々は簡単に、公共事業とは、はい、国または地方公共団体が発注する工事、こういう定義づけを行いますし、ある人は、いや、公共事業とは公共に用するものすべてだ、こんなような、そこの辺からだんだん詰まってまいりまして、ただ、これができました背景の中に、御案内のように日本のいろいろな工場等が企業進出してまいります。そうすると、日本の大手さんはコンサルタントももちろんできるわけでございますから、それが行って、そして向こうの施工者を集めたりしておやりになる。そうするとそこに大変な実績ができるわけでございますが、例えばマクドナルド・ハンバーガーが建つからといってアメリカから業者が来て設計するわけでもございませんし、したがって向こうは実績というのがないわけでございます。随分古い話になりますけれども、名神高速のときに世界銀行から金を借りまして、そのときに一度参入の機会を与えたことがございますが、日本の制度に習熟していないので途中で御辞退に相なった、こういうことがあったわけでございます。  したがって、今度の場合はそういう実績の相違がある。日本はまるで内外無差別だよ、しかし実績という主義ですから。それがないわけでございます。したがって、こちらは実績主義で十分向こうに実績を持っているわけでございますから、相互オープンな形で行うためにはやはりなれていただかなければならぬ。習熟と申しております。そこで、それにはどういうものがいいかということでいろいろ議論してみますと、関西空港の問題、これは別途の意味で解決しておるわけでございますが、そういう方式で、特に飛行場なんかはマーシャルプラン以来向こうさんは得意でございますし、日本はつくった数は少ない。そういうそれぞれ得意とする分野で少なくとも参入できるような枠組みというものを話し合いの中でつくり上げたということでございますので、その枠組みの中では競争もございますから、実績としては今後の問題でございますけれども、そういう形で大体物が解決してきたというふうにお考えいただければ結構だろう。したがって、外国企業がこの枠組みを活用して積極的な企業努力を行わなければ、実態としては実績は今後の問題ではなかろうか、こういうふうに考えておるところでございます。
  189. 玉置一弥

    ○玉置委員 参入は公共事業全体の枠の中で考え、なおかつ競争原理が働く、こういうふうに理解していいわけですね。
  190. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 例えば御例示になりましたNTTのインテリジェントビルなどというのは、公共事業とは言えないかもしれません。が、そういうものに対しては、非常に魅力を持って、NTTさんも、そういう設計等々参入させて自由競争するのはいいじゃないか、こういう考えをお持ちになっておる。これを政府が勇気づけるとでも申しますか、こういうことをする。公共事業全体というようなこと、原則的には内外無差別になっておりますけれども、実績も存在してないわけでございますから、やはりいろいろ念頭に挙げられたような将来の予測されるプロジェクト以外の、いわゆる我々が感覚でわかります一般土木工事とでも申しますか、そうしたものに参入するという機会はあっても、現実問題としてあるいは希望はないかもしらぬなという感じでございます。
  191. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間がなくなりましたので、本当は税制の方でちょっと聞きたいのですけれどもあとは一言ぐらいしか聞けないと思いますので、ちょっと分野が違いますけれども、ペルシャ湾問題についてお聞きしたいと思います。  多分後の外務委員会でやられると思いますけれども、我々大変心配しますのは、イラク・イラン戦争ということで、中東同士のいろいろなところから逆にアメリカがそこへ参入をする、こういうふうになりました。我々の目から見ると、ペルシャ湾というのは公海でございまして、公海上で機雷を敷設したりいろいろなことが今まで行われてきた。これに対して、いろいろな国々が努力をして排除してきたわけでございますが、予想以上に大変エスカレートしてしまった現状、これから例えば日本のエネルギーを考えていく場合、非常に不安になるわけでございますし、また船舶の安全性等も含めて日本としてぼつぼつ何らかの手を打っていかなければいけない、こういうふうに思うわけでございますが、総理としてはいかがお考えか、お伺いしたいと思います。
  192. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 十八日に、米国はイランの機雷敷設等に対応した措置としてイランの海上油田施設を攻撃、その後イランがアラブ首長国連邦の海上油田施設を攻撃したと伝えられるなど、ペルシャ湾をめぐる情勢は緊張をいたしております。我が国といたしましては、従前から申し上げておりますように、イラン、イラク両者に対しての外交関係が存在しておる。したがって、国連決議に基づいて国連事務総長の調停に対して積極的に参加しなさいということを言い続けて今日に至っておるわけでございます。これからもそうした外交努力というものを基本的には続けていかなければならぬ課題であるというふうに思っております。  ただ、私どもいつも感謝しておらなければいかぬのは、あの地帯で日本の海員組合の皆さん方が汗を流しながらやっていただいておる、それが少なくとも外交努力でその危険の感じ方が少しでも少ないような努力は、またしていかなければならぬ課題だというふうに考えております。
  193. 玉置一弥

