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1988-04-19 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十九日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       堀之内久男君    村井  仁君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    上田 卓三君       沢田  広君    野口 幸一君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    橋本 文彦君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務省経済局次         長       内田 勝久君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房審         議官      土居 信良君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省銀行局保         険部長     宮本 英利君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君  委員外出席者         総務庁行政管理         局管理官    太田 省三君         外務大臣官房審         議官      久保田 穰君         中小企業庁計画         部振興課長   瓦田 栄三君         自治省財政局指         導課長     二橋 正弘君         参  考  人        (日本銀行理事) 青木  昭君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   早川  勝君     伊藤 忠治君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 忠治君     早川  勝君     ───────────── 四月十四日  新大型間接税導入反対に関する請願岩佐恵美紹介)(第一三九六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一四九九号)  大型間接税導入反対に関する請願寺前巖紹介)(第一三九七号)  同(矢島恒夫紹介)(第一三九八号)  大型間接税導入反対に関する請願経塚幸夫紹介)(第一三九九号)  同(松本善明紹介)(第一四〇〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一五〇〇号)  同外一件(東中光雄紹介)(第一五〇一号)  同(不破哲三紹介)(第一五〇二号)  同(松本善明紹介)(第一五〇三号)  同(不破哲三紹介)(第一五二七号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願不破哲三紹介)(第一五〇四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一五二八号)  同(不破哲三紹介)(第一五二九号) 同月十八日  大型間接税導入反対に関する請願石井郁子紹介)(第一五六二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月十三日  新大型間接税導入反対に関する陳情書外十四件(第一五号)  税制改革に関する陳情書外一件(第一六号)  相続税基礎控除額引き上げに関する陳情書(第一七号) は本委員会参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第三号)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和六十三年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川勝君。
  3. 早川勝

    早川委員 いわゆる財確法案質問に入る前に、先週行われましたG7IMF暫定委員会大臣出席されて戻られましたので、その件について最初に伺いたいと思います。  G7が終わって大臣が戻られるのと軌を一にするような形でどうもまたレートが若干動いたりしているのですけれども、どうしてそういう動きをするのかなということで報道を見ていますと、余り成果がなかったんじゃないかというようなのを背景にまたドル安が生じたというような記事も見られます。そういうことを考えますと、大臣から今回の一連の会議のいわば評価成果について伺いたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先週、お許しをいただきまして、ワシントンで開かれましたG7IMF暫定委員会出席をいたしてまいりました。御審議に御迷惑をかけまして申しわけないことであったと思います。  ただいまお話しの点は、結局、昨年の暮れに七カ国で為替市場の安定を目指して政策協調あるいは市場における共同行動等についてさらに従来の協調確認いたしたわけでございますが、このたびのG7会議におきまして、いろいろあれこれちょっとそっとのことはございますけれども、概して昨年の暮れの協調体制というものは有効に働いておるという認識でございまして、今後ともそれを続けてまいろうということでございました。  御指摘のように、たまたま会議をいたしておりますときにアメリカの二月の貿易収支の数字が発表になりまして、これが予想よりもいわば悪かったということから市場がそれに反応いたしましたが、それに対しましてはまた昨年の暮れに合意をいたしましたような対応各国ともいたしておる。自由市場でございますからちょっとやそっとのことはございますけれども、全体としてG7側あるいは先進国側のこれについての対応体制がかなり円滑に動くようになりましたし、また事態の重大性ということも、我が国はもとよりでございますけれどもアメリカ自身認識をするに至っておりますので、今後の政策協調ないしは市場における対応については、まず体制は十分に今後も機能していくであろうということをこのたびの会議確認をいたしたということでございます。
  5. 早川勝

    早川委員 昨年の二月のいわゆるルーブル合意のときも、これ以上のドル乱高下は望ましくないということでやはり協調政策確認し合ったのですけれども、あのときは一ドル百五十三円で、十カ月後の十二月のときには百二十六円になっていて、今回は百二十六円、今の現状を確認し合おうじゃないかというようなことが含まれているのですけれども、考えてみますと、昨年の一年間の流れを見まして、百五十三円から百二十六円までというようなことを考えますと、今大臣がおっしゃられたようなことで、本当にそういうふうに確信していいのかなという不安をある意味でちょっと抱くのですけれども、そういうことはないものなんでしょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、昨年二月のルーブル合意におきましては、このあたり水準為替を安定させることが必要であるという認識を示したわけでございますが、この考え方のこのあたり水準というのは、市場そのものは自由でございますから、市場が長い時間の間に動いていくこと、これは妨げるものではない、乱高下に対しては協調するという物の考え方であったと思うのでありますが、昨年の十二月になりまして、明確に、これ以上ドルが下がるということは非生産的であるという、従来とやや違った表現考え方をとるに至りまして、つまり、それは、昨年の十二月以降、従来このあたり水準と言っておりましたものを、これ以上のドル下落お互いに迷惑な非生産的なことであるというふうに、もう一歩踏み込んだということを申し上げることができるであろうと思います。したがいまして、御指摘のように昨年ルーブル合意以降円の水準ドル水準はかなり円高の方に動きましたことは事実でございましたが、昨年の暮れあたりから、もう一歩踏み込んで、これ以上のドル下落というものを回避したい、こういう考え方になってまいったと申し上げることができるのではないかと思います。
  7. 早川勝

    早川委員 G7声明を最近読んでみたわけですけれども、その中で、従来からも言われて、確認をした部分は、御存じのようにドルのこれ以上の変動は好ましくないというのが確認されているわけですが、それ以外に二つ新しい点が含まれているんじゃないかと思います。  その一つは、いわゆる多角的監視サーベイランスの問題でして、商品価格指標開発について合意をしたということが盛り込まれております。  この商品価格指標というものについて、確かにこの声明におきましてはいわば追加的な分析手段だという限定的に使われているのですが、いや、そうじゃないんだ、もっと進んで、金融政策を発動するに当たっての道具、手段としても新しい側面を持っているんじゃないかというようなとらえ方がされているわけですが、この点について会議の中でどういうふうに、この文章をそのまま読みますとそれ以上にはならないのですけれども、今一般に言われているいわば二つのとらえ方があるわけですけれども、その点について伺いたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる経済の多角的、この声明には「サーベイランス」というふうに書いてございますけれども、そもそもこのサーベイランスということも、これは日本語でございませんで、新聞では監視とかいうようなことを言うのでございますが、監視となりますとますます不思議な言葉でございます。結局ここらにありますのは、各国経済がちゃんとうまくいっているかどうかということをお互い議論もしよう、またIMFもそれについてIMFなりの評価もするということで従来やってきておるわけでございますけれども議論をするにしても何かの物差しがないと議論ができないではないかということからその物差しという話になってまいっておりまして、その物差し指標に幾つかのものがある、その中で一つそれに商品価格も加えたらどうだ、こういう話でございますね。  したがって、これは、そういう物差しをつくったところで、指標がこうなったからすぐ政策をこうしなきゃならないという性格のものでない、そういうものでないということはかねて合意をしておるわけでございますから、私どもの間では、これに商品価格が加わったところで加わらなかったところで、全体の物差しの持っている機能というものは、政策をすぐにそれによって動かすといったようなものではないということは基本的に合意をされておるわけでございますが、それをさらに繰り返しませんでこの指標のことだけが出るものでございますから、何か現実政策を左右するようなことがここで起こってきたのではないかという、そういう読まれ方をする危険は私ございますと思います。しかし、実際には、かなりこれは、何と申しますか、経済分析の手法とでも申しますか、そういうことに関係をより多くするものであるというふうに考えております。
  9. 早川勝

    早川委員 ただ、今までの七つ指標というのがありまして、それは御存じのように、成長、内需インフレ経済収支財政収支金融情勢為替レート、いわば国内的な指標ですね。そういうものに対して、今回新しく一つ商品価格指標、これから中身はどうなるのか、「開発」ということですからわかりませんけれども、これは一つの国際的な指標としてとらえることができるんじゃないか。一次産品商品をそれぞれいろいろな加重平均だとか言われていますけれども、それを入れることは、従来の国内的な指標物差しに新しくこういう国際的な指標が入るということで、単にいわゆるインフレ先行指標というだけではなくて、それだと国内指標としての国内インフレという指標が今まであるわけですから、新たに加わった意味というのはどういうところにあるのでしょうか。どう理解したらよろしいものなんでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはお互い政治に携わっておる者よりはむしろ経済学者議論に入っていくのだろうと思いますけれども、恐らくは一次産品等等のいわゆる商品指標というものが、先進国はもとよりでございますが、発展途上国累積債務国等々にも広く経済要素としては影響を持ちますので、これも一つ七つでございましたか、従来の指標の中に加えてみたらどうだというのは、多分間違いではない、そういうことだろうなという程度に実は私自身は受け取っております。
  11. 早川勝

    早川委員 ワシントン会議を終えられた後大臣が記者会見されておるわけですが、その中で、この商品価格指標をいわゆるひとり歩きさせる、そういう表現をされているわけですが、それは同時に、各国政策、なかんずく金融政策等がこれによって縛られることはないのだというように発言されているようですが、この点はそのまま受け取ってよろしいですか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともと、この各国経済多角的サーベイランスという、まことにどうも熟さない言葉でございますけれどもお互い経済をどういうふうにやっているか、うまく大きな目標に沿って歩いているかどうかといったような話をお互いにするということでございます。そこまでは理解が容易なことでございますが、それをさらに分析的に指標でもってああだこうだ言うというのは、これは専門家のやることであろうと思います。要らないことだとは思っておりませんけれども、それは専門家のやることであって、それに新しい指標一つ加わったということであると私は理解をしておりまして、指標がこうなったからあなたのところの政策はこうならなければならぬといったように経済というものは動くものではないし、また動かせるものではない。いわんやよその国の経済についてそれをすぐにそんなに言えるものではないということは物事の基本合意されていることだというふうに私は考えておりますので、その意味でああいうことを申したのでございます。
  13. 早川勝

    早川委員 これは国際金融局長に伺った方が適切かもしれませんけれども、この商品価格指標金融政策運営上一つ指標に使った場合、使うことが適当でないと言われているのですけれども、これを使うことの最大の欠陥、それについてはどういう理解をすればよろしいですか。
  14. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来御指摘指標どれをとりましても、それ一つを何らかの判断の主要な材料といたしまして政策が決定されるということになった場合には、これは商品指標の場合でも、あるいは貿易収支でありましても、それだけをアンカー、いわばいかりとして政策決定をする場合には、経済自体は大変いろいろな要素で動いておりますので、必ずしも適当でないということであろうと思います。  したがって、例えば例を挙げますと、国際的な商品指標が仮に下落している場合には、先ほど御指摘のようなことを仮にいたしますとしますと金融を緩めることが必要かもしれませんが、ある一国におきまして内需が非常に強い状況にあるというような場合にはそれからのインフレ要因というものがあるわけでして、必ずしも第一次産品価格だけで判断するわけにはまいらないという例であろうと思います。
  15. 早川勝

    早川委員 この商品価格指標をこれから開発するということになっているわけですけれども、この場合に既に金だとか石油だとかを含めるんだという意見もあるようですが、そういうことが議論の場でなされたのかどうかという問題と、もう一点、これから仮に開発する場合に、この指標通貨建てですね、ドルになるのか。SDRとした方がいいという意見もあるのですけれども我が国のこの問題に対するスタンスというのですか、方針ですね、もしはっきりしておりましたら伺いたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいままでの御質問、またお答えによりまして、指標というものがどういう位置づけを与えられるべきものかということはほぼはっきりいたしてまいったと思うのでございます。したがいまして、その指標を、これから商品指標というものをどうするかは、いずれにしてもこの七カ国の蔵相会議には蔵相代理者というものがかねて定められておりまして、それは我が国で申しますと財務官というようなことでございますが、各省の次官クラスでございます、この指標の問題もひとつそこへ預けよう、ただいまおっしゃいましたどういうものを商品指標が含んだらいいのかといったようなことを全部含めまして専門家にひとつ任せよう、検討してもらいましてその結果をまた持ち寄ってみよう、こういうことになっておりますので、したがいまして、詳細は一切余り議論をせずに任せたということでございます。
  17. 早川勝

    早川委員 今までの答弁でこの指標位置づけなり性格説明を伺う限りわかったのですけれども、この声明の第一のパラグラフの終わり、「これと関連して、」という文章がありまして、指標開発合意した、「これと関連して、」「国際通貨制度機能及び協調プロセスをさらに改善する方法を検討することに合意した。」というので締められているのですが、余りにもうがった見方かなということを言われるかもしれませんけれども、昨年の九月三十日にアメリカベーカー財務長官が第四十二回IMF世銀総会演説されているのです。いわゆる商品価格指標について言われているのですが、その中に今回の声明と順序が逆になった形で演説されている部分があるのです。今回の声明では、追加的分析手段として合意した、さらにこれと関連して通貨制度を研究する、協調プロセスを研究していく、こういう組み立てになっているのですが、ベーカー財務長官の昨年の演説は、その前段、後段が逆の組み立てになっているわけです。「協調手段への追加的指標として、各国通貨と、金を含む商品バスケットとの関係値の使用を考慮する用意があります。」これが先にありまして、その後に、「われわれは、商品価格指標が、政策とその成果判断を得るために、分析手段として、」こういう組み立てになっているのです。そういうふうに考えますと、いわば七指標に一指標が今までと同列で加わったにすぎないのだというふうなとらえ方だけでは、この後段との絡みで読みますと、そうではなくて、巷間伝えられているようなベーカー構想がこれから出てくるのじゃないかなという感じもするわけなんですけれども、その点についてはいかがですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今お読みになりました「国際通貨制度機能及び協調プロセス」というのは、本当にこれもまた何を言っておるのかわからぬではないかとおっしゃいますことはごもっともな御指摘でありまして、実はこれには背景がございまして、たまたまフランスの大蔵大臣が今のこの問題についての所見のようなものを一、二カ月前に持たれましてそれをアメリカ新聞に発表されたのでございます。また、我々の会議にもしたがってそういう話をされましたのですが、それは、例えばヨーロッパのEMSであるとかいうものを参考にされながら、我々の変動相場制というものも何か改善できないものだろうか、こういう種類お話であった。もとより事の性質上具体的にこうしたらいいという結論があるお話ではないのでございますが、つまり、これはそのことをちょっと踏まえて言っておることでございます。  つまり、申しますと、先ほど昨年九月のベーカーさんの演説にも御言及になりましたが、こういう変動相場制というものをやっておって、各国がそれをできるだけ安定的に運営させるために政策協調であるとか市場介入とかいうものをずっとやってまいりました。これはこれで何とかお互いに不安定にならないように運営をしてまいっておりますものの、もう少し何かうまい制度はないものかなというのは、学者専門家はもとより、私どもでも無論おのおのがいろいろな機会に考えておることでございます。  恐らく早川委員の御質問の趣旨もそういうことに関係があるのでございますが、しかし考えてみてもなかなかうまい知恵がないものでございますから、結局今のような制度を比較的安定的に運営するにはどうしたらいいかということでやってきておる。ですから、機会がございますと何かもっといい制度はないかなという話が出てまいりまして、ここに書いてあることもそういうことに関係がございますし、また指標なんということも、経済のパフォーマンスを見るのに何かもう少し客観的な物差しがあればいいなという、いわば願望のようなものを多少専門家的に考えてみるということ、私は全体をそういう種類のことととらえておりますものでございますから、したがいまして、現実の政治的なあるいは経済政策的な意味合いというものはやや薄いものであるというふうに私は考えております。
  19. 早川勝

    早川委員 このG7会議声明の中で、いわば合意した内容のもう一つの特徴が、累積債務問題に対してIMF及び世銀、いわば国際機関が協力しようじゃないかということが今回初めて盛られたのではないかと理解いたします。大蔵大臣宮澤構想と言われるようなものを演説で発表されているわけですけれども、その中身をここでも披瀝いただきたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題はいろいろ複雑な背景がございまして、多少御説明が長くなりますのをお許しいただきたいと思うのでございますが、現実には累積債務の問題はケース・バイ・ケースに、特定の累積債務国とそれに関係しております銀行あるいは政府機関国際機関等々がいろいろな形で解決を図ろうとしております。銀行間のそういうグループもございますし、また政府間の協議もあるというようなことで、現実ケースを対象に一つずつ、正直言って少しずつ当面の問題だけを何とかその都度その都度対応をしながら今日に及んでおるわけでございまして、そのことはどうもそれ以外にしようがないだろうということがまず基本にございます。  しかしながら、そうかといって、今やっておりますことは、到来する問題を当面片づけるいわば債務のリスケジュールとでも申しますか、そういうことでやっておるのでありまして、問題の根本に触れた解決というものはなかなか難しい問題でございますから進んでおりません。現実には私はそのようなやり方しかないのであろうと思いますけれども、問題の大きさから見ますと、そうはそうであっても、もう少し先進国の方でもこの問題を踏み込んで考えなければならないのではないか、殊に我が国のように少なくともこれだけの経済力を持っておる国としては、この問題はやはりほっておいてはならぬのではないかという気持ちをかねて私も政府も持っておるわけでございます。しかし、それを不用意に持ち出しますと、債権債務の交渉の過程で債務国にいわば過度に楽観的な期待を与えるという問題もございますし、それから、もともとこれは個々の銀行の持っている債権に関することであって、それをなぜ国が関心を持たなければならないのか、そういう物の考え方は御承知のようにアメリカ議会などにはかなり強い。そこへまた、国際機関に対して、殊に一般国際機関でございますが、米国の議会の中にはかなり懐疑的な物の考え方もあるといったような、かなり複雑な背景がございますものですから、我が国としましては、昨年のIMF総会のときに私はこの問題について一言言及をいたしておきまして、また今回さらに半歩ぐらい進めた形で言及をいたしておるわけでございますが、それは、我が国としてこういう累積債務国の問題に決して無関心ではない、日本として殊に国際機関からの要請があれば応分の寄与をするのに決してやぶさかでないということをはっきり申しておきたい、こういう気持ちがありまして議論をいたしておるわけでございますが、背景が先ほど申しましたようにかなり複雑でございますので、問題の解決のテンポというものがなかなかはかばかしくいかないというようなことがこの第六項にあらわれておるところでございます。
  21. 早川勝

    早川委員 せっかくこの声明の中にも盛り込まれましたし、また我が国のあり方としても、年がかわると、アメリカの新大統領が選出された来年以降どうも防衛問題の圧力が日本に強まってくるのではないかということを考えますと、我が国が国際的な役割を果たすという分野はこういう累積債務問題だとか途上国の経済社会発展への協力の問題だというふうに考えますので、確かにアメリカの財務長官を含めてなかなか懐疑的だということも伺っておりますけれども、ぜひ日本がイニシアチブをとって実現をしていただきたい。これは要望になります。  次に、財確の問題について伺わせていただきます。  最初に、六十五年度特例国債脱却という目標を掲げておられましたが、この可能性について今日の時点でどのように認識されていますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここにきまして我が国経済運営がかなり順調になってまいりまして、それを反映いたしまして財政も比較的租税収入等順調に推移しておるように見受けられます。したがいまして、昭和六十五年度には特例公債の依存体質から脱却するという問題は昨年来現実性を帯びてまいったというふうに考えておりまして、前にもそのことを幾らか申し上げたと存じますが、ただいま具体的にこれは射程内に入った政策課題として何とか実現をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  23. 早川勝

    早川委員 ところで、この可能性が非常に強まっているということで、それが実際に実現できるかどうか、かなり自然増収との絡みで決まってくるのではないかと思いますけれども、これが仮に六十五年度までに特例公債依存財政から脱却できた場合に、いわば第二段階の財政改革、財政再建という言葉を使ってもいいのかどうかこれは問題ありますけれども、建設国債の依存率を下げるという国債との絡みもあるのですけれども、そうではなくて、もう少し視野を広げて日本の財政改革が第二段階に直面しているのではないかという感じを持ちます。  そういう観点で伺いたいのですが、これまでにとりわけ歳出カット、行革路線の中で進められて今回の予算にちょっと新しい方向へのかじが切られましたけれども基本的には行革、臨調路線ということを考えますと、一体その中でどういう政策が財産再建のためにとられてきたのかなということをちょっと整理してみたいなという感じがするのです。  それとの絡みで、初歩的なことなんですけれども、今回の財確法案中身というのは、特例国債の発行と国債費定率繰り入れの停止と健保会計への繰り入れの停止ですね。そうすると、六十五年度に特例国債がいわばゼロになればこのたぐいの財確法案というのはもう提出の必要がないというふうに理解してよろしいですか。
  24. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、いわゆる財確法というのは三本の柱から成っております。それぞれ毎年度の予算編成において財政需要等を考えまして毎年度そういうものをお願いしているわけでございまして、仮に六十五年度脱却をいたしました場合に、当然のことながら特例公債の発行というものがその場合ゼロになりますので、その部分について財確法で毎年度お願いをするという事態は当然のことなくなると考えております。ただ、そのほかの定率繰り入れの停止、それから健保の特例につきましては、そのときどきの財政事情、財源事情、あるいは健保について申し上げれば健保の財政収支の状況というようなものを考えて判断させていただく、また国会の御審議をお願いすることもあり得るというぐあいに考えておりまして、残りの二項目についてはいまだ明確なことを申し上げられる段階にはないわけでございます。
  25. 早川勝

    早川委員 そこで、こういう財政再建が六十五年度可能だという状況をもたらした大きな要因というのは、やはり歳出カット、実際にいいますと歳出カットよりもどうも繰り延べであり、通俗的にはツケ回しじゃないか、こう言われているのです。  そこで、この歳出面で、表面的なことなんですけれども、どれくらい、どんな項目について繰り延べられ、ツケ回しが行われてきたのかということを伺いたいと思いますが、まず、この定率繰り入れが五十七年度から今年度まで、そして来年六十四年度、六十五年度と今までと同じ定率繰り入れ問題に対して同じような対応をしていった場合、一体幾ら繰り延べられることになりますか。
  26. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 今までの定率繰り入れについては既に御承知であろうかと思いますけれども、六十四年度、六十五年度仮に定率繰り入れを停止いたしますということになりますと、六十四年度の定率繰り入れの見込みは二兆六千四百億、これはもちろん今後の公債発行にもよりますけれども、先般国会に提出いたしました「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」によりますと、六十四年度で二兆六千四百億、六十五年度が二兆七千三百億ということになります。
  27. 早川勝

    早川委員 そうしますと、六十三年度までで十二兆九千六百五十三億円という数字ですから、今答弁いただいた五兆三千億円を足しますと十八兆円ぐらいの定率繰り入れが停止される、そしてまず特例国債ゼロという財政が組まれるのだという事態が生じます。  それから社会保障関係で同じようなことが行われておりまして、国民年金の平準化措置、それから厚生年金の国庫負担の繰り延べ、政管健保の国庫補助の繰り延べが行われているわけですが、それぞれ行われた期間と額をまず教えてください。
  28. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 お答えいたします。  厚生年金の国庫負担金の繰り入れ等の特例、五十七年から六十三年でございまして、総合計で二兆七百三十億ということになっております。それから国年の特別会計の国庫負担の繰り入れの平準化措置でございますが、五十八年から行っておりまして、一兆二千七百二十七億ということになっております。それから政管健保の国庫補助の繰り入れの特例は、財確法で毎年度お願いしているわけでございますが、六十年度から六十三年度の合計で四千二百三十九億ということになっております。
  29. 早川勝

    早川委員 それで、国民年金の平準化措置によって一兆二千七百二十七億円、これは六十五年度から七十二年度まで八年間で支払うという約束になっているわけですが、利子運用益というものはどのように計算されているのかというのが第一点です。  第二点は、この厚生年金の国庫負担の繰り延べ二兆七百三十億円に対しては、来年度、六十四年度以降償還する、こういう約束になっているわけです。ただ、償還期間をどうするのか、その際に利子運用益はどうするのかということははっきりしていないわけです。この厚生年金の問題については、ことしの年末の予算編成までに今言いました償還期間だとか利子運用益等の問題を明らかにできるのかどうかということを伺いたいと思います。仮に十年間で返していくのだということになりますと、利子率の問題もありますけれども、二兆円じゃなくて三兆円とか三兆五千億とか四兆円近い数字を結局払わなければいけないのではないかというふうに考えられますので、これも明らかにしていただきたいと思います。  それから三番目としましては、今言われた政管健保の繰り延べ四千二百三十九億円、来年度、再来年度、六十四、六十五年度どうされるのかという問題と、それから償還は「予算の定めるところにより、」と今回もそういうことが記されているわけですが、償還期間、利子運用益、どのように見ておられるのか伺いたいと思います。
  30. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 お答えいたします。  最初に平準化法に基づく国年の利子の話でございますが、いろいろな計算方法がございますけれども、おおむね試算いたしますと、一兆二千七百二十七億の削減額の累計に対しまして三千七百八十億円ぐらいの運用収入というものがあるだろうというぐあいに見込まれるわけでございます。それで、これの償還につきましては、実は平準化法は償還額が法定されておりまして、きちんと返せるということになっておるわけでございます。  それから厚年につきましては、御指摘のように、これは厚生保険特別会計法で、年金財政の安定が損なわれることのないよう、特例期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担金の減額分を繰り入れるということが決まっておりまして、いわば特例公債依存体質から脱却後に返すということが決まっているわけでございます。ただし、返済の期間、方式等返済の具体的内容につきましては今後の国のそのときどきの財政状況を勘案するということでございまして、現時点では明らかになっていないところも御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、国の財政改革をさらに一層進めてできるだけ早くこの分をお返ししたいというぐあいに考えておりまして、その際には、年金財政の運営に支障が生じないように、計画的に繰り戻しを行いたいというぐあいに考えております。ただ、具体的な返済計画はまだ決まっていないわけでございます。  それから三番目の御指摘の政管健保の話でございますけれども、これは御承知のように一般会計から毎年多額の補助をしているわけでございますけれども、ここ数年黒字が生じたということで、六十二年度繰り入れ調整後にまだ多額の積立金があるという状況で今回一部の減額をお願いしているわけでございます。政管健保というのは、御承知のように短期保険ということでございまして、前の二つの保険会計のように長期の収支計算を行ってやるものではなくて、むしろ毎年変動の激しい医療費に機動的に対応するという性格のものでございます。今回の措置はそういうことで健康勘定と一般会計の財政状況に着目して繰り入れ調整ということで行ったわけでございますけれども一般会計が特例公債依存体質から脱却したときには、それぞれ保険事業が毎年短期保険という性格で適正な医療費支払いができるように、厚生保険特別会計健康勘定のまさに収入、支出の状況を勘案しまして繰り戻し措置その他の適切な措置を講ずる。これは、いわば健康保険勘定が短期保険という性格から、毎年医療費の支払いに過不足が生じないようにしていくという性格から適切に対処していくものであろうというぐあいに考えておるわけでございます。
  31. 早川勝

    早川委員 社会保障の問題だけにとどまらず、いろいろな繰り延べなり転嫁が行われておりまして、地方自治体にも同じようなツケ回しが行われております。まず、この行革路線のその前から考えてみますと、日本の財政がいわゆる特例国債を出すようになった昭和五十年以降、いろいろな形で、地方の財源不足を含めて、地方債の肩がわりということで、同じように地方へもしわ寄せがいっているわけです。その間、これまで財政対策債だとか財源対策債だとか原資補てん債だとか、いろいろな地方における借金が国からのしわ寄せという形で起きているわけです。それで六十三年度まで幾らかというような試算をしますと、この十三年間に十九兆円ぐらいに上っている。それに対する利子の問題を考えると、もう十兆円じゃないかなというような試算も成り立つわけです。それから同時に、足りなくて交付税特会が借り入れた金もある。そういうのが六兆円もあるし、それを同じように利子負担しているわけですから、それを計算しますと、何かえらい巨額な、四十兆円ぐらい、日本の国が赤字財政になってから地方へもそういう形で借金がしわ寄せになっている。こういう試算もあるわけです。この問題が一つあります。  それで伺いたいのは、この交付税借入金の肩がわりの問題が幾らかというのが第一点。それから、地方財源対策に伴う繰り延べ、それぞれ年度でどれくらいに達しているのかというのが二番目です。それから三番目としましては、高率補助金、これは幾らになって来年度以降どうされるのかというのも伺いたいと思います。
  32. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 お答えいたします。  五十九年度の地方財政のいわば抜本的改革ということがございまして、既往の地方財政特会借入金のうち国の負担分というのを一般会計で承継したわけでございます。その額が五兆八千二百七十八億程度でございます。これにつきましては、法律上償還額が極めて明定されておりまして、この計画に従ってお返しをしていくということでございます。毎年、実は借入金でございますので利子が発生しておりますが、これについてはきちんとお払いをしております。  それから、地方財政対策に伴う後年度負担というのが、実はいろいろ複雑でございますけれども、総合計いたしますと六十三年度までで一兆二千三百十四億ございます。これにつきましては、主として補助率カットのいわば補てん措置として考えたものでございますけれども、例えば六十一年度補助率カットに伴いまして、投資的経費と経常的経費と両方に影響が出ているわけでございますが、その経常的経費の影響額が六千三百億ございますが、そのうち交付団体分の影響額が五千四十億ありまして、その半分の二千五百二十億というのがこれはいわゆる暫定加算と申しまして後年度にこれを交付税に加算するということが決まっておりますけれども、その具体的方法、時期等はこれから自治省と相談をして決めるということになっているわけでございます。したがいまして、その分はそういう意味で加算の時期とか方法等は決まっていないわけでございますが、その他の残りの分でございますね、その二分の一を除いた残りの分につきましては、毎年度地方交付税、あるいはたばこの増税を毎年度お願いしているわけでございますが、その分で補てんしたほかはいずれも後年度加算する額がこれは法律上明定されておりまして、それは後年度にきちっと加算していく、そういう形をとっているわけでございます。  それから補助率カットでございますけれども、補助率カットの影響額は今申しました経常的経費のほか投資的経費を含めますと一兆六千億余に上る効果を持っておりまして、これにつきまして法律上六十三年度末で切れるということでございますから、そういうことで六十四年度以降どうするかにつきましてはこれから鋭意検討していくということで、目下のところ方針がまだ決まっていないというのが実情でございます。
  33. 早川勝

    早川委員 交付税借入金の肩がわりを十年間で元利償還で毎年の利払いが四千百三十八億円ですか、そういう額を払っているわけですが、十年間というとならして年間一兆円くらいずつは払わなくちゃいけなくなるのかなという感じ、六十六年度以降ですが、そういうふうに思います。  それから、この高率補助金の問題について六十四年度以降どうするかまだはっきりしていないということなんですが、恐らくこれから大蔵省、厚生省、自治省含めて議論されるのでしょうが、具体的にどんな形で手続を経ていかれるのかなというのが一つ。  それからもう一点、実は六十年十二月二十一日の補助金問題関係閣僚会議、そこで高率補助金の問題については六十三年度までは暫定措置なんだということが確認されまして、六十四年度以降のあり方については大蔵、厚生、自治の三大臣が協議して決めるということになっているわけですが、これは六十年十二月二十一日で、もう六十三年度はスタートして来年の話なんですけれども、これまでにどんなような例えば協議機関ですか、あるいは協議されてきたのかどうかというのを伺いたいと思います。  それと同時に、議論する場合に、国と地方の役割分担だとか費用負担のあり方の検討、いわゆる基本的な問題ですね。国と地方との役割をどうするかというのが何かこうはっきりしないままに暫定でこうやってきているわけですね。果たして来年度以降、こういう国と地方との行政そして財源等かかわるわけですけれども、本当に抜本的な議論が行われるのかどうか、そしてまた結論が出るのかどうか。  それと、この補助金は六十四年度以降どういう対応を、延長されるのか、またもうすっきり切るのか、この点も伺いたいと思います。
  34. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 お答えいたしましたように、補助金等に係る暫定措置の期間終了後どうするかということは、私どももできる限り早急に検討を始めなければいかぬというぐあいに考えております。今後のいろいろな情勢の推移、今御指摘がありましたように、国、地方の役割分担、それから財源配分のあり方というようなものをも勘案しながら、関係省庁と早急に協議を開始して、何とか適切な結論を出していきたいというぐあいに考えているわけでございます。  先ほど御指摘のありました三大臣覚書は、補助率カットのうちのいわば生活保護の部分についてのお話だったと思いますけれども、これも補助率カットの非常に大きなテーマでございますので、私どもを除きますといわば関係二省庁でございますが、二省ともよく相談をして適切な結論を出したいというぐあいに考えているわけでございます。
  35. 早川勝