    ○玉置委員 終わります。
  194. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  195. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、財確法案に関しましても総理の御意見などお聞きしたいのですが、時間が二十四分間でございますので、一番伺いたいところから入らせていただきます。  いわゆる課税ベースの広い間接税、私どもは大型間接税と呼んでおりますけれども、総理は十七日静岡県の熱海市のホテルで開かれました自民党の婦人部活動者研修会で講演されて、「六つの懸念」の問題で、所得に対する逆進性についても、課税最低限の引き上げや社会保障費で措置し、そういう調和の中で中和できる。私ここでお聞きしたいのは、ここで使われた「中和」という言葉なんですけれども、どういう意味で総理お使いになったのか、その点をちょっとお聞きしたい。
  196. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 元来、間接税というのには、その論理的な構築の中には逆進性は存在しておる、しかし、他の総体的な税の仕組みとか財政出動の中でそれらの懸念は打ち消されるというと表現が少しきついものですから、したがってなるほどというふうに理解してもらえるという意味を含めて中和という言葉を使ったのでございます。
  197. 矢島恒夫

    矢島委員 打ち消されるという形ですと少し強いのでと御答弁いただいたわけですが、総理も、旧制中学校時代ですか、化学をやられたと思うのです。それで、リトマス試験紙を使いながら酸性の溶液とアルカリ性の溶液、これをまぜていきますとそのうち塩と水になってこれが中和だ、こういうように勉強されたと思うのです。この二つの種類の違うもの、異質のものがまじり合うことによって結局その特性というか性質だとか作用だとかそういうものが失われる、これが中和という言葉の意味かな、こんなふうに思うわけです。そういうふうに考えますと、この逆進性というのを、社会保障あるいはまた課税最低限の引き上げ、こういうもので果たして中和できるだろうか、どうも問題があるのじゃないかというので、その点についてこれからお聞きしていきたいと思うのです。  まず社会保障の問題についていえば、社会保障につきましては今日までいろいろと改悪されてきた。例えばお年寄りの医療費が有料化されてしまう。これをまた無料に戻すということになれば、これは一定の社会保障のさらにまた回復になってくるだろう。あるいは年金につきましても、年金額の増額というようなことをきちんと言われるならば、その緩和の一部にはなるだろう。中和するという方向に行くだろう。例えば健康保険の本人一割負担、これも十割給付に戻しますよというのならば、これまた話は中和の方向かなと思うのですが、今の財政状況を考えてみるとき、一応六十五年の目標達成というようなことが言われておりますけれども、その後非常に厳しい財政状況であることについては変わらないわけであります。しかも高齢化社会という言葉が使われるとおり、そういう社会保障によっての中和というのは本当にできるだろうか。  それからもう一つは、課税最低限の引き上げによって中和をするのだ、こういうお話のようです。現行法を考えてみますと、また政府税調の素案あるいは政府税調や自民党税調で論議されてきている内容、あるいは国会での論議、こういうものを踏まえてみますと、おのずと頭の中に置いて考えますとはっきりしてくると思うのですが、その第一は、今現在所得税が課税されていない人、いわゆる納税義務者ではない人にもこういう間接税が導入されれば事実上払わなきゃならなくなりますから増税になる。負担がふえるわけであります。こういう人に対しては所得税の課税最低限の引き上げは関係ないわけなんですね。中和しようもない。言うなれば、酸性だけでアルカリ性全然なし、こういう状況ではないかと思うのですね。  それからもう一つ、所得者の課税対象の中で中所得者層の問題ですけれども、私、一昨日大蔵委員会で、いろいろと仮定を置かなきゃなりませんので政府税調等の素案を基準にいたしましていろいろと計算をしてみたわけなんです。実際に中和という現象がどの程度の所得から中和されるだろうかというのを調べてみまして、年間収入十分位階級別を例にとりましてお話ししたのですけれども、その計算によりますと、やはり第八分位のちょっと上ということになりますと年収八百万円前後のところで一つの中和現象は起きてくるだろう、それよりも低い所得の方については中和されない、こういう事態が出てきているわけなんですね。  それからもう一つの問題としては、最高税率を大幅に引き下げるということになっているわけですから、高額所得者は相当な減税になるだろう。結局、今の中和されるであろう八百万以上の方々、こういう方々につきましては五%の間接税でもあるいは一〇%の間接税でもそれほど痛みがあらわれてこない。むしろ第十分位で千百五十万円以上の方々になりますと二十万三千円からの減税という試算を、私の試算ですが、やってみたわけです。  こういうことを見てみますと、所得税減税によって逆進性を中和するといっても、そのことは不可能ではないだろうか。高額所得者がやはり優遇されるのではないか。この点について総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  198. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私が予算委員会で実は六つの懸念というものを言い出したわけでございます。今のこの計算上の問題になりますと、いわば税率をどうするかとか、そういうような具体的な問題に入るかと思いますので、それについて私から厳密な数字を挙げてのお答えをする用意は少なくともいたしておりません。  私が申しておりますのは、いわば現行税制の累進構造の緩和が見込まれております、そういう中で中堅どころの中和はあり得る、そうしていわゆる社会保障、税そのものに所得再配分機能がもともとあるわけでございますから、そのものは社会保障制度等を含めた財政全体で中和されるということを問答の中でやっていけばだんだんわかっていただけるんじゃないか、こういうことを申したわけです。  ただ、参議院の予算委員会でも申しましたので、あえて挑戦する意味では決してございませんが、社会主義国というのは本当は全部間接税であるという論理は一応あり得ると思うのであります。国有事業であるとしましたら、国有企業と言えば、企業という言葉を使えば利潤の追求ということになりますから、あるいは法人所得税になるかもしれませんが、国有事業の中でいわばすべて末端の価格に転嫁されておるとすれば、社会主義社会というのは、最初は、全部といっていい、大体間接税で構成されてくる。それこそまさに広い間接税で構成されてくる。それに所得再配分機能というものの議論が出て、そこに所得税という思想が入ってきて変化して、そうして今度は所得税というものの中で、なかんずく勤労所得の中におきまして、言ってみれば努力と報酬の一致ということが、言ってみれば五割は負担するのが限界じゃないかという限界説が出たり、そういう形で進んできておりますから、したがって、現状においてそういう総合的な税体系と歳出、財政出動などによってそういう懸念は中和されていくべき問題ではないか、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  199. 矢島恒夫