    早川委員 今までは何もやってきていないんだなということがわかりました。とてもじゃないけれども、国と地方との役割分担をこれから例えば年末の予算編成までにやる、そんなに簡単に、いわばこういう問題に結論を出すには余りにも時間が短いんじゃないか。行政改革議論のときの非常に大きなテーマなんですが、今までですら結論が出ないのですね。こういう枠の中でやっても出ないし、ぜひこれはもとへ戻すという方向で結論を出していただきたいと思っております。  それから、あと、私の方で言いますけれども昭和五十七年の予算編成のときに、国民健康保険の国庫負担、このときは高額療養費の自己負担額が一カ月三万九千円から五万一千円に上がったときなんですが、このときに会計年度所属区分の変更をしているわけですね。つまり、国民健康保険の国庫負担金についていわば十一カ月予算を組んで一カ月分計上しなかったわけですね。これは地方自治体の国民健康保険特別会計への繰り入れを結局十一カ月だけ入れて一カ月カットした。その額が二千億円ですね。一体この二千億円はどうなったのかな、どうするのかな、まあ問題はありますけれども、いわゆる国の歳出カットの一環として二千億円ここでも浮かしているということがあります。  それから、今現在行われている事業でして、NTTの財源、これを財源とする公共事業が行われているわけですね。地方自治体、いわばBタイプですか、たしかこれは四年間だと思いますが、六十二年度は三千九百十七億円、それから今度六十三年度の予算では一兆七百七十五億円、同じように使っていきますと、六十四年、六十五年で一兆円ぐらいが自治体だ。五年据え置きの返済財源はどうするのかということは、御存じのようにこれは将来の国庫補助金で返すということになっているわけですね。そうしますと、NTTの株売却益を財源とする地方の公共事業Bタイプは補助金の前渡しみたいなものなんですね。これは五年据え置きで返さないといけないわけですね。とにかく返さなければいけないから、今までと同じように通常の補助金プラスNTTの返還財源をプラスしてもらわないと事業費は落ち込むという問題があります。そうすると、落ち込まないためには、地方自治体がみずから負担しないと事業費は確保できない、こういう問題がまた起きるわけですね。  したがって、五年据え置きというふうになりますと、自治体の返還は六十七年から始まります。こういうことを考えていきますと、このNTTの株売却益を財源とするBタイプの公共事業でもやはり地方自治体に負担がかかってくるのじゃないか。またそのプラスアルファで返還のときに財源が国から与えられればそういう事態は生じないのですけれども、そうでない場合、地方自治体の負担がふえる。この点について、将来の国庫補助金で返すのだという場合にその点まで配慮されているのかどうか、伺いたいと思います。
  36. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 いわゆるNTTの無利子貸し付けのタイプのうち、Bタイプにつきましては、確かに補助金タイプでございますから、これについては将来その償還時に国がそれに見合う補助金を出すという制度になっております。御指摘のように、その時点で財政負担がその分だけふえることは確かでございます。  ただ、その場合、国が補助金を出さなければ地方がその分を負担するかと申しますと、公共事業は補助事業でございますので、国が補助金を出さない場合には事業そのものがなくなるということでございますので、その見返りに地方公共団体の負担がふえるというものではございません。  ただ、今後社会資本の整備を充実するためにも一定の事業水準を維持していかなければならぬということを私ども考えておりますので、そういうものに耐え得るような財政体質を一刻も早くつくりたいというぐあいに考えているのが基本でございます。
  37. 早川勝

    早川委員 財政再建は六十五年度で可能だといった場合に、今答えていただいたように、歳出カット、社会保障の分野と公共事業の分野、そして地方自治体の負担の中で今日まで来ているということを理解していただいたと思います。これ以外に、住宅金融公庫補給金の繰り延べの額が、償還額がまだ八千億円ぐらい六十五年度まであるとか、さらには国鉄の共済年金の問題が六十五年度以降年間三千億円ぐらい足りなくなる、こういうふうに考えますと、冒頭言いましたように、仮に六十五年度に特例国債ゼロ、こういう目標が達成できたとしても、それ以後の問題が非常に大きいのじゃないかということをまず理解していただきたいと思います。  歳出の問題については繰り返しになるからもうやめますけれども、六十五年度、さらには六十六年度、とりわけ社会保障、それから地方関係は六十六年度から償還するという約束になっているのが非常に多いわけですね。果たしてそれがきちんとできるのかどうか、当然やってもらわなければいけないという問題があります。  それから、歳入面ではどうなるかといいますと、特例国債の発行が三兆円なり二兆円、まずそれがなくなるということと、NTTの財源は六十五年度までやるわけですかね、四年間でNTTの五兆円近い中での公共事業に使っている一兆三千億円と定率繰り入れとを含めてあるわけですけれども、それも期待できない、こういう状況が生まれるわけです。  そういうことを考えますと、六十六年度以降の今言った歳出カットした分、あるいは歳入の問題を含めて、新しい財政計画、第二段階の財政再建を考えなければいけないのじゃないかと思うのですが、こういう認識について、これは大臣に伺いたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは恐らく御指摘のとおりであると思います。当面、特例公債という名の新しい債務を背負うことは今後やめたい、そういう目標年次を持っておるわけでございまして、それはぜひやってしまいたいことでございますが、それができますと財政再建が成ったかといいますと、まことにはるかにまだ道は遠うございまして、そういうことができるという段階で、さて、その次にはどのようにして、先ほどからお話しのような過去のいわば累積債務のようなものもございますし、繰り延べもございますし、NTTの金は場合によりましてもう少し繰り延ばしていけるかと存じますけれども、建設国債というものはどうするのかという問題もまたございます。それらのことをやはり将来に向かって考えなければならない段階がやってくるというふうに思っております。
  39. 早川勝

    早川委員 それとの関連でもあるのですが、大蔵省の出された「財政の中期展望」の中には、歳入歳出面で、前提が一応下に書かれていて、国債費は定率繰り入れを実施する、地方交付税は三二%相当額、それから六十三年度予算の制度、施策を前提とするということでいわば単純に引き延ばされているのですが、今こういう議論の中で明らかにしていただいた部分ですね、これは六十五年度までの数字が出ているわけですけれども、こういう面についてはこの試算の中には入っているわけですか。
  40. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、法律で明定されております六十六年度以降の償還額、そういうものにつきましては六十六年度の中にきちんと算入しております。
  41. 早川勝

    早川委員 先ほどの議論の中ではっきりしてない部分があるわけですね。法律で明定している部分は入っているけれども、ということは、逆に言えば、六十六年度、六十七年度以降は、また来年、一年後になれば同じような資料が、同じような資料と言うと失礼ですけれども、出されてくると思うのです。そして一年送られるわけですね。恐らく六十七年度まで入ってくる。そういったときに、繰り延べた項目について、償還期間も含めて、まだはっきり方針が決まっていない。そうすると、それを少なくとも今年度中にははっきりさせないと、六十六年度、六十七年度の見通しには入ってこないわけですね。そういうことで、繰り延べ問題を含めて、早急に方針を明らかにしていただいて新しい改革案をつくっていただきたいと思います。  それとの絡みにもなるわけですけれども、次に税制改革の問題について伺いたいと思います。  最近の世論調査結果及び政府税制調査会の地方公聴会、第一次、第二次と終わりまして、また並行して自民党の税制調査会も意見を聴取されておりますけれども、こういう国民の声をどのように大臣は受け取られておりますか。  結論的に言いますと、私はいろいろな世論調査なりそういう公聴会の中で出てきている共通点を私なりに整理いたしますと、税制改革の必要性はそれなりにみんな思っている。理解している。どういうふうに変えるかというのは、ここはいろいろ議論は分かれますけれども。それから、とりわけ不公平税制の是正こそまず先決だということ、私はそういう理解をするのですけれども、こういう理解を含めまして、最近のこの国民の世論の動きについて大臣の所感を伺いたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、不公平感というものが納税者側にかなり根強く存在しておって、これを除去すること、これを是正することがやはり何としても大事である。これは立法、執行、両方の面にあろうかと存じますけれども、税の、殊に新税のような話をするのならその前に言いたいことがあるというような形でそういう問題が強く指摘されているということはそのように受け取っております。  それから、その次に、殊に所得税でございますが、その不公平、公平の問題等と多少関係はございますが、やはり中堅所得者といいますか、子供さんの学費あるいは住宅ローンの返済といったような、そういう年齢層の重税感というものがかなり強いということ、これは税率の刻みにもよることと思いますが、そういう訴え、そういうことの中で、したがって税制改正そのものは必要だ。  また、それとの関連におきまして、やがて日本が高齢化社会になるということについてもわかった。それは若年層に相当な負担を負わせるものであろう。したがって、そのような費用を広く、薄く、社会が今からみんなで負担するという物の考え方そのものはわからないわけではない。が、さらに言えば、しかしそのときに社会保障の政策といったようなものは一体具体的にどういうふうになっていくのか、こうなるからこれだけの負担、これだけの給付というような、そこはもう少しはっきり示せないものかといったような、要望といったような、政府政府税調等々を通じまして検討願っておることについての一般的な理解と申しますか、それはかなり進んでまいったと思っておりますけれども、それに今言ったような前提なりいろいろなことがある。結局、しかしどういう形のものを政府が国会に御提案するのか、もう一つ具体的な姿を見なければなかなか言えないではないかといったような、そういうふうな世論の受け取り方ではないかと考えております。
  43. 早川勝

    早川委員 この世論調査の中に「説明が不足」という項目が実はありまして、非常に関心を引かれたのですが、この説明の不足というのは、つまり新型間接税がどれかということじゃないと思うのですね。そういう部分があるかもしれませんけれども、それ以上に、今大臣が言われたように、例えばこのパンフレット、「税制改革の素案」を見たわけですが、やはり税制改革の必要は、「高齢化社会に対応するためにも、税制改革は欠かすことができません。」とこう書いてありまして、中身は、勤労者の負担が集中しますよというのと、高齢者が非常に多くなりますよ、極端に言えば二人で一人を支えるような事態になりますよということが書いてあるわけです。今のままやりますと社会保障給付費も上がっていきますよ、こういうふうに書いてあるのですが、今おっしゃられたような形でどういう社会保障、その二〇〇〇年なり二〇一〇年の社会はトータルとしてどういうことがイメージできるのだろうか、そこがわからないんじゃないかな、この説明不足の意味は。そういうふうに私などは理解をするわけです。  そういうふうに考えますと、巷間伝えられているように、今なぜ秋でなければならないか、また夏でなければならないのかということもふっと疑問に思うのです。つまり、税制改革を提出し、これは国会が議論して決めるわけですけれども、少なくとも政府の方で成立を期すという時期は秋と考えておられるとすれば、なぜ秋でなければならないのかな、この点、どう理解したらよろしいでしょうか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、一つは、やはりシャウプ税制というものがもう四十年近くたって、このままではもう無理だということがほぼ認識されてきている。それは、先ほど申しましたような所得税のかなりの重税感、あるいは法人税の国際的な比較等々、もう少し申せば、間接税そのものも、個別間接税がいびつになってまいりましたので、これも問題があるなと。別の表現で言えば、直間比率が大変に、七二以上に直税の比率が大きいということとしてとらえても同じことでございますが、これはやはりもうどうかしなければいかぬな。かたがた、どうもだんだん諸外国では、やはり余り直接税が高いということは、殊に所得税が高いということは社会の活性化のために問題があるというような認識が強くなってきているということが一つあると思うのでございます。  したがって、そこでやはり、もう四十年近くたった、この全体の仕組みは改めなければならないということがあり、他方で、しかし、将来を見ますと、十二、三年先にはもうそういう高齢化社会というものが登場して、それがどんどんしばらくは進行するということがまた展望としてございます。したがって、ここで抜本的な改正をするのであれば、まあ四十年近くたてばする時期でございますけれども、やはり将来の展望に立ってすべきである、こういうこと、それが高齢化社会における負担の問題としてとらえられて、そして税制でもそれをどのように考えるかということになってまいっておるのではないかと思います。
  45. 早川勝

    早川委員 時間がないのでちょっと飛ばして質問させていただきます。  「税制改革についての素案」、政府税制調査会が三月二十五日に出されたわけですが、その中にこういう文章があります。「この素案を示すにあたって、今回の税制改革は、行政改革の一層の強力な推進を前提とし、全体としての税負担率の上昇を目指すことなく行われるものであることを明らかにしておきたい。」ということがわざわざ断られております。  そこで、これは政府税制調査会に聞くのが本来かとは思うのですけれども、この部分で、とりわけ「目指すものではない」ということを主税局長はどのように理解されておりますか。一つは、単純に今回の税制改革は税収の中立性ということを意味しているのか、将来にわたって増税ということは考えていないんだということを意味しているのか、この点を伺いたいと思います。
  46. 水野勝

    ○水野政府委員 お示しの文章は、素案を発表するに当たりまして「素案の提示」としてそのスタンスを税制調査会が書いておられる文章であろうかと思うわけでございます。今回の税制調査会の審議は、内閣総理大臣からの諮問に基づきまして、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築するということでございますので、これをもって直ちに税収増に結びつけ、財政に結びつけるというものではない。とにかく均衡がとれた安定的な歳入構造を確立する、構築するということが基本的な課題である、そういう審議を求められておるところでございますので、具体的に今回制度改正をいたしましても、全体としての税負担率の上昇を目指して行うものではないということをまさに文字どおりそのようにお書きになっておることだと思います。  具体的に税負担水準を上げる、あるいは下げる、そこはまさに歳出歳入を通じました年々の税制改正、予算編成の中で受益と負担とのバランスを眺めながら国民レベルで選択が行われるところでございますので、今回の税制改正それ自体が負担水準全体としてどうしようという意図を持っているものではないだろうと思います。そうしたことをこの部分が述べておられる。それは、委員指摘のレベニュー・ニュートラルとかそういうところまでのものをはっきり念頭に置いてお書きになっているのかどうか、そこは必ずしもはっきりはいたしませんが、少なくとも負担水準をふやし、引き上げ、税収を意図的にふやしていこうということではないんだということを確認的にお書きになっているのではないか、こんな感じでございます。
  47. 早川勝

    早川委員 高齢化社会を迎えるに当たって税制改革は必要だということですと、まだ十年とか二十年という時間があるわけですね。一方、先ほど財政再建のところで言いましたように、六十六年度から新しい発想、問題を抱えての財政再建を考えなければいけない時期が訪れるわけですね。そうすると、今税制改革が一方でこれから取り組まれようとしている問題と、少なくとも税負担率の問題に関連して言えば、第二段階、六十六年度以隆の財政改革、財政再建という絡みで税負担率を意識的に、自然増収という問題は別にしまして、積極的にいじって増税措置を講じなくてもいいというふうに考えたいのですけれども大臣のこれは方針、決意だと思うのですけれども、そういう理解をしてよろしいのかどうか伺いたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らくこの素案の意味されるところも今早川委員の言われたことにほぼ近いのではないか、また私どももそういう心構えでやってまいるべきものではないかというふうに思います。
  49. 早川勝

    早川委員 あと二点だけ、これは一問一答みたいになって大変恐縮なんですけれども、伺いたいと思います。  一つは、六十三年度暫定予算の提出が行われて、その理由については御存じだと思いますが、調べましたら、四月に入って暫定予算を組まれないでいわば予算の空白が起きた時期が、五十年度予算から六十三年度まで見ましても、九回もあるわけですね。これはやはり本来的には望ましいことじゃないと思うのです。せっかく旧憲法が新憲法に変わったときには、まず憲法では空白が起きないということを前提にされていて、しかし起きるかもしれないということで財政法で暫定予算の編成ができますよということになっておるわけですね。そうしますと、要は、予算提出の時期を早めればいいわけですね。できるだけ早く出して審議開始を早めれば、三月三十一日までまだ成立しなければ暫定予算をきちんと出すという姿勢が必要じゃないかと思います。やはり空白を残すべきではないということなんですけれども、したがいまして、一日とか二日というのは恐らく院の良識で多分カバーできると思いますけれども、四日とか五日とかいうのはやはり異常じゃないかと私は思いますので、来年度以降の問題になりますけれども、予算の空白をつくらないという問題についてのお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、衆議院における予算の御審議、それから参議院における御審議、両方に関係をいたしておりまして、過去におきまして参議院の御審議の過程において自然成立を待たずに議決をしていただいた例もしばしばございまして、そういう意味ではこの問題は法律的な問題であると同時にかなりに政治的な要素を持っておる問題でございます。  参議院の予算委員長からも、今年もそうでございましたが、当委員会の審議と並行して念のため暫定予算の編成準備に入るよう政府に要請したいということを理事会の意向を受けて委員長委員会政府に対して言っておられるわけでございます。片方で参議院が審議の促進を図っておられるような状況の中で、暫定予算をいつどのようにして提出するかということは、大変にそういう意味では政治的に難しい問題を含んでおりまして、政府内においてもさようでございますけれども、参議院側におかれてもいろいろその辺はいろいろにお考えのように存じます。今年のように年度がかわりましてから提出ということは、もとより違法ではないと存じてはおりますものの、大変異例のことであったというには違いございません。その辺のことは今後ともいろいろ検討しなければならない問題を政府としても持っておるというふうに考えております。
  51. 早川勝

    早川委員 最後になりますけれども、先月の二十九日生命保険協会が為替取引についていわばまたこれも異例の発表をされているわけですけれども、今年度末どんな形での処理が行われたのかという問題と、いわゆる一五%ルールの問題ですね。これはどうも余りにも日本的な手法ではないかという意見もあるのですけれども、この二点について伺いまして、私の質問を終わります。
  52. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 まず一五%ルールの方から御説明申し上げたいと思いますが、このルールは法人税法と法人税法施行令の規定に基づきましてすべての内国法人に対して認められておるものでございますが、一般に外貨建て資産のうち非上場の債券と長期金銭債権につきましては期の間に一五%を超えるほどの著しい為替変動が生じたこの評価損に対して認められておるもので、非上場債券につきましては財産評価損、長期金銭債権につきましては外貨建て長期金銭債権換算損というふうな形で損金処理することが具体的には法人税基本通達の示す条件の中で認められておるわけでございます。さらに、法人税法は、このような処理を行うことにつきましては、いわゆる確定決算主義と申しまして、このような経理処理が株主総会、生保の場合で言えば社員総代会でございますが、そういうところの承認を受けた確定した決算というふうなことに基づいて行われたものでなければならないというふうに規定しておるわけでございます。  そこで、この企業会計原則上の外貨建て資産の評価方法を見てみますと、それは外貨建て取引等会計処理基準というふうなものがございまして、この基準によりまして、外貨建ての非上場債券や長期金銭債権は取得時または発生時の為替相場による円換算額を付するというふうにされておるわけでございます。しかし、この規則はあくまでも原則でございまして、総則のようなところにおきまして、やはり著しい為替相場の変動が生じた場合等本基準を適用することが適当でないと認められる場合は別途適切な措置を講じることができるというふうな弾力条項を置いておるわけでございまして、為替相場の変動が著しい場合は評価損を立て得る余地を認めておるわけでございます。生命保険各社は、したがいまして、この企業会計の処理基準と法人税法の規定の双方に基づきまして、外貨建ての非上場の債券や長期金銭債権につきまして一五%を超えるような変動の場合には損金処理を行うことが正当に認められておるというふうなことでございます。  なお、生保各社がこのような処理をとり始めましたのは六十一年三月期決算からでございますが、この六十三年三月決算におきましてもこれを継続適用することが予定されておるわけでございます。したがいまして、六十三年度につきまして見ますと、いわゆる一五%ルールが適用できるかどうかの判定基準となる為替レート、つまり本年三月の月中平均のレートでございますが、米ドルの場合には百二十七円二十八銭でございましたから、生保会社の持っております非上場の外債等のうちこの百二十七円二十八銭を一五%で割り戻した百四十六円三十七銭という数字が出てまいるわけでございますが、これよりも円安で換算されているものにつきましてはその差額を評価損として計上するというふうな処理になろうかと思います。
  53. 早川勝

    早川委員 終わります。
  54. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢追秀彦君。
  55. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先ほど来もG7について答弁がございましたので私は簡単に申し上げたいと思いますが、まずG7大蔵大臣の率直な感想をお述べいただきたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変端的に申しますならば、昨年の暮れに声明を出したわけでございますけれども、まあまあそれがほぼうまくいっているな、我が国はもとよりでございますが、各国経済もまあまあじゃないか、こんなようなことが大変端的に申しますと全体の雰囲気であったと存じます。
  57. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それだけに、私は、この共同声明の結果、もう一つ、何といいますか、新しい具体策というのが盛り込めなかったのではないか。ただ、商品バスケットということがございますが、これも直ちにどうできるかという問題ではないと思います。そういう意味では、今まあまあということでございますが、それだけに新しい具体策というのはないのではないか。  問題は、為替問題、さらに累積債務、この問題に今申し上げた新しい面がなかったと言いたいわけですが、この問題については、一つは円というものが果たしてどう動いていくのか、アメリカがイランを攻撃したことによってまたちょっとドルが上がったような次第でございますが、そういう要因は別といたしまして、かなり今後とも安定と見られるのか、あるいはまた円高基調になっていくのか、その点はいかがですか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 為替で申しますと、一九八五年のプラザ合意というものでかなり思い切ったドルの引き下げを図った。これはかなり荒い手術であったわけでございますから、それを一応なし遂げて、そこでまあ、何といいますか、やはり安定というものを志向すべきではないかということが関係者のほぼ今の気持ちではないかと思うのでございます。矢追委員の言われますようにもっと何か新しい制度を考えられないかということは、みんなが意識しないわけではございませんけれども現実の問題として変動相場というものをどうやって安定的に比較的害がないように運営するかということがただいまの関心ではないかというふうに思っておりまして、商品指標に入れるというようなことは、これはどっちかといいますと学問的といいますかそういう専門家の分野のことでございまして、大きな流れといたしましては、この状況をできるだけ安定させつつ、しかし他方で累積債務のような問題についてはいつまでもほうってはおけない、まずまずケース・バイ・ケース解決を図りながら、しかしやはり根本の問題を忘れるわけにはいかない、こういったような雰囲気であったと存じます。
  59. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先ほども触れられておりましたけれども、今言われた債務問題についてアメリカベーカー財務長官とかなり議論をされたと新聞報道で出ておるわけでございますが、この点について、どういう点が大きく食い違っておるのか、それともあと今後の問題として日本がどういうふうにしていくのが大臣としては一番いいとお考えになっておるか、長官との議論を踏まえた上でお答えいただきたい。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは幾らか誤解がございまして、ベーカー長官と私とがそれについて議論をしたというようなことは実はございませんで、私が記者諸君に申しましたことは、米国の議会、あるいは一部政府もそうでございますけれども、について、先ほども申しました非常にこれについては複雑な背景があってなかなか一本筋の道を歩いていけないということ、及び、新しい考えを出せば累積債務国側が非常に事態を何と申しますか過度に楽観的に考える、そうすれば一つ一つの交渉はやりにくくなるわけでございますから、そういったようなだれにでもわかる、私もそれはよくわかるわけでございます、よくわかるわけでございますから、そういう現実的な考慮というものと、だがしかし将来に向かってやはりそれでも何かをだんだん考えなければならないではないか、そういう多少抽象的な物の考え方とがある、どっもをいわば強調するか、そういうことであるというふうに考えておるわけでございます。
  61. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この問題はこの程度にいたしまして、次に、今回パンフレットがつくられたわけでございます。「タックスナウ」というのと「いっしょに考えませんか。これからの日本とこれからの税。」これは、発行所は社団法人日本広報協会、監修大蔵省、自治省、こうなっておるわけでございますが、これの幾らつくられたか部数、それからおよその予算額、どういうところにどういう目的でお配りになっておるのか、お伺いしておきます。
  62. 水野勝

    ○水野政府委員 お示しのパンフレットは、大蔵省、自治省監修でございますが、日本広報協会が作成し、総理府において所要部数を買い上げておるというふうに聞いているところでございます。印刷部数は三十万部で、その費用は二千五百万円程度とお聞きしておるところでございます。
  63. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大臣はこのパンフレットはお読みになりましたか。もしお読みになっておりましたら感想をお伺いしたいのですが。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 素案の段階で相談を受けたのでございますから大体のことは知っておるつもりでございますけれども、私は、基本的には、間違ったことを書いてはいけませんけれども、余り役人がこういうものについてあれこれ言わない方が本当に読んでもらうためにはいいのだろうということだけは申しました。
  65. 矢追秀彦

    ○矢追委員 三十万部というとかなり多い数でございまして、また二千五百万ですから両方で五千万になろうかと思いますが、この一ページをあけてみますと、「日本の、まじめなお父さんの立場から――。」こういうように出ておるわけです。その次のページには、「なんだかいっしょうけんめい働いているお父さんが損してる気がするな。」こうやってページを繰っていきますと、結局はすべて大型間接税導入へのPRというのが結論になっておるわけですね。政府税調も公聴会を開いたり国民の意見を聞いておられる。それからまた国会でもいろいろ議論があり、このために与野党では審議がストップしたりしながらも合意もできてきたわけでございまして、そういうような状況の中で、政府監修という形で、これが公平なものであれば私は問題ないと思いますが、こういうようなことをするのは果たしてどうなのか、こう思うわけでございます。  特に、「いっしょに考えませんか。これからの日本とこれからの税。 税制改革の素案」というパンフレットの方は、私はまだこれは問題ないと思います。これについては、税調の素案というものを忠実に説明しておられるので、これは私はそうクレームはつける気はございませんが、「タックスナウ」の方は、ちょっとこれはいかがかと思うわけでございます。  しかも、これだけの予算があるなら、私はもっと先にPRしなければいけないのは、納税者の立場になって確定申告の説明書なんかをもっとわかりやすくするとか、税をもう少しきちんと申告していただく、あるいは税がもっと徴収しやすくなるようなことをする必要の方が大事ではないか。例えば昭和六十二年度の今度の確定申告で税務署の方が大変困られたのは、今度できましたいわゆる専業主婦控除、これに対しての理解がまだまだわからなくて、これで大変な手間をとられたというのは税務署員の方や署長さんからも苦情を聞いたような次第でして、そういう新しい税制が変わったために本当に申告する側がわからないこと、ちゃんとしなければいけないこと、そういったことをもっとPRする方がまず最初である。とにかく大型間接税を導入したい、そういう政府気持ちはわからぬでもないのですよ。しかし、だからといって――このパンフレットはパンフレットとしては、私も長らく党の広報宣伝の担当をしておりましたので、パンフレットを一生懸命つくってきた立場としては、なかなかよくできております。中身は別ですよ。中身はちょっと気になることが非常に多いわけでございまして、もっとそういうことが先ではなかったのではないか、こう思う次第でございます。  時間の関係もありますので幾つかを拾ってみますと、今申し上げたタイトル、それと、「最近、私たちの国の税制は、このまじめなお父さんたちに負担をかけ過ぎていはしまいか、という声がよく聞かれます。」「どう考えても今の税金はお父さんたちの働きに頼り過ぎてるなぁ。」三番、「このままじゃ、お父さんの会社だってタイヘンだ。海外へ逃げ出しそう。」四番、「直接税ばかりに頼ってちゃ、お父さんたちのヤル気はなくなっちゃうゾ!」五、「もしも現在のような所得税・住民税・法人税にかたよった税制のままでは、少ない働き手たちにたいへんな負担を強いることになります。」ざっと拾い上げましても、ちょっとこの辺は余りにも直接税罪悪論という立場に立ち過ぎてはいないか、こう思うのですが、大臣の率直な感想、いかがですか。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、これだけ申しましてこの現実を直せませんでしたら納税者から随分政府はしかられることになるわけでございますから、よほど覚悟をいたしましてこういうことを言わせていただいておるというふうに御理解をお願いしたいと思います。
  67. 矢追秀彦

    ○矢追委員 主税局長はどうですか。
  68. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘中身、事柄自体は、今回の素案のもとになっております基本課題すべてその考え方の中では編集をされておる、私ども監修をいたしたときにそのようには判断したわけでございます。ただ、何と申しましても基本課題も素案も難しいわけでございますので、それを御理解いただくには、私どもが考えるよりもこうしたものをおつくりになっておる専門家の方々が書き直すと申しますか、翻訳してみるとこういう形になるということでございまして、私ども基本的な考え方として素案にそれほどかけ離れておらないのであれば、おわかりやすくごらんいただけるとして、専門家のつくったものが間違いがなければこれでひとつ世の中にお示しをしてみるのもいいのではないかと考えた次第でございます。
  69. 矢追秀彦

    ○矢追委員 間違ってないとおっしゃいますけれども、間違いとか間違いでないとかいうのではなくて、私は今間違ってなければこの素案の説明したものはいい。私はこっちはいいと言っているのですよ。本当に間違いがなくそのまま税調の答申が説明されているわけですから、こっちは全然問題がない。こっちはちょっとひねりがあるわけですよね、ひねりが。要するに、直接税ばかり頼っていたのでは大変ですよ、負担が多くなりますよ、海外へも逃げていきますよ。これはお父さんだけ書いてお母さんが出てこないですね。これまた働く婦人の立場が全然出てこない。これはちょっと片手落ちだと思います。これは婦人団体が怒ってくるかもしれませんよ。それもありますが、とにかく直接税ばかりに頼っているとだめですと言う。  しかし、日本はもともと直接税中心で来たわけです。それで国民は今までは一応納得をしてきた。ただ、サラリーマンが重税であるというのは、いろいろな不公平があるから、間接税との比率を変えればそれで不公平感が変わるという、そこら辺は議論の分かれるところです。正しいとか間違いとかそんなのじゃなくて、私たちはそれが正しいと見ておるわけでして、今の段階で間接税をふやすべきではない。間接税というのは結果論ですからね。  そういうことで、要するにこのパンフレットの意図というのは、間違いなく直接税が悪い。だから、不公平感というのは、直接税が重いから。しかし、考えてみますと、直接税は、日本の所得税というのは一番公平ですよね。一番高額所得者からたくさん税金を取られているのですから、それだけを見れば所得税については世界で一番公平な税制と言えるわけです。ただ、中間層に余りにもきつい。しかし、ほかにはもっともっと抜け道がある、もっと抜け穴がある、あるいはまた把握できない、非常に優遇がされておる、そういったところに不公平感があるわけですが、そういうことの議論というのは余り出てこないですね。とにかく直接税でもう大変だ、だから間接税を入れなければだめなのです、海外へだって逃げていくと言いますけれども、では海外へ行って全部が全部成功しているかというと、そうじゃなくて、海外へ行って失敗した例もいっぱいあるわけです。税金逃れのために行った、しかしそれはうまくいかなかった、こういう例もあるわけです。  だから、私が申し上げたいことは、一つは、まだ税制が決まってませんよね。法案が出てからならばわかりますけれども政府が法案を出されたその段階でこれが出てきた、政府はこういう考えでやります、だから国民の皆さん理解をお願いしますというのは、これはちょっとはいただけますよ、ちょっとは。しかし、あなた、まだこれから議論してどうなるかもわからないし、しかもいろいろな議論がある。昨年は売上税は完全に廃案になった。これは国民の反対に遭ってだめになったわけです。だから私はもっとこういうパンフレットづくりは慎重にあるべきだと思います。  これが完全に民間の方が出しているのならいいですよ。やはり大蔵省、自治省監修というのが入っている。しかも、出している発行所というのも、これは政府の広報予算がつけられてつくられたところですね。著者でもちゃんと書いてあるかというと、著者は全然出てこないですよ、これは。宮澤喜一個人としてこれを書かれたなら、これまたそれはそれでいいわけですよ。これは完全な政府の広報予算から出ておるものです。だから、国民の税金で、国民の反対が非常にあるようなものを、その反対を押し切って何とかしたいというふうに使われるということは非常に問題がある。  こんなことより、もっと税金をちゃんと納めてください、もっとこういった点はちゃんとしてください、今度の税制はこう変わりました、皆さん申告のときは気をつけてください、こんなことの方にお金を使うべきであって、これは二千五百万、二つで五千万になるわけですが、決して何だ五千万ぐらいどうということないというわけにはいかない。これはそれこそ税金のむた遣いになる。しかも地方自治体の窓口にまで置いてあるようだと聞いておりますので、相当これは全国的に浸透させようという政府の意図でございまして、私は、こちらは結構ですが、こちらはちょっと慎重にすべきであったのではないか。それはできたら回収してもらったら一番ありがたいのですが、そこはなかなかそうはおっしゃらぬと思いますが、それを含めまして、大臣、これをどう処置されますか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 矢追委員は御専門のお立場から、直接税がある程度ウエートが大きいことは、これはそれでいいのじゃないかとおっしゃっていらっしゃるわけですが、今のように七二を超えた比率というものは、私はやはり問題がある。このパンフレットじゃございませんけれども、やはり働く者の立場、あるいは法人もそうでございますけれども、社会の活性化、活力というためには余り階段が急で刻みが多いというのは問題があるというのは、先進国の中での新しい物の考え方ではないかと思っておりまして、そういった観点からいってやはり私は問題がある。この中で確かに直接税のウエートが強過ぎるということを訴えておりますけれども、それは政府が訴えたいところでございます。そう信じておりますから、そういうふうに国民にお訴えをしたいということ、それは私は偽りではない、考えておりますことを率直にここに言わせていただいておるのだと思います。  同時にまた、このパンフレットの中で、「株や資産への課税をちゃんとしてくれないと汗水たらして働くのがバカらしいと、お父さんは不満です。」と、なかなかお父さんはしっかり政府にも物を言っているわけでございまして、これは政府としては、こういうことはきちんといわば現状を述べておるという意味で、決して言いたい一面だけを言っておるということはないのではないか。かなりこのページ、ここには医師優遇等々まで書いてございますけれども、いわば政府の現在やっておりますことを正面から批判をしておるわけでございますので、その点ではかなり正直な面を持っておる、いいところだけを宣伝しようとしておるのではないという点も御理解を願いたいと思います。
  71. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それはもう全部悪かったらそれこそあしたから回収しろと言いたいですわな。少しは書いてあります。しかし、間接税だって、今言われましたけれども、確かにゴルフ用品には課税されてテニス用品には課税されないというアンバランスは出ております。だから間接税は時代おくれと。しかし、だから時代おくれなのか。むしろまず間接税、物品税だってならすことを先にやって、それから次という考え方はあるわけですよ。紅茶とコーヒーの問題とか、私も、間接税を何回か、物品税については質問したことがあります。酒税についてだって、これは外国との関係もちょっとおかしいのですよ。そういうふうに言い出しますと、これは本当に時間が全部たってしまうくらい問題はあるわけです。  ただ、私が言いたいことは、政府の宣伝したい気持ちはわかりますが、政府のPRが全体的に問題があるわけであります。国民の中に大変な議論のある問題について、それを政府の広報としていわゆるテレビでPRをしたりいろいろなパンフレットをつくったり、いろいろやっているわけですね。そういうのは非常にまずいわけですよ。政府がちゃんとこういうふうにした結果として国民に周知徹底しなければならぬもの、あるいは国民にもっと理解してもらわなければいけないもの、そういうものはどんどん政府の広報予算を使ってもいい。  これは年々ウナギ登りなんですよ、政府の広報予算は。これはいつも問題になっているのですよ。だけれども、その中身について、そういう中立性ということと、いわゆる行政が本来は窓口でもっとちゃんとしなければいけないことがなかなかできない、国民にもっと理解してもらえばそれがもっと省ける、そういうような問題について政府の広報予算が使われ、こういうパンフレットがつくられるべきであって、政府が何か、国民の反対のあるものも何とか賛成をさせたいからということで、言葉は悪いですけれども、国民を洗脳していきたい、そういうふうなことに国民の税金を多額に使う政府の広報予算というものには大変な批判がやはり一方であるわけですよ。私は今度のこれはかなりそれにひっかかる感じを受けるわけですから、これを今問題にしておるわけです。  だから、政府の広報予算のあり方について、大蔵大臣も予算編成の責任者ですから、今後やはりそういった点はきちんと戒め、チェックをすることはぜひお願いしたい、こう思うのです。全体的なこと、それから、このパンフレットのことはさっき言われましたのでこれ以上言いませんけれども政府広報予算のあり方というものをこれを機会にやはりきちんと反省をして、今後は、政府の意図的な、しかも国民の反対のかなりあるもの、それを変えるためのPRには使ってもらっちゃ困る。この点はいかがですか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、政府というもののあり方あるいは政府の広報というもののあり方について非常に深い問題を御提起になっておられますので、それはその問題としてまたよく考えさせていただかなければならないと思います。
  73. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは次に、NTT株の売却益の無利子融資についてでございます。  昭和六十二年度の補正から始まりまして、A、B、Cタイプに分けられて始まったわけでございますが、特にCタイプの民活についてかなり使い残しができておるわけですが、その実態を教えてください。  あわせて、Aタイプ、Bタイプはどのように進んでおるのか、大まかで結構ですから、お伺いをしたいと思います。
  74. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 当委員会で御審議をいただきました法律に基づきましてNTTの無利子貸し付け制度というものがスタートをしたわけでございます。  そのうち、いわゆる公共事業タイプ、A、Bタイプでございますけれども、これにつきましては、Bタイプの公共事業につきましては補助金タイプでございますので極めて順調に出ておりますが、Aタイプの無利子貸付金、これは償還をしていただくということで、従来の公共事業にないいわば新しいタイプの償還型の公共事業ということでございますので、これについては必ずしも順調ではございません。ただ、六十三年度予算以降はかなり順調に出るようにしていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。  それから、Cタイプのいわゆる民活型でございますけれども、これは、開銀等に対しましては、地方公共団体、民間企業等から数多くの融資の相談が寄せられております。そういう意味で非常に意義のあるというか、画期的な制度だっただろうと思います。ただ、現実には、構想段階にあるプロジェクトが非常に多いということ、それから制度の内容の周知徹底に時間がかかったというようなこと、さらに、民活法とかリゾート法とか、このCタイプの貸し付けが行われておるタイプのものにつきましては特定施設の認定とか地域指定といった法律の手続が必要でございます。それに時間を要したということなどがございまして、実は六十三年度では五十億円程度の実績にとどまっております。したがいまして、五百三十億程度は翌年度に繰り越して使用するということになっております。ただ、六十三年度につきましては、開銀等で現在審査をしておりますプロジェクトが多く実行段階に入るということ、それから六十三年度予算で貸付対象事業を拡充したというようなことがございまして、今後は円滑な貸し付けが行われるであろうというぐあいに考えております。Cタイプは特に民活型ということでございますので、地方の活性化と申しましょうか、第三セクター等をつくるのに時間がかかっておりますけれども、大変効果のあった貸付制度であるというぐあいに考えております。
  75. 矢追秀彦

    ○矢追委員 補正以後でございますから、今言われたように実際お金が出ていくまでにはなかなか時間がかかった点で使い残しということが出たと思いますが、そもそもこのNTTの売却益というものは、私も前々からやかましく言っております国債残高の整理のためにまず第一義として使わなければいけない。いわゆる借金のたまった残高を返すことが今大変な課題であります。これは国債費がかなりのパーセントになってきておるわけでございますから。そういう意味では非常に大事な大事な財源ですし、しかも何年も続く永久財源でないわけですから、非常に大事に使わなければいけない。だから、むしろ私は六十二年の補正段階であれば国債残高の整理の方にもっと回していく。確かにこちらも大事です。内需拡大の要請があるし、こういった無利子のお金は先ほど言われたように申し込みが多いから、確かにそれは私は決して反対ではございません。しかし、今となってみますと、私は、ちょっとそういった点での見通しは誤ったのではないか、大事なお金であるだけにこうやって使い残すことは大変もったいない、その分減らしておけばよかったのではないか、このように思うわけでございますが、まずこの使い残しについてどういうふうにお考えになりますか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、第一義的に償還期の来ました国債の償還に使うということは、法律でもそう定められており、また現実にそのとおりいたしておりまして、国債整理基金にもなお必要なオペレーションの金も要りますから、あわせまして平均三兆円前後のものは残していくわけでございますが、それはおっしゃいますとおりやっております。その上でこういうふうに向けておるわけでございまして、これも無論やりっきりでございませんで、将来返ってまいりましてまた国債償還財源になるわけでございますが、今のお話の中で、私は、Cタイプなんというものは、本当に地方で新しい化事を地域で考える場合にうまく使ってくれますと日本列島全体のいわば新しい活性化になるのではないかと考えておりまして、使い残しの点は、恐らくは、比較的早くこの制度が、PRより制度の実現の方が早かったというようなことがございましたから、各地方で考えておりましたこともいわば漠然とアイデアの段階であった、それを事業主体を考え法律に当てはめということになりますと間に合わなかったというのが今までのところではなかったかと思っております。  これからは恐らくいろいろな申請が出てくるのであろう。そこで問題は、非常にしゃくし定規のことを言ってせっかくいい話をつぶしてしまってはいけませんし、そうかといって何かぐずぐずした話を認めていってもいけませんし、その辺をどのぐらいのあんばいで運営をするのかということが間もなく問題になってまいると思いまして、今使い残りがあるということはごくごく短い時間の出来事ではないだろうか。もし本当に意義のある仕事で、しかしいろいろ法律等々の建前からどうも使えないということであれば、これはまた建前を、制度を一部変えればいい話であって、その点は試行錯誤をしながら有意義に使っていきたいと思っております。また、これはそういうふうになっていく性質を持っておる制度ではないかと思っております。
  77. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今大臣はこれからのことをおっしゃっておりますが、この民活の決裁といいますか、今いろいろ言われましたけれども、今年度で決められた事業といいますか、これは大体各省全部ばらばらといいますかまたがっているのが多いですね。通産省、郵政省あるいは運輸省、建設省はございますけれども大蔵省はまだ全然ないわけです。それで、どこの省がこれをきちんと所管してそこの省でやっていくのか、何かもう一つその点がはっきりしないから遅いのかなというような気もします。  例えば私が昨年大臣質問しました、今大阪の方で国際金融機能強化のための大きなプロジェクトを一生懸命考えておるわけですね。これから金融先物市場あるいは商品の先物市場をまとめたビルにしてやりたいわけです。これをこのCタイプの融資に何とかしたいということで準備を進めておるわけでございますけれども、この場合は、大蔵省と農水省と通産省、三省が協議をしてこういうものをやろうと決まれば、それを開銀に申し出をして開銀の方でチェックをしてお金が出る、こういう形になるのですか。
  78. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 私ども、今大臣がお答え申し上げましたように、このCタイプの無利子貸付金をできるだけ有意義に使いたいというぐあいに考えておりまして、実は六十三年度の貸付額の設定について新しい事業をどう発掘するかについても、できるだけ弾力的にと申しますか有意義な事業は拾い上げるという基本的方向で各省と調整を図ったわけでございます。その結果、六十三年度ではグリーントピア事業とか新しい相当な事業の発掘ができたというぐあいに考えております。  今御指摘になりました国際金融センタービルにつきましては、実はまだ機能とか性格とか全く具体化しておりませんで、まだ非常に漠たる話でございます。これが具体化しまして、第三セクターがつくられ、当然のことながら何らかの民活法その他の法的基盤が整えば私どもは前向きに検討したいというぐあいに考えておるわけですが、いかんせんまだ何ら具体的な構想の段階に至ってないわけですから、検討の俎上に上っていないというのが現状でございます。
  79. 矢追秀彦

    ○矢追委員 地元の方ではこれからそういった点はやっていくと思いますので、ぜひ特段の配慮をお願いしたいと思います。やはり四全総の中にも近畿圏といいますか大阪を中心として国際金融機能の強化ということをうたっておるわけですから、ぜひお願いをしたいと思います。  ちょっと質問通告をしてなかったので恐縮ですけれども、今年度からこのAタイプのお金の流れが、今までは出なかった例えば治水特会あたりにも流れる道が開かれたわけですね。それの理由はどこにあるのか。本来は、その中にありますのは急傾斜あるいはまた海岸線、そういったものは一般会計でやられておったのが、今度からAタイプの融資を受ける対象となる工事等についてはその治水特会の方にお金を入れてそこから入る、こういう形がとられるようになったわけです。それが、先ほど聞きましたAタイプのお金が補正をやってみた結果もう一つなかなか出ない。だからそういうふうに入り口をどんどん広げて本来AタイプでないようなところにまでAタイプが使えるようにしたのではないか。理屈はAタイプに属する大きなものの一部だということにされておりますが、果たしてそれでいいのかどうか。私はまだちょっと疑問を感ずるのですが、その点いかがですか。
  80. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 あるいは説明が舌足らずだったかもしれませんが、Aタイプの事業と申しますのは、従来国が補助金を出して全額公費負担という形で行われた公共事業につきまして、新しい芽を出すといいましょうか、公共事業の中にも、開発利益の吸収とかその他で、利子部分は公的負担になりますけれども、少なくとも元本については回収していただける事業はあるのではないか。例えば治水特会の繰り入れで申しますと、いろいろな護岸工事を行います場合に、その護岸の堤内地、堤外地に公園施設みたいなのができて、それについて有償で償還が可能になってくるのではないかとか、そういういろいろな新しいタイプの公共事業を発掘いたしまして、それにつきましては、従来補助金で措置していたものにつきまして元本についてはお返ししていただくような事業として仕組んでいく、そういうことによって公共事業の外縁を広げていくということでつくっておるわけでございまして、従来型の公共事業のところに無理に元本償還のAタイプを押し込むというものではないということだけは御理解いただきたいと思います。  つけ加えますと、各省からも非常にこの制度については評価をいただいておりまして、Aタイプの公共事業でいろいろなことができるのではないかということで、六十二年度の補正、六十三年度の本予算でいろいろな事業の発掘を行ったというのが実態でございます。
  81. 矢追秀彦

    ○矢追委員 ただ、その事業がうまく収益がとれるようなものであればいいのですが、そのときはよくても将来だめになった場合非常に問題があろうと思いますので、事は慎重にいかなければならぬ、私はこう思うわけでございます。  ついでで恐縮ですが、もう一つだけこの問題でお伺いしたいのは、昨年の場合は、売却益の無利子融資については各省庁一括して法案が大蔵委員会にかかりました。ことしは各省に分かれてばらばらでこの法案が出たわけです。もちろん中身は変わらないわけです。ところが、各竹の法案というのは、例えば住宅・都市整備公団の一部改正案という名前だけで、NTTの売却益を無利子融資ができるように法律を変えたというのは全然わからぬわけです。これはネーミングの問題かもわかりませんが、昨年は一括、ことしからばらばらにされたその理由。それからもう一つは、そういうふうなことで今後ともいいのかどうか、これからまた広がっていくのかどうか、その点いかがですか。
  82. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 実はNTTのA型、C型につきまして施行主体をどうするかというような議論がございまして、それについて施行主体に取り込むという基本法たるNTTの貸し付け法の執行体制の整備という形で各省所管の法律に一部載っているということでございまして、私どもとしましては、この基本的な法律に基づく執行手続の一環としての法改正、しかもそれがすべてではございませんで、いろいろな法改正の中の一部としてそれが入っているということで、これは基本法の執行として法律上妥当な措置ではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  83. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは、財確法そのものについて質問してまいりたいと思います。  初めに、六十三年度の財確法に関連いたしまして、税収見込み四十五兆九百億円、前年度当初比九・五%増、前年度補正後比四・六%増、これは過小ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  84. 水野勝

    ○水野政府委員 六十三年度税収につきましては、六十三年度の政府経済見通し、それから最近までの税収実績等々を基礎として個別税目ごとに適正に見積もったものでございまして、私どもとしてはこれは適正なものであると考えておるところでございます。ただ、六十三年度税収としては、これが本格的に入ってまいりますのは六月以降でございますので、現時点で御議論を願うデータ等は全くございませんので、とにかく昨年末見積もりましたものをもって御提案をし、これが現時点におきまして適正であると考えておるとお答えをするほかはないわけでございます。
  85. 矢追秀彦

    ○矢追委員 六十三年度税収の前提となる六十二年度税収は、もう大きな見積もり違いをしておるわけです。当初見積もりの四十一兆千九百四十億円に対して三兆五千七百十億円、これは八・七%の増収見積もりに補正段階で改めたわけです。減税分や売上税分一兆六千七百八十億円を削ってもなお一兆八千九百三十億円の税収増加となったわけですが、その後も新聞等では一、二兆円の上乗せ税収があると言われているわけです。補正後の自然増収、データを持ち合わせてないとおっしゃいますが、どのように見ておられますか。
  86. 水野勝

    ○水野政府委員 現時点まで判明いたしておりますのは二月末までの数字でございまして、前年比九・一%の伸びとなってございます。これに対しまして、補正後予算の伸びは二・九%でございますから、こうした数字から見ますと、税収は順調であると言えるわけでございます。ただ、現時点まで、二月末時点までの進捗は七五%で、四分の三程度でございます。残されておりますものとしては、三月の確定申告によりますところの申告所得税の税収状況、それから非常に大きなウエートを占めます三月決算の法人の五月末におきますところの納税状況、この大きな二つ要素を抱えてございますので、現在におきましては確たることは申し上げることは難しいわけでございます。  先ほどお示しの数字のように、六十二年度予算の計数はそのように見積もっておりますが、これを結果として算定をできますところの弾性値で見ますと、一・八三という数値で見積もったことに結果としてなってございます。日本の税制といたしましては、定性的に考えますと、どう見ても一・一なり一・二ぐらいの性格の税制構造でございます。しかし、これを最近まで、年末までの税収状況等を見積もって積み上げますと一・八である。この結果として一・八になっておりますものが、なお今申し上げたような順調な税収状況でございますので、これは私どもとしても現時点での税収の動向につきましては十分な検討はする必要はあるわけでございますが、何分申し上げましたように大きな二つ要素を抱えておる、こうしたものの実績の判明を待ちましてよく検討をいたしたいと思うわけでございます。
  87. 矢追秀彦

    ○矢追委員 六十三年度の税収見積もりの発射台が上がることによりまして来年度の自然増収見込み額は相対的に小さくなるわけです。六十二年度当初比で三兆八千九百六十億円が補正対比では二兆三十億円、さらにもし上乗せ税収が一兆円出ると仮定すれば一兆三十億円の税収増でしかない。六十三年度経済が今も言われたように六十二年度より悪くなるとは思えませんので、この税収はやはり私は過小としか言いようがない、こう主張したいわけですが、いかがでございますか。重ねてお伺いします。
  88. 水野勝

    ○水野政府委員 今も申し上げましたように、六十二年度税収そのものとして結果としての弾性値が一・八三になるような税収を見積もったわけでございますけれども、なお現時点で順調でございます。自然増収が何がしかのものは六十二年度として期待されるところでございますが、そのような税収稲造をそのまま六十三年度なり四年度なりにかたい土台として見積もっていくことが適正なのかどうか、これは六十二年度税収が固まった時点での段階で十分検討をする必要があるわけでございます。  過去におきましても、四十八年度に非常に大きな伸びが示された、それを延ばしてまいりましたところ、四十九年から五十年に大赤字になって、五十年度におきましては三兆円を上回る欠陥、これによりまして特例公債の発行が始まった。五十四、五十五と非常に好調でございましたところ、それを延ばしてまいりました五十七年度にはついに六兆円の欠陥が生じたというような経緯もございますので、税収につきましては十分慎重に、今お示しのこれが土台となり、それを発射台としてその後もそうした傾向を延ばせるものであるかどうか、今後十分勉強をいたしたいと思っておるところでございます。
  89. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もちろん、私は、今のようなことは起こっちゃならぬところでありまして、ある程度はそういうシビアな面というのは必要だと思いますが、しかし、ちょっとそれにしても低過ぎるんではないかということは指摘をしておきたいと思います。  税収の見積もりの正確さだけを議論しておってもしようがありませんので、次に、六十三年度発行予定特例公債三兆一千五百十億円、これは、六十三年度に政府見積もり以上の税収が出れば、それだけ財源確保されるわけですから、今申し上げた数字はもっと削減が可能になるわけですね。だから、そういう意味では余り低過ぎると結局なかなか国債の削減もできなくなってしまいますので、きちんとした税収見積もりでいかなきゃいけません。それで、三兆一千五百十億円の削減かもっと可能になる、こう思うわけでございます。特に、私は、今の景気、後半はどうなるかそれはわかりませんけれども、六十三年度もやはり政府見積もり以上のかなりの年度内自然増収は期待される、こう思っております。したがいまして、特例公債の削減はなお可能と見ておるわけでございまして、その点、やはり三兆一千五百十億円、これでとどめられる気ですか。また、もし増収があれば、そちらの方をもっとやるという気になられますか。その点、大蔵大臣、いかがですか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、まず六十二年度について申し上げますならば、ただいま特例公債の未発行分を持っておりまして、これは税収の動向によりまして発行せずに済むということになる公算がございますものですから、一兆余りのものを出納整理期間までいわば発行を見合わせておるという現状がございます。  そこで次に、今度は六十三年度のお話をされたわけでございますが、同様な状況によりまして仮に自然増収が確実に見込まれていくということになりますと、これはそれだけの特例公債を発行しないで済むという事態になる可能性は可能性としてはあるわけでございますから、そこはやはり発行に当たりまして注意をしていく必要があるかもしれない。今年度、六十二年度も実はある段階から多少税収の動向を見ながら発行を少し調整してまいりましたものですから、幸いにしてと申しますか、同じような傾向が六十三年度に続きますと、そういうことをやはり注意していかなければならないことがあるかもしれない。ただし、それはそのような税収状況になるかどうかということにかかるということでございます。
  91. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、先ほども触れておられましたが、六十五年度を目標とした財政再建、これについてお伺いしたいと思いますが、大蔵大臣は、財政再建は射程距離に入った、こういうふうにおっしゃっておりますが、この理由についてお伺いしたいと思います。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろございますが、一つは、先ほどもお尋ねの中にございましたNTTの売り払い代金が公共事業に使えるようになったということがございます。もう一つは、幸いにして経済運営が順調になりましたので、自然増収というものが過去においてもございましたし、また六十二年度においても場合によってはあるかもしれない。こういう経済情勢等々から、残りました、二年に割りますと一兆五、六千億円でございましょうか、というものは、場合によってはもう六十五年度は必要がないかもしれない、そういう計算がやや可能になっていく公算は相当ある、こういうふうなことから申し上げておることでございます。
  93. 矢追秀彦

    ○矢追委員 六十三年度に赤字国債発行額を一兆八千三百億円減額できたのは好調な税収に助けられたことも大きいわけでございますが、今回の財政再建が始まった五十九年度から六十二年度の予算段階の赤字国債削減の平均は五千億円、決算段階の赤字国債削減の平均は七千二百九十億円、こうした推移から判断いたしますと、残り二カ年で一兆五千七百五十五億円、六十三年度の赤字国債を均等に削減と仮定をしておりますが、この一兆五千七百五十五億円を削減しなければならぬわけですが、これは私は大変容易でないと思うわけでございまして、六十三年度はむしろ異常であったのではないか。六十三年度に比較して残り二カ年の削減額は少ないので財政再建は容易である、あるいは射程圏内、こういったことになるかと思うのでございますが、今言ったような計算でいきますとこの一兆五千七百五十五億円を二カ年間で削減することは非常に難しいんじゃないか、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう見方も確かにあると私は思います。いずれにしても、先ほど申し落としましたが、歳出をできるだけ圧縮しておくということがいずれの場合にも必要でございますが、さて、この一、二年の税収状況がやや異常であるということは、私も矢追委員の言われるように思います。でございますから、いつまでもそれが続くと考えるわけにはいかないという観点からの御発言は、私どももやはり十分に注意をしておかなければならない。要は経済運営のいかんによると思いますものですから、このような順調に動き始めました経済を長続きさせるということはどうすればいいのかということ、その運営を間違えないことが大切であろうと思うのでございます。それを間違えませんで幸いにしてこの状況が続いてまいりますと場合によっては六十五年に脱却できるチャンスがある、そういう努力を経済運営の面においてもいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  95. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今大臣いみじくも指摘されたように、確かにこの税収の伸びが異常であったということで、今後続けば結構ですが、それが続くような経済運営はぜひお願いしたいと思いますが、くどいようですけれども、五十九年度から六十二年度の削減合計額は予算段階で一兆九千九百九十億円。六十三年度の一兆八千三百億円というのは四年分に匹敵をする額であるわけですね。また、六十二年度補正後の一兆五千八百七十億円というのは、五十九年度から六十一年度の三カ年の合計額一兆三千二百九十億円を二千五百八十億円も上回る額、こうなっておるわけですね。そういうことですから、私は、財政再建にその弾が届く距離まで来た、こういうふうにはなかなか言えないのじゃないか、こう思うわけでございます。その点は指摘をしておきたいと思います。  それで、この赤字国債の発行削減が非常に進んできた背景というのは、私が先ほども指摘をいたしました大蔵省の税収過小見積もりというものも大きく寄与した。裏返せば、いや、それ以上に経済が伸びた、だから税収が伸びたんだとおっしゃるかもわかりませんが、それは見誤りであったわけでございますから、やはり過小見積もりでその余力をつくり出してきたわけです。これが六十四年度、六十五年度でも果たして続けられるのかどうか。私は、その保証はないんじゃないか、こう思うわけです。六十三年度は前半も好調なようですから何とかいけると思いますが、六十四年度以降果たしてどうなるのか、これは確信の持てることではありません。  政府の「財政の中期展望」によりますと、六十四年度は二兆四千六百億円、六十五年度は二兆六千三百億円の税収増加を見込んでおられますが、この見通しを含めまして、今後の税収確保大蔵大臣どうお考えになっておりますか。この税収の見積もりは恐らく名目成長率四・八、弾性値一・二を使って計算されているわけですが、これで果たして予測になるのかどうか。先ほど一・八という数字も出たわけでございますから、それも含めましてお伺いしたいと思います。
  96. 水野勝

    ○水野政府委員 税収見積もりはそれまでの実績や経済見通し等を基礎にしまして個別に積み上げるのが原則でございますので、中期的な見通しとなりますと極めて大胆な仮定を置かざるを得ないわけでございます。この中期展望の数字もそうしたものといたしましてやや割り切って見積もってございます。ただいまお話しのような、経済成長率は四・八%、これは今年度のものを用いたわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、中期的に見ましても、また我が国の税収構造を見ましても、おおむね弾性値は一・一程度であるというところから、四・八の一・一倍で五・二八%といった数字で単純にはじいたものでございまして、これが必ず確保できる、あるいはこれ以上になる、ここまではいかないといったことはなかなか申し上げにくいところでございまして、こうした中期的な展望として割り切って一応の数字をお示ししているところでございます。
  97. 矢追秀彦

    ○矢追委員 税収と並んで歳出の抑制継続が赤字国債脱却の条件とされております。大蔵省提出の中期的な財政事情の仮定計算例のB、すなわち定率繰り入れを実施しないケースの場合でも、一般歳出をゼロに抑え、すなわち六十三年度の三十二兆九千八百二十一億円程度で推移させないと目標達成が困難になっております。六十三年度は過去五年間の横ばいからようやく一・二%のプラスに転じたわけでございますが、「経済大国の生活小国」などと言われまして、生活環境や生活水準の向上に国民の関心も集まっておりますし、また外国からの内需拡大への圧力というのもあるわけでして、一般歳出ゼロ抑制、これは大変難しいことになるわけでございます。非常に財政再建政策と逆行するようなことにもなってくるわけでございますので、その点はいかがでございますか。
  98. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 私どもがお示しいたしました仮定計算によりますと、確かに六十五年度脱却にするためには一般歳出をゼロ近いケース、具体的に申しますと一般歳出〇・七%増というところで達成するという機械的計算になるわけでございます。私どもずっと一般歳出、特に経常経費を圧縮するという努力を続けてきたわけでございまして、この努力を今後も続けていく。幸い社会資本整備の方につきましてはNTTの貸し付け法案の成立を見させていただいておりますので、その活用を図るということをあわせて活用していけば、今後とも大変苦しい道筋だとは思いますけれども、何とか努力を続けていけば達成可能な射程距離に入ってきたのではないかという希望を持つに至ったということではないかと考えております。
  99. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、先ほども触れておられましたが、地方自治体への補助率削減、負担転嫁といった問題でございますが、大蔵省の資料でも明示しておられますとおり、六十四年度以降補助率を法令本則によって算出いたしますと、一般歳出は六十四年度三十四兆三千百億円、六十五年度三十五兆千五百億円となっております。この金額は仮定計算例Bケース一般歳出が五%増の場合に近くなります。先ほどの伸び率ゼロがぎりぎりの財政再建ラインという点から見ますと、再建を破綻させてしまうわけです。これはまさに二律背反になるわけでございまして、これでは財政再建が先ほど大蔵大臣言われた射程距離ということにはならないのではないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  100. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 「財政の中期展望」は、何回も御説明しておりますけれども、現行の制度、施策をそのまま将来に投影するという、いわばそういう反射的な手法を使っているわけでございます。したがいまして、補助金のいわばカット法につきましても六十三年度に切れるということでございますので、六十四年度からその分をもとに戻した計算ということで、おっしゃいましたように一般歳出が予備費の調整額なしで七・三%の伸びという非常に高い伸び率になっているわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもはこれは六十四年度予算編成にかけての検討課題であるというぐあいに考えておるわけでございます。
  101. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私も前々からこの委員会でもよく指摘をしておりますが、財政再建というのは赤字国債の発行をゼロにする、これをもって何か財政再建ということになっておる。それも一つの目標だと思いますよ。しかし、それだけでは財政再建とは言えないのじゃないか。もう一つの大きな問題が国債残高の問題にあると思います。御承知のように、六十二年度百五十三兆円、六十三年度は百五十九兆円、六十四年度は計算で政府の出された資料でいきますと百六十四兆円、六十五年度は百六十八兆円、さらに六十五年度以降でも多分建設国債の発行は依然として続くわけですし、相当先のことになりますと、いろいろなデータが出ておりますけれども、どれを見ても大体二百兆ぐらいになってしまうのですね。赤字国債が発行ゼロになれば、財政再建、確かにその一つの力にはなると思います、赤字国債を発行しなくてよいということは。しかし、たまった国債の方は、余りこの問題には触れられていないわけでして、やはりこの方をまずきちんとしないとだめであるわけです。要するに借金財政がずっと続いてくる。このままいきますと、本当に借金からは抜け出せない、下手をするとアメリカの二の舞になってしまうのじゃないか、こう思うわけでございまして、こちらの方が余り目を向けられていない。だから、先ほどちょっとNTTの売却益のことでも指摘をしたわけですが、そういった点についてももうちょっと慎重にしてもらいたい、こういうことでございますが、財政再建といわゆる借金財政、この見通しについてお伺いしたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かにもう一つのポイントだと思っております。国債残高がどのぐらいであればいいか、あってはいけないかということについては、我が国経済全体の潜在力とも関係いたしますので、この議論はこの議論といたしておきまして、やはり現在のように国債費が一般会計の二割を占めておるということは、何とも一般会計の弾力性を奪っておるものでございまして、これが実は一番つらいところでございますから、そういう意味では残高が結局一番そこへ真っすぐ影響してまいります。おっしゃるとおりでございまして、それもございますから、少なくとも特例債だけは新規に発行するのを早くやめたい、つまり残高の累増を少しでも小さくしていきたいというふうに考えます。
  103. 矢追秀彦