    矢島委員 参議院での論争を私もここでやるつもりはございませんが、あのときは恐らく参議院でマルクスのことまで出て御論議されたと思うのですが、私のお聞きしたいのは、中和という問題、今おっしゃられたようなことでお考えだということですが、今度の素案を見たときに、まず一つは、今まで税金のかからなかった人がかかってしまう。つまり、納税義務のない層、こういう層もやはり大型間接税の導入によって税金を払わなければならなくなる。それから中堅所得層というところも、これは先ほど何%にするかというような問題がありますから一概に言えませんが、いずれにしろ相当低く抑えることがないと、課税最低限はうんと上げる、それから税率はできるだけ少なくするということを思い切った形でやらない限りは、これは私の計算によりましても、中堅サラリーマンが恩恵を受けるというよりもむしろ間接税によっての支出が増大する。そういう中にあって高額所得者は相当の減税になるんではないか、こういう矛盾があるんではないかという点を、いわゆる課税最低限の引き上げとそれから今度素案の中に出ております税率の六段階への変化、こういうものの中であらわれてくるこの点を指摘したわけなんですが、この点についてはいかがですか。
  200. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわば数字的な問題はそういう比率の問題等にも影響するところでございますけれども、総合して申しました場合に、この刻みを少なくいたします。これは簡易というところに当たってくるのかな。そうすると、刻みが、最高税率が下がってくればそれをしていわゆる金持ち優遇、こういう論議であったとすれば、それはそれなりの立論になるんじゃないか。私どもは、経済の活力、すべてお互いに生きる活力というのは、やはり努力して一生懸命でやればそれに対する努力と報酬というものがバランスしてくるという意味においては、べらぼうと言われる限界というのがおのずからこの六段階の最高税率のところにあるんじゃないかという認識を持っておりますので、基本認識が違うのは仕方ないといたしましょう。しかし、結果から見ますと、今のような問答をしていただきますと、聞いておる国民皆さんが、なるほどな、どっちの言っていることも一理屈あるが、竹下が言っていることがいいのかな、こういうふうに思っていただけるんじゃないかと私は思いますので、どうぞますます御議論をお願いいたします。
  201. 矢島恒夫