    ○矢追委員 NTT株というのが一つの救いになって、六十二年度補正以降少しは潤ってきているわけですけれども、これも限りがあるわけですから、その後の弾というのは一体何なのか。先ほど経済運営ということをおっしゃっておりますが、それだけではなかなかこの借金は返せない。しかも、一応ずっと先の計算例を見ておりますと、大体二割で国債費はとまっておるようですね。しかし、二割といっても今言われたような大変な重圧になるわけですから、やはりこれを減らしていかなければいけない。我々個人でも、住宅ローンに収入の二割もかかっておりますと大変厳しいわけですから、そういう意味ではこちらの方をもっと減らす努力をしなければいけない。NTTの次の何か妙手というか、そういうものはあるのかどうか、その点はいかがですか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうもそれは今何も見えておりませんで、やはり日本経済が潜在力を上手に発揮していきました場合の成長率というものがどのくらいであるのか、それが少しでも高いことが望ましい。雇用から申してもそうでございますから、増税ということではなくそこからくるいわば自然増でございますね、そういうことがこの問題の解決のかぎであろうというふうに思っております。
  105. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私は、NTTあるいはまた国鉄、また専売公社等が民営化されまして、NTTだけはこうやって売却益を使うわけでございますが、今後、国鉄にせよ、あるいはまた日本航空も今度はなるわけでございますけれども、そういう意味で、そういった株の売却益というものが使われてくる状況というのが今後もし見通しとして出てくるならば、まだ民営化できるものがいろいろあるんじゃないか、こう思うわけです。そういったものも一つずつチェックをしていただいて、そして国民の合意、また関係者の合意もいただいて民営化をしていく。そして、株を上場いたしまして、その売却益をいわゆる借金に返す。我々個人でも、借金で首が回らなくなったらやはり土地を売って返すわけですから、国家も同じことだと思います。  ただそれを売り払ってつぶしてしまうのではなくて、まさに国鉄だって、今非常に関係者の努力によってJRになって非常に国民の評判もよくまた収益も上がりつつある状況でございます。もちろんいろいろな問題はあろうかと思いますけれども。今私がもっと妙手はないかと言ったのは、そういうことも含めて、かなりドラスチックといいますか、一遍に激変することは難しいでしょうけれども、そういう大きな目標で国民の合意を得ながら、ただもう大型間接税ばかりさっきのパンフレットのように必死になってやっておられるようでございますが、そうではなくて、まだやれる手はいっぱいある。そして、国債残高をきちっと減らしていただいて、少なくも一〇%、二〇%超から一〇%台まで国債の利払い費を抑えるという目標をきちんと出すことが大事ではないか。  だから、財政再建の目標が赤字国債をなくする、ゼロにするということで来ましたけれども、もし大蔵大臣が、射程距離に入った、六十五年度でゼロになるんだという本当の確信ができたら、次の段階として、今度は国債残高、少なくも今赤字国債分の残高さえなくなれば、一挙になくすというのは難しいかもしれませんけれども、これだけでも大体半分ですから相当財政の弾力性は出るわけです。そうすると、これは一〇%になるわけですから、そういう意味ではそちらの方に財政再建の一つの大きな目標を出すことが非常に大事だと思うのですが、その点はいかがですか。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般会計における国債費の負担を減らしていくためには、どうしてもそういう方法しかございません。おっしゃいましたようなことは絶えず十分に注意をして努力をいたしたいと思います。
  107. 矢追秀彦

    ○矢追委員 そうじゃなくて、私が言うのは、財政再建の目標の一つに、そういったものをどう減らすかという年度といいますか、十年後とか二十年後というきちっとしたあれをひとつつくっていただきたいという意味で言っているのですが、その点いかがですか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもう大変に望ましいことでございますけれども、「財政の中期展望」とか仮定計算とかというものにならざるを得ません一つの理由は、やはり経済計画が大体五年のところまでしかつくれないという問題がございまして、これでそれを超えていわば経済財政の絵をかくということが難しいという点と、それから先ほどおっしゃいましたように、JRにいたしましてもその他にいたしましても、どのようなことで民営化のメリットができるかということが見通しにくいということもございます。おっしゃいますようなことは絶えず心構えとして私ども持ってまいらなければならないと思っておりますけれども、計数的に言うとなると、そういう問題がございます。
  109. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは次に、税収の所属年度区分変更と蔵券の増発問題についてお伺いしたいと思います。  ちょうど十年前の五十三年度に税収の年度所属区分を変更し、先食いをし、そのまま今日まで続いておるわけでございますが、この年度所属区分変更に伴う功罪を大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  110. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 現行の税収の年度区分変更は確かに五十三年度に行われてございまして、その当時の財政状況が背景にあったことも確かでございます。ただ、出納整理期間における歳入歳出というものを発生主義的な経理をしようということで、いわばそういう納税義務が成立している税収については三月末の、具体的に言えば法人税でございますが、その年度の区分にしようという考え方もあったわけでございます。そういうことでその後ずっとやってきておりまして、私どもとしてはこの制度のまま今後も続けていきたいというぐあいに考えているわけでございます。
  111. 矢追秀彦

    ○矢追委員 財政法十一条の会計年度の定めによりますと、「毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る」、こうなっておりまして、この十年間、歳出予算は財政法十一条どおりの執行でありますが、歳入の方は六月開始の五月終了というゆがんだ形になっておるわけです。  こうした歳入と歳出のずれ、すなわち、支払いに充てるお金がないのに歳出予算に計上され支払いはしなければならぬそういうお金、給与、年金、生活保護費、医療関係経費等はもちろん、公共事業費やその他の経費の支払いも毎年度計画的に行わなければならぬわけです。そこでこの収支時期のずれを調整するのが財政法七条の大蔵省証券または一時借入金によって泳ぐことになるわけです。  最近五年間の各月別の蔵券の発行額を見ますと、ちょっと時間がありませんので六十年度から申し上げますが、六十年度の四月が五兆三百億円、それから五月が四兆七千九百二十億円、六月が四兆一千六百二十億円、六十一年度は、四月度が七兆四千五百五十億円、五月度が四兆七百二十億円、六月度が五兆二千九百九十億円、六十二年度で、四月度が四兆九千八百二十億円、五月度が二兆九千四百七十億円、六月度が二兆三千四十億円、こういうふうになっておるわけでございます。このお金全部が税収の年度区分変更によって必要になった、こう言うつもりはございませんが、はっきり言えますことは、この税収年度区分変更後はそれ以前に比べますと大蔵省証券の発行が非常にふえておる、こういうことを私は指摘できるのではないかと思います。したがって、年度当初の国庫の収支のずれは歴然としておるわけですね。こういった傾向は財政当局はお認めになると思います。  こういったことも、結局何から起こってきたかというと、やはり財政が非常に厳しくなったというところから出てきた苦肉の策と言わざるを得ないわけでございますが、本来の大蔵省証券の機能からいってこういったことはやはりまずいのではないか。まずいなら直さなければいけませんので、どうされるのか。また、財政法の趣旨の上からも、現状の運営はちょっと問題ではないか。証券ですから利息を払わなければいけませんので、結局金利のついたものですから高くつく財政運営になってきておる、こう思うわけですが、この点について私の指摘しておる点を問題とされておるのかどうか、もし問題とされるなら、どういうふうに是正されていくのか、大臣も含めて答弁をお伺いして終わりたいと思います。
  112. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 確かに、御指摘のように大蔵省証券の発行がふえ、その金利負担がふえていることは事実でございます。ただ、私先ほど御説明しましたように、いわば出納整理期間中における発生主義的な経理ということで踏み切ったわけでございまして、現実問題といたしましても、例えば法人税につきますと約五兆円弱のお金が一度にどっと入ってくるわけでございまして、これを仮に年度区分五十三年度以前に戻しますと、その分だけ赤字公債を発行せざるを得ないということでございますので、現実問題としても対応が不能ではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょうど十年前にそういうことをいたしましたが、ちょっと妙なことを申し上げるようなんですが、あのときにそういたしておきませんとそれだけの国債を発行することが恐らく必要であったということでございますね。やることに理屈はあったとしましても、しなければということはまたそうでございますから、そうしますと、その利払いというものが今日まであるのだろう。で、あのときにあれを変更したことはやむを得なかったことでありましょうし、筋道として言えば租税債権債務の発生した時期をその年度でとらえるということは理屈のないことではございませんので、この制度のままやらしていただきたいというふうに思っております。
  114. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最後に一言。  やはり私は不自然と指摘をせざるを得ませんし、そもそも財源確保法そのものも、これは決して本来いいものではないわけですよ。ないにこしたことはない。しかし、赤字特例公債から始まって財源確保法、こういうふうになってきたわけでございまして、この法案自身についても、私もしばしば指摘をしてまいりましたが、こういうことをしなければならぬこと自体、やはり財政のゆがみといいますか、経済運営のいろいろな今までの過去の失政、状況もあったでしょうが、今日ここまで来たわけです。今後、私はこれからもし税収が伸び、経済がよくなり、そういう時期こそ思い切って正常に戻す努力をしなければならぬ、こう思うのですが、その点いかがですか。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的にはそういう努力をしてまいらなければならぬと思いますが、ただいまの点は見通しを持ってお答えすることはちょっと難しいように思います。
  116. 矢追秀彦

    ○矢追委員 終わります。
  117. 越智通雄

    越智委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ────◇─────     午後三時一分開議
  118. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  119. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 四月十三日からワシントンで七カ国蔵相会議、いわゆるG7、そしてIMF暫定委員会など一連の通貨金融協議が行われたわけでございます。我が国からは宮澤大蔵大臣出席し、ドル通貨問題を中心に各国経済政策の相互監視、いわゆるサーベイランス政策協調についての話し合いがあったわけでございます。十四日に宮澤大臣IMF暫定委員会で日本経済と世界経済の現状についてということで演説をされまして、「日本経済は底堅い個人消費と設備投資に支えられ、六十三年度の内需は実質四・八%と高い伸びになる」、そしてまた、世界経済の現状については、「昨年十月の株価暴落の影響は各国政策協調で乗り切った」、このように成果を強調されておるわけでございます。これは日経新聞の四月十五日に掲載されておりました。  ところが、四月十四日には、アメリカの二月分の貿易赤字が百三十八億ドル、前月比一一%の大幅拡大となったことが発表されました。ニューヨーク株式市場は百一ドル四十六セント安の史上五番目の下落を記録をいたしておるわけであります。外国為替市場ドル売りが殺到ということで一ドル百二十三円台に急落したことは御存じのことだろう、このように思っております。この背景には、G7での為替相場安定の合意の実効性に対する市場の不信感がやはりあると思うわけでございます。当事者としてこの事態をどのように受けとめておられるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先週の木曜日でございますが、その日にアメリカの二月の貿易収支の数字が出ることはかねてわかっていたわけでございますが、ここのところちょっと貿易収支の改善が見えたものでございますから、市場ではややいい数字が出るのではないかという期待があったようでございます。結果としてはむしろ悪い数字が出ましたので、それについて市場が反応したということは御指摘のとおりでございますが、もともと、アメリカ貿易収支というのは、基調としては改善していく、しかしそれはジグザグのコースであることはどうも避けられないだろうということをかねて申しておる一人でございますので、今度の程度のことはそのジグザグの一つの現象だというふうに私は考えておりますし、また統計的に見ますと、一月一月ならともかく、三カ月の移動平均をやってみますと、やはり移動平均としては少しずつは改善をしておるということでございますので、その見方に間違いはないであろうと思っております。  ただ、市場はそうはとりませんで、一応今上田委員の言われましたような反応をいたしました。たまたまその際には日米独三国の蔵相、中央銀行総裁もちょうど会議で集まるところでございましたもので、直ちに対応いたしたわけでございます。それで、やはりフロート、変動相場でございますから、市場は自由に形成される。その意味では介入で相場を動かなくするというわけには無論まいらない。しかし、かなりいろいろなことを考えまして、強く介入をいたしまして、その週のことはその週で済ますようにしなければいけないなというのが何となく私どもの言い合わした感じであったわけでございますけれども、結果としてはそんなことになりました。  私どもが昨年の暮れに合意をし、このたびも確認をいたしました政策協調は、もとよりこれはかなり時間のかかっていくものでございますが、市場介入にいたしましても、とにかくこの水準以上にドルが下がるということはよくないという意識でやっておりまして、市場でございますから相場は全くくぎづけにできるわけではございませんけれども、ほぼそういうところで今回も目的を達しましたし、今後もそういう協調を続けていきたいというふうに考えておるところでございます。
  121. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 八五年秋のプラザ合意以来、世界経済の不均衡、いわゆるドル高あるいはアメリカの貿易赤字、それから日本などの膨大な経常黒字を是正するために、主として為替調整によるところの世界経済の構造調整が進められてきた、このように思うわけでございます。  この間、二年半の間に円は一ドル二百四十円から百二十円台に、百円以上、一〇〇%も切り上がりがなされ、日本企業は必死の合理化努力と内需転換、また生産拠点の海外への移転等で構造調整に取り組んできた。その結果、日本の貿易黒字は去年百三十七億ドル減って七年ぶりに縮小した、こういうことでございます。  しかし、アメリカの方は、いわゆる双子の赤字が一向に目に見える形で改善に向かっているようには我々としては見られない、このように思うわけでありまして、ドル安アメリカの輸出を急激に伸ばしてはいるが、アメリカ経済の消費体質ですか、その定着で輸入も相変わらずふえているというのが現状ではないか、このように思うわけであります。財政赤字の削減は、ことしは大統領選挙があるためもっと困難な状況ではないか、このように推測するわけでございます。来年度の財政赤字は、グラム・ラドマン法というのですか、財政均衡法で定めた限度額千三百六十億ドルを大きく上回る千七百億ドルに達する、このように想定されるわけでございます。アメリカの双子の赤字削減の取り組みと今後の見通しについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、上田委員の言われますように、アメリカドルというのは基軸通貨であると同時にアメリカの自国の通貨でございますということがありまして、今のような問題についてアメリカ国民は我々が考えるよりもどうもやや鈍感であるということは事実でございます。ただ、これだけドルが下がりましたので、アメリカは今輸出産業が実は非常に好況である、これは当然そうだと思うのでございますが、輸出産業が好況になっているということは確かにアメリカの輸出がふえていく前兆であろうと考えております。おっしゃいますように、しかし輸入もなかなか思ったように減らないということも事実でございますけれども、輸出は輸出産業が好調だということに支えられて上昇傾向にあると存じます。  それから財政赤字でございますが、昨年の暮れに初めてレーガン大統領が多少の増税をやっても財政赤字を減らすということに合意をされたというようなこともございまして、グラム・ラドマン法の想定するほどなかなかいかないのはいかないのでございますけれども、しかし財政赤字を減らさなければならないという意識はアメリカ議会の中にも相当強くなっておるように存じます。殊に、昨年十月にウォールストリートの御記憶のような暴落がありました。その遠因がどうやらその辺にあるということを広くアメリカ国内でも考えるようになりましたことがありまして、ああいうことがありますと、やはりこれは人ごとではないという気持ちになるのだと思いますが、その後、今、そのような為替の問題でありますとかあるいは貿易収支の問題でありますとかについてはかなりアメリカ自身が深刻に考え始めているということが事実でございますので、そういう意味で改善が期待されるということではなかろうかと存じます。
  123. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカのこの双子の赤字は、大臣もお認めのように、抜本的な解決にはなっていない。このままアメリカの貿易赤字、財政赤字が高水準で続いていけば、いつ何どき再び株の暴落やドルの急落が起こるかもわからない、こういうような心配というのですか土台がそのままあるわけでございます。  この間来日されましたボルカーFRBアメリカ連邦準備理事会の前議長はこういうことを言っています。為替安定のためにアメリカが新たな対策を打ち出す可能性は極めて小さいということを言っているわけです。そういう意味で、当面各国協調介入をしてドル買い支えを行う程度ではやはり根本的な対策はとれないということは明らかではないか、このように思っておるわけでございまして、表面的な協調体制確認だけに終わったというのが先ほどのG7ではないかというふるに感じるのですが、どうですか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは見方によるかもしれないと思いますけれども、先ほどお話しになりました現実の先週起こりました事態、二月の貿易収支の結果が出ました、それに対応いたしましてアメリカの連邦準備銀行がとりました処理等々見ておりますと、これはかなり事態を真剣に考えている、一年前あたりとはまことに違う対応をしておるという感じを私は持っておりまして、それは実は、昨年の暮れと申しますか、ことしの初めくらいからそういうことが顕著になってまいったように見ておるのでございますが、それは昨年の十月のあの教訓というものがかなり深刻に受け取られているということの証左であろうと思っておりまして、殊にことしに入りましてからのアメリカのこういう問題についての対応は極めて真剣なものであるというふうに私は考えております。
  125. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣は恐らくそのようなことを期待も込めておっしゃっているのではなかろうかというふうに思うのですけれども、先ほど申し上げたように、円高によってアメリカの輸出は確かに伸びていることは伸びているが、しかし輸入も伸びている。アメリカのそういう双子の赤字、こういうことでございますけれども政府だけではなしに国民自身もお金がなくて借金、しかし、浪費癖というのですか特に外国からの流入が相も変わらずふえているということで、努力はわからぬこともないのですけれども、そういう財政赤字、貿易赤字を抜本的に改善するようなことがなかなか望みにくいという状況にあるのではないか、私はこういうふうに思うわけでありまして、そういう状態が続きますと、アメリカは日本に対して一層の金融緩和の要請をしてくる可能性がある、このように見なければならぬと私は思うわけであります。その点について、日本の金融はもう十分に緩和していると我々は考えておるわけでございますけれども大蔵大臣考え方をまず聞きたい。  それから、特に今回のG7政策相互監視、いわゆるサーベイランスのための指標として商品価格指標の導入が求められたわけでありますが、アメリカはこれをてこに日本や西ドイツに金融緩和の圧力をかける意向と新聞等で報道されているわけでございますが、商品価格指標を導入した意味をどのように考えておられるか、お聞かせいただきたい、このように思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりドルが実力以上に高かった時代が長く続いておりましたので、アメリカ以外の国の競争力がそれだけ強くなり、また、いい品物がアメリカのマーケットへ入って、それがアメリカの産業あるいは一人一人の生活の中へ組み込まれていったといることは、上田委員のおっしゃいますようにあると私は思うのでございます。  したがって、輸出は伸びているけれどもなかなか輸入が減らないではないかということは、やはり多少の時間がかかりませんと、そういうものをアメリカの産業がまた国内市場を取り返すという、それに多少の時間がかかることはやむを得ないのであろう、我が国のようにこうやって輸出を控えておりましてなおそうでございますから、そういう点は幾らかあるだろうと思いますが、傾向としては貿易収支はよくなっていくだろうと私は見ております。  そこで、金利のことでございますけれども、これは日本銀行総裁の本来のお仕事でございますが、一般的に見まして、我が国の金利は我々の努力があって十分に低いというふうに申し上げてよろしい。その点についてアメリカ側から特にこうしてほしいというようなことはございませんで、それは十分に低いというふうに考えていいのではないかと思っております。  今度、商品指標に取り入れましたのは、けさほども申し上げましたが、いわばかなり専門分野におけるエコノミストの分析の手法のようなものに属するものでございまして、政治的な意味はないものというふうに私は考えております。
  127. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 やはり物価が安定している、あるいは円高によって輸入品が格安であるというようなこととか、要するにそういう商品価格指標を導入することによって日本は金利をもうちょっと下げられるのではないかという圧力が強まってくるのではなかろうか。しかし、我が国は今で十分ぐらいでありまして、低いぐらいと言ってもいいような状況であります。さりとてアメリカがかつてのような高金利政策をとるわけがないわけで、日米の金利差を広げようとすれば日本の金利を下げざるを得ない、こういうようなことになりかねないわけでありまして、これも力関係だろうと思いますけれども、その点十分に考えていただきたいと思います。  いずれにしても、世界経済の不均衡を是正し、安定的な発展のレールを引くためには、やはりドル通貨制度の改革が不可欠ではないかというふうに思うわけであります。その一つは、今回のG7あるいはIMFの協議でも通貨改革の方向をめぐる論議がなされたと思うわけでありますけれども、日本政府としてどのような方向を目指そうとしているのか。  それから二つは、圧倒的な力を持ったドルの威信が低下する一方であります。それにかわる通貨がない以上、やはり長期的に見てドルと円とマルクの三極通貨によるところの目標相場圏、ターゲットゾーンというのですか、のセットで行くしかない、このように思われるわけでありますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの共同声明の中で一カ所「国際通貨制度機能」という部分がございますけれども、これはけさほども説明申し上げましたが、フランスの蔵相が一つの論文のようなものを書かれたことに関しての言及でございまして、会議そのものが何か新しい制度が可能ではないかといって議論をしたことはございませんし、また現実の問題として、いわば私ども学者でございません、現場におる人間でございますから、そういうものが現実に考えられるとは思わないという点では一応意見が一致しているということだと思うのでございます。  ただ、そうではございますけれども、このプラザ以来の通貨の問題を今のような形で、と申しますのは政策協調市場ほおける介入でございますが、それもお互いに密接に連携をしながらやっているということ、これが現実のやり方としては一番事態にかなっておるのではないかということをみんなが考えておりますから、昨年の暮れもああいう声明をいたしましたし、まあ一応その成果に満足しつつこのたびもそれを再確認したということでございまして、それは今上田委員の言われますように、ある意味でみんなが一つの、例えばこの辺のレベルとか、これよりドルが下がれば困るとか、そういったようなものをぼんやり頭に置いて協調しているという、それはどういう呼び方をいたしますかいろいろでございましょうけれども現実にはそういうやり方が一番事態に合っておるということでこのような合意がなされ、実行されておるという、そういう現実ではないかと思うのでございます。
  129. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ターゲットゾーンの設定の方向になるかどうかは別として、やはり何らかの形で通貨改革の方向を準備しなければならないということは明白ではないか、このように思うわけであります。  その場合、問題は二つあるのではないか。一つは、適正な為替相場の水準レートをどこに置くかという問題。現状は大体一ドル百二十五円前後でありますが、当面日本の貿易黒字の削減を図るための行き過ぎた相場、現状では私はそういうふうに思っておるわけでありますけれども、やはり政府としては適正なレートというものをどの程度にお考えになっているのかということが一つ。  いま一つの問題は、適正レート各国間で合意を見たとして、どうやってその水準を維持するか。各国国内政策が並行して行われない限り一定のレートを維持することはできない、特にアメリカの双子の赤字解消に本格的に取り組まない限り無理だ、私はこういうように思うわけでありまして、各国政策協調を維持するシステムをつくり上げることができるかどうかが最大の問題ではないか。そういう点も含めて、やはり通貨改革の機が熟したと言えるような、そういう条件は何か、あるいは見通しというものがあるのか、そういう点について教えていただきたいと思います。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円の水準がどのぐらいが適当かということは、私の立場から申し上げるべきことでないと思いますし、また現実にも申し上げられないことでございますが、ただ、プラザ合意からもう二年半になります。これだけ円が上がってまいりますと、あるいはドルが落ちてまいりますと、これはもうこの辺のところで十分だと。実際、我が国経済、国民生活も非常に苦しんだわけでございますから。それが逆の言葉で、これ以上ドルが下がるということはみんなに迷惑で困ることだという暮れ以来の合意になっているのでございますから、そこらあたりが大体関係者の一応の合意であって、毎日の変動に対しては協調、共同介入で、また安定的な推移については政策協調でこれを守っていこう、これを維持していこうということであろうと存じておりまして、それを超えてさらにこのような新しい制度が可能になったあるいはそれが模索できるというような状況にはないであろう、当面こういう形での運営というものが、ベストではないかもしれないが、今としては事態に一番適しておるというのが関係者のほぼ一致した意見ではないかと私は考えております。
  131. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、日本はアメリカに対して声を大にして、アメリカ経済あるいは双子の赤字といわれる構造的な体質を是正するべく自己努力するようにもっともっと強く言うべきではないか。そうしない限り、幾ら協調介入しても、あるいはジグザグな道があるといいながらも、やはり基調としては円高という道をどんどん進んでいくということにならざるを得ない。だから一ドルが百円になっても別段不思議でないというようなことにもなりかねないわけでございますから、そういう点でアメリカ経済というものを日本自身がどう考えていくのか、日本自身の努力ということも当然大事なことだと思いますけれども、やはり世界通貨としてのドルの威信が落ちてきているわけでございますから、そういう点で先ほど言いました三極通貨の新しい取り決めというのですか、通貨改革というものもやはり考えていかなければならぬだろう、このように思いますので、その点について強く要望しておきたいと思います。  次に、日本の経済の現状ということになるわけでございますけれども、三月十七日に経済企画庁が発表しました国民所得統計速報によりますと、去年の十月から十二月の実質GNPの伸び率は年率七・〇%を記録しておるわけであります。これは同年七月から九月の年率八・四%に続き快調な伸び、こういうことのようでございます。一年前にはほとんどだれも予想しなかった内需中心の好況が突如として出現したと言ってもいいのではないか。日本経済円高不況を克服して内需経済への転換、構造調整が急速に進みつつある、こういうように言われてもいいというように思うわけであります。  しかし、内需経済への転換といいましても、昨今の異常な地価騰貴や株高あるいは住みにくい住環境、高物価など、回復の仕方は一面極めてゆがんだ形で進んでいるということで、私は気にしておるわけでございまして、最近の日本経済の動向と今後の見通しというものを大臣はどのようにお考えでしょうか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここに来まして経済成長がかなり着実な歩みを始めましたことは大変に結構なことだと考えておりますし、これが殊に御指摘のように内需の方の伸びが多うございまして、外向きの勘定はマイナスに働いておるということも我々が意識的に政策努力をしておることの結果でございますから、姿としてもよろしいと思います。その結果は、いわば成長の成果がいろいろな形で国内に、蓄積ばかりとは申しませんけれども、落ちていくということでございますから、それで我々にとってもよろしいことだと思うのでございますが、願わくはこれが長続きいたしまして、そして我々の不足しております社会資本の整備に向けられていくという、そういう経済運営が最も望ましい姿であるというふうに考えております。  しかしこれはなかなか、外の外需はマイナスでそれをカバーして十分なだけの成長をするということは、かなり高い内需がなければならないということでございますから、努力をしなければできないことでございますが、それはいわば我々の社会資本を充実するという、あるいは国民生活の質を高くするという意味で、十分やるべき値打ちのある努力であるというふうに考えております。そのような我々の努力のためには、財政そのものもある程度の高い水準の公共投資を維持していく方がいいというふうに考えておりまして、それは御承知のように社会資本整備勘定で、従来よりほぼ二割高い公共投資をやっておるわけでございますが、これは必要のある限りこの水準をやはりしばらく維持していくべきではないか、そういうふうに考えております。
  133. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 新聞などで、日本経済は今や絶好調、こういったような楽観的な論調が聞かれるわけでございます。しかし、ここ一年ばかり好調とはいっても、この景気回復、内需経済への転換の基礎はまだ弱いと言わざるを得ない、大臣もお認めだと思いますが。景気回復の要因の一つは、資産効果と言われる地価とかあるいは株価の上昇で、貯金や含み資産のふえた消費者が物を買い始めた。美術品とか貴金属ブーム、あるいは高級車販売の急増に示されておるというように私は思うわけであります。昨年来の住宅投資の急増も、土地騰貴に対する税対策というのですか、節税対策としての貸し家建設の急増が大きな原因ではなかっただろうか、このように思うわけであります。  その一方で、三月十日の総務庁の家計調査報告では、資産収入による消費格差の拡大が指摘されております。サラリーマン世帯で収入の一番低い第一階層の消費支出は一・五%増、第二がマイナス一・一%、第三がマイナス〇・七%、第四が〇・五%増に対して、収入の一番多い年間実収入七百七十三万円以上の第五階層だけが三・四%増の伸びとなっておるわけであります。また、個人営業者の消費支出は三・九%増、それから法人経営者は四・二%増、自由業一五・一%増、このようになっておるわけでございまして、やはり金持ちが多くを消費する、そういう意味で、消費の面においてもやはりこういう格差というのですか、そういうものが大きく見られるようになってきておるわけでありまして、やはり国民の格差が広がりつつある、そういうことが傾向ではないか、このように思うわけであります。  一人当たりのGNPは、もう既にアメリカを抜いておるわけであります。個人当たりのGNPは最高はスイスでありますから、日本がアメリカを抜いて第二位、こういうことになるのではないか。当然それは円高という状況の中でそうなっておることも事実でありますから、それは数字の上だけの話で、国民の生活実感は少しも豊かになったという気がしないことは事実ではないか。特に経企庁の購買力平価で見た円レートは、去年で一ドル二百十三円で、実際の為替レートとの間に大きな開きがあるように思うわけであります。これは要するに、日本の製造業、工業の国際競争力は一ドル百二十円から百三十円台であるのに、日本経済全体の実際の実力は一ドル二百十円台の円安だということを示しているのではないか、このように思っております。  日本の経済力の拡大に見合った国民生活の向上を妨げているのは、まず第一に土地制度のひずみ、住宅土地政策のおくれがあると思うのです。それから二番目には、やはり物価水準の高さに反映されて、流通とかサービス部門の構造改革のおくれがあるのではないか。それから三番目は、欧米よりも年間二百時間から四百時間も多い労働時間に示されている労働分配率の低さなどがあるのではないか、こういうように思うわけでございまして、現在のような経済が上向きになっているときこそ、国民生活を一層豊かにする方向で内需拡大に取り組まなければならない、このように思うわけでございますが、大臣の決意というものをお述べいただきたい、このように思います。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、いわゆる資産効果というものによりまして、国内の消費活動が刺激されてきた、あるいは住宅建設もそれに関連があるかもしれませんということは、私も事実であると存じます。五分位階層で消費のふえ方が非常に格差が出てきたということも恐らく事実である。それは、一つは資産効果という点がございますけれども、もう一つは、やはり石油危機以後いろいろ非常に難しい問題がございまして、殊に急激な円高ということから雇用情勢がいっとき非常に悪くなりました。昨年の今ごろは、本当に心配をしておりましたぐらい悪かったわけでございますから、そういうときにはやはり分配、つまり賃金というものを、組合運動においても何しろ雇用の確保の方が賃上げよりも大事だという気持ちになられることは無理もないことであります。現実にそういうことがあったと私は思います。  そのことが、やはりそういう格差に反映をしておったということは私は疑いのないところではないかと思っておりまして、賃金決定について政府はかれこれ申す立場にはございませんが、今年、拝見しておりますと、労使の両方の御相談の中で賃金決定が、昨年よりも一ポイント近く上がるような御様子に見ておりますが、そうなりますと、これは、今おっしゃいましたような格差というものが少しここで直っていく一つのきっかけになるのであろうか、これは政府がかれこれ中へ入って申すべきことではないのでございますけれども、そういうふうな観察をいたしております。
  135. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 前川レポート以来、確かに円高という外圧ですか、そう見ていいと思うのですけれども、それによってやはり企業の合理化の努力とか、あるいは内需市場の開拓とか、あるいは海外への現地生産の拡大とか製品輸入の増大、こういうようなことは確かになさってきたというように思うわけですけれども、しかし一面、先ほど私が指摘しましたように、内需拡大のための制度面というのですか、円高によって輸出がブレーキがかかる、輸入が拡大するというその部分だけじゃなしに、本来の日本の経済内需型の拡大再生産をしていく、そういうものにする努力が非常におくれておるのではないか、そういうように私は指摘しておるわけでございまして、そういう意味で土地政策とかあるいは社会資本の整備とかあるいは労働時間の短縮など、そういう分野での努力がいま一つ、こう言わざるを得ないというように思っておるわけでございます。そこで、特にそれと問題は、消費格差とかあるいは資産格差の拡大を税制面で防ぐ、フォローをするということが非常に大事ではないか。そういう意味で、国民全体の消費拡大に結びつくような大幅な大型な減税の実施がぜひとも必要ではないか、私はこういうようにも思うわけでございます。  総務庁統計局の家計調査報告は、この点、最高税率を引き下げ、上に厚く下に薄い減税と批判のあった昨年の税制改革をこのように言っております。「税金、社会保障費などの非消費支出の第V階級の第I階級に対する格差率は、拡大傾向を示していたが、昭和六十二年の税制改正の影響などにより、前年の五・三九倍に比べ、五・一六倍と縮小している。」批判的に分析をされておるわけであります。現在、与野党間で協議が続けられている減税案については、課税最低限の大幅な引き上げなど、特に低所得層の可処分所得を伸ばす方向で実施方法の検討を大蔵当局にもぜひともお願い申し上げたい、こういうふうに思いますし、またそのことが火のつき始めた消費ブームを根本的に下支えをして日本経済内需の一層の拡大につながる、私はこのように考えておるわけでありまして、特に格差の是正という点では資産課税の強化が必要ではないか、このように考えるわけでございます。その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわば一番低いと申しますか、課税最低限というものをできるだけ改善をするということも大事なことでございましょうが、同時に我が国はかなりの中流社会になっておりますから、いわば中と思われる人々の所得についての所得税の軽減ということも大変大事なことであると考えておりまして、先般政府の税制調査会が出しました素案によりますと、最初の一〇%は五百四十二万でございましたか、まででございますし、一五%も八百八十九万でございますから、この二つの税率で大体の中堅までのサラリーマンは救われるということで、これはおっしゃいましたような目的にきっと非常に役に立つであろうと考えております。同時に、不公平感ということもございまして、資産所得についても課税をある程度強化するということも必要なことであらうと存じます。
  137. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 宮澤大蔵大臣は資産倍増論の中で、社会資本の整備、下水道や都市公園の整備、電線地中化工事や土地整備などに積極的に取り組んでいきたい、実際、資産倍増論といった場合にそのことにつながってくるのではないか、私はこのように思っておるわけですけれども大蔵大臣になってから一向に熱意が感じられないわけでありまして、その点についてどう考えておるのか。特に今後世界的に、先ほどからも議論になっておりますようにアメリカ経済の成長鈍化が予想される中で、世界経済の落ち込みを少なくするために日本経済の成長がどこまでカバーできるかということが大きな問題ではないか、こういうように思うわけであります。問題は、日本の内需あるいは経済の成長を何によって支えるかということではないか、このように思うわけでございます。  現在、政府の新しい長期経済計画、八八年度から九二年度が検討されているわけでありますが、経済議会の報告では、「財政運営に当たっては、財政再建と内需拡大の両立を目指す。」というようになっておるわけであります。これでは経済成長に対する財政の基本姿勢がはっきりしない。成長に対して中立なのか積極型なのかあるいは抑制型なのか、こういうことで、矛盾したものを調整して利用するのだということが果たしてこの時点で正しいのかどうかというように思うわけでございます。少なくとも今日の条件のもとでは、財政の基本姿勢を明確に積極型で示さないと社会資本の整備などいつまでたってもできない。いわゆる大臣がおっしゃっている真の意味での資産倍増論というものは実現しない。土地とか株とかいうことになってきたら資産倍増になっているのかもわかりませんが、そういう意味ではなしに、先ほどから申し上げているような基本的な面における内需拡大ということになると、財政面での出動についてはっきりとした考え方が示されなければならぬのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、株価とか土地の値段とかいうことでなく、社会資本としての国民資産の充実ということは大事なことだと思っておりまして、私は就任いたしまして、たまたまそのことが海外からも求められていたという状況でもございましたので、財政上もいろいろな工夫をいたしまして社会資本整備勘定も設けることができまして、公共事業の水準は二割アップになっておるわけでございます。これは、今後とも必要がある限り続けてまいるべきだと考えておるのでございますが、そういう意味では、社会資本整備の態勢に財政もまさに入ってきておるというふうにひそかに考えておるわけでございます。そのような財政の努力が経済成長に対して中立的であるか、プラスであるかマイナスであるかということは、比較の問題として申しますならば、そのように公共投資が二割も高い水準にあること、それから制度としての増税がないことを考えますと、成長に対してはプラスの寄与をしておるのではないかというふうに考えております。
  139. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そうだろうと思います。そういう意味で、どちらの方向を進むのかということを鮮明にしていただいて、その分野で大いに、世界経済を日本経済がリードするという立場で積極的に進めていただきたいと思うわけでございます。  新年度の予算では、赤字国債の発行減額幅は計画よりも多い一兆八千三百億円で、最近の好調な税収の伸びから見ても達成の見通しは高い、こういうふうに私自身思っておるわけであります。また、赤字国債の発行を昭和六十五年度にゼロにする、いわゆる赤字国債依存体質を脱却する、こういう財政再建の目標はほぼ射程距離といいますか、努力すればできる状況になったということはわかるわけでございます。財政を取り巻く環境も大きく変化しておるわけでありまして、かつては緊縮財政のもとで赤字削減のため支出を抑える、そうすると景気が悪化して税収が伸びず財政が悪化するという悪循環に入り込んでおったことは事実であります。しかし、昨年春、名目六兆円の補正予算を組んで積極財政出動をした結果、それだけではございませんけれども、景気回復が軌道に乗り、また税収も大幅に伸びた、こういうことでありますから、そういう緊縮財政というものはもう卒業して、内需拡大型の積極財政に大きく転換するということは当然正しい、私はこういうふうに思っておるところでございます。そういう立場でさらに一層の努力をしていただきたい、このように思います。  そこで、この経済成長に対する財政の姿勢を積極型に変えていく中で、今日、国債発行と国債償還をめぐる政策も見直しの時期を迎えているのではないかというような感じがするわけでございます。財政の健全化の建前からいうならば、赤字国債の発行はできる限り差し控えるということは当然望ましいことだというように思うわけでありますが、経済的に見れば民間の過剰貯蓄を政府が国債として吸収し、これが財政支出となって景気を下支えした、こういう役割も無視できないというふうに私どもは思っておるわけでございます。さらに公社債市場では、国債が支配的になって金融市場にも大きな影響を与えるようになっておるというように私は思うわけであります。かつての国債発行当初、民間金融機関に押しつけていた状態から、今日では、金融機関が一定のシェアを確保するために配分量の争いをするまでに発行の環境も変化してきた、こういうように見ていいのではないかと思うわけであります。  そういう意味で、国債発行が際限のない状態から一応の安定的状態に変わってきた現在、国債発行に関する新しいルールというのですか、そういう目安というのですか、そういうものをつくる時期に来ているのではないか、こういうように思っておるのですが、このことに対する大臣のお考えがあれば述べていただきたいと思います。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは非常に難しい分野にわたる御質問だと思うのでございまして、今後国が国債をどういう立場から管理していくかということに関係があるかと存じます。仮に自由な論議をなさる方からいえば、現在のように金利が非常に低うございまして、そして国債がどちらかといえば品がすれであるというときには、政府は国債をかなり思い切って出しておいてその資金を持っておくということも、当面要る、要らないと関係なく一つ考え方ではないか。これは私企業の経営なんかでございましたら、金利の安いときに金を借りておこうかというようなことはあるわけでございますから、そういったような自由な御議論もあるのかもしれません。しかし、それはいかに安くても国民の負担になるわけでございます。将来借りるよりあるいは安いかもしれませんけれども、なかなかそこまでは議論が発展いたしにくいといったようなことで、いろいろ研究すべき事項があろうとは存じながら、まだ十分に全体の問題として考えを申し上げるだけのものを持っておりません。
  141. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 六十五年度の赤字体質の脱却、こういうことでその見通しはある程度ついてきているというように思いますが、既に建設国債だけではなしに赤字国債も相当出してきておるわけで、合計して八八年度末には百五十九兆円、こういうことでございます。そういう点で、利払いのために国債を発行しなければならないというような現状がありますし、また、元金自身が返せないので借換債を発行しているというような現状もあるわけであります。あるいは、国債整理基金に定率繰り入れというものも停止せざるを得ないというような現状も、これまた事実あると思うわけであります。  そういう状況を考えるわけでございますが、やはり国債というもの、累積債務というものを考えたときに、アメリカ等の財政赤字の場合は、これは日本を初めとする外国から借金しているのですよ。言ったら国債を買ってもらっているのです。日本の場合は、日本の国民が国債を買っているのです。だから、親が金がないから子供が親に金を貸している、それで利子を取っているというようなことになっているわけで、アメリカの赤字体質と日本の財政赤字とそういう意味では全然根本的に違いがある。利払いをしている、あるいは国家財政の中に二〇%近くそういう利払い費があるということ自身、これは異常なことも事実でありますけれども、その点借金というのを余り怖がるのはどうだろうか。  ただ、日本の財政法によりますと単年度会計ということでありますから、もともと建設国債でさえもこれは例外中の例外ということでありますから、いわんや特例国債ともなれば一日も早くなくさなければならぬというようなこともよくわかるのですけれども、もう既にこういうような百五十九兆円という借金を抱えているという現状から考えたときに、どの程度に歯どめを置くのかということが非常に大事ではないか、私はこういうように思いますので、国債の発行というものは利払いの国債費を限度とする、それ以上はだめだ、それ以下にできるだけ抑えていくということをすることによって、次第に国債費の割合というものが落ちてくるということになるわけでありますから、そういう一つの物の考え方というものも大事ではないか、私はそういうように思います。  それから、NTT株の売却益は国債整理基金で国債の償還財源に充てるもの、こういうようになっておるわけでございますが、このような余裕資金が出た場合には、できるだけ早く赤字国債の償還に充てるべきであるということは言うまでもないことだというように私は思っております。しかし、公共投資とか減税財源など政策上の必要財源に充てるということは当然政策上の判断でございますから、これは否定するものではない、こういうように思っております。  それからもう一つは、先ほど大臣もお述べになったと思うのですけれども、結局は国民の負担をなくする、少なくするという立場でございますから、高金利の国債、そういうものはできるだけ早く償還しよう、そして低金利の借換債の増発をするというような形で全体として国が利払いの額を減らしていくということは、ひいては私は国民の幸せにつながってくるのではないかというように思いますので、そういうことも積極的にやるということでなければ、高利の国債が商品として駆けめぐるということはいかがなものだろうか、こういうように考えておりますので、幾つかの問題について述べたことについて大臣からお答えいただいて質問を終わりたい、このように思います。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、私はいろいろ示唆に富んだお話であったと思っております。  もともと、財政法で国債というものを基本的には考えていなかったということもありまして、国債についての政策あるいは研究というのはもう一つ十分に展開されておらない。それにはいろいろな禁忌と申しますか、もともと国債というのは発行しないのが本当であるという考え方があるものでございますから、上手に国債を発行するとか上手に管理するとかいうことは、どうも原則論からいえばやや邪道であるというような考え方があるのであろうと思いますが、現実にはこれだけ国債を発行しておりますし、建設国債はもとよりそうでございますから、一番条件のいいときに国債というものは発行しておくのがいいのじゃないかといったビジネス的な感覚というのはなかなか十分に行き渡っておりませんで、しかしそういう物の考え方は決して一概に排斥すべきものでもない。ですから、少なくとも例えば金利の低いときには長い国債を発行しておくべきであるくらいのことは、それは心がけていたそうと思っておるのですが、いろいろな意味で赤字国債からは脱却をしなければならぬと思っておりますけれども、今後の国債の管理ということについてはいろいろ検討すべきことがあろうと存じております。
  143. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 終わります。ありがとうございます。
  144. 越智通雄

    越智委員長 次に、安倍基雄君。
  145. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうも大臣G7から御苦労さまでした。きょうはいろいろ盛りだくさんのことを聞いているのですけれども、場合によってはちょっと次に延ばすようなことになるかもしれません。  今のいわゆる財政再建と絡んで私は非常に憂慮いたしますのは、外交的なしりぬぐいを大分財政におっかぶせているのではないかなという気がするのですね。何と申しますか、実は幾ら入るをはかってもどんどんとお金が出ていっちゃうんじゃ困る。これから税金の間接税論議が秋にある。そこで一番懸念されておりますのは、歳入面を見るのもいいけれども、どんどんと使われ過ぎているのじゃないかな。行革もさることながら、外交面のいろいろな譲歩あるいは失敗を最後は財政で見るというような動きが大分あるのではないかなと思うのです。  一番最初でございますけれども、つい二、三日前の新聞に、中国借款を一千億くらい前倒しをするという話が出てきたわけです。これは私、実は先週の十三日外務委員会でココムの問題をとらえまして、それで中国がたまたま人民大会で黙っているけれども、これは必ず大きな抗議になってきますよということを宇野外務大臣に言ったのです。宇野外務大臣はその日、何か中国から返事がございましたよ、これによって余り大した日中間の問題は起こりませんというようなことを言ったのですけれども、実はその本文をよく見ますと非常にきつい発言なんですね。それを私が質問した直後に、いわば新聞紙上で中国が遺憾の意を表明したと。宇野外務大臣が、たまたま両国の友好関係を築き発展させるという最後の文章しか読まなくて、途中には非常に厳しい口調で言っているのです。東芝事件でもこの前大分傷を負った、それで日本政府は慎重に本件を対処してほしいという申し出があった、その直後に新聞紙上で中国側に対して、我々は中国のいわば経済協力に、要するに積極的姿勢を示すという意味合いにおいて、一千億の円借の前倒しをやるというようなことを政府首脳は決めたと書いてあるのですね。  私がずばり大臣にお聞きしたいのは、宇野外務大臣が中国に行かれるときに、そのいわば一千億円の円借の前倒しといいますか、第三次か何かの前倒しをするおつもりであるのかどうか、それを大蔵大臣が認めておられるのかどうか、その点をはっきりお聞きしたいと思います。
  146. 内海孚

    内海(孚)政府委員 安倍委員ただいまお尋ねの新聞記事についてでございますが、現在、委員御承知のとおり、我が国は六十五年までの第二次円借款の円滑な実施に努力しているところでございます。第三次の円借款の問題は、中国側から非公式にいろいろな候補案件の提起がありまして、現在意見の交換をしておりますけれども、いずれにしても現時点におきまして、第三次円借款を一年繰り上げるというような決定を行ったという事実はございません。
  147. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは非常に重要な話でございまして、新聞報道によれば、いろいろプロジェクトなんかもそう簡単に審査もできない、だから大分第二次がおくれているんだ、しかし今度ココムで大分怒らせたから、前倒しをして向こうの機嫌をとるんだと言わぬばかりの報道でございますけれども、今のお話だと、宇野さんが中国に行くのについて、その一千億の円借の前倒しはしないのですね。それははっきりお聞きしたいと思います。
  148. 内海孚

    内海(孚)政府委員 恐らく二つの流れを若干御一緒に質問されていると思いますが、一つは第三次円借款の前倒しの件、これは先ほど申し上げたとおりでございます。それからもう一つは、第二次円借款とは別に約一千億円の円借款、これは八六年十一月、中曽根総理訪中の際に中国における輸出基地計画に対する資金協力が要請されまして、八七年十月に当時の中曽根総理よりその親書をもちまして、この輸出基地計画等に対し資金還流計画のもとで総額一千億円、約七億ドルを目途に、円借款約五億ドル及び輸銀資金約二億ドルによって新たな資金協力を行う用意があるということを述べたわけでございます。これにつきましては、現在、政府のミッションが向こうに参りまして、また輸銀基金も訪中いたしまして具体的な計画を詰めております。これは第三次円借款とは別の問題でございます。
  149. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、中曽根さんが約束したことを今実行しようと言い出しているわけですか。
  150. 内海孚

    内海(孚)政府委員 そのとおりでございます。
  151. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうもこの新聞報道によると、ココムで非常に向こうの御機嫌を損ねた、そこでひとつこの一千億のあれを早く実行しようじゃないかというぐあいに受け取られるのですけれども、ココムと今度の関係と全く無関係ですか、ある程度関係ございますか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全く関係がないと考えております。
  153. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 じゃ、全く関係はないわけですね。それじゃ宇野外務大臣が行って、向こうをなだめるためにすることとは意味が違うわけですな。それは、そう理解してよろしいわけですね。私は、この問題について非常におかしいなと思ったんですよ。というのは、この前、ココムの規制を外為法改正でやったときに、中国問題どうなんだと内部で質問したことがあるんですが、それについて、何となく中国の方は少しは規制を緩和するというような言い方でもって法案が通ったのですけれども、今度は第一発目のいわば告発がまさに中国がターゲットにされた。あれは一種の敵性国家ということで、危険度があるということでそういったココム規制があるのですけれども、ところが中国に対する経済援助は我が国の援助の中で一番大きいんですね。本当に敵性国家なら何もそんなたくさん上げることはないので、上げる以上は、これは友好国と考えてそれを緩和するのが当然なので、どうもその辺が趣旨が一貫しないのですよ。  私は、どちらかというともともとタカ派の方ですから、台湾の方へしばらく、何といいますか蒋介石の恩を忘れるなということできているわけですけれども、ただ、これだけ中国が発展してきて、相当西側陣営にも接近しているという状況を踏まえて、私も現在、中国との関係をよくしていかなければいかぬなという気持ちでいるわけです。その結果、これだけODAなんかでもトップに躍り出ているわけですね。それが一方においてココム違反ですぐ告発する。これも、聞いてみるとアメリカの国防省から情報を得て、それによってやったというのですけれども、実は外務委員会でも私は言ったのですけれども、前回の東芝事件もワインバーガーの投げた一つのわなではないかという説もあるのです。これは霍見さんあたりが言っています。  ここに対談がございますけれども、日本の分担金をふやすとか、国防省に対する風当たりを弱くするとか、あるいはそういう部門においてココム規制を強くすると同時に、いろいろな機械の先端技術についてのアメリカの覇権を確保しようというような意図で、一石四鳥の手であった、こう言っているのですね。私は、外務委員会でもこれは言いましたけれども、一学者の考えかもしれませんけれども、霍見さんが昭和五十九年ごろに来たとき、だれも政治家に会わないときに、あなたは学者らしいからと言って来たのですよ。たまたま私は、彼の弟とペンシルベニア大学で同じ先生のもとで勉強したということもありまして、比較的意見交流をしている。彼は共産主義者でも何でもない、非常にアメリカの事情を知った男です。それがそう言っているわけです。今度は、やはり同じ国防省が投げたえさというか、あれがまず中国だったわけですね。大臣は、外務大臣もされていますからその辺のことはおわかりと思います。  アメリカは中国とは、米中共同声明というような程度のつき合い、日本の場合には一歩進んで踏み込んでいる関係なんですね。それが片方でココムでぱんとほっぺたをたたくと、幾ら片方で援助しても意味がないじゃないか。諸外国の中国援助を見ますと、そんな多くはないのです。日本は明らかに友好国として、えらい金をつぎ込んでいるのですよ。それで、一方においてココムということで、まさに私がそのとき懸念したのは、これはそう簡単な問題ではない、光華寮以上の問題だと私は思ってそう発言したら、宇野さんは、いや、そんなことはない、今から仲よくしましょうやという手紙が来た。全文取り寄せてみたら、外交辞令ですから、最後はこれから日本と中国は仲よくしましょうと言っていますけれども、これに対して、東芝事件で非常に経済貿易関係に消極的影響をもたらしておる。それがいまだ完全に解消していない段階で本件が起こったことは理解しがたく、これに対し遺憾の意を示さざるを得ない。日本政府が慎重に本件を処理し、日中貿易はたびたび障害を設けることのないよう、また、両国間の経済貿易関係の順調な発展を損なわないことを希望するとまで言っているのですよ。これは尾を引きますよ。  私は、そういった外交上のしりぬぐいのためにまた円借が使われているのじゃあるまいか。さっきは、中曽根さんが昔約束したと言っていますけれども、それを今殊さら持ち出して、十分従来の円借が消化されていないときにまたそれを持ち出すということは、明らかに外交的な意図が含まれていると僕は思います。これは外務省の方、どうですか。
  154. 久保田穰

    ○久保田説明員 お答え申し上げます。  中国に対する援助につきましては、先生御指摘のとおり、我が国との友好関係の維持発展が我が国の外交にとりまして非常に重要な柱の一つであるという観点と、それから中国の経済発展、近代化の努力をできる限り支援することが世界平和にとりましても有意義なことであるという立場から最大限の援助努力をやりておりまして、委員指摘のように、二国間の円借款その他合計した我が国のODA協力の対象国としては第一位の地位に上っております。そのように経済協力努力をしておりますと同時に、御指摘のココムの問題につきましては、対中国ココム規制につきましても、その緩和につきましてできる限りの努力をしておる次第でございます。  このたびの対中経済協力の交渉ほ関しましては、先ほど大蔵大臣が申し述べましたとおり、経済援助との関係につきましては関係がないということでございます。
  155. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 本当にないのかどうか、私はいささか疑問ですけれども、それでは、「日本政府が慎重に本件を処理し」とあるのは、どう慎重に処理するつもりですか。
  156. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、中国側からは、本件を遺憾とするという見解、態度の表明がございました。政府といたしましては、中国側のこのような遺憾とするという見解はもございましたけれども、十分中国側の見解に留意しておりまして、法令の違反には厳正は対処しなければいけないと考えておりますが、本件が日中経済関係に影響をもたらしてはならないという日本側及び中国側も共通の認識を持っているわけでございますから、このような認識を踏まえまして対応していきたいと考えている次第でございます。  具体的にこの事件にどのような対応を行うかという点につきましては、本件、現在捜査中の段階でございますので、現段階でのコメントは差し控えさせていただきたいと考えている次第でございます。
  157. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 既に告発したのですね。こぶしを振り上げたのですよ。結局中国に言われて、あっ、しまった、どうしましょうかというような状況じゃないのですか。私は外務委員会でも言ったのですけれども、随分アメリカから日本バッシングがある。ともかく日本はもっと主張すべきことは主張すべきであるし、中国とのきずなを深めることが国際的に発言を増す意味もある。これはまさにワインバーガーが投げたかもしれないけれども、それにうまうまと乗って、米国市場における進出をみずから手を縛り、しかも日中間は悪化させる、しかもお金でもって解決する。今関係ないとおっしゃったけれども、実態的に新聞にそういったことをはっきりと書いてあるのですよ。じゃあ、新聞が間違って報道をしたのでしょうかね、この辺の話は。要するに、ココム問題でいろいろ問題が起こった、我が方は、日中の経済協力がかたいことを示すために、あるいは中曽根さんが約束したかもしれないけれども、まだ未消化であるのにかかわらず、その分をもう一遍宇野さんの手土産にするとまで書いてあるのですよ。新聞報道が間違いですか。
  158. 久保田穰

    ○久保田説明員 お答え申し上げます。  委員指摘の日経新聞の記事でございますが、現在、円借款の第二次四千七百億円、七年間の残額につきまして、これをどう扱うかということを鋭意交渉しておりまして、他方、一千億円の件につきましては、中曽根前総理の二百億ドルの資金還流構想の一環としまして、輸出基地に対するツーステップローンという形で供与するということを検討しております。この二本、二つの問題につきまして現在検討しておりまして、これはつきましては先ほども申し上げましたように、ココムの問題と関連させて検討しておるということはございません。
  159. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは水かけ論ですけれども、宇野さんがわざわざ行くときにそれをまた手土産は持っていく。今まで結局十分消化し切れていないのに、それをまた要するに持っていって、向こうをなだめるというような格好としか受け取れないのですね、実際のところ。私が本当に心配しているのは、一方において一生懸命財政再建と言いながら、片っ方においてどんどんと大口でもってお金が、これは借款ではありましょうけれども出ていってしまう、それが一番心配なんですよ。それでは、私どもがこれから秋に税制国会やろうというのに、本当のところ何だということです。  では、私は第二番目にODAの関係でお聞きしたいと思いますが、これもまた外務省の関係ですけれども、ODAが、これは円建てでやるとそれほど伸びてないのだけれどもドル建てだとべらぼうに伸びているわけです。当然のことですね、要するに円の価値が上がってしまっているので。この二、三年間におけるODAのドル建ての伸び率をひとつ外務省の方、御説明ください。
  160. 久保田穰

    ○久保田説明員 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、各国のODAの伸び率を比較するためにOECDの開発援助委員会、DACと申しますが、そこにおきましてはドル建てで各国の援助の努力というものを比較しております。最近のこのドル安為替変動のために、ドレ表示での実績比較においては、米国を除いて各国の実績が誇張される傾向はありまして、各国の努力が正確に反映されていないという認識があるのも事実でございます。  そこで、我が国の場合、八六年のODA実績は、ドル建てでは対前年比四八・四%という伸び率になっておりますが、円建てでこれを見ますと四・八%という伸び率でございます。
  161. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣、この前予算委員会の総括質問で、公明党の大久保書記長が円高還元の話から、防衛費が、本来安いものを調達すればそう伸びるはずがない、つまり円が高くなっていますから、要するに物資を海外から、ドルが安くなっているから。ですから、円高差益が還元されてないじゃないかという議論を随分されたことがございます。そのときに防衛庁は、それなりに、給与が違うとか、あるいはもう既に契約をしているものがあるから、そう簡単に円高差益が還元できないという話をされました。これは大久保書記長の指摘にも理屈があれば、防衛庁側の回答もある程度うなずける面もあったわけです。ところが、ODAの場合のいわば援助というものは、本来援助を受けた国というものはドルでもって買っていけばいいのですから、実際のところ、要するに実態的に五割も伸ばすことはなかったのですね。病院を建てるのに今までいわば百万円でできた。もっと安く外貨建てだったらできるはずなんですね。ODAを、もともと伸ばし方を円建てでどんどん伸ばしていけば、円が価値がどんどん上がれば、実態的にはべらぼうな金がだぶつくくらいの話になるのじゃないですか。  でありますから、今や日本は、ODAが世界一だという話に急になってしまったわけですね。これはいささか、ODAというのは税金部分が随分大きいのです。私はこの前外務委員会で、大体税金部分はどのくらいかという話で、まあ一兆円くらいになっているのですよ。そうすると、私はそのときに意地の悪い質問をしまして、あらかじめ全然出さなかった質問なものだから、これは答えられないのは当然なんですけれども、ちょっと意地の悪い質問をして、相続税の税収は幾らぐらいだ、こう聞いたわけです。一兆五千億、今度二兆円ぐらいになる。相続税に近いぐらいの援助をしているのですよ、それを皆さん認識してくださいという話をしたのです。  そこで、もともとこのODA予算は円建てで、例えばほかのものをぐんぐん抑えておって、円建てでODAはいいことだ、いいことだとやっているうちに、結果的には外貨建てだったら五割も、要するにそんな大きな伸びを示しているのですよ。今後のODAを考えるときに、それはいわば援助というものは悪いことではないには違いありませんけれども、これはおかしいじゃないか。もともと受け取る側はドルで要するに物をつくるのだから、これはほかの国もそうなっているということを言われますけれども、実はフランスとかイギリスなんというのは、昔の宗主国であって、要するに自分の領土みたいなところに出しているのが随分大きいのですよ、実際上。だから彼らの通貨も、どっちかというと、自分たちの通貨建てと似たようなものですから、日本の場合には円でやったら本当にもうだぶついてしまうのですね、実際のところ。  これは私は、ODAを考えるときに、その伸び率を日本の円の伸び率でどんどんやっていたのでは、本当にむだ遣いがふえてしまうのじゃないかなと思います。だから、これから、来年からの予算査定におきましては、もっとこの辺はきちっと実体的なプログラムはこのくらいだ、それでは要するにどのくらいで完成するということで、むしろドル建てで伸び率を考えてもいいのじゃないかなと思いますが、その点、大臣いかがでございますか。
  162. 内海孚