    矢島委員 国民竹下総理が言っていることがいいかなと思うか私が言っていることがいいかなと思うかは、それは国民皆さん方の御判断でございますが、もう一つつけ加えますと、簡易ということで六つの段階にしていくというお考えを今お答えになりました。素案によりますと、五百四十二万円の層までが一〇%ですから、言うなれば〇・五%から二%というわずかな差しか税率の中に出てこない。ところが高額所得者になりますと、今まで七〇%であったものが六〇%に現在なった。さらに今度はこれが五〇%になっていく。こういう数字上から見てもいわゆる金持ち優遇ではないかな。  それからもう一つ、所得税の累進性緩和による税率変更で一兆三千億円の減税という大蔵省の試算が出されております。これがどういう層、階級にどのように配分されるだろうかという点を考えてみたわけです。申告所得税の部分で二千万円超の階級の人たちは人員分布でいきますと二・二六%、わずかな部分でございますけれども、減税割合、つまり一兆三千億円がどういうふうに配分されるかという割合は三九・三二%、つまり四〇%近くがそういう方々の減税分に充てられる。これは私の計算ですので、ひとつ大蔵省にお願いするわけなんですが、この一兆三千億円の試算が出ている中で、課税所得額別に減税額を計算する、つまりいわゆる減税配分表といいますか、こういうものを資料として御提出いただきたいと思うのですが、委員長
  202. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま税制調査会は最終的なまとめに向かいまして鋭意審議が続けられているところでございます。税率につきましては、改正案の一例としてあのような六段階のものを提示しておられますが、これはあくまで一例でございますし、またその中でもそれぞれの刻みについて意見があるというふうに言われております。それから今回の素案の考え方の一つの特徴は、前回の抜本改革のときにつきましては控除の引き上げということにつきまして余り取り上げておりませんでしたけれども、今回は国税、地方税を通じ相当控除の引き上げあるいはその引き上げ方につきまして突っ込んだ議論をしておられるところでございます。したがいまして、この税率の改正によるものだけを取り上げての御議論は、今の段階では、それだけの議論にとどまりますと、今の税制調査会の御審議の様子からいたしますとやや部分的な議論になるのではないか。まさに先ほどのお話の逆進性の点にも大きく関連する控除の引き上げ、これからまとめられるところでございますので、それは全体像がまとめられたところでの御議論をいただいた方が全体をとらえる御議論になるのではないか。税率だけのものでございますとややそこは問題があるかなという感じがいたします。
  203. 矢島恒夫

    矢島委員 ですから、人的控除の引き上げということが言われたり、私の試算も思い切って七万円ぐらいは人的控除を引き上げるということで試算はしてみております。ただし、そういうものはいずれも仮定の問題だと。ただ、主税局長にお願いしたのは、そういうことではなくて、現在一兆三千億円は一応試算した、改正案の素案も、一応六段階というものも素案の段階でいろいろと議論があるけれどもという前提ですが、六段階に素案のとおりやった場合、どういうような減税配分になってくるかという試算はできますかということです。
  204. 水野勝

    ○水野政府委員 この税率の素案でございますと、これは課税所得階級別の税率の変化を御提案されておるところでございますから、これによりますところの変化と申しますのは、年収階層なり所得階層なりとの結びつきはそこで課税所得に全部置きかえられてまいりますので、その課税所得階級の中での税額の変動というものが出てまいりましても、一般に言われますところの所得階層なり収入階層別の変動と申しますか増減というものと直接結びつけられるかどうか。全く課税所得の中の機械的な変動にとどまるのではないか。それはどのような御議論の材料になるかということにつきましては、あの税率表、課税所得階級別の税率の変化というのはそれだけの問題として、それだけの試算として取り上げるのはややいかがかなという感じがするわけでございます。
  205. 矢島恒夫

    矢島委員 ややいかがかなという感じだと言うのですが、私の時間がもうほとんどなくなってまいりますので、その問題についてはまた後ほど論議しながら、総理、できるだけいろいろな資料の中で論議していくというのは基本的に重要なことだと思うのです。ただ、現在の段階では税調の方でということですので、その後またそういうような資料の問題についてはぜひ提出をお願いするという機会もあろうかと思います。  あと一、二問しかできない時間になりましたので、これもやはり総理の発言でございますけれども、先ほど私が申し上げました熱海の婦人部活動者研修会です。「欧州の例を参考にしなければならない。欧州では低いところから出発し、所得税減税をしては間接税率を上げてきた」、こういう発言があるという報道があるのですが、これは事実でございましょうか。
  206. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ちょっと正確には記憶しておりませんが、一般論として欧州税制を私も大蔵大臣であった当時お互い議論しました場合に、最初粗っぽく入っていった、それが逐次整備されるときにはいつでも所得税の減税、そして付加価値税の税率アップ、こういうふうな傾向で来たではないかという議論はした経験はございます。
  207. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにしろ、まず導入するのに導入しやすく広く薄くやっておいて、税率というものをいつでも上げられるのだというような発言にとらえている新聞もあるし、いろいろでございますけれども、先に間接税導入ありき、こういう方向へ今行っているという点を私指摘せざるを得ないわけなんですが、その点についてはいかがですか。
  208. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 広く薄く国の基本に関するものは可能な限りみんなで出そうや、こういうことは私も十分に理解しております。が、初めに間接税ありきというのではなく、初めに税制改革ありき、こういうことで今日に議論が至っておるのではないかなというふうに考えております。
  209. 矢島恒夫

    矢島委員 時間がなくなりました。いずれにしろ、初めに大型間接税ありきということでいろいろと作業が進められているという点、同時に、先ほど来逆進性の中和という問題について、私もそれぞれの内容について質問したわけですが、残念ながら十分私納得するような御回答になっていない。またの機会にはぜひそういう問題についても総理と論議を闘わしたい。  時間ですので、終わります。
  210. 越智通雄

    越智委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  211. 越智通雄

    越智委員長 この際、本案に対し、中村正三郎君外四名から、自由民主党提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。大島理森君。     ─────────────  昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  212. 大島理森

    ○大島委員 ただいま議題となりました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和六十三年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過いたしておりますので、これを「公布の日」に改めることとするものであります。  以上が、本修正案の提案の趣旨及びその内容であります。  何とぞ、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  213. 越智通雄

    越智委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  214. 越智通雄

    越智委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。杉山憲夫君。
  215. 杉山憲夫

    ○杉山委員 私は、自由民主党を代表し、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  本法律案は、今般成立いたしました昭和六十三年度予算とまさに表裏一体をなす重要な財源確保に関する法律案でありまして、昭和六十三年度予算の円滑な執行を期するため、その早期成立がぜひとも必要なものであります。  すなわち、第一に、特例公債の発行であります。  昭和六十三年度予算につきましては、まず歳出面において、既存の制度、施策の見直しを行い、特に経常経費について一層の節減合理化を進めるとともに、内需拡大の要請に配意し、一般公共事業費について、NTT株式の売り払い収入の活用等により、前年度当初予算に対し約二〇%増という高水準が確保され、さらに、限られた財源の重点的、効率的な配分に努めております。  他方、歳入面においては、税外収入について可能な限りその確保が図られております。  しかしながら、このような歳出歳入両面にわたる厳しい見直し等政府の努力にもかかわらず、昭和六十三年度においては、なお財源が不足するため、三兆千五百十億円の特例公債の発行を予定するに至っておりますが、財源確保のためには、必要かつやむを得ない措置と考えるものであります。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止であります。  国債の償還については、基本的には、現行の減債制度の仕組みを維持するのが適当と考えますが、昭和六十三年度においては、NTT株式の円滑な売却により、定率繰り入れ等を停止しても現行償還ルールに基づく国債の償還に支障は生じないものと見込まれております。昭和六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却を目指し、公債依存度を引き下げるという目標達成に向けて努力を傾けなければならないことを考慮すれば、一時これを停止することもいたし方のないところであります。  第三に、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例であります。  現下の極めて厳しい財政事情にかんがみ、このような会計間の財源調整により、一般会計の負担軽減を図らざるを得ないものであります。  なお、本特例措置につきましては、後日、健康勘定の収支状況によっては減額分に相当する金額を繰り戻す等の適切な措置を講ずることとしており、政管健保の適正な事業運営が確保されるよう配慮されております。  以上、本法律案に盛り込まれている各措置は、いずれも昭和六十三年度の財政運営にとって必要な財源確保するものでありまして、現下の厳しい財政状況の中で、国民生活と国民経済の安定に資するための措置として必要不可欠であるものと考える次第であります。  また、修正案は、事の性質上当然の措置であります。  最後に、私は、政府が引き続き行財政改革を一層推進し、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定、向上を図るため、財政対応力を一日も早く回復するよう努力されんことを切に希望いたしまして、本法律案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  216. 越智通雄