    内海(孚)政府委員 今御指摘のようなお考えが一方においてもあろうかと思いますが、逆に、我が国が世界経済でこれだけになったときに、我が国から出すODAについては、やはり我々の予算の中からどのくらいは出していかなければいけないだろう、これは我が国のいわば国際的な責務という面で考えなければならないという面があることも、同時に御指摘申し上げざるを得ないのではないかと思っております。  また、我々フローティングの、変動為替相場制度のもとにございます。したがってある場合には、現在は今おっしゃるようにドルが弱くなってきておりますが、これまた過去十年、二十年と見てみますれば、必ず波を打っていることもあるわけでございますから、今の局面で、こういうことでドル建てというふうなことではなくて、やはり私は円で考えていくのが大筋ではないかなという考え方をとっております。
  163. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、何も国金局長が答えるとは実は思ってなかった。外務省が答えると思っておったのですがね。  これはしかし、変動するといったって、要するに値段が半分になっているのです。通常の変動と一緒にされては困るのですよ。しかも、実際のところ、同じ病院ならば倍建つのですよ。そうじゃないですか。だから、そう一遍にふえちゃうと、非常に使い方がラフになってしまうのです。公共事業でも同じですよ。一遍に倍にしたら、どうしても査定が、査定というか建設の一つ一つの案件を審査するといっても、なかなかそうはいかないのです。  でありますから、それは大臣どうですか、実態を見れば、円の価格が倍になれば、その伸びでもってずっとODAを伸ばさなければならないというのはいささか行き過ぎじゃないですか。それとともに、大臣、これが果たして日米貿易摩擦にどのくらい役に立っているのですかね。世界に向かって、日本はODAをやっていますよ、それではひとつ日米貿易摩擦勘弁してください、あるいは欧州からの要求を拒絶できるのですか。  私は昔、サラ金に追いかけられながら用のないところへお歳暮を持って回ったものだと、二、三年前に言ったことがあるのですよ、だれもかれもみんなODA、ODAと言ったときに。私は、まず大臣が、ODA予算について、こういう為替変動のときに、しかも円の価格が倍にもなっているときに、ばか正直に通常の伸び率で日本の円、しかもODAは聖域みたいな形でもって伸ばす必要はどこにあるんだろう。結局、その分だけ非常にラフな金の使い方になっているのじゃないか。大久保書記長が指摘したように、円高メリットが全然納税者に還元されていないじゃないか。しかも、大体があれだけ重いというので脱税騒ぎまである相続税でも総額一兆五千億ぐらい、それに近いくらいの援助をしているわけですよ。この点大臣、私は来年からの査定はもう一遍考え直すというお答えを期待していますね。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは中長期的に見ますと、我が国経済力からいえば、やはり我が国は対外援助というのはもっとふやさなければならないのだというふうに私は思っております。それは、一つは軍事的に世界平和に貢献する道がほとんどないものでございますから、それにかわって何か我が国としては、自分で苦労をして貢献をするということでなければならないということから来る部分が多いと思いますが、そういう意味ではもっともっと大きくならなければならないということがございますので、こういう円高の時代に、確かに援助をする立場からいえば金額的には楽になるわけでございましょうけれども、それは全体としてはふやしていく傾向になければならないということ等勘案しながらやっていくべきではないか。  もちろん、安倍委員の言われますように、一つのプロジェクトについてある金額を決めましたら、それは円がそれだけ上がりましたらドル表示では大変に楽になるというか、実は計算し直さなければならないようなことになってまいることは多々あることだと思いますから、そういう場合のやり方をルースにしてはならぬと思っております。ルースにしてはいかぬと思っておりますけれども、全体としては、我が国のODAというものはもう少し大きくならなければならないということが前提にあるというふうに思っております。
  165. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ中長期的にとおっしゃるから、本当に中長期的に徐々に伸ばしていけばいいんですよ。一度に円の価値が倍になるようなときに、ばか正直に円建てでそのまま伸ばすということはまず使い方がルーズになるとともに、納税者にとっては片っ方で増税をしましょうと言っているときに、外国に向かっていい顔をするためにそんなに急に伸ばすというのはおかしいですよ。そうじゃないですか。  それからもう一つお聞きしますけれども、このODAが日米貿易摩擦あるいは日欧貿易摩擦、向こうは、おまえODAをあれだけ出しているからこっちは勘弁してやるよと言ってくれていますか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、今政府は増税を御提案していることはございませんけれども、しかし、日本の国家としての国際的なコストの一つは対外援助であると私は考えておりますから、それは納税者の御負担を願わなければならない一つの大事なアイテムであると思います。それがルースであってはいかぬということはおっしゃるとおりですが、まずそれが第一と思います。  第二に、日本がこれだけODAをしたから経済摩擦を勘弁してやろうとかなんとかいうことは、それはすぐには結びつきません。すぐには結びつきませんが、軍事的に世界平和に貢献できないということが事実でございますから、経済大国としてはそのかわりに何かをやっていかなければ、国際的に我が国としての責任は務まらないのではないか。人が言う、言わないというよりは、そういうことではないかというふうに私は考えておるものでございます。
  167. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、しつこいようですけれども、従来どおりの円ベースでどんどん伸ばしていくんですな。ちょっとこの点、言うように、中長期的に考えていくべき話なんですよ。要するに、一遍に倍に近い額にする必要はないんですよ。それは結局ルーズな援助に結びつくわけですよ。その点は大臣、よほど考えていただかないと、まさにこの問題は、今から国民に対して強い負担を要望する、重い負担を要望するというのであれば、それだけの姿勢がまず要るだろうということが大きな点ですね。これは大臣、よくよく今後考えていただきたいが、いかがでございますか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 と申しますのが私の基本的な考えでございますが、さりとて為替メリットをそのまま全部出すということは、それはいかがなものであろうか。それにはおのずから限度があると思います。
  169. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣のそのお言葉を聞きまして、これから本当に相続税が一兆五千億、二兆円になると大騒ぎしているときに、それは対外援助も大事でしょう。大事だけれども、それはそれなりの一定の伸びでいってもいいはずなんですよ。そうしないと、これは一つの盲点というか、ODAというとみんな大賛成してしまうけれども、私はそうじゃない。しかも一兆円をオーバーするような場合には、私は最後に、国民の同意を得てという面で、あるわけですね。その面でほかの国において、イギリスとかそれぞれの国が、アメリカあたりは特別な法律でやっていますけれども、ある程度ODAはまとめて、これは予算委員会でも出ましたけれども、国会の審査というか議決というか、外務委員会でやっていますというけれども、これからの対外援助というのはもう少し国民に明らかにして、できればそれそのものとして国会の議決を得るべきじゃないかと私は思います。いかがでございますか。
  170. 久保田穰

    ○久保田説明員 お答え申し上げます。  現在、ODA関連の予算につきましては、他の予算と同様に国会で審議を経て、承認をいただいております。政府開発援助の毎年度の供与方針、対象国それから予定案件、これらにつきましてあらかじめ国会の承認を求めるべきではないかということでございますれば、この点につきましては、各国からの個別の案件をトータルしますと、現在御承認いただいておりますODA予算の総枠をはるかに超えておりますし、これに対する我が方政府としましては、個々の案件について外交チャネルを通じましていろいろ交渉の末的確な案件にまとめていく、詰めていくということを行っております。したがいまして、このような現状を踏まえますと、事前は国会の承認を求めて、一括まとめて委員指摘のような形で承認をいただくということになりますと、相手国との交渉上非常な困難を来すということがございます。  それからもう一つ、技術的な問題でございますが、現在の予算制度上単年度予算ということを軸にしまして、その中におきまして案件をまとめていくということは非常にタイミングが重要でございますが、こういう時期の問題というような関連から見ましても困難点がございます。したがいましてこれらの観点から、他の先進国も同様でございますけれども、国会が援助予算の大枠を承認していただいて、その中で政府が外交交渉権の範囲内で、具体的な援助案件について交渉して決定していくということが最も適していると考える次第でございます。
  171. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は何も、向こうの言うのを全部、プロジェクトごとに全部のめと言っているのじゃないのです。私は、この間急に質問して悪かったけれども、いわば援助中における税金の占める割合はどうだという質問に対してさえも、一般会計から幾らですという程度の返答しか得られてないわけです。ですから、これは外交交渉でございますのででなくて、国民の税金を使う以上、大体どのくらいだということをきちっとそれなりにまとめて、予算だとおっしゃるかもしれないけれども、これは私は本当におかしいと思う。外交的とおっしゃるけれども、では監査はどうなるのですか、実際のプロジェクトの話は。これはすべて外交の問題だからといって、今のようにドルでもって五割もふえていって、ではだれがもうけているのかという話になるわけですよ。それはどうなっているのですか。
  172. 久保田穰

    ○久保田説明員 お答え申し上げます。  監査の問題につきまして、外務省初め援助にかかわる関係省庁それから実施機関である国際協力事業団、海外経済協力基金のこれら機関は、すべて従来から会計検査院によって会計検査を受けております。  また、我が国は右以外につきましても、効果的なかつ効率的な援助を実施するという立場から、経済協力の事前の調査、それから交換公文で相手国と約束するわけですが、その際に相手国に適正に使用せしめるという義務をつけております。また、公正な入札の確保、これは一般公開入札による原則でございますが、それから契約の審査、承認、それから事後におきまして各種プロジェクトの評価というようなものを積極的に行っておりまして、このような手段を通じて目が行き届くということに努力している次第でございます。
  173. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そんなのは、これは相手国に努力せいとかいろいろ言うても、随分発展途上国もあるし、例えばアフリカ援助なんというのは、要するに積んだままで向こうのゲリラか何かをやっつけるために使われるとかいろいろあるわけですよ。私は、このODAを聖域とすべきではない、本当にそう思います。大臣、どうですか、ODAは聖域ですか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 聖域ということがどういう意味でありますか、国の予算でありますから、国会に対して聖域ということはもちろん基本的にはございません。ただ、よく言われますように相手国、受け入れる国とのいろいろな関連ということは、これは国会において御考慮をいただかなければならないことであろうと思います。
  175. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題ばかりやっていますとほかのものが進みませんから。だけれども、さっき大臣言われたように、これからのODAについてさっきお話ししたように、こういう円ドル価格を考えながら査定するということについては御同意ですね。――わかりました。  じゃその次に、これは今外交問題がどう波及するかということに関連しまして、これから農産物の自由化とかいろいろ市場開放問題が起こってきますね。我々は今まで、農業に対する補助金が多過ぎる、あるいは何が補助金が多過ぎるといろいろ言っていました。ところが自由化をのむということになると、また新しくそれなりの金を国内対策で使うという話になりかねない。これは余り急にやればそうせざるを得ないと思いますね。  でありますから、かつて、木材でしたかな、大分アメリカから圧力があって、木材製品の関税を下げるという話がございました。竹下大蔵大臣のときですが、そのときに国内対策用として大体三、四千億、なだめ用に出すという話が出たのですね。私はそのときに、アメリカに譲歩して三、四千億の金をなだめ用として出すならば、何のためなんだ、何のため我々は行政改革をし、補助金を減らしているのだということを言ったことがあるのですよ。その三、四千億がどういったぐあいに使われたかということは、あるいはこれは時間がありますれば説明していただきたいところですけれども、今度の農産物の自由化あるいはこれからの市場開放問題、これについて国内対策で相当資金を用意するおつもりですか、それともそれはなしで自由化を行うのですか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そもそも、事態そのものがまだ決着をしていないわけでございますから、どのような予算要求になってまいりますのか全くわかっておりません。また、そういうものがあるのかないのかということも、ただいまのところ不明でございます。
  177. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 不明とおっしゃいますけれども、これはある程度の自由化に応ずるという方向を打ち出しているかのごとく聞いています。じゃ、万が一そういう方向を打ち出したときに、国内的な措置をなさるのですか、なさらないのですか。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、方向を打ち出すか打ち出さないかという決定がありまして、その決定に従いまして、具体的にどのような国内措置が必要かということを恐らく主務大臣からお話があるだろう、こういう順序になってまいると思います。
  179. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 主務大臣からそういう話があったときには、やはりある程度は考えざるを得ないというお立場でございますか。それとも、それは不必要であるとお考えですか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは御要求によると思います。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、外交交渉を通じていろいろな問題が起こってくる。さっきのココムの問題にしても、あれは関係ないとおっしゃるけれども、私どもは全く関係がないとは言い切れない。ODA問題も、外国に対してあれだけのものをどんどん出している。今から、自由化を要求されますとそれなりの支出がまた要る。恐らく大蔵大臣としても、それは要りませんともなかなか言えないと思うのです。今そんなことを言い出すと、農民がわっと怒りますからね。私だって、今度の自由化はいささか性急過ぎるな、私はもともと都会の票をもらって、農協は全然僕らを応援してくれていないのだけれども、それでもやはり急激な変化というものは、ある程度考えてやらなければいかぬなという気持ちは持っているのですよ、公平に考えて。それを、門戸を向こうに言われて開放すると、必ずまた金が要る。だから、非常に大口でぼかんぼかん金が出ていくわけですよ。  私は、後輩たちが一生懸命大型間接税の導入を図っている、私ども先輩として、それは彼らの希望もかなえてやりたいという気持ちもあります。しかし反面、そういうところでぼんぼんむだ遣いと言っては悪いけれども、むだ遣いとは言いませんよ、しかし外交的なしりぬぐいが要するに財政にしわ寄せされてきているのじゃないかな。かつて、この議場で思いやり予算のことを、あれは何千億と随分問題になりました。私も、防衛は大事だと思うけれども、果たしてあれだけのものが必要なのかなということを感じながら聞いていたわけです。そういうものがぼんぼん、要するに入るをはかって出るを制すじゃなくてはいけないところを、出るを制するところが本当に半ばしり抜けと言っては悪いけれども外に――私は為替差損の問題は、ちょっとゆっくりと国金局長議論をした後持ち出そうとは思っているのです。だけれども、それはやはり、日本はこういうアメリカの債券を買ったりいろいろ貢献もしておる。そういうところで、アメリカあたりからどんどん言われたやつをそのままぐんぐんのんでいけば、それにまた財政支出がかかってくる。これじゃ国民に対して、要するに間接税をやってくれというぐあいにならぬじゃないですか。  私はちょっとその辺が、国民にいろいろな税負担を求める以上はそれなりの、行革もせなければいかぬ、行革以外にこういう大きな――私は、あと地方財政に触れますけれども、公務員の人数を減らすという程度じゃ本当の意味の大きな支出削減はできてないんですよ。大きな補助金的なものをどう整理していくかということが本当の意味の出るを制すなんで、その出るを制す方の補助金が、一方において切ろうとしておきながら片っ方においてどんどん出ていってしまったら、それを見ると、我々は何のため税金を納めるのだ。ODAもいいでしょう。ODAもいいけれども相続税に近いくらいのあれを一体出す必要が本当にあるのだろうか。それはお金持ちとおっしゃいますよ。しかし、国民は本当に、これからの新しい負担に対して非常に抵抗しているのですよ。  私は今のODAそれからココム問題、農産物の自由化、建設に対する参入問題もありますけれども、そればかりやっていると一時間くらいになってしまいますから、この辺ひとつ、これから外交する上において大蔵大臣は苦しいと思いますよ。今当面の農林大臣から、おれはこれだけ自由化するから補助金をこのくらい見てくれと言われてきたときに、さあ、こう考えなければいかぬわけですな。それならもっともっと、この前の木材と同じように譲歩する、それで国内で金をばらまいて声を抑える、そういう繰り返しだったら財政再建はできませんよ。やはりある程度頑張るべきときは頑張って、それでもって要するに補助金なしでやっていけるような門戸開放。私は消費者の立場から見ると、そういう農産物の生産力をある程度もっともっと上げなくちゃいけないし、減反なんかに一々金を払うことをやめて、どんどんつくらせればいいと思っていますけれども、農業問題はもう少し時間をかけて論議しなくちゃいけないと思います。  この点、行革というのは単なる人間の、国家公務員の人数減らしじゃないのですよ、もっともっと大きな支出削減なんですよ。それがどうも十分ではないんじゃないか。一方において、特に外交問題でもってどんどん出ていく。私は、例の六十三年度予算の本会議演説で最後に一項目加えた。これは要するに、外交の圧力によってそのしりが財政に来るのではないか。つまり、昔の補助金を切りながら新しい補助金を出さざるを得ない形になるのではないか、外交の問題のツケが財政に来るんじゃないか、それが怖いと、その兆候が今やあらわれつつあるということを私は本会議演説お話ししたと思います。聞いていらっしゃったと思います、本会議では眠くて寝ていらっしゃったかもしれませんけれども。  大臣、本当にこういうところを、大口に出る方をもうちょっときちっと抑えていただかないと、国民としては新しい税金の負担ということまで応ずるわけにいかないですね。この点、いかがでございますか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのお話でございますけれども、農産物等の問題で農林大臣アメリカあるいはガットといろいろお話になられて、そしてこういうことが必要であるとお考えになり、それがかなり激変を伴うものであれば、多少の国内的な措置が入り用だという御判断になることはあり得ることだと私は思っております。しかし、これは行き当たりばったりに起こった問題ではございませんで、我が国の従来の自由化の経緯の中から残ってきた問題でございますから、何も行き当たりばったりに処理をしようとするわけではございませんで、筋道は筋道としてわかる事柄であると思います。  どういうことになりますか、財政はおっしゃいますように厳しゅうございますから、そうたっぷりなことはなかなかできないというのが事実でございますけれども、しかし、やはり我が国が世界の、それもガットによって代表される自由経済のいわば一人の担い手として歩いていかなければならないとすれば、これもそういうためのある程度のコストであると考えていくことは入り用であろう。どうなるかわかりませんけれども基本考え方はそういうことで、もとより決してたっぷりぜいたくができるような財政状態ではないことは、おっしゃいますとおりでございます。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 事務当局からの説明でいいですけれども、昔の詣ですけれども、木材製品の関税引き下げの際に、ある業界にそれぞれ手当てをする、何千億渡すという話もございましたけれども、それはどうなっていますか、現実としてどういうぐあいに使われましたか。
  184. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 ある意味で突然の御質問でございますので、あるいは十分なお答えができないかもしれませんけれども、当時森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画というのをつくりまして、融資で千億、国費五百億ということで対策を立てたわけでございます。それにつきましては、六十年度以降毎年度国費それから融資事業をずっとやっておりまして、全体の進捗率は六十三年度予算を含めて七八・三%、そういう状況になっております。
  185. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 突然の質問と思われたかもしれませんけれども、私はそういったことを約束されたことがかつてあったということで頭だけ出しておったわけですから、それほど突然の質問とも思いません。  そこで、出るを制すという意味で、今後における行革のスケジュールというのはあるでしょうか。その辺はどうなっているのでしょうか。
  186. 太田省三

    太田説明員 行政改革につきましては、従来から臨調、行革審の答申等を踏まえまして、政府におきましてはいわゆる行革大綱というのを決めておりまして、六十三年度におきましても昨年末の予算編成に際しまして、一般行政組織とか現業部門の簡素合理化の各般にわたる改革課題に関しましていわゆる六三行革大綱を取りまとめまして、現在それに従って具体的な改革を実施中でございます。  それからさらに、昨年、行革審に引き続きまして新行革審が設置されまして、現在地価等の土地対策と経済構造調整を推進するためという観点から、公的規制のあり方について調査、審議をいただいておりまして、土地の方につきましては五月末にいわゆる検討委員会報告を出していただいて、六月末に答申をするという予定でございます。公的規制の方は、年内に答申をいただくという予定になっております。そのほかの従来の行革審等の答申のいわゆるフォローアップを審議会でお願いいたしております。  そういったことで、新行革審の審議の動向も踏まえながら、今後とも行政改革については全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。
  187. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 国の方は要するに省庁を減らせと言っているけれども、外郭団体はどうなんですか、最近は減っているのですか、ふえているのですか。その数じゃなくて、そこで働いている人間の数です。これはどうなんでしょう。
  188. 太田省三

    太田説明員 お尋ねのいわゆる特殊法人等の職員の要員管理の問題でございますが、これは実は各主務大臣の所管でございまして、総務庁が所管しているわけではないのでございますが、現在国家公務員につきましては六十二年度を初年度とする第七次の定員削減計画を実施中でございますが、それを六十一年七月に閣議決定いたしました。その際にも、特殊法人につきましても、その経営実態に応じて国家公務員の削減計画に準じて削減してほしいという措置を閣議決定の中に決めておりまして、特殊法人等におきましても国家公務員に準じて削減していただいているというふうに承知いたしております。
  189. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、数字としてはあるのですか。今のお話では削減努力をしていると言うけれども、何年か前と比べてある年を一〇〇としたときに、どのくらいになっているという数字はあるのですか。
  190. 太田省三

    太田説明員 国家公務員の第一次の定員削減計画は四十三年度から始まりまして、それとの比較で特殊法人の例えば職員について御参考に申し上げますと、四十二年度末は特殊法人の職員の数は八十八万三千三百九十五人だったわけでございますが、六十三年一月一日現在で申し上げますと、この二十一年間に特殊法人の職員は二十三万四千百二十四人減の六十四万九千二百七十一人になっております。
  191. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それなりの努力はしてきたということですね。ここで問題は、行革は何で地方に及ぼさないのかな。私は、たしかある雑誌で書いたのですけれども、国家公務員が過去の二十年くらいで、一〇〇にして九十幾ら、ところが地方公務員は一〇〇にすると百四十幾ら、地方公務員は実際のところふえているのですね。ここで、地方の時代ということは必要かもしれないけれども、私はこの間指摘いたしましたように、地方も要するに東京メガロポリス、そこに金も集中してしまうわ、本当にやりたいほうだいと言っては悪いけれども、私は鈴木知事も知っていますから、鈴木知事は尊敬している人ですけれども、機構的にお金が集まってしまうことになっているのですね。  私はかつて、法人関係の税金が全国で三兆円あって、二五%の七千五百億が東京に集中している、東京都内全体のあれですが、そういう話をしたことがあるのですよ。本当に地方には、随分貧乏なところもありますよ。ところが、地方自治体というものが非常に格差が出てきている。しかも、例えば外国あたりと比べて、なかなか比較しづらいかもしれないけれども、外国の地方自治体というものはそれなりに独立採算でやっているのですよ。日本の場合には、例えば東京あたりでもいろんな工事をやると、すぐ国の補助がつくでしょう。一方において金はどんどん入ってくる。だから、例えば都市計画税とかああいったものも取る必要がない、法人住民税、個人住民税、どんどん伸びてくるから。しかも、その使途を見ますと、投資的経費がぐんぐん割合が落ちてきているのです。私は、いわばメガロポリスへの集中度というか、財源の偏在性をはっきり自治省の方に聞いてみたいと思うのです。どうですか。
  192. 二橋正弘

    ○二橋説明員 税源の各県別の状況の中で東京がどういうウエートを占めておるかということでございます。道府県税と市町村税ございますが、特に地域的な偏在が強いのは法人関係でございますので、このウエートが高い道府県税について申しますと、道府県税収入全体に占めます東京都の割合でございますが、昭和五十年度には一九・二%でございましたが、その後次第に割合が低下をいたしまして、五十五年度には一七・一%になっております。しかしながら、最近におきます産業構造の変化等の影響もございまして、東京都の税収の割合が再び上昇する傾向にございまして、六十一年度においては東京都の占める割合は一八・九%というふうになっております。
  193. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私の言っているのは、東京都所在の二十三区も含め、市町村も含めた東京都ですよ。東京都そのもののほかの県との比較じゃなくて、もっとそこに所在している二十三区及びいわば武蔵野都市とかいろいろなそういったものを全部含めた東京都ですよ。
  194. 二橋正弘

    ○二橋説明員 地方税全体について、東京都二十三区それから東京都下の市町村すべて含めました数字で申し上げますと、全国に占めるシェアは昭和六十一年度で一八・〇%でございます。さかのぼりますと、五十五年度は一七・二%でございましたから、その間次第に上昇いたしております。しかし、五十年度までさかのぼりますと、この割合が一八・七%でございましたので、六十一年度は五十年度よりは若干低いという状況でございます。
  195. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは逆に取らないでいるのですよ、要するに固定資産税なりなんなりを無理にほかのもので賄ってしまっているから。固定資産税あたりもっと上げようと思えば上がるのですよ、無理に上げるとは言ってませんけれどもね。でありますから、私は東京都――今、委員長は東京都選出だから一生懸命首を横に振っていますけれども、これは要するに国だけの行革じゃないので、地方を含めた行革をせなければいかぬ。でありますから、何で税調が直間比率ということばかり言うのか、地方税の領域に何で踏み込まないのか、ここを私は聞きたいのです。地方税の領域に踏み込むことによって地方の行革ができるのです。今、越智委員長は一生懸命首を横に振っていたけれども、もう少し外国のニューヨークとかと東京をきちっといろいろな観点から比較してもらいたい。例えば道路をつくる、教員の給与、そういったものを彼らがどのくらい国から補助を得ているのか。  私はこの前の委員会のときに、ニューヨークにおいては固定資産税を絶えず見直しながら、法人所有と個人所有とを区別しながらいくという話もしましたけれども、これは例えばイギリスなどは、地方財政は全部レートでやっているのですね。もちろん、それぞれの国がそれぞれの形態を持っていますけれどもアメリカにおける州、ステートは一つの国ですから、そのまま比較できないにしても、私は、経営分析の立場からそれぞれの地方自治体を海外と比較してほしいと思いますが、この点、自治省どうですか。
  196. 二橋正弘

    ○二橋説明員 ただいまお話もございましたように、各国の地方行財政制度、それぞれ各国の固有の事情あるいは過去の経過等によりましてまちまちでございます。国と地方との間の権限関係、税源配分、まちまちでございますので、例にお挙げになりましたような例えば教員の問題はどうかとか公共事業はどうかということについてそのまま比較するというのは、現実にはなかなか難しいというふうに考えます。
  197. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そんな君、そのまま比較できないことはわかり切ったことですよ。そんなことを聞いちゃいないのだよ。制度が違うからそのまま比較できないことはわかり切っていますよ。自治省はそれなりのほかの国とよく比べてみて、日本の地方自治体にむだがないのかどうか、もうちょっと調べてもらいたいと思います。そのまま比較できないのは当たり前です。私は、何もそんなことを今さら聞いているわけではないのです。どうですか。
  198. 二橋正弘

    ○二橋説明員 私どもも日ごろから、外国の地方行財政制度がどういうふうになっておるかということにつきましては非常に強い関心を持っておりまして、いろいろな資料も集めて勉強はいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように個別具体に、例えば教育の分野であるいは公共事業の分野で比較をした場合にどうかというふうにおっしゃいますと、それぞれの制度の仕組みが違いますので、両方を並べて比較をして、なるほどこういうことかなということをうまく説明をするような比較をするのはなかなか難しいという意味で申し上げたわけでございます。
  199. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いささか声を荒げましたけれども、例えば東京とニューヨーク、私もある程度資料はもらっていますけれども、一体どういう収入で支出で、どういうぐあいなのだと制度の差も考えながら比較してもらいたいと思います。私が大臣にお聞きしたいのは、税調はそういう直間比率ばかりおっしゃって、国税と地方税との間の問題を何で取り上げないのか。行革問題も、中央の行革だけは手を触れたけれども、地方の行革には手を触れようとしない。これは大体、代議士が反対するからということかもしれませんけれども、そんなことじゃなくて、私はそこを何で、結局私はこの前ちらっとお話ししましたけれども、地方税そして国税全部通計しますと、日本の資産に対する課税は比較的薄いのですよね。それは結局、地方税である固定資産税が手をつけられていない。もちろん私は、現在の東京の地価の暴騰にそのまま固定資産税を上げろとは言っていませんよ。しかし、少なくとも法人所有のビルなんかの固定資産税は、もう少し見直していってもいいと私は思っています。  私は、またこの次にしますけれども、たしかこの前、ここで国税、地方税を込みでやって、所得、消費、資産と三つで分けたときに、日本の場合には資産税についてはいわば相続税は国税、あと保有税関係は地方税に任されている。地方税を上げてみても富裕自治体にがっぽがっぽ入るだけであって、要するにますます偏在を高める。地方税は非常にそういう点、法人住民税あるいは個人住民税で賄えているところは固定資産に手を触れようとしない。私は、何も小規模の住宅のところに無理やり高い税を課して追い出せというわけじゃないけれども、保有についての税は安い。私は文春にも書いたし、最近、行革審の土地委員会でも私と同じことを言っていますけれども、譲渡もしくは相続についてがあっと税がかかってくる。もっとならして取れ。しかも法人所有については、もっと取ってもいいと私は言っているのですけれども、何で税調あるいは行革審が地方の問題をもっと正面から取り上げないか、地方税と国税の間のことを論議しないのか。その点大臣、どうお考えですか。すべきと思いますか。
  200. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど国税、地方税を通じました資産課税のお話がございましたが、OECDの統計数値等によりますと、日本はある程度資産課税は相応の水準に来ておるということでございます。ただ、その中で、御指摘のような国税と地方税の間の話はあろうかと思います。しかし、それは統一的に税制としても議論はされておりますし、また毎年の予算編成では国税、地方税、それを踏まえました国、地方の財政問題につきましては、常に全般的にバランスのとれた形になるように検討は行われているところでございます。
  201. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の所得、消費、資産のバランスは、私も最初見たところはとれていたのですよ。中身を分析していきますと違うのですね。要するに、資産税にどういう項目が入っているかということを探し出していきますと、減るのですよ。これは私はレクチャーを受けたので、レクチャーが間違っているのか、その辺の話がどうなのかですけれども、決してバランスはとれていないのです。結局保有税関係が地方税であるがゆえに、それを取らないで済ませているというところがあるのですね。  もう、あとたくさん用意したもので、せっかく呼んだ人にそれぞれ聞かなくちゃ悪いと思うものだからちょっと先を急ぎます。うまく頭の上を通過した人は、それでほっとされるかもしれないけれども。  次は、これから税制国会で非常な論議をしなくちゃいけない。実は各業界、私もきょうはずっと一日、九時から聞いておったのですけれども、たまたま質問があるもので最後の部分が聞けないでこちらに来ちゃったのですけれども、自民党と同じように我が方も各業界のあれを聞いているのですよ。これからいわば細かい議論をし始める、その出発点で、私はこの前もちらっと言ったのですけれども、日本の場合に中小企業で働いている人数が非常に多いのではないか、中小企業の数も多いのではないかと私は思うのですね。  これはちょっと労働省と通産省と両方で調べてもらったのですけれども、私は読み上げてもいいけれどもせっかくですから、日、英、西独のそれぞれ製造、卸、小売について、中小企業で働いている人間がどの辺の割合であるかということをお聞きしたいと思います。
  202. 瓦田栄三

    ○瓦田説明員 お答えいたします。  我が国の場合、先生御指摘のとおり中小企業の比重が非常に高いわけでございます。統計の関係上、正確な比較は難しいのでございますが、例えば小売業で見ますと、五十人以下が中小企業と定義されていますけれども昭和六十一年につきまして我が国の中小企業の比重は八八%でございます。他方イギリスは、年次が違いますが四三%、西独は六八%となっております。製造業、卸売業等につきましても同様に、中小企業のウエートが我が国の場合は非常に高いという特徴がございます。(安倍(基)委員「何%ですか」と呼ぶ)統計上、正確な人数に対応した数字はございませんが、イギリスでは製造業が大体三六%、西ドイツが製造業が三八%、それから西ドイツの場合は卸売業もございますけれども、五三%というふうになっております。
  203. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣、これは私が常々お話ししているのですけれども、日本というのは生産も流通も、まあ卸を言わなかったですけれども、中小が非常に多いのですよ、簡単に言いますと。私は何回も多段階、多段階と言いますけれども、例えば製造業も、今の日本で中小企業で働いているのは約一千万人いるのですね。それから小売業も中小企業が一千万人いるのですね。そこが一番問題なんで、欧州で付加価値税がうまくいっているといっても、かつての取引高税とかいろいろな間接税が昔からあったことで、その辺が中小のウエートがぐっと減っちゃってきているのですよ。だから私は今度の、私や後輩たちが、大型間接税、EC型付加価値税、まあどうせ取引高税とEC型付加価値税ともう一つ並べりゃ、取引高税よりはEC型付加価値税がいいよというような議論になるという話で税調の問題を出してきておると思いますけれども、これがこういった中小企業者にどうインパクトを与えるのかな。さっきもいろいろ聞いてきたのですけれども、最後は転嫁できるかどうかだという話にかかってくるのですね。転嫁できないと企業税になる。企業税になると、そこで働いている連中の給与に影響するわけですよ。  だから私は、この問題をもう一遍――私は気持ちもわかりますよ。だけれども、EC型付加価値税がいいというときに、この人口構成をもうちょっと考えてもらえないのかな。この辺、過去に彼らがそういった間接税になれていた関係で、要するに製造も流通も簡単になってきている。例えば、製造段階でも中小企業の下請を使わないで、売り上げじゃなくて一つの部門にしてしまえば、売上税の部分は消えちゃうわけですよ。ところが日本の場合には、かつてそういうことがなかったからいろいろな、私は浜松ですけれども、自動車の下請なんというのは山ほどある。それがあっちの会社、こっちの会社とそれぞれやっている。その下請がある。そんなのは付加価値税にするのだったら、むしろ一部門にしてしまった方がいいわけですね。そうすると系列化というか、その辺の人間がどこかの系列に結びついて、一つの部門にならないと生きていけなくなる、その方がまた税が節約できますから。そういう大きなインパクトが社会に対してあるのじゃないかな。だから、これは消費者に転嫁できるという前提で全部いっていますけれども一つ聞きますけれども一つの案として消費段階だけで課税するという案がありましたね。それが何で税調の答申の中に入っていないのですか。
  204. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会では八つのタイプを挙げていろいろ検討はされたようでございますが、素案の段階におきましては、一つの段階に絞って御負担と申しますか、納税行為をお願いするということになりますと、やはりそこは問題が大きいから、一つの段階に絞ったお願いというタイプはいかがか、そういうことで多段階のものをまとめ素案として提示しておられる、それが累積排除型と累積型とで二つに絞られておるということでございます。
  205. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 しかし、そこに矛盾があるのですよ。もし消費税であれば消費者が払うのですから、結局、そこで転嫁できないという前提じゃないですか。転嫁できるならば、それでいいはずですよ、最後の段階で。転嫁できないからこそ、その最後の段階のところに課すのはやめたのでしょう。だから、消費税というものは消費者が払うからいいのだとおっしゃるけれども、小売段階で課するということを断念したということは、転嫁できないことの証明じゃないですか。
  206. 水野勝