    越智委員長 次に、上田卓三君。
  217. 上田卓三

    上田(卓)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案並びに修正案について、反対の立場から討論を行うものであります。  まず最初指摘しておかなければならないことは、今国会の当初から与野党間で懸案になっている所得税を中心とする今年度減税案が、政府自民党の極めて不誠実な対応によって、いまだに具体的な成案を得ておらず、実施のめどすら立っていないことであります。  社会、公明、民社の野党三会派の要求する二兆九千四百億円の減税を実施するということは、三月八日の与野党国会対策委員長会談で確認され、その後も与野党間で再三確認がなされております。減税の規模、財源等については与野党政策担当者で決めることとし、三月三十日の与野党国対委員長会談では、六十三年度減税のための法案は今国会の会期中に処理するよう最大限努力するとの点で合意を見ております。  しかるに、竹下首相は四月十八日の記者会見で、税制の抜本的改革の名のもとに、減税法案だけを切り離して今国会に提出する考えはないとの意向を表明したのであります。これは、これまでの与野党合意を全く無視する約束違反であります。昨年春、国民がこぞって反対する中で廃案となった売上税の教訓を無視して、何が何でも新型間接税の導入を図ろうとする竹下内閣の姿勢は到底容認することはできません。  今国民が心の底から求めているのは、大型間接税による大増税ではなく、大企業、大資産家優遇の不公平税制の改革による減税なのであります。与野党合意に従って大幅減税を今国会中にぜひとも実現するために、政府・自民党の特に誠実な対応を望むものであります。  さて、周知のとおり、本年度予算での赤字国債の発行減額幅は計画を上回る一兆八千三百億円となり、大蔵当局は、赤字国債を一九九〇年度にゼロにする財政再建目標はほぼ射程内に入ったと得意顔であります。しかし、その多くは最近の急速な景気拡大による税収増とNTT株売却の臨時収入に助けられたものであり、決して大蔵当局の手柄とは言えません。むしろ政府、大蔵省のかたくなな緊縮財政政策が、これまで、いたずらに内需を冷やし、日本経済の輸出依存体質を強め、結果として財政再建をも困難にしてきたことの方が問題であります。  また、赤字国債の発行ゼロは近い将来達成されたとしても、この十年来の緊縮財政の中で積み重ねられた財政のツケ回し、一般会計からの厚生保険特別会計への繰り入れ削除、国家補助の一律カットと地方自治体への転嫁、防衛費の債務負担行為など、その総額は十一兆円以上に達していることも忘れるわけにはいきません。  私どもは、財政再建を進めるためにも、積極財政で我が国経済を内需主導型の安定的成長の軌道に乗せ、税の自然増収を確保するとともに、不公平税制の是正を図ることが重要であると主張してきました。そろそろ緊縮財政を卒業するときに来ております。  宮澤大蔵大臣の持論は資産倍増論でありますが、国民生活の基礎を長期的視野に立って整備する社会資本建設を中心に置いた財政計画を今こそ明確に打ち出すときが来ています。大幅所得税減税や高齢化社会に対応する福祉の充実などとあわせて、中身のある内需拡大策が求められているのであります。  税制改革について言えば、現行直接税の中に存在する多くの不公平、例えば有価証券譲渡所得、土地譲渡益などキャピタルゲイン、さらには資産に対する課税の適正化や法人税の各種引当金、準備金などを全面的に見直す必要があるのであります。  我が国の直面している政策課題にまともにこたえようとせず、小手先の対応で現状を糊塗する財政運営では、国民の要求にこたえることはできません。これまでの財政経済危機をもたらした政府・自民党がみずからの責任を全く棚上げし、またしても大型間接税で国民に負担を転嫁しようとしていることに対して、我が党は重大な決意を持って断固これと闘うということを強調して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  218. 越智通雄

    越智委員長 次に、日笠勝之君。
  219. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  以下、本案に対する主な反対理由を申し上げます。  第一に、財政再建が進んでいるというものの、その実態は、国民生活や地方財政へ負担のしわ寄せを行っていることであります。景気回復と土地暴騰、財テクブームに伴い法人税、相続税、有価証券取引税等の税収入も上がり、これを受けて六十三年度の赤字国債発行は三兆一千五百十億円に減額されました。財政状況は、表面的には改善されているように見え、政府も六十五年度赤字国債脱却の目標に向け自信を深めているようでありますが、その実態は、マイナスシーリングのもとに福祉、文教予算の伸びを圧縮した上でのことであり、また、歳出削減による後年度負担への繰り延べや特別会計への移管が行われています。今日、後年度負担の繰り延べは、地方への負担押しつけを含め、実に約十一兆円余にも上っているのであります。  六十三年度においても国債償還のための繰り入れを停止しており、政府は減債基金制度には支障がないとしていますが、減債財源として頼っているNTT株式の売却収入にはおのずと限度があり、減債基金制度については厳しい状態であると言わざるを得ません。減債財源が不足しているため、昨年に引き続き借換債の発行が新規財源債の発行を上回っております。特例公債の借りかえについては原則行わないとされていたにもかかわらず、今や借換債の発行が恒常化している状況に追い込まれているのであります。また、政府管掌健康保険事業への一般会計からの繰り入れのうち六百五十億円を削減しており、四年連続の措置であります。これらの措置は、単なる財源あさりであり、後年度へ負担の先送りにすぎないのであります。  第二に、本来的な財政再建を怠り、大型間接税を画策していることであります。本来の財政再建は、単に赤字財政の削減だけでなく、資源配分、所得再配分、経済の安定など、その機能を十分に果たせるような財政システムを構築することであり、まず所得税の不公平感の是正に取り組み、行政機構の効率的な縮減や行政制度の抜本的な改革を図っていくことが重要であります。しかるに、政府は、いまだ行政改革は不十分、不公平税制の是正もなされてないにもかかわらず、安易に税収を得られる大型間接税導入を画策しております。不公平税制の是正と積極的な行政改革によって歳入、歳出の両面を思い切って見直していくべきであります。その取り組みを怠り、安易に大型間接税を画策する政府の姿勢は、長期的にも健全な財政運営とは思われません。  今日まで政府は、財政赤字の削減を国民の実質負担増に任せ、実効ある財政見直しを怠ってまいりました。歳出の厳しい見直しを行うとともに、歳入においても国民の納得のいく公平な税制改革を目指すべきものであります。また、実効性のある積極的財政再建計画を策定し、健全な財政運営を図っていくよう強く要求し、本案並びに同修正案について反対を表明し、討論を終わります。(拍手)
  220. 越智通雄

    越智委員長 次に、安倍基雄君。
  221. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、民社党・民主連合を代表して、本委員会で審議が行われてまいりました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案に対して、反対の立場から討論を行おうとするものであります。  もちろん、このいわゆる財確法は、財政を運営する上に必要な技術的な法律であり、借換債の発行など、やむを得ない法案であるという一面はあるのでありますが、その基礎となる財政運営基本において批判すべき点が多く、我々としては、こうした内容の法案を提出せざるを得なくなった財政政策そのものに対して、反対の立場をとらざるを得ないのであります。  第一に、毎年繰り返されるこの財確法の審議に示されるように、我が国の財政再建についての長期的なビジョンとその目的を達成するための具体的なスケジュールが明確でないことであります。「増税なき財政再建」のスローガンが掲げられてから久しいのでありますが、その実効が上がらないままに、国債の多額の借りかえと新規発行が繰り返されております。このその場しのぎの財政運営が我々が批判する第一の点であります。  第二は、行政改革による歳出削減が十分行われていないことであります。一応、雷電、国鉄、専売の民営化は行われました。しかし、歳出の再検討のうち最も大切な補助金の整理については、思い切った措置がとられていないのみならず、相次ぐ海外からの市場開放要求等に伴い、関係産業に新たな補助金を考慮するという傾向が生じつつあり、つまり外交の失敗を財政措置でしりぬぐいしようとする傾向が懸念される状況であります。  第三に、この行革と関連し、地方の行革がほとんど行われていないことであります。地方の時代と申しますが、これは決して、国が社会保険その他について年々負担が増大する反面、地方、特に一部の富裕自治体があり余る財源を得て放漫財政を続けてよいということではありません。国と地方の財源と事務配分の見直しが急務であると考えます。  第四に、政府が、減税よりも公共事業という考え方のもとに、公共事業投資の投資効果を十分吟味しないままに、投資レベルの上昇のみに重点を置いている点であります。  公共投資を一時的に拡大しても、最近のように地価上昇が著しい現況のもとでは、投資効率を吟味しないままの公共投資の効果は疑問であり、一部業界を援助するだけのこととなります。また、こうした投資はカンフル注射のようなもので、次年度にこのレベルを低下させれば、内需拡大の効果を持ち得ません。むしろ、内需依存型の経済への移行には、減税の方が効果的とも言えます。この点の吟味が十分行われておりません。  政府は、この秋に大型間接税の導入を意図しているようであります。我々は、その前に、徹底的な行革と、不公平税制の是正と、これによる減税を行い、また間接税を導入するのであれば、その前に国民の信を問うべきであると主張しております。この財確法に象徴される政府の財政運営基本方針は、こうした我々の要求から隔たること遠いと言わざるを得ません。  以上の理由をもって我々はこの法案に反対の立場をとらざるを得ないことを明らかにして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  222. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  223. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案に対し、反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、財政危機を引き起こした政府・自民党、財界の責任とその根本原因についてであります。  今日の深刻な財政危機は、石油ショック後、政府・自民党が財界の要望に沿い、極めて無謀な国債の大量発行による財政ばらまき政策を強行したことから引き起こされたものであります。さらにこの数年間、政府・自民党が財政再建を図るとして進めてきた臨調行革路線の諸施策の実行、それは軍拡優先、大企業奉仕の財政、税制の仕組み温存、強化、その国民への犠牲の加重であります。その結果、わが国財政は国債費が一般会計の二割合を突破、新規財源債収入よりも国債費が上回るというサラ金財政の新たな段階に突入し、再建どころか破綻のきわみに達したのであります。  たとえ六十五年度赤字国債脱却という再建目標が達成し、大蔵大臣が言うお座敷がきれいになっても、この間のツケ回しや地方自治体への補助金カットなど、つまり押し入れの中の汚れ物は膨大な額に達し、さらに同年度末の国債残高は百六十八兆円と、国の借金体質は深刻化の一途をたどるのであります。  本法案は、このような破綻を招いた政府・自民党、財界の責任とその根本原因を棚上げし、そのしわ寄せを国民の財産の食いつぶしや、いずれ国民負担となる赤字国債の恒常的な大量発行や借りかえなどで、全く責任のない国民に現在及び将来にわたって肩がわりさせ乗り切ろうとするもので、到底容認できるものではありません。  第二の理由は、国民本位の財政再建の方途に背を向け当面を糊塗する安易な財源確保策であり、財政危機を一層加速、深刻化させるものであります。  今日の財政危機のもとでは、歳出面では軍事費の異常突出や大企業奉仕の不要不急経費に徹底したメスを入れ、また大企業などに対し低金利の国債借りかえを求め国債費を軽減すること、歳入面では大企業、大金持ち優遇の不公平税制の抜本是正を行うなど、国民本位の財源確保策こそとるべきであります。ところが、本法案はそれに全く反したものばかりであります。  三兆一千五百十億円の赤字国債の増発は、財政危機を深刻化させる根本原因であり、さらに同借りかえは、当面の負担を軽減するものの、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、財政危機の重圧を二十一世紀へ向け永続化させるものにほかなりません。七年連続の国債整理基金定率繰り入れ停止措置は、減債基金の枯渇を早め、結局は財政破綻を加速、深刻化させるものであります。また、四年連続の政管健保国庫補助削減措置は、健保大改悪による受診抑制と患者負担の結果であり、黒字が出たからといってその積立額から安易に国庫に召し上げるやり方は、改悪の屋上屋を重ねるもので、断固認めることはできません。  第三の理由は、本法案が大増税を企図し、大軍拡と大企業奉仕を貫き、国民犠牲の反国民的な六十三年度政府予算の財源対策であるからであります。  六十三年度政府予算は、レーガン核戦略に追随し、GNP一%連続突破の歯どめなき大軍拡の推進、民活の名による大企業関連支出の拡大の反面、福祉、教育予算を厳しく抑え込み実質マイナスとし、農業、石炭、中小企業などを経済構造調整の名のもとに切り捨て、あるいは破綻に追い込もうとするものであります。さらに、公約に違反し、最悪の大衆課税である新大型間接税導入を企図している予算でもあります。  かかる反国民的な予算、施策のための財源確保策は断じて認められないところであります。  以上で、私の反対討論を終わります。
  224. 越智通雄