    ○水野政府委員 一つの段階でございますと、その段階の事業者に納税義務、納税事務をお願いし、また転嫁のためのいろいろなお仕事もお願いをするわけでございます。したがいまして、やはり負担が一定であるとすれば、多段階で分割しながら、分散しながら納税をいただき、それをまた転嫁していただくということと、単段階で、一つの段階だけでそれをお願いするということでは、やはりそこは転嫁の点をとりましても、その難易には問題も出てこようかと思うわけでございます。
  207. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 だから、私は、水野君が一生懸命やっているところを余り水を差したくないのです。だけれども、これは小売段階で、要するに本来消費者が払う払うとみんな言っているのですよ。消費者が払うなら、最後の段階で当然消費者が払ってしかるべきもので、それを要するに小売段階を除外したということは、消費者が払わないということでしょう。大臣、それはどうお考えですか。
  208. 水野勝

    ○水野政府委員 消費の、しかも小売の段階、一番の末端の段階で、消費者と直結するところで御負担をお願いするというのは、消費税の性格からいたしますればある意味では理想的な形でございますから、一つの御意見であろうかと思います。また、アメリカの州あるいは市町村におきましては、そういうことで定着をしておる。  しかし一方、委員指摘のように、日本の流通というのは非常に小さい。小さくて多数の方々がそこに働いておられる。そういうことからいたしますと、そこの段階だけにそれをお願いするということになりますと、それはまた逆にやはり大きな問題となるということで、税制調査会としては素案の段階から、それはやや公平を欠くと申しますか、効率性を欠くと申しますか、そういうことから外されたように聞いておるところでございます。
  209. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 だから、今お話ししたように、中小企業で働いておるのは製造業でも一千万人ぐらいいるのですよ。小売業でもそのくらいいるのですよ。でございますから、これは消費税、消費税と銘打つならば、最後の段階で転嫁できるはずじゃないですか。それを、そこへ持ってくると摩擦が大きいからということは、要するに本来転嫁し切れないということをある程度容認しておるのですよ。だから、そこに大きな問題点があるのじゃないかな。私は、これからじっくり税制論議するのですけれども、この点を、私がさっき申しました人数、日本は製造段階でも流通段階でも中小企業に働いておる人間がいかに多いかということ、しかも、小売段階でかけないということは転嫁できないことを前提としておるのじゃないかな。  欧州の場合には、どっもかというと売っておる方が威張っておる。日本の場合はお客様は神様で、少しでも相手よりも安くしていかないとやっていけないという競争的な要素、いささかアメリカ社会と似ているのですね。アメリカと日本は非常に競争的だ。要するに買い手市場的なところだ。しかも日本においては、結局今まで流通も生産も間接税になれていないものだから、フランスあたりのように昔は取引高税があって、そのために流通、生産機構が非常に簡素化して、その改善という形でEC型付加価値税で入ったものと、そういった経験がないものとの大きな差があるのですよ。大きな社会問題になるのじゃないかと僕は心配しているわけです。  だから、これからの税制論議のときに、何で小売段階に一回限りというのがだめになったのだ、そこをもう一遍考えてみて――今のところ、いろいろなPRがありますよ。私は、それよりも資産課税というか、いわば地方税と国税の間を見直していくというのがまず最初じゃないかなと思いますが、いかがでございますか。私は今大臣に聞いておるのだけれども、せっかくですから、あなたでもいいです。
  210. 水野勝

    ○水野政府委員 小売段階の課税、これが転嫁ができないからそこは外されたというふうには、決してお聞きしていないところでございます。やはり、いろいろ新しい間接税につきましてお願いをするとすれば、各段階で少しずつ分けてお願いをするということが適当ではないかということで、絞られたというふうに聞いておるところでございます。
  211. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、政府税調の過程でいろいろ御議論をされたことに関するものでございますから、私必ずしも的確に存じませんでしたが、小売段階だけにすべてのその納税あるいはその手続等を負わせるということは、何と申しますか、結局は国民のすべての流通、生産についての課税になるわけですが、その納税なり事務なりが全部小売段階だけに集中するということは、やはり公平でないというお考えが主体であったというふうに聞きます。
  212. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、今小売業者に全部しわ寄せしろとは言ってはいないので、それが要するに没になったのは、本来転嫁が十分できないということを自認しているのではないかなという気がするわけです。  私の質問時間は二、三十分延ばしてくださいね。  もう一つお答えになっていないのは、何で地方税関係の審議を税調でしないのかな、要するにやっているというのが国税と――もう少し地方税の偏在なり、国税と地方税とのいわば境界線をもう一遍見直すべきではないかという議論が本来は出てきてもしかるべきじゃないか、何で税調はそれを取り上げないのかな、今後取り上げるお気持ちがおありかなということです。
  213. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税調は、国税ばかりでなく地方税も審議をされるものでございますから、現実にその議論は毎年毎年やっておられるようでございますけれども、実はそれは行財政ということにやはりなってくるのだと私は思うのでございます。つまり、行政事務の再配分ということがあって、それによって財源をどうするかということになるものでございますから、税制だけでその議論をするということが、実際は総合的な議論はその場ではできないということがあるようでございます。それならば行財政の再配分ということを国と地方で抜本的にやったらいいではないかということは、御承知のように実は戦後何度も試みておりますけれども、今日まで実行可能な案に到達していないというのが現実ではないかと思います。
  214. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 従来、地方と国との再配分というと、いつも地方に厚く、地方に厚くという声ばかり起こってしまうのですよ。その辺は私も、貧乏な地方には厚くてもいいけれども、この前私は文芸春秋で「巨大なタックス・イーター」という言葉を使って、また委員長が嫌な顔をするかもしれないのですけれども、この護送船団方式というか、足腰の弱いところへ合わせて地方の財源配分なりなんなりしてしまうものだから、足腰の強いところは本当に笑いがとまらぬようになるのですよ。その辺の話を本来もう一遍取り上げるべきだと思いますね。そこは私、土地問題でも、今度土地特の質問があるからそれでもって議論しますけれども大臣、もしそういうあれであれば、これからもうちょっと地方税も込みで本来議論すべきであると思いますけれども、その辺をどうお考えか。地方税を込みで考えていくべきだとお考えですか、いかがですか。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは本来は国と地方というものを、負担するのは国民でございますから、それをどういうふうに分けるか、どの部分が国税、どの部分が地方税であるかということは総合的に考えるのが本来であることは、どうも筋道はそうであろうと思いますが、そうやってまいりますと、今度は地方と中央の行政の事務をどうやって配分するかという議論に入らなければ、その後の方ができないということになってまいりますので、そういう大きな仕事が十分にこなされていないということだと私は思うのでございます。
  216. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっき私は自治省に、ニューヨークと東京とテストケースでいろいろ調べてごらん、歳入がこう、支出はこう、そういう本当に基本的な勉強をしていただきたいと思いますし、また税調もそれを正面から取り上げていただきたい。さっきの売上税の話をしたときに、こうやって社会にも非常に大きなインパクトを与える税金が今論議されているわけですね。そのときに、何か国と地方の関係で護送船団方式で、行革行革といいながら、本当に地方の行革が――給与だって地方公務員が高いのですよ。人数もどんどんふえているのですよ。それをもう少し真剣に税調でも取り上げていただきたい。今後、その辺をもう一遍問題意識を持って税調と話してごらんになりますか。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税調は税調の可能な範囲でこれは御議論をなすっていらっしゃると思いますし、これからもそうお願いいたしたいと思います。
  218. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 可能な範囲は地方税も入ると思いますね。そうでございますね。
  219. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両方の税につきましてでございます。
  220. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、少し延びましたからこの辺でやめておきます。     ─────────────
  221. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事青木昭君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  223. 越智通雄

    越智委員長 質疑を続行いたします。正森成二君。
  224. 正森成二

    ○正森委員 六十三年度の国債費は十一兆五千百二十億円で、一般会計予算に占める割合は二〇・三%で若干下がりましたが、依然として二〇%台の大台で歳出予算を先取りしていることは御承知のとおりであります。この国債費は新規財源債を二兆七千億円上回り、利子、割引料だけでも二兆二千億円上回るという深刻なサラ金財政であります。さらに、国債費は六十年度から歳出予算のトップに躍り出て四年目になっております。社会保障関係費の一・一一倍、文教予算の二・三七倍に達しております。このように国債費は、歳出予算のますます大きな部分を先取りして財政の硬直化を進行させ、福祉、教育など国民向け予算の切り捨て、さらに景気や財テクブームに左右されない安定した税収確保策などと称しての新大型間接税導入、こういうところへの口実の一つにもなろうとしております。  そこで、今年度は国債の発行額そのものは前年度等に比べますと、大蔵大臣も御苦心なさったのでしょうが減額されておりますが、国債費は依然として上昇を続けておるということで、国債費をどういうぐあいに膨張を防ぐかということは、財政再建という問題からいいましても我々にとって非常に関心のあることであります。きょうは、予算委員会ではなしに大蔵委員会でございますから、気楽な気持ちでと言うたら語弊がございますが、つまり大きな声を出さないで議論ができるのではないかと思っております。  そこで、最初に事務方にお伺いいたしますが、理財局長来ておられますね。今の統計のできている範囲で、私は手元に六十三年二月に大蔵省が予算委員会に提出された資料を持っておりますが、現在の国債の保有状況を、日銀、資金運用部、市中金融機関それから個人等というふうに仮に四つに大別いたしますと、保有額は幾らで全体の割合は幾らになるのか、お答え願います。     〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕
  225. 足立和基

    ○足立政府委員 一番最近の国債の所有者別の保有状況でございますが、六十二年十二月末という数字が私ども一番新しく把握をいたしておりますので、それで申し上げたいと思います。  残高でございますが、百四十九兆六千百二十四億円、そのうち日銀は五兆三千二百三十六億円、三・六%でございます。それから金融機関が四十六兆七百四億円、三〇・八%。証券会社四兆二十二百六十九億円、二・八%。市中と言われましたので、あるいはそれを足していくことになるかもしれません。それから資金運用部が五十兆八千二十七億円、割合で三四%になります。それから、あと個人等が四十三兆一千八百八十八億円、二八・九%ということになります。
  226. 正森成二

    ○正森委員 私の手元に持っておりますのは、昨年の九月の分でしたので若干数字が変わっております。  そこで伺いますが、個人等という中には個人とそれから法人企業というのを二つ含んでおると思うのですが、もしわかればそのおのおのについて答えてください。
  227. 足立和基

    ○足立政府委員 国債は、御承知のように転々流通するものでございますので、現在正確に個人が幾ら持っておる、あるいは事業法人が幾ら持っておるということを把握することはできないということを、まず御理解いただきたいと思います。  それを前提にいたしまして、推計でございますが、日銀の統計月報によりますと、個人の金融資産といたしまして中長期の国債の保有が、六十一年度末でございますが、十三兆三千二百億円余という数字がございます。そのほかに、やはり投資信託等を通じまして個人の所有、実質的に保有しているものが約七兆円ほどあるかな、これは推計になります。そういうことでございますので、それを加えますと、実質的な個人保有国債というのは二十兆から二十一兆円程度でないかと考えております。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  228. 正森成二

    ○正森委員 それで合っているのかもしれませんが、私どもが日銀の調査月報で承知しておるところでは、個人が十四兆五千八百二十一億円で約一〇・一%、法人企業等が十三兆九百七十二億円で九・一%という数になっております。あなたの言われたのと若干違うようですけれども、大まかな日銀、資金運用部資金、それから金融機関、個人等というものの大体の比率は、お答えになったようなところであろうかと思います。つまり、個人の比率がずっと減ってきているのですね。個人等の中でも、個人というのが減ってきているという数字があられてきております。これは、後でいろいろなことを申し上げるときに参考になることであります。  次にお伺いいたしたいのは、国債の残高が百四十数兆あるいは百五十兆と言われておりますが、これはそれぞれの発行のときにそのときどきの金利現勢に応じて、あるいは御用金などと言われて必ずしも金利実勢に合わない時代もあったかと思いますが、発行されております。そこで大まかに八%台とか七%台ということで、その残高がそれぞれ幾らあるのか、あるいは残高合計に占める割合は何%か、現段階でお答え願います。なお、加重平均利率がわかれば同様にお答え願います。
  229. 足立和基

    ○足立政府委員 これも一番新しいところで申し上げますと、昨年の十二月末現在の数字でございますが、全体で、これは利付債でございますから先ほどの国債の総額とはちょっと違いますが、百四十三兆六千五百七十一億円になってございまして、八%台のものが残高で二十二兆六千三百九億円、全体の一五・七%を占めております。七%台が四十三兆四千四百九十四億円で三〇・二%、六%台が三十四兆一千二百七十二億円で二三・八%、五%台が二十九兆八千九百七十二億円で二〇・八%、四%台が十兆二千七百八十七億円で七・二%、三%台が三兆二千七百三十七億円で二・三%ということでございます。なお、全体の加重平均といたしましては六・五七%になろうかと考えております。
  230. 正森成二

    ○正森委員 加重平均が六・五七%ですが、一番最近の利付国債の発行の利回りは幾らになっておりますか。
  231. 足立和基

    ○足立政府委員 四月債の発行条件がクーポンで四・六%でございます。額面が九十九円でございます。
  232. 正森成二

    ○正森委員 宮澤大蔵大臣、今お聞きいただきましたように、公定歩合が二・五%であることはもう皆さん御承知のとおりであります。最近の利付国債の発行金利も四・六%である。そうしますと、今の足立理財局長の答弁によりましても、三%台と四%台を入れましてもこれは全体の一〇%に満たないのですね。残りの九〇%は五%台以上である。その中には八%台、七%台という、今の低金利の時代から見ればもう非常に有利な商品があるわけですね。日銀が間もなくおいでになると思いますが、公定歩合を見てみましても、例えば四十八年などは公定歩合が九%の時代もあったのですね。それからしばらくは八・五とか八というのがずっと続きまして、一たんオイルショック等で低下いたしまして、その後第二次オイルショックの後などはまた九%に上がったということで、そういう時代がしばらく続いております。その後金利が低下いたしまして、昭和五十六年ぐらいから顕著に金利が低下しておるという格好になっているのですね。  そういたしますと、今MMCなどといいまして市場金利連動の商品があるときに、幾ら国が出したからといいましても、公定歩合が九%だ、八%だという世間の時代に出したものが、十年債だとか、あるいはここに資料を持ってまいりましたが十五年、二十年というのもあるわけですね。そうしますと、たとえ赤字国債、特例国債でありましても、初め出しましたときは大平さんなどもこれはもう絶対に借りかえはやらないんだと言っておりましたが、背に腹はかえられないということで六十年で償還するということになれば、四条国債と一緒なんですね。そうしますと、十年の場合でも十年たってやっと六分の一償還できるだけだ。二十年債ということになれば、もしそれが高い金利の場合には、これは非常に長期にわたって続くということになります。そこで、これはやはり何とか考えるということは、財政当局にとりましても国会にとりましても財政再建を本当にやろうと考える場合には、国民には税制改革ということでさまざまな御負担をお願いしようというときでありますから、やはり痛みを分かち合うという意味で、国家財政の観点からいっても真剣に考えなければならない問題であると考えるわけであります。  御答弁を先取りして申しわけございませんが、昨年でしたか、あるいは一昨年の暮れでしたかちょっと忘れましたが、私が同様の問題を提起いたしましたときに、当時の理財局長は、そういう乱暴なことはできないという意味の答弁がありました。それを受けて宮澤大蔵大臣も、金融秩序にこれは非常に大きな影響を与える。今、理財局長が乱暴なことと言われましたけれども、そういうように思います。ここを探せば速記録があるのですけれども、時間の節約の意味で正確には引用できませんけれども、そういう意味の答弁があったことは間違いないのですね。今でもそういう御見解ですか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どういう経緯であったか前後を忘れましたけれども、こういうことを申し上げたのではないかと思います。つまり、繰り上げて償還をいたします場合に額面で返すわけにはいかない。時価がございますから、そういうわけにはいかないということをまず申し上げたのだと思います。それから、それなら時価で買い取れといえば、これはむしろ金利的に損をするか得をするかという計算をいたしませんと、かえって損になる場合が多い。したがって、繰り上げて償還をするということは事実上買い入れ償還にならざるを得ませんから、買い入れ償還をした場合に損得の計算というのは損をする場合が多い、こういう趣旨のことを申し上げておったのではないかと思います。
  234. 正森成二

    ○正森委員 そういうやりとりもありましたが、私がさらに議論を発展させて買い入れ償還ということになりますと、それは八%もの利回りのものは、当然額面の百円を上回りまして百十五円、百二十円というようになっておりますから、そんなもので買い入れ償還をしたのでは国のもうけにはならない。けれども、調べてみますと、国債規則には繰り上げ償還という規定もある。それから国債整理基金の第五条には、国債の整理のためにはこれは償還できるという規定がある。また、国債自体の発行の場合にも額面に一応期限は書いてありますが、いつ何どきなりとも繰り上げ償還できるという文言がある。それは結局発行者である国と、あるいは引き受けた国債保有者との一応の約束事になっておるということを挙げまして、これは必ずしも時価による買い入れ償還をやらなくてもいいんだ、額面で償還をする、あるいは額面で時の金利あるいはそれに若干のプレミアムをつけて、低利借りかえが可能なのであるという見解を私が申し上げたのですね。  今、速記録が出てまいりました。そういうことを私が申し上げたのに対して当時の窪田さんが、「来年も恐らく借換債を含めて二十兆円以上の国債を発行することになると思いますので、ちょっとそういう乱暴なことはできかねる。」という意味のことを言われて、それを受けて宮澤大蔵大臣が、「今、理財局長が乱暴だと申し上げましたことは、それは全く金融秩序を壊してしまうことになるわけでございますね。そういう意味で私どもは、やはりそういうことは考えない。」こういういきさつになっております。だから、宮澤大蔵大臣が言われましたことは、ここへ来る前の段階の議論ですね。  そこで、ここからがきょうの本論なんです。ここまでは去年もう既にやっていることですから、復習しませんと議論が発展しませんのでここを申し上げたのです。しかし、「金融秩序を壊してしまうことになる」というのは、去年の前半の段階なら、それはそうおっしゃることも多少理由があったのかなと思うわけであります。本当はそうではないのですね。去年も多少申し上げたかと思いますが、我が国で前例があるのです、低利借りかえとか繰り上げ償還という。それは資料も持ってまいりましたけれども、日露戦争のときに金利の高い国債を相当出しまして、それを三分五厘で昭和四十三年に借りかえるということをやりまして一挙に二十数億円の、当時の二十数億円はものすごい金ですね。五%の高い金利のもののほぼ半額を借りかえているのです。(宮澤国務大臣昭和ですか」と呼ぶ)明治四十三年、日露戦争の後でございますから。  それから、昭和と言われましたので昭和の例をもう一つ出しますと、これは昭和十一年でございますけれども昭和十一年に馬場財政、そのときに、これはいよいよ戦争に突入しようというときでしたから五分というような高いものではだめだということで、明治四十三年の故事に学んだのでしょう、三分五厘でこれも相当な額を借りかえるということをやっているのです。このことは、我が国だけではなしに外国でもやっておりまして、例えばイギリスでは一九三二年だったと思いますけれども六%から三%ということで、これは若干のプレミアムなんかをつけておりますけれども、借りかえるということをやっております。ですから、これは決して共産党だけが言っていることではないんで、時期は戦争が終わった後の整理のときとかいうような時期ではございますけれども、前例がないことではないのです。  ですから、去年私が質問しましたときも、そんな乱暴なことはできませんという答弁をされましたけれども、決して乱暴なことではない。多少勇気は要ったかもしれませんけれども我が国の財政当局あるいはイギリスの財政当局が現にやったことであります。  それにかてて加えて、私は、去年の宮澤大蔵大臣の「それは全く金融秩序を壊してしまうことになるわけでございますね。」という答弁は、昭和六十三年の今になってみるといよいよいただけないと思うのです。といいますのは、マル優の場合には、今まで税金が全くなかったのを二〇%いただいているのですね。これは金利を二〇%低下させたのと、預金者にとっては同じ効果があるわけであります。それによって国は、平年度はもっとふえると思いますが、一兆六千億円余り税収を得るということになっておるのです。他方、これまで三五%払わなければならない利子配当分離課税という制度をとっております大口の預金者は、逆に二〇%に四割も金利を下げてもらって数千億円の利益を得るという、言ってみれば数十年続いた金融秩序を崩すことを政府は、一兆六千億円平年度で財政を得るためにはやっておられるわけです。これは、あるグループには金利を二割切り下げ、あるグループには金利を四割切り上げるということと同じことを、全国的規模で大規模にやっておられるわけであります。  そうだとすれば、我が国が財政で国債費の負担が非常に大きい場合に、全体の利益になるために八%とか七%とかいう今の金利水準では非常に高い金利を、どれくらいにするかはまた国会で御相談しなければならないでしょうけれども、一定の合理的な金利で借りかえる、あるいは償還をして、その償還財源は現在の金利の国債発行によって賄うということをして、それがなぜ乱暴であるとか金融秩序を乱すと言われるのか、私には不敏にしてわからないのです。もし、そういうことが乱暴であり、金融秩序を乱すなら、マル優廃止などは乱暴も乱暴、言語道断であると言わなければならないのじゃないですか。御意見をお伺いしたいと思います。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、まずできることとできないこと、それからやることが適当なこと、適当でないこと、いろいろな法律上の問題もあるようでございますので、最初に理財局長からお答えをすることをお許しをいただきたいと思います。
  236. 足立和基

    ○足立政府委員 まず、先生今御指摘の事実関係について申し上げたいと思います。  確かに我が国におきましては、明治三十八年に英貨建ての国債、これは六%物と五%物でございましたが、四%に借換債を出した。それから明治四十三年から四十五年でございますが、第二次桂内閣のときも従前発行の五%物を四%に借りかえたという事実があることはおっしゃるとおりでございます。(正森委員昭和十一年もあるでしょう」と呼ぶ)ございます。御承知のように、この二つにつきましては、日露戦中戦後を通じまして累積されました公債の利払いの軽減等のために行った措置でございまして、この当時におきましては、とても流通市場というようなものは整備されておらなかった。現在とは、そういう意味で環境がおよそ異なっておるということが言えるかと思います。  それからもう一つ言われましたように、昭和十一年に五分利国債を三・五%、三分半利国債に借りかえたということもございますが、当時は戦費調達といたしましてすべて日銀引き受けでいたしておるということでございまして、これまた、このようなことをいたしましても、現在のような大変広範な流通市場を通じて国債の保有者に損害を与えるというようなことがなかったのではないかと考えております。我が国におきましては、このような例があることは事実でございますけれども、そのほかに、それ以来一切このような低利借りかえというのはないわけでございます。  それから、イギリスにおきましても確かに一回例がございますけれども、それ以外の主要先進国におきまして、実は低利借りかえ、繰り上げ償還というようなものは行っていないと承知しておるわけでございます。  そこで、事実はそういうことでございますが、先ほど私が申しましたように、現実の国債残高の平均利回りというのはかなり高くなっておる。現在の国債の発行条件からいたしますと、かなり高くなってございますので、財政的負担を軽減するという見地から、低利借りかえをやれればやりたいということはやまやまでございます。それで繰り上げ償還自体は、法律的には先生のおっしゃるように制度としては可能でございます。確かに国債の券面にも、繰り上げ償還することあり得べしということも書かれておるのも事実でございます。が、一方先ほど来申し上げますように、現在の国債というのは大変に大量に発行されておりますし、それからまた保有者も金融機関あるいは市中証券会社あるいは個人、事業法人等、広く一般国民に持たれておりますので、かつての高金利の国債というものは、先生も御承知のように、現在流通市場におきましてかなりの高い値段がついておる。それを額面で償還するということになりますと、国債の保有者に不測の損害を与える。  現実昭和十一年におきましても、このような低利借りかえを行いました結果、流通市場におきます国債というものが大変に暴落をしたということがございまして、今後とも国債というものをある程度継続的に発行していかなければならない国の立場ということを考えますと、とてもそのような国民に不測の損害を与えるような繰り上げ償還ということは、制度的には可能になっておりますけれども、実際に実現することは無理でないか。その乱暴なことはできませんという表現がどうかという問題はございますが、私ども申し上げておることはそういうことでございます。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで乱暴云々ということになるわけでございますけれども、結局今申し上げましたことを簡単に申しますと、こういう時代になりまして国債というものが金融商品として市場で広く売買をされておる。したがって、転々流通いたします。あるいは、持っている人に対して価格についての一種の期待権を与えておるということ、そういう商品であるということではないかと思います。その商品債務者が一方的に、これは法律的には額面でお返しすることは可能であるとしましても、商品として成立しているものの価格をそれによって一方的に変動せしめるということでございますから、いろいろな意味金融秩序に障害を与える、所有者に損害を与えることはもちろんでございますけれども。ということは、これだけ市場に出回った商品になりますと、明治時代あるいは昭和十一年は日銀だけでございますからよろしいとして、できないということを申し上げようといたしたというふうに考えます。  マル優のことをおっしゃいましたけれども、ちょっときつい言葉でございますが、それは国家が国家権力によりまして、むろん国会の御承認を得てですが、財産の所有者から税を取るということはあり得ることです。それは、確かにそれだけの負担を余計に納税者にしていただくわけでございますが、これは国家が国会のお許しを得て徴税権に基づいて、言葉はきつうございますが、行うことでございまして、いい場合も悪い場合もあると思いますが、国債の問題になりますと、この場合の国は、恐らく限りなく一種の経済主体に私は近いものだと思います。債務者と債権者といったような関係であって、徴税権を持っている権力者としての国家といったようなものと事実上異質なものであるのではないか。つまり、商取引の当事者としての持っております、何と申しますか、モラルという言葉はちょっとよくないかもしれませんが、券面に書いてあるから額面でやらせていただきますというにしては、余りにも流通している商品になっておるということではないかと思います。
  238. 正森成二

    ○正森委員 多分そういうお答えが出るだろうと思ったので、次の論点を用意してまいりました。  限りなく国家権力といいますか、徴税権者というよりも商取引の当事者に近い、こう言われました。私は、そういう考え方に対しては必ずしも同意しておりません。それは国債というのは、金利が相当高くなっておって市中銀行などでクラウディングアウトが発生するようなときも、国家の利益のために、この大蔵委員会参考人おいでになったこともございますけれども、泣く泣くとはおっしゃらなかったでしょうけれども、御用金として御用立てしております、できれば実勢金利に近づいていただきたいという答弁をされて、満場の笑いと拍手喝采を受けた銀行家もおるわけです。私は、現にここにおって聞いたのです。だから、必ずしも大蔵大臣の言い分に同意するわけではありませんけれども、仮にあなたの言い分を認めたとして、ここに新聞等持ってまいりましたけれども、世界銀行は借りかえをやっているでしょう。   世界銀行は円資金の調達コストを下げるため、金利が高い時期に日本の金融機関から借りた円建てシンジケートローン(協調融資)約五千億円を低利借り換えすることで、協調融資団と基本合意した。内容は①借り入れた時に年八ー九%だった金利を現在の長期プライムレート、年五・八%にする ということになりまして、これを見ますと、こういうことをやる前に、  来日したクレーシー世銀副総裁が協調融資団の東銀、長信銀、信託、生・損保の首脳、大蔵省の国際金融局幹部に直接協力を要請、大筋で合意した。 しかも  違約金利の〇・五%を世銀が支払うかどうかは支払いを求める協調融資団側と拒否する世銀が対立、 というようなことまで書いてあります。これは二月の日経ですね。国際金融局長、この点がどうなったかもお答えいただきたいし、まだありますよ。世銀は東京市場で発行した円建て公募債、サムライ債と言われておりますね。これは世銀だけでなしに、ほかにも外国で用立てをしておりますが、それを過去に発行した高利率債を繰り上げ償還するといいますか、そういうことで動いておるということで記事が出ているわけですね。既にそれは実施に踏み切ったというようにも書かれております。そこで、これらの点についてほかにもまだ記事がありますけれども国際金融局長から答弁をお願いします。
  239. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  世銀等の国際機関といたしましては、金利が下降局面にありましては、開発途上国への貸出金利をできるだけ下げたいという気持ちを持つことは当然でございます。また同時に、世銀世銀に対する市場評価ということにも大変気を使っております。そういう意味で、金利が下がりました場合に世銀としては、公募債よりもできるだけシンジケートローンとかあるいは私募債というものを先行させて、償還をしたいという気持ちを持っておりますし、そういう基準がまずあるわけでございます。  したがって、そういうことからスタートいたしまして、次に御質問がありましたいわゆるサムライ債、世銀の円建て公募債の期限前償還についてでございますが、これにつきましては昨年十一月以降六件、合計金額にいたしまして千六百十四億円が実施されております。ただ、この場合も当然世界銀行としてはいろいろなことを考えまして、世銀債は不特定かつ大量の投資家によって消化され、かつ日々取引されているという性格は持っておりません。事実上、個人はほとんどありませんし、また投資家層もある程度特定できるというような特性があるということを、あわせて御説明いたしたいと思います。
  240. 正森成二