    越智委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  225. 越智通雄

    越智委員長 これより昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について採決に入ります。  まず、中村正三郎君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  226. 越智通雄

    越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  227. 越智通雄

    越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  228. 越智通雄

    越智委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。玉置一弥君。
  229. 玉置一弥

    ○玉置委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 我が国経済の着実な発展と国民生活の安定・向上を図るため、可及的速やかに特例公債依存体質から脱却するよう引き続き歳出の徹底した見直し、削減に最大限の努力を払うとともに、財源対策としては、中長期的観点から対応を図り、財政の健全化をすすめること。  一 今後とも公債の償還に支障なきよう、所要の償還財源確保に努め、もって公債に対する国民の信頼の保持に万全を期するとともに、日本電信電話株式会社の株式売払収入を社会資本の整備のために活用するに当たっては、国債整理基金の円滑な運営に支障が生じないよう十分留意すること。  一 現下の内外社会経済情勢にかんがみ、均衡かつ調和ある経済発展を図るため、引き続き適切かつ機動的な財政・金融政策の運営に努めること。  一 為替相場の我が国経済に与える影響が極めて大きいことにかんがみ、今後とも各国との政策協調等を通じて、安定した為替相場の実現に努めるとともに、円高メリットが国民生活の向上に十分反映されるよう配意すること。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
  230. 越智通雄

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  231. 越智通雄

    越智委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。宮津大蔵大臣
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  233. 越智通雄

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  235. 越智通雄

    越智委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前九時四十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会