    ○正森委員 内海国金局長が私の言いました大筋はお認めになったと思うのです。  新聞記事によりますと、スターン世銀上級副総裁が記者会見をいたしました記事が載っております。その中でこう言っているのです。  繰り上げ償還は、日本の市場ではなじみがないかもしれない。今回の措置はいわば教育課程の一環だ。スイス市場ではこの方式はあたりまえで、だれもどうこう言わない。東京市場でも五年もしたらだれも問題にせず、あたりまえの取引慣行になるだろう。世銀としては円をふくめ、どの通貨建てのものであれ、市場動向をみながら必要に応じて繰り上げ償還を考える。 こう言っているのですね。そして、  繰り上げ償還を決めるにあたっては日本の銀行、機関投資家や政府とよく話し合った。われわれのねらいは十分理解してもらえたと思う。 こう言っております。  そうすると、世銀などは金利の実勢が低くなれば、これは世銀が高い金利で資金を調達しますと、発展途上国は必然的に高い金利で金を借りなければならない。それを避けるためには、むしろ市場金利が低い場合には低い金利で調達して、発展途上国等に低い金利で融資をするということが世銀の目的にもかなっているし、利益でもある。そういう理屈が通るなら、これは政府も同じじゃないですか。金利が低くなっているときにいつまでも、五年も七年も前の公定歩合が九%だった時期に発行した八%というような国債の金利を払い続けるということは財政を圧迫し、納税者である国民に対して迷惑をかける。これを低い金利で借りかえて納税者の負担を軽くするというのは、我々の責任であり義務であるという議論の方が、世銀なんかよりも、ある意味では少なくとも日本国民にはもっと説得力があるのではないんですか。あなた、限りなく、まあ言うたら、商売人とは言われませんでしたけれども商取引に近い、こう言われましたけれども、仮に商取引に近いとすれば、あなたが最も大事にしなければならない顧客といいますか資金提供者は、これは国民じゃないですか。  それに対して、財政当局としてみすみす低い金利で財政負担を減少できるのに、それをいつまでも放置する。しかも、公定歩合九%が六%、七%ならいいですよ。二・五%なんて史上最低じゃないですか。しかも円ドル問題のために、後で申しますが、アメリカとの一定の金利差を保たなければならない。そのアメリカは、かつて高金利だったけれども、それではいろいろ弊害があるということで金利は下げておる。そのアメリカの金利と一定の差をつけなければアメリカの方に金が流れないということで、二・五%というような史上最低の公定歩合をもう長らく続けているんでしょう。二カ月や三カ月そういう状況で、いつまた高くなるかもしれないという状況じゃないんですね。そういうぐあいに長く続いておるときに、金融が緩和されているときに、しかも八%だとかいうような国債はこんないい商品はないから、きょうは証券取引所の関係者は来ておりませんけれども、大体市場に出てこないんですよ。悪貨は良貨を駆逐するという言葉がありますけれども、余りよ過ぎるからこれは大事にとっておいて、そんなものは金融市場に出てこないのですよ。それぐらい、もうずば抜けて有利な商品になっておるということを考えますと、宮澤大蔵大臣の限りなく商取引に近い立場でございますからというのも、これまた理由にならないんではないでしょうか。  それだけではありませんよ。我が国内でもやっておりますよ。例えばここに「大口の客には勝てぬ!? 銀行、電力会社に利下げ」という記事があります。これは、電力業界首脳が日本開発銀行や民間の金融機関からの借入金のうち、固定金利九%以上の分についてすべて引き下げて借りかえをするということで交渉して、各金融機関と合意した。こんなことは初めてだ、こう言っていますよ。電力会社だって高い金利で借りたものを、何せ九電力全体で三千億円も借りているのですからばかにならないということで、少しでもそろばんをはじく、経済の見通しを持っておる者なら、これは借りかえるのが当たり前なんです。それをマル優は廃止して金融秩序に大影響を与えるわ、これは国家権力だからやってもいいんですということで、それで今度また大型間接税をぼかっとやって、これも国家権力だから取ってもいいんです、こうなるのですか。  これはただで取ってしまうのですよ。金利を借りかえて下げるというのは、市場実勢から余りにも高いものを現在の金利でやってくれませんか、しかもそれでは余り気の毒だから、これは日露戦争後のときもやったようですけれども、国会で個別に立法をして、一定のプレミアムをつけるということは十分可能なんですね。これはどのくらいになるかは別ですけれども、五十銭の場合もあるでしょうし、二円五十銭ぐらい奮発する場合もあるでしょうし、それだって国民全体にとってはずっと有利なんですね。そういうことをやれば、今言いましたように、今の金利とほぼ似ているのは一〇%で、残り九〇%です。だけれども、九〇%借りかえなくても、平均より上のもの約半分、五十兆円とかあるいは七十兆円を借りかえるだけでも、二%節約すれば年間一兆数千億円になるのですよ。これは大変なことじゃないですか。なぜおやりにならないのですか。
  241. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど経済主体云々と申し上げましたのは、これは誤解をしていただかないようにお願いをいたしますが、なぜ税金でできることがやれないのかとおっしゃいましたので、税金をいただく国というものと国債を発行する国というものは、その際に、税金というものは一種の権力行使でございますから意味合いが違うということを申し上げようとしてそういうふうに申し上げましたので、これは誤解のないようにお願いをいたします。  普通の商取引でございましたら、確かに借りかえということはどこでもいたすことでございます。したがいまして、世銀が繰り上げ償還をいたしましたのは、世銀としては特に意図するに足りない行為であったと私は思いますが、債務者が国家でございますと、国家というものは少なくとも自分の国の中の金融市場の秩序維持というものには私は責任があると思います。のみならず、我が国のようになりますと、世界における日本の国債の商品としての価値維持というものに、やはり責任を持っておるのではないかと思います。したがいまして、そういう意味では、国が約束しました債務というものには国の責任がついている、また、というふうに商品として受け取られているということのもとに私は取引が成り立っているのだと思いますので、そういう意味では、個々の経済主体が、あるいは経済主体としての世銀がやりましたものと主権国家がいたしますこととは、やはりそれに伴う責任が違うのではないかというふうに思っております。  さっきも政府委員が申し上げましたように、加重平均利率が六・五七と申し上げましたでしょうか、でございますから、それはやりましたら相当な負担の軽減になる、計算は多分そうでございますけれども、しかし、やはり国というものは、自分の債務に対してそんなに損得だけで、殊にその債務商品となって一般に流通している場合には、軽率な行動はできないというふうに考えるべきではないかと思います。
  242. 正森成二

    ○正森委員 お話を聞いていてごもっともな点もあるのですけれども、ただ私が遺憾に思いますのは、ある場合には限りなく商取引の当事者に近いと言いながら、世銀だとかあるいは電力の方を出しますと主権国家であるというように、今度は国家の方にお逃げになるというようになりますと、これは幾ら相手を論戦して詰めようと思っても、ある場合には私的な商取引の方に逃げるし、そこで逃げられなきゃ今度は国家に逃げるし、国家で逃げられなくなれば商取引の方に逃げるしということで、甚だフットワークが巧みなのですね。これではいかにコーナーに追い詰めようと思っても、土俵が広くなったり、丸いのが長方形になってみたり、これはなかなか宮澤大蔵大臣に対して論戦をするのは難しいという印象を持たざるを得ないのですね。ただ、そのことを申してもあれですので、こういうことを言うているのは、大蔵大臣、共産党の正森だけではないということをもう一言申し上げて移りたいのです。  これは、「金融財政」に載っている「国債の繰り上げ償還」という随筆といいますか、なんですね。これはどう書いているかというと、読みますよ。   日本の債券市場において不思議でならないことは、金利低下の大波のなかで、円建て外債だけは、次々と繰り上げ償還するのに、国債をはじめとする国内債には、そのそぶりも見えないことである。同じ発行市場で、ほぼ同じ約款で発行されているのに、外人?の発行するものだけが、音もなく繰り上げ償還されていくのは、一体何ということなのだろうか。   実は、円建て外債のなかでも、世銀債だけは繰り上げ償還をやらないのではないかと、希望的観測が流れていたが、この八月二十四日に、 去年ですね。  世銀債もやると発表された。 云々というように書いてありまして   そもそも、繰り上げ償還する積もりがないのに、約款に繰り上げ償還を入れておくのが、おかしい。約款に書いてあるからには、当事者が合意しているのだから、やらないのが、おかしい。やれば、財政再建が一挙に進むのだから、財政再建、ひいては納税者の立場からすれば、やはり、やらないのが、おかしい。   やらないための理クッは、すべて世銀が打破してくれた。世銀の財務担当副総裁は、本件に関する記者会見で、「繰り上げ償還は、東京市場でも、五年もしたら、あたりまえの慣行となるだろう」 さっきの言うようにですね。  と述べたそうであるが、なぜ五年待たねばならないのか。いや、五年待っても、国債はやらないのではないか、という気がする。  こういうふうに書いておられるのは、金子太郎さんといって丸三証券の社長さんですね。これは、日本共産党の副委員長とか委員長とかいう人が言っているのじゃないのです。ちゃんと証券のことを百も御承知の証券会社の社長が、なぜやらないのだ、これやれば財政再建に役立つということがわかっているのにやらないのはおかしいじゃないか。これは「赤旗」に投稿されたのじゃないのですね。「金融財政」にちゃんとこう書いておられるのですね。  そう見ますと、これは宮澤大蔵大臣がフットワークよろしく右に左に論戦をおよけになりましたが、結局それは道理が通らないから宮澤大臣もなかなか苦しいのであって、既に共産党とか、あるいはこの間参考人においでになりました和田さんですか、立教大学の教授でございましたか、その方も著書に書いておられます。それだけでなしに、まあ言うたら政府・与党の支持基盤の拠点である証券会社の社長さんもそういう意見を持って、言ってみれば政府を論難しておるということであるにもかかわらず、こういう方面での財政資金の節約はおありにならないで、マル優は導入して庶民は泣かせる、新大型間接税を導入して国民全体からは広く薄く国家権力で取り立てるのは一向構わないというのでは、これは国民はなかなか納得しませんね。いずれ、万が一新大型間接税などが出てくればそれはそれで論戦しなければなりませんけれども、きょうは財確法の審議ですから財確法を主にしながら若干触れたのですけれども宮澤大蔵大臣、無理ですね、新大型間接税の導入は。今のようなスタンスではとても国民は納得しないです。こういうこともやりました。  なぜ私が金融の保有状況を聞いたかといえば、個人というのは持っているのは一〇%ぐらいなんですね。それ以外には日銀あり、資金運用部資金が大量に持っておる、あるいは銀行がまとめて持っておるというようなところで、そういう銀行は今の財テクブームでいろいろもうけているのでしょう、証券会社だって。そんなところに大蔵大臣、国家の約束を破れない破れないと言いますけれども、私は、徳政令をしいて皆棒引きにしろなんて言っているんじゃないんですよ。元本はちゃんと払います、しかも繰り上げ償還します、ただ、利息だけは、今までのは払いましたが、これからは九%、八%は御容赦ください、今の実勢金利に若干プレミアムをつけて払います、今、資金運用がなかなかできなくて困っているのに、それだって利益じゃないですか、損はしないのですからねという、まともなことを言っておるのにすぎないということを申し上げまして、また御答弁になると別のコーナーに行かれる可能性がありますので、この点はこれでやめておきます。  それでは次の論点に移ります。時間が迫ってまいりました。――答弁したいですか。
  243. 足立和基

    ○足立政府委員 大臣のようには、フットワークよくうまくいきませんですけれども、先生のおっしゃることは、要するに世銀債では繰り上げ償還しているのになぜ我が国の国債でできないのか、そういうようなことかと思いますが、それにつきましては、まず規模というものが大変に違うということが一つございます。それから、先ほど国際金融局長答弁いたしましたけれども世銀債というものは、我が国におきましてもある程度特定されている者が持っておりますが、先ほど来申し上げておりますように、国債はだれが実質的に持っておるのかというのは、正直なかなか行方がわからぬくらい広く国民各層に所有されておるわけでございます。  先ほど、昨年の八月二十四日にサムライ債、世銀債の繰り上げ償還を発表したというお話がございましたので、そのときの市場の状況をちょっと申し上げたいと思うわけでございますが、例えばサムライ債の十一回債につきまして、その繰り上げ償還発表になる前におきましては、百九円十銭というような値段が市場でついておったわけでございます。それが、その発表になりました途端に市場での取引ができなくなりまして、二十四日は取引できず、二十五日、二十六日、二十七日といわば価格が暴落をしておりまして売り気配で終わっておるわけでございまして、初めて値がつきましたのが二十八日でございまして、百九円十銭から百二円九銭にまで実は暴落をしておるわけでございます。要するに、繰り上げ償還をするということになりますと、世銀債の場合には若干プレミアムがつきますからその額にまで下がるということでございまして、その間におきまして国債の方はほとんど動きがない、むしろ一般の市況を反映いたしまして、若干価格が上がっておるという状況でございます。  これは、私ども申し上げておりますように、国債で言えば国債の保有者、世銀債で言えば世銀債の保有者に思いがけない損害を与える、急に発表した途端に下がるわけでございますから。世銀債の場合には特定されておりますので、その方々は、言葉は悪いかもしれませんが、まあやむを得ないということであろうかと思いますが、広く国民一般が持っておる国債の場合に、みんなが果たして納得してくれるであろうか。要するに税金の負担が、利子が軽減されますから、その点については国民全体の負担が軽減されることは事実でございますが、国債を持っておる者にとっては、自分がそれだけ損を抱えなければならないのだろうか。そこはやはり、国債についてはなかなかそういうことはできかねるのではないか、私の申しております不測の損害を与えるということについてはできかねるのではないか、こういうことでございます。
  244. 正森成二

    ○正森委員 余りフットワークを使わずにお答えになったようですけれども、しかし八%台のものを五%台にするということになれば、百九円が百二円になるのは当たり前の話であって、金利が下がればそれだけ値段が変わってくるのは、利回りから考えれば当たり前の話なのです。だから、私は今その話を聞いて、それだけの荒療治をしたのに額面を割らずに百九円や百二円ぐらいにとどまっているなら、金融市場に対する影響は比較的小さくて済んだのだなというような感じがしました。  それからあなたが、世銀債というのは限られているけれども国の場合はいっぱいなんでと言うて、いかにも国債を持っている国民に被害を与えたらいかぬというような同情ある発言をしましたけれども、それくらいの人道的な立場があるのなら、国民の中でも一番零細な人が持っているマル優を国家権力だと言ってぽんと平然と取り上げるようなことはしない方がいい。そんな同情ある発言は、この予算委員会でも大蔵委員会でも聞いたことがないな。だから、同じようにそういう人道的な立場をとられるなら、すべてのことについて人道的態度をとって対処していただきたい。ある場合には夜叉のごとく、ある場合には仏のごとくここで言われても、それは正森成二には通用しないということを申し上げておきます。  日銀がおいでになっておりますが、そこへ行く前にマル優の問題について、これは東京新聞などに載っておったのですが、マル優を適用される方が母子家庭で違うのですね。死別の場合には大抵共済年金とか厚生年金をもらっている。その年金受給者はマル優対象者になるのですけれども、生別の母子家庭の場合には、ある程度収入がありますとマル優の適格者にはならないということで、これは非常に不公平ではないか。また、お年寄りの場合には、六十五歳を超えますと相当な資産のある方でもマル優対象者になるのだけれども、母子家庭の場合は三百万ちょっと超えたくらいでもうだめになるというようなことでございまして、できれば寡婦控除の適用を受ける方はマル優対象者にしてもらうということであれば、相当ないわれなき差別というのは解消できるのではないかというのが新聞に載っておる投書でございまして、私はもっともな点があるというように思うのですけれども、マル優適格者の枠組みについて、これは国金では無理だね、銀行局ですね。だから僕は、銀行局が来ていないといかぬのじゃないかなと思ったのですけれども、主税が答えますか、いかがですかね。
  245. 水野勝

    ○水野政府委員 新しいマル優制度におきましても、適用者は千万人オーダーございます。また、その金融口座数というのは膨大なものでございますので、これを効率的に間違いなく処理していただく、しかもそれは郵便局、銀行の窓口で処理をしていただくことでございますので、極力客観的な文書で確認できる手段をお願いする必要があるわけでございます。  一方、この制度の趣旨にかんがみまして、社会的には稼得能力を失われておられる方につきましては、やはり適用を申し上げたいという制度の趣旨がございます。そういう点を踏まえまして、この制度の発足に当たりましては関係省庁と十分話し合いまして、これが間違いなく運用できるという観点からいろいろ整理させていただいたわけでございます。この点につきましては、母子家庭でございますと、やはりそういう公的な処理で、銀行でも郵便何でも、客観的に確認できるというところで絞らせていただいたわけでございます。  寡婦控除ということになりますと、寡婦世帯ということのその点の確認体制というものが現時点ではなかなか難しいということであったわけでございます。また、御承知のように、寡婦控除でございましても、これが生別、死別、また扶養控除ある、なし、扶養親族ある、なし、所得制限ある方、ない方、いろいろさまざまでございますので、一概に寡婦控除の適用者ということで割り切ることはなかなか難しいということで、現在の制度に落ちついて発足をさせていただいたわけでございます。
  246. 正森成二

    ○正森委員 現在の制度で発足したという説明としてはそれでいいのですけれども、私が言うているのは、そういう制度で発足したということを聞いているのじゃなしに、発足した結果、こういう多少不合理とも思える差別があるので、是正してもらえないかという投書といいますか新聞記事に対して、意見を聞いているのですね。  それで、寡婦控除というのは、なるほど年齢だけでぴしっと分けられるとかいうものと違いますけれども、しかし税務署へ行って寡婦控除で申告しておる、あるいはそういう取り扱いを受けておるという証明をみずから願い出て、右証明するといって判こを押せば、これはそういう労を自分でとらなければいけないということで、決してできないことではないわけですし、私はきょう多くの時間をこの問題に割こうとは思いませんけれども、なお検討できるならば検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。いいですか。
  247. 水野勝

    ○水野政府委員 御趣旨はわかるわけでございますが、寡婦控除でございますと御自分が、自分は寡婦であるということで申告をされた。税務署は、確かにその申告書は受理されるわけでございますけれども、では徹底的にその要件につきまして、すべてのケースについて御確認を申し上げているということでもございませんので、税務署にそういうことで申告をされているという、例えば申告書の写しでもって処理するというのは、まだそこは問題が残らないのかなということでございますので、なかなか難しい問題である。  この制度は、六十五歳になられたらもう絶対六十五歳以下に戻られる方はないわけでございまして、その状態が客観的に動かない方を基本的に対象といたしておりますので、寡婦のように所得制限があったりするということはなかなか難しいということを御理解いただければと思うわけでございます。
  248. 正森成二

    ○正森委員 今のは記録に残る名答弁で、それは六十五歳になった者が二、三年したら六十になっておったというようなことはないわけですけれども、なおいろいろ知恵を出していただきたいということで、青木さん、どうもえらいお待たせいたしました。  日銀にお伺いしたいのは、六十二年五月ごろからマネーサプライが非常にふえておりまして、大体二けたということになっております。そういうぐあいに、言うたら円高で輸入物価は下がっておるといいますか、それから卸売物価や小売物価もそう上がっておらないというようなことでございますのに、マネーサプライが、八年ぶりですか、二けたかなんかになっているというのは。しかも、それがずっと続いておるということは、将来のインフレとの関係でも非常に心配になるのですが、日銀としては、なぜこういうマネーサプライの上昇が続いておるのか、あるいはそれについて懸念はないのか、そういう一般的な問題についてまず御答弁を願います。
  249. 青木昭

    ○青木参考人 御指摘のとおり、マネーサプライ二けたということがずっと続いておりまして、きょうたまたま三月のマネーサプライを発表いたしましたけれども、前年比一一・八%増、やや実体経済の伸びに対してマネーサプライの方が多いという状況が続いておるわけでございます。この原因は、基本的には長期にわたって金融緩和政策を続けてきたということが一つ。それに加えまして、最近の金融の自由化に伴いまして今までマネーサプライの対象外であったような金融資産が、例えば大口預金が有利だとかCDが有利だとかいうことでそちらの方に流れ込んでくる、そういう二つの要因が非常に大きく働いてこういう高い伸びになっているのだと思います。物価の方はずっと落ちついておるわけでありますけれども、マネーサプライが多過ぎるという状況は長い月で見ると物価面で懸念があるわけでありますから、十分そういったものは、マネーサプライの動向等はなおウオッチしていかなければならぬ、注意していかなければならぬと思っておるわけでございます。
  250. 正森成二

    ○正森委員 せっかく青木さんにお見えいただいたので少し質疑をしたいと思うのですけれども、ここに若干の資料を持ってきました。「エコノミスト」でありますが、それを見ますとマーシャルのk、名目総需要に対するM2プラスCDの比率ですね、それが出ております。六十二年の七―九では五三・一%で、過去十数年間の平均が四三・七です。低いときには三九というときもあったわけです。しかも、来年の一―三は、さらに五四・八ぐらいになるのではないかという予測が載っているわけです。これはいかにも高過ぎる。遠くて見えないでしょうが、グラフが載っています。  それで、私なりになぜこういうぐあいにマネーサプライがふえるのかと考えてみますと、いろいろ理由はあると思います。私は、金融をそれほど勉強しているわけではございませんからあなたの認識とは差があると思いますが、この財確法に関連のある点で申し上げますと、最近の国債の発行との関係でいいますと、ここに国債残高についての資料がございます。最近は国債発行額が例えば六十二年度予算では二十六兆円、六十三年度では二十三兆四千億円、これは借換債も含めてです。けれども、逆に国債償還額が六十二年度は十七兆九千億、六十三年度は十六兆六千億、これはもちろん借換債と現金と両方だろうと思います。それから国債費が六十二年度は十一兆三千億、六十三年度はほぼ十一兆五千億というぐあいになっております。  国債を発行いたしますと、言うまでもなく資金を吸収します。それから国債を償還し、国債費で利息等を払いますと、資金を散布することになります。資金が散布になるかあるいは逆になるかという点を見ますと、六十一年、六十二年から顕著に資金散布に変わっているのです。御承知のように、国債を非常に大量に発行しました五十年代当初、特に五十三年、五十四年というのは、クラウディングアウトが心配されるぐらい資金を国家が吸い上げたわけです。それがこのごろは国債発行額が少なくなる、それに対して償還は多くなり国債費は多くなりますから、それを差し引きしますと散布超過になるということで、数字を見てみますと六十二年度は三兆二千億円、六十三年度は四兆七千億円の資金散布という数字が出ています。ですから、国債という一つの分野をとりましても、本来なら国債というのは市中から、これは主として国民の預金から成ります、それが銀行等に集まるわけです。それを国家がお借りして吸収するという性質を持っているのですが、その国債の分野でも資金散布になっておる。  それからもう一つは、これは私が予算委員会で申し上げましたので、宮澤大蔵大臣は御記憶かと思いますが、ドル介入ですね。ドル下落いたしますので、日銀が外為資金証券で大蔵省が獲得した資金でドルを買い支える。そうしますと、円は言うまでもなく国内に散布されるということになります。しかも、これは私が予算委員会で申しましたように日銀引き受けなんですね。これは本来財政法では、我が国の資金需要のためならやってはならないことですね。我が国の予算でこういうことをやりますと財政法違反で、これは大蔵大臣だけでなしに内閣総理大臣の首も飛ぶかもしらぬ、もちろん日銀総裁はしかりであるというぐらいのことですね。それがドルを買い支えるというためには外為資金証券を出して円を用意して、それでドルをどんどん買っていく。それが昭和六十一年までは予算で認められているのは十三兆円でしたね。それが六十二年は当初予算が十六兆円になり、第一次補正で十九兆円になり、第二次補正で二十一兆円になり、六十三年度予算はついに二十八兆円であります。  そういうぐあいにわずかの期間に、これは日銀引き受けで事実上日銀券がどんどんと市中へ散布されるということなので、それがマネーサプライの増加に結びついているのではないか。学者も、これは日本の学者も外国の学者も言っておりますが、結局このことがインフレ含みになり、そしてそのお金が土地に向いた場合には狂乱土地上昇になり、そして現在は土地の問題が国会等でいろいろ抑制されておりますから、資金が主として株式市場に回って、株があのブラックマンデーの後わずか数カ月にしかならないのに二万七千円とかそういう水準にまで上がっている。これは、やはり余ったマネーサプライが部分的に公社債市場という分野でインフレを起こしておるというように、学問的に言ってもいいのではないかと思うのです。この政策の是非については予算委員会で若干申しましたが、ここではそのことを主としては申しませんけれども、日銀としてはこういう点については、通貨当局として非常に懸念を持って見ているのではないのですか。
  251. 青木昭

    ○青木参考人 財政資金の散布あるいは外為の介入とマネーサプライの関係というのをどういうふうに考えるかということ、御高承のとおりかと思いますけれども、例えば外為の介入ということは、為銀からドルを買って、そのドルのかわり金である円を為銀に渡すということでございます。そのこと自体がマネーサプライの増加になるのではなくて、そういうことをやりますと銀行の円の資金ポジションに余裕ができる。円の資金ポジションに余裕ができるから、銀行としてはさらに貸し出しをふやされ、信用供与をふやそうとするわけです。信用供与をふやそうとして貸し出しが伸びる、あるいは有価証券の買い入れがふえるという形になりますと、そのことがマネーサプライの増加になって最終的にあらわれるということでございます。  したがいまして、仮に外為のドル買い円売りの介入をやった場合に、私どもとしては、それによって生じる銀行の手元の余裕というものをそのままほっておきますと、やはりマネーサプライの増加になってしまうわけですから、それを何とかして悪影響が生じないように中和させる必要がある。その中和させる道具といたしまして、私どもとしましては、例えば債券のマーケットオペレーションとかあるいは日本銀行貸し出しを回収する、あるいは外為の介入がなければ必要であったであろう額よりも少な目にしか、日本銀行としては銀行に信用供与しないというような形で、銀行の資金ポジションを調節をしていくわけでございます。そういうことによって、銀行の信用供与が過大にならないように調節をしていくということが、まさに日本銀行の使命であるということでございます。そういう意味で、外為の介入があったから、あるいは政府資金の散布があったから直ちにマネーサプライの増加になるというのではなくて、それに対してどれぐらい日本銀行が調節をするかということにかかっていると言ってもよいと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、内需を拡大しつつ対外不均衡を是正していくというような、物価の安定が維持されておる限りそういう使命のもとで金融緩和ということを進めてまいりまして、そういう観点から、ある程度マネーサプライの増加が実体経済を上回るのを容認してきておるわけでございます。それは物価の動向につきまして、当面非常に安定を続けておる、あるいは安定が予想される状態にあるというような情勢判断のもとで、そういう金融緩和政策をとってきておる。それで、マネーサプライの増加率が二けたを続けておるわけでございます。それについて、もちろん先生のおっしゃるように、私どもとしましては、将来の問題としてはやはり相当注意していかなければいかぬ、手を打つべきときには迅速に手を打っていかなければいかぬというふうに思っておりますけれども、当面はそういう情勢判断のもとでこの金融緩和政策を進めておる結果、今のマネーサプライになっておる、そういうふうに考えておるわけでございます。
  252. 正森成二

    ○正森委員 今のお話で、政府資金の散布あるいは外為資金、それは基盤にはあるけれども、それをどう調節するかという日銀の腕にかかっておる、腕にかかっておるとは言われませんでしたが、そういうニュアンスを込めた発言でしたね。  そこで、私が非常に興味を持って読んだ文書があります。それは、ことしの一月十三日に発表された「経済問題に関するレーガン大統領と竹下総理大臣の共同発表」、経済問題に関する共同発表と言われている文書であります。宮澤大蔵大臣も、お話ししているうちに御記憶が戻ってまいられると思います。  そこでこう言っているのですね。日本銀行のくだりです。今、手元にお持ちじゃないかもしれません。読みますから、後で何なら見てください。「日本銀行は、経済の持続的成長を達成し、為替相場の安定を図るため、現在の安定した物価状況の下において、現行の政策スタンスを継続するとともに、低下しつつある短期金利が実現されるよう努力を続けることに同意している。」こういうくだりがあります。青木さん、思い出されましたか。持っておられますか。さすが御立派ですな。  ここで私が非常に注目しましたのは、当時の新聞などでも、「現在の安定した物価状況の下において、」という文言が入っていることなんですね。これは、国際金融局長もおられますけれども、大蔵省は必ずしも余り賛成でもなかったみたいだけれども、しかしこれを入れておきませんと、今あなたがおっしゃった日銀の調節といいますか、あるいは主体性というものが失われて、どんなにインフレ傾向になってもどんどんと外為資金証券でドル買い介入すれば、円がどんどん散布されてこれが銀行にたまるということになる。また、むやみやたらと公定歩合を二・五をさらに二に下げたりということになれば、金融が緩和し過ぎて大変なことになる。したがって日銀としては、「現在の安定した物価状況の下において、」という文言を入れたかったのだというように、私はこの文書を読んだのですね。それは、まさにあなたがここでおっしゃった日銀の調節機能ということと軌を一にする、そういう表現ではありませんか。
  253. 青木昭

    ○青木参考人 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、この前に、去年のルーブル合意ですか、その場合でも、黒字国は物価の安定を前提にして経済成長を図るというか、内需の拡大を図るというような趣旨の文書があったと思いますけれども、まさに物価の安定ということが大前提になるというふうに考えておるわけでございます。また、そうでなければ、内需の拡大というようなことも長続きいたしませんし、したがいまして国際収支の不均衡の是正ということも、着実に進行させることはできないというふうに考えておるわけでございます。
  254. 正森成二

    ○正森委員 私どもは、日銀に対しても批判は持っておりますよ。批判は持っておりますけれども、やはりこういう文言を入れるというだけ日銀はある意味では大蔵省よりしっかりしているなと。国際金融局長、腹立ちましたか。今手を挙げたですね。あなたにせっかく出てきていただくのなら、なるべく早く、時間も遅くなってまいりましたのでやめさせていただきたいと思いますので、最後の一問だけをやりまして、それで国際金融局長にお答えいただいて終わらせていただきます。  国際金融局長は何をお答えになりたいかよく知りませんけれども、私は予算委員会で外国為替資金特別会計の貸借対照表を取り上げて聞いたことがあるのです。そこでは、外国為替等の評価損というのは、六十三年度末の予定額はゼロになっているのですね。そして、繰り越し評価損のところは六兆何がしというのが書いてあります。これはおもしろいことに、ずっと見ていきますと、昭和六十二年予算のときにも、まだ六十二年の末には外国為替評価損はゼロになっているのです。これは、これから始まるからわからぬというスタンスになっている。念のために六十一年のを見ると、六十一年もゼロになっていますね。しかし、実際一年たってみますと、これは円ドル問題でドル買い介入をやりますから、ドル下落するから介入をやるわけで、為替評価損が起こるのは当たり前なんですね。それで、一年たってみると、そこが六十一年度の場合には二兆二千億損をしたというのがちゃんと出てくるし、六十年度のところでは二兆九千億損したというのが出てくるし、順番に出てきているわけです。  今は六十二年の四月で、三月が過ぎましたが、六十二年度末の外国為替評価損は幾らになりましたか。私らがいただいている資料のときはまだ年度途中なので、一兆三百四十一億七千三百八十九万八千四百五十四円、こうなっております。これよりずっとふえたでしょう。
  255. 内海孚

    内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  六十二年度の末の当時の資料でございますが、予定額といたしましては、このとき既にその評価の基準になるレートが出ておりましたので、一兆三百四十一億円計上してございます。  で、六十三年度末はゼロとしておりますのは、そのときの基準になる相場がどうなるかわかりませんので、ゼロにしてあるということでございます。  それから、先ほど国際金融局は現在の物価の安定している状況においてということについて御発言がありましたが、それは私どもといたしましては、その当時におきましても現在におきましても、物価は安定していると思っておりますし、また一言申し上げたいと思いますのは、ドルを売る介入をしなければならないというときには、トレンドといたしましてはドルは弱くなっているわけです。円が強くなっているということは、輸入の方からの要素といたしまして、物価の低落要因になるということをあわせて申し上げさせていただきたいと思います。
  256. 正森成二

    ○正森委員 今の論点では議論すると長くなりますので、一言だけ言って終わりますが、六十三年度予算に附属している外為特別会計の貸借対照表を見ますと、外貨証券というのは六十二年度末は九兆三千億円余りだったのが十六兆余りにふえることになっているのですね。そうしますと、これだけ外貨証券がふえるということは、ドルを買い支えざるを得ない状況が起こって、買い支えたものがアメリカのTBなりなんなりに変化して、それでここへ出てくるということになるのですね。したがって、十六兆から九兆を引きますと、約七兆介入するということがここでもう予定されているのですね。七兆も介入するというのは、ドルが安くなるから介入するので、為替差損がゼロなんということはあり得ないのですね。ですからここでは、それはまだ基準のレートが予算上決まってないから確定できないでゼロになったという理屈はそのとおりですけれども、あなた方のこの記載自体が、本年度も恐らくは莫大な為替差損を発生するであろうし、発生せざるを得ないであろうということを数字の上で示しておるということを申し上げまして、多少時間を節約いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  257. 内海孚

    内海(孚)政府委員 一言申し上げます。  二十八兆円というのは、そういう事態に備えての限度額でございます。  それから第二に、仮にある年の初めのうちにおきまして相当な介入があり、その後逆転するということもあり得るわけですから、いろいろな事態の進行があり得るということを申し上げておきたいと思います。
  258. 正森成二

    ○正森委員 それは私もわかっています。それじゃ、どうも。
  259. 越智通雄

    越智委員長 次回は、明二十日水曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二分散会